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1958-02-18 第28回国会 参議院 法務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十八日(火曜日)    午後一時四十三分開会     ————————————— 出席者は左の通り。    委員長      青山正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            重宗 雄三君            吉野 信次君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            後藤 文夫君            辻  武壽君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警務部長 荻野 隆司君    警察庁刑事部長 中川 董治君    警察庁警備部長 山口 喜雄君    法務省刑事局長 竹内 壽平君    法務省矯正局長 渡部 善信君    法務省入国管理    局長      伊関佑二郎君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務省入国管理    局登録管理官  豊島  中君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (丸の内警察署留置場における暴行  致死問題に関する件) ○売春防止法の一部を改正する法律案  (内閣送付予備審査) ○婦人補導院法案内閣送付予備審  査) ○外国人登録法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  初めに、参考人出席要求についてお諮りいたします。  婦人補導院法案並びに検察及び裁判運営等に関する調査売春防止法施行運営状況に関する件の審査調査のため、来たる二月二十五日午後一時、参考人出席要求をすることにいたしたいと存じますが、さよう決定することに御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それでは参考人人選等につきましては、委員長及び理事に御一任願いたいと存じます。     —————————————
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) 初めに、丸の内警察署留置場における暴行致死問題を議題といたします。  本件は、去る十月四日夜、丸の内署留置場内における寺見淳一氏死亡にかかわる事案でございますが、まず、警察当局から、事件経過等説明を願います。
  5. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 昨年十月四日の夜、ただいま委員長のお話のありました寺見淳一氏が、器物毀棄現行犯で逮捕されまして留置中、不幸にいたしまして翌朝死亡されたという事案が発生いたしましたことは、まことにお気の毒にたえないことであります、私ども警察留置場管理に当る者に何か手落ちでもあったのではないかと、深くその点を反省し、自来慎重に調査を遂げておるのでございます。  事案経過を概略申し上げますと、なくなられた寺見淳一氏が、ただいま申します昨年十月四日の午後八時十分ごろ、有楽町駅構内におきまして、めいていされておった関係で、駅長室入口通路のとびらを足でけり、そのガラスを破損するといったような事故を起されたのでございます。  当時駅の方から被害届があり、丸の内警察署有楽町駅前巡査派出所巡査二名が直ちに現場に急行いたしまして、なるべくならば、示談解決が適当であると考えましてあっせんをいたしたのでございますが、解決に至らず、駅当局から告訴がございましたので、被疑者としてこれを丸の内署に連行いたしたのでございます。  当初、寺見氏はかなり酔っておられましたので、なかなか元気よく、大きな声を出したり、騒がしい状況でございましたので、取り調べもなかなか思うように進捗いたさなかったようでございます。住所等もはっきりおっしゃっていただけなかった関係上、やむなくその日は一日とめ置きという方針を署の方においてはとったのでございます。  最初は、単独の房に入っていただくのが適当であろうというふうに考えまして、少年房に、前に入っております者を一応他に移しまして、そこに入ってもらったのであります。  ところが、その日には寺見氏のほかに、もう一人なおもっと泥酔した人がございまして、これを留置する関係上、この人がまた非常に乱暴をするような状況でございましたので、その人の方をむしろ単独の房に入れることがより必要であるという観点からしまして、寺見氏を他の房に移しまして、そのもっと泥酔した人を単独の房に入れるという措置をとったのでございます。二度目に寺見氏に入っていただいたのが第六房というのでございますが、これは監視をする者の位置その他から申しまして、この房が適当であるというふうに判断をいたしまして、そこに入ってもらったのでございます。ところが、その第六房に入られてからも寺見氏は相変らず大きな声で騒ぎたてられたというようなことで、その房にはすでに三名の方が入っておったのでございますが、うるさいから静かにしてくれなければ眠れないというので、かなり同房の者から抗議めいた言辞があったようであります。なかなかおとなしく、休みにならなかったようでございます。その間、用便を訴えられて、二度ばかり外へ用を足すために出たのでございます。依然としておとなしく静かお休みになるような模様がないので、同房の三人の者が手をとり足をとり寝かせるというようなことをしたようでございます。看守もその状況を見ておりまして、押えつけているような格好になったのを見た際に、そういうことをさせることは適当でないと思いまして、そんなことをしないようにというふうに制止はいたしたようでございますが、そのときに寺見氏が、こういううるさい房はいやだから他の房に変えてもらいたい、こういう申し出がありましたので、それではほかの房に移せば静かに休まれるであろうかというふうに問いましたところ、おとなしく休むからという申し出がありましたので、第四房に今度は変ってもらったのあります。その第四房にもやはり三名のすでに留置されておる者があったのでございますので、この人たちはすでに静かに休んでおられる、こういう状況でございます。その第四房に移っていただいたのが、おおむね午後十一時四十分ごろであるという報告でございます。そこで、その後、ちょうど午前零時ごろ、当直監督者警部補留置場を見回りました際、この第四房におられる寺見氏が、部屋の隅の方で中腰になって頭をかかえたような格好をしておられるのを目撃をしまして、どうかしたのか、というふうに尋ねましたところ、頭が痛いということで、しばらく見ておりますと、壁に寄っかかるようにしてその場に倒れたということであります。そこで、その当直警部補は、これは何かからだのかげんでも悪いのではないかというので、直ちに看守巡査ともども応急手当をすべく房から寺見氏を出して様子を見たわけであります。呼吸が少し困難な状況もございまして、看守巡査人工呼吸等の修練もつんでおりましたので、さっそくそういう手当をしつつ救急車を呼びまして、近くの日比谷病院に入院させるべく手配をいたしたのでございます。数分のうちに救急車が参りまして、応急手当をした上、日比谷病院に入院していただいたのでございますが、遺憾ながら零時三十分ごろ目比谷病院においてなくなられたと、こういう事案でございます。  そこで、丸の内署といたしましては、事の重大な結果になりましたことにかんがみまして、かなりあわてたと申しますか、そういったことで、あるいは家族方々に対する連絡その他において十分な措置がとられなかったのではないか、そういう点につきましては、今もって十分過去を反省をし、当時の状況がどうであったかということにつきましては、関係者十分実相検討し、反省すべき点があるならば、今後の十分な反省資料にしなければならぬというので、留置場の方では、事案に関しまして十分な真相究明というようなことをいたしておるような状況でございます。  零時半に、今申します通り日比谷病院においてなくなられたのでございますが、先ほども申しました通り住所がはっきりしなかったということで、さっそくにとにかく家族の方に連絡しなければならぬというので、八方手を尽しまして探しました結果、午前四時半ごろになりまして、寺見氏の内妻に当られる方の住居がわかったのであります。そこで、丸の内署の方から、署の方に来ていただくように連絡をいたしたのでございます。その方が署においでになったのが朝の五時半ごろでございましたか、来ております。それからその方にいろいろ事情をお聞きしましたところ、寺見氏のお父さん住居もわかりましたので、その方に御連絡を申し上げまして、お父さん丸の内署おいでになったのがおおむね午前七時ごろというふうに聞いております。そうして検事の検視、あるいは監察医の検案、こういうような所定の手続を終りまして、家族方々に初めて寺見氏の遺体に対する対面をしていただいたということになっておるのであります。この辺のところが私ども振り返って考えまして、遺族の方に対してなお親切心と申しますか、そういった点において創意工夫努力が足りなかったのではないかというふうに、報告に接しておった限度において私自身反省をしておるのであります。警視庁関係当局の者もこの点につきましてはおそらく感を同じゅうしておるものと思っておるのであります。  そこで何といたしましても、こういう不祥の結果になりましたことに対しまして、どういういきさつ、どういう原因でそうなったかということを突きとめることが当然必要でございます。丸の内署といたしましては、さっそくその晩の監視勤務に当りましたすべてについて、また、今申しました第六房ないしは第四房、房を同じゅうした者関係者から事情を聴取するという措置をさっそくにとったのでございます。ところが、その当時の取調べにおきましては、関係警察官はもとよりのこと、同房者方々も、格別手荒なことをして寺貝氏を死に至らしめるようなことはなかった、こういうことに相なっておるのでございます。当時決していいかげんな調査をしたとは思っておりませんが、神ならぬ身の警察官取調べ官も最善を尽した次第でございますが、それ以上の真相究明し得なかったのでございます。  ところが、その後に至りまして、あるきっかけから、先ほど申しました第六房におりました田中輝男という同房者が寺見氏に対して、その晩、暴行を加えた疑いがあるということがわかりまして、お父さんの方から田中輝男氏を告訴された。これがたしか昨年の十二月二十六日であったかと思います。それで検察庁におきましては、この告訴に基きまして鋭意取調ベをなされたわけでございますが、その結果、本年の一月十六日に暴行罪起訴するということに相なっておるのでございます。今日、起訴後の勾留が引き続いておりましてなおさらに、必要な捜査を続行いたしまして、事案真相をはっきりさせるという態度検察庁において取り計らった、こういうことでございます。  そこで、警視庁当局におきましても、こうした遺憾な事案を起しました以上、事故の起りました当時調べて、先ほど申しますように、関係者格別暴行を加えたというような事案は発見できなかったにしましても、その後において、起訴に基く検察庁取調べの結果、田中輝男氏なる者が暴行者起訴されるというようなことに相なっておるのでございますが、この新たなる事実に基いて、あらためて当時の関係者方々につきまして十分再検討いたしまして、もしその間に、不幸にして警察官手落ちがあると申しますかへ行き過ぎがありましたら、責任を追及すべきような点がございますならば、厳重に責任を追及すべきものである、かように考えまして、警視庁におきましては、自来引き続きこの問題につきましては、あらゆる角度から検討を続けておるのでございます。しかし、今申します通り田中輝男という被疑者暴行罪起訴され、引き続き起訴勾留をされており、東京地検においてはさらに捜査を続行されているような関係上、事件真相を明らかにする上において最も中心となるべき田中自身に、警察としては当ることができないというような状況もあります。また、検察庁の方において、いろいろ関係者を取り調べられた資料等をお見せいただくということも、現在公判請求手続の段階にある今日においては、簡単に参らない点もございまして、警視庁といたしましても、真相究明の上において、やや難渋をいたしておるという点はあるのでございますが、今後ともあらゆる努力を払いまして、事案の再検討の上、真相究明し、もし警察官手落ちがあり、責任を追及すべき事案が発見されますならば、それに基いて必要なる措置をとるという態度をもって、警視庁当局においては関係者が鋭意努力を続けておる、こういう状況でございます。  留置場看守勤務というようなことにつきましても、その態勢そのものについても反省すべき点が、この結果出ますならば、今後十分そうした点は反省をさせたいと思っております。警察被疑者等に対する態度といたしまして、あくまで基本的人権の尊重ということが基礎にならなければならぬことは申すまでもないことでございますので、被疑者取扱い等について、行き過ぎと申しますか、人権を侵害するようなことが、絶対にあってはならぬことは、かねがね十分指導教養をいたしておるつもりでございますが、末端において、いまだ徹底していない点があるということの結果、こうしたことが起ったということであれば、これは将来の十分反省資料にしなければならぬ、かように考えておるのでございます。今申しますように、事案真相究明のために、なお若干の時間をおかしいただかなければならぬ状況にありますと同時に、真相究明の暁におきましては、責任を追及すべきものは追及し、今後警察全体といたしまして、こうした事故を再び起すことのないように反省をし、あるいは教養をしなければならぬ点は十分に戒心して参りたい、かように考えております。
  6. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件に関し、政府から石井警察庁長官のほかに、唐澤法務大臣竹内刑事局長がお見えになっております。  御質疑の方は御発言下さい。
  7. 赤松常子

    赤松常子君 私、今日法務行政一般及び基本的人権擁護に関しまして、一般公衆関係のございます事柄を具体的な実例に即して、少しお尋ねしてみたいと思うわけでございます。  その前に、私、法務大臣にちょっとお尋ねいたしたいのでございますが、臨時国会婦人団体からお酒を飲んだ人々に対して——まあいろいろ最近犯罪が起きておりますが、これをなくするために立法してもらいたい、こういう請願が、臨時国会に提出されまして、本委員会でもそれが採択されて、内閣に送付している請願がございますが、これは申すまでもございませんが、非常に最近酒を飲んだということでいろいろな犯罪が軽く扱われている、見過ごされている、これが非常に社会のまあ治安を乱すといいましょうか、社会道徳を汚すといいましょうか、特に去年でございましたか、横浜の米兵が殺人をしていながら、酒を飲んだ上の行為だというので、非常に軽く扱われている、こういうことから婦人団体からこういうことをなくしてもらいたいという、そういう内容の陳情が出ておるわけでございますが、最近法務大臣といたしましては、こういう問題を立法化なさるという御意思があるように聞いておりますけれども、そういう点、どういう程度にお考えでいらっしゃいますか。
  8. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 泥酔者がいろいろと間違いを起しまして、泥酔しておるのゆえをもちまして、刑事責任を免かれておる、それではその迷惑を受ける者はその周囲の者であるということで、従来から泥酔者取扱いに対する刑罰規定について、研究を重ねておるわけでございます。これはこの前にもちょっと申し上げました通り、諸外国におきましても、泥酔者に関する刑事立法というものは非常にむずかしいもののようでございまして、従いまして、その立法例もまちまちになっているようでございます。すなわち、この刑事責任となりますと、本人が意識をして、罪を犯すの意思があって初めて処罰されるべきものでございまして、その原則論から申しますると、多くは刑事責任を免れる、あるいは軽減されるということになるわけでありますが、しかし、そういうことで放置しておきますると、周囲の迷惑というものはこれはまた甚大なものがあるわけでございますから、そこに立法上の技術として非常にむずかしい問題がございます。そこで、法務省といたしましては、刑法改正準備会というものがございまして、これは法制審議会にかけるその直前の用意をする、現実の起案をする研究会でございまして、朝野の学者専門家が集まってこれら刑法全般についての改正具体案を作っておりますが、ことに、今御指摘のようなことがございまして、内閣でもそれが問題になったことがございました。泥酔者に対する何か立法措置を講じなければいけないということで、それによってまあ促進をされまして、今いろいろと案を研究中でございまして、まだ成案にまでは至っておりませんが、御意見の通り、何とか立法上の措置をしなければいけない、かように今考えている次第でございます。
  9. 赤松常子

