○
公述人(
近藤文二君) それでは、ただいまから、
社会保障制度を一歩でも
前進させたいと日ごろから
考えておりまする一学究としての立場から、今回の
予算に関しまして、二、三の所見を申し述べて御参考に供したいと存じます。
最初に、今回の
予算を拝見いたしますと、旧
軍人遺族等に対する
恩給などについての
措置といたされまして、前
年度に比べて
増加いたしました六十七億八千七百万円のうち、三十七億五千万円が
文官恩給との不均衡を是正するという理由のために計上されているのでございます。問題は、この
数字が将来どのように伸びていくかという点でございまして、
一般に、
平年度に直しますと、これは三百億円の
増加になるといわれているのでございますが、もしそうであるといたしますと、
若年停止の
解除その他による
自然増と合せまして、三十四
年度以後は一千百億円を上回ることは明らかと
考えなければなりませんし、
文官恩給を合せますと、優に千三百億円をこえると
考えなければならないのであります。しかし、この千三百億円が一体いつのころになれば減少するであろうか、
恩給法の
改正を主張されました
方々の御
意見を承わりますと、旧
軍人の方は今後その数を減じていく、
遺族の方もそうであるから、この
金額は次第に減っていくのだというお話でございますが、果して、おっしゃる
通りにこの
予算はなるのでありましょうか。私は、この
公聴会に前々回も
出席させていただいたのでございますが、わが国の
予算が毎年々々
考えられておるだけで、長期の計画的な
予算になっていない点を遺憾に思うと申し上げたのでございますが、五年、十年先のことを
考えて国の
財政計画は立てるべきではないかと思うのであります。そういう
意味におきまして、この
恩給の
費用がどう伸びるかということに重大な関心を持つのでありますが、これらの中で、まず
最初に、
若年停止者がどのぐらい今後その
停止を
解除されて
年金をもらわれるようになるかと、
軍恩全連の御
調査の
数字を拝見いたしましても、
昭和五十年ごろになりますと、三十二年の
受給者の約倍、
金額においても大体倍になるという
数字をお
出しになっております。
軍人恩給の
関係で、そういう
改正を強く主張された
方々でさえも、この点につきましては、明らかにふえることをお認めになっているのであります。それでは、
遺族の方の
公務扶助料は一体どうなるかという問題でございまするが、これにつきましては、
遺族のための
公務扶助料というものの
内容を少し検討してみる必要があるのではないかと思います。
遺族年金とか
遺族扶助料とか申しますと、いかにも
遺族の方の
生活を保障する
年金というふうに
考えられるのでございますが、
恩給の場合の
扶助料は
厚生年金保険における
遺族年金などとは少し性質が違っているのではないかと思います。たとえば
厚生年金保険の場合は、
遺族である妻が
年金をもらう場合には五十五才になってないといけない。お父さん、お母さん、おじいさん、おばあさんの場合においてもそういう年令の
制限がある。ところが、
恩給の場合はそういう
制限はないのであります。それから、もう
一つ重要な点は、かりに一家の中から三人の
戦死者をお
出しになったお気の毒な
家庭があるといたします。そういたしますと、その三人の方の
遺族扶助料がその
家庭に入ってくる
建前になっております。つまり
恩給という
性格からいって当然のことであるかと思うのでございますけれども、退職
年金的な
性格が、あるいはさらに突っ込んでいえば、退職金的な
性格が強いのでありまして、
遺族がどういう形にあるかということを問わずに、当然賃金の
あと払いのような
考え方でそういうものが支給される点は、
厚生年金保険の場合なんかとはいささか違つているわけであります。
その
意味におきまして、今回
政府の方でお
出しになりました
恩給法改正案を拝見いたしますと、今回の
措置は
遺族たる妻、子及び六十才以上の父母または祖父母でないと、
公務扶助料の
増額をしないという
建前をおとりになっておるのでありまして、これはそういう
意味におきましては、一歩
遺族年金的性格に近づいた
