運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-04-09 第28回国会 参議院 法務委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月九日(水曜日)    午後一時四十四分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            秋山俊一郎君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            吉野 信次君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○刑法の一部を改正する法律案内閣  送付予備審査) ○刑事訴訟法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○証人等被害についての給付に関す  る法律案内閣送付予備審査)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  本日は、刑法の一部を改正する法律案刑事訴訟法の一部を改正する法律案証人等被害についての給付に関する法律案、三案を議題といたします。  前回に続き、あっせん贈収賄に関する部分につきまして質疑を行いたいと存じます。  なお、この際、皆様に申し上げますが、昨八日の委員会におきまして、刑法の一部を改正する法律案並びに刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、弁護士植松圭太君外三名の参考人出席要求を決定いたしたのでございますが、都合により、参考人の数を若干増加することにいたしたいと存じますので、両案についての参考人の自後の取扱いについては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じますが、さよう御一任願うことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないものと認めます。     —————————————
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは、あっせん贈収賄に関する部分について、御質疑のおありの方は、御発言を願います。  なお、法務大臣唐澤さん、竹内刑事局長、お二人がお見えになっております。
  5. 大川光三

    大川光三君 前回に続きまして、あっせん収賄罪に関しての質問をいたしたいと存じます。  本日は、不正の行為と相当の行為、この点についてまずお伺いをいたしますが、先般の逐条説明によりますと、不正な行為とは、職務上の義務にそむいた積極的・消極的行為、すなわち作為・不作為をいう、こういう御説明を伺いましたが、そこで、一体職務上の義務にそむくということは、具体的にはどういうことになるか。たとえば官吏服務規律というものに違背する場合は、ことごとく職務上の義務違反になるのか、あるいは国家公務員法等法規における服務規定違背行為をさすのか。そういう点について、少しく掘り下げて、具体的な御説明をいただきたいと思います。
  6. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 公務員職務上の義務違反一般的に申します場合には、国家公務員法に基く各種の義務規定されておりますが、たとえば、上司命令に従う義務だとか、あるいは秘密を守る義務とか、職務に専念する義務といったような義務規定されているわけでございます。それらの義務に反することも、職務上の義務違反ということになろうかと思うのでございますけれども、ここにいわゆる職務上の義務と申しますのは、あっせん収賄行為という、おのずからなる限定がそこにあるわけでございまして、もちろん秘密を守る義務という義務につきましても、たとえば、予定価格を漏らす、これは、公務員として秘密を守らなければならないという義務にも、違背をいたすのでございますけれども、同時にまた、予定価格制度というものから内在する会計法上の義務でもあるわけなんで、そういう場合に秘密を漏らした、秘密を守るという義務違背するという見方をするか、あるいは会計法上、会計経理担当者に課せられた義務違背するというふうに見るかという問題がここにあろうかと思いますが、私どもは、用語の上からは、あらゆる義務を含むと言わざるを得ないのでありますけれども、なおかつ、あっせん収賄という何らかの利益第三者に与えるという、その利益を伴うことに関連のある義務でなければなるまいというふうに考えるのでございまして、今の予定価格の問題のような場合には、二つ義務が競合しておるのでございますが、そういう場合には、会計法上課せられた義務違背するという意味におきまして、職務上の義務違背するという解釈をして参りたい、かように考えておる次第でございます。
  7. 大川光三

    大川光三君 設例について申しますと、上司命令にそむいて正当なことをやったという場合、あるいは上司命令に従って不法なことをやった、こういう場合はどうなんでございますか。
  8. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 今日の公務員機構におきまして、上司といえども違法なる命令を下した場合に——下すことはあり得ないわけでございますが、かりに下した場合に、下僚はその違法なる命令に従わなければならない筋合いではないというふうに解せられるのでございます。上司が全く錯誤からしてそういう命令を下した場合は、これは考えられるわけでございますが、下僚といたしましては、もし、それが職務義務違背になるという場合でありますならば、具体的にはいろいろ具申をすることになろうかと思いますが、そういうものについては従う義務はないのではなかろうか、というふうに考えられるのでございます。  それからまた、上司が正当な命令を出しておるにかかわらず、違法なことをやる、これは普通の形でございますが、上司が違法な命令を出してそれに従ったという場合には、今申しましたような法理で、それがために犯意を阻却するという解釈には至らないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  9. 大川光三

