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1958-03-04 第28回国会 参議院 文教委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月四日(火曜日)午前十 時五十一分開会     —————————————   委員異動 本日委員川口爲之助君及び秋山長造君 辞任につき、その補欠として前田佳都 男君及び松澤靖介君を議長において指 名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯山  勇君    理事            野本 品吉君            林田 正治君            常岡 一郎君    委員            川村 松助君            下條 康麿君            前田佳都男君            吉江 勝保君            高田なほ子君            松澤 靖介君            松永 忠二君            大和 与一君            吉田 法晴君   国務大臣    文 部 大 臣 松永  東君   政府委員    文部大臣官房総    務参事官    斉藤  正君    文部大臣官房会    計参事官    天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省管理局長 小林 行雄君   事務局側    常任委員会専門    員       工楽 英司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査の  件  (当面の文教政策に関する件)     —————————————
  2. 湯山勇

    委員長湯山勇君) これより文教委員会を開会いたします。  前回委員会南極地域観測隊隊長永田武君及び宗谷の松本船長に対して、当委員会から感謝激励電報を打ちましたが、それに対してあいさつの返事が参っておりますから、御報告申し上げます。  昭和三十三年三月三日   参議院文教委員長殿   南極地域観測隊隊長永田武   御懇篤な電報を拝受いたし恐縮に存じます。われわれ微力のあらん限りを尽して努力いたしましたが、不幸にして第二次越冬観測の目的を達することを得ず、国民各位に対し誠に申し訳なく存じております。南極の自然の偉大なることをいまさらの如く痛感し、わが国といえども南極遠征に関する先進各国と同様に、少なくとも数ヵ年の年月をかして、じっくり対処するのでなくては、南極大陸の一角に厳然たる基地を築きあげることは難しいと悟りました。若し、許されますならば、今回の経験を足場として、われわれ一同想を新たにして、再び昭和基地に帰り、この前人未踏の地の科学的開発をつづけさせていただきたいと念願しております。   貴委員長はじめ委員各位のこれまでの御厚意を厚く感謝し、併せて今後の御鞭撻を、お願いいたします。 以上であります。     —————————————
  3. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 引き続き、当面の文教政策に関する件を議題といたします。質疑のある方は順次御発言を願います。なお、社会教育局長大学学術局長も後刻見えるはずでございます。
  4. 松永忠二

    松永忠二君 前回に引き続いて、少しまとめて教育課程の問題について見解をお聞きしたいと思うわけです。それより前に、この前、初中局長が申されました中で少し……、まあ非常に私ども不穏当だというように考えられるような言葉があったと思うのですが、当分の間、初等中等教育局で作るという「当分の間」というのは、司令部から言われたので、そういうようにしたというお話があったわけですが、そういうことになると、私たち司令部の方からどういうような話があり、どういうような経過をもってそれがそうなったのかということを明確にお聞きをした上で、私たちは党内でも一つ相談をしてみたいと思うわけであります。ただ、そういう意向があったが、結局文部省として討議をされてそういうふうにしたというお話であれば別でありますけれども、そういう点については、やはりその言葉を改めるなり、あるいは明確にするなりしておいていただきたいと思うのですが、その点について一つ局長の方から御意見を聞きたいわけであります。
  5. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 私は文部省設置法の制定……、たしか設置法改正になりましたときに、当時占領下にありましたので、その間の事情を申し上げたわけでございます。
  6. 松永忠二

    松永忠二君 その間のことを申し上げたというお話でありますが、その間そうであって、そういう意向もあったけれども、当時の文部省責任においてそういうものを決定したというふうに私たち考えるわけですが、押しつけられてそういうふうにやったんであって、全然文部省意思ではなかったというお話なのか、やはり文部省としてもそれを討議されて、現状ではそういうふうにすることが適当だと考えられて法律にきめられたのか、そこを明確にしていただきたいと思うわけであります。
  7. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) そういう司令部のサゼスチョンもありました。文部省としては、その当時においてはこの設置法改正が妥当であると、かように考えたわけであります。
  8. 松永忠二

    松永忠二君 大体それでわかりましたが、教育課程というのは、今法的にはどういう性格のものだというふうな解釈をされているのか、その点を一つお聞かせいただきたい。
  9. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは御承知の通り学校教育法施行規則教育課程規定がございますので、この教育課程学習指導要領基準によると、こういうふうに規定されておるのでございます。ですから、教育課程基本に関するものは文部大臣がきめ得ると、かように考えております。     —————————————
  10. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 委員異動がありましたから、この際委員異動について報告いたします。本日、川口爲之助君及び秋山長造君が辞任され、補欠として前田佳都男君及び松澤靖介君が選任されました。以上であります。     —————————————
  11. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、こういうふうに解釈をしてよろしゅうございますか。その教育課程基準を設定するということは、いわゆる文部省の仕事、権限だ、しかし教育課程編制とか、実施をするということについては、これは地方教育委員会責任だというふうに解釈をしていいのかどうか。
  12. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 国の基準に従って地方が具体的にどういうふうに教育課程を組むかということ、あるいはその教育課程実施するか、この面は都道府県なり市町村教育委員会責任である、かように考えております。
  13. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、私の申し上げたように、教育課程のどういうふうなものを編制し、どういうふうに実施をしていくかということは、地方教育委員会責任であると、従って文部省自身教育課程そのものを作るということではなくて、教育課程そのもの地方教育委員会が作るというふうな考え方だと私たちは思うわけであります。そうすると、地方教育行政の、例の新しい教育委員会法の第四十八条の2の二というところに学校組織編制教育課程学習指導生徒指導職業指導及び助言を与えることができるというようなことが書かれていて、そういう意味指導助言については文部省として権限があるということになっておるわけでありますが、同時に、地方教育行政組織及び運営に関する法律の第四十九条に、教育課程、教材の取扱いその他は教育委員会規則で必要な基準を設けることができるというふうに出ておるわけです。そうすると、教育課程の必要な基準地方教育委員会規則できめることができるということになっていると、今教育課程審議会が答申をしているように、何の教科は何時間、何の教科は何時間というようにはっきり教育課程がきめられているわけです。そういう中で必要な基準というのは一体どういうことなのか。それを一つ御説明いただきたいと思っております。
  14. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 文部省できめますのは基本でございましてあるいは最低授業時数等をきめるわけでございますが、これを具体的にどういうふうに組むかということは、これは市町村教育委員会責任になるわけであります。
  15. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、新しい教育課程の何時間、何時間、何時間というのは、一つ基準であって、それに基いて地方教育委員会編制をし、実施をしていくために時間を増減をしていくということは、これは当然あり得ることだというふうに考えていいわけですね。
  16. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) いろいろものによりけりだと思いますが、ただ、今御指摘の時間配当については、私ども最低基準だと考えておりますので、減をする方は差し控えていただきたいと思います。つまり義務教育というものがどういう内容のものであるかという点で、これは国民全部に責任を負わなければならぬ問題だと思いますので、私ども義務教育内容及び方法基本については国の基率に従っていただきたい、かような見地から、ただいま御指摘の時間配当につきましては、ふやす方はこれはけっこうでございますけれども、減らす方は、私ども基準最低であると考えておりますので、これを下りますと基準がばらばらになってしまうおそれがあると思いますので、減らす方は考えておりません。
  17. 松永忠二

    松永忠二君 ただ、あなたの御希望はわかるわけなんですよ。文部省希望はわかるけれども、必要な基準というのは最低で、それより下っては悪いとか、上ならいいというようなものではなかろうと思うのです。基準というものは、あくまで基準であって、それが最低基準だということはどこにも法律的に書いてないわけです。必要な基準を設けるということは、何もそれよりも下ならば必要な基準ではなくて、上でなければできないという理由はないと思います。希望としてならわかるけれども、それがそうだという解釈をすることは、私はできないと思うのです、どうですか。
  18. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 国の方でやるのは基準でございまして、その点が現在の施行規則で明瞭になっていないものもあるかと思います。しかし、私どもは今後国が守るべき基準については、はっきり施行規則できめたい、かように考えておるのであります。
  19. 松永忠二

    松永忠二君 私は、あなたのさきに言われたように、これは要するに文部省としての一つ希望であるということならよくわかるわけなんです。そういう意味一つ基準であるけれども、それを下ろうが上ろうが、とにかくその基準を逸することなくやっていくし、またそういう点について文部省はそれが最低基準であるので、そういう点を十分に留意をして編制をしてくれという指導助言権限はあるにしても、これが下ったからといってそれが違法であるとか、どうとかいう性質のものではないと思います。これはどうですか。
  20. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ちょっと私、言葉が足らなかったかと思いますが、現行法におきましては、お説の通り基準範囲というものは上る場合も下る場合もあると思います。しかし私どもは、今教育課程改正に当って検討しておりますのは、もちろん省令改正を含んでおりますので、この場合に現行のように基準範囲が不明確では困るのじゃなかろうか。もう少しこの基準範囲を明確にしたい。このうち国家的な基準として守らなければならないような点は省令の中に盛りたい、かように考えておるのでございます。
  21. 松永忠二

    松永忠二君 別に私は国が基準を作って悪いということを申し上げているのではなくてやはり現行法でも基準を作るということは認められていることであるし、どこまでもその基準に従って、やはり地方実情に即してそれが決定をされ、編制をされ、実施をされていくべきものだと思う。それを決定的なワクづけを行うということは非常に逸脱だと私たち考えるわけです。そこで大臣に質問したいのですが、文部省で出されている学習指導要領一般編という所に教育課程について、こういうことが書いてあるわけです。「教育課程は、それぞれの学校で、その地域社会生活に即して教育目標考え、その地域児童生徒生活考えて、これを定めるべきである」こういうふうに書いてある。だから教育課程は、それぞれの学校でその地域社会生活に即して教育目標考え、その地域児童生徒生活考えてこれを定めるのであって学校で定めるのだというふうなことが出ておるわけです。こういうふうな性格を持っているという説明をしておる教育課程が、今同じ法律の中でこれをどうしても守らなければできない、しかも文部省の作った基準通りにやらなければできないというような教育課程そのもの自体文部省が作るというような、そういうようなものに性格を変えていっていいものかどうか。そういう点について一つ大臣の、同じ法律のもとに、法律改正というものが行われないのに解釈がどんどん変更されていって、前には教育課程というものはそれぞれの学校で、その地域実情に即して編制をされていくべきだ、権限事項としては教育委員会がそれをいろいろと基準を出していくということはあるとしても、学校教育課程というものについては実情に即してやっていくべき性質のものだというふうな規定づけをしているわけです。法律が何ら変らないのにかかわらず、その性格がどんどん変更していってしまうということは、一体正しい法律の施行されている状況であると考えるのかどうかという点について、文部大臣に御意見を聞かせていただきたいと思うのです。
  22. 松永東

    国務大臣松永東君) 文部省といたしましては、教育課程基本だけをきめまして、そして各都道府県教育委員会で、実施についてはやはりその土地々々の実情に即応するようにやってもらう。しかし、文部省のきめましたところの教育課程基準だけはやはりそれを中心として実施してもらいらいというのが今までの行き方だというふうに心得ております。
  23. 松永忠二

    松永忠二君 大臣の御答弁によると、結局従前通りの、つまり教育課程というふうな性格考えているというわけですね。
  24. 松永東

    国務大臣松永東君) 今までのことを私は申し上げたのであります。松永委員の御説は、これから先の改正に基いての心がまえ、それは今局長が申し上げたのですが、実情に即して新しく今の基本的な考え方を打ち出してみたいというふうに考えておるわけです。
  25. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、今の法律では、法的な解釈ではそうだけれども、今後はそういう点については新しい方法でいくのだというような、具体的にどこの法律をどういうふうに変更るのか。
  26. 松永東

    国務大臣松永東君) 教育課程基本問題については、大体この八月ごろきめたいというふうに考えておるのですが、しかし、まだどこをどうするかということはきめておりません。今研究中に属しておるのです。しかしながら、大体これまでの教育課程基本と大して違わない範囲においてきめたいというふうに考えております。
  27. 松永忠二

    松永忠二君 だいぶ同じことになるのでありますが、今、文部省が、局長が言われたような性格のものに変えていくのに、変えなければできないたくさんの法律があるわけであります。たとえば地方教育——一つ聞いてごらんなさい。地方教育行政組織及び運営に関する法律の中でも、第四十八条というところに、教育課程というものの、文部省指導及び助言を与えることができるということが出ているわけなんです。それから文部省設置法の第八条の十三というところには、左のような方法によって、教育課程のあらゆる面について、教育職員その他の関係者に対し、専門的、技術的な指導助言を与えることというのが出ております。要するに教育課程そのもの文部省が作るのではなくて、教育課程編制というようなことは、各教育委員会実施をするので、それについての指導助言というものを与えるというふうに出ているわけなんです。ところが、教育課程そのものを作って、それをそのままやらせるということになるならば、今申し上げましたように、新しい教育委員会法の四十八条も、四十九条の基準をきめることも、設置法も、皆改めていかなければできないわけなんです。そういうことをやって、教育課程そのものを作って、そのままに実施させるというような方向にいくのか、それとも教育課程は、従前通り基準文部省で作るけれども、やはりその基準は、望ましい基準としては最低基準だけれども地方編制をし、実施をする権利従前通り、今局長が言われたように、文部省が、そういう権限はやはり地方教育委員会にあるという法律をそのままに認めてやっていきたいと、こういうふうに考えるのか、どっちですか。
  28. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ただいま御指摘の、地方教育行政組織及び運営に関する法律の四十八条及び四十九条並びに文部省設置法に関する権限は、毛頭変える意思はございません。現行通りでございます。ただ、もちろん地方教育委員会が具体的に教育課程をきめる場合、これに対しては文部省指導助言をする。この線は一つの線でございます。同時に、学校教育法の方では、これは学校教育法自体からどういう教科を置くか、その教科基準に関するものは、これは文部大臣権限にまかされているわけですから、この点は、学校教育法及びその施行規則の方において問題を処理しているわけなんです。今お尋ねの点は、むしろ学校教育法施行規則の問題になってくると思います。
  29. 松永忠二

