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1958-07-17 第29回国会 衆議院 海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月四日  田口長治郎君が委員長に当選した。 同日  逢澤寛君、稻葉修君、高橋等君、中山マサ君及  び山下春江君が理事に当選した。 同月七日  茜ケ久保重光君、受田新吉君及び戸叶里子君が  委員長の指名で理事に選任された。     ————————————— 昭和三十三年七月十七日(木曜日)     午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 逢澤  寛君 理事 中山 マサ君    理事 山下 春江君 理事 受田 新吉君    理事 戸叶 里子君       井原 岸高君    臼井 莊一君       河野 孝子君    辻  政信君       長谷川 峻君    細田 義安君       本名  武君    今村  等君       大貫 大八君    金丸 徳重君       北條 秀一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         国 務 大 臣 青木  正君  委員外出席者         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      山口 喜雄君         法務事務官         (入国管理局         長)      勝野 康助君         法務事務官         (入国管理局入         国審査課長)  田村 坂雄君         厚生事務官         (引揚援護局         長)      河野 鎭雄君     ————————————— 七月八日  海外胞引揚及び遺家族援護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中共地区残留胞引揚状況及び受入援護状況に  ついて派遣委員より報告聴取  中共地区残留胞引揚に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  この際御報告いたします。去る七日四日の委員会において、委員長において追って指名することとなっておりました理事五名につきましては、去る十日、委員長において茜ケ久保重光君、受田新吉君、戸叶里子君、以上三名を理事に指名し、この旨公報によって御報告申し上げておきましたので、御了承願います。     —————————————
  3. 田口長治郎

    田口委員長 この際、厚生大臣より発言申し出がありますので、これを許します。橋本厚生大臣
  4. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私、今回、再びまたこの重責を拝命いたしまして、当委員会におきましても、なるべく早くごあいさつをいたしたいと考えておったのでありますが、本日その機会を得まして、まことに幸いでございます。  当委員会の問題につきましては、私から申すまでもなく、戦後非常に重要な問題を処理してこられたのでございます。引き揚げの問題、また、これをめぐりまするいろいろな問題に関しましても、皆さん方の御尽力によりまして、仕事の量といたしましては、だいぶんこれで進んで参ったと申してよろしいと思うのであります。大体仕事も終りに近づいて参ったわけであります。それだけに、なお残っております問題は非常にむずかしい問題が多いのでございまして、ただいままで仕事の分量としていろいろなことをやって参りましたのに、まさるとも劣らないだけのいろいろな配慮を要する次第でございます。私も就任いたしましてまだ日も浅うございますので、この問題につきまして、なお、その後の状態を十分にこの上とも検討いたして参りたいと思うのでございますが、諸般の事情は、ただいま私も申しました通り、いろいろむずかしい問題が残っておりますので、この上とも皆さん方の御支援と御助力によりまして、これをうまく処理いたして参りたいと考えておる次第でございます。どうかよろしくお願いいたします。     —————————————
  5. 田口長治郎

    田口委員長 海外胞引揚及び遺家族援護に関する件について議事を進めます。本日の説明員出席者橋本厚生大臣引揚援護局長、正午外務大臣、午後一時より国家公安委員長及び警察庁長官入国管理局長勝野氏、以上でございます。  本日は、まず、去る七月十二日より三日間、中共地区第二十一次引き揚げ状況及び受け入れ援護状況調査のため舞鶴へ派遣いたしました委員よりその報告を聴取することといたします。まず、長谷川峻君、同じく派遣委員として舞鶴に参りました受田委員より補足して報告いたしたいとの申し出がありますので、これを許します。長谷川峻君。
  6. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今度の引き揚げは、報道機関によって大々的に取り上げられて、国民注目の的となっておったのですが、その最大なる原因は、中共からの引き揚げが、これをもって集団的なものとしては最後のものである、これが一つ。さらに、もう一つは、その間において、その引き揚げ船の中に、日共党員密出国して、その人たちが変名で乗船して、途中で覆面を脱いで名乗りをあげた、こういうことが大きなセンセーションを呼び起していると私は思うのであります。そこで、この間について調査した結果を御報告申し上げようと思います。  今回の白山丸による第二十一次引き揚げによって帰国した者は、総数五百七十九名です。その内訳は、いわゆる引揚者のうち、一般邦人三百七十四名、旧軍人軍属七十五名でありまして、ほかに再渡航者と、すでに新聞で御承知の、いわゆる密出国者として戦後渡航し、今回の引き揚げ船に便乗して帰国した六十五名及び華僑二名となっております。そのうち男子は三百四十六名、女子は二百三十三名、そのうち八才以下の子供男子九十名、女子七十四名となっております。なお、そのほかに遺骨十柱が引き揚げてきております。引揚者現地から持ち帰ったものといたしましては、金が香港ドルで五十五万八千六百七十七ドル、ポンド小切手で一万八千ポンド、大体一人頭日本金で十万円見当、それだけ持って帰っておるということであります。荷物としては、総数九百四十八個でありまして、一人平均一・六個、こういうことであります。引き揚げ地点といたしましては、瀋陽地区、昔の奉天地区が一番多く、次いで上海、ハルピン、北京、重慶、成都その他少数なものが各地区から引き揚げてきております。落ちつき先を見ますと、大体東京が一番多く、次に大阪、神奈川の順となっておりますが、これは従来と同様に、比較的就職しやすい大都市に集中している傾向がここでも見られております。  次に、このたびの引き揚げの大きな特色といたしましては、第一は、すなわち先ほど申し上げましたように、今回の引き揚げが、おそらく最後集団帰国になるであろうということであります。中国紅十字会は、引揚三団体代表に対して、ことしの引き揚げは、今回で最後であると語ったのですが、さらに、集団帰国は今度をもって打ち切ると、はっきり申し入れたことが、われわれ引ま揚げに関係している委員並びに国民に大きな衝動を与えているゆえんであります。従って、今度の白山丸最後帰国船だということからいたしまして、何もかも捨てて、各地区から引き揚げ地に集中してきた、引揚者の持ち帰った荷物が少いというのも、こういう理由によっているのであります。ですから、いかに中共に残っている諸君引き揚げというものに大きな関心を持っているかということは、ここでもわかるのであります。  第二は、いわゆる密出国者グループ乗船の問題です。すなわち、白山丸吉田船長及び引揚三団体代表に会いまして、塘沽出港から舞鶴入港までの経過その他の情勢を聞きましたが、これによりますと、白山丸が七月三日に塘沽港に着き、乗船代表天津繁華街にある国民飯店集結中の帰国者をたずねたときには、飯店に集まった者は四百七十余名だった。ところが、中国紅十字会は、数日後に、帰国者の数は五百五十人以上になると連絡してきたそうであります。そうして三団体代表が、中国紅十字会側帰国打ち合せを済ませて、帰国者全員集結を待って、八日塘沽に戻って参りましたのは午後四時半、三団体代表白山丸乗船後、十分たたないうちに塘沽を出港する、こういうことなんです。これについては種々の事情もあるでしょうけれども、従来でありますと、三団体代表が先に乗り込んで、引揚者乗船して出帆しておった。ところが、今度はその逆なんです。そして塘沽出港後一時間ほど経過して、乗船者名簿の作成にかかったところに、密出国者六十五名の代表から、自分たちは偽名で乗ったんだということの了解を求めてきたのです。でありますから、船内では、この人々の取扱いについては非常に対策を協議した。しかしながら、今さら引き返すわけにはいきません。いわゆる向うにいた方々引き揚げてきた船、それに対してこちらから密出国した人々がその船に便乗して帰ってきた。でありますから、法的にはとられる手段はいろいろあったでしょうけれども、何さま、六十五名を途中で舞鶴の港以外に下船させるというひまもなかったろうし、さらに、そのためには一般日本帰りたいという帰国者上陸もおくれるということを考慮したことが一つと、それから、白山丸のチャーターの期限が、ちょうどもう十三日で切れるのであります。そういう関係から、予定通り、その間に何ら手配せずに十三日に舞鶴に入港した、こういう実情であります。  次に、舞鶴における援護状況を申し上げますと、乗船者中の、いわゆる密出国者グループの大部分には、逮捕状が発せられておった。それで、十三日の白山丸入港当日は、警視庁の公安部京都府警機動隊、並びに十七都道府県捜査官約六百名が派遣されていたのであります。そして、従来円滑にやっておった引揚業務が、こういうことによって支障を来たすんじゃないかということを、一般方々係官国民ひとしく非常に憂慮しておったのでありますが、関係者の十分な話し合いが続きまして、私たち委員白山丸船長室に午前十一時に参りまして、船長引揚三団体代表と今回の引き揚げ経過についていろいろ話をしている間に、一般帰国者がまず次から次へと船をおりて祖国の土を踏み、そしてこの一般帰国者方々は平桟橋に向って、無事に地方援護局に収容された、こういうことであります。  そこで残った問題は、密出国者の問題であります。この方々は、前晩から参りました、いわゆる共産党本部方々折衝などが船で行われました関係から、なかなか手間どったのでありますが、その間話し合いが進みまして、家族とまず船の中で面会させ、そして警察権の介入もなく、船の中で帰国者業務を済ませる、こういう段取りがつきまして、予定よりも約数時間おくれて、夕方の午後六時過ぎに平桟橋上陸を完了したのであります。われわれは国会より派遣された立場から、ことさらにこういう交渉ごとには介入しませんでした。そして薄暗い夕やみの中に、この六十五人の密出国者方々が全部上陸するのを見届けることができたのであります。しかし、この諸君上陸後、逮捕状を持っている各都道府県警察官によって、そのうち五十九名が逮捕、連行、その後取調べを受けていることは御承知通りであります。これが今度の二つの特徴の概要であります。  次に、一般帰国者引揚援護寮における状況を御紹介いたしますと、私たち委員が、白山丸から数名の最後一般帰国者とともに援護局に戻りましたときには、先に、長い者で二十四年、短かくて数年ぶりに故国の土を踏んだ引揚者が、すでにそれぞれ各部屋々々に落ちついて、出迎え家族との面会あるいは各県より参りましたところの係官との相談、そして歓談、久しぶりに緑濃い七月の祖国の空気を一ぱい満喫しているのを見たのです。男子開襟シャツ女子は色とりどりのブラウスと、さっぱりした服装で、子供たちには国境も敗戦も何もありませんから、無邪気に構内をかけずり回っておった。われわれはここで、この間において一般引揚者代表四名の方々懇談会を開いて、中共の模様などを拝聴することができたのであります。それを若干御紹介いたしますと、社会主義建設途上にある中国の大衆、それから農民の生活の向上の問題、あるいはまた、社会施設がどんどん発達している点などについては、一般帰国者も賛美の気持をもって物語っておりました。それで、これは委員が全部聞いているのですから、一様に了解していることなんですが、大体、中共日本をどう思っているか、こういう質問をしたわけです。そうすると、国旗問題あるいは日中貿易問題等について、中共の人心は非常にわが岸内閣に対して悪い、こういう話があった。そこで、一体、中共では旗というものをどういうふうに考えているか、こう申しますと、新興国家ですから、旗を非常に大事にする。われわれは、久しぶり日本に帰ったその方々に、国内のことなどお知らせすることも一つ参考になると思いまして、日本では、終戦後あまり国旗というものをみんなが尊重しなくなった。新興国家は旗を尊重する、しかも、その中共においては、まず祖国を愛する、その次には国旗を愛する、あるいは公共的施設を愛する、さらに勤労を愛せる、こういうことがいわれているという話がありました。それで私は、それは非常にいいことだ、わが日本においては、祖国を愛せよとか、国旗を愛せよというふうな話などをすると、なかなかもって保守反動であるとか、時代おくれであるとかいうふうな世の中になりつつあるのだ。そういう話から、だんだん一般帰国者に対して話を進めて参ったのであります。  そこで、最近中共において社会上おもしろい問題はどうだろう。たとえば、よく日本のえらい方々中共に参ると、ハエが一匹もいないというが、これはどうなんだろう。こんなところで話をしますと、いや、私たちは、みないつでもハエたたきを一本ずつ持って歩いた。現に天津に参りましたときに、自分ハエたたきを持っていないものだから、子供が、おじさんはどうしてハエたたきを持っていないんだという質問をされたくらいで、昔ほどのハエはおりませんが、いる。さらにおもしろいことがある。最近は四害駆逐運動、すなわち、ただいま申し上げましたハエとか蚊とか、さらにネズミとかスズメ、こういう駆逐運動が始まっている。スズメは一体どうして駆逐するのだ、奉天、いわゆる瀋陽地区においては、一日じゅう屋根の上に、あるいは木の上に子供たちが登って、がんがらがんをじゃんじゃんたたく。そうすると、これは私ども新発見であり、これは、みなそういうことを初めて聞いたのですが、スズメというものは、六時間空の上に飛んでいると、ばたばた落ちてくる。ですから、一日たたいていると、スズメがばたばた何万羽も落ちてくる。それじゃ、さぞ焼き鳥屋が盛んだろうといったら、焼き鳥にとてもならぬものだから、肥料にいたします。(笑声)老いも若きも、そういうふうにやるということは、一体どういうところにあるか、自分たち生活国家の利益が結びつくということがよく了解されて、皆さん一生懸命やっているようでありますという話を聞いたのですが、これは私自身の浅学と申しますか、そういう点からして、非常に大きな参考になったような気がします。さらにまた、ある農村の合作社では、三年かかって土地改良、灌漑をやろうとしたのが、驚くなかれ、十八日間でできた、こういう話などもありました。こうしたことは、いずれも従来の報告と大差ないように見ましたけれども、一般引揚者といえども、国と社会自分たち生活というものを非常に深く考えさせられるようになったということは、非常に注目すべきことである、こういうふうに思ったのであります。  さらにまた、この話の中で、今回の引き揚げにまだ参加しない、なお中共に残っている人々消息についても若干聞いてみたのです。日本人の孤児であるところの、十九才になる娘さんが、まだ保育園で働いているということやら、あるいは病院生活を送っている二、三の友人は、療養して、からだがすっかりよくなったら、何とか日本帰りたいといって、もんもんの日を送っているという話などがありました。こういうことなどを聞きまして胸を打たれたのでありますが、最後に四人の帰国者一同がいわく、自分たち祖国に帰ってきたけれども、どうか一つ就職の問題と住宅の問題を国会あるいは政府当局、みんなの力でお世話願いたい、こういう話がありました。これは、まさに偽わらざる共通の願いだろうと思って、胸を打たれた次第であります。なお、そのあとで、私たち委員は、各部屋々々を回って、引揚者方々の今後の御健闘を祈り、激励のあいさつを述べてきたのであります。私たちがこういうことをやっている間に、密出国者上陸について、援護局警察本部派遣共産党代表との間にいろいろ折衝が行われておりました。私たちにも調停あっせんの労をとってもらいたいやの話がありましたけれども、国会から参った関係上、私たちはそれに介入せず、そして、いよいよ五時過ぎに密出国者諸君上陸を開始するということを聞いたので、その現場にかけつけて、その状況をつぶさに拝見してきたのであります。  こういうふうに見ますと、昭和二十一年のソ連引揚船大久丸」以来、ちょうど戦後十三年です。そうして、舞鶴ソ連中共から六十六万の帰国者を迎えております。これを二百万の日本家族出迎えて、そうして、この白山丸集団帰国最後です。そうしますと、この日でさえも、鹿児島から、あるいは仙台から、自分のまだ帰らない夫を探して、この引揚者の中におりはしないかという一縷の望みを持って来ておった留守家族の御婦人方二人がおった。一般帰国者あるいは援護局方々の話によりましても、まだ中共には四千名の邦人が残っておる、こういうことでありますから、われわれ関係者は、非常に責任の重大なるを痛感したのであります。そして、この舞鶴援護局は十一月の十五日をもって閉鎖する。二十数名の職員諸君は、ここに約十三年間がんばっておった。私たちは、マイクを通じて、この職員諸君が長いこと労苦されながら、あるときには日の丸梯団、あるときにはアクチブと、いろんな日本の新しい言葉があそこで生まれた、あのむずかしい引き揚げ事務を担当してこられながら、この十三日を最後集団引き揚げが終り、あと残務整理をし、歳末の街頭にほうり出される、職をなくしてしまう、こういう問題については、ぜひとも一つ当局皆さん方に十分なる御処置をお願いしたい、こういうことを申し上げまして、私の一般報告を終る次第であります。
  7. 田口長治郎

  8. 受田新吉

    受田委員 長谷川君から御報告に相なりました事柄で、一応私たち皆さん委員会から代表として派遣された報告を終っておるわけでございますが、一言、同行した委員の一人として、私よりつけ加えますならば、今度の中共引き揚げ第二十一陣の方々は、こちらへお帰りになるに当って一つの大きな不安を持っておられる、それを確認したのです。それは井上君、東君その他の代表者意見を聴取したときにも感じましたし、また、三団体代表者の御意見も伺い、同行した新聞記者団の御意見も伺って共通したものをまとめたのでありますが、この引き揚げ問題に関して岸政権のとっている政策は、著しく中共を敵視しているという印象を中共に根強く植えつけておる。また、今度帰られた方々も、そういう国民感情中共全体にあふれていることについて率直にこれを容認しておりました。従って今度の船で帰らなければ、もうとうてい帰ることができないんだという不安が残留者の中にもずいぶんあったようでございまするが、やむなく残された方々のあることを、私たち舞鶴で認めて帰ったわけです。もう一つは、こちらの舞鶴引揚援護局が十一月十五日で廃止される、厚生省設置法及び定員法職員も機構もなくなる、こういうことが現地に伝えられて、今度帰られた方々も、異口同音に訴えておったのでありまするが、残留者の問題は、もう日本政府は考えてくれないのであろう、この集団帰国をもって引き揚げ問題にはピリオドを打つのであろうと、日本政府の方針を非常にさびしく思ったという発言でございます。従って、日本政府のこの引き揚げ問題に関する熱情に、一応の終止符が打たれた、同時に、岸政権の対中共政策の著しい反動性が、現地人々にも、また、残された人々にも、徹底するように伝えられておる、こういう点でございます。私は、そうした最後帰国船であろうという、このたびの白山丸方々を、国会代表してお迎えした一人といたしまして、さらに、次の問題を考えたのであります。それは、残された人々処理について、現地舞鶴引揚援護局職員の意向はどうであるかということでございます。まだ三十名残っている舞鶴引揚援護局方々は、今、長谷川君から御報告通り、十二年に及ぶこの大事な問題の最後処理に当っておるわけでございますが、現地から照会の手紙が来たり、あるいは家族あての通信が依頼されたり、また、こちらへ帰られた方々のいろいろな照会があったりして舞鶴援護局の廃止は、非常なさびしさと、また、あとへ尾を引くものがあるように考えるということでございました。  私、もう一つ伝えておきたいことは、私個人としてもずいぶんたびたびお迎えに行きましたけれども、今度の出迎えに当って特異な現象は、密出国皆さん逮捕するために、沿岸に待ち受けておった六百名の警察隊の群れでございました。この方々の存在が、いかに一般引揚者方々に悲痛な感じを与え、衝撃をどのように与えたかということでございました。特に、援護局周辺警察一色であったという点において、今回の帰国に、これほどまで強い警戒と措置をとらなければならなかったかという、民主主義国家としてのあり方について、自民党の長谷川君も井上君も、また、わが党の藤田藤太郎君も、大所高所から見て、この一点については共通の感想を持ったわけでございます。  以上、長谷川委員の御報告に一言口つけ加えまして、私の報告を申し上げます。
  9. 田口長治郎

