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1958-03-29 第28回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月二十九日(土曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員の異動 本日委員小山邦太郎君、鈴木強君及び 竹中恒夫君辞任につき、その補欠とし て館哲二君、森中守義君及び千田正君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            大川 光三君            大谷 贇雄君            木島 虎藏君            古池 信三君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            三浦 義男君            安部キミ子君           小笠原二三男君            亀田 得治君            坂本  昭君            曾祢  益君            戸叶  武君            藤原 道子君            森中 守義君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            豊田 雅孝君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    農林大臣臨時代    理       石井光次郎君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    運 輸 大 臣 中村三之丞君    郵 政 大 臣 田中 角榮君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 河野 一郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君   政府委員    内閣官房長官 田中 龍夫君    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    総理府総務長官 今松 治郎君    警察庁長官   石井 榮三君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    自治庁財政局長 小林與三次君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    法務省民事局長    心得      平賀 健太君    法務省入国管理    局長      伊関佑二郎君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    国税庁長官   北島 武雄君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省管理局長 小林 行雄君    通商産業大臣官    房長      齋藤 正年君    通商産業省繊維    局長      小室 恒夫君    労働省労政局長 亀井  光君    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。  まず、委員の変更について報告いたします。  本日竹中恒夫君、鈴木強君及び小山邦太郎君が辞任せられ、その補欠として千田正君、森中守義君及び館哲二君がそれぞれ選任せられました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和三十三年度一般会計予算外二件を一括議題といたします。  昨日に引き続き質疑を続行いたします。
  4. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 予算審議が当委員会で一カ月前に始まりまして、一カ月の間いろいろ審議を重ね、政府見通し方針等をいろいろお伺いをして参ったのでありますが、そのときから、当初から私たち指摘をしておりました政府の現在の日本経済動向に関する見通しが、全く誤まっておるのじゃないか、従ってこの際その誤まりをただすと同時に、この一、二カ月の間にそれらの事態があまりにも明瞭になって参りましたから、ここで大きく方針といいますか、政策転換をやらなければならない時期に参った。そのことがあまりにもはっきりなってきたのじゃないかと思うのであります。そういうことを私たち考えておりますし、私たちはそれを主張をして参ったし、今後もそれを明確に打ち出して参りたいと思います。そこで私はあらためてまず大蔵大臣お尋ねをしたいのですが、大蔵大臣はこの予算を編成されるときに、来年度景気を刺激するようなことはやってはならない、そういう意味金融引き締め、昨年の五月以来の方針をそのまま堅持して参るということを言っておられた。方針政策としてはそういう方針をとっておられたが、しかし見通しとしては、今度は逆に三月、年度末において大体生産調整その他の完了をして日本経済動向は非常に好転をしていくのだという見通しを立てられていた。その見通し自体が誤まってきて、好転はなお三カ月くらいおくれて、第一四半期においてようやく調整が済むのだというふうに三カ月ずらしてこられて、見通しを変えてこられた。もし、見通しが三月あるいは六月に好転をするということであれば、その見通しに立つならば、経済方針財政金融方針としては、引き締めは、従ってそこからやめて正常に復し、あるいはもっと積極的にそこからは変えていくのだ。従って来年度年間の政策はそういうものを基本としてやらなければならないということが出て参るはずなのに、政策の点になると今度は非常にしぶく、依然として引き締めを継続するのだというふうに言っておられる。見通しを誤まっておるのみならず、その見通しを基礎にしての政策方針はまた完全に誤まっておる。そうとしか思えないのであります。従ってここで見通しの誤まったこと、しかもその見通しに応じて政策を、誤まったことがあまりにも明瞭になっておりますので、ここであらためてそういうものを変えて予算を組み直す。少くともこの予算は破綻をしてしまったということをお考えにならないかどうか、その辺をまず明瞭に大蔵大臣からお答えを願いたいと思います。
  5. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。結論から申し上げれば、私はただいまの御意見とは見解を異にするほかないのでありますが、それについてなるべく簡単に私の所信を申し述べさしていただきます。  第一に、景気見通しを誤まっていはせぬかという点でありますが、これは私としては誤まっていないと考えております。それはどういうことであるかと申し上げれば、御承知のように、皆様方も御指摘に相なったように、日本経済は非常に急速な速度で拡大をしてくる、これが国際収支に響きまして国際収支を悪化さした。このままでは持続ができない、こういうような状況であります。従いまして、昨年五月以来から総合的なこれに対する緊急対策をとりましたことも御承知通りであります。そうして、そのときにやはりわれわれが考えていたことは、政策的に考えまして、政府意欲といいますか、政策的にはなるべく早くこういう緊急対策は終らせることが適当であるという見地に立っておる。これは私は政策をやる者にとっては当然であると考えます。そのときに、当時の内外の情勢からみて、おおよそ三十二年度会計年度末、この三月程度にはこれを終了させる。その終了さしたいという意味は、要するに生産調整過程をその辺で終るようにもっていきたい、かように考えるのでありますが、これは政策的見地から一応さように考えたのでありますが、むろん経済の実際の動きというものはこれは非常な容易ならぬことであるから、特に日本経済の場合におきましては、国際的な影響を受けることがきわめて大である。たとえば、アメリカ経済をどういうふうにもっていくか、それに対してアメリカ当局者がどういう政策をとるかというようなことがやはり日本経済に大きく影響してくる。従いまして、われわれが考えておる通り日本経済が具現するとは限らない。そこにいわゆるズレというものがある。これは私は当然予期されることで、経済が、政策者がこういうふうに持っていきたいと言う通りにならずに、若干のズレを生ずるということは、これは私現実の問題としてはだれもが承認をしなければならない事柄であると、かように考えております。そういう意味におきましても、私は何も三月で終るとは申しておらないのでありまして、一応三月に、しかしやはり四、五、六というような、こういうところが調整過程にある、かように申している。そうして七月から日本景気がよくなる、いかにも景気がよくなる、よくなるというふうに皆さんがおとりになるが、私は七月から景気がよくなるというような考えではないので、この景気動きについての一つの見きわめる境をとれば、やはりアメリカ会計年度が七月から始まりますから、そうしてアメリカの新しい政策はやはり新年度予算において盛られてくる、こういう見地から、一応境とすれば七月というところを楽に境にとる。その辺から悪くならずに、むしろ希望が持てるという意味において、経済が振興するであろう、こういうような考え方であるのでありまして、何も七月になったら今にも好景気がくる、そういう意味ではないのでありまして、悪くなるよりもよくなる方向には向くのじゃなかろうか、こういうわけであります。  しかし、その期限においても、これはやはり政策者としての意欲がありますから、実際においてやはり多少ズレがある。ただ、方向が間違っていないという点において御了承を得たいのでありまして、なに、そうじゃない、これはもうことしの秋から来年にかけても日本経済というものは悪いのだ、世界の景気が悪いのだ、いや、だんだんよくなるのじゃないかと、そういう見通しが私は一番大事なところでありまして、幾らかズレがある。しかし、動きの流れは誤まっていない、こういう点において御了承を得たいのであります。  それから、依然としてそういうふうな経済の実際の動きを見ずして、一ぺんきめたことはその通りやる、言いかえれば、金融政策等においてもただ引き締めを続けてやるのか、こういうふうな御質疑でありますが、その点についても私がしばしば御説明申し上げたように若干違うのであります。言いかえれば、日本経済が伸びること自体はいいのであります。悪いことではないのだが、過ぎた場合において、これがどうしても抑制をしなければならぬという点がある。その過ぎたところを小産調整、そういうことによって是正をいたしておるのであります。その生産調整が一応終れば、これは私は金融の道というものは、たとえばそういう場合に滞貨が生ずる、しかし化産調整をやって将来にわたる需給が一応確立するとすれば、むしろその商品が国際価格よりも安く落ち込んでくる、こういうような場合においては、私はやはり滞貨金融といいますか、それに対する金融的な措置をとって、そう値下りをしないように、あるところに安定をさせてそうして貿易に持っていく、値段が常に動くということが将来の妨げになるのでありますから、価格の安定、しかも不当に安くないところの価格安定、こういうような金融はとるつもりをいたしております。ある意味において、きめのこまかい金融措置はとり得ると、私は考えておる。それが何も手直しとは私は考えていない。初めからそういうふうな過程にくれば、そういうふうな客観的情勢において金融政策をとっていくという考えで進んできておる。同時に今後におきましても従来と違って国際収支も、これは黒字が幾らずつか出ていくのでありますから、その面からも日本経済というものは金融的には私は楽になってぐる。そこで金融正常化をはかっていくという意味において、従来の行き過ぎ金融が円滑になるだろう。そういうふうになるような施策を今後とっていく、かように考えておるのであります。そういう意味におきまして、私は従来の見通し、また政策において誤まっておるとは考えておりません。大体われわれの考えておる通り——通りと言い切れませんが、大体その方向において進んでおる。かように考えております。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のお答えによると、最近の経済の推移、特に不況深刻化というような問題からかなり当初の考え方を変えてこられたことがほの見えておるのですが、従って見通しは私は完全に誤まっていたということを結果においては言っておられるにすぎないのだ。ということは、日本の現在の経済動向を単に金融の面からあるいは財政歳入歳出の面から見る限りは歳入超過になる、あるいは輸出入貿易収支国際収支の問題もそれほどあわてて、不足が四億ドルになるの、二億ドルになるのと言って、あわてふためいていろいろな対策をお考えになるほどのこともなかったのだが、そういう意味では、従って財政あるいは金融資金需給の面あるいは財政歳入歳出の面、あるいは国際収支の面、そういう面から見れば、それほど警戒的に考える必要はないし、相当ゆるんでくるんだ。そういう意味では三月までにそれらの問題がほぼ正常な方向にいくというふうな見通しとして考えておられるのならば、それでよかったと思うのです。従ってまたそこから金融なり財政あるいは輸出入に関する政策は別途積極的なものが出てこなければならないと思うのですが、その面からの日本経済動きと、もう一つその背景になるところの経済実態産業動向の方から問題を見ると、問題はなかなかこの年度末等で解決をする問題ではなくって、むしろ問題の悪化といいますか、景気深刻化というのは、これから持続をするのみならず、これから悪くなっていくのだというふうに見なければならない。産業動向生産過程あるいは雇用の問題から見れば、もっとそこを深刻に考えなければならなかった。そういうふうにはっきり分析的に考えなければならなかったのを、それらを十分に把握されなかったがゆえに、こういうふうな混迷が出て参ったんだ。従ってまたそれに関連をして大蔵大臣見方とあるいは通産大臣見方あるいは経企長官見方、そういうところに相当なちぐはぐが出て参るというような結果にもなる。  そこで私は今度は通産大臣お尋ねをしたいのですが、日本産業動向から考えて、経済実態の面から考えて、過去のこれまでの一年間、年度の一年間、あるいは特に金融引き締めを行われてから後の動向と今後の産業見通しというようなことをどういうふうにお考えになるか。その点大蔵大臣は三月で日本経済生産調整ができるつもりでいたが、少しずれたくらいなんだと言っておられるけれども、なかなかそういうただ一、二ヵ月ずれたというような問題でなくって、もっと本質的に困難な問題が出て参った、それが明瞭になっていると思うのですが、通産大臣はその点をどういうふうにお考えになるか。
  7. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私どもも大蔵大臣と同様に昨年からの動向について考えておるわけでありまして、実は三月までに生産調整を終り、そうして四月から景気経済を正常化していこうというふうに考えて参りました。しかしまあ率直に申しますと、なかなか業者の方も踏み切れぬという面もありました。従ってわれわれが予期しておりましたよりも、操短につきましてはずれてきたわけであります。またその励行が十分にいっておりません。そういうような関係で三月までに終るつもりで運んで参りましたのが、お話のように来年度の第一四半期に及ぶ、こういうような関係になって参りました。従ってまた四月からは生産調整を強力に——最近におきまして業者の方々も十分それを認識され、いろいろ監視なり生産調整に本腰を入れたやり方をやっていただく。そうしてこの第一四半期滞貨ということなしに、すっかり正常化していきたい。またそれにみんな踏み切っておられ、十分その見通しをもってやっておるのでありますが、その点はずれてきたということであります。  また一面におきまして、われわれは時期を見て、基幹産業等におきまして繰り延べをいたしたのでありますが、繰り延べにつきましては、これは御承知通りに一割五分の繰り延べをやったのでありますが、その残余の点におきまして資金に詰まる、民間資金が十分でないという面もありまして、これは昨年から私は申し上げておるのでありますが、その面は財政資金で補っていって、そうして景気なり経済の全般的な調整をはかっていくというようなことにいたしておるのでありまして、御承知のように、三十二年度の末におきまして、財政資金をさらに投入してやっておるようなことであります。経済全般として考えますときには、また行き過ぎ不況に落ち込まないようにということも配慮いたしておるのであります。その点は別に大蔵大臣意見が違っておるわけではないのであります。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 産業資金の計画その他をどうするかというような対策の問題はもう少しのちほどにお聞きをするということにいたしますが、今、通産大臣は非常に苦しそうな口ぶりで大蔵大臣と何ら変っていないのだというようなことをお話になっておりますが、まあ大蔵大臣と変らないで、生産調整が今年度で一応ケリがつくというように当初お考えになっておったとすれば、その見通しの誤まりもはなはだしいといわなければならぬと思う。私から言うまでもなく、生産調整等の問題はむしろこれはもっと早く実は手をつけらるべきであったと思うのですが、その手を役所がつけないままにずるずるにきたから、三月までにはなかなか終らないで、むしろ四—六月において初めて本格的に、全面的に、従ってあなた方の勧告操短というような問題として、本格的にとられるようになった。そういう意味で、見通しを誤まられたから、従ってまたずれて参った。そこであなたは、今六月で生産調整が完了するというふうにお考えになっている。なるほど、一応六月に区切って、大体六月をめどにして、業者諸君その他は生産調整をやっておりますが、しかし役所は、もう一歩先に進んで、もっと遠く見通すならば、なかなか六月では、生産調整は完了できないんだということも、従ってこれは、九月まで、第二四半期まで、さらに延ばして持続をしたければならないのみならず、新たに第二四半期——あるいは、第一四半期後半から第二四半期になれば、新たに生産調整をしなければならないような諸産業も加わってくるのだと、そういう意味で、生産調整は、もっと全面化するし、従って第二四半期、九月にも及ばなければならないし、さらにもっと後まで及ばなければならないんだと、そのくらいに、日本経済不況は、深刻なものなんだということが、もはや明瞭になってきていると思うのです。そういうふうな考え方で対処しなければ、適正な方策は出て参らないと思うのですが、その点々通産大臣は、どういうふうにお考えになりますか。
  9. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 先ほど大蔵大臣お話がありましたが、もちろん、なかなか生産調整ということは、業者の方にとりましてはやりにくいというので、まあ多少のずれはあることは覚悟いたしておったのであります。従ってなしくずし的な生産調整に、一応なったということだと思います。しかし、やはり役所決意をもって、そうして第一四半期に終るんだと、こういう覚悟のもとに、また業者の方にも、十分なる自覚を持っていただくということでなければ、次から次になしくずしていくということでは、そう簡単にかいかぬのでありまして、われわれが、この三月をはっきり目途としてやってきたというところにも、役所十分覚悟を持って、そうしていくべきたという点におきまして、実態は、多少のずれがあったことはわかっておりましても、そういう決意でやらなければならぬのでありまして、私は、何としましても、第一四半期生産調整を終る、そうして経済を正常化するという強い決心で臨んでおるのであります。その点だけは、十分御了承願いたいと思うのであります。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政府が、これをで、日本経済不況は大したものじゃないんだと、ちょっとした行き過ぎだから、その行き過ぎ手直しさえすればいいんだというように、事態認識を誤まられたから、こういうふうになってしまったことは、あまりにも明瞭だと思う。それで、通産大臣は、今は、目途として、六月で生産調整を完了する決意なんだと言われる。その決意は、なるほど非常に大事でありますし、必要でありますけれども、めどをそういうところに置いておられたら、非常なごまかしであり、事態を甘く見ておられるに過ぎないし、従ってまたぞろそのうちには、それをそのままずるずると延ばさなきゃならぬという問題になってしまう。そうじゃなくって、もっと事態を深刻に考えて、深刻な問題として対策考えなければならない。そういう意味で、事態認識は、非常に深刻にお考えにならなければならない。事態認識を、そういうふうに深刻に考えると、そこから、従って政策転換をしなければならぬという問題が当然に起って参ると思うのであります。そこで、過般、われわれは、日銀総裁に来ていただきまして、それらの見通しをいろいろと聞いたのでありますが、見通しとしては、私は、日銀総裁国際収支及びその他の見通しについて、若干同意し得ないものがありますが、しかし経済全体の動向としては、日本銀行総裁が言っておるように、なかなか今年度中に生産調整は終るというようなことは、非常にむずかしいのだ。ましてや三月に終るとか六月に終るとかというようなことで、問題を甘く考えていたら、とんでもないことなんだというふうなことを明瞭に言っておる。従って生産調整あるいはそういう問題は、むしろ秋まで続かなければならないし、秋以降も若干ずれるかもしれない。従って今年度中は、そういう方向として日本経済判定をしていかなければならないし、景気は今年度中に好転するというようなことを考えたら大間違いなんだということを明瞭に言い切っておると思うのです。私はここからどういう政策を打ち出さなければならないかという点になると、日本銀行総裁とおのずから見解を異にしますけれども、しかし客観的な事態認識としては、まさにこの認識が正しいと思う。大蔵大臣はそれらに対しては非常に甘く、さっきもお話があったように、三月でやるつもりだったが、それができなくて若干二、三月ずれただけだというような甘い考えを持っておられるが、事態はなかなかそういうものではないと思う。そこでそれらの点に政府の重要な閣僚あるいは日銀総裁等の間に、それらの考えがまちまちであることがあまりにはっきりしているのですが、それらを総合調整して判断をしなければならぬのが、ほかたらぬ河野長官だと思うのですが、河野長官は今申し上げましたような問題をどういうふうに判定をし、どういうふうに政策転換をやらなければならないかというふうにお考えになっているか、その点を御説明願いたい。
  11. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) すでに御承知通り、われわれは長期経済計画を重要な指針にいたしまして、しかも三十三年度におきましては、大体こういう方向に行くことを期待する、これを考えの基本にいたしまして、すべての施策を進めようといたしておるわけであります。その間に、今まで大蔵大臣通産大臣からお話がありました通り、多少生産調整ずれてきておるものもありますことは事実でございます。しかし、これらは民間の一部の生産調整がおくれておる、その結果として今ここにこういう事態があるというようなことが、時々そういうことが起ってくれば、くるごとに対処いたしまして、ますます政府といたしましては、きめのこまかいと申しますか、こまかなケース・バイ・ケースによって施策を実施いたしまして、そうして基本的な経済の成長の方向に馴致して参るようにして参ることが、われわれの目標でございます。ただ、だんだんお話でございますが、何分日本経済実態からいたしまして、わずかなことが非常に強く影響することは御承知通りであります。従いまして、これはいい悪いは別にいたしまして、政府の施策もまた強く響きますし、また他の要因も強く響きますことでございますから、これらについて慎重な態度をもちまして、そうしていやしくもあまり大きく経済が右なり左なりに、上下いたさぬようにしていくことが一番肝要であろう、こう考えておるわけであります。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本経済が大きく上下しないようにすることがいいからというお話ですが、それならばそれで、事態の判断を非常に正確にしながら政策をはっきり明確に打ち出さなければならないと思うのですが、その見通しをあなた方が誤られたから、こういう大うねりな日本経済動きが行われてるんだと思うのです。この点は私たちが昨年もやかましく言った点でありますが、昨年もっと見通しを誤らないで早く手を打っておられたら、これほどの大きなうねりはなかったはずなんです。ところが昨年私たちが口をすっぱくして国際収支その他の問題をお尋ねをし、政策転換手直しを迫ったときに、それを従来の行きがかりになずんで、はっきりとわれわれの言うことを率直にお聞き入れにならないで無理をして押し通して、そうして一応予算を済ますまでは押し通しておいて、予算が済んでからあわてふためいて大きな急カーブをとられた。征って今のような非常な混乱状態が起きて参っておると思うのであります。その混乱状態の結果非常に事態が悪いのでありますから、その悪さを率直に認識をして、その上に政策その他は今からもうはっきりした明瞭なものを準備をされなければならない。従って少くとも方針なり方向政策転換をしなければならぬのだと、こういう大きな筋で転換をしなければならぬのだということを明示をしながら、慎重な対処策をきめ、こまかに一つ一つ組み上げておやりにならなければならないのに、今度もまた今までの行きがかりにとらわれて、そういう大きな政策転換方針転換を今ここでやることにちゅうちょをしながら、従ってまたいろいろきめのこまかい具体的な施策がなかなか運ばないというのが現在の実態ではないかと思うのです。そこで、それならばどういう政策を具体的に提示していくべきか、あなた方は用意をしようとされているのか、私たちはどうしようとするのかというような問題については、もう少し後ほど触れるといたしまして、どうも今までのお話を聞いておると、現在の経済不況の性格なり本質なりというものに対して、はっきりした認識がまだないんじゃないかということを私はおそれる。しかもそれを明瞭に出すことを、政治的な思惑からそれを非常に隠しておられるという点が非常にあるとしか思えない。特に選挙を控えておるもんだから、そういうことを非常に選挙的に配慮をしておられるように思いますが、従って私はもう一つお聞きをしたいんですが、現在のこの不況状況というのは、明らかに過剰生産——過剰投資を原因にした過剰生産不況で、そういう意味では自由経済政策、資本主義政策そのものに根因を持つところの本格的な過剰生産不況あるいは恐慌である。従ってその責任、……原因は過剰投資自由経済政策、資本家諸君のてんでんばらばらな過当競争、それを総合調整計画化することのできなかった自民党内閣、岸内閣の責任である。もっと本質的な根本的な責任であると思うのですが、この点は一つ厚総理自身に、今まで大臣諸公の述べられた意見を総合した意味で、総理にもう少しその本質と岸内閣の責任をただしたい。岸内閣の責任以外の何ものでもないというふうに考えますが、岸総理はその点どういうふうにお考えですか。
  13. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 経済の問題につきましては、言うまでもなくいろいろなこれの動きというものについては要因かあるわけです。特に日本経済は、御承知のように国際的の関係が非常に深い、貿易に依存する度が非常に大きいのでありますので、国際的要因によって影響されるところも非常に大きいと思います。こういう経済界の情勢というものをできるだけ正確に把握して、そしてこれに対して常に堅実な基礎において、安定した基礎において成長を続けていくというのが日本経済のあり方であり、またそれを進めていくようにすることが最も望ましい、またそうしていかなければならぬ、こう考えるわけであります。そこで、日本の従来こういう国際情勢なりあるいは日本内地におけるところの各種のデータを、景気の観測等を把握するについて十分であったかどうかという点につきましては、私は遺憾の点もあると思います。その点についてはこれをあくまでも、できるだけいろんな点から正確に見通しをして、なるべく大きな波乱を経済界に起さないように、しかも堅実な基礎において常に成長していくというこの方向をとっていかなければならないのが、日本経済政策の根本でなければならぬと思います。  そこで、最近におけるところの経済動向をどういうふうに見るかという問題について、先ほど来いろいろ質疑が応答されておりますが、私はこの根本の傾向については、あるいは佐多委員との間に意見が少し違うかもしれませんが、今日の状態を非常に深刻なものと見るか、あるいはそれほどのものでないと見るかという点でありましで、私どもの見るところによるというと、なるほど日本経済のこの数年における発展過程を見まするというと、私はそのテンポにおいて日本経済の持っておる実力等から見まして、このテンポが少し過大であるという事実は確かにあると思います。それは今の佐多委員の言われるように、主として投資、設備拡張等の行われることが、あまりにも少し度を過ぎておったということである。しかしこの日本経済に対する投資の状況やあるいは設備の投資というようなものの内容を見るというと、それが非常に不堅実な、また不当なものであったと断ずることは私は間違いである、た、だ日本経済の実力なりあるいは諸種の事情から見て、それが適当なものであったかどうかというところに、われわれの現実がそれを度を過ぎておったという点があったと思うのであります。それが最も明確に現われたものは、日本におけるところの国際収支の面における輸入超過の勢いが非常に急速に起った、国際収支関係においてこれが急激に悪化したという事情が、最も明瞭に現われたのが昨年の上期の事情であったと思う。従ってこれに対する対策をとり、また今言った設備投資というものが、日本の客観的事情から見て度を過ぎておったというものに対する制約が行われなければならぬ。その過程がちょうど、いわゆる生産制限なりその他の調整過程として現われてきておるというのが現実の状況である。それがあるいは見方によってずれたか、ずれないかということが一つの問題である。この事態を、あるいはこの点については佐多委員見解を異にするわけでありますが、非常に大きな見通しを誤まり、もしくは政策を大きく転換しなきゃならないような事態に逢着しておると見ることについては、私どもはさようには考えておりません。もちろん経済の問題でありますから、一応のわれわれは根本において自由経済という立場を堅持しており、それが日本経済発展のためには望ましい方法であるという考えに立っております。その自由経済の立場においていろいろな変化に応じつつ、単に民間だけの自制調節の作用だけにまかし得ないところのものについては、やはり国が一つの計画性を与え、指導性を持つことは必要でありますけれども、根本的にこの政策が誤まっておるとか、あるいはそういう見地から、ここに大きな根本的な政策転換をしなきゃならぬ、大きな手直し一つしなきゃならぬという事態とは考えておりません。従って経済の推移を見、なるべく調整期間というものを早く経過して、安定した基礎において将来の経済の発展の事態を作っていく。そのためにはやはり根本の政策としては、従来とってきているわれわれの考え方に間違いはない。ただいろんなケース・バイ・ケースにおいて適当な処置をとるべきことは、これはもちろん経済政策でありますから、あると思いますが、そういうふうに根本的には考えております。
  14. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 若干のちょっとした行き違いであり行き過ぎである、従って見通しも誤まっていないし、政策転換もやる必要ないのだというようなふうなお話でありますが、先ほどからいろいろ各閣僚のお話を聞いていると、表面はそう言っておられながら、内実は決してそうでないことがあちらこちらにちらほらとほの見えている。ところが総理はその点をそういうふうに正直に受け取らないで、非常に政治的な発言をしておられます。しかしもっとこの問題は冷静に考えなければならない問題であると思いますし、過剰生産不況、あるいはもっと言えば恐慌であることはあまりにも明瞭であると思います。これはもうはっきり過剰生産不況である、過剰生産の恐慌であるということははっきりお認めになることが必要なんじゃないか。これが具体的に現われておるのは、この一、二年間における繊維産業にほかならないと思います。繊維産業は総合的な計画的な運営がなされなかったために、各資本家たちが過去のもうけをいいことにしててんでんばらばらに設備をやる、その結果があのような事態、現在のような事態に逢着をしておる。これは繊維相場の推移から見ても、むしろこの一、二年の間は恐慌的であると言っていいと思います。あるいはその過剰投資の様相から見ても、これはもう明瞭であると思う。あるいはそれに関連をして今言っておる操短というようなものを、非常に高率なものを全面的にやらなければならないという点、またそれに関連をしてあそこに雇用しておる女子工員その他を非常に無慈悲にどんどん整理をしなければならないし、大量に整理をしておるという点、これらを見れば、まさに繊維産業における恐慌と言わざるを得ないと思います。これらの点については、むしろ政府の方で非常にはっきりおわかりになっていると思うので、この繊維不況、恐慌の事態をどういうふうに認識をしておられるか、これはまず通産大臣お答えを願いたい。
  15. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 繊維につきましては御承知通りに、二年ほど前から非常に設備の増設が行われまして、これをある程度抑制しなければならぬということはわかっておりましたが、かけ込み増設その他によりまして予期以上に増設されてしまった。従ってもうすでに昨年の春から過剰生産になるということにつきましては、警告もされておったのでありますが、さらに国際収支改善対策とともに、九月から生産調節に入っております。ところが、先ほど申しましたように、まだなかなか業者の方々も踏み切れないというので、事態がおくれて参ったのであります。しかもその当時におきましては、十月以降におけるようなアメリカ景気の下降ということも予想されなかった点もありまして、過剰生産を予想せずに、極力生産調整に踏み切れなかったというような面もあります。またいろいろ監視などにおきましても十分でなかったというようなことで、われわれとしましては、三月末までに終りたいというつもりでやっておりましたのが、それほど徹底されなかったということであります。しかし輸出の面から見ますと、繊維の輸出は昨年は一昨年よりも別に減っておるわけではなしに、むしろふえておるのであります。従ってむしろあくまで根本原因は過剰生産という点にあるのでありまして、ただいま申し上げましたように、さらに監視を強化し、これは具体的に言いますと、ものによって違うのでありまするが、さらに三月に入って操短も強化していくというような割合を、度合いをふやしました面もあるのであります。従ってただいま申し上げましたように、大体においてこの四—六月で調整を終って正常化していこう、こういうふうに考えておるのであります。私は操短が励行されるということになりましたら、大体におきまして、ことに原料、原綿、原毛の輸入も極力押えるということになりましたら、十分その生産調整が行われるというふうに考えておるのであります。もちろんフル運転をやるというところには、これは海外の市況に応じて考えていかなければなりません。従ってその度合いに応じて考えていかなければならぬのでありますが、恒久的な不況、あるいは根本的な構造上の不況というふうには考えておらぬのであります。十分それによって、臨時的と言いましても、ただいま申し上げましたような期間を要するのでありますが、その間におきましては、ある程度の休止に伴いまするいろいろな失業の問題ということは起るのであります。それに対する対策は別途考えていくという考えであります。
  16. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 繊維産業不況、恐慌状態に対する認識がはっきりしていないから、今みたいなぼやけた答弁が出てくるのであります。そこでもう少しこの方をはっきりさしておきたいのですが、これは事務当局でいいですから、まず繊維相場がどういうふうに推移してきたか。特にこれはもう二年間続いておるのですから、いかに推移してきたか、まずこの点を明瞭にしていただきたい。これが明瞭になれば、いかにこれが恐慌的であるかということがはっきりすると思いますので、まず第一にその点をはっきりしておいていただきたい。
  17. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 繊維の各品種ごとに実数を申し上げることはいかがかと思いますから、一昨年のいわゆる神武景気といわれていたころ、繊維製品についてはおおむね非常な高値を示しておったのであります。そのころに比べまして、最近の安値は、一番大きく開いているものは四割くらい安、また三割安というようなものがかなり多いわけであります。大体三、四割安ぐらいの感じになっておるかと思います。高値に比べての安値でありますから、その点は御考慮願いたいと思います。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その程度の答弁は大臣がすればいいので、ことさらに事務当局にお尋ねをしているのは、もっと正確に、もっと具体的に説明をしなさい。
  19. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) お答えいたします。一番不況でありますものは、繊維の中でも化繊でございます。人絹糸百二十デニール、これは取引上の相場でありますが、大体一昨年の夏ころでありますと、高値が二百七、八十円までいっております。今日は安値のところは大体百六十円から百七十円、まあ百七十五円ぐらいが大体の基準の相場というところでございましょう。それからスフにつきましては、スフ綿は当時百五円ぐらいの、大体建値に近い、安定した売り値でございました。最近は八十円前後というところが安値でございます。その他一品々々申し上げるのであれば、またそのつもりでお答えいたします。
  20. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もっと一品々々。
  21. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 二十番手の綿糸でありますと、二百円をこえた相場、二百十円とか、そういうようなところであったかと記憶します。最近で申しますと、百六十円ぐらい、あとは資料を見てもう少し正確に申し上げたいと思います。
  22. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連。ただいまの点についての詳細な資料を午後までに一つ出すようにしてもらいたいと思います。要求いたします。
  23. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 承知いたしました。
  24. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 資料は持ってきているのでしょう。もっと詳細に、その点が非常に特に恐慌的であるかということが、それを出されれば明瞭だと思う。それをもっと具体的に、正確に説明して下さい。(「いいのも悪いのも全部言え」と呼び者あり)
  25. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) あまりいいものはございません。ただいま申し上げたように、綿糸、スフ綿、人絹糸は繰り返しませんが、スフ糸については、たとえば百六十円というのが当時の高値の数字でありました。これは最近で申しますと八十円の中ごろ、八十五、六円というような状況であります。(「半分だよ」と呼ぶ者あり)四割見当であります。(「百六十円の八十円なら半分じゃないか」「そんなところまでごまかさなくてもいいよ」と呼ぶ者あり)たとえば梳毛糸については千二百円見当、こういうものが最近でいえば七百数十円というところであります。(「二十円でも数十円だ」と呼ぶ者あり)それから毛織物、これはいろいろな品種がございますから何でございますが、一番高値であれば千三百五十円というようなところに対して、千円から千百円までの間、こういうようなのが大体最近の値段でございます。大体そういうことでございます。
  26. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その恐慌的な価格暴落、それはとりもなおさず需給の失調という問題であり、さらには、背景的には過剰投資の問題にほかならないと思うのですが、その実情をもう少し明確に御説明願いたい。
  27. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 好況の際に、特に収益の高かった化繊部門を中心にいたしまして、設備が急テンポに増強されました昭和三十年の末と昨年の十月ごろを比較いたしますと、スフ綿については約六割、人絹糸については四割、これはまあ設備の増強のほかに、合理化というような形で生産能力がふえているものもあります。また、綿紡績につきましては、一昨年の十月に設備の規制の法律が施行されましたが、その以前に作っておこう、こういうようなことも手伝いまして、一割くらいの増強になっております。あるいは梳毛糸につきましては、琉毛紡績につきましては二割強、あるいはスフ紡績についてはこれまた三割に近いくらいの、三割以上の増強、ただしこれが法律が施行された後は規制いたしまして、新増設を認めておりません。大体そういうような状況であります。
  28. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お話しのように、たった一年半くらいの間に設備増加が六〇%あるいは四〇%、そういう設備増加が急激に行われている。しかも、それが化繊、それから合成繊維、それから天然繊維、そういうものがてんでに、個々ばらばらにそういうものをやっているから、化繊自体としての需給の失調もさることながら、総合的な繊維の需給の失調が非常にはなはだしいものになっている。しかも、そういう状態であるにかかわらず、今度は新しい設備であるからというので、むやみやたらと各会社に非常に税法上の、租税上の恩典を与えておられる。そういう点において、全く資本家諸君の個々ばらばらな、資本家の一つ一つ——総合的なあれを見ない、利潤追求だけに問題々まかしておかれるから、こういうことになってしまっていると思う。大蔵大臣は、かなり正直にそれらの繊維品についての総合計画がないから困るのだというようなことを言っておられたと思うのだが、従って、粗税措置の問題について、特別に考慮し直さねばならぬということをきっとお考えになっているに違いないと思うが、大蔵大臣はそれらの点をどういうふうにお考えになっているか。
  29. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 税法上の特別措置でありますが、これはむろん私としては、税の体系からいきましても、あるいはまた負担の公平という見地からいたしましても、軽々に許す考えは毛頭持っておりません。が、しかしながら、今日科学技術の進歩発達がきわめて著しいのであります。しかも、日本経済は国際競争にさらされている経済であります。こういう見地に立ちます場合に、特に日本が科学技術において非常におくれをとっている、こういうことを考えます場合に、またきわめて必要なものについて税法上の措置をとることも、これも私はやむを得ない、こういうふうに考えております。問題は、経済自体、たとえば繊維なら繊維について、綿糸、綿布あるいは化繊とか、こういうものの間に総合的な計画をしていることは申すまでもない、これは今日でも相当考えられているのであります。さらに、これを正確な、かつ妥当なものにしなくてはなりませんが、それとはまた私は若干別個である。むろんそういうものができて、その上において税法上の特別措置をとれば一そう効果的であるが、しかし、一方がかりに不十分であるとした場合に、そんならそれを、であるから税法上の措置も全然やめてしまうというのでは、日本経済の国際競争力というものは非常に私は後退してしまう、まあこういうふうに考えているのでありまして、御説の趣旨はよくわかっておるのでありますから、今後も関係当局と十分協力いたしまして、私は総合的な経済の計画化において、計画と言えば語弊があるかもしれしませんが、経済に計画性を与えまして、しかもその上で今後税法上の措置考えていくのが適当であると、かように考えております。
  30. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 繊維みたような消費財の生産部門においてすら、総合的な計画化がこの際大きく積極的に取り上げられなければならないということが明瞭たと思うのですが、その点はもう少しあとにいたしまして、それならばもう一つ聞きたいのですが、そういう過剰生産需給が失調をしてしまって、それを今後合わせるめどをどういうところに置いておられるか。従ってそのまず前段階としての操短が今全面的にどういうふうに行われておるか。それからその操短が、先ほどのお話たと六月で大体完了をする。その後は正常状態に返るというふうに言っておられるが、果してそういうものとして考えていいのかどうか、その点をまず事務当局から、詳しく操短の状況、それから今後の設備をさらにどういうふうに増設その他を考えるか、一応具体的にこまかに御説明を願って、その上で大臣の御答弁を願いたいと思います。事実をはっきり出して欲しい。
  31. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) 綿糸については四月から紡機を一率に三割操短をいたしまして、また二交代十六時間の操業を守らせまして、これを確実に励行させるために、監視員を五十人置くとか、あるいは紡機の一番大事な部分を取りはずして保管する、そういうような措置に出るよう勧告して、業界もこれに同意をしておるわけであります。  それから人絹糸につきましては、これは一—三月にすでに五割操短、これは人絹糸を吹き出すノズルのところを封緘するというようなことをやっております。これは私どもの見るところも五割操短は励行されておると思いますが、これは四六月もこれを継続するということでございます。  それから毛糸につきまして、特に重要な梳毛糸につきましては、綿糸同様四—六月から三割勧告操短ということで、監視についてもほぼ同じようなやり方でございます。  それからスフ綿について、これは四—六月のは、これから最終的に政府としては勧告するわけでありますが、おおむね四割の操短を勧告する手順であります。スフ糸についても、これに伴ってスフ糸の方も過剰がはなはだしいので、四割何分かの操短勧告をおそらく三十一日に勧告することになるかと思います。  紡毛糸については三割操短というものを、これは中小企業安定法に基く調整行為として一年前からやっております。これを継続しております。この方はあまり大きな市況の動揺はありませんが、これを継続するという形になっております。  綿織物、毛織物については、これは中小企業でありますから、従来の中小企業安定法また新しい中小企業団体組織法によってその調整行為として、アウトサイダーも含めて操短が励行される措置をとるつもりでございます。
  32. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それらによって在庫がどういうふうになるのか。そうして今私がお尋ねしているのは、特にそういうことを六月までやれば、それで大体生産調整が終るというめどはどういう需給バランスからお考えになっているのか。さらに、それらを背景にして、今後の増設計画その他を総合的に調整してどういうふうにしようとしておられるのか。これは特に化学繊維だけでなくて、合成繊維に対してどういう政策をとろうとしておられるのか、その辺をもう少し詳しく御説明願いたい。
  33. 小室恒夫