    松永忠二君 私は、その施行規則を変えて、教科を設定しても、あるいはどういうことを施行規則でお変えになったとしても、今言ったように、文部省権限というものは、そういう指導助言権限がある。そうしてまた学習指導要領基準を作るという、そういう権限を持っているということ以外にはないのであるか。従って今言う通り行政法を変えない以上、今申し上げたような教育課程に対する文部省権限が拡大されるということはないわけです。私たちは、現在の法律をもってしては、どうしてもそのもの自体を、教育課程そのものを作って、それを押しつけていくという形には、どうしてもなり得ないというふうに考えるが……。
  30. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは、お話の点は、主としてこの学校教育法、それに基く施行規則によって、文部大臣権限は明確になっているわけなんです。今お話しの点は、指導助言、これはきまったことに対する指導助言であって、学校教育法施行規則でどういう教科を置くか、それからまた、その基準をどういうふうにするか、これは学校教育法から文部大臣に直接ゆだねられた権限でございまして、私どもはこの間に何ら食い違いがないと考えます。むしろ文部省設置法なり、あるいは教育委員会法の方は、この権限範囲規定したものであります。権限の行使の仕方は、学校教育法及びその施行規則に基くわけで断ります。
  31. 松永忠二

    松永忠二君 それはさっきから申し上げておるじゃありませんか。教育課程基準を作るということ、教育課程学習指導要領基準による、基準を設定することは、文部大臣権限であり、教科を作ることも権限であるけれども、その教育課程基準というものは、あくまで基準であるのだから、従ってその基準に基いて実施しあるいは編制をする権利は、地方教育委員会にあるのだ、これは別にその権限施行規則の中で拘束することはできないでしょう。その施行する権利編制権学校教育法施行規則の中で拘束することを考えておるわけじゃないのでありましょう。そうなってくれば、あくまでも実施権編制権を持っておる地方教育委員会が、行政法に基いて必要な基準を設定し、そうしてまた、それを編制していくということは権限事項である。あなたのおっしゃるように、学校教育法施行規則の中で考えていくというのは、教科を設定したりすることでありましょう。教科を設定したからといって、その教科に基いて教育課程というものが編制をされたとしても、文部省の出されるものは、あくまで基準だということについては、さっきから申し上げておるように、あくまでも基準である。基準を作る権限文部省にないと私は言っておるわけじゃない。従って現在の解釈をもってすれば、私は将来もまた、今考えておる局長考え方をもってすれば、教育課程というものは、あくまでも文部省考えておるのは基準であって、基準に基いて地方教育委員会編制し、実施をしていくという権利を持っておる。編制をし、実施をするときに、一つ基準を設定することができるという法律がきめてある以上、文部省教育課程をそのままぴしゃりやらないから、そこで違法であるということは、私は言えないと思う。だから、大臣にお聞きしたいことは、今の話から、結局文部省が今後改めようということを考えておるとしても、それはあくまでやはり教育課程基準を設定するということを文部省が行う、編制実施をする権利はあくまで地方教育委員会にあるという従前法律規定を変更する意思はないと私は思うのですが、それで誤まりはありませんか。
  32. 松永東

    国務大臣松永東君) 私の考えは、文部省といたしましては、教育課程基本大臣が作る、その大臣が作りました教育課程基本基準に基いて、各都道府県委員会実施権編制権を持っておる。でありますから、この教育課程基本改正せられれば、それに従って、やはり地方実施権編制権も変っていかんければならぬ。すなわち、そうした間柄から、やはり指導助言等大臣がやっていくことができるというふうに考えております。
  33. 松永忠二

    松永忠二君 だから、大臣の言われておることは、私の言っておることと同じですよ。基準が変るから、基準が変ってくるので、それに基いて地方教育委員会編制実施をする権利を変えるのじゃなくて、実施やこの編制の仕方を変えるのだ、権利を変えるわけじゃないのでありましょう。だから、従って文部省が出しておるものはあくまで基準であるということについては、誤まりがないわけであります。その点を文部大臣にお聞きしておるわけです。今後は、いや基準を作るということではなくて、教育課程そのものを作って実施をさせるということにするということではなくて、やはり従前通り基準を作るのだということにあろうと思うわけです。それで誤まりはないと私は思うのですが、どうですか。
  34. 松永東

    国務大臣松永東君) 私ども考え方は、これは松永委員の仰せになることと同じことじゃないかと思うのですが、要するに、この八月までのうちに教育課程基準一つ改正する、そういうふうに考えております。そこでその基準に基いて都道府県の方ではやはり実施をしておられる。しかも編制もそれに基いてしておられる。それに基いてやはり文部大臣としては指導助言をする権限を持っておる、こういうふうに考えております。
  35. 松永忠二

    松永忠二君 わかりました。従って私たち考えでは、文部省が今後考えていることは、基準を変更するということを考えているのであって、基準性格そのものを変えていくことではない。従って、従前通り教育課程についてはあくまで地方教育委員会編制権実施権を持っているのだ、従ってそれに必要な基準教育委員会が作って、最低であろうと——基礎最低としても、その増減地方教育委員会権限に属するというふうに解釈をしていくべきだと私たちは思うわけであります。  そこで大臣になおもう一つお聞きいたしたいのは、学習指導要領性格であります。学習指導要領というものは、一体どういう性格を持つものなのか。これは大臣にあとから関連してお聞きいたしますので、局長の方から一つお聞かせをいただきたいのでありますが、学習指導要領というのは、現在の法律ではどういう性格を持っておるものでありますか。
  36. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは、法的にはむしろ告示のようなものだと思います。ですから省令ではございませんが、省令と通達の間になる、まあ告示的なようなものに考えております。
  37. 松永忠二

    松永忠二君 一体それはどういうことなんですか。もっとはっきり御説明して下さい。告示省令ではなくて、告示だとか何とかというお話でありますが、しかしそういうことと、一体その学習指導要領というようなものについては、学習指導要領基準文部省が作るということだが、その学習指導要領そのものをそのまま一体やらなければできないものなのか、法律的な規制を持っておるものなのか。そういう性格もあわせて一つ御説明をいただきたい。
  38. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この学習指導要領という性格は非常に法的にもめんどうな性格を持っておりまして、実は昔は、主としてこれは教授要目及びその取扱いということになって、これは訓令で出ておったものでございます。ところが御承知の通り、終戦後、この学習指導要領という、いわゆるコース・オブ・スタディという形で教育基本を示すようになったのでございます。これがどういう法的な性格を持つかというお尋ねでございますが、この中には、いわゆる国の基準になるようなものと、それから教育の扱い方と、要素がいろいろあるわけでございます。たとえば何を何時間やるというような一般編に出ておりますところの時間配当のようなものは、むしろ国家的な基準ではなかろうかと思っております。それから、中に盛られた教育内容及びその取扱いにつきましては、ある面では、指導法のような面も入っておるのでございまして、多少この学習指導要領という性格内容的にはいろいろなものを含んでおると、こういうふうに御了解いただいて、法的には文部大臣が作成したところの教育基本方針である、こういうふうに考えいただいたらけっこうかと思います。
  39. 松永忠二

    松永忠二君 告示の問題について一つ御説明下さい。告示とか何とかという、省令じゃないという……。
  40. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この点は、従来指導要領につきましては、別に告示とか通達とか、こういう形で出しておるわけじゃございません。文部省が著作権を持った印刷物でございます。しかしながら、この中には、国家的な基準を含んでおりますので、私どもは今後出す場合には、告示というような形で出したいというような希望を持っております。
  41. 松永忠二

    松永忠二君 だいぶはっきりしてきたのですが、これは学習指導要領というのは、要するに一つ基本の方針だ。そしてこの中には、要するに参考的な、手引き的な内容も含んでいるのだ、そうしてこれはもともと印刷物というようなもので、告示などというような……、何ですか、告示ということになりますと、印刷物と告示というのはだいぶ性格が違うと思うのですが、その点はどうなんですか。告示ですか、印刷物ですか。
  42. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは、文部省が著作権を持った印刷物でございます。私は今後、この中には国家的基準を含んでおるものがありますので、手引きに相当するようなものと、そうでないものに分けるべきじゃなかろうか、国家的な基準に相当するものは、これは告示か何かの形で出すべきじゃなかろうか、かように考えておるのでございます。
  43. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、もう少しこまかいことをお聞きしたくなるのでありますが、告示にするものはどういうものなのか、印刷物にするものはどういうものなのかということを聞きたいわけであります。しかし、学習指導要領の中にいわゆる教科の時間がちゃんと出ておるでありましょう。そうなってくると、学習指導要領というのは一つ基準基本方針なんだから、従って学習指導要領に基いている教科の時間等も、あくまでやはり基本であって、何もそれをそのままぴしゃっとやる性質のものではないと私は思うのでありますが、どうなんですか。
  44. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この従来の学習指導要領はこれは非常に膨大なものでございまして、おそらくこのくらいあると思います。ですから、この中には教育内容にどういう内容を盛るかということと同時に、今御指摘になったような手引きのようなものが相当多いのでございます。ですから、そういう手引きのようなものと、国家的な基準に相当するものを分けるべきではないかという意見が出ておるわけであります。そこで国家的基準に相当するものは、これは告示で出していくんだ、手引書のようなものはこれは手引きで出せばいいと思っております。教師用の手引書を文部省がたくさん出しております。その方に譲ってもいいものが相当あるわけであります。特に最近の学習指導要領は非常に薄いものにいたしたわけでございます。従前のものは非常に分厚い手引書に相当するほどの厚さがあったのでございます。この点を最近だんだん改訂いたしまして、最近は国家的基準のものに改正しつつあるわけでございます。
  45. 松永忠二

    松永忠二君 もう少しで終りたいと思うんですが、告示で出すとか、そういうふうに内訳をするなら、教科の時間等の問題については、これは別に施行規則の中に出ておるわけでありますから、そういう点はまああると思うんです。それ以外には学習指導要領の中にはそういうものは含まないというように私は思うのでありますが、大臣にお聞きしますが、学習指導要領というものにこういうふうに書いておるんですよ、文部省ではっきり出しているもので。「学習指導要領は、児童生徒の学習の指導にあたる教師を助けるために書かれた書物であって、教師が各学校において指導計画をたて、教育課程を展開する場合に、教師の手びきとして、教師の仕事を補助するものとして、役にたつものでなくてはならない。」と、こういうふうに書いてある。「学習指導要領は、児童生徒の学習の指導にあたる教師を助けるために書かれた書物」である。そうして「教師が各学校において指導計画をたて、教育課程を展開する場合に、教師の手びきとして、教師の仕事を補助するものとして、役にたつものでなくてはならない。」と書いてある。こういう学習指導要領という性格を持っているものが、いつの間にか学習指導要領そのものを、つまり学習指導要領そのもの通り実施していかなければできないというふうに強制をされてくるものとするならば、同じような法律のもとで、こういう性格の変化をされるということが妥当であるのかどうなのか、その点を一つ御回答をいただきたい。一体どういう理由から学習指導要領性格を今後変えていかなければできないのか、その点を一つお聞かせをいただきたい。
  46. 松永東

    国務大臣松永東君) これは、御指摘になりました学習指導要領、これを法律的にしさいに検討いたしますというと、いろいろ御指摘になりましたように、あるいは法律的の性格を持っておる面もありましょうし、あるいは手引きの面もありましょうし、あるいは告示の面もありましょう、それぞれのやはり役所に従来からのしきたりといいますか、慣例といいますか、そういうものがあって、結局この学習指導要領も右申し上げるようないろいろの性格を包含しておるものと認められる。でありますから、これは一つ文部省の出版したところの書物でありますが、しかしこれがやはり教師の教授に対する手引きとなり、参考となりして、今日まで行われておるというふうに考えておる。でありますから、これを御指摘にもありました通り、もう少し研究しまして、この八月までにはこれを法制化するか何かして、そうして皆さんの納得のいくように、一つ作ってみたいというふうに今研究を重ねております。
  47. 松永忠二

    松永忠二君 大臣は簡単にそういうふうな言葉を申されるのでありますが、学習指導要領を法的に整備するとはどういうことなんでありますか。言葉は非常に簡単にお使いになるのですが、その学習指導要領を法的に整備するというのは、具体的にどういうふうにすることなのか、そういうことを一つ内容をお聞かせ下さい。どういうことなんですか、法的に学習指導要領を整備するということは。
  48. 松永東

    国務大臣松永東君) これは、法制化するという考えを持っておるわけじゃないのです。しかし、もう少し拘束力を持たせるようにした方がいいのか悪いのか、もしくは今まであった通りやはり参考書類とし、手引きとして存在さしておいた方がいいのか、そういうのを一つ研究せぬければならぬ、こういうことで今一生懸命研究を重ねておるところなのです。
  49. 松永忠二

