○橋本(正)委員 去る八月一日より七日間にわたりまして、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各県下におきまする
建設省関係公共事業、特に道路、
河川事業等につきまして調査いたして参ったものであります。そのすべてを御報告申し上げますことは相当の長時間を要しますために、要点のみを御報告いたすこととし、あわせて関係当局のこれに対する明確なる御答弁を期待いたすものであります。
まず第一に、
一級国道三号線について申し上げます。本線は、今春開通を見ました
関門トンネルを起点とし、九州西部を経て鹿児島市に至る総延長四百キロにわたる九州最重要の
幹線道路であります。その改修率は、昭和三十二年度末におきまして、改良率四七・二%、舗装率四三・三%を示しているのであります。その大部分は、
北九州—久留米間及び植木—八代間に集中されているのであります。このことは福岡県内、改良率八七・五%、舗装率八二・二%、佐賀県内、
改良舖装率とも一〇〇%、
熊本県内、改良率二九・八%、舗装率二七・一%、
鹿児島県内改良率一五・五%、舗装率一一・三%という数字がよくその状況を物語っているのであります。これを逆に未
改良区間の状況について見まするに、北部九州におきましては福岡、熊本県境にある小栗峠を中心とする未
改良区間を一部残すのみとなっているのでありますが、南部九州におきましては熊本県南端に赤松太郎、佐敷太郎、
津奈木太郎の三つの峠よりなるいわゆる
三太郎峠の長大なる難嶮が存在いたしておりますため、その進捗は好ましいものではなく、ことに木峠の南に当る
鹿児島県内の
一級国道三号線につきましては、さきに数字をあげて申し述べましたるごとく、その改良さえもほとんど進捗を見ていない現状であります。今後この
三太郎峠の改修をも含め、七カ年をもって本路線の整備を完了いたしますために要する費用は、約百四十三億円と目されているのでありまして、このうち今回の新
道路整備五カ年計画におきましては、約八十九億円を予定いたし、特に門司—八代間の
完全整備にその重点が置かれておる模様であります。同区間、すなわち平地部におきましては、すでに
自動車交通に対し飽和の状態に達しているのでありまして、これが
完全整備は焦眉の急を要するものであり、ここに計画の重点が置かれたことにつきまして、十分了解できるのでありますが、ただここで懸念されますことは、これらいわゆる平地部に重点が置かれるの余り、予算の年度割の関係上、
三太郎峠の改修等は、五カ年計画の相当後年度に回されるおそれがあるのではないかということであります。山地部、ことに
三太郎峠のごとき、地形的、技術的にみまして、短時日の工程をもってしては、
工事そのものがはなはだ困難と思われる個所につきましては、五カ年計画の後期より一級
国道完全整備の最終年次に至る二年ないし三年の間に集約的に多額の経費を投入することの難点もさることながら、その工程上においても、十分なる成果は期し得られないのではないかと考えられるのであります。またこのような地形のところにおきましては、平地部の場合と異なり、一
たん工事を完了いたしました以上、後年において再びこれを変更いたしますことは、容易なことではないのでありまして、十分なる予算と工期をもって、慎重に工事を進める必要があるのではないかと思うのでありますが、本年度以降
三太郎峠の改修を中心とする
一級国道三号線の
施工順位等の構想について御説明願いたいのであります。
第二には、二級国道百九十九号線について申し上げます。本路線は、
北九州各部市の港湾地帯、工業地帯を連結する重要路線であるのみならず、
関門国道トンネルの開通に伴い、飽和状態に達した
一級国道三号線の交通緩和のための
バイパス的性格からしましても、現在
日本道路公団で施行中の
北九州有料道路とともに、早急なる改築の促進が期待されているのでありまして、本年度より着工の運びとなりました有料橋若戸橋は、その一部をなすものであります。
本路線は、昭和十二年、当時の内務省において企画されて以来、幾多の変遷を経て、最近ようやく着工の運びとなったものでありますが、延長二六・七キロ、総工費概算四十一億円に対し、現在までに比較的工事の安易な個所において、事業費にいたしまして約三億円、進捗率にして約一九%の
改良工事を実施したにすぎず、解決すべき幾多の隘路は、すべて今後に残されているのであります。そのおもなるものをあげますと、第一には、本路線の
地理的条件よりして、その大半が
国鉄鹿児島本線及び筑豊本線に並行し、
八幡製鉄戸畑工場、
住友金属小倉製鉄所、
九州電力小倉火力発電所等の大工場の敷地内を通過せねばならず、従って、これらの鉄道、あるいは引込線との立体交差を余儀なくされ、さらに
