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1958-03-11 第28回国会 参議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十一日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員前田佳都男君、中野文門君、 田中茂穂君、柴田栄君、大沢雄一君及 び植竹春彦君辞任につき、その補欠と して苫米地義三君、佐藤清一郎君、館 哲二君、小山邦太郎君、下條康麿君及 び鶴見祐輔君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            古池 信三君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君           小笠原二三男君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            加賀山之雄君            千田  正君            市川 房枝君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   公述人    第一物産株式会    社副社長    水上 達三君    日本中小企業団    体連盟専務理事 永井  保君    国民経済研究協    会理事     藤井 米三君    一橋大学教授  木村 元一君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから予算委員会公聴会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。本日、前田佳都男君、中野文門君、田中茂穂君、柴田栄君、大沢雄一君、植竹春彦君の諸君が辞任せられ、その補欠として、苫米地義三君、佐藤清一郎君、館哲二君、小山邦太郎君、下條康麿君、鶴見祐輔君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 開会に当りまして公述人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙の中をわざわざお差し繰り御来臨をいただきまして、まことにありがとうございました。公聴会の議題は、昭和三十三年度予算でございます。公述人は、大体三十分程度で御意見を御開陳願いたいと存じます。  まず、第一物産株式会社社長水上達三君からお願いいたします。
  4. 水上達三

    公述人水上達三君) 私、第一物産水上でございます。私に与えられました問題は、貿易産業政策ということでございます。私は貿易業を営んでおる者でございますので、自然、貿易を中心といたしまして、それに関連して産業政策問題にも触れて参りたいと思います。御参考になりますれば幸いと存じます。  まず、三十三年度予算編成方針といたしまして政府は昨年十二月、昭和三十三年度経済目標と、経済運営基本的態度というのに基きまして、こういう方針をとっておられるのであります。投資及び消費を通じて厳に内需を抑制し、輸出伸長を期することを主眼とし、いやしくも財政が景気に対して刺激的要因となることを避けつつ、重点施策の推進をはかり、経済安定的成長の基盤をつちかうことを基本として編成する、こういう編成方針をとっておられるのでありますが、これは当然のことでありますが、まことにけっこうな御方針だと賛意を表する次第でございます。  ただ、でき上りました予算案の内容を見ますと、当面のいわゆる重点施策というふうなものにつきましては、若干、予算面におきまして経費その他の確保をされたようでありますが、一般的に見ました貿易、なかんずく輸出、最重点としておられます輸出伸長政策に対しましては、必ずしも特別に重点的の配慮がなされているとは考えられない点が、たくさんあるように感ずるのであります。元来、輸出伸長するには、いろいろの要素が必要でありますが、きわめて平易に申しまして、まず輸出は物を売るわけでありますから、売手側立場に立ちまして、売手側に最もいい条件を提供しなければ輸出は成立しないということでございますが、これを国の立場で申しますというと、いわゆる国内態勢をそういうふうに整備すると言いますか、国内態勢をそういうふうにするという、国内態勢いかんということに、一口に言いますと尽きるのではないかと思います。  そこで、この輸出伸長するためには、常に輸出のできるような態勢をとっておくということが大事なことであるのであります。たとえば、はなはだ卑近な例で失礼でありますが、品質の問題とか、数量の問題とか、あるいは値段の問題、それから積み出しの引き渡す時期の問題、そういうふうなものが相手の要求に合致いたしまして、初めて輸出は成立するわけであります。そこで、これに対しまして、私は日ごろ十ばかりの項目について常に考えておるのでありますが、これらの項目につきましては、大体間接的になるために、あまり重点がおかれてない。たとえば市場の調査とか、あるいは見本市の開催をするとかいうふうな具体的の問題、しかも海外へ出て行くというふうなことに対しましては、若干の配慮が払われるのでありますが、その背後をなすところの国内政策というものにつきましては、とかくおろそかになり、あと回しになるというきらいが非常にあるように感ずるのであります。  ここで、十ばかりの項目と申し上げますのを列挙いたしますと、第一に、物価の安定であります。それから貯蓄の増強。自然それに伴いまして、消費の調整と言いますか、消費の規制と言いますか、消費合理化ということであります。それから生産拡充強化拡充だけでなくて、生産拡充強化。それからそれに伴いまして技術研究向上。それから道路とか、港湾とか、こういうものの改善。それから大へん大事なことで非常にやりにくく、また忘れがちになることでありますが、国民全体に輸出意欲を盛り上らせる、輸出意欲を持たせる。それから税制とりか、金融とか、保険とか、そういう一連のあり方を、輸出に、一口に言いますと、有利にするようにする。輸出した者は、こういうものから何がしかの特典と言いますか、有利な立場を与えられるということ。それから輸出秩序、これはいろいろありますが、輸出入取引法とか、その他いろいろなものもこの中に入ると思いますが、輸出秩序確立するために、たとえば輸出入取引法をその線に沿って改正するとかということも大事なことであります。それから最近、政府でも真剣に取り上げておられます貿易管理制度、これの改善並びに手続簡素化、これは私ども毎日仕事をしております者から申しますと、むだを省いてもらうということにもなると思いますが、こういう点。こんなふうなことが、一々御説明するまでもありませんが、非常に大事な点だと思うのでありますが、これらは、先ほど申し上げますように直接的なものでないので、とかく重点的に取り上げられないといううらみがあるのでありまして、こういう点を特に私は強調したいのであります。  物価の問題ですが、物価をある程度低位に安定して行くということは非常に大事なことであります。ドイツが今日の外貨手持ちを持ちましたその裏には、エアハルト経済相などの物価安定政策というものが一番力があった、一番大きな原因をなしておるということは、すでによく言われておることであります。日本におきましても、昨年来、これは原因動機はあまりよくない動機でありましたが、その後、下りまして、昨年一年中で輸出価額というものは七%余り下っております。おそらく今年の平均輸出価額というものは、一割見当下るのじゃないかと考えておりますが、ただ下るということだけが大事なことではありませんので、ある程度低位に安定するということが望ましいわけであります。  それから貯蓄であります。これは貯蓄消費とは関連しております問題でありますが、大体これは戦前昭和九—十一年を基準にした数字で申しまして、国民所得は約二倍になっておりますし、また、鉱工業生産指数は二倍半以上になっておりますし、また輸入指数は一四〇、つまり四割強増しぐらいになっておるかと了解しておりますが、それに対しまして、資本蓄積の方は、これは貨幣価値の問題もありますが、これらを換算いたしまして、約九〇%ぐらいじゃないかと思います。それから輸出の方を見ますと、これは大体昨年の伸びたところで九五%くらいになっております。いずれも戦前基準に達しておりません。ということは、やはり設備投資とかあるいは一般消費とかいうふうなところに使われている。感じからいきましても、輸出の伸びが非常に悪い。それから資本蓄積の度合いが非常に悪いということは容易にうなずけるところであります。そこで、こういう観点から考えますというと、今度の予算でも問題になりましたところの減税預金とかあるいは法人税減税の問題とかいうふうな点に対する考え方が、やはり私から見まするというと、重点的でないと言わざるを得ないのであります。  そこで、次の生産拡充強化という問題でございますが、これは御承知のように、今度の戦争のあと技術向上ということが世界的に非常に強く、しかも非常な速度で進んでおりまして、日本もおくればせながら、非常に研究は各方面しておるのでありますが、非常に私はこれに対しては、国として考えた場合にむだが多いと思います。こういうむだを排除いたしまして、やはり科学技術向上をはかるということは大事でありますが、最も大事な点は、これを企業化する場合に、その企業日本として考えた場合に、適正規模というものはどの辺だろうかということをよく考えてやるということが最も大事なことではないかと思います。現在いろいろな産業の中に、五割あるいは実際的にはそれ以上の操短をしている産業があると思いますが、これらは見方によりますと非常なむだな設備をかかえておるわけでありまして、その企業としてはもちろんのこと、国としても非常な損失ではないかと考えるのであります。  それから道路港湾の問題でございますが、これはあらためて申し上げるまでもないのでありますけれども日本道路が悪いことにつきましては、これは世界的の定評の、あまりありがたくない定評ですが、あるところであります。ほかの点は非常にいい点をつけてくれるのでありますけれども、どこから来るミッションの人たちも、最後に、ただし道路だけは悪いというリマークがついているのが普通のようでありまして、はなはだおもしろくないのでありますが、これは非常に金がかかることでありますし、それからまた、いろいろほかにも複雑した事情があるかと思いますが、やはりこれも外貨獲得ということが大きな目的であるならば、それに即応したような政策をとってきめていくということが必要であると思いますが、もし外人の観光客など誘致するというふうなこともあわせて考えることができますれば、一石二鳥になると思うのでありますが、道路がよくなることによりまして、包装費とか、それから車両その他運搬物の消耗が非常に少くなりまして、単価が非常に安くなるということはよく言われることでありますが、これは非常なことでありまして、アメリカなどの、たとえばガラスを輸送するやり方を見ておりますと、ガラスバラで、日本ではがんじょうな木ワクに入れまして、さらにその間に動かないように、わらとか、その他何かそういうものを入れるのでありますが、アメリカなど見ておりますというと、全然バラで自動車の上に載せてずっと持っていく、工場から消費者の手元に直接持っていく、こういうことでありますが、この間に節約されるところの経費、資材というものはたくさんでございます。こういうふうなことも相当考えていかなければならない。  それから船の問題ですが、船は、現在日本貿易におきましては、大まかに申しまして、大体郵船の利用率は半分であります。半分は外国船を使っているというのが現状でありますが、これも内外ともに船の大きさが非常に大きくなってくる。タンカーなどで申しますと、マンモス・タンカーのような傾向になってくる。同時に、速力も非常に早くなってくるというような傾向でありまして、従ってこういう点から見ましても、港湾施設などを重点的によくして、外航船などがきらわないような、好んで来るような港の設備なり、また港湾行政というものをそういう、ふうにしなければいけない、こういう点が非常に大事な点であるだろうと思います。  それから税の問題でありますけれども税制金融保険と先ほど申し上げましたが、税の問題につきましては、今回も法人税は二%軽減していただくような法案になっておりますが、二%減らしていただきましても、事業税とかそれから住民税とかそれから固定資産税その他を加えますというと、普通の企業でありますれば六割見当の税金になるかと思います。それからまた、特別措置の改廃によりまして、政府としてはおそらくそう減収にはならないのじゃないかと思うのでありますが、こういう点につきましても、たとえばよく言われます輸出所得控除などにつきましても、やはり輸出を伸ばすという観点でいくならば、ある程度思い切った政策がほしいという感じがするのであります。  それから国民輸出意欲を、よくマインドフルといいますが、輸出意欲を、輸出というものを国民に認識させるということだろうと思いますが、これは簡単に申しますというと、やはり自分の使っている、たとえば朝飯なら朝飯をたべる中に、大豆とか小麦とか塩とか、あるいは卵などがある。また、その飼料とかいろいろなものがみな入っている。それが大体輸入品であります。半分、あるいは塩のごときは約八割は輸入だと思います。そうなりますというと、その輸入品を毎日三度三度食いつぶしているというわけであります。そこで、それならば、それだけのものは輸出するようなかせぎ方をしなければならないのだというふうなことも、これははなはだ卑近な例でございますが、一つ大事なことじゃないか。まあどういう方法でもいいのですが、国民にそれを知らせる、輸出というものが大事であることを知らせるということを、子供の教育から台所に至るまで徹底するようにさせる方法はないだろうか。これは私ども業界といたしましても大事なことでありますので、われわれ自身もそういうことを考えていろいろな場合にやっておりますが、今度の予算でも、通産省は当初たしか一億数千万円の予算を計上したように思っておりますが、それは途中で消えたのじゃないかと思うのですが、それからもう一つ、今の外貨の問題を申し上げますというと、いろいろのメーカーがございますが、そのメーカーの中で、外貨をかせぐ産業外貨を使う産業——中間ももちろんありますけれども、そういう産業があるように思いますが、この外貨を使う産業方々が、やはり外貨をかせぐことも考えるというふうな施策がほしい、こう考えております。極端にいいますというと、生糸のように全然国産を輸出して外貨をかせぐ産業があるかと思うというと、また、全く外貨で原料を輸入して国内で使ってしまうという産業もあります。それらが今どういう企業の状態にあるかということを考えますと、はなはだ不公平ではないかというふうな感じがするのであります。  それからまた、貿易為替管理あるいは手続簡素化というふうな問題でございますが、これは先般来、政府におかれまして審議会を作りましてせっかくやっておられますので、たいへんけっこうだと思います。  それから最後に、輸出秩序確立ということでありますが、輸出秩序確立の中に、たとえば輸出入取引法というふうな問題は大きな問題となっているのじゃないかと思いますが、これはやはり今アメリカで、輸入制限の問題でいろいろ波紋を描いております。これもやはり、これらの施策のよろしきを得ないというところにあるのじゃないかと思います。実は、たとえばこの間、問題になりました洋食器のようなものでも、非常に小さい貿易業者なりメーカーの方なり、そういう方がやっておられるのでありますが、これらの指導なり何なり、一つのやはり秩序を作って、その中で動くというふうなことにしますというと、相手からそんなにきらわれないで済む、こういうことになるのじゃないかと思います。  以上は、大体輸出の問題について申し上げたのでありまするが、輸出にもましてまた輸入が大事であるということを認識しなければならぬと思うのでありますが、たとえば、昨年来の金融引き締めにあって、今非常に不景気であるということを聞くのでありますが、この原因はどこにあったかと申しますと、輸入の過剰にあったということであります。輸入の過剰はどうしてきたかということになりますというと、先ほど来申し上げましたような、設備の過剰なり、あるいは消費の過剰なりというふうなことが、やはり大きな問題になっているのじゃないかと思うのであります。そこで、この輸入問題はなかなかいろいろの問題があるのでありますが、輸入合理化する、一口に申しますというと、輸入合理化するということが、非常に大事ではないかと思うのであります。やはり日本国際収支をよくするということが、どうしても一つの政治の目標であると思うのでありますが、この国際収支をよくするという観点からいきますというと、輸出を伸ばすということは、年間一割なり二割なり伸ばすということは、なかなか大へんなことであります。しかし、輸入の方でこれを合理化して減らしていくということの方は、まだそれほど努力が払われていないだけに、やりやすいということもあるのであります。何と申しましても、日本の将来は、外貨をためて、その外貨海外投資なり、あるいは国民生活向上のために使うということが、大きな目的でなければならないと考えますので、そういう観点から申しましても、輸入をできるだけ合理化して、輸出をふやしていく、外貨を残して、その外貨を有効に使う、こういうことじゃないかと思うのでありますが、幸い昨年は——本年度ですか、本年度は、当初は四億数千ドルの赤字国際収支では赤字を予想されておったのでありますが、政府政策のために、これは現在では一億三千万ドル程度赤字で済むというふうなことになっておりますが、三十三年度におきましても、三十一億五千万ドルの輸出、三十二億四千万ドルの輸入という目標は、おそらく数字よりも両方とも減るという環境に、世界の経済から見ますというと、そういう環境にあるかと思いますが、いずれにしても、国際収支の面から見ますというと、政府の予想する一億五千万ドルの黒字というものは確保できるであろうと私も考えておるのでありますが、これは幾ら余分になってもいいわけでありまして、ぜひ、そういうふうに持っていきたいと考えておるのであります。  それから、今申し上げましたのは、輸出入に対する問題でありますが、どうも世界的に見ますというと、貿易というのは自由化しなきゃいけないということで、自由化方向に向っていなきゃならないわけでありますが、実際は、御承知のような欧州の共同市場にいたしましても、それから、その他のいろいろな国々輸入制限の運動とか、ガットなどにおきます各国の所論などから見まして、やはり大小のブロック化になっておるというのが争えない事実であります。そこで、こういうものに対抗していくためには、やはり日本も、一口にいいますと、経済外交ということになるかもしれませんが、通商航海条約、その他いろいろな点で強力な経済外交が要望されるわけでありますが、こういうふうな点につきましても、今回の予算がどの程度これを見ておられますかといいますというと、はなはだ心細い気がするのでありますが、この予算の中にあります、たとえば経済協力の問題とか、ジェトロの問題とか、いろいろありますが、これらにつきましては、一応私は非常に時宜を得たものだと存じます。ただ、この今のようなブロック化の形勢にありますので、こういうことをわが国としては、ガットの機構とか、国連とか、あるいはICCとか、その他いろいろな国際機関がありますが、そういう場合に大いに主張して、日本の考えておる方向に持っていくということが、非常に大事なことじゃないかと思います。  それからこの予算でちょっと感じますのは、賠償とか開発基金とか、それから円借款延べ払い、そういうふうな一連経済協力がございますが、これが各省に、これでごらんのように、各省に非常に分散されております。こういうことは、やはり全体的に見て効率的でないということは言えるのでありまして、これらが、できますれば、日本経済の今後の海外発展を期するために総合機関がほしい、こう考える次第であります。  それからジェトロの問題でありますが、ジェトロは忌憚なく申し上げますというと、従来あまりうまく運営されていない点があるのじゃないか。もっとも、それだから、今度こういうような特殊法人にするということになったのだろうと思いますが、やはり運営が官僚的にならぬように、それから、やはり相手国々も、民間人が多いのであります。ですから、やはり適当な民間人を登用していくべきじゃないかと思うのであります。それから、その他、役員の権限あるいは事業計画、資金の予算、そういうものにつきましても、従来少しかた苦しく、融通がきかなかったというふうな点があるように思うのでありますが、これをこの機会に弾力性のあるものにして、理事長権限を大きくしていく、あまりこまかいところまで官庁の世話にならないというふうな考え方が必要じゃないかと考える次第であります。  時間もだいぶ経過いたしましたので、以上、簡単でございますが、私の公述を終らしていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ありがとうございました。  公述人に対しまして質疑のある方は、御発言を願います。
  6. 森八三一