考え方をおとりになっておると思うのでございますが、この
考え方をもう一歩お進めになって、
社会保障的な見地から問題を解決される
考えがなぜなかったのか。現に一月三十一日の
衆議院本
会議において、
水谷先生の質問に
岸総理大臣はこのように答えられております。「
恩給の問題を全部含めて
国民年金等の
社会保障制度に切りかえたらどうだという御
意見に対しましては、私もその御
意見には賛成であります」、こういう御答弁をなすっておるのでございます。それならば、なぜ急いで旧
軍人恩給法の
改正を今回なされる必要があったのか、もうしばらく一年でもお待ちになれば、この御趣意に沿うたような
改正が全般的に行い得たのではないかと思うのであります。しかし、一年も待てないとおっしゃる方もおありでしょう。また
公務扶助料というものは今後減っていくのだ、だからそう心配する必要はないという御
意見も出てくるでございましょう。そのような主張をなされます方は、
公務扶助料は四十六年までに
対象人員が半減し、五十二年には三分の一になる。こうおっしゃるのでございますが、
転給、それから
増加恩給の
受給者の
遺族の問題、さらに
遺族の
平均寿命というものが著しく延びておる、
老人の方が非常にふえてきておるという形においてもよくわかりますように、
平均寿命が延びておるという点を
考えますと、そういったことを主張されるほど
失権者が多いかどうかは問題だと思います。これは
恩給局の方が
人口問題研究所に
調査を依頼して、どのくらい減って参るかということをお調べになったことがあるというふうにも聞いておるのでございますが、ここ十年、二十年
程度、そう簡単に減るものとは思われないのでございます。そういたしますと、先ほどの
普通恩給の
若年停止解除の
方々と合せまして、今後
恩給の
予算の
総額は逆に伸びていくのではないかという懸念さえも出て参りますし、もしまた、将来ベース・アップが行われ、さらに
倍率の
改訂等が行われるというようなことになりますと、ゆゆしき大事になるのではないかとさえ
考えられるのであります。
旧
軍人恩給につきましては、このほか大将の
遺族の
公務扶助料が二十万五千七百円であるのに対して、今回の
改訂によって兵の
遺族の方の
公務扶助料が五万三千二百円に引き上げられた。この点はけっこうなことだと思いますけれども、それにいたしましても、なお二十万五千七百円と五万三千二百円という開きがございます。それからよく
文官との
バランスの
関係で
倍率が問題になるようでございますけれども、警察官の方を
中心にした
文官の方の六千人
程度の
倍率を、百五十万人もの
遺族の方にそのまま当てはめて
バランスをとるという
考え方は、一体正しい
考え方かどうかという疑問も、率直に申しますと出て参るのでありまして、いろいろこの点については
社会保障制度の
前進を念願しておる者としては遺憾な点が多いのでございます。特に問題は、
岸総理が政治的な取扱いとして、三百億円
平年度の
数字で申しますと増になるという
ワクを
最初におきめになって、その
ワクの中で
公務扶助料をどうする、
傷病恩給をどうするというような計算をされたという
やり方は、これは
予算を立てるという上において実に不可解きわまるところの
やり方でありまして、まず
公務扶助料をどうする、
傷病恩給をどうするということから計算して、その
総額が幾らになるというふうに合理的に、一国の
予算というものは計上さるべきものではないかと思うのであります。この辺がどうも頭の悪いわれわれには了解できないとともに、
国民の一人としてまことに遺憾だと申さざるを得ないのでございます。
私はかつて、旧
軍人恩給が復活いたします当時、
衆議院の
公聴会に参りまして
公述する機会を与えられたのでございますが、そのときも私は復活その事自体には反対いたしません。しかし、復活するとしても、それは
社会保障の線に沿うて復活していただきたい。
階級差はできるだけ少くお
考え願いたいということを申し上げたのでございますけれども、おとり入れにならなかったとともに、その当時私がひそかに案じておりましたことが今回具体的な
数字となって現われて参ったのでございまして、これは新聞その他の世論を