    大川光三君 現行刑法百九十七条ノ三の、枉法収賄罪の不正の行為とは、法規違反のみに限らず、訓令とか指令とかに基く職務違背する行為をも含むというふうに、判例の上ではそう解釈されておりますが、本法案の場合の不正の行為というのは、これと同様に解していいかどうか。
  10. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 本法案不正行為解釈は、将来裁判所判断によってきまってくる事柄でございますが、用語といたしましては、百九十七条ノ三の枉法収賄用語をそのまま用いておりますので、おそらくは今まで百九十七条ノ三に関してなされた裁判所法律解釈は、本法案解釈にもそのまま適用されるものと考えられます。また、私どももそのようなふうに期待いたしましてこの法案を立案しておるのでございます。
  11. 大川光三

    大川光三君 そこで、今度はこの不正行為不当行為、こういう言葉がございますが、不正行為というものと不当行為というのは、どういうところが違ってくるであろうかというような点についての一つ御所見を伺いたいと思います。
  12. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この問題は、一般的にはややともすると混同されて使われるのでございますが、ここに申します不正行為という観念と、それからいわゆる不当行為その他の行政法に書いてあります不当行為という観念との間には、少し立場と申しますか、見方と申しますか、少し変った角度から見た二つ概念であろうと思います。刑法にいわゆる不正行為という場合には、違法行為実体法に違反する意味においての形式上の法律に違反する違法行為だけではなくして、広く法律規範違背するという場合をも含むのでございます。そう解釈せざるを得ないことは、刑法一般理論としてさように解せられるのでございますが、そういうふうに不正行為というものを理解いたしておるのでございます。  もう一つ観念不当行為というのは、行政法上用いられる場合が多いと思うのでございますが、行政法上の違法あるいは不当という言葉は、違法というのは、すでに学者も論じておりますように、行政訴訟対象になります処分を違法なる処分、これは実体法違背しておるということが明白であります場合に行政訴訟対象になるのでございますが、そうでない、違法にはならないけれども自由裁量行為範囲内において、具体的に妥当でないというような行為を主として不当という言葉で呼んでいるのではないかと思うのでございます。行政法上の観念としての不当行為と、刑法上の観念としての不正行為という点は、全然交わらないというのではございませんが、ある部分では交錯しておるところがあるかと思いますが、考え方としては角度が違った考え方であります。
  13. 小林英三

    小林英三君 ちょっと関連しまして……。今の大川委員の御質問によります不正行為不当行為、これは今御答弁が、われわれしろうとが聞きますと非常に抽象的でよくわからないのですが、望むらくは例をあげて、こういう場合は不正行為である、こういう場合は不当行為であるということを御説明願いたいと思います。
  14. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 先ほど申しました予定価格を内示するという行為でございますが、これは不正行為予定価格というのは、入札をしてしまうまで封筒に入れて、皆のいる前に伏せておく。そうして入札の終ったところで初めて封を切る。そうして入札の結果と予定価格とを示すことによって公正に取引価格をきめる制度でございます。そういうものを、事前に官庁で予定いたしております価格を業者の一部の者に見せるというようなことをしますことは、会計担当者職務上与えられている義務、命ぜられております義務違背する行為で、不正行為というふうに考えるのでございます。  それから不当行為と申します場合は、たとえばある補助金を交付するというような場合は、条件いかんによりましてはいろいろな与え方があると思うのでございます。条理としましては、先願者に先に許可するとかいうこともありましょうし、あるいは先願者でありましょうとも、条件適格者でなければやれないということもありましょうし、いろいろなところから受給者をきめるということになろうと思います。そういうふうに受給の資格のある者が数人ありまして、甲、乙、丙、丁、そのいずれを選ぶかは自由裁量行為とされておるような場合には、初めは甲に交付するつもりで予定しておったものを、乙あるいは丙に変更する、その行為自体不正行為ではないのでございますが、また、別の観点から見ると、やはりそういうものにもおのずから一定の条理があるわけで、もしそういう条理違背——違背という言葉は適当でないかもしれませんが、まあ甲にやるのが相当であると一般的に思われるのに、乙にやったというふうな決定が出た場合は、行政行為としては、あの措置は不当ではなかったかという批判がこれは生まれてくるかと思いますが、刑法観点からいたしますと、自由裁量行為でございますので、甲にやるやつを乙に変更したからといって、それをもって直ちに不正行為だというふうに断ずるわけにはいかないのでございます。
  15. 小林英三

    小林英三君 今の御説明は、たとえば補助金を交付する場合においての説明がありましたが、そのときに甲でなく、自分が情を通じて乙にしたというような場合には、不当行為ではなくて、不正行為になりますか。
  16. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その場合も、情を通じて乙に変更をいたしましても、乙に変更をすることが、法律ないしその法律を背景としたいわゆる公務員義務に違反しない限りは、それは自由裁量行為でございますから、自由裁量行為としては不当呼ばわりをされる場合があったといたしましても、その行為自体不正行為とは見られません。
  17. 小林英三

