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1958-03-31 第28回国会 参議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月三十一日(月曜日)    午前十一時三十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━ ○議事日程 第十七号   昭和三十三年三月三十一日    午前十時開議  第一 公正取引委員会委員長任命に関する件  第二 参議院事務局職員定員に関する件  第三 参議院法制局職員定員に関する件  第四 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第五 糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)  第六 農業改良助長法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告) 第七 農林漁業団体職員共済組合法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告) 第八 企業合理化促進法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)(委員長報告) 第九 地すべり等防止法案内閣提出衆議院送付)(委員長報告)     —————————————
  2. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 諸般報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、公正取引委員会委員長任命に関する件を議題といたします。  内閣から、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十九条第二項の規定により、長沼弘毅君を公正取引委員会委員長任命することについて本院の同意を得たいとの申し出がございました。  本件に同意することに賛成諸君起立を求めます。    [賛成者起立
  4. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本件は、全会一致をもって同意することに決しました。      ——————————
  5. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 日程第二、参議院事務局職員定員に関する件  日程第三、参議院法制局職員定員に関する件  以上、両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  7. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 両件につきまして、議長は、参議院事務局職員定員規程案及び参議院法制局職員定員規程案を立案いたしまして、あらかじめ議院運営委員会に付議いたしましたところ、同委員会においては、いずれも異議がない旨の決定がございました。両規程案は、議席に配付いたしました通りでございます。  別に御発言もなければ、これより両規程案採決をいたします。  両規程案全部を問題に供します。両規定案賛成諸君起立を求めます。   [賛成者起立
  8. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって両規程案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  9. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 日程第四、補職金等臨時特例等に関する法律の一価を改正する法律案  日程第五、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案(いずれも内閣祖出、衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長河野謙三君。    〔河野謙三登壇拍手
  11. 河野謙三

    河野謙三君 ただいま議題となりました二つ法律案につきまして大蔵委員会審議経過並びに結果を御報告いたします。  まず、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  補助金等整理合理化をはかるために、それぞれ停止または減額を規定した補助金等臨時特例等に関する法律有効期限は、現在、昭和三十三年三月三十一日限りとなっているのでありますが、本案は、同法の有効期限昭和三十四年三月三十一日まで、さらに一カ年間延長することにしようとするものであります。  委員会審議におきましては、補助金出資金等整理合理化についての政府基本構想等について質疑がありましたが、詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終り、討論採決の結果、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この会計は、生糸価格安定価格帯内に維持するために、生糸の買い入れ、売り渡しをすることになっておりますが、本年度においては、最低価格による買上量が著しく増加し、年度末には相当量の保有とその固定化が見込まれ、昭和三十三年度以降における資金に不足を来たすこととなりますので、本案は、この会計の一時借入金等限度額を、四十億円引き上げて、七十億円としようとするものであります。なお、この借入限度の引上額は、当初案では二十億円でありましたが、衆議院の承諾を得て、政府修正がなされた結果、倍額引き上げられ、四十億円とされたものであります。  委員会審議におきましては、蚕糸業安定のための恒久的な基本対策等について質疑がありましたが、詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終り、討論採決の結果、全会一致をもって最議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  12. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  まず、補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    [賛成者起立
  13. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  14. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 次に、糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  15. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  16. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 日程第六、農業改良助長法の一部を改正する法律案  日程第七、農林漁業団体職員共済組合法案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。まず、委員長報告を求めます。農林水産委員長重政庸徳君。    [重政庸徳登壇拍手
  18. 重政庸徳

    重政庸徳君 ただいま議題となりました農林水産関係二つ法律案について、農林水産委員会における審査経過及び結果を報告いたします。  まず、農業改良助長法の一部を改正する法律案について申し上げます。  昭和二十三年から施行されました農業改良助長法に基いて、国と都道府県との協同事業として農業改良普及事業実施され、今日に至っているのであります。ところが、最近、農業技術の進歩と農業経営多角化とに伴い、より高度な、しかも総合的な技術指導に対する要請が高まっておりますので、かかる要請にこたえて、普及活動連絡調整を強化し、普及指導効率化に努めるとともに、地域の特性に即し、総合した指導普及を推進することが必要であるとの趣旨によって都道府県は条例をもって改良普及員の行う普及活動連絡調整その他普及指導に関する事務をつかさどる農業改良普及所を設置するものとするのが、この法律案が提出された理由とその内容であります。  委員会におきましては、まず、政府当局から諸般説明を聞き、続いて質疑に入り、農業改良助成施設受益農家の偏在とその普遍化農業改良普及所に要する経費及びこれに対する国の補助並びにその補助根拠普及地区適正数改良普及員の任務と行政事務負担改良普及員農協等団体技術員との協調特技普及員任用方針改良普及員町村駐在制地区担当制との是非、技術指導経営指導との調和、農業指導機構総合化、並びに試験研究機関普及事業との協調専門技術員改良普及員及び特技普及員の業務の調整及びこれら現在員数の当否等が問題になり、当局方針がただされ、その善処が求められたのでありますが、これが詳細ほ会議録に譲ることを御了承願います。  かくして、質疑を終り、討論に入り、柴田委員から、農業改良普及所に対する国の補助拡充と、その補助根拠明確化及び改良普及員の素質、技能の向上と、他の団体技術員協調内容とする付帯決議を提案して賛成せられ、千田委員から、希望を付して賛成があり、他に発言もなく、採決の結果、全会一致をもって前述付帯決議とともに、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、農林漁業団体職員共済組合法案について申し上げます。  この法律案は、農業協同組合法その他八つの特別な法律によって設立されている農林漁業関係法人、すなわち農林漁業団体役職員相互扶助事業を行い、その福利厚生をはかり、農林漁業団体事業の円滑な運営に資するため、年金制度を中心とする農林漁業団体職員共済組合なる法人を設けようとするものでありまして、そのおもな点は、概略次のようであります。  すなわち第一は、組合機構でありまして組合には、議決機関として組合会を、また、役員として理事長一人、理事若干名、監事二名を置くこととし、関係団体から給与を受ける常勤の役職員はすべて組合員となり、関係団体約二万七千、関係役職員約二十六万人と算定されております。  次は、組合事業でありまして、組合給付を行い、また、組合員福利厚生事業を行うことができることなっており、給付は、退職給付障害給付及び遺族給付の三通りとし、退職給付退職年金退職一時金、障害給付障害年金障害一時金、遺族給付遺族年金遺族一時金と年金者遺族一時金とであります。しかして、いゆる短期給付は行わないことになっております。  次は、掛金でありまして、この掛金率は、組合員標準給与月額の千分の七十八を予定し、組合員とその組合員を使用する団体とが折半して負担することになっております。次は、国の補助でありまして、国は、毎年度予算範囲内において、給付に要する費用の百分の十五と組合事務費の全額とを補助することになっております。  以上のほか、審査会会計監督組合の設立及び厚生年金保険との関係等について必要な規定が設けられ、施行期日は、昭和三十四年一月一日からとなっております。  委員会におきましては、まず、農林当局から諸般説明を聞き、質疑に一入り、衆議院農林水産委員会付帯決議に対する政府見解国民年金制度実施の見通しとその構想国民年金制度と今回の、あるいは他の既存の年金制度との関係協同組合公益性から見たその年金制度のあり方、この法律案を提出するに当っての年金制度に対する閣議決定趣旨厚生年金保険特別会計からの交付金の額、交付の時期及びその促進並びにその間の利子の取一扱い、民法法人農林漁業団体及びタバコ耕作組合法人化された場合、これらの団体の取扱い、団体掛金等負担負担を困難とする不振団体対策、これに関連し、事務簡素化、転職の場合の通算関係加入予定役職員数、特に加入の強制と団体の実態との関係共済組合福祉事業財団法人全国農業協同組合役職員共済会の行う福祉事業との関係等が問題となり、特に国民年金制度関連する問題については、厚生大臣の出席を求め、その見解がただされたのでありまして、これらの詳細は、会議録によることを御了承願います。  かくして質疑を終り、討論に入り、藤野委員から、後に鈴木委員によって提案されるような付帯決議を行うことの意見を付して賛成、続いて鈴木委員から、農山漁民に対する社会保障制度及び福祉厚生施設確立拡充と、この法律案による制度改善普及に対して、政府善処を求めることを内容とする付帯決議案を提案して賛成千田委員及び上林委員から、それぞれ意見希望を付して賛成が述べられ、続いて採決の結果、全会一致をもって、前述付帯決議とともに、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、右の二つ付帯決議に対し、瀬戸山農林政務決官から、政府を代表して「いずれもその趣旨を尊重して善処したい」旨を述べられましたことを申し添えて、報告を終ります。(拍手
  19. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  まず、農業改良助長法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  20. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  21. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 次に、農林漁業団体職員共済組合法案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    [賛成者起立
  22. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  23. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 日程第八、企業合理化促進法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。商工委員長近藤信一君。    [近藤信一登壇拍手
  24. 近藤信一

    近藤信一君 ただいま議題となりました企業合理化促進法の一部を改正する法律案につきまして商工委員会における審査経過並びに結果について御報告申し上げます。  まず、本法案の骨子について申し上げます。第一に、わが国で行われた試験研究の成果である新技術企業化するものは、主務大臣及び大蔵大臣に申請し、その企業化が、国民経済上緊要な新技術企業化であり、かつ、その取得する機械設備等が新技術企業化する場合の主要な生産工程において欠くことのできない旨の承認を受け、第二に、申請者承認された機械設備等を、承認一定期間内に企業化の用に供し「たときは、その設備承認と合致している旨の主務大臣の証明を受け、これにより機械設備等について、租税特別措置法による特別償却を行うことができるようになっております。なお、この特別償却内容につきましては、別途、租税特別措置法の一部改正法案において、その取得価額の二分の一相当額を初年度に償却できるように規定されております。また、本法案による新技術企業化の用に供する機械設備等固定資産税課税標準は、これも別途、地方税法の一部改正法案により、三年間に限り二分の一の価額とすることになっております。  以上が要旨でありますが、委員会におきましては、本法案租税特別措置法と密接な関係があるので、大蔵委員会連合審査会を行う等、審査に慎重を期したのでありました。その詳細は会議録に譲りたいと存じますが、審査の過程において特に問題となりました点を申し上げますと、第一点な、本法案は、大企業のみに税法上の恩典を与え、中小企業に均霑しないのではないかということであります。これに対し政府は、本法案は、わが国科学技術の振興と企業合理化促進を目途とするもので、大企業中小企業の区別を考えているものではないが、政府としても、運用面で大企業偏重にならぬように心がけて行きたい。なお、中小企業に対しては、税制のみでなく、総合的な施策を別に考えたいと答弁しておりました。第二点は、租税特別措置法は、税制調査会の答申の精神によれば、漸次、廃止の方向に行くべきなのに、この改正法案のように特別措置範囲を広げているが、今後これを縮小し、税収の増加をはかり、中小企業対策費財源にする意思があるかどうかということであります。これに対して、政府は、租税特別措置はなるべく廃止する方向である。しかし、その財源ひもつき中小企業関係財源にするかどうかは別の問題であるとの答弁がありました。  以上のほか、本法案でいう新技術の意味とか、範囲、あるいは企業化計画承認基準企業化用機械設備等承認基準について、政府との間に熱心な質疑応答がございました。  かくして質疑を終了し、討論に入りましたところ、まず、豊田委員より、「次の付帯決議を付して本法案賛成する」との発言がありました。付帯決議朗読いたします。   政府が改直後の本法第五条第一項の規定による承認をするに当っては、その承認が大企業偏重にわたらないよう十分に配慮すること。次いで、日本社会党を代表して相馬委員より、さらに、自由民主党を代表して青柳委員より、それぞれ、本法案並びに豊田委員提出付帯決議案に対し賛成する旨の意見開陳がありました。  以上で討論を終り、採決いたしました結果、本法案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定し、次いで、豊田委員提出付帯決議案も、同じく全会一致をもって本委員会決議とすることに決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  25. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  26. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  27. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 日程第九、地すべり等防止法案内閣提出衆議院送付)を議題といたします。  まず、委員長報告を求めます。建設委員会理事石井桂君。    〔石井桂登壇拍手
  28. 石井桂

    石井桂君 ただいま議題となりました地すべり等防止法案について建設委員会における審議経過並びに結果について御報告申し上げます。  わが国における地すべりの現況は、全国で五千五百カ所、総面積十四万五千町歩に及んでおりますが、これらの地域は、宅地、森林または農地に利用されている実情で、地すべりによる被害は逐年顕著になってきているのであります。この地すべり防止については、従来、砂防法または森林法にのっとり措置されてきたのでありますが、今回これら各種地すべり防止事業に関する計画実施を統一して事業効果的執行とその適正化を期するとともに、また、鉱業権者が存在しないボタ山についても、その管理が放置され、災害を起している実情から、必要な範囲内で防止措置をはかろうとするのが、本法案趣旨であります。  次に、その要旨について申し上げます。第一に、地すべり防止区域制度を設け、主務大臣は、地すべりのおそれのきわめて大きいもので、公共の利害に密接な関連を有するものについて、必要に応じ、現地関査を行なつた上、地すべり防止区域を指定することとしております。第二に、地すべり防止区域管理は、都道府県知事が行うこととし、都道府県知事は、関係市町村長意見を聞いて地すべり防止工事基本計画を作成することとしております。第三に、地すべり防止施設築造等基準を定め、統一を期するとともに、地すべり防止に有害な行為制限を規制しております。第四に、都道府県知事は、市町村長に対し、地すべりによる被害の除去、軽減に必要な関連事業計画を作成するよう勧告するとともに、この計画による事業実施した事業主体に対して事業費補助を行うことにしておりますが、この場合、国はその費用の二分の一以内を補助することができることになっております。また、家屋移転等に対しては、住宅金融公庫融資ができるようにいたしております。第五に、地すべり区域管理に要する費用は、都道府県負担することになっておりますが、防止工事については、渓流において施行するものについては国が三分の二、その他の工事については二分の一を負担することになっております。第六に、ボタ山崩壊防止についてでありますが、この法律対象となるボタ山は、鉱業権者が存在せず、この法律施行の際、現に存するものでありまして、地すべり防止と同様、崩壊防止区域の指定、その区域内における防止工事その他の管理有害行為の規制、管理に要する費用負担等を定めております。  本法案は、去る二月二十一日に本委員会に付託されたのでありますが、その重要性にかんがみ、参考人を招致し、意見の口述を聞く等、慎重なる審議を行なってきたのであります。  その質疑のおもなる点を申し上げますと、ボ夕山に関して、本法適用外になる鉱業権者及び鉱業権者とみなされる者の行う保安義務鉱業権を譲渡し、または放棄した場合におけるボ夕山の保安措置及び監督は、どうなるかということであります。この点につきましては、鉱山保安法及び同保安規則によって行なっており、鉱業権が消滅しても五カ年間は保安義務を負わせていること、また、弱小鉱山業者ボタ山崩壊防止措置については、採炭の当初から十分に指導するほか、鉱害問題の一態様として考え、監督に遺憾なきを期して行きたいということでありました。その他、山くずれ防止対策の処置、地すべり防止を阻害する行為制限の取扱い、防止施設築造基準関連事業計画に基く家屋移転に対する住宅金融公庫融資の方法、公共土木災害復旧費国庫負担法適用範囲等に関するものでありますが、詳細は会議録でごらんをいただきたいと存じます。  かくて、質疑を終了、討論に入りましたところ、日本社会党を代表して、内村委員から、「本法案は、国土の保全及び民生の安定上必要な措置であり、自由民主党社会党緑風会の三派共同による付帯決議案を付して賛成する」という発言がありました。  その付帯決議案は、   一、緊急を要する地すべり等防止工事は、おおむね五カ年間に完成すること。   二、本法対象とならないボタ山については、本法制定趣旨にかんがみ、鉱山保安法による監督指導を厳重にし、鉱業権者等をして、その崩壊防止対策につき遺憾なからしめること。というものであります。次いで、自由民主党を代表して西田委員から、「同様の趣旨により、本法案並びに付帯決議案賛成する」旨の発言がありました。  かくて、討論を終結、採決の結果、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次いで、討論中にありました三派共同提案付帯決議案について採決の結果、これまた、全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  29. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  30. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  31. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  議院法制局法等の一部を改正する法律案可決報告書裁判官弾劾法の一部を改正する法律案可決報告書      ——————————
  32. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) この際、日程に追加して議院法制局法等の一部を改正する法律案  裁判官弾劾法の一部を改正する法律案(いずれも衆議院提出)  以上、両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。議院運営委員長安井謙君。    [安井謙登壇拍手
  34. 安井謙

