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政府委員(
内藤譽三郎君)
学校保健法案についての文部大臣の
趣旨説明を補足いたしまして、その
内容の概要を御説明申し上げます。
まずこの
法案の規定
事項についてであります。従来は、
学校における
保健管理制度全般にわたる統一的立法はなく、
学校教育法第十二条の規定及びこれに基く省令等で各個別に規定しており、その他は指導措置によっていたのでありますが、この
法案は、制度の全般にわたり、必要な基本的
事項を総合的に規定することとしたものでありまして、総則、健康診断及び健康相談、伝染病の予防、
学校保健技師ならび
学校医、
学校歯科医及び
学校薬剤師、地方公共団体の援助及び国の補助、雑則の六章二十一条と附則から構成されております。
以下、章ごとに順次、その
要点を御説明申し上げます。
第一章総則におきましては、目的、
学校保健計画及び
学校環境衛生について規定しております。
まず、この法律の目的とするところは、
学校における
保健管理に関し必要な
事項を定めることにより、児童、生徒、学生及び幼児並びに職員の健康の保持増進をはかり、もって
学校教育の円滑な
実施とその成果の確保に資することにある旨をうたい、この
法案の規定範囲とその目標を明らかにいたしたのであります。
学校保健計画につきましては、児童、生徒等の健康の保持増進をはかるためには、児童、生徒等の健康診断その他その保健に関する
事項について合理的な計画を立て、計画性をもってこれを
実施しなければならないことを規定しております。
次に、
学校環境衛生につきましては、主として
学校内の環境衛生のことを規定したもので、日常努めるべき換気、採光、照明、保温、清潔等の
学校内の環境衛生の維持と必要に応じてその改善をはかるべきことを規定したものでありますが、この
実施については、
参考指針を示したいと考えております。
第二章は、健康診断及び健康相談に関する規定で、就学時の健康診断、児童、生徒、学生及び幼児の健康診断、職員の健康診断並びに健康相談のことを規定しております。
まず、健康診断という言葉でありますが、従来
学校教育関係法規では、身体検査という言葉が使われておりましたが、身体検査というと身体的な体格検査に偏したような語感もあり、最近の各方面の用語例にも合わないので、この
法案においては健康診断と改めるごとにいたしたのであります。
就学時の健康診断につきましては、従来就学時の身体検査として全国約八割近くの小
学校において行われておりますが、これは特別な法的根拠に基いて行われてきたわけではなく、その
必要性から事実上行われてきたものであります。しかし、就学時の健康診断は、市町村の
教育委員会が学齢簿を作成し、入学通知を行う就学事務との関連において行なって初めて所期の目的が達せられるものでありますから、この
法案においてはそのように制度化いたすこととし、就学時の健康診断の結果に基き、入学までに必要な治療の勧告をし、就学義務の猶予もしくは免除または盲
学校、ろう
学校もしくは養護
学校べの就学に関し指導を行う等の適切な措置をとるものといたしたのであります。
児童、生徒、学生及び幼児の健康診断につきましては、これは従来の
学校身体検査を移行したものでありますが、従来の身体検査がやや形式に流れているきらいがありますので、この
法案成立の上は、健康診断の方法及び技術的基準等を省令においてできる限り整備し、また、健康診断の結果に基く事後指導等の措置につきましても、できるだけ
実施に便利なように整備いたし、後に述べます要保護及び準要保護児童、生徒に対する保健医療費の補助と相待って、いわゆる
学校病の一掃に努力するようにいたしたいと考えております。
職員の健康診断につきましては、事業主たる
学校の設置者が行う建前とし、また、市町村立の義務
教育諸
学校の校長及び教員の結核に関する定期の健康診断は、従来の実績にかんがみ、また、統一的基準をもってより効果的に行う
必要性から、特に都道府県の
教育委員会において行うことといたしております。
健康相談につきましては、従来指導措置によって行われてきましたが、この
法案におきましては、これを制度として行うこととし、その充実をはかりたいと考えております。
なお、健康診断の方法及び技術的基準、その時期、検査の項目等に関しましては、細目にわたりますので、主として省令で定めることにいたしております。健康相談の
実施基準につきましては、
参考指針を示したいと考えております。
第三章は、伝染病の予防に関する規定であり、
出席停止、臨時休業、省令への委任のことを規定しております。
従前
学校における伝染病の予防に関しましては、
学校伝染病予防規程という戦前の省令がありましたが、新
憲法制定以後は
一つの
参考基準としての
意味しか持っておらないものとされております。この
法案におきましては、伝染病予防法その他伝染病の予防に関して規定する一般公衆衛生法規に規定のない
