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1958-03-24 第28回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十四日(月曜日)    午後二時五十分開会   —————————————  出席者は左の通り。    主査      松澤 兼人君    副主査     剱木 亨弘君    委員            大谷 贇雄君            館  哲二君            苫米地英俊君            高田なほ子君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            高良 とみ君            市川 房枝君   担当委員外委員            安部キミ子君            坂本  昭君            鈴木  強君   国務大臣    文 部 大 臣 松永  東君   政府委員    文部政務次官  臼井 莊一君    文部大臣官房総    務参事官    齋藤  正君    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省調査局長 北岡 健二君    文部省管理局長 小林 行雄君    文化財保護委員    会委員長    河井 彌八君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君   説明員    大蔵省主計局主    計官      相沢 英之君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ただいまから第四分科会を開会いたします。  本日の日程は、午前に労働省所管を、午後文部省所管を審査する予定でございましたが、労働省所管に関しましては労働大臣都合により二十六日の午前に審査することとし、今回は前回に引き続き文部省所管の残余につき議題にいたします。御質疑のおありの方の御発言をお願いいたします。
  3. 高良とみ

    高良とみ君 文化財委員長の御都合もあるそうでありますから、その方から先に私の質疑を進めさしていただきたいと思います。文部大臣おいでにならないのでお答え願えませんかと思いますが、大臣からもあとから関連してお話伺います。  文化財保護委員長にお伺いしますのは、日本古典古文書等に対して、これを国民の若い層が解釈し、あるいは読了することの能力がだんだん落ちておると思うのでありますが、それに四分科会一難騨対して文部省として、あるいは文化財保護方面においては何か保存方策が立っておりますのかどうか。私の伺いたいと思いまする要旨は、要するに古いものの保護及びこれを文化財として国民に伝えていくという努力と、新しい世代の必要に応じた文教政策とが分離しておらないところに今日の混然たる姿があるのではないかというふうに考えるのであります。従ってまず古文書あるいは絵画の説明等に対して、今まで何をしておいでになったか、これからどういうことができるか、それについての予算内容等ございましたら御説明願いたいと思うのでございます。
  4. 河井彌八

    政府委員河井彌八君) ただいまの御質問にお答え申し上げます。日本古典をよく理解のできるような人をどういうふうにして養成していくかというような問題にこれは結局いくと思います。そうなりますると文化財保護委員会といたしましては、直接に関係はない、むしろそれよりは、つまり一般文部行政がどういうふうに取り扱つておるかという問題であるかと考えます。しかし現状について文化財保護委員会がどういうことをしているかと申しますれば、そういう積極的な教育方面には関与いたしておりません。ただしかし、そういう修養を積んだりっぱな人材がたくさんできて、そして文化財保護仕事に従事することができるような人の多くなることを希望はいたしておりまするが、現在のところではたとえば国立の大学に文学部、それからその中のあるいは哲学とか美学というようなもの、あるいはさらに漢学あるいは国学というような部門がありまして、そこでそれぞれ相当な人材養成しておると考えます。それから私立大学等におきましても、たとえば国学院大学であるとか、あるいは二松学舎だとかたくさんあると思いますが、それは私よくあげることはできませんが、というようなところで卒業した人を使いまして、そして文化財保護仕事関係していただくということができておるのでありまして、今直接に不足しているというような実情ではありません。これ以上どうも私から申し上げるのはいかがかと思います。
  5. 高良とみ

    高良とみ君 文化財保護委員会としてはその仕事のワクもございますし、あの委員会が設置された当時の成り行きから見ましても、そういう限度もあることはよくわかつておるのでありますが、しかしどこの国でも古い言葉はだんだん実用されなくなってきて、そしてそこに文化財としての保存の意義があるのでありますが、古くなると、過去の世代が書き残し、あるいは説明をしたものが全然次の時代にわからなくなってくるということは、これは悲しむべきことだと思うのです。ところで、それならば、という今のお話しのようなきわめて短かい期間の四年なり、あるいはそれに大学院を加えても数年の教育期間において一般の教養、あるいは職業教育をしておりまする各大学がそういう古典保存維持、あるいはこれの解明等技術を身につけるにはあまりに期間も短かく、そういう特殊な教育にまで及んでいきますならば、これは学術研究と申しますもの  の、よほどこれは特異なものになると思う。そのために一般教育のための犠牲をしいることになるのではないか。そこでこれは文化財委員会としてはお話に出たこともあると思いまするからあえて伺うのでありまするが、やはり何かその数年を要する養成機間というようなものをお持ちになり、あるいはその職員内におきましても、これは特殊な技術といたしまして、これを大学卒業生、あるいは大学院等卒業生からこれを養成していく。従って日本古典に関しては一般大学にこれを期待するよりも、むしろ文部省一つ保存保護事業といたしまして、そういう方面機関を広げていくということの方が適当ではないか。学術専門家等をもそこによろしく動員してやることは適当でございましょうけれども、それと一般教育と混同するところに非常に憂うべきことがあるのではないか。まずその民族文化財は別にしまして、そうしてこの生きた文化を教えていく大学の方の荷を軽くしていくために、文化財保護委員会がもう少し先を見ての御考慮を払っていただけないかということが私の質問要旨なんでございます。その点いかがなんでしょうか。だんだん読めなくなるが、こういう古典をどう保護したらいいだろうかというようなお考えが今まで文化財委員会で出たことがある、あるいはそれにしてはあまりに弱体な文化財委員会事務局であって、そこまでは手が伸びないというのが実情であるか、その点を伺いたいのです。
  6. 河井彌八

    政府委員河井彌八君) 非常に先を御案じになりましたいい御意見を拝聴いたしました。ただいま私が申し上げましたのは、現状においてこの程度であるということを申し上げたのでありまして、今日でも文化財保護のために古典に通暁した修養を持っているりっぱな人をほしいということは事実であります。現状におきましてはそういうふうな保護といいますか、そういうふうな学徒の養成にまで何か力を入れるということは、文化財保護委員会といたしましては少し行き過ぎになるのではないかと考えます。現状におきましては、たとえば大学なり——多くは大学でありますが、という特殊の研究をした人が、文化財保護委員会職員として仕事に入ってくる。しかしこれは学校でその研究した、あるいは教わったというような程度におきましては、そんなにすぐに役に立つものではないというように考えられます。これはひとり文化財関係ばかりではありません。どの専門の事柄につきましてもそういうような傾向がある。文化財保護委員会としては、やはりそれらの人がほんとうに役に立ちまするまでになりますのには、少くとも五、六年あるいは十年の歳月を要するであろうかというくらいに考えます。その間にどうするかというならば、実地についての研究はいたされまするし、あるいはさらにその特殊の技能等につきましては、一年に二回くらいずつは特別の講習等をやりまして、指導いたしているというようなことなどはいたしておりますが、どうも学校教育にまで入りますことは非常にこれはいいことであるし、さらに国民性の将来のためを考えてみましても、それは非常に大切なことであるとは思いまするけれども文化財保護委員会としてそこまでは入っておらない実情であります。そのことを申し上げておきます。
  7. 高良とみ

    高良とみ君 よくわかりました。文化財保護委員会仕事限度がそこにあることはよくわかりますし、別にそこで教育機関を持てとか、あるいは特殊技能養成ということまでは御無理だということはよくわかっております。ただ、文化財保護委員長にお伺いするのではなく、調査局長がいらっしゃったら伺いたいのでありますが、日本古典について、そのほか建築などについてもそうでありましょうし、力学とかあるいはその他多くの問題が横たわっていると思うのです。これについて文部省は、調査局あるいは大学学術局としましても、日本のこの文化のクリームの中で、過去に属するものと将来に属するものと、やはり調査局として、そこを頭を分けてお考えにならないと、何もかにもみんな育ちつつある世代にかぶせているんです、その点が非常に私どもとしては次の世代に対して申しわけないと思っておるのでありますが、調査局としては日本古典についてどう考えていらっしゃるか、古典及び過去の世代が残した技術については、これはもう国民のどこかで研究者が守るであろう、大学院あるいはその他技術者が守るであろう、これについては別にそこまでは手が伸びないとおっしゃるのか、その点伺いたいと思います。
  8. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) ただいまお尋ねのことにつきまして、古典保存の問題につきまして考えてみますと、学校教育段階では専門的な教育、それからもうつは古典が、ことに内容が何らかの形で若い世代に伝わっていく、そしてその文化なり、精神的の基礎をつちかっていくというふうな点から、非常に重要な問題であることはお説の通りでございますが、特別にその文化保存なりという意味で、現在調査局所管の中で特別にとられている措置としては、まことに申しわけございませんが別段ございません。特別にそのために古典現代語的な理解を進める措置であるとかいうふうなものをやっているわけではございませんが、ただ教育の中には、そういうふうな形でだんだん取り入れられている。そしてまた、昔の時代には普通に考えられたものが、現代古典の、事実上古典のような段階になって、教育の中に入っているということは事実でございまして、かなり尊重された方向はとっているわけでありますが、調査局としてお尋ねでありますと、特別ないわけであります。
  9. 高良とみ

    高良とみ君 それならば古典のことについては一応おきまして、それならば今日学術用語審議会におき、あるいは法律用語審議会におき、その他民間におきましても放送、NHK、あるいは新聞協会その他において難語の言いかえ集であるとか、学術用語審議会答申であるとかいうふうにして、日本言葉及び文化を伝える言語文化というふうなものが日々夜々に流れて変化しつつある、ただいまのようにその古典教育の中に取り入れてくるというふうなことでもって、育ちつつある世代に、ただただこれは古典だからこれを覚えておけ、枕草子から大鏡までとにかくやれというような、そこに日本教育の非常なガンがあるように思うわけです。  そこでこういう言葉についての民間努力あるいは各界の努力に対して、これを集大成して、今の日本語かくのごとくむずかしい。このむずかしい言葉を言いかえる言葉にしなければ放送しても一般にわからない。あるいは学術語法律語、医学の言葉においても、かくのごとき民間努力があり、これをまとめて少くとも調査局としては国民言葉を生かして用いる努力をしておいでになるかどうか、それが一点。  もう一つは、あなたの方の国語研究所予算その他を全部拝見いたしますると、話し言葉研究室書き言葉研究室国語研究室、あるいは方言研究室等があって、おのおの数百万円の予算を持ってやっておられる。これは一体どこにいくのですか。これは、過去の言葉の語彙をただ集めて、そうしてこうかんなる印刷物にするための予算がとってあるのか。そして生きて育ちつつある世代のための言葉方策はどういうことになっているのですか。それが全部予算通り予定通り三年なり四年の事業計画が終つたときは、その中から要らない言葉を捨てて、要る言葉を生かして、国民の教科書に、さっきあなたのおっしゃいました国民教材の中に入れていくというおつもりがあるのか。あるいはただただ現象を追ってこうかんなる印刷物をやっていくというのでありますか。その二つの点について御方針を承わりたいと思います。
  10. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 最初のお尋ねで、民間あるいは政府関係機関等において言葉改善と申しますか、そういう努力が払われておることは事実でございまして、学術用語審議会等ではすでに十幾つかの学術関係の新しい言葉を出しております。それの内容は、大体当用漢字を使う範囲内に漢字の使用をとめて、そうしてこれを言いかえるなり、あるいはかな書きを用いるなりして、そうして学術用語統一と申しますか、整理しておるということでございます。  それから放送等関係においても、聞いてわかる言葉にかえるための努力研究が行われておりますし、それから新聞雑誌等のマス・コミュニケーションの関係においてもそういうやさしい、そしてよい言葉というふうな方向努力が進められております。役所としましてもこういうような線で国語審議会が成立しましてからずっとこの方向をとって参っておりまして、その国語審議会答申に基いて政府あるいは文部省においてそういう新しい方向に基いて研究され、整理された言葉なり、文字なりというふうなものをまとめて、たとえば当用漢字表、あるいは教育漢字表にいたし、さらに公用文を横書きにし、あるいは法律用語改善をする、内閣の告示なり、あるいは内閣訓令通達なりという形で世間に出て参っているわけであります。そういうような方向をとって進めておりまして、現在の国語審議会においては、話し言葉改善のための調査、それから日本言葉をどういう文字で書き表わすのが最も正しいかというふうな点についての調査を続けておりまして、まだ結論段階に至っておりませんが、今までに結論に到達したものは、すでに十幾つかの建議の形で報告され、それがそれぞれその段階で処理されているわけであります。こんなふうにやっておりますが、もう一方国語研究所予算関係でございますと、ここにおいて研究されておりますのは、その国語改善基本になるような事項の調査をしておりまして、幾つかの研究室を持っております。話し言葉研究室書き言葉研究室、それから言葉の歴史的な発展の調査をしている研究室もございますし、それから言語効果と申しますか、しゃべる言葉効果研究をしているところもございます。それからその他の資料等も収集している研究室もございます。そういうような部屋でそれぞれやっておりますが、この新しくと申しますか、過去の言葉を分析して、古典の中に出てくるような言葉をやっているのではなくて、歴史的発達——と申しましても比較的近代——明治以後の言葉について、それがどんなふうに変化していっているか、たとえば非常にむずかしい字を使い、あるいは漢文調で演説をしたというようなものから、現代話し言葉になり——言文一致になり、現在の話し言葉となってきたというその過程、従って現在どの段階にきているか、従ってこれがどういうふうに動いていくかというふうな目標のもとの調査、それから言葉を、いろいろ現在ありますのを、たとえば婦人雑誌に出てくる言葉新聞に出てくる言葉、それから総合雑誌等に出てくる言葉専門雑誌に出てくる言葉というふうなものを目標にしてそれぞれ調査しておりますが、これはこういうような調査によって、現在標準的に使われている言葉がどういう言葉であるか、従ってここから日本語としての基本的な、あるいは新しい意味標準語と申しますか、そういうものを見つけ出そう、そしてその見つけ出された標準語がどんなふうに書き表わされているかというふうな方向をねらって調査しているわけであります。  予算額としましては、大体一部屋に五十万くらいの程度、それに科学研究費なんかも入っておりますが、先ほど申し上げました現代使われている、雑誌やそういうものに使われている言葉文字調査というふうな方向から出ておりますので、実は十年くらい、それでその方向調査をしてきまして、大体来年、再来年くらいには結論が出せる段階になってきているのじゃないか。すでに三冊この関係報告が出ております。報告書として出ております。これはもう生きている、現実に使われている言葉調査になります。この調査の分析から、標準語といいますか、基本語といいますか、そういう方向がつかまれるのではないかというふうなねらいを持っているわけであります。
  11. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 関連してよろしゅうございますか、高良さん。
  12. 高良とみ

    高良とみ君 ええ。ちょっと簡単に願います、たくさん大臣に伺いたいことがありますから。
  13. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 今、高良さんからの御質疑の中に、この学校教育の中で、たとえば枕草子を教えるというようなことがまあこのガンだというようなお言葉があったのでありますが、これはきわめて重大な問題だと思う。先ほど文化財保護委員会からも委員長さん、お越しでありますが、この日本——高良さんから技術の問題もお話がございましたが、文学の、日本のクラシックの問題、あるいは建築技術、あるいはまた美術等の問題、おしなべてわれわれの先人が残しましたこの尊い文化に対して、文部大臣はどういうようなお考えを持っておいでになるか。と申しますることは、なるほどこの源氏物語とか、竹取物語とか、あるいは枕草子とかというような古典を、学校教育の中で大きく、取り扱っていきまするということでありまするというと、今の言語政策の、標準化しようと、こういうことからは非常なそごが起つてくるわけであります。しかしながら私どもはやはり——これはまあ御婦人委員の方がおいででありまするけれども、(「簡単々々」と呼ぶ者あり)シェークスピア以上に、私は紫式部のあの源氏物語というものは、婦人として世界で一番初めてあの長編小説を書いたという功績というものは、非常な偉大なる、私は日本婦人の、大きな残した文化だと思う。従いまして、むろんこのわれわれの生活におきまして、標準語を使っていきまするということ、言葉を簡素にするということは、私ももう非常に身をもって痛感しているわけです。たとえば私の大谷贇雄なんて字はちんぷんかんぷんでわかりません。これはおやじがつけたので、今さら責めてもしようがないのですが、非常に実はもう苦労をほんとうにしている。読めぬものですから、大谷たけを君とか、ふみを君とか、ぶんぶがいさんとかということを言われて、(笑声)非常に難儀をしているのであります。それかといって——従って私どものようなこういう名前は、ほんとうに変えたいのですよ。で、良という字に変えたら、これは大石良雄みたいで工合が悪いという話だから、これは実はちょっと変えたいが、おやじがつけてくれたから、おりますが、非常に不便を感じている。かといって、私はわれわれの先人が残してくれた偉大なる文化というものは、私は子孫が受け継ぐものであって、また後の世代に送り継ぐべきものである、まあかように思います。たとえば桂離宮のあの庭園技術なんてものは、実に尊い、偉大なる私は芸術である。修学院離宮にしてもまさにその通り。そういうようなところが、最近におきましては、庭園技術につきましても、その専門にやっていく人は非常に少い。あるいはこの日本建築の大工さんたちが、だんだん徒弟が少くなってしまって、跡継ぎする人もない。かわらをふく者もない。こういうようなことは、私は日本のこの先人の残したる文化を尊重し——ただこれを保護するだけでは私は何にもならぬと思う。保護するだけであってはならぬので、その先人の足跡といしずえとを生かして、われわれの後の世代が大いにその上に立ってやって下さるということであってこそ、初めて私は日本民族の尊い、美しい伝統が生かされていくものであると思う。  そこで、しかしながら実用主義からいえば、鉄筋コンクリートの家が一番実用主義であります。ところが、それは潤いがないということであります。文字もまた私ども日常生活におきましては、まあ標準語を使っていくということがこれは便利であります。しかしながら、この実用主義だけであってもならぬし、それかというて、むずかしい古典世界だけに生きておってもいかん。そこでそれらの点に関します、一体文部大臣、あるいはまた文部省は、どういうようなそれらについての工合のいいお考えを持っておられるか。その点を、この際高良さんの御質問に関連をしましてお尋ねをいたしておきたい。
  14. 松永東

    国務大臣松永東君) 御説、お説キになりました今の古典の問題ですがこれはもちろんやはりわれわれ民族先人の歩んできた道のしるべです。従って、これはもちろん尊重せんければなりません。さらにそれを子孫にも伝えていかんければならぬというふうに考えております。しかしながら、やはり現実にわれわれが生活していくのには、ちょっと縁が遠くなったような古典がたくさんあります、さればといってその古典研究の値なしというふうにほっておくわけには参りません、従って、そうした古典もこれから先の子供たち教材の中に取り入れていく、そうしてわれわれ民族特異性を生かしていくというふうに、やはり努めんければならぬと思っている。ことに大谷さんの言われた通り、ただ古典や古美術をずっと保護していくだけでなく、さらにそれを活用していって、そうして民族の本然の姿を現わすように努めていかんければならぬというふうに考えておるわけであります。
  15. 高良とみ

    高良とみ君 古典のことについては調査局がもっとしっかりして予算も伸ばして、そして本気でなさらなければ世界に対して申しわけがないし、国民に対しても困ったことだと思うのですが、大臣にお伺いしたいのは、現実の問題としてもっと困つたことがたくさん起っておるわけです。われわれが長く、日本国民文字を知っている率は九八%だとかいって、世界にもまあ大へん日本の人は教育があるということになって、新聞はだれでも読むというふうに思っておりましたのは過去の話になりまして、ここにユネスコに出ておる言語能力世界報告がありますが、文部省から出ているのでは依然として日本国民読み書き能力は高いようにいってますけれども、最近国がしました調査によりますと、正直のところ自分の名前も書けないというのはパーセンテージがそう高くないでしょう。ところが読み書き能力ということが今日は世界の基準になってみますると、日本人のほんとう読み書き能力は四・四%である。そしてこれに誤差数を入れますと全人口の六%しか読み書きはできないということでありまして、八十年の日本義務教育の結果がここに落ちておるということに対して文部省は深甚なる御考慮を必要とするんではないか。従って憲法などは読んだこともない、見たこともないという国民の数が六三%、その次の内閣調査、最近までのは七二%あるのであります。そうしてみると、これは私ども戦争前からの、いわゆる戦争責任者として、この激動しつつある世代の、文化財の処理がまずいんじゃないかということなんであります。古いものは古いでよろしく保護すべし、新しいものは新しいワクに入れて、新しい皮袋に入れて、今の青年女子が理解し得るような方策を立てなければならない。つまり言語政策が立っていないんではないかということを大臣に伺いたいんであります。で、あえて申しますなば、青少年にかけておる私ども漢字の負担が重過ぎるのではないか。絵が多いので目を悪くしてめがねもよけい使うようになっているし、そうしてそれに伴う言葉というものが常に感情の背景がありまするために、ユネスコからの忠告にも出ておりますように、言葉及び言語の教育文字教育というものは、必ず感情反応が伴って、そうして青少年の非行のごときも、その幾分かを——この日本文字がむずかしい、言葉が自分たちの手の届かぬところにあるということさえも言われておるのであります。これについてお答えを願いたい。
  16. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 読み書き能力調査についてお話を承わりましたのですが、私ども理解しているところでは、日本人の読み書き能力はそんなに低くはないと存じております。もちろん読み書き能力についての日本でやりました調査については、新聞に使われておる文字を使いましたので、従ってそういう文字になれない、年令層の非常に高い人たちが読めなかったり書けなかったりしたというのは出ております。従って義務教育が九九%こしておるのにもかかわらず、読み書き能力の方はそれよりやや低い線を出しておりますけれども、しかし読み書きのできない者が非常に多いというふうな調査ではなかったと存じます。もっともあとの方にお話しいただきました憲法を読んでいない者の調査というのは、まことに申しわけございませんが、私まだ承知いたしておりませんが、読み書き能力そのものについての考えでは、日本における読み書き能力は、そんなに御指摘になりましたように低くはないというふうな考えでございます。
  17. 高良とみ

    高良とみ君 どうぞ一つ大臣から。
  18. 松永東

    国務大臣松永東君) 高良さんのお説の通り、これは日本国語ですね、国語漢字、これは非常に、どうすればいいかと思ってわれわれは、半年や一年、過去文部大臣の職についておったって、こんなことはとても解決できませんが、いずれにせよこれは解決せんければならぬ大きな問題じゃないでしょうか。と申しますのは、漢字といいますけれども漢字はもうある程度漢字でない。外国の字ではない。日本の字になってきております。ところが、それはきわめてむずかしい字で、どうにもこうにも実用向きには縁の遠い字になってきておる。さらにまた言語、言葉を見ましても、まことにこれは、外国の言葉の簡単なのに比べれば、これはもう日本言葉は、これはどうしてこういうふうになったんだか、先祖の悪口を言うわけではありませんけれども、何せ、あなたというのを、外国では御承知の通りユーだけですが、君、お前、貴様、てめえ、やろうなんという、それはもう言葉は数限りもなく、一つを対象にしたあなたという言葉はそういうふうになっておる。こういうのは、何とかこれは統一されて、もっとわかりすいようにその表現の仕方をしなければならぬのじゃないか。それには一朝一夕にはこれはとても改正するわけにいきませんけれども、しかしだんだんと年を経るに従って、必要限度の字だけが文字とすれば残され、そうして言葉としてもやはり一定の普遍的な言葉に是正されていくというふうにお互いこれは心がけてやらなければならぬのじゃなかろうかと思っております。  先ほど特にお尋ね国語の問題でございますが、これもそうした、何とか統一しなければいかぬ、そうして要するに全国民がわかりやすく、そうして間違いなく使えるというふうに持っていかなければいかぬというような趣旨から、今度のこの教育課程の改正に際しましても、国語の時間を増加いたしまして、そうしてそういう面の研究一つ子供の頭の中にも入れていきたいというふうに企てておるわけなんであります。
  19. 高良とみ

    高良とみ君 大臣は、短かい御在任中にはこの問題は大きいとおっしゃいますが、どこかで始めなければならない。しかもこの問題は、世界が非常な速度で変りつつあるとともに、現にこのユネスコからの報告を見ましても、日本だけが非常におくれた報告を出しておる。で、また世界各国とも言語はこのスプートニク時代に、また、科学教育振興ということを掲げておられる内閣としまして、この際、これから先十年かかるかもしれないこの言語の改革について、大臣は、全文部省及び学術経験者をお集めになりまして、一つ出発するということが私どもの望ましいところだと思うのであります。で、科学技術教育方面から申しましても、教学の教育などは、あの応用問題の文字の解釈、その中に差し込まれた漢字文字が多いために、それに非常にたくさん時間をとるために、諸外国の児童が小学校の二、三年でやっております二けたのかけ算のごときが、日本の子供では、よほどあとにならなければ、国語というものと国字というものを一応解釈してでなければ、いかない。小学校一、二年でもうすでに扱い得る数字のようなもの、あるいは科学の活用のようなもの、あるいは辞書の活用というふうなものが、ほとんど小学校義務教育年令には不可能であるということを考えますると、この際、日本の児童を国字の負担から解放していくということを一つ研究願うとともに、その御意思はないものか、これを一つともに憂えていただきたい。その点、いかがなものでしょうか。大臣が一応そこまで心配していて下さるなら、もう一つ踏み切ろうじゃないかという御研究なり御意思は出ないものでしょうか。
  20. 松永東

    国務大臣松永東君) 御説の通り、これはもう私は何とかせんけりゃならん問題じゃなかろうかと思います。日本人でありながら、日本の、われわれの先祖から伝わつてきたこの国語研究に一苦労せんけりゃならん。従って、外国の留学生あたりが日本国語研究をするのに苦労をするのが実に困るということを、よく私も聞いております。でありますから、仰せになった通り、これはもう早かれおそかれやらんきゃならんのですから、文部省もそうした研究をやるように今心がけて進めております。
  21. 高良とみ

