○山田節男君 ただいま
議題になりました
放送法の一部を
改正する
法律案につきましては、私は日本
社会党を代表いたしまして、以下、岸総理、
田中郵政大臣並びに大蔵、通産、文部の諸大臣に質問を申し上げたいと存じます。
その前に、この
放送法とは、従来の日本におきまする
放送文化の
一つの憲法と申しまするか、この基本法が、
改正をされることになったのでございまするから、私は、この
放送法の制定当時の
一つのエピソードを皆様に申し上げて、本論に入りたいと存じます。
顧みますると、
昭和二十三年の六月でございました。芦田
内閣のときでございましたが、私は当時、日本
社会党の渉外
関係を担当しておりました。GHQの通信部並びに民間
教育情報部部長から招かれまして、そのときに、こういうことを言われた、
昭和二十年の十二月に、GHQ、マッカーサー司令部から、NHKを根本的に再組織すべしというメモランダムを出してある。これは、ここに岸総理がおられますが、当時、東条
内閣の閣員をしておられた岸総理は、十分お感じになっておることと思いまするが、この戦争中におきまする
ラジオ放送というものを、国家の
言論統制をして、ひどくこれを
利用したことが、今日の日本の悲運を招いた大きな原因であるからして、財閥の解体、それから農地の解放、それから
放送の自由、これが日本の民主化の根本政策をあるからして、ことに
放送法を制定しなくてはならない、それと同時に、
日本放送協会にこれを独占させるということは、再び軍部、あるいは官僚、あるいは特権階級が乱用するかもしれないからして、この
放送の
文化を保障するような方向に
一つ法律を作りたい。これが
電波法、
電波監理
委員会設置法並びに
放送法となって現われたのでございます。私は、この
放送法が日本占領軍政下におきまするある特殊の
状態におきまして、日本民衆のために定められたものであるということを、皆様に御記憶を新たにしていただきたいと存ずるのであります。(
拍手)
さて、今回のこの
放送法の
改正のいきさつでございまするが、ただいま所管の
田中郵政大臣も、きわあて詳細に、るる述べられました。あの自信満々たる提案
理由の御説明でございまするけれども、私は以下質問をいたすことによりまして、大臣並びに岸
内閣全般の所信を明らかにしておきたいと思うのでございます。
まず第一に、岸総理に対してお伺いしたいのでございまするが、この
電波は、これは
国民の共有の財産であります。いわゆるパブリック・ドメインと申しておりますが、これは
国民の要するに共有の領域である。しかも今日、地球上の数多くの種類の、あるいは出力の
電波が使用されておりますために、条約によりまして、日本に割り当てられる
電波に制限があるのであります。でありまするから、
電波法の第一条に申しておりますように、これを
国民のために、
公共福祉のために、きわめて有効に、かつ能率的に使わなくてはならない、かようなこれは、何と申しまするか、
電波行政というものは、一
内閣の中の大臣が所管すべくあまりにもこれは重大なものでございます。でありまするから、
アメリカを初めヨーロッパ諸国におきましても、
電波行政に関しましては、これは司法、行政、立法、こういったような、きわめて複雑な行政事務を扱わせる、しかも、国際的にいろいろな制約を受けますのみならず、この
国民の権利義務、こういもことまでも
関係するものでございまするから、どうしても私は
電波行政につきましては、一
内閣の行
政府がこれをつかさどるということにつきましては、今日までの治績を見ましても、非常に弊害が多いのじゃないか。昨年の
テレビジョンのチャンネルの割当にいたしましても、
田中郵政大臣は、きわめて勇敢にやられましたけれども、しかし、私どもから見まするならば、これは一種の利権化運動となって参りまして、暗躍明動、まことに見にくい争奪戦が行われておることは事実でございまするが、こういろ点から見ましても、私は
電波行政は総理府の外局に置いて、政治と独立した
一つの行政
機関を設ける必要があるのじゃないかと思うのでありますが、この点に関する岸総理の御所見を伺いたいと存ずるのであります。
それから第二には、これは直接本案の
改正に
関係はございませんけれども、かねて岸
内閣は、国連中心の外交を行い、善隣友好を外交の中心としてやってきておられまするけれども、今回のこの
放送法の
改正に伴う
一つの問題といたしまして、来年度のNHKの
国際放送の予算問題であります。
昭和二十七年に、占領軍が初めて
国際放送の開始を許しまして、そのときに、わずか一日五時間、二ヵ国の
外国語をもって始めたのでありますが、吉田
内閣、鳩山
内閣、年々国庫の負担をふやしまして、これは申すまでもなく、
放送法の第三十五条によりまして、
郵政大臣がNHKに、その