臨海道路であるため、港湾施設に対する多くの補償問題等複雑なる要素を有していること。第二には、本事業は、当初
運輸省所管の
臨海道路として発足し、後二級国道として建設省において企画調査され、その後福岡県に
事業施工を引き継いだものであります。現在におきましても、なおその複雑性から、経済企画庁を中心として、
建設省道路局、計画局、
運輸省港湾局、
国鉄本庁等を
構成メンバーとして百九十九号線審議会が設けられ、定例的に打ち合せが行われて、この決定事項に基いて、福岡県が施工しているのでありますが、これに加えて、前述の大会社が関係しているため、その推進は幾多の制約を受けざるを得ないこと。第三には、
北九州地区は、全国有数の
失業者多発地区であるため、本事業に対しましても、相当量の特別失対事業の抱き合せを余儀なくさせられているのでありますが、本事業は、物件移転、
特殊構造物等が連続する工事であるため、特別失対事業をもってするには、困難な工事であることなどがあげられるのであります。従いまして、本路線につきましては、単に予算の裏づけのみならず、これらの隘路を打開することなくしては、効率的な事業の推進は望めないと思うのでありますが、当局は、これらに対しいかなる対策を有しておられるか。また地元におきましては、関係者の大乗的な見地により、相互協調をはかり得る強力な
現地連結機関を設置し、かつでき得れば、国の
直轄事業として推進されたい旨要望いたしておるのでありますが、これらに対する当局の御見解もあわせて承わりたいのであります。
第三には、
上寺橋架橋の問題についてでありますが、本橋は
県道田主丸—寺内線中、
上寺部落地先におきまして、筑後川に架橋せられていた一種のもぐり橋に近いものであったのでありますが、昭和十四年における災害により流失いたしたのであります。しかしながら戦争に突入いたしましたため、
復旧工事は中止となり、逆に終戦後におきましては、すでに戦前の災害であるとして、
災害復旧工事として認められず、今日なお県営渡船によって、人員、自転車のみを辛うじて渡しているという状況であります。ことに
本橋架設地点の
上流恵蘇宿橋と下流両築橋との間は七キロにも及びますため、本橋の早急なる架設、特に昭和十四年当時と異なり、
自動車交通の急速に発達して参りました現在、永久橋としての早急なる架設を地元が強く要望いたしておりますことは、けだし当然のことかと考えられるのであります。
以上のごとく、戦争という空白時代のために国の制度上の盲点に置かれ、今日までなお復旧できざるままに放置されているものは、他地区にも数多くあることと思うのでありますが、このようなものに対しましては、地元各県とも
十分連絡検討の上、早急なる対策を講ずる必要があると考えられるのであります。
第四に、
多比良—長州間フェリー・
ボート設置に伴う
連絡道路の改修並びに
県道熊本—玉名線の
改修促進について申し上げます。
従来長崎市並びに島原半島を含む長崎県南部と、熊本県を中心とする九州中部及び福岡県南部との自動車による連絡は、佐賀県を迂回する以外に道はなく、
相互経済交易上の隘路となっていたのであります。本年四月一日より長崎、熊本両県共同により、長崎県多比良港と熊本県長州港とを連絡する
最短コースによる有明海自動車航送事業が開始されるに至り、相当の効果をあげつつあるのではありますが、これに連結するいわゆる
連絡道路の改修が必ずしも十分でなく、所期する成果をあげるには至っておらぬ状況でありまして、これら
連絡道路改修の促進が強く要望されているのであります。すなわち長崎県側におきましては、
愛野—多比良間並びに
島原—多比良間の二級国道。熊本県側におきましては、
県道府本—長州線がそれであります。特に熊本県側におきましては、
県道府本—長州線の改修がおくれております現在、相当数の車が
県道大牟田—玉名線を利用いたしておるのであります。しかし本線としても、幅員がきわめて狭小であり、諸車の離合に危険を感ずるほどでありますので、
県道府本—長州線の改修が完了いたしますまでの間、とりあえず
大牟田—玉名線に退避所のみにても設置できるよう、要望いたしておるのであります。
次に、
県道熊本—玉名線についてでありますが、本線は、熊本県五名市より熊本市に至る海岸線を通過する延長三十一キロの
主要府県道であります。本路線は、
集団栽培地といたしましては日本一とも称せられている天水、河内芳野のミカンの産地をその沿線に有するのみならず、海岸地帯を経過地といたしますため、海産物もまた相当の量にのぼり、これらいずれも鮮度を最も重視する産物の搬出路に当るのでありますが、その良好度はきわめて悪く、ことに利用度の最も高い原産地、天水、
