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1958-02-28 第28回国会 参議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十八日(金曜日)    午後二時四分開会  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            吉野 信次君            亀田 得治君            藤原 道子君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警務部長 荻野 隆司君    警察庁警備部長 山口 喜雄君    法務省民事局長    心得      平賀 健太君    法務省刑事局長 竹内 壽平君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件(大阪府における税務署職員不  当逮捕問題に関する件) ○企業担保法案内閣提出)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  本日は都合により、大阪警察本部税務署員不当逮捕問題を議題に追加することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それでは御質疑の方は御発言願います。  本日は、警察庁長官石井さん、山口警備部長荻野警務部長法務省から竹内刑事局長川井公安課長、五人のお方がお見えになっております。
  4. 亀田得治

    亀田得治君 去る二月十二日でありますが、大阪府警当局が、大阪府の堺税務署所得税係の岡田君というのを国家公務員法第百条、「秘密を守る義務」の違反の疑いということで逮捕いたしております。その後、さらに大阪国税局関係税務官吏の高田君というのを逮捕して今日に至っております。  問題の点は、両君が昭和三十二年営業庶業所得標準率表、もう一つ昭和三十二年度所得業種目別効率表、この二つ国家公務員法百条に違反して外部に漏らした、こういう問題のようであります。  ところが、この問題は、一度新聞等に発表されまするや、実際は官公庁の皆さんには非常な衝撃を与えているのです。  それで私は二、三点この問題の重要な点についてお尋ねしていきたいのですが、第一点は、今私が申し上げたこの二つの表、こういうものは秘密として扱い得るものなのかどうか、こういう点なんです。おそらく検察なり警察当局では、国税当局秘密だと言うから秘密扱いだという解釈で法律を発動しているのかもしれませんが、ただ、だれかが秘密だと言えば秘密になるというものでは私はないと思うのです。秘密にしてならぬものがあるはずなんです。私はそういう面から見ると、この課税標準率秘密にされるというふうなこと自体が、はなはだおかしいのではないかと考えているのです。それで警察検察当局では、国税局がそう言うからという意味ではなしに、もっとその辺の基本的な検討というものをなされたものかどうか、そういう点についてまずお聞きしたいわけです。
  5. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) ただいま御質問営業庶業所得標準率表と申しますのは、業種品目別売上金額の平均的な比率を示すものであります。たとえば、売上金額はわかるが、経費に関する帳簿がないというようなために、必要経費金額がわからない場合に、売上金額にある一定比率をかけて所得金額を推定していくというような書類でございます。これは税務署所得金額を推定いたしますために作っている書類でございます。  もう一つ所得業種日別効率表と申しますのは、使用人員在庫品、在高等の外形標準から、売上高一定相関関係を持つような業種目についてそういう外形標準、たとえば飲食店であれば、いすとか、テーブルとかいうような、そういう単位当りの年間の売上高を推定していく表であります。売上高に関する帳簿がなく、売上金額がわからないというような場合にこの売上高を推計するために使用されておるものであります。この文書は、これは税務行政の面におきましては秘密取扱いをいたしておるのでありまして、もちろん今回問題になりましたものにつきましても秘扱い、あるいは部外秘というような判が明瞭に押してあるのであります。国家公務員法にいいますいわゆる秘密という問題につきましては、その秘密外部に漏れますために公務の執行に非常に工合が悪いというようなものは、これはもちろん当然でございますが、なお、従来の判例等を調べてみますと、外形的に当該官庁におきましてこれは秘密取扱いを要するとして秘扱いの表示が付してあるような場合におきましては、その文書を職務上手に入れました公務員が、その文書内容一般に知らせることを禁ずる旨を国の機関が明示したものと認められまして、こういう場合におきましても、国家公務員法のいわゆる秘密という範囲にそういう文書は該当するものであるという判例もあるのでございます。そういう意味におきまして、今回この事件国家公務員法違反事件として、警察といたしましては措置をいたしたわけであります。
  6. 亀田得治

    亀田得治君 まあ警察当局態度が、大体意味はわかりますが、そこでこういう二つの表を秘扱いにすること自体が間違っておるのではないかというのが、これが税務官吏並びに納税者双方のもう共通した気持なんです。秘密のままではこれは仕事ができないわけなんですね。納税者の方から見れば、なぜそういうふうな認定をされるのかというふうに税務署に尋ねる、結局税務官吏としては、たとえばうどん屋さんであればうどん屋のそこの項目、やはりその基準に従った回答しかできないわけです。それを全部積み上げていけば、それは自然に漏れていくわけなんです。たとえば、農業所得等の場合でも、農業協同組合なりあるいは農民組合等で要請してきてもらえば、ことしはこういう標準でいくとか説明してくれる税務署もたくさんありますよ。だから私は当然なことだと思うのですが、公表しておくこと自体が。この点を私はそういうもっと上の方が検討してもらいたいと思います。第一、こういう事件が起きてから大蔵委員会等でその表の提示を求めているが、それを見せるとか見せぬとか、そういったような問題を起して、今問題になっているようですが、果してそういうことが許されるかどうかというのです。そうでしょう。第一、国会とか、議会政治の始まりから考えたってそうですよ、そんなことはわかりきったことですが、どうして税金というものを明確な基準で納得していくように納めていくか、これが議会政治一つの大きな柱ですよ。法律は明確にされているけれども、一銭一厘といえども法律で明確でなければとれないわけでしょう。ところが、実際の運用面における具体的な判断基準ですね。これは法律なり議会政治根本から言ったら公表しておくのが私は当然だと思う。それを無理やりに一方的にマル秘の判を押したから、これは秘密になる。