    ○森八三一君 非常にごもっともなお話を聞いたのですが、そのうち一つ貯蓄減税は不徹底だというようなことの意味の御発言があったように思うのですが、それじゃ、一体、どういうふうにしたらいいかという対案がございましたら、お話を聞かしていただきたい。  もう一つは、最近、生糸輸出が非常に困難をしておるという状況にあるわけでありますが、この原因は一体どこにあるのか。輸出商社のいたずらな競争のために値段を下げた、それが悪影響を与えたというようなふうにもいわれておりまするし、玉糸の最低価格年度の途中で変えてしまったということが、価格安定の新政策というものについての日本政府態度があいまいだったということが基因しておるというふうにもいわれておりますし、いろいろございますが、実際にその仕事をおやりになっておる立場から見て、その原因は那辺にあるかという点についてお聞きしたいと思います。
  7. 水上達三

    公述人水上達三君) 初めの方の、貯蓄減税の問題ですが、これは、私専門家ではございませんから、詳しいことはお答えできませんが、感じといたしまして、やはり、貯蓄をしておれば預金者の利益になるという点が、相当大幅でないと、貯蓄に金を吸収するということは、なかなか困難じゃないかと思います。もちろん、今度の案でもその効果はあると思います。しかし、私が先ほど申しましたように、たとえば鉱工業生産などは、これはいろいろ理由は違いますが、二倍半にもなっている。一方はまだ戦前基準に達しないというふうなことは、やはり円に対する、日本の通貨に対する信頼度合がどこかに欠けているのじゃないかという気がするのです。ですから、結局、私が先ほど来輸出を強調し、国際収支をよくするということも、やはり円の、通貨の価値を高めるというところに、一番の目的があるわけでありますが、これらを総合的に考えていかなければもちろんできないことでありましようかと思います。そういう意味で、貯金ばかりふやさしてもいけないわけでありましょうが、しかし、貯金もふやさなければならない、こう考えておる次第でございます。それには、やはり魅力のある政策がほしいということじゃないかと思います。  それから生糸の問題でありますが、これは、私は非常に深い、広い国内問題がやはり一番の原因となっていると思います。最近減ったとかいうふうなことは、それは、たとえば保管会社の買い上げの問題とか、いろいろあったわけでありましょうが、それからまた、ニューヨークなどにおいて、おっしゃるような過当競争というものもあったと思います。しかし、やはり生糸の一番根本の問題は、国内問題の、養蚕家の問題と製糸家の問題と輸出側の問題、およそ分けますというと、この三段階になると思うのですが、生産者に対する繭の値段なり、あるいは買い取り方なり、そういうところに対する政策の問題、それから製糸業者に対する問題、輸出の問題、いろいろこれは議論をする方がおります。一本の会社にするとか、あるいは組合をどうするとか、現状では出先の方でどうするとか、いろいろの問題があります。しかし、アメリカが主になっております生糸の場合には、あまりアメリカの独禁法にひっかからないようなやり方でやらなければならないというふうなむずかしい点もあるわけでございます。やはり、日本国内において、この生産者、それから製糸家、輸出家のみんなに合うような政策というものを考えなければならぬ、なかなかむずかしい問題だと思います。むずかしいだけに、今日重要問題にもかかわらず、こんなふうな状態におかれているということじゃないかと思います。
  8. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 同じく生糸の問題で少し伺いたいのですが、今度政府買い上げの生糸の資金が二十億予算に組んであります。今多分六十億の資金で政府が買っておるわけですが、一万数千俵持っておるわけです。そこにまた、二十億足してさらに政府で買おう、こういう気がまえでおるわけですが、このことは、国内農民、生産者、養蚕農家に対しては、これでおさまるのでありますが、生糸輸出という観点から見て、どんなふうなお考えでしょうか、御意見を伺いたいと思います。
  9. 水上達三

    公述人水上達三君) 私あまり詳しくは、生産の面は存じ上げておりませんが、問題は、繭の値段というものがかなり高いところにあるということが一つ、それから集荷の方法、これが相当問題があるということ、それから最近では、いわゆる座繰生糸の問題、そういうところが非常に混乱しているように思うのです。そこで、やはり日本のほんとうの蚕糸政策といいますか、生糸政策というものを徹底的にやろうとするならば、これは、ある程度私の思いつきなり、個人の考えであるわけでございますが、思い切って、繭を買い上げていく方法なり、機構を考えるということが一番いいじゃないかと思います。そこで、それを輸出に向けたものと、国内向けのものとは、多少差別していいじゃないかと思います。現在、生糸そのものは、たしか、検査料の差とか何とかの関係で、輸出の方が高くつく、こういうことは、輸出を伸張しようという政策をとっておる現在、非常に矛盾した話しでありますが、事実そういうことがあるようであります。ですから輸出向けのものには、特別の措置を講ずるというふうなやり方で、思い切って、国内の繭の買い上げというものを一本にまとめていくということ、それから輸出に対しましても、同じようなことが考えられていいじゃないかと思います。元来、生糸値段というものは、それがある程度高くても安くても、使う人はほんとうにほしくて生糸製品を使うのでありますから、そう影響ないわけであります。従って、現在の支持価格を下げるというふうなことが海外に宣伝されますと、生糸の需要はたちまち低下してしまう、これは当然であります。ですから、やはりこれは、あくまでも堅持して、あと国内でもって、国内政策強化して、外貨の手取りをよくするような方策を考える、こういうことに結論されるじゃないかと考えております。
  10. 森八三一

    ○森八三一君 今のお話しで、最後生糸の価格というものは問題でないのだ、私もそうだと思うのです。向うへ行って商社の諸君に会つて聞いたりなんかしましても、十九万円とか、二十三万円とかが問題じゃないのだ、むしろ、価格の安定の問題であるということが向うでも言われる。その安定をこわしているのは、一体どこにあるのか、どこをどうしたらいいのだということを、実際おやりになっておってお感じになりますか。そこが聞きたいのです。国としては、価格安定法というものを作って処しておる。ところが、実際の輸出行動に入ると、そいつが安定という線を画き出しておらぬ。そこに問題がある。それは一体どこでそうなっておるのか、それを防いでいくのには、どうやったらいいか、価格が問題でないのですから、生産が高い安いの問題でなくて、むしろ出ていくときの問題なんですね。そこをどうお考えになりますかという問題です。
  11. 水上達三

    公述人水上達三君) それは、商社にもいろいろありまして、思惑で売るところもあるし、いろいろあるわけです。これを規制する措置がないわけですね。そこで、先ほど来私の一般論として申し上げておる輸出秩序確立だとかというふうな問題、それからまた、最初に申し上げました国内物価の安定というふうなことも、そういう意味で実は申し上げておるわけでありますが、生糸の場合は、それではどうしたらいいかということなんですが、これはまあ相当デリケートな問題になりますけれども、やはりまず第一は、日本値段を動かさないということ、これははっきり相手に認識させることが第一、それから今度、それをくずさない方法ということになりますが、くずさない方法は、今の制度なり、今のあり方では、なかなか困難だと思います。たとえば、横浜の生糸市場というものがありまして、この生糸市場で上場されている数量というものは、きわめてわずかでありますが、とにかくそれが一つ基準になる。ところが、これが何かの拍子で安くなりますと、向うも安く売らなければならないということになってくる。ですからこれはやはり総合的な考えで、思い切った政策をとらなければできないのじゃないかと思います。現状ではそういう個人の商社の思惑でやるものを封ずるという道は、残念ながらないのです。これはまあニューヨークなどでは、向う側で寄り寄り日本人同士で相談はしているようでありますけれども、その相談は表向きはアメリカではできないわけでありますね。そういうこともありまして不徹底です。これはやはり私は生糸の問題は、これに携わる国民の数が相当の人数であるだけに、非常に大きな問題であると思いますので、繭の問題、生糸の問題、輸出の問題、この三つを一緒にして、利害が合わないのですけれども、これをやはり三つ一緒にして大きな国策を考える必要がある、こう考えます。
  12. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 三十三年度では、三十二年度輸出実績から一一%三引き上げることになっております。これが達成できるかできないか、それによって一億五千万ドルの黒字になるかならないか、まことに重要な問題だと思うのであります。先ほど予算の問題に関連しまして、なお十分ということはできないという御意見でございましたが、まあ国としましては、この一億五千万ドルの黒字を達成するために、あらゆる手を打たなければならないと思うのでありますが、昨年実績、三十二年度実績に比較いたしまして一一%三というものが果して可能な数字でありますかどうですかということと、もう一つは、アメリカ経済の現状というものは、相当深刻なように思いますけれどもアメリカ政府の手直しの政策によって、再び繁栄の道をたどることができるかどうか。この二つについてお答えいただきたいと思います。
  13. 水上達三

    公述人水上達三君) まず最初の輸出達成見込みでございますが、これはおっしゃる通りの金額で一一%三の増加になるわけでございますが、これを先ほど申し上げましたような輸出価格の低落の分を幾らに見るか、まあ問題はありますが、これをかりに一割昨年の輸出価格で下ると仮定いたしますと、二割三分数量ではふやさなければならんということになります。そうすると、二割三分という量の増加ということは、これはやはりなかなか大へんなことであります。そこで、この前の不況のときは、幸いにして海外市場が非常によかった。日本はそれに合うような政策をとったために、自然輸出が非常に比較的楽に伸びたということが言えると思うのでありますが、今度は海外経済事情というものが違うわけであります。そこで、私は国際収支の一億五千万ドル黒字というものは、必ず達成できると考えておりますが、三十一億五千万ドルの輸出達成ということにつきましては、これは相当の努力、相当の政策を加えなければ、なかなか困難じゃないかと、こうまあ考えております。  それから第二の、アメリカ経済問題でありますが、これはなかなかむずかしい問題でございまするけれども、私ども感じでは、大統領の次々と出すいろんな政策などから見まして、まあ、ああいう規模の大きな国柄でありますから、そう簡単に政策がきくということになってこないと思いますが、少くともいろんな経済学者などが言っているように、一年ぐらいたてば、一年ということは、大体来年の春ぐらいからということになるかと思いますが、そのころからは、おそくともよくなっていくのじゃないかと思うのでありますが、しかし、これは少し一番悲観した側の意見なんですが、ただ、来年度アメリカ予算などを見ますと、この新しい年度からは、やはり相当いろいろな公共事業費その他のものが、軍事関係もありますが、相当活発に出てくるんじゃないかということも予想されるわけであります。ですから、案外早く、この秋ぐらいから好転のきざしが見えるんじゃないかと、こう考えております。
  14. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今のアメリカの不況が単なる在庫調整というようなものであるというふうに見る人もありますし、相当、経済構造と申しますか、資本主義の行き詰りだなんと言う人もある。それからまあ軍需品の転換というようなことが、相当大きな要因であるというふうに考える人もおります。そうすると、来年の春ごろになりますと、景気は立ち直るというふうに見通していらっしゃる、こういうわけでございますか。
  15. 水上達三

    公述人水上達三君) 大体そういうことになるかと思うのです。
  16. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もっと深刻だということはないですか。
  17. 水上達三

    公述人水上達三君) まあアメリカは、やはり不況のときは、公共事業費とか軍事費とか、そういったような性格のもので、かなり調整をしておるわけであります。金利も御承知のようにこの間二分二厘五毛まで下げました。なおかつ準備率を下げるとか、これはこの間、わずか下げたのですが、約二割あるわけです。あれを下げていくとか、いろいろなことで、次々と考えておるんじゃないかという感じがするのであります。ですから、これはある程度信頼していいじゃないかと考えておりますが、ただおっしゃるように、アメリカのみならず、世界的に在庫調整時代というのが、今行われておるわけなんです。日本などは経済規模が小さいから、その影響も大きいということになっておると思います。
  18. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 水上さんありがとうございました。   —————————————
  19. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 次に、日本中小企業団体連盟専務理事永井保君にお願いいたします。永井保公述人
  20. 永井保

