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政府委員(尾村偉久君) 旅館業法が昨年
改正になりまして、従来旅館業法は衛生的な措置の法のみで旅館の営業を許可いたしまして、また、その面で監督いたしておりましたのを、昨年の五月の
改正の際に、風俗の
関係をも旅館業法に取り入れまして、当時
売春関係につきましては、勅令第九号の違反者は、旅館業法の八条でこれを営業許可の取り消し、または停止することに、こういうふうになった。もちろんそのほかに、学校教育との
関係で例の鳩森
事件を契機といたしまして、学校の周辺に旅館ができた場合に、教育上、風俗上いかぬという場合には許可をしないという要望も当時入ったわけでありまして、さような
改正があったくらいでございますので、旅館における風紀を乱すことを防止するということは、この旅館業法の施行の上に十分注意をしておるわけでございます。ただ、今のお話のように、今後一番予測されるのでございますが、この
売春防止法の発効とともに、これらの転業の
対象として非常に旅館業になる者が現にふえております。で、この場合に、最初からかような者を旅館業にしなければ一番安全ではないかということも予測されるのでございますが、ただ、これはあくまで旅館になりまして、正しくこれから営業して食べていこうというような形を表明いたしまして、また、客観的に非常に濃厚な事実はないとか、これはまあ旅館業法に定める規則、
規定に合っている以上これは許可せざるを得ない。また、できれば、むしろまじめなことをやっている者は積極的に許可をいたしまして、早く、もぐりの
売春業をやめさせる、こういうことでこれの許可は今どんどん進めているわけでございます。で、むしろ四月以降はそういうふうな旅館になるから、今のお話のような事態がどのぐらい起るかということでございまして、おそらく四月以降は、旅館の中で今のようなことが起りますれば、
売春防止法の二章の罰則にかかるものが出てくると思います。それがかかりますれば、八条によりまして、ただいまの国会に
売春防止法の二章の罪ということに切りかえるように今
法案を提出中でございますが、これによりまして、そういう事実があった結果について営業取り消し等をいたすわけでございます。これはあるいはひんぱんに起らぬことを望んでいるわけでございますが、これは将来そういうことが事実起れば、これは厳重に——旅館業法の施行はその面では厳格にやる、こういうつもりでございます。
それから現にどの程のそれに類似のことが起ったかということでございますが、これは府県知事から報告を徴するように通知をしておりまして、現に明らかに聞きました事例を申し上げますと、福井県で昨年勅令違反並びに児童福祉法違反で、旅館業者がその女中といたしまして雇っている者に継続的に
売春をさせたということで勅令九号違反にひっかかりまして、公訴が提起されるときに、直ちに府県知事から報告がございました。旅館業法の適用によりまして営業停止を命じたい、こういう協議がございました。これは
内容が非常に悪質でございまして、十六才か、十七才の女中まで雇っておった。児童福祉法違反と勅令九号違反にひっかかった。これはわれわれも指導といたしましては厳重にやれということで、すでに営業停止が発効いたしております。一月に入りまして、群馬県から全く同様な例がございましたので、これも同様に営業停止が実行されたわけでございますが、同様なものが数件あるのではないかというので、今事例の収集をいたしておりますが、すでに石川県から、そういう例が数例近く協議して指導を仰ぎたいということの報告が参っておりますので、こういう従来の勅令九号でございますと、契約をして
売春をさせた場合と、困惑によって
売春させた場合、この二つだけでいくようなことになりますので、二章が全部今度適用になりますので、これは相当ゆるがせにできぬということで、その対策につきましては、厳重に事実についてはやるようにということを、先般所管の府県の部長
会議を招集したときに、あらかじめこれを十分伝えているわけでございます。
それから先ほどちょっと御
意見ございましたような連れ込みの風紀紊乱の問題でございますが、これは今旅館業法の
五条で、原則としてはお客を断わった旅館が罰せられないように今なっておるわけでございます。断わっても罰せられない、差しつかえないというのが三つほど
理由があげてありまして、その中に
定員が一ぱいの場合、それから伝染病を持っている場合、それから最後に非常に風俗を乱すおそれがあると認められる場合と、こういうことがございまして、断わっても差しつかえない。ただ断わらなければならないという
規定にならなかったために、まあ強硬に断わらないところがあるわけでございます。この点で、今善良な旅館主は極力そういう者が入るのをこれでやっているということ、それからもう
一つは、そういうようなことを挑発させてはいかぬので、広告とかあるいは文書、図書をそれらしく飾ってお客をだます、誘惑するというようなことは、これは旅館業法でやはり昨年から禁止になっております。これは
政令に明らかに具体的な事実をもってきて
規定しております。これによりましてそういう面を防止しております。
それからもう
一つは、宿泊簿、すなわち宿帳でございますが、これに必ず泊る者は名前を記し、それから宿泊日等を記さなければならないことになっております。これである
程度取締りができるのでございまして、これを備えませんとやはり罰則がかかるようになっております。これにいわゆる
売春婦と称せられるストリート・ガールが、相手のお客が変りながら自分は同じもの、すなわち二人の宿帳を一定の
期間見ますと、一方だけが変らぬ宿帳が次々と違った人で出てくる、同室に泊る、これが
一つの発見のもとになります。これに基いて警察当局に情報を交換いたしまして、
売春行為がそこで行われておるということを発見するこれがもとになるわけでございます。この点は今後も有効でございまして、アベックに対してはさような点で指導するのが今大体全部のことでございます。そのほかには、旅館業法によりまして直接やり方がないわけでございます。
それからもう
一つは、旅館業法の
改正と一緒に成立いたしました
環境衛生の営業法でございます。これによって、県ごとに唯一の大同団結した旅館同業組合ができまして、この
理事会の
理事者が旅館の営業
方法について指導するということを
法律にうたったわけなんでございます。これはまだ各県全部できませんで、二十県ほどでございますが、これを通じまして指導する——府県当局あるいは厚生省と地方連合会という形で、今のような、従業者にさような営業
方法で使うということをこれは防止しよう、こういうことでございまして、これはこれからの問題であります。ちょうど幸い大体四月までに連合会もでき上りますし、大体の府県が組合ができますので、大体これは並行して指導できる、かように存じております。
それからなお、温泉旅館につきましては、旅館宿約六千軒ございますが、この半数が風俗営業を兼ねておるわけでございます。これは風俗営業法に基きまして警察が取締りをやる、同時に女をはべらしまして、客のわきにつけて御飯を盛るだけですとこれは女中の仕事でございます。これを越しますと、これは風俗営業のいろいろな取締りになって引っかかる、これは現在でも並行いたしまして取り締れるようになっております。しかし、実際問題としては、そこは非常にむずかしいのでございます。飲食店、いわゆる風俗営業の飲食店と違いまして、元来お客がふとんを引いてもらって泊るのが旅館の仕事でございますので、女のはべる
程度というものはこれは区別がむずかしいというので、旅館主から見まして違反
行為を積極的に届けるということが非常に少い、この点が少し抜け道になっておりますが、これはしかし、
売春防止法で場所提供その他でこれは十分発効するのでありますと、こう存ずるのであります。