    安井謙君 ただいま議題となりました議院法制局法等の一部を改正する法律案及び裁判官弾劾法の一部を改正する法律案につきまして議院運営委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、議院法制局法等の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  本法律案内容は、最近における立法事務増加に応じまして各議院機構を整備し、機能の増進をはかりますため、新たに各法制局次長制を設けようとするものであります。すなわち、法制局長のもとに法制次長を置くことを定め、これに伴いまして国会職員法の一部を改正して、法制次長任命資格を定め、かつ、国会職員考査委員会委員当該次長を加えようとするものであります。  本委員会におきましては、慎重審議いたしました結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、裁判官弾劾法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  本法律案内容は、近時における事件数増加及び事案の内容複雑化等に対処するため、裁判官訴追委員会及び裁判官弾劾裁判所の各事務局に置かれている参事、主事を一人ずつ増加し、各四人と改めようとするものであります。なお、本措置は、現職員の振りかえにより行われるものでありまして、実質的な増員ではありません。  本委員会におきましては、慎重審議いたしました結果、全会一致をもって可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  35. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 別に御発言もなければ、これより両案の採決をいたします。  両案全部を問題に供します。両案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  36. 寺尾豊

    ○副議長寺尾豊君) 総員起立と認めます。よって両案は、全会一致をもって可決せられました。  暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      ——————————    午後五時五十分開議
  37. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。山口重彦君から、病気のため十六日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  39. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 参事報告させます。    〔参事朗読]本日委員長から左の報告書を提出した。  道路整備緊急措置法案可決報告書  道路法の一部を改正する法律案可決報告書  日本道路公団法の一部を改正する法律案可決報告書  国立学校設置法の一部を改正する法律案可決報告書  昭和三十三年度一般会計予算、昭和三十三年度特別会計予算及び昭和三十三年度政府関係機関予算可決報告書      ——————————
  40. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、道路整備緊急措置法案  道路法の一部を改正する法律案  日本道路公団法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり]
  41. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。建設委員長竹下豐次君。    〔竹下豐次君登壇拍手
  42. 竹下豐次

    ○竹下豐次君 ただいま議題となりました道路整備緊急措置法案及び道路法の一部を改正する法律案並びに日本道路公団法の一部を改正する法律案の三法案につきまして、建設委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、道路整備緊急措置法案要旨について申し上げます。  本法案は、道路整備の緊急性にかんがみ、昭和二十九年策定の道路整備五カ年計画を改め、新たなる構想のもとに、昭和三十三年度を初年度とする五カ年計画を定め、この計画実施に要する費用財源の確保、その他道路整備に関し必要な措置を定めようとするものであります。  すなわち、第一は、建設大臣は、昭和三十三年度以降五カ年間における高速自動車国道、一級国道、二級国道及び政令で定める都道府県道その他の道路の整備に関する計画案を作成し、閣議の決定を求めなければならないことといたしております。  第二は、木五カ年計画実施するため、政府は、毎年度、当該年度の揮発油税の収入予算額等を道路整備費の財源に充てるほか、財政の許す範囲内において必要な財源措置を講ずることといたしております。第三は、国の負担金の割合または補助金の率につきまして昭和三十三年度においては、現行の道路整備費の財源等に関する臨時措置法と同様といたしておりますが、昭和三十四年度以降については、別に法律で定めることといたしております。なお、国の直轄事業費用について地方公共団体負担金の額の特例を設け、また、附則において現行の道路整備費の財源等に関する臨時措置法を廃止しております。  次に、道路法の一部を改正する法律案要旨について申し上げます。  この改正案は、一級国道の重点かっ効率的な整備をはかるため、これが管理について現行の都道府県知事が行う建前を改めんとするものであります。すなわち、第一に、一級国道の新設または改築は建設大臣が行うこととし、特別の事情がある場合には都道府県知事が行うこととしております。第二は、一級国道のうち、特に保全の強化をはかる必要がある指定区間については、建設大臣が維持、修繕、災害復旧その他の管理も行うこととし、その他は都道府県知事が行うこととしております。ただし、昭和三十三年度においては、修繕を除く維持その他の管理に要する費用は、国が三分の一、地方公共団体が三分の二を負担することとしております。  次に、日本道路公団法の一部を改正する法律案要旨について申し上げます。  すなわち、日本道路公団が行う高速道路の建設を促進するため、同公団が国際復興開発銀行から外貨資金の借り入れができるよう、借り入れ契約に際し、公団の外貨支払い債務を政府が保証することができることとするほか、外貨の受け入れについて公団が発行する債券の利子に対する所得税を免除することといたしております。  以上三法案は、二月二十一日に本委員会に付託されたのでありますが、その重要性にかんがみ、地方行政委員会連合審査会を、また、地方行政、大蔵両委員会とあわせ、三委員会連合審査会を行う等、慎重なる審議を行なって参ったのであります。質疑内容のおもなる点を申し上げますと、まず、今回の道路整備五カ年計画構想、規模いかんという点につきましては、政府側から、五カ年間における総道路投資額は、おおむね九千億円を目標とし、このうち地方公共団体が単独で実施すべきもの、およそ一千九百億円を除いて、七千一百億円をもって閣議決定を受け、五カ年計画の規模とする。その内訳は、有料道路事業一千五百億円、一般道路事業五千六百億円を予定している旨の答弁があり、また、第一次五カ年計画に対する実績と、新五カ年計画の見通し、この財源としての揮発油税、地方道路譲与税、軽油引取税の過去の実績と将来の見通し及び新五カ年計画の地方財源の確保の可能性、この計画に付随する地方単独事業遂行の可能性等、主として計画遂行の見通し及び地方財政の負担について質疑が行われましたが、特に、昭和三十四年度以降の国の負担金の離合は、別に法律で定めることとなっているが、地方財政に重大なる影響を持ち、かつ事業計画に基本的なこの負担率を、何ゆえ本法において具体的に定めないかとの質問に対しましては、昭和三十三年度については、現行の道路整備費の財源等に関する臨時措置法において高率の負担率が定められているので、これを踏襲したのであるが、この法律は時限立法であり、かつまた昭和三十四年度以降については、一般の国と地方との財政区分について根本的に再検討される時期に当るので、道路事業についても、これらの一環として考慮し一ようとするものであるが、道路整備の一重要性もあり、この点については、今後、関係各省間において十分検討の上、地方財政の過重により事業遂行が一不可能になることのないよう措置する一方針である旨の答弁がありました。また、道路整備特別会計が、資金運用部等から直轄工事の地方負担分として借り入れられた場合、同会計年度末までに生ずる、いわゆる未経過利子を地方の負担としていること、特別会計の借り入れ利息六分と、地方債償還の交付公債利息六分五厘との間に利子の差を生じること等の問題については、それぞれ他の特別会計の例、金利水準等に従った旨の答弁がありました。  このほか、一級国道の事務配分の根本的変更にもかかわらず、指定区間内の維持その他の管理について、昭和三十三年度、特に国の負担割合を二分の一から三分の一とした理由、国際復興開発銀行が日本及び諸外国に融資している契約額及び契約条件等についても質疑がありましたが、その詳細は会議録に譲ることといたします。  かくて三案の質疑を終りましたところ、田中委員より、道路整備緊急措置法案及び道路法の一部を改正する法律案に対する修正の動議が提出され、修正の趣旨弁明と修正案文について説明がありました。すなわち、道路整備緊急措置法案については、第二次五カ年計画財源について、地方負担が過重となるおそれがあるので、左のごとく修正する必要がある、「第一、国の負担の特例を昭和三十四年度以降においても昭和三十三年度と同様にすること。第二、未経過利子を地方公共団体負担とせず国の負担とすること。第三、修繕についての国の負担率二分の一を改めて三分の二とすること。」  次に、道路法の一部を改正する法律案については、一級国道の管理権限を都道府県知事から移管し、事務配分を根本的に変更しながら、その負担割合は旧来の通りとするのは当を得たものでないので、次のごとく修正する必要がある。「第一、指定区間内の維持修繕その他の管理に要する費用についての国の負担率二分の一を改めて三分の二とすること。第二、指定区間内の維持管理に要する費用について昭和三十三年度の特例を廃止すること。」  これに対して建設大臣より、「道路整備緊急措置法案の修正案に関し、第一及び第三の点について地方財政の再建のための公共事業にかかわる国庫負担等の臨時特例に関する法律が、昭和三十三年度までの時限立法であるので、これにのっとって道路事業も同法の一環として考えているので、この際、明定することには賛成できない。また、第二の未経過利子の点は、他の特別会計の例もあるので、国の負担とすることは適当とは思わない。しかし、政令を定めるときによく考慮いたしたい。」道路法の一部を改正する法律案についての修正案に関し、「同様の趣旨賛成できないが、今後においては、よく検討して行く」旨の発言がありました。  次いで、政府提出三法案及び修正二案について一括して討論に入りましたところ、自由民主党を代表して西田委員は、「修正案に反対し、三法案に原案通り賛成する。ただ、政府は次の点を検討善処すべきである。すなわち、五カ年計画の策定及び実施に当っては、一、計画の完全実施をはかるため、その内容工事費でなく、物価、貨幣価値に左右されない工事事業量をもって示すこと。二、本計画が地方の産業開発計画と密接な関連を有するにかんがみ、地方公共団体の意思要望を十分採用すること。三、政府部内の権限調整をはかること。特に、北海道開発庁長官の道路整備計画樹立の権限との競合を除去し、本計画の完璧を期すること。四、財源確保に万全を期するとともに、努めて年度事業量の均分化をはかること。五、地方負担の過重が本計画実施を阻害しないようにするとともに、都道府県の単独事業の遂行をも可能ならしめ、かつ昭和三十四年度以降の改築修繕に関する国の負担について三十三年度と同様の考慮を払うとともに、主要幹線道路等の整備に著しい地方的差別を生ぜざるよう措置すること。六、雲譲地帯の交通確保のため、地方道、市町村道に対しても除雪補助の道を講ずること。以上六点につき、政府善処を期待して賛成する」との意見が述べられました。  次いで、緑風会を代表して村上委員から、「修正案反落、政府原案賛成」の旨発言がありまして「なお、本五ヵ年計画によれば、地方公共団体負担は三千三百億円に達するにかかわらず、地方の道路財源である地方道路譲与税、軽油引取税の五カ年間の税収入見込みは千二、三百億円に過ぎず、本計画が地方財政に及ぼす圧迫は重大であって、本計画実施を阻害するおそれがある。なお、本法案趣旨から見るに、直轄工事費の全額国庫負担を原則とすべきである。また、道路整備特別会計設置の趣旨が、きわめて不徹底である。緑風会は、先年、揮発油税値上けの際、揮発油税二十カ年くらいの観収額を想定し、これを元利償還に充当する建前をもって最初に巨額の整備資金を確保し、短期間に道路整備を遂行することを主張してきたのであるが、これに比して今回の構想がはなはだ消極的である等、幾多の問題を包蔵しているが、この…法案は、わが国の道路整備を数歩前進せしめ、経済基盤の強化に資するものであるから、近き将来において、政府善処、断行を強く要望して本法案賛成する」旨、発言がありました。  かくて討論を終結し、まず、田中委員提案の、道路整備緊急措置法案及び道路法の一部を改正する法律案に対する修正案二件について採決いたしましたところ、少数をもって否決されました。  次いで、道路整備緊急措置法案、道路法の一部を改正する法律案及び日本道路公団法の一部を改正する法律案、以上、三法案を一括して採決の結果、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  さらに西田委員から、自民、社会、緑風三派共同提案にかかる付帯決議案が提掛され、採決の結果、全会一致を櫓って、本委員会決議とすることに決定いたしました。  その内容は、   政府は、本道路整備五カ年計画の確実な実施をはかるため、道路整備費の財源の確保に遺憾なきを期するとともに、地方財政の実情にかんがみ、将来、次の点を検討し善処すべきである。   一、国と地方公共団体の財政状況を十分勘案して都道府県の単独事業の遂行を可能ならしめるよう配慮すること。   二、昭和三十四年度以降の道路の改築及び修繕に関する国の負担金の割合及び補助金の率については、昭和三十三年度と同様の考慮を払い、地方負担の過重が道路整備の促進を阻害することのなきょう措置すること。というものであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  43. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 三案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。田中一君。    [田中一君登壇拍手
  44. 田中一

    ○田中一君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程の道路に関する三法案、すなわち道路整備緊急措置法案、道路法の一部を改正する法律案、日本道路公団法の一部を改正する法律案に賛意を表するものであります。  一昨年来朝いたしました米国のワトキンス調査団は、離国に際して、日本に報告をして参っております。その内容は、「日本の道路は信じがたいほどに悪い、ことに工業国としてこれほどまで完全に道路網の計画性を無視したものは、耳本一以外の国にはない」と、かように言って帰っております。  わが国に積極的な道路整備の道が開かれたのは、昭和二十八年、自民、社会の議員立法として衆議院に提案されたものでございましてこれは、今ここのひな壇にすわっている田中角榮君が提案説明をいたしましてそうして大蔵、建設両省の非常な抵抗があったにかかわらず、参議院におきましても、この法律案の成立を期したのでございます。これは現在、建設小六法には抜いてございますけれども、この意図は、政府が、当然法律が変るという前提のもとに、もう抜いております。従って発見には苦しみますけれども、道路整備費の財源等に関する臨時措置法という法律がもとをなしております。従って、いわば日本の道路整備の案というものは、国民の総意によって、政府に対して道路整備の促進を命じたというのが初めでございます。  このたび提案されました三法案は、第一次五カ年計画の第五年目でございます。道路整備費の財源等に関する臨時措置法、これによって五カ年計画をもって道路の整備を行なえということをこの法律で命じております。そうしてその第一次五カ年計画の第五年目が、本年、三十二年でございます。従って政府は、第二次五カ年計画ということを言っておりますけれども、これは、第一次五カ年計画の五年目、それを第二次五カ年計画の初年度、こういう工合に立案されております。そうして、岸首相も、地方に参りますと、この道路整備五カ年計画が自民党政権の唯一の重要政策であるかのごとき発言をなし、宣伝をして回っておりますけれども、その内容をつぶさに検討してみる場合には、まことに驚くへき欺瞞と申しますか、欠陥を持っておるものでございます。   まず第一に、今、委員長報告したように、政府は、九千億の巨費を投じて五カ年計画を立てると言っておりますけれども、これはうそでございます。この五カ年計画、九千億という中には、地方公共団体が単独で行うところの九千百億というものを含んでおります。そうしてまた、千九百億というこの事業計画というものは、五カ年計画には入っておりません。実態というものは、七千百億が五カ年計画の金額でございます。さらにまた、七千百億と言われておりますところの事業費の中におきましても、第一次五カ年計画におきましては、時限法、すなわち道路法に定められておりますところの二分の一の負担率というものを軽減するために、道路の整備に要する費用についての国の負担金の割合等の臨時特例に関する政令によりまして、二分の一を四分の三ときめております。これが第二次五カ年計画の初年度、すなわち第一次五カ年計画の五年目だから、これはこのままやっておって、来年は何とか考えますということを言っておりますけれども、新しい計画ができた場合には、第一次計画というものは、御破算になるのは当然でございます。従って、当然、第二次五カ年計画を策定し、そうして地方の負担割合というものをきめるならば、この特例というものを失効をさせまして新しい第二次五カ年計画に見合う負担率というものをきめるのが当然でございます。ことに、もしも道路法で規定しておりますような負担率に明年度から戻るものといたしますならば、地方の負担というものは、六百億というような巨大なる金額が地方負担となるのでございます。従って、地方負担がきまらなけれ伸ば、第千次五カ年計画というものは策定されるはずはございません。従って、今、政府がやっておりますところの第三次五カ年計画の初年度というものは、第一次五カ年計画の五年目にすぎないのでございます。なぜこういうものを急速作りまして国民の前に示したかと申しますと、これはむろん、最近解散が近いというようなことから、国民に訴え、国民に期待させる、まあ選挙対策法案ということに言わざるを得ないのでございます。  しかしながら、私も、道路整備というものは、一日もゆるがせにすることはできませんので、社会党としては、これらの欠点を補い、さらに、地方自治体の協力と整備意欲を喚起しようというために、先ほど委員長報告した通りの修正案を出しました。その修正案の内容は、第一に、緊急措置法におきましては、第二次五カ年計画を通じて、現行の措置と同様に、改築については四分の三の国庫負担をせよ、第二につきましては、修繕でございますが、国道の管理権を国が取り上げる、しかも、高率の地方負担を課するのは、地方財政の実態から見まして不可能なことでございます。これを少くとも現行の二分の一の補助を国が三分の二を負担するようにというのが第二点でございます。第三点は、維持管理昭和三十三年度、特に国の負担を二分の一から三分の一に減じておりますけれども、これも前と同様の理由によりまして、三分の二に引き上げたのでございます。同時にまた第四点といたしましては、道路整備特別会計が資金運用部等から、直轄工事負担に見合う額、これは地方が負担する額じゃございません、見合う額でございます。見合う額を先借りをしようというのでございます。現行制度では、当年度、金を借りましても、次年度から金利を払えばよろしいのでございます。ところが、今度の特別会計が借りるところの資金というものは、最初に前借りをして行こうという考え、そうしてその金利は地方に負担させようというのでございます。ことに国が借りる場合には、年利六分の金で借りて、地方にそれを肩がわりされる場合には、六分五厘の金利で交付公債を発行させようというのでございます。このように未経過利子をも地方の負担にさせようというのは全く不当でございます。そこで、こういうものはすべて国が全額負担せよ、かような修正を第四点としていたしたものでございます。この修正に対しましては、名前を言いますと、これはまた、はなはだ問題がございますから申しませんが、良識ある参議院の建設委員の方々は個人的にはことごとく賛成をしてくれました。まことにわが意を得た修正案であるので賛成をしたい、したいが、党に持ち帰りますと、これは相ならぬというようなことになったらしくて以上、ことごとく反対の結論は、今、委員長報告の通りであります。はなはだ了解しがたいものでございますけれども、これまた、われわれも少数党でやむを得ません。  今回立案されましたところの第二次五カ年計画、この地方負担の問題を申しますと、第二年度以降に決定されております七千百億の中核となるガソリン税収入額の算定、これは自治庁並びに大蔵省おのおの意見が違っております。かつ、企画庁の経済五カ年計画から出発してのこの計画が立てられておりますけれども、その関連の具体性が明確を欠いております。このような抽象的な計画は、必ず毎年度の財政事情に支配されまして、こま切れ的な予算となり、財務官僚の独善的なふるまいによって、結局成果が得られないということが考えられるのでございます。現に、第一次五カ年計画は、二十九年度から開始され、本年三十三年度は最終年度でございますけれども、なぜ四年で打ち切ったか。新たに第二次五カ年計画を立てる必要があるならば、現在までにやっておりましたところの計画がどうなっておるか。三十三年度が完全に遂行されるものと見ましても、進捗率は七七%でございます。私は、このような事態が起きることを心配するのは、鳩山内閣が、かつて国民に選挙対策として訴えましたところの住宅政策、四十二万戸を建てると言ったあの声明から見ましても、実際の財政資金によって作られたものは、十七万戸、残りの二十五万戸は、全然財政資金に関係のない国民の自力建設によるところを算定しているのでございます。こういう手品やからくりが、またこの中に入るのではないかということを憂えるものでございます。また、公営住宅の三カ年計画にいたしましても、進捗率をはるかに下回っております。ことに建設当局に聞いてみますと、この理由は何か、この理由は、資金がないから、予算がないからと、こう言っております。国会の承認を受けた三カ年計画が、施策の貧困によって完成されないということは、ここにも見られるのでございます。従って、羊頭を掲げて狗肉を売るというそしりは免れ得ません。  しかしながら、本法案に対しますところの賛意を表明する点が二、三ございます。わが社会党は、国道、地方道を問わず、重要幹線は国の完全な直轄管理にいたしまして、そうして国の経済伸張のためにはかるということを主張しております。従って、今回の一級国道を国の管理に移したことは、わが党の主張に一歩近づいてきたものであるという点が、まず歓迎する点でございます。しかしながら、さきに述べましたように、地方負担の過重を強いながら、国の直轄管理であるということを誇称するのは、この点において問題がございます。  第二に、政府の性格として、財政上一般会計をもって遂行することができないというならば、次善の策として、道路整備特別会計を設けたことは、これも一応前進の姿として了承するのでございますが、これまた、地方自治体の現状から見て地方負担金の前借りはやむを得ぬといたしましても、六分の利子で借りたものを、六分五厘で返させるというような措置は、絶対にわが社会党のとらないところでございます。さらに進んで、負担金は無利子とするのが当然でございます。  第三に、有料道路をも含めまして第二次五カ年計画を立てようとしている点、全国の道路網の構成上、いたし方がない措置とするならば、その工事費、完成後の運営に適正を期し、一刻も早く無料公開の原則、この道路の本来の姿に立ち返るようにするよう措置されんことをお願いいたしまして、本三法案に対しましては、賛成をするものでございます。(拍手
  45. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。   これより三案の採決をいたします。三案全部を問題に供します。三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  46. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって三案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  47. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して国立学校設置法の一部を改正する法律内閣提出衆議院送付)を議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。立教委員長湯山勇君。     —————————————    〔湯山勇君登壇拍手
  49. 湯山勇

