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1958-02-27 第28回国会 参議院 法務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)    午後一時三十八分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            吉野 信次君            赤松 常子君            藤原 道子君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省保護局長 福原 忠男君    厚生省公衆衛生    局環境衛生部長 尾村 偉久君     —————————————    最高裁判所長    官代理者    (総務局長)  關根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (総務局総務課    長)      海部 安昌君    最高裁判所長官    代理者    (刑事局長)  江里口清雄君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省刑事局総務    課長      横井 大三君    労働省労働基準局    監督課長    鈴木 健二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○裁判所職員定員法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○証人等被害についての給付に関す  る法律案内閣送付予備審査) ○売春防止法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○婦人補導院法案内閣送付予備審  査)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  初めに、参考人出席要求についてお諮りいたしたいと存じます。企業担保法案審査参考に資するため、来たる三月六日、法学博士水島廣雄君、興銀総務部長竹俣高敏君、八幡製鉄常務山口貞一君、東大法学部教授加藤一郎君の四君から、また、三月十三日には、各方面利害関係者から参考意見を伺うことにいたしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  つきましては、三月十三日出席要求参考人の人選につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じます。  速記をとめて下さい。   〔速記中止
  4. 青山正一

  5. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。まず、提案理由説明をお願いいたします。
  6. 横川信夫

    政府委員横川信夫君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  この法律案改正点の第一は、判事補員数を増加することとした点であります。御承知通り、現在、地方裁判所が第一審として取り扱う事件のうち、法律裁判官合議体で取り扱うことを必要とするいわゆる法定合議事件は例外的なものに限られ、その他の大部分事件については、一人の裁判官でこれを取り扱うか、裁判官合議体でこれを取り扱うかは、事案によって裁判所が定めることになっているのでありますが、最近におきましては、民事刑事事件数の増加、裁判官の不足その他の事情から、本来合議体で取り扱うことが望ましいと思われるような複雑困難な事件をも、やむなく一人の裁判官で取り扱っている場合が少くない実情にあるのであります。そこで、第一審の充実強化のためには、裁判官を増員して、なるべく多くの事件合議体で取り扱うことができるようにする必要があるのでありますが、さしあたり必要最少限度範囲内で判事補を増員する措置を講ずることが適当と考えられますので、この法律案では、判事補員数を二十人増加することといたしました。  改正点の第二は、定員外職員定数の一部を裁判所職員定員法による裁判所職員員数に組み入れることとした点であります。従来裁判所におきましては、二カ月以内の期間を定めて雇用される定員外常勤職員が相当数勤務しているのでありますが、これらの職員の中には、その従事する職務の内容その他の点につき、定員内の職員との間に大差を認めがたいものがあるにもかかわらず、これらはすべて裁判所職員定員法による定員の外に置かれているのであります。このたび政府におきましては、各行政機関における定員配置適正化とあわせて定員外職員処遇の改善をはかるため、定員外職員定員化を行うこととし、そのために必要な法律案を今国会に別途提出いたしましたことは、御承知通りでありますが、裁判所におきましても、これに対応して、定員外職員定数の一部を裁判所職員定員法による裁判所職員員数に組み入れることが適当と考えられますので、この法律案では、このため裁判所職員員数を四十四人増加することといたしました。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  7. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件に関する本日の審査は、この程度にとどめます。     —————————————
  8. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、証人等被害についての給付に関する法律案議題といたします。本件につきましては、去る二月二十日提案理由説明を聴取いたしておりますので、これより逐条説明を求めます。
  9. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お手元に逐条説明書と題する書面を御配付申し上げてありますが、内容がかなり盛りだくさんになっておりますので、この中から要点になります部分を読みながら御説明をいたしたいと思います。  第一条は、この法律目的を明らかにしたものでございます。  第二条は、この法律にいう証人及び参考人定義を定めた規定でございます。この法律にいう証人及び参考人は、いずれも刑事事件についての証人または参考人でございます。刑事事件とは、刑事処分目的として発展する事件でございまして、民事事件懲戒事件、非訟事件などとははっきり区別されるのでございますが、その範囲は必ずしも明らかではございません。そこで、本条第二項におきまして、刑事事件を「刑事被告事件及び被疑事件をいい、勾留又は保釈に関する裁判手続を含むものとする。」というふうに定義をいたしまして、その範囲を明らかにいたしたのであります。  本条第一項は、この法律にいう証人について定義したものでございます。すなわち、この法律にいう証人とは、刑事訴訟法規定に基きまして、右にいう刑事事件について、裁判所または裁判官より証人として尋問されまたは尋問されることとなった者をいうのでございます。刑事訴訟法第二百二十六条、第二百二十七条に基く検察官証人尋問請求による証人及び同法第百七十九条に基く弁護人等証拠保全請求による証人かこれに含まれますことはもちろんでございます。なお、この法律におきましては、共同被告人の一人が供述する場合におきまして、その供述が他の共同被告人に関する事項を含むものであります場合には、その共同被告人は、刑事訴訟法規定による証人とみなすことにいたしました。  次に八ページへ参りまして、本条第二項は、この法律にいう参考人について定義したものでございます。すなわち、この法律参考人とは、他人刑事事件につきまして、検察官検察事務官または司法警察職員に対し、自己の実験した事実を供述する者、及び他人刑事事件について、裁判所または裁判官に対し自己の実験した事実を供述する者でございまして、証人以外のものをいうのでございます。検察官検察事務官及び司法警察職員は、いずれも刑事訴訟法捜査の権限を付与されている捜査機関でございます。司法警察職員の中には、一般司法警察職員だけでなく、特別司法警察職員も含まれることは当然でございます。  次に、裁判所または裁判官に対する参考人といたしましては、交通事件即決裁判手続法第十条にいう参考人及び刑事訴訟法第四十三条第三項に規定いたしておりまする決定または命令手続に際しての事実の取調べの一方法として審尋される参考人がございますので、これを含めましたのでございます。  第三条は、この法律による給付積極的要件を定めた規定でございます。いわば、この法律の骨子ともいうべき規定であります。給付積極的要件は、これを大別いたしますると、次の二つの要件に分けられるのでございます。その一つは、給付原因となるべき被害発生原因についての要件でありまして、他の一つは、給付原因となるべき被害対象範囲についての要件でございます。  第一の要件、すなわち給付原因となるべき被害発生原因についての要件といたしましては、被害発生証人または参考人刑事事件に関し、裁判所裁判官または捜査機関に対し供述をし、または供述目的で出頭し、もしくは出頭しようとしたことによるものであることを必要とするのでございます。すなわち、証人または参考人供述または出頭と、被害発生との関に因果関係の存することが必要であります。  十二ページの最後の行へ参ります。  本条規定する第二の要件、すなわち、被害対象範囲についての要件としては、当該証人またはこれらの者の配偶者——婚姻の届出をしてありませんが、事実上婚姻関係と同様にある者を含むのであります。直系血族もしくは同居の親族が、他人からその身体または生命に害を加えられたものであることを必要といたします。  被害者人的範囲を右の範囲に制限いたしました理由は、現在の国民一般社会生活近親者として親近感を抱くのは通常右範囲程度であること、過去における実例から見ましても、証人等供述に起因して危害を加えられたのは、おおむね右の範囲親族であること等によるものでございます。  被害の態様といたしましては、身体または生命に害を加えられたものであることを必要といたします。すなわち、傷害または死亡の結果が発生した場合に限るのであります。ただし、加害行為傷害または死亡との間に因果関係が存在いたします限り、その間に時間的な隔離がありましても差しつかえないと解しております。  本条にいうところの、「国は、この法律に定めるところにより、被害者その他の者に対する給付を行う。」ということは、国は給付の義務を負い、被害者等給付請求権を有するということを意味するのであります。給付種類は第五条において規定しておりますが、被害者が生存している場合の給付——これは、療養給付障害給付打切給付、三種類ございます。それにおける権利者被害者自身でございます。従って、右の「その他の者」とありますのは、被害者死亡した場合の給付——遺族給付葬祭給付における遺族等をさすのであります。  次に四条へ進みます。  第四条は、給付の全部または一部をしないことができる場合、すなわち、給付消極的要件規定したものでありますが、第三条に規定する給付要件を満たす場合でありましても、社会通念に照らし、あるいはこの法律立法趣旨から見て給付を行うことが相当でない場合があり得るのでございます。そこで、本条におきましては、給付を行うことが相当でないと考えられる場合を列挙いたしまして、そのいずれかに該当するときは、第三条に規定する給付の全部または一部をしないことができるものとしたのでございます。  第一号は、証人もしくは参考人または被害者加害者との間に親族関係——事実上の婚姻関係を含むのでございますが、親族関係があるときでございます。  第二号は、証人等加害行為を誘発したとき、その他当該被害につき、証人等にもその責に帰すべき行為があったときでございます。  第三号は、証人または参考人が、加害行為原因となった供述において、当該刑事事件に関する重要な事項について虚偽の陳述をしたときでございます。  第五条は、給付種類に関する規定でございます。給付種類療養給付障害給付遺族給付葬祭給付打切給付の五種類といたしまして、そのほかに、特に必要がある場合には休業給付を行うことができることとしております。その給付種類は、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律規定による給付種類と同様でございます。その内容も、療養給付障害給付打切給付及び休業給付については右の法律規定するところとおおむね同様でございますが、遺族給付及び葬祭給付については、本法特殊性から若干異なっている点がございます。  第六条は、第五条規定する療養その他の給付に関しまして必要な細目的事項である給付範囲、金額及び支給方法遺族給付を受けるべき遺族範囲及び順位等につきましては政令でこれを定めることといたしました。その政令において、これらの事項に関する規定を設けるに当りましては、警察官に協力援助した者の災害給付に関する法律規定によるこれらの事項を参酌すべきことを規定したものでございます。  第七条は、他の法令による給付との関係について規定したものでございます。国は、本法第三条により同条に規定する要件に該当する場合には、第四条に規定する場合を除きまして、第五条に規正する療養その他の給付を行うべきでありますが、被害者が他の法令規定によって、本法による給付に相当する療養その他の給付を受けることができる場合も考えられますので、かかる場合に重ねて本法による給付を行うことといたしますれば、被害者は二重の利益を受ける結果となります。そこで、この法令規定によりまして、本法による給付に相当する給付が行われましたときは、当該給付支給原因たる事実と同一の事実については、当該給付限度におきまして、本法による給付を行わないことといたしたのであります。  次に第八条は、損害賠償との関係について規定したものでございます。本法規定による給付原因となる被害者損害は、必ず第三者不法行為に基くものでありますから、被害者加害者に対して民法または国家賠償法上の損害賠償請求し、賠償を受ける権利を有することは当然のことでございます。従って、本法による給付を受けるべき者が、給付原因である損害につきまして賠償責任を有する者から損害賠償を受ける場合が考えられますから、かように賠償を受けましたときは、その価額限度におきまして本法による給付は行わないものとしたのが本条第一項の規定でございます。  また、本条第二項の規定によりまして、国はこの法律による給付を行いましたときは、その価額限度において、給付を受けた者が、給付原因である損害につきまして賠償責任を有する者に対して有する権利を取得することとしたのでございます。  次は第九条、本条は、この法律による給付を受ける権利が実現されますには、給付を受けようとする者の請求に基く法務大臣裁定を要すること、また、この法務大臣裁定請求し得る期間等について規定したものでございます。もともと、この法律による給付を受ける権利は、第三条に定める積極的要件に当る事実が発生し、かつ、第四条に定める消極的要件に当る事実が存在しないことによって発生しているわけでありますが、その性質にかんがみまして、法務大臣に、その存否並びに範囲等を確認する裁定権を認めたのであります。その結果といたしまして、この法律による給付を受けようとする者は、まず、法務大臣裁定を求めるべきものとせられ、法務大臣裁定によって初めて具体的な給付請求権存否及び範囲が明らかとなるのであります。裁定請求し得る期間を、給付支給原因である事実が生じた日から二年以内に制限いたしましたのは、事実関係の明瞭な間に裁定を行おうとする趣旨に出たものであります。この期間は、援用、中断等の観念を入れる余地のない、いわゆる除斥期間でございます。  次は第十条、給付現実に行われますまで、その請求権の移動を禁じた規定でございます。療養現物給付が一身専属的なものでありますことは言うまでもありませんが、金銭給付といえども、この法律による給付は、すべてその性質上、権利者現実に払い渡されるまでに、それが第三者の手に移ることは好ましくないものと考えられるのでございます。かような観点から設けられた規定でありまして、法務大臣裁定の前後を問わず、本条対象となることも言うまでもないのでございます。  次に十一条は、この法律により支給を受けた金品等に対する非課税の規定でございます。  次は第十二条、この法律による給付を迅速適正に支給して、権利者の利便をはかる等の見地から設けられた規定でございます。受任者及び委任の範囲等政令で定めることとされているのでございます。  以上で説明を終ります。
  10. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件についての本日の審査は、この程度にいたします。     —————————————
  11. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、売春防止法の一部を改正する法律案婦人補導院法案、両案を一括して議題といたします。  本日は、初めに売春防止法の一部を改正する法律案につきまして、最高裁判所から裁判所意見について発言を求められておりまするので、これを聴取することにいたしたいと存じます。
  12. 江里口清雄