    公述人(永井保君) 三十三年度予算を見て参りますと、この中で中小企業対策予算といたしまして頭を出しております数字は、大体九十七億になっておるわけであります。しかしながら、この九十七億の中には、例の棚上げ資金の中から近く作られる予定になっておりますが、中小企業信用保険公庫に対する出資金が六十五億ございます。なお、この公庫に対しましては、一般会計予算からも二十億出資が予定せられておりまして、結局八十五億というものが、この信用保険公庫関係の経費と、こういうことでございます。そうしますと、九十七億の中から八十五億を差し引きますと十二億円、これが果皮年の中小企業振興対策予算の全部である、こういうことでございます。昨年、昭和三十二年度に対比いたしますと、それでも約三億円ばかりふやしていただいておるわけでございますが、この予算規模全体から見まして、中小企業振興対策予算というものが非常に少いというふうな感じを強くするものでございます。この十二億の予算の内訳でございますが、そのうち、半分以上でございますが、約七億は、中小企業振興資金助成法関係の設備近代化補助金、これが六億でございまして、他の一億は、協同組合の共同施設に対する補助と、こういうことでございます。協同組合の共同施設に対する補助額は昨年と同様でございますが、設備近代化資金の補助につきましては、三十二年度四億円に対しまして、三十三年度は二億円増加されております。その意味におきましては、約五割の増加ということになったわけでございますが、この設備近代化補助につきましては、私どもといたしましても、当初政府あるいは各政党に対しまして、少くとも三十億ぐらいの補助をお願いしたい、こういう要望をいたして参ったのでございますけれども、結果といたしましては六億に削られたと、こういうことでございます。  私どもがこの設備近代化補助を特に強調いたしまする理由は、これは、中小企業設備近代化は、大企業設備の増設と非常にその意味を異にいたしておるものでございまして、中小企業が今日大企業と競争し、あるいはまた、産業構造の近代化に当りまして、どうしてもみずからの経営を合理化していかなければなりませんし、また、技術向上もいたさなければならぬというふうな、そういった要請から、この設備に対する合理化あるいは設備の更新ということが強く業界の要望として上ってくるわけでございます。大体、今日まで、中小企業設備合理化、近代化のために、全国の銀行——市中銀行でございます、それから、中小企業専門の中小企業金融公庫であるとか、あるいは国民金融公庫、また、商工組合中央金庫、その他信用金庫、相互銀行等を通じまして、今日まで設備資金の貸出残は、今日と申しましても、昨年の暮れの統計でございますけれども、約二千四百億と、こういうことになっておるわけでございます。この二千四百億は、銀行から借りておる資金でございますが、その他に自己資金を加えておりますので、中小企業設備の近代化に投ぜられておりますところの資金は、相当な量に上るというわけでございます。そういう中におきまして、政府が、法律によりまして、一定期間無利子で設備近代化のために資金を貸してやると、こういう制度の設けられましたことは、非常にありがたいことでございまして、高い利子を払って設備合理化、近代化をやっております中小企業者にとりまして、大企業と競争して参りますためには、どうしても、そうした金利の面においても大企業に比して相当過重になっておりますし、また、その他の競争条件につきましても、いろいろ不利でございますので、この設備近代化の補助金を一つ画期的にふやしていただくということが、中小企業振興対策としてきわめて大事な政策ではなかろうかと、こういう観点から運動を続けて参ったのでございますが、大体三十二年度の実績に対しまして、五割程度の増加にとどまった、こういうことでございます。  それから、これが二億円ふえておるわけでございますが、なお、その他の一億円の中には、技術の指導のための経費といたしまして、三十三年度新たに六千万円の経費が計上せられておるわけでございます。これは、全国の試験研究所を活用いたしまして技術指導をやる、こういうことでございますが、これも、この程度予算規模では、全国百八十くらいの試験研究所の活用を中小企業庁において考えておったようでございますが、これも十カ所くらいしか、この資金によってその指導が行えない、こういうことでございます。大体この六千万円と、企業診断の指導費が二千三百万円程度ふやされた。それから、全国中央会の補助金が千五百万円ばかり来年度ふえる、これらを合せまして約一億でございます。結局この設備近代化の補助の二億とこれらの一億が、前年度に対比いたしましてふえた中味でございまして、その他は、いろいろ費目ごとにでこぼこがございますが、結局企業庁の要求額約二十九億と記憶いたしますが、大なたをふるわれて、大体金額的には前年度の線にとどまった。これが中小企業振興対策予算の概要でございますが、私どもは、昨日も通産省におきまして、全国地方の通産局長会議が開催せられまして、地方の中小企業の実態が明らかにせられたわけでございますが、容易ならぬ深刻な段階に来ておると察せられるのでございます。こういうふうな経済情勢のもとにおきまして、また、日本経済構造の二重性、これは、昨年の経済白書にも指摘しておる点でございますが、こういう前近代的な中小企業というものが、わが国の事業所の八割以上を占めておる。従業員四人未満の企業が八割以上を占めておるというふうな状況の中で、これらの零細企業に対する対策というものが、今日まで何ら実効性のある対策が行われておらないという点につきまして、私どもは、この際特に皆様方の御関心をいただきまして、この零細企業の対策に対する予算的な裏づけと申しますか、画期的な施策につきまして、今後十分御検討をお願いしたいと存ずるわけでございます。  この零細企業に対しましては、この前の臨時国会におきまして成立いたしました、中小企業団体の組織に関する法律とともに成立いたしました、中小企業等協同組合法の一部改正におきまして、この四月から、新しく事業協同小組合という制度が生まれることになったわけでございますが、この制度に対しまして、法律では、これらの組合員に対しては、税法上、金融上特別の措置をせなければならない、こういうふうに書いてございますけれども、来年度予算、またこれに関連を持ちますところの税制の改正等の面におきまして見ましても、そういった零細企業に対する対策というものがほとんどない、こういうことでございます。私どもは、今日までの中小企業対策は、申しますならば、概して中規模企業の対策でございまして、まあそれはそれといたしまして経済政策上意義のあることでございますけれども、今後は、この零細企業に対する税法上、金融上各般の施策が必要でなかろうかと、こういうふうに感じておるわけでございます。  それから、財政投融資関係におきましては、これは、昨年は、御承知のように、補正が組まれたものでございまして、当初予算よりも、それぞれこの中小企業金融機関に対する資金運用部の資金の投入という面におきましては、相当ふえて参っておるわけでございます。これは、昨年、昭和三十一年度におきましても若干ふやしていただき、この一両年来中小企業金融の疎通、打開のため相当御努力をいただきまして、年々ふえて参っておりますけれども、三十三年度におきましては、予算面におきましては、三十二年度の実績を下回っておるということでございます。この点につきましては、中小企業金融公庫、国民金融公庫の今後の、三十三年度の融資計画に関連いたしまして申し上げたいと存じますけれども、要するに、財政投融資関係におきましては、三十二年度の実績を下回っておる。中小企業振興対策予算については、三十二年度に対してわずかに三億円の増加にすぎない。こういうことで、中小企業重点政策の中身というものが、結局今度できる予定になっておりますところの中小企業信用保険事業団、こういうことになるのではないか、こういうふうに私どもは理解せざるを得ない。こういうわけでございます。  中小企業金融につきまして申し上げますと、中小企業公庫におきまして、三十三年度の貸付計画は、三十二年度に比しまして若干上回る計画になっております。財政投融資関係の投入が減っておるにもかかわらず、約四%程度ふえるような貸付計画になっておりますが、これは、回収金の見積りを相当大幅に見積っておる、私どもはこういうふうに見ておるわけでございます。同じようなことが国民公庫についてもいえると存ずるのでございますが、三十二年度に比して、三十三年度はやはり財政投融資関係では減っておるにかかわらず、やはり貸付計画は相当ふえておる。国民公庫におきましては、約七十四億ふえるような勘定になっておりますが、これはもう、本年の第四・四半期すでに二十五億くらいの資金が不足しているというふうな状況でございますから、それを新しい年度の当初に追い繰りますと、結局四十九億くらいの増加計画だといえるわけでございますが、ともかく両公庫ともに、回収金の見積りというものを相当に大幅に広げて、そうして計画面では、来年度は三十二年度に比して若干の増加というふうに見えているわけでございます。しかし、私ども、中小企業庁の調査によりまして、これらの公庫がどの程度に中小企業者の資金需要を充足しているかということを考えて参りますと、統計によりますと、これは、三十一年度、三十二年度を通じまして、おおむね五〇%の充足率である、こういう数字が出ているのでございますが、これは、窓口において受け付けられた、要するに金を貸してやろうということになった、それらの資金需要者の資金の需要額に対する割合でございまして、窓口で受付にまで至らないというふうな需要者の希望いたしております資金需要額との比率ということになりますと、この五〇%の充足率というものは、もっとうんと落ちてくるのではなかろうか、こういうふうに考えるわけでございます。そういう点につきましての数字はございませんけれども、私ども感じでは、もう二五%くらいになるのじゃないか、こういうふうに見ているわけでございます。そういたしますと、三十二年度は、補正等の関係で、相当運用部資金を投入せられたにかかわらず、なお五〇%以下の充足率である。こういうことでございますならば、この両公庫に対しまする財政投融資関係の資金の投入につきましても、三十二年度より減額せられるということは、借りる側の立場を代弁いたしまして、はなはだ残念だと、こういうふうに考えるわけでございます。どうか手をゆるめずに、この両公庫の資金源確保につきまして、国会等におかれましても、十分一つ御協力をお願いしたい、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、商工中金でございますが、商工中金は、三十二年度は、政府出資が十五億ございまして、その上に資金運用部によるところの債券の引き受けが七十億、八十五億の政府資金によりまして、年度間約百五十億の貸し出し純増が可能になったわけでございますが、三十三年度は、ただいままでのところ、政府資金によりますところの債券の引き受けは約三十億、こういうことになっておりますために、いろいろな資金のやりくりをいたしましても、貸し出し純増が三十三年度は百億程度にすることが精一ぱいである、こういう状況でございます。しかしながら、この商工中金につきましては、この四月から新しく施行になりますところの中小企業団体組織法あるいは中小企業等協同組合法の改正に基きまして、商工組合であるとか、あるいは火災保険共済組合であるとか、あるいは事業協同小組合であるとかいうふうな、新しい組合の制度も生まれまして、それが商工中金の取引対象になりますとともに、一面また、大蔵省関係の酒醸組合であるとか、酒販組合であるというようなものも商工中金の融資対象になってくる。また、環境衛生法によりますところの同業組合も同様この中金の取引対象になってくるというふうに、窓口といいますか、間口が非常に広がって参りました。またこの中小企業界の今日の景況からいたしまして、商工組合等によりますところの調整活動、生産調整その他の調整活動が活発になって参るでありましょうし、事業協同組合の、いわゆるその経済共同事業というようなものも相当ふえて参るんじゃなかろうか。こういうふうな点からいたしますと、商工組合の中央金庫の資金源は、昨年、三十二年度の実績より下回っては、非常に中小企業の組合金融に大きな支障を来たすのではなかろうか、こういうふうに感ぜられますので、これらの点につきましても、今後十分なる御配慮をお願いしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  なお、商工中金の資金源の問題に関連いたしまして、特に私ども問題にいたしたいと思いますことは、この商工中金の金利と中小公庫、国民公庫の両金融機関との間に、金利面におけるアンバランスがあるという点でございます。このことはくわしく説明の要はないかと思いますけれども、ともかくその資金コストにおいて違うものでございますから、商工中金の金利の方が高くならざるを得ないというのが現状でございますが、これは中小企業対策の基本理念と何か逆行しておるような感じもいたします。また今後組合金融というものがだんだん重要な役割を持ってくるというような事柄からいたしまして、商工中金の金利の引き下げのために資金運用部のこの資金法を改正していただきまして、運用部資金が直接に商工中金に流れるというふうな道を講じていただいて、そしてこの組合金融と個人金融との間に、金利の上でこうした逆の傾向が現われないように、この金利問題を解決する必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。この点につきましても格段の御配慮をお願いしたい、こういうふうに考えるわけであります。  なお税制の問題でございますが、三十三年度税制改正におきまして、いろいろ先ほど来話もございましたが、私どもでは、この今度の税制改正の中心は、法人税の軽減という点ではなかろうか。こういうふうに見ておりますが、この法人税の軽減につきまして、来年度から軽減税率の適用範囲を、従来の百万円から二百万円に拡張していただきました。と同時に、一律に二%の法人税率を引き下げていただく、こういうことになったわけでございますが、私ども感じといたしましては、これまで大蔵省において御発表になったこともございますが、この大法人と中小法人との実効税率というものが相当開いておる。大法人におきましては、大体二〇%ないし三〇%程度にとどまっておるものが、中小法人におきましては税法上の税率かっちり取られておる、こういう発表もございましたが、これは申すまでもなく、租税特別措置法あるいは合理化促進法その他の減税措置を、百パーセントうまく活用しておるというところと、そういう能力のないところとの開きが実効税率の上にこういう差別をもたらしたわけでございますが、ともかく中小法人の立場からいたしますと、いろいろな意味で金融上の面においてもございますが、税法上の面におきましても、事実として中小法人はよけい払っておる。従って一律の二%軽減というふうなことではどうも満足できない、こういう意見が非常に強いわけであります。従って三百万円くらいまで現在の軽減税率の適用範囲を広げていただいて、それをこえるものにつきましては、さらに段階的に税率をふやしていくというふうなことが適当ではなかろうか。こういう意見が中小企業界におきましては非常に強い、こういうわけであります。  それから地方税の関係でございますが、地方税におきまして最も中小企業界においてやかましい問題は、事業税の問題でございます。今回の改正に当りましても、それが見送られておるというような点からいたしまして、はなはだ遺憾に存ずるわけでございますが、事業税問題につきましても、今後十分国会等の御協力を得まして希望が達せられまするように御尽力をお願いしたい。こういうことでありますが、そのかわりに、事業税は見送られたが自転車荷車税が撤廃された、また木材引取税が少々軽減せられる、こういう措置を得たわけでございますが、自転車荷車税につきましては、なるほどこの税目はなくなったわけでございますが、しかしながら業界におきましては、決してこれが全部税金がなくなったから、これで楽になるかといいますと、若干不安を持っておる、こういうことでございます。その理由は、このたび国会に提出せられました地方税法の一部を改正する法律案によりますと、その第三百四十一条の第四号のただし書というのが削られておる、こういうことでございます。削られておるがために、また三百五十一条の特別な事情のある場合は、十万円未満の償却資産についても、固定資産税がかけられるのだ、こういうふうな条文と関連いたしまして、自転車荷車税はなくなったけれども、これが固定資産税に置き換えられるのじゃないか、こういう心配を持っておるわけでございます。この点につきましては、国会の審議の過程におきまして、十分事態を明らかにしていただきたい、こういうふうに考えるわけであります。なお、木材引取税につきましても、これは三十三年度は標準税率におきましては四%が二%、制限税率おいては五%が三%になった。こういうことでございますが、三十四年度からは、自治庁が市町村に指示しておる木材評価額というものを、二〇%くらい引き上げさせる、こういうことでございます。また国有林の払い下げにつきましても、従来比較的ゆるやかにやっておったやつを、林野庁に特別の徴税義務を負わしてがっちりやるんだ、従って実質的には市町村の財政に影響がないというふうなことになるのだ。こういうことが伝わっておるのでございまして、それらの点についても若干心配いたしておりますので、国会の審議におきましても、この点につきましても一つお願いしたい、こういうわけであります。  中小企業立場からいたしますところの、三十三年度予算案税制改正につきましての私の意見といたします。(拍手)
  21. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ありがとうございました。公述人に対しまして質疑のおありの方は御発言願います。
  22. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 中小企業金融公庫の貸付計画を見ますと、直接貸しで二十億ふえて、間接貸しで二億ふえるのですが、こういう配分は、中小業者といたしましてどんなふうにお考えになりますか。
  23. 永井保

