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1958-03-25 第28回国会 参議院 予算委員会第一分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十五日(火曜日)    午前十時十八分開会   ―――――――――――――   委員の異動 本日委員亀田得治君辞任につき、その 補欠として清澤俊英君を予算委員長に おいて指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    主査      石坂 豊一君    委員            泉山 三六君            大川 光三君            後藤 義隆君            下條 康麿君            一松 定吉君   担当委員外委員            大谷 贇雄君            矢嶋 三義君   政府委員    宮内庁次長   瓜生 順良君    皇室経済主管  高尾 亮一君    法務政務次官  横川 信夫君    法務大臣官房経    理部長     大澤 一郎君    法務省民事局長    心得      平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局長 福原 忠男君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才藏君    法務省入国管理    局長      伊関佑二郎君    公安調査庁次長 関   之君   事務局側    参     事    (事務次長)  宮坂 完孝君    参     事    (人事課長)  佐藤 吉弘君    参     事    (庶務部会計課    長)      浅井亀次郎君   衆議院事務局側    参     事    (庶務部長)  知野 虎雄君   説明員    法務省訟務局第    一課長     武藤 英一君    大蔵省主計局主    計官      上林 英男君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 石坂豊一

    ○一主査石坂豊一君) これより予算第一分科所管審査を開始いたします。  本日は、初めに前回審査を留保しております皇室費関係総理府所管のうち宮内庁及び国会所管について残余の質疑を行いまして、次に法務省所管審査に入りたいと存じます。  それでは皇室費宮内庁関係について御質疑の発言を願います。
  3. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 私は皇室費並び宮内庁関係について若干お伺いいたしたいと思います。この方面は、どうも私踏み込んだことがないので、内容をつぶさにわかりませんので、お教えいただくことをかねて一つ伺いたいと思う次第ですから、そういう立場でお答え願いたいと思います。  まず予算具体的内容に入る前に、私は皇室国会との関係についてちょっと伺いたいと思います。それは旧憲法下においては、主権者としての天皇陛下主宰のもとに開院式が開かれることによって、議員に審議権というものが効力を発生する、そういう性格開院式であったと思うのです。終戦後の憲法においては、天皇国事行為というのは御承知通り憲法に規定されているわけでありまして、新国会における国会開会式は、旧憲法下における開院式性格がずいぶん異なる。いわば国会の一つの行事でありまして、それに天皇陛下をお招きするという形に私はなっていると思うのです。従って、私がいつも奇異に感ずることは、国会開会式のときに天皇陛下だけお見えになって、皇后陛下がお見えにならない、このことは国会から御案内申し上げないからだろうとは思うのでございますけれども、これは私の私見でございますけれども、新憲法下における国会開会式性格から申しまして、私は国会側としては両陛下をお招きするというのが自然の姿で、また皇室としてもそういうことを御希望なさっておられるのではないかと、私ひそかに御推察を申し上げているわけなんですが、宮内庁当局としては、こういう点はどういう御見解を持っておられるのか、いい機会だと思いますので承わりたいと思います。
  4. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 天皇国会との関係は今おっしゃった通りでありまして、旧憲法においては、国会開院式というのは陛下が御主宰になりましたが、現在の国会における開会式国会が行われまして、そこへ天皇陛下が御参列になるという形でございます。従ってもし御参列がなくても、その開会式を行われることについて有効無効というようなことは何もないわけであります。ただ、今それでは来賓のような形でおいでになるのならば、皇后陛下おいでになったらどうかというちょっと御意見を承わりましたのですが、この点は、天皇陛下は国の象徴憲法上でもきめられておりまして、そうした公的のやはり御任務もお持ちでございますが、皇后陛下はその御配偶者でありまして、精神的においては国民の団結の上に大きな御役割をなさっておりますけれども、公的な身分では憲法上はなっておりませんのですから、従って天皇皇后の間においては、国会というような国政の審議をされる最高機関に対する関係においては、やや趣きが違う点があると思います。一般国民体育大会開会式等に両陛下おそろいおいでになりまするが、こういうのは公的なものでもございませんので、そういうところにおいでになる場合とはまた趣きが違うと思います。しかし皇后陛下おいでになっていけないかと、そういうことはありませんので、これはまあ来賓としておいでになっても差しつかえはないわけでありまするけれども、しかしながら、現在のところではまあ御身分がお違いになりますし、特においでになるということにしていいかどうか、その点についてはちょっと疑問にも思っております。おいでになって悪いとは思いませんけれども、ぜひおいでになった方がよろしいという断定を下すことは、まだちょっと疑問を持っております。
  5. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 陛下が恒例的にお出ましになるのは国民体育大会、それから緑化大会、この程度のように私は記憶しておるわけなんですが、これは公的なものですか、それともどういう御見解を持っておられますか。
  6. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この国民体育大会緑化大会そのもの自体国家的な公式行事と言い切れるか、それにちょっと疑問はありまするが、国が行われるというものでなくて、やはり団体が主催をされるというものであります。しかしながら、その行事には国民体育大会でありますと、国内の各地体育の方がそこへ集まられる、体育においてはその会合が日本においては最高の、最大の会合であるということでありますので、また緑化大会の方はこれも国家が主催されるわけでありませんけれども、その委員長衆議院議長で、それぞれその道の一流の方が役員をなさっておる、緑化関係においては全国各地からそれぞれその地方最高の責任を持っておられる方、熱心な方が集まられまして、そうして全国的な、その面では最も大きな意義のある会合になります。その行事に両陛下おいでになるということは、いわゆる憲法に言う国事行為ではございませんけれども、しかしながら国民との親しみをそういう機会に大いにお増しになるという意味において、大いに意義があることでありまするので、その行幸啓については公式のものと、こういうふうに考えておるわけであります。
  7. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) あなたの言われんとするところ、答弁されんとするところはわかったわけですが、緑化大会、あるいは国民体育大会天皇おいでになることは、国家象徴としての天皇としての公的な行為だと、かような解釈ですね、私もそうだと思うのですが、どうですか。
  8. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) やはりこれは公式の行事だと思います。単にちょっと葉山おいでになるとか、あるいは那須おいでになるというような私的なものとは違って、公的なものと思います。
  9. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) そこで明確になりました。やはり旧憲法並びに新憲法における、それぞれの開院式あるいは開会式天皇陛下おいでになることは、憲法上からその実質的な非常に差異を来たしりておるわけであるが、憲法七条による国会を召集するという国事行為に基いて、それに関連して天皇陛下国会行事おいでになるので、皇后陛下との立場を分離して考える、こういう見解をとられるわけですれ。
  10. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 趣旨においてはそういう趣旨になると思います。
  11. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) さらにこの那須御用邸、あるいは葉山御用邸おいでになるということは、これは公的な行為でなくて私的なものだと、その通りだと思います。その点明確になりましたが、そうすれば何ですか、那須御用邸とか葉山御用邸お出ましになるときの経費というものは、滞在経費等もありましょう、途中の経費等もありましょう、それらは内廷費から出るのですか、宮廷費から支出されるわけですか。
  12. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この葉山とか那須おいでになります際の両陛下の滞在なさいます経費、これは内廷費の方から出るのであります。ただお供をしておりまする職員国家公務員、こういう人の旅費というようなものは、これは宮廷費の方から出ますですけれども、これは宮内庁職員につきましては、そういう場合にお世話することも、やはり公けの義務というふうに考えられますので、そのお供の人の経費宮廷費から出ます。しかし、両陛下の分は内廷費から出るというふうに分けております。
  13. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その宮廷費支出する、その支出を受ける人は、これは宮内庁職員ですか。
  14. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) このお供をする人は、これは宮内庁職員で、国家公務員の方は宮廷費から出ます。ただこの葉山あたり生物学研究のお手伝いをするような人、こういう面の方の経費は、これは内廷費から出ます。国家公務員ではなくて、内廷の方でういう方を嘱託されておりますので、こういう方の経費内廷費から出ますが、身分国家公務員である人の経費は、宮廷費から出るのであります。
  15. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) ちょっとここで横にはずれますが、ついでに伺いますが、賢所宮殿のところに生物学研究所がございますね。あすこにお働きになっている研究者ですね、ああいう方々身分並びにその給与支払いはどこから出るのですか。
  16. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 生物学研究所職員の方は内廷費の方から支出をしております。身分内廷職員ということで、これは陛下象徴としての御活動の面というよりは、御趣味でなさっております私的なことでありまするので、その関係のお手伝いをする人は内廷費の方で支出をしているわけであります。
  17. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 私はあの研究所を一回拝観したことがあるのですが、非常にまじめな方があすこ陛下の御研究をお手伝いなさっておられましたが、ああいう方々国家公務員でないわけですね。それで年金とかですね、退職される場合の退職金というようなものは、内廷費から皇室の方で適当にお出しになるという、こういうことになっていらっしゃるのですか。
  18. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その通りでございます。従って内廷費の中で、退職手当とかというようなものは場合によると出るわけであります。一般公務員の方と待遇の点は均衡をとるように考えながら、その必要な経費は、たとえば今お話退職手当が必要になれば、内廷費から出しておられるわけであります。
  19. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) そういう点は私は明確でないので、きょう伺っているわけですがね。実際事を運んだことがないから、そう自信がある私見を述べることができないのですが、この内廷費は、御承知のごとく皇室経済法によってこれは公金としないわけですね。ところが宮廷費の方は、宮内庁の方で経理されることに皇室経済法できまっているわけです。その宮廷費の中には、動物購入費とか、飼料費まで公金として計上されているわけですね。されているわけでしょう。それをああいうところで研究されている方々公金に入らない内廷費扱いで、身分も不明確であるという点は、かつて議論されたことがあるのですか、どうですか。あの形が最4自然だという御見解ですか。
  20. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その宮廷費の方にございます動物購入費とか、飼料費、これは生物学研究所動物を買われたり、飼料を買われる経費ではありませんので、これは主として三里塚の牧場、あすこでこの牛とか馬とか何とか、その他の動物を飼われている、それに必要な飼料、それからなお皇室でいろいろな馬車を使っております。そういう馬車に必要な馬、そういうものを買ったり、それに対する飼料であるとか、そういうような経費でございまして、生物学の方の研究所で何かちょっと研究用に必要な動物をお買いになる、飼料が要るということになりますと、内廷費でまかなっているわけであります。その点は陛下のこの御趣味として私的になさっている関係でありますので、そういうふうに分離をして考えているわけであります。
  21. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その点は、あなたの御見解ははっきりわかりました。  それから次に伺いたい点は、この宮内庁職員宮廷費の方がらも旅費を受けるし、それから宮内庁予算の方からも旅費を受ける場合と、一件について重複してその支給を受けるということを言っているのじゃないのですが、宮内庁職員両方組織の方から旅費を受けると、かようになっているようですが。
  22. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは、この宮廷費皇室の御活動経費、従ってその皇室の御活動に――たとえば先ほどお話の出ました国体においでになるとか、あるいは緑化大会においてになるとか、そういう場合にお供をして参りまする旅費宮廷費から出ておるのであります。で、その宮内庁費という行政部費の方の旅費は、たとえば皇室用の財産、これは東京小以外には各地――と言いましても、主に関西方面であります。関西方面京都御所ですとか、御陵ですとか、いろいろあります。そういうようなところの工事をするとか、修理をするとか、そういう必要があって参ります。そういうような場合は、これはこの宮内庁費の方の旅費でまかなっておりまして、重複して出ることはない点は、今先生のおっしゃった通りでありますが、その両方を、出張するときの用向きによりまして、分けて考えてあるわけであります。
  23. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) じゃかりに、具体的に申し上げますが、今度陛下緑化大会九州おいでになる、するとあなたが下見聞九州おいでになる、この前は大野総務課長がお見えになりましたが、それから今度は陛下九州緑化大会にお見えになるときに、あなたがお伴においでになる、そういう場合ですね。前の場合はあなたは宮内庁の方から旅費を受けて、あとの場合は宮廷費の方から旅費を受けるのじゃないですか。そういう運用になっているのじゃないですか。
  24. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この行幸啓の下見聞経費、これもやはり宮廷費でございまして、これはやはり行幸啓という御皇室の御活動の下見聞でありまするので、ですからまあお供をする場合と、その下見聞も、やはり宮廷費からというふうになっておりますので、この下見聞の場合は宮内庁費からというのではございません。
  25. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その点明確になって参りました。そうなりますと、私が今まで疑問を持っておつた点がわからないのですが、あなたにお答え願いたいのですが、この昭和三十三年度皇室費というこの予算書ですね。これに皇室費のところだけ、予算定員及び俸給額表というのがないのですね。これはどうしてこの皇室費だけそういうものをつけないのですか。これは予算書を見ても、どこでもみなこの予算定員及び俸給額表というのがついているわけですが、こういうふうに独立して旅費が出たり、あるいはこの雑役務費とか、いろいろ宮内庁経理に属する宮廷費というのが出ているのですが、これはどういうわけで、この予算書には予算定員及び俸給額表というのはつけないのですか。これは慣例になっているのですか。ことしお忘れになったのですか。どうなんですか。
  26. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) もう予算上の定員とか定額表は、これはその宮内庁費の方に、総輝府の関係の方の宮内庁費の方をとごらんになりますと、そちらの方に出ております。そういう人の俸給とかいうようなものは、その宮内庁費というような方から出ておりますので、皇室費の方にはそれがないわけでありますが、これは支出皇室費から出すのじゃなくて、総理府所管宮内庁費から出すということで分けられておるわけであります。
  27. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) そうすれば、この皇室費の中の、あなたの方で管理なさっている宮廷費ですね、この予算宮内庁のところに予算定員及び俸給額表として九百六十三人が出ています。その九百六十三人がこれを受けて、九百六十三人以外の人でこれを受ける人はないと、こういうことですか。
  28. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 国家公務員関係職員についてはその九百六十三人で、ほかにはないわけであります。ただそれ以外にどなたか嘱託されるというような場合はまた別でありますが、そうたくさんございません。
  29. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) これは私納得できませんよ。それは内廷費は、これは天皇陛下の言わばポケットマネーで、公金としないということは皇室経済法できまっているんですから、これはない。宮廷費としてあなたのところの経理に属するものがあって、これだけの何があれば当然定員というものが、それから俸給額表というものが、いかに人数が少かろうと、低額であろうと、ついていないというのは、これは予算書の体裁をなさないと思うんですよ。それからさらに法律に基いて皇族費なんか出るわけですからね。ここに千三百五十万円の皇族費が出ているわけですが、三百万円になれば四人半分になるわけですね、そうなりますと、高松富から何々宮から、皇子が何のなにがしで出るわけですね。そういうものを私はこういう予算書出したからといって、何も私は失礼にも何もならないと思うんです。現に皇室経済費法律に基いて出て、国会審議を受けることになっているわけですから、当然私はこの他の省庁と同じように、予算定員及び俸給額表として出ていくべきだと思う。この中には国家公務員のような雑役等に服する人もいるし、それから東宮御所京都御所関係もあるわけですから、何か説明がなければ、これだけでは私は予算書として不十分だと思うんですよ。今年私はさらに追加して出しなさいとは申しませんが、来年度から当然私は出すべきだと思うんですが、お隣りにいらっしゃる方は大蔵省の方ですか。
  30. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮内庁経済主管でございます。
  31. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 大蔵省をお呼びしておったのですが、お見えになっておりますか。――どの分科でも大蔵省主計官は一人はおらなければ予算審議というものはできないですよ。――いかがですか。
  32. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その宮内庁費の方に定員から俸給定額が出ておりますが、宮内庁職員というものはこの皇室事務をいたすわけでございます。これを両方合わして見ますと、全貌がわかるような形になっているわけでございます。皇室費はやはり皇室の特別の経費として、そういう人件費とか、そういうものはやはり普通の一般公務員としてのいろいろな規格に従っておりますので、従って、一般公務員並の歳出の予算の中で組んでおいた方が、かえってわかりがいいということで分けられております。なおこの皇室費の方の宮廷費の問題は、これは宮廷の御活動経費予算関係事業費のような、その言葉がぴったり当るかどうか疑問ですが、事業費のようなものなのでございまして、従って人件費関係の方は一般公務員と同じように扱っておりまするので、そのワクの中で、特に現在宮内庁総理府所管でありまして昔は宮内省というものが内閣と別個の組織でありましたのですけれども、今はやはりわれわれも総理府所管のもとにある職員であります。そういうような昔とは違う組織になっている点を明らかにする意味においても、総理府の方に取り上げていくのがやはりほんとうと思っておるわけであります。
  33. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) この予算書をずっと調べていって、昭和三十三年度皇室費国会費総理府とこういうように出ているわけでしょう。そうしてこの皇室費のところだけ予算定員俸給表もなくて、それで見ていきますと、これは一体どういう人物が使われるのだろうかということが非常にわかりずらいのですよ、これは。この予算の立て方自体に不明確な点があると思うのです。これはいずれあと大蔵省の方が来たらさらに伺ってみたいと思います。  時間が経過しますから、次に内容面を伺いますか、宮廷費の中に報償費として二百六十二万五千円ありますが、この報償費はどういうように使われるのでございますか。
  34. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その報償費は、たとえば両陛下地方行幸啓になります際に宿にお泊りになる、そういうときの謝礼とか、それから飛行機なんかにお乗りになりますと、飛行機会社に対する謝礼とか、それから外国のお客さんに対しましてのおみやげのようなもの、そういうようなものもそこから出ております。
  35. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) それでは先ほどお答えになりました那須御用邸とか葉山御用邸おいでになる私的の場合にば、これは内廷費で、そういう場合にこのお供とかその他何かなさった方にお包みなさるようなのは、これから出ないのですか、そういう場合も出ているのじゃないですか。
  36. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) そういう経費宮廷費は、報償費の中からは出ませんで、もしもお供をしているときにたまにお菓子や何かお出しになる、それは内廷費の方からお出しになることがあります。
  37. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) それではこの報償費というのは、国民体育大会とか緑化大会とか、先ほどあなたも明確にしました象徴としての天皇公的行為の場合に限って支出される、かように了承してよろしいですか。
  38. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) さようでございます。
  39. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 念のため伺いますが、災害等があった場合に陛下内帑金を出されますね。あれは内廷費から出るわけですね。
  40. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは内廷費からお出しになります。
  41. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) それではこの図書購入費が四百五十万円ありますが、この図書はどなたの読むための図書ですか。
  42. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その図書購入費は主としてこの書陵部というのがございまして、もと図書寮、諸陵寮いうのがあります。それが一緒になりまして書陵部といいますが、その書陵部におきまして、皇室関係の深いいろいろの古い文書、その他の図書購入をして、これを整理し研究をいたしております。その方面に必要な図書購入費が主たる部分でございます。大きなものでは九条家本、そうした古い図書は相当の高価なものが多いのでありまして、図書購入費の八百十九万円、その中には四百五十万円で九条家本というのを買われる予定になっております。それから印刷製本費百五十万円、これは正倉院に関する研究の資料でありますとか、それから式年祭が行われる天皇の御経歴の刷りものでありますとか、それから必要な調査ができますと、それを製本する、そういうような経費、その他二百二十万円、これはやはりこまかいいろいろの皇室に関連のあるような本を買う経費でございまして、これは陛下生物学の御本なんかお買いになりまするのは、この方ではなくて内廷費の方であります。
  43. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) そういう図書を扱われる人は、これは総理府宮内庁予算定員の出ている九百六十三人の人が扱われるわけですね、それともそれ以外の人が扱っているのですか。
  44. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その定員の中にある人が、書陵部の中に図書課というのがあります。それから編修課というのがあります。そういうようなところの職員が扱われる。
  45. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) さらに伺いますが、職員厚生経費として員数百三十六人、単価六百円と、国家公務員並みの計上をされて、この百三十六人というのは、やはり総理府宮内庁の九百六十三人の中の百三十六人ですか、それとも違いますか。
  46. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) そこの百何十人というのは、これは国家公務員の九百何十人の中ではありませんので、常勤職員でこの宮廷のいろいろ要するに雑務をやったりしている人のための厚生福祉の経費であります。
  47. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) ちょっとおはかりいたします。本審査の経過を見まして、宮内庁皇室費及び国会所管の残余の質疑は午前中に終ることにして、法務省の所管は午後一時から審査することにしたいと思いますが、いかがでございますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) それではそういうことにいたしたいと思います。どうぞ。
  49. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) ここで私は今の質問を一応結ぶのですが、やはりこの予算書の組み立て方から言って、各省庁に必ずついているように予算定員及び俸給額表というのをどんな簡単なものでもつけないと、私は体裁がつかないと思うのです。これは一つあなたの方で御研究願います。実際これを見ておって、どうもわれわれ宮内省の仕事をしたことない関係かもしらぬですが、そういう点が明確でなくて、私調べるのにちょっと困ったのですが、内廷費のようにはっきりと経済法によって公金としないということになっているのは、そのままでいいのですが、公金となっている部面については、もう少しわかりやすい予算書提出方を私は考慮さるべきだと思いますので、特にこの点要望いたしておきます。  それから皇族費については、皇室経済法の第四条に、皇室経済会議は、変更の必要があると認めるときは、これに関する意見を内閣に提出しなければならない、その意見の内容は、すみやかに国会に報告しなければならないとあるわけなんですが、私文書箱を調べてみたのですけれども、どこにまぎれ込んだのか、国会に出された報告書というのを私まだ見つからぬでいるのですが、出されたのか出されなかったのか、またこの皇室経済会議からはどういう意見が内閣提出されたのか、要点を一つお答え願いたいと思います。
  50. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 皇室会議は一月の二十三日の午前十時から宮内庁の庁舎内で行われました。その結果、この内廷費皇族費の定額を変更して増額する。ここに決議がありますが、その際、内廷費及び皇族費の定額変更に関する決議、「経済情勢の推移にかんがみ皇室経済法第四条第一項の内廷費の定額を五千万円に、同法第六条第一項の定額を三百万円に変更することを必要と認める」。こういうような決議がたされましてこれが内閣の方に提出され、内閣から国会の方に報告になっておると聞いております。
  51. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) それは金額だけで別に意見というものはないわけなんですね。私は率直なところ、これを調べて、従来百九十万円であったという数字を見て、百九十万円だったかなあという感じがしたのですが、それでこれが三百万円になり、内廷費が五千万円に増額されたことについては、この経済法の第四条にいう意見というのは、ただ数字を示すだけじゃなくて、もう少し具体的なものを申し述べることが、意見を述べるということなんじゃないでしょうかね。これはどういうふうに解釈されておるのですが。
  52. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) これは以前にも内廷費皇族費の定額変更がございましたけれども、そのときもうこういうような決議の意見をきめておられるわけでありまして、意見というのは、結局そういうふうに変更することが必要であるという意見をここで述べる、決議なさっておりますので、それが意見ということだと考えるわけでございます。
  53. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 大蔵省の方に伺いますが、この予算書をずっと見て参りまして、この皇室費のうちの宮廷費、この明細書は出ておるのですが、各省庁にありますところの予算定員及び俸給額表というものはついていないのですね。これはいかに簡単であろうとも、予算書の体裁としては私はつけるべきじゃないかと思う。それからさらにこの中の皇族費については今度三百万円になりましても、これは四人半分ついておるわけですけれども、この四人半分の千三百五十万円というのは皇室経済法に基いて出るわけですが、法律できまっておるのですからね。かりに何々殿下、何々宮様ということをお名前を聞かなくでも、予算書出したからといって少しも失礼でないし、むしろ私は法律の建前から言うならば、そういうものを作るべきじゃないかと思う。それで宮内庁予算と比較対照して調べるのに非常に私は時間がかかりました。これは本年はこのままで私はいいと思いますが、来年度からは私はそういうものを作ることがこの予算書という体裁が整うのじゃないかと思いますが、大蔵当局はどういう御見解を持っておられますか。
  54. 上林英男

