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1958-03-14 第28回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十四日(金曜日)    午後二時六分開会   —————————————   委員の異動 本日委員竹中恒夫君、苫米地英俊君及 び西田信一君辞任につき、その補欠と して千田正君、武藤常介君及び青柳秀 夫君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     泉山 三六君    理事            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            高橋進太郎君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            青柳 秀夫君            石坂 豊一君            大川 光三君            大谷 贇雄君            小山邦太郎君            後藤 義隆君            佐藤清一郎君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            一松 定吉君            本多 市郎君            武藤 常介君            安部キミ子君           小笠原二三男君            岡田 宗司君            亀田 得治君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            藤原 道子君            矢嶋 三義君            加賀山之雄君            市川 房枝君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 一萬田尚登君    文 部 大 臣 松永  東君    厚 生 大 臣 堀木 鎌三君    農 林 大 臣 赤城 宗徳君    通商産業大臣  前尾繁三郎君    労 働 大 臣 石田 博英君    国 務 大 臣 郡  祐一君    国 務 大 臣 正力松太郎君    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    総理府総理副長    官       藤原 節夫君    警察庁長官   石井 榮二君    行政管理政務次    官       榊原  亨君    行政管理庁行政    管理局長    岡部 史郎君    自治庁財政局長 小林與三次君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際協力    局長      宮崎  章君    外務省移住局長 内田 藤雄君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省管理局長 小林 行雄君    厚生省公衆衛生    局長      山口 正義君    厚生省児童局長 高田 浩運君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君    中小企業庁長官 川上 為治君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十三年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまから委員会を開きます。まず、委員の変更について報告いたします。本日竹中恒夫君、苫米地英俊君及び西田信一君が辞任せられ、その補欠として千田正君、武藤常介君及び青柳秀夫君がそれぞれ選任されました。   —————————————
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これより昭和二十三年度一般会計予算ほか二件を一括議題といたします。  質疑を続行いたします。
  4. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 議事進行について。昨日の委員会行政管理庁長官に対して、常勤労務者並びに常勤的非常勤職員を一部定員化する件についての資料提出を要望いたしましたところ、先刻委員長を通じてその資料をここに提示されました。しかし、その資料を拝見いたしますと、非常に抽象的な文章でありまして、私ども予算を審議するに当って不十分でありますので、重ねて資料を早急に提出するよう委員長を通じて要求をいたす次第であります。と申しますことは、私ども同じ職場で同じ内容の仕事に従事している人が、一部は定員内の公務員であり、一部は定員外であるということは、どうしても納得できないのですが、この出された資料を見ますと、常勤労務者並びに常勤的非常勤職員は無用な人員である、必要がないと考えられているのではないかと推察されるような案文でありますが、これをどういうふうに考えているのかという点に疑問を持つわけです。従って資料といたしましては、第一は一年未満職員が何名、それから一年以上二年未満が何名、逐次一、二、三、四、五、六、七、八、九、十まで表を出していただいて、十年以上は一括して十年以上に該当する者が何名ある、二カ月ごとに更新されたのは何名あるという、その具体的な表を各省別一つ出していただきたいと思います。  なお、もう一つ資料は、本日出された資料は非常に抽象的な表現になっておりますので、今度出す資料については各省庁別に、さらに職群別に、きょうの資料にあるように職務重要度、それから責任の度合いというものがどういうふうにものさしを作られたかということを、具体的に言いますならば、運転手なら運転手は、責任重要度とか、それから職務重要度というのはどういうふうなはかり方をしたのかというような点がわかるような資料を、できるだけ早く出していただくよう委員長から要求していただきたいと思います。
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 榊原政務次官、ちょっと御説明願います。
  6. 榊原亨

    政府委員榊原亨君) 非常勤職員につきましては、私どもその重要性は十分考えておるわけでございまするが、これを定員化いたしまするのは、たびたび申し上げましたように、公務員制度というものがはっきりしなければ十分なことができないのでございまするが、今国会にはこれが間に合いませんので、暫定的措置をいたしまして約三分の一を定員化する、かように処置したわけでございます。なお、ただいまの御要求資料につきましては、整えまして提出をいたしたいと思います。
  7. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それでは市川君。
  8. 市川房枝

    市川房枝君 先般の総括質問の際に残りました社会教育に閲する問題について伺いたいと思います。それも時間をいただきましたので、少し詳しくお伺いをしようと思っております。この問題は非常に重大な問題と存じますので、実は岸総理にも伺いたかったのでありますが、きようは文部大臣にお伺いをいたします。  まず最初にお伺いしたいことは、この社会教育というものについての大臣の御所信と申しますか、あるいは御信念と申しますか、それを伺いたいと思うのであります。私は社会教育学校教育とともに非常に重要である、考え方によりまするというと、学校教育よりも重要だ、こう言ってもいいかと思います。社会教育対象社会教育法に規定しておりますように、主として青少年及び成人でありまして、それらに対しての組織的に行われる教育活動社会教育と言っておるようであります。成人はすなわち有権者でありますし、青少年も近く有権者になる人たちであります。またその数が非常に多い、そういうところから選挙政治に直接、間接のつながりがありますので、いろいろな問題が起つてきております。学校教育に対しては強力な日本教職員組合がありまして、文部省方針に対して絶えず監視をし、抵抗をしておいでになるようであります。ところが社会教育に対しては、その日教組もそれほど関心をお払いになっていないように私には見えますし、そのほかに社会教育に対して抵抗のできる有力な団体というものがないようであります。それで社会教育文部省の思うままに、あるいは自民党の思うままに行われている、いや、もっと大臣よりも下の社会教育局長なり、あるいは社会教育課長が勝手にやつているのだ、こういうふうにも言われております。で、国民が、あるいは有権者がものを考えるようになる、あるいは批判力を持つということになりますると、現状に満足しないで文句を言うようになります。また考え方が自然に進歩的にもなるし、政治的には社会党がふえていくということになるかもしれません。だから国民にあまり考えさせないようにするという、あるいは批判力を持たせないようにするということを、まあ愚民政策といいますか、そういうような政策をとろうとするというようなことにもなってくるんじゃないか。教育委員任命制の直接の目的は、自民党がまず社会教育を手に入れるためであったという人がおりますが、私にはよくわからないのですが、こういう観点から文部省の三十三年度の予算を見ると、なるほどその考え方の、いわゆる青年学級あるいは公民館の費用は三十二年度よりも減らされておる。そしてスポーツとか、ユース・ホステルとかいったような遊ぶ方に主力が置かれて、予算もその方にだいぶたくさん取られておるようでございますが、大臣は一体社会教育というものについてどういうふうに、お考えになっておるか。文部省社会教育に対する方針というものは一体どういうものなのか。  なお今日の時代において考えない、批判力を持たない国民を望むと、かりにそういう政策をとるような政党があったとしたならば、私はそんな政党はやがて消えていく、こう思うのでございますが、大臣のお考え伺いたいと思います。
  9. 松永東

    国務大臣松永東君) 市川さんの御指摘なつ社会教育の問題、もちろん学校教育も重大な問題でございます。しかしそれにもまして社会教育はまことに必要なものでございます。仰せになつた通り文部省といたしましては、こうした社会教育ついてはできるだけ力を尽したい。ことに終戦後ああした虚脱状態に陥るとか、放心状態に陥っておった青年層、それはだんだん大きくなっております。そういう人々ようやくここで、独立国になってもう戦後十三年も経過したのでございますから、ここら辺で一つ一ぺん反省をし、さらに再検討をして、お互いほんとうの民族の中堅として働くことのできるように持っていきたいというふうに考えておるのでございます。仰せなつ批判力を持たないようにして、そうしていきなり右来い、左来いといって引っぱっていく、そのような考えは寸毫も持っておりません。いや、それが今日できようはずがございません。みんなそれぞれあなた、民主主義の今日、相当の人々が監視いたしておるのに、そんなことをしようと思っても、できようはずがございません。従ってそうした社会教育については政党政派を交えない、いや交えないと申しましたところが、いずれはその地方地方における有力者は大体政党関心を持った人であり、政党の党員であるでありましょう。しかしながら、その人々でもいやしくもそうした社会教育に従事されるような場合には、党派を超越したほんとう中立的立場でやつてもらうということを熱望いたしております。それだけが今申し上げる私の考えでございます。
  10. 市川房枝

    市川房枝君 今の大臣社会教育に対してのお考えは当然だと思って、私もそれなら賛成できるのであります。しかし文部省においての現在やつておいでになります社会教育局社会教育に対する実際の動きは、大臣のそのお言葉と必ずしも一致していない。それはあとで具体的に申し上げて御意見を伺いたいと思います。  次に伺いたいのは政治教育の問題であります。私は、政治教育というのは、社会教育の中の一部だと考えておりますが、今までの文部省社会教育地方社会教育もそうでありますが、ほとんど政治教育というのは含まれていない、むしろ敬遠している、うるさいからさわらない方がいいと、こういうふうに避けてきたように思います。それから各地方にありまする公民館は当然その市町村公民としての教育をすべきだと思いますのに、この市町村予算あるいは決算と、そういうものに対してさえ住民に知らさないようにしておるところが相当あるのであります。市町村政治にもめんどうだからというので、なるべくよけているというような傾きがあるように思います。それから、今までの文部省社会教育のあり方のためかどうか、御存じの通りに二十九年の公職選挙法の改正によりまして、政治の常時啓発、これは選挙管理委員会所管になっております。これはまあある意味において私は文部省社会教育に対する不信任の表われだ、こう言ってもいいかと思うのですけれども大臣は、政治教育にについて一体どんな信念をお持ちになっておりますか。それから、選挙管理委員会政治教育がまかされているということについて、どうお考えになっておるか。それからまた選挙管理委員会のいわゆる常時政治啓発と、文部省社会教育とは一体どんな連絡をおとりになっておるか、それを伺いたい。
  11. 松永東

    国務大臣松永東君) 市川さんの仰せになりました政治教育、これは非常にむずかしいしことですよ。むずかしいことだと申しますのは、われわれが主唱して政治教育をやるとしますね、そうすると、ははあ、松永東自民党じゃから、自民党の勢力を勃興させるためにやつているぐらいに、やはり色めがねをかけられるおそれがございます。従って御指摘のように、特に青少年方政治上の知識を啓発する必要はあると存じますが、しかしそれは今の各地方々々でそれぞれの情勢、に応じてやっておると思います。そうして、御承知のごとく、青年学校あるいは公民館あたりを利用いたしまして、それぞれの団体でやつておりますが、こういう面で相当政治的に啓発されておると思います。文部省といたしましても、そういうことが望ましいことで、やはりいろいろな団体活動を指導し、啓発するようにいたしておる次第でございます。
  12. 市川房枝

    市川房枝君 事務当局からもう少し具体的に御答弁を願いたいと思います。
  13. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま市川先生お尋ねでございますが、社会教育におきまして、公民としての教養ということは非常に大事な問題でございますので、私どもといたしましては、教育基本法の精神なり、社会教育法のらち内におきまして、各種成人講座あるいは学級等におきまして、そういう問題をできるだけ取り上げるようにいたしております。ところで先ほどお尋ねがございました、公明選挙運動との問題でございますが、これは公明選挙をやるという立場から、自治庁所管としてそういう予算も計上されておりますが、これにつきましては、内容その他につきまして、私どもの方と自治庁と十分緊密な連絡とりまして、そうしていわゆる話し合いをし、その他各地方々々におきますところの実際の啓発運動に協力してやつているというのが実情でございます。
  14. 市川房枝

    市川房枝君 文部省社会教育で実際おやりになっております政治教育といいますか、これは何か少し数字的にどの分量といいますか、これは今でなくてよろしゅうございますけれどもあと一つ伺いたいと思います。それから、政治啓蒙公明選挙運動との連携をおとりになっているということは私も承知しております。これはまあ珍しくといいますか、初めてといいますか、おとりになってけっこうだと思っておるのでありますが、しかし事実上の社会教育選挙管理委員会との常時収拾啓発についておとりになっている状態、これは私東京でいわゆる推進員講習会のようなものに一度出てみたのです。そこには社会教育の方がおいでになり、両方おいでなつたのですか、その扱い方たるや、単なる話し合いの技術だけをお教えになっているといいますか、そのときのことを申し上げますと、何か身の回りの問題を取り上げて、いわゆるシンポジュムとはこうするのだ、パネル・ディスカッションはこうするのだということでなすったのですが、身の回りの問題はどぶの話かなんかで、それはけっこうなんですけれども、どぶは最後までどぶだったのです。何らどぶと政治はつながっていないのです。一体そういう政治教育があるかと思うのです。そういう考え方、そういう教育の仕方ならば私は何もならないといいますか、魂が入っていない。だから社会教育といわゆる政治啓蒙との連絡をなさる場合には、もう少しその内容に入ってといいますか、もう少し効果のあるやり方をやつていただきたいというのです。ついでにちょっと御注文申し上げておきます。次にはその社会教育自主性の問題を伺いたいと思います。文部省社会教育対象でありまする社会教育団体どいうものが、社会教育法の第十条で出ております社会教育法のいうその「『社会教育関係団体』とは、法人であると否とを問わず公の支配に属しない四体で社会教育に関する事業を行うことを主たる目的とするものをいう。」と、こうあるのでありますが、一体そり「公の支配に属しない団体」というのはどういう意味でありましようか。それからもう一つは、団体のどういう団体を一体具体的に「社会教育関係団体」とお認めになっているのか、これは法律では出ておりません。文部省で何かの方法社会教育局認めている社会教育団体はこれこれだというような一覧表のようなものもありましようか。その団体名前一つ伺いたいのです。これは事務当局からでけっこうです。
  15. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまのお尋ねでございますが、これは社会教育法に書いております「公の支配」云々の言葉でございますが、これは憲法の条章から引用されたような同じ文句を使っておりますが、これは公けの機関によって支配されていない団体と、こういうように私ども解釈いたしております。従ってそういった範囲の団体社会教育関係におきましてたくさんございます。いろいろ大きい団体もあれば小さい団体もありますし、たとえば婦人団体、あるいは青年団体、あるいはボーイ・スカウトのような団体と、各種のものがございます。これは全国的な団体もいろいろありますが、各府県あるいは市町村におきまして、かなりその地域々々の団体もたくさんございますので、一々これを私どもとしては全体をつかんでおるわけではございませんので、御了承いただきたいと思います。
  16. 市川房枝

    市川房枝君 しかし、まあ文部省社会教育局といいますか、課といいますか、社会教育関係団体に対している いろ法によってなさるのですが、そのときに一体どういう団体に対してするかということがはっきりしなければできないと思うのですけれども、そういう文部省一覧表なんというものはないのでございますか、重ねて伺います。
  17. 福田繁

    政府委員福田繁君) 大体おもなる団体一覧表はございます。
  18. 市川房枝

    市川房枝君 それ一ぺんいただきたいのでございますが、お願いいたします。今でなくてもよろしゅうございます。  それからその中に、私はちょっと伺いますが、婦人会青年団団体ということは今お話だったのですが、公民館団体であります全国公民館連絡協議会といいますか、あるいは社会教育連合会であります全日本社会教育連合会というものは、これも社会教育関係団体とお認めになっておりますかどうか。
  19. 福田繁

    政府委員福田繁君) 全国公民館連絡協議会と申しますのは、これは任意団体でございまして、法人組織ではございません。しかしながら一応社会教育関係のある団体と私どもは見ております。それから社会教育連合会、この方は文部大臣監督下にあります法人として存在して許可されております。これも同じく社会教育関係団体と解釈しております。
  20. 市川房枝

    市川房枝君 ところでまあそういう社会教育関係団体に対しましては、その社会教育法の第十二条で「国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によっても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業干渉を加えてはならない。」、こうはっきり書いてあります。なおまあ直接その関係を持ちますいわゆる社会教育主事につきましても、第九条の三で「社会教育主事は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える。但し、命令及び監督をしてはならない。」、こうはっきり規定しております。これがいわゆるまあ社会教育関係団体自主性とでも申しますか、この法律といたしては文部大臣は、いわゆる文部当局、あるいはまあ地方教育委員会はそういう関係団体に対しまして、今の法律の規定しておるように統制的な支配を加えてない。不当に干渉してない。あるいは命令監督してないということをはっきりお言えになるかどうか、厳格にその法律は守られているかどうかということをこれは大臣からお伺いしたい。
  21. 松永東

    国務大臣松永東君) 仰せ通り、そうした各団体はそれぞれの自主性に基いて活動いたしております。従って文部省といたしましては、これに干渉したり、統制したりするようなことはいたしておりません。ただ御指摘になりました通り、あるいは指導したりあるいは援助したりするようなことはござりますけれども、絶対に干渉とか、あるいは統制とかすることができないように法律はなっておりますから、いたしておりません。
  22. 市川房枝

    市川房枝君 法律はもちろんそうなっておりますし、まあ私が文部大臣に伺えば、文部大臣干渉してないとおっしやるのはさまっておるわけなのでありますが、ところが事実は、事実はその干渉が行われておる。これはまあ先ほど私がちょっと名前をあげて、これは社会教育関係団体かどうかということを伺いましたが、社会教育局長はそうだとはっきりおっしゃったこの今の全国公民館連絡協議会なんかに対しては、文部省社会教育局、あるいは社会教育課がいろいろな方法でまあ干渉と言いますか、して、これはまあ社会教育関係人たちの間では、この団体会長並びに事務局長、相当まあ文部省に対して批判的といいますか、思うことをおっしゃっておった。それじゃいやだから、とうとう硬骨な会長も一昨年の大会でありますか、にかえて、そして、後には埼玉県の県会議員で、自民党の方が会長におなりになったようでありますが、それから事務局長もつい三、四日前にとうとうおん出されちゃったといいますか、まあ普通の言葉で言えば、とうとう文部省に乗っ取られちゃったのだというような言葉で言われていることを私の耳に実は聞き取りました。あるいはその全日本社会教育連合会、この方も事務局長が相当しっかりした人だったらしいのですが、とうとうこの人もおん出されちゃったというようなことを私どもの耳に聞いております。それでこの公民館協議会につきましては、衆議院予算分科会社会党辻原議員が、文部当局干渉の有無について質問しておいでになります。それに対する文部当局の御返事は、私は速記録で拝見したのでありますが、その「そういった団体の運営については関与いたしません。求めがあれば」助言する建前をとつておる。求めがあったからまあ口を入れたんだ、こういうふうにおっしゃっておるんでありますが、これはまあ一種の形式論でありまして、私はまあ逃げ口上といいますか、そういうことをこれは私自身の経験で知っておる。それでまあいわゆる地方婦人会あるいは青年団というものに対しても、いろいろな干渉が行われておる。ことに私自身のはっきり知っておりますのは、滋賀県におきまして、滋賀県の婦人会連合会長を県の社会教育課長がまあ任命しておる。干渉したという問題でありますが、このことについては昨年の夏高田委員から文教委員会で御質問がありまして、局長から御答弁がありました。私その速記録を読みました。もちろんその局長の御答弁は、その要求があったから関与したのだ、こういうふうにお答えになっております。しかし私、事実滋賀県に参りましていろいろな方面の人に会い、これは調査してきた。ここではあまりそのことを詳しく申し上げる必要はないと思うのですけれども、とにかく私はかりにです、かりにその助言を求められても、そのこと自身が非常に非民主的なことなんだ、ことであればやはりその社会教育当局としては、そういうのに対してそれはいかぬと、こうすべきだという、それこそ正しい民主的な助言を与えるべきであつて、初めから仕組んでおいて、そうして自分たちにとつての都合のいいといいますか、あるいはそれをさせたのは背後のある力でありまするが、そういう力に迎合するようなことをする、こういうことは私は許されないと思います。  まあその他いろいろ具体的な事実はありますが、これは分科会でまた申し上げたいと思うのですけれども、まあかりに一歩譲って、そういう事実はないと文部当局はおっしやるかもしれませんが、そういう疑いも、少くともそういうことを言わせるというのには、何か文部省の方が私は不注意といいましょうか、行き過ぎといいましょうか、あったと、こう言われてもしょうがないじゃないか。さっき文部大臣ははっきりおっしゃいました。文部大臣のお人柄は私は存じ上げておりまするから、それこそ最初におっしやいましたような態度で臨んでいて下さると思うのですけれども大臣の下のそれこそ局長なり課長なりといいますか、官僚の方々はですね、必ずしも大臣の意思に沿った行き方をしておいでにならぬのではないかと、こういうふうに私は思うんでありますが、まあそういう事実に対して大臣は一体どう考えますか、伺います。大臣伺いたいのです。
  23. 福田繁