    田口委員長 これにて派遣委員調査報告を終ります。     —————————————
  10. 田口長治郎

    田口委員長 引き続き、これより海外同胞引き揚げに関する件及び遺家族援護に関する件について質疑を行います。通告がございますので、順次これを許します。長谷川峻君。
  11. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今御報告した通りでありますが、今度の引揚船をもって中共からの集団帰国最後であります。そこで、従来統計によりますと、まだ引き揚げざる者が三万六千名あるとわれわれは承知しておる。その数字が一体どういうふうに確認されておるか、これを一つ関係当局から聞きたいと思います。
  12. 河野鎭雄

    河野説明員 ことしの四月一日現在の統計でございますが、いわゆる夫婦還者として厚生省で把握しております数字は、四万三自六十二名でございます。もっとも、ここ数ヵ月間でお帰りになった方もあります。また、死亡の確認を得まして死亡処理をされた方、そういう方がおりますので、正確な統計はまだできておりませんが、ただいま申し上げました四万を若干割った数字が、現在あるものと考えておるわけであります。ただ、これは未帰還者ということで把握しております数字でございまして、この人たち海外に生きて残っておるという数字ではございません。むしろ逆に、この人たちの一番新しい消息を見てみますと、大体昭和二十年、二十一年に消息があったのが一番新しい資料であって、その後は何らの資料もないという人たちが大部分でございます。従いまして、ただいま四万あるいは四万若干切れるという数字を申し上げたわけでございますが、現在海外に残っておられる方ということになりますと、非常にこれは数が少い。この数字は正確には把握できないわけでございますが、非常に少いのではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに、内容をもう少し申し上げますと、その残っておられる大部分の方が、中共及びソ連地区であろうかと思いますが、まず、中共地区について申し上げますと、先ほど御報告のありましたように、中共側では四千——今度の代表が行ったときに話の出た数字は、四千数百であろうというふうなことを言われたそうであります。私どもの方で推計いたしておりますところでは、もうちょっと多いのではないか、大体六千ぐらいと考えていいんじゃないかというふうに思います。ただ、その内訳を見てみますと、いわゆる国際結婚した人、あるいは向うの中国人にもらわれて行った子供というふうな、実質的に中国人になった人が大部分でございましてこの数字が、今申し上げました六千のうちの五千くらいを占めるのではないか、かように考えております。あと残りの千名程度がその他の人でございます。この人たちも、さしあたり帰る希望を持っておられる方は非常に少数であろう、かように考えておるわけであります。先ほどの御報告にもございましたように、集団引き揚げはこれで終りであるというふうなことを言われたという御報告がございましたが、私どもも、そういう話があったということを聞いております。ただ、この集団引き揚げにつきましては、私どもも、昨年の今時分ごろからいろいろ情報を集めまして、大体集団引き揚げも底をついてきたというふうな予想を立てておったのであります。ただ、その当時といたしましては、昭和二十七年ごろまでに消息がありまして、二十八年以降、消息を断った人たちが千名余りあったわけであります。この人たちがどういうふうな状況にあるかということが、実ははっきりしなかったのであります。集団引き揚げが今後あるとすれば、その辺が集団引き揚げの対象になるのではないかというふうな予想を立てておったわけであります。今回二千人余りの人が帰ってみえたわけでありますが、その内訳を見てみますと、実は二十八年に消息を断って、昨年またその消息がぼつぼつつき出したという人たちが大部分でございます。そういうふうな判断からいたしましても、大体さしあたり帰る希望を持っておられる方は、今回の船でほとんど全部お帰りになった。今後個別引き揚げという形式で援助はしてもらえるというふうに伺っておりますので、そういうふうなことを考えますと、集団引き揚げは終りましたということになりましても、引き揚げそれ自身が終ったわけではございませんし、今後引き揚げに支障を来たすというふうに考える必要はないのではないか、かように判断いたしておる次第でございます。  次に、ソ連地区でございますが、ソ連地区は、大体生存して残っておられるというふうにこちらで想像いたしますのは、シベリア本土に二百人、それから樺太に約七百人程度でないか、かように判断いたしております。このシベリア本土の二百人は、大体国際結婚とか、あるいはまた、ソ連の籍をとっているというふうなことで、ほとんど帰る希望のない人たちだけのように承知いたしております。樺太の方につきましては、二、三百人程度の帰国希望者が、まだあるのではないかというふうに見込みを立てております。その二、三百人につきましても、やはりソ連籍をとっておる、あるいは朝鮮籍になっているというふうなことで、個々にその手続をとりまして、日本人であるというふうなことをはっきりさせて、許可を得るという手続が必要でございますので、そういったことを外務省にも援助方を申し出て御努力いただいておるわけであります。そういうふうな次第でございますので、それも大体個別的に手続の済んだ者からぼつぼつ帰ってくるという形をとるのではなかろうか、かような見込みを立てておる次第であります。  以上、概略申し上げたわけでございますが、なお御質問がありますれば、追加してお答えいたします。
  13. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 そうしますと、今からぼつぼつ帰るということになりますと、その方々は自費で帰ってくるわけですか。
  14. 河野鎭雄

    河野説明員 現在南方方面には、もう集団的な引き揚げはございませんので、主として個別の形で帰っていただいております。個別引き揚げの際につきましても、旅費は国でもって負担をしてお迎えするというふうな格好をとっております。また、受け入れの場所につきましても、帰ってくる方の便宜のところを選んでいただいて、検疫所がございますので、そこに援護局からもなれた人が行っているわけでありますから、そこで入国の手続あるいは検疫を行いまして、受け入れするというふうな形をとっております。今後もそういう方法でいきたいというふうに思っております。
  15. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 それを聞いて安心したのです。今まで集団引き揚げでくる場合には、船まで日本の船を出して、船の中から日本のにおいをかいでこられた。今から個別引き揚げになると、自分たちで旅費その他まで負担しなければならないという心配がみなあったのですが、今のあなたの御説明で了解しました。それは、引揚者だからそういうふうな国の恩典が与えられている。そういうことになりますと、今度の引き揚げの中に、私が御報告申し上げましたように、二名の華僑が乗っておる。こういう人たちを、なぜ引揚船に乗せたか。聞くところによると、その中の一人の張立文というのは、ことしの二月に華僑送還で中共へ渡った人だという。それがまた今度帰ってきた。それでは、まるで引揚船が、日本海を自由にただで行ったり来たりできる定期船みたいなものになるだろうと思うんです。その船賃がどうなったかということが一つ。もう一つは、今度の密出国者六十五名、行くときは日本の国法を犯して、人民艦隊でどかどか行って、帰るときには一般引揚船の中に入ってきて、われわれはペン・ネームを使っていた、今からわれわれは本名にする、こう言うておりました。私たち代表に会ったところが、この本名でも、あなた方警察官はつかまえ切らぬでしょうと豪語しておりましたが、そういう方々の船賃はどうなっているか、引揚者との関係をあなた方はどうお考えになるか、これは明快に御答弁願いたい。
  16. 河野鎭雄

    河野説明員 全く私どももお話のような気持を持っておるわけであります。引揚船引揚者でない方が乗ってくるということにつきましては、非常に遺憾に思っておるわけであります。その人たちは、本来引揚船に乗るときに、引揚者でないその人たちが乗ってきてしまったということで、日本人であるということであれば、送り帰すということもできないかと思っております。従いまして、船賃はちょうだいするということで話をいたしております。
  17. 中山マサ

    中山委員 ちょっと関連して……。今の御答弁を聞いておりますと、その運賃をちょうだいをすると、一体だれがちょうだいをなさるのですか。援護局がなさるのですか、それとも法務局が入国管理の違反者としてそれを取り調べた上で、それだけのお金をお取り立てになるのですか。これはどこの所管になるのでございましょうか。
  18. 河野鎭雄

    河野説明員 船は、実は国がチャーターをいたしまして、日赤にサブ・チャーターをして引き揚げ業務をやって参っておる、こういうふうな格好になっておりますので、終局には、国の収入に入れてもらうことになると思いますが、窓口としては、日赤を通じて取るというふうな格好にするのがいいんじゃないか、かように思っております。
  19. 中山マサ

    中山委員 日赤を通じて取るのがいいのじゃないかというようなクェスチョン・マークがついておるように思うのでございますが、もっとはっきりしていただきたいと思うのです。言いにくいことですけれども、たとえば、税金でも、超過したものはなかなか下げてくれないのです。私どもの自動車のお金も、五千円余分に取られたのですが、それも返すという通知があって取りにいったら、またいろいろな手続をさせられて、やっと半年ぶりか一年ぶり近くに返してもらったのでございます。そういう緩慢なやり方をこの問題でもやっていただきますと、私どもは、国会議員であると同時に国民であるのですから、国民代表なんですから、国民から取った税金でもってチャーターしてあるものでそういうふうな不法な行為がある場合に、うやむやにされるということは、私は国民に対して相済まないことであると思うのであります。聞けば、そういう人たちは非常にたくさんな金を持って帰ってきておられるという話でございますが、これは、一体赤十字を通じてやるのがいいのであろうなどというような不明瞭なことでは、私ども承知できないのです。一つはっきりと——きょうは日赤の代表者が来ていらっしゃらないのでございますが、日赤がそういうことをする責任を負わされておりますか。
  20. 河野鎭雄

    河野説明員 日赤には申しております。
  21. 中山マサ

    中山委員 申しておりますとおっしゃるだけでは、どうもはっきりと……。いよいよそれがどういう方式でもって取り立てられるか、もし、あなたがはっきりなさらないなら、一つ大臣からこの御答弁を願いたいと思います。最高責任者でいらっしゃいますから……。
  22. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 当然徴収をすべきものであると私考えております。ただ、今お話のございましたように、取って、それをどこでどういう処理をするかというようなことにつきましては、これは、まだおそらく政府部内で十分な相談をしてないと思いますので、その点は関係の当局に命じましてはっきりした形にさせたいと思います。
  23. 中山マサ

    中山委員 続けて済みませんですけれども、ぜひ一つ、私、こういうことははっきりさせてもらいたいのです。どういう方式で取るか、しかも、向うは金をうんと持ってきておるということが新聞紙上でも伝えられているのですから、これはない人からでも差し押えをしたり、いろいろの方法によって国内では取られているのですから、ぜひこのことは、取り立てたならば、どういう方法で取り立てたか、いよいよそれを取ったなら取ったということを、私はぜひこの委員会でもって御報告を願いたい。そうしないと、そういうだらしのないことでは、私どもは承知できません。とにかく、このごろは敗戦といううき目を見たためでございますか、日本国は外国からなめられておるというような格好が見えております。しかも、このいわゆる人民艦隊というものはどうしてできたかと申しますれば、結局国内の会社に共産主義者が入っていって、尼崎の尼鋼でもそうですが、ここでもって会社を破壊したその金、あるいはほかの会社も破壊して、そこにある品物を横流しをしてもうけた金でもって人民艦隊を仕立てて、それに乗って、しかも、北海道の白鳥事件の容疑者なども、これに乗って向うへ行っているのですが、そんなものがぬくぬくと、時間的にもういいだろうというようなことで帰ってくるとしたら、法務省もまるでなめられ切っておる。(「法務省はおらぬ」と呼ぶ者あり)きょうはおらないが、入国管理局の方がいらっしゃっておると思うのですが、そういうわけですから、この際、私ははっきりさせていただきたいと思います。われわれの国の尊厳のために、私は、これはぜひ申し上げて、はっきりさせていただかないと、われわれ国民の前に、あまりにもだらしがないというようなことでは、どうにもならぬ。今後もまだ引揚者が何らかの形でもって帰れる、運賃は見てやるのだという今の御答弁でしたが、今度のようなことでもって、ペン・ネームを使ったりしてまたやらぬということも断言できないと思いますから、この際、一つ厳然たる態度でこれを処分して、そういうことは通らないのだということを見せていただきたいということを、私はぜひお願いをいたしておきます。
  24. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 そこで、援護局に私の質問最後として一つお願いしたいことは、先ほど御答弁の中にあったように、四万を割る数字がまだ未帰還者として残っておる。これが、この委員会としても、あなた方としても、国民全体としても、非常な心痛の種なんです。ですから、これから先この問題を処理するために、今の未帰還調査部ですか、これをやはり拡充して、ちょうどよどんでいる水の中におりが残されているようなこの未帰還者ですが、私が行ってみましても、とにかく自分の主人が帰ってきているんじゃないかと、留守家族の奥さんが、きょうで二十何べんも来ている、名簿も何も見ないで、今度来ているのじゃなかろうかといって、舞鶴に行っている。それは援護局長よりも熱心に、数多く行っている。しかも、自分の金で行っている。こういう方々にお報いするために、私は未帰還調査の方の拡充をお願いしたい。これは、ぜひ厚生大臣の御努力をお願いしなければいかぬと思います。お互い一番悩んでおるもの、あるいはさびしがっておるもの、そういうものに国のあたたかい手を差し伸べるのが、なかんずく海外胞引揚及び遺家族援護委員会の大きな仕事だろうと思います。これは、一つ私の希望を入れていただきたいと思います。
  25. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまの御質問並びにそれに関連をいたしまして、私所見を申し上げておきたいと思います。  この引き揚げの問題につきましては、今日も、なお未帰還で不明の方々が、ただいま局長から報告のありましたように相当あります。ことは、はなはだ残念なことでございます。政府といたしましては、この引き揚げ方々最後の一人まで、本気でめんどうを見るつもりでございます。援護局の廃止の問題も、これは前国会に御審議を願いまして、厚生省設置法においてすでに十一月十五日限り廃止されることになっておるのでありますが、それは、大量の集団引き揚げが、もうこれから先あまり大したものがないでありましょう。そういうふうなことを考えますと、小規模の引き揚げだとか、個別の引き揚げについては、政府としても関係国とも連絡をいたしまして、今後とも熱心にやって参りたいと思います。これについては、現在ありますほかの施設等を活用いたしながら、十分やって参れるというので、前国会できまったような次第でありますが、今後とも努力いたして参るつもりでございます。  それから、中共の側におきまして集団引き揚げを打ち切るというような話が、これは少し強い言葉で、多少誤解をもって伝えられておるようでありますが、日赤の方から報告を受けましたところによります。と、帰国については、現在までに届出を受けた者については引き揚げを終ったので、従って、今後については大きな集団引き揚げはないであろう、将来帰国希望者が出た場合には、個別的に、従来通り援助することに変りはないという話を受けたそうでございます。政府といたしましても、なおこの点の引き揚げについての努力は続けて参りたいと思います。  それから、ただいまお話のございました未帰還の問題でございますが、本件につきましては、最後の努力をいたしまして、今後、もう一段といろいろな工夫をいたして参りたいと思います。前内閣のころから、未復員者、未帰還者の問題につきましては、閣僚懇談会を設けて相談をいたしているのでございますが、新内閣になりましてから、近く、またこの懇談会を開催いたして審議をいたして参りたいと思います。これにつきましては、国内におきましても、引き揚げ関係方々等からさらに一そう情報をとって、現地に残留しておられる方々の状態等が、一人でも多くわかるならわかるような努力をして参りたいと考えておる次第であります。なおまた、関係の国々に対しましても、さらにもう一段とこの調査の連絡をいたして参りたいと考えておるのでありまして、従いまして、それに必要な省内の組織等につきましては、十分これを活用いたして参りたいと考えておる次第でございます。繰り返して申しまするが、中共関係の問題につきましても、従来から中共側も、この引き揚げだけは人道上の問題として、政治問題とは別に、いろいろ便宜をはかってくれておるのでございまして、今後におきましても、この引き揚げの問題に関しましては、引き揚げの希望があり、そうしてその希望者に対しては、十分向う側からも連絡のあるものと考えておる次第でありまして、こちら側といたしましては、局長も申しましたように、旅費の便宜その他につきましては十分これを手配いたしまして、一人でも多く調査し、一人でも多く受け入れることを、一日も早くしたいと考えておる次第であります。
  26. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 大臣、今のお話、ちょっと私は甘過ぎるのじゃないかと思うのです。ということは、日本の赤十字から、集団帰国は終っても、なおかつ中共はこの問題についてめんどうを見てくれるというふうな御報告をいただいて、それをお信じになっておるようですけれども、私は、やはりこれは、もう少しまともにものを見ていただきたい。ということは、今までは確かにそうだったのです。大臣のおっしゃる通りだった。しかしながら、今度の引き揚げに当って、いわゆる中国紅十字会が、六十五名の人たちがああいうふうな人たちであるということがわからぬで乗せたとは私は思わぬ。日本の出入国の官庁もだらしがないけれども、中共の出入国の官庁もだらしがない。そういう意味から、私は、やはり真剣に考えなければならぬと思う。ということは、日赤の佐藤代表が、舞鶴でこういう談話を発表しております。「特に過去二十一回、三十七隻の中共帰国船が往復したのだが、その最後に当って中共側がこのような大量の密出国者を乗せたことは、人道に輝く愛の十三年という引き揚げの歴史に大きな汚点を印した」、そうして最後に、「これで集団帰国は打ち切られたことになるが、今なお中共には幾多の同胞が残っている。これら同胞の救出については、日赤は全力をあげるつもりである。しかし、すでに中共側は里帰りは援助せず、個別帰国についても、旅費のあるもののみあっせんするといった態度を明らかにしているので、旅費のない人は、こちらから迎えの船が出ない限りだめだということになる。一日も早く、政府はもちろん、日赤側も中国紅十字会と再度の交渉を行い、帰国の道がもう一度開かれることを切望します。」という談話を発表しております。これは、十三日のおそらくレーテストのニュースです。やはり、もう少し日本は吟味してかかっていかなければならない。私は、何も中国紅十字会の行為を曲解するのではないのです。人一人の人命の問題、大ぜいの人命の問題ですから、われわれの手で尽せる限り情報の正しいものを持ちながらやっていかれるという大臣の気持はわかりますが、その正しい情報の中に、向うの状況の変化というものが、こういうふうに現実に行われつつあるのじゃないかという御認識を持っていただきたい。とにかく、里帰りの一切の金はやらないし、旅費のない者は、こちらから迎えに行かなければだめだ。先ほどの答弁によって、引き揚げ上陸地で金をわが方が差し上げることができましても、しかしながら、そこまで出てくる金がないということになれば、これは永久に大陸あるいは南方の諸地域、樺太に捨てられるということになるのです。こういう問題についても、関係閣僚懇談会などが開かれるというならば、これはあと外務大臣もあるいはその他の関係大臣も来るそうでありますけれども、こういう認識までされて、私は、先ほど大臣の言われた善意が通るように御努力をお願いしたいということを最後に申し上げまして、私の質疑を終る次第です。これは厚生大臣に対する質疑です。
  27. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまの長谷川委員のお話につきましては、十分真剣に考えて参るつもりでございます。引き揚げの問題につきましては、もちろん引き揚げ自体の問題の主管官庁として、厚生省は真剣に努力をいたしますけれども、今回の密出国者の問題につきましても、塘沽出港後、船内で三団体に届出があったというような状況でございまして、なかなか厚生省だけでもやり切れぬ問題がございます。先ほどお話のございました密出国者の運賃の徴収といったような問題につきましても、これは引揚者以外の問題であって、関係当局の協力を得なければできぬ問題でありまして、いろいろな、そういったような問題がございますから、十分関係当局等とも相談をしながら、ただいまお話のございました御趣旨は十分私どもも考えまして、いろいろな連絡等もとりながら、真剣に、一人でも多くの人々を、一人でも早く、最後まで努力をして受け入れるつもりでございます。どうかこの上とも何かお気づきの点がございましたならば、お知らせを願いたいと思います。
  28. 臼井莊一

