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1958-01-31 第28回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年一月三十一日(金曜日)    午前十時十三分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第五号   昭和三十三年一月三十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第三日)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ─────・─────
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  大蔵大臣から発言を求められました。この際、発言を許します。一萬田大蔵大臣。    〔国務大臣萬田面登登壇拍手
  4. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 一昨日、国会に提出いたしました外国為替資金特別会計予算参照書昭和三十二年度及び同三十三年度の予定貸借対照表において誤まりをいたしました。まことに遺憾であります。ここに正誤をいたしますから、何とぞ御了承のほどをお願いいたします。(拍手)      ─────・─────
  5. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸君に一言申し上げます。  議長は、日豪両国国会議員団相互交歓計画に基き、さきに衆議院議長とともにオーストラリア連邦議会上下両院議員を招待いたしましたところ、去る二十三日、空路羽田に到着されました。その後、一行は、両院議長及び議員としばしば歓談の機会を持ちまして、日豪両国親善友好に努め、かつまた、わが国の文化、産業、経済、社会問題等について、つぶさに各地を視察せられ、わが国理解に努められましたことは、われわれの深く喜びとするところであります。  ただいまチャールズ・ウィリアム・デヴィドソン君外六名からなる議員団の御一行貴賓席に見えられました。ここに諸君とともに心からなる歓迎の意を表します。    〔拍手〕    —————・—————
  6. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第三日)  昨日に引き続き、これより順次質疑を許します。亀田得治君。    〔亀田得治登壇拍手
  7. 亀田得治

    亀田得治君 私は日本社会党を代表し、防衛文教農業の諸問題について岸総理及び関係閣僚質問いたします。  まず、防衛問題でありますが、岸内閣は、歴代政府方針を受け継いで日米共同防衛立場に立ち、米軍軍事基地を提供しております。しかし米軍の力は自衛隊に比して圧倒的に強力であります。このような状況下にあっては、日本運命米軍自体のあり方によって左右されること必然的であります。ことに昨年七月一日より、米国は、米国の西海岸からアジア全域をハワイの太平洋軍司令部統括下に置いたのであって、日本運命は一そう強く米軍一般的動向によって左右されるようになったのであります。なかんづくソ連におけるICBM人工衛星の成功後、米国戦略空軍は常時警戒態勢に入るとともに、米国IRBM等ミサイル兵器を、米国外に大量に持ち出す政策が決定されたのであります。かかる米国動向は、当然日本にも影響してくるのであって、率直に言って、岸総理がいかに言葉巧みに、原子兵器を拒否すると主張いたしましても、次第に既成事実ができ上りつつあることを国民は憂えておるのであります。私はこのような立場から、まず、岸総理にお尋ねいたします。  第一は、昨年六月二十一日の日米共同声明の中にある、合衆国によるその軍隊の、日本における配備及び使用について、実行可能なときは、いつでも協議することを含めて、安全保障条約に関して生ずる問題を検討するために、政府間の委員会を設置することに意見一致したという点についてであります。すなわち、この共同声明の結果生まれた日米安全保障委員会、以下、委員会と言いますが、この委員会でもって、米国側の一方的原子兵器持ち込みを防止し得るのかどうか、はなはだ疑わしいのであります。重要な点を三つ指摘し、総理見解を承わりたい。  その第一は、総理国会における説明によると、共同声明の中の配備の中には、軍隊装備、従って原子兵器装備も含むようでありますが、そのような解釈言葉自体、すなわち英文ではディスポジションとなっておりますが、この言葉自体意味からしても無理な解釈であります。総理説明のごときことならば、どうしてもディスポジションとともに、イクイプマントという文字が入っていなければなりません。イクイプマント文字がなくとも、それをも含む意味だという解釈上の了解でもついておるのかどうか、この点をまずお伺いしたいのであります。  第二点は、総理説明によりますと、この委員会において日米間の意見が一致しない場合には、米軍は一方的に行動できない、すなわち米国のみの意思原子兵器持ち込み等行動をとれない意味だと説明しておりますが、これも解釈上無理がある。普通のすなおな解釈方法によれば、米国安全保障条約の上で一方的に権利を持っておるのでありますから、もし委員会日米間の意見がまとまらねば、原則に戻って、米国が一方的に行動できると解釈するのが普通であります。(拍手)この点についても、解釈上の了解総理が言われるようについておるのかどうか、はっきりお答えを願いたい。  第三点は、共同声明によれば、委員会協議事項になる条件として、「実行可能なときは」ということが付加されておりますが、「実行可能なとき」と「実行不可能なとき」の区別は、だれがいかなる基準で判断するのか、具体的に説明してもらいたい。共同声明に関する以上の三つの疑点がはっきりしなければ、総理が、いかにこれによって原子兵器の一方的持ち込みの心配はないと、こう説明されましても、国民は安心することができないのであります。(拍手)  次に、防衛庁長官にお尋ねいたしたいことは、米軍太平洋地域における配置と、その原子兵器装備についてであります。すなわち日本を含む太平洋地域米軍部隊が、原子兵器により装備されつつあることは、早くから米国側より伝えられるところであります。たとえば、ニクソン副大統領の一九五五年三月十七日シカゴにおける言明クォールズ空軍長官の一九五六年一月十面目の談話、近くはマケルロイ国防長官米国下院歳出委員会における「極東にIRBM基地を置くことにつき考慮している」旨の答弁、さらにこのマケルロイ長官発言を訂正しようとして発表された国防総省の見解、こういったようなものは枚挙にいとまがないくらいであります。もちろんこれらの報道のみでは内容の詳細はわかりませんが、少くとも太平洋地域米軍が急速に原子兵器装備されつつある、このことだけは、私は否定できない事実であると思う。で、そういうふうになって参りますと、これは日本にも重大な関係が出てくるのであって、国民は無関心でおれません。そこで三つの点について具体的に防衛庁長官見解をお尋ねしたい。  第一は、政府は、これら太平洋地域米軍全体の配備、あるいは原子兵器装備の概略、こういうものについて、米国政府真相をただしておるのか、おるとすれば、差しつかえない程度に今日発表してもらいたい。  第二には、米国B52、B47を中心とする戦略空軍は、現在、常時原水爆をかえて警戒態勢に入っておる炉、これは単に欧米だけでなく、太平洋地域においても同じように行動していると見るべきでありますが、この点についての実情はどうなのか。特に最近ビルマのミラー紙、あるいはモスクワ放送などにおいても取り上げられたように、日本の上空も同じような状態になりつつある、こういうことが盛んに報ぜられてきますが、真相は一体どうなのか、明らかにしてもらいたいのであります。  それから第三に、日本本土におるジョンソン基地のB47、B52、これらを持つ第三爆撃連隊、板付のF100D戦闘爆撃連隊、横須賀の第七艦隊等についてでありますが、御承知のごとく、これらの航空機なぜは原水爆を搭載したり、あるいは核弾頭をつけたミサイルを発射するように設計されているものであって、従って当然それらは原水爆ミサイルを適当な方法で所持しているか、あるいはクォールズ空軍長官がかつて言明したことく、少くとも一時間あれば間に合う所に、原水爆等が貯蔵されていると見なければならないと思うのであります。従って、これらの在日米軍は、今日の段階においては、はっきり原子力部隊である、こう認識すべきではないかと思うのですが、長官見解を承わりたい。ことに、特にB47はB52とともに米国戦略空軍のこれは中心機であります。こういう明確な原水爆爆撃機がいつの間にか日本におる。こういうことは、私はきわめて重大であって、長官のはっきりとしたこの事案に対する見解をお述べ願いたいのであります。  次に、長官に対し、自衛隊の最近の傾向についてお尋ねします。自衛隊は、現に核兵器を運ぶ能力を持った兵器、すなわち高性能の航空機ミサイル研究実用化受け入れということに努力いたしております。こうして現在の日米間の関係のもとでは、いざ必要なときには、いつでもそれらに搭載する核兵器は、米国側より補給されるおそれがある。国民はこれらの点を総合的に判断して、自衛隊の最近の傾向に対して危惧の念を持っているのでありますが、特に、防衛庁が伊豆の新島本格的誘導弾試射場を設定する計画を進めていることは、今後の自衛隊方向を端的に私は証明していると思います。そういう意味で、新島問題について以下四点、こまかいことでありますが、お答えを願いたい。  第一に、試射場敷地面積影響海面等、いかなる規模のものか。第二には、防衛庁係官が島民に説明したところによると、ナイキもここで試射するとのことでありますが、ナイキ受け入れは一体きまっているのかどうか。第三には、試射場には米国顧問団も相当出入りするようであるが、米軍ミサイル基地として共同使用されるおそれはないかどうか。第四には、三十三年度予算にはどの程度この建設費が含まれているのか、明らかにしていただきたいと思います。  長官に対する質問はこれで打ち切りまして再び岸総理にお尋ねをいたします。  以上、私は日米共同声明太平洋地域米軍状況及び自衛隊の最近の傾向についてただしたわけですが、それらの各個所でも指摘したことく、全体を大観するならば、このままでは結局、日本は危険な原子戦態勢の一環に次第に深く入って行ってしまうと断言していいと私は考えるのであります。ICBM人工衛星の出現後、従来のような自衛隊は無用である、こういう議論が圧倒的に多くなっております。しかし、今後しからばどうするかという点になると意見二つに分れております。ある者は自衛隊を質的に強化すべきだと言い、他の者は今こそ自衛隊を廃止し、平和憲法に立ち返るべきときだと言っております。前者は、結局いかに弁解しても、原子戦略態勢に発展する方向であります。後者は、米軍基地を廃止し、とりあえず自衛隊ミサイルを遮断し、徐々に自衛隊を削減して、建設的方向に切りかえようとするものであります。両者の中間の道は、結局あり得ないのであります。原爆の洗礼を受けた日本国民は、今や圧倒的に後者の道を求めておると私は確信します。総理自身も、おそらく原子戦には反対でしょう。従って私は、既往にとらわれないで、この際、防衛方針を大きく転換すべき時ではないかと思います。(拍手)  昨日の羽生議員非核武装宣言質問に対する総理答弁を聞くと、はなはだ消極的でありましたが、たとえそういうことが今の総理立場としてできなくても、原子戦の危険を取り除くというお考えほんとうに持っておるのであれば、私は最小限二つのこと、第一は、もし米国安保条約の改訂に応じない場合は、条約を破棄して、原子兵器の一方的持ち込みが明文上もできないようにする。これが第一。第二は、新島では、現在全村民が反対をしております。一月二十二日の新島の村会においても、全会一致ミサイル基地反対を決議しております。こういう反対を押し切ってまでミサイル基地新島に作る、こういう行動を取りやめること、この二つくらいのことは、もし岸総理ほんとう原子戦争の危険を避けたいと、口で言っておられるのがほんとうであれば、私は実行できることだと思いますが、いかがでしょう。お伺いしたい。(拍手)  最後に、防衛方針転換に関連してもう一点総理にお尋ねいたします。従来、米国ソ連の平和の呼びかけを単なる宣伝と見る傾向があり、日本政府米国見解に追随する傾向がありました。しかし、そのような米国の伝統的な偏見に対しては、今日では欧米各国できびしい批判が生まれておる。ソ連からの侵略の危険性、そういうものを前提とした現在の日米共同防衛方針は、いささか私は的がはずれておるのではないかと思います。岸総理は、昨日公表されたブルガーニン書簡の中の平和共存の主張、これをどういうふうにつかんでおられるか、お聞きしたい。頭の中だけであれこれ考えないで、私はこの際、総理が直接ソ連中国などの共産圏諸国を訪問し、実際に見聞をする、こういうことをされることが、私は重要な段階に立っておる日本防衛方針転換のために、非常に役立つと思いますが、総理の率直な見解をお聞きしたいのであります。(拍手)  次に、文教問題について質問いたします。戦後の日本教育は、憲法教育基本法に基き、戦前の天下り的教育とはおよそ質的に違った道をたどって発達して参りました。しかるに、この新教育に対し、最近特に政治権力による圧迫等が多くなり、はなはだ憂うべき現象を呈して参っております。かような立場から、私はまず文部大臣三つ質問いたしたい。  第一は、勤務評定についてであります。この問題は、よい先生と悪い先生を区別するのは当りまえだと、そういう俗論で片づけることはできません。教育のことをほんとうに心配している専門家あるいは一般識者は、教育効果すら正確に表示できないような勤務評定、これを教員に適用して、上下の差をつけることは無理であると非難をしております。昨年十二月十三日、愛媛県の小松中学校長渡辺薫氏が、自民党の圧力に屈して勤評を出した後、自分は勤務評定を提出しても、教育者良心は提出しないと言いました。その職務の性質上、特に良心的活動を期待される教員に対して「良心に反した行動権力をもって押しつけていいものでしょうか。混乱が起るのは私は当りまえだと思います。(拍手)私は文部大臣に、こういう教員良心的反対を押し切って、紛糾を起してまで、このような勤評を続行すべきではないと思うが、所見を承わりたいと思います。  第二には、小中学校のすし詰め教室の解消の問題について伺います。この問題こそは、教員も父兄も子供も一致して要望しておることであって、こういう問題に対してこそは、政府文部大臣は、もっともっと全力をあけるべきであると思います。御承知のごとく、今日、すし詰め教室は全学級の三分の一、全生徒の二分の一に及んでおる。一学級理想的人数は、二十五ないし三十であるということは、学界の定説でありますが、日本では規則できめた五十人すらが守られておりません。この点につき、三十三年度予算では、校舎増改築三十三万坪、教員増三千三百人となっておりますが、これでは必要量に対し全く焼げ石に水の程度でありますが、文部大臣は今後どのような具体的年次計画を持っておられるのか、お伺いしたいのであります。  次に、日本教職員組合教研集会について伺います。この教研葉会は、本年で七回目であり、回を重ねるにつれて充実し、成果の上っておることは世間ひとしく認めるところであります。自主性創造性を尊ぶ教育の本質に照らしてみるときけ、こういう共同研究こそが全く望ましいのであります。しかるに文部省は、この教研集会の向うを張って、官製の教研集会計画して予算請求をしたが、大蔵省のいれるところとならない。そこで、教職員現職教育費の名目で計上された約千三百万円、これを使用する際に、そのような目的をも果せるように使用することを考えておるようでもあるが、全く時代錯誤もはなはだしいと思います。一体文部省は、日教組の教研集会をどう見ており、そうして文部省主催計画どいうものはどういう方法で行われようとしておるのか、御説明いただきたいのであります。  文教制度の改革の問題について、最後岸総理にお伺いいたします。教育は、正しい意味で中立的でなければならないということは、総理もお認めになると思います。しかし、このことは教員活動に対する要請であると同時に、教育行政に対する要請でもあります。従って、教育行政教育基本法第十条にもあるごとく、教育に必要な諸条件整備確立を目標として行えばよいのであって、いやしくも出過ぎたことのないように注意しなければなとません。しかし、このことたるや、単に一般行政権の自制に期待することは、はなはだ危険である。やはり制度的にも、行政権教育に干渉しがたいようにしなければ目的を達し得ません。そのためには、結局、もう一度教育委員公選制を復活して諸外国の例にも見られるごとく、制度的にも教育権を確立する方法しか私はないと思う。そこまでしなければ、頻発するところの政治権力教育者との紛糾というものは、私は解決できないと思うのですが、総理見解をお聞きしたい。  最後に、農業問題についてお尋ねいたします。第一には、価格政策についてであります。