    説明員(上林英男君) お答えいたします。ただいまの御質問でございますが、各所管、たとえば宮内庁でございますと、これは政府職員定員法に基きまする定員が定められておりますので、その関係定員の内訳、それからそれに必要といたします人件費が、この予算書で申し上げますと、政府職員予定定員及び俸給額表というのに載っておるわけでございますが、皇室費の場合におきましては、定員が置かれておりません。従いまして、そういうものが載っていないわけでございます。いわば皇室費の場合におきましては、御存じのように内廷費宮廷費に分れておりまするが、内廷費法律によりまして定額が定められております。宮廷費の場合には先ほど申しましたように定員が計上されておりませんので、従いまして、ほかの所管と異なりまして、定員及び俸給額表が載っておらないわけでございます。
  55. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) この予算書の組み立て方から申して、この皇室費予算を、他の項の宮内庁のところに載せているこの定員の人がこれを使うということはおかしいのじゃないですかね。このあとにこういう予算を取り扱う人が何名いるということを簡単ながらも書くべきものじゃないでしょうか。
  56. 上林英男

    説明員(上林英男君) ただいまの御質問と、あるいは意味を取り違えているかもしれませんが、宮内庁の運営に必要な経費は全部宮内庁経費に計上されておりまして従いまして、宮内庁の行政職員が使用いたしまする経費は全部宮内庁経費に計上されておるわけでございます。御質問の点に関連いたしますのは、宮廷費の中には若干そういうものがあるのじゃないかというお話であるかと思いまするが、宮廷費は御存じのように皇室の公的な御生活を行われます場合に必要とする経費でございます。その大部分は今申しましたような経費でございまするので、宮内庁職員はこれを使うというようなことはないわけでございます。ただ若干疑問になりますのは、職員旅費といたしまして、陛下などが地方に行幸なさいまするときにお供について参りまするいわゆる供奉旅費というようなものがございます。こういうようなものは、この皇室費宮廷費の中に計上されておりまするけれども、これは陛下の公的な御生活にお供をいたしまするいわば宮内庁職員が何と申しまするか、陛下にお仕えすると同時に、国の行政としての業務をやっておるというような性格から申しまして、供奉旅費というときには、この宮廷費の中にあります供奉旨費を使うということが出てくる、これだけでございます。
  57. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) それで、どうも私はその点が明確でないのですよ。国家象徴ですから、扱いずらい点があるのだと思いますけれども、さっきも御答弁になった那須御用邸おいでになるときには公的のものでなく、私的であるという次長の答弁です。そういう場合でもやはり宮廷費の供奉旅費から支出されるわけですね。そのことは悪いと言っているのじゃないのです。しかし、どうも予算書の組み立て方がわかりずらいということを私は申し上げているのです。この予算書を調べて皇室費宮内庁関係のが一番わかりずらかったのです。関係がね。時間がかかりますから、もうこの点はこの程度でやめますが、次長に伺いますが、皇室関係方々の御旅行なさるときの旅費宮廷費から支出されるということ、そうなりますと、それ以外にこの宮内庁職員旅費が五百二十三万九千円計上されていますが、それ以外に宮内庁職員旅費というのは、どういう場合があるわけですか。
  58. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 一番おもなのは、皇室用財産の管理のための出張を要する場合の旅費であります。先ほどちょっと申しましたように、京都の方の工事の関係で出かけるとか、あるいは御陵の方の工事の関係で出かけるとか、そういうようなこと、そのほか歴代の天皇式年祭、百年ごとの式年祭がございますが、そういうときにその式年祭を行うための必要な職員が御陵の方に参ります。そういうのもそこから出ます。あるいは正倉院の御物の関係がありまして、正倉院職員が東京の方に打ち合せに出かけて参ります。そういうような場合の旅費宮内庁費の方から出るわけであります。
  59. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その答弁に関する限りわかりました。  次に伺いますが、皇室費の中の宮廷費の項目にある庁費と、宮内庁予算の中にある庁費、これとはダブることはございませんか。これはどういうふうな区別をされるのですか、説明をして下さい。
  60. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮廷費の方の庁費の内訳を申しますと、おわかりになると思いますが、宮廷用の器具を買ったり、天皇象徴としていろいろ御活動になるための宮殿で必要ないろいろ器具を買いましたり、それから両陛下皇室として御活動になるのに必要な自動車を買うとか、それから皇室用の財産となっている御料牧場の道具を買うとか、書陵部の方で本を買うとか、儀式を行います際の職員が普通の服でなく、特別の儀式服を着て出ます。そういうような儀式服を作って与えましたり、そういうような経費宮廷費であります。宮内庁費の方の庁費は、普通の役所と同じような事務用の机を買ったり、事務用の用紙を買ったり、タイプライターを買ったり、そこに必要な電燈ですとか、暖房ですとか、そういう事務関係で普通の役所でも必要とするようなそういう経費宮内庁の庁費に入っております。これはやはり皇室のため必要なものと、単に事務をとるため必要なものというふうに分けておりまして、その点は観念上分けられるので、実際の経理もそういうふうに分けております。
  61. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 次に伺いますが、天皇陛下の御誕生日に私どもお招きを受けますが、あの費用は内廷費から出ているのですか、宮廷費からですか、どちらですか。
  62. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) それは宮廷費の方から出るわけであります。園遊会などの経費もやはり宮廷費の方から出るわけです。
  63. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 宮廷費の細目どこから出るのですか。
  64. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 宮廷費の細目の中の会議費というのがございますが、たくさんの方が集められるその会議費という、そういう項目の中から出ております。
  65. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) よくわかりしまた。そこで伺いますがね。私はこれは宮内庁の方に一、二度要望しましたけれども、いまだに解決していないようだから、ここで念のためもう一回私は要望をかねて伺いますが、ああいう予算内廷費から出るのであれば私は申しません。しかし宮廷費から出ているとすれば、私どもを自動車に乗せて行って下さる運転手さんですね、ああいう方々に私は昼食の折弁当、たばこくらいは私は出すべきじゃないか、それで私ども御案内を受けて参りましてね、おたばこも一箱いただきます。さらにごちそうもいただくわけですが、その間二、三時間というもの、ちょうど昼食時間を中にして何百という運転手さんは何も受けないで、あそこで待っていらっしゃるということは、私は国家象徴としての天皇の誕生日を祝うに当っては、少くとも今の憲法下、民主時代に私は望ましくないと思うのです。あれだけの運転手さんに簡単な昼食の折弁当とたばこを出すくらい、その程度の私は予算を組めないことはないと思うのですが、これは私は、私的に一、二度宮内庁当局に要望したことがあるのですけれども、いまだに解決してないようですが、次長並びに予算の査定、編成作業をやられる大蔵の事務当局としては、どういう御見解を持っていらっしゃいますか。
  66. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その問題はいろいろ検討もいたしましたのですが、まああの日にはたくさんの方が見えますが、自動車を待たせておかれる方もあるし、お帰しになる方もあるし、全部の方が待たせておれるようでもないようです。きまった時間にまた迎えに来させるというような方法をとられる方もあるようですから。それからまあこれは外交団の関係の普通のやり方なんかも調べてみましたのですが、まあ外国の大公使なんかであのような場合にも、運転手には何もしていないようでありまするし、まあいろいろ研究して、今のところはまあお出ししないようなことで進んできているわけですけれども、しかし、これについてはもちろん疑問の点もございますので、さらにわれわれの方では一そう一つ検討ばしたいと思っておりますが、現在の段階では、待っておられる運転手の方に一々出すというほど予算をまだ組んでいないのであります。
  67. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 大蔵事務当局の見解はいかがですか。
  68. 上林英男

    説明員(上林英男君) ただいまの点につきましては、私、実はあまりよく存じ上げておりませんのでありますが、そのような経費につきまして、先ほども会議費その他、いろいろの経費が組まれておりまするので、実行上いろいろやり繰りをお考えいただけるかとも思っておりまするし、またあるいはそのあと宮内庁の方からお話がございますれば、そのときの御相談をいたしたいと考えております。
  69. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 次長の考え方は納得できませんね。そういう考え方は。予算を要求したけれども、通らなかったというのなら話はわかりますけれども、今のあなたの答弁は了承できませんよ。それは車を運転する運転手さんも、乗せてもらっている人も、同じような気持で皇居に行かれるのじゃないでしょうかね。お祝いする気持で。私は極端に言えば、招かれた人々のごちそうを作るのに必要な予算を削っても、一部その質を下げてでも、私は運転手さんにたばこ一箱くらい差し上げるくらいな私は気持があっていいと思うのですよ。それが国家象徴天皇を祝う私は祝う人のとるべき態度だと思うのですね。あなた方がされる気持になれば私はできぬことはないと思う。非常に実は心苦しいのですね。運転手さんにたばこをやりたいけれども、われわれいただいたのは自分でも吸ってみたい。あるいは親御さんでも待っている人はおみやげに差し上げたいという気持でお招きを受けた方はいられるのではないかと思うのです。だから非常に心苦しい感じがするわけです。これはあなた方がやられるつもりになれば私はできないことはないと思うのですが、御検討いただきたいと思うのです。御検討いただけますか。
  70. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) なおまだ検討はいたしてみますが、今までの建前として、陛下が御招待になるそういう方に対しまして、お食事なりおもてなしをするという経費を組んで、そのお供の方についてのは必ずしも十分にいけないという点はあるのであります。しかし、まあこれは招待される方のお供の方をほっておくということがいいかどうか、これは疑問の点もございまするので、今までの建前はそういうふうになっておりますが、なお検討はいたしてみるつもりでおります。
  71. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 内廷費から支出されるならば、私は一切触れないつもりだったんです。しかし経済法に基いて宮内庁経理に入る宮廷費から支出するというので、私はあえて伺っているんで、おそらく陛下のお気持もそうだと思うのです。何だったら御参考に陛下にお接しになったときにお気持をお聞きになってもいいと思うのです。私は陛下のお気持もそういうことだと思うのです。そういうことは陛下は御存じないと思うのです。検討を要望しておきます。  時間が参りますから、次に二点ほど伺ってこの項について終りますが、これは二、三度あなたの方に要望申し上げたことはあるのですが、実は皇居の参観ですね。あの皇居の参観は整然と行われているわけですが、陛下のお住まいの所というわけには参りませんけれども、あの生物学研究所がある、それから元、戦争のときに戦利品として獲得したものを納めてあった倉庫がございますね。ああいう付近までは私は参観させてよろしいのではないかと思う。ほんの皇居の中のまあいわば下町に類するような所だけちょっと参観を許すというのは、どうも私はふに落ちない点があるのですが、一、二度意見を申し述べ、御要望申し上げたことはございますが、実現しないようです。が、やはりだめなんでございますか。
  72. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 皇居の参観に来られる方を御案内するコースの問題、これは今御要望のような点もありますることは、われわれも承知をして検討はしておりまするが、陛下のお住まいの吹上御苑の前から生物学研究所、あるいは賢所の近くというような所を一般の参観も認めたらどうかという意見でありまするが、現在は今申しましたような奥の関係は特別の方には御案内をしております。特別の方というのは、両陛下にお会いになるとか、各省でいろいろな功労者を表彰をされたりします。表彰を受けられた方が陛下にお会いになる。陛下は奥の方でお会いになりますが、そういうような人は今申しましたような所も御案内をしておるのでありますが、毎日午前千人午後千人とお見えになります一般の方は、まだ奥の方の関係は御案内してないのでありまして、御案内したらどうかということもいろいろ考えてみたのですけれども、その奥の方は両陛下がよくあのあたりまでお出ましになるものですから、万一午前千人、午後千人の方がずっと参観されると、そのためにまあお出ましのことに何かかた苦しいような、あるいは差しつかえが出るというようなことがあってもいけないというようなこともありまして、一般の方のはいたしておりませんが、特に両陛下のお会いになるような方の場合は御案内するというようなことで区別をしておるわけでありまして、これは将来の問題として、なお検討はしたいとは思っております。現在はそういうふうになっております。
  73. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 時間が切迫しましたので、私は皇室宮内庁関係のはこの程度にとどめて、あと国会関係の質問をさしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  74. 一松定吉

    ○一松定吉君 宮内庁関係の質問をしたいのですが……。
  75. 石坂豊一

    委員長石坂豊一君) それでは一松さん。
  76. 一松定吉

    ○一松定吉君 少しお伺いいたしますが、私どもが陛下の日常の御生活等を拝察いたしまして、ほんとうに深憂にたえないことが多いのでありますが、なかんずく陛下のいわゆる皇居の御新築ということが、今日そのままにまだ放擲されておるのですが、これに対しては宮内庁の皆さんはどういう考えで、いつごろこういう計画を立てるとかいうような、何か御計画がありますか。そういう点を一つ御遠慮なく話していただきたい。私はいつまでも両陛下が今のような仮住まいの所にお住まいなさっておるということは、国民としてほんとうに恐懼にたえないのでありますから、一日もすみやかにその皇居の新築をして、そうして陛下御安住の地として、お心安くお住まいができるようになさるということが、われわれ国民の常に希望しておるところでありますから、特にこの点を伺ってみたいのであります。
  77. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この宮殿の造営の問題でありますが、宮殿造営問題につきましては、いつまでも今のようにしておってはいけないということはわれわれも考えておりまして、昭和三十二年度からニカ年計画、三十三年度、来年度にわたりまして、宮殿の造営について宮内庁としてはどういうようなものをお作りすることを考えたらいいかという調査をやることになっております。で、三十三年度中には、いわゆる略設計、ごくあらましの構想を固めるつもりでございます。その予算も、この今出ております予算書の中に出ておりまして、宮殿造営調査費として五百六十万円組まれておりますが、これはその経費でありまして、三十三年度中にはまあ略設計ができる程度の調査を終えたいと思っております。それが終えたところで、それではいつから造営にかかるかということにつきましては、いろいろの方面の方の御意見も聞き、財政の事情その他も勘案して、できるだけ早い機会に実現をするように運んでいただきたいと思っております。これはわれわれだけできめるわけにもいかない点がございますので、さらにその略設計ができた後に十分相談をして、早い機会に進めたいと思っておるわけであります。
  78. 一松定吉

    ○一松定吉君 この予算を見ると、今あなたのお話のような宮廷造営費に対する予算というものはないように思うんですが、東宮御所の新営費というものはありますね。宮殿費のことに関してどこにありますか。
  79. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) その経費はこの刷り物の中でいきますると、諸謝金というのがございます。謝金でございますね、お礼をする金。
  80. 一松定吉

    ○一松定吉君 何号ですか。
  81. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この六の諸謝金の中と、それから庁費の方の――失礼しました。この諸謝金の中の御物調査等謝金という中と、それからあとの方の庁費の事業用器県費、そういう中に分れて入っておるわけであります。
  82. 一松定吉

    ○一松定吉君 それはどうも私ども了解できませんね。そういうようなものは正々堂々と項目を分けて、何人もわかるような名目をつけたらどうですかね。こんな今あなたのお話のようなものは、御物調査等謝金とある、それからいまの宮廷用器具費だとか(「事業用器県費だ」と呼ぶ者あり)というような名前をつけておって、どうも私はこれは先刻お答えになりましたように、私どもを宮廷へお招き下さるときの費用として会議費の中に入っておるなんかいうようなことは納得できません。会議はわれわれ何もしない。ただ陛下にお招きを賜わっわれわれ喜んで宮廷に参入して、ごちそうをちょうだいするということで、会議も何もしゃしない。そういうような名前をつけてやることはよくありませんから、やはりこれは交際費なら交際費と、幸いにここには十七のところに交際費として百八十三万円というものがあるから、こういうものをもっとふやして、正々堂々と交際費とか御寵招費とか、あるいは供応費とかというようなことを設けて、大手を振って、われわれ国会議員が納得のいくような予算項目を作るようにしたらいかがでしょうか、あなたの御意見を一つ聞いてみたい。
  83. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) この宮殿造営調査の関係のは、両方に分れておりますのは、その造営の調査の場合に要ります金というのが、建築その他宮殿造営に関連する各部門の専門の方を委嘱しまして、いろいろ調査をしてもらう、従ってその支出は謝金になるものですから、そこで謝金の中へ入っておる。それからその調査を進めていく場合に必要な器具が必要だ、だから器具費へ入っておるというようなことで分れておるわけでありますが、もうわかりにくいような点は将来改められるならば改善策を考えたいと思いますが、それからなお園遊会とか、あるいは天皇誕生日のお招きの経費などが会議費の中に入っているのは、という御意見、それも御趣旨は私もわかるので、何かあるいは改善の方法があれば改善策を研究したいと思っております。
  84. 一松定吉

    ○一松定吉君 私の申し上げますのは、この予算国会において審議されるならば、国会議員の納得のいくような項目を設けてやらなければ、御寵招を賜わることの費用が会議費であって、それから宮殿新営に関するいろいろな諸支出が謝金であってみたりするということが納得いかないから、それを申し上げた。私の質問せんとすることは、そういうことじゃないんです。一体陛下をいつまでもああいうところにお住まいしていただくということは、われわれ国民として恐懼にたえないから、一日もすみやかに新営に着手して、陛下が安らかにお暮しできますように、施設をこしらえて差し上げたいというのがわれわれ国民の希望ですから、そういうことを一つ十分に考えて、なるたけ早くにこれを調査研究して、新築に着手するように特に一つ御考慮願いまして、そういうような予算は、国会議員でおそらく何人もこれに反対するものはなかろうと思いますから、一つそういうふうにしていただきたいということを申し上げるために、今のことをお尋ねしたわけです。  それから今の謝金というところで、御進講謝金というのが諸謝金という六項のところにありますね、これは学者が宮中に行って、きょうは何々の講演を御進講申し上げるというような、ああいうふうな方に謝金を出すことはもちろんこの中に含んでおると思うが、私は陛下に対して御進講申し上げる学者、専門家等が、御進講申し上げたことに対して陛下がたくさんの謝金などをお出しになる必要はないと私は思うのです。それは陛下の前に御進講するということそれ自体国民として非常なる栄誉なんだから、そういうことに対しては別に謝金をたくさん差し上げる、お包みになるというようなことはする必要ないと思うのであるが、しかしそれはもらうものがあれば、陛下からいただけば何人も喜ばぬ者はないが、そういうことについてはやはり考慮していただくということが必要ではないかと、こう私は思っておるのだが、それに対してあなたの意見を伺いたい。
  85. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) ここの御進講謝金の大部分は、皇太子殿下が単独授業を受けておられますその先生に対する謝金が大部分であります。陛下の場合の御進講に対して、ちょっと包んだものをお出しになりますが、これは主として内廷費の方でなさっていられます。
  86. 一松定吉

    ○一松定吉君 何ですか、新憲法が実施せられて、憲法の規定によって皇室の財産というものが国家に属した後における皇室の費用と、新憲法の実施せられる前の皇室の費賀用とにおいて、どういうふうに金額に相違ができましたか、大体のことを教えて下さい。
  87. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 終戦前の皇室経費の全体はその年によって違います。といいますのは、国から四百五十万円を受けておるわけです。そのほかに皇室用財産から出る収入というのがございまして、皇室用財産、主として御料林、広く御料林を百万町歩ばかりお持ちになっておりまして、そういう御料林から出る収入、その他株の収入もございました。そういうような財産収入が八百万円から、多いときは千二百万円、そのまん中をとって千万円と考えますと、合せまして千四百万円、それに今の三百五十倍を掛けますと四、五十億になります。現在は皇室費は三億八千万円、なお宮内庁費というのが同じく三億八千万円、合せまして七億六千万円、ですから以前四、五十億のところを七億六千万円でまかなっておられるということになります。ただし、以前の皇室経費の中にはいろいろ学習院もなさっておりました。学習院の経費ですとか、あるいは博物館の経費でありますとか、なお皇宮警、現在は警察庁の方に予算が組まれておりますが、以前は皇室がまかなっておられました。従って以前よりは規模は小さい。以前の経費には各皇族、宮家が今よりずっと多うございましたから、そういうような経費もございました。規模は以前より小さいですけれども、以前四、五十億だったのが七億六千万円ということであります。
  88. 一松定吉

    ○一松定吉君 今まで宮中において御所有に相なっておったものは、憲法の八十八条によってすべて国家の所有に帰した。従ってそういうような費用から捻出されるところの皇室経費というものは出ないことになる。今お話によりますると、新憲法実施前の経費の四百何十万円というものは、今日の金の価値に換算すればいわゆる何千億というような膨大なものになる。私もそう考えておるのですが、そういたしますと、今度の戦後における皇室の費用というものは非常に減少されておる。従って陛下も思う存分これをお使いなさることができないというような御窮屈な御生活をあそばすということが、私は国民として非常に恐懼にたえないわけなんですから、そういう点については一つできる限り、冗費を増加するというようなことはもちろんいけませんけれども、必要な経費は相当に計上するというふうに、一つ将来は国会に要求するということが必要だと思うからして、そういうふうにお考えあらんことを特に私は希望しておきます。  それから最後に今の造営に関する諸費用だとか、あるいは陛下から御寵招を賜わりまして、国会議員やその他の学者、経験者、功績者という者に対していろいろな御供応を賜わるというようなことは、なるたけ数多くやって、そして遠慮なくなさるというようなことの方が、人間天皇として私は非常によいお企てだと思いますから、そういうような費用もどしどし計上していただいて、国会の承認を経るということを将来していただきたいことを希望して、私の質問を終りますが、それに対してあなたの御意見だけ伺っておきます。
  89. 瓜生順良