    赤松常子君 今私が申すまでもございませんけれども、すでに刑法では、第三十九条の一項及び第三十九条の二項に、一応酒の上の暴力行為が取り締られるということもございますが、これももちろんほんとうに限定された内容でございます。で私、婦人会のいろいろな御要望は、今申し上げましたように、ほんとうに世界に類例を見ないくらいの酒飲みの天国だということを、去年京都地裁泥酔者裁判いたしました判決例の中にも、その裁判当局がそういうことを言っておられるくらい、ほんとうに酒をいつでも売っている、いつでも飲めるという状態なんでございます。今申し上げましたように、外国でもいろいろ、イギリスにしろ、スイスにしろ、フランスにしろ、こういう酒の上の暴力行為犯罪というものは相当手厳しく取り締る法律がすでにあるわけでございます。どうぞ今おっしゃいましたように、刑法改正審議会とおっしゃいましたか、これを鞭撻をなさいまして、日本も文化国家並みに街路上に泥酔者の千鳥足で歩くような人のないようにしてもらいたいと思いますが、その刑法改正審議会というのはいつごろ結論が出るのでございましょうか。また、具体的に相当進んでいるのでございましょうか。また、その精神、目的がわかっておればちょっと御答弁いただきたいと思います。
  10. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 刑法改正準備会の点についてお答え申し上げます。  刑法改正準備会は御承知のように、改正刑法仮案というのが昭和十五年に発表されておりましてその後十七年を経過しているわけでございますが、いまもって成文法化されておらないのでございます。戦後の法制の変化、ことに憲法改正等にかんがみまして、仮案そのものにつきましても再検討を要する事態になっております。そこで、この仮案の全面的な検討という趣旨をもちまして、昨年来、小野清一郎博士中心といたしまして、学者実務家を集めて刑法改正準備会というものを組織して鋭意仕事を進めております。で、ただいまの状況としまして由しますと、刑法の各論に関する部分の仕事を一応終了いたしまして、ただいま総則の方に進んでおります。そしてこの冬ごろまでには大体全部を完了いたしまして、さらに第二読会と申しますか、適当な時期には公表もいたしまして、さらに世論の批判を受けましてそして逐次法制審議会にかけ、この議場にも御審議をわずらわすという大体の腹組みで進んでおります。ただいまの泥酔者の点でございますが、これは仮案にもございますし、当然準備会でも取り上げておる問題でございます。御指摘のように刑法三十九条「心神喪失者行為ハヲ罰セス」、こうなっております。泥酔者心神喪失であるかどうかということが裁判上争われるわけでございます。これをまあ純然たるお医者さんの立場から申しますると、めいていの、泥酔状態になっておりますのは、これは科学的に申せば心神喪失状態にある、こういうふうにまあいうわけでございます。それから、われわれ一般国民の側から申しますと、それは一時的にそうなったので、自分でそうやったのだから、それをもって無責任だというわけにはいかぬのだということからして、国民からしますと、こういう泥酔者犯罪というものがそう簡単に無責任だというふうには言い切ってしまえない実情にございます。それでは、裁判は一体どうかというと、お医者さんと国民一般感情との中間あたりをたどっておるように思うのでございますが、これにはいろいろ刑法上の問題もございまして、原因において、自由な行為という学説がございます。まあ自分泥酔をして、自分心神喪失状態を利用して相手に傷をつけてやろうといったようなことをしらふの間に考えて、そういう犯罪を犯した。なるほど、犯すときには心神喪失状態であったけれども、その前においてそういう考えがあったと認められる場合にはなお責任を負うべきであるという学説がございます。そういうものや、その他、裁判例におきましては、少くとも故意はないにしても過失責任はあるというような判例もございまして、何とかしてこの泥酔者についての責任を追及するという考え方は、判例の上にも現われておるのでございますが、究極的にはこれらの問題は、保安処分と申しますか、そういうような形で諸外国でも取り上げられておりますので、ただいま私ども研究しておりますのも、そういうラインで研究を進めておるような状況でございます。
  11. 赤松常子

    赤松常子君 ただいまの局長の御説明で、取りかかってはいらっしゃるということはよくわかりましたけれども、その年限が十七年も引き続いて綿々とやっていらっしゃるということなんですか、この改正仮案お作りになるのにですね。もちろん戦争がございまして、国の生活も変りましたし、憲法も原則的に変りましたから、いろいろその解釈上にまた新しい問題も起きたせいもございましょうけれども、今の説明では、改正も、十七年も仮案お作りになるのに続いていらっしゃる、こういう御説明でございましたが……。
  12. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 仮案ができるまでの経過は、大正十年にできたのでございます。そして仮案として発表されましたのが昭和十五年でございますから、約その間に二十年経過しておる。その昭和十五年に発表されました仮案が、今日まで日の目を見ずに十七年経過した、こういう趣旨に申し上げたのでございます。
  13. 赤松常子

    赤松常子君 実に私気の長いことだと思うわけでございますけれども、私きょう、ポイントをしぼってお尋ねいたしますが、この飲酒者に対する立法は、この刑法の中からその点だけピックアップして独立なさるという御意思はないのでしょうか。全面的に結論を見なければ、この泥酔者の単独立法というのはできないわけなんでございましょうか。
  14. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 泥酔者関係だけを取り上げて改正するということも、もちろん不可能ではございません。現にこの仮案の中から、いろいろ新しい立法に取り入れられておるのでございますが、そういう意味からいいまして、この泥酔者の問題だけを特に取り上げて規定する、改正するということも、もちろん不可能ではございません。ただ泥酔者の問題は、保安処分ということと関連がございまして、まあ今度の売春防止法保安処分補導処分として取り入れることになりました。なお、この場合におきましても、今後御審議をわずらわすわけでありますが、保安処分の純粋な形としては出てきておらないのでございまして、保安処分をどういうふうに国として、一国の刑事政策として取り入れますかということは、なかなかむずかしい問題があるようでございます。それで、との泥酔者関係保安処分との関連がございまして、学者の間でもいろいろ議論がございます。今、最近の機会にこれだけを取り上げてどうかということは適当ではなかろうというので、研究しておる次第でございます。
  15. 赤松常子

    赤松常子君 それでは、私特に要望申し上げておきます点が一つ。それはだんだん婦人側からいわゆるこういう即問題に一対して関心が高まっております。ぜひ当局で単独法律を作ってもらいたい、こういう御要望が強いのでございますから、その方向で順次お進め願いたいということを強く要望申し上げておきます。  それから、今、刑事局長のお話の中で保安処分とおっしゃいまして、私いささか安心したのでございますが、具体的に、この泥酔者の身柄を扱うことをもうちょっと具体的に簡単に御説明下さいませ。今この泥酔者の身分の取り扱い方をどういうふうにしていらっしゃいますか。保安処分でいらっしゃいますその建前について、ちょっと具体的にどういうふうに保護なさっていらっしゃいますでしょうか。
  16. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) ただいま具体的に考えております内容というふうではございませんけれども泥酔者に対する保安処分というやり方は、外国にも制度があるわけでございます。これはやはり一定の区画に身柄を収容いたしまして、そしてある期間酒癖を取り去るような治療と並びに習性をそこで植えつけるというようなことによって、性格を立て直していくというやり方になるわけなんでございまして、懲罰というよりも、そういったような泥酔者によって被害をこうむる一般社会を保護するという考え方が強いようでございます。それで、諸外国の実例によりますと、刑を言い渡し、かつ保安処分の言い渡しもする、そしてその者の行為あるいは環境その他の状況をよく考えまして、まず刑罰で処分をするよりも保安処分の方を先に執行いたしまして、そして成績がよければ、刑は執行しないで、保安処分だけで社会に復帰させる、こういったような処置をとっておる外国立法例がございます。そういうものを参考にいたしまして作りたい、こういうふうに考えております。
  17. 赤松常子

    赤松常子君 日本でも片山哲先生が神奈川に小さなモデル施設を作っていらっしゃいますね。私のお尋ねしたいのは、そういうことが今後全国的に施設として、治療及び補導ができるような施設が望ましいと思います。私の直接伺いたいのは、現在ここに一人の泥酔者がいる、これをどういうふうに扱えばよろしいと思っていらっしゃいますか。たとえば、酔っぱらいがいて、これを警察へお連れになるときに、どういうふうに指導をしておいでになるのか、その御当局の指導の仕方を具体的に御説明願いたいと思います。保安処分とおっしゃったから、大へんうれしいのですが……。
  18. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 酔っぱらいの取締りということが、最近特に強く、国民の方面から要望の声が強いように私は耳にいたしております。現在警察の職務権限の範囲でできますことは、御承知のように、警察官職務執行法第三条に保護に関する規定がございます。この規定の中に、御承知のように「でい酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼす虞のある者」があるときに、警察官は、その「異常な挙動その他周囲事情から合理的に判断して」、今申しますような状態の者を発見し、しかもこれを「応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由」があるときに、初めてこれを保護する。もよりの警察署へ同行して保護するなり何なりして、酔いのさめるまでお預かりをする、こういうことができる建前になっておるのでございまして、この規定は、今申し上げたような点から見ましてもおわかりのように、きわめて厳格に制約をしておるのであります。と申しますのは、結局、基本的人権警察官の恣意によって軽々に侵すというようなとがあってはならないということで、今、ここに申しましたように、異常な挙動その他周囲の情勢から判断をして、しかも合理的に判断をして、これは保護するに足りると考える相当な理由がなければならぬ、こういうふうにしぼってあるわけでございます。泥酔の程度が非常に高くて、本人並びに他人の身体、財産あるいは生命に危険を及ぼすおそれがあるという前提条件がなければならぬのでありまして、単に千鳥足できげんよく、少し声を大きくして町を歩いているくらいの者を、直ちにこれによって保護する、保護の理由をもってこれを警察署に同行するというようなことは、あえて行き過ぎであるということで、私ども実際の指導といたしましては、この規定を額面通り厳格に受け取って、実際の執行をいたしておるのでございますが、それでは往々にして酔っぱらいが公衆の方に迷惑をかける。何も身体、生命に危険を及ぼすとか、あるいは財産に著しい危害を与えるとかいうような程度には至らないけれども、多数の人が非常に迷惑を感じているという場合は、今日かなりあるようでございます。こうした面も、この保護の規定によって取り締るのが適当であるかどうかという点は、きわめて大事なことであります。これをあまりに広範囲に取り締るように指導いたしますと、往々にして人権を侵害するという結果を招来いたしますので、その辺のさじかげんをどうするかということは、きわめて慎重な考慮を要するものと考えております。
  19. 藤原道子

    ○藤原道子君 先ほど外国の例のお話があったのでございますが、私も今度少しあちらこちらを歩いてみまして、外国の人が日本へ観光に行って一番不愉快なのは、酔っぱらいの多いことである。夜の電車なんかにはてんで乗れたものじゃない。あれで観光日本の体面はどこにあるのだということをずいぶん方々で言われたのです。私は、あの外国の取締例の中で、ひどい酔っぱらいは有無を言わさず警察へ連れて行って、それで酔いがさめたらそのまま帰す、説諭をして帰すというようなことをやられている国も若干あるように聞いてきたのでございます。本人の泥酔によって今度のような事件が起きることもあるし、それから酔った結果が、売春街に繰り込んでいくとか、けんかをするとかいうことが、社会に相当な迷惑をかけておりますので、その点は人権侵害ではなくて、社会の浄化と本人を守るという立場で、私はこの点は十分考慮してほしいと思うのです。人権々々というけれども、その人権は、それは本人を守ってやるという立場に立てば問題じゃないのじゃないでしょうか。私は、観光日本というような立場からいえば、諸外国どこへ行っても、酔っぱらいが多いといわれることが、日本における男の性道徳の低さというようなことが、外国では非常に軽蔑されているもとだということを、この際、赤松委員の質問に関連いたしまして、一つとくと御注意を願いたい。
  20. 赤松常子

    赤松常子君 私ただいま、保護を目的としてそのときの状態を処理していらっしゃる、これは十分おっしゃっていただいて安心もいたしましたが、ところが、今から具体的に質問を申し上げる事件には、そういう精神なり法の規定というものが、少し行き過ぎて行われたという結論が出ている、こういうことを私大へん遺憾に思うわけでございます。先ほど長官から、今度の十月四日の寺見氏の警察内における怪死事件、これのいきさつをるる御報告がございまして、大体のことはわかっておりますけれども、まだいろいろと納得のいかない点が少しづつございますから、今後順を追って質問申し上げたいと思うわけでございます。  まず第一に、この問題は、その当時さまざまな新聞に報道されておる問題でございますが、この寺見氏が連れていかれたその場所及び状態、これも新聞でほぼ存じておりますが、今あなた様の御説明でもわかっておりますけれども、ちょっとその点をもう少し詳しくお聞きしたい。というのは、有楽町のホームでだいぶ酔ってそうして駅長室のガラスを破損された、で、その事件が起きたので、警察の方に連絡があってそうして警察に同行された。そのときの、今おっしゃるあなた様の保護の点と、保護という目的のそのやり方と、それから寺見氏を連れていかれた、そこの状態でございますね。ほんとうにそのときの警官が、保護の目的で寺見氏をお連れしたのかどうか、その辺のことがおわかりであれば、もっと詳しく御説明願いたいと思います。
  21. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  22. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。
  23. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほど御報告の際にも、その点を申し上げたと思うのでございますが、重ねてお答えをいたします。  昨年十月四日の午後八時十分ごろ、国電有楽町駅構内におきまして、寺見氏が飲酒めいていの上、駅長室入口通路のとびらを足でけ飛ばしてガラスを破損をした、こういうことが事の起りでございまして駅員から被害届を受けました駅前の派出所の巡査——岩田並びに久保田という両名の巡査が現場に参りまして、まあガラスの破損程度でございますから、でき得べくんば当事者間で示談解決するならばそれが望ましいと思いまして、そういうあっせんをいたしたのでございまするが、めいていのため容易に解決に至らない。一方、駅当局からは器物毀棄告訴がございましたので、警察官はこれを現行犯として逮捕いたしまして、丸の内署に連行いたしまして、捜査開始の段階に入ったというわけでございます。
  24. 赤松常子