昨年、農林省が公表した農業白書によると、労働生産性向上に注意を向けております。さらに、続けて公表された農林水産政策要綱は、一歩進めて、農林水産所得向上を強調しておる。旧来の単純な増産政策に比べるならば、大へんな進歩である。しかし問題は、さらに一歩前進させて、正当な農業労働報酬を確保することを基礎として農業所得向上をはかるのでなければ意味がないと思います。こういう方法で農産物の価格を正常に安定させる、これが今後の日本農業発展のための最も必要な条件ですし、今日の農民の要求の集中しておるところでもあります。ところが、問題がこの肝心なところまでくると、独占資本に対して、はなはだ弱い自民党農業政策は、はたと行き詰まってしまう。私は、農林大臣も力を入れている酪農一つの例をとってみたい。戦後の酪農は、なるほど大いに発達した。しかし農民は今日明治、森永などの独占資本による牛乳の買いたたきにあって、今さらのように当惑しております。都会では一合十五円もしておる牛乳が、農民は最低の採算線を割って五円以下で買い取られておる。私はこういう立場から二点だけ農林大臣にお尋ねします。  第一は、当面の牛乳生産者価格、これをどういう方法で、どの価格に安定させようという方針をもってやっておるのか伺いたい。  第二は、昭和三十三年度の米の生産者価格は、予算上、石一万二百円となっておりますが、昨年は、予算上は石一万円であったが、結局、予約加算金、パリティの上昇などのために石一万三百二十二円五十銭の実績となっておりますから、ことしも最終的には予算米価にとらわれないで、実情に即した金額が決定されるものと解してよろしいかどうか、お伺いしたいのであります。  次に、最近農地の無計画的な壊廃の強行が目立っておりますが、その一つとして、千葉県松戸市の金ケ作における住宅公団の問題についてお尋ねしたい。すなわち、この地区では五十一万坪のうちに農地がその約半分以上、約三十万坪あるのですが、区画整理の結果は、約三割四分七厘の減歩となるのであります。こういうむちやな、農業経営を破壊するようなやり方というものは、再検討すべきであると思いますが、いかがですか。(拍手)  最後に、私は岸総理にお尋ねしたい。解放農地補償は行わないと、従来、国会で何べんも言明されてきましたが、最近、予算編成の過程においては必ずしもそうではなかった。今後絶対そういう補償は行わない、あるいはまた調査会も設けない、こういうことを断言できるかどうか、言お答え願いたいのであります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  8. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいまの亀田議員の御質問中、私に対して特に指摘された点についてお答え申し上げます。  第一は、私とアイゼンハワー大統領との会談に基いての日米共同宣言に関する点であります。第一点は、あれに書いてある配備の中に装備が含まれるかどうかという問題であります。この配備ということは、軍隊配備でありますが、軍隊配備ということについては、当然主要なる装備が入ることは私は常識上当然であると思います。装備を持たない軍隊配備ということは観念上あり得ないと思います。従って、装備を含むものと考えております。  協議の点でありますが、これはもちろんこの委員会自体を設置すること、及びその運営が日米両国理解友好的関係基礎として行われるものでありますから、ここで論ぜられること、協議されることは、私は、いろいろとその道程はありましょうけれども、意見が一致することを前提として考えておると思います。もちろん、これでもって当然行政協定そのものを変更しておるのではございませんから、理論的に言って、協議が整わなかったときは協定が有効じゃないかというお話につきましては、私はさようであると申し上げるほかありません。しかし、実際問題としては、両者が友好的に話し合って必ず合意に達するということを前提といたしておるのであります。  実行可能なときと不可能なときはどうしてきめるかというお話であります。この協定にもありますように、この委員会は、安保理事会から生ずるすべての問題をここで話をするということを原則にきめております。従いまして実際上、今どういう場合があるかという具体的な場合は申し上げかねますけれども、実際上これにかけて協議することができないということも考えられるので、実行可能なときはという文句が入っておると思います。きわめてささいなことであるとか、あるいはきわめて急ぐことであるとか、事実上できないというような点を考えて、かようにきめておるわけであります。  それから次は、防衛方針の問題について、安保条約廃棄とか、あるいは新島ミサイル基地の問題を廃棄する意思はないかというお話でありますが、安保条約廃棄につきましては、今さようには考えておりません。  新島の問題につきましては、防衛庁長官から詳しく実態をお話しすると思います炉、われわれはこれをミサイル基地というような性質のものではないと思います。  それから平和共存のことをどう考えるか、また、そのためにはソ連中国を訪問すべきではないかというお話であります。私は東西両陣営対立緊張というものに対して、われわれがこれを緩和する方向考えなければいかぬ、力の均衡だけによって一時的の平和を作るということに、この現状にわれわれは満足するものではなくして、恒久的な安定した平和を作り上げるためには、首脳部の間においても話し合いをし、この両方の陣営の間に存する緊張を緩和して、互いの地位を尊重しながら、平和的に共存して行かなければならないという考えを持っておることは当然でありますが、そのために、今直ちに中国ソ連を訪問する意思というものは私は持っておりませんが、特に中国との間におきましては、しばしば論ぜられておるごとく、日本との関係が、ソ連とは違った関係にあります。ソ連はわれわれは正式に国交を回復しておりますから、機会があればこれを訪ねることは当然でありますけれども、中国の場合におきましては、今日のわれわれの立場としてはそうはいかない。  それから教育中立性の問題でありますが、教育中立性を守らなければならぬことは言うを待ちません。教育内容におきましても、教員の態度につきましても、あるいは行政の面から申しましても、お話の通りであります。ただ、このために教育委員公選制を復活したらどうだというお話でありますが、この問題は、過去の経験にかんがみて、公選制というものが、教育中立性を確保するために望ましくないということで、ああいう改正をしたのであります。従って、今、回復する意思は持っておりません。  最後に、農地補償の問題でありますが、これはしばしば私が言明をいたしておりますように、農地補償をする意思は私は持っておりません。ただ農地の、戦後におけるああいう変革に伴いまして、いろいろな社会的な激変が起ってきておる事態をどう処理するかという問題は、政治として考えなければならぬと思います。しかし、私は補償するという考えを持っておらないということを、はっきりと申し上げておきます。(拍手)    〔国務大臣津島壽一君登壇拍手
  9. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) 亀田議員の御質疑中、私の答弁すべき諸事項について御答弁申し上げます。  まず第一は、太平洋地域における米軍原子兵器装備がどうなっているか、こういう御質問でございます。この問題につきましては、米軍側の公表したもの以外は、情報としても私から申し上げられない、こういう状態になっておるのでございます。  なおまた、米軍の原爆機がパトロールしておるじゃないか、アジア地域において、というような御質疑もあったかと思います。この点については承知いたしておりません。的確なる情報を持っておりません。ただし、在日米軍に関する限りは、私は原子兵器装備はいたしておらないということを承知いたしております。すなわち、在日米軍原子力部隊であるといったような見方は誤まっておると思うのでございます。  なおまた、この機会に御質問に関連があると思いまするが、オネスト・ジロンは米の陸上部隊の撤退に伴って撤退しておるという事実であります。なお、自衛隊が今後ミサイル兵器装備するかというような御質問もあったと思います。これは私どもは全然考えておりません。  それから御質疑の中の新島の問題であります。これは多少詳細にお答えを申し上げておきたいと思います。基本的にわが国自衛隊原子兵器装備しない、核兵器装備しないということは、これはもう絶対に変りはございません。新島におきまして今日考えておるのは、誘導兵器研究開発のために、単なる実験、実射、試射をする、その候補地に考慮されておるのであります。この試射は、陸海空の防御的の誘導兵器でありまして、核弾頭等が絶対につけられない武器に関するものでございます。また、この基地を——この基地という言葉は言い過ぎでありまして、試射場でございまするが、これは米国とともに共同使用することがあるかという御質疑でありましたが、これは絶対にございません。大体今日考慮されておる計画は、きわめて小規模なものでありまして、ほんの試射にとどまるものでございます。あるいは装置、あるいは宿舎その他必要なる最小限度の設営をすることになっておりまして、三十三年度予算においても、金額においては約三千数百万円程度予算を計上している次第であります。なお、地元の方面に、この試射場の設置について反対があるということも承知いたしております。しかしながら、これらの目的、その施設の概要等を十分納得いくようにお話し申し上げて、その納得を得たる上で、こういったことは予算がきまった上で進行したいと、こう存じておる次第であります。  なお、ナイキを試射する、試作するということがあるのではないかというようなことにも触れましたようでございます。これは絶対にございません。これは考えておりません。  大体以上のことで、御質疑の点はお答えをしたつもりでございまするが、繰り返して申し上げまするが、新島試射場のごときものは、十分誤解のないようにお願いをしたいと存じます。    [国務大臣松永東君登壇拍手
  10. 松永東

    国務大臣(松永東君) 亀田議員の私に対する御質問について、お答えをいたします。  まず、御質問の第一は、勤務評定の問題でございます。勤務評定は申すまでもなく職員の研修、昇給、昇進、褒賞、適正配置等、公正な人事を行うための資料として必要なものでありますことは御承知の通りです。一般の公務員につきましても、その他社会の各方面におきましても実施せられているものでございます。私は考えますが公務員ばかりではございません。この世に生存いたしておりまするすべての人が、勤務評定を受けておることはもちろんでございます。教職員につきましては、地方公務員法等においてこれを実施すべきことが定められております。教職員の人事管理の向上を期する上からも、実施を進められるべきものと考えております。良識ある教育関係者は、勤務評定によって公正な人事管理が行われることを期待しておるのであります。(拍手)先ほど御指摘になりましたが、校長先生か、どなたかの御書面をお読み上げになりましたが、しかし、一人の良心では判断することはできません。やはり多くの人の良心が必要でございます。今後、教育委員会の適切な処置と、それから校長、教員理解とによりまして、円満に勤務評定が行われるものと信じております。御了承をお願いいたします。  次に、第二の質問すし詰め教室の解消の問題でございまするが、この問題は、いわゆるすし詰め学級をどうして解消するかという問題として、皆さんも相当御研究下さったところでございます。御指摘の通り、現在、小中学校において、児童、生徒を過剰に収容しておる学級が相当数ありますので、教育水準の向上のため、これが解消をはかるように格段の努力を今日までもいたして参りましたが、これからもいたすつもりでおります。その方策の第一は、学級の編成の基準を決定いたします。必要な教員の定数を確保することでございます。基準を法定する場合は、一単級の最高を五十人とする考えでございまするが、一挙にこれを実施するということは、いろいろ困難な事情もありますので、当分の間、何らかの経過措置を設ける必要もあろうかと存じますが、現行の制度よりも後退するようなことは絶対にございません。さような考えは持っておりません。幸い、今後は逐年児童、生徒が減少する傾向にもありますので、これを機会に、漸進的に法定基準に達するようにいたしたいと存じております。三十三年度におきましては、とじあえず義務教育費国庫負担金予算の中に、新だに五十人の教員増に要する経費を計上いたしまして、中学校における五十人以上を収容しておる学級を大幅に解消したい考えでおります。  次に、学校施設につきましては、明年度においても、引き続き中学校整備及び小学校の不正常授業解消のため、所要の補助金を交付して鋭意校舎事情の緩和をはかって参るつもりでございます。  第三に、教研集会の問題での御質問でございまするが、教職員が、その教務を実行いたしまするために、絶えず研さんを積むことが必要なことは、これはもう論を待ちません。そのためには、研究集会等の催しも、きわめて有意義であると考えております。しかしながら、特定のイデオロギーに片寄ったものは、これはどうも研究集会としては好ましからざるものと存じております。文部省におきましてを、でき得る限り教職員の研修の機会を作りたいと思っております。新たに約千三百万出品を予算案に計上いたしておりますが、これは御承知の通吟、科学技術教育振興のため理科教員の現職教育を行い、また、道徳教育を強化徹底するための講習等を内容とするものでございます。これによって、相当教育の改善が期待されると存ずる次第でございます。どうぞ御了承おきを願います。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  11. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 亀田議員の御質疑につきましてお答え申し上げます。  御指摘のように、農産物の価格の安定ということは、政府といたしましても非常に力を入れておることであります。そこで、三十三年度の予算におきましても、生産基盤として、土地改良、開墾、干拓、あるいは林道、あるいは漁港、こういうことに非常にカを入れてきておりますのも、生産費を低下する、あるいは価格を安定するという大きな線からであります。あるいはまた畑作酪農の方面に農業政策を指向しておるのも、その意味であります。  次に、流通価格対策には、十分な予算はありませんけれども、相当力を入れることにいたしておるわけでございます。直接農産物の価格の安定につきましては、御承知のように、農産物価格安定法によってカンショ、バレイショのほかに、大豆等、米麦に次ぐ重要な農産物について価格の支持をしておるのでありますが、これと米麦あるいは繭糸価格安定法による繭等を合わせまするというと、農業粗収入のおおむね七割に当る農産物に対しまして価格安定の方途を講じておるのであります。この現行法を適正に運用いたしまして、直接的には価格の安定をして行きたい。予算の面におきましても、価格安定につきましては、飼料の問題も含めて、一般会計から食糧管理特別会計に十億の価格安定の資金を繰り入れておるわけであります。なお、価格安定につきまして、牛乳生産者価格をどういう方法で安定させるかというお尋ねがありました、わが国酪農は、御承知の通り、その消費及び生産の両面におきまして、年々増大しておりますが、牛乳生産者価格につきましては、直接的な価格政策を講ずるということよりは、むしろ農民の販売体制の強化、牛乳取引の合理化等によって、適正な価格形成をはかりたい。一時的な需給の不均衡に対しましては、消費の増大とか、乳代の支払いの円滑等によって、異常な価格の下落を防止することが急務であると考えております。このために、今回の予算におきましても、こういうことのために酪農振興基金を設けておりまして、取引資金の融通の円滑化、また、牛乳による学校給食の実施、取引関係紛争の調停機関の強化等の措置を実施すべく努力いたしております。  米の価格の問題でありますが、御指摘のように、今年の予算米価は一万二百円と決定いたしました、三十年予算米価は、これまた御承知の通り一万円であります。しかし、実際に買い上げている今の価格は一万三百二十二円であります。そこで、予算米価は現在の情勢下におきまして、政府として適当と考え方法によって算定いたしたのでありまして、予算予算、実際は実際と、全然無関係考えておるのではありませんけれども、予算編成のときと米価決定とは約半年離れておるのが通常でございます。その間、事情の変化に応じまして、改善を加えるにやぶさかではないのであります。その意味におきまして、予算米価は固定的なものではない。こういうふうに御了承を願っておきたいと思います。(拍手)  なお、松戸市の金ケ作における日本住宅公団農民との紛争に見られておりますように、農民反対を押し切って農地の転用をさせること、農地の壊廃は禁止すべきではないかと、こういうような御意見であったようであります。詳しいことは別の機会に申し上げたいと思いますが、農地の転用による壊廃につきましては、農地法によって、所有者の意思を尊重してこれを許可するということになっておりますから、普通には、こういうことはないのであります。ただ松戸の問題は、日本住宅公団が都市計画地域内で行う土地区画整理事業については、こういう場合には、公団がこの事業の遂行のために必要な道路、公園等、公共施設を造成するため農地を転用する場合は、特に農地法による許可を要しないことになっております。これは農地の転用に当っては、農地法の趣旨に合致する運用がなされることと、所有者との間の円満な話し合いが行われることを期待して、農地法の許可から除外しているわけでございます、しかし、お尋ねの松戸の金ケ作における住宅公団の土地区画整理事業の施行につきましては、農林省としまして、建設省及び住宅公団に対し、この点を強く要望いたしまして、建設省及び公団に、慎重に今考究をしてもらっております。この間も住宅公団が測量を実施したために、一部農民との間に紛糾を起しておりますが、農林省といたしましては、前申し上げた趣旨によりまして、右区画整理の公共性と農民農業経営に及ぼす影響を考慮いたしまして、千葉県を指導し、目下、県において調停案を作っており、そうして、あっせんに乗り出しておりますので、この成果を見守るとともに、建設省及び公団に対して、差しあたり調停の成立まで測量の停止を要望して、事態の円満な解決をはかっておる次第であります。  以上、お答えを申し上げます。(拍手