    小林英三君 ただ、その場合に、何か、うしろからまいないでももらってやった場合には、不正行為になりますか。
  18. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そのまいないをもらっておりましても、あっせん形式不正行為でないというふうに見られます場合には、わいろをもらったがゆえに不当行為不正行為になるというものではないのであります。
  19. 大川光三

    大川光三君 次に、報酬としてのわいろという点について一点伺いたいと思います。本来わいろというものの本質から申しますと、あえて「報酬トシテ」という説明をつけなくても、ただ「斡旋ヲ為スコト」または、「為シテ賄賂収受シ」と、こう「賄賂」という言葉は全部取ってしまって、した方がすっきりするのだと、かように考えられますが、本法案が特に「報酬トシテ」と入れられたその理由を伺いたい。
  20. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仰せの通り報酬トシテ」という文字は「賄賂」ということをその次に書いております関係上、いわばダブった概念であるというふうにも見られると思うのでございます。私どもも、その点は、立案に当りまして検討を加えたのでございますが、本来、このあっせんによる不法利益の収得という行為は、通常わいろ罪と呼んでおります概念からは少し広いわけでございます。それにもかかわらず、なおそのような行為わいろ罪として汚職だという考え方に立って規定をいたしておるのでございまして、それをなお汚職だという理由は、先般も申し上げたような次第でございますが、それを汚職だというふうに見ますためのつなぎといたしまして、これは「報酬トシテ」ということで、そのあっせん行為報酬としてもらうものであるということの意義をここで明らかにしたいということが一つと、もう一つは、わいろはある行為に対する代償としてもらう利益でございますが、その意味で「報酬」ということがダブるというふうに申し上げるわけでございますが、しかし、ある行為に対する代償でございますから、対価たる関係に立ちます費用は、すべてわいろになるのかというと、まあ一般には、この実費というようなものは報酬概念に入ってこないというふうに解釈されるのでございまして、「報酬トシテ」という文句がなくても、実費は入らないというふうにまあ理解されるのでございますが、一般職務に関するわいろという百九十七条の場合でございますと、あっちこっち飛び回って、職務に関して何らかの行動に出るということはほとんどないのでございますが、あっせんの場合には、実際問題として、かなりの時間をかけて、実際に車馬賃をかけ、宿泊料をかけて、あっせんが長期にわたって行われた結果、やっと実を結ぶという事例も少くないと思うのでございます。そういう点を、実費は入らないのであるということを明確にいたしまして、運用あるいは解釈に疑義が残らないようにいたしたいという配慮からそういう文字を入れたのでございますが、この点につきましては、学者間の意見も、そのために非常にわいろ罪の性質を変えたものになるとか、あるいはそのためにわいろ罪のすっきりした形が失われるというような御批判はないようでございます。で、これによって、まあ政府側の意図した解釈運用の誤まりを避けようという趣旨はよく表われているということで、まあ法制審議会の際も、そういう意味の御発言がありました。
  21. 大川光三

    大川光三君 大体刑法の百九十七条ノ四に直接関係ございまする質問はこれで終ります。  関連いたしまして、第三者供賄のことについて、一、二点伺いたいのでございますが、先般いただきました質料で、昭和十六年以降における刑法百九十七条ノ二の第三者供賄罪適用状況、これを拝見いたしますと、結局、昭和十六年から昭和三十一年までの間に、第三者供賄罪として裁判所有罪判決を受けたのが二件だというように見えますが、それでよろしいでしょうか。
  22. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) さようでございます。起訴いたしましたのが四人ございまして、有罪判決を受けておりますのが二人でございます。これはいずれも最高裁まで上告いたしまして、判決は今日残っております。
  23. 大川光三

    大川光三君 そうすると、この二件は、最高裁までいったもので、あるいは下級裁判所で確定したという事件はないですか。
  24. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私どもの手元で調査しましたところでは、発見できなかったのでございます。
  25. 大川光三