    松永忠二君 それはしかし大へん——さっき話が出てきたように、学習指導要領を法制的拘束力を持つようにさせていくというようなことは、現状では学習指導要領基準文部省が作って、そうしてそれに基いて教育課程編制されるというのだから、これ以上整備するということになれば、学習指導要領文部省はこしらえて、そうしてそれに基いて教育課程を全部作って、それを地方でそのままやらせるということ以外にはもう幅はないわけです。そういうことを実施をしていくということになれば、これは現在の法律を改めていかなければできないということなんで、容易なことじゃないと思うわけです。そういうことまであえて今後おやりになろうというようなお考えを持たれておるのですか。
  50. 松永東

    国務大臣松永東君) 問題を研究しておるところはそこなんですよ。ただ一片の通達だけで、何の拘束力もないでもいかぬ面もある、しかしこういうことをやってほしいという望ましい点も多分に含まれている。でありますから、そういう点を研究して、もう少し各地方々々の実情に即応するように実施をしてもらうのと同時に、文部省の意図のあるところを順守してもらうようにせなければいかぬというふうに考えまして、どういうふうにするかということを今研究いたしまして、八月までには一つ作り上げようということになっておるわけです。
  51. 松永忠二

    松永忠二君 だいぶいろいろお聞きしましたので、私は終りたいと思うのでありますが、いろいろまあ御研究をなさるというお話でありますけれども、現実には学習指導要領基準文部省が作り、その学習指導要領基準によってできるだけそれに沿って編制をし、実施をしてもらいたいということを通達等でお出しになるということであるので、そういう点については徐々にそういう整備をされているわけなんです。従ってこれ以上私たちはそれを検討をして、学習指導要領そのものを実はそのまま実施をするように、教育課程そのものを、そのまま地方実施をしなければできないように、法的に改めていくということになると、これは私たちは新しく作った教育委員会法の精神にももとる点があるし、もちろん当初の教育委員会法の精神とは全然違ったものが出てくるので、こういう点についてはむしろ通達を出して基準を強化するということについても、われわれとしては相当疑念を持っておるわけなんです。それをなお一そう法的に整備をしていくということになれば、文部省というものの役目というものがだいぶ変ってくる、変更してくる問題だというふうに考えるわけなんです。一つ大臣にも御研究をいただいて、十分に慎重にこの問題等については善処していただきたい。で、新聞紙上にいろいろ出ていることを見ると、教育課程審議会が答申したものが来年からもうそのままその通り実施をされるというふうに考えておられる一般の方々もあるし、それをまた引き継いだ初中局長指導主事を集めたり指導課長を集めた訓辞とか、話し、あいさつが新聞に載っかって、それがまた抜きさしならぬものとして地方においてすぐ実施をされていくかのごとく伝えられている現在の法律、そうしてまた現在文部省考えている構想からいっても、実はあくまでもその基準文部省は作ろうとしているのであって、その基準で十分実施してもらいたいということを考えていくために研究しているのであって、決して教育課程そのもの実施権編制権を侵すつもりではない、地域実情に即して実施していってもらう、十分基準を尊重してもらいたいという意思でそういうものが次々と出されているのだということを、もう少し一つ十分に御理解のいただくように、ぜひ一つ御努力をいただかなければならぬと思います。特に教育課程の問題は、教育内容そのものであるので、私はいろいろな校長さんとか主事とか——この前私が申し上げて、教材等研究調査会のときに、誤まりであるというお話であったけれども、中等学校の部会には確かに二人であります、現職員は。それからまた初等科の方には四人入ってはおりますが、現場の職員の現実に教育をやっているその人たちの数は非常に少い、こういう教育課程こそ、こういう学習指導要領こそ現場の教師の、事実教育をやっている者の意見を最も尊重されていくべき性質のものだと私たち考えます。そういう面についても一つ十分な御努力をいただいて、そうしてこういうものが文部省の役人やあるいは上の方の者で勝手にきめられて、そうしてそれがどんどんそのまま実施されていくというようなことでないように、私たち法律を守る意味からもそういうふうなことをぜひ一つ考えていただきたい。基本的な問題であるので、文部大臣は、こういうふうな問題の発言は非常に影響の及ぼすところも多いし、こういうものの変更というものは、ある意味では制度を変えるよりももっとはなはだしい影響を教育に及ぼす性格のものだというふうにぜひお考えいただいて、十分一つ御検討いただきたいというふうに私たちは思うのであります。なお、その通達等については、出たらばお出しいただきたいということについて、ときどき局長がお約束されてもそれが実現をされないことが多いので、ぜひ一つ通達等については確実にお出しいただきたい。今言った基準という趣旨を十分盛って、地方においてそれが実情に沿って実施されるように一つ手ぬかりなくお手配をいただきたいという要望を添えて、私はこの問題についての質問を終りたいと思います。
  52. 松永東

    国務大臣松永東君) 松永委員の御主張のような点も勘案いたしまして、そうしていろいろの点からこの問題は研究せんければならぬと存じまして、慎重審議を重ねているような次第であります。しかし、いずれにいたしましても八月までには成案を得て、そうして発表したいというふうに考えております。
  53. 湯山勇

    委員長湯山勇君) ただいま文部省の方から政府委員として緒方大学学術局長及び福田社会教育局長が見えておりますからお知らせいたします。
  54. 松澤靖介

    松澤靖介君 松永文部大臣に御質問いたしたいと思います。  憲法に明示されておる通り国民はすべて能力に応じて教育を受ける権利を有するものであるにかかわらず、交通困難、さようなことのために文化的あるいは経済的に立ちおくれておるところのいわゆる僻地における教育が非常に、あるいは等閑に付せられておると言っても過言ではないような状態に相なっておる。このことに関しまして、松永文部大臣は三十三年度予算に対しましてどういう予算を重点的にお考え下さったかどうか。それらの点についてお聞きしたいと思うものでありますが、この点につきまして、すでに申し上げるまでもなく、二十九年のへき地教育振興法が可決された場合におきまして、付帯決議といたしましてなされましたところのそれらの条項の、いわゆる総合的、恒久的振興策を樹立すること、あるいはまた教員及び職員の特殊勤務手当の増額をすること、あるいは僻地の小規模学校を根本的に統合する、その際におきましては十分なる国庫補助をやることというようなこと、あるいはまた学校健康管理の適正なる実施をなすこと、あるいはまた校舎、寄宿舎の施設設備についても十分なる国庫の補助の配慮をなすようなことをすべきであるというようなことまでも付帯決議になされておるのでありますが、それらにつきまして、文部大臣は三十三年度予算に対しましていかなる御努力を払われましたか。その点をまずお伺いしたいと思います。
  55. 松永東

    国務大臣松永東君) この僻地教育につきましては、御説の通り、何とかこれは改善せんければならない。ああしたへんぴな場所で非常な不便を忍びづつ、次代をになう児童を——国民を一生懸命教養の任に当っていただいている先生方に対して、さらに学校に対して、何らか適当な改善方法をとらなければいかぬ、こう思って常々考えておるのであります。従って、この三十三年度予算におきましても——まあ自分の口から言ってははなはだ恐縮ですが——相当努力はしたつもりでありますが、しかしまだ完全というわけには参りません。だがしかし、私が宙に記憶いたしておりますのは、昨年度から見ますというと、たしか一億八千万円を計上をするようになりました。これはきのうの衆議院の本会議を通過いたしました。その内容は、ああしたへんぴなところで教養の任に当っていただいている先生方の宿舎の増設、それからいろいろな費用もやはり拡充せんければならぬ。さらに勤務手当の増加、そういう問題で右申し上げたように相当の計上をしたつもりであります。しかし、これではまだ不十分でありますので、さらに一つ努力をいたしまして僻地教育の弊害を除去したいというふうに考えておる次第であります。
  56. 松澤靖介

    松澤靖介君 文部大臣お話をただいま承わりますと、常々僻地教育のため御関心をお持ちのように承わり、かつまた三十三年度予算に対しましては集会室とか、あるいはその他のことに対しまして非常に努力をなさったというようなお言葉を拝聴したのでありますが、その三十三年度の文教予算を見ますときに、われわれといたしましても、はなはだ文部大臣の、いわゆる人間性の豊かなる文部大臣といたしましては、その努力のいたし方があまりにも少かった、努力が足らなかったんじゃないかということを、われわれといたしましても苦言を呈せざるを得ないということを非常に遺憾に存ずるものであります。ことに僻地の集会室の問題にいたしましても、去年よりは幾らか坪数にいたしましても多くなったようにも思いますが、しかしこれが完成は、しからば今後どのくらいの年数において完成されるかということを思い浮かべるときに、われわれとしてはなはだ……この状態において松永文相はもう妥当とお考えになっておるか、仕方がないと、メイファーズということでお考えになっておるか。すなわち今後これを完成するには二十七年を要します。あるいはまた僻地教育教員の住宅の件につきましても非常な、今後四十一年を要するというような、さようなことであって、果して僻地教育振興がおできになるとお考えになっておるかどうか。もう非常に関心を持っておるというようなことであっても、あまりにこの現われたところのものは消極的過ぎるじゃないかと、かく考えるものであります。昨年の八月十三日において、松永文相のいわゆる施政方針といいますか、その点を御質問申し上げましたときにおきましても、僻地教育に対しまして別段の努力をなされるということ、努力というものは、私は観念であってはならないと思います。やはり予算面に積極的に現われてこそ初めて努力したということになるのであって、ただ努力した、あるいはするというだけであっては、私はその熱意ということはうかがい知ることはできないと思いますので、この点について、なおお伺いしたいと思います。
  57. 松永東

    国務大臣松永東君) これは、もう御指摘になりましたように、まことに不満と思います、先ほど来申し上げておる通り。これは私は僻地教育をよく承知いたしております。私自身が僻地で教育を受けてきた人間でございます。でありますから、一人の先生が一年から二年、三年、四年までも一人で受け持って、教授をしてこられた実情もよく承知いたしております。従って、こうした山間僻地で苦労しておられる先生方に対し、さらに学童に対して、もっとほがらかな、もっと明るい教育をさせんけりゃならぬということは重々考えております。しかしながら、さっきも申し上げる通り、力足らずして完全な満足すべき予算を獲得することはできませんでしたけれども、しかしこれを出発点として来年度は——来年度じゃありません、これは三十四年度になりますが、やはり相当予算を獲得するような準備を今からやらんけりゃならぬというふうに考えております。
  58. 松澤靖介

    松澤靖介君 三十四年度においておやりになるという御決意は、ちょっと聞くとごもっともと存じます。しかしながら、私といたしまして、はなはだ失礼な申し分かもしれませんが、果して今後解散があり、勘、るいは議員の——何といいますか、はなはだ失礼なことですが、場合によりましては、あるいは社会党が多数を占めまして、社会党内閣になるかもしれません。あるいはされるにいたしましても、果して松永文相がその任にとどまるかどうかということは、私はとどまると言い切ることは、絶対にあるとは申し上げられない状態ではないかとも考えます。その際において、三十四年度においてどうなさるかということならば、私は文部大臣としてあまりにも無責任な逃口上にすぎないような、ただ一時逃れな言葉ではないかという、さような点において松永文相のような、いわゆる昨年の八月十三日において、私は総理大臣になる意思もなければ、あるいはもっと、立身といいますか、自分の栄達をはかる考えもない、誠心誠意文教の施策に生命を打ち込んでやるという、その御決意のほどを承わったのでありますが、今のお言葉を聞きまして、はなはだ寒心——はなはだ失礼かもしれませんが、あまりにも責任なさ過ぎるように私は思われますのですが、今後、あるいはもう少し積極的に、あるいは追加とか、さような点においてお考えはないのかどうか、その点について承わりたいと思います。
  59. 松永東

    国務大臣松永東君) 松澤委員のお説ごもっともです。これは、私がそろそろ解散を前にしておりますし、三十四年度まで果しておるかおらぬか——いや、おるかおらぬかどころじゃない、私の首はもうちょん切れて、皮一重でぶら下っているのかもしれない、実際は。でありますから、三十四年度はこうすると申しましても、それは無責任だという御叱正を受けることも無理からぬことではございますけれども、しかし、本年度からすでに、その来年度をどうしても上げていかなけりゃならぬという礎石は打っておるつもりであります。すなわち、学級編制にいたしましても、単級二十人、あるいは複式三千人というふうに、人数もちゃんときめまして、そうして大体やりやすい教育ができるように、やはり礎石だけは組んでおるつもりであります。さらに、先ほど申し上げたように、やはり特殊勤務手当等も、まあまあ十分とは参りませんけれども編成いたしましたのでござりますから、決して私は、三十四年度は必ず十分に僻地教育の予算が獲得できますということを申し上げるのは、必ずしも荒唐無稽のことじゃございません。礎石は今日から打っております。そして、三十四年度あたりは、相当充実せられた予算が獲得できるというふうに私は確信いたしております。
  60. 松澤靖介

    松澤靖介君 礎石を打つことに対しまして、非常に敬意を表せざるを得ないのですが、大臣は、おかわりになった場合において、新しい大臣の方針というものを、私は、非常に事案に対する方針というか考えが加味されるものと考えますが、果して新しい大臣がどんなお考えを持つか、あるいは僻地教育というような問題は打っちゃらかしてほかの方にやるべきじゃないかということになると、今お考えになっている逆の方向に進むこともあり得ると思いますので、私といたしましては、何とかしてこの際、あるいは追加なりあるいは新しい方法にいたしましても、できれば何とかできないものかと、こう考えておるのですが、それらの考えに対して、はなはだ愚問かもしれませんが、なおもう一度お聞かせ願いたいと思います。いい案がないかどうかと。
  61. 松永東