  12. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 亀田得治君。    〔亀田得治登壇拍手
  13. 亀田得治

    亀田得治君 時間がないので簡単にお尋ねしますが、総理の先ほどの答弁によりますと、中国はいろいろな事情で行けないが、ソ連の方は考えてもいいというような感じを受けましたが、この点、もう少し明快にお答えを願いたいと思います。  それから農地補償ですが、これは総理は否定されましたから、安心いたしますが、それならば、自民党の中に農地問題調査特別委員会というのがある。こういうものは、総裁としては解消すべきではないかと思いますが、一つお答えを願いたい。  それから共同声明の問題ですが、これはいろいろな問題があります。装備配備の問題、これは私のような解釈をあなたの部下の外務省のアメリカ局でもやっております。私のような解釈です。だから、ほかのことを一々言いませんが、総理が言われている解釈は、何か一方的な、希望的な解釈のように思う。だから、端的にもう一度お聞きしたいのは、あなたがおっしゃるような解釈でやろうというような、何か打ち合せなり、了解が、ダレスとの間ではっきりついておるのかどうか、そこだけを一つお答え願いたい。そういう了解がついておるのか、解釈上に。  そこで防衛庁長官に聞きますが、あなたの答弁は、全く長官としての資格がない。みずから共同防衛だということを言っておりながら、手をつないでいるところの相手の状態が全くわからない、ああいう答弁では。わかっておるけれども言わないというのか、わからぬのか、どういうのです、これは。そういうたよりのないことで、防衛庁長官は何を防衛するのです。よく考えてごらんなさい。  私は一点だけ取り上げて申し上げますが、これは米国戦略空軍の中枢です。B57が最も重要なものですが、これは米国計画通りまだ全部そろっておりません。従って現段階では、B47がSACの中心なんですね。そのB47が日本に来ているのですよ。これは私、証拠を示してあげましょう。小川雷太君、航空新聞社の社長、これは防衛庁も非常に信任されておられる方です。私たちが基地反対闘争で行きますと、この方が防衛庁の側から現われて、皆さんの方の立場で話をされる。そういう皆さんが信頼されている人の「在日米空軍」という最近の著書です。これは小川君が米軍に、はなはだ信頼が厚いものですから、基地の中を視察してもらったわけですね。その実見記を書いている。たまたまその中に、三行出てくるわけですね。その中の二百五十七ページに、「まず第三爆撃連隊を訪れることになっていた。丁度この日、B—47ジェット爆撃機の長距離爆撃訓練があるというので、その訓練の講義が出発に先立って行われている講堂に案内された。」、これは単なる風説でも何でもないのですよ。小川君自身が現実に見たことをここに書いている。B47が日本にいる証拠です。単にこれはグァムかもどこからか、ほかの基地べ飛ぶ途中で寄ったのじゃないです。訓練を日本でやっている。その講堂に案内されたわけです。ここまで日本の在日米空軍というものが進んでおるのに、先ほどのよもな答弁で一体通期しますか。しかもB47と言えば、世界のどこへ行ったって全部原水爆を持っております。B47から原水爆を引き離してしまえば、おもちゃの飛行機も同然です。従ってB如が日本におれば、日本の上空においても原水爆によるパトロールということが当然予想されることです。そんなことが予想されぬような長官でしたら、ほんとうに危なっかしいものです。だから、ビルマのミラー紙モスクワ放送等が、この点を盛んに注意している理由がある。一体この本はうそだというのか、そういう点をはっきり答えてもらいたい。そうして防衛庁長官お答えのあと、これは重要なことですから、総理の方北おかれましても、この問題はやはり米側に対して調査をしてもらいたいですね。そうして調査の結果、ほんとうに、この著書にあるがごとく、このBがいるというのであれば、直ちに私は退去を求めるべきだと思う。あなたは原水爆反対というのであれば、これは当然だと思いますので、その辺、総理大臣としての御決意のほどを一つお聞かせ願いたいと思う。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  14. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ソ連、中共詰問の問題については、今私は考えておりませんが、ただ、ソ連との間には国交が正常化されておりますし、そういう国交が正常化された国との間に友好関係を増進するために、互いに訪問し合うということは望ましいことでありますから、機会があれば、行っても美しつかえないと考えているということを申し上げたのであります。中共については、しばしば議場においても論議されているような立場から申しまして今行くということは適当でない、かようにお答えをしたわけであります。  農地補償の問題につきましては、先ほど明確にお答え申し上げたように、私は補償する意思を持っておらない。ただ、農地改革が日本の農村社会に急激な変化をもたらしたために、これから生じているいろいろな社会上の問題があることに対しては、政治上考慮しなければならぬ点もあるだろうということを申し上げたわけであります。自由民主党内におきましてそういう意味において、この問題が従来も調査、研究されておりますし、私はその調査会を今廃止する意思は持っておりません。  それから、最初の、配備装備の問題でありますが、別段この点についてダレス長官との間に、私は打ち合せをいたしたわけではございません。ただしかし、先ほど申し上げたように、軍隊配備というものは、当然その装備を含んでの配備ということでなければ意味をなさないのであって、これを含むということは常識である、当然であるということを、私は重ねてお答え申し上げます。    〔国務大臣津島壽一君登壇拍手
  15. 津島壽一

    国務大臣(津島壽一君) お答えいたします。  太平洋地域における米軍装備の問題、これは全然知らないということを申し上げた意味ではなかったのでございます。ただし、私の答えは、この問題については、米軍で公表する以外は、私として口外することは差し控えたい、こういう趣旨でございます。  なおB町の問題でございます。私の先ほど申し上げましたのは、全体を通じて米駐留軍が核兵器原子兵器を持っておらないということを申し上ぽたのでございます。その意味におきましてもしB47というものが、かりに演習を試みもその運営がどうであるかという問題についてただいまの御質問では、あたかも核爆弾と申しますか、原水爆と申しますか、そういうものを貯蔵しているということのような御質問であったように思います。これは、私はそういう事実はないと思っております。なお、これらの点についてはあらためて私は十分調査してお答え申し上げることにいたしたいと思います。(「総理大臣の答弁が残っている」と呼ぶ者あり)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  16. 岸信介

    国務大臣岸信介君) ただいまの問題につきましては、ただいま防衛庁長官かちお答えをいたしておりますように、私も事実を明らかにいたしておりません。なお、防衛庁長官は、十分に事実を調べた土においてさらにお答えをするというふうに申し上げておりますから、それによって事実を明らかにした土においてこれに対する私は答弁をいたしたい、現在におきましては、防衛庁長官答弁をいたしました以上に、何ものも私としてはお答えすることはないのであります。
  17. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 長谷部ひろ君。    〔長谷部ひろ君登壇拍手
  18. 長谷部ひろ

    ○長谷部ひろ君 私は、無所属クラブを代表いたしまして次の問題につきまして総理を初め、大蔵大臣、厚生大臣に質問をいたしたいと思います。  岸さんが総理に御就任になりましたとき、国民は非常に期待いたしておりました。比較的お若くて健康で、頭脳が明断で晃物事に理解がおありになると、岸総理への国民の期待は非常に大きなものでございました。しかじ最近は、岸総理の政治にはうそが多いという批判の声が、ずいぶんあちこちに出ております。そこで、国民のこのような批判の声がなぜ起ったか、その実例を一、二申し上げまして、それに対しての総理お答えをお伺いいたしたいと存じます。  岸総理は、昨年六月に渡米なさいましたが、あのときは、たしか日米安全保障条約再検討のふれ込みであったと記憶いたしております。ところで、総理日本にお持ち帰りになりましたものは、再検討どころか、逆に、安全保障体制の強化であったのでございます。つまり、アメリカへの日本の依存度を一そう高めたものと見られるものを作り出しておいでになりました。日米新時代というのが、それであると思います。そうしてある学者が指摘しておりました通り、この日米新時代の構想にみずからをすっかり膠着させているのが、岸政府の外交方針でございます。ICBM人工衛星出現後の今日も、なおその膠着状態は続いていると言えます。岸総理も、ICBM人工衛星などの出現が、国際間の力関係や外交関係に影響を及ぼすということは、もちろん御存じのはずでございますが、日米関係に再検討を要するような事態が発生するかもしれないという含みの上で、ICBMなどを問題にしているのではなく、逆に、アメリカ等の新しい動向に歩調を合わせることを大前提として、それらを問題にしそおられると思うのでございます。その意味で、岸政府の外交方針や安全保障政策は、再検討されたどころでなく、ますますアメリカベの従属を深めて行く態勢にあると思うのでございます。このことを端的に示しているものは、防衛庁の新企画や、日米安保委員会の新しい動きであると思います。防衛庁は、人工衛星出現後の十月二十二日に、防衛装備委員会の新設を決定し、この委員会を通じて、誘導弾の研究に拍車をかけることに決定いたしました。これは誘導弾の装備中心とする防空態勢の充実を長期防衛計画の基本としようとする構想に基くものでございます。防衛庁のこうした構想を受けて、十二月十九日に開かれました日米安保委員会では、自衛隊装備の近代化を促進することに意見が一致いたしまして、この目的のために、日本側の要請で、空対空誘導弾、サイド・ワインダーが米国から自衛隊に有償で与えられることに決定いたしました。そうして防衛庁は、十二月下旬、サイド・ワインダー十四発を受け入れるために、五千三百万円の追加要求をしたのでございます。この防衛庁の新企画は、ICBM出現などの新情勢に刺激されましたもので、それはアメリカの限定原子戦略思想につながるものであると存じます。このような結果から見ても、岸政府の外交は、アメリカの新動向に歩調を合わせることを大前提としたもので、岸総理の外交基本方針、つまり国連を中心に世界平和に努力すること、あくまでも自由主義国の一員としての立場を堅持すること、アジアの一員としての立場を積極的に生かす、以上の三本立で行くと申されましたこととは非常に矛盾があると思いますので、この点、総理にお伺いを申し上げるのでございます。  次に、核実験の禁止に関してお伺いいたします。昨日も本会議において、緑風会の石黒議員を初め、羽生議員、鶴見議員から申し上げました通りで、まことに、くどいようでございますけれども、私たち国民にとって最も大切なことであると存じますので、私からも、いま一度申し上げるのでございます。あくまでも軍縮と切り離して、核実験の即時禁止をさせなければいけません。一日も早く禁止を行わしめるような態度に出ることが、どうしておできにならないのでございましょうか。核実験禁止の形の上だけでのあっせんでしたら、世界中の笑いものに日本がなってしまいます。この後において実験禁止が行われるために、実際問題としての案なり、お考えなり、行動なりについての構想をお持ちになっておいでになりますかどうか、総理にお伺い申し上げるのでございます。  次に、また総理にお伺い申し上げますことは、中共問題でございます。中共政策は、承認はしていないが、貿易はするというのでございますが、政治的には不承認、経済的には黙認という、全くの奇形でございます。中国日本との長い歴史的関係を顧み、また、地理的に考えても、文化、経済の問題から、まず親善をはかることが必要でございます。隣国の存在に目をつぶらざるを得ない国際情勢のもとにあることは、よく承知いたしております。しかし、総理も御承知の通り、中国の経済建設と国民生活の向上には目ざましい発展の跡が見られます。最近は特に経済面において各種産業の建設が進められ、そのため各種原料、製品等の需要が多くなりましたので、西欧諸国の中国べの進出は、日本と比べて著しいものがございます。わが国では、このような貿易拡大の絶好のときにありまして日中貿易第四次協定が結ばれないままの空白状態にあることは、まことに残念でございます。総理は、従来の考え方から一歩進んで、中国との国交を回復するに至るまでに必要な貿易の拡大と文化の交流等について、従来のごとく、民間団体などにまかせることなく、政府として積極的な対策をお持ちになっておいでになりますかどうか、この点について総理にお伺い申し上げるのでございます。  次に、三十三年度予算案につきまして二、三お伺いしたいと存じます。岸総理の公約中、貧乏追放は特に強調されております。国の経済の発展と、社会保障の充実をはかると申されておりますことは、まことにけっこうなことでございますが、言葉だけで幾ら申されましても、予算の裏づけがなければ、全くのから念仏にひとしいと存じます。(拍手)そこで私は、大蔵大臣に、貧乏追放の予算、つまり社会保障充実のための予算は幾ら計上されておりますかとお伺いいたします。すると、大蔵大臣は、三十二年度より百二億の増加であるとおっしゃると思います。なるほど三十三年度の社会保障費は一千二百五十七億でございますから、三十二年度の一千百五十五億よりは確かに百二億増となっております。しかし、総予算に対する比率は九%で、三十二年度の一〇毎より一%減ということになります。社会保障費が充実するなら比率も増加しなければならないのでございますが、これでは逆に後退ということになると思います。  次に、この百二億の内容を見ますと、失業対策費が四十八億、生活保護費が十四億八千万円で、いずれも前年度よりも増になって、合計六十二億八千万円になっておりますけれども、これは比率にしてみますと、増額百二億の六三%に当るのでございます。つまり社会保障費増額のうち六三%を、これら失業対策費と生活保護費の増額分が占めているということになりますので、これは不景気になって失業者と貧困者がふえることを前提にしているものということができます。現在までの潜在失業者、生活貧困者を救うための増額ならば、これは社会保障の充実になりますが、失業者や貧困者が現在より多くなるというデフレ政策をとるということであれば、社会保障の充実ではなく、現在より悪くなると思うのでございます。政府自体が現在より悪い状態にしておいて、これを救ってやるとか、あるいは保護を受けなければならない状態にしておいて助けてやろうというのは、ほんとうにどうしたことでございましょうか。これは貧乏追放ではなくて、貧乏を作る予算であるとしか思えないのでございます。(拍手)不景気への政策として三十万の失業者が出るという前提のもとに、今までよりは予算も多く組まれたと思うのでございますが、大蔵大臣の御答弁をお願い申し上げたいと存じます。  次に、厚生大臣にお伺いいたしますが、第一に、結核対策の推進と、無医地区の解消にはほとんど手がつけてないように思うのでございます。それから政府は、国民にお約束なさいました三十五年度までに国民皆保険を実施なさるおつもりでございますかどうですか、これをお伺いいたしたいのでございます。  