運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-04-04 第28回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月四日(金曜日)    午後一時五十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            小林 英三君            吉野 信次君            赤松 常子君            亀田 得治君            辻  武壽君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警務局長 荻野 隆司君    警察庁刑事局長 中川 董治君    警察庁警備局長 山口 喜雄君    法務政務次官  横川 信夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局刑    事課長     河井信太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (大阪府における警察官職権乱用  事件に関する件)  (丸の内警察署留置場における暴行  致死事件に関する件)  (大阪府警察本部捜査中における  金品紛失事件に関する件) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  本日は、検察及び裁判運営等に関する調査といたしまして、丸の内警察署留置場における暴行致死事件並びに大阪府警察本部捜査中における金品紛失事件及び大阪泉北忠岡町の元自治体警察署における警察官職権乱用事件の三件を議題といたします。  御質疑の方は御発言を願います。  なお、本日は、警察庁長官石井さん、山口警備局長荻野警務局長、それから法務省側から政務次官横川さん、河井刑事課長、こういった方々がお見えになっております。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 最初に新しいケースである大阪府の忠岡町の問題についてお尋ねをしてみたいと思います。  質問に入る前に、なぜこういう問題を取り上げるのかという点について、考え方を若干申し上げておきたいと思うのですが、それは、従来警察一般の人民との間にいろいろないざこざがあることがございます。そういう場合に、ややもすると、警察自分権力を利用して、そうしてしっぺい返しをする。こういう話はときどき私も聞くわけです。しかし、その警察権力行使自体は、形の上では合法的でありますから、これは相当悪意を持ってやっておるということがわかりましても、なかなかその点をはっきりさせることができないわけです。警察官といえども、これは同じお互い人間ですから、感情にとらわれることはもちろんあり得ることですが、しかしそれを公務の執行の上に現わしてくる。こういうことでは、警察の威信というものが非常に傷つけられると思うのですね。そういう立場から、私ども絶えず正しい警察権行使ということをこいねがっておるわけですが、必ずしもその通りいっておらないことがあるわけなんです。しかし、今も申し上げましたように、形式は、合法的であるためになかなかそういう問題があっても突きとめにくい。私はそういうことを一つなくしてもらいたいという意味で、ここに具体的なケース一つ出して、真相を明らかに実はしてもらいたいと思っております。  事の起りは、非常に古い問題です。昭和二十六年当時に起きた問題なんです。それ以来、警察被告人にされた山内という人が争ってきたわけですね。これは、山内というのは町会議員をやっていて、公職にある。相当そういう意味では公けの立場で活動しておる方なんです。その方に、後ほども申し上げますが、そういうしっぺい返しがきて、それがともかく二十六年からですから、七年間やってきたわけです。私はときどきそのことは聞いているのですが、しかし、今裁判所争い中だから、ともかく済んでから——争い中にやったのでは、かえって君のそういう何が誤解されてもいかぬから、私も遠慮したいということできたのですが、昨年の、昭和三十二年の十月十五日の最高裁判所判決で、終局的に完全に無罪になったわけなんです。そこで、本人としても、どうしても、これは自分としても長い間苦しんできた問題だし、また、こういうことをほうっておけば、結局は役所の方だって、多少のことはあったって、時間がたってしまえば、相手はもう泣き寝入りだ、こういうことの癖をつけてもいかぬ、どうしてもこれははっきりしておかなければならぬ、こういうことで、地元検察庁等にも、後ほど申し上げます書類等は出しているのですが、そういうわけです。  具体的に若干申し上げますと、この被害者というのは、大阪泉北忠岡町の山内誠巍、それから加害者は、佐竹秀澄というのです。これは問題が起きた当時は、忠岡町の自治体警察署長です。現在は大阪市の大淀の警察署の次長をしているわけです。現職です。で、この問題が発生するまでに、この山内は、佐竹署長警察行政上のやり方、これに対して、相当批判を持っていた。率直にものを言う人ですから、悪いところは悪いと率直に批判もしていたわけです。従ってまた、警察の会計の監査、こういうことも、町の議員として積極的にやろうとして、そうしてそれを妨害されたりして、問題も起したりしている。それから根本的には、山内というのは、その当時、自治体警察廃止論者であったわけです。私どもは、その当時は存続論者だったから、そういう意味では意見はちょっと違うわけですが、まあそれは別として、当時の立場というものは、廃止論者であった。どうもこういう佐竹のような人のやっているところを見ると、これは廃止すべきだというふうな議論すらも強硬に持っていたわけです。結局そういうことが、山内佐竹との間にみぞを作って、そうして一つ口実を設けられて、逮捕されたというわけです。  その口実を設けられた問題を簡単に申し上げますと、当時、昭和二十六年三月七日に、被害者である山内は、大津川という川があるのですが、その川の土砂採掘権大阪府の知事に申請をしておろしてもらったわけです。で、その採掘権をおろしてもらった直後に、忠岡町立病院建築を始めていたのですが、その建築コンクリート用土砂を使わしてもらいたい、しかし、相手町会議員であるし、町立病院なんだから、一つ安く分けてもらいたい、こういう申し込みを受けたので、山内も、それはごもっともだ、おれの方としても、そんなに別にたくさんもうける必要はないのだからということで、快く自分が掘り出すものを譲る約束をしたわけです。そこまではもちろんいいわけですが、ところが、その忠岡町の病院建築が急ぐということで、結局、鑑札には十七日から掘ることになっておるのですが、少し早目に掘りかけたわけです、期日よりも前に。もちろんそれは代金の納入は済ましておりますが、それから、それをずっと掘っていったわけですが、途中で、どうしても期限までの分では、町立病院に使う砂の分量が足らないということを、病院の方から山内が聞いたものですから、それで第二回の申請大阪府の方にさらに出したわけです。もう少し要るから継続して掘らしてくれと。ところが、後には結局は、第二回の申請許可されたのですが、第二回の申請許可されるまでに、継続して掘った、これは、この事実は間違いないわけです。このことを聞き出してきて、結局これは無許可土砂採掘だ、これは窃盗罪であるということで、同年の六月十二日から三十日まで逮捕状をもらい、そうして警察に留置する、こういう事件が起きたわけです。さらに、それは裁判所に回って、しかも七月三日まで拘置所に留置されております。  で、これは後ほども申し上げるように、こういうもの窃盗罪というのは、はなはだこれは無理なんですが、結局それは河川法に基く命令許可を受けない行為であることは間違いない、しかし、先ほど申し上げたように、事情のあったことも事実なんだが、しかし、形式的な議論からいっても、許可を受けていないことは間違いないのですけれども河川法規定に違反してやった場合には、河川法に基く命令によっての罰則というものが、それぞれきまっているわけですね、当然それはそれで処理すべきものである、それを窃盗罪ということで逮捕、こう出てきたことろに、一つ問題があるわけです。  それからさらに、それに引き続いて、まだ何かないかということでいろいろ調べてみますと、その前年、昭和二十五年に同じ大津川の堤外私有地、そこのバラスを府の許可を得ないで売った、こういうことが出てきたわけです。これも法律的には非常に問題がある。大津川は、これは準用河川ですが、準用河川堤外私有地売買をする場合に、府県庁許可が要るかどうかということも、これは問題はあるのですが、しかし、事実は、本人も府に確かめてみたところが、府の係官としてもどうもはっきり言わない、見解がはっきりしない、そういうことで結局そのバラスを売るに当っては、許可問題等はあまり触れないで売買をしておるのが真相なんです。ところが、今度警察の方では、いろんな規則を調べて、規則の上ではどうも準用河川堤外私有地であっても、許可を得ないと、売ったりしてはいかぬのだというふうに思われる点を引きずり出してきて、結局そのことを隠して相手方に売ったのはこれは詐欺罪だ、こういうことで罪名を立てまして、再び七月二十三日に逮捕したのです。先ほどの窃盗罪逮捕して、期限が切れて釈放した後、再び今度は一年前のそういう問題を引きずり出してきて、これは普通の刑事犯罪とかそんなものじゃないわけですが、そういうものを引きずり出してきて、そしてしかも詐欺だということにしてまたぶち込んだわけです。問題はその二つですね。  そして、これらの結末はしからばどうなったかと申し上げますと、第一審では二つとも有罪になりました。それから第二審では、これは事件二つあるわけですが、詐欺罪窃盗罪の方も二つとも無罪になったわけです。検察官の方では窃盗の問題についてだけさらに上告したのですが、これも上告棄却、当然こういうもの窃盗の対象にも法律的にいってならないのじゃないか、こういう場合の処理の仕方は河川法等によって、ちゃんときめてあるのですから、それを無視して、ことさらに窃盗にもっていくということは、全然筋が通らぬというので、これは結局全部無罪になったわけです。それで本人としては警察なり——結局警察ですが、警察の責任を追及しておるわけですが、追及される方の言い分は、おそらくこれはむずかしい法律問題があるので、そこの法律解釈自分としては間違えたというだけなんだというふうな立場での弁解のようです。だから、そういう弁解の成り立つような法律問題も世の中にはたくさんあると思いますがね、あると思うが、だれが見てもどうもすぐ窃盗とか詐欺とか、そういうところにもっていくのは無理だ、河川法関係の法規に別個の規定というものがあるのに、ことさらにそれをはずして、重い、そうして世間体から見るならば、これははなはだもう、ことに公職についておる者としちゃ工合の悪いことですよ、選挙をやろうとか、そういう立場の人なら。果してそういうふうにもっていった法律の運用、これが単なる誤まりということで済ませるかどうか、この点が一つども問題にしなければならないのです。  それからもう一つ警察がいろいろでっち上げた事実関係ですね。これは非常に無理があるわけです。詐欺ということにもっていくために、いろいろの調書を作る過程において無理があるわけです。その無理は結局二審以上でくつがえされたわけですが、そういう事実関係を曲げ、そうして法律のわかり切った解釈をことさらに曲げて、そうして逮捕状をもらって、逮捕状をもらったのだから形式の方では合法的だ、七年間争ってみた、ところが、それは結局警察は間違いであった、こういうことなんですが、長官としては、この問題をよくまだ御存じないかもしれませんが、どういうふうにお考えになるか。私はもう形式論をこの際お聞きするのではないのです。そんなことで私は片づけられない問題だと思う。その点をまず一つお聞きしたいと思います。
  4. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) ただいま御指摘になりました具体的事案につきまして、何分古いことでございまして、私全然存じておらなかったのでございます。昨日、この委員会においてこの問題をお取り上げになるという御通告をいただきまして、初めて大阪府警察本部に当時の事情を確かめてみたのでございます。ただいまお述べのような事実関係であるようでございます。  そこで、ただいま御指摘のありましたように、およそ捜査に当る警察官は、感情を交えて事件を取り上げ、事件にすべからざるもの事件として取り上げるというようなことが、もしかりにあったとするならば、これはまことに遺憾なことであると思うのであります。およそ捜査に当る者は、感情にとらわれることなく、どこまでも科学的合理的に、私が常に申しますように、適正なる捜査を行い、常に人権の尊重ということを基本的理念としつつ、その上に立って真実を科学的合理的に発見していくという態度でなければならぬ。そしてまた、法の適用につきましても、立法の精神に照らして、これを適正に運用していくという態度でなければならぬことは申すまでもないことでございます。ただいまお述べになりましたこの事案につきましては、何分古いことであり、私、先ほど申します通り、今回照会してみて初めてそういう事案があったことを承知いたしたような状況でございますので、具体的事実について、かれこれ詳細にお答えする資料を持ち合しておりません、一応私どもこういう問題の取扱い方、警察官事案に対する態度と申しますか、そういうことについての基本的心がまえというようなことについては、今お答えしたように考えておるのでございます。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 私、同じようなことで、非常に切歯扼腕しておるような気持でいる人がずいぶんあると思うのです、実際問題として。ただ、この人は、相当財力もあるし、性格もなかなか元気な人ですから、ここまでがんばってきてはっきりさせたのですが、従って、この問題を中心にしてもう少し掘り下げていきたいと思うのは、こういうことがあっちゃならない。しかし、こういうことが実際あった場合どうするのか、そこの処理——まことに相済まなかった、それだけではどうも引っ込みがつかぬと思うのです、それだけのことでは。それで、たとえばこの被害者山内佐竹に対して、おれを詐欺罪にしたということについて、これは職権乱用だということで、大阪地検昭和二十六年十一月の十日に告訴しているのです。告訴しています。それで地検昭和二十九年の八月三十一日にこれを不起訴処分にしています。おそらくそれは見解相違ということで不起訴処分にしたのでしょう。ところが山内は、そういう不起訴処分には承知できないということで、審判請求裁判所に対してしたわけです。その審判請求に対する決定が、昭和三十二年の二月四日に大阪の地方裁判所から出れおる。この決定を見ると、この審判請求棄却をしております、結局は。しかしながら、決定書内容をずっと私詳細に拝見したわけですが、この中には、警察署長とそうして山内との間にそういう公けの問題についての意見相違、そこからくる対立関係があって、そのことが事件の背景であったということがちゃんと認めておるのですね。これは私非常に重大なことだと思うのです、認めておることは。これは裁判所決定ですから、いずれ御調査のときこういう点も調べてほしいと思うのです。  それから、しかもたとえこの問題について警察が調べるにしても、任意捜査でよかったのじゃないかということも、この決定書の中で書いております。そうしてまた、そういう公けの職にある人でしかもちょっと事件自体に問題があるようなものについて、それを検察庁に連れて行くときに手錠をはめてそして一般のお客さんの乗る南海電車に乗せて連れて行ったこと、そういうこともはなはだ不適当である。こういう申請人山内の言いたい点については、十分事実関係は認めておるのです。ただしかし、これはしろうとの陪審の裁判くらいであれば、大体そこまでくれば、すぐに警察署長はけしからぬということでぱちっと結論が出せるのに、そこがまあ専門家になるときわめて慎重になるのですね、結論としては。しかし、いろいろ手続をとって、そういう逮捕状請求したことなのであって、そこの、ほんとうに故意でやったという点が若干わかりにくいということで、この山内告訴というものは最終的には却下されております。事実は今言ったように、これは告訴決定を下す判事としても気の毒だと思ったからこんなことをわざわざ書いたので、本来ならば、問題にならぬ請求ならそんなこと書く必要ないですよ。私はそれだけを見ても事案の真偽ははっきりしていると思うのです。  それからもう一つは、今申し上げた告訴は、詐欺罪の点についての職権乱用としての告訴です。ところが、今度は、最終的に窃盗罪部分についても最高裁無罪がはっきりしたからというので、その窃盗罪部分についての告訴を三十二年の十一月一日に大阪地検に出しておるわけです。これは法務省の方へ関係が出てくると思うのですが、これは現在大阪地検では審理中なんです。ただ私の非常に心配することは、どうも警察庁にそういう職権乱用問題等国民の側から持ち出しても、結局何だかんだと言ってかばってしまうのですね。ものにならぬ場合が多いのですよ。どうも近くまでいっていてもものにならぬ場合が多い。これはもう忠岡町の人はみんな知っている問題ですから、私はこういう問題に対しては、むしろ間違っていたのならいたということを明確にしてやれば、なるほど間違いのある場合は検察庁警察も訂正してくれるのだな、こういう印象を与えて、かえっていいと思うのです。本人だってそれで救われる。その辺のところを、私は何としてもこの問題についてもっと大きな気持で検討してほしいと思っているのです。これは法務行政全体の一つ運営の方針として、実はきょう大臣の出席を求めたのは、こまかいことじゃなしに、その点を私は聞きたかったのです、気持を。ですが大臣おられませんから、政務次官の方から一つかわって、この事件を今どうするということを直ちに言ってもらわぬでもいいのです。しかし、類似の事件のあることはしょっちゅう私ども幾つも聞くのです。ただ一々そんなことをしょっちゅう法務委員会等で問題にできません、時間的にいったら。ただ代表的に私は申し上げているのです。こういう問題の扱いですね。一つ政務次官からお考えを聞きたいと思います。
  6. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 申し上げるまでもなく、法は国民に対して平等に保護もいたしまするし、また、罰も加えるという立場であらねばならないと当然考えております。法の扱いにつきましては、常に公平に、厳正にという立場を失わないような気持で、法務省は現地を指導しております。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 大体長官と次官の方から基本的なお気持は聞きましたが、そこで、石井長官にお聞きしたいのは、これは大阪府では特にわかっている問題です。地元の新聞にも判決のあるたびに出ている問題なんです。大阪府としては、佐竹、当時の署長に対してどういう処置をされておるのか、その点おわかりでしたらお答え願いたい。
  8. 中川董治

