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1958-02-03 第28回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月三日(月曜日)    午後一時五十二分開会     —————————————    委員異動 十二月二十五日委員亀田得治辞任に つき、その補欠として藤原道子君を議 長において指名した。 一月二十日委員小酒井義男君及び岡田 宗司辞任につき、その補欠として山 口重彦君及び高田なほ子君を議長にお いて指名した。 一月二十七日委員高田なほ子辞任に つき、その補欠として亀田得治君を議 長において指名した。 本日委員山口重彦辞任につき、その 補欠として高田なほ子君を議長におい て指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            赤松 常子君            高田なほ子君            藤原 道子君            後藤 文夫君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法務政務次官  横川 信夫君    法務大臣官房経    理部長     大澤 一郎君    法務省入国管理    局長      伊関佑二郎君    外務省アジア局    長       板垣  修君    厚生省社会局長 安田  巌君         —————    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  五鬼上堅磐君    最高裁判所長官    代理者    (総務局長)  關根 小郷君    最高裁判所長官    代理者    (人事局長)  鈴木 忠一君    最高裁判所長官    代理者    (経理局長)  岸上 康夫君    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    法務大臣官房主    計課長     勝尾 鐐三君     —————————————  本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件  (日韓抑留者相互釈放問題に関する  件)  (昭和三十三年度法務省関係予算に 関する件)  (昭和三十三年度裁判所関係予算に  関する件)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 委員会を開会いたします。  最初委員異動について御報告いたします。  二月三日付、山口重彦辞任高田なほ子君選任されました。  以上であります。     —————————————
  3. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日は都合により、初めに日韓抑留者相互釈放問題を議題といたします。  申し上げるまでもなく、昨年十二月三十一日、懸案となっておりました相互釈放が妥結いたしまして、刑余者国内釈放も逐次行 われているのでありますが、本件は、在日数十万の朝鮮人国籍処遇及び国外追放処分を定めた出入国管理令の運用にも影響するところきわめて大なるものありと考えますので、この問題の対策並びに今後の取扱い方針等につきまして検討を行いたいと存じます。また、調査進行により、必要により秘密会を開き、会議を進めていくようにいたしたいと存じます。  それでは、初めに相互釈放折衝経過釈放進行状況対策、その問題点等につきまして外務省並びに法務当局から御説明願いたいと存じます。
  4. 板垣修

    政府委員板垣修君) 私から、去る十二月三十一日抑留者相互釈放に関する日韓協定が締結されましたまでの経過を御説明申し上げたいと思います。  御承知のように、この問題は一昨年の春から起って参ったわけでありまするが、当初は純然たる日本に抑留されておりまする韓国人と、それから韓国に抑留されておりまする漁夫との釈放というだけの問題で出発したわけでございまするが、後になりまして、韓国側で、この問題に全面会談を必ず開くのだという、まあ一種の政治的な条件をつけて参りました。多少交渉が長引いたわけでございまするが、日本側といたしましても、いずれ全面会談も開かれなくちゃならぬ。そうなれば全面会談内容そのものに入るわけではございませんけれども、できるだけこの機会に、全面会談で取り上げるべき諸問題についても意見を交換しておくということが有意義であろうかとも考えました。全面会談を開くこと自体については異議がございませんでしたので、その問題に関連して交渉が行われて参ったのであります。  ところが、全面会談議題になるべきうちで最も大きな問題は、韓国側からいたしますれば対日請求権の問題でございました。この問題にからみましてだいぶ交渉が難航いたしたわけでございまするが、幸い昨年の六月、岸総理が渡米される直前に、大体双方合意が九五、六%まで妥結を見たわけでございまして、調印するまぎわになりまして、韓国本国政府の方からなお三、四点字句修正する点があるということで、あの際の調印は延期になったわけであります。韓国側はその際、さらにせっかく妥結しました対日請求権の問題につきましてやや拡張的な解釈をして参ったのと、その他字句修正について新しい要求が参りましたので、それをめぐりまして自後十二月に至るまで六カ月間、彼我の交渉を繰り返したわけでございます。しかし、結果におきまして、韓国側もこの請求権に関する再修正要求を撤回したのであります。そのかわり、日本側もその他の受諾し得る字句的修正には応ずるということで双方の妥協がなりまして、十二月三十一日にやっと相互釈放に関する協定調印を見たのであります。  協定内容は、すでに御承知と存じますが、要旨は要するに、日本におりまする抑留されておる韓国人の中で、第二次世界大戦からずっと引き続き日本に住んでおる朝鮮人については国内釈放を行う。それから戦後不法入国して参った者は朝鮮送還いたしまして、韓国がこれを引き取るということが一つと、一方韓国に、釜山に抑留されておる日本人漁夫釈放する。これに付随いたしまして、先ほど申しましたように、全面会談を開くという覚書がなされ、全面会談は今回の協定では三月一日から開くということになり、その他多少発表されておりませんが、合意議事録の中で、全面会談における議題などをきめたわけであります。これは内容には立ち至っておりませんが、従来三回全面会談において取り上げておりました問題、すなわち李ラインの問題、あるいは戦前から日本におりまする韓国人国籍処遇の問題、韓国側の対日請求権の問題、こういう問題を全面会談議題にするということが主たる内容になっております。  以上、簡単でありますが、経緯を私から御説明申し上げました。
  5. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 釈放実施状況を申し上げます。  問題は二つございまして、いわゆる戦前から引き続きおります、そうして刑期を終えて大村に収容されております者の、いわゆる刑余者釈放問題と、それから不法入国者韓国への引き取りの問題、この二点ございますが、不法入国者、現在浜松並び大村に収容されておりまする不法入国者約千二百名の韓国への引き取りの問題につきましては、まだ韓国側準備が整わないものと見えまして開始されておりません。刑余者国内釈放はすでに実施しておりまして、本日夕方までには四百七十四名のうち約三分の二が釈放されることになっております。私どもの方は身元引き受けのある者を最初釈放するという方針でおりまして、大体本日の釈放によりまして、身元引受者のある者は全部出ることになっております。身元引き受けのない者は少し延ばしまして、大体今月の十日前後に全部これを終える予定であります。身元引き受けのあります者は、これは多少の被服代というものを支給いたしまして、親戚とか確実な知り合いという者に渡しておりますが、今までのところ何ら治安問題は起きておりません。すこぶる順調に参っております。身元引き受けのない者につきましては、これはいろいろと引受団体を探しまして確実な引受者に渡したい。これは仕事のあるいろいろな土建業者その他の、主として朝鮮人業者でありますが、こういう人たちになるべく分散して頼みたい、引き受けてもらいたい、こういうふうに考えております。大体原則としまして十人以下くらいのグループにしまして、そして一個所になるべくまとまらぬように、全国に分散するように持っていきたい。こういうふうに考えております。この際は、一応の被服代という以外に、今まで働いておらなかった人でありますから、当面の食費というようなものも見るつもりであります。多少病人がおりますが、これは病院に入っておる者はそのまま、病院に入らないけれども働けるというふうな者は、当分仕事をさせずにめんどうを見るというふうに考えております。以上です。
  6. 青山正一

    委員長青山正一君) 唐澤法務大臣から、向うから引き揚げる日本人の問題について何か御説明が足らぬように思われまするが、その点を一つ
  7. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) 私別に補足することもございません。
  8. 青山正一

    委員長青山正一君) 御質疑のある方は御発言願いたいと存じます。
  9. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 ただいま伺いましたのは、大体韓国人釈放並びに送還の問題でございましたが、日本人漁夫帰還という問題、これは新聞等において、第一回に三百人の者が帰されたということを承知いたしておりますが、九百数十人のうちから残留する者もあるかのように伝えられておりますが、これらの釈放といいますか、帰還はどういうふうな予定になっておりますか。また、あとに残留する人たちがいまだ受刑中の者であるのか、これらの予定等についてお伺いいたしたい。
  10. 板垣修

    政府委員板垣修君) 釜山におりまする日本人漁夫は現在九百五十一名ございまするが、そのうちいわゆる刑を、協定上は刑を了した日本人漁夫送還するということになっておりますが、その刑を了した者は、韓国側の正式の通報によりますと九百二十二名でございます。従いまして、二十九名がまだ刑を終らない者で、韓国側に、釜山に残ることになっております。これにつきましても私どもは名簿並びにあとどれくらい、何年の刑を受け、あと残っている刑期は幾らかというような資料をほしいということを韓国側要求しております。まだこれにつきまして、資料を私どもの方はもらっておらないのでありますが、この点も今後要求いたしたいと思っております。さしあたり協定の実行で問題になりましたのは、ただいま申し上げました九百二十二名の送還でございまして、その第一次といたしまして、先般三百名が帰って参ったわけでございます。従って、今後残りの者につきましてできるだけ早く日本に帰るように、本日の午後にもまた会議がございますが、促進をして参りたいと存じます。残るまだ刑期中の二十九名につきましては、協定上はまだ帰ってくることになっておりませんが、この点は、今後まず刑余者送還が終りましたに引き続きまして、これらの者も順次帰るように交渉していきたいというふうに考えております。
  11. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 あとへ残っておる人たちの六百二十二名でございますか、これらの人たち送還につきましては、そのつど話し合いをしてきめていくのでありますか。あらかじめ予定は立っていないものでありますか。この点が一つと、それから韓国側の発表いたしております九百五十一名、そのうち刑の終った者は九百二十二名という者と、日本側の持っております数字と一致しておりますかどうか。
  12. 板垣修

    政府委員板垣修君) 第一の御質問に対してお答えいたします。私の方の希望といたしましては、九百二十二名が全部帰ることは協定上確実でございますけれども、この実施の方法につきましても、できる限り、韓国側が三回にわたって帰すと言っておりますが、この全貌をできるだけ早く知らしてほしいということを要求しておりますが、現在のところ、まだ第一回が実施されただけでございまして、二回、三回、どれくらいの人数がどれくらいの時期に帰ってくるかという点はまだ通知を受けておらないのでありまして、本日午後の会議でもこの点を明確にして、できるだけ早く二回、三回に分けても帰る時期なり数なりがはっきりするように向う側交渉したいと考えております。  それから全体の数字につきましては、実は私どもの持っております数は九百五十二名でございまして、一名の差があるわけでございます。名前もわかっておりますが、その点につきまして、最初連絡会議においてもその点を指摘して、至急韓国側調査方を依頼しておりますが、まだ返事が参っておりません。途中で行方不明になったのかどうか、まだ韓国側でも調査ができないような状況でございまして、日本側数字韓国側数字は一名の食い違いがあるわけでございます。
  13. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この相互釈放につきまして、全面会談は三月一日から開始するということになったということが報ぜられておりますが、そうしますと、この相互釈放はそれが三月一日までに完了するお見込みでありますか。ただいまの状態であると、今後きめていくということでありますが、日本に帰ってくる人たちも三月一日まで、すなわち二月中には帰ってくることになっておるのであるか、それもまだ未定なのであるか。また、韓国から不法入国したところの、今収容している韓国人に対しまして、これも同じ期日、三月一日までに向うが引き取ることになるのであるか。それからまた、三月、四月にわたってということになるのでありますか、その点も。
  14. 板垣修

