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政府委員(
竹内壽平君) お手元へ配付申し上げました
説明案をごらんいただきたいと思うのでございますが、まず目次でございます。目次の
改正は、新たに
補導処分に関する一章が追加去れたことに伴う整理でございます。
次に、第一条、目的、本条の
改正は、この
改正法が第五条に違反した成人の女子に対して
補導処分の言い渡しをすることができるようにしたのに対応いたしまして、売春防止が補導処令について規定することをも目的とするものであることを明らかにするためでございます。そして本条によって、
補導処分は、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者に言い渡さるべきであるということを明らかにしておるのでございます。
次は、第十六条から二十二条までの保護更生の規定でございます。現行法の第十九条及び二十二条の
改正並びに同第十六条から二十二条までの条数の繰り下げは、新たに
補導処分に関する規定が追加されたことに伴う整理でございます。
第十六条、刑の執行猶予の特例の規定。この
法律は、
売春防止法第五条の罪を犯した成人の女子に対し、なるべく実刑の言い渡しを避け、
補導処分に付してその更生をはかろうとするものでございますが、
刑法第二十五条ノ二の規定によって保護観察に付された者が、保護観察の期間中に第五条に違反したときは、
刑法第二十五条第二項ただし書きによって懲役刑の執行猶予の言い渡しをすることができないのでございます。従って、
補導処分の言い渡しをすることもできなくなるので、本条は、第五条に違反した者に対して
刑法第二十五条第二項ただし書きを適用しないことといたしまして、同条第一項または第二項本文の要件が備わっている場合には、何度でも懲役刑の執行猶予の言い渡しをすることができるようにしたものでございます。
本条は、成人の女子に限らず、男子及び少年にも適用され、また、第五条の罪の共犯者にも適用されるのでございます。本条が刑責を緩和する規定でありますことにかんがみて、公平の見地から、すべての第五条違反者に適用することとしたのであります。なお、本条の適用があるのは、新たに有罪とされた罪が第五条の罪だけである場合と、第五条と他の罪とについて
刑法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑で処断されるべき場合とでありますが、後者の事例はきわめてまれな場合であろうと存じます。
次に、第十七条、
補導処分関係。本条第一項は、
補導処分の要件を定めたものであります。
補導処分に付することができますのは、第五条の罪を犯した満二十才以上の女子であって、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者に限られるのでございます。現状から見て
補導処分を考慮する必要のない男子はもちろん、少年の女子にも適用されないのであります。少年については、成人とは異なった
取扱いが必要でありまして、少年法により家庭
裁判所において適当な保護
措置を講ずることとされているからであります。
補導処分の言い渡しをすることができますのは、第五条の罪のみについて懲役の言い渡しをする場合に限らず、第五条の罪を含む併合罪または処断上の一罪につきまして、懲役または禁固の言い渡しをする場合をも含むのでございます。たとえば、第五条の罪と窃盗罪または公務執行妨害罪との併合罪について、懲役または禁固の言い渡しをする場合にも、
補導処分の言い渡しをすることができるのであります。
補導処分は、懲役または禁固の執行を猶予する場合に限って言い渡しをすることができるのでありますが、その
趣旨は、なるべく実刑の執行を避け、
補導処分によって更正の目的を達しようとするためであります。
本条第二項は、
補導処分に付された者に対する
措置を規定するものでありますが、生活指導、職業の補導、医療など、その詳細はすべて婦人補導院法の規定に譲られておるのであります。
次に、第十八条
補導処分の期間の点。本条は、
補導処分の期間を定めた規定であります。六ヵ月という期間は、売春の習性のある者に対し、現在少年院等で行われているような職業教育を施すのには必ずしも十分でないと思われますが、第五条の罪に対する法定刑がきわめて軽いことを考慮いたしまして、生活転換の契機を与えるという意味での生活指導を