    政府委員中川董治君) 本件具体的内容等につきましても私ども若干勉強いたしましたので、亀田委員の御質問のことと関連いたしましてよく御説明いたしたいと思います。  お話のように、二十六年に、当時自治体警察時代でありました関係上、その関係事件が今日までずっと裁判上の問題になっていることはよく承知いたしております。きのうも当委員会から御連絡がございまして研究いたしましたので、その状況を申し上げたいと思います。  本件につきましては、ただ同じような事件がありまして、河川砂利採取のことについて、窃盗という問題で問題を進めていたことも事実でございます。その後ずっと今日に至りまして、昨年に最高裁判所判決がございまして、かかる場合においては、刑法の窃盗罪という構成要件を充足したとは認めがたいと、こういう意味判決があったことも事実でございます。そういう最高裁判決があった後において、かかる事案がまた窃盗で論議されるということであれば許しがたい問題であるのでありますが、それ以前の状態におきましては、かかる最高裁判所判決がなかったのでございまして、逆に大阪地方高等裁判所におきましては、これと同種類の問題を有罪とする判決もございますし、無罪とする判決もあった。従って、判例は確定していないのであります。私どもこう見たのも決してゆえのないこともなかったと思うのであります。ところが、御存じのように、二十六年の自治体警察のことでございまして、自治体警察の悪口を言う考えはございませんが、何といいましても小さい警察でございますから、いろいろ感情上の問題その他うわさに関連して世の誤解を受ける、こういうことはこのことに限りませず、全国的にそういう問題がありましたので、こういう小さい自治体警察はいかがかと考えまして、現行法のごとく、都道府県という広域警察にして、その種の誤解を払拭いたしたい、こういうことになっておりますので、広域警察であれば、こういった誤解もなくて済んだのではないかと、こう思われるのでありますが、おあげになりましたような事件がございまして、本件事件の第一審裁判所におきましては、これは有罪と認めておられるのであります。われわれ第一審の裁判所をたてにとって弁護する考えはないのでございますが、何と申しましても、検事の起訴弁護人弁護とによって検討された第一審で本件有罪とされた。その後、高等裁判所につきましては、積極の判例と消極の判例とともに存在いたしましたために、検察庁におかれましては当然だと思うのですけれども最高判例を得たいという心持もあったのでございますが、上告されまして、上告審におきましてお話のように相なっておるのでございます。それでこの種の問題が、まあそういうふうに法律手続を経て、だんだん段階をふんで確定をしたのでございますが、これが関係警察署長職権乱用なりとされまして告訴いたしまして、検察庁では告訴処分になっておるのでございますが、この告訴処分に対しましては、御案内の刑事訴訟法第二百六十二条の規定によるお話もございましたが、審判請求がございまして、審判請求に対しまして、すなわち職権乱用の罪になるかならぬかということに関連し、裁判所におきましては、——亀田委員もいろいろ御勉強願っておってありがたいんですが、私もきのうからずっとよく調べまして、判決文も電話でよく内容を聞きましたが、お話のようないろんなことをずっと、裁判をされておるのですけれども、当警察官職権乱用の事実があったかどうかの問題については、裁判所は、「本件窃盗容疑事実を捏造したような事実はこれを認めるに足る何らの証拠もなく、また本件逮捕」以下云々とありまして、職権乱用容疑としての審判請求棄却すると、こういう決定に相なっておりますので、まあそういう裁判所決定があったことでもありますので、私どもといたしましては、そういう裁判所決定によって判断することになるということもやむを得ないかと思うのであります。おあげになりましたように、自治体警察の問題として、感情上の問題も認められるが、と、こういうことは確かに判決文にいっております。で、私ども考えましても、ああいった地方自治体警察というのは、とかく誤解を招きやすいものであったと思いますので、今日は、まあそういう自治体警察のない状態になっておりますので、国家といたしましても、そういう誤解を受ける機会が今後は少くなるのじゃなかろうか、こう考えておるのであります。私ども何でもかんでも地元警察のやったことを抗弁する趣旨は毛頭ございませんけれども事案真相を明らかにするためには、亀田先生のお調べになった事柄もまたお聞きいたしまして、私どもの勉強いたしましたことと突き合せてみまして、だんだん研究を進めてみたいとは思いますけれども裁判所もそういうふうに調べた結果、決定されております事柄でもございますし、それから地方自治体警察でいろいろ誤解等もあったようなことも、この問題は別といたしましても、いろいろ全国的には反省せにゃならぬ問題も少くなかったかと思いますけれども、その問題も警察法の改正によりまして解決している問題でございますので、今後の問題といたしましては、いろいろ本件の問題といたしましては、亀田先生の御勉強なさった事柄も教えていただきまして、私たちが勉強いたしましたことも突き合せてみてやってみたいと思うのですけれども、私が勉強いたしました限りにおきましては、裁判所も、事実関係もいろいろ、最高裁判例が確定する以前のことでございますので、積極の判例、消極の判例ともにあったような状態において、法律の適用について最高裁までだんだん問題がいっている。これまた、憲法政治の当然のことだと思いますので、そういったことを考え合せて参りますと、そういう状況でもございますので、ただいま御質問大阪警察といたしましても、最高裁関係その他事実関係も明らかにいたしまして、今のところ関係警察官に対して何らかの処置をする、こういうことはしていないと存じます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 刑事部長はどうも今お聞きしていると、答弁を用意してこられたようです。私はだからそういう態度なり考え方を訂正してもらいたいと思っておるのです。これを法律判断——それはもちろんいろいろ対立した意見がある場合にどちらをとるかという問題があるでしょうけれども、どちらをとっても、それはその人の見解ですから、それだけをとことんまで追及する、責めるということは、これはできないでしょう。ただ問題は、特殊な動機というものが働いて一つの判断を悪い方の判断に持っていく、こういうことがこれでは問題になっておるだろうと思う。そうしてその点については、この裁判所決定も大よそこれは認めておるわけです。これを詳細に読んで下さい。だからそこが問題なんですよ。だからそれは、私は大阪警察としては、当然自主的にほんとうに人権擁護という気持があるのであれば、もっと調べてみるべきだと思うのです。裁判所決定の中に書いてあるのですから、それが違法であるかないかは別にしましょう、私たちは違法だと思っておりますよ、実際は。そういう動機と、そういう権力の使用というものに結びつけて、当然刑法百九十四条ですか、そういうものに該当すると思っております。しかし、それは別として、該当するかせぬか皆さんの方でするとおっしゃられると、これは当然起訴することになるでしょうから、そこまではいかぬまでも、そういう問題が伏在して、この問題が進められたところに本人として納得いかない点がある、絶対にそういう背後の事情のあることは、あなたも今若干認めているようにも思うのですが、そうであれば、たとえそれが法律に触れるような線まではないと大阪警察当局は考えておるのかもしれませんが、しかし、法律に触れるような線でなくても、私はこれは警察みずからが検討してみる値打のある問題だ、しかもその検討の仕方は、ただ単に、その当時、署長佐竹さんを警察にきてもらって、君はどうしたんだ、こんなことを聞いてもだめです。それはやはりむしろ山内なりその関係者にその当時の真相をやはり聞いてみる、それで初めてはっきりするのです。その点が一体どの程度大阪府警で検討されたのか、あるいは最高裁判例等が出た後、その点はどうです、再検討ということをやったのですか。
  10. 中川董治

