○田畑金光君 私は
日本社会党を代表し、
岸内閣の内政
政策、
労働、中小企業、地方行財政、社会保障に関し、若干の
質問を行わんとするものであります。
まず第一に、私は
岸内閣の
労働政策に関しお尋ねいたします。すでに周知のように、第二次
岸内閣はその成立に際し、
三つの公約をいたしたのであります。すなわち第一は、完全雇用の実現であり、第二は、勤労者の生活水準の
向上であり、第三は、よき労使慣行の樹立ということであります。しかし事実は、反動的
労働政策に終始し、公約の
一つすら実行できなかったのがこの一年間における
岸内閣及び石田労政の実体であったのであります。今日、
国民の切実な要求は、完全雇用の問題であります。ところが、
岸内閣の沈滞した政治は、この問題に対し、何らの具体的、建設的回答を提示せず、六十万人台の完全失業者が依然として存在し、加えて数百万に上ると言われる潜在失業者、一千万をこえる生活困窮者は、そのまま放置されているのが現状であります。今や国内不況は深刻化し、失業、雇用問題はいよいよ緊迫をきて加えてきております。過去一年間の施政の成果は、失業者を減らすことではなく、貧困と失業をますます多く作り出したにすぎません。そこで
岸総理にお尋ねいたしますが、今日の雇用、失業問題を
総理はどのように把握せられ、雇用
政策をどう進められようとする
方針であるか。
政府は、昨年十二月、三十三年度を起点とする新経済五カ年
計画を立て、
わが国経済発展の構想を描かれましたが、これによって、
昭和三十七年度までに、新規に四百九十八万人を吸収しようというのであります。せいぜい学卒者を吸収し得る
程度でありまして、完全雇用にはほど遠いものがあります。この際、新経済五カ年
計画と雇用との
関係に関しまして、河野経済企画庁
長官の明確な
説明を求めます。昨年十二月末、
労働省は、三十三年度の雇用、失業問題に関し、その
見解を明らかにいたしました。すなわち三十三年度は、経済成長率から見ても、雇用の
動向、生産年令人口の増加や景気の動きからいっても、二十九年の不況時よりも、より深刻になるだろうと見ておりまするが、本年度失業対策
予算をもってして、事態を乗り切り得る確信をお持ちであるかどうか、承わりたい。
以上述べましたことは、雇用量の問題でありますが、
わが国の雇用問題の最も深刻な問題は、むしろ質の問題であります。戦後、
わが国の経済は急速なテンポをもって回復し、雇用量も相当伸びたことは事実でありますが、質的に見た場合、そのほとんどが臨時工ないし日雇いの形であり、さらに長時間
労働、短時間
労働、低賃金
労働といった不完全就労の形で伸びてきております。同時に、近代産業における雇用と、
農業及び中小企業における雇用との間の質的な格差は一段と激しくなり、今後増大する
傾向にあります。すなわち雇用の二重構造の問題がそれであります。そこで
岸総理にお尋ねいたしまするが、雇用面における質的悪化に関し、
総理はどのように
理解され、今後どういうような改善策を加えて行かれようとするのか、明確に承わりたいのであります。
次に、
労働者の生活及び物価と賃金のアンバランスの問題に関しお尋ねいたします。朝鮮動乱直後の
昭和二十五年六月を基準として、卸売物価と賃金、すなわち支払賃金指数を生産指数で割ったもので比較して見ますと、勤労者に支払われる賃金は、
生産性の上昇にもかかわらず、逐年低下し、賃金と物価の開きはますます大きくなってきております、さらに、最近における米価を初め、運賃、住宅費等、消費者物価値上りは勤労者の家計をいよいよ圧迫してきております。しかも、今日までの
政府の態度は、仲裁裁定の不完全実施、人事院勧告の軽視等と相待ち、賃金ストップに介入し、反面、物価
政策や福祉施策に何
一つ具体案を持っておりません。そこで
岸総理並びに石田労相にお尋ねいたしますが、こうした賃金、物価のアンバランスをいかようにして是正されようとせられるのか。賃金
政策、物価