    ○湯山勇君 ただいま議題となりました国立学校設置法の一部を改正する法律案につきまして、文教委員会における審議経過とその結果を御報告申し上げます。   まず、本法案の提案の理由とその内容を簡単に御説明申し上げます。本法案は、昭和三十三年度における国立大学の学部、大学院、国立の短期大学並びに大学付置の研究所の新設等について規定するものであります。  改正内容の第一は、東京大学に薬学部を設置することであります。第二は、弘前大学、信州大学及び鳥取大学に大学院を置き、医学研究科を設けることであります。第三に、久留米工業短期大学を新設することと、大阪外国語大学に短期大学部を設けることであります。第四は、東京大学の理工学研究所を航空研究所に転換すること、東京工業大学の建築材料研究所と窯業研充所とを統合して工業材料研究所と下ること、及び共同利用の研究所として、大阪大学に蛋白質研究所を新設することであります。委員会審議におきましては、各委員会から、本法案が大学設置審議会の正規の答申を待たすして提案されたこと、短期大学の設置と政府が考えている専科大学との関係共同利用の研究所の運営を円滑にすること、関西研究用原子炉の設置が、本法案規定されなかった理由及びその設置の場所と時期など、重要な諸問題について、きわめて活発な質疑が展開され、政府からも熱心な答弁がなされました。   これらの質疑応答の詳細は、会議録によって御承知願います。質疑を終り、直ちに採決をいたしましたところ、本法律案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  50. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 別に御発言もなければ、これより本案採決をいたします。  本案全部を問題に供します。本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  51. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  52. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、昭和三十三年度一般会計予算  昭和三十三年度特別会計予算  昭和三十三年度政府関係機関予算  以上、三案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。予算委員長泉山三六君。    〔泉山三六君登壇拍手
  54. 泉山三六

