○中田吉雄君 私は、
日本社会党を代表しまして
昭和三十三
年度一般
会計予算、特別
会計予算、
政府関係機関予算の三案に対し、反対
討論をいたさんとするものであります。
岸
内閣は、少くとも昨年の春、石橋
内閣から引き継いだ予算案が国会を通過いたしましたならば、直ちに解散を行うか、おそくとも昨年の秋には解散を断行し、しかる後、
昭和三十三
年度予算に対処するのが民主政治のルールーであったと言わなくてはなりません。(
拍手)しかるに、岸総理は、解散回避のための口実を設け、三度も外遊をし、内政をおろそかにし、アイクやダレスのごきげんをとることによって、岸政権のてこ入れをしようといたしましたことは、内政と外交の本末を転倒するも、はなはだしいと言わなくてはなりません。従って岸総理が政局担当以来ここに一年、その施政は、わずか三カ月の短命であった石橋
内閣にも劣り、解散回避と外遊に終始し、今や、だれ一人として岸
内閣の長期政権を認めるものはなく、かくて、党と
内閣の生命である三十三
年度予算編成において、
内閣の弱体ぶりを遺憾なく露呈し、戦後最悪の予算となったことも、また必然と言わなくてはなりません。(
拍手)
政府は、昨年九月十日の閣議で、明
年度予算案に関する
構想を
決定したが、一月二十日の
昭和三十三
年度予算編成
方針と最終案に至っては、岸
内閣とは違った
内閣の作ったものではないかと疑われるほどの変り方であって、これでは、長期
計画や予算編成
方針は、あってなきがごときものと言わなくてはなりません。
政府は、三十二
年度に比べ、一千七百四十六億円の増であるが、公債償還費等を差し引けば、実質的な増は一千億と称しているが、一般
会計だけでも、三千二百十一億に及ぶ
補助費、委託費に大斧鉞を加えることもなく、本来、三十三
年度予算に一計上すべき三十二
年度、三十三
年度分、の食管の赤字補てん分百五十億円を補正第二号に、社会保険費十六億円、
義務教育国庫
負担金四十二億円、旧軍人
遺族等恩給費六億円を補正第三号に、以上合計二百十四億円を補正に回し、三十三
年度予算規模の膨張をカムフラージュしょうとしていますが、実質的な歳出増一千億円の
方針は、完全に
崩壊していることを指摘しなくてはなりません。また、剰余金のたな上げも、四百三十六億円の全額を一括し、景気調節のため、経済基盤強化資金として保留する当初の
方針は守られず、うち、この種資金として計上されているものは二百二十一億円にすぎず、他は五つの基金に繰り入れているが、これは財政法上疑義があるばかりでなく、実質的な歳出増で、第二の
方針も完全にじゅうりんされておると言わなくてはなりません。
また、財政投
融資においても、大蔵省の原案自体が、すでに編成
方針でうたわれた本
年度実行
計画程度という
決定を百五十億も上回っているのに、さらに、それが一月二十日の
政府案となると、三千九百九十五億円と、実質的に四百七十一億円の
増加となり、さきに繰り延べられた三十二
年度分の二百六十億円の解除分とあわせ考えますならば、六百億ないし七百億の大膨張となり、大資本への忠勤ぶりを遺憾なく発揮し、これは過剰生産恐慌を
促進すべく、予算編成
方針は跡形もなくついえ去ったと断ぜざるを得ません。(
拍手)イギリスのソーニクロフトは、ポンド危機を守るため、職を賭して反対しました歳出増は、予算規模のたった一%であったと伝えられておりますが、これでは、
わが国では
大蔵大臣が何人あっても足らないと言わなくてはなりません。しかも、一萬田蔵相が、予算ぶんどりに悪戦苦闘をしているのに、かつて吉田総理が
大蔵大臣を強力にペックアップ、復活要求を押えたのに反し、岸総理は、あたかも党内野党のごとく拱手傍観しているだけでなく、みずから圧力