    公述人(永井保君) 中小企業金融公庫の貸付は、従来代理貸しのやり方でやっておったのでありますが、この両三年来直接貸しを始めた、こういうわけであります。業者がこの直接貸しと代理貸しとの比率についてどういう希望を持っているかと、こういうお尋ねの趣旨でございますが、私どもそういう点につきまして調査いたしたこともございませんけれども、大体その代理貸しと申しますのは、組合員の関係でありますと商工中金でありますとか、あるいは組合の関係のないものにつきましては取引銀行がある、そういうとこで取引条件のいいものにつきましては、代理貸しがいいとこういうことでございましょうが、取引条件がよくないとか、あるいはまたなじみが薄いというふうな中小企業者にとりましては、気やすく借りられるならば直接貸しの方がいいのじゃないか、というふうな気持を持つであろうと思いますが、中小公庫においては、直接貸しにつきましては、大体どういう人でなければ貸さないというふうな、こまかい内輪で規定を作っておるようでございまして、私ども聞いておりますのは、輸出関連産業に対する設備資金であるとか、そういうようなものが重点的に考えられておる、業種によっては直接貸しを申し込んでも受け付けられないというふうに聞くわけでありますが、これはどちらがいいかということも、私ども何とも今の場合申し上げかねるのであります。
  24. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 これはなかなか一利一害がありまして、われわれとしましてもどちらがいいかということはよくわからぬのですが、直接貸しでいえば、今おっしゃいました輸出振興とか、あるいは設備の近代化という目的のために使用される。しかも大体調査が割合に簡単であって筋が通っているような業者に対しましては、出ると思うのですけれども一般の零細な中小企業者に対して直接貸しはあまりやれないのじゃないかとこう思います。ところが、またそういう人は市中銀行からの承認を得ることが非常に困難であるというようなことで、直接貸しがふえることはいいけれども、非常に中小のうちで中企業くらいが直接貸しの恩恵を受けて、一般零細の人はやはりそれすら受けられない。しかも市中銀行の代理貸しということも十分の保証も得られないという結果になりまして、直接貸しがふえることが直ちに、私は、零細業者に対する資金が潤沢になる、というふうにも考えられない。実際にどういうことかと思ってお伺いしているわけなのですが、やはり永井さんといたしましてもどちらがいいか、よくわからないという結論でございますか。
  25. 永井保

    公述人(永井保君) 今の零細企業に対する設備資金なり、運転資金なりの貸し出しの機会を、できるだけ作っていくという問題でございますが、これは先ほども申し上げました通り、この四月から新しく事業協同組合というふうな制度ができますならば、その組合の制度を通じて商工組合中央金庫に融資の一応連絡はつく。ただ、これは商工中金ばかりじゃございませんが、大体政府関係の金融機関もおそらく同じ傾向であろうと思いますが、零細の金融につきましては、その調査が非常に件数として多くて手間がかかる、その割に経費がかかって、採算ベースに乗らぬというようなことで、なかなか国民公庫を除いてはこまかい金は借りにくい。従いまして、今後は国民公庫のやはり資金源を画期的に増加せられますると同時に、この事務能力も一つ十分さばき得るような程度強化せられたい。それから一方においては、零細企業の組合を通じて、商工中金から組合金融の形でどんどん貸し出しをしていくというようなことで進めていくことがいいのじゃなかろうか、こういうように私ども考えております。
  26. 坂本昭

    ○坂本昭君 中小企業に対する政府施策並びに来年度予算がきわめて劣悪であり、特に小企業に対してきわめて残酷であるという御説明、非常によくわかっております。  そこで、現実の問題として、最近特に中小企業の皆さん方が企業を守り、と同時に生活を守らなくちゃいかぬというので、社会保障に対する要求が非常に強く出てきておられるように感じておるのです。そのことについて三つほどお尋ねいたしたいのですが、もしおわかりになっているならば、現在の中小企業であらゆる社会保障の、たとえば健康保険国民健康保険に入っていない零細な自家営業所の数と、その家族の数、大まかなことでけっこうです、どれくらいあなた方の中小企業団体で入っていない数があるかということと、それからどういう社会保障を皆さん方が求めておられるか。それから三番目に、求めておるけれども、どうもこういう点で困っておる、隘路だ、その点を御説明願いたい。
  27. 永井保

    公述人(永井保君) 実はそういう点につきまして特別に調べたこともございませんのですが、いろいろな会合でこの社会保障に関するいろいろな主張がございます。まあそういうことを通じて私ども承知しておる、こういうわけでございます。  大体零細企業の数は、四人以下の企業の数としましては約二百五十万から二百六十万あるのじゃなかろうか。それはまだ正確な数字でございませんので、よく調査いたしまして後ほどまた御返事いたしますけれども、大体の数字は二百五、六十万と記憶いたしております。ここに働く方々の数でございますが、これも正確には覚えておりませんけれども、まあこの四人以下の中には自分一人でやっておるのも相当あるわけでございますから、小売業者等にそういうものが多いのでございますが、この四人以下の従業員を擁する企業において働いております労働者の数は、たしか五百万ぐらいのように記憶しますが、これも私正確に覚えておりませんので、また後ほど調べまして返事いたすことにいたします。それでそれらの業者が社会保障に対してどういう希望を持っておるかということでございますが、業者の方々で、やはり健康保険等の五人以上の規模の企業に与えられておるような特権を、自分らの方でも持ちたいという希望は、十分持っておるのでございますが、ただ、そういった零細企業者が、従業員の掛金の一部を負担するというところに、若干まだ踏み切れない点があるのじゃないいか。これは最近、最低賃金の業者間協定がだいぶ進んでおりまして、四人以下の零細企業も中に入っておるというような状況からしましても、だんだん自覚は高まっておりまして、そういう労働者の健康保険の掛金の半分を持つというふうなことは困るというようなことを、従来は言っておりましたが、そういうことを言う人の数も、だいぶ減ってきておるというふうに、私どもも見ておりますので、だんだんと社会保障につきましても、そうした業者の負担を顧みないで、やはり零細企業に働く従業員のために、一緒に業者も犠牲を払うという気持になりつつある、こういうふうに思っておるわけであります。
  28. 坂本昭

    ○坂本昭君 そこで、零細企業者とすれば、そこで働く人の保険料を負担するのはたえられないと言っておる。こういう点は大きな問題だろうと思います。そのことについて、何か税制上の特別な取扱いを求める声というものはありますか。
  29. 永井保

    公述人(永井保君) それはあるのでございます。直接に健康保険の掛金のためにというわけばかりじゃございませんけれども、そういうことも今後積極的にやっていく。また、最低賃金協定ですつね、業者間協定のあれに参加しておるために、今後の賃金の確保といいますか、今後業界が不況になっても、協定賃金を守っていくための準備対策として、積立金をする、そういうものに今日課税せられるというのでは困るから、それらを含めて税制上の特別な恩典を与えられたい、こういう希望は非常に強いわけでございます。
  30. 森八三一

    ○森八三一君 時間がありませんから、一言だけお伺いをいたしますが、中小企業の振興のためには、組織化していくことは大切だ。これは政府もそうやっておりますし、業界でも考えておるところです。その場合に、組織を発展さしていくために、また中小企業の進展のために、一番重要なのは金融の問題だと思います。そして今の中小企業に対する金融体系が、組合金融の体系と、中小企業金融公庫を通ずるとか、個人を対象にするのとある。それが一つ私は問題だと思うわけです。そういう点について、組織化するということと、金融については、ばらばらになっておる、これに対して、どういうふうにお考えになるか、この一点だけ御質問をいたします。
  31. 永井保

    公述人(永井保君) 私ども端的に申しますと、中小企業に対する金融機関の窓口が多ければ多いほどいい。これは、それだけ資金量が豊かに回ってくる。こういう意味で、窓口を、しいて一つにする、整理するというふうなことは、私どもとしましては、あまり希望しておらぬわけであります。しかしながら、先ほどもちょっと申し上げましたが、中小企業基本的な対策の一つとしまして、組織化という問題が非常に重要だ。これはどなたもおっしゃるのでございますが、しかしながら、そういう組織化を通じて金融をやろうという組合金融に対して、金利の上で、個人貸しの公庫の金利の方が安いというふうなことは、これは非常に矛盾しておるじゃないか。こういう意味から、どうしても組合金融の金利を、個人金融のものよりも若干有利になるというふうな施策が並行しませんと、組合金融の方が大事だというようなことを言ってみても、事実は組合を離れて、個人で公庫あたりから借りた方が金利が安い、こういうことになりますと、せっかくの組織化が阻害せられる、こういうふうに私ども思っておるわけです。従って、金融機関の窓口は幾つあってもけっこうですけれども、組合の系統金融機関に対する金利の面、資金量の面においては、それらの他の金融機関よりも重点的に考えてもらう、こういうことが必要ではないか、こういう意見でございます。
  32. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん私、しろうとですけれども政府の今回の予算基本的な経済方針としては、輸出を促進して内需を極度に抑制する方策をとっている。この内需抑制の方策と、中小企業の振興対策というものは、非常に矛盾してくるのではないかという考え方を、私持つのですが、内需抑制によって影響される中小企業の振興というもの、それがどんなふうになってくるかということが一つ、もう一つは、今御説明がありました運転資金の貸付の窓口、これは充足率が大体二五%ぐらいにしかすぎない。そうすると、小口の中小企業の貸付というものは、全然放置されているわけであります。現実にその放置されている方々は、どういう方法で資金のやりくりをしているのか、そういう実態についてお話し願いたい。
  33. 永井保