    ○泉山三六君 ただいま議題となりました昭和三十三年度一般会計予算、昭和三十三年度特別会計予算及び昭和三十三年度政府関係機関予算の予算委員会における審議経過並びに結果について御報告申し上げます。  これら三案は、一月二十九日、国会に提出せられ、予算委員会におきましては、二月六日、一萬田大蔵大臣より提案理由の説明を聴取し、三月三日、衆議院よりの送付を待って、翌四日より本審査に入りました。自来、委員会を開くこと十八回、また、四日間にわたって分科会を開き、慎重に審議を重ねましたが、さらに、この間二日間にわたる公聴会を開くとともに、山際日本銀行総裁を参考人として出席を求める等、審議の周到を期した次第であります。  申すまでもなく、予算委員会における質疑は、政府の施政全般を通じ、きわめて広範多岐にわたって行われたのであります。ことに、人工衛星並びに大陸間弾道弾等によって象徴される新時代を背景とした、わが外交の基本方針並びに防衛問題、難航を続ける日ソ漁業交渉、日韓会談、日中貿易協定等の処理についての、熱心なる質疑が行われましたことは当然であります。経済問題につきましても、最近における内外の諸情勢にかんがみ、景気回復の時期、政策転換の要否などをめぐり、幾多の論議が戦わされたのでありますが、順序といたしまして、予算の内容について簡単に触れておきたいと存じます。  すでに本会議におきまして一萬田大蔵大臣より概略の御説明がありました通り、財政規模につきましては、昭和三十三年度一般会計予算において二百六十一億円の減税を行いまするが、なお、歳入歳出は一兆三千百二十一億円余と相なり、前年度当初予算に比べ、一千七百四十六億円の増加と相なっております。しかしながら、神武景気のなごりである一千一億円に上る前年度剰余金を、一般会計歳出財源に充当することは適当でないので、国債償還費等、法定の使途に充てるものを除く四百三十六億円をもって経済基盤強化資金外五つの基金を新設して、これを保留し、さらに、三百十億円を国債費を増加計上いたしておりますため、一般会計歳出の実質的増加は、前年度に比べ一千億円にとどまっております。また、特別会計につきましては、新たに道路整備特別会計が設けられるため、その総数は四十一会計となり、その歳入総額は三兆一千三百七十四億円、歳出総額は二兆九千九百四十九億円と相なっております。  次に、政府関係機関におきましては、従来、中小企業信用保険特別会計で行なっておりました事業を吸収して、中小企業信用保険公庫が新設せられますために、政府関係機関の総数は十二と相なり、その収入総額は一兆二千三百六十六億円、支出総額は一兆一千六十九億円と相なっております。また、財政投融資につきましては、三千九百九十五億円を予定し、前年度当初計画に比し、九十六億円余の減少となりますが、前年度の実行額に比べると、ほぼ同額であり、明年度は特に資金の重点的配分と、その弾力的運用及び効率的使用とに配意せられております。  以下、右の予算三案に対する重点的質疑応答の大要について御報告申し上げます。  まず、予算の基礎となる経済の見通しについては、「最近の世界経済の動向から見れば、わが国経済はさらに不況が続くものと思われるが、どうか。国際収支はすでに黒字に転換したのであるから、予算編成時の考え方を改め、この際、国際収支の均衡よりも、むしろ国内均衡に重点を置き、国内需要を拡大するための減税、賃金引き上げ、公共事業の拡大、中小企業振興等について予算の手直しをすべきではないか」との質疑がありましたが、これに対し、大蔵大臣より、「今後の世界経済については、アメリカの景気対策等により、七月の新会計年度を区切りとして、徐々に好転する見通しであり、わが国経済も不況というよりは、伸び過ぎを是正している段階で、四月ないし六月で調整期は終り、その後は悪くはならないと考える。もっとも、実際の推移には、ある程度のズレはあろうが、政策的に、かかる方向に持って行きたいという従来よりの考え方は変えていない。国内均衡については、方向としては異議はないが、財政上一挙にそこまでは行けないので、まず経済を健全化して後に考えたい。国際収支一億五千万ドルの黒字達成は、アメリカ輸出入銀行等よりの短期借款を返済する等からも、ぜひ必要である」との答弁があり、また、山際日本銀行総裁よりも、経済の見通しについては、おおむね同様の答弁がありましたが、特に、「現実の政策に当る者としては、海外経済のわが国経済に及ぼす時間的ズレを考慮し、経済界の実態に注目しながら、調整措置をとるべきであり、私としては、年末には日本経済が上昇することを念願する。外貨は、表面的には相当多額と相なっておるが、内容的には、これを資金化できないものも、かなりあるので、現在の残高では、変動の多い日本経済を運営する運転資金として、まだ不十分と考える」旨、答弁がありました。  次に、予算規模につきましては、「今回の予算は、圧力団体に屈して総花的放漫予算となり、対国民所得の比率は、数年来の低下より上昇の方向に逆転し、予算編成方針にいう引き締め方針はもちろん、新長期経済計画にいう財政消費支出を引き下げ、行政投資、財政振りかえ支出の増加をはかるという方針は、計画の初年度から、すでに破られているのではないか。また、財政投融資は、中小企業にはいずれも減額、大企業にはいずれも放漫になっているが、これでは中小企業対策を重点政策としているとは言えないではないか」との質疑がありましたが、これに対し内閣総理大臣及び大蔵大臣より、「予算規模は、形式的には大幅に増加し、国民所得との比率も前年より上回っているが、来年度は国民所得の伸び過ぎを押える反面、予算大綱に定めた重要施策に特に重点を置いたためである、明年度予算は、長期計画上は、最も好ましい姿とは言えないが、次年度以降、ますます計画に接近し、平均において五カ年計画の目標を達成するよう努力する。財政投融資も、民間資金の減少を考え、財政資金を増額いたしたいのである。中小企業金融についても、昨年来、特別の配慮を加えており、明年度は回収金が多いので、実際の貸付規模も拡大される上、信用保証制度拡充により、支障のないようにしている」旨、答弁がありました。  次に、いわゆるたな上げ資金につきましては、「財政法上種々の疑義があるが、将来もかかる形を原則とするのか、むしろ減税等の財源に回すべきではないか」との質疑がありましたが、これに対しましては、大蔵大臣より、「今回は、経済に対する財政からの刺激を控え目にするため、特に設置したものであり、経済基盤強化資金は、将来雇用の機会を与えることをも意図しているが、ただいまのところ、これを使う見通しはない、使う場合には、必ず補正予算を組むことにしている。資金とはせず、予備費とするのでは、支出を抑制する趣旨に沿わないと思う。減税に充てるべきであるとの議論もあるが、異常な経済の成長による歳入増を、そのまま減税または経営歳出に充てるのは適当でないため、特に工夫した措置である。なお、景気循環に対する財政面からの調整的な制度については、今後なお検討を加えたい。今回の減税は、税制調査会の答申によったものであるが、低額所得者、小法人等に対する減免税等については、税制全般の均衡の問題として、将来、根本的な改正を検討する決意を固めている」旨の答弁がありました。  次に、社会保障関係費につきましては、「国民皆保険には、いまだ未加入者が相当あるが、これらを加入させる具体的方策はあるのか、政府管掌の健康保険について明年度も赤字補てんを繰り延べているばかりか、国庫補助金をも減額しているが、従来からの公約の違反ではないか。国民年金制度については、まず無醵出年金制度より早急に始めるとともに、厚生年金勘定資金の活用、所得補償基準の引き上げをはかるべきである。また、恩給受給者と動員学徒、準軍属関係者等、その他の戦争犠牲者との取扱いが不均衡ではないか」との質疑がありましたが、これに対し、内閣総理大臣初め関係各大臣より、「社会保障の長期計画は、財源関係もあり、さしあたり国民皆保険、国民年金制度の確立を当面の目標とし、国民皆保険については、今回、その隘路である医療費、地方財政の問題を解決することとしているので、被保険者数は明年度末におきまして、国民健康保険では三千八百四十万人、被雇用者保険でも同じく三千八百四十万人となり、計画最終年度昭和三十五年度末においては、それぞれ四千九百二十万人、四千二百八十万人となって、国民皆保険は達成し得る見込みである。政府管掌健康保険については、本年度も相当の黒字が見込まれるため、経済調整を目的とする予算でもあり、各保険間の均衡を考え、削減する分は他の保険の調整に回し、社会保険全体の伸展拡充により、国民皆保険の方向にさらに一歩を進めんとするものであって、当時とは、情勢が異なっており、公約違反とは考えない。国民年金制度についても、近く社会保障制度審議会、国民年金委員会の答申を待って、厚生年金等、各種年金制度、恩給制度等との調整をはかり、所得補償基準も、生活保護基準、最低賃金制度ともあわせ考え、国民生活水準の向上と見合って、真に老令による生活の安定を確保し得る制度を樹立する考えである。戦争犠牲者間の不均衡については、政府は臨時恩給等調査会の答申の線に沿って、今回、恩給法、援護法の改正を行うもので、大筋ではこれらの問題は解決すると思うが、具体的な事例については、今後もなお専門的な検討を加えたい」旨、それぞれ答弁がありました。  また、文教関係費につきましては、「政府は、小中学校の学級編成の基準に、なお緩和規定を設けているが、明確に五十人以下一本にし、すし詰め教室解消の公約を果すべきではないか、大学の入学難は重大社会問題化しているが、これが対策があるのかどうか」との質疑がありましたが、これに対しまして文部大臣より、「すし詰め教室の解消は、明年度は、財政上やむを得ず暫定基準を設けたが、中学校はニカ年、小学校は五カ年計画で実行に移したい。大学の入学難についても、最近は地方大学へ希望者が漸次増加しつつあり、また、理工科系の学部学科の増設、入学試験選抜方法の改善、地方国立大学の地方的特異性の発揮等を進めることにより、漸次解決に努める方針である」との答弁がありました。  次に、防衛関係費につきましては、「ロケット兵器の完成等により、米国側から、わが国の防衛方針、整備計画等に変更を要求せられているのではないか、陸上自衛隊の増強等も時代おくれではないのか」等の質疑がありましたが、これに対し、防衛庁長官より、「将来の戦争については、局地戦争の公算も多いと考えられるので、昨年の六月設定した基本方針を変更する必要は認めない。最近、各国で地上軍の削減が行われているが、これは新兵器による代替であり、一般軍縮ではない。わが国の今回の増強は、科学の進歩に応じ、時代おくれとならないよう、質的増強に重点を置くものであって、新兵器の時代になっても、この程度は防衛の根幹として必要である。三十四年度の陸上部隊の増強は未定であるが、十八万は最小限度必要と考える。集団保障体制においても、憲法上の制約、日本防衛を目的とする日米安保条約の建前からも、海外派兵、攻守同盟加入等は不可能である。また、日本防衛のため米軍による原水爆持ち込みは、これを拒否する。また、わが国自衛隊も核装備はしないという確固たる方針である。エリコン、サイドワインダーも研究実験のためのもので、国産化は考えていないし、米国からの新兵器供与についても、私としては強く要望していない」旨答弁がありました。  次に、賠償等特殊債務処理費につきましては、「インドネシア賠償は、革命政権の関係もあり、批准は慎重にすべきではないか。清算勘定方式による貿易は焦げつきやすいので、根本的に再検討する必要はないか、また、政府は最近、東南アジアについて、賠償政治借款政策に転換しつつあるが、かかる性急な貿易振興の形をとる必要があるのかどうか」との質疑がありましたが、これに対し、内閣総理大臣及び大蔵大臣より、「インドネシア革命政権は、本質的に、スカルノ政権そのものを否認するものではないと思われ、平和条約、賠償協定については、各政党間に有力な異論もないので、批准をおくらせることは、本問題の解決に適当な方法とは思わない。清算勘定方式は、戦後の貿易振興のための特別な協定であり、今日では、国際経済情勢も正常化して参り、早く廃止する方向に向いたいが、実際問題としては、まず、勘定残高の返済を確保して後、相手方の国情、経済事情に即し検討を加えたい。海外投資は、最近、国内投資の減少に比べ、著しくは増加しているので、まず、わが国の開発に力を入れ、余力があれば海外に向うよう、今後は慎重を期したいが、東南アジアについては、国交回復後の共存共栄のため、貿易並びに経済に対する協力関係をはかることを本旨としている」との答弁がありました。  また、貿易に関し多くの論議を呼びましたのは、日中貿易協定の問題でありました。「政府が民間協定を承認する効果は、直接相手国に及ぶものかどうか、覚書中には、通商代表部員の特殊待遇や、国旗掲揚の権利などの字句があり、これを認めることは、事実上の日本政府による中共承認と見るべきではないか、わが国と正式国交を結んでいる台湾政府の了解が得られるかどうか」などの質疑がありましたが、これに対し、内閣総理大臣及び関係大臣より、「中共との関係については、貿易を促進することに努力するが、中共政府承認しないという従来の方針は、何ら変るものではない。今回の民間貿易協定が、この方針にかない、両国の貿易を円滑ならしめるために、政府はこの協定に支持を与える方針であるが、その相手方は協定の当事者であり、中共政府を事実上承認することにはならない。台湾政府も、わが方の立場を説明すれば、必ず理解を得られるものと思う」との答弁がありました。  最後に、道路整備特別会計につきましては、「五カ年計画に基き新設せられるにかかわらず、道路整備緊急措置法案では、明年度分の国庫負担率、補助率のみを規定し、その後は別に法律で定めるといたしているのであるが、いつ、いかように定めるのか」との質疑がありましたが、これに対し、大蔵十臣を初め関係大臣より、「公共事業対する高率補助が、明年度末までの時限立法のため、明年度はそれによったが、その後については、整備計画実施状況、地方財政の実情等を勘案し、事業計画の完全な遂行ができるよう、昭和三十四年度予算編成時までに、関係各省間の意見調整する」旨、それぞれ答弁がありました。  かくて本日をもちまして質疑を終了し、討論に入りましたところ、まず、日本社会党を代表して坂本委員より反対、自由民主党を代表して伊能委員より賛成、十七控室の八木委員より反対、緑風会を代表して森委員より賛成の旨、それぞれ申し述べられました。  これをもって討論を終り、採決の結果、予算委員会に付託せられました昭和三十三年度予算三案は、いずれも多数をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手
  55. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 三案に対し、討論の通告がございます。順次、発言を許します。中田吉雄君。    〔中田吉雄君登壇拍手
  56. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 私は、日本社会党を代表しまして昭和三十三年度一般会計予算、特別会計予算、政府関係機関予算の三案に対し、反対討論をいたさんとするものであります。  岸内閣は、少くとも昨年の春、石橋内閣から引き継いだ予算案が国会を通過いたしましたならば、直ちに解散を行うか、おそくとも昨年の秋には解散を断行し、しかる後、昭和三十三年度予算に対処するのが民主政治のルールーであったと言わなくてはなりません。(拍手)しかるに、岸総理は、解散回避のための口実を設け、三度も外遊をし、内政をおろそかにし、アイクやダレスのごきげんをとることによって、岸政権のてこ入れをしようといたしましたことは、内政と外交の本末を転倒するも、はなはだしいと言わなくてはなりません。従って岸総理が政局担当以来ここに一年、その施政は、わずか三カ月の短命であった石橋内閣にも劣り、解散回避と外遊に終始し、今や、だれ一人として岸内閣の長期政権を認めるものはなく、かくて、党と内閣の生命である三十三年度予算編成において、内閣の弱体ぶりを遺憾なく露呈し、戦後最悪の予算となったことも、また必然と言わなくてはなりません。(拍手)  政府は、昨年九月十日の閣議で、明年度予算案に関する構想決定したが、一月二十日の昭和三十三年度予算編成方針と最終案に至っては、岸内閣とは違った内閣の作ったものではないかと疑われるほどの変り方であって、これでは、長期計画や予算編成方針は、あってなきがごときものと言わなくてはなりません。政府は、三十二年度に比べ、一千七百四十六億円の増であるが、公債償還費等を差し引けば、実質的な増は一千億と称しているが、一般会計だけでも、三千二百十一億に及ぶ補助費、委託費に大斧鉞を加えることもなく、本来、三十三年度予算に一計上すべき三十二年度、三十三年度分、の食管の赤字補てん分百五十億円を補正第二号に、社会保険費十六億円、義務教育国庫負担金四十二億円、旧軍人遺族等恩給費六億円を補正第三号に、以上合計二百十四億円を補正に回し、三十三年度予算規模の膨張をカムフラージュしょうとしていますが、実質的な歳出増一千億円の方針は、完全に崩壊していることを指摘しなくてはなりません。また、剰余金のたな上げも、四百三十六億円の全額を一括し、景気調節のため、経済基盤強化資金として保留する当初の方針は守られず、うち、この種資金として計上されているものは二百二十一億円にすぎず、他は五つの基金に繰り入れているが、これは財政法上疑義があるばかりでなく、実質的な歳出増で、第二の方針も完全にじゅうりんされておると言わなくてはなりません。  また、財政投融資においても、大蔵省の原案自体が、すでに編成方針でうたわれた本年度実行計画程度という決定を百五十億も上回っているのに、さらに、それが一月二十日の政府案となると、三千九百九十五億円と、実質的に四百七十一億円の増加となり、さきに繰り延べられた三十二年度分の二百六十億円の解除分とあわせ考えますならば、六百億ないし七百億の大膨張となり、大資本への忠勤ぶりを遺憾なく発揮し、これは過剰生産恐慌を促進すべく、予算編成方針は跡形もなくついえ去ったと断ぜざるを得ません。(拍手)イギリスのソーニクロフトは、ポンド危機を守るため、職を賭して反対しました歳出増は、予算規模のたった一%であったと伝えられておりますが、これでは、わが国では大蔵大臣が何人あっても足らないと言わなくてはなりません。しかも、一萬田蔵相が、予算ぶんどりに悪戦苦闘をしているのに、かつて吉田総理が大蔵大臣を強力にペックアップ、復活要求を押えたのに反し、岸総理は、あたかも党内野党のごとく拱手傍観しているだけでなく、みずから圧力団体と提携して軍人恩給等を大幅に増額したことは、不見識、無責任きわまる態度と言わなくてはなりません。これを要しまするに、本予算案は、岸内閣が最近の軍事情勢の大きな変化、世界景気の後退等について、十分な見通しと、透徹した政治信念と政策を欠き、予算編成に当って右往左往、無定見を暴露したもので、国民の期待を裏切ること、はなはだしいものとして、わが党は断固反対するものであります。(拍手)  第二に、原爆とミサイル兵器の時代に、対米従属の地上軍増強の政策であります。防衛庁費は一千二百億円と、前年度に比べ百九十億円と大幅な増加で、一段と再軍備政策をとっています。しかも、これは陸上自衛隊一万名を含む一万九千余名の増員をはかり、合計二十四万二千余名、一個師一万として戦前の二十個師をはるかに上回る膨大な計画であります。言うまでもなく、世界は今やミサイル時代であり、地上軍の価値は著しく減殺しつつあります。ソ連は、一九五五年と六年に削減された百八十四万のほかに、新たに三十万を削減、米国は、一九六〇年までに八十万の兵力削減計画を立てており、英国は、現在の六十二万五千から  一九六〇年には三十七万五千に大削減の予定であり、中共も、昨年八十万を削減したと言われ、世界広しといえども、昨今、地上軍の増強をはかっているのは、わが岸保守党内閣あるのみであります。かかる時代錯誤の岸内閣に、わが国の安全保障を求めることは、木によって魚を求めるものと言わなくてはなりません。原水爆の時代であるから、全面戦争はともかく、局地戦争に備え、この程度の自衛力は必要であると称しているが、しかし、核兵器とミサイル時代に、かかる主張が根拠薄弱でありますことは、太平洋戦争末期に、本土決戦に備えた二百万の大軍も、たった二発の原爆で無条件降伏をしたことを知らなくてはなりません。自由民主党内においてすら、良識ある方々は、ミサイル時代に、今さら一万の増員でもあるまいと反対がありましたが、大勢を制するに至らなかったのは、アメリカのさしがねで作った三十三年度から五年度までの三カ年の防衛整備計画に基き、対米関係を考慮の上、無用とは知りつつなされるアメリカのための再軍備であり、岸内閣の安全保障となっても、断じてわが国の安全保障にならないことは自明と言わなくてはなりません。また、過般マニラで開催されたSEATO理事会に出席したロバートソン国務次官補が、ひそかに日本に立ち寄り、本年度の陸上自衛隊一万増強の計画を中止し、ミサイル装備の拡充に切りかえてはいかんと申し入れをし、日本側は、岸総理、藤山外相らは、本年はともかく、来年度は要望に応じ得るなどと回答したと伝えられております。国会審議のさなかに、外国の指示によって計画変更を余儀なくされるごとき防衛計画を提案一する政府の無定見を、わが党は断固糾一弾ずるものであります。軍備での安全保障を考えます限り、最近の西ドイツに見るごとく、核兵器と核装備とミサイル化は必然であり、わずかではあるが、今回三億円計上されたミサイル予算は、将来重大な意義を持つものと言わなくてはなりません。しかし、米ソの核兵器と、ミサイルの包囲下にあるわが国が、自由民主党のごとく米国につき、IRBMと、ICBMを持つソ連を仮想敵国にすることは、何らわが国の安全保障にならず、思想や制度は違っても、わが党のごとく、中ソを敵にしない自主独立の善隣外交こそ、最善の安全保障と言わなくてはなりません。従ってわが党は、ミサイル時代に、役にも立たない自衛隊は漸減すべく、その一環として、まず旧警察予備隊程度に削減し、他は直ちに平和建設隊に転換することを強く主張し、再軍備予算に反対するものであります。  次に、終戦以来十三年、講和発効後六年を経過しているのに、今なお防衛分担金二百六十一億円を負担している点であります。一般方式より三十億円よけい追加削減されているとはいえ、これは一万名増員の振りかえであり、しかも、この削減に対し、一萬田大蔵大臣は粘り強く交渉したのでありますが、岸総理は、対米関係をおそれ、はなはだ冷淡であったと伝えられているが、ドイツのアデナウアー政府のブレンターノ外相は、昨今、防衛分担金を自主的に予算書から全面的に抹殺し、スパークNATO事務総長に通告している強硬な態度と比較しまして、自主性の喪失はまことに遺憾と言わなくてはなりません。(拍手)  第三に、上に厚く下に薄い減税政策であります。国税における租税特別措置による減収八百七億円、地方税の非課税の減収およそ三百七十五億円、合計一千百八十二億円も、大法人並びに資産者階層には、税法上の治外法権的優遇を与えており、従って、この恩恵に浴しない中小企業、農民、労働者等の税負担は、著しく高いのが特徴であります6本来、この税法上の恩恵は、いわば隠れたる補助金とも称すべく、わが国経済が、ここまで復興した現段階において特別措置や非課税は、最小限にこれを整理し、やむを得ないものは、補助金に引きかえ、全体の税率を大幅に引き下ぐべきであります。しかるに、政府今回の減税は、法人税、相続税、長期貯金減税等二百五億円は、大法人、高額所得者本位であって、五人家族年収三十二万までを免税とし、累進税率を引き上げ、法人税にあっては、低額所得五十万円以下の税率を三〇%に引き下げる等を主張するわが党と、鋭く対立するものであります。二級酒類の税率をわずかに引き下げても、酒に酔わせて大衆をごまかすことは断じてできないのであります。しかも、わずかな酒類の税率引き下げも、そっくりそのまま小売価格を引き下げず、原料代の値上りを口実に、卸値段を優遇せんとするがごときことはわが党のとうてい容認しないところであります。しかも、政治資金規正法を見ますると、国から租税特別措置補助金、財政投融資の恩恵を受けている大法人が、自由民主党に数億の政治献金をしているが、今回、法人税一律二%引き下げは、昨年の特別措置整理の復活といってもよく、政治資金源を培養する選挙目当ての減税のおそれなしとしないのであります。  従って、国から租税特別措置補助金融資等の恩恵を受けているものの政治献金の規正なしには、せっかくのあっせん収賄罪も、ざる法案と言われても仕方がないと思うわけであります。なお、資本金一千万円以上の一万二千五百の法人は、配当金一千百六十億円にすぎないのに、実に八百億円の交際費を使っており、損金不算入があるとはいえ、大半は課税対象外となっておることは、あまりにも大法人の優遇と言わなくてはなりません。わが党は、文教政策を初め、国民年金、健康保険、結核対策、生活保護、失業対策等、社会保障の拡充強化の財源確保のためにも、租税特別措置法の徹底的な整理を主張するものであります。かかる、上に厚く下に薄い減税は、国税だけにとどまらず、地方税についても同様であります。昨年、一千億減税が、勤労者の住民税の減収にはね返るというので、税率を大幅に引き上げ、減収を防止していながら、今回、法人税の二%の減税が、法人住民税の所得割りべの三十億の減収は、税率を、これをそのまま据え置いておりますが、昨年と対比して、はなはだしく片手落ちと言わなくてはなりません。  さらにまた、市町村長等の強い反対にもかかわりませず、あっという間に、昨年、一%下げているにかかわらず、さらに今回、一挙に二%べと、木材取引税の税率を半分に引き下げています。これは、山林業者等の圧力団体に屈した減税であって、明らかに選挙対策として、地方税を二、三にしたものと言わなくてはなりません。  また政府は、今回、河野長官の主唱で、自転車税、荷車税の廃止をはかっているが、以上のごとき大法人、資本家本位の減税から、国民の目をそらそうとしても、それだけでごまかすことはできません。元来、自転車税、荷車税の廃止は、わが党多年の主張であって、いわば今回の措置は著作権、政策の剽窃とも称すべきでしょう。わが党は、非課税制度を大幅に整理し、自転車税、荷車税、住民税、電気税、事業税等、大衆課税の廃止軽減をはからんとするものであって、これらを総合的に実施して、初めて効果があるものであって、これらの一部分だけでは、その一貫性をはなはだしく欠くものと言わなくてはなりません。また、わが党は、個人事業税は基礎控除十五万円を二十万円に、法人事業税はそれぞれ二%の減税をはかる修正案を提出しているが、政府はこれに応じようとしませんが、岸内閣中小企業振興の意思ありゃいなやを疑わざるを得ないわけであります。  これを要しまするに、これでは中小企業の振興はもとより、その資本蓄積等は思いもよらないことで、前近代的な中小零細企業と近代的な巨大産業との、いわばわが国産業の二重構造を救いがたいものとし、わが党として断じてとらないところであります。渋い、きびしいと言われる予算編成が守られているのは、実に労働者、中小企業、農民に対してであってかくのごとき減税には強く反対するものであります。一第四に、道路整備についてであります。政府は、道路整備は予算編成において最重点政策とうたっていますが、総額は六百八十三億円であり、防衛庁費千二百億円の半分にすぎず、また、道路予算は前年度に比べて、揮発油税の自然増収分五十二億円と一般会計からの繰り入れ五十五億円、合計百七億円の増額にすぎず、防衛庁費前年対比百九十億円増に比べれば半分であって道路整備の緊急性に対しては、この程度では全く焼け石に水と言わなくてはなりません。  しかも、明年度は道路整備五カ年計画の最終年度であるにもかかわりませず、さらにその上に道路五カ年計画の初年度を乗っけましたのは、岸内閣には政策らしいものの持ち合せが全くないので、総選挙対策として、急場に看板として掲げたと言っても、決して過言でないわけであります。道路の改築、修繕等につきまして昭和三十三年度だけ国と地方の負担割合をきめているだけで、三十四年度以降は法律こ譲っていますが、これは第二年度以降の地方の負担率を引き上げようとする伏線であり、およそ五カ年計画と言いますからには、五カ年間にわたっての中央と地方との合理的な負担区分を設定しなくてはなりません。また、地方負担分を引き当てに借り入れる五十一億九千五百万円の利子まで地方に負担させることは、交付公債の利子の全免を主張するわが党としては、とうてい容認できないところであります。また、一級道路で国がやる維持、修繕については、半分府県に負担させながら、府県や五大都市に委任された一級国道の修繕、維持費は全部府県や指定市に負担させることは、全くその一貫性を失っていると言わなくてはなりません。五カ年間の地方費は、地方負担は五百八十九億円にも達し、しかも、機会あるごとに地方に負担を転嫁させようということでは、地方財政の面から、道路政策は重大なる蹉跌を来たすことを、今から警告しておかなくてはなりません。  第五に、農林予算についてであります。農林予算は、昨年の九百四十三億円に、土地改良向け出資金六十五億と、合計一千八億と、今年は千億円台を突破したと宣伝されていますが、比率は七七%であって、昭和二十八年の二八二%は言うに及びませず、昭和三十一年度の八四%、三十二年度の七九%より低く、しかも出資金の六十五億は、その利子三億九千万円だけ三十三年度に支出されるので、実質的な農林予算は九百四十六億九千万円、七二%と、戦後最低の比率であり、重点政策の面目いずこにありゃと言わなくてはなりません。また、農林業への財政投融資も、総額三千九百九十五億円のうち、わずかに三百七十億円にすぎません。  さらに、政府は過般、内地の農民より外国の農民に対し、重要なる生産資材である硫安を、肥料審議会の答申と称し、俵当り百三十円も安く売り、その肥料でできた外国の食糧や余剰農産物を輸入して内地の農民を圧迫しています。これでは岸内閣は、日本の農民の内閣でなしに、台湾やアメリカの農民の内閣と言われても仕方がないわけであります。農林人口は四二%を占めるのに、農民への国民所得の配分が二〇%しかありませんのは、断じて日本農民の労働が足らないからではなく、歴代の保守党内閣の農政の貧困を物語るものと言わなくてはなりません。  第六に、軍人恩給と社会保障の関係についてであります。社会保障関係費の総額は一千二百五十七億六千万円と、前年度に比べまして百二億の増額であります。しかし、歳出予算総額の前年対比は千七百億円、一五・五%であるのに、社会保障関係費はわずか八・五%ふえているにすぎません。昨年行なった千億減税の恩恵に浴しないのみか、運賃値上げ等のはね返りで、生活を圧迫されている階層に対して、本年こそ社会保障費の大幅増額をなすべきであるのに、この程度では、社会保障に対する熱意が政府にあるか、疑わざるを得ないわけであります。わが国の貧困層は二百四十六万世帯、一千百十三万人、総人口の一二・四%と、厚生白書はうたっております。一握りの大企業には六、七百億も投融資をふやしながら、政府は、一千万の要生活保護者に対しては、生活保護費を前年に比べてわずか十六億円増加しているにすぎません。また、婦人保護費は、従来も少かったのに七千万円も減額、売春対策に、はなはだ冷淡であることを示しています。これでは四百年の経過を持つ売春制度が、ついに明日から終止符を打つのは、政府の政策によってではなく、自由民主党議員が、多数、売春汚職に連座し、世論がその延期を許さなかったからだといっても仕方がありません。  失業対策費もわずか四十九億円増で、失業者を二十五万と、二万五千人をふやしているにすきません。世界景気の後退のため、失業者の増大は不可避であるのに、政府は、失業対策費を増額せす、反対に、貸本労働協会に十五億円も出資し、労働者階級の懐柔と分裂政策を企図しています。これでは、労働者はパンを求めているのに、石を与えているのが石田労政の本質と言わなくてはなりません。(拍手)  さらに軍人恩給の増額であります。本年度の増額は六十七億八千余万円にとまっているが、四年後には千百億円に達し、文官恩給と合算いたします一ならば千三百億円、国家予算の一割にも及び、社会保障前進に重大な暗影を与えているものであります。軍人恩給のピークであります三十六年の千百億円は、余命率から推算いたしますると、無視し得る程度になりまするには、大よそ今後五十年の歳月を必要とし、加算制度の復活要求、自衛隊の恩給増加等を考えますれば、相当長期にわたって容易に減少しないことが予想されるのであります。また、たとえば東条勝子夫人の公務扶助料は、陸軍大将東条英機としてではなく、内閣総理大臣東条英機として計算され、戦犯の死刑も、公務死として七割増しされ、現に五十八万八千五百六十円を受けておるのであります。しかも一たん決定したものは、財産権等に藉口し、減額はきわめて困難であり、今後、増額は慎重でなくてはならぬ理由がここにあるわけであります。特に公務扶助料の倍率、すなわち不均衡是正の問題であります。たった六千人の文官と、百五十万の旧軍人とを比較し、文官と同じ四十割の倍率を要求しますことは妥当でなく、比較は、一千万人の要生活保護者との均衡でなくてはなりません。数千万の農民、中小企業、労働者等、社会保障の谷間の国民との比較均衡であるべきであります。しかるに、文官と軍人との狭い恩給受給者相互間の比較をもって、ついに岸総理は倍率を三五・五%にされましたが、これは将来の社会保障制度にとって重大な問題を残したものと言わなくてはなりません。これでは現下の財政事情から、広範な農民、中小企業、労働者への全面的な社会保障の実施は、遠くかなたに押しやられ、かくて岸内閣に、貧乏の追放と社会保障の全面的実施を求むることは、きわめて困難であって、貧乏の追放は、岸内閣の追放からと言わなくてはなりません。(拍手)わが党は、この際、軍人恩給の問題に終止符を打ちますために、階級差を撤廃すること、傷痍軍人を厚く遇すること、所得を加味し、社会保障の総合的な実施に支障を来たさないような立場から、交付公債を発行し、かつ厚生年金制度の即時実施とあわせて行わんとするもので、政府の案に対して強く反対するものであります。  第七に、岸内閣の経済外交についてであります。岸内閣のインドヘの百八十億円の円借款、アジア開発基金出資金五十億円に対しては、多大の疑問を持つものであります。政府はその他に、パキスタン、セイロン、フィリピン、エジプト、パラグアイ等の借款を検討しているやに伝えられているが、わが国はすでに外国より、政府、民間合計いたしますならば、きわめてきびしい条件で、長期借款だけでも十八億ドルの借款をいたしておるのであります。外国から借款をしながら、中小企業や農民は、近代化の資金に事欠いておるのに、政治的な円借款を与える余裕があむやいなや、多大の疑問とするところであります。  保守党内閣の一枚看板である東南アジアを中心とするオープン・アカウント貿易は、実に千百億円も焦げつきとなり、これは結局、国民の税金による見せかけの輸出振興であったわけであります。オープン地域の貿易が限界に来、これにかわって賠償貿易、借款貿易を企図しておりますが、これは正常貿易をはなはだしく阻害し、第二の西原借款のおそれもあり、重大な反省を求めるものであります。アメリカからは十億ドルも輸入し、これに反し五億ドルしか輸出しない対米依存の片貿易の当然の帰結であって、これに対しては、中共貿易を初めとする市場転換以外には、その解決の道がないことを指摘しなくてはなりません。しかし、オープンアカウント貿易には機構的な欠点もありますが、しかし、運用によって慎重な配慮をいたしますならば、決して焦げつきを生ずるものではなく、焦げつきは、政府、業者なれ合いによって生じたものであり、一千百億円もの損害を国民に与えた当時の担当大臣である岡野、愛知、石橋、水田等の元通産大臣は、国民の前に国政を語る資格がないものと言わなくてはなりません。(拍手)  以上、本予算案に盛られましたる政府の重点政策は、満身創痍と言わなくてはなりません。これを要しまするに、今日の内外の困難なる情勢は、岸内閣を初めとする歴代の保守党内閣の向米一辺倒、対米従属の再軍備政策及び大資本家本位の金融財政政策の当然の帰結であります。しかるに、政府は、依然として外交路線の調整をはかろうとせず、労働者、中小企業者、農民等の犠牲によって過剰生産恐慌を克服しようとしていますが、これは可能でもなく、また、わが党は断じて許さないところであります。外交における自主性の回復、再軍備政策の中止、貿易市場の転換、減税、適正賃金の保障、労働時間の短縮、中小企業農業等への大規模な投資等により、国際均衡と国内均衡、両者つり合いのとれたところの国民本位の不況対策を強く主張するものであります。本予算案は、その通過後、直ちに組みかえを要するような無定見、無性格の性格分裂の予算と言わなくてはなりません。  このことは、やがて近く行われるでありましょう総選挙において国民的な規模における歴史的な裁断によってわが党の主張が正しいことが証明されるであろうことを付言いたしまして私の反対討論を終る次第であります。(拍手)     —————————————
  57. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 剱木亨弘君。    〔剱木亨弘君登壇拍手
  58. 剱木亨弘