    ○臼井委員 ちょっと関連して……。先ほど厚生大臣は、最後の一人まで、なお未帰還者引き揚げについては援護の手を差し伸べるというあたたかいお話があったのですが、中共の方では、集団帰国を打ち切るというようなことも、ああいう国柄ですから、すべてに政治的な意図をひっからめてやっておるわけです。たしか、ずっと前にももうこれで終りだというようなことがあって、その後、また集団帰国につきましても復活したような事態があったように思うのです。そこで日本政府としては、さらに今後情勢の変化によって、もし集団的に帰国をするような希望があちらでまとまった場合には、いつでもこちらで——やはり従来と同じように、これで集団帰国を打ち切ったということは向うの言うことであって、日本としては、集団帰国があれば、これはいつでも応ずる、こういうことに当然解釈してよろしいと思うのですが、さようでございますか。
  29. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 日本政府といたしましては、もし集団的にまとめて帰国のできるような事態がございましたならば、これはぜひそういうふうに願いたいと思いまするし、それに応ずることは十分できるわけでございます。ただ、私重ねて申しますが、今回赤十字から報告を受けたところによりましても、里帰りの問題の援助をしばらく中止するというお話があっただけでありまして、引き揚げ自体の問題につきましては、集団帰国を打ち切るというふうなことではないので、帰国希望者に対する帰国の世話をやることに変りはないけれども、現在まで帰国届出のあった者についての引き揚げはもう終ったので、今後集団的な引き揚げはない、そうして個別的な引き揚げについては、従来通り援助することに変りはないのだという話がありまして、赤十字から公式に報告を受けたところによりますと、集団引き揚げの可能性があるにもかかわらず、わざとこれをしないのだというふうな申し入れを向うから受けてはおらぬようであります。これは、従来から中共側にも、この問題だけは政治問題と切り離して努力をしてもらっておりましたので、私もそれを信じておるわけでございますが、もし、まとまって帰国するようなことがございましたら、こちらも、ぜひそれを受け入れるのはもちろんでありますし、その便宜については、従来通りやるつもりでございます。
  30. 臼井莊一

    ○臼井委員 そうすると、集団の点については了承いたしましたが、個別引き揚げにしても、向うで援助しないというと、希望があっても、もし費用がないと引き揚げができないということになるのですが、今後は、日赤を通じて向うの紅十字会の方と、かりにそういう希望がある、しかし費用がないということであれば、紅十字会と日赤との間で、何かそういう費用の点で、こちらから費用を送ってやるとか、何かの便船でそういう方法を講ずるとか、そういうことができるのでございましょうか。また、そういうお考えがあるのかどうか。
  31. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 繰り返して申しますが、赤十字の方からの報告では、将来帰国希望者が出たときは、個別的に援助をすることは、従来通り変りはないということだそうでございます。ただ、ただいま長谷川委員から、ただそれだけの話でなしに、もう少し掘り下げて調査をしないと、もし、ほんとうの希望者があったときに辛い目にあってはいかぬという御趣旨につきましては、十分連絡をして調べてみたいと考えておりますが、今日では、一応向う側の話としては、引き揚げの希望者が出たときには、個別的な援助をするということには、従来通り変りはない、従来通りやってくれるものと今日は信じて参りたいと思います。その点は引揚者方々に辛い目がないように、十分連絡をとって調べて参りたいと思います。
  32. 受田新吉

    受田委員 大臣は非常に引き揚げ問題について楽観的な気持を持っておられるようでございますが、そうではなくて、あなたの今の御説とは異なって、日本国自身、日本国政府は、舞鶴引揚援護局を廃止して、この問題に一応ピリオドを打とうという態度を持っておられる。もう一つは、今、援護局長が仰せられましたが、もう集団帰国なんというものは考えられないだろうと、中共側が言う先に、もう日本の方が先に引き揚げ問題の終止符を予定して仕事にかかっておられる傾向があるのです。こういうところが、残された人々に非常に不安を与えている。私はさっき、現地の声を舞鶴で伺ったそのままを御報告したわけなんです。こういうことにつきましては、日本政府としては、進んでお帰りをお待ちします、集団帰国お願いしますという、あらゆる努力をして、受け入れ態勢をちゃんとしておく格好にしておかないと、向うの中共の紅十字会が言う通りに、こちらは集団帰国は終り、ああそうですかでは、個別帰国もなかなか期待できない。舞鶴援護局は廃止しましょう、こういう先手をこっちが打つ傾向があるのではないか。これが引き揚げ問題に熱意を持った政府のやり方とは言えないと思うのです。最後の問題が解決する来年の七月三十一日の、留守家族手当の支給を打ち切るその日くらいまでは、受け入れ態勢はちゃんとやって、調査究明の責任と、帰国促進の責任のある政府の最後の努力を尽す、そのぎりぎりまで受け入れ態勢を完備しておくということが、この問題に熱意を持つ政府のやり方だと思うのですが、三百、大臣の御答弁を願いたい。
  33. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 いろいろ御意見はあると思いますが、実はこの問題につきましては、前国会に、大体いろいろな引き揚げの情勢等からいたしまして、引き揚げの問題については、政府といたしましても、真剣に今後もやって参りたいということに変りはございませんけれども、残留者状況等から判断いたしまして、特別にあそこを常置する必要はないという御意見で、厚生省設置法の改正につきましても、与野党一致で御賛成を願って、もうきまったことであると、実はその引き継ぎを受けたわけであります。私この引き継ぎを受けまして、ただいまお話のありましたような問題について、いろいろ検討をいたしました。今日舞鶴の出張所の設備は相当のものでございますが、今後の問題につきましても、今までほどの非常に大きなものは大体考えられないようでございますし、ある程度の大きさのものが考えられましても、検疫所等もずいぶん大きなものがあるようでございますから、引き揚げができまする際には、万々遺漏のない手当はできるものと考えておる次第でございます。十一月十五日の廃止ということにつきましては、すでに前国会で、厚生省設置法の改正によりまして法律的にきまっておることでございまするので、これはこの通り実行いたさなければなりませんけれども、私は、それによって引き揚げに支障があるようなことは万々ないようにいたすつもりでおりまするし、できると考えております。
  34. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 外務大臣にお尋ねいたします。外務大臣は今御出席ですけれども、ここの委員会は、十三日の白山丸引き揚げ調査に行って参ってその報告をして、そのあと厚生大臣から従来の経過などをお伺いして、今からあとの処置についてお尋ねしておったんです。そこで、外務大臣が御出席なものですからお尋ねをしたい。要点を若干申し上げます。  一つは、一般帰国者諸君代表四名ほどと、国会から派遣された四名の委員がいろいろ懇談した。これは新聞で有名な、密出国者日本共産党党員の諸君とは違う方々です。そういう方々の話を伺っている周に、中共においては岸政権の評判が非常に悪い。たとえば、国旗の問題とか日中貿易問題等々が原因して、われわれ集団帰国ができなくなった、何とかこの点について国内において話し合いをしてもらいたいというふうな、日本をよく知らない方々でありますけれども、そういう希望があったのであります。そこで、最近わが内閣において五大使会議をお開きになったり、あるいはまた、外務大臣のお言葉として静観という言葉などが再び出ております関係から、この閉会中の国会において委員会の開かれたときに、これだけの熱烈な気持——政治にも外交にも何ら関係せずして敗戦の日本を見ることができずにとどまっておった方々が訴えられている気持に対して、今の外務省として、将来引き揚げを促進する意味においてどういう手を打ったらいいか、あるいは対中共問題についてどういうお考えであるかを、一つこの委員会を通じてオフィシャルにお話しいただくならば、われわれ委員として非常に参考になると思いまして、お尋ねしたいと思う次第であります、一つ率直に御解明いただきたいと思います。
  35. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま、引揚者からいろいろ中共事情等をお聞き下さいまして、それに関連していろいろ御意見が出ましたが、皆さん方がそういう点に心配していただいておるのに感謝をいたすわけであります。  岸内閣としましても、中共との貿易関係をこのままにしておくという気持はないのであります。御承知のように、日本が貿易で国を立てております以上、できるだけ各国との貿易量を増大し、ことに今年は御承知のように三十一億五千万ドルというような輸出目標を初めに立てまして、その線に沿ってやっておることでありますから、できるだけ中共との間におきましても貿易関係を民間において増大もでき、また円滑にもいくように、これに対して支持と協力を与えるということについては、従来通り変らないわけであります。ただ残念なことには、ただいまお話のありましたように、中共側で岸総理についていろいろな批判をいたしております。ずいぶん激しいような見方もしておるようでありまして総理が何か中共に敵意を持っているようなことを言われるような言説があるわけでありますけれども、しかし総理としては、そういう考え方は持っておらぬので、今日まででも、ただいま申し上げましたような方針のもとに終始一貫過ごしてこられておるのであります。そういう点については、総理の気持というものに対して中共側が何か誤解をしているのではないか、また、いろいろ過去のいきさつの上から、感情の問題もあるのではないかというふうに考えられるわけであります。従いまして、私どもは今日静観という態度をとっておるわけであります。要するに、私どもは、それらの誤解が重なって参りますことは、日中貿易関係を打開する上において適当でない。また、日本側においていろいろな言説をしゃべりますことが、また新しい誤解を生むというようなことがあってもならぬので、従って、そういう意味において、われわれはなるべく静観をしておるという態度をとっておるわけであります。この静観ということは、何もしない、あるいは日中貿易を否定する立場で静観をいたしておるというのではないのでありまして、静観をいたしておることの方が、むしろ早く日中貿易を再開する何か糸口をつかまえ得るのではないかという考え方のもとに、静観をいたしておるわけであります。ただ、中共側がそういうような態度にありますことのおもな原因がどういうところからきているのか。これはいろいろに言われるわけでありまして、ただ岸総理が憎いというだけでなしに、その他いろいろの原因もあろうかと思いますが、どれがそういう原因の一つであるかということを言いますこと自体が、まだ危険であろうかと思うのであります。従って、われわれとしては、やはり共産圏全体の動向なり、あるいはソ連とアメリカとの国際政治の大きな関係なり、また中共自体の持っております性格なり、あるいは中共側におきますいろいろな事情なりというものをもう少しよくつかんだ上で、直接の対策を立てていくということが必要だと思うのであります。そういう意味において静観をいたし、われわれは多くをしゃべりませんけれども、そういう意味において中共側の考えておること、また、中共側事情等を十分調べた上で、そういう問題に対してわれわれがどう対処していくかということを考えておるわけであります。そういうことで、現在の段階におきまして引揚者等にも御迷惑をかけるようなことは、まことに遺憾であります。でありますから、われわれとしては今申し上げたようなことで、静観といっても、決して否定的な態度で静観をしているのでないということだけは御了承願いたいと思います。
  36. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 それ以上のことは当委員会とあまり関係がないから申し上げませんが、政治、外交、みんな一緒であるところの中共ですから、いろいろ扱いにくい点、あるいは折衝しにくい点があると思います。しかしながら、引き揚げの問題については、結局するところ、国の大きな政治の働きかけによって中共との間を打開しない限りにおいては、どうにもならないという不安を持っている面が非常に多い。そこで、これは大臣の御説明で了承する面もありますが、前内閣時代には、内閣の中に関係閣僚懇談会がありました。ただいま厚生大臣は、そういうものなども活用しながらやるというお話があったんですが、今、約四万ほど未帰還者が残っておるわけです。先に帰ってきた方々は、苦労しておられる方々もありますが、あるいは国内でそれぞれの仕事についた方々もあります。この四万の人々については、結局受け入れた後のことは厚生省ですけれども、それの尖兵となって働いていただくのは外務省の役目でございますから、ぜひただいまお話になったようなお気持で御努力下さらんことをお願いいたしまして、私の質疑を終ります。
  37. 田口長治郎

    田口委員長 受田君。
  38. 受田新吉

    受田委員 私は、外務大臣にお願いではない、要求しなければならない事態になっていることを非常に悲しむものです。今回の引き揚げ方々をお迎えに行って、その人々共通した報告の要点を先ほど御報告もしたのですが、その中に、現に中共に残留しておられる方々がひとしく不安を抱いていることは、今後集団帰国ということは期待できない、また、日本中共との関係は非常に悪化しておる、岸政権は極度に中共を敵視しており、しかも、最近国旗掲揚問題などに関連して、日中貿易についても暗礁に乗り上げている、こういうようなことから、今後の引き揚げ問題はまことに困難であるという異口音同の報告を聞いてきたわけなんです。そこで、大臣に一つ腹を割って決意を表明していただきたいことは、この引き揚げ問題が、集団帰国はない、しかも、今後の個人帰国についても、旅費を本人負担にしてくれ、こういうようなところまでいき、また、三団体代表と紅十字代表との会見においても、ことごとに日本に対するきびしい批判に終始しておったというこの現実を、どう解決していくかという問題であります。そこで、来年の七月三十一日をもってこの留守家族に対する手当を打ち切るということを、夫帰還者遺家族援護法ではっきりした規定を設けておりまして、それまで、政府は未帰還者の調査究明と、その帰還促進に全力を払わなければならないと、この法律の二十九条に明記してあります。政府はこの困難な段階で、来年の七月三十一日で留守家族手当を打ち切ろうという、いわば引き揚げ問題のピリオドを打とうというこの迫った段階で、いかなる手を打って、悪感情の中国に対して、この引き揚げ問題の解決をなさろうとされるのか、外務大臣の御決意を承わり、さらに答弁によって質問を繰り返します。
  39. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 引き揚げ問題は人道上の問題でもありますので、われわれとしても、熱意を持って今日まで善処してきたつもりでありますが、むろん、お話のように、われわれとしては今後も善処していきたいというだけの努力は払っていきたい、こういうふうに考えております。ことに、お話のように、一応法律が来年の七月ということにもなっておりますから、相当長期にわたっておりますので、できるだけこういう問題については努力して、短期間に片づけることが適当だと思うのであります。同時にまた、これは人道問題でありますから、中共側におきましても、いろいろ政治的にあるいは経済的に、日本に対して私は誤解と言いたいのでありますけれども、まあ、誤解もあり、あるいは中共側から言えば正解もあるかもしれません。そういう点もあろうかと思いますが、そういう点から切り離してこの問題だけは中共側も相談をしていただきたいと私は熱望いたしておるわけであります。同時に、政府といたしましても、御承知のように、過去においてジュネーヴにおいて、領事の間でこういう問題については話し合いをさしておりますので、そういうルート等も使いまして、今後もこの問題は、他の政治もしくは経済問題とは別個に、日本側も熱意を持ってやり、中共側もこの問題だけは熱意を持って取り扱って、いろいろ誤解もあり、あるいは正解もあるかもしれませんが、日本に対する感情の問題を別にして、中共側でも扱っていただきたい、こういうことを熱望いたしておるわけであります。
  40. 受田新吉

    受田委員 今、日本の国には、戦時中中国から連れてきた労務者四万のうちで、七千という人々の遺骨がまだあるわけです。そのうち、一部三千名ばかり送還しましたが、あとだいぶ残っておる。この人々の骨を中国へお返しして、まず日本側の誠意のあるところを示すという努力を外務大臣としてもなさるということ、現に慰霊実行委員会というのがあって、参議院の大谷さんが会長をしておられます。この慰霊実行委員会とよく話し合いをされて、共同でこの問題の解決に当るということを、この際外務大臣として勇敢に実行されたならば、中共の印象が私は大いに緩和すると思うのですが、そのことが一つ。もう一つは、そういう努力を払うとともに、日本政府の、あなたのおっしゃるような誤解を受けているという節があるならば、その誤解を解くために、直接政府が、陰で援助した親善使節のごときものを中共に派遣をして、その使節の力でこの問題の解決に好転の道を開く努力をするというような、具体的な問題が幾つか私はあると思うのです。そのことを、どれかあなたの方で御検討されておると思うのでございますが、どれかを勇敢にやって、中共日本に対する悪感情を解消するという努力をされることが問題解決の糸口だと思うのですが、いかがでしょう。
  41. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日本にあります遺骨の問題でありますが、これは外務省の直接の担当ではございませんけれども、従来の民間団体では、もうある程度限度がきた、従って、政府自身の手で遺骨の収集をやり、その送還という問題については外務省がこれをお引き受けしてやるような話し合いも、すでについておりまして、その限りにおいて、われわれはできるだけの努力をして、りっぱにそれを送還していきたい、こういうことを考えておるわけであります。これも、問題は人道上の問題でありますし、また、過去においても、われわれできるだけ民間三団体に協力してそういう問題について進んできたと思いますが、今後とも、中共側が政治あるいは経済的に日本に対していろいろな批評をいたしましても、そういうこととは少しも関係なしに、われわれとしては進めていくつもりでおるわけであります。  なお、第二の御質問は、将来、こういう問題について具体的に何か両国の関係を逐次戻していくような方法を考えておるかどうかということなのであります。先ほど申し上げましたように、私どもが静観をいたしておるのは、否定的な立場で静観をいたしておるのではないので、できるだけ静観をいたしておって、そうしてあまり中共側を刺激するような言説その他の行動がない方が、かえって早く中共側の誤解を解くゆえんではないかということでありますので、従って、先ほど申し上げましたように、中共側の考え方なりなんなりを十分研究もいたして、それらの原因等に対する対応策も考えて参らなければならぬと思っておりますし、また適当なそういう時期にありますならば、むろんそういう適当な人の行き来によっておのずから何かの打開の方法をつけて参るとは、一つの方法論として重要な方法論だと思います。ただ、現在の段階において、あまり公けな形でいろいろな人を出そうとかなんとかいうことは、私ども静観の立場から見ましてあまり適当でないのではないかというふうには考えておりますが、しかし、内面的に、いろいろな意味において、将来そうした具体的な問題の展開ということについては、考慮いたしておるわけであります。
  42. 受田新吉

    受田委員 静観が来年七月まで続いたらおしまいです。私はそこを申し上げたのです。昨年九月、あなたはこの委員会でも、何らかの形で、そうした日本の親善の意思を代表した形のものを中共に派遣したいというような気持も持っておられたようですが、そういう気持が具体化しないじゃないですか。これでは、とてもとても、この静観は傍観になってしまって、最後までこの問題の解決はできません。あなたとしては勇気をふるって、この集団帰国最後報告を受け、通告を受けておる直後、外交上の手を打たなければならないと思うのです。しかも、今度帰られた人々が異口同音に言ったことの中に、国旗掲揚問題をめぐって、第四次貿易協定の跡始末について、日本は非常に冷淡であるということに対する悪感情が現地に満ちあふれておることも、これはおおい隠すことができない。従って、赤城官房長官も、すでにこの日中貿易議員連盟の解散という問題については非常に批判的な気持を持っておられて、この第四次貿易協定を完全に実施するための努力をすることが、中共との関係を緩和し、親善に踏み込む第一歩であるという気持は持っておられるようでありますが、自民党の内部には、一部には解散論を唱え、一部にはそういう好意的な人もある。こういう格好で今迷っておるようですけれども、この第四次貿易協定を完全に実施して中共側に好印象を与えて、同時に、引き揚げ問題の解決に一歩前進をはかるという努力、こういう問題は、大臣としてもちゃんとお考えがあると思いますが、現在の心境からする決意を伺いたいと思います。
  43. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 何か私が勇気がないようなお話でもありますけれども、そう猛勇というようなものは平生持ち合せておりません。しかし、勇気を出しますときには、静かな中でも勇気を出すつもりでおりますので、従って、何か非常にいくじないようにごらんになるかもしれませんが、決してそういう気持でおるわけでもないわけであります。私としましては、先ほどから申し上げておりますように、むろん、日本中共との貿易問題は日中間の一つの大きな問題であります。従ってこれらの問題を解決するにつきましては、適切な時期に適当な手を打って考えていくということは、必要なことであります。これは、勇気のあるなしにかかわらず、当然やるべき考え方だと思うのであります。ただ、そういうことが一番適切な時期にいきませんと、またそういうことのために、さらに損をするというようなことがあってもいかぬのであります。特使の希望者は、自薦、他薦たくさんありますけれども、そういうような人を簡単に考えるというようなことも、私どもは必ずしも適当じゃない。やはり適当な時期に適当な方に行動していただくということが必要なのだと思うのであります。そういう意味において、私どもも決して勇気かないわけではございませんし、やるべきことはきっぱりとやっていきたい、こう考えております。  日中貿易の議員連盟の問題については、党が何かそういう問題をおきめになった、あるいはなりかけたというようなことを伺っております。総理も、この間からお話のありましたように、必ずしも総理自身それが最適であるとも考えておられません。しかし、また議員連盟そのものの過去の功績というものもあります。また、新しい時代に対処する方法として、何か新しい組織が要るという形も考えられると思います。それらの問題については、私としては、やはり研究をしていく必要があると思うのでありまして日中貿易を打開するに伴って、方法論の一つがやはりその中にあるのではないか、こう考えております。
  44. 北條秀一