    大川光三君 そこで、先般も御答弁のうちに、第三者供賄というものが過去の実績にかんがみてそう適用されていない。いわばそう大して必要はない。こういう御答弁であったように伺うのですが、それは私ちょっと見解を異にいたしておる。と申しまするのは、この百九十七条ノ二というところで、第三者供賄罪というものが設けられておる。そこで百九十七条の収賄罪を犯した者は、自分が受け取る場合は別ですけれども、かりに第三者にそれを供賄さしても罪になるのだということで、いっそ第三者収賄さすよりは、自分みずからこれを受け取った方がいいんだというところに、この第三者供賄罪実例が少くなる、言いかえますと、第三者供賄というところで網を張っておりまするから、そこまでいかずに、むしろ前条の直接収賄をするのだという、その方の事件が私は出てくると思う。ところが、今回の場合のように、あっせん収賄罪を作って第三者供賄罪の網を張っておかぬと、その方へどっと逃げていくという私は危険があると思うのですが、その点に関してのお考えはいかがでしょうか。
  26. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その点はただいま大川委員のおっしゃるように、確かに昭和十六年の改正によりまして百九十七条ノ二ができました。それがやはり一つ一般他我の効果を現わして、第三者供賄罪としては検挙の件数は少いけれども、やはりそれはそれなりこ威力を発揮しておるという見方もできないことはないわけでございます。その点は、私もそうではないという趣旨で申し上げたのではございません。で、今回の改正第三者供賄を入れませんでした理由一つとして、この前、実際の適用件数も少いのでということを申し上げたのでございますが、私どもの実質的な理由と申しますか、これをもう一回補足して申し上げますと、第三者供賄規定その他いろいろまあこのあっせん収賄に関連してけしからぬ行為ではあるが、それを余さず漏らさず規定するかどうかということにつきまして、特に公職選挙法等、公選によって公職についておられます高級の公務員というような方々も、このあっせん収賄公務員の中に入ってくるわけでございますが、こういう方々職務範囲というものは、非常に幅の広いものでございまして、下級官吏ですと、職務権限というものの幅はきまっておりますが、この幅の広い方々、特に政治活動をなさる方々につきましては、これはあまり幅を広く規定しますことは、かえっていろいろ弊害を伴うという観点から、思いことではありますけれども処罰としては限度をきめていこうという考え方を持ちまして、そういう意味におきまして、第三者供賄の点も当然考えられたのでございますけれども、いろいろな立法の今までの経過その他を考えまして、まあこれは割愛したというのが一つ理由でございますし、その割愛をしました実質的な理由といたしましては、わいろ罪の取締り、処罰、裁判という実務家方々意見を徴しますると、まあ第三者供賄するというような形は、ある意味において公けにされることなんでございます。で、そういう場合には、今度はわいろ性が稀薄になって参りまして、第三者供賄したというような事実は、実例から申しましても、警察署長の場合で抜き差しならない場合に、初めて第三者供賄が成り立っておるので、そうじゃなくて自由裁量行為の幅の広い公務員については、まあその第三者供賄したというような事例におきましては、供賄というか、わいろ罪にならないというふうに見られるというのが実務家意見でございます。まあそういうことと、それから限定して立案したいという考え方と両方からいたしまして、今回は法制審議会では、希望意見としてそういう希望が提出されましたけれども、今後の運用実績を待ってからやっても決しておそくはないのじゃないか。現に百九十七条ノ二のごときも、明治四十年の法律昭和十六年になって初めて入ったといういきさつもありまして、そういう点を勘案してきめたのでございまして、今の大川委員の御見解は、私ども頭から否定しておるものではございません。
  27. 大川光三