    ○剱木亨弘君 私は自由民主党を代表いたしまして、昭和三十三年度一般会計予算案外二案について政府原案に賛成の意を表明せんとするものであります。  本予算案の予算委員会において審議せられました際、基本的問題として論議せられましたのは、本予算案の編成方針策定に際して政府の内外経済情勢の把握が、果して的確であったのかどうかという点であったと思います。すなわち、昭和三十一年産以来、わが国経済の高度の成長のあと、昨三十二年初頭以来、急激に襲った国際収支の悪化に対処するためにとった政府の緊急総合対策を中心とする経済調整の効果いかん、国際的に今なお低迷する世界経済情勢の中においてわが属経済の見通しいかんの問題でありました。しかして現在の不況を本格的な過剰生産恐慌であるとする社会党の論議と、決して現状を楽観はしていないが昨年五月以来とられてきた緊急対策は、おおむね所期の効果を上げつつあり、十月以降、国際収支は黒字に転じ、今年に入ってもなお順調な歩みをたどりつつあり、今後なお調整過程を続け、輸出の増強に努力するなれば、わが国の経済は必ずしも悲観すべきものではないとする政府意見との間に食い違いがあったと思われますが、これらは両者の見解の相違でありまして政府の予算編成の基本方針をくつがえすものは伺ものもなかったと存じます。  以上の論議を通じ、昭和三十三年度の予算編成に当っての基本的態度は、次の三点が必要であるということが確認されたと存じます。  すなわち、第一に、現、下の経済情勢からも調整過程が完全に終了していない今日、景気を過度に刺激することのないような、きわめて堅実な予算でなければならないということでございます。第二は、海外の不況と関連して、ますます強まりつつある国際競争に打ち勝って、順調に輸出の伸長をはかるための施策を盛ったもりでなければならないとするのが第二点であります。第三には、またそれと同時に、右の要請範囲内において、将来の発展に備えて、基礎的な条件をできるだけ整備するとともに、民生の安定にも十分な配慮を加えたものでなければならないことでございます。  政府提出の昭和三十三年度予算は、これらの要請に応じて、堅実にして調和のとれた予算でありまして現下内外の情勢に最もよく合致した予算であると考えるのであります。この予算が堅実にして調和のとれた予算であるということは、何よりも予算の規模と四百三十六億円の資金の保留の中に現われておると存じます。昭和三十三年度予算は、前年度に比し千七百四十六億円増加して、一兆三千百二十一億円という、かつてない規模のものになっておるのでありますが、この増加額千七百四十六億のうち、三百十億円は国債の償還に充て、四百三十六億円はこれを保留して議出の実質約増加を一千億以内にとどめておるのであります。しかもなお、あとに述べるように、初年度に三百七億円、平年度四百二十三億円に上る減税をも断行しておるのであります。予算の規模と保留に関して、社会党諸君は、国民所得の成長率に比して予算の膨張率が大き過ぎる、税金の取り過ぎであるから、保留をやめて、全額減税に回すべきであるという批判を得なっておるのでありますが、予算規模一兆三千百二十一億円の国民所得に対する比率一五・五%は、前年度よりは確かに増加しておるのでありますが、二十九年度の一六・六%、二十八年度の一七・九%に比較いたしますと、はるかに低いのでありまして、国民所得に対する比率という点で、三十三年度が特に高いということは申されないのであります。三十三年度の予算規模の膨張は、一昨年の日本経済の予想外の拡大からきた自然増収が、剰余金として三十三年度予算に引き継がれたことが、大いに影響しておるのであります。資金の保留にいたしましても、それだけの余裕を生じたのは、一昨年の経済の異常な伸びに基因するものでありまして自然増収が継続的で、かつ財政需要をまかなって余りある場合には、減税も適当でありましょうが、こういう異例の臨時収入を減税財源とすることは適当でないと考えて政府は異例の臨時収入について、保留という異例の措置を講じた次第であります。この資金の保留は、予算に弾力性と機動性を付与するものであって、国内外の経済情勢から見て時宜に適した措置であると言わなければなりません。かくして昭和三十三年度予算は、超均衡予算と言うべきでありましてこの点に第一の特色を持っております。  その第二の特色は、初年度三百七億円、平年度四百二十三億円に上る減税を行なった点であります。わが党は、昨年、所得税を中心とする画期的な大幅の減税を行なって、国民負担の軽減をはかりました。その額は、所得税だけについて見ましても、平年度一千二百五十億円余という巨額に上ったのであります。こおによって、減税の基本的な懸案は、ほぼ解決されたのでありました。そこで本年度は、昨年度の減税においては一応見送ったもの、たとえば相続税の軽減、あるいは不十分であったもの、たとえば法人税の減税、そのほか、要するに昨年度の減税以後、なお残された諸問題を解決することとしたのであります。減税の内容については、ここで一々触れることは省略いたしますが、何よりも大切なことは、本年度の減税をそれだけ切り離して観察するのではなく、昨年度の減税と本年度のそれと、覇者を一括して観察するごとによって、初めてわが党の減税の全貌が明らかになるということであります。  昭和三十三年度予算の第三の特徴は、堅実をきわめた超均衡予算でありながら、わが党の公約した重要政策が、はっきりと予算の裏づけを与えられているという点であります。すなわち、本年度の最重点事項として、輸出の振興、主要道路の整備、科学技術の振興並びに中小企業及び農業対策を掲げましたが、輸出の振興については、三十二年度の輸出実績見込み額二十八倍億三千万ドルに対し、三十一億五千万ドルと、約一一・三%の輸出増を目標とし、この目標達成のために、一般の貿易振興予算、前年度十二億円に対し、約五億円余を増額し、これに日本貿易振興会への出資金二十億円を加えますと、前年度に比し、二十五億円余という画期的な増額をはかっているのであります。  主要道路の整備については、去年を初年度としまする道路事業五カ年計画を樹立しても道路の整備を強力に推進することとし、これがために特別会計を新設することといたしておりますが、この特別会計事業費予算額は、総額六百七十五億円に上っており、前毎度に比し、百二十二億円の増額となっておるのであります。  次に、科学技術の振興については、原子力の平和利用を推進するため、予算の大幅な増額を行なったほか、特に一般の科学技術研究の強化に意を用いて、各種研究機関の拡允、大学等の試験研究費の増額、あるいは科学研究所の特殊法人への改組など、科学技術振興費として、総額二百十六億円を計上し、前年度よりも約三十五一億円を増額しているのであります。  また、中小企業対策としましては、一般会計においては、前年度の十八億円に対し、本年度は、中小企業信用保険公庫の新設を含めて、九十六億輿という大幅の増額を行なっておりますし、財政投融資におきましても、中小企業金融公庫に七十五億円、国民金融公庫に三十五億円の増額を行なって資金の確保をはかっております。中小企業対策において、本年度はまさに画期的な飛躍がなされたと言っても過言ではないと存ずるのであります。  農林対策としては、農、畜、水産を通ずる総合的な食糧増産政策を前進させ、小団地土地改良事業べの融資のために特別な基金を設置し、また、新農山漁村建設計画実施地区を、さらに一千地域増加するなど、注目すべき施策が講ぜられており、農林水産関係の一般会計予算は、前年度に百十三億円を加えて千八億円に上っておるのであります。  公約されましたわが党の重要施策は、このように予算を裏づけを与えられているのでありますが、このほかにもわが党は、民生安定に資するため、それぞれ経費を増額してその万全を期しているのであります。すなわち、国民皆保険を推進するため、懸案である診療報酬制度の合理化、無医村の解消、結核対策の強化等の施策が講ぜられており、母子対策の充実、失業対策拡充などを加えて社会福祉関係の予算は千二百五十七億円に上り、前年度に比して百二億円の増額となっておるのでございます。また、長い間問題となっておりました文官恩給と、旧軍人恩給との不均衡も完全に是正され、恩給問題に関する懸案の大部分が解決を見るに至りました。世上行われておる旧軍人恩給に対する批判は、その九割以上が、気の毒な戦没者遺家族に対する公務扶助料と傷病軍人に対する傷病恩給であって、社会保障的な色彩の強いものであることを無視している点で、われわれの断じて納得し得ないところでございます。  このように、昭和三十三年度予算は、堅実な均衡を保ちつつ、公約されたわが党の政策をほとんど余すところなく盛り込んだものであり、現下内外の情勢に照らして最も適切な予算であることを確信するものでございます。(拍手)  予算委員会における審議の過程において、特に外交問題、防衛問題、社会保障問題、文教問題等について、実に熱心かつ真摯な論議が行われました。その中でも、社会保障や文教問題についての社会党委員諸君の論議の中には、われわれもまた傾聴すべき点のあったことを認めるものであります。しかしながら、その論議は、すべて予算の増額の要望であったと言えると思います。われわれもまた、かかる経費の増額を念願するものでありますが、限られた予算の規模の中で、極度の均衡が要請された予算の中では、政府のとった漸進的態度こそ、われわれは是認さるべきものであると確信するものであります。ことに社会党諸君が、世界経済の不況がさらに深刻化するものとして、これに対処する準備と対策は特に持たれていないと主張しながら、何ら具体的に国民経済の安定的成長の基盤をつちかうための必要なる施策を示すことなく、ただ、賃上げと減税と社会保障に全財源を回して国内需要を増すことだけが景気回復の唯一の方途であるがごとき論議に対しては、われわれは断固として反対せざるを得ないのでございます。  私は、衆議院予算委員会における社会党辻原議員の反対討論中、組みかえ予算案を提出しないかわり提示せられました予算に対する構想を拝見いたしました。これに対して、衆議院会議においてわが党の橋本議員が言及し、批判をいたしておるのでございますが、私は、これに対して多く触れようとは思いません。ただ私は、この案を通じて社会党の財政計画に対する基本的態度に対して深刻な疑問を持つものであり、おそらくは、この私の持つ疑問は、国民大衆もまた、もし真剣にこの案がいかなる意図を持つものであるかを知りたいと思うならば、必ず持たれる疑問であろうと信じますがゆえに、この点につき、一言う触れたいと思うのでございます。  その第一点は、この予算大綱の中で、歳出予算編成の項におきまして、第一の社会保障関係より第十五の公務員給与の引き上げまで、まことにけっこうなことばかりでありますが全部歳出の巨額なる増加を要するものでございます。その全額も明示されておりませず、総予算に対する比率も示されておりませんので、全額の算定は不可能でありますが、おそらく、われわれの想像することもできない巨額に上るものであろうと考えられます。これらの経費をまともに計上するならば、主十三年度予算総額の数倍になると考えられます。一方、削減する経費といたしましては、その第十六の防衛関係費のみでありますが、かりに防衛関係費全部削減するといたしましても一千四百億円であります。しかも、社会党案においても、なお自衛隊を警備組織として十二万五千名を残すことになっている以上、その削減金額にも限度があると思われるのでございます。ことに自衛隊のほかに、平和国土建設隊として十五万名の隊員を置くこととなっていることと関達して考えますならば、防衛費の削減は、この隊員費だけでもまかなうことはできない不可能ではなかろうかと思われるのでございます。この想像もつかない歳出増加に対し、歳入面におきましては、ほとんどすべてが減税でございまして、唯一の収入財源は大法人と高額所得者に対する増税だけでございます。かかる社会党案のごとき予算案が、もし不幸にして成立いたすようなことがあったとしまするならば、大法人も高額所得者も、日本には一人もなくなってしまって、おそらく唯一の財源も枯渇してしまうのではないかと思われるのでございます。この私の疑問は果して当を得ないでございましょうか大方の御批判を得たいと思うのでございます。(拍手)  第二の点は、この予算大綱には、いかように調査いたして見ましても、日本経済の育成強化、特にエネルギー基盤の強化とか、産業構造の高度化等に対する施策は、その片鱗をすら見出すことができません。ただ一つ、将来の経済発展の土台としての科学技術の振興という言葉が使われておるだけでございます。およそ、いかなる国家におきましても、その産業経済の発展なくして、国家の成長も民生の安定も望むへくもありません。いかに社会主義あるいは共産主義国家でありましても、また、産業の国営と民営との差はありましても、国家経済の基盤たる重要産業の育成強化は、国家発展の必要条件でございます。しかるに、この社会党案におきましては、これら重要産業を国営にするとも、また現在の状態において育成するとも、全然触れていないのでございます。いな、むしろ一方において、膨大なる経費の財源とし大法人に対する過大な増税にし、他方においてその正体、性格は一はっきりしませんが、十五万に上る平一和国土建設隊を組織せんとする意図は、わが国現在の社会経済秩序に重大なる変革を企図しつつ、これを背後に隠しておるのではないかとすらの疑問を持つのであります。この私の疑問が果して誤まりであるのでございましょうか、大方の御批判を得たいと存ずるのでございます。  私は昨秋、同僚議員とともに西ドイツをおとずれたとき、時あたかも西ドイツの総選挙の最中でありましたので、社会党の選挙対策本部をおとずれ、その選挙スローガンを尋ねたことがございます。その際、基幹産業の国営を選挙戦のスローガンとして主張するかどうかと質問したのに対して、西ドイツの社会党は、英国労働党の失敗を再び繰り返す意思はない。従って重要産業の国営は絶対に採用しないと言明せられました。私は、日本社会党も重要産業や医療機関をすべて国営にするのかしないのか、これを天下に明言すべき時がきていると思うのでありましてかかる基本的態度を明らかにせすしてその真意の那辺にあるかわからない予算大綱をもって、国民の批判を受けようとすることは、公党としての態度ではないと信ずるのでございます。  私は、社会党の予算大綱について、私の疑問点を述べたのでございますが、このことが、今回、政府提出の予算がいかに正鵠を得たものであるかの反証にもなることと存ずるのでありましてここに政府提出の昭和三十三年度一般会計予算案外二件に対し、心からの賛意を表し、私の討論を終ります。(拍手)     —————————————
  59. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 岩間正男君。    〔岩間正男君登壇拍手
  60. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は日本共産党を代表して、予算三案に反対するものであります。岸内閣が、組閣以来一貫してきた基本政策として、まず外交の面では、アメリカの原子戦略に同調して、露骨な反共政策をとり、極東における反共軍事同盟の中に日本を編入し、それによってアメリカの経済援助をもらい、あわせて東南アジアヘの反共的政治的進出をはかることであります。  第二に、これと対応して、内政面では反動勢力と大資本家を強化育成し、そのために平和と民主主義、生活の改善を求める国民の要求を押えつけ、ことに労働者階級を弾圧し、分裂させることであ珍ます。  しかしながら、平和共存を求める世界の大勢、ことに、アジア諸国民の反撃を前に、アメリカの政策は、日に日に破綻を深めているのであります。従って、これを唯一のよりどころとする岸内閣の対外政策が、事ごとに動揺し、よろめきを深めているのは当然であります。その証拠には、賠償問題は行き詰り、東南アジア諸国との提携は少しもうまくいっていない。また、日中、日ソの友好関係はもちろん、経済交流も前進していないのであります。国連においても、原水爆の禁止や軍縮問題、さらに、アジア・アフリカの諸問題についても、全く世界の物笑いをかっているといった現状であります。アメリカのごきげんをとることに汲々として、しかも、かえってアメリカからさえ不満を言われているといったありさまであります。  岸内閣の外交政策は、このように、今や全く行き詰ってしまっているのであります。しかも、世界経済は、今重大な恐慌を迎えようとしています。わが国も、今、恐慌の波に巻き込まれようとしているのであります。これを避けようとして、国際競争の激化していく中で、ますます平和、民主主義、生活改善を求める国民運動を抑圧し、国家資金を纂奪して独占資本の強化をねらっている。ここに露骨な最近の岸内閣の政策があるのであります。一方、政府の予算編成方針は、選挙を前にして、圧力団体と与党議員の予算ぶんどりに直面して、初めからよろめかざるを得なかったのであります。しかも重要なことはよろめきながらも、この予算の中には、以上申し述べた反動的な基本政策をみごとに貫いているのであります。  すなわち、本予算案を検討するに、まず第一に、自衛隊三万の増強と、核ミサイル武装をめぐる防衛費百九十億の増加があります。これは、さきにも述べたアメリカの原子戦略体制と、これに伴う極東軍事同盟の方向に、日本を引ずり込む準備にほかなりません。  次に、賠償費四十七億の増加は、言うまでもなく、東南アジアヘの進出をねらったものであり、このために政府は、総額で国民一人当り約四千円を負担させようとしているのであります。さらに、軍人恩給費平年度三百億を増額していますが、これは、言うまでもなく軍国主義の復活と、反動勢力の強化育成をねらったものであることは、あまりに明らかであります。また、国民の諸運動を押えるための弾圧、治安対策費の増強、ことに、昨年に数倍して十四億に達する機密費、いわゆるスパイ活動費が計上されているのであります。  第二に、本予算案の性格として、何よりも重要なことは、独占資本強化のための財政投融資の総額が、前年度に比べて著しく膨張していることであります。なるほど、額面上は三十二年度同様三千九百九十五億ということになっています。しかし、これは、いわゆるたな上げ資金や外貨借り入れ等をこれに加えますというと、実にその総額は六千億に達するのであります。なぜこういうことをやっているのか。これは、一萬田蔵相も明らかにしているように、今後における経済情勢の悪化は避けられない、従って、それに備えるための恐慌対策として、いわゆる経済基盤の拡大と、重要産業の合理化資金を、今から準備するためのものであることは言うを待ちません。  道路公団は、三十二年度の三十億が一躍百五億に国家資金を増大し、また、計画造船の国家資金への依存度は、三十二年度の三五%から、本予算では五三%にはね上っているのであります。しかも、これらの膨大な国家資金は、まるで、ただでくれるような使い方にまかされているのであります。たとえば、開発銀行は現在百三十億の焦げつきを持っています。この焦げつきを作った電力、海運、石炭などの大資本に対しては、この回収を求めるどころか、前述のような巨額な貸し出しを平気で行なっています。それだけではない、その借金をもって、これらの大会社は、サウジアラビアの油田開発の国際的投機を行なっているのであります。この財政投融資をてことして、いわゆる経済基盤の拡充や重要産業の合理化が行われるのであって独占資本は、これを強力な武器として、あらゆる産業で労働者の賃金をストップし、賃金形態を改悪し、労務管理を強化しているのであります。このように本予算は、恐慌に備えて独占資本を強化するという重要な特徴を持っているのであります。  第三に強調せねばならないことは、大衆収奪を一そう強化していることであります。柱会保障費や教育文化費の実体は、果してどうでありましょうか。これは、今までもしぱしば輪ぜられた通り、予算規模の拡大に対しましてその割合は、反対に引き下げられているのであります。しかも、診療費単価引き上げに伴う国庫負担分の増加は、国民負担の引き上げに見合っているにすぎず、保育所予算のごときも、多少ふえてはいますが、その中身は、実際の必要を満たすに足らず、児童措置費の査定を厳格にし、保母の待遇のごときは、かえって改悪される結果となっているのであります。また、政府定員法を変えて、行政機構の臨時職員を定員化すると言っていますが、その実体は、総数の約二〇%を定員化するにすぎません。それによってかえって臨時職員を分裂させようとしているのであります。文教費についても、僻地教育や学校保健経費は、なるほど多少増額されていますが、それにはしかし地方財政の裏づけが全然ないといったありさまであり、また、校長に管理職給を支給しようとしていますが、これは勤務評定を押しつけて、職場を分裂させようとする悪だぐみ以外の何ものでもありません。  さらに、この予算では、国民のひとしく要望していた大衆減税は、全く捨てて顧みられないのであります。何よりも重大な点は、恐慌の見通しが明らかであり、法人税では法人所得が前年度に比べて九・一先の減少と見込んでいるのに対し、もっとも、その中でも個人営業所得は一・五%の増加を見ているのでありますが、九一%の法人税では減少を見込んでいるのに対して勤労所得では二百五十・一億、前年に比べますと、五・三%の増加を見込んでいるのであります。すなわち、法人所得の減少を見込まざるを得ないような経済の悪化にもかかわらず、中小企業の個人営業や勤労者の所得は依然として水増しされているのであります。政府は一方、賃金ストップやゼロ回答を強制し、失業者の多量増加を予定しながら、他方では勤労者の所得の増大を見込むという、これは明らかに大きな矛盾であり、二重収奪であります。労働者は、超過勤務をしようにも、最近仕事がない。毎月三千円から一万円に達する実質賃金の減少に悩んでいるのであります。これに対して、五・三%、二百五十億の増収とは、一体何を根拠にして作ったデータであろうか。
  61. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 岩間君、時間です。
  62. 岩間正男

