○山下義信君 私は
日本社会党を代表いたしまして本案に対し
質疑をいたしたいと存じます。
政府は、口を開けば
国民皆
保険ということを申されますが、両三年この方、何ら進展を見ていないのであります。さきの
国保普及四カ年
計画もついに失敗に帰しまして、五人未満の吸収もそのままと相なっているのであります。当時、
国民皆
保険の地ならしだなどと称しまして、岸幹事長みずから陣頭に立って、
健康保険の改悪を強行したというだけであります。しかも、今回、三十三
年度の
予算編成に際しましては、被
保険者の
負担増と
一体であるという公約にそむきまして、三十億円の
国庫負担をあざやかに抜き取ったのであります。——————————私は、たった二十億の金をかれこれ言うのではございません。二十億の金よりも、一国の
政府が、かくのごとき不信行為をしたということを遺憾とするものであります。ことに、
保険のごとき、まじめで、じみな仕事に対してその方針を二、三にするということは厳に慎しむべきであると信ずるものでございます。
国保が今日まで進展を見ないで、なお難航をたどっておりまする真の
原因は何であるか。
一つには、昭知二十三年、公営に切りかえましたときの跡始末を誤まりまして、
国保に対して嫌悪の念を植えつけたということ、いま
一つは、
政府の
施策がしばしば変更し、
保険行政に対する信頼を失ったのが
原因でございます。現に、
実施をおくらせればおくらすほど、
補助や恩典が多くなるというのでは、だれも急いでやるものはございません。みな、ひより見主義をとることに相なります。これが皆
保険失敗の
原因であります。何ぞはからん、ふたをとって見たら、皆
保険を阻害しているものは
政府自身であったのであります。よって私は、
大蔵、
厚生両
大臣に、三十億円の政治
責任につきまして、ここで弁明を要求いたしますとともに、特に
厚生大臣には、
保険行政の信用のため、
国庫負担の減額とにらみ合せまして、
保険料の料率を引き下げる用意があるかいなか、また、
国保の育成につきましても確固不動の基本方針があるのかないのか、あるとすれば、具体的にお示し願いたいと思うのであります。
政府がにしきの御旗のようにかついでおった
国民皆
保険の正体は、今度お出しになりましたこの
法案で明らかであります。何というお粗末なものでありますか、まるでボロボロのにしきの御旗である。こんなものでは、皆
保険はおろか、現在の
国保を一歩前進させることも、とうてい不可能であります。これは私だけが悪く言うのではありません。
社会保障制度審議会いわく、「この
法案には、真に
国民皆
保険の実をあげるため、
基礎的条件を
整備し、あるいは国の責務を明確にするような配慮がなされていない。
給付率の引き上げ、
国庫負担の増額、
医療機関の
整備等、その他何々何々、ことごとく不十分である。今回の
改正では、皆
保険完成を打ち出したものとは認めがたい。早急にやり直すがよかろう。会長大内兵衛、
堀木厚生大臣殿」と、こうなっております。堀木さん、いかがですか、一言なかるべからずでしょう。審議会の再検討要請に対して、どう対処されますか、御返事を伺いたいと思います。
こまかいことは委員会に譲りますが、あきれてものが言えないのは、設置
義務を
昭和三十六年までたな上げしたということであります。これはざる
法案でなくて、だるま
法案である。手も足もこれでは出ません。元来、この設置
義務たるや、
国保改正の眼目であります。岸さんの目は大きいが、この
法案には目がありません。目がないからどこへ行くのか見当がつきません。それというのも金を出すのがいやであるからです。
政府は、
国保に金が出したくないのです。舌だけはそつのないように出しますが、金は出しません。金を出さずに皆
保険をやるという、そんな無銭遊興のようなことはできません。ですから
政府としては、
国保の