皆さんお読みになっておると存じますが、すべて私と
意見を一致しておると申しても過言でないような形になっておりますのでございますから、
一つこの際当参議院におきましては、慎重な
態度でこれに関する
予算を御検討願いたいと、はなはだ僣越でございますけれども、希望する次第でございます。
次に、
予算の中で
社会保障関係費といたしまして百二億円の
増額が計上されております。この百二億円の
増額を
中心に、その中身について私の
考えを多少述べさしていただきたいと存じます。まず第一に、
国民健康保険の問題でございますが、これはいよいよ全面的な
国民健康保険法の
改正法案が今回の
国会に上程されることに決定したようでございますが、それと関連いたしまして、
給付費の
補助として十八億七千五百万円の
増額が計上されておるようでございます。この十八億七千五百万円の
増額の中で、十一億円ほどは
国民皆
保険計画の実施に伴う四百万人の被
保険者増に対する
負担増ということになりますので、残るところは八億円
程度のものになるわけでございますが、これは
受診率の上昇と
診療報酬の
合理化による
費用増に充てられるものらしく思われます。特にその中の六億二千八百万円がいわゆる
合理化のための
費用だということでございますが、かりに三十二
年度の
療養給付費を
国庫補助金から逆算いたしまして四百三十四億円と見、その
半額を
保険が
負担するといたしまして二百十七億円、これの八・五%増しで
合理化が行われますとすると、十八億五千万円となります。その半年分は九億二千万円
程度でございますから、四百万人の増を入れますと、十億三千万円くらいが
合理化のために要る
数字となるのではないかと思いますが、
予算上は六億三千万円でございますから、ざっと四億円ほど被
保険者みずから
負担せなければならないという形になっておるのはどうかと存じます。
それから、今回
財政調整交付金十三億八千二百万円というものをお作りになりましたのはけっこうでございますが、これは現実に要った
費用の百分の五ではなく、その
見込額の百分の五であるというのでございますから、決算で余ればこれは返さなければならないという、まことにさもしい
考え方の
財政調整交付金ではないかと思います。この
辺大蔵当局はなかなかそろばんがこまかい、
大阪商人のような
考え方だという感じをもたざるを得ないのでございます。
それから
事務費の
国庫負担でございますが、たとえば
大阪府の
黒字財政の
都市を例にとってみましても、
事務費は被
保険者一人当り百二十一円要っておりますし、
赤字町村になりますと二百八十五円も要っておるのでありますが、なるほど
単価は八十五円から九十円にお上げになったのはけっこうでありますけれども、かりに五万以上の
人口の
都市は現在八十三円三十五銭の
単価ですが、これが五円上ったとして、八十八円三十五銭といたしましても、非常な不足が生ずるのではないか。しかも
国民皆
保険の
対象は
大都市であります。
転出入が非常に多い
該当者の把握が想像以上に困難な
大都市であります。そのような所では当然に膨大な
事務費が要るのでありますが、このような
単価でもって果して
事務費がうまくまかなわれるでありましょうか、
事務費の
全額がまかなわれないということは、
法律で
義務制にされましても、
大都市が
本気になってこういうことをやろうとしないおそれを起すのではないかと思います。
大都市に
義務制をしきましても、
大都市がもし
国民健康保険をやらなかったら、
大都市をどういうふうに処罰されるのか、おそらくこれは、
罰則適用というふうなことはできないと思うのであります。こういうふうな抜け穴がここにありますので、もし、
国民健康保険を通じて
国民皆
保険を
本気でやろうというならば、喜んで
大都市が
国民健康保険をやるような態勢を整え、同時に
法律で強制していくという
方向をとらなければならないと思います。そのためには、かねがね
社会保障制度審議会が要望しておりますところの、五割
給付を七割
給付まで引き上げ、今すぐにというのでなくとも、引き上げる
方向でもっと具体的な努力を示していただきたいと思うのでありまして、前述の