放送地域と、あるいは
放送事項を命令して、
国際放送をやらせる。従って、三十五条によりまして、国が
国際放送所要の費用を負担するということになっておる。しかるに、今週の三十三年度のNHKの予算を見まするというと、在来の
内閣が年年、この
国際放送の重要性にかんがみまして、若干ではありまするけれども、予算をふやしてきたのでございまするけれども、来年度の予算を見まするというと、これは初めてでございまするが、額から申しますと、千五百五十万円という
国際放送の経費を削っておるのであります。これね私はまことに残念なことでございまするが、その
理由を聞いてみまするというと、千五百五十万円は、これは減らしたけれども、これは
外国へ
海外放送の送信をする国際電話の送信料を少しまけさせるから、それでとにかくがまんしろということを言われたのでありまするが、この千五百五十万円をどういうふうにしてまけさせるかと申しますというと、御承知のように、
海外放送は、いわゆる時間によりまして
電波の
状況が非常に違うのであります。たとえば、東南アジアにおきまして数カ国の
電波を発しまする場合にも、正確にそこに到達するためには二波も三波も使用しなくてはならない。しかるに、これを三波やって、正確にその土地に送信をしようというのを、ただ
一つでやる。要するに、値段を値切るということは、その
放送が向うに着くか着かぬかわからぬ。こういうようなことをしてまで
国際放送の経費を削るということは、私は岸総理の今日までの、東南アジアに行かれ、あるいはワシントンに行かれた外交
方針と申しまするか、善隣友好の外交と、
国際放送の経費を節減するという、これは初めてのことでありますが、この矛盾した
事項に対しまして、岸総理はどういうお
考えをお持ちであるか。聞くところによりますると、NHKは六億円の
海外放送費をくれと、
政府は値切りまして、二億六千万円でいいと、そういたしまするというと、大蔵省の最後の査定におきまして、約九千万円の査定にした。
イギリスは、一九五八年度におきまして、
海外放送のために五百七十万ポンド、邦貨にいたしまして五十七億円の交付金を与えておるのであります。これは私はまことに遺憾なことでございまするから、岸総理の御所見を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
その次には、これは
岸総理大臣、
田中郵政大臣、両方に御答答を求めるのでありまするが、先ほど、前田議員からも問題にされましたNHKの
受信料の問題、
現行法の三十二条によりまするというと、とにかくNHKの
放送を
受信するための
受信機を据えたからには、これはもう強制的に
受信契約を結ばなくちゃならぬ。これは
一つの強制
規定になっているのであります。これが先ほど来、大臣も御答弁になりましたごとく、
民間放送が非常に数多くなりまして、東京のごときは、
放送に関する限りにおいても、短波を入れますと六つのダイヤルがついておる。
テレビにいたしましても、現在三つでございまするが、これが五つになる。こういうような
情勢におきまして、とにかく
テレビでも
ラジオでも聞けば、すべてNHKに
受信料を払わなくちゃならぬということは、これは何と申しても大さな疑問でございます。のみならず、契約の自由という憲法の保障しているところから申しますると、一種のこれは憲法違反じゃないかということまで、今日言われておるのでありまして、かように、実に何と申しますか、矛盾きわまる事態となってきましたこのNHKの
受信料をどうするのか。大臣の御答弁を聞きまするというと、まあ今どもにかやっておりまするからして、そのままにしておきましたという御答弁でありまするけれども、NHKのために、あるいは日本の将来の
公共放送の発展と財政的基礎の確保をするという
意味からいたしましても、これをなおざりにしたということは、これは私は、
田中郵政大臣並びにこの主宰者でありまする岸総理の責任は、きわめて重大であり、怠慢と申しても差しつかえないと思うのであります。ことに不徹底な
改正法の中におきまして、最も不徹底きわまるこの重要な問題に触れなかったということにつきまして、もっと私は徹底した
郵政大臣の御答弁を願いたいと思うのであります。
なおまた、NHKの
受信料でありまするが、これを値上げするということが、この
国会開会前におきまして
田中郵政大臣から申されました。申すまでもなくNHKは、
テレビジョンを今年度におきまして数多く建設しなくてはならぬので、金が要るのであります。従いまして、従来の一カ月六十七円を百円にしてくれということを申し出たのにつききまして、
郵政大臣は、月八十五円にしようと、こういうことを言われたことを新聞で知ったのでございまするが、少くとも全日、現
政府におきまする