    政府委員瓜生順良君) 今ほどの御意見の点は、われわれもできるだけその線に沿うて努力したいと思っております。ただ天皇陛下はいろいろ予算のことなどで、まだ日本の経済も十分復興してないし、財政もそう裕福でないのだからという御遠慮のお気持を持っておられる。いつも先憂後楽というようなことをおっしゃいまして、まず自分は先に憂えてあとから楽しむ、だからまだほんとうに復興してないのだから、できるだけ倹約していこうというようなことをおっしゃっておりますので、そのことも考え合せながら、しかし、あまり御不自由をお与えしてももちろんいけませんので、その点を考えながら今後ともだんだんと予算もふやしていただく、そういう面について努力したいと思っております。
  90. 一松定吉

    ○一松定吉君 陛下が先に憂えて後に楽しむというお考えを持っていらっしゃるということは、われわれ国民として、まことにありがたいお考えであることについて感激をいたすのであります。それは陛下の御心、下僚であるあなた方としては、陛下のそういう御心情に深き考慮を払われまして、なるたけ陛下が御窮屈な御生活をあそばされないように、やはり予算を計上されることに御留意に相なるということが適当だと私は考えますから、そういうことをお願いする。陛下はなるたけ国民から税金をたくさん取ったり、国民に窮屈な目を負わしたりすることはきらいだというお考えは、これは歴代の聖天子の御心で、非常にけっこうなことであるから、下僚としてあなた方の方から今私が申し上げるような方針において、陛下があまり御窮屈な御生活をあそばされないようになさるということについて、御考慮を払ってもらいたいということをお願いして、私の質問を終る、こういう意味です。
  91. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 次に国会関係質問いたします。まず衆参当局に伺いますが、新たに報償費として衆議院に四百万円、参議院に二百四十万円が計上されておりますが、この報償費は何に使われるおつもりか、さらに衆参四百万と二百四十万の差がついているが、これはどういう基礎でこういう差をつけたのか、御答弁を願いたい。
  92. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院に今度四百万円の報償費を計上いたしましたのは、矢嶋先生御承知通り、最近外国議員の往来が非常に多くなりまして、特に今年オーストラリアの議員団を国会の賓客としてお招きをいたし、また来年度におきましては、すでに両院の議長から、ブラジルの国会議員にやはり国会の賓客として日本におこしいただくように、すでに招聘状を出しておるわけでありますが、そういう外国議員団を国会の賓客としてお招きいたしますときの接待のために使うつもりで計上したものでございます。
  93. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 参議院の方はきておりませんか……。最近外国の議員を国会がお招きするということは私はいいことだと思うのですが、それならば、なぜ十七の交際費のところに計上しないのですか。衆議院の場合には、議長交際手当が百九十五万円、さらに交際費が三百二十四万二千円が計上されておりますが、これは明らかに交際費ではないのですか。それを何がゆえに七の報償費というような項目で計上なさるのか。大体この報償費大蔵省の書類を見ても説明していないから、先般私は総括質問で大蔵大臣に伺ったところが、大蔵大臣は、高度の機密に属する云々と答弁されたのですが、そういう性格のもの、公安調査庁の報償費はそうなんです。外務省とか……。そういう性格のものと、さらには、法務省のように賞状を与えるという内容報償費もあるわけなんです。国会の場合の衆議院の四百万円、参議院の二百四十万円というものは、これは明らかに交際費に所属すべきものだと思うのですが、これについて大蔵事務当局はどういう見解ですか。
  94. 上林英男

    説明員(上林英男君) 交際費は、通常の官庁と言いますか、国会の場合でございますと立法機関でございますが、たとえば衆議院でございますと、衆議院議長の通常の社交的と申しますか、儀礼的と申しますか、いわゆるおつき合いのための経費を交際費と、こういうふうに考えております。今回報償費に計上いたしましたのは、国を代表いたします立法機関が国として相手の国の立法機関をお呼びする、いわば外交と申しますと語弊がありますが、外交的な目的をもちましたおつき合いでございますので、その意味におきまして、いわば各官庁におきます外交、内政上必要とする経費で、そのために必要とする経費でございまする関係上、これを一般的な儀礼的な交際費と区分いたしまして、報償費として計上いたしました次第でございます。
  95. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その点は了解できませんが、角度を変えて伺いますが、議長交際手当は衆参とも同額に組んであります。これはごもっともだと思います。まあ、しいて言えば、議員の数の違いから議長交際費は若干差をつけていいという考え方があるかもしれませんけれども、しかし、衆参とも議長の交際手当は同じように百九十五万円計上してあることは、これは私は妥当だと思う。ところが、交際費の方は、衆参で差があります。これもやむを得ないかと思いますが、ところが、先ほど説明されたようなそういう内容報償費であれば、衆議院の四百万円と参議院の二百四十万円と、数に差をつけたというのは、どういう説明をなさるのですか。大へんこれはおかしいことだと思うのですがね。
  96. 上林英男

    説明員(上林英男君) 実は本年度でございますが、オーストラリアの議員団をお招きしたことがあるわけです。そのときに参衆両院でもって協同して経費を負担いたしましたのですが、十対六でございました。まあ、たまたま議員の議席数の割合が十対六でございまするが、大体いろいろな場合の経費の負担区分とか、いろいろなそういう場合に使う数字でございまするが、現実には参衆両院で協同してお招きになる。その結果お互いに経費を按分してお払いになるというような格好でやっておられるわけでございまするので、今回のブラジル議員団等の招聘におきましても、おそらくそういうような格好でおやりになると、こう考えております。従いまして、大体総額といたしましては六百万円程度の金と考え、そのおのおのの計算上、金額を今申し上げましたように四百万円と、二百四十万円、こういうふうに計上いたしましたわけでございます。
  97. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) これは私は討論しませんが、来年度予算を編成する際に、一つ検討してもらいたいと思うのです。議員の外国出張旅費とか、国内出張旅費は、議員の数に比例して算出するというのは当然だと思うのですが、外国の国会議員を第一院と第二院がお招きする場合に、その負担を何対何で配分せねばならぬように、そういうふうに予算書に載せるということは、あなたも、予算書に同じように載せたから十対六で配分しましょう、十対四にしましょうと、そんな議論をすることはないわけです。これは非常な細かいことだと思いますが、さらに衆参両院当局と来年度一つ検討してもらいたいと思うのです。それと、私は報償費の項目で、新たに計上されたのは、これは妥当でない。交際費のところに一つの項を起しても、そういうところで特殊な性格をもった交際費というふうな形で計上されるべきものだと、私はそう思います。大蔵大臣の予算委員会における報償費に対する答弁から言って、またその内容を各省庁などで調べたのですが、その内容から言っても、同じ報償費を七の項目で衆参で計上するということは、私は適当なものでない、こういう見解をもっておりますので、これは一つ検討しておいていただきたい。次に衆参の当局に伺いますが、常勤職員約六万在職するうち、その約三三%、三分の一の約二万人、大まかに言って約二万人を定員国家公務員として切りかえる予算並びに法案が、今、国会に出ているわけですね。国会の常勤職員定員切りかえは、行政管理庁は強制しないということで、行政管理庁から出た資料にも出ていないのです。それで国会としては、常勤職員、何名かここに数字がありますが、それはのちほど申し上げましょう。そのうちから何名をピック・アップして定員化するということについては、どういう基準でやられ、だれがその方針をきめて、どこで決定したのか、その点をお答え願いたい。
  98. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院について申し上げますと、衆議院は従来四十三名の常勤労務者がおりました。このたび三十五名を定員に切りかえをいたしたわけでございます。その基準でございますが、私どもの方では、まあ常勤労務者の定員化という性格にかんがみまして、ごく特殊な、常勤労務者でないとやはり困るような特殊な人を除きまして、ほとんどの人を定員に切りかえるように、四十三名のうちの三十五名を定員化いたしたわけでございます。
  99. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 参議院の場合におきましては、来年度におきまして、十名だけ定員化する予算になっております。この衆議院が三十五名で、参議院が十名しか定員化できないことを御不審にお思いかと存じますが、来年度の予算を編成いたします際にその基準といたしましたところは、常勤労務者の中で、七等級以上のものを定員化するという一般の御方針に従いまして、本院の常勤労務者の中で七等級以上のものは十名でございましたので、衆議院は三十五名で、参議院は十名という数になったわけでございます。
  100. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その七等級以上という基準は、だれがきめたのですか。
  101. 上林英男

    説明員(上林英男君) 常勤職員定員化につきましては、先ほど矢嶋先生からお話しがありましたように、行政機関につきましては、行政管理庁といろいろ相談をしてやって参ったわけであります。行政管理庁の基準は、一定の責任と、それからその他勤続年数、職責その他を勘案いたしまして定員化をして、その機関の基幹的な職員としてふさわしい人をとりあえず定員化する、こういう方針で、主として行管が作りました基準に従いまして定員化をすることに相なったわけであります。国会の場合は独立機関でございまするので、行管の規則を受けないわけでございますが、同じような趣旨から、その線を七等級というような、以上の者に引くということにいたしたわけでございます。
  102. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) この問題は参議院の予算委員会でかなり質疑応答をやったわけです。そうして資料も提示を求めたわけですが、行政管理庁当局は、七等級以上云々というような基準は示しておりませんよ。これは大蔵省が対国会という立場で独自できめられた基準でございますか。
  103. 上林英男

    説明員(上林英男君) 行政管理庁とお話をいたしておりますときには、責任の限界なり、あるいは職責の限界、学歴、その他いろいろの点で議論をいたしておったわけでございまするが、おのおのいろいろな、各省におきましては独特な理由がございます。そういうものを加味いたしまして、もちろん頭の中では、今申し上げたような責任の度合とか、学歴とか、勤続年数とか、そういうようなその機関の基本的な人間になるべき人間をとりあえず定員化しよう、こういう方針で議論いたしたわけであります。それで国会の場合には、どういう基準でやるかという点は、もちろん行管とは相談いたす範囲ではございませんでしたが、そういう趣旨に従いまして、いろいろなものが総合されたところは、結局、格づけと申しますか、今の一定の等級以上、こういうことに相なるかと思いまして、そういうことで国会お話し合いをし、結局それで両方で、国会にも御了承を得て、七等級以上のものを定員化するということにいたしたわけであります。
  104. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) お伺いいたしますが、独立機関であめるところの国会職員であろうが、行政府関係職員であろうが、こういうものを取り扱うときは大体同じ基準で扱うという点についてはどうお考えになりますか。
  105. 上林英男

    説明員(上林英男君) 同じような基準でやるということは、その通り考えております。従いましてそういう基本方針に従いまして、どこで線を引くかということを国会とも打ち合せをし、七等級で線を引くことにいたしたわけであります。
  106. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 行政管理庁が私の要求に基いて出された基準としては、業務内容の重要度、責任の度合を考慮し、重要な職務に従事し、責任の重いものを選んだ、こういうふうに資料として出されております。この基準から考えた場合、参議院において自動車運転手が二名、それから衆議院において自動車運転手が五名、例をあければ……。それから電話交換手が参議院において七名、あるいは看護婦が三名、こういう人が依然として常勤職員でありますが、この区別はつくのですか。私ども自動車に乗せていただいておるが、運転している運転手さんは、この職員定員内か定員外か区別つきません。その重要度が軽いと見られたような運転手さんの車に乗せられてぶっつけられては、たまったものではないですよ。同じ運転手さんでそのような差がつくのですか、あるいは看護婦は職員の診療をやっておるのに差がつくのですか。交換手は同じ交換台に立って交換をやっておるのに、責任の度合というのか、重要度というものはどういうふうに衆参当局は差をつけておるのか、御答弁いただきたいと思います。
  107. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院の常勤労務者のうちで、今先生からお話がありましたように、四十三名のうちで三十五名を定員化いたしました。事務補佐七名と調査の一名、八名残ったわけであります。これはやむを得ない人たちという意味でございますが、そのほかに自動車運転手五名、庁務用具と申しておりますのは、今度衆議院の方に新庁舎ができ上りまして、そのためのエレベーターでございますとか、あるいは掃除をしていただく用員さんでございますとか、そういう人たちが常勤労務者で入りましたのと、自動車運転手が五名常勤で入ったわけでありますが、自動車運転手で定員と常勤と区別があるのは、仕事の重要度云々というお話でございましたが、そういう区別はなかなかしにくいのでございますが、大体御承知のように、一般職の給与表を適用しております者のうちで、七等級と八等級とございまして、六等級以上は大体係長でございます。七等級というのは一般に上級職員ということになっております。八等級というのは下級職員ということになっているわけであります。そういう意味で一応重要度ということも勘案しまして、八等級の者を除きまして七等級以上を定員化した、自動車の運転手につきましては、仕事の内容としましては変りないのでありますが、初め入ります人は割に月給が安い人が入りますので、今度は常勤で入れた、こういういきさつでございます。
  108. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 参議院の方は。
  109. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 参議院の方は、まだ新庁舎が完成いたします見込みが秋になりますので、ただいまの新庁舎関係の庁務の用員は入っておりません。運転手の二名だけが今衆議際と同様に入っているわけでございます。
  110. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 電話交換手七名、看護婦の三名、これは重要でない、責任がないのですか。
  111. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 全般的に御説明申し上げますと、参議院の場合は非常に従来から定員が苦しいのでございます。参議院の職員の千百四名というのがございますが、現在におきましても、純粋の欠員というものはほとんどゼロでございまして、毎日この定員がオーバーすることを心配しながら、人事をやっているというような状況なんでございます。従いましてなぜ等級の高い者が雇えないかと申しますと、定員が苦しいために、やむを得ず常勤労務者をもって埋めるという結果になるのでございまして、現在おります常勤労務者の内訳を申し上げますと、たとえば議員会館の職員が九名、議員宿舎の職員が十一名、あるいは警務課の政党の控室であるとか、帽子の預り所であるとか、そういったところに勤務する者は六名、それからたとえば夜間に庁舎関係の警備をいたしております職員が三名といったような状況でございまして、これらはどうしても議員さんのお世話をする関係、あるいは庁舎を警備する関係、そういった関係でどうしても必要な職員であります。この七等級以上――今のたとえば七等級で申しますと、相当の高度の知識または経験を必要とする業務を行う職務となっておりますが、いわゆる上級職員あるいは六等級、五等級の係長というものが雇えませんで、どうしても今申し上げましたような関係の必要やむを得ざるものを、まあ比較的単価を落してたくさん雇わざるを得ない状況にあるわけでございます。従いまして七等級以上の者が、先ほど申しましたように、参議院におきましては十名しかなかったという結果になっているわけでございます。そこで予算の各目明細には事務補佐員二十九名、看護婦三名、運転手二名、交換手七名とございますが、必ずしも現在この数が現在員と合っておらないのが遺憾でございますけれども、ただいま申し上げましたような状況で、やむを得ず、必要やむを得ずそういう運営をいたさざるを得ない状況になっていることを申し上げます。
  112. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 佐藤人事課長に伺いますが、現在常勤労務者は何名おりますか。
  113. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) 現在七十五名おります。
  114. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その七十五名いるうちから十人を定員化すると、六十五人になりますね。
  115. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) さようでございます。ただこの十名の定員化のほかに、すでに四月一日から主事に採用すべきものが五名おりますので、十五名定員化しまして、残りが六十名でございます。
  116. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) この予算書には四十五人しか出していないのですが、それはどういうわけですか。
  117. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) この四十五名の定数は本来守らなければならない数でございますけれども、先ほど申し上げましたような定員の苦しいために、参議院におきましては、これは実情を申し上げますが、やむを得ず職員の単価を落すと申しますか、低い給与の職員を常勤労務者として採用しまして、この予算の範囲内でまかなっているというのが実情でございます。
  118. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 事務次長に伺いますが、こういう職員国会を運営していくに当って必要のある人なんですか。必要ない人員なんですか。事務次長からお伺いしたい。
  119. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) この点につきましては、ただいま人事課長が申しました通り、必要欠くべからざる人員であると思います。
  120. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 必要欠くべからざる人を、国権の最高機関において国民の奉仕者として働いていただく場合に、うういうことが行われているということは驚いたことですよ、これは。予算書に四十五人と出ておって、この実員は六十人というのでしょう。そうして予算金額は、要求金額は七百九十万二千円と出ているわけなんですね。これは一文ももう動かせないわけですね。そうすると、四十五人分として計上された七百九十万二千円で六十人もまかなうわけなんですから、賃金を下げにやならぬわけですね。そうでしょう。下げなければならぬ。そうすると、あなた七等級にならないじゃないですか。大体七等級にならないので、参議院は十人しか定員化しなかったという、こんな悪循環のひどい話がありますか。あなたそういうことで部下から信頼される事務次長となり得ますか、あなたは。ちょっと待って下さい。驚くべきことですよ。で、今度の定員化は各省庁を通じて平均三三%、私は内閣委員ですから関連をもって調べてきているわけなんですが、まあ衆議院の方はあとで伺いますが、八一%になっているのは努力の跡が見られる。参議院に至っては一九%じゃありませんか、一九%。何ですか、大蔵省からやっつけられたのですか。それとも頭から交渉しなかったのですか。こういうことは私は許さるべきことじゃないと思うのですよ。これをあなた、四十五人の予算で六十人雇う。しかもこれは必要な人員だという。そうしたら、七等級に格づけできるような給与を出せるわけはないですよ。そうしたら、七等級にならなければ、定員化しない。そういう機械的にやっていって、そんなひどい扱いはありませんよ。私は宿舎にお世話になっている。けさあたり、この娘はこれは常勤かな、定員かなというとわからぬのですね、ちょっと、かまをかけて聞いてみると。勤務状況は差がありゃせんですよ。それからむしろ常勤なんかに非常にりっぱな人がおるですよ。よく働くのがね。決して常勤の方が質が悪いなんて絶対差がつくということはないですよ。それは看護婦、運転手、交換手に限りませんよ。つくものじゃないです。これは一日も早く是正されるべきだと思うのです。一体努力されたのか、されないのですか。それを一つお答え願いたい。私の申し上げていることはむちゃなことを申し上げているのじゃないつもりなんですがね。
  121. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) ただいま矢嶋委員の御質問の点、まことに御もっともなことでございまして、こうした事態を持っておりますことは、実は最近におきましては、御承知通り人員の増加というこつとはほとんど認められてこなかったのでございまして、ここ数年、速記、特殊な警務を抜かしますると、職員の増加ということはなかったのでございます。それで私の方の議員宿舎等の経営方針は、衆議院と異りまして、純然たる参議院の職員をもって、これに充てておる実情でございまして、その点は、職員予算において少いにもかかわりませず、使用しておる人員が多数に相なっておるわけでありまして、非常にそうした実情が、この結果に大きな影響を持っておるのじゃないかと思考いたしますが、何分お話通りのことでございますから、十分考慮いたしまして善処いたしたいと思っております。
  122. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) これは行政管理庁と関係なく独立しているわけなんですが、しかも行政管理庁の国会に出された基準から解釈して、国会のこの扱い方は、私は非常にそれからずれていると思う。大蔵事務当局との折衝で解決できる問題ですか。大蔵事務当局の方に承わりたいのですが、こういうことを、国権の最高機関でこういうことをやってよろしいのでしょうか。これは広義に解釈すれば、労働三法の立法精神に反しますよ。こういうことは反しますよ、広義に解釈すれば。それが私は不必要な運転手であり、交換手であり、そういうものなら申しませんよ。そういう人がいなくても国会が――十分車が回るのだったらば私は申しません。しかし事務次長が認められるように、必要なんでしょう。そして採用する場合には、あなた方、身体検査も、筆記試験までして相当テストして入れているはずです、国会はですね。それからその任に堪えないような者は、あなた方で適当にこれは淘汰しているはずなんですね。そうして国会に働いていただいている人は、今一部わかりましたような、まあ何年間も――私は若干調べてみたのですが、何年間も常勤でおる人があります。ところが他の行政官庁は平均三三%も定員化されている。こういうことを私は庶務小委員会なり、さらに議運で協議して通して、そうして国会の意向として、大蔵事務当局、さらには大蔵大臣と折衝して通らない、認められないと、そんなばかなことはないと思うのですよ。事と次第では、私は大蔵大臣――親委員会で場合によって、必要があれば、私はやらなきゃならぬと思っているのですがね。一つ事務当局の方は今後いかように対処なされるのか、お伺いしたいと思います。
  123. 上林英男

    説明員(上林英男君) これは衆議院と参議院、あるいはほかの行政官庁との定員化の比率が違うという点でございまするが、これは行政官庁におきましても、それぞれパーセンテージが違っているかと存じております。それで、私の記憶によりますと、むしろ行政官庁の基準に従いまして定員化をいたしますと、要するに責任の度合いその他というような観点から考えますと、たとえば法務省でございますと、登記管理の職をやっておる者が常勤職員でおる、いわば国家権力に参画しておるというようなものがその常勤職員でいる、そういうのは従って定員化すべきではないか、こういう観点から拾い出しましたような場合には、むしろ立法機関の場合には少くなるというようなケースであったと考えております。従いまして、むしろそういうものが集約されました一定の等級以上の職員を拾った方がいいのではないかというところで七等級というふうに線を引いたかと考えております。そういうような事情でございまするので、たとえば各省におきましてもそういう職員が比較的多いところはパーセンテージが高うございます。少いところは少くなって参るというような格好に相なっているかと存じております。従いまして、一律にはパーセンテージで議論ができないのじゃないかというふうに考えます。それから第二の、今の予算定員以上に参議院におきまして定員を置いておられるというのは、私も実はあまりつまびらかにしておりませんでしたが、これは予算の建前上、予算定員以上に人を入れることはあまり好ましくないことであります。予算総則にもその旨うたってあるはずでございます。もちろん、予算の中のやりくりでやっておることはあるのでございますけれども、好ましくない点でございまするが、私ども常に考えておりますのは、衆議院と参議院につきまして、たとえば常勤なり定員をふやしますときには、おのおの同じような角度でものを考えて入れておるつもりでおります。たとえば運転手なり速記の人というようなものは同じように、これは議員さんの数ではございません。たとえば自動車を入れますと、その自動車の台数、あるいは速記の場合には必要、このものを必要とする数、ことしなどはたしか同数だったと考えておりますが、そういうようなふうに入れておるつもりでございまして、あとは私、運用なり実情なりはよくつまびらかにいたしませんけれども、その辺のバランスは私の方では十分考えてやっておるつもりでございます。
  124. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 伺いたい点は、実際必要であると、人は。それだけの人を入れて、そして給与予算額から給与を割り出すと低賃金になる。そのために七等級以上に格づけができない。さらに七等級以上でなければ定員化なされないということになると悪循環しているじゃございませんか。たとえば具体的に、どうしても必要な運転手で運転しておったらば、これは果して国会職員として的確かどうかというのを試みにためしてみて、若干臨時採用して、大丈夫、これは国会職員に適するというので本採用するというなら話はわかる。しかし、そうでなくていつまでもそういう予算の面から同じ車を運転しておる、事故を起したら大へんです。交換手だって看護婦の場合あるいは宿舎の職員でも同じことです。それを一方は定員に入れ、一方は定員からはずすということは、これは私は穏やがでないと思うのです。これは参議院事務当局の説明まだ不十分だと思うのですね。それからそれを理解しない大蔵省もややこれは、がんこじゃないでしょうかね。近い将来一つ是正していただきたいと思うのですが、事務次長、いかがですか、努力されますか、見通しをちょっと伺います。
  125. 佐藤吉弘

