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1958-03-13 第28回国会 参議院 法務・商工委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十三日(木曜日)    午後二時四分開会     —————————————  委員氏名   法務委員    委員長     青山 正一君    理事      大川 光三君    理事      一松 定吉君    理事      棚橋 小虎君    理事      宮城タマヨ君            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            井上 知治君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            松野 鶴平君            最上 英子君            吉野 信次君            赤松 常子君            亀田 得治君            藤原 道子君            山口 重彦君            後藤 文夫君            辻  武壽君   商工委員    委員長     近藤 信一君    理事      青柳 秀夫君    理事      古池 信三君    理事      阿部 竹松君    理事      相馬 助治君            大谷 贇雄君            小沢久太郎君            小幡 治和君            小滝  彬君            小西 英雄君            西川彌平治君            高橋進太郎君            高橋  衛君            海野 三朗君            岡  三郎君            島   清君            椿  繁夫君            加藤 正人君            豊田 雅孝君            大竹平八郎君     —————————————  出席者は左の通り。   法務委員    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            亀田 得治君            藤原 道子君            辻  武壽君   商工委員    委員長     近藤 信一君    理事            青柳 秀夫君            古池 信三君            相馬 助治君    委員            小滝  彬君            小西 英雄君            高橋進太郎君            高橋  衛君            加藤 正人君            大竹平八郎君   国務大臣    法 務 大 臣 唐澤 俊樹君   政府委員    法務省民事局長    心得      平賀 健太君    通商産業政務次    官       白浜 仁吉君    通商産業省企業    局長      松尾 金藏君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君    常任委員会専門    員       小田橋貞壽君   説明員    法務省民事局第    三課長     香川 保一君    大蔵省理財局経    済課長     庭山慶一郎君    通商産業省企業    局企業第一課長 川出 千速君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○企業担保法案内閣提出)     —————————————   〔法務委員長青山正一委員長席に着く〕
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいまから、法務商工委員会連合審査会を開会いたします。  私が委員長の職務を行います。  これより、企業担保法案につきまして質疑を行います。  質疑商工委員の方を優先して行うことにいたしたいと存じますので、この点御了承願いたいと存じます。  それでは御質疑の方は、順次御発言願います。  なお、政府から白浜通産省政務次官法務省から平賀民事局長、同じく香川第三課長通産省から川出企業局企業第一課長大蔵省から庭山理財局経済課長、こういった方々が見えておりますから、申し添えておきます。  まず、その前に、平賀民事局長から、本法案概要について、一つ商工委員方々もお見えになっておりますから、簡単に御説明願いたいと存じます。
  3. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) それでは、企業担保法案提案趣旨を簡単に御説明申し上げます。  株式会社がその営業資金を調達するために社債発行する場合には、確実な担保を必要とすることは言うまでもないのでありますが、この担保としては、現在工場財団その他の各種財団抵当を利用しているわけであります。  しかし、この財団抵当制度は、会社企業を構成する特定財産を集合して財団を設け、その上に抵当権を設定するものでありますが、現在の企業におきましては、その企業施設財団を設け、さらに設備の頻繁な改廃、変動に伴いまして、この財団組成物件について変更手続をするということは、きわめて煩雑であるばかりでなく、多くの時間と費用を要し、かなりの不便を来たしている実情にあるのであります。  そこでこの法律案は、このような不便を除くために、株式会社の総財産をその変動するままの状態において、社債担保に供する簡素で、かつ、合理的な新しい担保制度を創設して、株式会社営業資金の調達を円滑ならしめようというのがこの法案のねらいであります。  この法律案要点を申し上げますと、第一、株式会社の総財産は、その会社発行する社債担保するため、企業担保権目的とすることができる。これが第一であります。  第二は、企業担保権得喪変更は、その登記をすることによって効力を生ずるものとされておるが、その手続を簡素化しますために、会社本店所在地登記所において株式会社登記簿登記をすればよいとされているのであります。  第三は、企業担保権は、会社企業の運営に伴って常時変動するその時々の状態における会社の総財産効力が及ぶものとされていて、また、その関係先取特権質権及び抵当権よりは常に後順位とされているのであります。  第四として、企業担保権が実行されたときは、差し押えによって会社の総財産が固定して、この総財産管財人一括競売または随意契約によって、売却するものとされているのであります。  第五は、会社の総財産換価代金は、企業担保権者及びこれに優先する債権者にまず配当して、その残余を無担保債権者に配当することになっているのであります。  以上がこの法律案要点であります。  なお、この法律案におきましては、国際復興開発銀行からの借款等特殊性にかんがみまして、日本開発銀行の特殊の貸付金につきましては、例外的に、会社はその総財産企業担保権を設定することができるものとし、それから、なお担保附社債信託法その他の関係法律に所要の改正附則において加えることといたしております。  以上がこの法律案提案趣旨並びに概要でございます。
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) それでは質疑に移りたいと存じます。
  5. 近藤信一

    近藤信一君 ただいま議題となりました企業担保法案について、最初に二、三の御質問を申し上げたいと存じます。  まず、この法案が出て参ったいきさつでございますが、私ども商工委員会といたしましては、過去に幾たび日本製鉄株式会社法廃止法の一部を改正する法律案という変な法案を審議したことがあるのであります。廃止法の一部を改正するというのは、はなはだおかしいことでございますが、この廃止法は、主文はただ日鉄法を廃止するというだけであるけれども、これには、附則が九項もついておるのでございます。その附則の中には、日鉄解体によってできた八幡製鉄富士製鉄、これらについては、日鉄法が廃止されても、なお日鉄時代と同じように、社債権者及び開発銀行が両会社に対する債権について、日鉄法廃止法施行後八年及び九年以内は、両会社財産につき、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有しております。こういう規定があるのでございますが、この八年及び九年以内というのが、最初は短かかったのでございます。何回かの改正で、これが積り積りまして八年及び九年ということになりました。この八年及び九年が、今年の八月五日に期限が切れることになっているのでありまして、そこで、この八月五日の来ないうちに、いま一度この日鉄法廃止法というものを改正するか、また、あるいは他の法律の制定によりまして、そうして今回のこの企業担保法案が出てきたと、こういうふうに承わっておるのでありますが、この担保法案につきましては、商工委員会連合審査を行おうとするのも、この法案が、企業にとって、また、わが国経済にとって、非常に重大な関係を持つものでありますから、かかる点から、私ども質問をいたすのでございます。また、他の一般理由といたしましては、かねて幾たびか審議をしたことのございまする、この日鉄法廃止法との関係があったからでございまして、そこで承わりたいのは、この法案は、右のように解釈して、廃止法附則に加わるべきものであるかどうか、この法案が成立すれば、日鉄法名実ともに廃止されることになるのかどうか、そうして、その社債につきましては、この法案全体が役に立ち、開銀融資につきましても、この法案附則第三項の効力を持つもので、八幡富士の両製鉄会社に対しまして、今まで通り取扱いができるようにしたと思うのでございまするが、それとも、何かこれと違った取扱いになるのかどうか、この点についてまずお伺いいたします。
  6. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) お答えを申し上げます。この企業担保法案と、日本製鉄後身であります今日の富士八幡株式会社との関係でございますが、この法案は、直接これと関係を持っておるわけではございませんけれども、この法案が成立いたしますれば、今お話のありましたような効力を持つことに相なるのでございます。今お言葉のうちにありましたように、日本製鉄後身である八幡富士の両株式会社につきましては、昭和三十三年八月五日、今御指摘のこの期限までに両社が発行いたしまする社債、それからまた、この会社に対して日本開発銀行が融通いたしまする貸付金につきましては、法律規定、当然の結果といたしまして、この会社財産に対して先取特権が発生することに相なっております。そうしてそれは、昭和三十四年、来年の八月四日まで効力がある。こういうことになっておりますが、昭和三十三年の八月五日以後に発行いたしまする社債や、それから日本開発銀行からの融資等につきましては、この規定が及ばなくなるのでございます。そこで一方、この先取特権にかわるものといたしますれば、たとえば、富士八幡にいたしまして、ある担保を作ろうといたしますれば、現行法工場財団抵当制度によるほか道はないのでございます。ところが、この企業担保法案が幸いにして成立いたしますれば、この規定によりまして、これは富士八幡には限りませんが、すべての会社がこの企業担保法案の効果といたしまして、その財産担保にかける、そして工場財団抵当制度に比べますると、その手数の点におきましても、また、費用の点におきましても非常な便益を受ける、こういうことに相なるようになっております。なお、詳細なことは政府委員からお答え申し上げます。
  7. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま法務大臣から御説明通りでございますが、なお、敷衍して申し上げますと、結局、先ほど御質問通りの結果になるわけでございまして、企業担保法案附則の第二項でもちまして、開発銀行の特殊の貸付金富士八幡製鉄株式会社に対する貸付金もそれに含まれるわけでございますが、この法律案附則の第二項の規定でもって、開銀貸付金については、企業担保権を設定できるということになります関係で、実質的には日鉄法廃止法附則のあのゼネモ、一般担保権にかわる作用を営むわけでございます。でありますから、日鉄法廃止法附則規定によりますところのあの先取特権が、法律規定通り、来年八月四日限り失効いたしましても、それまでの間にこの企業担保権に乗り移る手続がされますならば、あとの心配はないと、そういうことになるわけでございます。
  8. 近藤信一

    近藤信一君 それでは次に、この法案提案の御趣旨を拝見しますると、会社がその資金を調達するためには、社債発行する、こういう場合がある。担保を供しなければならないが、その担保を、あるがままに会社全体の——法案では、一体としての会社の総財産という形で全部を担保にすることにするというのでありますが、そうしますると、この担保の形というものは、今までの担保制度から見ますると、よほど目新しい制度だと思うのであります。ことに、その総財産というものは、担保に供されながらも中身はない。幾ら変ってもかまわない。こういうのですから、今までの物上担保制度が、はっきりした財産を押えて、これを担保に取ってあるから万一貸付金が返されないようなときも大丈夫であると安心しているのに比べますると、かなり不安定だと思われるのであります。しかるに、この企業担保がかえって簡素で合理的だと申されるのですが、他の担保制度に比較して、適切、合理的だとおっしゃる根拠はどこに一体あるのか、まず、これを伺いたいのであります。
  9. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) お答えを申し上げます。  この企業担保制度が、従来の財団抵当制度から見ますると合理的であるとわれわれが考えておりまする二、三の点を申し上げてみまするならば、今日の財団抵当制度は、御承知のように、その適用を受ける企業限定をされております。これは制度の性質上いろいろな理由がございますが、ある企業でないと法律適用されないことになっておりますから、この限定外企業は今日の財団抵当制度の恩恵に浴することができません。従いまして、一々の財産について、あるいは質権なりあるいは抵当権なりを設定する、こういうような固まった財団財団として経済的な価値があるのに、その制度適用を受けないために一々の財団についての抵当権を設定するという実際に合わないような結果になるのでございます。それからこの財団抵当制度適用を受ける企業におきましても、その財団を組成いたしておりまする物件範囲限定されておりまするから、その実質上はその財団に属している財産でありましても、その制限以外の財産はその財団のうちに加えられておりませんから、一括してその抵当の根底となります財産のうちに加えられないことになるのでございます。ことに以上申し上げたこと以外におきまして、手続並びに費用の点を比較いたしますると、財団抵当制度から見ますると、この企業担保法案におけるその手続並びに費用は非常に簡素化されておりまするから、この点で非常に節約ができるわけでございます。  ごくあらましを申し上げますると以上のことでありまして、なお、詳細は政府委員お答え申し上げさせます。
  10. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この企業担保制度合理性はただいま大臣から御説明通りでございまして、まず、財団抵当制度特定企業だけしか利用できないということでございますが、例をあげますと、株式会社でありますところの百貨店などは財団抵当制度の利用ができないわけでございます。ところが、企業担保権でありますと、百貨店などがその営業施設在庫商品、そういうものが財産の主たる内容でありますが、その総財産担保として社債発行するというようなことがこの法律案によって可能になってくるわけであります。  それから第二の点でありますが、従来の財団抵当制度におきましては、財産権のすべてが財団組成物件になり得ない。その顕著な例は、会社が持っておりますところの債権であります。債権は従来の抵当制度においては財団組成物件にならないのでございますが、この企業担保権におきましては、総財産の非常に重要な内容をなしてくるわけであります。それから今百貨店の例をあげましたが、在庫商品、こういうものも企業担保権目的たる総財産担保になるわけでございます。財団抵当制度におきましては、こういう商品などは組成物件にならない。例をあげればそういうことになるわけでございます。なお御質問では、この企業担保権は弱いということがあったのでございますが、これは従来の特別担保権に比べますと弱いのでありますけれども、これはやむを得ない。そのかわり、先ほど大臣から御説明になりましたようなそういう利点があるということで、この担保権としての弱さは相償えるのではないか、こういうふうに考える次第でございます。
  11. 近藤信一