    ○岩間正男君(続) これに対して、労働者階級が団結して立ち上るのは、まことに当然のことであります。しかるに、日経連、政府、与党は、三位一体となって春闘に圧力をかけ、ゼロ回答 で答え、従わなければ、警察その他の機構を動員して直接弾圧を加えている。果してこれが許されるでありましょうか。これこそは、恐慌からの活路を、アメリカの原水爆戦略政策への協力と、国民べの犠牲と負担に転嫁しようとする以外の何ものでもないのであります。  しかし、このような岸政策の方向は、日本経済の恐慌からの脱出を一そう困難にするにすぎません。だからこそ、最近、独占資本と与党の中からも、岸内閣の無力さに対する不安と不満が大きく生まれているのであります。恐慌からの脱出の道は、今日の世界の大勢に沿って、政策の全面的な転換をはかることであります。少くとも今日、来たるべき恐慌に備えるために、われわれ日本共産党は、次の諸点を要求するものであります。  第一に、全面的な大衆減税を行うこと。第二に、社会保障、最低賃金、農業政策、中小企業の育成政策を強化すること。第三に、アメリカ一辺倒の貿易計画を大胆に切りかえ、長期安定した市場を、とりわけ中国、ソビエト同盟、その他の社会主義平和諸国との貿易拡大に全力をあげること。  以上の三点を心から要求して、三十三年度予算案に対する私の反対討論を終ります。(拍手)     —————————————
  63. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 森八三一君。    〔森八三一君登壇拍手
  64. 森八三一