第二に、売春対策について、総理と厚生大臣のお二人から御答弁をお願いしたいと思うのでございます。売春防止法はいよいよこの四月一日から全面実施されることになりました。かつて岸総理は、売春対策は強力に推進させると言われましたが、強力に推進させるとは一体どのようなことでございましょうか。全国に三十七万六千六百人と言われるこの人たちを、どうして更生させ、また、どのようにそれを進めようとしておいでになるのか、具体的に総理に御答弁をお願いしたいと思います。一度入ったら二度と抜け出られないような仕組みになっているのがこの売春の泥沼なのでございます。この泥沼の中からやっとの思いで抜け出して、地方の相談所や保護施設にかけ込んでくるこの人たちを、一時的に保護するための予算は一日わずか八十九円九銭でございます。この中で食費は一日六十四円になっておりますが、実際問題として、最低の食費でも現在の状態として八十円はどうしてもかかるのでございます。八十九円九銭から八十円を引いた残りの九円で、日常の生活費一切をまかなうのでございますが、絶対にそれはできるものではございません。九円で食生活を除いたあとの生活費一切をまかなうことができるかどうか、この際、総理のお考えをお伺いしたいと思うのでございます。新年度の売春対策の予算案を見ますと、二十一億二千五百十九万余円で、この要求額が三億八百八十万余円に削られてしまっておるのでございます。つまり要求額の約七分の一に削られたのでございます。現在、相談所のない県が十一県、保護施設のない県が二十八県もありますのに、補導院七カ所の新設費も、婦人相談所八カ所の新設費も全部削られてしまいました。ただし、保護施設改造費がわずかに通っているばかりでございます。昨年の一部実施のときは、十二億円の要求に対して四億円を認められましたのに、全面実施の年である三十三年度は、三億という要求額の七分の一で、三十二年度より以下ということは、一体どうしたわけでございましエうか。総理が申されました強力に推進させるということに全く矛盾していると思うのでございます。最近、売春対策国民協議会では、このような政府はもう頼むに足らずと見切りをつけまして、民間団体に呼びかけております。そして、この人たちのために、肌着でも何でも持ち寄ろうという運動が起ったのでございます。このような実態に対して、どうお考えになりますか。そして、この後どのようにしようとしておいでになりますか、総理大臣と厚生大臣のお答えをお願いしたいと思うのでございます。  最後に、大蔵大臣にお伺いいたしますが、このたびの予算編成を見ますと、どう考えても選挙目当ての増額の結果、軍人恩給、社会保障診療費の引き上げなど、三十三年十月以後にずらしたものが相当ございます。そこで、これらのものの三十三年度の予算は少くて済むように見えますけれども、三十四年度以後は必ず多くなると思うのでございます。三十三年度予算増額は一千億円内のワクにとどめてあるように表面は見えますけれども、これを平年化してみたら幾らになるでございましょうか。平年度化した場合の予算規模を大蔵大臣にお伺い申し上げるのでございます。  以上をもちまして、私の総理を初め大蔵、厚生各大臣に対する質問を終ることにいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  19. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 長谷部議員の御質問お答え申し上げます。  第一は、外交の根本に触れて日米関係が一そう日本のアメリカに対する従属関係を増すような方向に行っているのではないかという点に関する御質問であったと思います。私は、しばしば日本の外交方針の根本について申し上げておりますように、われわれは究極の世界平和というものを念願しておるが、その平和は、あくまでも日本の国の建前である自由——人間の自由を守り、民主主義の立場を堅持した世界平和ということが人類の真の幸福をもたらすゆえんである、そういう意味において、われわれが自由主義国の立場を堅持しておるということにつきましても、しばしば申し上げておる通りであります。こういう意味において、世界の平和を、われわれが恒久的平和を念願する上において、自由主義国としての立場をもってこれらの国々との間に連携を深めて行く、協力関係を強めて行くということを、私は繰り返して申しておるのであります。この意味において、自由主義国のうちのアメリカとの関係が、最も日本の外交の上において重要な部面を占めることは言うを待たないと思います。しかしそれは、あくまでも自主的立場に立って日米の協力を考える問題であり、われわれの国民的要求に基いて、この日米の協力を推し進めて行くということでありまして、決して私は、日本のアメリカに対する従属を増すとか、あるいは従属関係にあるというふうな一部の人々のような考え方に立つものでは絶対ないのであります。  次に、核実験禁止の問題につきましての御意見でございます。これはしばしば、昨日もここで幾多の議員から質問の出、御意見の出たことであり、また本議院としましても、その国民意思をしばしば明確に表明をされておることでございます。私は、あくまでも人道の立場に立って、この核実験の禁止を実現しなければいかぬという考えに立って、これを主張して参っております。ただ御承知の通り、今の現実の問題といたしまして、米ソ両国の、持っておる国々がこれをやめない。やめないのは、相手方がやめないから、こっちはやめられないという主張で、お互いにその責任を他になすりつけておるような立場に立っておると思うのです。これを、この現実に立って、核実験禁止をどうして一日も早くなくするかということについては、両巨頭がお互いに歩み寄らなければならない。お互いの主張を、おれの主張が正しいから聞けということなら、これは聞かないのです。そういうことから、これをいかにして現実に基いて妥協せしめ、これを実現するかということが、国連における各国の、真実にこの問題を取り上げておる国々の悩みであると思う。日本としましても、そういう意味においてこの提案をいたしておるのであります。理論は、あくまでも人道主義に基いて、一日も早くこれを禁止すべきであるというこの主張は、私は正しい主張であり、この主張は、私としても従来もやっておりますし、今後もやるつもりであります。  中共の問題につきましては、これもしばしば申し上げておる通り、現在の国際情勢、また日本と従来の沿革的な中華民国政府との関係等も考慮いたしまして、今日の現段階においては、これを承認するということはできないけれども、貿易を積極的に増進する第四次協定の行き悩みになっておりますいわゆる指紋問題につきましても、政府は、今国会に案を提出して、これを緩和して、この第四次協定の成立を促進したいと考えております。  売春対策につきましては、これもしばしば私が申し上げておる通り、一時、ことし四月から施行されるものが延期されるんじゃないかというような一部の風評もありましたけれども、私は四月から、はっきりこれを実施するということを明確にし、これに対するいろいろの準備なり、その他の施設を増強することを努めてきております。今御指摘になりました通り、いろいろな方面の要望にこたえるだけの十分な内容を盛っておらないじゃないかという御批判でございました。この方面についての熱心な団体の方々とも、私、数回お目にかかっております。この問題については、言うまでもなく、業者の転業の問題と、それから従業婦の更生の問題と、両方考えなければならぬ。政府の施設ももちろん必要でありますが、同時に、民間のいろいろな御協力を願わなければ実現できないことであります。この予算の具体的内容につきましては、厚生大臣からさらに申し上げることにいたします。(拍手)    〔国務大臣一萬田衙登君登壇拍手
  20. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します。  社会保障費の問題ですが、これが前年度に比べて百二億ふえておるが、割合から言えば、かえって少いのじゃないか、こういうような御質問でありましたが、実は今度の予算の歳出にたな上げ分がありまして実際のこの歳出と見られる部分に対しましては、昨年に比べましてパーセントが減っておるわけではありません。昨年のこの歳出増が千二十五億であり、これに対して六十億の社会保障費、この千億の歳出増に対して百一億、こういう日ふうになっておりますので、さように御了承を願いたいと思います。私といたしましては、この社会保障には、できるだけ力をいたしたいと考えておるわけであります。  なお、社会保障に関連しまして、今回軍人恩給をふやしたのでありますが、しかしこれとても、大部分は遺家族、戦傷病者の扶助料、こういうふうになっておりまして、こういうのも、私はやはり今日では社会保障的に考えてもいいんじゃないか、かように考えておるわけであります。なお、各種の健康保険につきまして今回国庫の負担も増しておりますし、扶助料もふやしておりまして、こういう面からも社会保障の充実に努めておるわけであります。むろんこれらを全部統合いたしまして、今後とも社会保障全体として考えて行くことは十分考えておる次第であります。  なお、失業対策費や生活保護費がふえて、初めから予定しておる、これは失業を作り、貧乏を作るじゃないかという御質問でありまするが、これは今日の経済を建て直す過程におきまして、経過的にやむを得ないことで、社会保障の要請に対応しまして政府としては当然とるべき措置と考えておるわけであります。  それから今回の三十三年度の予算編成に関連しまして、今回の予算編成は、何か選挙目当ての予算ではないか、こういうふうな御質問があったようでありますが、そういうことは絶対にありません。今回の予算方針は、あくまで日本の経済の再建というところに置いておるのであります。言いかえれば、輸出を振興することによってそうして国の経済を安定させ、拡大させてその上に国民生活の向上をはかって行こう、こういう構想を作り、こういうふうな状態を作る基礎的な条件を三十三年度に確立して行こう、こういう意味から予算を編成しておるのでありまするから、決してさようなことは考えておりません。(拍手)    〔国務大臣堀太鎌三君登壇拍手
  21. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) お答え申し上げます。  結核対策につきましては、私どもかねて懸案を解決いたしたいという考え方で、十カ年に約半減をいたす計画を持っておりましたが、財政上の都合、あるいは技術的にさらに検討すべき面もありますので、これを見送ることにいたしました。しかし、結核対策について何もしてないようにおっしゃることは、よほど間違っておるので、本年度予算をごらん願いますと、検診班の充実でありますとか、療養期間の延長でありますとか、療養範囲の拡大等が織り込まれまして、約十億の予算が計上いたされております。これらについては、今後、結核対策上相当の効果を持つものと考えているのであります。  無医地区の問題につきましても、昨年の予算に対しましては、大幅に公的医療機関の整備として、率としては大幅になっているのでありますが、個所といたしましては、私どもが現在国民皆保険の進行に伴いまして、約三百足らずの無医地区を解消しようというのには幾分足りないのでありますが、今後この点についても、さらに努力を重ねて参りたい、こう考えているような次第であります。  なお、国民皆保険の問題につきまして、果して三十五年度に実施ができるかどうかというお尋ねであります。実は、これは予算上の人間の数だけをごらんになって、よくそうおっしゃるのじゃなかろうか。三十二年、御承知の本年度が第一年度でございますが、これで約四百万人の被保険者が実績としてふえているのであります。ただ、三十二年度の予算編成上は三千五百万人と計上いたしてあります。三十三年度は三千六百万人と計上されてありますが、これらは年平均をとりました数字でありますと同時に、確かに三十二年度におきましては、予定より幾分下回っているということが言い得るのであります。しかし、この皆保険を推進いたしますところの基礎条件であるところの大きな柱を、今度の予算においては解決いたしているのであります。それは六年間据え置きを食っているところのいわゆる診療報酬の適正化の問題、さらに国民皆保険を推進いたしますと、これがふえればふえるほど、地方財政に負担がかかるということ、この二つが従来の大きな支障になっておったわけであります。で、今回は国民健康保険につきまして、二割から五分の調整金をつけますとか、あるいは事務費を九十円に上げますとかというふうな、諸種の方法をとっておるわけであります。すなわち基礎条件二つの大きな柱が、私は本年度予算で解決する、ここにおいて国民皆保険は、皆さんの御期待以上に、私はなめらかに進むのではなかろうかと確信いたしておる次第であります。  売春関係につきまして、いろいろ御指摘がございました。私も婦人相談所及び婦人保護施設等を現地に視察いたして、つまびらかにいたしておるのであります。三十二年度に比しまして、三十三年度予算は、確かに六千七百万円か減っておるのであります。しかし、この問題は御承知の通り、厚生省におきましては三十二年度におきまして、先ほど未設置として御指摘がございましたが、婦人相談所、婦人保護施設等は、大体ほぼ本年度において完了する見込みであるのであります。従いまして、三十三年度におきまして補足的な設備をいたしますが、この多くの設備費は、三十二年度に比し、三十三年度に減るということは当然のことでなかろうかと考えるのであります。なお、むしろ今回は、婦人のために新たに更生資金貸付でありますとか、被服等の支給費を三十二年度の実績にかんがみまして新たに計上いたしまして、この問題の円滑なる施行に処したいと考えておるような次第でございます。(拍手
  22. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 大蔵大臣から答弁の補足発言を求められました。一萬田大蔵大臣。    〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  23. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) ただいま御質問にお答、え漏れがありましたので申し上げます。  軍人恩給の国庫負担は、平年度化した場合の国庫負担が、四年先でありますが、三百億円。それから一点単価の引き上げによります国庫負担増は、平年度におきましてはぼ四十億であります。
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 議事の都合により、午後二時まで休憩いたします。    午前十一時五十六分休憩    —————・—————    午後二時四十八分開議
  25. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 休憩前に引き続き、これより会議を開きます。  国務大臣演説に対する質疑を続行いたします。田畑金光君。    〔田畑金光君登壇拍手