    最高裁判所長官代理者江里口清雄君) ただいま御審議中の売春防止法の一部を改正する法律案につきましては、最高裁判所側といたしまして、修正していただきたい希望があるのでございます。その修正の要綱は、第一は、「裁判所は、第五条の罪にかかる事件審理する場合において必要があるときは、裁判所調査官情状について調査させることができるものとすること。」第二は、「第一の調査は、なるべく、被告人の行状、経歴素質性格環境経済状態等について、医学心理学社会学その他の専門的知識を活用して、これを行うように努めなければならないものとすること。」とこのような修正をお願いいたしたいのでございます。この点につきましては、昨年の年末に、裁判官議会の議を経まして、この法案に以上の修正を織り込むように法務省当局にお願いいたしたのでありますが、この点は一応見送るということに相なったのでございますが、刑法や刑事訴訟法の全面的な改正がされるのは近い将来という見込みもございませんので、さしあたり、売春防止法改正に際しまして、この五条の違犯の罪につきましてのみ情状調査の制度を採用する必要があるというふうに考えるのでございます。  その理由といたしましては、売春防止法の第五条の罪は、売春の相手方となるように勧誘をする、あるいはその目的で立ちふさがり、つきまとう、客待ち、誘引というような簡単な、しかもその大部分現行犯の場合が多いと思うのでございます。従いまして、この犯罪事実が起訴になりました場合におきまして、この事実があったかどうかという点についての審理は、きわめて大体の場合におきましては簡単に済む。あまり証拠調べ手続を要しないで、事実があったかどうかという点につきましては審理が終ると思うのであります。で、事実の認定ができました場合におきまして、さらに量刑あるいはその処遇ということを裁判所がきめて言い渡すわけでございまして、懲役刑あるいは罰金刑あるいは執行猶予にするかどうか、保護観察にするかどうか、本法保安処分にするかどうかというような点につきまして、その情状調査するという必要が出てくるのでございまして、これは被告人素質経歴環境犯罪後の状況等情状を十分調査するという必要が出てくるのでございます。たとえば、売春婦につきましては、素質性格という点につきまして、精神状態調べる必要がある。売春婦は、精神薄弱者も多いし、精神異常や性格異常者も多いし、また、ふしだらな性生活のために、性的な異常者というものも多いわけでございます。また、知能状態知能検査やあるいは知能指数等調査をして、あるいは学業の成績等調査をする。健康状態につきましては、性病その他の病気があるかどうかというような点を調査いたさなければなりませんし、また、環境や、境遇という点につきましては、家族関係、特に父母やその他の保護者や身寄りの者があるかどうか、あるいは従来の生活歴調査し、あるいは現在の生活状態調査に関しましては、居所や住所、あるいはその周辺の状態、陰の雇い主があるか、あるいはいわゆるひも等があるかどうか、同業者やあるいは同僚、友人関係調べ、あるいは売春婦の収入、財産、経済能力、あるいは技術、生活能力というようなものも調べる必要があります。売春婦の転落した原因、動機、これは性格性的衝動、経済的な原因、あるいは虚栄、怠惰というようなことからくるのもございましょうし、これらを調査する。あるいは将来の更生というような点につきましては、本人の更生の意欲、更生能力、適当な保護者協力者があるかどうかというような点を十分調査した上で、刑や処遇方法を言い渡すということに相なるわけでございます。で、これらの調査をいたすわけでございますが、現在の公判中心主義当事者主義を建前とする刑事訴訟法のもとにおきましては、当事者訴訟活動というものは、主として犯罪事実の存否、すなわち犯罪行為があったかどうかという点に重点が置かれ、情状に関する資料は非常に少いということが一般でございます。で、検察官側情状に関しての資料はお調べになるわけでございますが、起訴、不起訴を決定する資料中心としてお調べになる、また、従って、その資料だけでは裁判をする場合に不足する場合が非常に多いのであります。で、検察官側情状調査というものは十分にやっていただいて、その資料を提供していただきたいわけでございますが、検察官側から資料が出ましても、現在の証拠法のもとにおいては、被告人側でその調査資料証拠とすることに同意するということがなければ、証拠能力が与えられないというようなことになっております。また、証拠能力が与えられておりましても、判決を言い渡すには不十分な場合が多い。で、これが普通の犯罪でございますれば、犯罪事実、すなわち犯罪行為があったかどうかという調査を、相当証拠調べ等をいたしますので、その際に、情状に関する資料も相当出て参るわけでございますが、本法五条違反につきましては、先ほど申し上げました通り、非常に簡単な、しかも現行犯のものが多いので、犯罪事実の調査ということにあまり手がかからない。従って、その調査の段階において情状関係資料が出てくるということが非常に少いのであります。従って、その資料が少い場合におきまして、裁判所といたしましては、これらの情状に関する資料を十分に収集し、かつ、量刑科学性を与えるというために、裁判所は、判決前に、心理学社会学医学等の専門的な知識を有する者に情状に関する調査をさせて、これを裁判官の判断の資料に供するという必要があるわけでございます。で、これらの資料の収集は必ずしも公判定でやる必要はないと思うのであります。で、これらの資料につきましては、立証責任やあるいは立証範囲というものが不明確でございますために、検察官あるいは被告人弁護人当事者側からは十分に出ないし、裁判所といたしましても調査をする手がかりが少い、ときによっては、手がかりが得られないということがございます。で、さらに公判では十分な資料が出ない場合が多いのでございます。この法律案審議におきましても、本会議では微妙な調査ができない、委員会あるいは小委員会において詳細なかつ完全な審査ができるように、公判一つの儀式的な面もございますので、十分な資料が出ない。調査官が一々出かけて行って近隣の者や関係者、あるいは方面委員というようなものについて調査をしてこそ、正確、確実な資料が豊富に集まるわけでございます。専門的な調査官調査というものが、科学的な豊富な的確な資料というものが、裁判をする上に非常に必要になってくるわけでございます。調査官調査をさして調査報告書を出させれば、これを法廷で証拠調べをするということにいたせば、反証の機会も与えられるということに相なるわけでございます。もし、これを公判廷で裁判官がいたすということになりますと、十人以上もの証人を一々公判廷に呼ぶということに相なりますと、そのための労力、時間というものが相当かかるわけでございますが、これを調査官調査にゆだねるということになりますと、裁判官の労力と時間も節約することができ、これを他の事件審理に費すことができて、裁判の能率化、促進ということにも役立つわけでざごいます。この情状調査というものは、被告人関係者の私事にわたるという事項も非常に多いのでございますので、これらの方々の人権を尊重するという意味からいたしましても、また、調査、収集された資料が公平な、また片寄らないものである、信憑性のあるものであるという点からも、この調査に当る機関というものは、捜査機関やあるいはその系統に属する機関から独立した裁判所の機関であることが最も適当だというふうに考えられるのであります。英米におきましては、この判決調査調査官制度というものが、すでに広く用いられて、裁判の適正な迅速な効用を果しておるわけでございますが、わが国におきましても、この調査官を地方裁判所に置いて、この売春防止法五条事件の事前調査判決前の調査に当らせることが必要になるわけでございます。わが国では、家庭裁判所に家庭裁判所調査官があって、すでに十年の歴史を持って千人をこえる調査官が、少年事件や家事事件の審判に協力いたしておるわけでございますが、この調査官は専門的な学門を積んだ上に、調査官研修所で研修を積んで事件調査に当っておるわけでございまして、わが国ではこの調査の専門機関としては、これをおいては他にないのでございます。家庭裁判所で、かって、この売春防止法を処理することが成人についても家庭裁判所で処理することが望ましいという御意見が出ましたのも、この家庭裁判所調査官調査をさして、十分な資料を得た上で、売春婦更生することができるように最も適切な審判がなされるということからの考慮であったというふうに理解しておるわけでございますが、地方裁判所で取り扱うということになりましても、この調査官調査を得た上で、最も適切に裁判をすることができるのでございまして、どうしても地方裁判所に、この家庭裁判所調査官と同じ種類調査官を置いて裁判をする必要があるというようなことを信じておるわけでございまして、この点についての修正をぜひお願い申したいと思うわけでございます。
  13. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいま聴取いたしました最高裁判所側意見につきましては、委員の皆さんはもとより、法務省当局におきましても御意見のおありのことと存じますが、これにつきましては、適当な機会に委員会または委員懇談会を開きまして、十分検討することにいたしたいと存じますので、さよう御了承願いたいと存じます。
  14. 吉野信次

    ○吉野信次君 今の御発言についてちょっと伺いたいのですが、政府が出しました売春法の一部を改正する法律案議題になっております。それを何ですか、修正意見として……、修正というものは私の了解するところでは、議会の議員がやるのですから、議員の方で何か修正意見が出て、それに対して政府側から意見を言うなら話はわかるけれども、政府の人が一ぺん出しておいて、これを下げないで、これをまたもう一ぺん修正してもらいたいという御発言でないかもしらぬけれども、そういうことであると、そういう例は私はあまり知らないが、このごろはそういうことをやるのですか、これはどういうことでしょうか。
  15. 青山正一

    委員長青山正一君) お答えいたしますが、国会法の第七章の方ですが、第七十二条に「委員会は、議長を経由して会計検査院長及び検査官の出席説明を求めることができる。最高裁判所長官又はその指定する代理者は、その要求により、委員会の承認を得て委員会に出席説明することができる。」こういう条項がありますので、その条項によって当委員会として問題になっている点を説明を求めたわけなんです。
  16. 吉野信次

    ○吉野信次君 一ぺん改正に対する修正意見委員会に出たのですか、どなたからか。
  17. 青山正一

    委員長青山正一君) まだ出ないのです。
  18. 吉野信次

    ○吉野信次君 出ないというと、議題になっておることを、それに対する説明最高裁判所の方が来て、今の規定であっていいのですけれども、政府責任者が提案されておって、それを引っ込めないで、これをまたもう一ぺん考える、こういう意見があるのだということの説明をすることは、すでにそういう例があるのか私は知りませんから、しろうとではなはだすまぬけれども、私の今までの法律上の常識から言うと、そこが少しおかしいように考えるから、そこで、どういうふうにただいまの最高裁の御説明を私どもが了解していいかということを伺いたい。もしわれわれ委員の中で、これは修正した方がいいじゃないかという意見があってそれに対して最高裁の人がどういう意見がある、あるいは法務省でどういう意見がある、これはよろしい。ところが、政府責任者から原案というものが出ているのですからね。一ぺん出したものを、それを今そういう第何条の二項かによって一ぺん政府責任者が出したものを片っぱしからまたもう一ぺんこれを修正してほしいという意見を言うというような例ができるということは、私は……。
  19. 青山正一

    委員長青山正一君) 先ほど私が申し述べました修正意見というのは撤回いたします。修正意見じゃなしに、たまたまそういうような意見があろう、その意見を申し述べていただきたい、こういうふうな……。
  20. 吉野信次

    ○吉野信次君 今のを伺うと、修正意見のように伺ったものですから、説明じゃなくて。原案はこうあるけれども、原案はこういうふうにいじってほしいのだ、こういう説明だから、これは政府責任者が出しておられて、それを最高裁といえども、それをもう一ぺん修正してほしいという意見をここに積極的に陳述なさるということの例は私はよく知りませんけれども、私は古い頭だから、どうも少しおかしいじゃないかと思ったものですから、それで今の御説明を私どもはどういうふうに伺っていいかということを申し上げたのです。何かその点について法律的な一つ納得のいくように御説明を願いたいと思います。
  21. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 少し違うかもしれませんが、実は前前回でございますが、棚橋委員からの御発言がございまして、この売春法の補導処分に付するにつきまして、その適否について家庭裁判所調査官調査さしたらどうかという御質問もございましたので、この点につきまして私が前回に出席いたしましてお答え申し上げたんでございます。しかしながら、それにつきましては、私も実はこの前は、できるかどうかということにつきましては、この法律の建前ではできないのだ、で、できるとすればいずれにしても法律改正していただかなければだめだ、しかし、改正いたしますと、家庭裁判所調査官をしてそれの適否について調査せしめるということはできるというように改正していただけましても、家庭裁判所性格といたしまして、今問題になっております成人の婦女子、成人の売春婦につきましては家庭裁判所の管轄でございませんので、やはりそういう家庭裁判所の身分のままでやるということは、家庭裁判所性格上好ましくないという点がございます。その点、私が前回に実は申し述べるのを忘れましたものですから、その点を今江里口刑事局長の方から補足されたものです。それで、それに敷衍いたしまして少し積極的に説明されたかもしれませんが、そういう意味でございますので、どうぞ御了承願いたいと思います。
  22. 吉野信次

    ○吉野信次君 私も別に大したことではないのです。大したことでないけれども、ただ議事を進める上において今のようないきさつがあれば別ですけれども、政府が原案を出されておって、委員のうちからそれを修正するということもしない、特別何も意見が出ないで、また、政府の方が一ぺん出したけれども、これはこういじっていいという意見を言うことはこれは私はおかしいと思うのです。
  23. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止
  24. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。  それではこれより前回に引き続きまして、両案についての質疑を行います。御質疑の方は御発言願いたいと存じます。  本日は、この右側の順序から座席順に申しますと、尾村環境衛生部長。江里口刑事局長、これは最高裁です。菰淵家庭局長、最高裁です。それから法務省の福原保護局長、竹内刑事局長唐澤法務大臣横川政務次官、渡部矯正局長、そのほかに刑事局の横井総務課長、こういった方々がお見えになっております。御参考までに申し上げておきます。
  25. 大川光三

