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国務大臣(一
萬田尚登君) 仰せのように、今後の経済の景気の動向について私
自身としての所懐を若干申し述べたのでありまするが、それは実をいうと、非常にむずかしいのであります。特に景気がいつから回復するかというようなことは、容易に断言あるいは見通し得るものではないのであります。ただ、景気の方向がどういうように向く……、言いかえれば、ずっと不況が非常に長く続いていくか、あるいはまた一定の期間を経過すれば、景気はやはりいい方に向いていくかというような見通しが一致するかせぬかというところに私はやはり限界がある、こういうふうに
考えておるのであって、しかも、今日世界のいろいろの学者の意見を研究してみても、やはり同じなので、いつからよくなるかという点は非常にまちまちです。ただ、よくなるであろうというのと、ソ連の学者のようにこれはよくならぬ、これはほんとうの社会的な不況である、こういうふうに
考えるのと相違が私はあると思います。ですから、ある人とある人の意見が非常に食い違っているというようなことを言う場合は、方向が違っておるかというなら、これは私はそれを違っておるといわれていいのですが、同じ方向に向いておって、いつからというようなときは、それはなかなか、だれがいいのかわかりませんが、これはいろいろと
考えて、聞く人もまた受ける人もよく
考えなければならない。なぜかというと、経済の景気自体の動きと、これを今チェックしょう……、いわゆる景気対策というものが
アメリカを中心にして強力に行われております。従いまして、そういう景気対策というものが、今日の政治の上では、やはり議会の協賛を受けることが多いのであります。そうしますと、時間的にどうしても一定の時にやろうということがずれることもある、あるいは国会で、やろうと思ったことを否定することもある、いろいろそこにありますものですから、こういうことをやるからこういうふうになるだろうという仮定で見る場合は、いつからということは非常に私はむずかしいのじゃないか、こういうような見解であります。それから私との見解が違っておることは、私は全然ないと思います。これは。それは、私は経済全体あるいは国民生活の方も
考えての
発言は若干ありますが、
日本銀行総裁はこれは金融の方で、いわゆる通貨価値の維持という見解においてものを
発言されておると思いますから、若干のものの言い方について、いわゆる何といいますか、言葉の使い方とか、あるいは語句について若干の相違はありましても、それほど私は違っておらぬと思います。私が従来政策的に申し上げましたのは、
日本の景気はなるべく——私は政策的に申しますから、なるべく早く生産
調整でも切り上げるというのが当然なことであろうと思います。いつまでも生産
調整といいましても、二年、三年続くわけにいかぬ、できれば早く……。ところが、生産
調整になりますと、これは事業家としては生命です。自分は非常に骨を折ってやつて、
仕事がここでストップするとか、あるいはさらに生産を下げるということに、できるだけ抵抗するというのが自由経済においては原則だと思う。そうすると、これはこうしようと思っていても、事実は伸びておる、こういう事態も生じます。それで私は大体、今一番初めのときに、できれば大体常識として
アメリカの景気の当初の状況を見て、まあ三月くらいになるべく切り上げたいのだ、そうして政策としては、これはまあ四、五、六はやはりいろいろな情勢的なものがあろう、こう思っておつたんです。大体そういうふうな言葉の使い方も、三月から要するに六月まではやはり生産の
調整過程で、大小の波がある。山際君あたりも大体そういうことで六月くらいまではそういうような生産
調整でうまくいくだろう……。私の
考えでは、政策をやる方ですから、もう少し早く来ぬというと、事柄は生産
調整を済まして
あとは地ならしの
調整でいきたい。七月からというのは、七月から景気がよくなるという
意味じゃないのです。ただしかし、
日本の景気が立て直る動機となるのは、やはりどうしても
アメリカの景気、そういう
アメリカの経済……また
アメリカは七月から新しい年度になりまして、ここに景気回復の対策が維持されていくだろう。そうするとおそらく、ここでうまくなかなか言えませんけれ
ども、七月ころから一般に景気が悪くはならぬだろう、除々によくなる方向には向くだろう、こういう点について非常に意見の相違がありまして、来年の春にならぬとわからぬ。今後の推移を見ませんと何ともこれは申し上げかねる。ただ、今日何らかまだ不景気じゃないか、お前は景気の見通しを誤まつているという人があるのですが、そういうことじゃない。実際私は四月という時は
日本の景気の最も悪い時で、初めから予定している。ここが生産
調整のピークだという見解をとつているのですから、今、
日本の景気が悪いというのは初めから覚悟して、ここをどう切り抜けるかというのが私たちの
考え方なんですから、今どうもお前は何か楽観しておる、景気悪いじゃないかというのは突拍子もない話なんで、私は初めから悪いというので、ここのところは誤解のないようにお願いしなくちゃならぬ、私の景気の見通しが、私の
考え方ですね。しかし、これはまちまちになって悪いですから、政府としては企画庁が
関係専門官庁ですから、企画庁が十分スタッフを動員して、経済の動向を研究されて、それを今度企画庁として、あるいは政府として、
日本の経済の現状あるいは刻々に動く経済の情勢並びにそれに基く見通しというものを発表することにしまして、それによることにいたしておりますので、政府の見解は、どうぞ企画庁の発表におより下さることをお願いいたします。