    政府委員(小室恒夫君) まあ何が適正在庫であるか、またどの部分が異常在庫であるかということは、商慣習で判断するよりしようがないのでありますが、大体、ならして正常在庫よりは五割ないし十割ぐらい多い在庫を各部門ごとに抱えておるわけであります。私どもの計算では、早いものは四—六月、またおそいものも七—八月にこの調整行為の結果といたしまして、適正在庫、正常在庫に復するという計算でございます。むろん、これは需給が根本的に基調において改善される、これが四—六月に達成される、こういう大臣の御説明と照応しておるわけでありますが、御承知のように、今在庫という中に、流通段階における在庫が先行き不安、相場の不安のためにほとんどからっぽになっております。従いまして、需給の基調が改善され、先行きの相場について安定感が確保されれば、需給としては相当急激に好転するのじゃなかろうか、こういうふうに私どもは考えておるわけでありまして、何よりも人気を安定させる、相場の先行きに対する不安を払拭し、需給の基調を健全なものにしたい。それは四—六月においておおむね達成できる、こういうふうに考えておるわけであります。また設備の面につきましては、紡績設備及び繊維加工設備につきましては、繊維工業設備臨時措置法が一昨年の十月に施行されまして、これはみんな許可制になっております関係で、過剰設備のある紡績設備については、自来一錘も許可いたしておりませんし、また合成繊維紡績設備につきましては、新しい産業であるところの合成繊維の増産において、ある程度紡績設備の新設を認めて参りましたけれども、これも紡績全体の設備の過剰にかんがみまして、今後はもう認めないという考え方をとっております。また問題の化繊、スフ綿、人絹糸につきましては、これは業界がはなはだしい採算割れに悩んでおる際でもありますので、法律的な規制はございませんけれども、新しく新増設をやろうという計画はこれは一件もございません。現状では一件もございません。ただ合成繊維だけはこれは将来性のある産業でありまして、短期的な不況ということを離れて、長期的に考えていかなければならぬ産業であるというふうに私どもは考えておりますし、また今後の新設される合成繊維で申しますると、羊毛にかわる分野の合成繊維でありますので、これは世一界的にいってもどの品目、どの品種が最も適当なものであるか、メリヤスにはどういう分野、あるいは洋服にはどういう分野、そういうふうなことについて、まだ将来現実に生産が行われ、現実に応用されて品種が定まるというような時期でありまして、こういうものについては短期的な不況にかかわらず、育成し育てていかなければならない、こういうふうに考えておるような次第でございます。
  34. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも在庫が幾らになる見込みなのか、従って需給がどういうふうになるのかという点についての明確なお示しがなくて、結論だけ、四—六には何とか完了しましょうということのお話ですから、私にはその点がどうしても納得できない。それらの数字を具体的にお示しになれば、いかに六月でできないかということかあまりにも明瞭になると思う。これはさらに御説明を願いたいと思いますが、最後に出ました合成繊維の設備増強の問題、これは、今局長の話では、さらにこれを積極的にやるという問題になりますが、そうすると、これに関連して、さっきお尋ねをした租税の特別措置の問題が出て参る。ところが、もっとこれらの計画を各社別のものを総合的に考え、さらには他の繊維との関連、需給状況を考えれば、もっとこれらの問題は適正に規制をする必要が、資金的な面からも出て参るのみならず、租税措置としては、今までのあのばかげた甘い、大資本家だけを優遇するあのやり方については、この際もう一ぺん再検討しなければならぬ問題も出て参っておると思いますが、これらの点は、大蔵大臣はどうお考えになります小。
  35. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 大体の考え方は、私も異論ありません。特に、まあ今日もそうなっておるのでありまするが、たとえば税法上の特別措置をやりました場合に、これはそれが特殊な新しい工業であるという意味からも来るのであります。しかも、それが国家経済に、あるいは国民生活に必須なものである、そういう意味で税法上の恩典も与える。ところが、その結果において、その税法上の恩典の結果、会社が予期しない利益をあげるということもあり得るのであります。そういう場合は、今日もさようでありまするか、やはり一定以上のものについてはさらに国庫に納付させる、こういうふうな措置考え、今日もそういうふうな考え方を税法上に織り込んでおるのでありまするが、それがどういうふうな割合が適正であるか等について、さらに私は厳密な査定を加えていきたい、かように考えております。
  36. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこで、この需給調整の問題ですが、需給調整をもう少しこれは総合的にやらなければならない問題になると思います。これはまあお示しがないのでよくわからないのですが、どうしても消費需要を相当引き上げなければならない問題と、それから輸出の問題を考えなければならないという問題、その場合によく一般論として、値段が高いから輸出が出ないから、消費をふやしてそういうものを上げるようなことはこの際やってはならないというお話でありますが、そうでなくて、これは先ほどもちょっとお話に出たように、今や価格水準の問題をどうする、輸出に関連して価格水準一般をどうするという問題もさることながら、個別の商品について国際価格あるいは競争力をどう考えるかという問題に来ている。その場合に、繊維の関係はむしろ価格を上げる、おるいは少くともストップするということが必要であり、そのためには消費をふやす、輸出をふやすということが必要であると思う。それを消費をふやすということは、大衆の購買力あるいは農村の消費力をふやすというむしろ問題であり、さらに輸出を伸ばすという問題は、これはいろいろ各方面に行詰まっている。ところが、幸いにして新しい繊維その他については、中共、ソ連からの需要が相当出て参っている。ことに、昨今は綿糸布についてすら、中共が引き合いを出してきている。そこで、打開の一つ方向は、輸出の方向はこういう点に考えなければならないと思うのですが、これをどういうふうに通産大臣はお考えになるか。
  37. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) お話しの通りに、繊維はむしろ安くなり過ぎておるのでありまして、これを少くとも安定し、あるいはもう少し引き上げていく。その根本は過剰生産を押えて正常在庫に戻すということでありますが、一面におきまして輸出を伸ばしていくということは、これは当然やらなければならぬ問題であります。また、現に輸出は減っておらないことは、先ほど申し上げたような状況でありますが、さらにこれを伸ばしていくということにつきまして、いろいろ宣伝その他につきましても、われわれ考えておるのであります。  ただいまお話しの中共におきましても、もちろん輸出し得るものにつきましては極力伸ばしていかなければなりません。それに関しましては、中共については、御承知のように、輸入するものを考えていかなきゃならぬ。その点におきまして、われわれとしましても極力、貿易をバランスさせるという意味におきまして、他の方から中共に振り向けられるものについては振り向けていきたい。またさらに、現在におきましては、御承知のように、輸入意欲もあまり強くありません。従って、さらに輸入をふやせるものについてはふやしていきたい、かように考えながら、外貨予算につきましても、あるいはその他の場合におきましても、極力輸入を促進して、そのかわり輸出をしていくというふうに考えておるわけであります。
  38. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 輸出振興に関連して、価格の問題をどう考えるかという点は、すでに繊維において一つ明瞭な問題が出てきている。これが物価水準その他の方式としても、これまでやられた予算編成の基本方針その他を変えなければならない、物価に対する考え方を変えなければならない一つのポイントになっていると思うのですが、この全般的な物価政策の問題は、後ほどさらに質疑をしたいと思いますが、今お話しのように、すでに繊維品の輸出の問題についても、大きく中国の市場を考えなければならないという問題が出て参っております。そこで、中国との貿易の問題、これに関連をして、日本貿易構造をこの際変えるということが、むしろ輸出増進の輸出規模、貿易規模拡大の非常に大きなポイントになるし、ここに輸出振興の全力を注がなければならないという問題が出て参るし、従ってまた、政府の輸出増進の方針が見当違いであるという問題も、これに関連をして出て参ると思いますが、この点ももう少し後に議論をすることにして、  その前に、もう一つお聞きしておきたいのは、繊維産業は、今申したようなことから、恐慌状態。しかも、これはなかなか簡単に問題は完了しない点であるということが、はっきりなって参っていると思いますが、特にこの繊維産業における雇用問題、人員整理の問題は、もっと大きな社会的な社会問題化しておると、こういうふうに考えますが、過去においてこれらの人員整理その他の問題がどういうふうになってきたか、今後これがどういうふうに進むとお見通しになっておるのか、これに対して労働省としてどういう対策をお考えになっておるのか、その点を御説明願いたい。
  39. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 繊維につきましては、昨年十二月から非常に顕著な傾向が見えて参りました。詳細な数字は、事務当局からお答えをいたします。全般の就業状態でございますが、三十二年、これは暦年でございますが、前半は非常に好調でございました。後半は、御指摘通りの事情によりまして、後退をいたしました。しかし、三十二年暦年で通算をいたしますると、なお、三十一年の暦年に比べて上位の成績を示しているわけでございます。しかし、三十三年に入りまして、三十三年の一月は、大体一月という月は例年失業者が非常にたくさん出る月で、失業保険の初回受給者が毎年十万名くらいございます。本年は十四万九千くらいになったのじゃないかというふうに考えております。季節的な要素を加味いたしましても、なお相当の増加を示しておるわけであります。三十二年、今度は会計年度で通算をいたしまして、当初予定をいたしました失業保険の支払い準備で間に合う予定でございます。それから、完全失業者は、三十二年の十二月末は五十三万でございますが、三十三年三月には五十五万くらいになるのではないか。それから三十三年は、就業者の増加は大体百十万程度で、その中で雇用に回りますものが六十五万、雇用外の就業者が四十五万と見込まれておるわけであります。  で、五カ年計画では、いわゆる就業構造を近代化するという大きな目標を立てているわけでございますが、その就業構造の近代化という点から見まするならば、三十二年におきましては、相当数第一次産業から減少いたしまして、第二次、第三次のそれが増加を示しているわけでございますが、三十三年におきましては、遺憾ながら、第一次産業からの減少というものはそう大きく見られず、第二次、第三次におきましても、三十二年度に見られたような増加は期待できないのであります。しかしながら、長期経済計画におきます年々の雇用増、平均八十万という計画から見ますると、三十二年度は百十五万の雇用増を見ました。三十三年度は六十五万でございますが、合算をいたしまして年度に割りますと、八十万の増加の予定という基本線はくずしていないと、こう思っているわけであります。三十三年後半以降の景気好転というものに、期待をかけているわけであります。しかし、三十三年度の失業の増大に対する施策といたしましては、御承知のように、失業対策事業の二万五千人増、それから失業保険の支払い対象の約七万人増をもって、楽観はいたしておりませんけれども、遺憾なきを期し得られるものではないかという見通しの上に立っておるわけでございます。  数字は、今、事務当局から御説明申し上げます。
  40. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 事務当局の話をもう少し具体的に聞きますが、その前に、私は、雇用の一般的な問題、今大臣のお話しの一般的な問題に入る前に、まず繊維産業における雇用が、そしてまた特に人員整理がどういうふうになっているか、この点を私は、事務当局でいいですから、もう少し先の関連において、詳く御説明を伺いたい。
  41. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お答えいたします。繊維における企業整備関係でございますが、これは昨年の夏以降漸次増大いたしまして、昨年の九月が二千三百九十、十月千七百、十一月千二百、十二月に至りまして三千六百というふうに増大して参っております。これが端的に現われますのは、失業保険の初回受給者についてでございますので、この点について御説明申し上げますと、三十二年、昨年の八月には七千二百、九月に六千二百、十月六千八百、十一月六千二百、十二月五千百、三十三年の一月に一万三千と増大いたしております。  なお、化繊につきましては、昨年十月にいわゆる一時解雇——これは期限付でございますが、実施いたしまして、その関係で初回受給者が、前月の九月の五百五十一に対して、二千三百というふうにふえております。さらに、これが第二次といたしまして、本年の一月に行われました結果、三十三年の一月には五千四百というふうに増大いたしております。  従って、繊維関係全体として、これらを含めまして、今後におきまして来年までを通じまして約三万四、五千の離職者が出る、こういうふうに考えております。
  42. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは織物の関係も入っておるのですか。特に織物の関係はどうなんです。
  43. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 全部含めてでございます。
  44. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お示しのように、繊維においては非常に大量な人員整理が行われつつある。しかも、これはまだ始まっただけで、本格的に操短をやられるのがこれからでございますから、これに関連した失業が相当出て参る。特に、お尋ねしたら、織物もこれに入っておるという話ですが、しかし、織物は数字としてはそれが非常に過小に、あるいはほとんど入っていないと言ってもいいくらいな数字になっておる実情じゃないか。むしろ、たとえば福井、石川等においては、解雇もならず、しかし、操業をやめておるんだから、賃金も払われず、半殺しの状態に置かれておるというのが現在の実情であると思う。そこで、こういう織物におけるそういう中小の企業における雇用の状態がどういうふうになっておるか、これは一つ事務当局にもう少し詳しく説明願いたい。
  45. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 織物関係でございますが、先ほど申し上げました三万五千という数字の中に、絹、人絹織物で約一万五千、綿、スフ織物関係で五千を見込んでおります。
  46. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 いや、僕が聞いておるのは、そういう数字に現われない雇用の状況はどういうふうになっておるか。これはちっとも数字に現われてこないのだ。その事情はどういうふうになっておるのか。
  47. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 数字でお答え申し上げましたので、数字に現われない状況、特に失業保険等の初回受給者として現われない面も相当あるかというふうに考えておりますが、この詳細は結局、安定所の窓口に出てくる求職者がどうなったかということでまあ類推するよりしようがないのでありますが、これにつきましては、求職者は漸次増大してきているというような状況でございます。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そういう問題を、ただ数字に出てきている問題だけを検討しているというところに、むしろ単に、雇用の問題をそういう非常に事務的な形においてしか扱っていない。これは事務当局としては当然であるかもしれませんが、ここに雇用の問題に対する、労働問題に対する政治が何らなされておらないということのあらわな証左が出て参っておると思うのですが、この点はもっと一般的な問題として論じたいと思いますので、後に譲りますが、一体かような大規模な人員整理が行われておる。これはまだ、繊維産業でありますし、従って女子であるから、まだ問題はそれほど大きくなっておりませんが、これが各関連産業に、化繊だとか、紙パルプ、あるいは硫黄、そういうものに波及をして参るし、さらには、もっと今後の雇用の傾向は、今度は鉄あるいは機械器具産業、そういう本格的な、しかも成年男子、年とった男子まで含んだものへの雇用なり失業なりという問題に、問題は移って参ってきている。そこで、この問題を重大に考え対策をとらなければならない問題が出て参ると思いますが、その前に、先ほど大臣が御説明になった点について、もう少しその……  非常に大臣は楽観的な答えをしておられるのですけれども、この雇用の問題がなかなか、今、大臣がお答えになっているように、楽観的な問題じゃない。特に昨年の下半期から今年の年末年初にかけてのきざしを見ると、非常に大きな問題をはらんでおると思う。そこで、この点をもう少し明瞭にして参りたいと思いますが、一体、まず第一に、事務当局にお聞きをしたいのは、雇用指数——雇用の問題がもっとどういうふうになっているか、年間の問題その他を若干お話しになりましたが、これをもっと、下半期からさらに最近の年初の傾向から見て、今後どういうふうにこれを見通されるか、それらの点を、まず雇用の指数の問題を中心にして、まず一つ御説明願いたい。
  49. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お答えいたします。毎月勤労統計による常用雇用の指数でございますが、これは三十一年から三十二年の初めにかけまして漸次増大して参ったのでございますが、昨年の六月、七月の一二一・一というのを頂点といたしまして、八月に一二〇・八、九月に一二〇・五、十月に一二〇・一、十二月に一一九・六というふうに、漸次三十人以上の雇用におきましては減少して参っております。ただ、この十二月の一一九・六という指数は、前年度同期と比べますと、なお四・四程度上の水準にございますが、傾向といたしましては、昨年の下半期以降下降の傾向にあるわけでございます。こういう状況を反映いたしまして、完全失業者等の数につきましても……。
  50. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはあとからでいい。雇用の……。
  51. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) さらに、臨時日雇いの雇用指数について申し上げますと、これは多少季節的な関係がございますので、単に数字の羅列のみでははっきりつかめませんが、三十一年と三十二年を比べました場合には、なお七・二程度の上昇にあるのでありますが、上半期と比べました場合には、上半期には約一三一ポイント程度、下半期は一二三・四ポイント程度というふうな状況でございます。
  52. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 問題は、最後にお触れになった臨時の雇用の激減の問題だと思うのでありますが、これをもう少しはっきりすることが、いかにも雇用の問題の深刻化という点を明瞭にするゆえんであると思うので、その点をはっきりしていただきたいのは、臨時の雇用が七月から十二月においてどういうふうに減少をしているか、それから昨年の十二月と今年の十二月との対比においてどういう減少を示しているのか、ここに雇用の問題の悪化が集中的に現われている。
  53. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 指数で申し上げますと、ただいま申し上げましたように、昨年の五月において一三一・七、六月において一二七・九、七月において一三五、八月は季節的な影響がございますので一五〇・三と上昇いたしておりますが、九月は一二五・八、十月は一二三、十一月は一二四、十二年は一四二・四、これも季節的な影響でございます。前年度とその十二月について比べますと、前年度は一五八・八でございますからして、一六・四下回っております。平均といたしましては、三十一年暦年の一二七・二に対して一三四・四、七・二上昇いたしております。
  54. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私があなたの方の資料をもらって計算をしたところによると、臨時の雇用の七月から十二月までの減少率は一六%、一昨年十二月と対比した昨年十二月、これは二二%減少をしている。非常に大きな雇用の減が、すでに一年あるいは半年の間に現われている。大臣は雇用の年間を見ると大したことはないとおっしゃるが、同じ数字で、見方によってこういうふうに違うのです。この深刻さをはっきり認識をしなければ、現在の不況の問題、雇用対策は出てこない。われわれは、これを基礎にするから、思い切った政策転換がなされなければならぬということを強調しているゆえんであります。  もう一つ聞きますが、この企業整備の状況、これを先ほど大臣が大まかに説明をされましたが、これをどういうふうに判定をしておられるか、もっと詳しく説明を願いたいと思います。事務当局から。
  55. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 企業整備の状況でございますが、これは昨年の七月から、個所数におきまして、整理人員におきまして、漸次増大を示して参りました。七月において三百六事業所に対して一万四千人、八月には五百十七事業所に対して一万八千六百、これは駐留軍関係の整理も含まれている関係でございます。九月から十一月までに大体四百八十六、四百四十三、四百九十八、四百台で、人員としては二万人でございます。さらに、十二月に入りまして、個所数六百八十四、整理人員三万三千、一月は繊維等の関係もございまして、個所数八百十、人員四万一千ということでございます。
  56. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、整理の事業所数あるいは整理人員数を、昨年一カ年間の累計にして、もう一ぺん、どれだけになるのか。昨年の同期とそれを比較して、どういう増加の傾向と判定しておられるか。
  57. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 三十一年をとりますと、整理人員で一万四百九十平均でございます。
  58. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 累計を聞いている、年間。
  59. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 年間は十二万人でございます。それから、三十二年の月平均一万五千でございますから、十八万でございます。
  60. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お話しの通りに、昨年十二万であったものが、企業整備の結果として十八万、非常に増加を示している。大体前年同期より五割程度私はすでにふえているんじゃないかというふうに計算をしているんですが、とにかく整理されていくものが、数字においてすでに非常に大きく現われている。ところが、これは、先ほど言いましたように、数字で現われないものも相当多いし、それから不況が本格的になったのはむしろ本年度からでありますから、それを考えると、本年度は非常に大きな数字を予想しなければならないという問題が出て参ります。従って、この完全失業がどうなるかという問題ですが、これは先ほど大臣が簡単にお述べになりましたから、私はこれをあらためてもう少し詳しくは聞きませんが、ただ問題は、完全失業として現われてくるのはもう少しおくれるし、それから、いつも言われるように、完全失業は非常に過小に数字に現われて参る。もっと正確に表わしておるのは失業保険の関係であると思うのですが、この失業保険の離職票の受付件数、あるいは受給の実人員というようなものが、七月以降にどういうふうにふえてきておるか、特に昨年と対比してどういうふうな様相を示しておるか、これをもっと御説明願いたい。
  61. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) 失業保険の実人員並びに初回受給者でございますが、昨年の七月までは大体、六月が二十七万二千、七月が二十七万八千という水準でございまして、初回受給者は月五万四千。八月以降は、八月が二十八万一千、九月が二十八万五千、十月が三十万二千、十一月が三十一万一千、十二月が三十四万二千、本年一月が四十四万六千ということになっております。なお、初回受給者につきましては、七月が五万四千、八月が四万九千、九月が四万八千、十月が六万六千、十一月が六万五千、十二月が八万一千、一月が十四万九千、こういうふうになっております。本年の一月におきましては、受給実人員におきまして十万四千という非常なふえ方を示しておりますが、この十万四千を示した内容につきまして検討いたしてみます。と、これは京浜、中京、京阪神、北九州、この四大工業地域の七都府県におきましては、これが四千人程度の増加でございます。その他の地域において約十万ふえております。  それは二つの理由による。一つは大臣が先ほどお話しになりました季節的な影響、もう一つは繊維の操短、この二つであろうと存じますが、その関係で一月の初回受給者十四万九千に対しまして、短期のいわゆる季節的な離職者として失業保険をもらう者、これが約九万三千そのうちに含まれております。残りの五万のうちの約二万程度が繊維関係、こういう工合になっております。
  62. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 私のいただいておるあなたのところの資料では、一月に新規が十五万四千。この数字は、不況が非常にひどかった二十九年の同じ時期には十二万ですから、あの不況が非常にひどかった二十九年の当時に比べても、さらに高い数字、十五万という数字を示しておる。しかも、先ほどから申しておるように、この失業その他の問題は今ようやく始まっただけであって、これからむしろ全面的に出て参る問題になる。そうだとすると、非常に大きな問題になってくると思う。特に、三十三年度には特殊な原因に基くいろいろな失業が考えられなければならないと思う。よく言われておるように、駐留軍の問題、あるいは石炭企業合理化の問題、あるいは繊維企業の設備制限の問題、あるいは製塩施設の問題、これらの特殊な問題が折り重なって出て参ると思いますが、これらの失業数をどういうふうに予測をせられておられますか。それらをひっくるめて、一体年間の失業予測をどういうふうに考えられるのか。先ほど大臣は非常に少い数字を示しておられますが、なかなかそういうものでは包み切れない数字だと思うのですが、まず事務当局の方からお答え願いたい。
  63. 百田正弘