    ○大川光三君 売春防止法の一部を改正する法律案につきましては、前回の委員会で私自身で数点の御質問を申し上げたのでありますが、それに引き続きまして、本日は、主として補導処分に対する諸問題についてお伺いしたいのであります。  そこでまず第一に、法案第二十二条の5によりますると、「収容状によって身体の拘束を受けた日数は、補導処分の期間に算入する。」というのがございますが、その収容状によって身体拘束をなした期間を補導処分期間に算入をするという、その立法趣旨をまず伺いたいのであります。
  26. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御質問の身体拘束を受けた日数は、もちろん補導処分の期間ではございませんのでありますが、何と申しましても、補導処分は収容処分でございまして、強制力のかかったものでございます。それからまた、収容状によって身体の拘束を受けた場合も、これまた強制力のかかったものでございます。そうしてなぜこういう規定を設けたかと申しますと、これは補導処分がそういう強制力によって収容を伴うものでありますので、こういう期間が少しでも短かくなりますことは、被収容者にとりまして利益になることでございますので、できるだけ日数を減らしてやるような考え方をした方がいいということが第一でございますが、もう一つ理由といたしましては、今回の予算で認められております補導院は三カ所でございまして、全国津々浦々で発生いたしますこの種の事件の補導処分を執行いたします場合に、この三カ所のいずれかに連れてこなければならないのでございます。そしてもし強制力によって、収容状によって連れてくる場合には、現実に補導院に到着するまでの間に何日かの日数がかかるわけでございます。その日数を補導処分の期間の中に計算をしてやった方が被収容者にとりまして明るい希望を持たし得るのではないかという考慮から、特にこういう規定を設けた次第であります。
  27. 青山正一

    委員長青山正一君) 大川さん、皆さんに申し上げたいと思いますが、法務大臣は衆議院の予算委員会から出席を要求をされておりますので、大臣に対する質疑を初めに済ませていただきたいと思います。
  28. 大川光三

    ○大川光三君 私は大臣に対する質疑はございません。そこで、他の委員の方で大臣に関する質疑がございますれば、その委員の方に先に御質問願ってけっこうだと思います。
  29. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 法務大臣にちょっと一言だけお伺いいたします。この売春法の一部を改正いたしますその中で、五条違反の問題でございますけれども、昨日まではそれは犯罪でなくて堂堂とやっておったものが四月一日になりましたら、今度はもう同じことをやっても犯罪者として刑務所の中にもぶち込まれなければならない、この点なんでございますが、これはもうすでに実施されております売春防止法によりまして、売春は悪であるということがうたわれております。だけれども、一般社会におきましても、ことに業者たちはどうしても納得がいかないというのが今日の実情だろうかと思っております。それにつきまして、売春法ができまして以来、法務省としましたら売春は悪であるという一般の教育を何か手を打ってなさいましたかどうかということを伺いたいのでございます。
  30. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 仰せの通り売春は社会悪であるということは今さら申す要もないのでございます。ことに売春防止法が成立いたしまして、国家意思といたしましても売春は社会悪で、これは追放しなければならないという大方針がきまっておるわけでございます。しかしながら、長い間のならわしで、そうして直接別に他人に迷惑をかけることもないじゃないか、長いこと大目に見られておったことをどうして法律まで作り、懲役刑まで課して、そう追及しなければならぬだろうかというような、従来からの古い考え方が世の中に残っておるということも、やはり仰せの通りと思います。この点につきましては、主として私ども部内の会同などにおきましても、明らかに売春防止法で禁止されて、そうして四月一日から罰則規定も実施されるようになるのであるから、その点は機会あるごとにそれの関係筋へ話をして、そうしてこれの追放を期さなければならないということを会同ごとに申しておるのでございますが、さらに三月になりまして、詳しくその点について法務省としても動き出したいと思っておりますが、その詳細につきましては、刑事局長から申し上げたいと思います。
  31. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 売春行為が違法とされましたことは、これは一つ社会通念として法案に書かれたものと私は理解いたしております。で、数年前まではそれほどに思わなかったものが、今や売春防止法によりまして違法視されたのでございますし、これはまた、裏を返して申せば、世論もそこまでの位置まで熟してきたというふうに理解をいたすのでございます。そうしてもちろん現在におきましては、まだこの理解の届かない面もありますので、これが周知徹底をはからなければならないのでございますが、いろいろと広報宣伝等の法務省にもあります機関を動員いたしまして、機会あるごとにその趣旨説明をいたしておりますし、また、検察庁のルートにおきましては、各地でただいま売春法の円滑な完全施行へ持って参りますために準備的な取り締りを励行いたしておりますが、この励行で決定をいたしました際等に、各地の地方新聞等で見ますると、その成果として事態を国民一般に知らせると同時に、売春防止法の精神を強調したような談話を検事正等が発表してこれが指導に努めておるのでございます。なお、私といたしましては、三月の中旬ころ適当な機会に、ラジオを通じて罰則の説明等をいたしまして、この売春が悪であるということの理解を深めるように努力いたしたい。かように準備をいたしておる状態でございます。
  32. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ただいまの御説明で少しはわかりましたけれども、実は大臣がその責任者として、昨年の冬に世界会議の部会が東京で行われました。これは一昨々年ジュネーヴで行われました犯罪防止の、それから売春対策の会議の部会でございましたけれども、その部会が二週間四苦八苦してずいぶん会議をやったのでございますが、その会議の最後に、たしかあれは法務大臣の御招待であったと思いますが、外人全部をお呼び下さいまして観劇会がございました。そのまた芝居が、これは御多分に洩れずに、出てくる幕も、出てくる幕もどろぼうと売春、ことに吉原のあの派手やかなおいらん様式が出て参りまして、あのおいらん道中もやったのでございます。ごらんになったと思いますけれども、しかし、そういうときに、一々その説明を求められまして、私は、私のみならず日本側の人は皆赤面したと思っております。ああいう点について、私は一方にいろいろの手を打ちましても、あの芝居の威力というものは私は大したもの、これは日本人に対してだって大したものだと思いますけれども、ああいうことが小さいようで大きいと思っておりますが、そういう点にまで何か留意されておりましょうか、どうでございましょう。私はあのときにこういう芝居はもう一切やらないということに何か規則でもできないものかと思ったのでございますが、いかがでございましょうか。
  33. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) そういうお感じを持たれたことは御無理もないことと存じますが、さればといって、現にそういう芝居を向うの都合で行われているのを見せなければ、そういう芝居が行われてないという印象を与えるのもこれは偽わりでございますから、ありていに日本のありさまを見せた方がよろしい。要はそういう芝居をかけても世の中はこれをきらってお客がない。従って、そういうのが自然に滅びる、こういうことになることを期待するわけでございます。私どもといたしましては、やはりそういうような芝居が、なるべく整理されていくことを希望するわけでございますが、これはもう少し言い過ぎかもしれませんが、御承知のように、これはただ売春ばかりではございません。芝居の多くにはどろぼうというものが英雄化されて、それを逮捕に行った警察官がひどい目にあえばこれを拍手かっさいして喜んで見る、こういう芝居は数多くございます。公金を横領して、そして逃げていく若人をつかまえる警察官の方がいかにも悪党のような芝居は数多くございます。これは私ども昔から警察に多少の縁を持っておりましたから、いかに警察官に公僕として一生懸命に働いてくれということを頼みましても、芝居や映画に行けば警察官というものは常にかたき役である、これではどうしても一生懸命に働く気にならないのじゃないかという気分を持ちまして、私個人のやったことを申し上げては恐縮でございますが、今の松竹の社長の城戸四郎君に、警察官というものが出てきて拍手かっさいされるような芝居や映画はできぬだろうかと話をしたところが、それはいかにももっともだ、なるほど数えてみると、大がいはどろぼうの方がヒーローで警察官の方が憎まれるということで、非常に考えてくれまして、そうして一つ外題は忘れましたけれども、芝居を作ってくれまして、これは歌舞伎座にかかりました。それで私もそういう無理な芝居でどうかと思いましたが、計算は十分立ったということでございます。これは売春ばかりでなくて、社会風教を改善していく上において世の中の趣味がそういうような何か社会風教とそむいたような行いをする者をヒーローとして、そうしてそれを拍手かっさいするというような風潮がありますれば、自然それを当てにしてそういう映画や芝居ができますが、これは営利会社でありますればこれは仕方ない。だからして、これはどこまでも社会全体の力でそういうような映画や芝居のかからないようにしたいという、その心持は全く同感でございます。
  34. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 どうぞお願いいたしますが、芝居や映画その他読みものにつきまして、今回のこの立法が成立いたしますのを機会に、一ついろいろな点にまで法務省は心をお配り下さって、大いに親心で今まで私どもが懸念しておりましたようなものを根絶していただくように手を打っていただきたいとお願いを申し上げておきます。  それから犯罪防止につきましては、法務省は七月をその月間といたしまして全国的に大々的に催しをされておりますが、売春防止につきましては、今あれに劣らないような法務省の行事が新たに作られましても、また、それに少々の費用を入れましても、私はこれは犯罪予防と匹敵する問題ではないかと思っておりますから、そういったような行事につきましても、特にお考えおき願いたいと願いまして、私はお急ぎのようでございますから、これだけにいたしておきます。
  35. 藤原道子

    ○藤原道子君 一点だけ。私この法案審議に当ってしみじみ考えているんでございますが、この間、法務省の方からいただきました資料を見ましても、先日参考人を呼んでいろいろお話を聞きましても、売春婦あるいは犯罪者などの中に非常に精薄者が多いということで、私は今度六カ月の矯正をいたしましても、精薄者はそのまま社会へ出ていくわけなんです。また町の盛り場などを見ても必ず精薄が多いと思うんです。ところが、これに対しては何ら今まで手が打たれていない。受刑者も精薄者であろうともそのまま社会に出して、さらにこれを繰り返すということを考えますときに、私はいつも社会労働で厚生省に言うんですが、なかなか実現できません、この精薄対策というものが。ところが、外国においては精薄者を解決できれば売春は八〇%を解決できる、こういうことが一言われております。従いまして、この際、法務省関係で今まで経験していられるこの問題を通じて、厚生省と相談をして、抜本的な精神薄弱児に対する対策、政治においては精薄問題はほとんど野放しなんです。子供だってわずかに五千人より今日収容施設に入っていないというこの現状で、ここを解決しなければ国費がむしろ乱費され、人権が危ぶまれておると思うのでございますが、大臣の御所見を伺いたい。今まで厚生省と相談されたことがあるかどうか、さらに今後そういうふうなことをしようという御意思があるかどうかということを私はこの際はっきり伺っておきたいのです。ことに、先日女子少年院の所長さんが参考人としておいでになって、少年院の中に売春関係の者が二〇%、ところが、その中で純正常という者はたった一人しかなくて、あとは全部精薄であるということを聞くに及んで私はりつ然といたしております。従いまして、この本法審議に当りまして、まず大臣のこの点についての御所見を伺っておきたい。この一点だけでけっこうでございます。
  36. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) 最近の刑事政策といたしましては、一般犯罪の予防防止というようなことにつきまして、単に刑法学者、刑事法学者だけの知識ではとうていまかない切れない、社会学者、あるいは医学知識のある精神病学者なり、こういうような各方面の科学知識を動員しなければ完全でないというふうに今考えておりまして、各般にわたりまして社会科学あるいは医学知識を導入して、この助けを求めようとしているのであります。これは一般犯罪についてでございますが、今度の問題についても全く同様でございまして、そうして来年から全国十四ヵ所に設けようとしております保護更生の相談室等にも医学知識のある者を動員する、そうして参加してもらいたいと、こう考えております。そのほか、厚生省とは緊密な連絡をとりまして、ただいまお言葉にありました精薄関係者の処分その他の医学上の知識を必要とする諸点につきまして、十分連絡協議をいたしていきたいと考えております。
  37. 赤松常子

    ○赤松常子君 私も一点だけちょっと、法務大臣の御意見並びに私どもの要望をちょっと申し上げたいと思います。それはいよいよ四月一日から社会の大改革とも言える売春防止法が実現されるわけでございます。先ほど宮城委員の御発言の中にございましたように、周知徹底させる、そういう方法ももちろん大事でございますが、それに対しまして竹内刑事局長のお話では、三月の中ごろにラジオを通じて一般に周知する方法をとる、こういうふうな御意見でございましたけれども、私どはもっともっとこの大きな網を張って、そうしてこれを周知徹底せしめることはもちろんでございますけれども、予想される犯罪の未然の防止であるとか、あるいは性病の予防ですね、蔓延させないとか、徹底するとか、性病の蔓延を食いとめるとか、そういう諸般の網を政府みずからが総合的に張っていただくことが大事だと思うのです。もちろん責任省でございますから法務省がおやりになることはもちろんでございますけれども、厚生省にも呼びかけ、あるいは検察庁にも呼びかけて、ほんとうにこういう大きな社会の大改革に際しましての出発に際して、もっともっと本気で今申しますような総合的な綱を張る、そういうお考えをお持ちでいらっしゃいましょうか。私どもはそういうこともやっていただきたい、こういうお願いを申し上げたいのであります。もちろん私どもも、厚生省、あるいは検察庁及び労働省にも呼びかけまして、今申しましたような諸般のこともしてもらいたいと思うのでございますが、もちろん今申しますように、法務省がもっとその各省にお出かけ下さいまして、そうして網を張っていただくようにお願いしたいと思うのでございます。その点に対する御意見を伺いたいと思います。
  38. 唐澤俊樹