    近藤信一君 貸金のカタに取る担保はそれが確実に押えられるということが重要だと思われるのが普通のようであります。従って、その最も確実なものは質権であり、また、自分の手元に押えておる株券などであります。または容易に動かない不動産抵当だろうと思います。この企業担保では中身が変りますが、社債期限は大体七年が多いようでありますが、七年もたつ間に景気が一巡して参りまして中身が変る、こういうようなこともございます。従って押えたと思ったのは着物だけで、中身はいつの間にかもぬけのから、こういうようなことになっておるというようなこともあろうかと思います。その点について、保証になるような制度がこの法案にはないような気がいたしますが、これは他の同僚諸君から質問も出ることだろうと思いますので、私は差し控えますが、要するにこの制度では、社債発行する会社中身はもぬけのからになるような不徳義なことはしない。また、そんな会社に対しては金融機関社債発行を認めないという、こういう信用を基礎といたしまして、この制度ができ上っておると思われるのでありますが、そこで金融を見ておるところの大蔵当局企業を見ておられる通産当局とにお尋ねしたいのでありますが、今回この制度社債発行は容易になるかどうかという点でございます。これは容易になるにきまったことと思いますが、今まで社債発行しなかったような会社でも、手続が簡素になるから発行しようというようなことにもなると思うが、この点いかがでございましょう。また、金融機関は、これにより担保制度が合理的になるから、今までの貸付制度を改めて社債によることにしようとするかどうか、こういう制度はできたが実用にならなかったというのでは困るのではないか。この点を一つお伺いいたしたいと思います。
  12. 川出千速

    説明員川出千速君) 企業担保約定担保でございまして、社債発行する会社とそれから金融機関との話し合いがつかないとできないわけでございまして、従来、日鉄廃止法等でやっておりました一般担保制度法定担保と違う点でありますので、その辺は今後、金融機関がどの範囲企業を対象にして企業担保を運用していくかという信用関係によって制約されるのではないだろうかと思います。従って、現在より、この制度ができたために社債発行する会社がふえるかどうかという点は、その辺、金融機関がどういう態度でいくかということに非常に影響されますものですから、金融機関が非常に信用度が高いというものであって、従来社債発行していないというものがあれば、その範囲では拡充されていくのではないだろうかというふうに考えております。
  13. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 今通産省から説明がありましたことと大体同じようにわれわれも考えております。この制度は現在の財団制度よりも非常に手続が簡単にできますのでありますが、それをその制度を使うか使わないかは、これはやはり金融機関の考え方にかかっております。現状では、これができましたならば、直ちにこのために社債発行がふえるということには必ずしもならないと思います。それはもっと全体の一般経済がどうなるかの問題にかかっておりますが、少くとも優良な会社、優良な企業は、この制度によりまして比較的社債を容易に出し得る格好になるであろうことは予想されます。それ以上のことは、現在では申し上げられないのじゃないかというふうに考えております。
  14. 近藤信一

    近藤信一君 ただいまのお話で多少わかりましたが、こういう制度わが国でも特殊の会社で、たとえば先ほどの製鉄会社やそれから電力会社で、実際にやっておることは存じておりますが、今回のように、企業全般に及ぼすことは初めてであります。しかし、このような企業担保制度を広く実施しておるところは外国には例が多いのだと思いますが、その実例がどこかで実施しておるのか、それからまた、どんな成績をおさめておるのか、また、それと今回わが国で行わんとしている制度との相違点はどんなところにあるのかと、こういうことについて、簡単でよろしいから、知っておられる範囲でお教えを願いたいと思います。
  15. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 私ども調べました範囲では、企業担保制度に類似しておる制度を持っておるのは、さしあたってイギリスだけのようでございます。でイギリスでは判例法でもちまして、フローティングチャージ浮動担保と訳しておりますが、フローティングチャージという制度が裁判所の判例によって認められておりまして、現在も行われておるようであります。この判例法であります関係でで、必ずしも明確でない点があるのでございますけれども、大体の制度といたしましては、わが国のこの法律案におきますところの企業担保と同じもののようであります。で企業担保法のように社債だけに限られておりませんようでありますけれども、実際このフローティングチャージが用いられますのは、社債の場合が大部分であるとのことであります。常時営業状態営業の進行している状態におきまして、会社の総財産担保になるという点において、全くこの法案による企業担保制度と同じような制度であるように解される次第でございます。
  16. 近藤信一

    近藤信一君 最後に一点お尋ねいたしますが、企業担保権制度が簡素な制度だと申しますが、その程度実例で一、二示していただきたいのであります。たとえば、工場財団制度で借りる場合と、それから企業担保権を設定して借りる場合と、社債十億のときにはどのくらいの節約になるのかというのでよいのですが、大蔵当局でも通産当局でもけっこうでございますが、御答弁をお願いいたしまして、私の質問を一応終了いたします。
  17. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) お答え申し上げます。これを使えばどの程度今までと金が少くて、経費が節約になるかという御質問でございますが、これはなかなか一がいに何円安くなるというふうには申し上げられないと思います。ただ、この企業担保制度を採用いたしますと、どういうところに実際に手間が省けるかという点を申し上げた方がいいのじゃないかと思うのですが、財団抵当を作ります場合には、まず、目録を作成いたします。それからそれに必要な図面だとかを作らなければいけない。それから財産の評価をしなければいけない、それからたとえば、動産に対して権利を有する者に対して公告をして何といいますか、権利があれば申し出てこいというふうな公告をしなければいけないとか、それから未登記の建物には保存登記をしなければいけないということで非常な手数を要するわけであります。それからこの登記をいたしますと、登記内容変更がありましたならば、一々変更届けをいたしまして、財団中身が変ります場合にたえずそういうことをしなければいけない。これで非常な手数を要するわけであります。で、これは金額が幾らになるかというふうにはちょっと簡単には申し上げられないのでありまして、その会社の事情によっていろいろ違うと思います。ただ、有形、無形のそういう手数が非常に省けるということだろうと思います。この登記をいたします場合の登録税でございますが、これは今度の企業担保の場合も千分の一・五でございまして、これは今までの財団抵当の場合と変りはございませんが、そういう表面的な手数料というものは変りませんが、その背後のいろいろな有形、無形な手数は省けることになるだろう、こういうことでございます。
  18. 相馬助治

    相馬助治君 この法律案は、株式会社社債発行に対して、会社の総財産を一体として担保とする制度を認めようとするものであるからして、業界が長く渇望していたという点では必要欠くべからざる法律案であろうと、私も原則的には了解をいたしますが、しかし、商工委員の立場からいたしますと、若干心配な点があるわけで、この際、通産省並びに大蔵省に私はお尋ねをしたいと思うのです。で、この法律が施行されますと、結局金融機関社債発行を認めるような大会社のみが恩典を受け得ることになると思うのです。そういたしますと、大会社資金調達はますます有利となってけっこうでございますが、金融市場における資金は、結局するところ、限られたものが大企業に吸収されやすくなり、その方に傾くということは、逆な面からいうと、中小企業金融をさらに圧迫することになりはしないかということを私はおそれるわけです。従いまして、金融市場における資金配分という観点からして、本法案が中小企業金融に与える影響をどのように見ておるか、そうして一歩進んでは、中小企業金融に対して便益を与えるという角度から、本法案提案と絡んで、何か積極的な構造等があるか、この点を承わっておきたいと思います。
  19. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のございました点は、この法案によって大企業がその担保の提供等で非常に便益を受けて、大企業にのみあまり有利になり過ぎるのではないかという点を中心とした御質問であったと思いますが、実は大企業につきましては、従来におきましても、御承知のように、社債発行等についてはある程度担保の提供の手続については、財団抵当というような特殊な制度があったわけでございますが、その中におきましても、その財団抵当のような制度よりも若干——若干と申しますか、さらに担保の提供上便宜な手続規定を定めることにはこの法案でなるわけでありますが、もともと大企業につきましては、そういう担保手続の簡素化と申しますか、そういうことだけではなくして、大企業自身の信用力が結局大企業についてどれだけの融資が可能であるかというところに最終的には帰着いたすのではないかと思います。その担保の提供する手続が簡素になることによって、それだけで大企業の方へ融資が特によけいにいくというようなことには必ずしもならないと思いますけれども、ただ、大企業の立場といたしましては、それだけの本来持っておる信用力を基礎にして金を借りる手続に簡素化されるような優勢が生ずるというようなことは争えないと思います。これに対しまして、中小企業の方について、さらに特別な配慮があるかどうかという御質問でございますが、この点は中小企業につきましては、このような制度あるいはこれに類するような法律制度を中小企業にまでかりにまあ広げようというふうに考えてみましても、もともと中小企業には提供すべき担保なりあるいは中小企業自身の信用力に問題の根本があるわけでありまして、その担保の提供の手続等についてのこのような法律制度を拡充するということは、本来無理なことであろうかと思います。これは申し上げるまでもないことでありますが、そういう意味で、中小企業につきましては、むしろ中小企業自身の信用の補完制度をやはり拡充なり、その他して参らなければならなくなるわけでございますが、この点は御承知のように、中小企業信用補完制度といたしましては、本国会におきましても、中小企業信用保険制度について新たな構想でその補完制度の拡充策を現在法案審議でお願いしておるわけであります。中小企業自身に対しては担保手続そのものじゃなくて、信用そのものの補完制度を別途講じて参らなければならないと、そのように考えております。
  20. 相馬助治

    相馬助治君 だいぶ過剰な答弁をなさったのですが、私はこれは大企業にのみ便宜を与えるじゃないかということを聞いておるのじゃないのです。それからまた、中小企業者にもこういう法律案適用せしめよなどということを言っておるのじゃないのです。私が言っておりますことは、大企業に対してやっかみ根性を起して、私自身は社会党の議員ですから、大企業をぼろくそに言うような意味でこの法案はおかしいじゃないかと、こういうことを言っておるのじゃない。この法律は業界が渇望しておるのだから、これはこれとしてわかると前段に言っておるのです。ただこれに見合って金融市場の状態から見ると、さなきだに困難な中小企業金融が圧迫されはしないか、そういうことが圧迫されるであろうということを私はおそれるからなんです。そこで、それに見合って、政府はこの法律とともにどのようなことを構想として描くかと、こういう問題なんです。これは本来局長にまあ聞くべきことじゃなくて、その答弁は白浜次官からあるべきだと思っていたのですが、あなたはどっかとそこにすわっておって、局長から答弁があったのでございますが、私は再度やはり私の質問趣旨を明確にして、次官よりとくとその辺についての構想を承わっておきたいと思うのです。
  21. 白浜仁吉

    政府委員白浜仁吉君) お答えいたします。松尾局長からも御答弁がありましたが、この法案が通ることによりまして、今相馬委員の危惧されるようなことのないように、私どもは中小企業金融に対して、特に政府関係金融を強化していかなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  22. 相馬助治