    政府委員(百田正弘君) お答えいたします。御指摘になりました特殊な原因に基く離職者の見込みでございますが、駐留軍関係につきましては大体三万ないし四万、こういうふうに考えております。石炭鉱業につきましては一万一千、繊維関係については千八百というふうな数字でございます。その他、先ほど申し上げましたように、主要産業における離職見通しとしては、われわれが一応今明年中に把握いたしておりますものが七万四、五千程度と見て、合計まあ十一、二万というのが新しく出てくるのではないか、こういうふうに考えております。
  64. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それらの数字を私の計算によると、特殊原因に基くものだけでも十四、五万出る。これはまあこまかくなりますから、議論はよしますが、そういう問題があり、さらに一般的な意味において全面的な失業増加があるということになれば、先ほど大臣の見込まれた数字なんというものは、とてもとてもそんななまやさしいものでないと思うのですが、その点は大臣、どういうふうにお考えになりますか。
  65. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 私は当初から、明年度の失業及び雇用の状態の見通しについて、決して楽観的な立場で申し上げておるわけでございません。従って、新規雇用者の増も、新規就業者の増も、三十二年よりはかなり低く見て、特に新規雇用者は、三十二年度におきましては百十五万人程度の実績がございましたが、それを六十五万と見ておるわけでございまして、決して楽観はいたしていないのであります。  それから、新して出て参ります失業者の増加に対する施策は、現在のところ、失業保険の支払い準備を七万人増、それから失業対策事業の対象人員を二万五千人増の予算を計上しておりますほか、公共事業費の増大あるいは財政投融資の増大に期待をいたしまして、臨時工その他の失業の問題の処理を期待しておるわけであります。  それから、数字に現われてこない中小企業の雇用状態、これはわが国の就業構造の基本的な困難な問題でございまして、この潜在的な失業者と申しますか、不完全就業者と申しますか、そういう状態の改善ということが、雇用政策の基本でなければならないと思っておりまするし、長期経済計画におきましても、それを目ざしてやっておるわけでございますけれども、それにつきましても、三十三年度はその速度を変えなければならないということを申し上げておったわけでございます。
  66. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 この雇用の面において相当問題があることは、労働大臣も、今お話しの通りに、かなり考えておられるようだが、非常に政治的な発言として、大したことはないのだというふうに、まあいろいろ言いくるめようとしておられるとしか思えませんが、おそらく失業は、あなたは今、昨年度五十二万が今年度は六十五万、従って十二、三万ふえるというふうに言っておられるが、もっとこれは事務的に冷静に算出をすれば、おそらく二十万から三十万、数字に現われるものだけでも二十万から三十万増ということは不可避だと思う。来年のこの席で、もう一ぺんその点ははっきり数字をもって対決をいたしたいと思いますが、いずれにしても、そういうふうな状況である。  そこで、私は今ただ単に一つ、消費財生産部門の一つの典型的なものとして、繊維産業を中心にして、日本不況の様相なり問題点をいろいろ考えて参りましたが、これはさらに、生産財の代表的なものとしての鉄鋼業を中心に、同じような問題を掘り下げていくと、事態はもっと深刻であることが明瞭になると思う。さらに、これはこれまでの問題でありますが、これから不況は機械産業、それからエネルギーの問題等に移って参ります。従って、そういう意味で非常に不況は全面的になってくる。それらのことを考えますと、先ほど大蔵大臣や企画庁長官考えられたような事態ではなくて、非常にむずかしい事態であるということがおのずからはっきりなってくると思うのであります。  そこで、そういう事態に当面をして、それでは政策としてどういうふうなことを考えなければならないかという、いよいよ本論に入ってくるのですが、どうも時間もないようでありますから、最後の方は端折って、二、三お尋ねをいたしますが、まず第一にお尋ねをしたいのは、先ほどちょっと当初の方で出て参りましたけれども、まず第一にわれわれが考えなければならないことは、金融政策をここで考えなければならないという問題、もっと根本的には、これまでの政府経済計画あるいは予算の編成の前提になっていたのは、もっぱら国際収支の問題に力点を置いてお考えになっておるが、問題は今やそこから、過剰生産生産調整産業調整の問題に、非常に基本的な問題に入ってきているし、従って、国内均衡の問題を考えなければならないというところにきておる。国内均衡の問題として、財政としては、支出以上の収入を一応形式的にはバランスしておりますが、実質上は超均衡予算、それから資金の総合的な需給計画としては千二百億の散超を考えておられるが、それに見合って一千億の日銀券の収縮等をお考えになっておるから、ここでは大体収支とんとんという考え方、実質的にはそういうことにしようとしておられる。そういう点から、公定歩合の問題等についてはなかなかお触れにならないようになっているが、今やそういう国内均衡の問題を考えて参らなければならない点に到達をしておる。  さらに物資全体の需給の問題を考えなければならない。それには、生産を総合的に、計画的に規制をしなければならない問題と、他方には、さっき繊維の問題で示したように、あるいは生産部門においてはもっとそういう問題が出て参ると思いますが、消費をいかにふやすかという問題、さらには、貿易をどうふやすか。しかも、その貿易も、ただ価格を切り下げるのだとか、あるいは合理化するのだとかいう問題としてではなしに、もっと価格はストップするのだ、あるいは上げるのだと、一つ一つの個別商品の問題として問題を考えていく、そして貿易構造の問題として問題を解決していかなければならないというような問題に転換をしてくると思いますが、まず、その金融政策、従って、公定歩合の引き下げの問題、これはもうこれをやる決意をされなければならない時期であると思うが、どうお考えになるか。  さらに、金融の問題としては、従って一体一千二百億の散超とそれを全部吸収をするというような考え方、それを基本にした資金計画等でいいとお考えになっているかどうか、その点をもう少し考え直さなければならない時期じゃないか。ことに、滞貨融資の問題なり救済融資の問題等も出て参りますが、それをどういうふうに考えられるか、それらのまず金融の問題からお尋ねをしたい。
  67. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えしますが、私どもが、たとえば繊維について金融をそう楽にしていなかったという根本原因は、やはり生産の面において需給が均衡を得ていない、こういう事態において金融すれば、ますます不均衡を助長して、いわゆるオーバー・プロダクションに拍車をかけ、問題の解決にならない、こういう見地に立っておったのでありますが、しかし、だんだんと生産調整ができまして、生産面において需給の均衡を回復すると、少くともその見通しが確立すると、こういうふうな場合におきまして、お話のように、その価格も国際水準に比べてあまりにも低過ぎる。言いかえれば、非常に安く物を売って、日本が非常に損をしておる。のみならず、そういう結果、価格が常に不安定である。これでは貿易も容易でない、できない。こういうようなことを捨て置くわけにいきませんので、そういう生産調整ができた上は、私はそのときにあるストックというものは需給ズレにすぎないという見地に立ちますから、これは私はファイナンスすべきだという立場に立ちます。従いまして、今後におきましては、そういうストツクに対して金融もつけていく、そういう基礎が固まったものについて金融をつけていくということは、これは私どもとしては、当初から考えておる一つ金融の施策であるのであります。  それからもう一つは、消費についての問題があったと思います。要するに、生産力が非常に拡大されておる。物の生産はふえておる。ストックも従って生ずる。それなら、この状況をどうして打開するかといえば、結局有効需要をどこにいっ求めるかというところに私はあると考えておるのでありまするが、私の考えによりますれば、日本経済の基盤からいたしまして、これは何としても輸出ということに日本経済は依存するのでありますから、こういう事態に国内的消費に有効需要を求めるかということについては、非常に慎重であるのであります。なぜかなれば、これはやはり資本の蓄積というものを阻害するのみならず、そのことからやはり全般的な物価騰貴を招来する。この物だけは使ってもよいが、この物は使って悪いというような行き方は、国内消費においては、私は統制をとらぬ限りは容易でないという見地に立ちますがゆえに、それはあまり私はとらない。従いまして、それならどこに有効需要を求めるかといえば、私はやはり、先ほど申しましたように、輸出に日本経済があるという以上は、なるべく私は将来の日本の輸出市場を育成確保する上からも、海外に今日あります商品がはける方法を考えていく、同じ消費にしても、その方が日本経済の将来に対して、どれほど裨益するか。そうして、そういうマーケットは、今日東南アジア等において非常にある。ただ、これには購買力が乏しいというところに難点があるのでありますが、これは私はまた考えようによっては解決の道もあると、かように考えておるのでありまして、そういうふうな行き方において、私は今後やはり今日のストックの消化ということを考えておるわけであります。  それからもう一点は、公定歩合の問題ですが、これは私は今日の事態においては、まだ考えるのは時期尚早であるという見地に結論的に立ちます。なぜかと申し上げますれば、今日日本銀行の貸し出しだけを見ましても、六千億に及ぶ貸し出しが出ておる。なお、いかに資金に対する需要が大きいかということも現われておるのでありまして、私はやはりこの日本の金利というものは、日本経済が輸出に依存しておりましても、輸出というものが継続的に拡大されていくという見通しが立って、その面から国内市場は金融をゆるめる、市場金利も下げる、そういうふうな事態を招来させるようにして金利政策考えていくべきであると、こう考えておるのでありまして、今すぐに日本銀行の公定歩合をどうということは考慮に上しておりません。
  68. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その輸出に重点を置かなければならぬという考え方、これも一つ考え方であると思うのですが、先ほどからいろいろ申し上げたように、輸出に重点を置かなければならないというときに、それをどういう意味で重点を置くかということにあなた方のピントのはずれがあると思う。先ほどから言っておるように、輸出に重点を置かなければならないということは、あなたはやはり依然として国内消費を切り詰めて、そうして積極的な投資をやって、そうして国内を細らせておいて、外に押し出していくというような政策、しかも外に押し出していくのは東南アジアだという、これまでと変らないずっと一貫した考え方を持っておられるのだが、先ほど来いろいろ問題を指摘したように、問題はそういうところにあるのではなくて、むしろ価格をどう適正に引き上げるか、あるいはストップするかという問題、さらには輸出方向の問題にしても、貿易構造を変えて、東南アジアその他にはもうすでに限界があることが、この数年来においてはっきりわかってきた。そうして、今後も非常に悪くなることも考えられる。その場合に、中国あるいはソ連等もひっくるめて、特に中国の貿易をどう打開をしていくかということに重点を置かなければならない。先ほど、すでに繊維においてそういう問題が出てきておると言いましたが、鉄鋼業においても同じような問題が出てきておる。輸出の相当な部分を中国にしなければならないし、それとの関連において、鉄源を、鉄鉱石にしても、さらには特に石炭にしても、向うから相当多量に入れなければならぬという問題が出てきておる、あるいは機械器具、さらには大きなプラント輸出の問題についても、今や大きく中国の市場が開かれなければならないという問題になってきておる。それとの見返りに、大豆の輸入の問題を積極的に大きく考えなければならない。これまで、ほとんど大部分をアメリカに依存していた大豆の相当な部分を、あるいは大部分と言っていいくらいに向うに切りかえてしかるべき状況になってきておる。そういう問題として輸出の問題は考えられなければならないと思います。また、輸出商品の価格の問題でもそうですが、たとえば、硫安一つをとって見ても、硫安の値段を下げるという問題は、今や、国内の消費を切り詰めて、従って海外に安売りをするという段階よりも、国内の消費もふやしながら生産規模をどう拡大し、現在の設備能力その他との関連において需給のバランスをどう適正に考えるか、内需も相当ふくらましながらどう需給のバランスを考えるかという形において、硫安の中国への輸出を考えなければならないという一つ一つの問題になってきておると思う。そこで、全般的な政策の前に、まず一つ通産大臣お尋ねをしたいのは、鉄鋼業の鉄の輸出、それから鉄源の輸入の問題として、大きくこれはもう一ぺん鉄鋼業の総合的な長期的な政策考え直される必要があるの、じゃないか、これまでもよく言われておりますように、インドの鉄鉱石と中国の石炭とを結んで製鉄業を興すということがアジアにおける非常に大きな問題になっている。幸いにして、日本は、それに非常に格好な地理的位置に位しておるのだから、そういう問題として、大きく政策転換の問題として、ここに取り上げて考えなければならない状況であり、時なのである。そういうようにお考えになるかどうか。  さらに農林大臣にお聞きをしたいですが、先ほど申しました大豆の輸入の問題をどうお考えになるか、さらには、硫安の対策を、特に輸出あるいは価格引き下げの問題等と関連をして、どういうふうにお考えになるか、それらの点を各大臣から御答弁を願いたい。
  69. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 先ほどの私の答弁を若干敷衍しておかなければならぬと考えますので、発言を求めたわけであります。それは、私が、今後の金融政策経済政策の基本的な点を輸出の増大ということに置かなくちゃならぬということを申しました。ところが、それがいかにも国内需要を抑制して、そうして国内を非常に苦しめてやるかのような御発言がありましたから、これは、私このままには了承しかねる。それは私は、佐多委員なるがゆえにおわかり下さると思いましたから申し上げなかったのでありまするが、滞貨について、今後生産の基盤が確立すれば、いわゆる需給が均衡になれば、滞貨についても私は金融をつけていく、この一言でも、国内需要を抑制するというのではない。ここに私は購買力とバランスをしていく、私は、そういうような一点をとりましても、国内的にも今後十分こまかい配慮を加えていくということを申し上げておるわけでありまして、何も、いかにも国民を苦しめて、何か、海外輸出、海外輸出、そんなことは毛頭思っておらない、バランスの問題であります。特にこの機会でありますから私は釈明をしておきます。
  70. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 製鉄業につきましては、われわれは五カ年計画を立てて、設備の増設なり、また高炉、転炉というようなもので増設計画を立てておるわけでございます。それによりますと、当然鉄鉱石につきましては、相当量ふやして海外に求めていかなければなりません。また、現在買っております地域も、今後むしろフィリピン等におきましては、さらにふえることは期待できないという地域がたくさんあるのであります。そういう意味からいたしますと、われわれも、インドの鉄鉱石を入れるということにつきましては、前からいろいろ計画をいたしておるのでありまする御承知のように、最近調査団も派遣し、また、長期契約について、そのかわりに投資をするというようなことも考えて参っておりまして、一応の口火を切るというような段階になっておりますことは御承知通りであります。また、もちろん石炭につきましても、国内で得られないような良質の石炭につきましては、これはさらに中共等からも入れようというふうに考えておりますので、これは、大きな政策転換というよりも、当然やっていかなければならぬ計画的な問題であります。これは政策転換とは考えておりませんが、将来十分そういう点を考えていきたい、かように考えております。
  71. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 大豆の問題から先に申し上げます。三十三年度の機械やら鉄鋼の輸出の金額が相当大きなものとして今後出てくるのでありますが、これに見返るものといたしまして、鉄鉱石とか石炭とかを輸入いたしますけれども、もっとこれと引き合いになる問題は、大豆の輸入じゃないかと思うのであります。大体今予定されておりまする鉄鉱石、石炭の輸入の金額と、それからこちらから輸出するものとの差し引きをいたしますると、その残りが、かりに大豆を輸入してバランスをとるとすれば、約三十万トンぐらい輸入するということになる。まあ数字だけの問題であります。今までは二十万トンほど輸入いたしておりまして、これは食糧に充てられております。御承知通りであります。これは、中国の大豆が食糧用に向いておって、油脂用としては少し性質が劣るというので、食用だけにこれが充当されておったと思うのであります。かりに、三十万トン輸入するようなことになりますると、残りは油脂用になるのだと想定されるわけでございますが、これはどういうふうになりますか——油脂用の大豆とすれば、競争相手もありますし、これは、買い入れの方式は、グローバル・クォータで、世界的な市場価格で買い入れるということでやるわけでございます。これから先は、商売人の間の努力いかんによるということになりまするが、これらは、両国の間の話し合いがいろいろと今進んでおるようでございまして、だんだんと形が整っていくのではないかと思っております。  次の肥料の問題、特に硫安の輸出の問題でございますが、これは四十万トン、本年の肥料年度では中国に輸出することになっておりますが、これは、さっき内地の需要を圧迫して出すようなことなく、もう少し堂々と大いに生産を盛んにしてというお話でございますが、御承知のように、内需優先の方法は必ずとっておりますし、内需を圧迫するようなことは全然いたさないで、その残りを輸出する。大体ことしは七十万トンから八十万トンにかけてのものが輸出できるだろう。そのうちの四十万トン、約半数が中共へ向けて輸出されることになるのでございますが、ことしは世界的にと申しますか、国際競争が激しくて、各国からの売り込みがどこにでもありましたような関係で、だんだん値段をたたかれて、実際は内地の基準価格を割って契約をしておるというような状態でございますが、この肥料の生産をもっと見直すべきものじゃないか。値段をもっと下げて、国際場裏にもっとどんどん出せるようなものにしなければならない。それには今日の値段に換算いたしますと、内地の基準価格が五十五、六ドルになりますが、これを少くも四十ドルか、四十五ドルぐらいまで引き下げられるのではないか。引き下げられる方法があるのじゃないかということで、今せっかく検討中であります。そういうこともいたしまして、内地の価格を下げ、また、世界の市場にも送り出すというようなことにいたしたい、こういうふうに思っております。
  72. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 佐多君、時間ですから。
  73. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もうあと、ちょっと……。  そこで、そうなりますと、特に硫安の値段を下げるという問題は、電力料金の問題にも関連をしてくる。そこで、私は総合エネルギーの対策を同時にいろいろ質疑をしようと思いましたが、時間がありませんから、これは省きます。ただ一点だけお尋ねをしておきたいのは、総合エネルギーの需給あるいは価格の問題として考えなければならないことは、価格を引き下げなければならないという問題は、こういう点にこそ有効適切な政策をやられることが必要だと思う。そこで、三割頭打ち制の問題も持続しなければならないのみならず、さらに強調をしなければならないし、あるいは東北、北陸の電力料金の引き上げの問題も、これはストップして、むしろ全体として引き下げの方向を具体的に、積極的に進めなければならないことと思う。今はそういう問題であることが非常にはっきりなったにかかわらず、すでに先にそういう需給計画なり、何なり、あるいは将来の見通しについて、誤まりを、見込み違いをして、すでに頭打ち制は今年度でやめるのだ。あるいは東北、北陸の電力料金は、さらに四月一日から引き下げるのだということを、すでに早く約束をしてしまわれておる。まず、通産大臣考え方、責任はどういうふうに考えられるか。
  74. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 電力料金につきましては、将来は極力下げていかなければなりませんし、また、コストはだんだん上っていくのでありますが、それを何らかの方法によって押えていかなければならないと思います。しかし、三割頭打ちあるいは東北、北陸の昨年すでに決定をいたしておりまするのは、これはでこぼこ調整といいますか、非常に部分的なものであります。これによって物価がどうなるかというような問題では私はないと思います。それによって計画が進められております。その計画は計画通りにして、将来は極力これを押えていくということでなければならぬと思います。
  75. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 さしあたりはどうされるか、料金の引き上げは。
  76. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) この問題につきましては、総理に御一任をいたします。
  77. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その点を河野長官は、どういうふうにお考えになりますか。
  78. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 御承知通り、電力源、動力源等につきましては、物価政策からいきまして、現状の程度まで下って参りました以上は、この程度で安定をさせていきたいという立場をとっておりますので、なるべく刺激的要因を、これを避けていきたい、こういう考えを持っておりますが、いろいろ議論もありますので、これらの取扱いは、総理に御一任いたしたいと思います。
  79. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 総理は、どういうふうにお考えですか。
  80. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 具体的な今おあげになっております三割頭打ちの問題と、それから東北、北陸の昨年許可しております、そうして四月一日以降に値上げがわかっている部分に対する具体的の措置としては、目下考慮中でございます。
  81. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 佐多君、簡単にお願いいたします。
  82. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 非常に醜態な場面を私たちはここで見せられてまことに残念なんですが、先ほどから申したように、これは通産当局としては、そういう長期の見通し、その他を誤まってしまった問題であると思います。それならばそれとして、総合計画、総合調整を扱っておる企画庁長官がもっと早目にそういう問題はきちっとしておくべきだったのに、総合計画その他をはっきりされないから、個別に、ばらばらにそういう問題がきまったという、これも非常に責任がある。しかも総理は、まだいずれどうかしようという、あした、あさっての問題になりましたのに、いずれどうかしようというような遅疑逡巡をしておられるような状態、まことに政策の統一なり、はっきりした計画的な見通しなり、あるいは早目の処断がないことは、これは総理のこれまでのいろいろの問題にあったように、まことに総理の総理たるにふさわしくない、もはや総理たる地位に不適任なことを、このこと一つだけでも非常に明瞭に示しておられると思うのです。これまでいろいろ論議しました過程において、あなた方の、岸内閣経済見通しというようなものが完全に誤まっておったということはあまりにも明瞭になってきたと思う。しかもそうであるにかかわらず、それじゃ、かく誤まったにしても、何とか早くこれを是正し、この日本不況を打開するために積極的な施策が今や準備され、決意がなされなければならないのにかかわらず、その政策転換方針変更もいまだなくて、遅疑逡巡をしておられる、こういうことを考えると、もはや岸内閣がどうも政局を担当していく資格がなくなってしまったということを暴露している以外の何ものでもないと私は思うのです。そこでどうも解散とかいうような話もありますが、むしろ、解散という問題の前に——解散なんと言うのはおこがましいことで、その前にさっさと退陣をされて、第二党のわれわれに政権をお譲りになる時期である。われわれは先ほど申しましたように、見通しを正確にし、どう変えるかということをはっきり申し上げておるわけでありますから、安心をしてわれわれに譲られる時期であると思いますが、この点をどういうようにお考えになりますか。
  83. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は先ほど考慮中であるということは申し上げたのでありますが、これはもちろん四月一日までははっきりすべき問題でありますけれども、行政上の処分の問題でございますから、ここでお答えをしないだけであります。ちゃんとそれまでにははっきりさせることは申し上げるまでもないことであります。  それから、今の状態で社会党に政権を譲れというお話でございますが、そういうことは実は私ども考えておりませんし、また、従来社会党が御主張になっておる、こういうことこそ政権の移動ということの典型的の例でありますから、国民の意思に聞くべき問題であろうと考えます。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連して。
  85. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ごく簡単にお願いいたします。
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 行政上の処分だから申し上げられぬというようなことをちょっとおっしゃったように思うのですが、これは私ははなはだおかしいと思う。行政上の処分であったって重要な問題について質問者が尋ねておるときに、それだけのことで答えられない、そんなことはないと思う。重要な行政上の処分だからむしろ私ども答えを求めておるわけです。もっと何かほかに理由があれば、それをおっしゃっていただきたい。あれだけでは私ども納得できない。
  87. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、行政上の処分であって考慮中であるということをはっきり申し上げております。それ以上、今現在申し上げることはできません、ということを申し上げておるわけで、それはしかし、四月一日のことでありますから、行政上の処分はそれまでにいたします。こういうことを明確に申し上げます。
  88. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 午後二時まで休憩いたします。    午後一時二分休憩    —————・—————    午後三時六分開会
  89. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続き、質疑を続行いたします。
  90. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 岸総理が外交の三原則を確立されまして、二回にわたって東南アジアに御旅行になり、米国へも行かれまして、日米関係は、総理のお言葉によるというと、新しい時代に入ったという確信を持っておられるのでありますが、これは、国民として非常に喜んでおる次第でございます。で、日米共同宣言は、少数の例外があるといたしましても、両国民が絶対多数でこれを支持し、心から歓迎しているものと思うのであります。藤山外務大臣も、総理と一心同体となって、経済外交の推進に努力を傾注しておられますが、これも、国民すべての歓迎しているところと私は信ずるのであります。それにもかかわらず、現在日本の直面しておる国際情勢は、決して容易なものではございません。自由と正義に基く平和の確立ということは、言うことはまことにたやすいのでありますが、これを実現することは容易ではございません。理想や理論を説いても、国内の世論やその意欲するところに政府が沿うていくだけでは、外交はできません。もちろん、政治は目前の形象現態をたくみにとらえて、これを処理するのが大事であることはもちろんでありますが、それだけにとどまってはならないのであって、総理の理想や理論、これを現実に即した形として、まず内部を統制し、国民の十分なる理解を得て、世論を率いていくのでなければ、ほんとうの外交はできないと私は信ずるのであります。そのためには、国内ばかりでなく、世界の情勢を適確に把握して、これを正確に分析し、総合し、判断を下さなければなりません。この点にやや欠けるところがないかと、各方面で危惧を持たれておるのであります。たとえてみれば、インドネシアの今の内乱につきましても、外務省の見解、また海外のいろいろの色彩を持った電報、それからして、インドネシアをよく知っておる人々の意見が、非常に食い違っておるのを私どもは発見するのであります。これは、まことに惜しむべきことであって、外務省は、もっと直接な、適確な資料を広く集めて、これを分析しなければならないと思うのであります。しかし、これを外務省に要求することは、現在の状態では、私は無理ではないかと思うのであります。聞くところによるというと、外務省の方が新聞記者とコーヒー一杯飲んで話をしようとしても、その費用がない。外国におる公館の人々が、旅行しようとしても旅費がない。これは、大蔵大臣も、アメリカに行かれたときに直接御経験になったと承わっておりますが、こういうような状態であって、外務省に情報を十分に集めて適確な判断を下せということは、いささか無理をしいるのではないか、こういうふうに私は感ずるのであります。大蔵大臣は、外務省の予算は、十分だとは思わないけれども、本年は相当増額しておる。そう急激に予算を増すことができないから、徐々にというような御答弁がおるのを聞きましたが、今のインドネシアのあの状態などは、日本の将来に対して非常に重要な問題であると私は思うのであります。これは、国内ならば、災害が起った、天災があった、大火事があった、大水が出たというような場合と同じでありますが、こういった場合に、大蔵大臣は、徐々にふやしていけばいいとお考えになりますか。または、突発事項であるからして、予備費からでも金を出して、もっと海外の適確な情報をつかむ、また、外交活動をもっと活発にさせるに必要な部分があるならば、それをやろうというお考えがありますかどうか、まず、大蔵大臣お尋ねをいたす次第でございます。
