運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-08-01 第29回国会 衆議院 運輸委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月一日(金曜日)     午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 塚原 俊郎君    理事 木村 俊夫君 理事 堀内 一雄君    理事 井岡 大治君 理事 土井 直作君    理事 正木  清君       小淵 光平君    川野 芳滿君       菅家 喜六君    久野 忠治君       小枝 一雄君    關谷 勝利君       高橋清一郎君    高橋 英吉君       羽田武嗣郎君    原 健三郎君       前田  郁君    三池  信君       河野  正君    久保 三郎君       河野  密君    島口重次郎君       杉山元治郎君    館  俊三君       山田 長司君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 永野  護君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局長)  粟沢 一男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      権田 良彦君         運輸事務官         (自動車局長) 山内 公猷君         高等海難審判庁         長官      長屋 千棟君         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         日本国有鉄道副         総裁      小倉 俊夫君         日本国有鉄道常         務理事     吾孫子 豊君         日本国有鉄道常         務理事     久保 亀夫君         日本国有鉄道参         与         (資材局長)  平出  彬君         日本国有鉄道参         与         (営業局長)  磯崎  叡君         専  門  員 志鎌 一之君     ————————————— 八月一日  委員小泉純也君河野正君及び松岡駒吉辞任  につき、その補欠として久野忠治君、池田禎治  君及び河野密君が議長指名委昌に選任され  た。 同日  委員久野忠治君及び河野密辞任につき、その  補欠として小泉純也君及び松岡駒吉君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  陸運及び海運に関する件      ————◇—————
  2. 塚原俊郎

    塚原委員長 これより会議を開きます。  陸運海運及び観光に関する件について調査を進めます。質疑通告がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 若干志免の売山、民間移譲の問題につきまして、その後のいろいろな諸情勢に対します質疑を行なって参りたいと考えます。すでに昨日も委員会におきまして、若干の論議が行われて参りましたから、まずきのうの論議について私どもも若干質疑を重ねて参りたいと考えます。  昨日は運輸大臣に対して自民党の長谷川委員からも御指摘がございましたが、すでに御承知のように、今回吾孫子常務理事門司おいでを願って、そして関係いたします組合側当局側要旨通告されたということでございますが、これに対する事務的な取扱いについてのいろいろな点について、昨日もいろいろ論議がかわされたのでございますが、その中で私が一点疑問に感じました点は、それはなるほど運輸大臣吾孫子常務理事門司に出かけていって要旨を伝達する、通告すると申しますか、そういったことについては了承された。了承されておったその点については異論ございません。ところが大臣の御答弁を承わっておりますと、事務的な折衝は当然国鉄当局が行うべきである、従って政治的な判断を行うための資料をいろいろ得るために派遣を了承したんだということでございましたけれども、私ども承知する範囲におきましては、いろいろと現地従業員なり組合側意見を聴取するというようなことでなくて、当局側としては調査委員会の第二次の諮問に応じて民間に移譲することを決定したんだというふうな通告が行われたというのが、その真相のようでございます。ところが大臣は、昨日の当委員会におきます御答弁の中の要旨を承わりますと、そういったような通告という意味でなくて、いろいろと現地現地なりの意見があるであろと思うので、そういった意見を十分聴取してもらう、そういう点において了承した。この点は後ほど大臣おいで願いますれば、大臣からも私はその点に対しましてもう少し明らかにしていただきたいと思いますが、そういった点で門司に出かけていっていろいろと組合側とお会い願うという点につきましては、運輸省側了承されておるのでございますけれども、その内容におきましては、運輸大臣がお考えになっておりますこととは、実質的な相違をしておるというふうに私ども判断するのでございますが、その辺はいかがでございまするか、一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  4. 十河信二

    十河説明員 運輸大臣はわれわれの考えておりますほかにいろいろ政治的に御考慮になっておることで昨日申し述べられたと私は了解いたしております。運輸大臣と私との間に何らそういう点において意思の疎隔はないということを私は信じております。
  5. 河野正

    河野(正)委員 運輸大臣と私の間には相違がないと断定的におっしゃいますけれども、しかしながら、少くとも本委員会の席上におきます運輸大臣の御答弁なり、あるいはまた吾孫子常務理事現地で通達をされております内容等を照合いたしまするならば明らかに相違しておる。吾孫子常務理事当局労働組合の当事者に対して通告をされた。調査委員会の第二次答申に基いて当局側は実施をするんだという通告が正式に行われたわけであります。ところが大臣は、昨日この委員会におきましても明らかにされましたように、常務理事現地に出かけていっていろいろお話をするという点については了承を与えておるけれども、その内容というものは現地従業員からいろいろ意見もあろうから、そういった意見を十分聴取する。それに基いて自分は政治的な立場から政治的判断資料といたしたいというふうな御答弁であったわけでございます。そうたりますると吾孫子常務理事現地にお出向き願うということは問題ありませんけれども、その内容においては総裁相違しておらぬとおっしゃいますけれども、私は相違しておると思う。この点は後ほど大臣からもう一度確かめておきますけれども、私は相違しておる、かように考えざるを得ないと思います。その点に対しまする理解相違はあるかもしれませんが、そういう点に対して総裁が断定的に相違しておらぬ、そういった考え方でございますから今日までいろいろな問題が派生的に起って参っておるというふうに私は理解をするわけであります。永ちろん総裁としては売るという墓穴方針でいろいろ強行策をとっておられるかもしれませんけれども、しかしたがら今日まで現地の方たが切実な意見をそれぞれ申し述べられておりますように、この志免鉱業所に関連いたします四カ町村の十万の住民の方々、あろいは従業員三千数百、家族を含めれげ約一万でありますが、そういった方々の非常に真剣な意見を、今日まで長い間かかって、当局側に対しましても、あるいは関係各方面に対しましてもろるとして陳情されて参ったことは、総裁も十分御承知通りであると思います。ところが総裁自身が売るという御方針であるので、そういったいろいろな意見というものを全く黙殺される、あるいは黙殺されるということが適当でございませんならば、軽視されるということは、今日の民主正義時代におきまして全く逆行する態度であるというふうに考えざるを得ないと思うのでございます。その点に対しましてはただいま総裁相違しておらぬとおっしゃいますから、後ほど大臣おいでになりましたならば、もう一度明らかにしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  そこで私は、今度の問題がいわゆる答申案中心として具体的に事務的な折衝が進められて参りましたので、若干この答申案中心として御質疑を続けて参りたいと考えるのであります。まず私の第一にお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、直接の監督官庁であります運輸省当局が、この問題はやはり現地におきましても非常にいろいろな複雑な情勢のもとに置かれておる。ことに十河総裁から運輸大臣に対しまして、いわゆる三月十二日に承認方の上申が参っておりまするが、その運輸大臣回答の中にも明らかに示されておりますように、「諸般情勢にかんがみ、これが取扱いについては万遺憾なきを期せられたい。」というふうな回答が、運輸大臣から総裁のもとに届けられておりますように、運輸省におきましても、この問題はいろいろ問題が複雑であるので、一つ慎重に取り扱ってもらいたい、こういうふうに監督官庁であります運輸省はきわめて慎重なる態度を堅持されておりますけれども、しかしながら国鉄当局側は、どういう意図が秘められておるのかわかりませんけれども、この問題を強行に遂行していこうというふうな御意図が明らかに今日まであって参っておるようであります。そこでまず第一にお尋ねいたしたいと思いまする点は、調査委員会の第一回の答申の中に、「とりあえず中間答申を行う必要がある」ということでございますが、とりあえず答申を行う必要があるということにつきましては、私はいろいろな理由があろうかと思います。それでは一体どういう理由でそういったように答申を早急に行わなければならないのか。なぜ答申を緊急に取り扱って参らなければならないのか。そういう点に対しまする具体的な理由につきまして一つお尋ねを申し上げてみたいと思います。
  6. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 調査委員会が比較的急いでそれぞれの時期に答申をお出しになられましたのは、それぞれの答申書によっても明らかにされておりますように、鉱業所の処置ということにつきましては非常に関係する事項が多い。従ってその中で基本的な方針、あるいはそのときどきの、さらに一歩進められた基本的な事項等については、まとまったものから逐次に答申をしていくことが、諸般の準備、事務を進める上においても必要なことであるというふうにお考えになって、お出しになっておられるのだと考えております。
  7. 河野正

    河野(正)委員 諸般事情によって行われたということでございますが、それでは第一回の答申が行われるに当りましても、大体この志免問題に対しまして三つの取り上げ方をいたしております。それはすでに御承知かと思いますけれども、この志免鉱業所を現在のような国鉄として合理化をやっていくという点が第一の取り上げ方でございます。現物出資をして共同経営をやっていこうというのが第二の取り上げ方でございますし、第三の場合、最後の場合が、いわゆる譲渡するならばどうあるべきかというふうな取り上げ方でございます。それではこの第一の取り上げ方でございまする志免鉱業所、現在の国鉄経営いたしまする、いわゆる国鉄中心となって経営合理化をはかっていくというような点についてどのような検討が行われてこのような答申が行われて参ったのか、私はこの点はきわめて重要であると思います。と申し上げますのは、結論的に申し上げますならば、国家的な見地から総合開発を行います場合には、道としては二つの道しか残されておらない。第一の道は今日の国鉄中心となって総合開発する場合と、それと率直に申し上げますが、いろいろ答申案の中では、三菱だとか住友だとか三井だとかいうことでございますけれども、そういったことを私は全くナンセンスだとしか考えておりません。と申し上げますのは、隣接鉱区三菱でございますから、この三菱中心として総合開発を行う、いろいろ御意見はあるといたしましても、究極の問題といたしましてはこの二つの道しか残されておらない。そういたしますると、調査委員会としては当然、国鉄中心となって総合開発する場合と、三菱中心となって、いわゆる隣接鉱区中心となって総合開発する場合と、この二つの問題が同等の条件で検討されていかなければならぬ、かように私は考えるわけでございまするが、それではごの第一の取り上げ方に対しましてはどのような検討が行われておったのか、これに対しまする事情を明らかにしておいていただきたい、かように思います。
  8. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 調査委員会とされましては、最初国鉄総裁の方から志免鉱業所をいかにすべきかという第一号諮問を差し上げました際に、国鉄がこのまま直営して経営合理化していくのがよいのか、それとも独立の別会社というような形にするのがよいのかというようなことについていろいろ御検討いただいておったわけでございます。国鉄がこのまま直営を継続していくという場合につきましては、これは前国会青山委員長参考人として御出席になられました際にもその御説明があったと記憶いたしておりまするが、直営の現状のもとにおいてはいろいろな合理化の措置もすでに限度にきておる、志免炭鉱の寿命を伸ばし、そしてまた石炭資源開発という趣旨に沿うようにするためには、どうしてもより広い範囲のいわゆる総合的な開発を行うのでなければ、現有施設も十分有効に活用するということにもならない、そういう観点から国鉄直営ということではすでに限界に達しておるので、これを第三者に譲り渡すのが適当と認めるということで、第一回の中間答申をお出しになったのであるというふうに承知いたしております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 ただいま調査委員会青山委員長のいろいろな説明をもとにして御答弁がございましたが、私は青山委員長の御答弁了承できませんし、なおまた青山委員長答弁中心にして行われましたただいまの答弁了承するわけにも参りません。と申し上げまするのは、この国鉄志免経営合理化というものがもはや限界に達上た、しかも現在の状態を長く維持することは困難であろうというので、そういったことに基いて民間譲渡という結論を出したということでございますが、私どもが一番不思議に感じますることは、国鉄が行いまするところの合理化限界に達している、それでは民間が行いますればその限界がなくなるという点につきまして私は全く了承が参らないわけでございまするし、なおまたすでに当局側も御承知のように、今日の志免鉱業所というものは従業員の協力も非常に大きなものがございまするし、当局側の白書によりましても、すでに昨年度におきましては三億数千万円の黒字が出るということであることはすでに御承知通りでございます。こういったように、経営合理化に協力して今日非常に能率を上げている。ところが、国鉄経営すれば限界に達する、それだから民間に譲渡する。それでは、国鉄経営すれば限界に達上て、民間経営すれば限界に達しないという理由がどこにあるのか、まことに残念でございますけれども、私どもはそういった理論に対しましては了承しかねるわけでございます。どういうことでございまするのか、その辺も一つ了解のいきまするように御許明を願います。
  10. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 国鉄がこのまま直営をしていくという場合に、勢い現在の鉱区に限定されざるを得ませんので、現在の鉱区内においてはすでに合理花限界にきている、これを隣接鉱区永あわせて国鉄自身総合開発をなし得るような状態にあるかと申しますと、この点は、昨日も運輸大臣お話もございましたが、国鉄としては、国鉄本来の業務に対する資金の調達にも非常に苦労をしているような状況でございまして、炭鉱に対してまで新たな投資をするというようなことはとうてい許され得ない状況にございますので、こういう状況のもとにおいて、国鉄が現在の鉱区でこの炭鉱を所有しておる限りこれ以上事態が好転するということは、国鉄直営のもとにおいては考えられない、こういうことのように伺っております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 地下資源のことでございますから、掘れば掘るだけ地下資源が減っていくということは当然のことでございますけれども、しかしながら、私どもが今日まで非常に疑問を持って参りましたことは、さればといって現地の実情も十分聴取することなく、現地の意向も十分尊重することなく、強硬に、しかも短時日でこの問題を進めていかれようというところに私どもは非常に大きな疑問を抱くわけです。それに伴いましては、当局側もお聞き及びになったかどうか知りませんけれども、今日いろいろな醜聞が桂岡には伝えられております。そういったように、将来の問題は別といたしましても、この問題を早急に解決していごうというところに非常に問題を残しているというふうに私ども考えるわけでございますし、なおまたこの答申案理由の一端をながめて参りましてわかりますように、現有地施設の有幼活用という点からも民有にした方がよろしいということでございますけれども、私どもも先般勝間円団長以下本名の国会議員が大挙いたしまして現地をつぶさに視察をさしていただきました。ところが御承知のように、現有施設有効活用という言葉がもし引用されるといたしまするならば、むしろ国鉄中心となって総合開発をやる、それこそ私は現有施設有効活用ということにおきましては最も最たる道であるというふうに判断をいたして参ったわけでございます。と申し上げますのは、最下層炭の採掘、この点につきましては、御承知のように隣接鉱区からは採掘することができません。これこそ今日の国鉄が経画しております縦坑中心として最下層炭開発が可能になって参るわけでございます。そこで、他の隣接鉱区事業体経営いたしましてもその総合開発を実施することは不可能でございまして、もしこの答申のような現有施設有効活用ということが指摘されるといたしますなら寸ば、私はむしろその言葉建前からも、当然国鉄中心となってこの現有施設の有効なる活用を行うべきだというふうに理解いたすわけでございます。たまたまこういう言葉が使われておりまして、しかもそれを理由にして民間に譲渡するということでありましたならば、私は全くこの答申というものはナンセンスだというふうに考えるわけでございますが、その点いかがお考えでございますか。
  12. 平出彬

    平出説明員 現有施設有効活用と言っている中には、もちろん国鉄で投資しました諸施設縦坑等施設も入っているものと考えております。あの地帯を総合開発いたします場合には、国鉄施設だけでなく、現在持っている各種の周囲の施設排気口あるいは採炭の坑道にしましても総合的に組み合せてやることが可能である、こういうことも言えるのではないかと私は考えます。
  13. 河野正

    河野(正)委員 全く今の答弁は、私どもしろうとが聞いておりましてもあきれ果てるような御答弁です。どういう意味で御答弁なさったのか知りませんけれども、この糟屋炭田総合開発というものは、今の国鉄志免鉱業所施設中心として必要な総合開発が行わるべきであって、もし総合開発するといたしますならば、いろいろな隣接鉱区施設活用するということでなくて、隣接鉱区そのものがほしいわけです。たとえばお隣の三菱勝田鉱業所総合開発するといたしましても、これは志免鉱業所現有施設活用して初めてできるわけです。三菱勝田施設活用してできるわけではないのです。これは現地専門家意見を聞いて参りましてもそういった点が明らかになっております。ところが、ただいまの御答弁によりますと、隣接鉱区等施設活用して総合開発をやるというわけでございますけれども、問題は鉱区でございまして、施設そのものは、私は今日の志免鉱業所現有施設中心にならなければならぬと思う。これは専門家がそのようにおっしゃっている。それを当局側がこういうずさんな答弁をなさることは全く了承できません。そので訂正さ、れる点があるならば訂正して下さい。
  14. 平出彬

    平出説明員 私の説明が不十分であったかと思うのでありますが、委員会答申でもって出ております有効施設、これは国鉄の問題として申し上げているわけでありますから、国鉄縦坑施設をさしていると思うのであります。また、実際の総合開発に当りまして、志免縦坑その他の施設が重点的に有効に活用されるであろう、こういうことについては、私もそう思っているのであります。ただ、開発には縦坑だけではいけないのでありまして、排気品その他の施設が要るわけであります。また、反対側から掘ってくる場合もあるわけでおります。そういった点で、総合開発でありますれば、実際の経営に当っていろいろ既存の民間施設も利用することがあり得ると私は考えております。
  15. 河野正

    河野(正)委員 そういう不十分な理解のもとに売山を決定されるところに問題がある、こういう意味で私は取り上げているわけであります。と申しますことは、活用しようと思えばどういう活用もできる。しかし総合開発ということが柱でなければならぬ。総合開発ということは、能率的だということであります。そういうことからいけば、現在の志免施設中心としての活用のほか考えられないと思う。排気口とかおっしゃいますけれども、そういうことは総合開発建前から申しますと微々たるもので、大した問題にならぬ。一々取り上げますといろいろなことがあるわけです。総合開発を国家的な立場からということがこの前青山委員長からも明らかにされたわけで、国家的立場総合開発をするにはどうあるべきかということで、大筋をあげて論及しているのであります。従って、答弁大筋の御答弁を願わなければならぬと考えるわけです。ただいま局長から御答弁がございましたような不十分な認識で今後事を運ばれますならば、将来に重大な問題を残す。そこで、この問題を処理するに当りましては、もう少し十分なる認識理解を持って事に当ってもらいたい。今御答弁のような理解のもとにこの問題を運はれるのは、私ども了承することがならぬ、かように御指摘申し上げなければならぬのであります。  さらに、答申内容でございますが、現段階においてはすでに志免鉱業所国鉄経営する必要がなくなったというのでございます。なぜ現段階においてはその必要がなくなったか。たとえば先ほど吾孫子理事も、あるいはまた先日から、国鉄行管の勧告もあって鉄道本位で行った方がよろしいということでございますけれども国鉄におきます発電設備の点からながめてみましても、今日増強計画が行われております。しかもその計画は、私どもの持っております資料によりましても、三十六年まで発電設備増強計画を行うということでございますが、なぜこの志免鉱業所に対しては現段階でその必要が認められないのか。そうしますと将来は、発電計画が終りますれば、発電設備も必要がなくなって民間に移譲するということで、次から次に民間に移譲されて、最後には国鉄そのもの民間に移譲されるという結果に陥ってしまうと思うのであります。大体国鉄経営のあり方、たとえば私鉄経営をごらんになりましてもわかりますように、私鉄野球場あるいはデパートを持っている。こういった総合経営のもとに私鉄経営がだんだん発展を見ておるという事実が明らかに認められておる。国鉄国有から公共企業体的性格に移って参りましたからには、国鉄の場合と若干違った経営が行わるべきものであると思う。私ども公社に対しましては、そうい、一つ性格を持つべきであると判断し、理解をいたしております。ところが、終戦後——私は昨日も大蔵大臣にお会いしましていろいろ当時の模様を承わりました。大蔵大臣は、当時海軍省から志免鉱業所国鉄が引き継ぎましたところの最高責任者でございます。そこで、当時のいろいろな事情を承わかりましたが、志免鉱業所があの終戦後の石炭不足時代国鉄燃料炭に与えた役割は非常に大きいということを力説されておりました。そういうように、利用する場合には従業員のしりをたたいて利用する、そして今日若干情勢がよくなってどうも利用価値が少くなったとなりますと、もう民間に払い下げるのだ。そうなりますと、さっき申し上げました電化の問題につきましても、発電所の問題につきましても当然起って参りますし、将来は国鉄経営そのものにつきましても大きな変革が起って参ると思いますが、そういった一つ基本的な問題に対する総裁の御所見を承わりたいと思います。
  16. 十河信二