    国務大臣松永東君) 今申し上げた通り、私はいつかわるかもしれませんし、また、かわらぬかもしれません。御迷惑でも、もう少しは勤めさしてもらうかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、事務当局といたしましては、この僻地教育は何とかせんければならぬというので、勢い込んで予算の編成にも当ったわけでございます。本年度すなわち三十三年度は、満足すべき予算の獲得はできませんでしたけれども、事務当局がおりまする限り、やはり引き継ぎとして、三十四年度には充実した予算を獲得するという意気込みで進むということだけは間違いございません。その点は一つ御了承を願いたいと思います。
  62. 松澤靖介

    松澤靖介君 なお、こまかいことはあとで局長なりにお伺いすることといたしまして、昨年の八月十三日におきまして僻地教育振興を企図するためにおいては、その骨子となるべきへき地教育振興法を是正すべきではないかということを申し上げたのでありましたが、その節におきまして、文部大臣は、ごもっともの御意見であって、私もその点について努力するというお話であったのでありますが、その点に対してどんな御努力をなさったのかどうかお聞きしたいと思います。
  63. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になります通り、僻地教育の振興もこれはせんければならぬ問題じゃないかと思います。というのは、年とともに変るこういう時代の変遷に即応するやはり教育をせんければなりませぬ。しかしながら、こうした問題については、いろいろな、全般の教育問題と並行いたしまして、研究を今一生懸命重ねておる次第でございます。他日、おそらくは理想に近いような案を一つお耳に入れて御研究をわずらわす事態がくると思うのでございます。
  64. 松澤靖介

    松澤靖介君 他日お目にかけるということは、要するにへき地教育振興法を改正するという、さようなことにとってよろしゅうございますか、どうか。
  65. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘通り、何とか改正をして、そうしてもっとほがらかな教育を施すようにせんければならぬという方針のもとに研究を重ねつつあるわけなんでございます。
  66. 松澤靖介

    松澤靖介君 われわれといたしましては、今後改正すべきであるということはごもっとも、だれが見ても現在のへき地教育振興法に満足するものはないと思います。しかしながら、是正すべき点があったならば、できるだけ早い時期において改正して、そうしてその僻地において熱意を傾けておらるるところの教職員、あるいは生徒児童のために、私は不安なからしめるような措置を講ずるのが最も妥当なるやり方だと思います。将来やるということは、これはやらざるを得ないものでありますので、将来やるというととはこれは当然なお言葉と存じますが、要するところは時期的の問題かと思います。できるだけ早くやるということが私はこの適切なる問題だと存じますので、との点につきまして、将来というようなことでなくて、あるいはまた今国会において、もしも議員立法などの形において提案をされたときにおいて、文部大臣としてどういう工合にお考えになっているか、それに御協力を申し上げる御覚悟があるか、その点をお聞きしたいと思います。
  67. 松永東

    国務大臣松永東君) もちろん、私ども考え方は、この現在の法律改正したい、へき地教育振興法を改正したいというふうに考えております折柄でございますから、議員立法あたりがあると喜んで協力するというふうに考えております。
  68. 松澤靖介

    松澤靖介君 私は、松永文相のとの文教施策といいますか、その点につきまして、僻地教育に関しましての熱意の点は非常に私は敬意を表しておるのでありまするが、少くとも、熱意は熱意だけのことでなくて、十分に実行を伴うようなことにしていただきたいと、かく考えるものでございます。なお、局長に対して二、三お聞きしたいと思いますが、三十三年度の予算を見ましたときに、あるいはスクール・ボートとかスクール・バスというその予算の項がなくなっておるというのは、これはどういうお考えのもとですが、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  69. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは御指摘通り、要求いたしましたけれども、実は査定でゼロになったわけでございまして、特に私どもは、今のところ無電灯地帯に電源の装置を実施するということを昨年からやっておりますので、これを充足して三十四年度以降にはできるだけ今御指摘のスクール・バス、スクール・ボート等の予算を確保したい、かように考えております。
  70. 松澤靖介

    松澤靖介君 なお、こまかいことになりますが、走る公民館の予算の問題ですが、これにつきまして、あまり少いように思いますが、これにつきまして、社会教育局の方の、いわゆる公民館設備費とか、そういう方の中から、こちらの中に融通され得るというようなととがあるのかどうか、あるいはこれは別個のものであるというようなお考えなのか。これは、非常にやるべき施設の中でも関心を持つべきものと私は考えるだけにお聞きしたいと思います。
  71. 天城勲

    政府委員(天城勲君) いわゆる走る公民館、あるいは移動公民館といわれておる問題でございますが、本年度も新しく予算を組みたいと思いましたけれども、実現に至りませんでしたけれども、社会教育設備費の関係の中で、実行上考えていきたい、こう思っております。
  72. 松澤靖介

    松澤靖介君 なお、予算の面について、こまかいいろいろな点がありますが、時間の都合上あとに譲ることといたしまして、文部省として、僻地指定に関しましての原則をお作りになる御意思があるかどうか、その点を局長にお聞きしたいと思います。
  73. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 実は、学校教育における僻地の問題と一般の僻地の問題がございます。一般僻地につきましては、人事院の指定がございます。学校の僻地におきましては、都道府県の知事に指定がまかされておる。そこで、各県ばらばらでございますので、できるだけこれは統一的な基準を作りたいという気持で現在まで努力して参ったのでございます。
  74. 松澤靖介

    松澤靖介君 文部大臣にこの点についてお聞きしたいと思いますが、局長が今申された通り、各県がまちまちになっておるような状態であって、はなはだ不均衡な状態であるので、文部省といたしまして、やはり大綱を示すべく準則を作るのが、私は妥当なものと考えるものでありますが、その点について、文部大臣はいかにお考えなさっておるか、お聞きしたい。
  75. 松永東

    国務大臣松永東君) こうした問題は、今現実の問題として実際急遽やらなきゃならぬというふうに考えております。従って、社会教育の面も多分にありますので、関係各所と協議いたしまして、急速に一つ運んでみたいというふうに考えております。
  76. 松澤靖介

    松澤靖介君 局長一つ、あまりあっちこっちになるかもしれませんが、健康管理の問題ですが、僻地において、最も関心される一つの事項といたしまして、やはり健康の問題を、私は大きく取り上げなければならぬと考えます。その点につきまして、今回学校保健法案ですか、あれが提案されておるようでありますが、この僻地における学校管理というものは、私は適正妥当にやるべきじゃないか、適当なる措置をなすべきじゃないかと考えられるのでありますが、この点について、特にどういうお考えをお持ちであるか、お聞かせ願います。
  77. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これはすでに、この学校保健法案につきましては、当委員会に付託されておると思うのでごさいますが、僻地という点から、特別立法はいたしておりませんが、一般の児童について、特に就学時に当りましては、新しく健康診断をして、そしてじょうぶなからだにして学校に入れるという点が第一点でございます。それから定期的に学校で身体検査を行いまして、その結果に基きまして適切な措置をする。たとえば疾病の予防を行うとか、あるいは治療を指示するとか、あるいは体育や作業等の軽減の措置を講じたり、そういう適切な措置を講ずる。特にこのたびの法案では、要保護児童と準保護児童、要するに貧困な家庭の子供に対しては、国と地方団体とで治療費を負担する、こういうふうな規定でございます。特別に保健法の中で、この僻地学校についての規定は設けておりません。学校医あるいは学校歯科医あるいは学校薬剤師という制度はもちろんございますけれども、御指摘のように、山の中でございますので、何らか今後検討しなければならぬと考えております。特に私どもは前々から、学校に救急箱のようなものを備えたいという気持でおりますので、今後僻地の問題については別途に研究したい、かように考えております。
  78. 松澤靖介

    松澤靖介君 この問題につきまして、別途にお考えなさるというふうな御答弁、私もその点に対しまして適正妥当なるお考え考えますが、十一月ですか文教委員の方が視察に参られたときの報告書の一部を御参考までに申し上げまして、いかに僻地の健康状態というものが悪いものであるかということを頭によくよく入れられて、そうして再認識されまして、文部大臣といたしましても、この点に御留意なされることを私は希望申し上げたいと思うのであります。この一項によりますと、「保健問題については、学校の身体検査もほとんど実施されていない実情で、学校にはかりもなく、村一軒のよろず屋の店に、児童生徒が行ってはかるとか、獣医さんが身体検査をするところがよい方だとか、非常に考えさせられる話を聞きました。」、おわかりのことと思いますが、動物をみる医者です。「獣医さんが身体検査をするところがよい方」である。「これらの学校と医療機関までの距離については一二キロ以上の学校が全数の三五・二%もある現状で、医師の巡回身体検査の実施について、教職員、家族の保健衛生管理とあわせて特別な助成を講ぜられたいとの要望がありました。」、こういうような状態でありまして、なおこれらの点につきまして、読売の週刊誌でしたか、あれは何号でしたか、去年の……、忘れましたが、岩手県において、四人だかの先生が自殺したとかいうようなことの理由の一つの中においても、やはり医療機関ということに対しての不安、病気に対する不安というようなことが、一つの理由であったと思いますが、この点につきましても、僻地におけるところの健康管理といいますか、そういうことに対しましては、特に熱意を傾けられまして、そうしてそこに就職されるところの職員並びにまた児童生徒に対して、健康上の少くとも安心とまでいかなくてもある程度の、心配がなく受けられるような状態にして下さるように、松永文部大臣に特にこの点、お願いしておきたいと思います。  なお、この僻地教育の問題につきまして、いろいろと申し上げたいこともありますが、われわれといたしまして、何とかして今国会におきまして、へき地教育振興法の改正に向って努力したいと考えているのでありますが、それらの点につきましても、大臣といたしましても、先ほどおっしゃったような意味合いにおきまして御協力下さって、そうして僻地教育の振興を一段と向上させることをお願いいたしたいと思うものでありますが、なおこれらの点につきまして、よく御視察になったところの野本先生なんかも、僻地教育振興に対して熱意を傾けておられることは当然のことと思いますが、なお野本先生からも御一言あったならば私は幸いと思っておりますが、しいてこの際お聞かせをお願いしたいと思います。
  79. 野本品吉

    ○野本品吉君 日ごろ僻地教育の問題につきまして心魂を傾けられております松澤委員の熱意に対しましては、私は心から敬意を払っておるわけであります。従って、ただいま御催促がなくとも私の方が先に質問したいと思っておったのですが、これは与党の立場もありますので、御遠慮いたしておりましたので、この点御了承を願いたいと思います。日の当らないところへどういうふうにあたたかい政治の手を差し伸べていかなければならぬかということは、単にこれは僻地だけの問題であると私は考えておりません。あらゆる部面に日の当らない生活をしておるものがある。ここに政治があたたかい手を伸ばすべきだ。僻地教育の問題は、日の当らない場所で教育を受けている人にどういうふうに政治の手を伸ばしていくかという、あたたかい政治の当然目をつけなければならない場所であり、当然考えていかなければならない重要な点である、かように私は考えております。そこで松澤委員お話しのように、実は私と高田委員は、昨年十一月末から十二月の初めにかけまして、国会議員としては前人未踏の僻地を相当見て参りました。私自身も僻地の問題につきましては、従来関心を持っておりますし、また自分で直接手がけた問題、たとえば群馬と長野の境にあります小串という鉱山には、実は学校がなかったのであります、数十名の子供がおりましたけれども。ここに新しく分教場を創設した一人でありますので、従ってこういうところに政治が見落している重大な教育的な問題、道義的な問題があるということを絶えず考えておるわけであります。こまかい点につきまして私は御質問申し上げますことは一応差し控えますが、北海道の僻地を視察し、また内地の僻地を自分で知っており、また人から話を聞いて総合しまして、今私の頭に浮かんでおります僻地に対する観念でございます。これは北海道の僻地と内地の僻地とを同じ観念において考えることが適当であるかどうかということに私は大きい疑念を持っております。と申しますのは、北海道の僻地は、北海道の開発の進行に伴う必然的な現象であります。今まで僻地であったところが開拓が進んで、学校統合が行われて、やや整った学校になったときには、さらに一歩奥の開拓地に僻地ができておる。従って北海道の開発計画というものが強力に推進される限りにおきましては、北海道にはいかに努力しても開発の終らない限りにおいて僻地が必然的に起ってくる。僻地学校ができてくるわけであります。そとで内地の僻地は、深い谷の奥にある僻地であるとか、あるいは離島の僻地でありますが、内地の僻地と北海道の僻地とは違う。われわれは僻地の問題を見る場合に、北海道の開発に伴う必然的現象としての僻地問題と、それから道路交通機関が整備されればそれで一応解決のつく僻地問題、この二つに分けて考えなければならぬ。かように考えておるわけなんですが、これは文部省の方はどういうふうにお考えになっておるか。
  80. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 今、野本先生のおっしゃった点、確かに僻地と申しましても条件が皆違っているように私たちも存じております。私たちへき地教育振興法を立案いたしますときにも、全国の僻地につきまして幾つかの性格の違うことを認識いたしまして、北海道と内地の僻地はまた違いますし、それから島の僻地も違いますし、また沿岸で、いわゆる陸の孤島になっている僻地の性格も違っているわけでありまして、それらの問題は、必ずしも一様の姿では取り上げ切れないものがあるということは十分認識していたつもりでおります。
  81. 野本品吉