  91. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えします。  今の御意見のうちには、二つあったかと思うのですが、一つは、たとえばインドネシアというような例で、突発的にいろいろな問題がある場合に処すること、もう一つは、経営的な外務省の経費、こういうふうに考えるのでありますが、むろん、いやしくも日本の外交を遂行する上において必要な経費というものは、これは、臨時であれ経営であれ、組まなくてはならぬことは、これは申すまでもありません。ただ問題は、何も外務省の経費というものが、あるいはまた日本の外交というものが、そう突発して急に現われたわけではないのでありまして、これはやはり多年のしきたりもあります。むろんこれを改正し、同時に拡充していくということもある。これは、他面財政力のゆとりのいかんによってさらにやっていく。双方から見合っていかなくてはならぬと思います。しかし、大体の趣旨におきまして、今後外務省の経費が増大され、また大蔵省としても、できるだけさらによく事情を聞きまして、適切な判断を下していくということの必要なことは申すまでもありません。私は、今さような感じでおりまして、三十三年度も、そういうふうなところから、若干の増加を見ておるような次第でありますが、考え方としては、抽象的に言う以上、何も変った考えは持っておりません。
  92. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 ただいまの大蔵大臣の御答弁は、従来のしきたりにもあるからというようなお話でありますけれども、敗戦の結果として、日本には外交というものがなくなってしまった。そのために、外務省予算というものは極度に縮められた。のみならず、元の吉田総理は、率先垂範という意味で、予算をできるだけ極度に縮められた。ところが、今国交が回復して、外務省が全面的に活動しなければならぬ、世界的に活動しなければならないというときに、昨年の予算というものを標準にしていられたのでは、これは、外務省の活動というものはほとんどできなくなってしまう。であるから、ある時期に、特殊の事情によって非常に縮小されたのであるから、ある時期には、その当時の事情ににらみ合せて、飛躍的に増進するということも、私は合理的ではないかと考えるのであります。私は、大蔵省の予算に対するいろいろの御考慮は、国の立場に立って、おおむねはなはだよろしきを得ておる、こういう感じを持っておりますけれども、すべてにわたって賛成するわけにはいかない。その賛成のできないものの一つに、外務省予算というものがあるのであります。これは、戦前の外務省予算に比べてみても、また総予算に比べてみても、あまりにも少いという感じがいたすのでございます。この点はいかがでございましょうか。
  93. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) もうその議論としては、何も申し上げることはない、ごもっとも、その通りであります。ただ、財政的に申し上げれば、やはりできるだけ客観的な情勢の変化と、特にまた重点的なものについて特別な考慮を払うのは、言うまでもないのでありますが、やはり全体の歳出の財源が限定されておりますると、なかなかまた、実際においては御満足を得るようにもいかない点もあります。しかし、いずれにしても、大体において私も、この戦後の日本が非常に国際的な——ひとり外交ばかりじゃありませんが、教育においてもしかりと思うのですが、非常にインターナショナルの面において特別な留意を払っていかなければならぬという点については、気がついておるのであります。今後諸般の情勢考えまして、客観的な情勢の変化に応ずるような、これは、外務省の予算についても、客観的事情の変化に応ずるように十分考慮すべきである、かように考えております。
  94. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 大蔵大臣のおっしゃることは、よくわかるのでありますが、であるから、私は、大蔵省の考え方は大体として間違っておらない、全体を見渡してやっておられるのだ、それは認めるのでありますけれども、一体外交というものは、失敗するというと、これは一国の運命に関するものであります。ところが、この身近な問題については、多くの人がやかましく言う。やかましく言われるというと、大蔵省も、理論や信念を曲げて、そちらへ引きずられていく。そのために外務省はしわ寄せさぜられるというようなことが私には見られるのであります。  そこで、問題を少し変えまして、この各省の間の政策が食い違っておって、統制がなくて、統合的な見解が現われておらないところが多い。これはぜひ総理に、この点は、内閣としての総合的の、統制のある結論を出していただきたいと存ずるのであります。一例をあげますというと、賠償問題、賠償物資の問題ですが、これについて、大蔵省の見解と通産省の見解とが非常に食い違っておって、しかも、大蔵省の見解の方が強いがために、非常に困っているという事情はよく御存じだと思うのであります。もし大蔵省の主張の通りにやるならば、輸入物資五%以上を含んだものは、賠償物資もしくは商品として出すことができないということならば、ほとんど何も出せないということになる。こういう問題があります。また、移民の問題につきましても、外務省と大蔵省との間に非常に食い違いがある。外務省側では、内閣の了解を得たと考えておるのに、大蔵省の方では、そういう話は出たが、了解はないと解釈しておられる。こういうような問題があります。また、法人の課税問題についても、文部省と大蔵省との間に食い違いがあります。こういうことについて、総理は将来どういうふうにお運びが下さるか。総合された統一された御見解を伺いたいと思うのであります。
  95. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん、行政事務の具体的の問題になりますと、各省に関連し、各省の所管にわたる事項が多数あるのでございます。この場合に、各省のこの事務的の意見をどう調整するかという問題では、意見が決定される道程においていろいろな議論が出まして、省によって見解が違うという問題は、これは具体的にあるのであります。そういう問題につきまして、これを調整して、国としての意見一つにまとめていかなければいかぬし、また、それがあまりにおくれる。そういうことが、その議論がなかなかきまらないために、その処分がおくれるというようなことが間々あることも耳にいたしております。重要な問題につきましては、それぞれ、次官会議であるとか、あるいは内閣官房長官のところにおいてこれを調整し、またさらに大きな問題につきましては、閣議においてわれわれはその問題を持ち出してこれが調整をし、政府としての統一した意見を作り出すように、それぞれ努めております。ただ問題は、そういう機関なり、そういう方法によって調整せられるまで、事務当局問における意見が対立したり、意見の相違があって、調整を見るのに非常に長い時日がかかる。もしくはそういうようなために、国民が非常に迷惑をするというようなことがありましては、これははなはだ、行政事務の敏速な措置という意味から申しまして、不適当であると思います。政府としては、今申しましたような方法によって、従来も統一をするようにいたしております。私は、せんだっても、そういう問題で、きまり得ないというものは、具体的な問題があれば、閣議に持ち出してそうして早くきめるように、ここで論議して、最終決定をして、そうして統一しようということも、閣議に提案いたしておりまして、各閣僚も、そういう段階においての事務的レベルにおいてきまらないという場合においては、閣議に出してこれを決定するようにいたしております。おあげになりました具体的の問題につきましては、私、内容を承知いたしておりませんけれども、今申し上げましたような方針でやっております。
  96. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 総理の御見解には賛成でございます。各省が異なった意見を持つということも当然であり、その段階において十分討議されることの必要であることは、認めるのであります。ただ、これが従来あまり長くかかり過ぎて、非常に迷惑をしている。迷惑だけでなしに、国の信用にも影響するというような事態が見られるのであります。従いまして、今の総理のお考え通りに、一つなるべく早く調整して、内閣の総合的の結論を出すように、この上とも御配慮を願いたいと存ずる次第であります。  次に、北洋漁業問題でありますが、この漁業条約は、私は非常に欠陥があると思います。その欠陥は、資源を保護するというのであるならば、北洋においてサケ、マス、カニ等をとる総量をきめて、それをソ連と日本とでどのように配分するかというきめ方でなければならないのに、これこそ片務的な、日本の漁獲量だけが規制されている。しかし、これは将来の問題といたしまして、今年ぶつかっているところの問題は、私は二つ考えさせられるのであります。日本がりっぱな大使を派遣している以上は、事務的の折衝であれ、政治的の折衝であれ、大使を通じてやる。そうすれば、大使は、困ることは本国に請訓しなければならない。本国で十分研究して、指令を出すこともできる。いきなり全権を出してしまうというと、そこで何なり結末をつけてしまわなければならぬような羽目に陥る。で、今最も懸念される問題はオホーツク海の締め出しの問題であります。きょうの新聞を見ても、きのうあたりから見えておりますけれども、母船は認めない。独航船は認めるというようなことは、この先どうなるかわかりませんが、昨年もだいぶ減らしたけれども、ことしは一隻にしろというようなことになり、来年になると、またこれが蒸し返されるというようなことになるので、こういうむずかしい問題は、大使館を通じて早くから折衝すべきものである。また同時に、漁業条約の中には、双方で科学的研究をするというならば、それを義務づけておかなかったということが一つの欠陥であるのでありますが、これも将来の問題でありますが、私は、この北洋の漁業問題について一つ総理に十分御考慮願いたいことは、この安全操業の問題であります。安全操業というと、私ども同輩の間でも、沿海州や樺太や千島とかいうところに出かけて漁業をしたいと、こういうことのみを考えている人がありますけれども、一番北海道で困っておりますのは、国後と北海道本土との間、北海道本土と歯舞、色丹のあの狭い海峡で、霧が深い、ちょっとはみ出すというとつかまえられる、安全が保障されておらないというところにあるのでありますからして、安全保障の交渉が行き詰っても、最小限度、これら狭い海峡においてだけは、何とか取りきめをしていただきたいと、こういうふうに私は希望いたす次第でございます。いかがでございましょう。
  97. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 安全操業の問題は、御承知通り、これは今、日ソの間に交渉いたしておりますサケ、マスの漁獲量、これに関連してのオホーツク海の漁場の問題等の、いわゆる漁業条約に基くところの両国の委員の間の話し合いと違いまして、日本とソ連との間において、今お話のように、北海道の多数の零細漁民が、遠くはあるいは樺太や千島等にもありましょうが、その非常に重要な関係を持ちますのは、おあげになりました、あの狭い海峡付近における漁撈に際しまして、日本の漁船が拿捕され、あるいは監禁されるというような事態をなくして、そうしてこれらの漁民がその生計を営むことができるようにという趣旨のものでございまして、昨年の夏以来交渉いたしておるわけでございます。その範囲をどこに限るかというような問題、どういうふうに制限するか、どういうふうに安全を確保するか、どういう漁業をさせるかというようなことは、実は安全操業に関する、日本とソ連との間にそういう話を進めようという大体の了解のもとに、日本が提案したものには詳しく出ておるわけでありますが、今日までの交渉の何から見まするというと、そういう内容に入って審議することも、実はソ連としてはこれに応じないと、この問題は、領土問題を解決すれば、当然自分たちとしてもこの問題についてはっきりした考えができるけれども、それと不可分の関係にあるがゆえに、そういう漁業の種類であるとか、地域であるとか、どういう方法で安全操業さすとかというような、実は内容に入っての話し合いが、われわれとしては当然できることであり、昨年の夏われわれの提案したことについていろいろな意見が出、それで両方で話し合いができるものと実は考えておったのですけれども、最近の事情は、そうでないことになっておるのであります。そうして、今苫米地委員のおあげになりましたことは、最も北海道の漁民の切実に感じておる問題であり、また最も問題をしげく起しておる問題であり、またわれわれとしては、これらの人々の生計に不可分の漁業というものが、何とかして安全にできるようにしなければならぬと、強く、痛切に考えておる問題でありますから、今後安全操業の問題の交渉は、引き続きやっておるわけでありまして、それの進行に伴って、十分にそれらのことも到達できるように、この上とも努力いたしたいと思います。今のところでは、ソ連側は、一切それを受けつけないという態度でありますけれども、さらにわれわれとしては、努力をいたしたいと思います。
  98. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 北洋漁業につきましては、何とか妥結することを希望しておりますし、妥結することだろうと思っておりますが、万一妥結しなかったような場合には、漁業者の間に倒産者を出す、非常な混乱を来たすと思いますが、また、この安全操業ができないというと、北海道の零細漁民の間にも、思想の悪化、反政府的の色彩、いろいろなものが現われてくると考えられるのでありますが、こういった場合に、政府は何とか救済の手を伸べてもらうことができるかどうか、この点をお伺いしておきたいと思うのであります。
  99. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) サケ、マス等のこの漁業条約に基く北洋漁業の話し合いは、私は、必ずこれが妥結されるものと思い、また、妥結するように全力をあげておるわけでありますが、この妥結がどういうふうな形で出るかということにつきまして、数量等の決定いかんによりましては、相当大きな母船の数を制限しなければならぬし、あるいはまた、独航船の数も相当に制限しなければならぬという結果になると思います。それに対して、そういう場合に、どういうふうに国として措置するかということにつきましても、これは、過去に例もございまして、そういうものとにらみ合せてやっていくつもりであります。  また、この安全操業に関連しておる零細漁民の問題につきましては、昨日も農林大臣がお答えを申し上げましたように、従来政府としても、いろいろな金融面から、これに新船の建造について力をかすとか、その他これらの人々がほかの漁業やほかの方面において漁業もできて、生活が安定するように、指導も援助も実は与えてきておるのであります。ただ、いずれにしても、それらの人々が生計を失い、そうして成り立っていかないというような事態に対しましては、これはほうって置くことのできない問題であることは、言うを待ちません。従って、政府においても、そういうものに対して適当な措置を講ずべきであることは、言うを待ちませんが、根本の方針としては、できるだけこれらの漁民に生業を与え、そうしてこれらの漁民が仕事として何らか成り立っていくというふうなことを考える必要があると思います。そういう意味において、それぞれ政府としては指導しておりまして、また、生活上の問題については別途考えていくという、こういう考えでおります。それらに対しては、政府としては、講ずべき措置は十分に講じていくつもりでおります。
  100. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 次に中共貿易のことについてお尋ね申し上げたいのでありますが、私はこの貿易関係については相当いろいろ自信を持っておるのでありますが、協定を見ると非常に粗雑のものでありますけれども、これは問題といたしませんけれども、この協定を結ぶにつきまして、総理は政治と外交と、承認という問題と商売をやるということは別ものだ、これも私は了承いたすのであります。でこの経験の豊かな商社が確実なベースで市場を拡大していくという場合には、それが中共であろうとソ連であろうと、その他いずれの国であろうと、これは差しつかえないと思うのでありますが、この日本貿易のプロモーターの中には、日本のためを思っているのかどうか、疑問を抱かざるを得ないという人々があるということ、またこの協定を結ぶ経路を見ておりますと、あまりにも政治性が多過ぎる、で中共は、周恩来首相はこう言うておる、「中共政府日本政府と直接の交渉による国交の回復方式は絶対に行わない。」、これは日本政府というものを認めないということであります。むかし近衛内閣のときに蒋介石政権を相手とせずと言ったと同じことで、日本政府というのは抹殺されているのです。「日本民間との個々の協定等による実績の積重ね方式によって国交の回復を行う。」、これが第一項です。でこの積み重ね方式によって国交を行う、政府は相手にしないというのが今度の協定に明らかに出ておる。その次は「日本民間側も、国交回復工作の最終の段階(調印)を日本政府に委せることをせず、民間の機関が指導権をもって国交の回復を実現せしめる。」これは革命ですよ。その次「台湾問題に関しては、二つの中国を認めないことを日本民間側も自主的に実践する。」これは代表委員もこのことを認めておるのであります。その通りだと認めておるのでありますので、ここで一言一句もあの覚書を改めないで調印をしてきたのでありますからして、国民政府から異議が出てくることは私は当然だと思うのです。であるからして日本政府の出方によっては、あの第四次協定というものは実行されなくなる。あれを実行すれば台湾政府を見捨てなければならない、自由主義国家と協力していくという建前からして、今いずれにするか、非常な困難の立場に立っておると私は信ずるのであります。こういった行きがかりのときに、総理は衆議院において、普通の軍縮と核兵器の問題とは切り離して考える、という御答弁がありましたが、これで果して自由主義国家と協力していくことに差しつかえがないかどうか、私どもしろうとにはよくわからないので、これは教えていただきたいと思うのであります。  また昨日のこの委員会におきましても、私はどうも頭が悪いのでわからないのですが、日米の安全保障条約というのは、条件付きの安全保障か、絶対の安全保障か。なるほど軍の配備は行政協定できめる、これは日本の安全を保障するために、適当な所に陸海空軍を配置するということでおる、しかし安全保障をするということになれば、安全保障をする軍はアメリカ軍である、アメリカ軍であるならば、アメリカはその持っている最善の武器をもって、日本の安全を保護するというのが、安全保障の条約じゃなかろうか。こう考えられるのでありますが、核兵器を持たなければ日本の安全は保障できない、という限度にきたときには、安全保障はしてもらわなくてもいいという意味になるのか。この点が私ばかりでなく、おそらく日本の国民が非常に迷っているところじゃないかと思うのでありますが、この点について総理のお教えをいただきたいと存ずるのでございます。
  101. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 中共との間の貿易につきましては、私ども従来中外にわれわれの方針を宣明いたしておりまして、貿易はこれをできるだけ拡大増進することに努力するけれども、中共との間に正式の外交の交渉を開いたり、これを承認するということはいたさないという方針のもとに、すべて今日まで努力してきております。中共政府の意図や、あるいはそれはいろいろな意見というものは、これはいろいろなことを向うでも考えているかもしれませんし、私はいろいろな意図が全然ないということを申し上げているわけじゃございませんけれども、私どもはあくまでも今の線を堅持してそうして事に処す。従って民間の第四次協定の扱いにしても、今私が申し上げておる根本の趣旨を動かさないという範囲で、政府としては善処する考えでありまして、周恩来首相が日本に対する一般方針として言っておることがこうであるから、直ちに民間における団体との間にできた協定もその意味であり、従ってこれを承認してはならぬというふうには、私どもは考えておらないのでありまして、やはりこの先ほど申した根本方針を堅持して、これを扱っていく。それには民間の代表部と、われるものができても、これに公的の特権を与えたり公的の扱いは一切しない、国旗についても、われわれはこれが掲揚の権利というものを認めるわけじゃない。これについても昨日来、法律のいろいろな論議がありましたことにおいて、それは明瞭である。しかし貿易を増進するという従来の方針は、やはり貫いていって、われわれとしては、政府としては国内法の許す限りにおいて協力をしていく、そうして貿易を円満に増大していく、という方向に進んでいきたいと思います。  それから核兵器の問題につきましては、私は、この点については、アメリカやイギリス等の自由主義国の、この核兵器を持っており、これの実験をいたしておる国々に対して、従来一貫して日本政府方針であり、日本政府考えからこれが実験も禁止しそれは核兵器というものは、われわれとしてはその製造を禁止し、使用も禁止してもらいたいという意図のもとに、そういう一貫した主張をしあらゆる努力をいたしております。このことが自由主義国の、この持っておる国々の意見と違っておることも、私は承知をいたしております。しかし、われわれが自由主義国と協調をし、自由主義国の立場を堅持して、これらの国々と協調していくということは、言うまでもなく、それらの国々がやっていることを一切すべて無批判に、無条件に受認をし、これに従っていくということではないのであります。やはり日本が独自の立場において、日本の主張すべきことは主張し、われわれから考えてみて、それは正当でないと考えることについては、反省を求めていくことは当然であると思います。核兵器の問題につきましては、これはすでに国会でも、しばしば日本国民の、この私の申す考え方というものが議決になって、そうして、世界の自由主義国といわず共産主義国といわず、この実験をやっている国に対して強い抗議を申し述べ、日本国民の一致した願望を伝えておる問題でございます。従いまして、私どもがこれを主張することは、共産主義国の利益のために主張するものでもなければ、あるいは単に今東西が緊張の間にあって、どちらを支持するという意味ではなくて、純粋の人道的、また、われわれの体験からくるところの国民の一つの願いを実現しようとするものであります。従いまして、私は核兵器で日本の自衛隊を武装しないということを申し、また核兵器の持ち込みを日本は拒否する、ということを一貫して申しております。  私は、今のお話の議論になって、核兵器を持たない自衛隊が祖国を防衛する場合に、それでは防衛ができない、どうしても核兵器を持たなければできない、という事態があっても、一体、総理は拒否する、核兵器をもって武装しないのかどうか、という突き詰めた御質問にも接したことがございます。それに対しても、私はこの核兵器をもって武装しないという私の信念は変えないつもりで、それはあらゆる方法において祖国のわれわれは防衛を全うし、侵略を防止するということについては、あらゆる努力、あらゆる研究、あらゆるなにはするけれども、この核兵器でそれをするということは、私は考えておりません、ということを明確に申し上げておるのであります。  従いまして、その点はやはり安全保障条約の施行の上におきましても、米軍の装備について、この核兵器で武装するということに対して拒否する、という私の考えは一貫をしておるわけであります。そういうことが、それじゃ自由主義国の立場をとる、協調、協力をすべき国との間はどうなんだ、というさっきの御質問に返るのでありますが、それにつきましては、先ほど申し上げましたように、私はやはり、われわれは自由主義国と協力をし、日米の協調を考えるけれども、それは、あくまで日本は独自の、自主独立の立場から、われわれが正しいと考え、われわれの国民的のこの一致した意見というものが、たといアメリカ方針と違っておっても、これを私は主張し、その主張するということが、反米なりあるいは他の勢力、ちょうど反対するところの勢力を支持しよう、というつもりでやっているのじゃないのだ、これは、こういう正しい主張から出ているのだということは、十分に了解せしめ、また了解せしめるように努力することは当然でありますが、そういう立場をとるならば、決して自由主義国の協調とか、あるいは日米協力関係であるとか親善関係を、私は傷つけるものではないと、こう思っております。
  102. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 苫米地君、時間が経過いたしております。
  103. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 私の申し上げるのは、原水爆の禁止を唱えておられることは正しいと思うのであります。ただこの場合に、核兵器と普通軍備とを切り離すというところに問題がある、ということを一つ申し上げたのであります。いま一つは、総理の御見解によれば、安全保障というものは、核兵器による安全保障はしてもらわないのだ、こういう条件付きの安全保障であると解釈されますが、それでよろしいのですか。
  104. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 今申し上げましたように、私は祖国の安全を保障する上におきましても、われわれの自衛隊においても核装備はしない。日本の安全保障というものは、核装備なり核兵器によって安全保障をするものでないという考えから、そういう考えを述べておるわけであります。従いまして、米軍のその持ち込みなり、それによるところの装備に対しても、私は、拒否するという態度を明瞭にいたしております。
  105. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にお願いたします。
  106. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 簡単に残ったものを……。
  107. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間が経過しておりますから、残りはただ一点だけにお願いいたします。
  108. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 学割の問題でありますが、学割は学校を対象にしたものと私は心得ておりますが、文部大臣はどういうふうに考えておられるか。また国鉄の方ではどういうふうに考えておられるか。法規によれば、確かに学校を対象としておる。ところが、どうも実際問題はそう扱われておらない。たとえてみれば、普通科は百人ありましたからこれは学割をやる。高等科へいくと百人に欠けるから学割をやらない。調べたところが、初めに調べて百人あったからやったけれども、人数が減ったからして追徴金を取るというようなことをやっておりますので、この点について一つ双方から明らかにしていただきたいのであります。  さらに大蔵省は、法人にあらざる法人人格に対する課税、という方針を昨年出したのでありますが、その場合に、われわれは、いろいろの疑問を持ったのでありますが、税は公平であるべきものである。ところが珠算や簿記や受験のものは短期間でもよろしい。政令では、正常の学校の授業と認めるものは課税しないといっておきながら、通牒を出して、三ヵ月以内のものはいけない。ことに自動車学校というものが対象になっておりますが、自動車学校というものはもうけ仕事にやっているのもありましょう。けれども、そろばんでも受験の学校でもある。これは理論的の根拠は何もないと思うのです。ないにもかかわらず、法規でなしに、法規の上でははっきりいいようなことを言っておいて、通牒というもので変えてしまう。これを審議に当った議員は、だまされたという感じがするのです。ここのところに何かこれを区別する正当なる理由があるかどうか、これを大蔵大臣からお伺いしたいのであります。文部大臣にはまだお尋ねしたいことがありますけれども、時間がないのでこれは割愛いたしますけれども、どうか、この学割の問題は、今全国的に問題になっておりますから、一体学校を対象として文部省は考えておられるのかどうか、運輸省はこれをどう解釈しておられるか、お伺いしたいと思います。
  109. 中村三之丞