    十河説明員 ただいまのお説しごくごもっともでありますが、電力と石炭とは相当事情が違いまして、石炭は、貯炭をして必要なピークの需要に応ずることができるようにすることが可能であります。電力はそれができないのであります。電力につきましても、私たちはでき得る限り輸送という本来の業務に専念するために、これを民間に依存したいと考えて、電化計画を促進するに当って、前にも申し上げましたが、電力会社の社長さんにお集まりを願っていろいろとお話を申し上げたのです。何分東京付近は、今日の状態では国鉄がラッシュ・アワーに非常にたくさんの電力を必要とするのであります。その必要とする電力をピーク時に供給することは困難であるのでぜひ国鉄でやってもらいたい、こういうお話がありましたので、東京付近におきましてはやむを得ず電力の増価計画を進めなければならぬような状態になっております。志免炭鉱におきましても、終戦後あの困惑した状態におきまして志免炭鉱は非常に大きな使命を果してくれたのであります。私は志免炭鉱従業員並びにその地方の四カ町村方々が協力して下さったことに対して心から感謝いたしております。それゆえに、そういうふうに働いてくれた従業員に、だんだんしり細りになって今後安定した職場を継続して持っていくことができるかできないかということで心配をさせることはまことに相済まぬ。またこれを国鉄が総合的に計画すればそういう心配はなくなるということもありますが、それにはたびたび申し上げまするように、国鉄は輸送業務に専念すべきである、輸送業務自体すら十分国民の満足を得ることができないような状態にあるにかかわらず、民間でやり得ることを国鉄が継続してやるということはよろしくないという世論、並びに今度の調査委員会あるいはまた行政管理庁の勧告もみんなそういう点からきておるのです。私はこれを切り離すという事務を進めるに当りましても、第一に考えたことは、どうすれば従業員に安定した職場を与えることができるか——先刻来御説明申し上げまするように、現在の志免鉱区内においてはもう合理化も行き詰まって、これからだんだん出炭量も減ってくる、人も余ってくる、こういう状態になっております。今ここで何らかの処置を講じないと、従業員が安定した職場を得て働いてもらうことができないという状態になりました。それゆえに私は慎重に事を検討いたしまして、すでに三十年に行政管理庁から勧告があり、また本年にも重ねて勧告がありました。それにもかかわらずなお国鉄だけで決定することを遊げて、軍門家にお集まりを願って、専門家をわずらわしてどうしたらいいでしょうかということの御意見を伺って、その上で事を進めるというふうな慎重な態度をとって参った次第であります。このたび調査委員会答申が出ましたから、新しい事態が起ったならば、必ずまずこれを従業員に報告して、従業員の心がまえあるいは従業員意見なりを聞くという約束をいたしております。その約束に従って吾孫子理事現地に参りまして、こういう調査委員会答申が出た、前から言っておる通りどうも払い下げということは大勢上やむを得ない、ついては、諸君の将来のことはでき得る限り考えるから、どうか意見を言ってくれ、そうしてそのことに協力してもらいたいということを従業員お話申し上げた次第であります。同時に関係町村の方たにも今日までのいろいろな御協力を感謝すると同時に、将来鉱害等につきまして何ら不安のないようにいたしますからということの御了解を願うつもりで、吾孫子理事を派遣いたしたような次第であります。その点においては私は、運輸大臣は十分御了承下さっておられるというふうに考えておるということを先ほども申し上げた次第であります。
  17. 河野正

    河野(正)委員 ただいま総裁のお言葉の中の慎重ということにつきましては私ども了承いたします。ところが実際には、私先般の委員会におきましても指摘申し上げましたように、四月七日に第一回の諮問を発して、九日後の四月十六日には第二回の諮問を発する、要するに九日目には調査委員会が売るという方針を決定した。ところがそれにつきましては先般もるる申し上げましたように、志免鉱業所は七十年の貴重なる歴史を持っておるのであります。その七十年の歴史の中には血も涙も通っております。その血も涙も通っておる七十年の歴史を持った志免鉱業所の処理をするのに、わずか九日間で売るという方針を決定した委員会答申は、いかに総裁が慎重という言葉をお使いになりましても、私どもはその慎重という言葉に対しましては断じて了承するわけには参りません。しかも現地ですでに発表されておると思いますが、生産十カ年計画というのがございます。その生産十カ年計画をながめて参りましても、大体ここ四、五年は四十五万トン・ベースというものが維持できるという計画でございます。しかしさっき総裁もおっしゃいますように、地下資源でございますから、採掘いたしますればそれだけ地下資源が減少していくということは私ども了承いたします。ところが今日総裁が慎重という言葉を使い、なおまた現地におきましては生産十カ年計画が発表され、その十カ年計画のうちの五カ年というものは四十五万トン・ベースが維持できる——もちろん可採炭量につきましてはいろいろ問題はございましょうが、組合等においてはその生産十カ年計画についてはなお異議があるようでございますが、一番確実なところを踏んで、なお今後五カ年間につきましては四十五万トン・ベースが維持できるという事態にあるのが今日の専門家意見でございます。ところが、そういう情勢にあるにもかかわらず、調査委員会に対しましてはわずか九日で結論を出させてみたり、あるいはまた総裁は今日まで短期決戦といいますか、短時日にこの問題を処理しようというふうな態度をとっておられますことにつきましては、まことに残念ながら私どもは何か底意があるのじゃなかろうかという疑問を持たざるを得ないというのが実情でございます。  なお、ただいま総裁言葉の中で、鉱害補償の問題が出て参りましたから、私も若干触れて参りたいと思います。それは今日現地の鉱害を受けました被害者の方々の統計によりますと、その被害額というものは、田畑が約五百町歩、家屋が千二百戸そのほか道路、ため池等々ございますが、そういった田畑五百町歩ないし家屋千数百戸等を含めます鉱害補償額が大体十三億程度だというふうに推定をされております。ところが、私どもが先日調査団として現地に参りましていろいろ調査いたしましたところが、当局側判断によりますと三億程度だということでございまして、その間におきましてもすでに十億以上の開きが生まれておる、これが今日の実情でございます。ところがただいま総裁言葉によりますと、吾孫子常務が現地に行って、鉱害補償はどういうふうにすれば納得していただけるかという話が行われたということでございますが、その点につきましては何ら行われていない。そうして今日は現地の方たが、今のままで推移すれば現地で重大な事態が発生するぞということで、陳情団の方々もたくさんおいでになっておるようでございますが、私はそういった点につきまして、総裁が先ほどおっしゃいましたような点がほんとうに今後行われるかどうか、その点をお尋ねしたいのが一  なおまた先ほど総裁がるる述べられたように、将来従業員について心配をしておるという点については、私は敬意を表します。総裁みずからも現地従業員とひざつき合せて、どうすればいいんだ、従業員はどう考えているのかという声を、もし総裁がそういったお言葉のような温情がございますならば、私はやはり吾孫子常務が現地に行って——現地ということでございますけれども現地ではございません。門司まで出かけていってそういった通告をされたという実情でございます。現地という話でありますけれども、決して現地ではございません。そういった重大な問題でございまするから、やはりそういう通告をするならば現地に行って従業員がとことんまで納得のいくような通告をするというふうな手続なり態度なりが私は必要だと思うのでありますが、必ずしもそういった態度がとられておらない。しかも、さっきも総裁がおつしやいましたように、ついては現地の方たが納得されるような相談をされたということでございますけれども、私はそういった相談をされたということは聞いておらない。その辺の事情について、もし誤まりがあれば一つ訂正していただきたい。
  18. 十河信二

    十河説明員 私の言葉が足りなかったか、間違っておったかもしれませんが、鉱害につきましても関係の方たに御納得のいくようにいたしますからどうか御協力を願いたい、関係の方にお会いしたらそう言ってこいということを私は申したのであります。鉱害のことについて交渉をしろということは私は申しておりません。その点は御了承を願いたいと思います。また吾孫子理事門司で話をして現地へ行かなかったということは、吾孫子理事も非常に考えた結果、あまりこういう際に刺激するようなことはしたくないという考えから、慎重に考えた結果、門司で代表者の方たにお話をしたということだと考えております。その点は決して骨借しみをしたとか慎重にやらなかったということではないということを御了承いただきたいと思います。
  19. 河野正

    河野(正)委員 ただいま訂正をされましたけれども、その内容は私は若干食い違っておると思います。と申しますのは、これは吾孫子理事から後ほど御答弁を願いたいと思いますが、内容についてはいろいろ打ち合せをやらなかったけれども、納得するような処置をやるのだというふうな話し合いをさせたということでございますけれども現地の被害者に対してそういう話し合いが行われたということは私どもは聞いておりません。おそらく国鉄労働組合に対して要するに人事問題等もありますので、そういった意味通告が行われたのだと思う。この鉱害問題につきましては、私はその節代表団の方をお呼びになって、そうして、内容については別でございますけれども、納得するような形でやるのだという通告を行なったというようには私ども理解しておりません。この点につきまして後ほどでも吾孫子理事の方から御訂正がありますならば一つ御訂正を願いたい、かように考えます。  それからなおまた、たまたま鉱害補償の問題が出て参りましたから、その点について若干私はそれに関連してお尋ねを申し上げておきたいと思いますが、それは第二回の答申でございますが、この第二回の答申の中に、「従業員の処遇、鉱害補償の折衝等にも相当の時日を要するものと判断せられるので、諮問第三号に関する結論を待つことなく答申を行う」ということでございます。この諮問第三号というのは、志免鉱業所の譲渡価格、評価の問題と思いますが、その評価の問題は別にして、さっき総裁がおつしやいましたようないろいろ鉱害補償の折衝あるいは人事の問題の折衝等で相当時間がかかる、そこであらかじめ中間的な結論を出すということだと思いますけれども、大体相当時日を要するということで中間答申、第二回の答弁が行われたと思いますが、それでは最終答申というものはいつ出されるのか。私は一応やはり含みがあってこの第二回の答申が行われたと思いますが、それに対しまする事情がわかっておりますならば、さっきの吾孫子さんの補足と合せて一つこの際御答弁をお願いいたします。
  20. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 ただいまお話の出ました、まず鉱害の問題につきましては、もしお前が九州に行ったときに、地元の方にお目にかかるようなことがあって、地元の方からそういうようなことについてお話があった場合には、鉱害の問題については十分御納得のいくような措置を御相談申し上げるからというふうに話をせよ、こういうお言葉であったわけであります。実際には時間の関係もございましたし、地元の方たにそれらの問題についてお目にかかるという余裕がございませんでしたので、そのことについては何にも触れておりません。それが事実でございます。  それから鉱害の問題につきましていろいろ地元の関係町村等からお申し出をいただいておることは事実でございますけれども、まだそれにつきましてどうこうするというような、国鉄側から対案を持ってお話するという段階にはなっておりません。それで第二回の答申の末尾に、ただいま御指摘のように鉱害補償のことが触れられておりまするが、実は調査委員会の方でこの鉱害問題の処理をどうすべきかということについて、少くともその基本方針というようなものをただいま御検討下さっておる最中でございます。いずれこの点についても調査委員会の方から意見の具申があるはずになっております。私どもといたしましては、鉱害の問題につきましては大へん重要なことも考えておりますので、今調査委員会が調べております基本的な取扱いに関する方針等を伺った上で、それもよりどころにし、かつまた地元の関係の方々とも十分御折衝もいたしまして、御納得のいくような措置をいたさねばならないと考えております。なお第二回答申の一に書いてございますように、委員会としては年内になるべく早く処置をするようにということを申されておりますので、今後のいろいろな問題に対する委員会としての意見の御提出等も、示された時期に間に合うようにおやりになる御予定であるというふうに考えております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 大臣おいでになりましたので、大臣に関係いたしますることについて若干質問を続けて参りたいと思います。すでに大臣も、昨日の委員会志免鉱業所の問題につきまして若干所信を表明されて参りました。その中で一点、吾孫子常務理事門司に参りまして、現地従業員に対していろいろ申し渡しをしたその事務手続についての質問が若干行われて参りました。その答弁の中で大臣は、自分が政治的な配慮を行うための資料として、吾孫子常務理事現地に派遣することを了承したというような意味の御答弁があったと私ども理解しております。ところが現地吾孫子常務理事が関係いたしまする従業員の方たに通告されました内容というものは、第二回答申が行われて、国鉄当局は売るという方針を決定したのだ、そこでいろいろ条件があるならば申し出ろという一つ通告が行われた、売山に対する意見を徴するということでなくて、売るんだという通告というものが柱になっているというように私ども理解をいた上ております。ところが大臣の昨日の御答弁では、いろいろ現地でも意見があろうから、そういった意見を聴取してもらう、そういった心組みで派遣を了承したということでありますると、その間に私は内容につきまして若干の合い違いが行われておるというふうに判断をいたしたわけでございます。ところがそういう点については全然食い違いがないという国鉄当局の話でございますけれども、私は少くとも大臣の昨日の本委員会における答弁というものは、自分が政治的な配慮を加えるためにいろいろ資料が必要である、そこでいろんな現地方々事情を聞くために吾孫子常務理事現地に派遣したという意味理解をいたておりますので、それに対しましてもう一度明確な御所信を承わっておきたい、かように考えております。
  22. 永野護

    ○永野国務大臣 ただいまの御質問、すなわち吾孫子常務理事の扱いましたやり方と私の説明との間に食い違いがありしないかという御質問ですが、結論的に逆に申しますと、私は少しも食い違いはないと思っております。と申しまするのは、立場が違うということであります。すなわち、政治的配慮を加えてということではなくて、政治的に扱うのが運輸大臣の任務だと思っております。政治的な配慮は国鉄の当事者が考慮すべきことではなくて、それは運輸大臣考えるべきことだ、私はこう了解しております。従いまして、国鉄運輸省とは全く離れた独立の存在を持っておるのでありますから、国鉄事務当局がこれを売るべきものだと判断する、その判断運輸大臣は変えさすことはできません。ただそれを認めるか認めないかという自由を運輸大臣は持っておるだけであります。従いまして、国鉄の当事者が売るものだと決意をして、そういうことをかりに通告いたましても、それをとどめることはできぬのであります。ただわれわれは、どういうことをきめましても、それを認可しない自由を保留されておるだけであります。それを認可するかしないかというその判断資料として、現地方々がどういう判断をしておるかということを知る必要がありますから、具体的に売るのだと決意を表明してきて、それがどういう反響を起すかということを知ることは、私が政治的判断をする材料に必要でありますから、少しも差しつかえはない、行っていらっしやいと言ったのであります。立場が違うということから、今のように一見食い違いのように見えるけれども国鉄立場からいえばそうなる、しかしそれは何ら運輸大臣の自由判断を拘束するものではない、そういうことであります。
  23. 河野正

    河野(正)委員 私の質問の言葉が足りなかったかと思いますけれども大臣のおっしゃることはわかるのです。ところが昨日大臣が御答弁になりました言葉から私ども受けました印象というものは、大臣はもちろん政治的な最終的な判断を下す、そのために国鉄国鉄として独自の立場事務処理をやるということについてはとやかく言うべき筋合いではない、それはよくわかるわけです。ただ大臣言葉の中で、政治的な配慮をするために現地事情を十分聴取してもらいたいという意味吾孫子さんが現地に行くのを了承したというふうに私どもは承わったわけです。ところがただいまのお話では、売出決定を通告する、そのために、それに対て現地の反響が、どうであるかというその反響をながめるために派遣を了承したのだというような印象をただいまの御答弁から受けました。そうでございますればそれでけっこうだと思います。ただ、きのうの大臣の御答弁の中では、売山を通告する、そのための派遣を了承したのじゃなくて、いろいろ現地でも意見があろうから、その意見国鉄が聴取する、そのために派遣を了承したのだというふうな意味に私は理解をいたしましたので、そういった御質問を申し上げたわけです。ところがただいま大臣がおっしゃいましたように、通告するならしてもよろしい、それに対して現地従業員がどういう反響を示すか、その反響を自分はながめたかったのだ、そういうことでありますなら、それはそれで了承いたします。それでけつ、こうです。  それでは次に、私はこれは先般から大臣にぜひお尋ねしたいと思っておった点でございますが、それは大臣もすでに御承知のように、今度の問題の処理に当って総裁諮問委員会を設定されました。ところがその諮問委員会が設定されるに当りまして、総裁から大臣に対しまして承認方の願い、承認書が参りまして、それに対しまする運輸大臣回答というのが三月の十八日に行われております。それは、「諸般情勢にかんがみ、これが取扱いについては万遺憾なきを期せられたい。」いろいろ複雑な情勢があるので、この問題は慎重に取り扱えというような意味運輸大臣回答であったように私ども理解をするわけでございます。ところが大臣もすでに御承知だと思いますけれども、この調査委員会に対しまする第一回の諮問が発せられましたのは四月七日のことでございます。ところがその九日後の四月十六日には、もう売るのだ、売山するのだというような決定が行われておるわけです。さっきもちはっと申し上げましたように、委員の方たには恐縮でありますけれども志免鉱業所というものは七十年の歴史と伝統を持った鉱業所です。これには血も涙も通っておるというようなことを先ほど指摘申し上げたのでありますが、そういった志免鉱業所の問題を、調査委員会というものが——もちろん国鉄当局は三十年に勧告された、その三十年より今日まで経たわけですからこれは別といたしまして、調査委員会というものは独自の立場からこの問題を調査するわけでありますが、その調査委員会が九日目には売山が適当であるという結論を出しておるわけです。この点につきましては、何も私どもが反対の立場から申し上げるのじゃなくて、常識の立場からながめて参りましても、第三次機関がこの七十年の歴史を持った、複雑な要素を持った鉱業所のいわゆる処理の問題について、九日間で結論を出すというようなことは、私はきわめて慎重を欠いた委員会態度であったというように理解をいたすわけでございます。こういった点について大臣は、これは前大臣のころであったかと思いまするけれども、要するに複雑ないろいろな情勢があるので、一つ慎重を期してもらいたいというふうな回答国鉄総裁に与えられた。ところが総裁諮問いたしました調査委員会というものが、この複雑な要素を持った鉱業所の処理について九日間で結論を出したということは、私どもは全く軽挙に失する点ではなかろうかというふうに判断するわけでございますが、そういった点について大臣はどういうお気持でながめておられまするか、そういった点に対する御所感を率直にお漏らし願いたい。
  24. 永野護

    ○永野国務大臣 九日間が適当か、三週間が適当か、それは純技術的な問題でありますから、期間が単に九日間であったというだけの理由で軽率であるという判断は下しにくいと思います。これは委員の能力の問題であります。へぼ医者が三年見ても診断がつかぬのが、有能な医者が見たら瞬間的にわかるというようなこともあるわけであります。だから、いたずらに時間が何日かからなければその判断が軽率であったとか、不正確であうたとかいうことにはならぬと思います。その調査員の能力によって、三年かかってもできないことを、あるいは九日間でもやれるかもしれません。従いまして、七十年の歴史を無視して云々というようなお言葉がありましたけれども、この調査員の任務は政治的の立場から考えるのではなくて、単純にこの鉱山はペイする山であるかどうかということをきわめて事務的に判断することが任務であったのでありますから、あとのあなたが御説明になったようないろいろな関係は、それは運輸大臣考えることで、調査員はそんなことは考えちゃいけない、ほんとうにクルーエルに、医者がモルモットを試験台に載せて病理学の研究をするような態度でやるべきだと考えております。でありますから、先ほどから繰り返しくどいくらいお話しておるのでありますけれども運輸大臣立場とそれから国鉄事務当局立場は違う。さらにその調査員のテクニシャンの立場は違う。従って単純に今の九日は軽率じゃないかという判断には私はちょっと承服できません。能力があれば、九日じゃなく、三日でもできるかもしれない。それからかりに私であったら三年行っておってもわからないかもしれない。そういう意味であります。
  25. 河野正