政策に関し、その所信を承わっておきたいと思います。
さらに、これと関連して、私は最低賃金についてお尋ねいたします。
政府は、今
国会に最低賃金法案を提出する
方針とのことであり、けさの各新聞は、
労働省試案要綱を伝えております。最低賃金制の問題は、今日はもはや必要論云々の問題ではありません。いかようにして最低賃金額を決定するか、その
方法いかんの問題であります。しかし現在、
政府の
考えている
方法は、業者間
協定による最低賃金と、
行政官庁の決定による最低賃金方式を中核とする構想のようであります。およそ業者間
協定に最低賃金の
基礎を求めることはナンセンスであり、賃金ストップ、最高賃金に結びつく危険があることは、静岡のミカンカン詰業の事例によっても明らかであります。ましてや
行政官庁が決定することは、本来、労使間できめらるべき
労働問題に関し、
行政権力の介入を招く危険があります。そこで石田労相にお尋ねいたしますが、このような
方法によって、果して公正な最低賃金の決定ができるかどうか、かえ力て
日本の低賃金をくぎづけにする危険はないか。また、最低賃金法を実施するといたしまするならば、家内
労働法によってこれを裏打ちする必要があると思うが、家内
労働法に関し、
政府の所信を承わりたいと思います。
次にお尋ねしたいことは、労使間のよき慣行の樹立という問題であります。過去一年間の石田労政の跡を振り返って見ますと、公労協争議に対する
政府の統一
解釈の発表や、国鉄の争議を違法ときめつけ、場合によっては公労法を改正し、刑事罰を課するなどという態度、さらに
労働組合費のチェックオフや、組合への事務所貸与を禁止するなど、一方においては、
教員に対する
勤務評定の強行と相待ち、
岸内閣の
権力政治、反動的石田労政の性格を端的に示すものであります。旧
憲法当時の取締り
行政によって、よき労使慣行が生まれると期待することは
時代錯誤もはなはだしい、よき労使慣行の樹立のために
政府のとるべき道は、公務員一公企体職員にスト権を回復することであり、すべての
労働者に
憲法の保障する基本権を与えることであります。ILOにおいては、結社の自由及び団結権の擁護に関する
条約を採択し、すでにイギリス、フランス等、おもだった三十余カ国がこれを批准しておりますが、ひとり
日本のみが長い間批准をサボダージュして、世界の非難を浴びている現状であります。そこで
岸総理並びに石田労相にお尋ねいたしますが、すみやかにILO
条約を批准し、
憲法で保障された
労働基本権を尊重し、公務員、公企体職員にスト権を与えるべきであると思うが、その用意があるかどうか、明確に承わりたいのであります。
昨年十二月、公共企業体審議会は、公企業体のあり方に関し、
政府に答申を出しております。すなわち公企体制度を強化しながら、民営の長所を取り入れるためには、公企体の
予算及び決算は、企業性にふさわしいものに根本的に改めるとともに、
国会の議決を要しないものにすると言っております。
岸内閣の
労働政策は、公社等の争議行為を取締るだけに狂奔し、よって来たる根源をきわめることを忘れております。国鉄など公企体の労使
関係が不安定なのは、
労働者の責任では断じてなく、公企体の性格や運営にあることは周知の事実であります。公社の経営に
自主性が与えられ、使用者が労組との団体交渉においても、責任を持って自主的解決ができる体制ができますならば、労使
関係は今よりも大いに改善されることは必至てあります。そこで、
岸総理にお尋ねいたしまするが、公企体のあり方について、
政府は現状のままに満足するのか、少くとも
労働政策に関する限り、答申の趣旨に基いて改善を加える
意思がないかどうかを明らかにしていただきたい。しかるに、このような民主的な態度を忘れて、
政府は昨今、国鉄営業法の全面的改正案を本
国会に提案し、罰則の強化をはかり、正常な業務運営の名に隠れ、
労働運動を弾圧する法改悪を準備していると聞きますが、事実であるかどうか、