  26. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は日本社会党を代表し、岸内閣の内政政策労働、中小企業、地方行財政、社会保障に関し、若干の質問を行わんとするものであります。  まず第一に、私は岸内閣労働政策に関しお尋ねいたします。すでに周知のように、第二次岸内閣はその成立に際し、三つの公約をいたしたのであります。すなわち第一は、完全雇用の実現であり、第二は、勤労者の生活水準の向上であり、第三は、よき労使慣行の樹立ということであります。しかし事実は、反動的労働政策に終始し、公約の一つすら実行できなかったのがこの一年間における岸内閣及び石田労政の実体であったのであります。今日、国民の切実な要求は、完全雇用の問題であります。ところが、岸内閣の沈滞した政治は、この問題に対し、何らの具体的、建設的回答を提示せず、六十万人台の完全失業者が依然として存在し、加えて数百万に上ると言われる潜在失業者、一千万をこえる生活困窮者は、そのまま放置されているのが現状であります。今や国内不況は深刻化し、失業、雇用問題はいよいよ緊迫をきて加えてきております。過去一年間の施政の成果は、失業者を減らすことではなく、貧困と失業をますます多く作り出したにすぎません。そこで岸総理にお尋ねいたしますが、今日の雇用、失業問題を総理はどのように把握せられ、雇用政策をどう進められようとする方針であるか。政府は、昨年十二月、三十三年度を起点とする新経済五カ年計画を立て、わが国経済発展の構想を描かれましたが、これによって、昭和三十七年度までに、新規に四百九十八万人を吸収しようというのであります。せいぜい学卒者を吸収し得る程度でありまして、完全雇用にはほど遠いものがあります。この際、新経済五カ年計画と雇用との関係に関しまして、河野経済企画庁長官の明確な説明を求めます。昨年十二月末、労働省は、三十三年度の雇用、失業問題に関し、その見解を明らかにいたしました。すなわち三十三年度は、経済成長率から見ても、雇用の動向、生産年令人口の増加や景気の動きからいっても、二十九年の不況時よりも、より深刻になるだろうと見ておりまするが、本年度失業対策予算をもってして、事態を乗り切り得る確信をお持ちであるかどうか、承わりたい。  以上述べましたことは、雇用量の問題でありますが、わが国の雇用問題の最も深刻な問題は、むしろ質の問題であります。戦後、わが国の経済は急速なテンポをもって回復し、雇用量も相当伸びたことは事実でありますが、質的に見た場合、そのほとんどが臨時工ないし日雇いの形であり、さらに長時間労働、短時間労働、低賃金労働といった不完全就労の形で伸びてきております。同時に、近代産業における雇用と、農業及び中小企業における雇用との間の質的な格差は一段と激しくなり、今後増大する傾向にあります。すなわち雇用の二重構造の問題がそれであります。そこで岸総理にお尋ねいたしまするが、雇用面における質的悪化に関し、総理はどのように理解され、今後どういうような改善策を加えて行かれようとするのか、明確に承わりたいのであります。  次に、労働者の生活及び物価と賃金のアンバランスの問題に関しお尋ねいたします。朝鮮動乱直後の昭和二十五年六月を基準として、卸売物価と賃金、すなわち支払賃金指数を生産指数で割ったもので比較して見ますと、勤労者に支払われる賃金は、生産性の上昇にもかかわらず、逐年低下し、賃金と物価の開きはますます大きくなってきております、さらに、最近における米価を初め、運賃、住宅費等、消費者物価値上りは勤労者の家計をいよいよ圧迫してきております。しかも、今日までの政府の態度は、仲裁裁定の不完全実施、人事院勧告の軽視等と相待ち、賃金ストップに介入し、反面、物価政策や福祉施策に何一つ具体案を持っておりません。そこで岸総理並びに石田労相にお尋ねいたしますが、こうした賃金、物価のアンバランスをいかようにして是正されようとせられるのか。賃金政策、物価政策に関し、その所信を承わっておきたいと思います。  さらに、これと関連して、私は最低賃金についてお尋ねいたします。政府は、今国会に最低賃金法案を提出する方針とのことであり、けさの各新聞は、労働省試案要綱を伝えております。最低賃金制の問題は、今日はもはや必要論云々の問題ではありません。いかようにして最低賃金額を決定するか、その方法いかんの問題であります。しかし現在、政府考えている方法は、業者間協定による最低賃金と、行政官庁の決定による最低賃金方式を中核とする構想のようであります。およそ業者間協定に最低賃金の基礎を求めることはナンセンスであり、賃金ストップ、最高賃金に結びつく危険があることは、静岡のミカンカン詰業の事例によっても明らかであります。ましてや行政官庁が決定することは、本来、労使間できめらるべき労働問題に関し、行政権力の介入を招く危険があります。そこで石田労相にお尋ねいたしますが、このような方法によって、果して公正な最低賃金の決定ができるかどうか、かえ力て日本の低賃金をくぎづけにする危険はないか。また、最低賃金法を実施するといたしまするならば、家内労働法によってこれを裏打ちする必要があると思うが、家内労働法に関し、政府の所信を承わりたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、労使間のよき慣行の樹立という問題であります。過去一年間の石田労政の跡を振り返って見ますと、公労協争議に対する政府の統一解釈の発表や、国鉄の争議を違法ときめつけ、場合によっては公労法を改正し、刑事罰を課するなどという態度、さらに労働組合費のチェックオフや、組合への事務所貸与を禁止するなど、一方においては、教員に対する勤務評定の強行と相待ち、岸内閣権力政治、反動的石田労政の性格を端的に示すものであります。旧憲法当時の取締り行政によって、よき労使慣行が生まれると期待することは時代錯誤もはなはだしい、よき労使慣行の樹立のために政府のとるべき道は、公務員一公企体職員にスト権を回復することであり、すべての労働者に憲法の保障する基本権を与えることであります。ILOにおいては、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約を採択し、すでにイギリス、フランス等、おもだった三十余カ国がこれを批准しておりますが、ひとり日本のみが長い間批准をサボダージュして、世界の非難を浴びている現状であります。そこで岸総理並びに石田労相にお尋ねいたしますが、すみやかにILO条約を批准し、憲法で保障された労働基本権を尊重し、公務員、公企体職員にスト権を与えるべきであると思うが、その用意があるかどうか、明確に承わりたいのであります。  昨年十二月、公共企業体審議会は、公企業体のあり方に関し、政府に答申を出しております。すなわち公企体制度を強化しながら、民営の長所を取り入れるためには、公企体の予算及び決算は、企業性にふさわしいものに根本的に改めるとともに、国会の議決を要しないものにすると言っております。岸内閣労働政策は、公社等の争議行為を取締るだけに狂奔し、よって来たる根源をきわめることを忘れております。国鉄など公企体の労使関係が不安定なのは、労働者の責任では断じてなく、公企体の性格や運営にあることは周知の事実であります。公社の経営に自主性が与えられ、使用者が労組との団体交渉においても、責任を持って自主的解決ができる体制ができますならば、労使関係は今よりも大いに改善されることは必至てあります。そこで、岸総理にお尋ねいたしまするが、公企体のあり方について、政府は現状のままに満足するのか、少くとも労働政策に関する限り、答申の趣旨に基いて改善を加える意思がないかどうかを明らかにしていただきたい。しかるに、このような民主的な態度を忘れて、政府は昨今、国鉄営業法の全面的改正案を本国会に提案し、罰則の強化をはかり、正常な業務運営の名に隠れ、労働運動を弾圧する法改悪を準備していると聞きますが、事実であるかどうか、総理並びに運輸大臣より明確な答弁を要求いたします。もし事実といたしますならば、それこそ、よき労使慣行の樹立を破壊するものは政府自身であり、反勤労働政策の本性を遺憾なく暴露したものと指摘しなければなりません。このような暴挙によって事態か混乱することは、あげて政府の責任であることを強く警告して政府の所信を承わりたいと考えます。(拍手)  次に、私は中小企業政策に関し一、二承わりだいと思います。中小企業が日本の産業構造及び輸出の面において重要な地位にあることは申すまでもありません。ことに、国民の衣食住のほとんどが中小企業によってまかなわれておるのが実情であり、従って、これが発展いかんは直接国民生活につながる問題であります。政府は中小企業振興対策を重点施策の一つに取り上げて参りましたが、本年度予算を見ましたとき、果してこれで重点施策の名に値しましょうか。中小企業対策費はわずかに三十一億四千六百万円であり、総予算の〇・二五%にすぎません。農林関係予算二百億増に比べましても、みじめな増額と言わなければなりません。法人税一律二%の引き下げが、大企業、大法人のためであることは、その内容も見れば明らかであります。わが党が事業税の軽減を主張いたしましたのも、かかる政治の偏向を正さんがためであります。なるほど中小企業信用保険公庫が設置されましたが、政府出資わずかに八十五億、うち二十億を信用保証協会に貸し付けるというのでありますから、大した期待はできません。かえって国民金融公庫、中小企業公庫、商工中金に対する財政投融資は、三十二年度に比しまして百十五億の減少でありまして、この分では、これら金融機関は需要見込みの五割程度しか応じられないというのが実情であります。予測される不況を前にいたしまして、この手当でもって十分なりとお考えであるのか、今の情勢いかんでは、補正予算等で対処するとの方針であるか、通産大臣がら承おりたい。経済の均衡ある発展を計画的に進めますためには、どうしても金融の裏づけがなければなりません。財政面からくる過度の経済刺激と無計画な金融政策が、投資過剰と輸入増大をもたらし、外貨危機を中心とするわが国経済の今日の混乱をもたらしたのであります。今日、金融資本は再び強固な支配体制を確立し、その傘下にある企業でなければ融資をしないという系列金融を強行し、産業の破行状態をもたらしております。中小企業また例外ではありません。政府は金融政策においても自由放任主義をとり、単なる窓口指導と資金調整委員会等の自主的調整にゆだねておりますが、これでは資金の効率的運用も、産業全体の均衡ある発展も期待することはできません。むしろこの際、立法措置による資金の計画的運用をはかり、他面、中小企業の減税措置を講じ、さらに、わが党の提案しておりまする大企業と中小企業との産業分野確立に関する法案、小売商業振興法案等の成立を促進し、総合的観点に立つのでなければ、中小企業の安定は期しがたいと考えまするが、大蔵大臣並びに通産大臣の所信を承わりたいと考えます。  第三に、私は地方行財政の問題に関し一、二承わりたいと思います。第一は、昨年十月、地方制度調査会の答申のありました地方制案についてであります。これによると、府県を廃止し、知事を官選にするという、いわゆる道州制案になっております。帰するところ、この答申のねらいは、官治的中央集権の採用であり、旧内務省の復活を意図しておることは明らかであります。戦後十余年の間につちかわれた地方自治を抹殺し、再び戦前の天下り的官僚支配を地方住民に押しつけようとするのがこの内容であります。府県の廃止は憲法九十二条の精神に違背するものと申さなければなりません。今日、地方自治の問題は、制度の問題ではなく、自治体に独自の財源を付与せず、地方財政を窮乏に置いてあたかも、これを制度の欠陥であるかのようにすりかえようとする歴代保守官僚内閣の逆コース政治の問題であります。この際、岸総理にお尋ねしたいことは、地方制度に関する現内閣の方針いかん、制度調査会の答申に対する政府の態度を明らかにしていただきたい。  第二にお尋ねしたいことは、現在、地方税のうち最も過酷であり、かつ不公平な事業税、ことに中小企業者に対する事業税の問題であります。大蔵当局も、当初これが軽減を準備しながら、地方財政との関連で取りやめたと聞くが、事実であるかどうか。今日、国税においては大法人に対し租税特別措置法により六百億ないし八百億の免税が行われております。これとの均衡から申しましても、事業税の八十億ないし百六十億の減税は当然の措置と言わなければなりません。われわれは中小企業に対する事業税は、少くとも税率を二%引き下げること、個人事業税の基礎控除を二十万円まで引き上げることを主張いたしております。これによる地方財政の不足は、特別措置法の廃止等による事業税のはね返りにより、容易に埋め合すことができるはずでありまして、これすらできぬところに、大企業、大資本中心の現内閣の性格が如実に現われておると言わなければなりません。(拍手)事業税軽減について、いかように政府はお考えであるか、大蔵大臣、自治庁長官見解を承わりたいと考えます。  最後に、私は社会保障に関し若干の質問を行わんとするものであります。歴代の保守内閣、ともに社会保障の強化を必ずその政策の一項目に掲げて参りました。一千億減税、一千億施策を呼号した三十二年度予算は、社会保障政策前進のためには、またとない絶好の機会でありましたが、ついにその機会を逸したのであります。昨年未発表された厚生白書は、わが国における貧困の問題を端的に示し、資本主義政党の持つ政治の貧困を如実に物語っております。すなわち、国民所得の点から見ますと、わが国は先進国と後進国の中間にあります。ことに注目すべきことは、米英等においては、所得の絶対水準が非常に高い上に、経済の成長につれて貧富の差が縮まる傾向があるに反し、わが国にあっては、昭和二十五、六年の経済の安定期から発展期に入るに従い、かえって貧富の差が激しくなってきたということであります。すなわち、これは不労所得階級が増大し、反対に勤労者階級の生活は圧迫、窮乏化しておるという事実を物語っております。今日、農村人口は全人口の四割三分を占めておるが、その所得は一割八分に満ちません。要するに、戦後の復興が農村、農民の犠牲の上に進められてきた実証でありまして、これこそ資本主義政治の自己矛盾にほかなりません。岸総理は三悪の追放、貧乏の解消を国民に対する最大の公約として唱えて参りました。ところで、予算は、政策の集中的表現であり、公約の実行でありますが、三十三年度予算は、社会保障を一体どれほど前進せしめ、国民生活の安定向上に幾ばくの配慮を加えておると言えましょうか。経済に刺激を与えぬとする緊縮予算編成方針は、予算ぶんどりと、岸総理の優柔不断により、かつて見ざる不評利の放漫財政になっております。予算規模は前年度を上回り、減税は大企業、大資本家を潤し、国民一人当りの国税負担は、前年度より七百五十四円の増税となっております。先ほども指摘がありましたように、予算規模は前年に比べますと、一五%強の増額であります。社会保障費の増額は九%弱の増額にすぎません。予算全伸に占める社会保障費の割合は、前年度の一割強に比し、本年度は九・五%に後退しております。岸総理の貧乏追放は、三十三年度予算の面からは完全に追放されております。(拍手)これすらも社会保障重点施策と呼ぶならば、概念の混乱を招くというものであります。汚職追放とともに貧乏追放の看板は、岸内閣政策スローガンから取りはずすことが、政治的良心なりと考えまするが、岸総理見解を伺いたい。  以下、欺瞞的な社会保障政策内容について、二、三お尋ねいたします。第一に、政府は、三十二年度以降四カ年計画国民皆保険の実施に踏み切ったのであります。ところが、初年度は六百九十万人の新規加入を予定しながら、昨年十一月末、三百二十万にすぎず、年度内においては、せいぜい四百万にとどまるだろうと言われておりますが、これで果して三十五年度までに、国民皆保険が実現するとの見通しであるのかどうか。この伸び悩みの原因は、市町村の財政難と、加うるに国民健康保険の内容が非常に劣悪な条件にあるということであります。三十三年度予算においては、調整交付金制度が設けられ、一歩前進はしておりまするが、少くとも社会保障制度審議会の勧告にもありますように、医療給付費の国庫負担を三割に引き上げ、七割の医療給付を実施することが、国民健康保険普及促進の道であると私は考えまするが、政府にその用意があるかどうかを厚生大臣から承わりたい。  第二に、国民健康保険とともに、医療保障の重要部門を占める健康保険、船員保険について見ますると、たとえぱ健康保険においては、三十一年、三十二年度ともに、それぞれ三十億の国庫補助がなされてきました。しかるに、三十三年度の予算においては、わすかに十億に減らされております。ことに、去る第二十六国会におきまして、患者の医療費一部負担が政治問題化いたしましたとき、時の大蔵大臣は明確に、健康保険財政の黒字、赤字にかかわらず、定率までとは行かないが、定額を負担すること、三十億を削るような時代錯誤は断じてやらぬということを約束いたしております。しかるに、今回の削減措置は、いかなる理由によるものでありましょうか。国会での約束を無視するとは、国会軽視の暴挙であり、断じて許すことはできません。(拍手)もし、健康保険財政に余裕ができたとするならば、当然に被保険者や患者の負担軽減をも同時にはかるべきだと考えますが、どうでしょうか。弱き者を常に犠牲に供する岸内閣の片鱗が明確に出ておるわけでありまして、総理並びに一萬田大蔵大臣の御答弁を求めます。  第三に、医療保障の充実のためには、医療機関の整備とともに、医療担当者の適正な配置並びにその職務と地位に応ずる待遇改善を行う必要があることは論を待ちません。診療報酬の適正化問題は、昨年来重要な政治問題に発展いたしましたが、政府は、本年度予算において、医療費の八・五%引き上げを行なっております。しかし、これでは国の支出分は非常に貧弱であり、公約無視、実質的には医療内容の同上をはかることは不可能であります。結局この犠牲を受ける者は、医者であるよりも、むしろ一般国民大衆であります。医療費引き上げに伴い、この際、医療関係費の国庫支出を法制化し、これを増強し、大衆に奉仕する用意はないか、現在のまま放置すれば、将来、保険料の引き上げにもなると思うがどうか、点数、単価の合理化問題は、どのように解決する御方針であるか、この際、厚生大臣から明確なる方針を承わっておきたいと考えます。  第四には、結核対策についてでありますが、午前中の長谷部議員に対する厚生大臣の答弁は、責任回避としか聞き取れません。今日、全国には二百九十万と推定される結核患者と、発病のおそれある者二百六十万、かれこれわが国には、結核のため何らかの指導を要する者五百五十万に上ると言われております。しかるに、現在治療を受けておる者、わずかに八十万人にすぎません。結核は個人の家庭経済を破壊すると同時に、今日の保険財政を圧迫いたしております。しかるに、厚生当局の立てた結核撲滅十カ年計画も、予算削減にあい、ついに放棄せざるを得なくなっております。公衆衛生の第一線機関である保健所の機能はどうでしょうか。麻痺一歩手前にあります。わずか十億の強化予算が削減されているではありませんか。厚生大臣は、これで厚生行政に対し、責任が負えるとお考えになっているかどうか。  