    ○参事(佐藤吉弘君) ただいま申し上げましたのは実情でございまして、私どもこの定数をオーバーしておりますことを決していいこととは考えておりません。またその結果におきまして、来年度におきまして七等級以上のものが一九%にしか当らなかった、そういう実情であったことは、はなはだ遺憾でありますが、やむを得なかったごとではないかと考えます。で、今後におきましては今十五名オーバーしております常勤職員は来年度本定員の方のやりくりがつく限り定員化いたしまして、この予算定員をオーバーしている状態を一日も早く是正し、かつ常勤職員で給与が低い、あるいは定員化できない職員方々定員化を一日も早くはかりたい、かように考えておる第でございます。
  126. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 私は独立機関である国会だから、他の行政官庁よりもたっぷり定員を取って、そうしてその公務員の勤務時間も短かくしてやっていくというようなことは、私は許されないと思う。許されないと思う。しかし国会を運営していくに当って必要なだけの公務員の員数という、定員というものは確保すべきだと思う。そうしてその公務員に対しては国家として公務員らしいところの処遇をすべきだと思う。それは国会のみならず、まず国会から始めてこれを私は全行政機関に及ぼすべきものだと思うのです。それが公務員制度としてあるべき姿ですよ。ところが特殊な行政官庁にある特殊事情から逆にたどってきて、逆算してきて、国会においても今この指摘されているような事態であるということは、これは私はつゆゆしき事態だと思うのですね。こういう事情はこれは議長知っておりますか。事務次長、議長に報告してありますか。
  127. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) この点につきましてはただいまのお話通りでございますが、近来の参議院の人員の不足につきましては、歴代の人事課長がずいぶん骨を折りましたのですが、何分事務がふえる一方でございまして、それにマッチできなかったのは、はなはだ遺憾でございまするが、将来十分気をつけていきたいと思っております。
  128. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 参議院の事務次長に要望しておきますが、こういうことが予算分科会で論議されたということを議運の委員長なり議長に報告していただきたい。
  129. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) 承知いたしました。
  130. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 次に、衆議院側にお伺いしますが、まあ衆議院の方は参議院よりも関心を持ち努力をされた点は認められます。予算の先議権と後議権が少し関係したのじゃないかというような私は感じを持つわけですが、しかしあなたの方でも不思議な感を持つわけです。それは四十三人のうちから三十五人をピック・アップして定員に入れると八人になりますね。八人に。ところが今度この予算書を見ると常勤職員定員は二十一人になっているのですね。この二十一人というのは、これは衆議院を運営していくに当って必要な人なんでしょう。これはどういうことなんですか。四十三人のうちから三十五人定員化して八人常勤があるわけなんですね。そのままならまあ話は私はわかると思う。ところがそれに十三人加えて、この予算書には三十一人の常勤職員出してある。そうすると、これはまあ必要な人なんだろうと思うのですがね、衆議院、これはどういうふうに説明なさるのですか。
  131. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 先ほどちょっと申しましたように二十一名、新しく入りました常勤職員定員が十三名でございまして、そのうちの庁務用人というのは先ほど申しましたように、新庁舎の管理に必要なエレベーターの職員でございますとか、あるいは小使さんのような人なんでございますが、私どもとしましては、同じような内容の仕事をする人たちでございますので、まあ最初はそういう格好で、月給も安い人でございますから、初年度はそういうことでしんぼういたしまして、順次まあ定員に繰り入れていただきたいというふうな意味で、最初の、初年度といいますか、そういう意味のものは常用でしんぼうするという考え方で入れたわけでございまして、将来はやはり同じ内容の仕事をするものにつきましては、できるだけ早く定員化していただきたいというふうに考えております。
  132. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) その答弁は了とします。一つ十分努力していただきたいと思います。私は外国に行った場合一つ感心したことは、外国の官庁の運転手さんは、頭は、はげた年寄りがずいぶんいるのです。こういう人は事故を起さないという話ですが、客扱いも、車の扱いも非常にうまいのですね。聞いてみると一生ハンドル持っておっても、それで待遇が上っていって暮せるというわけですね。このことは私は傾聴すべきことだと思ったのです。それはエレベーターの運転手であろうが、自動車の運転手であろうが、それを事故もなく能率的にそれを果しておるということは非常にとうといことだと思うのです。決してわれわれはハンドルを持っているからとか、それほど高度の技術を要しないかもしれないが、エレベーターを運転しているからといって、軽べつの一片の念すら持っておらないと思うのです。ましてや、その同じエレベーターを運転している人で、一部は定員に入り、一部は常勤で超過勤務もいただけない、そういうような差別待遇をするということは、これは労働法の違反ですよ。さらに申せば私は憲法の条章に違反すると思うのです。そういうことが国権の最高機関国会で行われているということを驚かざるを得ない。  そうして先ほど参議院の場合でも、衆議院の場合でも予算書に上げられている数字から見て実に私はおかしいと思う。従って新庁舎もでき上りましたら、衆議院、早急にこの定員化を大蔵当局と折衝をもってもらいたい、こういう内容質疑があったということは衆議院側においても、議院運営委員長、並びにあなたの上司である事務総長、事務総長を通じて議長に報告していただきたいことを要望しておきます。よろしゅうございますか。
  133. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) かしこまりました。
  134. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) もう二、三で終ります。  次に伺いたい点は、自動車購入費が衆参相当組まれておりますが、これも必要な車だろうと思いますから、これはもう深くは伺いませんが、私が伺いたい点は、自動車維持費ですね、これが相当の金額になっているのですが、これは国産車を買うので維持費がよけいかかるのじゃないのですか。予算面ばかりから考えれば、これは外車を買った方がその維持費も少くて経済的であるというふうには結果は出ておりませんか。その点はどうなっておりますか。参考に聞いておきたいと思います。
  135. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 今の自動車維持費問題でございますが、実情を申しますと、まあ戦後から今日までの間、大体原則として外国車が入っておったわけでございます。非常に型の古い車もございまして、そのために修繕費がかさんでおりましたのは事実でございます。できるだけ新しい車に交換いたしますると、自動車の維持費というものは減っていくわけなんでございますが、一定の、各官庁には、交換をする場合の基準がございます。そういうことでなかなか交換が進捗しておらないのでございますが、ことに衆参両院の車につきましては、各官庁の車と違いまして、使い方におきましてもまあかなり激しいといいますか、そういう意味で、やはり一定の年数だけでは衆参両院の車というものは割り切れないものがあるのでございまして、そういう意味で修繕費というものは非常にかさんでおる実情でございます。最近新しく入ります車並びに交換しますものは、全部衆議院におきましては国産車を利用しておりまして、今のところ、国産車が入っておりましてから多少の経験しか持っていないわけでございますので、そういう意味で現在の国産車は新しいだけにほとんど修繕費がかかっておりません。ただこれが五年十年とたちますと、外国の車と比べまして国産車の性能がどういうことになりますか、相当修繕費がかさんでくるのじゃないかと思いますが、現在の段階におきましては、新しい国産車はむろん修繕費がかかりませんので、古い外国車によけい修繕費を食っているというのが実情でございます。
  136. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 明快にわかりました。  次に伺いたい点は、衆参とも衛視宿料といって、そうして単価八百四十円出ていますが、これは単価八百四十円、一ヵ月にして七十円ですね。これはどういう内容のものですか。
  137. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衛視宿料と申しますものは、衛視は御承知のように院内の警備に当りますものですから、夜、突発的な場合にあまり遠くにおりますと、その任に耐えませんものですから、そういうことで上げておりまする経費でございますが、実際は非常に単価が少うございまして、最近は終戦から今日までの間におきまして職員の宿舎もだいぶ整備いたしまして近いところに宿舎を持つ衛視もおりますものですから、なんとかこれでまかなっておりますけれども、実質的には宿舎が整備いたしますと、こういうものはほんとうをいうと要らなくなる性質のものなんでございますが、そういうかね合いで現在のところは入っているわけでございます。
  138. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) これは宿直手当とは違うのですね。
  139. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 宿直手当とは全然違います。宿直手当の場合でございますと、これは役所の勤務としまして宿直いたします場合に、別に人件費の系統から宿直料として出しております。
  140. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) これを具体的にはどういうふうに支出しているのですか、説明いただきたいと思います。
  141. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 宿日直の場合には超過勤務手当というのがあるわけでございまして、そうして従来はすべて私の方は超過勤務手当をもって当日直の方を支給いたしておりました。昨年の四月から各行政官庁に準じまして当日直料の制度を国会職員の給与規程の制度の中に設けたわけでございます。そういうことで一回の当日直に当りまして三百六十円という同じ当日直料を支給するようにいたしております。ただ費目は当日直料というものを別に立ててありませんから、費目は超勤で支弁しておりますので、当日直料はそういうことで日額を定めまして、そして実施をいたしておる実情でございます。
  142. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 参議院も同じでございますか。
  143. 宮坂完孝

    ○参事(宮坂完孝君) 参議院も同じでございます。
  144. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 次に、衆参ともに庁舎増築費というのが出ておりますが、これはどういう内容のものか、衆参面会所、ほとんど完成に近づいておりますが、あの完成に必要な予算は今度の予算書には出ていないのではないかと思いますが、それはどうなんですか。
  145. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院の庁舎増築費千七百八十五万円というのがございます。これは矢嶋先生御承知のように両院のわきに建てております新庁舎がございます。議員面会所及び受付を中心にいたします建物でございますが、それの完成に必要な経費でございまして、この経費をもちまして完成をいたすことになっております。
  146. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 衆議院で約千七百八十万、参議院で三千七百二十万予算が要求されているわけですが、あの両庁舎はいつから使えるようになりますか。そうしますと、着手してから何年何カ月日ということになるか、それを一つお答えおき願いたいと思います。
  147. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院の新庁舎は、この予算通りますと、大体五月ごろには使用できるようになる見込みでございます。着手いたしましたのは、実際の増築庁舎の工事にかかりましたのは三十年でございまして、その前に仮設、当時あそこにありました建物を移築しますとか、あるいは面会所の移築等の準備工事に二十八年、二十九年を要しまして、それで実際の庁舎の増築工事に入りましたのは三十年でございます。自来三十年、三十一年、三十二年を終えまして、大体三十三年度の初めでもって終るということになっております。
  148. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 参議院の方は。
  149. 浅井亀次郎

    ○参事(浅井亀次郎君) 参議院につきましても、やはり着手をいたしましたのは衆議院と同様でございますが、予算関係で使用でき得るようになりますのは、本年の十二月末の予定でございます。
  150. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 大蔵事務当局に伺いますが、これは一つの見本だと思うのですがね。幾らわが国が貧乏国とはいえ、あの程度の建物が三年も四年もかかっては……。これをどこかに貯金して金融の方に回わせば、これは国家資金としてはずいぶん効率的な運用ができると私は思うのですがね。しかも、この衆参で何カ月かの期間差ができたというのはどういうことなのか。この二つの建物だけがそうならばいいんですが、全国で、国費で建造する建物がこういう状況では私はちょっと問題だと思うのですがね。あなた方の方ではどう考え、反省されているのですか、参考に事務当局に見解を伺っておきたいと思います。
  151. 上林英男

    説明員(上林英男君) 第一の参議院の庁舎の建築がおくれておるという理由は、こういうことでございます。当初の計画を途中で変更いたしました関係上、参議院につきましては若干おくれまして、従って若干のおくれが、金額で申しますと千七百万円と、三千七百万円、約二千万円の資金の差があり、その結果といたしまして、工事は参議院の方がおくれましたという関係でございます。それから第二の国の予算でやります建築費がなかなかつかないで、おくれているのではないかという点につきましては、いつもいろいろとお叱りを受けておるのでございますが、私どもは国会の建物につきましては、国会の独立機関である点にかんがみまして、できる一たけ早く、完成するように努力はして参っておるつもりでございます。ことにこの庁舎の問題につきましては、なるべく早く作るつもりで、いろいろ査定に当りましても配意を加えておりまして、現実には今年はもう相当のところまで全部できておりまするが、ある年によりますと、工事量が追っつかないで、繰り越しがあったという年もあるわけでございまして、そういう点も考えて予算の計上をいたしできたつもりでございます。ただ何分にもやはり予算を編成いったします際に、いろいろと編成方針等にのっとりまして、たとえば、投資的な支出をなるべく押えるというような年にぶつかりまするときには、控え目にお願いせざるを得ないというような場合も過去にはあったかと考えておりまするが、できるだけ国会の場合におきましては、その性格にかんがみまして、早く完成するように努力をいたしてきたつもりでございます。
  152. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 計画変更がこの期間差を生じたということですが、それだけ聞いておきましょう。それで最後に、衆議院の方に休職者が十九人ございますね。参議院の方の休職者は給与のところに人数を入れてないんですが、これは脱落したのだと思うのですが、参議院は何名あるのですか。そうしてどういう理由で休職されているのか、それを承りたい。
  153. 浅井亀次郎

    ○参事(浅井亀次郎君) お答えいたします。該当者は大体結核患者が休職中で、支給されております。
  154. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 何名ですか、予算書に出てない。空白になっている。正誤表を出しているだろうと思うのですが、正誤表が見つからんのですよ。出てないのか……。
  155. 浅井亀次郎

    ○参事(浅井亀次郎君) これは八名でございます。
  156. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 八人は結核ですか。
  157. 浅井亀次郎

    ○参事(浅井亀次郎君) そうです。
  158. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 衆議院の方はどうですか。
  159. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 衆議院につきましても、大体結核によりまする長期療養者でございます。
  160. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 職種としてはどういう人が多いのですか。
  161. 知野虎雄

    ○衆議院参事(知野虎雄君) 職種は特別にどの職種が多いということはございませんが、やはり事務系統、それから速記、警務、みなにわたっておりまして、特別の職種だけが特に飛び抜けて多いということはないようでございます。
  162. 矢嶋三義

    担当委員外委員矢嶋三義君) 国会職員は場合によると精神的な重圧を受けることと、それから仕事の繁なる場合と、閑なる場合との差が非常に激しいのですね。それだけに私は健康に及ぼすところが多いと思うのです。これらの職員の保健については、両院当局者は十分意を払っていただきたいと思うのです。特に病を得て休職されている参議院八名、衆議院十九名の人については、心安らかに休養ができるように上司の方で御配慮をしていただくことを要望しまして、時間がありませんので、これで質問を終ります。
  163. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) それではこの程度でもって皇室費総理府所管のうち宮内庁国会所管については、国会図書館を除く残余の部分りは、それぞれ一応終了をすることにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) 御異議ないと認めます。午後一時半まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十六分開会
  165. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) 休憩前に引き続いて、これより第一分科会を開会いたします。法務省所管を議題といたします。まず政府の説明を求めます。
  166. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 昭和三十三年度法務省所管予算内容につきまして、その大要を御説明申し上げます。昭和三十三年度の予定経費要求額は二百四十四億五千二百五十五万五千円でございまして、これを前年度の予算額二百三十一億一千五十四万二千円に比較たしますと、十三億四千二百一万三千円を増加いたしました。この増減の詳細は別途の資料により御承知願いたいのでございますが、今増額分の内訳を大別いたしますと、第一に、人件費関係の十億八千八百四十七万六千円でございます。これは昇給、昇格等に要する職員俸給等の自然増加額であります。第二に、営繕費関係の一億一千二百四十万一千円でございます。これは補修費の増加額でありまして、坪当り単価の増加と坪数の増加等によるものでございます。第三は、売春防止法の一部改正に伴う婦人補導院関係経費の一億一千三百一万九千円でございます。次に、昭和三十二年度において、新たに増額した経費内容とおもなる事項の経費について御説明申し上げます。第一に、前に述べましたところの婦人補導院関係経費でございまして、これは法務省設置法の一部改正により定められる婦人補導院所掌の一般事務を処理するに要する経費と、売春防止法の一部を改正する法律及び婦人補導院法により補導処分に付せられた婦人を収容し補導を行い、更生させるために要する経費として一億一千三百一万九千円を新たに計上いたしました。第二に、昭和三十四年二月二十六日に任期が満了する衆議院議員の選挙の公正を期するため、厳正、適切な検察を行う必要がございますので、これに要する経費として一千九百五十七万七千円を新たに計上いたしました。第三に、法の複雑化及び訴訟技術の専門化に伴い、貧困のため法の保護を受けられない人々のために、法律扶助事業を助成強化し、貧困者の権利の保護を強化する必要がございますので、これに要する経費として一千万円を新たに計上いたしました。以上が新たに計上いたしました経費の概要でございます。次に、おもなる事項の経費について概略を御説明申し上げますと、第一に、外国人登録法に基き、在日外国人の登録及び指紋採取の通常事務を処理するために必要な経費といたしまして、九千四百五十六万七千円を前年度に引き続き計上いたしました。第二に、法務局、地方法務局等におきまして法令に基く登記、台帳、供託、戸籍等の事務を処理するために必要な経費といたしまして、三億七千五万三千円を前年度に引き続き計上いたしました。第三に、検察庁におきまして処理する一般刑事事件その他各種犯罪事件の直接捜査活動に要する経費といたしまして四億八千八百六十四万九千円を前年度に引き続き計上いたしました。第四に、拘置所、刑務所、少年刑務所、少年院及び少年鑑別所の昭和三十三年度の一日収容予定人員九万四千七百人に対する衣食、医療及び就労等に要する経費いたしまして四十七億五千五百三十六万六千円を前年度に引き続き計上いたしました。第五に、犯罪者予防更生法、更生緊急保護法及び執行猶予者保護観察法に基き、刑余者並びに執行猶予者を補導監督し、これを更生せしめるための補導援護に要する経費といたしまして三億二千九十一万一千円を前年度に引き続き計上いたしました。第六に、出入国管理令に基く、不法入国者等の調査並びに審査事務を処理し、被退去強制者に対しては護送、収容、送還する必要がございますので、これに要する衣食、医療及び送還のために必要な経費といたしまして一億一千九百二十万円を前年度に引き続き計上いたしました。第七に、公安調査庁におきまして処理する破壊活動防止のための調査活動等に要する経費といたしまして四億八千一百二十六万三千円を、前年度に引き続き計上いたしました。第八に、検察庁庁舎その他、及び刑務所、少年院等の収容施設の新営、整備等に要する経費といたしまして八億三百四十万四千円を、前年度に引き続き計上いたしました。なお、このほかに営繕費といたしましては、法務局等の庁舎その他新営に要する経費として一億六千十九万六千円が建設省所管予算中に計上されております。以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の大要でございます。終りに当省主管歳入予算について一言御説明申し上げます。昭和三十三年度法務省主管歳入予算額は四十九億一千百四十一万八千円でございまして、前年度予算額四十一億九千八百七十六万五千円に比較いたしますと、七億一千二百六十五万三千円の増額となっております。その増額のおもなものは、罰金及び没収金でございまして、過去の実績等を基礎として算出されたものでございます。以上、法務省所管昭和三十三年度予算についてその概要を御説明申し上げました。よろしく御審議を賜わりますようお願つい申し上げます。
  167. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) 御質疑の方は御発言願います。
  168. 大川光三

    ○大川光三君 ただいま昭和三十三年度法務省所管予定経費請求の御説明を伺ったのでありますが、これに関連いたしましてお伺いいたしたい。第一点は、人件費関係で十億八千八百四十七万六千円の請求をいたした。しかし、これは昇給、昇格等に要する職員俸給等の自然増加額である、こういうことでございますが、法務省としまして、新たに増員を請求されましたのに対する予算というものは、どれほど計上されておるかをまず伺いたいのであります。
  169. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 今回の三十三年度予算におきまして、人件費の純増と申しますか、婦人補導院関係におきまして、定員で四十名、常勤職員で二十五名、計六十五名が純増として認められたわけでございまして、その他は人員の増加は見ていないのでございます。ただ定員外の職員として、昭和三十三年度におきまして、三十二年度末の常勤職員が千八百二十一名でございますが、うち五百五名が定員に組みかえられまして、これが定員化せられておるのでございます。それ以外は人員の増は見ておりません。
  170. 大川光三

    ○大川光三君 そこで伺いたいのですが、申すまでもなく、この四月一日からは売春防止法の完全実施がされまして、刑罰法規が適用されることになりました。また、ただいま審議中でありまする刑法の一部改正法律案のうちの暴力関係の法案が成立いたしますると、検察陣営の強化という必要が必然的に起ってくると存ずるのであります。そでこで、当初法務省におかれましては、昭和三十三年度の予算編成に当って、経常的経費として増員請求をされたうちで、検事十三人、事務官等三百四十二人、常勤、非常勤職員一千七十五人、雇用人減十一人を差し引いて合計千四百十九人、政策的経費として増員請求が検事五十一人、事務官等千八百七十九人、雇用関係七十四人、常勤、非常勤職員二百四十二人、その他にて合計二千四百八十六人、さらに公判審理の適正化のために検事三十一人、事務官五十六人、また、売春防止法の全面的施行のために検事二十人、事務官五十人、その他調査官、保護観察官、教官等の増員請求をせられたように承わっておったのでありますが、ただいまの御説明によりますると、これらの人員増加の要求に伴う予算というものはほとんど削除されたということになるのでありますが、私はただいま申しました当初の予算請求というものは、検察陣営その他法務省関係としては絶対確保をしなければならない最低の線であったと思うのでございますが、かように削減されてしまっても、なおかつ、法務省はこれでまかなえるのかどうかということを伺います。
  171. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) お話通りの数字を当初法務省といたしまして要求いたしたのでございますが、財政の都合もございまして、やむを得ず、先ほど申し上げましたような数字にならざるを得ない状態なんです。与えられた予算の範囲内において、最善を尽しまして努力をして参る、さような覚悟であります。
  172. 大川光三