総理並びに運輸大臣より明確な
答弁を要求いたします。もし事実といたしますならば、それこそ、よき労使慣行の樹立を破壊するものは
政府自身であり、反勤
労働政策の本性を遺憾なく暴露したものと指摘しなければなりません。このような暴挙によって事態か混乱することは、あげて
政府の責任であることを強く警告して
政府の所信を承わりたいと
考えます。(
拍手)
次に、私は中小企業
政策に関し一、二承わりだいと思います。中小企業が
日本の産業構造及び輸出の面において重要な地位にあることは申すまでもありません。ことに、
国民の衣食住のほとんどが中小企業によってまかなわれておるのが
実情であり、従って、これが発展いかんは直接
国民生活につながる問題であります。
政府は中小企業振興対策を重点施策の
一つに取り上げて参りましたが、本年度
予算を見ましたとき、果してこれで重点施策の名に値しましょうか。中小企業対策費はわずかに三十一億四千六百万円であり、総
予算の〇・二五%にすぎません。農林
関係予算二百億増に比べましても、みじめな増額と言わなければなりません。法人税一律二%の引き下げが、大企業、大法人のためであることは、その
内容も見れば明らかであります。わが党が事業税の軽減を主張いたしましたのも、かかる政治の偏向を正さんがためであります。なるほど中小企業信用保険公庫が設置されましたが、
政府出資わずかに八十五億、うち二十億を信用保証協会に貸し付けるというのでありますから、大した期待はできません。かえって
国民金融公庫、中小企業公庫、商工中金に対する財政投融資は、三十二年度に比しまして百十五億の減少でありまして、この分では、これら金融機関は需要見込みの五割
程度しか応じられないというのが
実情であります。予測される不況を前にいたしまして、この手当でもって十分なりとお
考えであるのか、今の情勢いかんでは、補正
予算等で対処するとの
方針であるか、通産大臣がら承おりたい。経済の均衡ある発展を
計画的に進めますためには、どうしても金融の裏づけがなければなりません。財政面からくる過度の経済刺激と無
計画な金融
政策が、投資過剰と輸入増大をもたらし、外貨危機を
中心とする
わが国経済の今日の混乱をもたらしたのであります。今日、金融資本は再び強固な支配体制を確立し、その傘下にある企業でなければ融資をしないという系列金融を強行し、産業の破行状態をもたらしております。中小企業また例外ではありません。
政府は金融
政策においても自由放任主義をとり、単なる窓口指導と資金調整
委員会等の自主的調整にゆだねておりますが、これでは資金の効率的運用も、産業全体の均衡ある発展も期待することはできません。むしろこの際、立法措置による資金の
計画的運用をはかり、他面、中小企業の減税措置を講じ、さらに、わが党の提案しておりまする大企業と中小企業との産業分野確立に関する法案、小売商業振興法案等の成立を促進し、総合的観点に立つのでなければ、中小企業の安定は期しがたいと
考えまするが、
大蔵大臣並びに通産大臣の所信を承わりたいと
考えます。
第三に、私は地方行財政の問題に関し一、二承わりたいと思います。第一は、昨年十月、地方制度
調査会の答申のありました地方制案についてであります。これによると、府県を廃止し、知事を官選にするという、いわゆる道州制案になっております。帰するところ、この答申のねらいは、官治的中央集権の採用であり、旧内務省の復活を意図しておることは明らかであります。戦後十余年の間につちかわれた地方自治を抹殺し、再び戦前の天下り的官僚支配を地方住民に押しつけようとするのがこの
内容であります。府県の廃止は
憲法九十二条の精神に違背するものと申さなければなりません。今日、地方自治の問題は、制度の問題ではなく、自治体に独自の財源を付与せず、地方財政を窮乏に置いてあたかも、これを制度の欠陥であるかのようにすりかえようとする歴代保守官僚内閣の逆コース政治の問題であります。この際、