    政府委員中川董治君) 私はむやみに抗弁する考えはないのですが、御審議のために説明申した方がいいと思うのですけれども、確かにおっしゃいますように、この決定は、職権乱用の証拠がないということを明確に言っております。それからその他に所論の途中におきまして、決定の文書を読みますが、「所論のごとく請求人が平素から佐竹自治体警察署長としての警察行政の失敗を追及し、佐竹との間に感情上の対立があったことを伺い得ないわけではないが、」以下云々と、違法でないということを言っておるのですが、自治体警察署長ということによって、感情上の対立があったことは、裁判所決定の中に引用しておることは事実でありますが、その関係を、自治体警察との感情上の対立があったことは、今調べるのも一つの方法と思いますが、自治体警察はすでに今日なくなったことであります。その感情上の対立をまた調べることによって、感情上の対立を増していくのもいかがかと思いますので、そういった事柄を、だんだん感情上の対立をなくする方向に持っていくのが健全な行政と私ども考えますので、そういったことも勘案いたしまして、本件事件につきましては、そういった裁判所決定感情上の云々ということを引用しておりますれども感情上の云々ということを、また、調べることによって感情上の対立ということを増すことは考えられないわけではございません。そういうことは、自治体警察はもうすでにない状態でございますので、そういうことも勘案し、警察行政を、各般のことを円滑にやることがお互いいいことだと思いますので、そういう意味合いで本件処理しておる状況でございますので、われわれが、警察のやったことを全部くさいものにふたをするという、ここで抗弁する考えは毛頭ないわけですが、ざっくばらんに申し上げまして、それから亀田先生のいろいろ御勉強願った事項は、今後いろいろこの委員会以外でもお聞きいたしまして、研究するのにやぶさかではございませんが、感情上の問題は、また取り上げて事とするということはいかがかと、こういうふうに考えておるのでございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 何も本人は、感情上の問題をはっきりしてくれることをきらっておるわけではない、本人自体ははっきりしてもらいたい、当時の事情を、こう言っておるわけですから、何もそこをはっきりさせてやったところで問題が悪化するわけじゃないですよ。ことに当時の署長は、現在は大阪市内の大淀の次長になっておるわけですからね。地元におるわけじゃない。だから私は今のお答えを聞きますと、こういう最高裁等の判決が出ても、どうも大阪府警としては再検討すらされておらない、地元の新聞にあれだけ書かれて……。地元の新聞ではどう書いていますか、警察のしっぺい返し事件は結局白ですか何とか、そういう見出しで書いておりますよ。これはみんな公然の事実なんです。しかも七年間、ともかく人を刑事被告人にしておると、これはされておる方の立場を私は考えてほしいと思うのですよ。私は善意でやった場合であっても、七年間も刑事被告人にして、そうしてそれが無罪になった場合には、国としては相当やはりとるべき処置があろうと思う。いわんや本件のごとき問題ね。これは大阪府警としては、こういう最高裁判決が最終的に出たのだが、どうしようというような、そういう相談なんかしたことはないのですか、その点だけ、ほかのことはいいですから答えて下さい。
  12. 中川董治

    政府委員中川董治君) これはまあ率直に申しまして、国家公務員にかかる問題でございませんので、わが警察庁に関する関係において相談を受けたことはございません。ところが、何と申しましても、地方新聞にも出た事件でございますし、重要な事件でございますので、大阪警察といたしましては、本件問題にからんで起りました一切の事柄を調べて、ことに一番重要なキイ・ポイントになる問題としては、亀田委員も御指摘になりましたような職権乱用にかかる罪の起訴になった事情、事柄についてはまあ処置する、そのほかに、それについて審判請求があった事件裁判所決定というようなことも十分吟味して、そういう意味合いにおきましては、よく大阪警察では調べている、こういうことが言い得ようかと思うのであります。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 どうもそこがはっきりしないのですが、初めから私大阪の府警は、どういうふうに処置をとっておるかと聞きますと、どうもほかのことをあなたはおっしゃって、結局再度私が聞きますと、今いろいろな点について調べておるかと思いますというふうな、はなはだあいまいなんですがね、実際はこれは大へんな迷惑をかけた問題である。たとえば自治体警察の当時の署長であったにしろ、現在大阪府警の大淀の次長にしておるわけですから、これは当然私は真剣に検討して、そうしてできれば本庁あたりにも連絡をして意見等も聞いて、そうしてやるべき問題だと思うのですが、どうもそこまでやっておらぬようですね、あなたのお話を聞くと。やっていないならいないということをはっきり言うてもらわなければならぬ、やったならやった、いつどういうふうにやってどうなっておるのか。
  14. 中川董治

    政府委員中川董治君) お答えいたしますが、国家公務員にかかる事案でありませんので、私の方の関係においての詳細な連絡は、今まではございませんでした。ところが、大阪といたしましては、事件真相を発見するについては、幸か不幸か本件事案は、すなわち職権乱用に関する事案裁判所決定を仰いだ事件でございますので、裁判所決定等について十分その事案の明らかになった問題でございますので、それに基いて処置しておるのでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、判決が出た後にも結局山内にははなはだ済まぬことをしたといったような点についての協議などを、大阪府警としてはしたことはないと解釈していいんですか、裁判所にまかせた、こういうことですか。
  16. 中川董治

