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1958-08-09 第29回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月九日(土曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 加藤 精三君    理事 田中 正巳君 理事 八田 貞義君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君       大石 武一君    大橋 武夫君       川崎 秀二君    河野 孝子君       齋藤 邦吉君    田邉 國男君       谷川 和穗君    寺島隆太郎君       中山 マサ君    藤本 捨助君       柳谷清三郎君    亘  四郎君       伊藤よし子君    大原  亨君       多賀谷真稔君    堤 ツルヨ君       八木 一男君    吉川 兼光君  委員外出席者         厚生政務次官  池田 清志君         厚生事務官         (大臣官房参事         官)      加藤信太郎君         厚 生 技 官         (公衆衛生局長)尾村 偉久君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      町田 幹夫君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐藤 京三君         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    竹田 達夫君         労働政務次官  生田 宏一君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      百田 正弘君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  三治 重信君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      住  栄作君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 七月二十八日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として松  山義男君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員松山義男辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働基準及び失業対策に関する件社会保障制度  及び公衆衛生に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 ただいまより会議を開きます。  労使関係労働基準及び失業対策に関する件について調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 百田さんに失業対策事業のことで一、二点尋ねてみたいのですが、政府経済計画が三十一億五千万ドルの輸出の達成ができないことは大体見通しがついたわけです。従って現在のこの不況状態は、政府が言っておるように秋になれば景気が上向くというような情勢は、われわれは必ずしもそう信じられない。むしろ現在の不況というものは昭和二十九年の不況と比べるより、一九二九年の世界的な不況に比ぶべき深刻な不況である。こういう見方をして参りますと、すでに労働省の発表している労働情勢報告等を見ても、失業保険受給者というものは昨年の同期に比べて四割七分、十五万以上も増加するという事態になってきているわけです。そうしますとこの失業対策事業にだんだん人がたくさん入っていくことは火を見るより明らかなんです。現在失業対策事業というものが非常に弾力を失って、失業対策事業に入ることさえも困難だ、こういう事態が起っておるわけです。先般われわれのところでいろいろ暴力事件に類似したようなことがちょっと起りまして、失対事業から二、三の労務者を排除するという問題が起ったのですが、それを排除されたら生活保護にいくより方法がない。市町村では生活保護にそういうことでこられては困るということで、生活保護の受け入れの福祉事務所と職安との意見が一致しないというような事態が起ってくるというような工合に、とにかく失業対策事業というものが、最近は予算のワクが二十五万かそこそこのために、弾力を失ってきている。どんどんあとから新しいニコヨンの群れの中に入る人がふえてきているという情勢が出てきておる。一方ニコヨン自体は非常に老齢化し固定化してきて弾力を失う。何かここで失業対策事業考えなければならぬという時期がきておることは、先般来私はここで二回か三回主張したのです。前の松浦労働大臣のときから私は主張しておったのですが、最近新聞を見ると政府も何かそういうような考えを発表しておるようでございますが、当面こういう雇用失業情勢というものの深刻化した現段階で、労働省としては今のままで、ことしの予算程度でそのままいって、大体今年の秋から冬が乗り切れるのかどうか、この前も質問をしたら百田さんは、大体まあいいと思いますということだったのですが、最近の情勢というものはあのときに比べてさらに深刻になっていると思うのですが、一体どうお考えになっているのか。実はこれは大臣がおれば失業対策の根本的な政府方針というものも一応聞かしてもらいたいと思うのですが、事務当局の方でも一応の検討はされておると思うので、そういう今年度予算その他の関係見通し、それから今後の失業対策事業、三本建で行われているのを一体どういう工合考えておられるのか、こういう二点について御説明願いたいと思います。
  4. 百田正弘

    百田説明員 ただいま御質問の第一点の本年度予算見通しでございますけれども、本年度予算は御承知通り三十二年度よりも日雇い登録者が約一割ふえる。昨年は大体四十七万台でございましたのを一割ふやしまして五十二万にするということで予算基礎にいたしておるわけであります。従いましてその後の予算執行状況ないし日雇い登録状況を見ますと、六月におきまして四十八万ちょっというような状況でございまして、昨年よりも漸増の傾向にあるわけでございます。しかしながら現在四十八万程度でございますので、予算基礎の五十二万にあと四万程度ございますので、直ちにこれが予算の不足であるというようなことにはならないかと存じます。しかしながら今お話のように、今後の事態等につきましては予測を許し得ないものもございますし、特に失対事業に出てくるという時期が非常にずれて出てくるというような事情もございますので、そういう状況を十分見ながら今後の誤まりない処置をとって参りたいと考えるわけでございます。  次に失対事業あり方の問題でございますが、ただいま御指摘のように、失業対策事業昭和二十四年の緊急失業対策法に基きまして制定せられましてから、今日まで足かけ十年になったわけでございます。当初の目的とするところの失業対策事業は、御承知通り事業から離職した者のために、一時的に労働力を保全するということのために、応急的に弾力性のある失対事業というものを起すことによって、その一時を救済していこうというような趣旨で出たものでございますが、その後漸次民間雇用状況なりあるいは失対労務者の質の問題ともからみまして内容が変貌して参りまして、最近におきましての状況について申し上げますと、失対就労者構成がだんだん老齢化して参ったということ。もう一つは失対就労者が依然として民間雇用あるいは通常雇用につき得ることなく、非常に定着するような状況になってきた。現在でも平均四年程度というような状況になっておる。こういう実態を十分に直視しながら、今後の失対事業を改善するにはどうしたらいいか。まず失対事業につきましてとかく世間で言われますのは、これの非能率性を指摘されるわけでございます。従来から労働省におきましてもできるだけ経済効果の上る事業にこれを就労せしめるということで、臨時就労対策事業あるいは特別失事業を実施して参りましたけれども、この率も少いといったようなことで、相当多数の高能力労働者がおるにもかかわらず、仕事自体は低い労働に従事せざるを得ない、こういうことが一方において非能率原因にもなっておるような状況でございますので、こうした実態に即応するように、この際失業対策事業というものをそいう面から改善して参りたいというふうに考えまして、来年度予算等においてそういう趣旨から要求して参りたいと考えておるわけでございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 第一点の方ですが、六月現在で四十八万台で、予算基礎である五十二万に四万ばかりあるのですが、先般来の当委員会でも、今年度失業者の増加は大体十万をこえるというのが労働省見通しなのです。最近の企業整理状態等から考えても、暮れから年頭にかけては相当のものが出てくるだろうと思うのですが、二十一日というものが、だんだん人数がふえてくると必ずしもそうはいかぬという状態が出る。今後誤まりなきを期していろいろ処置をやるということでございますが、そういう事態になりますれば当然これは補正予算の問題が出てくると思うのです。事態がそういうように深刻になってくれば、労働省は率直に次の臨時国会なり通常国会では補正予算を出すという方針なのですか。
  6. 百田正弘

    百田説明員 失業者が相当出て参るという場合におきましても、従来の経験から申しますと、直ちに失対労務者として現われるというよりも、その以前に失業保険の期間として六カ月、七カ月ないし九カ月というものがあるわけでございますので、ふえるといたしますればむしろ本年度あとの方になるであろうというふうに考えるわけでございます。その際におきまして予算に非常に大きな狂いが生じ、足りなくなるという場合には、それの状況に応じましてそれぞれの措置をとることになろうと存じますが、現在の状況では、このままの推移をもって直ちに補正予算措置をとるという事態までは立ち至っていないというふうに考えます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 その見通しが正しいかどうかは、だんだん時日が経過するとともにはっきりしてくると思いますので、一応その答弁はそれで了承しておきます。  次には日雇い労務者老齢化現象でございますが、一体現在日雇い労務者年令構成というようなものはどういう状態になっておるのか。非能率と高能率労務者が雑居しておる、こういうお話もございましたが、一応将来非能率と高能率とを分けるということになると、これまたなかなか——体力検定だというようなことになると、昔の軍国時代体力検定を思い出して強い反対が起ってくることは火を見るよりも明らかなんですが、一体年令構成その他がどういう形になっておるのか、わかっておれば御誤明願いたいと思います。
  8. 百田正弘

    百田説明員 年令構成から見ますと、男女合せますと、三十才未満のものが約一二%、三十代が二四%、四十代が約三〇%、それから五十才から六十才までが二〇%、六十才以上の人が一一%ちょっとというような、概数でございますが、そういうことでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 日雇い労務者年令構成は、たとえば日本の全産業年令構成との関係はどういう工合になっておりますか。全産業がわからなければ、何かわかっておるような特殊の、たとえば大企業でもかまわぬですが……。
  10. 百田正弘

    百田説明員 今ちょっと資料を探しておりますが、公共事業等就労するものと比べますと、高年令層の方に片寄り過ぎている。特に女子におきましては、ほとんど四十才以上が六〇%というような状況でございまして、一般公共事業就労者等から見ますと、この点が非常に年令が片寄り過ぎているということは言えると思います。
  11. 滝井義高

    滝井委員 あとでけっこうですから、ちょっとその資料を出してもらいたいのですが、四十才以上が六〇%というのは、日雇いの方で四十才以上が六〇%を占めている、こういうことですね。
  12. 百田正弘

    百田説明員 今申しましたのは、安定所登録日雇い労働者女子で四十才以上でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 できれば一つ産業日雇い労務者、それから、公共事業土建関係ですか、何かそういうのと日雇い労務者と対比した表でも、次の機会に一つ出していただきたいと思います。
  14. 百田正弘

    百田説明員 今見つかりましたから申し上げます。建設業就業者と失対の場合との比較をいたしますと、男女計におきましてわれわれの方で日雇い労働者について調査いたしましたものは、四十才以上が全体で七二・三%、それから一般建設業におきましては四四・三%、二十から四十までの間は日雇い登録者につきましては二七・五%、それから一般につきましては四七・三%、二十才未満登録者につきましては〇・二%、一般につきましては九%というようになっております。
  15. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、日雇いは四十才以上が他の産業に比べて非常に多いということはわかりました。
  16. 五島虎雄

    五島委員 関連して。今の滝井さんが質問された失対事業の問題について、将来の見通しということですが、この特別国会が終了して以来、倉石労働大臣はいろいろの施策を日常の新聞に発表されているようです。失対を分けて、現在三つあるのを、二つを高度の失業対策として読売新聞——これはよその新聞はなかったのですけれども、読売新聞だけが発表しておったようですが、高度失業対策事業を設けるというようなことで、高度の能率重点として失業対策をその方面に転化していく。そうしてガソリン税が創設されてから建設省に二万人くらいの臨時失対を吸収しておったわけだけれども、業者がこの労働者を好まないというような理由を新聞にもあげてあるわけですが、そこでこういうようなことじゃいかぬということで高度失事業という見出しで倉石労働大臣新聞発表をされたか、あるいは閣議決定をされたのかわからぬのですけれども、それにいくと来年度は二百億円ばかり予算をふやして、資材費も今までは平均六十円程度のものを四百円くらいにふやして、就労日数は二十五日としたいというようなことを発表しておられるわけです。そうすると、高度失事業に関連いたしまして、現在は一般失業対策の問題で二十一日の就労ですが、これは大臣がおられないからちょっとわかりかねるのですが、就労日数を将来二十五日におく労働省考え方があるかどうかというようなことについてちょっと質問したい。
  17. 百田正弘

    百田説明員 新聞等にもいろいろのことが出ておるようでございますが、われわれといたしましては従来の失対事業あり方がそのままでいいのかということで、現在まだ検討中でございます。従いましてこれはどうかと言われましても、私今申し上げられませんけれども、いろいろの考え方といたしましては、たとえば現在一般失対事業のほかに、経済効果をねらいまして特別失対、あるいは臨時就労対策事業があるわけであります。御承知通り就労対策事業等はだんだん失業者のおるところと場所が離れていくというような傾向にもなって参っております。なおその財源はガソリン税というような関係もございまして、いろいろと実施上の難点もございますし、失業者吸収という目的にぴたっとこれが沿うように、当初の目的通りするにはこれをどう検討していったらよいかというような問題が一つあるわけであります。それからもう一つは、高度の作業というようなことをおっしゃいましたが、現在の事業は一人当り六十円程度資材費ということでございますので、これでは大した仕事はできないということは申し上げるまでもないのであります。できるだけ資材費もよけいかけ、しかも世の中の役に立つような仕事をやっていくということが、多額の国費を使っていることでもございますので、われわれの任務ではないかと考えます。一方失業対策、現在の日雇い登録者状況からしましても、先ほど申し上げましたように、六〇%以上程度の人が高度の能力を持っているというふうに考えております。従ってこういう人たちが非常に安易な程度作業だけに大部分就業されるということは、勤労意欲を磨滅させるばかりでなく、これがおそらく労働の実をあげない一つ原因にもなっておるような状況だと思います。そういう意味からいたしまして、できるだけ高度の作業に従事させますことによって能率的な仕事ができるように、能力に即応した仕事ができるようにしたい。なお、民間等においてきらうというような問題もございますけれども、それは今言ったように、一つにはそういう人たちがなるほど体力はあるけれども経験がないという点もあろうかと思います。従いましてそうしたものに対しましてしばらくの間職業訓練をしてなれてもらうというようなことも必要になって参りましょうし、またそれに付随しまして、先ほど申し上げましたような非常に老齢の人なんかも一緒になって混在しておるというようなことでは能率が非常に上らないということは当然でございます。そういうものも含めまして失対事業をその能力に応じて、しかも経済効果の上るように安定した——安定したと申しますか、なるたけ生活の安定に資し得るような仕事にいたしたいというのが基本的な考え方であろうと思います。  就労日数の問題でございますが、われわれとしましてはできるだけ就労日数というものを実情に即してふやして参りたいという考え方は再三申し上げましたが、来年度におきましてもこの就労日数の増ということを大きな重点一つとして推進して参りたい、こういうふうに考えます。
  18. 五島虎雄

    五島委員 もう一点。そうすると失業者吸収予定人員をこの内容で見ると、昭和三十三年度は三十万人を二十五万人にしました。来年度は三十四万人と見込んでいるようです。しかし今の局長説明では、まだはっきりコンクリートされてないんだ。ということは、大臣のただ一人の考え方傾向であるというように私たちは受け取れるわけですけれども、大体三十二年度予算編成して、三十三年度のときの吸収人員は三十万と労働省は見ておったわけです。それを二十五万人にして、適格基準を厳正にし、そして今説明されたように予算内で現在は小康を得ているのだというような説明もあって、補正予算を組む必要はないが、将来その事態が出てくれば補正予算もそのとき考えなきゃなりますまいというように考えておられるようですけれども、三十四万人の内訳を、一般失対はそのままに置く、こういうように説明してあるわけです。一般失対と高度の失業対策事業、すなわちこの内訳などは、一般失対は一体その三十四万人のうち何パーセントくらい置けるような見通しがあるのですか。これは大臣質問した方が適当だろうと思うのですが……。
  19. 百田正弘

    百田説明員 従来失業対策事業予算につきましていろいろとおわかりにくい点もあろうかと思いますが、今年の二十五万と申しますのは、それは一つ計算上の数字でございまして、先ほど申し上げましたように登録者五十二万人、この人たちに二十一日の就労をさせるということが基礎になっているわけであります。従いまして来年度吸収人員をどう見るかということは、全体の登録人員がどうなるであろうか、それから来年度における民間その他の吸収人員をどの程度に見込むか、それを何日間就労日数を確保するか、これらの三つの要素がきまりまして、残ったものにつきまして、全部これは失対事業就労させるといたしますならば、その失対事業にいかなければならぬ者は何人かというような計算になるわけです。今三十四万というようなことをおっしゃいましたが、われわれの方といたしましては、予算の要求の過程におきまして、一応架空の数字に基きまして、かりにこうなったならばどうなるといういろいろな数字を出しておるわけでございます。失業情勢というものはそう簡単に実は予測がつきませんので、来年度は今の三十四万くらいで大丈夫かと言われましても、ただいまのところは現在の予測においていろいろな前提を置きまして検討中でございます。数それ自体につきましてはまだ申し上げる段階に至っておりません。
  20. 五島虎雄

    五島委員 私たちはこう思っておるのです。現在の不況の中に失業雇用情勢が非常に悪化しつつある。そうすると失業調査報告でも示されておるようにどんどんふえておる。それで失業者は今年度三月に八十五万人に達したのが、いろいろの要素の中から四月は五十一万人に減った。ところが六月になると五十九万になった。八万人増大した。そうすると二カ月の間で八万人増大した。しかも不況あと追いをやる雇用情勢の中には、これからそういう趨勢でどんどんふえて、年末から来年の正月というのはずっと失業者がふえていく傾向にありますから、どうしても今年度中は予算をオーバーする。そこでこの臨時国会が九月二十日か——わが党の主張は九月の上旬にということですが、九月二十日ごろから開かれるとしましても、臨時国会には補正予算措置を講じて万全を期さなければならないと思っておるわけですが、局長あたりの観点では、九月の臨時国会までには補正予算措置は要らぬだろうとお思いになるのですか、これをはっきりしておきたい。
  21. 百田正弘

    百田説明員 補正予算を出すか出さぬかということにつきましては、われわれ説明員から申し上げるわけにはいきません。
  22. 滝井義高

    滝井委員 労働情勢の問題は非常に重要ですが、大臣がおられませんので、政務次官が見えられておりますけれども、ちょっと先に聞いておきたい問題がございます。  失業の問題は一応そのくらいにして、少し具体的に石炭鉱業合理化炭鉱をかけまして、そのあとにいろいろの労働問題が起っているわけですが、その石炭鉱業合理化労働問題について石炭局の方からおいでいただきましたので、いろいろお尋ねをしたいのです。それは石炭山合理化にかけて売り渡すときに、一応労働組合話し合いができますと、いわば買い上げ予定日と申しますか、調印予定日ができ上るわけです。その場合には一体政府予定日がきまったならば、その石炭鉱山というものはもう廃止して石炭を掘らなくてもよいのか、依然として掘ることに指導をしておるのか、この点をまずお聞かせ願いたい。
  23. 町田幹夫

    町田説明員 ただいまの御質問でございますが、われわれの方といたしましては、予定日がきまりましても、そこですぐ山を廃止していいというふうには指導いたしておりません。これは事業団の方に通じまして、ほんとうに予定日がきまりましても、事業団の方で評価いたしまして、最終的にその評価で売買が成立するかどうかということがはっきりいたしませんので、予定日がきまりましても、すぐやめていいというふうには指導いたしておりません。
  24. 滝井義高

    滝井委員 ところが現実は、調印予定日がきまりましても最近は非常に廃山をするものが多くなってきたわけです。そこでその結果新しい問題が起って参りました。というのは調印予定日がきまりますと、当然労働組合としては退職金の問題や社宅の居住の問題、水道の問題、燃料の問題、電力の問題、こういうものを一切がっさい事業主話し合いが終って、そこに初めて調印をきめてくるわけです。そうしますと、まず炭住に住まっておるわけですから、事業主労働組合とが話し合いの結果、たとえば炭住には調印予定日から六カ月間居住してよろしい、こういうことになるわけです。そうすると労働者としては、調印予定日がきまって判を押したのだから、すぐに山は買い上げてもらえるだろう、こういう予想をしておるわけです。そこで事業主としては早く炭住を出てもらわなければならぬので、まずその退職金半額を担保にするわけです。半額だけは支払うが、半額は君らが炭住を出るときに払いましょう、こういう形になるわけです。ところが調印予定日がきまっても、買い上げが今度はきまらないうちに廃山をしてしまって、同時に退職金は半分しかもらっていない。そしてこれは大体いつ買い上げてくれるか、全く時期がわからぬというのがだんだん出てきつつあるんです。一体政府はそういう場合に、買い上げの申請をした炭鉱が廃山になって、労務者がそこに定着しておって、ずるずると半年も一年も一年半も引っぱられていいものかどうかということなんですがね。これはわれわれがあの法案を審議するときに、実はこういうところまで十分詰めて審議をしていなかったという欠陥も私たちは率直に認めたいと思いますが、これはやはり何とか行政指導でしてもらわなければ、山は廃山になったわ、労働者は六カ月以内には炭住を出なければならぬ、半分の退職金は担保にされている、こういうことではどうにもならぬですが、一体この買い上げの時期というものを予定日からそう一年も二年も延ばしていいということはないと思うんですが、ここらあたり、一つの限界を行政指導でする必要があると私は思うんですが、そういう点どうお考えになっておりますか。
  25. 町田幹夫

    町田説明員 御説のように事実上山が廃山のような形になりまして、それから売買契約の締結までに非常に手間取るという事例がある程度あるということはわれわれの方も承知いたしておりまして、この点はまことに遺憾に存じております。ただこれは御承知のように売買契約の締結ということになりますと、鉱業権者が持っております債権債務の処理をいたさなければなりませんし、それからまた鉱害の処理もしなければならぬ。この鉱害の処理と債務の処理に非常に手間取りまして、その関係で非常に売買契約の締結まで長引くというケースがあるわけでございます。この点につきましては、今御説のように買収申し込みをいたしましても、売買契約というものの締結までにある程度の期間を置きまして、一カ年なら一カ年というふうな期間を置きまして処理の促進をはかるということは、われわれとしてもいろいろ方法を考えております。ただあくまで売買契約の締結でございますので、そういう債務の処理もつかぬ、あるいは鉱害の未処理のままで契約を締結するということもなかなかできませんので、その点をどう調整しますか、非常に苦慮しておるわけでございます。やはりじんぜん日を過ごしまして、一年も二年も契約の締結ができないということでは非常に困りますので、われわれとしてもある一定の期間を置きまして、もう契約が締結できないものは打ち切るとか、そういう方法でも考えなければいかぬのじゃないか、こういうふうに考えております。
  26. 滝井義高

    滝井委員 通産当局は非常に苦慮しておるということでは、この問題はなかなか済まされないと思う。もし今あなたの言われるようにじんぜん日を過ごして、売買契約ができないものは打ち切るということになっても、山は廃山されてしまっておる。労務者としてはこれは買ってもらえるという前提に立ち、事業主のそういう説明を信頼をして調印をしたわけです。ところが今度それを打ち切られるということになると、山は廃山されて、半分の担保された退職金ももらえないわけです。あとで離職金の問題も出てきますが、離職金ももらえない、こういうことになってしまう。こういう廃山に伴う多くの労働問題が現在起りつつあるのですが、労働省はこれをどうごらんになっておるかということです。これは基準局には関係ないんですかね。これは一体どういうことになるのですか。こうなった場合に労務者というものは、調印したわ、退職金は半分しかもらっていない。それでは労務者はもうやりようがないのです。鉱業権者は、今町田さんから御説明があったように、自分の債務と債権と鉱害との処理をしなければなりません。ところが事業主が大まかに当ってみたところが、買い上げられてもどうも自分の手には一文も入らないという見通しがつきますと、事業主は一切の買い上げの手続をさぼってしまう。そうするとどういうことが行われるかというと、その山にある巻とかレールを売り払ってしまう。売り払えばそれだけ自分の金になる。ところがこれを合理化にかけてレールや巻やなんかの資材を全部整備事業団にとられたのでは、自分には一文も入らないので、調印をして予定日はきめたけれども、買い上げまでに時間がかかるので、資材を売り払ってしまえばそれだけ金が自分の手に入って、自由なお金ができる、こういう事態が起り始めております。そうしますと労務者は、調印をしたのだからやがて買い上げになれば一カ月分の離職金ももらえると思っておるわけですが、その離職金もくるかこないかわからぬという事態が起ってきかねないのです。こういうように鉱業権者がでたらめをやれば、調印をした労務者は踏んだりけったりです。何ら手の施しようがない。労働者の基本的な人権が無視されるという形が起ろうとしておるのですが、一体これをどうやられるつもりなのかということです。  それからもう一つは、水道や電気の問題です。廃山をするとともにその山は、もう私のところは山はやめたのだから電気はやめます、水道もやめます、こういう形になるわけです。そうすると今までは電力料金を払っておったからやるのだが、電力ももう炭鉱に要らぬようになるからやめました、こういうことで支払わなくなると、水道はとまり電気もとまるわけです。そうすると、労務者は六カ月社宅におれるという約束ができておって、事業主が重力料金を払うでしょう。しかし六カ月を過ぎたら電気なり水道なりはだれが運営をし、だれがどうしてくれるのかということです。こういう問題が起ってくるのです。そうしてその水道が同時に鉱害地にいっておる水道だということになると、その市民なり町民なり村民なりに影響を及ぼしてくるのです。一体だれが管理して、だれがこの水道の料金を払うのかということです。それは整備事業団買い上げてしまった後ならば、何らかの形で水道の運営がきまるまでは整備事業団がやるということは、前の讃岐さんが言明しているわけですが、山は廃山になった、まだ整備事業団買い上げていないという中間があると思う。この六カ月か一年か二年になるか知らぬが、この間はだれが労務者の水道や電気を見てくれるのか。あるいは鉱害地の水道を見てくれるのか。こういう二つの問題があるのです。これは労務者が非常に困っておる点です。これは結局調印をしたけれども買い上げないというところからきているわけです。一方事業主はさぼった方が得なんです。さぼれば自分の資材は自由にすることができるわけです。こういう二点について——水道と電気の問題の処理、それから鉱業権者が事務手続をさぼった場合には一体どうするのか。事務手続をするためには五十万から百万の金がかかる。整備事業団に売り渡すための、鉱害から債権の処理から債務の処理、国税庁との折衝、その他に非常に時日がかかる。そうすると五十万から百万の金がかかるわけですが、もう廃山するような事業主は金がないというわけです。こういう点、労働問題と合わせてどういう工合に処理をしていただけるか。
  27. 町田幹夫

    町田説明員 ただいまの問題でございますが、そもそも予定日というものを設けましたのは、実は離職金の問題にからみまして、われわれの方はむしろ予定日を設定する方が離職金が安くなるという意味で、こういう制度を設けたわけです。実際問題といたしましては今滝井先生のおっしゃるように、こういう面が逆用されまして若干弊害を生じておる。予定日を作りましても、その後売買契約が締結されるまでの間になかなかいろいろな問題が起っておるという現状でございますが、われわれといたしましては、この売買契約がほんとうに締結されるまでは極力廃山させないというふうに、指導する以外はないと思います。ただそう申しましても、経営者としてどうしても山がやっていけぬということになって、事実上やめるという者に対しまして、これをあくまでやれ、山を継続しろ、そういう命令を出すというわけにも参りませんので、この点は行政指導で、契約が締結するはっきりした見通しがつくまではできるだけ山をやめさせないというふうに指導をする以外には方法はないと思います。またその間においていろいろ水道なり電気なりの問題は、当然経営者の責任でやるべき問題であろうと思います。
  28. 滝井義高

    滝井委員 水道なり電気は経営者の責任でやるべきだという御言明がございましたので、さようにわれわれは今後主張していきたいと思います。問題はその行政指導で、廃山をさせぬように指導するといっても、現実にほとんどやめてしまっておるんですね。それはやめなければならぬ一つの理論的な根拠も出てきておる。というのは、たとえばABCと三つの鉱区が並んでおります。そうしてまん中のBが合理化にかけます。そうすると水の多い所だと、そのBという炭鉱が非常に大きい炭鉱だとしますと、AとCとの小さい炭鉱というものは電力料金がかさんで水を揚げることができない。従ってBがやめるならば同時にAもCもやめなければならぬ、こういう事態が起ってくるわけです。とにかく坑内の水を揚げなければならぬという条件が悪くなって、電力料がかさんで採算がとれなくなるということが一つ。それからいま一つは、通産局自体が、ABCと鉱区が並んでおるのに、Bだけやめたのではその境界の鉱区がやりにくい。たとえば破断角付近の鉱害を一体だれが見るか、あるいは脱水陥落が広く起った場合に一体だれが見るかという問題が起ってくる。これはABC全部で見てもらわなければならぬ。そうするとABC全部一括して合理化にかけましょう、こういう線が出てくるわけです。そういうあれやこれやの問題で、ABCの炭鉱を全部一括して申請してしまおう、そういう場合に、今度は一つがやめれば水の問題があるから同時に全部やめてしまう。これはどうもわれわれがしろうとでございますので、専門的にはたしてやめなければならぬ情勢であるかどうかということはわかりませんが、炭鉱の専門家の方で、どうも水の関係でやめざるを得ないということになりますと、そういう形になってくるわけです。従って廃止をさせぬ方針だといっても、これは技術的に見てやめざるを得ないという形が出てくるわけです。そうしますと、ABCの三つが申請をして調印までやったけれども、その中一つのCが事務的な手続きをサボつたために、あるいは金がないためにサボったために、あとのAとBが申請をして、一切の手続きは終ったけれども合理化にかからない、こういう連鎖反応が同時に起ってきているわけです。この点は鉱害の問題にも非常に大きな影響を与えておるし、労働問題にも非常に大きな影響を与えておるわけです。そこでこれは三カ月、六カ月たっていきますうちに、失業保険のないものと失業保険のあるものとありますが、あるものも六カ月すればなくなってしまうわけです。そうしますと、当然労務者が欲する金は何かというと、離職金が今度はほしくなるわけです。われわれはもう調印をしておる。六カ月過ぎてもまだ退職金を半分しかもらっていない。そうすると今度は一カ月分の離職金を何とかしてくれという論が最近起りつつある。離職金を担保にして金を借りたいという議論が当然起ってくるわけです。この離職金を担保にして金を借りる方法があるかないかということです。
  29. 町田幹夫

    町田説明員 離職金を担保にして金を借りる方法があるかないかということでございますが、離職金は売買契約が締結した後に初めて出せるという法律の規定もございまして、そういうことになっておりますので、売買契約がはっきり締結されるかどうかわからないという段階で、いわば一種の条件付債権みたようなものでございますので、そういうものを担保にして金を借りるということはちょっと実際問題として不可能じゃないか、こういうふうに考えます。ただ、何か売買契約が締結される可能性が非常に強いという場合には、これはまたそういうものを引き当てにして、あるいは事業団の証明というふうな方法でもとりまして、その間労働金庫等から借りるというふうなことも考えられないではないと思いますけれども、売買契約の締結の見通しがあまり不確定だという場合にはちょっと困難ではないか、こういうふうに考えます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 今、事業団の証明の問題がございましたが、事業団も、そういう事務手続等でよろめいているような炭鉱、あるいは鉱害や債権、債務の関係が非常に複雑なところはなかなか証明を出さないわけです。そこで労働金庫を、今町田さんの言われるようにわれわれも思いついたわけです。ところが労働金庫というものも、預金があるか何か担保を持って行かないと貸してくれないわけです。そこで結局労務者失業になって、あとに残っている可能性のある金というものは、一カ月分の離職金以外にないということになりますと、これを早くもらいたいわけです。そこでこれを事業主労働金庫なりその他に、その売山の対象になっている施設なり固定資本ですか、そういうようなものを提供すればあっせんをし、行政指導をして金を借りられるような方法は何かできないものですか。一応その売山をする施設なり鉱区なりがあるわけなんですから、それがきまるまでは一時担保にして離職金の分だけは貸してあげる、そうしてきまれば、それを今度は鉱害と同じように整備事業団の方でリザーブをして支払ってやる。何かそういう方法ができないと、廃山をさせぬ方針だと言っておっても、現実に廃山をしてしまうと労働者はきめ手がないのです。もしそれでだめだということになれば、これはどうにもならぬわけです。ペテンにかかったと同じなんです。こういうところがいわば法の盲点をくぐった体のよい脱法行為をやっているということなんです。何かここらあたりを一つ考えてもらわないと、親切な事業主は、じゃ一つ自分がそれを立てかえようということで、今度は退職金半額を、担保しておったものを解除して半額は払ってやって、そうして今度は離職金を担保にとって、社宅を出るときにあるいは売山がきまったときに離職金を上げましょう、そういう形のものがいろいろ折衝した結果出てきています。あの合理化法の一番いいところといえば、一カ月分の離職金がついておったところだと思うのですよ。ところがその一カ月分の離職金が何かあやふやでもらえるか、もらえぬかわからぬという形で調印だけはしておるということでは非常に問題があると思うのですが、何かここらあたりいい考えはないかどうか。
  31. 町田幹夫