    政府委員板垣修君) 先方から帰って参ります日本人漁夫につきましては、協定上は、協定成立後一ヵ月半以内に実施するということになっておりますので、正確に申し上げれば二月十四日までに完了する手はずになっております。この点につきましては、韓国側は従来しばしば協定期日までには実行すると申しております。しかし、遺憾ながら実施状況を見ますと、漸次おくれがちになっておることは事実でございますが、あと二回の船で帰す意思があれば、当然私は二月の半ばまでには実施し得ることと思うわけであります。この点につきましては、なお韓国側に対して推進したいと思っております。  私の見通しでは、韓国側実施に移す準備さえ整えればあと二回の船で済むのでありまして、予定の二月半ばには実行いたすものと確信をしており、また期待をしております。ただ日本から向う側に送ります不法入国者送還問題につきましては、実はこれは数が非常に多うございまして、その全部を二月十五日までにやり得るかどうか、この点は疑問がありますし、また一方、密入国者は毎日々々ある程度はあるわけでございます。だんだんふえているわけでございますから、この問題は一応の目安としまして二月十五日なりあるいは三月一日までにできるだけのことをやりまして、なお、その後も密入国者があり次第、逐次送還は続けることとしまして、この点につきましては、韓国側の了解をすでに得ているわけでございます。
  15. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 最後に、今の不法入国者送還でありますが、これは日本準備ができればどんどん送り帰すということができるのでありますか。向う受け入れ態勢と両方合致しなければ、こっちから積み出しができないのでありますか、その点はいかがですか。
  16. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) これは従来も、昭和三十年の四月にきまりますまで何回か送還をいたしておりますが、こちらの準備ができまして、かつまた、向うの方も受け入れ準備ができましてから実施いたしております。従いまして、私の方は今のところもう準備はできておりますが、先方の方がまだ準備ができないと申しますので、実施しかねておる状況であります。
  17. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この不法入国者朝鮮のいわゆる三十八度線以南、以北というふうにわたっておるのでありますか、南鮮だけになっておりますか、その点一。
  18. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 不法入国者のうちにはいわゆる北鮮系と称します者が約九十三名ございます。これはどこから入ったかと申しますと、入りますときには、九十三名のうち、私の方の調べでは八十六名までは南から入っております。ただし現在、大村におきまして北に帰るという意思を表明いたしまして、南に帰る、韓国に帰る者と別に収容されておるというので、北鮮系と称しておる者が九十三名おるわけでございます。ですから、入りますときには韓国から入っておる。しかし、その後のいろいろな事情でもって北に帰りたいと言っている者が九十余名おるという次第でございます。
  19. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 九十三名でありますか、これも一緒に送還するについて送還地点というものはまだきまっておりませんですか、向う受け入れ地点
  20. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この点につきましては、私が入管局長になります前から随時国会で問題になっておりまして、当時の総理大臣外務大臣法務大臣等から、本人意思に反してその希望しない所にはなるべく帰したくない、本人意思を尊重する原則をとりたいということをお答えしております。政府としましては、ただいまも大体そういう原則によりたいという考えを持っております。
  21. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 そうしますと、それらの人の送還はどういうふうにお考えになっておりますか。今のところ、どういうふうな措置をなさっておりますか。
  22. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいま申し上げ得ますことは、本人意思を尊重したいという点にとどまりましてて、それ以上の点につきましては、目下交渉中の機微な問題に属しますので、ちょっとお答えいたしかねる次第でございます。
  23. 大川光三

    大川光三君 ただいまの秋山委員お尋ね中で一つ関連して伺いたいのですが、日本人の帰国いたしまする人数は九百五十一名、または九百五十二名とこう伺いましたが、反対に日本から韓国送還する人数についての予定はあるのでしょうか。ありましたらその数を伺いたい。
  24. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいま不法入国者といたしまして大村並び浜松に収容いたしておりまする総数は千二百五十九名であります。これには北鮮系の九十三名を含んでおります。それ以外に不法入国者でありますが、そして一たん大村に収容した者、あるいは収容せずに強制退去という処分を受けましたけれども、現実に国内に、仮放免という制度でもって国内に自由に、自由と申しましても一応束縛はございますが、要するに収容所にいない密入国者というものが二千三十四名おります。そのほかにまだ随時入って参ります。大体過去の平均で申しますと、月に七、八十名は見つかっております。
  25. 大川光三

    大川光三君 そういたしますと、収容所にいる千二百五十九名、これは徐々に送還するというのはわかりますが、収容所外の二千数十人というのは、これはどうなるんですか、あるいは見つかり次第、逮捕し次第順次やはり送還しようというのですか。
  26. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) この二千三十四名につきましては、原則としまして住所はわかっておりますので、大村の現在おります者が送還されれば、  これをもう一度収容いたすというのが原則でございます。しかし、これらの人の中には仮放免されて長い年月もたっており、いろいろ人道的な見地から見まして非常に気の毒な人もあるのじゃないかと思いますので、再収容いたしますに先立ちまして、もう一度各人のケースを審査いたしまして、非常に気の毒な人というのは特別在留許可というものを与えたがいいのじゃないかというふうに考えております。
  27. 大川光三

    大川光三君 日本人漁夫のいわゆる九百五十一人、これは一体韓国でどういう犯罪を犯して抑留されたことになっているのですか。
  28. 板垣修

    政府委員板垣修君) 韓国側の言い分によりますれば、いわゆる李承晩ライン平和ラインを侵犯のかどで向うの刑罰に付したということになっている次第でございます。この点につきましては、終始日本側としましては向う側の主張は認めていないわけでございます。
  29. 大川光三

    大川光三君 そういたしますと、いわゆる今度の相互釈放の問題で、日本人漁夫というものは刑余者というように日本側は認めていないことになるのですか。
  30. 板垣修

    政府委員板垣修君) 私どもは認めておりません。現に交渉中におきましても、向うは刑を了した日本人漁夫を帰すという言葉になっております。これははなはだわれわれも李承晩ライン承認につながる問題として困るということで、随時主張しております。しかしながら、どうしてもこれにこだわりますと協定が締結されそうもありませんでしたので、この刑を了してという言葉を使うけれども日本側としましては、李承晩ライン承認とかそういう問題とは関係ないという留保条件をつけまして、やむを得ず譲歩している次第でございまして、日本政府法律的立場からいいますれば、刑余者とは考えておりません。
  31. 高田なほ子

    高田なほ子君 ただいまの御答弁やら何やらに関連してお尋ねしたいと思いますが、非常に長い期間、懸案になりました日韓政府間の抑留者相互協定が締結されたことに対して、私は衷心より敬意を表しているものであります。ただいまのいろいろ御報告の中に、それぞれ問題点があったようでございますし、また、御答弁にもあったようでありますが、一つここで問題になっております大村収容所の中におります釈放問題については、南北鮮にそれぞれ帰りたい、違う意思を持っている者の釈放問題についての、不肖私が法務委員長の時代にも、本問題については非常な関心をもちまして、収容所にもたずねたこともございますが、たまたま東京新聞によりますと、北鮮に帰りたいという希望を持つ者が相当数あるのでございますが、その希望を持っている者がたまたま内部においてテロ行為を受けて、非常な人命危機にさらされている。従って日赤に対して人命救助を求めるというような事態が起っているわけであります。従来法務省当局の御見解は、ただいまの御答弁の中にもあったように、本人意思に反して、無理に意思にあらざるところに送り帰すという意思はさらさら持っていない。これは従来からの政府見解であり、また、われわれもその見解に対しては全く同感の意を表するものでありますけれども、少くとも人道的な立場から考えたときに、北鮮側に帰りたいという意思を持つ者が、こういうテロ行為にあって貴重な人命危機にさらされているというような問題に対しては、われわれとしても相当問題を重視しなければならないのでありますが、一体南北鮮に帰りたいという、こういう個人の意思というものが今回の送還に当って尊重されるべき筋合いのものであるのかないのか、この点について、はなはだくどいようでありますが、大臣から特にこの基本的な問題について御答弁をわずらわしたい。
  32. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) ただいまお尋ねのありましたいわゆる北鮮系人たち送還の問題でございますが、従来から政府としてまた、法務省としてお答え申し上げました通り、やはり原則として本人希望の実現されるように取り計らいたい、かように考えております。
  33. 高田なほ子

    高田なほ子君 この原則は当然あらゆる場合に守られるべき性質のものだと思うのですが、最近韓国代表部福岡にありますのだそうでありますが、特に福岡出張所員大村収容所にたびたび参っておられるようでありますが、その出張所員北朝鮮に行く者に対しては再審査をする。再審査理由は、諸君は北朝鮮には帰さないという、そういう意思を持っての再審査であるように伺っておりますが、もしこういうことが許されるとするならば、ただいま法務大臣の言明されたこととは全く相反するものである。むしろ内部におけるいろいろな不祥事件は、こうした政府当局意思というものが末端のところに伝わっていないところに混乱を起す原因があるのじゃないか、一体再審査をする理由は、どういう理由で再審査しているのか、また、再審査理由の中に、南朝鮮にお前たちは帰すのだ、北には帰さないのだというように、そういう前提のもとにされているということはこれは、出入国管理令から見ても私は違法であると思いますが、こういう現状に対して大臣はどういうふうな御所見をお持ちになっておりますかお伺いしたい。
  34. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいまの御質問でありますが、韓国福岡の代表事務所の者が大村に参りまして、そういう再審査をいたしたということは私は全然知りません。また、そういうことをいたしますれば必ず報告があることと私は思っております。  それから先ほどの御質問でありましたが、南北の問題に関してテロ行為が行われておるというお話がございましたが、私の方はそうしたことがございますれば必ず報告があるのでありますが、別に報告も参っておりませんでしたが、念のために一昨日電報を打ちまして、けさ詳細な回電が参っておりますが、テロ行為等はございません。
  35. 高田なほ子

    高田なほ子君 テロ行為がないというふうに言明になっておられるし、また、かりにそういうテロ行為が起った場合あるいは起らんとするような危険性に対してはどういう保護を一体おとりになるつもりでございましょうか。つまりこれは南北の問題ではなくて、人間として生命を存する以上は、あらゆる迫害から守られなければならない権利を私たちは持っているし、政府自体としてもこうした問題の保護については確たる御見解をお持ちになって、今日までこられたことは了承するのでありますが、具体的な問題としては、現に北朝鮮に帰りたい者とそれから南鮮の方に帰る者とは、私は目で見て参りましたけれども、これは寮を別にして複雑な事態を防ぐように留意しておられることはわかっておりますけれども、現在南鮮側の寮にいるもので北鮮側に帰りたいという意思を持って当局に対して申請しているけれども、その申請を却下している。しかも却下された者が寮内における脅迫事態におそれをなしてついに有刺鉄線にかじりついてその寮を抜け出し、これを違法行為であるといって今独房に入れられているそうでありますが、一体自由意思を表明できない、しかも正式に書面を出して申請したものを当局がこれを却下してそういう恐怖の中に放置しておるということは、これは明らかに職務怠慢であると思う。現在あなたがそういう事実はないという言明をされておりますが、こういう事実が現にあるとするならば、これは明らかに職務怠慢ではないか、申請書を提出した者の名前もここに五名ばかり私は手元に資料として持っておりますが、なぜしからぼその申請書を提出した者を押えてそういう事件を防ぎ、かつ人命の安全という立場からも、また、強迫観念を払拭していく、こういうような立場からもこれを受理すべきではないかと思いますが、なぜ受理されなかったのですか。こういう報告は来ておらないのですか。再度お尋ねいたします。
  36. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 協定は十二月三十一日にできたわけでありますが、協定ができましてからその以後におきまして、従来は韓国に帰ると言っておりました者の中から、この際北鮮にくらがえしたいということを申し出た者が約十六名ございます。その中にただいまお話しになりました者が四、五名入っているわけでありますが、大体三十一年の初めから三十年の暮れに北鮮系の者と南鮮系の者がいざこざを起しまして、警備上の問題がございますのでこれを両方に分けた、北鮮系北鮮系南鮮系は南鮮系に分けて、北鮮系は非常に少いので別の棟に入れております。最初それが五十八名であったわけでありますが、その後、昨年の十二月末までにふえまして百二十六名になっているわけであります。北鮮に帰りたいという者は、よく事情を調べまして北鮮の方に移しておったわけであります。それまでに意思表示をいたしませんで、今回になりまして急に北鮮に帰りたいということを申します者は、どういう理由かと申しますと、大体われわれの方では、北鮮に帰るということを言えばこれは実際問題としてはなかなか北鮮に帰れない。そのうちに国内に仮放免にでもなって、そうしてまた、いざ帰るときも帰国の時期がきまるまでだいぶ先だし、自分で自由な時期が選べるというようなことを北鮮系が盛んに宣伝いたしますために、韓国には皆不法入国者は帰りたくない気持でありますので、何とかしてこの際北鮮にでも変れば帰らずに済むかあるいは帰る時期が延びるのじゃないかというような淡い希望を持ちまして北鮮に帰りたいということを申し立てる、こう考えております。それでこれを認めますとどんどんこういう者がふえますし、韓国との約束も十二月三十一日現在でありますので、これは今のところ認めない方針でやっている次第であります。
  37. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうしますと、北鮮に帰りたいという希望を公式に申請をいたしても、当局としてはこれは絶対認めない、こういう御方針でございますか。間違いありませんか。
  38. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 北鮮に帰りたい者は十二月三十一日までに当然申し出得る機会があったにかかわらず申し出ていない。この際そういうことを言うのは、帰ることを避けたい、なるべく帰りたくない、北鮮にくらがえすることによって帰らずに済むという考えでやっているものと認めまして、これは認めたくない、こう考えているのであります。
  39. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、ただいまの御説明によると、北鮮に帰りたいという者の意思は、日本に長くおって自由な時期が来たときに自由に帰れるからだというような希望を持っている、こういう御説明でありましたが、不肖私の仄聞するところによれば、強制的に今度南朝鮮にかりに帰った場合に、北鮮に帰ろうとする希望を持っている者は明らかに南鮮に対して反対の意見を持っている者である。かつて一九五二年に南鮮に強制送還された北鮮系の人が二人ともこれは死刑に処せられております事実がありますし、また、現在北鮮系にどうしても帰りたい、南鮮に強制送還されれば、われわれはもう死を待つ以外にはないのだという、こういう非常な生命の危機感に立って南鮮に帰りたくないと訴えているのでありますけれども、そういう声というものは、全然当局の方へは響かないものでしょうか。北鮮に帰りたいという者の意思が非常に一方的に曲解されているのではないか。帰ったならば死刑が待っているのだ、こういうおそろしい立場の中に、だれだって喜んで帰りたいという者はないと思うのです。一体日本政府原則として本人意思を尊重するというならば、私は少くとも正直に公式な書面をもって提出した者については、よく事情をただして本人意思を尊重するということごそ、私は政府としての今日までの寛大な、かつ国際法上に照らしても正当な方法ではないかというふうに考えておりますが、お調べが若干足りないのではないか。大へん私の手元にきておりますものと、そちらのお答えとが食い違っておるようでありますが、この点もう少しお差しつかえがなかったならば、詳しくお知らせを願いたい。
  40. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) そういうふうな、韓国に帰れば死刑にされるというふうなそれほどの脅威があるものならば、昨年の十二月三十一日までに当然申し出ておるべきものと考える次第であります。それまでに自由に申し出ができたわけであります。  それから現在問題になっております人間が四名ほどございますが、一人の有刺鉄線をくぐって北の方へ逃げ込んだ李炳南と申す男でございますが、これは最初北鮮へ帰りたいということをちょっと申し出、また、そのうちにそれを取り消したりしております。それからその次に金俊孝という男、これも脅迫を受けたと言っておりますが、本人の任意供述書でもって、脅迫は受けなかったということを申し出ております。それから金大鉉、金容珠、この二名は一度申し出ましてまた翻しております。また、南に帰るとこう申しておりまして、まだそれほどシリアスなケースにはなっておらぬわけであります。
  41. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の党としても、この問題は非常に重視いたしまして、調査団を派遣して実情を調査して参ることになりますから、ここに、この席で水かけ論になるような議論は差し控えたいと思いますが、要は本人意思に反さないという政府の大方針は、やはり国際法上に照らし、あるいは世界人権宣言に照らしても、国際信義として守っていくべき事柄でありますから、この大方針だけは、どうしても守っていただかなければならないということを強く要望するものであります。  次に、この問題はさらに質問を保留いたしまして、北鮮に帰りたいという者に対して送還の方法はただいま交渉中であると、こういうようなお話でありますが、具体的な詳しいことはお話しいただけないにしても、その方法、交渉中の原則というものはお話しいただけるのではないかと思うのです。この原則について、できる限りお話しいただきたいと思います。
  42. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 先ほどお答えいたしました通り、その点についてはまことに遺憾ながら全然申し上げるわけに参りません。
  43. 高田なほ子