    国務大臣中村三之丞君) 学生割引は、鉄道管理局長の指定によって行なっておるのでございまして、その指定は、国鉄における旅客荷物運送規則第六十九条によって行なっておりまして、そこには、文部省の学校教育法各種学校、こういうものを広く指定をいたしておりまして、私といたしましては、国鉄の取扱いに不公平はないと思っておるのでございますが、もし何か不公平な点がござりますならば御指摘を願いたいと思うのでございますが、こういうふうにして、たしか四千ほどの学校に学生割引をしておるのでございまして、私の方としては、このことをお答え申し上げる次第でございます。
  110. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 今の御答弁でありますが、その指定された学校において、指定でなしに……
  111. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 苫米地君、委員長に発言を求めて下さい。まだ許可しておりません。(「時間々々」と呼ぶ者あり)
  112. 松永東

    国務大臣(松永東君) 苫米地さんの今の御質問のうちにありました私に関する御質問、これは、学校はいずれの学校もみんなその一定の基準に従いまして成立しました学校、それが国鉄と協定いたしまして、国鉄によって認可せられたもの、それに対して配付すると、こういうことになっております。
  113. 苫米地英俊

    苫米地英俊君 指定されている学校について、内部で区別するから言うのだ。(「時間時間」「委員長の発言通りだ」と呼ぶ者あり)
  114. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この、法人格のないものに法人税を課する、これも政令にその範囲で定めておるのでありまするが、今お尋ねの簿記、珠算、これに通牒によってかけておるか、私……(苫米地英俊君「いや、かけておらないです」と述ぶ)かけてない——それでは、これは調べましてお答え申し上げます。
  115. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一に、先ほどの佐多委員の質問の最後に問題となりました東北と北陸の電力料金の値上げにつきまして、少しお伺いしたいと思います。この問題は、いろいろ複雑な内容を持っておりまして、私どもの立場から申しましても、また、政府としましても、こういう引き締めの時期において、電力料を値上げすべきではないということはよくわかるのであります。問題は、いわゆる行政上の措置というものが途中で変更されるということに対する申請会社に対する財政上のいろいろの影響、この問題として考えなければなりませんし、もう一つの問題は、昨年もいろいろ議論を戦わせました料金値上げが妥当であるかどうかと、こういう問題と二つに分けて考えられると思うのであります。そこで、今回河野経済企画庁長官と前尾通産大臣との間に意見の相違が起って、そうしてついに総理一任という形になっているように承わっているのであります。これは解散が近いということもかたみまして、料金を値上げしないという態度にほぼ総理大臣の裁断が下るものと推測されます。しかし、その真実はどうでございますか、承わりたいと思います。総理大臣から。
  116. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) この問題につきましては、過般来内閣におきましてもいろいろ検討いたし、いろいろの意見がありますことも、今御指摘になつたような実情でございます。というのは、電力料金のごときものをこういう時期に値上げをすることは、これは極力防がなければならない、防止しなければならないという原則は、これはだれでも異論のないことであろうと思います。ただこれらの問題は、今新たに値上げの申請が出て、これを値上げするかしないかというこの問題ではなくして、すでに従来から一応許可してある。そうして期限的にその一部は押えられているというこの問題でありまして、この電力のごとき事業の経営から申しますというと、その料金の問題につきましては、相当長期的に計画的に各種の経営の基礎を定めておる性質のものであることは、私申し上げるまでもないことであります。そういう問題でありますので、それをいかにこの行政上措置するかということは、今申しましたように、一方の理論の問題と、それから現実にすでに許してある行政処分り発効期限が四月一日から来るという場合に処しての措置というものとをあわせ考えなければならない問題であります。そこで、いろいろと検討いたしまして、私は次のように決定をいたしまして、それぞれ主管大臣からそれが措置をいたしております。それは、一つは、いわゆる今度の問題のうち三割頭打ちの問題がございます。これはこの情勢でありますので、いま一年これを実施を延期するように措置する、それから東北及び北陸電力に対するたにに対しては、従来許してある行政処分そのものは、これは変更しない、ただし、これについては、家庭用の電燈の電力及び農業用のものは据え置く、公共事業に影響のあるものに関しては、いわゆる特定料金で、その値上げが一般に、事業に影響しないように特定料金においてこれを定めるように行政上の指導をする、こういう方針でそれぞれ主管大臣におきまして措置することに決定いたしました。
  117. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ただいまの総理の御答弁で、その内容がほぼわかったのであります。そうなって参りますと、やはりそこに政治的な問題が多分にあると思います。午前の佐多委員に対する答弁で、前尾通産大臣が、この問題については総理に一任しています——これはまことに率直な御答弁でありまするけれども、しかし、自分の所管事項であります事の決定を、予算委員会の席上で、それは私は決定しませんで、総理に一任しております、という答弁をすることは、まことに不穏当だと思うのです。少くとも通産大臣として予算委員会で答弁される場合には、その問題については現在考慮中でありますとか、調査中でありますとかいうぐらいなことを御答弁なさって、実際に岸総理に一任されているならば、岸総理が実はその問題についてはこういうふうにする考えでありますということを答弁されることが当然だと思うのです。あなたは通産行政をあずかっていて、電気料金の決定については権限を持っていらっしゃる。それを、いろいろの事情があることはわれわれも想像できますけれども、この予算委員会の席上で、それは総理に一任しております、というような発言をなさることは不穏当であると考えますが、この点はいかがでございましょうか。
  118. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 一任はいたしておりますが、私は法律上の問題としましては、あくまでやり得る限界があります。また、私が総理のいろいろおっしゃることによって私の決心をいたしまして、それによって会社なりにつきまして、もし必要であれば、私から申しておるのでありまして、その点は何ら権限の問題はないと、かように考えております。
  119. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 通産大臣が自分の所管の問題については、やはり権限があるとおっしゃっていらっしゃることは、これは当然であります。そうなければならぬと思います。そうすれば、これは通産大臣としては昨年も本年も一体でなければならぬはずであります。昨年はいろいろ反対もあったにかかわらず、料金を値上げするという決定をしておいて、現在はそれをしないという決定がなされたとするならば、これは通産大臣の責任として、まことに重大であると思うのです。この点につきましては、総理にいろいろ進言したり、あるいは総理からいろいろまた話があって、自分の所管事項だけは完全に守っているのだというふうにおっしゃるかもしれないけれども、この政治的な責任ということはぎわめて重要であると思います。それに先ほどこの委員会において、その問題は総理に一任しているという発言を、私は不穏当であると思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  120. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私が、行政行為としましては私が責任を持ってやるのであります。あるいは一任するという言葉が足りなかったかもわかりませんが、総理の御意向もいろいろ伺ってそして私として決心をし、私の責任においてこういう行政上の措置をとる、また、ただいま総理のおっしゃったように、昨年の値上げの問題につきましては、その線をくずさずに行っておるのであります。私としては十分責任を持って今後の処置もやるわけであります。
  121. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは重ねてお伺いしますけれども、それはおそらく当分の問、先ほど岸総理がおっしゃったような、そういう行政上の措置をしていくということだろうと思うのでありますけれども、いつごろになったならば、それは通産大臣が昨年申請を許可された、それ々もう一度元に復して値上げをされるというお考えなのか。
  122. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 実は昨年の許可をいたしました供給規程は、ほとんど変更なしに四月一日から実施することになっております。
  123. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、通産大臣にお伺いしますけれども、東北及び北陸両電力会社におきましては、収入がおそらく違ってくると思うのであります。どのくらいの収入減になるお見通しでございますか。
  124. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいまのところ、北陸におきましては九千万円、それから東北におきましては一億八千万円くらいの収入減になると思います。
  125. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうして、それは政府としては、何らの財政措置をしない、それは両電力会社で穴埋めをしろ、こういうことでございますか。
  126. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 政府としては別に財政措置はいたしませんが、その程度でありましたら、会社の経理のやり繰りによって十分やっていける、こういう見通しを持っております。別に大きな収入減ということではありません。影響はあまりない、かように考えております。
  127. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 金額はそれほど多くないかもしれませんが、先ほどから私が申し上げております通産大臣としての政治的な責任というものは、それはどうなるのですか。
  128. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは会社ではただいま申しましたように供給規程を多少変更しなければならぬ面があるので、その点については会社から申請が出れば、それに従ってやるわけでございます。それ以外は何ら供給規程を変更するということはございません。ほとんど従来の方針通りにやっていくわけでありますので、私としてはまずまず責任は十分とれる、かように考えております。
  129. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 おそらく両電力会社は、外貨の借款をしているのじゃないかと思いますけれども、それはこういう途中における変更等によって不利をこうむるということはございませんか。
  130. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま、きまりました方針でありましたら、ほとんど変更はありません。外債には影響ない、かように考えております。
  131. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 さらに岸総理にお伺いしたいのでありますが、ただいま総理がこの問題に対する裁定をお下しになりましたことは、両電力会社あるいは電気事業連合会長、そういう方々の了解を得たことなんでございますか。
  132. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 別段特に了解を得たということじゃありませんが、業界の事情等についても、私はこの問題を決定するにつきましては、いろいろな事情を取り調べておりますけれども、もちろん了解を得た性質のものじゃないのであります。
  133. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうしますと、政府がそういう行政的な決定をした、それでこれは会社がどんなに不満があっても押しつけるという形になるのか。
  134. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これは私は、こういう公益的な事業をする事業に対して、政府は一面におきまして基幹産業としていろいろ財政上の援助もいたしておりますし、あるいは外債を募集するについては、政府も保証するというようないろいろな保護を加えて、できるだけ安く豊富に電力を供給せしめるようにいたしておりますし、また、これを経営するところの人々も、そういう考えでもってこれに当っておるのであります。従いまして、私はこの現下の経済事情等を十分に業界においても承知もいたしておりますし、政府がそういう決定をするについては、やはりこの一般に経済界の不況の時代に処し、物価の値上りを押えてきておる政府の根本方針というものには、協力をして、そうしてそれが実現できるものという確信のもとにいたしておるわけでありまして、法律上どうするかとか、あるいは聞かないのを無理に押しつけるとかというふうなことでなしに、こういう性質のものでありますから、十分また政府がそういうように決定をするということについてのやむを得ない事情についても、十分に理解のできる問題であると思います。従いまして、主任の通産大臣も、この決定によれば十分に責任を持ってそれを実現するところの確信を持って当っておるというのが、今の実情でございます。
  135. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 重ねてお伺いしますけれども、岸総理が川島幹事長なり、あるいは大野副総裁なりを菅電気事業連合会の会長のところにつかわして、そうしてこの問題について援助を頼んだという新聞の記事があるわけであります。で、ただいま総理がお述べになりました決定は、やはりそういうルートを通じて納得を得られるという考えでございますか。決定ありました後においては、所管の通産大臣がそのことを相手方に伝達するということになりますか。どういう形でもって了解を得られるとお考えになりますか。
  136. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 党の幹部が電力業者と会いましたことは、電力界における事情なり、また、政府考えておる方針等を説明するということであったわけであります。また、業界の事情等も、私はそれによって——相当にその会談によって、私自身が決定をする上において相当な参考になったと思います。しかし、一たび決定をいたしたのは、これは実は私が決定したということは、内閣内部のことでありまして、責任大臣たる通産大臣がそういうふうに決定して、通産大臣の監督下にあり、指導下にあるところの電力会社を呼んで、そうしてこれが実現をいたすわけであります。それは一切主管大臣たる通産大臣が、先ほどもお答え申し上げているように、責任を持ってそれを実現するわけでございます。
  137. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 昨日は大野副総裁なり、あるいは川島幹事長なりが総理の使い——総裁の使いですか、として、菅電気事業連合会長に会った。今回はそういうルートを経ないで、直接に通一産大臣が総理の決定、あるいは通産省の決定を伝達し、納得を求めるという形でございますか。
  138. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) さようでございます。
  139. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 じゃこの問題について最後にお伺いしたい。岸総理は、この問題につきましては、閣内において、値上げは昨年省議として決定した、認可を与えたということと、それから河野経済企画庁長官が、この際電力料金の値上げをすべきじゃない、こういう二つの対立した意見の中にあって、いろいろと苦心されておったと思うのであります。こういう内閣の不統一ということは、一体どういうところから起ってきておるか、経済企画庁長官が電力料金の値上げについて決定し得る権限はないと私は考えて、前回の私の質問の中におきましても、そのことを言っていたのでありますが、電力の需給状況というような総合的な計画を立てる、企画を立てるという場合には、もちろん経済企画庁長官の権限でございましょうが、しかし、昨年通産省として一旦認可したものを、それを通産大臣としてはその通りにやりたい、これは行政をあずかる者としては、当然そういうことだろうと思うのであります。こういう意見の対立が閣内にあって、果してその内閣、あなたの内閣が、今後もこういう問題が起った場合には、これは重大な問題だと思うのです。で、二人の国務大臣意見が一致しないで、総理の裁断を仰ぐというようなことは、全くこれは異例のことじゃないかと思うのでありますが、この点いかがですか。
  140. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 内閣、閣議におきましていろいろ意見が対立し、もしくは意見が違うという場合は、これは間々あることでございまして、そういう場合に、内閣総理大臣がこれを決定して、そうしてもしくは意見の違うところの大臣がそれに服さないというようなことが万一にもあったとすれば、これは不統一の問題であると思います。しかし、決定されるまでの道程で意見が対立し、意見がなかなかまとまらない、しかしまとめなければならないという場合において、私は、閣内の首班である内閣総理大臣が責任をもってそういう場合にものをきめるということは、これは当然のことでありまして、そうして、閣僚がそういう場合にそれに従うということであれば、これは、私は内閣の不統一という問題ではないと思います。  それから、この問題に関して、経済企画庁長官が云々というお話がございました。これは、実は企画庁の長官としては、経済計画の実施の上から見まして、この物価の問題というものについては、これは当然深い関心を持ち、意見を持っておることは、私は当然であると思う。そうして事電力料金のごとき、基幹産業にもあるいは国民生活にも非常に影響のあるものについて意見を持つということは、これまた私は当然であると思う。もちろんそれをどう決定するという権限は、今申しまするように、また、御指摘になりましたように、通産大臣に専属している問題でありますけれども、こういう問題に対して意見を言い、また、大蔵大臣等におきましても意見が出るというのは、これは当然のことでありまして、私は、そういう意味において発言された閣議における各大臣の意見というものを取りまとめ、内閣として単一の意思を決定するというのが、閣議の任務であり、また、それを主宰している私の任務である、かように考えております。(八木幸吉君発言の許可を求む)
  141. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 八木君何ですか。関連ですか。——じゃ簡単にお願いいたします。
  142. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 先ほど総理は、農業用の電気料金は値上げしないというお話があったように伺ったのでありますが、その農業用という中には、肥料用の電力も包含しておるかどうか。もし肥料用の電力が除外されておらないということでありますと、やはりこの料金が上れば、自然肥料も値上げされる、こういう関係になりますので、農業用の中に肥料用の電力も包含されておるかどうかということを伺っておきたいと思います。
  143. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これは包含をいたしておりません。私が最後に申しましたいろいろな公共的の事業や重要産業の部面において、いわゆる特定料金において、その製品の値上りが、いろいろな方へ影響を持たないように、特定の料金を定めることについて政府が指導してそういうものを定める。これは従来御承知通り、料金が定まりましても、肥料とかそういう特殊なものにつきまして、特定料金が契約によってきまっておるというその方法によってきめるつもりで、農業用を据え置くうちには入っておりません。
  144. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今、総理がおっしゃったことは、これは普通のルールをおっしゃったのでありまして、河野国務大臣と前尾通産大臣意見の対立があって、その調整が非常に困難であって、総理にその裁断を一任したということは、普通の閣議あるいは閣内における意見の相違ということではないことは、これはだれが見てもわかることであります。単に一つの問題を閣議において取り上げた場合に意見の食い違いがあるというようなことではないのであります。それですから、私どもは政治上の問題として、その責任が果してどういうことであるかということを申し上げているのであります。特に通産大臣が昨年はああいう決定をし、本年はまた違った決定をするというようなことが、単に、それで全体には大して影響がないのだというようなことで済ませ得るものかどうか、これは私は重要な問題であると思います。また、閣内の不統一ということが、単に意見の相違でないということは、総理自身もそれはお認めになると思うのです。これは決定の過程における意見の対立とか意見の相違ということでないと思うのです。この問題が相当に深刻であるし、すでに閣議の中だけでなくて、もう極端にいえば、日本全国に知れわたっている二人の国務大臣の対立ということなんです。これに対する政治上の責任はどうなるかということを、はっきりお伺いしたい。
  145. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、閣議の意見の対立する場合におきまして、非常に簡単にその対立意見調整される場合もありますし、おのおのの大臣が相当にその主張について強く主張して、なかなか一回や二回の閣議でまとまらないような問題も、これは問題いかんによって、あると思います。何か両大臣の意見が違ったことが、政治的の対立関係があって、なにのような前提のもとに御議論になっておりますけれども、私はそうじゃなしに、問題自身が、今言っているこの経済一般政策見地から低物価政策をとっておるこの政府方針と、それからすでにそれは先ほども申し上げましたように、新たに申請したという問題でなしに、過去において許されておるものが、期限的に四月一日にたまたまそれがくるという条付づきになっている条件が、ここで完成するという問題でありますから、単純な物価政策だけでこれをやるわけにもいかないし、そうかといって、去年のああいうことをきめたときと経済事情も変っており、また政府としても、いろいろその新しい経済事情に応じて、いろんな行政をしていかなければならない事情も起ってきているわけであります。そこで、この期限づきのこの期限がくる際に再検討する余地があるかどうかということについて議論が出るということは、私は当然であると思うのであります。一応、主管大臣としての意見も十分尊重しなければならぬし、そういう内閣全体のこの経済政策なり一般方針というものとも、これを——どういう影響を受けるかというようなことについても考えてみなければならないということで、これがほかの新たに申請する問題であるとするならば、さっきお話がありましたが、業界の意向であるとか何とかいうことは、比較的簡単な問題でありますけれども、すでに許した問題において、そういう先ほど申したように、ことにこういう事業というものが長期の計画があるし、あるいは外債等の資金の調達の問題にも影響を持つ問題があるおそれがありますから、そういう事情を十分に考慮して、先ほど申しましたように、私は、この際措置することが一番適当であると考えて、主管大臣たる通産大臣に私の考えを述べたところ、主管大臣としては、そういう方針で責任を持ってやりましょうと、やるのが適当であるという結論に達したわけでございまして、これからは、主管大臣がそれぞれ監督下にある会社と連絡して、これが実現をいたすように取り運んでいくと、こういうわけでございます。私はその間に何か政治的の対立があり、何かであるというふうに前提されて御議論されることは、はなはだ本件について適当でない、こういうふうに考えております。
  146. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、現在低物価政策をとっているからということであれば、昨年の決定は間違いであったということになるわけですか。昨年だってこれはだれも高物価政策がいいというふうに、あなた方お考えになったわけじゃないでしょう。そんなら昨年それが適当として料金の値上げを認めておいて、ことし四月一日から低物価政策であるからそれは認めることはできぬ、こういうことじゃ話が合わないのです。それは同じ岸内閣なんです。通産大臣はかわったかもしれないけれども、同じ岸内閣政策は一貫していなければならない。去年はそれを許しておいて、ことしは許さないということはわからない。行政上の問題として、そういうことを年度が変るからといって、一々やっていたのでは、実際に大きな会社を経営しているような人でも、その去就に迷うという結果になるでしょう。その責任はどうなるかということであります。
  147. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 御合承知通り、この問題は昨年突如として起った問題ではございませんで、この東北、北陸三社の経営の上から見るというと、相当の赤字になっており、これを解消しなければならぬということで、前から申請も出ており、しかしほかの料金と違って、こういう電力料金の問題は、産業、国民生活に影響を及ぼすところが大きいということで、いろいろ審議した結果、約一七%の値上げをするが、そのうち約三%のものはその七月にすぐ上げずに、来年の四月一日、すなわち今年の四月一日に上げるというふうに、分割してこれを措置した問題でございます。もちろん、われわれは最初から低物価政策をとっておることは言うを待ちませんけれども、その後における緊急総合対策がとられ、特にいろいろなその後に起りましたこの料金の値上げ等につきましても、相当赤字を解消するために、その原価主義から見るというと、当然値上げをしなければならぬようなものに対しても、実はその値上げをしないようこ慫慂し、また、そういう方針のもとに各方面の協力を求めてきておる、こういう事態考えまして、今の三%の値上げについて、こういう情勢だから特別に考えるべきじゃないかという私は議論が出てくるのも、相当な理由があることだと思います。また、それらにつきまして今の御意見のように、すでに昨年において十分審議してきめておることだから、それは当然期間だけの問題だから、四月一日になったら当然に上げるべきであるという議論を言われることも、これもまた、現にそういう議論がありますと同時、に社会党の方からも御陳情がありまして、東北の二社は上げちゃいかぬ、これを上げないようにしろという御議論も社会党からわれわれの方に出ておるということから見ましても、私は、その形式的なこの問題も、もちろんこれを無視することは行政官庁としてできないが、そういう経済事情なり経済情勢というものも、政治としては重要視しなければならない。そこで意見が対立し、しかし対立したままでなにするわけにいきませんから、内閣総理大臣としては自分がきめて、そうして主管大臣がもちろん納得するものでなければいけませんが、主管大臣においてもそれを納得して、それならやろうという決意ができたわけでありまして、そういう措置をしたわけであまりして、私は、その経過につきましては今申し上げましたような点から見て、特に政治的の責任というような問題が起る問題じゃない、かように考えます。
  148. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は質問の最初に、われわれの立場から言いましても、電気料金の値上げには反対であるという立場は明瞭にしたわけでありまして、私が議論しておりますことは、電気料金の値上げをしないことがいいということを言っているわけではないのであります。しかし、行政措置をしたものがいろいろの事情からその行政措置を再び変えるというようなことは、内閣としてはなはだ不手際なことである。少くとも私どもとしましては、法律によって行政的な措置をしたのならば、やはりその立場というものはどこまでも尊重されなければならないし、そういう行政的な措置を変更するのには、それ相当の理由がなければならないということを申しているわけであります。この問題につきましては、以上で終ります。  だんだんと会期が迫って参りまして、まあ解散の時期の論議がさらに活発になってきております。この問題につきましては、あらゆる角度から、あらゆる議員から、それぞれ質問があったことでございますから、私が質問いたしましても、結局今まで総理がお答えになったこと以外は、新たに御発言になることはなかろうかと思うのでありますが、しかしまあ、大体予算が三十一日には上るかもしらないという見通しになって参りました。この辺で、予算が優先であるということから、一月解散を見送られた総理の立場として、総理がはっきりとした立場をお示しになる  ことが適当なんではないかと思うのであります。もし、岸総理が、予算は上ったけれども、予算関係する法案がまだ上らないというお考えであるならば、そういうお考えも聞かしていただきましょうし、あるいは、四月の末ならば、いろいろの事情が適当であるから、その時期は一つ考えてみようというようなことであるならば、それも承わりましょうし、率直な御意見を伺いたいと思うのであります。
  149. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 解散に関しましては、各方面からいろいろな御意見や御忠告にも接しております。ただいま松澤委員の御意見をもっての御質問も、私としてはこれを十分に承わっておきますが、しかし、解散問題に関する私の今日の心境なり態度は、従来しばしばこの席上において、あるいは本会議におきましてお答えをしております通り、私としては、予算が三十一日に成立するように理事会等でお話しになりまして、大へんけっこうだと思いますが、付属の法律等もこれに関連してぜひとも成立さして、この予算が完全に執行されるように努めていかなきゃならん。かように今のところは考えておるだけでございまして、特に解散について、いつ、時期をどうするかということにつきましては、まだ私もそういうことを決心をいたしておるわけではございません。
  150. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して。外国の例ですが、カナダは、昨年総選挙をやりまして過半数をとることができませなんだので、政局を安定する意味で、たしか二月の一日に、三月三十一日に総選挙をやると、こういうことをカナダの首相は言明しています。さらに、イタリアの大統領も、この三月十七日に、来たる五月二十五日に総選挙をやると。こういうふうに解散の時期をはっきりと予告して、国民に判断の余裕を与えるというのが、民主政治のとるべき方向だと思うんですが、どうも、時期を予告することは、いかにも解散権を拘束するようにとられてですか、川島幹事長等の言を見ると、そういう言説をなされているんですが、イタリア、カナダ等の例を見ても、また、日本のこの混迷した政局をはっきりさせる意味でも、総理がやはり解散の時期を予告されるというのは、民主政治家としてとらるべき措置ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  151. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 解散につきましては、これは議院内閣の制度の運営といたしまして、解散という事態は、私は、きわめて重大な政治的意義を持っておると思います。しこうして、それにつきましては、日本一つの模範の制度として、日本の憲法に、従来また慣行の上にも取り入れられておるイギリスの慣行というものは、相当大きな影響を持ってきておると思いますが、しかし、今日までの日本において樹立せられておりますといいますか、樹立というのは、適当でないかもしれませんが、今日まで行われてきておった日本の慣行から見ますというと、まだ、今お話しのように時日を相当先に予告して解散をし総選挙をするというようなことは、今まで行われておらないのであります。ただ、私は、情勢から見て、たとえば、私がしばしば申し上げているように、四年の任期でやるわけでありますから、その任期を一応一ぱいやって、そうして国民の審判を受けるというのがごく平常なときにおけるノルマルの状態であろうと思う。そういう場合におきましても、たとえば、今回のわれわれの任期が来年のたしか二月の何日かに終ることになりまして、そこで、自然に総選挙をやるというようにしますというと、来年度予算に影響を持っという、はなはだよからぬ影響を与えるということから、われわれが初め常識であると考えておりました秋に解散されるというような場合におきましては、今お話しのように時日を両党において話し合って、そうして一ヵ月なりあるいは二ヵ月前にそういうことをきめて、たとえば、農繁期に関係が少い十一月の何日にするとか、あるいは十二月の何日にするということをきめて、そうして予告するというようなことがあるいは可能なのではないかと思っておったのでございます。今、中田委員の御質問では、何かこういうふうに政局が不安定であるから、早く解散しろというふうな御意見もありまして、私の所へそういう意見を述べられる方も、中田委員だけじゃなしにあるわけであります。そういう情勢のもとに、果して今お話しのような予告してやるという慣行を樹立するに適当なことであるかどうかということは、非常に疑問であるようにも思う。まあ、いずれにいたしましても、私は従来申しているように、世論を十分に尊重して、これに従ってこういう問題は——今何か突発事件が起っており、それについて、どうしても解散しなきゃならんというふうな事態は、これは何人も今の事態においてはないと思います。そうするというと、やはり国民の世論の動向というものに対して、われわれが謙虚な形で従っていくということが、一番望ましいのではないかというふうに考えておるわけでありますが、時期等にっいては、そういう意味において今考えるべきことではないということを、しばしばお答えを申し上げておることであります。
  152. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今のお話しでは、たとえば秋の農繁期等の関係のないときに、一ヵ月または二ヵ月前に両党で話し合って、解散あるいは総選挙の時期をきめる、こういう話を承わったのでありますが、秋にやるということは、これはまあだれも考えていたことでありますし、常識論としては、それが当然かと思います。そこで、一カ月か二ヵ月前に両党で話し合って、その時期をきめるということであれば、今度は問題をこちらに引っぱって参りまして、そういう形で両党で一ヵ月か二カ月前に話し合ってするという建前であるとすれば、四月の末には解散がない。こういうことにも考えられるのですが、先ほどのお話は、秋ならば一ヵ月、二ヵ月前に話し合って解散、総選挙の時期等をきめる、四月あるいは五月ならば、そういう話し合いはない。で、抜き打ち解散ということも考えられる、こういう点はいかがですか。
  153. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私自身は、先ほど申し上げているように、解散の時期にっいて、今何にも具体的の結論を持っておるわけではございません。しかし、いろいろな私の根本的態度である世論の動向を正確に把握して、これに対して謙虚な形で行動することが必要であるということを申しております。すでに、社会党からは一月に解散をすべしという解散決議が提案をされておりますが、私どもはその時期にあらずと言ってこれを否決して参ってきております。その当時、私どもが国民に、なぜそれを否決し、どういう意味で社会党の解散決議に従わないかという理由を天下に明らかにしており、それは、この国会は予算案初め重要な案件を政府としては提案しておるから、それを成立せしめることが国民経済上、また、国民の繁栄のために必要であるという考えのもとに、今解散すべきであらずと言って、実は来ておるわけであります。そうして、実際の審議がこういうふうに、私としては、考えてみると、きわめて順調にすべての案件の審議が進んでおるように考えております。従いまして、特に解散をしなければならないような事態が特に起っておるとも思いませんし、しかし、いろいろの方面からの意見というものもいろいろありますので、私としては十分それらに対して、謙虚な形で一つ考えたいということを常々申しておるわけであります。決して私は今何か無理をして、いわゆる抜き打ち解散というお話がありますけれども、そういう抜き打ち解散をしなければならないような事態が私はあるとも思いません。そうかといって、慣行のない現在において、直ちに何か押し迫った話し合いをしていく、今までの社会党の多数の方が私に質問をされ、もしくは御忠告下さることは、早期解散をしろ、秋までやるということは、延ばすということはいかぬというような強い御意見でございますので、そういう際に、秋ならいろいろ話をする機会もあるであろうかというのが私の実は先ほど申しておることでございます。
  154. 戸叶武

    戸叶武君 関連です。総理大臣の考え方は、古いドイツ憲法風の考え方であって、慣行を尊重するというが、議会政治におけるところのあり方というものは、新しい慣行をわれわれが作るのです。その能力がなければだめなので、世論を尊重して、世論に聞くのじゃなくて、世論の動向を察して、それをあなたの意思によって決定していくのです。そういう積み重ねによって、民主的ルールというものは確立されるのでありますが、新しい慣行を今作らなければならない段階なんです。二大政党による初めて対決がこの総選挙において行われようとするのです。新しい歴史のページを今あなたが作るべく要請されておるのです。そのときにおける意思決定ができない。ドイツ憲法の学者に対して、シルレルがうしろ向きの予言者だ、いつも過去の事実にとらわれて、観念にとらわれて、その解釈に終始して歴史を創造する意欲がないと言ったが、そういう亡霊的な考え方では、私はだめだと思うのです。二大政党による責任内閣制におけるルールを、この解散問題において、総理みずからが作っていくというだけの見識と意欲というものが、そこにできなくちゃならないので、ノーマルな状態でというあなたの論拠の中には、論弁がひそんでおるのであって、国民に信を問うたのは、第一次鳩山内閣なのであります。国民は第三次鳩山内閣以後の、政治性格が異なった内閣、しかも、その与党の基盤が異なった内閣に対しては、何ら信任してないのでありまして、やむを得ないところなんです。石橋さんもあなたもやみ内閣である。そのやみ内閣であるから、国民、主権者としての人民の意思を問うことなしに、国会におけるところの勢力のかけ引きによってでっち上げられた、人民主権を無視したところの国会取引によってできた内閣だから、われわれは筋を立てろと言うので、その問題に対して明快な回答を与えてない。いっでも議論をそらしてしまって、ノーマルな形というふうな仮説を設けて言っているが、仮説じゃない、歴史は具体的事実によってきざまれている。具体的事実に即して問題を回答しなければ、あなたの言葉の表現のマジックによって問題をごまかしていくという形は、非常に私は不明朗だ。その点をもっと明快に私は答えてもらいたい。
  155. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) この政権の移動のルールとして、これを必ず総選挙に問えという、私は従来社会党から提議されておるところの御議論に対しては、私はそれは一っの公式論、公式論であって、こういう御議論に対して、私はそれを全然無視するものではないけれども、現実の政治としては、その通りにいかない場合もあるということを申し上げております。私は今の御議論からいうならば、それはわれわれの過去にとってきた行動に対する批判として、一つの御意見としては承わります。しかし、かるがゆえに国会を途中においてやめて、解散して問わなければならない現実に、現在私は必要にかられておるとは実は考えておりません。従って、そういう意味においても、従来もお答えを申し上げておるけれども、明確に私の所信をそういうふうに申し上げておきます。
  156. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 関連して。私はさっき申しましたのは、政局が混迷しているから早く解散の時期を予告されたらどうかというのでなしに、たとえば石井副総理は、昨日ですか、今日の新聞にも、もう四、五月解散は必至、また腕ききと称せられる河野長官は春秋会と称しますか、自分の派閥のグループを集めて、三月三日に予算が通ったら春解散だから選挙区へ帰れ、こういう指令を出されたということを、私は河野派に属する人から聞いておるわけであります。そういうふうな岸総理の御答弁は、最初から一貫していると思います。しかし、有力な副総理、閣僚の方がそういうことを言われることが大きな混迷を来たす理由であります。ですから、私は混迷しているから解散を早くやられたらどうかというのでなしに、抜き打ち解散をやられるのじゃないかということが、政局を混迷さしている大きな理由で、いつも参議院の選挙におきましても、ちょうどこの予算審議を済まして参議院の選挙をやるのです。しかし、これは任期がもう解散の時期、選挙の時期がはっきりしているから、私の二度の体験からいっても、こんな不安な混迷したことは、参議院の二回の私当選以来の選挙ではないわけであります。そういう点でも岸総理が申されたように、これまでは慣行はありませんが、秋なら別ですが、私は予算通り、重要法案が通ってから総選挙をやられようというのなら、私ははっきり予告されることが、近代政治家のとるべき方途だし、そのことが国会を冷静にして重要法案をスピード・アップして審議する大きな理由ではないか、こういうふうに考えるわけであります。いかがでしょう。
  157. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私が解散に対する考えは、しばしば申し上げてきた通りでありますが、今お話しのようにいろいろな論議があることも、これは事実であります。特に有力な社会党の方面から少し私は突つかれる、アジられておる向きもあるのじゃないかと私も思えるような情勢もございますが、いずれにしましても、今中田委員お話のように、ある種の混迷があるということは、大へん私としては残念だと思って、そこで、あらゆるこういう御質問に対しては、非常に注意して、一貫して私の所信に疑いを生ぜしめないように実は申し上げておるところなんであります。(「そつがない」「いつやられるかということをはっきりされたら混迷はなおります」と呼ぶ者あり)それは今申し上げたように、私としてはまだ考えておりませんから、十分一つ考えます。
  158. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 結局いつまで問答を続けましても、結局は岸総理のお得意のそつのない答弁をされるだけでありまして、これ以上解散の時期について追及いたしましても、おそらく何ものも得られないだろうと思う。はなはだ不満でございますけれども、次に移ります。  よく解散の時期を決定するのは、総理大臣あるいは自民党総裁にあるのだということから、岸総理なり、あるいは総裁なりは、一番自分たちにとって有利の時期をねらっているのだというようなことを言う人があります。おそらく総理としては、そういう考えは毛頭持っていない、国家、天下という立場を考えておられるだろうと思うのでありますけれども、とかくそういうことがあって、そのために岸総理に解散権かあるというと、岸総理の都合のいいときに解散するのだ、解散権というものが岸総理の私物であるというようなことまで言われているのであります。私はそういうことで人をじらすということも、(笑声)どうかと思うのでありますけれども、しかし、その問題は別といたしまして、かりに、本し解散が行われるとすれば、そこでまた問題は、六十九条か、七条かといろ関係、解散の形式の問題が出てくると思います。この問題につきましては、吉田内閣当時から、いろいろのいきさつかございまして、国会としても、私は歴代内閣としても、きめかねている点があると思うのであります。両論がありますから……。岸総理としましては、解散をするとするならば、どういう形の解散をなさるお考えでありますか。
  159. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 憲法上七条による解散の権利があるかどうかということについては、議論があるということでありますが、憲法上の解釈として私の承知いたしております限りにおきましては、多数説は、この議院内閣制度のもとにおける七条の解散という本のは、これを是認し、これはあるという解釈が、私は日本の憲法上の解釈としても多数説であると思います。それから、従来の日本において今日まで問われてきた解散の慣行から申しましても、七条による解散があるという    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 ことについては、私はもはや疑いがないと思います。そこで、どの条章によってそれじゃ解散するかという問題につきましては、これは解散をいたします場合の具体的の事実から判断をしなければならぬのでありますが、先ほど来のいろいろ御議論があっているような場合の解散ということになれば、七条の規定による解散ということになるだろうと思います。
  160. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この問題につきましては、両論のあることはよくわかっております。しかしわれわれとしましては、七条による解散というものが、どうかすると天皇制の復活、あるいは、天皇の大権事項、大権といいますか、国事行為をさらに強化するものであるというようなまた反対論も相当強いのであります。そこで、なぜ、岸総理は現在の段階において七条以外の解散の方法というものをお考えにならないのですか。
  161. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 七条による解散についての天皇の国事行為は、内閣の助言と承認によって行われるわけでありまして、従って何か七条による解散を認めることによって天皇の、かつての明治憲法のごとき解散に関する大権を認めるようなおそれがあるという見解は、私は正しくないと思います。先ほども申し上げておりますように、具体的にもしも不信任案が通過する、そこで解散しなければならないというようなあるいは事態が起ったとすれば、これは六十九条の規定によるものであります、しかし、先ほど来の御議論があっているのは、そういう事態ではなかったように思いますので、七条で解散をする、こういうことを申し上げたのであります。
  162. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問。この憲法上の形式的な解釈というのは、民主政治運営の上において非常に有害をもたらす場合が多いのです。これは岸さんは依然として、伊藤博文以来の長州の官僚がとった解釈と同じようなことをしているのでしょうが、とにかく明治十四年における政変の悲劇というのは、伊藤、井上のああいうビスマルク的の憲法解釈、ドイツ憲法的な解釈、大隈などのイギリス式の憲法解釈との対立で、しかも、薩長連合におけるところの陰謀というものによって政変が起きて、その悲劇というものが日本の憲法政治というものを破壊したのです。上杉憲法なんかその典型的なものなんです。また、非常にあなたは解釈の点においては、だいぶ進んできたのだけれども、根底において上杉憲法的なものが残っているのです。私は民主政治の運営というものは、政治家の見識と、その人格によって作られるのであって、イギリスが二大政党責任内閣制を確立したのも、ビクトリア王朝時代におけるグラッドストーン、ジスレリー、あの見識と人格で作られたと思う。それを岸さんに期待している。岸さんに期待しているのは、政治家が作る新しい歴史、新らしいルール、制度を作るのだ。内閣と国会がここにおいて作るのだ。憲法の亡霊、形式的な解釈に終始すると、だんだん明治憲法と同じような失敗に陥る。私はその歴史の上に新しいページを作る意欲があるか、亡霊の伊藤博文から上杉、ああいうところへ逆戻りするか、そういうところに問題があると思うのですが、明快な回答を……。
  163. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 戸叶君が従来主張され、また私は尊重すべき公式論だということを言っておりますが、政権の移動は、必ず解散して総選挙に問えというようなことは、六十九条ではこれはできないのでして、それは議院内閣というもの性格から言うと、七条解散ということがあるのですよ。これはどこの何においても、今おあげになりましたジスレリー、その他の何におきましても、これはできていると思うのです。従って私はさように解釈することは、むしろ議院内閣の本質から見るというと当然である。具体的に、それではその内閣がそれを、七条によるところの解散をしようと、それが政治的にどういうふうな意味を持つか、またそれが適当であるか、間違っているかということについての政治責任は、もちろんこれは何しなければならぬが、解釈論としては、別に私は旧憲法や、その他のものによって解釈しているわけじゃないのです。
  164. 戸叶武

    戸叶武君 もう一つ、今の七条の解釈が悪いというのじゃない。その形式的な解釈だけに終始して、あなたの行為に現われないことが悪いというのです。第三次鳩山内閣のときに、とにかく自由、民主党の合同によって、その与党の政治的基盤というものに変化がきて、今までの第一次、第二次鳩山内閣と違った政治性格の内閣ができた。そのときに解散すべしという良識をあなたは示した。それから継承せられた石橋さんも、当然解散すべくして病気で倒れた、これは仕方がない。私は憲法形式論はとっていない。第二次鳩山内閣のときも解散するなと言っていない。第三次鳩山内閣のときに、特に第一次内閣のときの民主主義のルールによるならば、解散しなければならない。憲法の形式的解釈だけであって、その応用問題を活用することができない政治家というものは、過去の憲法の亡霊にとらわれているということを私は指さしている。
  165. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) その問題に関しましては、石橋内閣のあとを受け継いで、私が内閣の首班となって、岸内閣を組織した当時に、今と同じような御議論が、その当時私に対してなされたのです。私はそれに対してそういうこの公式論よりも、今の、現下そのときに行われておるところのこの状態において、三十二年度予算を成立せしむることの方が重大であると思うから、私はあえてそれをやらない。そのことはイギリスにおいても実際に行われておる慣行であり、私はこれは決して違憲の、あるいは非民主的な行動ではないと思う、こういうことを申しております。
  166. 亀田得治

    ○亀田得治君 第七条で解散をする、これは私、大多数の説がそういう立場をとってきておるからいいと思う。ただ、お聞きしたいということは、第七条を使うにいたしましても、これは総理大臣が勝手に使っていい、そういうふうなものじゃないと思うのですね。その点まずお聞きしたいと思うのです。第七条自体の条文には、何らの条件もついておりません。だから、言葉通り考えれば、無条件かもしれません。結局はそういうふうにお考えになっておるのかどうか、まずその点。
  167. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私はこれについては勝手にやっていいとかということは、もちろん、これは政治的な責任になるわけでありますから、法律的な制限とか条件とかはないと思います。
  168. 亀田得治