    政府委員福田繁君) 大臣あとで。先に私。  ただいま全国公民館連絡協議会のお話が出ましたので申し上げますが、この問題は非常に明瞭な問題でありまして、私も社会教育関係団体に対します際には、市川先生も御承知のように、絶えずそういった点を注意しながら、従来からやつてきているのでございます。従って、この衆議院委員会で私答弁いたしましたときは、一般的にこの社会教育関係団体に対して、不当な干渉や何かしてはいけないと、こういうようなお尋ねもありましたので、それに対して私は同感の意を申し上げたのでありまして、全国公民館連絡協議会につきましては、もちろんわれわれとしては、人事その他に全然関与いたしておりません。その点を誤解のないようにお願いを申し上げたいと思います。  それからなお、先ほど出ました滋賀県の問題につきましては、これは先生が御調査になりましたように、私どもの方といたしましても調査いたしたのであります。その結果、御承知のように、県の文教委員会におきまして、その内容について詳細な調査をして、それに基いて、不当な干渉はなかったというような結論を出しておりますので、われわれとしては、それに従って教育委員会の報告をもとにしてお答え申し上げたようなわけでありまして、決してそういった市川先生のおっしやるようなことは、これはもうよく御存じのことと思いますが、そういった問題については、一般的には、これはお求めがあれば、専門的、技術的な助言をするのが建前でございますが、団体の人事等につきましては、干渉あるいはそういったいろいろの干渉がましいことをやるということは、厳に自戒あるいは自粛して、しないように注意いたしておりますことを申し上げておきます。
  24. 松永東

    国務大臣松永東君) ただいま福田政府委員から御答弁申し上げたような次第で、文部省といたしましては、今日まで何ら干渉とか何とかゃった行為はありません。さらにまたこれからは、一そう一つ注意して、そういう非難を受けないようにやりたいというふうに存じております。
  25. 市川房枝

    市川房枝君 干渉した事実はないという、直接の社会教育局長からのお話ですが、ことに公民館連絡協議会に対しては、人事に対して干渉しないとおっしゃいましたけれども、私どもには、人事に対して、はっきりと御干渉になっておる事実が参っております。これはここで水かけ論をしてもしようがありませんから、また分科会へでも行って、もう少しはっきり資料を持って参りまして伺いたいと思います。大臣が今後注意するとおっしゃって下さいましたが、これは一つ大臣としては、私は省内で一ぺん特別にお調べ下すつて、そうしてこういう疑いを受けるというのは、一体どこに不注意な点があったかということを一つお願いをしたいと思います。そうして適当な機会に、またそれを伺わせていただきたいと思います。それをお願いを申し上げておきます。  で、次に社会教育団体政治活動についてお伺いしたいと思います。文部省は、二十七年の十二月の二十六日付で、社会教育局長の名で、社会教育関係団体政治活動に関する通牒を全国に出しておられます。この通牒の内容は、「社会教育関係団体のうちでも、特に多数の公職選挙法上の有権者を構成員とするPTA、婦人会等は、」云々とあり、「その活動政治の分野等における実際活動とならないように」と、こういう文句があります。つまりそういう団体は、あまり実際の政治活動はしないようにという御注意と思います。それから第二項では、社会教育団体関係者が立候補することはこれは自由だ。「但し、役員が現職のまま立候補することは、社会教育関係団体の正常な運営を傷つけるおそれが多分にあるので、現職を辞してから後に立候補することが望ましい。」こういう通牒を出しておいでになります。この御通牒には私は賛成なんであります。もっとも婦人団体等では、議員と会長を兼ねておる人とか、これから議員になろうという人との間には、多少の反発はありましたけれども、ところが、一昨年の参議院の選挙の際に、新潟の連合婦人会会長の方で、その方が現職のまま自民党の公認候補として立候補されました。ちょうどたまたまその最中に、文部省社会教育課の係官の方が現地においでなつた。それで新潟県の婦人団体の間では、そのことについて、ごうごうたる論議があった。つまり会長をやめて立つべきだ、こういう意見が相当にあった。そこで婦人団体の人が文部省の方に意見を聞いたらしい。そうしたらその方は、いわゆる今の二十七年の通達に従って、そうして、やめて立候補する方が望ましいと多分お答えになったんだろうと思います。そこで新潟県の自民党の方としては、その文部省答弁はけしからぬというので、自民党の本部へそのことが通達になり、自民党の本部組織局から、社会教育局長と係官が呼ばれまして、そうしてだいぶしかられた。その通牒を変えろ、こういうあれがあったらしい。そこで社会教育局といいますか、まあ局でしようが、局は、広島県の自民党の支部連合会から文部省に問い合せをさせることにして、そうしてそれに対する回答として、そのいわゆる二十七年の通牒の趣旨を緩和するといいますか、変更する処置をおとりなつた。それで、その文書が私の手元にありますが、これは昨年の十二月の五日です。十二月の五日に、自民党の広島県支部連合会事務局長佐々木節吾氏から出ている。そうして文部省社会教育局長にあてまして、「婦人団体役員の政党関与の可否についての問合せ」、こうなっておりまして「地方婦人団体役員は政党その他政治団体の役員等の構成員となり得るか、又之が可能とすれば、関与の範囲に格別制約はないか等、処理方針について御回答賜りたく御願い致します。」そこで、社会教育局長の名で、今度は、この広島県の教育委員会教育長に対しまして、御返事が出ているんです。その御返事の文句はこういうことになっている。「このことは法的に禁止規定はありませんので、一般的には本人の意思によって決定すべきものであると思いますが、役員等団体の構成員に関することでありますから、当該団体の意思をも考慮する必要があると考えます。」何のことだかよくわからないんです。まあその話は、何か聞くところによると、具体的にはっきり緩和された文章だったそうでありますが、ところが社会教育局長が、それはいかぬというので、だいぶ手をお入れになってこういう文章になつたんだと聞いております。しかしこの文章では、私がさっき読みました二十七年の社会教育局長の通牒とこれと比較して見ますると、だいぶ違いがある。文部当局は、はっきりとこの違いをお認めになりますか。あるいは現在の社会教育局としての、いわゆる社会教育関係団体政治活動についての態度といいますか、お考え方、どういうお考え方を持っておいでになるか。それは福田さんからでけっこうですから、お答え願いたい。
  26. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま社会教育関係団体政治活動というような面につきまして御質問でございますが、お読み上げになりました二十七年の通牒につきましては、これは教育委員会委員選挙の際の通達だと考えておりますが、昨年の十二月に出しました社会教育関係団体の役員が、政党の役員なり、あるいは構成員になれるかどうかというような関係質問と、何ら矛盾するところはないと考えております。従って今おっしゃいましたように、二十七年の通達のように、社会教育関係団体というものは、あくまで私どもは、根本におきましては、政治的中立を守るべきものだ、こう考えております。しかしながら、この個々の、その団体の構成員自体につきましては、これは個人の問題でございますので、いろいろ各地方で問題が起きていることは私ども聞いております。従って新潟県の問題にお触れになりましたが、この新潟県の長岡の問題だと思いますが、長岡で起りましたようなそういった事例につきましては、これは文部省としてよりも、むしろ現地の問題でありますので、私どもとしてはそういった問題について公式な意見を述べることを避けております。むしろ、質問があれば県の教育委員会に対して聞いてもらいたい、こういうように申している。それによって大体地元でも県の教育委員会といろいろ相談をしたということは聞いておりますが、決して公式な意見をわれわれとして申し述べたことはございません。
  27. 市川房枝

    市川房枝君 実はそれに関連してまだ伺いたいと思いますが、時間が過ぎましたの、で、あと一つだけ伺いたいのですが、それはこの社会教育局といいますか、社会教育課社会教育に関する講師のブラック・リストというのがあるのですが、大臣御存じですか。つまりこういう講師には話を問いちゃいかぬ、こういう人ならばいいという、その聞いてはならぬ人のブラック・リストがある。これはまあ、まるで一種の言論統制でありまして、現在の時代にそういうことがあり得るということは実に奇怪しごくの話でありまするが、事実あると私は聞いている。大臣、御存じでなかったら私お教えしてもいいわけでありますが、(「教えてやりなさい」と呼ぶ者あり)もっとも私自身もそのリストというものをこの目でちゃんと見たわけではないのです。(「市川さんも入っているよ」と呼ぶ者あり)ええ。私も入っているらしい。結局、何といいますか、進歩的といいますか、あるいは左翼的な人、あるいは文部省社会教育の批判をする人、そういう人たちがみんな入っているらしいのです。そうしてそういう人からは講演を聞いてはならぬ、こういうふうになっているらしくて、これは社会教育関係の人の間に盛んに言われていることです。君はブラック・リストに入っているらしい、あれはまだいい、というような話が出ているのですが、それで具体的な実例を一つ、二つあげてみますと、昨年の六月、大分で第一回の公民館の大会が開かれました。そのときに、講師として大分県は朝日新聞の伊藤昇さんをお願いすることにしていた。ところが文部省はこれに反対をした。そこで県の当局の人たちが心配しまして、自民党の前議員でありました松原一彦氏のところへ行って、そうして文部大臣のところへ——まあそのときは灘尾さんでした。そうして一体どういうわけだということをおっしゃったのです。そうしたら、大臣は、そんなことは知らぬ。それはおかしいというので、とうとう社会教育局の方でその抗議を引っ込めて、そうして伊藤昇さんはそのときは講演をなすったそうでありまするけれども、まあ伊藤なんかはブラック・リストの中の一人に入っている。それからもう一つは、この昨年の秋文部省と日青協との共同主催で、青年大会といいますか、何かが開かれたわけですが、それに対して、シンポジウムが入っておって、現代の青年の役割という、まあテーマでする。そうしてその講師といいますか、それを日青協の側からは、南原さん、臼井吉見さん、佐多稲子さんなんかを出した。ところが社会教育課の方からは、とんでもないというわけで、しかられて、そうしてかわって出たのがだれかというと、阿部真之助さん、村上学芸大学学長さん、田中澄江さん——これはあの劇作家の田中さんと思いますが、そうして青年の方から、もう少し進歩的な人を入れてほしいと言ったら、阿部真之助さんが入っているじゃないかと、こう言われた。それで、とうとうこの三人の方がお入りになつたらしいのですが、これは明らかに一つのブラック・リストだと思います。そういう例がたくさんありますが、一体こういうことといいますか、文部省は、地方社会教育課に対しても、その講師を中央から呼ぶときは一々文部省社会教育課に連絡をしろ、こういう通牒が出ているらしいのであります。こういうことは私は一体どういうことか、これは大臣から一つ御意見を伺つて、そうしてそれに対する対策をお立ていただきたいと思います。
  28. 松永東

    国務大臣松永東君) 市川委員仰せになるようなことは、私は初めて聞くのです。(「文部大臣知らんの」と呼ぶ者あり)私はちっとも知りません。そして知らぬばかりでなく、そうした革新糸の人々と私は喜んで議論もいたします。教えも受けます。そうしていろいろ意見も取りかわします。従ってそういうブラック・リストなんかができておろうなんてことは、今実は初めて承わったような次第で、詳細は政府委員から申し上げます。
  29. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまの御質問でございますが、大臣から申し上げましたように、私どもの方でそういうブラック・リストを使用しているというようなことは全然ございません。社会教育の授業をやりますときに、その授業の内容なり、あるいは授業の性質によりまして、適当な講師を選定するということは、もうこれは当然なんでございまして、従ってわれわれのやります授業につきましては、各種の講師を依頼しております。今お述べになりましたようなことは、何かの誤解に基くものだと考えておりますが、一例を申しますと、別府の問題でございますが、これは私の記憶いたしております範囲では、別府の公民館大会と申しますのは、文部省と共催の、文部省も主催で入っている会合でございます。従って主催で入りましてやる以上は、私どもといたしまして、その授業の計画の全般について知っておく必要がございます。従ってわれわれに相談なしに地方できめられても困りますので、そういった点について、この手続の点について誤解が生じたのでありまして、別におあげになりました人を忌避したというような事実はございません。  それからまた、さっき日青協とのことをお述べになりましたが、これは私もよく存じませんけれども、いつも研究大会におきましては、日青協とわれわれの方で十分話し合いをいたしまして、そういった内容を、お求めがあればこちらも助言しながらきめておりますので、何らそういったトラブルはなかったと思います。(「関連々々」と呼ぶ者あり)
  30. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお待ち下さい。藤原君。
  31. 藤原道子

    藤原道子君 私は文部省ではうまく逃げればいいというような答弁に聞えて残念でございます。もっと大胆に、率直に、ほんとうのことを言ってもら  いたい。事実がないとおっしいますけれども一つの例といたしまして、私もそういう目にあっております。地方婦人団体で私を呼ぶことが決定した。ところが県の社会課ですか、これがいけないと拒否しておいでになる。あの人は政党関係がある。それでかわって呼んだのは自民党の婦人議員です。社会党政党関係があっていけなくて、自民党は党派に関係がない、こういうふうなやり方が公然と行われているのです。  過日私が質問をいたしまして、急いだためにお答えが得られなかったのですけれども、日青協の問題にいたしましても、意見発表などに原稿を出しておる。気に入らなければ削らしておる事実があります。幾ら統制していないと言っても、明らかにされておるのです。もう世間一般も周知の事実なんです。官僚統制は目に余るものがございます。もう少しはっきりした御答弁をいただきたい。そうでないというならば、証拠を持ってやらなければなりません。
  32. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいまの御質問はどの場合を指しておるのか、私よく了解いたしませんけれども、中央の日青協の研究大会につきましては、さような事実はないと思うのであります。(「関連」と呼ぶ者あり)
  33. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 わが国の社会教育が進まない原因としては幾つもあるでしょうが、私は一点について伺いたいと思うのです。それは今のわが国の社会教育団体では、自主性確保ということが一番重大な問題である。その立場から市川さんは、先刻まで質疑を展開されたわけですが、その立場からこの社会教育法の十三条に対する見解を文部大臣からはっきりと一つここで述べていただきたいと思います。  それは御承知のごとく、社会教育法の十三条は、「国及び地方公共団体は、社会教育団体に対し、補助金を与えてはならない」と、禁止してあるわけなんですね。そこで国にしても、地方公共団体の首長にいたしましても、社会教育団体、たとえば青年会、婦人団体に対して事業費のような形で法網をくぐってこっそり金をやるわけです。金をもらわなければ、青年団婦人会も動かないものですから、事業費とか何とか名目でやみ金みたいな形でもらうわけです。事実はそのために大きなひもがつくわけです。だから選挙を前にいたしますと、おおむね地方公共団体の首長は、まずもって社会教育課長を自分に都合のいい人に取りかえるというのが大体慣習になっているんですね。そして青年団婦人会に働らきかけていくというわけです。先ほど市川さんが滋賀県の例をあげられましたが、これもあの人が婦人会長になれば補助金をもらうのに都合がいいということになって、ああいう事態が起っているわけです。だからこれは文部大臣にはっきり承わりたい点は、これは教育法十三条は今のままにして、そして日本の社会教育の振興をはかろうとするのか、それともこの法の改正をして、そうしてこの社会教育団体に対して、国も地方公共団体も補助金が出せるというような改正をしてはかろうとするのか。そうしますと、後者の場合はひもがつくんじゃないかという心配があるかと思いますけれども、たとえば英国の私立大学のごときは、六〇%国から補助されておりながら、補助金委員会の運営によって何らのひももついていない、中立性が保たれている、こういう国もあるわけです。この点私は運営の面にかかると思いますが、日本で運用できるかで、できないかという問題もあろうと思いまするけれども、そのいずれをとるかということは、これは大きな問題だと思う。  それともう一つは、それと関連いたしますけれども、昨年の国会において社会教育法を一部改正して、国の規模、あるいは社会的規模において行う運動、体育大会に対しては、国から補助ができるという改正をして、御承知のごとく国民体育大会とか、あるいはオリンピック大会等は天下晴れて補助金が出せるように改正した。ところが今度のアジア・オリンピック大会に対して、国は六千万円の補助金を出したところが、足らないからというので、小学校の生徒一円、中学校の生徒二円、高等学校の生徒五円と、強制的に割り当てて今募金している。これに対して各都道府県や主管庁あたりで相当抵抗があつているわけですが、これら法の改正の趣旨から言って、補助金等を出すことによって、国が必要な予算を出すべきであって、予備金あたりから出すべきであって、小学校、中学校、高等学校の生徒から半強制的にとることはやめるべきであると思いますが、これに対する見解も文部大臣に承わっておきたいと思います。
  34. 松永東

    国務大臣松永東君) 矢嶋委員指摘通り、十三条にはお説のように書いてあります。しかしこの補助金を出してならぬという趣旨は、仰せ通りやはりひもつきになるおそれがあるので、ひもつきにしてはいかぬ、こういう考慮からこういう規定が設けられたと存じます。(「実際はやつている、やみでやつている」と呼ぶ者あり)そこでやみのことはわかりませんどうも、(笑声)私はそこでさっき御指摘になりました、その一円、二円ずつアジア・オリンピック大会のために各府県で金を集めておるじゃないかというお話ですが、これは私は承知いたしておりません。(「みんな知らないよ」と呼ぶ者あり)私の知っておる限りでは、そういうことはまだ行われておらんように聞いております。その詳細のことは福田政府委員が承知いたしておりますから、これから答弁させることにいたします。
  35. 福田繁

    政府委員福田繁君) ただいま御質問のございましたアジア大会のための寄付金でございますが、これはオリンピック後援会を通じまして、各府県の後援会の支部、あるいは市町村の支部といったところの、そういった組織を通してやつているのでございまして、極力私どもそういった今おあげになりました強制的にならないような方法をとるように十分注意をいたしております。それにつきましてはバッチを作りまして、それを五円あるいは十円で売るというような方法をとつておりますので、従ってそれも一定の十円というような定額を必ずしもとらない、地方によって違いますけれども、むしろ大多数の方がそういった熱意を示して下さるというような趣旨でやつておるわけであります。  もう一つは切符の問題でありますが、この切符につきましても、体協の支部を通じて切符を販売をいたしておりますが、極力そういった販売の場合に強制的にならないように努めて注意をしてゃっておるわけであります。
  36. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 重ねて大臣に簡単にお伺いします。それは社会教育法十三条の運用の面で相当の弊害が出て来ているのですね。にもかかわらず、その現在の社会教育法十三条そのままでやっていくお考えか、それとも社会教育法十三条を再検討するというお考えか、いずれかということを伺っているのと、もう一点は、小学校一円、中学校二円、高等学校五円は半強制的に全国で行われてトラブルを起しておる、そういうことをあなたは知らんというのなら、今後もしそういう事実があったならば、それは学校教育という面から考えてあなたは好ましいことか、好ましくないことか、どういう見解かということをお答え願いたい。
  37. 松永東

    国務大臣松永東君) 今の矢嶋委員の御質問に対する十三条の問題ですが、これは一つ私は研究してみたいと思います。再検討をして、そうしてそうした好ましくないことがあるとすれば、これは是正せんければならんというふうに考えております。なお、研究することを一つしばらく御猶予を願いたい。さらに今御指摘になりました各府県であるいは二円とか五円とかいう金を集めているというようなことも、なるほど今政府委員から聞きまして、ちょっと私はうわさに聞いたことがございます。それはどういうことかというと、各府県々々にオリンピックの支部がありまして、その府県から選手が出るのについての費用を集めるということで、そうしたことがあった県があるやに承わっております。しかし最後の御質問になりました好ましいことかどうかというお話ですけれども、これは決して好ましいことではございません。こういうことはやめさせなければならんというふうに考えております。
  38. 市川房枝

    市川房枝君 大臣にまだ質問したことがたくさんありましたけれども、時間が参りましたので、分科会の方であらためてお伺いいたします。
  39. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと速記をとめて。    午後三時八分速記中止    —————・—————    午後三時四十一分速記開始
  40. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記を起して下さい。  昨日、鈴木強君の質疑に対する石田労働大臣答弁中、集団陳情その他の問題について、松澤委員から議事進行の発言があり、委員長はこれを採択して、本日の理事会にこれを諮りました。その結果、石田労働大臣の説明を求めることになりましたので、この際発言を許します。
  41. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 昨日の鈴木委員に対する私の答弁中、言葉の足りなかったため誤解を生み、御迷惑をおかけ申したことは申しわけなく存じます。御了承を願います。
  42. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  43. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 速記を始めて下さい。  委員の要望に基きまして、政府に対し委員長から一言いたします。  本委員会の運営には、委員長は特段の御協力をお願いして参りました。かような際とて、いたずらに刺激を与えるがごとき言動は慎しまれるよう、特に希望いたします。   —————————————
  44. 高田なほ子

    高田なほ子君 最近の文部行政においては、特に文部官僚の独善が目立ってきていることは、まことに遺憾と思うのです。かって戦争中に、その役割を偉大に果した内務官僚の独善が、文部行政の民主化に大きなブレーキをかけている。こういう時代に当りまして、特に教育の基本的な方針についてしっかりとした見解を、私は文部大臣から承わりたいのです。  まず、教育の基本法に示してあります通りに、わが国の教育の基本的な方針は、平和な文化国家を建設するために、りっぱな社会人を育成していく、こういうことが明記してあるわけであります。従いまして、今日の教育の基本方針は、あくまでも平和に根ざした、いうところの平和教育でなければなりません。そこで伺いたいことは、基本法にいう内容についてどういう一体意味合いを持っているのか、現在の岸内閣の平和方針は、品では平和とは言いますけれども、平和維持の方式については、力の均衡による平和という方式をとつておるようであります。従いまして、閣僚の一人であられる政党文部大臣としては、この平和の内容という問題については、相当重要な見解をお示しいただかなければならないと思うのでございますが、平和という意味内容、平和を維持するための現内閣の方式と基本法にいう平和という内容とは、どういうふうな差異があるか、明確にしていただきたい。
  45. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の御指摘になりました平和の意義でござ  います。これは平和の意義はだれが考えてみても大して違うことはない。要するに戦争の起らないようにお互いに共栄共存の実をあげて、世界人類が共栄共存していくことが平和だというふうに考えております。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣、どうぞこちらにおいで下さいまして……、まことに御調ごもっともです。しかし、平和維持の方法には、われわれ社会党のいう平和維持の方式と、岸内閣の平和維持の方式とは、全く異なる見解を持っているのです。これは文部大臣に私から説明するまでもないと思いますが、力の均衡による平和維持の方式には、ここに軍備という問題、力という問題がここに当然内在してきます。形式的にもそういうことになってくるのです。しかし教育基本法にいう平和は、人類世界の福祉、世界から恐怖と欠乏を取り去るほんとう意味の平和です。力によらざる平和という内容を持つものとわれわれは解釈してきた。なぜなれば、教育基本法のよってきたるところは、戦争放棄を規定した憲法の精神に沿うものであつて、基本法の冒頭には憲法を再認識することが明記されているわけです。力の均衡による平和維持の方式が、あなたのいう平和方式であるのか、再度御答弁願いたい。
  47. 松永東