改正案は、実は出さないつもりであったそれをこういうふうにたな上げして、恥をかきながら出してきた、言わずと知れた選挙目当てが目的である。敵は本能寺であります。しかし、せっかくでありますが、こんなものではだめで社会党案に比べて問題になりません。社会党では、三カ年で
国民皆
保険をみごとに実現して見せます。
給付率も六割、七割、八割と上げて行く、そうして健保と同様の
給付をいたします。金は惜しみなく出します。
国庫負担は初め三割、後に五割、すなわち半額を
負担する、
全国の
市町村民はこぞって社会党案に賛成すると、こういうことになっております。(
拍手)元来、残っておる
市町村は、
財政不如意か、または開設困難な都市のみでありまして、
自治庁が心配されるのは当然の話であります。いわんや再建
団体においてをやであります。
そこで自治
大臣に伺いますが、再建
団体に対しまして、
一般会計からの
繰り入れを
昭和三十四年までで打ち切って、以後は
国保の
特別会計の独立採算を厳命されておられまするが、
実情はどういうふうに進んでおりましょうか、また、今後いかなる
措置をおとりになるお考えでありましょうか、伺いたいと思います。
それから
保険税のことですが、われわれといたしましては、三十一
年度の平均におきまして、一人
当り五百六十六円、一世帯平均二千八百五十四円、こういうのがすでに限界点に来ておると思うのでありますが、なお、
負担能力の余地、増徴の余地があるとお考えでございましょうか。また、個人
負担の賦課につきましても、もっと応能
割合を増すべきであるという議論もございますが、自治
大臣の御方針を承わりたいと思います。
国保開設の都市におきましては、その
対象は、言うまでもなく低額
所得者がきわめて多いのでありまして、都市の人口から健保の加入者を引き去り、特別組合を除きますと、大体四〇%内外がその
対象である、あるいはもっと低いかもしれません。しかもそのうち、二〇%ぐらいは
負担能力のない
住民であります。そこで
保険税の減免
措置をどうするかということが問題になってくる。この点について、
自治庁の見解として、その
対象、
国保に及ぼす
影響、減免
措置等についての御方針を承わりたいと思うのであります。
一体、
国保の
赤字というのは、総額でどのくらいあるのでしょうか。
自治庁あたりでは四十一億四千八百万円と計算をされ、
厚生省では三百二十の
団体で十一億二千五百万円とも計算されておる。今回の補正第三号では十六億円が助成費として出されてある。これでは帯に短かくたすきに長いようでありますが、
大蔵、
厚生、自治
関係者から御説明を願いたいと思います。
次に、本案の中で重大な問題がある。それは
健康保険等の家族の二重加入を禁止するという
規定を設けた点であります。これは労働者の家族に不当な損害を与えるものであります。健保の家族の
給付率を引き上げたあとならばともかく、このままでは、まことに乱暴きわまる
措置でありまして、皆
保険と言いながら三百万人の加入者をかえってほうり出すことになるのであります。
政府は
実情に沿い、何らかの
措置を講ずる考えがあるか、当局の御方針を承わりたいと思います。
次は、
指定医療機関の問題であります。今後は、
健康保険と同じように、
保険医療機関
制度ということにする、ただ
全国と
府県とその区域が違うだけである、ここまでくると、
国保に国の統制方式がだいぶ加わって参りました。そこで、
日本医師会あたりが
医療国営を阻止するのだといって盛んに反対しておる。あなた方は、春闘や年末闘争を年中行事だと言ってかれこれ言われますが、あなた方の方こそ、
医師会とのけんかも、まさに年中行事のようであります。(
拍手)本年二月七日の
全国保険課長会議におきまして「
国保普及四カ年
計画が、本年に入って、俄然進展がとまったのは、
医師会が、新契約を見送れとの秘密指令を出したからだ。このため重大な支障を来たしたと判断する。よってわが方は」と、まるで大本営発表のようでありますが、何やら対策を指示されたということであります。
国保事業が