    ○亀田得治君 法律的な制限はないが、政治的にはそうはいかないと思いますね。たとえば六十九条のような場合も、一つの解散の問題に対する考え方が出ておるわけです。だから、それに匹敵するような事柄というような考え方も、一つの基準です。岸総理大臣としては、とにかく第七条を使わなければならぬような事態になってきておるわけですね、いずれは……。社会党が多数、あるいは社会党に自民党の中の一部が同調してくれれば、六十九条というものが使えるかもしれないが、まさか岸さんの統率力がにぶったといっても、そういうことにはならぬと思う。そうするとやはり第七条です。そうなりますと、総理大臣が第七条をどういう時期、どういう理由で使うか、これは一つの前例になっていくわけです。憲法上の大きな慣行になっていくわけです。私はこれだけこういう解散問題が議論されておるわけですから、この第七条の発動について、自分としてはこうこうこういう具体的な基準を持っておる、それは確かに私はあろうと思う、その点を一つお聞かせを願いたい。
  169. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私はその点に関しては、やはり最後の主権者たる国民の意思というものは、投票によって決定するわけでありますが、従来も言っておるように、民意を尊重し、世論の動行を十分に把握して、これに対して謙虚に従っていくということが、私の政治的な信念であります。もしそれが、私のそういうつもりでやったことが、もし間違っておるという判断が、国民から下されるならば、私はそれについての政治的な責任はもちろん何するつもりでありますが、心がまえとしてはそういうつもりであります。
  170. 亀田得治

    ○亀田得治君 もう一つ、民意を尊重しということを基準にどうもされるようですが、今のお答えを伺いますと、私はそれじゃいけないと思うのですね、総理大臣としては、もう少しはっきりした体対的な考え方と、具体的な基準というものを持っておるべきだと思う。あなたが具体的な基準を持っておって、自分はこういう立場で解散をやろうと思うがどうか、そういう考え方をはっきり出して、そうして皆さんの意見も聞く、これならわかる……。ところが民意を、民意をと言いますと、はなはだ民主的であるようですが、実際は何らの基準が自分の方にはありません。従って悪くいきますと、結局は的はずれの理由で抜き打ち解散をやられるかもしれぬ。逆にこういうふうに一般からは疑われるわけなんです。だから実際は何らかの基準を持っておられると思う。それをやはりお示し願わなければならぬと思う。それがもう絶対にないのだ、ただ民意だけだということなのかどうか、その点もう一度答えてもらいたい、そういう足りないことじゃ私はなかろうと思う。それともう一つは、民意心民意と盛んにおっしゃっておるわけですが、現在の新聞の論調なり、そういうもの等をどういうふうにおとりになっておるのか、私は民意という立場から言うならば、できるだけ早い機会に、こういう不明朗な状態を一掃するために解散をすべきだ。今まで解散ぎらいであった人たちの中ですら、これはもう仕方がない、こういう気持、これこそが私は民意だと思うのです。それでは、とても九月というようなことを考えているのは民意ではないと思います。二点に分けて一つお答え願いたい。
  171. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は先ほど申し上げましたように、何か具体的の問題において、国民の審判を受けなければならないような国政上問題が起ったときにおいて、その問題について国民の審判を仰ぐという具体的の事例も、そういう場合もあろうと思います。しかし、現在置かれておる状態は、私は特にそういうことが顕著に現われている状況ではないと思います。従って、私としてはやはり国民のこの世論の動向が、解散に対して適当な時期でないというふうな意見が強い場合において、それを押し切ってやるべき時期ではないと私は思います。今の国民の世論の動向を、私にどう見ておるかというお話につきましては、私は世論の動向に対しましては、慎重にこれを検討している時期であると申すのが適当であろうと思います。
  172. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 しかし、もう選挙は始まっておるのです。どんなに解散の時期について総理が言明を避けられましても、すでに選挙は始まっておるのです。そこでお伺いしたいことは、今度行われる選挙について、非常にこれこそ非民主的な選挙運動の制限等が、自民党の中において取り上げられておるという話しでありますけれども、そういうことに対して、岸総理あるいは総裁として、どういうお考えを持っておいでになりますか。
  173. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 何か非民主的な事柄があるかのような御指摘でありまするが、新聞紙上等いろいろな経過を掲載しておるのがございましたが、昨日閣議決定をいたしました政府の提案の内容におきまして、先般三十一年に参議院議員の選挙の運動方法について、これは議員提出の形でございましたが改正が行われました。すなわち一つは、大正以来衆議院議員の選挙運動期間を二十五日としておりましたが、その後交通手段、通信の手段等が著しく進んだという理由で、それまで参議院の選挙がありまして以来三十日としておりましたのを、三十一年に二十五日に改めました。それをその際に衆議院を二十日にしよう、こういう議論がありましたけれども、これは議員提出の形で行われたものだから、この際は手をつけまいということで、手をつけませんでした。それ以外の五大市の首長、議員、府県の知事、議員、それぞれ参議院の二十五日にあわせて改めております。従いまして、この機会に衆議院の選挙運動期間を改めますこと、また、参議院の選挙の場合に応じましてポスター、はがき類を六割増しますこと、それ以外におきましては、つとめて民主的に選挙運動ができますように、不在者投票の範囲を郡市の区域に出ませんで、町村の区域に出ればよろしい、不在投票を認めるということ、あるいは点字の文書につきましては、かさが大きくなりますので、これは第三種郵便物の認可を受けておりませんでも、選挙についての評論等を記載することができるということ、町村長の選挙につきましては、区域が広がったのにつれて、従来は全然認めておりませんでした小型自動車、バイク・モーター、オートバイ等を認め、すべて努めて選挙運動が容易にできますような方法をとって改正案をこしらえておる次第であります。それで、一番骨子になっております点は、町村合併のために飛地や何かができて、非常にそのために府県会議員の選挙が今の郡市の区域にあるという規定では動きませんので、その点を直すという点が、違った意味での骨子になっておる次第でございます。
  174. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は閣議決定のことを尋ねているわけでございませんので、たとえば立会演説会の回数を減らすとか、あるいは個人演説会の回数を制限するとかといったようなことが、自民党の中において取り上げ、論議されていたという話を聞いておりますので、こういうことは非民主的なことではないか。なぜ立会演説会の回数をふやすことをしないか。あるいは個人演説会の回数をふやすことをしないか。こういうことは全く逆行だと、こう思うのです。これは、閣議決定ではこの線は出てこなかったけれども、しかし自民党の中ではそういうことが取り上げられていたということを聞いておりますから、岸総理、あるいは岸総裁についてその点に関する一つの御所見を承わりたいと、こう考えております。
  175. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、今おあげになりましたようなことが党内で議論されておるとかいうことは実は聞いておりません。政府として今閣議できめましたことは、やはり党のそれぞれの機関とも相談してきめておることでありまして、個人的にどういうふうな意見を持っている人がおるかそれは別として、そういうことが党として議論されておるということは私聞いておりません。
  176. 苫米地義三

    苫米地義三君 関連して。解散権の問題について、私自身にも関係いたしますからちょっと伺います。それは総理大臣は第七条で解散するのが一点の疑いがないと、こういうお話でありますが、私が現に最高裁判所で現在争っておる問題でありまして、それが決定しなければあくまで疑問があるということでなければならない。そうして憲法調査会にこの間最高裁判所の真野判事が見えましても、私の説に同調しております。そういうことから言いましても、いささか疑問があるということのお考えになっていただかなければならぬと思うのですが、ただ、抜き打ち解散以後の慣行としては、総理大臣の権限にある、こういう慣行がございますけれども、それは私が抜き打ち解散についての訴訟を起しておりますから、その訴訟が決定せざる限り、私は一点の疑いがないというふうに言われるのは、少しどうかと思う。その点に対して総理大臣の御見解を承わりたい。
  177. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん憲法上のこの解釈の最後が最高裁で決定される問題ですが、私の先ほどから申し上げておる言葉が多少不十分であったかと思いますが、政府としてはこの問題に関する学説も通説に従ってこれをできるという考えであり、またその後の慣行もそういうふうになっておると、政府はそういう見解をとっておる、こういうことを申し上げたわけであります。
  178. 戸叶武

    戸叶武君 これは非常に、今の苫米地発言というのは重要だと思うのです。与党からもそういう御意見が出ておるくらいなんで、この解散権の問題はきわめて民主政治運営の上において重要なのです。過去に、ああいう吉田さんのようにばかやろう解散なんかをやって、それから造船疑獄のときには指揮権を発動して、そのあとで解散をやろうとして緒方さんに引きとめられて、吉田内閣は沈没したのですけれども、岸さんは聰明な人だから、あんな吉田さんのような強引なことはしないと思うのですが、どうも春の川岸の柳みたいにゆらゆらしてつかみどころがない憲法論議をやっておるということは、私は春の国会であるといえども、非常に残念だと思うのです。この解散権というものは総理大臣の絶対権でないのです。民主的なルールに従うべきであるのであります。新聞の政治評論家たちが、俗論的に伝家の宝刀などと言っているのは、過去の亡霊にとらわれているのです。われわれの国会は国の最高の機関なんです。あの最高裁に依存するというのは悲しき姿です。みずから憲法に対してこの国会が自分自身でもって判断を下せないようなのは、国会自身としては恥ずべきなんです。一国の総理大臣は慣行において憲法の新しい規範というものを作り上げるという意欲がなければ、私たちは法治国家の名のもとにおいてほんとうに法律の中に埋没しなくてはならないのです。私は事憲法に関してはあくまでもこの国会がみずからがそれを解釈し、みずからがそれを創造していくというような意欲がなければならないと思うのに、依然として過去の法治国家の思想にとらわれて、その国会みずからの権威というものをみんながくずしていくということに対しては、非常に不満なんですが、総理大臣は一体、この憲法の調査会の問題もそうでありますが、憲法は一体だれが定め、だれが解釈すべきものであるか。ドイツの古い憲法解釈の亜流にとらわれて、いまだにアナーキーの亡霊から脱し切れない国のまねをするのでは私はだめだと思う。総理大臣に対してこの問題、きわめて重大な問題ですから御答弁を願いたい。
  179. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) これは、憲法の解釈の問題において最後的のこの問題が裁判所が決定するというこれは仕組みになっておることはこれは御承知の通らであります。で、私どもがこの憲法を運用していく上において一つのよき民主政治の実体を示すように、国会も政府も行動していかなければならぬと、そしていい慣行を作り、そうしてりっぱな民主政治を完成するように努力をすべきであるという意味戸叶委員のお考えについては、私も何ら異論を差しはさむものではございません。ただ問題は今戸叶委員と、これはしばしば戸叶委員の御意見にありましたように、不幸にしてこの点について意見を異にしておるのでありますが、必ず政権の移動という場合、その移動というのは政党が同じであってもいやしくもどういう理由であっても首班が変った場合においては、解散して何をしようという(「そんなことは言っておらぬ」と呼ぶ者あり)御意見には、私はこれを考えておらないので、過去において今のお話のいわゆる第三次鳩山内閣が民主党と自由党とが一緒になった場合において、これは解散してどうということは私は一つの、それはその当時にも考えたことでありますが、そういうことはいいと思います。しかし、その後の移動について直ちに今の議論をするということは私は賛成をしない。こういうふうな私の気持であります。しかし、戸叶委員からいえばそういう時期が一度あったんだから、それから受け継いだところのものはすべていかないのだから、国民に問えと(「その通り」と呼ぶ者あり)御議論になるのだと旧思いますが、それから今申しましたように、各種の事情を考えて時期的に私は永久に解散しないということを申し上げておるのではありません。これはそういうことでございますから十分に御意見として承わっておきます。(「思い上るな」と呼ぶ者あり)
  180. 戸叶武

    戸叶武君 これはきわめて重要な問題で、とにかく憲法を総理大臣によってゆがめられては大へんなんで、今苫米地さんすら心配するのは、解散権の総理大臣による乱用に対して、与党の苫米地さんは身をもって今戦っているんで、私はその苫米地さんの精神をどうしても超党派的に庇護しなければならない。一番おそれるのは、吉田さんのような非常識なことをやらないであろうが、自民党並びに岸内閣の一部にはこのおかしなことを考えている者があって、たとえば春季闘争、私鉄争議というようなものは悪化さしておいて、そうしてこの選挙に有利なために、抜き打ち解散でもやろうというような言動を行なっておる者があるということを漏れ聞いて、実におそろしい、これは真珠湾攻撃のような作戦を、また岸内閣のもとにおいて企てる者がある、そういうことをやったならば、国内はまっ二つになって、権力に対する闘争としての内乱的な私は総選挙の形相を呈してくると思うんです。まさか岸さんはそういうむちゃなことはやらぬと思いますが、喬木は風に倒れやすしというけれども、喬木か柳か、その問題に対して明確な回答をお願いします。
  181. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 解散の問題について、法律論としてただいまの苫米地委員の御議論は、おそらく六十九条以外に解散することは違法であり、そういうことは認められないという御議論であろうと思います。今のこれは、法律論として、政治論として、これを慎重にしなければいかぬことは、先ほど来私がしばしば言うておることでありまして、その点についてはその通りであります。法律論として今の戸叶委員お話は、六十九条のみならず、七条でも解散することがあり得る。しかしその場合において、政治的のよきルールを作る意味において、総理は慎重に、かつ十分に民主的にやっていけ、こういうお話であろうと思います。その点につきましては、先ほど来申し上げておるように、私も十分心がけていくつもりでございます。
  182. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今回の閣議決定による公職選挙法の改正につきましては、これは私はある程度まで納得がいきます。しかし、選挙期日をだんだんと短かくしていくということは、申すまでもなく、現職議員にとっては非常に有利であります。そういう点につきましては、われわれは、なぜこれを短かくしなければならないんだ、参議院が短かくなったから衆議院も短かくなる、そういうことをしていけば、だんだんと短かくなっていってしまう。こういうことではいけないので、できるだけ選挙において政策を表面に押し出して、これを中心として、各政党がその立場を明確にするということが選挙運動の実態でなければならないと思うんです。今回の閣議決定におきましては、先ほど申しましたように、立会演説の回数も従前通り、個人演説会も従前通りでありましょう。しかし、こういうことが一歩一歩積み重ねられていくときに、選挙法というものが、非常に非民主的になりはしないかということをおそれているのであります。ところで、先ほど岸総理に申したのでありますが、すでに今日、事前運動の段階ではない、選挙運動に突入している。この実情について、岸総理あるいは自民党総裁として、どういう見解を持っておられますか。こういう目にあまるような事前運動をやっていて、しかも一方では国会審議を促進しろと言ったって、それは両方はなかなかうまくいかないのであります。この事前運動を取り締るということが、選挙を公明にし、またそれを公正にするという非常に大切なポイントであろうと思うのであります。この事前運動、あるいは現在行われている選挙運動に準ずるような運動は、岸総理としてどういうふうにお取り締りになるか、明快に御所信を承りわりたい。
  183. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) もちろん選挙が公明に、フェアに行われるということは、民主政治の要諦でありまして、従って選挙について、この選挙法規のそれぞれ趣旨に従って行動していくということは当然であると思います。従いまして、この悪質の、そういう性質のものに対しましては、もちろん政府としては、これに対して取締りを行なっていかなければならないのでございますし、また実際行なっております。しかし問題はいろいろそれは行き過ぎもありましょうし、また正当な取締りはこれからも行われるというのは当然でありまして、ことに一面においては、それを私が幾ら否定しても、選挙が早いように、また早くさせなければいかぬというような動きもありますので、そういうことに関連して、相当に全国的にそういうような機運が起っておるという事実も、私はこれを無視はいたしておりません。しかし、それがやはり公明なる選挙を妨げないように、それぞれの取締り方面において取り締っていくということは当然であると思います。
  184. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 法務大臣にお伺いいたします。現在、目にあまるような事前運動が行われ、あるいは選挙運動が行われている。これに対してどういう取締りの方法を講ぜられるか、法務大臣のお国の方でも、私が聞いたんですけれども、バスに乗せてどっか見学して、それで演劇を見せて、そうして主婦たちの関心をつないでいるという人があるそうです。どなたか、私は名前は申しませんけれども、もう現にあなたのおひざ元でもそういうことが行われている。これは形式はどうか知りませんけれども、実質は、明らかにこれは事前運動です。選挙運動ですよ。これをそのまま放置しておかれれば、あるいは法務大臣の足元が危なくなるということも考えられる。こういうことに対して、ほんとうにどれだけ徹底的に取り締られるかどうか、この点を明らかにしてもらいたい。
  185. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) お答えいたします。事前運動につきましては、検察当局においても非常に苦慮いたしておるところでございます。これにつきましては、御承知のように、先ごろ自治庁の側から、各地の選挙管理委員会に通達がございまして、この事前運動についての自主的な警戒を与えておるわけでございますが、私ども検察当局の側におきましては、これと相呼応いたしまして、そうして自主的にさようなことを慎しんでもらいたいという運動とともに、また検察当局といたしましては、法に触れるものがあるような場合におきましては、十分査察内偵を進めていかなければならぬということを通達をし、また数回の会合におきましては、私もそれを訓示をいたし、また各地の高検内における検事の会同においても、しばしばこれを訓示をいたしておる次第でございます。御承知のように、今年は選挙の年と通俗いわれております。そこで事前運動と思われるようなものが盛んになったとうわさされておるわけでございますけれども、事前運動と一がいに申しましても、法律で処断いたし得まするには、それだけの法律的の要件を備えなければならないのでございまして、その要件を具備して、それが違法の行為でございますれば、これは容赦するところなく処断いたして参りたいと考えております。十分検察当局に戒心を加えておる次第でございます。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  186. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは通産大臣にお伺いしたい。先ほども電力料金の問題をお聞きいたしましたが、四月一日から、電気事業の広域運営の問題が発足するらしいのであります。これで果して電力需給が、予想通り順調にいくかどうか、この点を承わりたい。
  187. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 広域運営につきましては、御承知のように、電源開発につき、あるいはまた送電、発電につき、合理化をやっていくということでありまして、今後もちろん発電計画をいろいろ進めて参らなければ、需給がうまく調節されるというわけにはいかぬと思います。需要に十分応じられるというわけには参りませんが、極力合理化をはかるということでいっておりますので、これによって相当改善されることは間違いないと、かように確信いたしております。    〔矢嶋三義君「委員長、さっきの選挙のことでちょっと関連して」と述ぶ〕
  188. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君。
  189. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 さっき松澤委員から選挙のことについて質疑がありましたので、それに関連して、ぜひ一つ私は聞いておきたいことがあるのです。  自治庁長官に伺いたいのですがね、あなたは交付税交付金の配分、並びに特別交付税交付金の配分に当って、その自治体の首長が所属する政党によって差等をつけておりますか、つけておりませんか、お答え願いたいと思います。
  190. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 仰せまでもなく、全然ございません。
  191. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回……。そこで問題は重大なんです。最近の事前運動並びに地方の首長の選挙に当っては、自由民主党所属でなければ、交付税交付金並びに特交は取れないということを盛んに言っているのです。  そこで、私は具体的に石井副総理に伺います。あなたの——名前は言いません、懇意な三重県選出の代議士に、あるところに選挙運動にいくときに、甲なる人物が当選すれば石井が交付税交付金を一切引き受ける、しかし、Bが当選したら、一切かまわない。石井がこう言ったということを、選挙民に言って演説をせよと言って、あなたは九州のある土地に過去二ヵ月以内に派遣した覚えがあるかどうか。……ちょっとお待ち下さい。具体的に言わにやおわかりにならぬから申しますと、熊本県の水俣の選挙のときに、あなたの——いわゆる石井派に所属する三重県選出のある代議士——名前は言いません。(「言え言え」と呼ぶ者あり)その人がそういう演説をされている。そうしてさらにあなたの懇意な別の代議士が——私が支持した候補と反対の人で、その人は海軍中将であったのですが、海軍中将だから天皇陛下から三番目に偉いというのと、(笑声)それからその人物が当選したら、石井副総理が一切引き受けると言うので、演説をぶって歩いたのです。選挙は一つフェアでやろうじゃないですか。そうしてその結果として、私は選挙に負けて帰ったわけなんですが、実際最近の事前運動等に当って、盛んに交付税交付金に引っかけて皆さん方演説している。自治庁長官はそういうことはないとはっきり言明されているのですが、石井副総理に責任ある御答弁を求めます。
  192. 石井光次郎