    赤松常子君 そのとき寺見氏はひとりで歩行できる程度だったのでしょうか、いかがでございますか。
  25. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 報告によりますと、今申します通り、二人の巡査が両方からかかえるようにして丸の内署まで連れて行ったというふうに聞いております。
  26. 赤松常子

    赤松常子君 丸の内署に連行されまして、すぐに調書をお作りになられたでございましょうか。そのときに寺見氏は、自分の氏名、住所並びに職業などをはっきり言われたのでございましょうか。または本人は犯行を認められたのでございましょうか。
  27. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 当日の当直捜査の方の担当者であった警部補が寺見氏に対しまして、犯罪事実の要旨及び弁護人を選任できる旨を告げて、いわゆる弁解の機会を与えたのでございますが、寺見氏はかなり酔っておられた関係もありまして、おれがなぜこんなところに連れてこられるのかと、住所も名前も答える必要はないというふうに供述を拒否されたようでございます。
  28. 赤松常子

    赤松常子君 寺見氏はりっぱに職業を持っておられるし、そして相当のまあ家庭も持っていらっしゃるし、御家族の方もおいでになる方でございますが、あれでしょうか、私思いますが、そのガラスの一枚の破損ぐらいででございますね、今あなたは、示談のあっせんをしたとおっしゃっておりますが、この程度の器物破損でこういうふうに引っぱられていくということが妥当であるかどうか、今申しますように、職業も持ち、はっきりした住所もあり、家族もある方なのでございますが、その方が、ガラス一枚の破損ぐらいでこういうふうに留置場に持っていかれるということが、その当時の状況として妥当であったかどうか、お尋ねします。
  29. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 先ほども申し上げました通り、ガラスの破損程度でございますから、でき得べくんば当事者の示談で解決するのが望ましいというように現地の警察官も一応考えたようでございます。ところが、円満にお話がつかない一方、駅当局からは告訴があるということになりますと、警察官といたしましては、これを取り調べをしなければならないということになるわけでございますが、その際に住所その他が明らかでありますならば、翌日また出直してきていただくという取調べの方法もあるわけでございますが、この際は、先ほども申しましたように、住所も名前も言えないというようなことで、お答えが願えない。そこでまあ衣類を拝見した結果、身分証明書と申しますか、そういうようなものがありましたので、お勤め先もわかったのであります。そこで勤め先の方にもすぐ警察としては連絡をとってみたようでありますが、夜のことでございますので、宿直の方もおられなかったために、はっきりしたことがつかめなかった。また、一応住所と目されるところの所轄署の方にも手配をしてみたのでございますが、該当の番地の所にはそういう方が住まっていないというような回答が来た、こういうことで、やむなくそのときは一日留置したければならぬ、こういうことになったわけでございます。
  30. 赤松常子

    赤松常子君 調書がその晩はとうとうできなかったわけなんですね。
  31. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) その通りでございます。
  32. 赤松常子

    赤松常子君 私、聞いておりますと、これは亡くなられた方でございますから、死人に口なしで、その当時のこまかい事情というものははっきりわからないけれどもほんとうに遺憾でございますけれども、この程度のことで二人の方が引っぱっていかれ、そうして非常に酔っていらっしゃって、興奮状態にいらっしゃったわけでございましょうけれども、あまりひどいやりようではなかったか。その前後の事情というものが、あいるはその手続というものが何か違法な点があったのじゃないか。これは今申しますように死人に日なしでございますから、どうも真相ははっきりできないわけでございます。けれども結論といたしましては、ガラス一枚の破損でございますから、これは御承知のように罰金事犯、二万五千円程度の罰金であると思うのでございます。この程度の軽微な犯罪で逮捕するということは、一応二百十七条で禁じてあるのじゃないか、こういうことは私一応行き過ぎではなかったか、こう思うのでございまして、もう一度そこのところをちょっと御説明下さいませんか。
  33. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 最初に申し上げました通り、ただいま赤松委員からおっしゃるようなことも含めまして私はこの事案の全般について真相究明し、反省をすべき点は十分反省をし、将来再び行き過ぎのないように、また不祥の事故を起さないように、関係警察官に十分話をしていきたい、かように考えております。
  34. 赤松常子

    赤松常子君 これは酔っぱらうということ自体犯罪ではないのでございまして、その結果、周囲に迷惑を及ぼすということから犯罪が構成するわけでございます。どうぞこういう軽微な問題についての犯罪については、先ほどくれぐれも繰り返しおっしゃったように、保護を目的として、あまり人権のじゅうりんにならないように、その精神に沿ってやっていただきたいと思うのでございますが、その次に進めて参  それでは、寺見氏を丸の内署にお連れになって、先ほどの御説明のように、最初は保護室にお入れになり、それから少年室にかわって、それから他の方にかわった。これも御説明がございましたけれども、少したんたんといたしまして、私どもの聞いております内容とは少し違う点がございます。私の問題にしたいのは、最初お入れになって、それからまた第六号にお入れになったそのいきさつをもっと詳しくお聞きしたいと思います。
  35. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私が先ほど御報告をした以上の詳細なことは、ちょっと正確に記憶いたしておりませんので、もし必要がありますならば、直ちに主管部長、その他関係の者を呼びましてお答をいたしたいと思うのであります。        一
  36. 赤松常子

    赤松常子君 ここが大へん問題で、根本だと思うのでございます。これは当時の十月二十六日の東京新聞にも掲載されておることでございまして、私どももそれで承知をしているのでございますが、この新聞紙上には、警察庁の片岡人事課長のお話では、当初保護室に入れて、本人が騒ぐので、少年室に移し、そこでまた留置場にかえたということですが、事実はどうもそうたんたんとかえられたのではなくて、そこに何か事情があった、こういうふうなことが予想される記事が出ておるわけでございます。これが根本だと思うのでございまして、ここをもう少し答弁をはっきりおっしゃっていただきたいと思います。
  37. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 最初に申し上げましたように、私、繰り返し申し上げるようでございますが、今御指摘のような点もさらに十分再検討しまして、私ども警視庁当局から報告を受けておるのでは、私どももどうも腑に落ちない点があるので、さらに十分徹底的に真相究明するように申しつけておるのでございます。ただいま御指摘のあったことも、今後さらにはっきりいたして参りましたならば、その際にそこに警察側の何らかの手落ちがあるというなら、これは十分責任を追及していきたいと思うし、今後そういう行き過ぎの点がありますならば、今後十分反省をして改めていきたい、かように思います。
  38. 赤松常子

    赤松常子君 問題はもう去年起きていることなんでございまして、新聞にも当時さまざま書かれていることなんでございますが、今その大事なポイントに対しまして質問を申し上げるにかかわらず、まだその真相究明ができていないという、こういう御返答なのでございますが、私はどうもそこが腑に落ちないのでございます。何かそこに事実を隠蔽——こういうことを申し上げては何ですけれども警察側の落一度に対してそれを隠蔽しようというような御意図があるのではないか、これは私疑う、納得がいかないのですが、いつ、では真相がはっきりわかるのでございましょうか。
  39. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私は第一線の警察には常々申しておることでございますが、警察官といえども、神ならぬ身でありますから、時に故意か、悪意なくして失敗をしでかすことは遺憾ながらあり得るので、そこで、もし失敗をしでかしたという場合には、これは率直に非は非として認め、男らしくこれを認めてあやまるべき点はあやまり、将来再びそういうあやまちを起さないように十分反省していくという態度が必要ではないか、いわゆるくさいものにふたをする、こういう態度であっては、依然としてそうした事故を防止することはできないのでございますので、その点は十分に戒心するように申しつけておるのでございます。今回の丸の内署事件につきましても、そういう見地からあらためて検討を命じまして、詳細な報告を極力すみやかにいたすようにいたしたいと思います。
  40. 赤松常子

    赤松常子君 どうもはっきり大事なところが今御解明できないということは、私非常に残念に思うのでございますが、当時の新聞に出ておりました事実を簡単に申し上げますと、大へん寺見氏が最初入れられたお部屋で大きな声で騒いでおられた。それで第六房の人が、その人をこちらによこせ、ここで焼きを入れてやるからというようなことで第六房に移された。これを当時のその看守の人が連れていって、そうしてその第六房は看守の方の一番目よいお部屋であったというようなところに連れていって、それからその中で、先ほどもあなたの御説明のように、初め入っていた人が、静かにしやるからというので、何か少し事件あった。それも今申し上げますように看守の一番見よいところで行われていることなんです。これが私は実に不思議でたまらないのでございますが、そういう中における、言葉は過ぎるかもしれませんけれども、リンチにひとしいことが看守の一番見よいお部屋で行われていたということに対して、どういうふうに解釈したらいいものでございましょうか。
  41. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 第六房に移しましたのは、私最初にも御報告申しましたように、看守の見やすい房であるという点を考慮してそこに移したということになっておるのでございます。従って、そこに、その房の中における留置場留置者の行動につきましては、十分看守の目が届くはずであるのであります。また十分看守をいたしまして、事故を未然に防止するという態度でなければならぬことは申すまでもないことでございます。ただいまお話しのように留置人の中から、こちらによこせ、焼きを入れてやるとか、あるいはそういった言葉通り暴行が加えられておるのを、看守巡査が見て見ぬふりをしておったということであるならば、これはまことにゆゆしいことでございまして、そういう点がもしありとするならばこれは十分に責任を追及しなければならぬ、かように考えまして、たびたび申します通り、そういった点を十分に真相究明するように手はずしておるのでございます。
  42. 赤松常子

    赤松常子君 今それを認めて、もしもそれがほんとうであれば、これは大へんなことだとおっしゃっておりますが、私どもの経験では、どうも看守の方が、御自分で何か取締りができない場合は、いわゆる牢名主というような人にまかせて、その監房の治安といいましょうか、そういう騒がしいことを静かにする役目をさせておいでになるというようなことを、私はよく聞くのであります。そういうことが今なお各警察で行われているようにも聞いておるのでありますが、その端的な現われが、こういう場合に相手を殺したという事実になって現われていると思うのでございますが、そういう点は警察の中で今改善しようとしておいでになるのでございましょうか、いかがでございましょうか。
  43. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 私どもずいぶん昔の話として、留置場のいわゆる牢名主というようなものがあったというようなことは語りぐさとしては聞いておりますが、現実にはそういうものはないと私は信じておるのでございます。少くとも戦後の新しい民主警察になりましてからは、何と申しましても国民のための警察であり、国民の生命、身体を保護することを任務としておる警察の職責にかんがみ、基本的人権の尊重ということをすべての執行務の基礎として日常の行い、警察官の職務執行がなされなければならないことは申すまでもないことでございまして、そういう見地から絶えず警察官の指導、教養をいたしておるつもりでございます。あるいは数多い全国の警察官の中には、そうした基礎的なものの考えがまだ十分に徹し切っておらない、古い残津が若干でも残っているために、何かの拍子に失敗をしでかすものが数多い中には絶無ではございません。それははなはだ残念でございますが、そうした点は今後さらに一そう指導、教養を徹底することによって、今後絶無を期したいと、かように考えております。
  44. 赤松常子

    赤松常子君 私の調査によりますと、そのときに同じ房に入れられたI氏という人が、非常に警察側に不利な証言をしておられる。これはその後、丸の内署が呼び出して三時間にわたってその警察側に不利な証言を変えさせていらっしゃる。その反対の口述をとっておいでになります。こういうことが私ども調査では判明しておるのでありますが、これは明らかに非常に恐ろしいことだと思うのですが、丸の内署はなぜこういうことをなさったのでございましょう。
  45. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) そういうことがあったということは、私は報告に接しておりません。もしそういうことが事実であるならば、まことにけしからぬことでありますから、ゆゆしいことであり、決して放任できないことであり、十分責任を追及していかなければならぬと思います。そういう点も、先ほど来しばしば申す通り、十分再検討いたしまして、善処したいと考えております。
  46. 赤松常子

    赤松常子君 いずれこのことは寺見氏のお父さん東京地検告訴していらっしゃいますから、そういう事実は法廷ではっきりしてくることと思います。  それで、私の調査によりますと、先ほどもあなたのおっしゃったように前に入っていた田中某という人が偶然なことから犯人であるという事実がわかって参りました。それで告訴によりまして、田中某という人が暴行罪で今拘束されておる。それを先ほどあなたはおっしゃいましたが、私は単なる暴行罪ではなくて、暴行致死と私は思うのでございますが、なぜ単なる暴行罪としてやらしているのか。この警察当局も、それでは暴行罪として今拘束されている限り、暴行したということは認めていらっしゃるのですか。
  47. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 田中輝男が先月十六日付で起訴されましたことは、最初にも御報告いたしました通り東京地検に対して告訴がありました結果、東京地検において捜査をされた結果に基くものでございまして、警察はこれには何ら関与いたしておらないのでございまして、従いまして、どういう証拠、理由に基きまして暴行罪になりましたかは、私はただいま承知をいたしておらないのでございますが、もし竹内刑事局長の力で地検側の何らかの報告がありましたら、その方からお答えをしていただくのが至当かと思います。
  48. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) なぜ暴行罪起訴をしたかという点でございますが、結局、現段階におきましては、暴行罪の程度しか認められないので、暴行罪起訴したということになるわけでございます。もう少し詳細に申し上げますと、吉村という監察医の方が解剖をしておりますが、解剖所見によりますと、急性心臓麻痺ということになっておりまして、死体は火葬に付されております。それから、その解剖所見をさらにまた詳しく見ますると、若干の外傷はありますけれども、それらの外傷はいまだもって致命傷と認められるようなものではない、こういう客観的な死の結果を誘致したというような解剖所見になっておらないということが第一でございますが、それからなお、関係者の供述によって暴行を加えた事実は認められますので、ひとまず暴行ということで起訴をみたようでございます。  しかしながら、検察庁としましては、なおこの解剖所見に何か見落しがあるのじゃなかろうかという考えを持っておるようでございまして、関係者の供述、特に暴行の程度でございますね、そういうものを詳細に供述調書になっておりますので、それらと諸般の事情とを総合してこの暴行と死の結果の間に、いわゆる因果関係があるのじゃなかろうかという点につきまして、さらに東京大学の法医学教室に、暴行と死の結果との間に因果関係があると認められるかどうかという鑑定を求めておるというのが現状でございます。その結果を待ちまして、場合によりましては、もしも因果関係があるということになって参ります場合には、公判におきまして、あるいは傷害致死といったような罪名の訴因の変更と申しますか、そういうふうに起訴事実を変えまして裁判を求めることになろうかと思うのでございます。そういう関係もありまして、ただいま起訴は受けておりますが、裁判所の方も法廷を開いておらない状況でございます。
  49. 赤松常子