    政府委員中川董治君) そこを確認いたしておりませんが、裁判所決定もあったことでございますので、その決定ということを中心に処置しておるかと思うのでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 裁判所決定というのはどんなことをおっしゃるのですか。私の言うのは、最高裁判決のことを言うのですよ。最高裁判決では、昨年の十月十五日にはっきり最終的に無罪と、こうなっておるのです。あなたは、決定々々と言うのは、自分の都合のいいような決定ばかりを言っちゃだめですよ。それは職権乱用に対する告訴についての決定のことをあなたおっしゃっているようだが、私はそれだけを言っているんじゃない。たとえ善意でやったものであっても、七年間もこういういきさつで苦しめた場合に、最終的に判決が出た場合に、一体ほうっておいていいのかどうかということを聞いている。しかも事情というものは、決定々々というけれども決定の中にははっきり書いているのだ。あなたはさっき感情上の対立があったように思われるというようなところをお読みになったんだが、この決定の中には、「請求人と警察側とには前示のように感情的な対立があったことは事実である。」はっきりこう言い切っている文章のところもあるんですよ。だから、そういうわけで、どうも何ですか、ほったらかしになっておるのがどうも真相のようにあなたの答弁から受け取るのですが……。  そこで長官にお聞きするのですが、まあ結論はどう出すにしろ、私は検討くらいはしてほしいものだがな。当然これは検討の結果、どういう結論を出すかはまた見方の違いがあるでしょう。検討もしないでほうっておくというわけには私はいかぬと思うのですが、どうでしょう。
  18. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 最初にお答えいたしました通り、私は、およそ捜査に当る警察官としましては、感情を交えて事を処理するというようなことがあっては相ならぬのでありまして、ただいまお聞きいたしますと、当時事件の被疑者とされました山内氏と忠岡警察署長佐竹君との間に感情的におもしろくないものがあったやにうかがえるのでありまして、そうしたことが基盤となって、いわゆるしっぺい返し的にことさらに事件として取り上げたというようなことであっては、これは警察として事件を取り扱う態度としては適切でないことは申すまでもないことでございますので、この件につきましては、先ほど私が申し上げました通り、昨日御連絡をいただきまして、当委員会にお取り上げになるということで、初めて大阪の方に照会をして内容を承知いたしたような状況でございますので、大阪警察に対しまして、この事案についてのあらためて十分なる反省をするように私から連絡をいたしたいと、かように存じております。当時の忠岡署長であった佐竹君は、現に大阪市内の大淀の次長の席におることでもございますので、かりに当時の佐竹君のとりました行為が不適当な点がありました場合、講和発効の恩赦等によりまして懲戒処分の対象にはあるいはならないかもしれませんが、それにいたしましても、むしろ反省の結果適当でない点がありますならば、今後の反省としまして、十分に本人はもとよりのこと、大阪警察全般といたしまして今後戒めていかなければならぬ、かように考えますので、とにかく事案の全般につきまして一応再検討し、反省すべきものは反省して今後に処していく、こういうふうにさしたいと思います。
  19. 青山正一

    委員長青山正一君) 亀田さん、ちょっとお待ち下さい。ただいま長官のおっしゃったように、この事件は相当感情を交えておる事件のように思われてしようがないのですが、今後大淀次長の自省を求めるように、一つ長官から十分に御監督のほどをお願いいたしたいと思います。
  20. 亀田得治

    亀田得治君 で、まあこういう長い間訴訟をやった結果、無罪になったというふうな場合の救済措置ですね。これは現在、例の刑事補償法なりあるいは昨年でしたか、法務大臣の訓令で、警察で留置されていた人についても若干の補償が出る、こういう規定はありますけれども、とてもそんな一日三百円とか四百円とか、それを留置しておる期間だけ出すとか、そんなもので片づく人でもないわけなんです。社会的な地位からいっても。そういうふうにいじめられた中で、この人はやはり選挙もずっと続けてきておるわけです。しかし、地元の人はこれは山内の方が正しいのだ、警察はあれは無理しているのだということで、山内はずっと当選しているのですよ。しかし、そこをずっと突っぱってきておるその間の苦心というものは大へんだと思うのです、法廷関係の費用にしても。そういう点については、これは多少問題が一般的になるかもしれませんが、いろいろなことで私は疑問を持っておるのです。私人間であればなかなか済まないことが、国が何か間違ってやった場合には、ともかく切り捨てごめんだ。こういうことでは民主的な国家じゃないと思うのです。これも実は私法務大臣のそういうところの大まかな見解をただしたいし、多少伝統的にある考え方というものをもっと改めていく。たとえばそういう結果になった場合には、できるだけ本人の名誉を回復するような措置を講じてやることが、これは一つの方法ですよ。金銭だけの問題じゃないのです。だからそういうようなことについて、警察当局なり、法務当局で検討をされたことがあるかどうか、検討されたことがあれば結論は出ていなくても、議論内容をお聞きしたいと思います。
  21. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 関連。最高裁判決によりまして、事件の起りは、やはり感情の行き違いというものに原因しておるということはわかっておるのでございますし、さらに、長い間、裁判所で争った結果が無罪になっておるということであれば、やはり警察に、どのくらいな程度のものか知らぬけれども、過失があったということは明かであろうと思うのです。そこで、今長官の御答弁は、声が小さくてしまいの方がわかりませんが、この件について、それだけの無罪になった事件について、大阪の府警としては、その後どういう処置をとっておったか、あるいは何らの処置もとらずに今日までほおかぶりして、放任してあるのかどうか。今日まで何か処置をとったことがあるかどうかということを御調査になって、当委員会に御報告を願いたいと思います。なお、今日まで何にもしておらぬとすれば、今後どういうふうにするつもりであるかということについてのお考えを、同時に御報告願いたいと思います。長官にお願いいたします。
  22. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいま棚橋委員より申し出の調査の件、石井長官にお願いいたします。  先ほどの亀田さんの御質問に対する御返答、横川さんがおいでになりませんから、河井刑事課長にお願いしたいと思います。
  23. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) お答え申し上げます。無罪判決がありました場合に、検察庁におきましては、常にその内容を十分に検討いたしまして、再びさような判決を受けることのないように反省の資料に常にいたしております。  ところで、亀田委員よく御存じだと思いますが、無罪判決の中にもいろいろなケースがございまして、外形的事実は認められて、単に法律上の解釈について甲論乙説があるという場合に、甲説をとるか、乙説をとるかということで、たとえば高等裁判所判決すら甲論乙説と分れているような場合に、最高裁判所の判断を求めるというふうな事実もございます。それからまた、犯罪の外形的事実が全くなくて、架空捏造の無罪という場合もございます。従いまして、その事案内容によりまして、それぞれ捜査に従事いたしました者の責任とかあるいは反省とかいうものもおのずから異なってくるというふうに考えられるのでございます。
  24. 亀田得治

    亀田得治君 私は、では非常に譲った立場で一応聞いてみますが、全然検察官なり警察関係者が善意で刑事事件を取り扱った、全く善意に。しかし、それが六、七年やって、結局無罪になった。こういう場合には、善意だからこれは仕方ないじゃないか、こういう考え方ですか、日本の法務行政立場というものは。それはあなたにお聞きするのは適当かどうかわかりませんがね。
  25. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 私がお答えすることが適当かどうか、非常に問題でございますが、ただ私の立場で申し上げますと、始終、そういう問題は反省もいたし、議論の中心にもなっている事柄でございまして、ただ問題は、その場合に、御指摘のように全く善悪で、しかもこれは甲論乙説があるというふうな場合に、一体、それが無罪になったから直ちにその者の責任を常に追及するということになりますと、第一線の捜査官というものは、士気は萎靡沈滞いたしまして、事なかれ主義になり、かりに被害者告訴を提起いたして参りましたような事案におきましても、果して最高裁判所までいってこれが有罪になり得るかどうか、多少でも疑問があれば不起訴にしてしまうということは、これは火を見るよりも明らかだと存ずるのでございます。従いまして、そこのかね合いをどこへもっていくかということが、結局捜査官の心がまえと上司の指揮統率という問題とに帰着するのではなかろうか、こういうふうに考えているのでございまして、非常にむずかしい問題でございまして、第一線の捜査官はもちろんのこと、捜査に関与いたします者は、この点のかね合いを適正公平に行うということに非常な苦心を払っているというのが実情でございます。
  26. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問を少し取り違えておられるようですが、つまり全然善意でやったという場合には、検察官なり警察官を追及する理由は、これはないのです。そういう場合であっても、対象にされた方は大へんな迷惑を受けているわけですから、その行動した人の責任は追及しなくても、迷惑をかけた人に対しては、国としての措置というものはあるべきじゃないか。この点を言うているわけです。これは、私は一般の人の気持にも合致した問題だと思うのです。現行法がどうなっているか、そんなことはわかっていますよ、国家賠償法の規定は。そんなものじゃ問題にならぬということを私言っているのです。そこはどうなんですか。そういう大きな議論というものは法務当局等でなされておるのかどうか。
  27. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) それは常に問題として議論をいたしております。いたしておりますが、問題はそういうふうに迷惑を受けたから、直ちにそれではこれに対して、何らかの補償なり給付なりすることの是非ということになりますと、これは単に刑事事件だけの問題ではなくて、一般の国家の政策というようなものにも関連する非常に大きな問題であろうと存ずるのでございますが、その場合に、もちろん今御指摘のように、故意過失があれば、これはもう国家賠償法なりございまして、それ以外においてなおかつ、その責任、国家の責任と申しましょうか、迷惑を受けたことについて補償をするかどうかという点には、一体補償の原則は何か、あるいはその責任の根拠はどうかという問題が非常にまあ御承知のように、議論が分れておると同様に、これは単に刑事事件だけの問題でちょっと解決できないんじゃないかということはいつも議論の中心になっておるような次第でございます。
  28. 亀田得治

    亀田得治君 それはもちろん刑事事件だけじゃないですよ、刑事事件以外のところを検討してみますと、たとえば、何か国が大きな建設事業をやる、その工事のためにいろいろな迷惑が付近にかかる、これは相当いろいろな、理屈は抜きにして、補償等するわけでしょう、している例もたくさんあるわけです。だから故意過失があったか、なかったか、故意過失があれば、当然これは刑事事件にもなるし、正当な損害に対して、その個人もこれはむろん要求できる。ところが、本件なんかはそういう事案なんですが、それは一歩を譲っているわけですね、そういうものを抜きにしても、国の行為によってそういう問題が起きていることは間違いないのですから。そうでしょう、金があれば当然出すのが当りまえなんで、いろいろ手当てをするのが当りまえです。金があるかないかは別なんです、すなおに理屈だけからいったら。風が吹いてきたら、国でも予算の措置をするでしょう、それによる被害はどこがやるのです。本人にしてみたら、台風の被害みたいなものですよ。だから、そういう点を、これはむしろ法務部内のそういう中堅どこの人がもっと——あんまり上の方へいくと頭が古いから、そういう点はぼけるかもしれないが、むしろ中堅の諸君にそういう点を検討してやってもらわぬといかぬ。そういう制度ができれば、今度は逆に私は、人権じゅうりんだって、ある意味じゃなくなると思うのです。警察官等が人権じゅうりんをやれば、結局それは国家に迷惑をかけるのだ、こういう問題になっていくわけですからね。現在ですと、国家がしりぬぐいをせぬものですから、何かしっぱなしのような感じ、しっぱなしというのは何か役得みたいな感じを与えるのです。そういう点を私は、制度的にも、こういう問題などについても、検討してほしいと思います。そこで、まあほかの問題にも、きょうまだ二つあるわけですから、本件はこの程度に本日のところしておきますが、長官並びに法務省の方でも、告訴地検の方に出ている事件ですから、地検の方にも十分これは真相を把握するように、丁寧に、そういう点を連絡してもらいたいことをお願いしておきますし、大阪等の報告を聞いた上で、もう一度質問をしたいと思います。なおその際に、私は、刑事課長にお聞きをした点ですね。たとえ無過失で迷惑をかけた場合でも、民主国家のあり方としては、それに対する措置というものが要るのじゃないかというふうなこと等についても、あらためてお聞きをしたい。そういうふうに、若干保留をして、一応この問題についての質問打ち切ります。
  29. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 中川刑事局長にちょっと伺いますが、先ほど御答弁のうちに、この事件は、自治警察時代のことであって国家公務員ではないのだからして、今の警察庁には責任がないのだというふうにちょっと聞えましたが、御答弁の趣旨はそういうことですか。
  30. 中川董治