どっちかわからぬ程度のものはそんなに私はこだわりませんが、こういう表自体を一体秘密にするということが筋が通らぬと思うのです、納税者立場から見ても。それから実際の税務官吏の執務上の実情を私ども聞いておりますが、これは秘密にしおおせるものではありません。こういう問題ですから、それで一般官公吏の方が非常な衝撃を受けているのは私は当然だと思う。何も国家の重要な機密をどんどん外に出しなさいというようなことを私は申し上げてない。この問題は、はなはだ私は筋が少し間違っているように思いますが、そういう点の検討警察なり、検察上層部でやって、そしてこの逮捕等に手につけたものかどうか。実はそこまでやっていなかったのだが、ともかく手をつけてしまったから仕方がない、形式論理で押していくのだ。なるほど一時的には押せたって筋の通らぬところはそう最後まで押せるものではないのです。その辺のところを、私は長官なり、刑事局長一つもっと高い立場でそういう検討をなされて、そして手をつけたものかどうか。もし検討したとしたならば、どういう検討がなされたのか。根本的なところを一つお聞きしたいのです、お二方から。
  7. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほど警備部長お答えいたしました通り、今回の大阪におけるこの事件につきましては、大阪府警当局とおそらくは地元の地検とは緊密に連携をとって、こうしたものの扱いについては相談をしたものであると思うのでございます。御承知のように、こうした個々の具体的事件について私どもの方、中央で、これを一々指揮命令する権限は持っておりません。従いまして、今回の事件についてこれを検挙すべきかどうかというようなことについては、私どもあとから報告には接しましたけれども事前にこれをこうすべしというような指揮はいたしておらないのでございます。お話通り官庁秘密文書というものが軽々に、また、必要以上に便宜的に秘扱いにされるということでは一般国民方々にかえって御迷惑をかける。また、官庁事務能率の上から言ってもかえって不便だという面もありましょうから、いかなる文書官庁秘密文書とすべきかということについては、十分実質的にその必要の有無の判断をしてきめるべきものであるということは当然であります。一たび秘扱いにしたものでありましても、それが未来永劫に秘扱いでなければならぬということではないのでありまして、一定の時期がたったならばこれは公表してさしつかえないという時期が参りましょうから、そういった措置官庁文書についてはそれぞれ適宜に取り扱いがなされておるというふうに私ども考えておるのでございます。今回の具体的問題になりました大阪国税局のこの書類が、当時は秘扱いのものであったように私ども聞いておるのでございますが、今後いつまでもこれが秘扱いでなければならぬという点は、先ほどいろいろお話のありましたように、その必要がなくなる時期があるいはくるのではないか、そうした場合には、これも公表してもよいという扱い関係者においてなされるものであろうと、かように考えておるのでございます。ともあれ今後一般の問題といたしまして、およそ官庁秘密文書というものはどの範囲に判定すべきかということにつきましては、十分慎重に考えるようにいたしたいと、かように存じておる次第でございます。
  8. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 実情を申し上げますと、この具体的事件につきましたは、電報で簡単に報告をいただいておる程度でございまして、事前にこの文書が今亀田委員のおっしゃるように秘のものであるかどうかという内容検討をいたしました上で、私どもも関与して検挙ということになったわけではないわけであります。これは大阪には大阪検事長も検事正もおりまして、その辺で、もちろん厳密に検討した上でやったことだと思うのでございます。しかしながら、今内容を伺ってみますると、警備部長から御説明のありましたように、書類でございますればこの標準率あるいは効率を書いた書面というようなものはもしもこれが一般に公開されるということになりますると、一部の納税者にとりましては、それに合せて過小に申告をするといったような傾向を助長するかもしれませんし、また、一部の納税者にとりましては、幾ら正直にやっても画一に査定をされるだろうといったような危惧の念を持つでありましようし、まあ徴税行政については私は詳しくはないのでございますけれども、しょせん法律に定めております税率によって取るわけではございますが、すべてそれらは与えられた帳簿その他の書面によって認めるわけでありますが、そういう書面がないような場合に、それじゃ取らぬでもいいかといえば、そうではない。やはり取らなければならぬということになりますると、今言ったような一応の標準を頭に置いて行政を行なっていくというものさしになるものだろうと思うのでございます。そうだといたしますると、石井長官も言われましたが、これは未来永劫そういう秘扱い的なものではないと思いますが、さしあたりの処置といたしまして、こういうものを外部に公開しない方がいい。役所取扱いとしましては秘という扱いをされたものと思いますが、そういうふうに思いまするならば、やはり判例の、いわゆる国家公務員法百条に関する判例説明しておりますところによりますと、この種のものは秘の扱いをし、かつ保護されなければならぬものであるというふうに理解いたしておるわけでございます。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 そういう考え方で、こういう表をごらんになると、税法自体が実は疑問が出てくるのです。官庁がどういう考え方課税してくるのかという基本は、これは税法できめてある、そうでしょう。だから、どこの企業でもその税法に合すようにいろいろ検討しているわけです。だから、ある場合によってははなはだ酷なことになる場合もあるし、逆に上手に合せればうまくいく場合もあるでしょう。税法というものはそういうものですよ。これはそうでしょう。だから、多少のいろいろな問題が伴いましても、具体的な標準というものは明確にすることが必要なんだということで議会政治というものが出てくる。これは根本ですよ。それを税法ではああいうふうにちゃんと税率なり、いろいろなものを明確にしておるが、具体的な適用基準等については、これは隠している。それでは矛盾がありますよ。その点、それは隠してやれば税務官吏の方は便利かもしれない。だけれども、納める方ははなはだ不便です。現実に、たとえばいろいろな帳簿なんかそろえることができぬ小さな経営なんかもたくさんあるわけですからね。だから、そういうものについては税務署はこういうふうに考えているんだとわかっているのなら、納税義務を持っている人たちはそのつもりで初めから臨むわけです。こうすべきなんです、むしろ。それを国会においてでもあなた、それを公表しないというふうなことを一方の委員会で言っている。