団体と提携して軍人恩給等を大幅に増額したことは、不見識、無責任きわまる態度と言わなくてはなりません。これを要しまするに、本予算案は、岸
内閣が最近の軍事情勢の大きな変化、世界景気の後退等について、十分な見通しと、透徹した政治信念と政策を欠き、予算編成に当って右往左往、無定見を暴露したもので、国民の期待を裏切ること、はなはだしいものとして、わが党は断固反対するものであります。(
拍手)
第二に、原爆とミサイル兵器の時代に、対米従属の地上軍増強の政策であります。防衛庁費は一千二百億円と、前
年度に比べ百九十億円と大幅な
増加で、一段と再軍備政策をとっています。しかも、これは陸上自衛隊一万名を含む一万九千余名の増員をはかり、合計二十四万二千余名、一個師一万として戦前の二十個師をはるかに上回る膨大な
計画であります。言うまでもなく、世界は今やミサイル時代であり、地上軍の価値は著しく減殺しつつあります。ソ連は、一九五五年と六年に削減された百八十四万のほかに、新たに三十万を削減、米国は、一九六〇年までに八十万の兵力削減
計画を立てており、英国は、現在の六十二万五千から
一九六〇年には三十七万五千に大削減の予定であり、中共も、昨年八十万を削減したと言われ、世界広しといえども、昨今、地上軍の増強をはかっているのは、わが岸保守党
内閣あるのみであります。かかる時代錯誤の岸
内閣に、
わが国の安全保障を求めることは、木によって魚を求めるものと言わなくてはなりません。原水爆の時代であるから、全面戦争はともかく、局地戦争に備え、この程度の自衛力は必要であると称しているが、しかし、核兵器とミサイル時代に、かかる主張が根拠薄弱でありますことは、太平洋戦争末期に、本土決戦に備えた二百万の大軍も、たった二発の原爆で無条件降伏をしたことを知らなくてはなりません。
自由民主党内においてすら、良識ある方々は、ミサイル時代に、今さら一万の増員でもあるまいと反対がありましたが、大勢を制するに至らなかったのは、アメリカのさしがねで作った三十三
年度から五
年度までの三カ年の防衛整備
計画に基き、対米
関係を考慮の上、無用とは知りつつなされるアメリカのための再軍備であり、岸
内閣の安全保障となっても、断じて
わが国の安全保障にならないことは自明と言わなくてはなりません。また、過般マニラで開催されたSEATO
理事会に出席したロバートソン国務次官補が、ひそかに日本に立ち寄り、本
年度の陸上自衛隊一万増強の
計画を中止し、ミサイル装備の
拡充に切りかえてはいかんと申し入れをし、日本側は、岸総理、藤山外相らは、本年はともかく、来
年度は要望に応じ得るなどと回答したと伝えられております。国会
審議のさなかに、外国の指示によって
計画変更を余儀なくされるごとき防衛
計画を提案一する
政府の無定見を、わが党は断固糾一弾ずるものであります。軍備での安全保障を考えます限り、最近の西ドイツに見るごとく、核兵器と核装備とミサイル化は必然であり、わずかではあるが、今回三億円計上されたミサイル予算は、将来重大な意義を持つものと言わなくてはなりません。しかし、米ソの核兵器と、ミサイルの包囲下にある
わが国が、
自由民主党のごとく米国につき、IRBMと、ICBMを持つソ連を仮想敵国にすることは、何ら
わが国の安全保障にならず、思想や
制度は違っても、わが党のごとく、中ソを敵にしない自主独立の善隣外交こそ、最善の安全保障と言わなくてはなりません。従ってわが党は、ミサイル時代に、役にも立たない自衛隊は漸減すべく、その一環として、まず旧警察予備隊程度に削減し、他は直ちに平和建設隊に転換することを強く主張し、再軍備予算に反対するものであります。
次に、終戦以来十三年、講和発効後六年を
経過しているのに、今なお防衛分担金二百六十一億円を
負担している点であります。一般方式より三十億円よけい追加削減されているとはいえ、これは一万名増員の振りかえであり、しかも、この削減に対し、一萬田