    高田なほ子君 南日外相が、この送還問題については声明を出しておりますが、政府当局としてもこの声明についてはごらんになっていらっしゃると思いますが、これは昨年の十二月二十九日の声明でありますから、日本政府としてこの声明をどういうふうにお取扱いになったかということを、当時私十分に承知しておらない。で、内容大村収容所を即時釈放し、彼らを受け入れる。この受け入れる態勢のために、朝鮮赤十字社代表を日本に派遣したい、赤十字社を通してわれわれは北鮮に帰りたいという者に対する受け入れ態勢を整えているのだという南日声明が出されておるわけであります。先ほど法務当局からの御説明によりますと、韓国側準備次第送り帰すのだ、身元引き受けのある者は、これは早く出すのだ、引き受け団体があるならば、これも渡してやるのだというよう・なこれは御答弁があったと思いますが、北朝鮮日本とは、ある意味でまだ正式の国交を持たないと思う。しかし、私どもの解釈では、韓国というのは、これは二つでなくて、南も北も同じ朝鮮人たちであるというふうに解釈しておりますが、これは政府見解と違うかもしれませんが、少くとも正式な国交を結んでいない、あるいはまた、交渉がしていないという場合にこそ韓国の赤十字社の活動する分野というものがあるものであって、北朝鮮側の南日氏のように、この赤十字社を通して北鮮側に帰りたい者を受け入れるのだ、こちらの方で必ずこれを保護し、かつその生活の保障をするのだという声明を出しておるのでありますが、一体、この赤十字社の受け入れるというこのことに対して、法務省はどういう見解をお持ちになっておりますか。
  44. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) だたいまの御質問で、この身元引き受けのある者は早く出し、ない者はあとから出す、これは刑余者の問題だけでございます、国内釈放いたします。それで韓国側準備でき次第送り帰すと申しますのは不法入国者でございます。二つは別のものでございます。  それから北鮮の赤十字の問題、この赤十字が代表を送りたいと言っているのに対してどうしたか、あるいはどうするかという御質問につきましては、外務省からお答えした方がいいと思います。
  45. 高田なほ子

    高田なほ子君 外務省でお答えいただけますか。
  46. 板垣修

    政府委員板垣修君) ただいまの御質問の中にございました、日本政府といたしましても、本人の帰国先につきまして、本人意思の自由をできるだけ尊重するということは日本政府方針でございまするが、現在、この問題は、全般的に相互釈放の問題に関連をいたしておりますので、この取扱いは非常に微妙であり、また、具体的な実施方法につきましては韓国側とまだ交渉中であり、先ほど伊関局長から御答弁申し上げましたように、非常に微妙な段階にありますので、ちょっとこの席では御説明をいたしかねる次第でございます。
  47. 高田なほ子

    高田なほ子君 大へん問題が微妙で十分のお答えをいただけないのでありますが、しからば外務省国籍処遇の問題について三月一日からの全面的な会談にゆだねるというお話でありますが、国籍処遇の問題というのは、一体どういう問題なのかどうか、そしてそれはどういう方針でもってやっていくつもりなのであるか、ただいまの御答弁でははなはだどうも心もとない。むしろ私どもに何らつかむことのできない御答弁でありますが、もう少し詳しく、方針だけでもけっこうでありますからお話し願いたいと思います。
  48. 板垣修

    政府委員板垣修君) 全面会談で取り上げられます議題の中に、ただいまお話のありました終戦前から日本に場りまする韓国人国籍処遇の問題、さらに不法入国者の問題、あるいは政治犯人の問題とかいろいろな問題があろうかと思います。これらにつきましては、従来日本政府としての主張もあったわけでございますが、今後の全面会談においても従来の主張をそのまま繰り返すか、あるいは今後の情勢の推移におきまして韓国側の主張も入れて新しい妥結点を見出すか、この点はすべて会談が始まってみないとわかりませんので、今、現段階におきましてはっきり申し上げるほど実は意見も固まっておりませんし、かりにございましても、ただいま申し上げることははなはだ不適当と存じますので、この点御了承をお願いいたしたいと思います。
  49. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは、これは若干違うかもしれませんが、さっき当局からの御答弁によると、南鮮の者であったのが北鮮に帰りたいようになり、北鮮に帰りたいと思っておったのがやがてまた南鮮に帰りたいという、いうなれば二つの国籍がある者のような言動をしてきている部面がありました。私は法的に伺いますが、二重国籍の者についての出入管理令はどういうふうに一体取り扱われるべきものか、日本国としては、こういう二重国籍のある者の場合には、その本人意思というものはどういうふうに尊重されるべきものか、これは法律問題としてのみお尋ねいたします。
  50. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 現在いわゆる朝鮮人という、朝鮮から来ておる人たちで登録をいたします際には、朝鮮と書くものと韓国と書くものと両方あるわけでございます。昔は全部朝鮮と書いておったのでありますが、最近に至りましては、韓国がなるべく自分の系統には韓国と書くように勧めておりますので、韓国と書く人間がふえてきておるわけであります。われわれはいずれにしましても、朝鮮と書いてあっても、韓国と書いておりましても、同じように扱っておるわけでございます。
  51. 高田なほ子

    高田なほ子君 いやそれはそうかもしれませんが、問題になっているのは、朝鮮韓国との言葉の違いではなくて、現に三十八度線を境にして現在朝鮮人民共和国があり、南は韓国とこう呼ばれておるのですが、政府韓国というものの解釈をどういうふうにしておるのですか、さっきの質問とちょっと違いますけれども韓国というのは、どういうものを韓国と呼んでいるのですか、私ども韓国人と言えば、北朝鮮の方もこれは韓国人だと思います。それから南におられる方も広い意味では韓国人だと、同じ朝鮮民族だと思う。政府の方では、朝鮮韓国言葉の違いだけ言われましたが、一体韓国というものの解釈はどういうふうに解釈をしておるのか。なかんずく南と北との関連についてお述べいただきたいと思うのです。
  52. 板垣修

    政府委員板垣修君) ただいまの御質問で、韓国人と言えば南鮮北鮮もというお話でありましたが、それはおそらく韓国側政府はそういう主張をやられるかもしれません。しかし、これを純粋に法律上に申し上げますると、御承知のように、韓国政府は一九四八年の国連の決議でできましたので、純粋の韓国政府は違った意見を持っております。しかし、日本政府の純法律的な解釈から申しますれば、韓国政府並びに韓国民とは、やはり現在の韓国政府が統治を及ぼしておる地域における人民ということになるだろうと存じます。
  53. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、純法律的の立場で言うと、南のものだけが韓国であって、北のものは韓国という範疇に入らないというように解釈されるのでありますが、こういうような場合は、やはり出入国管理令に基いて二重国籍者でどれか一つの国籍を認める場合には、第三国としての日本国の立場はその本人意思に従うというのがこの管理令の本旨ではないかと思うのでありますから、純法律論から言えば、南鮮だけが韓国というように考えるかもしれませんが、今回の釈放問題について、同じ朝鮮人である場合にはこれを拡大し、準用して、日本の第三国としての立場は、この二つの解釈の純然とつかないものに対しては、やはり本人意思を尊重して、そしてしかるべき帰りたい場所に帰してやるという方針を貫くということは、これは一向法律違反でもなければあるいはまた、他国に対して非常な非礼になるとは考えられないのでありまして、どうかこういうデリケートな問題はもう少し親切気をもって、あるいはまた、当面している方の非常な苦境というものもお考えになって、人道的な立場に立って処理していただきたいということを強く私は考える。従いまして、先ほどから質問がちぐはぐになっておりますけれども、今日収容所の中で南北対立という形ではないにしても、少くとも自由な意思の表明できないというような立場にある者、あるいは北鮮に帰りたいと申請しながらそれを取り上げてもらえない者、そうして帰されれば死の手が待っているというような、そういうような苦境の中に私は放置しておくべきものではなくて、あくまでも人道的な立場に立ってこの困難な問題を解決されるように、一そう私は当局が留意されることを強く主張したいのですが、もちろん私の主張に対しては、法務大臣もまた皆さん方も反対という御意見はないだろうと存じますので、あらためてお伺いしたいのでありますが、特にこれを法務大臣にお伺いしたいのですが、明確にお答えしていただきたいのですが、共和国の赤十字社の日本入国要請に対して、政府としてこれを受け入れ準備があるかないかということを、非常にデリケートだと思いますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  54. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) だんだんと北鮮へ帰国することの希望者の問題から今のお尋ねでございましたが、いわゆる北鮮系朝鮮人送還の問題は、政府としたしましては、従来通り、かりに先に迫害が待っておるものをそれをかまわずに送り帰すというような、さような非人道的なことをいたすつもりは絶対にございませんですから、従来通り本人希望をなるべく実現されるようにということを考えております。  ただ、よけいなことかもしれませんけれども、これらの人は全部密入国の人たちでございます。私は今密入国をとがめるわけではございませんが、日本へ来て、そうして日本に住みたいという希望を持っておる人たちでございます。そうして、その中には少からず原籍が南鮮にある人がおるようでございまするし、それから密入国のときのその出発点がやはり南鮮であったというような人もあるものですから、それも相当あるものですから、従いまして、これを南鮮に送り帰せばすぐ——今お言葉がありましたように、あるいは死がこれを待っておるとか、あるいはこれに準ずる迫害があるというような人ばかりであるかどうか、あるいはその中には従来からいろいろ言っておったにもかかわらず、南鮮へ帰ってよろしいと言っておったにもかかわらず、急にまた北鮮でなければならぬと言い出した人などは、これは少し調べなければならないという心持になるのはこれはやはり一つの常識だろうと思いますが、要するに、北鮮系であるというて南鮮に送り帰されれば、かりに今述べられたように、極端に言えば死が待っておるというようなものをどこまでも南鮮へ送り帰す、そういうような意思は絶対にございません。  それから、今お尋ねの、赤十字社の問題でございますが、これは日本の赤十字社にそういう申し込みがあるそうでございますが、政府に対してはまだそれがないようでございまして、政府といたしましては、まだそれに対する態度をきめておりません。
  55. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、南日声明の出ました昨年の問題については、政府としてはあまりこの赤十字の問題については御論議なさらなかった。もし、さらにあらためてこの赤十字社から要請があれば、政府としてはこれを研究するという態度というものはお持ちになっていらっしゃるものでしょうか、いかがなものでしょうか。
  56. 板垣修

