○
国務大臣(
唐澤俊樹君)
売春汚職その他いわゆる
汚職というものが
龍頭蛇尾に終っているのではないかというお
疑いでの
お尋ねと存じます。いろいろの
汚職が
新聞紙その他で伝えられまする際に、それが予想のように発展したとかしないとかいうことは、これはいろいろ
世上でうわさされまするけれ
ども、
検察当局といたしましては、
法律違反の
証拠がございますれば、どこまでもその
証拠を追うて
訴追手続をいたしておるのでございまして、もし何かたとえば
売春汚職等につきましてこれを発展させないような
工作でもしたかというお
疑いでの
お尋ねでございますれば、さようなことは絶対にございません。
検察当局といたしましては、
売春関係について
汚職の
疑い……ある端緒を得まして、それからたぐり寄せまして、
証拠のあらん限りは
検察事務を
厳正中立に行なった次第でございます。
検察当局といたしまして、それがある
程度でとどまるか、あるいは非常に発展するか、そういうことはわかりません。ただ調べて参りまして、
証拠のあらん限りこれを追及いたします。もちろんただ
世上にうわさがあるとか、あるいは
新聞紙に書かれたというようなことで人を取り調べますことは、これは
人権じゅうりんになりますから、慎まなければなりません。
人権じゅうりんにならない、法の命ずる
範囲内におきまして、そうして
法律の
違反がございますれば、どこまでもこれを追及して参るわけでございまして、もし何かの
工作で
売春汚職その他について手控えをしたというようなお
疑いでございますれば、さようなことは絶対にございませんということを、私が責任をもって明言をいたします。
それから次に
あっせん収賄罪についての
お尋ねでございました。これはすでに
総理から
お答えのあったことにつきておるかと思いますが、
事務を担当いたしておりまする私の
立場から、やや
事務的になりまするけれ
ども御説明申し上げまして御了解を得たいと思いますが、これは御
承知のように、
あっせん収賄罪の
規定はまあ非常に
内容のむずかしい
規定でございまして、
古来わが国の
学者、
専門家の間にも非常に
論議のある問題でございます。それからまた
各国の
立法例を見ましてもまちまちでございます。ある国もあればない国もございます。
わが国の
刑法の
母法といわれております
ドイツの
刑法ではまだこの
規定がございません。あの理屈っぽい
ドイツ人でございますから、数十年にわたってこの
あっせん収賄罪を
規定するの
可否、
規定すればどの
程度にこれを
規定するかということについて
論議をかわして参ったんですけれ
ども、まだ成文化しておりません。それほどに非常に
議論のある
法律でございまして、この
法律を必要とする
意見の側から申しますれば、なるべく広く強く
規定すべきであると、こういう
考えが出て参りますが、また一方それと
反対の
立場に立ちまして、このあっせん収賄的の行為は
社会悪といい得るかもしれぬけれ
ども、それを取り締るために
法律を作ると、そうすると、
公務員の善良なる
活動がほとんど抑制されてしまって、その副作用の方が大きい。だからこういう
法律は作るべきでないという
反対意見もございます。かりに作りましても、まずきわめて限局している
範囲、そうして
法律の解釈上
疑いのないような字句をもって
規定すべきであるというような、まあ両方の極端な
考えがあるのでございます。その間に立ちましてだんだんとこの
社会情勢、
政治情勢をかんがみられて、
岸総理とされましては、どうしても今日
汚職追放という観点から、あっせん収賄的の
規定をおく必要があるのじゃないかというお
考えになられたのでございまして、私といたしましては、大体にそれを
立法するという御趣旨に基きまして、案は私独自の
考えで作っております。先ほど
総理からの
お答えのありましたように、私
どものところで
考えた案が他の場所で制約を受けたというようなことは絶対にございません。ようやく
事務当局におきまして
一案を得まして、私といたしましては、この案がまず今日のこの
政治情勢、
社会情勢に対処されるときの最も中正、適正な案と私は確信をいたしております。この案を
法制審議会にかけたのでございまして、
法制審議会ではまああらゆる
日本の
学者、
専門家が集っております。自由に討論をしていただきまして、その間にこれは
ざる法ではないかという
意見のあったことも確かではございますが、これはその御
意見を発表された方のお
考えでは、この
あっせん収賄罪はこれでよろしいけれ
ども、それと表裏して
第三者に
供賄をすると、
第三者に金品を差し出すという場合が抜けておれば、
自分は金を取らずに他の
後援会あるいは親族というようなものに金を取らせるからそれですっかり抜けてしまうという御
心配で、それで
ざるであるという御批評があったのでございますが、これは
一つの
考えでございます。しかしながら今日まで私
どもの研究して参りましたところでは、一体
わいろ罪の
規定はその歴史を見ましても漸を追うて進んでおるのでございます。あの
刑法法典をお開きになればわかります
通り、第何条の二とか第何条の三とかいう形に残っております。それは、
わいろ罪は漸次
規定を完備していったその順序を示すのでございまして、今日の直接
収賄罪も後に至って
第三者供賄というようなその
規定をおいたのでございます。この
刑法改正の全体についての仮案ができております。これは過去二十年にわたって
学者、
専門家、
権威者が作った案でございますが、それにも
あっせん収賄罪の
一案がございます。しかしそれにも今の
第三者供賄の
規定はございません。それからしてかつて
昭和十六年でございますか、
国会に提案されました案にもございません。社会党の御提案になっている案にもこの
第三者供賄罪の
規定はございません。私
どももまずその
規定は漸を追うて補充的につけ加うべきである、かような
考えに立っております。ともかく今私が
考えておりまして、そうして
法制審議会で大体賛成をして、決議をして、答申になっておりまするこの
あっせん収賄罪の案がまず最も適正な案である、そうしてこれを実施してみて、その成果によって漸を追うて
改正していくべきものである、かように
考えておりまして、初めの
お尋ねのように、私の
案——法務省で作った案が他の手によって修正をされたなんていうことは絶対にございません。