大蔵大臣は粘り強く交渉したのでありますが、岸総理は、対米
関係をおそれ、はなはだ冷淡であったと伝えられているが、ドイツのアデナウアー
政府のブレンターノ外相は、昨今、防衛分担金を自主的に予算書から全面的に抹殺し、スパークNATO
事務総長に通告している強硬な態度と比較しまして、自主性の喪失はまことに遺憾と言わなくてはなりません。(
拍手)
第三に、上に厚く下に薄い減税政策であります。国税における
租税特別措置による減収八百七億円、地方税の非課税の減収およそ三百七十五億円、合計一千百八十二億円も、大
法人並びに資産者階層には、
税法上の治外法権的優遇を与えており、従って、この恩恵に浴しない
中小企業、農民、労働者等の税
負担は、著しく高いのが特徴であります6本来、この
税法上の恩恵は、いわば隠れたる
補助金とも称すべく、
わが国経済が、ここまで復興した現段階において
特別措置や非課税は、最小限にこれを整理し、やむを得ないものは、
補助金に引きかえ、全体の税率を大幅に引き下ぐべきであります。しかるに、
政府今回の減税は、
法人税、相続税、長期貯金減税等二百五億円は、大
法人、高額所得者本位であって、五人家族年収三十二万までを免税とし、累進税率を引き上げ、
法人税にあっては、低額所得五十万円以下の税率を三〇%に引き下げる等を主張するわが党と、鋭く対立するものであります。二級酒類の税率をわずかに引き下げても、酒に酔わせて大衆をごまかすことは断じてできないのであります。しかも、わずかな酒類の税率引き下げも、そっくりそのまま小売価格を引き下げず、原料代の値上りを口実に、卸値段を優遇せんとするがごときことはわが党のとうてい容認しないところであります。しかも、政治資金規正法を見ますると、国から
租税特別措置、
補助金、財政投
融資の恩恵を受けている大
法人が、
自由民主党に数億の政治献金をしているが、今回、
法人税一律二%引き下げは、昨年の
特別措置整理の復活といってもよく、政治資金源を培養する選挙目当ての減税のおそれなしとしないのであります。
従って、国から
租税特別措置、
補助金、
融資等の恩恵を受けているものの政治献金の規正なしには、せっかくのあっせん収賄罪も、ざる
法案と言われても仕方がないと思うわけであります。なお、資本金一千万円以上の一万二千五百の
法人は、配当金一千百六十億円にすぎないのに、実に八百億円の交際費を使っており、損金不算入があるとはいえ、大半は課税
対象外となっておることは、あまりにも大
法人の優遇と言わなくてはなりません。わが党は、文教政策を初め、国民年金、健康保険、結核
対策、生活保護、失業
対策等、社会保障の
拡充強化の
財源確保のためにも、
租税特別措置法の徹底的な整理を主張するものであります。かかる、上に厚く下に薄い減税は、国税だけにとどまらず、地方税についても同様であります。昨年、一千億減税が、勤労者の住民税の減収にはね返るというので、税率を大幅に引き上げ、減収を
防止していながら、今回、
法人税の二%の減税が、
法人住民税の所得割りべの三十億の減収は、税率を、これをそのまま据え置いておりますが、昨年と対比して、はなはだしく片手落ちと言わなくてはなりません。
さらにまた、
市町村長等の強い反対にもかかわりませず、あっという間に、昨年、一%下げているにかかわらず、さらに今回、一挙に二%べと、木材取引税の税率を半分に引き下げています。これは、山林業者等の圧力
団体に屈した減税であって、明らかに選挙
対策として、地方税を二、三にしたものと言わなくてはなりません。
また
政府は、今回、河野長官の主唱で、自転車税、荷車税の廃止をはかっているが、以上のごとき大
法人、資本家本位の減税から、国民の目をそらそうとしても、それだけでごまかすことはできません。元来、自転車税、荷車税の廃止は、わが党多年の主張であって、いわば今回の