    国務大臣松永東君) 私どもは力の均衡による平和というのでなく、要するに今のわれわれがとつておりますことが、即平和に進んでいく道だと考えております。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 具体的にお尋ねをいたします。今子供たちがあなたに質問したらどういうふうに答えられるか。子供たちは、あの兵隊さんがおりますし、飛行機は飛んでおります、機関銃もあれば、このごろはおつかない原子兵器もあります。平和を維持するために、こういうものが必要なんですかどうですかという質問を、子供たちはする。教師は、平和憲法の戦争放棄の精神に沿って一切の戦争の準備もしないという規定について教えた場合に、現在の岸内閣の平和維持の方式と、教師の教える平和という問題とは、非常にかけ離れてきている。もし子供たちにこういう質問大臣がされたならば、どういうふうにお答えになりますか。武装することもまた平和であるとあなたお答えになりますか。この点について。
  49. 松永東

    国務大臣松永東君) 今私ども考えますところでは、これは武装というのですかなあ、これは見方によるでしょうが、自衛隊は置かんければなりません。俗にいう戸締りなくして、あけっばなし、で生活はできません。でありますから、みずからの生存を守り、みずからを守るだけのやはり自衛の方法は講ぜんけりやなりません。しかしながら、あくまでもそれは自衛であつて、侵略の方法であつてはならないということだけは、厳に慎しまなければならないと存じております。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 自衛の問題になりますと、とうていこの瞬間では、この問題だけでも論じ尽されないと思いますが、もし、あなたのいう自衛であるならば、なぜアメリカと共同してわが国の再軍備方式を進めなければならないかという問題に発展する。本来の意味の自衛なら、またいろいろ考え方があるでしょう。けれども、現在の子供たちに、自衛ということを教えるならば、これは当無日米安全保障条約というものは改廃されなければならない筋合いのものなんです。ですから、自衛権ということだけでは、これは子供たちに納得いく教え方にはならない。つまり、力の均衡による平和維持の方式と、現在の憲法の規定にある平和ということの内容とは、はなはだしく隔たりを持ってきているところに教育の今日の困難さ、そして五十万の教職員の主張する平和教育というものが、遺憾ながらまつこうから対立する形をとらざるを得ないのです。私は、この際文部大臣に、そういうあやふやなことではなく、戦争放棄を規定し、戦争の準備を一切しないという現在の平和憲法を守つていく、その筋合いに立っての平和であるのだ、こういうふうな御主張というものをこそ、私はしていただきたいと思うのですが、不幸にして文部大臣自民党からお出になられたいわゆる政党文部大臣、私は文部大臣はできるならばこれは政党所属の文部大臣であってもらいたくない、いろいろな意味において不当な権力に服しなければならない場合もあり得る。これは私の尊敬する大先輩である大臣に対して、こうせいということを申し上げるのではありませんけれども、若干この平和維持という方式についての御説明が足りませんから、あらためまして藤山外務大臣に、わが国の平和維持の方式について明確に御答弁をいただきたい。特に憲法との関連でお答えいただきたい。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本国民が平和を心から念願しておる、また、そうでなければならぬわけだと思います。ただ、御承知のように、平和を念願いたすにいたしましても、おのおの過去のいろいろな情勢等もございまして、やはり将来の目標として、一歩一歩平和の道に向って進んでいかなければならぬのであります。岸総理が力の平和か、あるいは軍備を持った平和かということを言われたのは、現状を脱帽されたのでありまして、岸総理も力の平和では永久の平和は、できないのだ、やはり軍備を将来なくし、制限し、なくしていくというような方向に向っていかなければ、ほんとうの平和ができないのだということを言われておるのであります。平和を確立するためには、やはりユネスコ憲章にありますような、人の心の中に平和な気持を育成していくということが、根本的に大事であることは申すまでもないわけであります。そういう意味において、われわれは将来の平和というものを、ほんとう意味の平和に持っていくように、過去からつながっておりますいろいろな事情を現在は帯びておりますけれども、それをだんだんに解消していく、従って、政治的に申しましても、国際社会において軍備制限というような問題がなかなか可能にはなって参りませんけれども、しばしば取り上げられてくる、あるいは巨頭会談というものが考えられて、そしてお互いの不信感を払拭して、できるだけ軍備なき平和に持っていこうという方向に動いていることだけは、事実だと思うのです。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部大臣の御答弁よりは藤山大臣の御答弁の方がよくはっきりしている。軍備なき平和に持っていこうという考え方である。大へんこれははっきりしました。文部大臣もこの点はよく御認識になって、軍備なき平和がほんとうの平和であるということ、教育の目標はそうした世界の実現のためにされなければならないということ、そのことのために教育は絶えず社会悪を排除しながら、その真実を求めていかなければならないということ、だから文部省の官僚独善、官僚干渉、こういう問題については、厳として大臣はかまえていただかなければならないのであります。  さて、続いて藤山外務大臣お尋ねしたいのですが、ユネスコ精神に盛られたこの平和精神というものが、教育の基本になるということについては了解します。だが、しかし、それは理想の世界であつて、現在の日本の外交方針は、それの方向にいくための暫定的な措置としてであると思いますが、日米安保条約を結びまして、日本とアメリカがいわゆる共同の措置をとりながら、戦争に対応する態勢を作つていることは間違いない。けれども若干希望を持てることは、将来安保条約の効力を無効にする規定が第四条にありますが、この規定の内容によれば、安保条約を廃棄して真の平和をきたすために、あるいは安保条約を破棄して日本の独立を規定する条件として三つの条件があげられているようです。すなわち、その一つは日本が再軍備をして軍備を増強することが一つの条件、第二の条件は、その前提の上における集団安全保障が確立した場合、三つめの条件としては、国連的な安全保障がはっきりと保障される場合。われわれ日本社会党は日本の再軍備増強による平和維持、あるいは安保条約の改訂または破棄という方式を選んでおりません。また、地域的な集団安全保障すなわち軍備を前提とする集団安全保障の建前をとつておりません。われわれ社会党は、御承知のように世界に対して平和宣言をし、アジア友邦と手を結びながら国連による真の平和的な、いわゆる安全保障、中立的な立場に立つ安全保障、こういう建前をとつておりますが、この三つの方式のうち、はっきり言うならば、今いうユネスコ精神、すなわち軍備なき世界の平和を実現、する方式として日本のとつている方式は、具体的にどういう方式を今とつているのか。この三つの条件のうちどれであるか、これを簡明にお聞かせ願いたい。
  53. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 世界が平和になりまして、お互いが心持よく共存するということは、人類の大きな理想でなければならぬ。人間の英知がそこまで発達していない今日までの過程において、いろいろな意味で現状いろいろあることは、やむを得ぬことだと思います。好ましいことは、先ほどお話のありましたように、人間の心の中に争闘精神がなくなって、あるいは武力、自衛そのものもなくなるということがあり得れば、非常にけっこうなことである、これはしかし大きな理想かと思うのであります。国家におきましても、やはりいろいろな過程で、現状においては武力をもってお互いにまだ対峙しなければ平和が達成できないのだという観念も、一部にはあることはむろんであります。そういう過程を通じて、われわれは徐々に人間の英知の上に立って、そうして世界が平和になっていくことを努力して参らなければならぬと思うのであります。従って、日本の今日におきましても、侵略的な軍備を持つという考え方はないわけでありまして、自衛の限りにおける軍備を持つという考え方であることは申すまでもないわけであります。従って、こういう大きな理想を達成する終局において国連を中心にして、問題が平和裏に進展していくことは、一番に望ましいことだと思います。ただ、その過程にいきますまでに相当な歳月と、人間がみな一緒になって英知を尽しての努力が必要であろう、その間に今もがいておりますのが、現在の世界政治の状相だ、こう考えます。
  54. 高田なほ子

    高田なほ子君 御答弁はいいですが、ちょっと私の質問のつぼがはずれておったと思います。やはりせんじ詰めますというと、現在の日本の再軍備はやむを得ない、平和維持のためにはやむを得ない、こういうような、せんじ詰めれば御答弁だったと思いますが、そういうふうに了解してよろしいですか。
  55. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の段階におきまして、日本が少くも自分を守るだけの自衛力を持っておらなければならぬということはやむを得ぬことだと、私は考えております。
  56. 高田なほ子

    高田なほ子君 今までにこの自衛の問題がたびたび出たんですが、だれだって侵略するための軍隊を持つという田はどこもないし、またそういうことを言う人もない。ここの論議はあとに回しますが、重ねて文部大臣質問をいたします。  現在の段階としてやむを得ないという立場に立っての再軍備の増強である、これははっきりしたようです。しかし、教育は現在の姿そのままが教育のその理想に盛られるものではなく、教育の基本法にいう平和は、人間の心の中から戦争の恐怖を取り除き、戦争の起る要因を取り除くいわゆる真の平和に徹したその平和であるということがここに新しく確認されなければならないと思うんです。これについて大臣は、どうお考えになりますか。非常に大事なところですから、慎重にお答え願いたい。    〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕
  57. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、これから先われわれ民族の次の時代をになう青少年、その青少年、まことにわれわれの次をになう青年は大事です。こうした青年あたりは、仰せのように戦争なんということをもう観念せずして、頭の中に置かないで、ほんとうの平和の世界、人類の共栄共存のために一生懸命になって働くというような気持を教え込むということが必要だと思っております。
  58. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういたしますと、自民党並びに政府が目の上のこぶのようにわざわざ教唆扇動して日教組と対立しようとするところは、この平和という内容の解釈にかかっていると思う。今の文部大臣の御答弁によると、いうところの日教組の平和教育の精神とは全く変つていない。この点では全く一致している。でありますから、今日現場で行なっている教育の中における国際理解の教育の中で、特に中国やソビエトを排撃しなければならないというような情勢を作つている今日の教育委員会の私はあり方というものについては、相当これは文部大臣自体も監視しなければなりませんし、国際理解の教育というものは、一体文部省としてはどういうふうに理解しているのか。今日、講和条約を結び得ないそれらの国々に対しても、敵対的な思想をあおるような、これをしいる、どの国の事情も公正に理解させようとしてソ連や中国の事情等にも触れて国際理解の教育に熱心な先生を特に危険視するようなこういう風潮こそ、明らかに排他的な軍国主義につながるものであつて、真の平和に徹した教育であるならば、国際理解の教育においても当然これはワクをはずすべきであつて、私はこの国際理解の教育というものが、平和という問題の解釈から今日いろいろに歪曲されて現場の教師を苦しめているというこの現実に対して、文部大臣の私は見解をただしたい。国際理解の教育、この内容です。
  59. 松永東

    国務大臣松永東君) 私どもは一方に偏するような教育は好ましくない。従ってソビエトに偏したり、あるいはアメリカに偏したりするようなことは好ましくない。ほんとうにいずれにも偏しないで、そうしてこの民族精神を発揮していくというふうなところに、われわれとしては望むところが多いと思う。  それでさらに、その次に仰せになりました日教組の何というんですか、いじめているじゃないかというお話、しかし日教組を何もいじめているのじゃないんです。日教組の人々ほんとうにわれわれと一緒に手を握って、そうして次の時代をになう青少年教育の任に当つていただくなら非常にけっこうであります。好ましいことじやと思っております。そうしてまた現に今当つておられる。ですから、私は何にも日教組と、少しそれは意見の違っているところもあります、その意見の違っているところが、一方は平和を基、調とし、一方は戦争を念願してやつているというふうにとられるということは、私はおかしいと思う。いずれも平和を祈念し、平和に向って進むというふうに私ども考え教育をしているというふうに存じております。
  60. 高田なほ子

    高田なほ子君 国際理解の教育は、今あなたの仰せのごとく、これはもちろん一方に偏してはならないのですね。しかし、現場の教育の統計から見ると、子供たちは、アメリカやイギリスのことの知識については五八%くらいの知識を持っておる、しかしソビエトや中国の問題については、これはあまり知らないのです。だから現場では、国際理解の教育という面からソビ  エトとか中国とか、こういう国の事情等についてのお話をすれば、これは赤のレッテルを張る教育委員会がある。そういうことを好んでおる指導者もおる。特に文部官僚はそうだ。これではあなたが言う、どの国も平等にすべての国を理解させるということから見れば、私は今の国際理解の教育は相当偏しているんじゃないか、この偏さない方向に向わせるためにすべての国の事情を知らせようとする現場の教師というものは弾圧されておる。これでは真の国際理解の教育にはならぬと思う。岸内閣は、新中国に対しては、これは講和条約を結んでないからという理由で、いろいろな面でブレーキをかける面がありますけれども教育基本法にいう平和が、真の国際理解ということを基調とするならば、現場における国際理解の教育もまた真の平和を求めるために、片寄らざる国際理解の教育というものが行われるのが当然であろうと私は思うのです。大臣は、子供たちがどういう形で国際理解の教育をされておるのかというところの、一方に偏した国際理解の教育が行われておるというふうに理、解されるのか、あなたの認識をあらためてただしたいのです。いかがですか。
  61. 松永東

    国務大臣松永東君) 今、日本の子供たちに対する教育が、米英方面の認識のみを深めさしていって、ソビエトと中共のことの認識をまるでなおざりにしておるじゃないかというような御説でございます。しかし、これは無理もないことなんです。それは、米英は御承知のごとく、自由主義国家群としてお互いに手を握っていこうという条約ができております。ソビエト並びに中共は、ようやつと中共はこの間貿易協定ができたようでございますが、まだソビエトはそこまでいっておりません。だがしかし、これは遠からずして円満平和条約が締結されると存じます。しかしながら、そのたとえ条約が、そうした平和条約が締結していないでも、その両国の実情についてはやはり中正な教え方を、真実の教え方をするということが適当だと思います。そういうふうに導いていくというふうなつもりであります。
  62. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねてお尋ねいたしますが、文部大臣は、政党大臣としていろいろこういう外交方針あるいはその他の問題等について、いうところの真の意味の憲法を守る、平和という、そのことと食い違うような面が多々出てくるような場合があると思う。従って、政党所属の文部大臣としていろいろなよろめきを感じられることがあるんじゃないかと思うのです。政党をお離れになって、文部大臣としてこの後長くおやりになるという御意思はお持ちになっておりませんか、いかがですか。
  63. 松永東

    国務大臣松永東君) そうよろめいておらぬつもりであります。(笑声)あなた方のごらんになるところでは、よろめいておるように見えるかもしれぬけれども、案外これでしっかりしておるつもりであります。(笑声)  そこで、政党を離れて長い間文部行政をやる決心はないかというようなことですが、それは政党に属しておりましても、いやしくも事教育に関する限りにおいては、中正にして穏健なる道を踏んでおるというふうに考えております。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長、関連して。  文部大臣は、ただいま高円委員に対して、決してよろめいて、おらぬ、しっかりしておるという御発言です。私の質問に対してもよろめいていない反撃的な答弁をされました。で、私はこのことは重大だと思うのです。で、今の高田委員質問に関連して私は伺いますが、松永文部大臣は、私はあなたの人となりについては敬服いたしております。確かに年の功というものがあると感心している。ところが、たとえば道徳教育の問題にしましても、単に日教組の考え方につきましても、あなたは文部大臣就任一カ月か二カ月にして変りました。これはよろめきじゃないでしょうか。道徳教育を、文部大臣就任当時新聞記者に、あるいは放送記者に語り、活字になり、電波となって国民の目に、聴覚に伝わったものと、一カ月か二カ月後の道徳教育の問題に対する考え方が変りました。私は関連質問ですから、詳しくは申し上げませんが、反問されれば、またさらに私は反撃をいたしますが、確かに変りました。日教組に対するあなたの考え方もまた変ったわけなんです。で、このことは、私は政党所属であるということが、非常な影響を及ぼしていることと思う。今の日本は激動期です。大海の激浪にさまよっている小舟のごとき日本の姿というものだと私は思う。しかも、世界は小さくなっていくとすれば、今は自由民主党が政権を取っているわけですけれども、それはアメリカの影響というものは非常に大きいですよ。それは文教政策に出て参ります。ところが、一国の教育政策というものは、そのときどきの情勢にそう動かされることなく、国家百年の大計のもとに、一国の文教政策は行われなければならないと思う。そういう立場から考えますときに、今のわが国の実情から言うならば、私は文部大臣というものは、今高田委員から指摘されたように、政党に所属されない、信念をもって、自主性の保てる文教政策というものをすべきじゃないかと思う。私は松永文部大臣が、文部大臣なつたときに、あなたの発言を聞いて、なるほど松永文政はりっぱなもんだと思っておりましたが、ともかくあなたは政党所属でありますから、非常に大きなひもがついて、さっき私は若干具体例をあげましたが、相当影響を受けております。それで今高田委員から質問があったわけです。それで、あなたは高田委員に対しては、よろめいていないと言っておるが、私は確かによろめいておると思っている。その点についてはいかなる見解を持っていらっしゃるか。
  65. 松永東

    国務大臣松永東君) これはよろめきの解釈です。どんなふうにしたのが、よろめきかということについて、考え方があると思います。しかし、おそらくは矢嶋委員の今御指摘になりましたことはこうだと思います。去年の七月の十日の日です。私が文部大臣に就任いたしましたときに、新聞記者諸君が、私に対して道徳教育をどうするか、こういうような質問がありました。そのときに、私は道徳教育を強化することはもちろんだ、しかしながら、その強化のやり方としては、今現に社会科の中で教えておるのですから、その社会科の中の道徳教育を、それを強化して、さらに地理、歴史、そういうものを強化していけばよかろうと思う、ということを確かに私は申し上げました。ところが、しろうとの悲しさである。いろいろ研究してみますというと、それは社会科の中で教える道徳教育を強化するだけではいかぬ。もう少し掘り下げて、そうして別の時間をさいて、そうしてほんとうに子供たちの人格を作り上げる、りっぱな人間として育て上げるという特段の時間を作らなければならぬというふうに考えます。それは私が相当研究いたしました結果です。決して政党から引きずられたわけでもなければ何でもございません。私自身がいろいろ研究しました結果、そうすることによって、一番よりよきりっぱな人間を、子供たちを作り上げることができるというふうに感づいたからでございます。
  66. 高田なほ子

    高田なほ子君 今道徳教育の問題に触れられて、大臣としてはまあ何カ月御研究になつたか知りませんが、ともかく重大な道徳教育という問題についてそういう結論を出しておられます。あらためて私は道徳教育問題についてただしたいのですが、現在の政府の言う道徳教育の必要は、社会の頽廃の中で、子供たちが現在のような状態では困る。何とかしてこれはあなたの言うようにりっぱな国民にするために道徳教育をやりたいと、こう言われる、そのお気持については私はよくわかります。現在の社会の頽廃ぶりは、まことにひどいものです。家庭の貧困、それから不和、家庭の忙しさ、商業主義の反動、独占からくるエロ、グロ文化のはんらん、政治の中の不明朗さ、こういうような社会悪の条件があまりにも数多くございます。こういう中で、戦後の教師たちは社会科を通し、全教科を通して、困難な中で道徳教育をやつてきた。だがしかし、その効果はまことに上り方が少いように見えるけれども、実際においては、今日まで道徳教育をやってきた、やってきているのです。これは教師が、こういう社会の中で子供に対する道徳教育というものを行うということは、これはけっこうなことなんです。全教科を通して行うということは、これはいいことなんです。また、やるべきことなんです。だがしかし、それは教師の活動分野における問題であつて、この社会の頽廃した道義を、どういうふうにして確立するかという作業は、これは政府自体にも一つの作業計画がなければならないし、家庭の中にも計画を持たなくちゃならないでしよう、教育者も持たなければならないと思う。従って、私は政府全体として、特に文教の最高の責任にあられる大臣が、道徳教育の必要性を説くからには、こうした社会の頽廃した道義を、どういうような計画の中でこれを直していくか。いわゆる教育の部面だけではなく、政府としての道義確立の作業計画というものをどういうふうにするか。もう少しわかりやすく言えば、今までの教師の行なってきた道徳教育を阻害した条件は、何かというのです。その条件をどういうふうにして政府は取り除かなければならないか、こういう問題なんです。御答弁願いたい。
  67. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました今までの教師が、決して教育になげやりであったとか、あるいは教育がまずかったということを、私は言うのじゃありません。御指摘のように、戦争後社会が全く混乱いたして、特に思想が混乱いたしております。そのまつただ中によくも、あれだけ子供をりっぱに教育してきてくれたと、ほんとうに喜んでいます。(高田なほ子君「ほんとうにそう思ってらっしゃるんですか」と述ぶ)そう思っていますよ。私はほんとうに終戦後社会があんなふうに混乱しておった、そうして御指摘のように家庭も、政治も満足するものじゃないことも、御指摘通りでありますけれども、さればといって、教育だけをほったらかしにしておくわけにはいきません。教育も、社会も、お互いが反省をしながら、そうしてどうすればりっぱな民族としての平和な、そうしてなごやかな生活ができるかということに、努力せなけりゃなりません。ことに私としては、次の時代をになう子供を養育する任務を帯びておるのでございまするから、これに対する道徳教育を強化して、そうしてりっぱな国民を作るということに精進せなけりゃならぬというふうな考え方から、右、申し上げたような努力を続けている次第であります。
  68. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、文部大臣としては、道徳教育をやれば、社会道義というものは確立するというふうにお考えになってらっしゃるのですか、そんなふうにとれるのです。教育の面だけじゃないと思う。あなたの、閣僚の一員として答弁が不満なんですが、それでいいんですか。
  69. 松永東

