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国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。昨年の秋のソ連の発射しましたICBMその他人工衛星、これに伴って米国においても各種の中距離ないしは長距離の弾道弾兵器の実験、またはその実用化に向っておるという事実は、お説の
通りでございます。このことが
世界の
政治並びに軍事上に与えた影響も非常に大きなものがあるということは、おっしゃる
通りだろうと思っております。現にその後の国際間のあらゆる
会議において、また、最近の
外交の
関係における交渉において、こういった事態から生じた幾多の問題が現に討議され、交渉され、また、論議されておるという実情でございます。これらの点について一々申し上げる必要はいかがかと存じまするが、そこで御質問の点は、こういった事態が、わが国の国防の基本方針、また整備の
計画にどういう影響を及ぼすか、これが変更する必要ありやというような御質問と了解いたします。この点につきましては、わが国の国防の基本方針は、昨年の六月決定したものがあり、また、それに即応した防衛整備
目標というものが決定されておるのでございます、これらはこういった事態において、事態の推移に応じて、その実行において、いろいろな点において改善を加え、刷新を加えるという必要は当然あると思います。しかしながら、国防の基本方針は、御
承知のようにわが国があくまでも自衛の
体制を作り上げる、それについては国力、国情に応じた最少必要限度の防衛の
体制を作るのである。これについては、
財政の
事情その他も考慮する、こういったようなことであり、特に対外
関係においては、国連憲章の精神をもって平和に維持し、また協調をはかり、それによって
世界平和に寄与しようという基本の方針をうたっておるわけでございます。なお、防衛直接の問題としては、国連によっての集団安全保障による防衛というものに寄与することができ得るまでに至る期間においては、日米安全保障条約によって、その
日本の防衛力の足らざるを補う、これだけの基本的なものをきめておるわけでございます。この事態は、私は基本方針としてこれを根本的に変えるという今日の
事情には、わが国にとってはないと思っております。
次に、これを実行すべく想定いたしまして、現に三十三
年度予算においても御審議願っておりまする防衛の整備
目標というものでございます。これは申し上げるまでもなく、ある一定の期間、すなわち三十五年ないし三十七
年度にわたってわが防衛の骨幹をきめるというような
意味において、陸十八万、また海十二万四千、航空機、航空自衛隊の方面でございますが、それを千三百機、こういったものをきめてあるわけです。これは一応の
目標でございます。今後の事態においてこれが再検討して、これではどうもいけないという事態が起れば、再検討する必要のあることは、そこに示されておるわけでございます。ただ、それらの問題については、むしろ内容的に質的の増強、また装備の刷新をはかるということ、その
目標自体の中に示されておるわけでございます。でありますから、今日この
目標を直ちに変更するかということについては、まだ十分な腹案、検討を加えておりませんが、これは各年次
計画においてその国力また
財政の
事情、民生安定との
関係を顧慮して弾力性を持たしてやろうということが示されておるわけでございます。現実の問題といたしましては、三十三
年度予算においてもまた今後も当然でありますが、いわゆる科学の
進歩に応じた装備の改善、
開発、また、部隊編成においても同様な趣旨においての質的な増強をはかっていって、この時代に応じようという
考えで、
予算においてもそういった趣旨において必要な経費を計上して御審議をお願いいたしておるわけでございます。大体今日の事態においてわが国の国力、国情に応じてやり得ることは、いわゆる核兵器を装備して、こういった新事態の新科学兵器に対応するという方針はとらない。そのとらないうちにおいても、質的の改善、装備の改善を加え、科学研究
開発によって、これらの装備を逐次改善していこう、こういう方針でやっておる次第でございます。