    政府委員板垣修君) この問題は先ほど申し上げましたように、全般の問題とも関連をして、慎重なる処理をしなければなりませんので、ただいまどうとも御返事はできませんけれども、少くとも今の段階において、かりに北鮮の赤十字が日本へ入りたいという希望政府へ伝達されましても、いたずらに事を、紛糾を起すばかりでありますので、政府としては消極的な態度をとるよりほかないと考えております。
  57. 高田なほ子

    高田なほ子君 消極的な態度ということは、私は拒否するという意味ではないととるし、それでは赤十字精神というものをじゅうりんする政府なんというものはどこの国にもあったものではない。私は事のいかんを問わず、国交が正常に回復し得ない場合のいわゆる処理機関、なかんずく人命に関する処理については当然赤十字社というものが活動すべきものである。いずれの国といえどもこうした赤十字社精神というものを無視する国はないのであって、非常に問題がデリケートでありますから、明確な御答弁を避けられているのではないかと考えられますが、少くとも赤十字精神というものが無視されないような方針というものを、この際政府は当然正々堂々と打ち出すべきものではないか、これは戦時の場合でも赤十字社というものは堂々とどの国の間でも認められるものである。しかも現に今砲弾を飛ばし合っている国ではない、その問題の処理のための赤十字社の活動というものは、それは日本政府としても、いかに韓国に対して、南朝鮮に対して御遠慮があるといいながら、これは、無視するというような態度は私は許されないものじゃないか。消極的にということは、拒否することではないということになっておるのか。一体赤十字精神というものをどういうふうに外務省考えているのか、この際赤十字に対する見解をはっきり述べてもらいたい。
  58. 板垣修

    政府委員板垣修君) 外務省としてはもちろん赤十字の原則に従って行動したいと思っておりまするし、ただいま起っておりまする具体的問題につきましても、赤十字の原則を尊重したいという方針には変りございません。ただ、今申し上げました消極的態度と申しますのは、北鮮側の赤十字が日本に入国して引き取りに来るというようなことにつきましては、ちょっと今の段階におきましてはこの入国を許可するということは、いたずらなる紛糾を起すばかりでありますから、消極的な態度をとらざるを得ないと申し上げたわけでございまして、全般的にこの問題の処理につきまして、日本政府といたしましては、赤十字の精神に沿うてやっていくということに変りはございません。ただ再三申し上げました通り、これは全般の問題にかかりますので、この点の円満なる解決というものにつきまして、私どもは日夜苦慮いたしておる次第であることを十分御了承願いたいと存ずる次第でございます。
  59. 高田なほ子

    高田なほ子君 赤十字の精神を尊重されるということが今御答弁にあり、かつまた、法務大臣人命尊重というような立場、あるいは国際法上の立場から本人意思によらざる強制送還ということは、これはしない、こういうような言明があります以上は、現にただいま大村収容所内に起っている、公然と行われているテロ行為というものを当局者は相当調査をされて、こういうテロ行為というものがかりにあった場合に、これは十分なる私は処置をとるべきものであると思うし、また、そういう風評が立つということも決してこれは名誉なことではないと思います。現に私が大村収容所に参りましたときも、ひそかにその危惧を感ずる空気をからだで感じとってきた。現に今そういうことも行われていると聞くのです。これはどうしても十分な御調査を願うとともに、こういうテロ行為が少くとも南北鮮に帰るということを機会にして行われるというようなことがないように、十分これは注意をしていただきたいと思いますが、これらの点につきまして、どういう方法を一体おとりになろうとするのか、もう一度私はお伺いしたいと思うのです。これを未然に防ぐようにしてもらいたい。
  60. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) テロ行為とお話になりますが、ただいままで十分調査いたしました結果では、テロ行為は全然ございません。テロ行為があるごとく言われるのは北鮮系の宣伝であると私は思います。もし今後そういう危険が生じますれば、そういうことのないように、これは十分注意いたすつもりでおります。
  61. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は北鮮系のそういう宣伝に乗せられて質問しているとは考えられない。再度申し上げましたように、わが党も調査団を派遣いたしますから、この水かけ論はやめたいと思いますが、次にお伺いしたいことは、各自の帰国希望地の選択に当ってその意思を確認するために、第三者を交えて話し合いをするような機会を与えてやった方が、こういうような誤解とか紛争とかを避ける方法としては適切な方法のように考えられますが、そういうような方法をおとりになる意思というものはお持ちにならないでしょうか、いかがでしょうか。
  62. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいまの御意見も非常にいい御意見じゃないかと思いますが、何分にも不法入国者は皆帰りたくないわけでありまして、帰らぬために、この際送還されないためには、あらゆる手段を講ずるわけでございますので、この点をよほど考えませんと、いろいろな方法、手段をとりますと、皆が何か口実を設けて帰らないというようなことになるおそれも多分にございます。一つのいいお考えと思いますが、これを実行するかどうかにつきましては、もう少し慎重に検討いたしたいと思います。
  63. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうもこの点やはり調査しなければわかりませんが、不法入国者である、しかし、私どもの少し調べたところによると、やはり政治的な亡命というような形で来られているような場合もある。そういう場合が一番強制的に南鮮送還された場合に危険を伴うという、生命の危険に襲われるのではないかというふうに私は仄聞するのですが、これは明らかに仄聞でありまして、どうしてもこれは私どもはもう少し慎重に検討して、あくまで人道的な立場に立たなければならないというふうに考えられるわけでありますが、私どもの議員の調査につきまして政府として協力していただけますか。また、いろいろな便宜をお与え下さるようなお気持をお持ちになっていらっしゃいますか。なぜ私がこういうことをお尋ねするかというと、なかなか大村収容所調査問題というと厳重であって、議員が行っても調査できないらしい。それではやはり事の真相がわからず、いろいろな誤解を生んだり、無用な紛争を生んだりするのであって、やはり正々堂々と国会議員が調査に参るというような場合に、当局としても協力を惜しむべきではないと考えられるのでありますが、今回の私ども調査団に対して、できるだけの便宜と協力を与えていただきたいのでありますが、この点はいかがでございましょうか。
  64. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) 調査においでになるという具体的な計画についてはまだ承わっておりませんが、おいでになります場合はできるだけ御協力したいと思います。ただこの不法入国者があらゆる口実を設けて帰らぬという結果にならぬようにまた御協力願いたいと思う次第であります。
  65. 高田なほ子

    高田なほ子君 若干私どもの党に対しても御疑問があるような御答弁で、はなはだ遺憾に思うのですが、私ども北鮮に帰りたいという者を庇護するという、そういう態度をとっておらない。私どもはほんとうに中正な立場に立って、不幸にして三十八度線を境にして南北朝鮮に別れて一日も早くこの朝鮮が統一して同じアジア民族として手をつないでいきたい、こういうような立場に立っているもので、特に南、北というように分けて、北朝鮮を応援して日本に置こうというような考え方は持っておりません。正当な手続きと、そして国際法に示す本人意思が尊重されて、あくまでもアジアの平和の一環のために、われわれ社会党としてはがんばっていきたい、こういうような謙虚な気持を持っているのでありますから、ただいまの御答弁は若干私どもに対する誹謗のように受け取れますが、そういう誹謗は私どもはしていただきたくないので、十分私ども立場も了解していただきたい。こういう意味における調査団でありますから、ただいまのお言葉のように、十分に協力と便宜を与えられて、この調査の目的が果せるようにしていただきたいと思います。  最後に、外務省とそれから法務当局に心からお願いしたいことは、戦争というものはこんなようなところにも不幸な影を引いている。自分が帰りたいと思うところに帰ろうと思えば死刑というような手が待っている。拘束というような手が待っている。無理に帰せばこの人はどうなってしまうかわからない。これは非常に私どもとしてはだにアワを生ずるような悲しみをさえ覚える。戦争はこれは世界の人類の手によって避けていかなけりゃならない。南北朝鮮の、大村収容所の中に起っている小さな問題も、これも戦争の犠牲です。今度自分の意思に基かずして、正々堂々と帰り得ない心を痛めているアジアの同胞もこれも戦争犠牲者なんです。法務当局もそれから外務当局も、戦争の中に起った悲劇である、こういうような認識を持たれて、どうか国際法上に基く本人意思が尊重されて、危害のない安住の地に帰り得るように、いろいろと御事情はあるかもしれませんけれども、だんだんの私はお心配りというものが望まれてならない。われわれ日本人が、拿捕されているこの日本人漁夫が、一日も早く無事に送還されることを願うように、彼らの祖国もまた、自分の兄弟姉妹が一日も早く自分たちの手元に帰ることをどんなにか待ち望んでいるに違いない。どうか一つこういうような人道的な立場に立って、私が主張しているのだ、別に北鮮の側の宣伝に乗せられて私はここで質問しているというような気持はいささかもない。どうか一つ世界人類が兄弟姉妹である、戦争の犠牲はいろいろあろうけれども、みんな手でこれを償っていこう、こういうようなお気持に立たれまして、本問題が一日も早く処理せられ、なかんずく日本赤十字社神神というものが日本政府の手によってじゅうりんされないように、あらゆる努力をしていただきたいということを心からここにお願いをいたしまして、はなはだ私一人で質問が長くなりますので、私の意思に対して両当局から政府の御意思をいただいて、質問を終りたいと思う。
  66. 板垣修

    政府委員板垣修君) 御質問の御趣旨につきまして、私ども何ら疑いをはさんでおりません。私どもも全く同じ気持で、人道的な見地から赤十字社の原則を十分に守りながらこの問題を処理したいというふうに考えております。ただ問題は、先ほどから再三申し上げておりまするように、この問題だけを切り離して解決し得ないところに非常に私どもの悩みがあるわけでございまして、やはり全体を全般から見、あるいは少し極端な言葉で言いますれば、私どもとしては過去三年以上も長い辛酸をなめている日本人漁夫日本に引き取るということをまず第一の念願として仕事を進めておるわけであります。その関連からいたしまして、十分私どもの態度もまだはっきりときめ得ない、また、ここでもはっきり御答弁申し上げ得ないことをまことに遺憾に存ずる次第でございます。  なお、帰国者の収容の問題と関連はないのでございますが、先ほどからしばしば出ておりまする韓国に帰れば死刑が待つとか、あるいは迫害が待つとかという点につきまして、これは私どもはわかりません。しかし、韓国側の名誉のために一言つけ加えさしていただきますれば、私ども韓国側交渉の途中において、少くとも東京におりまする韓国の代表は、韓国不法入国者が帰ってきても、あるいは北鮮系の者がかりに帰ってきても、迫害するとか、死刑にするということはあり得ないということをしばしば言明しておりますので、この点だけは御参考に申し上げておきます。
  67. 伊関佑二郎

    政府委員伊関佑二郎君) ただいまの人道に立っての問題の処理ということにつきましては、おっしゃる通りでございまして、私たちもそのつもりでおります。ただ実際の行政に当ります際に、人道という名のもとにこれが悪用されるようなこともございますので、私どもが注意をいたしておるということでございます。
  68. 一松定吉