    ○北條委員 引き揚げ問題に関連してでございますが、先ほど厚生省援護局長から、シベリア本土には二百人の未帰還者があって、それの全部が国際結婚をしておる、そうして日本帰国する希望もない、樺太には七百人の日本人がおって、そのうちの三百人が帰国を希望するけれども、あとの四百人は国際結婚をしており、帰国の希望がない、こういうお話があったのであります。それではシベリア本土におる二百人の日本人と、樺太におる四百人の国際結婚をしておる人たちは、当然国籍の問題がやかましくなってくるわけでありますが、これは外務省の所管でありますから、これについて、一体どういうふうな処置をされておるのか。また、わずかなことでありますけれども、この問題を事務的に外務大臣処理を進められることが、四万人に近い未帰者還の大部分ソ連におるわけでありますが、行方不明者の調査をする上に、私は大きな足がかりになると考えるのであります。今申しましたシベリア本土の二百人の人たち及び樺太の四百人の人たちの国籍の問題を、どういうふうに処理されるのか。突然の質問でありますから、あるいはどうかと思いますが、もし、この際お答えできますならば、はっきりとした態度を表明してもらいたいと思います。
  45. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 実は突然のお尋ねでありまして、私も詳しい御返事ができかねると思いますから、後ほど、そういう人たちの問題につきまして事務当局から御答弁させることにいたします。
  46. 受田新吉

    受田委員 私、昨日通告をしておまましたが、引揚援護問題に関連した在外財産の補償関係で、韓国に残された引揚者の財産を放棄するような日韓会談の結論が出たというように了承しておりますが、さようでございますか。
  47. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 日韓会談はただいま進行中でございます。日韓会談において財産請求権その他の問題を処理いたします委員会ができております。ただ、日韓会談は御承知のように、必ずしもわれわれが考えておるように進行いたしておりません。まことに遺憾だと思うのでありますが、しかし、できるだけ日韓会談の中でそういう問題を解決していきたいと考えております。
  48. 受田新吉

    受田委員 在外財産の所有権そのものを放棄するという日本側の意思表示がされたのではないでしょうね。まだ正式にされていませんね。
  49. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、韓国にあります財産は、アメリカが韓国を占領いたしましたときにこれを取りまして韓国政府に渡したわけであります。従って、この問題については、日本側の請求権はないように考えられるのであります。従って、韓国との間の問題につきましては、この問題を見合って解決するということになっております。
  50. 田口長治郎

  51. 受田新吉

    受田委員 今、引き揚げ関係をお尋ねしておるわけです。それは、非常に薄弱な外交の関係でそういうことになっておる。韓国側引揚者の在外財産について、それだけはっきりした態度で、外務大臣がこれにあきらめを持っておられるということは、初めて承わったわけであります。日韓会談のそういう停滞の原因が、きのうも通告を申し上げたように、矢次特使の派遣からそういうふうに派生しておる。つまり、韓国を日本は侵略したのだ、韓国併合は日本の侵略だという矢次特使の発言が、日韓会談が非常に日本側に不利に発展しておるということを大臣は御存じでございましょうか。そういうところからきて、韓国に対する侵略というあの矢次特使の発言は一体どういうものかということと、あなたは、矢次特使の韓国を侵略したのだという発言に対して日韓合併は韓国を日本側が侵略したものであるので、これに対する陳謝の意味をもって日本の外交をしなければならぬという態度で日韓会談に臨んでおられるかどうか、これを一つ伺って質問を終りたいと思います。
  52. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 矢次君が行きました際に、どういう言説を弄しましたか、私は存じません。むろん、そういう言説を弄したとは私ども考えておりませんし、私は同行いたしたわけでもありませんから存じておりません。私は、日本が韓国と合意の上で日韓間の話し合いができたと思っておりまして、そういう問題について特に陳謝をするということは考えておりません。ただ、日本が合邦時代におきまして何か態度の悪いところがありましたならば、そういう問題については考えなければならぬと思いますけれども、日韓合邦そのものが侵略だとも考えておりません。
  53. 田口長治郎

  54. 戸叶里子

    戸叶委員 一点だけお伺いしたいと思うのですけれども、受田委員に対する外務大臣の御答弁を伺っておりますと、中共との関係はあくまでも静観の態度であるというこの御答弁は、前の特別国会においての各委員会の答弁とちっとも変っていないわけで、幾らそれが否定的でないとおっしゃいましても、静観は静観で、何ら前進はないと思うのです。そこで、今の答弁を伺っておりますと、適当な時期に適当な手を打ちたい、こういうことでございますが、適当な時期に適当な手を打つということが、なるべく早く、機を逸しないようにしてほしいということを私どもは望むわけでございます。引き揚げの問題につきましては、日本人である以上、だれでも外地にいれば帰ってきたいという気持はあるわけでございまして、先ほどの舞鶴へ迎えに行かれました長谷川委員のお話の中にも、引き揚げてきた人のお話を聞きますと、一人の婦人が、病気で休んでおられて非常に切ない思いをしていたということも聞いたわけでございます。そいう方が、いろんな形で早く帰されなければいけないと思いますけれども、その問題につきましては、あとから厚生大臣に伺うこととして、そういう方々に対して、せめてもの慰めである小包なり何なりをお送りしたくても、今日では、国交が回復しておりませんので送れないわけでございますが、何か送るような手はございませんでしょうか。
  55. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 第一問は、静観が遅くなってはいかぬということだと思うのであります。むろん、貿易の関係を早く改善いたしますことは希望されるわけであります。ただ、十分に感情の問題その他が理解されてこないときに、あまり急速に手を打ちましても、第二、第三の感情のもつれを起すというようなこともあるわけであります。そういう意味において、私どもは適当な時期に適当なことを考えていくというのが、現在の静観の態度であります。  第二の御質問は、何か中共在留者に対して小包等を送る方法はないかということでありますが、現在の段階では、おそらく国際赤十字を通じてやるという以外には適当な方法はないかと思うのであります。日中関係が先般のような情勢に陥らなければ、技術的に郵便等の問題が取り上げられる時期があったかと思いますが、現在は、必ずしもそういう時期でないと思うのであります。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 これは、もしも日本中共との間に郵便協定のようなものを結びましたら、すぐに解決できる問題だと思うのです。国交が国復されていなくても、そういうふうな協定を結んで、そして積み上げていくという方法もあると思うのです。この際、向うにおられる気の毒な人たちに、せめても小包を送ってあげて、そしてその方たちが早く帰れるようにするのは当然ですけれども、それまでの間にも送れるようにする意味においても、あるいはまた中国との間の一つの前進、静観の前進という意味からも、やはり郵便協定のようなものから始めていかれたらいいのじゃないかと思うのですけれども、それに対するお考えはいかがですか。
  57. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 前内閣のときにおきまして、日中関係が漸次貿易上の問題で進展しつつある際に、技術的に郵便の取りきめができる方法というようなものを考えておったこともあるわけでございます。しかし、今のこの段階におきましては、そういう問題はおそらく取り上げることが非常に困難だと思います。従って、現在の段階そのものにおいては、やはり赤十字等を通して、人道上の立場から、そういうものを送ることを話し合いする以外に方法がないのではないか、こう考えております。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうな態度を持っておられたのでは少しも前進しないのであって、やはり人道上の問題として考えたときに、当然そのくらいの話し合いは、中共との間の静観を打破する意味の一つのきっかけとして、今度の引き揚げの問題にもからんでぜひやるべきではないか、こういうふうに私は考えるわけでございますけれども、外務大臣がこれに対して、今やるべきではないとお考えになる理由はどこいら辺にあるのでしょうか。
  59. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私は、若干御質問の趣旨を取り違えて御答弁申したように思いますが、今、私の申し上げたのは、事務的であろうと、一般的な郵便の協定ということはむずかしいと思います。しかし、引揚者あるいは向うに残留している人だけに対して何らかの方法をとるというようなことは、これは今申し上げましたように、赤十字の方法がとり得る一番有効な方法だとは思いますけれども、お話のように、それだけの問題として、人道問題等と関連して話し合いをし得ることはお説の通りかと思います。そういう問題については、十分考慮して参りたいと思います。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 もう一度確かめておきたいのですが、それでは、人道上の問題とからんでいるから、話し合いをして、郵便協定のようなところまで進んでいいというふうに了承してもよろしゅうございますか。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私どもの観測では、現在の段階において、中共側がそういう問題を取り上げるというふうな観測はいたしておりません。従って、一般的なそういう問題については、技術的な問題でありましょうとも、いま少しく貿易問題その他が解決していかなければならぬのではないかと思います。ただ、先ほどお話のありましたように、引揚者だけに対する特別の措置というような問題については、御質問の御意見もありますことですから、われわれとしても十分留意をして処置して参りたい、こう考えております。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 郵便協定のようなものは、向うの方がおそらく応じられないだろうから無理だというようなことをおっしゃったわけなんですが、しかし、まだ帰ってこられない日本人たち、そういう方に対する小包の問題なんかは考えてもいいというふうな御答弁でございましたけれども、それでは、具体的にどういうふうな形でお考えになろうとしていらっしゃいますか。
  63. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほど申し上げましたように、今日まででも、引き揚げ問題その他については、ジュネーヴの総領事館あたりでもって話し合いを一時いたしたのでありますから、そういうルートをもって、そういう話し合いはやることが可能かと思います。
  64. 田口長治郎

    田口委員長 長谷川峻君。簡単に一点だけにお願いします。
  65. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今まで中共の方にばかり話が走ったので、引き揚げ一般的な話に触れなかったから、この際ちょっとお伺いいたします。未帰還者の分布を見ますと、ソ連関係が七千七百人、それから北鮮が二千二百人、中共地域が二万五千五百人、南方地域が二千七百人となっておりまして、これは断然共産圏が多い。こういう関係から見ますと、国交回復を見ているソ連や南方よりも、国交未調整の北鮮と中国地区が多いのです。そして、これらの三万八千名の未帰還者の大部分は、今日まだ生死がわかりません。戦後すでに十三年もたっておりますけれども、こういう状態にあることは留守家族としても耐えられませんし、この委員会のわれわれとしても耐えられない。これに対しまして、厚生省においては援護局があり、あるいは未帰還調査部があります。しかし、これは何といっても内地のことですから、外地のことはどうしても外務省にお願いしなければなりません。ですから、この際、国交が回復しているところと、未調整のところに対して、どういうふうにそういう引揚者の問題について外務省が御調査されているか、そういう点を一つお伺いしたいと思います。国交回復のところと、未回復のところと別々に、外務省としてどういうふうな手を打って御調査をしているかということをお伺いしたいと思うのです。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 御承知のように、国交を回復しておりますところは、正式外交ルートをもって話し合いをいたしておるわけであります。国交未回復の国については、非常に困難でありますが、中共等に対しては、先ほども申し上げましたように、ジュネーヴにおける総領事館の話し合いというものが今日までもあるわけであります。そういうルートをもちましてやりますと同時に、国際赤十字社等を通じて当該政府等に話し合いをしていくという方法をとりたいと考えております。
  67. 受田新吉

    受田委員 公安委員長を待つ間、ちょっと河野引揚援護局長に伺いたいのですが、この間、舞鶴警察隊が六百名来たわけです。今、公安委員長たる国務大臣が来ますから、それに関連して先にあなたに確認しておきたいと思います。  厚生省の所管である舞鶴引揚援護局の構内で、警察隊が検挙に乗り出したわけです。これは、厚生省警察庁との間に十分な連絡があって行われた事態であるか、あるいは警察庁は独自な立場で、厚生省の意思を無視して行動されたのであるか、お伺い申し上げたいと思います。
  68. 河野鎭雄

    河野説明員 厚生省といたしましては、この六十五名の人たち引揚者じゃございませんので、実は、厚生省の援護の対象ではないわけであります。しかし、その他に多数の一般引揚者が帰ってこられますので、この人たちの受け入れに支障を来たすような事態になりますことは、われわれとしても非常に困る。われわれとしてというよりは、むしろ引揚者方々に非常な迷惑をかける。そういう事態になることは非常に困る次第でございますから、そういう立場から、警察と申しますか治安当局に、一般引揚者の受け入れに支障があるようなことをしてくれるなということはよく連絡をいたしたのであります。ただ、司法権の行使につきましては、厚生省といたしましてもこれを妨げるわけには参りませんので、そういう立場から、警察の方が援護局の中に入ることも了承せざるを得なかった、こういう事情にあったわけでございます。
  69. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、厚生省側は警察庁の御要求に応じて、構内を利用して警察権を発動することを認めた、かように了解してよろしゅうございますか。
  70. 河野鎭雄

    河野説明員 一般引揚者に迷惑をかけないという方向で、司法権の行使をされることについては、消極的にこれを妨げないという態度をとったわけであります。
  71. 受田新吉

    受田委員 これは事務的な問題ですから、厚生省の局長と警察庁長官のお二人にちょっと確認したいことがあるのですが、厚生省が、一般引揚者と分離して密出国者引き揚げについて措置すべしという要求をしたのであれば、引揚援護局の構内は、密出国者の上ってくるところとしては適当でないと一応認められたわけですか。
  72. 河野鎭雄

    河野説明員 お説の通りに、これは引揚者でございませんので、引揚者とは別に、あるいは援護局に入らないで、ほかのところに上陸してもらうことができれば一番よかったと思うのであります。そういう線で話し合いもしたわけでございますが、やはり日本に帰ってきたということで、そこまで峻別しないで援護局に上げてもらいたいという気持もわからぬではないということで、一般帰国者に迷惑を及ぼさないという前提が成立するならばやむを得ないではないかということで、援護局のあります桟橋の方に上ってもらった、こういう実情にあるわけであります。
  73. 受田新吉

    受田委員 当日、河野引揚援護局長舞鶴におられなかったわけです。引き揚げ問題についての担当行政官としては、局長さんが一番責任の地位にあられる方なんで、そうした現地の重大な事態に対して、厚生省が東京から電話で指示をするという格好では、なかなかそこの間が円滑にいかない。先ほど長谷川君が御報告申し上げたように、密出国者組は、一般引揚者よりも六時間も七時間もおくれて上陸するというような事態が起ってきておるわけです。しかも、引揚援護局の構内には、六百名の武装警察官が網の目のごとく警戒網を張りめぐらして、舞鶴引揚援護局は、当時の事態から率直に申し上げるならば、警察官によって占拠されていた。そういう事態を、河野引揚援護局長は、東京の厚生省からながめておられたわけです。こういう問題の解決にみずから乗り出して、その間の円満解決に当るという熱意が厚生省の首脳部にはなかったのかどうか、特に大臣の答弁をわずらわすまでもなく、局長さんの御答弁をいただきたいと思います。
  74. 河野鎭雄

    河野説明員 係官を出します際にも十分打ち合せをしておりますし、東京におきましても関係の者と十分打ち合せをして、基本方針は、先ほど申し院げましたような態度で臨んでいくということで事に当っておるわけでございます。現地には、引き揚げ問題を最初から手がけておる有能な責任者たる局長もおることでございますので、その辺は、万抜かりなくやってもらえるものと考えておったわけでございます。
  75. 受田新吉

    受田委員 現地の一色引揚援護局長は、非常に苦痛の色があった。この問題の解決をどうしたらいいか、あの人は、警察権の介入を援護局の構内にしてもらいたくないという気持を持っておられまして、そういう努力を終始現地警察の首脳部との間で交渉されておったのでございますが、事態は非常に急迫した形になっておった。われわれ四人の国会議員が、あの席に大所高市からの存在として、でんと控えていなかったならば、重大な事態に立ち至ったであろうということを長谷川君とも述懐したのですがね。それほど警察権の介入は徹底しておりました。こういう点について、やはり局長さんは、現地局長に全権を委任するというのではなくて、御自身で円満解決のために乗り出すという熱情をお示しになることが、最後引き揚げ問題解決の機会でもあったし、きわめて適切な方法だったと思うのでございますが、その点、そうお考えではございませんか。あなたが東京におられた方が御都合がよかったでしょうか。
  76. 河野鎭雄

    河野説明員 私どもも、あそこの中で司法権の行使が行われるというふうな事態になるということについては、極力避けたいというふうな方針でおったのでございます。しかし、諸般の情勢上、そういうふうなことができないというふうなことでございまして、ああいうふうな事態になったわけでございますが、私が行ったから行かないからというような問題で結論が変ったというふうには、実は私も現在のところでは考えておらないのであります。
  77. 受田新吉

    受田委員 私は、今回の舞鶴上陸された帰国者のお迎えに行った一人でございます。ところが、私すでに二十回近く舞鶴にお迎えに行ったその帰国風景の中で、今回ほど、民主主義国家の姿の上に汚点を印したような格好の出迎え態勢というものを見たことがなかったのです。もちろん、また密出国者というような形の人が帰られてきたということも今までになかったわけですから、その事態が、特異のケースであることは私もよく了承します。しかし、警察権の発動が、平和な舞鶴援護局の構内に、あたかも重大な犯罪人を捜査する、逮捕するとかいうふうな格好の大とりもの陣の形式で行われたことが適切であったかどうかということは、これは非常に批判しなければならないところだと思うのです。私は、同時に行った長谷川委員と、警察官の側と上陸してくる密出国者団体の側と両方の間に立って、介入はしない形ではございましたけれども、できるだけ円満な形で上陸できるようにという努力をした一人でございます。六十五名の密出国者上陸に当って、六百名の警察官が動員されたということは、その配置と人員の数において、また、そのアリの目も漏らさぬという厳重な警戒網をしいて、あの平和な、十何年ぶりに初めて足跡を印するというなつかしの故国に帰られた方々のあこがれの地である舞鶴援護局の海岸に、あれだけの警戒網を張って、寄らば逮捕するぞというかまえで出迎えた方法が適切であるかどうか、この問題について、警察庁長官としての御意見を伺いたいと思います。
  78. 石井榮三

