○
戸叶委員 私は
提出者を
代表して
日本への核兵器持込み
禁止並びに核非武装に関する
決議案の趣旨弁明を試みんとするものであります。
まず最初に案文を朗読いたします。
本院は、核兵器の
禁止、及びこれが実現に至る過程においての核実験の停止に関する本院屡次の
決議に省み、またその後における
国際情勢の推移、特に大国間におけるミサイル競争の激化と、他面東西首脳会談の気運を考慮し、四度原水爆を許さずとの
日本国民の願望を達成するとともに、
国際緊張の緩和に貢献するため、ここにあらためて次のごとく厳粛に
宣言する。
日本は、核兵器及び核ミサイルによる装備を永久に保持しないとともに、いかなる第三国によるとを問わず、これらの兵器を
日本に持ち込むことを許さない。
本院は、
政府に対し本
決議案の趣旨を達成するため、所要の措置をとることを要請する。
右
決議する。
わが国は、
昭和二十年広島や長崎でおそろしい原爆の被害を体験し、続いて二十九年にはビキニ島で行われた原爆実験に際して第五福龍丸が被害をこうむったのみでなく、久保山船長初め多くの犠牲者を出しました。実に私たちは三たびにわたる原水爆の唯一の被災国なのでございます。原水爆の被害は目に見えるもののみでなく、知らず知らずの間にじりじりといろいろな形で人間の身体を襲ってくるものであることは、幾多の実例が示すところであります。原爆をこうむった年ごろの娘さんが、ゆがんだ顔をしながらも恥かしさ、悲しさを乗り越えて、原水爆実験
禁止の運動に挺身している姿を見るにつけ、また被爆の人妻が、生まれてくる子供が満足でないのではなかろうかとおそれて自殺した事件を聞くにつけ、また死を待つばかりの放射能を受けた人々が、何万人とベッドに横たわっている姿を見るにつけ、私たちは深く胸の痛みを覚えるのであります。(拍手)また一方国連の放射能科学
委員会の報告によりますと、ことし一ぱいで核実験をやめても、大気上層に蓄積されている放射能の降下によって、白血病患者は多い年で四百人ないし二千人、遺伝的不具者は今後何年かの間に千五百人ないし十万人出るということであります。このようにその被害のいかに大きいかを
考えていくと、私たちは核実験をなお行わんとする国々に対して深い憤りを感じるのみでなく、一体それらの国々には良心があるのであろうかと疑わざるを得ないのであります。(拍手)だからこそ私たちは衆参両議院におきまして二十九年、三十一年、さらに三十二年には参議院において、それぞれ原水爆の実験
禁止を要望する
決議を行い、
政府を通して
関係国に伝達し、善処方を要望したのであります。残念ながらまだ実験は続けられております。しかし最近世界の情勢も平和を望む諸国民の声が日に日に高まり、原水爆
禁止、軍縮などの実現のため東西間の話し合いが熱望されてきております。今その現われの
一つといたしまして、
ジュネーヴでは東西の核実験探知の専門家
会議が開かれ、国民はこれによって核実験の
禁止も一歩前進することを期待しているのであります。私たち社会党は、院内のみならず、今後さらに一そう核実験
禁止の国民運動を展開するとともに、世界の諸国に向っても積極的に呼びかけ、その実現を達しようとしております。それと同時にさらにこの運動の
効果をあげるためには、わが国に核兵器の持ち込みを
禁止し、核兵器及び核ミサイルによる装備を永久に保持してはなりません。ところが過ぐる国会におきまして、
藤山外務大臣は、
アメリカ軍は
日本に核兵器を持ち込む
条約上の権利を持っていると主張されているのでありまして、このことは非常に国民の不安を買っております。もし外相が御
自分の職責を果されようとするならば、当然この国民の不安を除くような平和外交の方針がとられなくてはなりません。そのためにはまず
アメリカとの間に、はっきりと核兵器は持ち込まないとの約束を取りきめるべきであります。私たちは幾たびかこの点を強調しましたが、
政府は日米間は信頼が厚いから、そんな約束をする必要がないと答えて、積極的に持ち込みに反対の
態度に出ないのは、一体どういうわけかと了解に苦しむものであります。もしそれほど日米間の信頼の度が深いならば、
アメリカがあるときはエニウェトク島に、あるときはジョンストン島にと、核実験を行うといって一方的に公海の自由を制限した通告を行なったことに対し、
日本から抗議を
申し入れるならば、これを聞いてもらうく
らいの自信があってもいいと思うのであります。