岸総理にお尋ねしたいことは、地方制度に関する現内閣の
方針いかん、制度
調査会の答申に対する
政府の態度を明らかにしていただきたい。
第二にお尋ねしたいことは、現在、地方税のうち最も過酷であり、かつ不公平な事業税、ことに中小企業者に対する事業税の問題であります。大蔵当局も、当初これが軽減を準備しながら、地方財政との関連で取りやめたと聞くが、事実であるかどうか。今日、国税においては大法人に対し租税特別措置法により六百億ないし八百億の免税が行われております。これとの均衡から申しましても、事業税の八十億ないし百六十億の減税は当然の措置と言わなければなりません。われわれは中小企業に対する事業税は、少くとも税率を二%引き下げること、個人事業税の
基礎控除を二十万円まで引き上げることを主張いたしております。これによる地方財政の不足は、特別措置法の廃止等による事業税のはね返りにより、容易に埋め合すことができるはずでありまして、これすらできぬところに、大企業、大資本
中心の現内閣の性格が如実に現われておると言わなければなりません。(
拍手)事業税軽減について、いかように
政府はお
考えであるか、
大蔵大臣、自治庁
長官の
見解を承わりたいと
考えます。
最後に、私は社会保障に関し若干の
質問を行わんとするものであります。歴代の保守内閣、ともに社会保障の強化を必ずその
政策の一項目に掲げて参りました。一千億減税、一千億施策を呼号した三十二年度
予算は、社会保障
政策前進のためには、またとない絶好の
機会でありましたが、ついにその
機会を逸したのであります。昨年未発表された厚生白書は、
わが国における貧困の問題を端的に示し、資本主義政党の持つ政治の貧困を如実に物語っております。すなわち、
国民所得の点から見ますと、
わが国は先進国と後進国の中間にあります。ことに注目すべきことは、米英等においては、所得の絶対水準が非常に高い上に、経済の成長につれて貧富の差が縮まる
傾向があるに反し、
わが国にあっては、
昭和二十五、六年の経済の安定期から発展期に入るに従い、かえって貧富の差が激しくなってきたということであります。すなわち、これは不労所得階級が増大し、
反対に勤労者階級の生活は圧迫、窮乏化しておるという事実を物語っております。今日、農村人口は全人口の四割三分を占めておるが、その所得は一割八分に満ちません。要するに、戦後の復興が農村、
農民の犠牲の上に進められてきた実証でありまして、これこそ資本主義政治の自己矛盾にほかなりません。
岸総理は三悪の追放、貧乏の解消を
国民に対する最大の公約として唱えて参りました。ところで、
予算は、
政策の集中的表現であり、公約の実行でありますが、三十三年度
予算は、社会保障を一体どれほど前進せしめ、
国民生活の安定
向上に幾ばくの配慮を加えておると言えましょうか。経済に刺激を与えぬとする緊縮
予算編成方針は、
予算ぶんどりと、
岸総理の優柔不断により、かつて見ざる不評利の放漫財政になっております。
予算規模は前年度を上回り、減税は大企業、大資本家を潤し、
国民一人当りの国税負担は、前年度より七百五十四円の増税となっております。先ほども指摘がありましたように、
予算規模は前年に比べますと、一五%強の増額であります。社会保障費の増額は九%弱の増額にすぎません。
予算全伸に占める社会保障費の割合は、前年度の一割強に比し、本年度は九・五%に後退しております。
岸総理の貧乏追放は、三十三年度
予算の面からは完全に追放されております。(
拍手)これすらも社会保障重点施策と呼ぶならば、概念の混乱を招くというものであります。汚職追放とともに貧乏追放の看板は、
岸内閣の
政策スローガンから取りはずすことが、政治的
良心なりと
考えまするが、
岸総理の
見解を伺いたい。
以下、欺瞞的な社会保障
政策の
内容について、二、三お尋ねいたします。第一に、
政府は、三十二年度以降四カ年
計画で