    ○国務大臣(唐澤俊樹君) ただいまのお言葉の通り売春行為が社会悪であるということを周知徹底せしめますことは、目下の急務と考えております。もちろんこれは法務省ばかりではございません。文部省、厚生省、各般の行政庁において協力をしてもらわなければならぬと思いますが、今日まで幸いに言論機関が非常に御協力下さいまして、この売春防止法関係のことはしばしば新聞紙で報道せられておるわけであります。私も、この売春防止法関係では、またしばしばラジオ、テレビに呼び出されて、そうして売春追放のことを述べておるようなわけでございまして、この言論報道機関、ラジオ、テレビなどが、この法案趣旨徹底のために非常に協力して下さっておることを感謝しておるわけでございます。しかし、政府といたしましても、この趣旨徹底のためには、ただいまお言葉がありました御趣旨に沿いまして、できるだけの仕事をして参りたいと考えております。
  39. 大川光三

    ○大川光三君 先ほどの収容状による身体拘束期間を補導処分の期間に算入するということについての立法趣旨はよくわかりましたが、先ほどの竹内局長の御説明を要約いたしますと、要するに、一つ被告人の利益のためにすること、いま一つは、補導院の数が少いので、補導院へ送り込むまでの期間を補導期間に算入するということもまた被収容者の利益であるという、きわめて恩恵的な、親心を持った趣旨かと承わったのであります。そこで、もしそういう意味でこの収容状による身体拘束期間を補導処分の期間に算入されるのならば、収容状の発しられる以前のいわゆる身体拘束、すなわち勾留日数というものは果して補導期間日数に算入されるかどうかという点を伺いたい。
  40. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 判決のあります以前の勾留日数は、この中に算入いたさない考えでございます。
  41. 大川光三

    ○大川光三君 実は、そこに問題があるのでありまして、補導処分全体を通じて、これは大きな問題であると私は考える。申すまでもなく、勾留日数の本刑通算につきましては、任意通算の場合であるとか、あるいは刑事訴訟法にいう上訴の提起期間中の未決勾留の法定通算というような規定が設けられております。しかも、この未決を本刑に通算するという理由といたしましては、勾留が被告人に与える苦痛の点でも、また、拘禁中の処遇の点でも、自由刑に近い面を持っておるという本旨からだと思うのでございます。これと同様に、補導処分は、これは自由刑とは違いまするけれども、被告人を補導処分によって身体を拘束して、被告人に与える苦痛やその処遇の点は、全くよく類似いたしておる。そういう点から考えましても、収容状執行前の未決勾留というものを補導処分期間に通算する必要はなかろうか。私は痛切にそれを感じる者でございまして、先ほど最高裁判所から修正意見を述べられました。その中にも、結局、裁判所調査官というものを置いて、そうして被告人素質経歴環境犯罪後の状況等を徹底的に慎重に調査して、そうして果して補導処分に付するに足る場合に補導処分の言い渡しをする、かようになりますると、勢い被告人の勾留期間というものは相当長引くということを予想しなければなりません。また、この法案の第二十一条の規定によりますると、補導処分に付する旨の判決の宣告があったときは、刑事訴訟法第三百四十五条の、いわゆる勾留状が効力を失うというその適用を排除して、引き続いて勾留を継続するということになっておる。そうすると、ここにもまた長期勾留が予想されるのでありますが、かような面から見て、相当長期勾留を予想される。その勾留を補導処分期間に通算しないというわけはないと私は思うのであります。その点に関する御意見を伺いたい。
  42. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいまの御質疑まことにごもっともでございますが、先ほど申し上げましたように、勾留中の期間は補導処分の期間の中に数えることはしないという建前をとったのでございます。その趣旨は、大体勾留になりました者に対して自由刑の言渡しがあって、その執行が猶予される場合におきましては、勾留期間についてその本刑に幾ら算入するということを判決の上で、主文の上に表わさない場合も相当あるようでございます。また、表わしておるのもあるのでございます。そういたしますると、補導処分を受けました場合に、補導処分は、この法案にも明らかなように、何どきでも仮退院を許すことができるのでありますが、仮退院中にまた罪を犯し、あるいはその他の罪の併合罪で処罰されておりましたために、執行猶予が取り消されるといったような事由によって取り消されました場合には、もとの本刑を執行することになるのでございますが、そのときには、もしも判決主文において勾留日数が何日か算入するように判決されております場合には、当然その執行します刑の中からそれを差し引いたものを執行する、つまり、勾留までの日数は刑事手続の面で一応まかなってしまう、そうして、この補導処分はいわゆる保安処分でございますので、保安処分の方は保安処分として取り扱う、一応そういうけじめをつけたのでございます。  なお、調査官の問題もあわせて御発言があったわけでございますが、第五条に違反する罪は、その罪自体きわめて軽い罪でございます。でありますから、これによって実刑にどんどん持って行こうという趣旨ではないのでございまして、その罪を手がかりとして、できますことならば、起訴猶予処分にして保護更生の道を講ずる、あるいはどうしてもこの保安処分がなければ実刑に持っていかなければならないような案件につきましては、この補導処分を活用して、実刑にはやらないようにしようという趣旨でございます。そこでこの売春婦は、五条の罪を犯したということで補導処分に付せられるのではございませんで、第一条の目的にも明らかでありますように、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者、しかもそういう習癖のある、常習性と申しますか、そういう売春の習癖のある者で、かつ、五条違反の罪を犯した場合にこの補導処分ということになるわけであります。その習癖があるかないか、また、補導処分をすることによって道が開かれるかどうかというようなことにつきましては、これは単に情状だけで事は解決されるものではございません。必ずや社会学的あるいは医学的、心理学的、精神病学的、あらゆる角度からの検討を要しますし、その他環境調査、本人の経歴、性行、その他詳しく調査をいたしました結果によって、初めて処遇ができるのであります。そういう処遇につきましても、検察側といたしましては十分資料を集めて、裁判に支障を生じないようにいたす考えでございますが、これも必ずや、そういうめんどうな調査をいたしますために、常に必ずしも身柄を拘束しておかなければならないというものではございませんで、この二十一条をごらんになってもわかりますように、普通の場合でございましたならば、執行猶予になりますと勾留状の効力は消えるわけでございますが、この場合には消えぬということにしたのでございます。けれども同時にまた、三百四十三条、三百四十四条などの適用を排除して消えないことにいたしましたが、権利保釈もできるというふうにして、普通の有罪判決の場合の取扱いをすることにして、あたたかい気持をここに示しておるつもりでございます。
  43. 大川光三

    ○大川光三君 いろいろ詳しい御説明ではありましたが、私の要約して申しますことは、先ほどの、収容状による身体拘束期間を補導処分に通算するのでありますという親心があるならば、なぜそれ以前の勾留日数を補導処分に通算しないのかという問題であります。お説のように、なるほど二十一条によりまして、あるいは保釈は補導処分の言い渡しを受けてもその効力を失わない、あるいはその後においても権利保釈の請求ができるのだという条項はございます。しかし、ここが一番むずかしい問題です。と申しますのは、およそ売春婦の第五条違反にかかるような女性は、そう簡単に保釈をするにも保釈する金がありません。身元を引き受ける人もこれはきわめて少い。そこで、金があって保釈されている者は、結局自由に外におって活動ができる。ところが、保釈されないような、いわゆる保釈するにも資金がないのだ、金がないのだという可憐な女性が長らく勾留されておる。そうして結局その勾留というものは補導処分に通算しないということになりますと、これは金を持てる女性にはいいでしょうけれども、貧乏で困っておって——貧乏で困っていなければこんなことはやらないのでありますが、そういう女性に対して、真に親心があるならば、これはよろしく勾留日数を補導処分期間に通算すべきであるという私の意見でありますので、再びこの点をお伺いしたいと思います。
  44. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御懸念の点は私もよく理解できるような気がいたします。ただ、この手続刑事手続として裁判までは進行いたしておるのでございます。その裁判の際に刑事判決を下すわけでございますが、その際にこの補導処分をあわせて言い渡すことができる。つまり、刑事手続保安処分とをからませておる手続においてこの問題を解決しようとしておるのでございます。で、今の勾留は、いわゆる刑事手続における勾留でございまして、保安処分の言い渡し後の収容状によります身柄の拘束、こういうものとは趣きが、性質が違うという点に着目をいたしまして、二つの手続をのせてやります場合のけじめを、どの辺で線を引くかということで、一応ここで引くのが適当であろうということにいたしたのでございまして、御疑問の点は、私どももよくお気持は理解することができるのでございますが、さような趣旨で、勾留については算入をいたさないということにいたしたわけでございます。
  45. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、今お話しの刑事処分期間と補導処分の期間とに一つの区切りをつけるということはわかります。ところが二十一条の規定によりますと、たとえば勾留状が効力を失わないのだという、その引き続いて勾留するという利益は、補導処分の執行をするための利益なんだ。わかりますか、裁判所が一応判決は言い渡した、補導処分を言い渡した、そうするとその補導処分を言い渡しても、なおかつ勾留状が効力を失わないということは、勢いこれは補導処分につながっているからだと思います。そうすると、いわゆる刑訴の上告提起期間の法定計算などとにらみ合してみると、少くとも補導処分を言い渡した後のいわゆる強制勾留といいますか、本来であれば当然勾留状は効力を失うわけであります。効力を失わない期間について、特に補導期間にこれを算入するという考慮が私はなければならないと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  46. 横井大三

    説明員(横井大三君) 先ほどからの御質問、結局するところ、補導処分というものと刑というものをどういうふうに考えているかという本質論に帰するのじゅないかと思います。確かに刑事手続上の身柄拘束でございますから、補導処分上の身柄拘束という意味ではその共通点は持っているわけでございます。しかしながら、その他の面におきましては、たとえば今の、判決がありましたあとの上訴期間中の勾留でございますが、これは二十一条はいつまでも拘禁を受けるわけではございませんで、判決確定までの拘束にすぎない。つまり逆に申し上げますと、上訴期間中の拘束である。従って本質的には刑事手続上の拘束になる。ところが、あとの補導処分のために引っ張ってくる期間は、補導処分を執行するための一つ期間でございます。そういう意味で、一応われわれとしては分けたのでございますが、これは本質的に、刑そのものが教育刑であって、保安処分的であるというふうにも考えますというと、なるほど区別するのもどうかと思いますが、しかし現在のわれわれのこの案を作りました考え方といたしましては、両者は違うものである。これはこの前も私御説明申し上げましたが、補導処分の方は、過去の責任を追及するものでなく、教育を目的とする刑自体は、これは道義的な責任を追及するというふうに考えました結果、どこかでこれはけじめをつけなければならない。そこでこの判決言い渡しの確定までの期間、これはやっぱり刑事手続上のものであるというところから、通算いたさないことにいたしたわけでございます。
  47. 大川光三

    ○大川光三君 御説明わかりますが、私はどうしても了解できないのは、結局判決言い渡し後の確定までの二週間です。この二週間は、補導処分を執行するために特に勾留状の効力を失わないということを書いておるのですから、ちょうど収容状によって身体を拘束したのと同じ性格を私は持っておると思います。それを収容状によって勾留したならば、すぐにその期間は補導期間に通算するのだ、収容状によらない、いわゆる判決言い度し後の二週間は算入しないのだということが非常な矛盾を来たしておらぬかという点であります。
  48. 横井大三

    説明員(横井大三君) 私の御説明があるいは不十分であったかもしれませんが、なお補足して申し上げますと、これは上訴期間でございますので、刑事訴訟法規定による法定通算になるわけでございます。いよいよ刑を執行する場合には、裁定通算と違いますが、当然通算されます。そういう意味におきまして、先ほど竹内局長が御説明申し上げました未決通算の一種になるわけでございます。従いまして、これを区別して考えるということも十分理由があるのではないかと考えるわけでございます。  なお、これはお尋ねがございませんでしたが、逆に補導処分をやります期間は、いよいよ刑を執行する場合には、これはやはり通算いたしません。両方とも通算いたさないわけでございます。これはやはり両者の本質的な違いというものを考えました結果でございまして、身柄拘束という意味におきましてはいずれも共通なんでございますが、両者の本質的な違いということからさような取扱いをいたしたわけでございます。
  49. 大川光三

    ○大川光三君 今の御答弁に関連して、実は私も伺いたいと思っておったのでありますが、たとえば執行猶予が取り消された場合において、既往になされた補導処分の身体拘束というものは、懲役あるいは禁固の刑に通算しない、こういう御説明でございましたが、これは他の法務委員各位にもよくお聞きを願っておきたいと思いますことは、最も端的な例を申しますと、補導処分を五カ月、六カ月間近まで受けた、ところがもし六カ月経過前に、その直前に執行猶予が取り消されたという場合におきましては、補導期間中の五カ月なり六カ月以内の身体拘束というものは全部御破算になってしまう。それからまたあらためて本刑を執行される。極端にいいますと、補導処分を受けて、その満了前に執行猶予が取り消されて、さらに引き続いて本刑の期間を全部つとめなければならぬということは、どう考えましても、あまりにもそれは被収容者に対して酷な仕打であると思うのですが、それに対する御見解を伺いたい。
  50. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいまの補導院に収容されて、つまり強制収容で補導院におります間に執行猶予の取り消しを受けるという場合は、ちょっと理論的には絶無ではないかもしれませんが、ほとんど考えられない場合だと思います。ただ仮退院になりまして、仮退院の期間中に執行猶予が取り消されるような事態がありますね。これは想像にかたくないのであります。その場合には、もう仮退院でございますので、拘束という状況はないというふうで、二重に収容されるというような御懸念は実際問題としては起ってこないのではなかろうかというふうに考えます。
  51. 大川光三