措置は著作権、政策の剽窃とも称すべきでしょう。わが党は、非課税
制度を大幅に整理し、自転車税、荷車税、住民税、電気税、
事業税等、大衆課税の廃止軽減をはからんとするものであって、これらを総合的に
実施して、初めて効果があるものであって、これらの一部分だけでは、その一貫性をはなはだしく欠くものと言わなくてはなりません。また、わが党は、個人
事業税は基礎控除十五万円を二十万円に、
法人事業税はそれぞれ二%の減税をはかる修正案を提出しているが、
政府はこれに応じようとしませんが、岸
内閣に
中小企業振興の意思ありゃいなやを疑わざるを得ないわけであります。
これを要しまするに、これでは
中小企業の振興はもとより、その資本蓄積等は思いもよらないことで、前近代的な中小零細
企業と近代的な巨大産業との、いわば
わが国産業の二重構造を救いがたいものとし、わが党として断じてとらないところであります。渋い、きびしいと言われる予算編成が守られているのは、実に労働者、
中小企業、農民に対してであってかくのごとき減税には強く反対するものであります。一第四に、道路整備についてであります。
政府は、道路整備は予算編成において最重点政策とうたっていますが、総額は六百八十三億円であり、防衛庁費千二百億円の半分にすぎず、また、道路予算は前
年度に比べて、揮発油税の自然増収分五十二億円と一般
会計からの繰り入れ五十五億円、合計百七億円の増額にすぎず、防衛庁費前年対比百九十億円増に比べれば半分であって道路整備の緊急性に対しては、この程度では全く焼け石に水と言わなくてはなりません。
しかも、明
年度は道路整備五カ年
計画の最終
年度であるにもかかわりませず、さらにその上に道路五カ年
計画の初
年度を乗っけましたのは、岸
内閣には政策らしいものの持ち合せが全くないので、総選挙
対策として、急場に看板として掲げたと言っても、決して過言でないわけであります。道路の改築、修繕等につきまして
昭和三十三
年度だけ国と地方の
負担割合をきめているだけで、三十四
年度以降は
法律こ譲っていますが、これは第二
年度以降の地方の
負担率を引き上げようとする伏線であり、およそ五カ年
計画と言いますからには、五カ年間にわたっての中央と地方との合理的な
負担区分を設定しなくてはなりません。また、地方
負担分を引き当てに借り入れる五十一億九千五百万円の利子まで地方に
負担させることは、
交付公債の利子の全免を主張するわが党としては、とうてい容認できないところであります。また、一級道路で国がやる維持、修繕については、半分府県に
負担させながら、府県や五大都市に委任された一級国道の修繕、維持費は全部府県や指定市に
負担させることは、全くその一貫性を失っていると言わなくてはなりません。五カ年間の地方費は、地方
負担は五百八十九億円にも達し、しかも、機会あるごとに地方に
負担を転嫁させようということでは、地方財政の面から、道路政策は重大なる蹉跌を来たすことを、今から警告しておかなくてはなりません。
第五に、農林予算についてであります。農林予算は、昨年の九百四十三億円に、土地改良向け出資金六十五億と、合計一千八億と、今年は千億円台を突破したと宣伝されていますが、比率は七七%であって、
昭和二十八年の二八二%は言うに及びませず、
昭和三十一
年度の八四%、三十二
年度の七九%より低く、しかも出資金の六十五億は、その利子三億九千万円だけ三十三
年度に支出されるので、実質的な農林予算は九百四十六億九千万円、七二%と、戦後最低の比率であり、重点政策の面目いずこにありゃと言わなくてはなりません。また、農林業への財政投
融資も、総額三千九百九十五億円のうち、わずかに三百七十億円にすぎません。
さらに、
