○
山村(新)
委員 私は、
自由民主党を代表いたしまして、
高石君の
逮捕許諾請求に対しまして、
許諾を与うべきものではないとの
意思表示をいたすものでございます。
御存じのように、
憲法の第五十条におきましては、「両議院の
議員は、法律の定める場合を除いては、
国会の
会期中
逮捕されず、」ということが、明らかに
規定されておるのでございます。従って、この
規定を尊重いたしまして、当
委員会といたしましては、果して
高石君の
逮捕請求というものが、
逮捕をしなくてはならないというような
事案であるかどうかということにつきまして、慎重なるところの
検討を続けた次第であったのでございます。ところが、その間におきまして、たまたま同じ
警察庁の中におきまして、
逮捕許諾請求を撤回せんとの
動きの出たようなこともございまして、このために十数日が過ごされたということは、一部
世間には、何か
国会がこれを握っておったかの感を与えるような事実があったことは、非常に遺憾であったのでございます。しかし、私
どもは、もし、これを
許諾をすべきものでございましたならば、すみやかに
逮捕の
許諾をいたす
態度をとることは、決して拒まないものでございますし、同時にまた、すでに
警察の
内部におきましても、
逮捕許諾の
請求を取り下げようじゃないかという
動きがあったという事実にかんがみましても、いかに
逮捕許諾請求の
根拠が薄弱であるかということを思いまするときに、あらゆる
角度から、この
高石君の
逮捕問題につきまして
検討を続けて参ったのでございまするが、たまたまし
さいに
検討いたしますると、
御存じのように、
高石君は、すでに
国会開会中にもかかわらず、四回も出頭して、
取り調べを受けておるのでございます。しかも、その買収の
相手方でございまするところの
高村君は、すでに釈放をされてしまいまして、
高村君を釈放された現在におきまして、
相手方でございます
高石君を逮補いたしましても、これは何の
意味もなさないものであるということを考えざるを得ないのでございます。すなわち、
逮捕をするということは、
証拠を隠滅するとか、あるいは
逃亡のおそれがあるという場合においてのみ、
逮捕すべきであるのでございまするにかかわらず、
高石君は、堂々と、四回にわたって出頭して
取り調べを受けておるのでございまするから、これは全然
逃亡のおそれがないのでございます。しかも、
証拠隠滅につきましても、すでにその
相手方と目されておりまするところの
高村君が釈放された現在においては、その
心配も全然ないのでございまして、これらにつきましては、今まで
秘密会等におきまして、あらゆる
角度から
当局に質問が発せられ、特に
警察当局あるいは
警察庁本庁と
出先の
埼玉県
警察本部との
意見の
食い違い等は、一時は、この
委員会を激高させるような状態にまで参った次第であるのでございまして、これらの点は、非常に遺憾に存ずる次第であるのでございます。
要すれば、こういうように、全然
証拠隠滅のおそれもないし、また同時に、
逃亡の
心配も全然ないところの
高石君を、あえて、それでもなお
逮捕せんとするところの
警察当局の
態度というものは、これは明らかに
人権じゅうりんであると同時に、見方によりましては、これは
警察の
一つの
面子にこだわったものであると、私
どもはいわざるを得ないのでございます。
こういうような点を考えますると同時に、すでに
会期も迫っておりまする今日、何か
警察の
面子にのみこだわり、あるいはまた、
高石君を
逮捕という政治的な肉体的な拷問によって、無理じいに自白せしめんとするような、こういう
警察の
態度というものは、今後とも、
民主警察を建設する
意味におきましても、非常に遺憾な
態度であるといわざるを得ないのでございます。
特に、われわれが非常に遺憾とする点は、先ほ
ども申し上げましたように、
青木国家公安委員長並びに
警察庁長官の
石井さんと、
出先の
埼玉県の
本部長との
意見が、非常に食い違っておるという点であるのでございます。こういうような
意見の
食い違いのままにおいて、いやしくも
国会議員の
逮捕が
軽々になされるということは、院の権威にも関することでございまするから、われわれとしては、絶対この
逮捕は
許諾を与うべからざるものであるという
態度を決定いたした次第であるのでございます。
私は、この
態度を表明すると同時に、この
審議過程におきまして、非常に各
委員の方々から追及され、同時に、
当局が非常にしどろもどろになったということは、
警察法そのものに、非常に欠陥があるのではないかという点でございます。あるいは
警察庁と検察庁との
セクト主義の現われが、いろいろな
事件において現われてきて参っておるということは、非常に残念であるということを痛感せざるを得なかった次第であるのでございます。
こういうようないろいろな欠点と、特に、この
事案そのものをし
さいに
検討いたしてみまするときに、四回にわたっての出頭といい、あるいは
相手方の
高村さんが、すでに釈放された現在におきましては、何らこれは
高石さんの
逮捕をすべきではない。また同時に、
高石さんというものは、いつでも
警察の求めがあれば出頭いたしますということを、
虚心たんかいに表明しておるのでございまするから、私は、要するに、先ほど
石井長官が御言明な
さいましたように、
任意捜査によって、すなわち、不拘束の
捜査によって、ぜひとも
事件の真相をきわめたいという、この
長官の
意思を、
一つ下部まで徹底せしめることができましたならば、おそらく
逮捕の
許諾請求というものは、撤回されたに違いがなかったと思うのでございます。すなわち、
逮捕許諾の
請求を撤回しようという
動きがあったという事実は、何ものよりも雄弁に、この
逮捕というものがいかに
根拠のないものであるかということを、物語っておると存ずる次第でございます。
従いまして、いろいろな
角度からの
反対論がございますが、特にただいま申し上げました点と同時に、
逃亡のおそれもない、
証拠隠滅のおそれもない
高石君に対する
逮捕というものは、これは
軽々に許すべきではないという
見地から、わが党を代表いたしまして、この
高石君
逮捕許諾の
請求に対しましては、
許諾を与うべきものではないとの
意思表示をいたしまして、
自由民主党を代表いたしましての、私の
意見の開陳を終ります。