    赤松常子君 解剖の際でございますね、今おっしゃったように、大へん暴行と死ということの因果関係の濃いこういう場合、変死者の場合、どうして行政解剖だけでお済ましになったのでしょうか。もっと司法的な見地における解剖、今のような司法解剖というのはとても立会人がたくさん必要なのでございますね。そういう厳重な手続によって、あるいはその環境によっての解剖をなされなかったのでございましょうか。これが一つ疑義なんでございますが、それで、今のように暴行か致死かということの原因が不明になっている場合ですね、なぜ簡単に行政解剖になすったのか。もっと厳重な司法解剖にお付しにならなかったのでございましょうか。
  50. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) その点の御疑念は、今日この結果を見ますると、まさしく起ってくる疑問でございます。当時変死通知を検察庁が受理いたしまして、検事が丸の内警察へ現場を見に行ったようでございます。そのときの状況が、先ほど申しましたように、まず何としても、外傷があるかどうか、その外傷が致命的な傷であるかどうかということは、どうしてもまず第一に見なければなりません。その観点から見ますると、いずれも致命的な傷は外部からは見られない。それから病院のお医者さんの方は、これは心臓麻痺的なものである、こういうことを言っております。それからなお、これも後になってわかったことでございますが、当時、関係者、つまり今日の証人になっておる連中ですが、事故の発生した当時には、死人に口なしだから、あまりまずいことは言うなというような申し合せをした形跡があります。それらの人たち関係者の供述等から、別段暴行をふるったような様子もない。こういったような環境のもとで最初の検死が行われましたのと、検事といたしましては、犯罪があるというふうに疑うに足りる十分な理由がなかったというところからして、これを司法解剖をしませんで行政解剖の方に回してしまった、こういうことになっておるようでございます。
  51. 赤松常子

    赤松常子君 私は、大へん重大な問題だと思うわけでございます。今おっしゃった中に、いろいろな方が、それに関係していらっしゃる方々が口をそろえて、何か死人に口なしだからということで、そこをすらっと切り抜けるような措置にお出になったのじゃないかという、そういう疑いがますます濃厚になるわけでございます。これもいずれ法廷で明らかになることでございましょう。  その次に、私、死なれてから遺族に通知なさる前後の事情は、非常に不親切だったと思うのです。それは寺見氏の遺族が、十月五日の午前六時四十分ごろ、奥さんの住んでいらっしゃる玉川用賀町の交番の連絡でやっとわかって、そうして奥さんが出頭されました。それで調室で一人の刑事の方が、五日の午前零時三十分に御主人はなくなったのだということを告げられた。さらに、そのときに署に、有楽町の駅から警察に連れてきて、大へん酔って、そうして廊下の長いすに寝かせておいた。急に頭が痛いといって頭を抱えて、長いすから落ちて、どこか頭でも打ったのか、急に変になったために、救急車を頼んで、そうして日比谷病院へ頼んで救急処置をとったけれども、ついに三十分になくなった、こういうふうに一人の刑事の方が奥さんに言っておられる。その刑事さんを寺見氏のお父さんは会って知っておられますから、どの方がおっしゃったかということは、顔を覚えておりますからはっきり言えると、こうおっしゃっているのでございます。けれども、私は、今申しますように、いたずらにただ警察側は事なかれ主義で、頭を長いすから落ちて打って死んだんでしょうというふうに、軽く遺族の方に言っておられる、こういうふうな扱い方。そうしていよいよ本人に会わせるときも、それからだいぶたって本人に会わせていらっしゃる。で、実に、その間の扱い方、遺族に対する警察態度というものが、非常に、私どもは昔からある非民主的な態度のように思われてなりません。で、こういうふうなことを、一体どういうふうにお考えでいらっしゃいましょうか。繰り返して親切丁寧にとおっしゃっておりますけれども、事実、死んでいるその遺族に会わすのに、時間がたっている。でなければ、会わせていらっしゃらない。解剖にも遺族の方を立ち会わせておいでにならない。そういうことは許されていいものでございましょうか。
  52. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 最初の御報告のときにも、私、その点おわびを申し上げたつもりでございますが、遺族の方に対する警察関係者のとりました態度はきわめて親切心を欠いておったということは、私も率直に認めております。奥さんがおいでになったとき、またお父さんおいでになったときも、これに対する応対等においても十分でない点がございます。先ほどお話しのように、なくなられた事情を一刻も早く御説明すべきであるにもかかわらず、かなり時間がおそくなっておるということ、さらには、検事の検視あるいは監察医の検案等があるために、それらの仕事に追われて気がつかなかったと、弁解がましいことを言っている向きもありますけれども、それはそれとして、やはり遺族の方の立場になりますれば、こういうことはもっとあたたかい親切な態度をもって接すべきであることは申すまでもないところでございましてその点は、私、報告を聞きましたときに、まっ先に指摘したような点でございます。  なお、解剖に立ち会わせなかったという点につきましても、私の報告に接するところによりますと、解剖する場所の図等も書いて差し上げてもし御希望ならば立ち会われるようにということは、遺族の方に申し上げたというふうに言っております。それらもまた事実でありますかどうですか、そういう点も含めまして十分に実相を究明したいと考えております。
  53. 赤松常子

    赤松常子君 いずれまた、遺族の方にも、私、その辺のことをはっきり正しくお聞きいたしたいと思っておりますし、また、こういうこともいずれまた法廷で明らかになることと思っております。  ただ、私、遺憾でございますことは、私の調査によりますと、遺族の方が再三再四警視庁に行って、そうしてその当時の留置人の名前を調べてもらいたい、そしてその真相をもっと究明してもらいたいということを、足を運んでお願いに上ったが、ところが、警視庁側はただ、警察側には落度はないと言うのですよ。非常に民主的な警察であるということを強調されまして、一向に、当時そのときに入っておられた留置人の名前もなかなかお知らせなさらなかったし、真相もはっきりおっしゃらなかったというような、こういうような警視庁態度、これは私は非常に遺憾だと思うのです。この点、繰り返し繰り返し今後の改善を願いたいと思っております。  それから、先へ進みましょう。このことが告訴されて初めて明るみに出て、そうしてふとしたことからこの真犯人がわかり、そうして地検が今田中という暴行犯人をつかまえておる。それにかかわらず、なぜ警視庁が、この地元の警察署内に起ったことに対して、地検が手を入れる前に、なぜはっきりと真相をおつかみにならなかったのでございましょうか。地検の手が入って初めてこれが世間に発表されたというようなことを、どう考えていらっしゃいましょうか。
  54. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 事故の起りました当時、その向後に、関係警察官はもとよりのこと、同房者等につきましても、全部当りまして取り調べました結果におきましては、最初に御報告申しました通り、何ら暴行を加えた者はないということであったので、警察といたしましては、一応それ以上追及する方法がなかったという点もあるかと思うのであります。それをもちましても、どうも割り切れないと申しますか、はっきりしない点があったのでございますから、そうした点については、遺族の方のお申し出もあり、重ねて調査すべきものは調査をしておったようでございますが、不幸にいたしまして田中何がしというものが自供しておるような事実を突きとめるところまで至らなかったのでございまして、告訴がございましてから、何らかのきっかけで、聞くところによりますと、田中何がしがみずから車に乗っておって友人に話しておるのを運転手の人が聞かれて、それが回り回って遺族の方の耳に入って、告訴に至ったというふうに聞いておるのでございます。その段階に至るまで、警察はいろいろ警察の立場において可能な限り調査は進めておったのでございますが、真実を発見するに至らなかった点はまことに申しわけないと思っております。告訴の事実に基きまして先ほど来申しました通り東京地検の鋭意捜査を強行されました結果、一月十六日に至り起訴するに至ったのでございます。  先ほど申しましたように、田中輝男という被疑者起訴されまして、起訴後さらに身柄を勾留されておりますので、警察としましては、この田中被疑者その者に直接当ることもできない関係上、これが事件の中の最も中心である人物でございますので、事件の起りました当時警察において取り調べた際の田中氏の供述と、今日ただいまにおける田中氏の供述と照らし合せてみるならば、そこに真実を発見できるわけでございますが、遺憾ながら、警察としましては、現段階においては田中被疑者に当ることもできない関係上、東京地検の方の取調べ状況を、訴訟手続遂行上支障のない範囲で、警察側にも御連絡をいただきたいというふうに申し出まして、可能なる限りそういう便宜をはかっていただくことによって、警察の独自の捜査というものを実行して参りたい、かように考えておるのでございます。
  55. 赤松常子

    赤松常子君 結論に行きたいと思っておりますが、ほんとうに、私の考えでは、この田中何がしという方がただ暴行罪で処断されるということになっては、死なれたこの寺見氏もお気の毒にたえない次第でございますから、その暴行と死因との因果関係をどうぞはっきりさしていただかないと、国民一般も非常に、捜査の機関、警察に扱われるその扱われ方に非常に不信と疑惑を抱くわけでございますから、この点どうぞ、警察当局としてほんとうにはっきりしていただきたいと、こうお願いするわけでございます。  それで、最後に私はお聞きいたしたいことは、こういう少くとも人一人が署内で不思議な死に方をしている、非常にこれに疑義がある、それに警察は手をこまねいている、地検が入ってやっとこれが明るみに出たというふうになっているということは、私ども非常に遺憾に思うところでございます。特に御遺族に対するその態度は、非常に精神的に御迷惑をかけておりますが、こういう御遺族に対してどういう——何と申しましょう、補償といいましょうか、どういうふうに考えていらっしゃるのでございましょうか。もしも警察の落度があったといたします場合に、御遺族の精神的、経済的な打撃に対するその補償でございますね、これはどういうふうに考えていらっしゃいましょうか。
  56. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 事案真相究明いたしまして、もし、不幸にしまして、警察側に重大なる落度があったというようなことでございますならば、それに即応しまして、関係者方々に十分物的ないしは精神的に陳謝の意を表すべきことは、当然であると考えております。
  57. 赤松常子

    赤松常子君 そういうことに対して、前例ございますのですか。こういう警察側の落度により重大なる問題の起きた場合の遺族に対する補償でございますね、慰謝と申しましょうか、そういうことに対して何か前例がございますのでしょうか。
  58. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 今、具体的には記憶いたしておりませんが、国家賠償法にもそういう場合の救済規定がございますので、そういうものに該当する事例は過去においても若干あったように伺っております。
  59. 赤松常子

    赤松常子君 どうぞこういうこともお忘れなく、責任の所在を明確になさいまして、そうして遺族に対する慰謝あるいは補償を十分お考えおきいただきたいことを、くれぐれもお願いする次第でございます。  最後の質問は、今いろいろと問題が明るみに出ましたが、そのときの扱われた看守の方、これはどういうふうにしておいででございましょうか。あるいはそういう看守方々の怠慢と申しましょうか、あるいはその署内の今までの風習で、そういうことはどうでもよかった。先ほど申しましたように、牢名主に制裁させた方がいいのだというようなことで、今なお行われているのか、このときの責任者は今どういうふうに扱っていらっしゃいますか、その責任をどういうふうに今追及していらっしゃいましょうか。
  60. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) たびたび申し上げます通り事案真相がはっきりいたしませんと、責任をどの程度に追及していいかの判断を下すことが困難でございます。従って、ただいまは引き続き真相究明努力中でございます。結論を得ましたならば、その内容に応じまして、それぞれの責任を追及すべきものは追及したい、かように考えておるのでございます。ただ単に、その当日の看守勤務警察官のみならず、日ごろそれを指導している監督の立場にある者も、平素の指導教養が不十分であるために、もし不祥事を起しておるということでありますならば、その監督責任も当然問うべき性質のものであると考えるのでございまして、そういう点もあわせて十分に真相究明の上において、処置いたしたいと考えております。
  61. 赤松常子