で、結局警察法務省当局もそういう考え方を是認したようなことで、このマル秘というものを認めている立場なんですね。だが、今お聞きしますると、今度の事件に手をつけるに当って、特に警察のあるいは検察最高首脳部検討はされなかったようでありますが、私はこれは十分検討の余地のある問題じゃないかと思うのですよ。これは一つ今からでも、今後いろいろな問題のやはり前例にもなると思いますので、検討してほしいと思います。こんなことをすぐ国家公務員法違反ということでいきなり逮捕なんかするのでしたら、それは私はたくさん知っておりますよ。もっと政府高官が漏らしている秘密というものを。そういう点をこれはもう少し一般官公吏の人が納得のいくような検討を私はしてもらいたいと思います。そこで、私先ほどちょっと申し上げたわけですが、納税者などが、この表を適用しなければならぬような業種の方が、役所一体自分らのように帳簿などがそろっておらぬ場合などはどういうふうに大体見当をつけておられますか、こういうことをどこでも聞きます。私どももしょっちゅう相談を受けます。電話で聞くこともあります。そういう場合に、税務官吏がその標準を言うことはこれは悪いのですか。そんなことは答える必要がない。おれの方で判断するんだ。そういう不親切な態度を私はとるべきじゃないと思うんです。私が今申し上げたような場合、税務官吏、それはやはり国家公務員法百条違反になるんですか。これは責任者の方から一つ答えて下さい。重要な問題ですから、しょっちゅうある問題なんですから、長官あるいは刑事局長から。
  10. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私、徴税抜術のことに関しては何ら知識を持っておりませんので、よくわからないのでございますが、おそらく税務当局といたしましては、徴税技術上必要な限度において秘扱いにすべきか。あるいは公表して一般徴税者便宜その他に資するために必要なものは公表いたすでありましょうし、従いまして、私どもといたしましては、各官庁のそれぞれ責任を持っておやりになるというものに一応信用、信頼すべきものである。かように考えますので、国税庁当局徴税上の事務運営上、必要な限度において秘扱い文書最少限にお持ちになるということは、これは当然あるべきことと思うのでございまして、それを一々私どもがそうではないのじゃないかということで、けちをつけると申しますか、しろうとのくせに内容を分析してあまり批判がましいことを言うのはどうかという面もあろうかと思います。いずれにしても、先ほどお答えしましたように、官庁が自己の便宜のために必要以上に秘扱い文書を設けて、そのことによって、一般国民方々にかえって迷惑をかけるというようなことに相なってはこれはいかぬと思いますので、その辺のところはおのずから自粛いたしまして、適正なる措置がとられるべきものだ、かように考えるのでございます。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 私のお尋ねしているのは、もう少し具体的にお伺いしているんでありまして、納税者自分の方は帳簿がそろっておらない。外形的な事実はこういう状態である。こういう場合には税務署はどういうふうな標準を持っておられるのですかと聞きますね。そういう場合に、こういう書類を見て、これはこうこうこうだと、こうおっしゃる。書類でも覚えておればいいでしょうが、それは国家公務員法百条違反になるのか。何も今秘にするとかせぬとかじゃない、百条違反としての罰則の適用の問題として私はお聞きしている、具体的に。そういう場合どうですか、これは公務員法違反になりますか。
  12. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 御質問の点は、いわゆる公務員の知っておる国の秘密のうちで、実質的な秘密といいますか、外部方々に知られては困るというような事項の問題だと思うのであります。で、お話のような場合は、おそらく税務署側としましては、できるだけ申告を待ち、あるいは経費に関する帳簿その他の参考の材料の提出を求めまして、そしてそれを基礎にして所得税金額を算定していくと思うのでありますが、それがまあどうしてもわからないという場合に、税務署側に対して、税務署としてどういう基準課税をされるのかと言われた場合には、場合によりまして、税務署側として考えておる課税の方法を話す場合も、これは私はあり得ると思うのであります。それがこの国家公務員法に言う秘密を漏らすということになるかどうか。これは場合によって、私はいろいろとあると思います。ただ、今回の文書の場合は、そういう各業種全般にわたる推計をする基準を記載した文書でありまして、しかもその文書は一連の番号を付して厳重な取り扱いを長い間にわたってやってきておるのであります。そして、一番上に秘扱いあるいは部外秘という印章が押してあります以上は、公務員法上にいわゆる秘密を漏らすというその秘密に該当いたすものと考えておる次第でございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 私の質問だけに答えるようにして下さい。私が先ほどあげたような具体例、その場合には、税務官吏標準を語られることもあり得るという意味のことを今お答えになっておるのですが、そこで、取締り上の立場から見て、それは公務員法違反かどうかということを聞いておるのです。ほかのことはまた別に聞きます。百条違反になりますか。
  14. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 徴税に際しまして、納税者といろいろ話し合いが行われるわけであります。その話し合いの際に、税務署側としての一つ基準といいますか、そういうようなものを大まかにお話し合いをするということは、これは私は差しつかえないと思います。しかしながら、その基準につきまして、これをきわめて明確に、しかもそれが大事な基準でありますような場合には、公務員法違反として成立することはあり得ると、かように考えます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 はなはだ不明確なんですね。あり得るとか、あるいは大まかだとか、あまり自信がないようなお答えですね。で、実際には各業種とも、実情はそういうふうにやっているのです。だから、それをずっと積み上げて各業種全部を集めれば、一つの表ができるのです。個々的に許されることが、全体の一つの表になったからといって、それはいかぬと、こんな論理は私は出てこないと思うのですね。だから、そこまでいきますと、やはりこういうものを秘扱いにしておくこと自体に基本的な一つの無理がある。無理があるから、現実には末端で破られておるわけなんですね。破らなきゃ、また、徴税もできないわけですよ。その点を私は一つ検討してほしいと言っているのです。  もう一つは、大体基本的な問題としての御考慮をお願いしているわけですが、実情はどうかというのですね。