    国務大臣松永東君) それは、教育の面だけでそうした明朗な社会ができるとは思いません。しかし、さっきも申し上げた通り、すべての面で反省をし、協力して、そうしてりっぱな生活を、お互いこの民族がするようにやらんけりやならぬと思います。ですからして、教育さえやればいいというのじゃありません。政治家も大いに一つ反省してもらい、実業家も反省してもらい、家庭も反省してもらい、しこうしてさらに、教育は一生懸命子供たちを、りっぱな人間に育て上げるということに努力せなければならぬというふうに考えております。
  70. 高田なほ子

    高田なほ子君 反省をあなたはしきりに言われますが、反省しただけで道義は確立しますか。政治家としての御答弁は、それでよろしゅうございますか。道義をここまで頽廃した社会的の原因というものは、それではどうお考えになりますか。
  71. 松永東

    国務大臣松永東君) それは高田委員の御質問とも思いません。反省しただけでいいかじやありません。反省して、さらにお互い正道を踏んでりっぱな道をいく、そうしてりっぱな人格者として民主主義に徹していくということが、一番いいことだと思います。
  72. 高田なほ子

    高田なほ子君 石井警察庁長官に、この際現状を一つ伺ってから重ねたいのです。現在の青少年の不良が最近非常にふえているようですが、現状と、その原因がどういうふうになっているか。この点について現状を一つ説明してもらいたいと思います。
  73. 石井榮二

    政府委員(石井榮二君) お答えいたします。御指摘通り、最近青少年の犯罪が年々ふえておりますことは、まことに憂うべき傾向でございまして、数字的に申しますと、今ちょっと手元に資料を持っておりませんので、概略を申し上げます。いわゆる刑法犯を犯した少年、二十才未満、十四才以上の少年でございますが、一昨年一年におきましては、約十万でございましたのが、昭和三十二年一年間には、十一万五千くらいふえております。こういう状況でございまして、そのふえ方も相当なものであるのでございまして、戦前に比べまして、かりに戦前の昭和十六年を一〇〇といたしますと、最近の数字はその二・五倍くらいになっている。こういう状況でございまして、戦後逐年青少年犯罪がふえております。昭和二十六年が、戦後の中でも、統計的には最高でございましたが、その後二、三年はやや低下の傾向にあったのでございますが、昭和三十年以降、また逐年増加の傾向にありまして、先ほど申しましたような数字を示しておるのでございます。これはまことにゆゆしい問題といいますか、次代を背負う国民であるべき少年が、今日こういう多数の犯罪を犯すに至っているということは、憂慮すべき問題であるのでございまして、私ども警察の立場におきましては、警察の分野においてこの問題に対処すべきいろいろの方策を考えておるのでございますが、問題はただ単に、私ども警察の取締りによるだけでは、解決し得ないものでございまして、いわゆる少年を保護育成すべき各関係方面の施策と相待ちまして、警察は警察の立場において、この問題に真剣に取っ組んで問題を解決して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  74. 高田なほ子

    高田なほ子君 資料はいただいておりますから、大体わかりますが、私いただきました資料で非常にがく然としたことは、十四才以上十六才未満の者についての、特に殺人、強盃、放火、強姦、こういう中で最も増加率の高いのは、強姦ですね。それから十六才から十八才の中でも、これは風俗犯の中では、やっぱりわいせつ犯が非常に多い。これは最近の特徴じゃないかというふうに考えられますが、一体こういう刑事犯、あるいは風俗犯が、あまりにもわれわれが見て子供の時代に多過ぎる。こういう原因は一体どういうところに原因があるのか、それを一つお話し願い、これを解決するために、どういう積極的な手段をとつていくか、警察としてこれにも触れてもらいた  い。
  75. 石井榮二

    政府委員(石井榮二君) 御指摘通り、少年犯罪の中で特に粗暴犯、性的犯罪が著しくふえておるということは、確かに顕著なる傾向なのでございますが、おそらく戦前戦後を通じまして、今日の示しておる数字が最も多いのではないかと、かように見ておるのでございます。では、なぜそういうふうになつたかという原因の問題でございますが、少年犯罪のふえました原因につきましては、一概に言えない多元的なものがあろうかと思うのでございます。少年が一つの犯罪を犯した場合、私どもそれを一応実情を調べてみますと、表面は単純な動機が原因のようでございますが、さらにその遠因を探ってみますと、きわめて多数の要素が錯綜しておるようでございまして、結局は、戦後のわが国が、あらゆる面において非常な激変をいたした。家庭の事情もありましようし、何と申しましても社会の環境、少年を取りまく社会の環境が、彼らをして犯罪に陥らしめるような思い条件のもとにあった。また、現在もある、完全にそれが一掃されていないというところにあろうかと思うのでございます。そこで、私どもといたしましては、先ほども申しましたように、私ども警察の立場においてのみならず、青少年を保護育成するあらゆる機関はもとより、民間の団体、さらには民間の有志の方々、各方面と緊密に連携をとりまして、少年の犯罪の予防、少年をしてそういう悪に陥らしめないように、その悪に陥る一歩手前のところで、いわゆる早期発見して、これを補導していくということにいたしたいという考えで、努力をいたしておるのでございます。特に最近におきましては、全国的に各学校を中心としまして、地元の警察が相寄り相協力しまして、少年の補導ということに、かなり活発な運動が展開されまして、見るべき成果を上げつつありますことは、心強く思っておる次第であります。特に性犯罪が非常にふえておりますことにつきまして、少年に性的刺激を与えるいわゆる不良出版物、あるいは映画等、こういったものが現実に問題を起した少年を取り調べてみた結果によりまして、はっきりと言えることでございますので、そういういわゆる少年を取りまく不良文化財と申しますか、そういったものに対しまして、これは関係の業者、製作業者等の自粛にも待たなければなりませんし、あらゆる関係の者が相寄り協力いたしまして、少年の周囲を取りまく社会環境を純化していく、こういう方向に進んで参らなければならぬと思いますし、私ども、警察もまた警察の立場において、可能なる限りこうした問題の解決に協力をして参りたい、かように考えます。
  76. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の説明でも十分にわかりますように、やはり政治家としては、こういう問題を防ぐために、道徳教育もさることながら、社会条件を備えていくということ、これが私は閣僚としての文部大臣の肩に課された政治教育と車の両輪をなす最も重要な私は課題だと思う。いうならば、岸内閣において三悪追放のこの前衛になってお立ちにならなければならないのが、私は文部大臣の非常な役割じゃないかと思うのです。あなたは、道徳教育に非常にうき身をやつされることはわかる。しかし、それ以上に社会条件、青少年を取りまくこの三悪というものにどう取り組んでいくかということ、これを閣内において、最も強硬に主張なさらなければならない立場にある方だと思うのです。  続いて、このエロ、グロ文化の追放についてはあとでお伺いしますが、その前に若干大臣に尋ねたいことがあるのですが、こういう中でですね、こういう中で、今度文部省は非常に大急ぎで道徳教育を推し進めるために、指導通牒というものを出されたのです。そうして時間を特設すると答弁しておるのです。これはあくまでも方法論なんです。時間を特設して何をするか、どういう目的で何をするか、道徳教育内容、これを明確にしていただきたい。
  77. 松永東

    国務大臣松永東君) 道徳教育内容でございまするが、これは文部省内にありますとろこのエキスパート、専門家の人々の集まりで教材審議会があります。それで相当審議をいたしまして、多分もう二、三日のうちに、その報告が来ると思いますから、大体の構想はわかっております。それは教科書などを作つてやるわけじゃございません。やはり大体は日常のできごと、あるいは新聞や、ラジオ等に報道せられた材料をとりまして、そうして生活にマッチした面を主題として先生が手引きをしていく、こういうことであります。そうしてさらに経典とか、あるいは聖書とか、あるいは論語とか孟子とかいうようなものもございましょうし、さらに偉人の言行録、偉人の経歴、そういうような点も教材になるような点は、それを取りまして教え込んでいく、要するに子供たちの是非善悪の弁別心を培養していくということ  に、重点を置いて導いていきたいというふうに考えております。
  78. 高田なほ子

    高田なほ子君 教え込むということを主にしたものですか。
  79. 松永東

    国務大臣松永東君) 教え込むというのじゃありません。さっきも申し上げる通り、判断力を培養していこう、そうして手引きをしよう、こういうことです。昔の、よく私がそう言うと、私が老人だものですから、あれは戦前の教育勅語の徳目を押しつけるつもりだなんて言う人がありますが、そうじゃないのですよ。年をとっておっても、私は今の事情をよく承知いたしております。(笑声)決して私はそういう考えは持っておりません。
  80. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうひがまないでお答えを願いたいと思います。(笑声)そんな御説明だと、今日までやつている社会科の教育と何ら変らない。なぜ時間を特設するのですか、その理由を。
  81. 松永東

    国務大臣松永東君) 社会科の中で道徳教育をやるばかりでなく、これはもう高田先生御承知の通り、全教科の中で道徳教育を教えております。しかし、全科の中で教えておるけれども、それでは中心がなくなる、ぼけてくるのです。そうしてまた、それならば社会科の中で教えるといっても、社会科は御承知の通り社会教育でありますから、やはり社会道徳ばかりじゃいかぬ。どうしても子供の個性、教える児童の個性、そういう点も考えて先生が善導をしてもらいたい、すなわち上から押しつけるのでもなければ何でもない、弁別心を培養することに骨を折つてもらいたい。こういうことから、どうしてもそれには時間を特設して、もう一つ掘り下げた教育をする方がよろしいというので、道徳の時間の特設をやつたわけであります。それもしかし、御承知の通りホーム・ルームの時間でやろう、こういうことになっております。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも大臣は、ホーム・ルームをごらんになつたことがありますか。中学、小学校の社会科の教科の指導面について、一度でも御見学なさったことがございますか、それから一つ伺いたいと思います。    〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  83. 松永東

    国務大臣松永東君) 私は仕事でございますから、できるだけそういう方面を一つ見て見学をしたい、そうして自分の考え方の材料にしたいというので、ずいぶんそうした面も回りました。給食等の面も何も回りました。まあ、日が足りませんから、あなたから見れば研究年月はきわめて短いですけれども、相当回って、おくれまいとして研究をしたわけであります。
  84. 鈴木強

    ○鈴木強君 関連して。今大臣の御答弁ですと、教育勅語の中にあるいろいろ古い考え方を押しつけるというようなことは、全然考えておらない、これははっきりしました。そうすると、その道徳教育を特に時間を設けてやろうということなんですが、高田委員質問は、どういう道徳教育を必要とするのかということを聞いておるわけですが、その点が何か研究しているそうでありますが、しかし、重大な問題ですから、少くともこういう特設科目を設けてやろうというからには、あなたは道徳教育というのはどういうことを教えようとするのか、そのことはおわかりでしよう。そのことをやはり明確に、しないと、非常に誤解を受けると思います。そのことを一つ質問したい。
  85. 松永東

    国務大臣松永東君) 今仰せになったことは、要するに道徳教育を教えるその内容、教えるというか、手引をしていく、その内容、こういうことだと思います。その内容につきましては、ちょうどここに政府委員が来ておるから、これをよく研究しておるから、しろうとの私よりも、この方がよくわかるでしょう。わかりやすいように説明できると思います。
  86. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お答えいたします。道徳教育内容については、現在の憲法、教育基本法学校教育法の線に沿って、具体的には、第一に、子供たちのしつけの問題でございます。これは日常生活における行動様式について規定する。第二番目には、ただいま大臣からお答えになつた正邪善悪の価値判断を培養して、そして正しい行いを行うようにしたい。第三に、国家社会の一員としてりっぱな日本人を作っていきたい、こういう点が、中心になると思っております。
  87. 高田なほ子

    高田なほ子君 この特設時間は、必須ですか、随意ですか。
  88. 松永東

    国務大臣松永東君) これは必須でございます。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 少くとも時間を特設して必須科目に、必須時間にするというのは、これは現在の法律の範囲内ではできないと私は見ている。学校教育法施行、規則の五十三条では、これは中学校の教科についてもこれを必須教科と選択教科に分けると、必須、選択のこれは法的な規制というものが、ちゃんとできておる。時間を特設してその門内容を規制するということになれば、これはあくまでも教科です。だとするならば、これは法改正によらなければできない仕事です。文部省の行政措置でやるということは、これは行き過ぎである。この行き過ぎが、なぜ起ってきているのか、なぜこんなにあわてなければならないのか、この点について大臣の御見解をただしたい。
  90. 松永東

    国務大臣松永東君) その点については、いろいろ研究したのですけれども、それは法律でやらないでもよろしいと、要するに今のままで文部省がやつていけばそれでよろしい。つまり通達でやつていけばよろしいということを、大体研究しました。そしてあなたのおっしゃる通り、それならば早くやらなくてもいいじゃないかということも、議論もずいぶん聞きました。しかしながら、まあ俗に言う善は急げで、いいことなら一日も早くやった方がいい、こういうことで早くやろうということに決心したわけです。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 時間がなくて非常にここは残念なところですけれども、法改正をしなければ、こういう勝手なことはできない。文部省はいつでも自分の都合のいいように拡大解釈をして、法律無視で、このことは衆議院予算委員会でもつかれて、法律を改正する予定だと答えていられる、内藤さんそうでしょう。
  92. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 御指摘のように、学校教育法の施行規則の問題だと思います。ですから法律関係はございません。すでに学校教育法によって、文部大臣にまかされておる権限でございますので、学校教育法施行規則の改正が必要かしと存じております。しかし、指導要領ができますまでの間は、大体今指導要領のでき上るのは、各教科とも本年の八月を目標にしておりますので、その間は指導通達で、地方に助言と指導をいたしたい、かように考えております。
  93. 高田なほ子

    高田なほ子君 地方に助言と指導をするというが、文部省衆議院予算委員会であったと思いますが、この学習指導要領を、これを告示にすると言っている。一体国が地方教育委員会を拘束するような、少くとも教科にわたるところの告示というものができるかできないか。まことにこれは中央集権的な危険な方法なんです。行政措置でこういうことができますか。
  94. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 御承知の通り学校教育法によりまして、どういう教育内容を教えるか、あるいはどういう方法で教えるかということは、これは文部大臣にまかされた権限でございますので、その教科の大要は施行規則に規定されておるわけでございます。具体的にどういう科目を置くかということ、それからどういう方法でやるかという教育課程の問題は、これは学習指導要領の基準によるということになっております。そこで、学習指導要領というのは、どういう性格かという議論が出ましたので、これは文部省の出版物でございますと、この出版物の基準によると、そこでこの中には、ある程度法的規制を加えるものと、そうでない参考事例といろいろございますので、特に学習指導要領を今検討しておりますので、必要な部門は施行規則の方にあげて、そうでないものは指導要領の基準によりたい、その指導要領を告示にするかどうかということを、今検討中でございます。
  95. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連。内藤さんに尋ねますが、特設時間というのは、教科ですか、教科でないのですか。
  96. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは従来の意味にいう教科ではございません。それは従来のように特定の教科書を使い、あるいは特定の免許状を持った先生が教え、そしてその結果評価を5、4、3、2、1とか、あるいは優、良、可というような評価を行う、これがまあ普通の教科でございますけれども、道徳教育の時間は、社会科その他全教科でやつておる分をさらに深く掘り下げたり、あるいはそれを敷衍したり、あるいは断片的なものを統合するというような意味で、中心的な教科になると思うのですが、これは従来の意味の教科ではございません。しかし、新しい意味の教科というてもいいと思います。ですから、教科内と教科外活動と二つに分けますと、教科内の活動でございます。
  97. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部省がいかに抗弁なさろうとも、この学習指導要領を告示とするなんて、そんな性格はありませんよ。一体教科課程というものは、これは地方教育委員会職務権限の中に所属しているので、文部省がこれにタッチすることはできない。ただ、文部省は、学習指導要領の基準要綱を作成できるでしょう。しかし、それはあくまでも基準であつて、その基準に従って地方教育委員会が教科課程を改正する権限を持つ。だから文部省の権限は、これはあくまでも指導、助言の立場に立つものであつて、学習指導要領の基準を告示にしてこれを強制するという、こういう権限はないはずなんです。もし、これを強行するというならば、これは文部省の中央集権行政、今まさにその逆を行こうとしておる、反省して下さい。  次に、大臣お尋ねします。今度の予算では、かなりの予算を組みまして、そして幾らですか、六百……この教員の道徳教育に関する講習をやろうと予算を出しています。いつ、どういうことをやるか、だれがこれを指導しますか。
  98. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 本年度予算に四百万円計上いたしております。これは各学校から大体一人あたりを予定しておりまして、本年の八月に指導要領ができますので、九月、十月を予定して各県で行うつもりでございます。  その前にブロックごとに指導者の教育をいたしますので、その指導者講習に出た者が講師に当るわけでございます。
  99. 高田なほ子

    高田なほ子君 行うつもりという法的根拠はどこにありますか。教育委員会の要請に基く指導、助言が私は本体だと思う。つまり現場の教育活動がこれが道徳教育の姿だとするならば、これは当然現場の要請に基く講習でなければならない。なぜ、文部省が国の予算を組んで、天下り的な指導者講習をするのか。これは戦争中の、教員を引っぱり出して、一億一心の教育を邁進するためにやった講習の性格と何ら変りない。これこそ教育中央集権ではないか、説明してもらいたい。
  100. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 御承知の通り、学習指導要領は文部省で作成することでございます。その学習指導要領によって、地方では教育課程を組むわけでございます。ですから指導要領はどういうものであるかということは、これは当然文部省がこういうふうな趣旨で作ったということを、地方教育委員会に、あるいは地方の先生方に普及徹底する私は義務があると考えております。
  101. 高田なほ子

    高田なほ子君 現場の教師たちは、文部省の指導を受けなければ仕事ができないほど抜けていませんよ。文部省の指導要領を基準だとするということは、文部省の強制的な指導に待たずに、地域社会の、生活の中に即した現場の活動を望むからこそ、こういう規制があるにかかわらず、今逆をいこうとしているのです。その説明で納得できませんが、もう時間がなくてできないのです。  こういう状態なのに、今副読本が盛んに出ている、道徳教育の副読本が——ここで一々あげると切りがありませんが、たくさん出ています。文部省は野放しです。大手筋の会社が競争で学校に売りつけ宣伝している。こういうものにこそ文部省はしかるべき方法をとつてもらいたい、どうしていますか。
  102. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) この副読本につきましては、先ほど申しましたように道徳教育は教科書を使わない、これは昔の修身に返るようなおそれもございますので、できるだけ教科書は使わない建前をとつております。そこで、御指摘のように、副読本が出て参ったことも、これも事実でございます。私どもも先般の地方教育行政の組織及び運営に関する法律によって、こういう種類のものは教育委員会の承認、または届出を要する事項になっておりますので、教育委員会の指導のよろしきを得て適切な措置が講ぜられることを、強く期待しております。
  103. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部省の中央集権に都合のいいところは、ほうっておく、こういうでたらめのやり方はない。教科書問題協議会、道徳教育研究会議、道徳教育研究協議会等では厳重な抗議申し入れをしておる。そういうような民間の声にこたえて、文部省が、まだ何も内容を発表しないうちから、商魂たくましいチンドン屋のような道徳教育のやり方は放置できない。なぜこれを放置していくのですか、今の説明で納得できない、これは大臣に御答弁願う。そんなばかげたことありませんよ。
  104. 松永東

    国務大臣松永東君) 今この問題については、政府委員から御答弁を申し上げた通りです。しかし、弊害があるようなことがあると、これはまあ重要なことでございますから、地方のそれぞれの委員会と打ち合せまして、善処することにいたします。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 続いて政府の一大公約であるすし詰め教室解消の問題です。これはすし詰め教室を解消すると言っておられますが、この財源措置はできておりますか。
  106. 松永東