    ○野本品吉君 僻地の現地の方々の要望は、その場所々々の特殊な様相、特殊な状態に立っての具体的な要求になってくるわけです。従って、僻地の問題を考えます場合に、いろいろな僻地があるのだということを十分想定されてそれぞれの僻地の教育の解決に対応し得るような方策というものが考究されないというと、一般的な僻地教育の問題が解決されない。私は、かように考えておりますので、今後僻地の問題について、文部省も、今大臣を初め熱心に御検討下さるということをおっしゃっているのでありますから、そういうことを頭に置かれて、僻地対策をどうするかということについての御研究をわずらわしたい、かように考えます。  次に、これは具体的な問題になってくるのでありますが、僻地の方々の要望の中にまことにごもっともであるという要望があるわけです。それは現在の扱い方におきましては、たとえば僻地の学校で二十人なり二十五人なりを収容する教室がほしいという場合に、今の校舎の増改築と申しますかの補助は、四十五坪でしたか、ある程度の面積を持たないというと補助の対象にならない、そういう欠陥が指摘されているわけです。従って、そういう扱いでいかれますというと、僻地学校においてほんとうに小さな教室一つ作るというような場合に、それはあまりに小さいので補助の対象にならない。かようなことは非常に遺憾なことでありますので、これらの点について一応御考慮願う必要があるのではないかと思いますが、これはどうでございますか。
  82. 松永東

    国務大臣松永東君) 野本委員のいろいろな御研究によって御発表になりました点は、まことにわれわれは参考とするに足る重要な資料であるというふうに考えております。御指摘になりました通り、全く僻地の問題の対策は、やはりいろいろな観点からこれに対応していかなければならぬのではないかと存じます。仰せになりましたように、北海道の僻地は、いわゆる僻地ではありますけれども、暫定的と申しても差しつかえないのじゃないか、すなわちやがてそこが開発事業が達成いたしますというと、そこに集団的の住宅ができまして、そうして僻地の様相を一変するようなことも考えられなければなりませぬ。さらにまた、交通機関が発達いたしているその途上における僻地は、その交通機関の完備によりましてやはり僻地の容貌を変じてくるというふうにも考えられます。ただしかし、どう考えてみても山間の、永遠に僻地として認められる所については恒久策を立てなければならぬというふうに考えております。従って、そういう面につきましては、やはり場所に応じてそれぞれの施設を試みなければならぬというふうに考えております。申すまでもなく、教育の機会均等、平等を叫んでおりまする今日、われわれ文教の府にありましては一生懸命そうしたへんぱのおそれのないように改良したいというふうに考えておる次第でございます。
  83. 天城勲

    政府委員(天城勲君) 僻地の集会室の補助につきましては、一応生徒一人当りの基準がございますが、児童数が少い場合でも最低二十坪までは保障いたしておるのでございます。教室の建設の場合に今御質問のような、小学校一人当り〇・九、あるいは中学校一人当り一・〇八を人数でかけた場合に、非常に小さい教室のある場合に、実際の補助金の配分の場合において対象にならない場合もある、こういう事実はございますが、制度としてどこ以下は切ってしまうということをきめたわけで一はございませんけれども、あまりに小さなものとしては補助金として対象にしない場合がございますが、今申し上げたような事情で僻地の施設の問題については人数が小さい場合がたくさんございますので、集会室につきましては、最低二十坪、それから教材費につきましては児童数だけで計算しますと非常に少額なので、これも最低保障をするという考慮はいたしておるのでございます。
  84. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは、北海道の某町はいわゆる単複の三十人、五十人というような小さな学校を一町村で五十以上持っておる町村がある。そういうような場合に一校単位として補助の対象を考えていきますというと、補助対象としては小さいということで補助から漏れる。そのときに同時に、同一町村内において幾つかの学校をするというような場合がありますが、そういうような、やはり合算してやるとか、とにかくそこがやはり僻地対策の僻地対策たるゆえんだと思います。一般の学校基準にしてのものの考え方をそのまま当てはめようとしてみるというと当てはまらなくなってしまう。やはり僻地は僻地に対する特殊な考え方、取扱い方をするところに僻地教育が具体的に尊重されるということになってくるのでありますから、これらの点につきましては、将来事務的な取扱いの上において遺憾のないようにお願いいたしたいと思います。  次に、これも質問というよりはむしろ希望に近いものであるかもしれませんが、昨年文部省とわれわれとで話し合いまして、例の無電灯町村に対してのささやかな予算を計上していただきました。私は現在の世界において、これだけ電気文明と申しますかが進んだときに、電気の恩恵に浴することのできない人が日本にまだあるというこの事態はまことにさびしい、そして気の毒な状態であると、かように考えて、昨年の文部省の予算編成のときにもこの点につきましては深い関心を持っておりました。従ってこの無電灯町村に対する補助金がどのように活用されておるか、その結果がどうであるかというところに深い関心を持って実は僻地視察をいたしましたところが、これは金の少い割合に実に村をあげて感謝されておるわけです。自家発電の装置ができたことによって映画が見られるようになった、それができたことによっていろいろと便利、ラジオが聞えるようになった。私はここで文部大臣に特に頭に入れておいていただきたい問題は、ごく軽少な少い金でありますけれども、この種の施設は天の福音のごとく喜ばれる。教育尊重ということは、むろん大きな政府の方針であり、われわれのお互いの方針でありますけれども、ややもするというと、教育の尊重というような事柄がいわゆる上向きに頭が向いてしまって、大きいところにばかり頭がいってしまって、非常に感謝される小さい問題を見落しがちになる。これらの点につきましても、本年度も私どももずいぶんお力添えを申し上げたつもりでありますけれども、遺憾でありますので、今後やはり予算を編成されますときに、大きなところもむろん大事であるけれども、こういう小さいところにいろいろな問題がある。少い金で非常な感謝と喜びをもって迎えられる補助制度がある。このことをぜひ頭に置いて今後の補助金その他の問題についてお考えを願いたいと思うのですが、大臣のお考え一つ
  85. 松永東

    国務大臣松永東君) 野本委員の御説まことにごもっともだと思います。そうしたわずかばかりの予算を獲得することは、実際に大きな金とは違って大して骨の折れない問題でございますから、十分一つそういう点をこれから注意しましてこうした山間僻地の人々に明るい気持を持たせるように努力していきたいというふうに考えております。
  86. 野本品吉

    ○野本品吉君 なお、僻地の教育の問題につきましては、今後制度的にもいろいろな検討の余地があろうと思いますので、当局におきましても誠意をもっての御研究を切望いたします。  次に、これは大学学術局長に質問いたしたいと思います……。
  87. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと関連して。私は、具体的にちょっとお聞かせ願いたいのですが、今度の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案の中で、「五学級以下の学校の総数に政令で定める数を乗じて得た数」というのがある。実際今度の定数の問題で一番心配しているのは僻地の学校、小規模学校なんです。これについて具体的にどういうことを考えておられるのか。その点が一点と、もう一つの点は、実は僻地の学校教育特別研究旅費の問題ですが、文部省は現職教育として道徳教育とか、理科教育考えているし、また教員の講習費として三千三百四十一万円という大きな現職教育費を出している。一体現職教育や免許ものの現職の講習に出るのに僻地の先生の旅費をどうするのか。こういう講習費を出しておいてみたところが現実には僻地の方から出ていくには、御承知のように、一日出るのに三日もかかって四千円のワクの中ではとてもそんなことは考えられない。現実に地方では四千円どころではない。三千円を組んでいる学校もあるので、こういう点について具体的にどういうことを考えておられるのか。もう一つの点は、時間がありませんから、へき地教育振興法を現実にそのまままじめに実施をしていれば相当解決できている問題が多いのじゃないか。たとえば今お話しに出た旅費、寄宿舎、養護教員定員、あるいは特別手当の問題等については市町村、県の教育委員会、そして文部大臣はこれについて適切な指導助言をするということが法律に出ている。そういう点について複式手当の支給の状態とか、僻地手当の支給のアンバランスという問題に具体的にどういう指導助言をお与えになっておるのか。そういう三つの点について一つ局長からお聞かせを願いたいと思います。
  88. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 第一問の学級編制基準でございますが、五学級以下はどうするかというお話ですが、そういう小規模学校には教員の割増しをいたしたい、で、その数につきましては政令で、ただいま関係方面と折衝しております。いずれにいたしましても、小規模学校に対して数の割増しをいたしたいという趣旨でございます。
  89. 松永忠二

    松永忠二君 具体的には言えぬですか。その問題は、もう法律も出ているのですからね。
  90. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) これは政令の段階でございますので、今いろいろ折衝しておりますので、いましばらくお待ちいただきたいと思います。いずれにいたしましても割増しをするという趣旨でございますので、一人以上置くということでございます。  それから第二点の研修旅費でございますが、これは文部省がいろいろ理科教育、道徳教育等の研修を強化いたしまして教職員の教育能力を向上さしたい、こういう趣旨からでございまして、旅費は義務教育国庫負担法によりまして都道府県が組まれれば、必ずその二分の一は国の方が責任を持って負担いたします。  それから第三番目の点ですが、振興法につきまして忠実に指導助言というお話でございます。特に僻地手当でございますが、実は僻地手当につきましては、これは従来は定額補助でございました。たとえば千五百円とか、千二百とか、あるいは九百円というような定額補助をいたしておりましたが、今回定率補助にいたしまして、最高は二割、最低は四%、五段階の刻みにいたしております。そこで、文部省はできるだけこの定率負担になるように今一生懸命指導をしておるところでございますが、全部がまだ定率負担にはなっておりません。できるだけ定率負担になるように現在も指導いたしております。
  91. 野本品吉

    ○野本品吉君 時間が過ぎて失礼ですが、もう少しばかり……。今度の予算のうちでわれわれも非常にこれを喜び、また一般社会からも画期的な事柄として期待されております問題の一つが、例の進学保障制度であります。私は進学保障制度は考え方によりましては、教育から貧乏を追放する一つの道である、かように考えておるわけであります。岸さんが貧乏追放ということを盛んに言われておりますが、これが一番目立った貧乏追放の一つの仕事の現われであると考えてもよろしいように思っておるのです。玉を抱いて埋もれておりました幾多の英才がこのことによりましてほんとうに伸びられるだけ伸びる道が開かれたということは、何と明るいうれしい喜ばしいことであろうかと思います。秀才が経済的理由によって進学することができず、他の自分より力の低い者がどんどん進学していくのを見ているときに、この胸の痛さというものは容易なものでありません。同様に、優秀な子供を持った父兄もまた、家庭の事情によって進学させることのできないほど切ないことはないと思う。で、これによって、優秀な子供を生む限りにおいては、父兄のこうした悩みがなくなり、素質がよくて努力する限りにおいては子供の苦しみや悩みがなくなる、ほんとうに明るい感じがしてなりませぬ。そこで若干お伺いしたいのでありますが、さしあたっての予算は、一億三、四千万と思っておりますが、これが学年進行に伴いまして最終学年までいきましたときにどのくらいの予算を必要とするか、お伺いします。
  92. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 三十三年度から発足いたしますに当りましては、高等学校の一年に入る者から実施いたしたいと、かように考えております。これは単価は月額三千円、そして人数は五千人、これに要します予算は一億八千万でございます。これが学年進行で上に参りまして大学のランクに達しました場合に一人当り幾ら出すかということにつきましては、まだ確定しておるわけではありませんけれども、進学保障制度の趣旨に沿うように十分な額を用意しておきたいと考えております。かりにこれを八千円といたしまして計算いたしますと、大学がずっと四年まで進みまして、つまり高等学校の一年から大学四年まで七年間が完成いたしました場合の予算規模といたしましては、大体二十五億に相なります。
  93. 野本品吉