国民皆保険の実施に踏み切ったのであります。ところが、初年度は六百九十万人の新規加入を予定しながら、昨年十一月末、三百二十万にすぎず、年度内においては、せいぜい四百万にとどまるだろうと言われておりますが、これで果して三十五年度までに、
国民皆保険が実現するとの見通しであるのかどうか。この伸び悩みの原因は、市町村の財政難と、加うるに
国民健康保険の
内容が非常に劣悪な
条件にあるということであります。三十三年度
予算においては、調整交付金制度が設けられ、一歩前進はしておりまするが、少くとも社会保障制度審議会の勧告にもありますように、医療給付費の国庫負担を三割に引き上げ、七割の医療給付を実施することが、
国民健康保険普及促進の道であると私は
考えまするが、
政府にその用意があるかどうかを厚生大臣から承わりたい。
第二に、
国民健康保険とともに、医療保障の重要部門を占める健康保険、船員保険について見ますると、たとえぱ健康保険においては、三十一年、三十二年度ともに、それぞれ三十億の国庫補助がなされてきました。しかるに、三十三年度の
予算においては、わすかに十億に減らされております。ことに、去る第二十六
国会におきまして、患者の医療費一部負担が政治問題化いたしましたとき、時の
大蔵大臣は明確に、健康保険財政の黒字、赤字にかかわらず、定率までとは行かないが、定額を負担すること、三十億を削るような
時代錯誤は断じてやらぬということを約束いたしております。しかるに、今回の削減措置は、いかなる理由によるものでありましょうか。
国会での約束を無視するとは、
国会軽視の暴挙であり、断じて許すことはできません。(
拍手)もし、健康保険財政に余裕ができたとするならば、当然に被保険者や患者の負担軽減をも同時にはかるべきだと
考えますが、どうでしょうか。弱き者を常に犠牲に供する
岸内閣の片鱗が明確に出ておるわけでありまして、
総理並びに一
萬田大蔵大臣の御
答弁を求めます。
第三に、医療保障の充実のためには、医療機関の整備とともに、医療担当者の適正な配置並びにその職務と地位に応ずる待遇改善を行う必要があることは論を待ちません。診療報酬の適正化問題は、昨年来重要な政治問題に発展いたしましたが、
政府は、本年度
予算において、医療費の八・五%引き上げを行なっております。しかし、これでは国の支出分は非常に貧弱であり、公約無視、実質的には医療
内容の同上をはかることは不可能であります。結局この犠牲を受ける者は、医者であるよりも、むしろ一般
国民大衆であります。医療費引き上げに伴い、この際、医療
関係費の国庫支出を法制化し、これを増強し、大衆に奉仕する用意はないか、現在のまま放置すれば、将来、保険料の引き上げにもなると思うがどうか、点数、単価の合理化問題は、どのように解決する御
方針であるか、この際、厚生大臣から明確なる
方針を承わっておきたいと
考えます。
第四には、結核対策についてでありますが、午前中の長谷部
議員に対する厚生大臣の
答弁は、責任回避としか聞き取れません。今日、全国には二百九十万と推定される結核患者と、発病のおそれある者二百六十万、かれこれ
わが国には、結核のため何らかの指導を要する者五百五十万に上ると言われております。しかるに、現在治療を受けておる者、わずかに八十万人にすぎません。結核は個人の家庭経済を破壊すると同時に、今日の保険財政を圧迫いたしております。しかるに、厚生当局の立てた結核撲滅十カ年
計画も、
予算削減にあい、ついに放棄せざるを得なくなっております。公衆衛生の第一線機関である保健所の機能はどうでしょうか。麻痺一歩手前にあります。わずか十億の強化
予算が削減されているではありませんか。厚生大臣は、これで厚生
行政に対し、責任が負えるとお
考えになっているかどうか。
あわせて私は、
岸総理、一
萬田大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今回の