    高良とみ君 もう一点、大臣にお伺いしておきたいのは、せっかく東南アジア等の学生の留学を御考慮になっておりますが、仰せの通り、この国へ来て、日本語を、話す言葉でなく、文字で、大学の講義等を理解するために学んでいきましても、どこの国へも通用しない。そこで、むしろ、東南アジアの民族として進歩をあせっておる国としては、フランスヘやればこれで通用する範囲も多いし、ドイツにやり、英国にやり、アメリカにやるという点で、何とか日本語を、横の文字に書くとか、あるいはかな書きにするとかいうふうにしませんと、日本に来る留学生の応用の範囲が非常に狭くなる。自分の国へ帰っても、その人たち技術者になろうと思っても、これはむだな骨を折るということになる。それから、もう一つの点は、実業界から、あるいは科学技術方面からも、日本文字国語をいつまでも使っておったのでは、電気計算機も使えないし、種種の、オートメーションというほどのものでなくとも、ごく簡単な計算等にもとても不自由をするので、かたかなで、あるいはひらがなでもいいですから、名前を書くだけでも、保際会社あるいは電気会社、その他の証券会社ももちろんでありますが、そういうところの計算が非常に早く機械化していく。どうか、育ちつついく子供には、かな文字、あるいはローマ字、あるいは、少くともきわめて制限した漢字にしてやっていってもらわないと、日本の能率は上らない、こういう要望があるんです。そこで、日本へ来る外国の留学生、あるいは日本文化を学びに来る人たちに対する方策、それから、実業界、科学界の要請、これに送り込んでいる科学技術の振興から考え日本言語政策、いかに私ども理解したらいいでしょうか。御意見を伺いたいと思います。
  22. 松永東

    国務大臣松永東君) 先ほどから申し上げております通り、言語、文字、これは相当もう思い切つて改革をやらんきゃならんのじゃなかろうか。ただ、このごろ、言語学者、ことに私のように古い世代で暮してきた人間は、幸いにして、横に書くときにも、われわれの学生時代は右から書いていましたが、このごろは左から書いております。これはまあ一日の進歩だと思う。それはなぜかといいますと、数字あるいは外国の言葉と並べて書いてもやはりうまく調和がとれてそうして解釈ができるようになる。従って、だんだんこれはそういうふうにせなけりゃならんというふうに心ある人は考えておりますし、さらにまた、われわれ文部省におきましても、そうした方面にやはり道を開いていかなけりゃいかんのじゃないかというふうに考えております。
  23. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  24. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記を始めて。
  25. 高良とみ

    高良とみ君 日本人の読み書き能力につきましては、調査局長が御存じないというのは、これは非常に遺憾だと思うんです。大きな本が出ています。本日こそ持って来ませんでしたが、これは国の費用を使ったので、大きな調査費用が出ていまして、それでいきますると六・二、正直な統計から言うと、日本人の読み書き能力は四・四で、さらに憲法の一部さえ読んだり聞いたりしたこともないというのは、国立教育研究所の調査でございまして、三五%かあるのでありますが、こういうことを基礎にして一つ調査局はもっと言語の実態とそれに対する対策を御研究になっていくように、国語課というのがありますけれども調査局全体で活発な議論を戦わせてそして次の世代を言語の負担から解放する方向にお進みにならないと、ただ当用漢字だけではなかなか問題が多過ぎると思う。  それから、いわゆる略字とか新かなづかいとかございますけれども、これは、若い人に言わせると、もう年じゅう変わっていき、今の世代は、戦争前のかなづかいも覚え、新しいのも覚え、また、当用漢字も覚え、それを今混同して使っておるということを申しております。この点、もう一つ進歩的な方策調査局はお立てになる必要があるのではないか。従って、具体的に申しますると、今三千万円を使っておられる国語研究所ですが、その一部として、一つは、言語の言いかえ、あるいは難語を改良したものを集大成を作られるごとには二、三百万円あれば十分できると思います。そして国民に知らせ、もう一つは、同音異語の調査国語研究所一つ仕事として加え、そして今までの言語の歴史なんというようなところももちろんけつこうですが、これは専門家にまかせて、その一歩先へ進む方策調査局はおとりになる意思がないか、それに予算をふやすことは不可能であるか、その点伺いたい。
  26. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) 最初の読み書能力のことでございますが、実はこの本ができますときに、私、この仕事関係にタッチしておりまして、従って、本ができたこと、それから大体どういう者を対象にしてどれくらいのサンプリングでやつた、時期はいつやったということは承知しておるわけであります。それで、六・三とか四・四とかいうのは、読み書き能力のない人間のパーセンテージであるのか、ある人間のパーセンテージであるの……。
  27. 高良とみ

    高良とみ君 あるのがそれなんです。
  28. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) そうしますと、国民のあれは小さいものから大きいものまでやりました。従って学齢期段階を除いたもので教育を受けておるもの、ずいぶんおるわけでありますから、従ってそれが六・二%なり四・四ということになるはずはとうていないということを先ほど申し上げたのでございます。何か数字のお間違いじゃないかしらと思いますが、私の記憶するには、九九%の義務教育のあれにしては八十以上の年令まで入っております。そういうところからたしか八十何パーセントかの読み書き能力のパーセントが出ている。ただし、読み書き能力と申しましても、程度幾つかに分れておりまして、インドとか東南アジア諸国なり南米のようなあきめくらの多い国における場合には割合程度を下げておりますが、わが国のはかなり高い程度のもので、新聞に使われている文字を使いましたからずいぶん高い程度のものをやった。それで従って、お年寄りや僻地におられるような方々で読めないのが案外多かったように記憶しておるので、その点申し上げたのです。そこで国語研究所なり国語課なり、あるいは調査局全体としましてとっております方向は、先ほど国語審議会方向として申し上げました線でございます。従いまして標準的な言葉等をできるだけ見つけて、字をやさしくし、それからできるだけかなり、そういう音標的な文字を取り入れる方向をとり、そしてそういう方面の新しい調査なり研究なりを進めながら、その成果を発表し、そしてそれの普及を放送なり報道関係なりと協力して普及をはかつていく、普及をはかって参りますと、もちろん教育段階において用いられる文字、ことに漢字教育漢字という線に落ちて参りますから、非常に簡素化された文字を知っているものの数がだんだんふえていくわけでございます。  それから、途中でいろいろ学年の准行の間に様子が変わってくるという点、御指摘ございました。かなづかいとか略字が変わってくる、これは学力調査の場合にもそういうのが出て参りまして、おととしやりました国語の全国の学力調査の場合に、やはりかなづかいなんか下見ますと、高等学校段階の方が割合かなづかいを誤まつておる。新かなづかいと従来のかなづかいの混同がある。しかし中学校段階、小学校段階ではこの変の混乱がほとんど出ておりません。こういうふうに学力調査などの結果から見ましても、途中で変った場合にはいろいろ工合の悪いのが出て参りますが、ある程度そろって参りますとその線で教えていけるのじゃないか。一方国語研究所言葉調査等においても、新聞に使われる言葉と大衆的な雑誌婦人雑誌などに使われる言葉、それと総合雑誌と比べますと、もう使われておる文字の数が、当用漢字以外に使われておる文字の数が変っておる。総合雑誌の方はまだたくさん残しておりますが、新聞や大衆雑誌というような読みものの方ではずっと落している。ですから効果は徐々に、というとまだ足りないような話になりますが、とにかく着実に現われてきておるということを申し上げたいと存じます。  言葉の言いかえなり、同音異義語の調査については、たとえば同音異義語について、文字の方の線では現在国語研究所が十年やって参りました語彙調査の中から整理をこの方面に目ざせば、ある程度できるかと思います。ただ問題は、その同音異義語を見つけましても、それをどういうふうに処理していくかという点になりますと、かなり時間的にも、内容的にも、あるいは知力の程度といいますか、そういう意味でもかなり高いものが要るんじゃないかと思われます。そういう見通しは持っておりますが、現在国語研究所ではまだ最後までいっておりませんので、この際急にこういう調査を突っ込むことが適当かどうかということは、さらに考えさしていただきたいと思います。費用がほかの方に回っているものを中断してこちらへ回すのはいかがかという意味でございます。中断して回せばもちろん同音異義語等は文字を拾い出す程度でしたら二年もあれば十分できるかと思いますが、中断してこちらへ回すという——先生は先ほど大分古い言葉ばかりやっておるように仰せられましたけれども、そういうことはございませんで、周辺的に、科学的にやはり資料を集めておくことが国語研究所としては大事な点じゃないかと考えておりますので、中断してこちらへ回すということはさらに考えさしていただきたいと思います。
  29. 高良とみ

    高良とみ君 いろいろな問題がありますが、十年もかかってそうして依然として日本国民言葉が変わっていくのをあとを追っかけていくというのでは、われわれ税金を払つておる者、ことに育ちつつある多くの世代は満足しない。そこでやはり、私どもはどうせ何十年も先にはわれわれ生きていないのですから、どうも古い世代大臣を初めとしてわれわれも、次の人たちに、国語研究というのは何も学術研究のためじゃないのですから、行政官庁としては国民のために働くのでありますから、一つその十年から十三年たっても依然として遅々たる研究で、私ども研究所という名前はあってもよその機関に委託すべきものであって、もっと政治をやってもらいたい。すなわち言語政策を立ててもらいたい。そこで同音異義語はお集めになれば二年かかるというなら、それを今の学者に託して、あるいは学識経験者及び新聞雑誌その他の人たち、生きた言葉と死んだ言葉、死んでいきつつある言葉と分けて、なるべく次の世代から言語の負担を取って、そうして必要にして欠くべからざる言葉へ持っていく。同じ言葉幾つも漢語でいったり古語でいったりいろいろな同音異義語を残さない。音だけ同じで意味の違う言葉を整理していくという義務が私はあると思う。すなわち家の中でも古く役に立たないあき箱や何か片づけるのが家庭科学の常識であります。それをどこまでもついていくというところに前時代的なものを私ども調査局仕事に感ずるわけであります。そうして結論としては、いかがでしょうか、初等中等教育局の方でもほかの方でもけっこうですが、表音化の方に進めるために、今はローマ字を四年生に課しておるのでありますが、今度は教科書を使わないというのでありますから、これを一年生に課していくということにどういう困難があるか。そうして先にいってからは略してもいいのです。一つその点お答え願いたい。
  30. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 義務教育段階におきまして現在ローマ字につきましては御承知の通り実験学校で任意に選択でやっておるわけでございます。現在ローマ字が相当普及しておりますので、私どもはかたかなと同じような位置で読み書きのできるように全部に教えさしていただきたい、こういうことでございます。そこで一年からというお尋ねでございますが、一年は学校に入学したばかりでございますので、ひらがなを中心に行なっております。若干の漢字を教えております。で、二年と三年の間にひらがなとかたかなを修得し、また相当数の漢字を覚えさせるわけであります。小学校では六年間に大体八百八十一字を目標にしておるわけであります。そこでようやく四年になって今度はローマ字を学習する、こういうことでございますので、一度に小学校に入つたときにひらがなもかたかなも、あるいは漢字も、さらにローマ字も、こういうことになりますと、かえって子供たち教育上混乱を起しはしないか。かような見地から四年ということにいたしておるのであります。
  31. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) この際分科担当委員外委員の発言を求められております。これを許します。安部キミ子君。
  32. 安部キミ子

    担当委員外委員安部キミ子君) この前一般質問のときに、科学技術振興に関連して大臣お尋ねしたかったのでありますが、時間がありませんので……。きょう主査の方から時間を与えて下さいまして、まことにありがとうございました。  きょうは、下関水産講習所を国立単科大学に移管する件についてお尋ねいたしたいと思います。  大臣は御承知でもありますように、下関の水産講習所というのは、かつては釜山の水産専門学校が今日こういう形になっておるのでありますが、東京水産大学は第一水産講習所、下関は第二水産講習所というのでありましたが、終戦直後は、そういう形で出発したのでありますが、途中で、東京の方が大学になって、文部省所管になつたのですね。下関の方がいまだに農林省の所管になっておりますが、実情から見まして、設備も大かた整ってきた、そして大学に入学する学生たちも同じく高等学校卒業で、そしてその講習所に入っておる。実質的には、東京の水産大学と教科課程は違わない、実力もたんとある。そして社会では大きく活躍して、日本の国に貢献しているのでありますが、片一方は、四ヵ年の教科課程を受けて、水産大学と同じようにその実績を上げているにもかかわらず、水産講習所卒業ということでありまして、社会へ出ましても、就職の点で困っているし、それから、学生たちも勉強するということの意欲も、大学とは違って、入ってはみたけれども、卒業してはみたけれども、就職の点では非常に、何というか、ひけ目を感じる。使う方でも、片一方は大学卒業ということで、学士さんでありますのに、片一方は講習所というので、れっきとした資格がないわけです。そういうことで、今日の段階では、これはやはり科学技術振興を考えるならば、すっきりした形で大学に、しかも、それがかつて、山口大学の水産学部ということなら、文部省でも引き受けようという話もありましたし、私も、この問題については、二十八年ごろ、当時文教委員でございまして、しばしば前の文部大臣にもお話したこともありますが、水産庁の方では、いわゆる農林省の方では、同じ文部省移管になるなら、単科大学としたもので受け取ってもらいたい、そうするために、まあいわば娘を嫁にやるので仕着せが要るということで、予算もたっぷり、しかも、設備も十分してやる、こういう考え方で、自分たちも、そういう単科大学という資格で引き受けていただけるのなら、文部省へお願いしてもいいけれども、山口大学所管ということであれば、それは少々異議があるというふうなことでありまして、まあむしろ文部省よりか農林省の方が将来のことを考え、将来日本が水産漁業でいかに発展していかなければならぬかという考え方に立てば、私が考えたところでは、農林大臣、そういう所管の方が積極的でありまして、文部省の方が冷淡だったと思うのです。しかし、今日の段階では、そういうふうな考え方ではいけなくて、御承知のように、ソ連との今日の漁業交渉にいたしましても、ソ連の方は魚族資源について十分な資料があるし、それに引きかえて、日本の方では、ソ連に対応するだけの用意ができていないということが実情だと思う。これは、昨日も農林省の方へお尋ねしましたら、まあそんなことはないとおっしゃいますけれども、事実は遺憾の意が私は表されていると思うのです。そういう意味で、この際、下関の水産講習所をれっきとした単科大学に昇格して移管して、そうして今まで四部の学科があるわけです。漁業学科、機関学科、製造学科、増殖学科、この四つの学科がありますが、さらに今日問題になっているところ、今日だけの問題ではありません。これは魚族の保護ということは永久的な問題でありますので、そういう学科を一学科設けて、この際、水産講習所を単科の国立大学に移管していただきたい。これは、地元の非常な熱望でもあります。今までずいぶん各界の人たちが後援をしてきました。今日ここまで発展してくるには、ずいぶんな犠牲を払って後援してきました。また、山口県の予算で、何千万円という金をつぎ込んでおります。地元の人たちも、いろいろ付設の設備がありますが、そういうところには莫大な土地を提供し、建物を提供し、協力しているわけなんですね。そういうことで、ぜひともこの際、もうその時期が来ている、こういうふうに考えますが、大臣はどういうふうに考えておられるか、大臣の決意をお尋ねしたいと思います。
  33. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 山口の水産講習所の具体的な問題についてお尋ねでございますが、結論といたしまして、仰せになりました単科大学として文部省に移管することはどうであるかというお話でございます。これは、御承知のように、いろいろな従来の経緯がございまして、現在、向うは農林省所管になっております。東京は、お話通り文部省所管といたしまして、水産大学となっております。文部省の従来の大学に対しまする方針といたしまして、一県一大学のもとにいろいろな教育施設を統一して参りました。そういう関係からもいたしまして、今もお話がございましたように、あるいは山口大学の一学部の問題が従来あったかもわかりませんけれども、単科大学としてのお話は、まだ正式に水産庁からも、あるいは講習所自身からも私ども聞いておりません。私ども国立大学の運営をいたします立場から申しまして、現在文部省所管として持っております大学内容の整備充実、これは非常に大事な問題でございまして、新たな学校機関をこれから引き受けてやるということにつきましては、よほど慎重にこれは考えなければいかぬのじゃないかと考えております。しかしながら、ただいまお話のように、内容的には非常に整備をしてきているようなお話でございますし、十分検討はいたしたいと存ずる次第でございます。まあ内容的にも、教育内容としましても、改善をされているというお話でございますけれども大学教育として持って参りますということになりますと、あるいは一般教育専門教育との関係もございましょうし、そういうような点は、十分一つ検討しなければならぬのじゃないかと考えております。
  34. 安部キミ子

    担当委員外委員安部キミ子君) 大臣の態度を……。
  35. 松永東

    国務大臣松永東君) この問題につきましては、つい四、五日前も相当議論をしまして、問題になったのであります。問題になりましたというのは、東京水産大学一つ文部省所管、同じやはり目的を持ち、同じ研究、学問をやりながら、ほかのはみな農林省所管、どういうわけであるかというので、もちろん農林省所管のゆえをもって、仕事に対する積極性は多分にあるかもしれません。しかし、学術研究ということになると、どうしても文部省が本家本元になるのじゃなかろうかというわけで、この間も相当議論をいたしました。しかし、単科大学にするということは、お説の通り、ほとんど学校における教科内容大学とちっとも違いありませんので、これは、ただもう形式上、名義上だけのもののような気がする。しかし、こうした設備を単科大学として文部省所管内に移すということは、相当農林省内にも反対があるというようなことを聞いております。従って、こういうようなことについて、これは一つ統一しなければならぬということで、つい四、五日前も、相当議論を戦わしたことがあるのであります。お説によりまして、これは一つ相当折衝、研究をいたしまして、何とか一つ、一本化していきたいというふうに考えております。
  36. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 簡単に……。
  37. 安部キミ子

    担当委員外委員安部キミ子君) 大臣の御答弁を聞きまして、だめだという御答弁じゃないと思いまして、私は大へん希望を持っております。単科大学にするために何が当面足りないかという点では、図書、それから実験室、漁具、それから運動場、この三つだけが残された問題なんでございます。それは、予算を見ましても、ほんのわずかとは申されませんでも、大したことはない。私も、東京大学も見てきておりまして、講習所には二度、三度行っておりますが、この学科目も、東京大学にはない科目があるわけですね。それから、俊鶻丸といえば、大へん皆様にもおなじみの深い船でありますが、これも今は、ここの講習所の所管になっていて、水産大学に貸しているわけですね。いろいろこう考えてきまして、南極探検の問題もありますが、私は、学問は、横と縦との連絡が十分でなければ、真の意味の科学技術の振興にはならないし、むだが多いと思うのです。農林省の方でも、今、局長さんは、農林省では反対の意向があるとおっしゃいましたが、私、この問題は、きょうこのごろ持ち出した問題ではなくて、この前の二十八年にも、水産庁長官もまあ大体あのときに賛成だったのです。農林省の方はむしろ積極的なんですよ。ところが、文部省の方が今度は、あの当時は大学をふやさないという建前でありましてね。それで、文部省の方が消極的で、少しも熱意がなかった。こういうふうに考える。それで、山口大学の一学部という考え方もあるにはありましたけれども、それでは農林省は反対だったのです、これははっきり。私が質問した速記録をごらんになりましても、あのときの水産庁長官の名前は忘れましたからあれですけれども、すでに課長級の方には、文部省との積極的な交渉もあったと私は記憶しております。そのような返事を私はしばしば聞いておるし、私も何回か文部省と農林省に行って、この問題の相談をしたことがあるわけです。で、山口県はもちろんですが、今まで、ここまで発展してくるためには、たとえば林兼とか、大日本水産とか、いろいろな財閥筋の援助も相当なものであります。ここにいろいろ資料がありますから、ここで読めばよろしいのですが、時間がありませんので省きますが、それから、小野臨港実験実習所、あるいは田名臨港実験実習所、あるいは学生の寄宿舎といったようなものも、地元がほとんど寄附しておるわけです。土地から建物から……。それを総計しますと、何億円という金が地元からもつぎ込まれているわけですね。そういうことを考えますと、私は、文部省もこの際将来を考えられて、いいかげんなことでなく、学問の大事な府であるこの講習所を農林省にまかしておくべきではないと思うのです。どこまでも学問の府として、筋の通った教育をしなくちゃならないと、こういうふうに考えます。先ほど申しましたように、大臣はだめだという考え方には立っておいでにならないと思いますし、そうして今後の日本の水産行政というものが非常に重大になってきたと思うのですよ。平承晩ラインは、あの通りに、われわれの目と鼻でじゃまをするし、あるいは北洋漁業、あるいは中近東の漁業、あるいはアジア近海の漁業につきましても、やはり科学的ということが根拠になって漁業が運営されなくちゃいけないと思うのです。そういう段階にきましたので、いいかげんなことでは教育にもならないし、また、漁業の発展にもじゃまになることでありますので、この際、わずかな予算でこれが単科大学として経営されるものなら、そういうことは目をつむって、大局から見れば、私は、むしろその方が大事じゃないかと、こういうふうに考えますので、今年度は、もうすでに予算が一億四千万円近く組まれておりまして、農林省所管になっておりますですが、来年のうちには何とか……。もうほとんど設備も今列挙しました程度のことでありまして、人後に落ちないりっぱな大学でありますので、また、地理的条件としても、大へんいいところでありますので、単科大学としてこれを育てて行くなら、福岡県あるいは広島県、島根県、鳥取県、それから長崎県と、九州の方の人たちに仕合せじゃないか。ことに下関は福岡県と接しておりますので、山口、福岡の人たちは非常に仕合せじゃないか、こういうふうに考えますので、これをただ、委員会の議題に上ったということだけでなくて、水産行政が世界の大きな問題として浮び上っている今日の情勢でもありますので、真剣に文部省でも考えていただきたいと、こういうふうにお願いしまして、最後に大臣、それから局長の決意のほどを聞かしていただきたいと思います。
  38. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 先ほど私、農林省の方からはまだ正式に話を聞いてないということを申し上げたわけでございますが、これはまあ、所管の違いがございますから、私も内容を十分存じておりません。  それからまた、従来文部省がとって参りました一県一大学ということ、これは、一つの原則としてとって参ったのでございまして、単科大学を作るよりも、総合大学として運営していく方が、教授陣容にも実質的に融通をはかって、内容を豊富にすることもできるんじゃないか、こういう観点もございますので、文部省の従来の方針からいいまして、単科大学にするということは、相当慎重に研究しなければならぬと思います。現在の段階では、私よく存じておりませんし、いろいろ整備されたというお話でございますけれども、ここですぐに私が、そういうふうにいたしますというお返事はできかねる次第でございますので、どうぞ…。
  39. 松永東

    国務大臣松永東君) 私が先ほど申し上げたうちにも、御了解を得たろうと思っているのですが、しかしこれは、お説の通り、水産界は今後飛躍的の躍進をせんければならぬのじゃないかと思います。しかも、その活動の場所が全世界にまたがっております。従って、これはやはり、こうした修練やこうした研究をなしとげるのには、やはり学術研究が重大な要素とならんけりゃならぬというふうに考えております。先ほど来申し上げた通り、この問題については、私どもこの間から研究を続けておるところですから、もう少し時日をおかし下されば、何とか決意したいと思います。
  40. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、三月十日に総括質問を行なった場合に、文部関係を若干伺ったわけでありますが、時間の関係上、掘り下げて伺っていませんので、これを中心に若干お伺いいたします。時間が切迫いたしておりますので、お答えは、簡にして要を尽していただきたいと思います。  まず、文部大臣の御答弁の中に、「高等学校、中学あたりに至るまで、その基礎学、あるいは理科とか、あるいは数学とか、そういう方面の基礎学の教養も増強するように努めて参るように予算も組んでおります。」と答弁してありますが、この一般会計予算の何ページのどれか、数字をもってお答え願います。
  41. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 三百三十八ページの教職員の研修等に必要な経費二千七百万計上しておりますが、そのうちに、理科教育が八百八十万円新たに計上しております。それからなお、三百四十二ページに、理科教育設備に必要な経費、これが四億四千七百万計上されております。それから、産業教育につきましては、三百四十三ページに七億計上してあります。
  42. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その程度のものをこういう表現をされるのはおかしいと思うのですね。この表現では、私も、この質問の経緯から見て、数学とか理科には飛躍的に予算措置がされて、日本の科学技術がこれで進展するのだというようなところにこの答弁が出ているので伺ったわけで、理科教職員の研修費が組まれておることは承知いたしております。それで、あなたの答弁の内容はわかりました。  それで伺いますが、小学校、中学校、高等学校の生徒の一年間一人当りの実験費は幾らになっていますか。
  43. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 今ちょっと資料がございませんから、すぐお届けいたします。
  44. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その間に調べて下さい。たしか小学校の生徒一人当りまんじゅう一つ分になっているわけです。それで、このたびの予算を見て、この金額から実験なんかできやしないですよ。五円か十円のまんじゅう一つですよ。大臣は、言葉だけはこういう大きなことを御答弁しておられるから、心外だから伺ったわけです。正確に一人当りの一年間の実験費をお教え願いたいと思います。  次に伺いますが、大臣の答弁の中にこういうことがございます。確かめますから……。大学院における博士課程の方でも、育英事業の一端として、五百人新たに増員して、一人当て月に一万円供与する、これは、予算概算要求段階文部省が省議で決定して、大蔵省に要求したことですが、この答弁から見ますと、新たに五百人大学院の博士課程の方がふえて、そうして一ヵ月一人当り一万円程度国からの供与、これが行われることになった、かように言っておるのですが、さようじゃありませんか。
  45. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) その通りでございます。
  46. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その一万円は、償還の義務はありませんね。
  47. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) その供与という表現でございますけれども、これは、貸し与えるわけでございまして、もちろん貸費でございます。貸与の点につきましては、従来と変りございません。ただ、大学院博士課程に対しまする一万円口のワクを五百名、これは、正確に申しますと、医学部を含めまして六百名でございますけれども、その一部は、学年進行による関係がありますので、正確には、五百人と申しているわけでございますけれども、それだけワクをふやしています。ただしそれは、貸与でございます。
  48. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣に伺いますが、進学保障制度というのができまして、高等学校から月に三千円くらい借りていく、そうして大学を出て博士課程五年間出るまで、しかも、博士課程で月に一万円ずつ借りるとすれば、私は計算してみたのですが、それは、四十になっても、とても奥さんを迎えることはできませんよ。若き科学者が冷遇されておつて工合が悪いということを先般質問して、あなたは、待遇改善努力すると言われたのですけれども、高等学校の三千円は、御承知のごとく、千円だけは返すが、二千円だけは返さなくていいように法律措置をやっておるのですが、大学院の制度は五年間、博士課程の三年、修士課程は二年でしょう。こういう人が月に一万円ずつ借りて、それを卒業して、サラリーが九千円から一万四、五千円でしょう。そのサラリーから五年間毎月一万円ずつ借りたら返せますか。そういうことでは、私は、次代の日本をしょって立つ科学者の養成政策としては不十分だと思うのです。それは与えるべきです。いかがですか。
  49. 松永東