    ○野本品吉君 総額二十五億ということだそうでありますが、一人の子供に対して、高等学校から大学までの所要経費は、私の推算では大体五十万をこえると思いますが、事務当局では一人当りの所要経費をどのくらいに算定されておりますか。
  94. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 今の計算で参りまして、つまり高等学校三千円、大学八千円でございますと、五十万ちょっと欠けます。四十九万二千円でございますか、ちょっと欠けるはずでございます。
  95. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで問題は、五十万円以上の金を一人の学生に投ずる。私は金額の多いなどはこれは驚く必要はないので、できるならもっとかけなければいけないと、こう思っておりますが、従来の奨学金制度による金のつまり返還の扱いと、五十万の借金をしょったこの借金をどうなすかということになると、これはなし方だけで頭が痛くなって、秀才がその方に頭を使ってしまって、勉強どころじゃなしに、借金なしで若労してしまう、こういうことになってくるので、一応どういうことにするかという御方針はおきめになっておるようでありますが、私はこの機会において文部省が英才のために投じた五十万の金の跡始末をどういうふうにされるか、どういう扱いで処理されていくか、これを明確にしていただきた、
  96. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) その点につきましては、育英会法の改正法律案をすでに国会に提出をいたしております。考えておりますところは、今お話しの通り、この制度によりまして高等学校の一年から大学の四年まで同じ人が借りました場合に五十万近くの金になりますので、これを戻させることは負担能力の点から申しまして非常に問題でありますが、法律考えようといたしておりますことは、一般の奨学生が借ります額だけを返還させる。返還しました場合には、残余の額はこれを免除するというふうに考えております。つまりかりに五十万といたしました場合に、一般の奨学生が借りられます最高額は十八万であります。十八万返せば残余は免除になる、こういう考えであります。
  97. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこでまあ五十万前後の国費を投じて養っていく英才の選考の問題でありますが、中学に在学する者の中からさしあたって今年度は五千人を選考する。その選考の方法等につきましては、私は相当綿密に御研究になっていかないというと、制度それ自体というものは非常にいい制度でありますけれども、選考の方法のいかんによりましては、せっかくの制度に一つの瑕瑾をとどめるというようなことも心配になるのでありますが、選考の時期、方法等につきまして、まだこまかい点が御決定になっておらなければ、大よその腹がまえだけでも御説明願いたい。
  98. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 御説の通り、この制度のりっぱな趣旨を生かしますためには、その運営方法につきましてきわめて慎重な用意が必要と考えております。そこで、選考の問題でありますけれども、この制度の趣旨は、御承知のように、素質として非常にすぐれておりましても、学業成績非常によろしいし、そのほか素質能力が特に優秀でありましても、経済的理由から特に著しく進学困難な者に対しまして与えようとするものでございます。これをなるべく大学まで通じまして与えますことによりまして、そうしてその進学を保障していくというのが制度の趣旨でございます。そこで、経済的な理由で、一般の奨学資金の制度がございますけれども、それをもってしてもなお金額的に、金額が一般制度では足りないで、優秀な者でも中学卒業しても高等学校に行くということを断念せざるを得ない者が相当あるわけでございまして、これを救っていくというのがこの制度の趣旨でありますので、その選考方法として第一に考えなければならないことは、高等学校に進学する前の段階、つまり学校を卒業するときにすでに予約をしておくということを第一に考えます。従来の一般的な方法は、高等学校なら高等学校に入りましたあとで選考をして奨学金を与える。まあ一部は、事実上運営によりまして予約制度をとっておりますけれども、一般的には今申しましたように、学校に入りましたあとで選考をしてこれを与えるわけでありますけれども、今度の新しい制度におきましては、進学前に予約をするということが一つ、それから選びますにつきましては、資質能力の優秀なる条件、それから経済的な条件、この二つがあります。これをどうやって選んでいくか、非常にむずかしい問題でありますけれども、これはさらに今後政令、省令の段階で精密に規定いたさなければならぬことは規定いたしていきたいと考えておりますけれども、今一応考えておりますことは、まず成績につきましては中学校長の推薦をまず出させる、そうしてさらに全国的な試験を実施して、この試験によって採用を決定していく、かように考えます。それから経済的条件につきましても、これは一般奨学生よりも当然経済条件の不利な家庭の子弟を保障していくわけでありますので、その経済条件の選考につきましても、従来一般奨学生の例から見まして、これにふさわしい者を選び出していく一つ方法考えていく。これは省令規定しまして、文部大臣の定める方法でその基準方法をきめていく、これによって該当するものを特別奨学生とする、かような形にしていきたいと思っております。
  99. 野本品吉

    ○野本品吉君 いろいろな問題につきまして、もっと他の問題につきましても質問いたしたいと思いますが、次の機会に保留いたしまして、一応時間もおそくなりましたから、これで……。
  100. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 午前中の質疑はこれにて終了いたします。  午後は一時四十分から再開いたします。    午後零時四十四分休憩      —————・—————    午後二時十八分開会
  101. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 午前に引き続き、委員会を再開いたします。  議題は、当面の文教政策であります。質疑のある方は、順次御発言を願います。  なお、ただいま内藤初中局長が見えておりますが、あと緒方大学学術局長、福田社会教育局長も見える予定でございます。
  102. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣にお尋ねをいたします。最近の新聞を大臣はごらんになっていらっしゃると思いますが、なかんずく最近の入学試験あるいはまた学期試験、こういう試験問題のために、ほとんど連日のごとくに将来ある青少年が、このことのために精神的な過重な負担を帯びて、みずから死の道を選んでいる。まことに最近の新聞を見るたびに私は心を痛めている大きな問題です。で、この問題は単に学校当局あるいは学生個人の意思の薄弱というふうにだけ帰する問題ではなくて、これは今日の岸内閣の文教政策と切っても切れない大きなつながりを持っているものとして、私はこういう問題に対して、大臣は日々どういうお感じを持って新聞をお読みになり、本問題の解決のために文教政策の最高責任者として、どのようにしたらこういう事実を防ぐことができるかということについて、お考えになっておられるのではないかと思います。まず私はこの問題から、以下なかんずく大学問題について、若干御質問申し上げたいと思いますが、大臣の御答弁をお伺いしてから、お尋ねしたいと思います。
  103. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の御指摘になりました問題については、これはもうひとり私ばかりじゃございますまい。おそらく子を持つ親として、みんなの人が非常に深憂し、焦慮しておる問題だと存ずるのであります。この問題につきましては、どうして一体これを解決するかというと、そんな簡単にこれを解決するような法は浮んで参りません。なんせ中学校を出てから高等学校から大学、もうほとんどこれは孫を持っている私らも悩み抜いている。私ばかりじゃない、みんなの人もそうであろうと思うのですが。そこで、さればといってこれをこのまま放置しておくわけには参りませんので、実はさらにまた考えんければならぬととは、学校に入学するのにもう一生懸命、御指摘になった通り子供が神経衰弱を惹起するように、子供ばかりじゃない、親たちも保護者も神経衰弱になるように、一生懸命に骨を折らんければならぬ。そうしてまた学校をめざす。学校を卒業してからその就職の問題で、また、これは当面の学生、すなわち卒業生はもちろんのこと、親たちまでも非常な苦労をせんければならぬというのが現状であります。そこで、これをどうして一体解決するかということは、これはまあ社会問題として大きな問題で、ひとり教育問題ばかりじゃございません。そとで、私どもがかねがね叫んでおりまするまず第一が、科学技術教育の振興、そうして法文系ばかりでなく、科学技術教育の方にもそいつをどんどん振り向けていっ七、そうしてそうした科学技術教育を受けた青年技術者が、やはり中堅技術家として社会に活躍することのできるような面を開かんければならぬというので、御承知のごとく、本年度からそういう方面にも振り向けていくというふうにやっております。多少これも緩和の一助ともなろうかとも思いますけれども、根本的の解決方法ではまだまだありません。でありますが、順次そうした面に一つ打開の道を開いていきたいというふうに考えておるのであります。
  104. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 大学学術局長社会教育局長が見えましたから、お知らせいたしておきます。
  105. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣はお孫さんもお持ちになっていらっしゃるので、なかなか人情のある御答弁ではあると思うのですが、しかし、人情論だけではこの問題は解決できない。で、この問題の陰に横たわるものは、結局今日の私は教育のあり方自体が問題になってくるのじゃないか。理解をさせる教育、その理解をさせる教育ということからはずれて、今やまさに詰め込み主義に陥っている。この詰め込み主義に陥らなければならない原因は、たくさんあるだろうと思いますけれども、問題の解決は、当面やはり工学部をふやすとか、法学部をふやすとかいう問題ではなくして、どうしたらば学校差をなくすかというところに、私は文教政策として非常に大切な面があるのではないか。この学校、あの学校と選ばなければならないというのは、そこにはやはり学校差という問題が出てきている。学校差の問題をなくすということについては、よほどこれは大臣が本腰になっていただかなければなりません。今の御答弁では、この問題を解決するための当面の対策にはならないのではないか、文部省は最近勤務評定の実施等については、もう大わらわになっている。教科課程を改編するに当っても、指導通達の一片の通達くらいで、もうどんどんどんどんと教科課程の内容に至るまで改訂しようとしている。それだけの指導力があるなら、なぜ、今日の試験地獄をますますそそるような詰め込み主義教育を放置しておくか、もう少しこういう点については積極的な指導がされ、そうしてその原因を打開するための学校差をなくすために、どういうふうにすべきかというような点についても、私はお考えになってしかるべきではないかと思う。今日の試験地獄の現状に対して、何か文部省指導的な役割を果している事実があったならば、御答弁願いたい。
  106. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の御指摘のありました、今の教育が詰め込み主義じゃないかということは、これは私は当らぬ。われわれが学生時分が詰め込み主義ですよ、すべてが暗記で、そうして詰め込みで、われわれが弁護士の試験を受けたり、司法官の試験を受けたりするときに、まるきりふところの中に六法全書一つ持っておって、暗記、詰め込み、それで終始して参りました。ところが、今日ではおかげさまで、学校教育法も相当、御指摘になりました理解力を持たせるというふうになって参ってきたことは事実です。ただしかし、そういう詰め込みとか、あるいは理解教育とかというような問題ばかりでは解決ができません。何といたしましても、これは御指摘になりました学校差の問題もあります。なるほどあの学校に入りたい、この学校に入りたいというので、相当評判のいい学校に集中するというようなこともあります。従って学校差の問題を解決せんければならぬじゃないかということも仰せの通りです。しかしながら、大体公立、国立学校は、学校差というものは大してないと思います。ただ私立の学校では、相当評判のいい学校と評判の悪い学校とか、あります。その評判のいい学校の方に学生あたりが、どんどん流れ込んでいくということは事実のようでございます。しかしながらこうした問題も、今申し上げました科学技術教育をもう少し拡大いたしますというと、その方面へ学生の吸収ができるということになれば、多少は緩和していくのじゃないかというふうにも考えております。けれどもこれはなかなか大きな問題で、一朝一夕でそういう計画ができようとは考えられません。一片の通達や一片の布告あたりで、さようなことができようとは思いません。根本的の一つ打開策を、どうすればいいかということを相当研究をいたしております。なお、研究を続けて参りたいと思います。
  107. 高田なほ子

    高田なほ子君 根本的な御答弁をいただけないことは大へん残念です。私は今の教育が詰め込み教育をやっているというのではないのです。せっかく理解をもとにした教育、個性を尊重する教育、こういったようなものが基礎になって出発した新教育が、最近になってだんだんと詰め込め主義に堕してきている、暗記主義に堕してきている。その一つの例は、道徳教育もそうです。知識としての道徳、道徳を知識として教え込んでいく、これなんかも、大臣の言うところの詰め込み主義の一つの私は現われだと思う。ここでこれを押し問答する時間的な余裕もありませんが、これをこのまま放置するならば、次第に詰め込み主義に陥り、現に各小学校あたりでも、上級学校へ行く子供のためにはどうしても暗記主義をとらなければならない。その暗記主義をとる中ででも、特に注意しなければならないのは、上級進学の子供たちに対して、もちろん親からの要請があるかもわかりませんけれども、特に上級に行く者に対する差別的な教育が、詰め込み主義の形でされている。こういう激甚な子供の競争の世界の中で、確かに子供たちは心を痛めて、それが神経衰弱の原因にもなって年端もいかない者が飛び込み自殺をする、毒薬自殺をするというような悲惨な結果に追い込むことになってしまうわけです。私は現在高知県でも、大臣も御承知だと思いますが、今まで高知県あたりでは、入学地獄というものを緩和するために、民間の要望にこたえて、どの子供も高等学校に入れるような大へんよいしかけを慣行としてお作りになっておったらしい。ところが、最近はそれをぶちこわすような方法が、理事者側からとられていると聞いています。これに対して高知県民は、教育を守る国民大会を持って、この入学試験地獄を強化するような方法には賛成できがたいという抗議集会を持っているように聞きますけれども、高知県の事情は単に一つの例にしかすぎませんけれども、願わくばこういう試験地獄を強化するような方策が打たれることに対しては、文部省は当然手を打って、入学試験の地獄の緩和のために、私は手を差しのべられるのが当然ではないか。どうも中央集権の教育統制の方には御熱心ではありますけれども、子供の生命や教育を守るということの積極性に欠けていることは、今日の文部省のまことに悪いくせだ。こういう点についてはぜひ御反省願いたいと思う。  続いて質問を進めますが、大臣ははしなくも私立学校学校差の問題について言及されました。私はこの私立大学あたりの非常に学校差のあるという問題について心を痛めている一人です。幸いに学術局長もおみえになりましたからお伺いしますけれども、最近この私立学校の各大学では、授業料を値上げするという案があると聞いています。これは全国一斉に値上げするようでありますが、こういう値上げをするということは果して妥当なことであるかどうか。今までのこの私立大学を見ましても、これは私の自分の家庭での体験なのですけれども、これ以上どうも幾らなんでも私立大学の授業料を値上げするということについては、まことに賛成しがたい。しかるにもかかわらず、文部省はわざわざ私立大学の学校差をつけるようなことを、授業料を値上げしたり、また、学校差をつけるようなことに拍車をかけているように伺っています。それは授業料の値上げとともに、文部省は大学の格づけをしようというふうに示唆をしていられると聞きます。たとえばAクラスの大学、Bクラスの大学C、Dというような大学の格づけ示唆、特に三等級に格づけ案を持っているというように聞いていますが、授業料の値上げということと、それから大学の格づけ示唆の問題について、基本的にどういう考えを持っておられるか、大臣にまずお尋ねをして、具体的な問題は局長にお尋ねをしたいと思います。
  108. 松永東

    国務大臣松永東君) 私は高田委員の今のお説によって初めて大学の格差ということの文句を知ったような上げです。大学にそう格差があろうとも思いませんし、さらに文部省としましては、そんな格差をしようとか、差等を設けようというような考え一つも持っておりません。でございますから、監督権の範囲内において平等に一つ就学の機会均等をはかるようにやっていきたいというふうに考えております。
  109. 高田なほ子