    ○大川光三君 補導院に収容されておって、かりに窃盗を働いた、殺人をやったというような場合はいかがでしょうか。
  52. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まあただいまの御指摘のような殺人をしたとか窃盗をしたとかというような犯罪を犯したということでないというのでございますが、私どもは、補導院に入っております間はむしろそういうこは少いのじゃなかろうか、また、そういうことがないようにというのが、補導院の生活指導の大きな目標であろうと思いますので、理論としては考えられますけれども、実際問題としてはまれな場合ではなかろうかと思うわけでございます。
  53. 大川光三

    ○大川光三君 執行猶予の取り消しは、補導院内における犯罪の場合もございましょうし、それ以外に執行猶予を取り消すことについての刑法の条文がありますね。それに該当して執行猶予を取り消すのだ、犯罪以外の場合で執行猶予を取り消す場合もございます、刑法の中に。そういうときには、ほとんど六カ月近くまで収容されておって取り消しになったから、これはあらためて六カ月本刑をつとめなければならぬということについて、私は非常に血も涙もないやり方である、かように考えるのですが、いかがでしょうか。
  54. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) いろいろ議論をいたしますれば、六カ月に一日足らないところまで補導を受けて、そのときになって他の罪が発覚して執行猶予が取り消しになるという場合もあり得ると思います。そういう場合に果して血も涙もない処遇になるかどうかということでございますが、まあ私どもは、補導処分というものを刑ではない。しかもその保安処分といたしましても、単に社会から隔離して、保護するのは社会であるという考えの保安処分でなくて、少年の場合と同じように、その売春婦そのものを保護してやるという趣旨のための保安処分でございまして、まさに少年の保護処分と、保護措置と本質は同じくするものであります。そこで、その両者を相融通し合というふうには理解いたさないのでございます。もしそういうふうに両者が共通のものであるということに相なりますると、それはただ身柄が収容されておるというこの一事にあるのでございまして、私は考え方としては、有無相通ずるような性質のものではないというように理解をいたしまして、両方の通算をし合うということはいたさないで、刑は刑、保安処分保安処分ということでけじめをつけていただきたいと、こういうふうに思うのでございす。
  55. 大川光三

    ○大川光三君 その点についてまあこれ以上申し上げましても一つの議論になりますから、この程度にいたしますが、それでは、お説の少年に対する場合の引例がございましたが、少年に対する保護処分というものは時に取り消されることがございます。ところが補導処分についての取り消しという規定はどこにもないのでございますが、それはいかがでございましょうか。
  56. 横井大三

    参考人(横井大三君) 確かにその通りでございますが、これは短期間の間にできるだけ改過遷善の実を上げたい。おそらく、そういう取り消しをしなければならないような、補導処分に適さない、お話では確かにそうだと、そういう場合だと思います。そういうことのなからんことを期しておりまして、しかも短期間の問題でございますので、あえてそういう規定を置かなかったわけでござざいます。もし非常な非行でもありますれば、ただいまおっしゃいましたような執行猶予の取り消しということも考えられるわけでありますから、大体そこら辺のところでまかなえるのではないだろうかと、こう考えた次第でございます。
  57. 大川光三

    ○大川光三君 今の御説明ですけれども、補導処分を取り消さねばならぬ場合なきにしもあらずであります。たとえば十七条の規定を見てみますると、「第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子に対して、同条の罪又は同条の罪と他の罪とに係る懲役又は禁固につきその執行を猶予するときは、その者を補導処分に付することができる。」という場合でありますが、もし満二十歳以下の女子にあやまってそういう処分をしたときには、どうしてこれを救済いたしますか。
  58. 横井大三

    説明員(横井大三君) 裁判所が補導処分できない者を補導処分に付したという場合でありますれば、これは検察官が当然その判決に対して控訴いたします。もし確定すれば、これは非常上告の問題になろうかと思います。そちらの面で解決する問題ではなかろうかと思います。
  59. 大川光三

    ○大川光三君 非常上告のお話が出ましたが、御承知通りに、非常上告は、検事総長が、判決の確定があった後に、その事件審理法令に違反したことを発見したということで、かかって検事総長がこれをやれることになっておる。一々そうして検事総長が非常上告をやっていただければけっこうでありますけれども、あえて検事総長をわずらわさずとも、現に少年法においてはそういう規定があるのでありまするから、この規定を、補導処分についても取り消し規定を設けるということは、これは手数も費用も何もかかる問題じゃない、いかがですか、その点。
  60. 横井大三

    説明員(横井大三君) これは、裁判所判決におきまして、刑を言い渡すと同時に補導処分にするという裁判をするわけでございます。その根拠になる裁判それ自体が変更されませんで、ただ行政機関がそれを取り消すというようなことは、おそらくできないことだろうと思います。従いまして、今補導処分にすべからざる者、たとえば要件がないのに補導処分をしたという場合には、これは普通の上訴手続によって解決するのでございまして、これはすべての違法の判決に対する是正というものの一環として行われるわけでございます。非常上告は検事総長しかできない。なるほどその通りでございまして、このことは、非常上告制度それ自体に対する批判でございまして、これは前から議論のあるところでございます。しかし現行の制度といたしましてはそうなっておりますので、できるだけこれを活用したい、こういうふうに考えるわけでございます。しかし刑事手続は三審までございますから、その途中でその違法を気づかないということはほとんどございません。大体普通の上訴でまかなえると、ごくまれな場合に非常上告の問題が起るかもしれないということにわれわれは考えております。
  61. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、もしごくまれな場合でも、非常上告によって無罪が確定するというような場合には、すでになされた補導処分による身体の拘束について刑事補償を求められるかどうかという点でありますが、いかがでございましょうか。
  62. 横井大三

    説明員(横井大三君) 刑事補償は一定の場合に限定をしておりますので、この場合は入っておりません。
  63. 大川光三

    ○大川光三君 もう一つ法律的な点を伺っておきたいのでありますが、いわゆる不利益変更禁止の問題でございます。御承知通り、不利益変更の禁止は刑のみに関するものでありますから、一応は補導処分について適用の余地はないように考えまするけれども、補導処分は刑の執行にかわる形態をとっておりますので、法令によって身体を拘禁する教育刑的性質を持つ新しい制度でありますが、従来の法理論では決し得ないのではないか。実際上、たとえば第一審において被告人を懲役二カ月の実刑に処したのに対して、第二審においては懲役六カ月、二年の執行猶予、補導処分の判決をするというような場合に果してこの不利益変更禁止に抵触しないかどうかという問題であります。
  64. 横井大三

    説明員(横井大三君) 不利益変更禁止の問題が出たのでございますが、これは御案内の通り非常にむずかしい問題でございまして、なぜ一体不利益変更禁止の制度があるかということにつきまして、いろいろ学者が検討いたしておるのでございますが、現在の定説と申しますか、有力な説は、被告人の上訴を妨げないようにと、そういう意味を持つのだ、こうなっております。従いまして、今お話の一審である刑を課しまして、そうして二審である刑を課した場合に、この二つを比較いたしまして、被告人の立場に立って考えてみまして、こういうことをされるのでは上訴をちゅうちょするであろう、こういうような場合には、これは不利益変更禁止に触れるんだというのが基本的な考えでございます。たとえば、現在でもありますのは、一審である刑を言い渡しまして、それに執行猶予を付する。被告人が上訴いたしました結果、裁判所は同じ刑あるいは軽い刑で保護観察に付したらどうだ、この点の解決も実は法文の上ではしてないのでございます。これは今までの判例をずっと見て参りますと、それぞれ具体的案件に応じまして、刑とかいう言葉にこだわりませんで、この両者の刑を比較いたしまして、これではいかにも被告人が控訴して失敗したと、こんなことなら控訴しない方がよかったというふうに思われる場合には、これを不利益変更禁止に触れるというような態度をとっておりますのがこの裁判所の考え方でございまして、非常に合理的な考え方であると思います。従いまして、今度の保安処分につきましても、やはり保安処分のつかない場合とつく場合を考えてみますと、つく方が重い。しかしそれ以外に、一方は執行猶予がつく、一方は実刑と、そういうようないろいろな要素を総合いたしまして判断するということになろうかと思います。
  65. 大川光三