    赤松常子君 中川刑事部長及び荻野警務部長が、今御出席でございまして、実は直接の御担当者でいらっしゃいましたにもかかわらず、もう大体私の質問は、石井長官に申し上げまして、済んだわけでございます。何かまだまだ、その当事者でいらっしゃいませんので、中川さんは当事者でいらっしゃるわけでありますから、もっと詳しくその当時の真相を伺えたと思うのでございますが、その点非常に私、残念でございますけれども、またいずれ、きょう時間を私ばかりとっては済みませんので、きょうはこの程度にいたしておきますが、また、不審な点、納得のいかない点がございましたならば、また明確な御答弁をいただく、そういうことにしていただきたいと思っておりますが、繰り返して私、きょう、さまざま課題が出たのでございまして、この点に対してどうぞこの責任のがれなさらないで、はっきり締めくくりをおっけになっていただきたいと思います。また、この法廷の最後の結論が出ました場合には、それに対してどういう責任をとったかということも、この委員会に御報告を願いたいと思っております。私の質問はそれだけにします。
  62. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。こういう問題が起きた場合、時間的に責任関係を早くする、こういうことが非常に大事だと思います。以前の、たとえば五番町事件の当時でも、国会の法務委員会で何回にも催促して、ようやく国会の幕の切れる直前に、検察当局なりの処置というものがはっきりしたのです。で、あれはおそらく、国会があまりやかましく言わないでおれば、国会終了後になる。そうすると、またそういう責任関係を明確にする時期がずっと延びてしまったのではないかと、私ども非常にその当時何回もそういう心配をして、委員会で何度も法務大臣その他に要求したものですから、記憶がはっきりしておりますが、今回の場合でも、これほど世論の対象になっておるわけですから、先ほどからの長官のお話を聞いておれば、一応筋はそれで抽象的には通るわけですが、しかし、これは時間を延ばしたからといって真相がはっきりするものではないので、むしろ関係者はあなたの部下の内部ですからね、物的な関係も人的な関係も、自分の掌握下のものなんです。だから、そういう関係等から見ても、これはもう現在でもはっきりして、こうこうこういう事情ですということが、私は言えなければいかない時期だと思うのですよ。だから、そういう点から考えますと、赤松さんのお尋ねに、私、長官のお答え、その面でははなはだ実は不満なんです。自分の掌握下のものなんですからね。私はこの席上でたとえば二日内とか、あるいは五日内とか、少くとも一週間内にははっきりさせるということは、私は言えなければならぬ問題だと思います。ほんとうにお答えのような、責任という点をまじめに考えておられれば、私はそんなことは言明されていいと思うのです。また、そのつもりで一生懸命やってもらわなければ、目がたつほどぼけるわけですから、すべてのものが。その点、長官の方で、およそどのくらい内に一つはっきりしますということは言明になれないのですか。いろいろやったけれども、どうもこの点がまだ不十分なんだということであれば、そのことはその際また御説明願えばわかることでありますから、何も言明したからといって、絶対にその日に説明が願えなければ、私どもはその責任を追及するということは、そういうことは考えておりません。それはもう事情によるわけですから、そういう気持であれば、私はこの際、何日以内にははっきりしますと、そういう覚悟でありますというくらいのことは、お答え願わぬと、大事なところが——世間の警察に対する疑惑といいますか、そういうことに対するこたえには私はならぬと思います。その点はっきりしてもらいたいと私は希望するのですが、いかがですか。
  63. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) できるだけすみやかに結論を得たいことは、私、亀田委員と全く同感でございます。かるがゆえに、私は警視庁にたびたびそれを要望して今日に至っているのでございますが、先ほど来申し上げます通り事件真相究明するに最も中心となるべき田中輝男なる方が、現在東京地検において起訴され、起訴勾留されているという関係で、この人について事件当時丸の内署において調査したことと、現在地検においていろいろ取調べを受けた内容と相当そごを来たしているその実情と、十分に突き合せるということが最も大事なポイントとなっているのでございます。それが、東京地検の訴訟手続関係等からいたしまして、緊密な連絡はとって支障ない範囲において御連絡はいただいておりますが、今日ただいまのところ、十分私ども警察の立場において納得できない面もありますので、鋭意その点を至急に解決をはかるべく、東京地検の御協力をいただいて、問題の早期解決をはかりたいと、かように考えているのでありまして、従って、それが具体的に何日やれば可能であるかということは、今直ちには明確にお答えできないのははなはだ遺憾でございますが、できるだけすみやかに結論に到達すべく、あらためて警視総監の方に申し入れたいと思っております。
  64. 亀田得治

    ○亀田得治君 御説明趣旨を聞いておりますと、こっちは早くやりたいのだが、身柄を拘束している東京地検関係等で、なかなか協力が必ずしも得られないのだ、ざっくばらんに言って、そういうふうな意味にも聞えるのですが、私は、そういうことでしたら、法務大臣が来られるかどうかわかりませんが、こういう問題については、やはり法務大臣の方から検事総長に指揮をして、こういう問題は、ほかの捜査はあとにしてでも、早くこの部分だけは明確にすべきだ、警察にその点は協力すべきだ、むしろこういうふうに法務当局としても私はすべき問題だと思うのです。今の御説明のようなことですと、結局は相手が協力してくれないというふうに感じたわけですがね。実際はそうなんでしょうか。それならば、私ども議員としても、むしろ法務大臣に、その点を積極的にやるように、なぜ協力しないのか、そういう点を聞いてみなければならないわけですが、どうなんですか、真相は。
  65. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 協力は十分いただいておるのでございますが、なお必要な面がありますので、今後なお一そうその点を早期解決すべく協力を得たいと、かように考えておるのでございます。
  66. 亀田得治

    ○亀田得治君 協力は十分いただいておれば、これは警察の皆さんも本人に会えるわけでしょうし、そうすれば、それでもなお食い違い等があるというのなら、あとはもう判断が残るだけの問題ですね、協力は十分いただいておるのであれば。だから、そういうふうに、すでに手をつけるべきところはつけてしまっておるのであるから、あとは判断だけですからね。これはあなたの方で、むしろ、この点とこの点の食い違いがあるからどうだとか、はっきり判断をここに出すべき時期ではないでしょうか、協力は十分あるのだから、それを、ただいまの状態でずるずるといったって、何も新しいものは出てこないと思いますね、協力はいただいておるのですから。だから、その辺にはなはだ私、大体真相ははっきりしているのだけれども、どうも何か早く言いたくないというような感じを、私抱くのですが、どうなんでしょう。
  67. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 十分協力をいただいておるのなら、問題解決ではないかというふうにおとりいただいておるようでございますが、十分協力という表現では、あるいはそう申すのは適切でなかったかと思いますが、検察当局におきましては、可能な限りにおきまして私どもに御協力いただいておるのでございまして、訴訟手続関係上、いまだ検察側では全貌をそのままお示しいただけないような面もあるようでございますが、そういう関係から、警察側といたしまして、まだ十分に最後に納得できない、割り切れないといいますか、そういうものが残されておるというふうにご報告いたしたいのであります。本日こちらへ参ります前の警視総監の報告によりましても、担当の刑事が東京地検の方の係官の所へ打ち合せに行っておるということを聞いております。そういうふうに鋭意努力をいたしまして、できるだけすみやかに問題の解決をはかるべく、努力中でございます。いましばらく御猶予を願いたいと存じます。
  68. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょうど刑事局長がおられるので、大臣がおられないので、一つかわってお聞きしたいわけですが、先ほどからの長官のお答えのようなことですが、協力は願っておるが、若干足らない点があるというふうな感じをもう一つ受けるのですがね。実際そういうことでありましたら、これははなはだ私、遺憾だと思うのです。だから、決して、それだけの協力をしたからといって、ほかの犯罪捜査等に支障を来たすべき私は問題だとは思いません。だから、そういう問題が提起されているのですから、早くそれは協力をして、事態をはっきりしてやるべきじゃないかということを、これは法務大臣等を通じて、やはり検察当局に注意をすべきじゃないかと思いますがね。刑事局長のお気持はどんなものでしょうか。
  69. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 協力の程度が徹底して、ないうらみがあるということでございまして、それは実は私、初耳なんでございますが、まあ事柄によりましては、あるいはちょっと待つてくれというような事態も、ないとは保しがたいのでございますが、しかし、本件のような場合については、何も隠す理由はない。検察庁が一生懸命やっておりますゆえんのものも、しょせんは、これは警察の名誉にも関することでございまして、真和が明らかになることを希望しておるところでございます。もし何か不十分な点がありますならば、私どもの方からもお口添えをいたしまして、御納得のいくような協力関係ができますように、努力をいたしたいと思います。
  70. 亀田得治

    ○亀田得治君 不十分な点がありますればではなく、先ほどの長官のお話を聞いておると、十分の協力でなく、多少不十分な点があるようですね。あるようですから、これはやはりあなた、きょうお帰りになって真相を、この辺の協力の度合いとか何かお聞き願って、そういうことなら何も隠しだてする必要はない問題だと私は思いますから、積極的に検察当局と打ち合せすべきじゃないか。そういうふうにやってもらいたいと思います。どうでしょうか。
  71. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お話の通りでございましてまあそれは不十分だというふうに思っておらなかった次第でございますが、もしそういうふうな事態がありますならば、これはすみやかに改善をいたしまして、納得のいくように、一つ地検側にも協力させるようにいたしたいと思います。
  72. 亀田得治

    ○亀田得治君 だから、そういうふうに法務当局のお考えもはっきりしておるわけですから、私は、長官としては早く、皆さんにいろいろ疑惑をかけておる問題だから、一つ五日以内にでも明確にするように努力する。ともかくできるだけすみやかにだけでは、とかくそういうことではやはり印象がはっきりしません。それから覚悟のほどというものはほんとうにあるのであれば、日ぐらい切ってここでお答え願うくらいのことは、私はできると思う。最後にその点だけお願いいたします。法務当局がそうおっしゃることですから、できぬことはないのです。
  73. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 御承知のように、この事案解決責任を持っておりますのは警視総監であります。警視総監に対して私はただいまお話のありました点を十分に伝えまして、できるだけすみやかに問題の解決をはかるように、重ねて注意を喚起いたしたいと思っております。御了承願いたいと思います。
  74. 青山正一

    委員長青山正一君) 本件に関し、委員長からも一言いたしたいと存じます。先ほどから石井長官の応答を聞いておりますと、申しわけないとか、おわびの言葉があまりに多過ぎます。それよりも、真相をはっきりしていただきますように、これは刑事局長にもその点希望しておきます。  本件はこの程度にとどめます。     —————————————
  75. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、売春防止法の一部を改正する法律案婦人補導院法案、両案を一括して議題といたします。まず、提案理由の説明を求めます。竹内刑事局長から、売春法一部改正法案について説明願いたいと思います。
  76. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) 大臣が別の席に出席しておられますに政務次官はちょっと御病気で早退をいたしましたので、私がかわって御説明をいたしたいと思います。  売春防止法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  戦後における世相の混乱と道義の和廃並びに性道徳の低下によって、売春を行う女子の数が著しく増加し、他面、これに寄生して利益を収奪することを業とする者が増加の傾向にあったことにかんがみ、善良の風俗の維持、保健衛生、女子の基本的人権の確保筆の観点からいたしまして、第二十四回国会において売春防止法の成立を見るに至ったのであります。  当時国会における同法案の審議に当り、参議院法務委員会において、同法案第五条(勧誘等)の罪を犯した女子に対する保安処分の規定を設けること等の決議が行われたことは、御承知の通りでございます。  一方、政府としては、閣議了解のもとに設けられました売春問題対策協議会の昭和三十年九月二日の答申、及び同三十一年三月七日総理府に設置されました売春対策審議会の同年四月九日の答申について慎重に検討を続けていたのでありますが、さらに昨年九月十八日売春対策審議会から、立法措置に関する適切な意見の具申もありましたので、ここに売春防止法第五条の罪を犯した成年の女子に対する補導処分に関する規定を立案し、売春防止法の一部を改正する法律案として提案する運びに至った次第であります。  以下この法律案の百要点につき御説明申し上げます。 一、売春防止法第五条の罪を犯した二十才以上の女子に対し、その売春の習性を矯正し、社会復帰をはかるために、保安処分としてすでに刑法で認められている保護観察のほかに補導処分なるものを認め、裁判所が自由刑の執行を猶予するとき同時に補導処分の言い渡しをすることができるものといたしております。 二、補導処分内容は、婦人補導院に収容して、生活指導等その更生のため必要な補導を行うことといたしております。 三、婦人補導院への収容期間は六月とし、地方史生保護委員会が相当と認めるときは、仮退院を許すことができるとともに、仮退院を許された者が順守すべき事項を順守しなかったときは、仮退院の取り消しをすることができるものといたしております。 四、婦人補導院を退院したとき、または仮退院を許された後補導処分の残期間を経過したときは、刑の執行猶予の期間を経過したものとみなすことといたしております。 五、売春防止法第五条の罪のみについて懲役の言い渡しをしまたは刑法第五十四条第一項の規定により売春防止法第五条の罪の刑によって懲役の言い渡しをするときは、刑法第二十五条第二項ただし書きの規定を適用しないこととし、さらに自由刑の執行を猶予して補導処分に付し得ることといたしております。 六、右に申し述べましたほか、手続上必要な規定を設けております。 七、最後に、この法律の施行期日についてでありますが、売春防止法の完全実施は来たる昭和三十三年四月一日からでありますので、同日を施行期日とすることにいたしております。  以上が売春防止法の一部を改正する法律案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  77. 青山正一

    委員長青山正一君) 続いて、渡部矯正局長より、婦人補導院法案について、提案の理由を御説明願いたいと思います。
  78. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 婦人補導院法案について、その趣旨を御説明申し上げます。  このたび提案されました売春防止法の一部を改正する法律案によりますと、新たに同法第五条の罪を犯した成人の女子に対して補導処分の言い渡しができることになりますので、これらの補導処分に付せられた婦人を収容補導する施設を必要とするのであります。の法案はその施設たる婦人補導院に関して必要な諸種の事項を規定するものでありまして、この法案によって制度化されます婦人補導院は、申すまでもなく、補導処分に付された者を収容して、これを更生させるために必要な補導を行う施設、つまり矯正施設の一つでありますが、その補導処分が売春の習性を矯正し、完全な社会復帰をはかるためのものであること、在院者が成人の女子であること等の特殊性にかんがみまして、他の矯正施設におけるとは相当異なった特色を有せしめているのであります。  以下、この法案の要点につき御説明申し上げます。 一、婦人補導院は、売春防止法第十七条の規定により補導処分に付せられた者を収容して、これを更生させるために必要な補導を行う国立の施設といたしております。 二、婦人補導院で行う補導は、規律のある生活のもとで、社会生活に適応させるため、必要な生活指導及び職業の補導を行い、また、その更生の妨げとなる心身の障害に対する医療を行うものといたしております。生活指導は、相談、助言その他の方法により、婦人の自由と尊厳とを自覚させ、家事その他婦人として必要な基礎的教養を授け、その情操を豊かにさせるとともに、他面において勤労の精神を体得するようこれを指導するものといたしております。 三、補導の実施につきましては、施設みずからがこれを行うばかりでなく、学校、病院、事業所、宗教団体、婦人団体または学識経験者に委嘱して、広く外部の援助を受けられるようにいたしております。   職業の補導につきましては、その制度の趣旨とするところにかんがみまして、本人の更生に十分適応する業種を選ばなければなりませんので、補導を受ける者を施設外の事業所等に通わせることができるようにいたしております。また、職業の補導を受けた者に対しましては、相当の賞与金を与えることができるようにいたしております。 四、こうした補導を徹底的に行うためには、補導を受ける者の個性、心身の状況、家庭その他の環境等を十分に考慮した上で最もふさわしい方法によらなければならないのでありますが、在院者の処遇については、本人の性格その他入院時及びその後においてしばしば行います多角的な科学的分類調査の結果に基いて、これを適当な級に分けて行い、分類処遇の徹底を期することにいたしております。 五、右に申し述べましたほか、在院者の処遇に関しましては、補導処分の性質にかんがみまして、適切妥当な諸種の措置を定めることといたしております。 六、最後に、この法律の施行期日についてでありますが、売春防止法の完全実施は来たる昭和三十三年四月一日からでありますので、補導処分に関する同法の一部改正規定の実施を予想される同日を施行期日とすることにいたしております。  以上が婦人補導院法案趣旨であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  79. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  80. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記始めて。  次に、両案の逐条説明を願います。  まず、竹内刑事局長から、売春防止法の一部を改正する法律案の逐条説明を願います。
  81. 竹内壽平

