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政府委員(
平賀健太君) 第一条にいっておりますところの総
財産の
内容でございまするが、これは民法の三百六条に、
一般の
先取特権の
規定があるのでありまするが、これに「債務者ノ総
財産」という用語が使ってございまして、この総
財産と同じ意味でございます。でありますから、この総
財産の
内容といたしましては、要するに、強制執行の対象になる
財産ということに相なると思うのであります。でありますから、先ほどたとえば、例としてお引きがございました工業所有権、これは当然この総
財産の中に入るわけでございます。それから行政庁の許認可に基く
権利、バスの
営業免許と、こういうようなもの、この免許によって得られたところのそういう資格、これは総
財産の中には入らぬわけでありますけれ
ども、この総
財産が
担保権の実行によって売却されますと、その競落人はその免許に基く地位を承継するということで、四十四条の第二項に特別の
規定を置いておるわけであります。でありまするから、総
財産の中には入りませんけれ
ども、その競落人が免許に基く資格を承継することに相なるわけであります。
それからさらに、商号はどうなるかという
お話でございましたが、商号はこの総
財産の中には入らないわけでございます。商号は商法の
規定によりまして、
営業とともにしか譲渡できないことになっておりまして、商号だけを独立して譲渡の
目的にする、従って強制執行の
目的にするということはできないわけでありまして、この商号は総
財産の中には入らないことになるわけであります。
それからのれんといいますか、その名声、得意先という
関係、これもそれだけが独立して総
財産の中に含まれるということにはこれはならぬわけであります。しかしながら、この
営業の、
企業の施設が一体として売却されまして、競落人あるいはその買受人の手に移りますと、その
企業に付随しておりましたこういう名声といいますか、得意先の
関係なんかも自然にくっついていくということはあり得ると思うのであります。のれんというものが、グッドウィルといいますか、そういうものが独立して
一つの
財産権として総
財産の中に入るということにはなりませんけれ
ども、事実上そういうものが
財産の評価の中に織り込まれるということは考えられるであろうと思うのであります。少しおわかりにくかったと思いますけれ
ども、総
財産の中に独立の
財産権としては含まれない。しかし、事実上は総
財産の評価の中にこういうものも織り込まれて評価される場合が多いだろう、そういうことになるわけでございます。
それからこの
担保権の名称でございますが、この総
財産は、今申し上げましたように、
財産権として強制執行の対象になるものだけでありますので、
企業財産担保法とかいった方があるいはより正確であったかもしれないのでございますが、この名称はやはり名前が呼びやすいと、そういう方面の考慮も必要でございまして、なるべく短かくて
通りのいい名前ということで、あるいは
企業担保法という名前が真相には少し遠ざかるかもしれませんが、呼びやすい、早わかりする、そういう見地から
企業担保法という名称を採用したわけでございます。