    町田説明員 今の滝井先生のお説にございましたように、事業主が自分の施設を労働金庫その他に担保に入れて、それからそれを保証に離職金目当ての金融を労務者の方にするということも、事業主の方にそういう適当な担保なり施設なりがあれば、そういうことも可能だろうと思います。ただ実際問題といたしまして、現在合理化法で売山申し込みをいたしておりますような炭鉱は非常に多額の債務を持っておりまして、もうすでにそういう施設なり何なりが大部分ほかの銀行なり何なりの担保になっておりますので、そういう関係で、おそらく事業主としては担保に入れるものの持ち合せがないというのが実情だろうと考えております。ただしかし今の滝井先生のお説のように、労務者の窮境というものも十なるという意味で、こういう制度を設けたわけです。実際問題といたしましては今滝井先生のおっしゃるように、こういう面が逆用されまして若干弊害を生じておる。予定日を作りましても、その後売買契約が締結されるまでの間になかなかいろいろな問題が起っておるという現状でございますが、われわれといたしましては、この売買契約がほんとうに締結されるまでは極力廃山させないというふうに、指導する以外はないと思います。ただそう申しましても、経営者としてどうしても山がやっていけぬということになって、事実上やめるという者に対しまして、これをあくまでやれ、山を継続しろ、そういう命令を出すというわけにも参りませんので、この点は行政指導で、契約が締結するはっきりした見通しがつくまではできるだけ山をやめさせないというふうに指導をする以外には方法はないと思います。またその間においていろいろ水道なり電気なりの問題は、当然経営者の責任でやるべき問題であろうと思います。
  32. 滝井義高

    滝井委員 水道なり電気は経営者の責任でやるべきだという御言明がございましたので、さようにわれわれは今後主張していきたいと思います。問題はその行政指導で、廃山をさせぬように指導するといっても、現実にほとんどやめてしまっておるんですね。それはやめなければならぬ一つの理論的な根拠も出てきておる。というのは、たとえばABCと三つの鉱区が並んでおります。そうしてまん中のBが合理化にかけます。そうすると水の多い所だと、そのBという炭鉱が非常に大きい炭鉱だとしますと、AとCとの小さい炭鉱というものは電力料金がかさんで水を揚げることができない。従ってBがやめるならば同時にAもCもやめなければならぬ、こういう事態が起ってくるわけです。とにかく坑内の水を揚げなければならぬという条件が悪くなって、電力料がかさんで採算がとれなくなるということが一つ。それからいま一つは、通産局自体が、ABCと鉱区が並んでおるのに、Bだけやめたのではその境界の鉱区がやりにくい。たとえば破断角付近の鉱害を一体だれが見るか、あるいは脱水陥落が広く起った場合に一体だれが見るかという問題が起ってくる。これはABC全部で見てもらわなければならぬ。そうするとABC全部一括して合理化にかけましょう、こういう線が出てくるわけです。そういうあれやこれやの問題で、ABCの炭鉱を全部一括して申請してしまおう、そういう場合に、今度は一つがやめれば水の問題があるから同時に全部やめてしまう。これはどうもわれわれがしろうとでございますので、専門的にはたしてやめなければならぬ情勢であるかどうかということはわかりませんが、炭鉱の専門家の方で、どうも水の関係でやめざるを得ないということになりますと、そういう形になってくるわけです。従って廃止をさせぬ方針だといっても、これは技術的に見てやめざるを得ないという形が出てくるわけです。そうしますと、ABCの三つが申請をして調印までやったけれども、その中一つのCが事務的な手続きをサボつたために、あるいは金がないためにサボったために、あとのAとBが申請をして、一切の手続きは終ったけれども合理化にかからない、こういう連鎖反応が同時に起ってきているわけです。この点は鉱害の問題にも非常に大きな影響を与えておるし、労働問題にも非常に大きな影響を与えておるわけです。そこでこれは三カ月、六カ月たっていきますうちに、失業保険のないものと失業保険のあるものとありますが、あるものも六カ月すればなくなってしまうわけです。そうしますと、当然労務者が欲する金は何かというと、離職金が今度はほしくなるわけです。われわれはもう調印をしておる。六カ月過ぎてもまだ退職金を半分しかもらっていない。そうすると今度は一カ月分の離職金を何とかしてくれという論が最近起りつつある。離職金を担保にして金を借りたいという議論が当然起ってくるわけです。この離職金を担保にして金を借りる方法があるかないかということです。
  33. 町田幹夫

    町田説明員 離職金を担保にして金を借りる方法があるかないかということでございますが、離職金は売買契約が締結した後に初めて出せるという法律の規定もございまして、そういうことになっておりますので、売買契約がはっきり締結されるかどうかわからないという段階で、いわば一種の条件付債権みたようなものでございますので、そういうものを担保にして金を借りるということはちょっと実際問題として不可能じゃないか、こういうふうに考えます。ただ、何か売買契約が締結される可能性が非常に強いという場合には、これはまたそういうものを引き当てにして、あるいは事業団の証明というふうな方法でもとりまして、その間労働金庫等から借りるというふうなことも考えられないではないと思いますけれども、売買契約の締結の見通しがあまり不確定だという場合にはちょっと困難ではないか、こういうふうに考えます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 今、事業団の証明の問題がございましたが、事業団も、そういう事務手続等でよろめいているような炭鉱、あるいは鉱害や債権、債務の関係が非常に複雑なところはなかなか証明を出さないわけです。そこで労働金庫を、今町田さんの言われるようにわれわれも思いついたわけです。ところが労働金庫というものも、預金があるか何か担保を持って行かないと貸してくれないわけです。そこで結局労務者失業になって、あとに残っている可能性のある金というものは、一カ月分の離職金以外にないということになりますと、これを早くもらいたいわけです。そこでこれを事業主労働金庫なりその他に、その売山の対象になっている施設なり固定資本ですか、そういうようなものを提供すればあっせんをし、行政指導をして金を借りられるような方法は何かできないものですか。一応その売山をする施設なり鉱区なりがあるわけなんですから、それがきまるまでは一時担保にして離職金の分だけは貸してあげる、そうしてきまれば、それを今度は鉱害と同じように整備事業団の方でリザーブをして支払ってやる。何かそういう方法ができないと、廃山をさせぬ方針だと言っておっても、現実に廃山をしてしまうと労働者はきめ手がないのです。もしそれでだめだということになれば、これはどうにもならぬわけです。ペテンにかかったと同じなんです。こういうところがいわば法の盲点をくぐった体のよい脱法行為をやっているということなんです。何かここらあたりを一つ考えてもらわないと、親切な事業主は、じゃ一つ自分がそれを立てかえようということで、今度は退職金半額を、担保しておったものを解除して半額は払ってやって、そうして今度は離職金を担保にとって、社宅を出るときにあるいは売山がきまったときに離職金を上げましょう、そういう形のものがいろいろ折衝した結果出てきています。あの合理化法の一番いいところといえば、一カ月分の離職金がついておったところだと思うのですよ。ところがその一カ月分の離職金が何かあやふやでもらえるか、もらえぬかわからぬという形で調印だけはしておるということでは非常に問題があると思うのですが、何かここらあたりいい考えはないかどうか。
  35. 町田幹夫

    町田説明員 今の滝井先生のお説にございましたように、事業主が自分の施設を労働金庫その他に担保に入れて、それからそれを保証に離職金目当ての金融を労務者の方にするということも、事業主の方にそういう適当な担保なり施設なりがあれば、そういうことも可能だろうと思います。ただ実際問題といたしまして、現在合理化法で売山申し込みをいたしておりますような炭鉱は非常に多額の債務を持っておりまして、もうすでにそういう施設なり何なりが大部分ほかの銀行なり何なりの担保になっておりますので、そういう関係で、おそらく事業主としては担保に入れるものの持ち合せがないというのが実情だろうと考えております。ただしかし今の滝井先生のお説のように、労務者の窮境というものも十分考えられる点でございますので、その辺等につきましてはもう少しわれわれの方でも現地の実情等をよく調べまして、何らかこれを救う方法はないかどうか、速急に一つ十分検討いたしたい、こう考えております。
  36. 滝井義高

    滝井委員 離職金の問題はぜひ一つ研究をしていただきたいと思います。  そこで、これは少し労働問題からはずれますが、ついでに二、三点お尋ねしておきたいのです。一応最終的に売山が決定をした、こうなった場合に、その鉱害というものは当然一般鉱害でやることになるのでしょうね。
  37. 町田幹夫

    町田説明員 お説の通りでございます。
  38. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、その具体的な復旧方法なんですが、まず分けると、安定分と不安定分とあるわけです。不安定分については、たとえば井戸水が出ないとか、壁がまさに倒れんとしておるというようなものについては応急の復旧をやってもらわなければならぬわけですね。一体こういうものについて、買い上げ炭鉱の復旧は、当然年次的な計画を立てて、予算のワクが一般鉱害だとあるのですから、やることになると思うのですが、その安定分なり不安定分あるいは応急復旧分の具体的な復旧方法はどういう工合にやるかということなんです。これは五年も十年もかかったのではなかなか大へんだと思うのですが、一体どの程度のもので、買い上げられた炭鉱——三年から五年たてば、不安定分も安定すると思うのです。そうしますと、その炭鉱は全部やんでしまうわけですから、三年か五年で安定するのですが、買上げられた炭鉱の当該鉱区については一体三年か五年以内に安定分も不安定も全部復旧が行われていくのかどうかということです。もしそういう形で行われるとするならば、たとえば安定分はすぐやるわけですから、そこの炭住に住んでおる労務者というものを——その復旧の事業は当該鉱業権者が結局やることになるわけでしょう。そうするとその事務というものは整備事業団がやるわけにいかぬから、AならAというもとの鉱業権者にそれを移して、だれか請負さしてやるのだろうと思います。そうするとそこに労務者が住んでおりますから、安定鉱害からかかれば、そこですぐに労務者を使うという関連問題ですね。従ってそこに何か具体的な計画がないと、そこに住んでいる労働者とこれをすぐに結びつけることは不可能だと思いますが、何かそういうことを、買い上げられた後の鉱害復旧については考えておられるかどうかということなんです。労務者の問題と使用の問題と具体的な復旧の方法ですか、計画ですか、それを御説明願いたいと思います。
  39. 佐藤京三

    ○佐藤説明員 ただいまの買い上げ鉱区についての復旧問題でございますが、大体買い上げた鉱区の復旧につきましては、事業団といたしましては年次計画を立てて、裏づけになる予算をつけております。それから買い上げられない安定鉱害でも、鉱業権者に片づけさせるというような問題につきましては、前の鉱業権者が工事能力を持っているという場合には、当然その鉱業権者に鉱害復旧の事業をやらせますけれども、能力的に不十分だというような場合には、鉱害復旧事業団が引き受けて鉱害復旧事業をやっております。その場合に失業者との結びつきということにつきましては、現地において職業安定所ですか、あの辺とも打ち合せて、十分使うように指導をいたしております。
  40. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、買い上げた鉱区の計画は事業団がやることになるのですが、一体どの程度の年限をかけてそれを完了してしまう方針なのかということなんです。というのは、買い上げ炭鉱の不安定鉱害については、整備事業団がその金をとってしまっておるわけです。従って安定すれば一挙に事業ができるわけですね。大体安定する時期というのは、炭鉱をやめてしまえば、三年なら三年たてば一挙に安定してくるわけです。時を同じくして安定してくると思うのです。それと時を同じくして復旧ができるかどうかという点なんです。復旧事業をやるためには土掘りその他をやらなければならぬので、一挙にずっとやった方が仕事能率も上るし、泥を取るのにも便利だという点もあるのですが、一体買い上げ炭鉱の鉱害についてはどの程度の計画を持ってやられる方針なのかということなんです。年限が五年も十年もかかったのではとても大へんだと思うのです。
  41. 佐藤京三

    ○佐藤説明員 整備事業団買い上げる不安定鉱害につきましては、大体安定の年次があるわけです。それでその問は農地でありますと年限補償もございますので、当然そういうものをリザーブしてあるわけです。ですから、炭鉱の具体的な債務条件によって違いますけれども、今のところは大体三年くらいで復旧工事を完了するというような予定でございます。
  42. 滝井義高

    滝井委員 大体三カ年くらいで復旧工事を完了するということがわかればけっこうでございます。そうしますと、次にはこれも一つ労務者を泣かせる問題になっておるわけですが、鉱区の分割です。われわれはあの法案を審議するときには、AならAという炭鉱がAという鉱区を持っておれば、合理化を申請すればその鉱区は全部封鎖される、買い上げられてしまう、こう考えておりました。ところが最近はそうではなくなって、四つの方法があるようでございます。まず第一は、たとえば坑口をあけている付近だけを合理化にかけていく、そしてそこだけ鉱区を分割して一つの鉱区にしてしまうわけです。それからいま一つは、一部の鉱区を残す。それから一部は他に譲渡します。そうして一部は自分が新しく新鉱を開発します。この四つのコンビネーションが行われ始めたわけです。Aという鉱区があって、その一部を合理化の鉱区にかける、一部は残す、一部は新鉱を掘って炭鉱を始める、一部は他人に譲渡するというような四つの組合せが、二つであったり三つであったり、いろいろの形で出てき始めた。一体こういうことが許されるかどうかということなんです。あの法律は新しく坑口をあけさせないということを一つ目的として、そして能率の悪いところを買い上げるということだったわけです。ところが鉱区を分割して自分が別に坑口をあけて炭鉱を始める。そうして同じ鉱区であったその一つだけを限局して封鎖してしまう、買い上げの対象にする。ところが残ったものは何かと見てみると、鉱害の多いところは残っている。一番鉱害の多いところを分割して残しておるわけです。こういうことをやられては問題が起ることは当然です。こういう問題は今度は対外的な折衝で困難を来たすので、結局それは連鎖反応を起して、労務者の離職金なり退職金の問題に関連をしてくるわけです。こういういわゆる買上対象の鉱区の分割というものを平気で通産省は許可しておるわけです。こういうことがもし通産行政で黙って許されておるとすれば、あの法律というものはないのと同じになってしまうのです。しかもそれは炭鉱にただで金をやるようなものです。こういうことは下から報告をされていると思うのですが、一体どういう御指導をされ、どういうような監督をされておるのですか。
  43. 町田幹夫

    町田説明員 今滝井先生から御指摘になりました事例は、確かに最近合理化法の精神を没却するようなそういういわば脱法行為みたいな事例がだんだんふえてきているということを報告を受けております。これはその一つ一つの行為について見れば、法律的に違法だというわけではございませんけれども、しかしながら合理化法の当初の目的からすれば、明らかにこれをくつがえすようなことでございますので、われわれといたしましても、今のところは事業者に対し、分割して鉱区を売りに出すというものについてはこれをなるべく買うな、こういう指導をいたしておりますけれども、さらに業務方法書の改正なりあるいは場合によれば法律等の改正も考慮いたしまして、こういういわば脱法手段をぜひ防ぎたい、こういうふうに考えて、目下その方法を研究しておるところであります。
  44. 滝井義高

    滝井委員 過去において買い上げ炭鉱で、すでにそういうことをやったのが幾つかありますか。現在申請しておるものの中には私はあると思いますが、買い上げたものの中にそういうものがありますか。
  45. 町田幹夫

    町田説明員 現在買い上げましたものの中には多少そういうふうなにおいのするものはありますけれども、はっきりしたものはないように聞いております。ただ目下申請しておるものの中にはそういう事例は若干あるようでございます。
  46. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、政府としては申請したものでも分割の許可をしないという方針で、全部一括して買い上げるという方針で参りますか。ここらあたりは実は非常に大事なところなんです。今後の鉱害を片づけ、労働問題を円滑に片づける上において、非常に私は大事なところだと思うのですが、町田さん一つここはしっかり答弁をしてもらいたいのです。今そういうものは買い上げぬようにするということでございますが、買い上げなければ、閉山をされてしまった労務者は非常に困ることになるわけです。買い上げぬということになれば、そこに別な問題として社会的な労働問題を解決しなければならぬと思うのですが、一つはっきりした通産省の御答弁をお願いしたいのです。買い上げぬというよりか、買い上げてよろしいので、分割を許可しないという方針をとったらどうですか。
  47. 町田幹夫

    町田説明員 分割の問題は、これは御承知のように鉱業法の方の問題でございまして、鉱業法におきますれば、これは鉱業権者から分割の申し出があれば、必要と認めれば分割を許可しなければならぬということになるわけでございます。ただそういう分割がそういうふうな合理化法の精神を没却するような手段に用いられるというところが非常に困ったことでございますので、われわれとしては分割した場合におきましても元の状態でなければ、一括でなければ買い上げぬというふうにするか、あるいはまた鉱業法の方で分割自体を認めないというふうに直すか、いずれにしろそれを一体としてでなければ買わないという方向に持っていきたい。それを分割を禁止する方向にいくか、あるいは分割は分割としましても、それを一緒でなければ買わないというふうにするか、どちらの方法にするかということについてはもう少し法律問題を詰めてみたい、こういうふうに考えます。
  48. 滝井義高

    滝井委員 これは当面のすぐに決定をしなければならぬ問題なんです。現場においては、すでにそれが日々の業務として、すみやかな決定を迫られておる事務的な問題なんです。従って今あなたの言われるように分割を認めるか、それとも元の状態でなければ買い上げぬという方針で行くのか、いずれを選ぶかより方法がないと思うのです。すみやかに一つその態度を決定してお知らせを願いたいと思うのですが、ちょっと多賀谷君がそれで関連質問をするそうですから……。
  49. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 関連して。原則的にはその通りですが、実はこの滝井さんが質問されている問題は、かなり特定の問題をさしている。この特定の問題というのは、やっぱり炭鉱災害に端を発している。名前をいいますと籾井炭鉱という炭鉱が、その鉱区の一部に施業案の許可を得ないである業者にやらした。これは黙認でやらしたか、あるいは金をとっておったか、それはわからぬが、その名前は芳ノ谷炭鉱という。ここで五名の災害者が出た。そこで救出するのに費用がない。死体を揚げるためにポンプあるいは電力料金その他がないというわけで、あるところに依頼をした。その関係から、この問題はその鉱区の一部を譲らざるを得ないようになった。そこでこれらに鉱区の一部を譲りますと、今滝井さんがおっしゃっただけの心配じゃないのです。もう鉱区の下は網の目のようになっておる。その鉱区の一部を譲るのですから、譲られて操業したところの炭鉱がまた災害が起りますよ。これは必然です。災害を誘発するような鉱区の譲渡が行われておる。ところがそれは金がないために、業者に鉱区を譲ってくれということを鉱山保安部の方が頼んでおるのです。そこに私はやっぱり根本的な問題があると思う。制度的にどうしても考えなければならない問題があると思うこれは労働省でも同じです。要するに死体を救出しなければならない。そして災害から救助しなければならないのに、費用がないから鉱区の譲渡という問題が起っておる。そこでこれらの問題はやはり根本的に制度的に解決しなければ、この問題は解決するかもしれませんけれども、私は今後どうしても災害が誘発されるし、さらにせっかくの合理化法案が死文化する、脱法的に行われる、そのことを官庁が進めなければならぬ、こういう立場に立つと思うのです。この点も一つ十分考慮してもらいたい。この点について、こういうことに対する労働省の見解を聞きたいと思う。要するに災害から救助する、そのために費用がない、そこで費用の捻出は、御存じのように対労働者にはあるでしょう、それは労災保険があるから。しかしその間の救出する費用がないという場合について、どういうふうに制度的にお考えになるか、これをお聞かせ願いたい。
  50. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまの問題につきましては、これは非常に根本的な問題でございます。災害が鉱山において起りました場合の救出、あるいはさらに遺体の搬出というような措置をすみやかに講じなければならないということは、だれもがその必要を痛感するところでございます。そこで目下通産省当局におかれましても、この問題ついていろいろ御検討を願っておられるところでありますが、われわれの方といたしましては、御承知のように労災保険を所掌しておりますが、災害が起きました場合には、やはり労災保険からの支出というものが相当な額になるわけでございます。そこでこの労災保険の面からいたしましても、保険施設として、災害が起きましたような場合に、その救助につきましては、これについても資力のないような、非常に客観的な事由が明白であるような場合には、われわれの方としても労災保険として何らかの措置を講ずることが必要ではないか、このような感じがいたしておるわけでありまして、実はこれらの点につきまして目下関係者を集めまして検討いたしておるところであります。この問題につきまして、中心はあくまでも通産省の方でありまするが、われわれといたしましても、救出をすみやかにして、災害によるところの犠牲を最小限にとどめるというような措置につきまして十分検討いたしたい考えであります。
  51. 五島虎雄

    五島委員 関連して。廃坑の問題と関連しますが、今の災害の問題で基準局長にちょっとお尋ねしたいのですが、私先月の終りにこの委員会から派遣されて福岡の中小炭鉱を見せてもらったわけです。まあいわば初めてですから全部知悉するということは不可能でした。しかし二つの炭鉱を見て類推ができたわけですけれども、今多賀谷さんが言われたように、明治時代、その前からか、とにかく何回も何回も炭鉱権者が変って、あるいは廃坑になる、またそれを新しく採掘するというようなことで、ずいぶん長い間から同じ坑道がいつの間にか廃坑になる、そうしてまたその経済の状況においてほかの穴から掘る、そうすると災害が出る、それで炭鉱業者の方たちから炭鉱の保安の問題を聞くと、われわれがここで炭鉱保安の問題はどうだなどと質問するというようなことは釈迦に説法だと思うわけですけれども、炭鉱業者がるるとして訴えていたのは、坑内図が完備してないからなんだ、これは従来の国会におきましても多賀谷さんあたりから通産関係でたびたび質問があっているだろうと思います。しかしわれわれが調査したとき痛感したのは、坑内図が完備していないのに災害を防止するということはなかなか困難であろうということを痛感したわけです。というのは廃坑にたまった水をやみくもに中小零細企業は掘っていく、大手炭鉱は違うですけれども。そうすると水のたまった廃坑に掘り当てると水害が出る。そうすると今のように資金のないところは放置せざるを得なくて大きな災害にそれが到達するというようなことなんです。そこでこれは鉱山保安局の方にも聞きますけれども、こういうようなことを言っている。あるところで災害が発生する、そうすると保安上の問題でその災害を排除しなければならないから、鉱山保安局の方からは他の鉱山主に対して保安要員を応援するようにという指令が来る、そうするとやはり同業者の災害であるから、保安要員をでき得る限り動員をしてこれの排除に努めなければならないと思う。ところが労災保険の適用の問題では、自分のところの保安要員を他の炭鉱で災害が起きたからそこに応援に出した場合、再びそこに災害が起きるかもしれない、そうすると自分のところの従業員である保安要員が応援に行って災害を受けた場合、一体労災保険の適用があるかどうかというようなことを聞かれたわけです。ところが福岡の労働基準局の方では、当然それは適用がありますよと言っている。ところがその鉱山主はそれについて、将来起り得る可能性があるから応援に出さなければならぬ、そうすると自分のところの大事な従業員がその他の炭鉱で災害を受けるおそれがあるかもしれない、その場合労災保険の適用ありやなしやというような質問を鉱山保安局の方か何かに質問をしたというのです。そこで労働基準局の方に質問を発したところが、その場合は労災保険の適用なしという回答があったというのです。そこで懇談をしているわけですけれども、ある方はそれは当然適用があると言う。ある方はいや回答が来ているからと言う。そのときどういう質問内容になっていたか、それは私ははっきりわからないのですけれども、その場合適用なしときた。適用がなければ、鉱山保安局の方から応援に行けという指令が来、炭鉱業主としては保安要員を応援にやる責任と義理がある。そうすると業務命令として出して災害を受けた場合は、会社が全部ひっかぶらなければならぬ。そうすると死亡するかもしれない、あるいは大けがをするかもしれない、それをひっかぶるということは、会社としては他の災害に対して自分の大事な従業員に災害を及ぼすということは非常に困る、こういうことははっきりしてくれという要望があったわけです。そこでわれわれは当然、業務命令によって出ていった保安要員が他の炭鉱で災害を受けた場合——こういうことはない方がいいのですが、受けた場合は当然あると解釈するわけですけれども、基準局からの回答は適用なしということだということがありますから、その点についてはっきりしてやろうと言って帰ってきたので、これをはっきりして下さい。
  52. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまの鉱山保安の問題につきましては、第一義的には通産省が所管しておるところでありますが、最近の炭鉱出水の頻発しておる現状にかんがみまして、労働省としてもこれを放任しておくわけには参らない、このような考え方で鉱山保安局と密接に連絡をとって、今後の対策の確立に努めておるところでございます。お話にありましたように、われわれといたしましても、現在図面が整備しておらないために災害が起きる、もう一つは先進ボーリング等の措置を十分にとらないで、いきなり掘進を続ける結果古洞に行き当る、このような事例が多いのではないかと考えまして、図面の整備、それから先進ボーリング等の強化、このような問題について検討を加える必要があるのではないかということを、通産省にもわれわれの意見として申し上げまして、目下鉱山保安法の改正その他について検討を願っておるところであります。  第二の問題につきましては、実は昭和二十九年に、そのような問題につきまして鉱山保安局の方から労働省に御質問があったことがありまして、その問題をあるいはさしておられるのではないかと思うのであります。それは鉱山救護隊というものが鉱山保安法あるいはそれに基く施行規則等によりまして設置されていることになっておるわけでありまして、この鉱山救護隊が、その鉱山救護隊を置くということになっております他の鉱山に出動いたします、あるいは共同鉱山救護隊というようなものを組織いたしまして、幾つかの中小炭鉱がそれに加盟しておるというような場合に、それに加盟しておる鉱山に対しまして鉱山救護隊が出動するような場合におきましては、これは当然その出動したもとの鉱山の本来の事業の一部として出動したものである、かように考えられまするから、労働基準法あるいは労災保険法に基くところの災害補償の業務上の傷害である災害が起きました場合には業務上の傷害である、従って労災保険の給付も行われるものである、このように回答しておるわけでございます。その場合に問題になりますのは、そういうようなものに加盟しておりませんような別の炭鉱がたまたまあったという場合に、その横から頼まれてたまたま出動した、その際、これは現実にあったかどうか存じませんけれども、論理上の問題としてその場合に災害が出た先で起きた、このような場合にどうなるかということが出てくるわけであります。このような場合に、そのもとの鉱山本来の業務ではなかったのだ、だからもとの鉱山の業務上の傷害ではない、このように回答したのが二十九年にあるわけでございます。おそらくそのことが伝えられておるのではないかと思うわけでございますが、私はやはり労災保険の災害補償の理論といたしまして、法律解釈上はどうもそうなる。ただその場合に、たまたま出動いたしましてしかも災害に不幸にしてあったというような労働者はまことにお気の毒なことでありまして、この場合には、原則としては、そのもとの鉱山の業者に対して損害賠償の責任等も生じるわけでございます。労災保険の面はどうなるかと考えますると、今度は出動した先におきまする鉱山との間に臨時の労使関係が認められるというような場合も多分に出てくるだろうと思うわけであります。そこでわれわれといたしましては、そのような場合にはやはりその出動先の鉱山との間に労使関係があって、その場合には当然やはり業務上の傷害になるわけでございますから、そのような解釈運用によりまして実際上のブランクを埋めるような措置考えていきたい、このように思っておるわけでございます。なお具体的にもし問題がありますれば、さらに事実を調査いたしまして労働者の保護に遺憾のないように善処いたしたい考えであります。
  53. 五島虎雄

    五島委員 今の解釈を私があえてここで聞くのは、出先官庁の方たちが二輪に分れておった。これは滝井さんも同席されておったわけですが、それで出先官庁が二論に分れて頭をひねっているということはこれは困る。官庁の方たちが頭をひねる問題を業者に押しつけてもそれは困る。そこで、二十九年にそういうような回答を出されたならば、さらにあえてあらためてそれらの問題の解釈をはっきりせしめて、そうして出先官庁にもその認識を与え、業者に対しても安心させながらこの災害排除の行動をしてもらった方がいいのじゃなかろうか、こう考えるわけですが、そうしてもらえますか。
  54. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまの問題につきまして、現実に現場でそのような疑いがあったということは残念なことでございますので、通産省と相談いたしまして、その間の適用につきましてはっきりさせたいと考えております。
  55. 五島虎雄