    相馬助治君 御趣旨はわかりましたから、どうかそれがその場限りの答弁でなく、いつでも問題になりまする中小企業金融のために、政府においては今の次官の御答弁の通りに、積極的に本法案の成立に伴って考慮をされたいと、念のために申し上げておきたいと思うのです。  次に、私はもう一点承わりたいと思いますることは、やはりこれは通産省から承わりたいのでありまするが、この社債発行できるかどうかというこの最終的な意思決定は、金融機関の意向に待たなければならないと思うのです。で、こういうことになりますと、企業というものがいよいよ金融機関に押えられる結果となって、いわゆる金融資本の勢力が増大し、金融資本が会社企業に対して過度の統制力を持つという結果が予想されるのでありまするが、これは私の偏見または誤解であるかどうか。かりに私が懸念するようなことがあり得るといたしますれば、この点では独禁法の趣旨にも反して、そうして近江絹糸事件やなんかにもその例が幾らかあるようでございまするが、不公正な取引関係を生ずるおそれというものが私はあり得ると思うのです。従って、この法律は、この法律自体では非常にけっこうなことなのだが、もともと力のある大企業に、より便益を与えて、連鎖反応的に中小企業者を金融の面で苦しめやしないかという第一段の私の懸念と、今度はその力のある大企業に対して、より金融機関が過度の勢力を保持して、そうして企業自体に対する統制力を持って、これがかりにメーカー会社であるとするならば、会社自体の意思というよりも、金融資金家的なものの考え方というものが会社の経営その他に作用いたしまして、行く行くは日本の貿易方面に対して悪影響を持ちはしないか。もうちょっとこまかく言いますれば、商工委員会でたびたび私どもが問題にしておりまするように、日本の貿易は中小企業の持つウエートというものが非常に大きなわけであって、というのは中小企業というのはそれ自体は脆弱であるけれども、その経営者のものの考え方によっては非常に目先のきいたことに変更して、海外市場その他をにらみ合せて物を作っていくというやはり能力を持っているからこそ、資本的には脆弱な中小企業が輸出の面ではかなりの成績を上げていると思うのです。そういうふうな妙味が会社自体に対して金融資本の過度の勢力の支配によってその妙味が滅却しやしないか、こういうことを私はおそれるので、以上の質問をするわけでございます。一つ明快なる答弁を期待いたします。
  23. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) ただいま御指摘のございました点は、金融機関社債の引き受けをやる、あるいは企業担保をとる際に非常に支配的な力をふるうんではないかという点に特に御質問があったと思いますが、もちろん金融機関といたしましても、いやしくも預金者から預かった資金を運用する際に、その社債の引き受け等をやる際には、十分に信用調査をやらなければならないことは、むしろ金融機関自身の当然の責務であろうと思いますし、その意味から金融機関が、そういう本来の金融機関の任務として信用調査をやる、社債発行の引き受けの判断をやるという点は、これはむしろやむを得ないといいますか、当然のことであろうと思います。ただその際に、かりに金融機関がそういう資金の面のめんどうを見るということ以上に企業の内部の経営に非常に深く立ち入って、あるいはその際に、企業の内部に対する支配力が金融機関の地位の乱用というような極端な場合をかりに予想いたしますれば、これは当然独禁法の不公正取引等の問題にも関連してくる問題であろうかと思いますが、現在までに私どもが聞いております限りでは、社債の引き受けをやり、かりにこの法律の施行に伴って企業担保の運用が行われましても、そこまでの懸念を私どもとしては心配する必要はなかろうかというふうに現状の判断をいたしております。まして中小企業に対して、金融機関が非常にまあ地位の乱用をするような支配的なことをやって、今御指摘のような貿易の阻害をするというようなことが厳にないように、私どももいろいろな私どもの仕事の面でもこの辺は十分気をつけて参りたいと思います。
  24. 高橋衛

    高橋衛君 先ほど政府側の御説明によりますると、企業担保法目的の中心は、この法律理由にも書いてありますように、「株式会社資金の調達を円滑にする」ということが目的に相なっているようであります。しこうして、大臣の御説明によりましても、担保附社債信託法に掲げておるところの十二の項目にただいまは限定されておる、しかもこれらの項目に該当しているものにおきましても、たとえば債権であるとか、その他のものが含まれないというような点から、包括的に企業財産全部を対象とするところの企業担保法を制定することを考えたのだという御説明でございましたが、この企業担保法のほんとうのねらいとするところがどこにあるかという点について最初にお尋ねいたしたいのであります。この理由にも書いてありますように、「資金の調達を円滑にする」ということの意味のほかに、先ほどの御説明によりますると、従来の公共財団等の手続きが非常に複雑煩瑣であって、そのために人手も要し、経費も要する、従って、それを簡素化するというところに相当のねらいがあるようにも思われるのであります。同時にまた、企業に与信力を与えるという点にも相当大きなねらいがあるように思うのでありますが、その二つの点から申しましていずれに重点を置いて考えておられるか、その点をまず最初にお伺いしたいと思います。
  25. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま御質問の点につきましては、先ほど法務大臣から御説明ございましたように、従来の財団抵当制度が非常に手続が繁雑で、多くの時間と費用がかかった、これを矯正したい、合理化したいというところに一番大きな主眼があるのでございます。
  26. 高橋衛

    高橋衛君 そうしますと、企業に対しては与信力を与えたい、しかも法律案理由に書いてあるところの「株式会社資金の調達を円滑にする」という目的よりもむしろ手続を簡素化、合理化したいという、こういうところに重点があるという御説明でございますか。
  27. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) お説の通りでございます。
  28. 高橋衛

    高橋衛君 お説の通りというのはどっちなんですか、理由に書いてあるように……。
  29. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 与信力を増加するというよりも、在来の担保制度の不合理、不経済、これを是正したいというところに主眼があるのでございます。
  30. 高橋衛

    高橋衛君 この法律に書いてある理由にははっきりと「資金の調達を円滑にするため」というふうに、そのほかにもいろいろ御説明を伺いましたが、これをもっぱら書いておるようでございますが、その点はどうなんですか。
  31. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 一番大きなねらいはというお尋ねでございますので、重点はそこにあるわけでございますが、しかし、この制度の合理的であるということの理由として、先ほど法務大臣から三点の御説明があったわけで、第一、第二の点は私は与信力の増加ということに相なるわけでございます。しかし、一番重点はどこにあるかということになりますと、在来の担保制度の簡素合理化ということになろうかと思うのでございます。
  32. 高橋衛

    高橋衛君 そこで先ほど来、近藤委員長質問に対しまして通産省並びに大蔵省側からの御説明によりますと、この法律を制定した後において果して社債がより優位に募集でき、そして社債発行高が相当増加するであろうかという点についての質疑に対して、通産、大蔵両当局はあまりその影響はなかろうという答弁であったのでございますが、その点が私ども非常に何と申しますか、いかにもおかしい感じがするのでございます。と申しますのは、こういうふうに今まで担保の対象とならなかったところの株式の財産が全部担保の対象となり、しかも手続が非常に簡素化、合理化される、そうしておいてなおかつ、これができました後においても、そう社債市場というものは育成されて、社債がどんどんふえるのじゃないのだという御答弁では、われわれちょっと納得いたしかねるような感じがするのでございますが、その点もう一回お答えをお願いいたしたいと思います。
  33. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) やはり社債の運用等につきましては、制度のこのような簡素化なり、合理化が行われたことによって直ちに社債発行額が非常に急激にふえるというわけには、資金の都合、いろいろな面から制約があると思いますので、その意味で先ほど、そういうただいま御指摘のような御説明をいたしたと思いますが、やはりこういう新しい担保制度が設けられて、だんだんにこういう便利な制度を利用することに金融機関側も習熟し、また、企業側もこういう制度の利用について習熟して参りますれば、他方、資金面の増強とも相かね合って、だんだんと社債発行等には、それだけの便利を加えた点だけはやはり今後の社債発行には、何といいますか、それだけのプラス面は出てくるというふうに当然考えております。
  34. 高橋衛

    高橋衛君 第二にお伺いいたしたいのは、この企業担保法が制定されました後において、現在政府は、各種の企業等に対して社債発行いたします際に、政府が保証をいたしておるのでございますが、その政府の保証の態度に対してこれだけ簡素化され、これだけ担保力を増したならば、政府としてもこの保証の限度を相当あらためて考え直していいというふうなことが起り得るとも考えるのでありますが、その点は、政府としてはどういうふうにお考えになりますか。
  35. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) この企業担保法を作りまして、企業担保制度によりますと、政府が特殊の会社債権について保証をいたしておりますことは、直接問題が関連がないとわれわれは考えております。
  36. 高橋衛

    高橋衛君 まあその点はあらためて、よくわからぬ点がございますけれども、次の質問に移ります。  まず第一に、第一条でございます。第一条で、総財産は、一体として、企業担保目的とするということが書いてあるのでございますが、それに総財産内容というものが一体どういうものであるか、たとえば工業所有権、または行政管理庁から許認可または免許によるところの営業権、たとえば、バスの路線の許可を得る、または製造業についての免許を得るというふうな、そういうふうな許認可に基くところの、または免許に基くところの営業権、こういうものが入るかどうか、または会社の商号、いわゆるのれん代、こういうものが会社の総財産として含まれるかどうかという点をまず最初にお伺いいたしたいのでございます。  それからこの法律の構成を考えてみますと、むしろこの法律の構成は個々のばらばらになった財産というものを対象とするよりも、収益を生むところの一つ企業体を対象として、これに対してある程度担保力を法制的に認めようという趣旨にも考えられるのでございますが、それらの点から考えますと、これらのものは当然総財産の中に入ってしかるべきではないかと感じられるのでございますが、その点、立案者とされましてはどういうふうに解釈をしておられますか、その点を最初にお伺いいたしたいのであります。  なお、これは題名でございますが、この法律を読んでみますと、何となしに企業担保法と申しましても、企業財産一体としての企業そのものであるか、企業財産であるか、いずれを担保とするのか、むしろ企業財産担保法といった方がよさそうな感じもするのでありますが、あえてこれを企業担保法と、企業という一つの収益体を題名として、そうして企業財産という文字をわざわざ避けている、これはどっちかと申しますと、むしろ収益を生むところの一つのアーニング・パワーと申しますか、そういうようなものを担保とするのだという精神の現われのようにも解釈されるのでありますが、その点なぜ企業担保法と称し、企業財産担保法といわなかったかという点の説明をお願いいたしたいと思います。
  37. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 第一条にいっておりますところの総財産内容でございまするが、これは民法の三百六条に、一般先取特権規定があるのでありまするが、これに「債務者ノ総財産」という用語が使ってございまして、この総財産と同じ意味でございます。でありますから、この総財産内容といたしましては、要するに、強制執行の対象になる財産ということに相なると思うのであります。でありますから、先ほどたとえば、例としてお引きがございました工業所有権、これは当然この総財産の中に入るわけでございます。それから行政庁の許認可に基く権利、バスの営業免許と、こういうようなもの、この免許によって得られたところのそういう資格、これは総財産の中には入らぬわけでありますけれども、この総財産担保権の実行によって売却されますと、その競落人はその免許に基く地位を承継するということで、四十四条の第二項に特別の規定を置いておるわけであります。でありまするから、総財産の中には入りませんけれども、その競落人が免許に基く資格を承継することに相なるわけであります。  それからさらに、商号はどうなるかというお話でございましたが、商号はこの総財産の中には入らないわけでございます。商号は商法の規定によりまして、営業とともにしか譲渡できないことになっておりまして、商号だけを独立して譲渡の目的にする、従って強制執行の目的にするということはできないわけでありまして、この商号は総財産の中には入らないことになるわけであります。  それからのれんといいますか、その名声、得意先という関係、これもそれだけが独立して総財産の中に含まれるということにはこれはならぬわけであります。しかしながら、この営業の、企業の施設が一体として売却されまして、競落人あるいはその買受人の手に移りますと、その企業に付随しておりましたこういう名声といいますか、得意先の関係なんかも自然にくっついていくということはあり得ると思うのであります。のれんというものが、グッドウィルといいますか、そういうものが独立して一つ財産権として総財産の中に入るということにはなりませんけれども、事実上そういうものが財産の評価の中に織り込まれるということは考えられるであろうと思うのであります。少しおわかりにくかったと思いますけれども、総財産の中に独立の財産権としては含まれない。しかし、事実上は総財産の評価の中にこういうものも織り込まれて評価される場合が多いだろう、そういうことになるわけでございます。  それからこの担保権の名称でございますが、この総財産は、今申し上げましたように、財産権として強制執行の対象になるものだけでありますので、企業財産担保法とかいった方があるいはより正確であったかもしれないのでございますが、この名称はやはり名前が呼びやすいと、そういう方面の考慮も必要でございまして、なるべく短かくて通りのいい名前ということで、あるいは企業担保法という名前が真相には少し遠ざかるかもしれませんが、呼びやすい、早わかりする、そういう見地から企業担保法という名称を採用したわけでございます。
  38. 高橋衛

    高橋衛君 ただいまの御説明、どうもよくわからぬのでございますが、たとえば第三十八条の第二項に、「会社の総財産の評価をするには、これを一体としてしなければならない。」と、こう書いてある。そうしますと、ただいまの御説明では、商号なりのれん代は入らない。総財産の中にはそれが入らないのでございます。一体としてする場合にも、それを除いて評価をするというのが当然だと思うのです。その場合に、実際の問題としては入ってくるだろうというお話でございますが、その辺現実の評価が、法律の解釈に従って厳格に規定されなければならないと思うのですが、その場合に、のれん代、商号は考えないで評価するのが第三十八条第二項の当然の精神だろうと思うのですが、その辺もう一回御説明を願いたいと思います。
  39. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 企業担保権の執行が始まりますと、管財人は第三十四条の規定によりまして、会社の総財産について、財産明細表をつけることになっておりますが、この財産明細表の中に商号幾らと、商号とのれんというものが掲載されるものではないと、そういう意味におきましては、総財産の中にこれは入らないからであるというわけであります。財産の明細表の中に商号それからのれんということにはならぬだろうと思うのであります。ただ、この三十八条の関係、評価の関係におきましては、商号はどうもこれは総財産の中に入りませんし、競落人が商号権を取得することにならぬわけでございますけれども、商号の価値というものが、実際この総財産の評価の中に組み入れられるということは、これはないと思うのでございます。ただ得意先というようなもの、これはその企業の施設全体が買受人の手に落ちる。その企業たとえばこの製造しておりました商品の特許権、商標権、そういうものも付随して買受人が取得するわけでございますから、その商品の得意先というようなもの、これは事実上くっついていくことになるだろう、そういう関係で、企業施設といいますか、その総財産の評価の場合に、事実上そういう得意先とか、のれんというようなものもある程度考慮されるということはあるではなかろうかと、そういう意味でございます。しかし、独立して、のれんというものが財産権の対象として幾らと評価されるというわけではないのであります。
  40. 高橋衛