河内芳野—熊本間は特に幅員狭小、屈曲多く、その現況はきわめて悪いのであります。これらの区間は、僅々二十キロをこえる程度の距離にすぎないのでありますが、ミカンの搬出期に至りますと、ミカン畑の観光バスも加わり、このわずかな距離の走行に半日を要する状況でありまして、当該区間の全画的改良もさることながら、とりあえず突角芟除、退避所の設置のみにても、早急に行う必要があるのではないかと考えられるのであります。
第五に、
南北霧島有料道路、
連絡有料道路の開設について申し上げます。現在宮崎、鹿児島両県界にまたがる霧島高原を中心といたしまして、鹿児島県側には
林田温泉—高千穂河原間約十一キロに、
南霧島有料道路が昨年十一月より、また宮崎県側には小林市
—えびの高原間約十四キロに、
北霧島有料道路が去る十九日に完成いたし、おのおの明眉なる
観光資源の開発に寄与することとなったのではありますが、これら両
有料道路がいまだ連絡いたしておりませんため、その効果を完全に発揚するに至っていない状況であります。
これら両
有料道路を連絡いたしますことは、単に
観光資源の開発という点からのみでなく、
宮崎—鹿児島両市間の
最短距離を連絡することとなり、南九州における
交通経済上多大の効果が期得できるのでありまして、本
連絡有料道路の開設は、両県のひとしく要望いたしているところであります。
現在
連絡道路のルートといたしましては、
えびの高原—高千穂河原間十四キロ、
えびの高原—林田温泉間十一キロの二案が考慮されている模様でありますが、前者は、
国立公園特別地域の中を通過いたしますため、厚生省との関連もあり、
観光資源の開発という点については、やや後者にまさってはおりますものの、早急なる着工は困難と思われるのであります。
従いまして、さきに申し述べましたごとく、本
連絡道路の第一義が
観光資源の開発という点に存するのではなく、
宮崎—鹿児島両市間の
最短距離を連絡するという
交通経済上の点に存します以上、なるべく他の行政機関との摩擦の少い
えびの高原—林田温泉間にルートを撰び、これに一日も早く着工することの方が、はるかに得策かと考えられるのであります。
第六には、
特殊土壌地帯における
コンクリート側溝の問題についてであります。
特殊土壌地帯におきましては、道路の側溝は、完全なる
コンクリート側溝とせざる以上、上下左右に侵食せられ、道路の構造保持のための重要なる一部であります側溝のために、かえって
道路自体の構造が破壊せられるという現象が起り、しかもその量も決して無視できないものがあります。加うるに、さなきだに後進牲をかこっている同地帯の公共団体の財政能力をもってしましては、とうていこれに要する費用の負相に耐え得るものではなく、これが対策に腐心いたしているのが実情であります。
すでに
災害復旧事業におきましては、鹿児島県のみに対しましては、
コンクリート側溝を認めているのでありますが、
道路事業におきましても、鹿児島県及び宮崎県南都の、特に
シラス地帯のはなはだしい地域に対しましては、
コンクリート側溝に対する特別のワクを設けるか、あるいは
特殊改良予算の同地域に対する配付に相当の考慮を払う必要があるのではないかと考えられるのであります。
第七に、六角川の
改修計画についてでありますが、
本川下流一帯は、古くからの
干拓造成地でありまして、土地が低く、かつ築
後川下流地域と同じく、わが国でも類のない軟弱地盤であるのみならず、有明海の最奧部に注ぐ河口付近の潮位差五ないし六メートルの影響を受け、本川、支川ともに全流路の約八〇%は感潮いたしておるのであります。従いまして、有明海より遡上してくるかた土の堆積により、河積は狭小となり、潮汐の影響と相まって、洪水の疎通はきわめて悪く、年々その被害は増大しておるのでありまして、最近におきましては、その被害額は年平均三億八千万円余に達しているのであります。
本川につきましては、昭和二十三年度以来、
中小河川改良工事として施工せられてきたのであります。これら年々の被害額の増大、並びにさきに申し述べました本川の地勢的、
地質的悪条件、さらにはこれに伴う
本川改修の
技術的困難性より、昭和三十一年、三十二年度の両年度にわたり
直轄調査を行なったところであります。その結果、一応の
改修計画といたしまして、
本川下流住ノ江地先に潮どめ水門を新設し、高潮による災害を防除するとともに、
上中流部の洪水位の低下、かた土の遡上防止をはかり、さらに
上中流部においては引堤、掘削等による河積の増加をはかることとし、本年度より事業費三千万円をもって、
直轄改修工事に着手することとなったのでありますが、
内水排除の問題、あるいは潮どめ水門の問題等、具体的にはなお未解決の問題が相当残されているのが実情であります。すなわち