しからば、この二つの表の実情、これはたとえば、私はここに二、三冊実物を持ってきておりますが、前年度のものはみんないろいろな税務関係の著書などには載るわけですね。現に載ってるんです。ただ、現在二月なり、三月の徴税期標準というものは、まだ時間的に間に合わぬから、書物などにはなりません。ならぬけれども、これはもうほとんど知っております。経理事務所なり、会計事務所などでは知っておるのです。  で、もう一つ具体的に申し上げると、こういうことが問題になった後、神戸の南藤治さんという方が、兵庫の税務署長にこの表のことをお聞きしたのです。署長は、いやそんなものは秘密でないはずだと、こうおっしゃっておる。それほど、なるほどどこかでマル秘判こを押してあったのかもしれないが、実際はそんなものを秘密にしておいたのでは仕事ができない。それで、税務官吏自体がそう思っておるのですね。実情はまさにそういうことなんですよ。そういう状態にあるのに、やぶから棒のように、いきなり何か表を漏らしたというようなことで逮捕しちゃうというのは、全く実情を無視しておると思うのです。たとえば、業者が会合をやるでしょう。税務署の方が説明に来る。そうすると、たまたま書類など忘れてきた税務署の方が、業者の方もそういう表を持っておりまするから、ちょっとその表を貸してくれぬかと言って、それを見て、そうしていろいろ説明しておるということすらもあるのですよ。実例をあげて下さいと言えば、いつでもあげますよ。たくさんある。ですから、そういう現実も何もない場合ならば、またそれは別ですけれども現実の事態もそういうふうになっておる。そういう状態で、国税の本庁の方でマル秘の判を押してあったからといって、いきなり逮捕して役人を取り調べるというようなことは、どう考えたってこれは私は納得いかないのです。法務大臣あとからお越しになりましたが、どういうふうにこれをお考えになりますかね。こういうことを国家公務員法違反逮捕なんか事前の注意も何もしないでいきなりばさっとやる、そんなことを本気でおやりになるなら、私ども、もっともっと高官の方から知っている秘密そういうものをどんどん暴露しますよ。実際のところ、そうしなければ下級の官吏は納得しませんよ。さっきから刑事局長警察庁長官にお聞きすると、この事件に手をつける事前に別にいろいろな基本的な検討はしたわけではないというようなことであったようですが、これは何とかもっと法務当局の方で再検討をされませんと、はなはだ悪い前例になることを心配するのです。大臣の一つ考えをお聞きしたいと思います。
  16. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 私は冒頭からお尋ねの趣旨を承わっておりませんから、あるいは誤解をいたしておるかもしれませんが、この事件につきましては、私はあまり詳しくまだ報告を受けておりません。ただ、そういうことがあったということだけ承わっております。これはおそらくは国税庁扱いをよく聞いてみませんと、国税扱いの上でそれが漏れては非常に困るということになれば、当然国家公務員法第百条に照らして相当の処置をとらなければなりませんし、それがだれでも知っていることで、そんなことを漏らしたって百条違反に当らないということでありますれば、お説のように、軽々しく逮捕するということはよくないのでございますけれども、要するに問題は、その秘密を漏らしたということが百条に当るかどうかということでございまして、百条に当らないものを逮捕したらばこれはいけないけれども、当るものならば、綱紀振粛の今日でありますから、厳重に処断していかなければならない。ただ事実は、今逮捕した方では、明らかに百条違反に当るということで逮捕したわけでございましょうが、今日まで受け取っておりまする報告ではその程度でありまして、なお、詳細なことは、よろしければ刑事局長からお答えすることにいたします。
  17. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 亀田委員のおっしゃるように、この標準率表あるいは効率表と称せられるものがいろいろな形で外に漏れているのじゃないか、あるいはまた、税務署長がそんなものは秘扱いのはずはないということを言ったというような、いろいろ実例をあげられての御説明でございましたが、私の理解いたしますところでは、これはものさしだと思いますので、そのものさしを頭の中に置いて、一般納税者に対して、帳簿がないときにはこういうふうな処置をしたいとか、あるいはするとか、いろいろな御指導の方法があると思います。それはそれとして私は差しつかえないと思うのでありますが、内容が同じでありましても、けれども、こういう秘扱いになっておるものであるぞと言って、お前にだけこっそり知らしてやるがこうだというやり方でやります場合には、やはり触れるというふうに私は理解するわけなんでございます。まさしく税法の建前から申しますと、青色申告と申しますか、申告制度を、私詳しいことは存じませんが、申告制度になっておって、何でも正しく実情に即した申告をして、それをまあ政府側はうのみにしていこうという建前になっておるわけですね。そういうことを前提にしてものを考えますと、こんな標準を、ものさしを持たなければならぬということは、ほんとうはあってはならぬことだろうと思いますが、しかしながら、帳簿その他うそを言う人もあるわけでありますし、そういう場合に、これを何とかして確定していかなければならぬという行政事務があるといたしますれば、こういうものさしを、年々歳々経済事情の変化等を織り込んだ標準というものを考えるということは、政府当局としては当然あるべきことだと思います。そうしてそれを、これが標準だと言って示すことになりますと、今言ったように指導として、それを頭の中に置いて指導される場合は、これはともかくも、これは秘扱いになっておって、だれにも見せぬことになっておるのだが、その中のこれは一部だがと言って例にあげて示すということは、個々の場合でありましても、やはり秘密に扱うべきものを漏らしたということに私はなるのじゃないかと思います。これは御満足のいく解釈ではないかもしれませんが、私はそういうふうに理解いたすのでございます。
  18. 青山正一