    公述人(永井保君) 最初の、消費の抑制が国内の中小企業者の事業活動に相当影響を及ぼすのじゃないか、こういうお話でございます。事実その通りでございます。消費を積極的に抑制いたしますまでもなく、景況が悪くなる、あるいは海外貿易の条件も悪くなる、こういう情勢から、製造の段階におきまして調整活動をやる、つまり生産制限を業者が調整組合等を通じてやります。そういう場合におきましても、これは一面においてこういう物資を取り扱う販売業者の取扱量が減ってくる、こういうことでありますから、やはり影響がある、こういうわけでございます。しかし、これはなかなか総合的な経済政策の問題の一環として考えられる問題であります。中小企業だけの立場で、これに対して利害損得を主張するということもいかがかと思うわけであります。しかし、明らかに生産調整によりまして、販売業者の取扱数が減ってくる。従って事業量が減ってくる、こういうことは事実でございます。しかしまた一面、販売の業者でございますが、これも昭和二十六年から九年の統計によりますと、年々四万七千ずつぐらいふえているわけでございます。この面に対して、要するに物品販売業者の年々歳々の増加ということについて、少しもこれを調整しようというようなことができない。法律でもございませんし、また自由経済の世の中でございますから、ともかく零細な小売商業者というものがどんどんふえておる。まあ卸を兼ねる業者もふえておるわけでございますが、そういう業者がふえていきまするならば、生産の調整がなくとも、やはり事業の分量というものは減ってくる。総体的にこの零細過多というふうな現象が進行していく、こういうわけでございます。従って、まあこれはもっと大きな視野で対策を考えていくのでなければ、中小企業者の立場でこれを対策するということは、非常に困難ではなかろうかと、こういうふうに思うわけであります。
  34. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 永井君ありがとうございました。  それでは、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十二分休憩    —————・—————    午後一時十七分開会
  35. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから公聴会を再開いたします。  開会に当りまして公述人の方に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多忙中をわざわざ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。公聴会の議題は昭和三十三年度予算でございます。公述人は大体三十分程度で御意見をお述べ願いたいと存じます。  では、国民経済研究協会理事藤井米三君からお願いいたします。藤井米三君。
  36. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 私が御依頼を受けましたのは、地方財政の見地から昭和三十三年度予算について意見を述べよということでございました。そういたしますと、どうしても自治庁の作っている地方財政計画ということがまず第一に問題となるのでありますが、自治庁の地方財政計画は近年だんだん地方財政の実数と実額が接近してきておりますけれども、まだまだ私は接近の度合いが足りないと思います。もう少し財政計画を実情に合わせたものに作り直す必要がある。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 これは計画と申しましても、地方団体をこれによって拘束し得る部分は全部ではないのでございますから、どっちかというと地方財政の見通しといったほうが性質のいいものなんであります。そういうものであればもう少し実情に近づけた方がいい、そういうふうに私は思います。  これを若干具体的な数字で申し上げますと、昭和三十一年度の決算でこれを純計いたしまして、地方財政の歳出規模は一兆二千二百六十六億なんで、前年度より八百九十七億ふえております。ところが自治庁で作られている昭和三十三年度の地方財政計画は一兆二千三百七十二億でわずか百億しかふえていないというような実情でございます。これをおもなるものにつきまして、人件費について見ますると、三十一年度の決算で四千七百七十八億、ところが自治庁の計画では四千七百三十三億と、かえって三十三年度の方が減っているというふうなことになっております。毎年人件費が二百億くらいは自然増が地方団体であるわけですから、もっとやはり全体として六百億かあるいは一千億くらいは、三十三年度の計画は大きくなくてはいけないかと思うのでありす。こういう点でやはりもう少し皆さんの方で自治庁の方へ請求されて、実情に近づけるように指導して計画を立てるようになさったらどうかと、こういうふうに思うのであります。  それから第二に、日本の財政は国からたくさんのものを地方へ回しまして、そうして地方で出すようになっておる。来年度予算が一兆三千億、国の予算はそうでありますけれども、その中の五千億ばかりは地方団体に回っていって、国が直接支出するのは、出すのは八千億だと、こういうことであります。ですから地方団体と国とが非常に結びつきが多くて、そうして直接出す率からいえば、地方団体の方が多いので、ですから国民所得に対する財政の規模とか、あるいはいろいろの人件費だとか、あるいは防衛費とか、社会保障費だとかというような大きな費目について、妥当であるかどうかということを大局的に判断するということになりますると、どうしても地方財政と中央の財政とを一緒にして、それの純計をとって大きく仕分けて見るということが必要なのではないかと思うのであります。そういたしますると、政府提出しておる現在の資料というものが、その点において不足しておると思う。国の財政を根本的に、統一的に判断をするについて、資料が不足しておるのではなかろうか、こういうふうに思います。  そこで私は今一枚刷りのガリ版で刷ったものを皆さんのお手元にちょっと配った。これはほかのことのために特に私が作ったのを利用さしてもらっておるわけですが、その三表です、「国と地方を通ずる経費の推定」という推定を私がやってみたのであります。こういたしますると、国と地方との全体の財政規模を推定合計いたしますると、二兆一千億という数字に上っておる。国民所得八兆五千億に比較さるべきものは決して一兆三千億の国家予算ではなくて、地方予算と総合いたしましたこの二兆一千億だと思うのであります。これを人件費と、社会保障費と、恩給費と、公債費と、公共事業費と、それから防衛費ですか、それから物件費とその他と、こういうふうに大まかに分けたのです。こういう大まかな分け方が妥当であるかどうかというのは、これは研究問題でありまするけれども、ただやはり財政問題を統一的に大局的に判断するのには、大きな費目を、十くらいですな、十以下くらいの大きな費目に分けて、この両方の純計をとって一つやってみることが必要ではなかろうかと思うのです。これは私がやったので、もっと正確にやれば……、民間人としてはなかなかできにくいこともありますので、もっと政府の方で正確な数字を立てて提出されることが、私はいいのではないであろうかと、そういうふうにかねがねこれは、私はいつも地方財政の問題をやるたびにこの点を痛感いたしまして、何べんも私自身やっているのでありますけれども最後になって若干費目のわからないところがいつも出てきてしまうというのが、今までの私の経験でありました。  それからもう一つ私は資料が不足していると思うのであります。といいますのは、国の財政の中で、公共事業費ですね、あるいは住宅費、あるいは文教施設費というような、そういう設備投資に回る部分と、一般経費とは、人件費や物件費とは性質が違うと思うのです。分けてみれば片方は消費的な経費、経常勘定と申し、片方は資本的な事業勘定ということが言えると思うのであります。それと国鉄とか専売とかというような、政府の直接の企業会計、農業金融公庫とか、開発銀行、輸出入銀行とかというものの政府関係機関の金融機関を通じて、民間に供給されるところの財政融資ですな。公共事業と政府の直接の企業の財政融資ですが、この三つが合さって、政府企業勘定ということが言えると思います。その規模がいろいろの企業会計、国鉄なんかの自己資本分、あるいは開銀や輸出入銀行の自己資本分が非常に多くなるわけです。一般消費的な経常的な経費というものは、この意味で既定的な、そう年々変ってこないような経費でありますけれども、片方の投資勘定といいますのは、よほど政策判断のきくところの経費なんでありますから、国の大きな経済動向というのはそちらできまる。そうして日本の官民合せての、政府部門と民間部門と合せての総投資の中で、政府部門の地位というものが、割合というものが大体四割から年によっては五割を占めているというような状態なんでありますから、国会の論議もどちらかというと、今までは一般会計の方に集中されすぎたと思うのでありますが、実際から言えばこういう資本勘定の方に、地方財政のこともよくやらなくちゃいかんし、資本勘定の方もよくやってもらわなければいかんというふうに私は思う。その意味でも政府の資料が不足しているのじゃなかろうかと、こういうふうにこれもかねがね思っております。  それから地方財政の問題につきましても、これも長い間の問題でありますけれども、貧乏な団体と富裕な団体、農業圏と大都市圏との財源調整の問題であります。これは平衡交付金以来相当日本ではしめられましたけれども、まだまだ私は不十分だと思うのであります。大体財政需要というものは、人口の割合に比例するものでありますけれども、ところが地方税の収入の方では非常にアンバランスが、富の処分がアンバランスだ、資本主義の発達というものが地域的に非常に不十分だ。たとえば東京都の税収入全部をとりますと、これは東北六県と、関東の東京と神奈川をのけたところの五県と、これに北陸四県、これに長野県と山梨県と、年によっては岐阜県まで加えたくらいの税収入があるわけであります。人口は、今私が申し上げました地域の人口というものは、東京都の三倍以上でありますけれども、税収入はそういうような状態だということになっております。ですからこの財源調整の問題、標準的な行政ということを標準にして、そうしてある団体はどのくらい財源が余るか、ある団体はどのくらい財源が不足かということが調整されてしかるべきだ。地方財政交付金の制度なんかもいい制度でありますけれども、まだ財源調整のし方が現状では不十分だ、ことにいわゆる神武景気以来、何が一番税収入でアンバランスかといえば、大きな法人税であります。たとえば青森県や岩手県の法人税というものは、県税として三億円くらいしかとれない。ところが東京都は五十倍ぐらい、人口は東京都が六倍ぐらいです。人口は六倍だけれども法人税というものは五十倍もとれる、年によっては六十倍もとれる、こういうような状態であります。なかなか財源調整というものは、制度的にうまくやりましても、なかなか調整が不十分だということになっておる、ですから、東京都は三十一年度の決算でも、多くの地方団体が赤字を出しておるのに、三十億近く黒字を出しておる。そうしてなおかつ国家公務員よりは東京都に勤めている人たちのレベルというものは、ベースというものは二割ぐらい高いのだということになっております。それから私が数年前に計算したところによりますると、東京都の予算面に表われたところの旅費ですね、それから費用弁償、食糧費というふうなものも、大体交際費と同じような性質のものです。そういうものを合せますと、それが予算の表面に出ておるだけを見ましても、岩手県と青森県の県税を合せたくらい、これくらいなものになっているということになっております。それから今度は、税の徴収も東京都は非常にゆるやかで、たとえば数年前でしたか、何十億に上るというものを、なかなか滞納して納めないというので、かなり簡単に棒引きしたこともありました。そういうような事情で、税の徴収もゆるやかで、公務員のべースも高い、その他いろいろ問題になるような費目もいろいろあるというようなことで、なおかつそれだけ年度の財源が余ってくる、こういうようなことになっているわけであります。その点しからばこれをどういうふうに調整するかと申しますると、これはたとえば数年前に義務教育費が半額国庫負担になりまして、その前は東京都なんかにはいかなかったのでありますから、東京都や大阪、神奈川県というようなところには義務教育費の国庫負担をやめるということもいいのです。あるいは税を、さっき言いましたように法人税が一番アンバランスが激しいのですから、法人税の税率を国の方へ重くして、地方の方は軽くするということは、これも一つ方法であります。あるいは、たとえば東京都では江戸川だとか足立だとか、葛飾というような貧乏な地方区には東京都の方から区に調整金を流して、そのかわりに目黒とか世田谷とかあるいは中野とか杉並だとかというような税収入の多いところから区税を取り、上ったものを取り上げてそして財政調整をやる。だから東京とか大阪で取ったところの地方税をまた国の方に出してもらって、そして財源を豊かにして、もっと貧乏なところへ出すというふうなことも一つ方法であります。で、考えればいろいろ方法があります。ところがこういうことに対して東京都の人たちが、東京都や大都市圏には特殊な財政需要が要るのだ、民生的な失業対策費だとか、生活保護費だとか、あるいは糞尿の処理費だとかというような特殊な財政需要があるのだということを言われるのですけれども、しかしそれは、民生関係は大都市に余計要りますけれども、今度は、東京都には災害復旧費というものは要らないのです。それから河川の費用も農業の費用も、そういうふうなものは東京都にはあまり地域の狭いところで、大きな川もないところですから要らないのです。ですから公共事業関係というものはいなかの方に、面積が広くて人口の少いところへ、北海道みたいなところでたくさん要りますけれども、人口の密集したところは保健衛生費だとか、民生費だとかというものが余計要るのです。そこらを相殺すれば財政需要というものは、人口割りになる。東京都の人たちは、もう一つ、つまり年々三十万人ぐらい人口が増加するから、それに伴って学校も増設しなくちゃならぬし、病院も必要だという、設備投資が必要だということを言う、それは確かにそうなんだ。そうでありますけれども、それならばいなかの方はどうかといいますと、それは病院にしろ、学校にしろ、道路にしろ、神武天皇以来非常にレベルが低いのでありまして、そのレベルを縮めるためにどれだけの努力をまたしなくちゃならぬかということ、この間も、きのうでありますか、自分で自動車をかってヨーロッパ大陸、アフリカ大陸、それからアジアと、アメリカと三回横断された人の話を聞きましたのですけれども、民主主義が発達して政治のよくいっているところほどいなかの道路はいいのだ、中小企業人たちや農家の人たちが便益を受けるような道路がいいのだ、共同の施設がいいのだということをいわれる。いなかの道路を見ることによってその国の政治がうまくいっているかどうかということがよくわかるのだということを申されたのです。まことにその通りだと思う。そいう点から申しますると、日本の終戦後のやり方というのは、いわゆる重点産業主義でありまして、鉄とか石炭だとか、電力だとか、あるいは肥料だとか海運だとか、いわゆる重点産業主義でありまし  て、ほかのことはよほどおろそかにやられてきたのだ。ソ連や中共が重工業主義をとっておるけれども、ある程度それに似ているようなやり方で、その他のものは相当おろそかにされてきた。けれども国力がこのぐらいまで回復して、若干余裕ができたのでありまするから、もっとこういう点でお互いが考え直さなければならぬのではないかと思うのです。もう一つこういうことを申しますと、東京都で集まった税金を国に取り上げるということになると、これは自治権の侵害じゃないかということを東京都の人たちは申されるのです。ですけれども、皆さん、東京都というものはほんとうに自治体でありますか、人間の膨大なる集合体ではありましょうけれども、しかし自治体である以上は、そこに住んでいる人たちは共同でこの自治体をよくしていこうという意識がなければ自治体たる資格はないのです。ところが東京都に住んでいるお互いはそういう意識を持ち合せるにはあまりに膨大になり過ぎているのです。だから東京都に住んでいる人たちは自治体意識というものはきわめて薄い。そのかわり国家意識というものはきわめて強いと思う。これは毎年々々の選挙の結果にはよく現われている。私は東京都の人たちの判断が一番正しいと思う。ですから東京都で集まった税金が国家目的によく使われるということを東京都の選挙民は私は考えるだろうと思う。決して東京都の理事者や、あるいは一部の人の都合のいいようになるということを考えてはいないのではないか。財源調整の点については東京都に住んでいる人たちは私は賛成だろうと思っておるわけでありますが、現に東京都自身が、さっき申しましたように特別区の中野区とか、あるいは世田谷区の区長さんなんかに言わせると、東京都というものがだんだん区でやっている仕事を取り上げて、区税なんかを取り上げて、そうして多くの自治権というものを侵害してきているのだということを切実に言われるわけなのであります。東京都自体が現にそういうことをやっている。今度は東京都から国の方で何かすると、それは自治権の侵害だというのは大へんふに落ちぬ議論ではないだろうかと私は考えるわけであります。  それから第四番目に申し上げたいことは、これは最後でありますけれども今各地方団体で、たしか木下大分県知事が最初におやりになったのが先べんだと思うのですけれども、地方団体で敬老年金というのが、どちらかというと今はやりものになっていて、どこでもやられている。だんだん盛んになりつつあるということなので、非常に歓迎されていて、どこでも大へん喜ばれているということ、東京都でもそれを考えられているということで、私も大へんうれしく思っているわけであります。それだけにやはり国家として早く今問題になっているところの国民年金制度を作らなければいけないという機運に私はきているので、政府昭和三十四年度からやるということを声明されているので、これをぜひ申しわけ的でなく、実質的にやっていただきたいということを私は一つ希望したいと思うのであります。そうしてその内容といたしましては、どうも年金というのは、これはイギリスから始まりましたものですから、イギリスでは国民の九割が被用者、月給取りでありますから、月給取りは掛金をすることが楽でしやすいのです。だからどうもこういうことを考える人たちが掛金主義になりやすいところがあるので、これは日本では大へん工合が悪いのではないだろうか。日本ではまだまだ中小企業者や農家の数が多いので、ああいう人たちは掛金をすることがなかなかむずかしい。金はないというわけではないけれども、掛金をすることがむずかしいということがありますので、ですから掛金した部分もありまするけれども、一定の基本額については掛金しないで、無醵出制で、一定の基本額だけは国民のすべてに上げるという、たとえば六十五才以上の御老人の方に全部上げるという制度が日本の事情に私はふさわしいと思うのであります。つまり無掛金主義、それになお掛金したい人は、醵出したい人は醵出さして老後にもっともらえるように用意すればいいのでありまして、とにかく一定の基本額については無掛金主義ということがやはりいいんじゃないか。その財源をどうするかといいますと、たとえば社会党ではそれを資産割り、所得割り、平等割りと、今の村の国民健康保険の制度と同じようなことを考えておりますけれども、資産割り、所得割りという算定がまた非常にむずかしいと思う公平に査定するということが狭い一つの市町村でもなかなかむずかしいのでありまするから、これを広く全国に及ぼして公平に査定をするということが、これはなかなか私はむずかしいと思う。特別な社会保障税を取れということもありまするけれども、しかしながらあとで申しまするように、今では所得税を納めていない人が国民の三分の二以上にもうなっているわけでありますから、そのすべての人から所得を査定して社会保障税をとるということも、査定の問題で非常にむずかしいのですから、そういうふうに掛金しないでも、また特別な社会保障税をしないでも、その一定の基本額だけは国民のすべての人に、つまり今の税金全体を原資としてやる。ちょうど軍人恩給のそれと同じように原資の——元本はそれと同じようになりますが、それは私は日本の事情にふさわしい。お互いがお酒を飲みましても、たばこをのみましても、私どもやはり養老年金税を納めているのだという考え方が私は手続からいっても、事務からいっても一番簡単だし、また日本の実情に一番よく合っていると思うのであります。それから今度は受ける人、これを所得によって職業の区別はむろんしてはいけないし、男女の区別もむろんあってはいけませんけれども、所得の区別をするかどうかということです。これはこの方面で一番先進国であるスエーデンでもこれを始めるときに問題でありましたけれども、結局やはり基本額については、そういう差別をしないということになっているようであります。で、私はやはり日本でも差別をしないことがいいんじゃないか。社会党の案を見ますると、現在もう掛金する余裕のない六十五才以上の人に対しては十八万円までは、一家の総所得が十八万円までが二千円だ、十八万円をこえて三十六万円までは一千円だ、次に三十六万円以上は上げないということになっておりますけれども、そうしますと、十八万円以下と、ちょっと十八万円をこえたところでえらい相違になる。また三十六万円をちょっとこえたところとこえないところではえらい相違だということになります。だれが正確にこの人の総所得は十八万円であり、この人は三十五万円だということを査定することができるか。これは今の所得税徴収の実情から見てとてもこんなことはできっこない。ですから、やはり一定の基本額だけは貧乏な人にも金を持っている人にも差し上げるということが私はいいんじゃないか。そして金額としてはだんだんこの方面の皆さんの御意見で今そういうふうになりつつあるようでありますけれども、この際月額二千五百円、年間三万円程度のものがいいんじゃないか。そこにも一枚刷りで差し上げたものの中に、「将来人口の推定」というところがありますけれども、大体今は五百万人ですから、六十五才以上の方は。千五百億の財源があればこれは可能なのであります。千五百億の財源といえば相当の大きな財源でありまするけれども、すでに昭和三十二年度は一千億減税して一千億積極施策をやって、それにもかかわらず、なおかつ政府の歳入見積りよりは一千億くらいよけい取れておるということを大蔵省は言っておられるわけです。それから三十三年度におきましても、やはり大蔵省の歳入見積りというのはいつも四百億か五百億は内輪に見積られておるのでありますから、やはり少くとも五百億くらいは、景気はよくありませんけれども私は何ができるだろう。これからだんだん日本国民所得が三十三年度は八兆五千億で、それから毎年七%くらいは伸びていくだろうということがまあ一般の推定になっておると思う。年間やはり六千億くらいのものが所得が伸びていきますと、国税はそれの一四%ですから、大体八百億くらいのものが伸びていく。国税が伸びていくということになりますから、で私はその半分を、だから八百億毎年国税が伸びればそのうちの半分ですな。あるいは七百億でもいい、その三百五十億を、それを四年分集めればこの制度は私はできるかと思う。そこちょっと一枚刷りで第二表というところをごらんいただきたいと思うのでありますが、政府経費をそこで二大分類した。これもきわめて大胆な分類でありますけれども、大まかな判断をするにはこういう分類がいいかと思う。つまり国民所得が上り、生活水準が上るにつれまして、財政支出の方も増加していくところのいわゆる自然増的な経費、これは公務員の人件費であります。あるいは生活保護費の単価を上げるというふうなことで、そこにまあ道路税を入れておきましたけれども、1のイ、ロ、ハ、ニの「雑件の五割」と書きまして、そのほかと分類してあるのは、「主として運営費」というのはこれは間違いでありまして、これは消して「主として人件費」としていただきたいのであります。そういうふうなものが大体自然増的な経費が六千四百七十四億としたのでありまするけれども、大体は国の予算の半分はそういうもので、あとは政策の判断のきく、あるいはこれからあまりふえない農業保険費だとか、国債のうちでも国債費というのはそれほどふえないでしょう。今国債を募集していないから。賠償費も三十三年度あたりで平年度化するとも思うのであります。そういうようなことでふえない経費等は政策判断でどうにもなる経費というものが半分あるわけであります。ですからつまり毎年々々八百億か七百億か、あるいは場合によれば千億くらいな国民の国税がふえるわけでありますから、その半分とすれば四カ年分ですね、これをためれば、養老年金制度というものが実現できるのであります。そして四カ年分ためて養老年金をやれば、日本は社会保障制度が大体備った国だということで、世界でも恥しくない国に大体なれるかと私は思うのであります。この方面が一番おくれているわけであります。そうしてその次にまた四年分くらいのものをためまして、今度は住宅をよくするとか、あるいは道路をなお一段よくするとかいうふうなことにやっていけば、私は国の経費というものが最も重点的、集中的に使われて、日本のお互いの生活あるいは日本の前途というものに対して、何年後には何がどうなるという希望が持てますから、日本の前途に希望が持てるんじゃないか。そうして人々の気持というものがすっかり落ちついてくるのじゃないかということ。それでこういう大方針がきまってないから、しかし税の方では相当な余裕があるからということで、いろいろな利益団体、圧力団体というものがそれをめがけていきまして、おれのところにも少し、おれのところにも少しということになりまして、ことしの遺族会の奮闘を皆さんがごらんになって、来年はみんな国民のすべてが一つおれもやってやろう、おれもやってやろうと、それぞれ計画を私は立てておるかと思う。こういうことになってはどうも困るわけです。ですからやはりここで重点的に大方針として四年間くらいで一つ国民年金を実現するのだ。その次には住宅をよくするのだとか、その次には道路をまたよくするのだとか、そういう大方針一つ国会の大方針としてきめていただきたいと私は思うのであります。  ここで問題になりまするのは減税であります。それほどになるのならば一つ減税したらどうだという意見であります。税は昭和二十四年ごろまでは非常に重かったんで、国民のほとんどすべてが所得税を負担しておりましたけれども、まあ基礎控除が上り扶養控除が上りまして、三十三年度はああいうような何がありまして、今では勤労者のうちの総数の半分しか負担してない。農家は八人か十一人に一人しか所得税を負担してない。中小企業者も六人に一人しか負担してないということになっておるわけで、つまり国民の三分の二以上は所得税を負担してない。間接税の酒、たばこはこれは多くが飲みますけれども、大衆課税と言われておるけれども、しかしこのごろはだんだん御婦人の方もビールを飲んだり、たばこを吸ったりいたしますけれども、まだやっぱり日本の婦人の大部分は酒もたばこも飲まない。それから男の人も三人に一人か四人に一人は酒もたばこも飲まない。そうすると酒たばこを飲む人も、これも少数派だと私は思う。そうすると減税は直接税でも間接税でも、結局減税論というものは国民の正確な投票をやったら少数派になる。ただしかし、減税派は世論、輿論としては有力です。なぜ世論、輿論としては有力かというと、世論、輿論と申しましても、世論に声を上すことのできる者は国民の限られたる部分です。国民の大多数というものは、まだまだ日本では声なき民なんであります。それで新声社の論説委員でも、あるいは国会議員の皆さんでも、個人経済から言えば月に二千円くらいもらうよりは減税してもらった方が私はいいんじゃないか。だから皆さんでも個人経済から言えば減税論者かとも思うんでありますけれども、広く国民全般を見渡しますれば、もはや所得税を納めてないところの国民の三分の二以上の人の気持から言えば、減税はこの程度にやめてもらって、そうしてそれだけの余裕があるんならば、それを有意義に使ってもらいたいということの方に必ず私はなるんじゃないだろうかと、こういうふうに思います。ですから一つこの点をよく国会の皆さんでお考えいただきたいというふうに思っております。どうか少し長くなりましたが……。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  37. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ありがとうございました。公述人公述に対しまして、御質疑のある方は御発言願います。
  38. 森八三一