内水排除の問題につきでましては、今次計画には、武雄川合流点より下流の残流量は無視いたし、
計画高水流量の対象外といたしておりますため、当然この
内水排除の問題は、将来に残るものと思われるのでありますが、さらに
下流地区の
内水排除は、潮どめ水門との関係もあり、水理的にもさらに検討すべき事項も多いため、保留事項となっており、また牛津江の排水も今後の
検討事項となっているのであります。
次に、潮どめ水門の問題につきましても、水門の設置個所の地質調査、洪水時の潮汐との水理機構の検討、提防方式との比較、上流部のショート・カットとの関係等、多くの
検討事項を残しているのであります。従いまして、本川のごとき、上流より河口に至るまでの間、どこを取り上げましても災害との関係において同一条件のもとに置かれており、かつまた技術的にも非常な困難性を有しているものに対しましては、部分的な
予算措置をもって、長期間にわたり改修を継続いたしますことは、非常に危険であります。着手する以上は、
一定計画のもとに、相当量の工事を一挙にやらねばならぬと考えられるのでありますが、いずれにいたしましても、本川につきましては、何よりもまず十分なる
実施計画の確立が先決問題であろうかと考えられるのであります。
第八に、
本明川改修工事について申し上げます。本川は、昭和二十四年度以来
中小河川改良工事として、
長崎本線鉄道橋より
下流河口までの間が施工されてきたのでありますが、昭和三十二年七月における未曽有の大災害により、新たに全水系を一貫した
河川計画を樹立し、昭和三十三年度以降、
長崎本線鉄道橋より上流は助成と災害との合併により、下流は直轄と災害との合併により施工することを目途として、とりあえず昭和三十二年度におきましては、十一月より
災害復旧費のみをもって工事に着手いたしたのであります。本
計画実施に要する総事業費といたしましては、一一・四キロにわたる
助成区間につきましては、災害費四億九千万円余を含め八億一千万円、六・六キロにわたる
直轄区間につきましては、災害費一億八千万円余を含め、十一億七千万円余が見積られているのでありますが、特に
直轄区間につきましては、そのほとんどが市街地でありますため、総事業費十一億七千万円余のうち、本工事費四億七千万円余に対し、用地費二億八千万円、
付帯工事費三億三千万円余、その他八千万円余となっており、用地費、橋梁等の
付帯工事費の割合が大なる比率を占めているのであります。
一方これを工事の進捗率の面より見ますと、
上流助成区間につきましては、総事業費の約六三%が災害費でありますため、予算の配付が比較的円滑に行われ、昭和三十三年度末においては、約四三%の竣工を見ることとなるのでありますが、
下流直轄区間につきましては、同期における竣工率は、約二一%にすぎず、ここに
本川改修計画遂行の上に、かなりの問題があるのではないかと思うのであります。特に本川の場合のごとく、流量を大きく改訂し、河道の
流下能力増大を第一義とした
改修計画の実施に際しましては、当然下流から改修を進め、疎通能力の増大を確保して後、上流からの流量を受けることとし、万一の場合、
下流市街地の災害を防止することが、民心安定の上からみましても常道ではないかと考えるのであります。もちろん本年度は、
計画実施の初年度ではあり、また別途実施されつつある諌早市の
都市計画事業との関運等、諸種の事情により、思うにまかせなかったであろうことは、十分想像できるのではありますが、それにいたしましても、
都市計画事業の方は、一応昭和三十四年度の竣工を目途として進められそいるのでありまして、河川費からの負担金約一億五千万円も、三十四年度中には
全額支払いを完了し、かつ橋梁かさ上げによる取りつけ道路も完了いたさねばならぬ段階に立ち至るのであります。従いまして、本年度のごとき、
直轄区間一億五千万円程度の
予算措置をもってしては、とうてい円滑なる事業の遂行は期しがたいものと想像されるのであります。また
直轄区間のほとんどが市街地でありますため、当初懸念された用地買収、あるいは
家屋移転等の問題につきましても、沿川住民は、いまだに災害時の恐怖を忘れがたく、現在のところ、きわめて協力的である模様でありまして、この意味からいたしましても、
直轄区間の工事は、でき得る限り早急に行う必要があると思うのでありますが、当局は、
本川助成区間、
直轄区間の年度割予算についていかなる構想を有しておられるか、御説明を願いたいと思うのであります。
第九には、
球磨川改修工事について申し上げます。本川は、
下流区域が昭和十二年度より、
上流区域が昭和二十二年度より
直轄区域に編入され、
改修工事が行われてきたのであります。その進捗率は、昭和三十二年度末におきまして、
上流区域において一七・六%、