財政調整交付金は、そういったような
意味を含んでおるとも承わっておるのでありますが、そういう点をもっとはっきりと
出していただく必要があるとともに、そのためには、この
財政調整交付金というものをもっとふやしていただく必要がどうしてもあるんじゃないかと思います。五分をせめて一割
程度までふやしていただくことができたならば、もう少し
政府は熱意があると
国民は
考えるのではないかと思います。そうでございませんと、下手をいたしますと、戦争中の
国民皆
保険のように、形だけは皆
保険でございますが、
内容は伴わない、
開店休業皆
保険というようなことになるおそれがありはせぬかと思うのであります。
国民皆
保険、
国民健康保険法改正、この問題につきましては、いろいろ問題がございます。私はこの問題については、
医療関係者の
協力がなかったならば、実質的に皆
保険にたらないと思います。そのためには、
医療制度をどうするとか、あるいは
無医村を
解消するためにはどういう
措置をとるとか、
診療報酬支払い方式をどうするとかいうことの謙虚な研究が必要であるのでございますが、今回の
予算には、
無医村解消の
予算も出ていないようでございます。
診療報酬支払い方式についても、
混乱に
混乱を重ねておるような形の
健康保険の
方式をそのまま採用されようとしておるのは、少しどうかと思われるのでございます。
ことに、問題は、
結核対策でございます。これがうまくいきませんと、
国民皆
保険は
有名無実になると思います。なるほど、今回の
予算を拝見いたしますと、
健康診断、これにつきましてはいろいろと新しい手をお打ちになっており、そのための
費用を計上されております。また、
各種検査を
公費負担の
対象の中に入れておられます。しかし、
医療費公費負担の率は、依然として現状のままでございます。三十一年十一月に
社会保障制度審議会が行いました勧告は、紙くず同様に取り扱われておるのでございます。まことに私はその
委員の一人として遺憾千万と申し上げざるを得ないのでございまして、
結核公費負担率の引き上げに手を触れずに、
国民皆
保険が果してできるのかどうか。しかも、今回の
国民健康保険法の
改正では、われわれが
答申案において要望いたしましたところの、三年で打ち切るというようなことはやめてもらったらどうかという、その点が三年で打ち切るのが、原則としてはっきりとお示しになっておるようでございますが、三年間だけ
国民健康保険から
治療費の
半額を
出してもらって、その
あとは
保険料だけ
出して何にも
給付を受けないという
結核患者の方が出てくるわけでございますが、それは一体どうするのか。
公費負担は
半額であるという問題、行く先は
生活保護法の
医療扶助しかないというような点、さらに、農村におきます
老齢人口の
増加に伴う
老人の
慢性病、これに対して三年という打ち切りは果してどういう
意味を持つか。で、
国民皆
保険は、皆
保険でございますから、抜けておる皆
保険というのはちょっと私にはわからないのでございます。そういう
意味におきまして、
厚生当局は転帰までやりたいとお
考えになったんでしょうが、
大蔵省との
関係等があって御遠慮されておると思いますので、
一つ御遠慮なく
大蔵省に、皆
保険は皆
保険だからという形で、
予算計上を再考慮していただくようにお
考え願うとともに、そういう
方向にいけるように
先生方の御
審議をぜひお願いいたしたいと思います。ことに、
結核問題は、
最初は金がかかりますけれども、一ぺんこれがすべり出せば、将来は
財政的に非常に
負担を軽くするものであるということを、特にこの際お
考え願いたいと存じます。
また、
無医村の
解消のためには、
直営診療所等の
新設についての
補助金といったような
考え方が
法案には出ておるようでございますが、
直営診療所を設けるのも
一つの方法でございます。しかし、
開業医が喜んで
僻地無医村に行くために、
開業医にもその
診療所を作る
費用の一部を国が
補助するというふうな
考え方も、この際ぜひとっていただく必要があるのではないかと思います。
医療保険は
医療従事者との
協力がございませんと、形だけの