    国務大臣松永東君) 今の御指摘になりました点は、法律上免除の規定があったと思います。なお詳細なことは、一つ緒方政府委員から御答弁させます。
  50. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 大臣が御答弁のように、大学院を出まして研究職につきました場合には、返還を免除する規定になっております。なお、その研究職につきまして、猶予期間を設けておりまして、その活用によって負担は相当軽減されて参ります。それからその返還は、これも御承知と思いますけれども、貸与期間が六ヵ月過ぎましてから、二十年以内に返せばいい、その間に返還計画を立てまして、あるいは年賦とか、半年賦とか、あるいは月賦とか、そういうふうな割賦の方法を自分できめまして、それによって返還することに相なるわけであります。そのときに、今申しましたように、猶予の規定もございますし、それから、特に研究職につきました場合には、これは免除するということとなっております。
  51. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 教育研究職というのは、私は具体的に伺いますが、たとえば東芝の研究所に入ったのは、これは免除されないでしょう。どうですか。
  52. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これは、研究所を指定することになっておりまして、東芝の研究所というのは、指定を受けていないと思います。
  53. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大学院まで行って、五ヵ年間の博士課程を終えて研究されている人は、それは民間であろうが公けの機関であろうが、そういう研究等に携わっている人は、私は免除すべきであると思うのです。それでなければ、日本の科学者は育たないと思う。英国を見なさい。最近徴兵さえ免除しているじゃないですか。徴兵さえ免除している。それだけの便宜を科学者に与えている。私は、民間研究機関として、東芝を一つあげたのですが、東芝すら指定されていない、こういうことですが、願わくばさらに検討されて、根本的には、原則的としては貸すのじゃなくて与える、与えるという方針で行くべきである。われれが全額与えることができなければ、高等学校の三千円に適用いたしましたように、一部償還を義務づけ、一部を免除するというような形態もあろうかと私は思います。いずれにいたしましても、高等学校では三千円、大学では月八千円、大学院になって一万円、そういう貸与されたものの大部分を償還するということは、これは私、不可能なことだと思いますので、十分検討をいただきたいと思います。大臣の答弁をいただきます。
  54. 松永東

    国務大臣松永東君) 御説の通りに、なかなか大学を出たから、すぐそうした借りた学資金を返すということは、至難なことだと思います。ですから、できる限り、卒業した後に折衝しまして、そうして細く長く返す、こういうふうな制度をとることになっております。そればかりでなく、指定せられた研究所において研究する、いわゆる学者として勉強する人に対しては、特段の扱いをするようにたしかなっていると思います。
  55. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点は要望いたしまして、次に伺います。  大臣の私の質疑に対する答弁を承わりますと、小学校十九人、中学校二十九人生徒児童を収容している単級学校ですね。要するに小規模の単級学校、そこで一人の先生は二科目、ちゃんと書いてある、二科目、多くて三科目持つ。従って小学校で十九人、あるいは中学校で二十九人の場合には、先生は幾ら少くても四人以上になるという計算ができる答弁をしておりますが、間違いありませんね。
  56. 松永東

    国務大臣松永東君) これは、この前のあなたの御質問のその十九人問題、これはまあ、十九人をどうして計算して、どうなることかと思って、私は実は迷ったのですけれども、大体こんなふうになるのじゃないかと思って答弁したのですが、なおその正確な答弁は、今ちょうどここに初中局長がおりますから、初中局長から御答弁させます。
  57. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは、大臣の答弁は、私は教課目もあげたのですが、たとえばここに十九人、中学校の生徒が一年生から三年生までがいる、必修科目、選択科目はかくかくある、それだけの教科があったならば、一応の教育をするのには、一人の教員が二科目か三科目持つとすれば、少くとも、常識的に考えて、四人程度の教師がいなければ教育ができない。これは、大臣、良識からの答弁だと思うのですが、そうですね。法律に基いたものでなくて、それはあなたの、今私が申し上げた良識からの御答弁だと、こういうふうに了承していいですね。
  58. 松永東

    国務大臣松永東君) 速記録を私はまだ見ておらぬものですから、どういうふうなことを答弁しておるかということはわからぬ。ですから、正確な答弁を私にお求めになるなら、その速記録を見て、私が研究する間、少し時間を与えてもらえれば、私もどういうことをしゃベったかなと思って、一つ思い起してみます。しかしながら、これは私の言ったことが間違っておるかどうかは、今ここにちゃんと当面の政府委員局長がおりますから、これからお答えすれば、正確にわかります。ただしかし、私は、この前のお尋ねのときには、良識とおっしゃれば、良識であるが、私の記憶は、そんなふうな記憶があるから、ですから、それを申し上げただけであって、正確なことは今局長から、政府委員から答弁した方が……。
  59. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回私は伺いますから、あなたの良識をもってお答え願いたい。ここに中学校の一年生から三年生まで子供が二十九人おる。単級です。教科は、中学校の子供は、必修が国語と社会、数学、理科、音楽、図工、保健体育、職業課程、選択が外国語と職業課程、これだけを義務教育で教えなければならない。一年生から三年生まで子供がここに二十九人おる。三十人に譲ってもいい。その子供に教育するには、先生が何人あれば教育できると思いますか。十人、二十人おればこれにこしたことはないでしょう。しかしとれは、国家財政その他の関係もあるが、要するに、一応の義務教育としてその教育を受ける彼らは権利がある。われわれは、与えなければならない義務がある。それをするのには、何人先生がおればできるとあなたは良識をもってお考えになりますか。
  60. 松永東

    国務大臣松永東君) 正確を求める御質問でございますけれども、こういうことは、良識をもってお答えするより、きっちりした、法律に基いて、そうしてこうやっていきますというお答えをした方がいいんじゃないかと思います。ちょうど政府委員がここにおるから、こまかなことは、政府委員の内藤局長からお聞きを願えれば、良識やなんかでなく、きっちりこう行くと、それのいいとか悪いとかの判断は別です。文部省の方針ではこう行きますということを申し上げられると思う。ですから、政府委員の方の答弁を……。
  61. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 現在単級学校で、教員配置の状況を見て参りますと、三人配置をしているところが全国で一県、二人配置が三十五県、それから、一人配置をしておるところが八県あります。そこで私どもは、現状は大体二人程度と見ておるのでありまして、先般当参議院の方にも予備審査を付託されておる、学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案においては、二人を原則にいたして、さらに政令で定める数を加えるごとになっておりますので、最低二人、最高三人ということを予想しておるのであります。今お尋ねのように、免許科目の面から申し上げますと、二科目ではとても足らないと思います。そこで三科目、必要がある場合には四科目、あるいは五科目程度は教えていただかなければならないと思いますが、もちろん一科目なり二科目程度で済ますことが教育上は望ましいことではありますけれども、また一面、財政上の観点からも考慮しなければならないという事情もありまして、教員の勤務時間が一週間四十四時間を建前としておりますので、勤務時間等の考慮も加えて、無理のないように、しかし、どうしても単級学校等に関するある程度の無理はやむを得ないのじゃないか、かように考えております。
  62. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 局長の答弁は下回ったので、私は非常にさびしかったのですが、私は、なぜ大臣にしつこくお伺いをするかというと、今局長は答弁されたように、一年から三年までを一人で先生が受け持っておる、持たしておる県が八県もある、全国で。これだけの教科を一人の先生が持っておる。それが今の実情です。それをあなたは知っているか、知っていないか、その点をためそうと思って、失礼ながら伺ったのですが、ところが、この前のあなたの答弁から、私は、文科系統、それから理科系統、それから保健体育、芸能系統、これを受け持つ先生三人、それに主事を入れれば四人、これだけあればまあ教育できるなと、あなたの答弁で安心しておったところ、今、内藤局長は、二人ないし三人というのですがね。これは、政令のきめ方によって、かなりすし詰め解消法案は動くわけですが、私は、文科系統、理科系統、芸能系統と最小限、分校だったら主事を譲つても、最小限教科の担当は三人を置くようにすべきだと思うのですが、大臣の御見解いかがでしょうか。
  63. 松永東

    国務大臣松永東君) 私もそれくらいは、どうしても三人くらい置かんければいかぬのじゃないかと考えちゃおるのです。これは、私も小供の時分は、そうした教育を受けてきたのです、山の中でございますから。私は、一人で四年受け持って教えてもらつたこともあるけれども、もうそれは、五十年も前の話ですから、今日では、仰せの通り、何としてもいかぬ、三人くらいは最小限度、学科も非常に進んできておりますから、必要じゃないか、なるほどそういう点もありますので、これから実施に当つては、一つ研究していきたいと思っております。
  64. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それと同じ問題ですが、小学校の問題ですね。この出されましたすし詰め学級解消——いわゆるすし詰め学級解消法案によりますと、第七条の第三項、「五学級以下の学校の総数に政令で定める数を乗じて得た数」、これが非常に問題の一項だと思うのですね。小学校の生徒は、一年から六年まであるわけなんですが、これを一学級に編成した場合に、これもまた、教科を扱う場合、最小限三人は私は要ると思うのです。一年から六年までですから、教科はあるわけですからね。それが配当できるかどうかということは、この「五学級以下の学校の総数に政令で定める数を乗じて得た数」、これは、自治庁と大蔵当局と協議の上きめられるのでしょうが、この数は、どういうことを政令できめようと考えておりますか、伺いたいと思います。
  65. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) その前提で、小学校の場合には、大体、御承知の通り、学級担任……、その学級が幾つか重なっておる、中学校の方は学科担任でございます。建前が違っておることは、御承知の通りであります。ただ、私どもは、両方の場合に、教師の負担能力というものは、生徒数が一つの要素であり、一つは勤務時間であると思うのであります。ですから、勤務時間をどの程度にするか、それから、生徒の数をどの程度にするか、この二つの要素を検討しなければならぬかと思うのであります。こういう点で、私どもは、今御指摘になりました中学校の場合、あるいは小学校の場合で、小学校の場合には、数が単級で六年まで持っておる場合は二十人で押えておりますので、二十人なら、個別指導も私はできると思う。ですから、この場合は一人で、原則として一人でまかなえる。それから、多学年で編成している場合には三十五人、あるいは二十人の場合でございますが、人数の制限をいたしておりますので、その点で緩和できるというふうに解釈をいたしておるわけであります。  最後にお尋ねの政令の問題ですけれども、政令につきましては、ただいま自治庁、大蔵省と折衝中でございますが、その点は、全部の学校に置くというわけにも参らぬかと思いますが、たとえば三校に一人とか、あるいは二校に一人とか、そういうようなことになろうかと考えております。
  66. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 僻地は、ずいぶんといろいろな事情がありますのでね。お医者さんみたいなことも先生がやっているわけなんですね。養護婦あたりも、僻地の学校に配置することにこしたことはないのですが、これもやるべきだと思うのですが、やっていない。あらゆる仕事をやっておるわけです。たとえば、あなたの今度出した法律では、単級は二十人までなっておるのですが、一年生は、おしっこだってするのですがね。一年から六年まであって、あらゆる教科を一人でやれというのは、内藤さん残酷でしょう。少くとも最小限三人程度の先生を配当できるように、大蔵、自治当局と交渉されて、第七条三項の数をきめなければ、教育の機会均等という立場から考えても不十分だと思うのですが、文部大臣の御所見いかがですか。
  67. 松永東

    国務大臣松永東君) 先ほど申し上げました通り、私は、どうしても三人ぐらい必要だと思って、そういう政令を何とかしてこしらえたいと思っているのですが、それは、大蔵当局、自治庁あたりと折衝をこれから重ねていかなければなりませんが、私のやはり子供のときからの体験から、教育も、しかも今日また学科も相当ふえてきた、さらにいろいろな実情から、今の僻地教育というものについては、そのくらいの力を入れるのが当然だ、こういうふうに考えております。しかしこれは、こっちだけでやれることじゃありませんから、いまの政令その他、これから折衝を重ねていきたいというふうに考えております。    〔主査退席、副主査着席〕
  68. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大蔵主計官の方お見えになっていると思うのですが、いかがでしょう、御見解は。事務当局としての御見解を承わりたいと思います。
  69. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 義務教育の今度の定数基準の法律を提出します際に、一応政令で、今お話があったような問題につきまして、大体どの程度の数を予定するかということも考えてはおりましたが、まだ最終的に文部省、大蔵省と折衝を終っておりません。ただ、現在の基準で申しましても、相当現員数を上回るという見込みもございますので、この点は、国のみならず、地方の財政状況も考えねばなりませんので、そういった点も考慮いたしまして、十分折衝したいというふうに考えております。
  70. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この点は、一つ文部大臣の政治力に期待いたします。  次に、これと関連しまして、公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案、いわゆるすし詰め学級解消法案が出たのですが、今の公立高等学校は、入学試験の際に、一クラス平均五十五人程度、しかも高等学校の生徒ですから、からだが大きくて、机間巡視などできないほどすし詰めになっている、それから、教員の配置基準につきましても、御承知のごとく、高等学校が発足した場合には、甲号基準でやるという約束であったわけですけれども、いまだに乙号基準で、全日制で九二%しか行われない、定時制の分校のごときは、教員配置基準は、乙号基準の五五%しか与えられていない。ここに高等学校教育の振わない大きな原因、隘路があると思うのです。公立高等学校の学級編制及び教職員定数の標準をきめるような法律を私は考慮すべきじゃないかと思うのですが、大臣いかがでございますか。
  71. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは、学校教育法で、すでに文部大臣の権限にまかされている事柄でございまて、これが今お話の甲号基準、乙号基準の問題でございます。私どもは、将来日本の財政が回復し、非常によくなった場合には、甲号基準をとりたいと考えておりますが、現在の段階では、乙号基準を目標に、努力いたしておるわけでございます。そこで、昨年以来高等学校の単位費用の増額に努力いたしまして、昨年度は、地方交付税の単位費用を三割引き上げたのでございます。金額にして七、八十億の増額をしたわけでございます。本年もさらに、前年に引き続きまして、高等学校につきましては、一人の定員の増加をいたしまして、乙号基準にできるだけ近づけて参つたわけでございまして、この旨は、すでに都道府県の教育委員会にも通達をしております。乙号基準の完全実施できるような態勢に持っていきたい。その上で甲号基準の問題はあらためて検討したい、こう考えておるわけでございます。それから、立法化の問題につきましては、今申しましたように、省令の段階で十分な措置が私どもはできると、今のところ考えておりますので、さらに立法化するかどうかについては、検討をいたしたいと考えております。
  72. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、長い間これを見守って参りまして、地方財政の苦しさというものは教育にしわ寄せされてくる。そして問題解決ができないから、やはり日本の高等学校教育進展のためには、法である程度規制しなければ、問題は解決できない、こういう私は結論を持ちましたので、あえてお伺いいたしておるわけです。それは、あなた今そう言われる。確かに単位費用を去年努力されて上げられました。けれども、それでは高等学校の配置をどうなさったかというと、解決していない。乙号基準に到達する状況ではないのです。だから、大学からいろいろ苦情が出てくるわけです、高等学校教育に対して。従って私は、この陥沒しておる高等学校教育の進展のために十年間努力してできなかったのだから、ここで何らかの法規制をしてその進展をはかるべきだ、かような立場から伺っておるのです。文部大臣いかがですか。
  73. 松永東

    国務大臣松永東君) 御承知の通り、これはもう、高等学校の今のすし詰め教室の是正も何も、解決すべきものが山積しております。しかしこれは、なかなか一朝一夕には方法がありません。しかし、特に私は今考えさせられていることは、ちょうどこのごろ、御承知のような入学シーズン、入学シーズンに、一体このままで——もうすでに高等学校から浪人者を出さなければならぬというふうで、一体どうなるかと思いまして、この入学試験制度をどうすればよかろうか、さらに、入学させた後の教育をどういうふうにすればいいか、今あなたの御説明になった通り、完全な教育ができぬから、やはり大学に行って頭が伸びていかぬということも、御指摘の通りです。これも、何とかしなければならぬと思って、今研究をいたしております。私は、お説のように、近々これは何か案をこさえて、そして適当な処置をとらなければならぬというふうに考えております。
  74. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この解決策は、あまりむずかしくないのです。私は、一つ案を申し上げますならば、定時制の高等学校、それから通信教育、これの充実、それから、高等学校学校差をなくすること、これだけやっただけで、高等学校の問題はずいぶん解決して参ります。そこで、私はその点から伺いますが、最近当院の文教委員会で取り上げているのですが、小、中学校学校区域外のもぐり入学、それから、高等学校の学区制を無視してのもぐり入学、これはゆゆしき問題だと思う。かつて私は、参議院の文教委員会で、内藤さんにお伺いした場合、内藤さんは、親としては子供をいい学校にやりたいから、それはなかなか簡単にいかぬというような、人情論で答弁されました。こういう行政に臨む態度というものが、今日のこの救うべからざる状態を招来してきたと思う。従って私は大臣に、明確なあなたの方針を伺います。このことについては、かなり抵抗があるようで、君らこんなことをあまりやったら、選挙のとき票が減るぞというようなおどかしの文書までもらっております。しかし私は、日本教育にとってはきわめて重要なことだと思う。それで、若干数字をもってあなたに実情説明して、答弁を求めるのです。たとえば、芦屋市では、校区外の子供が越境入学するには、小学校の児童の場合、六万円取るそうです。それから、中学校の場合は四万五千円。それから千代田区では、中学生は一万円、小学生からは二万円納入させて入学させる。そうして当参議院の文教委員会調査では、番町小学校児童の三二%が越境入学です。それから、そこの麹町中学校は、驚くなかれ四一%が越境入学で、他県から汽車で通っている。埼玉県から、あるいは千葉県から、汽車で通っている生徒もあるとのことです。そこで最近は、福岡市の教育委員会がきわめて強い方針を打ち出しました。越境入学生は、校区の学校へ復帰させる。京都市も打ち出しました。また、千葉市も打ち出しまして、当局はかなり抵抗を受けているようです。そこで私は、文部大臣に伺いたい点は、これは放置できない問題だと思うのです。従ってこれは、文部大臣としては、はっきり福岡市の教育委員会あるいは京都市の教育委員会措置を支持する、それがよろしという明快なる態度を私は表明すべきだと思うのですね。そしてどうしても是正されない場合は、相当の法規制をしても、法によっての規制をしても、この義務教育、小学校における越境入学というものは、断じてやめさせるべきだ。そうして学校差をなくするようにすべきだ。それは、学校はそれぞれ施設、設備の差異はありますけれども、私は、小学校と中学校学校差をなくすることは、これは簡単なことだと思うのです。これは、一つの方法として、先生の配置を適当に考慮するというだけでも、学校差というものは相当短期間に是正されますよ。その教育者並びに行政官にやる考えがあるかないかということ、それだけだと思うのです。これは、このままでは放置されないと思いますので、大臣のはっきりした考え方と、今後いかに対処するかということを一つ明確にお答え願いたい。
  75. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘の越境入学の問題につきましては、当院の文教委員会で問題になりました。実はうかつな話ですけれども、そこまでたくさんの越境入学があろうとは、私は承知いたしていなかった。文教委員会で問題になりまして、そして同僚の秋山委員からその問題が出まして、そうしてそれでは、そこまでたくさん越境入学があるとすれば、何とか一つ方法をとらなければならぬというので、文部省といたしましては、これに対して峻厳な通達をいたしました。そうしてさらに、あれだけの通達をいたしましたから、多少反響はあると思いますが、しかし、その後のことについて、どうやればいいかということを今研究を重ねております。しかし、お説のごとく、こうした問題については、何か法制化でもやって、そうして父兄を取り締るとか何とかいうような特段なことをやらなければ、どうもその学校差を今急になくすると言ってみましても、学校の評判がいいのは、また入学率も相当いいようです。だから、そういうのが自然やはり評判になりまして、そうして親や父兄や保護者あたりがそういう方面に入学させようと努力するのが人情だと思うのですけれども、しかし、お説の通り、その学校差を何とかなくするように努力するということが一つ。さらに、これはまあいろいろ研究をまだしてみなければなりませんけれども、こうした問題を根絶するには、やはりこれを法制化しなければいかぬのじゃないかというようにも考えております。その点は、今研究中であります。けれども、何とか一つ方法をとらなければならぬというふうに考えて、今研究を進めております。
  76. 高良とみ

    高良とみ君 関連。この学校差をなくするのに、今、矢嶋委員から、特定な教員の配置がえのお話があったのでありますが、それは、ずいぶん抵抗があったにもかかわらず、教育委員会法をああやってお通しになったのでありますから、文部行政の末端としての教育委員会ともっと強力に御協調願いまして、そうしてそれこそ越境学校などを、あるいは特定な、ことに金銭の授受等をもって越境入学させているような学校に対しては、厳重な警告を発するとともに、職員の転学、転校を御配置になりまして、そしてなるべくレベルするように御努力になることは易々たるものだと思うのです。法律をもって父兄を罰するとか、処置するとかというようなことよりも先に、もちろん行政の面においてなさるべきことがたくさんあると思う。いかに修身教育を推し進めになっても、学校に入るのに巨万の富を積んで、わいろをやって、学校の先生がこれを取り、それで学校の設備をするというようなことは、これは公務員になっても、銀行、会社員になっても、わいろはつうつうになることを、小学校、中学校の生徒に教えているものだと思う。いかに観念的な修身教育をなさっても、みずからこれを落しておられるのだということを考えまして、私は近来文部委員をしばらく離れておりましたが、ほとんど目にあまるものがありますから、大臣の御決意のごとく、学校差をなくし、入学試験の偏差、また児童の片一方に片寄っていくことを、——私はこれは船のバランスがこわれているのと同じことでありまして、難破状態でありまして、結果として自殺がふえる、あるいは愚連隊のような堕落がふえる。これについて、大臣の御決意をもって御在任中に一つ御処置になるように一つ希望したいと思うのです。これは法が悪いのではなくて、行政指導が悪いのだと思うのです。いかがでございますか。私、お伺いしたい。
  77. 松永東

    国務大臣松永東君) 今御指摘のことは、実に驚いた。それは、中学校時分、小学校時分から、入学するのに金が——それがわいろになるかならぬかわかりませんが、金銭が動くというようなことは、私は初めて聞いて、実は驚いた。ですから一つ何らか断固たる決意をもって善処したいと思う。
  78. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 この芦屋市の六万円とか、千代田区の二万円なんかというのは、これはちゃんと区の条例か何かこしらえて取っているのですね。だから父兄も天下ごめんですよ。こういう事態になっているのですからね。(「文部大臣知らないことはないでしょう」と呼ぶ者あり)それから教職員の配置転換ということは言いましたが、これは、本人の意向も問わずに、新しい教育委員会で、御夫婦が別居せにゃならぬとか、あるいは自宅から通勤ができぬような所に、駒を動かすように動かせということを言っておるのじゃないのですから、そういう点は誤解しないようにしていただきたい。大臣、明確に答えていただきたい。福岡市教育委員会のとった態度を、大臣としては支持しますね。まだ知らぬのですか。([大臣、遠慮なく発言しなさいよ」「気がねない大臣の意見そのものをずばり聞かして下さい」と呼ぶ者あり)
  79. 松永東

    国務大臣松永東君) 私は、今の福岡県の問題ね、新聞で見ましたが、ああ、こうやって苦心してくれているのかなと思って新聞を読んだ。しかし、実際詳細な実情は、今、内藤局長のところへでもきておらぬかといって聞いたのだけれども、きておらぬ。しかし、多分日ならずくるらしいです。その通知がですね。それに基いて、一つこれはもう何とかせんけりゃならぬということは、私どもは覚悟しているのですから……。一つ善処してみたいと思う。
  80. 藤原道子

    ○藤原道子君 どうも先ほどから伺っておりますと、何とかしなきゃならぬとか考慮しているとかというお言葉ばかり聞いているのです。私非常に残念なのです。教育というものは、とにかくその子はどんどん社会へ巣立ってしまうのです。考慮しているうちに、それはもう過ぎてしまう。私は、何やらどうも文部省に一貫した基本線というものが欠けているように思われてならないのです。第一、芦屋の今のお話を聞きまして、条例できめて入学に金を取るようなことがなされていていいとお考えになりますか、どうなんですか。それをちょっとお聞きしたい。
  81. 松永東