中心に補導を行うことにすれば、その期間内に相当の効果をあげ、その者の
社会復帰をはかることができるものと思われます。
補導処分の期間は、現実に婦人補導院へ収容されたときから起算されますが、収容状または再収容状による身体拘束等の期間は、その中に算入されることになっております。
次に、第十九条は保護観察との
関係であります。本案は、
補導処分と
刑法第二十五条ノ二第一項の規定による保護観察との
関係を規定したものであります。すでに
補導処分という強力な保護更正の
措置をとります以上、あわせて保護観察に付する要はないという
趣旨であります。
本条の適用がありますのは、第五条の罪のみを犯した場合、及び第五条の罪と他の罪とにつき
刑法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑で処断されるべき場合だけに限られるのであります。従って、第五条の罪と窃盗罪とで懲役に処せられた者に対しては、
補導処分の言い渡しをしても、
刑法第二十五条ノ二第一項に従いまして、同時に保護観察の言い渡しをすることができるのであります。場合によってはその言い渡しをしなければならないのであります。
次に、第二十条、
補導処分の言い渡しの
関係であります。本条は、
補導処分の言い渡し
手続に関する規定でありまして、執行猶予及び保護観察の言い渡し
手続に関する刑事訴訟法第三百三十三条第二項と同じ
内容のものであります。本条によって
補導処分を刑と同時に言い渡すことといたしましたのは、第五条の罪を犯した成人の女子に対する
保安処分の第一歩として、できるだけ現行刑事司法体系に即した制度を
考えたためでございます。従いまして、
捜査から公判を終るまでの
手続は、
法律的にはすべて通常の刑事
裁判におけると同じでございます。
なお、
補導処分の言い渡しをする
裁判所について
法律上の制限はないのでございますけれ
ども、簡易
裁判所は、第五条の罪について懲役刑を言い渡すことができない
関係上、事実上は地方
裁判所となるであろうと
考えるのでございます。
次に、第二十一条、
勾留状の効力の
関係でございます。本条は、
補導処分の言い渡しがありました場合における身柄の
措置に関する規定であります。まず、
補導処分の言い渡しは、実刑の言い渡しではございませんけれ
ども、その効果として身柄の収容を伴いますので、刑事訴訟法第三百四十五条の適用を排除し、
勾留されている者については
勾留状の効力を存置させることといたしたのであります。しかし、実刑の言い渡しがあった場合と同じ厳格さで身柄の確保をはかるのは、
補導処分の性質にそぐわないものと
考えられますので、同法第三百四十三条及び三百四十四条の適用をも排除いたしまして、従って、保釈中の者については保釈が失効しないことになりますし、また、言い渡し後も、権利保釈が許されることとなるのでございます。
次に、第二十二条、収容の
関係でございます。本条は、
補導処分に付された者を婦人補導院に収容する
手続のうち、強制手段を用いる場合を規定したものでございます。
補導処分の
裁判も、原則的には、
検察官の指揮によって執行されるのでございます。従って、強制力を用いる必要がない場合には、
検察官の執行指揮と婦人補導院への任意の出頭によって、収容が行われることとなります。収容状を発する必要がある場合とはどういう場合かと申しますと、逃亡のおそれがある場合など、
裁判の言い渡しを受けた者の任意の
行為によっては収容することができないと認められる場合などをいうのでございます。なお、収容状には、執行指揮の場合と同じ記載事項及び添付書類が要求されているので、収容状を発した場合には、
検察官の執行指揮を要しないものといたしました。また、収容状によって受ける身体の拘束は、
補導処分の執行そのものではございませんが、設置される婦人補導院の数が少く、収容までにかなりの日数のかかることが予想されますので、その日数を
補導処分の期間に算入することといたしたのでございます。
次に、第二十三条、
補導処分の競合の点でございます。本条は、二個以上の
補導処分についてその執行を調整し、あまり長い期間にわたって
補導処分が行われるのを避ける
趣旨の規定でございます。
補導処分は、六ヵ月の期間内にその目的を達することができるものとするのがこの
法律の建前でございます。また、あまり長期間にわたりますときは、
人権尊重の面から見てよ好ましくないのであります。同一の女子に対し二個以上の