    河野(正)委員 そこで、たまたまへぼ医者の話が出て参りましたから、さらにお尋ねいたしたいと思いますが、私は今度の調査委員会出しました結論が軽率だったと思うのです。たまたまへぼ医者の話が出ましたから申しますが、瀕死の重症、生死を決する重大な状態にある病人、それを手紙で診断をして指示を与えるようなものだと私は思うのです。やはり、たとい名医であっても、そういう重大な状態であるならば、もちろん資料調査しなけれぱならぬが、現地調査して初めて私は適正な判断ができるのだと思う。たまたま私は医者ですから申し上げるのですが、いかなる名医といえども、そこまでするのが常識だと思う。常道だと思う。人道的だと思うのです。それに、九日か三日か、長い短かいは別といたしまして、こういう重大な問題をただ単なる一片の机上の資料判断を下しておるということは軽率であると思う。たまたま大臣がへぼ医者ということをおっしゃいましたから医者の立場から言えば、これは全く人道に反した処置だと思うのです。それだから大臣が医者の例を出しておっしゃいますのならば、明らかに軽率だということが断定できると思うのです。そこで私は、大臣は十分今の事態については反省していただきたい。十分考慮をめぐらしていただきたいということをお願いをいたしておきます。  それから、時間がないということで委員長から御注意を受けましたので、最後に一点、大事なところを御質問申し上、げておきしたいと思いますがをながめてみましても、大臣もすでに御承知だと思いますけれども従業員の不安を除去するために、昭和三十三年内に、なるべく早い時期に譲渡の手続を完了したがよろしいということであります。ところが今日従業員が非常に不安を抱いておるのは、売山されるから不安を抱いておるわけです。売られるから不安を抱いておるわけです。根本的に考え方の食い違いがございますのは、調査委員会国鉄総裁も、早くこの問題を処理すれば従業員の不安が除去されるというお考えのようでございますけれども、今日従業員が不安を持っております一番大きな原因は、売り渡される、官営から民営に移される、そこで民営に移されると大へんである、身分が違ってくる、将来に対する不安もあるし、地方財政に及ぼす影響、中小企業に及ぼす影響、そういう点が心配されている点ですね。そこが根本的に食い違っておる点だと思うのです。そこで私が大臣に率直にお伺いしておきますことは、地元従業員の不安は、民営に移されるから不安を持つと思うのです。民営に移されるということが決定されればは不安が除去される、そういうお考え方は根本的に誤まっておる。根本的に不安を除去するためには依然として国鉄経営をすることである、こういうふうに私は理解し、現地方々もまた陳情に参っております住民の方々理解されておるのです。時間がありませんから最後に一点その点の大臣のお気持を率直に漏らしておいていただきたい。
  26. 永野護

    ○永野国務大臣 今の御質問の要点は、従業員及び地元の人の不安は、売られるということが不安であって、反対に申しますと、国鉄が今まで通りずっと経営しておれば、自分たちの将来については何らの不安は持たれないというふうに解していいのですか。つまりこの山は、ここにぶら下っておりさえすれば、三年とか五年とか、何年か知りませんが、この山についてさえおれば自分たちの生活に不安はないのだ、安心しておられるものを、国鉄事務当局が売ろうと言うから不安が起るのだ、つまり山の本質に関する認識が、この山の寿命は、このままで、今の状態に何らの手を加えなくても相当期間やっていけるのだ、つまり、要らぬお世話だというふうに国鉄当局のやっておることを非難しておるというふうに了解してよろしゅうございますか。
  27. 河野正

    河野(正)委員 多少感情的に取り上げられたと思うのですが、何ら、手を加えなくてもというふうなことではなくて、国鉄が依然として経営してもらいたい。経営するためには、たとえば今度率直に現地の実情を申し述べますが、もう売るのだから一切機械がこわれても、施設が崩壊しても全然手を加えておらない。それに対する予算を流さないというのが今日の実情です。それが隣接鉱区を買収するとか総合開発をやるとかいうことではなくて、現在の志免鉱業所を運営するについても非常に予算上の圧迫を受けておるのが現状なのです。それがために今日現地方々というものは非常に大きな心配を別に受けられておる。たとえば、機械がこわれますと、現在五十万トンの出炭ですが、それに対するいろいろな諸設備がございます。その設備に対しても何ら予算を流さない。どうせ売るのだから流す必要はない、こういう態度をとっておるというのが今日の国鉄態度です。それですから大臣言葉の中に、何ら手を加えなくてもぶら下っておればよいのだということについては私は了承しかねる。やはり手は加えてもらわなければ困る。現在の出炭を維持するための手は加えていただかなければならぬ。
  28. 永野護

    ○永野国務大臣 その何ら手を加えないということは、経常の修理などということは実は私含んでおらないのです。具体的に申しますと、隣接鉱区を買ってくれて、そうして総合的に開発すればやっていけるけれども、しかし何ら手を加えないというのは、あなた少し極端に言われたけれども、今の運転を正常にするために必要な修理もしないというのは、それは私は少し行き過ぎだと思っておりますけれども、私の言うのはそれが入っておらない。もっと進んだ根本的の何らかの計画を加えなくても——この山の、つまり経常修理なんかむろんしなければならぬ。それは当然です。当然だが、それさえしてくれれば、われわれは安心してこの山に生きていけるのだというふうにお考えになるのと、それから、それは困るのだ、必ずそれにはこれだけのことをしてくれないと、われわれは不安だと考えておられるのとでは、私のいわゆる運輸大臣としての扱い方が違うのであります。でありますから、運輸大臣としての態度をきめる上に、地元の人々の気持を十分に御了解になっておるあなたの意見を聞いておるのです。これは運輸大臣の気持をきめる上において、私の聞いておる限りでは、このままではだめなのだ、だから何かそれに手を加えて——何かというような抽象的なことを言うよりは、ぐるりを買ってくれて、そうして国鉄がやってくれることを希望して、それなら安心ができる、しかし、かりにそれができないのではわれわれやはり安心ができないという気持でおられるのかどうかということを私は知りたいのです。その点をあなたに聞いたのです。
  29. 河野正

    河野(正)委員 第一段の点は、隣接鉱区を買収して総合開発をやってもらう方がよいというのが第一の願いです。第二の願いは、それができないということであるならば、やはり現有鉱区の中でいろいろな経営合理化をやってもらう。それが第二段ですね。それから理想は、当面のお願いは、現在の志免鉱業所中心とした総合開発をやってもらいたい、これなら将来とも安心ができますが、それができないから直ちに民営に移すということについては反対だ、そういうふうに一つ理解願いたい。
  30. 永野護

    ○永野国務大臣 關谷さんの質問の時間がだんだん短かくたりますからこれで打ち切りますが、先ほどお話ししましたように、私はこの問題を意思決定する材料に、今の点は非常に大切なポイントなのです。売らないときめて、いわゆる応急修理的の経常運転をするに必要な配慮だけしてくれれば従業員及び地元の人は安心してやります、こういうことであるのか。それから今の隣接鉱区を買うということは、これは絶対的に必要だ、それがないと、われわれはやはり不安ですというのか、これは非常に重要なポイントです。ですからはっきりもう一ぺん伺いますが、その点を一つはっきりお答えを願いたい。それが運輸大臣として私の意思決定をする重要な要素だから言うのです。
  31. 塚原俊郎

    塚原委員長 志免鉱業所に関する質問は、このあとまだ時間がありますから、一応關谷君に質問を許します。關谷勝利者。
  32. 關谷勝利

    ○關谷委員 時間がなくなりましたので簡潔にお尋ねをいたしますから、簡潔にお答えを願います。  私はまず第一番に運輸規則の件についてお尋ねをいたしまして、それが終りましたならば運輸行政全般のことで二、三点伺っておきたいと思います。運輸省令の第二十一号による自動車運送事業等運輸規則についてお尋ねをいたします。  先般、四月一日でありましたか、内閣交通事故防止対策本部からタクシー事業事故防止対策要綱が発表になったことは御承知通りであります。それに続きまして六月の九日付をもちまして、運輸省令の第二十一号をもちまして自動車運送事業等運輸規則の一部が改正せられて発表になりましたことも、これまた大臣承知通りであります。その運輸規則の改正の趣旨でありまするが、これはあくまでもタクシーの事故防止を眼目といたしましたもので、「タクシー事故防止対策要綱の決定に伴い、その実施の確保をはかるため」と書かれておるのであります。それで改正するとあります。あくまでも内閣の交通事故防止対策本部のタクシー事故防止対策要綱に基いたものでなければならぬと私たちは考えております。ところが発表せられました運輸規則改正は、これは事故防止の立場を逸脱いたしまして、タクシ品の業界の壊滅を招くようなものになっておるのであります。ことにそういうふうに受け取れる点も取れない点もありまするし、ごとに改正案というものは、出先の陸運局とか関係業者等がこの事故防止対策委員会等でいろいろ諮問を受けて、それに答申いたしましたものでありまするのに、この運輸規則の改正につきましては、そういうふうな出先機関とかあるいは業界の意向等は一切聞いておらない。そうして突如発表せられたために将来紛糾を起すようなおそれがありまするので、紛糾の起らないようにその解釈を承わっておきたいと思います。  事故防止対策要綱の第三には、走行距離の適正化について述べられております。「通正な走行距離の標準を決定し、不当な走行義務を運転者に対して課さないよう措置するものとする。」、適正な標準を決定して、不当なことをしてはならないというのであります。なお第四には、下車勤務の制限といたしまして、「標準作業量に達しないことのみをもって懲罰的に下車勤務させることにより、交通違反に追込むことのないよう指導するものとする。」、こういうことでありまして、適正な標準作業量を決定することを認めておるのであります。しかるに運輸規則には、その第二十一条の二に「乗務距離の最高限度を定めなければならない。」、なおその五項には、「乗務距離の最高限度をこえて乗務させてはならない。」、こういうようなことを決定いたしておりますので、意味がだいぶん変ってくるのであります。また運用の上から、この道路運送法の第十五条の五でありますが、乗車拒否をしてはいけないということになっておりますが、そういうふうにいたしますると、乗車拒否をするようなことになって、おもしろくない事態が起ってくるのであります。なお第二十一条の三におきましては、「運転者に、その収受する運賃及び料金の総額が一定の基準に達し、又はこれをこえるように乗務を強制してはならない。」こういうふうに規定しているのであります。これは標準作業量の目標すら命じてはならないかのような解釈もできるのでありまして、運転手がどんなになまけておりましても、経営者としてはどうにも手の出しようがないというふうにも、これは悪く解釈いたしますとそうならないとも限らないのであります。もっともこれは強制という文字の解釈でどうにも解釈ができるものと思いますが、まぎらわしい条文であります。  そこで、私はこの点を明確にするために大臣お尋ねいたしまして、将来の紛糾をなくしたいと思います。第二十一条の二についてでありますが、事務当局は、省令だから、「適正な乗務距離」と書くところを「最高限度」と書いたのみであって、適正な標準の意味だと、説明会その他で説明しているのでありますが、そういう意味に解釈していいのかどうか。第二に、説明会等で、運用の面についてはこういうふうに答えております。極端な上下のない限り多少標準距離を増加することは支障ない。なおこれは、労働基準法などと同じように、一週間を通じての平均でも差しつかえないというふうな解釈を下しているのでありますが、それで差しつかえないのかどうか。この二点について、それでいいか悪いかをお尋ねいたします。
  33. 永野護

    ○永野国務大臣 非常にこまかい条文の解釈の問題でありますから、私が説明いたしますよりも、自動車局長が参っておりますから自動車局長から答弁をさせますが、ただ大臣といたしまして総括的にこういうことだけは申し上げ得ると思います。つまり社会の実際上の必要から生まれた業態が成り立たぬというような法規の運用をすることは誤まりだと思います。つまり常識的にもっともだと思うような運用をするということが、答申の個々の条文を通じての一貫した精神だと私は解しております。従いましてどちらの面から見ましても、非常識な運用は許されない、いわゆる自然法的の一つの制約がある。つまり適当な、だれが考えてももっともだと思う——たとえばずるけて、酢っぱらってちっとも働かない者にも何らの手を加えることができないというようにかりに解釈をいたしましたならば、それは非常識であります。われわれの常識が許しません。従いまして、そういうことはもちろんあり得ないと私は解しております。法律の運用はそういうように運用して参ります。個々の具体的の条文の解釈につきましては、自動車局長からお答えいたします。
  34. 山内公猷

    ○山内説明員 タクシー事故防止対策要綱の文言と法律の文言が違うということにつきましては、このタクシー事故防止対策要綱決定に伴う附帯決議を交通事故防止対策本部がしておりまして、その第二項に、「運輸省においては、現行法の下において場可能な最大限の省令改正その他の措置を可及的速やかに行って、本、要綱の実施の確保を図ること。」というふうになうておりまして、ただりの二十一条の二につきましては、適正な乗務距離が保たれるということが最も望ましいことでございます。ただ適正な乗務距離をこえてやった場合に、それではすぐその要綱の命ずるように確保する対象になるかどうかといいますと、適正な乗務距離というものはやはりまた安全の限度内でなければならないわけでございまして、それが少しでも上回ったならば処罰の対象にするということは、法の建前からとれないわけでありまして、その上に、その上の段階におきまして、これをこすと事故を起す相当大きな可能性があるという段階がありまして、法の対象といたしますのにはそこを求めませんと法の体系をなしませんので、この二十一条の二のような表現になったわけでございます。この点御了承を願います。  次に第二番目の「料金の総額が一定の基準に達し、又はこれをこえるように乗務を強制してはならない。」ということでございますが、どの産業におきましても生産の目標と申しますか、そういうものがあるのは当りまえでございます。それで、これは努力の目標でございますので、そういうものを作ってはいけないという趣日ではございません。この問題の起りましたのは、御承知のように下車勤というものが世上非常に取り上げられまして、また業界でも一部あったやに聞いていますので、そういうことが事故を起す原因になるということで大きく取り上げられたのでありまして、そういうものをさせないためにやはり法的な規制が必要である。それで要綱の方には、常識的なものでございますので、下車勤の禁止というふうなはっきりした文言を作ったわけでございますが、そういったものだけでなくて、いろいろそういった類似のものがありますので、二十一条の三の表現はこういうことになったわけでございますが、これは単にそういう目標を作るということでなくて、それを下車勤でありますとか、あるいは不利益処分ということで強制をするという、強制というところにわれわれの方は法律の主眼を置いて規定しているわけでございます。通常の人事管理権というものを否定するということは全然考えておりません。この二十一条の三の目標といたしますところは、事故防止の目的を達するために、非常に苛酷な労働をしているということを防止しようという趣旨の条文でありますので御了承願いたいと思います。
  35. 關谷勝利

    ○關谷委員 お尋ねしたことの半分も答弁ができておりません。大体事故防止のでき得る範囲内であったならば、それで適当な標準の距離をきめるのだというふうなことだけのお答えのようでありました。そして運用の面におきましても、最高限をきめるというふうな場合には、大体標準をきめるというのが最高限をきめるということになりますと、そこで区切って、それもつもこえられないという、まことに窮屈なことになってきておるのでありまして、事故を防止するということを頭の上に置いてやるのならば、多少の常識的な上下はあっていいのだということでなかったならばとうていその運用はできない。実際にタクシーの業界というものは、あなた方が机の上で考えるようなものじゃない。それでどうしても多少余裕のあるものでなければならないので、標準を決定してそれに基いてやるのがほんとうであるのに、最高限というものをびしゃっときめてしまう、こういうことになりますと、それをこえたら処罰をするということになってくると、大へんなことで、動きのできない非常に窮屈な経営をしなければならぬということになるのでありまして、この点は、最高限と書いたのは、これは標準の意味だとあなた方が説明をしておられる、そういうふうに私が解釈しているのと、今の御答弁とは多少食い違いがあると思います。  なおそれと、一週間を通じての平均で差しつかえないかということについては何も答弁がないということでありますが、これは一つはっきりとした御答弁を願いたい。
  36. 山内公猷

    ○山内説明員 われわれ今まで方々でこういう解説をいたしたのでございますが、標準をきめるということではなくて、標準というものは最高限の下にある。結局この条文の目的といたしますこの乗務距離というものの実施を確保いたしますためには、やはり訓示規定ではどうにもならないわけでございまして、違反者に対してはやはり厳然たる態度をもって臨むということでなければできません。それでこの上下のあるものであるならば、そういうものを確保することはできないわけでございます。それでわれわれの方では、先生のおっしゃいますように、そういう妥当な標準というものは一応考えております。これは行政指導で業界の協力を得て、そういうところに乗務距離というものを規制していきたい。しかし、それはただ行政指導の段階でございまして、それでもやはり中には、もっと走ってもうけよう、あるいは事故を起しても走ろうという人がなきにしもあらずでございます。その上に標準のところがございまして、その上に最局限度——これ以上走ったのでは事故を起す危険性が非常に高いという線があるわけでございます。それで省令の建前といたしまして、上下のあるものでは処罰の対象になりませんので、一番上のところを省令といたしまして取り上げまして、これ以上走ってはいけないということを規定いたしたわけでございます。  それからまた一週間の問題でございますが、もちろん、ただたまたま一日、二日そういうことがあったという場合に、すぐ処罰の対象になるかどうかということは、行政運営の問題になるわけでございますが、たとえば一週間平均をいたしまして何百キロということになりますと、たまたま一日は四百キロぐらい走る、一日は二百キロぐらい走る、一週間ならして何百キロだからいいということでは、この事故防止の目的にも沿いませんので、どうしてもやはり一日単位ということで考えるのが適切ではなかろうか。もちろんそういった今言いましたように一日の中でも特殊の理由がありましてキロが延びるという段階もございましょうから、たまたまきめましたよりも一キロ延びた、一キロ半延びたというようなことをすぐ行政で取り上げるということではないと思いますが、やはり事故防止の見地からいいますと、一日の走行キロというものを単位で考えていきませんと、今までいろいろ当運輸委員会におきましてもわれわれの方にお話のありましたいろいろの問題についての効果が現われないのではないかというふうに考えております。
  37. 關谷勝利

    ○關谷委員 それは説明会の話とだいぶ違うのです。それならお尋ねをするのですが、標準というものを設けて、最高限は標準の上にあるのだ、標準というものは最高限より下にあるのだということであなたは標準というものを想定しておられるというようなことで、それが事故を起す何といいますか線があるというふうに言っておられましたが、その事故を起す線というのはどういうふうな線かあなた考えておられるような口吻でしたが、そういうふうな発言は私たちが説明等を聞いたときは一切なかったのですが、標準というのをどのくらいに考えておるのか、大体事故を起す線というのはあなた方がどういうふうに考えておるのか、この点はっきりと伺っておきたいと思います。  なお、この一週間を通じてというようなこと、これも運営の上ではそういうふうになるということをはっきり説明会で聞いておったのでありますが、今局長答弁を聞きますと、ある日は四百キロ走り、ある日は二百キロ走るというようなことではと言うが、そういうふうな非常識なことを前提として考えておるのではないのであります。また業界の実態からいってそんなに、一日は四百も五百も走り、一日は二百か百くらいしか走らぬというような、あなた方の言うよ、なそんなばか理屈をこねたような業態はあり得ないのであります。そういうものを考えないで、もしかりに最高限度というものが三百八十なら三百八十、これが三百九十になる日もあっていい、三百七十になってもいい、そういう上下の余裕を持たすのかどうかということを聞いておるのであって、そういうような状態でやる場合に、一週間を平均したのでいいのかどうか、一週間を通じてやったので差しつかえないかということを問うておるのでありまして、そんな極端な、言葉でこそそういうことが言い得ますが、実態がそんなことがあるとあなた方思っておるのですか、そんたばかげた話はありません。そういうようなことはないので、常識的な判断をして、常識的な運営をして、そうしてかりに最高が三百八十というのであれば、九十になる日もあって、七十になる日もあってよろしい、そうしてそれを平均したのでいいかどうかということを聞いておるのであって、そんな昨常識の、言葉の上であって事実ないことを聞いておるのではありません。もっとまじめな答弁をしてもらいたい。
  38. 山内公猷