    ○大川光三君 このことは、裁判所関係のときにも申したのでございますが、法務省なり裁判所関係の人員増員の請求を大蔵省は認めなかった。その理由として、まあ裁判所や法務省はどうにか今日までまかなっておるのだから、そつう急ぐ必要はあるまいというように、いわゆる司法というものを軽視した傾きがあるということを私考えまして、これは大蔵当局としてはもってのほかでございまして、われわれも今後検察陣営の強化ということに備えるために、予算獲得のためには協力を惜しまないのでございますが、法務当局におかれましても、昔のようにあまりお上品にかまえずに、心臓強く今後予算の獲得に邁進されたいという希望を申し述べておきます。なお、それに関連いたしまして、裁判の適正化と審理の促進ということは、法曹界はもとより世論の強く熱望いたしておるところでございまして、それがために、先には最高裁判所の機構改革に関する法律案が提出されましたし、また、第一審強化策を講ずることについても、いろいろ当局として御尽瘁になっておるという点は認めるのでございますが、いわゆる大蔵省の言うておる、どうにかまかなっておるからということを裏から考えますと、今日の訴訟が、民事においても刑事においても遅滞がちであるという、この状態をいつまでも続けていくという結果になろうかと存ずるのでございまして、一つの例をあげますると、芦田均先生は十年かかってようやく晴天白日の身になられたという、この一つの例から考えまして、まあまあまかなっておるのだからそれでいいということは、第二の芦田事件、第三の芦田事件というものが起ってくるという憂いもあるのでございまして、さればこそ、法曹界で訴訟の促進ということをやかましく言っておるのでございます。でございますので、私は、そういう面からもできるだけ裁判所の人員強化、検察庁の人員強化ということは軽視できない、ゆるがせにできない重要問題であると考えておるのであります。これはひとり刑事事件だけではないのでございまして、民事事件、行政訴訟事件についてもこのことは言えると存ずるのであります。一例をあげますると、われわれに最も身近かな問題として痛感いたしておりますことは、昭和二十八年の参議院の選挙におきまして、たまたま佐野市における選挙無効問題が起った。それがために佐野市の有権者数とにらみ合せて、当落に関係があると思われました当選者について再選挙が行われました。その結果、再び選挙をやられた候補者はいずれも物質的にも、経済的にも少からぬ損害をこうむっておる。そこで、この損害を補いまするために、憲法第十七条が保障いたしておりまする国家賠償法の規定に基いて訴訟が提起された。ところが、その訴訟がなかなか進行しない。自来何年になりますか、昭和二十八年から計算いたしますると、三年以上経過しておる。しかし、それでもようやく準備手続が終った程度でありまして、ようやく最近口頭弁論が開かれようとしている。いわゆる準備手続に三年以上も費やしておる。これは一つは民事訴訟として、当事者双方の都合で延期になるのかもしれませんけれども、こういうことでは、いわゆる国家賠償法の精神に非常にもとるのじゃないかと考えるのでありまして、いわゆる憲法が十七条で保障いたしておりまするわれわれ国民の権利というものは、いざ実行となって、再び訴訟の段階を通らねばならぬ。しかもその訴訟の段階において、ただいまも申しますように、三年も五年もかかる。おそらくこの事件も十年組だと私は考えるのであります。国家憲法で保障するわれわれの権利を、いざ実行するとなると十年ぐらいはかかる。そういうようなことは、結局国民一般の裁判に対する信頼感というものを薄らがす結果にもなろうと存ずるのでありまして、この面からも訴訟の促進ということは考えねばならぬ重大問題であると思うのであります。それに関連いたしまして、一体国家賠償法というものが、今日まで過去十年間にいかようなる成績を上げておるかということをこの機会に伺いたいのであります。それと同時に、先ほど申しまするように、憲法が保障するわれわれの権利を、訴訟行為の手続を経なけりゃならぬということにつきましては、相当議論の余地があろうかと思うのでありまして、むしろ今日国家賠償法がきめておりまする、公務員の故意または過失に基いた場合に限って国その他の公共団体が損、害賠償の責めに任ずると、こういう規定をいっそ改めてしまつて、無過失責任というものを負担せしめるように国家賠償法を改正すべきであると、それがいわゆる憲法の精神にも沿うのだという私は個人的な考えを持っておるのであります。この点に関しましては、最近法務省においても御検討になっているやに伺うのでございますが、この機会国家賠償法の改正について、当局はいかなるお考えを持っておられますか、あわせて伺いたいのであります。
  173. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 国家賠償法施行の実績並びに国家賠償法の改正についての法務省の考え方はどうかという二つの御質問であったと思うのでありますが、国家賠償法施行の実績につきましては、訟務局から関係課長見えておりますので、後ほど答弁をしていただく予定でおります。国家賠償法の改正の問題についてでありますが、元来、この憲法の十七条で国家賠償の原則がうたわれておるわけでございますが、従来の各国の制度を見ますと、国家は悪をなさずと申しますか、国王は悪をなさず――悪というのは不法行為であります、で、国家の、公権力の作用によって私人に損害を与えても、国家は賠償責任がないというのが従来の、十八、九世紀の考え方であったわけであります。イギリスなんかは、もう長くこの原則が支配しておったわけでありますが、それは不当であろうということになりまして、最近では各国とも、国家もまた公権力の行使によって私人に損害を与えた場合には、一般不法行為法の原則に従って賠償責任を負うべきであるということに、最近の傾向はなっておるのであります。それを言い表わしましたのが憲法の十七条であろうとわれわれは理解しておる次第であります。でありますから、国家もまた一般不法行為の原則に服するということなのでありまして、一般の不法行為法におきましては御承知通り、過失責任主義を、まあ従来大体の傾向としてはとっておる次第でございます。しかしながらく最近におけるいろいろの大企業の勃興などに伴いまして、無過失損害賠償責任論ということも各方面で唱えられておる状況でございます。これは要するに、故意、過失ということではなくて、危険な事業を営む者は、その危険が現実化して損害を与えた場合には、その危険な事業を営んでおるということに基いて、損害賠償責任を負うべきだという考え方が、まあ最近になって出てきておるわけであります。そういう見地から申しますと、ひとり国家賠償法だけの問題ではなくて、不法行為法全般の問題として、この過失責任主義を再検討しなくてはならぬという問題があろうかと思うのでございます。で、法務省の方におきましても、そういう見地から不法行為法全般の問題として実は問題を考えておるわけでありまして、さしあたって国家賠償法の規定をどうするか、ことに、故意、過失によりという、あの一句を削る、それだけで問題が解決するのではあるまい、もっと広範な問題として考えるべきではないかという考えでございまして、さしあたっては国家賠償法の改正ということは考えておりません。しかしながら、最近の諸立法におきましても、無過失損害賠償責任の原則というのが、そういう危険な事業を営む者は、それに伴って発生した損害を賠償すると、そういう考え方に立った立法は最近でもあるのでございまして、数年前に成立いたしました自動車損害賠償補償法などは、まさしくこの例でございまして、それは無過失損害賠償責任をいわば実現したものであります。これは国家もまたその法律の適用を受けるわけでございますが、その限度におきましては、国家賠償法も実質的には一部修正になったような関係になっておるのでございます。そういう、非常に多方面にわたりますし、それから、すべての国家公権力の行使による損害につきまして無過失責任を認めるべきかということにも、これはいろいろ問題があると思うのでございます。法務省としましては、そういうもっと広い見地から、この国家賠償法の問題を一般不法行為法の問題の一環として考えたい、そういうふうに考えております。
  174. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 大川委員から御質問のありました第一の、事件の迅速処理の問題でございます。これは憲法の要請に基くことでございまして、事件が迅速に処理せられないということになりますると、特に刑事裁判におきましては、その刑罰目的を達成し得ない場合もあるわけでございまして、この迅速処理につきましては、裁判所はもとより、検察庁におきましても、絶えずいろいろと工夫をこらしておるのでございます。なぜ迅速処理がうまくいかないかという点につきましては、原因は少からずあるのでありまして、その一つを解決いたしましても、必ずしも迅速処理に寄与しないのでありまして、これは総合的に解決されなければならない問題だと考えております。さしあたってどういうところに原因があるかと申しますと、特に最近の刑事事件についてのみ申し上げますと、ここ数年間非常に事件が増加いたしております。これに担当いたしますところの判事、検事ともに、まあ数年前の定員がそのまま続けられておりまして、絶対的には人員不足ということが一つの大きな原因であろうと考えておりますが、この人員増加の問題は非常にむずかしいのでございまして、人員増加の以外の方法でなお改善すべき点があるならば改善しなければならないわけでございます。それで考えておりますことは、第一には、訴訟の実態を見ますると、控訴、上告と、一審の裁判で事がきまらないで、さらに上にくるのが諸外国に比しまして非常に日本は多いように考えるのでございます。ことに最高裁判所におきましては、事件が非常に多くたまるというようなことからいたしまして、最高裁判所の機構改革ということが先般来問題になり、現に国会にも機構改革案が継続審議されておる状況でございます。で、これは機構として改革されなければなりませんが、その前に上訴審を、上訴へ持っていくことを防ぎますのにはどうしたらいいのか、という運用の問題として考えられる点がないでもないわけでございます。これは結局一審の裁判に対する信頼の問題でございますので、諸外国の一審の裁判官は非常に老練な方が多いのでございますが、日本の場合におきましては、必ずしもそうではない。これはまあ裁判官、検察官の採用の制度にもよることでございますが、何はともあれ一審を強化して、そうして一審の裁判に対する信頼を増大するということが訴訟を促進する一つの方法であるという結論のもとに、最高裁判所におきましても、一審の強化ということを考えまして、老練な判事を一審に回すという措置を強力に推し進めておるのでございます。これに対しまして、検察庁の側におきましても、やはり一審の強化と申しますか、第一線の検事を強化する措置を進めて参っております。最近の大きな検察庁の人事異動もこうした趣旨にのっとった措置でございます。しかしながら、これが完成をいたしましても、なお迅速処理には必ずしも満足すべきものではないと考えるのでございまして、これには機構の制度の問題がもう一つあります。これは刑事訴訟の根幹をなしておりますところの刑事訴訟法の問題があります。これは御承知のように、戦後米法にならいまして、英米法の系統の手続を取り入れたのでございますが、刑法はこれはドイツ流の刑法であります。手続法は英米法といったような、ここに両者相いれないような原理で支配された法律組織があるのでございます。これを、実施すでに十年になるのでございますが、この問題の改正ということも私どもに課せられた大きな職務だと思っております。法務省におきましては、まず刑法、刑事訴訟法の改正につきまして、一昨年来熱心に継続事業として作業を続けております。刑法につきましては、御承知のように、昭和十五年に発表されました改正刑法仮案というのがございますが、これは現在の憲法並びに国情に沿わないものがありますので、この国情に沿うということと、新しい刑事訴訟法との関連におきまして、内容の検討を続けております。大体、本年の冬までには一応の結論を出し得る段階になっております。これと並行いたしまして、刑事訴訟法の改正につきましても研究を進めておるのでございますが、刑事訴訟法の方につきましては、過去十年の運用の実績に照らしまして、非常に問題が多うございます。これを古い、もとの旧刑事訴訟法の方に戻すべきだという議論もありますりし、それは適当でないので、今欠陥とされておりますのは、国民の裁判に対する参加、つまり陪審あるいは参審という制度を取り入れることによって、画龍点睛と申しますか、刑事訴訟法のほんとうの意味の改正を遂げたい、こういう意見も強く主張されております。それらの点をよく考えまして今せっかく研究作業を続けておる段階でございます。こういうものが総合的に実現されました暁におきましては、憲法の命ずる通り、迅速に事件を処理することが可能になってくるのではないかというふうに思っております。
  175. 武藤英一

    説明員(武藤英一君) 先ほど国家賠償の事件でどういう成績を上げているかというお尋ねでございましたが、ちょうど昨年の十月二十七日が国家賠償法が制定されまして十年に当りますので、そのときに調べた数字がございますので、ちょっと御報告申したいと思います。これは地方公共団体は資料がございませんので、国を被告とするものだけに限っておりますが、この十年間に起りました国家賠償請求事件、いわゆる受理事件でございますが、これが総計三百三十四件ということになっております。その十年間に解決されましたものが百九十四件、未済が百四十件ということになっておりました。それを結果別に見ますと、請求が認容されましたものがそのうち十五件、これはほとんど一部認容でございます。それから請求が棄却あるいは却下されましたものが七十五件、それから和解、調停によって解決しましたものが三十件、それから取り下げになりましたものが七十四件、以上のようでございまして、結局当時未済は百四十件ということになっております。
  176. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) ただいま大川先生からお尋ねがありました問題に関連をいたしまして、この際御質問を申し上げたいと思います。実は、栃木県の佐野市の問題につきましては、私も関係者の一人で、原告であります。そこで、昨日当委員会におきまして裁判所の総務局長さんに出てもらいまして、一体裁判がかように三年間に遅延した、また、ただいまお話がありましたように、芦田先生のごとき、元総理として、また、国家に非常な枢要な働きをなしてこられた、この方の被疑事件が十年間もそのことにかかっているというようなことは、国家のためにも私はまことに遺憾千万である。どのくらい新日本の再建のために力尽しをいただける十分な、十五分、二十分の才幹をお持ちの方が、個人といたしましては十年間も憂いに閉ざされたる御生活をしておられた、国家としても非常に損失である。従って何がゆえにかくのごとき事件が遷延をされておったかということをお尋ねをいたしたところが、非常にむずかしい事件であって、その書類等の作成にも、また、調査にも非常な時日を要した。しかも判事が足らぬということでありまして、その点につきましては、私どもも判検事の方の非常に少いということについて、これはもっと増員をしなければならぬじゃないか、われわれもまた、国会として御協力を申し上げるのだということを、実は昨日申したことであります。実は、佐野の問題は、御承知通り、前代未聞の再選挙が行われたのでありまして、当時二十八年の四月の参議院選挙におきまして、宇垣元大将が第一位で、私は第五十位の六年議員の一番どんじりであった。そこで私に続く人は八木秀次、天理教の柏木庫治、楠見義男君ということでありました。ところが、佐野市の市役所の選管が次点で落ちました、今、国会に出ておりまする平林君を、日本社会党と書くべきものを日本共産党と書いた、これはわずか一時間そういうことが四十カ所の佐野の標識にあったわけです。そこで発見をして、すぐに書きかえたわけです。ところが、平林君は、こういう共産党と書かれなければおれは当然当選したのだということでもって、従って、全国区選挙は無効である、こういう訴訟を起したのでございます。そこで、これは大へんなことになるわけです。宇垣一成さん初め、全部当選した人、横川政務次官さんも全部これはだめになってしまうというような事態に相なったのでございます。ところで、従って、せっかく当選を、国民の負託を受けて私どもは当選したものを、もしそういう選挙は無効であるという訴えが可能であるとするならば、せっかく国民が負託をしてくれたこの国会議員の諸君が失格をしてしまう事態になるのであります。選挙のやり直しをやらなければならぬ、こういう無効であるならば選挙をやり直さなければならぬ大事件でございます。おそらく日本始まって以来の、宇垣一成初め五十三名の者が全部再選挙をしなければならぬ、失格するのであるということであれば、これは大問題である。そこで国会におきましては、佐野の三万票の票数をそろばん勘定をはじいて、もし再選挙になっても影響をしない者はそういう場合にはやらぬでもいい、そうしてそれに抵触する者はやるのだということを、これば国会できめて、私どもは非常に抵抗しました。そんなあほうなことはない、そんなことをきめるということは、裁判所が判決を有利にするような形になるじゃないか、そんなあほうなことはないというて、関根久藏さんも私も八木さんもみんなこれは反対をしたけれども、これは多数に押し切られてしまい、とうとうそういうことをやっておる。そこで、一年半私どもは当選したかせぬかわけのわからぬ状態に置かれてしまっておる、その間の苦痛というものはほんとうにそれは何ともかとも言いようのない実は苦痛を帯びたのであります。しかもその中におきましても、私のごときはたったあの佐野で八票よりもない、何も縁も何もない行ったこともなければ、聞いたこともない、佐野の源佐衛門の鉢の木の所かしらぬと思ったくらいで、何も知らぬ、万が一選挙無効であるということになって再選挙せんならぬということになったら、そんなものはあきまへんわ、カッパがおかに上ったようなものだ、えらいことになったものだということで、横川先生よく御承知でございまするが、何ですか、ほんとうに苦しみ続けました。私どもの弁護士の牧野良三先生なんかは絶対そんなあほうなことはない、裁判所がそんな無効な判決を下すはずがない、良識があるのだから、そんなことはないという言葉にわずかに慰められてきたのでありますけれども、しかし、その不安というものは絶えず脳裏につきまとうて実はおった。ところが、最高裁判所はついに全国区選挙無効であるという判決を下されてしもうたのであります。ほんとうは私どもは全く天を恨んだのです。かくのごとき、大岡越前守であるならばさようなことはなかったであろうにと恨んだのでありましたけれども、仕方がない。一たん判決を下された以上は、これは仕方がありません。天の命やむを得ざるものと観念をしたのでありますが、そんなところで選挙をしたって、ほかの方は近いところの人はあるいは徒歩の力で行くのですが、しかも私どもの所属していた自由党の佐野支部はあそこで候補者を一人立てた寺田甚吉という人を、一万票とっても当選しやしない人を立てた、奥さんが女優さんだものですから、松竹の女優さんや大映の女優さんがオンパレードで来てたくさんかり出されてきている、ほんとうに孤立無援の私どもは、何ともかとも言えぬような選挙を実は戦わざるを得ないことになった。そこでこれは天はやっぱり正しき者を知ってくれたのでございましょう、私はたった八票よりしかないところでございましたが、八は開いてしまって四千六百票をちょうだいしまして、私はずっと上に上って、まことにありがたいことだと実は感謝しておりますが、その間の苦痛たるや、まことに何ともかんとも言いようのない、ほんとうに地獄の底にぶち落されたような実は悲痛な日を送りました。万が一にも佐野市で、あの一部で、しかも佐野市の人は二重投票を使っておるわけです。二へん投票権を持っておる、こういうことは許されるか許されないか知りませんが、二へん投票権を行使したわけなんです。そこで、私どもは、選挙をいたしまして当選をさしていただいたわけでありまするが、そのときに楠見君は無言の抵抗をしました。かくのごとき、大岡越前守はいまさざるかということで、彼はかくのごとき選挙には自分は立たぬということで、そこで楠見君は立候補しなかったのです。私は楠見君の心情まことによくわかります。そこで平林君はついに当選をされたのです。というようなこと以後、関根久藏さんは御承知通り、選挙違反が起つて、昨年の恩赦があるまでは、これまた実にその苦痛をなめられた。再選挙失格せずんば――私ども一たん当選したのが失格してしまったわけですから、無官の太夫になってしまった。それで出直して再選挙をやった。関根久藏さんのごときは、この間まで延々その選挙違反のために苦しみ続けてこられました。幸いに恩赦があったので助かったわけなんです。もしそういうことが行われなければ、関根さんだって選挙違反を起さなかった、これはああいう判決があったために選挙違反が起ったということも言い得るわけでございます。そこで、これは実はこの柏木天理教さんが、かくのごときことは、当然この天の理に基いてこれは国家の賠償を要求すべきものである、一千万円か二千万円くらい国家に対して賠償を要求しようじゃないか、この間の苦しみなんていうものは、ほんとうにたえがたいし、また、選挙管理事務を取り扱う者の責任がいかに重大であめるかということの注意を喚起するためにも、当然これは訴訟を起すべきであるといって、発意によりまして、私どもは同調いたしまして、関根久藏、大谷贇雄、八木秀次、柏木庫治、楠見義男君、ことに楠見君のごときは失格をしてしまったのです。ああいうことがなければ当然一年有半というものは、国会議員としての職責をもって、国家のためにも、国民の代表として尽し得たのであります。従って、楠見君としては無念の涙を胸にのんで、そうしてかくのごときばかなことはないということで、無言の抵抗を示してやめてしまった。一年有半の議席を持つべかりし楠見君は、ついにその席を去って、私どもは深甚の御同情を申し上げた。従って、近く総選挙が行われる、来年は知事選、あるいは県市会議員の選挙が行われます。この際において、どうしても選挙管理事務、これはむろん手薄なんです。気の毒なんです。気の毒ではあるけれども、あやまちを犯したということに関しては、これはたださなければならぬのであって、全国の選挙管理事務に従う方々が、こういう機会においてほんとうに慎重な、細心な注意をして臨んでいた。たくということが必要であるという建前と、また、これは当然こういう楠見君等に対して損害を与えたのであるから、従って、国家としては賠償をするということがこれは金の問題でない、金でいえば、千万円や二千万円、三千万円もらったところでこの償いというものは果せないのであります。私のごときは、半年以上もその後、病気をしてしまったというようなことでございまして、国家賠償法に基くところの損害賠償の請求の訴訟を起しておりましたところが、先ほど大川先生からお話通り、また、先ほど私が申しましたるごとく、いまだに準備手続が済んだというだけであって、まだ弁論に入っておらぬというような状態でありまして、私どもは、はなはだ遺憾とするのであります。その間において、それは皆様方に申し上げることではありませんが、その間において、大谷さん、あなた取り下げてくれ、こんなこと初めてのケースだから取り下げてくれということを、自治庁の者が私に申しました。けしからぬ話です。これは他の委員会において申しました。けしからぬ話です。また、沢田竹治郎さんは、当時政府側の弁護士でありました。その沢田竹治郎先生は、私どもの立場を理解されまして、弁護を引き受けて下さったのです。その沢田さんは政府側の弁護士たったから、あなた不適格だと言ってやめさせようとした。その沢田弁護士が来まして話をされた。これは私どもそういうことをするということ自体が、これが人権じゅうりんであめると私は思うが、その間の一つ人権擁護局長さんの御所見を承わりたいと思います。また、そういうことでありますので、私どもはこの裁判、芦田先生のことといい、かくのごとくおくれておるものが非常に多いのでありまして、むろん裁判所の判事さんたちが手薄なことはよく承知しております。私どもは、実はこの判事さん方に対しまして深甚の感謝、敬意を表しておるわけでありますけれども、私は国民のために、私はこの際お尋ねを一つ申し上げたいと思う次第でございます。
  177. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 実は今突然問題が提起されまして、今御指摘の事件の内容がよくわかりません。追ってまた、よく調査いたしまして、御答弁いたしたいと思います。
  178. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまの御質問は、訴えの取り下げを勧告されたというお話のようでございますが、何か政府当局者の方から、自治庁とかの方から取り下げを勧告されたというお話のようでございますが、私そういったいきさつ詳しく存じませんので、ごく一般的に申し上げますと、権力にある地位を利用いたしまして、事件の取り下げを強要するということが、もしございますとしますれば、それははなはだよろしくないことであると考えるわけでございます。場合によりましたら、それが強要されたために取う下げを余儀なくされたというふうなことでもありましたら、それこそ不法行為でもなりかねないことだと思うのであります。しかし、具体的案件につきましては、私ども詳細を承知いたしておりませんので、その点につきましては、一つ答弁を差し控えさしていただきたい、こう存ずる次第であります。
  179. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) この裁判の促進ということに対しては、これはあなた方の方はもう処置はないということでございますか。
  180. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 裁判の手続。
  181. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) いやいや、これが非常におくれているということ。
  182. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 訴訟の促進につきましては、私どもの方としましても、これは切に希望いたすわけでございまして、その関係で現在提案されておりますところの最高裁判所の機構改革の問題であるとか、これもやはり訴訟促進ということが一つのねらいであるわけでございます。それから裁判所の方におかれましては、民事刑事双方にわたりまして、第一審の強化ということをお考えで、一昨年、昨年にわたりまして会議を開かれて十分御検討になっておるような次第で、訴訟の促進ということは現下の急務であろうと、われわれも思っておるわけでございます。
  183. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) この機会に、一つ人権擁護局長の方にお伺いをいたしたいと思いますし、他の方からも一つ御答弁が願いたいと思います。聞くところによりますと、映画の少年俳優で津川雅彦という青年があるのでありますが、この津川君が、昨年の九月に日活との専属の契約が切れると同時にフリーの宣言をしたわけです。そこで、この松竹系のマキノ雅弘監督のもとの「葵獅子」の映画に出演を希望しておったところが、新人は五年間引き抜きを行わぬと、こういうような日活、松竹、大映等々との六社の申し合せに触れて、まあ出演できぬままで映画界からシャット・アウトされた形になっておる。この問題について、法務局の人権擁護部におかれましては調査に乗り出されておるやに仄聞をいたすわけでありますが、この間の事情を一つ御説明いただきたいと思う。こういう問題は、昨年の暮れにも何か起ったというようなことを聞いておるのでありまして、この際その事情を承わることができれば非常に仕合せと存じます。
  184. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 確かにただいま御指摘の津川君に関する問題は起きております。これは本年の二月二十六日にあるファンの方より私の局に投書がございまして、今御指摘のような事情を述べられまして、これは人権上あるいは人道上の問題ではなかろうか、でき得る限り徹底的に研究調査をしてもらいたいという申し出があったのであります。それで私の方の法務省人権擁護局といたしましては、そのファン・レターを東京法務局の人権擁護部に差し回しまして、しかるべく調査されたいという指示を出したのであります。その間、各方面のファンの方より相当数の手紙が参りまして、何とかして津川さんを助けてもらいたい、こういうふうな要望がございました。それで、ただいま実際の調査は、東京法務局人権擁護部において調査をいたしておりますが、ただいまのところでは、まだその先ほど申されました松竹、大映、東宝、新東宝、東映、日活というこの六社の間の一つの新人登録に関する申し合せというそれが一体どういうふうな申し合せであるのか、それをただいま調査をいたしております。その調査の方針は、果してこの六社の申し合せというものがどういうものであるか、また、どの程度までシャット・アウトをするだけの効力を持つものであるか、こういうことを調査いたしておりますが、まだその結論を得るに至っておりません。昨日、社団法人日本映画製作者連盟の重要な仕事をしておいでになります池田義信さんに東京法務局に御来訪を願いまして、その間の事情をよく聞いたのでありますが、まだこの六社の申し合せについての実態がよくわからないのでございます。おいおいこの内容につきまして調査をいたしまして、そうして果してこの六社の申し合せによりまして、こういう未成年の新しい若い俳優の方が、ある映画会社との契約、そういう契約終了後他の会社に移りたいという場合、その俳優としての仕事を妨害される、あるいは俳優としての仕事ができないような事態に至りますと、これはやはり大きな人権の問題でもあろうかと思いますので、よく今後慎重に調査をいたしていきたいと思っております。
  185. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 御調査中であるということでありまするが、すでに二月にそういう投書がたくさん来て、そうして、なお承わりまするというと、続々そういうような陳情投書が来るということも聞いておるわけであります。これについて、昨日、池田義信さんがおいでになられて御調査になったが十分わからぬということでありますが、それはそんな六社協定ぐらいのものがそれほどたくさんの文章でもありますまいし、簡単なことのように思われますが、どうしておわかりにならぬのか、それを一つ。
  186. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 局長として申しわけないのでありますが、私は東京法務局に一応調査をまかしておって、詳しいことはまだ報告を受けておりませんが、六社の申し合せというものは非常に簡単なものでございまして、これは、映画界の向上発展あるいは繁栄をはかるというようなものが主たるもののようであります。ただ、その付属書類というものがいろいろあるようで、あるいは付属の打ち合せ、そういうものがあるようでございまして、それは池田さんもよく御存じないようであります。もう少しその点を調査をしてみたいと思います。
  187. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 池田さんは、そういう映画の協会の責任者であるということであり、また、この映画界にとりまして、スターの問題ということは、これはだれしも衆人環視の非常な注目的なことであるはずであります。従って、その池田さんがどうしてそれを御承知にならないのか、それはちょっとふに落ちかねるのであります。しからば、よく御承知のないような池田さんを御招致になったということは、一体どういうことでありりますか、承わりたい。
  188. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 人権問題を調べます場合には、いろいろ順序がございまして、一体津川さんの問題のどこから取りかかってよいかという問題もあるわけでございますので、一応大体の様子を聞くために池田さんをお呼びしたのではないかと思うのであります。この問題につきましては、私の方でもだいぶ問題になっておることでございますので、至急によく調べていきたいと思います。
  189. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) そうしますると、局長さんとしましては、まだその付属書の内容については御承知ない、こういうことでございますか。
  190. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) さようでございます。
  191. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) そこで、その付属書というものは――これはおそらくもう映画の影響力というものは、これはお互いにもう承知をいたしておりまするように非常な影響力を持っておる。従ってその映画界に登場しますところの俳優というものに関しましては、われわれはなかなか映画を見にいく機会もないのでございまするけれども、若い青年男女にとっては非常な関心の的であるわけです。従って、六社協定なり、あるいは付属書というようなものについては、これは当然公開をされておるものだと思うのですが、それは御承知かどうか、承わりたい。
  192. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 申しわけありませんが、まだ公開をされておるかどうかは私は存じません。
  193. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) それでは、この問題につきましては、これは慎重にまた迅速に一つ御調査をお願いいたしたいと思います。先般来、六社協定ができたというようなことは、私どもは新聞でよく実は承知をいたしておるわけです。そこで、たまたまこういう津川青年の問題が起ってきたわけですが、昨年の暮れにおきましても、東宝の前田通子さんという女優さんが、何か東宝からすそをまくれとかどうとかこうとかで、映画を映すというようなことで、抵抗を示して、いやだということで問題が起った。各社も一齊にそれに対して歓迎の意を示さなかった。結論においては戻ったということでありますけれども、こういうことは、これはもしかりに六社が映画俳優を、ことに新人を抜擢して、そうしてスターにするということについては、それは非常に苦心があることは、私どもこれはよくわかります。それは一人の映画スターを育てるということは、それは容易ならざる、おそらく苦心を会社当局はしておられると思う。それでなければその辺のミーちゃん八ーちゃんが一ぺんに映画スターになったり、歌謡歌手のチャンピオンになったりするということはこれはあり得ぬのですから、レコード会社においても、その養成ということについてはおそらく知能を傾けて、また、物質的にも非常な犠牲を払って育てられて、そのおかげによってスターにもなり、また、歌謡歌手にもなるということであろうと思う。それは歌舞伎の小さなうちから修業をして、そうして一大の苦心をして、一大の名優になられるのですからつ、従って映画会社として、この一人の新人を育て上げてスターにするということについては、それは非常ななみなみならぬ努力を傾倒しておられると思うのです。しかしながら、かりに津川君のことが、これが真相なりやいなやということは、これは十分お調べにならぬとわからぬが、かりに津川君が、自分は松竹のマキノ監督のもとに行けば、非常に自分の才幹を伸ばし得るのだ。才能を伸ばし得るのだ。一大スターになれるのだということで、日活をやめてそうして行こう。ところが、六社協定というものは、かりにそういう新人を五カ年間はどこも行かぬのだ、雇ってくれないのだということになると、あたら才能を持ちながら、チェックされてしまう。こういうことになれば、これは芸術の本来の立場から申しましても、これはその才幹を抹殺するということであって、これはまさに人権じゅうりんになるし、人権じゅうりんという言葉でなしに、そういうかりにもし才幹を持っている人であるならば、それはまことに悲しむべきことだと思う。たとえば、山田耕筰先生のところに音楽を習いにいっておったところが、山田先生のところで十分習ったけれども、なおまた、大谷贇雄に習いたい、こういうことで来ようとした場合に、もしそういう――まあそんなことはありませんが、そういう六社協定があって、ほかへ習いにいってはいかぬというようなことがあるとすつれば、せっかくこの才能が、いろいろなところへ行って研究しようということがとめられてしまつて、これは画家の場合でも同じであります。大観門下だからあっちの先生のところはいかぬ、こんなことは美術界や音楽界にはありませんが、映り画界におきましては、スターの養成というものが非常な苦心を要する。従って、会社側としても、それを離すということは、徒弟を養成して一人前になったら逃げていってしまう、こういうことと同じでありますから、会社側の苦心というものは非常にわかるわけであります。それかというて、今みたいにほかのお師匠さんについたら自分の才幹は十分伸ばし得るという場合にも、それが規制されるということになれば、それはまことに遺憾であると思うのです。さっきちょっとこの会社の当局の宣伝部長さんの方のお話を間接に聞いてみますというと、だいぶ話が食い違っておるように実は思うわけであります。まあ、そういうことでありますから、これは十分慎重な御検討を願わなければなりませんが、さような才幹をとめさしてしまうというような観点からもこれは十分な、慎重な御調査を願いたいと思うのですが、もう一度御所見を承わっておきたいと思います。
  194. 鈴木才藏