    ○森八三一君 私は、ただいま議題になっております昭和三十三年度一般会計予算外二件に対しまして、緑風会を代表して、政府提出の原案に賛成討論を行うものであります。  本三十三年度予算に国民が期待するものは、きわめて多種多様でありまするが、なかんずく、その最も重要なものは、産業の堅実な成長を達成すること、国際収支の黒字を完遂すること、これらの成果の上に国民経済の発展と安定を具現することであろうと存じます。これがためには、政治の清潔が保持され、きびしい内外の諸情勢に処し、判断と対策の誤まりなきを期し、国民の政治に対する信頼と協力を得ることが、その要諦であると存じます。私はここに、まずもって、政府の決意と善処を望むものであります。  私は、昭和三十二年度予算討論に際しまして、いわゆる神武景気というような、偶発的とも申すべき現象に、うちょうてんになって、いたずらに経済を刺激するようなことは、厳に戒めなければならない。産業の異常な発展と、国民所得が八兆円をこえるというような現実からして心配はないというように説明をされておりましたが、決してそんな甘いものではない。前年度に比べて、一般会計で一千億を増しておるのを初め、投融資、その他を合せますると、二千億にも上る財政規模の膨張は、大いに警戒を要するところであると、政府善処を要望したのであります。  しかるに、一、二カ月を出でずして、国際収支は破局的な様相を呈するに至りました。再度にわたる日銀公定歩合の引き上げとなり、ついに緊急総合対策実施を見るに至ったのであります。これがため、国民のこうむった損失は、筆舌には足しがたいものがありました。いわゆる黒字倒産の新熟語が流行いたしましたのを見ても、その及ぼした影響のいかに深刻であったかは、想像に余るものがあります。幸いにして、国民各位の理解と協力によりまして、国際収支も急速に改善され、予期以上に好転して参りましたことは、まことに喜ぶべきことでありまして、御同慶の至りにたえません。しかしながら、これをもってして、政府の一緊急総合対策のみの成果であるとして誇示さるべきものではないと思うのであります。私どもが発した警告に対し、最大の留意と関心を払って対処されておったといたしますれば、国民の負担と犠牲を回避し得たのではありますまいか。政府も、この点には深く反省されまして、喜びかくのごとき不幸の結果を招来せしめませぬようにとの配慮から、昭和三十三年度の予算編成に際しましては、景気に対する過度の刺激を避けることに格別の努力を払われましたことは、敬意を表するとともに、同意をするところでありますが、それでもなお一般会計において、前年度対比一千億の増であり、昭和三十二年度の補正を加えますれば、千二百億くらいになるかと思います。さらに、留保されました四百三十六億の資金も、その半額に近い二百十五億が、ひもつきになっておりますることや、国庫債務負担行為が二百億余の増額となっておりますること、さらに、財政投融資額が、三十二年度の実行額より三百億も増加しておりますることなど、相当の膨張となるのでありまして、必ずしも放漫とは申しませんが、積極財政と見るべきでありまして金融引き締めによる極度の困難に対し、堅実な手直しは必要かと神じますが、これが運用には格段の注意を要するところであります。特に、米国を中心とする国際的な景気の立ち直り時期の見通しに、楽観的観察を行うような態度は、きわめて危険と申すべきであります。どこまでも現実第一主義をもって終始されんことを望むものであります。  三十三年度一般会計予算の内容を見まするに、前年度予算に比べて社会保障費関係で百二億円、文教並びに科学技術振興費関係で百二十七億、農林関係が百十三億、中小企業が十三億を初め、道路交通関係公共事業費関係、その他いずれも増額となっておる一のであります。政府は既定経費の節減をはかり、重点施策の遂行に万全を期したと説明されておりまするが、前述のごとく、まさにまんべんなく配慮した総花的予算という感じであります。節約や重点がぼやけてしまったことは残念に存ずるところであります。予算の編成権が内閣にあることと、政党政治からくる政党の公約を合理的に予算化することとを、いかにして調和、あんばいするかはきわめてむずかしいこととは存じますが、本予算の決定に当りまして内閣の予算編成権が侵されたような感じを与えたことは、きわめて遺憾に思うのであります。巷間、圧力団体に屈したとか、分取り合戦に終始したとかいうような批判が生まれ、ついには腰抜け予算という声を聞くに至ったのであります。国民の一部には、政党政治のもとにおきまする予算の編成に対し、危惧の念を抱くに至ったものもあるかと存ずるのでありまして将来、かくのごとき信を失うような事態を引き起しませんよう、善処を望むものであります。  本三十三年度予算は、さきに策定されました長期経済計画にのっとってわが国経済の発展と、民生の安定を実現するための本年度計画として、輸出三十一億五千万ドル国際収支黒字一億五千万ドル、前年対比三%の経済成長を達成することを目途として編成されたものであります。私どもは、これが達成のための努力と協力を惜しむものではありませんが、特に政府に注意を喚起いたしたいのは、三十一億五千万ドルの輸出目標の達成は、最近における世界景気の動向、ブロック経済の強化、並びにわが国をめぐる外交上の諸情勢等からして、必ずしも安易な目標とは申しがたいのでありまして、いたずらに数字にこだわり過ぎますと、勢い不合理な輸入とのかみ合せにおいて輸出が強行せられるということになるのではないかということであります。もちろん輸出の振興増進をはかりまするためには、ときに不要物資との輸入を抱き合せることの必婆が生まれて参りますることも、否定するものでありませんが、不要物資は、国内の流通過程で、おおむね巨利を博し得る場合が多いのであります。そこに多数国民の犠牲において特定の一部関係者のみが利益するという結果が生じ、善良な国民に迷惑を及ぼすのみならず、そこには、総理が国民に対する最大の公約である汚職発生の危険が伏在するのであります。過去に見た幾多の汚職あるいはそれに類する事件が、かくのごとき不当利得をめぐって発生していたのではないかと存ずるのであります。政府は、這般の実情にかんがみ、不要物資の輸入は絶対に拒否すべきであり、やむを得ず輸入いたしまするような場合といえども、輸入後における当該物資の措置に誤まりなきを講ずべきであります。  わが国が自由主義陣営の一員としての立場を堅持しつつ、あらゆる国家との間に親善関係を増進するとともに、アジアの一員としてアジアの開発に協力を行うという政府方針に対し、一同感の意を表するはもちろん、さらにわれわれの努力が、世界平和のすみやかなる確立に寄与貢献することを念ずるものであります。その具体的な行動と旧して、経済協力が推し進められておりますことも、アジア各国の後進性にかんがみ当然のことでありますが、ややともいたしますると、そこには、いわゆる政商的存在の暗躍が行われる危険がないとは申されないかと思うのであります。かくのごとき不祥のことがありましては、経済開発の実を上げますることができないというだけではありません。両国の親善友好関係を破壊し、中外に向って日本及び日本人の信用を失うという、おそるべき結果を招来するのでありまして、政府の慎重な態度を望むものであります。  食糧の総合的自給施策として、畑作の振興と営農の有畜化が取り上げられましたことは、きわめて意を強くするものでありまするが、ただ、かけ声だけで生産物の需要の拡大がなされず、流通機構が整備されず、加うるに海外からの無計画輸入が放置されるという現状では、結局、零細農民をして破局べ追いやるという最悪の結果となるでありましょう。その責め、きわめて重大  であると申さなければなりません。政府は、これらに思いをいたし、所期の目的を達成するために万全を期せられたいのであります。  中小企業の振興、最大の要締である金融の円滑化に対し、積極的な対策をとったと説明されておりまするが、数字的には、減少をみたものもあります。いまだ、真に零細な弱小企業者は、高利貸に走らざるを得ないという現状にあります。今日最も重要なことは、これらの階層の金融であります。これがためには、組織化とその活用でありまして、政府も、従来勧奨されておるところでありまするが、さらに強く推進すべきであると存じます。  社会保障が年とともに拡充強化されて参りましたことは、喜ぶべきところでありまするが、すみやかに養老年金制度を確立し、近代国家としての施策を行うべきであります。近時、国民精神が弛緩し、頽廃的風潮が深刻化しつつありますることは、きわめて遺憾な現象であり、青少年にその傾向を見ますることは、特に意を用いなければならぬところであります。抜本有効の施策を実施し、次代をになう国民の養成に遺憾なきを期せられたいのであります。  道路、港湾等の整備について躍進的な対策をとられたことは、きわめて適切なことで、賛意を表するところでありますが、さらに、国際観光の重要性とも相関連せしめ、これらの改善拡充に一そうの努力を望むものであります。  次に、私は昭和三十二年度の一千億所得税減税に当りまして、賛意を表するとともに、将来、法人税の軽減、特殊法人税の免除、物品税、事業税の減免、租税特別措置の整理等を提唱いたしたのでありますが、今回、法人税の軽減が取り上げられましたことは、国会の論議に耳をかされたことであり、民主政治発展のため喜びにたえません。しかしながら、私どもが具体的に要求いたしているところとは、いまだ相当の距離を存しておるのであります。すみやかに再検討を行い、一そうの軽減を断行し、自己資本の充実に資し、企業の堅実化に寄与せられまするとともに、特殊法人税は、その総額わずかに三十億にすぎないという現状にかんがみ、その本質上、当然に廃止さるべきであると存じます。  最後に、私は日ソ、日韓、日中等を初め、わが国が当面する外交を正しく推進するためには、国論を調整し、挙国体制のもとに国民的支援を得ることが、その要諦であると確信いたします。さきに緑風会が超党派外交を提唱いたしましたゆえんも、またここに存するのであります。当時、総理として、総裁として、きわめてあいまいな態度でありまして私ども、きわめて不満の感を抱いておったのでありましたが、その後考慮をされましてか、本委員会質疑を通じ、総理も、すでに同感の意を表されているところであります。この際、すみやかにその具体化をはかられまして、わが正義の外交に、輝かしき成果を上げられますよう、衷心から切望して、私の討論を結ぶ次第であります。(拍手
  65. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、全部終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより三案の採決をいたします。  三案全部を問題に供します。三案の表決は記名投票をもって行います。三案に賛成諸君は白色票を、反対の諸君は青色葉を、御登壇の上、御投票を願います。  議場の閉鎖を命じます、氏名点呼を行います。    〔議場閉鎖〕    〔参事氏名を点呼〕    〔投票執行〕
  66. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 投票漏れはございませんか——。投票漏れないと認めます。投票箱閉鎖。    〔投票箱閉鎖〕
  67. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。    〔議場開鎖]    〔参事投票を計算]
  68. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 投票の結果を報告いたします。   投票総数 二百二十一票   白色票   百三十七票    〔拍手〕   青色票    八十四票    〔拍手〕  よって三案は可決せられました。(拍手)      ——————————  賛成者(白色票)氏名 百三十七名   豊田 雅孝君  杉山 昌作君   竹干 豊次君  中野 文門君   河野 謙三君  上林 忠次君   迫水 久常君  田中 啓一君   森 八三一君  青山 正一君   堀  末治君  早川 愼一君   田中 茂穂君  島村 軍次君   手島  栄君  佐藤 尚武君   武藤 常介君  永野  護君   松岡 平市君  梶原 茂嘉君   西川甚五郎君  藤野 繁雄君   前田 久吉君  野田 俊作君   谷口弥三郎君  新谷 寅三郎君   君木内四郎君  森田 義衞君   加賀山之雄君  後藤 文夫君   田村 文吉君  村上 義一君   一松 定吉君  鶴見 祐輔君   笹森 順造君  江藤  智君   仲原 善一君  西田 信一君   堀本 宜実君  鈴本 万平君   大谷藤之助君  稲浦 鹿藏君   吉江 勝保君  塩見 俊二君   前田佳都男君  酒井 利雄君   三木與吉郎君  青柳 秀夫君   雨森 常夫君  小西 英雄君   館  哲二君  井村 徳二君   山本 米治君  小林 武治君   剱木 亨弘君  大谷 贇雄君   佐藤清一郎君  本島 虎蔵君   大谷 瑩潤君  苫米地英俊君   近藤 鶴代君  小柳 牧術君   井上 清一君  小沢久太郎君   斎藤  昇君  小山邦太郎君   木暮武太夫君  石坂 豊一君   廣瀬 久忠君  西郷吉之助君   植竹 春彦君  草葉 隆圓君   安井  謙君 大野木秀吹郎君   川村 松助君  黒川 武雄君   小林 英三君  重宗 雄三君   野村吉三郎君  苫米地義三君   平井 太郎君  寺尾  豊君   増原 恵吉君  松村 秀逸君   榊原  亨君  白井  勇君   最上 英子君  柴田  栄君   大沢 雄一君  平島 敏夫君   林田 正治君  後藤 義隆君   高橋  衛君  重政 庸徳君   横山 フク君  西川彌平治君   土田國太郎君  小幡 治和君   伊能 芳雄君  宮田 重文君   三浦 義男君  高野 一夫君   高橋進太郎君  古池 信三君   岡崎 真一君  佐野  廣君   寺本 広作君  石井  桂君   関根 久藏君  野本 品吉君   秋山俊一郎君  岩沢 忠恭君   上原 正吉君  石原幹市郎君   左藤 義詮君  鹿島守之助君   小滝  彬君  井野 碩哉君   杉原 荒太君  下條 康麿君   吉野 信次君  郡  祐一君   津島 壽一君  堀木 鎌三君   木村篤太郎君  青木 一男君   泉山 三六君  林屋亀次郎君   横川 信夫君  吉田 萬次君   勝俣  稔君  大川 光三君   辻  武壽君  白木義一郎君   大竹平八郎君  北條 雋八君   天坊 裕彦君     ————————————— 反対者(青色票)氏名  八十四名   森中 守義君  北村  暢君   鈴木  強君  藤田藤太郎君   相澤 重明君  松永 忠二君   占部 秀男君  森 元治郎君   木下 友敬君  平林  剛君   山本 經勝君  岡  三郎君   湯山  勇君  亀田 得治君   久保  等君  柴谷  要君   大和 与一君  安部キミ子君   江田 三郎君  近藤 信一君   東   隆君  大倉 精一君   竹中 勝男君  阿具根 登君   藤原 道子君  吉田 法晴君   中田 吉雄君  松澤 兼人君   藤田  進君 小笠原二三男君   成瀬 幡治君  小林 孝平君   島   清君  田中  一君   赤松 常子君  野溝  勝君   松本治一郎君  三木 治朗君   千葉  信君  戸叶  武君   荒木正三郎君  市川 房枝君   八木 幸吉君  野坂 参三君   岩間 正男君  長谷部ひろ君   竹中 恒夫君  安部 清美君   鈴木  壽君  大河原一次君   伊藤 顕道君  千田  正君   光村 甚助君  鈴木  一君   秋山 長造君  加瀬  完君   坂本  昭君  阿部 竹松君   大矢  正君  松澤 靖介君   椿繁  夫君  田畑 金光君   海野 三朗君  中村 正雄君   矢嶋 三義君  相馬 助治君   横川 正市君  小酒井義男君   河合 義一君  松浦 清一君   天田 勝正君  高田なほ子君   片岡 文重君  永岡 光治君   重盛 壽治君  羽生 三七君   岡田 宗司君  佐多 忠隆君   曾祢  益君  山下 義信君   清浄 俊英君  棚橋 小虎君   内村 清次君  山田 節男君      ——————————
  69. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 参事報告させます。    〔参事朗読〕 本日委員長から左の報告書を提出した。  関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案可決報告書  所得税法等の一部を改正する法律案可決報告書  法人税法の一部を改正する法律案可決報告書  租税特別措置法の一部を改正する法律案(閣法第五八号)可決報告書  酒税法の一部を改正する法律案可決報告書  入場税法の一部を改正する法律案(第二十六回国会、衆議院提出)修正議決報告書  道路整備特別会計法案可決報告書      ——————————
  70. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) この際、日程に追加して、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案  所得税法等の一部を改正する法律案  法人税法の一部を改正する法律案  租税特別措置法の一部を改正する法律案  酒税法の一部を改正する法律案(いずれも内閣提出衆議院送付)  入場税法の一部を改正する法律案(第二十六回国会衆議院提出)  道路整備特別会計法案内閣提出衆議院送付)  以上、七案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 御異議ないと認めます。  まず、委員長報告を求めます。大蔵委員長河野謙三君。    〔河野謙三登壇拍手
  72. 河野謙三

    河野謙三君 ただいま議題となりました七つの法律案につきまして、大蔵委員会審議経過並びに結果を御報告いたします。  まず、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近の経済事情等にかんがみ、昭和三十三年三月三十一日に期限が到来する重要機械類、給食用ミルク等の免税措置、別表甲号による小麦、A重油等の免税措置、別表乙号による原油、カーボンブラック等の軽減措置を、昭和三十四年三月三十一日まで一年間延長しようとするものであります。  委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論採決の結果、多数をもって衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、税制の合理化及び簡素化をはかる見地から、所要の改正を行おうとするものでありまして、その大要を申し上げますと、第一は、証券投資信託の収益に対する課税方式の合理化をはかろうとするものであります。すなわち、従来の収益源泉別の課税方式を廃止し、その収益全体を単一の所得として配当所得のうちに含めて課税することとし、その源泉徴収税率は、三十四年三月末日までは六%の暫定税率を課税するとともに、一〇%の配当控除を行うこととしております。  第二は、税務執行の簡素化の見地より、給与所得者が確定申告書を提出しなくてもよい範囲を拡張しようとするものでありまして、一カ所から給与の支給を受ける給与所得者について、給与所得以外の所得が五万円に満たない場合等には、確定申告の提出を要しないことにしております。また、共済組合の年金等についても、給付金額が九万円に満たないものについては、源泉徴収を要しないことといたす等、所要の改正措置を講じております。  委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知願いたいと存じます。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法案は、法人所得の税負担を軽減するため、その税率を一律に二%ずつ引き下げるとともに、中小法人の税負担実情にかんがみ、軽減税率の適用範囲を、現行の年所得百万円以下から、年所得二百万円以下に引き上げようとするものであります。この結果、普通法人の各事業年度の所得に対する法人税率は、年二百万円以下の金額について百分の三十一二、これをこえる金額については百分の三十八、特別法人等については百分の二十八に、それぞれ引き下げられることとなっております。また、申告手続の適正化をはかるため、災害その他の事由により、確定申告書の提出期限を延期したい旨の承認申請があった場合には、申告期限を指定して承認することができることとする等、所要の改正措置を講じております。  委員会における審議の詳細につきましては、会議録によって御承知を願いたいと存じます。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、現下の緊急対策たる貯蓄の増強、科学技術の振興、輸出の振興に資する等のため、所要の改正を行おうとするものでありまして、その大要について申し上げますと、第一は、貯蓄の増強に資するため、新たに貯蓄控除制度を設けることであります。すなわち、本年四月一日から翌年十二月末日までの間に、特定の長期貯蓄を行なった個人の三十三年分及び三十四年分の所得税について、年間貯蓄額の三%相当額、最高六千円を限度として、それぞれの年分の所得税額から控除することとしております。この制度対象となる貯蓄の種類は、預貯金、合同運用信託、有価証券及び生命保険等とし、貯蓄の形態は、長期貯蓄の気風を起すとともに、既存貯蓄よりの振りかわりの弊害を防止する見地から、原則として六月以上、毎月一定額の積み立てを行い、その平均預入期間が二年以上のものであることを条件としております。  第二は、科学技術の振興に資するための特別償却制度拡充であります。すなわち、試験研究実施を奨励するため、試験研究機械設備等特別償却制度について、現行の三年均等償却方法を、初年度にその取得価額の二分の一の償却ができることに改めるとともに、重要な新技術企業化促進するために、新たに新技術企業化用機械設備等特別償却制度を設け、本年四月一日から向う五カ年間に、重要な新技術企業化するための機械設備等を取得して企業化の用に供するときは、初年度にその取得価額の二分の一の特別償却をすることができることとしております。  第三は、輸出振興に資するため、輸出所得控除制度の拡大でありまして、対外支払い手段を対価とする三国間の運送について、特別控除率を取引金額の三%から五%に引き上げるとともに、紡績業者等の委託を受けて行う縫製加工を、新たに本制度の適用対象に加えることとしております。  第四は、住宅建設の促進に資するため、新築貸家住宅に対する特別償却制度及び新築住宅に関する登録税の軽減及び非課税措置について、それぞれ適用期限を三十七年三月末日まで延長することとしております。このほか、期限切れとなる航空機の乗客に対する通行税の軽減措置について、その適用期限を延長するとともに、重油ボイラーの改造費の特別償却制度を廃止する等、所要規定の整備をはかることといたしております。  なお、本案は、衆議院において、貯蓄控除制度対象となる貯蓄の種類に、相互掛金を追加する修正議決がなされたものであります。  委員会審議におきましては、本案関連法案である企業合理化促進法の一部を改正する法律案について商工委員会連合審査会を申し込む等、慎重審議いたしましたが、その詳細は会議録によって御承知願いたいと存じます。、  かくて質疑を終了し、三案一括して討論に入り、大矢委員より、「所得税については、低額所得者の基礎控除を中心とした大幅の減税を行うべきであること、法人税については、年所得百万円程度の小企業に対する減税措置を重点的に配慮すること、租税特別措置法については、すみやかに整理すべき税制調査会の答申がなされているにもかかわらず、今回の増加措置がとられているのは遺憾である」旨の反対意見が述べられ、採決の結果、それぞれ多数をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、入場税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、第二十六国会において、衆議院大蔵委員長の提出にかかるものでありますが、純演劇の適用範囲等、明確を欠くと思われる点について再検討を要するため、今国会まで引き続いて審議されて参ったものでありまして、その内容は、純演劇の育成をはかる等の見地から、純演劇である歌舞伎、新劇等、政令で定めるものの入場料金が八十円をこえ、三百円までの場合には、二割の軽減税率で課税しようとするものであります。  委員会審議の詳細につきましては、会議録によって御承知願いたいと存じます。  かくて質疑を終了し、討論に入りましたところ“平林委員より、「演劇をもっぱら催す場所への入場について、その入場料金が一人一回について八十円をこえ三百円以下であるときは二割、三百円をこえるときは三割の税率で課税し、本年五月一日より施行する」旨の各派共同修正案が提出され、次いで、国会法第五十七条の三に基く内閣意見を求めましたところ、「地方税収の減少となりますが、関係官庁と協議の上、政府として善処いたしたいと思います」との意見が述べられました。次いで杉山委員より、各派共同提案として、「政府はすみやかに入場税を全面的に再検討し、適切なる改正案を提出すべきである。」との付帯決議案が提出されました。  採決の結果、各派共同修正案は全会一致をもって可決され、修正部分を除く原案についても、全会一致をもって可決され、本案を修正可決すべきものと決定し、また、各派共同提案にかかる付帯決議案は、全会一致をもって本委員会付帯決議とすることに決定いたしました。  次に、酒税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、最近における酒税負担の現状にかんがみ、国民大衆の税負担の軽減に資するため、二級清酒の現行石当り二万二千五百円を二万五百円に改めるほか、二級合成清酒、甲、乙類しょうちゅう、みりん、果実酒、二級雑酒の下級酒類に対する酒税の税率を、約一割引き下げようとするものであります。なお、特殊用途酒類の税率については、従来の税負担を据え置いております。  委員会における審議の詳細については、会議録によって御承知願いたいと存じます。  質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  最後に、道路整備特別会計法案について申し上げます。  本案は、さきに成立いたしました道路整備緊急措置法に基いて行われる道路整備五カ年計画にかかる道路整備事業等に関する経理を明確にするため、特別会計を新設しようとするものであります。  以上、本案の要点について申し上げますと、第一は、この会計は、国が直轄で行う道路整備事業都道府県等が行う道路整備事業に対する負担金の交付等に関する経理を行おうとするものであります。第二に、この会計は、揮発油税収入等の一般会計からの繰入金、都道府県負担金、借入金等を歳入とし、道路整備事業費、借入金の償還金等を歳出として経理することとしようとするものであります。第三は、都道府県負担金に相当するものの財源に充てる等のため、借入金ができることとし、借入金のうち、その年度内に借り入れをしなかった金額の借入限度の繰り越し等について規定しようと、するものであります。なお、このほか、特別会計として必要な事項並びにこの会計の設置に伴う経過措置等を規定しようとするものであります。  委員会におきましては、道路整備緊急措置法等、いわゆる道路三法について、建設委員会連合審査会を申し入れる等、慎重審議いたしましたが、それらの詳細は会議録によって御承知願います。  質疑を終了し、討論採決の結果、全会一致をもって、衆議院送付案通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告いたします。(拍手
  73. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案に対し、討論の通告がございます。発言を許します。大矢正君。    〔大矢正君登壇拍手
  74. 大矢正