    国務大臣松永東君) 何とかせんけりゃならぬことばかり多いのですよ。ですから何とかせんけりゃならぬと言うので、実際。いいかげんにごちゃまかしておるのじゃありませんよ。何とかせんけりゃならぬことばかりがあまりにも多過ぎる。(「そうだ、そうだ」と呼ぶ者あり)ですから、その実情調査した上でやろう。先ほど来矢嶋さんのお話の芦屋の問題、これは私は初耳です。五万とか六万とかいう金を入学に動かされて、しかもそれも公然と条例とか何とかで取っているに至っては、これはさたの限りです。ですから、こういうのは実情調査して、これはもう決然たる態度をもって臨むということを申し上げたい。(「内藤さんの意見を聞かして下さい」「大臣が知らなくても、内藤さんが知らないことはないでしょう。怠慢です」と呼ぶ者あり)
  82. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 芦屋の件につきましては、私は存じておりません。おそらく芦屋も学区外入学を拒否するという意味で制限を設けたつもりなんでしょうと思うのですが、この件につきましては、私ども事情をよくつまびらかにしておりませんので、どういう条例になっておるのか、一ぺん検討したいと存じております。
  83. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 十分検討されて、早急にこういう金を取って学区外からの入学を許すようなことをやめていただく。そういうことこそ文部省が助言と指導を与えることなんです。(「その通り」と呼ぶ者あり)さらに場合によったら措置要求を求めてもいい、こういうことは。義務教育なんですから。で、そういう対策を講ずることと、それから今入っている子供をどう扱うかということは、非常に具体的になりますので、この委員会で論ずべきことでありませんが、そういう大きい筋から早急にこの対策を講じてもらいたい。  なお私は、主査の方には本分科会の最終段階に、でき得べくんば本分科会の総意として、こういう点、何かまとめるよう努力していただきたいことを要望しておきます。  さらに伺いますが、国立大学の付属中学校、高等学校ですね、これはことに教員養成を目的としている大学に付属している中学校、こういう子供の募集は、これは私は抽せんか何かでやったらいいと思うのだね。特別優秀な子供だけとかお金持の子供だけを付属中学校に集めて、何でこれが研究校になりますか。しかも、私は大学名前を言ってもいいのですが、ある国立大学の付属中学校は、今年一年に入るのに、父兄から生徒一人当り負担金を八千円取っておる。そんなことで大臣いいんでしょうか。私は場合によっては大学名前を言います。調べているのですから。で、国立大学の教員養成を目的とする付属の中学校で、そこの中学校に今度生徒が入学するのに負担金が八千円、一人当り。一体、付属中学校とか付属高等学校というものをそういう立場に置く。そういうような運営をしてよろしいでしょうか。
  84. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 付属小・中学校の生徒の入学につきましては、これは大学によりましていろいろな方法があるように思います。成績のテストをする。入学試験を課す。あるいはその上に抽せんの方法をとるとかというようなことが行われておるように思います。これはまあ一律じゃございませんで、区々な方法があるように思います。御指摘のような、今の金銭の負担の問題は、私は存じません。そういう事実は、子の負担をしなければ入学を許さないというようなことは、あり得ないと思います。
  85. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 あったらどうしますか。
  86. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) あっちゃいけないことと思います。それから、これは一つ教育の施設でありますと同時に、教育の実習の場でございますから、その目的に沿うような配慮をすることは、生徒を選ぶ場合に必要だと存じます。そういうような配慮から、今申しましたように、あるいは試験をし、あるいは抽せんというような方法は、とってもいいと存じます。
  87. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 二学級あれば、一学級は試験でとり、一学級は抽せんでとる。学芸大学はそうやっていると思うのですが、こういう方法は、私はいいと思うのですね。ところが、むしろ地方の大学では、全く特権学校みたいになっているのですよ。しかも文部省予算が少いからというので、学校の維持管理費を全部父兄に持たせる。だから膨大な金を出している。だから、特殊な階級の父兄の子供しか行けないわけです。そういう付属中学校、高等学校のあり方というのは、私はないと思う。もし今度の一年に入学するのに、負担金八千円取っている付属中学校があったら、是正させますか。文部大臣御答弁下さい。
  88. 松永東

    国務大臣松永東君) いずれもきょう矢嶋委員から新しい初耳のことばかりで、今の八千円取ったなんというのも初耳です。そんなことがあろうはずはないと思います。さらに、事実そういうのがあったとすれば、これは大いに研究しなければならぬ、私が研究と言えば、また研究かといってしかられるかもしらぬけれども、実際はそういう事実があったとすれば、容易ならぬことです。(「やめさせますか」と呼ぶ者あり)それは一つ研究して善処します。
  89. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大学学術局長に要望いたします。近日中に各国立大学に通達を出して、そして中学校一年生入学に際して、どの金額でどの程度大学に納入したか、その報告を求めて、そのまとまったものを、本予算委員会の終了するころまでに、あるいはこの国会終了前に、委員会に、委員長を通じて提出されるよう要請をいたします。で、かような状況である一面、家庭が貧困なるがゆえに、昼間の中学校に行けない。今の法律で認められない夜間中学、中学二部と近ごろ言っているようですが、そういうのは全国にあります。一体、文部省学校教育法で認められていない夜間中学校、これを別名中学二部と称しているようですが、そういう学校幾つあり、そこに学んでいる子供は何人で、さらにそれ以外不就学児童が何人あると数字をつかんでおられますか。お答え願います。
  90. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 夜間に中学校を行うことは、御指摘の通り法の趣旨ではございません。私どもは、できるだけそういう中学校を解消するように努力をして参っているわけでございますが、現在だいぶ減りましたが、昭和三十二年の調査によりますると、五十九校ございます。七十三校あったのですが、五十九校に減りました。生徒数は約三千人でございます。
  91. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 不就学児童は。
  92. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 不就学児童とおっしゃるのは長期欠席者だと存じますが、小学校で大体十一万、中学校で約十三万でございます。
  93. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣ただいまの数字をお聞きになったと思いますが、法で認められてない夜間中学校は全国で五十九校、それに学んでいる生徒は三千人、さらに家庭の貧困、あるいは父兄の無理解のために、大部分は貧困が理由ですが、義務教育、小学校に学ぶべき生徒、児童でありながら、学校に通つてない者が小学校で十一万、中学校で十三万人なおかつあるという報告ですが、これはいかに対処されますか、お考えを承わりたいと思います。
  94. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私どもは、これは単に教育だけの問題でもございませんので、特に貧困家庭がやはり相当多うございますので、厚生省の生活保護関係、あるいは労働省の労働基準法等の関係もございますので、関係各省とも協議いたしまして、こういう事態のないように、努力しているわけでございます。なお、文部省自体といたしましては、貧困家庭につきましては、特に教料書及び給食につきまして、準保護児童に対しまして、無償で給与をいたしております。こういうような点を推し進め、さらに家庭の御協力を得まして、できるだけ一日も早くこういう事態のないように努力していきたいと考えております。
  95. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 私は、あえて文部大臣にお伺いするのは、岸さんが義務教育国家保障制度というのをうたわれたわけです。そうしてこの前総括質問で伺った答弁によりますと、そのごく一部、例の高等学校の予約奨学生五千人だけを答弁されたわけなんですが、それよりなおこれは重大じゃないですか。夜間中学校五十九校、三千人、不就学、小学校で十一万、中学校で十三万あなた方の数字で。それに対するさっきの教科書とかあるいは給食——時間がないから申し上げませんが、生活保護による教育扶助の教科書の単価は何です。あんな単価で教科書は一体買えますか。足らぬ分は市町村が持っているのかもしれませんけれども、何らこれらを解決するというような数字として、予算案に表われていないじゃないですか。だから私は伺っているのです。このくらいのものを解決することは朝飯前ですよ、予算的には。父兄の無理解を解くことはなかなかむずかしい。そういう人は若干います。しかし、予算的にこの程度のものを解決するというのは、貧乏なりとはいえ、一兆三千億の予算を組むわが国ですから、できぬことはないですよ。大臣はどういうお考えを持っていらっしゃるのか。どれくらいなほんとうに腹を据えたお考えを持っていらっしゃるのか、私は疑わざるを得ない。あえて文部大臣としての松永さんのお答えをいただきます。
  96. 松永東

    国務大臣松永東君) 実は中学の生徒ですか、夜間学校ですね。夜間学校に三千人おるということも実は最近知ったのです。最近知ったというのは、どこかの、NHKでしたか何でしたかのテレビで、その先生がきて私と対談するということで、初めて私はそういう学校も、いわゆるもぐり学校ですね、もぐり学校があるんだなということがわかった。そうして実はその学校を参観しに行くという約束になっているのです。私は全くこれはうかつな話ですが、義務教育ですから、そうしたもぐり学校なんかがあろうということは思わなかったのですが、今御指摘のように、相当数の子供たちがもぐり学校に行っているということを聞いて、驚いて、これは一つ何とか善処せんければならぬと考えておるのであります。私はもぐり学校に行っている子供たちは、これは大体主として家庭が貧困であるために学校にやることができない。仕事をさせんければならぬために夜学校に行っているというような実情らしいのです。従って、これは文部省だけの仕事とするわけにはいきません。やっぱりこれは厚生省と打ち合せして、そうしてこうした家庭を、家庭から救っていくというふうな方法をとらなければならぬというふうに考えておるのであります。ことに先ほど御指摘になりました義務教育を受けない十一万の小学校の子供がおる。こうした者は、これは大部分は病気なんです、私の聞いているところでは。そうして病気であるとか、あるいはいずれにしろ要保護者が非常に多い。従って、そうした面はこれまた厚生省の方と打ち合せをして善処せんければならぬというふうに考えております。なるほど、こうしたどん底にもう落ち込んでいる家庭から、義務教育を受けている子供たちを何とかしなければならぬということは、大きな社会問題だというふうに考えております。従って、急遽これは一つ解決をしたいというふうに考えております。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 関連。今の長期欠席児童の問題なのですが、これは厚生省と連絡をして何とかしなければならないというお話なんですが、もちろんこれはその御答弁でいいと思うのです。けれども、実際問題としては文部省自体でも解決できる筋合いのものがあるはずなんです。たとえばこの要保護児童あるいは準要保護児童、これらの数は、現在文部省では、大体七十三万人を対象としていらっしゃるようですが、今度の三十三年度の予算では、その七十三万人の、教科書も買えないというような、こういうような子供たちに対して、わずか、一億九千万円の予算きり組んでいない。これだけの予算ですと、七十三万人の子供たちに対して、全部これを救い上げてやることはできないわけなんです。文部省お話だと、三十六万人を対象にしているのだということになって参りますと、あとの四十万の子供たちには、だれが一体教科書を与えてやるのか。なぜ文部省は三十三年度の予算を組むときに、厚生省と相談をする前に、せめて文部省所管内にある教科書を給与するという法律もあるわけなんですから、完全に七十三万人の要保護並びに準要保護児童に対しては、給与されるような予算措置をとるべきであったと思う。そういうことをやらないでもって、ここで矢嶋委員からの追及で、厚生省というふうにお逃げになるということは、私は文部省の自主性が失われているんじゃないかという、はなはだ遺憾な気がしてならない。並びに、またこの要保護及び準要保護児童に対しては、やはり学童給食の補助ができるわけなんです、ところが、やはり文部省の本年度の予算は、七十三万人の学童たちに対して、十分な予算が組まれておらない。結局、これは当該地方公共団体の負担になるか、あるいは当該地方公共団体の負担の負えないところは、これらがPTAの負担に肩がわりしているわけです。政府予算を組まないで、子供をほったらかしておいて、PTAにおんぶさしておいて、そうして厚生省と連絡をとるということは、私は筋としては受け取りがたい。なぜ、文部省自体が解決し得ることをまずもって解決しないのか、私は、この点について、ぜひ伺わしていただかなければならない。  第二の問題は、長期欠席児童の文部省発表は、大体二十四万と今お話しになりました。けれども、これは断続的な長期欠席というものが私は含まれておらないと見ている。つまり一定期間を長期休む者と、一ヵ月のうちに二日くらい出てきて、また一ヵ月のうちに二日か三日出てくるという、断続的な長期欠席児童もあるはずなんです。こういうものをまぜると、推定約七十万人をこえるのではないか、こういうような子供たちに対する対策はどうなのか。これは現在の青少年の不良化の問題と、それから教育水準の向上という問題の隠れた私は大事な盲点であるような気がしてならない。こういう本質的な問題と取り組むためには、どうしても文部省自体の積極的な施策というものが講ぜられなければ、厚生省に相談をしてみるとか、あるいはあっちの省と相談をしてみるとかというようなことでは、これは相済むまいと思う。なかんずく、この長期欠席児童の中には、共かせぎによる留学番、あるいは家庭の労働力にならなければならない青少年たちが多くいるという問題については、どうこの子供たちをしなければならないか、どうあらしめなければならないかというような、文部省自体の自主的な方策というものが立ってこそ、初めて労働基準法の問題もやはり大きく浮び上ってくるんではないか、厚生省の問題も浮び上ってくるんじゃないか、私は各省間のなわ張りの中にこういうような盲点が放置されて、最も弱い階層が救われないというこの現状に対して、まことにふんまんやるかたないものを覚えるんです。従って私は、この際、文部大臣の決断を促したい。特に文部省がこの問題に対して、やはり脚光を浴びせる役をしていただかなければならない。よその省と御相談になる前に、ぜひ自主的な積極性を打ち出していただきたい。意見を添えて、なぜ予算が本格的に組まれなかったか、そして残った四十万人の子供は一体どうするつもりなのか、この問題にしぼって質問したい。
  98. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 実は、もちろん御指摘のように、文部省みずから計画を立てなければならぬと思っております。で、この生活保護費の方は、これは厚生省に入っておりますので、厚生省の、生活保護法に基く教育扶助、これが約十五億ほど見込んでおります。この中には、対象人員として五十二万人見込んでおりますので、五十万程度のものは厚生省の方で教育扶助を出していただく。なお、生活保護には引っかからないけれども、それに準ずる程度のところのものを文部省関係で救っておるわけであります。これが教科書の約二億と、給食の一億五千万が入っておるわけでございまして、それによって大体私どもは、ほぼ先生の御指摘になりました七、八十万人のものは救えるということでございます。  それから、なお不就学の問題につきましては、先ほど大臣からもちょっとお答え申しましたように、小学校の場合は、ほとんどが病欠でございます。約七割が病欠でございますので、この場合には、私どもは当委員会にも御審議を願っております学校保健法の制定をいたしたい。で、学校保健法を実施いたしますれば、これによって身体検査を励行し、さらに治療をいたしまして、貧しい生活保護の者、あるいは準保護児童については、治療費も市町村で出し、さらに国が二分の一負担する、こういうふうにして、できるだけ長欠児童をなくしたいという積極的な体制をとっておるわけでございます。で、なお労働省、厚生省等の御関係につきましては、特に中学校段階に参りますと、これは教育扶助だけの問題でなくて、家庭そのものが貧困で食べていけないというような事情もございますので、生活保護の完全な適用と相待って、児童、生徒の就学をしていかなければならぬ。特に家庭の無理解あるいは本人の勉強ぎらい等もございますが、本人の勉強ぎらいについては、これは指導できますし、また、家庭の無理解につきましても、文部省が積極的に御指導しなければならぬと思っておりますが、なお生活の貧困等につきましては、厚生省あるいは労働省と十分打ち合せして、そうして長期欠席児童のなくなるように、私どもは最善の努力をいたしたいと考えております。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと念を押したい。ただいまの御答弁によりますと、もちろん生活保護法の中の教育扶助で救われる面があるでしょう。私はそれを信じたい。しかし、果して今度の文部省の組んだ予算、給食並びに教科書の予算、そうして生活保護法に該当する教育扶助で、これらの子供たちが全部救えるという確信を持っての予算なのですか。私は数字の上から見て、この予算でもって完璧であるとは、どうしても考えられない。今の御答弁だと、さながらそれで全部解消済みであるというような、はなはだしく私の考え方と違う印象を受ける。この点いかがですか。
  100. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私ども申し上げましたのは、生活保護法の五十万人程度を見ておりますし、また今回文部省予算措置で、準保護児童として約三十数万見込んでおりますので、まあ大体これでカバーできるんではなかろうかと思っております。
  101. 高田なほ子

    高田なほ子君 と思うだけ……。
  102. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 分科会担当外委員から発言を求められております。  これを許可します。坂本君。
  103. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 私は、明日実は結核問題について、厚生省の人にお尋ねする予定をしておったんですが、ところが、たまたま長期欠席の子供の例が出ましたので、今、文部大臣お話を伺いますというと、どうも統計的にだいぶ違っているような感じがするんです。で、これはきょう即答ができなければ、よく検討していただいて、明日の午後までに資料を作っていただきたい、正確な資料を。と申しますのは、今小学校の長欠十一万のうち、七割ですか、は結核性であるという局長説明がありましたが……。
  104. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 病欠です。
  105. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) 病欠ですか。
  106. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 病欠です。結核とは申しません。
  107. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) しかし、先ほど大臣は、大多数は結核であるというふうな御説明であるように聞いたのですが。
  108. 松永東

    国務大臣松永東君) 結核とは申しません。
  109. 坂本昭

    担当委員外委員(坂本昭君) それでは、私は改めて、その中で結核の児童——療育を要するところの結核児童が何万あるか、その数を正確にあしたの午後厚生省とのここで審議をやりますから、それまでに、正確な数を一つお出しいただきたい。  それと、そのことについてはすでに厚生省の母子衛生課の方で、療育児童の問題について、ことしは三千床、一億八千万程度予算を出しましたが、全部削られてしまったわけですね。そのことに関連して、文部省の対策を十分御検計の上、実はあした初等教育の担当局長さんに来ていただくようにも話がしてありますから、この際、よく検計をしておいて、明日正確な御返事をいただきたい。
  110. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 時間の関係で、ちょっと角度を変えて伺いますが、それは小学生の児童数がピークになる年、それから中学校の生徒数がピークになる年、それからさらに小・中学の生徒、児童合せてピークになる年、それから小・中学の生徒、児童合せてこのミニマム——最小になる年ですね、これはいつで、幾らと数字を踏んでいらっしゃるか。通告してあるはずですから、お答え願います。
  111. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私これは実はよくお聞きしておりませんが、今私の覚えている点だけ申し上げて、あとは後ほどお答えいたします。  小学校は三十三年がピークでございます。
  112. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 約幾ら……。
  113. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これはちょっと児童数は忘れましたから、あとでお知らせいたします。  それから中学校の方は、ことし減り、来年さらに減りまして、その後また上がるわけです。これは私の記憶では、三十五、六年だと思っておりますが、これも不正確でありますから、後ほど資料を差し上げます。  それから小・中合したものは、本年三十三年がピークのように考えております。で、この最低は今後ますます減るという段階でございますので、    〔副主査退席、主査着席〕 おそらく三十八年度以降はさらに減っていくであろう、こういうことでございます。
  114. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 管理局長お見えになっていると思いますから、一つかわっていただきたいと思います。  管理局長に伺いますが、今の初中局長の答弁を補足するとともに、将来平常化した場合に、小・中学校の生徒、児童数は幾らと予測されているのか。  それとあわせて、現在すし詰め学級はどのくらいあり、危険校舎はどのくらいあり、これからどれだけ建築すれば解決するのか。そういうこの計画をいかように一応目途として立てておられるか、要点をかいつまんでお答えいただきたい。
  115. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) ただいま初中局長の方からお答え申し上げましたが、小学校の児童数は三十三年度が最高でございまして、それからあとは急激に減少して参ります。大体三十四年度には十五万人程度——これはまあ推計でございますが、三十五年度にはそれからさらに八十万、三十六年度には約八十三万、三十七年度には下って八十万、こういった数が減って参ります。で、三十七年度になりますと、三十三年度に比べて約二百五十万近く減る、それから三十八年度以降も逐次減って参ります。ただ四十年度以降どうなるかということは、ちょっと現在のところ、まだ子供が生まれておりません関係から、はっきりお答えできません。(笑声)で、小学校の不正常授業の解消につきましては、現在の予算では、三十三年度の実態調査を基礎にいたしまして、その不足坪数を漸次解消するということでやって参ったわけでございます、これが大体本年度をもちまして、この当初の数字の八割が解消することになります。これから以降につきましては、小学校の児童の急激な、ただいま申しましたような現象がございますので、そういったこともかみ合せて、文部省としては新しい一つ計画を具体的に立てたい、こういうふうに考えております。  それから中学校の児童につきましては、これは本年度、来年度は減りますけれども、それから以降、また急激にふえて参ります。これは先ほどの小学校のあおりの関係でございます。で、現在の本年度の予算では、三十二年度の調査をもとにしまして、三十三年度初めの不足坪数を整備していくという計画でございますが、ただ、本年度は五十万程度の生徒数が減ります。その意味で、約一万学級の教室があくというような状況でございますので、本年度の予算そのものは、必ずしも十分でないかもしれませんけれども、生徒数の減少とかみ合せてみれば、これは十分本年度としては対処できる。この中学校の整備につきましては、三十五年度以降、急激にふえますので、そういったことも考えて、本年度並びに明年度でできるだけの準備をして参りたい、かように考えております。
  116. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 このことは教職員の定数並びにこの教育の施設とも関連があるわけですが、こういうときにこそ、私は文部大臣がすし詰め学級の解消と言うならば、建築費を確保して解決すべき絶好のチャンスであると思う。しかるに、本年度われわれに提示された予算を見ますと、昨年度より一億五百万円というような施設関係予算は減になっております。小中学校の整備にいたしましても、約二億三百万円、軒並みに減っている。中学校で四億八百万円、これはどういうことなんですか。岸さんを初め、全国を遊説して、すし詰め学級の解消と言って、父兄は非常に、解消してくれるものと喜んでおるときに、こういうような予算を減らすようなことで、解消ができるのですか。解消すべき絶好のチャンスではなかったのですか。どういうお考えでいらっしゃいますか、文部大臣
  117. 松永東

    政府委員松永東君) 数字のこまかなことは私にはわかりませんが……。
  118. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ええ。数字はいいですが……。
  119. 松永東

    国務大臣松永東君) しかし減にはなっておらぬはずですよ。
  120. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 なっておりますよ、ちゃんと。
  121. 松永東

    国務大臣松永東君) ちょっと、それは小林局長から答えさせますから……。
  122. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 一億五百万円……。
  123. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) この公立文教全体としては減っておりますけれども、これは災害関係でございまして、三十二年度の予算には災害関係の経費が一億八千二百万入っておりますが、三十三年度予算額として引き継ぎますものは、八千五百万で、その差額が九千六百万でございます。こういった災害関係を除きますと、わずかではございますが、明年度の予算としてはふえておるわけであります。
  124. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ、それならそういう説明でね。それはもう五十歩百歩のことですね。これだけのあなた——まあそんな議論をしていると時間がかかるから、私はしませんけれども、減っているのは確かに減っているのです。災害関係を云々すれば、少しはふえているけれども、もう単位はわずかなものです。これでは、すし詰め学級解消というのも、どうも話が合わぬと思うのですがね。大臣はどういう努力をされたのでございますか。
  125. 松永東

    国務大臣松永東君) これは明年度は御承知の通り中学の生徒が五十万から減ります。それとかみ合せて、すし詰め学級の解消ができる、こういう計算になります。けれども、それは予算をもう少し取ろうと思って努力したことはしたのですけれども、なかなかそううまくいかなかったのです。これはもう告白すればその通りなんです。努力したことはしたのです。
  126. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはやはり大臣の告白が正しいと思うのです。ただ、私はこの際伺っておきたいと思うのです。最近理科教育振興、これにだいぶ大わらわで、われわれもまたそれに賛意を表したいと思うのですが、実際問題としては小学校も中学校も非常に特別教室が足りないのですね。理科教室のあるような所はまあいろいろ資料もありますが、非常に少い。特別教室を非常に望んでおる。一万学級余るというようなさっきお話がありましたが、一体、この特別教室というものについて、文部当局はどういうような具体的な方法をとろうとするのか。これは東京都のある小学校一つの実話ですが、ある日、理科室の前でA先生が、きょうは、四年で社会科学習の映画をやりたいのですが、理科室を貸してくれませんかと、こう言った。B先生が、とんでもない、きょうは五年の理科の実験だよ。A先生は、でもフィルムはきょう返さなければならないのですよ。B先生は、弱つたなあ、じゃ講堂でやってくれよ。C先生は、だめだめ、講堂はマット体操で使うのだから。D先生は、実は私の方でも家庭科の割烹を予定していたのですが。B先生は、君たちそんなにがあがあ言ったって、これはもともと工作室なんだぜ。このように理科教室がなく、工作室でこのような争奪戦が演じられているのです。これを算数で現わすと、四、五、六年の理科の時間数が六十時間、四、五、六年の工作の時間が十五時間、五、六年の家庭科の時間が十八時間、それから幻灯を各学級一時間ずつ見せるとした時間数が二十九時間、これだけの時間数を総計しても、理科室をフルに使っても三十二時間きり使えないのに、今申し上げたような数字に対して、三十二時間のたった工作室一つきりない、これでは理科教育の振興などということは、から念仏で、実際問題として、これは東京の学校でこういう問題が起っている。そのほかたくさん例はあるのです。でありますから、特別教室、なかんずくこの理科教室あるいは工作室、こういったようなものをどういうふうにお考えになっているのか、余ったとか、余らないとかという問題じゃない、どういうふうにこれをやっていこうという計画を、この際聞かしていただきたい。
  127. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 学校の新築なり増改築をいたします場合に、御承知のように現在では一つのまあこれは補助金を交付する場合の基準がございます。この基準は、私ども俗に暫定的な最低基準と、こう言っておりますが、この現在の暫定最低基準で申しますと、児童一人当り〇・九坪、それから生徒一人当り一・〇八坪、こういうことで計算をいたしております。これでいきますと、大体標準規模の、たとえば三百人程度学校でありますと、一応小学校では一・五程度の特別教室ができる、それから中学校の場合において三・五程度の特別教室ができるという計算になっております。ただ、ただいまお話のございましたように、ことに中学校の場合、特別教科の授業をします場合に、特別教室が非常に重要であることは申すまでもないことでございます。これをまあ整備するためには、現在の基準では必ずしも十分でないと思っております。将来できる時期には、この暫定的な最低基準を引き上げたいと思っておりますが、ただ、御承知のように、正常授業の関係でも、まだこの暫定基準に達しない学校なり坪数が相当ございますので、現状では、これを今直ちに基準を引き上げるということはむずかしいと思っておりますが、できるだけ早い機会にこの基準を引き上げて、そういった特別教室の相当余裕を持って建築ができるように努力をいたしたいと考えております。
  128. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣に伺いますが、内閣の方から義務教育学校施設費国庫負担法案という法案が提出されております。老朽校舎並びに不正常授業解消のための臨時措置法を一本にまとめて、恒久法として出された点は、私も賛意を表します。しかし、当院といたしましては、前国会に補助率を二分の一に引き上げることと、それから今まで校地は補助の対象になっていないが、実情等検討して、校地をも補助の対象とすべきだということを満場一致で決議して、院の意思として行政府に伝えてあるはずです。しかるところ、この法案を見ますと、補助率は据え置きであり、校地に対する補助というものはうたわれておりません。どういうわけで院の意思を無視してこういう法案を作ったかということと、それからこの内容を見ると、公立高等学校の危険校舎については、臨時措置法として残されているようです。御承知のごとく、地方財政の窮迫下において、高等学校の危険校舎が非常に多いわけなんですが、これは依然として臨時措置法に高等学校の分はなっていますが、これは相当法が運用されるものと理解していいのか、それともこの活字の示す通りに、臨時として一、二年で打ち切りになるおそれがあるのか、それらの点は、閣議決定して出される場合に、どういう経過になっているのか、この二点を文部大臣から伺うとともに、そのあとで大蔵省の主計官からお答え願いたいと思うんです。この一本化並びに恒久化、それから補助率の引き上げ、土地を補助の対象にするとかいう点については、大蔵省が非常に難色を示されているやに承わるわけですが、どういう見地でその反対をされるのか、いずれ大蔵大臣に伺いたいと思いますが、事務当局としてどういう討議がなされたのか、事務当局としての見解を文部大臣の答弁のあとで承わっておきたいと思います。
  129. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 御指摘のございましたように、義務教育施設費の国庫負担法を御提案申し上げておりますが、御指摘のございました補助率の点でございます。危険校舎に対する国庫補助金、不正常授業解消に関する国庫補助金、これについては、ただいまもお話がございましたように、当院で御決議もございまして、文部省としてもできるだけその線に沿い、また義務教育の施設でございますので、国の責任体制を明らかにするために、できるだけその御趣旨の線に沿って財政当局と折衝いたしましたが、本年度は従来通りの補助率しか認められませんでしたので、やむを得ず、とにかく本年度の予算の積算の基礎に従って御提案を申し上げているわけでございます。校地につきましては、これもその決議の中で御指摘になっておられますが、一応文部省としては、財政当局との話し合いもいたしましたが、これも財政のワクの関係から認められませんでした。文部省としては、しかし校地については特に起債を認めてもらいたいということで、自治庁と話し合いいたしまして、金額の点はまだ固まっておりませんが、一部について起債を認めてくれるという話し合いになっております。大体学校の校地につきましては、これは必ずしも全国的なことでございません。校舎等は多少違って、局地的な面もございますので、起債でいったらどうかというふうに現在のところ考えております。なお、高等学校の危険校舎解消に関する法律が今度義務制を離れまして、公立高等学校危険建物の改築に関する臨時措置法になりますが、私どもといたしましては、まだ相当程度高等学校の危険校舎も残つておりますので、そういったものが解消されるまでは、今直ちに、ここ二、三年の間に、現在の財政援助制度がなくなるものとは考えておりません。
  130. 松永東