    政府委員(鈴木才藏君) 御趣旨はもっともであります。実は俳優の問題につきましては、さきに京都におきまして歌舞伎俳優の問題で似たような問題が起きたのであります。そのときジュリストの方面から、果してこういうものを人権擁護局がタッチするのはどうであろうかというような一つの批判も出たのでございます。しかし私は、先ほど大谷先生が御指摘になりました点、いろいろまた、私の今までに聞きました点を総合いたしまして、やはりこの津川君が未成年であり、また現在ある程度封建的な空気の中に包まれております映画関係の生活、そういうものについて、この機会に一つよく調査をいたしまして、万一、津川君の人権問題、あるいは津川君に似たような立場の人に人権問題あるいは人道的な問題がありますれば、徹底的に追及したいと思いますので、暫時調査に時間をおかし願いたいと思います。
  195. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 今、この映画界の中には封建的な要素があるやのようなお言葉がございましたが、万が一にもそういうことがありますれば、これははなはだ遺憾なことでございますので、ぜひとも十分な慎重な御調査をお願いいたしておきたいと思います。
  196. 大川光三

    ○大川光三君 先ほど国家賠償法に基く行政訴訟の過去十年間の成績につきまして、きわめて御懇篤なる説明をいただいたのでありますが、この説明によりましても、国を相手とした訴訟が三百三十四件あって、そのうち一部認容または和解調停で解決した事件が四十五件、請求棄却または却下されたものが七十五件、取り下げ七十四件というこの実績にかんがみましても、私は国家賠償法というものが再検討されねばならぬと、かように考えるのでございまして、先ほど無過失の責任を問うやいなやということについては、他の法規全般にわたる重要問題であるということで、問題を将来に残されておりますが、私はそういう全般的なものでなしに、特に、国家賠償法については至急に再検討を加えるべきであるという見解を持っておるのでございまして、現に、この国家賠償法自体におきましても、営造物に関して、かりに過失の有無にかかわらず、国または公共団体が責任を持つという無過失責任を認めておられます。その面から考えましても、国家賠償法自体について検討を加えてしかるべきだと私は考えておるのです。そこで、一応これに関連して伺いたいのでありますが、御承知通り、ある証人等の被害弁償に関する法律案と申しましょうか、刑事事件の証人になった者、またはその親類が被告人等から加害を受けたという場合においては、国家がその損害を賠償するという大体法律案が出ております。一体あれは国がどうして責任を持たねばいかぬかという問題、そういう加害事件が起ること自体が、警察の面にも手落ちがあるのだ、その他の機関にも手落ちがあるという意味で、ああいう法律ができるのか。私は、あの法律によって国がそういう責任を持つという法的な根拠をどこに置かれておるかということを伺いたいのです。
  197. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) お尋ねの点でございますが、国が何らかの形で損害を補てんしてやるという考え方の中に、国家賠償法等の賠償という考え方と、補償という考え方と、給付という考え方、大体大きく分けまして三つあろうかと思います。ただいま御審議をわずらわしております証人等の被害についての給付に関する法律案は、第三の形の給付という考え方をとっておるのでございます。お尋ねのように、国がどういう根拠でそういう給付をするのかという点でございますが、なるほど国の機関だけではなくして、たとえば地方公共団体の職員であります地方の警察部門が捜査に当りまして、その捜査の段階において証人が被害をこうむったという場合にも、国が給付をするという形をとっておりますので、国が責任を負うべき場合でない、むしろそのまん中に入りますものの不法行為、ないしそういうものの分を国がかわって給付するという形でございますので、いかにも補償という考え、あるいは賠償という考え方には適合しない概念でございます。そこで証人等の給付に関します法律におきましては、そういう故意または過失といったような国の側の手落ち、あるいはそういうものはなくても、国がある危険を負わしたというような場合は、その損害を補償するという考え方ではなくして、国がそういう給付をします根拠としては、刑事司法というものは国の責任で遂行いたしますので、その刑事司法の円満なる遂行を保持するということは、やはり国の大きな利害に関する問題でございますので、その目的を達成します方法として、一つの刑事政策的な観点からいたしまして、そういうものに給付して、そうして刑事司法に協力の実を上げてもらう、こういう考え方であります。
  198. 大川光三

    ○大川光三君 御説明はよくわかりましたのでありますが、私は、名称がかりに給付であっても、これは実質的には国家が損害を賠償するのだということになろうかと考えまして、その給付責任を持つということは、結局、国の利益に証人が出た、あるいは裁判の公正を期するために証人に出てくれた、それが、たまたま第三者から被害を受けるということに対して、損害を補償すると、この補償は、言葉は給付だけれども、実際をいうと、何の責任もない国家が損害を償うことになるわけでありまするから、私はある意味において、これは無過失責任を国が持つのだというふうに考えるのであります。従いまして、先ほど問題になっておりまする、たとえば公職選挙法による選挙に当って、選挙管理委員の過失ということで再選挙を行わなければならぬということ自身に、もう過失がある、手落ちがあったことははっきりしておる。だれが見たって、これは気の出世だということが常識でわかる。ただ、共産党という肩書をつけたかつけぬかというそのあめやまちが大きな被害を与える。そういう場合に、訴訟の段階を経て、しかもかつ、故意、過失の立証責任を賠償請求者に負わしておるということは、私は国家賠償の法の精神でない、かように考えまして、この証人等の被害弁償に関する法律が出ますのと相待って、国家賠償法の再検討を急遽やるべきだと考えておるのですが、その点いかがでございますか。
  199. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 御意見まことにごもっともと思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、ひとり国家賠償法だけの問題ではなくて、民法における不法行為法全般の問題であるように考えるのでございます。公けの営造物の設置管理の瑕疵による賠償責任は、これは仰せの通り、無過失賠償責任だと言われておるわけでありますが、これは民法でも七百十七条にこれに相当する規定があるわけでございまして、ひとり国家賠償法だけの原則ではなくして、その点については民法でもすっでに無過失損害賠償の責任をとっておるわけであります。どうしてもこれはやはり不法行為法の問題として、民法の原則と相待って再検討する必要があるように感じるのでございます。国家が賠償すると申しましても、やはり国民の税金によって賠償が行われるわけでございます。国家だけがひとり一般の不法行為の責任に先んじて、無過失賠償を全般的に取り入れるということは、なお疑問の余地があるように感じるのでございます。目下、法務省におきましては、一昨々年以来、民法の改正に着手いたしておりまして、財産法と身分法に分けまして、根本的な改正を今検討いたしておるのでございます。不法行為法の方にもやがては手を染めることになると思うのでございますが、その際に国家賠償法の問題もぜひとも取り取げなければならないと、根本的な検討を必要といたしますので、なお若干の余裕を与えていただきたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  200. 大川光三

    ○大川光三君 大蔵省からどなたか見えていますか。先ほど私から質問いたしておったことをお聞き下さったと思いますが、本年度の予算に、裁判所並びに法務省から人員増加に関する予算の請求があったのでございますが、これを全面的に大蔵省は排撃されているのですが、一体どういうわけで司法関係に関する人員増加の予算が認められなかったのか、その理由を伺いたいのであります。
  201. 上林英男

    説明員(上林英男君) 一般的に申しまして、政府職員定員の増加につきましては、御承知のように、過去幾たびか行政整理もやったということもございまするし、定員の抑制につきましては、できる限り既定定員の中で能率を発揮したり、高度にいろいろな機械その他の効率的な配置その他を考えていただきまして、定員の抑制をしていただくという方針で参ってきておりますることは、御承知通りであります。従いまして、三十三年度の予算の編成に当りましても、同じような方針をもちまして、定員はできる限り抑制するということに相努めたわけであります。単に法務省、裁判所だけではございません。なお来年度予算におきましては、裁判所におきましては、若干でありますが、判事補を二十名、それから法務省関係におきましては、矯正局関係、婦人補導院関係に若干の増員をいたしておりまするほか、御存じの常勤職員定員化いたしました次第でございます。
  202. 大川光三

    ○大川光三君 本年度の予算で、判事補三十名の増員に関する予算は認めたという御答弁でございますが、一体裁判所は本年度判事並びに判事補を含めて増員請求をいたしましたのは、たしか七十数人であったかと考えます。また法務省で増員要求をいたしましたのは、検事だけに例をとりましても、百十五人でありまして、これは新たに売春防止法の全面的実施が四月一日から施行される。あるいは暴力関係等の法律が改正をされまして、絶対必要にして欠くべからざる最低人員であるとわれわれは考えているのでありまして、たとい他の行政官庁の職員についての増員が行われなくても、司法関係については優先して増員をしなければならぬ重要性を持っていると考えますが、その点に対する御見解を伺いたいのであります。
  203. 上林英男

    説明員(上林英男君) 司法関係につきましては、特にお話もございましたように、たとえば裁判所でございますと、裁判の促進とか、あるいは法務省でございますと、今お話のございました検察事務の適正、迅速化というような観点から、始終配慮を加えなければならないということはよく存じておりますが、今申しましたように、政府職員定員増加につきましては、これを抑制いたしまして、できる限り既定の人員をもちまして、あるいは能率を上げ、あるいはその他いろいろな諸制度を勘案いたしまして、既定の人員の中で、できる限りやり繰りをお願いいたしているわけでございまして、来年度の予算につきましても、そういう御趣旨で、裁判所、法務省ともお話し合いをいたしましたわけで、御了解をいただいたわけであります。
  204. 大川光三

    ○大川光三君 先ほど問題になりました芦田先生の事件でございますが、一体ああいうえらい方が、十年もかからねば裁判の黒白が決しなかったということについて、あなたはどうお考えになっておりますか。
  205. 上林英男

    説明員(上林英男君) ただいまの具体的な問題につきましては、私つまびらかでございませんが、一般的に申しまして、裁判が遅延いたしておりますという原因が、人の問題、もちろんあるいはある程度の問題はそういう観点があるかもしれませんが、それが主たる問題であるというふうに私感じておらない。そのほかいろいろな制度上の問題、あるいはこれに関連しまするいろいろな問題、あるいは事件の難易というものもございましょうし、そういう点もむしろ問題があるのではないかというふうに考えております。ことに、裁判の迅速化につきましては、裁判所の方でも特に一審を強化するというようなのを極力一昨年から重点的にお考えでございまして、その点につきましては、たとえば法廷の増設とか職員の超過勤務、そのほかいろいろな点につきまして相当の予算を計上して参ったつもりでございまして、それによりまして、できる限り裁判が促進されるよう心がけているつもりでございます。
  206. 大川光三

    ○大川光三君 ただいまの御答弁で私も非常に安心いたします。しかし昨日の裁判所関係予算についての政府委員の答弁のうちに、司法関係はまあまあどうにかやっておるから、そう急いで人員増加をやらぬでもいいのだというような考え方で、裁判所の増加要求は排斥されたというように伺ったのですが、大体そういうようなお考え方であるのでしょうか。もっと司法の重要性ということをお考え下さって、予算の編成に当って特に御留意をいただきたい。ただ、司法はどうにかまかなっておるということになりますと、現状維持ということは、引き続いて第二、第三の芦田事件が起ることもまたやむを得ないのだ。参議院補欠選挙の国家賠償事件が三年、四年かかってもやむを得ないのだ。この現状維持におるということが、私はいけないと思うのでありまして、まあまあやっておるからというべき性質じゃないと考えますが、理屈を申すのじゃないのでありますけれども、御意見を伺っておきたい。
  207. 上林英男

    説明員(上林英男君) お説の通り、決して司法関係は現状のままでよろしいとか、司法関係だから別に定員をふやさなくてもよろしいというふうに考えておるわけじゃございません。というよりか、むしろ司法権の運用というものは、三権同じように非常に重要なものであり、それを適正に、かつ合理的に運営されるようにというのが、われわれの予算立場から申しましても同じように考えておるわけでございまして、ただ予算を効率的に使用していただく、あるいは運用していただくという観点から、いろいろ申し上げ、あるいはお話し合いをいたしまして、予算を編成しておる状況でございます。
  208. 大川光三