    政府委員中川董治君) その責任回避というけちくさいことで申し上げたのではありませんが、昭和二十九年に警察法が改正する以前の自治体警察は、完全に独立しておりまして、われわれに対する指示権は、全然なかったことは事実でございます。
  31. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 自治警察の事務を、この機構改革によって警察庁の方が全部引き継いでいるわけですね。といたしますれば、その当時の警察官なんかの非行、そういうものについて、現在の警察庁に責任がないとは言われぬと思うのであります。それを引き継いでいると思いますが、その点はいかがでしょう。
  32. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御承知のように、現在の警察制度は都道府県警察が建前でございます。従いまして、二十九年の制度改正によりまして、それ以前にありました都道府県内の数多くの市町村警察、これが一つの都道府県単位に統合されたわけでございます。従いまして、その統合前の旧市町村自治体警察の事務は、その新しい都道府県警察に一括包含されたわけでございます。その各市町村警察に勤務しておりました警察官の個々の行為等につきましても、従いまして、もし懲戒処分をしなければならぬというような場合には、新しく統合された都道府県警察の本部長がその権限を持っている、こういうことに相なるわけでございます。     —————————————
  33. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、丸の内警察署留置場における事件及び大阪府警の金品紛失事件につきましては、去る二月二十八日、当委員会におきまして調査をいたしましたところでございますが、初めに、その後の経過並びにいかなる措置がとられたか、警察当局の御説明を求めたいと存じます。
  34. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 二十八日の委員会以後におきまして、前の委員会お話がありましたが、東京地検の方から連絡を受けまして、警視庁の当局で直ちに調査に着手いたしたのでございます。調査のやり方といたしましては、問題の起きた当時、一緒にあの留置場におった者、つまり同房者、あるいは、問題の房は第六房でございますが、第六房以外の近所の房におった者、そういう者のうちから、住所のはっきりしている者につきまして、真相はどうであったかということを警視庁におきまして、鋭意調査をいたしたのであります。その調査が一段落いたしましたので、当時勤務をいたしておりました看守の巡査に対しまして、お話のありました田中某との暴行関係を厳重に調査をいたしいのであります。それによりまして、わかりました点は、第六房で寺見氏が、用便を訴えましたので、六房からの用便のため一応寺見氏を出しまして、それからそれが済みまして、再び第六房に入ることになったのでございますが、そのときに、寺見氏が早く帰してくれというふうなことで、相当、酒に酔っておった関係もあると思いますが、相当騒いだ事実がございまして、なかなか房に入らないという一幕があったわけでございますが、これを看守の巡査はなだめまして、そしてようやく房内に入る、こういうことになったのでございます。その瞬間に、田中某が、いきなり寺見氏に暴行をいたしまして、さらにそれを押えつけておるというのを見ましたので、看守の巡査はあわてまして、靴のまま房内に入って、そしてそれを強くたしなめて制止をいたしたのでございます。そして、そのあとになりまして、寺見氏が六房におるのはいやだというふうな申し出がありまして、そういうふうな不祥な事実の再発を防止する意味から、第四房に移したというのが、実際の実情でございます。従いまして、その点は、従来、警視庁の報告として委員会に申し上げた点と、若干違って参りましたことも事実でございます。看守の巡査は、暴行自分の監視不十分の結果、惹起したということに、非常に責任を強く感じまして、警視庁が最初に調査をいたしましたときには、その真相調査の者にも、上司の者にも報告をいたさなかったということがはっきりいたしまして、この点はまことに、結果としては調査の不徹底ということになっておりました点は、まことに残念にも存じ、申しわけなく思っておるのでございます。その結果、警視庁当局におかれましては、関係警察官に対して処置をしまして、看守係の古田巡査に対しましては、こまかいことになりますが、減給一カ月百分の一、それから転所、つまり勤務場所をかえるという方法をとりました。それから、これから以下は監督の責任になるわけでございますが、看守係の、その上におります巡査部長については、戒告、それから、さらにその上司である捜査係長についても同じく戒告、その上の署の刑事課長についても戒告、それから署の次長につきましては書面の訓戒、それから署長につきましても訓戒処分をとって、それぞれそういう暴行を未然に防止できなかったということ、並びにその報告が真相発見までに至らなかったというふうな報告をいたしたということに対して、責任を明らかにしたのであります。  以上でございます。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 大体、結論的な御報告がありましたが、その六房には、当時、留置されていたのは何人いたわけでしょう、田中外何名。
  36. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 都合三名、田中某外二名という報告でございました。
  37. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの二名というのはどういう人ですか。どういう人というのは、年令とか、まあ名前はよろしい、年令とか、職業とか、それからどういう犯罪容疑で入っておったか。
  38. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 被疑罪名は詐欺窃盗、それから年令は三十才前後であったという報告を受けた記憶がございます。
  39. 亀田得治

    亀田得治君 それから田中は、その日入った人でしたね——じゃなかったですか。
  40. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 田中は、その日の入房者ではなく、以前から入っておった入房者であったと思います。
  41. 亀田得治

    亀田得治君 その日は、六房以外には、すいておるところはなかったわけですか。
  42. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) その点は、一人々々のことは、正直に申しまして、よく報告を記憶しておりませんけれども、全くすいておるという房は、婦人房は別でございますけれども、女の入る婦人房は別でございますけれども、なかったと記憶しております。
  43. 亀田得治

    亀田得治君 何か、少年房か何かが、すいていたのじゃなかったですか。
  44. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 初めは、少年房にはやはり少年がおった、すいておったという事実はないようであります。そういうふうに……。
  45. 亀田得治

    亀田得治君 この田中というのは、その日入ったのじゃなしに、前から入っておるようですが、これはどういう性格なんですか。
  46. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 性格までは、実は私も一々承知しておりませんが、房におった態度としては、特に、その日に入ったのでなくて、だいぶ前から入っておったのでありますが、特に乱暴をするという性格のものではなかったというふうな報告であったように記憶しております。
  47. 亀田得治

    亀田得治君 ほかの房がすいていないとすれば、その点が非常に警備官としては大事な点だと思いますがね。とにかく、こちらが泥酔しておるのだから、田中の性格等について、今のお答えですと、どうもはっきり調べていないようですね。ただ、これが一くせある男なんだと言っておる。大体、それをそんなところへ入れるのはおかしいじゃないかと言われるから、あなたとしては、特に乱暴なような男ではないようだった、こうおっしゃるわけですが、お答えの出だしが、はっきり調べていないようですね。だから私は、真相をお調べになるについて、結局、そういう酔った人を、三人もすでにいるところへ入れる。多少くせのある人だと、やはりそういう場所ですから、何をするかわからぬ、その辺に問題点があるわけですね。それで、田中の性格などを、これは事件のあとからでもいい、調べてみなければならぬ問題だと思いますが、どうなんですか。
  48. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) その房におったときの態度としましては、留置場内における平素の行動は、看守係の命令をよく守って、乱暴を働くという事実はなかったという状況でございます。
  49. 亀田得治

    亀田得治君 四房は何名いたのですか、移された四房は。
  50. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 大体、当時は各房三名だったと思います。四房も三名であったと記憶しております。
  51. 亀田得治

    亀田得治君 まあ、ただいまのような報告ですと、結局、まあ運が悪かったといったような感じもするわけですがね、しかし、これだけのことを、ずいぶん長いですね、調査の報告が。これだけのことでしたら、全くあなたの部下のことを調べるのだし、そんなに長くかかるのが不思議なんです、われわれからしてみれば。
  52. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと石井さんのこの前の報告によると、何か少年房に入ったとか入らぬとかいうような報告があったように私は聞いておるのですが、そうじゃなかったのですか、きょうの報告では少年房というのが全然出ていないでしょう。
  53. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 最初は少年房に入ったということを報告しておると思います。それから今亀田委員からのお尋ねでございますが、実はこれは留置場に一緒におった人たちについて、警視庁当局は調査をするというのでございまして、これは御承知いただけると思いますけれども、そういう人たちに当りますのは、犯罪捜査というふうなことではなしに、参考人としてその当時の事情をお聞きをするというのでありますから、ごく端的に申しますと、警視庁にちょっと来てくれというわけにもこれは参りませんし、そのとき皆釈放されて出ておった人たちであったという関係もございまして、在否、住所等について調べました上、警視庁から出向いて調査をすると、そういうふうな関係がありまして、相当時日をとったことも事実でございます。また、看守巡査の調査につきましても、前にとにかく暴行を見た事実がないというふうな話であったことでありますから、これは取り調べの時日の問題になりますけれども、その関係で先生がお疑いになるような点もあるかと思いますが、相当な時日を要しておる、こういうことでございます。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 私の言うのは、六房から出されて、しばらくして結局冷たくなってしまったわけでしょう、だから、その日のうちに六房の人はまだおるわけでしょう。だからそういういやしくも人の生命という問題にかかわる問題が起きておるのだから、直ちにその日の晩のうちにでも、房におる人を、どうだったのだと、これはあなた、警視総監がみずから出かけていく値打のある問題です、出かけていって聞けば、すぐ私はその日のうちに真相をつかまえられて、こんなところまでごちゃごちゃしないで真相が明らかになっておったはずだと思う、それを言っている、これは房の人を出してしまってから聞きにくいのは、これは大へんです。
  55. 青山正一