    高橋衛君 どうもよく……頭が悪いせいか御説明がわかりかねるのでございますが、個々の財産としては考えられないけれども、実際問題としては入るということになるだろうというようなお話のようでございますが、たとえば、総財産を個別に売却をするということは、この企業担保法で認めておるのでございましょうか、実際の実行の場合に。
  41. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この今の御質問の点は第三十七条でございますが、実行方法といたしましては、総財産を一括して競売するという一括競売と、任意売却と二通り認めておりまして、任意売却の中には、総財産を一括して随意契約で売るというのと、それから個別に適宜の方法によって売却するというのと二通りあるわけでございます。
  42. 高橋衛

    高橋衛君 その点は知っておりますが、その点を特にお伺いいたしましたのは、たとえば、三十七条の第三項の任意売却の意味、個別にこれを売却した場合に、商号に関連しのれん代だけが残ったと、別個の人間に、あなたはこののれん代として、この商号を使ってこのお得意を使ってよろしいということにして、何らかの報酬を得るということは、これは実際の方法としてはあり得ることだと思いますが、そういう場合には、どうすればその財産企業担保の対象として確保できるということになるのでございますか。つまりのれん代というものが総財産一つのアイテムとしては載らない。従って、個別に処分される場合においては、その処分の対象にならない。それで、処分した後においてなおその商号があり、昔からののれんがあるとすれば、別個の人に対してその商号を使え、その得意先を利用することを認めるという条件のもとに対価を得るということはあり得ることじゃないかと思うのですが、そういうことはお考えにならなかったですか。
  43. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) のれんというものの事実上の性格がどうもはっきりいたさないのでございますが、のれんというものを考慮しまして営業の譲渡というようなことが行われることは考えられるのであります。しかし、そういう場合には競業をしないとか何かそういう取引の制限に関する特約がついておるだろうと思うのであります。そういうことでのれんというものが起きてくるわけでありまして、企業担保権の場合はとにかく営業の物的施設、工業所有権のような無体財産権も対象になりますけれども、要するにその企業の施設の売却ということになるわけで、そういう取引の制限というような特約段階がくっついていくわけでありませんので、のれんというようなものは、やはり法律的にはどうも総財産の対象の中には入れては非常におかしいと思うのであります。一般の取引の場合だったら、なるほどたとえば同じような営業を近くではやらぬ、従来の得意先に対しては今度営業を移したので、この人と取引をしてくれというのでそういう通知をするとか、要するに競業をさせるとか、そういう特約がつくだろうと思うのであります。そういうことによって初めてのれんというものが経済的な価値が出てくるわけでありまして、この強制的な売買、購買手段によって企業の施設を売却するという場合には、そこまで広げますと非常に煩瑣なことになりまして、のれんというようなものは一つ財産権として総財産の中には入れないという方が合理的だろうということでもって、この民法の一般先取特権の対象でありますところの総財産の観念をこちらにももってきた次第であります。
  44. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 関連して。私も頭の悪い一人かもしらぬけれども、今、高橋委員ののれんの問題に対する政府委員の御答弁、どうも私解しがたいのでありますが、まず私はお尋ねいたしたいことは、総財産企業というものはある意味において二つに分れた方がいいのじゃないか、また、分れて解釈すべきが妥当ではないかと思うのであります。そういう意味で今、高橋委員の言われたのれんというものは、企業の中において非常な私は重要な要素をもっておると思うのであります。ことにただ、のれんと申しましても、その企業自体が人事あるいは一つの特許権、あるいはその他伝統的な経営方針というようなことが大部分を占めていて、長い間営業をし、そして信用を博しておるというのがたくさんあるわけなんです。従って、私はその総財産企業というものは明らかにこれを分けて考えなければならぬし、従って、どうも政府委員の御答弁の中にありますその対象の業態というものはよくわからないのでありますが、この点いま一点伺いたいのであります。
  45. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 企業と申しますと、企業の定義いかんということになりますと、非常にむずかしい問題になると思いますが、商法でいっておりますところの営業譲渡の営業というものを考えますと、この営業の中にはやはり会社の積極的財産だけでなくて債務なんかも入っておるのじゃないか。それから企業となりますと、さらに営業というよりも範囲が広くなって、企業の物的施設はもちろん、その動的な取引関係、そういう点を全部、それから雇用関係会社が雇っておりますところの労働者との雇用関係、そういうものが全部企業のやはり動的な構造の内部にあるわけでございまして、本来からいいますと、そういう企業、そういう対外的な債権、債務の関係、取引関係、得意先との関係、それから内部の雇用関係、こういうものを全部ひっくるめてこれを一括して担保にするというようなこともこれは考えられないわけではないのでございますけれども、そこまで広げますと非常に複雑なことになりまして、たとえば、契約人が会社の債務までも引き受けるという結果になる、雇用関係までも引き受けるという結果になりまして、非常に大へんなことになります。そういうことになりますと、かえって担保権の価値をそぐのではないか、こういう点も考慮に入れまして、要するに、会社の積極財産だけ、しかも財産権としてはっきりしておるものだけということでもって、民法の一般先取特権の総財産という観念をここにもってきたわけであります。でありますから、法律的には必ずしも実体のはっきりしないのれんというようなものはこの総財産の中には入らない。これは随意の取引によってのれんというものを評価して取引の対象にする、これはもちろん可能でありますけれども、この企業担保権にいうところの総財産の中には含めないという考えであります。
  46. 相馬助治

    相馬助治君 立法する方の立場からいえば、企業内容というものをどういうふうに定義するかということがむずかしいから、現に現われている施設その他をその内容として一括してこれを企業担保権とするという説明はよくわかるのです。  で、私しろうとだから私だけがわからないのかどうか知らないけれども、具体的に一つ尋ねますと、企業担保権というものを一括して作っておいて、その総財産担保として社債発行していただく、施設から何から全部その会社がつぶれて清算するわけですな。一つの例にとってみると、全部そういうようなものを施設からいろいろなものを取り除いて順々と解決していった場合に、最後に、名前といわゆる俗にいうのれんというものが残った。これは値段に換算して買うという場合に限度があるかどうか、こういう場合にこれはどういうことになりますか。
  47. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 担保権を実行しまして、積極財産、施設なんか全部売れてしまったあとに残っておるのは、今仰せのような商号とそれからのれん、得意先との関係が残っておる。それを譲り受けるという人があればもちろん可能であるわけであります。そういうふうに、譲渡を会社が譲受人と契約をするということは一向差しつかえないわけで、ただ事実上、そういうことが無価値になって、だれも買手がないということになるかもしれぬが、もし買手があれば契約して一向差しつかえないということだと思うのであります。
  48. 相馬助治

    相馬助治君 そういうことがあり得るとすると、こののれんをあらかじめ価値に見て、これを担保として総財産の中に含めるということもあり得ると、こういうことをこの法律案は予想しておりますか。あなたの今までの説明では、そういうことを予想していないのだ、こういうふうに高橋委員に答えておるように思うので、具体例をあげて私はお尋ねしておる。私は何も意見はもっていません。わからないからお尋ねしておるのです。
  49. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) のれんというものの法律的な性格、のれん、のれんと普通申しますけれども、のれんとは何ぞやということになりますと、大体のれんが法律的に問題になりますのは、不法行為の関係においてのれんの侵害、近くで同じような名称を用いて同じような営業をやる、不正競争でございますね。そういう不正競争による損害の対象としてのれんというものが考えられる。そういう場合に、のれんというものがのれんの侵害ということで損害賠償請求権の原因になる。それから営業譲渡する場合に、その得意先との関係なんかがこれはやはりそれを引き継ぐということが、経済的価値あるものとして取引される、その場合には、同じ取引先にはもう譲渡人は取引しないで、全部一切をあげて譲受人との関係にしてしまう。そういう場合にはやはり競業禁止の義務と申しますか、譲渡人の方ではそういう義務を負うわけであります。取引の制限を受ける、そういう特約がついておるわけであります。それによって初めてのれんというものの価値が出てくるわけでございまして、企業担保権の実行の場合には、会社企業担保権を設定するわけでありますが、会社の人格がこれによってなくなるというわけではありませんで、企業担保権の実行がなされましても、会社が当然解散されるわけではありませんで、会社の人格は残るわけであります。営業もできるわけであります。そのためには商号も残っておらなければなりませんし、従来の取引先との関係はこれは続けても一向差しつかえないわけであります。従来の取引をやめさせなければいかぬ、従来の営業を総財産の買受人に対する関係で買受人との競合になるような場合には営業が制限される、そういうようなことをする必要はないわけでありますので、どうも商号であるとか、のれんというようなものがこの総財産の中に含まれまして買受人の方にくっついていくということになったのではおかしいのではないかということであります。そういう関係で総財産の中には含まれない。民法の解釈と同じ解釈にすべきである、こういう前提で一条の規定ができておるわけであります。
  50. 高橋衛

    高橋衛君 どうもいろいろ御説明はございますが、企業担保法としてこうやって踏み切られる以上、もう少し勇敢に立法措置をとられていいのではないかという感じがいたしますけれども、しかし、法制的にいろいろ困難な点があるということはただいまの御説明によってある程度了解ができたのでございます。  そこで、やはり第一条に「一体として」という表現を用いておるのでございますが、第三十九条の「総財産の評価額は、最低競売価額とする」というふうに規定いたしておるのでございます。そうして同時に、この第三十九条の評価は、評価のやり方は、これは三十八条に関連いたしまして一括競売の場合のみでございますが、この三十九条の場合におきましても、最低競売価額というものは当然に一体としての価額にならなければいかぬと思うのでありますが、これは特に「最低競売価額」というような表現にいたしまして、「一体として」という規定を入れなかった、必要がないという御見解でございますか。  同時にまた、附則の第二項にも「会社の総財産は」という規定をいたしておりますが、これは「一体として」という字句を欠いておるのでありますが、その点は何か特に意味があってそういうふうに書いておられるのでございますか。区別した用語を使っておるのでありますが、その点をお聞かせいただきたい。
  51. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 三十九条の最低競売価額というのは、これは一括競売をします際に、これ以下で競売の申し出がありましても契約はできないという最低基準になるわけでありますが、それは三十八条の二項の規定を受けておるわけでありまして、「鑑定人は、会社の総財産の評価をするには、これを一体としてしなければならない。」ということを三十八条の二項で規定しまして、この鑑定人の評価した、一体として評価したこの総財産の価額が三十九条で最低競売価額になるというのであります。でありますから、当然この最低競売価額は一体とした総財産の評価額ということになるわけであります。  それから附則の二項のこの会社の総財産も、いよいよ実行の場合になりますと、この総財産の評価はやはり一体としてされることになるわけで、ただいま申しました三十八条、三十九条の適用になってくるわけであります。
  52. 高橋衛

    高橋衛君 この点は、一条との関連は、つまり附則第二項は、三十九条の場合のように、三十八条を受けておりませんが、その点は差しつかえありませんか。
  53. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この附則の二項は、第一条では社債だけに企業担保権が利用できることになっておるわけでありますが、二項でもって開銀の特殊な貸付金につきましては貸付金担保にもできるというわけで二項を置いたわけでありまして、例外は一応あるけれども、その他の規定は全部、法律規定附則二項の企業担保権にも適用があるわけでございます。第三十八条、三十九条にももちろん適用できるわけでございます。
  54. 高橋衛