    国務大臣松永東君) 私は、初めからこれはもう一本化しなければいかぬ、そうしてしかも恒久性を持たせなければいかぬというので、強く主張しておったのです。そうして全部二分の一というようにやってもらいたいというので、相当これは何にもならぬことじゃないかとおしかりがあるかもしれませんが、努力した。ところが、今、小林局長から御説明申し上げた通り、二分の一、恒久性もありますが、しかし三分の一というのもあります。しかし、まあとにかくいずれにいたしましても、国が義務教育であるから当然義務として負担するということにした方が、一歩やはり前進する道だと、補助金という制度じゃなくて、やはり負担金、当然の義務として負担するということに法律をした方がよろしいし、しこうして恒久性にした方がよろしいという建前から、こういうことになったわけであります。しかし、私どもとしては、何とかして二分の一に全部やってもらいたいと思ってやってみたが、どうも通らぬで、そのままになりました。
  131. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 公立文教の施設費の問題につきましては、現在御案内の通り、中学校義務教育年限延長につきましては、国の負担で二分の一、戦災復旧が二分の一、災害復旧が三分の二、それから不正常授業、老朽危険校舎の改築につきましてはいずれも三分の一というように補助率が分れております。この根拠法になっている三本の法律を、ぜひ恒久法として一本化したいというお話文部省からも強くあったわけでございます。率直に申しまして、私どもとしましては、将来の国の負担の問題もありますし、また学校の施設につきましては、これは学校教育法第五条にも明記してございます通り、原則として管理者がこれを支弁すべきものであるということがございます。そういった点と、それからここ一、二年、地方財政の状況が相当好転して参っておりますので、特にこの際、国の負担を恒久的なものとする必要がないのではないかといったようなところから、事務的には、この恒久化に対しまして必ずしも賛成していなかったわけでございます。しかしながら、両院の決議もございますし、それから文部当局及び各地方団体の強い要望もございましたので、そういった点を勘案いたしまして、大蔵省としましても、この際この三本の法律、中に二本臨時法が入っておりますが、これを統一化して恒久法とすることに同意をしたわけでございます。これは予算折衝の際の経緯もございまして、三十三年度の予算が一応現行法を建前として、従いまして補助率につきましても、小学校及び危険校舎は三分の一の補助を建前として組まれております関係がございますので、政府提案としまして、やはりこの際、現行法をそのまま恒久化するという建前で考えるのが至当ではなかろうか、こういった考え方から、今回の恒久法では補助率を含みにしている次第でございます。これは、やはり現在の補助率が食い違っておりまするのにも、それぞれその成立の由来及び理由があるわけでございまして、中学校については、国が六三制の義務教育の年限を延長したこと、それから盲ろう学校につきましても同様な趣旨でございまして、それだけ国としての責任を私は感ずる度合いが強いという意味におきまして、ほかのものは三分の一になっておるにかかわらず、これは二分の一になっているわけであります。そういった経緯及び理由というものは、現在においても残っているという考え方で、一部に全部三分の一といったような意見がございましたが、ともかく現行法の制度を踏襲するという形に落ちついたわけでございます。  それからなお、校地の問題につきましては、これは当初文部省から補助対象に加えてほしいという御要望がございましたが、折衝の過程におきまして、起債の対象にぜひ加えてほしいというふうになって参りました。この点は、私の方といたしましても起債の関係を扱っております理財局の地方資金課とも密接な連繋をとりまして、ただいま管理局長から答弁がございました通り、自治庁とも話を打ち合せて、来年度はぜひこれを起債の対象に加えるようにということで、目下準備を進めております。
  132. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 他の質問があるようでありますから、私はもう一問だけ伺って、あとで細目について質問さしていただきます。  ただいまの主計官の発言ですね、これは一応ごもっともな点があると思います。しかし問題は、実態、実情の把握に不十分な点がある。そこが原因となって文部省と大省蔵のこの問題に対する考え方にズレがきているということを、私は感ぜざるを得ません。その立場から、文部大臣の大蔵大臣に対する働きかけと申しますか、説得と申しますか、不十分な点を私は若干遺憾に思います。ということは、今の主計官の発言は確かに理論としては一応成り立つことです。しかし、実情というのは、御承知のように地方財政のアンバランスですね、これが義務教育に非常に影響している。文部省の学力調査によっても、はっきり出ているわけでしょう。富裕団体と赤字団体とではこの子供の学力差というものがはっきり数字に出てきているわけです。義務教育がアンバランスになっているわけでございます。これは国の責任において、高きところに水準を合わせるようにしなければならぬと思うのです。大蔵当局としては、地方財政が好転してきたから云々というのですが、一部は好転しているかもしれませんが、決して赤字団体は好転していない。しかも、税外負担を住民は相当しょっている。三百円から五百円くらい税外負担をしょっています。学校建築するといったら、父兄は皆多額の寄付をしているわけです。そこで、その自治体の財政力のいかんによって子供の学力差が出てきているわけですから、これは重大だと思うのです。この実態を主計当局はよく御研究になっていただきたい。そうして今後の資料にしていただくことを希望します。  今の段階で最後に聞きたい点は、講堂ないし屋内体育館、これは私は小学校においても中学校においても、講堂、屋内体育館いずれか一方は持たなければ教育はできないと思う。名士を呼んできても、生徒に話を聞かせる場所がないわけですから、雨が降ると外で卒業式をするわけにもいかないから、卒業式もできない。文部省はだいぶ努力してはきたのですが、微々たるもので、本年度小学校に屋内予算として三千六百万円ばかり新たに組まれた点は、考え方としてはいいと思うのです。それから中学校が四千八百万円予算化されておりますが、伺いたい点は、小学校学校で講堂も屋内体育館もいずれも持たないという学校は何パーセントくらいあるのですか。それと、各校にいずれか一方持たせるためには、今後どの程度の国庫補助金額を要するか、それは何年で解決しようとしているか、その数字を伺いたい。
  133. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 文部省といたしましては、教育実施の建前から申しまして、小学校におきましてもまた中学校におきましても、ともども屋内体操場というものが必要だと思っております。ことに、単に体操場としてばかりでなく、保健体育場も、授業の実施上からも必要だと思っております。ただ、中学校におきましては、小学校と比べて体育の教科の内容が多少変っておりまして、中学校の方が、まあ屋内体操場を必要とする理由が、小学校に比べますと高いということがいわれると思います。なお、小学校と中学校の屋内運動場の保有の比率を見てみますと、小学校の場合には屋内運動場を持ってない学校が大体四九%ですから、大体半分は持っておる。それから中学校の方の場合は、屋内運動場を持っているのが三六%、持っていないのが六四%程度になっております。  なお、先ほどお話しのございました本年度の予算に組んでおります小学校の屋内運動場でございますが、これは戦災復旧の関係について、小学校の屋内運動場を認めるということでございまして、一般的に小学校の屋内運動場を国の補助金で建築するということにはなっておりません。
  134. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 どのくらい国庫補助金を要しますか。
  135. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 今全体の取得坪数と、それからそれを全部完了する数字につきまして、今ちょっと調べておりますから……。
  136. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その数字を計算するまでに。聞くのを忘れていましたが、公立学校並びに国立大学、高等学校、小学校ですね、そういう学校の火災件数並びに焼失坪数、金額は幾らになっていますか、並びにその原因はどうですか。それからその対策はどういうことを講じておりますか、お答え願います。
  137. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 学校の建物の火災につきましては、私ども実は非常に憂慮しておるところでございまして、たとえば国の補助金をつけまして、いろいろな新築なり改築をいたしましても、相当坪数在来の校舎が焼けるということでございますと、差し引きそれほどプラスにならぬということでございますので、学校建物の防火ということについては、年々文部省からも通牒を出していろいろ会議等でも、話をいたしまして、特に注意を喚起しております。現状を申しますと、公立学校、これは小学校、中学校、高等学校でございますが、三十年度におきまして、大体焼けた坪数が二万七千坪という、これは文部省調査いたしております指定統計の数字でございます。それから三十一年度には、少しこれがかなり高くなっておりまして、四万六千坪というような数字になっております。国立学校につきましては、これはただいま私、的確な数字をここに持っておりませんが、たしか一昨年に比べまして、本年、三十二年度はかなりこれまた数字が上回っておりますので、その点については昨年の十二月、また本年の一月につきまして、特にこの冬季の間の火災防止ということについて配慮してもらいたい。なお、防火措置、防火施設についても、従来に比べて多少予算をよけいに取りまして、その火災対策ということで、木造の施設につきましては措置をいたしております。
  138. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一度反問して伺いますが、私は新聞をよく見ていると、自衛隊の飛行機が落ちたというのが出ていないときには、自衛隊のトラックが落ちた。それから国立大学が焼けたとか公立学校が焼けるとか、何か必ず毎日三面記事に出ていますよ。私が調べてみたところによると、今、局長が言われるように、公立学校昭和三十一年に十三億九千万円、国立学校は十四件、五千七十四坪燃えて、金額にして一億四千八百万円というのが燃えているんですね。一億四千八百万円というのが燃えている。で、この原因はいろいろありましょうが、一つには驚くごとには、高等学校大学はかなり実験をやるわけですが、ガスとか電気が入っておるわけですが、木造のがたぴしゃしたところで電気、ガスを使っているんですね、これは危険ですよ。少くとも科学振興、こういう時代には、私はああいう電気、ガスとかいう、ああいうものを扱うところは、一日も早く鉄筋にすべきだ。そうしなければ火災をなかなか私は根絶することはできないんじゃないか。それ以外にいろいろ方法はあると思うんですが、もう少し積極的な具対策が立てられてしかるべきだと思うのですが、文部大臣、こういうふうに焼けるのをどうお感じになりますか。ともかく新聞見ておって下さいよ。ともかく自衛隊の飛行機かトラックか、あるいは学校が焼けるか、役所が焼けるか、毎日一つか二つは三面記事から統計をとると出ますね。これでは国民は税金を納めて幾ら作ってもらってもたまらぬと思うんですよ。この点はやっぱり少し引き締める必要があると思うんですが、大臣の御見解を承わりたい。
  139. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、まことにどうも火災がひんぴんとして起るので、にがにがしいことだと考えておるんです。私は一体これから先の学校等の公共営造物は、これはやっぱりすべて鉄筋にしなければいかぬ。そうしてそれは一ぺんに金のかかることは高いようで、非常に負担が大きいようですけれども、長い間の平均をとるというと、むしろ木造より鉄筋の方が安いんじゃないかというふうに考えております。また、統計学者あたりもそういうことを述べております。ですから私はなるべくこれから先は、木造でなく鉄筋でやってもらいたいというふうに考えて、それを奨励するつもりでおります。
  140. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 国立大学の火災につきましては、これはすべての火災につきまして、その原因をよく調べまして、責任者の懲戒処分をかなり厳重に行なっております。しかし、それもまあ、火災の予防に役立つかもしれませんが、ただいま御指摘のございましたように、ことに理科系の実験を必要とするような授業の教室は、できるだけ文部省としても鉄筋にしたい。もちろん、それ以外にただいま大臣のお答え申し上げましたように、大学の校舎、施設全部を鉄筋にすればいいのでありますが、現状予算では、必ずしもそういきませんので、人文系につきましては、ことに重要な図書館等、あるいは図書館の書庫といったようなものだけに限定いたしまして、できるだけ理科系の実験を行うような教室を鉄筋化するということに努力いたしております。  なお、先ほどお尋ねのございました屋内体操場の関係でございますが、現在寒冷地と暖地と申しますか、その他の地域があるわけでございますが、そういった寒冷地だけに限らず暖地まで含めますと、小学校の場合は工事費として、これは全体を全部漏れなく建てるという計算でございますが、大体工事費五百十二億、二分の一の補助といたしますと二百五十六億の国庫補助が要る。なお、中学校は工事費は三百二十八億、国の補助金としては百六十四億程度が要る、こういう計算でございます。
  141. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  142. 松澤兼人

    主査松澤兼人君) それでは速記をつけて。
  143. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと関連して。今危険校舎の問題が出ましたね。小学校、中学校の場合はいろいろと努力もされ、また、父兄の方もずいぶん心配をして、逐次危険校舎が少くなってきつつあるわけですが、ただ問題になるのは、この高等学校の危険校舎が小学校、中学校に比して非常に多い、改築すべき分がですね。統計によると二十九年から三十二年度にかけて改築した分が、高等学校の場合は三九・四%、改築しなければならない坪数が六〇・六%という非常に大きな数字が上っているようです。今、大蔵省の見解によると、地方財政が好転をしたから危険校舎、あるいは改築すべき分は逐次これはよくなってくるだろうというような、だろうというような期待感に満ちた御答弁であったのですが、これは青年の教育環境という問題からしても、相当高等学校の危険校舎並びに改築すべき校舎の問題については、    〔主査退席、副主査着席〕 重要な問題としてこれは考慮していただかなければならない。特にこのいろいろ全国の調査を見ると、今日、明治何年かに建った七十何才にもなる老朽校舎が三重県あたりにもまだあるようです。ずいぶん多いようです。文部省は今度定数基準で一応この子供たちの数並びに教員の定数というものを法律できめるようですけれども、古い時代に建った校舎というものは、非常に教室自体が旧式で非常に狭いわけですね。こういうような狭い教室の中に、たとえば今度の定数基準の法律によっても、政府は五十人以下にしたいというふうにいっておりますが、実際問題としては法律の解釈を拡大すると、これは五十五人まで入れて差しつかえないことになっているわけです。私はすし詰め教育は、政府の言うごとくには簡単に解消しないと見ているのですが、ことにここに関連質問で私が心配していることは、旧式な校舎建築の様式で坪数が非常に小さい。こういうような校舎の改築というような問題については、文部省としてはどういうふうに一体考えているのかということ。一つの例をとると、秋田県の小学校の五百二十校中、坪数の不足する学校は百八校ある、老朽校舎が七十七校ある、危険校舎が百七校もある、こういう状態、これは中学校では二百九十四校中坪数の不足しているものが百五校、老朽校舎が十二校、危険校舎が三校ということになっています。また、静岡県は、これは関東ブロックの中では、なかなか教育熱心な県ですが、この場合でも小学校の五百八十校中、坪数の足りないものが百六十七校です。老朽校舎が百一校、危険校舎は四十四校であります。中学校では三百七校中、坪数の不足するものが百四校、老朽校舎が三十一校、危険校舎が十二校とこういうふうに、実際問題としては地方財政が好転するから、近いうちに解消するだろうというような楽観論は、現実問題としては許されない。私はお伺いしたいことは、特にこの高等学校の危険校舎並びに改築すべき坪数、これらをどういうふうにして一体やっていこうとするのか。先ほどから学校に対する寄付の問題なんかが出ておるようですが、当然この国が負担しなければならない分を、強制的にではないにしても、やむを得ざるという段階に追い込んで、PTAから施設費の寄付を仰ぐということは、私はある意味では違法ではないかという気がするのです。まあ違法でもやむを得ないので今やっているのですが、厳密に私は法制的な解釈をすると、地方財政法の四条の第四項に違反しているのじゃないかという疑いを持っている。この法解釈については、後刻またいろいろ論議もし、私も研究さしてもらいたいと思います。少くともこういう状態を放置すべきではなく、特に青少年の不良化が大きくピック・アップされているときに、高等学校の生徒の教室の非常に狭いということは、生徒を必然的に興奮状態に追い込んでしまうのです。教室の中の興奮状態を何とかこれは緩和しなければ、単に道徳教育だけでは解決し得ないのです。こいねがわくは、早急に高等学校のこれらの問題については計画的な方途を立ててもらいたいということを切望し、かつまた、私の願いを兼ねて質問をしたいと思うわけです。あと二、三問大きな問題だけ質問をして終りたいと思います。
  144. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 高等学校の危険校舎の改築に関するお尋ねでございますが、これは小、中学校の改築の場合と比較いたしますと、高等学校の危険校舎の改築は御承知のようにかなりおくれて国の補助制度ができました関係から、実際小、中学校の校舎の現状と高校の危険校舎の現状を比べますと、高校の方がおくれておるという実情だと思います。私どもといたしましてはもちろん、ことに義務教育関係の危険校舎の改築に力を入れていかなければならぬと思っておりますが、しかしながら、ただいま申し上げましたような状況でございますので、高校の方もこれはおろそかにできぬこととして、国の補助金につきましては、できるだけのワクを取りますように、大蔵省の方と折衝をいたしておるわけでございます。今後もこの点につきましては、義務教育の危険校舎と並んで改築が進んでいけるように努力をいたしたいと思います。  なお、古い旧式の校舎で面積の狭い教室があるという御指摘でございますが、お話しの通りだと思います。大体現在は四間に五間、すなわち二十坪というのが大体普通でございますが、昔の教室では四間に四間、十六坪というような教室がございます。で、そういうところでは五十人になりませんでも、まあ一人当りの占める面積というのは非常に狭くなるわけでございます。そういったところは子供が非常にまあ疲れる。それから先生も授業をなさるのに疲労されると、その半面教育効果もそれほど上らないというようなこともございますので、改築等の、あるいは新築の場合等におきましては、できるだけ現在の標準でございますところの四間に五間程度のものを建ててもらうように、文部省としては指導をいたしております。ただ、これは強制的なものではございませんが、できるだけかなりの余裕のあるような四間に五間程度のものを建ててもらうように、各府県を通じて指導をいたしておるところでございます。
  145. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣にこれはお伺いしたいのですが、特に高等学校の場合に、体操場が必要だという声が非常にやはり多いわけです。この場合に予算関係から、これは自発的に寄付をするのですが、PTAあるいはその学校後援会のようなもの、何とか会という、いろいろ名前があるようですが、一世帯に当って二千円なり三千円なり、自発的な形だけれども割り当てておるところがあります。私はこういう施設に対して、たとえ自発的であっても、割当の寄付をこれらのことのためにさせるということについては、いかがなものかという考え方を、実は私は持っているんです。一々例をあげても、ややこしいから申し上げませんですけれども、何とかこの強制的な割当寄付というものが、少くとも校舎建築の場合には、これはできるだけ避けるような方法を御指導なさるべきではないかと思うのですが、現在では、そういう御指導が全くなされておらないわけです。PTAが自発的にやるのだという見解をとっておられますから、やっておられないんです。自発的だと言うけれども、末端の各家庭には、これはもうすごい強制的なんです。五人も六人もPTAの方が受け取りを持ってやって来られれば、どんなに苦しくても出さざるを得ない。これは形を変えた強制寄付なんです。このことは、私はよくないと思う。こういうような方法について、何とか緩和策をとっていただきたい、こういう希望を持つ。大臣は、これに対してどういうふうにお考えになっておられますか。また、どういう方法をおとりになりますか。  それから、立ったついでですからお尋ねしますが、衆議院の予算委員会で、門司委員は、建築単価の問題に触れたようですが、この場合、現在の建築単価でもって十分だというような御答弁を、当局はされているようでありますが、どうも建築単価の基準というものが、近代的でないままにされているんじゃないか。もう少し建築単価を上げて、そして父兄からの負担を仰がないようにすることの方が正しいんではないか、そんなふうに思うんですが、寄付と関連して、現実に沿うような建築基準というものが再検討されてしかるべきではないか。本年度は、何か逆に三%削っているような予算が出ておりますが、どうも時代と逆行しているんじゃないか、そんなふうに考えます。これについて、数字的にお答えいただきたい。
  146. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 高等学校の屋体に関する寄付の問題でございますが、これは、もちろん高等学校でも屋体が必要だと思います。ただ、高等学校は、御承知のように、設置者が府県なりあるいは市でございまして、財政的には、町村に比べますと、規模もかなり大きいし、余裕もあるわけでございますので、そういった面には国からの補助は出ない。私どもとしては、義務教育に重点をしぼって、国の補助としてはやっていきたいということで、これはやっておりません。その場合に、高等学校が、屋体を持つために父兄から寄付を自発的に取る、実際は割当の寄付であるが、寄付を取るということについてでございますが、これは、理想から申せば、もちろん寄付を取らない方がベターだと思います。ただ、府県の財政からいいまして、急激に多くの高等学校に屋体を普及するということが困難であるから、やむを得ず、おそらく、PTAなり、あるいは学校の生徒としては、一刻も早く屋体を持ちたいというところから、一部分自己負担するという現状ではなかろうかと私は考えるわけでございます。これは、理想から言えば、必ずしもいいこととは思いませんけれども、地方財政の現状からは、まあやむを得ないんではなかろうか、かように考えます。なお、学校建築建築単価についてのお尋ねでございますが、御承知のように、国の補助単価、これは官庁営繕審議会の答申に基きまして、その答申を基礎といたしまして、大体資材費なり、あるいは労務費なり、また、その当時の物価指数等を考えて、一応、その年その年の年度ごとの建築単価をきめるという現状のやり方でございます。文部省いたしましては、従来、木造につきましては二万八千円、それから、鉄筋につきましては五万七十九百円という数字でやっておりましたが、三十三年度はこれが三%減になったわけでございますが、国の予算編成の大方針といたしまして、すべてこういった物件費につきましては、五%を減ずるという建前であったものを、学校建築の単価については、特に削減の率を低くしてもらいまして、三%程度に押えてもらったわけでございます。実情から申しますと、従来三十年度、三十一年度の実績から申しますと、これは多少下回っておるような実情でございます。ただし、これは、建築単価と申しますのは、御承知のように、地域によってかなり開きがございます。中には相当高い建築単価につくようなものもございます。全国平均をいたしますと、本年度の予備単価程度でやり得るのじゃなかろうかと私ども考えておる次第でございます。
  147. 高田なほ子