    委員長青山正一君) 亀田君に申し上げたいと存じますが、国税局の関係係官に出頭を求めましたのですが、同じ案件で大蔵委員会へ出席なすっておられるので、当委員会へどうしても出席できぬ、こういう御返事でありますから、その辺よくお含みの上……。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 根本は、まあ大蔵当局が税法の建前というものを無視してそういうものにマル秘の判を押しておることに問題があると思うのです。あると思うのですが、実態を検討されたら、マル秘にすること自体に非常な問題があるのです。そのことだけは私は若干でも、本日私の申し上げていることで幾らかは皆さんの方でも推定できると思うのです。従って、そういうものに対して、直ちにこれは国家公務員法百条違反ということで、事前の予告も何もなくぱっと逮捕する、こういったような刑事上の扱いの問題ですね。この点の再検討を私はお願いしておるのです。何も私は法律をゆるめなさいというのではない。土台そのものに問題がある。大蔵委員会自体がもめているのですから。国会議員にすらそれを示さぬというのですからね。そんなばかげたことはないですよ。だから、その点も考慮されて、刑事上の扱いというものを検討してほしいと思います。はなはだ私は遺憾だと思っております、大阪府警がいきなり逮捕して捜査するという出方に出たことは。なお、その点どうですか、一つ資料等取り寄せられて、具体的に私はほんとうにこれは検討してほしいと思うのです。こんなことを形式的にやられるならば、私は先ほど申し上げたように、何も開き直るわけではないが、不公平ですから、一切の官公吏の方についての資料というものを知る限り出さなければいかんですよ、お互いに。検討されるお気持はないでしょうか。
  20. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) おそらく、大阪府警当局としましては、地元の国税当局並びに警察当局等と事前に十分研究して取りかかったものと考えておりますが、ただいま御指摘の点もございますので、私どもとしては、この件に対しては、さらに十分検討いたしてみたいと思っております。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 それからなお、この事件に関連して、公安調査庁の方々がいろいろな調査にタッチされておるということを聞いておるのです。そうして、この問題自体じゃなしに、何か国税の労働組合の組織の問題とか、いろいろな活動の問題とか、そういうことについてずいぶん執拗に聞かれておるというのですね。これは先だっても、拘留開示の大阪の公判でも、調べられた人自身が言っておるのですから、これは間違いないと思うのです。この問題自体は簡単なことですからね。こんな表がこっちへ渡っておったというだけですからね。私は、逮捕されたそのねらいというものが、そういう点を考えると、労働組合自体に対する弾圧、圧迫、いやがらせ、こういうことを考えておられるのではないかというふうな感じを強く持つのですがね。国税の組合の諸君も、これはもうはっきり言って、そういう疑いを持っております。そういう点などを、どういうふうに警察検察の方ではお考えになっておるのでしょうか。
  22. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 労働組合に対する圧迫というようなことは、毛頭考えておりません。警察の労働組合に対する態度は、何らこれに対していわゆる弾圧とか圧迫とかいうような気持を持って接しておるわけではないのでありまして、私どもといたしましては、健全なる労働組合に対して何ら関与するところはないのでございます。公安調査庁とどういう関連がこの点についてあったかということにつきましては、私は何も聞いておりません。お答えする資料を持ち合せておりません。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、いやしくも本件に関連して、組合活動の動向の調査なり、もしそういうことをした事実があがってきたとしたら、その部分だけこれは行き過ぎだということになりますな、どうですか。
  24. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 警察の本来の任務のため必要なる限度において各般の動向等についてこれを観察するということは、あるいは必要に応じてはありましょうと思いますが、その任務の範囲を逸脱して、特殊な眼をもって各種の団体に干渉がましいことをするということは、これは行き過ぎであると考えております。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあそれだけ承わっておけば、これはいずれどういう調査がされたということはこれは具体的に明確になりましてから、その際に再度お聞きしたいと思います。  それから時間も大体予定の約束の時間がきましたから終りたいと思いますが、最後に一点、この問題に関連して、金銭の紛失事件が起きておる。これは二月の十二日、日は同じ日か翌日ですか、十三日の朝になりますかはっきりいたしません、一日か二日ズレがあるかもしれません。この問題に関連して、大阪商工団体連合会の事務所が家宅捜索をされた。府警の方が八人来られたわけですが、その際に十一万八百六十円、これは現金と小切手合せてですが、これが紛失したわけですね。こういう事件があった。これはもう関係者としては非常に憤慨しておる問題ですが、そして府警なり、当局にその捜査なり、事態を明確にしてほしいと要求しておることですが、いまだにこれが明らかにならないのです。どうもこういう問題が起きますと、本来ならば自分たちの内輪の問題だし、捜査権も持っているのですから、もうじきわからなければならないはずの問題なんです。そういうことがいつも水かけ論のようなことになって終りがちなんですが、この間も丸の内署でもまだはっきりしないわけですがね、この紛失事件というのは報告を受けておりませんか。
  26. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 今回の捜査に当りまして、ただいまお話のありましたような現金と小切手が紛失をしたという届出を警察が受理いたしましたのは事実でございます。この問題につきましては、警察といたしましても事情を明確にいたしたいと思っております。その捜索のときの前後の状況を若干申し上げたいと思います。  府警から警察官が大阪商工連合会、これは問題になりました税務署の職員から、この連合会の事務局長が文書を受け取ったという容疑があった連合会でございますが、その連合会に対しまして捜索を実施いたしました。その事務所におりました岡本治子という人に立ち合いを求めましたところ、どうしても捜索の立ち会いに応じませんので、やむを得ず刑事訴訟法の規定に基きまして、大阪府の南府税事務所の係長の立ち会いを求めまして捜査を開始いたしたのであります。そうしましたところが、^あとになりましてこの事務所の中の机に入れてありましたお金及び小切手がなくなったというような抗議を受けたのであります。初めはこの近くの派出所に、ただいまお話がございましたことを、警察といたしましても慎重にしかもはっきりといたしたいと思いまして、本署におきまして盗難届をお出し願うことをむしろ慫慂いたしました。そしてその盗難届を受理いたしまして、本件と関係のございません刑事係の方におきまして目下参考人等に事情をお聞きして調べておるような次第でございます。なお、当日捜査に参りました警察官六名につきましても、前後の事情等をよく調査いたしまして調べておるのであります。