    大川光三君 関連いたしまして、法務大臣最後一つだけ伺っておきます。いろいろこの刑法の百九十七条ノ四について、世論としてはこれがざる法だと、あるいは骨抜き法だというようにいわれておるのでありますが、私は骨抜き法だとは決して思っておらぬのです、最初から。まあ生まれるべくして生まれ得なかったこの第三者贈収賄罪ができたということは、ちょうど国立国会図書館が今がっちりした骨組みを組み上げましたが、私はこの法律はちょうどそれだと思います。やはり骨ができた、骨格ができた、そうしてその骨格に対して法律を完全にやるためには条文そのもののほかに、国民のこれに対する心がまえということによってやがて完成されるという意味からいって、私は骨格ができ上った、むね上げができたのだと非常に喜んでおります。しかし、まあざる法だといって逃げるのは、これから肉をつけ、いわば壁をつけて、壁下地をやってしていけばいいのでありますから、私は世にいわれるざる法だということについては、一応ある程度まで肯定いたしまするけれども骨抜きでは断じてないというふうに一つ考えを持っておるわけであります。  そこで、第三者供賄というものもこれは一つの何というか、付属建物を建てているのだ、それによってこのおもやの方はより以上りっぱなものに仕上っていくというので、私は第三者供賄によって人を罰するとかいう以外に、これは付属建物を建てて、法の最後の仕上げをする、そうして綱にかからなくてもよろしい、網を張るということによって犯罪を未然に防ぐのだという意味において、やはり第三者供賄罪を設けておく必要があるのじゃないか。かように考えるのでございますが、その点に関する法務大臣の御意見を伺っておきたいと思います。
  28. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 第三者供賄に関する御意見でございますが、これはまあ一々ごもっともと存じます。この点は、起案するに当りましても非常に省内でも論議をいたしました。しかし、今度の段階においてはまあ見送っておこう、こういう結論になったのでございますが、それに至りまする経過理由は、先ほど来だんだん刑事局長が申し上げたようなわけでございまして、まあ過去においても直接の収賄罪第三者供賄がなくて、そうして長い期間それで過ごしたけれども、全部それで逃げたというわけでもなかろうということや、それから昭和十六年にできてからも、その規定があるから、なるほどそちらへはいかなかったかもしれぬけれども、なかなか数が少いというようなこともあり、それから第三者と申しましても、そのうちには、自分の親、兄弟、秘書官というような、ほとんど一心同体みたようなものは、それはある意味においては第三者と見ずに、脱法行為自分がとったといえるかもしれません。さらにだんだん縁遠くなると、あるいは神社仏閣に寄付してくれとか、こういう慈善団体自分が金を取ったかわりに寄付してくれというようなことになると、わいろ性がもうなくなるかと、徳義上からいっても処罰することがどうかというような、第三者というのは非常に幅の広いというようなこともあり、ことにまあ常識的な判断ですけれども、従来から、たとえば改正刑法仮案を見ましてもまず一応はずしてある。それから、社会党から御提案になっておる案にも、たくさん提議された諸案を見てもまずないから、それらのことを参考にして、取りあえず今度ははずしておこうではないかということでございましたが、しかし、私どもといたしましても、はっきりその必要ないというような実は確信はなくて、ただあっせん収賄罪は従来から非常に論議があって、今度初めてまず法律にするから、先ほどのお言葉を拝借いたしますれば、とにかくおもやだけを作ろうじゃないか、直接収賄罪もまずおもやを作って、それからしばらくして蔵を建てた、それと同じように今度も取りあえず新しい試みで、非常にむずかしい規定を入れられておるが、おもやを作って、いずれは、これは第三者供賄規定も要るだろう、要るろだうが、それは一つ時期を見ていう、少し慎重過ぎるかもしれませんが、こういうつもりで作ったわけでございます。あっせん収賄罪そのものも非常にありがたい御示唆を受けたのでございますが、私はざる法と言われますが、ざるだとは思いません。この中に入ったものは漏れなく検挙されますから、ただ批評すれぱ間口が狭い、狭過ぎやせぬか、こういう御批評はあるかと思いますが、これは私ども甘受いたすつもりでございます。というのも、あっせん収賄罪はとにかくむずかしい規定、諸外国の立法例を見ても一律ではない、日本で初めてここで作るから、そう大幅に一網打尽にあっせん収賄行為は全部この法律処罰対象にすると言わずに、そのうちの最も悪質のものだけを処罰する、そして社会に警告を与える。今日まで全部これは不問にされておったから、これは徳義的によくないことであるから、そのうちの最も悪質のものは処罰する、他は社会道義にまかせる、こういうつもりで今お尋ねのありました不正の、作為・不作為ということでしぼったつもりでございまして、それもあまり幅が狭い、こういうことになりますれば、考え方の相違と、こういうふうに考えておる次第でございまして、第三者供賄に戻りますと、やはりあれは将来十分研究しまして、いずれはこれを立案するような時期が来やしないか、かように考えておる次第でございます。
  29. 一松定吉

    ○一松定吉君 ちょっと刑事局長にお尋ねしますが、この刑法の二百二十二条一項、二項、二百二十三条一項、二項、どちらにも皆「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」「脅迫」するとある。「害ヲ加フ可キコト」ということは、いつも脅迫の前提になるのだね、そうすると「害ヲ加フ可キコト」ということを取ってのければ、脅迫ということはないのだね、この二百二十二条、二十三条にはどの項にも「害ヲ加フ可キコト」が皆前提になっている。そうすると、「害ヲ加フ可キコト」ということを前提としなければ脅迫ということはないのか、あるのか。
  30. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 私ども脅迫罪、脅迫とは何かという定義を下しますと、いずれも「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」というふうに説明をするわけでございまして、刑法五十年の運用からも、脅迫という概念の中には「害ヲ加フ可キコト」ということが概念の中に溶け込んでおりますけれども、脅迫と、取り出してその文字だけを説明いたしますと、今日でも「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」脅迫ということを言わなければ脅迫罪の脅迫にはならぬという考えでございますので、「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」脅迫というふうに規定してございますから、その「害ヲ加フ可キコト」でない脅迫ということは脅迫罪の脅迫ではないというふうに言わざるを得ないと思うわけでございます。
  31. 一松定吉