    高田なほ子君 寄付の問題は、万やむを得ないというような御答弁であったし、大臣の方からは御答弁がなかったんですが、これはやはり方針だけは大臣としては打ち出されるべきで、現在やむを得ないから仕方がないというのでは、これは岸内閣文教政策としてPTAの予算軽減のために教材費を二割増したというようなことで、大看板を出しているんですけれども、実際問題としては、こういうことが放置されているのでは、PTAの予算軽減という看板が泣いていますよ。例を言えば、これは大臣に聞いていただきたいのですが、これは目黒の第十中の例ですが、実際子供に必要な出さなければならないという金よりは、むしろ変なところに取られる方が多い。変なところと言っちゃ悪いのですけれども。たとえば、PTAの会費が千八百五十円、生徒会の入会金が十七円、生徒会費が五百四十円、学級費が百十円、任意醵出金というのが百二十円、体育館の醵出——講堂を作る金ですね、これが八百五十円割当です。それから視聴覚教育費というのが、この方へ二十五円取られる。それから教育会の賛助費というのが二十三円、それから実地見学費が六百円、修学旅行積立金が九百円、卒業積立金が二百四十円、教科書代が九百円、教科実習費というのが千八百円、クラブ活動費が百円、運動衣それから靴が八百円、それから映画、音楽、演劇教室に割当が百五十円、各種の募金が五十円、年間九千七十五円、これが目黒十中の一人の子供の負担であります。この一例を見ても、各家庭の教育費の負担がいかに大きいか。こういうような中でPTAの割当寄付、施設のために要する費用が必然的に割り当てられなければならない。これでは、中流以下の家庭ははなはだしく困る。中学校義務教育であります。国が無償でするということは憲法の精神ですが、私どもはにわかにこれを無償にせいというような横やりは出さない。けれども大臣としてはこういう方向は是正しなければならないということは、少くともこの当委員会あたりでは言明していただくことの方が、私は妥当ではないかという気がするので、あえて大臣の御答弁を求めたい。
  148. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました問題は、これはやはりまず第一は、PTAのあり方について相当検討を要する問題が全国的にあると存じまして、これについては文部省でもやはり研究を続けております。そうしてさらに、PTAの方へ相当の講師といいますか、そういう人々を派遣してそうして今後のあり方についても研究をするというふうになっておりますが、しかし、御指摘になりましたような今の高等学校の建設費についてPTAの負担金、これはまことにどうもよく私も耳にいたしておることもある。苦るしい問題だと思っておる点もある。しかしながら、やはりそのPTAの人や父兄の人が、いわゆる愛校心といいますか、その学校をりっぱにしたいという気持のほとばしりから、そうした負担をする面もあります。これはまあけっこうなこととは言いませんが、やむを得ぬことだと思います。しかし、御指摘になりましたように、町内に割当をやって、半ば強制的にやるということは、これはもう避けんければならぬ問題だと存じております。しかし、そうした見分けがなかなか区別しにくいので、非常に困っておるのですけれども、しかし、こうした学校建設等に、いろいろの巨額の費用を父兄とか、PTAとか、個人負担をさせないように、公共団体において設立者である以上、努力せんければならぬと存じております。しかし、事は全国的に非常に大きな問題でございますから、これは一つ研究いたしまして、相当の成案を得ようと、これはもう今始まったことではありません、前からこの問題については研究を重ねておる次第であります。
  149. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん時間もおくれましたから、残余の小さい問題については、文教委員会に譲りまして、一つ予算委員会で時間がないためにお伺いすることができませんでした問題を、一つだけにしぼって伺います。これまた大臣には大へん難問題を伺うわけですが、エログロ文化、どういうふうにしてこれを追放していくか、なかなか広範な問題でむずかしい問題なんですが、文部省は過般来からこの問題に頭を痛めていらっしゃるようですが、できれば具体的なお考え、それを聞かしていただきたい。
  150. 松永東

    国務大臣松永東君) ちょっと高田さんに伺いますが、御質問要旨がよく私にはわかりませんが、もう一ぺん一つおっしゃって下さい。
  151. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは、青少年が非常に最近悪くなってきているということで、この間予算委員会で警察庁から資料もいただきました席上、私はその原因はどういうところにあるのかということをただしました。いろいろ原因はあるけれども、問題として取り出されたのはエログロ文化です。おわかりになると思うのですが、こういうものがちまたにはんらんをしている。子供たち学校でいろいろ先生方指導なさるけれども、どこにも遊び場がない、結局そういうところにいってしまって、そしてそのための性的な刺激を受けて、そして小学校や中学校子供たちが、わいせつ罪にはなりませんでしょうけれども、そういうような犯行をあえて犯すようになっておる。要は健康な文化をどういうふうに打ち立てていくかということが、私の質問の要点なんです。どういうふうにしたら健康な文化を、子供たちのための文化を打ち立てていくことができるか、こういうことになると思いますが、何か積極的なやり方というものはないものか、お考えがあったらば聞かしていただきたい。おわかりでしょうか。(「大臣、得意なところだろう」と呼ぶ者あり)
  152. 松永東

    国務大臣松永東君) それは得意どころじゃない、むずかしい問題ですよ。むずかしい問題だということは高田委員が劈頭におっしゃった通り、非常にむずかしい問題です。どうしてこれを解決しようかと思って苦慮しているのです。第一、であるから、私どもはやはり学校において道徳教育の強化をしなければいかぬということを主張しておる。しこうして家庭においても、またわれわれ社会においても、いま一ぺん反省して、そうして子供たちに恥かしからぬように、やはり純情な生活をしていかなければいかぬというふうに考えておるのです。しかし、高田委員の今お問いになった問題、すなわち一番大きな影響を与えるものは、映画とか、あるいはラジオ、あるいはテレビというようなものから相当悪影響を受ける場合もありましょう。しかし、その反面において、またいい影響を受けることも間違いない。しかし、こうした問題についてやがて教育映画あたりが実施されるようになりますというと、学校等においてやはり健全な思想を養っていくテレビあたりが実施せられるというと、やはり相当それが役立つのじゃなかろうかというふうに考えております。しかし、この問題については、これはやはり今の環境のもとに育っていく子供たちを、そうした悪の面に近寄らせないようにやっていくのにはどうすればいいか。ことに、御指摘になりましたエロとか何とかいう方面に陥ってしまう、まあ思春期といいますか、そういう年ごろの子供たちがおるのをどうすればいいかということは、これはとうてい学校だけの教育とか何とかだけじゃ、その目的を達せられません。家庭においてももちろん、社会においてももちろんでありますが、やはり検察庁あたりと、あるいは保護、観察というような面からやはり提携して、そうして深みに陥らぬうちにこれを是正し、教育していくというふうにするよりほかないと思っております。いろいろ考えておりますけれども、まことにお恥かしいことですけれども、こうすればそれがきちっと是正されていくのだ、心配いらぬように子供たちが成長していくのだというような点までは、どうも考え当っておりません。もしいい案でもあれば、お教えを願えばありがたいと思っております。
  153. 高田なほ子

    高田なほ子君 私も自分で、ときどきこのことを深く考えることがあるのです。私が文部大臣になったら、どうしようと考えることもあるのです。しかし、なかなか名案はないのですが、どうも一つバツク・ボーンが抜けていらっしゃるのじゃないかと考えるのですね。私の考え方では、子供の健康的な文化的な施設がないということが、一番大きな問題じゃないかと思う。たとえばこれも東京の例でありますけれども子供たちはどこで一体遊ぶか。遊び場所というものの一番多いのはこれは近所のあき地とか道路で遊ぶ者が一番多い。その次は友だちのうちで、自分のうちで、こういうような数字が出ておるようですが、どうも遊び場がないのですね。これはもちろん、地方公共団体に属する分野になるかもしれませんが、せっかく文部当局は教育委員会まで任命にされて、それで教員に拘束力をぐっと強めてきておるのですけれども、こういう面に対する御指導というものは存外なされておらないような気がする。できれば子供の遊び場、こういうような問題について文部当局として一つ筋を入れてみてはどうか。地区々々にこういうものを作ったらどらか。それからもう一つは、教育映画の問題でありますが、どうしたわけでしょうか、せっかく教育映画のお話が出て、なるほどそうかと思うのですが、私は教育映画一本にしぼった方がいいなどというような考えは毛頭ないのです。また、子供になるたけ見せないようにと言って、何にもないのに見せないようにするわけにはいかないのです。時には大いにそういうふうなものも見せてというところのホーム・ルームや道徳教育の時間は、お得意の文部省ですから、そういうような映画を中心とする激しいお互いの議論というものがこの中から戦わされて、悪への抵抗力を強めてくると、こういうような方法があるかもしれない。しかし、そういうことは、今度道徳教育の徳目をずっと並べてしまえば、そういうことはおそらくできなくなってしまうのです。馬の目のところに目隠しをするように、まっすぐ行かれればいいのですけれども、社会は解放されていますから、見せないわけにはいかない。やはりこれに対する抵抗力をどういうふうにして強めてくるかということと、その反面、一つの例として子供たちの遊び場をどうするのか、学校の映画教育の時間あたりにでも、なるたけ施設を利用して、特に僻地あたりには、よい映画が見られるような仕組みを作ってもらいたいと思うのです。大臣も私の考え方と同じようにおっしゃっていましたけれども、何と全国の児童、学生の二千万の子供がいるのに、今年の予算では映画等の製作について、何ですかこれは百十四万、三十二年度はそれでも百二十万だったのですね、それが今年は六万円減らした。この岸内閣が六万円の映画製作費を減したということは、恥かしくてよその場では言えるどころじゃない。エログロの映画がいけないというなら、これに対応するだけの教育映画の製作費はどんと私は出されて、そして子供の文化の目を開き、科学の目を開く、いうところの視聴覚教育というものにもっと本腰を入れてもらわなければならない。放送教育の問題もそうだと思う。これはやはり普及していかなければならないとおっしゃっていますけれども、実際問題としては七百十二万でしょう、たった。しかも、前年度から比べると三十七万円減っている。三十七万円ばかり減して、この金は一体どこに回っていくかと思って、しみじみ私深夜考えるところがあった。これは実に私にはわからない。並びに子供たちが今読んでいる本は何かというと、子供たちがマスコミに影響されるところははなはだしく多い。今、子供たちが望んでいる本は、漫画が一番喜んでいるようです、男、女の子も。それから学習のためになるものをその次に望んでいる。これは今の子供はなかなかそういういい面がある。これは実際の子供からとった資料ですが、学習のためになるもの、娯楽雑誌、それから童詰、それから探偵小説、科学物語、少年少女小説、こういうようなものを子供たちは読んでおりますけれども、こういうような読み物を望んでいるけれども、実際問題としては、なかなかこういう読み物が手に入らない僻地の子供たちに対して、あるいは買えない子供たちに対してどうするか、こういう問題は大体地方の公共団体にほとんどこれがおんぶされているような形でありますし、本年度の文教予算から見ましても、公立学校の図書館図書整備費は千二百三十一万きりしかない、法律で規定されている学校図書館法による基準に到達しているものは、私はそうたくさんはないと思いますが、前年度に比べると一億三千九百二十万円減しているのです。子供たちが読み物がない、こういうふうに言っている、映画がないと言っている。教育放送も聞きたいと言っているけれども予算の面から見ると、全面的にこれは削除の方向にある。初めから少いのですから削除の方向にいっているということは、これは大臣の御意思とは若干違っているし、子供たちに対する文化政策というものは、まず岸内閣はゼロだと見なければならない。私は前年北海道に行って 一教育長がこまどり号というジープを運転して、そうしてそのジープに本をつけて、三里も五里もの僻地の中に夜通し車を運転して、子供たちの待つ村名を回っている姿を実際に見てきました。これらはいずれも地方公共団体の乏しい財政の中から出される負担であり、教育長みずからがこまどり号を運転して、僻地の子供たち文化を与えようとするこの熱意に対して、岸内閣子供たちに対する愛情というものは、予算の面から見てあまりにもひど過ぎる、私は子供たちによい読み物をどうしたら与えられるか、子供たちのためのよい遊び場をどういうふうにしたら設けられるか、そうして教育放送の施設を、どういうふうにしたならば子供たちに喜んで与えることができるか、こういうような明るい面にこそ、私は金を使ってもらいたい。遺憾ながらわずか六万円ばかしの金を国の予算の中から減すなんということは、当代の恥ですよ。こんなことでどうなさるおつもりでしょう。特に映画と教育放送の面が大臣から御答弁がありましたから、なぜこういうものを減らしたか、どうするのか、この点についてお尋ねをしたい。
  154. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま高田委員から、いろいろ青少年、特に子供の問題につきまして非常に御熱心な御意見がございましたが、私どもも全くそういった対策につきましては同感に考えているのでありまして、たとえば児童の健康な遊び場というような点につきましては、これは来年度予算に厚生省が、児童遊園地の建設というような関係の経費を厚生省で組んでいるようでございます。そういう施設の建設は別といたしまして、文部省は地方の教育委員会等を通じまして、児童の愛護、子供の健康な成長ということについては、社会教育の面について絶えず注意をいたしております。従って従来やっておりますのは、そういう施設を建設するということはやっておりませんけれども、子供クラブだとか、あるいは児童愛護班の育成とかいうような関係におきまして、努めてこの児童がいい環境に置きまして、りっぱに成長するように念願いたしておりまして、そういった児童愛護班の育成、あるいは子供クラブの育成というような点について、これは学校と緊密な連絡をとってやっておるわけであります。で、これが特に夏休み等を中心にしまして、地方におきましてはかなりこの児童愛護班等の結成が普及いたしております。これにつきましては、非常にわずかでありますけれども、地方の教育委員会を通じて、そういった児童愛護班にも若干の補助をいたしております。  それからまた、映画の問題について御質問がございましたが、これは予算が非常に少いというおしかりでございますが、私どもといたしましては、映画が青少年に与えますところの影響が非常に強いということは、もう申すまでもなく同感に考えておりますが、これにつきましては、文部省で選定いたしますようないい映画を極力地方の人たちに、青少年に見てもらうという機会を多く与えたいというような趣旨からいたしまして、特にまた、僻地につきましても同様な問題があるのでありまして、そういった意味で、この予算上計上いたしております社会教育特別助成費というものが六千七百万円ばかり計上されておりますが、その中で昨年も約二千八百万近くの映画対策費を見たのでありますが、三十三年度におきましても、引き続いてこの青年に対しまして選定映画の配付、あるいは録音教材の作成配付というような仕事をいたしたい、こういうような計画を持っております。さらにまた、この青少年の映画対策の一つの問題として、東京都あたりにおきましても、いろいろ従来研究して実施されている部分もございますが、この青少年に、特に学校の小さい子供に対しまして、極力いい映画を見る機会を提供するというような意味合いにおきまして、あるいは一般映画館を利用した早朝興業ということを勧奨したいという心組みから、三十三年度におきましては、やはり特別助成費の中、今申しました約二千八百万の予算の中に、若干の補助金もこれに組んでおるわけであります。そういった意味で極力映画等を通じまして、できるだけ青少年の健全化に尽していきたいということを考えております。  また、先ほどおっしゃいました読書の問題でございますが、これもおっしゃる通り現状は非常にむずかしい現状でありますけれども、子供に対する読書指導というものは、これは学校も、あるいは家庭も、あるいは一般の社会におきましても、軽視することはできない問題でございます。従って、そういった意味によって、従来から、この青少年のための巡回文庫というものを各府県で設けておられまして、これは大部分は府県あるいは市町村等がそういう施設をやるわけでありますが、それに対しまして、文部省としても若干の補助金を出してこれを実施しておりまして、三十三年度におきましては、そういった読書指導、巡回文庫を含めまして、約六百万円くらいの補助金を一応計画いたしております。そういうことによりまして、必ずしも十分ではございませんけれども、できるだけそういった青少年に対する環境の浄化、健全な育成ということを考えておるわけであります。
  155. 高田なほ子

    高田なほ子君 御説明は御説明として承わっておきますが、公立学校の図書館の整備費を前年度から比べると一億三百九十二万も減して、わずか千二百十三万にしたという、この理由について私は全く了解に苦しむのです。それから巡回文庫の話が出ましたが、わずか六百万ばかりのもので、どうして巡回文庫が完全にやっていけるか、これは熱意の足りないというところよりは、むしろ文化政策に欠けているのじゃないかという私は疑いを持つのです。これはやはり感覚の相違ですよ。これでも当りまえだというような説明をしている。それじゃ私はあなたの神経を疑うのです。六百万で何ができますか。こういうようなことは、もう少しどういうふうにして計画するか、今、巡回文庫のない所は何県くらいあるのか、巡回文庫をやっているのは何県くらいあるのか、どのくらいの補助がされているのか。時間もないから私はここでそこまで突っ込みたくはありませんけれども、私は全国、この巡回文庫の実情というものをかなり実地を通して知っているつもりなんです。このようなことでは、子供たちによい読物を与えるというような積極的な政策を見ることはできません。それから社会教育特別助成費というのは六千七百万ですか、前年度から比べると約三百万減っていますね。文化政策と言っておりますけれども、前年度から比べると約三百万円削っている。こんなわずかなものをなぜこんなに大なたをふるって削らなければならないのか、はなはだしく、これも了解に苦しむところです。それから、教育映画の問題についても、今お話がありましたけれども、これも前年度から見ますと、やはり七十六万円ばかり削っているようです。ですから、あなたのおっしゃっていることは、私の質問する趣旨とはだいぶやはりかけ違って、予算を見れば、何をするかということがこれでよくわかってくるような気がするのです。これではほとんど言うところの文化政策というものが立たないと申し上げるよりほかに方法がない。芸術祭の運営費なんかもたった二百六十万ばかりのものを十三万ばかり削っているようです。十三万ばかり削って、子供たちに積極的な文化政策というものに痛手を与えているということは、まことにこれは相済まない話しで、これを多くの民衆に聞かせましたならばきっと憤慨するのではないかと思う。  それから図書館の問題ですが、これは読売新聞の切り抜きをきょう持ってきたのですが、青少年の文化対策ということで、大切な問題ですが、大へんこれは予算が少いようです。上野図書館のとびらがあくと、直ちに行列を作っておる者が入って、そうして満員になってしまう。熱心な青年たちはもう二時間も前から、朝の寒いのに立ち並んでいる。ところが、いすも足りなく館も狭いために、満員になってしまって十分に勉強ができない。現在一日にと平均千六百名が入っているというようなことでありますが、この千六百名の人たちがぐるぐる入っている間にも、何時間待っても入れないような人があることが報道されております。予算が取れないために新刊購入はわずか年に五千冊きり本が買えない。一日に千六百名もの真摯な学徒がせっかく勉強に来るのに本も買えない、勉強もできない。これが東洋一とはいいますまいけれども、大東京の国立上野図書館の実情だとすれば、これはやはり文化政策というものについて背骨が抜けているのじゃないかと思います。いろいろ、るる御説明はあるかもしれませんが、もう少しバツク・ボーンを通されてから、道徳教育なんという問題は大ぴらになさるべきである。みみっちい予算を削りながら、ただお説教一点張りの道徳教育は、まことに封建的な、近代的な感覚じゃないというように思われるのです。これはどういうふうに上野図書館はなさっておりますか。
  156. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 先ほどお尋ねの公立図書館の質問について私からお答え申し上げます。実ば学校図書館法が実施されまして急速に基準に到達するような機運になりまして特に自己の財源でやる分と国の負担でやる分で、大体基準のほぼ七、八割に達したわけでございます。そこで、毎年公立図書館の予算は予想以上の基準の充足率がいいので、そこで予算の減額がございますもので、私どもば、むしろこの際教材費で恒久的に見た方がいいのではなかろうか。と申しますのは、図書館の五カ年計画を待たないで、すでに基準に充足するというような状況でございますので、この図書なんというものは本来毎年々々購入しなければならぬもので、ある一定の基準に達したから、それで打ち切るというわけに参らぬと思います。むしろ、本来の教材費の中で見るべきがいいのではなかろうか、かように考えまして、一方において単価の増額をいたしまして、同時に他面におきまして図書館の、公立図書館の経費を義務教育費の教材費の中に組み入れたわけでございます。そこで十五億にいたしまして、さらに従来は一部負担というのをはっきりと二分の一負担にいたしまして、地方財政計画で残りの十五億を本年度から増額して見ることにいたしたわけでございます。私、申し上げましたのは、学校図書館でございます。
  157. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の御説明はそれで、御説明は御説明でいいのです。教材費を二割増したということは、PTAの負担を軽からしめるために二割増したと説明されておるし、また、政府もこれは笛や太鼓で大へん宣伝していらっしゃる。ふやしたことはけっこうなんです。小学校の児童一人当りの教材費は九十円を百円にした。父兄の方は九十円を百円にしたからだいぶよくなったなと思う。だがしかし、一方においては今言うように一億万円以上の公立図書館費を削って、それを肩がわりして教材費の中にぶち込んで、なんでPTAの予算軽減になるか。九十円の教材費を百円にした。これはいいのです。その百円の中に、いうところの図書館の費用が入っているわけでしょう。中学校一人当りの教材費百三十五円を百五十円に値上げした。これはけっこうです。しかし、その百五十円中に今いうところの公立図書館費を削ってその中へぶち込んだのだから、差し引けば教材費というものは実質的に上っていないという結論になる。こういうようなことは、からくりじゃないかというような気がするんですね。あなたどんなふうに思われますか。
  158. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは一割は、上げた方は単価の引上げを行なったわけでございます。で、二割大体上げましたんですが、残りの一割に相当する分が、今御指摘の図書館の経費でございます。これは単位費用の是正でやったわけでございます。これがPTA負担の軽減に資するもので、他の一割は学校図書館の方の経費を持ってきたわけでございます。私どもは、この十五億の教材費と同額の地方負担分合せて三十億、さらに今御指摘にありましたように、PTA負担の軽減という趣旨から教材費の地方負担分十五億と、なお地方の市町村の教育費が少いので、PTAに御迷惑かかるわけでございますから、この十五億を含めまして五十億程度本年度市町村の教育費の増額をしてございます。ですから私どもは、ある程度PTA負担の軽減になるかと考えております。
  159. 高田なほ子

    高田なほ子君 建築施設費を総体で三%減して、そうして今度は図書館費も削って、そうして映画普及費も削って、そうしてしかる後にPTAの負担を軽からしめるということは、これはそろばんが合わない。言うところの政府のPTAの負担軽減というのは、こういうからくりの中に行われているもので、私はむしろ今後父兄に対する強制的な……半強制的な寄付というものが形を変えてのしかかってくるのではないか。文化政策が全然できていないという点と、PTA負担軽減ははなはだしく欺瞞に満ちたものである、というと文部大臣に対してはなはだどうも申しわけないことを言うようでありますけれども、こういう問題については、どうか一つとくと真剣に取り組んでいただいて、私の意のあるところをお察しいただいて、がんばっていただきたいと思う。  以上で終ります。
  160. 藤原道子

    ○藤原道子君 大へん時間がおそくなりまして、いろいろお伺いしたかったんですが、残念ながら時間がございませんので、ごく簡単にお伺いいたしますから、誠意ある御答弁をいただきたいのです。  先ほど来伺っておりますと、何とかこの場を済ませばいいんだ、全然誠意が見受けられないんです。おなかがすいたことは御飯を食べればすぐ直るんです。ところが、学校教育を受けておる子供はそれじゃ済まないんですよ。教育効果は三年、五年、十年後にいって現われてくるものだ、そのときしまったと思ったって取り返しがつかないんですから、少くとも教育行政を預かっていらっしゃる皆さんが、もっと筋金を通してやってもらわなきゃ私たち安心できませんわ。通り一ぺんの御答弁ならばわれわれは伺わなくたっていい。金がないから、予算がないから、文化教育だ、科学振興だといいながら皆削っているじゃありませんか。それで一方においては偏向教育だなんていって、選挙対策に何ですか、管理職手当なんてだれも要求しないものを押っつけて、四億五千万円もとっておるじゃありませんか。私はこういうことに対しては限りない不満を持ちます。しかし、義務教育の問題については、先ほど来いろいろ御質問がございましたので、私はこれを省略いたします。  と同時に、きょう質問しようと思いました結核児童の問題、それから精薄児童の問題、現在対象人員がどれだけあるのか、これが適用しておる者がどれだけあるか、その教育によって効果がどの程度に上っておるか。今後の見通し、これらにつきましては、明旦厚生部会がございますので、そこへ御出席を願って厚生省と対決をして御質問をしたいと思います。御用意をお願いいたします。その点はきょうはもう時間がないので、委員長に対して敬意を表して省略いたします。明日に譲ります。  ところが、私最近、まあ私が外国へ行ったときにも、つくづく感じたのでございますが、外国で学校で教えている教科書というんでしょうか、その中に日本の紹介がありますけれども、実に明治時代日本の交通機関といえば、人力車に乗っかって飛んで歩いておる絵が出ておる。日本の汽車なんというものは実にみじめな、まことに、ほんとうに昔そのままのものが宣伝されておりますので、これらに対しては何とか外国へ近代の日本の姿を、あなた方が向うへ申し入れるとか何とかすることはできないでしょうか。だからよけい日本がばかにされて、アメリカあたりでも日本にはアイスクリームがあるか、日本には汽車があるかなんということを聞くんですよ。そういう状態にいたんでは、正しい日本理解せしめるということは困難だと思いますが、こういうことに対しては文部省考えていないのですか。
  161. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ユネスコの機関を通じまして教科書の交流等を行いまして、そういうことのないように努力いたしております。
  162. 藤原道子

    ○藤原道子君 いつごろからやっていらっしゃるか知りませんけれども、いまだ何ら結果として現われておりませんので、今後十分な御努力を願いたいと思います。それはその程度でよろしゅうございます。  そこで私が文部省の誠意のない御答弁に対して、一つあらためてお伺いしたいことがございます。それは過日来、市川委員その他によりまして、社会教育の面でだいぶ御質問申し上げていたようでございますが、それに対して、文部省として何ら干渉した覚えはない、干渉した事実はないという御答弁でございましたが、もしも干渉した事実があった場合にはどうなさいますか。と同時に干渉した事実がないということは、調査の方法はどういうふうにして御調査になったか、それをまずお伺いしたいと思います。
  163. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 干渉した事実があるかないかは、これは市川先生の場合におきましては、私は干渉した事実はないと申し上げたのですが、もしもそういったまぎらわしいような事件がありますならば御指摘をいただきたいと思います。私どもそれに応じましてできるだけの善処をしたいと思います。
  164. 藤原道子

    ○藤原道子君 どういう調査をなすったか……。
  165. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私ども調査いたします場合には、事柄によりまして、教育委員会を通じて調査するのが建前になっておりますので、まず教育委員会にそういう調査を依頼をいたします。
  166. 藤原道子