    ○大川光三君 私、まだいろいろ伺いたいことがございますが、本日はこの程度にとどめまして、また次の機会に引き続いて御質問を申し上げたいと思います。
  66. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと私から御質問申し上げたいと思いますが、先ほどの大川さんの質問に関連いたしまして、先ほどの設例の場合に、たとえば二十才という年令の誤認は、これは事実の誤認でありますので、非常上告ができないはずです。非常上告は、刑事訴訟法の四百五十四条で「法令に違反したことを発見したとき」、こういうことに限られておるわけなんですが、その点についてもう少し、これは他日でけっこうですが、よく御検討願いまして、その点をどうするかという問題を一つ御研究願いたいと思います。
  67. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は一問一答で簡単にしたいと思っておりますが、その前に、今度の法案が、一体、刑を課そうとしているのか、教育して、大へん恥かしい仕事を長い間やっておった女の人に、当りまえな日本婦人として、あるいはできるなら日本のお母さんとして立て直そうというその教育をしようとして立法されているか、その立法の精神を私第一に伺いたいと思うのであります。それは家庭裁判所で取り扱えば、こういう立法はおそらくなされなかっただろうと思っておりますけれども、これを刑事裁判に持っていくものですから、こういう大へん矛盾したことがたくさんありまして、私自身もやはり審議会の審議委員としまして、ことに五条違反についていろいろやりました一人でございますから、責任を感じておりますけれども、私これを読んでみても、ふできな法案じゃないかと実は考えておりますのでございます。そこで、いろいろな事情上、刑事裁判に持っていかなければならないということになると、こういうことも大部分必要になってきますけれども、読んでみますと、いかにも教育でやらなければならぬというようにも思えるし、と思って、実際は刑事処分などが多うございまして、さっきから少年法通りにというようなことでありますが、実際、家庭裁判所に持っていって、少年法の精神によって、あの立法によってやれば、もっとスムーズに立法ができたのじゃないかということを非常に残念に思っております。  そこで、私は一問一答の形で伺いますけれども、一体実刑を課しましたら、長い短かいにかかわらず、そのあとは野放しになるのですか、どうなるのですかということを一つお伺いしたい。たとえば、二カ月なら二カ月の実刑が課されますね。そうしますと、そのあとはもうそれで済んだことになるのですかということです。
  68. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) まずこの一部改正が、刑を課せようとすることをねらっておるのか、教育をしてやろうという点をねらっておるのかという点でございますが、ねらいは教育をしてやろうというところをねらったものでございます。ただ条文そのものを見ておると、いかにも刑を課そうとしておるように見えるじゃないかという点でございますが、これは刑事手続にのせて保安処分を立案しておりますことから生ずることでございまして、この点ふできであるというおしかりはまことにこれは甘受せざるを得ないのでございまして、保安処分という制度が、非常に刑罰体系といたしましては重大問題でございましたので、今もせっかく研究をいたしておりますが、いずれはその時期においてこれらの問題をあわせて、ねらっておる通りの条文の形に書きかえられなければならないものだと考えております。それだけはおわかりを願ったとかりにいたしまして、それでは補導処分が所期の通り満足すべき状態で終った場合はどうか、あるいは仮退院になって、残りの期間を無事に過した場合に、刑の方はどうなるかという点につきましては、売春対策審議会の御答申と若干そこを変えまして、刑の執行にかえてという線を強く出すために、三十二条によりまして、そのような補導処分の期間を終った者及び仮退院をして残りの期間を無事に過した者は、刑の執行猶予もそれとともに消えてしまう。従って刑の方も消えてしまうということにいたしたのでございまして、その辺は、補導処分と実刑との関係をそういうふうに調整をいたしまして、できるだけ補導院に入った者に希望を持たせて、将来に向って希望を持って更生していただくように措置したつもりでございます。
  69. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その点に、三十二条についてはあとで触れようと思っておりましたが、前後しますが、その点お伺いします。それは刑を受ける者に六カ月でぽっきり、もうあとは執行猶予もつけないとするということは、それを受ける人には恩典と思うということと、私はそうでないという——その見解が違うのです。六カ月補導院に入れておきまして、ここに法律にうまいこと書いてありますが、生活指導をし、職業補導をし、医療の手当をするなんてえらいことを書いてある。だけれども、この一点を捉えてみましても、一体六カ月でできますか。生活指導、女の生活指導を、六カ月であの腐敗堕落した女たちを、ほんとうに家庭の一婦人として正しく歩ませようというのは、六カ月でできるというのは、あまり法務省は甘い考え方を持っている。だから、私はほんとうに教育的の立場で行くなら、これじゃいかぬということが言いたかったのですが、それはどうでしょう。
  70. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 御指摘のように、六カ月の期間というのは、保安処分といたしましても、諸外国の例に見ない短期間でございまして、いずれまた矯正局長からお答え申し上げた方が適当かもしれませんが、立案者の立場から申しましても、この六カ月の期間が決して長いものではない、短か過ぎるというように考えるのでございますけれども、それは、今おっしゃるように生活の立て直し、再教育、職業補導というような点を考えますと、そういうことに考えるのでございます。少くとも少年の場合と比較してみましても、つくづくとそういう感を深くするのでございますが、本件は刑が六カ月以下というきわめて軽い刑を課しておりますし、また五条違反そのものが犯罪の形態としては軽い形態の犯罪でございます。そこでそういうものとの比較も妥協的に考えましたのと、それからまた、問題を生活指導と申しますか、心持を転換する契機にしたいというようなところに教育目的をしぼって参りますと、六カ月でも相当な効果を上げ得るのではないかというふうに考えまして、六カ月という期間を定めたのでございます。
  71. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そこで、これは六カ月というのが刑期だとすれば、できるだけ短かい間がいいわけです。六カ月より二カ月の方がいいかもしれない。だけれども、そこで問題にしたいのは、刑にかえてということになぜなさらなかったか。刑の言い渡しをしないで、刑にかえて教育をする。それを、六カ月が基本の指導をする期間であっても、そのあとはやはり何か形を変えて、保護司を使ってでも、あの手この手で、どうでもこうでも婦人を日本のお母さんに立て直さなければならぬという建前でしたら、私はこういうことはまずいことだと思うのだけれども、いかがでしょう。その刑にかえてということになぜなりません。
  72. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑にかえてということは、そういう御要望は、一部改正に当りまして、相当広い人々の間に論議された点でございます。私どももこれをあながち否定しておるのではございませんで、できるならばそうしてみたいものだという考えは持っておったのでございます。ただ、先ほどもちょっと触れましたように、刑にかえてということになりますと、補導処分という、保安処分をもっぱらやる形にしなければならないのでございます。ところが、先ほどもるる申しましたように、保安処分という刑事手続に乗せてやるということから起ってきたのでございますが、もっと端的に申し上げますれば、家庭裁判所でお願いをすることができない、適当でないという結論から起ってきたことでございますが、とにかく刑事手続に乗せてこの問題を解決しようといたしました結果として、刑事手続においては、この保安処分と刑罰を課するという手続の二本立になっておらないのでございまして、日本におきましては刑罰を課する手続は一本立と申しますか、それだけなんでございまして、安保処分という制度はないのでございます。そこで、この補導処分を作りますために、早急にこの二本立制度を刑罰体系の中に持ち込むということにつきましては、いかに刑にかえてという処置をとりたいと希望されました学者の方々も、一挙に刑罰体系全体に影響するような制度をここへ打ち立てるということにはさすがにちゅうちょされたのが実情でございます。そこで、こういうような結果になったのでございまして、そのために適用範囲が狭められるという懸念も同時にあるわけでございますが、一方執行猶予を何回でもやれる道を開いたとか、その他いろいろ手当てをしまして、まずまずこの程度でさしあたり出発をいたしたい。特にこの四月一日からの罰則規定の発動と申しますのは、これなくしては完全実施という、完全ということは私はどうしても言えないのじゃないかというふうに思うのでございまして、そうだといたしますると、まことに完璧を期した案ではございませんけれども、まずもってこの案で完全施行に入りたい、こういう念願でございます。
  73. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 時間がございませんので急いで苦しゅうございますけれども、次に移ります。  実刑を課します場合に、たとえば二カ月、三カ月というような、もちろん六カ月というのもありましょうけれども、そういうときに売春婦であるゆえに中の取り扱いについて何か考えられておるでしょうか。まだそこまでいきませんでしょうか、どうでしょうか。そして出ましたあとはどういうことになるのですか。
  74. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 短期受刑者の取り扱いというものは、行刑当局といたしましては非常に取り扱いのむずかしい問題として研究をいたしておるのでございます。ただいま御指摘のごとく、かような第五条違反として短期の、二カ月とか三カ月とかの実刑を課された者の処置をいかにするかということ、これは今後の問題としまして十分にわれわれとしても考えていきたいと思っております。この行刑をいかにしていくか、これは現在、行刑は教育刑を目的としてやっておりますが、その趣旨からいたしまして、なるべくこの短期間内に本人たちの更生に役立つような方途を考え、今後の更生の道をたどらせるにつきまして、まあ二カ月や三カ月じゃ仮釈放ということはないかもしれませんが、それでも出ましてから後の問題につきましては、保護関係の役所とも十分に協調をとり、そして厚生省関係の、藤原委員のおっしゃいました精薄施設との連携、現在は成人に対する精薄施設は、御指摘のごとくございません、そういうような点につきましても、今後さらに厚生省の方ともよく連絡をとりまして、こういう方面の手当につきましては、さらに手当を加えていきたいというふうに考えております。
  75. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そういたしますと、保護観察に付されるというわけなんでございますか。
  76. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) これは御承知のごとく、仮釈放になりました場合に保護観察になるわけでございまして、満期になりましたときは保護観察にはなりません。しかしながら、更生緊急保護法の適用を受けるわけでございますから、この点は法務局の方で十分お考えを願いたいと思っておる次第でございます。
  77. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そういたしますと、最も悪いのが刑務所に入れられるわけなんですね。それで刑務所に行きましたならば、二カ月か、中には一カ月のものもあるかもしれませんけれども、そうすると、今度出されたらあの方の法律前では更生緊急保護法によってと言いますけれども、大体において手放しになってしまうというように解釈してよろしゅうございますか。
  78. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) ちょっと御趣旨がよくわかりませんが、判決で二カ月という判決を受けまして満期で出ましたならば、これは本人から願い出まして緊急保護を受けない限り、これに対しましては保護観察も何もつけることはないのです。
  79. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 そうすると、先ほど刑事局長がおっしゃった大体においては教育でいきたいという意味から言ったら、これはほんとうに女たちから言いますと、いつまでもいつまでもやられるよりも、二カ月でもつとめて出てきた方がいいわという結果になりはしないかと思っております。ことに、長い悪習慣のある者は愛情をもってじわじわと長い間手当をしていかなかったら、とても表に帰ってこないということになりますが、実際問題として、当局の方は刑務所に行く者があるだろうとお考えですか。法律はこうやっておいて、実際は行く者はないというようにお考えでしょうか、どうでしょうか。また、それは入れてやろうとお思いになれば幾らでも入れられますが、その点のお考え方はどうでしょうか。ほんとうは刑務所に入れないでもいい。もっと、しゃばに出しておいてそしてあの手この手でやって、どうでもこうでも日本の女を作らなければならぬというお考えがあれば、私は手当の仕方はいろいろあると思うのですが、その点はいかがでしょう。
  80. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 二カ月さえ刑務所でしんぼうすればそれでいい。そう言ってしまえばそうでございますが、この刑務所に行くという、刑罰を受けたという事柄の重大性でございます。果して世間でそんなに刑務所に行ったということを軽く考えておるかどうかということにつきまして、私は刑罰というものに対しましては、相当世間のきびしい批判をわれわれ考えざるを得ないと思っております。従って、かような確かに短かい期間でありましょうが、刑罰をもって臨むということは、その本人に対しましては非常な大きな烙印を押されたことになりはしないかと思っております。われわれの立場からいたしますれば、刑を受けた者の過去の刑はわれわれは問いたくありません。なるべくこれは社会からいつまでもいつまでも刑余者ということの取り扱いを受けさせたくはないのであります。ないのでありますが、しかし、世間の刑罰を受けた者に対しまする感じというものはそうなまやさしいものでは私はなかろうと思っております。しかしながら、この保安処分は刑罰として課したものではないということに、これは私は本質的に感じが違うのである、かように考えます。従いまして、この保安処分によって刑の執行猶予されまして、それでもう刑罰を受けなくて済んだということは、これは本人に対しましては非常に大きな利益じゃなかろうかと思っております。  なお、この刑罰は今後やるつもりかということでございますが、これはわれわれの感じからいたしますと、刑罰に私はもっていきたくない。刑罰にいくかわりに私は全部保安処分で、補導処分でまかなっていきたいと思っております。これでどうしてもまかない切れない者があれば、これはやむを得ませんが、さような者はないようにしなければならないと私は考えております。さように今後この補導処分を運営していきたいものとこいねがっております。
  81. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと一言だけ。いろいろございますけれども、もう一言。  矯正局長が願っているだけでそれを願いが通るかどうかわからないのですが、こういう点についてもう少し当局は研究していただいたらどうでしょうか。大事なところで、こんなものは作っておいても、刑務所に入れるような法律を作っておいても入らないように、早くみんな女をいい方に導いていけばとてもけっこうですけれども、その点を一つ考えていただきたいことと、それから三十二条の執行猶予が消えるということは、ほんとうに愛情があるならば執行猶予をつけておいた方がいいじゃないかという点もあわせて研究していただきたいと思います。  いろいろたくさんございますのですが、きょうは私の質問はこれだけにしておきましょう。
  82. 青山正一

    委員長青山正一君) 藤原さん、尾村環境衛生部長は他の委員会から出席要求がありますから、この部長さんに関する限り先に御質問願いたいと思います。
  83. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、法律が次々作られるのですが、ほんとうに実施される意思があるかどうかということを非常に心配するものであります。売春法ができて、完全にこれを更生させる上におきましては、よほどの決意、熱意がなければだめだと思うのです。最近聞くところによりますると、業者が非常に転業しておる。こういう場合にいろいろな問題が現実に起きておるのでございます。  そこで、私は先ほど来旅館業法の改正についてその当時の質疑応答をちょっと目を通していたのです。ところが、この旅館業法案改正に伴いまして、従来の不備の点については、よほど努力をして指導して更生に当らせるということを局長がはっきり答弁しておるのです。ところが、最近入りました情報によりますと、実にひどいのですね。最近売春業が廃止されると、勢い特にひどいのは、温泉旅館等におきまして、従来はチップが大多数を占めている。それと女を連れ込んだ場合に別室料として取っていたわけなんです。旅館ではそれが三分の一くらい収入が減るそうです、そこで、今度は女を入れて女中さんをはべらして、それでこれにかえていく形態が目立ってきている。こういうことの陳情がたくさんあるのです。これについて厚生省としては、全国の旅館業に対してどのような指導がなされておるか。それと現実にそういうようなことがあったかどうかという点について、御熱意のほどを私は聞きたい。
  84. 尾村偉久