医療になるおそれがあるのでございますから、この点につきまして、ぜひとも慎重なる御考慮を促すとともに、
予算面におきまして
協力ができるような
措置をぜひお取り上げ願いたいと思います。
なお、
日雇い労働者健康保険等につきましても、
国庫負担、
医療給付に対する一割五分を二割五分に引き上げられており、しかも、これを
答申案の線に沿われまして、法文に明記されておるのはまことにけっこうでございますが、
傷病手当金や
出産手当金の
新設に伴う三分の一の
国庫負担は、三分の一以内というちょっと気に食わない字がついておるのであります。この「以内」を取りはずすことができないのか、ということを私は
皆さんに
一つ御判断願いたいと思います。
それから、
健康保険その他の
医療保険に対する
診療報酬をめぐる
合理化の問題でございますが、
日雇い労働者健康保険の場合は、一億四千三百万円というものが中に見積られておると承わるのでございます。従いまして、先ほど申しました
国民健康保険の六億二千八百万円と、
結核の一億一千六百万円、これらを合せますもののほかに、
生活保護におきまする七億六千三百万円、合計して十六億五千万円が
合理化の
費用ということになるのではないかと思いますが、
健康保険につきましては、全然これが計上されていないようであります。もっとも
健康保険組合につきましては、
暫定措置として二億円、
給付費臨時補助金というのが計上されておりますが、これは収支の悪い
組合に対する
補助金なのか、それとも
診療報酬の
合理化に伴う
弱小組合に対する
補助金なのか、少し明確を欠いておるようでございます。もしこれが、
弱小組合に対する
合理化のための
国庫負担であるといたしますならば、結局
健康保険については、すべて
合理化は
保険料でやれ、被
保険者の
負担でやれという御方針のように
考えざるを得ないのでございます。
合理化を被
保険者の
負担でやる、
保険料でやるという
考え方は、
政府管掌の
健康保険の場合はもっとはっきり出ております。三十億円あった
国庫からのお金が十億に減ってしまっております。この点から見ても、
合理化については、国は横を向いておる格好でございます。元来、三十億が十億に減ってしまったというのは、
健康保険の
財政がよくなったからだそうでございますが、私は三十億円が問題になりましたときに、あの
国庫から出される金は
赤字対策ではないということをしばしば聞かされておったのであります。
国会においても
池田大蔵大臣がしばしばそういうことを言明しておられるということにも聞いておるのでございますが、その言明は、
大臣がかわられると霧のごとく消え去ってしまうのかと、私はあぜんとしておる次第でございます。もし
健康保険が
黒字であるならば、なぜこの
黒字を使って問題の五人
未満の
人たちに対する
健康保険の
前進をおやりにならないのか。
国民健康保険でこういった
人たちをまかなうという
考え方は、五百四十七万人の
零細企業労働者とその家族七百十九万人が少しも希望していない点であります。これらの
人たちの希望しているのは、
傷病手当金のある、そして本人が
全額保険で見てもらえるところの
健康保険であります。最近厚生省はこういった
人たちに対しましても、
任意包括の線で、従来のように
報酬が低いからお断わりするというそういうけしからぬ
態度をおとりやめになったということでございまして、これはまことにけっこうなことだと思うのでありますが、さらにそれを一歩、あるいは二歩、三歩
前進させるために、この
黒字をなぜお使いにならないのかという点、どうも不可解千万だと言わざるを得ないのでございます。
そのほか
失業保険の問題につきましては、五人
未満の零細な
労働者の
方々にできるだけ
任意包括をしようという線を
出しておられ、その
方向こそむしろ
健康保険もとるべき
方向であるのに、どうして
失業保険だけそういうような
積極策をとっておられるのか、これも問題の
一つだと思うのでございます。
その他
社会保険関係につきまして申し上げたいこともいろいろございますけれども、最後に二、三私の特に申し上げたいと思いますのは、今回の
国会に
農林省予算としておそらく計上されているのではないかと思いますが、