    五島委員 さらに、今基準局長は、鉱山監督局とつよく連絡をとって水害の発生しないように先進ボーリングの使用等々についてもよく関連をとって、今後災害防除に努めたいということは、きのうの夕刊にも、これも大臣限りの構想ですか、災害防止五カ年計画というように書いて、非常に現在は災害が中小企業に起きる、爆発事故とかあるいは落盤事故とかいうようなものがある、もちろんこれは水害も含まれているでしょうけれども、そうすると通産関係労働関係の総合一体的な五カ年計画だと思う。経済効果は計画の五カ年目には一千一百億円も増すのだ、そして四十三万人の命あるいは身体がこれによって救われるというような計画の発表があったのですから、これはいいことだと思います。ところが先進ボーリングを島廻炭鉱というところで見せてもらったわけです。この値段は幾らくらいですかと聞いたら、二十九万円程度で入れられるというわけです。そしてそれは六十メートルから八十メートル先までボーリングして、水が出ない場合はこれを三万に掘さくして、その以内で石炭を掘っていくのだ、そうすると水害のおそれはこういう炭鉱ではありません、こういうことです。ところが二十九万円の先進ボーリングを入れるのにはやはり金がかかる。金がかかるから、私の会社では入れているのだけれども、より小さいところの零細企業のところでは入れられないのだ。ところが鉱山監督局の話では、でき得る限りこの先進ボーリングを使用するように慫慂しているのだ、こう言っておられたのです。それで、先進ボーリングを慫慂するのだけれども、その補助とかあるいはそれを入れるように通産省は何か援助をしているのですかと言うたら、いやそれはないと言っている。そうしたら慫慂だけしてもやはり資金の面で行き詰まる。そこで炭鉱地帯に五十台ほど——田川やあの方面で五十台くらいの先進ボーリングを一括して購入して、用意して、そしてどこそこへ貸してというような話し合いもあったわけです。しかし鉱山監督の方では、ボーリングをすれば水害になる率が非常に少い、安全であるということでどんどん慫慂はされるが、それについて資金の裏づけ等々を考えられたことがあるかということについて監督局の方に聞いてみたいと思う。なければ今後どうするのだ、どうやってこれを慫慂していくのだ。考え方はよろしい。先進ボーリングの使用をうんとして、水害を排除したいということの五カ年計画等々にそれを組み入れられることはいいが、一体具体的にどういうようにして入れていくのだ。入れろ入れろといったって、金がない炭鉱業者——五人以下の炭鉱業もあるそうです。僕はびっくりしたのだけれども、そういうところには一体どういう措置をするのだ。五人以下のところがこの先進ボーリングを使って掘さくしなければならないという実情はないと思うのですけれども、三十名、五十名、百名というようなところには必要でしょう。そういう場合の資金の裏づけ。それから坑内図の問題が基準局長からも出ましたけれども、坑内図がめちゃめちゃだと現場では言うのです。そこで坑内図なしにやみくもにモグラ戦法で掘っていって、ついには水脈を掘り当てる、そうすると水ぶくれになるのだ、こういう話もあったわけですけれども、坑内図を整備するのにはどれくらいかかるか。それから坑内図を整備するのには金がどのくらいかかるのかということをちょっと質問いたします。
  56. 竹田達夫

    ○竹田説明員 九州におきまして最近の災害は出水事故が非常に多いのであります。ただいま御指摘のありましたように、坑内の実測図面が正確に整備されていない。これは戦時中等において十分整備ができなかった点もございまするし、特に戦災によりまして通産局の方におきますその図面が消失いたしました関係等もございますので、これにつきましては通産局におきまして科学的調査を実施いたしまして十分古洞の状況をつきとめるという案を今せっかく練っておる次第でございます。金額がどの程度かとおっしゃいます点につきましては、われわれの方でどの範囲をやるかという点にも多少のまだ研究の余地はございますが、最低五千万から七千万の金額は必要であろうということで案を練っておる段階でございます。ただ古洞の調査につきましては、御承知のように、九州の炭田地帯におきましては、極端に誇張して申しますと、古洞がクモの巣のような状態になっておりますので、これに対しまして調査をいたします際に、相当な科学的な調査をいたしましても未知な分野が出てくるのではないか、そこまで徹底的にやるということになりますると、これはただいま申しました七千万程度の金額では困難であろうというふうにも考えられますけれども、大体七千万円程度調査を二年程度の時間をかけていたしますならば、大体の古洞の状況は判明いたすであろうというふうに考えております。  次に、ただいま御指摘のございました先進ボーリングというのが、金はかかりますけれども、出水事故に対しましては非常に有力なる災害防止の方法でございますので、われわれの方におきましても、出水の指定をいたしまして、出水の指定をいたしました地域におきましては、鉱山保安法によりますところの規則によりまして、先進ボーリングの義務を鉱業権者の方に課することになっておりまして、これつきましては、まず技術的な指導をいたしますと同時に、その先進ボーリングの規定を励行して守っていただくように十分巡回監督指導をいたしたい。これにも若干の——若干と申しますか、相当額の予算の増加を今折衝中でございます。さしあたりは従来の巡回監督の旅費を重点的に繰り上げまして使って、目下調査団等と相待ちまして、成果の上るように努めておる段階でございます。そういたしまして、最後の、この先進ボーリングの機械に対しまして、何かこの際保安当局におきまして資金のあっせんでありますとか、あるいは金の貸付でありますとか、これをいろいろ研究いたしたわけでございます。研究をいたしましたけれども、現在の炭鉱の起業費というものは相当な起業費になっております際に、先進ボーリングだけを、ただいま御指摘のような二十数万という金額を一つ炭鉱に対しまして数台を必要とする際に、それの融資をあっせんするということにつきましても、なかなか技術的にむずかしい点もございまして、炭鉱におきますところの設備資金につきましては、石炭局の方におきまして炭鉱の設備あるいは貯炭の増加に伴います金融の逼迫等との関連におきまして、金融の問題についてはせっかく努力を願っておるわけでございまして、保安といたしまして、その器材の購入費をどうするという段階までには至っておらないのでございます。金融の問題をいたすということは一番必要なことでございますけれども、この金のかかります点におきましては、むしろ先進ボーリングは、器材費よりもそういう作業を義務づけられることによりまして生産コストの方が非常にかさんでくるんじゃないかという点、経済的な問題といたしましては、そちらの方にむしろ大きい問題があるのではないか。時期的な問題といたしましては、御指摘のありましたように、資金のあっせんをするということにつきましては、はっきり計画は立てておりませんけれども、われわれの方といたしましては、通産局のただいま申しました資金のあっせんにおきまして一つ優先的に取り扱っていただきたい、こういうような見解で進んでおる次第であります。
  57. 滝井義高

    滝井委員 今鉱区の分割の問題で、最終的には石炭局の方で研究をしていただきたいと思いますがこれは結論を速急に出してもらいたいと思います。問題は、鉱区の分割は、一部は合理化にかけ、一部を残し、一部を他人に譲渡し、一部はみずから新鉱を開発するというような四つのケースがいろいろ組み合された場合があるということを申しましたが、その一部を残す場合に、残した鉱区に一番鉱害が多い、こういうことになって、しかもその山は売山をしてしまった、労務者調印をした、こういう形になっておるわけです。これが買い上げの対象になるためには当然残したところが一括して買い上げられるということになれば、これは鉱害の被害者との関係も出てくるので、なかなか買い上げの対象にならぬわけです。そこを残してしまう、こういうことになると、問題は、残された部分における鉱害被害者の問題を一体どうするかということです。山は売山になる、そうして鉱害被害者だけは莫大な鉱害をかかえて残っておる、鉱害を復旧するためには鉱業権者の同意を必要とする、その同意をなかなかやらない。もう私は山はやめてしまいましたから、いずれ残した鉱区は何か人に売るか、あるいは私がやるかどうかわかりません。多分あのままにしておくつもりでございます。人に売るか、あるいはやった場合には考えましょう、こう言われますと、これは処置なしなんです。こういう残した部分に莫大な鉱害があるという場合に、一体政府はどういう工合に今後処理し、取り扱っていくのかということです。こういう問題は、さいぜんのように、根本的に原状の一括した鉱区のままでなければ買い上げません、分割を認めませんという基本方針がきまればいいですが、すでに申請をして分割はきまっちゃっておりますよ。そういう場合に、一体残したものはどうするかという問題が一つある。そうしてその残ったものの中に、たとえば盗掘の問題なんかが出てきておるわけです。そうして盗掘した本人が無資力であり、破産寸前だ、そうして盗掘した本人でない全く別の人がその盗掘した区域の鉱区を買ってしまっておるのだという、こういうやり方が、実に法の盲点をくぐるというか、地方の労働者なり、善良な農民なり、家屋の所有者が法律上のいろいろの問題を知らないために、裏をかかれて手も足も出ないという事態が起ってきておるわけです。それが結局労働問題にはね返って、売山がうまくいかない、うまくいかないので、事業主は資材を売ってしまった。一体売山の申請をした資材なり、線路とかトロッコというものをどんどん売っていいかどうかということです。一体こういう残した鉱区の鉱害の処理を、もし許すとすれば、どういう工合に扱うのか、申請をした炭鉱というものが資材や何かを売り払っていいものかどうか。こういう二点についてどういう工合にお考えになっておりますか。
  58. 町田幹夫

    町田説明員 今御質問の鉱害ばかりが残った鉱区をどうするかという問題でございますが、これは今御指摘のように、そういう事態の起らないように、そういうものを一括して買い上げるということが好ましいわけでございまして、われわれとしてはそういう方針で進めたい。もし不幸にしてどうしてもそういうものが残るということになれば、これは今の鉱害の復旧の一般原則によりまして、現在無資力あるいは行方不明のものの鉱害につきましては、特別な方法でやるということになっておりますから、その方向で鉱害復旧をやるという以外に方法はないと思いますけれども、なるべくそういう方法によらぬように一括して買い上げるという方針で進めたいと思います。  それからもう一つの問題は、買い上げのきまる前に資材を売っていいかどうかという問題でございますが、これは法律的に言えば一般の売買でございますので、何も事業団買い上げは資材なり鉱業権なりを一括した強制買い上げということではございませんで、あくまで任意買い上げの原則でございますので、これは売ったって民法による一般原則で決して差しつかえないわけでございます。ただおそらくその山としては、相当債務を持っておりますので、そういう面では債権者災害とかそういう問題は起るかと思いますけれども、それを売っちゃいかぬという法律的な規制の方法は現在はないわけでございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 評価をする場合には、たとえば巻の施設とかレールは一括して評価をしているのではないのですか。
  60. 町田幹夫

    町田説明員 もちろん巻とかあるいは選炭機とかいうものは一括して評価しておりますけれども、ただワン・セットになっておりますものは一括して評価しておりますけれども、それでセット、セットでは個々別々にやっておるわけでございます。それをたとえば巻の方は事業団の方に売る、しかし選炭機の方は自分の方に残すとか、あるいはポンプは売らないで残すということをやっても差しつかえないわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 問題は、おそらく労務者調印をする場合には、巻や施設やそれらのものが一括して買い上げられる、だからわれわれの未払い賃金までこれは金が回ってくるぞ、労務者はこういう予想を立てて調印をしたわけです。ところがそれがだんだん日にちがたつために、それが他のいろいろな用途に——未払い賃金にも使われるかもしれませんが、とにかく大して労務者を潤さない、ほかの事業経営の目的のために使われる。あるいは新しく炭鉱を開いておれば、その方の賃金の支払いなり資材費に使われてしまう。そうして結局買い上げられる炭鉱というものはもぬけのからで、残ったものは鉱害と鉱区だけしか残らなかったということにもなりかねないのです。こういう非常に複雑な問題が起っておるということだけを一応お知りになっておいていただきたいと思います。  それからこういう場合は一体どういう取扱いをするかということですが、その残した鉱区が二重鉱区になっておる。そしてすでにもうこれは許可をしておるわけです。そうすると二重鉱区になって、上層の方はずっと昔にとって莫大な鉱害を何百軒という家に起しておる。ところがその昔とった鉱業権者というものが今どこにおるかわからない。ところがその下層の鉱業権者というものは厳然としているというわけです。その場合に上層をとったその鉱業権者は、やめるときにその上層を減区しているわけです。鉱区を自分のものでないということで減区を申請をして許可になって、残っているものは下層だけである。ところが最近その下層のものがその鉱区を減区しておる。減区というか廃坑というか、私はそういうことはどうも不可能だと思いますが、そういうことをやっている。そうするとこれは一部だけ鉱業権者がなくなってしまっておるわけです。こういう場合には一体これは無権者と見るのかどうかということなのですけれども、最終的には多分最近その下層だけはそのものが掘っていない。全然掘っていなくて、その下層のものの鉱業権者がはっきりしておる場合と、それから今言った減区した場合と、三つの場合があるわけですが、これは減区ということが可能であるかどうかということと、下層の鉱業権者が全然掘っていなくて、上層だけを掘って、上層の者がいないというときに、これは無権者として国が全部責任を負ってその鉱害復旧をやることになるのかどうか、この二点について伺います。
  62. 佐藤京三

    ○佐藤説明員 今の二層を割る場合でありますけれども、鉱害発生の責任は、鉱害の発生したときの鉱業権者ということになるわけです。それですから、減区してもすでに鉱害が発生しているときには、その鉱業権者が責任を負うという建前になっておる。しかも鉱害が発生して、その鉱業権者が行方不明あるいは無資力状態だという場合は、現行法の六十六条によって、国庫補助、地方公共団体の全額補助関係で復旧するという建前になっております。
  63. 滝井義高

    滝井委員 それがはっきりすればいいのですが、そうしますと、下層の鉱業権者が掘っていない限りにおいては、それは下層には責任がないという断定で差しつかえありませんか。鉱業法の百九条の関係で、二つの鉱区が重なっておるときは、現在の下層の鉱業権者は一切責任を負うということにならぬか。そこらあたりが重要な意見の分れるところになるのではないかと思いますが、いかがですか。
  64. 佐藤京三

    ○佐藤説明員 鉱害を発生せしめたときの当該鉱業権者ということでございますから、下層の鉱業権者が全然採掘しておらぬという場合には、上層の採掘した鉱業権者の責任ということになると思います。
  65. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、下層の者は責任がないということで処置してかまわぬわけですか。
  66. 佐藤京三

    ○佐藤説明員 そうです。
  67. 滝井義高

    滝井委員 よくわかりました。  次に行政機構の上でお願いしたいのですが、現在各地に石炭事務所がある。この前私は讃岐さんに、鉱害事務が非常に渋滞をしてうまくいかぬということについていろいろ質問したが、そんなことはない、保安関係等からいろいろ加勢等もいくので大丈夫というお話だったが、石炭事務所に行ってみますと、ほとんど人がいない。いろいろ調査や何かで出払っておる。特にこの鉱害関係の事務をとっている人は一人か二人しかいません。石炭事務所に行ってみますと、鉱区の地図もよくわからない。福岡まで全部出向いて行かなければならぬ。今言ったように一体分割したのはどういう工合に分割しておるのか、いつ分割されたか、今だれが鉱区の所有になっておるかということがよくわからない。一々福岡に問い合せなければならない。そういうことから、被害者、それから探鉱している鉱業権者も、地方の事務所では間に合わぬので全部福岡に行く。そうすると結局福岡にはわんさわんさと鉱害関係の人が押しかけて、なかなか事務がはかどらぬで待たされる。従って私は少くともこの合理化法がここ半年か一年の間には事務的に片づけなければならぬ時期にきていると思います。従ってたとえば嘉穂、田川、直方というような事務所には、地図もそこに行けばわかる、鉱害のいろいろな法律上の処理問題もわかるという鉱害関係のベテランを臨時に配置してもらいたいと思います。善良な大衆を一々博多までやることは非常に気の毒だと思います。そうして今言ったように、山が古くなって二重、三重の鉱業権者なり租鉱権者のあるところは、これはもうとても事務がはかどらない。その間には暴力事件が入るということで、どうにもならない。少くとも三、四人の者を筑豊炭田の非常に複雑したところに置いてもらわなければならぬのではないかと思います。この点速急に一つ処理してもらいたいと思います。現地に行って聞いてみても、とてもわれわれだけではやっていけないと言っておる。こういう点をお考えになって処置いただけますか。
  68. 町田幹夫

    町田説明員 ただいまの御質問の点につきましては、現地とも十分連絡いたしまして至急何らかの方法を講じたいと思います。
  69. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ一つそうしていただきたいと思います。  それから基準局長に最後に一つお尋ねします。この失対労務者構成の問題ですが、今の保安の救護員の出動の問題とよく似ておるのですが、この失対労務者は、紹介を受けるまでは職安の所管に入るのか、紹介を受け終ったらもう事業主体の所管に入るのか、これによってその交渉の担当が違ってくるわけですね。職安がその交渉の責任になるのか、事業主体がなるのかで違ってくるわけです。これも最近九州で議論のあった問題なんです。それでこれは紹介をするまでは職安だろうと思うのです。紹介が終ってしまったらそれから先はもう事業主体になるのか、まだ依然として職安なのか、いわゆる現場に行くまで。こういう問題はとにかく具体的にあるわけなんですが、これをどういう工合に見るか、これも非常に議論が土木事務所と職安との間に対立をしている問題があるわけです。
  70. 堀秀夫

    ○堀説明員 ただいまの点は、さらに具体的には職安の方からお答えをいたすと思いますが、一応われわれとしては、紹介をして事業主体が受け入れたときから事業主体どの間に労使関係が発生する、このように考えます。
  71. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、その受け入れた時期とは、紹介が終ったときがもう受け入れたときになるのか、それとも仕事の現場に行ったときなのか、監督の掌握下に入ったときなのか、いろいろの場合が想定されるわけなんです。
  72. 三治重信

    ○三治説明員 これは災害との関連の御質問かと思っておりますが、現在の紹介は、現場まで本人たちが自分の足、自転車あるいは電車なりの交通機関を使って行って、現場の箱番へ着いて、受付のある場合にはその以後、しかし非常に遠距離で事業主体の方で輸送機関を職業安定所の方にまで持ってきましてそこで受け入れる場合、職業安定所の紹介で安定所の広場に集合せしめてそこから輸送機関で輸送する場合には、そこからが事業主体の責任というふうにしております。
  73. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと現場が比較的近くて、そうしてその現場で面着をして仕事に入るときには、その現場で面着が終ったときから事業主体に入ったことになる。それから非常に遠距離で自動車その他で送る場合には、やはりその監督が受け取ったそのときになるのですか。——それは受け取ったときとわかりました。そういう工合に、これはやはり職安と現場との間になかなか議論のあるところなんです。監督がそこに来ておりまして受け取ったときにはどうなるのか。今言ったように監督の掌握下に入るという言葉を使っておるのだけれども、監督がそこにおれば終ったときが掌握下になるという形になるわけです。だから掌握下に入るとは一体どういう形のときが掌握下に入るのかという解釈がむずかしくなる。これはそこに監督さんが来ておれば、終って、集まれ、こういうことになればもうそれは掌握下に入るということになるのではないかと思うのです。そこらあたりが、いよいよになると非常に微妙な問題が出てくるのです。そこらあたりをもう少しはっきりしておいてくれませんか。掌握下に入るというのは一体どういうところから掌握下に入るということになって事業主体の責任になるのか。
  74. 三治重信

    ○三治説明員 先生のおっしゃる通り、その労働出張所の紹介の場所まで輸送機関を事業主体が持ってきている場合には、紹介が終って輸送機関の副監督なりその連絡員が集合を命じてから事業主体の責任というふうに理解していただいてけっこうであります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、裏を返せば集合を命ずるまでは職安の紹介が終っておっても職安の責任になりますか。そこにブランクが一つできるわけですね。紹介が終ればもう自分の方は責任がないと言われた場合には、集まれという時間が長くなるとそこにブランクができるのです。そこらあたりは職安になるのか事業主体になるのか、ここが問題なんです。そこらあたりは職安ですか。
  76. 三治重信

    ○三治説明員 それは職安とおっしゃるが、個人の責任になるわけです。職業安定所の方は何も災害関係、本人たちの行動についてのそういう補償の責任を負うということではない、職業安定所の活動はあくまで職業の紹介だけですから、本人たちが職業安定所に来るまでの途中の災害、紹介してそこへ自動車が来ておっても、自動車に乗るまでに本人たちが自分の行動で災害を起した場合には、それは本人の責任になる。やはり毎日のことですから、きちんと八時半なら八時半にそこで集まって自動車に乗るのだというならば、その八時半から事業主体の責任になる、その間に十分、二十分の自由行動の時間があっても——それは初めに紹介される人とあとから紹介される人と時間がかかりますから、それまでの範囲は本人の責任になる。そこで本人がたばこを買いに道路を横切ったとか、何か自分で用足しに行って災害を起した場合には、これはやはり本人の責任ということになります。
  77. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりがなかなか納得がいかないのです。一番初めの人から終りまで紹介が終るのに三、四十分かかるわけなのですね。その間みんな家の中で待っておるわけなのです。そうして終ってから初めて監督が集まれなら集まれと号令をかけるわけです。その前に、たとえばどこかであったように天井が落ちたというようなことになれば、やはりそのときの労災の申請というものは事業主体はやらぬでしょう、これは職安がやらなければならぬことになるのじゃないかという感じがするのです。だから問題はそこのブランクがどうなるかということなのです。それをあなたは個人の責任だから何も見ないということになると、なかなか問題じゃないかと思うのです。それは自由行動するといったって自由行動できる時間じゃないのですね。
  78. 三治重信

    ○三治説明員 そこが具体的な問題になってくると思うのですが、理論的というのですか、法律的な解釈からいけば、先ほど私が申し上げたような基準局と職業安定局との時間的と申しますか、責任の区分は、そこに置いてやるよりかほかに手はないと思う。ただ安定所の中で天井が落ちたとか窓ガラスでけがをするとかいうときに、あるいは国家の施設のそういう建物の設備の不備でそういうふうになったのか、あるいは本人たちの責任でなったのかというのは、具体的な問題としてきまってくるわけなので、一般的にはその災害まで全部あれもこれも労災というふうにはなかなかいかぬと思うのです。労災の方はやはりあくまで事業主体が自分の指揮下に入れてからということ以外には解釈のしようがないのじゃないかと思うのです。そういうところで御了解を願いたいと思います。
  79. 園田直

    園田委員長 八木一男君。
  80. 八木一男

    ○八木(一男)委員 失業対策問題でちょっと簡単に御質問をいたします。先ほど同僚の五島君から質問のときに例としてあげられました読売新聞の記事を拝見いたしますと、賃金の問題には触れておられないようでございます。こういうところに大きな暗い面があるのじゃないかと思いますが、そういう点について一つ
  81. 百田正弘

    百田説明員 賃金の面について触れていないというお話でございました。実は私ども消したわけでもなんでもございませんので、責任を負いかねますけれども、賃金についての考え方といたしましては、先ほど申し上げましたように、できるだけその能力に応じた仕事をできるようにいたしていきたいということにいたしますと、その必然の結果として、賃金といたしましても能力、その作業の重軽に応じた賃金にするようにすべきが当然ではないかというふうに考えております。
  82. 八木一男

    ○八木(一男)委員 失対事業の賃金が十分なものでないということは方々で論議されておりますから、論議しなくてもわかると思うのです。十分じゃないものであるということを職安局長は認めておられるのですか、その点はどうですか。
  83. 百田正弘

    百田説明員 この失対事業の賃金の問題については非常にむずかしい問題でございますが、失業対策法におきましては、一般のPWを基準としてきめるようなことになっております。従ってこの失対事業の賃金といたしましては、あくまでもそれぞれの同種の事業の同一地域において支払われる相場と申しますか、その賃金に応じてきめるというような建前になっておるわけです。従いましてそれが非常に低いところはおのずから低くなるというようなことになるわけでございます。それが果して生活を保障するに足る賃金であるかどうか、これは就労日数の問題とも関連して参る問題でございますけれども、失対事業として労力の提供の対象として支払われる賃金ということでありますれば、やはりそこは一般民間における同様な事業において支払われる賃金というようなものを一応基準として定められなければならない問題じゃないか。ただこれが生活を保障し得るに足るかどうかという問題は非常にむずかしい問題でありますので、生活保護との関係もございますし、一方また今後の問題でございます最低賃金等の問題とも関連してくる問題でございますが、われわれはできるだけ今のところを基準としてきめておるわけであります。できるだけ仕事の性質に応じて、同時にまた手取り収入が多くなるように考えていきたいということを現在の段階では考えております。     〔園田委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
  84. 八木一男

    ○八木(一男)委員 失業対策事業の本則から離れて派生した問題については、ほかとの比較であるとか、能率であるとか、そういうことを答弁をしておられますけれども、失業対策事業の本質というものは、職を失った、従って所得を失って生活ができないということを埋めるためにできたものだと思う。それについてはどうですか。
  85. 百田正弘

    百田説明員 おっしゃる通り、職を失って所得を失った、従ってこれの失業中の生活というものに対してどういうふうに考えるかということでありますが、これに対しましては、失業保険というものも一方においてあるわけです。他方におきして、一つの方法として積極的に雇用機会をそういうふうに作り出して、それに雇用させるということが現在の失業対策事業ではないかというふうに考えております。そういたしますと、やはり事業の性質に従って支払われるべきものじゃないかと考えております。
  86. 八木一男

    ○八木(一男)委員 失業保険があると言われましたけれども、失業保険の期間にも限界があります。永久に失業保険が出るわけじゃありません。ですから、結局失業対策事業というものができたのは、職業を失ったから所得がないということを救うためにできた制度であろうと思う。何も能率を上げて——普通の企業のようなこともそれは要素としては考えるべきであるかもしれないけれども、主体は失業者に職を与えてそれの生活を立てるということが主体であろうと思う。その場合に、今の賃金が少いということを各種の失業対策関係の団体から交渉があり、労働省はいつもこれは待ってくれとか、できないのだとかいう立場に立っていられますから、なるべくそういうふうに明るみに出すような論議は控えたい、避けたいというような観念がおありだろうと思いますが、本則としてそういうものであり、しかも今の失対事業の賃金が少いものであるということは、労働者のサービス機関である労働省としては当然お認めにならなければいけない。これは大蔵省の抵抗その他があって、いろいろなことが労働省考え通りにいかないことがあるかもしれないけれども、少くともこういう事業は、雇用の機会を失って就職ができない、所得がない、生活ができないというものを埋めるためにできたものであって、能率を上げて道をばんばんよくするということを第一の主体としてできたものじゃない。あくまでも労働者生活ということが主体の問題であろうと思う。その問題で今賃金が十分じゃない、非常に足りないということも概括的にはお認めにならなければいけないと思う。何も今職安局長にぎゅうぎゅう食い下ろうというわけじゃないけれども、とにかくそういうほかとのなんとか、PWのなんとか、能率のなんとかよりも、労働者失業した、所得がない、生活ができない、それを埋めるために、それを救うためにできた事業であり、そうして現在の状態が非常に不十分であるということは概括的にお認めになってしかるべきだと思うのです。それについて労働政務次官の方の御意見を伺いたいと思います。
  87. 生田宏一

    ○生田説明員 お話のことを承わっておりますると、生活ができるとかできないとか、基準の高下に議論があるのじゃないかと思いますが、ただいま百田君からもお話がありましたように、同一業種の基準によって賃金をきめていくという考え方は、今の状態としてはやむを得ないのじゃないか、そういうふうに考えます。
  88. 八木一男

    ○八木(一男)委員 やむを得ないとか、ほかとどうとか、そういうことを伺っているのじゃない。失業対策事業というものが、今の就職できない人たちのために、所得がない、生活ができない者、そういう者に対して、それを救うために起ったものであって、それで現在生活するだけの賃金をもらっているかどうかということを考えたら、どういうことをお考えになるかということを御質問しているのです。PWとか、ほかとの関係とか、そんなことは第二義的なことなんです。それが少いということをお認めになるかどうかということなんです。
  89. 生田宏一

    ○生田説明員 お話のことですと、原則的なことをお尋ねのようですが、私は日本の今日の社会情勢における失業対策から見て、今の賃金が安いとか高いとかということは人によって考えが違いましょう。しかし私は日本の今の社会情勢においては、この賃金というものは、これでがまんをしてもらいたいものだ、そういう考えでございます。
  90. 八木一男

    ○八木(一男)委員 がまんをしてもらいたいとか、そういうことを質問したのじゃない、少いとお考えかどうかということを伺っただけです。それをはっきりお答えを願いたい。
  91. 生田宏一

    ○生田説明員 どうもこれは個人の考え方の相違によるようでございますから、私からお答えできるのは、今の状態がともかく現実においては妥当ではないか、こういうことでございます。
  92. 八木一男

    ○八木(一男)委員 問題を伺った通りに返事していただけばいい。それについてまた、それだけ少いけれども、政府はできないとかなんとかという答弁もあるだろうが、少いか多いかということを伺っているのです。少いと思うか、多いと思うか、端的に伺っているのです。それを端的にお答え願いたい。
  93. 生田宏一

    ○生田説明員 どうもなかなかお尋ねが再三でございますが、私としては前申し上げた通りでございます。
  94. 八木一男

    ○八木(一男)委員 質問者の答弁に前の答弁がなっていない。それを前にお答えした通りということでは、また答弁になっていない。そういうことで労働政務次官が勤まりますか。
  95. 生田宏一

    ○生田説明員 たびたびのお尋ねでございますが、先ほどの通りでございます。
  96. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは委員長に申し上げますが、労働政務次官はああいうふうな御答弁です。最高の責任者である労働大臣であれば、われわれはどうもそういう答弁では承知できないので食い下る。ところが本日の委員会に倉石君が出てこないのはどういうわけか、政府当局の方に聞いていただきたい。
  97. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 後刻調べまして御返事申し上げます。
  98. 八木一男

    ○八木(一男)委員 聞いていただきたい、どういうわけで倉石君が出ていないか……。大体この委員会の決定はずっと前にあったはずです。労働省は当然知っておるはずです。倉石君は国会を軽視しているのかどうかわかりませんけれども、今までの委員会において労働大臣が出てこないときは、参議院の予算委員会労働大臣に対する質問があるとか、参議院の本会議でなんとかということなら——それでも衆議院の社会労働委員会としては譲るべきではないと思う。だけれども、そういうことであればしょうがないけれども、きょうみたいに前からわかっていて差し繰りがつかないはずがない。それで労働大臣が出てこないということはとんでもない、けしからぬ。今東京におって出てこないなら、労働大臣は実に職務怠慢と言わなければならぬ。地方に行っておるなら、前もってそういうことがわかっておるのに、そういうずさんな計画をやった労働省自体がけしからぬ。労働大臣がけしからぬ。そういうことで、委員長の方から労働大臣に対する強烈なおしかりを一つやっていただきたい。労働大臣が出てこないことについて労働省全体に対して国会の社会労働委員会がしかるというような発言をしてもらいたい。
  99. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 ただいまの八木君の御発言については、後刻事情を調べまして委員長の方において善処をいたしまして、質疑者の方にも御報告申し上げたいと思います。  多賀谷委員
  100. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は私は先般発表された失業対策から雇用政策へという倉石構想について質問いたしたいと思ったのですが、大臣がおられないので、これも質問ができないわけです。ところが、私はこの失業対策より雇用政策へというのはどっかで見たなという感じを受けた。それで新聞をめくっておりましたところが、はからずも、前に倉石労働大臣ができたときにやはり同じことを言っておる。三十年の十二月十二日の新聞で同じように「失業対策より雇用政策へ」とあって、それで同じようなところに写真が載っておる。これは非常におかしなことだと思ったわけですが、その前労働大臣が前の時代に全然やらなかったことを今度やろうというのですから、私は大したことはないと思ってあまり期待しないのですが、しかしお手並みを拝見したいと思います。それはいずれ臨時国会でやっていきたいと思います。  そこで私は緊急な問題を二、三質問いたします。一つは帰休制について、一つ石炭鉱業合理化法施行後における失業対策について、この二点をお伺いしたいと思います。  まず第一の石炭鉱業合理化法施行後の失業対策についてでありますが、これは合理化法案が出ましたときの西田労働大臣はきわめて明白な答弁をなさっておる。私は速記録を読み上げませんけれども、遠賀河川には何名、あるいは鉄道建設には何名、電源開発工事には何名、こういうようにお話しになっておるのです。ところが現実にはそれが全然できていない。そうして当時この一般失対をやりますと、一世帯一人しか失対事業に行けないので、これは従業員の中で同一世帯で何人も仕事にいく場合があるから、そういう従業員については十分失対事業に行けるように考慮するということでマル石というものができて、そして今までの一般失対の適格者の基準外に、一応従業員であって、合理化法の施行によって解雇されたものについては失業対策へ行けるのだという制度が確立されたはずです。それはそのとき十分御答弁があった。ところがそれが現在行われていない。これは一体どういうことであるのか、まずこれをお聞かせ願いたい。
  101. 百田正弘