    政府委員(尾村偉久君) 旅館業法が昨年改正になりまして、従来旅館業法は衛生的な措置の法のみで旅館の営業を許可いたしまして、また、その面で監督いたしておりましたのを、昨年の五月の改正の際に、風俗の関係をも旅館業法に取り入れまして、当時売春関係につきましては、勅令第九号の違反者は、旅館業法の八条でこれを営業許可の取り消し、または停止することに、こういうふうになった。もちろんそのほかに、学校教育との関係で例の鳩森事件を契機といたしまして、学校の周辺に旅館ができた場合に、教育上、風俗上いかぬという場合には許可をしないという要望も当時入ったわけでありまして、さような改正があったくらいでございますので、旅館における風紀を乱すことを防止するということは、この旅館業法の施行の上に十分注意をしておるわけでございます。ただ、今のお話のように、今後一番予測されるのでございますが、この売春防止法の発効とともに、これらの転業の対象として非常に旅館業になる者が現にふえております。で、この場合に、最初からかような者を旅館業にしなければ一番安全ではないかということも予測されるのでございますが、ただ、これはあくまで旅館になりまして、正しくこれから営業して食べていこうというような形を表明いたしまして、また、客観的に非常に濃厚な事実はないとか、これはまあ旅館業法に定める規則、規定に合っている以上これは許可せざるを得ない。また、できれば、むしろまじめなことをやっている者は積極的に許可をいたしまして、早く、もぐりの売春業をやめさせる、こういうことでこれの許可は今どんどん進めているわけでございます。で、むしろ四月以降はそういうふうな旅館になるから、今のお話のような事態がどのぐらい起るかということでございまして、おそらく四月以降は、旅館の中で今のようなことが起りますれば、売春防止法の二章の罰則にかかるものが出てくると思います。それがかかりますれば、八条によりまして、ただいまの国会に売春防止法の二章の罪ということに切りかえるように今法案を提出中でございますが、これによりまして、そういう事実があった結果について営業取り消し等をいたすわけでございます。これはあるいはひんぱんに起らぬことを望んでいるわけでございますが、これは将来そういうことが事実起れば、これは厳重に——旅館業法の施行はその面では厳格にやる、こういうつもりでございます。  それから現にどの程のそれに類似のことが起ったかということでございますが、これは府県知事から報告を徴するように通知をしておりまして、現に明らかに聞きました事例を申し上げますと、福井県で昨年勅令違反並びに児童福祉法違反で、旅館業者がその女中といたしまして雇っている者に継続的に売春をさせたということで勅令九号違反にひっかかりまして、公訴が提起されるときに、直ちに府県知事から報告がございました。旅館業法の適用によりまして営業停止を命じたい、こういう協議がございました。これは内容が非常に悪質でございまして、十六才か、十七才の女中まで雇っておった。児童福祉法違反と勅令九号違反にひっかかった。これはわれわれも指導といたしましては厳重にやれということで、すでに営業停止が発効いたしております。一月に入りまして、群馬県から全く同様な例がございましたので、これも同様に営業停止が実行されたわけでございますが、同様なものが数件あるのではないかというので、今事例の収集をいたしておりますが、すでに石川県から、そういう例が数例近く協議して指導を仰ぎたいということの報告が参っておりますので、こういう従来の勅令九号でございますと、契約をして売春をさせた場合と、困惑によって売春させた場合、この二つだけでいくようなことになりますので、二章が全部今度適用になりますので、これは相当ゆるがせにできぬということで、その対策につきましては、厳重に事実についてはやるようにということを、先般所管の府県の部長会議を招集したときに、あらかじめこれを十分伝えているわけでございます。  それから先ほどちょっと御意見ございましたような連れ込みの風紀紊乱の問題でございますが、これは今旅館業法の五条で、原則としてはお客を断わった旅館が罰せられないように今なっておるわけでございます。断わっても罰せられない、差しつかえないというのが三つほど理由があげてありまして、その中に定員が一ぱいの場合、それから伝染病を持っている場合、それから最後に非常に風俗を乱すおそれがあると認められる場合と、こういうことがございまして、断わっても差しつかえない。ただ断わらなければならないという規定にならなかったために、まあ強硬に断わらないところがあるわけでございます。この点で、今善良な旅館主は極力そういう者が入るのをこれでやっているということ、それからもう一つは、そういうようなことを挑発させてはいかぬので、広告とかあるいは文書、図書をそれらしく飾ってお客をだます、誘惑するというようなことは、これは旅館業法でやはり昨年から禁止になっております。これは政令に明らかに具体的な事実をもってきて規定しております。これによりましてそういう面を防止しております。  それからもう一つは、宿泊簿、すなわち宿帳でございますが、これに必ず泊る者は名前を記し、それから宿泊日等を記さなければならないことになっております。これである程度取締りができるのでございまして、これを備えませんとやはり罰則がかかるようになっております。これにいわゆる売春婦と称せられるストリート・ガールが、相手のお客が変りながら自分は同じもの、すなわち二人の宿帳を一定の期間見ますと、一方だけが変らぬ宿帳が次々と違った人で出てくる、同室に泊る、これが一つの発見のもとになります。これに基いて警察当局に情報を交換いたしまして、売春行為がそこで行われておるということを発見するこれがもとになるわけでございます。この点は今後も有効でございまして、アベックに対してはさような点で指導するのが今大体全部のことでございます。そのほかには、旅館業法によりまして直接やり方がないわけでございます。  それからもう一つは、旅館業法の改正と一緒に成立いたしました環境衛生の営業法でございます。これによって、県ごとに唯一の大同団結した旅館同業組合ができまして、この理事会の理事者が旅館の営業方法について指導するということを法律にうたったわけなんでございます。これはまだ各県全部できませんで、二十県ほどでございますが、これを通じまして指導する——府県当局あるいは厚生省と地方連合会という形で、今のような、従業者にさような営業方法で使うということをこれは防止しよう、こういうことでございまして、これはこれからの問題であります。ちょうど幸い大体四月までに連合会もでき上りますし、大体の府県が組合ができますので、大体これは並行して指導できる、かように存じております。  それからなお、温泉旅館につきましては、旅館宿約六千軒ございますが、この半数が風俗営業を兼ねておるわけでございます。これは風俗営業法に基きまして警察が取締りをやる、同時に女をはべらしまして、客のわきにつけて御飯を盛るだけですとこれは女中の仕事でございます。これを越しますと、これは風俗営業のいろいろな取締りになって引っかかる、これは現在でも並行いたしまして取り締れるようになっております。しかし、実際問題としては、そこは非常にむずかしいのでございます。飲食店、いわゆる風俗営業の飲食店と違いまして、元来お客がふとんを引いてもらって泊るのが旅館の仕事でございますので、女のはべる程度というものはこれは区別がむずかしいというので、旅館主から見まして違反行為を積極的に届けるということが非常に少い、この点が少し抜け道になっておりますが、これはしかし、売春防止法で場所提供その他でこれは十分発効するのでありますと、こう存ずるのであります。
  85. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はあなたの言うことでわかる点もあるし、わからない点もある。結局一応そう法の建前になっておる。今は売春をしたときは、これは営業停止ということができるということも、私も法案審議に参加しておりますからよく承知しております。けれども、それが果してやられておるかどうかが問題なんです。それが今度の法案審議に当っても私が非常に重大視しておる問題であります。従いまして、この次まででけっこうでございますから、今日までにそうしたことで、全国の旅館が営業停止になった数がどれだけあるかということをここにはっきり出していただきたい。  私はもっともっとあなたにお聞きしたいことがございますが、きょう時間がございませんので、次の委員会に、その点のいろいろの質問が出ると思って、ぜひ調べてきていただきたいということをお願いいたしておきます。お急ぎのようでございますから、そこでそういうことにはなっておりますが、やられていない点の数々についてお伺いをしたい。  私はもう一つあなたに聞きますけれども、それならば、売春をやっておるということが明らかになっておとるころへ少しも問題がいってない。最近の、これはまあ入手した情報でございますけれども、小野川温泉というのがある、山形県に上山温泉というのがございます、その近くに小野川温泉がある。またさらに、その近くに赤湯温泉という温泉があるわけでございます。ところが、小野川温泉にはおまわりさんが一人しかいない。従って、そこではここの代表的な宿屋といたしまして山川屋、坂本屋、河鹿荘と、これはもう世間周知の女中さんが淫売をしている所がある、ところが警察官が一人でございます。何とかうまくやっておるらしいのです。そこで、赤湯温泉では、これは売春法が今度実行されたならばこんなにたくさんいるおまわりさんを一々——これは私が聞いたままを言うのですから、名誉棄損などと言わないで下さい、一々買収するわけにはいかない、これはどうも小野川温泉がうらやましいというので、業者が非常に頭を悩ましておると、こういう、これは業者の情報なんです。一体こういうふうに明らかに売春をやっていても、いまだかつて営業停止になったとも聞かないし、ここにお手入れがあったとも私は聞いてないのです。こういう点がどういう状態であるかということも一つ調べを願いたい。こういうことが野放しになるならば、幾ら売春法が施行されても実効は上りません。要はこれを守ると、実行するのだという熱意がなければだめだと思いますので、上山温泉の実態、小野川温泉の実態、さらに赤湯温泉、引きましては静岡の熱海温泉、これだけは至急に実態の御調査を私はお願いいたしておきます。  それから労働基準局の方にお伺いいたしたい。
  86. 青山正一

    委員長青山正一君) 鈴木監督課長がおいでになっております。
  87. 藤原道子

    ○藤原道子君 私はこうした問題が施行されていくには、基準監督局がよほどしっかりしてもらわなければだめだと思うのですが、最近基準監督局に幾ら提訴してもやってもらえない、忙しいというようなことで少しもやってくれないという問題がたくさんあるのです。結局旅館の女中さんたちは今日どれだけ働いておるかということになる、大体十二時間くらいが法で認められておるのですか。ところが、実際におきましては十六時間から二十時間くらい働かせるところがざらにございます。こういうことで、従業員から監督局へ幾らお願いしても一向に監督してもらえないというのが、これが山形県の上山温泉で問題になりまして、そのときに労働基準局の答えといたしまして、そういうことを言われたので、旅館に対してアンケートを出したけれども、締め切り後一月以上たっても一向に返事がもらえないという嘆きを発表しておる。ただし、今までの旅館業に対しての調査が足りなかったことは遺憾である、こういうふうに言っておるのですが、これは方々にあると思うのですがね。一体労働基準監督局としては、こういう面に対しての監督はどの程度にやっておられるのか。まあああいう業種だから仕方がないという、こういうことで一方的に従業員が長時間の重労働にあえいでいてもこれを野放しにしておいて、まあまあ仕方がないというお考えでやっておられるのかということをここで明確にお聞きしなければならないと思うのでございます。
  88. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 旅館業における労働者の労働条件につきましては、一般的な統計調査はございませんが、昭和三十年に、婦人少年局が、未亡人等の雇用に関する調査というのをやった結果によりますると、旅館、ホテルにおきまする一日平均実労働時間は九時間三十九分、これは平均でございます。休日につきましては、一週間一回あるいは一カ月四日以上与えておるものが調査事業所全体の四〇・八%、一カ月二日ないし三日の事業所が四一・八%、こういうふうになっております。  なお、監督の結果でございますが、これは私どもの統計のとり方からいたしまして、旅館業だけはとっていないわけでございますが、旅館業を含む接客娯楽の事業所につきまして見ますと、一昨年の七月から昨年六月までの間に、約千八百程度のこういう事業所を監督いたしましたところが、その違反率は七五%でございます。その違反のおもな事項は、やはり労働時間、休日、割増賃金、こういうふうなことでございましたので、それぞれ是正勧告あるいは再監督をやった結果、約半数程度は全部あるいは一部の是正をしておる、こういうふうな実情でございます。こういう実情に対しまして基準局といたしまして、どういう態度で臨んでおるかという御質問だろうかと思うのでございますが、御存じの通り、こういう業態は、前近代的な業態でもございますし、また、その基盤が非常に脆弱であるということのほかに、また、業態の特殊性からいいまして、普通の工場に付するような監督をやりましても、なかなか実効が上らないという点は御了解いただけると思います。従って、われわれといたしましては、最近新聞紙上等で御存じの通り、従来問屋街あたりでは週休制を実施されていなかった。これを一つ集団的に指導して、現在、横山町、馬喰町を初め、大阪、岐阜こういう所では、三百年の伝統を破って週休制を実施された、こういうふうなやり方を、一つ旅館業の方にも採用して、一足飛びに労働基準法に定められておるところをやらそうと思ってもなかなかできることではありませんので、まず、労働条件の明示、労務管理の合理化ということを中心に、業界指導あるいは労働組合指導、こういう面からまず始めて参りたいということで、先般地方の局長に、そういう観点から十分指導監督するようにという通牒を出したような次第でございます。
  89. 藤原道子

    ○藤原道子君 私は、旅館業は、前近代的な業態であるから、工場労働者のようにきびしくやれと言ってもできないという点はわかるのですけれども、あまりにひどいのです。ことに、固定給などもらっておる者はほとんどいないと言ってもいい。けれども、前近代的な業態であるからといって、全国に二十万から三十万の従業員がいるということを推定されるわけです。これらの者が非常に苛酷な労働条件で酷使されておる。しかもシーズンになりますと、一日十六時間から二十時間ぐらい働かされております。こういう実態は、おそらく労働基準局にも私はわかっておると思います。わかっていながら、前近代的な業態であるからといって、今日まであまりこれにきびしく御調査あるいは御監督がなされなかったということが私は非常に遺憾です。くわしいデータも私は持っておりますが、きょうはあまり時間もございませんから、深くは御質問することを避けますけれども、今後やっていただけるかどうか、やる意思があるかどうかということについて伺わなければぬらないと思うのです。結局先ほども言いましたように、チップに依存しておる、固定給がない。あっても三千円くらい。しかも三千円渡したことにして、食費として二千五百円ぐらい取っちゃって、あと五百円ぐらいしか実態は渡されていない。あるいはチップの中でも業者が一割、二割というものを天引きしておる、こういうことがたくさんあるのですよ。こういう状態のところへ今後売春法が施行されれば、連れ込みがなくなる。そうすると収入がぐっと減ってくる。この弱みにつけ込んで業者の収入も減るものだから、売春強要という方へどうもいくらしいのです。こういうことについて、あなた方のお覚悟を私は聞いておきたい。
  90. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 先ほども申し上げましたように、旅館の従業員の労働条件が、ほかのものに比して非常に悪いということは、われわれも十分存じておるわけでございますので、先ほど申しましたように、全部が全部、違反しているのを全部摘発するというわけにも参りませんので、業界指導その他によりまして、百事業所があるものなら、たとえば七〇%程度は守れる状態に置いて、それでなお違反するものは断固摘発するというような態度で、まず業界指導、労務管理の近代化、あるいは労働条件の明示といったような根本問題についての業界の指導から始めて、悪質なものは断固取り締る、そういう方針で参りたい、こういうふうに考えております。
  91. 赤松常子

    ○赤松常子君 今の藤原委員の問題にされております旅館の従業員の問題でございますが、最近旅館従業員の組合が少しずつ発足しているわけでございます。女中さん及び番頭さん……。私も先だって、この月の十九日に、上山支部に集会がございまして参りました。ほんとうに女中さん方の待遇というものは原始的というのでしょうか、まだ完全なる雇用契約すら成立をしておりません。それで勤続年数を聞いてみましても十二年、長いのは二十年いてもまだ完全なる雇用契約がないものですから、健康保険法の適用も受けておりませんし、勝手に首にされる。非常に不安な状態なのです。それで私驚きまして、一体基準監督署がここにおいでになったのかと聞いたのですけれども、ある番頭さんは、私は二十年ここに働いておりますが、基準監督官のお顔を一度も拝見したことがございません。まあこれはその方のことを私聞いて全部信ずるわけではございませんけれども、ほとんど、有名な山形県でも一流と言われている上山温泉にも監督官の手が伸びていないという、そういう実情なのでございまして、ほんとうに驚くべき待遇でございまして、まあそれゆえにこそ従業員の団結がだんだんできまして、組合ができて、そうして固定給の獲得、週休制の獲得、完全雇用の契約の制定というような方面に自分たちで立ち上る以外にないというので、そういう動きがあるわけでございますが、もう少しここで問題にしたいのは、ほんとうにそういうところの監督官の手がほとんど伸びておらない。これは私、白浜温泉、有馬温泉などにもそういう例をたくさん、私の行ったところでは指摘したいことなのでございます。一体こういう方面に対して、今指令を出しているとおっしゃいますけれども、従来ほとんど手ぬかりであった、こういうことは私は非常に遺憾に思う次第でございます。まだまだこの問題につきましては、私も相当調べておりますこともありますから、次の委員会で、これはやはり売春防止法の施行に関連している旅館のことでございますので、売春防止法に関連したその条項で質問申し上げたいと思うわけでございますが、今たまたま御発言がございましたから、私、この点についてもう少し目の届くようにしてもらいたい、こういうことを強く申し上げて、私のあなたに対する質問はこれにとどめておきます。
  92. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) こうした旅館業とか商店とかいうものの監督を、どういうふうな方法でやるのが一番実効が上るかという点に関しましては、かねがね苦慮しているわけでございます。現在の監督官で、旅館あたりに年に一回たとえ行ったといたしましても、それがどれだけ実効を確保するかという問題になりますと、いろいろ問題がありますので、もう少しほかの実効の上る、また、一たん監督をしたらあと戻りをしない方法はないだろうかというふうなことをいろいろ考えてみた結果、まずこういう行政につきましては、たとえばまず第一に必要なことは、従業員そのものが自分の労働条件というものはどういうものであるかということがはっきりわかるような状態に置くことが先決問題として必要じゃないか。たとえば、自分の週休というものは上から恩恵を与えられるのでなくて、一応就業規則として何日与えられることになっていて、賃金はどれだけ与えられるようになっていて、夜おそくまでやればどれだけ割り増し賃金がつくことになっているのか、こういう労働条件そのものがはっきり従業員にわかるような状態に置くということが先決問題であると考えますので、主として、先ほども申しましたような、業者を指導いたしましてそういう労働条件を明示する。また、その労働条件の基礎になりまする賃金台帳を整備すると、そういうようなことからまず指導をして参りたい。こういうふうに考えておるわけでございまして、従来監督官が旅館に参ったのが非常に少かったのは事実でございますが、この点につきましては、従来のようなやり方でございますると、年に一回行きましてもしばらく行かない間にもとへまた帰っているというふうな状況では何もなりませんので、こういうふうな特殊の状態を監督する場合の最も実効ある監督方法という問題につきまして自信が十分なかったものですから、そういう結果になっておるわけでございまするが、今後は、今言ったように業界指導を中心とする監督を十分やって参りたい。こういうふうに考えておるわけでございます。
  93. 藤原道子