事項について、
学校における伝染病の予防に関し必要な
事項を定めたものでありまして、最も重要な予防方法である
出席停止のことと臨時休業のことを明記し、その他の予防方法の細目は省令に委任しております。
なお、伝染病による児童、生徒等の
出席停止については、急施を要するので校長が行うものとし、伝染病予防上必要がある場合の臨時休業については、単に個々の
学校の臨時休業だけでは効果を期待できないことが多いこと及び
学校の全部または一部の授業を休止することでもありますので、
学校の設置者が行うことといたしました。
第四章は、
学校保健技師並びに
学校医、
学校歯科医及び
学校薬剤師について規定しております。
学校保健技師は、都道府県の
教育委員会の
事務局に置き、上司の命を受け、
学校における
保健管理に関し、専門的技術的指導及び技術に従事する一種の専門職であります。この種の制度は、戦前は地方
学校衛生職員制という勅令によって各都道府県に
学校衛生技師というものが置かれていたのであります。
学校における
保健管理の問題は、専門的
事項について学識経験がある医師等が必要でありますので、少くとも都道府県の
教育委員会の
事務局に、この種の専門職を置くことといたしたのであります。
学校医、
学校歯科医及び
学校薬剤師については、従来省令で暫定的に規定されておりましたが、これらの
学校医等の設置は、本来法律で規定すべき
事項と思われますので、この
法案においてはそれらの設置のことを規定し、まま、従来
学校医等の職務の範囲が、必ずしも明確でない点もありましたので、この
法案の規定に基いて職務執行の準則を省令で定めることといたしました。なお、
学校薬剤師につきましては、この制度が設けられたのが比較的新しく、現在の設置
状況が低いため、本法施行後も
昭和三十六年三月三十一日までは置かないことができるという
経過規定を付しておりますが、
政府といたしましては、本則において
学校薬剤師を必置とした
趣旨にかんがみまして、三年間の猶予期間を待たずに、できるだけすみやかに各
学校に設置されるよう勧奨いたしたいと考えております。
第五章は、地方公共団体の援助及び国の補助に関する規定であります。
学校において健康診断を
実施し、児童、生徒の疾病が発見された場合等に、
学校において疾病の治療の指示をいたしましても、従来の最も大きな隘路は、経済的
理由によって医療費を支出することが困難な要保護および準要保護の児童、生徒の場合であります。この
法案におきましては、地方公共団体は、その設置する義務
教育諸
学校の児童または生徒の保護者のうち、要保護および準要保護のものの児童または生徒が、政令で定める伝染性または学習に支障を生ずるおそれのある疾病について
学校において治療の指示を受けた場合は、二の疾病の医療に要する費用について必要な援助を行うものとし、その地方公共団体の援助に要する経費の一部について国は補助することができることといたしております。なお、政令で定める疾病とは、
学校病ともいわれるトラホームその他の眼疾、伝染性皮膚疾患、中耳炎、アデノイド、蓄膿症、鶴歯、寄生虫卵保有を予定しており、また、国の補助については、二分の一の補助を予定し、なお、公費負担割合は、要保護児童、生徒については全額、準要保護児童、生徒については半額を予定しております。
次に、国の補助としては、都道府県に対し、公立の義務
教育諸
学校の校長及び教員の結核に関する定期の健康診断に要する経費の一部を補助することができることとし、補助率は二分の一を予定いたしております。
第六章の雑則では、保健室、保健所との連絡、
学校の設置者が事務の委任を行うことができることを規定しております。
この
法案に規定された健康診断及び健康相談を行うため、その他救急処置を行うため、
学校には保健室を設けるものといたしました。
保健所との連絡につきましては、健康診断を行う場合、結核に関するエックス線検査、ツベルクリン反応陰性者等に対する予防接種等に関し、保健所の協力が必要であり、また伝染病によって
出席停止や臨時休業の措置をした場合は、保健所における一般公衆衛生活動との連絡が必要でありますので、規定いたしました。
学校の設置者が事務の委任を行う場合については、この
法案において建前として
学校の設置者が行うとされた事務が二、三ありますが、大学以外の公立
学校に関しては地方
教育行政の組織及び運営に関する法律に、公立大学に関しては地方自治法にそれぞれ事務の委任の規定がありますので、これらの
学校に関しては、それらの法律の特別の定めによることとし、その他の国立または私立の
学校については、校長に委任することができるとしたのであります。
附則におきましては、本法の施行期日と前述いたしました
学校薬剤師の設置の特例の規定を設けたほか、本法の施行に伴い、
関係法律に所要の
改正を加えております。
以上、
学校保健法案につきまして、各車ごとにその
内容の
要点を御説明申し上げた次第であります。