    百田説明員 ただいまの御質問でございますが、われわれとしても現在考えておりますのは、一般的に主たる家計の担当者と、失業対策事業のいろいろな関係がございまして、そういうことになっておりますけれども、そうした特殊な事情に基いて多数の失業者が発生するというような場合には、その失業者失業対策事業就労せしめるというような方針を持っておりますし、また明確にしていきたいというふうに考えておりますが、今御指摘のありました石炭離職者につきましても、これは労働省としては実は全然やめたといったようなことはございませんが、事情を聞いてみますと、現地においてさような取扱いになっておらないというような事情もございます。この点は是正して参りたいと思います。
  102. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 石炭合理化法による買い上げによって出た離職者の中で対策を要する者がどのくらいあるか、また対策を要しない、すなわち縁故関係で就職するとか、自分の郷里へ帰るとか、その他自活自営をするとかいう者と、対策を要する者がどのくらいあるか、それがどのくらい救済されているのか、これを概数でけっこうですから、お知らせ願いたい。
  103. 三治重信

    ○三治説明員 この石炭合理化に伴う離職者の問題につきましては、あれ以来われわれの方といたしまして各省と連絡をとって公共事業の費目決定をしたあと、特殊な地域として失業多発地域に対する予算の特別配付の制度をとってきているわけです。本年度の北九州における吸収人員は千七百三十六人というふうに計画しております。そのほかこれで足りない分につきましては、一般失対事業の方で吸収するというふうにしております。北九州の方の多発地域の公共事業につきましては、約二十八億六千万円ということにしております。
  104. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どのくらい失業者が出ていて、どのくらい対策を要する者がいるのですか。
  105. 三治重信

    ○三治説明員 石炭買い上げで出た離職者につきましては、今までの報告によりますと、三十二年度までで一万五千百人、本年度において全部予定の石炭買い上げが済むようになりますと、本年度で約一万二千人であります。その対策を要する者につきましての計画は、計画と申しますか、その中で対策をする者につきまして先ほど申し上げたわけでございます。要対策者の計画というものについては、先ほど先生が言われたように、たくさんやってみても、その間においてなかなかうまく参りませんので、われわれの方としては各省と連絡して、対策できる数字を掲げて要対策者としてのものは計画しているわけであります。
  106. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法律を通過さすときには、でたらめとは申しませんが、その気持があったかどうか疑問になるほど正確らしく発表して、実際に法律が出るときには、三十年度からこれだけやります、鉄道建設のごときは三十年度も九百名も使うのだと言いながら、三十年度はおろか、三十一年度になってもできないという状態であります。現地に行ってみますと——たちは現地をずっと歩いてきたのですが、もう非常な悲惨な状態です。集団的に全部が失業している。合理化法案そのものについて党は反対でしたけれども、私が非常に疑問を持つのは、なるほど非能率炭鉱買い上げることはいいように見えるけれども、実際問題としては、集団的な失業者を発生せしめている。それに何ら対策ができていない。それで何百名とか、あるいは二千名とかいうような人口が全部失業している。そうして行ってみますと、みんな顔がむくんでいる。これはみな栄養失調だ。それに何ら特別な対策がなされていない。現地に行って職業補導なんかしてあるかというと、全然してない、放置状態です。この前衆議院の商工委員会が福岡県庁に行きまして、従来の失対では救済できないけれども、一体どうしているんだ、従業員であれば当然失業対策に入れなければならないじゃないかと言いましたが、労働部長は、そんなことは聞かないと言う。それはもともと、原則はあくまでも世帯主あるいは世帯を構成する者である。それ以外は暫定的に若干やっておったけれども、とても今のような失業発生状態ではできないと言う。ですから、衆議院の商工委員会としては、現地に行ってみましたが、みんなどなられて、手をあげて帰った。一体どういうことなんだ、合理化法案を作ったときとは全然違うじゃないかと、大へんなつるし上げにあって、ほうほうの体で帰ってきたわけですが、こういうふうな状態なんです。そこで合理化法案ができなくて企業が倒産する場合には、一ぺんに倒産しませんから、若干でも解雇しながら倒産をする。ですからお隣が就職している、自分のところだけが失業しているということになれば、どこか就職口を探さなければならぬというので、一生懸命北九州に出て、その就職口を見つけるわけです。ところがお隣も失業している、その向うも失業しているんだということになれば、やはりイージー・ゴーイングになって、気がついたときには移転もできない、こういう状態です。全部が失業のるつぼに入っておるという状態なんです。これを何とかしなければ、私は大へんな問題が起ると思う。今まで中小炭鉱もかなりやっておりましたし、いわゆる出かせぎ的な仕事もありました。あるいは洗い炭と称して特殊な事業があったわけですが、そういう事業もだんだんなくなってきた。これが全部失業者になって帰ってくる。そこでこの集団的失業者をどうして救うかという問題は、非常な大きな問題になってきたわけです。合理化法案ができました後は、皮肉にも割合増産態勢ということになりましたので、この問題はあまり大きな社会問題として浮かび上らないで済んだわけですが、今やこの問題はぶり返してきたわけです。そこでこの問題をどうしても扱い、そしてこれに対する根本的な対策をしなければいけないと思うのです。そこで現地に行きますと、まず第一に、失業対策のワクをふやしてくれ、おれらも働けるようにしてくれという声なんです。今までの話では、失業対策事業はあるけれども、行き手がないのだと聞いておる。少くともそういうことが官庁では言われておった。ところがそうではなくて、今仕事を与えよ、私たちは行きたくても行けないんだ、登録できないんだと、こう言う。一体登録できないような状態にどうしてなったか、これをお聞かせ願いたい。
  107. 百田正弘

    百田説明員 ただいまお話の点につきましては、われわれも地方の報告によりまして、石炭関係の、特に合理化と別に、なおその中小炭鉱等において相当の離職者が発生しておるという状況を、よく承知いたしております。従いまして、今お話の点につきましては、われわれとしても深刻に考えなければならない問題が多々あるわけであります。当面の緊急の問題といたしましては、現在直ちにやり得る措置といたしましては、一般失対事業のワクをその状況に応じて拡大するということが必要だろうと思います。今お話のありました石炭関係の離職者につきましては、いわゆる一般適格基準によらないということを、やはり完全に実施させる必要があろうと思います。なお本年度につきましては、北九州の炭鉱地帯につきましては、いわゆる買い上げ地域の対策といたしまして、二十八億円程度公共事業並びに特失といったようなものを総合的に実施する計画になっておりますが、これは施行時期とかいろいろな点で、従来のやり方におきましても、必ずしも失業者の発生とマッチしないという面もあったかと思いますので、当面は一般失対でしのぎつつ、こうした買い上げ地域対策等せっかくとられておりますので、今後これが実情に即するような方向に持っていかなければならないと考えるわけであります。
  108. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 福岡県が出しました統計によりますと、それは三十三年の五月の調べですが、買い上げを申請した炭鉱の一カ月前の従業員は一万七千、解雇者が九千五百、そのうち対策を要する者が六千八百、こういう数字を出しております。そのうち二千名ぐらいしか日雇いに行けないというのですね。あと一体どうするのかという問題です。ですから、私は失対のワクをふやしただけではうまくいかないと思う。そうしてやはり高度の補助率——これは全額にしてもいいんです。大体西田さんは全額にするという約束をしている。西田労働大臣は、簡易な移動住宅のごときものを建てて、そうして移動さして、就職のしやすいところに持っていくという話までしたのですが、移動住宅どころか、今おるところも追い出されそうな状態になっている。ですから、私はもう少し言った答弁には責任を持ってもらいたい。さらに、一世帯一人ということだけではどうにもならない。炭鉱は一人だけの、おやじさんだけの賃金では食えない。率直に言いますと、おやじと息子が行っているから食える。二人して一世帯を構成しているから食える。働く人が二人で一世帯を構成している。一世帯一人だけの日雇い登録を認めるということでは、食えないと思う。ですから、このワクは一体どうしてできたのですか。一世帯一人なんていう、もちろん法律には根拠がないんですからね。ですから、こういうような情勢になれば、私は当然考えなければいかぬと思うが。どうですか。
  109. 百田正弘

    百田説明員 その点につきましては、われわれも今検討中でございます。今何らかの改善措置を必要とするんじゃないかという方向で、検討中であります。
  110. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうもさっきから話を聞いていると、検討中々々々ということですが、検討中と言いますが、買い上げ申請は今からは認めないんですよ。今から検討中と言いますと——これは通産省の話ですが、全く何にもならない。検討が済んだときにはもう全部処理されている。ですから私は、これは早急に一つ考えていただきたい。次の臨時国会には答弁できるようにしてもらいたい。あなたの方は日雇い登録をする労働者は少いと言いますけれども、シビアーにやるから適格者が少いんだ。最近の状態はワクがないから、どうせ適格者の中に入れても、就労日がないから押えているのです。申請して何カ月になったら適格者になりますか、大体どのくらいですか。
  111. 三治重信

    ○三治説明員 個々の事情によって押えているということはわれわれも聞くわけですけれども、前々申し上げておりますように、労働省としては、どこどこの登録をふやすな、今予算のワクがないから登録を押えろというような指示をしたことはないわけでございます。しかし現実の問題として、地方それぞれ予算を当初組んでいるものですから、やはりその事業主体との関連で、安定所の方の登録も、従って審査の方も、厳重にしておるところと、してないところと種々あるようですけれども、この問題につきましては先ほど局長が申し上げましたように、ほんとうに問題があるわけでして、今後十分検討してみたいと思います。
  112. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 登録を押えておるのは現実です。いかに労働省がそういうことはありませんと言いましても、それが現実ですよ。私は申請しても、さっぱり適格の何が来ないと言うのです。幾ら言ったって適格者になれない。権利を売買するということさえ問題になっている。今、四十八万しかないのだとおっしゃいましたけれども、こんなのでたらめです。押えておるから四十八万しかないのです。市町村のワクがあるからふやさない、ふやせば就労日が減るからです。今まで登録されておる労働者も、就労日が維持できるからふえない方がいい。こういう状態で、非常に矛盾から矛盾を生んでいるのです。潜在失業者ということでなくて、もうはっきりした顕在失業者登録できないのです。ですから私はむしろワクをゆるめて、適格性というものをシビアーにやらないで、ほんとに一年くらい出させてみたらいいと思う。それからの政策です。今、日本の国会で、自民党といえども失業対策費を削るなんということはしませんよ。そしてはっきりこの問題を浮び上らせて、みんなで研究して解決しなければ、幾らふたをしても私はますます社会問題になると思います。衆議院の商工委員会ではものすごくどなられたのです。われわれはバスから引きずりおろされるような状態でした。これはほんとうなんです。顔がむくんでいるのですから。ですから、とにかくこの一世帯に一人という原則は破ってもらいたい。少くとも駐留軍とかあるいは石炭合理化法案に基くものというのは政府の責任でやるのですから。この従業員については十分処置しますと言ったじゃありませんか。ですからマル石の問題は復活してもらいたいと思うのですが、どうですか。
  113. 百田正弘

    百田説明員 その点につきましては私も同感でありまして、企業よりの離職者あるいは駐留軍の離職者あるいは石炭合理化による離職者、これらの点につきましては失業者全員が失業対策事業に働けるような方向に持っていきたいということで、実は私どももその方向で検討中だ、こういうことを申し上げたのであります。
  114. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 もと答弁しておるのに、途中で変えておるのですよ。
  115. 百田正弘

    百田説明員 検討中だと申し上げましたのは、それに基く予算措置その他もした上で、はっきりしましたということを申し上げたかったからであります。
  116. 八木一男

    ○八木(一男)委員 関連して。今の適格基準の問題については、多賀谷さんのおっしゃった石炭鉱業の問題とかそういう問題は特に必要ですから、その前から問題になっておったわけです。そのうちのある部分を申し上げますと、戦前から問題になっておりました部落対策の問題で、非常にこれが問題になっておるのです。手帳をもらえないために、夫婦分れをして働かなければならないというような現状が、関西地方にはたくさんあります。そういうことではいけないので、一軒に何人も失業対策事業に働きたい人がいた場合には、手帳を支給すべきなんです。そういうことを今までほったらかしておいたのは、労働省の重大な責任だと思う。臨時国会までにはっきり答弁できるようにという多賀谷委員の発言ですから、それはちゃんとしてもらって、その答弁も、適格基準をはずして何枚でも手帳をやるようにしますという答弁でなくてはいけないと思う  その問題の一つで、この前の通常国会で岸内閣総理大臣に、私は部落問題で質問をいたしました。それで、内閣に審議会を作る問題とともに各省の予算を飛躍的に増大するということを、岸内閣総理大臣が答弁しておるわけです。今度の倉石君が、それをちゃんと吟味して頭に入れて政策を立てているかどうかわかりませんけれども、もうそういうことに怠慢があってはとんでもないことだと思う。内閣総理大臣がはっきり明言したことに対しては、各省の大臣は当然今の行政上でできる問題についてはすぐ反映させ、次の予算の問題についてすぐに実現する努力をしなければいけない。そういう問題がまだ労働省ではっきりされているかどうかちょっと疑問だと思う。適格基準を今多賀谷さんのおっしゃったような問題のためにすぐはずすことが当然、それから今までの問題についてもはずすことが当然です。それは労働措置の問題ですから、労働省が内閣総理大臣が言明したことをほんとうにやる気だったらすぐ実現できるわけです。それについての予算は、同時に総理大臣が答弁した問題であれば、大蔵大臣がいかに近視眼的な財政政策でそれにブレーキをかけようとしても、それは閣議の場で労働大臣が推進すれば当然その主張が通ると思います。そういう点の努力が原局において足りなければ何もならない。職安局長としてもそういう行政上の問題は臨時国会までに、適格基準をはずして解決するという決意と約束と、それから予算の問題ついては、臨時国会でできるだけ補正予算で本年度適切に措置する。通常国会の来年度のほんとうの予算では本格的に取っ組んで、幾ら大蔵省の抵抗がきつくてもそれを排除して、失業者のための対策を立てるということの御約束を願いたいと思います。
  117. 百田正弘

    百田説明員 ただいまの適格基準の問題につきましては、われわれもいろいろ苦慮いたしておるところでございますが、われわれの一つ考え方といたしましては、先ほども申しましたように、企業よりの離職者等につきまして、これに主たる家計の担当者だけでなければいけないということにつきましては再検討する必要があるのではないかということは当然考えております。  第二の問題といたしまして、現在の失業対策事業就労者実態というものを見ますと、必ずしも、いわゆる企業よりの離職者といったものばかりでなくて、やはり個々の家庭の生活が困難であるからといったようなことで、ほかに収入を得る道がないから失対事業に働きたいというような方が大部分であります。特に女子等につきましては半数以上がそうである。この問題を失業対策上の根本に立ち返って考えてみました場合に、これは先生方の御意見もお伺いしたのですが、果して失業対策事業のみをもってこの生活困難な者の足し前といいますか、維持というものをこれのみに依存すべきかどうか、これは日本の社会全体の問題として大きな問題じゃないかというふうに考えております。従来はそういうことのために、また生活困難な全員を失業対策事業のみで収容することは予算的にも非常に大きな問題でありますし、おそらく世帯の担当者ということでこの面についてはきめて参ったというふうに承知いたしておるのでありますけれども、私たち今一番苦慮しております問題は、単に失業対策事業ということだけではなくて、この問題をどういうふうに総合的に処理していくかという点に非常に悩んでおるような次第でございますので、現在の実態を御説明申し上げました。
  118. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ほかの方と生活困窮者の問題を総体的にやらなければならない問題ではなかろうかと思います。それはもちろんその中で一番大きな問題が労働省、厚生省にかかってくると思います。そういうことで労働省だけの検討でそういうものが全部済むものではない。今の労働省としは、労働省の任務の範囲でできるだけ多くやらなければならない点があると思います。ほかの社会保障全体との関連において考究中というようなことで、現在生活に困っている、失業している人の問題を延ばしてはいけない。今の適格基準の問題で、即時そういうふうにするというお約束があってしかるべきですけれども、そういうことについてさっき質問した要旨に従ってはっきりとお答えを願いたい。
  119. 百田正弘

    百田説明員 適格基準の問題を今直ちに撤廃する、あるいはまた撤廃するように約束しろとおっしゃいますが、これはもう少し考えさせていただきたいと思います。
  120. 八木一男

    ○八木(一男)委員 とにかく適格基準の問題は、失業対策全体の精神の問題からも、この法律の問題からも、どっちみちけしからぬ問題である、不都合な問題であるということは明らかにわかると思う。だれも否定はできないと思う。失業対策の根本精神の問題からも、この法律の問題からも、そういうまずい間違ったことを労働省自体がやっていられる。やっていられるのを即時改められるのがほんとうの行政だろうと思います。検討するとか、考えるとかいうのでなしに、もっと積極的な御答弁を願いたいと思います。
  121. 百田正弘

    百田説明員 日雇い労働者として安定所登録いたしますのは全員登録いたします。これを失業対策事業就労せしめるかどうかという、特に民生援護と申しますか、失業対策とばかりは言い切れない面につきましても同様な措置をとるかということにつきましては、われわれもう少し現状ともにらみ合せて考えていきたいということを申し上げました。
  122. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私はこの失対の制度、日雇いの制度ができたときの日本の国力と現在とはだいぶ違うと思うのです。予算規模においても非常に違う。だから、日本人全部が失業者と言えば失業者と言えるような当時の状況と現在とは非常に違うと思う。最初できた制度をそのまま維持するならば、労働省の役人は要らぬ。やはり国力に応じてそういうものは変えていかなければいかぬと思う。それが私はやはり労働省の役目だと思うのです。今この制度ができるならば、何もそういう適格基準なんというむずかしい制度は要りませんよ。別の基準がいるでしょうけれども、一世帯一人なんという基準はないですよ、今この制度が行われるならば。当時の状態は日本の所得が非常に少くて、戦後全部がほとんど食うや食わずの状態にあったときの制度なんですから、そのことをよく考えてもらいたい。依然としてその制度が踏襲されて進歩がないというならば、私は労働省の官吏は要らぬと思う。だからそのことをよく考えて対策を立てていただきたい、かようにお願いしておきます。  続いて帰休制度についてお尋ねいたしたいのですが、一時帰休制というのを実施されておりますが、これは一体どういう基準でその産業を認定されるのか。一時帰休制に適合される産業はどういう産業を認定されるか。これは全産業であるのかあるいは特定の産業を指定されておるのか、こういう点をお尋ねしたいと思います。
  123. 百田正弘

    百田説明員 たしか昭和二十九年ごろであったと思いますが、石炭あるいは造船でございましたかについて、二十九年のときはたしかそうだったと思いますが、一時帰休制ということで特別のやり方をやったことがあります。それで実は昨年以来、特に化繊の操短が始まって以来そういう問題が出て参ったわけでございます。これに対しまして現在の労働省方針といたしましては、新聞紙等におきまして、あるいは業者間におきまして、一時帰休いう言葉を使っておりますが、これは非常に誤解を招く言葉であります。自分のところの会社の一時帰休ならば、企業の負担において当然帰郷をさしていけばそれでいいのでありますが、しかしながら失業保険との関連において問題になるといたしますならば、そうしたことにつきましては、実質的にも形式的にも、失業でない限り失業保険を支給すべきでないという考え方でございます。従いまして現在巷間に言われる一時帰休というものは、労働省におきまして現在とっておる方針といたしましては、その解雇が形式的にも実質的にも失業であるということに認定されれば、これを失業として失業保険の対象として認めておりますけれども、かつてありましたように、一定の期間を限ってどうするということは、最近において全然認めておらぬわけであります。ただ企業との間に、景況がよくなった場合に採用する、優先雇用というような協約を持っておるのが現実でございますが、失業保険の立場から言いますと、これは形式的にも実質的にも解雇で、かりにそれが企業者との間に優先雇用の協約がありましても、それは解雇は解雇であるということで処理いたしておるわけでございます。従いまして失業保険法上特にこれに対して特別の取扱いをするといったようなことはやっておりません。従いまして、同じ形態でありますならば、どの産業に限るということはないというふうに考えます。
  124. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 二十九年のときの一時帰休制とどう違いますか。
  125. 百田正弘

    百田説明員 二十九年のときは、たしかその計画をとりまして、それから一定の制限を付して、これはちょっと私も覚えておりませんが、それから離職して国に帰ったという者に対して他の職業に対するあっせんを控えるといったような、いわゆる給付制限をしなかったといったようなことがございます。
  126. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると今は一時帰休制というものはやってないわけですね。
  127. 百田正弘

    百田説明員 そういう言葉としてはございますけれども、労働省としてはいわゆる誤解を招く一時帰休といったようなものではなくて、ほんとうの意味の失業でなければ失業保険金は支給しないという立場をとっております。
  128. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 労働省の職安局長は、石炭鉱業連合会とこの問題について話し合われたことがありますか。鉱業連合会というのは中小炭鉱の連合会です。
  129. 百田正弘

    百田説明員 実は前のことがありましたので、いろいろな業界、石炭鉱業もあったかどうか今ちょっと私覚えておりませんが、繊維関係あるいはその他の関係につきましてもこれを認めてくれ、そういうようなお話があったことを聞いております。従いまして私は今申し上げたような趣旨に従って御説明したことはございますが、石炭鉱業連合会とこの問題で話したかどうか、ちょっと私は今覚えておりません。
  130. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 僕のところに炭礦レポートという日刊紙がきておるのですが、「石炭鉱業連合会では、石炭不況の深刻化に伴い各傘下炭鉱より「一時帰休制」の実施かたを要請され労働省と連合会の間で話合いが続けられた結果、昭和二十九年に実施した「時帰休制」については既に失効しており、あらためて繊維産業の一時帰休制をあてはめて取扱うことに決定した。  労働省職安局長は七月十日各都道府県知事に対して、申請炭鉱があった場合の取扱い通達を発した」こういうようなことなのです。これは記事が正確であるかどうかわかりませんけれども、七月十日に職安局長名で都道府県知事にそういう通牒を発せられたことはありますか。
  131. 百田正弘

    百田説明員 これは、ただいまの記事の関係でございますが、昭和二十九年にどういう根拠であったか知りませんけれども、そういう方法をとったのがいかにも失業保険法上はおかしいので、本年、今回の場合にこうした一時操短になりましたので、昭和二十九年と同様な方法をとりたいといったような業界があったのです。その場合私ども検討して、これはいわゆるひもつきと申しますか、そういったことであれば、失業保険制度の乱用であるというような見地からいたしまして、形式的、実質的に解雇で失業である場合でなければ認められない。従って労使の間において何カ月後に採用する、景況がよくなったら優先雇用するというようなことがありましても、その解雇自体は本来の意味の解雇でなければならないということを、一月化繊がやりましたときに、その線を明確にさしたわけでございます。そういうことからいたしまして、その後綿紡につきましてそういう問題が起りましたけれども、これは解雇というような措置に至らずして、休暇をふやすといったような措置で解雇に至らなかったのでございます。その後各県から一つ一つの同様な事例が、こういうところにもあるがどうだろうといったようなことで参りましたが、私たちは特定の産業についてどうこうということでやっておったわけじゃないのでございますので、誤解のないように考え方基礎を七月十日に出したわけでございます。
  132. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると一時帰休制というものは、昭和二十九年に行われたもののような形式はとらない、こういうことですね。
  133. 百田正弘

    百田説明員 さようでございます。また一時帰休というような特別のものを失業保険法上認めたということはしておりません。
  134. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 業界の方から各炭鉱に出した通牒によると、「不況見通しから再雇用年月日については出来得る限り具体的期日を示さずに炭況好転などを目安とした方が適当である。」こういうような、きわめて脱法的なことが現実は行われておる。一時帰休だ一時帰休だと言いながら、再雇用の年月日についてもはっきりしないで、炭況が好転をしたら雇うてやるなんて、そしてそれを一時帰休だ、こういうように労働者をして錯角させるようにしておる。そうして労働省の方がそれを認めたのかどうか、こういうことで非常に問題になったわけです。今炭政課長見えておりますけれども、炭鉱は今不景気で、いついつしたら非常に好転をするという状態にないのです。今つぶれておるものはあるいはずっとつぶれるかもしれぬ。もう再起不能かもしれません。だんだん一般合理化が進行しますと、現在の経済情勢でつぶれていっておるものが、炭況さえよくなれば回復するということは、ちょっと現時点においては考えられない。しかも一方においては合理化法案で買上げ申請が行われた。こういう状態の中に一時帰休制というものが非常に乱用されてやられておるのではないか。これは労使関係を一時的には円滑なように見せますけれども、いわば脱法的なことが行われ、安易に解雇する、こういうことが行われるんではないか、こういう意味で私は心配してお尋ねしたわけですが、労働省としては失業保険を離れて、一体こういったことについてどういうようにお考えですか。
  135. 百田正弘

    百田説明員 この問題につきまして申し上げますと、一定の時期を、たとえば操短等の場合におきまして三カ月操短だというようなことで、三カ月後には再雇用するといったようなことが従前にあったことがございます。この約束は果されております。ところで昨年来そういう問題が再び起っております。ところが三カ月たっても状況はよくならない。そういたしますと、従来の約束もあるのでそれは入れる。しかし新しい者をまた一時解雇するといったような、今多賀谷先生の言葉をかりれば乱用する、いわゆる輪番解雇的なことが現われて参った。それはおそらく労使関係の問題を考慮してのことだろうと思いますけれども、われわれとしてはそういうはっきり先の見通しのつかぬことについて、失業保険が六カ月なら六カ月だけはやるんだ、あとはどうするかわからぬというようなことについては、われわれとしてはそれを認めるわけにいかないというようなことで、解雇なら解雇、ほんとうの意味の解雇でなければ失業保険の適用はしないということで徹底させておるわけであります。従いまして今おっしゃったように景気がよくなればということは、これは将来の優先雇用の約束だけでありまして、いつだという時期については、おそらくそういうことを承知しながら、やはり労使の間の交渉はあってしかるべきものだというふうに考えておるわけでございます。従いましてほんとうの意味の解雇でございますと、御承知通り失業保険におきましては五年以上同一事業所に勤めた、あるいは十年以上同一事業所に勤めた者については失業保険の給付期間が延長される。それがそうした一時解雇の場合は途中で中断されることになりますので、その意味においては非常に不利になるわけでございます。再雇用されましてまた初めから始まるというような点も十分考慮して、労使関係の問題として処理してもらわなければならぬ、こういうふうに私どもは考えます。
  136. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 先ほど滝井さんが離職金の問題をお聞きになっておりましたが、これは基準局長にお聞きしたいのですが、合理化法案の三十三条に離職金というのがありますね。この離職金をもらう場合には解雇手当は免除するということにはなっていないと思うのです。当然両方とももらえると思うのですがどうですか。
  137. 堀秀夫

    ○堀説明員 石炭合理化法三十三条でお話のような離職金の規定がございます。これは基準法二十条とは別に存在するものでございますから、三十三条による離職金と、それからあとの二十条はそれ以外の問題として適用がある、このように考えます。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実際払われているのですか。立法のときはその通りの答弁になっておるのですが、実際払われているのですか。
  139. 堀秀夫

    ○堀説明員 三十三条の離職金は合理化法によって支払われるわけであります。ただ先ほどお話のようないろいろな問題があることは、これはわれわれも承知しております。二十条の問題につきましては、二十条は御承知のように即時解雇をいたす場合には平均賃金三十日分を払わなければいけない。あるいはそのほかの場合においては、一カ月前に予告をしてそうして解雇をすることができることになっております。そのいずれかをとらなければ基準法上違法になるわけでございます。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから予告をしているだろうから、おそらく手当としては払っていない。けれども予告しているだろう、こういう話だろうと思います。そこで今滝井さんが質問しておりましたが、結局離職金を払わないのです。前に解雇するのです。申請して後に解雇する。そうして解雇したときには従業員はいないのですから離職金をやらない。離職金の脱法をやるという話である。この場合にはおそらく予告をしないでやるのでしょうが、解雇手当がもらえますか。
  141. 堀秀夫

    ○堀説明員 予告がなければ解雇手当を払わなければならないことは当然であります。基準法二十条によってそのように規定されておるわけであります。
  142. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 法律理論はその通りですが、現実に離職金を脱法するくらいであるならば、経営上やむを得ないで即時解雇を認めておるのではないか、こう私は思うわけです。離職金を払わないで、それを脱法で事前に首を切るくらいですから、そういう業者はみずからの手からはとても解雇手当は出せませんよ。解雇手当を出すならば、どうせ一カ月もらえるということになれば、それほど問題は起らない。問題はやはり経営不能である、やむを得ない、こうあなたの方で認定するかどうかにかかっておる。おそらくあなたの方で、現地の監督署でやむを得ないと認定しておりはせぬか、こういうことを聞いておるのですがね。
  143. 堀秀夫

    ○堀説明員 基準法二十条によります場合は、これは現地の監督署長が認定をすれば、今のような二十条の適用はないということになっております。ただしわれわれの方では、これは現地にも通産しておるところでありますが、今のような場合には二十条の認定の基準には該当しない、このようにはっきり示してございますから、二十条に基く認定をした事実はないと考えます。
  144. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 八木一男君。
  145. 八木一男

    ○八木(一男)委員 それでは時間の要請がありますから短かくやりますけれども、答弁の方も、変な警戒をしないで、ざっくばらんに答えていただきたい。実は生田政務次官と職安局長お二人にお伺いしたいのですが、さっき触れました部落対策の問題を、来年度予算において労働省でこれを取り上げて検討しておられるかどうか。
  146. 百田正弘