ただいままでの取調べの状況によりますと、捜査中に現金及び小切手が紛失したというようなことを認められる事情は何らございません。なお、今日まで、刑事上の捜索に際しましてそういう金品が喪失したというような例は私は今まで記憶がないのであります。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 岡本という人はきょうもここに来ておられるのですが、あなたは報告だけをお聞きになっているのでしょうが、結局まあ岡本はこれは大商連の事務所の人ではないのです、これは。だから立ち会いを拒否した、先ほどの報告だと、そこの人であるのにもかかわらず拒否したような印象を与える報告ですが、その点が違うわけです。ともかく拒否した。従って、外に出た。中に入った者はこれは警察官だけです。捜索ですから立会人は中に入ったか入らぬかその点がはっきりしないようですがね、若干。地元で立会人の方に聞きましたら、ともかく役所の方だけが入っていることは間違いない。だから六人とおっしゃったが八人じゃないですか。その報告がどうもはっきりせぬような点があるのですが、もう少し関係者はみんな傍聴もしているのだし、だれも見ておらぬから否定しておいたらよかろうというようなことではちょっと済まぬような気がするのです。第一、八人でしょう、六人でなしに。こういう問題では人数など非常に大事でしょうが、不正確でしょう、そういう報告では。
  28. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 六人という報告を受けております。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 だからそういう報告だから、すでにもう間違いがある。だからこれもよく検討して下さい。疑いない、ないならないとはっきり筋の通るようなもっと説明をね。まあ大体この程度に本日のところは私いたしておきたいと思うのですが、ともかく、今起きているこれは国税の皆さんだけの問題でなしに、もう全体の官公庁の労働組合で非常な問題になっているのです。だからそういう不安を与えないような措置をやはり考えていただきたい。  それからついででありますからお聞きいたしますが、先だっての丸の内署の問題ですね、その後これは刑事局長も大いに真相を明らかにするように協力するというふうにおっしゃっておるし、もうだいぶ時間もたっているから、きょうぐらいははっきりお答えできる時期じゃないかと思うので、ちょうどいい機会でありますので、ついでに一つ御発表願いたい。
  30. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 去る十八日だったと思いますが、当委員会におきましていろいろお尋ねをいただきました丸の内署の問題につきましては、直ちに警視庁の方に対しまして十分再調査をいたすように申し伝えたのでございます。その後、警視庁におきましては、東京地検にもお願いをいたしまして、支障のない限りにおいて御協力をいただきました。現在暴行致死で起訴になっております田中何がしの取り調べの資料等におきましても支障のない範囲においてお漏らしをいただいたのでございます。そうしたものを基礎といたしまして、警視庁といたしましては再調査に乗り出して今日に至っておるのでございまして、当時の共謀者等につきましてもあらためて現に当っております。また、関係の警察官につきましても、再販調べをいたしておるところでございまして、近く真相がはっきり把握できるものと考えております。その上において、しかるべき措置をいたしたいと考えております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 再び近くになりまして……はなはだ不満ですけれども、しかし、時間は、これは予定しておらない問題でございますので、一応この程度にいたしたいと思います。
  32. 青山正一

    委員長青山正一君) 終りに、委員長から一言警察当局に対し申し述べたいと思いますが、先ほどの丸の内のあの事件といい、それからただいまの亀田さんの事件といい、これはまああなたの方とはこれは直接の立場ではなしに、非常に立場は間接的立場かもしれませんが、しかし、責任上は一応あなた方は代弁してやっていただくのだ、こういう立場におられるわけなんですが、今までの関係をいろいろお聞きいたしますと、当委員会の調査が非常に円滑にその件に関する限り進行していないわけですからして、今後そういうふうな事件があったら逐一大阪の府警なりあるいは警視庁から報告をとってしまって、いつでもそれに対応できるだけの一つ御準備だけしていただきたい。こういうことを特にお願いいたしまして、この件はこの程度にとどめます。     —————————————
  33. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、企業担保法案を議題といたします。  本件は、去る二月二十日、提案理由の説明及び逐条説明を聴取いたしておりますので、本日は質疑に入りたいと存じますが、質疑に入ります前に、本法案の立案の経緯等について民事局当局から説明を伺いたいと存じます。
  34. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 従来、株式会社におきまして、資金を調達いたします際に、担保として用いられておりましたのは財団抵当制度なのでございます。ところが、この財団抵当制度は、明治三十八年にできたのでございますが、当時としては非常に合理的ないい制度であったわけでありますが、その後、産業の発達につれまして大企業ができ、日本でも興るようになりますと、必ずしも適当でない、特に、手続がかなり煩瑣でありますために、時間と経費が非常にかかるわけであります。そういう関係でかねてから経済界の方では、この財団抵当制度の簡素化の要望があったわけでございまして、現に、昭和二十四年に日本経済団体連合会から財団抵当制度の簡素化の要望があったわけでございます。法務省としましても、かねてからこの財団抵当制度の合理化について考えておったのでございますが、これは単に財団抵当制度を少し修正をするというようなことではやはり足りないのではないか。根本的に検討してみる必要があるというので検討しておったのでありますけれども、経団連なんかからもこのような要望がありました折柄でありますので、一まず財団抵当制度で改正を要する点はまず改正しようではないかということになりまして、昭和二十七年に工場抵当法の一部改正を行なったのであります。ところが、ただいまも申しました通り、この財団抵当制度のこういう部分的な改正だけではとうていこの日本の産業の現状には適応いたしませんので、さらに法務省といたしましては検討いたしまして、ただいま議題になっておりますような企業担保制度の構想を立てるに至ったのでございます。そういたしまして、昭和二十九年に事務当局で一応案を作りまして、これを世間に公表いたしまして、各方面の意見を聞いたのでございます。