    国務大臣松永東君) すし詰め教室の解消は、本年度の予算が協賛せられますというと、(「協賛とは何だ、帝国議会じゃないぞ」と呼ぶ者あり)賛成、協賛という言葉が間違ったら取り消します。だがしかし、これが通過いたしますというと、実行できるようになっております。(「協賛議会じゃない」と呼ぶ者あり)
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 これは定数法と関係するのですが、今度出される定数基準法の中で、今までは五十人というものが一学級の人員として規定されておった、学校教育法で。ところが、今度の定数基準法によれば五十三人というふうに線を下してきておりますし、さらには、文部大臣の認可を得た場合には、やむを得ざる事情のときには、五十五人までもこれはいいという緩和規定を設けている。文部大臣は必ず五十三人までできるのか、五十五人という数になっていくのか。これはきわめて財政措置とからみ合せて重要な問題がと思いますが、もう少し明確に答えていただきたい。数字の点については事務当局の方からでけっこうです。
  108. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘通り、このすし詰め教育解消は、これは非常なわれわれ重要な問題と考えまして、今までいろいろ努力をして参った。ところが、どうも財政上の都合から、どうしても三十三年度から仰せ通り五十人にこれを減少するということが、難問だ。従って、中学におきましては五十三人までとして、そうして三十三年、三十四年でこれを解消してしまう。小学校につきましては、御承知の通り本年度が一番増加する山でございますので、あと五年間猶予を願ってそうして、五年間のうちに全部五十人以下にする、こういうような考え方のもとに進めておる次第でございます。
  109. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 学校教育法施行規則には、「五十人以下の標準とする。」という規定がございます。そこで、普通の学級編成の場合には、五十人を基準としておりますが、特に複式の場合には三十五人と三十人、それから単級の場合には二十人、特殊学級の場合には十五人、こういうふうに五十人以下の内訳をしておるのでございます。ですから、ただいまのように、現在の施行規則のように「五十人以下の標準とする。」という非常にあいまいな規定でございますので、そこを明確にしたわけで、五十五人まではある程度やむを得ないんじゃないか、こういうお話も出たのですが、五十五人を私どもはこえないようにいたしたい。しかしながら、先ほど大臣からもお答え申しましたように、今一ぺんに五十人以下にすることは施設の関係で、あるいは財政負担の関係で一ぺんには無理でございます。そこで生徒、児童の減少することと、それからもう一つは、施設の整備状況と見合いまして、中学校の場合には大体二ヵ年計画、小学校の場合には今後五ヵ年計画の範囲で、これを五十人以下に切り下げたい。その途中におきましてはある程度五十五人をこえる場合もあり得るし、現に小学校の場合は、大体本年度がちょうど最高の生徒数でございますので、来年度以降に小学校は譲っておりますので、小学校の場合はどうしても五十五人以上が起きますので、この場合には文部大臣に協議しなきゃならぬ、意見を聞かなきゃならぬ、こういう規定でございまして、この規定が、将来も五十五を容認するという意味ではないのでありまして、私どもの計画が順調にいきますれば、五ヵ年以内には五十人以下になる、こういう意味でございます。それから今もう一つお尋ねの、五十三人というお尋ねがございましたけれども、これは本年度の中学校で五千人の増を見込みましたので、五千人によりまして中学校のすし詰め学級を解消できる。標準は五十三というところに置いておりますので、五十三が標準でございますので、五十一のところもあるし、あるいは若干五十を、大都会で非常に人口の密度の強いところでは、五十三を上回るところもあるかと思いますが、できるだけ五十三を全国標準にいたしておるのでございます。
  110. 高田なほ子

    高田なほ子君 自治庁長官に尋ねますが、この五千名増の財源措置というのは、どういうふうにされているか、現員プラス五千人であるのか。その中には小学校、中学校、ぶっ込んでの五千人であるのか、どういうふうに他方財政計画の中に、この数字を盛り込んであるのか。もう一つ、教員の定数と関連することは、すし詰め教育と関連することなんですが、この中に婦人のお産で休んだ場合の補助教員の財源というものは、一体見込まれておるものか。結核で休む教員の休養期間に当る補助教員は、この財源の中に見込まれておるのか、この点を明確にしてもらいたい。
  111. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 五千人の増員  を現員のほかに加えまして、そうしてこれについて十六億円という財政計画上の見積りをいたしております。また、産休のための臨時教職員等につきまして、文部省の補助がございます。それに見合うものは財政計画上見込んでおります。
  112. 高田なほ子

    高田なほ子君 重ねて自治庁長官に伺いますが、現状としては産休補助教員の取れている県というのは、半数に満たないのです。地方財政の関係からでしょうと思うのですが、現在ある法律が無視されて、文部省の言い分は実績の二分の一を負担をする。こういうような建前をとつておりますので、これは当然自治庁責任があるのではないかと思うのです。この点いかがですか。実際行われていないものに対しては、どういう措置をおとりになろうとするのか、はっきりしていただきたい。
  113. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 財政計画上では見込んでおりますのが、若干足りないかもしれません。これらについては、さらに文部省とも相談をいたしまして、充実して参るようにいたしましょう。
  114. 高田なほ子

    高田なほ子君 足らないかもしれませんというのは、どういう意味ですか。(「半分の県しかやってないのですよ」と呼ぶ者あり)
  115. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 地方財政計画におきましては、結核が今のところ一・三%くらいでございます。それに産休を含めまして大体二%見ておりますので、二%内では十分まかなえると、私ども考えております。
  116. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういうその責任のなすり合いのようなことをされるのは、困るのです。まかなえると思っても、まかなえないのです。この責任はどちらにあるのか。文部省自治庁か、ここではっきりしていただきたい。
  117. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 財政計画上は、見込むべきものは従来でも見込んでおります。ただ、産休の、私もこれは聞いてみました。産休のは三十年に立法されました。あの結果どういう工合になっておりますか、これは聞いておりますし、財政計画上も私先ほど申し上げましたように不十分な点があるように思います。今政府委員からこまかいこと申し上げましたですが、私もその感じでは三十年の立法ができたあの当時、あれが十分動くだろうかどうだろうかというようなことは、私も感じた一員でございます。しかし、すでに法律がああいう経過でできましたことですから、これに合せるような財政計画はできる限り充実するようにいたしたいと思います。
  118. 高田なほ子

    高田なほ子君 いつから。
  119. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 三十三年の財政計画は、すでにこしらえておりまするけれども、これにつきましても、個々の団体等への指導は、さらにいたして参らなければならぬ点がいろいろな点でございます。これはちょっと話が別になりまするけれどもね、たとえば臨時職員定員化というようなことですね、こんなことも実際の指導によってもう少し充実して参りたいという点がありまするので、さらに予算編成措置につきましては、十分考えて参りましょう。いつからと申しますけれども、三十三年度からでも、できることは十分考えて参ります。
  120. 高田なほ子

    高田なほ子君 まことに今の御答弁は、不満にたえないのです。二年も前に通過した法律が実施されない。そしてこの問題を取り上げても、明確な御答弁がいただけない。婦人の母性保護の法律というのは、遺憾ながらわが国憲政史上、始まつてたったこれ一つなんです。この成否に全婦人が注目しているといっても過言ではない。こういう問題は、存外政府はどうも不熱心です。どうもただいまの御答弁は、単なる御答弁ではなくて、この法律を守るか守らないかということは、岸内閣の順法精神を、これは勤務評定するのに一番いい材料になる。こういうことをやつていて勤務評定を教員だけやってはいけませんよ。どうか一つ足りない部分はせっかくこの法律が実施されるように、特段の御努力をわずらわしたい。もう一ぺん正確な御答弁をいただきます。(「法律違反ばかりではないか」と呼ぶ者あり)
  121. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 私は率直に申しまして、三十年のあの法律ができましたときに、これが一体どういう形で実施できるだろうか。これは高田さんとは言いませんが、社会党の若干の方とも論じ合ったことがあります。これは一つのある意味でおっしゃるように、意味のある立法と申しますか、将来の方向を示す立法だということは、私は考えております。従いまして、はっきりとこれからもですね、あの法律に沿いますように、これはしかし文部省とよく相談しなければいかぬことでありますから、文部大臣ともよく相談をいたして参りましょう。(「これからですか」「文部大臣答弁」「これで道徳教育ということは聞いてあきれる」と呼ぶ者あり)
  122. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました点は、今内藤政府委員から申し上げた通り、千七百五十三省みてあるのです。(「それでは足りない」と呼ぶ者あり)いえ、それは大体それで足りるという見通しです。私はよく知りませんけれども、こまかなことまで計算しておりませんけれども、大体それで足りるという文部当局考え方です。
  123. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ちょっと補足させていただきますが、千七百五十三名というのは、現員でございます。これはその法律に基きまして、実際おる数が千七百五十三名、私ども地方財政計画でみてございますのは、二%でございますから、教員総数で五十数万おりますので、一万数千の者を見込んでいるわけでございます。そのうち結核が七千ございますので、三千数百程度を見込んでおりますので、私どもはこの程度で間に合うという関係になるかと思います。
  124. 高田なほ子

    高田なほ子君 間に合うということは、どういうことですか。子供を生むのに全国の婦人教師が統計をとって生んでいるわけではないのです。そういうばかな答弁をするものではないのです。それでは母性保護の法律とは言えない。今の文部省の数字は、なるほどそうかもしれない。しかし、確かに文部省の計算している基準よりぐっと下回っている。なぜ取れないかというのです。そこに問題があるんです。これを今郡さんは大へんよい答弁をして下さったので安心しますが、当の文部省がそういうばかげた認識では、この問題は解決しない。大臣お尋ねいたします。すし詰め学級のことにまた戻りますが、五ヵ年かからなければすし詰め教育の解消はできない。現在組まれている五千人定員増は、これは中学校に振り向けても、私はこのすし詰め教育は解消でき得ないという計算をしている。だからこそ、今度の定数基準法には、わざわざ五十五人までを許すような教育委員会の基準権限を与えている、こういうものは削除すべきではないかと思う。そうして明確に五十人以下という法文で一本にすればいいんじゃないか、これに対する見解を尋ねたい。そして、すし詰め教育が解消できなかったときの政治的な責任をどうなさるのか、あらためてあなたの決意を聞きたいのです。
  125. 松永東

    国務大臣松永東君) 私どももできるならば五十人以下にしたいのです。しかし、現在の財政状態上、五十人にはどうしても本年度からはできない。そこで、やむを得ずして三十三年度、三十四年度には、五十三人といったような暫定的な方法をとったということでございます。しかして先ほど来申し上げた通り、小学校の方も五ヵ年たちますというと、いろいろな計数から勘定してみますというと、大体これで間違いなく予定の通り五十人以下に減らすことができるというふうな考え方を持っております。それで私はいけると思います。責任の問題でございますが、どうも五ヵ年先までのことを私が申し上げてみたって、これはどうもしようがないけれども法律に(「法律が出ているからですよ」と呼ぶ者あり)法律が出ておりますけれども、今あなたがおっしゃる通り、五十人なら五十人で切ってしまえとおっしゃるけれども、それは切りたいです。しかし、五十人でやることは財政上伴わないものだからできない。でありますから、今言う通り五十三人でやむを得ずしてそういうことにしたわけなんです。
  126. 高田なほ子

    高田なほ子君 結局論じ尽されたことは、政府の一枚看板であるすし詰め教育の解消は困難である、こういうふうな結論が出てきているようです。次に、お尋ねしますが、養護教諭の問題に触れたい。養護教諭の職務内容はどういう内容ですか。これは事務当局から職務内容について、ずっと全部言っていただきたい。
  127. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 養護教諭は、学校において児童の養護をつかさどる、こういうことでございます。
  128. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういうことはわかっているのです。それを読みなさい。そんなばかな答弁をするものじゃない、不勉強ですよ。
  129. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 「養護教諭は、児童の養護を掌る」こういうふうに法律に規定されておりますので私はそのことを申し上げたんですが(「職務内容」と呼ぶ者あり)職務内容がその通りでございます。(「具体的に」と呼ぶ者あり)児童の養護をつかさどるのでございます。たとえば子供たちのからだの工合を見て、そして子供たちの学習に支障のないように、治療を要するような子供には治療をさせ、また作業を、あるいは勉強を緩和しなければならぬような子供には緩和させるとか、あるいはほかの盲学校、ろう学校とか、養護学校へ行った方がいいような子供には、そちらの方に行くように指導すると、そういうようなことになって参ります。
  130. 高田なほ子

    高田なほ子君 はなはだ意地の悪い質問をしたのは、私は伏線があってしたのです。養護教諭の職務内容というものについての認識が、若干文部省に足りないから質問をしている。きわめて養護教諭の職務内容は多岐多様にわたり、また、子供の健康を守るという建前から、欠くべからざる存在です、非常に重要なものです。ところが、この養護教諭の配置基準というものは、今度の法改正によっては児童千五百名に小学校の場合は一人、中学校の場合は二千名に一人、これでほんとうに子供の教育を守られるか、健康を守られるか、この配置基準でいいかどうかという問題、大臣はこれはどうお考えになりますか。
  131. 松永東

    国務大臣松永東君) 仰せ通り千五百人に一人、中学では二千人に一人では全く足らぬと思うのですよ。足らぬと思いますけれども、しかし財政上の現状から、まずこれでがまんするよりほかないと思っているわけなのでございます。しかし、これは、来年度すなわち三十四年度あたりから、順次また増員していくということも考えられることだと存じております。
  132. 高田なほ子

    高田なほ子君 増員計画について事務当局から説明してもらいたい。
  133. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 養護教諭の現状は、大体一万人くらいおるわけでございます。で、この場合に私どもは小学校千五百人、中学校二千人に一人という基準を設けました。これによりましても現員よりはさらに三千名の増員を要するのでございますが、また養護教諭の養成が毎年五百人程度しかございませんので、現在のところは、今のところ三千人の増員が、地方財政計画あるいはこの養護教諭の養成の現状から考えてでき得ないのではなかろうか。今後できるだけ増員いたしまして御期待に沿いたいと考えております。
  134. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の文部省の基準によると、千五百名に養護教諭が一人ですから、そうすると、全県の児童数を千五百で割って、そうして何人ということになって、こうなってくる。こういう計算をすると、今そういう基準を設けられると、それより上回って存置している県が今ある。その上回って存置している県は、今度首切ろうという文部省考え方じゃないか、増員するというけれども、首を切ってそれを足らない方に回すという計画が立てられているのじゃないかと、私は非常にこれを懸念する。なぜなら、学級というのは僻地になればなるほど小さな学校が多いでしょう。ですから、一人の養護教員が六つくらいの学校をかけ持ちして飛んで歩いているのですね。そんなことで守られないのです。それを打開するためにPTAの負担や何かでも置いている所もあるわけです。ですから現員の法律がきまると、その定数より上回いた県についての首切りが行われる危険性があるのではないか。これについてどうなさるか。
  135. 松永東

    国務大臣松永東君) 今申し上げました千五百人とか、二千人というのはこれは基準数です。基準数でありますから、これから上回ってもこれを首にする、やめてもらう、とかいうようなことは少しも考えておりません。
  136. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の基準でいいかということ、千五百名の基準が妥当かどうかという質問に対しては。
  137. 松永東

    国務大臣松永東君) これはもう少し減らす、すなわち、もう少し養護教諭をふやしていくという考え方を持っております。でありますから、これが十分だという基準とは考えておりません。
  138. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の学校保健法によると、学校病一掃のための健康診断が規定されておりますが、現在の医療機構の中でこういうことがどれくらい目的を果せるものか。特に厚生省関係の、いわゆる保健所の御協力を求めなければならないということになっておりますが、二千世帯くらいの世帯を一つの保健所が持っているということになれば、児童の結核に対するエキス線の検査、ツベルクリン検査の陰性者の予防接種とか、その他伝染病の予防というようなことは、とうてい、養護教諭もいないし保健所もないという所で、どうしてこの学校保健法の実施ができるか、はなはだ私は疑問に思うのです。これも、から念仏の法律じゃないかと思う。特に厚生省のこの問題に対する見解というものを聞きたい。
  139. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 私、率直に申せば、地域社会の健康を守ることはやはり保健所が従来よりももっと積極的に推進しなくちゃならない。今度幸いに学校保健法ができましたのですが、この地域社会の健康を守る上においても、結局集団的な所にやはり相当力を入れることが一番効果がある。従いまして、今度学校保健法ができ、従来ともエキス線の検査なんかは保健所が事実やっておるのですが、今後ますますそういう点については厚生省としては重点を注いでいきたいと考えております。
  140. 高田なほ子

    高田なほ子君 学校保健法の法案が間もなく国会を通過しますが、現在の保健所の状態でいけますか。定員をどうなさるおつもりですか。これの予算措置はできておりますか、この点について。
  141. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) こまかい具体的のことは政府委員から申し上げたいと思うのでありますが、結核予防のごときは昭和三十二年一月から十一月までの間に、約千七百万人の小中学生に対してエキス線検査を実施しておるというふうな情勢であります。ただ保健所自身定員の増加あるいはその充実というものについては、まだ欠くるところがあります。これはもう率直に認めざるを得ないので、私としてもたびたび、結核対策その他で保健所を充実いたしたい、ということを申し上げておるのでありますが、これらについてはもっとこちら自身も努力をして参らなくちゃならぬとは思っております。ただ結核関係については、たびたび申し上げましたように、今度検診班を相当充実いたします。学校のこの児童に対しては相当積極的にやりたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  142. 高田なほ子