    百田説明員 検討いたしております。
  147. 八木一男

    ○八木(一男)委員 検討していただいておれば非常にけっこうですけれども、検討は非常に大幅にしていただきたい。さっき検討という言葉を使いましたけれども、検討ということじゃなしに、内閣総理大臣の答弁はこの対策をやる、従って大幅に予算を組むという答弁を通常国会ではっきりとしておられるわけです。ですから関係各省においてその具体的な対策を立てて予算要求をされたならば、たとい大蔵省が抵抗をしても、内閣は一体であり、総理大臣の威令が行われれば、それはそのまま通るべき性質のものです。それを今まで通らなかったというので原局が憶病未練であっては、総理大臣の意図がほんとうに具体的に反映しないことになる。私の憶測がもし間違いであったら平あやまりにあやまってもけっこうですけれども、今までよりちょっとふやすくらいに考えているのじゃないかと邪推をするわけです。邪推が当っていなければ非常にけっこうです。たとえば部落問題で労働者の方で取り上げなければならぬ問題は幾つもあります。失業対策の問題もあれば、職業補導の問題もあれば、幾つもあります。各省にまたがっております。ことに失業対策関係の深い安定局長がおられるので御質問申し上げますけれども、今まで部落問題を除いて、失業対策で当然今までにやらなければならなかったものでやったのは少かった。たとえば日数が足りない、これは当然ふやすべき趨勢にあるわけだ。ふやしたいけれども今は間に合わない、来年度はやります、当然二十五日には全部しなければならぬ、当然賃金も上げなければならぬ、適格基準もはずさなければならぬ、そういう問題もやるのでしょう。そのほかに恒久的な、半永久的な失業保険があるわけです。部落対策は何百年の日本の施策のためにそういうことになっているわけです。その問題の解決は、教育の問題もあればいろいろな問題があります。厚生省の問題もあるけれども、生活の道が立つということが一番根本問題です。農業の問題は土地の問題に制約されて根本的な飛躍はできない。零細企業の問題も非常に行き詰まりになっておる。その問題は雇用の問題を解決することが一番大きな問題だと思う。現実的な完全雇用もしなければならないし、そのための職業補導もしなければいけない。今当面の問題としては、完全雇用は自民党の内閣では解決しないと思いますけれども、完全に解決するまでは少くとも今の失業対策問題でそれを埋め合せるための最大の努力はしなければならぬ。そうすると、今までの失業対策事業のすべてのしなければならない問題はして、その上にその問題をつけ加えるということでなければならないわけです。そういうことで総理大臣にも申し上げて答弁を願っているわけです。ですから非常に飛躍的な元気を出してもらわなければならない。一割や二割や三割や十割ぐらい予算をふやすということでは片づかない、そういう元気で予算要求をしてもらわなければならぬ。検討しておりますと今御返事になったけれども、邪推であればあとではっきりあやまってもけっこうですけれども、それだけの元気はないと思う。政務次官は総理大臣の答弁をもう一回お読みになって、そういう元気で労働省を指導していただきたいと思いますし、また職安局長はそういう元気で課から組み上げていって原局で組む、局議では完全に大きな予算を組む、省議でもそれを突き通し、閣議でも突き通すということをしてもらわなければいけない。時間がないからそれだけでけっこうです。ほんとうにやる覚悟はあるという御返事を願いたい。倉石労働大臣が積極的であればいいけれども、積極的でなければ政務次官局長が食い下っても積極的にさせるという決意をはっきりとここでお示しを願いたい。
  148. 生田宏一

    ○生田説明員 だんだん御意見のありますところはわれわれも尊重いたしますし、労働者の福祉の改善につきましては努力をいたします。それから予算の問題につきましては、できるだけの努力をいたしますから御了承願いたいと思います。
  149. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 暫時休憩いたします。     午後一時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時五十七分開議
  150. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 休憩前に引き続きまして会議を再会いたします。  社会保障制度及び公衆衛生に関する件について調査を進めます。質疑の通告がございますので逐次これを許します。八木一男君。
  151. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生政務次官にお伺いをしたいのでございますが、きょう橋本厚生大臣がお見えにならないのは何か特別な理由があるのかどうか伺いたいと思います。
  152. 池田清志

    ○池田説明員 橋本厚生大臣は公用をもちまして、岡山の療養所の施設に行っております。昨夜立ちまして不在でございます。
  153. 八木一男

    ○八木(一男)委員 本社会労働委員会が開かれることはおよそ一月以上前から決定されておるわけでございます。当然大臣は出席されなければならないものだろうと思うわけですが、常任委員会大臣の出席要求をいたしますと、いろいろと都合があって出られないことも今までございます。その中には参議院の本会議で答弁していられるとか、あるいは先に要請された参議院の社会労働委員会で約束があるとかいうようなことがあった場合には、これは仕方がないわけでございますが、それ以外では最優先的にこういうところに出席するつもりでおらなければいけないと思う。特に前からわかっていたことでございますし、昨夜御出発になったということでございますから、そういうことは当然やりくりのつくものだと思う。厚生政務次官の話によれば岡山県の療養所の問題と言われる。これは厚生行政の部門ではございますけれども、国会の社会労働委員会の審議をほって、今晩一日の差し繰りができないという問題では絶対にないはずです。そういう問題で、厚生大臣のこの厚生行政に対する不熱心、あるいは国会に対する軽視ということはけしからぬことだと思う。特に今厚生行政上では非常に大事な問題が起っております。ほうはいとした世論になりまして、方々で取り上げられております国民年金の問題もございますし、また国民健康保険法の改正案を出すとか出さないとか、またその内容がどうであるとかいうことで、非常に大きな問題になっている。そういうときに、しかも二大政党の時代に、当然野党の建設的な意見を聞いて、そして、御自分の方針を立てるために、そごあるいは欠陥がないように努めなければならない。あるいはまた政府の方の案なり方針なりに自信がおありになるならば、そういう機会にこういう方針でやりたいと、そういう自分の御所信を披瀝されなければいけない。そういうときに、たった半日のことで行かれるということは実にけしからぬと思う。その裏には社会労働委員会で、自分たちの案が非常に不完全である、怠慢である、あるいは不熱心である、そういうことをつかれるのをおそれて行かれるようなこともあるやに想像されてもいたし方がないと思います。そういうことで、今後厚生大臣は断じて国会には一番先に出られる、特に社会労働委員会には一番先に出られる、というような風習をつけるように厚生省全体として考えていただきたいと思いまするし、委員長も、もしそういうことが今後あったら委員会としては許さぬというような態度を示していただきたいと思う。その点で委員長からも一言この問題について厚生当局におっしゃっていただきたいと思います。
  154. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 ただいまの八木委員からの御発言でございますが、まことにごもっともと思いますので、十分調査の上善処いたしたいと思っております。
  155. 八木一男

    ○八木(一男)委員 不熱心な厚生大臣と違いまして、熱心な厚生政務次官がお出になっておられるのに、その方に耳痛いことを申し上げて恐縮でございますが、国民年金の問題につきまして厚生省のいろいろの諸準備がどのくらい進んでおられるか、概括的に御報告を願いたい。
  156. 池田清志

    ○池田説明員 国民年金の問題につきましてはわが自由民主党のみならず、社会党その他の方面におかれましても大へん御熱心に御検討をいただいており、すでに社会党におかれましては法案も御提出になったという経過もあります。まことに尊敬をいたしておる次第です。私ども自由民主党におきましては、御承知のように去る総選挙におきまして公約の一つといたしまして、三十四年度から国民年金制度を漸次実施に移します、こういうお約束を申し上げておるわけでございます。幸いにいたしまして第二次岸政権が樹立いたしまして続いておりますわけですから、私どもといたしましてはその公約を忠実に実行しなければならない責任を負うておるわけであります。されば今お尋ねにもありましたように、私ども政府におきましても、なおまたわが党におきましても、それぞれ国民年金制度につきまして勉強いたし、調査準備をいたしておるところでございます。今のお尋ねは、厚生省においてどういうような準備が進んでおるかということのお尋ねでございましたから、厚生省の範囲に限りましてお答え申し上げます。  厚生省におきましては、まず機構といたしまして今まで厚生行政の中におきましてそういう部面を担当する部署がなかったわけでございます。それではいけませんので、省内から優秀なる者を集めまして、国民年金の準備局ともいうべきものを作っております。これはいまだ設置法によって認められておるものではございませんけれども、私どもの行政措置によりまして、準備といたしましてそういうような部署を作っている。小山君を事務局長という立場に置いて、以下俊秀をたくさん集めまして努力をいたしておるところでございます。さてその研究調査内容でありますが、これはまだ大綱というようなものも締め上げておりませんので、お示しを申し上げることができないのでございますが、大体申し上げますと、やらなければならぬという立場に立ちまして養老、障害、母子、三つの柱を建てまして、この三つの柱をおのおの同時に発足していこうじゃないかという心がまえ、腹がまえで準備を進めておるところでございます。その内容につきましてはさらに検討を要するわけであります。さらにまた大きな問題といたしまして、醵出制にするか無醵出制にするかという大きな問題があるのでございますが、私どもの考え方といたしましては、国民おのおのその体力に応じ能力に応じて働いてもらわなければならないという立場に立ちまして、いたずらにこの制度によって惰民を養成するような結果になってはいかぬというような考え方、そしてまた国民おのおのは自分の責任によって自分の将来のことも考え及んでおくべきであるというような考え方からいたしまして、醵出制というものを建前といたし、それに加えまして無醵出の面によっても養老等が行われるようにしよう、こういうような考え方で進んでおるわけです。なお細部につきましては、先ほど申し上げましたように大綱等もまだきまっておらない今日でありますから、これ以上申し上げる資料を持ちませんことをお許しいただきます。
  157. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生省の方でいろいろの準備を進めておられる点につきましては敬意を払うわけです。非常に大きな問題でございまするとともに、いろいろ事務的な点につきましても相当の検討を要するわけであります。しかしほんとうにやる気でやれば、ある期間内には結論も出、準備もできる問題だと思います。おそらくはそういう気持でおられないと思いまするが、政府の今までの例といたしまして、やるつもりで考えておったけれども準備が足りないとか、またもっと総合的に検討しなければならないとかいって、実施の日にちがどんどん延ばされた例がたくさんございます。国民年金においてもそういうおそれなしとしないと私は思うので、そういう点で準備がしきれなかったから、検討がしきれなかったからということで実施をおくらすことのないようにお願いしたいと思うわけでございますが、その点につきましての御決意を承わりたいと思うわけでございます。
  158. 池田清志

    ○池田説明員 今のお尋ねは建設的に御鞭励をいただいたわけでありまして、感謝を申し上げます。先ほど、今日の段階におきましてはこれ以上お示しを申し上げる何ものもございませんと申し上げましたが、大綱を作り上げるのには少くとも今月一ぱいまでに作り上げようじゃないかという準備を進めております。大綱ができますと、省内はもとより党内また政府等も全体の問題といたしまして研究もいたすわけですが、法制局とも相談をいたしまして、いわゆる法文化するという段取りになることはもう御承知通りです。私ども、できるならば臨時国会にも提出したいというふうに考えております。しかしこれは実際はなかなかむずかしいことでありますから、お約束を申し上げるわけではございません。ですけれども通常国会には必ず提案をいたしまして、皆様方の御協力によって成立せしめたいという熱意を持っており、そういうことが実現できるように準備を進めておるところでございますから、この上ともよろしく一つ御協力をお願いします。
  159. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今醵出制と無醵出制という問題をおっしゃいましたけれども、その問題は両方とも検討を要する問題でございます。しかし今までにこういう年金制度が、一部の部分的に発達しました部分を除いてはない。それで今までは、そのないという状況に従いまして、昔からの年寄りは自分の老後のために貯蓄その他のことをして準備をしておったわけです。ところが戦後の経済変動でその準備がほとんど無になってしまったという状態においては、そういう現在の年寄りあるいは未亡人あるいは身体障害者に対しては、当然無醵出制のもので十分なものをしなければいけないと思うわけです。学者なり、そういう人たちの中の一部あるいは公務員の指導者の中の一部には、理屈のみに走って——今の財政的見地というようなことですね、醵出制という理屈を強く推し立てられる方があります。将来の問題としては醵出制も加味してりっぱなものを作っていくことはいけないことではございません。しかしその名前に籍呈しまして、現在の年寄りの問題を、ただ国民年金といったからちょっとしたものを出しておけばいいのだというようなことで、現在の老人の問題をごまかし、未亡人の問題をほったらかしにしておく、あるいは身体障害者を見放すということがあってはならないと思うわけでありますが、醵出制、無醵出制の論議のうちにはそういう考えがずいぶんある。考えではいいであろうが大蔵省が聞かないであろうとか、われわれは国民年金の方が大事だと思うけれども、自民党のほかの部分の人がもっと大事なものがあるというので、そっちに財政支出をしなければならないから、国民年金にそれだけは入れられないであろうという。そうなるとそのときに問題をごまかすために、醵出制、無醵出制という理屈でもって、自分の金で用意しておかなければいけないということで、一応の筋は通るけれども、現状の一部分の老人たちには合わないでしょう。協力はした、理屈は言うたが、お前たちはがまんしろ、ほったらかしでも承知しろというような態勢になりがちのものであります。今政府の方で御論議になりますことも、はなはだ恐縮でありますが、自民党の御論議の中のことも、そういうような傾向が少し出ておるのではなかろうか。それについてはどうお考えになりますか。
  160. 池田清志

    ○池田説明員 社会党の先般お出しになりました御案を拝見いたしますと、無醵出制によりまする建前をとっていらっしゃいますようでありまして、この点、私ども先ほど申し上げました有醵出制と無醵出制とからみ合せております点と大きな違いがあるようです。そこで、今の養老のお話をなさいましたが、私どもは三十四年度から実施に移す、こういうのでございまして、三十四年度から積み立てを始めて四十年後に初めて交付する、そういうようなことを考えておるのではないのであります。三十四年度から一部の方には交付ができるようにしよう、こういうわけです。そういたしますと、御指摘になりましたような老齢の方々についても、あるいは障害者、母子の方についてもできるように、そういうふうにしたいと思います。そういたしますと、積み立ての期間もありませんから、こういう方々には無醵出でいくということも、当然に実現しようと思います。
  161. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今政務次官の言われました社会党の案が無醵出制をおもにしておる——おもにしてというよりも無醵出制をとっているようにおっしゃいましたけれども、これは社会党の案を全部お読みになりますと、無醵出制の部分もあれば醵出制の部分もある。概念的に税金の形をとるから無醵出制ということでなしに、年金という形をとっておれば、税の形でとっておろうと、保険料の形でとっておろうと、自分の出す部分は醵出制といっていいと思いますから、そういう部分も含んでおりますので、社会党の案については、さらに詳しく御検討を願いたいと思いますが、今の老人に対して無醵出制をとるというお考えを持っておられることは私も存じております。しかし、先ほど、そういうことをちょっとやりながら、それは財政負担が重くなるからということで、現実に困っている人をあんまり見ない、そうして将来の理屈で現在の問題を少くしょうとしておられるのではないかと、これは邪推したわけです。しかしこれは邪推ではなしに、ほんとうに当っている。というのは、いろいろのことを発表になりまして、正式には発表しておられませんけれども、選挙その他の公約で発表されておりまするところによりますと、自民党の現在の老人に対する年金は、七十才から開始するというような案のように承わっております。もしこれが違っておりまして、もっと早くから支給するという気持であるということがありましたならば、私は喜んであやまりもいたしますし、世の中のために非常に喜ぶものでございますけれども、七十と理解しております。中には、あるいはそれよりもっとおそくてもいいというような考えの方もあるのじゃないだろうかと思う。それでは、ほんとうにただそういうことをやった、名前が国民年金と言い出したからやったのだ、選挙公約を果したのだという、ただ表面的なことになるだけです。七十からでは、今ほとんどもらえる方はいない。六十過ぎた方の平均年令というものは、男子の場合七十五才です。五年間しかもらえない。年寄りで死にかかってからもらえる。その間の十年間は、結局もらえなければ、むすこさんが隆々としてやっておられればいいが、そうでなければ、自分のくたびれた体で、不完全就労でどこかで働くとか内職するということをしなければならない。それで生きていかれる方もありますけれども、長いことわれわれの世代を育てていただいた老人に対して非常に不十分である。やはり老後を人間らしく楽しんでいただくという考え方がなければいけない。もちろんそれは金額によりますから、六十からでも、ちびっとしたものでは十分に生活を保障するというわけにいきませんでしょうけれども、少くとも、そういう精神で、もっと開始年令を下げなければならないと思います。七十という数字考えておられるというのは、これはほんとうに内容としては国民年金というのに値しないくらいの内容である。まだ案がきまっておられないようでしたら、厚生省としても、もっと開始年令が早くからできるように、また、ここまで言いますとこの委員会の議題でないかもしれませんけれども、年金制度確立準備促進委員会委員でおられる方々からは、第一党である自民党の政策が、もっと内容のよくなるように推進していただかなければならない、こう考えるわけでございますが、それについて御所信を承わりたい。
  162. 池田清志

    ○池田説明員 内容お話をいろいろお尋ねをいただきましたが、先刻も申し上げておりますように、まだきまっておりませんわけでして、これ以上申し上げましても私の私見でございますから、一つ御了承をいただきます。この問題実現につきまして、内容を充実して財政の関係において相当がんばってやれ、こういう御鞭撻でありますが、まさにその通りであります。一方政局を担当しております政府、内閣あるいは与党の立場から申しますと、財政をその時に応じまして有効に使うということがまた一つの問題であると思うのです。従いまして私どもがお約束を申し上げておりまする国民年金の問題に相当の財政をつぎ込んで国民の期待に沿うように努力をさせていただきたいと思います。
  163. 八木一男

    ○八木(一男)委員 社会保障制度審議会の答申が出ておるようであります。その答申案を作る経路において私も参画しておったわけであります。これを少くとも上回る案を考えられる御決意を政府は持っておられるかどうか。
  164. 池田清志

    ○池田説明員 今御発言のように、社会保障制度審議会から答申をいただいております。内閣総理大臣がこれを受けておりまして、私どもそれによって勉強をしております。これにはある数字等も書いてあるわけであります。しかしながら私ども厚生省といたしましては、何ら具体的に申し上げることをきめておりませんので、申しわけございませんが、気持としてはそこまではいきたい、それ以上もいきたいと池田政務次官考えておるわけです。
  165. 大石武一

    ○大石委員 関連してちょっと質問と申しますか、希望を申し上げたいと思います。年金制度が来年度から実施されるということはまことにけっこうであります。これについては各政党はもちろん、政府においてもそのような決意でありますし、国民もそのような期待を持っておりますので、これはぜひとも間違いなく三十四年度から年金が出せるように、その決意でもって御努力を願いたいと思います。ただ、ただいまの質問を聞いておりましても、とにかくいろいろと国民のこれに対する要望と申しますか、あるいは期待というものが非常に大きいようであります。したがいましてその期待と要望にこたえるためには相当の財政的支出が必要であろうと思う。そこに非常な苦心があると思います。しかしできるだけよい条件を出していただきたいということは、どなたも同じだろうと思う。ただこのようないろいろな財政的な困難の問題がございますから、養老年金についてもどのような形で実施するか、先ほど政務次官は養老年金、それから母子年金、もう一つは廃疾と申しますか身体障害者、この三つのことを申されましたが、当然一つのものとして実施さるべきだと思います。たといどのような財政的困難がありましても、この三つを必ず同時に実施する、つまり年金を出す。一般考えは老人年金ということについてのいろいろな御意見が多いようでありますけれども、考えようによっては母子年金あるいは身体障害者年金の方が必要度と申しますか、困窮の度合いが強いと思います。従いましてどうしてもこれをおろそかにして、老人だけに先に年金を出すということはいけないと思います。必ずこの三つを同時に出すかどうか、そのはっきりした御決意を伺いたいと思います。
  166. 池田清志

    ○池田説明員 ただいまの大石委員のお尋ねは、国民年金の中におきまする養老、障害、母子、この三本を同時に発足すべきであるという強い御意見でございました、まったく同感でございます。私どもこの線に従いまして実現しようと思います。
  167. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今の大石委員の御発言に私も同感でございます。これから論及しようと思っておったところを先に申されましたけれども、けっこうでございます。巷間新聞紙上で、老人の問題だけで、あとの問題は少し延ばさなければならないかもしれないというようなことが載っておったように記憶するのですけれども、そういうことでは困るわけでございまして、何といいますか、大ぜいの老齢人口に対する考え方も進めていかなければなりませんけれども、現在身体障害者とか母子家庭は、むすこさんがある程度にやっておられる老人よりは、さらに生活に困った面がありますので、ただそういう問題を対象人数が少いから、声が弱いからというようなことであと回しにするということがあってはならないと思います。厚生次官の今の御決意で非常にその点は意を強ういたしましたけれども、橋本厚生大臣がいませんので、その点少し足りない気がしますが、厚生政務次官大臣を督励して、大臣がひん曲ったならば腕ずくででもまっすぐ向けるような御努力を願いたいと思うわけでございます。また厚生政務次官としては、そのお答えになったところは厚生省を代表してやっておられるので、今の厚生省としてそういう方針を出されたものと理解して参りたいと思います。  先ほど、社会保障制度審議会の答申以上にと申しましたこの点を特にお心にとめておいていただきたい。社会保障制度審議会の答申は、私その審議会の委員の一人といたしまして、その中の論議に参画をいたしております。あそこでいろいろと文章がぼやかしてあります、こういう意見もあったが、ああいう意見もあったがということで。私は今の答申案に対する有力な反対者です。ただし解散があったために反対者がいないところで結論がきまってしまった。私は、手ぬるいという一番強硬な反対者だった。そのときの理屈からいえば解散で首が飛んで、いないんだから、全員だとかなんとかいうかもしれないけれども、この問題に一年間取っ組んだ者としては、ある者はあれでは手ぬるいという意見なんです。その制度審議会において最後の結論を出すときは、ああいう結論になっていないはずであります。あの制度審議会の案は欠点が非常にあります。たとえば国民年金と称して、今の厚生年金の利用者の家族はそれからはずしております。そんなもので国民年金とは言えないわけであります。そういうような欠点があります。それから通算の問題を全然考えておらないという点もあります。そういう点で非常に手ぬるい。手ぬるくなった理由は何かと申し上げますると、制度審議会の論戦の過程においては、今の岸内閣がそこまで踏み切れるかどうかわからないから、踏み切れるためにこのくらいにとどめておくのだ、そういう論議のもとでああいうことになった。岸内閣は、ほんとうに公約した国民年金をやるという意思があったら、これに憤慨されてもいいわけなんです。ですから社会保障制度審議会の答申、それを最大のものとして考えたらとんでもないことであって、それは最低のものである。岸内閣がほんとうに国民年金に熱心であれば、それの足らない点を埋めて、もっと強力にやるという決意に燃えられなければならないと思う。社会保障制度審議会の答申は尊重しなければならないということを審議会法第二条にきめられております。ですから形式的に言えばあの通りやればいいということになるでしょう。ところが審議会の答申はいまだかつて完全に尊重されたことはない、医療保障の勧告においても、その前の年金の勧告においても、それまでの失業保険の勧告においても。それで尊重しないことはいけない。しかし尊重して、あの前文に書いてあるようなほんとうのものを完成したいというようなことを即時にやることは、これは尊重じゃないとは言えない、逆なんです。ほんとうに尊重した意味になるのです。あれよりもはるかに高いものを作る、早く作る、十分なものを作るという決意に燃えられなければいけないと思う。その点で御所信を伺いたい。
  168. 池田清志

    ○池田説明員 社会保障制度審議会の委員であられました八木委員から、審議会におきまする経過並びに審議等を拝聴いたしましてありがとうございました。要点はあの答申よりも上回るようにやれ、こういうお話であります。私は政府として、厚生省としてやりますというお答えではありませんでしたが、先刻も申し上げましたように、池田政務次官は上回るように努力をいたします、こう申し上げておりますので御了承願います。
  169. 八木一男

    ○八木(一男)委員 技術的な問題を一、二申しますると、通算の問題がほったらかしになっています。これは非常に困った問題でありまして、今の厚生年金で、たとえば女子労働者が就業する、厚生年金に強制加入させる、そして年金保険を払う、五年間ぐらいで結婚して家庭に入る、かけ捨てになる、十何年やっても脱退手当金だけで、スズメの涙で、ほんとうの老後の保障にはなっておらないという点がある。こういう問題で、通算がなければほんとうに有名無実といってもいいくらいで、通算というものは非常に大事だと思います。ところが通算という問題がはっきりと考えられておらない。そういう点が非常に心配される。私どもの社会党の年金法案はすでに四月に提出し、解散で廃案になりましたので、六月に提出しましたから、政府の方で御入手になり、また与党の方でもごらんいただいていると思いますが、あの中で、私どもの考え方を完全に理解しておられる方ばかりではないと思います。そこであの問題は、われわれ野党で少数でございますが、一年間かんかんになってやった問題ですから、十分御検討になって御参考にしていただきたいと思います。そこに通算の問題をどうするか、今の財政の問題をどうするかという問題も入っているわけであります。それから付加方式、積立金方式という考え方をもっと御検討になればそういう問題も一つの解決の道になると思います。野党だからということで検討なさらないということはないと思います。ほんとうにもっと深く検討していただきましてやっていただきたいと思います。この案は社会保障制度審議会の場に提出された。そして原則的には社会保障学者といわれる方方、大内さんにしても今井一男さんにしても近藤文二さんにしても、その他の人にしても、この案はいい、ただ岸内閣で実現されないだろうから、そういう実現の可能性があるということでこの案以外の答申をするのだということを言っているわけです。私は岸内閣がそんなにばかにされては困ると思います。やはり今の日本の世帯を背負って立っているのですから、学者といっても尊敬ばかりする必要はないと思います。岸内閣をばかにした学者に対して憤慨して、もっとりっぱな案を作ってみせるという元気でやっていただきたいと思います。また岸内閣だけの財政方針だけできめてもらっては困る。年金制度というものは何十年、何百年と続く。今の内閣の財政方針がそうであるから、それで工合が悪いからこんなちっぽけなものを作る、これは失礼かもしれませんけれども、それでは困る。だから年金制度というものは現在の財政の時点でなくて、将来を見通してどうあるべきかということを考えなければならぬ。そういう問題は大きな背景で考えていただきたいと思います。年金問題はほんとうは橋本さんに本格的に数時間取っ組んで御質問いたしますけれども、きょうはその御所信を伺いまして一応切らしていただきまして、あと二、三別の問題で質問したいと思います。何回も御所信についてあれですけれども、厚生政務次官としてでなく、厚生省の代表者として御答弁願いたいと思います。
  170. 池田清志

    ○池田説明員 去る総選挙におきまして私ども自由民主党が多数を国民から与えられまして、おかげさまで与党という立場になり、岸総裁は国会において指名を受けて第二次内閣を組織しているわけであります。こういうように国民の多数の方々から信頼を受けております岸内閣といたしましては、今の御鞭撻のお言葉を拝聴するまでもなく、公約申し上げたことをどしどしと実行するという立場にあり、すでに他の方面でもおわかりのことでございますが、どしどし実行に移しつつありますことは新聞紙上等でもおわかりのことと思います。なおまた来たるべき臨時国会、さらに通常国会におきましては、それが具体的に明らかになって参ることでございますから、よろしく御協力をお願い申し上げます。国民年金の実施につきましても同様でございます。
  171. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実は岸内閣総理大臣が内閣総理大臣臨時代理のとき、社会労働委員会におきまして社会保障制度審議会の答申勧告案を完全に尊重するということを明確に発言されました。そのときに問題になりました医療保障関係は、ことしはできないけれども来年にはという御発言があった。それで年金問題の方にすりかえてしまって、医療保障の問題はほったらかしにされては困ると思います。医療保障の勧告は今政府考えておられるようなものとは断じて違うわけであります。たとえば国民健康保険の問題にしても、五分国庫負担を平均で上げるというような考え方を一応原案としては持っておられる。その中にいろいろ欠点がある。たとえば窓口払いを患者に押しつけて、結果的にはまた医療担当者に押しつけようとする内容であるとか、あるいはまた国民健康保険の経営者の方に審査機関を置かれるというような非民主的なものになったり、そういういろいろ間違った、とんでもないことがある。それを五分上げるということと、毒と薬をまぜこぜにしてこの前、案を出されてそれが廃案になった。そんなものではないのです、医療保障勧告というものは。結核の医療費を全部はずして、それで即時に三割の国庫負担とする。ですから国民健康保険には五割、六割の国庫負担をしろというのです。そうすれば、さっき毒と薬といいましたけれども、毒の部分は入れなくても十分にいい内容が作れるわけです。そういうものをたな上げして国民年金の方へ全部そらしてしまうというような考え方があるようです。医療保障も国民健康保険と同様に非常に重要な問題です。二年前に出た勧告をほったらかしにして、毒と薬をごちゃまぜにした法案を出そうということではいけない。どっちも重視してもらわなければならない。そうなりますと、この前出された国民健康保険法案というものはとんでもないことになります。この毒の部分を全部排除して、国庫負担を飛躍的に上げて、結核の医療費を全額国庫負担にして、ほんとうに自分の負担をしなくても国民健康保険で十分見てもらい、見る方の医療担当者は迷惑をこうむらない、それで市町村も財政的に迷惑をこうむらないというようなりっぱなものにしていただかなければならない。国民年金に示されたこの御熱意をもっと今の医療保障の中に入れてもらわなければ困る。それについて厚生省としての御意見を承わりたい。
  172. 池田清志

