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参考人(
中村五郎君) 当時
留置場は、三人
勤務でございまして、
大森巡査、
古田巡査、
神群巡査が
勤務しておりました。そこへ寺見
淳一という者が入って参りました。非常に
留置場で大きな声を出したりあるいは
留置場の
身体捜検等に応じないで骨を折った、こういうような話でありました。かろうじて
身体捜検をして
持ち物等も全部預かって、それで、さてどこへ
留置しようかという問題になりました。そこで、当時
留置場はほとんど全部満員の
状況でございました。そこで、酔っぱらっているから
独房に入れるのが
建前でございますので、
独房といいます。と、
少年房に二名
少年が入っておりました。そこで、その
少年二名を他の房に全部移して、そこをからにして、そしてそこへ寺見
淳一氏なる者を入れた。この入れるについては、
村田係長も全部中へ入って、当時
身体捜検には
刑事も
留置場に入って大ぜいで、五、六人で扱ったわけです。
係長の
指揮で
少年房に移した。
少年房に入ってからも一人で
羽目をたたいたり大きな声でいろんなことを言うて騒いでおる。約二十分ぐらい騒いでおった。ところが、たまたまそのときに
中村正元なる、これは単なる
泥酔者の
保護ですが、
壁一つ隣の
保護室に入っておった。これが足で扉をけ破って、すぐわきにある
家出等の
女の子が五、六人いる、そこへ
入ろうとして、
女の子がこわがって泣き出して収拾がつかなくなった。そしてこのままその
中村なる
泥酔者を
保護室へ入れて置くことが危険になってどうしてもしっかりした
留置場に入れなければならない。さてそうしますと、
少年房にはすでに先に一名
泥酔者が入っておるので、
酔っぱらい同十三人今入れることは当然できません。これもいろいろ
相談の結果、
係長の
指揮を受けて、最も見張りの
場所から近いところにある第六房、ここにはおおむね三十歳以上の人が入っております。
少年たちも入っていない。どこの房も四名ないし五名で、ほかにすいた所もないというので、それで大ぜいで
相談の結果、
看守三名で
独房へ入れた。ところが、
独房へ入れてからも、相変らず騒いだり、から手のまねをやったり騒いでおった。そこで、
同房者の者も、あしたになれば帰れるから、静かにして寝ろと言ってズボンを脱がしたり、大ぜいして介抱してなだめた。ところが、あまり騒いだりするので、他の房からうるさい、早く寝かしてくれという声も出た。そのうちに
便所々々と言うようになったので、こう言うときは
看守もまだ三人おりまして、早く出さないとここへしちゃうぞとかということなので、
看守が三人おれば
便所に出してもいいことになっておりますので、多分二人で
便所へ一回出しました。だんだん時間が
経過して、最後に十一時ごろから、今度は他の
看守も、
休憩も全部つぶして十一時近くまでこれが処理に当っておったのですが、一応それぞれ
部屋から出て、
古田巡査が一人で十一時からの
勤務になった。そこでまた、
便所々々、そういうふうに言うので、そこで
便器を入れてやろうと思って、
便器を置く
場所に行ったところ、
便器はすでに他の房で使っておって、なかった。そこで、
酔っぱらいのことであるし、あまり騒ぐので、やむを得ず
古田巡査が連れて
便所へ出した。そこで
便所へ行って用便を済ましてまた再び房へ戻って……そのとき本人は、なぜおれを
留置した、帰せとかなんとか言って……
最初からそう言っておったわけですから、帰るつもりでおるらしい。房へ
入ろうとしない。そこで
うしろから押して無理に入れた。ところが、ほかの、中へ入っていた者も、寝ておる者もあれば
中腰で起きておる者もあって、早く寝ろと言って、問題の
田中輝男なる男が、左の腕か……
古田巡査も
あとになってからのあれですから、はっきりした
記憶はないのですが、首の
あたりに手をやって、早く寝ろと言って抑えつけた。私はそのときかぎをかけようとしておった。突然の瞬間のことで、あまり大きな声で、何をしている、寝ろ、こういう声がしたので、はっと思った。無理に寝かせようとしたから、そんな無理をしなくてもいいと言って、こう言って制止した。そうしたらすなおに寝た。そうしたところが、寺見が、こんなうるさい房はいやだから……その前も
同房者はもううるさくてしょうがないから口をきかぬようにしろとかいろいろ言っておったそうですが、こんなうるさい
部屋はいやだから房を変えてくれと、そんなことを言っておったそうです。お前が静かになるなら変えてやろうというので、第四房へ
——すぐ前の房ですが、そこに移した。ところが、前の房へ移ってからも、やはり大きな声で騒いだりいろいろなことを言うておる。それでたまたま十一時五十九分ごろ、その間、
監督者は外勤の
監督者その他を含めて五、六名で巡視が絶えず行われております。それで、
田中係長が巡視したのが多分十一時五十何分か、八、九分ごろのことだと思っております。来たとき、異常なしの
報告をして、そして後について各房を順次見て回って行くと、たまたま四房のところへ行くと、寺見なる男が
中腰になって泣いている。で、どうした、どうしたと、こうやって
田中警部補が声をかけたら、何も答えない。さらによく顔を見ると、非常に顔色が悪い。これは何かおかしいじゃないかと言うているうちに、ガタッと
羽目に頭を打つような格好で倒れた。そこであわを食って中へ入って、それから
休憩の
監視も起して、脳貧血か何かと間違えたのか、水を顔に引っかけたりあるいは
平素人工呼吸を若干なり心得があるので、
人工呼吸をやったらしいのですが、どうもおかしいというので、
救急車の要請をして、
病院に収容した、大体以上の
程度の
報告が当時ございました。