    高橋衛君 法律の解釈論の途中にほかのことを質問申し上げるのでございますが、通産省また大蔵省関係にお伺いいたしたいのでございますが、この企業担保権をいよいよ実行の場合において、金融機関がどの程度に評価するか。つまり社債担保として総財産価額に対して何割の程度か、具体的な物上担保の場合にはそれぞれ担保価額を七割とか六割という慣行になっておりますが、これは予想でございますから、それこそ的確なお答えを得られぬかとも思うのでありますけれども、この企業担保権そのものがたとえば先取特権だとか、抵当権に優先されるという関係もございます。常時その内容が変動するというような関係もある。従って、この評価の問題は非常に困難な問題じゃないかと思います。金融機関としてどこまで社債担保として認めていいかというこの評価の問題が技術的には非常にむずかしい問題、また、これがある程度基準ができなければ、こういうふうな法律がせっかくできましても非常にむだな、実益のない法律になってしまうおそれがある。それらの点について大蔵当局なり、通産当局は大体どういうふうな見当を立てて、どういうふうになるであろうという予想をしておられますか、その点をお伺いいたしたいのでございます。
  55. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 今仰せの通り、まことに企業全体の評価の問題はむずかしゅうございます。特に仰せの通りに、これは特定担保物件を持っている債権に劣後するわけでございますから、その評価は慎重に、控え目にやらなければならぬ問題かと思いますが、この法案がまだこれから実際に、まだ生まれておりませんので、これができましたならば、どの程度まで運用がなされるか、今後の問題になると思いますが、その辺は金融機関におきましても、それぞれ検討をいたしておる点と思いますが、十分慎重に運用していかなければならぬと思います。
  56. 高橋衛

    高橋衛君 どうも金融機関が慎重にやらなければならぬということはよくわかるのでありますが、大体の見当について、こういうような制度ができ上った後における運用の問題として、ある程度の目安がなければ、一体これがほんとうに担保としてうまく運用できるかどうかということについても、私どももなかなか見当がつきにくいのでありますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、なかなか困難であろうかと思いますので、この点はこの程度にいたしておきます。  なおこれは「一体として」に関連しての問題でございますが、今までたとえば工場財団その他の問題については、総財産の一部について担保をさしておるのでありますが、この工場財団その他の手続が非常に複雑であるというような観点から、または一つの工場単位において、やはり一つ会社の内部において、その工場を中心としたところの一つ企業財産と見て、それを対象としてこの企業担保法適用するというようなことができれば、先ほど来御説明のありましたような非常に複雑な手続、非常に煩瑣な手続、こういうようなものを改良して、より簡素にやれる道が開かれるのではないかと思うのであります。それは企業担保法の問題でなしに、むしろ工場抵当法なり、鉄道抵当法なり、これらの法律を簡素合理化する方法はないか。それに対するまた御構想がないかということにもなるのでございますが、その点を一つお答え願いたいと思います。
  57. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 工場抵当その他の財団抵当制度につきましてはお説の通り、簡素化の余地がないかということでございまするが、実は従来の財団抵当制度につきましても簡素化の要望がございまして、その可能な限りにおきましては、すでに昭和二十七年の工場抵当法の改正におきまして実現をいたしたわけでございます。しかし、工場抵当制度特定担保であります限りは、これ以上に手続を簡素化するということは、これはもう困難であると思うのであります。問題は要するに、登記登録のある財産については登記登録をするというところにあるわけであります。それから動産なんかでありますと、目録を提出いたしまして、登記と同じ効力を持たせるという点にあるわけでございますが、それが非常に煩瑣な手続になるわけであります。しかし、いやしくも特定担保であるという以上は、その手続は必要最小限不可欠の手続であろうと思うのでございます。そういう関係昭和二十七年の改正で、ある程度の合理化はできたわけでございますけれども、現在以上により簡素化するということは事実上不可能ではなかろうかと、こういうふうに思っております。
  58. 高橋衛

    高橋衛君 前段の総財産の一部についてこの法律適用しなかった理由は……。
  59. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 企業担保権を総財産の一部についてということも考えられないわけではございませんが、何分総財産の中には債権のようなものも入っておるわけでありまして、債権なんかというようなものになりますと、どの一部ということにもいかなくなりまして、そういう関係で、全部について総財産を一体としてということになった次第でございます。それからなお、換価の段階におきましては、たとえば、会社の工場が九州とか北海道とかに分れておるときに、たとえば北海道の工場だけを売却すればそれで社債の償還が全部できるというような場合には、北海道工場、それに付随する施設なんかを、それだけを売却するということもこれは可能になるわけであります。実行の段階でそれはあらかじめ会社の総財産の一部について担保権の設定をしたと同じような実効を上げることができる仕組みにはなっておるわけでございます。
  60. 大川光三

    大川光三君 ただいまの御答弁の中で、総財産のうちの一部が競売に付される場合がある、また、売却される場合があると、こういう御答弁であります。そこで、この三十七条換価方法の第三項ですね、「任意売却は、会社の総財産を一括し、又個別に、適宜の方法によってする。」というこの「個別」という問題に関連しまして、総財産が個々に甲の競落人、乙の競落人というように、複数で人を異にして競売する場合があるかどうかという疑問がありますが、いかがでしょうか。
  61. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 三十七条の三項の規定によりまして、任意売却します場合には、たとえば九州工場は甲という人に、北海道工場は乙という人に売却が行われるということは可能であるようであります。
  62. 大川光三

    大川光三君 そこで、四十四条の点が非常に疑問になると思うのです。四十四条では、二項で「前項の場合には、競落人は、会社営業に関する行政庁の許可、認可、免許その他の処分に基く地位を承継する。」、こうありますね。そうすると、競落人が甲と乙とに分れた場合には、一体四十四条の二項にいわれる許可、認可、免許というものがどちらへついていくかという問題でありますが、いかがでしょうか。
  63. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは実際問題としては、例が果して適切かどうかわかりませんが、バス営業というようなことを考えますと、路線を指定してバス営業の認可があるということになると思うのでありますが、北海道地区、九州というふうに分れますと、それぞれ北海道の事業施設を譲り受けるのは、その北海道の地域におけるバス事業の免許に基く地域、それから九州の方は九州のその地域でバス事業を営む免許による地域でございますね。それを承継する、そういうことになるだろうと思うのであります。実際問題としてはそういうことになるわけで、どちらにくっついていくかわからぬというものは起らないのではなかろうかと考えます。
  64. 大川光三

    大川光三君 そこで、なるほど北海道と九州と別々に認可、許可があればよろしいですが、もし免許等一つしかないという場合はいかがでしょうか。免許は一つしか受けていないという場合に、財産の買い主が甲と乙とに分れるという場合はどうでしょう。
  65. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その場合には、その免許が一つという場合、このバス事業がこの地域たとえばバス事業の例をとりましたが、バス事業に伴う一切の施設ですね、それをばらばらに分けまして売却するというようなことにはならぬのではなかろうか、ここのバスはだれそれに、それからバス事業の事務所の施設というものはだれにというふうには、実際問題としては売却しないのではなかろうかと思うのでございますが、この御意見のような場合は、実際問題としては起らぬのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。
  66. 青山正一

    委員長青山正一君) 企業局長、その意見はどうですか。
  67. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 私もただいま民事局長からのお話のようなことで、大体事実問題として、そういう処分の方法が行われることが、企業担保法の本来の趣旨に基く担保の実行方法としては、ほとんど起らないのではないかというふうに考えております。
  68. 高橋衛

    高橋衛君 次に、第二条の企業担保権者とありますが、企業担保権者は、担保附社債信託法の七十条によるところの受託会社と考えていいかどうか。もしそうであるとするならば、こういうふうに企業担保権というような制度を作ることによって、非常に複雑な、きわめて新しい制度でございますが、この受託会社社債権者との間の法律関係規定を現状のままで十分かどうか、その辺のところを一つお伺いいたしたいと思います。
  69. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この企業担保権の設定も、社債発行します株式会社と、それから担保附社債信託法の受託会社との契約で設定することにこれはなるわけであります。企業担保権者社債担保になるということのために、この受託会社と、社債権者との間の法律関係が今まで通りではいけない、改めなくちゃならぬという点は、特に出てこないのではないかということで、その点は、特に従来の担保附社債信託法には改正を加えていないわけでございます。
  70. 高橋衛

    高橋衛君 次に、第二条の第二項に、前項の規定適用しないと書いてあるのでありますが、第七条でも「先取特権質権又は抵当権は、その権利目的となっている財産につき、企業担保権に優先する。」とはっきり書いてある。そうしますと、何か重複するような感じがいたすのでございますが、この二条の規定はそれでもなおかつ必要であるかどうかという点が第一点、それから次に「優先する」と書いてありますけれども、第二十八条の規定によりますると、実行すれば、直ちに競売なり、その他の手続は全部停止される、効力を失うということに相なるのでございますが、優先はするけれども、実際の手続関係においては、これを実行する人のいわば地位によってどちらかの法律関係を受けるということになるわけだと思うのですが、その点は何かもう少しはっきりと法律的な規制がなし得なかったかという感じがするのですが、よくこの点の法律関係がわからぬのですから、その辺の御説明をお願いいたしたいと思います。
  71. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 二条の二項は、これは会社の強制執行や担保権の実行があるという場合です。これは会社の個々の財産に対する強制執行、または担保権の実行がなされるわけでありまして、その際に企業担保権者が優先権を主張できない、個々の財産に対する強制執行や担保権の実行の場合には、企業担保権者は優先を主張できない、それを二条の二項で規定しておる。だから企業担保権者が優先権を受け得るのは、企業担保権者担保権の実行を申し立てた場合、あるいは破産した場合、こういう場合であります。個々の財産の場合においては、強制執行の場合には優先弁済権の行使ができないということを二条の二項に規定してあるわけでございます。それから七条の関係は、これは、でありますから、企業担保権が実際実行される場合の規定でありますので、七条の二項は企業担保権者の申し立てに基いて企業担保権の実行が始まった場合、あるいは破産なんかの場合にものを言う規定であるわけであります。でありますから、たとえば企業担保権が実行されました場合に、抵当権目的となっておる不動産があるということになりますと、その不動産の価額からまずその抵当権者が優先弁済を受ける、そういうことになるわけであります。
  72. 高橋衛

    高橋衛君 そのことはつまり二条の二項との関係において、二条の二項が、なぜ七条の二項があるのに必要かということを私は質問申し上げておるのです。七条の二項で優先するとはっきり書いてあるのでございますから、従って二条の二項で特別に適用しないと断わることは重複じゃないか、何かここに法律的なその他の意味があるのじゃないかということを、私にはわからぬからお教えを請うておるわけなんです。
  73. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 別に仰せのようなその他の意味があるわけじゃございません。
  74. 高橋衛

    高橋衛君 同じことを規定しているのでしょう。
  75. 香川保一

    説明員香川保一君) 二条の二項と七条とがダブっておると申しますか、二条の二項はよけいな規定じゃないかという御質問趣旨がわかりかねるのでありますが、その御趣旨は、七条で企業担保権一般先取特権よりおくれるし、その他の特別の担保権よりも全部おくれるということにしてあるのだから、個々の財産に対して優先権が行使できないというのは当りまえのことじゃないかと、こういうふうな御趣旨かと思うのでありますが、これは七条の関係は、ここに列挙しております担保権よりは企業担保権がおくれるわけでございますけれども、無担保債権者よりは優先するわけであります。ところが、二条の二項の関係は、個々の財産に対して強制執行とか担保権の実行があった場合に、無担保債権者企業担保権者関係規定しておるわけでありまして、この場合には無担保債権者と同時に、要するに優先権は企業担保権者は行使できない、そういうことを規定しておるわけですから、ダブっていないというふうに考えておるのであります。
  76. 高橋衛

    高橋衛君 それから第四条で、効力発生要件として、会社の本店の所在地において、株式会社登記簿にその登記をしなければならぬというふうに規定をいたしておるのでございますが、これを効力成立条件にされた理由ですね、対抗要件ではなぜいけないかという点、それからいま一つこれに関連しまして、個々の抵当権等につきましては、個々の財産についての登記簿にそれぞれ登記をして対抗さしておるのでございますが、会社登記簿に企業担保権登記をされるという場合に、相互にそれを見るというふうな便宜がなかなか得られぬと思うのでありますが、ただ単に、財産についての登記簿を見るだけでは、企業担保権があるかないかということを債権者として確認する方法がそのままではないわけですが、あらためてその登記所株式会社登記簿を調べなければいかぬということが起ると思うのですが、その辺はこれで十分実際の運営に差しつかえないというふうにお考えになったんでございますか。
  77. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 四条は一般の例、不動産物権の例にならいませんので、効力要件といたしましたのは、要するに成立を明確にしようという考え方からであります。まあ実際問題としては対抗要件でもいいんじゃないかということも考えられますけれども、たとえば、抵当権なんかの場合に、未登記抵当権でも実行ができることになっておりまして、そういうようなことになりますと、未登記企業担保権というのは、当事者間では効力があるということになりますと、非常に複雑な関係が生じはしないか。で、現在の不動産物権につきましても登記をもって単なる対抗要件ではなくて、物権変動の効力要件とすべきであるという改正論もあるわけでありまして、企業担保権なんかにつきましては、やはり成立をより明確にするという意味で、効力要件とした方がより合理的ではないかというようなわけで効力要件にいたしたわけであります。それから登記、登録のある個々の財産についても、それが企業担保権目的になっておるということをはっきりしたらどうかということもこれは考えられるわけでありますが、そうなりますと、これは手続が非常に大へんなことになりまして、企業担保権が簡易な、簡素な制度であるということと相反しますのみならず、この企業担保権というのは会社のそのときどきの総財産に対して効力を有する、つまり会社財産でなくなったものには及ばない、その浮動性がやはりこの企業担保権の生命なのでありまして、個々の財産について企業担保権が及んでおるということがわからなくても、その財産の取得者は、その財産をたとえば譲り受けた者がありますと、これは企業担保権効力が及ばなくなっておりますので、何ら損害を受けることはない。要するに、個々の財産については企業担保権目的になっておるということを公示する必要はごうもない、公示されていないことによって不測の損害を受けるという人はないわけであります。そういう関係登記、登録をしないということにしておるのであります。
  78. 高橋衛