    ○一松定吉君 私は実はこの問題について、李ラインの問題と、今の朝鮮人送還の問題、こういうことに関しまして、外務大臣法務大臣お尋ねしたいという考えを持っておったのであります。幸い法務大臣が出席しておりましたから、法務大臣だけにでもその関係ある事項をお尋ねしようと思ったが、法務大臣は中途で御退席になりましたから、一つ近いうちに、外務大臣と、法務大臣、両大臣をお呼び出し賜わりまして、その席上で李ライン問題並びにこの問題に対する解決方法、一体、日本人漁夫向うに逮捕されて、犯罪があるなんていうようなことは、朝鮮が勝手に李ラインをこしらえて、そうして犯罪でもない、公海における漁獲に対して犯罪なんかというようなことで逮捕して、有罪の判決を受けて、そうして向うに抑留されているというようなものでありますから、こういう点について、外務大臣並びに法務大臣の両大臣をこの委員会にお呼び出し賜わりまして、そこで一つ大臣に質問したい、かように考えておりまするから、きょう私の質問は、その上においてお許しを願いたい。
  69. 青山正一

    委員長青山正一君) 承知いたしました。どなたか御発言の方おいでになりますか。——ほかに御発言もなければ、本件に関する本日の質疑はこの程度にとどめまして、次に移りたいと存じます。     —————————————
  70. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、昭和三十三年度裁判所関係予算同じく法務省関係予算議題といたします。  本件につきましては、去る十一月に概算要求の概要について説明を聴取いたしまして、その際、質疑、要望なりいろいろ出たわけでございますが、本日はまず、予定経費要求額の内容につきまして説明を伺いたいと存じます。速記とめて。   〔速記中止〕
  71. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をつけて。  それでは初めに法務省関係予算について、大澤経理部長から御説明願いたいと存じます。
  72. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 御命によりまして法務省所管の昭和三十三年度の予算予定経費要求説明を簡単に概略申し上げたいと存じます。  法務省が大蔵省に提出いたしました昭和三十三年度の歳出予算概算要求総額は三百六十五億二千四百八十三万円でございましたが、それに対しまして大蔵省の査定結果は二百四十六億一千二百七十五万一千円となりました。前年度の予算額と比較いたしますと十三億四千二百一万三千円の増額となっておるのでございます。なお、このほかに建設省所管に官庁営繕費といたしまして一億六千十九万六千円が計上せられております。増額の内容につきましての詳細は、お手元に差し上げてございます参考資料昭和三十三年度法務省所管予定経費要求説明資料を御参照願いたいと存ずる次第でございます。  増額の内訳を大別いたしまして申し上げますと、まず第一の人件費関係で十一億二百七十四万九千円の増、営繕費関係で一億八千三百十三万一千円の増ということになっております。それぞれ婦人補導院関係の人件費あるいはまた、婦人補導院関係の施設費を含んでおるのでございます。  これをこまかく御説明申し上げたいと存じますが、まず第一に、人件費の十一億円についてでございますが、これはただいま申し上げました婦人補導院関係の経費のほかは、昇給、昇格等に要する職員俸給等の自然増加額がその大部分でございます。法務省におきましては、三十三年度の概算要求で増員三千九百五名を要求したのでございますが……。
  73. 一松定吉

    ○一松定吉君 ページのどこだということを言う下さい。やはりあなたの説明にわれわれがついて見て行くことのできるように話していただきたい、何ページの何行でこうであるということを。
  74. 青山正一

    委員長青山正一君) 大澤さん、そういうふうにお願いいたします。
  75. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) はい。要求の結果、三千九百五名を要求いたしたのでございますが、婦人補導院開設に伴う……。
  76. 一松定吉

    ○一松定吉君 どこですか。何ページですか。どこの何ページかを、君、これで説明してくれたまえ、委員に配ってあるのだから。
  77. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) その人員の関係は第一ページの表の二段目の表でございます。このうちの人件費の増の説明になるわけでございます。昨年度との比較で、十一億二百四十七万九千円の増、この内訳として今御説明いたすわけでございます。が……。
  78. 一松定吉

    ○一松定吉君 この内訳の表はないのですか。
  79. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) この三千九百五名の要求は概算要求の数でございまして新しく増員を認められましたのは……。
  80. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  81. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をつけて。
  82. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 主要科目別比較表というのがございます。その三枚目の一番うしろ、その人件費の一番左の行でございますが、左の方の人件費、その四段目の婦人補導院の人件費、その合計の一千四百二十七万三千円、これが本年度新規に認められました人件費でございます。この人数は六十五名でございます。その内訳は定員が五十名、しかし、うち十名は、刑務所の既定人員より組みかえられまして、四十名が新規増になるわけでございます。
  83. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  84. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をつけて。
  85. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) ただいまの人員のこまかい点なんかも、後日資料でさっそくお届けいたしたいと思いますので、御了承願います。  この人件費でふえましたのが、ただいま申しました婦人補導院開設に伴う要員として六十五名、うち定員五十名、しかし、十名は刑務所の既定人員より組みかえられまして、その他の定員外職員——常勤職員二十五名ということで、この婦人補導院開設に伴う要員として新たに認められたわけでございます。そのほか、出入国審査事務の強化のための二十四名、それは常勤職員でございます。それの合計八十九名が本年度認められたにとどまった状況でございます。しかし、八十九名増員になりましたのでございますが、ただいま申し上げました通りに、定員五十名のうち十名は、刑務所から組みかえになりましたので、実人員は四十名ふえただけでございます。なお、常勤職員が、この婦人補導院関係で二十五名と、それから出入国審査事務強化のため二十四名、合計四十九名につきましては、これは定員外の常勤職員ということになります。これらの四十九名につきましては、前年度予算で川崎入国者収容所浜松分室の維持要員として計上されておったのでございます。  以上が本年度の人員増の御説明でございます。  このほかに、人件費につきましては、国会で問題となっておりました定員外職員の定員化につきましては、三十三年度におきまして、常勤職員の三十二年度末現在の千八百二十一名中、五百五名が定員に組み入れられたことになるわけでございます。これが人件費の定員の中に定員化されて入ってきたわけでございます。
  86. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 どうもこういう数字のことですから、耳からべらべら言われても、実際わからないので、やはり書いたものによっていただかないとわからない。ですから、もし、きょうどうしてもいかぬならば、あらためてそういう説明の概略をこういうものに書いて、この次にそれによって御説明を願いたいと思います。聞いてもわからない。
  87. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 私は原稿がございますので、それをお配りしてよろしゅうございましょうか。
  88. 青山正一

    委員長青山正一君) その方がむしろいい。
  89. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) あとでお届けしょうと思いましたが、ただいま取り寄せておりますので、それをお届けいたします。
  90. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  91. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。     —————————————
  92. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは、裁判所関係予算について、岸上経理局長から御説明願いたいと思います。
  93. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) お手元にお配りしてございます資料に基きまして、概略を申し上げます。  資料最初の方には文章で三枚ばかり書いてございますが、そのあと数字を表にしたものがございますので、この表にしたものに基いて申し上げた方が便宜かと思いますので、それに基いて御説明申し上げます。  お手元の資料の四枚目でございます。三十三年度歳出予算案という題目で、一覧表にしてございます。これに基いて申し上げますと、まず一番上の欄ですが、三十二年度予算額、前年度予算額は、右の欄ですが、計が百六億七千三百八十二万八千円、これに対しまして、三十三年度の当初の要求額は百九十五億六千五百十六万八千円、それに対しまして、政府原案になっております予算額は百十一億二千九百三万三千円ということでございまして、差引約四億五千五百万ほどの増ということになっております。  そこで、それのうちで事項的に申し上げますと、一番左の欄の営繕費関係でございますが、三十二年度は八億七百四十二万七千円でございましたが、三十三年度の予算額は、八億四百九十二万七千円ということで約二百五十万ほどの減額になっております。これは、裁判所庁舎の新営工事が大部分で、個所別の点につきましてはお手元の表のもう二枚あとの表に、一番最後の表でございますが、一覧表をつけております。これによりますと、三十三年度のただいま申し上げました営繕費の事項別の庁別は、継続工事の関係の分が二十一庁、それから新規工事関係の分が十四庁ということでございます。その二十一庁、十四庁の庁舎は、一番右の備考欄にあげております庁名でございます。それから、新営費が大部分でございますが、不動産購入費が、今申しました八億四百九十二万七千円のうちで、四百五十七万一千円というのが土地買収費、庁舎用敷地の買収費でございます。  それからその次の四枚目の表にお戻り願いまして、その右の欄の一審の充実強化関係の経費といたしまして三十三年度の予算額に計上されておりますのは、四千二百四十二万九千円、で、その内訳は、その下の備考に書いてございますが、その関係のおもなものは、まず判事補の増員が二十名、それから検証用等の自動車十台分、それから国選弁護人の報酬の単価の増額に関係する経費が二千百九十九万一千円、協議会、これは中央、地方の協議会の関係の旅費でございますが、これが三百五十七万八千円、その他というのは、その他のいろいろな庁費系統の金でございます。そういうふうなものがおもなものでございまして、なお、そのほかに、先ほど申しました営繕費のうちに金額は計上いたしておりますが、一審充実のための法廷増築費というものが約二千七百万円ばかり計上されておりまして、これは先ほど申しました営繕費のうちに金額は計上いたしております。なお、判事補の増員二十名の人件費は大体そこに書いておりますのは千二百五十九万四千円でございますが、これはこの表ではその二つ右の裁判所通常経費、人件費という中に一括して書いておるわけでございます。  なお、そのほかに、事務能率器具といたしまして、検証用の器具とか、検証用の写真機とか、あるいは録音機というようなものが若干認められまして、それが全部合せまして約五百九十四万九千円に相なるわけでございます。  それからその次が、その右の欄の裁判費でございます。裁判費は、前年度十四億三千八百万に対しまして今年度は十三億五千八百万、なお、ただいま申しました国選弁護人の報酬値上げの二千百万円というのがこの十三億五千八百万円に加わるわけでございますが、いずれにいたしましても、約五千七百万程度の減額になっております。その内訳は、その次の表を見ていただきますと、前年度との比較が書いてございます。その次の表の裁判費というところの備考欄に、前年度と三十三年度との比較を書いてございますが、これをごらんいただきますと、職員旅費と委員等旅費が減になっております。庁費及びその他の関係の経費は若干増になっております。この減は、主といたしまして委員等旅費の減に相なるわけでございますが、これは三十三年度の事件の見込み件数というものが三十二年度よりも若干下回るということに相なります結果、事件数を基礎にして計算いたしております委員等旅費関係が若干減った、こういうことでございます。しかし、これは私どもの方といたしましては、見込みはそうでありましても、実際もしも事件数がふえた場合、これはどうしても支出しなければならぬ経費でございますので、実績が実際にふえたという場合には、さらに内閣の予備金等から補充をしてもらうという予定でございまして、大蔵省当局もそれは了承しておる次第でございます。  それからまた四枚目の表にお戻り願いまして、その右の欄が裁判所通常経費とありますが、これは裁判所が普通に運営されるための一般の人件費、それから旅費、庁費等でございます。これは毎年大体事項的には同様のものが認められておりますので、一括して計上いたしましたが、この関係で金額的には人件費の増が一番多いのでございます。この人件費の増の理由は、先ほど申しました判事補の増員関係のほかに、御承知の年末、期末手当〇・一五分が予算上ことしから計上されておるということでございます。それから職員の昇給のための経費が大体平均いたしまして五%ばかり見込まれておるということからふえておるという関係でございまして、増員はただいま、先ほど申しました判事補二十名だけでございます。  それからさらに、その右の欄の最高裁判所機構改革と書いてあります。これは先ほど来国会で御審議をいただいております最高裁判所の機構改革に関連いたしまして、三十三年度は機構改革が、法案が成立した場合の建物の要求をいたしました。それに対しまして三億九千九百万という建物の新営を要求したのでございますが、この予算の二千三百万と申しますのは、ちょうど東京地方裁判所の営繕費が一部認められましていよいよ着工するのでございますが、その工事中、東京地方裁判所は一時ほかに移転する、移転いたしますと、現在地方裁判所の刑事部が使っておりますところが一部あくところが生じますので、そこに若干の補修をして、そうしてそこを使っていただくということで大体間に合うだろうということで、そのための補修費として入っておる経費でございます。  それから一番右の欄の調停協会補助金、これは例年五百万円入っておりまして、三十三年度も同額入っております。  以上合計いたしまして、先ほど申しました百十一億二千九百万円という金額に相なるのでございます。ただいまのは事項的に申し上げましたが、これを経費の種類別に前年度と比較するとどうなるかという表は、その次のページに比較、比率を書いてございます。これは経費別に見たものでございます。  一般的に申しますと、人件費は増額、旅費系統はわずか減額、庁費はわずか増額、裁判費が先ほど申しましたように減額になっておる。営繕費がごくわずか減額になっておるというふうなことが経費別に見まして言えるのじゃないかというふうに考えております。  非常に大ざっぱでございますが、さらに御質問等がございますれば、具体的に答弁をいたしたいと思います。
  94. 青山正一