    ○山内説明員 私この条文の解釈を申し上げておりまして、私の解釈は前の説明いたしましたことと違っていないわけでございますが、今繰り返して申し上げますように、標準的なものを一応要綱では考えておることは御指摘の通りでございます。しかしこれでは省令に書きまして処罰の対象にするという場合には、標準的であるという場合には——特別の場合にはもっとたくさん安全に走れるという段階でありまして、走るものも走らないものもありましたその標準を考えておるわけでございます。それで処罰の対象としてその乗務距離を確保しようといたしますためには、どうしても法律の体系として一番上の段階を押えなければならないわけでございます。それでそういう抽象論では、話にならぬことはもちろんでございます。これは現実に交通規則にのっとりまして、東京なり大阪なり走っております業態が全国でいろいろ違ったものがありますので、この法律では何キロということは出すわけには参りません。それではそういうものはどうきめるかという問題になるわけでございますが、これにつきましては、現在東京におきましては陸運局と警視庁でいろいろ理論的に、また実際的に、どの程度のものが一番このアッパー・リミットに達するものであるかという実際上の検討をいたしまして、出て参るわけでございます。今日私の方では、もちろん陸運局にも報告を受けつつやっておりますが、実際に仕事をいたしておりませんし、まだ結論が出ておりませんので、本日この場合に何キロであるという具体的なことを言うことはできないわけでございますが、仕事のやり方といたしましては、実際に車を走らせ、また理論的に検討し、その限度を見つける努力を今いたしておるわけでございます。  もう一点、一週間できめてもよろしいのではないか。先生のおっしゃることはよくわかるわけでございますが、たまたまそういうことも考えられるという趣旨でお話を申し上げたわけでございまして、私どもの方といたしましては、この趣旨からいってやはり法律の解釈でございますので、一日としてきめておきませんと、極端な場合にはそういうものも出る可能性があるということになれば、やはり一日としてきめるのが一番いいのではないか。先生のおっしゃることは二つあると思うわけでございますが、それでは一日でも、少しでもオーバーしたものは正当な理由があっても、何らその理由調査することもなく、処罰の対象にするかどうかという行政しの問題があるわけでございます。その場合には、おっしゃいますように、一週間であるとか二週間であるとか、継続的に一週間全体でもオーバーしておる、あるいはその日の中でも相当オーバーしておるものという情状によりまして、検討する際にはそういうものを継続的に見るということは、行政のやり方としてもちろんでございますが、法律の建前といたしまして、やはり一日の走行キロというものを押えるのが一番妥当ではないかというふうに考えておるわけでございます。
  39. 關谷勝利

    ○關谷委員 私は局長の今の御答弁説明会のときとは違うと思う。よくそのことを頭に置いて考えてもらわなければなりませんが、それなら伺っておきますが、標準というものをきめて、それより上回ったものを最高限ときめる。その標準というものは、今までの業態といいますか、理論的な適正な、事故を起さないというふうな常識的な標準を設けて、それより幾分し回ったものを最高限とするんだ、こういうふうに解釈していいですか。
  40. 山内公猷

    ○山内説明員 標準といいますものは、常識的と申しますか、通常この程度であれば事故を起さないで走り得るというものを考えて標準を作るわけでございます。そうしまして、最高限のものをこしたならば事故を起す危険性が非常に高くなるというものを作る。その点二つにわれわれ考えて、その一番上の段階を法律の段階で織り込もうということを考えておるわけであります。
  41. 關谷勝利

    ○關谷委員 そうすると、今の言葉から判断いたしますと、事故を起す限界の、その下回ったところを最高限ときめるのだ、こういうことでいいですね。
  42. 山内公猷

    ○山内説明員 その交通の実態から見まして、それをこせば必ず事故が起るという——事故はスピードだけでなくていろいろな条件がございますので、事故を起す可能性が非常に強くなるという段階でやはりいかなけれ、はならぬ、こういうことでございます。
  43. 關谷勝利

    ○關谷委員 よくわかりました。それでは事故を起す段階、それが最高限になるのだ、それを起さないようなことが最高限になるのだ、よく承わっておきます。将来の運営の際、今の言葉をはっきりと覚えておいていただきます。  運用の面でありますが、法律の解釈では、これは毎日たたというものが事故を防止するのに役立つから、そうだ、こういうふうなお考え方だというのでありまするが、私は業界が実際に運営する面におきまして多少のし下の余裕を見ておきませんことには、これはきちんとそこまできたら処分せられるのだということになりますると、大へんなことになりまして、非常にかた苦しい、重苦しい経営をしなければならぬ、こういうことになると思うのでありますが、運営の面におきましては、一週間平均してそれがむちゃな上下でない、極端な上下でない限りと、私は質問する際に言うてあるのですよ。極端な上下のない、通常あり得るような上下である場合に、それを一週間平均をしてこれをやる、その限度にとめればいいのだということを説明会でしておられましたが、あの説明会で言われたことはうそなんですか。
  44. 山内公猷

    ○山内説明員 法律の建前としまして、今申し上げましたようは、その線をこすと事故を起す可能性が相当高いということでございますので、その上にまたある程度のニュアンスというものは、法律的にはやはり認めにくいわけでございます。ただ、今先生のおつしやいましたような多少のニュアンスというものは、これは行政の処罰の対象にするかどうか、多少の上下でございましても、常に上にばかりあるということは行政指導で一応標準的なものを指導いたしますので、常にこれをこすと危険性が強いというものがずっとある場合は考えられるわけでございます。たまたまそういうふうなものがありました場合には、やはり行政運営として直ちにそれをもって処罰の対象にするかどうかということは陸運局長判断になると思いますが、そういうことはない、常識的にこの条文を大臣のおつしやいますように運用していくべきであるというふうに考えておるわけでございます。
  45. 關谷勝利

    ○關谷委員 私がお尋ねしておる言葉をすなおにその通り聞いて答弁して下さいよ。それを常にオーバーするときは平均して——常にオーバーして平均になりますか。妙な答弁をするものではありません。もう少し常にオーバーをするというのでなくして、わずかの上下というものは差しつかえないかということ、それで一週間平均して運営の面ではそうなると思いますと言うておるが、それはうそかどうかということを聞いておるんです。
  46. 山内公猷

    ○山内説明員 今のお話の場合でございまして、先生のおな話しになっておりますのは、今われわれの方で考えております行政指導等にいう標準の段階でございます。それから一番上の段階とあるわけでございます。一週間の標準の段階であれば、もちろん上の段階にならないわけでございます。もちろんけっこうなわけでございます。これは常に標準の段階でございますのでへただ、先生のおっしゃっておられることはよくわかるわけでございますが、法の建前といたしまして、この線をこすと危険性が強いというので処罰の形式的な対象になるわけでございます。ただ実際上法律の運用といたしましては、たまたまそういうものができた場合に、すぐに処罰の対象にするかどうかということは情状の判断になるわけでございます。そういう場合に具体的な問題にせざるを得ないということを御答弁申し上げておるわけであります。
  47. 關谷勝利

    ○關谷委員 そうすると実際の運営の際には、こういうふうに考えておられるのですか。私は今あなたのお話を聞いておりますと、標準というものを想定して、そうして事故を起す可能性の多いぎりぎりの限界を最高限度とする、あなた方はこういうふうに思っておられるのですか。そうするとわれわれの考えておるのより、標準よりオーバーしてぎりぎり一ぱいのところまでいくということになりますと、相当の距離がここに出てぐるのではないか、こういうふうに考えてられます。そのぎりぎり一ぱい、あなた方が考えておられるのは、それが事故を起す限界になりそうだということになると、四百をこえるということじゃないかと思いますが、私どもはそんなことを考えておるのではないのです。もしあなた方が、それをこえたら事故を起すかもわからないと考えておるとすれば、四百二十ということになった場合には、それは危険があるかもわからないけれども、押えなければならぬから、四百以上たまたま走ってはならぬということは言い得られると思うのですが、私が言うのは、かりに三百八十なら三百八十ということを想定いたしまするど、それが三百九十になる日もあり、三百七十になる日もあるということで、それを一週間平均でよろしいかというのです。これに対して一週間平均したのでいいのか悪いのか。そうなると、あなた方が言うておるのは違っているのかどうか、うそかほんとうか。それをはっきり言ってもらいたい。
  48. 山内公猷

    ○山内説明員 私ども考えておりますいわゆるこれからのタクシーの動き、状態といいますものは、結局現在警視庁できめられております諸交通法規を守ってどのくらい走るかということでございまして、もちろん先生そういうことばかりおっしゃるわけでないと思いますが、現在、非常に運転の腕がよくて走れるという段階ではございません。     〔委員長退席、堀内委員長代理査着席〕 それで交通の状態からいいまして、東京でもいろいろな状態がございますので、ある車はたとえば二百キロ走る、ある車は三百キロ走る、でたらめな数字でありますが、(關谷委員「そんな非常識なことを言っているのではない」と呼ぶ)いろいろな数字がありまして、その平均的なところが適正な輸送距離というものになるわけでございます。交通法規を守りまして、非常に状態がよくて走れるというのが一番上の段階でございまして、その意味からいいまして、四百キロになるとか、四百をこすというような段階考えられないわけでございます。  それで第二点は繰り返すことになりますが、そういうような段階にございますので、やはり一人々々の運転者につきましてきめませんと、一週間平均ではなかなかそういうものが確保できないわけでございまして、その点はわれわれは前にもそういうふうに御説明をいたしたわけでございます。ここに資料もございますが、その点については旅客課長の説明を私もそばで聞いておりましたが、旅客課長の話も私が今説明しているのと変らないと考えております。
  49. 關谷勝利

    ○關谷委員 今局長は変な解釈をしておられるのですが、一人々々について、一人の一週間の平均を言っているのです。車両の全部のことを聞いているのではない。一人の毎日のなにが常識的に多少上下になるということを私は数字をもって言っておるのは、三百八十を最高限と仮定すると、別に三百八十ときめたわけではありませんが、それが三百九十になっても、三百七十になっても、一人の走行距離が一週間を通じて三百八十におさまれば、運用の面ではいいとあなた方は言っておったが、それでいいのか悪いのか聞いておるのです。
  50. 山内公猷

    ○山内説明員 それは私の力は認めない方針でございます。
  51. 關谷勝利

    ○關谷委員 認めない方針。——そしたら一切認めぬということになりますと、最高限をきめるということが非常に窮屈なものになってきますよ。これは余裕のあるものでなかったら、タクシー界の壊滅になりますよ。そういうふうなことをよくあなた方はお考えにならなければなりませんが、大体運営の面ではそういうふうになります、と国友業務部長も黒住課長もはっきり言うておるのです。
  52. 山内公猷

    ○山内説明員 私その点、標準の走行キロと最高のキロをお取り違えて御了解願ったのではないかと思っております。われわれの方といたしましては、この標準の走行キロのところでは上下があるであろう、ここを目的といたしておるわけでございますが、その上の方のニュアンスのところを最高の走行キロというふうにいたしておるわけでございますので、その点あるいはわれわれの説明が誤解を生じたかもしれませんが、標準と最高ということをわれわれはそういうふうに考えておるわけでございまして、標準というものはこの法文に出ておりませんので、あるいは誤解を生じたかと思いますが、この法律に出ておりますのは、これをこすと相当程度事故が起きるということでございますので、そういうふうに御了解を願いたいと思います。
  53. 關谷勝利

    ○關谷委員 局長のきようの御答弁は牽強付会というか、この運輸規則の中に標準という言葉は出てないのです。出てないのに、その標準の上下を一週間平均してと言うた。それは詭弁を弄するというのだ、もってのほかです。私たちが言ったのは、これははっきり記録にも書いてある。三百八十を最高限ときめた場合に、九十になることもある、七十になることもあって、一週間平均でいいかと言ったら、運営の面ではそうなりますとはっきり言って、数字まであげて回答しておるのですよ。
  54. 山内公猷

    ○山内説明員 ここに国友部長の答弁がありますが、これを見ましても、やはり処罰ということを対象にいたしまして、法律の形式的な適用でなくして、その場合の処罰は一週間の運用数字を見て、あまりひどいものは処罰することもある、処罰につながる場合にはというふうに頭をつけておりまして、この速記録を見ますと、私の場合答弁をいたしましたのも、今言いましたように、たまたまそういうことがあるというものもやはり処罰の対象にならないというわけでございまして、法の適用と処罰と二つわれわれ心理的に考え答弁をいたしておるわけでございます。
  55. 關谷勝利

    ○關谷委員 それならはお尋ねいたしますが、法律の解釈は解釈として、運用の面ではどうかとお尋ねいたします。
  56. 山内公猷

    ○山内説明員 運用の面では、この説明会の場合にも言いましたように、実情によって考えるわけでございまして、たまたまそういうものがあったということだけですぐ処罰することはないであろうということは言っておるわけでございます。始終ではそういうものは困る。
  57. 關谷勝利

    ○關谷委員 局長はどうも強情なので、始終あるというのでは平均はそうはならぬのですよ。始終そうなるというのはどういうふうに勘定しておるのかわからぬことになります。始終をこえたのでは平均になりません。一週に一回か二回そういうようなことがあって、上下があって、平均してそういうことになるのですよ。それがいいか悪いか。運用の面ではそうなるといっておるが、運用の面ではどうなりますか。
  58. 山内公猷

    ○山内説明員 始終という意味は、今座談会の記録を読んで言っておりますのでそういう御答弁を申し上げたわけでございますが、たまたまそういうものが起ったという場合には、運用の面では陸運局は形式的な違反を取り上げるということはしないのではないかというふうに考えます。
  59. 關谷勝利

    ○關谷委員 運用の面ではそうするのだと言っておりながら、そんなことではおかしいのです。そんな説明会で言うのとここで言うのと違っておったのでは将来紛糾します。前には運用の面ではそうであった。たまたまそういうことになることは処罰の対象としないのだから、こちらは運用の面においては差しつかえない、そういうふうに解釈いたします。  長くなりましたのて、あとまた簡単にお尋ねしますが、第二十一条の三でありますが、「運転者に、その収受する運賃及び料金の総額が一定の基準に達し、又はこれをこえるように乗務を強制してはならない。」ということに対しましては、あなた方が正しい目標をきめて、それに到達するということを指示し、指導することはよろしい。また給与体系で能率を上げさせることも否定しない。こういうふうに言っておりますが、これはその通りでありますか。
  60. 山内公猷

    ○山内説明員 その通りでございます。
  61. 關谷勝利

    ○關谷委員 二十一条の三について文句を言う問題はないと思いますので、その点は御質問いたしませんが、仮眠施設の件、これはたな式でも差しつかえないとか、運転者の選任の問題は業界その他との問で出先あたりで事務的に解決のつく問題だというので、これは取りやめます。  区域差は設けないというようなことでありましたが、区域差を認めないということについては説明会の通りでありますかどうか。
  62. 山内公猷

    ○山内説明員 地域差と申しましても、先産のおつしやいましたのは、東京都内という一つの経済地域の問題だろうと思いますが、そういう場合の地域差はあまりないのじゃないかというふうに考えております。
  63. 關谷勝利

    ○關谷委員 このあたりでこの問題についての質問を打ち切りたいと思いまするが、最後に言うておきたいと思いまするのは、これは局長が最高限をきめる。これは標準を想定して、それから事故を起すぎりぎりの線、これは最働限でいこうというような点にきめるということになりますから、これは実際に今出先の陸運局あたりと業界あたりが折衝をしていろいろ指導するというふうなのと、局長考えることはだいぶ離れておるので、むしろ局長の方が走行キロが長くなるのではないかというふうな気がいたします。局長のような解釈によりますと、ぎりぎりばいということになりますと非常に大きい距離になりますが、その点は、きょうは局長はまだ検討中だということでありますから、よく検討をして、ここまでいくと事故を起す可能性のあるぎりぎりだという線を、いずれあとでまたお示し願うことといたしまして、私はこの問題についての質問に打ち切ります。
  64. 高橋英吉

    高橋(英)委員 関連して。關谷君の質問、なかなか肯綮に当ると思って、私も先ほどから傾聴しておったのでありますが、私こういうことをちょっとお伺いしたいと思うのです。先ほど運輸大臣はこういう問題については、いわゆる常識的に物事をきめたり判断したらいいというふうなことだったと思います。常識的かつ良識的にこの問題を解決すべきであるというふうに言われたと思いますが、そういうふうにしますると、運輸大臣のその真意をわれわれそんたくいたしますると、この問題は非常に重大な問題だと思うのです。ひとり東京都民の生活の問題ばかりではなく、業者、従業員の問題はかりではない、大へんに大きな問題を含んでおると思うのです。従って、特にこの問題について常識とか良識とかいうふうに言われるのも根拠があったと思います。また、先ほど局長お話を伺いますと、この走行距離の問題なんかについてその限度を定められるのは、陸運局とか警視庁とか、そういうような機関で相談し合ってきめられるというふうに言われておったようでありますが、もしそうだといたしますと、われわれの従来の経験からいいますと、どうしてもこれは局部的な観点にとらわれて、いわゆる視野の狭い観点から物事をきめられるおそれがあるのではないかと思います。私ども我田引水ですが、常識とか良識とかいう点については、日本じゅうで最もすぐれた君たちが議員になっておると思いますが、今の運輸大臣の意向を体してこの問題を解決するのには、艇も常識に富んで総合的判断力に富んでいる国会議員あたりを相談相手にしてもらうというような気持はないか。もしないといたしますならば、非常に極端なことを言うようでありますが、アメリカと同じように、こういう小さな問題でも議員立法として法律でもこしらえるというようなことについてはあなた方はあまり賛成されぬでしょう。賛成されますか。行政面にまでわれわれなるべくタッチしたくない、そういうこまかい点まではタッチしたくないのでありますが、そういう点についての御見解を一つお聞きしたいと思います。
  65. 山内公猷

    ○山内説明員 この最高限度、適正走行キロというようなものはテーブルの上の問題ではないわけでありまして、なぜ陸運局とか警視庁がやるか。法の建前といたしましては、個々の業者の方たの属出が適正な届出であれば受け付けるということにいたしておりまして、事業者の意思もむろん含めて行われることになっております。その場合に、たとえばそういう非常識なことはないと思いますが、四百キロとか四百五十キロが私のところは最高限度でありますといった場合に、これがいいとか悪いとかいう尺度を持たなければならぬが、非常に低い限度をお出しになる。陸運局、警視庁が調べましたものの低い限度をお出しになったのはもちろんそれでいいわけであります。それをこえた場合に、これはなぜこえるといけないのだという尺度を持たなけれぱいけないということで陸運局と警視庁がやっているわけでありますが、ただこれは東京とか大阪とか横浜とかいう地域の交通情勢が違っておりまして、毎日々々の車の走り方、その他実際に車を走らせまして調べるとか、客待ち時間については業界の春情を十分に調べてやるというような、現場的な仕事が多いために現地陸運局長がやっているわけでありまして、本省でただ机の上でこれがよい悪いというようなものではなくて、実際問題を取り扱いまして、現在の交通の情勢で一体どのくらいがぎりぎりであるかというものを調べ上げた上できめることにいたしておるわけであります。
  66. 高橋英吉

    高橋(英)委員 その尺度をきめる上において、陸運局とか警視庁とかいうものは視野が狭いのではないか。常識とか良識とかいうことについて欠くるところがありはしないかということを申し上げるのです。これはひとり取締り的な観点からばかり考えたのではいけない。従業員の生活、業者の生活、すべての点から考えなければいかぬでしょう。多面的に考えなければいかぬと思いますから、その点について陸運局と警視庁のみにまかせずに、業者の意見も大幅に取り入れてもらうことが必要でありますが、その他何らかの方法で、ほんとうに適切妥当な尺度をきめるところのお考え方をせられる考えがないかどうか。今すぐに御答弁をしていただくことになるとどうしても否定的な答弁になると思いますから、一つ御研究の上でいずれ機会を見て質問を申し上げることにして、私の質問を打ち切ります。
  67. 堀内一雄

    ○堀内委員長代理 河野密君。
  68. 河野密

    河野(密)委員 私きわめて簡単に関連して申し上げますが、私は業界のことも何も知りませんから、私の関係した範囲のことを御質問申し上げますから、一つ簡明直截に御答弁願いたいと思います。  自動車局長にだけお尋ねしておきますが、去年閣議でもって駐留軍労務者の離職者に対して特別な救済策を講ずる。その救済策の一つとして新しいハイヤー、タクシーの許可、そういうものを優先的に与えるということを閣議で決定したはずなんです。しかも今日に至るまでそれが全国で一つも実現しておらないと思うのです。これは一体どういうことか。それから東京陸運局管内においてそれが出ているが、それを少しも許可されていない、許可しようという手続もとっていないのだが、それは一体どういうことになっているのか、それをどういうふうにこれからしようとするのか、それを一つ答弁していただきたい。
  69. 山内公猷