    高橋衛君 次に、企業担保権の実行の問題でございますが、これも法律がよくわからぬからお尋ねをするのでございますが、第十一条に、「実行は、企業担保権者の申立によってする。」こう書いてある。それで、この申し立てはどういう場合にするかと申しますと、担保附社債信託法の第八十二条の規定によって、「受託会社ハ遅滞ナク社債権者集会ノ決議ニ依リ担保権ヲ実行スヘシ」こう書いてあるのでありますが、これによる趣旨でございますか。また、何かほかに根拠がございまして、いかなる場合に実行の申し立てをするということが規定されておるのでございますか、その点。
  79. 香川保一

    説明員香川保一君) 企業担保権の実行開始の要件としましては、現行の担保権の実行開始の要件と同じでありまして、附担保債権、この場合で申しますれば、社債が償還期になっても償還されないということになりますれば、そのとき実行が始まるわけでありますし、また、お説の通り担保附社債信託法の八十二条で、会社が解散いたしました場合にも、特別に担保社債の場合にも、担保権が実行できることになっておりますので、この場合にも実行が始まるわけであります。それ以外に、債権者、受託会社社債発行会社の間で、こういう事由が発行したときには期限の利益を失うという特約がなされる場合も非常に多いわけであります。そういう特約に該当する事由が発生いたしますと、期限の利益を失う結果、期限が切れてしまうということになるわけであります。その結果、弁済債務の実行が始まるということになるわけでございますから、結局法律的に申しますれば、担保附社債信託法八十二条で規定しておりまする範囲と、企業担保権の実行される範囲とは同じだということになるわけであります。
  80. 高橋衛

    高橋衛君 第十五条並びに第十六条に、「利害の関係を有する者」という規定があるのでございますが、「利害の関係を有する者」というのは、範囲は大体どの程度にお考えになっておられますか。
  81. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 要するにこの「利害の関係を有する者」というのは、非常に広いわけでありまして、十四条の「実行手続における利害関係人」よりも広いという考え方であります。たとえば、この会社財産を買い受けよう、競売の希望者、これなんかもやはり利害関係を有する者の中に入る、そういうふうに考えております。それから会社一般債権者担保権を持たない一般債権者ども、やはりこの「利害の関係を有する者」の中に入ると、そういうふうに考えております。
  82. 青山正一

    委員長青山正一君) ちょっと高橋さん、大臣とか政務次官はお帰りになってもよろしゅうございますか。
  83. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 僕は大臣に……。
  84. 高橋衛

    高橋衛君 それじゃもうあと二、三ございますけれども、時間もたちましたので、一応最後に、大蔵省通産省かどちらかに、資料をいただきました内容について、これは後ほどでけっこうでございますが、電力会社及び特別の法令による社債というのが、現在残高で千四百二億円ありますが、この電力とその他の特別の法令の区分をしていただきたい、それから担保社債のこの内訳について、担保附社債信託法の、十二の項目に分かれておるようでございますが、もしもわかったら、内容をわかった区分に従ってお教えを願いたいと思います。これはきょうでなくてよろしゅうございます。
  85. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) この電力会社及び特別の法令による社債の内訳でございますが、この千四百二億のうちで、九電力は千百八十二億でございます。それからそれ以外に、次に電源開発が七十億、それから日本航空が二十五億、帝都高速度交通営団——地下鉄が九十六億、それから放送債券が二十一億、東北開発債券が九億となっております。  それからこの三の担保社債の内訳でございますが、これは内訳がございますが、三十二年十二月末では、まだちょっと調整ができておりませんので、三十年十二月末の——二年前にさかのぼりますが、申し上げまして大体のウエートを判定していただきたいと思いますが。
  86. 高橋衛

    高橋衛君 あとで内訳はけっこうです。
  87. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) それではあとで資料について申し上げます。
  88. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間がありませんから、私は一、二点お尋ねいたしたいと思います。  特に、最初法務大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、先ほど近藤商工委員長から質問がありました中に、政府委員の御答弁があったのでありますが、こうした例の外国の状況でありますが、これは英国だけが現在施行している、こういう御答弁があったのでございますが、なるほど本案は、有力なる担保物権を持っている会社にとりましてはきわめて好都合な、しかも簡易に金融ができるという点におきましては、まことにけっこうな案でございます。しかしながら、先ほど相馬委員も触れました通り、優良企業のみがこれを利用し得るというところに問題の中小企業との関係等がございます。従って、私は日本の正常化された経済状態の中において初めて本法案のごときは利用せられるのではないか、こう考えます。現在の日本の経済状況がいろいろなそれは見方はございますが、果して正常化されているかどうかという点でございますが、ただ単に、法的に便宜だということで立案されたものかどうか、その経済的事情というものを十二分に勘案せられて、時期としては当を得ているものという御判断のもとに御提案されたものか、その御所見をまず伺いたい。
  89. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この点は、私ども法務の立場よりは、あるいは通産大臣のお立場からお答え申し上げる方が適当かと思うのでございまするが、ともかくこの信用力のある者には非常に便宜になるということだけは確かでございまするが、こういうふうな信用力のない者には何にも恩典がない、あるいは逆に、資金源の関係などで不利な結果をもたらすのじゃないかという先ほどのお考えがあるようでございますが、この点は、ともかく従来の財団抵当制度では非常に手数もかかるし、費用もかかるから、これをある程度拡張して、そうしてその信用力を増してやろうという見地からこの制度ができたのでございまして、他のたとえば、中小企業等におきましては、この制度は活用されない、片手落ちではないかというのでございますが、中小企業等の金融関係につきましては先ほどもだんだん御意見のありました通り、その企業自体固有の関係で、たとえば、対人信用なりなかなか金融機関が融資しないというような、その中小企業本来の立場から非常に窮屈になっておりまするけれども、それの救済は他の方法でやる、その点がこの恩恵にはあまり浴さないからと言うてこの制度を施行することを、これを阻止するというわけにはいかないのじゃないかと、かように考えるわけでございまするが、ただいまのお尋ねの財界、事業界等の関係につきましては、通産省との間にも十分検討を加え、また、実業家の側の御意見もだんだん承わって、そうして今この法律を施行しても別段の支障がない、こういうような確信を得ましたので提案をいたした次第でございます。
  90. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 私はもう大臣にはけっこうです。私はあと一点だけ局長にお尋ねをいたしたいのでありますが、高橋委員も触れておりましたが、私はその総財産という点につきまして、いま一つ御解明を願いたいと思うのでありますが、この法案を見まするというと、名称は企業担保法案ということになっているのでありますが、どうも法案を見ましても、どこに企業担保とするというようなことが書いてあるのか、ちょっと私十分に見ておりませんのでわからないのでありますが、しかもその第一条では、会社の総財産は一体として企業担保権目的とする、こうあるのであります。会社の総財産であり、それが企業そのものであるかどうかということについてまことに疑わしいわけであります。また、そういう点におきまして、先ほど高橋委員企業財産担保法というようなことをお話になったのでありますが、私は、むしろ総財産担保法というような方がむしろぴんとくるのじゃないかというほど、この問題について大きな疑念を持っておるのでありますが、これをいま一度一つ解明を願いたいと思うのであります。
  91. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいまの点、当初この法律を立案します際に、最初一般担保権とか、いろいろの名前を使ってきたわけであります。しかしながら、この法律の名称並びにこの権利の名称としまして、やはりわかりやすい、呼びやすいということが非常に大事だと思いますので、企業担保権というのも、要するにあまり理論的でないかもしれませんが、ただイギリスフローティングチャージというのも、これも正式に法律があるわけじゃありませんので、法律上使われておる名称じゃございませんが、フローティングチャージという言葉が慣用されておりますが、そのフローティングチャージというのは、会社のアンダーテーキングを担保にするということが言われております。そのアンダーテーキングが、これも日本の企業と同じで、いろいろの意味があるわけでございましょうが、やはりイギリスフローティングチャージにおけるアンダーテーキングというのが、やはり日本の総財産、日本流の、日本の法制のもとにおいて、日本流に言いますとこれは総財産というふうになるのであります。こういうように考えられるわけであります。そういうわけで、アンダーテーキングを担保にする、その考えにヒントを得まして、こちらも企業担保——学術的あるいは理論的ではないかもしれませんが、わかりやすいのではなかろうかということで、この名称をとった次第でございます。
  92. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 いま一点お伺いをいたしておるのでありますが、社債募集のときに、当然これは総財産の価額というものがわからなければならないと思うのでありますが、そうするとその総財産は、担保権設定のときに当然これは示すわけでありますが、その中に、先ほど再三質問がございました、いわゆる無体財産権、こういうものについては、どうも局長の答弁が実ははっきりわからないのでありますが、これは全然見ていないのか、あるいはその無体財産というものも——無体財産の中にはいろいろあるわけです。先ほど来議論の中心になりましたのれんという問題もありますし、特許権もありますし、いろいろあるのでありますが、こういう無体財産というものも担保権設定の場合に含めるのか、あるいは全然お話の筋では含めないというようにも拝聴したのでありますが、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  93. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 結局企業担保権担保として社債発行します場合には、社債発行します会社と受託会社の間で契約をするわけでございますが、実際問題としては、受託会社の方では、会社の総財産の評価はいたすと思いますが、募集する際に、評価額を公示する、そういうようなことはいたさないわけであります。それから無体財産権の問題でございますが、無体財産権というのは、学術上そういう用語を使うわけで、その中にはのれんのようなものが入るかどうか疑問でございますが、工業所有権——特許権であるとか、商標権、実用新案権であるとか、そういう工業所有権は総財産の中にもちろん入るわけであります。しかし、のれんにつきましては、先ほど申し上げましたような事情で、のれんは総財産の中に入らない、そう申し上げるよりほかないのでございます。
  94. 古池信三

    古池信三君 先ほどから、同僚委員諸君よりいろいろ質問がありましたので、私はできるだけ重複を避けまして、二、三の点についてお尋ねをいたしたいと存じます。  まず、ただいまもちょっと触れておられましたが、企業担保法案の立案につきましては、イギリスフローティングチャージが非常に参考にされたであろうと思われるのであります。そこで、英法系でありますから、慣例法であるから、そのままとって日本の法案と比較するということがむずかしい点もあろうかと存じますけれども、しかし、最も似た制度であるとして御説明にもありましたので、この際、このフローティングチャージと、今回の企業担保法との間における同一な点、共通点と申しますか、どういう点が共通しておるか。あるいは違っておる点はどういう点であるかということについて、特に最も重要な点だけでけっこうでありますから、ちょっと御説明いただきたい。
  95. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 似ております点は、常時変動する会社の総財産担保の対象になるという点、この点が似ております。企業担保権の骨子になるわけでございます。その点が似ているわけであります。違います点は、英語のフローティングチャージは必ずしも社債担保だけに限らない。貸付金についてもフローティングチャージがつけられるという点が一つの違いであろうかと思います。ただ、実際の運営におきましては、イギリスフローティングチャージ社債担保に使われることが非常に多いというふうに言われております。
  96. 古池信三

    古池信三君 先ほどから問題になっておりましたのれんと申しますか、あるいはグッドウィルと申しますか、そういうようなもの、及び工業所有権、こういうものは英国のフローティングチャージにおきましても含まれておるのでありましょうか、どうでしょうか。
  97. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 工業所有権なんかはイギリスでもやはりフローティングチャージの対象になるようであります。ただ、のれんの点につきましては、のれんということが必ずしもはっきりいたしません関係で、ただいまのところ何とも申し上げかねます。なおもし調査してわかるようでございましたら、次の機会にでも御答弁申し上げることにいたしたいと思います。
  98. 古池信三