あわせて私は、岸総理、一萬田大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今回の予算は、どの角度から見ましても、社会保障とは無縁のものであります。物中心予算ではあっても、人中心予算ではありません。投票と選挙資金集めには、好都合の予算でありますが、病気と貧困を解決する予算では断じてありません。(拍手)このような実態で、厚生行政、社会福祉の前進をはかることができると考えておられるかどうか。  次に私は、国民年金制度について政府方針を承わりたいと思います。わが国の老令人口は、絶対数においても、人口構成の上からも、ますますその比重を加えてきております。人口老令化の現象は、先進工業国に見られる現象であり、わが国もようやくその域に入ったことを意味いたします。しかし、今日わが国における年金制度の普及はきわめて低く、厚生年金保険を中核とする被用者年金でありますが、全被用者の六五%、千二百四十五万人であり、自営業者、家族従業者等、全就業者に対しては、わずか二九彫にすぎません。わが党は、すでに天下周知のように、全国民を対象とすること、健康で文化的な最低限度の生活を保障すること、国民の受益を公平にすること、既得権を尊重することの四原則に基く年金制度の構想を明らかにしております。政府においても、近く社会保障制度審議会から答申を受ける段階に来ておりまするが、ここで岸総理の明確なる所信を承わりたいと思います。国民年金制度創設に関し、現内閣はどのような構想をお持ちであるか。三十二年度予算において、国民年金策定準備費を計上し、この分野に一歩踏み出したのでありまするが、本年度はかえって予算上後退いたしております。大資本擁護、軍事的性格の予算を根本的に切りかえるならば、国民年金制度は、明年からでも実現できると考えるが、政府にその用意があるかどうか、承わりたいと思います。(拍手)  最後に、私は軍人恩給と社会保障との関係に関し、総理見解を承わりたい。社会保障費は、以上見てきたように、総くずれでありまするが、これと対照的に、軍人恩給は大の増額を約束されております。今回の恩給法改正案が、上薄下厚を主張して参りましたわが党の方針に一歩近づいたことは事実であります。しかし、なお階級差は厳然として残っております。公務扶助料については倍率を重視しておりますが、恩給調査会の答申とも隔たる思想であります。ことに、われわれは旧軍人恩給は、将来、国民年金制度の中心に包含さるべきものと考えますが、政府案にはそのような配慮がなされておりません。平年度一千百億円に上る軍人恩給費が、将来のわが国財政に大きな負担となること、従って、社会保障の前進に大きな制約となることは否定できません。社会保障制度審議会も、昨年十二月、恩給費と社会保障のバランスをはかるよう、岸総理大臣に申し入れております。そこで、岸総理にお尋ねいたしますが、軍人恩給の増額は、将来、財政圧迫の因とならないか、社会保障との、バランスを得たものであるか、将来、国民年金制度創設に当り、衝突することはないかどうかを、はっきり御答弁願いたいと思います。  以上、私は社会保障について若干の質問をいたしましたが、要するに、現代政治の任務の第一は、労働のにない手としての勤労者の保護をどうするか。第二には、経済の成長にもかかわらず、日陰に取り残された人々の生活をどう守るかの問題であります。前者は労働政策の分野であり、後者は社会保障の分野であります。私は、この際、岸総理はその施政演説において、農民に、中小企業者に、青年に、はては婦人に呼びかけております。選挙演説も、ここまでくると気の毒と申すほかありません。反動逆コースの予算をやめて、国民のための予算を編成することこそ、演説の幾層倍にもまさり、岸総理と保守党のため、将来にわたる大きな資産になるであろうことを申し添えて、私の質問を終ることにいたします。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  27. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 田畑議員の御質問中、特に私を指名してお尋ねの点にお答えを申し上げます。  第一は、雇用問題でありますが、雇用の数並びに質に対して、政府はいかなる対策を考えておるかという御質問であります。われわれは究極の目的として、完全雇用を目途として産業基盤の拡大、経済の発展、繁栄政策考え、これを計画的ならしめるために、新産業経済五カ年計画を立てておるわけでありましてなかなか雇用問題の一時に解決できないというのは、この雇用問題の本質からそうなると思います。しかしこの計画によって、産業基盤を拡大することによって、この目的を達したい。質の問題につきましては、これは雇用条件のいろいろの点にもふれると思いますが、特に政府といたしましては、最低賃金法の制定を、日本の国情に合ったものを作り上げて、そうしてこの雇用条件のうち、大事な賃金の問題の最低の基準を定めるということをやりたい、かように考えております。  賃金と物価との関係につきましては、もちろん大事なことでありまして、われわれは物価の高騰しないように、物価を安定せしめるような諸政策をとって参っております。最近の物価指数等については、すでに御承知の通り、幾分この四月以降から見まするというと、相当程度一般の小売物価は下落をいたしております。今後といえども、物価の安定政策を持続したいと考えております。  ILOの条約の批准の問題につきましては、できるだけその内容を検討して、わが国の特殊事情も考えながら、これに批准をして行くという方針のもとに検討をいたしております。すでに御承知の通り、今まで採択された条約案のうち、二割はこれを批准をいたしておりまして、決してこれが多いわけでもありませんが、特に他の加盟国に比して少いというわけでもないのでありますが、なお、今言った方針によって、将来、批准を進めて参りたい、かように思っております。  それから公企業体のあり方につきましては、すでに昨年末、審議会の答申もございます。全面的に相当に重大な事項をたくさん含んでおるのでありまして、政府としては、この答申に基いて、この内容を検討中であります。  鉄道営業法の改正の問題についての御質問でありましたが、御承知の通り、この法律は、たしか明治三十三年ごろの制定でございましてきわめて時勢おくれの内容を持っております。同種のこの他の立法に比べて非常に現実離れのしておる法律でございましてこれを全面的に改正するということは、すでに従来から各方面から要望されておることであります。政府としては、すっと改正の検討を続けてきておりまして、成案を得れば、これを提案したいという考えであります。  貧乏追放についての手きびしい御批判でありますが、これは私は、もちろん貧乏追放ということは、しばしばここで申し上げておるように、私の政治の根幹をなす私の信念でございまして、いかにむずかしくとも、いかに長くかかっても、これを実現するという強い決意のもとに、進んで行きたいと思います。この点につきましては、もちろん一面において経済の繁栄を考えること、一面においては社会保障制度の拡充という二本立で行くということを、しばしば申し上げております。しからば、社会保障制度で、それが本年度の予算でどうなっておるかという問題でありますが、詳しいことは関係大臣から答弁いたしますが、われわれは、この社会保障制度の根幹として、国民皆保険の健康の問題と、それから国民年金の問題を、二本の大きな柱として推し進めて行きたいという考えのもとに、すでにこれは、国民皆保険の問題につきましては、四カ年の計画のもとに、来たる昭和三十五年に実施するようにその計画を進めて参っております。また、国民年金の問題につきましては、御指摘になりました今回の遺族扶助料を中心とする軍人恩給の引き上げの問題や、あるいは他の一般公務員の恩給問題等とも関連しておることはもちろんでございますが、私は全国民を対象とする国民年金制度を樹立すべきものである、その内容につきましても、今おあけになりましたように、少くとも国民の生活の最低の水準は、これを保つような内容を持った国民年金制度でなければならぬことは、言うを待たぬと思いますが、すでに準備を一年やっております。本年の五、六呂には、かねて諮問してある社会保障制度審議会からの答申も得るはずであります。これらを検討いたしまして、政府としては、できるだけ早くこれを実施に移したいと、かように考えております。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  28. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 大体私へのお尋ねは、ただいま総理答弁で尽きておると思いますが、この機会に、ただいまの御答弁中、誤解が生ずるといけませんから、つけ加えて補足いたしておきたい点があります。それは賃金と物価との関係でございます。賃金の指数につきましては、昨年の一月—十月の統計によりますると、六・三%の上昇になっております。ところが一方、消費者物価指数は二・八%の騰貴でございまして、決して質問に御指摘のようなことにはなっておけません、総理がただいまお示しになりました物価の傾向は、生産資材の卸売物価でございますので、この傾向は今年度以降の物価の傾向といたしましては、おそらく物価は横ばいに行くだろうという傾向を持っておりまするし、賃金指数につきましては、本年も前年とほぼ近いような上昇を見るだろうということになっておりますので、決して御指摘のような数字にはならないわけでございます。この点はあらためて御了承を得ておきたいと思うのでございます。もう一ぺん申し上げます。消費者の物価指数は、二・八倍の騰貴になっております。賃金の指数の方は六二二倍の指数になっておりますので、御指摘のようなことにはなっておりませんということを申し上げます。(「違うぞ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  申しわけありません。訂正をさせていただきます。パーセントでございますから、この点御了承願います。    〔国務大臣石田博英君登壇拍手
  29. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 田畑さんの御質問お答え申し上げます。  最初は、失業対策に万全を期せられるかという御質問でございましたが、なるほど三十三年度は、国際収支の改善に伴いまする施策の断続と、それから駐留軍その他の引き揚げに伴いまして雇用の問題で若干の、あるいは相当の摩擦が生ずるかと思いまするが、これは公共事業費あるいは財政投融資の増大をはかりまして、でき得る限り失業者を吸収し、摩擦を少くするように努めて参りまするが、その一方、失業保険の対象人員は二割増加いたしまして、三十七万をこえておりまするし、また失業対策事業も前年度より二万五千人ばかりふやしまして、二十五万人計上いたしまして遺憾なきを期して参りたいつもりでございます。  それから雇用の質の悪化でございますが、なるほど臨時工、あるいは社外工、あるいは日傭工というものが相当増加しておりまするけれども、その他面におきましては、現実に雇用も増大し、雇用内容向上いたしておりまするので、必ずしも悪化しておるとは私は考えておりませんけれども、現状に満足すべきものではございませんので、この雇用内容の改善について努力を傾注して参るつもりでございます。  その次、賃金と物価のアンバランスも、今、河野企画庁長官お答えになっておる通りでございまして御指摘の通りではないので、勤労者の実質賃金は、明確に増大をいたしております。  それから、勤労者の賃金政策に対する政府見解をお問いになったと思うのでありますが、私は今勤労者の賃金の状態を見てみますると、一番基本的に考えなければならない問題は、やはり大企業、公企業の賃金水準と、中小企業以下の賃金水準との格差が大きく開きつつあるという問題でございます。特に大企業の場合におきましては、それが主として基本産業であり、かつ基礎物資を生産し、他の事業、中小企業の経営に、相当大きな影響を与えているという点から考えましても、やはりこのアンバランスを訂正する。逆に申しますならば、低い層の賃金を定めて、かつ上昇せしめるというところに、賃金政策の重点を置いて行かなければならないと考えておる次第でございます。(拍手政府が本国会におきまして、最低賃金制度を立法化して、その成立をはかろうといたしておりまするのも、この趣旨に基くものでございます。政府が現在提案準備をいたしておりまする最低賃金制についていろいろ御批評がございましたが、この法律は、労・使・中立三者構成ででき上っておりまする中央賃金審議会の答申を尊重いたしまして、それより後退させないという建前に立って作り上げているものでございます。しかも、この答申は労使ともに賛成をされたものでありまして、皆様方の代表の方々も、御出席をされて賛成されたものであることを申し添えておきたいと思います。  それから、よき労使の慣行の樹立につきまして、私どものやって参りましたことが、反動的あるいは弾圧的な態度であるという御発言でございましたが、抽象的な御批判は何とおっしゃっても御自由でございますけれども、私は、よき労使の慣行の樹立というものは、基本的には、現在の労働慣行法規を労使ともに守るという建前を貫くことが前提であろうと思っている次第でございます。従って政府岸内閣成立以来、仲裁裁定の完全実施を公約いたしまして、その公約通り今日まで一貫してやって参っているのであります。この仲裁裁定の完全実施ということが労働政策の基本でありまして、いろいろの御批判がございましょうけれども、世論もまた、この基本方針を支持していることと確信をいたしております。(拍手)  それから公共企業体の現在の性格についての御議論がございました。公共企業体の現在の性格は、特に労働関係につきましては、いろいろ問題があることは御指摘の通りでございます。従って、公共企業体審議会の答申が出て参りましてそれに伴って政府はその具体策を考究中でございますが、その成案を得ましたならば、それに見合うように公労法の改訂その他は研究しなければなりません。先ほど御質問中に、何か私が、公労法に罰則強化をはかり、刑事罰でも加えるようなことを意図しておったかのごとき御発言でございましたが、さような事実は全くないばかりでなく、私はさようなことがもし起りますならば、これに反対する決意であることも、あわせて申し述べておきたいと思います。  なお、労働政策の根本について、あるいはその目標についての御議論は全く同感でございます。要は、その目標を達成いたしますために、公共の利害、国家財政の現状の中で、現実的にどう歩んで行くかということが私の責任でありまして、批評をされ、攻撃をされ、抽象的な議論に終始をされる立場とは違うのであります。(拍手)    〔国務大臣中村三之丞君登壇拍手
  30. 中村三之丞

    国務大臣(中村三之丞君) 鉄道営業法の改正問題につきましては、ただいま総理大臣よりお答え申し上げました通りであります。現在の営業法は、全く今日の社会、経済の推移に沿わないのでありますから、法の不備、欠陥を是正し、そうして鉄道運送の安全、確実、適正を期してもってこの鉄道運送の実をあげたいということが眼目でございまして、ほかに私はことさら罰則を強化するとかというようなことは考えておらないのであります。(拍手)    〔国務大臣前尾繁三郎君登壇拍手
  31. 前尾繁三郎

    国務大臣(前尾繁三郎君) ただいま御質問の第一点は、中小企業に対する補助金が少いのではないか、ことに農業と比較して絶対額が少いという、こういうお話であります。しかし、御承知のように、自由主義の原理に立っております中小企業に対しまして直接に補助金を出すということは適当でありません。従って間接的な補助金が多いのでありまして、そういう意味からいたしますと、本年度は画期的に、増加割合は従来と違って多いのであります。ただ、何と申しましても、金融機関の円滑ということが、中小企業に対する根本的の政策だと思います。従いまして、先ほどお話もありましたが、中小企業金融公庫あるいは国民金融公庫につきましては、融資額は昨年よりも五十五億円、国民金融公庫につきましては九十億円ふえておるのであります。また、商工中金につきましても三百五十億円ぐらいふえておるのであります。これにも従来通り、それ以上に力を入れております。さらに、私は一般の市中金融機関から、中小企業者の皆さんが金が借りられるということが最も肝要だと思いますので、今回、御承知のように八十五億円政府が出資をいたしまして、さらに、従来の信用保険特別会計の二十億円以上の金を入れまして、百数億円の信用保険公庫というものを創設いたしまして、これをうまく運用いたしますれば、少くとも三百五十億以上の金が、本年度、市中金融機関から中小企業者の方々が金が借りられると、こういうふうになると思うのであります。  これまた私は画期的な方法をとったものだと確信をいたしておるのであります。  さらに、中小企業への貸し出しの問題でありますが、従来もありました近代化補助金につきましては、本年は、五割以上ふやしまして、六億円を投入いたしております。府県分なり、自己調達分を入れますと、約四十五億円以上の設備の近代化がはかられるはずであります。従いまして、これまた従来とは特段の進歩をするものと考えておりますし、さらに技術の指導につきまして、本年は新たに三年計画で、公設の試験研究機関の整備をはかるというようなこともいたしておりまするし、さらに、企業診断につきましては、経費を相当増額いたしまして、貸し出しの改善を根本的に進める考えでございます。  次に、産業分野の問題でありますが、これは必ずしも法律で規制するというわけのものではなかろうかと思うのであります。日本経済全般の立場から、合理的な発展をするように慎重に考えて行くべき問題じゃないかと思っております。もちろん中小企業団体法の適切な運用によりましても、相当部分の問題が解決するのじゃないかとも思っております。  小売商業の振興につきましては、すでに政府は、小売商業特別措置法案を提出いたしております。消費生活協同組合や購買組合の員外利用の規制あるいは小売市場の不公正な取引方法を規制いたしまして、小売商業が公正な活動ができるようにいたしたい、かように考えておるのであります。  また、減税につきましては、法人税につきまして、一律に二%下げになっておりますが、軽減税率が百万円から二百万円に限度が引き上げられておりますので、これは中小企業者にとりましては非常に恩典だと、かように考えております。また、事業税の軽減は、遺憾ながら見送られましたが、御承知のように、自転車及び荷車税というものが廃税になる見込みでありまして、これは最も零細業者の方々には、非常な特典だと、かように考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣萬田尚登登壇