政府は過般、内地の農民より外国の農民に対し、重要なる生産資材である硫安を、肥料
審議会の答申と称し、俵当り百三十円も安く売り、その肥料でできた外国の食糧や余剰農産物を輸入して内地の農民を圧迫しています。これでは岸
内閣は、日本の農民の
内閣でなしに、台湾やアメリカの農民の
内閣と言われても仕方がないわけであります。農林人口は四二%を占めるのに、農民への国民所得の配分が二〇%しかありませんのは、断じて日本農民の労働が足らないからではなく、歴代の保守党
内閣の農政の貧困を物語るものと言わなくてはなりません。
第六に、軍人恩給と社会保障の
関係についてであります。社会保障
関係費の総額は一千二百五十七億六千万円と、前
年度に比べまして百二億の増額であります。しかし、歳出予算総額の前年対比は千七百億円、一五・五%であるのに、社会保障
関係費はわずか八・五%ふえているにすぎません。昨年行なった千億減税の恩恵に浴しないのみか、運賃値上げ等のはね返りで、生活を圧迫されている階層に対して、本年こそ社会保障費の大幅増額をなすべきであるのに、この程度では、社会保障に対する熱意が
政府にあるか、疑わざるを得ないわけであります。
わが国の貧困層は二百四十六万世帯、一千百十三万人、総人口の一二・四%と、厚生白書はうたっております。一握りの大
企業には六、七百億も投
融資をふやしながら、
政府は、一千万の要生活保護者に対しては、生活保護費を前年に比べてわずか十六億円
増加しているにすぎません。また、婦人保護費は、従来も少かったのに七千万円も減額、売春
対策に、はなはだ冷淡であることを示しています。これでは四百年の
経過を持つ売春
制度が、ついに明日から終止符を打つのは、
政府の政策によってではなく、
自由民主党議員が、多数、売春汚職に連座し、世論がその延期を許さなかったからだといっても仕方がありません。
失業
対策費もわずか四十九億円増で、失業者を二十五万と、二万五千人をふやしているにすきません。世界景気の後退のため、失業者の増大は不可避であるのに、
政府は、失業
対策費を増額せす、反対に、貸本労働協会に十五億円も出資し、労働者階級の懐柔と分裂政策を企図しています。これでは、労働者はパンを求めているのに、石を与えているのが石田労政の本質と言わなくてはなりません。(
拍手)
さらに軍人恩給の増額であります。本
年度の増額は六十七億八千余万円にとまっているが、四年後には千百億円に達し、文官恩給と合算いたします一ならば千三百億円、国家予算の一割にも及び、社会保障前進に重大な暗影を与えているものであります。軍人恩給のピークであります三十六年の千百億円は、余命率から推算いたしますると、無視し得る程度になりまするには、大よそ今後五十年の歳月を必要とし、加算
制度の復活要求、自衛隊の恩給
増加等を考えますれば、相当長期にわたって容易に減少しないことが予想されるのであります。また、たとえば東条勝子夫人の公務扶助料は、陸軍大将東条英機としてではなく、
内閣総理大臣東条英機として計算され、戦犯の死刑も、公務死として七割増しされ、現に五十八万八千五百六十円を受けておるのであります。しかも一たん
決定したものは、財産権等に藉口し、減額はきわめて困難であり、今後、増額は慎重でなくてはならぬ理由がここにあるわけであります。特に公務扶助料の倍率、すなわち不均衡是正の問題であります。たった六千人の文官と、百五十万の旧軍人とを比較し、文官と同じ四十割の倍率を要求しますことは妥当でなく、比較は、一千万人の要生活保護者との均衡でなくてはなりません。数千万の農民、
中小企業、労働者等、社会保障の谷間の国民との比較均衡であるべきであります。しかるに、文官と軍人との狭い恩給受給者相互間の比較をもって、ついに岸総理は倍率を三五・五%にされましたが、これは将来の