    ○石井説明員 受田委員が直接現地においでになりまして、つぶさに現状を御視察になられましての御発言でございますので、私はその点では深く敬意を表して、そのまま率直にお話を承わっておるのでございます。私は、現地からの報告に接しておるだけでございまして、現地を見ておるものでございませんので、あるいは間違っておる点がありますならば、それはまた御指摘をいただくことにいたしまして、私は現地から報告を受けておるところに基いてお答えをいたします。先ほど、現地に約六百名になんなんとする警察官を配置したということでございますが、私の承知いたしておるところでは約四百名であるというふうに聞いております。ただし、その他に、万一に備えてのいわゆる待機部隊というものを、警察は多くの場合に用意するものでございます。そうした、背後に万一の場合に備えて用意をしている待機部隊も含めれば、おおむね六百の数になるというふうに聞き及んでおります。六百と四百とでは大差ないということも言えましょうが、いずれにしましても、相当数の警察官があの舞鶴現地に配置されたという事実は、いなめない事実でございます。お話の通り久しぶりに故国に上陸される一般引揚者方々にはいい印象を与えなかったであろうことは、私も全く同感でございまして、そうしたことなくして、久々に故国の土を踏まれる方々が、ほんとうに気持よく上陸できるという情景であることを、私も念願をする一人でございます。今回は、先ほども御指摘がありました通り、全く今までに例のない、一般引揚者のほかに、いわゆる密出国をされた六十五名の方が乗船しておられた。これは遺憾ながら、密出国ということは、現在の現行法令上、法律に違反する行為でございますので、取締りの立場にあります警察といたしましては、これを放任するわけには参らない。従って、その警察の職責を全うする必要上やむを得ざる措置として、現地警察官を何がしか出動せしめざるを得なかったという事情は、御了承いただきたいと思うのでございます。ただ、その数が必要以上に多過ぎはしないかどうかという点につきましては、私もまだ詳細にここに承知をいたしておりませんが、今後のこともありますので、十分に反省すべき点は反省し、将来、改善と申しますか、そういった場合に対する措置として行き過ぎの点がありますならば、それは十分反省考慮いたしたいと考えております。今回の場合はやむを得ざる措置であった、かように私は現地報告を聞きまして承知をいたしておるのでございます。
  79. 受田新吉

    受田委員 やむを得ざる措置であったと警察庁長官は言われておりますが、直接現地の指揮をしておられた西本警備課長の話では、この六十五名が逃亡するというような場合であったならば、一人に対して一人の警察官がおればいい、六十五人ほど警察官がおればいいのだというお話だった。ところが、上ってこられた人々は、船中においてすでに名乗りを上げて、逃げも隠れもしない、すなおな形で上陸しますという、両手を上げた形で上ってきておるのです。そうした無抵抗で、しかも堂々と名乗りを上げて故国に帰ってきたという立場の人々に対する迎え方として、すぐ海岸から、都合によれば手錠をはめて連行しようという用意があったと承わっておるのでございますが、こういう形で、約その十倍の警察力をもってこれを逮捕せんとしたこのやり方は、民主主義国家警察権の発動としては、異常な発動方式であると考えていいのではないかと思うのです。私は、逃亡のおそれがある場合に備えての警察力は、一人対一人でいいのだという現地課長の声を聞いたときに、予備隊を合せて六百名を用意されたというところには、何か別の意味があったのではないか、それがどういう意味があったのか、一つお答え願います。
  80. 石井榮三

    ○石井説明員 確かにお話の通り、六十五名の方々上陸されるときには、きわめてりっぱな態度と申しますか、手数のかからない、きわめておだやかな態度で上陸されたのでございます。その結果から考えますならば、まさしく現地警察官の配置は多きに過ぎたのではないかということは言えようかと思います。そういう意味で、現地の警備課長はそういう述懐を漏らしたものと、私はただいまのお話を拝承いたしたのでございます。ところが実際には、事前には、一体最終的にどういう形になるかということが、警察当局としても判断に苦しんだように思うのです。従って、万一の場合に備えて、やや分厚い警察力を配置するということを一応考えておかなければならないのではないかという判断のもとに、そうした比較的分厚い配置をしたものと、私は考えるのであります。しかしながら、最初予想したような、最悪の場合に必要なだけの数を考えたとしても、その後、情勢の変化によってその必要がなくなった場合には、その情勢に即応して、現地の指揮官たる者が適宜適当なる判断を下しまして、必要最小限にとどめるべく、不必要な警察力は引っ込めるというような措置々緊急にとるべきものであると思うのであります。それが普通の場合のやり方でございますが、何分にも、おそらくその日は警察の方も、相当事態の成り行き等からして、冷静な判断を下すにはいささか興奮しておったような点も、あるいはあったかもしれません。そういうような詳しい点は、現地承知しておりませんから断定的には申し上げかねますけれども、おそらく現場の空気等からしまして、そういった点についての冷静な判断を下して、必要最小限度の警察力によって目的を達するというだけの、最善の措置がとられなかったというきらいがあるのではないかという感じはいたすのであります。従って、結果的には確かに多きに過ぎた警察力をもって職務執行に当ったという結果になろうかと思います。その点は、確かにその御批判を甘んじて受けなければならぬかと思います。そういう点は、先ほども申しました通り、将来十分考慮いたしまして、常に警察は必要最小限度の力をもって処するという根本方針だけは堅持するように、今後十分戒心して参りたいと思います。
  81. 受田新吉

    受田委員 今、必要最小限度の警察力の発動でがまんしておく基本原則に帰りたいと仰せられました。ところが、当日は海上保安庁の出動もあった。そして白山丸船長が私たちを迎えたときに、こう言われたのです。私は舞鶴に入港したときに、平和な舞鶴の海上に警備艇がウンカのごとく待機しておる。その中を入っていくのに、どういうふうにしていくか、進路を誤まるおそれがあるほど危険を感じたという。つまり、不愉快を感じたわけです。あの白山丸船長は、進路にそういうものがちょろちょろすると、実際困るわけなのです。こういうことをしなくても、もう船中ではっきり名乗り出ておる場合ですから、普通の方法で逮捕するなら逮捕する方法もあると思うのです。海上からもやっておる。海陸相呼応して待機しておるという形です。これは、私、船上を通じ、上陸地点を通じて、まことに不愉快な気持でその一日を終始したのでございますが、長官、こういうことを現地でマイクで報道しておったのですよ。つまり、密出国部隊が上ろうとするとき、一般方々に申し上げる、ただいまよりわれわれは職務執行をいたしますので、職務執行に支障の起らないように、このあたりは御協力してくれといって、退散させたのです。すなわち、岸壁に近いところへ一般人々を退避させて職務執行をする、こういう報道をするものですから、上ってきかけて、またあっちへ行っちゃった。つまり、すぐ平穏裏に上ってこなかった。そこで交渉が始まった。こういう形では、逃げも隠れもしないという名乗りをあげて、全く無抵抗で上ってくるような人には、平穏な形でこれに警察権の発動をされることが適切ではないか。しかも、京都から十台の自動車を連ねて砂塵をけって舞鶴へ乗り込んで来た。私たちが京都へ帰るときに、あの警察隊の十台の車がまた帰りに砂塵をまくというと、当分平和な車は通れぬからというので、私たちは、急いでそのなにを避けたような事態もあったのです。まるで、もう全く大戦闘を展開するような格好できている。警察権をこういうところへ、こういうような形で発動しなければならぬかと思うと、はなはだわれわれは不愉快を感じたわけです。警察庁としては、少くとも、だれが見てもあそこへあの形で——もう必要がないと見たら、途中で帰っていいと思う。一般民衆、一般出迎え者は、あそこに百人ばかりしかおらなかった。途中で引き返していいわけです。警察官を一日じゅうくぎづけにして、もう暴動の危険は全然ないということがはっきりわかっていながらも、晩までじっと待機させたというそのやり方は、これは中央の警察庁の指示においてやったんじゃないかと私は思うのですが、こういう場合にはどうしたらいいかというようなことについては、いかがですか。警察庁として、もう少し適宜即応の態勢で、配備を大いに緩める必要があるときには、さっとこれを引き揚げるというような格好で、もっと国民全体に納得のいくような警察権の発動の方針がないのでございますか。あれはもっと早く引き揚げる必要はなかったですか。どこか山の奥の方に潜伏しているような出迎え人はおらなかったのです。ほんとうに平穏な上陸風景だったのです。いかがですか。
  82. 石井榮三

    ○石井説明員 先ほどお答えいたしました通り、私は、現地警察の指揮官が刻々に推移する事態の変化に対しての見通し、判断というものを冷静になし得なかったために、ただいま御批判されるような結果になったと思うのでございまして、それは、当然ひとり今回の場合に限らず、およそ警備関係の部隊出動の場合には、現地の指揮官が常に心しなければならぬところでございまして、必要最小限度の警察力をもって警察の職務を全うするように配慮すべきものでありまして、必要以上の警察力を使用するということは、警察みずからにとっても大きなマイナスであるのみならず、一般民衆に与える影響から見ましても、きわめて慎重に考慮しなければならぬ点であることは申すまでもないところでございまして、そうしたことは、私ども中央といたしましては、日ごろ関係者に十分注意を喚起し、また、指導教養に努めておるのでございまして、個々のケースの場合に、一々中央のわれわれの方から、きょうはこうすべし、ああすべしというふうな指揮をすることは、第一権限もございません。従いまして、今回の場合のみならず、第一線におけるそうした類似の警備出動の場合には、その当該府県の本部長が執行の最高責任者であり、本部長みずからが現地に出動して指揮する場合は申し分ございませんが、事案の軽重によっては、本部長がそうした現場に出ることなくして、本部長にかわるしかるべき者、あるいは警備部長、あるいは警備課長、あるいは所轄の署長といったような、しかるべき者が現地の最高指揮官として、その場において、その場の状況の推移をながめつつ、必要なる警察力の執行に当るというのが、われわれ警察の日常の執務態勢なのであります。先ほど申しました通り、そういう意味で、今回の舞鶴における現地の最高指揮官は京都府の警備課長であったとしますならば、この現地の責任者がよく現場の事態の推移を把握し、それに即応する警備態勢をとるべきものである。それが不幸にいたしまして、必ずしも十全の措置がとり得なかったというのでありますならば、これは十分反省し、戒心すべきものと、かように私は考えておるのでございまして、先ほども、そういうふうにお答えしたつもりでございます。御了承願います。
  83. 受田新吉

    受田委員 最後に、私はこれで終りですが、あの当時の情勢は、全国各地から警察が出たのですよ。一地方の問題ではないのです。全国的な、大がかりな大捜査陣なんです。だから、やはり中央の警察庁としては、関与せざるを得ない問題であったと思うのです。もう一つは、品川で密出国者が下車して「きたときに、片方の手に手荷物をさげさせ、片方は手錠をはめられておる。手錠をはめなくても、重い物をさげておるのですから、逃げるようなことはしないのです。民衆がたくさん見ておるところで、あれが今度の何だといって人に見せるようなことをしなくても、そこはやはり人権を尊重して、手錠をはめておるなら、荷物はだれかさげてやったらいい、そういうときにこそ、警察を動員したらいいのです。そういうときに、荷物をさげてやるくらいの愛情を与えていいと思う。片方に重い荷物をさげ、片方は手錠をはめられて民衆のおるところを通って行くということは、これは民主主義の人権尊重の姿からいっても、許されないと思う。こういうところは、なんとか改善されませんかね。大衆に愛される警察として立ち上って、大悟一番、大いに悟りを開いてやり直すということにしないと、暴力団だとか愚連隊のようなものにいたずらに眼をそそいで、そしてこういうところにいたずらに神経を使うという、ちょっと警察もノイローゼにかかったような格好の措置をされるおそれがあると思うのですが、いかがでしょうか。この点、最後に長官の決意を伺いたいと思います。
  84. 石井榮三

    ○石井説明員 お説の通り警察国民に愛され、国民に信頼される警察でなければならないことは申すまでもないところであります。民主主義下の警察のあり方は、まさにそうあるべきでありまして、私ども微力ながら、常に第一線の警察官の指導、教養につきましては、その点に特に力をいたしまして、いわゆる民主警察のあり方というものにつきまして、その心がまえ、また、その心がまえに基いての具体的な行動について絶えず教養指導をいたしておるつもりでございますが、何分にも数多い全国の警察官でありますから、十分に徹底しておらない点は非常に遺憾でございます。今後、さらにその点には一そう努力を重ねまして、国民の信頼と期待にこたえ得るような警察を育成したい、かように考えております。
  85. 受田新吉

    受田委員 これで終りますが、今回の密出国者のあのような現地の警戒、そして、お取調べになった結果が、今どのような進行状況になっておるか、お取調べになった結果、はっきりと例の管理令違反者としての証拠が歴然として残っておるのかどうか、その取調べの現況を、報告を受けておられる限度内でけっこうですから、御答弁を願いたいと思います。
  86. 石井榮三

    ○石井説明員 まだ関係者舞鶴上陸してから今日まで日が浅いのでございまして、しかも、関係者が全国各府県にばらまかれておるという格好になっておりますので、個々の一々の関係府県からの報告というものを私まだ聞いておりません。従って、ただいまそうした全国集計的なことをお答えできないのをはなはだ遺憾に存じます。あしからず御了承願います。
  87. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 私も現地に行ったのですが、これは、受田委員も、警察権を発動するのに、私は反対じゃないだろうと思うのです。ということは、密出国者という、法律を破って、そうして一般引き揚げの船に便乗して帰ってきた人ですから、これは、当然法律違反者として警察権を発動することについては、私は受田委員もほかの方々もみんな同感だと思うのです。ただ問題は、今のように、非常にそのときの状況の変化に対応するだけの指導者と申しますか、そういう幹部養成について、先ほど石井長官が御答弁されたような面があったのじゃないかということを私は感ずるのです。しかし、何さまそういう意味での幹部養成をぜひお願いしたいということは、党の方からお見えになった方々にも申したのですが、六十五名もそろってきてしかも、桟橋で堂々と国民に向って、自分たちは声明をするのだというて、はでに、いまや人工衛星が飛んでいる時代に、国と国との交通は自由じゃないか、出たり入ったりするのが何だ、いまや平和と独立を守るためにおれたちは公然と帰ってきたのだ、というふうなゼスチュアをやられたのです。これは、まあその党の性格が、中村翫右衛門が帰ってきても何にもならぬのだというふうな自信から、いつでもチャンスをつかまえて、自分たちの非合法性を合法性であるかのごとく全国民にアジテートをやるのだ。そういうものに対して、現地の指導者が、われわれの目の前でそういうことをやらせている。それは、私たち四人の国会議員はそばから見ていた。中立地帯を作られているわけです。私は、そういうときにおけるところの警察の態度というものに、政治的配慮というものが行われていないことが非常に残念です。  もう一つは、やはり朝早くからバス四台も五台もの制服の警察官などがああして待機しているということは、ほんとうをいうと、引き揚げ全体には警察権の発動は関係ない。本質は、迎えに行った集団引揚者の中に、わずかに六十五名という問題が突発的に——これは相手国あるいはまた、乗っている人たちの作為によって突発的に起った事件ですね。だから私も受田委員も、警察権発動については何ら異存はない。しかしながら、これが大衆なり多勢の目の前に発動が現われるときの形式と、それから自分たちの態度を守るときの指導方針というものについて、いささか以上に遺憾なものがあったということを私は認めておるのであります。一つ、そういうことをよく御了解いただきまして、今から先に、何といっても愛される警察官としての幹部養成と申しますか、教養の向上ということにぜひ御協力、御精進をお願いしたい、こう申し上げておきます。これは、石井長官が先ほど御答弁されておりますから、私は何も答弁は要りません。  そこで、出入国の問題になりますが、先ほど、援護局長に船賃の問題でお尋ねしたのです。入国管理局の方は、先ほどの質問をお聞きになっておったと思いますが、今度の引き揚げの中に華僑が二名入っている。そうして、その一人の張立文という者は、ことしの二月に華僑送還で中共へ渡った人だったのです。これが今度の船で帰ってきております。そこで、私は先ほど船賃の問題を聞いたんだが、まるで引揚船というものを定期便のように使って、行ったり来たりしているのですね。それからまた、けさの新聞を見ますと、華商を装うて対日工作員が日本に入り込んでいる。これは御承知通りです。こういう事件などがあるのですね。これに対して、一体入国管理局としてはどういうふうな見解、処置を今までとっておられるか、これをお尋ねしたい。
  88. 勝野康助

    勝野説明員 初めの、引揚船に二名の華僑が乗っておったという御質問でございますが、これは、われわれの方から係の者が出張しまして、日本の港におきましては入国者の審査をいたしましてそれが日本人であればそのまま入国を認め、外人でありましたら、それに対して一定の在留資格というものを与えて日本において適法に滞在できるようなことをやるのが、入国管理局の港における仕事でございます。そうしてこのたびは二名の者が乗っておりましたが、これは、日本を出ますときに再入国の許可を得て出ております。再入国の許可がたまたま期限が切れておりましたので、一応仮上陸を認めておるわけでございますが、生活の本拠その他がおそらく日本にあると思われますので、これはいずれ再審査の上、いかような在留資格を与えるかということは、また、あとになって考慮しなければならぬ問題だと思います。  それから、第二の点の不法入国者につきましては、われわれは犯罪の捜査機関ではございませんが、これに対して行政処分の退去強制をすることができまして、一定の手続を経て、容疑者を発見いたしましたときは、その違反者を調査いたしまして、それに必要な三段階に分れました審査手続を経まして、これに対して強制退去の手続をいたします。同時に、警察の方におきましては、それは犯罪を構成いたしますので、別に捜査が行われるのであります。ただ、われわれ入国管理局は、全国に出張所その他を持っておりますが、全部で千三百名でございましてなかなか不法入国者全部の違反調査に当り、全部それを網の目のようにつかまえてやるということは、遺憾ながら現段階においては非常な不備の点があるのじゃないかと思います。
  89. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今の質問に対して、警察庁の方からも御答弁願います。
  90. 山口喜雄

    ○山口説明員 けさの新聞の問題につきまして、私まだ詳細に報告を受けておりませんが、一たん帰国しました華僑の中にも、密入国あるいはその他の方法によって日本に再び帰ってきておる者は相当おるように聞いております。なお、その日本に帰ってきます理由でございますが、日本におる方が暮しよいというような個人的な気持から帰って見える方もあります。あるいはまた、別に特殊の仕事を与えられて帰ってきておるのではないかと思われるような人もおります。そういう者につきましては、警察といたしまして現在「捜査をいたしております。本日の新聞に出ておりましたのは、そういう例の一つであると私ども考えております。
  91. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 それでは、今度の入国者の中にそういう疑いのある者はありませんか。
  92. 勝野康助

    勝野説明員 今度の引揚者の中には、六十五名を除いては、現在のところございません。
  93. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 今までの中には……。
  94. 田村坂雄

    ○田村説明員 現在までの引き揚げの中には、十数名くらいそういう不法入国者がございました。それにつきましては、入管としては所定の手続の違反調査とかあるいは審査手続をしまして、退去強制該当に決定になった者は退去をさせ、あるいは人道上在留許可が至当と思料せられる者は、在留特別許可を法務大臣が与えて在留を認めておりますが、ただいま手元に資料を持っておりませんので、町名あって、そのうち退去強制になった者が何名、あるいは在留特別許可になった者が何名という詳しい氏名、数については、はっきりお答えできません。
  95. 田口長治郎

    田口委員長 午後は二時半より再開することとし、休憩いたします。     午後一時三十八分休憩      ————◇—————     午後二時四十六分開議
  96. 田口長治郎