金額はわずかに一千万円と聞いております。
事務費としてわずかな一千万円でございますけれども、その結果できて参ります
農林漁業関係職員共済組合というものが実現するといたしましたならば、これは
厚生年金の
空中分解であるということをとくと頭の中に入れて御検討願いたいと思うのであります。
社会保障制度審議会の方では、
厚生年金保険のフラット分の上に積み重ねたような形のものであるならば、という
意見が答申されておるのでありますが、
厚生年金保険は別にして、そのほかに退職
年金の共済
組合をお作りになるのならばけっこうでございますけれども、
厚生年金の方の積立金を持っていく、その積立金を持っていく計算が一体できるのか、
厚生年金の今日の積立金は
保険料の資金になっておりますけれども、ほんとうはその
通りの計算でやっておりません。整理資金も
考えていない点がございますし、私の荒っぽい
考え方では積立金は
保険料計算の半分しかないと言っても言い過ぎではないと思うのでありますが、一体どういう形でもっていかれるのか。農林
関係の団体の方の福祉を
考えます場合、いろいろな点から私はかえって危険だと思います。現在は勤務年数が八年どまりのようでございますが、こういうものができれば、そういう方は長く在職されます。長く在職するということは、それだけよけい
年金が要るということになりますが、そういう場合に一体どうするつもりでおられるのか、またその共済
組合をやめて普通の会社にお勤めになったときに、
厚生年金保険は
最初から始まるというような不合理なことになるのでございます。しかも、こういう共済
組合は最終
報酬を基礎にいたしまして
年金額をきめますから、やめるときに最終
報酬を引き上げるという点がややともすれば行われる、非常に危険な要素を含んでおるのでございますから、ちょっとしろうとが
考えると、これはうまいぞと
考えますけれども、よくよくくろうとが
考えると、これは困るぞというのが今回の職員共済
組合法の
内容であるのではないか、と思うのであります。
それからもう
一つ、これはどうなるかわからぬようでございますが、大蔵当局の御希望で
恩給を共済
組合に切りかえてしまうという御提案が出かかっておるようでございます。私は
恩給というものを共済
組合方式に変える、つまり
保険の
やり方に変えるということにつきましては大賛成でございます。今日の
恩給の
国庫納付金もよくよく
考えてみますと、相当なものに実はあれはなっておるのでございまして、この際、
保険の
方式に変えることはけっこうだと思うのでございますが、
保険に変えるのが目的なのか、
保険に変えた積立金を自分で使いたいというのが目的なのか、というところに問題があるのであります。国が責任をもってやる、こういったものを各省の共済
組合がてんでんばらばらにその積立金を持って、自由に使えるということは果して許されるべきことであるかどうか。私は
保険方式に変えることは賛成でございますが、その積立金はきちっと……。何もこれを
大蔵省が持つとか
恩給局が持つとかという問題でなしに、国の責任のもとに積み立てて運用すべきものではないかと思います。
大蔵省がいろいろなたとえば
厚生年金保険とか簡易
保険の積立金なんかを自分の方で一括して積み立てることをいろいろな面から進めておられながら、共済
組合については、その積立金を共済
組合にてんでんばらばらに渡してしまうという
考え方は一体どこから出てきておるのか。そういう
意味におきまして、この
法案がもし
国会に出るようでございましたならば、慎重に御討議願いたいと思います。これは直接
予算方面には姿を現わさないかもわかりませんが、こういう
予算面に姿を現わさないところの隠れたる
予算こそ、
国民が最も懸念する
予算でございまして、
金額が大きいものだけを問題にしておっては間違いでございます。
国民はよくその
年度の
金額が少いからと安心しておりますと、その次の年から
平年度となって、それが数倍になるというあの魔術のような
予算の作り方に対して非常に疑問を持っておるということを最後に申し上げて、私のはなはだ失礼きわまるところの
公述を終りたいと思います。ありがとうございました。(拍手)