    ○森八三一君 一番最初の都道府県別に財政の需要額というものと徴収される税とが非常にアンバランスになっておる、こいつを調整することが必要でないかというお話として、一、一の例をおあげになりましたが、具体的にこれをやる場合に一体どう考えたらいいか。
  39. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) ですからさっき申し上げたように税制を改革することもできる。たとえば法人税の税率を国の方で重くしまして、地方税は軽くするわけですね。国の法人税率をもっと重くして地方の法人税率をもっと軽くする、あるいは義務教育費の国庫負担の半額をどの県にも出しておりますが、それは富裕県には出さない、これも一つ方法なんです。さっき申しましたように、地方税でとりましたものを今度は国家の方に余ったところから、余裕のあるところから回してもらって、それから今のところに今の中から回すということもこれも一つ方法です。
  40. 森八三一

    ○森八三一君 その場合に税の徴収費というものを見ますると、国税の方は国税局、税務署というような機構が完備しておると思いまするけれども、そうしてまた比較的確実な財源というものを持っておる関係もありまするけれども、徴税費というものが非常に少いのですね。それから市町村民税になるというと非常に徴税費が余計かかっておる、これを一本でとってしまって配付するということになるというと、地方の自治体の性格というものが非常に失われていくという議論もありますが、そういうことは一体考えられるのか、られんのか、そういう点はどうでございましょうか。
  41. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) ですから、だんだんやはり国の方で余計とって地方の方に回していく、だから税金は地方でとらなければ自治体としての何が、権限が侵害されるという考え方をよほど是正してこないといけない段階に私は今きているかと思うのであります。
  42. 森八三一

    ○森八三一君 第二に国民年金制度の問題は同感でよくわかりますが、ちょっとお話になったところで、税収が年額八、百億くらいふえていくだろう、その半分をあてがえば四年分なり三年分でできるのじゃないかというのはこれはどうか。というのは、私はこの表で五百万人の六十五万以上の人が存在しておる、それに年額三万円やれば毎年千五百億というものが消耗されていくのですから、何年分集めるという計算ではそうならんのではないかと思うのですが。
  43. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) ことし四百億でしょうたとえばことし四百億。来年八百億。これだけふえるわけです。その次はまた四百億、その次は四百億、四年分集めればそれはできるでしょう。だから最初の何は四百億しかないでしょう、これは。
  44. 森八三一

    ○森八三一君 月額二千五百円で一年三万円で五百万人というと年額千五百億が入り用なんで……。
  45. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) ですから、第四年度において大体制度化すことができるのじゃないかと私は思います。四百億、八百億、千二百億、千六百億ということでございます。
  46. 森八三一

    ○森八三一君 四年目にはなるほどお話のように千五百億たまりますから、四年目に一ぺん給付するというとまた四年休んでまたやると、こうなってしまうので……。
  47. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) それがふえるわけでしょう元本がふえていくわけでしょう。だんだんふえていくわけでしょう、税収入というものは。減税しなければ税収入というものはだんだんふえていくわけでしょう。年々八百億くらいふえていくわけでしょう。ことし八百億ふえるでしょう来年また八百億ふえるわけでしょう。ことし一兆国の税金があるとすれば来年は一兆四百億、一兆八百億、その翌年は、その次は一兆一千六百億ということになるわけでしょう。そうして四年で制度化してその半分をやればあとの半分は公務員の人件費を上げるとか、そういうことに自然いきますから……。
  48. 伊能芳雄

    ○伊能芳雄君 地方団体の非常に財政上不均衡であるということにつきましては全くお話の通りでありますが、従ってそれに対して調整財源でできるだけならしてしまうというお考え、これもわかるのですが、現在もう御承知のように交付税制度である程度やっていけるわけです。あるいは譲与税でやっているわけでありますが、先生の今お話のようにほとんど非常に広い調整をやるようになりますと、大体こういう団体というものは、一方では税金をとってその税金をどういうふうに使うかというところにその団体の責任があるわけです。とる方は責任なくてそうして使う方だけやるのだというような団体になってしまいますと、この団体というものは非常に無責任な団体になってしまいはしないか、殆んど大部分が国からきた財源で町村なら町村、県なら県の財政をやる、とる人と使う人と違うということになりますとですね、こういう心配が非常にあると思うんですが、この点はどういうふうにお考えですか。
  49. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 使うといたしましても、ないものは使えないんだから、限度しか使えないわけでしょう。地方財政の需要というのは、やはり道路でも、学校でもずいぶんありますですから、それによってこうめちゃくちゃに使われるということには私はならないと思う。つまり地方交付税と、府県税、事業税、両方つきあわして地方交付税でとった方がめちゃに使うかというと、そういうことにはならない、これは限度があるんですから、無制限に国から財源がくれば、それはいろいろなことに使うことになるでしょうが、そうでなくして限度があるわけですから、限度が今の何では、公平に考えてみて、片方の富裕団体には少しまだ余り過ぎて、片方じゃ少い、やはり相当足りないということじゃないだろうかというのが私が申し上げたことであります。
  50. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、藤井さんも十分ごらんいただいていると思うんですが、社会党案は、今所得に制限を加える、これは私どもの方が拠出年金と無拠出年金と二つを出しているわけです。現段階において、直ちに施行するまでに無拠出年金制度をとったわけなんです。掛金制度に対しては、今あなたの御意見もございましたように、これは検討の余地があるかと思いますが、今社会党が所得に制限を加えましたのは、無拠出を直ちに行うという場合の制度でございまして、将来の根本的な掛金制度にした場合には、別に所得に制限は加えていない、こういうことがある、それからいま一つお伺いしたいことは、母子年金については、先生はどのようなお考えを持っているか。今日十八才以下の子供をかかえております未亡人世帯は生活が非常に困窮しているわけです。そうして、またこれが生活保護を受けております中のウエートの非常に大きな部分を占めているわけです。この子供の教育問題等が昨日も問題になったんでございますけれども、生活保護なんか受けておれば、どんな優秀な子供でも上級学校へいけない、こういう点がございます。私たちはこの年金制度を老令年金と母子年金、身体障害者年金の三本建にしているわけです。一つ御意見を伺いたい。
  51. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 母子年金と身体障害者年金は当然問題になるのでありますが、どうも母子年金と身体障害者というものを、厚生省なんかの資料で見ましてね。もう少し何か資料が不足しているような感じがして、何か内訳が十分よくわからないような感じが私はいたします。もう少し調査をこまかくして、現在生活保護費で吸収されているものはどのくらいあるか、あるいは六十五才以上で、今度の遺族会の恩給をもらう方は、平均年令が六十七だといわれているけれども、そういうことですでに救済されている人がどのくらいあるかというようなことを、もっと内訳のこまかい調査が私はほしいと思って、これはいろいろとやってみましたが、どうも資料がつじつまが合わない。何か国によっては、たとえば六十五才以上の人は養老年金が受けられるけれども、母子というのは、未亡人の方が五十才になったら受けられる、年令をこう下げるという工合にしているところもありますが、私はまだ腹案がありません。
  52. 藤原道子