    政府委員竹内壽平君) お手元へ配付申し上げました説明案をごらんいただきたいと思うのでございますが、まず目次でございます。目次の改正は、新たに補導処分に関する一章が追加去れたことに伴う整理でございます。  次に、第一条、目的、本条の改正は、この改正法が第五条に違反した成人の女子に対して補導処分の言い渡しをすることができるようにしたのに対応いたしまして、売春防止が補導処令について規定することをも目的とするものであることを明らかにするためでございます。そして本条によって、補導処分は、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者に言い渡さるべきであるということを明らかにしておるのでございます。  次は、第十六条から二十二条までの保護更生の規定でございます。現行法の第十九条及び二十二条の改正並びに同第十六条から二十二条までの条数の繰り下げは、新たに補導処分に関する規定が追加されたことに伴う整理でございます。  第十六条、刑の執行猶予の特例の規定。この法律は、売春防止法第五条の罪を犯した成人の女子に対し、なるべく実刑の言い渡しを避け、補導処分に付してその更生をはかろうとするものでございますが、刑法第二十五条ノ二の規定によって保護観察に付された者が、保護観察の期間中に第五条に違反したときは、刑法第二十五条第二項ただし書きによって懲役刑の執行猶予の言い渡しをすることができないのでございます。従って、補導処分の言い渡しをすることもできなくなるので、本条は、第五条に違反した者に対して刑法第二十五条第二項ただし書きを適用しないことといたしまして、同条第一項または第二項本文の要件が備わっている場合には、何度でも懲役刑の執行猶予の言い渡しをすることができるようにしたものでございます。  本条は、成人の女子に限らず、男子及び少年にも適用され、また、第五条の罪の共犯者にも適用されるのでございます。本条が刑責を緩和する規定でありますことにかんがみて、公平の見地から、すべての第五条違反者に適用することとしたのであります。なお、本条の適用があるのは、新たに有罪とされた罪が第五条の罪だけである場合と、第五条と他の罪とについて刑法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑で処断されるべき場合とでありますが、後者の事例はきわめてまれな場合であろうと存じます。  次に、第十七条、補導処分関係。本条第一項は、補導処分の要件を定めたものであります。補導処分に付することができますのは、第五条の罪を犯した満二十才以上の女子であって、性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者に限られるのでございます。現状から見て補導処分を考慮する必要のない男子はもちろん、少年の女子にも適用されないのであります。少年については、成人とは異なった取扱いが必要でありまして、少年法により家庭裁判所において適当な保護措置を講ずることとされているからであります。  補導処分の言い渡しをすることができますのは、第五条の罪のみについて懲役の言い渡しをする場合に限らず、第五条の罪を含む併合罪または処断上の一罪につきまして、懲役または禁固の言い渡しをする場合をも含むのでございます。たとえば、第五条の罪と窃盗罪または公務執行妨害罪との併合罪について、懲役または禁固の言い渡しをする場合にも、補導処分の言い渡しをすることができるのであります。  補導処分は、懲役または禁固の執行を猶予する場合に限って言い渡しをすることができるのでありますが、その趣旨は、なるべく実刑の執行を避け、補導処分によって更正の目的を達しようとするためであります。  本条第二項は、補導処分に付された者に対する措置を規定するものでありますが、生活指導、職業の補導、医療など、その詳細はすべて婦人補導院法の規定に譲られておるのであります。  次に、第十八条補導処分の期間の点。本条は、補導処分の期間を定めた規定であります。六ヵ月という期間は、売春の習性のある者に対し、現在少年院等で行われているような職業教育を施すのには必ずしも十分でないと思われますが、第五条の罪に対する法定刑がきわめて軽いことを考慮いたしまして、生活転換の契機を与えるという意味での生活指導を中心に補導を行うことにすれば、その期間内に相当の効果をあげ、その者の社会復帰をはかることができるものと思われます。  補導処分の期間は、現実に婦人補導院へ収容されたときから起算されますが、収容状または再収容状による身体拘束等の期間は、その中に算入されることになっております。  次に、第十九条は保護観察との関係であります。本案は、補導処分刑法第二十五条ノ二第一項の規定による保護観察との関係を規定したものであります。すでに補導処分という強力な保護更正の措置をとります以上、あわせて保護観察に付する要はないという趣旨であります。  本条の適用がありますのは、第五条の罪のみを犯した場合、及び第五条の罪と他の罪とにつき刑法第五十四条第一項の規定により第五条の罪の刑で処断されるべき場合だけに限られるのであります。従って、第五条の罪と窃盗罪とで懲役に処せられた者に対しては、補導処分の言い渡しをしても、刑法第二十五条ノ二第一項に従いまして、同時に保護観察の言い渡しをすることができるのであります。場合によってはその言い渡しをしなければならないのであります。  次に、第二十条、補導処分の言い渡しの関係であります。本条は、補導処分の言い渡し手続に関する規定でありまして、執行猶予及び保護観察の言い渡し手続に関する刑事訴訟法第三百三十三条第二項と同じ内容のものであります。本条によって補導処分を刑と同時に言い渡すことといたしましたのは、第五条の罪を犯した成人の女子に対する保安処分の第一歩として、できるだけ現行刑事司法体系に即した制度を考えたためでございます。従いまして、捜査から公判を終るまでの手続は、法律的にはすべて通常の刑事裁判におけると同じでございます。  なお、補導処分の言い渡しをする裁判所について法律上の制限はないのでございますけれども、簡易裁判所は、第五条の罪について懲役刑を言い渡すことができない関係上、事実上は地方裁判所となるであろうと考えるのでございます。  次に、第二十一条、勾留状の効力の関係でございます。本条は、補導処分の言い渡しがありました場合における身柄の措置に関する規定であります。まず、補導処分の言い渡しは、実刑の言い渡しではございませんけれども、その効果として身柄の収容を伴いますので、刑事訴訟法第三百四十五条の適用を排除し、勾留されている者については勾留状の効力を存置させることといたしたのであります。しかし、実刑の言い渡しがあった場合と同じ厳格さで身柄の確保をはかるのは、補導処分の性質にそぐわないものと考えられますので、同法第三百四十三条及び三百四十四条の適用をも排除いたしまして、従って、保釈中の者については保釈が失効しないことになりますし、また、言い渡し後も、権利保釈が許されることとなるのでございます。  次に、第二十二条、収容の関係でございます。本条は、補導処分に付された者を婦人補導院に収容する手続のうち、強制手段を用いる場合を規定したものでございます。補導処分裁判も、原則的には、検察官の指揮によって執行されるのでございます。従って、強制力を用いる必要がない場合には、検察官の執行指揮と婦人補導院への任意の出頭によって、収容が行われることとなります。収容状を発する必要がある場合とはどういう場合かと申しますと、逃亡のおそれがある場合など、裁判の言い渡しを受けた者の任意の行為によっては収容することができないと認められる場合などをいうのでございます。なお、収容状には、執行指揮の場合と同じ記載事項及び添付書類が要求されているので、収容状を発した場合には、検察官の執行指揮を要しないものといたしました。また、収容状によって受ける身体の拘束は、補導処分の執行そのものではございませんが、設置される婦人補導院の数が少く、収容までにかなりの日数のかかることが予想されますので、その日数を補導処分の期間に算入することといたしたのでございます。  次に、第二十三条、補導処分の競合の点でございます。本条は、二個以上の補導処分についてその執行を調整し、あまり長い期間にわたって補導処分が行われるのを避ける趣旨の規定でございます。補導処分は、六ヵ月の期間内にその目的を達することができるものとするのがこの法律の建前でございます。また、あまり長期間にわたりますときは、人権尊重の面から見てよ好ましくないのであります。同一の女子に対し二個以上の補導処分裁判が言い渡され、ともに執行可能の状態となるような事例は、実際にはほとんど生じないであろうと思われますが、その場合にも本条の適用がありますので、すでに裁判の確定した二つの補遺処分のいずれについてもまだ執行が開始せられていない場合、一方の補導処分の執行が開始されれば、他方の補導処分について執行が行われなくても、その日数は、すべて他方の補導処分の期間に算入されることとなります。また、ある補導処分の執行開始後他の補導処分裁判が確定したような場合には、その確定日以後における前の補導処分執行の日数は、後の補導処分の期間に算入されまして、算入されなかった期間についてだけ後の補導処分の執行が行われる仕組みになるのでございます。  次は第二十四条、在院者の環境調整の点でございます。本条は、売春の習性のある女子については、その環境調整を行うことが特に必要であることにかんがみまして、保護観察所の長にそのための権限を与えた規定でございます。  次に、第二十五条、仮退院の許可、第二十六条、仮退院中の保護観察、第二十七条、仮退院の取り消し、第二十八条、処分の審査、第二十九条、予防更生法雑則の準用、第三十条、仮退院の効果、これを一括御説明を申し上げます。  第二十六条から第三十条までは、婦人補導院に収容された者の仮退院に関する規定でございますが、その手続については、性質に反しない限り犯罪者予防更生法の規定を準用することといたしました。ただ、補導処分は、その期間が短かいので、在院期間についての制限を設けず、いつでも仮退院を許すことができるものといたしましたし、不必要に収容期間が長引かないようにいたしたのでございます。第二十五条関係であります。なお、申すまでもなく、仮退院は、矯正施設に収容された者について、収容中の行状を考慮してかりに退院をさせ、その社会復帰を容易にする。パロール制度の一種でありますから、事故なく補導処分の残る期間を経過いたしました場合は、その期間中補導処分の執行を受けたのと同一に取り扱う趣旨であります。第三十条関係がそれでございます。  次に、第三十一条、更生保護、本条は、婦人補導院を退院した者及び前条の規定によって補導処分を受け終ったとされた者についても、更生緊急保護法による更生保護の措置を行うことした規定でございます。  次に、第三十二条、執行猶予期間の短縮の点でございます。婦人補導院がら退院した者または仮退院の後補導処分の残る期間を無事に経過した者、これらの者は再び売春を行う危険が少くなったというふうに見られるのが通常でありますし、これらの者に対してその後も執行猶予の効力を存置して、その取り消しによって刑の執行を受けなければならないような状態に置かれますことは、かえって自発的な更正の妨げとなる場合が少くないので、本条は、これらの者について執行猶予期間が経過したものとみなしまして、刑の言い渡しの効力を失わせることといたしたのでございます。なお、本条が適用されますのは、第五条の罪のみを犯した者及び第五条の罪と他の罪とにつきまして刑法第五十四条第一項によって第五条の罪の刑で処断された者に限られるのでございます。その他の場合、たとえば窃盗罪と第五条の罪との併合罪について懲役刑の執行を猶予され補導処分に付されたような者には適用されないのでございます。  次に、第三十三条、補導処分の失効の点でございます。本条は、補導処分の言い渡しが失効する場合を規定したものでございますが、補導処分が自由刑及びその執行猶予の言い渡しを前提とすることから生ずる当然の規定でございます。すなわち、補導処分は、前提として自由刑及びその執行猶予の裁判の効力が存続していることを要するものでございますから、執行猶予の期間が経過した場合とか、大赦があった場合など、刑の言い渡しが効力を失いました場合はもちろん、法定の事由によって執行猶予の言い渡しが取り消されましたときには、補導処分の言い渡しもその効力を失うのでありまして、もはやその執行に着手することも、開始した執行を継続することもできなくなるのでございます。  最後に、付則でございますが、第一項は施行期日に関する規定でありまして、売春防止法第二章の規定と同時に補導処分に関する規定を施行する趣旨でございます。  第二項は、第二十七条による犯罪者予防更生法第四十条の準用に伴いまして、更生緊急保護法第一条に必要な整理を行なったものでございます。  以上をもちまして説明を終ります。
  82. 青山正一

