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政府委員(平賀健太君) 従来、株式会社におきまして、資金を調達いたします際に、担保として用いられておりましたのは財団抵当制度なのでございます。ところが、この財団抵当制度は、明治三十八年にできたのでございますが、当時としては非常に合理的ないい制度であったわけでありますが、その後、産業の発達につれまして大
企業ができ、日本でも興るようになりますと、必ずしも適当でない、特に、手続がかなり煩瑣でありますために、時間と
経費が非常にかかるわけであります。そういう関係でかねてから経済界の方では、この財団抵当制度の簡素化の要望があったわけでございまして、現に、
昭和二十四年に日本経済団体連合会から財団抵当制度の簡素化の要望があったわけでございます。
法務省としましても、かねてからこの財団抵当制度の合理化について
考えておったのでございますが、これは単に財団抵当制度を少し修正をするというようなことではやはり足りないのではないか。
根本的に
検討してみる必要があるというので
検討しておったのでありますけれ
ども、経団連なんかからもこのような要望がありました折柄でありますので、一まず財団抵当制度で改正を要する点はまず改正しようではないかということになりまして、
昭和二十七年に工場抵当法の一部改正を行なったのであります。ところが、ただいまも申しました
通り、この財団抵当制度のこういう部分的な改正だけではとうていこの日本の産業の現状には適応いたしませんので、さらに
法務省といたしましては
検討いたしまして、ただいま議題になっておりますような
企業担保制度の構想を立てるに至ったのでございます。そういたしまして、
昭和二十九年に事務当局で一応案を作りまして、これを世間に公表いたしまして、各方面の意見を聞いたのでございます。これは
法務省民事局の参事官室試案ということをもちまして、条文の形にしました一案を作りまして、大体骨子は今問題になっております
企業担保法案と似たものでございますが、これを公表いたしまして各方面の意見を聞いたのでございます。さらに各方面の意見を参酌いたしまして、この
企業担保制度の立案の
仕事を続けたのでございますが、この
企業担保制度につきましては、
企業担保権を設定できるものは株式会社に限るべきであるという点においては、各方面とも意見が一致しておったのでございますが、すべての株式会社がこの
企業担保権を設定できることにすべきか、株式会社の規模、資本の大きな株式会社だけが設定できることにすべきか、それともすべての株式会社が
企業担保権を設定できることにすべきか、それからまた、被担保債権をどうするか、社債を担保にすべきことはこれは当然でございますが、株式会社の借受金、こういうものについても
企業担保権を設定できることにすべきかどうか。そういう点で、同じ経済界でございましても、産業界とそれから金融界との間で、多少意見の食い違いがございまして、経済界の方でも
十分検討していただいたのございます。そういたしまして、経済界の方でも
十分検討していただきました結果、意見が一致いたしましたので、昨年の十月でありましたか、法制審議会の民法部会の財産法小
委員会におきまして、正式にこの問題を取り上げまして
検討いたしたのであります。そういたしまして、昨年の十二月に法制審議会の民法部会を開きまして、この民法部会には、従来の部会の
委員のみならず、産業界、金融界も含めまして、経済界の学識経験者を加えましたこの民法部会におきまして
検討いたしまして、要綱案を作り、その要綱案をさらに本年一月十七日、二十四日の二回にわたりまして、法制審議会で
検討していただきまして、この二十四日の総会で、お手元にも資料として配っておりますところの
企業担保法案要綱が可決されたのでございます。この
企業担保法案の要綱に基きまして立案いたしましたのが、この議題になっておりますところの
企業担保法案でございます。
大体今までの経過を申し上げると、以上のようなことであります。