    高田なほ子君 文部省は、人気取りの法律は次々出されるけれども、行政措置、特に財源措置という問題についてきわめて遺憾な点が多い。現在の堀木大臣の御答弁を聞いても、学校保健法に基く児童の健康を守るという行政措置は、これはほとんどできない。今日までも子供たちは、特に僻地の子供たちは獣医に健康診断をしてもらう。目方ばかりがないからおいもばかり目方で、雨の日に行列を作つて目方ばかりをしている。こんなべらぼうなことが許されておっていいか。法律を作るのはいいけれども、こういうことを解消する財源措置というものがほしいのですが、ほとんどこれは見出すことができない。はなはだ遺憾であります。  次にPTAの負担軽減というのは、岸内閣の文教政策の大きな柱になっています。今度の予算でPTAの予算を軽減するためにどういうふうな構想でやられたのか。特に教材費の問題は高く主張しておるようでありますけれども、どのくらい軽減されますか、具体的に。
  143. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 従来、義務教育国庫負担法に、教材費の国庫負担がございまして、これが十二億数千万でございましたが、これを今回十五億にいたしまして、それをさらに、従来は二分の一負担でなくて一部負担という格好でございましたので、地方財政計画の方では財源措置をしておりませんでした。そこで地方財政計画でさらにこれに見合う分を十五億見たわけでございます。そのほかに、市町村における教育費が非常に少いので、PTA等に負担がかかって参りますので、教材費その他含めまして、約五十億程度の財源措置を増加いたしておるわけでございます。
  144. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間が経過いたしましたから、簡単にお願いいたします。
  145. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の御答弁は、これははなはだ納得のいかない答弁なんです。この教材費の中には、児童の一番好きな学校図書費というものを削って、そうして教材費という目名でその中にぶち込んでいる。こういうインチキではいけないですね。二割ふやしたというならば、完全に二割ふやすべきなんです。そういうものを肩がわりして入れておってはいけない。特に学校の維持、それから教材、施設、こういうもののためにPTAは非常に負担を負っている。百十八億もこのために負担を負つている。こういうものを解消するためには相当の計画がなければなりませんが、今日の文部省の教材費の二割増くらいのやり方では、このPTAの負担は軽減しない。なぜならば、今日までのPTAの予算というのは次次とふえてきている。時間的に具体的な例を述べることはできませんけれども一つのじゃ口に七十五人もの子供が殺到するような学校にしてある。七百人の子供に便所が八つきりないような現状なんです。だから見かねてPTAがこれに出している。こういう費用が重なり重なって三十年度に百十八億、今年度はもっとふえているはずです。だからPTAのこの予算を軽減するための十五億というようなことをおっしゃっても、これは軽減しない。ますますふえる一方であります。こういうように政府の予算を通して見ると、まことに体裁だけは整っていますけれども内容面においては実施困難であるし、看板に偽わりありというような状態で、はなはだ遺憾なんです。  大へん時間がなくなってしまって残念でありますが、次に譲ります。  また法務大臣には御多忙中お出ましいただきましたにかかわらず、青少年問題について御答弁いただく時間を失ったことについて、厚くおわび申し上げたいと思います。(笑声)
  146. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 だいぶ時間がおそくなりましたので、御注意もありましたから、一問一答でなしに、お願いをいたしました各省大臣に対しまして、一括して御質問の要点をかいつまんで申し上げますから、それに対しまして明快適切に、簡明に一つお答えをいただきたいと思います。  第一に、外務大臣お尋ねをいたすのでありますが、わが国の外交は、きわめて多端でありまして、いろいろ御心労多いことと思いますが、この機会に明らかにいたしておきたい点があります。まず、外交の基本方針でありますが、政府は、いわゆる外交の三原則を立てておりまして、国連中心主義、自由諸国との協調、アジア諸国の一員として立っていくという点でございますが、これらの点につきまして、その総合関連におきまして矛盾をするような点がありはしないか、すなわち、アジアの一員といたしまして、自由諸国との協調の上にそういう点がないかどうかという点であります。申すまでもなく、アジア諸国の中には、SEATOの諸国もありまするし、あるいはAA諸国もあります。あるいは国府も中共も韓国もあるというようなことである場合におきまして、日本の指向するのは、どのアジア諸国を指しているのであるか。  なおわが国が国連に加盟をいたしまして、その場における外交もあるのでありますが、目下は、国連憲章にも認められておりまする集団安全保障から来まする、大国間の力によるところの外交もある。こういうような状態におきまして、どういう立場をとっていくかということであります。また、国連中心主義をとっていくのでありまして、ことにわが国は、安保理事会における非常任理事国に当選をいたしたのであります。従って、国連の外交というものはきわめて重要なものである。単にその一員として列しているだけではなしに、重要な発言権をわが国は持つことになったのであります。従って、外務大臣といたしましては、それに対してどういう心がまえ、どういう対処をなさろうとするのであるか。その点をお尋ねをいたしたいと思うのであります。  また、総理がアメリカに行かれまして、安全保障に関しまする日米共同委員会ができたのでありますが、政府は、この委員会を通じてどういうような期待をしておられるか、またどういう問題を処理できるか、今までにどんな実績があったか、さらに、将来どんなことを解決していく御所存であるかということを承わりたいのであります。  なお、アジアの一員としての立場におきまして、海外経済協力について伺いたいのであります。それは、先般からの御構想でありまするところのアジア開発協力基金の構想は、その後どうなっておるか、アジア諸国のこれに対しまする期待はどんな見通しであるか、また、その後アメリカ等が参加をいたしまするという点についての見通しはどうか。また現在、海外経済協力にはどのくらいの件数が出ておるか、その実績を伺いたいのであります。聞くところによりますると、外貨が少いから、積極的にやれぬという考え方が大蔵省やその他にあるということでありまするが、この問題は、わが内閣の非常な大きい外交の施策であると思うのであります。この構想は、わずか五十億円しかない、しかも、すぐには使われぬというような仕組みになっておるということでありますが、この点はわが政府の支柱をなすような大きな施策であるとわれわれは存じておるのでありますが、もっと大きな構想で始めたらどうか。その点一つ外務大臣、大蔵大臣お尋ねをいたしたいのであります。  なお、きょうの新聞を拝見をしまするというと、外務大臣は、昨晩でありますか、日韓問題につきまして金大使に会われたということでありますが、どういうようなお話があつて、どういうような事情になっておるかを伺いたい。この問題は、国民が早く、三月一日からもう交渉が始まるということで非常に期待をいたしておったのですが、どういうことで延期をされ、また、残っておりまする日本の抑留漁民を釈放されないかが、昨年岸総理が渡米をされる前に、日本は譲るだけ譲って、早く日韓関係を正常化したい、こういう考えであったのでありますが、どうもスムースにその交渉がいかなかったという点のことであります。  なお、けさ私、韓国側の新聞を見ますというと、どうも日本に釈然としておらぬ、えらく憤慨しておるようでありますが、こちらから言わせると、どうも向う様の態度も理解ができないという感じを実は深く私は持っておるのであります。李承晩ラインの問題もまだ解決しておらない。さらに、竹島などは不法占領をしておる。当然これらは私は国連及び国際司法裁判所に提起していいと思うのです。それらにつきましての御所見を伺いたいと思うのであります。  なお、農林大臣おいでになりまして、これはいろいろ御出発でお忙しい御準備等があります中を御出席いただきましたので、先に一つ質問を申し上げたいと思うのですが、今回御出発をいただくことになりましたことは、漁業担当の大臣として、まことに御苦労に存ずる次第であります。そこで、どうも、伝えられるところによりますと、ソ連の方におきましてはあるいは今回の漁業委員会における交渉をあるいは安全操業の問題にひっかけたり、あるいはオホーツク海の公海における漁業にひっかけたりしておる。けさの朝刊でありますか、見まするというと、平和条約の交渉に応ずれば平和条約の締結を希望しておる、この機会に——そういうようなことで平和条約の交渉が実現する場合には、領土問題については歯舞、色丹を返還し、南千勘帰属の問題は将来の交渉に残したまま平和条約に調印することを考慮し、漁業の安全操業等の問題についても、大幅な譲歩を用意しておるというような、これはソ連に近い消息筋がワルシャワから言っておるというようなことで、これらは、漁業問題は、日本の漁民のきわめて重大な問題なんであって、それがこういうような、岸総理は平和条約は、わが固有の領土を返還するという意思がなければ、これは交渉には応じられないということをはっきり言っておる。しかも、この漁業の問題というのは、当然純技術的な問題であるので、それを政治問題にからめてきておるというようなことは、私どもは従来のソ連のやり口から申しまして、はなはだふに落ちざるところであります。赤城農林大臣は、それらのいろいろな謀略的な政治的発言、わが公海の自由の原則を侵されるというような点について、あるいは平和条約にからませたりしておるというようなことは、まさか、これらのことは私は単なる情報であると信ずるのであって、赤城農相に御苦労いただきますということは、漁獲の問題についてのはっきりした、きぜんたる御態度で御交渉をいただくものだと確信をいたすものであります。これは、いろいろなことが伝えられるというと、国民といたしましては非常な心配をいたすわけであります。負けたりといえども日本は、無謀なる、また、横車を押してこられる国に対しましては、誠心誠意をもって交渉はいたしますけれども、それらはあくまでも払拭をしていかなければならない、かように存ずる建前から、御苦労をいただきまする赤城農相の御所信をはっきりと一つ御宣明が願いたいと思うのでございます。  さらに中共貿易の問題でございますが、この問題につきましても、きょう入手いたしました海外の新聞の、フィリピンの新聞の中に、総理は、この民間貿易協定及び覚書に調印をしてきた問題について、岸首相は五日の国会で、協定の批准は困難であるとはっきりここで言われたわけです。ところが六日の予算委員会では、本協定に政府の承認を必要とするであろうと、その説明ぶりを変えているところを見ると、総理の真意は、本協定を支持しないにしても、その事実が全く反対でもないようだというような批評を下しているのであります。なるほどこれは、六日の日のこの予算委員会における藤山外務大臣の御答弁、また林法制局長官の御答弁であるというと、中共は絶対に認めぬということは、それはわが政府のきぜんたる態度である。しかしながら、四団体に対しては承認を与えるというようなことであるならば、これは政府の責任でないというようなことのようにとれる発言があるのであります。また、けさの新聞を見まするというと、何か、政府の見解は十八日に発表をされる、そうして三団体に対する回答書という形で協定及び覚書に対する政府の見解を公表し、第四次日中貿易協定及び覚書の実施については、支持と協力を惜しむものでないということを明らかにするという新聞報道が伝えられているのでありますが、外務大臣は、この点につきまして、閣僚としてどういうふうに了承をしておられまするか。これはきわめて重大であります。私どもは、もとよりわが国の貿易がどんどん振興をいたしているということにつきましては、心からこれをこいねがうのでございまして、中共貿易の振興ということについても、民間の人たちが非常な要望をしておられる、また、その念願を達成せしめるということは、きわめて大切であると思うのでありますが、あの覚書なるものは、きょう池田君に聞きまするいうと、何とかいう言葉で、あとで、申し合せではない、何か両方で調印をしてしまってからあと話し合いをして緩和をしたということでありまするけれども、あの覚書に現われておりまする裁判権の問題であるとか、あるいは外交特権の問題でありまするとか、あるいは国旗の問題に至っては、これは断じて私どもは、中共を承認せざる今日の日本としては、とらざる、許すべからざることであると思うのでございますが、それが、従って、貿易と政治的な意味とがごっちゃになってやられていくということに関しましては、これは截然たる区別をいたさなければならぬ問題であると思うのであります。その点に関しまして外務大臣のはっきりとした一つ御所信を伺いたいと思うのであります。  さらに、この機会に伺っておきたいのでありますが、この日本のこの人口いうことはきわめて……、と思うのでございますが、その点につきまして、先般来パラグアイの問題が出ておりまして、毎年五千人づつ三十ヵ年十五万人の受け入れを受諾してきている。そこでそれについては借款を申し込んで、一年も前からきているわけなんであります。ところが、ですな、総理も外相も、昨年暮れか、本年初めでありましたか、これは記者会見でも、やると、こういうお話しでありましたけれども、どうも大蔵省は、このパラグアイは国が小さいとか、予算規模が小さいとか、外貨が少ないとかというようなことで、どうも杉調査団の参りましての御報告をお聞きになって、おわかりであるはずなのに、これに対して御協力的でない。この点につきまして私は外務、大蔵大臣の御所信を一つ伺いたいと思うのでございます。
  147. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 大谷君にお尋ね申し上げます。農林大臣に対する質疑は、まだ続きますか。
  148. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 いや、続きません。
  149. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それならば、せっかくですから、あなたの御質疑を拝聴して、とりあえず農林大臣の御所信を、いかがでしょうか。
  150. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そうですな、けっこうですね。
  151. 泉山三六

    委員長泉山三六君) では、赤城農林大臣
  152. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 本日日ソ漁業関係の政府代表という発令を受けたわけであります。でありますので、目下モスクワにおいて開かれておりまする、両国の漁業委員会における結論を得るべく、近くモスクワに出発することと相なったのであります。そこで、その交渉についてどういうような態度、あるいは方策でいくのかというお尋ねでありますが、現地に行きまして、今までの経過、あるいは感触等をよく聞きませんというと、どういうふうにこれを処理していくかということを申し上げるわけには参らないと思うのであります。ただ、原則的に今お尋ねの点などに触れて申し上げまするならば、今開かれておりまする日ソ漁業交渉というものは、一昨年の暮れに効力が発生いたしました日ソ漁業条約に基きまして、両方から委員を出し、その委員会の場において総漁獲量とか、その他いろいろこまかい点を審議決定する、こういうことに相なっているわけであります。  でありますので、私がこのたび行くということは、政治的折衝とよく言われておりまするけれども、どんな意味政治的折衝ということを私が考えているかということに触れて申し上げますならば、今お話しのように、日ソの全面的な国交をなおよく推進していくという、政治的の折衝ということもありましょう。しかし、私が行きます使命というものは、そういう意味政治折衝ではないのであります。御承知の通り日ソ漁業委員会におきましては、科学的、技術的に両方の魚類保存について検討する、こういうことになっているわけであります。そこで、日本側の科学的根拠を出しまして、漁獲量等につきまして提案もいたしておるのでありますが、ソ連側におきましても、ソ連側といたしまして、日本に与うるべき漁獲量等を提案しております。ところが、御承知の通り、昨年の漁業委員会におきましては、昨年中にその科学的根拠を出すべく、漁場その他につきまして共同調査をすることに話がまとまっておったのであります。ところが、昨年中にソ連の方の機構改革というような問題があったという理由で、共同調査を拒否されてきておつたのであります。共同調査による科学的根拠というものがありませんから、両方に通ずる科学的根拠というものを今欠いておるわけであります。そういうことでありまするから、日本側の科学的根拠、あるいはソ連側の科学的根拠というものは食い違いをいたしております。そういうことでありますならば、  共同調査をしておりませんので、政治的といいますか、この間におきまして話し合いを、科学的根拠に立ちながら、しかもその上に政治的な話し合いをする必要がある。こういう段階と認識いたしまして、行くことに相なっておるわけであります。そういうことでありまするから、漁業条約に基いて、その上に立っての政治的折衝ということに相なっておりますので、今お話しのように、全面的な平和条約を締結するとか、こういう問題は、あるいは話に出ることでありましょう。出ることでありましょうけれども、この点につきましては、まず日本の政府とソ連の政府との間においてこれを進めるというような形に相なるべきものでありまして、私が行く趣旨はそこまでを含んでおるわけではないのであります。  ただ、安全操業問題等につきましては、これは漁業に関係いたしまするし、また、安全操業につきましては、平和条約の問題等に関連を持っての先方の案が出るわけであります。でありますので、この方面の話が出まするならば、いろいろ平和条約等に関連いたしますことになるのでありますけれども、これまた漁業という線から言いまするならば、私の方でこの線につきましていろいろ話し合いをしなくちゃならぬこともあると思いまするが、しかし、これが今申し上げましたように一般的な外交、ことに平和条約という問題とのからみつきにおいての話し合いということは、私の権限外といいますか、そういう問題につきましては、私は話はし合うことがあるかもしれませんが、それをつき進めて、平和条約とか、どうとかいうことに入っていくということは、私の権限ではないと、こういうふうに考えております。  それから漁業条約問題の上に立った今の漁業交渉等におきましては、私どもこれを平和条約と結びつけて話をしておるという事態は、われわれまだ聞いておりません。しかし考え方としては、先ほど申し上げました通りであります。  なお、公海の自由、それに基く公海における漁撈ということにつきましては、これは私どもの従来からの主張であり、国際的にも当然主張すべき原則は主張しなければならぬ、こう考えております。ただ、漁業条約上の問題といたしまして、オホーツク海においてもいろいろ規制をするというようなことは、条約上の問題でありますが、これを締め出す、ここから締め出すというようなことは、これは日本全体の立場から見ましても、あるいは漁業条約上の立場から見ましても、私どもは公海自由の原則を破るということは、これは容認できない、こういう考え方を持っておるわけであります。  なお、先ほど申し上げましたように、現地に行きませんというと、今までの交渉の経過あるいは感触等がよくわかりませんので、ここであらかじめ申し上げることは差し控えさしていただきたい、こう思っております。
  153. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 大谷君に申し上げます。農林大臣は退席してもよろしゅうございますか。
  154. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 けっこうです。まことに御苦労様でした。
  155. 戸叶武

    戸叶武君 今赤城農林大臣答弁を聞いておりますと、この段階における日ソ間における交渉というのは、非常に楽観して見ておられるようでありますが、今まで平塚さんが帰ってきた経緯を見ても、非常な困難な段階にあるので、そんなのんきなことで行ったのでは、私は成功はおぼつかないと思います。日本側の漁獲量に対する日本の十四万五千トン、ソ連側の八万トンと主張するこの間の問題を、基本的な数字でもって調整するというような段階は、あるところまで、それだけでは片ずかなくなって、デッド・ロックに乗り上げかかってきておるのだろうと思います。その上の政治折衝というものは当然考慮されなければならぬ。それに対しては、総理大臣の親書を持っていくということも問題になっておりますが、今の農林大臣答弁の範囲内では平塚さんがやったことを今また繰り返しやっていくという程度に私はとどまるんじゃないかと思います。もっとはっきりした見通しを持っていかなければ、向うへ行かなければわからないというたよりない使節で、二回も三回もモスクワの間を往来してもらっては、この国際間の速度が早いときに、そんなゆうちょうな外交をやってもらっては困る。もっとはっきりした見通しの上に立った、自分の使節の役割がいかなるものであるか、そんな専門技術的なものだという答弁をすべきじゃないと思いますが、もっと政治折衝の段階におけるこの外交使節の役割がいかなるものであるかということを、明確に私は国会に表示してもらいたい。
  156. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 政治折衝をしなければならぬと思いますから、今ここでそういう折衝の方法というようなことを申し上げる段階ではない。気持の上においては今のお話の通りであります。しかしながら、漁業条約ができて、漁業委員会において仕事を進めておるのに、それを無視していくということは、せっかくできている条約を否認して先へ進むということでありますから、私は漁業条約の線というものを、どの辺まで委員会で進めてきておるのか、あるいはまた、今の政治的感触というものも、現地におきましては、相当感触につきましてもこちらよりもよほど身近かに、また、いろいろ考えている面もあるだろうと思いますから、私は何も、漁業委員会委員として行くというような気持ではありませんけれども、そういうようなことを一応聞いておきませんというと、漁業条約を締結する以前にこの問題を引き戻すということではこれはならぬ。やはりあくまでも漁業条約というものがあるので、この漁業条約の線に沿うてこの問題を今解決するといっておるのでありますから、その線を一度調べて、その上で政治折衝をもちろんやるつもりで、私は決してのんきな気持ではないのであります。ただ、この問題につきまして私の気持を申し上げまするならば、いろいろ今のお話のように切迫したこともありまするし、また、時期的にもいろいろありますが、そう悲観的に見るべきものでもないし、あるいはまた、楽観的などにはなおさら考えるべきものでもない、気持を申し上げますならば、そういう気持でありまして、お話の通り政治折衝ということで行くのですが、ここに順序というものはある、こういうふうに考えておりますので、決してあなたの今のお気持に反対の気持はありませんけれども、尋常になすべきことをなしていくというようなことで、なお強い気持をもちまして、政治折衝の上にも当っていきたいということであります。
  157. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 戸叶君、簡単にお願いいたします。
  158. 戸叶武