受信料というものは、一種の税金のように、何んでもかんでも強制的に取られるというのでありまするが、月六十七円でございまするが、
テレビは一カ月三百円でございます。こういう
国民の
経済にきわめて重要な、問題の重要性におきましては、郵便切手の値上げ、電信電話料の値上げと何ら異ならないこれを、一
郵政大臣が値段の上げ下げをできるようにしておくということは、これまた私は、まことにけしからぬことであると思うのでありまするが、この問題については、むしろ私は
法律をもって電信電話料金、郵便切手と同じようにきめるべきものだと思うのでございまするが、これにつきまする岸総理並びに田中主管大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。で、NHKは
公共放送の重任を果すために、値上げをされないままで、
テレビの建設、
ラジオの整備の予算を計上しておりまするけれども、今年は値上げをしておりませんけれども、来年をどうするのか。来年以後におきましては、どうしても
拡充整備しなくちゃならぬところの金が要るのでありまするけれども、来年になったら、この料金を上げるのか、総選挙が済めば料金を上げるのか、この点を
一つお伺いしたいのであります。(
拍手)次に、これは
田中郵政大臣に御質問申し上げたいと思うのでありまするが、先ほど来、
田中郵政大臣は、実に何と申しまするか、
現実に即応し、必要欠くべからざる
改正をやったということをおっしゃっておりますけれども、私ども逓信
委員の者に、今
国会が始まりまして、
放送法の
改正の要綱を配られたのでございます。それが三度私どもに渡されましたが、渡されるごとにこの
改正の
内容が変っている。しかも一番目立つ点は、このNHKの監督の問題であります。ここにもございまするけれども、二度目に送られました
改正法律案要綱には、
日本放送協会に対しまして
放送法の
施行に必要な
限度において
業務の
報告を求め、そうして郵政省の職員をして
財務の
調査をせしむるということが書いてある。これを最後の案においては削っておるのでありますが、あなたは衣の下によろいはないとおっしゃいますけれども、こういうようなところを見ましても、どうしてもやはりNHKを何とか
郵政大臣の支配下に置こうという下心があるということは争えない。従って、前田議員の申されましたように、この
業務報告を求める、
法律の
施行に必要な
限度において
報告を求めるということも、これは最後のひもをここで握っておられるということを証明するものでありまして、私はこの点におきましてこれを撤去すべきだと思うのでありますが、その点に対する
郵政大臣のお答えを、もう一度聞きたいと思うのであります。
次に、この
法律改正によりまして
放送番組の審議
機関を法制化したということであります。しかもこれは、
会長の諮詢
機関でありますけれども、この審議会の
委員が、
意見、勧告をした場合には、
会長はどうしてもこれを執行しなければならぬという義務があるというようにしておるのであります。これは一体何を
意味するのか、
放送の自由を保障するということでありますならば、従来のように、
民間放送でも、いわゆる中央に
一つの大きな
番組の審議
機関を持っている。そして
番組の
基準を作っておるのであります。
放送協会は各地方ごとに持ってうまくやっておるのであります。それをわざわざ法制化いたしましてしかも、その勧告、
意見は、
会長が尊重して
措置しなければならないという
規定にしておる。これも悪く言えば、
一つの官僚統制の現われであると言われてもいたし方ないと思うのであります。この点につきまして、私は重ねて
郵政大臣の御答弁をわずらわしたいと思うのであります。
最後に、
民間放送は、
受信料を取っちゃいかぬ。これは大臣が明日の
放送の姿を想定してと言われますけれども、
民間放送が、従来
テレビあるいは
ラジオを無料で、スポンサー付でやっておりまするけれども、
アメリカに見ますごとく、
民間放送が有料の
テレビ放送、
ラジオ放送をやるのであります。これは現に出願者があるのでございます。それを
民間放送からは、絶対にこの
受信料を取っちゃいけないということは、まことに私は先を見ない見通しだと思うのでありまするが、この点に関する
郵政大臣の所見を伺いたいと思うのであります。
それから、時間がございませんから、大蔵大臣への質問に移りますが、これは申すまでもなく、
テレビジョン、
ラジオの物品税の問題であります。今日、すでに八十万をこえている
テレビの視聴者がございますが、なるほど、最初におきましては、
テレビは一インチ一万円、今日におきましては、一インチ五千円の割合でできておりますけれども、なお十四インチのものが七万円から七万五千円、