    ○藤原道子君 法案に直接に関係でないという御注意もございましたけれども、法案を実行する上において非常に大切なことだと思って時間をお借りして済みません。ただ一点お伺いしておきます。  労働基準監督局が、ほかの方には違反行為で摘発した事件はたくさんあるが、旅館業で明らかに違反していてもいまだそういうことは私耳にしないのです。もしそういう点で違反行為として摘発され、あるいは処分された例があるかどうかということを今後お調べおきを願いたいと思います。  それから、これは警察庁が来てないそうでございますから、委員長においてお取調べを願いたい。これは同じく上山温泉の問題でございますが、売春防止法ができれば、結果的には女中にそうした役目が転嫁されそうだという危険を感じて、女中さんたちの従業員組合が講習を受けたい、警察を呼んで講習を受けたい、こういうことで、今月の十九日の大会数日前から警察へ講師——講師というのですか、つまり教育を受けたいためにだれか来てほしいということを申し入れたけれども、忙しいということでついに来てくれなかった。こういうことです。これで一体政府がほんとうにこの法案を通そうとする意思があるかないかという点が私は疑わしい。幾らここで慎重審議しても、扱うその衝に当る人がこういう熱意ではだめだ。監督局がしかり、あるいは厚生省しかり。さらにましてや一番たよりにしております警察が、そういう危険にさらされない前に、女中さんたちみずから講習を受けたい、こういうことを申し入れても来てくれない。こういうことではだめだ。こう思いますので、そういう点があったかどうかという点をはっきりしたいと思いますので、この次には警察庁に来てもらいたい。  私はきょうの質問はこの程度にいたしておきます。
  94. 青山正一

    委員長青山正一君) 承知いたしました。
  95. 赤松常子

    ○赤松常子君 私もちょうど十九日に行ってたわけなんです。二、三日前から従業員が集まります、業者も集まりますから、売春防止法のその施行に対する警察の態度及び防止法の内容をつぶさに研究したい。ですから適当な方に来てもらいたいということを二、三日前から言ってある。ところが、私もちょうどその日行っておりますから、いい機会だからというので、また、責任者が当日朝早く行ったのです。ところが、署長さんは先約があるから……じゃあその次の方と言っても、いや忙しいから、どうもというので、せっかくいい機会でございましたにもかかわらず、ついに見えなかったという事実が——私はそのとき行っておりますから、確かにあるのです。
  96. 青山正一

    委員長青山正一君) それはどこの警察ですか。
  97. 藤原道子

    ○藤原道子君 上山です。
  98. 赤松常子

    ○赤松常子君 これはちょっと余談でございますけれども、確かにあったことは事実でございますから、この次に警察庁をお呼び下さるようにお願いしたいと思います。
  99. 青山正一

    委員長青山正一君) 承知しました。
  100. 赤松常子

    ○赤松常子君 それから、私きょうのこの議題に対して、一、二ちょっと総括的に御質問したいと思いますが、急行で参りますから……。この婦人補導院というその法律の名前、これはまあこういう内容を持っております法案でございますから、こういう名前になったものと思いますけれども、先ほどから聞いておりますと、非常に教育目的を重要に考えていらっしゃる。法律のタイトルはこれにいたしましても、たとえば東京にできる、大阪にできる、福岡にできるというその補導院の名称ですね。これはやはり青葉学園であるとか、あるいは白百合学院であるとか、そういう名前に実際は変えることができるように私どもは望みたいのでございますが、御当局はどうでいらっしゃいましょうか、補導院というと、何か今問題になっております、刑を受けておると、そういう考えにとらわれると思うのですが、教育を目的とすることを強くうたうならば、今言ったようなやさしい名前に実際はしていきたいと思うのですが、その辺の融通性はいかがでございましょうか。
  101. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 仰せのごとく、婦人補導院という名前はいかにも法律らしいごつごつしました名前でございます。何とかいい名前はなかろうかといろいろ考えておるのでございますが、今仰せのような学園というのは、ちょっと年令の点からいいましてふさわしくないように思いまして、何か寮というようなことではどうだろうかということで、そうしますと、婦人寮というような名称はどうだろうかと思ってみたのですが、それがこの婦人寮という名前が相当たくさんあるのでございます。厚生省関係の方で婦人寮というものが非常に多いのでございます。で、最初は東京婦人寮、大阪婦人寮、福岡婦人寮というようなことではどうだろうかと考えてみたのでございますが、調べてみますと、厚生省関係で福岡婦人寮というのがあるのでございます。で、どうもそういう名前はちょっと困るということが出て参りました。で、これじゃちょっと工合が悪いから、もう少しほかの名前を考えようじゃないか。しかし、なかなかいい名前が出ませんで、実は法律の上からは婦人補導寮ということにいたしまして、呼称はもう少しいい名前を考えてそれを使いたいと思っております。
  102. 赤松常子

    ○赤松常子君 もう一、二点でございます。  この法律ができまして、非常に運営はよくいくようにしたいと思うのですが、それにしても私どもは院長及び職員というものは全部婦人にしてもらいたい、こういうふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。また、そういう指導員——婦人指導員の養成と申しましょうか、そういう御準備、そういう将来の御計画というものが、指導者の御計画というものがどういうふうに進んでおりましょうか、伺いたいと思います。
  103. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 婦人補導院の職員の構成でございますが、赤松委員御心配のごとく、われわれもこの人的な構成がうまくいかないと、ほんとうにこの院の運営がうまくいかないと思っておりますので、実はこの二十五名の職員と申します数は、実は少いのでございます。決して十分じゃないのでございまして、これはいろいろ予算の関係からこういうことになったのでございますが、従いまして、この二十五名の職員は、ほんとうに優秀者を実は集めたいということを念願いたしております。そこで、このわれわれ矯正関係には研修所がございます。これは中央の研修所と地方の研修所とがあるわけでございますが、この中央の研修所の方は大体中堅幹部になる者の養成を企図いたしておるところでございます。初級の職員を研修いたしますのは、各管区にございます、八つ管区がございますが、その各管区に付設いたしております地方研修所で実はいたしておるのでありますが、しかし、今度の婦人補導院の場合は、中央研修所にまとめまして研修をやりたいと思っております。でき得べくんば私は、今まで矯正関係に縁故のないほんとうに真新しい感覚の人をもちたいと思うのでございますが、しかし、一方考えますと、女子少年院におきましても、また、女子の刑務所におきましても、この種の対象者、売春の経験をもちました者が相当数入っております。従いまして、こういうふうな施設でも売春の経験をもった婦人たちの取扱いに相当の経験をもっておる者がいるのでございます。この経験を私はなるべく活用するということも一つ方法ではなかろうかと考えておるのでございますが、さような観点から、この少年院あるいは女子の刑務所におきましても、ほんとうに婦人補導院にふさわしいような人も皆無じゃないのでございます。おるのでございます。さような人たちを私は厳選した上で、かような人たちのこういう尊い経験というものを、今後のこの婦人補導院の運営に生かしていきたいという考えをもっております。現在各管区に命じまして、かような婦人の職員の中から適格者がいるならば、今月中に申し出るように今言っております。来月早々かような人たちを集めまして中央研修所で私はみっちりと研修をやりたいと思っております。  なお、この職員は婦人で全部を占めたいという御要望、これは宮城委員からも強い御要望があるのでございます。なるべくさようなことになりますれば一番けっこうだと思うのでございますが、もしも、御婦人の方で十分得られない場合には、やむを得ず男子の方もやはり必要じゃなかろうかと考えております。この辺はもう少し十分検討さしていただきまして、われわれの方で一番いい人を迎えたいということを考えておりますので、十分われわれに検討の日時を与えさしていただきたいと思います。
  104. 赤松常子

    ○赤松常子君 最後に。どうぞその点は、ほんとうに真剣にお考え願いたいし、また、私どもも御協力を申し上げたいと思います。  それからもう一点は、これは竹内局長へのお尋ねでしょうか、予算が成立いたしますのは三月一ぱいでございますけれども、もう発足は既定の事実だと思うのですが、いつごろになるでしょうか。また、その場所、地所、そういうことが計画的に進められておるのでございましょうか。予算は通ったけれども、地所もなければ建物もどうだということのないように、御準備はどういうふうに進んでおりますか。
  105. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 婦人補導院の設置場所でございますが、東京、大阪、福岡の三カ所を予定しております。大体もう場所は考えております。一体どういうものを作るかということでこれも非常に問題がございます。もっともぜいたくに作れば、小さいものをたくさん作るのがいいのでございますが、これもなかなか人員の配置からいたしましてそうも参りません。従いまして、これは、管理の面からの必要性、それから補導の目的を達するに一番いい方法はどうであろうかということを中心といたしまして、今第三案、第四案を練りまして、目下設計をいろいろ衆知を集めて検討いたしております。なるべく、よいものができたとおほめにあずかるようなものを一つ作りたいと念願いたしております。
  106. 赤松常子

    ○赤松常子君 もしおできになりましたらそのプラン、計画をまた早く御報告願いたいと思います。これを強くお願いいたしておきます。
  107. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと関連して伺いますが、東京、大阪、福岡にできまする補導院の収容人員は何人でありますか。
  108. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 収容人員は、予算上の収容人員は、東京百名、大阪九十名、福岡九十名ということになっております。しかしながら、現実にどれだけ入ってくるかということは、今後の裁判の結果によると思います。百名と申しましても、百名以上収容しなければならないような事態が起るかもしれません。あるいは百名と申しましても五十名、六十名しか来ないというような事態が起るかもしれませんが、予算上の収容定員は百名と九十名、九十名でございます。
  109. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、特に矯正局長に希望しておきたいことは、先ほどの御答弁のうちに、なるべく実刑を避けて補導処分の方へ持っていきたいということについて、あなたの熱意のある御答弁がございました。そういうことから考えますと、とうてい二百八十人や三百人では収容し切れないのじゃないだろうかという懸念がありますので、先ほどの御説明とただいまの収容人員とは全くかけ離れたような感じがするのですが、いかがでしょうか。
  110. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) この数がいかようになるかということ、非常にこれは大きな問題でございます。実ははっきりとしたのがつかめないのが現実の姿でございまして、で、実はこういうふうな処分を受ける者の段階でございますが、御承知通り、本人たちが、この処分が少年法と同じように刑罰以前の保安処分でございますと、相当範囲が広いと申しましょうか、あると思うのでございます。これは一応刑事手続に乗った対象者であるということでございます。従いまして、執行猶予で全然保護観察も何もつかない者も相当数出るのじゃなかろうか、そういうふうで、何も手当を加えずしてりっぱに更生のできる、再び間違いを犯さないという者は、どんどん、さような裁判があるはずでございますから、これらは問題外になりますし、そうして参りますと、ほんとうに刑罰を受けなければならない人たちで、かような補導院に入れることによりまして将来更生をはかり得る人たちということになって参りますので、さような面からいたしますと、多少その辺が制約されてくるきらいがあるのじゃなかろうかと考えております。われわれといたしましては、この補導処分によって、刑罰を全然なしに、これで全部まかなっていきたいという気持でございます。これがさらに不足するというようなことが起りました場合には、これは予備費によってあんばいしていこうということを大蔵当局の方でもこの点は了承しておりますので、さような事態がもしも起りましたならば、さっそくその手当はやっていきたいというふうに考えております。
  111. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日はこの程度に終了したいと存じますが、いかがでしょうか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 青山正一

    委員長青山正一君) 次回は、明二十八日金曜日午後一時から、企業担保法案について審議を行いたいと思います。なお、ただいま審議の両法案につきましては、来月七日午後一時から行いたいと存じます。  本日はこの程度にて散会いたします。    午後四時四十九分散会