    ○山内説明員 駐留軍労務者の道路運送関係の許認可を優先的に取り扱う、もちろん法律のワク内におきまして優先的に取り扱うという閣議決定の趣旨に基きまして、運輸省といたしましては十分その点を陸運局に徹底をいたしてあります。それで全国の概況を申し上げますと、今お話のありましたハイヤー、タクシーの関係といたしましては、現在までに十件許可が行われております。内訳を申しますと、大阪で四件、新潟で一件、福岡で一件、東京で三件、札幌で一件、今東京とか札幌とか言いましたのは陸運局管内でございますが、それぞれの陸運局管内で今言いましたような十件の免許が行われておるわけでございます。現在でもすでに大阪ではその申請に基きます自動車運送協議会の答申案が出まして、陸運局におきまして現在それを審議中でございます。お話の点は東京陸運局ではどうかということであろうと思うわけでございますが、東京におきましては現在までに、タクシーだけ申し上げますと三件先ほど申し上げましたように免許をいたしておりまして、そのほか三件の取り下げがございます。未処理の案件は二十七件でございまして、これはただいま御指摘になりましたような、大体東京都内の免許申請がおもでございます。この点につきましては神風タクシーの問題その他いろいろございまして、増車すべきかどうかというものが結局需給調整がどうなっておるかということが非常に大きな問題になっておりますし、かたがたこの問題に関連をいたしまして、東京陸運局では全業者の監査を今実施中でございまして、それぞれの十分な資料ができましたならばしかるべく処置をするものであるというふうにわれわれは聞いておるわけでございます。
  70. 河野密

    河野(密)委員 三件許可になったのはいつ、どういうのが、どれとどれとどれとなったのですか。
  71. 山内公猷

    ○山内説明員 日付はちょっと手元に資料がないわけでございますが、昭島市で一件……。
  72. 河野密

    河野(密)委員 何月何日に。
  73. 山内公猷

    ○山内説明員 申し上げます。横浜共同タクシー企業組合といいますのが三十三年三月二十四日に免許になっております。それから有限会社富士タクシー、これは横須賀市でありますが、これも三十三年三月二十四日、同日付で免許になっております。ただいま言いました昭島市の昭立交通有限会社が三十三年七月二十六日免許、これが三件でございます。
  74. 河野密

    河野(密)委員 わかりました。それじゃ東京都内では昭島が一つ、それからあとは神奈川県ですね。これはどういう管轄になるか知らないですけれども、道路交通審議会というものにかける管内は一体どことどこですか。
  75. 山内公猷

    ○山内説明員 東京都の特別区の区域は自動車運送協議会にかけるということになっております。
  76. 河野密

    河野(密)委員 そうすると、道路交通審議会にかかる区域のものは一つもまだ許可されておらない、こういうことになるのですね。
  77. 山内公猷

    ○山内説明員 自動車運送協議会にまだ諮問が出されておりませんので、そういう結果になっております。
  78. 河野密

    河野(密)委員 この委員は任命になっておりますか。いつ開かれるのですか。
  79. 山内公猷

    ○山内説明員 委員は任命になっております。
  80. 河野密

    河野(密)委員 開いておりますか。
  81. 山内公猷

    ○山内説明員 ことしになりまして一回開きまして、会長その他の役割をきめたということになっております。
  82. 河野密

    河野(密)委員 これは自動車局長は雲の上の方にいらっしゃるからわからぬでしはうけれども、実際は駐留軍労務者の関係で、東京いわゆる特別区の都内でたしか十一件申請が出ておると思います。その中には非常にみんな、企業組合の形をとっておるのもあるし、株式会社の形をとっておるのもありますが、それでとにかく企業組合なんかは退職金をみんな積み立てて、去年の九月から実際申請を出して待っているわけなんです。やがて一年ですが、その一年の間に何らのあれもない。もとよりそういう人たちは財産があるわけでもないし、経済的な基礎を持っているわけでもない。それなのに便々としておって、閣議ではいろいろりつばなことを決定しておるけれども、そのうちにそういうものはみな参ってしまうだろうというようなことで、現在待っているような状況にあるのが私は実際の運営じゃないかと思います。この点について、もう許可しないならしない、東京特別区の区域において許可はしないならしない、するならする、増車を認めるなら認めるとはっきりしてやることが親切だろうと思います。閣議において決定をして麗々しく発表しておきながら一年有余ほうっておいて、そうして自然に参ってしまうのを待っている、こういう政治のやり方というものは私はあり得べからざることだと思うのですが、これはどうなんですか。もうこれは許可しない、増車は特別区の都内では認めない、こういう方針をきめておられるのですか。それとも検討を加える余地があるのですか。これはみんなが実際待っているわけなんです。私は別に業者でも何でもないから、ぎょうこういうことを質問しなくてもよいんだけれども、現に私もそういう駐留軍労務者の関係もいろいろあるものだから、駐留軍労務者の離職者の立場を見るに忍びないから質問するのですが、これはどうなんですか。方針をはっきりしたら、どうですか。
  83. 山内公猷

    ○山内説明員 先ほど申し上げましたように、東京を除く大都市、現在京都も諮問をいたしまして審議が大体終ったというふうに聞いているわけでありますが、特に東京におきまして交通事故の問題が今まで非常に大きく取り上げられておりまして、それにはやはり自動車の需給という問題もいろいろ議論の対象になっておりましたわけでございまして、東京陸運局長といたしましてはそういった状態も十分勘案いたしまして、幸い現在各全業者の監査を実施いたしておりますので、現在の状態というものが漸次これからはっきりいたしてくるわけでございます。その上でなるべく早く諮問をするかどうかということの結論を出したいというふうに言っております。われわれの立場といたしましては、前大臣のときにも駐留軍の労務者の閣議決定に基きまして、なるべく早く取り扱うようにということは指示をいたしておるわけでございますが、ただ土地々々のいろいろの状態がございまして、陸運局長の、一般の交通情勢というものを十分見きわめた上でやりたいという意思もございますので、現在そうした検討をいたしておるわけでございます。そう長くない期間に何らかの処理をするものであろうというふうに考えております。
  84. 河野密

    河野(密)委員 そういうふうに長くならない期間にあれするとか言っておられますけれども、私もいろいろ審議会の委員の諸君にも聞いてみたのですけれども、実際現在審議会の会長の岸道三君は外国に行っているのでしょう。二カ月か三カ月旅行して、帰ってこないうちは審議会は開かれないでしょう、開かないでしょう。岸君が行く前に、自分は留守する場合には二カ月ないし三カ月留守になるのだから、その前に審議会を開いてくれ、こういうことを何べん言っても開かぬのです。開かぬものは何ともしょうがない。こういうことで開かない。一体そういう態度というものは、私はほんとうは大臣がいるところで質問したかったのだけれども、私は三時から会合があるので何ともしょうがないから質問しますけれども、早くやる、早くやろというのは、これが運輸行政の早くたんですか。特別な閣議決定までして、特別に敏速に取り扱ってやれという、その敏速に取り扱うというのがこれなんですか。これは一つ明確にお答え願いたい。
  85. 山内公猷

    ○山内説明員 自動車速送協議会につきましては、岸会長が現在外国に行っておられますが、代理ができておるもけでございまして、開き得ない段階ではございません。ただ、今申し上げましたように、東京の問題といいます永のは、駐留軍の問題も重要であるということでございますが、これは陸運局長にかわって陸軍局長考え方を申し上げておるわけでございますが、ただいま申し上げましたように、神風タクシー問題以来、交通事故という問題が非常に大きな問題でございますので、それらを勘案して、交通の需給の情欲というものを十分把握した上で、かけるべきものならばかけるというふうた判断をしたいというふうに言っておるわけでございまして、現在監査も相当進んでおりますので、そう長くないうちになし得るであろうというふうにお答え申し上げたわけでございます。
  86. 河野密

    河野(密)委員 いろいろなこまかい内容については、これは交通審議会を開くか開かないかということは、これは陸運局長の権限ですか。
  87. 山内公猷

    ○山内説明員 その需給の関係につきまして音目川を求めるのは、陸離局長の権限でございます。
  88. 河野密

    河野(密)委員 そうすると、こちらからあなたが自動車行政に関しても指不命令することはできないのですか。早く開けとか。
  89. 山内公猷

    ○山内説明員 一般的な命令はできるわけでございますが、またそういうような駐留軍労務者について早急に取り扱うべき指令はいたしておるわけでございますが、ただ、今申しましたようないろいろな他の条件もございますので、陸運局長はそれらの調査をいたしておるというふうに聞いております。
  90. 河野密

    河野(密)委員 それは至急に明確にするようにできるのか、できないのか。それは私は離職者に対しでそういうことを早くはっきりしてやることが親切だと思うのですがね。できるのかできないのかということ、また標準に合うのか合わないのかというようなことは、これは早く指示してやることが親切なやり万だと思うのですが、その点一つ明確にしていただきたいと思います。  もう一つ、貨物自動車の免許について、現在五種類がございますが、これは簡易化する方針なんですか、方針でないのですか。
  91. 山内公猷

    ○山内説明員 現在貨物自動車につきましては、一般免許、限定免許その他がございますが、現在急にこれを変えるというふうなこともまだ考えておりませんが、全般的に道路運送そのものの基本的な改正の研究はいたしておるわけでございます。
  92. 河野密

    河野(密)委員 道路運送法そのものを一つ改正しようという動きにはなっておる、こういうことですか。
  93. 山内公猷

    ○山内説明員 全般的な再検討を今辛務的に進めておるわけでございます。
  94. 河野密

    河野(密)委員 その中には今申し上げたような貨物自動車の免許の問題も簡易化するという方向が加わっているわけですね。
  95. 山内公猷

    ○山内説明員 私の方で今そういった法規の改正の委員会を局内に持っておるわけでありますか、再検討をし研究をするというその項目の中には入れておるわけであります。急速にまだどうという結論は出ておりません。
  96. 河野密

    河野(密)委員 その結論はいつごろ出す予定なんですか。
  97. 山内公猷

    ○山内説明員 いろいろ問題のある条又が多いので、私のところで担当の者をきめまして進めておりますが、いつできるか、あるいは全般的な改正に進むか部分的な改正にするかということは、まだちょっと申し上げられない段階になっております。全般的には非常にむずかしい問題をたくさん含んでおりますので、急速な結論は全般の問題ではむずかしいかもしれない、そういうふうに考えております。その場合には部分改正をすべきかどうかという検討をするということで、研究会の方針としては各項目別な討議を今やっておるわけであります。
  98. 河野密

    河野(密)委員 そうすると、今の特定免許とか限定免許とかいうものをそのまま残すというようなことではなく、そういうものをまずなくするというような方向で研究する、こういうふうに了解してよろしいのですか。
  99. 山内公猷

    ○山内説明員 実はまだ方向づけをいたしておりませんので、本日お答え申し上げますとすると、やはり白紙でまだ検討をしておるという程度しか申し上げられないと思っております。
  100. 河野密

    河野(密)委員 では現状がいいとは思ってないのですね。現状がいいとは思ってないが、しかしその方向はわからぬとこうおっしゃるのですか。
  101. 山内公猷

    ○山内説明員 今検討いたしておりますのは、この事業の実態と法との関係からいいまして、現在の事業種別のままでいいのか、あるいはふやさなければならないのか、もっと減らした方がいいのかというような点につきまして、専門的に今検討をいたしておるわけでありまして、まだどういう方向であるということまで御答弁申し上げるだけの研究が熟しておらないわけでありま
  102. 河野密

    河野(密)委員 非常に奥歯にもののはさまったようなものの言い方ですけれども検討するのは、現状がいいとは思ってない、こういうことでしようね。
  103. 山内公猷

    ○山内説明員 種別ごとの規制をどうするか、この段階でございまして、現状はまあ悪い、改善する余地がないかということはもちろんでございますが、といって、こうした方が非常に適切だという結論も出ておりませんので、そうなりますと御答弁申し上げまして、現状が悪いのだという結論にもならない。奥歯にもののはさまったような言い方だとおしかりを受けるかもしれませんが、事実ほんとうに事務官のところで白紙で、比較法学的に研究しておる段階でありまして、各外国の法令も取りまして、また日本の実際のやり方も研究いたしましてやっておるという段階で、まだ本日どうだという御答弁までちょっと私の手元でいたしかねるようなわけでございます。
  104. 河野密

    河野(密)委員 それでは、比較法学的に研究して、日本のようにいろんな多種類の免許のある国がありますか。
  105. 山内公猷

    ○山内説明員 これは大体におきましてアメリカの法制を多く取り入れた法律でございます。そこでいろいろ問題が発生する余地があるわけでございまして、今度は外国法の段階も調べてみようということでございます。規制の仕方も各国まちまちでございまして、日本の法律からすぐこうだということは言えないわけでございます。これでは非常に答弁にならないと思うわけでございますが、イギリスの法律、フランスの法律と、一つ一つ説明は時間がございませんのでできないわけでございますが、各国のやり方が多様である、その中でどれが工合がいいであろうか、日本に取り入れて工合のいい制度があるだろうかというようなことを今法律的に研究さしておるわけでございまして、今ちょっと具体的に御答弁できないで帆小編州でございます。
  106. 堀内一雄

    ○堀内委員長代理 午後は一時三十分より再開することといたし、休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  107. 塚原俊郎

    塚原委員長 ただいまより再開いたします。  午前に引き続き陸運海運及び観光に関する件について調査を進めます。井岡大治君。
  108. 井岡大治

    ○井岡委員 去る一月二十六日に紀伊水道で起りました南海丸の遭難事件について若干お伺いいたしたいのでありますが、それ以前に、審判庁の長官の方から、その後の海難審判の経過等で公表できる範囲内におけるこの問題の界議の経過等をお伺いできれば非常にけっこうだと思います。
  109. 長屋千棟

    ○長屋説明員 お答え申し上げます。内容の詳細についてはまだこちらに書類も回っておらぬ事件で、地方の海難審判所で処理しておる事件でございますので、申し上げられませんが、経過につきましては大体皆さんが新聞で御承知通りでございまして、第一回の審判が一昨七月三十日に開廷いたしました。それで次回は来たる七日に開始する予定でありましたところ、三、四委員の変更などがございまして、大体今のところでは八月二十三日に第二回を開くことになっております。内容その他がはっきりいたしませんので、どのくらいの日にちをかけたら片づくかということは、私の考えではちょっと申し上げられませんが、きよう、神戸の審判所長が審判長をやっておりますので、どういう見込みであろうかと連絡いたしましたところが、大体九月一ぱいに結審したい、結論が出るのは今年一ばいという目標でやっておるという状況でございます。
  110. 井岡大治

    ○井岡委員 実はその問題で、御承知のようにこの委員会でも、かなり構造の問題あるいは当時の状況等について審議をしておりまするので、私は必ずしも会社側が期待をしておるような結審が出ないのではないか、こういうように思うわけです。しかし、それは審判の結果を待たなければなりませんので、私はあえてその問題をきょうお尋ねしようとは思いません。ただその後の遺族の状況等を聞いてみますと、経済的にも肉体的にもかなり困窮をしておるような状態であります。しかもそれに対して会社自体は、何ら誠意と申しますか、解決への努力が見られないような現状にあるわけです。従って結審を早くしていただいて、会社に猛省を促すということも一つの方法ではないか、こういうふうにも考えますので、この点はできる限りの努力を払っていただくようにお願いをいたします。  そこで、実は海運局長にお伺いするわけですが、ただいま申し上げましたように、今度の事故はほとんど、子供でなく、家族の中心が失われておるように思うわけです。そういうような点から遺族の諸君としては、何とか早く解決をして更生の道をはかりたいという希望を持っておられるようであります。従って会社とも何十回にわたって交渉をされておるようでありますが、会社はさきに二十五万円を補償金の内渡しとして支給しておる。あるいは遺体の葬祭料として八万円を渡したという程度でもって今日までこれを引っぱっておるわけです。最近に至って会社は——今までは会社の事故じゃない、これは突風による突発的な事故だ、従って大体今まで支払つたのでよろしいように考える、しかしまあ道義的に見て十万円ばかりさらに追加してやる、従ってこれで解決をするのだ、こういうふうに言っておるようであります。粟沢局長はこの前の委員会で御説明なさったときに、「乗客の保険につきましては、南海汽船は四百四十四名分の保険に加入いたしておりました。今度の場合には被災乗客の数ははそれよりはるかに少うございます。全員最高額の二十五万円までは確実に出る、」こういうように言われておるわけであります。そうしますと、二十五万円を出したとしても、これは会社の負担でなくて、保険会社の負担であるということが明らかであります。こういう点で、しかも一方において会社はその後須磨丸を購入したりあるいは南海丸を改装するのに二億数千万円の金を費しておる。遺族の方はほっぽり出しておいて、片一方の万で二億数千万円の金をかける、こういうことでは遺族の諸君は納得しないと思うのです。従って、この点について海運局として何らかの方法がないものだろうか、こういうように思うわけですが、局長の御意見をお伺いいたしたい。
  111. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 ただいまのお話でございますが、会社といたしましては、当初見舞金を一万円出しました。それから葬祭料、供物料等といたしまして八万円、それから弔慰金二十五万円、ただいまもお話がございましたように、合計いたしますと三十四万円になりますが、三十四万円という金を一応前払いの形を含めまして出しておるわけでございます。それに最近なお十万円というものを追加して、これで何とか話をまとめてもらいたいという申し出をしておりますことは私ども聞いております。なお、ただいまお話のありました保険関係につきましては、先般も申し上げましたように、保険会社から二十五万円というものをもらえるという点は、私どももただいまでもそういうふうに思っております。ただこの保険金につきましても、こういう損害のあったときに填補してもらうという意味で平素から保険をかけておりまして、それで保険金をもらうわけでございますので、保険金の分は全然別だという解釈もちょっとむずかしいかと思いますが、それにいたしましても現在までで三十四万円、これに十万円ということで折衝を今いたしておることは事実でございます。ただ先ほども審判庁長官からのお話もありましたように、まだ事件の結審も済んでおりませんし、会社側としましても、一応現在の建前は会社には事故に対する審判上の責任というものはない見込みだということで考えておりますので、なかなかたくさんの金をそこへ出せということは言いにくいかと思うのであります。私どももかねがねこういった申しわけない事故を起しておるのだから、遺族にはできるだけ誠意を持って弔慰その他の方法を考えるようにということは指導いたしております。今申し上げましたような状況でございまして、ただいまの段階で役所の方から会社にさらに何十万円出せというふうなことはなかなか言いにくい状況でございまして、できるだけやはり御遺族の方と会社が十分話を詰められて、なお詰めた結果、話がなかなかつかないからということでこの辺まででやはり第三者が入って話を進めるという順序になるかと思うのであります。現在私どもといたしましては、ただいま会社が申し出ております十万円が少いからもっと出せというふうなことを申す意思はないのでございます。
  112. 塚原俊郎

    塚原委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  113. 塚原俊郎

    塚原委員長 速記を始めて。  河野正君。
  114. 河野正

    河野(正)委員 先ほど来、志免鉱業所の売山問題についていろいろ質疑を重ねたわけでありますが、最終段階におきましてむしろ大臣が私の方に質問をされたわけでございます。そこで私どもは、従業員なりあるいはまた鉱業所に関係いたしまする四カ町村十万の住民の方々の意思を代表して、この際この席上で態度を明確にいたしておきたいと思います。  それは、今日問題となっておりまする焦点は、国家的な見地から総合開発をいかにやるべきかということが問題点でございますが、私どももやはり現在の国鉄志免鉱業所中心とする総合開発ということが望ましいということが第一の目標でございます。さればといって、その点が支障があって、その場合にどうであるべきかというような点についての意思表示というものが第二回で求められたわけでございますが、もし国鉄志免鉱業所中心とする総合開発、すなわち隣接鉱区等を買収しての総合開発ということが不可能でございましても、現地従業員方々あるいはまた住民の方々、町村団体というものは、やはり現有施設のままでも国鉄で依然として経営をしていただきたいという意思があるということをこの際一つ明確にいたしておきたいと思います。大臣におかれましても、そういった地元従業員の意思なり、おるいはまた地元に関係いたしまする町村の意思なり、こういうものの意思というものを十分尊重されまして、今後とも政治的な御配慮を願いたい。どうかそういう点につきましてよろしくお願いを申し上げたいと思いますが、そのような点につきまして最終的な大臣の御所見をこの際承わっておきたいと思います。
  115. 永野護