補導処分の
裁判が言い渡され、ともに執行可能の
状態となるような事例は、実際にはほとんど生じないであろうと思われますが、その場合にも本条の適用がありますので、すでに
裁判の確定した二つの補遺処分のいずれについてもまだ執行が開始せられていない場合、一方の
補導処分の執行が開始されれば、他方の
補導処分について執行が行われなくても、その日数は、すべて他方の
補導処分の期間に算入されることとなります。また、ある
補導処分の執行開始後他の
補導処分の
裁判が確定したような場合には、その確定日以後における前の
補導処分執行の日数は、後の
補導処分の期間に算入されまして、算入されなかった期間についてだけ後の
補導処分の執行が行われる仕組みになるのでございます。
次は第二十四条、在院者の環境調整の点でございます。本条は、売春の習性のある女子については、その環境調整を行うことが特に必要であることにかんがみまして、保護観察所の長にそのための権限を与えた規定でございます。
次に、第二十五条、仮退院の許可、第二十六条、仮退院中の保護観察、第二十七条、仮退院の取り消し、第二十八条、処分の
審査、第二十九条、予防更生法雑則の準用、第三十条、仮退院の効果、これを一括御
説明を申し上げます。
第二十六条から第三十条までは、婦人補導院に収容された者の仮退院に関する規定でございますが、その
手続については、性質に反しない限り
犯罪者予防更生法の規定を準用することといたしました。ただ、
補導処分は、その期間が短かいので、在院期間についての制限を設けず、いつでも仮退院を許すことができるものといたしましたし、不必要に収容期間が長引かないようにいたしたのでございます。第二十五条
関係であります。なお、申すまでもなく、仮退院は、矯正施設に収容された者について、収容中の行状を考慮してかりに退院をさせ、その
社会復帰を容易にする。パロール制度の一種でありますから、
事故なく
補導処分の残る期間を
経過いたしました場合は、その期間中
補導処分の執行を受けたのと同一に取り扱う
趣旨であります。第三十条
関係がそれでございます。
次に、第三十一条、更生保護、本条は、婦人補導院を退院した者及び前条の規定によって
補導処分を受け終ったとされた者についても、更生緊急保護法による更生保護の
措置を行うことした規定でございます。
次に、第三十二条、執行猶予期間の短縮の点でございます。婦人補導院がら退院した者または仮退院の後
補導処分の残る期間を無事に
経過した者、これらの者は再び売春を行う危険が少くなったというふうに見られるのが通常でありますし、これらの者に対してその後も執行猶予の効力を存置して、その取り消しによって刑の執行を受けなければならないような
状態に置かれますことは、かえって自発的な更正の妨げとなる場合が少くないので、本条は、これらの者について執行猶予期間が
経過したものとみなしまして、刑の言い渡しの効力を失わせることといたしたのでございます。なお、本条が適用されますのは、第五条の罪のみを犯した者及び第五条の罪と他の罪とにつきまして
刑法第五十四条第一項によって第五条の罪の刑で処断された者に限られるのでございます。その他の場合、たとえば窃盗罪と第五条の罪との併合罪について懲役刑の執行を猶予され
補導処分に付されたような者には適用されないのでございます。
次に、第三十三条、
補導処分の失効の点でございます。本条は、
補導処分の言い渡しが失効する場合を規定したものでございますが、
補導処分が自由刑及びその執行猶予の言い渡しを前提とすることから生ずる当然の規定でございます。すなわち、
補導処分は、前提として自由刑及びその執行猶予の
裁判の効力が存続していることを要するものでございますから、執行猶予の期間が
経過した場合とか、大赦があった場合など、刑の言い渡しが効力を失いました場合はもちろん、法定の事由によって執行猶予の言い渡しが取り消されましたときには、
補導処分の言い渡しもその効力を失うのでありまして、もはやその執行に着手することも、開始した執行を継続することもできなくなるのでございます。
最後に、付則でございますが、第一項は施行期日に関する規定でありまして、
売春防止法第二章の規定と同時に
補導処分に関する規定を施行する
趣旨でございます。
第二項は、第二十七条による
犯罪者予防更生法第四十条の準用に伴いまして、更生緊急保護法第一条に必要な整理を行なったものでございます。
以上をもちまして
説明を終ります。