アメリカの百二十ドルに比べますると、はるかに高いのでございます。それはいろいろ原因がございましょうけれど、
外国の
特許料を払う、並びに大蔵省が課税しておりますところの十七インチ以上は三〇%、十四インチ以上は二割、ことしの六月三十日まではこれが一割七分になっておりますけれども、かような高額な物品税を取るというところに、私は非常に
テレビのセットの高い原因があると思う。これは大臣も申されますごとくに、やがては三百万、四百万になるのであります。それに、こういう多額な奢侈品的な物品税を課することが果して妥当であるかどうか。私は、これを少くとも
現状の半分ぐらいに減らすべきものであると思うのでありまするが、これに対する御
意見を伺いたいと思うのであります。なおまた、先ほど申し上げましたように、
国際放送のための国家交付金を千五百五十万円減らした。しかも、あなたのところの主計官でありましょうが、これが
外国へ
放送を送信する送信料を値下げさして、
放送の質を悪くして、そしてこの予算を、交付金を値切ったということでありまするが、これは私は、岸外交政策に対するまことに非協力な態度であると思うのでありまするが、この点に対する大蔵大臣の御所見を伺いたいと思う。
それから、通産大臣でありまするが、これは物品税に対しましては、もちろん反対でありましょうけれども、あなたの前任者は、
昭和二十七年でございまするか、
テレビを大いに発展させるのであるからして大いに大量生産を奨励してそしてこの
テレビジョンのセットを極力安くしますという五カ年計画を立てておったのでありますが、今日も依然として、この
テレビのセットが
国民大衆に、はるかに手がとどかないほど高いということは、これは一体どこに原因があるのか、この一点。
それからもう
一つは、
カラー・
テレビジョンでありまするが、時間がありませんから、これ以上申しませんけれども、要するに、
カラー・
テレビジョンをすでにNHKあるいは正力国務相が創設されましたNTVに
実験放送をやらしておる。これは
カラー・
テレビジョンというものは、標準方式は一体どうするかということは、先ほど
郵政大臣が申されたように、モスコーでこれから論議されるのであります。これを、いかに新しがり屋とは言いながら、
アメリカの標準方式をそのままにいたしまして
実験放送をやっておる。ドイツにおきましても、
イギリスにおきましても、特に
イギリスのごときは、すでに
テレビジョン視聴者が四百五十万でありますけれども、
カラー・
テレビジョンは、ここ数年は絶対やらない、こういう慎重な態度をとっておるにもかかわらず、日本におきましては、もう
カラー・
テレビジョン実験放送という名前におきまして、二カ所でやっておるというこの事実であります。しかも、聞くところによりますると、この一商業
放送の
カラー・
テレビジョンの
実験放送は、この
カラー・
テレビジョンの
受信機を百台輸入してくれということを通産大臣に申し入れておるそうであります。これは、元来から申しまするならば、実験用でありまするならば、三台か五台買い入れまして、それをメーカーに
研究させればいい。百台輸入、非常に高いのであります。少くとも一台は五十万円であります。それを何にするかと言えば、それを
実験放送のために方々に据えつけましてこれを宣伝に使う。また、それに
一つのスポンサーをつけようというやに伺っておるのでありますが、この外貨の貴重な今日におきまして通産大臣は、
カラー・
テレビのセットを
アメリカから百台輸入するということは、これは事実であるかどうか、この点を伺いたいのであります。
最後に、文部大臣に対しましては、これは昨年の二月と思いまするが、参議院の文教
委員会におきましてことに
テレビの
教育放送は重大であるからして、この
テレビによる
教育放送を開始する上におきましては、参議院といたしましては、なるべく
公共機関的な
放送機関によって青年、少年並びにこの
社会教育のために、慎重を期して画策をすべしということが、付帯決議として文部大臣に出されておるのであります。しかるに、昨年の
テレビのチャンネル割当におきまして、
教育放送の
公共放送並びに
民間放送の免許がございましたけれども、これにつきまして文部大臣は
郵政大臣からいろいろ協議を受けられた。また、今回の
放送法の
改正におきまして、
公共放送、
民間放送におきまする
教育放送番組につきまして、文部大臣は
郵政大臣からいかような相談を受けられ、また、文部大臣としてはいかような
意見を述べられたか、この点を
一つお伺いいたしたいと存ずるのであります。
以上、はなはだ論旨が尽きませんが、時間がございませんので、これをもって質問を終る次第でございます。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇、
拍手〕