    委員長青山正一君) これはどうなんです、石井長官にお聞きしたいと思いますが、石井警察庁長官の方では、これは事警視庁の事柄だから、これはなかなか調査するのに非常にむずかしいというようなことと、それから問題が検察庁の方にいっておるからして、なかなか調べにくいというような、そういうふうな点もあるのですか、どうですか、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  56. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) ただいま亀田委員の御指摘になりました、事故の起ったその直後調べれば、同房におった者みんなおるのだから、実情がすぐわかるじゃないか、まことにその通りであります。当時、丸の内署におきましては、直ちに同房者はもちろんのこと、また、その近くの房で、その状況を目撃したであろうと思われる他の房の留置人につきましても、事件直後事情を聞いておるのであります。ところが、いずれも田中の暴行について、事件にかかわりたくないという気持からであろうと想像されるのでありますが、申し合せたように、いずれも暴行の事実がないというふうに、否定をされたのであります。  同時に、当面の責任者である看守、古田巡査につきましても、前回以来しばしば申しました通り、田中の暴行の事実を認めておらぬと、こういうふうに終始供述して参っているのでありますが、いろいろ手を尽して再調査いたしました結果、先ほど警務局長がお答えいたしましたように、当面の責任者である古田看守が、実は自分がその当番であって、監視が不徹底であった、そのためにこうした事故を起し、ひいては上司にも迷惑をかけることになってはまことに申しわけないという、自分自身の責任をあまりにも痛感をしたために、そうしたその自分が田中の暴行を目撃したにもかかわらず、その事実を当時そのまま率直に上司に報告することを控えたということが、そもそもこの事件を、今日までこんなふうにこんがらかした大きな原因になっているのでございまして、当の古田巡査にしましてみれば、今からおそらく監視した当時、いち早くありのまま上司に報告すればよかったと、後悔していることだろうと思うのでありますが、当時は、先ほど申しました通り、事のあまりにも意外な結果になったことにびっくりいたしまして、自分の監視不十分のために、こんな大きな事故を起したということで、上司に迷惑をかけることを極力心配するのあまり、真相をそのまま上司に報告するということが、当時なされなかった、そのためにその自後においても、一たびそういう態度をとった関係上、それに拘束されまして、何度聞かれても、暴行の事実はないというように、終始供述して参ったというのが真相でございます。  それを私から、いろいろと人を変えて本人に当りまして、先ほど警務局長が報告しましたような真相を把握することができたということでございまして、まことにそのために長時間を要しまして、従いましてまた、その責任追及処分も、さらに時期をふることになったということは、まことに申しわけないことでございます。この点は、こういうふうに長時間を要して初めて真相を把握し得るに至りましたことは、最初における看守巡査のありのままの上司への報告がなされなかったということに、結局は起因するのではないかと思うのでございますが、そうした態度を巡査がとるに至ったことにつきましては、やはり監督者としましては、平素の指導監督が不十分であるということになろうかと思うのでございまして、およそ人間のなすことでありますから、ときには失態をしでかすこともあるのでございますから、そうした場合には、包み隠さずそれを上司にいち早く報告し、上司の適切なる指揮を誤まらしめないようにすることが、部下たる者のとるべき態度であると思うのでございます。そうした点について、日ごろ部下の指導が十分なされておらなかったという意味におきまして、先ほど警務局長が報告しました通り、監督者の責任についても、警視庁におきましては、それぞれその段階に応じて処置をいたしているような状況でございます。
  57. 亀田得治

    亀田得治君 それだから僕がね、前提としてほかの房があいていたのかどうか、あるいは田中というものの性格などを聞いたのであります。ところが、ほかの房もあいておらない、田中の性格も、決してそんな粗暴なところが見えなかった、こうおっしゃっている。それならば、この巡査には何も責任が出てこぬわけです、そうでしょう、どこかへ入れなければならぬのですから。それならば何も隠す必要ないことでしょう。いやしくもああいうところへ勤める人ならば、普通の常識は持ってるはずだ。何か自分に責任があるから隠したというのならわかりますよ、真相を。本人はおとなしいし、ほかに房はない、それで入れたところがなぐられた、すぐそれを引き出した、そんなことを隠す必要が一体ありますか。そこなんですよ、どうもふに落ちないのはね。それでそうじゃなしに、もっとそんなところに入れたら当然なぐられることがわかっているような状態なのに、あまり騒ぐからほり込んでちょっとやらしておけというくらいにやったんじゃないかとか、いろいろな憶測が出てくるわけです。御報告のようなことなら、一体何でこれを隠す必要があるんですか。そんなことは、私は普通は隠さぬと思いますな。その点、長官疑問に思われませんか、隠す必要ないじゃないですか、長官はどうですか。
  58. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 寺見氏を最初に少年房に入れたのでございますが、その後、当日は中村という他にもう一人非常に泥酔された者が保護されておったのでございますが、この中村という泥酔者を保護室の方に入れて、少年房をあけまして、そこに最初寺見氏を入れたわけでございます。この前御報告した通りでございます。ところが、その中村という泥酔者が保護室に移された少年に非常に悪ふざけをすると、こういうことで、この中村という泥酔者を少年房に別に入れた方がよかろうということで、そこで寺見氏を他の房に移さなければならぬ、こういう非常にやっかいな、三角関係と申しますか、そういうことになりまして、そこで寺見氏をそれではどこに入れたら適当であろうかと、いろいろ考えました結果、第六房は場所的にも看守の見張り場所から見通しのよくきくところであるということと、さらに第六房には、先ほどもお答えしましたように、当日入っておりました三人が、いずれもまあ比較的年配者と申しますか、三十前後の比較的年配者で、おとなしく留置されておりましたので、この房が適当であると、かように考えて六房に寺見氏を移したというような状態でございまして、その後、ここで寺見氏が暴行されるというようなことが予見されたら、そんなことは決してしないはずでございまして、田中がとかく人に暴行を加えるというような癖があるということがわかっておりましたならば、そういう第六房というものは選ぶはずはないのでございます。そういう点は全然懸念されないという状況であり、見張り場所からも見通しのきく格好な場所である、かように考えたので第六房に移したと、こういう実情になっておるのであります。
  59. 亀田得治

    亀田得治君 私のお聞きしているのは、その説明の通りなら、何も巡査の方は普通のことをやっておるわけでしょう。それをなぜ隠すのかと言うのです、長い間。長官としては、そこに疑問をお持ちになりませんかと言うのです。多少報告通りじゃなしに、何かあったんじゃないか。この通りなら、初めからそう言ってりゃいいんです。そこの長官の感じはどうですか。
  60. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 第六房からさらに、先ほど警務局長がお答えしましたように、寺見氏が用便に出られた後、第六房に入ることをあまり心進まずして、早く帰してもらいたいと言われるのを、無理になだめて入ってもらった。その直後に、田中から暴行を受けたということになっておるのでございます。そこで、寺見氏が、こんな房におれないから他の房に変えてもらいたいというので、そこで古田看守はとっさの考えとして、それじゃ手近の第四房に入ってもらおうということで、第四房に入っていただいた。その第四房において、その後しばらく時間がたって容態が急変した、そこで、日比谷病院に救急車で運び入れたと、こういう結果になっておることは、御承知の通りでありますが、そこで、それでは古田巡査が一人なぜ自分の責任を痛感するのか、私は、看守の立場にある者としましては、ことに若い巡査で、留置人が死に至るというような事故が起ったということは、これは非常なショックを受けたことは間違いないと思うのでございます。しかも、そういうふうに房を転々とさせた、その間に暴行を受けたと、その暴行が死の原因であったかどうかは別としましても、とにかくそうした暴行後において死亡されたという事態が起ったことは、これは看守巡査としましては非常なショックであったと思うのでありまして、自分に何か手落ちがあってもしそういうことになったというのであれば、上司に対してもまことに申しわけないという責任を感ずるというのは、これは私は当然であろうと思うのでございます。そこで、上司になるべく迷惑をかけたくないという思い詰めた気持自分の責任を痛感するの余り、先ほど申し上げましたように、当時の状況をありのまま述べなかったというのが真相であろうと思うのでございまして、若い巡査としてみればそういうこともあり得ることではないかと、さように考えるのでございます。
  61. 亀田得治

    亀田得治君 それは普通じゃないですな。これはまあ議論になりますがね。あなたの経過のようなことなら、何もそんな隠す必要はないことです。こういう点はお調べになりましたかね。ともかく同房の三名、これは全部口をつぐんでおる。それから、その看守も言わない。とにかく、そういう事態が起きてから、同房の人も、看守の人も、これは黙っておれ、こういうふうなことを言ったのではないか。そこがうまいこと両方とも言わぬというのは、うまく合っているではないですか。その可能性の方がどうも多いように思うのですがね。長い間、口を割らぬところを見ると、打ち合せしてなければ。それが真相であれは——あなたの先ほどの報告のようなことが真相であれば、世間がこれだけ騒いでいるのだから、もっと早いことだれかが言うですよ。あるいは、警察から出て新聞等を見ておっても、ああこんなことでずいぶん騒いでいるなら真相を告げてあげようと、その気になるですよ。それは看守と同房の人が、皆がそういうふうに打ち合せでもしたのと違うのですか。
  62. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 同房の者と古田看守とが打ち合せしたかどうか、そういうこともそれは想像としては考えられることでございますが、今まで調べたところによりますと、そうした事実はないようでございます。先ほどもお答えしましたように、当時同房の者、その付近の房で当時の状況を目撃したであろう人々等につきまして、事故の起りました直後、丸の内署において事情を聞いたときに、いずれもそうした暴行があったというようなことを否定されたということは、先ほどもお答えしましたように、こうしたことが起ったことについて、事件にかかり合いを持ちたくないという気持からであろうと想像するのでありまして、これはあり得ることだと私は思うのであります。同時に、看守巡査につきましても、先ほど申し上げましたような心境を持つということ、これもあり得ることで、たまたまそうした両者の間に何らの事前の連絡というものがなくとも、そういうことがあり得るということが私は考えられるのではないかと思うのでありまして、たまたまそういうふうに、同房者、あるいは他の房におった目撃者と目される者たちが暴行の事実を否定したと、同時に、看守古田巡査も暴行の事実はなかったと当時述べたのが、これがありのまま私の報告に接しておるところでございます。
  63. 亀田得治