    国務大臣石井光次郎君) 私は絶対にそういうことを言うたこともなければ、そういう話はただいま初めて承わります。
  193. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 きわめて重大ですよ。そういう無責任なことを、いやしくも国会議員が私は選挙民に言うことは、私はけしからぬと思う。九州の人間が純朴だからといって、あの場合、いなかにいってそういうことを言うのはけしからぬと思う。私は演説をぶったのだから……。  それでは法務大臣に伺います。そういう事実は事前誘導になって、選挙違反になりませんか。いかがでございますか、法的解釈を伺います。
  194. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) これが法に触れるかどうかということはきわめて重大な問題でございますから、ただ簡単にこういう場合ということで、私どもがここで断定いたしまして、誤解を生じてはならないと思いますから、訴えの事実につきまして詳細に承わった上で、お答えをいたしたいと思います。(「法理論だ、法理論だ」と呼ぶ者あり)
  195. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 じゃ、先ほどの通産大臣に続いて御質問申し上げます。  発足の要綱を見ますというと、中央に中央協議会というものを作りまして、電気事業運営に関する重要事項を協議決定するということになっているようでありますが、その重要事項というものの内容はどういうことですか。
  196. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これはもう全般的に、広域運営に関しまして——別に限定しておるわけではありませんが、お互いに協議をし、話し合いをするのでありますが、発電、あるいは送電、配電、あらゆる問題に関して協議をするということであります。
  197. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その中には料金問題は入っておりますか。
  198. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 調整料金——この融通料金等につきましてはもちろん入っておりますことと思います。ただ、料金制度全般の問題につきましては、御承知のように料金制度調査会というのを設けまして、そしてそれによって根本的に検討しようということに相なっておりますから、全般的な料金制度というようなものを協議するわけではないのであります。
  199. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると、料金問題も一応はその協議の対象になる。それなら融通電力量の料金は、そういうところで協議の対象になるのでありますか。
  200. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 大体は融通電力につきましては、その地域協議会がちょうどそれに該当することになりますから、おそらくそこで協議も行われると思います。もちろん会社間の問題でありまするから、会社間で協議もいたしますが、この協議会も利用して協議をされる、かように考えております。
  201. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 各社間の融通電力量を決定するということは、従来ともやっていたことだろうと思うのです。今度中央に協議会をこしらう、またブロックにはブロックの協議会を作るということで、融通電力量の料金を値下げするとか何とかということの見通しはいかがです。
  202. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 融通電力量につきましては、この広域運営によりまして極力合理的に行われますので、量も減ると思います。また料金につきましても、いろいろ協議をして、極力下げるということで協議が行われる、かように考えております。
  203. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 中央及び地方の協議会が、たとえば融通電力量の問題にしましても、協議整わない場合にはどうなりますか。
  204. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 広域運営に関しまして、新規電源開発について意見の相違があるという場合におきましては、電源開発調整審議会というものによって審議決定される、こういうことになっておるのであります。おそらくまたいろいろ意見が一致しないというときには、中央協議会、そういう場が使われる、かように考えておるのでありまして、また政府もこれに対しまして、実効の上るようにというので、必要な助長措置をとるということになっておりますが、結局まあ政府が中に入って解決するというような問題もある、かように考えます。
  205. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは結局政府と各電力会社との間に、中間的な中二階をこしらえるというだけのことで、まっすぐに上下結べばそれでいいというのを、よけいな中二階ができたという結果になりはしないですか。
  206. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これはまあ最後的にいろいろ意見が食い違って、どうにもならぬという場合であります。大部分の問題はこの中央協議会なり地方協議会において協調をされる、かように考えておりますのと、さらに、電源開発会社もこれに参加をいたしまして、そうして総合的に広域運営をやっていくというところに意味があると思います。
  207. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ちっとも意味がわからない。私は、中二階をもう一つこしらえたというだけのことで、本来ならば上下話ができるものならば、各業者政府というもので話がつく、それをこういう中三階的のものをこしらえて、これで広域運営ということは果してどうかというように考える。しかも、この有効期限が五カ年間ということであります。そうすると、五カ年間は、どんな経済上の事情が勃発いたしましても、各業者の統合が行われない、広域運営ということだけでいくのだ、逆に言えば、どういう事情があっても統合しないのだという結果になりはしないのですか。
  208. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) われわれは、そういうふうには考えておりません。ただ、御承知のように、合併というのは、そう簡単にできることではございません。しかし、この広域運営の協議会によって円滑に、極力合理化していくということは、もう急を要することでありますので、四月一日から発足する。しかし、今後におきましては、私は、まあ五カ年間のうちに、原子力の発電とか、いろいろの事態が起ってくると思います。また、料金問題につきましても、いろいろな今後の問題が起ってくると思います。それに対処しまして、今後の検討を続けていかなければならぬ。かように考えております。もう五カ年間はこれでおしまいという考えでは毛頭ございません。
  209. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 電源開発の計画を一つ考えてみましても、今日では、非常に重複したところがある。今度は、電源開発会社も入っておるわけですから、そういう重複の点は、ある程度まで調整されると思うのであります。各電力会社及び電発におきましては、緻密な長年の計画を立てて、それで今日に至っておる。場所によりましては重複している所もある。ところが、この広域運営協議会というようなものが、現在立てられておる電源開発計画というものを再検討して、そうして重複している所は重複しないようにする、新しい電源の開発をやるというようなことがこの協議会自身によって行われるかどうか、その見通しはございますか。
  210. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) これは、それを目的としておる協議会でございます。十分これによってやっていけるというふうに考えておりますし、これは、自主的に電力会社もやっていこう、それにつきましては相当な覚悟をもってやるのでありますから、御趣旨に沿うような考え方でやるわけであります。
  211. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 どうもしかし、通産大臣の話を聞いてみましても、さっぱり自信のないような御答弁でございますので、はなはだ不満足であります。長い間かかって電源開発を進めてきた。そうして開発地点を決定して、それに対する交渉をしていた。この広域運営という仕事が四月一日から始まったにいたしましても、少くとも、そういう電源開発の重複を避けるとか、あるいは新規の開発計画を立てるとかいうことは、五年間の期限の中ではとうてい私は実現できないのじゃないか、こう思うのです。御自信がありますか。
  212. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) ただいま申し上げましたように、それを目的とした協議会でありまするから、それがこの協議会でできないというようなことなら、これはもう、全然作る意義がありません。また、その点につきましては、われわれも十分決意を持って望んでいるわけでありますから、実効の上るようにさしていくことについては、私は責任をもってお答えしておるわけであります。
  213. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと今の問題に関連して。どうも、今の通産大臣お話でははっきりしないのですが、九分割をするときに、われわれがこれに反対をした。その反対の理由は、電力融通が非常に不円滑になってしまうから、一元的な、統一的な、総合的な運営ができないから、これは反対なんだ、あるいは、一つ一つに地方的にまかしておけば、企業経営の格差があまりひどくなるから、これではだめなんだ、従って、それに関連をして、電力料金の不均等がだんだん増大をしていって、地域別に各地域の不均等な負担が生じてくるから、これがいけないのだ、あるいは特に致命的なのは、開発上のむだがあちこちに行われる、そういう弊害があるから、われわれはこれに反対をした。ところが、それを押し切って、あなたの方では九分割をしてこられた。数年の経験によって、今われわれが予測したようなことが、われわれの予測したよりももっとはっきりと、あまりにも明瞭に出てきたと思う。その一つ措置が今度の広域運営のやり方であると思うのですが、しかし、今のような広域運営の方式協定であるならば、先ほどから御説明を聞いていて、少しも納得しないように、今あげたような諸弊害は少しも改まらない。だからこそ、そういう問題をここでもう一ぺん再検討をしなければならない。そして特に、先ほどから問題になっておる総合エネルギーの計画をもっと総合的に、従ってそれをやろうとしたならば、現在の五カ年計画は、資金計画その他にもすでに大きなそごが来ているのだから、そういうものとも関連をして、再検討しなければならないし、その再検討する場合には、ここでやっぱり思いきって合併案、あるいは、さらにはわれわれ社会党が言っているように、一元的な総合的な計画的な経営方式、しかも、それを完全に社会化してしまわなければ、今の資本主義的なむだ、二重投資等の問題は決して解決をされない。社会党は従ってそういう政策、そういう方向を具体的に提示をいたしておるのでありますが、政府はそこまで問題をお考えにならないのかどうか、それを考えないで、今のような諸弊害を除けるとお考えになるのかどうか。少しも、五カ年計画、長期計画等の計画によれば、それらが除かれていないことがあまりにも明瞭じゃないか。その点をどういうふうにお考えになるか。
  214. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 九電力に分割をいたしましたことにつきましては、まず、それ相応の当時理由もあったのでありまするし、また、それによる長所も確かにあったと思います。しかし、それに伴う弊害も、ただいまお話のように、需給のアンバランスあるいは経営内容の格差あるいは料金のまちまち、非常な差異ができてきたというような問題があるわけであります。従って、極力そういう格差をなくしていかなければなりません。その方法にはいろいろあると思います。しかし、とにかく早く発足いたしますことが、また早く合理化することが何としても必要なことでありますので、一応広域運営という機構を作ってその点は発足する。しかし、今後の推移を見まして、もちろんあるいは合併ということを考えなければならぬかとも思います。また、今後もそれ以外の方法も考えなければならぬかと思いますが、従ってこれは、一応この広域運営で出発するということであります。今後につきましては、われわれもさらに検討を続けていきたいと、こういうふうに考えておるのであります。また、五カ年計画その他につきましても、われわれ無計画にやっておるわけでありませんで、常に総合的に再検討をし、それをさらに具体化していくというふうに考えておるわけであります。  繊維の問題につきましても、先ほど御質問がありましたが、やはりこれは、人工繊維と天然繊維につきましては、その配分のいき方をどうするかということを計画的に考えていかなければならぬというので、せっかくその点は、業者の方にも要望をし、計画を立ててもらいたい、われわれも、それをさらに検討をしていくというふうに考えておるわけであります。
  215. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 郡自治庁長官にお伺いします。今国会に、地方財政法を改正いたしまして、余裕金を積立金として積み立てるという法律案が出ておるのでございます。三十二年度でどのくらい余裕金が出てくるお見通しでございますか。
  216. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 全体を見まして、現在のところ、おしなべてどうという検討をまだしておりませんのでございますけれども、赤字団体が漸次黒字になって参ります状況等から見まして、個々の府県、市町村に見まするならば、相当の余裕を持ち得るところ、もちろんこれは、今までのいろいろな措置によります分で、ややゆがんでおる、たとえば、行政水準の低下をさせて経理をいたしておるというようなところもございますけれども、個々の団体について見ますれば、相当余裕金を持ち得るものも出て参ったと存じております。
  217. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 金額を承わりたいと思っておりましたが、金額はおわかりになりませんか。
  218. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 今ちょっと手元に金額を持っておりません。
  219. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 余裕金が出るということは、いろいろその理由があると思うのです。今もお話がありました、行政水準を現状のまま据え置くということによって余裕金ができる場合があります。こういう場合には、もちろん自治体当局としましては、その余裕金は行政水準を高めるということに使いたいと思い、また使わなければならぬと思うのです。行政水準と余裕金、積立金の関係はどういうことになりますか。
  220. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 私は、生じて参りまする余裕金、松澤委員指摘のように、余裕金と申します中にもいろいろなものがございます。私は、これはよく言うのでありますが、たとえば、余裕金を積み立てておる間に、新潟の地盤が沈下してしまったら大へんなことだ。余裕金より地盤沈下の対策を講ずる方が大事だというようなことをよく申しもするのでありまするが、それで私は、しかし、出て参りました金が義務的な経費に比べまして相当に多い場合には、これは積み立てに回した方がよろしいと思っております。しかしながら、その場合には、一応そういたしましても、行政水準がどの程度に果して確保されているやいなや、こうした点は十分検討いたしまして、個々にきめて参らなければ相ならぬと思っております。
  221. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 著しく財政収入が財政需要に対して越えた場合ということであります。著しくということは、まあ法律用語としては適当かもわかりませんけれども、これは、個々の地方団体に適用された場合には、非常に判定に迷うわけです。自分の方では、著しい余裕というふうには考えていないけれども、自治庁が、それは著しい余裕である、その部分は積み立てしなければならないということならば、これは、個々の自治体としましては、一種の中央から地方に対する統制であるというふうに考えられないこともないのであります。今までずいぶん地方財政が窮乏した窮乏した、こう言っておりました。もちろん、その窮乏の時期におきましては、固有の事務を果し得なかったということがある。自然に道路が荒廃しているし、橋梁は危険な状態であるし、住民の福祉のために行政をやっていけなかったということがある。低いままの行政水準でいるからこそ、ある意味におきましては、そういう余裕が出たということも言えるわけです。第一に使わなければならないのは、やはり町村が合併して新市町村になった。それならば、それだけの必要な財源というものをまず何よりも先に与えてやらなければならない。そして新市町村の建設に与えてやらなければならない。それを単に自治庁が、しかもこれは事務当局が、これは著しい余裕であるからと言って、この部分は積み立てなければならないということは、これは、自治体に対する非常に大きな干渉であると思うのです。その点いかがですか。
  222. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 私は、今の自治体に対して自治権の尊重ということがきわめて大事であるということを、松澤委員と同じように考えるのであります。従いまして、個々の団体については、余裕のあるものもある。しかし、大体二十八年度程度の行政水準に達しておるという程度で、それ以上著しい伸びのあるものというのは、そう多くはございません。従いまして、そういたしますならば、一つの点には行政水準とのにらみ合せ、また一つの点では、その著しく伸びたという判定をその個々の団体にいたしまして、そうしてやって参らなきゃならぬと思います。私は、ある程度三十二年度の収支の締めくくりを見ますと同時に、自治体の調査もいたし、そうして周到な指導をして参りたいと思っております。
  223. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 郡長官がそういうふうにおっしゃることは、これはいいのですけれども、しかし、これが現実に、自治庁の中におきましては、財政局長も見えておりますが、これが地方に行きまして、地方課で、それぞれの公共団体を指導する場合におきまして、これが郡長官が言うようにはならないのです。もう一方的に、これは余裕金であるというようなふうにきめつけて、それで、これはもう積み立てなければいけないというふうに押しつけられる。有無を言わさないで、もう地方課ならば地方課に、これはもう、計算でもってそういうことを押しつける。そういうことを私は非常に危険に考えております。だから、あなた方は、直接自治体に対して統制をやっているのじゃないと、こう言うけれども、財源をそういうふうにして縛っていけば、これは、地方の自主性ということはどこにありますか。自由なる、いわゆる自主的な行政というものは結局できなくなってしまう。これはなかなかむずかしい問題です。長官のお考えはよくわかるのですけれども、しかし、事務当局として末端に持っていったときに、そういうふうにならないという保証がありますかどうか。
  224. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 私は、決算で出て参ります剰余金、これは、相当の部分を積み立ててよろしいものだと考えております。これは出て参ったものでありますから、その結果でありますから。しかしながら、それ以外につきましては、全体の運営をよほどよく見ますこと、おっしゃるように、確かに末端へ十分理想的な形ででものがしみ込んで参りますかどうかということは、注意をいたさなければなりませんことでありますけれども、私は、財政法の全体の立て方というものが、非常に注意深い、また個々の自治体を育てていくために、親切な態度でいたしませんと、動かないことでございまするから、その点については、特に今までと変ったと申しますれば、ようやくこう安定の時期に来たところでございますから、この安定を守って参りますために、従来にも増して、そういう点を十分地方の方にしみ通るようにいたしたいと思います。
  225. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういうことを望みまして、次に、先般もこの問題について御質問したわけでありますけれども、一方町村の給与が著しく低い、それで、長官としましては、給与の実態、平均どのくらいと見込んでいらっしゃいますか。
  226. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 手元にあります資料で申し上げてみます。これは、松澤委員承知通り、三十年に実態調査をいたしました。ことし実態調査をいたそうと思っております。従いまして、大体の状況で、府県五大都市においては、国と大体似たような状態に相なっており、町村に行きましては、かなりに格差があるという工合に見ております。
  227. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 私は、町村職員の給与の実態というものは一万円に足らない、で、地方財政計画の中では一万三千八百六十四円、その差額四千円というふうに了解しておりますが、大体そう見てよろしゅうございますか。
  228. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) これは、私どもとして押えます際に、財政計画で見て参ります以外には、実態調査の結果でありまするが、三十年の一月で、これは単純な平均——雇用人まで入れました、今までの観念の雇用人まで入れました平均で、九千六百円になっておりまするが、これは単純な平均でございますから、私は、それが三十年一月であれば、現在はそれより相当程度は上って、一万円を相当程度上回っておる状態に平均してなっておるのじゃないかと思っております。
  229. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 一万円を上回っていないと私は思います。これは、地方公務員の給与は、国家公務員に準じてやるということですから、明らかに自治庁に責任があると思います。その原因の一つは、やはり初任給というものがはっきりきまってない。そこで、初任給というものを、国家公務員と同じようにきめていかなきゃならない。ちょうど金が余っているから一人雇おうというようなことで現在雇っておる。そういうことが累積していって、今日非常に低い給与になっていっているということが言えると思うのですが、その初任給を引き上げる、少くとも新高卒業で六千三百円というようなところが適当な線ではないかと思うのですが、初任給の引き上げについては、どういうふうにお考えですか。
  230. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 初任給でありまするとか、定期昇給の実施だとか、こういうものが町村によりまして、守られておるところもございまするし、守られておらないところもございます。全町村について、約半数について調べてみましたが、昨年の六・二を上げましたときに、全体の約二%五くらいが、財政難を理由に昇給ができておりませんでした。ややおくれたときはございましたが、九七%ばかりは上っております。それで、初任給にいたしましても、定期昇給にいたしましても、私は、これは比較的大きい町村、それから市街地的な町村、農山村というようなもの、それから、その中における類似の団体、まあ農協なんぞ一番—私は、農協よりも二、三割程度高いというところが比較的多いように思いまするが、必ずしもそういうものは一律にいっておりません。そういうものを見まして、そうして先回にも松澤委員にいろいろ御説明申し上げたことがありますが、地域的の、また町村の形に応じ、類似団体を見ながら、そういう初任給なり昇給なりについては、制度の整備をぜひはかりたいと思っております。本年行います相当大がかりな実態調査の結果を、そういうふうに現わしていきたいと思います。
  231. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 最後の質問をいたします。  これは、総理にもお伺いしたいのでありますが、新聞にも当時出ておりました、中国人の劉連仁という人が、二月九日に、北海道で十三年の逃亡生活をしておりまして、日本の敗戦も知らないで山に隠れていて、ようやく出てこられて、現在では東京に来ておられると思うのでありまするが、この劉君について、これまでどういうような措置をとられたか、その点についてお伺いしたい。
  232. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 劉氏の問題につきましては、かつて勤めておった会社におきましてそれが確認され、その会社において、寄宿舎に一時収容いたしまして、それぞれ措置を講じ、向うへなるべく早い機会に帰還するように措置するという方針措置していると私は聞いております。なお、詳しいことにつきましては、主管の大臣からお答えいたします。
  233. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) これは、大体今、総理大臣からお答え願った通りでございますし、主としてこの案件は、警察の方で取り扱ってもらったのでございまして、あるいはその方からお答えいたした方がよろしいかと思いますが、私の手元にも報告が届いておりまするから、便宜、私から一応御報告申し上げたいと思います。  これはもう、御承知のことと思いますが、ことしの二月八日に、石狩郡の当別町の者が付近の山でウサギ狩をいたしましたときに、不思議な人が穴居生活をしておるということを見まして、そうして会ってみましたけれども、言葉が通じませんので、その日はそのまま引き揚げまして、そうして翌九日に警察の者が行って、そうして連行して帰って来たわけでございます、何分初めは言葉が通じませんので、ようやく通辞を通じ、また、だんだんその当時の文書などを調べてみまして、結局、今お話のありましたように、それは劉という山東の人でございまして、そして昭和十九年に、日本軍によって連行されて、北海道に参りました。そして明治鉱業の昭和鉱業所で働いておったわけでございますが、何分にも苦しいというので、その翌年にまあ逃げたわけでございます。それ以来、今お話がありましたような、十三年も山中生活をやっておったわけでございまして、別に不法入国とか、あるいはことにスパイとか、そういう容疑は全然ないものでございますから、警察の方でも穏やかに扱いをいたしまして、そうして札幌の旅館に連れ戻って来て、そこで落ちつかせてあったのでございます。そしてだんだん調べました結果が、その明治鉱業がかって使っておったということがわかりましたから、明治鉱業へ話をいたしまして、そうして明治鉱業が、華僑の人とか、あるいは日赤などと力を合せまして、被服などを与えたりして、また、凍傷にもかかっておったものですから、その治療などを手を尽しておったわけでございますが、本人がだんだん帰国をしたいという希望を述べておるものですから、やはり日赤、それから中国の紅十字会等のまた御相談もございまして、そうしてその希望をかなえさせてやる、こういう方針のもとに、先ほどお言葉にありました通り、東京へ呼びまして、現に明治鉱業の番町の和風荘という寮に今落ちついておるわけでございます。これが大体の経緯でございまして、これをやかましく申しますと、私どもの所管の入国管理令とかあるいは外国人登録法一とかいう法律の問題もあろうかとも思いまするし、その他いろいろ法律関係の問題をやかましく言えばあるかもしれませんが、これは特殊なケースなものですから、人道的な立場に立ちまして、そうして本人の希望をかなえてやりたい。こういうふうに今考えておるところでございます。
  234. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすれば、現在の身分としましては、不法入国者とか、あるいは不法残留者とか、そういうことではなしに、平和な市民として取り扱っていらっしゃるのですか。
  235. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この点は、実は法理的に申しますと、なかなかむずかしい問題であるようでございます。理屈っぽく申しますと、いまの外国人は、終戦と同時に、外国人が日本に残留いたしておりますると、それぞれ手続をしなければなりませんのですけれども、その手続は、もちろん山中におったのですから、できませんししておりました。戦争が済んだことすら知らないでおったわけですから、だからして、そういう帰国も知らぬわけです。そうすると、法の不知ということにもなるでしょうけれども、法の不知では、犯罪を阻却しないという理屈にもなりますけれども、法の不知より何より、そういうことを知り得る機会もなかった。であるからして、そういう場合には、本人には刑事責任がないという考え方も成立するわけでございまして、この解釈問題につきましては、いろいろ研究の余地があろうかと思いまするけれども、とにかく本人に何も悪意があるわけでございませんですから、法のことは問わずに、ただ、もし本人が希望がかなって帰国するようになりました場合にだけは、出国の正式の手続だけをとるように本人に話をし、そしてその希望のかなうようにしたらどうか、かように考えておるわけでございます。
  236. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 札幌の入国管理事務所は、何か非常に劉君に対して感情をそこねるような取扱いがあったということを聞いているのですが、そういう事実は全然ありませんか。  またもう一つ日本が入国管理令というような法律、外国人登録法というような法律を非常にやかましく言えば、国際法違反の問題が起ってくるというようなことを言っているそうでありますが、札幌の入管事務所の取扱い等についてどういう取扱いをしたのか、感情を害するようなことがなかったのかどうか、この点を伺いたい。
  237. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 何分異様な人でありまして、とにかく十数年も山中生活をやっておったのですから、そうして言葉も通じなかったから、どういう行き違いがあったかは私にはわかりませんが、私の手元に届いております報告だけで申し上げますと、事態がだんだんわかりましたものですから、あるいは入国管理事務所とか、あるいは検察側というようなものは、どちらかといえば第二陣に控えておりまして、大体警察のお世話で事案を処理していくという、こういう方針をとって参ったようでございます。主として警察を通じて、いろいろと入国管理事務所も調べておったように伝え聞いておりますが、劉氏の感情を害したようなことがあったということは聞いておりません。
  238. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 入国管理事務所におきまして呼び出しをして、出頭しなかった。で、その泊っている旅館に今度は事務所の職員が行って会おうとしたけれども、会わなかった。そのときに、「日本政府に物申す」という物を入国管理事務所の職員に渡したということを言っておりますけれども、そういう事実はあるのですか。
  239. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 今御指摘のようなことは、私の手元に届いております報告ではありません。それから事務当局に今ただしてみたけれども、事務当局も存じないようでございます。
  240. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その際に劉君が、自分の入ってきたことを聞きたければ、岸総理に聞いてくれということを言われたそうであります。これは、どういう関係で岸総理に聞いてくれということを言ったのか、あるいはその当時東条内閣の閣僚であった岸大臣が、その入国の経緯について知っておられるから、劉君が岸総理に聞いてくれ、こういうことを言ったのか、その辺のところはいかかでございましょう。
  241. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 劉君がそういうことを申したかどうかも、私は事実を知りません。また、劉君の気持としてどういう意味でそういうことを、もし言われたとすると、言ったのか、これまたつまびらかにいたさないのでありますが、今報告のありました、十九年の秋だとしますと、私が当時東条内閣の大臣をしておったそのとき……東条内閣は、たしか十九年の七月に総辞職しておりますから、秋とすると、その当時は、私が商工大臣であった時代とは、時代が違っております。もちろん、個人的に私が劉君と特別な関係はございません。
  242. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 いずれにいたしましても、先ほども唐澤法務大臣は、日本政府あるいは軍によって連行されたという言葉を使われました。そうすれば、結局、捕虜として日本に強制的に連れてこられ、強制的な労働をさせられたというように解釈してもいいと思うのであります。で、劉君が言っておるのに、自分の十四年間の肉体的、精神的な損害については、会社及び日本政府に対して当然損害賠償を要求するということを言っております。これは、果して日本政府がそういう損害賠償をやられるのかどうか、これは別といたしましても、少くとも劉君が日本に入ってきたその経緯から見ますならば、日本政府としても、何か劉君の気持を慰める方法を講ぜられることが当然であると思うのであります。その当時、岸信介氏が国務大臣であったかどうかということは別といたしまして、現在の政府の首班である総理大臣として、その点は十分に、あたたかい気持をもって取り扱っていかなければならないと思うのであります。すでに中国の紅十字会からは、慰問金七万五千円というものが来ておるそうであります。日本の三団体に対しましても、この劉氏のことについてはくれぐれもよろしく頼むということを、電報で打ってきておるそうであります。われわれは、中国に抑留されておりました日韓の人々に対しては、中国政府並びに紅十字会から非常にあたたかい処遇を受けておるのであります。ただ劉君一人でありますけれども、これに対する日本政府としてのあたたかい気持は、何かの形で現わしていかなければならないということを痛感するのです。その点はいかがですか。
  243. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 事情も事情でございますし、また、人道的立場から、これに対して十分に配慮すべきことは、私は当然であると思います。お話のように、あたたかい気持で十分に慰労をするということは、当然であると思います。
  244. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 関連。関連でございますので、二つの点をお尋ねいたします。  まず、事実からお尋ねしたいと思いますが、劉連仁氏を含めます数万の人たちが中国から連れてこられましたのは、先ほど岸総理は、思い出せんということでありましたが、昭和十七年の東条内閣当時で、岸さんは当時商工大臣をしておられた。件名は正確にわかりませんが、華人労務者の移入に関する件、といったような閣議決定に基いて、多数の華人労働者と申しますか、あるいは捕虜と申しますか、日本に連れてこられたようであります。それは日本の、先ほど法務大臣が述べられました点と違う点で、思い起していただきたい。  で、御答弁を願いたいところは、第一は、劉連仁氏に関連する事実の認定を政府はこれはさるべきだと思うのであります。今まで明らかになったところによりましても、明治鉱業が作成をいたしました捕虜名簿、それから、外務省が現に持っております華人労務者の就労事情調査報告書、というものによっても、劉氏は非戦闘員であった。農民で、当時くわを持って家を出かけて仕事に行くところを、農業に行くところをつかまえられたということでありますが、非戦闘員であった人が、一九四四年旧八月ごろ、日にちは正確ではございませんが、中華人民共和国の山東省、当時諸城県、現在の高密県の一部だそうでありますが、そこで日本軍によって逮捕と申しますか、不当にそこから拉致されたと、そうして日本に、先ほど申しました東条内閣時代の閣議決定に基いて、北海道の、先ほど話がありました明治鉱業の昭和鉱業所に連行され、坑内労働に強制的に使われたと、この炭鉱の生活に耐えかねて、死人が出たり、あるいは食いものが足りないで、この炭鉱生活に耐えかねて、一九四五年七月三十日に山中にのがれたものである、こういうことが言われておりますが、そういう事実なのかどうか。これは、すでに本人が見つかって相当日にちがたっております。明治鉱業なり、あるいは外務省等でもお調べをいただいておるかと思いますので、まず、その事実の認定を願いたいと思うんです。  それからもう一つは、政府の責任ということでありますが、この方針が当時の東条内閣——岸総理も参加されて閣議決定された点でありますから、日本政府に責任がないというわけには参らぬと思うのであります。衆議院の外務委員会その他で、総理は、明治鉱業で世話をしておる云々、あるいは遺骨の送還等については民自党の幹事長としてできるだけのことはした、こういうことが書いてございまして言っておられて、政府としての責任を明らかにしておられません。しかし、捕虜の待遇に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、あるいは、戦時一における文民の保護に関する千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ条約、これは当時なかった、あるいは日本の批准をしてなかった、こういうことであるかもしれませんけれども、そのもとをなします陸戦、法規慣例二関スル条約、これらの条約に含まれております戦時国際法規は日本も認めてこられた。そのことは、こういう問題を含みます戦争犯罪について、岸さん自身、戦争犯罪の裁判を受けておられますが、これについて一九四六年十二月国連の総会で、国際軍事裁判所条例によって認められた国際法の諸原則と、この裁判所の判決を再確認するという、全会一致の決定が行われておりますから、国連に加入し、それから、非常任理事国になっております日本政府として、これらの陸戦ノ法規慣例二関スル条約、あるいは捕虜の待遇に関する条約等について責任がないというわけには参らぬと思うんです。昭和十七年の閣議の決定、それからこれらの諸条約に基いて、戦闘員でない者を軍をもって、軍隊が逮捕した、それから日本の国内に連れてきて強制労働に従わ世た、こういう陸戦法規以下の条約違反、あるいは捕虜の待遇に関する条約違反、これについて、これが直接の、過去にさかのぼって違反であったかどうかは別問題にして、その精神に違反し、人道に関する罪と申しますか、人道主義に反する行為があったということは、これは責任を免れないと思うんです。この捕虜の待遇に関する条約の中には、個人の責任があるかどうかを問わず、抑留国が責任を負う、と書いてございます。あるいは、敵対行為の終了の際における捕虜の解放及び送還については「抑留国は、自国の国境に至るまで又は捕虜が属する国の領域に最も近い自国の乗船港に至るまでの自国の領域内における捕虜の輸送の費用を負担しなければならない。」と書いてございます。政府の責任を免れぬのでありますが、これについて、本人なり、あるいは過去において友好協会なり、あるいは日ソ間の捕虜送還に関連をいたしております民間団体等から政府に申し入れをしている、あるいは先ほど松澤さんからも御質問がございましたけれども、本人からも政府に対して覚書なり、あるいは申し出があっております。その内容はここで詳細に繰り返しませんが、これに対して今まで伺ったところでは、何ら政府としての意思表示はなしておりません。政府の責任を明らかにされることがこの際必要であると思うのでありますが、これらの要求に対して、あるいは要求にかかわらず、先ほどから引用いたしました条約の精神に従って、政府としてはどのようにせられるのか、具体的に明確な御答弁を伺いたいと思います。
  245. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまのお尋ね、これに対して政府としてどういうような措置をとるかということは、その心持におきましては、今総理大臣からお答えをいたした通りでございまして、なおこれから、研究してみなければならぬと思います。ことに、これは実は私の方の所管だけではないのでございまして、よく関係省と打ち合せなければならぬと思います。  先ほど私の御報告申し上げたことが、あるいは誤解をされておると困ると思いますから念のために申し上げるのでございますが、松澤委員から、日本軍によって連行されたという話だが、というお言葉がございましたが、私の御報告申し上げましたのは、地元の入国管理事務所からの報告でございまして、それで地元では何も資料がないのでございまして、わずかな名簿等を参酌したわけでございましょう。それで多くは、この劉氏本人から通訳を通じて聞いたことを、いがにもその通りと、こういうふうにして報告して参ったのでございまして、劉氏が山東の人であるとか、何年にこちらに連れてこられたとかいうことは、全部劉氏の話をそのままに聞き、報告をして参ったことでございまして、その報告を私が何も別にこれを調査したわけでもございません。その報告のまとまりあえずまあお答えをしたわけでございますが、今の関係の捕虜であるとかどうとかいう問題になりますと、これは非常に法律的に慎重に研究しなければならない関係でございまして、これは外務省ともよく協議をしなければ、私のあるいは主管であるかどうかということについても疑義もございますから、よく調査をいたしたいと考えますが、根本において、心持としては先ほど総理大臣からお答えになった通りでございます。
  246. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 十七年の東条内閣当時において、華人の労務者を日本に連れてきて何するということについて閣議決定があったではないかという御指摘でございます。これは私正確な記憶ではございませんが、当時、日本の労務者が足りなかったので、華人労務者を連れてくる。しかし、これはすべて契約によって当の本人が受諾してくる、任意の者を連れてくるという建前であったと、明瞭にそういうふうに記憶いたしております。劉君が果してそういう何で来られたのか、あるいはそうでなしに、先ほど来言われるように、不当に逮捕され、もしくは連行されて来られたものであるかどうかということは、私事実としてはっきりいたさないのでありますが、当時の何はそういうことであったと私は考えておる次第であります。それから政府がこれに対してどうするか、具体的にどうするかというお尋ねでございます。これはいろいろ今おあげになりました法規等、いろいろ条約等の関係をおあげになりましたが、私はそれらにつきましては、いろいろなまた法律上の解釈があろうかと思います。たとえば、中華民国との平和条約締結ということ自体をどういうふうに見るかというような法律の解釈としてはいろいろの議論があろうかと思いますが、そういう法律的の議論ではなしに、やはり人道的の立場から、劉君の立場というものをわれわれは考えて、それがやはり日本政府のもとにおいて、日本領土内においてそういうことが行われ、そういうような事態に劉君があって、そうして相当なつらい思いをして、山に穴居生活をずっと続けておったという事態に対する私は人道的の立場から、同君に対する慰労なり、慰安なりあらゆる方法を尽したい、こういうふうな気持が政府考えでございます。まだ具体的にどういうことをするのだというお話につきましては、十分関係の当局とも今申しました心持を具現するように、私としてはそれぞれの方面に措置することにいたします。
  247. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 吉田さん、簡単にお願いします。
  248. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 簡単にしたいのですが、事柄が簡単でないのだから長くなるのです。きょう松澤さんから、この問題について質疑があることは通告があったと思うのです。都合が悪いものだから途中で帰ってしまわれたけれども、この問題について、政府に対する申し入れをずいぶん前に愛知官房長官を通じて申し入れてあります。ところが、唐澤法相の報告では、自分の所管ではないという話で、どこでとにかく所管をし、それでどういう工合にすべきかということについても全然とにかく討議がされておらない、その実態が今ここに暴露されておるわけでありますが、そういう点から言うと無責任きわまる。先ほど私は、昭和十七年のことから説き起しましたけれども、こういう問題について十分な反省がないのではないか。戦争責任については十分な反省をして、民主政治家として生まれ変った、こういう話が岸総理にございましたけれども、しかし、実際に過去の戦争犯罪なり、あるいは日本がやって参りましたことについての反省がないがら、こういう問題が起りましても何ら責任のある返答がなされない、私はそう思うのであります。ですから問題は一人の問題ではございますけれども、影響するところは大へん本質的な問題です。ですから岸総理として、当時商工大臣としても関係をしておられたこの戦争犯罪についての、あるいはここにおける岸さんを含みます日本内閣が十分反省をし、ほんとうに平和国家として、あるいは民主国家として戦後生まれ変ってやっているのだと言うなら、この問題についても、まっとうに取り組んで、そうして回答なり、あるいは政府方針が出てくるべきだと思う。詳しいことは申し上げませんが、もうすでに久しい前に、政府に対しては申し入れがしてあるわけでありますから、事実についての認定、それから政府の責任を明らかにする点は、ぜひ一つこれはここでできなければ、決定を願って御表明を願いたいと思う。口頭でできるだけのことはしたいということを言っておられるが、私も予算委員会の分科会でいろいろ聞きましたが、しかし、その具体的な内容につきましては何も御相談なされておらぬ。本人が陳謝を求め、あるいは中国政府への通知あるいは身柄をすみやかに中国政府に引き渡すこと、それから不法行為と十四年間の肉体的、精神的の損害に対する賠償の支払い、それから自分を含む行方不明者あるいは華人労働者の行方の調査と釈明、いわゆる名簿問題について誠意ある態度を調査の結果として御表示願いたい、こういう要望が出ておりますが、それを直接政府としてするのか、あるいは責任者を通じてやるのか、それを具体的な方法をここではしいはいたしませんが、すみやかに誠意ある表明あるいは答弁を願いたいと思います。重ねて岸総理にここでの、あるいは他日の機会かにすみやかに御表明が願えるかどうかをお尋ねしたい。
  249. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 先ほども申し上げました通り、私はこれはいろいろやかましい法律論をいたすべきではなくして、人道的な見地から劉君に対して十分な、できるだけのあたたかい気持から、政府としてこれは処さなければいかぬということを申しております。その具体的な具現につきましては、関係当局に十分に一つ至急にそれを具現するように私も努力いたします。
  250. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤さん、よるしゅうございますか。——では森中守義君。
  251. 森中守義

    森中守義君 今回国会に出されて参りました各省設置法の一部を改正する法律案が十三に及んでおります。しかも、その全部を一読してみますと、ほとんど中央集権を一そう強化していくというようなきらいがきわめて濃厚であります。現在の行政組織法の第一条の目的に、ないしは憲法に果してこれが合致するかどうか、はなはだ疑問とぜざるを得ません。かつて国会の中に、一曹に十三に及ぶ設置法の改正が出たのは、その先例を見ません。同時にまた、この各省設置法の内容につきましても、いろいろとずさんな点が非常に多いように散見をするのでありますが、一体政府の方では、この十三設置法の提出に当つて、何ほどの審議を重ね、そしてまた、行政機関の運営上、まことにやむを得ざるものとしての提案であるのかどうか、この点をまず最初に、総理の御意見を承わつておきたいと思います。
  252. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 設置法の改正につきましては、それぞれわれわれは、その必要を認めて、そして政府部内におきましては、それぞれの機構を通じて、そして御審議を願つておるものでありまして、今お話のように、こられを出したことによって、何か行政上の建前の根本を変更するというような意図ではございませんで、それぞれの設置法は、それぞれの必要を内容といたしておるものでございます。
  253. 森中守義

    森中守義君 私は、特にずさんであるということを、一つ証明しなければならないのでありますが、郵政省設置法であります。これは、その内容に、たとえば電気通信事業の自主性、つまり電電公社の主体性を極度に喪失せしめるような内容がある、これが第一点。さらに第二点としましては、過般の両院本会議において、代表質問が行われましたように、公共放送である日本放送協会ないしは民間放送に対して、極度に言論統制を加えるような、あるいは将来そのことの保証ができないような要素があるということ、これについて、総理は、本会議で、一応その所見は承わつたことはありますが、あらためて、郵政省設置法の中における電電公社の主体性、及び言論報道の自由について、この設置法が、そのことを拘束する結果になるかどうか、その点を明確に御答弁をいただきたいと思います。
  254. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は、郵政省の設置法の改正について、電電公社の自主性をなくするとか、あるいはNHKその他の何で、放送、これに対して言論統制を強化するとか、あるいはその涌を作るというような意思は、毛頭持っておりません。なお詳しいことにつきまして、御質問があれば、所管大臣よりお答えします。
  255. 森中守義

    森中守義君 言論統制の可能性を生ずるかどうかという、この問題につきましては、後日、内閣委員会で、もう少し、中身に入って質問を行いたいと思いますので、これについては終りますが、もう一つ、設置法提出に当つて、はなはだ慎重を欠いた実例の一つでありますが、特別会計の予算書、これの四百五十三ページをお開きいただきたいと思うのでありますが、郵政省では、官房長を、この機会に設置をしたいということが、設置法の中に出ております。しかるに予算の中では、官房長というものが出ていない。これも言ってしまえば、単なるあげた、あげないという問題であるから、それまでのことかもわかりませんが、およそ設置法の一部改正法律案というものが国会に出され、加えて、期を同じくして予算が出たのみならず、大臣あるいは局長、事務次官、政務次官、かような所定の予算総則に従って、それぞれの項目別に予算提出されておるにもかかわらず、いかなる理由で、郵政省の官房長というものが、この予算から削られておるのか、大蔵大臣から、私は、このいきさつについて承わつておきたいと思います。
  256. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ごもっともな御意見でもあると思うのですが、御承知のように、この予算人員表は予算に対します参照書類でありまするので、別途法律が制定されますれば、予算はそれに従って施行されることになるというふうな考え方から、さようにいたしたのでありまして、このことは先例もあるわけであります。なお、そういう点について、詳しいことは、主計局長からなお説明を補足いたさせます。
  257. 森中守義

    森中守義君 法律が制定されたあとで、このことを行なつた先例があるという御説明でありますが、その先例を正常なものと思っていらつしゃいますか、ちょつと御説明下さい。私はこの予算総則の二十一条、これを大蔵大臣は御存じないのじゃないかと思う。二十一条の中には正確に、みだりに費目を変更するとかあるいは増減額をやつてはならぬ、こういう規制事項がありますよ。しかも私は根本的には、一部を改正する法律案と予算、両建が出て、大臣、政務次官、事務次官以下各局長、所定の法則に従って予算が出ているのに、なぜ官房長だけ落しているのか、こういうことを言っているのです、大蔵大臣
  258. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) もっともな仰せでありますが、今そこでお読み下すつたところにも、みだりにしてはならぬと、こうあります。むろんみだりにするわけではありません。法律を制定いたしまして、法律の命ずるところである、かように考えております。
  259. 森中守義