    ○大矢正君 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案外二法律案に対しまして、私は、日本社会党を代表して、反対の討論を行おうとするものであります。  私は、税法改正にかかわる個々の具体的な反対理由を述べます前に、経済政策、その他税制税法の改正に対する政府とわが党との相違点を明らかにし、さらに、税法改正の基本的な考え方の上における政府の誤まりを指摘いたしたいと思うのであります。まず第一に、税法改正の根本的な相違について明らかにいたします。  それは、一昨年から昨年に続いた俗に言う神武景気が、計画性のない政府の経済政策と、大企業の無統制、放縦な設備投資等によって、外貨の危機を招き、ために急激な経済縮小政策と緊急対策をとらなければならない羽目に陥り、せっかく上向きになっている日本の経済が再び下降線をたどり、しかも現在では、どん底に落ち込んだ感があることは、まことに遺憾にたえないところであります。ことに、最近の経済の動向をながめて見ますと、緊縮政策とデフレの自律作用により、過剰生産と消費力、購買力の減退によって、操業短縮を余儀なくされている産業は、紡績の五割を筆頭に、金属、機械等々、全産業に及び、失業と貧困に悩む国民の数は、日ごとに増加の一途をたどっております。貧乏追放をうたった岸総理の政策いずこにありゃと、国民の多くの批判が、ちまたに満ちあふれているのであります。一月解散によろめき、今また四月解散によろめきかかっている岸総理のよろめきの根源は、まさにここにありと言わなければならないと思うのであります。(拍手)  この際、政府がすみやかに断行しなければならない措置は、税制面からの景気の回復策であります。それがためには、今さしあたり必要のない部分の国債整理基金の吐き出しを行いさらには経済基盤強化資金等の吐き出しを行うことであります。九百億以上と言われる自然増収を含め、これらの資金が、より、輸入物資と外貨を必要としない大衆課税の撤廃と底額所得者の減税に振り向けられることができましたならば、購買力の増加に伴う経済の発展が健全にはかられることは必然であ均まして、失業と貧困を救う大きな手がかりとなるものと確信をいたしております。  すでに御存じのように、昨年以来の世界景気の後退に対し、各国は景気の立て直し策がはかられ、アメリカにおいては、公定歩合の引き下げはもとより、最近においては減税政策が論議の段階を越え、実施の段階に移されつつあると聞いております。また、西欧各国においても、イギリス、フランス、西ドイツ、オランダ等、ほとんどの国が公定歩合の引き下げをはかり、進んで減税対策を検討中であります。この際、わが国も積極的な減税政策を行い、世界経済の動向と歩調を合院わせる必要があると思うのであります。  特に、外貨の問題については、二月末の保有高九億九千万ドル、三月末見込み十億三千万ドルと言われ、河野経企庁長官自身が、「国際収支はもう心配はない、国際収支の改善は一応目的を果した」と言明をしております。しかも、かりに四月以降、大幅な大衆減税が行われたといたしましても、それが経済活動に直接影響が出てくるのは、国際収支がますます改善されたあと、すなわち、秋以降に現われることから考えあわせても、減税政策は何ら矛盾がないと考えるのであります。政府の失政と大企業、銀行の放縦によって、かもし出された極端な不景気政策で、いつまでも大衆に犠牲を負わせるべきではないという立場に、私は反対理由の第一を求めるものであります。  次に、私が反対理由の第二としてあげることは、政府の行おうとする税法改正は、税額の点において、上に厚く、また下に薄いなどと言われるならまだしも、上に厚く、下にはなしとする点であります。このたびの政府提案による法律改正及び減税内容は、所得税の免税約五十億、法人税の減免税約百三十五億、相続税の減税約二十億、酒税の減税約五十五億、合計二百六十億の減税と発表されておるのでありますが、その性格においては、国民の大部分を占める低額所得者には、およそ縁もゆかりもない、大企業を擁護し、富める者をますます富ましめる目的のための法律改正であり、さらには減税内容であるということができると思うのであります。昨年の一月、病のために退陣した石橋総理のあとを受けて岸さんは総理になられましたが、当時、政府から出された税法改正は、一番中心となる所得税において高額所得者の優遇措置があまりにも多いので、私どもはその改正を提案いたしましたが、しかしながら、これは政府の反対にあい、高額所得者優遇の所得税改正案は、ついに成立を見てしまったのであります。しかし私は、いや、これは私ばかりではありません。おそらく国民の大多数が、そう考えたと思うのでありまするが、当時作成されていた税法改正案は、石橋さんの手によって作られたものであり、岸さんは、石橋さんの政策をすべて受け継ぐとのことが世上伝えられておりましたので、気持の点においては、改正したいというお考えがあっても、以上の理由によってできないんだと、善意に解釈いたしておったのであります。従って、三十三年度予算の中において、岸総理独自の構想、そして手によって作られる減税案こそ、多くの国民の世論を百。パーセント受け入れてくれるものができ上ると、心から期待しておりました。ところが、いざ、ふたをあけて見ると、石橋さんの手になる減税案に輪をかけた高額所得者、大企業擁護の法律であります。  最近、新聞を初め、国民の中に、岸さんは大へんそつのない人だと、こういう声が起っております。そつがないという言葉は、もはや岸総理の代名詞にすらなっております。しかしながら、そつがないという国民の声は、これは間違われては困りますけれども、決してこれは岸総理、あなたを賞賛した言葉ではないのであります。それは庶民のせめてもの不満が、皮肉になって現われた言葉であって、あなたが、あまりにもあざやかに、低額所得者や中小企業に名をかりて、大企業、高額所得者の保護をすることに対しての驚きの声でありましょう。(拍手)  ところで、私は次に、具体的な点で税法改正の反対理由を述べてみたいと思います。まず、第一にあげなければならないことは、租税特別措置の整理を、なぜ行わないかということであります。すでに御存じの通り、一昨年答申を求められた臨時税制調査会は、特別措置に対し、あまりにも特別措置があるために、各種の弊害が現われており、全面的に再検討を行い、税負担の公平と税制簡素化をはかるべきである、また、特別措置による減免税または課税の繰り延べは、その金額が多額に上り、しかも、それは往々にして少数の納税者に片寄りがちであると指摘し、すみやかな解決の方針を明らかにしているにもかかわらず、今回、政府提案による租税特別措置は、逆に増加を示しており、ますます答申と国民の要望に逆行しているのが実態であります。今回の措置により削除されるものは、わずかに重油ボイラーの改造費の特別償却だけであり、大蔵省当局自身が、整理の対象は重油ボイラーだけで、このことによる増減収額はきわめて少額で、ほとんど影響がないという言明をしている始末であります。  次に、私は法人税と租税特別措置関係について指摘いたしたいと思います。今般、政府は、租税特別措置はそのままとして、さらに法人税の一律二%引き下げを行おうとしておるますが、ことしもまた、財政投融資による低利資金を大量に借りることのできる大企業に対し、昨年と同様の租税特別措置による年八百億以上もの減免税及び税金の繰り延べをし、さらにその上に、なぜ二%の減税を行わなければならないかということであります。おそらく政府の意図するものは、みずからの失政によるデフレ政策によって、大企業の収益が減ったので、それをカバーするために企図されたことであり、決して中小企業を保護するためのものではないと考えます。たとえば大蔵省提示の資料によって資本金別、所得金額別による減税効果を見ても、そのことが裏書きされるのであります。最近の資料に基き計算をして見ますと、所得金額五十万円以下の会社数は、全体の六一%もあるにかかわらず、減税効果の面では、わずかに三%であり、さらに、これを百万円以下の場合として計算して見ましても、なお七七%のの会社数に対し、七%の減税という結論しか出てこないのであります。また、これを資本金に基き算定して見ましても、会社総数の七八%を占める百万円以下の資本金の会社の受ける減税の恩典は、わずかに二二%でありましてこれを見ても、いかに政府の施策が大企業擁護であるかを、うかがい知ることができると思うのであります。  今日、一政府の緊急の課題は、わずか三十一億程度しか一般会計で予算対策がとられていない中小企業に対し、経済変動にもたえ得る基盤を搾り上げてやることであり、そのことのための減税方針でなければならないと思います。政府は、口を開けば中小企業対策中小企業対策と言いながら、実際には大企業対策しか行なっていない。私は、いまだかつて、政府から、大企業対策という言葉を聞いたことがないにもかかわらず、大企業対策が現実に行われているということは、まことに不可解であります。おそらく政府対策と銘打つものは、やる気のないことと、できないことの代名詞じゃないかと思われるのであります。  次に、私は貯蓄控除について指摘をいたします。今回、政府は、一定期間、六ヵ月以上毎月積み立てた預貯金その他が、二年以上引き出しをしない場合は、三%、六千円以内に限り所得税より控除するとの改正案を提示しておりますが、これは明らかに、富める者をますます富ます結果になりはしないかという点で、多くの疑問を持つものであります。たとえば、低額所得者が生活を切り詰め、預貯金をしても、確実に毎月六ヵ月以上積み立てて、しかもニカ年間手をつけずにおくことは困難であります。あるときは多少ゆとりがあるので預貯金をし、あるときは不時の支出で引き出しをする、こういう立場の者には適用されない。金に余裕のある者のみがこの恩典に浴し、富をますます偏在させる結果が出てくると思うのであります。また、政府は、この措置により、二千億円以上の預貯金の伸びを計算されておりますが、これには、今日までの討論範囲においては、確たる根拠がなく、あくまでも想定であり、もし預貯金が案に相違して伸びない場合には、ただ金持ちを肥やすだけに終ることを政府は何と考えるのか、まことに理解に苦しむものであります。  ところで、私は所得税法外二法律案討論の終局に当り、次のことを岸総理に望みます。  その第一は、より多くの国民の意思をいれた政治を行なってもらいたい。その第二は、総理としての決断力を持っていただきたいということであります。戦後、数多くの総理が国政を担当しておりますが、岸総理、あなたほど舞台効果と演出効果を百パーセント発揮した人はおりません。また、あなたほど国民に笑顔とあいきょうを振りまいた総理はおりません。地方遊説に行ったときなどは、それこそ奥歯の三枚目まで見せんばかりに、あいきょうを振りまいておるのであります。にもかかわらず、あなたほど人気の沸かない総理はこれまたおりません。岸ブームが沸かないという点では、あなたの与党である自民党も、選挙を間近に控えて大へん心配をされておるようでありますが、あなた自身、なぜブームにならないかということをお考えになったことがありますか。それはあなたの外見や貫禄ではない。あなたに不足し、あなたにブームの起らない最大の理由は、心底から貧乏を追放し、より多くの国民の要望にこたえる政治を行わないということにあります。あなたが今日まで行なってきた、また行おうとしている政治や公約は、すべてシャボン玉と全く同じであります。なぜシャボン玉かと言えば、見かけは大きいが中身が全然ない。しかも時がたてば消えてなくなってしまう。
  75. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 大矢君、時間です。
  76. 大矢正

    ○大矢正君(続) もしあなたが、ほんとうに国民の期待に沿う政治を行い、かつ岸ブームを作りたいという気持があるならば、政府は、すみやかに今議題となっている税関係法の改正案を撤回して、ほのぼのとした庶民性あふれる減税法案を出すよう希望をいたす次第であります。  以上をもって、私の討論を終ります。(拍手
  77. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) これにて討論の通告者の発言は、終了いたしました。討論は、終局したものと認めます。  これより七案の採決をいたします。まず、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    [賛成者起立
  78. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって本案は可決せられました。      ——————————
  79. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 次に、所得税法等の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案、秘税特別措置法の一部を改正する法律案  以上、三案全部を問題に供します。  三案に賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  80. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 過半数と認めます。よって三案は可決せられました。      ——————————
  81. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 次に、酒税法の  一部を改正する法律案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  82. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。      ——————————
  83. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 次に、入場税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。  委員長報告は修正議決報告でございます。  委員長報告の通り、修正議決することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  84. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって委員会修正通り議決せられました。      ——————————
  85. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 次に、道路整備特別会計法案全部を問題に供します。  本案賛成諸君起立を求めます。    [賛成者起立
  86. 松野鶴平

    議長(松野鶴平君) 総員起立と認めます。よって本案は、全会一致をもって可決せられました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後九時八分散会      —————————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 公正取引委員会委員長任命に関する件  一、日程第二 参議院事務局職員定員に関する件  一、日程第三 参議院法制局職員定員に関する件  一、日程第四 補助金等臨時特例等に関する法律の一部を改正する法律案  一、日程第五 糸価安定特別会計法の一部を改正する法律案  一、日程第六 農業改良助長法の一部を改正する法律案  一、日程第七 農林漁業団体職員共済組合法案  一、日程第八 企業合理化促進法の一部を改正する法律案  一、日程第九 地すべり等防止法案  一、議院法制局法等の一部を改正する法律案  一、裁判官弾劾法の一部を改正する法律案  一、道路整備緊急措置法案  一、道路法の一部を改正する法律案  一、日本道路公団法の一部を改正する法律案  一、国立学校設置法の一部を改正する法律案  一、昭和三十三年度一般会計予算  一、昭和三十三年度特別会計予算  一、昭和三十三年度政府関係機関予算  一、関税定率法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案  一、所得税法等の一部を改正する法律案  一、法人税法の一部を改正する法律案  一、租税特別措置法の一部を改正する法律案  一、酒税法の一部を改正する法律案  一、入場税法の一部を改正する法律案  一、道路整備特別会計法案