    ○藤原道子君 今日、中央地方を問わず教育が非常にゆがめられておる。政治の圧力によって政治的に教育がゆがめられておるということは、今日も世論の動向でも皆さん御承知の通りと思います。ところがこれらに対しましては、非常な世論とさらに教育に従事する人たちの熱意によって、相当これに抵抗が行われておる。ところが弱い立場にある社会教育の面においては、これがなかなか世論というものが盛り上ってきていないのです。それをいいことにしてずいぶん無理な干渉が最近露骨に行われておる、ということを私は非常に悲しむものなんです。実は過日市川先生が御質問なさいましたことに対して、そういうことはございませんとはっきり御答弁になりましたけれども、これに対して、私はこの三日ばかりの休暇を地方へ出張いたしましていろいろ聞きまして、あぜんとしてきておるのです。まずお伺いいたしたいのは、青年学級と青年団、日青協ですか、これとの関係はどういうふうになっておるのですか、それをちょっとお伺いしたい。
  167. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 青年学級と青年団の関係でございますが、これは別に法的にそういった関係があるわけではございません。ただここに、青年学級におきましては、それぞれ地域々々の青年たちが、おのおの自分教養を高めたいとかあるいは技術教育を行いたいとか、こういうような要望に基きまして、市町村において青年学級を開設する建前になっておりますので、従ってそういう場合に、青年団の団員が多数それに参加するということは、これは当然なことだと思います。そういった美質上の関係はありますが、団と青年学級というものは直接関係はございません。
  168. 藤原道子

    ○藤原道子君 青年学級振興法ですか、あれができたときの質疑応答をちょっと見ましたけれども、そのときには、あくまでも青年学級は学習の場である、実習の場ではない、こういうふうに御答弁がしきりになされておる。ところが最近これをよく見ますと、運営をいろいろと検討してみますと、これがどうもそういうふうにいっていない。青年団が思うように文部省の意図のままに動かない。そういう所では青年学級を全県下統一の場として、これが実踐の場に乗り出しているというような事実がたくさん現われている。それもよろしい。ところが過日、これは静岡県の問題でございますけれども、青年学級でぜひ予算の補助をふやしてもらいたいということを知事に要求したのです。知事が、青年学級は何もしていないじゃないか、何か具体的な働きをしなければ予算を出してやれない、こういうことを言いましたために、これが社会教育課と教育委員会とで相談いたしまして、県下の青年学級の意見発表の大会をもった。そのときに清水市の代表が原稿を出した、ところが清水市の社会教育課からは三回本人を呼び出して、この原稿は好ましくない、ぜひこの点を改めるようにと、三回にわたって強要をしております。けれども、本人は、意見発表であるからゆがめるわけにはいかない、こういうことで拒否いたしました。ところが、大会当日に配付されました印刷物には本人が承知しなかったのにもかかわらず、ちゃんと改ざんされて印刷されている。こういうことは干渉にはならないのでしょうか。それで青年は非常な怒りをもって、大会では改ざんされたところはすっ飛ばして読んでいる。これが静岡県で問題になっております。社会教育課というところは、青年の自由を意思による意見発表であるべき場においても、原稿の書き直し、修正、削除を要求しておる。本人がきかなければ、本人が不承諾のままにおいて印刷物の上においては抹殺して書きかえておる。これは干渉にならないのでしょうか。
  169. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 今御指摘の事件につきましては、私も新聞で見ましたので、静岡県の教育委員会の方にそれがいかなる事情にあるのか聞いてみたのです。ところが、詳細のことはまだわかりませんけれども、御指摘のように、静岡県の各地区の青年学級の研究発表大会というのですか、それに一人の青年が意見発表をするということで、その意見発表の内容について多少、どういう誤解かわかりませんけれども、この青年学級は青年の敵だというような、こういう何か又旬があった、こういうことでございます。従ってそういう敵とかなんとかということでなくて、これは青年学級自体の、そういう青年側からのいろいろな誤解があるのではないかというような点で、十分この青年と、清水市でございますか、教育委員会の方とよく話し合って、そういう誤解を招くような言葉はやめて、そうして研究発表をするということで話し合いがついたそうでございます。従って、その話し合いに従いまして、その青年は研究発表をした、こういうふうに報告を受けております。従って今おっしゃるようなまあ不当な干渉といいますか、そういうことに当るかどうかは私どもはまだ判断の何は持っておりませんけれども、もしも今報告のようなことであるとすれば、これは話し合いでございますので別に不当な干渉とは考えておりません。
  170. 藤原道子

    ○藤原道子君 そういうことをお答えをするのに、教育委員会に聞いてやって、そうして一方的な教育委員会あるいは社会教育課の報告で、そういうことはございませんと言っていいのでしょうか。なぜ、真実を聞くならば両方を合わせて聞かないのですか。本人は絶対に了承しなかった。了承してあったものならば、大会においてはそのままを発表したはずなんです。改ざんされた所はすっ飛ばしているんです。自分の意に反した発表などはおかしくてできるか。こういうことで今静岡県の青年団では問題にして、まあ社会教育課さらに教育委員会との問題になってまだ解決いたしておりません。こういうことは厳重に一つ調査にならなければ、任命制になってからの教育委員会がどういう性格になっておるか、というようなことを考えますときに、その報告だけを聞いて一方的にそういうことはなかったとすましているところに、私たちは心配になる根本的な問題がひそんでおると思う。こういうことのございませんように、直ちに御調査をお願いいたしたい。  さらにひどいのは山形県、大分県、さらに岐阜県、愛媛県等々においていろいろな問題が起きている。これらを一々申し上げる時間的余裕がきょうはございませんので、この点もっと社会教育を真剣にお考えになっていただかなければならない。静岡県の問題でも、何も青年学級が青年の敵だというような言葉を使ったのがなぜそういうことになるのか。青年学級で自分の希望した講師を呼ぼうとすれば、この講師を呼んではいけない、この講師を呼ぶなら金を出してやらない、こういう講師を呼びなさい。上から全く圧力をかけて青年の意思をじゅうりんしている。そうして、青年を今の与党の意のままに動かそうとする意図が露骨に現われているから、そういうことを言ってきている。だからこの青年は、そうした青年学級、政府の御用機関にしようとするような青年学級に金を出すよりも、自主的な青年学級にもっと補助を出して、そうして十分に活動のできるようにしてもらいたい、こういう意見があったように私は聞いておりますが、その真相を御調査になってほしい。  ことに、さらに静岡県に起った問題でございますが、小笠郡においても講師を呼ぶときにはこの人を呼びなさい、この人はだめですとこう言っております。さらに同じ所に起りましたが、婦人会を集めて新生活運動をやるそのモデル地区を見に行こうというので伊東へ参りました。そうしてモデル地区の視察ではなくて、温泉旅館へ連れて行ってごちそうをして、新生活運動を今後大いにわれわれのところでもやろうじゃないか、ついてはこういう講師を呼んではいけません、呼ぶ場合の講師はこういう人を呼びなさい、婦人会にもこういう指導がなされている。しかもこれは与党代議士の地元なんです。与党代議士の選挙地盤に新生活運動が利用されている。青年学級が利用されている。青年団が利用されている。これをがえんじない場合には圧力をかけてくる。こういう社会教育があっていいものかどうかということが、今非常に問題になっておりますので、その点を一つ……、あなた方の、そういう意図でやっておられるのではないと、御答弁はきまっておりますから、私は御答弁は聞きませんけれども、そういう例がもうほとんど全国に起っているということをお考えになって一体これでいいのか。  さらに今度の青年の家の予算が出る動機にいたしましても、これは自民党の青年部が立案をして、自民党の政調会を通りこれが文部省に流されて、そうして文部省でタイプを打ったものが全青協へ行っている。こういうものを持って文部省に陳情にきなさい、こういうことがなされている。だから文部省にある陳情書の写しは、本場は文部省にあった、こういうことさえ世間では言われております。私もこの点に対しまして十分調査をいたしましたが、どうもそうらしい。だから偏向教育を叫び、それの是正を叫ぶ文部省が、こういう偏向教育をみずからやっているということは、私はあなた方の良心にまつ以外にはございません。これもこういう事実があるということを私は申し上げたいと思います。  そこで新生活運動とはどういうふうなもので指導されておいでになるのか、青年の家というのは今後どういう気持で運営されていくのか、これについての御答弁を求めます。みえすいた答弁は要りません。
  171. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 新生活運動の問題でございますが、これは私の方で直接新生活運動の推進をやっているわけではございません。御承知のようにこの新生活運動実施本部がありまして、各府県にこの支部がございます。そういった関係で新生活運動の仕事をやっております。ただ地方の社会教育関係する部面におきましては、それらの団体といろいろ連絡をしながらやるというのが建前になっておりますので、具体的な事項に応じてこちらは協力していく、こういうような建前をとっております。  それから青年の家の問題でございますが、これは自民党の関係をおっしゃいましたが、私どもは青少年の家というものは青少年の野外活動の拠点として作る必要がある、こういうような観点からすでに三年以前からもうこういうものをやっておりまして、別に党の関係でいろいろおやりにならなくても、私どもすでに二十六カ所全国に設けております。従ってそれを何とか今後発展させたい、こういうような考え方を持っております。従って三十三年度に、従来わずかでありました予算が、約六千万円計上されましたので、これによってこの青少年の野外活動、その他の拠点になるような施設を作ると同時に、また現在この青年団方面におきまして、青年の職業教育という面を非常に重要視しておりますので、そういった職業教育一つのセンターとでもいうべき施設として、これが活用できれば幸いだと、こういうような考え方で今後青年の家を建設していきたいと考えております。さしあたり三十三年度におきましては、六千万円の予算で十五カ所ぐらいを考えております。  なお、先ほど静岡の問題をおっしゃいましたので、ちょっとつけ加えて申しておきますが、この青年学級について講師云々の問題は、これは具体的に存じませんけれども、しかしながら市町村が開設しますので、ただ青年がこういう先生に習いたい、こう言いましても市町村自体が、それはこういう先生にした方がいいのじゃないかというようなことは、市町村の教育委員会であるかもしれません。しかしながらそれはおそらく青年たちと十分話し合ってやるべきことであると考えております。もしそういうことでなくていろいろ意見が出ました場合に、あくまでその青年たちと市町村の教育委員会と十分話し合ってきめていく問題だと考えております。  また先ほどの清水市の問題でございますが、これは私ども調査したところによりますと、青年団活動が非常に忙しいので青年学級に出るひまがない。それにこの青年はその団長としていろいろな責任を負わされているので、そういった面でこの青年学級の出席も悪くなるし困る。こういうようなことを述べて、さっき申し上げましたように青年学級というものは敵だというような、こういう強い言葉を使っておったというのが真相のようでございます。従ってそういう関係におきましては、何ら、私ども今調べた範囲におきましては、干渉がましいことはなかったと存じます。
  172. 藤原道子

    ○藤原道子君 あなたは一方的にそういう断定をしていらっしゃる。当時おいでになってほんとうにお調べになったのじゃないでしょう。青年がそういうふうにあなたに答えたのですか。教育委員会報告なんでしょう、どうなんですか。
  173. 福田繁

    政府委員(福田繁君) もちろん教育委員会を通じて調べた調査でございます。
  174. 藤原道子

    ○藤原道子君 教育委員会の今日の姿がどういう姿かということなんですよ。問題を起した教育委員会にあなたがお聞きになって、実はこれこれで干渉いたしましたと言うはずがないじゃございませんか。そういう考え方で文部省が社会教育を指導しておいでにる、御自分の思うつぼにはまったやり方であって、調査を真実なさろうとなさらないでしょう。私は今の御答弁では不満足でございます。でございますから、事実を必ず調査していただきたいということを強く要望いたします。ことに静岡県下では青年団の活動している活動分子の思想調査をしている事実もございます。こういうことは文部省の今日の指導方針であると私は考えております。もしそうでないならばこれを十分調査なさって、具体的に御報告をいただきたい。こういうふうに考えます。講師のあっせんも、この人を頼みたいのだけれどもと言った場合に、これでなくこれにしなさいというようなやり方であるが、どうか。私どもは事実を知っているだけに、あなたのお答えがあまりにもそらぞらしいように聞えてならない。  さらにお伺いしたいことは、青年団の問題は時間がないので後日に譲りますが、それよりも過日の市川さんに対する御答弁で、大分の全公連の大会のやり方に干渉した事実はないかと、こういう御答弁であった。ところが私が調査したところによると、これは干渉でないとあなたが言い抜けるならばこれはいたし方がない、第六回の全国公民館大会の場合、そのプランに対して大きな干渉をなさっておられるようである。講師の派遣を、放送討論会のスケジュールにあったのに、これが予定された伊藤昇氏をけっている。ところがあなた方はそういうことはないと言われるが、それならばお伺いしたいのですが、教育という雑誌の十二巻七号に掲載されている記事でございますが、「今回の大会の一週間前まで放送討論会のことで、NHKと文部省との間に意見がまとまらず、(NHKは地元案を了承した。)日程は二日間で打ち切って放送討論会は付帯的なものにしようなどと文部省が言い出したためにもめたそうであって、そのために土地の人たちが飛んで来たり、あるいは地元の県の社会教育課長までが心配のあまり飛行機で東京に飛び出して来るような状態に追い込まれた。あのときの苦心と焦慮は今もなお忘れ得ないところである。そこでこれによって大会のあり方に深く考えさせられたが、大会はあくまでわれわれ公民館人の大会として自主的、独立的に計画、立案し、文部省などは後援者として側面から協力を仰ぎ、共催者からははずした方がいいと考えている、云々」と、まだ続いておりますが、そういう記事が載っている。ところがこれに対して文部省から何ら意見が出されておらないし、了解されたものと私は思いますが、こういうことに対しても講師のあっせんその他で、何にも干渉した覚えはないと、これで打ち切っておしまいになるのでしょうか。しかも文部省は、公民館の大会などは共催でやることが正しいとお考えになっておるか、どうなんでしょうか。これでも干渉した事実はないかどうか、はっきり言い切れるのでございましょうか。
  175. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 予算第四分科会委員委員より発言を求められております。これを許します。鈴木強君。
  176. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) 関連して。私は発言する予定ではなかったのですが、今藤原委員質問に対して政府委員の答弁は納得できない。だから質問をしたいのですが、清水の青年学級の問正題に対し、少くとも意見発表の際にとったあなた方の監督の立場に立つ人たちのやり方というものは、これはまことに言論の自由の統制であるし、封殺ですよ。少くともどういう意見を発表しようが、その発表の方法が、表現がどうであろうとこれは自由です。かりに青年学級というものが敵だという表現を使ったとしても、それならそれで、それでないということを堂々と発表すればいいのであって、少くともこう書いて、こう発表したいという意思を曲げたということは、これは干渉でないというわけにいかぬと思うのですよ、戦前の治安維持法の時代のように、われわれが演壇に立って少し変なことを言えば、「弁士中止」というのと同じじゃないですか。今、民主主義の時代に、少くとも私は本人の発表しようとする考え方を、意思を封殺したということは、言論統制でないですか。あなたは干渉しないと言うけれども、そんなことはないですよ。これは私は聞き捨てならないので、文部大臣のそれに対する見解を承わっておきたいと思います。これは実際この放送なんかでもそうです。今政府民間放送を使って、そうして政府都合のいいような宣伝をしております。昨年も私は石田官房長官の当時、私の委員会に来ていただいて、具体的に民放がこの講師とこの講師によって放送しよう、こういう講師の選定をしたところが、政府はこれに干渉して、そうして遂にやらせなかった事実がある。これは剱木委員長も当時逓信委員会におられたので知っておいでと思いますが、そういうような不当な干渉を政府がやってきているのです。私は少くとも教育行政をあずかる文部省は、絶対に思想的には中立であらねばならぬし、その監督については十分中立な立場に立ってやらなければならないにもかかわらず、こういった静岡のような問題が起き、しかも講師の問題については、不当な干渉が行われているのですよ。しかも、その際に具体的に調査をされて、ここでこういう事実があったということを認めておりながら、現実にやった行為が干渉でありませんと、こういうことを言うことについては、まことに私はけしからぬと思う。これは一つ文部大臣から、これに対する明確な答弁を要求しておきます。
  177. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました青年学級の研究発表会で、青年学級は敵なりというような文句があった。それがほんとうかどうか私は初めて聞くのですが、(「ほんとうだ」と呼ぶ者あり)そこで、そうした問題についてその青年学級のうちでか、あるいは教育委員会ですか、そういう方面と、そういう乱暴な言葉を使うには、こういうふうにしたらどうかというように妥協してやったのかどうかそれはわかりません。しかしもしそうでなく、強圧的にやらしたとすれば言論の圧迫というようなことも言えるでしょう、しかしこうした問題については、まだ何の報告も具体的に私は受けておりません。しかし、さらに政府委員の福田君が、この問題について一応は承わって研究したそうですから、だからよく詳細に一つこれは研究して、そうしてそういう事実があったかどうかということを、研究の上であらためてまた申し上げてみたいと思います。
  178. 藤原道子

    ○藤原道子君 事実があるから言っているのです。
  179. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) それならそれでいいんです。あと十分に調べて、そうでないかどうかはっきりするというならわかるのですが、少くとも福田さんは今読み上げて、こういうのが真相でしょうということをおっしゃって、これは干渉でない、こうおっしゃっているから問題なんです。だからもし具体的な調査がないなら、福田さんもそこで言い切れないと思いますよ、あなたが具体的なそういう事実が、あなたのおっしゃっているように何も強制的でなかった、本人が了承してやったんだ、これは先だっての羽田の宮良君の問題じゃないですが、まあ一つはだかになって下さい、検査しますよ、よろしゅうございますといってはだかになったかもしれないが、あれと問題は同じですよ。具体的な問題は文部大臣は最終的に知らぬと言うのを、一方的にあなたの調査だけで、これは干渉になっていないなんということを言うのは行き過ぎじゃないですか。どうですかその点。
  180. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私は事実を申し上げましたのと、それから教育委員会から報告のありました限度におきましては、そういう十分話し合いをして、納得して、その不穏当な字句は訂正されたというように報告を受けておりますので、その限りにおいては、先ほど申しましたように、不当な干渉ではないのではないか、こういうように申し上げたのであります。
  181. 鈴木強

    担当委員外委員(鈴木強君) やはり本人の意思は明かに——これは表現が悪い、いいは別として、本人は青年学級は青年の敵だ、こういうふうに書いたわけですね。ところが、それが気に食わないから、教育委員会は何とか直してくれないか、こういう話をしている。しかもこっちの藤原委員の話しによりますと、そう言ったが、本人は発表の日自分の原稿通りに読んだということであれば、これは明かに本人の思意というものは、話があっても、いや私はこれを信念で、こう信じているのだから、これを発表したい、これをいけないという根拠はどこにもないでしょう。これを押える理屈はどこにもないですよ、そうでしょう、それに対してあなた方の方で、これは不穏当な言葉だから変えなさいということでもって、かりにその点が直って発表したなら別でありますが、直っていないのじゃないか。発表しているのは、自分の作ったように発表しているのでしょう。そうするとそれは不当な干渉と言えないですか。そうすると、これは非常にそういうごまかしというか、筋の通らない答弁をしたってだめですよ。これは明かに干渉ですよ、そうでしょう。今の時代に自分の言おうとするところが、自分の意思が自由に言えない時代じゃないと思う。どういう根拠に基いて言論を封殺するようなことをやったのですか。それでも不当干渉じゃないのですか。
  182. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はどうも納得がいかないのです。今、鈴木さんの言ったように、実はこれは先ほども申しましたが、教育委員会からの報告で、そういうことはなかったとあなたは断定していらっしゃる。ところが、教育委員会では三・四にわたって本人を呼び出している。折衝したが、本人は承知しないで帰っている。たまたま配付された印刷物には自分の意思でないものが載っていた。不穏当と言うけれども、不穏当なら、意見の発表の大会ですから、青年学級は敵だと思ってその人は発表する、しかし、それを敵でないと思っている人は、不穏当な発表であるならばこれに反論ができる。そこで正しい結論が出てくるというのが、意見発表の意義あるものじゃないでしょうか、私はそういうふうに思う。それなのに、あなたはそれをそういう方向へ持っていった下手人にあなたは聞いていらっしゃる。教育委員会がやっておいて、そうしてあなた方のおっかない本省の役人に、事実を、私はこういうことを勝手にやりましたというふうに言うはずがない。そういう調査をしておいでになるから、教育行政がちぐはぐちぐはぐになってくる。不当な干渉であると私は思う、あなたは不当な干渉じゃないとおっしゃる、これだけ私が申し上げても、不当の干渉じゃないとおっしゃるのですか。あるいは大分の問題に対しても、そういう事実があったかどうか、不当干渉でないとさらに断言できる勇気がおありになるか。
  183. 福田繁

    政府委員(福田繁君) この問題は、なお私の方としましては、県の教育委員会調査を一応求めたのでございまして、さらに詳細な調査が必要であれば、もう少し調査をしてみたいと思います。  それから大分の問題につきましてお答え申し上げますが、この大分で開きました全国公民館大会の問題は、これはいろいろ誇張がありますけれども、講師の問題について、いろいろ県の教育委員会なり、あるいはNHKの出先と、それから東京側といろいろ意見の一致しなかった点はありますけれども、それは手続の問題でありまして、何もそういっただれそれをオミットするとか、そういったことはございません。従ってその手続の問題は最後的に完了いたしまして、そうしてその当初の計画通りに実施したのであります。この全公達の大会の問題につきましては、これは文部省も共催者の一員に加わっております。従って、当然その大会の内容につきましては、文部省も責任を持っておりますので、文部省、全公連それから開催地元の教育委員会というものが、三者で一緒になって相談をしてきめるのが建前であります。ただ、大分という非常に遠隔の地でございましたので、十分連絡がとれなくて、その間にいろいろ連絡不十分な点があって、そういった多少のトラブルを起したことはこれは事実でございますので、今後われわれとしては、そういったトラブルを起さないように、その三者、地元開催の県あるいは全公連それから文部省というようにやっていきたいと考えております。ただ、今後。共催した方がいいかどうかというようなお尋ねでございますが、これは一つ共催でもよろしいし、あるいは共催しなくても、後援というような形でも十分やっていけるのじゃないか、かように考えております。もちろん、そういう場合におきましては全公連であるとか、当該教育委員会というものが希望がありますので、その希望に従って処理したいと考えますが、その別府の際におきましても、ぜひとも共催に入ってもらいたい、こういうような建前で要請がありまして、また、将来の問題として、ことしも全国公民館大会を開くわけですが、これにつきましてもまだ決定はいたしておりませんけれども、共催でやってもらいたい、これは非常に地元の強い要望がございます。従ってそういうことでございますので、今後は共催にするか、あるいは後援にするかということも十分研究していきたいと思います。
  184. 藤原道子

    ○藤原道子君 若干の手続の相違だと言って逃げておしまいになる。手続の相違だということは、私、納得いかないのです。共催にぜひなってくれと言ったことも私納得いきませんが、まあ、それでもきょうはあまりやりとりしている時間がありませんけれども、しかし共催になれば、いろいろ主張するのもあたりまえだと、こうおっしゃる。社会教育法ではどうなっておりますか。この全公連ではこの大会は前々から原案には、法律の改正問題であるとか、いろいろの問題が大会の議題として、運動方針として織り込まれている。ところが、文部省はこれを反対して削除させたじゃありませんか。自由な意思でやられるべき社会教育のあり方が、文部省の圧力でその意思に反するような結果になることは私は好ましくないと思う。従いまして共催という名のもとに、しかも費用は一文も出していない。そうじゃない。全国で三万八千もある公民館、これの支配ということが私は大きなあなた方の意図であろうというふうに、まあ皮肉かしりませんが、私はそういうふうに理解いたします。  それから具体的なはっきりしたことを言わなければ、答弁を逃げておしまいになるので、若干お名前が出て御迷惑な方が出るかもわかりませんけれども、私は以下二、三点お伺いをしたいと思うのです。文部省では決して干渉はしていない。自主的にやっているのだ。ここで逃げておしまいになりますが、そこで私の納得のいかない点を二、三伺いたい。と申しますことは、この全公連の機関紙が長く休刊になっている。これを復刊しようというみんなの希望のあることは事実です。そこへつけ込んで、文部省の宮地というのですか、社会教育課長が、昨年の七月六日に行われた全公連の評議員会の開催を前に、全公連の会長に書簡を送っております。その書簡によりますると、この復刊については、これはある出版社を指定しておいでになる、第一法規から発刊するように、そして第一法規からは月々三万円の補助が出る。事務所も提供する。こういうことが条件として出されている。(「けしからん」と呼ぶ者あり)同時に、私はさらにこれは文部大臣にも聞いていただきたいのでございますが、この第一法規の理事あるいは文部省の課長、局長などが赤坂の料亭吉松で会合しておいでになる、こういうことは一体どういうことでございましょう。私は少くとも道徳教育を強く打ち出しておいでになる文部省の、その責任ある社会教育関係しておいでになる人たちが、所もあろうに、営利会社の人たちと赤坂の料亭で会合を持つということがあってよろしいのでございましょうか。この点私はしかと大臣の御所見を伺わなければなりません。そしてこれをやるためにじゃまになる人を、とうとう何だかんだといって事務局長取扱から追放いたしております。自分たちの意図が行いがたいときには、じゃまになる人たちが次から次へと追われておりまするのが、今日社会教育関係する面におきまして、全国各地で行われております。こういう例はもし事実名前をあげろとおっしゃれば私全部あげます。こういうことがあっていいか悪いかお伺いいたします。
  185. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 全公達の問題でございますので、私が先に答えますが、この全公連の機関紙の問題でございますが、これはもうだいぶ前から休刊になっております。今のお話しのように全公連の機関紙を何とか出したいというのは、関係者の一致した希望でございます。ところで、全公連は御承知のように会費の徴収もなかなか意にまかせません。従ってこの借金もかさみまして、機関紙を出すことができないというようなことで、会長になりました方がいろいろ奔走したのでありますけれども、どうもうまくいかない。そういう関係から、先ほど名前をあげましたが、そういった方でなく、私のところに全公達の会長が何とかあっせんをしてもらいたい、こういうことを頼みにいらっしゃいました。従っていろいろ考えまして、第一法規に話をいたしましたところ、全公連の関係機関紙であれば、自分の方で引き受けてもよろしいというようなお話しでございましたので、われわれは全公達の会長とそれから第一法規の関係の方とも相談をしてもらって、最近になりましてようやくまあ機関紙を出そう、こういうようなことにきまったわけであります。  ただいま事務局長の問題をおっしゃいましたが、これは私も内容はよく存じませんけれども、前々から内部におきまして、いろいろ会長と対立があったように聞いております。従ってそういったことで、まだやめたかどうかははっきりいたしませんけれども、そういった事務局長と会長との対立の問題があったことは、事実でございます。
  186. 藤原道子