    委員長青山正一君) 法務省からお願いをいたします。資料も皆さんの手元に渡っておりますので。
  95. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 続いて営繕費関係に移ります。
  96. 一松定吉

    ○一松定吉君 質問はいつするのですか。
  97. 青山正一

    委員長青山正一君) 時間があったら、きょういたしたいと思います。
  98. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) この説明要旨の第三ページから続いて申し上げます。  第二は、営繕費関係の増が一億八千万円、資料の一枚目の第二段目のワクの終りの方でございます。営繕費の増額が一億八千三百十三万一千円、ここにいわゆる施設費といたしましては、資料の六ページをごらん願いまして、六ページの一番下の欄でございますが、検察庁の庁舎等の新営を目的といたします法務官署施設費では、二千九百六十一万五千円の増額になっており、反面、資料の七ページの一番上の行の刑務所、少年院等の法務収容施設費におきまして二千六百五十四万三千円の減少ということになりますので、差引三百七万二千円の増額ということに相なるわけであります。しかしながら、この表にございませんが、建設省所管計上分の官庁営繕費では昨年度と比較しまして五百七万二千円の減額、これは資料の第一ページの最初のワクの官庁営繕費、これには五百七万二千円の減額となっておりますので、法務省所管の分と建設省所管の分を差引いたしますと、結果においては二百万円の減となるわけであります。しかしながら、また反面、補修費の方におきましては、これは資料の六ページの下から二行目でございます。ここにおきまして、今までの単価が坪当り二百四十三円というのが三百円に増額されましたので、それに坪数の増加等によります分を加えて九千四百八十八万一千円というものが補修費関係で増額になっております。また、不動産購入費、これは資料の七ページの二行目でございます。不動産購入費で千四百四十四万八千円という増額が認められましたために、営繕費総体といたしましては、先ほど申し上げました一億八千万余りの増額ということに相なるわけでございます。  このうちから婦人補導院関係の施設費を取り上げますと、これは資料の三ページの一番上でございます。それと主要科目別比較表の三ページ、この二つを御参照願いたいのでございますが、婦人補導院関係の施設費は、収容施設としましては一応東京、大阪、福岡にそれぞれ一庁、計三庁を新設あるいは既存建物に改修を加えまして開設するに当っての施設費として七千七十三万円が計上されております。これは資料の主要科目別比較表の第三ページ……。
  99. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  100. 青山正一

    委員長青山正一君) 速記を始めて。
  101. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 施設費として七千七十三万円が計上されております。  なお婦人補導院関係の官署費といたしましては、先ほど申し述べましたように七十五名の職員に対する人件費一千四百二十七万三千円を含みまして一千八百五十六万一千円が計上されております。また、収容費といたしましては年間平均一日当り収容人員を二百十名と見込みまして、その収容に伴って必要とする庁費被服費及び食糧費などで二千三百七十二万八千円が計上されております。以上が本年度の予算要求でおもなる増加額の内訳になっているわけでございます。  次に当初予算構成の大要を申し上げますと、人件費は百五十三億一千九百九十一万三千円でありますから、総予算額の六二%に当るわけであります。このほか、使途別に分類いたしますると、旅費が九億三千八百十八万七千円、物件費が三十三億一千四百六十九万九千円、補助金、委託費等一億八千五十九万三千円、営繕費が付帯事務費及び婦人補導院施設費を含めて十二億五百十九万七千円、そのほか刑務所等の収容者食糧費、原材料費等が三十四億九千三百九十六万六千円ということになっております。以上のように、法務省の予算は大体所管事務の性質上旧年度に引き続きまして恒常的な事務経費がほとんどすべてであると申し上げてもよいと存じますが、特に前年度と異なるものとして新たに増加を見ました事項のおもなものを次に列挙して御説明申し上げたいと思います。  第一は、売春防止法の一部改正及び婦人補導院法の施行に伴いまして、この種事犯の適正処理並びに売春婦に対する刑事処分、更生保護の措置等を有効適切に行うために身上調査を行う必要がありますので、その身上調査室の整備をはかりまして、全国的に計画的かつ統一的な対策方針を決定し、加えて更生保護相談室の設置により更生保護の措置を強化するとともに、補導処分に付せられた婦人を収容し、補導、更生するに必要な経費等といたしまして、職員旅費、庁費、検察費、保護司実費弁償金及び婦人補導院関係経費等総額一億二千四百六十八万三千円を計上いたしております。  第二に、昭和三十四年二月二十六日に任期が満了いたします衆議院議員の総選挙の公正を期するために厳正、適切な検察を行う必要がございますので、その所要経費といたしまして、本省刑事局及び検察庁を通じて検察費、並びに超過勤務手当、職員旅費、庁費等行政費で一千九百五十七万七千円を新たに計上いたしております。  第三に、法の複雑化、これに伴う訴訟技術の専門化によりまして、貧困のため法の保護を受けられない人々のために、民間の法律扶助事業を助成強化し貧困者の権利の保護をはかる目的から、これに要する経費といたしまして法律扶助補助金一千万円を新たに計上いたしました。  また青少年の犯罪の激増と悪質化に伴いましてその犯罪の原因を科学的に探究し、その合理的対策を講ずることによって犯罪を未然に防止する必要から調査委託謝金の増額をはかるほか、暴力事犯等の刑事手続遂行の過程において、危害を受けた証人、参考人またはこれらの家族に対しまして被害補償を行うことによりまして、暴力事犯に対する刑事手続の適正、円滑な運営をはかる必要から、証人等の被害についての給付に関する法律案の提出と相待ちまして証人等被害給付金百万円を新たに計上いたしております。なお、ついでに付言しておきますが、検察庁関係におきまして汚職関係事犯の処理に当りまして全国的統一処理方針を樹立して、あわせて関係機関との密接な連絡をとり、事犯の原因の究明、適切有効な処理方針等の協議を行うに必要な経費として百五十八万三千円が計上されております。  以上が昭和三十三年度予算において、新たに計上いたしました経費の概要でございます。次に使途経費別について増減の概要を御説明申し上げます。  第一は、まず人件費でございますが、これにつきましては前述いたしましたので、ここでは省略させていただきまして、事務費及び物件費について申し上げたいと存じます。  本年度は経営的経費に対しましては、統一的節減の方針がとられたのでございますが、事務量の増加により増額を認められたものも多少ございます。これらの増減のおもなものを御説明申し上げます。  まず第一には、旅費関係については総額一千四百九万五千円の減少となっておりますが、増減の内訳を申し上げますと、減少のおもなものは、赴任旅費三百六十九万四千円、検察旅費一千百六十一万三千円、護送旅費九百九十三万二千円等でありますが、これは本年度の予算編成方針が極力節約の政策がとられまして、旅費については、原則として五%の節減ということになりましたために、かような減少を来たしたのであります。これに対しまして増額を見たおもなものは、職員旅費、仮釈放審査旅費、登記登録旅費、その他等でありますが、職員旅費は法務局の戸籍現地指導旅費及び選挙関係の打合会の旅費の増額等であります。登記登録旅費、仮釈放審査旅費はいずれも事件の増加に伴いまして増額されました。その他は選挙経費の新規計上による増額等であります。  次に庁費関係でありますが、各日におきまして増減がありまして、結局、総体においては百七十三万一千円の増加となっております。その内訳は、図書購入費の百十三万八千円、通信専用料の二百九十六万二千円、行政特別庁費の八百九十六万四千円、補充経費系統の庁費七千六百五十八万七千円の減少となつていますが、これはただいま申しました旅費の削減と同じ節約という方針に基きまして五%ないし三%の節約によるものがこの減となったわけでございます。収容諸費あるいは収容者被服費、作業諸費等は収容人員減少に伴いまして計上減額されたものであります。これに対しまして増額を見ましたおもなものは庁費の七千九十六万三千円の増加、これは検察庁、刑務所、少年院、公安調査庁、等の人当庁費の単価の是正及び登記等事務量の増加に伴う増額と検察庁におきまする選挙経費並びに婦人補導院の初度設備費等の新規計上等によるものであります。  次に土地建物借料の六十四万六千円の増加、これは値上りによるものであります。  次に護送用船費の千九百七十七万三千円の増加、これは不法入国者送還に要するものとしてその回数の増加によって増額されたものであります。  次に諸謝金関係でありますが、諸謝金、被償費は四十六万五千円増額されておりますが、これは特別顧問に対する謝金の増額並びに選挙関係経費、婦人補導院関係経費が新規計上されたものであります。  次に食事費給与金でありますが、これは、従来更生保護委託費に計上されておりました経費が組みかえられたものであります。この経費は更生保護官署で一時保護等の対象者に直接支給する経費でございまして、事件実績によって計上されたものであります。  次に調査活動費の八千二百九十六万円の増加でありますが、治安関係等の調査活動費は一般に五%節減されたのでありますが、諸般の公安情勢を考慮されて増額を見たものであります。  次に委託費関係につきましては、三%の節約をやはり経費節約の面から見たのでありますが、ただ更生保護委託費は二千三百八十三万二千円の増額となっております。これは保護観察の対象者等を保護会等に委託する際の経費でありますが、従来前年度までは更生保護会補助金に計上されておりました事務費の一部が一日一件五十六円という形で委託費に組みかえられまして新規計上されましたことと、事件数の増加等によりまして増額されたものであります。  五は補助金でありますが、総額で七百九十六万七千円の減額となっておりますが、これは更生保護会補助金のうち、事務費の一部がただいま申し上げました委託費に組みかえられましたことによりまして千百三十六万七千円の減少となっておるのでございます。この補助金関係で新たに法律扶助協会補助金の一千万円が新規経費として増加を見ましたことは先ほど申し上げました通りであります。  六は営繕費でありますが、これは先ほど申し上げましたので、省略させていただきます。  七は収容者の食糧費でありますが、矯正関係施設の刑務所、少年院、少年鑑別所、の菜代一円の増額によりまして三千四百十万円の増額、並びに地方入国管理官署の収容施設の米価改訂に伴う値上りを見ましたので、しかしながら人員減少ということで、差引入管関係では四千四百二十三万円の減額となるわけでございます。  八に原材料費の九百二十七万八千円の減少は節約減によるものであります。  九は実費弁償金でありますが、保護司実費弁償金の三千五十二万一千円の増額は補導費の単価が昨年度より三十円増額されまして一件百六十円となりました結果と、売春関係で新たに計上されました分と合せたものであります。都道府県警察実費弁償金の七百二十五万四千円は実績数の減少によるものであります。  次に証人等被害給付金の百万円の新規計上は先ほど申し上げました通りでございますので、これも省略さしていただきます。  以上概略申し上げました増減が終結的に十三億四千二百一万三千円の増加と相なるわけでございます。  以上法務省所管の歳出予算について概略申し述べたのでございますが、終りに歳入予算について一言簡単に御説明申し上げたいと思います。  昭和三十三年度法務省主管歳入予算額は四十九億一千百四十一万八千円でございまして、前年度予算額四十一億九千八百七十六万五千円に比較いたしますと七億一千二百六十五万三千円の増額となっております。  この中には刑務所作業収入二十一億八千七百十九万四千円、物品売払収入、少年院製品売払代、不用物品売払代、二億四千八百二十二万二千円及び罰金等の懲罰及没収金二十二億六千七百八十九万四千円を含む雑収入及び政府資産整理収入が含まれておるのであります。いずれも過去の実収、実情等を基礎として算出されたものであります。  以上をもって法務省所管予定経費要求の大要を申し上げた次第でございま  す。
  102. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと今のところ伺いますが、八項目のところ「原材料費の九百二十七万八千円の減少は節約減によるもの」というのは、何の節約減によるのですか。どこから出てきますか。
  103. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) これは事務費等の節約を命ぜられました節約減でございます。
  104. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 節約、事務費の……。
  105. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 事務費、旅費の節約を一律に三%、五%と命ぜられまして、それによります減でございます。旅費等もすべて昨年度から五%くらい節約を命ぜられました。
  106. 青山正一