    ○池田説明員 国民の健康をいやが上にも増進するということはまことに大事なことでございます。これがためには疾病あるいは傷害を受けた際の医療の普及を徹底するということであるわけです。これがためには、もう釈迦に説法でありますが、いろいろな制度によって行なっておるわけであります。国民健康保険とか船員保険とかその他の共済組合関係の保険とか、いろいろそういうような被保険者がだんだん多くなって参りましたが、それでも農村とか中小企業とかには被保険者になり得ない方もいらっしゃいますので、それを対象にいたしまして国民健康保険制度を実施しようということを考えており、すでに昭和三十五年度までに全市町村にこれを実施すべく、わが政府はやっておるところであります。これにつきましては、御承知のように前の国会におきまして国民健康保険法案を提案いたしまして御審議をいただきましたが、解散のために流れてしまったわけです。前の特別国会にこれを再提案しようといたしておりましたけれども、会期も迫って参りましたので提出もできませず、申しわけありませんでした。ところが今度の臨時国会にはわれわれといたしましては国民健康保険法案を提案をいたしまして、御審議を仰ぐことにいたしております。なおその内容についての御発問がありましたが、御発問といたしましてはごもっともでございますけれども、私ども政府といたしましては前にお出しをいたしました国民健康保険法案そのものを提案をいたしまして、御審議をいただく方針にいたしております。
  173. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今のああいうような内容のものを出された原因は、いろいろの財政的なものが一番おもな問題です。それは今までの委員会の論議ではっきりしている。それでああいう毒をまぜたような法案が出てくるのです。財政的なもとは国庫負担が足りないからです。医療保障勧告を尊重して、ことしはできないけれども来年からやる、次の年からやるということは岸さんが承知をして、岸さんが約束をしているのです。ですから厚生省自身がそんな考えではとんでもないことです。医療保障勧告は厚生省に一番大事なことなのです。岸総理大臣が約束していることを、大蔵省が何といってもできるはずです。国庫負担を国民健康保険だけに三割とする。それから国民健康保険の勘定から結核の勘定は全部はずして、それを全額国庫負担にする。そうすれば大きな財政の余裕ができるわけです。そうしたら被保険者にああいう窓口払いを半分やってすぐ取り立てるようなことをしたり、またそれを医療担当者が取り立てなかったら結局において医療担当者が自分で負担しなければならないようなことをしたり、そういうやっかいきわまるワクをはめて、そうしてワクのところで、お医者さんが良心的にワク内でやっておることに何とか難くせをつけて、これは過剰診療だというようなことで締めようとする。それでお医者さんの意見を反映しないようにほかの審議会へ持っていこうとするというようなこまかいことで、ほんとうに弱い人、ほんとうに大事な人を締めるようなことはいけない。財政の問題が片づけばそんなことを考えなくてもいいのです。ほんとうは厚生省はそんなことを考えたくないはずです。ところが厚生省の方の公務員の方の中には少々意地になって、その問題が財政上の問題でできなくて、ほんとうの国民健康保険の改正ができないために、また改悪を推進したために、そのときのへ理屈が、何がいけない、かにがいけないというふうに意地にとらわれて、そっちの方にほんとうに精力を集中しておる。被保険者なり医療担当者を締める方に集中しておる。そういうような傾向がある。それを与党から出ておられる政務次官はそういうような小じゅうと的なやり方は断じてためて、今の国民健康保険の悪い毒の点は全部抜いて、そうして財政的裏づけをもっといいものにするというようなやり方でやってもらわなければ困ると思う。それを今方針として確定しました、出しました、そういうようなことではほんとうの国民の声を代表したとは言えないと思うのです。厚生省で一応決定されても、そんなものは変えることはできます。あやまちはどんどんためて直さなければならない。その間違った点を考え直し、間違った点を抜かして完全なものにして、積極的なものにして出すように努力するという御意思があるかどうか。
  174. 池田清志

    ○池田説明員 先ほどお答え申しましたように、すでに国民健康保険法案を提案して御審議をいただく、こういう方針にいたしておるということを申し上げたわけであります。それは財政的の面でちょっと申し上げますと、今までの国庫負担二割を二割五分にするということも入っておりまして、十分ではないかとも存じますが、財政の面において医療保障の面にある程度力を入れておるということにもなろうかと思います。なおこれを臨時国会において通過させていただきまして、本年の十月一日から実施しようと思っておるわけでございます。なお具体的な問題でありますから、正確を期しまするために、必要でありましたら専門の政府委員からお答えいたさせます。
  175. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政務次官の御答弁を願います。この前の新国民健康保険法案と称せられる素案は社会保障制度審議会にかかっておる。個々の点で毒になる部分はいけないという答申が出ておる。ところがその答申を尊重しないでそのまま法案を出した。社会保障制度審議会の設置法の第二条を厚生政務次官は御存じですか。
  176. 池田清志

    ○池田説明員 法律を見まして正確にやります。
  177. 八木一男

    ○八木(一男)委員 じゃ法律を言われなくてもいいです。これは、内閣は社会保障に関する立法その他について社会保障制度審議会に聞いて、その結論を尊重しなければならないということが書いてある。それについて結局審議会の意見を入れないで厚生省の出した原案のものを出したということは、社会保障制度審議会の二条の法律の法律違反なんです。今の日本の国は法治国なんです。法治国でほんとうに法律を尊重しなければならないのは政府自体です。内閣総理大臣は法律を尊重しなければならないということはちゃんと憲法に載っておる。国会議員も尊重しなければならない。それを法律違反を厚生省がやっておるわけです。ですから厚生省がいかに決定しても、法律違反はもとにもどさなければならない。ですから新国民健康保険法案を出すことに決定したということは重大な問題です。法律違反を犯しておるのですから、法律違反のないようにして立案してこなければならない。その点御答弁願いたい。
  178. 池田清志

    ○池田説明員 審議会の答申は尊重すべし、これは政府を拘束するものであります。政府といたしましては審議会の意思を尊重いたしまして、その内容を百パーセントに実現することが一番よろしいことであり、一番尊重したことであると思うのです。ところが政局を担当しております立場におきましては、そういうこともできかねる面もあったりいたしまして、時として百パーセント尊重しないということもあったのではないかと思います。あるいは御指摘のように国民健康保険法案につきまして、そういう面があることを御指摘になっていらっしゃると思うのですが、これは八木さんの方が一番お詳しいのでありますから、そういうことで一つ努力をする、こう申し上げるわけですけれども、一応政府考えといたしまして、国民健康保険法案は従前の法案を提案する、こういう建前にいたしておりますことを御答弁申し上げておきます。
  179. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今政務次官の御答弁、政務次官としてはほんとうに誠意のある御答弁だったと思うのです。御誠意のほどはわかりますけれども、前段で医療保障の勧告、答申を尊重しないという問題もありますし、新国民健康保険法案については、全体の骨格ができたやつをかけて、ここはいけない、ここはいけないという答申が出る。それを直さないで出して、十分にとおっしゃるけれども、一つも尊重していない。これは完全に法律違反である。そういう法律違反をすることがいいかどうか、厚生政務次官御答弁願います。
  180. 池田清志

    ○池田説明員 憲法九十九条に書いてありますように、憲法その他の法規を国民は順守しなくちゃなりません。ですから今御指摘のように、審議会の設置法に違反するようなことを政府がやるということもよくないことである。しかしながらさっきも申し上げましたように、政局担当の立場から、いろいろな面からいたしまして、百パーセントの尊重ができないこともあるという現実の事実は御了解をいただきたいと思います。
  181. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうことで、法律はあるけれども現在の事情でできないこともあると言ったならば、殺人をしていけないという法律がある。だけれども、中には思わず人を殺したという問題も認めなければならぬことになると思う。正当防衛のときは別ですけれども、そうじゃない場合、おれは食えない、それで強盗しなければならない、それで強盗殺人を認めるようなことになったらとんでもないことになると思う。やはり法治国である以上は、法律を断じて尊重していただかなければならぬ。これは非常な問題で、内閣総理大臣と厚生大臣に伺いますが、とにかくそういうことで新国民健康保険法案は、厚生省はさっき申しましたように少し意地になった。大蔵省には強く言えないで、自分の出す法律案なりあるいは行政方針なりでいろいろと困ったことが起る。それからもっとしてもらいたいという人がある。そういう大衆の声はあまり聞かないで、厚生省の既定方針の頭で考えたこと、しかも財政を建て直すとか、財政上の観点というような、大蔵省的な考え方でできた案が最近は多いのです。これは厚生省の人がおられますからはっきり言いますが、厚生省の最近五、六年の案はほとんどそうです。それではいけないので、特にそういう考え方が、制度議会の勧告、答申を守らなければならないというようなところまでも排除しているのはよろしくない。ですから厚生省としてきまっても、そういう間違った考え方の人がきめられたのですから、当然大臣政務次官は法律順守の立場から、ほんととうに大衆の声を守る立場で再審査を命ぜられていいと思うのです。その点についてのお考え方を承わりたいと思います。
  182. 池田清志

    ○池田説明員 審議会におきましては、学識経験の方々を初めといたしまして、各方面のこの方の有識の方々が集まってお作りになったものでありますから、政府が答申をいただきました以上はこれを尊重する、こういう建前になっておることはお示しの通りであります。問題は尊重という内容が百パーセントのこともあるでありましょうし、あるいは九五%にとどまったということもあろうかと思うのであります。今の御指摘の問題は、新国民健康保険法案において審議会の答申を尊重しておらぬじゃないか、そのことが法律の違反ではないかということの御指摘であるわけでありますが、先ほど来申し上げておりますように、いろいろな観点から百パーセントの順守ができないという事情もありますことは、これは御案内の通りであります。従いまして私どもといたしましては極力尊重して実施するように努めるわけでありますが、具体的に新国民健康保険法案につきましては、先ほども申し上げましたように、政府考え方といたしまして、前に出しましたあの案を提案する、こういう方針をきめておる段階でありますので、これをさらにまた私どものところで研究はいたしますが、内容を改めることはできないことに今日はなっておるわけでございます。
  183. 八木一男

    ○八木(一男)委員 厚生次官の御誠意はわかりますけれども、いろいろ今おっしゃったようなことで、不十分な点、悪い点もあるんじゃないかということは認められておるわけです。ですから、残念ながら橋本君おられませんから、検討してこう変えますとかなんとかいう御返事はむずかしいかもしれないが、検討して、悪いところがあったら変えることもあるかもしれぬ、そういうふうに推進します、そのくらいな御答弁はあってもしかるべきだと思う。橋本君がいたらはっきり答弁してもらいますけれども、そういうことで、いろいろと御理解になったいいお言葉を賜わりながら、しかし出すことは決定して、これは動かすことはできないというのは、ほんとうの世論じゃないのです。悪いことがあったら、それを直すのが当りまえだ、法律違反があったら法治国として直すのは当りまえだ、しかし、それはそうだけれども、出すことは決定している、それじゃ話にならぬ。ですから、御検討になって、ほかの考え方もあるでしょう、ほかの理屈立てもあるでしょう、御検討になって、悪いことがあったら改めていただきたい、そういう御答弁をいただきたいと思います。
  184. 池田清志

    ○池田説明員 もちろん悪いことがあれば改めなくちゃなりません。またその時代に合わなくなったようなものがあればどしどし改めて、その時代に即し、国民の民福増進のために役立つようにしていかなくちゃならないことは申し上げるまでもございません。国民健康保険法案につきましても、私どもも研究いたしております。係の者は一生懸命研究いたしております。そうしてまたいろいろな方面から修正の御意見と申しますか、建設的な御意見等も拝聴いたしておるわけでございます。しかしながら政府考えといたしまして、くどいようですが、先ほど申しましたように、今までの法案をお出しいたしまして、あれを御審議いただく、こういうことになっておりますし、御説明申し上げておるわけであります。
  185. 八木一男

    ○八木(一男)委員 政府方針としては今のところそうなっておるということはわかりました。しかし、悪い点、それからまたもっと補充する点があったらそういうことを改めるということもある。これは完全に悪い案ですけれども、それがいいということになれば出すこともおありになるでしょうから、悪い点を認めたら直すということはお約束になってもいいわけでしょう。
  186. 池田清志

    ○池田説明員 八木委員の重ねての御質問でございますが、悪い点がありまして、どうしても直さなければならない程度の悪いところでありますならば、それは政府といたしましては改めるべきであると思います。改めて出すべきであると思います。しかしながら今日の現在までのところは、あの今までの案をどうしても筆を加えて提案しなくちゃならないというところまでに至っておりません。今日の段階においては、今までの案を御審議いただく、こういうことを申し上げておきます。
  187. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういう御答弁では非常に不満なんですけれども、橋本君がおられないので一応その問題は打ち切ろうと思いますが、私どもはどうしても悪い点があると思う。ですからどうしても悪い点があるというのをときどき言いに行きますから、それをお考えになって、それを入れて直していただきたいと思います。それで、政府の方が御検討になっておられるかもしれませんけれども、やはり同じような考え方で、厚生省のお役人の考えたのはマンネリズムに陥っているわけです。ですから広く世論を聞いて、いいと思われたら直すという御努力を願いたい。  ほかの質問者もありますので、最後にもう一点だけにしぼって申し上げます。部落解放対策ですが、この問題については、厚生政務次官はいろいろ経緯とかその他詳しく御存じでしょうか。
  188. 池田清志

    ○池田説明員 今の御質問の問題につきましては、不敏にいたしまして研究調査を進めておりません。また係からその問題について具体的な報告も受けておりません。
  189. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今までの経過も御承知にならないことは非常に残念でございますが、一つ至急やっていただかなければいけないと思います。それは昨年の十一月の臨時国会それからことしの通常国会で論議された問題でございます。岸内閣総理大臣がはっきりと答弁して、本年度検討して、次のときに法案をちゃんと出して、内閣に直接この問題に対する広範な審議会、強力な審議会を設けるという問題を各省で——厚生省だけではありません。厚生省、文部省、労働省、建設省、みんな関係があります。各省で飛躍的に予算を増大させるということをはっきりと総理大臣が明言をしておられます。前の厚生大臣の堀木さんもそれを答弁しておられます。橋本君がおられないので残念ですが、今度の厚生大臣としても当然前のことを引き継いでおられなければならないと思うのです。内閣の方針として確定されたことは、厚生省としてはその通りやらなければいけない。政務次官一つ前のを読み返されまして、この問題は非常に重大な問題である、ことしやらなければならない問題であるということを認識して推進していただきたいと思う。政務次官は御存じありませんけれども、どういうふうに準備が進んでおるか、社会局長の方から一つ具体的に御答弁願いたいと思います。
  190. 安田巖

    ○安田説明員 同和問題につきましては八木委員もすでによく御存じのことでございまして、私から詳しく申し上げることはないのでございますが、明年度予算といたしましては、隣保館でありますとか、共同浴場でありますとか、できれば地区内のそういうものの環境をよくいたします。さらにほかのことにも手をつけてみたいと思いまして、そういう予算を社会局限りで実は立案をいたしておるわけでございます。いずれ予算省議等がございまして、また大蔵省とも折衝いたさなければならぬと思いますけれども、本年よりはもっと充実したものにいたしたい、こういう準備をいたしておる次第でございます。
  191. 八木一男

    ○八木(一男)委員 社会局で取り上げておられる点は非常にけっこうだと思うのですけれども、社会局長の御発言のニュアンスから見ますと、本年よりはふえているけれども、二十倍、三十倍ほどにふえているというようなニュアンスには受け取れない。そのくらいの勢いでやっていただかなければ困りますので、その点についてこの機会に一つ御決意のほどを承わりたいと思います。
  192. 安田巖

    ○安田説明員 まことにごもっともなことでございまして、私どもできるだけ内容におきましても額におきましても、増額するように努力いたしておる次第であります。
  193. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ちょっと今、私失言しました。二十倍では足りないのです。厚生省の環境改善の問題では少くとも五百倍くらいなければならぬということです。それから今環境改善関係だけやりましたが、生活保護が非常に関係が深い。生活保護関係で当然そういう問題に対処をしていただかなければなりません。生活保護の支給する金額を上げるとか、それからこれの適用をもっと簡単にするとか、手内職とか日雇い労働者の期末手当とか、そういうものの収入を差し引かないようにする。当然そうなると生活保護法の改正までいくわけです。こういう階段をつけていって、ある程度までは収入があったものでも差し引かないようにするということも考えていただかなければなりません。そういう点も推進していただきたいと思います。ほかの方もおられますから、今度橋本さんが来られたときにたんねんに申し上げることにいたしますが、厚生政務次官さっそく御勉強いただいて今予算を組んでおられるのですからすぐ進めていただきたい、安田さんは一つほんとうにがんばってやっていただきたいという御要望を申し上げておきます。
  194. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 伊藤よし子君の発言を許します。
  195. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 本年の四月一日から売春防止法が実施されたわけでございますが、その後の状況につきまして御質問申し上げたいと存じます。  第一は業者のその後の転廃業の状況について伺いたいと思います。第二点は従業婦の更生の状況でございます。その点について厚生省の御関係のお調べがございましたら御報告いただきたいと思います。
  196. 安田巖

    ○安田説明員 第一の御質問の、業者の転廃業の状態でございますけれども、もう御承知と思いますが、四月一日で、全国で約四万の売春関係業者が一斉に転廃業を完了いたしました。転廃業を完了いたしたと申しましても、やめたのが多いのでございまして、転業先といたしましては旅館が一番多くて二八%程度でございます。それから料理店とか飲食店、酒席、カフェー、キャバレー、バー、下宿、貸間、こういったような順になっておるのでございますけれども、それが現在非常にうまくいっておるかどうかということになりますと、ああいった場所が旅館を営むのに必ずしも地理的に適当な所であるかどうかという問題もございますので、その所々によりまして、よくいっております所もありますし、うまくいかない所もあるというような状況でございます。大体におきましてそう成功したような例はあまり聞いておりません。しかしたとえば東京の千住の地区でありますとか、あるいは京都の、御承知かもしれませんが中書島等におきましては、学生の下宿に集団転業いたしまして、好成績をおさめておるのもございます。それからまた廃業いたしましたけれどもいまだに転業の業種等に迷って去就をきめかねておるような者もございます。あるいはまたタクシー業というようなものをまとめて出願をいたしておるような例も、東京でありますとか大阪でありますとかにございますが、まだ許可はされてないようでございます。いずれにいたしましても、私どもそういう業者がもとの業態に返ることのないようにということで、警察の方の取締りと並行いたしまして、今後もそういう点に気をつけて参りたいと思っております。  それから第二の御質問の従業婦のことでございます。これも早いのは十二月中——これは愛知県とか岐阜県という東海あたりになりますと十二月中に大体転廃業いたしたのでありますが、東京でございますと二月、全国的に見ますと三月の終りまでには全部一応商売はやめる状態にいたったのでございます。そのときの調べがあるだけでございますけれども、大体帰郷というのが半分を占めておるのでございます。あとの半分が就職とか結婚とかあるいは保護施設に収容したというような例になっておるのでございます。最近見ておりますと、やはり一たん帰郷したというのが、ほんとうに帰郷したのもございましょうし、あるいはそうでなかったのもあるわけでございますが、ぼつぼつまたこちらへ出ておるのではないかというような話もたびたび聞いておるのでございます。それから結婚をいたしましたといっても、これがうまく成功しなかった例も相当ございますし、就職が長続きをしなかったという例もあるようでございます。場所によりますと、もとの業者のところにそういう女の人が戻っておるというような情報もあるわけでございます。いずれにいたしましても、現にそういった仕事をいたしておるところをつかまえるわけではございませんので、私どもといたしましては婦人相談所あるいは婦人相談員がその機能をフルに活動しまして、検挙された者につきましては検察庁によく連絡しまして、そちらの方から必ず相談所に回してもらって適当な措置をするようなことをいたしております。そのほか転落前のそういう人たちについても注意をいたすように考えておるわけであります。  保護施設のことでございますけれども、御承知通りに各県に婦人相談所を一カ所ずつ置いておるわけでございますが、婦人相談所で相談を受けまして帰郷させるとか、あるいはちゃんとしたところに落ちつく場所を作ってやるということでございますが、それでもうまくいかない場合には、婦人相談所に一時収容所がございますので、そこへ二週間なり二十日間入れておきまして、その間に今言ったようなことをいろいろやってみまして、まだいけないという場合には婦人保護施設へ送るわけでございます。保護施設は従来ありましたのが十六カ所でございまして、昨年の予算で三十九カ所の予算が通ったわけでございますが、七月末現在で予算三十九カ所に対しまして三十八カ所が大体完了いたしまして、なお現在工事中のものが九施設あるわけでございます。九施設と三十八カ所では四十七施設になるじゃないかということで、予算より多いじゃないかという御疑問があるかと思うのでございますが、これは三十九カ所の予算でそれだけに伸ばしてやったということでございます。  そこでこの収容状況でございますけれども、東京等におきましてもまだできたばかりのところが二、三あるわけでありますが、概して申しますと大都市は比較的に中に入っている者が多くて、いなかに行きますとそういう保護施設に入っておる者がまだ非常に少いという——これはやはり婦人相談所なりあるいは婦人施設というようなものにつきましての理解が足りない、私どもの方から申しますと啓蒙宣伝が足りないという点もあると思いまして、そういう点について十分努力をして参りたいと思っております。
  197. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 ただいまの御答弁の中にもございましたが、帰郷の人の中に、最近また都会へ出て参りましてキャバレーとかバーなどに入ったり、昔の仲間でいろいろ連絡がございまして、新しくお金を出してもらったりして、相当多額なお金がキャバレーなどから出てそういう人を引っぱっているということも耳にいたしておりますし、あるいは他の業に転業いたしましてもいろいろ、従来労働にもなれておりませんので、他の人との折り合いが悪くてうまく行かなくてまた転落するような傾向もあるようでございます。またただいまの婦人相談員も数が非常に少うございます上に、現在は非常勤でございますので、最近相談員の方のお話などを伺いましたところ、郷里に、あるいは長野とか岐阜とかに帰った人たちまでもめんどうを見てほんとうに更生させるためにはいろいろ旅費等も要りますそうですし、何かと引き続いて一人の人を更生させるには現在の婦人相談員では、給料も非常にわずかでございますし、非常勤で大へん困るというようなお話もございました。それらの点につきましても現在のようなわずかな予算では十分でないと思いますが、その点はどういうようにお考えになっておりますか。まだ三カ月ちょっとでございますが、いろいろそういう施設についての現在の予算は足らないと思うのでございますが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  198. 安田巖

    ○安田説明員 婦人保護の予算で、今最初に仰せになりました婦人相談員でございますが、これは非常勤ということになっておりまして、一週に四日くらい出ればいいというふうなことが建前になっておるわけでございます。それでいいか悪いかは別といたしまして、そういうことでございますので、自然俸給も安くなりまして、現在九千円になっておるわけであります。母子相談員が大体八千円くらいかと思うのでありますが、この方は地方税の交付税、交付金でまかなわれておりますのを、私どもの方は二分の一補助で、その点では非常に優遇されておるのじゃないかと思っております。しかしいずれにいたしましても、婦人相談員が現在一生懸命働いていただいておりますことに対する報酬といたしましては私は決して多いとは思っておりませんけれども、何しろこういうものを定員化して人をふやすということにつきましては、今私どもがとる予算としては一番むずかしい予算でございます。今後も努力いたしますけれども、そういう点も御了承いただきたいと思うのです。  それからその他の旅費でありますとかあるいは被服費とかいうようなものは大体間に合っておるのじゃないかと私は思うのでありまして、そういった費用が余っておるようなところもございますので、まかなえるのじゃないかと思いますが、問題は施設における食糧費なのでございます。これが非常に少いために魅力がない、こういうことを経営者が申します。経営者が言うということは、中へ入っている女がそういうことを言うのだろうと思いますが、ただこれはこういう人たちが割に美食になれておったとか、遊んでおってうまいものを食っておったから、何かそこへ引きつけるにはうまいものを食わしてやらなければならぬということはよくわかる。私どもの気持としてはもっといいものにしてどんどん——少し出たくないというようなくらいの施設にしてやりたいという気持になっております。けれども、しかし今度予算を出す方になりますと、やはりそういったハンディキャップを持った人たちの施設がたくさんございます。ほかと比べてそういう人たちだけなぜよくしなければならないかという理屈を言われるわけであります。そういうことで、やはり生活保護の施設等に右へならったようなことになるわけであります。しかしいろいろ施設によっては工夫をいたしまして、相当程度のカロリーのある、また内容のあるものを食べさせておりますので、いろいろそういった点で御勉強も願い、また地元の婦人会等の御協力を得て、非常に愉快な生活をしておるようなところもあるわけでございます。そういうことで、確かに私どもも十分とは思いませんけれども、今のところはやむを得ないのではないか。  それから最近は、この中に入っておりまして就職口等がございますと、そこをアパートのようにいたしまして、外に出て働く人たちも相当おるわけであります。こういう人たちも私どもは大目に見ております。そこで三カ月でも六カ月でもおればおったでいいじゃないかということでおるわけでありますが、そういう人たちが外へ出てかせいできます金を、ほんとうを言いますと、生活保護のようにぴしっとやらなければなりませんけれども、施設も特別な施設で、特別な内容を持っておりますので、それをあまり今のところやかましく言っていないようでございますから、そういうようなところからもいろいろゆとりが出てきやしないか、ほんとうの打ちあけ話でございますけれども、そんな気持でおります。
  199. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 ただいまの御答弁によって、私もそのように思いますが、いずれにいたしましても、せっかく防止法ができまして実施されているのでございますから、従業婦の人たちがほんとうに更生していきますように、十分なる更生資金その他補導の面におきましても予算を組んでやっていただくように御要望申し上げておきます。
  200. 中山マサ

    ○中山委員 関連質問でございますが、多分安田局長もお読みになった記事だろうと思います。これはしばらく前に東京で起った事件でございますが、表向きの夫婦かどうか存じませんけれども、ある女の人が町に立って、いわゆる街頭の仕事をしておった、それで警察にあげられまして連れていかれて、それから今度釈放された、そして男の人とある宿屋に行って、男は早く帰ってしまった、そして朝起きてこないから見に行ったら、その女が絞め殺されておったという記事が出ておりました。そこにつけ加えて、この女は結局自分が妊娠しておったので、そのお産の費用をかせぐためにこうして街頭で醜業をやっておったという記事がつけてあったのであります。英国では交通妨害という意味でそういう町の女を連れていって、それで次の部屋を通って出さないといって、そこで検診をするのだそうでございますが、こういう問題が起って参りますると、英国のやり方であれば、この婦人が受胎をしておったということで、いろいろ事情も聞きまして、それに対してどうしても生活ができないならば、受胎した場合、その子供はやはり十八才まで国の責任だ、お産の費用も出すというような法律の規定、これは日本にもございますにもかかわりませず、先ほどあなたがおっしゃいました、PRが足りないのだというお話を伺いましたので、私はふとその記事を思い出したのでございますが、こういうことになった場合、警察はこういう女がつかまった、釈放するんだということを何とか福祉事務所に連絡する制度はないものでございましょうか。その女がお産をした場合に、何も費用はないということをおそれて、そういうまことに母性愛の行き過ぎと申しますか、法律のことを何にも知らなかったためにこういう悲惨なことができて、その男の無責任さから、そういう状態のために自分の生活がよけい圧迫されることをおそれて、とうとう女を締め殺したという恐しい事件が発生しているのでありますが、そういう連絡というものはどういうふうになっておりますか。これは社会局にお尋ねするよりも、むしろきょう警察関係の方がおいでになっておればそちらの方に、お尋ねするのが至当だと思いますが、今から呼び出しても間に合わないと思いますので、お尋ねしたいと思うのです。
  201. 安田巖

    ○安田説明員 今お話のような場合、検挙されまして、たとえば検察庁に送られますと、東京都の場合でありますと、検察庁に更生保護相談室というのがございます。相談室の方に、都庁の方の私どもの方の関係の筋の相談員が積極的に出かけていって詰めるというふうな処置をとっておるわけでございますから、検察庁にそういうふうに参りますと、それがそこで適当な措置をされて相談所に来る。相談所に来ればもちろん身体検査もする。それから全国的にも法務省の方でそういう指導をいたしておりますけれども、私ども念のために、四月でございましたか、刑事局長の方に、私の名前でもって、検挙をいたしました場合に府県の婦人相談所の方に連絡してくれということをお願いしたわけでございます。それにこたえて刑事局長の方から地方の検察庁の方に、通知を出していただいております。ですから、そういったような場合には一応相談を受ける機会があるのでありますけれども、しかし先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、ああいう人たちは、相談所に行けといってもなかなか行かなかったり、あるいは起訴猶予にするにしても、保護施設に入れというのでいやいやながら入るけれども、入って二、三日すると逃げてしまうとかいうことがございまして、その辺まだまだ不十分な点があるわけでございます。その点につきましては、今後一そう気をつけるように、よく連絡指導いたしたいと思います。
  202. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 五島虎雄君。
  203. 五島虎雄

    五島委員 安田局長、今伊藤委員から質問がありましたけれども、従業婦の転業とかなんとかは帰郷が五〇%という報告の答弁があったわけですけれども、厚生省の方では帰郷したあとがどうなっておるか、さっぱりわからぬらしいじゃないですか。それからまた、施設に収容された。警察から回ってきたり、検察当局の方から回ってきたり、あるいは本人の希望で相談にこられて、それらをしばらくの間世話をされている。そうしてその間にいろいろ話し合いをされて就職などの世話をされている。そうすると、今伊藤委員が言われましたように、労働にもなれていない。そこで朝から晩までの仕事——たとえば女中さんに、就職を世話された。そうすると、ほかの女中との折り合いが悪くなったり、それから仕事になれていないものだから、もうその仕事の合間にすわり込んでしまって立てなかったり、それが怠惰ですわり込むのじゃなくて、肉体的にすわり込んだりして長続きしない。そうしていつの間にかやめて行方不明になる。そしてそれから把握ができない。あるいはまた途方に暮れて相談に来られる。そうすると、それがずっと回転してくるわけですね。こういう人たちをどうやって就職さして更生させるべきかという問題は、単に一度収容施設に入れるだけでは、これは問題の解決にならぬじゃないかと思う。私たちがいろいろそれらの問題について話を聞きあるいは調査をしてみて、とうていこれだけの少額の予算では、ほんとうに真の更生ができないんじゃないかというように思う。そうすると、こういうほんとうに更生をしたいと思う人は健全なる仕事につかせなければならぬ。しかも、肉体的な問題やら精神的な問題で、健全な仕事ができないという過渡期があると思う。そういうような場合に一体どうしたらいいのだ。それをゆるがせにしておいて、今度は行方不明になる、把握ができないようになって、紅灯のちまたの中に帰っていって、そうしてわからないような行為がされるのじゃないかというような想像もかたくないと思う。今局長が言われましたように、やはり再びいかがわしいことに転落していくというようなことがある。地方に行ってみると、それが非常に問題なようですね。そこで私たちはいつもこう思うのです。政府はそういう人たちの就職というのは、何か仕事、授産所ですか、たとえば食物も今言われましたように少々よく、それから設備もよくして、仕事はつけるのだ。そうして仕事をし、収入を与えて、その上に結婚というような問題なども解決しなければならぬじゃないか。行ってみると、ただ何もない、たった机一つその部屋に置いて、そしてしばらくおれ。そうして、ときどき就職せぬか、結婚せぬか、帰郷せぬかというようなことをやっておっても、真の更生というような結果にはまだほんとうに遠いのじゃないか。そうすると、婦人保護を二億三千三百万円ですか、去年が三億円程度ですが、これから毎年々々継続的に予算をとっていかれるわけでしょうけれども、ああいうような状態で、ほんとうに五十万もいる人たち全部に手を差し延べて更生をさせることができるかということは、売春禁止法の法案の論議の中でも、更生という問題が一番重要なんだ、それには多額の更生資金、更生予算が要るのだと論じられておったわけですけれども、現在の二億三千万円くらいで、少しばかり把握した人たちは、局長が言われましたように、まあそれで十分かもしれませんけれども、もっとそれを広く差し延べ、PRをして、ほんとうに精神的、肉体的に更生させるためには、今のような予算で十分だと思われますか。池田政務次官、個人としてどうですか。
  204. 池田清志