    ○藤原道子君 その点でございますが、実は老令年金はもらえるわけでございますけれども、子供をかかえて、そうして生存競争していかなければならない場合に、今の日本の実情では、子供をかかえた未亡人が働くということはなかなか困難なわけです。そういう立場から、ことに今の経済構造の中においても、婦人が従来あまり働くような場におかれていなかった、仕事は与えられない。でございますから、子供をかかえた未亡人の生活の困窮度というものは想像以上にひどいものがある。夫婦そろっておりましても、なかなか零細者、低額所得者はなかなかやっていけないわけであります。まして子供をかかえた場合の未亡人、子供の幸福ということを考えました場合に、ここに年金が必要じゃないか、こういう私たちは構想に立っております。その点も今後少し御研究いただきたいと思います。
  53. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 確かに先ほど申しましたように、六十五で養老年金をもらえるのを、母子家庭では五十に下げるというのはみんな妥当で賛成だと思います。たとえば三十五の方が今未亡人になって、働く能力が十分あるということですぐ母子年金の対象になるかどうか、これが生活に困っていられれば生活保護費を拡大しまして、そうして生活保護の対象とすることができるわけであります。ですからそれをやはり当然未亡人で、十八才以下の子供しかないという場合に、すべてに母子年金が行き渡るようにできるかどうかということになると、これはやはりちょっと研究問題じゃないかと思って、非常にむずかしい問題だと私は思います。
  54. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 一つお伺いいたしたいのですが、東京都という一つの行政体、これは地方公共団体です。これは非常に複雑怪奇である。地方制度という制度の中においてこういうあり方がいいのか悪いのかという問題につきましても、私も非常に悲観的なんです。もし、かりにこれを機構改革をやる、制度改革をやるというような場合におきましては、どういう形のものが適当であるとお思いになりますか。
  55. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) それはわかりません、非常にむずかしいので。
  56. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それではもう一つ予算と直接関係がないようなものなんですが、これもやはり制度の問題といたしまして、町村合併がある程度まで進みまして一段落ということでありました。その後の実情を考えてみますと、どうも第二次町村合併あるいは市町村合併というようなものが必要であって、現在の規模は必ずしも十分でないというような気がするのですが、町村合併の実情及び今後の見通しについてはいかがでございましょうか。
  57. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 私は町村合併にはあまり賛成じゃなかった。地方団体の末端の地方自治団体というのは大きいのもあり、小さいのもあって私はいいと思います。地方の自治意識、郷土意識というものが一番よく盛り立てられているという形が一番いいのでありますが、あれを財政の見地で財政改善ということでおやりになったけれども、しかし結果は必ずしもうまくいかない。というのは、小さい町村でありますれば、たくさん赤字を負うて放っておくと、それは住民がみなわかっているから承知しない。承知しないから自然それは住民意識が……。ところが市くらいになりますと、人口四万くらいになると理事者と住民の間が離れまして、市で何かやっているというのは住民にはわからぬということになりまして、住民の監視も行き届かない。市になりますと、県の監視も行き届かない。そうすると国も県も監視しないし、監督もしない、住民も監督しないというふうな小都市というものが今度の市町村合併で非常にたくさんできた。財政はどこが一番悪いりかというと、そういう小都市が一番悪い、赤字が一番多い。ですから私はあまりあれに賛成じゃないのです。あれは少し自治庁が強制し過ぎたと思います。あまり強制しない方がよかった、成り行きにまかせた方が。住民の意思は問わないで何か上から強行した形跡が非常に強い。
  58. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その手続などが十分でないと思われる点もあります。また合併町村で赤字ができてきたということもあると思いますけれども、これは合併直前における旧町村などで学校をこしらえたり、いろいろしてその借金を持ち込んできて、その合計が新市町村に赤字となって現われてきたということもあると思うのです。今後はこの段階が一応解消してしまえば、やや安定した状態で財政のやりくりができるのではないかと、こう思っておるのでありまして、私自身は必ずしも町村合併が失敗だったというふうに思っておりません。そこで、ただ一定の規格に合わせるということで、府県におきまして合併の計画を立てたものですから、あるいはここで多少無理押しもあり、かつまた現在から考えてみて、そのときの合併計画というものは必ずしも実情に即したものでもなかったという反省もありまして、私としましては、合併が一段落した早々でありますけれども、将来におきましては、第二次の合併があってもいいのじゃないか、こういうふうに考えているのです。非常に藤井さんの御意見は、反対というか、消極的のようですから、私の期待するような御答弁も得られないかもわかりません。
  59. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) だからつまり住民の意思で再合併したいのならこれはいいのですが、住民の意思は問わないで、また再合併しろということになると、成績の悪い——どこの県はどれだけ再合併率が達成されたというようなことで番付をこしらえて、やらぬところはだめじゃないかというようなことになる、それは非常にいけないと思う。どうもしかし今までの自治庁のやり方はそういうことで……。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょっととっぴかもしれませんが、私伺いたいのは、実はちょっと用件がありまして、先生の前半を聞き漏らしたのを残念に思っているのですが、実は今市町村合併も出ましたが、この市町村で合併されたところも合併されていないところも、財政の不如意から消防施設というものが非常に不十分のように私は見受けるのです。実は先般私は、全国にどの程度の火事が起り、どの程度の富が失われているかということを調査したわけですが、膨大な金額になるのですね。さらに公共施設のそういう件数を調べてもずいぶんあるのです。ところが国家消防庁並びに地方自治体の消防経費等、これも調べてみたのですが、その損額に比べてあまりにも金額は少いのですね。それでいかにしてこれを充実して——日本は風もよく吹きますし建物も御承知の通りですし、その損害は大きいわけです。今の地方財政の状況下においていかに整備をするかということを考えた場合に、私は今の保険会社がずいぶんともうけている。しかもその保険料率をきめるのは大蔵省の役人が数人できめている。どうもああいう保険会社たちとぐるになって率をきめているのじゃないかという傾向があると思うのです。それで私は一つ方法として、今の地方財政下においてこれらを整備して参るに当っては、保険料の何%かを納めさして、そうしてそれを各自治体に再交付して、それによって今の地方自治体の窮迫によってのそういう整備ができない点を救済していくというような点を考えてはどうかと、かようなことを考えておるのですが、先生、そういう考えに対してはどういう御見解を持っていらっしゃるか、参考にお聞したいと思います。
  61. 藤井米三

    公述人(藤井米三君) 初めて承わらしていただいた御意見で、なかなか研究すべき点だと思いますので、よく研究さしていただきたいと思います。
  62. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それではありがとうございました。   —————————————
  63. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 次には一橋大学教授木村元一君から御公述を願います。
  64. 木村元一

    公述人(木村元一君) 今紹介にあずかりました木村でございます。時間が限られておりますので、ごくかいつまんだお話をさしていただきます。  ことしの今出ております予算案は、昨年来の外貨の危機を前提にして、この克服をどうするか、こういうことが一番基礎になって編成方針がきめられたように思うのでありますが、この前提ないしは要求を貫くために、政府は緊縮的な予算を組むということで出発をしたのでありますが、途中で御承知のような経費の増額に対する要求がたくさん出て参りまして、また、他方では、余裕財源がある以上は減税に回すべきであるという要求も出て参りまして、いわば途中で雑音が入りまして、でき上った現在提出せられております予算案は、若干首尾一貫しないところがあるように思われるのであります。ただ、世間で、ことしの予算ほどつじつまの合わない非常におもしろくない予算はないというような批評も間々聞えておりますけれども、今まであるいは日本のみならず各国の予算の編成状況を達観いたしまして、どこの国でもそうつじつまの合った予算が組まれておるというのは、実は私も知らないのであります。元来、予算の編成というのは、いろいろな要求の上に立っておるのでありますから、特徴のない予算ができたということは、かえって本来の予算の編成に忠実であった——少し皮肉に聞えるかもしれませんが。まあ、いろいろ批評をする人がおりますけれども、それじゃその人の予算はどうであるか見せてごらんなさい、と言われますと、なかなかだれも見せてくれないのであります。そういう意味で、特徴がないということはかえって特徴かもしれませんし、そう悪いことではないと思うのであります。ただ、予算を批評いたしますときの立場といたしましては、通常よく混同されておりますけれども、二通りの立場があろうかと思うのであります。その一つは、一つ一つのプラン、予算に盛られております要求なり、あるいは租税の制度なりの持っております効果、プランについての効果から判断するという立場一つ。もう一つは、その予算全体を遂行いたします結果、すなわち学校教育であるとか、国防であるとか、司法であるとかいうものを実行していきます上に、国民経済に対する予算全体の持っておる影響いかん、いわば経済的な効果に即して見ていく立場と、二通りありまして、ときどきこれが混同されてくる。また、実際にはっきり区別しかねるところもありまして、無理からん点もないとは言えないのでありますが、同じ国民経済に及ぼしますような予算の規模、性質におきましても、その金の出し方は非常に違ってくるということが当然考えられるのであります。私は、個々のプランの持っておる重要性については、ことに経費面については、あまり批評を差しはさむ資格が私にはないのであります。ただ、まあよく私どもも聞かれることもあるのでありますが、たとえば、軍人の恩給についてプランとしてどうだというようなことを聞かれますときには、それはまあそれぞれ審議会ができて、りっぱに社会保障という大きな形の中で考えていこうとしておるのであるから、それに従う方がいいのではないか、そこまでは言えるのでありますが、国家の必要を考えながら予算を、軍人に対する恩給をどれだけふやすか、ふやした方がいいか悪いかという点につきましては、私は、当然でありますが、批評を差しはさむだけの力がないのであります。ただ一人の国民として意見は述べることができるかもしれませんが、財政をやっておりますからといって、学問的の立場からとやかく言うことは私はできないと思うのであります。  さて、今申しましたように、予算編成方針が途中で少し雑音が入った関係もありまして、でき上がったものを見ますというと、昨年よりもかなり大きく膨張しておるのであります。金額にいたしまして約千七百億ばかり増加しております。今までの財政規模の動きを見て参りますと、昭和三十年に若干財政規模が減った時期がありますけれども、戦後ずっと一貫して増加して参りまして、ことしの増加割合は例年に比べましても少しきつ過ぎるのではないか。どこに節約する余地があるかどうかは、私なかなか申し上げかねるのでありますが、膨張し過ぎているというきらいがあることは確定できるのじゃないかと思います。しかし、他方におきまして、四百数十億に上りますところの経済基盤拡充資金というようなものを設けましたのは、今までにないことでございます。世間でもこの基金についていろいろ議論が行われているのでありますが、これは私の個人的な見解ですけれども、世界各国において景気の調節のために努力を払っていることは事実でありますけれども、こういう特別の基金を設けて調節を図っている国を私は知らないのであります。わが国でこういう考えが出て参りましたのは、学説上いろいろ根拠はあるのでありますが、その運営の仕方につきましては、いろいろ疑問があるのであります。もう御案内の通り、予算というものは、年々作っていく、来年、再来年の議会の意思を今日の議会があらかじめ制約するというようなことはいけないことになっておるのであります。ところが、他方において、景気の調節という問題になりますというと、年々の予算で効果をはっきり出すことができませんで、相当長期にわたる計画が必要だ、こういう要求が一方にありまして、予算の年次性、年々の議決ということと長期的な計画ということの間に制度上いろいろ摩擦があるのであります。わが国の現在の予算遂行上の能力、あるいは権限、各官庁の組織などを考えてみますときに、はなはだ理論的にはりっぱな考えでありますけれども、この支出をいつどの面にどういうふうにするかということについて相当の疑念があるのであります。従って理想を申せば、こういう基金をもし設けるといたしましても、むしろ減税に充てる、今減税することが経済上差しつかえがあれば、後に減税に回すというような含みでたな上げすることの方が望ましいのではないかと私は思うのであります。  次に、私が特にこの機会に申し上げたいと思いますのは、世間でしばしば予算を批評いたします場合に、消耗的な経費と、それから移転的な経費、実質的な経費というような区別をいたしまして、ある予算投資的な、すなわち道路であるとか工場であるとかというふうな投資的な方面に使われる方が予算としてはいいのである。給料その他の消耗的なものに使われるのは予算のむだ使いであるというふうな意見がまま見受けられておるのでありますが、これはやはり反省を必要とするのではないか。国家の使います経費というものは、むしろ消耗的である方が理想的なのでありまして、もちろんいろいろ事情によって私の申し上げたことに対する、いわば条件が違って参りますと、違った議論が出て参りますが、おしなべて資本主義の国では国家の経費というものは消耗的なもの、立法、司法、行政、国防と、それが現物として残らない形の仕事をするのが本来の建前であろうかと思うのであります。ところが、最近の、特にまあ戦後でありますが、資本蓄積が十分でなく、戦争によって破壊せられましたために、政府投資的な活動に乗り出す機会が非常にふえて参りました。戦後十数年たつのでありますけれども、まだこの傾向が十分払拭されたとはまだ言えないのであります。そのせいもありまして、年々財政投融資というものがやはり予算の一環として提出せられ、これの審議も議会でしておるようなわけでありますが、この投資的なものでありますというと、どうせあとで戻ってくるのである、一たん貸し付けてもまた返済ができるのであるし、一たん支出してもそれが資本的な意味をもって国民経済に役に立つのである、こういう考えが底に流れております関係上、ややもするとこの財政投融資、ないしは一般経費の中でも投資的な経費に対しては批判がおろそかになる気配が私には感ぜられるのであります。で、この財政投融資をもっと厳密に財政的に取り上げて考えてみますというと、こういう問題があるのであります。  すなわち、かりに政府一般金利よりも安い金利でもって民間に政府の資金を貸し付けるといたしますというと、これは隠れた経費、すなわち見えない補給金、補助金が一般民間に渡っているわけであります。はなはだ唐突な例でありますが、たとえば食糧管理特別会計におきまして赤字が百数十億出ると、出ないと、いろいろ議論をなさっておられるのでありますが、その計算の基礎になっております数字をもう少し確かめてみますというと、今申した百数十億というお金とは違った数字が出てくるのであります。すなわち、あの会計では食糧証券を発行しておるのでありますけれども政府の説明によりますというと、大体二千九百億ばかり、ならしましてそれだけの借金がある。ところが、そのうちの九百億は国庫剰余金を使わしてもらうから利子が要らない、残りの二千億分については、これは食糧証券を発行する、これは利子を調べてみますというと、日歩一銭四厘五毛、非常に安い利子でありまして、従って一般金融べースには乗らない、乗らないがために、結局また資金部でそれをめんどうみるとか、あるいは日本銀行の方でそれをめんどうみるとか、こういう形にすり変っておるのでありまして、もし厳密に計算いたしますというと、食管の赤字はもっと多くなってしかるべきだと思うのであります。ただそういう安いお金を使うことがいけないとかいいとかいうことはまた別の問題でありまして、一般に農家の経済を安定させる。今までは問屋が中に立っておって農村の金融がうまくいっていなかった。それが現在の米穀の統制方式のおかげで前渡し金を五月六月のころにやる。この政策自体を批判するのではございませんけれども、財政的な見地に立ちますというと、そこにも実は見えない経費の支出があるのでございます。同じようなことは、そのほかの財政投融資にもすべて当てはまるのでありまして、電源開発その他重要な事項について政府がお金を出すことは、決して非難すべきことではございませんけれども政府が出すお金がもとになりまして、市中金融機関もそれにくっついていく、すなわち、政府から十なら十の投融資を受けますというと、それの数倍、数十倍のお金が民間からまた適当に供給されてくる。これは本来は銀行が自分の責任において貸付をきめて、もし不安であれば貸付をとめるなり、あるいは利子を上げるなりするはずでありますけれども政府がついているということが目に見えない非常に大きな安心感を与えまして、政府が出しておるなら、まずつぶれることはあるまいといったふうな金の出方がかなり多いのではないかと思うのであります。そういう点を考慮に入れますというと、先ほど今年の予算において昨年度よりも一千七百億円ふえた、そのうち四百数十億は経済拡充基金でもってたな上げしてあるから、実質は千三百億、そのうち公債償還に三百億あるから、まあまあ一千億の膨張にとどまったというのでありますけれども経済規模が昨年より縮小はいたしませんが、今年は少し窮屈になっておる。そこで昨年の実績の三千五百億ばかりの財政投融資を上回るような、たしか四千億近かったかと記憶しておりますが、投融資を今年計画しておるということは、かなり膨張的な性格を、いろいろな弁解がありますけれども、相当膨張を見せているように感ぜられるのであります。  次に、予算のうちの収入面について若干考えておりますことを申し上げさせていただきます。御案内の通り、一九五〇年、昭和二十五年でありますが、五〇年にシャウプ使節団が日本へ参りまして、かなりドラスティックな租税制度の改革を行いました。シャウプ案において基本的な構想となっておりましたものの一つに直接税を優先させて、間接税をなるべく押えていこうという考えがあったのであります。ほかにもいろいろあるのでありますが、直接税、間接税の比率を昭和二十五年以来今日までたどって参りますと、毎年毎年、例外が一回ありますけれども、毎年冷々直接税の比率が下っていって間接税の方がふえていっておるのであります。これも単なる理屈一点張りでは解決できませんけれども、まず、租税制度のよしあしを達観いたしますのには、間接税よりも直接税の多い租税制度をよしとするのが一般の考えであります。なぜかと申しますと、これも御案内の通り、直接税は非常に悪いものもありますけれども、大体負担能力に比例し、税率の面で申しますると、累進制度をとれる税金であります。ところが、間接税の方は品種に応じて若干考慮はできますけれども、どちらかと申しますと、逆進的な性格を持っております。おいおい直接税の減税が進むにつれまして、免税点以下の所得層もかなりふえて参りまして、直接税を幾ら減らしても、そういう人たちの負担を軽減することのできないという段階が、まあ昨年、一昨年あたりからかなり顕著に現われておりまして、そういう人たちは主として目に見えない間接税、たばこであるとか、酒であるとか、砂糖であるとか、そういうものの負担を受けております。この間接税の割合がなかなか減らないで、むしろ直接税の割合の方が減っていくという傾向は全体としておもしろくないのではないか、このように考えるのであります。  なお、直接税の中におきましても、いい税金、悪い税金、いろいろございますが、現在の租税制度全体としてはまだシャウプの基本的な改革の線に乗っておりまして、かなり累進度の高い、あの人の言葉で言えば、近代的な租税制度になったと言われておるのであります。けれども、よく見て参りますと、同じ直接税の中でも、源泉徴収を受けます分野が非常に強く徴収せられまして、申告納税の方の徴収があまりうまくいっていない。それから所得税の一種類でありますけれども法人税を見ますと、特に租税特別措置というものがたくさんございまして、この方からくる減税が、特別な種類の仕事をしておる人、特別な条件になる人、あるいは会社、結果から見ますと、大きな企業に有利に作用しているのであります。昨年の税制改革でかなり特別措置に類するようなものが整理、統合をせられたのでありますが、今年の予算案では少し名目なり、理由は違いますけれども科学技術の振興という名目のもとに、特別償却を認めまして、これは五十億ばかりの減税を考えている。さらに貯蓄の増強という名目のもとにいろいろ条件のついた貯蓄ではありますが、その部分について三%、年額六千円ですから、二十万円までの貯蓄に対しては三%の減税を認めるというふうな、新たな特別控除式のものも入ってきておりまして、所得税の全体の制度がいいといたしましても、そういういわばいろいろ理由はあるのでありますけれども、特別の、特恵的なやり方による減税がまた顔を出してきておるということは、はなはだつじつまが合わないのではないかと思うのであります。  なお、所得税につきましては、たとえば農家の早場米の供出代金については所得に算定しないとか、あるいはお医者様の収入、特に社会保障に関連のある収入でありますが、その面については一八%だけを所得に見込みまして、二八%でございましたか、あとは認めない。いろいろ理由があってできているのでありますけれども、できれば全体としての所得税を減らす、全体としての法人税を減らす、こういうことでお考えいただく方が税制としてはすっきりしているのではないか、このように思うのであります。  それから、あと二つばかり申し上げたいのでありますが、昨年の予算におきまして一千億減税、一千億施策というかけ声で予算ができました。こういう予算ができます基礎には、実は経済白書におきまして、日本の現状を分析し、その分析の上に立って、日本は今後ますます経済の基盤、特に鉄鋼と石炭、交通、船舶、電気、ガス、そういう基本産業拡充しなくては経済がもうこれ以上伸びないから、隘路の打開ということを非常に強くうたいまして、経済白書ではわれわれを激励したのであります。その激励の上に乗って実は千億減税、千億施策という予算ができました。あの予算ができましたのは昨年の四月ごろでありますが、もうすでにそのときには経済白書で分析しておりました日本経済基盤というものは変って参りまして、実はおととしの十二月ごろから、そろそろ外貨が底をつき始めるという傾向が見えてきておったのであります。ところが予予の編成には、半年なり、一年なり前の分析の上に立って編成が行われる。それをすぐに変えたり、また編成がえをしたりすることがむずかしい実情にあると思うのでありますが、これで大丈夫だということで、かなり膨張した予算を実施いたしました。で、経済界が非常に上向いているときに、財政を膨張させますというといけないんだと、非常にあとのたたりがおそろしいんだということはよりよりわかっておったのでありますが、ついに予算を通しまして、通すと間もなく、五月でしたか、日銀の方で金利の引き締めをやる。しかし最初のうちは長期利子は上げないのだというふうなことであったのですが、現実がきびしいにつれてだんだん変って参りました。これはどこへお願いしていいのかわからないのでありますけれども経済白書というようなものは、あまり政府政策を指導するような言辞を弄さないで、ただ静かに客観的に経済界を分析するような方式をとっていただきたいと思うのでありまして、今度もやはり何かというと経済白書の中で国民を叱咤激励するようなことを述べております。ところが今申しましたように、そういう基礎の上で予算を組んでおりますうちに、いろいろな要求、雑音が入って変ってくる。変ってくるときに、一体外貨収支の見通しはどうなんだと言って聞かれても、そのときの基礎になっておる数字というのは相変らず半年前に出した白書を基礎にして、外貨は相変らず危機であるということを言っておる。そこできわめて矛盾した答弁が政府当局から出ているんじゃないか。ですから変ったなら変ったでもよろしいのでありますから、変ったときにはなぜ変えたかという事情をもう少しよく説明してほしい、こういうことをここで申し上げていいのかどうかわからないのでありますが、そういうことを感じます。  時間が迫って参りましたので、もう一つ、先ほどの財政投融資に関連いたしまして、特別会計の設置が毎年一つ、二つ、三つというふうに行われまして、だんだんふえてきておるのであります。これも特別会計になりますものは、当然そうなるべき理由があってなるのでありますから、一がいにいけないとは申し上げるわけではございませんけれども、特別会計になりまするというと、どうしても議会での審議がお目こぼしが多くなって参りますし、ところがその特別会計から出ていきます金額がなかなかばかにはならないし、経済に及ぼす影響においては相当に大きなものがあるのであります。でありますから、各省省の方ではどうも何かというと、特別会計をふやしたがる傾向があるように思うのでありますが、この点についてももう少し反省をお願いしたいと思うのであります。  それから最後に、順序が不同になりましたが、政府が安い金を使う。特別会計なり、それから郵便局のお金なり、安い金を使うことが日本の金利の体系にかなりでこぼこを与えておりまして、たとえば経済界が少しゆとりができたときに、政府証券を売りに出せば資金の吸収ができるというような場合でも、低金利ということに執着しまして、政府の証券を非常に安い金利で押えております。その結果政府証券が一般金融べースに乗らないで、それがいろいろなルートを通りまして、日本における経済界のガンでありますところのオーバー・ローン、企業の方から申しますとオーバー・ボローイングでありますが、これを是正しがたくしておるような事情がありますので、財政投融資に関連して、そういう問題のあることを指摘させていただきました。  首尾一貫いたしませんでしたが、一応時間が参りましたので、私の話を終らしていただきます。(拍手)
  65. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 公述人に対して質疑のある方は御発言を願います。
  66. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一に、先生が御指摘になりました保留金の問題についてお伺いしたいと思います。四百三十六億、そのうち二つに分れまして、いわゆる経済基盤の強化という面で二百二十一億、ほかは大体各公庫なり、あるいは会なりの募金として設定するということでございますけれども、しかし予算から考えてみますと、二百二十一億は別といたしまして、他の資金は国家財政の面から見れば保留されていないと思うのですが、支出されている、保留されていないと思うのですが、いかがですか。
  67. 木村元一