    ○大川光三君 いろいろありがとうございました。どうぞただいまのお言葉の通り、将来の予算の上に、現実にあなたのお言葉を証明していただけますようにお願いをいたしておきます。次に、保護司の問題について二、三お伺いをいたします。従来保護司の方から、保護司実費弁償金を増額してもらいたいという要望が強いのでございまして、あるいは三百五十円または千円に値上げしてほしいというような点を聞くのでございますが、それに関連いたしまして、保護司実費弁償金支給規則によりますと、補導費、環境調査調整費、特殊事務処理費、その他の費用という四種目がございますが、保護司から値上げを要望されているのは、ただいま申します四種類のどういう点に該当するのでございましょうか。ちょっと事情がわかりにくいのでお教えをいただきたいと思うのであります。
  209. 福原忠男

    政府委員(福原忠男君) お尋ねの件でございますが、保護司の方が一番に痛切にその費用の少いことをお訴えになっている点は、主として今おあげ下さいました中の補導費でございます。
  210. 大川光三

    ○大川光三君 そういたしますと補導費の予算は、現在一件について百四十円以内、昭和三十三年度予算では増額されて百六十円と相なっているようでございますが、一体これで十分であるのでございましょうか。補導費ということに関連いたしましては、少年の問題はもとより、今後、売春防止法の一部改正に基きまして婦人補導ということにも関連性を持つと存じますので、果して百六十円が適当な金額であるかどうかということについての御見解を伺いたい。
  211. 福原忠男

    政府委員(福原忠男君) 保護司制度というものの本質にもかかわる問題でございますが、大体、保護司はいろいろと条件がございまして、時間的余裕がある人であり、かつ世間的な信望もあり、そうして経済的にもまた相当の地位にある方だというふうな方を一応選考基準にしております。それでお話しの補導費も、そういうような面から考えまして、対象者をお扱い下さる場合にその補導に要する全額をということになりますと、かなりの金額が想像されます。しかし、今申し上げたように、保護司の方の民間の篤志家という点に本質を求めますと、必ずしも全額をそのまま保護司の方は要求しているのではございません。先ほどお言葉にございましたように、予算単価が、昨年は、対象者一人を担当いたしますと、一カ月百三十円、それが今年は三十円増額になりまして百六十円という予算をお認め願うように御審議願っているのでございますが、この程度ではもちろん十分だとは申せません。しかし、これは平均しての金額でございますので、ある種のものについては、今度はこの百六十円というものをかなりいろいろとあんばいいたしまして、今せっかく法務省令できまっております実費弁償金支給規則というものを、かなり現場の保護司の要望にこたえる形で改めたいと、こう考えております。
  212. 大川光三

    ○大川光三君 保護司を委嘱する相手は、裕福な余裕のある方に従来の委嘱をいたしておるということはわかりますけれども、現にその保護司が弁償金の増額を言うてくるということから考えますと、これはよくよくのことでないだろうか。相当余裕のある人、社会的に地位のある人、裕福な人、その人が値を上げてもらわなければ困るというのには、相当な理由があるだろうと思うのです。実際、保護司が必要とする補導費の金額というものは、実費としてはどれほどが必要なんでございましょうか。向うの要求の額ではなしに、実際これだけあれば十分に補導ができるのだというその金額は、どれほどのものなんでございましょうか。
  213. 福原忠男

    政府委員(福原忠男君) もし私の方で理想的な金額というものを考えて、それを提示せよという御要望でございますと、一応私の方では、このたび大蔵省出しました予算原案の線というのがございます。それを申し上げて、責をふさぎたいと思います。対象者一人を預かりました場合の保護司の方の一カ月間の活動の最小基準というものを、少くともその対象者に三回は接触してほしい、こう考えております。そしてその場合、いろいろとこれは旅費その他が考えられるのですが、そういうやかましいことは言わずして、少くとも普通のこの程度の方の日当として、今、国家的に考えられている金額というものが二百三十円でございます。ですからそれの三分の一程度でよいのではないだろうか、日当まるまるほしいというほどの一日仕事ではありませんから。そうすると結局一カ月を通じて三回ですから、三分の一日当を差し上げると、結局一日日当二百三十円程度が一応考えられているわけでございます。それにもし事情が許せるならば、二回くらいは今度は通信費、五円なり十円なりの手紙で、本人から近況を聞くとか、そういうようなことも考えられますので、それに二十円程度の通信費、合せまして二百十五円程度をいただくならば理想かと考えて要望いたしました。
  214. 大川光三

    ○大川光三君 引き続いて保護司の点で、保護司の定員は全国で五万二千四百人となっておりますが、現在の実際の数は四万九千人でありまして、大体三千四百人定員を欠いておるという実情でありますが、最近とみに激増して参りました少年犯、また売春防止法の完全実施に伴いまして、売春婦の保護、補導の仕事もふえることは必至でございますが、保護司の充実についてどういう対策をお持ちになっておるか、この機会に伺っておきたいのであります。
  215. 福原忠男

    政府委員(福原忠男君) お言葉のように、保護司の定員を三千人ほど下回っております。これにつきましては、お言葉にもありましたように、売春防止法の完全施行その他の関係を考慮いたしまして、従来必ずしも全国的にその五万二千五百人の定員を配付してなかったものを、全部配付人数を昨年の七月ごろでございますが、改めまして、その増員方を各地にお願いしてございます。御存じのように、残りは、先ほどのいろいろな条件がございますので、必ずしもそれだけの人数を直ちには充員できませんが、その方向で努力しておりまするし、やがてはかなりの実績が上ることだと、かように考えております。
  216. 大川光三

    ○大川光三君 大蔵省の方に一つお願いをいたしておきます。ただいまの保護司の問題もお聞き及びの通りでございまして、三十三年度の当初予算に請求いたしておりまする金額は、絶対必要欠くべからざる経費であるということを私は確信いたしております。すべて裁判所にいたしましても、法務省にいたしましても、非常に何と申しますか、法律的な良心をお持ちになっておる。私は在野法曹でございますが、よく世間で、大川は政治家として大成しないのだ、なぜかというと、彼は法律的良心に常に制約されておるのであるということを言われて、皮肉られるのでありますが、私は、そういう世間の批評に対して、甘んじてこれを受けております。そういう見地から申しまして、司法関係予算請求に決して水増しはないという確信を持っておるのでございまして、法律的良心に基いて請求されまする司法関係予算につきましては、今後決して割引をせずに、真正面からお受け取り願いたいということをお願いいたしておきます。
  217. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 今、大川先生から国家賠償法を改正されたらどうかという御質問に対しまして、今のところはないが、研究をするというお話、そのことの御答弁の中に、国民の税金によってまかなっておるのだから、過失等全部について賠償をするというようなことはどうかと思うというような実は御発言があった。先ほどの公職選挙法の誤記の問題について、あの事件のごときは、公務員が選挙管理の事務を国から委託をされておるものであります。あやまちをしたということにおいて前代未聞の、全国選挙無効だという大事態が起ったわけであります。天下を震憾させたわけであります。そこで、しかも関係者というものはもう失格してしまって、無言の抵抗をして、再選挙に出る、こういう事態まで引き起した。また、関係者一同というものはそのために、一国家の委託を受けてやっております若い者のあやまちによって、塗炭の苦しみをなめた。こういうものに対しても、いかにもり損害賠償せぬでもいいというような印象を私は受けたのでありますが、一体そういうようなお考えなのかどうか、その点を承わっておきたいと思う。
  218. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) ただいまの佐野市の再選挙の事件については、私どももごく概略を知っておるだけで、事件の詳細のことは存じないのでございますが、かなり困難な事件であるように想像されるのでございます。果してその事件が過失責任ありやいなやという点も、非常に認定の困難な問題だろうと思いますが、かりに国家賠償法が過失責任主義をやめまして、無過失責任主義をとったといたしまして、果してその事件の原告の請求が立つものやらどうやら、非常に疑問ではなかろうか。で、一般的といった問題として想像いたしますと、果して損害があったかどうか、損害額は幾らかということで非常に問題があろうかと思うのであります。先ほど申し上げましたように、無過失責任主義ということはつとにいわれておることでございますが、これをすべてについていうということは、非常に困難ではないか。で、一般の不法行為法の原則と国家賠償法の原則と違った性質のものではないのでありまして、国家賠償法だけが先に先走って改正をするということはかなり困難ではないか、問題があるのではないか。幸いに今、法務省におきましては、民法の改正事業に着手いたしておるのでありまして、やがては不法行為法の問題にも及ぶわけでありまして、その際に、民法の付属法令といたしまして、国家賠償法の問題もぜひ取り上げなければならぬ、こういうふうに考えておる次第でございます。
  219. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) どうもはなはだ異なことを承わるので、なるほどことごとくに国家賠償を要求されておったら、それはなかなか容易ならぬということはわかるのですが、少くとも公務員が、国の事務を委託をされてやっておる者が、前段来申しまするような大事件を出来しておいて、しかもその選挙管理委員自体も何らの陳謝もせず、しこうして、国もそれに対して、なかなか困難なことであるというような御発言は、私は非常に心外にたえない。私はそういうお言葉に対しましては、私どもとしましては、これは天下の世論に訴えて処置しなければならぬという感を実は今非常に深くしたのであります。私どもは、裁判の進行につれまして、正しき公正なる国の処置を期待をして筋通を通してもらう。人に迷惑をかけて、それで知らぬ顔をしておるというような、冷たい、そういうあほなことでは、犯罪がどんどんふえるのは当然のことである。もう少し筋通の通した、あたたかい国民に対する御答弁を一つ、これは政務次官からお願いしたい。
  220. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) 先ほど来、佐野の選挙に関連する国家賠償の問題を御議論になっておるようであります。実は大谷委員も御承知のように、あの選挙に当りましては、私は大谷委員側の選挙参謀で活躍をいたした一人であります。まことに当時、関係者の皆様方には非常にお気の毒だという感を、同志として深くしておったものでございます。国家に対して、選挙管理委員会の失策に対して賠償を要求しておられるということも伺っておりました。この問題が一日も早く解決いたしますことを念願いたしております一人でございまして、もとよりむずかしい、事態が非常に困難であるから、この裁判が御期待通りに解決することはむずかしいというようなことは考えておりません。世界的に信用あるわが国の裁判が厳正公平に、正しい結論を一日も早く生み出していただくことを希望いたしておるものであります。大谷委員と志を同じゆうするものでございますことを申し上げます。
  221. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) ただいま政務次官の懇切丁寧な御答弁で、その問題は了承をいたしました。次に、大川委員の御質問の保護司の待遇の問題であります。これは、あなたの方の大蔵省に対する要求原案は、一件について二百五十円を御要求になった。しかるに大蔵省は前年度に比べて、まあたった二十円かあるいは三十円、ピース一つにも足らない、ひかり程度の増額をした、こういうことで、むしろ司法の点については十分な了解を持っておるという先ほどの参事官のお話でありますが、これに対する御所見はいかがですか。
  222. 上林英男

    説明員(上林英男君) お答えいたします。保護司さんの実費弁償金は、先ほど保護局長さんもおっしゃいましたように、その性質は、民間の篤志家の方々にこういう更生保護の事業につきまして御協力をお願いしているわけでございます。従いまして、その実費弁償金につきまして、あるいは必ずしも十分でないという御批判があることは重々存じておりまするが、この保護司の実費弁償金につきましては、予算を編成いたしますときも、いろいろと御相談申し上げてきたところでございまするが、今申しましたこの弁償金の性格から申しましてあるいはまた、むしろ国の事業に御協力を願っておりまする保護司さんに対して、国の感謝の方法といたしましては、たとえば今、百六十円を二百五十円に上げるというようなことよりも、むしろほかにいろいろな方法で、国の野生保護事業に御協力願う感謝の意を表する方法があり得るのではなかろうかというような感じを持っておったわけであります。しかし、当面の一法務省のお気持としましては、この実費弁償金をぜひ上げてほしいというお話もございましたので、来年度の予算におきましては、百三十円から百六十円に上げたわけでございます。ちなみに申しますと、一昨年度は百二十円でございましたが、十円上げたわけでございます。ただ、十円と申しますと、あるいは三十円ではピース一つも買えないとおっしゃるわけでございますが、件数にいたしますと、およそ百万件ございます。従いまして、十円上げますと約千万円ぐらいふえるわけでございます。従って、約三十円上げましたので、結局、来年度の予算は三千万円程度ふえておるわけでございます。まあ保護司さんのいろいろな御協力に対し感謝の意を表するという方法としましては、なお今後とも研究を加えたいというふうに考えておりまするが、当面三十三年度につきましては、この程度で御了承いただきたいというふうに考えております。
  223. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 大蔵省は非常に御理解があって、光のさすように、ひかりだけ上げたということでありますが、これは保護司の方というものは、そうしてまた今、百万件もあるというお話ですが、やはりみみっちいことをしておくから犯罪が私はふえると思う。万全の策をとれば、それは犯罪もまた世の中に少くなると思う。従って、私はそうういう音意味合いにおいて、やはり保護司の方々の非常な献身的な御尽力に対してはかの意味で、ほかの点で感謝の意を表することがあるとおっしゃいますけれどもし、やはり実費は潤沢に差し上げるということが当然の処置であり、またそのこと自体が、百万件を減少するということになれば、あなたの方の財布もそんなに少くもならぬ、こういうことになるので、みみっちい考え方を持っておるというと、ますますふえていくということなんだから、そこはあなたは大へんに御理解があるということなんだから、これはぜひとも一つ今後十分に御理解を願って、大蔵省のお考え方は、財布を大事にして、今年などはたな上げがたくさんあって、ふところに入れてしまつ区て、ちょくちょく出されるつもりかどうか知らぬけれども、というようなことでなしに、やはり大事なことには、日本の青少年の犯罪の増加、先ほど大川委員の仰せになるように、売春防止法の四月実施に伴いまして、それは予算を要求をして人員をふやそうというのを、定員をふやさぬようにということで押えてしまわれる。財布のひもをぎゅっと締めておりしまいになると、これはやはり法律を通した以上は、そうしていろいろな、それこそ総理の言われる悪を追放するためには、それはまあ財布のひもをやわらげて手当をするということが、これは国家全体を考えて下さる大蔵当局としての大事なことだと思うのだが、もう一ぺん一つ今のところをお願いしたい。
  224. 上林英男

    説明員(上林英男君) 御趣旨の点につきましては、各先生方からもいろいろお伺いいたしておりまするし、また法務省からもよく承わっておりますので、今後なお検討していきたいと考えております。
  225. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) そこで、局長さんの方にお尋ねしたいのですが、保護司の方々は全国には五万人からあってですね、これはもうほんとうに、社会悪の防波堤となっていて下さる。防波堤どころじゃない、また善導の、積極的に善導の働きをしていて下さる。従って私は心からなる感謝の意を表しつつ、そのお仕事に従事をしていただかなければならぬと思いますが、それらの点に関して、実は私は幼少の時分に、父が非常に愛知県の社会事業協会を設立しまして、当時の免囚保護事業にも専心をしました。私のうちには女囚が始終五人も六人もいなさって、中には実に、顔を見てぶるっとふるえるようなのがおりました。子供心にもこわいなと思いました。そういうふうにして、実にこの愛知慈恵会の女子保護部をやっておったことは、今名前が変って保護会でございますか、慈恵会の仕事、さらにまた保護司の方々の仕事というものは、非常な御苦心を要するものなんです。従って、先ほどあなたのお言葉の中に、徳望の高い方々であり、また身分もしっかりした方々にお引き受け願っておるのだから、物質的にはよほど云々というようなお言葉もあったやに承わりまするが、どういうような、それらの点について、私どもは、これらの方々に対してほんとうに物質的にも精神的にも感謝の意を表していただくということが、きわめて大事だと思うのでございまするが、それについての御所見をこの際承わっておきたい。
  226. 福原忠男

    政府委員(福原忠男君) 保護司の仕事に対して、大へん御認識のあるお言葉をいただきましてありがとうございました。ただいまの御質問の点でありますが、先ほども主計官からお話のありました通り、保護司の方は、物質的な点でこのお仕事をしていただいておるのではございません。もっぱら社会奉仕の念に燃えてやっていただいておるのでございますので、その方々の実費弁償金が少な過ぎるという声に対しましては、十分傾聴いたしまして、その線に沿って幾分ともつ努力いたしておる次第でございます。なお、足りないところは、さらにまたいろいろと考究したいと、こう考えております。それにもまして、御示唆がありましたように、この方々に対しまする精神的な面の、いわば感謝の気持を国家的にどういうふうにしてお示しするがということが問題だろうと思います。実は、今お話しのございましたように、名古屋地方は、大谷委員の御先考などのお力でもって全国的にも非常に社会事業、また更生保護事業の盛んなところでございます。そして従来はこのような方方に叙位叙勲というふうな制度もございましたし、非常にいろいろな名誉的な御処遇を申し上げた。たとえば奏任待遇にしていただくというようなこともございました。ところが終戦後、そういうことが全部制度的になくなりましたものですから、非常に困っております。現在は一番の最高の名誉は藍綬褒章をいただくことでございます。そして藍綬褒章につきましては、大へんかしこきあたりのおぼしめしもございまして、従前にましまして、毎年相当の数をお認めになっております。それから、その次には、法務大臣の表彰ということをいたしております。さらにはまたその段階の下では、各地方別の地方、更生保護委員委員長の表彰というようなことで、それぞれその方々の御労苦をねぎらう方法をとっておるようでございます。
  227. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) もとより、保護司の方々は物質的なことを念頭に置いて御奉仕をいただいておるわけではありません。これらの方々は、全く御自身のお仕事のかたわらにおいて、誠心誠意をもって御尽力をいただいておる方々でございまするので、少くともその御尽力をいただく実費だけは十分に一つ大蔵省にも、幸いに御理解のある参事官も御出席でありますので、今後ぜひとも増額をするように、私どもも微力をささげまするけれども、当局におかれましてもより一そうの御尽力をお願い申し上げたいと思います。なおまた、国家として、これらの功績ある人々に対する表彰の制度がなくなって、今日は藍綬褒章その他の表彰制度でありますが、願わくばこれらの方々に対しまするところの表彰制度が確立をされるように御尽力をお願いいたしておきたい。国家としての感謝の意を法的に一つしていただく措置を今後御尽力をお細いいたしたいと思うのでございます。それから、大川先生からも売春防止法に関連をして定員の増加がなされなかったかと、こういうことでございますが、これは私は、この間社会労働委員会におきまして旅館業法の一部を改正する法律案が上程になりました際に、栃木県――これは残念ながら大川先生の方でございますが、並びに群馬県等におきまして旅館で自分のところに雇っておる女中さん、これと契約を結んで、そして売春行為をやったというのが警察当局で発見ができたわけである。今後、おそらく私は正式の旅館におきましてはそういうことはありませんけれども、温泉マーク等におきましては今後そういう事態が非常に起って、しかも悪質な事態が起ってくると思う。従って、私は非常にそういう悪質なひもつきブローカーと申しまするか、悪質なものが日本の若い娘さんたちを食いものにするということについて、私は非常に心配しておるわけです。従ってこれらに対して現在の、今度の御要求の予算が不可能になりまして、どういうような一体対策を立てておいでになるか、この際承わっておきたい。
  228. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいまの御質問は売春防止法の刑事規定が実施を見た暁におきまして、いろいろと形を変えた売春が行われる心配はないか。また、そういうものについて手当はいいかという御質問であったかと存じますが、仰せの通り、四月一日を期しまして、おそらく都会から赤線、青線の灯は消えるものと確信をいたしております。しかし灯は消えましたが、それでは、それにかわるような組織的な、むしろ地下組織的な管理売春あるいはいわゆる五条違反の罪、こういったようなものが必ずしもなくなるものとは考えられないのでございますが、御承知通り、売春防止法の罰則規定は、世間でざる法などと申しますが、実際の罰則規定は余さず漏らさずの規定ができておるのでございまして、赤線、青線の灯が消えましても、それにかわる脱法的な売春行為につきましては、十分あの罰則をもって取り締ることができると考えております。法務省、特に検察庁におきましては、警察当局とも密接に連絡をいたしまして、この取締りに万遺憾なきを期しておる次第でございます。予算についてはどうかというお話でございますが、予算につきましては、特に大蔵当局におきましても、この点の認識を深くお持ち下さいまして、検察費の点におきまして相当な金額を見積っていただいております。なお、この予算をもって、さらに不足というような場合におきましては、これはいわゆる補充費系統の予算でございますが、適当な方法で、あるいは流用、あるいは予備費の承認をいただくというようなことで、予算的には万遺憾ないこれも態勢になっておりますから、その点、御安心を願って差しつかえないと存じます。
  229. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) どうか一つ赤線、青線の消えていきますることが、まことに喜びにたえぬところでありまして、それに反しまして、今度はどす黒い、あるいはまつ黒い線が組織的にできるというようなことでもって、一般の青少年、あるいはまた一般の女性の苦しみがないように、万全の一つ御措置をお講じを願いたい、かように思います。
  230. 大川光三

    ○大川光三君 簡単に伺いたいのですが、昨日の東京新聞によりますと、釈放朝鮮人に生活保護法を適用するの措置を請ずるというような新聞記事が出ておりますが、これは私は非常に重要なことであると考えるのであります。そこで、最初に伺いたいのは、昨年十二月成立いたしました日韓抑留者相互釈放協定でございますが、それに基いて、すでに国内釈放されました刑余者は何人あったか。その数、それは全体であるかどうかということと、釈放した場合、この刑余者のうちで再犯を犯した者が今日までに何人あるか、その再犯の原因はどこにあったかという点を、まず伺いたいのであります。
  231. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 最初の釈放朝鮮人に対しまする生活保護の新聞記事が出ておりましたことは、私も承知いたしておりますが、これに対して、何らかの保護の道を講じなければならぬということは考えておるのでございますし、それに対して、かなり具体的な話も進んでおるように聞いておりますが、これは入管局長からお答えを願う方がいいかと思います。それから、釈放は御承知のように、これも入管局長からお答えを願うのが筋だと思いますが、いらっしゃいませんので、私の承知しておりますことを申し上げますと、たしか本年の一月十九日でございましたかから、二月の初めにかけまして、四百数十名の者が釈放されたはずでございます。この正確な数字は入管局長からお答えを申し上げたいと思います。それから、その釈放されました朝鮮人のうちで犯罪に陥ったものはどうか、これは私の方の所管でございます。これはその釈放の一月十九日でございましたか、それから今日までの私の手元に報告されております数字は三十一名ございます。その罪種を見ますると、窃盗が大部分でございます。そのほか傷害が続いて多うございま申す。なお、脅迫とか、一件でございましたか公務執行妨害、それから道路交通取締法違反といったような事例になっております。窃盗が多いということにつきましては、やはり生活が困窮しておる。つまり狭き門になっておるということが考えられるのでございまして、これに対しましては、何らかの方法で保護するということも、確かに必要な措置であろうというふうに考えておるのでございます。
  232. 大川光三