    田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長谷川峻君。
  97. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 それでは青木国務大臣に御答弁をお願いいたします。というのは、本日の委員会は、十三日舞鶴に集団最後引き揚げといわれた中共からの引揚船を迎えに行って帰ってきたその報告をし、そのあと、質疑を午前中から続行しているのです。午前中の委員会の模様が御了解いただけないと思いますが、今度の引き揚げの大きな特徴は、一つは、中共からの集団引き揚げ最後であったといわれていることであります。さらに、その引き揚げを迎えに行きますに当って、六十五名の密出国者が乗っておりまして、一般引揚船に便乗してきて、覆面を脱いで、自分たち日本共産党の者である、こう発表して、それに対する逮捕の問題などについて非常にセンセーショナルに国民の間で注目を浴びた、こういうことだろうと思うのです。そこで、私たち一般引き揚げ問題については、午前中に話が大体終ったのでありますが、ここに問題になっております密出国の問題、すなわち、今度帰ってくるに当っていろいろ巷間伝えられているところによりますと、この方々は、いずれも終戦直後党活動に従事し、そうして法に触れておりながら、行くときには、昭和二十三年から六年の間に、いわゆる人民艦隊を組織して、これは出入国管理庁があったけれども、何ら役に立たずして、堂々と日本海を行って、今日まで向うで変名で党活動をやってきた人、こういうふうに言われておるのです。しかしながら、近く二十一日から党大会が行われるに当って、それに新風を吹き込む意味で送ったともいわれるし、あるいは日中貿易協定打ち切りの声明を中国が出すのに、その原動力になったともいわれますし、まあいろいろ揣摩憶測されているのであります。これに対して、当然法治国家として逮捕がなされるということについては、この委員会の午前中の質疑を通じますと、だれも不当と言う人はありませんでした。ただしかしながら、その方法において、一般帰国者の中に入ってきておる。この方々は、長い者は二十数年、短かい者においても、十数年も日本の土を踏まなかった人たちで、なつかしの祖国に帰ろうとして胸のふくらむ思いをしておるところに、逮捕する警察官が、警視庁公安部あるいは京都府機動隊、あるいは十七都道府県捜査官約六百名も来て、それがものものしい警戒に当ったものだから非常に暗い印象を受けたというふうなことなどが、午前中論議されております。  そこで、要約してお尋ねをいたしますが、まず第一に、出入国管理に対しまして、こういうふうな六十数名——今まで伝え聞くところによると、百六十四名の方々日本の国から密出国をしておった、こういうことになっておるが、果して一体警察が手薄なのか、そういう問題に対するところの態度は一体どうなっているのか、これが一つ。  さらにまた、一般引き揚げ方々には、国の財政乏しいところであるけれども、十三年間にわたって船賃も用意をし、あるいは援護の上において一万円の金も差し上げもし、いろいろお手当もした。しかしながら、里帰りさえも船賃を徴収することになっているにもかかわらず、こういう密出国方々が公々然と、行きは人民艦隊、帰りは、人工衛星が飛ぶ時代に、どこの国へ行こうと勝手じゃないか、しかも、自分たち中国で平和のために戦ってきた、今から先も平和のために堂々と戦うのに、逮捕するとはけしからぬということを揚言させながら、その船賃などが、全然今のところ徴収されておらないというふうなことは、やはり私は税金を払っておる国民として、さらに法治国家国民感情としても、これは許せないという気持が、少くとも日本国民の中に九割以上はあると思う。こういう問題に対するところの公安委員長としての、また国務大臣としての御答弁をお願いしたいと思います。
  98. 青木正

    ○青木国務大臣 先般の白山丸引揚者帰国に当りまして、たまたま密出国者がおりましたために、せっかく故国に帰りましたのに、密出国者逮捕する必要上、警察官がおったということで、多勢の引揚者方々に不愉快な気持を与えたことは、私もまことに残念に思う次第でございます。ただしかし、密出国者がおります以上、やはりこれに対する適当の処置をいたさなければなりませんので、警察としては、結果から見ればあるいは大げさだというような御非難もあろうかと思うのでありますが、どういう事態になるかわかりませんし、やはり万全の措置を講ずる必要もありましたので、やむなくとったということを了承していただきたいと思うのであります。  それから密出国の取締りの問題でありますが、申し上げるまでもなく、密出入国の問題につきましては、入国管理局におきましていろいろやっておるわけでございますから、これに協力いたしまして、警察といたしましても万全の措置を講じておるわけであります。ただ御承知のように、人民艦隊事件というようなこともありましてなかなか警察の力だけでも捕捉しがたい点もありましてこういう事態になっておることは、まことに法治国として残念に思っておるのであります。いろいろ内情等を承わってみますると、出入国管理に関しまして、いろいろ船舶の問題その他あるいは機構上、警察の方と入国管理局の方と提携する問題等、いろいろあろうと思うのであります。これを監視する船の問題等につきましても、現在のところ若干不足じゃないかということも私ども聞いておるのでありまして、御指摘のように、法治国家として、こういうような状態を放任しておくことは、まことに残念に思っているような次第であります。私どもできるだけ今後こういうことのないように最善の努力をいたしまして、人的にも、また船とかいうような点におきましても、できるだけの措置を講じていかなければならぬ、かように存じているわけであります。  それから、密出国者の船賃を払わぬという問題でありますが、これは、私どもの所管と申すよりは、あるいは厚生省関係になるかと思うのであります。考え方といたしまして、お話のように、密出国ということ、つまり違法のことをやっておってしかも、その人たちが堂々と帰ってきておる、さらに、その人たちは船賃も払わぬで、国民に負担をかけておるということは、どなたがお考えになりましても、そういう形は私は許すべきでない、かように存ずるのであります。違法のことをした上、さらに国民に迷惑をかけておる、こういう姿は決してとるべきものでない、私も、さように考えております。
  99. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 青木国務大臣の前段の答弁、了承いたします。そこで、もう一つお尋ねしたいのは、青木国務大臣は、十五日の閣議で、白山丸帰国した中共からの引揚者状況報告しておるようであります。それの内容を仄聞するところによりますと、白山丸乗船した密出国者五十八名はすでに逮捕した、これは私も現地に参りまして、逮捕したところを見ることができたのであります。ところが、一般引揚者の中の四十人ほど、国籍を明らかにしない者があった。これらの引揚者逮捕していないが、近く日共の大会もあることであるので、その動向を厳重に調査しているというふうな発言があったように了承しているのであります。われわれは、何も思想を調査する役割も何もありません。しかしながら、今までの帰国者の中においてさえも、向うの方に参って、また今度帰ってきたというふうな華僑の者もある。そこで、五十八名を逮捕されて、そして国民の非常な注目の的でありましたから、それらが一体ただ単に密出国というふうな軽い罪だけで今やっているものやら、それからほかの事件、人民艦隊だあるいは火炎びんの問題だ、そのほか白鳥事件の問題等々があるやに私どもは拝承しておりますが、そういうふうな事件に関連している五十八名などのお取調べの模様などをお聞きしたいことが一つ。もう一つは、一般引揚者も、なにさま本名を名乗ってきているとは思われない方々が多いやに、私は現地において了承したのであります。ですから、そういうところについての御調査がどの程度に進んでおるのか。ということは、今まで新聞などで伝えられるところによりますと、いわゆる三天皇の一人が一般帰国者の中に入っておるとか等々いわれておるのであります。果してそういうものがあるかどうかはいざ知らず、警察の立場においてお取調べになっておることを、結論はまだついていないでしょうけれども、閣議で御発表になり、そうして新聞にも出ていることですから、この委員会が調査に行った関係上、ここにおいて了解のできる範囲において御説明いただいたならば、非常にけっこうだと思います。
  100. 青木正

    ○青木国務大臣 閣議で私が報告いたした内容についての新聞記事の問題でありますが、私は、引揚者のうち密出国者として逮捕された者は何名とか、こういう御報告を申し上げまして、さらに、当時警察庁の方に参っておった報告によりますと、その当時の報告として、四十名ほど本籍の不明な者がある、こういう報告があったのであります。その報告をそのまま、私閣議で申し上げたのであります。ところが、その後事情を聞きますと、管理局におきまして、翌十四日、この四十名の身元につきまして本籍等いろいろ調べました結果、全部わかりまして、そしてその四十名につきましては、警察として、これに対して警察関係において処理を必要とする方は一人もいないという報告を承わったのであります。  それから、密出国者として逮捕した方々のその後の取調べの模様につきましては、まだ詳細な報告がありませんので、石井警察庁長官から詳細申し上げます。
  101. 石井榮三

    ○石井説明員 六十五名のいわゆる密出国者グループのうち、逮捕いたしました者五十九名でありますが、そのうち一名は、当日でしたか翌日でしたか、間もなく釈放になっております。残り五十八名のうち、私が先ほど報告に接したところによりますと、五十二名の者が勾留請求が認められまして引き続き勾留して取調べを続行しており、差し引き六名の者は勾留請求いたしましたが却下された、こういうことになっております。却下されましたものは、理由はいろいろありますが、その本人が病身であるというもの、あるいは今までの捜査において相当供述を得られ、これ以上強制捜査をしなくても、あとは任意捜査等によって目的が達し得られるのではないかというものがあるのであります。まだ詳細な報告に接しておるわけではありませんが、一応大まかに先ほど報告に接したところによりますと、現状はそういうふうになっております。
  102. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 大体答弁を了承いたしますが、あれが最後引き揚げで、国民注視の的であったのですから、やはり原則的に、はっきりと国民警察としての役割を、こういう思想的にも国際的にもむずかしいときには、筋をしっかり立てて、守るところは守っていただく、また、守らせるものは守らせるという強い気魄を今の時代において示さなければ、とてもだめだという感じがしたのであります。  あとのことはいろいろありますが、原則論だけを申し上げ、それを希望いたしまして、私の青木国務大臣に対する質疑はこれをもって終ることにいたします。
  103. 田口長治郎

  104. 受田新吉

    受田委員 青木先生、御苦労でございます。しかし、事態は非常に重大な具体的な事例に触れたわけですが、先ほど警察庁長官から御答弁をいただいたところで、なお納得しがたいところがあるわけです。それは、今回の舞鶴帰国した密出国者の取扱いにおいて、一局部的な事件として京都の警察本部に全権を委任してそこで処理をされておる。先ほど私がお尋ねしたように、今回の事件は、全国的にその容疑者が帰国するというので、各府県の担当刑事が逮捕状を携行して舞鶴にメジロ押しに集中したという事件なんです。従って、そういう全国的な、大がかりな事件であるという意味からいったら、先ほど私が指摘したのでありますが、単に一地方警察の所管事項としてこれを片づけるべきものではなくして、中央の取扱い事項として重視すべき事件ではないかと思うのですけれども、国家公安委員長たる国務大臣青木先生の御見解を伺いたいと思うのです。
  105. 青木正

    ○青木国務大臣 午前中おくれましてまことに恐縮に存じましたが、公安委員会で、警察の問題に引き続きまして消防関係の打ち合せをやっておりましたのでおくれましたことを、まずもっておわび申し上げます。  それからただいまのお話でありますが、一応ごもっともに考えられるのでありますが、申し上げるまでもなく、現行の警察法によりますと、それぞれの事案につきましては、府県警察本部長が一切の責任に当っておるのでありまして、警察庁といたしましては、ただ連絡調整をするだけのことしかできないのであります。いわんや国家公安委員長に指揮命令権のないことは申し上げるまでもないことでありますので、こういう事案につきましては、やはりそれぞれの現地警察本部長が責任を持って事を処理するほかにいたし方ないのではないか、かように私は思います。もちろん各地に関連のあることでありますから、警察庁といたしまして、その間の連絡調整はいろいろいたさなければなりませんが、しかし、あくまでも現地警察本部長の責任においてこれをやる、こうするよりほかにいたし方がないのではないか、かように思います。
  106. 受田新吉

    受田委員 私は、中央から指揮権を発動せよというのではないのです。現地警察だけにそのすべての仕事をさせて、中央がこれにタッチしないという形ではあり得べき事件ではないのではないか。すなわち、こうした全国的な関係に波及している事件については、少くとも中央警察庁は何らかの連絡を受け、また、ときにはある程度の指示をいたすというような形のものが、これは地方警察に対する権限侵宝という意味でなくして、あり得る形だと思うのです。そこを私伺っているわけです。中央は何ら連絡を受けなかったし、また、それに対して適当なる注意指導もしなかったのか、ここを一つ伺いたい。
  107. 青木正

    ○青木国務大臣 もちろん中央の警察庁といたしまして、各県に関連のある事案でありますので、警察庁として連絡調整のことはいたしておるのであります。そのことは、また当然いたさなければならぬことでありますので、その点は警察庁として十分連絡調整をいたしておることと私ども考えております。
  108. 受田新吉

    受田委員 その取扱い方が常軌を逸脱して、警察官の、特に指揮者の良識を疑わしめるような形において行われるという事態が起っているわけです。単に、それは好ましき姿でないというような見解を述べただけでは、この問題は解決しないと思うのです。従って、中央における警察庁としての見解というものが、京都の警察本部に何らかの形において伝達されておらなければならぬと思うのです。また、京都の警察本部は、中央に対して、こういう場合におけるいろいろな知識をお伺いするという形をとってこなければならぬと思うのです。そういうところに十分手を打ってあったかどうか、そこをお伺いしておるのです。
  109. 青木正

    ○青木国務大臣 先ほども長谷川委員にちょっと申し上げたのでありますが、なるほど、結果からごらんになりますと、何か、あまりにもものものしく警察官が出たように受け取られたことも、ごもっともと思うのであります。しかし、いろいろ事情を聞いてみますと、たとえば、密出国者一般引揚者と一緒に上陸することがあり得るのではないか、そういう場合にはどうしなければいかぬかとか、あるいはまた、逮捕状を出した場合に、果してあまり問題を起さずに逮捕できるかどうかとか、こういうふうな、いろいろなことを想定いたしまして万全の措置を講ずる、また、他の引揚者方々に御迷惑をおかけしても、これはまことに申しわけないことでありますので、いろいろなことを勘案いたした結果、現地として、やはりそうせざるを得なかった、こう私どもは了承いたしておるのであります。中央からどうこう言って、現地の判断に対してそう差し出がましくすることは、これもいかがかと思いますし、また指揮命令することはできない立場にあります。やはり、中央として全体の調整連絡はとらなければなりませんが、しかし、現地の判断に対して、それはいかぬぞというような、中央としての判断が下し得るかどうか、この問題も、何といっても現地の考えを第一に尊重せんければいかぬのじゃないかと思うのであります。単に法律の建前がそうなっておるばかりでなく、現地で、どうしてもこれだけのことはしなければならぬということでおありになるのに対して、現地を離れたこちらで、それはどうだ、こうだということも、ちょっとできかねるんじゃないかと思います。結果から見ますと、お話のように、まことにぎょうぎょうし過ぎると申しますか、ものものし過ぎたというようなあるいは御批判もあろうかと思うのでありますが、幸いにして、事案がああいうふうに平静のうちに処理できましたので、そのことから見ますと、ぎょうぎょうし過ぎたということになるかと思うのであります。警察としましては、万一のことを考慮しまして最善の策を講ずるということで、そのことが一般引揚者に対する印象等を全然考えずに、何でもかんでも、ただ逮捕ということだけを考えてやったという意味ではないと思うのであります。結果が、一般引揚者に対して不愉快と申しますか、不快の念を与えたということは、これは、たまたまああいう密出国者がおりましたために御迷惑をおかけして、まことに恐縮に存ずる次第であります。
  110. 受田新吉

    受田委員 地方の警視正以上の警察官で、国家公務員である高級職員があるわけです。これは中央から任命権を発動する対象になり、中央の公安委員会の承認を得てやる。そういう職員は、だから中央が握っているのです。つまり、地方の警察の木部職員の高級職員の少数の人は、警察庁長官がこれを任命するところの直接の権限を持っておるのです。従って、その部下が良識を欠く権力の行使をしたという場合には、これに対して戒告をするとか、その他の処分行為を当然行う場合もあり得ると思うのです。こういうことについて……。
  111. 石井榮三

    ○石井説明員 都道府県警察の警視正以上の階級にあります者が国家公務員であり、そうして、それが中央の任命によることは御指摘の通りでございます。警察庁長官が任命権を持っておるということがお言葉にございましたが、これは国家公安委員会が任命権者でございまして、私は、そういう権限は持っておらないのでございます。任命権の関係はそういうことになっております。従って、もし地方の警視正以上の階級にある者に何らかの非行がありました場合、懲戒処分にするという場合には、国家公安委員会がその権限を持っておるわけでございます。当該都道府県公安委員会は、罷免等の措置要求をするという権限をまた持っておられるわけでございまして、国家公安委員会都道府県の公安委員会とは緊密に連絡をとって、警視正以上の者に対する身分的な監督はいたしておるわけであります。問題は、国家公安委員会が持っております権限、従って、その管理下にあって日常の仕事をしております警察庁、そしてまた、その長である私の権限というものは、国家公安委員会が持っておる権限以外にはみ出すことはできないわけであります。御承知のように、警察法の第五条に国家公安委員会の権限が規定されておりますが、これによりますと、個々の事件について都道府県警察を指揮監督する権限はないのであります。ただ限られた場合、国の公安にかかわる特殊の事案について直接指揮命令ができる、こういう建前になっておるのであります。今回のような事案につきましては、一々中央が指揮命令をいたして事を処理するという建前になっておらないのでございます。先ほど大臣がお答えになりましたように、ただその間の連絡調整の権限がある、これによりまして全般の運用の調整をはかっていく、こういうことしか道はないのであります。そこで、今回の場合においても、御指摘のように、関係各府県からそれぞれ警察官が必要とするだけ出向いて参ったわけでございます。それらの者の行動が、あるいはてんでんばらばらであっては、これはまことに醜態であり、また、警察の同じ目的を達成するのに、あまりにもてんでんばらばらであっては目的に沿わないということにもなりましょうが、そういった点の、いわゆる連絡調整の必要であるということはお説の通りだと思います。そこで、私どもの方は係の警視を現地に差し向けまして、現地の最高責任者である京都府警本部長並びにそれの補佐機関に対して、連絡調整の立場において必要なアドバイスを行うという仕事はやらしておいたのでございます。それ以上のことは、権限的にもないわけでございますので、直接に、はしの上げおろしまで一々やかましく指揮命令することはできないわけでございます。午前中にも私からお答えいたしましたように、ああした場合には、現地の最高指揮官が、その場の事態の推移を冷静に判断して必要なる措置をとらなければならないのでありまして、その動きは、きわめて短かい時間の間に刻々に変っていくわけでございます。それを一々上司に連絡をして指揮を受けて事を処理するというようなことでは、時間的に間に合わない。結局、現地の最高指揮官が責任を持って事態の全貌を正確に把握し、冷静に判断をして適宜の措置をとるということにする以外に方法はないわけでございまして、そういう見地から、いろいろな御批判をいただいたのでございますが、事は、きわめて冷静に警察逮捕という目的を達し得たにもかかわらず、あまりにもぎょうぎょうしい警察の態度であったのではないかということであります。それは、先ほど大臣もお答えになりましたように、警察といたしましては、最悪の場合ということも考慮して、いろいろな事態、どういう形で現われてくるかということを考慮に入れつつ、最善の措置を一応用意しておかなければならぬわけでございます。しかし、予想したような最悪の事態にならないで、案外平静な事態で推移するという場合には、当初予定しました警備態勢を若干ゆるめて、それに即応した態勢に切りかえるということは、現地の最高指揮官がその事態の推移をよくながめて、それに即応した判断をしなければならないということをお答えしたわけでございますが、そういう見地からも、現地の最高指揮官がとったやり方が最善であったかどうかという点は、これは十分今後の反省の資料にもなりましょうから、詳しくそれぞれの資料等を収集しまして検討し、将来の反省の資料にいたしたい、かように考えております。
  112. 受田新吉