    ○永野国務大臣 河野委員の御趣旨はよくわかりました。国策として資源を総合開発すべきである、もしもそれができない場合でも、国鉄中心にしている従来のままでもこれをやっていきたい、従業員及び地方の住民の諸君の御希望だからそれをかなえるような対策をとってくれ、こういう御趣意であったと思います。それに対して運輸大臣としてのお答えをいたしますが、御希望はよくわかりましたけれども、しかし、この点だけは御了承願いたい。それは、国鉄中心総合開発をすることが一番いい方法だとあなた方もお考えになり、私もあるいはそうかと思った。しかし現実の問題として、国鉄中心にするあの付近の炭田の総合開発は少くとも今のところ不可能である、財政的資金面の理由で不可能だ。そこで今度運輸大臣としては、おなた方もあの地方の総合開発の必要性は考えておられるのだから、ある程度従業員及び地方の住民の皆様方の極意に沿うような経営を、国鉄以外の相手方で総合開発をする余地がないかということも一応は考えなければならぬと、これは私の立場から思うのです。皆様方の御希望はわかっておっても、私の立場としてはそれはどうしても一応は考えなければならない。もちろん決して強要はいたしません。独断で一方的通告のようなことはいたしません。従業員及び地方の住民の方々の御希望に反することはいたしたくないと思っておりますけれども、しかし今は、だれがどういう案を立てるかということはまだ一つも表面に現われていない。でありますから、総合開発の必要は認めているけれども国鉄以外のものなら、どんな粗手方でどんな条件であろうとも絶対反対だと言われても、さようでございますか、それじゃそういたしましょうとは私は言いかねる。この心は御希望には沿わぬかもしれませんけれども、私の立場としてはそういう考え方をしなければならない余地のあることをあらかじめ御了承願いたい。これが第一点。  次に、今のままでもある程度やっていけるという確信を持っておるというお話なんです。これは、今私がすべての判断をしておる基礎とは非常に違うのであります。だから、もしもあなた方が言われる、今のままでも、あと何年だか知りませんけれども、ある程度やっていけるという見込みがあるんだというお考えが、あなた方の主観だけにとどまらないで、客観性を持つような証明ができますと、先ほど言った総合開発考えなければならぬという私の立場を捨てるわけじゃないんだけれども、これと並行して考えなければならぬと思っております。ただし、それがどういう方法でそれに客観性が持ち得るかという今度は手段方法の問題になってきますと、実ははなはだむずかしい。というのは、一応国鉄が信任し、社会的に見ましても相当の人だというきわめのついておる人で構成しておる調査委員会ができておる。それが出しておる結論は、今河好委員がおっしゃったような説とこれは相反しておる。従いまして、河野委員の説をその委員会調査に優先せしむるためには、河野委員のバック、背景、あるいは何かなければならぬ、第三者的の保証するものがなければならぬ。それがかりにどういう方法であるか。何か国鉄従業員ですか、技術者ですか、何だかじかに計画して、こういうふうにしてやっていけばいけるというふうな案を立てておるというようなことでもあれば——残念ながら私はそれを見ておりません。おりませんが、そういうものがあるなら、これも相当に、つまり医者の例でよくかかりつけにといいますけれども、大学の先生よりは、子供のときからあのからだをよく見ている医者の判断の方が案外正確なことがあり得ますから、肩書きに優先するいわゆるかかりつけの医者の診断がほんとうに正鵠を得ておる場合もありますから、肩書きや何には驚かない。それも十分私は尊重してみますけれども、しかし、今申しましたような理由で、おれなどの見るところでは総合開発が望ましいが、その総合開発ができなくても、今のままでもやれるという理論的の説明には今すぐここで私は賛成しかねる。ただし理論抜きにして、感情的には、山にそれだけの愛着を持っておられるということは、山にとっては非常な財産です。というのは、ほんとうに山がだめになったらそういう感情を山の従業員は持たぬものです。だから、山の従業員がそういう愛着を持っておられるということは、その山の値打を裏づける大切な要素だと思います。従ってそれは非常に尊重して聞きます。しかし尊重して聞くということは、それをうのみにすることではないということをはっきりと一つ了承願いたい思います。
  116. 館俊三

    ○館委員 簡単な質問をするわけですが、きのうの話で機関車や冷房をする資金の投資は国鉄がやらないとおっしゃったのだが、私はそういう意味から、国鉄に投資をしないという大蔵大臣お話よりも、もっと考えてみたいのは、今財政投融資を引き締めておる。設備投資その他については過剰を来たしておるのだ。そういう意味から新規な設備投資といいますか、そういうものについての政府の方針としてはめんどうなことになるのじゃないかという気持から、機関車その他の問題でなくて考えてみたい。新たな投資をするということですね。そういうことについての運輸大臣のお考えはどうかということを聞いてみたい。民間の会社にやらせる場合であっても、どれほどの投資を新たにやらなければならぬかということについては私はわかりませんが、運輸大臣大蔵大臣お話しになったときは、やはりそういう気持で国鉄で何かできないかという立場国鉄でやる場合にはこれだけの投資があらためて必要であるという立場から御相談をなさったのではないかと私は考える。それから今の、事を分けての大臣お話を聞いておりましても、まだまだ国鉄で投資をしてやって、できるのか、できないのかというところの判断、あるいは民間でやらなければならぬとおっしゃいましたけれども、その判断がまだまだそういう財政投融資の考え方からも検討しなければならない余地があるのではないか。私はしろうとでわかりませんが、そういう点について、通輪大臣でなくて、国務大臣としての立場から日本の経済を考えて、今不況に臨んでおるときに、新たに三菱なら三菱がかかりきって自己資本でやるのか知りませんけれども、政府の投資によ。てするというようなことになってきますと、今の政府の方針とどうなるのか、こういう見通しについての国務大臣としての、このことを処理される場合の考え方というものはおありになるかどうか、そういうことを聞いておきたい。
  117. 永野護

    ○永野国務大臣 国務大臣としての抱負経綸を運輸委員会お話しすることが適当であるかどうか知りませんけれども、しかし私には私の多少の私見がないでもありません。私見がないわけではありませんけれども、われわれはこれは真剣勝負をしているのでありまして、いたずらに理論闘争をしておるのではありません。私にかりに私見がありましても、私を大蔵大臣にして下さらぬと、私の私見が実行力がない。だから、現実の問題としては、今の大蔵大臣考えていることを一つの不動の鉄則として、その範囲内でわれわれ今後運輸大臣として動かなければならぬ、私はそういう判断をしている。それと離れて、現実の問題でなくて、理論として、一体財政投融資をどういうふうにしてやったらいいか、あるいは山の投資を民間にやらすのがいいか、国鉄にやらせるのがいいかというような問題につきましては、私の私見はありますけれども、それは実際上においては、現実の問題としては無力なんです。何となれば、どういうことをやっても、みな大蔵大臣の了解を得て、大蔵大臣が判を押さなければ金が一文も動きませんから、従って、お前国務大臣としてどういう意見を持っておるかということに長たと時間をとって陳述いたしましても効果がありませんから、まあこの程度にとどめておきたいと思います。
  118. 館俊三

    ○館委員 今のこれが本ぎまりになるせとぎわはいつだかわかりませんけれども、そのせとぎわにおいて承認をする立場に迎輸大臣がいらっしゃる。承認をした以上は、どういう形で決定されるか知りませんけれども、たとえば民間でやるという決定をされてよろしいという承認を出されるかもしれませんけれども、その承認を出されるときの周囲の状態について、今お話の財政その他の問題について考慮をお払いになった上でなくては承認ができないのではないかということを私は考える。
  119. 永野護

    ○永野国務大臣 運輸大臣が意思決定をするときの心がまえとしての御注意として十分に拝承いたします。
  120. 館俊三

    ○館委員 それが私が最初尋ねたかった気持なんです。そういうことで、総裁が意思決定をして、ただ未承認という形だけにとどまっておるのだが、それを遂行していって、経済的な不況がもっと深刻になってきて、いよいよ引き締めか何かをやらなくてはならないようなときになってきた。この張り切ってやっておる当局立場がくずれた場合には、これは大へんなことになります。運輸大臣としても、認可を与えたあとにそういうことになってきては大へんなことになる。今年度一ぱいということになっておるのですが、その今年度一ぱいという期限をどのようにお考えになっておるか。今私の申したことは杞憂にすぎないのかもしれません。そういうさなかに臨んだ場合に、今の当局があなたのお考えのような遂行の仕方でどばつくようなことになったら大へんだ、そういうことでもって運輸大臣として、あるいは国鉄当局としましても、どこに考慮をめぐらされておるかどうか。三十一年から三十二年にかけての好況の上り坂の時分に、国鉄では五カ年計画を立てたり、非常な資金の計画を立てておったのですが、本年度に入ってから、収入その他の面からこれがどばついてきた。志免の問題もそういう好景気時代考えられてきたのではないかと思うのですが、そういう市況というか、経済界の変動というか、そういうものを考えて慎重に事を運はれることが——決して失敗を予期するわけじむございませんけれども、十分に考えていただかなければならぬと思うのです。従業員の待遇、あるいは鉱害被害者の待遇について慎重に考えられることも必要ですが、それと一緒にそういう広い面に考えを及ぼしておいでになることが——これは老婆心かもしれません、わからぬのかもしれませんけれども大切なことだと思う。それで運輸大臣は一体いつごろ認可をなさるおつもりでいらっしゃるか、もうすでに認可をするような心がまえになっていらっしゃるのかどうか、そういうことをお聞きしたい。
  121. 永野護

    ○永野国務大臣 誤解のないように申し上げておきます。当然のことでありますけれども、あの答申案はあくまでもわれわれの参考資料であって、あれには決定権はございません。あの参考資料をどう扱うかということは運輸大臣考え次第になっております。先ほど申しましたように、相当に社会的の評価のある人が書いた意見書でありますから、もちろん敬意は払います。しかし敬意を払うということと、それに無条件に盲従するということとは違います。そこは誤解のないようにはっきり申し上げておきます。  それから、景気のいいときに案を立てたのだから、景気が違ってきたら考え方も違うのじゃないかというようなお説でありますが、それは断じて関係ございません。この問題は、この山の本質が従業員及び付近の住民の皆様方の生活にどういう影響を与えるであろうかというだけ、すなわち、この山の運営の仕方を、従業員及び付近の住民の方たの仕合せを一日も長く維持するのにはどうしたらいいかという一本のものさしで私は判断するつもりです。目先が好景気だからこうする、景気が悪いからどうするということは、国鉄総裁としてはそう考えるべきであります。国鉄総裁は自分のそろはんだけでいく、従って、これは景気、不景気と大いに関係があると思いますけれども、政治をやる運輸大臣立場からいたしましたら——景気、不景気は全然無関係とは申しません、しかしながらそのねらいの重点は、今申しました従業員の幸福と付近の住民諸君の幸福を一番大きな要素に考えております。それに比べてみますると、目先の景気、不景気はそう大きな影響を与えません。そのことを念のために申し上げておきます。
  122. 館俊三

    ○館委員 もう一つだけ……。従業員と土地の鉱害被害者の問題に重点を置かれてお話しになりましたので、そういう意味では大へん助かるわけなんですが、私のほんとうの言うところは、国家資源をうんと活用してもらいたいという根本的な立場から総合開発をなさろうということであるが、そういう場合にほんとうに民間に委譲してやって、さてまたその財政投融資の関係でどばつくということになったら大へんだということを御注意申し上げた。あなた方やろうとする立場から今従業員や鉱害の話が出ましたが、聞くところによると、北九州は失業者の多発地帯として指定されておる。主として鉱山関係の北九州——大牟田から荒尾にかけての炭鉱地区というのは、だんだんそういう形になっていく最中なんです。それを国鉄の労働者が守ってとにかくやってきておるところへ、さらにどういう条件で投げ出されるのかわかりませんけれども、大いに注意を払ってもらいたいと私は思う。今お話がありましたから私はそういう話をするんですが、やはり運輸大臣としては国鉄経営者として考えるのではなく、国務大臣として財政方面も考えてもらわなければならぬし、失業問題も考えた上でこれを承認すべきかどうかという問題を決定すべきだと思う。国務大臣は非常に気の毒な地位にあるのだけれども、そうい形かから国政全般——い言うと少し大きいかもしれませんけれども、その立場で承認するか承認しないかという決定をされる立場にいらっしゃるということを私は申し上げておきます。そういう形で十分お考えになった上で、いつごろこの問題のらちをおあけなさるつもりでおるか。大体の見通しがありましたら教えていただきた
  123. 永野護

    ○永野国務大臣 今申しましたように、この問題を運輸大臣が決意をいたすためには、方針はきまっておりますけれども、具体的の事実、たとえば一例をとって申しますと、このままでもあと十年やそこらは、やり方によってはやっていけるんだという意見もあるし、一面においてやれないのだという意見もあるのです。従って、この意見のどちらをとるかということは、ただくじを引いてきめるようなわけにいきません。どうしても十分科学的に根拠のある、客観性のある資料によってきめなければなりません。従いまして、何日までにやりますというようなことは申し上げかねるのです。今のお話のように、今年一ぱいに何とか片をつけなければならぬというあの意見書は、あれはあくまでも私の参考意見であって、何らこの問題のターミナル・ポイントを明示しているものじゃございません。この点は誤解のないように願いたい。あれにとらわれません。私も神様じゃありませんから、私のやることに間違いもありましょうが、しかし、私としては万全を尽してこの問題を解決したいと考えております。
  124. 井岡大治

    ○井岡委員 大臣は自分の判断を決定するのに参考資料が必要だ、同時に現状のままでやるのには——一番それが望ましいことだ、たとえば国鉄総合開発なり何なりをやることが一番望ましいことだから、そういう資料があれば出してもらいたいという御意見だったと思う。そこで私たち先般、これは社会党だけでありますが、十名ばかりで向うに参りまして、反対される理由を聞いて参りました。会った方々を先に申し上げておきますが、鉱業所の所長を中心とした職員、それから従業員方々、隣村の町村会の議員の方々、それから鉱害関係の方々、これは主として隣接市町村の方々であると思います。それから社会福祉事業の方々、さらに主婦の会の方々最後にこの山を経営していく上にいろんな関連業者がおりますので、この業者の方々、以上の方々に会いました。  そこでまず鉱業所の職員の方々は、現状のままでこれをやるのに対しての見解としてこういうように言っております。大臣もすでに総合開発をして国家資源を活用することが一番大事だ、この目的には変更を加えるわけにいかない。私もそう思います。そこで、現状のままでどうしてやっていくかということでありますが、現状のままで、大臣もいろいろお調べになっておいでであろうと思いますから、あの地区における鉱区を詳細にお調べになればおわかりになると思いますが、たとえば三菱の持っておる鉱区志免鉱区の中に入っております。しかもこれは志免の方からとらないと三菱の方からはとることができないという現状にあります。従ってこれを買ってもらいたい、こういう意見を持っております。そこでその金について、現在金を出すということが困る、こういう国鉄側の御意向でありますが、職員並びに従業員の諸君の言い方は、なるほどわれわれは長い間迷惑をかけてきたけれども、最近に至っては、われわれは何とかしてこの鉱業所を守ろうという立場からいろいろ努力をしてきた、その努力の蓄積は昭和三十一年度並びに昭和三十二年度の純益、これはある意味において鉱害関係が若干未処理になっておりまするから、純然たる純益とは申しませんけれども、合せて約五億近くの金があります。このお金を使っていたたいていわゆる隣接鉱区を買う、それから今手をつけておるのにその費用を充てていただくとするならば、われわれの立てておる十年計画というものは立っていく、しかしそれはいわゆる現在の五十万トン・ベースではなくて、四十五万トン・ベースは十年間確保することができる、こういうように言われております。従って、そういう立場をとりつつ総合開発をいかにすべきか、こういう観点でこれを考えることが望ましいのではないかと思うのであります。御承知のように総合開発でありまするから、私は必ずしもこれが採算ベースに乗るか乗らないかということも将来考えていかなければいけない。従、もし採算、ベースに乗らないとするならば、しかし資源を生かさなければならぬという絶対至上命令があるとするならば、これは国家投資をやらなければならぬということになって参ろうと思います。こういう点を考え合せるならば、現在のままでいわゆる志免鉱業所が努力の蓄積によって得た黒字、それを若干補てんをしていただくということは、これは現状のままでよいという結論になろうかと思うのであります。  それから隣接市町村の問題でありますが、市町村議会でありますが、これは鉱害の問題を主としております。御承知のように今日まで鉱害問題の解決いたしておるのは、単に志免問題ではなくて全国一律に見てみますと、必ずしも鉱害問題はスムーズに解決をしておらない。各鉱業所との間に、これは石炭にいたしましても鉱石にいたしましても一緒でありますが、かなり鉱害問題をめぐって紛争のあることは事実であります。そこで、にもかかわらず隣接の市町村は、この国鉄等の鉱害の問題について比較的、どう申しますか、大らかな気持であることは、過去から国鉄が今まで示していただいた実績、同時にそれに対する取扱い、こういう点をほかの鉱害に対する問題と比較対照するならば、かなり血の通ったものがある、従ってこれをわれわれはこのままやっていただきたいというのが、鉱害関係における隣接市町村関係者の考え方であります。同時にまた隣接市町村の考え方はいわゆる地方財政の確立であります。御承知のように今日地方財政は非常に苦しゅうございます。仕事が多うございます。ここでこれがほかの方に売られていくということになって、果して計画したいわゆる地方行政というものができ得るかどうかということについて不安を持っております。時間がないという委員長からの御注意がございましたから、こまかいことは省略いたしますが、この点を十分大臣の方でお取り上げ並びに御検討をいただきたいと思います。  それから社会福祉事業であります。今日の各炭鉱の中では必ずしもいい環境にあるとはいえません。しかしながら、志免鉱業所における社会福祉あるいは児童教育というものは、この事業が国営である、あるいは国鉄の事業であるというプライドをいわゆる主婦から子供からみんな持っておる、そういう点からかなり社会福祉事業にいい結果をもたらしておる。このことは向うの社会福祉事業の方たからお聞きになられれば十分おわかりになると思いますが、この点を強く主張されておりました。これもほかとの比較対照における問題であります。  それから主婦の方々であります。主婦の方たは自分の子供に仕事をさす上において、あるいは就職をさす上において、志免鉱業所の職従業員の子弟であるというならば、いわゆる北九州における工場就職率というものは無条件でとっていただいておるということであります。これがほかの炭鉱と比較するならば、あの炭鉱かあるいはあの会社の従業員かということでどうも入れていただいておらない、こういう点から将来の子供に対する希望というものが非常に強く主婦の方たから働いておるということであります。  最後に関係者の話でありますが、たとえば坑木の問題であります。御承知のように坑木はその炭坑々々に企画をして、半年ないし一年前からこれを整備している、これがほかに譲られていくということになると、果して今まで通りに坑木が入れてもらえるかどうか、年間一億幾らの取引をしておるようでありますが、こういう結果からくるこれらの約十軒に当る業者の生活の問題、並びに従業員の問題等で非常に心痛をしておるというようなことをわれわれに陳情されたのであります。  以上のような点を考えてみまするならば、大臣が言われるようにそこの隣接の市町村と従業員の福祉ということが第一前提として考えられるならば、私は十分現在のままにおける反証になろうかと思うのであります。同時にまた大臣総合開発について、現状では大蔵大臣はこれを認めない、こう言っておられるようであります。従って現状ということは、現段階におけるとわれわれは解釈をいたしまするから、先ほど申し上げましたように、たとえば十年計画が遂行されつつある中であるいは情勢の変化があり得るかもわからない、こういう点等を合せるならば、十分私は現在のままやっていってよいのじゃないか、こういうように考えます。大臣判断資料にということでございまするので、私はこの程度にしておきます。
  125. 永野護