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  金融政策は、国民経済の緊要といたします資金を確保して、不要不急の資金を抑制し、その流れを適正化する、これは言うまでもないのでありますが、ただ、そういうふうな状況を持ち来たすのに、私は法律の力でもってやるということには、金融の本質から見て賛成をいたしておりません。そこで、しからば、そういうふうな状態を、どういうふうにして実現するかという問題があるのでありますが、これにつきましては、私は、五カ年計画という長期計画政府は持っておるのでありますから、この計画に基きまして事業計画を一方で立て、そうして、この事業計画を受けて、その重要性に基いて金融機関が金融をつけて行く、それについて、今日の機構といたしましては、民間には融資調整委員会というのができておりまして、大蔵大臣の諮問機関としては資金審議会がございます。これで十分検討を加え、なおかつ、大蔵大臣の金融機関監督権を活用いたしまして、そうして勧告その他によりまして、規制を加えて行く、こういたしますれば、私は法律等で意図しておることが、金融の自主性、金融の本質に基いて実現が可能である、かように考えておるわけでありまして、そういう方針で行くつもりであります。  それから私に対する質問の次は、事業税であったと思いますが、これについては自治庁長官から、いずれ詳しく御答弁があると思いますが、私といたしましては、この事業税は、やはり負担が重いと思っております。それで、国民負担の軽減の一環として軽減をしたいと考えております。特に事業税は、景気の影響を非常に受けます。同時にまた、地域的にむらが多くてこういう点からも、やはり最も重要な財源としては、動きやすい、安定性を欠いております。こういうように考えておりますので、なるべくは軽減をいたしたいと思うのであります、それを希望するのでありますが、今回は地方の財源等を考えまして見送ることにいたしております。  それから、健康保険についての国庫負担の繰り入れの問題についておしかりを受けたのでありますが、これは政府管掌の健康保険におきまして相当赤字が従来出ておりましたのですが、その後、幸いに制度の合理化とともに、財政が健全化になりまして、三十一年には四十八億、三十二年にはおよそ六十億程度の黒字が見込まれるようになりました。それで、他の社会保障関係に資金を回す必要もありますので、たとえば、これとごく近い国民健康保険というような方にも資金をふやして行く、そういう必要もありましたので、従来、三十億国庫から入れておりましたのを、十億残して、二十億だけは他に回す、こういうようなことになっておるのであります。今回、診療報酬の引き上げをいたしましたが、改訂をいたしましたが、これによりましても政府管掌保険は、黒字が非常に出る、こういう考えをいたしております。さよう御了承をいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣郡面一君登壇拍手
  33. 郡祐一

    国務大臣(郡祐一君) 第一は、地方行政についてのお尋ねでありますが、地方制度調査会の答申は、総合的であり、また広域化される将来の地方行政のあり方については、示唆に富んだものと考えております。今後、地方行政の改革を考えます際には、これらの要素と、また同時に、国と地方との調整、行政の効率化、こういう点をあんばいしながら考えて参りたいと思います。しかしその根底において、憲法の言うております地方自治において、十分自治の本旨を貫きますることが第一の要素でありますので、これらの点は、十分考えて参りたいと思っております。  第二には、地方税について、租税特別措置の整理をもって減税財源に当らないかというお話がございましたが、三十二年度で行いました整理については、この整理による地方税の増収分及び三十二年度、三十三年度における国税の減税による地方税への影響、これらをそれぞれ織り込んで見込みを立てておりまするので、新しい財源を見ることは不可能でありまするし、同時に、租税特別措置という租税上の経済政策によりますものを、さらに今後大幅に広げるということは考えられませんので、これによる財源を見ることは困難だと思います。  事業税につきましては、昭和二十五年度以来、累年減税をいたして参りましたので、今年度は、納税者が一千数百万人に及んでおります自転車税、荷車税を廃税することをまず取り上げたのであります。事業税を含めて地方税全体を地方財政の状況とあわせて考慮いたしますることは、将来の問題として、今後十分慎重に検討いたしたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣堀木鎌三君登壇拍手
  34. 堀木鎌三

    国務大臣(堀木鎌三君) 田畑さんの私を指名しての御質疑に対してお答えいたします。  第一は、三十二年度以降三十五年度までにおいて、国民皆保険が実現するかというお話につきましては、先ほど長谷部議員の御質問に対して、数字をあげてお答え申し上げましたが、特に三十三年度予算につきましては、従来、国民皆保険を進捗いたしまするのに、その基礎条件として必要でありながら欠けておりました医療費の問題、及び地方財政との調整の問題をはかりましたので、今後は、順調に進み、皆保険達成はできるものと考えておるのであります。田畑さんの調整交付金の医療費に対する国庫負担の割合を三割にしたらぱいいじゃないかというお話に対しましては、国民健康保険組合連合会が常に三割を主張いたしておりますること、及びその根拠についても、十分了承いたしておるのであります。しかし大体、現在におきましては二割を標準にいたしておりますために、二割すらやれない市町村が相当あるわけでございます。それがこの国民皆保険を推進するのに非常に支障になっておるということから考えまして、私どもは二割及び五分の調整交付金制度を設置いたしたいというので、予算に計上いたしましたような次第でございます。  健保の三十億一般会計からの繰り入れの問題は、大蔵大臣から先ほど御説明がございました。これは十億に減りましたことは遺憾ではございますが、しかしながら、各種の社会保険を通じて、総合的に見てこれを推進する責任のある厚生大臣といたしまして比較的脆弱である国民健康保険及び各種の健康保険、それから、少しも社会党の諸君は私をほめて下さいませんが、日雇い健康保険の傷病手当金の創設、その他各般にわたりまして社会保険に改善を加えて、そうして国民の健康をはかろうと思っておるのであります。(拍手)  なお、診療報酬の適正化につきまして、どうも八分五厘は少いのじゃないか、もっと上げたらいいじゃないかという御質問を受けて、私も実は残念に思っておるのであります。しかし、八分五厘というのは、実は現在の診療報酬を設定いたしまして以来の、過去六年間の物価の単純な引き直しではないのであります。最近の医学の進歩、新薬の実現等を取り入れまして、そうして私どもはこの八分五厘を設定いたしております。その点につきまして、中央社会保険医療協議会にも原案を付して御審議を願ったような次第でございます。私どもはこれによって、社会保険診療を通じて国民の健康が守れるものであるというふうに考えておるような次第でございます。  点数単価につきましては、私どもとして中央社会保険医療協議会の答申を得ましたので、その線に従いまして診療報酬を決定いたしたいと考えておるのであります。  結核対策につきましては、長谷部議員からの御質問に答えたのでございますが、ともかくも従来に比して十億円を増額いたしました。そうして検診班の強化でありますとか、あるいは療養範囲の拡張でありますとか、療養期間の延長でありますとかいうものをはかりまして、予防及び治療の両方面にわたりまして従来よりも私は、はるかに結核対策は進んだものである、ただ私どもは、さらにこの点につきましては、将来大きな計画をもって国民の幸福をはかりたいと、こういうふうに考えておりますような次第でございます。  以上、私を指名しての御質問お答えいたします。(拍手
  35. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 田村文吉君。    〔田村文吉君登壇拍手
  36. 田村文吉

    ○田村文吉君 緑風会を代表し、きのうの石黒議員に引き続いて内政問題に関し質問いたします。  まず、自民党の総裁である岸総理にお尋ねいたしたい。一昨日の施政方針演説、これに続く社会党の質問等を伺ってもわかるように、岸総理のいわゆる二大政党の育成と対立はけっこうなことと思いますが、両政党はその政策において根本的に相違し、その世界観さえ違っているような感じを強く受けたのであります。これが米国の共和党と民主党、英国の保守党と労働党くらいの相違なら、必ずしも問題にする必要はありませんが、今の日本のような保守党と社会党との非常な相違のもとにあって、万一、衆議院と参議院との中における勢力の分野が全く相反するようになった場合には、どうなるであろうかと懸念するものであります。近い将来には、さようの場合は起らないと思いますが、かりに政党が分裂したり、あるいは在来の勢力が反対になった場合、端的に言って衆議院において社会党が比較多数を得るようになり、参議院は依然として自民党が絶対多数を占めたような場合、国会の運営は、ただめんどうになる程度ではなくして、国政の運営ができなくなるようなおそれが起りはせぬか。これは決して痴人の夢ではなくて、両院勢力分野の転換は長い間に必ず起るものと思うのであります。そこで私は、参議院の自民党も社会党も、いわゆる党議に拘束されないようになるとか、あるいは憲法の改正まで進んで、参議院の構成方法を変えるとかしないと、いよいよまぎわになって、混迷を生ずるおそれがあると思いますが、二大政党の生々発展を期待せられます岸総理は、参議院の今後のあり方について、どんなふうに考えられるのか伺いたい。  第二の問題といたしまして、日本はあくまで自由主義の国、民主主義の国としての国是に対しては、総理もこれを主張し、国民の大多数がこれに共鳴して参っているところであります。しかしながら、いわゆる自由主義と申しましても、長所もあるが短所もある。全体主義と申しましても、短所もあるが長所もある。今度のミザイルや人工衛星をもって代表するソ連の科学の進歩は、全体主義国家としての長所を発揮したものであります。だからというて、私はもちろん血と牢獄四十五年分恐怖政治に対して何らの魅力を有するものでないことは申すまでもありません。しかし、静かに今日の日本実情を顧みまするとき、道義を持たない自由主義、人道を忘れた民主主義のもたらすところの弊害があまりにもはっきり目に映るのであります。自由奔放、快楽主義、むしろ放らつと申すべき世相に、若き世代の人々が知らず知らず流されつつあり、これを迎合するマスコミ、商業主義、物質至上主義が町にはんらんしている状態を見るとき、まことに国家累卵の危きを嘆ぜざるを得ないのであります。(拍手)自由はもとよりわれわれのこいねがうところであります。しかし、これはあくまでも他人の自由をも尊重する、独尊にして互尊の規制をはずれてはならぬのであります。お互いのためには、また集団のためには、自分の自由を若干犠牲にする覚悟あってこそ、真の自由は守られるのであります。自由主義の擁護を尊重せらるる総理考えには異議はありませんが、今日の行き過ぎたと申しますか、道義を喪失したと申しますかの自由主義について、反省し、これを検討し、あるいは労働政策、あるいは文教政策の上において、これを規制する必要を認める考えはありませんか。  昨年度の人口増加は八十三万と言われておりまするが、生産可能人口の増加は百三十万をこえており、うち就職できるものはその半数にも足りないと言われておるのであります。三悪の追放もとよりけっこうでありますが、このふえて行く人口に、いかにして職を与えるかが何より重大な問題であります。これに対し、総理はいかなる構想をお持ちであるか承わりたいと思いましたが、ただいまの田畑君に対し、一応の御答弁がありましたが、私はこれらの問題に関連しまして私の心づいた点で、以下、総理及び関係閣僚の御所信をただしたい。  まず第一に、輸出の振興によって産業を発展せしめ、これによって雇用を増大することの必要は申すまでもありません。ことに世界全体の輸出総額が一九五六年において九百十九億ビルとなり、一九三七年、すなわち昭和十二年に比べて三・九倍、物価騰貴を調整すると七割を増加し、米国、西ボイツが同じく十六割ずつを増加しているのに対して日本は逆に一割四分も減少していることを考えまするとき、われわれは静かにその内容を検討し、なぜ日本がひとり輸出の増進に立ちおくれているかを明らかにし、これが対策を立てることが喫緊のことであります。これが原因として考えられることは、戦前、輸出の大宗が、後進国が容易に自給自足し得るであろう繊維品、雑貨等に、重きを置き過ぎたことも重要なる原因であり、かつては日本の最大得意であった中華六億の顧客をほとんど失っていることも原因であるかもしれません。数字をもって申しますれば、昭和十年の対中国輸出額の総輸出額に対する割合を見ると、二割三分を占めていたが、昭和三十一年のそれはわずかに二分六厘にしか当っていません。岸総理が東南アジアの開発及び貿易の促進に関心を持たるることは、大いにわが意を得たものであるが、それと同時に、計画経済下にある中共との貿易に大きな期待は持てないまでも、一日も早く、これとの正式の貿易協定まで進むべき段階にきているのではありますまいか。また、日本に最も多くの物を売り込んでいる米国としては、日本の中小企業者によって生産せらるる洋食器、かさの骨等について、最近高率関税の適用等によって、これらの輸出を阻止する等のことの起らないよう、外交上の措置をとらるべきではなかろうか。東南アジア、南米等に移動大使を派遣して通商の拡大を意図されている岸総理計画には、大いに敬意を表する次第であるが、これには全国民をして日本の輸出がいかに日本民族の死活に関する問題であるかを十分納得せしめ、この点に関しては官民一体はもちろん、政党政派を超越して努力することが必要であると思いますが、これに対する所見を承わりたい。  大蔵大臣に対して次の三点についてお尋ねいたします。その第一は、財政投融資の限界は、資金の集まるに従って決定されるのか、あるいは事業の性質等によって一線を画せらるるのか。巷間伝うるところによれば、来年度民間の投資が減少するだろうから、投融資はふやしたんだと言うているのであります。要するに、あるめど、または限界線を考えておらるるのかどうか。  第二の問題、これは総理大臣、経済企画庁長官からも、聞いていただいて御所見を承わりたい問題でありますが、経済白書の七つの教訓の一つとして日本の統計資料の収集が不完全のためもあって経済の見通しがなかなか困難であったと弁護しておられます。神武景気など言うて鳴りもの入りで、はやし立てていると、急転直下、いつの間にやらボルがなくなりそうだからと言うて、あわてて金利を引き締める、品物は売れなくなる、手形の割引ができない、授げ売りが始まる、こういう政治をやられては、まことに国民が難渋迷惑するのであります。来年度の経済成長率は実質三%と見込んである。しかるに、予算は約一割四分も膨張して組んである。しばらくはインフレ的の手直しかと思っていると、秋の末ごろになれば、また何が出てくるかわからないというふうに、経済政策、財政政策に対し、過去においてしばしば急激に変っている点から、町の人たちがきわめて不安を感じているのであります。