これは法務省民事局の参事官室試案ということをもちまして、条文の形にしました一案を作りまして、大体骨子は今問題になっております企業担保法案と似たものでございますが、これを公表いたしまして各方面の意見を聞いたのでございます。さらに各方面の意見を参酌いたしまして、この企業担保制度の立案の仕事を続けたのでございますが、この企業担保制度につきましては、企業担保権を設定できるものは株式会社に限るべきであるという点においては、各方面とも意見が一致しておったのでございますが、すべての株式会社がこの企業担保権を設定できることにすべきか、株式会社の規模、資本の大きな株式会社だけが設定できることにすべきか、それともすべての株式会社が企業担保権を設定できることにすべきか、それからまた、被担保債権をどうするか、社債を担保にすべきことはこれは当然でございますが、株式会社の借受金、こういうものについても企業担保権を設定できることにすべきかどうか。そういう点で、同じ経済界でございましても、産業界とそれから金融界との間で、多少意見の食い違いがございまして、経済界の方でも十分検討していただいたのございます。そういたしまして、経済界の方でも十分検討していただきました結果、意見が一致いたしましたので、昨年の十月でありましたか、法制審議会の民法部会の財産法小委員会におきまして、正式にこの問題を取り上げまして検討いたしたのであります。そういたしまして、昨年の十二月に法制審議会の民法部会を開きまして、この民法部会には、従来の部会の委員のみならず、産業界、金融界も含めまして、経済界の学識経験者を加えましたこの民法部会におきまして検討いたしまして、要綱案を作り、その要綱案をさらに本年一月十七日、二十四日の二回にわたりまして、法制審議会で検討していただきまして、この二十四日の総会で、お手元にも資料として配っておりますところの企業担保法案要綱が可決されたのでございます。この企業担保法案の要綱に基きまして立案いたしましたのが、この議題になっておりますところの企業担保法案でございます。  大体今までの経過を申し上げると、以上のようなことであります。
  35. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは、これより質疑に入りますが、当委員会には平賀民事局長のほかに、香川民事局第三課長もお見えになっております。御質疑の方は御発言を願います。
  36. 大川光三

    ○大川光三君 企業担保法案内容的なことに関しましては、いずれ他の機会において逐次お伺いをいたしたいのでございますが、ただ一つの大きな概念上の問題として伺いたいと存じますことは、本法案の第一条では「株式会社の総財産は、その会社の発行する社債を担保するため、一体として、企業担保権の目的とすることができる。」という一つの大きな定義を下しておるのでございまして、これから見ますると、いわゆる企業担保物権というものが創設されることになるのでありますが、いわゆる企業とは一体何であるかという、その概念が実ははっきりしないのでございまして、ここにいわれるように、株式会社の総財産を一体として把握するということが果して可能であろうかどうかという疑問が生まれて参ります。御承知の通りに、商法の営業譲渡における「営業」という概念と、ここにいわれる「企業」とは、一体どう違うのであろうか、それらの点についてお伺いをいたします。
  37. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) この企業担保法案の一条におきましては、なるほど「企業担保権」という用語を使っておりまして、「企業」というものを正式に取り上げておるように見えるのでございますが、実は、この「企業」とは何ぞやと、商法にいう「営業」とどう違うかということになりますと、これは単にひとり法律上の問題だけでなく、経済学上の問題にもなって、非常にむずかしい問題だと思うのでございますが、この法律案で「企業」という言葉を使っておりますのは、「企業担保権」と、まあなるたけこの担保権の名前を通りがいいように、言いやすいようにという意味で「企業」という言葉を使いましたけれども法律的に黄味がありますのは「株式会社の総財産」、この「総財産」ということにあると思うのでございます。まあ総財産の担保権、「総財産担保権」と言うのもちょっと適当じゃありませんので、便宜企業担保権」という言葉を使いましたが、この「総財産」と申しますのは、これは商法でいう営業譲渡の「営業」の場合でありますと、これは各種のものが含まれております。たとえば債務なんかも営業の中に入るという関係、それから、のれんであるとか、いわゆるグッドウィルというような、そういう無形なもの、そういうものも営業の中には入るだろうと思うのでありますが、ここでいっております「総財産」というのは、民法の「一般の先取特権」の規定にございます、あの「総財産」と同じものでございまして、債務なんかは含まない、積極財産だけでございます。積極財産も、しかも、のれんであるとか、グッドウィルであるとか、そういうようなものは含まないのでございまして、動産、不動産、債権、それから無体財産権、現行法のもとで強制執行の対象になる財産、そういうふうに理解していいのではないかと考えております。そういう意味でこの「総財産」というのは、商法にいわゆる「営業」とは違うわけでございます。
  38. 大川光三

    ○大川光三君 商法ではいわゆる商号は営業とともに譲渡しなければならぬ、というような規定がございますが、本法案にいわれる「総財産」 には、たとえば商号などは含まれておるのでございましょうか。
  39. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 商号というのは、今仰せの通り営業と一体でなければ譲渡の対象にならないものでございまして、商号は独立して処分の対象にならないというのが現行法の考えでございます。でありますから、この法律案におきますところの総財産の中には商号は入らないと解すべきものでございます。これは民法の一般の先取特権の対象でありますところの「総財産」の中にも商号は入らないと、こういう解釈になっております。
  40. 大川光三

    ○大川光三君 先ほどの御説明の中にもちょっとございましたが、本法案の趣旨は、株式会社の総財産が一体として企業担保権の目的となって、その被担保債権は会社企業のための長期資金の調達方法である社債のみに限定するところに本法案の特徴があると思うのであります。しかるに、本法案の附則二項では、日本開発銀行の貸付金についても、当分の間、会社はその総財産に企業担保権を設定できるようになっておりますが、それはどういう理由に基くものでございましょうか、伺いたいと思います。