    委員長青山正一君) それではこれより御質疑のある方は御発言願います。
  107. 一松定吉

    ○一松定吉君 今のあなたの説明書の九ページの一番初めの、特別顧問に対する謝金というのは、特別顧問というのはどういうものですか、法務省にそんなものがあるのですか。
  108. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 昭和三十一年の法務省設置法によりまして、法務省に特別顧問がおります。
  109. 一松定吉

    ○一松定吉君 今現在あるの、どういう人です。
  110. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 現在、人をあげますと、前の東大教授の小野清一郎博士、それから前の最高裁裁判官の岩松先生、前の東大教授我妻榮先生、前検事総長佐藤藤佐、その四人が現在特別顧問として、法令の立て方その他についての諮問に応じていただいておるわけです。
  111. 一松定吉

    ○一松定吉君 それは何ですか、一カ月どのくらい俸酬をやっているのですか。人によって違いますか。
  112. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 一ヵ月本年度から十八日出ていただくことに予算を組みまして、一日三千円の手当ということになっております。非常勤です。
  113. 一松定吉

    ○一松定吉君 非常勤、十八日で五万四千円やるのですな。
  114. 青山正一

    委員長青山正一君) 念のために申し上げますが、大澤経理部長、荻野営繕課長、それから主計課長、それから最高裁は事務総長総務局長経理局長家庭局長人事局長、売春の問題もあろうと思いますので、厚生省の社会局長も来ておりますから、予算上の質問がおありになれば、どしどし御質問願いたいと思います。
  115. 大川光三

    大川光三君 裁判所関係の予算について伺いますが、所属の表の第一ページ、裁判所所管昭和三十三年度歳出予算案というこのうちで、例の第一審の充実強化の費用、これが当初要求額が四億二百六十八万九千円、それに対して認められたものが四千二百四十二万九千円、相当大きく第一審の充実強化の費用を要求されておって、これがわずかに四千二百四十数万になった。これはどういう点が省かれたことになるのですか。
  116. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) この要求額の内容は増員でございます。増員に要する経費が、約半分の二億一千万円ほどが増員の経費として要求した分でございます。増員は裁判官が百十六名、その他書記官等が三百二十六名、合計四百四十名ばかりの増員を要求いたしました。ところが、それに対しまして認められましたのは、先ほど申し上げました判事補二十名ということでございます。それからその他には庁費系統、法廷の器具とか、まあそういう庁費系統でございますが、たとえば自動車等は五十台分要求いたしたのでありますが、結局十台だけ認められたというふうなことで、結局項目的には少しずつ認められたのでございますが、金額は要求から相当幅があるということで、大体こういう数字になっておるのでございます。
  117. 藤原道子

    藤原道子君 今の数字を伺いたい、要求の人員。
  118. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) 要求の人員は、判事が五十九名、判事補五十七名、その他書記官、書記官補等合せまして三百二十六名、合計四百四十二名ということでございます。
  119. 藤原道子

    藤原道子君 それが幾人に……。
  120. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) 判事補二十名。
  121. 藤原道子

    藤原道子君 あと全部削られたのですか。
  122. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) ええ。
  123. 大川光三

    大川光三君 そこで大体第一審強化費用四億円の要求をいたしまして四千二百数十万円、大体一割程度しか認められないことになるのですが、この認められた予算の範囲内で、裁判所がかねて企図しておられます第一審の充実強化というものはある程度目的が達せられることになるのですか、全然お話にならぬのじゃないですか。
  124. 五鬼上堅磐

    最高裁判所長官代理者(五鬼上堅磐君) この第一審の強化というのは、昨年、一昨年あたりから裁判所でもだいぶ力を入れてやっているのでございますが、結局帰するところは設備の問題と人の問題、人員の問題、そこで大体理想のものとしては、先ほど経理局長説明したような人員を要するのですが、しかし、なかなか予算的には認められない。われわれとしては、まあたとえ二十名でも判事補が認められたら、これはやはり第一審強化の線に向って配置して、いろいろ努力していこう・こう考えるのでございますけれども、理想的にはなかなか相当遠いのじゃなかろうかと、かように思っております。
  125. 一松定吉

    ○一松定吉君 この今読んで説明していただいた六ページの三行目、調査委託謝金の増額と、こういうようなことで今までやっぱり調査委託という謝金を出しておったのか。
  126. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 人員その他の関係で学者等に、かような犯罪原因の科学的研究をお願いしまして、委託謝金を出したいというのがこの増額でございます。
  127. 一松定吉

    ○一松定吉君 どういうことを調査するんだね。
  128. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) 主計課長でございますが、かわって説明させていただきます。  これは青少年の犯罪の原因につきまして、すでにある程度明らかにされておりますが、両親がそろっているかとか、あるいは家庭の職業がどうであったとか、いろいろこういう原因が言われておるわけでございます。それにつきまして、最近アメリカでグルックという博士が新たな観点から少年犯罪の原因につきまして調査を開始いたしまして、その的中率がほぼ八六%であるという結果が出ておるのでございます。それは非常にわが国の最近の少年犯罪の原因探究に参考になるのでございますが、アメリカの社会事情とわが国の社会事情が異なりますので、わが国の社会事情にマッチした方法を取り入れて、ぜひこのグルック博士が築き上げたよい結果をわが国にも取り入れたいというような研究をする、その調査の委託謝費とか、あるいは最近のいわゆる不良文化財のはんらんと犯罪の原因の関係、あるいは最近の犯罪の都市集中化というものがきわめて顕著になっておりますが、その現象を社会学的に、あるいは刑事学的に研究をする、こういう主要な研究科目を約四科目ばかり選択いたしましてそれぞれわが国のその道の専門の学者にこの調査を委託して、その結果に対して出す謝金、こういう趣旨でございます。
  129. 一松定吉

    ○一松定吉君 今までこういうのをやっておったのかね。
  130. 勝尾鐐三

    説明員(勝尾鐐三君) この青少年犯罪につきましては大へん遺憾に思いますが、今回が初めてでございますが、そのほかの、たとえば一松先生非常御造詣の深い上告制度の改正の問題など、これは法務省調査課が所管でやっておりますが、そういう問題につきましてもやはり学者に各国の法制の研究を依頼をして謝金を出すのと同じ性質の予算費目でございます。
  131. 一松定吉

    ○一松定吉君 よくわかりましたが、そうすると、その先の「暴力事犯に対する刑事手続の適正、円滑な運営をはかる必要から、証人等の被害についての給付に関する法律案の提出と相待って証人等被害給付金百万円を新たに計上いたしております。」これはよくわかるが、これは何か被害者に対して、どういうような被害に対して幾らやるとかいうような何か法律とか、規定とか、内規とかいうものをこしらえて、その被害を助けるような方法をとるのかね、法律もなくてこれはやるのかね。
  132. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 法律を提出する予定で、そうしてその内容の詳細は政令で定めたいという予定でございます。
  133. 一松定吉

    ○一松定吉君 それからいま一つ、これはちょうど五ページのおしまいから三行目に衆議院選挙のために一千九百五十七万七千円を計上して、これだけで済むかね、選挙違反のところの。
  134. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) これは大体過去の選挙の取締り経費の実績から出ている金額でございますが……。
  135. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは参議院の方もあるのか。今のは、これは衆議院だけだね。
  136. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) これは参議院の方は含んでおりません。なお、三十四年三月までの経費を計上しておりますので、約三分の一でございます。
  137. 一松定吉

    ○一松定吉君 参議院は来年度にやるのですか。
  138. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) はあ。
  139. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 さっきの一松委員の質問の調査委託謝金ということから少し関連すると思いますけれども、公安調査庁で秘密調査のあれは謝金ですか。何か機密費というのですか、それをことし計上されておりますか、公安調査庁。
  140. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 調査活動費というので計上されておるのでございます。
  141. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それは機密費ですね。
  142. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 機密費というわけでもございませんが……。
  143. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それはどのくらい計上されておりますか。
  144. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 四億二十万。
  145. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 四億……。そうすると、昨年五億ぐらいでしたね。少し下っている。
  146. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 昨年は三億一千六百万です。
  147. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ことしは上りましたね。
  148. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) はあ、増額になりました。
  149. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 最高裁判所のことでちょっとお伺いしたいのでございますが、あなたの方の書類の最後から二番目のページを見ますと、研修旅費というのが少し上っておりますね。これは研修生がふえるという意味合いでございますか。それともどういうことでございましょう。
  150. 岸上康夫

    最高裁判所長官代理者(岸上康夫君) この増額はもっぱら研修生の日額制と申しますか、一日の日当でございますね。日当の単価の値上りがある程度認められました結果、総額においてふえておるのでございまして、研修員は前年と相違はございません。
  151. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 家庭裁判所の調査官の研修生はことしは少し減ることになっておりましょう、五人くらいか。
  152. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 大体昨年度、つまり三十二年度と同じようにやっておりますので、ほとんど減ることはないと思いますが……。
  153. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ありませんか。それから重ねて伺います。調査官研修所の建物はどうなりましたか。これは五鬼上さんに伺いたい。
  154. 五鬼上堅磐

    最高裁判所長官代理者(五鬼上堅磐君) 予算上は認められてないので、やはり今の所でやっていくよりやむを得ないと思っております。
  155. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 少しも認められませんか。
  156. 五鬼上堅磐

    最高裁判所長官代理者(五鬼上堅磐君) 新しくは認められなかったのであります。
  157. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それから調査官の外国留学の人数はどうなりましたか。少しはふえましたか。
  158. 五鬼上堅磐

    最高裁判所長官代理者(五鬼上堅磐君) この点も全然認められなかったのであります。
  159. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 認められない。わかりました。
  160. 青山正一

    委員長青山正一君) この機会に、厚生省の社会局長がおいでになっておりますからして、ごく簡単に、売春に関するこの予算の説明も当委員会関係ありますからして、一つ簡単に御説明願いたいと思います。
  161. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 厚生省の社会局長でございますが、三十三年度の厚生省関係の売春対策関係予算につきまして御説明申します。  資料は二枚つづりの縦書きになったものでございますが、総額は前年度が三億二百万五千円で、今回の要求額が二億三千三百三十一万八千円でございます。内訳を申しますと、第一が婦人相談所職員設置費補助でありまして、一これは前年度の予算額三千二百五十二万六千円に対しまして、要求額が五千二百三十七万七千円にふえております。これは、全国四十六カ所に婦人相談所を設置してございまして、その職員三百四十四名の費用の二分の一補助でございます。ふえましたのは、昨年は新設三十八カ所でございましたので、人件費が予算上半カ年分だけ計上してございまして、明年度はそれが一年分になったためでございます。  第二の婦人相談員設置費補助、これは全国に四百六十八名の婦人相談員を置いておるわけでございますが、その二分の一の補助金額でございまして前年度と全く同額でございます。  それから、第三は婦人相談事業費補助、これは、要保護女子の相談に応ずるために、売春対策啓蒙指導でありますとか、訪問調査調査記録の整備、身元照会、移送費の支給並びに売春対策を総合的に推進するための売春対策本部を設置するために必要な経費でありますが、これは昨年に比べましてここに書いてありますように、約三百万円ばかりの増額になっております。これは、主として相談員などの訪問調査旅費の増額でございます。  それから、第四の婦人更生資金の貸付補助、これは要保護女子の更生をはかりますために、必要に応じまして、予算の単価といたしましては二万三千円になっておりますが、その二千人分の三分の二の補助額でございます。これは前年度予算がゼロになっておりますが、三十二年度におきましては、千六百万円ばかり他の費用を流用いたしまして支出をするようになっております。  それから、第五の被服等支給費補助、これが三百二十万円でございますが、これは要保護女子のうちの被服等に困っておる者に必要な被服を支給するという経費でございますが、最高三千円といたしまして、予算単価といたしましては一人二千円の二千人分、これは十分の八補助になっております。  第六が都道府県売春対策推進委員設置費補助であります。これは、都道府県に、婦女の保護更生でありますとか、業者の転廃業を推進するために、民間の方に推進委員をお願いいたしまして、これを県に置いておるわけでありますが、その額が四百七十二万一千円、これは二分の一補助になっております。  それから、第七番目が婦人相談所一時収容保護費補助、これは、先ほど申−しました婦人相談所が全国の各都道府県に一カ所ずつできておるわけでありますけれども、そこに一時収容いたしました場合の費用といたしまして計上したものでございます。前年度よりふえましたのは、昨年は新しく三十八カ所を設けましたために、半年分計上してあったのが、本年は全額という違いでございます。  それから、第八の婦人保護施設の設置費補助、これは前年度予算額が一億七千六百九万八千円に対しまして、要求額が二千百八十三万八千円と、非常に減っておるのでございますが、これは三十二年度で三十九カ所の婦人保護施設を設置する予算を計上いたしまして、それが大体年度内に設置が完了いたしますので、それでも足りないものを補うという趣旨で、十二カ所ばかり、八大都道府県、それから東京、大阪等に、十二カ所の婦人保護施設を作る。そのうちの大蔵省の査定は、二カ所を新しく作り、あとの十カ所は既存の建物を補修するという建前の予算が入っておるわけであります。  第九の婦人保護施設運営費補助、これは婦人保護施設に収容保護いたしました女子のいろいろ食事その他の訓練等の費用でございまして、前年度より今年度ふえておりますのは、三十二年度におきましては、途中から設けられるものがありましたために、その費用が減っておるわけでありますが、明年度はそれが一年間の費用が組んであるということで、かようにふえておるわけであります。  以上が大体厚生省関係の婦人保護施設関係の御説明であります。
  162. 一松定吉