医師会のため妨害されているという事例並びにその対策とは何であるか、明らかにしていただきたいと思う。わが社会党におきましては、決してお医者さんとはけんかはいたしません。あくまで
保険医を信頼して行くのであります。そうして大いにその待遇を
改善いたし、被
保険者のために、よりよき治療をしてもらおうという主義であります。従って、僻地にも、無医地区にも喜んで開業医は行きます。これらの開業医諸君に診療所長を兼ねていただいて、
補助を十分にして、生活も保障して退職金もうんと奮発することにいたします。そうしますと、無医地区はたちまちに解消するのであります。これが社会党の行き方です。
政府の方では、三十三
年度予算によりますと、二十六カ所の公営診療所を作る、ただそれだけである。年々二十六カ所を作っていたのでは、百六十五カ村、七百二十八の無医地区を解消するのには実に三十四カ年かかるのであります。一方では、皆
保険四カ年
計画などというのでは話が合いません。医者のいない所でどうして
国保を開きますか、
厚生大臣に教えていただきたいと思う。
医療費引き上げの問題について、今後どのようにして解決なさるお考えであるか、
医師会とはもう絶対にお話し合いにはなりませんか、
医師会がどう出れば団交に応ずるという御
意思でありますか、また、
医療費の引き上げの八・五%というのは、場合によってはそれ以上になる可能性もあるのでございましょうか、その
実施の時期はいかん、従って、告示の時期はいつごろと予定しておられますか、承わりたいと思います。
堀木さんは、いつも
医療保障のレールが敷けた、敷けたとよく言われますが、それなら
一つ汽車を通してもらわねばならぬ。しかし、どうもまだまだ不完全なような気がいたします。それは
医療制度の改革ができていない。
医療というものの本質と取り組んでいない。われわれは、すみやかに
医療の
実態を改革すべきであると考えるものでありますが、私はしろうとで、うまく表現ができませんし、また、時間もありませんが、
医療法も
医師法等も、ともに改めるべきであると私は考えます。
医療機関の規模があまりにも小さ過ぎる、また、
医療機械も、設備もあまりにも旧式過ぎるように思われます。デパートの方がよっぽどりっぱである。木賃宿のような家に病院の看板がかかっておるというのではお話になりません。
それから今日の
医療は、病人の治療に大わらわの
状況である。これもどうもふに落ちません。果してそれでいいものかどうか。今は予防活動に全力を尽し、病人を作らぬようにする。そういう時代ではないかと考えるものであります。薬も病気にならぬような薬が一ぱいできております。OMKを使えばBCGも要らず、
結核が出ないという話だ。スターリンが作らせたゼリースというのを使えば老人にならぬという話だ。クロロマイセチンを使えば、どんな高熱でも一ころであることは御
承知の通り、その値段ももう百円前後と相当安くなっておりますのに、いまだに
医療保険ではそれを使わさない。かぜ引き患者を一週間も医者が引きとめておる。
国民皆
保険も、
医療保障も、こういうレールの上に乗っていてはお話になりません。ロケット時代に、まるでかごで道中をしているようなありさまであります。これからは
医師の任務を再検討し、環境衛生、予防活動、
住民の健康管理等に活用いたしまして、
医療費を激減させ、
保険医療の様相を一変すべきではないかと考えます。もし
政府に
医療制度改革の
計画があるならば、将来の青写真というものを見せていただきたいと思います。そうすれば、
保険関係者も、
医療関係者におきましても、今後の方針が立ちますから、無用の混乱が避けられるものと思うのでございます。
さて、私はここで岸首相に対し御質問申し上げねばなりません。岸首相は、
日本の
社会保障制度についていかなる長期
計画をお持ちになっておられましょうか、伺いたいのであります。私は首相が
貧乏追放と言われた直後、昨年の初めごろ、わが国においては