  41. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは附則の二項の、まず第一号でございますが、「日本開発銀行と国際復興開発銀行との契約に基く貸付金」これを筆頭に上げておるのでございますが、この国際復興開発銀行から日本開発銀行が融資を受けまして、さらにこれを株式会社に貸付をいたします場合には、国際復興開発銀行、いわゆる世界銀行の方で担保を要求するわけでございます。ところが、この世銀の借款の貸付を受けます会社は、たとえば富士製鉄株式会社であるとか、八幡製鉄株式会社であるとか、大企業なのでございまして、この世界銀行の要求します担保ということになりますと、どうしてもこれは現行法のままでありますと財団ということになるわけでございます。ところが、富士、八幡、こういう大企業になりますと、この財団を設定するということになりますと、実に莫大な費用と時間がかかるわけでございます。で、日本の国内の他の銀行が貸付する場合でありますと、これはこういう確実な企業に対しては無担保で貸付ができるわけでありますが、世界銀行の方ではどうしても担保を要求する関係で、これだけは特例といたしまして、企業担保権を担保にしまして、総財産を担保にして、この融資を受けるという道を例外的に開くのが適当であろうということで、この一号が入ったわけでございます。  ところがそうなりますと、世銀の関係、いわゆる世銀のひもつきの貸付金については企業担保権を設定できるということになりますと、そのひもつきでない日本開発銀行が、こういう富士、八幡のような、そういう会社に対して貸付する場合には、世銀のひもつきでないのは企業担保権ではだめだということになりますと、どうしてもこれは無担保か、あるいは財団ということになってくるわけです。ところが、日本開発銀行は政府の出資にかかるものでありますし、どうしてもやはり確実な担保が必要だと、そういう建前がとられておる関係で、開発銀行の世銀のひもつきでない貸付金についても、やはり企業担保権を担保にしまして、総財産を担保にしまして、貸付を受ける道を開くべきではないかというわけで第二号が入ったわけでございます。  それから、三号の関係は、これは事例をあげますと、昭和二十五年法律百四十五号、電気事業会社の日本開発銀行からの借入金の担保に関する法律、非常に長い法律ですがございます。それから、さしあたりの例として、この電気事業会社の日本開発銀行からの借入金の担保に関する法律、これによりますと、開発銀行が電気事業会社に貸付をいたしました場合には、「会社の財産につき他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」こういうことになっておるのでございます。こういう規定がこの法律でできましたのも、要するにこういう電気事業会社——大企業に対しまして貸付をする場合に、財産を設定されたのでは非常に不経済だということでこういう便宜措置ができておるのでございますが、ところがこの「他の債権者に先だって自己の債権の弁済を受ける」、いわゆる一般の先取特権というのは必ずしもこの効力がはっきりしない、そういう欠陥がございますので、これを企業担保権に乗り移るので、まあ実質は大体同じようなことになるわけでございまして、現行法上こういう一般の先取特権が生ずるというようなことになっておる会社につきましては、例外的に貸付金についても企業担保権を設定できるということにした方がよいであろうということで一号ないし三号の特例を設けた次第でございます。
  42. 大川光三

    ○大川光三君 大体のことはわかりましたが、もう少し具体的に伺いますと、この附則二項の一ですね、「日本開発銀行と国際復興開発銀行との契約に基く貸付金」というこの「契約に基く貸付金」の貸付先というものは具体的にはどういう会社になるのでございましょうか。
  43. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) 私ども調査しましたところでは、電力会社、八幡製鉄、日本鋼管、川崎製鉄、住友金属、石川島造船、トヨタ自動車、三菱造船、富士製鉄、神戸製鋼、まあこういう会社があるようでございます。
  44. 大川光三

    ○大川光三君 なお、この第二項で、「当分の間、第一条の規定に」云々という、その「当分の間、」という期間が明確でないのですが、これはどういう意味でございましょうか。
  45. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これは、この法律案が社債の担保ということを原則としております関係で、あくまでこれは例外の措置であるということで、そういう趣旨から「当分の間、」というのを入れたのでございますが、大体見当はどのくらいまでかという予測は今のところつかない状況でございます。場合によりましたら、この法律を施行いたしまして実績を見ました上で、あるいは貸付金の担保としてもこの企業担保権が使えるというような情勢にあるいはならぬとも限らぬのでございまして、そういうことになりますと、この附則二項の規定なんかは不要になるわけでございます。しかし、差しあたってといたしましては、まず社債の担保というところで出発するのが確実ではなかろうか、そういう趣旨で当分の間というのを入れたのでございます。
  46. 大川光三

    ○大川光三君 先ほど貸付先の各会社についての名称を伺いましたが、大体それらの会社は、まあ官庁関係と申しますか、公的な性格を帯びた会社が多いのでありますが、そういう特殊の会社の貸付金に対してのみ例外規定を設けるということになりますと、一般の他の私企業との不権衡を来たさないだろうかという疑問がございますが、いかがでございましょうか。
  47. 平賀健太

    政府委員(平賀健太君) これらの会社は今仰せの通り、いずれもまあ国策会社ばかりではございませんが、それに準ずるような大会社のみでございまして、しかもこれは貸付をいたします側の銀行は、国策銀行でありますところの日本開発銀行だけに限られておるわけでございます。で、この日本開発銀行の貸付金のみにつきまして、しかもこういう限られた会社だけについてこういう特例を認めるわけでありますので、他の一般の会社、あるいは貸付をします、あるいは社債の引き受けをいたしますところの他の銀行、こういうものに対しても不利益を及ぼすことはまずないだろう、実害がさしてないだろう、しかも日本開発銀行の特殊性、それから世界銀行というものの、世界銀行からの借款の特殊性というものからこの程度はやむを得ないのではないか、実害もさしてないであろうということで、この二項の規定を設けた次第でございます。
  48. 大川光三

    ○大川光三君 私はなお、法案全体についていろいろ詳細具体的に御質問を申し上げたいのでありますが、他の機会に譲りまして、本日はこの程度質問を打ち切ります。
  49. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の質疑は、この程度にとどめまして、これにて散会いたします。    午後三時二十七分散会