    古池信三君 日本流にのれんと言いますと、非常に独特なものであろうと思うのでありますが、向うの言葉ではグッドウィルということがよく企業上使われているように思います。これにつきまして、あとからでけっこうですから、もしお調べがありましたらお示しをいただきたいと思います。  それから次に、ゼネラル・モーゲージの問題でありますが、先ほど来御説明がありましたように、わが国におきましても、ある種の大きな企業についてゼネラル・モーゲージの制度が利用されている、そういう点を承知したのですが、今まであったゼネラル・モーゲージと、今回の企業担保との間の相違点、並びに同一の点があれば同一の点、これを一つ重要な点だけお示し願いたい。
  99. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 同一の点は、会社の総財産担保の対象になるという点は同一であります。違う点は、従来のゼネラル・モーゲージというのは法定担保でありまして、法律上当然に発生する企業担保権は約定によって発生する。さらに相違点の第二は、ゼネラル・モーゲージの場合は実行方法がどうなるのか。これは必ずしも法律ではっきりしておりませんが、これは一般先取特権と同じように、やはり個々の財産について競売の申し立てをしていこうということになるのだろうと思います。企業担保権は先ほど御質問の二条なんかの関係で、今申しました企業担保権実行の大きさによりまして、一体として換価されるということで、手続が全く違っておる、こういうことになると思います。
  100. 古池信三

    古池信三君 現在生きて認められておりますゼネラル・モーゲージの例は、これは特別法によっておると思いますが、会社にしまして幾つぐらいございますか。
  101. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この特別法によるわけでありますが、先ほどお話の出ました、日鉄法廃止法によりまして、富士製鉄株式会社八幡製鉄株式会社、それから特別法の関係では電力会社、それから東北開発株式会社、これも東北開発株式会社法によるものであります。そういうものが特別法によって認められておるわけであります。
  102. 古池信三

    古池信三君 今お述べになったほかで、たとえば帝都高速度交通営団が交通債券を発行できるのでありますが、これもやはりゼネラル・モーゲージと認めてよろしいのですか。
  103. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 御意見の通りでございます。
  104. 古池信三

    古池信三君 そこで、ただいま御説明のありましたのは、特別法による抵当権あるいは先取特権でありますが、一種の担保であると思いますが、今回この企業担保法が成立いたしますると、これは一般法でありますから、これによって従来のそういう特例のものをやめてこれに統一しようというお考えなのか。あるいは従来のものはそのまま認めて、ゼネラル・モーゲージを続けていく、こういうお考えなんですか。その辺をちょっと伺いたい。
  105. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 日鉄法廃止法によりまして、ゼネラル・モーゲージの有効期間が定められておるものはまあこの企業担保法に事実上乗り移っていくわけでございますが、その他のものは従来のままでこれに統一するというふうにはなっておりません。
  106. 古池信三

    古池信三君 この法案によりますと、企業担保法に基いて社債発行できる会社株式会社となっておるわけでありますが、先ほどちょっと申しましたような営団のようなものに対しては、そういう将来必要が起った場合にこの法案の対象とはならないのですか、どうですか。
  107. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 帝都高速度交通営団、これには及ぼさない。株式会社ではありませんので、あまりに大きな例外になりますので、これには及ぼさないということで立案いたしております。
  108. 古池信三

    古池信三君 簡単にお尋ねを進めて参りますが、本法案によりますと、社債に限るということになっておりますが、しかし、現在の企業運営の実情から見ますというと、社債以外に、長期借入金によって相当建設工事その他を進めておるのが多いのであります。従いまして、信用のある場合には、長期借入金の場合にもその担保として企業の総財産というものをこれに充てるということを考えてもよいじゃないかと思うのでありまするが、長期借入金を認めない理由はどうか。  なお、ただいま御説明ありましたように、イギリスにおいては社債以外に借入金を認めておる。こういう実例もあるとすれば、わが国においても借入金を認めてよろしいのではないかと、こう考えられるのですが、それのいけないという理由一つお示しいただきたい。
  109. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点につきましては、お説の通りでございまして、本来ならば借受金の担保にもしたいところでございますが、当初からそれを認めますと、株式会社にもいろいろあるわけでございまして、貸付金にも認めますと、これは長期のみに限るというわけにはいかない。法律的にはどうも、どういうふうにこれを長期というものを規定していくか、そういう点にも問題がありますし、貸付金にこれを認めますと、要するに金融機関、これも正規のしっかりした金融機関ならばいいのでありますが、高利貸しなんかが企業担保権をとりまして、そうして金融をするということになりますと、結局会社企業がそういう高利貸しなどのために首の根っこを押えられてしまうと、そういうような危険が生じはしないか、で、そういう関係で、まあ社債だけに限りますと、これは担保附社債信託法適用を受けるわけで、信託会社の方は政府の監督もあるわけでありますので、比較的公正に行われるのではなかろうか。これをまず実施いたしまして、その実績を見た上で、大丈夫だということになりました場合に、貸付金の方にも及ぼしていくようにしてはどうかということで発足してみようというのが、まあこの案の趣旨であります。でありますから、貸付金を認めては絶対にいけないという理由はないわけで、行く行くはそうあるべきものだろうというふうに考えております。
  110. 古池信三

    古池信三君 ただいまの御説明を承わりますと、借入金にこれを認める場合には、債務者側にとって非常に信用のないような場合がありはせぬかということと、それから、その金を貸す方の側で、いろいろ不当な力をもって企業を圧迫するようなおそれはないか、こういうような御心配があったように思います。そこで、この企業担保法に基く契約は、この担保の設定は契約に基いていたすわけですから、相手が信用のない事業を認めれば契約をしないまでのことですから、信用のない人に対して企業担保法に基いて貸付をするという心配はまずなかろうと思う。それから高利貸しがあって、非常に不当な貸付をしやせぬかという心配については、そういう金貸し業といいますか、金融機関は野放しではないはずであります。大蔵省から相当厳重な監督を受けておると思いますから、そういう心配はないと思うのです。もしそういう心配があれば、大蔵省金融機関に対する監督を厳重にすればこれは足りると思うのですが、その辺についてはどういう御見解ですか。なお、これについては大蔵省のお考えもお聞きしたい。
  111. 香川保一

    説明員香川保一君) 本来企業担保制度——この法律の企図しております企業担保制度は、この性質から申しまして、長期の設備資金の調達のために使われるのが適当だろうと思うのであります。その第一のものとしましては、社債があるわけでございます。なおお説のように、現在商業銀行の貸付金でもって長期設備資金をまかなっているという実情にあるわけでございますけれども、これは本来申しますれば、決して、好ましい傾向と申しますか、こういった金融情勢はできるだけ改められた方がまあ適当ではなかろうかというふうに考えられるわけでございますが、さしあたりはそういった銀行からの融資で設備資金をまかなっていくという状態が続くといたしますれば、お説のように、企業担保権の被担保債権範囲に入れてもいいじゃないかというふうに考えられるわけでございます。しかし、その点につきましては、消極的には短期の少額の融資のために企業担保権を設定するというふうなことがまず問題になるわけであります。これは設定する債務者の方がそれだけの力を持っておれば問題はないわけでございますけれども、何分にも債務者側にもまあ力関係から申しまして弱い点がありますので、そういった短期の少額のために企業担保権を設定するということは決して好ましいことではなかろうというふうにも考えられるわけでございます。  さらにまた、この企業担保権は、実行が始まりますと、会社の総財産を競売するというふうなことになっておりますので、会社の乗っ取りのために使われるというふうな懸念もあるのではなかろうかということも考えられまするし、さらにまた、外資の関係につきましても、政策的にいろいろ考えなければならない問題もあろうかと思うのであります。そういったことを考慮しまして、最も適当だと思われるもの、すなわち、長期の正規の金融機関からの貸付金に、実質的には限れば差しつかえないように思われるのでありまするけれども法律的に、事実上これをそういう形に制限するということは非常に困難でありまして、むしろ次善の策といたしまして、社債に限って発足いたしまして、この制度が完熟して参りまして、産業界、金融界ともこの制度になれて参りまして、弊害のない運用がされるというふうな状態になってきたときに、一般的に貸付金にも広げた方が、かえっていいのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。
  112. 庭山慶一郎

    説明員庭山慶一郎君) 今法務省から御答弁がありましたので大体尽きておると思いますが、何と申しましょうか、理論上申しまするならば、これを社債だけに限定するというのは若干おかしいではないか、どういう債権であってもいいのではないかということが考えられまするけれども、実際問題といたしまして、やはりこの制度は、現状では、まだわが国の商慣習上、なれた制度でございませんので、あまり一般的に広めることはどうかという心配もございます。それから、これは何と申しますか、借りる側の方に借りやすくする、借りる場合に便利にするための一つ制度でございますから、日本の金融機関は、まだ、いろいろこれは御批判もございましょうが、なお正常な形になっていない、ややもすれば貸し出し競争というふうなものが起ったりして、そういう、何と申しますか、金融機関も、ある程度なおウイークな立場にありまするので、あまり現在のバランスを変えるような、借りやすくし過ぎるというような形にすることは、いろいろ、現在ではまだなお問題があろうと思います。それから、現在では、実際上長期資金が、本来は社債でまかなわれるべき金が、一般の借入金という形になっておりまするけれども、これは、貸し出しなりあるいは経営のルールを正常化するという意味におきましても、本来社債で借りるものは社債で借りたらいい、社債でそういうよい制度ができましたならば、自然そういうふうに社債に向いていくだろう、貸し出しのルール、借り入れのルール、経理のルールを正常化するためには、現在はこの程度でいくのが一番いいのではなかろうかというように考えているわけであります。
  113. 古池信三

    古池信三君 ただいまの大蔵省の御答弁は、どうもまだ十分に理解できないのでありまするが、時間もありませんから、これ以上議論はいたしません。そこで、この社債発行ということは、おおむね大きな会社に限られておるわけです。実際問題といたしまして、小さい事業者が社債発行するということは、これはできないだろうと思うのであります。しからば、信用のある事業は皆大会社であって、中小事業は信用がないかというと、そういうものではない。非常に資本金その他の大きい、いわゆる大企業と称せられるものの中でも、不健全なものがないとは言われない。また、反対に、中小企業でありましても、内容のきわめて堅実なものがあるわけです。しかし、中小企業であるために、内容は堅実だが、社債発行することはできないという場合が多いだろうと思います。従って、そういう場合には、堅実なる中小企業のためには、やはりこの長期の貸付金というものが必要になるわけです。現在の金融関係が正常ではないというような、今御説明がありましたけれども、私は、必ずしもそればかりとは言われないと思うのです。先ほど社会党の委員からも御意見がありましたが、この企業担保法の成立によって、資本の大きい大会社金融上便宜をはかるということに傾いては、これはいけないので、やはり日本の実情としては、中小企業金融の上においても企業担保法が十分利用できることを、そういう道を考えていかなければいかぬと思うのでありまするが、そうしますと、どうしても社債に限るということが非常に窮屈になる。正常な、堅実な場合には、貸付金に対しましても企業担保法適用できるような方法を考えるべきであろうと思う。たとえて申しますならば、現在においても長期の信用を与えている銀行があります。長期信用銀行、あるいはまた、中小企業を対象としている中小企業金融公庫、こういうような金融機関貸付金に対しましても、その事業の総財産担保として浮動性を認めるということが可能になりまするならば、中小企業の利益するところ非常に大きいものがあろうと思うのです。また、実際に即したやり方であると思うのですが、今回、この大企業に限らないで、あるいは社債に限らないで、特に長期信用銀行なり中小企業金融公庫なりの貸付金に対して限定してもよろしいですが、企業担保法を利用できるようなことをお考えになられるかどうかということについてお尋ねをいたしたい。これについては、大臣の御所見も承わりたい。
  114. 唐澤俊樹

    国務大臣唐澤俊樹君) この点は、だんだん御議論のあったことで、私どもも、また、立案に従いました者も全く同感でございます。ただ、今日までの財団抵当制度ではあまりに窮屈であり、煩瑣であり、費用もかかるから、これを少し簡素化して、そうして企業信用力を増す、そのためにこの制度を作ったのでございますが、そこでまあ広く会社に及ぼしまして、そしてその財団の構成要素につきましても非常に自由にする。ただ、そこですべての借金についてこれを適用するかというと、まず新しい試みであるから社債にだけ限ろう、社債と長期の借入金とは違わないじゃないか、そとまで及ぼしたらいいじゃないかという考えもありまして、これは非常に検討いたしたのでございますけれども、長期の借り入れと申しましても、それでは期限をどうするとか、借入金ということになりますと、またいろいろの場合が想像できる、でありますから、まず、とりあえずはこの程度に踏みとどまって、そしてこれを運用してみまして、その実績いかんによりましては、さらに長期の借入金にこの制度を及ぼすことはもう当然理由があると思いまして、その方向に向って進みたいのでございますが、何分にも新しい試みでございますから、まずこの辺で踏みとどまって、そして一応運用の成績を見よう、こういうつもりでございまして、考え方は、だんだんと御意見のありましたことと全く同感でございます。
  115. 古池信三