    戸叶武君 楽観とか悲観とかの問題じゃなくて、この問題が起きたというのは、政府側が相当なショックを受けて、心臓の強い河野大臣でさえ、総理大臣級のものを送らなければならぬといって、政治折衝を重視しているのじゃないですか。それにもかかわらず、今赤城さんが淡々と述べた心境は、何か技術的折衝の段階であるような錯覚を一般に与える印象が非常に強かったと思うのです。政府側において、総理大臣級の人間を送らなければならないとまで政治折衝を重視したなら、その政治折衝に当って、政府は、いかなる決意をもって臨むかということを国会に表明されることは大切なことであって、あるいはまた、感触はもっと敏感であって、目をあいている政治家が、現場へ行って探究しなければ問題の中心が見られないというような不感症では、私は政治折衝なんか非常に心細いと思うから、赤城農林大臣に、もっとはっきりした態度で国会に決意を示してもらいたい。
  159. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 重ねて申し上げますが、はっきりした態度で、気持でおることに別に変りはないのであります。ただ、大谷委員の御質問は、どういう折衝の方法をするのかということでありますから、それにつきましては、現地においていろいろ聞く必要がある、ここで聞いていることもありまするし、私どもは情報を持っていることもあります。そういういろいろな情報を頭に置いて、もっと大きな気持でやっていくということに別に異議があるわけでもなければ、峻拒するわけでもなければ、あるいはまた、技術的にやるという感覚をもっていくということでもないことは、先ほどから申し上げた通りでございます。
  160. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 外務大臣に続けてお尋ねをいたします。最近あなたのしきりに仰せになる、経済外交の再検討という声が盛んに聞えてくるのでありますが、総理も、また、外務大臣も、アジアの経済外交には非常な努力と熱意を重ねておられることはよく承知をしております。そこで、端的にお伺いしたいことは日本の東南アジアに対しまする経済協力というものはどこどこの国から始めるといった工合に、どの地域に重点を置いてやるのか、あるいはまた、どういう何々の物資からするというような工合に、原料資材、プラント類あるいは消費物資の交流そのものに眼目を置いて進めておるのか、その辺がきわめてあいまいでありまするので、これに対して、できるだけこの方針を明らかにしていただきたい。これは通産大臣からもお願いいたしたいと思います。それから、賠償支払いは非常に困難な中にだんだん解決ができておりますが、わが方の経済協力態勢の中にどういう地位と役割を占めておるのか、この辺を一つ確認をされていただきたいのです。それから、二、三日前の電報報道によりますると、エカフェ総会におきまして、澁澤代表が、地域内貿易促進会議を明年度日本で開きたいということを提案しておられますが、これはもちろん政府側との話し合いの上でのことと思いますが、その実現と会議の効果、その見通しを一つ伺いいたしたい。それから、三十三年度の上期の外貨予算の編成が始まるわけですが、この上期におけるこの予算の規模は、ほぼどのくらいの額に落ちつく見込みであるか、また、年間の工業生産の上昇率を四・五%と見ておるものとしますると、その目標に対しまして、どんな点にポイントを置いて輸入外貨の割当をしぼるかという点であります。その点を一つお尋ねをいたしたい。なお、この清算勘定の貿易の貸し越しがインドネシア、アルゼンチン、韓国、台湾、エジプト等々に相当額あるわけです。輸出の振興はもとより大事でありまするけれども、代金の回収ができぬというような輸出は無意味だけでなしに、そういうことになりますれば、国の非常な損失でもありまするし、それが国民の負担になる。こういうようなものが千百億円というような貸し越しがあるというようなことは、非常に国民が理解しがたいところであります。何か運営に欠陥があるのじゃないか。これらにつきましては通産省、大蔵省の間に意見の対立もあるというようなことも聞いておりますが、それらについて外務、通産、大蔵大臣からの一つ答弁をいただきたい、かように思います。
  161. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御答弁申し上げます。第一の、日本の外交の三原則、自由主義諸国の一員としての立場、またアジア人としての立場、そういうものを貫いていくということ、及び国連を中心にした外交をやる、その間に矛盾はないかという御質問かと思うのであります。私ども、日本が自由主義を樹立し、信奉しております、各人が自由を享楽する立場に立って国家の経世をやっておることは、日本の基本的な立場であります。従って、志を同じうする自由主義の立場に立っておる国々と協調して参りますことは、これは当然のことと思います。同時に、日本が地理的にも経済的にも、あるいは歴史的にも、長い問の慣習からいいましても、アジア人でありまして、思考の方法から申しましてもアジア人を抜けないこともまた事実であります。また、地理的に日本の島がアジアに属することも間違いないことであります。従って日本人の考え方、日本人の立場というものがアジアにあることも、これまた消し得ない事実なんです。従って、日本としてはそれをはっきりやはり認識して参らなければならぬと思うのであります。そうしてその立場に立ちまして、アジアの諸国の人たちと手を握って親密にしていく、またアジア人の共感を持ちますこともまた事実なんでありますが、そういう意味において、われわれはアジア人とともに手を握っていく、こういうふうに考えております。従って、それらの立場を今後国際的に表わす、また、活動していきます場合に、国連という舞台を主として使っていくということも、これはまた当然のことだと思うのでありまして、その間に矛盾はないと考えております。われわれといたしましては、国連において非常任理事国になったわけであります。非常に大きな責任を国際社会の上に持ったわけであります。申すまでもなく、国連は世界の平和を終局の目的として、十分国際間の協調を保ちながら、円満に世界の諸般の問題を片づけていくということにあるわけでありますから、従って、その中心にあります非常任理事国の一員というものは非常に大きな責任を持つと思います。国際社会に復帰いたしましてわずか二年ともならない今日でありますから、日本としてはやはりこの非常任理事国として活動をいたすためには、十分将来にわたって日本がこの活動において、国際社会の信用を得るようにして参らなければならぬと思うのであります。そういう意味からいいますれば、日本は公正な立場に立ちまして、大国といわず、小国の意図も十分正しくこれを汲み取りまして、そうして発言をしていくという態度を持って参らなければ、国際信用を高めていく、また理事国としての信用を高めていくわけに参らぬと思います。同時にアジアにおける一員であるという立場も、これはまた、先ほど申し上げましたように現実の立場であります。あるいは自由主義陣営の一員であるという立場も現実の立場なんでございまして、そういう面からアジアの人たちとも協力して参るということを努めて参りたいと、こう考えております。次に、安保委員会の問題でありますが、安保委員会につきましては、御承知のように昨年六月岸総理がアメリカに行かれまして、アイゼンハワー大統領と会合をせられました。そのときにいろいろ安全保障の問題等について、また安保条約の問題についていろいろアメリカと話をされたわけであります。その結果は、共同声明にありますように、両国はこの安保条約の運営その他についても、さしあたりハイ・レベルの構成の上において、十分力を尽して、そうしてこの運営をうまくやっていこう、また、将来にわたって両国の国民の願望に従って、安保条約をどういうふうに考え直していくかという問題等も、論議しよう、こういうことで安保委員会ができたことは御承知の通りであります。従って、今日まで五回会合をしております。アメリカとしましては、日本における立場を十分にこの委員会におきまして汲み取ることができるように、われわれとしてはこの委員会を活用し、また日本人の願望というものを、この委員会を通じてアメリカ側に伝えていくということにやって参らなければならぬと思うのであります。そういう意味において、まだ五回しか開いておりませんが、これは引き続き継続的にやっていくうちに、だんだん効果を上げてくることになり得るように持っていかなければならぬと思うのでありまして、岸・アイゼンハワー共同声明の結果として、軍隊の撤退問題等が中心になって、今日まで論議が多く費やされたのでありまして、将来も運営としては、この委員会のできました一つ意味であります両国の願望に沿っていろいろな問題を一つ考え、ことに安保条約等についても再検討するというような面で進めて参りたいと思っております。それから、アジアに対する経済協力の関係はどうであるかという御質問が、前段と後段とにまたがってあるようでありますが、アジアの日本が一員であることは申し上げた通りであります。また、アジアがいわゆる後進国であり、あるいは植民地経済から悦却したばかりの国であり、あるいはまだ完全に脱却をしていないという国々なんであります。私は、政治的の独立を完成しましたアジアが、実質的に政治的独立を達成していくのには、どうしても経済的な裏打ちがなければならぬと思うのでありまして、その意味におきまして、日本が、アジアの、これらの植民地経済から脱却しよう、またしなければならぬ、そうして自己の経済を建設しなければならぬというのに、日本は経済の上におきましては、過去八十年の経験からして若干の先輩であり、また経験も持っており、知識も持っておるわけでありますから、そういうものに対して協力をして参るということは、当然われわれがアジアの一員としてやらなければならぬ仕事だと思うのでありまして、ただ日本といたしましては、むろん日本自身の戦後におきます財政金融の関係がありますので、日本自体も相当に困難な苦しい中をたどっても、き切り開いてもきておるわけでありますので、資金的に非常に大きな援助を日本がするということは、今日むずかしい関係にあることは御承知の通りだと思います。が、しかしながら、若干でも、乏しい資金のうちでも、やはり共感をし、またともに経済を打ち立てていくという意味から言えば、ある場合には犠牲を払って、そして援助をして行かなければならぬのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、インドの経済五ヵ年計画というようなものに対するインドの資金不足に対して、日本が先般百八十億の円借款をしたのも、そういう気持であります。インドも、日本が苦しい中でそういうものを十分にやってくれたという非常に大きな感謝もあり、また、これがインドの経済建設に貢献することを認めて、インド側においても喜ばれておるようなわけであります。しかし、資金的には今申し上げましたように、余裕がないのでありますから、常時における協力としては、やはり技術的な協力、あるいは経験による、人的資源による、その経験を生かしてのサービスによる協力ということが非常に大きいことだと思うのであります。そういう意味において、今後のアジア協力をやって参らなければならぬと思うのであります。今回五十億円のアジア開発基金を積みましたのも、御承知のように、昨年、岸総理が東南アジアからアメリカ、再び東南アジアを回られて、開発基金の構想を持って出発されたのであります。これにつきましては、それぞれの国のいろいろな意見が来ております。あるいはバイラテラルの方がマルティラテラルよりいいんだという意見もあります。あるいは日本が何らかの政治的意図を持って、これをやるのではないかという誤解もあったようであります。あるいはそれぞれの国におきまして、いろいろな考え方で、いろいろな批評もありましたが、しかし、この事自体、こういう資金がアジアの経済建設に必要であるという点については、やはりアジア自体が、必ずしも十分な資金を生み出し得ない現状においては、必要だろうということは認められておるわけであります。日本としましては、そういう状態でありますから、今後これらのアジア開発基金の問題につきましても、できるだけその構想を進めて行くつもりなんでありまして、そういう意味において、日本も乏しいながらも、わずかの資金でもこれを出して、そして基金のいわゆるこんぺい糖のしんにでもなるならば、また、それによって、それをこんぺい糖のしんにして、まるいものを作って行かなければならぬという気持でやっているわけであります。これらの基金を活用し得るときが必ず近くくるのではないかと、こう考えております。日韓問題につきましては、御承知のように、日本と韓国との間のいろいろな問題がございます。戦時財産の処理の問題もあります。あるいは李ラインの問題等もあります。そして問題を過去において数回交渉をいたしておったんでありますが、そのたびに中途で決裂をするというような状態であった。これはやはり両国が、その場合に両国とも誤解のない友好、親善な、あるいは友好親善に進み得て、会談をスムースに運び得るような状況下に置かなければならぬのでありまして、その一つの大きな障害は、相互に抑留しておる者の釈放の問題であり、ことに日本側から言えば、李ラインというような不法な海に引かれました線によって、抑留漁夫が数年にわたって釈放を見ないということは、日本側としては非常な困った問題なのでありまして、これらの問題を解決しなければ日韓の正式な話し合いもできず、また、国民の人道問題として、これを解決して参らなければならぬわけであります。従って、先ほどお話のありましたように、岸総理が昨年アメリカに立たれる前に、ある程度の話を固められたのでありますが、その後進まなかったわけであります。しかるに、十二月三十一日に、これが相互釈放の協定ができたのであります。日本側といたしましては、その相互釈放の協定にできました必要の措置を、すでにとっておるのであります。がしかしながら、韓国側におきましては、会談の日ときめられました三月一日までに、抑留漁夫を二回にわたって帰してくれたのでありまするけれでも、最終的に全員を帰す段階になって参りません。私どもは友好にこの会談を開く、正式会談を開きますのにも、これらの問題が解決しておりませんことは好ましいことではないのでありますから、従って、先月二十七日に、抑留漁夫の送還について明確な意思表示をしてもらいたい、そうでなければ、三月一日の会談は延ばすより仕方がない、で、日本側としては、いつでもそれらの時期が明示され、また漁夫の送還がでごますれば、会談を開く用意を持っておるのでありまして、従って、代表団等を任命して待っておるわけであります。その後、韓国側といたしましては、今日まで、数日前まで何らの積極的なそれに対する処置を通知して参りません。そこで私は先般、金大使が帰任されましたときに、金大使に一度話をしたいからということを、また日本側の真意も伝えたいからということを申したのであります。昨日の午後三時半に会談をすることができたのでありますが、帰任以来、病気であったので会談ができなかったことは遺憾だったということを、金大使も申しておられました。私といたしましては、日韓会談を開く前に、ぜひ釈放が完全に行われ、そうして日本人も、韓国側が十分約束を守って釈放したという信頼の念と協力の気持をもって、国民がこの日韓会談に臨みたいと、こう思っておるのだから、ほかに他意があるわけでない、従って、その点について十分な一つ努力をしてもらいたいし、もう相当の期日もきておることであるし、もし技術的に船等の面があるならば、日本側は、これに対して努力をする用意があるのであって、配船等の都合その他についても、日本側はできるだけの便宜をはかるからということを申したのであります。そういうようなことで、韓国側としては、あるいはそれらの抑留漁夫の牲名その他の調査等に、だいぶ違った名前もあったりなんかして、そういうことに手間取っておるので、決して故意に引き延ばしておるのではない、それらの事情は十分、日本側も了承してもらいたいというようなことを発言しておられます。私といたしましては、金大使に対して、十分日本側の意向を京城の政府に伝えるように申したわけであります。それから中共貿易につきましては、先般、民間三団体が中共に行かれまして、第四次協定を締結して帰ってこられたのであります。(「簡にして要を得て下さい、大きな声で」と呼ぶ者あり)はい。御承知のように民間協定でありまして、まだ三団体の方から正式に、政府に対してはお話を承わっておりません。来週早々承わるような機会を得るかと思うのでありますが、中共との貿易を促進して参り、しかもそれを円滑に遂行して行くためには、できるだけ政府も協力するにやぶさかでないのであります。ただ、政府は中共を承認しないという立場ははっきりいたしておりますので、その立場に立って、この問題は、貿易が円満に遂行されるということとにらみ合せて参りたい、こう考えておるわけであります。それから移民の問題につきましては、移民政策全般を検討し、今後、移民という問題、移民の行政を促進して参らなければならぬのであります。ことに日本が大きな、農村におきましても、あるいは工業におきましても、産業の転換というような問題を、東南アジアなり、あるいは今日の新しい科学の発達のために考えて参らなければならぬとすれば、あるいは農村における二、三男対策とか、都市における過剰な中小企業者を海外に出すとか、いろいろな移民も、過去の移民行政にさらにプラスされてくるわけでありまして、こういう問題については、大きくこの際再検討をして、そして日本の移民政策というものを十分強力に進めて参る必要があろうと思います。ただいまお話のありました。パラグァイの問題でありますが、パラグァイは、かねて日本に対して、移民の問題を提起しておりますのとあわせて、商船隊を作って、そしてパラグァイにおける河川の航行を自国船によってやりたい、現在、隣国の船によってやっておりますものを自国船でやりたい、それには、日本の協力を得て、河川用の船を作りたい、また、河川におけるドックを作りたいという希望があるわけであります。そういう希望を日本が十分くみ入れてくれるならば、パラグァイとしても、先ほどお話のありましたように、毎年五千人で、三十年間に十五万人ぐらいな受け入れは可能であろうという話であるのであります。これは、移民政策を推進する上におきまして、日本の国内態勢を十分検討することも必要でありますが、同時に、受入地側の希望なり、あるいは受入適地というものがあることが必要なんでありまして、そういう際でありますから、パラグァイの問題は相当大きく検討されて、しかるべきだと思うのであります。従って、昨年若干の調査団の予算がつきましたので、昨年の秋、それぞれ船舶その他の専門家を加えまして、杉氏が団長になってパラグァイに参ったわけであります。その結果として、今申し上げたような船の面についても、それ自体において、パラグァイ自身が外国船舶に払っていた運賃というもの、しかも、それは外国船舶が独占的にしていた航路なんであるから、それが自国船でやれるようになれば、それだけ非常に大幅に外貨の節約にもなるというような見地から、いろいろなコマーシャル・べースによる採算も、ある程度とれるのではないかという見通しもついたわけであります。で、調査団が帰って以来、われわれとしては、こういう問題を将来ともに推進して行きますために、現在、大蔵省といろいろと話し合いをいたしておるのであります。しかしながら、何と申しても、各方面からの経済協力という問題がたくさんあるわけでありますから、そういうものとも、にらみ合して参らなければなりませんけれども、移民政策の非常に大きな今日の必要性から考えましても、パラグァイ問題は重点的にこれを取り上げて、現実に進めて行くことが必要だと考えて、ただいま相談をいたしておるわけであります。なお、東南アジアに対する経済外交の再検討をする必要がないか、協力の方法はどういうことにあるのかというような点で、賠償における経済協力を含めての御質問であるようであります。ビルマ、フィリピン、今回のインドネシアの賠償に、それぞれ民間経済協力の取りきめができております。これらの推進に、これらの現状から申しますと、率直に申して、あまり実績をあげておらぬのであります。実績をあげておりません点につきましては、いろいろな点があるのでありまして、むろん、日本の事業家、商社等の国外における投資活動、あるいは合弁事業等に対する協力活動の経験も薄いということもあります。あるいはそれぞれの国におきます外貨事情のために、協力関係を打ち立てても、それらがコマーシャル・べースの上にうまく乗るのかどうか、また、乗った場合にでも、そういうものに対する果実の送金等というような、いろいろな技術的問題も、ただいま申し上げたような日本の事業家の協力に対する心持とあわせて、そういう問題があるわけであります。そういうようなことで、必ずしもこれは活発に進んでおりません。がしかしながら、やはり日本がアジアの経済建設に寄与する以上は、日本としても、しかもこういう経済協力の協定もできていることであります。たとえそれが民間の協定でありましょうとも、できるだけ政府もあっせんをして、それが成り立つように、便宜な方法をはかって行くことは当然でありまして、そういう面については、政府は責任を持つ立場にはおりませんけれども、あっせん、仲介の労等をとって、そうして、そういうものができ上って行くように努力をして参らなければならぬと思うのであります。次に、エカフェの総会を来年日本に招致するということを提唱して、果して招致できるか。これは今後の問題でありますので、エカフェ関係各国の協力を求めなければならぬわけでありますが、日本において国際会議を開きますことは、特に東南アジア各国の人たちも、日本を総会あるいはいろいろな理事会等の開催国にすることは、喜んでいる国々が多いように思うのでありまして、私どもは、できるだけこれが実現を見るように努力をして参りたいと思っております。なお、外貨予算につきましては、大蔵大臣、通産大臣からお話があると思います。焦げつき債権でありますが、私の関係だけを申し上げておきたいと思います。現在、焦げつき債権のありますものは、韓国に四千七百万ドル、エジプトに千二百万ドルでありましたか、それからアルゼンチンの五千五百万ドルは、すでに三分五厘の利息でもって十年賦で、昨年、年賦償還の第一回を受けております。エジプトの方は、これはスエズの関係でできたものでありまして、エジプト綿と米とを買えば、スイミングリーになるようであります。また、台湾にあります二千三百万ドルでしたか、これも、台湾から米及び砂糖の輸入ができて参りますと、スイミングリーになってくる予定でありますので、そう心配はないと思います。ただ、残りますものは、韓国に対する四千七百万ドル、これは正式会談において、日本側としては十分日本の主張を貫いて行きたい、こう思います。
  162. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 特に私から御答弁申し上げる点だけについて簡単に申し上げます。一つは、パラグァイから申し入れのあった借款につきまして、大蔵当局は反対をしておるかのような御質疑でありますが、反対はいたしておりません。ただ、しかし、慎重な態度をとっておるということであります。と申しますのは、この借款の申し入れが、船が一そう四十三億要るこの条件は必ずしも商業ベースではありません。そうして他方、毎年五千人の移民で三十ヵ年、これは長いものです。三十ヵ年。こういうふうなのが大体の骨子であります。ところが私どもは、むろん移民もけっこうであります。また、ある程度の借款ということも、別にどうというのじゃありません。しかし問題は、やはりこれは百六十万の人口を持っておる程度の国であります。むろん外貨もきわめて保有も少い。また、対外債務がどういうふうにあるか、そういう点も明確でありません。そしてまた、第一、五千人毎年移民を送る果して計画を持っているのか、これが私は一番問題なんです。移民を目的にして、移民ということを中心として借款も考える。ところが、年五千人といいながら、五千人の移民が果して行けるのか、そういう準備計画があるのか、そういう点がやはり私はつまびらかにいたしませんと、いかぬ。従来の実績からいうと、この国にはさほどないのですね、移民が。三十三年度の計画にしても、千八百人ということになっております。従来の実績は大よそ千人、こういう状況下にある。これはむろん五倍にすることも可能であるかもしれません。よほど移民計画というものを調べていかなければならない。それに見合っての借款でなければならぬ。しかも、借款が決して商業べースとはいえないとすれば、やはり慎重な態度で調査を十分して、そして所期の目的を達成するという見込みがやはり必要である。こういうのがいわゆる慎重なるゆえんであります。そうしてやはり、私はこういうものについて申し上げておくべきことは、大蔵省がいかにも、外国にいろいろ借款をやるとかおみやげを持っていくことに対して、議論があるように言うのですが、これはやはり日本の国力というものを考えてもらわなければならぬ。もう賠償は今からほんとうに支払う、ほんとうにフルに実施する。賠償一つにしても、対外の経済援助、いわゆる経済協力というものが、およそ三億ドルないし四億ドルというような巨額なものがやはり約束されておる。フィリピンにしても、あるいは今回のインドネシアにしても、あるいはまたビルマにしても、やはり約束をして出す。そのかわり、これはもう貸すということは愉快に違いありませんが、ただ国力が許せばけっこうですけれども、しかし、日本の国力並びに日本の国自体をやはり私は考えていかなければならない。それほど日本の国が整っておるとはいえません。日本の国の道一つとっても、むしろ東南アジアの国よりも日本の道がよほど悪いのではないか。そして国際収支にしても、なかなかそんなに余力がある国でもない。ですから、私は、まあ今までのところは、国民所得等の関係から見ていいと思う。しかし、今後はこれは一つ厳重にやってもらう。私はそういう意味で、非常にきびしい態度をとるということを申し上げておきます。それからもう一つは、外貨の今度の上半期の外貨予算についてどういうふうに考えるか。これは私どもとしましては大体、来年度の経済計画ですが、いわゆる日本経済の伸びが三%、それから工業生産において四・五%、輸出において三十一億五千万ドル、こういう物資需給関係考えて、これを可能ならしむるようにやはり輸入というものを考えていきたい、かように考える。計画といたしましては、三十一億五千千万ドルの輸出に対して三十二億四千万ドルが輸入計画です。そうしてみますと、総じて大体日本の貿易は下期に輸入が季節的に多いと考えておりますので、大よそ半分よりも若干少いというようなものが具体的にあるのではなかろうか、かように考えておる次第です。それからもう一つ、私が御答弁申し上げるべきことは、例のオープン・アカウントのこっちの貸し越し残高の件について、これはもうしばしば申し上げましたように、総額において、インドネシアの一億七千七百万ドルを加えて、大よそ三億ドルある。こういうものがどうして、これはまあいろいろな条件もありましょうが、総じて清算取引、このオープン・アカウントという制度自体に私はやはり欠陥がある。これはスウィングというものも一定のスウィングに強化するまでは、やはり支払いをセーブしていく、あるいはそういうもののないときはインドネシア等においては年一回の決済を求める、こういうような形になっておる。ある期間において相手方が急に輸入する、なに、これは決済するのだという態度で急に輸入して、事実決済をやらぬということになれば、突然として大きなしりが現われるわけであります。それが結局、従来の例でいえば、清算勘定の貸方残高として残っておるということになっておるわけであります。そういう意味におきまして、私どもは大体において、原則としてオープン・アカウントの取引は廃止をする。もと十六ありましたのですが、今日では、近いうちに五つに減ります。やむを得ないもの以外はこれをやめていく、こういう考えでいたしております。私は、そういうような勘定的な、制度的なことで一応御説明申し上げたのですが、なおまた、いろいろともう少し実質的なことは、通産大臣からお話があると思います。
  163. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間もだいぶ経過いたしましたから、委員会の状況にかんがみまして、簡潔にお願いいたします。
  164. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 経済外交また経済協力の推進ということについての具体的な考え方というお話でありますが、ただいま外務大臣からもお話がありましたように、賠償と相並んで経済協力をやっていくというような、両面を持っておるわけであります。しかし、私ども考えておりますのは、何としましても、アジアを開発していかなければ今後の日本の輸出というものは伸びない。また、従来は、御承知のように、日本の貿易構造は繊維品が三分の一以上を占めておったのであります。もちろん繊維品もさらにふやしていかなければなりませんが、結局今後はプラント輸出、重工業品なり化学工業品を出していかなければならぬ、こういう立場にありますのと、逆に、今後鉄鉱石あるいは石油資源、またボーキサイト等の鉱石等の原料資源を輸入しなければならぬ、こういう関係にあるのであります。そういう点の結びつきを考えていきますと、インドの鉄鉱石の開発、これはもちろん運輸、輸送等の開発をやらなければなりません。また、パキスタン等においては、将来綿花を入れます関係からいたしましても、肥料工業とかそういうような問題を考えていかなければならない。インドネシアにつきましても、ボーキサイトあるいは石油というような資源の開発を考えていかなければならぬと思うのであります。しかし、そればかりではなしに、ただいま考えておりますのは、やはり向うに中小企業も育成していくということでありまして、来年度の予算としましては、西ベンガルに技術センターを設けまして、そして中小企業を育成していくかたわら、それに必要な機械類等も今後輸出するような結びつきを考えていく。あるいはマライ等におきましても、自転車その他のセンターをこしらえていく。こういうような計画で考えておるのであります。それにつきましては、やはり経済協力あるいは経済外交の推進ということが肝心だと思うのであります。  それから、次のお尋ねの外貨予算につきましては、ただいま大蔵大臣のお話の通りに、三十一億五千万ドルの輸出、それから三%の経済成長率、さらに国際収支の黒字一億五千万ドルという点につきましても、私どもはあくまでやっていかなければならぬと思っております。ただいまの見通しでいいますと、国際収支の黒字につきましては、上期等の関係から言いますと十分まあ見込みがついておるのであります。と申しましても、輸入をもちろんどんどんやっていくという状態ではありません。従来と同じような考え方をもっていきたいと思います。ただ、輸入につきましては、御承知のように、あまりしぼりますと国内物価が上る、そういうような関係がありまして、この前の下期の外貨予算につきましては非常に苦しんだのであります。ところが、今回につきましては、総ワクの問題としては、ほとんど大蔵省も通産省もそう意見は違っておりません。前回の外貨予算と今回の予算の非常に違います点は、もちろん物価を上げてはなりませんが、反面において下り過ぎておるというようなものがあります。まあ御承知のように、繊維品等につきましては、むしろ原綿、原毛の輸入を押えてもらいたいと、また、押えなければ価格が下り過ぎて困っておる。これは現実だと思います。従って物によりましては——鉄鋼も同様な現象にあるわけであります。物価をまた維持しますと言いますと語弊がありますが、あまり下り過ぎておりますもの、また、滞貨のできておりますものにつきましては極力抑えていく、こういう関係になると思うのであります。個々の商品についてよほど調整していかなければならぬという点が、前の外貨予算と非常に違っておる点だと思います。もちろん、私どもも国際収支の黒字を極力出していこうというでの努力をいたしておりますが、ただいま申し上げましたように、だいぶ事情が変りまして、一面においては輸入を押えなければならぬというような面もあることが、今回の、この次に組みます予算の非常に違った特色だと思います。もちろん、まだ閣僚審議会も開いておりませんので、詳細につきまして申し上げる段階ではありませんが、ただ、そういう特色を持っておるということだけ申し上げておきます。  さらにオープン・アカウントの問題、オープン・アカウントにつきましては、私非常に歴史的な時の経過ということを考えていかなければなりませんので、お互いに外貨を持っておりません間におきましては、極力外貨を節約する、こういう意味で清算勘定が一時は十六国にも開かれた、こういう情勢であります。しかし、それがだんだん整理されて参ることはこれは当然なことであります。ただ、清算勘定そのものが必ずしも悪いとも言えないのであります。結局、向うから十分物資の輸入ができるという見込みがあります地域におきましては、そうして向うも外貨がない、こちらもできるだけ外貨を節約していかなければならない、こういう状況にあります場合には、オープン・アカウントも必ずしも悪いことではありません。まあわずかな国におきましては、日本が入超の国もあるわけでございます。また、エジプトにおきましては、御承知のように、これは去年が例のスエズ運河の問題で日本から輸入ができなかったわけです。従って、ああいうような貸し越しになって参りましたが、今年は十分輸入をするようなことができますので、決して焦げつきではなしに、そういう時の事情によって貸し越しになったということでありますので、綿花なり米を入れましたら、十分先ほどのお話のように、スイングの中に入ってくるというふうに考えておるのであります。その他の国につきましても、ただ単に政治的に考えますと、まあ時に焦げつきの問題が起ってくるのであります。純粋に経済的に考えていけば、むしろそれによってお互いに貿易を拡大することができる、こういうような場合もありますので、その国、その国によって、また、そのとき、そのときの事情によって判断をしていかなければならぬと思うのでありますが、大勢としては私どもも整理していくべきだ、ことに日本もだんだん外貨がふえて参りますと、必ずしもそうあわてて清算勘定でやっていかなければならぬというほどのことでもないのであります。今後十分それらの具体的なことを検討いたしまして、そうして善処して参りたいと、かように考えているのであります。ただいま焦げつきと思われますのは、韓国なり、アルゼンチンという二ヵ国で、その他におきましては、これは輸出入のバランスがぴっちりいくというわけには参りませんが、貸し越し、あるいは借り越しになる場合にすぎないので、焦げつきとはわれわれ考えておりません。
  165. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 大へん御迷惑ですが、もうちょっと持ち時間がありますから、簡単明瞭に一つお尋ねをいたしますから、大蔵大臣にですな。この日本の金利が高い、従って、金融機関がまあ相当調子がいいわけなんです。従って、これは国民納得しがたいので、政府は貸し出しの金利を引き下げる強力な措置を考えておられぬか。  それから、たな上げ財産の運用の問題です。これはまあ財布の中にどうっとおためになったわけだが、これを三十三年度中の適当な時期において、補正予算を編成して、緊要の歳出に充る御意思はないかどうかという二点を一つお尋ねいたします。
  166. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) この金利の点ですが、日本の今日の金利が国際水準に比べまして高いということは、これはもういなめないと思います。がしかしながら、この金利の高い安いというのは、銀行の収益がどうとかいうようなことから考えらるべきでないので、やはりこの金融の調整といいますか、あるいはまた、この資金の需給関係から生じてくる、それをまあ政策的にやはり調整をする、こういう関係になると思います。従いまして、たとえば景気を下げるというようなときには、どうしても高金利、金利をやはり高目に持っていく。不景気がくれば、やはり資金の需要も減りますから、需給関係から見ても金利を下げる、こういうふうな行き方にならざるを得ない、かようにまあ考えております。ただお説のように、今日の日本の金利が国際水準に比べて高いということはお説の通りであります。  さらにもう一つ、保留した経済基盤強化のための資金の点でありますが、これはもうたびたび御説明申し上げましたように、日本の経済を今日の事態において刺激しないような財政方針から、これを保留いたしたのであります。これをいつ使うかということは、要するに、日本の経済の今後の推移で、これを使うべきときはもちろん国会の御審議を仰ぐ、かようになるわけでありますが、今のところ、いつ使うかという見通しはありません。少くとも三十三年にはなかなか使えないのじゃないかと、かように考えております。
  167. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 通産大臣に、中小企業団体法の問題でお尋ねをいたします。いまこのあと半月ですが、政令等、この法律の施行が完全にいくかどうか。それから、中小企業者は自分の入っておりまする業種が商工組合ができるかどうかという点を、まあ非常に心配しているわけなんです。その点についての、これは一つしっかりした御答弁をお願いしたい。それから信用保険公庫です。これはまあ八十五億政府出費が見込まれるのですが、これで信用力の不足の中小企業者の信用補完ということができて、金融難打開に相当役に立つかどうか。それから商工中金の問題ですが、これは三十億の債券引き受けだけであるようでありますが、これはこの資金運用部の資金を直接融資できるというような措置のお考えはないかどうか、これだけお尋ねしたい。
  168. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 中小企業団体法につきましては、四月一日から施行をする考えで、もう大体、政令につきましては、法制局の審議も済まして、日ならずして出せると思っております。従いまして、四月一日から実施しょう、かように考えておるのでありますが、御承知のように、法律の建前は、その施行になりましてから、安定審議会を設けまして、そしてそこに基準をかけますので、その間多少ブランクができることだけは、どうも申しわけないことでありますが、法律の建前がそういうことになっておりますので、速急に周知して、皆さんの不況要件がどういうものであるかということについて、十分周知をさせる考えでおりますから、多少ブランクができますことは法律の建前上やむを得ないのであります。できるだけ安定審議会も四月一日の発足ということで準備を進めております。そう御迷惑はかけぬつもりでありますが、そういう状態であります。それから第二の信用保険公庫につきましては、御承知のように八十五億の出資に、従来の基金の二十二億円を入れまして、百七億円の基金を持った公庫ができるわけであります。そうしておそらく三百五十億以上の信用の保証限度を広げることが本年度できると思います。本年はその基金の中で、二十億を地方の信用保証協会に貸付をいたしますので、しかし来年、再来年になりましたら、だんだんその貸付もふやしまして、もっと拡大をいたしますとともに、御承知のように包括保険制度を全面的に広げていこう、こういう建前になっております。包括保険になって参りましたら、信用保証協会というものは非常に強固になりますので、銀行も金利を下げようじゃないか、こういう機運も出ておりますので、われわれも指導をいたしまして、極力包括保険によって保証料も下げる、また金利も下げる、こういうことになっていきますと、非常に大きな役割を果すようになる、かように確信をいたしておるのであります。それから、お尋ねの商工中金につきましては、本年は三十億ということで預金部へ引き受けをしていただいておるのでありますが、御承知のように、昨年は貸出運用額が千二百億円、来年度は千五百三十億ということに三百三十億の運用額がふえる、こういう計算になっておるのであります。しかし、これは御承知のように、別に運用計画その他によらなくても、債券の引き受けは増していただけますので、そのときそのときの情勢に応じてその引き受けをしていただこう、かように考えておるのであります。ただ、出資という問題になりますと、これはほかの公庫等の関係がありますので、大蔵省において難色がありますことは、すでに御承知だと思っております。われわれも、いろいろ工夫をして考えたいと思っておるのでありますが、ただいまのところ、実現をいたしておらぬような次第でございます。
  169. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 文部大臣お尋ねします。第一点は、教育基本法を改正なさる御意思がないか。ということは、それはあの制定の経緯から見ましても、先ほども大臣のお話がありました民族意識の高揚、祖国観念の涵養という点については、教育基本法に表われておりません。従って、その御所見。それから、道徳教育は非常にけっこうであります。ぜひおやりを願いたいと思うのであります。それから、勤務評定というものは、勤務条件に入るかどうか。もし入らぬとすれば、職員団体はこの問題について交渉権を持たぬのじゃないか、かように思います。なお、日教組が全国的に展開している勤務評定反対闘争に対する政府の見解をお尋ねをいたします。
  170. 松永東