    ○永野国務大臣 いろいろ御注意ありがとうございました。しかし大蔵大臣がこの志免炭鉱にこれ以上の出資はしないと言っておることは、いろいろな理由がありますけれども、一番基本的の問題は主義、プリンシプルの問題であります。つまり鉄道は鉄道に投資をすべきであって、たとえば新線開設とか、あるいはディーゼル・カーを入れてくれとか、電化とかいう、その本来の仕事に資金が足りなくて困っておるときに、なおこの炭鉱にこれ以上何億という金をつぎ込むことは国鉄本来の使命に反するではないかということで、引き合うとか引き合わぬとかいうことは従たる問題であります。でありますから、幾ら引き合うからといっても大蔵大臣は賛成し得ないだろうと考えております。それから今承わって非常に参考になりましたのは、鉱業所の所長、従業者の十年計画というものが三菱鉱区を買ってくれたならば、という仮定であるとすると、これはすこぶる厄介だと思います。
  126. 井岡大治

    ○井岡委員 その全部という意味じゃないですよ。志免鉱業所内の……。
  127. 永野護

    ○永野国務大臣 もちろん志免鉱業所の中の三菱鉱区を買ってくれたならばという、そうすれば続くというのであるといたしますと、かなりこの問題の扱い方はむずかしいと思います。と申しますのは、その鉱区もおそらく売らぬといったら始末がつかぬ、収用するわけにはいかぬと思います。それから売るといいましても、一体値段がどんなものであるか、さらに鉱区だけ買ったのじゃしょうがない、新しいいろいろな開発資金も要ると思います。従いまして、これはまた大蔵大臣の問題に返るのでありますけれども、その計画を立てましても、大蔵大臣了承を得ることは少くも私が今まで大蔵大臣折衝した範囲内においては不可能だと思います。従って一番大切な前提がくずれ去るわけであります。それからそのあとに鉱害問題とか、それから地方財政の問題とか、あるいは社会福祉上とか、主婦の関係とか、環境行政の問題がありますけれども、これは実は大体がきまったあとに考える問題であって、この理由によって本体の問題を解釈することにはならぬのではないかと思います。少くも決定の主要素にはならない。一つの参考資料としては、十分考える価値のあるたくさんの条項だと思いますけれども、それによってこの問題を右し左するだけの影響力のある問題ではないように私は判断いたします。
  128. 井岡大治

    ○井岡委員 それは今度のこの答申の中の第八に、「買取金額の現金支払と、今後における総合開発に必要とする資金を確実に調達できること。」と、こう明らかにしておるのと、第九に、「従業員の給与水準並びに福利厚生施設等が略々同程度であること。なお、従業員の将来の身分保障等についても極力安定方法が講ぜられること。」こう書いてある。このことを私は、少くとも先ほどの大臣お話からくるならば、第一項にあげられてしかるべきだと、こう思うのです。しかし私は、順序が先であるからこれが優先するとかあるいは優先しないとかいう問題は別に考えますけれども大臣考え方からいうならば、これが絶対の条件でなければならないはずなんです。それから国鉄が、いわゆる大蔵大臣が、これを再建するあるいは開発をするというのに金を出さないということ、しかし一方においては現金で買うだけの能力がなければいけないんだと、こう言っておる。それから開発する資金というものは確実に調達することができるものでなくてはならぬと言っておる。こうなって参りますと、なまやさしい金じゃないわけです。こういう点の関連を考えてみるならば、私は大臣のお考えになっておるところに必ずしも変更ができないということにはならないのじゃないかと思う。参考までに聞かしてくれということでありましたから、私は先ほど申し上げたのです。ですから、この点を十分この二つの項から考えても、私は大事なことだと、こう申し上げておるのです。
  129. 塚原俊郎

    塚原委員長 井岡君の海運局長に対する質問はもう少しで終りますね。——どうぞ井岡君。
  130. 井岡大治

    ○井岡委員 海運局長は現在のところあっせんする意思がない、こういうことでありますが、同時にあとの十万円は云々ということで出す、これによってやるんだ、こう言っておるのでありますが、向うはもう責任はないんだ、こう言っておるのです。けれども道義的な責任があるから、私どもは涙金として十万円出しておるのだと言っておる。これは必ずしも私は適切な言葉じゃないと思う。だから向うのいわゆる会社側の態度というものは、もう用らかになっている。明らかになっておる限りにおいては海運局長も御存じの通り、かつてこの問題を前の中村大臣は、二百五十万円一人に補償金をとってあるんだからこれは出すべきだ。これはかりに旅先の談話として発表したとしても、これは責任ある大臣が言ったことなんです。遭難者の遺家族というものはそれに非常な期待を持っておるのです。こういう点等から考えるならば、私は海運当局は何らかの処置を講じていくような努力を払うべきじゃないか、こう思うのです。この点を一つもう一度お伺いします。
  131. 粟沢一男

    ○粟沢説明員 大臣お話は私ども事務的には承わっておりませんので、どういうことになっておるかちょっと申しかねるのでございますが、なお先ほどからのお話もありましたように、会社側としてさらに誠意を持って折衝するということは私はやるべきであると考えます。その金額が十万がいいのか、二十万がいいのかというふうなことは、私どもとして今日まだ口にする時期ではないと思いますが、ただ六月にそういう申し出をして、そのまま何らの進展に努めないということは、必ずしも誠意がある態度とは言えないと私は考えますので、この点はさらに遺族の代表の方々と再々話をされて、できるだけ誠意を持って折衝するように今後とも指導していきたいと思います。それからなお先ほどのお話にもありましたように、中には実際にお困りになっておる方もあるかと私は存ずるのでありますが、そういう方に対しては、またほかに内払いをふやすというような方法も考えられるのじゃないかと思います。そういう点についても、やはりもっと誠意を持って考えるというように会社を指導いたしたいと考えております。
  132. 井岡大治

    ○井岡委員 今の段階で、局長から私が中へ入ってあっせんしましょうということは、これは公けの席上で言えないかもわかりませんから、私はあえてこれを求めようとは思いませんけれども、少くとも十万円で、これでわれわれの方はもう道義的責任も、あるいは刑法上の責任も免れるのだ、こういう会社の態度というものについては少しかたくななところがある、この点は何とか打開のできるように局長の方で努力を払っていただきたいと思います。もう一つ私はここでこの問題をほぐす一つの方法としては、なるほど南海汽船と南海電鉄とは会社が別であります。別でありますけれども、南海汽船の株のほとんどは南海電鉄が持っておるわけであります。従って遺家族に非常に不幸な方がおられる、両親を失ってしまったとか、あるいは親一人子一人のところをその親を失ってしまって遺族が困っておる、こういうような場合は電鉄会社はなお採用するいろいろななにがあるわけでありますから、こういう点についてやはり遺族を採用してやる、こういうようなことが私はほんとうに血の通った解決方法ではないかと思うのであります。こういうことが現われてくるならば、この遺家族の方たももっとほぐされて、交渉がスムーズにいくのではないか、こう思いますので、このこともあわせてお願いして、早急に解決のできるように、そうして遺族の方々の更生のできるように何らかの処置をとっていただくことをお願いして私の質問を終ります。
  133. 塚原俊郎

    塚原委員長 久保三郎君。
  134. 久保三郎

    久保委員 国鉄総裁お尋ねを申し上げます。志免炭鉱の問題について今各委員からそれぞれくどいように御質問がありまして、重ねてお尋ねするのは大へん恐縮ですが、大事な点だと思うので、二、三お尋ねを申し上げます。  まず第一に、調査委員会設置について運輸大臣から認可の書類が参りました。その書類の中で、諸般情勢にかんがみ、万遺憾なきを期せという注意がありますが、諸般情勢にかんがみというのは、どういうふうに国鉄総裁はとられておるのか、この点をまず第にお伺いしたい、こう思います。
  135. 十河信二

    十河説明員 私は、これは国鉄内の情勢国鉄の職員のこと、それからあるいは鉱害補償のこと、いろいろな文字通り諸般情勢を考慮して慎重にやるべきだ、こういう趣旨と解しております。
  136. 久保三郎

    久保委員 私は前の国会からの議事録等から類推しまして、ただいま総裁が御答弁なさったような問題だけではなさそうに考えておるのです。というのは、四月の八日に参議院の運輸委員会でこの問題が論議されましたが、その際論議された中で、こういう相反したお考え総裁は述べておられるように思います。まず第一に調査委員会を設置して、そこへ諮問して、付議事項はとにかく根本的にどうしたらいいかを検討してもらう、出た結論に対しては、これは白紙をもって尊更していきたい、こういうのが一つ答弁の中で出ております。もう一つは、この炭鉱はとにかくだんだんと出炭量が下ってくる、最下層炭を掘ることはガスの噴出でこれはなかなか困難だ、それによってこの炭鉱を他と併合するか、鉱区を買い取るかしなければ、維持できない。さらにこの点について、国鉄はこの炭鉱に対して新しい投資をすることは困難だ、こういうような答弁もしているわけです。この二つを見ますると、調査委員会を設置した目的というのが、表面的には基本的な問題か調査をしていこう、結論を得てもらいたい、こういうことを言っておきながら片方では、国鉄ではこの炭鉱を持ちこたえていくのが困難である、こういう見解を総裁はそれ以前かもしれませんが、持っておられる。それでなお先般の当委員会で青木参考人から意見を聴取した際に、その意見最後の方に、国鉄がとにかく分離していくのだ、国鉄自体はやらないのだというから、分離ということに早急に結論を出す、こういうふうな意味を簡単に述べられております。こういうことになり、さらには今回出てきましたところの答申を見ますると、これは予定のコースをただ単に調査委員会を介して言ってきたようにしか見えない。まず第一に結論として、この炭鉱の譲渡先をきめてきた。当然この選定基準というのがございますが、選定基準に当てはまるものは、この三社でなくて、この三社の中の三菱炭鉱一つである。三菱鉱業株式公社一つだけです。というのは、この選定基準の一番に、「これと隣接鉱区とを綜合して経営開発するうとができる便宜を有し、」云々と書いてある。隣接鉱区を有するのは三菱鉱業以外にない。この答申案にしても、そういうことがうかがわれる。それから四月八日の先ほどの参議院の運輸委員会で質問があった中で、こういうことを言っています。すでにこの志免炭鉱の払い下げの申請が出ていた、その出ていたものはお返しをしました、三十二年の二月に三井、三菱、住友、九州の中小炭鉱の代表、こういうものは返した、それから上田ですかはそのあとから出てきて、三十二年の五月にお返しをした、こういうことを述べているわけです。これは事実ですね。こういうのがある。こういうことを総合してみますると、あなたはなるほど良心的に今日まで国鉄経営について全責任を負ってこられたし、従業員に対する思いやりも従来の国鉄の最高首脳責任者としては、最も見上げたものだと私も考えています。また今日もそうだと思います。しかしながら、あなたの知らないところで、知らない方法がとられてきていはせぬか。そして今日まで国鉄総裁はその地位のためにこの志免炭鉱ではお苦しみになっているのではないか、こういうふうにも私は考えるのです。というのは、今まで申し上げたように、たとえば運輸大臣から認可がきたときの諸般情勢にかんがみというのは、少くともこういう炭鉱業者がこの志免炭鉱の払い下げの申請をどっとやってきた。それでこの始末に困ったというのが、まず国鉄総裁のお立場ではないだろうか。さらにこれを合理化し、何とか体裁——と言っては語弊がありますが、そういうものの陰に隠れてこれを何とか処理していかねばならぬ事態に追い込まれた。そこで考えつかれたのが調査委員会を作る。なるほど調査委員会に選ばれた委員の方たは権威者であり、りっぱな方々である。そのりっぱであるべき荷山委員長そのものが先般の当委員会参考人の発言では、先ほど申し上げたように国鉄でやる気がないし、やれないというのだから分離をするということになったんでございますという、こういうように調査委員会というものはただ単に予定のコースを歩いてもらうにすぎなかったのではないか。それで最も大事なこの金額の評価あるいは従業員の処遇問題、さらには鉱害の問題等はこの答申案にもあるように、これには相当の時日を要すると認められるから、これはまずもって分離ということでやりてきました、これはあとでやります、こういうことなんです。全く運なんです。この答申の出てきた工合も、本来ならば最終結論が出ない限りは譲渡先についても、評価についても、鉱害の補償についても、従業員の問題についても、およそ見当がつかない限りはこういう答申案というものは出すべきはずではないと思う。ところが、重要な問題があと回しになって分離ということが出てきた。しかも払い下げの対象が三社をあげてきておるが、事実は一社しか適用するものがない。選定基準に適合するものは一社しかない。事実われわれは現場に行って現場の諸君に説明を聞いても、これは三菱以外にはない。先ほどから何べんも各委員から御質問があった。この志免炭鉱縦坑から掘ってくるには三菱だけなんです。そういうことを考えると、どうもあなたのお考えと、あなたの人格には関係なく、この問題は不明朗に処理される、こういう際でありますから、これはもう少し考え直していく段階である。このまま押し切られることもお立場上必要かもしれません。しかしながら大きな国鉄経営に不信の念はこの二つでも買います。もう一つは、総合開発という問題についてもそれぞれ論議がありましたが、総合開発というものを急ぐその手段についても、当然三年か四年前に三菱から国鉄志免に売りたいという交渉が何べんもありたが、その当時の国鉄は取り上げなかった。なぜ取り上げなかったかというと、今考えればこういうコースを歩く筋を何とかして作るために今日まで遷延してきた。最後には合理化し、合法化するために調査委員会を設置した。調査委員会国鉄の意のままに答申案出してきたんではなかろうかと私は推量するのです。この点について一つ国鉄総裁からお伺いしたい。
  137. 十河信二

    十河説明員 結論から先に申し上げますが、私の方で予断をもって委員会に何か押しつけたというふうなことでございますが、それは全然反対であります。これは私の就任する前から、当委員会か別の委員会かで申し上げましたが、前から志免炭鉱の問題はいろいろと部内において論議せられてきたのであります。それが外に現われて問題になりましたのは、三十年の行政管理庁の勧告として発表されてから問、題になったのであります。白米私はこれを慎重に、どうしたらいいかということを検討して参ったのであります。その行政管理庁の勧告の後に国鉄経営調査会からも勧告がありますし、また本年になって、再び行政管理庁から、国鉄がこれを持っておる積極的な理由に乏しいから、国鉄は運輸輸送という面に専念すべきである、だからこれを切り離すがよかろうという勧告を受けまして、私は非常に重大な問題である、国鉄にとってもあるいは国にとっても、また従業員にとっても、地方の関係町村にとっても重大な問題でありますがゆえに、政府筋からたびたびそういう勧告を受けたにかかわらず、専門家にお願いをいたしまして、あなた方専門的な立場からどうしたらいいとお考えになりますかとい、ことの意見を求めたのであります。私といたしましては、政府から勧告があるにかかわらず調査委員会を設けて検討をする、そういう根本的の問題から検討をするということは、若干潜越じゃないかということも考えましたけれども、今申し上げまするように、各方面に及ぼす影響すこぶる大きいと考えましたので、慎重の上にも慎重にというつもりで委員会諮問いたしましたような次第であります。決して私が予断をもって結論を委員会に押しつけたというふうなことは毛頭ありません。私はこの問題を明朗にガラス張りの中で処理したい、こう考えますがゆえに、むしろ委員会でざっくばらんの御討議を願った方がよろしい、こう考えまして、特に運輸大臣にお願いして、運輸大臣の御了承を得て、調査委員会を設けて検討したような次第であります。
  138. 久保三郎

    久保委員 そういう予断をもって押しつけたことはないということでありますが、総裁としてはそういうことはないか知りませんが、そういう動きできているようにわれわれは見ざるを得ないのであります。もう一つは、今も、前からもお話がたびたびございましたが、行管あるいは経営調査会等からは、輸送屋は輸送一本で行けという勧告があったからというお話であります。この調査委員会からの答申の、分離すべきであるという理由には、そういうものはございません。そこに一つの食い違いもございますね。それでこの調査委員会の方では、とにかく国鉄経営下においては、現在の鉱区では開発の見込みというか、開発は、もうすでに合理化限界にきている、だからよそへ放せ、こういうふうになっているようであります。そこらにもこの問題が一転、二転、三軽している理由があると思う。なるほど調査委員会をお作りになって、あるいは当委員会でも審議するということで、いわゆるガラス張りのように見えますけれども、基本の線からはだいぶ違ってきているということを、この際ぜひお考えをいただかねばならぬ、こういうふうに私どもは思います。  そこであらためてお尋ねしますが、第二回の答申が出てきたわけでありますが、払い下げというか、売り渡しの対象は、最終的には三井、三菱、住友の三社のうちから選ぶことが適当であると認められる、こう認定したというのですが、この選定基準にあわせてこの三者がそれぞれ適格だとわれわれは思わぬ。というのは、先ほども申し上げたように、隣接鉱区というが、鉱区が隣接しているのは三菱だけなんです。そういう考えからいけば、総裁はこの三者がやはり並列、同列の立場考えられるものか、どうだろうか、この点一つお尋ねをしたい。
  139. 十河信二

    十河説明員 委員会答申にもありますように、九つの標準を総合して勘案いたしました結果、この三者が適格者である、こういうことになっておるのであります。この点についてはどこがどうといろいろな条件がありますから、九つ条件がありますから、それを目下あらゆる角度から検討中でありまして、どこが一番すぐれておる、最優先者であるかないかというようなことは、今日まだ決定いたしておりません。
  140. 久保三郎

    久保委員 同じような質問になりますが、とにかくわれわれが見る目では、二年あるいは三年かかってきて、この際結論を出すという際に、もう一ぺん当初を振り返ってこれは考え直してもらう必要が私はあると思う。それからもちろん先ほども質問があったようでありますが、資金の問題あるいはその処遇の問題、そういへ問題を最終的に見通しがつけられずにこれは分離すべきだということになりますれば、それはあなたの今の御方針通り分離するというまでの間において、志免鉱業所が荒廃しないとも限らぬ。そういうことを考えると、国家資源保存維持のために考えなければならぬ問題だと思う。そういうことを考えないでやっていくことは得策ではないし、国鉄という大世帯においてそういう扱いをすることはどうもうまくないというふうに考えるのです。  最後一つ申し上げますが、とにかく今まで不明朗だった。というのは、先ほどからるる申しました通り、既定のコースをただ単に何というか、ガラス張り式な隠れみのを作ってそこから引き出してきやしないか。これが私の推測泊りでなければ幸いです。そういうことになりますと、これは非常にまずい関越、大きな政治問題になるので、この際一つ考え直す必要がある。結論を申し上げますと、結局三菱に売るということのために今日までいろいろ工作をしてきたというふうにとれるわけです。そういうことを一つ考えいただきたいと同時に、先ほど運輸大臣からいろいろお話がありましたが、運輸大臣は、政治家として、政治の担当者として、結局政治問題として扱って最後判断を下すのだという御答弁をしております。それからもう一つは、そう言いながらも、大蔵大臣炭鉱のためには金を出さないのだと言っておるから、私どもの能力には限界があるからどうも、というようなことを言っておりますが、この辺のところが国鉄経理の問題とかね合せの問題だと思います。もう少しこの調査委員会が自由な立場で自由に結論を出してくれたなら別だが、総裁なりあるいは当局者がこの調査会に行って、国鉄考えはどうかと聞かれた場合に、いや金は出ないし、また今後聴取する考えはない、よって、これを将来持っていくことも考えられない、こういう話をされたことは事実だと思います。そういうことをやってきたその結論が、今日の第二回の答申だったと思う。そういうこと自体は私はおかしいと思う。よって、この辺で思い直していただかぬと将来大きな問題になる、こういうことを警告して今日の私の質問を終ります。
  141. 塚原俊郎