    ○一松定吉君 それならば、今度百五条、改正案のいわゆる「強談威迫ノ行為」ということに、害を加うべきことをもって強談威迫ということはあるのか、ないのか。
  32. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ここに「強談威迫」というのは、脅迫に至らない程度のいやがらせ行為を取り上げておるのでございます。
  33. 一松定吉

    ○一松定吉君 脅迫に至るとか、至らないとかいうのを聞くのじゃない。「審ヲ加フ可キコトヲ以テ」強談威迫というようなことがあるのか、ないのかと聞く。「害ヲ加フ可キコト」ということが脅迫の場合にいつも前提になる。そこで私の聞くのは、脅迫というのはいつも「害ヲ加フ可キ」ということが前提になるのか。また、今度はこの強談威迫というときに「害ヲ加フ可キコト」を前提とすれば強談威迫ということがあるのか、ないのか。そこが問題なんですよ、それが明確でないと。
  34. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 「害ヲ加フ可コト」ということが前提になると私は思うのでございますが、その「害ヲ加フ可キコト」を……。
  35. 一松定吉

    ○一松定吉君 「害ヲ加フ可キコト」を前提として強談威迫するのだ、その意味では脅迫か、脅迫でない強談威迫か、そこですよ。
  36. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは脅迫罪の場合には「害ヲ加フ可キコト」というのが表面に出ておりますが、考え方としましては、同じことを腹の中に置いての強談であり威迫であると思うのでございますが、強談というときには「害ヲ加フ可キコト」ということは、表面には出さないで、今までの判例の解釈によりますと、言語をもって、しいて自分の要求に応ずべきことを迫る行為、こういうふうにいっております。そういう迫る迫り方の中に、暗に「害ヲ加フ可キコト」が考え方として内在しているとは思いますが、そういうはっきりと表面に出ておりますのが脅迫でありますし、そこに至らないのが強談あるいは威迫であります。
  37. 一松定吉

    ○一松定吉君 害を加えますと口に言うて強談威迫したときは脅迫か。害を加えますということを言わないで強談威迫したときは強談威迫であって、脅迫罪にならぬのか。口で言うのと、心で思うたことと違うだけで、ほんとうは刑法でいえば口に出そうが出すまいが、腹の底で害を加うべき考え方をもってやれば、害を加えてやるぞということを口に出さぬでやっても害を加える意思がある。表に出したときには脅迫になり、表に出さぬときには強談威迫になるということで、脅迫にならぬということになるようだが、そこはどうかと聞くのです。
  38. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) これはやはり外部に行為として出た形をとらえるのでございますから、たとえば、お礼参りの例で申しますと、おかげさまでという言葉を言ったとします。おかげさまでという言葉は今言った「害ヲ加可キコト」も何もその表面には出ておらないのでございますが、そのおかげさまでという言葉を、そういう意味のお礼を言われた。今度は被害者の方にとってみますとおそろしいという感じを持つこと、あるいは困ったという当惑の感じを持つこと、そういう点はひとしく保護してやらなければならないのでございますが、とくかく刑法では、外部に現われた行為そのものをとらえて、その程度が強い「害ヲ加フ可キコト」もしこれに応じなければ、いつ傷害あるいは暴行を受けるような結果が発生せぬとも限らぬぞということがわかるような形において行為に現われた場合に、これを脅迫というのでございますし、どこを押してもそういうところまでは、内心の意図があるとしても、その内心の意図を口に出すだけのまだ強さにはいっていないというのが強談ということになると思うのでございます。
  39. 一松定吉