政府の見込みが違ったからと言うて昨年のように急に金利の引き締めをやる。やる方はいわゆる一片の書きつけで済みますが、これを受ける方は実に四苦八苦、塗炭の苦しみで、何というむごたらしいことを政府はやるのか、恨まざるを得ないと、つくづく慨嘆しておったのであります。一体全体、これほどの事態を引き起しておいて、政府はきわめて涼しい顔をして、統計資料が不足だなどとすましておられますか。これがためにこうむつた、いな、今もなおこうむっている大企業、中小企業の苦しみ、従って生じた国民経済の損失に対しては、だれがその責任を負うのでありましようか。来年度予算が、今年度に対比しただけでも、千五百億の歳計が膨張しているのでは、今度は反対にインフレ傾向を誘発することになりはせぬかどうか。最近なるほど物価は一割は低落いたしましたでしょう。いな、中には採算点を無視して二割も三割も暴落したものもあるのであります。しかし、これで物価は下るんだと思ったら大きな間違いで、もともと人為的に金利を引き締めて、強制的に下げた物価ですから、四囲の状況が落ちついてくれば、たちまち反騰に転ずるものと思います。かようのことのために、国民経済の波乱と損失とは、はかり知ることができないのであります。いわんや昨年、米価は上る、鉄道運賃は上る、生産用の電力料金は暴騰する、予算は一割四分も膨張するのでは、物価及び経済の安定はなかなか困難でないかと憂うるものであります。大蔵大臣及び河野国務大臣の御所見を承わりたい。  第三に、これは、政府及び社会党の考え方と私の考え方の相違と言えば、それはそれまでであるけれども、日本の民間資本の構成は、自己資本が三割七分、他人の資本が六割三分であって、英米のそれに比し、全く反対の数字であり、日本の戦前の比率の自己資本六割、他人資本四割に対しても、全く正反対になっておるのであります。また基準年次と昭和三十一年とを比べて、銀行預金は三百六十三倍になっておるが、払込資本金はようやく八十二倍であり、株式の時価総額も八十一倍にしかすぎないのでありまして、これらは日本の企業資本の構成がいかに貧弱であるか、また資本の造成ができておらぬことを物語っておるものであって、これなるがゆえに、経済の底が浅いと言われ、一朝、昨年のごとき金融引き締めが行われると、不必要に企業は萎縮し、投げ売りが起り、企業整備が始まり、失業者を出すという悲惨な状況を現出するのであります。そもそも企業資本の造成が十分にできない理由は、政府が法人税を四割の高率に残し、その他の地方税を合わせて、大略五割二、三分もしぼり上げる結果にほかならないのであります。政府は、今次わずかに二分の低減をされたのでありますが、日本経済の病ガンの核心に触れないことを痛嘆する次第であります。ことにいわんや、来年度のごとき、少くも一千億以上を法人税の減税に向け得る絶好の機会を逸せられたことを残念に思うものであります。税金を下げ、金利を下げ、従って物価を下げることによって、輸出も振興し、失業者もなくなることは間違いない事実であります。大蔵大臣、企画庁長官、通産大臣より所見を伺いたい。  時間がありませんから、河野大臣に簡単にお伺いいたします。それは、いつになったら国民は、やみ米を買うという法律違反を行わないで済むようになるのでしょうか。(拍手)この問題は、三年前の特別国会において、私はあなたにお尋ねをいたしました。あなたは、なおしばらく準備期間がほしいと申され、自乗三年、豊作が続きました。あなたは、まさか永久に国家公安委員長をして、やみ米を取り締らせるつもりではないでしょう。農林大臣とお二人から明快の御答弁をお願いして、私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣岸信介登壇拍手
  37. 岸信介

    国務大臣岸信介君) 田村議員の御質問お答えをいたします。  最初の問題は、二大政党と参議院のあり方についての御質問だと思います。私は、民主政治、それの本体をなす議会政治というものを運用して行くのには、どうしても二大政党が望ましいという考えを従来持っております。しかし、言うまでもなく、この二大政党は、両方とも国民全般を広く基盤とするところの国民政党でなければならないというのが私の考えであります。いかなる場合にも、一つの階級であるとか、一部の者を代表しておるというような考え方ではいかぬというのが私の考えであります。今日わが自由民主党と社会党とのあり方を見まするというと、われわれの党におきましても、大いに反省し、自粛しなければならぬことは多々あると思います。しかし、同時に社会党の現在の姿というものに対しては、国民の各方面から相当批判があることも、社会党の諸君も御承知の通りであります。私は、両政党とも国民政党として、そうして穏健中正なる民主政治が作り上げられなければなちぬというのが私の信念であります。ただ、参議院におけるこの二大政党という考え方から申しますというと、選挙を基盤として出られ、作り上げられる現在の参議院のあじ方から申しますというと、当然、参議院も、好むと好まざるとにかかわらず、二大政党がその主力を占めるようになることは、選挙ということの実態から当然であろうと思います。しかし、それが衆議院同様の政党化すことが望ましい状態であるかどうかにつきましては、これまた相当な批判のあるところであります。また、今田村議員の御心配になっておるような、衆議院と参議院の政党的構成に食い違いができるというと、政治の運営が非常に困難になりやしないかというお話、私もそう思います。でありますから、われわれは選挙におきまして国民の多数の支持を受けて、そうして政局を安定する、そうして民主政治の運営を円滑ならしめるように、今後とも努力をいたしたいと考えております。(拍手)第二の、自由主義、民主主義というものの根底に道義が必要であり、また、自由ということは、自分の自由を主張することは、他人の自由を尊重することであり、他人の人格を尊重、認めて行かなきゃならぬというお考えは、私も全く同感でありまして私が施政方針のうちに、道義に貫かれた民主政治を確立するとか、民主政治の真髄を把握するということを申しておるのも、そういう見地でありまして十分にわれわれは、民主政治の運営をして行く上において、この道義という問題を強く考えなければならぬと考えます。  第三の、人口問題に関連して、輸出振興に日本の産業拡大の中心を置いて考えなきゃならぬというお考えは、私も全然同感であります。日本の産業というもの、経済が、外国から重要原料を輸入しなければならぬし、また、輸出を奨励して、これによって多数の人口を養って行かなければならぬという産業構成を考えますというと、輸出振興に重点を置いて考えなければならぬこどは言うを待たない。しかも、なかなかこの輸出振興には、いろいろな難点があり、おあげになりましたような幾多の問題があると思いますが、私は、おあげになりました点について、順次簡単にお答えを申し上げます。  中共との貿易協定の問題につきましては、難点になっております指紋の問題を解決するような外国人登録法の改正をいたしまして第四次貿易協定を成立せしめ、その運営によって貿易を拡大して行きたい。かように考えております。  米国市場における日本商品に対する関税の引き上げや、その他輸入制限の措置等についてのいろいろな動きが米国内に見られますが、これはきわめて遺憾でありましてあらゆる外交の手段を通じまして、これを未然に防いで行きたいと思います。同時に、日本のこの大事な米国市場という大きな市場を確保して行くためには、秩序のある輸出をして行くように、自制をする必要もあると思いますが、アメリカ側における制限措置に対しては、これをさせないように、今後とも努力をいたします。  東南アジアの貿易の問題につきましては、現在最も必要なことは、これらの地域における購買力を作り上げることが必要であると思います。私は東南アジアの経済開発に対するいろんな協力についての計画を急速に進めたい。これを進めて、経済を開発し、その産業の基盤を作って、購買力を作り上げる。そうすれば、日本の市場として非常な有望なものが出てくる。こういうふうに考えております。(拍手)    〔国務大臣前尾繁三郎君登壇拍手
  38. 前尾繁三郎

    国務大臣(前尾繁三郎君) 私に対する御質問は、法人税の軽減の問題だと思います。  現在の資本構成が、ただいま田村議員お話のようなことになっておりますことは、これは戦後の特別な環境によるものでありまして、従って、今後ますます資本の蓄積をやって、自己資一本の割合を大きくして行かなければならないということにつきましては、これは問題のないところであります。従りて、法人税の軽減をわれわれもして行かなければならぬと思うのであります。これは段階を追いまして、今回二%の軽減をいたしておるのであります。さらに私は、現在の日本の非常な経済技術の進歩その他の点から考えますと、合理化なり、近代化を促進するという意味から、設備の特別償却制度を拡充して行くのが最も適当である、かように考えておるのであります。今回は科学技術振興のために、特別償却を広げて行くというような措置を決定いたしまして、御審議を願うことになっておるのであります。  そういう意味合いで、われわれは今後ますます自己資本をふやして行く、資本の蓄積を促進するということを考えて行きたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣萬田尚登登壇拍手
  39. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答えいたします。  私には、財政投融資の限界はどこにあるか、こういう御質問であったようであります。これは原則的に申し上げれば、国の総生産に対して、一方に消費があり、これに対して投資がある。その投資が財政投融資と民間の投資に分れる。こういうふうなバランスの上においてその限界は私は考えられなければならないと、かように考えておるのでありますが、従って、これにつきましては、やはり経済に長期計画というものがなくてはならぬ。そうしてその長期計画に基いて年度計画が生じ、その年度計画において経済の成長、それに対応して消費をどういうふうにして行く、財政、予算をどういうふうな規模に置く、そうして投資というものは、どういう規模でなくてはならぬ。こういうふうな形になって現われてきまして財政投融資は、さらに民間の資金の関係等から考慮せられなければならない。いわゆる政府の資金と民間の資金とが、どういう割合にその年において蓄積されるか、こういう割合において、また財政投融資の限界の増減がある。こういうふうに考えていいと思うのでありまして、そういう見地から、来年度は三千九百九十五億と、こういうふうな財政投融資を出しております。これは民間の投資が、三十三年度においては、ずっと減るということが予想されるからであります。(拍手)    〔国務大臣河野一郎君登壇拍手
  40. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) わが国の統計が不十分な点がありまして、大へん御迷惑をかけることがある。この点は、御承知の通り、最近わが国の経済が国際経済の影響を受ける点が非常に多くなって参りましたので、世界経済の見通し、それにつきましても十分考えなければならぬというようなことを深く考えますので、明年度予算におきましても、この点を御考慮を願い、なお、それぞれの関係官を設置する等につきましても、今後御賛成を願いたいと思って政府でも目下準備をいたしておるようなわけでございまして要は、こういう点に現在まで不十分な点もございました。昨年度におきます経済の不安定が、非常に国民各層に御迷惑をかけました点につきましては、われわれといたしましても、まことに相済まぬことだと思っておるのでございます。しかしただ、こういうことを申してはどうかと思いますが、あまり統計に見通し等を立ててやりますと、実は財界の一部には、思惑であるとか、先走りであるとかいうようなことで、たとえば、昨年ありましたように、過大投資をなされまして、先走りなさったようなこともあるというようなことがありますので、われわれといたしましては、官民の十分御意見を伺い、御相談を申し上げまして長期計画を立てましてこの長期計画のもとに、われわれは今後進んで行きますれば、そこに経済は安定した成長をして行くことができるということについて、御理解を願いたいと考えておるのでございます。  次に、米価、やみ価格のことについてでございますが、実は、これは所管大臣からお答え申し上げた方が適当でねないかと思いますけれども、特に、私の従来の立場から答えよということでございますが、私は今もなお、現在の米穀政策は、これを変更することは不適当である、と申しますのは、ここ数年来の豊作であり、国民各位におかれましては、数量的な一応の不安感は持っていらっしゃいませんけれども、しかし何にいたしましても、わが国の食糧問題は、全体として海外に依存する面があるわけであります。従いまして、一たびこの統制をはずしまして、やみ価格のないような事態にいたしますことは、そのときに非常に大きな持ち越し、もしくは手当米を持っておる、絶対に国民諸君に不安感がないというようなことにいたすことができますれば格別でございますけれども、そういうことをいたしますことは、それこそ財政の面において非常に大きな負担がかかり、また、非常に大きなロスもできるというようなことになりますので、今後、国民全体の諸君が、日本の食糧に対して不安感を持たれない状態において、今日の制度に十分御理解をいただくようになりますればともかくとして当分の間は、なかなか適当でなかろうと、こう考えておる次第であります。(拍手)    〔国務大臣赤城宗徳君登壇拍手
  41. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) やみ米を全然なくするということは、自由販売に移せば、やみがなくなるということでありますが、今、自由販売にするということにつきましては、河野企画庁長官お答えいたしましたように、私け適当でないと、こういうふうに考えておるのであります。というのは、現在の予約売り渡し申込制度によりまして、相当量の政府の米の集荷もあります。そこで、消費者にとりましても、現在、基本配給、希望配給十四日、それに準内地米、特用米等を合わせますれば、消費者といたしましても、やみ米にたよらなくてもいいだけの手当けしてあります。消費者につきましても、この配給のテコがあるということは、一つの安定感だと思います。また、生産者にとりましても、投機的にならずに、一定の時期に、一定の価格で米を売るということは、農家経済の計画性を保って行く上においても必要だと、こういうふうに考えておるのであります。なお、政府といたしまして自由販売にするということにつきましては、ただいま河野企画庁長官も申されましたように、相当量の操作米を持ち、あるいは相当の金額を用意しておりませんというと、米の暴騰あるいは下落に対する用意が十分でないわけであります。現在の日本の食糧事情から申し上げますならば、まだ自給度が総合的にできておりませんので、今、食糧管理制度をやめ、そうして自由販売に持って行くということは時期を得ていない、こういうふうに考えておりますので、事前売り渡し申込制度を持続して行きたい、こう考えております。しかしながら、お話のように、やみ米があるということにつきましては、私ども遺憾でもありますが、また、これは事実認めざるを得ないのであります。そこで、私どもといたしましては、極力これを政府の集荷に乗せ、配給のルートに乗せようということで、昨年度におきましても、二千七百万石の予約申込に対しまして、これをなお追加の買い入れをしておりますと同時に、また、その後引き続き臨時匿名集荷制度及び代表者売り渡し制度等を昨年よりも一カ月も早めまして、極力、政府の手持ちを多くし、配給のルートに乗せようということで努力しておりますので、三十二年度におきましては、約三千百万石程度政府で買い上げる米に相なったのであります。なお、三十二年度の予算におきましては、二千七百万石の集荷目標でありましたが、三十三年度におきましては、二千九百万石を予算の上におきましても買い入れの予定にいたしまして、極力、政府の買い上げを多くいたしまして配給ルートに乗せたい、そうして、やみを少くしたい、こう考えております。
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 佐野廣君から、成規の賛成者を得て、質疑終局の動議が提出されております。  これより本動議の採決をいたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  43. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 過半数と認めます。  よって、国務大臣演説に対する質疑は終局することに決しました。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会    —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第三日)