政府のいう日米間の信頼は、私たちから見るならば全く信頼できないとしか思われません。さらに心配なのは、先ごろの日米
委員会におきましてサイドワインダーの持ち込みも
決定いたしました。これに核弾頭をつければ、すぐ核兵器になるのでありまして、このためにも核兵器の持ち込み
禁止を強く打ち出しておくべきであります。この際核兵器を持ち込まない、核武装しないという国会の
決議を通して、世界にはっきり
日本の
立場と平和に対する
考え方を発表することこそ、最も必要であると思うのであります。非核武装地帯の設定という
考え方は、ポーランドのラパッキー外相が、昨年十月二日国連第十二回総会の
演説で提案したものであります。その
内容は、東西両ドイツが核兵器の生産、貯蔵を
禁止するならば、ポーランドも同じ措置をとるというものであります。
〔床次
委員長代理退席、
委員長着席〕
これに対し、チェコ国連
代表は直ちに賛成し、また東ドイツも賛成しました。ことしの一月十一日にソ連のブルガーニン首相は、デンマーク、ノルウェーの各首相あての書簡の中で、これらの二国にスェーデン、フィンランドを入れて、北欧非武装地帯設定の提案をいたしました。翌十二日にはグロムイコソ連外相は、訪ソ中のイタリア訪ソ使節団に対して、イタリア、アルバ二アの非核武装と、ソ連のアドリア海沿岸の安全保障とを提案いたしました。次いで一月十四日にはユーゴフ・ブルガリア首相が、バルカンに同様の地帯を設定することを提唱し、さらに二十一日には、ソ連は中東の非核武装化を提唱しました。
アジア方面では、二月初めにホー・チミン
北ヴェトナム主席が同様の構想を述べ、二十日にソ連が全朝鮮を非核武装化する提案をいたしました。その後西ドイツは議会におきまして三月二十五日、西ドイツ軍が核武装する
決議を強引に可決したため、ラパッキー案も一頓挫いたしましたが、この案に対しましては
アメリカのジョージ・ケナン、ウォルター・リップマンのような有名な評論家でさえ、その検討を主張しているのであります。さらに西ドイツの社民党、イギリス労働党もこの案を中心に核武装反対の強い盛り上りを見せているのであります。
私
どもは北西太平洋
アジア地域において核非武装地帯の実現の一日も早いことを望むものでありますが、その前にまず
日本が国会の
決議として非核武装
宣言をすることが必要であります。
日本の国民の意思が国会の
決議として他に伝わったとき、その影響は大きく、平和を念願とする国々は、こぞってこの
決議に賛意を表することは明らかであります。今もしこの
決議案に反対するならば、悔いを千載に残すでありましょう。そして私たちの子孫から、なぜあのときに国会の
決議として核非武装をはっきりしておかなかったかと恨まれるかもしれません。
アメリカに対する気がねとか、あるいはまた面子などによってこの
決議に反対することは、結局
日本の国の将来の平和に対しての見通しの誤まりとなるでありましょう。
日本に核兵器及び核ミサイルによる装備があるためにかえって他国を刺激し、
日本が
戦争の渦中に巻き込まれないとはだれも断言できません。現にけさの外電の伝うるところによりますと、チェコは西ドイツが核兵器を持ち込むならば核発射基地を置くといって、西ドイツの核兵器持ち込みに強い反撃を示しております。そのときこそ人類の最大の不幸であります。四たびの核被害をこうむらないためにも、進んでこの
決議案に賛成していただきたいと思うのであります。私たちはこの
決議案こそ当然本
会議で
決議されてよいと
考えたのであります。ところが本
会議に持ち込むことは話し合いがつかないそうであります。外務委員の方々は自民党の中でも良識派の方のみであり、
国際情勢に対して正しい認識と判断を持たれた方々であります。従ってこの
決議案に賛成されることによって、その良識を示されるとともに、反対される人がいるとするならば、その方々を説得され、次には本
会議で
決議されるよう御努力をしていただきたいと思うのでございます。そのときにこそ初めて
日本の外交は、真から平和外交を望んでいるということが世界に理解してもらえると思うのであります。今こそそのときであります。この
決議案に対して満場の賛成をお願いして、私の趣旨弁明にかえる次第でございます。(拍手)
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