    森中守義君 そういうことになれば、これは行政、立法という二つの面の重要な問題ですよ。これが国会がないようなときに、いわゆる今大蔵大臣が言われるような、みだりであったかみだりでなかったかという問題は発生するでありましょうが、予算審議であります、いわんや設置法の一部を改正する法律案の審議が、並行的に行われ得る国会において、片一方の法律が通ったならば、それを行政措置をやるということは、国会における審議権をどういう工合にお考えでしょうか。
  260. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私はただいま御答弁申し上げた確信のもとにやつたわけであります。なお、先ほど申しましたように、詳しい納得のいきますような説明を、主計局長から。
  261. 森中守義

    森中守義君 これは大蔵大臣、国における審議と行政権、どちらが先行するのか、これを私は大臣に聞いているのですよ。事務上の問題じゃない。だから国会が、今申し上げたように、片や法律案の審議をしている、設置法を一部改正する法律案の審議をしている。並行審議の可能性がこの国会にある。しかも予算総則に従って当然入れるべきものを入れないでいて、設置法の一部を改正する法律案が通ったならば、行政措置をやるというならば、いわゆる予算の国会における審議はどういうことになるのか、行政権と立法権の問題を私は聞いているのです。
  262. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。森中さんが申された通り官房長は普通であれば参照書類であつても明記をすべきであります。なぜ明記をしなかったかという問題を申し上げますと、郵政省設置法の一部改正案は、私が立案をし、提出いたしているものでありますから、その間の事情を申し上、げますと、予算編成のときには、まだ郵政省と行政管理庁の間に、官房長及び局の置局の問題に対して、いろいろ折衝中でありまして、文部省及び法務省等の問題もございまして、官房長だけは一応ペンディングになっておつたわけであります。でありますので、予算書を印刷するまでには、どうしてもきめなければならないと思っておつたのですが、一日、二日のズレがありまして、官房長というものを明記しないで参照書を提出しなければならないというふうになつたわけでありますが、実際の行政上の、また、予算的な問題に対しては、全然支障なく設置法が国会を通過しますればできるという状態でございます。
  263. 森中守義

    森中守義君 総理に伺います。私は冒頭に、十三にわたる設置法の提出はいささか慎重を欠いたのではないか、こういう質問をいたしましたが、今あなたがお聞きの通り、行政管理庁と郵政省は完全に意見の一致がなかった。しかるに予算提出が急がれたという、そのことの作業を終了せずに出したということを今、郵政大臣は答弁をしておる。そして設置法が通過したならば、行政措置をやるということは、一体国会における予算審議という、この審議権の問題及び行政措置という二つの関係はどういうことになりますか。その点を私は、総理が法律を国会へ出す場合には、閣議の中でいろいろと検討を加えて、これであるならばというところで私は法律は出されるのが正しい筋であろうと思うのでありますが、お聞きの通り、こういう重要なミスがあります。私はもし、このことをきょうここで指摘をしないならば、国会における、審議というものは無視をされたまま行政執行ということになります。それを一つ、総理としての責任あめる答弁を求めたいと思います。
  264. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 先ほど御質問がありました、この設置法の十幾つ出してることは、非常に何かずさんな何であるという例として今の問題をお取り上げになってるようでありますが、今、郵政大臣から御説明申し上げましたように、この設置法の提出につきましては、行政管理庁その他の機関でもって十分に意見調整し、そうして慎重を期してそういう審議をしたわけであります。問題は、それがずさんであるということでなしに、予算の、この付属書類の上においてそういう明記がないじゃないかという問題でございました。その点はただいま、これまた郵政大臣が説明を申し上げましたようないきさつからきておるわけであります。私によく法律理論としてわかりかねるところは、何か行政処分であるとか行政執行というようなお言葉でありますが、これは、先ほど来、大蔵大臣が説明をいたしておりますように、法律が成立いたしますならば、その法律によって、会計法その他において許されておる、予算総則等において許されておる範囲内において、その法律に従って予算を施行するというのは、これは行政庁の私は当然の任務であると思うのであります。そういう意味において、今の問題は処理されることであると、かように考えております。
  265. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連。総理も大蔵大臣も郵政大臣も、あつさりあやまりなさいよ。文部省は今度官房長をやつぱり設置法で設けるようになつたのですよ。ところが予算書のところに、文部省は官房長局長と活字が入ってるわけだ。ところが郵政省のは局長だけで、官房長の活字が落ちてるんだから、これは正誤表として出すべきでありましたと、あつさり認めたらいいのではないか。それを行政措置云々と牽強付会なことを言うからですよ。正誤表で局長のあとへ官房長を入れるべきであったと認めたらそれでいいのですよ。あつさりあやまりなさい、郵政大臣。
  266. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。正誤表を出すべきであったと、ここまできたらあつさりあやまれば、出さなくてもいいということでありますれば、あつさりあやまりますが、いずれにしても、ただいま申し上げましたように、行政管理庁との間に審議をいたしておりまして、法律を出して、国会の議決を経て執行をするというのでありますから、違法性はないわけであります。でありますから、いずれにしても、予算参照書の体裁からいうと、できれば正誤表を出すべきだったと思います。
  267. 森中守義

    森中守義君 私は、そういう大体の意向がはっきりなりましたので、これ以上追及いたしません。ただしこの問題は、やはり国会における審議と行政措置、この関係なんです。これを一つ私は、よほど真剣に政府の方ではお考えいただかないと大へんなことになります。そういうことを特に警告を残しておきたいと思います。  さらにもう一つ伺つておきたいと思いますのは、先般、郵政大臣は、春闘の終つたあとで、この前の闘争が終りましたあとで郵政省の職員、全逓の組合員に対して、二十五年の大量馘首に次ぐ大量馘首もやむを得ない、こういう言明を行なっております。そこで大量というエックス的な数字ではわからない。一体、大量とは何を根拠にどの程度のことをさしているのか、それを承わつておきたい。
  268. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。私が公けの席上で、公けの立場で組合員の諸君に、大量処分をやるというようなことは言明しておりません。でありますから、組合と話をしているときに、まあ政治闘争という色彩が非常に強くなつたのであるし、特にこういうものを強行する、何回も何回も警告を出しておるものに対しても強行せざるを得ないということになると、相当大幅の処分をしなければならなくなるので、ぜひやめてもらいたい、こういう言葉のやりとりがありまして、そういう状態において大量処分という言葉が出ただろうと思います。大量処分については、数字の問題でありますから、相当ということになるでしょう。いずれにしても、今まで一番大きく処分をしたのは、レッドパージの昭和二十五年十一月、百六十一名というものが郵政職員でおりますが、これほど大量になると考えておりませんが、いずれにしても、相当なというような表現を使つたと思います。しかし、現在は捜査中でありますので、大量になるかどうかということは、現行明確には申し上げられません。
  269. 森中守義

    森中守義君 どうも軽率で困ります。あなたは今、言つた覚えはないということをちょつと前段にしておる。ところが朝日、毎日、読売、この三大新聞は、もちろんあなたもごらんになつたと思う。明らかに郵政大臣談話として出ておりますよ。ことにあなたは、そつちで出ているように、桜の花の散るころはと、こういうことを言っておる。それでも言っていないと言いますから、それで問題は、そういう大量というのはおそらく仮定の数字です。これは労使の問題をとらえて、私は真剣に双方が事態の解決に当つておる最中に、仮定の数字の大量ということをとらえて、桜の花の散るころはどうということは、これははなはだ見識がない。一そう問題を困難なものにして、しかも混乱を生ぜしめるのが、政府の私は各閣僚の責任であろうと思う。問題をかえってこじらしているものがありはしないか、その点をもう少し、私は大量という言葉には何か意味があったと思う。それほどあなたの頭脳は混乱していないと思うから、大量というのは一体どの程度のものであるか、それを一つ正確に答えていただきたい。
  270. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。新聞の記事に対しての御説明でありますが、その後、新聞社とも話もしましたし、なお逓信委員会でも明確に申し上げておりますが、新聞記者会見で正式にそういう発言をした覚えはありません。新聞記者諸君は、私の今までの警告その他をいろいろ考えて、大量に処分をする決意があるように看取をしたので書いたと、こう言うのでありますから、私が軽率にいろいろのものを話しておるということはありません。これは公けの席上で私は明確に申し上げておるのであります。しかも、本人が言っているのでありますから間違いはありません。しかも今の大量という問題については、これはもう比較論でありまして、いろいろな問題がありますが、二十五年の百六十一名を契機にして、その後、郵政省としては労働争議に関係して解雇者を出しておりませんので、全然出しておらないというような立場からものを考えていただければわかるのであつて、現在は、先ほども申し上げました通り捜査中であるので、どういうような状況で大量処分になるということは申し上げられない段階であります。
  271. 森中守義

    森中守義君 総理に伺います。しばしば闘争を称して、スケジュール闘争である、あるいは政治闘争である、こういう表現を総理を初め各閣僚がしばしば使つておいでになりますが、これは特定の意図のもとに政府対策が行われてきたのではないかと思う。従って、私は、政府の労働政策に対する純粋性が那辺にあるのか。何かしら、総評であるとか、あるいは国鉄や、全逓や、電通、こういうものに徒党の集団を相手にでもしているように、そういう表現が非常に多い。私は、総理や石田労働大臣がよく、正常な労使の慣行を作らねばならぬ、こういうことをおっしゃっておる矢先に、何とはなしに、特定の意図を持ってこの労働組合に対処されておるような、そういうきらいが具体的な事実として受け取れるのでありますが、その点はどういうことでありましようか。
  272. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) しばしば、労働問題に関する政府方針は、私も、あるいは労働大臣——主管の大臣からも、申し述べておりますように、私は、労働組合というものが健全に発達して、そうして労使の間における民主的な関係が自主的な立場において作り上げられていくと。そうして労働者の労働条件が改善され、安定してくるということは非常に望ましいことであり、これはあくまでも私は労働組合の使命として、政府もそれを仲ばしていくように、あらゆる面からこれを助長すべきものであると私は考えております。と同時に、労働組合の、特にストライキその他の運動に、争議に際しましての行為を見まするというと、私どもはもちろん、この私営の、私企業のものに政府が介入する意思は持っておりません。あくまでも労使の自主的立場においてこれが解決されることを望んでおりますが、しかし、この日本に行われております最近の春季闘争という名のもとに、各組合が一つのスケジュールのもとに、画一的にこういうストライキもしくはこれに類似したところの実力行使をするということの事態は、私は、望ましい、私どもの願っておる健全な労働組合のあり方としては、私はこういうものに対して遺憾の意を持っておるということを、従来も明瞭に申し上げております。  それから、公企業体あるいは官公労等に対しましては、これは公労法その他の法律によりまして、実力行使や争議行為というものが認められておりません。それにかわるに、賃金の闘争についての仲裁裁定という制度が設けられております。私どもは、仲裁裁定のこの裁定に対しては、政府として誠意を持って完全にこれを実施するということを一方において公約するとともに、一方においては、その法が命じておるところのことを行わない、それを無視して、法で禁止されておるところの争議行為、実力行使というものを、禁止されておるにかかわらず、これをあえてするという場合におきましては、法を励行してそういうことを取り締つていくという、この二つの方針を明確にいたしておるわけであります。  決して何らかの、われわれこそ政治的意図を持ってするというようなことは、われわれ自身は……。私は、日本の今申しましたスケジュール闘争にそういう政治的意図がないかどうかということについては、従来はなはだ疑問を持っておるのでありますけれども、政府そのものにそういう意図は全然ないということを明瞭にいたしておきます。
  273. 森中守義

    森中守義君 政治的な意図、特定の意図がないということでありますが、私はこういう事実を指摘したいと思う。すでに総評あるいは各組合が闘争計画を行なつた、その前に、労働組合には労働組合法以下関係各法律があります。こういうものを適用すべきであるのに、わざわざ刑事罰の適用を、たとえば郵政省の場合には、郵便法七十九条の適用を全国に指令をして、これで取り締れということをやつておるじゃありませんか。ここに私は、労働運動に対する純粋性が政府にありゃいなやということを聞いておる。さらに、もっと指摘しなければなりませんのは、警察官が職務執行規定に違反ではないかという疑いのあるような行動をしております。完全に武装して、数百人に及ぶ警官を動員をして、取り締つておるじゃありませんか。その数においても常識をはずれておる。これでも、政府の労働運動に対する対策の純粋性があると言えますか。のみならず、今日どんどん、どんどん検挙して、そうして郵使法七十九条の違反があるかないかということの追及に終始しておるという事実は、明らかに政府が、問題の根本的な解決をはかることよりも、むしろ取り締る、悪く表現するならば弾圧という、こういう政治的な意図があります。これが、私は、今日の岸内閣が労働運動に対し特定の意図を持ち、政治的な意図を持っておると断定せざるを得ないのであります。この事実について、もう少し率直に総理の意見を私は聞いておきたいと思います。
  274. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 郵便の事務に従事している人がこの実力行使をした場合に、それは一面において公労法の規定に違反するということになると思いますが、同時に、郵便法自身が命じております、また規定しております——これは刑事罰に関する規定でありますが、それに違反する事実があるかないかということを、私は法律的に考え、これの事実を調査し、その捜索をするということは、これは私は当然であり、一つの行為が、この行為が刑事罰の適用かあるかどうかということは、この席上におきまして法務大臣その他との間に十分な議論があったわけでありまして、それがわれわれ政府としては適用あると、こういう考えのもとに事実々やつておるわけでありまして、それが特別の意図を持って何か弾圧しようとかいうことではないことは、言うを待たないのであります。私は、その点につきましては、やはり法律の解釈でいくべき問題であると。  もう一つは、この警察官の労働争議等に対する場合において、あまりにも大げさであり、あまりにも数が多いじゃないかというようなお話でありましたが、これは具体的の事例がどういう場合であるか。一般的に申して、この非常に多いとか、あるいはものものしいというわれわれは実は考えを持たないのでありまして、なるべく、先ほど申し上げましたように(民間の争議については自主的な、組合と経営者側との話し合いによってこれをきめる、また今の公企業体や官公労等につきましては、法規の順守を求めるという態度で、それを事態によって非常に違反するような事態が大げさに行われるというような場合に、事前にそういうことのないように防ぐというような、防止するというようなために、あるいは警察官が出るというような場合もあろうかと思いますが、私どもは警察力をもってこういう問題に干渉するとかいうような考え方は毛頭持っておりません。
  275. 亀田得治

    ○亀田得治君 関連……。
  276. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単にお願いいたします。
  277. 亀田得治

    ○亀田得治君 政府は、春闘に対して干渉したり弾圧のお考えはない、こういうことをおっしゃるわけですが、全逓の問題については時間もないから申し上げませんが、私鉄の問題ですね、私鉄の問題について、たとえば東急が調停案よりも若干上回つた額で労使間で解決をした、これに対して、河野長官なり政府側の方から、そういうスト破り的なことをやる私鉄に対しては、運賃は引き上げない、こういう意味のことを盛んに放送されたことは、これは新聞にもたくさん載つておる通りであります。私は、これは運賃の問題は運賃で、当然別個な問題です。何も、調停案よりも若干上回って解決したから、その会社の経営が、そうでない、日経連等に引きずられて解決できるものを解決しないところよりも、経営内容がいいのだ、簡単にそんなことは私は断定できないと思う。ほんとうに労使間で、問題がここまで紛糾しておるから、調停案から若干でも上回つた額で解決がつくものならつけたいという、ほんとうに労使間の自主的な解決の気持でやつておるものがあるかもしれない。そうでしょう。そういうものを、内容を一々よく検討しないで、ともかく日経連の線から見て上回つたような額で妥結するものはスト破りとみなすと。資本家側から見たスト破り、そういう立場から、今度は運賃の問題にひつかけてそういう発言をするということは、これは明らかに弾圧です。大きな干渉です。私は、そういう意味で、非常にこれは遺憾だと思って見ているのですが、総理の見解をお聞きしておきたい。盛んに先ほどから、労使に対しては弾圧しないと言うのですが、弾圧している、明らかに。
  278. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 私は今お話しの事実ははっきり承知いたしませんが、しかし、今お話しのように、賃金のベース・アップやあるいは増額という問題と料金の問題は、もちろん別個の問題でございます。ただ、普通の常識からいって、なかなか労使の間の事実上の賃金のベース等についての争議について、それが妥結される場合における情勢を見まするというと、会社の内容が悪い場合においては、経営者が相当に労働者側の立場を十分に同情し、適当なところできめようとしましても、会社経営の責任上、会社の経営内容が悪い場合には、なかなか労働者の要求に対して応ずることができないというのは、これも私は実情であろうと思います。経営内容がよければ、自然これは経営者としても労働者の要求を十分認め、これに何していくということも、これもまた当然のことであると思います。そういうことからそういうような発言が行われたのじゃないかと思いますけれども、もちろん、これは料金の問題は料金の問題として、会社内容の全面を十分に検討した上において、必要があるかないかということをきめるべき問題でありまして、この一つの事例だけで直ちに結論を出すということは、これは間違つておるということは、これは亀田君の言われる通りであります。
  279. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 森中君に申し上げますが、時間が経過いたしておりますから、お含みの上御発言願います。
  280. 森中守義

    森中守義君 最後に、私は一つだけ大事なことを承わつておきます。それは、今総理は政治的な干渉をした覚えはない、そういう考えは持たないということでありますが、たしかきょうの新聞に、河野経済企画庁長官が、朝飯会というものが、どういうものか知りませんがしかしその会合に出て、私鉄の代表に対して、もしも千円以上のむとするならば、今後私鉄における経営は良好のものである、こういう認定のもとに運賃の値上げは同意しない、許可しないということを言っておるじゃありませんか。これは明らかに、間接に政府が労使双方に政治干渉を加えておるということにもなるでありましょう。  それと、もう一つの問題は、郵便法七十九条、これは私が調査したところによれば、二十五年、百六十一名の整理の場合、郵便法七十九条の適用をしておりません。政令二百一号が適用されておる。しかも、その後言、二回いろんな問題が発生をしておりますが、そういう際にも。純然たる労働関係諸法によって行政処分が行われておる。しかも、占領中のできごとです。にもかかわらず、今郵便法七十九条をたてにとつて刑事処分をやるということは、軍政以上のことをやつておるじゃありませんか。(「その通りだ」と呼ぶ者あり)これは私は、占領軍さえもやらなかったことを岸内閣がやろうというからにおいては、総理はしばしば民主政治家として出直しをしてきた、こういう話であるけれども、民主政治が泣くということになります。私は、占領中においてすらも刑事処分が加えられておらないのに、七十九条をわざわざなぜこの機会に持ち出してきたか。しかも、中央郵便局における深夜から職場大会が終了するまでの実情というものは、だれよりも郵政大臣がよく知っておると思う。断じて郵便法七十九条に該当するような事実はありません。のみならず、現場における労使の慣行として今まで取り行われてきた組合事務所の撤去を申し入れたり、執務者以外は局外に出ろ、こういう挑発行為をかけておる。それで七十九条の違反。しかも、七十九条の立法の精神というのは御存じですか。  第一回国会において、参議院及び衆議院においてやかましく論議されております。そのときに政府当局は、労働問題については七十九条は適用しないということを言明をしておる。かように国会の審議をされ、明らかに政府から答弁が行われた郵便法を、わずか十年ちょつとくらい過ぎた今日において、わざわざ七十九条を引き出してくるということは、明らかに軍政以上の問題であります。そのことを、私は、総理と田中郵政大臣及び法務大臣から、七十九条の適用のことについて的確な答弁をいただきたいと思う。
  281. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。私が就任しました去年の七月直後に、全逓の組合員諸君全部に口達を出しております。私の方も出せるものは出す。お互いに誠意を持って事の解決に当ろうということに基きまして、こちらの方も誠意を持って措置をするが、違法行為があった場合にはきびしく取り締る。しかも、それを例示をいたしまして、公務員法の適用、それから公労法の適用、郵便法七十九条の適用ということを例をあげて、こういうことになるのだから、一つ十分注意をするようにということで、春闘の始まる今日まで、郵政関係は非常に円満に参つたことは御承知通りであります。でありますから、戦後十二年間になかったような、年末の問題を十一月の七日に早期に片づけたというような経過をたどつて参つたわけであります。  でありますが、今度の争議は、御承知通り、非常に困つた争議であります。非常に変つた色彩を帯びておるものであります。なぜかと申しますと、いわゆる政府が相手のものであり、公労法によって団体交渉を行わなければならないというような範疇のものではないのであります。政府とは全然組合は対立しておらない。どういうことでもってストライキをやるのか、また職場大会を開くのかということは、単に両者の意見がまとまらない、二千四百円ベースアップの問題に対して、第三者の調停にゆだねておる。その調停がゼロ回答が出ると困るので、デモンストレーション的なものをやるのだ。こういうところが非常に色彩が変つておるのであります。でありますので、実害を及ぼさないようにやろうという組合の立場は十分に了解をし、その誠意も認めるが、いずれにしても、違法事実というものが今度非常に明確になるなら、郵便法七十九条の適用もやむを得ないというような状態になっては困るので、ぜひやめてくれと、もう何回か警告を発しておるのであります。ですから、立場上やむを得ずということで、スケジュール闘争の一環として行われたわけであります。でありますから、公労法の適用はもちろんでありますが、公労法の適用をするからといって郵便法七十九条の適用が除外されるものではない。また公務員法の適用が除外されるものでもないのであります。  しかも、郵便法違反の事実がないということは、先ほどの昭和二十五年のものは、これは俗に言われるレッドパージというものでございますけれども、昭和二十二年の処分に対しても、七十九条の適用がなかったというのでありますが、これは昭和二十二年の十二月に今の郵便法ができております。二十三年に公労法ができ、郵政職員に対しては二十八年に適用をされておるのであります。二十二年当時は、この現在の郵便法七十九条制定のときの趣旨通り、あなたが今言われた通り、国会審議をされた通りの状況なんです。なぜならば、当時は、郵政職員にもストライキ権があったのでありますから、七十九条の適用を特に労働関係のものに対しては適用しない、こういうふうに政府が言つたことは、これは明確であります。でありますが、その後公労法ができまして、ストライキを禁止をいたしております。禁止をいたしておりますから、七十九条の適用から除外されるということはないのであります。でありますので、私の方といたしましては、非常に慎重に、かつ、刑事処分というものが好ましいものではないと思っておりますから、慎重ではありましたが、この二十日に行われた全逓の職場離脱の問題は全く山ネコ的なものでありまして、これは事実から言いますと、非常に悪質なものであります。そういう意味で、公労法の適用はもちろんでありますが、郵便法七十九条の違反の容疑もあるわけであります。私たち考えでやつたわけではありませんが、いずれにしても警察が今調べております。先ほどは拘引をしてというお話しがございましたが、任意出頭を求めているのでございます。全然強制収容をしたような事実はございません。でありますが、任意出頭を求めて事実を調査をしておるのでありまして、この調査の結果、郵便法七十九条の違反容疑が濃くなれば刑事訴追を受けるという問題がございますが、現在のところは、全く捜査の段階であつて、七十九条が適用せられるかどうかということをまだ明確に言える段階ではないということを、逓信委員会  でも申し上げておる通りでございます。
  282. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 郵便法七十九条の解釈につきましては、今郵政大臣からもるるお答えがございましたし、また、この委員会におきましても、過日私が申し上、げたのでございますから、簡単にお答えいたしたいと思いますが、今お答えのありました通り、郵便法の制定の当時におきましては、もちろん公労法がなかったのでございますから、郵便法第七十九条に該当するような、たとえば、ことさらに郵便を取り扱わぬというような行為がございましても、その行為が争議行為の過程においてなされますときには、争議権を認められておりまするから、その意味において七十九条の犯罪の成立要件を阻却いたしまするから、これは罪になりません。従いまして、形の上では該当行為がありましても、七十九条を適用することはできないのでございますが、その後、公労法の制定を見まして、そうして郵政職員には争議を禁止されるようになりましたから、これは正当なる争議行為ではないということになりますから、七十九条の犯罪の成立要件を阻却する原因にはならなくなつたわけでございます。かような解釈を法務省としましてはとつております。この解釈につきましては、過日、亀田委員からも別のお考えが述べられておりまして、また、学者の一部にはそういうような意見があることも承わつておりますが、法務省といたしましては、七十九条の適用ありと、かように解釈をいたしております。(「事実がない」と呼ぶ者あり)
  283. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 本件につきましては、主管の大臣である郵政大臣から申した通りであり、また、この法律解釈につきましては、法務大臣がお答えをいたしましたように、私も同様に考えております。
  284. 森中守義

    森中守義君 政府の私鉄の干渉……。
  285. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) 先ほど申し上げましたこの私鉄の争議について、私はさっきも申し上げましたように、賃上げのきまることと、そうして料金の問題というものとは別の問題である。それで、ただ一般に考えて相当な程度に上げ得るところのものは、多くの会社におきましては内容がいい、また、それを上げ得ないところのものは、内容が一般に悪いというのが大体常識的に言えることだと思います。しかし、ただ単に幾らにきまつたから、直ちにそれでもって値上げをする必要のないほど内容がいいかどうかということを、これだけの事実でもって言うということは言い得ないと思うのであります。従いまして、料金の問題は料金の問題として、別途会社の内容なり、その他の事情を十分に調べた上で決定すべきものであると思います。
  286. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から申し上げます。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)発言中です。森中君、ちょつと委員長から申し上げます。時間もだいぶたちました。しかしなお、御参考までに森中君に申し上げますが、本件について、(発言する者多し)静粛にお願いします。本問題につきましては、一昨二十七日の補正予算の審議の過程におきまして、社会党の鈴木強君から御質疑がありました。長時間にわたって質疑応答を重ねられ、郵政大臣、法務大臣、労働大臣、警察庁長官から懇切な実は答弁がございました。ただあなたの御発言には、一部新しい問題があるのでございますから、右お含みの上、御発言を願  います。
  287. 森中守義

    森中守義君 大体、今総理及び郵政大臣、法務大臣、関係各閣僚から答弁がありました。しかし、私が質問を申し上げた趣旨とはおよそかけ離れた答弁が行われております。私が申し上げたのは、明らかに政府は、政治干渉をした事実がある、そのことを三つ四つ実例をあげたはずなんです。それに対する答えが出ていない。従って、時間ということでありますから、私は不満なままここで下るわけに参りませんが、後日この問題は、再度発言の自由を留保する、ということは、きょう労働大臣をお願いしておきましたが、病気ということで出席されておりません。これまた、私の発言は残つておりますから、委員長において善処されることを特に要望して、私の質問を終ります。
  288. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 森中君に申し上げます。あなたの御要望のお気持はよくわかりましたが、時間と機会がございましたらこれを認めることにいたします。(「議事進行」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)もう済みました。御発言が済みました……。では大谷君簡単にちょつと。
  289. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 理事会の申し合ぜに基きますというと、ただいまの御質問は五分間だというふうに私は承わつております。委員長の時計はとまつておるのでございますか、今何分になつたかということをお知らせ願いたい。願わくは、私は理事会で慎重審議して、この議事の運営の進行について与野党の理事の方々が審議しておきめになつたことは、委員長は公平に一つ御尊重を願いたい。そのことをお願いしておきます。
  290. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長から申し上げます。(「時間のことなんかいい」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し、松澤兼人君「議事進行」と述ぶ)議事進行の発言ですか。松澤君。
  291. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 先ほどの森中君の、最後の委員長に対する要望ですね、これは別に再質問をするとか、何とかということじゃないのです。きょう労働大臣が欠席している。政務次官も出ていない。それでもっぱら岸総理なり、田中郵政大臣なりにお願いして答弁していただいたけれども、しかし、これは所管の労働大臣の御意見も聞かなければならないということで、少くとも労働大臣が、この関連する部分については、適当な機会に後日この委員会において答弁してもらいたいということを言っているのですから、その点をどうか御了解を願いたい。
  292. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤君にお答え申し上げます。労働大臣の病気途中退席につきましては、労政局長亀井君をもってけつこうである、こういう森中君の御了解に承わりましたので、これは委員長において適宜取り計らつたのであります。さように御了承願います。
  293. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 労政局長が答弁するような問題じゃないのです。これはやはり国務大臣として、労働大臣として答弁する問題がある。所管事項があるのですよ。所管事項がありますからして、その問題については、後日この委員会におきまして、答弁をしてもらいたいということを要望しているのですから、答弁をさせたらいいでしょう。
  294. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤君に申し上げます。委員長は、時間と機会があらばこれを許すことに、先ほどお答えを申し上げました。
  295. 森八三一

    ○森八三一君 議事進行。当委員会の運営につきましては、昨日の理事会の申し合ぜに従って、委員長取り運びをされて参りました。なお、下条委員の質問を残しております。昨日、理事会の決定を委員会に報告され、了承された推移から申しますると、下條委員質疑をこれから続行すべきでありますが、時すでに二十時にもなんなんとすることでありますので、下條委員質疑は三十一日に持ち越しをいたしまして、三十一日十時に委員会を開き、下條委員質疑を行いまして、下條委員質疑が終りますれば、本委員会質疑終局ということにいたしまして、直ちに引き続き討論採決をすることにいたしまして、きょうはこの程度で散会されまするようにお諮りを願い、進行されることを希望いたします。
  296. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 労働大臣の答弁は。
  297. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいま森君の議事進行に関する御発言は、委員長において、この際適切な御提案と存じますので、さよう取り計らいたいと存じますが、(「異議があるかないか諮らなければわからないじゃないか」と呼ぶ者あり)これからです。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  298. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認めます。
  299. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 議事進行、森君の発言、大体においてわれわれとしても了承いたします。しかし、私は先ほど申しましたように、少くとも所管事項に対する労働大臣の答弁は、この予算委員会において適当な機会に答弁を願いたいということだけを。
  300. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 森中さんの労働大臣の問題ですね。
  301. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 その問題だけを森君の発言に加えてお願いしたいと思います。
  302. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 森君いかがでしょうか、あなたの御提案に今の松澤君の提案を入れましても。
  303. 森八三一

    ○森八三一君 けつこうです。
  304. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは委員長から申し上げます。ただいま松澤委員の議事進行に関する御発言も、これも適当のものと考えまするので、各位の御了承を得たいと存じますが、いかがでしょう。    〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  305. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それではさよう決定いたします。  明後三十一日は、午前九時五十分理事会を、午前十時本委員会を開くこととし、本日はこれをもって散会いたします。    午後七時四十六分散会