    ○大川光三君 ただいまお話がございましたように、再犯者三十一名のうちで、主として窃盗事件が大部分を占めておるということは、即生活困窮という問題からくると思います。あるいは脅迫の場合においても、それにつながるものは生活困窮ということも想像つくのでございますが、ただ一つ、法務省の考え方として、また、われわれの考え方といたしまして申し上げたいと存じますることは、生活保護法ができましたその精神というものを、あくまでも生かして行きたいというのが私どもの考え方でございまして、たまたまこれをすることによって、日韓交渉をスムーズにやろうということは、多少私は考えが違う。少くとも、あるいは再犯防止の面から、広くは人道的な見地から、韓国人に対しても生活保護法を適用するということは、これはわかります。しかしながら、これをすることによって日韓会談をスムーズにやりたいのだということは、裏を返せば、これは軟弱外交である。こんな腰の弱いことではならぬのでございまして、おそらく、昨年成立しました相互釈放協定には、生活保護法の適用を刑余者に及ぼすのだということは、条件になってもいなかった、すべからく、現在残されておりまする抑留日本人を、一日も早く送還されたいということは、国民こぞっての念願であると思います。しかしながら、その代償としまして、日本が韓国にこびたり、ごきげんをとったり、これが日本の誠意でござるというようなことを示して、そうして昨年の協定を完全に実施さすというようなことは、これは話が違う。そこに日本の外交のあり方がなければならぬと思うのでございまして、いやしくも釈放朝鮮人に、生活保護法を適用するのだということは、そういう派生的な目的じゃなしに、ほんとうに生活保護を適用しなければならぬ実情に向って、考えるべきだと、私は考えておるのでございますが、この点に対して、刑事局長の御見解を承わっておきたいと存じます。
  233. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) ただいま入管局長がお見えになりましたので、先ほど留保いたしました点は、入管局長からお答えを願うことにいたします。なおまた、釈放朝鮮人に対する保護ということが、日韓会談を円満に妥結させるための手段になってはならないというお考えでございます。これは私どもも全く同感でございまして、今考えられておりますことは、抑留漁夫を一日も早く帰すがために、特に国内で、韓国側の歓心を買うために、そういうう措置をとるのではございませんので、全く国内の治安に及ぼす影響を考慮いたしましたための措置であると、私はかように理解いたしております。
  234. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ちょっとお伺いしますが、これは刑事局長がいいのではないかと思いますが、ただいま刑法の一部を改正する法律案が出ておりまして、あっせん収賄罪と申しますか、そういうものが提出されておるのでありまするが、あの刑法の一部を改正する法律案によって保護される法益ですな、それは何でしょうか。
  235. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) あっせん収賄罪の保護される法益は何かという御質問でございます。これは一般の汚職、収賄罪につきまして考えられる法益と全く同じというふうに理解しておるのでございますが、これは一つには、公務員の廉潔を保持するということ、もう一つは、公務の公正なる執行を担保すると、この二つのことを考えておるのでございます。これは御承知通り、学問的には、今二つの考え方があるわけでございまして、前の公務員の廉潔を保持するという考え方は、ローマ法に淵源を求めることができるのでございます。それからあとの、公務の公正を担保するという考え方は、ゲルマン法にその淵源を持つと言われておりますが、現行の各国の刑法におきまして、いずれか一方のみを保護の法益としておる立法例はございませんで、保護法益として、そのいずれに重きを置いておるかというニュアンスはございますけれども、両方を保護法益としておるのでございます。で、あっせん収賄罪につきましても、公務員が束縛を受ける、つまり身分犯といたしております点で、公務員の廉潔を保持しようというところに大きなねらいがあります。と同時に、他の職務権限を有する公務員に対する不正な行為をさせようという、あっせん行為を罰しようとしておるのでございまして、その限りにおきましては、やはり公務の公正なる執行を担保する、つまりそういう公正なる執行に危険を及ぼすような行為でございますから、これを担保しようというこの二つのねらいがあるわけでございます。従いまして、この二つがやはりあっせん収賄罪におきましても、保護の法益になるというふうに考えている次第であります。
  236. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 ただいまの御答弁ではっきりしたのでありますが、この公務員の廉潔を期待するということで、一つの目的だということでありますが、私も公務員の廉潔、公務員の品性の維持と申しますか、高揚と申しまするか、現在の社会において、議員とか、その他公務員の人が、自分の職を汚すようなことがあるから、これに対して品性を維持するために、こういう法律は作る必要があるというようなふうに、一般には言われているわけでございますが、ところが現在出されておりまするところの条文を見ますと、相手の公務員の人が不正な行為がなければ処罰をされないということになると、現在世間で期待しているところの目的の半分あるいは三分の一しか達せられないということになるのではないか、いわゆる金は公務員が幾ら金をもらってもどうしても、別個の第三者の公務員に不正がなければいいじゃないかというふうなことになれば、国民が現在期待している目的の半分か、あるいは三分の一しか目的を達することのできないことになる、こういうようなふうに考えますが、それで相手の公務員が不正な行為をするとか、しないとか、そういうことを処罰の条件にかからせない方がいいのじゃないかというようなふうにも考えますが、その点はどうでしょうか、あなたのお考えは。
  237. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) 相手のあっせんを受けます公務員が、不正な行為をした場合だけが犯罪になるというような今御質問の御趣旨でございましたが、もし、さように解する向きがありますならば、これは誤解でございまして、相手の公務員に対して不正な行為をするように、あるいはもう一つの場合は、したことに対する謝礼でございますので、不正なことをするようにというあめっせんをした場合、将来の場合でございますが、このときには、結果として不正な行為があったかどうかは、本法の問うところではないのでございます。要するに、職務権限を有する公務員に対して、働きかけをしますその働きかけが、不正な行為をするようにという働きかけでございます。そうしてこの不正な行為をするという意味は、これは明治四十四年、今の最高裁判所、当時は大審院でございますが、大審院の判例以来、幾つかの判例が出ておりますが、この判例によりますと、公務員の職務上の義務に違反するような行為、そういう行為が不正な行為だと、かように解釈されております。なぜこういうふうにしぼったか、こういうふうにしぼったのでは、適用の範囲が挾くなって、世論の期待に沿わないのじゃないかという御懸念かと思うのでございますが、この点につきましては、私どもも実に慎重に考えてみました。このあっせん収賄という類型の犯罪は、日本の刑法の歴史におきましては、今回初めて登場してきた条文でございます。外国の立法例を見ましても、アメリカ、イギリス、フランス、チェコあるいはユーゴ、その他八つばかり私どもの手元にその資料を持っておりますが、そういう国々でも、これは現在、現行法として持っておりますが、本家本元のドイツは、四十年来この問題を論議して、いまだ、まあドイツ人のこれは特性かもしれませんが、現実の問題になっておらない、論議の段階でございます。こういうように、あっせん収賄という規定を作ります経過を見ましても、これはひとり日本ばかりではない。諸外国にもなかなか論議の多い条文でございます。で、さしあたりこの問題は、昭和十五年の改正刑法仮案に、すでにあっせん収賄の規定が出ておる。それから昭和十六年の第七十六帝国議会に政府原案として出されておりますが、これは貴族院は通りましたが、衆議院においては否決をされて、結局流れておるのでございます。その後、戦時中にあっせん収賄の規定が一つできました。これは議員等は含まれません。官公署の職員ということで、昭和十八年でございましたか、できましたが、これは施行間もなく廃止になって、終戦後廃止になった。こういうようないきさつが過去にございます。それから昭和二十九年、また昨年と、社会党の方から同趣旨のあっせん収賄の規定が提案をされて、現在継続審議になっております。この七十六帝国議会のときの国会における論議でございますが、これはまあ非常に私どもにも参考になる論議がありまして、速記録に残っております。そういう御論議をずっと見ますると、特に国会議員あるいは地方議会の議員の、つまり選挙によって公務員の地位についておられます方々活動範囲というものは、私ども事務官である公務員とは違いまして、幅も広うございますし、また、選挙との関係におきましては、非常に政治活動の面が広いのでございます。その中には当然あっせん行為もあるわけで、それをすべて処罰するということになりますると、またかえって反面において、ちょうど選挙違反と同じように、捜査当局、捜査官憲のねらい撃ちとか何とかという批判を、受けるような場面も出てくるかと思うのでございます。まあ、そういうようなことがもし起りますならば、これは世間でよく申します検察ファッショだというようなことになるのでございまして、そんなことはないとは信じておりますが、そういうような部面も、この際はっきりと払拭しておかなければならぬ。それからまた、用語その他も、これは新しい概念をここに持って参りますと、解釈、運用の面におきまして、いろいろ疑義がある。一応は検挙を見るといったようなことになりかねないのでございまして、ただいま提案しておりますあっせん収賄罪は、すべて現行の刑法の中にある用語を使いました。それで、もう少し「不正ノ行為」というようなものの範囲を広げて、不当な行為まで及ぼしてはどうかというような意見も実は法制審議会等でも出ましたのでございますが、この不当な行為という概念は、はなはだあていまいな概念でございまして、人によっては広くも解釈し、人によっては必ずしも広くないといったようなこともあります。もし不当という概念をそこに使ったといたしますと、その前の条文にあります百九十七条ノ三でございますが、これらの規定には不当という概念は刑法の中にもございません。そうすると、今までの判例も新しいあっせん収賄の不当という概念の影響を受けて、従来固まって参りました解釈までも悪い影響を持ってくるおそれがあるというようなことをいろいろ考えまして、現に改正刑法仮案のときも、新しい立法であるから、相当しぼりをかけなければいかぬというような委員長の報告の記録も残っております。それをあれこれと考えまして、現段階におきましては、綱紀粛正といったような面の目的を果しますということ、これは確保しなければなりませぬが、いたずらに捜査官憲の活動を促すような結果にならないように、とくとその辺を考慮いたしまして、まずまずこのあたりが適当であろうというのが、法制審議会の学者、実務家の多数の意見が、結局はそのように落ちついた次第でございまして、その面についてはいろいろ批判はございますけれども、私どもとしては適正妥当な線であろうというように考えておる次第でございます。
  238. 後藤義隆

    ○後藤義隆君 そういたしますと、あなたの今の答弁からいたしますと、政府、が国の財産を払い下げるというふつうな場合に、希望者が数人あつて、そうしてそのうちのたれかが有力な公務員に、議員あるいはその他の公務員に頼んで運動をして、そうしてその人が払い下げを受けることになる。それが幾らかのお礼をもらっても犯罪を構成しないということになるわけですね。そういうようなことをあっせんしても、わいろをもらっても犯罪を構成しない、そういうような見解でよろしゅうございますか。
  239. 竹内壽平

    政府委員(竹内壽平君) その払い下げ行為が自由裁量行為でございまして、Aの人に払い下げるのも、Bに、あるいはCに払い下げるのも、諸般の事情を考えて最も適当だと思う方に払い下げて差しつかえない。そういう行政行為でございますならば、その間にあっせんをする方がありましたために、AなりBなりに払い下げたという案件でございますれば、これは今の不正な行為をさしたというふうに見られませぬ限り犯罪にはならないのでございます。
  240. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) ちょっとこの際伺いますが、名古屋市に刑務所が町のまん中に、昔は宿舎でございましたけれども、今日は名古屋市の中央に刑務所がいまだに存置されている。これは風教上から申しましても、はなはだ芳ばしからざることであります。ことにあの付近には住宅地帯があり、また商店街も近くに控えている。小学校もすぐ近くにあるというようなことで、純真なる子供たちに考える影響も、私どもははなはだ芳ばしくないということで、絶えず心を実は痛めているわけであります。こういうようなところは、おそらくはかの土地にもあるのではないかと思いまするが、名古屋市のあの刑務所につきましては、非常に町の発展も阻害をいたす。それよりも一番大きな問題は、ああいう赤れんがの建物が、しかもおそらく何万坪という土地建物である。これにつきましては、御移転になるという御計画ありやいなや、どういう対策をお立てになっておるか、この際承わっておきたいと思います。
  241. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 現在、矯正局関係の刑務所は全国にたくさんございますが、これらの刑務所で、ただいま仰せのようりな移転の問題が出ておる刑務所も十刑務所以上にも及んでおるのであります。かような刑務所は、最初はさような繁華街に置いてあったわけではなかった。これがだんだんと都市の発展につれまして、町のまん中に現在は置かれておるというような事柄から、都市計画の都合上、郊外地への移転の問題が今起っておるのでございます。名古屋の刑務所も、まさしくその通りでございまして、現在、都市計画に基く百メートルの道路が刑務所の横腹につけられておるというようなことになっておりまして、地元の方から移転の運動が起っておるのでございます。われわれといたしましても、かような現在の状況からいたしまして、都市の発展の上から、また都市計画の遂行上から、国策を遂行する上に、刑務所が支障を来たしておるというようなことは、まことに遺憾なことだと存ずるわけでございまして、かような不適当と思われる刑務所につきましては、郊外地等に移転の計画をしておるのでございます。しかしながら、何分この刑務所の移転と申しますのは、なかなか容易なことではないのでございまして、一つの刑務所を移転するにしましても、少くとも十億程度の費用が要るわけでございまして、なかなか現地の方々の御要望に沿うようなことにもなりかねるのでございます。いろいろその間、われわれといたしましても適当地を物色いたしまして、われわれの仕事の上からも支障のないように、また、現地の方々の御要望にも沿うようにという適地を選考いたしまして、移転を完了いたしたいと思っておるのでございます。現在さような観点から、全国的な刑務所の移転問題につきまして、法務省の中に委員会を設けまして、その緩急順序を作りまして、最も緊急を要するところから、逐次その問題を解決して行きたいという方向をとっております。そのために予算の方でも調査費を八十万円ばかり入れまして、諸種の調査をいたしておるような次第でございます。名古屋の刑務所の問題につきましても、目下調査中でございまして、緩急順序に従いまして、御要望に沿うように解決をつけたいというふうに考えておる次第でございます。
  242. 大谷贇雄

    担当委員外委員(大谷贇雄君) 願わくば、名古屋市の問題はすでに市街の中心地であり、ただいまお話しのように、都市計画路線がわき腹に通るというようなことで、名古屋市発展のためにもきわめて遺憾な状態でございます。風教上から考えましても、これは学童等に与える影響はきわめて甚大であります。すみやかに一つ御善処を賜わりまするように、とくと一つお願いを申し上げたいと存じます。なおまた、この機会に、全国のそういう大都会、中都会等におきまして、そういう繁華街等の移転を要するような刑務所の資料を、一つこの際御提出が願いたい、かように思います。なお、資料の要求でありますが、たとえば、私立で非常な苦心をして要保護の子供たちを預かっておられるような、たとえば愛知県の那蘭陀苑とか、あるいは明徳塾、あるいは東京の自立会とかいうような施設の概況についての資料、並びに先ほどの保護会等の施設に刑余の人々がおられる状況等についての資料、並びにそういうところにおりまする人々が、どういうパーセンテージをもって改俊をし、また、社会にも復帰をしておられるか、再び犯罪を犯すような人々はないかどうか。さっき由ましたところの、私のうちに前科十六犯という者がおって、何べん世話しても、また刑務所に戻って、また私のところへくるというような状態でございました。そういうような者は特殊なものでありまするが、おそらくこのあやまちを、御尽力によって、それらの施設の指導者たちが善に進むような御指導をいただいておるので、その御功績顕著なものがあると思いますが、それらの点についての一つ状況を知悉いたしたいと思いまするので、資料をお願いいたしまして、これで質問を終ります。よろしゅうございますか。
  243. 横川信夫

    政府委員(横川信夫君) よろしゅうございます。
  244. 大川光三

    ○大川光三君 入国管理局長にわざわざおこしをいただきましたので、先ほどの質問を繰り返していたしますが、昨年十二月に成立いたしました日韓抑留者相互釈放協定に基いて、すでに国内釈放をされた朝鮮人の刑余者は全部で何人であったか、それと、その釈放された刑余者の中で、再び罪を犯して逮捕された者が何人あるかということ、それといま一つ、一体それらの再犯者の犯罪名はどういうように区分されておるかという点、さらに、現在、日本人抑留漁夫が何人あちらに残っておるかという点を伺いたいのであります。
  245. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 御質問がありましたときに席をはずしておりまして、まことに申しわけございません。昨年末の覚書によりまして、二月十三日に国内釈放を完了いたしました朝鮮人刑余者の数は四百七十四名でございます。子の中で、ただいままでに扱告が参っております犯罪を犯しました者が三十一名ございまして、その内容は、窃盗、横領、無銭飲食等の財産犯合計十八、暴行傷害九、その他四となっております。それから朝鮮に、釜山に残っております漁夫は、釈放の対象となりますのが九百二十一名ということであったのであります。そのうちから三百名と二百名で、たしか五百名残っておりますから、依然とし四百二十名以上の者が残っておるわけであります。そのほかに、現在向うで刑を受けております者が、当時は二十九名とか申しておりました。あるいはこれらのもので刑を終えたものがありますと、これも釈放の対象になっておるわけでありますが、いずれにいたしましても、四百二、三十名ということであります。
  246. 大川光三

    ○大川光三君 数字的によくわかりましたが、そこで、進んで伺いますことは、この昨年の抑留者相互釈放協定と申しますか、この協定に基く日本側の義務というものは完全に履行したのでありましようか、伺いたいと思います。
  247. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 日本側の義務は完全に履行いたしました。
  248. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、昨日の新聞によりますと、厚生省では、朝鮮人の刑余者の中で生活困窮者に対しては生活保護法の適用をいたすべく、その準備をしておるということでございまして、しかも新聞で報ぜられるところによりますと、これによって日本側の誠意を披瀝して、今後の日韓会談がスムーズに行くような一助としたいというようなことが新聞に報道されておるのでありますが、私はこれは大へん日本のために残念な、遺憾なことだと考えるのでございまして、ただいま御説明のございました日本人漁夫がなお四百二十一人残っておる。その残留者を一日も早う送還してもらいたいということは、これは国をあげての念願であるし、熱望であると考えまするけれども、すでに、この協約において課せられた日本の義務というものは、完全に履行されておるにもかかわらず、先方側が、その先方側に課せられた義務を履行していない。それがために四百二十一人という漁夫がなお残っておるのでございまして、なるほど四百二十一人の同胞は大事であるし、その返還は熱望されます。けれども、ここでさらに朝鮮人の刑余者を生活保護法の適用をして、特別サービスをいたしますというようなことで、協定の義務の履行を相手方に求めるというようなことは、これは日本の非常な軟弱外交と申しましょうか、ま辱的な私は行き方であると、かように考えるのでございまして、しかし一面において、朝鮮人の刑余者に生活保護法を適用するということは、目的はほかになければならぬのでありまして、あるいは国内治安保持の関係から、あるいは朝鮮人刑余者の再犯防止の見地から、さらに進んで人道的な立場からも、これは考えるべきであると存じまするけれども、たまたま日韓会談をスムーズにするために、相手方のごきげんをとったり、相手方の歓心を買うために、この生活保護法をそうやすやすと適用されてはならぬのだと私は考えておるのでございますが、この点に関する入国管理局長の御意見を承わっておきたいと存じます。
  249. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 先ほど申し上げましたように、二月十三日に釈放を完了いたしたのでありますが、その際から引ぎ続きまして現在まで、まだその釈放者の中で病院に入っております者が十八名ございます。これらの者につきましては、病気がなおりますれば別でありますが、病気がなおるまでは大村の市内の病院に入っておるわけでございますが、やはりめんどうを見てあげなければならぬのでありますが、年度末、この三月三十一日までは、私の方の法務省の費用でめんどうを見ます。それから先ほ予算がございませんので、私の方から厚生省に交渉いたしまして、そうして岳活保護法の適用を受けて費用を出してもらうということでありまして、連中から見ますと、何ら待遇が変るわけでも何でもないわけでありまして、病気の間は出て働けというわけにも参りませんので病院に入れておく、その費用を法務省から出せないので、厚生省の生活保護法の方から出してもらうということでございます。この点につきましては、もちろん外務省も何も知っておりません。また、韓国のミッションにも何ら連絡いたしたことはございませんし、私もその新聞をけさ見まして驚いたような次第でありまして、そういうような漁夫との関連というようなことは、私の頭には全然出なかったのであります。従来とも一般朝鮮人で生活保護法の適用を受けておりまするものが、すでに八万ぐらいございまして、経費としましても十七億ぐらいを使っております。
  250. 大川光三

    ○大川光三君 そういたしますと、結局、新聞に言われる生活保護法の適用というのは、朝鮮人の刑余者のうちで、病気等の理由によって生活ができないという者に限って生活保護法の適用をするというのであって、今後広く一般朝鮮人刑余者に対してまで広げる意思は、局長としてはないのだ、こういうように伺っておいてよろしゅうございますか。
  251. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいまのところは、この病人だけでございます。それから刑余者が、これはその他の刑余者でございますが、四百七十余名、十八名を除きまして。これらの者が日本におります資格をどうするかということは将来の問題なんでございますが、これは日韓会談におきまして、在日朝鮮人の国籍並びに処遇の問題という点が交渉されるわけでありますが、それらとにらみ合せまして、これらの刑余者にどういう資格を与えるかということが将来の問題になっております。しこれらの者に国内に在留することを認めましたならば、これらの者は一般の朝鮮人と同じになります。そうすると、一般朝鮮人の中で生活保護法の適用を受けている者があるわけでありますので、それと同じ立場に立ちまして受ける者も出てくるかも存じません。ただいまのところは、それらの者は仮放免のままになっておりますので、この病人以外はこの適用を受けることはございません。
  252. 大川光三

    ○大川光三君 よくわかりましたが、ただ、相互釈放協定というものを日本側が完全に履行したのだということであります以上は、現在、朝鮮に抑留されておりまする邦人漁夫の返還ということと交換条件で生活保護法を朝鮮の釈放された刑余者に適用するというのではないと、かように私は承知いたします。けだし、日韓会談の結果、将来、生活保護法がかような一般刑余者に適用されるやいなやということは、これは今ここで論議すべきではないと思いますので、私はこの程度で質問を終ります。
  253. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) もはやほかに御発言もなければ、法務省所管はこの程度でもって一応終了することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  254. 石坂豊一

    主査石坂豊一君) 御異議ないと認めます。  つきましては、明日午前十時より、国会所管のうち、国会図書館及び大蔵大臣に対する残余の質疑を行います。  なお、政務次官に申しますが、欠席の委員より、法務省に対して留保しておる人もありますから、明日あるいは御出席を要求するかもしれません。  本日はこれで散会いたします。    午後五時一分散会