    古池信三君 大臣の御信念は了解いたしました。ただこの社債に限るということの例外といたしまして、附則において日本開発銀行関係の一号から三号までございますが、これらの貸付金については、やはり企業担保法適用を認めておるわけです。こういうふうな例外を認めておる以上は、ただいま申しましたような中小企業を対象としておる中小企業金融公庫というようなものに対しましても例外を認めても大した不当な点はなかろうかと思うのでありますが、これについて、今度は通産省の方から御意見を承わりたい。
  116. 松尾金藏

    政府委員(松尾金藏君) 私ども通産省の立場といたしまして、産業を担当しております企業が、できるだけ自分の資金確保に有利な態勢を作っていただきたいという点は同じく私どもの強く希望するところでございます。先ほど来お話のございましたように、だんだんとお話のございましたようなことで、この際、こういう新しい制度をしく第一歩としてこのところにスタートしたのであります。将来の問題として、やはり借入金についてもだんだんとこういうことに習熟をし、金融機関側、さらに企業の側もこういう制度に習熟していくに従ってこの制度の実績を見ながら、制度適用範囲の拡大されることを当然希望いたしております。
  117. 古池信三

    古池信三君 次には、この社債権者の利益を保護するという立場から二、三お尋ねをしたいのですが、この法律によりますと、担保権の設定は契約によってやる、そうなりますと、実際は担保附社債信託法によりまして委託会社と受託会社との間の契約に基くことになろうと思うのでありまするが、ただそれだけでよろしいのか、あるいは多数の社債権者を保護するという意味合いから、これに対して行政官庁が何らかのチェックをする、あるいは認可、承認、そういうふうな必要がないかどうか、これに対して御検討になったかどうか、お伺いいたします。
  118. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) ただいま御質問関係は、担保附社債信託法が全面的に適用があるわけでございますので、しかし、企業担保権関係だけではなく、財団抵当担保にする場合にも同じことでございまして、所要の監督の規定、たとえば信託営業の免許の件につきましては五条に適用規定がございますし、その他、社債権者保護に関する規定担保附社債信託法中にございますので、これで十分ではないかということで、特別に企業担保権担保にしました社債発行の場合について監督規定というようなものは別に設けなかった次第でございます。
  119. 古池信三

    古池信三君 担保附社債信託法が全面的に適用があるというお話でありますが、たとえば、財団担保等におきまする重要なる財産をリリーズするというような場合には、あるいは社債権者集会を開くとか、あるいはインデンチュアによって厳格なる規定がなされると思うのであります。で今回のこの企業担保法によりますと、ただ総財産が一体として担保に供せられる、こういうわけでありまするから、その中の相当重要なる財産が移動をしても、これを抑える方法がないように考えるのです。何かそういう場合に対しては、特別な措置が考えられておるのでございましょうか。それをお伺いします。
  120. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点に関しましては、結局社債発行会社と、この受託会社との間で特約を設けまして、発行会社がたとえば重要な財産を処分する、売却する、あるいは担保権を設定すると、そういうようなことにつきましては、受託会社の承諾を要するという特約を設けまして、もしこの承諾を得ない、同意を得ないでそういう処分行為をした場合は、期限の利益を喪失する、そういうような特約を設けることによって、総財産内容に重大な変更が生ずるのを未然に防止するという、そういう措置を講ずることになるだろうと思うのでございます。
  121. 古池信三

    古池信三君 この総財産の中には、たとえば企業者の所有しておる株式というものも当然入ると思いますが、この担保附社債信託法の第四条第二項によりますと、「株式ヲ物上担保目的ト為サムトスルトキハ命令ノ定ムル所二依リ主務官廳ノ認可ヲ受クルコトヲ要ス」とあります。相当厳格な規定がこの担保附社債信託法には規定されておるのでありますけれども、今回の場合はそういう主務官庁の認可というようなものが不必要になるだろうと思うのですけれども、それでこの担保附社債信託法の要求しておる保護という規定目的が達成できるものでありましょうか、どうでしょうか。
  122. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) この担保附社債信託法四条二項の、「株式ヲ物上担保目的ト」する場合、これは株式質の場合と思いますが、特別担保目的として株式をとるという場合は、まさしくこれは相場の変動なんかもある関係で、担保価値が不安定でありますので、主務官庁の認可ということになっておると思うのでございます。ところが、企業担保権の場合には、なるべくその社債発行会社の持っておりますところの他の会社の株式なんかはもちろん総財産の一部でありますので、企業担保権目的になるわけでございますけれども、それだけが担保になるという性質のものではありませんので、担保附社債信託法四条二項のような趣旨規定は必要ないように思うのでございます。  それからなお会社の総財産というものは、変動常ないもので場合によったら重要なものが逃げてしまって中身がなくなってしまうというおそれも、これは観念的には考えられないわけではございませんけれども、そこは受託会社の見込みと申しますか、受託会社信用しまして社債権者に不利益をしないだろうということで、受託会社を信頼しても差しつかえないのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。従いまして、企業担保権担保として社債発行をする場合は、特に主務官庁の認可を要するということまでしなくてもよいのではないだろうか、そういうふうに考えております。
  123. 古池信三

    古池信三君 この総財産の中のある重要な財産について、これをはずそうという場合には、受託会社との間の契約に基いてその承認を得なければならぬ、こういうことを先ほど御説明であります。それは担保価値の減少を防ごうという趣旨だろうと思うのでありますが、同様に株式というものは今御説明があったように、相場は非常に変動するものです。従って、担保権設定当時は相当高い価値を持っておった株式を含めて総財産というものを担保にした場合に、相場の変動によってその株式の価額が非常に下落したという場合には、その総財産担保価値というものはまた減少するわけです。その場合には、受託会社は何ら相談を受けることができぬわけでありますし、自然に社債権者の不利を招致するということになるわけです。そう考えますると、ここに担保附社債信託法の第四条二項に規定された趣旨というものが、やはり今回の場合においても勘案されなければならぬのではないかという気がいたすのでありますが、株の変動ということは、それだけを特定担保物件として物上担保を設定した場合の総財産の一部としてある場合と、変動においては変りはないわけですか、これについてはどうお考えですか。
  124. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) その点はお説のように考えられるのでございますが、株式会社の総財産といいます場合には、一般にはその中で、その会社の持っておる株式が総財産の中の重要な部分を占めておるということは異例に属するのではなかろうか。もっと物的な企業施設、その他無体財産権在庫商品、そういうものがむしろ財産の主体ではないかというふうに考えられるわけでございます。でありますから、社債発行会社財産の主たる部分が株式であるという場合だったら、受託会社としては企業担保権を設定することを差し控えるのではなかろうか、非常に財産関係がはっきり、変動しまして安定しておりませんので、その場合には、受託会社としては企業担保権附では社債の引き受けはしないだろう、そういうふうに考えられるわけでございます。
  125. 古池信三

    古池信三君 ただいまの御議論からいいますと、株式だけを物上担保目的とするということは非常に危険性が多いわけです。そうなればだれも株式を担保にして金を貸さぬだろうという議論になるわけですが、その点はどうですか。
  126. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) これは実際の経済界の取引、その点は取引にまかせておいていいことではないか、ただ四条の二項は、社債権者の保護という見地から、株式を社債担保にとる場合には、社債権者の保護の必要上、単なる取引の実際にまかせるわけにはいかぬということで、四条の二項の規定ができたんだろうと思うのでございます。しかし、一般の場合、株式を担保にしまして金の貸し借りが行われるということ、これは実際社債権者というものがない場合には、銀行対産業、たとえば事業会社との間の取引で、そういうことが行われるのはこれは一向差しつかえないことじゃないか、こう思う次第でございます。
  127. 古池信三

    古池信三君 いや、ただいまのは、担保附社債信託法によって社債発行する場合に、その担保として株式を利用しよう、こういうことが第四条の二項であろうと思うのです。従って、多数の社債権者権利、利益に重大な影響を持つという点からいえば、同様であろうと思うのです。受託会社だけの利益じゃなくて、そのうしろには、多数の社債権者がいるわけですから、その点からいえば同様であろうと思うのでありますが、もう一度この点について御意見伺いたい。
  128. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 同じことを繰り返すようでございますが、会社の総財産の中には、株式もある場合もございましょうが、そのほかにも多くの財産があるわけでございまして、受託会社の方で企業担保権で十分だと認めて信託契約を結びました場合には、それでいいのではないか。特に主務官庁の認可を要するとまでしなくてもいいだろうという趣旨でございます。
  129. 古池信三

    古池信三君 それでは最後に一点だけ御質問をいたしますが、企業担保法によりますと、担保権の実行の方法といたしまして、これは直ちに差し押えをしてそうして三十七条によって換価処分をする、こういうふうになっておるわけです。従って、この担保権の実行によって、一体として動いておる企業がそこでストップしてしまうというわけになる。かように考えますると、せっかくかような企業が、今まで、中には相当な歴史もありましょう、一体として運営されておったものが、たまたま弁済不能のために一括して競売される、あるいは任意売却されるというのでは、その事業をたちまち殺してしまうわけになるのであります。従って、かような際には、強制処分でなく、こればかりでなく、むしろ政府が適当な人を選んで、強制管理をさせる、そうして引き続いてこの事業を運営させて、それによって得たる収益をもって弁済に充てる、こういうことを考えても、企業を一体として、その財産担保としていこうというこの法案趣旨から申しましても適切ではないかと思うのですが、なぜそういうことをお考えにならなかったのでありましょうか。
  130. 平賀健太

    政府委員平賀健太君) 不動産に対する強制執行の場合には、ただいまお説のように、強制管理というようなことと強制処分と二通り制度がございまして、その趣旨を持ってくれば、こちらにおきましても強制管理というものが考えられていいのじゃないか、管財人会社の経営の衝に当りまして、上った収益から弁済をしていくということが考えられないわけではないのでございますが、非常に手続が複雑になります。上った収益と申しましても、個々の不動産をたとえば強制管理する場合は至って事が簡単であります。たとえば、他に貸し付けて上ってくる賃料を弁済に充てるというようなことになるわけでありますが、会社を経営して出てきた収益、これは株主に配当すべきものを企業担保権者に渡していくということになるわけでありますが、会社の経営を管財人がやらなければならない、これは非常に大へんなことになってくるわけで、実際問題としてうまくいくかどうか、非常に疑問があるわけでございます。不動産の強制執行の場合の強制管理すらも現在の実情ではほとんど例がない、非常に手続が複雑で実効の上らぬものであります。ところが、会社の経営の強制管理となりますと、事柄はもっと複雑になりまして、おそらくこれは実効が上らないであろう、それのみならず、非常に手続が複雑になりまして、有名無用の制度になる公算が非常に多うございますので、また、実際界においても強制管理というような方法はとらない方がいいという意見が圧倒的に強かったものでございますので、強制管理というものをとらなかった次第でございます。ことに懸念いたしておりますのは、労働関係なんかもやはり問題になってくるわけで、管財人は労働組合を相手に団体交渉をやらなくちゃならぬというようなことになって参りますと、とても担保権の実行としては非実際的この上もないものになってしまうおそれが多分にあるわけで、そういう関係で強制管理というものはやめたのでございます。
  131. 古池信三

    古池信三君 ただいまの御意見につきましても、私としまして相当な意見を持っておりますけれども、本日は議論することを避けまして、時間も参りましたので、質問はこの程度で打ち切ります。
  132. 青山正一

    委員長青山正一君) 大蔵省の庭山経済課長なり、平賀局長に申し上げます。先ほど高橋委員なり古池委員より調査依頼の件は、商工委員長まで書類として至急御提出願いたいと思います。  ほかに御質問もないようでございますから、これにて本日は終了することにいたしたいと存じますが、法務委員会におきましては、企業担保法案につきまして、明十四日午後一時、第二回参考人として、鈴木竹雄東大教授、堀越禎三経団連事務局長、間島達夫開銀理事、松崎健吉中政連政策局長の四名から御意見を伺うことになっております。つきましては、本連合審査会は本日をもって終了することにいたしますが、商工委員で有志の方は、当日委員外議員として御出席下さるよう、特にお願いいたします。  それでは本連合審査会は、本日をもって終了することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。それではこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会