下流区域において二五・四%にとどまり、上下流全体として、今なお七八%が未改修のままに放置せられているのであります。また昭和三十三年度以降における本川に対する修正全体計画によりますと、
上流区域十五億四千万円、
下流区域十一億一千二百万円、計二十六億五千二百万円の事業費を要するものと積算されるのでありますが、昭和三十三年度を初年度とする
球磨川改修五カ年計画におきましても、その総事業量は、
上流区域一億三千万円、
下流区域二億五千万円、計三億八千万円が施工されるにとどまり、これを予定通りに完遂したといたしましても、なお修正全体計画の一一・二%の進捗率を示すにすぎない状況であります。従いまして、この程度の
予算措置をもっていたしましては、途中における災害、あるいは手戻り等を考慮いたしますとき、四十年ないし五十年の長年月を要するものと憂慮されているのでありますが、特に
下流区域におきましては、八代港の修築問題との関連もあり、その促進が強く要望されているのであります。
一方、
上流区域におきましては、現在、錦、深田、
多良木地区等に着工、その改修が進められているのでありますが、何分にも
直轄改修区域への編入がおくれましただけに、その改修率は、
下流区域のそれに比べ、さらに低い状況でありまして、ことに須恵村中島地区につきましては、連年の被害にもかかわらず、今なお
改修計画未決定のままに、今回の
球磨川改修五カ年計画におきましても保留の状態に置かれているのであります。もっとも、当地区に対する当初の
改修原案といたしましては、一応捷水路による計画が立てられた模様でありますが、その後かなりの河状変化も見られ、現在
原案通り捷水路の方式をとるか、あるいは河状整理の方式によるか、当局においても鋭意検討中のことと思われるのでありますが、
最終案決定の時期的な見通しについて伺いたいと思うのであります。当地区におきましては、連年被災の経験より、
大雨注意報のたびごとに全部落民が他地区へ退避するという悲惨な状態に置かれているのでありまして、早急なる最終案の決定が必要と考えられるのであります。
また
球磨川上下流全川住民といたしましては、改修が遅々として進捗せざる現状にかんがみ、
緊急事態発生の際の被害を最小限度にとどめるべく、現在設置されている
市房ダム工事事務所のほかに、人吉、八代両市にも
洪水予報専用の無線電話を設置されたい旨要望いたしているのでありますが、これに対してもあわせて御答弁願いたいのであります。
最後に、
川内川改修工事について申し上げます。
本川下流部につきましては、昭和六年度以来
計画高水流量毎秒三千五百立方メートルの計画のもとに、
直轄改修工事に着手いたし、現在までに築堤土量の約八七%を竣工いたしているのであります。また上流部につきましては、下流部とは別個に、昭和十八年における大出水を契機として計画が樹立され、昭和二十三年度より
改修工事に着手いたしましたため、現在までの築堤土量の竣工率は、僅々一六%にすぎず、これが早急なる促進が強く要望されているのであります。
一方洪水量は、年々増加の傾向にあり、さらに上流部における改修の促進と相まちまして、下流部における
計画高水流量の改訂は、やむを得ざるものとされていたのでありますが、昭和二十九年、三十二年における大出水を契機といたしまして、上下流の流量に関する総合的検討を行いました結果、下流川内市付近における
計画高水流量を毎秒四千百立方メートルと改訂するに至ったのであります。しかしながらこの流量改訂により、すでに築堤率八七%に達している下流改修区域におきまして、今さら引堤あるいはかさ上げ等により河積の増大をはかろうといたしますことは、とうてい不可能に近いことでありますため、中流部鶴田村付近の狭窄部に堰堤を築造することにより、毎秒六百立方メートルの流量を調節すべく、計画が樹立されるに至ったのであります。
本堰堤地点につきましては、本川五三・三キロ付近を第一候補地、これより下流三百メートルの地点を第二候補地として調査が進められたのでありますが、本年度におきまして、両者を比較検討の結果、上流地点、すなわち第一候補地点が有利であるとの結論に達し、目下主として地質調査を続行中であります。
本堰堤築造に要する費用といたしましては、最低に見積りましても百億円の巨費を要するものと推定されているのでありますが、北上川における場合と同じく、すでに下流部の
改修工事の大部分を完了いたしておる川内川といたしましては、本堰堤により洪水を調節する以外に、下流部を守る方途はないのでありまして、上流部における築堤の促進とともに、本堰堤の早急なる着工が特に要望されているのであります。
以上、要点のみを申し述べ、これに対する関係当局の御答弁を期待いたしまして、報告にかえる次第であります。