    受田委員 そうしますと、青木先生は国家公安委員会委員長でいらっしゃる。それで、いわば事務局長に当る警察庁長官国家公安委員会が任命されたわけです。しかしながら、事務処理の責任は警察庁長官である。一々国家公安委員長が手続をするわけではないのです。そうすると、事実上の任命権者の職務を行政的に執行される当面の事務担当者は、警察庁長官である。けれども、公安委員長である青木さんに、公安委員会としての責任のある発言をしていただきたいのですが、今回のような事件で、これが地方の一警察のやった仕事であるからというので、つい、これを大目に見のがしておるところに、日本警察が権力乱用のそしりを受けている理由があると思うのです。現に、愚連隊その他凶悪犯人二十六人を全国指名して協力を国民大衆に訴えるとか、こういうところまできておるときに、愚連隊などは大目に見、その他民衆に直接迷惑をかけるような暴力団の検挙などにはきわめて寛大なる警察が、こうしたわかりきった、何ら抵抗しない者に対して、罪があることに対してはいさぎよく服従しようという態度に出ている人に対して、あまりにも過酷な取扱いが問題なんだ。品川で下車してきた人に手錠をはめる。一方警察官には手を引っぱられ、片手には重い荷物をさげているんですよ。手をつながれているんですよ。片手はつながれ、片手で重い荷物をさげて民衆の前を引かれいくこの姿は、大衆を愛する警察の権力行使としては、あまりにも悲惨じゃないですか。残酷じゃないでしょうか。ここを私は申し上げているんです。こういうところから、今、日本警察がどこかに片寄った、へんぱな行動をしておるという批判があるわけなんです。もう少しにらむべきところをよくにらんで、民衆の公僕としての警察官の責務を果してもらいたいのです。従って、こういうそそうがあった、良識を誤まった、判断を誤まったというような場合には、その責任者に対して何らかの形の処分にまで及ぶ必要もあると思う。そのとき、やはり公安委員会が責任があるということでございますなら、今回の現地警察官の行為は行き過ぎであると考うべき点がたくさんあったと、警察庁長官も先ほどからはっきりと発言されているのでありますから、こういう点に対して何らかの注意、勧告あるいはそのほか処分に関係した措置をして、国民の疑惑を一掃させるための措置をすべきじゃないでしょうか。
  113. 青木正

    ○青木国務大臣 個々の事案に対する国家公安委員会なりあるいは警察庁の権限の問題は、先ほど長官も申した通りであります。ただしかし、日本警察の大綱と申しますか、運営につきましては、やはり民主警察として正しい姿にならなければなりませんので、そういう全般的の運営につきましては、もちろん、国家公安委員会がそのことを考えるべき問題であることは当然であります。従いまして、国家公安委員会は、常にいろいろな警察の運営の問題につきまして、個々の事案ということでなしに、全体のあり方としての警察の姿、こういう問題につきましては、常に委員皆さん方が御検討なさっておるわけであります。今回の事案につきまして、これが果して御指摘のように行き過ぎの問題として責任を追及すべきかどうか、こういう問題でありますが、私どもは、先ほど申しましたように、現地警察本部のとりました処置につきまして、結果から見るといろいろ御批判もあろうかと思いますが、事情やむを得なかったのではないかという気がいたすのであります。しかしながら、なおよく事情を調査いたしまして、将来の警察運営の面から考えまして、そういうことであってはいけないということでありますれば、今後警察運営の問題として、国家公安委員会がそれを検討していかなければならぬと考えるのであります。今回の問題が、果して行き過ぎであったかどうかというふうなことを、私がここで申し上げるのは早計じゃないかと思うのであります。なおよく現地事情等も調べまして、また、現在の私の考えとしては、結果から見れば御批判があろうかと思いますが、あの当時の事情としてやむを得なかったのではないか、私自身はさように考えておりますが、いろいろお話でもありますので、なお事情をよく調べまして、先ほど石井長官も申しておるように、将来の反省の資料となすべき点がありますれば反省の資料といたしたい、かように思う次第であります。
  114. 受田新吉

    受田委員 私は、この機会に共産党諸君の行動に対して弁護する気はちっともないのですよ。しかしながら、こういう取扱い方が人権をじゅうりんするという形にいくことも見てきておるのです。その場合は、相手が共産党員であろうと、一般民衆であろうと、どういう政党の党員であろうと、同一でなければならぬ。そうした意味で、警察に対する国民の信頼が欠けたときに、警察国家という姿が露骨に現われてくるおそれがあるのです。私はそれを憂えておるのです。警察は、国民の生命、財産、身体の保護をする重責をになっておる。安心して警察にたよろうとする国民がおる。そうした場合に、別に他に危害を加える心配もない、迷惑もかけないという形でその前に現われた者を、権力をあまりにも多く用い過ぎてその取扱い方が人権侵害に及ぶような格好であるということは、行き過ぎだということを私は申し上げるのです。国家公安委員会がけさ開かれたのですが、国家公安委員会が開かれた機会に、今回の取扱い方についてお話し合いをされましたか。大事な問題となっておりますから、この委員会に大臣をお呼びするのは、そういうところにあるということをきのう通告してあったのですが、何か今回の問題が議題になりましたか。
  115. 青木正

    ○青木国務大臣 いろいろお話を承わっておりますと、警察官の逮捕者に対する取扱いの問題が、少し常軌を逸しておったのではないかというようなお話に承わるのでありますが、私ども常に心配しておりますことは、警察官というものが職務執行に忠実なるあまり、その結果として、行き過ぎが出るのではないかということであります。同時にまた、何と申しましても一番大切なことは、警察官の教養の問題であると思うのであります。自然警察官の教養が行き届きませんと、ややもすれは常軌を逸するような行為に陥るおそれがあるということでありますので、警察官の教養につきましては、公安委員会としても常に重点を置いて、この問題を取り上げておるわけであります。御承知のように、警察官の教養の問題は、直接公安委員会の課題になっておりますので、教養の問題に重点を置いて、そういう世間の非難のないような民主警察を作っていきたい、かように存ずる次第であります。きょうの公安委員会でも、この問題につきまして一応の報告は受けております。しかし、こまかい個々の内容についての検討まで入っておりません。一応の報告は承わっております。
  116. 戸叶里子

    戸叶委員 関連質問。先ほど青木公安委員長の御答弁を伺っておりますと、今回六百人の警察官が出たのに対しましては、事がなかったからよかったけれども、もしも問題でもあった場合を考慮して出された、こういうふうなお言葉でございましたけれども、私どもから見ますならば、六十五人の人に六百人というのは、あまりにも多過ぎはしないかというふうに考えるのです。こういうふうな場合はもうないことを信じますけれども、そういうようなときに、これからやはり六十五人に対して六百人、この程度の割合で警察官を出す必要があるとお感じになっての御答弁でございましょうか、それとも、やはり、これは少し行き過ぎだとお思いになるでしょうか、一ぺん確かめておきたいと思います。
  117. 青木正

    ○青木国務大臣 いろいろの事情を承わってみますと、たとえば、六十五人の方を密出国者として逮捕せんければいかぬ、その方々があるいは黙秘権を使うかもしれぬ、そういたしますと、どれがどの方かわかりませんし、その場合に、他の引揚者方々に御迷惑をかけてもいけません。そういうことから、従来のいろいろな関係密出国者の顔を知っておる警察の方もおるわけです。そういう方が、やはり行かなければいけないのではないか。それからまた、逮捕いたします場合に、逮捕に応じないというようなことがありますと、やはり一人というわけにも参りませんので、その他の何人かの人も必要じゃないかということもありますし、また、一般引揚者の方と密出国者と、幸いに今回のように別々に上陸するようなことになりますれば、それほどのことは必要はないかと思うのでありますが、しかし、それは結果からそうなったのでありまして、あるいは一緒に同時に上ってくるのではないかということも考えられますし、また上陸したあと、どういう混乱が起るかもしれぬというようなこと、いろいろなことを勘案いたしまして、現地としては、やはりあの程度の警備をしなければいかぬのじゃないか、こういうことを現地当局としての判断においてせざるを得なかっだ、かように私どもは報告を受けておるのであります。結果から見れば、確かに多過ぎたという御批判もあろうかと思うのでありますが、警察当局としては、やはり自分の責任を完全に遂行しなければなりませんし、同時にまた、混乱の結果他に御迷惑をかけてはいけませんし、いろいろなことを考慮した結果、あの程度はやむを得なかった、かように私どもは報告を受け、そしてその報告に対して、現地の立場としてやむを得なかったのじゃないか、私どもも、さように了承しておるのであります。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 国民一般の感情として見ますれば、六十五人の人に六百人なんというのはあまりに多いことで、今、委員長は、密出国者一般人たちとの区別がつかないような場合にはということをおっしゃるわけですけれども、はっきり船の中で名乗りを上げているわけでございまして、そういうような、わざわざ顔を知った人をというようなことは、はっきり自分たち密出国者だということを言っている参わけですから、考えなくてもよかったのではないかと思うわけであります。そういうふうな形で、もし万が一事を起したような場合ということを考えましても、一人に十人もつかなければならないというようなことは、だれが考えても想像されないことで、国民一般としては、少し警察官を動員し過ぎたのじゃないかというふうな、割り切れない気持がいまだに残っているわけでございます。そこで、そういうふうな行き過ぎということは、やはり反省されなければならないのじゃないかということを私は考えますので、この点をもう一度伺いたいと思います。  それから、きょうの御答弁では、取締りのことは現地に全部まかしてあるというふうなことでございましたけれども、何か聞くところによりますと、どこが指揮権といいますか、一体どこが指導権を握って取り締ったらいいかということで大へんもめて、結局、京都に落ちついたというように聞いたのですけれども、そういうふうな事実はなかったかどうか。この二点をお伺いしたいと思います。
  119. 青木正

    ○青木国務大臣 前段の、結果論にいたしましても、ともかく行き過ぎだったというような御批判の問題でありますが、これは警察としては、幸いにして、今回は結果から見まして、ああいうように平穏に行われましたので、結果から見ると、まことに行き過ぎであったかのような形になったわけであります。それにいたしましても、今後ああいう事態がたびたび起ることはもちろんあり得べきことでありませんが、しかし、警察としては謙虚に、やはりああいう事態につきましては、今後の場合の一つの反省の資料といたすべきものと私どもは考えております。  それから第二段の問題につきましては、これは決してごたごたがあって、その結果京都に押しつけたということではないのでありまして、やはり現在の警察法の建前からいたしまして、これは京都の警察本部長がその直接の責任に当るのは当然のことになっておるのであります。ほかの方が当ったら、これはかえっておかしなものでありまして、やはり京都が所管するのが当然のことだと私は考えております。
  120. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 ちょっと関連して申し上げます。というのは、これは受田委員現地に行ってわかっていることなんですが、私は、警察の弁護をする意味ではないのです。真相究明の意味で申し上げますが、私たち国会議員は、前の晩から行っていた。党代表方々がいろいろあっせんしておって、私たち国会から派遣された委員も、それに一緒になってもらいたいやの態度があった。しかし、国会から調査に行っているのだから、一つ実情だけよく見ていこうということで、介入しなかったのです。しかし行っていたものですから、現地の警備課長ですか、隊長さんらしき人にお目にかかったときに、やはりこれは少し多いのじゃないかという話をしたところが、今、公安委員長の御説明があったような理由をいろいろ言うていました。しかし、その理由のほかに、こういうことが私は参考になると思うのです。応援団体が非常にたくさんこられて、そして密出国者上陸する場合に、何かそこに一つの騒ぎでも起ればということを予想して多かった、それがなくて、ただ六十五名が逃げたり何かするというようなら、それは十分の一でもいい、しかし、応援団体ともみ合うようなことでもあった場合には非常に困るので、私たちはこの通りよけい派遣しているのですという説明があったので、ものものしい雰囲気は私きらいでしたけれども、そういう実情です。公安委員長の説明に足りない実情について、これは受田君もわかっているのですが、それを一つ……。
  121. 青木正

    ○青木国務大臣 私は、あまり端的に表現しても恐縮と存じたものですから、そこで上陸後の、つまり逮捕の場合に混乱が起ってはいけない、こういうことを考えているということを申し上げたのです。そのときに、一般引揚者に御迷惑をかけるようなことになってもいかない、こういう配慮ということも、その意味で申し上げたつもりであります。
  122. 受田新吉

    受田委員 長谷川委員と裏表でものを考え、見ておるのですが、私は、表の発言を裏の方から申し上げたいのです。すなわち、集団で密出国者上陸を擁護して、警察権の行使を妨げるというような場合を予想したという話ですが、その日は朝から天気晴朗で、海上も平穏だったのです。ところが、海上におる警備艇の数が、またはかり知れないほどおり、陸上にまた六百名というのがおる。このことが問題なんで、出迎えに行っている共産党の党員その他の数というのは、せいぜい百名に足らなかっただろう。そうすると、もう状況判断からいって、その朝、これはそう集団でここへ大挙してくることはない、また、自動車を連ねてくる見通しもないということになれば、警察隊を一部ずつ後退させてもいいはずなんです。つまり状況判断によって、その動員した数を適宜後退させるという手を、なぜ打たなかったかということをわれわれはさっき申し上げたのです。さっきのような、あまりにも大げさな杞憂、警察がノイローゼにかかっているというところを申し上げたのですが、状況判断で適宜後退させて、超過勤務手当を出さぬでもよいようにする、それに振り向ける費用を大衆の生活の方に振り向けたらよっぽどいい、だから、そこを申し上げたのです。状況判断が誤まっている、適宜後退させる努力をしなかった、最後までがんばらしておる、そこを申し上げたのです。これは長谷川君もよく確認しておられますから……。
  123. 青木正

    ○青木国務大臣 情勢判断において欠ける点があったかどうか、なお私どももいろいろ事情を調査いたしまして、そして将来の反省の資料にいたしたい、かように存じております。
  124. 受田新吉

    受田委員 厚生大臣、あなたの御所管のお仕事の中で、特にあなたの御存任中にぜひ、しかも早急に解決しなければならない問題でございますから、一つ熱意の持って御意思のほどをお述べ願いたいのです。  私は、先ほど一言あなたに申し上げましたが、政府としては、この引き揚げ問題をごく簡単に考えておられるようです。もう集団帰国はないと言えば、ああそうか、個人帰国に旅費を出せと言えば、そうかということで、中共の言い分通りになって日本政府が動いているような格好が見えるのです。ところが日本政府としては、法律の規定に基いて、第二十九条の調査究明と帰還促進という重責をになっている。このことを忘れてはならないのであって、中共側の話されることについて、不十分なところは十分指摘して、こちらから誠意を尽してあちらに訴えて、この問題の解決に当る努力をしなければならぬ。これに欠けていることを、私先ほど申し上げたのです。従って、あなたは閣僚懇談会についても、近く会議を開きたいということでございましたが、この問題については、外務大臣、大蔵大臣、官房長官とあなたなどが組織する閣僚懇談会を早くお開きになって、すぐにでも対策をお立てになっておらなければならぬ。今度引揚者をお迎えする際に、すでにそういう閣僚懇談会である程度の意思決定がなされておらなければならなかったと思うのですが、少し手おくれじゃございませんか。前大臣があれほど国民に約束した、閣僚懇談会を持って、内閣の総知をしぼって努力をしてみたいという発言をされて、一応留守家族にも安心感を与えておった問題ですし、大臣の御就任後すでに二ヵ月になんなんとするのですから、この問題について御熱意があるならば、すでに舞鶴引き揚げてくる直前に閣僚懇談会を開いて、対策を用意しておらなければならなかったと思うのです。時期おくれじゃないでしょうか。
  125. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 今回の白山丸引き揚げの前に必ず閣僚会議を開いて用意をしなければならなかったという御意見でございますが、なるべく早く、この対策についても進めていくことは必要でございまするし、実は閣僚会議を開きますにも、ただ漫然と開いてもしようがございませんので、この間うちからいろいろ引揚団体等の方々ともお目にかかりながら、未復員者の関係の問題その他についての腹案を練っておった次第でございます。私は、必ずしも白山丸引き揚げの前に開かなければならなかったということもないと考えておるのであります。現在は、閣僚懇会談を開きまして——大体その持っていき方としましては、国内においても、なお海外に残留しておられる方々状況を調べ、また国外に対しましては、中共ソ連等について、残留者状況を調べるためのいろいろな措置について、どういう手を打つかということを考えております。それに従いまして、今後積極的な施策を進めて参りたいと考えております。いろいろデリケートな問題もございますので、閣僚懇談会の前にも外務大臣その他とも打ち合せをいたしたいと思っておりますし、大体閣僚懇談会は近いうちに開くつもりでおります。重ねて申し上げますが、さきにも申し上げました通り引き揚げの問題をそう簡単には決して考えておりません。人数といたしましてはだんだんに減っては参りましたけれども、それだけ残っておられる方々の問題というものは非常にむずかしい問題を含んでおりますので、これを十分にいたしますことにつきましては、これは従来と決して変らない決意を持っております。  中共の問題につきましても、私は引き揚げの問題に関します限りは、中共側もかねて言明がありました通り一般の政治問題とは別の人道上の見地で処理するという善意を信じたいと思いますが、決してほうっておる、言いなりになっておるわけではございません。これはわが方の問題といたしまして、十分に積極的に働きかけて参りたいと思います。
  126. 受田新吉

    受田委員 わが方の問題として積極的に解決に当りたいという個々具体的な方策というものを、大臣としては胸の中に持っておられると思うのです。それが渉外的に微妙な点があるならば、それはそれにわたらざる範囲内でけっこうですが、先ほど、私外務大臣にも申し上げておいたのですけれども、例の慰霊実行委員会が、中共からこっちに連れてきた人の死亡者の遺骨送還に対して政府に協力を求めており、政府と慰霊実行委員会とのタイ・アップで、この問題の解決に当るというような具体的な問題などもある。そのほか、外交上の民間代表を何かの形で派遣してその衝に当らせるとか、あらゆる努力をする個々具体的な問題があると思うのです。外務大臣とはまた変って、あなたのそうした御抱負があると思うのですが、それを承わりたい。閣僚懇談会の責任者として御発言を願います。
  127. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 いろいろデリケートな問題もございますので、大体腹案をいろいろ準備をいたしておりますけれども、閣僚懇談会で相談をいたしましてから実行に移して参りたいと考えておるのでございまして、今日、いまだここで具体的にどうこうということを発表する段階に至っておりません。
  128. 受田新吉

    受田委員 発表の段階に至っていないということですが、しかし、その熱意を示す一つの糸口というものは、たとえば、こういうことを考えて、これを実行に移していきたいというようなところはお持ちだと思うのです。それがない限りは、この問題は時期的にも迫っておる問題ですから、とてもとても実を結ばぬと思うのです。もう留守家族手当の支給期限というものが一年先に迫っておるのです。そうした差し迫った問題なんです。  もう一つは、先ほどあなたが私の質問にお答えになられて、舞鶴の問題は、与野党を通じて厚生省設置法の改正に賛成したのだと言われた。ところが、あのとき私の方からは、これを十一月十五日をもってやめることについては問題はないか、引揚者に対して不安を与えないか、未帰還者に対して不安を与えないかということを鋭く追及し、また事務処理の上においても、この舞鶴の少数の職員ではあっても、これを取りやめることには問題はないかということを鋭く追及してあるのです。決して安易に賛成をしたわけではないのです。ただ、厚生省としては十分の対案を用意しておるということであるから、一応認めたんだ。その対案が実を結ばぬことになれば、また次の臨時国会厚生省設置法の一部改正と定員法の改正で半年延ばす道もあるわけです。いかがでしょう。
  129. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 閣僚懇談会は近いうちに開くつもりでございます。先般来、この閣僚懇談会に提案をいたしまして処理する問題につきましての腹案を実は練っておる次第でございましてそれまでお待ちを願いたいと思います。  それから舞鶴の問題につきましては、これはさきにも申し上げました通り、前国会でおきめ下さいました問題でございますが、私も、支障はないかの点につきましては十分当っております。ただ、今後におきましての引き揚げの問題は、従来のような大量のものが引き続いて行われるというようなことがあまり予想されませんし、必要な場合には、今日あります検疫所の施設等でも非常に多くの人数を収容することもできるわけでありまして、将来予想されまする引き揚げの問題につきましては、そうした施設を使い、所要の人員についても、その際特派することができますので、これは将来の引揚問題に対して十分対処することができる、こう私も考えておりまして、前内閣からの引き継ぎを了承いたしておる次第でございます。
  130. 受田新吉