    高田なほ子君 授業料はどうですか……。
  110. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 授業料の値上げの問題でありますが、これはまあ各私立大学でございますので、原則として自主的な運営教育につきましては、学校の経営につきましても、自主性を認めるという建前からやっておりますので、それぞれの大学におきまして、その経営上財源といたしましては、授業料にたよっておるところが多い実情でありまして、そのために来年相当値上げをするところがあるように聞いております。ただ、この授業料につきましては、現在の制度といたしましては、学校の学則にちゃんと規定いたしまして、それで徴収することになっております。これを文部省の関係から申しますと、文部省に対しまして報告が参ります。それ以上には規制の方法が今ないわけです。それは私立学校法が私立学校の自主性ということを中心に考えておりますので、これを文部省が規制をしていく建前には相なっておらぬわけであります。ただしかし、御指摘にございましたように、授業料が高くなりますことは、これはもちろん好ましいことじゃございません。学生がこれを負担をいたしますその限度を越えて高くなるということでありますと、これは非常に遺憾なことだと存じます。ただ、これが私立大学といたしまして、どの限度が一番適当であろうかということは、はなはだきめがたい問題だろうと存じます。あるいは教職員の待遇改善とか、あるいは教育内容の施設の整備とかいったような面で、その財源を授業料の値上げに求めるということが現在行われていることは、事実のようでありますので、文部省といたしましての立場は、今申しました通りでございます。
  111. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣からの御答弁によりますと、あれですか、三等級の格づけというものは風評だけで、それは全然文部省としてはそんなことは考えておらぬというのですか、どうなんです。
  112. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 格づけというのは、ちょっとお話しの意味がわからないのでございますけれども、大学を格づけいたしまして、それを別の扱いをするということは全然考えておりません。それは国立大学にいたしましても、私立大学にいたしましても、特に私立大学に対しまして何か格づけをするということはあり得ないことであります。
  113. 高田なほ子

    高田なほ子君 それでは設置基準を強化するために、どういう方法をとっておられますか。設置基準の完全実施目標にしてAクラス、Bクラス、Cクラスという三等級を設けるというふうに伺っておりますが、それは設置基準実施を強化するために格づけをするのか、それはどういう関係にありますか。
  114. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) もちろん、あの認可いたします場合に、設置基準に照らしましてやっておるわけでございます。その設置基準につきましても、いろいろ条件がついている学校もございます。自然事実上は、設置基準にどこまで達しているかという段階はあろうかと存じますけれども、それを何か分けて差別扱いをするということは考えておりません。これはたとえば昨年御審議願って成立しました研究設備の補助金の問題にいたしましても、それを対象として大学の格づけをして、その今おっしゃいますようなCの学校には補助金を出さぬと、そういったようなことは全然ございません。
  115. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣は授業料の値上げについて御答弁いただけませんでしたが、学術局長の方から好ましいことではないというふうに答弁されました。しかし、伝え聞くところによると、私立大学の自主性を尊重するということは、これは当然のことなのです。ですからその私立大学の授業料の値上げ等についても、これは自主性として認められるかもわからないのです。しかし学校の自主性というものは、その授業料だけの私は問題じゃないと思う。今回の私立大学の授業料の値上げ問題の特徴は、全国の私立大学は、ほとんど画一的に授業料を上げていくというのです。これはまことにゆゆしい問題ですが、これは資料として私はちょうだいして、こんなにお金がこれはかかることかということを思いを新たにして見たのですが、大体今度の私立大学の連盟の懇談会に提出された、私立大学の連盟から出した資料によると、大部分の大学が一人の子供に対して五万数千円の金がかかっている。実にこれは莫大な金がかかっている。少いところで三万数千円です。一人の子供を大学に入学させるのに五万も六万もかかる。なかんずくこの統計を見ると、女子の大学の方が男子の大学よりもはるかに高率の徴収をしている。これはまことにおもしろい統計で、数字をあげてここでお読み申し上げると、まことにおもしろいのですけれども、実に六万、五万、なかんずく女子の大学は総体的に五万以下のものはない。そこへ持ってきて、さらに授業料を値上げするということになると、教育の機会均等という線はくずされていく、金のある子弟でなければ大学に上れない。もちろん、国立大学は授業料が安いというところから、そういうところから学生が殺到する。何も、学校がいいというようなことよりは、授業料が安くていい学校だから国立大学を望むのが当りまえだ。ここに試験地獄が生まれてくる。その次に生まれる問題は、金のある子弟でなければ大学に安んじて入れないという、教育の機会均等の線をくずしていくという、実にこれはゆゆしい問題なんです。どうして私立大学の授業料を値上げしなければならないのか。その原因はどういうところにあるのか。文部省としてその原因を的確につかんでいなければ、本問題の解決は、私、むずかしいと思う。どういう点にこの授業料値上げの原因があるのか。おつかみになっている面があるのならば、御答弁いただきたい。
  116. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 各個の大学につきまして、詳しいことはわかっておりませんけれども、先ほども申し上げましたように、私立大学は本来、自主的に経営していくものでございますから、その財源を得るために、特に最近は教職員の待遇改善の問題、あるいは教育施設の充実の問題が起っておりますので、さような点から財源を得るために、値上げを行われたものだと思っております。お話しのように、教育の機会均等の建前を確保いたしますために、国といたしましては国自身で国立大学を設置いたしまして、そうしてその授業料は、御承知の通り、安い授業料で運営いたしております。国なりあるいは地方公共団体等で運営いたしておりますところによりまして、公けの立場における機会均等は……。そのためにそういう大学を設置していると、こういうことに相なるかと存ずるのでごさいまするが、私立大学は、これは繰り返して申し上げますように、全く独自の自主的な、あるいは学風を立て、あるいは経営についても、それだけに自主的にやっているということでありますから、さような傾向になることは、今日の制度としては私はやむを得ないのじゃないかと思います。
  117. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、あれですか、授業料を値上げすることはやむを得ないということに、結論になりますか。
  118. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 私は、先ほども申し上げましたように、優秀なる学生であっても経済的に、授業料の値上げのために進学ができないというような限度に至りますれば、これは決して好ましいことじゃないと存じますけれども、しかし今、国がこれを措置するということは、制度の上からできないことでもごさいますし、また、国がこれを何か措置をして、こういう国の措置を私立大学の中に、私立学校の中に強く入れるということになりますと、これは私立大学の本質をやっぱりそこねることになるのじゃないかと考えます。
  119. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは大へんな私は間違った御答弁だと思います。国が支出をしたから国が統制をしなくちゃならぬという理由は、成り立たないと思います。諸外国でも私立大学の運営のためには、相当なやはり寄付金もあるでしょう。あるいはまた、国から補助を受けて、出す国もあるでしょう。それはその国々によって違うかもしれませんが、国が私立学校振興法で金を出したからといって、それを統制しなくちゃならないという理由は成り立たない。国の責任教育の機会均等という線を打ち出しているからには、やはりこれは満ち足りない部面については、当然国が補助すべきではないか。しかも、施設の拡充のために金が要るから、どうこうというような御答弁でありますけれども、大体が国の補助率といっても、ほんとうにスズメの涙みたいなものでしょう。私は私立大学に対しましても、国の補助金の、補助率というものは、相当やはり上げていってしかるべきじゃないかと思うのです。三十二年度の国の補助金は八千八百万円、そうでしょう。これを各大学に割り当てすると、平均一大学について百二十万から三十万というものです。このような金は、これはもう全くただ振興費を取っているというだけのことで、ほんとうに私立の大学の学生たちのために、国がやはり相当の手を伸ばしているということには相なるまいと思います。もちろん、私立大学ですから、あらゆる部面についてこれは自主性を持たなければならないでしょうと思いますけれども、わが国の受験生の状況と、学校の収容の実情と、それから現在受けている進学環境、教育環境と申しますか、そういうような点からにらみ合わせてみましても、私は国の補助率というものは、相当やはり考えなければならないと思う。中教審あるいは私立大学研究設備審議会、日本私立大学連盟、これらのところは、いずれもこの答申、あるいは声明、あるいは要望書等で、この国の補助率を上げることについて、いずれも強い要望を出しています。こういう要望には、国民の声として文部省がこたえるべきものであって、それをやらないでもって、この設置基準の強化をやかましく言ったり、あるいは大学の格づけのようなことをやったり、あるいは授業料の値上げ等に関して、口を緘して語らないということでは、私は少し間違っているのではないかと思います。いかがですか、松永文部大臣は。この国の補助率を引き上げるということについて、それぞれの機関から、相当文部省あたりにも陳情やら、声明やら、抗議やら来ているのじゃないですか。これについてどういうふうになさろうと思っておられますか。
  120. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、私立大学についても相当補助金を出して、そうしてやはり国民の子弟の教育のために、一生懸命努力しているのでありますから、万全を期したいと考えておる。従って三十三年度予算にも、これはまあ十分というわけではありませんけれども大体四億円、研究設備の補助、助成金としまして出すことにいたしました。ちょうど昨年から見ますというと、二億五千万円ばかり増額いたしております。でありますから、これは決してこれで満足するわけではございませんけれども、しかしできるだけのことは、一つこれからもやりたいというふうに考えております。
  121. 高田なほ子

    高田なほ子君 若干の予算をふやしていただいたことは、うなずけます。なるほど、国の補助率あるいは地方公共団体、そういうものの補助率は毎年のように、昭和八年以降次第に昭和二十八年のこの二十年間に、どんどん上ってきていることは事実です。そしてまた、昭和三十年以降これまた上ってきています。だがしかし、金額において上ったということは、国全体の総予算の率からいって、率が高率になったということは私は限らないと思います。その証拠には、昭和八年に百分比で見ると、補助率が一という数字が出ている。この一という数字は、依然として昭和十五年まで一々と続いている。そして、昭和二十三年、二十四年は、これは補助率ゼロです。それから二十八年まで依然としてやはり補助率は一であります。三十年度以降も、同じように補助率は一、こういうふうな数字が出ておるようでありますが、これは文部省の資料です、よそからの資料じゃない。文部省が出した資料ですから、これはお間違いのない資料だろうと思います。問題は、金額をふやすということではなく、もちろん金額をふやすことは、当面の問題でありましょうけれども、この補助率をどういうふうに引き上げていくかというところに、この陳情やあるいは声明が私は来ているんだろうと思います。こういう引き上げをしないと、物価は毎年々々上っているわけです。物価の上昇によって、物価指数というものは高まるのですから、金額だけ上げたって、本問題の解決にはならない。そこで、こういう貧弱な補助率をしているわけでありますから、各大学の人たちは実に一人々々大へんな金を出しているのです。今、表がちょっと見当らないのですけれども、歯科大学あたりは、施設費というのは、一人一万五千円くらい取られているようですね。それから、それぞれ大学でも施設費といって二万円くらい取っているのがある。三万円取っているところがあります。それから、あとでこれはお調べして物を申したいところなのですが、はなはだしいところでは、十何万円も取っている大学がある、施設費に。こういうことをやったのでは、これはとても一般の子弟は大学に上れませんよ、こういうことをやったのでは。その上に、これは授業料値上げでしょう。こういうことを防ぐために、もう少し文部省はがんばっていただかなければならない。このことと私立大学の自主性ということは別個の問題として、少し御研究願わなければならない。この補助率に対して、どうなっていますか。この資料は違う資料ですか。これは、私よそからいただいた資料なのです。
  122. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 先ほど大臣から御答弁がありましたことでございますが、私立大学に対しまする助成金といいますか、先ほど私は考え方の原則論を申し上げたのでございますけれども、しかし、私立大学に対しまして、政府として助成の手を少しでも高めていくことは、これは非常に必要なことでございまして、教育の水準を向上していくという意味から申しましても、非常に大事だと思っております。文部省といたしましても、これまでこの点につきましては、十分努力をしてきたところであります。大臣からお答えがありましたように、来年度におきましては、私立大学に対しまする補助金といたしまして、研究設備の購入費に対する補助金といたしまして、先ほどお話がございましたように、昨年八千八百万円でありましたものを一億九千七百万、それからもう一つ、私立大学理科特別助成補助金、これは教育面の設備の助成金でありますが、これは、昨年五千万でございましたのを一億九千八百五十万、両方合せまして、三億九千玉百五十万計上いたしております。昨年度に比べますと、これは二倍上になっております。昨年度は、両方合せますと、一億三千八百万でございましたのを、今申しましたように約四億でございます。増額が二億五千七百万、かような二倍以上の増額を来年度におきましては計上いたした次第でございます。そうして、今の補助率という話しでございますけれども、たとえば、研究設備の助成金だけを例にとって申し上げましても、これは昭和二十八年から始めておりますが、初め二十八年度におきましては三千万円でございます。それが、昭和二十九年度はちょっと減りましたが、二千八百五十万になりまして、それが三十年度になりまして三千八百万、三十一年度も三千八百万、三十二年度に五千万円加えまして八千八百万円になりまして、来年度は一億九千七百万、かように増額いたしたいという考え方でございます。でございますので、先ほど、率を二十八年の一というお問いだったのでございますが、ちょっと私その資料はよくわからないので、その点につきましてはお答え申しかねます。  それからなお、このほかに、私立大学に対しましての研究面につきましての助成といたしましては、御承知の科学研究費というのがございます。これは、来年度は、三十二年度に比べまして二億二千万ふやしまして、十四億二千万計上いたしております。これも、国立大学ももちろんでございますが、私立大学も対象になることでございまして、かような面につきまして、政府といたしましても、私立大学の助成につきましては、十分に努力いたしておることを御了承願いたいと存じます。
  123. 高田なほ子