予算は、どの角度から見ましても、社会保障とは無縁のものであります。物
中心の
予算ではあっても、人
中心の
予算ではありません。投票と選挙資金集めには、好都合の
予算でありますが、病気と貧困を解決する
予算では断じてありません。(
拍手)このような実態で、厚生
行政、社会福祉の前進をはかることができると
考えておられるかどうか。
次に私は、
国民年金制度について
政府の
方針を承わりたいと思います。
わが国の老令人口は、絶対数においても、人口構成の上からも、ますますその比重を加えてきております。人口老令化の現象は、先進工業国に見られる現象であり、
わが国もようやくその域に入ったことを
意味いたします。しかし、今日
わが国における年金制度の普及はきわめて低く、厚生年金保険を中核とする被用者年金でありますが、全被用者の六五%、千二百四十五万人であり、自営業者、家族従業者等、全就業者に対しては、わずか二九彫にすぎません。わが党は、すでに天下周知のように、全
国民を対象とすること、健康で文化的な最低限度の生活を保障すること、
国民の受益を公平にすること、既得権を尊重することの四
原則に基く年金制度の構想を明らかにしております。
政府においても、近く社会保障制度審議会から答申を受ける
段階に来ておりまするが、ここで
岸総理の明確なる所信を承わりたいと思います。
国民年金制度創設に関し、現内閣はどのような構想をお持ちであるか。三十二年度
予算において、
国民年金策定準備費を計上し、この分野に一歩踏み出したのでありまするが、本年度はかえって
予算上後退いたしております。大資本擁護、軍事的性格の
予算を根本的に切りかえるならば、
国民年金制度は、明年からでも実現できると
考えるが、
政府にその用意があるかどうか、承わりたいと思います。(
拍手)
最後に、私は軍人恩給と社会保障との
関係に関し、
総理の
見解を承わりたい。社会保障費は、以上見てきたように、総くずれでありまするが、これと対照的に、軍人恩給は大の増額を約束されております。今回の恩給法改正案が、上薄下厚を主張して参りましたわが党の
方針に一歩近づいたことは事実であります。しかし、なお階級差は厳然として残っております。公務扶助料については倍率を重視しておりますが、恩給
調査会の答申とも隔たる思想であります。ことに、われわれは旧軍人恩給は、将来、
国民年金制度の
中心に包含さるべきものと
考えますが、
政府案にはそのような配慮がなされておりません。平年度一千百億円に上る軍人恩給費が、将来の
わが国財政に大きな負担となること、従って、社会保障の前進に大きな制約となることは否定できません。社会保障制度審議会も、昨年十二月、恩給費と社会保障のバランスをはかるよう、
岸総理大臣に申し入れております。そこで、
岸総理にお尋ねいたしますが、軍人恩給の増額は、将来、財政圧迫の因とならないか、社会保障との、バランスを得たものであるか、将来、
国民年金制度創設に当り、衝突することはないかどうかを、はっきり御
答弁願いたいと思います。
以上、私は社会保障について若干の
質問をいたしましたが、要するに、現代政治の任務の第一は、
労働のにない手としての勤労者の保護をどうするか。第二には、経済の成長にもかかわらず、日陰に取り残された人々の生活をどう守るかの問題であります。前者は
労働政策の分野であり、
後者は社会保障の分野であります。私は、この際、
岸総理はその施政
演説において、
農民に、中小企業者に、青年に、はては婦人に呼びかけております。選挙
演説も、ここまでくると気の毒と申すほかありません。反動逆コースの
予算をやめて、
国民のための
予算を編成することこそ、
演説の幾層倍にもまさり、
岸総理と保守党のため、将来にわたる大きな資産になるであろうことを申し添えて、私の
質問を終ることにいたします。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君
登壇、
拍手〕