社会保障制度にとって重大な問題を残したものと言わなくてはなりません。これでは現下の財政事情から、広範な農民、
中小企業、労働者への全面的な社会保障の
実施は、遠くかなたに押しやられ、かくて岸
内閣に、貧乏の追放と社会保障の全面的
実施を求むることは、きわめて困難であって、貧乏の追放は、岸
内閣の追放からと言わなくてはなりません。(
拍手)わが党は、この際、軍人恩給の問題に終止符を打ちますために、階級差を撤廃すること、傷痍軍人を厚く遇すること、所得を加味し、社会保障の総合的な
実施に支障を来たさないような立場から、
交付公債を発行し、かつ厚生
年金制度の即時
実施とあわせて行わんとするもので、
政府の案に対して強く反対するものであります。
第七に、岸
内閣の経済外交についてであります。岸
内閣のインドヘの百八十億円の円借款、アジア開発基金出資金五十億円に対しては、多大の疑問を持つものであります。
政府はその他に、パキスタン、セイロン、フィリピン、エジプト、パラグアイ等の借款を検討しているやに伝えられているが、
わが国はすでに外国より、
政府、民間合計いたしますならば、きわめてきびしい条件で、長期借款だけでも十八億ドルの借款をいたしておるのであります。外国から借款をしながら、
中小企業や農民は、近代化の資金に事欠いておるのに、政治的な円借款を与える余裕があむやいなや、多大の疑問とするところであります。
保守党
内閣の一枚看板である東南アジアを中心とするオープン・アカウント貿易は、実に千百億円も焦げつきとなり、これは結局、国民の税金による見せかけの輸出振興であったわけであります。オープン
地域の貿易が限界に来、これにかわって賠償貿易、借款貿易を企図しておりますが、これは正常貿易をはなはだしく阻害し、第二の西原借款のおそれもあり、重大な反省を求めるものであります。アメリカからは十億ドルも輸入し、これに反し五億ドルしか輸出しない対米依存の片貿易の当然の帰結であって、これに対しては、中共貿易を初めとする市場転換以外には、その解決の道がないことを指摘しなくてはなりません。しかし、オープンアカウント貿易には
機構的な欠点もありますが、しかし、運用によって慎重な配慮をいたしますならば、決して焦げつきを生ずるものではなく、焦げつきは、
政府、業者なれ合いによって生じたものであり、一千百億円もの損害を国民に与えた当時の担当大臣である岡野、愛知、石橋、水田等の元通産大臣は、国民の前に国政を語る資格がないものと言わなくてはなりません。(
拍手)
以上、本予算案に盛られましたる
政府の重点政策は、満身創痍と言わなくてはなりません。これを要しまするに、今日の内外の困難なる情勢は、岸
内閣を初めとする歴代の保守党
内閣の向米一辺倒、対米従属の再軍備政策及び大資本家本位の金融財政政策の当然の帰結であります。しかるに、
政府は、依然として外交路線の
調整をはかろうとせず、労働者、
中小企業者、農民等の犠牲によって過剰生産恐慌を克服しようとしていますが、これは可能でもなく、また、わが党は断じて許さないところであります。外交における自主性の回復、再軍備政策の中止、貿易市場の転換、減税、適正賃金の保障、労働時間の短縮、
中小企業、
農業等への大規模な投資等により、国際均衡と国内均衡、両者つり合いのとれたところの国民本位の不況
対策を強く主張するものであります。本予算案は、その通過後、直ちに組みかえを要するような無定見、無性格の性格分裂の予算と言わなくてはなりません。
このことは、やがて近く行われるでありましょう総選挙において国民的な規模における歴史的な裁断によってわが党の主張が正しいことが証明されるであろうことを付言いたしまして私の反対
討論を終る次第であります。(
拍手)
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