    国務大臣松永東君) お答えいたします。第一のお尋ね教育基本法を改正する意思はないかということでございます。なるほど、この基本法の中には、民族意識とか、あるいは愛国心の涵養というものについての積極的な規定は盛り込まれておりません。けれども、こうした問題は、この法律を改正いたしませんでも、実施の面から相当やはりその内容の改善、内容の充実を施していけると思います。従って、それでやっていくことにちっとも差しつかえないというふうに考えております。それからその次は、道徳教育の問題であります。これは先ほど来問題になっておりましたのでございますが、教育課程審議会の答申に基いて実施いたしたいというふうに考えておるわけであります。それは、先ほども申し上げました通り、大体四月の新学期からぜひ一つやっていきたいというふうに考えまして、その答申を待っているわけであります。なお、各国の道徳教育の実情につきましては、いろいろ西欧諸国では宗教それ自体をとって道徳教育をしているようでございます。しかし、御承知の通り、わが国ではそこまで普遍的な宗教がございませんので、そうした面もやはり道徳教育内容として取り入れていきたいというふうに考えておる次第でございます。その次の御質問は、勤務評定についてであったと思います。これは勤務評定は勤務条件の中に入っておりません。勤務条件の中には入っておりませんので、こうした問題について組合がいろいろ騒ぐということを遺憾なことだと思っておるのであります。しかし、何とかそう大きな騒ぎにならないように一つ解決をしたいと念願いたしております。ただしかし、お考えおきを願いたいことは、この問題は、文部省が主導役ではございません。御承知の通り、都道府県の委員会が主としてこの問題を取り扱っておるのであります。私ども文部省関係といたしましては、いわゆる脇役でございます。指導、協助をするというような程度でございます。しかしながら、この問題については、すでに法律も規定してあるところでございますし、その法律に基いてそれぞれ都道府県の教育委員会で実施しようとしておられるところでございますから、これはぜひ一つ実施してもらいたいというふうにわれわれは念願しておる次第でございます。
  171. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それから先ほどもお話がありましたが、日本の自衛力の問題です。防衛の科学技術が非常に進んできている、それに応じてどう考えていらっしゃるか。また、こういう人工衛星、ミサイル時代において、防衛力の整備計画はどう対処なさるのか。また、防衛庁の国防の基本観念が非常に不明確ではないか、従って訓練目標を失って士気が高揚しておらぬ、またPRも足らぬのじゃないかということで、所要の法律を改正するような意思はないかという点。それから、それに関連をしまして、私は、日本の今日の状態は、機密保護法もなければ、防牒法もなければ、あっぱっぱの状態で、全く私は治安の点からこんな国は世界中どこにもないと思う。それらの点につきまして、私は、そういう点からの所管関係当局の一つ、この際はっきりとそういう治安情勢等についての御所見を承わりたい。その対策を、お話しおきを願いたい、かように思います。
  172. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。第一点は、こういった軍事情勢、科学の進歩に応じて、自衛隊の新装備、また科学研究がどうなっておるかということであったと思います。これは御承知のように、防衛庁におきましても、数年来科学研究、すなわち技術研究所を置きまして、相当研究を進めてきたのでございます。しかしながら、最近の情勢に応じまして、特に来年度予算においては、これに要する経費も相当多額を計上しました。また陸、海、空自衛隊の関係においても、装備の改善ということで、これらの研究開発の経費を計上いたしております。全体といたしましては、技研の、技術研究所の予算は全体が十九億一千百万円を計上いたしております。なお、そのうちで特に人件費等を除きまして、科学技術の研究、これは種々の項目がございます。それと陸、海、空の自衛隊関係で装備の研究というものと、技研等にやらすものを合わせますれば、大体二十四億円ばかりが来年度において、これらの経費に充当されるわけでございます。これを十分活用いたしたいと思います。しかしながら、技術の研究ということは、一朝一夕においてなされるものではございません。今後はますますこの方面に重点を置いてやりたいと思います。第二点は、自衛隊の士気の問題であったと思います。これは非常に大事なことでございまして、われわれ非常に苦心をいたしておるところでございます。第一には、自分の国は自分で守るのだという意識が最も大切であり、またそれに即応した能力を身につけるということが大事である、こういった意味において、各方面に一貫した訓練を促進して参っておるわけでございます。何分にも、まだ自衛隊創設以来年所を経ないものでございますが、必ずや御期待に沿うようにやりたいと思います。これにつきましては、一般国民の防衛意識の高揚をはかるということが必要かと思います。この点につきまして、お話のありましたような、いわゆる一般の防衛意識の普及といったようなことについては、来年度の予算においても相当の経費の増額を見たわけでございまして、この点にさらに一そう意を用いたいと、こう考えております。  なおまた、御質問の中にありました機密保持の問題であったと思います。これは法務大臣からも一般的にお答えがあると思いまするが、防衛関係から申しますと、防衛の機密の保持ということは、あらゆる角度からいってその必要を感じておるわけでございます。特に技術面の開発その他においても、必要を感じておるわけでございます。すでに防衛機密法が一部に行われ、適用されておるものがございますが、これは十分だとは申し上げかねるようでございます。しかし、この問題は、あらゆる面から検討を要する問題でございまして、この問題についてはあらゆる角度から慎重なる研究をいたしたいといって、目下せっかく検討中の段階でございます。
  173. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連して。まず、文部大臣伺いますが、道徳教育の特設時間を設けたのは、独立教科を作ろうとしたが、免許状の関係と教員の養成等の関連もあつて、特設時間に変ったように私は経緯を判断いたしております。従って、伺いたいことは、今後独立教科として道徳教育をやるということには、将来絶対にならないということであるのか。この点については、文部大臣と、文部大臣がかわった場合には事務当局の見解も必要ですから、念のために初中局長答弁求めておきます。  それから、関連して防衛庁長官に伺いますが、私は、防衛大学の学生がダンス・パーティをやる、ダンスをやるというようなことは否定いたしません。しかし、ただいま大谷委員から士気の関係の質疑があったわけですが、私はそれで確めるのですが、防衛大学の学生は、普通の大学生に比べると、ずいぶんと優遇せられております。最近ダンス・パーティをやったのに、どうも国費であの会は催されたのではないかということを巷間で聞くのですが、あのダンス・パーティの費用は防衛庁予算の中から出されたものであるか、学生のポケット・マネーから出たものか、この際明確にしておいていただきたい。  それからもう一点は、ただいまの質疑に関連するわけですが、近代的な兵器をアメリカから日本に貸与するということと関連して、軍事機密保護をもう少し充実してほしいというような要請が、安保委員会、日米合同委員会等を通じてアメリカから要請があっているのか、あっていないのか、その点明確にしていただきたいと思います。  以上です。
  174. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました、つまり道徳教育の独立時間をとる、そうしてそれは独立科目になるのか、こういうことでございます。そうしてそれは永続性があるのか。永続性と申し上げてどうですか、つまり文部大臣が変りでもしたら変えるか、こういうような御質問の要旨だったと思います。しかし、私ども考え方としては、これは変えないでもいい、変らぬようにしたい。それは、今の学校施行規則ですか、これを改正して、そうしてずっとこれを永続性を持たせるようにしたいというふうに考えております。
  175. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと……。
  176. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単に願います。
  177. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちょっと、質問の趣旨がわかっていない。質問の趣旨は、道徳教育をやる場合に、施行規則で、教科はさっき二種類あると言ったのですが、一種類にして、教科としてそれを教えるのに免許状が必要であるとして、そうしてその教科をして一、二、三、四と評価をするような行き方のと、それからきょうあなた方が説明されたように、特設時間でやつて、普通の教科とは認めない。従って、一、二、三、四、五というような評価もしない、こういう行き方をきょう表明されたわけですね。ところが、教員免許状と教員養成計画と関連がある関連上、途中から変った、こういうふうに私は判断している。だから、きょうあなた方が御説明されたようにずっと一貫するのか、将来絶対こういうことがないということはきよう確約できるのか、その点を明確にしてもらいたいというわけです。
  178. 松永東

    国務大臣松永東君) 仰せ通り、これはずっと一貫していくつもりでございます。それで一貫していって差しつかえのないように、施行規則あたりを変えるつもりであります。そういうふうな考えでございます。
  179. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 内藤局長、どうですか。
  180. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ただいまの御質問でございますが、道徳に関する従来の教科と違った意味の教科として規制いたしたい。なお、評価につきましては、従来のような五、四、三、二、一とか、あるいは優、良、可というような評価はとらないで、子供の特性をよく判断し、またこれを育成するような特別の指導をいたしたい、かように考えております。そういう趣旨でございますので、この点は、将来も、このことを変える考えはございません。従って、今御指摘になりました教員の免許につきましても、道徳教育というのは、教員としてどなたでも教えていただかなければならぬ基本的な性格であると考えておりますので、道徳教育のための特別の免許状を考えておりません。
  181. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。防衛大学の学生の昨年末のダンス。パーティについてお尋ねがございました。このダンス・パーティは、学生二百名が参加して、会費二百五十円ずつ自分のポケット・マネーを出しております。全体として経費は七万円ぐらいでございました。これは、ダンス・パーティのために特に国家の経費というか、防衛庁の経費、あるいは大学の経費を一切支出いたしておりません。このパーティにおいては茶、菓子等を出しまして、この会費でまかなったということでございまして、きわめて質素なパーティであったということを私は信じております。  次の問題でございますが、日米安保委員会において、機密保護法といいますか、そういったような問題が出たかという御質問でございましたが、これは今まで四回、五回いたしましたが、そういう話が出たことはございません。
  182. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私の質問に対して、関係大臣が二人……。
  183. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 治安についてのお尋ねがございましたが、この問題は目下のところ、一応表面的には平穏の様相を呈しておりますが、これはしかし、決して安心してよろしいということを意味しているわけではございません。法務当局といたしましては、警察と協力をいたしまして、視察、警戒を厳重にして、あやまちなきを期している次第でございます。   なお、防諜関係の立法につきまして  は、防衛庁長官のお答えのありました通りでございまして、今日断片的にはいろいろの法規がございますけれども、防諜のために現行法だけで足りるか、あるいは新らしく立法をする必要があるかということにつきましては、法務省におきましても調査研究をいたしているところでございますが、まだ結論に達しておりません。
  184. 正力松太郎

    国務大臣正力松太郎君) ただいま法務大臣が説明されたことに大体尽きると思いますが、国家の治安につきましては、申し上げるまでもなく、警察といたしましては、違法行為の発生した場合に十分な処置を講ずることにいたしております。従って、たとえていいますると、事件が発生するおそれのあるものにつきましては、諜報関係を密にして事前に十分情報をとりまして、これに対する万全の対策を講じております。
  185. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 これは大へん皆さんに御迷惑をかけて恐縮でございます。  なお、地方財政の問題について郡長官、それから母子健康センター、非常にけっこうなことですが、その問題について御質問を申し上げたいと思いましたが、与党の劔木理事から、もうやめなくちゃだめだということですから、いずれかの機会に質疑を続行いたしたいと思います。
  186. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 明日は午前十時から委員会を開くこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時十五分散会