    ○池田説明員 売春防止法が今年の四月一日から完全に実施されることになりまして、そういう法律の対象になるような方々がいろいろと自粛せられましたり、あるいはまた転廃業をせられましたりいたしておるわけでございますが、みずからそういうことをなしていただくのは非常にけっこうでありまして、政府といたしましてはぜひそういうことをお願いしたい、こう考えるのでございます。しかしどうしても政府あるいはほかの力でお世話をしなくちゃならないという方々がたくさんいらっしゃいますわけでありまして、これにつきましては先ほど来局長が御答弁申し上げておりまするように、厚生省といたしましてもいろいろな施設を作りまして、その足を洗うということ、それから将来につきましての楽しみを与える、職業を与える、結婚も世話するというようなことにつきまして、いろいろとお世話をしておるのででありますけれども、御指摘のように予算関係等もありまして十分に参っておりませんことはまことに申しわけございません。そこで五島さんのお尋ねになりましたように、予算をふやしてもっと施設を拡充してお世話せよ、こういう御質問がなされますることは当然であります。池田個人としてはどうかというお尋ねでございました。お示しのように、私ども一生態命に予算獲得に努力をさせていただきたいと思います。
  205. 五島虎雄

    五島委員 売春の問題はそれくらいにして、実は公衆衛生局長にお尋ねしたいのですが、問題は兵庫県神戸市の特飲の問題です。昨年の暮れごろに、岡山県で学校隣接地に旅館を経営するというようなことで、一部で非常に社会問題を生じた。社会問題といいますか、非常に世論が高進したことがあることを知っております。結局岡山県の旅館営業は許可されて、現在は営業されているだろうと思います。ところが神戸市において、今幼稚園のすぐ隣に建物が建造されて、そうして間もなく旅館業が許可になるだろうというような問題が一つあるわけです。そうしてこの問題については、一年二カ月の期間が経過しておるわけですけれども、この一年二カ月の間にずいぶん婦人団体あるいは教育者、それから関係筋が反対をして、幼稚園の隣に美麗な、そうしてまた刺激的な建物を建てて旅館を営業されては教育上、清純なる教育に合致しないおそれがあるから、そこで許可してもらいたくないというような反対の動きがある。反対の声が非常に強かったわけです。そうしてその結果として、市役所は今年の五月に旅館営業の許可申請について、申請取り消しをしたわけです。ところがその後六カ月、七カ月を経て、今日に至って再び旅館営業を許可してもらいたいという再申請が出まして、そうして神戸市会の衛生委員会等々で問題になって、そうして状況を聞けば、近いうちに許可せざるを得ない、許可をするであろうというようなことになっております。そこでこれを知った婦人団体などは、学校のすぐ隣にこういうような旅館営業を許可してもらうということは、せっかく去年の六月の十五日から実施されている旅館業法の一部改正に伴って、学校隣接の百メートル以内では、清純なる教育を保持することができないというような場合には、百メートル以内にその敷地あるいは営業を許可しないことがある。ところが、百メートル以内ではなくて、すぐ隣だった。そこで公開質問状を衛生局長に出したり、あるいは市長に出したりして、非常に神戸の方では新聞をにぎわしておるわけです。ところが神戸市会では、今月の終りに市会が開かれる。そうすると市会の連中がこの問題を取り上げて質問をするとか、あるいは許可することはおかしいとかいうような問題があるわけです。そこで私、尾村さんに聞きたいのは、全国でたとえば建造物を建築しようとするときは、目的がなければ建築をしないわけなんです。ただ単に金をかけて、何に使うか目的がないのに家を建てる人はいないわけです。それで住居にするのか、商売用にするのか、あるいは浴場を作るのか、旅館を作るのか、目的があってやはり建築が始まると思うのです。ところが建築をする場合は建築基準法に適しているかどうかという、建築基準法に該当する確認の申請がなければならないわけです。その確認の申請を出すときは、一般に旅館をするならば旅館営業の許可申請が付随してあるはずだと思うのです。ですから全国的にはそういうようにして、営業権と営業の許可願とそれから建築基準法にのっとった確認をしてくれろという書類が一緒に役所には出るのだと私は思うのですけれども、全国一般にそういうふうになっておりますか。
  206. 尾村偉久

    ○尾村説明員 ただいまの建築基準法の建築主事による確認、それからそのものの目的の営業について必要なものは許可営業になっております。それとの関連ですが、ただいまお話の神戸の例は、その経過がギャップをついたような形であります。と申しますのは、昨年の六月二十一日の旅館業法の改正が行われまして、百メートル以内の問題が実は施行になったわけでございますが、この当該旅館は六月七日に申請をいたしまして、六月十七日に建築基準の確認がおりておるわけであります。ちょうど百メートル以内の問題は、その前に起ったわけで、これは偶然な例のわけであります。一般的に申しますと、建築の確認申請の場合には、大体こういうふうな旅館とか下宿とかいうものは基準法の申請をするときには通例つけるのですが、その場合何に使うか必ずわかるようにする。従いまして衛生当局が旅館業法を握っております。これと建築の方の申請と横の連絡があれば、これはかなり事前にむだのないように指導ができるわけです。そこで昨年この旅館業法の改正をいたしましてからは、衛生当局も同じ公共団体の中でございますので、今の確認が出て衛生当局の握っておる営業許可に関係のあるものは必ず連絡をいたすように指導をいたす、これは建設省の方にもお願いいたしまして、同じような指導方針でいってくれということは依頼をいたしました。ただ、まだ建築関係の方の当局が、どれが果して厳重な営業許可と関連があるかどうかというようなことの知識不十分な場合に、うかつにこれを見のがす場合が往往ありまして、若干事故を起しております。さような場合があってはいかぬというので、そのために指導をいたしておりますが、これは自治体の中同士のことでございますので、十分連絡をするように一そう心がけたい。  それから神戸の問題は、先ほどのお話がありましたように、昨年以来もう一年二カ月もたっております。一回不許可になりました。その不許可の原因といたしましては、隣接しておりまして、構造設備が旅館業法の政令に定めるものに合致しない点が一つあります。それは教育施設から内部の状況が展望されるということが、現在の百メートル以内の旅館の場合には規定あるわけでございますが、これが申請の中に十分整っておらぬということ、それから別な政令で、運営に当りまして、風俗を乱すような展覧物あるいは図書、広告、かようなものがあってはいかぬということになっておりますが、これとの関連において若干疑義がある。主として法令に関する点ではこれらの条件がそろわないという点、それらに基きまして、幼稚園でございますので、許可を与える場合には、所管する県知事の意見が同意をされないといかぬわけでございます。県知事の意見もさような事情で不同意ということでございまして、ことしの五月に市長が申請却下をいたしました。その後これらの点につきまして、大体法に規定するものを改造をいたすという措置が講ぜられまして、それらの点を直した申請がありましたので、これを県知事の方に、百メートル以内の要件といたしまして協議をいたした結果、県知事の方からは前と違って、非常に風俗を乱すという点についてはすっかり緩和された、かようないわゆる同意的な回答が市長になされたよしでございます。これに基いて許可をする方針になっておるようでございます。その点についてこちらに、今までの経過一切を実情の報告がありまして、若干の口頭による相談があったわけでございます。前にわれわれの方に相談がありましたときには、ばく然と物事の許可不許可をしてはいかぬというように回答をしておるのでございます。と申しますのは、根本的に今の政令に違反するかどうかというような理由をただしておらず、あるいは不許可にしたいという理由は何かということも、ただ百メートル以内に旅館は作らせない、将来あやしくなりそうである、さようなことでは法の運用上はこちらとしては判断ができかねる、かようなわけでありますが、今度はさような条件が整っておりますので、市長がさらに今の直された条件を判断して、善良な教育環境を乱さぬという決意をされれば許可されてもそれはよろしかろう、現在のところでは、もし回答を求められればさように回答いたしたい、かように存じておるわけであります。
  207. 五島虎雄

    五島委員 大体経過はわかりました。しかしこれは、なるほど建築の確認申請があったのは三十二年の六月七日で、そうして二十一日以内に確認をすべき場合は確認をしなければならないという基準法の内容ですが、そこで十日を経て六月の十七日に、確認を市の建築課がしているわけです。その確認の前、六月十五日に旅館業法の施行があった。そして官報所載は二十一日になっているのですが、その間に確認が建築に関する限りにおいては、その以前であった。建築を申請した人は、最初から旅館営業をしたいと思っておった。ところが旅館営業の許可申請が出てきたのは、それからずっと二カ月も過ぎてから、去年の七月三十一日に保健所を経由して提出されたというわけですね。もうすでに建築の事実は始まった。従ってこの許可確認によって、建築がだんだん基礎打ちされた。その基礎打ちされたあとに許可の申請があった。そこでずっと越えてことしの五月、総選挙半ばに知事の不同意があった。そして市も不許可にされたわけです。期日は一年たっているわけです。一年たっている間に、たとえば不許可の理由が、学校、幼稚園から直接中の施設が展望できるとかいう。展望できるという場合も、できるから許可しないんだというのだったら、展望できないようにしたらいいんじゃないかというような指導をすればいいし、それからまた、いかがわしい風俗等々は改正させればいいわけですが、不許可まで一年間も放置してある。しかも建築は昨年の十一月から十二月にかけて完全に、いかがわしい室内の飾りとか、あるいは玄関わきにヴィーナスの像を建てたとかいうようなことが、昨年の末にはでき上っておった。そうして建てた人は早くこれを営業をしたいと思っておられる。ところがそれからなお半年放置されて、五月一日に不許可をやられた。そうすると建物が建ち上ってもう営業ができるというてから、四カ月、五カ月後に不許可になっておるわけです。どういう理由で不許可になったか、それはわかりませんが、最後のぎりぎり五月一日に不許可になったときは、すでにヴィーナスの像ができ、あるいは中が美麗過ぎたり、赤色、青色にいろいろ部屋を塗って、感情を刺激するような建物だと思われたことは、半年前にわかっておった。そうして五カ月後にこういう理由で改造しなさい、入口を変えなさいというように言うて——いや、言わないで不許可になった。その前に話し合いがあったことは想像されるわけです。何も話し合いをしないで、お前のところはあまりきれい過ぎるから不許可にするぞといってぽんと不許可にして、数千万円かけた建築に、それだったら下宿屋にせぬかいとか用途変更なんか指導されるはずがないと思う。そこで不許可になったわけです。県知事の不同意があった。不許可にしたのは教育関係が反対したから不許可にした。ところが五月一日に不許可にしたのが、再申請が出た。そうして二カ月、三カ月の間にそれを改造された。なるほど改造されたという個所を聞いてみると、入口を幼稚園の生徒が通らない方向にわざわざ作ったとか、あるいは地下室に入っていく入口を別に作ったとか、あるいはヴィーナスの像を取り払ったとか、それから、展望されるような、中の行為がわかるような、そういうところには高いへいを作って、幼稚園の生徒が見れないようにしたとか、各部屋々々には窓を作ったとかいうようなことをやって再申請を出されたようですけれども、そうすると二カ月後の今日においては、それが今度は清純な、教育に支障がないというところまで改造されたかどうかということは、こちらはちょっとわかりませんけれども、今や間もなく許可になりそうだ。そうすると神戸の婦人団体等あるいはその他の神戸市民が、新聞に書きますから全部知っておるわけですが、すると、もう建築が始まって、しょうがない、建築の事実行為が始まって事後承認の形において、一度不許可になったのを再び、いろいろの運動等々でこれは許可せざるを得ないじゃないか。そうすると、百メートル以内の教育の清純を守るという法律の内容、著しく教育の清純を害するというような、著しいという判断は主観的な問題であって、わからないのじゃないか。そうすると、今後も百メートル以内に建ててしまって——建ててしまってということは今後はないでしょうけれども、建って、そうしてこれは著しく教育の清純を阻害しないんだと市や県が判断し、建設省がそれでいいんだ、著しい阻害じゃないんだというようなことに——なるほど著しいというのはばく然たる問題ですから、そこで著しく阻害しないと認めるということで、どんどん建てられたら、金のある者は得じゃないか。すると旅館業法の一部改正で、百メートル以内にはというような規定そのものは、死んだも同然じゃないかというようなことになる。しかも一年もかかったあとの五月一日に不許可をして、二カ月経過した今日においてはそれを許可せざるを得ない、もう間もなく許可するんだということです。そうして、こんなのは許可しないでくれといって反対の陳情をされる人たちには、陳情はおかしいから請願にしてくれとかなんとかと言われるというのです。だから、旅館を建築し旅館営業をしようとした人たち、あるいは今伊藤委員から言われたように、売春禁止法に伴うそれが転業で、新しく旅館を建てるかどうかというようなことなどは、私は問題じゃないと思う。できるだけ転業しなければならぬ。従って、そういう人たちがそこに旅館を建てたから売春行為がそこで行われるであろう、従って教育環境を害するであろうと、その最後のことを想像するがゆえに反対する、行為がないのにそういうように断定するということもどうかと思うのです。それから、もうすでに法上では売春婦がいないのです。いないのに売春が行われるであろうと想像するのもおかしいのですけれども、事実はさいぜん安田局長が申されましたように、いかがわしく転落している人がある。そこで、売春禁止が四月一日から実施されたのだ、業者は転業しているのだ、そうして鳩森事件以来旅館業法の一部改正が行われて、百メートル以内には今後建てることができないのだと一般は思っている。だから、教育環境は非常によくなったと思っている。そういうような期待がある矢先に、ま隣りに展望できるような旅館を営業したり、非常に美麗な部屋ができたとかいうようなことで、一般が想像するのも無理がないと思うのです。そうして五月一日に、こういうのは適当していないからということで不許可を与えて、二カ月、三カ月たった今日においてはもうやりますというようなことで、市民一般は市当局の豹変だと言っておる。そこで、法に照らしてほんとうに清純な教育を阻害しないという判定はだれがやるかというと、市民個人じゃないわけです。それは知事の同意、市長の許可、そうして問題があった場合には尾村さんたちがサゼスチョンを与えられるでしょうけれども、市民一般はそうは考えないのです。そこで市民に対するところの筋を通して、ただあやふやに許可を与えたり不許可を与えたりすることは、市民一般を惑わすものだ、それはその土地の住民に対してもいけないというように私は思うのです。そこで、この委員会で尾村局長に、どうですかといって神戸の問題一点をとらえてあなたに聞く気持はなかったわけですけれども、神戸市から局長が来て、局長に対して相談をされた。局長に対して相談をされたということは、かつて相談をしておられたからだろうと思うし、なおまた神戸地方の新聞では盛んに取り上げられ、そうして公開質問状まで出しておるというようなこと、これは全国的な問題だと思うのです。これは神戸市だけに限らず、全国的にこういうような事例が発生した場合は、事実を認めざるを得ないがゆえに営業権が許可されざるを得ないというところに追い込められるということならば、法の精神が曲ってしまうのじゃないか、こういうように考える。それからもう一つ非常に問題にしていることは、こういう一つの例ができれば、次だってそうじゃないか、次も次もということで、教育環境を金の力によって破壊されるということは困るのだというように神戸市民の人たちは思っているようです。  そこで、今後の問題について、どういうようにこれを指導されていくか。もちろん局長が言われましたように、旅館業法が改正された今日に至っては、建設関係と衛生関係とでよく連絡を保って、合議制にしてやっておるそうです。神戸市は、昨年の十一月から合議制にしたというのです。旅館業法が改正されてから、半年前やっと合議制になったというのです。それまではてんでばらばらです。そうすると、一方では建築の適格基準があって、建築は建築基準の方面から確認したり不確認したりする。一方では衛生関係で、旅館業法に照らし合せて、環境衛生の問題として許可していいか不許可していいかをきめるというようなことで、てんでばらばらであった。しかし今では、昨年の末からでも合議制になっているから、今後は誤まりがないと思うのですけれども、現実に建ててしまって、さあ建ってしまったから許可してくれろというようなことで、多くの反対があるにもかかわらず、あとでは感情の問題になって、陳情している方が悪いみたいな表現をされながら営業が許可されるということは、私は困ると思う。そういうような行政をされると、民心を惑わすようになるのじゃなかろうかと思うのですが、この問題について今後はどういうようにわれわれは解釈したらいいでしょうか、お伺いしたい。
  208. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 御答弁も御質問も簡単にお願いいたします。
  209. 尾村偉久

    ○尾村説明員 ただいまの旅館と限りませず、許可営業、たとえば喫茶店、飲食店、すべてそうでございまして、建築のいわゆる確認とそれから営業許可という関連は、全国で関係業者が非常に多いもので、毎年々々申請が非常に多いわけであります。これがかってはしょっちゅう問題が多かった。現在も若干数多い中では今のお話のようなことがまだ起っておるわけであります。これはもう確かにむだでございまして、もちろんその場合に、建築はどこにでも使えるようなものが多くて、特定の営業には設備不完全であるということで営業許可にならなくとも、ほかの業種ですと今度は許可になる、こういうことがありまして、全部が全部なるわけではございませんが、それにいたしましても、せっかく最初からある営業をしようと思って作ったものが、意に反したものでなければ使えなくなるということではもったいないことでありますので、この点は共同体制がまだ十分でないところは一そう督励いたしまして、共同で必ずこれを進めるように指導いたしたいと思います。それからいま一つの、今後かような百メートル以内の高等学校以下の学校なり、それから学校教育法に認める幼稚園なりのところに旅館ができる場合どうするか。この百メートル以内の旅館というものはもう一切許可しないのだということになれば、これは客観的に簡単でありまして、何でもない話でありますが、かようなことはちょっと不可能であります。また適切ではないと思います。要するに旅館で便利なところにあって、多数の旅客がおとなしく泊るというのが旅館の真の目的でございますので、さような場合には決して教育と背馳するものではない。従いまして原則としては、むしろ建物であればこれは許可してさしつかえないと思うわけでございますが、とかくいかがわしいものがあるために、どうしても教育があとから害されるということで、ああいう法律の制定を見たわけであります。現在の法によりましても、市長なりあるいは県知事が最初から不許可ということが自分の判断ではっきりしているのは教育委員会に全然相談する必要はない。自分で単独で不許可できるわけです。むしろ自分自身はそれほど環境を害しないであろうという場合に初めて許可をするわけで、許可をする場合に教育委員会なり、県の教育課、つまり知事の同意を求める、こういうことになっておるわけでございますので、どちらかといいますと、許可権者は大体よさそうだという場合に問題が起るわけであります。従ってこれに対していかぬという場合には、具体的にいろいろな根拠が要る、こういうわけでありまして、最初から人に相談しないで不許可にする場合には、当然相手が不満なことがわかっているわけでありますから、むしろこの清純な環境を害するという具体的な例示というものが必要である、かように思っておるわけであります。これを双方がよく集めまして、それの総合的判断で不許可にきめる、あるいは通過させる、かように存じておりますので、さような点をポイントにいたしまして指導を一そう綿密にしていきたい。今までかなり方々で起った例は、会議で相当数例示いたしまして、両方の例がございますから、指導したつもりでありますが、一そうそれは綿密にしていきたい、かように存じます。
  210. 五島虎雄

    五島委員 今の旅館の名前は東海道旅館だそうですが、それと相前後して、もう一つ、小学校の隣接地に花隈旅館というのが申請されている。それは建築と申請が同時に出てきた。同時に出てきたから衛生局の方ではいろいろ申請者と話しながら旅館業法の改正の話等々をして、そうして本人が向うから申請を取り下げたということが一つはあるのです。そしてこれはこの前の二十八通常国会の中間に、元の野原衆議院議員が文教委員会でこの二つの問題を取り上げて、文部省の意見を求めて、そうしてこういうことについては十分注意しなければなりませんという答弁に基いて、その後に本人が申請取り下げをしているわけです。一方ではさいぜん申しましたように、この問題はもう建築がどんどん進んでしまっておる。どうも上げ下げもできなくなって、一方では建ててしまって、金を出したその本人は、これから不許可になったら今度は財産権の問題とか損害賠償の問題とかというようなことになる、そういうような重大なことになってしまって、許可せざるを得ぬということになるということは、問題を紛議させるゆえんのものであると私は思う。そこで市が間もなく許可するというような情報があるわけですけれども、なお向うの市の方から局長の方に相談にこられたそうですが、そのときどういうように局長が言っておられるか、それは許可してもいいだろうと言われているだろうけれども、なお慎重に神戸市民に対してもよくわかるような委員会説明あるいは市会においての説明の後に許可をするなら許可の行為をするようにというぐらいの程度は、局長の方からさらに長距離電話等等をもって注意をしていただくように私としては希望するわけです。そうして今後はこういう問題のないように全国的に指導をしてもらうように希望して、質問を終ります。
  211. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 滝井義高君。
  212. 滝井義高

    滝井委員 さいぜん八木委員と池田政務次官との間の一問一答の中で国民健康保険の問題があったのですが、国会に国民健康保険は提出する、時期は次の臨時国会だ、提出する法案は二十八国会に提出したものと同じものだ、こういうことを政府方針を決定したという御説明がございましたが、政務次官も御存じの通り、二十八国会に出ました国民健康保険法は、十月一日から実施の法律であります。これは実施の時期が違うと、二割の国庫負担なり五分の調整交付金の額が違ってくるわけです。従ってそれを生かそうとすれば、遡及規定を設けなければならぬことになるのです。そうしますと二十八国会に元のまま提出するというわけにはいかぬことになる。少くとも付則の一部はやはり修正をして出さなければならぬということになると思うのです。それから臨時国会の開かれる時期も、いつ開かれるかわからないのですね。巷間九月の終りごろだといわれておりますが、はっきりしていないのですね。そういう点は、修正をせられて出すのでしょうか。
  213. 池田清志

    ○池田説明員 ただいまのお尋ねでございますが、臨時国会をいつ開くかということもお話のように未定でございます。予定といたしましては、御指摘もありましたが九月二十日というような見当であるわけでございます。従いまして国民健康保険法案も臨時国会開会のしょっぱなに提案をいたしまして、早く成立をお願いしたい、こう思うわけでございます。ところが十月一日というのがありまして、十月一日に調整交付金も交付ができるようにしたいということを申し上げたわけです。そこでかりに九月二十日に臨時国会が招集せられまして、その後間もなく提案をいたしまして、九月末日までに十月一日施行として法案が成立いたしますれば、修正する必要もなくて十月一日から実施ができるということになるわけでございます。今御質問にありましたのは、その見込みがおくれるではないかということを頭にお描きになっていらっしゃると思います。あるいは見込みでありますからおくれることもあろうかとも思いますが、それが今日から私どもといたしましては予定ができないのでありまして、その点についての修正をする考えがないわけであります。もしそれ、十月一日以後になりまして成立をいたしたということでありますならば、このときこそその施行を十月一日にさかのぼるよう法制化していただく、こういうことになろうかと思います。
  214. 滝井義高

    滝井委員 どうも政務次官の御答弁は、政府はとにかく二十八国会に提出したものをそのまま出す、あと一つよろしく国会でやってくれというような答弁のようにあるのです。客観的な情勢は、この分厚い、しかも全面的に国民健康保険法を改正する法律が一週間や十日で通る筋合いでないことは、もう常識なんです。しかも日本の皆保険の一番のにない手である療養担当者の団体は、みな反対しております。自民党の中にも、かんざましの酒が飲まれるかという人もいらっしゃる。これはいうてみればかんざましの酒なんです。二十八国会に出して審議未了になって、二十九国会には出そうか出すまいかと、出すと決定しておったがいつの間にかふにゃふにゃと出さないようになってひっ込めたという、いわくつきの法案なんです。二度かんざましているわけです。三度目のものを飲まれるかということは、私は言葉のあやとしてはうまい表現だと思うのです。これは橋本さんが国民健康保険の連合会の理事か何か知らぬけれども、そういうことがあるかもしれません。しかしこれは大臣大臣の立場で客観的な情勢を見てやられればいいことであって、今の段階で、たとえば仲裁機関なんかも作らなければだめだという意見が非常に強くなってきておる。また大臣もそういうものは考慮しましょうということは再々にわたって答弁をしておるのですが、そういうものもない段階なんです。それを無理に、これはあのまま出すんだ、その裏を返せば、あとは修正するところがあれば一つ国会が適当にやって下さいということでは、責任ある政府の態度ではないと思うのです。  そこでもうはっきりしておることは、私は今わざわざ取り寄せてもらったのですが、この法律は、昭和三十三年十月一日から施行すると、付則ではっきり書いておるわけです。そうすると、臨時国会がいつ開かれるかわからぬ、しかもそれが九月の終りになることは今の情勢では確実だというときになって、それはそのまま、今の次官の言葉ではないけれども、九月の終りになって臨時国会が開かれてもそのまま出すということでは、少し筋が通らないと思います。これは日々診療というものが行われるわけなんですから、十月一日から保険医療機関というものの指定を受けなければならぬという問題が出てくる。日々現金の授受が行われるという筋合いのものなんです。だから医療というものは法律だけ通してしまえば、あとはしばらく猶予がおけるというものではない。従って政府はもう少しそこらあたりを弾力を持って考えてむしろこの際、この法案は第一次岸内閣で作ったものなんですから、第二次岸内閣というのは装いを異にしておるのです。閣僚も違ったし、岸さんの方針も違ってきているのです。従ってこれは新しく考え直してやるといった方が、むしろ政府当局として先先いろいろな答弁で困らなくてもいいんじゃないかという感じが私はするのです。その点どうですか。
  215. 池田清志

    ○池田説明員 今日第二次岸内閣でありますことは御指摘の通りでありますが、与党は自由民主党でありまして、内閣が第二次岸内閣になりましても、第一次岸内閣とそう異なることはなかろうかと思います。政策といたしまして、先ほども申し上げましたように、選挙に公約いたしましたことを第二次岸内閣といたしましては実行しよう、そのうちの一つともいうべきものでありますが、八木さんが御指摘になりましたように、医療保障、医療普及の徹底というような目的を持ちまして、国民健康保険法案を提案するということにいたしておるわけです。その内容につきまして、第一次岸内閣で決定したものでありまするが、第二次岸内閣になりましてから後におきましても、政府といたしましてもいろいろと考究を重ねて参っておるのでありますが、今日までのところ結論といたしまして、第一次岸内閣当時のそのものを提案しょう、こういうことになっておるわけです。従いまして、さっきお読みになりましたようにこの施行は十月一日であります。もしそれこの法案の成立が十月一日から後になるということになりました際には、先ほどもお話がありましたように十月一日にさかのぼって実施しよう、こういう考えであります。
  216. 滝井義高

    滝井委員 医療機関の指定や現金の授受がございまして、この法律が十月一日にさかのぼって指定するといっても、困る条文が出てくるわけです。たとえば健康保険法の例によって全部やるんだ、こういうことに今度の法案ではなるのです。ところが今は給付の内容については全国ばらばらなんです。そういう問題は十月一日にさかのぼれといったってさかのぼれないわけです。そういう技術上のこまかな問題が必ず私は出てくると思う。それから施行法の中には、十月一日を基礎にして全部施行法が作られてあるわけです。そうするとその中の時日のズレ等が必ず出てくるんじゃないかと思う。私施行法を続んでおりませんが、出てくると思う。そこで具体的に一つ尋ねてみますが、たとえばこれを十月一日から実施するとすれば、中央社会保険医療協議会の現在の委員は半数が任期が切れております。一体これをどういう工合に任命せられていくか、十月一日とすると、今から任命していかなければならぬわけです。
  217. 池田清志

    ○池田説明員 この法案を通過させていただきますと、さっきも申しましたように十月一日以後の成立であったら、さかのぼって十月一日から施行するようにしようということで諸般の準備を進めておるわけでございます。その内容の具体的なことについていろいろと御心配の点も御指摘になっておりますが、これらのことについてもそれぞれ専門の者がおりまして研究をいたしております。もしそれ正確を期する関係におきまして、私のお答があいまいであってはいけませんので、そういう点につきましてはほかの者から答弁させるようにいたしますが、いかがでしょうか。
  218. 滝井義高

    滝井委員 政務次官も御存じだと思いますが、今一番もめておる問題は、中央社会保険医療協議会の委員を一体どうするかという問題なんです。これはあとでちょっと触れますが、たとえば甲表、乙表の関係で、病院は甲表を用いよ、病院特に国立病院なんかは甲表を用いよという指令を出しておるわけです。そうしますと一体病院関係、たとえば日病を中心の委員というものを出すのか出さぬのかという問題ですね。これは厚生省も方針を決定されておると思いますが、今までは中央社会保険医療協議会の委員は医師会が推薦をしておったわけです。ところがあの神崎問題というものがもめて以来、病院関係を出すか出さぬかということは非常にあるわけです。そうするとこの国民健康保険法が通りますと、すぐ医療協議会に諮問をしなければならぬわけです。「厚生大臣は、第三十八条の規定による厚生省令を定めようとするときは、中央社会保険医療協議会に諮問するものとする。」こういうので、すぐ諮問しなければならぬわけです。すると中央社会保険医療協議会の半数の委員はいないのです。六月の何日かに任期が切れているわけです。もう橋本さんが大臣になってからだいぶになります。四カ月ちょっとになるのですが、医療協議会の委員の任命は一体どういう方針でやるのか、もうきまっておるはずだと思うのです。こんなに医療問題が混乱をしておるときにそのまま放置しておくことは許されぬと思いますが、どういう方針で御任命なさるのでしょう。
  219. 池田清志

    ○池田説明員 医療協議会の委員の選任についてどういうことになっておるかというのでありますが、それにつきましてまだ私何もいたしていないのであります。これは大臣の胸のうちにはあろうかと思いますけれども、私どものところにおいてはまだ何もいたしておりません。
  220. 滝井義高

    滝井委員 医療問題がこれだけ重要な問題になって、紛糾しておるときに、甲表を答申した本家本元の委員が二カ月も三カ月も欠員のままで放置するということは私は許されないと思う。すみやかにその委員を作ってやらなければいかぬと思うのですが、これは九月の中ごろくらいには多分この委員会を開く約束をしましたから、それまでには厚生省の方針一つ明白に、この委員会質問をする前に大臣から、中央社会保険医療協議会の委員任命の基本方針はこういう工合にやるのだという御説明を願いたいと思います。これは要望しておきます。
  221. 池田清志

    ○池田説明員 滝井さんの今の御質問、まことにごもっともであります。先ほど申しましたように、大臣の胸の中にはたくわえてあろうかと思いますが、今日の御質問のありましたことを大臣に御報告いたしまして、よく相談いたしまして、次の委員会におきましては何らかのお話ができるようにいたしたいと思います。
  222. 滝井義高

    滝井委員 一つぜひその宿題は忘れぬようにやってもらいたいと思います。  次には、最近各地で点数の講習会が開かれておるのですが、その講習会の記事を読んでみますと、六月三十日に告示された特に乙表は厚生省の注射の点数の計算の間違いから〇・一点、約一円程度の修正を必要とするという意見がちらほら見えておりますが、そういうことになっておるのでしょうか。
  223. 池田清志