    ○藤原道子君 赤坂へいらしたことあるでしょう。
  187. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまの御質問のような料亭は、私は記憶いたしておりませんけれども、全公連の方とそれから出版社の方と私どもと打ち合わせばしたことはございます。
  188. 藤原道子

    ○藤原道子君 まさか料亭へ行ったとは、お答えにはなれないと思いますから追及はやめます。しかし、今会長から頼まれたとおっしゃる。ところが、全公連の、前の会長さんはどうも工合が悪い。とうとうこの人がやめられまして、今日の全公達の会長は自由民主党の県会議員、従いましてこの人と、正しく民主的な社会教育機関としての全公連を守り抜こうとする立仙さんとでは、意見が合わないのは当りまえですけれども、意見が合わないからといって、あるいは事務官が、あるいは課長さんが事あるごとにやめるように、どうだこの際ほかへ転出してみたらどうかというようなことで、いやがらせをして、そうして今回事務局長になられましたのは、くさいとわれわれがねらっておりますところの、第一法規からおいでになったでしょう。しかも、この第一法規は、あなたが調査局時代に第一法規で雑誌学校管理」を発行されて、これが当って現在第一法規のドル箱と言われておる。こうした因縁があるのです。ここに、極力そういう疑いをもって見られることは避けなければならないときに、ことさらそこから、雑誌発刊について、これを条件として三万円出さす、そうしてまたさらに、そこの人を全公連の事務局長に据え込む、こういうことでよろしいのでしょうか。世間というものは、何にもなくても疑いの目を持ちやすいものなのであります。ことに社会教育に関しましては、もっときれいな、疑いの余地のないような態度をとっていただかなければ、私たち困るのです。私たちの日常活動も、ある面におきましては、社会教育の一端をになっていると言っても私はいいと自負しているのです。ところが、文部省がこういうことをなされるというに至りましては、まことに困るのでございます。さらに、文部省のある課長さんは、外国へおいでになったときに、帰ってから原稿を書くから、金を二万円ばかりくれ、ところが、帰ってからは、原稿を書いちゃおらぬ。視察してきた資料だけ渡して、とうとう原稿を書かないで金を取っておる。こういうことをしたんじゃ、私たちはあなた方を信頼できないでしょう。こういう事実はないとはっきり言えますか。これであなた方は、一面において、日教組が偏向教育だ、校長なんぞ今度は管理職にするとか、教員の勤務評定をつけるのだ、こういうことがよくぬけぬけと言えると思う。こういうことがあっていいかどうか、しかも、第一法規の人をここに入れる場合に、何ら機関の決定も行われていないやに私は聞いている。これじゃ私、社会教育というものの名が泣くと思うのでございますが、こういう事実があるかないか、これで、干渉してないとはっきり言えるかどうか、この点についてのしっかりした御答弁を伺いたいと思います。
  189. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまの御質問でございますので、誤解のないように申し上げておきますが、事務局長の問題につきましては、先ほど私が申し上げたように、会長と事務局長との意見の対立は、確かにあったようでありますが、この会長は、全公達の評議員会等の正式の機関によって選ばれた会長でございまして、これをとやかく言う筋合いのことはなかろうと思います。それから、今度新しく事務局長に予定されております方は、第一法規の者ではありません。私も、以前はよく存じませんけれども、人事院の誤長の仕事をやっておった方でありまして、(「兼任しているんでしょう」と呼ぶ者あり)これはりっぱな方だそうでございます。それか、「学校管理」という雑誌を私が調査局長時代に出したということを申されたのでありますが、「学校管理」という雑誌は、私関係したことはございません。何かの誤解だと思います。調査局時代に、その第一法規とあたかも何か関係があったように申されましたが、私は、第一法規とはそういう関係はございません。その点は、誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。なお、そういった全公連の内部事情について、いろいろ御存じのようでございますが、単に事務局長のお話、あるいは一方的なお話でなくて、会長のお話も十分聞いていただきたいと、私はお願い申し上げたいと思います。
  190. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、まだ立仙さんという人には会ったことがない。全然会ったことがない。私は、一方から頼まれても、公平な調査をしなければ、取り上げたことはないのです。私は、立仙さんに頼まれたものでもなければ、立仙さんという人に全然会ったこともございませんけれども、こういうことは、全国公民館に私どもはときどき行くことがある、そういうところで会長さんなり、そこの人たちから、非常な不満の声を今までもたびたび聞いてきている。もうこれは文部省の御用機関だ、与党の御用機関になり下りました、公民館運営の熱意をわれわれは欠いて参りました、こういうところで正しい意見を吐けばにらまれるのです——こういうことで、社会教育の実をあげることができるかどうか。外国へ行って見ますと、今日ぐらい成人教育に熱を入れているときはないといわれるほど非常な熱の入れ方です、成人教育に。ところが、日本においては、党利党略に偏した指導干渉が行われておる。これでよろしいかどうか。これは、大臣にもしっかり責任ある御答弁をお伺いしたいと思います。結局、公民館の機関誌、こういうものはどういうあり方で発刊されたものがいいか、協議会の機関誌というものは、機関の決定をみて十分なされるものと思うけれども文部省の一方的な圧力によってそういうことがなされていいかどうか、こういう点。それから、文部省は、助言をしているだけだと言って逃げておりますけれども、ただいま申し上げましたような、そういう確実な資料を持って、私はお伺いいたしておりますので、こういうことが不当干渉とはならないと、大臣はお考えになるでございましょうか。こういう点につきまして、私は、時間がございませんので、きょうはこの程度にいたしたいと思いますが、まだ人事の追い出し事件、内部対立のいろいろないきさつなども、私はここに持っておりますけれども、きょうは時間がございませんので、この程度にいたしますが、大臣として、社会教育のあり方がいかにあるべきかということについて、責任ある御答弁を伺わしていただきたいと思います。
  191. 松永東

    国務大臣松永東君) 申すまでもなく、社会教育は、不偏不党でなければならぬことは、これは論を待ちません。ただしかし、さっき仰せになりましたことは、私は今初めて聞くのです。(「大臣、初めてのことばかりじゃないですか」と呼ぶ者あり)初めてのことばかりです。今あなたから聞いたのが初めてですよ。私は、何もそんなことでうそを言う必要はありはしません。初めて聞いた。しかもそれは、第一法規がどうじゃとか、全公連がどうとかおっしゃいますけれども、私は、そういうものは一ぺんも聞いたことはない。さらにいわんや、赤坂などという所へとういことをおっしゃいましたけれども、私は行ったこともない、文部関係で。何も知らぬ。ですから、私は一つ研究してみたいと思います。調査してみたいと思います。
  192. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの藤原委員質問については、速記録を調査し、なお調査しまして、他の機会に質問を譲りたいと思います。分科会は大へん時間がおくれましたが、最後でございますから、恐縮ですけれども、ごく簡単に、ちょっと聞かさしていただきたいと思います。  大蔵の事務当局に伺いますが、高等学校並びに大学の機械器具の近代化、更新ということは、非常に大きな問題であります。明治時代に購入したのが二割で、戦前のが六割、戦後の機械器具は、わずかに二割しか入っていないという状況で、研究にも困っておりますし、また不能率であり、光熱費等ずいぶん浪費しているわけですが、予算の査定をし、また予算編成の作業をしている大蔵事務当局は、科学技術の振興と関連づけて、こういう理化学設備の更新という点については、どういうお考えでいらっしゃるのか、この際、伺っておきたいと思います。
  193. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) ただいま御質問の、大学及び高等学校の設備費の予算の問題でございますが、まず、国立大学の問題につきましては、ここ両三年来、不十分ではございますが、古い設備の更新及び新しい研究のテーマに応ずる設備の備付ということにつきまして、できるだけの配慮はしてきたつもりでございます。三十三年度の予算としましては、大学の経常費がとかく不足であるという実情にまず着目しまして、学生経費及び教官研究費を相当増額しております。従来は、理工系及び文科とも、大体同じような割合で引き当てておったわけでございますが、三十三年度は、理工系に重点を置きまして、学生経費は前年の約四割増、それから、教官研究費につきましては、講座制の大学において二割ほどふやしております。それから、設備充実でございますが、これも、前年の十五億に対しまして、約二億ほどふやしております。このほか、特定の研究といたしまして、原子力の研究あるいは原子核研究所、物性研究所あるいは新設を予定されております蛋白の研究所等につきまして、それぞれ所要の設備費等を計上しております。なお、私立大学関係では、これは、理工系の学生の増募及び私学振興という見地から、科学研究基礎設備の補助金及び理科の設備費の補助金を相当大幅にふやしております。高等学校の設備につきましては、これは、小、中学校と合せて、理科教育の振興法に基く設備費補助金が計上されておりますが、これを前年度に対しまして約二割程度増額するほか、産業教育関係では、新たに電気及び機械の課程の新設に伴う設備及び施設費というものを計上しますほかに、産業科、これは短期コースでございますが、それの新設に必要な設備費というものを計上しております。これでも、現状から見ますとなお不十分であるかと存じますが、国の財政の関係もございますので、逐次この増額をはかっていきたいというふうに考えております。
  194. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 主計官として勉強なさっておる点は多といたします。しかし、そういうことでは、私は解決できないと思います。物性研究所あるいは原子核研究所等の予算がふえたということは、それで小額ながらよろしいわけですが、問題は、高等学校大学にいたしましても、既存の設備、施設、ことに設備ですが、そういうものが非常に旧時代的なものだ。大体明治三十年ごろの機械がずいぶん入っております、五割くらい……。とてもこれでは問題にならない。そこで、文部省の当局に伺いますが、一体大学の理科系統の設備を、まあまあこの程度ならという程度に近代化するには、どの程度予算を要するとはじいておられるのか。その年次計画をどう持たれておるのか。それとあわせて、先ほど伺って答弁を保留になっておる、高等学校以下中学校、小学校の生徒一人当りの一年の実験費、それを伺いたい。
  195. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 大学研究並びに教育の設備の問題でございますが、これは、申し上げるまでもなく、科学の進歩が非常に急速でございますので、どこまで持っていったらそれで足りるかということは、なかなか算定がむずかしいのでございます。ただ、従来ございます、特に工学部の実験工場等の設備では、老朽のものが相当ありますので、これを何とか更新していきたいということは、強く考えておる次第であります。
  196. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 金額は。
  197. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 金額は、非常に算定はむずかしいものでございますが、先ほどお話のございました、戦前購入の設備等の調査をいたしておりますが、これも、またその中にもいろいろ種類がございます。一応百三十億くらいのものを更新いたしますと、非常に目的の研究あるいは実験教育のために資するところが大きいと思います。ただ、財政の関係等もございますので、なるべく古いものから逐次更新していきたい。一方また、先ほど冒頭に申し上げましたように、進んで参りまする研究分野に対しまする新しい高性能の装置を備えつけていくという問題もございますので、両々勘案いたしまして、進めていきたいと思います。
  198. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 先ほどお尋ねの実験実習費でございますが、中学校については、実態調査したものがございますので、大体六十円から七十円の間でございます。これは一人当り。で、小学校及び高等学校は、サンプル調査及び推定でございますが、小学校はその半分ぐらい、ほぼ三十円程度でございます。それから、高等学校は百二十円ちょっと上回るかと思いますが、すでに財政計画でも、百二十円の財源措置はいたしております。  それからなお、この機会に、先ほどお尋ねの小、中学校のピークのときの人数の点がございましたので、申し上げますが、小学校は、三十三年が最高でございまして、千三百三十七万七千でございます。それから中学校は、ピークは三七年でございまして、これは七百万六千、これがピークです。それから小、中合せたもののピークは、先ほどお答え申しましたように、三三年の数でございまして、千八百三十七万七千でございます。それから最低は三八年でございますが、三八年が千六百七十九万八千でございます。
  199. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その数字は、承わっておきます。  そこで、大蔵事務当局に伺いますが、あなた方査定されるに当って、国家財政の関連もあって、なかなか思うようにならぬと思いますが、大学研究者に聞きますと、ここに機械の修理費三十万円もらうと、二百万円、三百万円新規購入すればかかる程度の機械に直し得るというのですが、その二十万円、三十万円の修理費をなかなか大学当局に割り当ててこないというのです。それがあれば、不十分ながらも、新しく買えば三百万円ぐらいする機械に直せるというのです。そういうことをあちこちで聞くのですが、あなた方、国家財政が苦しいわけですけれども、査定をし、また予算編成の作業をやる場合、そういう研究考慮もされるべきじゃないかと思いますが、御所見はいかがですか。
  200. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) 御案内の通り大学研究及び、これは学生の実習の経費もでございますが、含めて、運営費は、学生経費、教官研究費が二つの大きな柱になっておりまして、これに設備充実その他特定した研究テーマにつきましての経費が計上されておるわけでございます。そこで各大学は、この教官研究費、学生経費等から配分のありましたものをそれぞれ各大学が使うという建前になっておりまして、この学校運営費の大部分を占めますところのこれらの経費につきまして、私どもとしましては、一々どういう使途に充てるかということを予算で拘束しておりませんし、また約束もしているわけではないのでございます。従いまして、各大学におきまして、これらの経費をそれぞれ各学部にこまかく分けてしまうところも、あるいはこれを学内において一括運用して、重点的に使うというようなやり方をやっているところもあるわけでございます。もちろん、これは校費一本で組んでおりますので、これらの経費は設備の更新費にも、あるいは設備の補修費にも、いずれにも自由に使えるようになっておりますので、もし、お話しのような設備の補修費という方に使う方がはるかに効率的ならば、私どもとしましては、そういう使い方を希望するわけでございますし、また、その程度の、二十万、三十万といる程度の金は、大学全体としては生み出せるものではないかというふうに考えております。
  201. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その二十万、三十万が、なかなか生み出せないのです。なお、校費一本の予算の編成の仕方について問題がありますが、時間がないから他日に譲ります。  これと関連する問題として、次に承わりたい点は、経済五カ年計画に即応して、八千人の技術者養成を企図している。来年度千七百人ばかり増員するわけですが、この八千人の養成計画については、私立大学に若干数期待したわけですが、これが順調にいっているかどうかということと、それから私立大学の理科特別助成は、昨年の五千万に対して、本年度一億九千八百五十万円、約四倍組まれたわけですが、しかしながら、私大当局の要望の点からいうならば、これはスズメの涙という程度ですが、まあしかし、私大としては、なかなか理科設備ができないので、補助率は四分の三にという要望があったのですが、この補助率はへ予算金額は減じられたけれども、やはり四分の三でいくのか、あるいは八千人の養成計画のうち、私大に期待したものは、この三十三年度から順調にすべり出しているのか、その二点をお答え願いたい。
  202. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 科学技術関係で、科学技術者養成でございますが、昨年度この話が始まりましたのは、割合に時期としておそかったのでございまして、そのために、私大の方に文部省の方から連絡をいたしましたが、本年度と申しますか、三十三年度新たに、学部なり、学科の増設をして定員を増すというのは、大体五百二十人程度でございまして、私どもの当初の計画よりは下回っております。しかし、三十三年度以降は早期に私立大学側に連絡いたしまして、何とか当初の計画が実現できるように努力をして参りたいと思っております。なお、私大理科特別助成の関係でございますが、これには二通りございまして、既存の設備関係を充実する、学校教育上必要な実験、実習器具、機械あるいは設備、その充実をするという経費につきましては、これは実は三十一年度から予算が取れております。補助率としては二分の一で実施をしておりますので、三十三年度以降もこの二分の一のままやりたいと思っております。なお、新増設の関係につきましては、できるだけ高率の補助をしたいということで、予算要求をいたしました。ただ四分の三になるかどうかということにつきましては、まだ大蔵省との話し合いができておりません。文部当局としては少くとも二分の一以上の高率をもって実施したい、こういうふうに考えて、まだ大蔵省と折区中でございます。
  203. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大臣、私はもう詳しいことは伺いません、結論だけ伺いますが、私もだいぶ考えた末の質問なんですが、それは理工科系は全部国立にして、それから法文系は全部私学にする、こういう今後の大学のあり方について、大臣はどうお考えになりますか。
  204. 松永東

    国務大臣松永東君) そういう話は聞いております。そういう説もあることは聞いております。そうして実際理想としては理工科系は相当費用もかかるのですから、器具、機械の設備もしなければならぬのですから、これは国立でやって、そのかわり法又系は、あなたの言う通り向うに回す。向うというのは、私立に回すということもいいじゃないかというふうにも考えておりますが、何せ、これは教育界を荒療治せんけりゃならんことですから、なかなか簡単にはそう計画は立てられぬと思う。しかし、大いに研究してみたいと考えております。
  205. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点誤解を受けると困りますので、ちょっと簡単に申し上げますが、国立の方は尊重されているが、私学の方は軽視されているという立場から論じているのではない。御承知の通り、英国においては全部私学ですが、国から六割ないし七割の補助をされているが、国から何のひももつかずに、補助金委員会でうまく運営されているわけですね。私はそういう立場から、国立になった教科なら尊重され、私学になった教科が軽視されるというのではなくして、私はそういう立場もあるのではないかという考えでありますので、ちょっと伺ったわけです。  で、あと二点簡単に伺います。報償費ですね。あれは文部省は大蔵省に要求したのですか、しなかったのですか、したけれども文部省は認められなかったのか。
  206. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 文部省には報償費はございません。
  207. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは要求したのか、あるいはしないのか、要求したけれども削られたのか、伺っておきます。
  208. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 要求いたしません。
  209. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 要求しないのは、どういう意味で要求しないのですか。
  210. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 報償費を特に必要といたしておりませんので要求いたしません。
  211. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣に伺いますが、私は報償費を全部ずっと調べていますが、労働省三百八十九万二千円とっている。裁判所でも五十一万二千円ですね。報償費の中にも、報償費の内容によりけりで、問題は内閣官房のように、本年度一億九千二百八十万円という報償費を持っている。外務省の在外公館のごときは四億九千百万円も取っている。私はこれを見て、文部省がどうして報償費がないのか不思議に思ったのですが、これは閣内意見の不統一じゃないですか、大蔵省の答弁を求めます。
  212. 相沢英之

    説明員(相沢英之君) ほかの省の関係は、私は担任以外のところはあまり存じておりませんが、報償費はむしろ組んでないところの方が多いじゃないかと思います。で、現在組んでおります報償費は、この前も予算委員会で論議があったかと存じますが、やはり外務省とか検察庁その他特別な調査、あるいは情報収集というようなものが必要なところに組んでおります。そのこまかい五十万とか五十五万ぐらいの報償費を組んでおるところは、おそらくこれは団体その他の表彰の関係の経費ではないかというふうに存じております。特に文部省からは要求もございませんでしたので、要求のないところにつけるというのは、どうも主計局でやっておりませんものですから、ついていなかったと思います。
  213. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣、この中には私はさっきの質問で大蔵大臣に伺ったときに、高度の機密云々と答弁がありました。それもあるのです。ところが、主計官はやはり主計官だけあって知っていらっしゃる。表彰というのがある。だから私聞いたときに、文部省はずいぶん表彰することが多いと思うのですよ。だから厚生省とか裁判所さえ五十一万二千円の報償費を取っておる。文部省少し表彰することは多いだろうに、これを要求しないのはおかしいな。閣内でも言った方がいいので、言わない方が損するのかと不思議に思っておるのですがね。  ついでに伺いますが、二十一日にのど自慢全国コンクールがあった。あれは文部大臣が奨励賞を出しておる。これは福田社会教育局長に伺いますが、あなたがちょうどおいでになっておりましたが、あのとき賞品が重なっておりましたが、カップとか盾とか、予算があれば贈りたい気持だったのですか、それともそういう気持でなかったのか。あなたの心境を伺います。
  214. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 従来そういったいろいろな催しの際に、文部大臣が奨励賞を出しますが、これは奨励の意味文部大臣から賞状一本を出すというのが慣例になっておるのです。従って、私ども別に副賞をつけなければならぬように考えておりませんが、事柄によりましては、副賞をつけた方がいいと思いますが、今の場合は、必ずしもつけなくても私はいいと思います。
  215. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ただいまの答弁は、私の期待に沿ったものです。伺ってみたのですが、確かにああいう場で文部大臣が奨励賞を出す場合は、賞状一本の方がいいと思う。変な品物なんかはっけない方がいい。で、あのときのあなたの態度は、実に堂々たるもので、私下から見ておったが、大へんよろしかった。まあ、それはそれとして、確かに変なものはつけない方がいいというあなたの見解は正しい。ただ、他の省の報奨費については他の機会に追及しますが、ただ、こういう実情だということは、文部大臣含んでおいてもらいたい。  もうあと一問伺いたいのですが、国字、国語政策について高良委員から質疑があったのですが、公文に使う書類ですね。これには当用漢字以外は使わないようにした方がいいのではないかと思うのですが、国字、国語政策を扱っている文部大臣の御所見はいかがですか。
  216. 松永東

    国務大臣松永東君) これは今急々に当用漢字以外のものを使っちゃいかぬというふうにすることもどうかと思います。しかし、これは国語審議会ですかで研究しておりますので、いずれ結論が近々に出ると思います。それによって処置をしたいというふうに考えております。だから、いずれにしても、高良さんの言われたあの御質問にお答えした通り、何とか一つ国語漢字、それからローマ字、そういう点もきちっとした結論を得なければならぬように迫られているんじゃないかというふうに考えております。
  217. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その点、私、文部大臣は、きょうむずかしいむずかしいと言われておったですが、手近なことから私は考えが確定していないと思うのですが、あのむずかしかった度量衡ですね。あのメートル法転換についても、まず官庁からこれを利用するようにして、そうしてだんだんと民間に及ぼしていって、近ごろおじいさんおばあさんがメートル法になれてきたでしょう。現代かな使いとか当用漢字、少くとも官庁の文書はこれで押し通すというふうにまずやっていかなければ、私は当用漢字現代かなづかいをきめた意味をなさないと思うのですが、所管調査局長いかがですか。
  218. 北岡健二

    政府委員北岡健二君) お答えいたします。現在の、官庁の言葉等につきましても同じでございますが、実際に使われている言葉、それが当用漢字の範囲外の文字を使わなければわからない言葉がかなり多いわけでございます。それで、たとえば学術の用語につきましては、学術用語の審査会で、それぞれの部門ごとに何とかこの部分はかなで書こう、この部分は当用漢字に変えよう、そのためには今まで使っていた言葉を変えて当用漢字に合うようにしたい、あるいはかなで書いてもわかるようにというふうに変えておるわけでございます。ところで、官庁の用語等につきましても、これは学術用語のように始めからワクがきまっておるわけじゃございませんから、自然普通世間に使われておる言葉が、官庁の公文の中にも出て参ります。そういうものにつきましては、それぞれの言いかえ、それぞれに当てはまる文字、あるいはかなで書いてもわかる言葉、そういうものが作られてきませんと、一挙に当用漢字の範囲内に押え込もうとしましても、混乱が起るということになりますので、一方では教育によって実際に使われる文字、それからそれの文字のワクに合ったような言葉への改善が、教育の過程で進められておりまして、自然国民の大きな層がそういうふうに、だんだんとそういうような新しい言葉づかいになれたものがふえて参ります。そういうものがふえて参りますと、自然報道関係に使います文字言葉というのも、それに合わさってくるようになりましょうし、官庁の用語等も、そういう段階には急速に変ると思いますが、とにかく一方的になかなかやりにくいという点がございますために、何度も申し上げておりますように、順序を追って進めていかなければならないのじゃないかというふうに考えて、国語審議会の現在の考え方も、そういう言いかえあるいは新しい言葉を現わす文字、あるいは従来使っていた文字当用漢字に切りかえる切りかえ方、そういうようなものをやりながら、そういうような研究を進めながら、言葉改善を進めていく、こういうような方法をとっておるわけでございます。
  219. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 これで終ります。  その点については、もう少し、そういうことなら研究を急がなければなりませんね。なければ、高良委員質問に対する答弁なんかになりませんよ。もう少し早く研究して、そうして何年計画でいけばいいというものを持たなければ、ただ、重大だ重大だ、考えよう考えようでは、私は物事が一歩も進まないと思うのです。  最後に、主査に要請しますが、それは本日ここで質疑されました、もぐり入学禁止の問題、それから、先般親委員会において与野党を通じて問題になりました、そうして意見の大体一致いたしました、中学校最終学年の課程を、大体進学する組と就職する組とに分けて教授するという問題ですね。この方法は中止してしかるべきだ。好ましくないというのが、もう親委員会の全会一致の圧倒的な空気でございました。従って、本日はそれについて、時間の関係上、十分さらに議論することはできなかったわけですが、このもぐり入学と、中学校最終学年分離の二つの問題については、分科会において強い要望があった。その要望とは、進学と就職と分離することをやめることが望ましい。それから、もぐり入学がなくなるように努力すべきであり、それが望ましい。こういう強い要望があったということを、主査報告として親委員会に述べられるよう、この分科会で各委員にお諮りいただきたいと思います。  私の質問は、それで終ります。
  220. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 矢嶋君にお答えします。  今、私、主査代理をいたしておりますので、矢嶋君のただいまの御意見は十分主査にお伝えして、御趣旨に沿うように、私からも十分申し上げます。  それでは、ほかに御質疑もなければ、文部省所管についての質疑は、一応終了したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  221. 剱木亨弘

    ○副主査(剱木亨弘君) 御異議ないと認めて、さよう決定いたします。  次回は、明二十五日午前十時より日銀及び大蔵省所管を、午後厚生省所管について審議をいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後八時十五分散会