    公述人(木村元一君) 御質問の意味ですが、もうすでに計上してしまったと、こういう意味でございますか。
  68. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 国家の予算から見れば実際に使っている。それで日本貿易振興会なら振興会の基金として、その金額は取りこぼすことはできないけれども、そこへまあ基金として置いておく。国家財政の、面から見れば支出になっているのじゃないか、保留でなくて支出になっているのじゃないか、そういうふうに考えられます。逆の場合を言いますとね。日本質材振興会なり日本労働協会に対して補助をする、補助という言葉がいいかどうか、助成する、しかしこれは使ってはなりません。利子だけをあなたの方で使いなさい。こういう場合には国家財政からいえば明らかに支出になるんだろうと思います。保留金としてありますけれども、実際はそういう会に使ってはなりませんけれども、上げますということですから、国家財政からいえば支出になっているのではないか。保留されていないと思うんですが、その点いかがですか。
  69. 木村元一

    公述人(木村元一君) 今の御質問で私もよく考えていなかったのでございますけれども、初め四百三十六億をたな上げするときにはひもをつけなかったのですね。つけないという建前であった、そのときの頭がだいぶ残っていたんですが、もしひもをつけないで、それを利子だけを使うという形になりますというと、おそらくたな上げの効果はあると思います。しかし政府の説明でいうと、二百十五億の指定しました、四つばかり指定しましたですが、その指定した分についてもやはり利子だけでどうとかこうとかいう説明だったものですから、同じように考えていたんですが、しかし出先がきまって出すということになったということは、財政的に見れば確かに支出済みでございますね。確かにそうです。
  70. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それで大体こういう基金を設定をするということが妥当であるのかどうか。まあ先生はあまりたくさん特別会計を作ることはいけないというお説、これは理論としてはいいと思うのですけれども、こういうたな上げ資金として、あるいは保留金というような特別基金を設定することと、それから特別会計を設けることでは、利害得失というものはどうですか。
  71. 木村元一

    公述人(木村元一君) その比較でございますか。そうですね、どちらも同じように特別会計について述べたと同じ議論が当てはまるのではないかと思いますが、やはりそういう基金を特別に取るということは、経費を明らかにするという意味から申しますと長所でございます。しかし一たんそういうものに入れてしまいますというと、今度引き揚げることもむずかしくなって参りますし、他にもっと重要な使途があっても、これは一たん取ったものだということでなかなか戻すことはむずかしい。私が特別会計を非難した意味は特別会計になりますというと、目が届かなくなってきて、ほかにもっと重要な使途があってもなかなかそっちの方には回っていきかねる、そういうところにあったのでございます。ですから資金、基金を設けるということも、やはり同じような意味合いで批評ができるかと思います。
  72. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 特別会計の場合はそういうふうにまあ国会の目が届かないということがあります。経済基盤強化資金は、それを実際に使う場合には補正を組んで、国会の議決が必要であるということになっていますから、この点は国会から見れば使い方がいいかどうか、悪いかということは端的にわかるわけですね、その点でまあ特別会計に置くよりは強化資金として留保しておくことがいいと思われる点もあるのでございます。しかし、こういう実例は先生のお話でもあまり外国にない、私もちょっと調べたところによりますと、一つあったようでありますけれども
  73. 木村元一

    公述人(木村元一君) スエーデンかどこか……。
  74. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 現在そういうことを今やってないそうであります。財政学上しから言えば、こういう資金を設定するという政治的な判断以外にはあまり望ましくないという制度なんでございますか。
  75. 木村元一

    公述人(木村元一君) 理論的に申しますと、私はいい制度だと思います。ただそれをやりますためには、たとえば議会からも独立、政府からも独立、あるいは議会、政府両方から出ているような非常に強い権限を持った執行機関がないと、弾力的にそれを運営していくということが非常にむずかしい。別に作りますというと、下部機構では実際は予算を使うときにはそれぞれプランに従って使っておるのでありますから、経済的な効果があるとかないとかいう判断とは違った面でもって、下部機構は、各省は使っていくわけですね、それをこちらでもって景気の波を調節するような意味でもって使わせるということができるような態勢がなかなかできない、これは少し極端な言い方をしますと、議会主義というものに対して、どれだけの大きな影響を持つかという問題にも関係するので、下手をしますというと、また昔の軍部のように、継続費といったようなもので、おれの方はおれの方の計画でこれだけやるのだというそこだけの調節ができまして、全体としては異分子になって出てくる、こういう問題も出てくるのであります。もしほんとうに経済界のことがよくわかっておって、使わすだけの下部機構を持っておって、経済界が下ってきたときは、ここで少しよけい出してやろう、上ってきたら少し減らすというシステムがもしできれば、これは大へん理屈に合ったことだと思う。制度的にいろいろ制約があるので、一足飛びにそういう理念でもって、こういうものを設定しても効果がどこまで期待ができるか心配だ、こういうことです。
  76. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先生のおっしゃるその基金というのはフイスカル・ポリシーと、そういったような意味を含んでいらっしゃるのですか。
  77. 木村元一

    公述人(木村元一君) そうでございます。
  78. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ところが今回のやつは明かに使途が、ここに列挙してありますけれども道路整備、港湾整備、科学技術振興、異常災害の復旧、産投特別会計への繰入れ、こういう項目が上っているわけであります。しかもこれがフイスカル・ポリシーというふうに使われないで、これが現実に使われる場合には補正予算を組んでやるわけですから、先生のおっしゃるように、景気の波によって自動的といいますか、非常にわかった人がそれを自由にとりこぼして、そうして使うということはできないわけなんですね。それですから、先生のおっしゃるような意味ならいいのですけれども、この経済基盤強化資金というのはそういうものじゃないですから、現実としては先生の望ましいと思っている形とは違った形になっているのじゃないのですか。
  79. 木村元一

    公述人(木村元一君) どうもこの基金の性質は私もよくわかりにくいのですが、元本をとりこぼすことを考えるというときは、景気の状況を見ていくということが含まれているのじゃございませんでしょうか。今のところその問題についてやかましい議論が出てきたから、理論的にこういうふうに変りましたが……。それから先ほどこれは補正予算で組んでやるのだから議会の目が届くのだというお話しでありましたが、そういう意味になりますと、特別会計も見る目が届くわけであります。ただ実際の問題として、これは制度の問題ではなしに、どうしても議論が一般会計の方に集中しがちで、実質的にどうも特別会計の方は——まあよくむずかしい会計でもあるというとなおさらのこと、あまり議論が出てこない、こういう意味で申し上げたのでございます。
  80. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう一つだけ、この中に異常災害の復旧に二百二十一億が使うことができるというふうに書いてある。これはおそらく予備費につきましても、もちろん異常災害でなくても災害の復旧には使い得る、しかもこれは国会に関係なく行政的に使える金があるのです。もし異常災害が起った場合に予備金を使うという場合と、この異常災害の復旧のためにこの経済基盤強化資金を使うという場合と、順序から言えば、やはり予備費を先に使って、それでも間に合わないときにはこの経済基盤強化資金というものを使う、しかもそれは国会に補正を出して使うという順序になりますか。
  81. 木村元一

    公述人(木村元一君) 異常的な災害に対しては、予算の建前から申すというと、一々追加予算を組むのがほんとうだと思います。予備費というものは、元来が予見し得べき災害その他何でもけっこうですが、一年間に——去年もそうだ、おととしもそうだというので、大体予見すべきものに使うのだという建前です。ですから、異常災害に使うことができるということは、今の補正予算で組むのだという趣旨と若干関係があるのじゃないかと思いますが、書いても書かなくても同じ性格のものだと思います。
  82. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 わかりました。
  83. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 別に御質疑はございませんか。  それでは先生、本日は御多忙中のところ、まことにありがとうございました。  明日は午前十一時から公聴会を開きます。本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会