    委員長青山正一君)次に、渡部矯正局長より、婦人補導院法案の逐条説明を願います。
  83. 渡部善信

    政府委員(渡部善信君) 婦人補導院法案の逐条の御説明を申し上げます。  第一条第一項は、婦人補導院の目的ないしは性格を規定したものでございます。婦人補導院は、このたびの売春防止法の一部改正法律による同法第十七条の規定にのっとり、同法第五条の罪を犯した満二十歳以上の女子であって性行または環境に照らして売春を行うおそれのある者を収容して、その更生のために必要な補導を行うことを任務とする矯正施設でございます。  本条第二項は、婦人補導院が補導処分裁判の執行を行う施設であることにかんがみまして、すべて国立とすることを規定したものでございます。  第二条は補導の規定でございます。本条第一項は、在院者に対する補導の趣旨及び内容を規定したものでございます。補導は、在院者が不健全な生活に染まった成人の女子であることに照らしまして、規律ある生活のもとで、これを社会生活に適応させるために必要な生活指導、職業の補導及び医療を重点的に行うのでございます。生活指導は、在院者を、一面において健全な婦人として更生させるとともに、他面において社会人として更生させるためのものであり、また、職業の補導は、更生のための就職を容易にするために必要な職業に関する基礎的な知識及び技能を授けて、その自立更生を助長させることを趣旨とするものでございます。医療については、在院者のうちには心身の障害のあるものが多いものと予想されますので、その更生の妨げとなる心身の障害の除去を旨とする矯正的医療が特に重要なのでございます。  本条第二項は、生活指導の方法及び指導の趣旨を明示した規定でございます。  本条第三項は、補導が在院者各人についてふさわしい方法で行われなければならないという処遇の原則を規定したものでございます。  第三条は分類処遇に関する規定でございます。本条は、補導の効果を上げるため、また、他方において、在院者相互間の悪い感化を防止しなければならないことにかんがみ、在院者の処遇が分類を基礎として行われなければならないことを明示したものでございます。この分類処遇は、多角的な科学的調査に基いて分類級並びに前期及び後期の期別を決定し、それぞれに最もふさわしい補導その他の処遇を行うものでございます。  第四条は賞与金に関する規定でございます。本条は、職業の補導を受けた者に対する賞与金の制度を設けたものでございます、賞与金は、在院者の職業の補導を奨励し、これに対する効果的な刺激を与えるという趣旨から、行状及び職業の補導の成績の良好な者に対して恩恵的に与えるものであって、在院者に勤労の意欲を植えつけ、自己責任と自尊心を促し、また、更正資金の一助ともさせようとするものでございいます。  第五条は自己労作に関する規定でございます。本条は、在院者が材料費その他の費用を出して労作を行い収入を得る自己労作の制度を設けたものでございます。自己労作は、在院中に自由な就業の道を開く制度であって、いわば内職的なものであり、特に更生資金の獲得方法として意義のあるものでございます。  第六条は給養に関する規定でございます。本条第一項は、在院者の被服及び寝具並びに糧食及び飲料について官給主義の原則を規定したものでございます。被服等について原則として有給主義により一定のものを着用させるのは、在院者が従来の環境から離れて婦人補導院での更生のための新しい一歩を踏み出すに当りまして心機一転させる意味において、また、婦人補導院における平等処遇、規律等をおもんばかったためでありますが、貸与するものを婦人にふさわしいものとすることについては、特に注意を払いたいと存じます。  本条第二項は、在院者にはできるだけ自由な処遇を与えるという趣旨から、かなり大幅な自弁主義を認めることを規定したものでございます。  第七条は健康診断に関する規定でございます。本条第一項は、在院者の処遇における健康管理及び医療の重要性にかんがみ、医師による健康診断を励行すべきことを明示したものでございます。  本条第二項は、健康診断に当ってとることができる医学的処置は、採血その他医学的に一般に認められているものであって、なお、そのような処置も当該診断に必要な限りでのみ行うことができる旨を注意的に書いたものでございます。  第八条は面会及び通信に関する規定でございます。本条第一項は、在院者の処遇についてはその従前の悪い環境から遮断するということに重要な意味があるなどのことにかんがみ、在院者の面会及び通信について、本人の更生が妨げられ、または婦人補導院の保安上支障が生ずるようなときには、必要な制限をすることができるものとしているのでありますが、他面において、在院者の面会及び通信がこのために不当に制限されることのないように、その制限することができる範囲を規定したものでございます。  本条第二項は、婦人補導院の長が在院者の発受する通信の内容の検査を行うことができる場合を慎重にするため、その通信によって在院者の更生が妨げられ、または婦人補導院の保安上支障が生ずるおそれがあると認められるというばかりでなく、そのように認めるに足りるだけの理由が客観的に相当である場合に限られる旨の厳格なしぼりをかけているものでございます。  第九条は臨時外出の規定でございます。本条は、在院者の近親者の死亡または危篤、本人が出向かなければとうてい回復できない不利益を生ずるおそれのある事態の発生その他の個人的な特別の理由がある場合に、人道上の立場から、補導に支障がない限りにおいて、在院者に一時外出を許す臨時外出の制度を設けたものでございます。  第十条は賞に関する規定であります。本条は、在院者の善行その他個々の事案に対する賞の制度を規定いたしたものでございまして、在院者一般の発奮努力を促す趣旨でございます。  第十一条は懲戒に関する規定でございます。本条第一項は、婦人補導院においては規律の保持が最も大切であることにかんがみまして、妥当な範囲の懲戒の制度を規定いたしたものでございます。  本条第二項は、謹慎室収容の懲戒の執行について、情状によりその執行を猶予する等の運用上の余地を置きまして、弾力性のある執行を期したものでございます。  第十二条は手当金に関するものでございます。本条第一項は、在院者が職業の補導に際して万一災害を受けるようなことがあった場合につきまして、これにいわば見舞金を支給する手当金の制度を規定いたしたものでございます。  本条第二項は、手当金の支給の対象者及び時期を規定いたしたものでございます。  第十三条は領置に関する規定でございます。本条第一項は、婦人補導院の保安及び規律のために、在院者が所持する物の領置について規定いたしたものでございます。  本条第二項は、財産権の保障の趣旨から、売却代金を領置し、または廃棄することができる場合を限定いたしたものでございます。  第十四条は学校等の援助の規定でございます。本条第一項は、在院者に対する補導の個別化をはかるためには婦人補導院みずからの機能だけでは十分でないことにかんがみまして、広く外部の援助を求めることにいたしたのでございます。  本条第二項は、職業の院外補導の制度を明示いたしたものでございます。  本案第三項は、婦人補導院の保安上、在院者の分類調査上等で必要な援助を求める趣旨でございます。  第十五条は保護具に関する規定でございます。本条第一項は、保護具を使用することができる場合を厳格に規定いたしたものでございまして、単に在院者が逃走するおそれがある等の場合には保護呉を使用することはできないのでございます。  本条第二項は、保護具の使用は被使用者本人の保護のためではありますが、それが身体の自由を直接的に拘束するものであることにかんがみまして、原則として婦人補導院の長の事前の許可を受けなければならないこと等を規定いたしたものでございます。  本条第三項は、保護具の構造を規定いたしたものでございます。  第十六条は連れ戻しに関する規定でございます。本条第一項は、在院者が逃走した場合の連れ戻しについて規定したものでございまして、婦人補導院の職員による連れ戻しは、逃走後四十八時間以内に限られているのでございます。  本条第二項は、在院者の逃走後四十八時間経過後における連れ戻し手続を規定いたしたものでございます。連れ戻し収容状は、逃走者の連れ戻しに当たりまして令状主義に準じて処置するためのものでございます。  本条第三項は、連れ戻し収容状及びその執行について仮退院の取り消しの場合の再収容状及び当初の収容の場合の収容状に関する規定を準用することを規定いたしたものでございます。  第十七条は子の保育に関する規定でございます。本条第一項は、在院者に乳児のある場合を考慮いたしまして、やむを得ない場合には婦人補導院内で子を保育することを認めたものでございます。  本条第二項は、在院者の在院期間が短かいのでございます。それを考慮し、特に必要がある場合の乳児の保育の継続を認めたものでございます。  第十八条は旅費及び衣類の給与に関する規定であります。本条は、婦人補導院における釈放時保護の一方法としての旅費及び衣類の給与を規定したものでございます。  第十九条は死亡者等の遺留金品に関する規定でございます。本条第一項及び第二項は、在院中に死亡した者の遺留金品の遺族への交付を規定したものでございます。  本条第三項は、逃走者の遺留金品の処分について規定いたしたものでございます。  二十条は実地監査に関する規定でございます。本条は、監査官による婦人補導院の実地監査を明示いたしたものでございます。  第二十一条は処遇に関する事項で“ざいます。本条第一項は、婦人補導院処遇規則の根拠を規定いたしたものでございます。  本条第二項は、各婦人補導院処遇細則の根拠を規定いたしたものでございます。  付則は、第一項は施行期日に関するものでございます。本項は、施行期月を規定したもので、売春防止法の完全実施の日から施行する趣旨を規定したものでございます。  第二項は国家公務員共済組合法の一部改正の規定でございます。本項は、婦人補導院の職員が刑務共済組合に属するものとした規定でございます。  第三項は公職選挙法の一部改正の規定でございます。本項は、公職選挙の不在者投票の理由に婦人補導院に収容中を加えたものでございます。  第四項は精神衛生法の一部改正規定でございます。本項は、矯正施設の長の精神障害者の通報に関する規定中の矯正施設の定義に婦人補導院を加えたものでございます。  第五項は出入国管理令の一部改正規定でございます。本項は、退去強制該当者通報及び退去強制と刑事手続との関係に関する規定中に婦人補導院に関する事項を加え、婦人補導院の長の通報義務及び補導処分の先行を規定いたしたものでございます。  以上は大体の説明でございます。
  84. 青山正一

    委員長青山正一君) 両案に関する本日の審査はこの程度にとどめ、質疑は次回に譲ります。  速記をとめて。    午後四時十七分速記中止      —————・—————   午後四時三十六分速記開始
  85. 青山正一

    委員長青山正一君)速記を始めて。     —————————————
  86. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、外国人登録法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に続いて質疑を行います。質疑の方は御発言願います。
  87. 大川光三

    ○大川光三君 外国人登録法の一部を改正する法律案に関連いたしまして、去る二月十日、私から外国犯罪に関する統計の資料の御提出をお願いいたしました。そして資料をいただいたのでございますが、ちょっと一見してわかりにくい点があるので、御説明をいただきたいと思います。これは、この表にありまする「三十二年上半期外国犯罪表」という、まず上半期と申しますのはいつからいつまでであるか、この点伺います。
  88. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) それは警察庁の方から出しました資料でございますから、私の方からお答え申し上げます。一月から六月でございます。
  89. 大川光三

    ○大川光三君 そこで、この表のうちで外国人の国籍別としまして、軍人軍属の犯した罪、その他一般外国人の犯した罪ということに区分けしまして、さらに刑法犯、刑法犯以外の特別法犯というように区別されておりますが、そこで最も総括的なお尋ねをいたしますと、三ページの一番右の方の総数人員の欄で四万七千三百五十二、こうなっております。そこでこの総数のうちの発生、検挙、それから人員、この意味を一応御説明いただきたい。たとえば発生事件があるいは集団的であった場合、従って検挙ないしは最後の検挙人員というものにも多少影響があると思いますけれども、この点もう一ぺんわかりやすく御説明を願いたい。
  90. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 発生と申しますのは、たとえば二人共謀して殺人事件を起したという場合には一件でございます。検挙人員は二人になる。それから検挙の方は、一月から六月までに検挙した件数をあげております。従いまして、三十一年中に起りました事件で、三十二年の一月から六月までに検挙したものもこの検挙の中に入ってくるわけであります。そういう意味でございます。
  91. 大川光三

    ○大川光三君 そういたしますと、三十一年度のいわける一年盾を通じての犯罪総数、あるいは検挙総数というものは、この表の一番最後に出ておりまする四万七千三百五十二件というものに大体倍したものがこの数に近いのでしょうか。
  92. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) まあ大体それで間違いないと思いますが、どちらかといいますと、あるいは後半期の方が少し多いかと思います。これはまあその年によって違いますが、しかし大体の見当としては二倍をしていただきますれば、一年間の大よその見当はおつきになると、かように存じております。
  93. 大川光三

    ○大川光三君 常識的にはこの表を倍したものと、こう考えられまするが、前回の御説明によりますると、ことに外国人登録法違反等は年々下ってきておる、こういうような御説明があったのですが、そこでこの表をいただきますと同時に、前回、たしかもう少し古い犯罪統計が手元にあるということをおっしゃっていましたが、この三十一年上半期以前の二年とか三年前の一年間の犯罪総数がわかりましたら、この際お知らせいただきたい。
  94. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 犯罪総数でございますか。
  95. 大川光三

    ○大川光三君 総数でけっこうでございます。
  96. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 三十一年の一年間を通じまして刑法犯と刑法犯以外の特別法犯を合せまして総数を申し上げます。発生が八万五千二百二十件、検挙が八万五千五十二件、検挙人員が七万三千三百二十人ということになっております。それ以前の統計資料をちょっと手元に持ち合せておりませんので、省略させていただきます。
  97. 大川光三

    ○大川光三君 そういたしますと、この参考資料の表を倍加しますると、一年間の犯罪総数が九万四千七百四件になりますね。そこで今御説明の三十一年度分一年間を通じて総数で検挙人員が七万三千二百といたしますと、三十一年度に比べてその後の分がふえておるという計算になるわけですね。そういうふうに考えてよろしいですか。
  98. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 三十一年と三十二年の前半を大よそ二倍にしました数字と比べてみますと、お説の通り、三十二年の方が犯罪が若干ふえておるというふうに言えると思います。
  99. 大川光三

    ○大川光三君 もう一つ、そのいわゆる犯罪総数のうちで外国人登録法違反というものは、この表によりますと、検挙人員数が一万四千八百九十七件ですが、この数は三十一年度の犯罪数とどういう関係になりますか。
  100. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) 三十一年度は発生件数一万六千三百十八件、検挙件数一万六千三百十八件、検挙人員一万五千七百九十三人でございます。
  101. 大川光三

    ○大川光三君 この一万五千七百九十…人というのは三十一年度の一年間を通じてですか。
  102. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) そうでございます。
  103. 大川光三

    ○大川光三君 そうしますと、このいただいた表の一万四千八百九十七件というのは六ヵ月間ですね。そうするとこれを倍加しますと、ただいまお示しの一万五千七百九十三人に比べると、非常に外国人登録法違反がふえたような形になりますが、そういうように判断してよろしいのですか。
  104. 山口喜雄

    政府委員(山口喜雄君) お説の通りだと存じます。
  105. 青山正一

    委員長青山正一君) ほかに御質疑の方はございませんか。
  106. 小林英三

    ○小林英三君 一年未満国内に、日本に来ておる人に対しては指紋を今度とらなくなったのですが、それはどこの官庁でそれを調べるのですか、一年未満かどうかということをお調べになるのは。
  107. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) それは入国管理局、私の方でございます。そうしてこれは、外国人が入ります際には、在留資格、在留期間というものをはっきりきめて入ります。それでたとえば六ヵ月で入りましたものがまた延ばしますと一年になるとか、九十日で入りましたものがそのまま帰れば九十日、延ばしまして百八十日でございます。普通は一年以上で入りますものを長期と申しまして、一年以下は、百八十日以下がございますが、十五日、三十日、六十日、百八十日とございますが、こういうのを短期と申しております。百八十日を一度延ばしましても三百六十日で一年にはならないわけでございます。そういうふうに延ばします際に、一年以上になるとかならぬとかがわかるわけでございます。
  108. 小林英三