    ○一松定吉君 これは、売春対策関係の予算総額は幾らですか。これは寄せてみればわかるけれども、お手元にわかっておるのなら……。
  163. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 一番最後に書いてあります要求額計が、二億三千三百三十一万八千円であります。
  164. 一松定吉

    ○一松定吉君 そこで、これはことごとく補助ということになっておるが、何人がこれを決定するのですか。
  165. 安田巌

    政府委員(安田巌君) これは、先ほどから申しましたように、府県が仕事の主体になっておりますから、そこで厚生省の方からこの補助金を出しまして、府県が二分の一であります場合は半分を持つ、こういう予算でございます。
  166. 一松定吉

    ○一松定吉君 府県というと、府県の知事ですか。
  167. 安田巌

    政府委員(安田巌君) さようでございます。
  168. 一松定吉

    ○一松定吉君 府県の知事が、この厚生省から割り当てられた金額に対して、幾ら補助するということの金額を決定すると、こういうわけだね。
  169. 安田巌

    政府委員(安田巌君) さようでございます。
  170. 一松定吉

    ○一松定吉君 その決定が不公平だというような場合があり得るですね。そういう場合には、それをどういうふうに是正しますか。
  171. 安田巌

    政府委員(安田巌君) まあその不公平だという意味でございますけれども、府県がたくさんこういったような費用がほしいということで、それに対しまして厚生省でいろいろ配分をいたします場合に、必ずしも府県の意向に沿い得なかったと、こういった場合のことをおっしゃるわけかと思いますが、ところが、これまでたびたび申したのでありますが、婦人保護施設などは、むしろこちらがいろいろ頼んで作ってもらうよ……。な格好になっておりますので、今のところはそういうようなことはないわけであります。本年度の、つまり三十二年度の予算につきましても、まだ保護施設等につきましては、二カ所ばかり作るということをはっきり言わない府県もあるような事情でございます。
  172. 一松定吉

    ○一松定吉君 要するに、そうすると、府県に割り当てるのは大臣の決裁に待つわけだね。
  173. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 割り当てると申しますが、府県の方に、こういう趣旨で予算を計上していただきたいということで、私どもの方からいろいろ事情を話しまして、府県の方から申請をしてきましたものに対しまして、こちらから出すと、こういう一般の補助と同じような建前になっておるわけであります。
  174. 一松定吉

    ○一松定吉君 しかしながら、総計額がきまっておるのだから、府県から要求したのが過大な要求とかいうような場合には、それを判定しなければならぬのだから、それを聞くのです。
  175. 安田巌

    政府委員(安田巌君) そういうおそれのありますのは、新しく建てますところの婦人保護施設の設置費くらいでありまして、それと婦人更生資金でありますとか、被服等の支給費でありまして、あとは大体きまっておりますので、人数なり個所によりまして機械的に分けていけばいいわけであります。
  176. 一松定吉

    ○一松定吉君 結局、大臣が決裁するということになるのでしょう。
  177. 安田巌

    政府委員(安田巌君) さようでございます。
  178. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 ちょっと伺いますが、今の一松さんの質問の中にもございましたが、婦人更生資金の貸付補助でございますね、これは来年度分から始まるわけなのでございますね。
  179. 安田巌

    政府委員(安田巌君) この予算にありますのは三千百二十万円でございます、から四千五百万円ばかりのものが府県で貸付の金額になるわけでございます。これが三十三年度、ところが三十二年度におきましても、こういうふうな費用が非常に必要であるということで、そこで婦人相談所の一時収容の保護費でございますとか、あるいは婦人保護施設の収容の費用でありますとかいうものが、御承知のように設置がおくれましたために、余りましたものですから、そちらの方を多少回しまして、本年におきましても大体補助金の額にいたしまして千六百万円ばかりをそちらの方へ出してあるわけでございます。
  180. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それを伺いたかったのです。それでそれを貸し付けると、一口やはり五万円ぐらいでございますか。
  181. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 一口五万円というのが最高でございます。たとえば更生資金として新しく店舗とかいう場合には五万円でございますし、技能修得の場合にはもっと少くて済みますので、そういうのを平均いたしまして、予算の単価としては二万三千円が組んでございます、一件当り。
  182. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その貸付の基準になるものは何ですか。そうしてだれがそれを定めるのですか。
  183. 安田巌

    政府委員(安田巌君) これは主として婦人相談所で相談を受けました者でありますとか、それから保護施設へ入っておりまして、保護施設から更生して出ていく場合の助けになるとかいうことを考えておりますので、大体におきまして婦人相談所長にそういうことを一つ判断してもらう。ほんとうに金がむだにならないように、この人ならばお金を貸しても、りっぱにこういう仕事をやっていくだろうというような更生計画等を見まして、本人の性格なりその後の状況なんかを照し合せてやる、こういう仕組みでございます。
  184. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 その貸付にちゃんと厚生省は内規を作っていらっしゃいますか。
  185. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 作っております。
  186. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 それじゃまた次の機会に一つ見せていただきたい。  そうして私が最も伺いたいのは、その貸付をしました婦人たちが、やってみると結果はよかったでしょうか、悪かったでしょうか。
  187. 安田巌

    政府委員(安田巌君) これはまだほんとうに十二月ごろか一月に入ってからでございますので、そこまでの結果は出ていないわけでございます。これからむしろ府県が貸し付けるということになるかもしれません。
  188. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 わかりました。
  189. 藤原道子

    藤原道子君 簡単なんですが、要求額に出ているのはこれは決定額ですか。
  190. 安田巌

    政府委員(安田巌君) さようでございます。
  191. 藤原道子

    藤原道子君 要求額は幾らだったのですか、要求は。
  192. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 大蔵省に要求いたしましたのは五億五千万円ばかりでございます。
  193. 藤原道子

    藤原道子君 それからちょっとお伺いしたいのですが、いまだにこちらの要請に応じないで、作ってくれない県はどことどこですか。
  194. 安田巌

    政府委員(安田巌君) だんだん減りまして、けさも実は和歌山県で作るからと言って参りましたので、あと二つになりました。栃木県と島根県が婦人の保護施設をまだ作るということをはっきりいたしておりません。
  195. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっとお伺いしたいのですが、きのうも二、三の相談所を見てきたのですけれども、食費に一体幾らぐらい出すのですか。
  196. 安田巌

    政府委員(安田巌君) これは地域差がございまして、一級、二級、三級と分れておりますが、一級地が九十円、二級地が八十二円、三級地が七十四円。
  197. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと関連して私から御質問を申し上げたいと思いますが、これは法務省の方の御関係も同様だろうと思いますが、安田さんにお伺いしたいのですが、この売春に関する予算というものは非常に少いわけなんですが、何か将来足らない場合には予備費から出し得るというような道を講じられておるのですか、どうですか。その点について承わりたいと思  います。
  198. 安田巌

    政府委員(安田巌君) もちろんそういう場合になりましたならば今、委員長のおっしゃったようなことも起るかと思いますが、実は三十二年度の予算が実際やってみまして、先ほどから申し上げるような事情で、それほど要らなかったのだ、勢いそういったようなことが来年度の予算の査定にも影響いたしたというようなわけであります。今の状況でございますと、当初は一億七千万円ぐらいの査定でございましたのが、その後いろいろやかましく言われて六千数百万円ふえましたので、まあ大体これでやっていけるのじゃないかというような、私どもこれは事務的な見通しを持っておるわけでございます。
  199. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 法務省所管の収容費、並びに検察費につきましては、事件数が多いので、予備費の要求ができることになっております。
  200. 青山正一

    委員長青山正一君) 藤原さん、何か御質問ありますか。
  201. 藤原道子

    藤原道子君 私今のお考えは甘いと思います。何といいますか、昨年はまだ時期がこなかったので、一部に法案の施行期日を延ばそうという動きもあった、ですから業者というものは転向をなるべくしない方針をとっていた。これがやるという決意が見えたので、あわてて、今急いで更生をいたしております。そのためにまあ何とか去年余ったからやれるだろうというようなことは少し甘いと思います。最近の情報によりますと、やられるなと思って転業してばかをみた、これは施行期日は延ばさないということにはなったけれども、この予算では転業資金をもらえないかわりに取締りを緩和して、暗黙のうちにわれわれにゆるやかにしてくれるのだというような風説というか、業者はそういう心組みに変りつつあるわけです。ということを見ますと、この予算で私は検察庁なり法務省なり果してやれるかどうか。従って今、委員長の御質問のように、必要な場合にはほかの費用でやれるという言明ですから、まあまあですけれども、私は安田さんなかなか容易なものではない。業者は何とかして生き抜こうとしている。従って、取締り等の経費からいけばもぐっても大丈夫だというので、転業の方針まで変えつつあるやの私どもには情報が入っております。そういうことに対してあまり甘いお考えでは、法律はあってなきがごときことになると思います。よほどしっかりやっていただかなければならないと思います。
  202. 一松定吉

    ○一松定吉君 補助の問題もございますが、補助することは法律できめなければいかぬと思います。その法律はいつ出すのだ。
  203. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 売春防止法の中にきめてございます。
  204. 一松定吉

    ○一松定吉君 補助することができるとあるのですね。
  205. 安田巌

    政府委員(安田巌君) 売春防止法の中に、この設置に要しますところの施設の費用でありますとか、それの経常費と補助の割合等が書いてあります。
  206. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 私、法務省の今度の補導員のことにつきましていろいろ質問しなければなりませんが、長くなりますので、この次に一つやりたいと思います。
  207. 藤原道子

    藤原道子君 ちょっとお願いがあるのです。これは刑務所に受刑しております人たちの、知能指数というのですか、知能指数七五以下と計算いたしまして、精薄といわれる七五以下の知能指数の者がどのくらいのパーセンテージにあるかということの資料一つ出してほしい。
  208. 青山正一

    委員長青山正一君) 経理部長一つお願いします、その資料を。
  209. 藤原道子

    藤原道子君 婦人刑務所と一般の刑務所をなべて受刑者の知能指数に関する一つ参考資料を出していただきたい。
  210. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 少年院を含めましてですか。
  211. 藤原道子

    藤原道子君 それを事項別に、少年院はどのくらい、一般刑務所がどのくらい……。
  212. 大澤一郎

    政府委員(大澤一郎君) 平均知能指数の……。
  213. 藤原道子

    藤原道子君 何%というのがどのくらい、七五以下を今、精薄と呼んでおります。従って精薄がどのくらいのパーセンテージを占めているかを知りたい。  私もいろいろ質問がございますが、次回に譲ります。
  214. 青山正一

    委員長青山正一君) 御質疑も多々あろうと存じますが、予算関係の本日の調査はこの程度にとどめまして、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十一分散会      —————・—————