    受田委員 前内閣の担当大臣であった堀木鎌三先生は、これに対して非常に強固な決意をここで披瀝されまして、ことに、未帰還者のいわゆる死亡処理法案については、御家族の希望によっては帰らざる人、長期行方不明者に対する死亡処理の何らかの法的基礎を設けてあげたいというお気持を持っておられたのが問題になって、これは留守家族にとってははなはだ手痛い法案であるという留守家族側、一般国民側からの声が出て、ついにこれは引っ込められた。だから、これに対しては非常に深い関心を持っておられる。いわんや橋本さんは、厚生大臣としては二度のお務めであって、特にこうした人道問題については人一倍熱意を持っておられる方なのですから、今のような舞鶴の問題は、ごく簡単に言いましても、よし一人残っておる場合であっても、その一人のために役所を置いておくというくらいの心づかいはやはり必要だと思うのです。そのくらいの気持は、やはり行政措置をされる責任者として必要だと思うのです。だから、最後の一人の引き揚げまで、この問題を解決するまでは国をあげて協力してあげたいという熱情が要るのです。だからこそ、この引揚特別委員会国会には衆参両院にできておる。最後まで熱情を持って、国民代表機関はこうしてやっておるのです。だから、舞鶴はもういいんだということになると、あとに残った人が、もうわれわれには協力してもらえないのだという印象を持つわけですから、今度も、何としても帰らなければならぬという人がたくさんあったのだということを、今度お帰りになった方の代表者がはっきりわれわれに異口同音に伝えておったのです。こういう情勢の変化というものを考えたときに、この三十名の職員に、来年の七月まで、あるいは三月まで引き続きその業務を行わしめるという措置ぐらいは、これは考え直す必要はないかと思いますが、御検討していただけませんか。
  131. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 繰り返して申しますが、引き揚げの問題に関しましては、従来と同じように、今後とも努力を続けて参るつもりでございます。ただ、舞鶴の役所を存置するかどうかということにつきましては、先般の国会におきましても、私伺ったところによりますと、そういったようなことを与野党とも真剣に御議論をなさいまして支障がないかとか、あるいは不安を与えないかとかいう御意見があったようであります。ただ、私今日なおこれを再検討いたしまして考えましても、引き揚げの問題の際に、非常に多くの人数が次々に来るという場合には、これは常置的に一つの機関を置いておくという必要がございましょうけれども、今後予想されますのが、従来のように大量のものが次々に来るということでございませんでしたならば、今日あの舞鶴の出張所を閉鎖するという前国会の御決定に従いましても、何かの際には万々心配のないような措置がとれるわけでありますので、これは一般方々に、役所をこしらえて、そのためにずっと一年中仕事をしておるというほどの必要はないし、その際には一向支障のないような措置ができるのだからという意味できめられましたその御決定の趣旨というものは、あまり不安のないように私たちも申したいと思いますし、また、お聞きの方にもお伝えを願いたいと考えておる次第でございます。未帰還者問題等処理につきましては、これはただいまお話のございました通り、きわめて早く片づけて参らなければならぬ次第でございます。ただ、この問題につきましては、もう期限も迫っているのだから片づけるといったような感じで処理することを、何と申しますか、片づける片づけるということに、私はどうもはなはだ不満足でございます。なるほど、明年の六月までの問題でございましょうけれども、これは残っておられる御家族方々にとりましては、はっきり死んだにきまったと思っている人につきましても、公報などよこしてくれるなという希望の方々もある状態でございまして、私も、十分この間の問題につきましては、遺族の方々の御希望なり——その御希望によって処理するにいたしましても、一体今日どういう状態になっているのだということがわかっているように見えても、なお再度留守家族方々の心持ちによって確認をしてもらうといったような措置が必要であると思いまするしいたしますので、多少の時間をかけましても、私は念査をしてみたいと思っておるのであります。それは決して処理を放置するという問題でなしに、この問題は、どうもあまりあわてて片づけてしまうといったような、法律一本でやるというふうにもいきかねるのではないか。やはり何といいますか、いずれ処理をする時期というものはなくちゃならぬでしょうし、方策がなくてはならぬのでありますけれども、そのときは、ああ、これはどうもやむを得ぬという、気持の満足というものをどこかに置いて、落ちつくところに落ちつくようにいたしたいと考えておりますので、そういったような考え方でもう一度調査をしてみるというようなことを、迂遠のようでありますが、基本に置きながら、閣僚懇談会でも相談をしてみたいと思っております。
  132. 受田新吉

    受田委員 これで私、終ります。すでに時間も四時ですから、お暑い中でお気の毒であります。来年の七月末をもってこの留守家族手当の支給を打ち切る法律があるわけですね。従って、今後一年間のうちに、この問題の何らかの処理をする法律改正が必要だと思うのです。次の通常国会にはどうしても手を打たなければならぬ問題なのです。その際にどういう手を打つかということについて、何かの形で大臣は抱負を持っておられると思うのです。留守家族の気持も十分、了承し、また現実の問題もつかんで、こういう形でこれは解決していきたいという一応の腹案は、大臣となられた以上はお持ちたと思うのです。それを伺って私の質問を終ります。
  133. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいま申しましたような深い人情に根ざした気持の問題もございますので、この腹案をもう少し練らしていただきたいと存じております。
  134. 田口長治郎

  135. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がありませんから、簡単に二点だけ大臣に伺いたいと思います。  先ほど来の質疑応答を通じましても、集団帰国が今度で終って、これからの個々の帰国については中共側でも援助をする、こういうことも大臣は言っておられましたけれども、これは北京協定に示されていることで、今までの帰国の場合には、一応三団体に通知があって、三団体が迎えに行ったわけでございます。これからの方法としては、どういうふうな方法が考えられるわけでございましょうか。やはり個人の引き揚げの問題でも、三団体にこういう希望者がいるからという形で言ってきて、そして三団体が迎えにいくというふうな、在来の形をとるのでしょうか。この点を伺いたいと思います
  136. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 説明員から答弁いたさせます。
  137. 河野鎭雄

    河野説明員 実は、従来も少数でございますけれども、中共からも個別引き揚げが行われた例はございます。たとえば、留守家族を通じまして帰りたいというふうな申し出がございまして、船をこちらの方でアレンジして、船賃を払い込んで乗ってもらった、あるいは紅十字会があっせんして、その仲を取り持ってもらったというふうなこと、いずれにいたしましても、船賃をこちらで払い込んで、その船に乗ってもらうというような形をとってきた例がございますので、大体そんなような形をとるのが考えられるわけでございますが、なおだいぶ技術的な面もございますので、さらに日赤等ともよく話し合いをいたしまして、個別引き揚げの方法をとるといたしましても、これが円滑にいくようにいたしたい、かように思っておる次第であります。
  138. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今、日赤という例をおあげになりましたけれども、三団体話し合いをつけて、そして個人々々の帰国を希望する人たちのあった場合には、相談をした上で適当な処置をとる、こういうことでございますか。
  139. 河野鎭雄

    河野説明員 今まで個別引き揚げの場合には、三団体というふうな団体に介入してもらっていないで事が運んでおりますので、今後別に三団体が迎えに行くとか何とかいうふうなことの必要はないのではないか、かように考えておるわけであります。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 私、今持っていませんからわからないのですが、北京協定には、たしか集団帰国が終っても、三団体と協力して個別に希望のある人は帰すというふうになっていたのではないかと思うのですけれども、この点はどうなのでしょうか。
  141. 河野鎭雄

    河野説明員 個別引き揚げの場合に、具体的にどうするということは、実は文面にはないと思います。ただ、集団引き揚げが終っても、個別引き揚げに対して援助をするというふうな、抽象的な言葉であったのではないかと記憶をいたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、従来ありました個別引き揚げというのは、三団体が関与しない形で行われておりますので、個々の人の引き揚げでございますから、一々三団体と相談してどうこうというふうなことは、かえって引揚者のために手続が繁雑になって御迷惑ではないだろうか、むしろ、簡便に帰っていただけるような方法をできるだけ工夫をしてみたい、かように思っておるわけであります。
  142. 戸叶里子

    戸叶委員 それでけっこうなのですけれども、私は、今の協定の内容を日赤の方から聞いたものですから、それを申し上げてみたのですが、それはお調べいただいてけっこうでございます。  そこで、これからの問題で、先ほど長谷川委員のお話の中にもございましたように、帰りたいのだけれどもと、非常にさびしそうにしていらっした婦人もあったそうでございまして、こういう例もございますので、何らかの方法で早く帰れるような方法を講じなければならないと思います。そこで、橋本厚生大臣は大体の根本的な腹案はお持ちのようでございますけれども、閣議に出さないうちは、いろいろ微妙な関係があるから言えないというようなこともございましたから、私はあえて追及いたしませんけれども、早くこの問題を解決するようにして、具体的に解決する方法をとっていただきたい、こう思います。  もう一点は、戦犯の問題なんですけれども、おそらくこの戦犯関係の方で、刑が終る方も今年あるかもわからないと想像されるわけです。戦犯の問題につきましては、今後どういうふうな方法で帰していただくような方法を考えていらっしゃるか、厚生大臣から伺いたい。
  143. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 私、実は事情にあまり通じておりませんので、局長から答弁いたさせます。
  144. 河野鎭雄

    河野説明員 今度帰ってきました三団体乗船代表の方とまだお会いしておりませんので、具体的にどういうふうな話であったかつまびらかにいたしておりません。ただ、戦犯の釈放があった場合には、これは中共政府の方から紅十字会の方に連絡があるようでございますが、そのときはまた連絡するというふうな話し合いになっておるようなふうに聞いておるわけでございます。今までは集団引き揚げというような形で、戦犯の方も一緒の船で帰っていただいておりますが、今後そういった船を用意しないというようなことになりますれば、従来と違った方法がとられなければ、あるいは引き揚げが実現できないというふうなことも考えられます。そういった具体的な問題が起りましたときに、十分善処いたしたいと思っておるわけでございます。中共側におきましても、引揚問題、特に戦犯の方につきましては、これをほうっておくというふうな気持ではないのではないか、かように考えておるわけでございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、要望として重ねてお願いいたしますけれども、向うから何らかの通知があるとかいうふうな時期待ちというよりも、もう少し積極的な態度でもって、方法を早く考えていただきたい、これを要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  146. 田口長治郎

  147. 辻政信

    ○辻(政)委員 まず、援護局長に一言ただしたいと思います。それは、この前の国会のこの委員会におきまして、軍艦「陸奥」が瀬戸内海に沈んでおる。その中には、海軍将兵の遺体がまだ二百三十数体残されておる。それを政府は知らぬ顔をしておる。民間のサルベージ会社に手をつけさしたが、完全にとってこない。この二百三十体の英霊をどうするかという質問に対して、局長は、海軍というものは海の底へ沈むのが海軍の任務であって、揚げない方がいいだろうなんということを言って、この委員会でだいぶ問題を起しておる。それを私が追及して、堀木厚生大臣に、それはけしからぬ話だ、何とか政府において予算と責任を持ってやれということを申し上げたことは、局長は記憶なさっておると思います。大臣の交代に当って、この「陸奥」引き揚げの問題について、新大臣にどのような業務の申し送りをされたか、また政府は、来年度の予算において、この始末についてどうするかという一つの腹案を持っておるのかどうか、それを念のために承わりたいと思います。
  148. 河野鎭雄

    河野説明員 お答え申し上げたいと思います。お言葉を返すようでございますが、実は私は、引き揚げない方がいいのだというようなことを申し上げたつもりではないので、そういう考え方もあるように伺っておる、だけれど、これは遺族の気持とは沿わない、ぴったり合った考え方ではないのじゃないかと思うけれどもというふうなことで、そういうふうな考え方もあるということを申し上げたのでございまして、私どもも、できればこれは引き揚げた方がいいということについて、全然先生と考えを異にしておらないわけでございます。先般御質問がございましたあと、いろいろ大蔵省とも、また専門のサルベージ会社の人たちとも、いろいろ打ち合せなり検討をいたしたわけでございます。その結果、現在相当深いところに沈んでおりまして、しかも非常に重い船体、鋼板も非常に厚いというふうなことで、現状のままでこれ以上遺体を引き揚げるということは、ほとんど不可能に近いのじゃないかというふうな結論に到達をいたしております。それで、遺体を引き揚げるといたしますれば、どうしても船体を何らかの方法で引き揚げなければ完全に収容できない。あるいは一体程度見つかるということは例外的にあり得るかもしれませんが、その前二回にわたって引き揚げをやりましたので、おそらく容易に引き揚げ得る位置に遺体はもうないのではないかというふうに判断されるわけでございます。さらに、現状のままでやるといたしますと、鋼板に穴をあけて入るとかいうふうなことになるわけでございます。これも簡単にはいかない。しかもこの深さの関係、潮流の関係で、熟練者でも十分ないし十五分くらいしか作業する時間がとれない。しかも、穴をあけましたところは角があって、空気を送る管も、そこのところに触れると破損をして、非常な危険を起すおそれもあるというようなことで、現状のままでは、とても揚げられないのじゃないかというふうな結論も出ているわけでございます。そういたしますと、今後これを引き揚げる場合にどういう方法をとったらいいかということでございますが、そのまま浮かせて引っぱっていくという方法と、それから、その場で破壊をいたしまして、上から逐次こわして中に入るというような方法と、いろいろ考えられるわけでございます。いずれにいたしましても、前者の方法によりますことも技術的に非常に困難ではないだろうか、しかも、数億の金をかけなければその目的を達することもできない、数億の金をかけて何年かかかって揚げる計画をしても、それが実現するかどうか、必ずしも断定できないというふうなことでございます。それからまた、こわして中に入るというふうなことをいたしますと、こわし方によっては、遺体をかえって損傷するというふうなことも考えられます。こわすことが遺族のお気持にどういうふうな——こわすというのは、火薬を使うようなことをしなければこわれないわけでございますから、そういうふうなことをしては、遺族の気持にかえって沿わないのじゃないかというふうなことも懸念されるわけでございます。  それからもう一つ事務的な問題でございますが、現在、ある問題につきましては訴訟が係属中でございまして、国の損害賠償の訴訟、それから所有権確認の訴え、それから立ち入り禁止の訴え、請求に対する訴訟でございます。こういった三つの訴訟が係属中でございます。従いまして、大蔵省も法務省も、その訴訟の成り行きも見る必要があるのじゃないか、かりに、手をつけて揚げるというふうなことをいたしましても、そういうふうなことをやる必要があるのじゃないかというふうなこともございます。そういうふうないろいろな条件を基礎にいたしまして、大蔵省の方にも実は検討をお願いをしておる次第でございます。  それから、一方先生方の特に御心配になっておられますのは、遺族の方のお気持だと思います。艦長の御遺族の方にもお会いいたしましてそういうふうな状況に実はあるわけであります。千人ばかりの死亡者があったわけでございますが、そのうち七、八割に相当する方の遺骨を一応収容いたしまして、援護局にお預りをしておるような次第であります。この御遺骨をどういうふうに処理したらいいかというようなこととあわせて、遺族の方にも御相談申し上げたところ、御遺族の方でも、自分たちの方でよく相談してみたいというふうなことにいたしまして、現在に至っておるわけであります。私どもも、決してこれをほうっておるつもりではございませんし、できるだけ御遺族の気持にも沿いたいと思っておるわけでございますが、もうしばらく時間をかしていただきたい、かように思っておるわけでございます。大体のことは、大臣引き継ぎのときにも御説明を申し上げておりますので、大臣の御指示を受けまして善処して参りたい、かように思っております。
  149. 辻政信

    ○辻(政)委員 今、あなたから非常に技術上困難であるという御発言がありましたが、どういう方法でその困難であるという結論をお出しになったか。この前やったあのインチキ会社の係員から聞かれたのか、それとも、ほんとうに金をかけて、もぐって調べられたのか、どっちですか。
  150. 河野鎭雄

    河野説明員 前回に大蔵省から払い下げました以降、数回にわたって現地調査が大蔵省の関係で行われております。そういったことに関係したサルベージ会社の専門の方、大体大きなサルベージ会社の専門の方に伺って、非常にむずかしいということで、絶対不可能だという断定を受けたということを申し上げているわけではございませんが、今まで調査いたしましたところ、聴取いたしましたところでは、非常にむずかしいという話を聞いておるわけであります。
  151. 辻政信

    ○辻(政)委員 どのサルベージ会社に聞かれましたか、大きなサルベージ会社というのはどこです。名前を言って下さい。
  152. 河野鎭雄

    河野説明員 今、フィリピンに大きなサルベージ会社が五社ほど行って作業しておるわけであります。その幹事をしておる人、それから、サルベージ会社としては、非常に大きな会社として知られておると思っておりますが、日本サルベージ会社というのがございます。そういうところの責任者の人に来ていただいて、大蔵省とも一緒に話を伺いました。
  153. 辻政信

    ○辻(政)委員 私は、この問題について非常に残念に思うのは、あれは終戦後のどさくさに、インチキ会社と役人が結託して、利権とからんだ、非常に醜悪な事件なんです。そのインチキ会社がもぐって、取りやすい砲塔であるとか、はずしやすいところだけはずして、鉄は売ったらもうかるから揚げた、遺骨を揚げてももうからないからほうっておいた、これが真相なんです。千名のうちの七百名が引き揚げて、残りの二百何十名残っているのです。手をつけて、むずかしいということであれば私も承知いたします。取るものは取ったんだ、手をつけたが、あとはそろばんに合わぬからといってほうってある。これは遺族の身になって、この営利を目的としたインチキ会社のそろばんに合わなくても、合わなければ合わないで、国が責任を持って、国の予算で始末せよといわれているんです。これは、あなたが言われた日本サルベージ会社、おそらくこれに直接諮ってみた結論じゃなかろうと思うのです。ただ、常識的にお聞きになったのではないですか。やろうと思えばできぬことはありません。そろばんをはじくからできない。そろばんをはじかぬように、国が責任を持ってやれということを前大臣に言うと、前大臣も、これは責任を持って国が何とかしょうといっている。そういう状態でありますから、橋本新大臣は、十三年間あなたの選挙区の近くの海に沈んでいるのですけれども、その遺族の身になって、ことに歴代の大臣の中で、あなたが一番熱心だ。あなたの手によって、これは一つ有終の美をおさめるように、ガダルカナルまで骨を拾いに行くのもいいです、やらなければならぬが、瀬戸内海の、広島と山口の境の海に沈んでおるのを、十三年間も捨てておく手はありません。金がかかろうが、むずかしかろうが、橋本大臣の手で、遺族を納得するようにお骨折りを願いたいと思います。どうぞ御研究になって、来年度の予算に具体的にそれを載せてもらいたい。これをいいかげんにしておいて、海上自衛隊の諸君に、いざというときには沈んでやれと言ったって聞きやしません。小さな問題ではありませんから、十三年間待っておる遺族の身になって、これは一つ打算を越えて、国が責任を持っていただきたいことを橋本大臣にお願いして、私の発言を終ります。
  154. 橋本龍伍

    橋本国務大臣 ただいまのお話、十分に承わりました。実は、私就任いたしましてから、ただいま河野局長からお話をしたような申し継ぎかつ報告を受けたわけであります。訴訟関係等がからんで、大蔵省あたりもなかなかむずかしい点があるようでありますが、何とかして善処いたしたいと思いまして、なお検討してみたいと思います。
  155. 田口長治郎

    田口委員長 本日はこれをもって散会いたします。     午後四時二十一分散会