  142. 島口重次郎

    ○島口委員 農産物の運賃特割制度に関しまして十河総裁お尋ねしたいのでありますけれども、こまかい数字の面について総裁が御答弁できないとすれば、吾孫子理事でもけっこうだと思います。  第一点といたしましては、従来通り施行されて参りました運賃特割制度でありますけれども、このたび国鉄は、前年度の予算に比較いたしますと三十五億の赤で、昨年度に比較いたしまして十七億の赤である。この関係から、昨年度における慶産物の運賃特割制度による減収と称するものは約二十四億である。国鉄が独立採算制の立場から特割制度を廃止する、もしくは従来の割引額を減ずるということで、七月の一日から施行しようとしたことは事実でございます。ところが農林委員会やあるいは国会等の意見によりまして、従来のまま一年間延期することに決定したのであるが、前年度予算に比較いたしますと約三十五憾の赤字になるということでございますけれども、この赤字を補てんする将来の方針、対策というものをどう考えておられるのか。具体的に申し上げまするならば、政府の一般会計に要請いたしまして充当する考えであるか、それとも国鉄内部におきまして明年度からはどういう操作によりまして国鉄の独立採算制度の運営をしていくかというような基本的な構想につきまして、総裁から御見解を承わりたいのであります。さらに農産物の運賃特割制度を一年間継続することに決定したのでありますが、あれは御承知通り年間を通しての割引制度でございますけれども、それに付帯いたしまする季節割引もあるのでございますが、特に季節割引といたしましては青果物が多いのでございますが、この季節割引と称するのも従来通り継続するのであるかどうかということをお尋ねしたい。  それからもう一点ですが、昨年の運賃値上げの際に、平均といたしましては一割三分を引き上げまして、最高は一割七分の引き上げとなる、こういうような国鉄方針であったようでございますけれども、ものによりましては遠距離におきまして二割四分の値上げになっているというような実態もあるのであります。具体的に申しますると、青森県のリンゴ遠距離輸送がそういう実情でございますが、それらの点をどうお考えになっておられるか、国鉄当局の御見解をお尋ねしたいのであります。
  143. 塚原俊郎

    塚原委員長 島口君に申し上げますが、ただいまその問題で農林水産委員会に小倉副総裁営業局長が出ておられまして、こまかいことはその方のあれだそうですが、ここにおられる方の答弁を願いましようか。
  144. 島口重次郎

    ○島口委員 けっこうです。
  145. 久保亀夫

    久保説明員 それでは私から御答弁申し上げます。ただいま先生のおつしやいました農水産物の割引につきましては、従来からもございますが、特に昨年度運賃値上げの際にいろいろそういった御要望もございまして、一応一年ということで今おっしゃったような数字の割引をいたしたことは事実でございます。私どもといたしましては、独立採算という建前から、また五カ年計、画の遂行その他相当資金を要しまするので、運賃はできるだけ合理的な姿にしていただきまして、そして確保した資金で設備の増強なり、サービスの改善をしていきたいという希望は、私どもとしては当然強いわけでございます。もちろんそれに対しまして、あるいは生産の面、あるいは産業政策の面というような御要望もあったことは確かでございまして、ことに運賃値上げの際にできるだけその影響を弱めるといったようなこともございまして、御要望に応じてそういった割引制度をいたしたわけでございます。私どもといたしましては、なるべくこの割引は短期間にとどめまして、できるだけ御了承を得て、いわゆる政策割引はなるべく早く少くして参りたい。ただ出荷誘致というような——営業割引と申しますか、そういった面については、これは営業政策として当然考えて参らなければならぬ。政策的な割引はむしろなるべく政策を担当せられる政府の方にお願いしたいというのが私どもの気持でございまして、それをこの春に、去年の一年間の割引を——ものによりましてこれは違いますけれども、原則として戻していただけぬものだろうかということを関係各省並びに農林水産委員会等の関係でもいろいろお願いいたしたわけでございますが、やはりその辺については影響も考え、もっと慎重に扱うべしということで一応一年間はそのままにいたしまして、なおその間に運賃の合理化ということを検討して参りたいということで、ああいう決議もありましたし、しょうということにいたしたわけでございますが、私どもといたしましては、百数十億という膨大なものでありまするし、この運賃割引に対して政府から、あるいは一般会計からこの穴を埋めていただくということよりも、私どもとしては運賃の面では企業としての合理的な収入を上げさせていただいて、産業政策なりの問題はむしろ国の方にお願いするのがほんとうじゃなかろうかということは常々申しております。しかしそれにいたしましても、私どもの理想通り簡単にきちんきちんと参るものでございませんで、ある程度影響をなだらかにしながら、私どもとしてはそういう線にお願いしたいという気持はやはり今後とも持たざるを得ないのであります。あるいは機会あるごとに政府の方に、あるいは国会の皆様方にお願いして参りたい、こういうふうに考えておりま  それからこの季節割引の問題でございますが、これも営業政策的なものと、それからまたどちらかというと産業政策といったようなものでもございますし、私どもの気持といたしましては、営業政策的なものは私どもの出荷を確保するという考えから参りまして、これもものによりでございますが、あくまでもちろん続けて参る、しかし難業政策的なものはなるべくやめていって、これはむしろそれぞれ担当の各省、政府にむしろ助成策をお願いしたいという根本的な気持は持っております。個々の物資なりあるいは貨物につきましてどう現われますか、個々の問題になりますから私はここで詳細に申し上げる知識は持ちませんが、基本的な考えといたしましては、ただいま申し上げましたようなことで進んで参りたい、かように存じております。
  146. 島口重次郎

    ○島口委員 第三点の、昨年度の一割七分の最高でおさめるんだというのにもかかわらず、青森県のリンゴの遠距離輸送は二割四分になっているということに対しては答弁がないのでございますが、この点をもう一回明確にしてもらいたいと思います。  それから季節割引の問題は営業割引と解釈してよろしいか、ただ今の答弁では、公共的な政策の割引といたしましては、考え検討しなければなりませんけれども、季節割引が営業割引であるとするならば、従来通り奨励して参りたい、こういう御答弁だと理解したのであります。そう解釈してよろしいかどうか。  それから赤字の充当の問題は、やはり国鉄全体の一番大きな問題でありますから、総裁からこの御所見を承わりたいと思います。
  147. 久保亀夫

    久保説明員 ただいま答弁を漏らしました点の一七兆の問題でございますが、私担当でございませんので、正確にお答えすることはあるいはできかねるかと思いますが、昨年主として農林水産の特定の貨物につきまして、いろいろ国会方面その他のお話し合いもございまして、原則として一七%で頭打ちをするということで運賃の改正をいたしたことは事実でございます。しかし、ただいまの仰せの例は私はっきり記憶しておりませんので何とも言えませんが、遠距離逓減率の修正とかあるいはその他の制度改正ということで、一割七分以上に出たものもあったことは事実であります。ただ、あのときには具体的な品目について、関係の業者の方々と具体的に相談をしまして、その当時相当こまかく、もちろん農林水産委員会等でもお話が出ましたが、関係の業界のお話を具体的に一つずつ聞きまして、お話し合いをした上で実はぎめたものでございまして、今のリンゴの件は私はよく承知いたしませんが、あるいはそうであるとするとその当時格別お話し合いが出なかったものとも思いますが、これ以上私はちょっと今記憶しておりませんので、お答えいたしかねます。  それからもう一つ今の季節割引との関係でございますが、私ごく一般論として申し上げたので、営業政策的なものにつきましては、考え方としては残る。それから単なる政策割引と申しますか、ことに非常に出荷の多いときに割引をしておる、たとえば十一月のような出荷の多いときに割引をしておりますものは、これはむしろいわゆる政策割引でございます。農業政策なり生産政策的な考えの割引でございまして、こういうものはできればなくす方向へ持っていきたいということでございます。
  148. 十河信二

    十河説明員 赤字の対策ということでございますが、午前中もここでお話が出ましたように、経済界の変動によりまして本年は相当収支の上に考慮を加えなければならぬ点があります。運賃割引の赤字は、その経済界の情勢からくる赤字に比較いたしますと、比較的小さな問題であります。これは全体の赤字の影響を見た上で慎重に考慮しなければならぬじゃないか、こう考えております。
  149. 島口重次郎

    ○島口委員 政策割引の問題、それから営業割引の問題は、国鉄の原則論だけをお尋ねしましたけれども答弁にはならないと思います。そこで、わからないものを答弁して下さいと申し上げましても無理だと思いますから、あとで書面で明細に、私の質問の要点、この季節割引と称するものを営業割引として国鉄がやっておるのかどうか、やっておるとすれば、継続されることだから、これがさっぱり答弁が要点に触れておりませんから、明日でけっこうですから書面答弁をしてもらいたい。偽わりも若干あると思っていたけれども、ない——国鉄当局として現実を把握しておらぬということは非常に不勉強だと思う。そういう点から、係が違う、担当が違いますと申しますとこれまた何でありますけれども、この問題も答弁になっておりませんから、明細な書類で答弁してもらいたいと思います。おそくとも明日の十時までに出して下さい。  それから赤字の問題は、関連して申し上げますが、昨年運賃の値上げをいたします際に、これだけ値上げをしてもらいますと、いわゆる国鉄の五年計画と称するもので完全に建設事業が遂行されるという前提で値上げがされたものだと考えております。ただ本年度は、御承知通り、私らに言わせると岸内閣の政策が悪いから、神武天皇以来の不景気だ、国鉄の貨物が少いから収入減だ、こういうことだと解釈するのであります。そういうような政府の政策的な欠陥による国鉄の減収を、あえて国鉄が責任を負わなくともいいじゃないか、むしろ政府の一般会計から捻出をしてもらうような要請をいたしますことが正しい形ではないか、こう考えるのでありますが、さらに、経済ですから、すなわち生きものであり、動いておる、明年度に至りまして景気が回復をいたしますと、貨物が多くなる、国鉄の収入も多くなるという段階なら、ただいまの総裁のような答弁が妥当だと思いますけれども、このまま不景気が継続いたしまして赤字が継続いたしますとすれば、何らかの赤字対策をとらなければならないのであります。これに対する国鉄の大方針というものをお尋ねしたいのであります。その点に関する国鉄方針というものをもう少し掘り下げまして、具体的に御説明をお願いしたいと思います。
  150. 十河信二

    十河説明員 政府におかれましても、その対策をいろいろ今検討されておる際であります。われわれといたしましても、その政府の御方針とマッチしたような処理をいたすことが適当じゃないかと考えております。今後政府の方針や経済界の情勢検討した上、適当な処置を講じたい、こう考えております。
  151. 塚原俊郎

    塚原委員長 島口君、さっきの一割七分の問題、今打ち合せていますから……。ちょっと速記をやめて下さい。     〔速記中止〕
  152. 塚原俊郎

    塚原委員長 速記を始めて下さい。
  153. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 お答えいたします。あるいはちょっと御質問と違った点がございましたら、あとでまた補足させていただきますが、まず一番初めの方の問題の、昨年の運賃値上げの倍率でございますが、これは一七光と申しますのは、特殊な物資を大体限定いたしまして、その物資に限っては一七光にとどめておく、こういうようなお話でございます。従いまして、これは大体賃率といたしましては二八光が平均になっておりまして、さらにそれに対しまして遠距離逓減の修正を遠距離においていたしておりますので、二〇%をこえるものもございます。そのこえました理由といたしましては、たとえば青函航路におきまして四百五十キロでございましたものを百五十キロ減らして三百キロにしたという財源、あるいは種々な制度改正をいたしましたための財源が約二十億くらい必要でございます。その二十億を補給するために一般的に他の物資で負担する、全般の物資で負担するという意味におきまして、賃率は最低一六%といたしまして、遠距離逓減による増加をはかったわけでございます。従いまして物資によりましては二〇%をこえるものが当然出てくるわけであります。約七十数品目に限りましてだけ一七%で頭打ちをしたということになっております。  それから第二点の季節割引の問題でありますが、先ほどの久保常務からお答え申し上げましたように、それは沿革的に申しますと、この中には営業政策的なものもございますれば、もう二つ営業政策でない、一般的な公共政策的なものと二つございます。しかしながら現在では大体責任トン数制をきめませんので、公共政策割引でもない、また営業政策割引でもない、一種の中間的な季節割引制度というものを作っております。これは主として果物類、それから宮崎県、高知県の早生野菜、それからただいま実は問題になっておりましたのは北海道の種バレイショであります。そういったごく特殊な、しかも二カ月か三カ月だけに限った生産物につきましては季節割引というものを今やっております。ただ、これにつきましては、私どもといたしましては、当然ある時期には政策割引でなしに、営業割引に切りかえて参りたいというふうに考えておるわけであります。従いまして、ある程度出荷トン数をまとめてくれればそれだけ割引するというふうな、一つの純粋な営業政策的な割引にこれを切りかえて参りたいという気持は持っておりますが、なかなか現在出荷量その他の確定ができない物資もございますし、また出荷の形もさまざまであります。たとえば農協で共同出荷いたしておりますものもございますれば、ばらばらであるということで、出荷団体が必ずしも確定いたしておりませんので、なかなか出荷統制がむずかしいというようなことがございまして、今すぐ全部を営業割引に切りかえることは大へん困難でありますが、少しずつ徐々に各物資ことになるべく営業割引に切りかえて参りまして、そうして割り引くかわりに出荷数量は確保する、従って全体の運賃収入は下らないということで実は会計検査院から始終こうした点を指摘されますので、検査院的に見ましても確かにこの割引は国鉄全体の営業増収になっておるという点を確信いたしました上で今後割引をいたして参りたいというふうに考えております。
  154. 島口重次郎

    ○島口委員 営業局長が参りましたから、先ほどの御質問をもう一回繰り返してお尋ねしたいと思います。どうも焦点が合いませんから……。  第一問といたしましては、例の農林水産物の一年間の継続、こういう決定がございましたので、従来の季節割引と称するものも一年間そのまま継続する意思であるかどうかということであります。  それからいま一点、例の季節割引と称するものが画業割引だと見る見解もあり、あるいは公共割引だと見る見解もあるということでありますけれども、青森県のリンゴの場合はどういう制度でやっておるかということであります。  それからただいまの説明によりますと、公共政策的なものを営業的なものに切りかえたいという御意思はわかります。わかりますけれども、特割制度の方は一年間継続するのでございますから、当然季節割引も一年間継続してはどうか、こう考えるのであります。  それから一割七分の超過の問題でありますが、大原則として一割七分が最高だ、こう称しながら、その品目によりまして二割をオーバーすることは妥当ではない、こう考えます。ただいま北海道の青函航路の例をあげましたけれども、これは北海道向けではなくて、むしろ九州方面に対する輸送の問題であります。そういう面から、青函航路のしわ寄せが九州あるいは中国等に対します遠距離の問題にしわ寄せいたしますことはどうか、こう考えまして、やはり大方針である一割七分が最高だというならば、あらゆるものがそのワク内における値上げが妥当ではないか、こう考えるのであります。  それから総裁から答弁がなかったのでありますけれども、もう一度念を押したいのでございますが、昨年の運賃の値上げをいたします際に、この値上げをいたしますと五年間にわたる国鉄の建設事業が施行され得るというような見解に立って値上げをしたものかどうかというのがまだ依然として答弁がないから、この点も明確にしてもらいたいと思います。
  155. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 一番初めの農林水産関係の特別政策割引を一年間延長いたしましたのは、この前の特別国会最後にそういう言明をいたしまして、そして一年間延長いたしました。この内容は、実はこれらのものは昨年の三月三十日に、一貫して約七十品目につきまして、最低一おから最高一七、八%の各物資別の割引をしたのでございますが、これらの措置を、ことしの三月一ぱいで切れるものを六月一ばいまで三カ月間延長したわけでございます。その延長したものにつきまして一年間延長するというふうに申し上げたわけでございます。従いまして、これらには季節割引は全然含まれておらないわけでございます。と申しますことは、季節割引と申しますのは、先ほど申し上げましたような物資でございますので、その年々において生産高が全然違っている。それから販路が違っておる。しかも発駅が違う。あるいは輸送の区間が違い、あるいはまた輸送の期間が違う。毎年たによりまして割引の内容が当然非常に違ってくるわけでございます。従ってこの割引率を、あるいは割引の条件を一定して、これを一年延ばすとか二年延ばすということは、全然季節割引とは関係のない問題になってくるわけでございます。従いまして、季節割引はその都度その都度その年の作柄を見まして、また私の方の全体の輸送状況、ことに貨車の配置の問題、あるいは幹線の輸送力の問題を勘案いたしまして、その年その年に、その都度実はきめて参るのが季節割引でございますので、一年間延長いたしました各物資について、一年時をかまわず、発着駅をかまわず割引をしております単なる政策割引とはその点多少異なっておるわけでございます。  従いまして、第三の問題のお答えになりますが、季節割引を一年間延長することは、季節割引の性質上、それはできないことであると申しますか、全然問題が違う問題であるというふうにお答え申し上げるのが、実は適当じゃないかと考えるわけでございます。  第二番目の御質問のリンゴの問題でございますが、実はこれはいろいろ今までも紆余曲折がございまして、数年前まではこれを営業割引でやっておったわけでございます。営業割引と申しますと、たとえばリンゴは大体五十万トンくらい出ますので、四十万トンなら四十万トン出してくれれば一割なら一割引く、もしそれ以上出してくれれば、それ以上出した分については一割二分引くというように大体二段階にいたしまして、そのかわり出荷責任のトン数をきめて、そうして出荷責任のトン数が完遂されましたときにその分だけこちらから運賃をお返しするという、いわゆる運賃の割戻しの制度をずっとやっておりました。ところが、一昨年の輸送の繁忙期になりまして、非常に東北線が輸送力がない、あるいは奥羽線裏縦貫が輸送力がないというときに、北海道の方々がこれを見られまして、北海道の物資さえどしどし送られないのに、国鉄はリンゴの運賃割引をしてリンゴを無理やり自分の方にとっておるじゃないかというように、非常に御批判になったわけでございます。従いまして、その前後にこれを全部改めまして、営業割引でなしに、これを政策割引というふうに変更いたしました。と申しますことは、営業割引でございますと、どうしても貨車の一定量の配給をこちらがお約束しなければならないというわけでございます。おととしの状況から申しますと非常に逼迫いたしまして、とてもリンゴならリンゴだけに一日何車必ず配給するというお約束ができなかった状態でございますので、やむなくこれを営業割引から政策割引に変更いたしました。ところがその後いろいろ業者の御意見その他を聞きますと、やはり営業割引の方が自分たちとしても出荷意欲がわくし、またある意味の出荷の統制と申しますか、生産者からの集荷等についても営業割引の方が非常にやりやすいから、営業割引にしてくれというような御意向が、実は昨年あたりからぽつぽつ出てきております。ことしはまだリンゴの季節にはちょっと早うございますが、実は今その問題についても現地意見をまとめておりまして、場合によりましてはこれをことしあ、たりからまた画業割引に切りかえてみたらどうかというような——ごれはまだ非公式なあれでございますが、そういうような意向を持っております。現在、たとえば山形県のモモ、リンゴ、これは夏リンゴでございますが、これらのものにつきましては、数量は非常に少うございますが営業割引でやりたいというふうに考えて、目下準備中でございます。従いまして今後私どもといたしましては、ただ何となく割引するという季節割引は非常に大義名分が立ちにくい点がございますので、極力これを営業割引に切りかえて参りたい、そして公共政策割引自身は、先ほどお話通り根本的な問題として検討いたして参りたいというふうに考えておるわけでございます。  それから二割四分の問題は、一七%と申しますのは、たしかあのときは七十数品目だったと思っておりますが、これらの主として国民生活に直接関連のある物資については一七%でとめろ、たとえば魚、木材等を筆頭といたしまして、今の政策割引を適用しているものが大体この一七%でおさまっているわけでございます。私どもといたしましては約七千種類の貨物を送っておりますが、そのうちの七十品目くらいだけが一七%でとまったわけでございまして、あとはその距離によりまして一応一七%をこしているものはたくさんございます。その財源は先ほど申し上げました通り、結局青函の航路のキロ程の短縮あるいは関門トンネルのキロ程の短縮というために、どうしても財源が必要なわけでございます。その財源を捻出いたしますために、一般の賃率としては一七%に上げざるを得なくなるわけでございます。従いまして先生のおっしゃった通り、端的に申しますと、北海道関係の値上げ率は非常に低いわけでございます。現在ちょっと正確な数字は記憶いたしておりませんが、一一・七%くらいが北海道関係の全物資の値上げ率でございます。ところが国鉄全体といたしますと一三%でございまして、国鉄全体の貨物運賃値上り率よりも北海道の運賃値上り率の方が低いわけであります。従ってその低い分はどこかでもってこれをカバーしておるという形になるわけでございますので、当然一三%よりもまた一七%よりも多いものが出てくるわけでございます。もしそれでなしに、フラットに一律一七%なら一七%に上げますればまことに公平でございますが、そのかわり青函航路のキロ程の短縮もできなければ、その他さまざまの荷主から御要望のある制度の改正もできないわけでございます。
  156. 塚原俊郎

    塚原委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後三時三十七分散会