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国務大臣(岸信介君) 中共との間の
貿易につきましては、私ども従来中外にわれわれの
方針を宣明いたしておりまして、
貿易はこれをできるだけ拡大増進することに努力するけれども、中共との間に正式の外交の交渉を開いたり、これを承認するということはいたさないという
方針のもとに、すべて今日まで努力してきております。中共
政府の意図や、あるいはそれはいろいろな
意見というものは、これはいろいろなことを向うでも
考えているかもしれませんし、私はいろいろな意図が全然ないということを申し上げているわけじゃございませんけれども、私どもはあくまでも今の線を堅持してそうして事に処す。従って民間の第四次協定の扱いにしても、今私が申し上げておる根本の趣旨を動かさないという範囲で、
政府としては善処する
考えでありまして、周恩来首相が
日本に対する一般
方針として言っておることがこうであるから、直ちに民間における団体との間にできた協定もその
意味であり、従ってこれを承認してはならぬというふうには、私どもは
考えておらないのでありまして、やはりこの先ほど申した根本
方針を堅持して、これを扱っていく。それには民間の代表部と、われるものができても、これに公的の特権を与えたり公的の扱いは一切しない、国旗についても、われわれはこれが掲揚の権利というものを認めるわけじゃない。これについても昨日来、法律のいろいろな論議がありましたことにおいて、それは明瞭である。しかし
貿易を増進するという従来の
方針は、やはり貫いていって、われわれとしては、
政府としては国内法の許す限りにおいて協力をしていく、そうして
貿易を円満に増大していく、という
方向に進んでいきたいと思います。
それから核兵器の問題につきましては、私は、この点については、
アメリカやイギリス等の自由主義国の、この核兵器を持っており、これの実験をいたしておる国々に対して、従来一貫して
日本政府の
方針であり、
日本政府の
考えからこれが実験も禁止しそれは核兵器というものは、われわれとしてはその製造を禁止し、使用も禁止してもらいたいという意図のもとに、そういう一貫した主張をしあらゆる努力をいたしております。このことが自由主義国の、この持っておる国々の
意見と違っておることも、私は
承知をいたしております。しかし、われわれが自由主義国と協調をし、自由主義国の立場を堅持して、これらの国々と協調していくということは、言うまでもなく、それらの国々がやっていることを一切すべて無批判に、無条件に受認をし、これに従っていくということではないのであります。やはり
日本が独自の立場において、
日本の主張すべきことは主張し、われわれから
考えてみて、それは正当でないと
考えることについては、反省を求めていくことは当然であると思います。核兵器の問題につきましては、これはすでに国会でも、しばしば
日本国民の、この私の申す
考え方というものが議決になって、そうして、世界の自由主義国といわず共産主義国といわず、この実験をやっている国に対して強い抗議を申し述べ、
日本国民の一致した願望を伝えておる問題でございます。従いまして、私どもがこれを主張することは、共産主義国の利益のために主張するものでもなければ、あるいは単に今東西が緊張の間にあって、どちらを支持するという
意味ではなくて、純粋の人道的、また、われわれの体験からくるところの国民の
一つの願いを実現しようとするものであります。従いまして、私は核兵器で
日本の自衛隊を武装しないということを申し、また核兵器の持ち込みを
日本は拒否する、ということを一貫して申しております。
私は、今の
お話の議論になって、核兵器を持たない自衛隊が祖国を防衛する場合に、それでは防衛ができない、どうしても核兵器を持たなければできない、という
事態があっても、一体、総理は拒否する、核兵器をもって武装しないのかどうか、という突き詰めた御質問にも接したことがございます。それに対しても、私はこの核兵器をもって武装しないという私の信念は変えないつもりで、それはあらゆる方法において祖国のわれわれは防衛を全うし、侵略を防止するということについては、あらゆる努力、あらゆる研究、あらゆるなにはするけれども、この核兵器でそれをするということは、私は
考えておりません、ということを明確に申し上げておるのであります。
従いまして、その点はやはり安全保障条約の施行の上におきましても、米軍の装備について、この核兵器で武装するということに対して拒否する、という私の
考えは一貫をしておるわけであります。そういうことが、それじゃ自由主義国の立場をとる、協調、協力をすべき国との間はどうなんだ、というさっきの御質問に返るのでありますが、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、私はやはり、われわれは自由主義国と協力をし、日米の協調を
考えるけれども、それは、あくまで
日本は独自の、自主独立の立場から、われわれが正しいと
考え、われわれの国民的のこの一致した
意見というものが、たとい
アメリカの
方針と違っておっても、これを私は主張し、その主張するということが、反米なりあるいは他の勢力、ちょうど反対するところの勢力を支持しよう、というつもりでやっているのじゃないのだ、これは、こういう正しい主張から出ているのだということは、十分に了解せしめ、また了解せしめるように努力することは当然でありますが、そういう立場をとるならば、決して自由主義国の協調とか、あるいは日米協力
関係であるとか親善
関係を、私は傷つけるものではないと、こう思っております。