    亀田得治君 その点の論議はちょっとあとにしまして、傷ですね、傷はやはりなぐったあとがあるわけでしょう。
  64. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) なぐった傷があるということにはならないのであります。
  65. 亀田得治

    亀田得治君 どういう程度ですか。
  66. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) これは、あの寺見氏が死にましたあと、死体の検案を受けておるのでありますが、皮下出血とかそういうものはないという検案書になっておるそうでございます。
  67. 亀田得治

    亀田得治君 田中輝男というのは、今度はじゃどういう罪名で追起訴になるのですか、その辺の扱いはどうなっているのですか。
  68. 荻野隆司

    政府委員荻野隆司君) 東京地検の方で直接お調べになりまして、暴行罪で起訴しておるという連絡は受けておりますが、その後のことは、ちょっと私の方ではわかりかねます。
  69. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) 田中輝男に対しましては、昭和三十三年一月十六日に、暴行の事実によりまして起訴になっております。
  70. 亀田得治

    亀田得治君 それだけでは、さっきの報告のようなことと、起訴とが食い違うように思うのですが、重大な報告がすでになされて、これは当然検察庁御存じのことだろうと思うのですが、その点どうなんですか。
  71. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) もちろん、お尋ねのような点についての容疑がございます。ただ、当時死体がすでにございませんので、関係者の供述その他の証拠をそろえまして、目下東大で鑑定嘱託中でございまして、いわゆる田中の暴行とこの被害者であるところの寺見淳一という人との死の結果についての因果関係の有無という点が、御承知のように問題になるわけでありますが、その点、近く鑑定の結果が出る予定でございますので、その鑑定の結果を待って処理したい、そういうふうに考えております。
  72. 亀田得治

    亀田得治君 それは、まあ鑑定の大事をとってそういうことに手続上はなろうかと思うのですが、どうもその辺が食い違うようだと、はなはだ割り切れぬ結果がやはり残るような感じもするのです。まあ先ほどの看守の隠しておったことですね、これは何べん聞いても私はどうもふに落ちない。従って、御説明のようなこととは若干何か違った事情等がやはり隠されておるものがあるのじゃないだろうかという感じもいまだに残っておるのです。しかし、まあ長官としては、なかなかそれ以上のこともわからないかもしれぬのですが、まあ当然、留置場でそういう死人が出たわけですから、当時の署長としては、おそらく直接その看守の方にも会っておるだろうし、そう思うのですが、その辺、私どももう少し署長にでも来てもらって、一体どういう措置をとったのか、その措置をとったときの感じ等、そういう点も直接聞きたいと思うのですね。はなはだまあこまかく問題を追及するようですが、しかし、どうも考えてみれば大きな問題ですからね。まあしかるべくこれは一つ委員長の方で、理事会等で御相談願って、取り計らってもらいたいと思います。一応この点についての質問は終ります。
  73. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと石井長官にお伺いしたいのですが、その当時の署長は、やはり現在の署長ですか。
  74. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 第八方面本部長にかわっております。
  75. 亀田得治

    亀田得治君 栄転したのですな。
  76. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 栄転というほどでもございませんが、御承知のように、警視庁の管下におきましては、丸の内署というのは署長の最右翼のポストでございます。先般警視庁におきまして、古参の方が数名勇退をされることになったのでございまして、方面本部で申しますと、八つあるうち、三各方面本部長が勇退されるというようなことになりましたので、署長の最右翼である丸の内署長がその方面本部のいずれかに本部長としてかわるということは、これは必ずしも特別の栄転ではなく、むしろ通常の転任である、かように思うのでございます。ただいま問題になっておりまするこうした留置場事故を起したような当時の署長が、そうした事故がありましてからまだ半年たつかたたないかの今日、そういうふうにかわることはいかがなものかという点は、確かに問題の点であろうかと思いますが、先ほど申しました通り署長として最右翼のポストにある、それより後輩の者が本部長に数名出ていって、丸の内署長をこうした事故があったからというゆえをもってそのまま残しておくということは、警視総監としてもおそらくできないことで、この事故の責任については、先ほども警察局長から御報告いだしました通り、訓戒処分にも付しておることでございますので、それとこれとは別個に考えてもよいのではないかと、こういうことで考えたのでありまして、ただいま八方面本部長になっておるのでございます。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 次に例の捜査中における紛失事件ですが、この前の委員会では、この紛失事件の点については調べてみて下さいということになっておりましたので、一応御報告願いたいと思います。
  78. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) この事件は、大阪国税局の堺税務署の直税課の職員でありまして、大阪国税労組の執行委員をしております岡田という人が、税務署の秘密文書を大阪の商工団体連合会の者に渡したという容疑で、国家公務員法違反事件として取り扱ったものであります。岡田という人は、二月十二日に逮捕をされておりまして、問題になっております捜索は、二月十三日午前九時三十分から十時二十五分まで、大阪の商工団体連合会事務所で行われたものであります。で、この捜査に参りましたのは、警察官が八名であります。前回六名と申しましたのは間達っております。八名であります。その事務所の中におりました岡本治子という人に捜索についての立会いを求めたのでありますが、どうしても応じてくれないというので、刑事訴訟法手続によりまして、大阪府の南府税務事務所の審査係長をしておる石田という人に立会いをお願いをして、捜索をしたものであります。ところが、この岡本治子という人が、自分のハンドバッグに入れてあった現金、小切手、預金通帳等を盗まれたと言っておられる件であります。  以上、事件の概要でありますが、御質問のありました後に、といいますか、問題になっております、盗まれたといわれる事件についての捜索の状況を申し上げます。  一つは、捜索に当りました警察官について調べております。これは、そういう窃盗事件を担当しております大阪府の捜査三課において取り調べをいたしております。捜索に参りましたのは、この課と関係のない警察官でございます。関係警察官が八名のほかに、外の警備に当っておりました警察官が一名おりましたので、九名について供述調書を取っております。  それから被害者といわれる岡本治子という方には、その後、六回にわたって呼び出しと申しますか、御出頭をお願いしておりますが、忙しいということで、一度もお見えになりません。三月四日に、捜査員が商工団体連合会の事務所に行って、事情をお聞きしましたが、内容は被害届を出された、それと変りのないもので、捜査の参考になることは全然お話にならないのであります。その後も、たびたび呼び出しをして、お聞きしたいと思っておりますが、全然応じていただけない、そういう状況でございます。  当日、捜索に立ち会われました南府税事務所の審査係長に事情をお聞きしましたところが、私は、二階事務所の中央付近のよく見える場所に立っていたが、効率表や、メモなど五点ぐらいを捜索してきて、私の前の机の上に置いてあった。押収するとき、私も控をもらい、現品と照合したが、持って帰ったのは明細書に書いてあるものだけであった。捜索が始まって十分ぐらいたって、四十才ぐらいの女が、二階南側の部屋に入り、黒色様に光ったビニールのハンドバッグを持ち、ふたを開き、中を調べながら下に下りていった。こういうような状況であります。この点について、岡本さんに聞いてみますと——これは三月四日に参りまして聞いたのでありますが、捜索の警察官が帰ったあとで、二階に上ったら、国際婦人デーのパンフレットが出ていたので、おかしいと思って、 ハンドバッグをあけてみたら、初めて盗まれていることがわかったというように言っておられるのであります。この点、若干事実の食い違いがあるのであります。立会人は、捜索が始まって十分ぐらいたって、——この四十才ぐらいの女というのは、おそらく岡本さんのことであろうと思いますが、ハンドバッグを持ち、ふたを開き、中を調べながら下に下りていったというように言っておられますが、御本人は、捜索が終ったあとで、警察官が帰ったあとで、ハンドバッグをあけてみたら、初めて盗まれておることに気がついた、こういうように言っておられるのであります。で問題の小切手等について、どういう措置がとられてあるかとお聞きしたのでありますが、お答えを得られませんでしたので、警察署で三和銀行、あるいは住友銀行に照会文を出しまして、捜査三課員が銀行におもむいて、取り調べをいたしたのであります。小切手の一つ、一万円というものにつきましては、住友銀行十三橋支店に、岡本治子という方から盗難紛失届が出されております。預金通帳につきましては、住友銀行の大阪駅前支店へ、当人から支払い停止の届出が出されております。それからもう一つの四千二百三十円の小切手には、三和銀行上町支店へ路上で紛失したという届出が出されております。もう一枚小切手が紛失したということでありますが、これについては、どうもただいままでの調査のところ不明、わかりません。  以上のような事情でございまして、この小切手等がなくなったといって、警察お話のありましたのが同日の午後四時五十分ごろであります。捜索は、十時二十五分に終っておるのであります。関係者の供述に若干の食い違いがございます。今後御本人の御協力をさらに一そういただきまして、私どもといたしましても、真相はあくまでも究明して参りたい、かように思っております。
  79. 亀田得治

    亀田得治君 当日、事務所の捜索に当った八名の警察官というのはどういう方ですか、氏名は。
  80. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 警部補橋本助一、警部補友添三、それから巡査部長の国安原二、それから巡査部長の八木京、巡査部長の小西満男、それから巡査の竹沢貞夫、巡査の前田通則、それから一つ落しましたが、巡査の、ちょっと読みにくい字ですが、もう一人おります。
  81. 亀田得治

    亀田得治君 その警備の方は……。
  82. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 指揮者は、橋本という警部補です。
  83. 亀田得治

    亀田得治君 それから事務所の二階には小さな部屋と大部屋があるわけですが、小さな部屋にお入りになったのは、どなたですか。小さな部屋を捜索されたのは。
  84. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 二名、報告があったと思うのですが、ちょっと調べまして、後ほど申し上げます。
  85. 亀田得治

    亀田得治君 二名ですね。
  86. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) たしか二名であったと思います。その机の近くを捜索したということですね。
  87. 亀田得治

    亀田得治君 その当日、岡本がそういう盗難にあって、近くの瓦屋町の派出所へ届を出すために行った、こういうことは聞いておりますか。
  88. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) はい。存じております。
  89. 亀田得治