    ○一松定吉君 問題は、口で、この刑法の条文に具体的に書いてあるように「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」人を脅迫する。こっちは「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」とこっちは言わない。ただ、腹の底では、おれの言うことを聞かなければ一つひどい目にあわせるぞという考えをもって強談威迫をやる、そこが、その区別がなかなかむずかしいのだね。それで今まで伺っているのだが、これは面会を強要することは、強請することは、これは今までの脅迫罪の中に強請罪なんかまだないが、強談威迫ということはこれは一つの脅迫になるのかね。「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」ということが加われば脅迫になる。加わらなければ脅迫にならぬというような区別があるようにこれが解釈されるのか。将来これは解釈するときに疑問が起るわけなんです。それを聞くのだが、これはむしろ私は強談威迫ということがもうこの脅迫罪の二百二十二条以下のうちに含まれているのじゃないのかね、ほんとうは。御承知の通り、具体的に生命、身体、自由、名誉、財産、しかも本人と親族とに分けてこれが規定されておるのだが、こちらには、今度のこの百五条ノ二の改正案には、生命、身体、自由、名誉、財産というものがなくて、強談威迫という文字を使っておるだけだね。これはやっぱり生命とか、あるいは身体とか、自由とか、名誉とか、財産とかいうことにやはりひっかかるのでしょう。強談威迫というものは、ただどうもお前のからだに傷をつけてやるぞとか、お前の財産をどうしてやるとか、ひったくってやるとか、火をつけてやるとか、お前の自由を拘束するぞとか何とか言かなければ強談威迫であるけれども、言えば脅迫になるということになる。こういうことになってくると区別がわからぬことになるのだね。だからむしろこれは強談威迫ということはやはり一種の脅迫である。刑法では、「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」と、こういう前提があるのだから脅迫になるが、これは「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」という冠詞がないのだ。それと名誉、自由、財産、生命というものがないのだ。そうしてみると、すべての生命、身体、名誉、財産というものはみな含まれた強談威迫ということも言えるわけだ。そこがどうも私はおかしいのでね。政府委員説明のうちに、つまり脅迫、暴行等の程度に違いない威迫行為においては適切な処罰規定がない。ゆえにこれをもって出すのだが、しかしながら、証人なり何なりに対するお礼参りの行為に対し、それが暴行、脅迫等の罪に当るものについては現行法で処罰することができるのだと、この説明書にありますね。これも「害を加フ可キコトヲ以テ」ということを言うか言わぬかだけでもって同じことではないですか。そこの点が明確でないですから、法を適用する上において必ず疑問が起りますね。今あなたのおっしゃるのには、ごく軽微なことであれば強談威迫になるが、それに「害ヲ加フ可キコト」というプラスがあれば刑法の脅迫罪になるということになってくると、これを活用するときに非常に問題が起りゃしませんかね、どうですか。
  40. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) この脅迫というのを中心にして考えますと、御承知の二百三十六条の強盗罪でございますが、これはやっぱり脅迫して強取した。「強取」という強の字がついておりますが、ここにいう脅迫は、犯行を抑圧する程度の高い脅迫なんでございますが、ところが、脅迫罪の脅迫は、犯行を抑圧するというほどの強いものではない。しかしながら、害を加うべく、もし応じなければどんな危害を加えられるかもしれないということを相手に感じさせるに足るだけの客観的な事情がございますれば、犯行を抑圧するに至らなくてもすでに脅迫罪が成立する。こうなるわけであります。それよりもさらにまた程度の低い、犯行を抑圧するということにはもちろんなりませんし、また、害を加えられるかもしれぬというそこまでの危 の念を抱くには至らないけれども、何となくいやらしい、うっとうしいと、こういうところの行為、これをまあ強談威迫というようなことで表わしておるのでございますが、これは即席的に考え出した概念ではございませんで、強談威迫という概念につきましては、かつて、廃止になりましたが、警察犯処罰令の第一条に、「故ナク面会ヲ強請シ又は強談威迫ノ行為ヲ為シタル者」という規定がありまして、もうすでに警察犯処罰令の解釈としても、面会強請、あるいは強談威迫ということは、一般的に脅迫の程度に至らない脅迫と申しますか、そういう概念として理解されておったのでございますし、現行法にいたしましても、「暴力行為処罰ニ関スル法律」の第二条第二項には、「常習トシテ故ナク面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者」というふうに、現行法においてもそういう規定がございます。さらに改正刑法仮案の四百一条を見ますと、「面会ヲ強請シ又ハ強談威迫ノ行為ヲ為シタル者」というふうな規定が設けられておりまして、この面会強請、強談威迫というのは、脅迫に至らないもう少し程度の軽い脅迫的な行為ということで一般に理解されておる概念でございまして、必ずしも明確を欠くというふうには言い切れないと思うのでございます。
  41. 一松定吉

    ○一松定吉君 そうすると、今局長のお話のようなことにこの刑法の二百三十六条にこれを当てはめてみるが、二百三十六条の「暴行又ハ脅迫ヲ以テ他人ノ財物ヲ強取シタル者」というのを、言葉をかえて、強談威迫をもって他人の財物を強取したる者というときはどうなる。——強盗になりますか。なるでしょう。
  42. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 強盗にはならないと思います。
  43. 一松定吉