    ○小林英三君 私の聞いておりますのは、今度は一年未満については指紋をとらぬということになるのでしょう。それの線を引かなくちゃならぬわけです。あなたの方でそういう名簿を作って調べていくのですか、これは一年になったとか、一年以上になったとか、あるいは今までは一年未満であったけれども、あるいはさらにもっといようとして一年以上になる方もありますね、そういうようなものをちゃんと調査して、一々本人に通知するのですか、一年以上おった人に対して。
  109. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) こういうことでございまして、初めから入りますときに一年というのをもらいますと、これはすぐ登録をします際に六十日目に指紋を押さなければなりません。それがそれ未満で入りました場合、一番多いケースは百八十日だと思いますが、百八十日で入りますれば、一度これを延長します。そうすると三百六十日になりましてまだ一年になりません。二度目の延長をしますと、そこで一年を越すということになります。その延長をいたしましたときに、そこで本人は届け出なければならぬことになっておりますが、その届け出た際に指紋を押すということになっております。
  110. 小林英三

    ○小林英三君 私の聞いておることは違うのですよ。私が聞いているのは、今までは何でもかんでも指紋をとっていたのでしょう。今度はこの改正によって、一年未満の人は指紋を押さなくなるのです。そうすると、一年が来たときに、あなたはもう一年以上になるとか、一年未満とかいうことをはっきりと線を引かなくちゃならぬわけです。それはどういうふうにして線を引かれるのですかどうかということなんです。
  111. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 一年末満で入りましたものが延長して参りまして、一年以上滞在し得ることになったときに、そこに線を引くわけです。
  112. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると一年未満の場合には、今度の改正ではとらないのでしょう。ところが、一年未満であるか、一年以上になるかという区別をあなたの方でつけなければならないでしょう。それはどういうふうなんですか。ずっと一人々々、日にちを勘定してやって帳簿でも作ってやるんですか、それを聞いているのです。
  113. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 普通、外国人が入ります際には旅券を持ってきます。その旅券の上に資格と、それから在留し得る期間が書いてございます。そうしてその期限が切れますと不法残留ということになりますので、私の方ではカードを持っておりまして、これを延長の許可を得ずに、たとえば六十日で入りまして、延長の許可を得ずに残っております者は、不法残留としてすぐ調べるのですが、しかし普通は、本人が申し出まして、そうしてこういう理由で延ばしてくれというふうなことを申し出ますので、全部私の方ではわかっております。
  114. 小林英三

    ○小林英三君 それから改正の中に、本人の生年月日等が事実と相違しておる場合と書いてありますね。その場合に、市町村長の権限によってそれを訂正する、その権限が市町村長に与えられる、こういうことですね。市町村長は、生年月日がどういうふうに違っているかということをどうやって調べるのですか。またどういうふうな、どれを根拠にしてそれを訂正するのですか。
  115. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この本が申し出る場合もございます。それから警察とか検察庁等で、私の方で本人を何らかの事件で調べておりまして、そして本人より申し出ましたものが従の記録と違います場合、よく確かめまして、そうして本人からこれは間違っておったというふうなことがございましたら、そこで訂正いたします。
  116. 小林英三

    ○小林英三君 そうすると生年月日が違うということは、本人がかつて申請した生年月日でしょうが、それが違うとか違わねとかいうことを市町村長が見分けするには、本人の必ず申告によって、これが正しいということを言った場合にのみ市町村長がそれを変更する権限がある、こういう意味ですか。
  117. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この初め登録をいたしました際に、急にいたしまして、そのころ朝鮮人の団体が代理で何万人かの代理申請をしたというふうなものがございますので、本人の故意でなくて間違った登録が行われている場合がございますが、こういうのは、本人の説明でもって訂正できます。それ以外には、本人が旅券とかその他の文書を持っております。あるいは婚姻の際等に戸籍謄本を取り寄せるとかいうふうなのもございます。いろいろなものによるわけですが、初め本人が悪意でだましているのでなくて、そういうふうに代理申請したために、善意で間違っているのが相当件数あります。
  118. 小林英三

    ○小林英三君 私が承わっておりますのは、市町村長が生年月日等を訂正する権限を与えられているということは、必ず本人の申し立てにおいて、これは正しいのだということを聞いた上でなければやれないのかということを聞いている。
  119. 豊島中

    説明員(豊島中君) 旅券を持っている外国人は旅券によって、あるいは国籍証明によって法的証明を要求いたします。大部分の今の訂正する部分の外国人は、朝鮮人が大へん多いわけでございますが、朝鮮人は戸籍謄本が取り寄せられまして、戸籍法は日本のと同じような方法を実施しているのでございまして、それで大体原籍が南鮮の方が九五%でございますので、大部分の者がそれで間に合わしております。証明書を要求しております。
  120. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この法律をそのまま適用して参りますと、国交上非常に支障を来たすような場合が考えられるのでありますが、その点に対して政府はどういうふうな措置をとられるのでありますか。今までの政府の御答弁は、非常にこの点があいまいで、真意を捕捉することができないのですが、もう一回そういう場合に対する政府のお考えをお尋ねしておきたいと思います。
  121. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまのお尋ねは、端的に申しますと、通商代表部関係の人々に関係のあることではないかと思うのでございますが、さようでございましょうか。
  122. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 はあ。
  123. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この点につきましては、この前も申し上げた通りでございまして、通商代表部の方がこちらへ見えまするときには、外務省においていかなる取扱いをするかということがきまりまして、そうして査証が出るわけでございます。その際に、私どもの方といたしましては、わが国が承認した外国政府の公務に従っている者あるいは国際機関の公務に従っている者、こういう査証でございますれば、もとより国際慣例に基きまして、当然指紋は要求いたしませんが、これに準ずる者というような査証が出ることになりますれば、こちらといたしましては、国際慣例を広く解釈して、そうして指紋をとらないようにしよう、こういうふうに考えて、そうして今外務省と折衝をいたしておりまして、大体外務省も、こちらで指紋をとらなんでもいいような査証を向うで発行してくれることになると思っております。まだほんとうの最後の決定段階には至っておりませんが、私は必ずそうなるものと、こういう希望を持って、今話を進めております。必ずそうなることだろうと信じております。
  124. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 外交官に準ずるといいましても、これは取扱い上非常に明確を欠くわけでありますが、この点は法文の上にはっきりときめておく必要があるのじゃありませんか、この点はいかがですか。
  125. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この前にも当委員会におきまして、この問題がいろいろとお尋ねにあずかったのでございますが、あるいは例外的の規定を置いて、これこれの場合には指紋をとる必要はないというような、はっきりした規定を置いてもよろしいのではないかというまあ御意見のような御発言があったのでございますけれども、現在の段階におきましては、外国人処遇のかごとでございまして、これはなかな重大な問題と考えまして、一つ例外規定を置きますると、それに基きまして、だんだんとそれが拡張されてるおそれもありますので、とりあえずの措置といたしましては、この法律並びに国際慣例の解釈によって今当面ししておりまする通商代表部の問題は解決し得るだろう、かような見通しのもとにこの改正案を出した次第でございます。
  126. 大川光三

    ○大川光三君 ちょっと関連して。大臣に関連してお伺いしますが、今お話しの国際慣例によるものとして一つの取扱いをするという考えだというふうなことでございましたがね。この「外国人登録事務執務提要」というものを見てみますと、われわれ一般的に考えて、外国人登録法には何ら明文がないけれども、特に左記のものはこの登録法を適用しないんだということを前提として、第一に「国際慣習による者」、その例として外国の元首、その他随員及びこれらの家族で外交旅券を所持し、在留資格何々を与えられた者というように、まあ(イ)(ロ)(ハ)(ニ)と、こういうふうに例示しているわけですね。そうすると「国際慣習による者」に準ずるということになっている国際慣習というのは、なるほど、その国の元首とか、あるいは外交官というものは、これは国際慣習として認められると思いますけれども、たとえば、今度の中国問題のような場合は、善意にこれを国際慣習によるんだと見ることに非常な私は無理がある。むしろ登録法の本法において一つの弾力性のある規定を設けるのがいいんじゃないかという考えを持っているんですが、そのいわゆる国際慣例によるんだということについても、そこに新たにそういう慣例を作るということに無理はなかろうかというように考えるんですが、いかがでしょうか。
  127. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 現実の問題といたしましては、外務省の方でこの査証を発行いたすわけでございますが、外務省としましては、まあこういう国際慣例と申しますか、国際慣行から見まして、今のところ承認した政府の公務員というものは、どこの国でも登録法から除外しておりますが、承認はしていないが、一国の公務員であるという点で、これを拡張しても無理はないんじゃないかというような解釈を外務省はとろうとしておるわけでございます。
  128. 赤松常子

    赤松常子君 この改正ができまして、正常なる国交の、交流の妨げにならないようにということの考慮は非常にされていると思うのでありますが、反面、不良外人の散在いたしております場合に、まあ居留地に多数の人がおられましょうけれども、離れて小人数の人がいた場合に、一年以上期間が過ぎても、なおこの法律の適用がされないというようなおそれはないでございましょうか。これがそういう場合も漏れなく適用されるようなことになっているかどうか、私のお聞きしたいのは、こういうことを手続に参りますその場所ですね。これが全国にどういうところにあるのか、どういうところでそういう辺地にいる人の登録が処理されるのか、これがちょっと心配です。
  129. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 全国の市町村で扱っております。
  130. 赤松常子

    赤松常子君 じゃおもに朝鮮の方という御説明でございますが、漏れなくこれが、たとえ一人辺地にいてもはっきりとこの適用がなされる、こういうことになっているのでございますね。
  131. 豊島中

    説明員(豊島中君) 辺地にいる朝鮮人の方と申しますと、これは大体この在留資格を持っておるんじゃなくて、法律第百二十六号によりまして、当分の間在留資格なしで在留するというカテゴリーに入るのであります。これは全部登録し指紋を押しておりますので、今度の法律改正で一年以上という問題は、一年以内の在留資格を持っている者は指紋を押さなくてもよろしいということでありまして、辺地におる全部というのは、市町村でよくわかっておりまして在留資格とは関係はないわけでございまして、全部押すことになっております。ちっともその心配はないと思います。
  132. 赤松常子

    赤松常子君 密入国の方々は大へんですね、それはどうしてあれでございましょうね。ここはちょっと漏れるおそれがありましょうね。
  133. 豊島中

    説明員(豊島中君) 密入国の場合には、登録法上は不法入国者としての登録の義務があるということになっております。慣例上は不法入国でありますが、登録法上は登録するということになっております。そうしますと、市町村で密入国者が登録に参りますと、登録は受理しまして、すぐ管理事務所に報告しまして、管理事務所で不法入国を調べまして、不法入国であればこれを逮捕するという形になっておりまする密入国で潜在しておる場合は、これはどこにも出ないわけでございまして、もちろん指紋も押しませんし、登録もしません、隠れておる、潜在しておる、そういう状態でございます。
  134. 赤松常子

    赤松常子君 いたし方ないんですね。
  135. 豊島中

    説明員(豊島中君) ええ。
  136. 青山正一

    委員長青山正一君) ほかに御発言もないようでございますから、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願いたいと存じます。
  138. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 本案には不満足ながら賛成をいたします。指紋押捺の制度は、国交上好ましくないことは言うまでもないのでありまして、従って、かような制度は一日も早く廃止することを希望するものでありますが、現在のように密入国者が跡を断たず、また在留外国人で罪を犯す者が少くないような現状におきましては、この程度の制限はやむを得ないと考えるのであります。  ただ、本法の施行に当りましては、適用上慎重に考慮しなければならない場合のあることが予想されるのでありますが、しかし、かような場合にみだりに法の解釈を曲げ、拡張をし、適用をゆるやかにするということは、法律を空文化せしめ、法の権威を失墜するおそれがないとしないのであります。この点につきましては、政府において特に留意して考慮を払い、適当な処置を講ぜられることを要望して、本案に賛成いたします。
  139. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私は緑風会を代表いたしまして、本改正案に賛成いたします。  今度のこの改正案につきましては、目下の諸般の情勢から、むしろおそかったという感がございますのでございましてむしろ時期的にはおそまきながら、まあ大へんよかったと思っております。さらに私はちょっとつけ加えておきたいことは、この中国の通商代表部の指紋の免除の措置でございますが、これにつきては、この運用についてさらに私は御当局が十分研究なさいまして、万遺憾なきように措置をおとりいただきたいということを申しまして、私の賛成の言葉にいたします。
  140. 大川光三

    ○大川光三君 私は外国人登録法の一部を改正する法律案に賛成いたすものであります。現行外国人登録法に基きまする指紋押捺制度は、昭和三十年四月二十七日の施行以来、実質的にも形式的にも相当なる成果を上げて参ったのでございまして、今これを全面的に廃止するということには、にわかに賛成しがたいのでござりまするが、今日外国との貿易、文化の交流を一そう促進するために、一年未満の比較的短期の残留者に指紋押捺を免除することは、最近の情勢にかんがみまして、きわめて適切であると考えます。また登録証明書の交付手続改正を加え、事実に相違する登録を市町村長の職権で訂正することのできるように新規規定を設けましたことも妥当であると存じまするので、私は本案に賛成いたすものであります。
  141. 青山正一

    委員長青山正一君) ほかに御意見もないようでございますから、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決を行います  外国人登録法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案を原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  143. 青山正一

    委員長青山正一君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、口頭報告内容報告書につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  それでは、本案を可とされた方は、順次、御署名を願います。   多数意見者署名     大川 光三  一松定吉     棚橋 小虎  宮城タマヨ     雨森 常夫  井上 知治     大谷 瑩潤  小林 英三     重宗 雄三  吉野 信次     赤松 常子  後藤 文夫     辻  武壽
  145. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日は、これにて散会いたします。    午後五時十二分散会      —————・—————