    亀田得治君 そのとき、応待した警察官の名前はおわかりにならぬでしょうか。
  90. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) これは十三日の午後四時五十分ごろ、南警察署二ッ井戸巡査派出所に、年令二十才くらいの女の人が見えまして、巡査北川詮男、この巡査に届出があったのです。警察官が、現場をそのままにしてくれていますかと尋ねたところが、その女の人は黙って帰ったのであります。そこでその巡査は、直ちに本署にその旨報告をしたところ、重大な事柄であるから、その届出をしてこられた方に、一つ本署まで来てもらうように話してくれ、こういうようにお願いをした。ところが、四時五十五分ころ、さらにこの派出所に年令三十二才くらいの背の高い男の人が見えて、大商連の事務所から盗難届に来たと言われましたので、本署の方に、それはちょうど都合がよろしいから行ってもらいたいと言ったところがそのまま帰られた。さらに南警察所の警備係長に公衆電話があって、交番では盗難届を受理しないのかという抗議があったようでありますが、いやそうでなくして、大事な問題であるから、本署に来てお話しを願いたい。臨検その他の措置をとって十分に処置をいたします、こういうようにお答えをしております。五時十分ごろ、岡本治子という人がこの派出所に来て、紛失届を出したいと見えておるのであります。  なお、先ほど申しましたのにもう一点つけ加えますと交番に当初届出のありましたときは、机の中に入れてあった小切手、現金等がなくなった、こういう御申告であったのであります。正式に出されておりますのは、ハンドバッグの中に入れてあったものがなくなった、こういうようになっております。
  91. 亀田得治

    亀田得治君 それでその派出所の北川警官のことだろうと思うのですが、結局、届は受け取らなかったわけですか。受け取らないで、南署の本署の方に出さしたことになるのですか。
  92. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 五時十分ごろ、岡本という女の方が見えたというところまでさっきお話しましたが、その後をお話しします。  届出をしたいと言って見えましたので、北川巡査がこれを受理して、紛失届用紙に所定の事項を書き終ったころ、自家用自動車で同派出所に来ました氏名不詳の三名の男の人が、机の中に入れてあった金がなくなったのに紛失届はおかしい、盗難届であると言ったので、同巡査は盗難届用紙を取り出したところ、一名の男が、今は書けない。これからこの岡本さんを連れて府庁の方に行かなければならないから、あとで書いて持って来ると言われて、その盗難届用紙をその男の人に渡しております。翌々日の十五日の午前十時五十分、岡本さんがこの派出所に盗難届を出された。そこで受理をしております。
  93. 亀田得治

    亀田得治君 たぶんこれは北川という巡査だと思うのですが、岡本さんに、こういうことを言ったというのですがね。届に行ったところが、それは共産党への弾圧なんだから、金のなくなるくらいのことはあるわい。府警に届けなさい、と言うて、取り合わなかったというのですね、初め。そういうことは聞いていませんか。
  94. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 共産党に対する弾圧だから、金のなくなるのは当りまえだというような考え方は、おそらく警察官は持っておらない。そういうことを申すはずは私ないと思う。もしかりにあるとすれば、非常な不謹慎な話だと思います。常識で考えまして、そういうことはあり得ないことです。
  95. 亀田得治

    亀田得治君 あり得ないことを言われたというので、岡本本人から私のところへ手紙がきているわけですがね。実際にこういうことを言ったとしたら、もう大へんな不謹慎なことです。これは調べてもらいたいと思うのですね。まさか全然ないことを作り出すわけがない。こういうふうに書いてあるのです。それは、共産党への弾圧なんだから金のなくなるくらいのことはあるわい。府警へ届け出よ、と言って、取り上げてくれなかった。今お話を聞いても、どうも届がどっちの責任かわかりませんが、行きつ戻りつしているような感じを与えるわけなんですが、そういう経過の中で、あるいはそんなことを口走っておるわけかもしれない。あるいは本人は軽い気持で言ったかもしれぬ。軽い重いにかかわらず、もし言ったとしたら大へん重大な問題ですね。それは調べてほしいと思うのです。  それからこの事件について、カバンを岡本が下へ持って下りたとか下りないとか、そのことについての意見が食い違っているということも、私、手紙で見ておるんです。それで、立会人の方は、何か、岡本と思われるような人が、黒い光るカバンを持って下りたというようなことを言っておるらしいのですが、岡本の言い分は、おそらく警察では聞かれていると思うのですが、黒いカバンというのは、それは大商連の事務員のカバンであって、自分のは黒いカバンじゃない。何か、ブルーのつや消しのものです、とこういうことです。それでこれは、事務員がおくれて来たわけですからね、その日は。岡本はここの事務員じゃないから立ち会いを断わった。事務員がおくれて来て、そうして二階へかけ上った。そのときに、その黒いカバンを事務員が持って上っておる。それを、こういう事件があろうとは考えておらぬから、立会人の方は錯覚されているのじゃないかというような意味のことを言ってきておるんです。この点が双方の意見が食い違っていて困っておるということが書いてあります。あなたの方からもおっしゃったわけですが、岡本からは、そういうことを三月の四日ですか、お調べになったときに聞いておりませんか。記録ではどうですか。
  96. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) その記録を私手元に持っておりませんので、詳細には存じませんが、先ほど申し上げましたように、どうも警察の方にはお話をいただけないので、非常に実は困っておる状況でございます。
  97. 亀田得治

    亀田得治君 信用されていないのだ。
  98. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 亀田先生から、一つ警察の方によく話すようにお話を願いたいと思います。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、基本的に、警察としては、この紛失事件というものをどう考えておるのか。これを一つ端的に聞きたいと思います。  私の聞きたいというのは、そういうことがないのに、何かでっち上げておる。そうして無理難題を言うておるというふうにとっておるのか、それとも紛失自体はあったのだ。ただその原因等については、これは簡単には断定できないでしょうが、そこの点はどう見ているのですか。
  100. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 御本人から届出が出ておりますが、紛失があったか、なかったか、その事実については、まだ不明だと思っております。これは警察といたしましても、この真相は極力明らかにいたしたい、かように思いまして、先ほども申し上げましたように、取調べ、調査をいたしているのでありますが、肝心の被害者といわれる方から御協力が得られないので、非常に困っているというのが実際の状況でございます。
  101. 亀田得治

    亀田得治君 これは、紛失自体について若干疑いを持っておられるような答弁ですが、そういうことですと、これはなかなか捜査は進まぬですよ。私も、実際その点が一番心配しているところなんです。だからこれは、手紙もお見せしてもいいわけですが、机の上にあったとか、なかったとか、そういうことの言葉がちょっと違うとか、違わぬとか、そういうことにあまり特別な理由をつけたり、そういうことはなさらぬで、もう少し大きく見ないと……、これは机の上と下と間違う場合はありますよ。だれだって、大事なものは、机の中に入れているという普通慣習があれば、机の中と思う場合があるだろうし、とにかく小切手とか、銀行の預金通帳とか、相当大きなものが結局なくなったことは事実なんです。そうして本人からも、銀行にそのことを直後に電話をしてとめていることも事実なんです。だからその事実だけとってみたって、紛失事件自体を疑うような態度では、なかなか私は捜査も進まぬと思うのですが、どうなんですか。そこまででっち上げているという考えなのか、私はそんなことまでできるものじゃないと思うのですが、どうなんですか。
  102. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 紛失自体に警察が不信の念を持っているというようなことはございません。私の答弁からそういう印象をお受けになったといたしますれば、これは私の答弁がちょっと至らなかったためだろうと思いますが、警察といたしましても、いやしくも捜索の場合に金品が紛失したというようなことは、きわめて重大な問題です。これはどこまでも真相は明らかにしたい。現在のところはただいま申し上げましたように、どうも真相がまだ十分に突きとめられておらないという状況でございます。
  103. 亀田得治

    亀田得治君 先ほどの、カバンを置いてあった小さな部屋にお入りになった二人というのはわかりましたか。
  104. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) ちょっとお待ち下さい、今、探しておりますから……。委員会が終りましてからお話し申し上げましょうか。
  105. 亀田得治

    亀田得治君 すぐわからぬですか。
  106. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) その捜索に当ったかどうかちょっと不明確ですが、ハンドバッグが、置いてあった場所を見ておる警察官が二人おります。で、ハンドバッグは、事務室南東すみの奥にある机の上に、口金を北側に向けて横倒しにして置いてあったということが捜索従事員の友添三という者と小西という者、この二人の供述により判明しておる。おそらくこの二人が、その部屋に入って捜索をやったのではないかと思います。
  107. 亀田得治

    亀田得治君 これは、大部屋と小さな部屋との間は、板の仕切りになっておるようですから、従って、その二人の方が見ておるわけですから、これは結局そこの部屋を捜索された人でしょう。だから、その人の供述からみても、そういうもとがあったこと自体は、これは間違いない、従って、それが今ないわけですから、紛失していることは、これは間違いないわけである。で、その直後に、ともかく小切手と銀行預金はということで、銀行の方に岡本治子が連絡して、その点のとめ置きだけはしたことも、これはもうあなたの方でも調べておると思う。だから、そういうわけですから、紛失事件自体は、やはりちゃんとあったものという立場で、一つ熱心にやってもらいませんと……、こういうところで、あまりその嫌疑などのようなことを言っては、はなはだ本人に対してもお気の毒だから、なかなかそういうことまでも言うべきじゃないかとも思うのですが、私の方でも、もし岡本治子があまりあなたたちの質問に答えないということであれば、これはよく注意します。もっと積極的に、いろんな事情についてざっくばらんに話をするように……。それから、あなたの方でも、これは一日も早く真相をはっきりしてもらいませんと、これは重大な問題だと思うのですよ、令状を持った捜査中に何かなくなったというのは。私の方もそういうふうに注意しますが、できるだけ早く真相一つ調べて、こちらへ御報告願いたいと思います。一応きょうのところは、この程度にとめておきます。     —————————————
  108. 青山正一

    委員長青山正一君) 先ほど亀田委員から、丸の内警察署留置場における暴行致死事件について、前丸の内警察署長並木伊平君を参考人として出席要求されたいとの御発言がございましたが、来たる四月十一日、金曜日、午後一時より当委員会本人出席を求めることに決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  三件に関する本日の調査は、この程度にとどめます。なお、次回は、四月八日、火曜日、午後一時、刑法関係三案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案を議題にいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時十八分散会      —————・—————