    ○一松定吉君 強取ということは、暴力をもって財物を奪い取る意味でございましょう。
  44. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) そういう意味でございますが、前段の「暴行又ハ脅迫ヲ以テ」という脅迫に当らないのでございますから、二百三十六条の強盗というのは犯行を抑圧する程度の脅迫行為がなければいかぬ、こういうふうに判例も解釈が一定しております。従いまして、脅迫にも至らぬ程度のいやがらせを言った程度では、いまだもって強盗で論ずるわけにはいかないと思いますが、御承知のいわゆる説教強盗というのがございまして、これはその危害を加うべきことを言わないで、犬を飼っておきなさいというようなことを言ったのをもって、やはりこれは強盗だという判決がございます。従いまして、その表面に出てきた言葉だけでは言えませんが、そこのそういう言葉を出す前提として、夜半人の寝ているところへ入りまして、そういう環境のもとにおいて、犬をお飼いになった方がよろしいでしょうと、やわらかい言葉でかりに言ったとしても、その言葉は明らかに犯行を抑圧するに足る威力を持つわけでございまして、そういう場合にはやはりもちろんここにいう脅迫に当るわけでございます。そういうふうに、まあ具体的に申しますと、いろいろ言い方はあろうかと思いますが、要するに、ここで考えておりますのは、暴行脅迫になりますれば、暴行脅迫罪で処罰できるのでございますが、行為に現われたお礼参りの形をとりますと、ほんとうにお礼参りなんで、お礼に行ったわけなんで、何も暴行脅迫に行ったのではない、お礼に行ったのだけれども、前に自分が告訴をしたためにお礼を言われた、あるいは自分のところへ来て何らかの犯罪があったために今取調べを受けている、そういうことでお礼を言われるわけでございますから、言葉は、白昼人のいる前で言われたといたしましても、その心理的に及ぼす影響は脅迫を受けたというまでには至らないけれども、いやがらせを言われた、こういうふうになって、まあ脅迫暴行に至らぬ程度のいやがらせ行為でありましてもなお処罰しよう、こういう考えでございます。
  45. 一松定吉

    ○一松定吉君 害を加うべきことをもって人を脅迫するのだね、脅迫罪は。それで二百三十六条は「暴行又ハ脅迫ヲ以テ」とあって、もちろんこの脅迫というところには「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」という文字は使っていないね。前の脅迫罪にはどこもみな頭に「害ヲ加フ可キコトヲ以テ人を脅迫」とある。そうすると、害を加うべきことをもたずして脅迫した場合が想像されるのだね。脅迫のうちには害を加うべきことをもって脅迫する場合と、害を加うべきことをもたずして脅迫する場合がある。こう解釈を私はできると思う。そうせぬと、この強盗の二百三十六条のときには暴行または害を加うべきことをもって脅迫をもってと、こういう意味にこれはなるね。それならば私の考えではこの二百三十六条の暴行または強談威迫の威迫をもって他人の財物を強取したというときにも私は強盗に当ると思うのです、強取という。人の意思に脅迫を加えて、意思を圧迫してそうしてしかも他人の持っておる財物を暴力によって奪取するという意味だから強盗だと、どうも私はここの強談威迫というものには「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」ということが加味されぬのだ、脅迫ということには強談威迫の上に「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」ということがプラスになるのだというような解釈ならわかるのだね、そうすると、強談威迫に「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」すれば脅迫になるのだ、ところが、「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」しないでやった時分には、ごく簡単ないわゆる強談威迫だけであるが、この強談威迫に「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」ということが加わったときには脅迫になるのだ、だから脅迫と強談迫威というのは「害ヲ加フ可キコトヲ以テ」するかせぬかということをプラスに入れるか入れぬかで違うので、これは非常に意思を束縛する上において軽易なものであると、こう解釈すれば解釈できるのだが、そこはどうなんですか。
  46. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいま一松先生のおっしゃるような解釈をしていただいても一向支障はないと思いますが、ただ、しいて自分の要求に応ずべきことを迫るのでございますので、「害ヲ加フ可キコト」ということはまあ背後に隠れておるのでございます。従って、それを表向きにむき出しに出さなくていいという——出さない程度のものをいうのだというふうに私はお答えを申し上げたのでございますが、そういう点がはずれておる部分、そういう意味において軽いんだというふうに御理解をいただいても解釈上は支障ないと思います。
  47. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは私と局長と議論しても仕方ありませんから、この程度にしておきます。
  48. 大川光三

    大川光三君 ちょっと私はこういうふうに解釈しておるんです、二百二十二条に「生命、身体、自由、名誉又ハ財産二対シ害ヲ加フ可キコトヲ以テ人ヲ脅迫シタル者」ということで一応脅迫とは何ぞやということをここで定義してしまって、それで定義された脅迫という言葉を強盗罪の方へ、「暴行又ハ脅迫ヲ以テ」というふうに定義された脅迫という言葉を強盗罪に持ってきた、こう解釈するんですが、こういう解釈はいがでしょうか。
  49. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) それは大川先生のおっしゃる通りでございます。
  50. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の審査はこの程度にとどめます。次会は、明十日、午後一時、刑法関係三案について開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後二時四十四分散会