    ○池田説明員 新点数表を告示いたしまして十月一日から実施することに相なっておるのでありますが、その内容趣旨関係方面に徹底せしめます考えからいたしまして、係の者を派遣いたして、ブロック的にお集まりをお願いして説明をいたしております。そのお集まりには医師会はもとより、病院協会あるいは役所向き、そういう関係の方々が多数おいでをいただきまして、御勉強をいただいております。やっておることは事実であります。もうまさに終了する段階まできておると思いますが、今滝井さんのおっしゃいましたような具体的な点についての報告にまだ接していないわけです。
  224. 滝井義高

    滝井委員 尾村公衆衛生局長は結核予防法を担当されておりますが、特にパス等の点数も何か一部修正を要するようなうわさを聞いておるのですが、あなたの方にはそういう計算の誤まり、その他お聞きになっておりませんでしょうか。
  225. 尾村偉久

    ○尾村説明員 現在までのところは、私さようなことは存じておりません。
  226. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、厚生省は六月三十日に告示した案の通り十月一日から実施する、こう考えて間違いございませんでしょうか。たとえば後になって、どうも厚生省はいつも見るにたえないような方法で修正する。たとえば正誤表というようなことでやってくるのです。この前も正誤表でやってきた。こういう大事な問題があとになって計算が違っておった、正誤表だなんということになると、前の問題は権威がなくなって話にならない。非常に論争をやって、わずか一円の問題、点数に直せば〇・一点の問題を論議しておるときに、ぽこっと十二点としておったような初診料を十点にしてみたり、二点も変えてくるということは、これは総医療費が三千四、五百億円の膨大なものなんですから、一点で一円も二円も違ってくるということになると莫大な違いになるのです。そういうものを正誤表で出されることは非常に困るのです。それで内容説明会をやっておるが、今のところ六月三十日の告示を動かす方針でないということを確認して差しつかえありませんか。
  227. 池田清志

    ○池田説明員 さようでございます。もしそれ資料によりまして印刷等の誤字、脱字等がありまするならば、これは正誤表によって訂正する、こういうことでございます。
  228. 滝井義高

    滝井委員 計算基礎には違いはない、誤字や脱字はこれはやむを得ぬと思いますが、基本的な、たとえば処方なら処方料が一・七点、これはもうはっきりしておるわけなんです。それが一・八点になるというようなこと、あるいは静脈注射は乙表の一なら九・四点が九・五点になるというようなことはないと考えて差しつかえないわけですね。——首を縦に振っていらっしゃるので、さよう了承いたしておきます。  次には、甲表、乙表は選択は自由になっておるわけですね。ところが私は先ごろからも言っておるのだが、乙表だけ選ぶ人は届け出ろ、甲表はいいのだということになっているんですね。これは甲表も乙表も一つ機会均等に届けさせてもらわなければならぬと思うのですが、この点は御修正できないですか。なぜ乙表だけを届け出なければならないか、もうそこで厚生省は甲と乙との差別待遇をしておるということになる。自分は乙表を選びたかったのだけれども忘れておったという人がいないとも限らない。だから行政というものはやはりかゆいところに手の届くような親切さが必要なんです。みんなお出しなさいとなれば、甲を選ぶ人は甲と書いて出します。乙は乙を選んで出すから、それは漏れなく出ることになる。ところが乙表を選ぶ人だけ出しなさい、出さない人は甲表だ、こういうやり方というものは、何かそこに差別待遇する感を受けるのですが、この点は私は修正をしてもらいたいと思います。これは文書を一本各都道府県知事なり医師会長にやればみんな出すことがすぐできるわけです。私のこの場における質疑応答では、今までの厚生省の方針は乙表だけ届け出ることになっておったと思うのです。私はそれではいかぬという主張をしておったのですが、依然としてそうなっているのじゃないかという気がするのでお尋ねするのですが、これは一つ政務次官の責任で、甲乙両方とも届け出るということにしていただきたいと思うのですが、そういうことはできないのですか。
  229. 池田清志

    ○池田説明員 新点数表のねらいまするところは、滝井さんがよく御承知のように、合理化の方向に進んでいこうというところに根底がありますることはおわかりの通りであります。それを実行に移す、徹底した合理化ではありませんけれども、実行の線に移すというものが甲表であり、非合理化とは申しませんけれども、従来のような方針でいこうというのが乙表であるわけです。建前といたしましては合理化でいこうというのでありますから、これを一本化いたしまして全部合理化しようというところに線が現われるべきであろうと思います。しかしながら一方また医療機関の中におかれましては、従来のやり方に大へんなれていらっしゃる方々もありましょうし、そのお医者さんの自由意思によりまして、どちらでもおとり下さいという格好に現われておるのが甲表、乙表であると思うのであります。そこでお医者さんの方に選択の自由をお認めして、選んで下さい、こういうのでありまするが、その選び方について、すべてのお医者さんについて甲表、乙表ともに届け出るようにせよという御指摘はまことに公平の精神に合致するものであります。ところが一方また行政の方から見ますると、あるいはまたお医者さんのある部分の方から見ますると、もう乙表を選ぶ人だけやってもらえば甲表のものは当然そうなるのだということも、これはまたしかるべき考えであろうかと思うのでありまして、私どもの新点数表の告示につきましては、まさに乙表の方だけお選びいただくようになっておるわけであります。しかしこれにつきまして修正の御意見として、甲乙両方とも、すべての医師がいずれをとるかを届け出るようにせよという御意見は十分拝聴いたします。
  230. 滝井義高

    滝井委員 あなた方は甲表が合理化されたという断定のもとに立っております。甲表が合理的だということはどこで証明ができましたでしょうか。どこか公けの機関で甲表が合理的であるという折紙をつけたものを私は聞いていないのです。また甲表の基礎が医療費体系に基くというのですが、一体医療費体系はどこにあるかということもわれわれは聞いておりません。国会にまだ政府が甲表の医療費体系を示したこともないし、それから質疑応答の過程で甲表が合理的であるとわれわれが納得したこともないのです。われわれに言わせれば甲表ぐらい不合理なものはないのです。病院の分類の面だって、それから技術料の面だって、科学的な根拠は何もないですよ。あなたは十八点というものがどうして技術料として合理的であると言えますか、言えないはずです。だからあれはあなたの方だけが、何人かの技官が——私は今日は技官を呼んだのです、技官でもいいから来てくれと言ったのですが、いないのです。あの十八点というものが科学的なこういう根拠をもって合理的であるという御説明ができれば納得ができます。しかし少くともわれわれが聞いた限りでは、それはつまみ金であるという説明しかできていない、医学につまみ金を持ってくるというくらい不合理なことはない。つまみ金ならば今の四点でもいいのです。だからその点、合理的だということを言っているのはあなた方だけなのです。甲乙両方選びなさいという格好だけつけたということは、これは語るに落ちたりということになるのです。われわれは今後の論争で甲表がいいか乙表がいいか——戦後の民主主義の世の中が多数が選んだものがいいということになれば、もし乙表を多数が選んだ場合にはどうするかということなのです。民主主義の原則からいえば——もちろん私は少数の意見でも合理的なものはあると思っております。しかし日本の療養担当者の大勢がそれを選んだ場合には、それはなお従前の例によるということなのですから、その方向にいかざるを得ないということになるのです。もしそれを無理押しをして、少数の医師だけが選ぶものをやれば、日本の皆保険はできないということになる。もしそこに政治というものがある程度妥協をするということになれば、先の遠いものを見通して皆保険というものをやろうとすれば、あまり短兵急にものを片づけようとすることはいけないと思う。短兵急にものを片づけようとするのなら、まずやんわりと、甲表も乙表もお届けなさい、これがいいのです。われわれはしかし甲表の方を合理的に思っておりますぞ、この方がいいと思っておるということでけっこうなのです。出発点から甲乙差別待遇をやるというところに、すでに厚生行政というものが療養担当者から支持されない一つのポイントを作ったと思うのです。だから将来の日本の皆保険政策をやるために、厚生行政を円滑にやるために、両方させたってちっとも差しつかえないのです。あなた方が今言ったように、甲表が合理的だということを、にしきの御旗さえ掲げておきさえすればいいのです。それをおろしさえしなければいいのです。何も甲表を選ぶ人たちが多いからあなた方の行政がうまくいくなんということはない、むしろそれの方がうまくいかないのです。そういう小さなことにまで厚生省が目の色を変えてこだわるところに、日本の厚生行政というものがうまくいかぬ理由があるのです。だから私は老婆心から、まず一歩を誤まってはいかぬ、第一歩とは何かといえば選択のときがまず第一歩です。その点は一つ池田政務次官の政治力でどうですか。甲乙両方とも出せという方針に切りかえてもらう方が、私は今後物事が非常に円滑にいくという感じがするのですが、それはあなたの方が聞きおくだけというのならば聞きおくだけでもけっこうです。私はいずれ機会があればまたやりますから……。
  231. 池田清志

    ○池田説明員 先ほど私申し上げましたが、合理化の線に進んでいこうという方針でできておると、こう申しました。その場合、甲表が徹底した合理化であるということは申しておりません。私が合理化されたと申しておりまする中身といたしましては、要するに、物の値段と技術の値段とを分けまして、おのおのそれに合理的な対価を考えて、それを総合して医療報酬を積み上げよう、こういう仕組みになっておることをさしまして合理化と申したのでありますから、滝井さんの御指摘の合理化とはあるいは違っているかもしれませんが、もし食い違っておりましたら、お許しをいただきます。そこで、甲表、乙表ともにすべての医師に届け出させるようにすることはどうかという御意見で、私は承わっておりまして、今日そういたしますというお答えができないのであります。
  232. 滝井義高

    滝井委員 実施するまでには、もうちょっと日にちもありますから、十分一つ考えてみて下さい。とにかく、発足のときから差別待遇をしておるということは、これは確実でございますから……。  次には、最近国立病院を回ってみますと、国立病院は甲表を用いよという指令を出しておるようにございますが、出しておりますか。
  233. 池田清志

    ○池田説明員 報告を受けておりません。
  234. 滝井義高

    滝井委員 国立病院では、みなそう言っておるのです。これは尾村さんの方にも関係があると思うのですが、そういうことをお聞きになっておりませんか。そういうことを省議で決定したこともありませんか。
  235. 尾村偉久

    ○尾村説明員 今までのところ、通牒、通知等も含めまして、私の方にさような方式のことは聞いたことはございません。
  236. 滝井義高

    滝井委員 一つはっきりお聞きしておきたいのですが、そうしますと、国立病院なり、国立の結核療養所なり、保険局所管の健康保険病院なり、年金病院なり、それから労働省の労災病院なりが、甲表を選ぼうと乙表を選ぼうと、それは自由であって、厚生省はこれを強制的に甲表を選べなんというけちな指令なんか出さない、こう確認して差しつかえございませんか。
  237. 池田清志

    ○池田説明員 御承知のように、甲表、乙表をお示しをいただきまして、そのうちどれをとるかは、医師、病院、診養所等にお選び下さい、こういうことに相なっておるのであり、乙表をとろうという方だけが届け出によりましてはっきりといたしまするし、届け出のない方は甲表と、こういうことに自発的におのずからきまることになっておるわけであります。従いまして私どもといたしましては、そういう関係の方々の自由意思を尊重する意味合いにおきまして、厚生行政において、どのものを選びなさいということはいたしません。
  238. 滝井義高

    滝井委員 はっきり確認をいただいたのですが、実は一、二私は国立病院を回ってみましたが、甲表を選べという指令がきておる。だから私は医務局長を呼んでおったのですが、そういうことでございました。しかし、今の政務次官の政治的な御答弁で自由であるということを確認をいたしましたので、さよう了承いたします。  次には、もう一つで終りますが、年金の問題でございます。八木さんに対する御答弁で、国民年金の準備はどういう工合に進んでおるかという質問に対して、機構としては国民年金準備局ともいうべきものを作っておる、それから研究調査内容は、大綱はできていないけれども、母子年金と養老年金と障害年金を同時に発足させたい、それから醵出か無醵出かということは、醵出制度を主体として無醵出をこれにつけ加えたいという御答弁がありました。そこで、厚生省の基本的な態度なんですが、まず先般の大臣の御答弁なり、大臣の当委員会におけるあいさつを見ますと、社会保障制度審議会の答申をできるだけ尊重するとあります。そうして、これには書いておりませんが、大臣が同時につけ加えて言った説明では、厚生省に設けられている国民年金委員会の意見なども同時に聞くのだという意味のことを言われました。同時にその下には各方面の意見も参酌しと、こうなっております。そうしますと、主体は、総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会の意見というものが中心になってきておるわけです。この説明でも明らかです。ところが現在厚生大臣の諮問機関である国民年金研究のいわゆる五人委員会ですね、それの基本構想と、それから制度審議会の答申との間に非常に大きな開きがあるということは、これは政務次官も御存じの通りです。一体この調整というものをどうするかいとうことですね。いかなる方法でこの橋渡しを政府としてはやろうとされておるのか、この点が一番大事な点です。八月末までには構想をまとめるということは、先般来言われておる、それからきょうも政務次官は言われておるわけです。八月末まであと二十日しかない。大体予算編成期ですから、その橋渡しの方法が何らかの形でできていなければ、これは予算編成に間に合わぬわけです。だからその中心は制度審議会のものだと思うのです。そうすると、横から諮問機関のこういうものを二つ作ったというところが、結局まいた種は自分で刈らなければならぬことになりつつあるのです。自分で手かせ足かせをはめられつつある形になっておると思う。われわれが客観的に見れば、全く国民年金委員会と制度審議会とは対立しております。一体どういう工合にこれを調整されていくのか、この点は厚生省はもう相当議論されておるはずですから、お伺いしたいと思います。
  239. 池田清志

    ○池田説明員 御承知のように、制度審議会は内閣総理大臣に答申をいたしております、五人委員会は厚生大臣の諮問機関でありまして、厚生大臣に答申をいたしております。この両方がかけ離れておるという点をいろいろ御指摘になりましたが、さようであります。これをいかに調整するかという問題です。先ほど申し上げましたが、厚生省におきまして、私どものところにおきましても準備局ともいうべきものを集めまして、そこで一生懸命勉強しております。さらにまた一つの調整の方法かとも思うのでありますが、新聞紙等で御承知のように、わが自由民主党におきましても国民年金特別委員会というのを設けておりまして、非常に熱心に勉強をしていただいております。厚生省からも出ていろいろ説明を申し上げましたり、意見を述べたりいたしておりますが、これも近く制度審議会の答申やあるいは五人委員会の問題や大蔵省の意見や厚生省の意見や、いろいろとあちこちの意見を聞きまして結論も出そうかという段階になっておるわけであります。これも一つの調整のことになろうじゃないかと思うわけであります。何しろ御承知のように政党政治でありまして、与党というものが政策の大綱を作るということは御了承の通りであります。私といたしましては、与党の政策大綱の決定にも大いに協力をいたしまして、その政策大綱が八月末までにでき上るように努力をいたしておる最中であります。
  240. 滝井義高

    滝井委員 それでは答弁にならないのです。岸さんも橋本さんも、制度審議会の答申を尊重します、それを基礎にして作ります、そうしてそれになお五人委員会の意見も加えます、その他の意見も聞きますと、こうおっしゃっておるが、その大筋というものは制度審議会の答申案のはずなんです。これはことしの二月の予算委員会以来一貫して岸さんはそういう答弁をしてきておられます。ただ三十四年度から実施するとはだれも言わなかった。今まで言わない方針できておった。橋本さんになって初めて三十四年度からやりますと言っておられる。これが嚆矢です。筋というものはきまっておったわけでありますから、従って制度審議会の答申というものと年金委員会との調整というものは、あくまでも制度審議会の答申を中心にして、そこに何か悪いところがあれば幾分補っていくというのが年金委員会の意見だろうと思うのです、われわれが客的観に考えてみれば、あるいは今までの政府の答弁から考えてみれば。そうしますと、今のように自民党が別に作ってそれでいくということでは、答申なんか何も要らないということになってしまうのです。何のために答申を作ったか、制度審議会には自民党も入っているのです。自民党のれっきとした社会部長ですか、あなたの方の政調のつかさを握っている人が入っていらっしゃる。あるいは亀山さん、野澤君なんかも入っていらしゃる。そうするとそういう自民党の人たちが入られて、同時に学者の意見も聞いてお作りになったものを、今になって今度は自民党で、政党政治だから与党が大綱を作ってやるのだ、こうなれば、そういうものは要らないことになるんですよ。もう作らない方がいい。それならば与党で大綱を作ってから、今度はどうだろうと諮問した方がいいのです。何も高い日当を払って、国民の税金をむだにする必要はないと思う。だからそういうように、結局困ったときには制度審議会をうまく隠れみのにする、都合のいいときには制度審議会にかこつけて国会の答弁にお茶を濁していくという行き方は、二大政党対立のもとにおける政党政治としてはとるべき道ではないと思うのです。少くとも政党政治で、内閣総理大臣というものは与党の総裁なんですから、総裁が自分で諮問をしておって、自分で自分の顔につばを吐くようなことはやらぬ方がいいと思うのです。だからそういう点、もう少しああいうものに権威を持たせ、ほんとうにああいうところで国民の税金を出して作るというならば、できたものを与党に持ち帰って、それを基礎にして、たたき台にして作っていくということの方がいいのじゃないかと思うのです。どうも今の答弁では不満足です。  そこで、日本の財政の余裕財源その他も大体見通しがついてきたようであります。そうすると、一体厚生省としてはどの程度の財源を年金に振り向けられていく方針を今立てられつつあるのかということなんです。これはこまかいことは要りません。およそどの程度なのか。たとえば制度審議会の答申によれば、これは最低五百三十億、もうちょっとよけい見積ると六百億ぐらい、大ざっぱにいって五百三十億くらい要るといっておりますが、厚生省としてはどの程度のものを大蔵省に予算要求をやる腹がまえで準備を進められておるのか、これくらいはきまっておられるはずなんです。しかも醵出を主体にする上においては、これはもう保険料は七十五円から二百円ぐらいが限界です。五人委員会と制度審議会の答申というものはそういうところに出てきておるわけですから、月額二百円をこえるものを自民党は出すとはまさかいわないだろうと思うのです。上の限界はきまっている。下も七十五円と限界はきまったわけなんです。そうすると、この間で財源の見通しというものは自民党としてはつくはずだと思うのです。厚生省としても——高橋さんはいないようですが、高橋さんのような専門家がいらっしゃるのですから、およそこの程度のものは厚生省としてほしいのだという限界があるはずだと思うのです。一体どの程度の財源を要求される所存なのか。それは常識論で、大体国の予算というものは一兆百億か二百億あるいは二千億、こうきまっておるわけです。そしてそれ以上にぐんと伸びるということはない、過去の終戦以後における予算編成の方針から見ても。大体国民所得の一割四分から一割六分程度を上下しているということもきまっている。防衛費も大体どのくらいということもきまっているわけです。来年自衛隊を一万ふやすとかふやさないとかという問題もあります。しかし大きなワクとしては、日本の国民所得の一割四分か六分程度を上下しているということは確実なんです。だからそのワクの中でものが考えられていくわけです。だから予算のワクがふえても一%か二%の上下だ、こういうことになれば国民年金に対して国が財政で出す額というものもおよそ厚生省としては、もう八月ですから、はじいているのじゃないかと思うのです。一体どの程度の財源を、特に国庫負担を見られておるのか、この点を御説明願いたい。
  241. 池田清志

    ○池田説明員 先ほど八木委員の御質問にもありました点であると思いますが、そういうような数字的なことについて厚生省といたしましては何らまだ資料を持っていないわけであります。そこで先ほど八木委員もお尋ねになりましたが、池田清志はどうだ、こういうことになりましたので、私は審議会の答申を尊重いたしましてあれの通り、あれ以上出るように努力いたします、こう申し上げたわけであります。
  242. 滝井義高

    滝井委員 少くとも政務次官になられて、選挙でかねや太鼓であれだけ年金を作ると言って回った自由民主党が、今になったらその財源もわからぬ、担当当局がわからぬというのは担当当局のふまじめです、不勉強ですよ。当然厚生当局としては、この程度のものは少くとも要求すると言わなければならぬ。それを今私は数字で示してもらいたい。制度審議会は、最低五百三十億くらい必要ですよと言っている。厚生省はそれを尊重するというなら、五百三十億もらいますというのか、それとも、とてもあれだけは日本の現在の財政状態から考えてむずかしい、まあまあ百億くらいでございますということになるのか、そこらあたりを言ってもちっとも差しつかえないと思う。もちろんこれからも折衝して、ふえるか減るかという段階は幾らもあるわけだし、今は八月ですから、大体腰だめとしてこのくらいの要求はとりたいのだ、そうしなければ、あなた方が少くとも無醵出をやめて醵出を主体にするということが出てきているのだから、醵出を主体とするとすれば、一体日本の今の財政状態、国民所得の状態から考えて、幾らなら醵出ができるとお考えになりますか。幾らの醵出なら日本の国民経済の状況から考えて負担が可能ということになるかということはわかるのです。これならわかるのです。これがわかるから醵出ということを言うわけですから、それが幾らかということを私は聞いているわけです。
  243. 池田清志

    ○池田説明員 制度審議会の答申を尊重いたしまして、今の醵出制度もその中に入っておりますし、醵出の限度につきましても数字的な示しがあるわけです。しかしそれをどういうふうにするかということは、先ほども申し上げておりますように厚生省といたしまして、ましてやまた政府といたしまして御答弁する資料までになっておりません。そこで池田清志はどうだ、こういうお尋ねになったわけでありまして、そこは一つごかんべんを願いたいと思います。
  244. 滝井義高

    滝井委員 ものごとは客観的に、たとえば国民の現在の所得の状態というものはそう一挙に一万円も二万円も伸びる情勢にないことは、この神武以来の不景気で、しかもなべ底に焦げついた、その焦げついたなべ底の底には累累として失業者がたまりつつあるというこの客観情勢のもとで、月額千円も二千円もかけられる情勢というものでないことは常識でわかる。社会党でもいろいろ検討した結果、まずまず百五十円というところが限界じゃないかということを考えているわけです。社会党の案でもそれが出てきているわけです。制度審議会、それから五人委員会でも、まあまあ二百円とか百五十円とか百七十円というのが出てきている。それを、専門的に飯を食ってやっている厚生省の技術官僚が、あるいは国民年金の準備局まで作ろうとしている人たちがそれがわからぬというなら、今まで何をしておったかということです。今までずいぶん長くやってきているんです。それが今になって、およそどのくらいのものならば日本の国民経済の現状から、あるいは一人々々の国民所得の現状から考えて負担が可能だ——それは徴収の方法や技術上の問題でいろいろ難易はあります。しかしおよそどの程度のものならば負担可能であろうというくらいの見通しがわかっていないはずはないのですよ。だからそれをここで何も秘密にする必要はないと思います。それぞれのものが数字を出しているんですから。それがもしあなたの方で小山君なり何なりがやっていないというなら、小山君は今まで何をしておったかということですよ。その点一つ正直に言って下さい。こういうことは何も政治問題にはならないのですから、お互いに、われわれもこれからまた夏が終って九月になれば、一生懸命に年金の基礎数字をやはりやらなければならぬ。そうすると厚生省の専門家は一体どの程度見ておるのだろうということは、今後の日本のやはり政策の切瑳琢磨を、二大政党ですから、やらなければならぬ。それを政府が秘密にしてやる必要はちっともないじゃありませんか。私はあなた個人の意見というものは聞きたくない。厚生省の専門家がやったのはどうなんだということです。あなたは専門家じゃないのですから、あなたの意見を聞いたってしょうがないのですよ。あなたは厚生省の事務当局から聞いただろうし、また聞いておらぬというなら、そういうことは信じられないことなんです。だから、そういう点はどうなんだということなんです。
  245. 池田清志

    ○池田説明員 今のお尋ねでございますが、小山事務局長以下、俊秀が集まりまして一生懸命にやっております。これを何しておるかとおしかりを受けますことは、私は部下のために一言申し上げなくちゃなりません。日夜精励して大いにやっております。そういうような、お示しの数字的な問題についても検討をいたしておるわけです。しかしながら先ほど来御理解をいただいております通り、これをもって厚生省はこうする、この数字をもっていくというところまでいまだ積み上げておりませんことをお許しいただきます。
  246. 滝井義高

    滝井委員 厚生省がこの数字でいくというものでなくして、負担可能と思われるようなものは一体どの程度のものか、腰だめ的にでも出てきておるか、こういうことを聞いておるのです。それはそれでいくということがきまれば、それはあくまでもそれで押してもらわなければならぬ。ところがなかなかその数字が出にくいところに現在の日本経済の二重構造なり三重構造という、むずかしい経済理論までやらなければならぬところの問題があるわけです。だから一応制度審議会の方は百五十円くらいならば可能だ、しかしそれを主人と奥さんと二人にするということになると、これはやはり七十五円くらいでなくちゃいかぬのじゃないかと言っておるし、それから他の五人委員会の会は二百円くらいならと言っておったと思うのです。そうすると、その百五十円とか七十五円とか二百円というものは、やはりアクチュアルといいますか、その年金の計算をする専門家がやってできているはずなんです。その専門家がやるについては、やはり日本経済の現状なり国民所得の現状なりというものを、だれかがその計算の専門家に説明をしたからこそできてきておるはずなんです。そうすると厚生省からは制度審議会にもだれかが出ておるはずです。それから年金委員会の二百円が出るについても、厚生省が下動きしておるはずなんです。そうすると、これは何か数字がなければこういうことは出てこないはずです。厚生省がわれ関せずえんでこれらのものが成り立つとは言わせない。だから、そういうものが出る過程において厚生省は厚生省なりの、やはりこういう二つのものの違いが出ておるけれども、この程度のものくらいならばどうだろうという、おぼろげながらこれでいくという、大蔵省まで押していくというものでなく、およそこのくらいのところはどうでしょうか、研究したところはどうでしょうかと言っておる。出てきた姿が年金委員会とか制度審議会という形で出てきたからそれは問題がありますが、厚生省としてはどのくらいだというおよそのところでけっこうだというのです。それをもって今度はああ言ったじゃないか、こう言ったじゃないかと言って、それを言質にするつもりは私はありません。
  247. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 大体時間もずいぶんおそくなりましたようですので……。
  248. 滝井義高

    滝井委員 これ一つでやめます。これも一つ臨時国会くらいまでにはある程度一つ厚生省の腹がまえぐらいは示してもらいたいと思うのです。国民健康保険のように、非常に客観状勢も違ったし、時日を経たものをそのままやっていくのだ、こう強引におっしゃる厚生省なんですから、やはり自分の自信と信念がなければ厚生行政をやっていけないのです。そのぐらいのことは教えてもらいたいと思うのです。  次には関連をして国民年金の準備局らしきものを作った、こう言われました。御存じの通り国会の態勢というものは、各省の設置法については定員の増加はもうやらないということで、二十八国会でも厚生省設置法で、尾村さんいらっしゃいますが、環境衛生局と予防局に分離するという問題が出てきた。ところがそういう各省の増加するものは全部だめになってしまったわけです。客観的に見てあれから半年しかたっていないのですから、国民年金の準備局というようなものを作る可能性というものがあるかないかという問題です。私はこれはきわめて困難な情勢ではないかという感じがするのですが、すでに大蔵省方面から人員の増加については反対論が出ておったというような新聞記事も見たことがあるのですが、この点についてはあなたはやるのだ、こうおっしゃっておる、自信がおありでしょうね。厚生省設置法というものは当然臨時国会なり通常国会に出されてくると思いますが、その点自信がありますか。
  249. 池田清志

    ○池田説明員 先ほど私が御答弁のいろいろな個所で、準備局とも称すべきものを作っております、こう申し上げました。これはお示しのように設置法によるところの部署ではございません。厚生大臣考えによりまして、その厚生事務を処理するために省内から集めまして、小山君を長といたしまして、その下に二十数人を配置して努力をしておるところです。それによりまして一生懸命準備をいたしておるところでございます。  さてこの問題を設置法によりまして明らかに公けのものに認めていただくことはどうかという重ねてのお尋ねであったと思いますが、臨時国会に提案するかどうかという続いてのお尋ねでございました。この問題といたしましては、私ども厚生当局といたしましては、そうして人員を明らかにとりまして、増員をいたしまして堂々と準備をいたしたいのです。しかしながらわが党におきましても新しい増員等はなるべく遠慮しようという方針もありますし、厚生省の国民年金の事務は今まで政府は全くやっていない事務でありますから、理論から申しますとその準備につきましても新しい人員を要するわけなのでありまして、そのことを私どもは申し入れておるわけですが、事務次官の集まり等におきまして審議をしてもらったのでありますけれども、事務次官の集まりにおきましては、その必要はないではないかということ、いま一つはそういう法案を作成する等のために準備局ともいうようなものを設置法上認めた事例もないというようなこと、さらにはまた通常国会に提案をしようというのでありますから、臨時国会で設置法によって認められましても、その後二、三カ月しかないではないかというようなことからいたしまして、設置法によりますところのおきめをいただくということには今日いたしておりません。
  250. 滝井義高

    滝井委員 実は私はそこを言いたかったのです。さいぜん申しましたように、選挙のときに国民年金を作るといってかねや太鼓でふれ回った自由民主党が、今になったら人員の増員もまかりならぬと次官会議がきめたら、もう与党もその通りだ、これではまるきり何のために国民年金を作りますとあれだけ言ったかということです。大体今の保険局の機構の中で国民年金がやれる機構があるかどうかということです。結局やみの準備室らしきものを持っておるということだ。これはやみですよ。やみでそういうことをやっておることがもう第一の不都合です。しかも国民年金を醵出を中心にしてやるんだと掲げておきながらも、その醵出の主体というものを作りもしない。与党自身が増員は反対だ、遠慮しよう。これではまるっきり、これを聞いただけで語るに落ちたりです。あなた方の年金がいかなるものであるか、いかに国民を選挙でごまかして票をかすめとったかということが、これでわかるのです。五百三十億は太鼓判を押しておるのです。が、とてもその足元にも及ばぬということですね。きょうも一人当りの国民が一体幾ら負担したら国民年金の醵出制ができるかという点の御答弁もできないのです。だから私はもうこれ以上言いませんが、やはりあれだけの公約をして、三百名近い代議士を得たならば、やはり真摯な態度で国民にその公約を果してもらわなければいかぬと思うのです。その点はこれ以上言いませんが、やみの準備局を廃止して、堂々と成規の準備局を作ってもらいたい。そうしないと、おそらくそういうことをやれば会計監査の上から、決算の上から問題になると思うのです。それで私たちは、あなた方がそういうことをこのままずるずるとやるならば、われわれは決算委員会にいってこれを摘発させなければいかぬと思うのです。莫大な人員がやみのものでやっているということは許されぬと思うのです。従って、そういう点は一つ次の臨時国会までには十分に、今言った機構の問題、それから一体国民がどの程度の負担ならば耐え得るかという問題、これらの問題について、医療協議会委員の任命の問題とともに、一つ正確に御説明をいただくことを希望して終ります。
  251. 加藤精三

    加藤(精)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十一分散会