社会保障制度についてのプランというものがない。いつも思いつきばかりで糊塗しておる、これが欠点である。ぜひ総合的かつ長期的なプランを考えていただきたいということを委員会で申し上げたことがございますが、今これを承わりたいと思います。つきましては、解散はあなたがなさろうとなさるまいと、刻々に近づいておりますが、来たるべき総選挙におきまして、いかなる政策をもって社会党と相まみえんとするお考えでありますか、あるいは対決の政策がないのではないか。政策のないあせりから、何か社会党を刺激して誹謗の種を作ろうと、校長非組合とか、鉄道営業
法改正とか、いろいろ小策を弄しておるようであります。しかし、いやしくも天下の二大政党の決戦です。そういう術策でなく、正々堂々と政策を掲げて雌雄を決してはいかがでしょうか。しかしてその政策とはいかなるものを考えておいでになりますか、
社会保障政策もまたしかりでございましょう。この
機会にあえて
お尋ねをする次第でございます。
大蔵大臣には、
社会保障関係費につきまして、
財政当局としての御
所見が承わりたいのでございます。
大蔵省は
予算編成の都度、この
社会保障費をおきまりのようにばっさりと削る。そうして
関係者を泣かせる。保母や病人が雨の中をデモをして歩く、新聞が弱い者に同情する、そうすると、やっと前年通りにこれを認める。これを毎年繰り返す、これは
一体どういうわけなんですか。弱い者には強く、強い者には弱いというのは、紳士の恥じるところです。これは何か
社会保障費について
補助をやめたいとか、
補助率を下げたいとか、国と地方の分担を変更したいとか、
社会保障費の膨張を押えたいとか、何か
大蔵大臣としての一定の見解がなくてはならないはずであります。それをお聞かせいただきたい。あわせて
大蔵大臣としての今後の御方針もお示しを願いたいと思います。
思うに、貧困の問題は実に痛切であります。陽の目を見ることのできない大多数の
国民が、中にもエンゲル係数六五%以上と言われる二千万人の貧困階層は、陽の当る場所はどこにあるかと絶望のうちに彷徨しておるのであります。哀れにもこれらの気の毒な人々を、病気や幸運を好餌として、迷信邪教の輩が、これを餌食にしております。また日々の紙上には、ひんぴんとして親子心中の記事が掲載され、まことに痛心にたえざるものがございます。
岸内閣になってから一家心中が激増しております。首相はこの世相をいかに考え、いかに対処されようとなさいますか伺います。
また、松永文相は、この迷信邪教の現状等を果して
調査しておられましょうか、これを取締るお考えはありませんか。道徳の源は宗教で、いかにしてこれが是正をはかろうとされますか、宗教法人法を
改正し、近く国会に提案する御
意思はございませんか、同法のいかなる点を
改正するお考えでありましょうか、伺います。
国保に
関係する問題としては大学病院のことがございます。大学病院と
国保、健保等の
関係につきましては、別個の取扱いを要求されておるようでありますが、
保険医療にいかにも非
協力のように見えます。
診療報酬のプラン・アルファーは文部省にて
措置され、被
保険者のために広く門戸を開放されてはいかがでございましょうか。大学病院と
保険診療についての文相の御方針をお聞かせ願います。なお、この
機会に学校給食に栄養士を置く考えはありませんか、伺います。
石井行政管理庁長官には、
社会保障関係についての行政機構の
改正、行政
運営の方法等につきましていかなる検討を加えておられますか。行政管理庁は昨年の秋、公的
扶助、児童福祉等の監査をいたしました結果、激しい非難をこれに加えて、その
改善を主張されたのでありますから、さだめて御研究が進められてあろうと思います。従って御
所見を伺いたいのであります。関連して、問題の審議会につきましていかにこれを整理し、いかに改めようとしておられますか、長官たる石井副
総理の御
所見を承わりたいと思います。
以上で私の質問を終りますが、願わくば誠意ある御答弁を期待してやみません。(
拍手)
〔佐野廣君発言の許可を求む〕