    高田なほ子君 問題は、こういうような中で、少しずつ文部省の方も手を伸べてきてはいるようでありますが、何といっても、この授業料の値上げは食いとめてもらわなければならない。私は、現在の私立大学の経営者を批判する気はさらさら持ちません。しかし、大体において、私立大学の経営者それ自体が、経営主義が重点になっておるという傾向に陥らざるを得ない。これは憂慮すべきことであって、これは経営者自体の問題ではなくて、やはりわが国の文教政策一つの問題点として、これからも十分に私は御検討願わなければならない点ではないか、こういうふうに考える。とにかく、今の私立大学の学生の実態調査についても、私は十分な資料を持ち合せておりませんけれども、アルバイトをして通っている者がかなり多いわけです。このアルバイトをしている人たちは、今ぎりぎり一ぱいの生活をしているのですからね。この人たちにとって、授業料の値上げという問題は、私どもが物価の値上げに騒ぎ回ることより以上の大へんな問題だと私は思うのです。こういうようなところから、生徒たちが、学生たちが、青年たちが絶望することがあるでしょう。やむなく学を断念しなければならない面もあるでしょう。しかし、彼らを迎える社会というものは、事ほどさように簡単な就職口はない。彼らの行く道は、さながら、女たちが追い詰められたときに売春婦として転落をするがごとくに、社会の中に転落して行かなければならない。これは、単に教育問題だけではなく、一つの岸内閣のやはり大きな政策の欠陥として、これからも皆様とともに、こういう面を見て行かなければならないと思うのですが、少くとも、文部大臣として、今回の私立大学の授業料値上げという問題についは、一つもう一段の御研究を願って、経営者とともに学生側にしわ寄せが行かないように、十分の御努力をいただきたいと思う。入学に際して、三万円から五万円、あるいは七万円というような、そんなべらぼうな入学献金を使わなければならないというようなことは、これはほんとうに憂慮すべき問題でありますから、これ以上そういうことがないように、重ねて私はここでもってお願いしておきたいと思う。それについては、学校の経営者側にこれをしわ寄せをするということは、これはいけないことだし、重要な学生の施設というものに対して、手の打ちようがないという状態に置くのも、これもどうかと思う。有名な某私立大学の授業をしている光景を見ると、すわる所もなくて、立っているような大学もあるでしょう。学生が立ってノートしている。声もろくすっぽ聞こえない。こういうことではいけないのでございますが、このことのために、私立学校振興会の貸し付けが行われておるようですが、政府は三十三年度までに五十億円を支出することになっているが、三十二年度までにすでに四十五億が貸し出されておる。そうすると、残り五億というものが三十三年度の貸し付けになるのか。これは設置基準に達しないもののためにのみ貸し付けしているのか。弱小私立大学に対する貸し付けというものが、この振興会の貸し付け規則の中で行われておるのかどうなのか。学校差をなくするために、この問題についても相当研究していただかなければならないのです。これはどういうふうになっていますか。局長に数字の問題、お尋ねいたします。
  124. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 来年度五億計上いたしまして、それで五十億になるわけです。この運営につきまして、私、直接の所管でございませんけれども、今お話しのように、内容改善、あるいは基準に達するということも一つ目標でありましょうが、内容改善という観点から貸し付けたいと、かように存じております。
  125. 高田なほ子

    高田なほ子君 それはあなた、真剣な答弁していらっしゃらないですよ。三十三年度までに五十億出資するのでしょう。三十二年度までに四十五億貸し付けてあるのです。だから、あと五億しか残っていない。ところが受験生は殺到する、設備は悪い。そういうものに対してもっと予算というものがどうにかならないのか。それでいいのかということなのです。
  126. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 五十億といいますのは、政府の出資金を五十億にするということでございまして、毎年の運営、これは別の金額でございます。私は直接の所管でございませんので、その詳細のことを申し上げられませんけれども、来年度五億というのは、そういう意味の五億でございます。
  127. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると何ですか。五十億でもって各大学の学校差をなくする。つまり設置基準に達するようになる完璧な金額が五十億ということなのですか、どうなのですか。
  128. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 五十億を運営いたしまして、これは貸し付け金でございますから、返還もございますし、それを運転いたしまして貸付金を続けていくわけでございます。
  129. 高田なほ子

    高田なほ子君 これはあとで資料としてちょうだいしたいことなのですが、各大学にどんなふうにこの金が配分されているのか。つまり、この金というのは、設置基準に到達するために貸し付けるのでしょう。精神は学校差をなくするためにこういう方法がとられたのでしょう。そうだとするならば、各大学にどのくらいこれが貸し付けられておるものか。現状はどうなのか。五十億で目標とするだけの学校差を解消することができるのか。これは資料として後刻ちょうだいしたいと思うわけです。大臣、授業料の値上げについては御答弁がないのですけれども、これが一番大事な問題です。
  130. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました私立大学の授業料の値上げですね。これはあなたと同様に、むしろ、あなた以上に困ったことだと私は思っております。ただ、これは現行法律では、各私立大学の授業料を値上げしちゃまかりならぬという指令を私の方から出すことができない。そこで、これは何とかこういうことを法律一つきめて、これだけ、四百九十九もある大学の中に私立が相当あります。これをもっと監督を厳重にし、もっとこっちから指導を強くするというようなことができればと思いますけれども、そうなりますというと、なかなか、各私立大学はいずれも自治体であります。自治権を持っておりますから、こっちの言うことなんか聞きやしません。そこで、これをどういうふうにして統制していくか。すなわち、一面においては中央集権だなんという声も起りましょうけれども、しかし文部当局として、そんな、月謝を上げちゃいかんぞというようなことを指導する強い力を持つととはできぬものかというふうにも考えておる。これは、もう、御指摘になりました点は、何とかして、今日アルバイトをしている学生あたりが、非常に困窮しておることは、私自身もかつて経験がありますから、よく承知しております。そこで、何とかしてこういう面を是正したいというふうに考えております。この点も文部省内でいろいろ研究はいたしておりまするけれども、しかし、右申し上げる通り、各それぞれの私立大学に命令をもって値上げを禁止するというようなわけに参りません。しかし、いろいろ協議会を開いておりまして、そうして私立大学の当局ともいろいろ協議して、そうして何とかそういうことをやらずに済むような方法はないかということも、勧告はいたしております。しかし、これから先も大いに続けて、そういうことのないように、あるとしましても、何とか緩和するように続けていきたいと存ずる次第であります。
  131. 高田なほ子

    高田なほ子君 大臣は、指導監督ということをよくお好きでおっしゃるのですよ。文部省というのは、指導監督の機関じゃなくて、これはサービスセンターなんですよ。それを指導監督の権がないからそんなふうにしたいなんというようなことは、これは大臣、不見識ですよ。そうじゃなくて、後段におっしゃったように、やはり、経営者側と十分懇談をし、話し合いの機会を持ち、どうしたならば授業料の値上げをしないで済むか。国として何とかやる手はないか。できるならばもっと補助率を上げて、今日の学生の要望にこたえるように、間接的にやはり財政的な援助をしてやるという私は方法が望ましいので、これ以上、文部省指導監督とか統制とか、これはご免こうむりたいですよ。今でたくさんですよ。これ以上私立大学というものに、やたらにお役人のような方が、えらそうな顔をして命令されたらいけませんよ。今の形でいいですから、金だけ出してやって下さい。そうして授業料はこれはぜひ上げないように、文部省自体がそういう本腰を持ってお話しすれば、私お話しに応じて下さると思うのです。来年は何とかこの率を増してこんなふうにしたいから、ちょっと待て、何とか待てないものか、というような積極的な話し合いが望ましいのであって、上げてしまってから騒いだって、これは何にもならない。どうか一つ、これは経営者にとっては授業料の値上げということは、緊急不可欠の問題であるかもしれませんが、あまりにも現在の子供たちがかわいそうです。そうしてまた、大学に進ませるために、親が朝から晩までみそ汁で食事をしなければならないというような、この日本の母親の悲願というものもお考え下さって、どうか一つ授業料の値上げは、何らかの形でここで食いとめられるような積極政策が得られるように、これは指導監督ということを意味していないでというただし書きで、申し上げます。  私ばかりであれですから、これで質問を終ります。
  132. 野本品吉

    ○野本品吉君 ただいま高田委員から私学の補助の問題につきまして、いろいろ御意見があり、また、当局の御答弁があったわけなんですが、私は、私立学校運営の非常に大事な点は、一般の官立大学と違って、個々の大学の建学の精神と申しますか、同志社には同志社の建学の精神がある。慶応には慶応の、早稲田には早稲田の。従ってその建学の精神、学校の個性というものをはっきりと生かしていくような運営ということが、その教育上としては非常に大事なことだと思っておるわけなんです。そこでしかし、それを、学校自体ではいろいろ施設なり、設備の改善ができないというので、文部省が国から一応の補助を出す。その補助を出すということが、学校の個性というものに影響を与えていくるということは、慎重に考えなければならぬという点においては、高田委員と同感なのでありますが、しかし同時に、一方から考えますというと、また、国民の血税によって私学の補助をしていくのでありますから、私学に対する補助は、金を出せば出しただけでいいと、野放図で、やりっ放しでいいんだと、こういうことも考えられないんで、建学の精神をそこなわないという基本的な立場に立ちつつ、同時に一方においては、国が投入する国民の血税というものが、ほんとうに生かされるように学校運営をしていっていただきたいという念願を絶えず持っているわけであります。この点につきまして、これはまあ非常にはっきりしない質問でありますけれども、私はそういうふうに考えているんですが、大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  133. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、私も考えております。それは、建学の精神、要するに校風です。その校風ということが、一番私立大学には必要なんです。御指摘になりました通り、早稲田には早稲田の校風がある、慶応には慶応の建校の精神がある、さらにまた、いろいろな、同志社その他、中央でも明治でも、それぞれのやはり校風がある。その校風をやはり生かしていきたい、校風をますます光らせ、輝かしいものにしていきたいということは御説の通りであります。しかし、一面において、御指摘になりました通り、補助金としても、なるべく何とかして学校経営が楽にいけるようにしたいということは、これはもう当然でございます。というのは、やはりわれわれ文部当局の考えておりまするような方針に基いて、それぞれ青年たち教育の任に当ってくれている私立大学、これはもう当然のことであります。けれども、何と申し示しても、国民の血税がそんなに余裕がございません。でありますから、先ほど来申し上げたような、まあ不満足ながら、補助金を出して、そうして援助をいたしておるというような次第なんです。しかしながら、先ほど来高田委員からるるお述べになりました、授業料の値上げをやらないようにする問題は、これはもう、しごく御趣旨ごもっともと存じまして、先般来私学の人あたりと会ったときにも、いろいろ私からそうした忠言はいたしておる。しかしながら、私学の方は私学の方として、相当やはり経費がかさみ、いろいろ設備その他に費用もかかるということで、背に腹はかえられぬというような現状であることも聞いております。しかしこれは、しょっちゅう会うことですから、御趣旨のあるところは、一つ伝えておきたいというふうに考えております。
  134. 野本品吉

    ○野本品吉君 もう一つ。そこで、私学に対する補助金の問題でありますが、各学校への補助金の配分、それから配分された補助金が各学校において有効適切に使われておるかどうかの経理の状況、そういうことにつきましては、文部省はどういう立場に立たれているんですか。
  135. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 配分につきましては、昨年御審議いただきました法律にも明記してございます通りに、審議会を設けまして、その審議会の議にかけまして適正な配分をはかっております。これが使用の状況につきましては、なかなかこれは一々学校をたずねて監査をするというまでには至りません。しかし、十分私立大学の団体とも連絡をとっておりますから、それを通じまして、適切な使用が行われますように指導をしていきたいと考えております。
  136. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 私からちょっとお尋ねいたしたいと思います。それは昨年私立大学の研究設備の補助の法律ができますときに、当時としては年次計画というものができていない、ただつまみ金のような格好で助成をする。昨年のような金額でいけばなんでも七十年か八十年かかかるというようなことで、大臣もこれではいけないから、一つ十分将来検討して計画的にやろうというような御答弁があったんですが、本年こういう予算をお出しになるについては、何か年次計画か何かお持ちになってお出しになったのか。本年もそれができないで、まあ一応こういうようなつまみ金のような形でお出しになったのか、その辺ちょっと伺いたいと思います。
  137. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) これはどこまで高めたらよろしいかという問題は、非常にむずかしい問題でございまして、現在はっきりした基準もないわけでございます。ただ、まあ私立大学関係の方々の御意見も十分聞いておるわけであります。しかし、今度の一億九千万円がこれでいけば十分だという額ではございません。その意味におきましては、はっきり年次計画は立っておりません。しかし、一歩でも高めながら、なるべく満足な状態に近づけたいという努力を今後も続けていきたい、かように存じております。
  138. 湯山勇

    委員長湯山勇君) ただいまの問題は、大臣もしばしば言っておられるように、将来理科系統をふやしていこうということとの関係もあると思いますし、それからせっかく審議会もできておることですから、ぜひ一つ計画的にやっていただかないと、せっかくやったととがむだになるとは申しませんけれども、効果が出ない場合があると思いますから、もうすでにあれから一年たっておりますから、さらに御検討願いたいと思います。  もう一つは、研究費の問題ですが、昨年助成研究と奨励研究の費目が落されまして、これでは困るということを私から申し上げたことがございました。それについては、昨年、目内の流用でもって助成研究、奨励研究は五百万円程度の額でしたかで残されたと記憶しております。で、本年の予算を見ますと、やはり本年も奨励研究、助成研究が落されておりますが、これは科学技術振興という建前から申しますと、民間の研究なり、あるいは個人的な研究なりというものを奨励するというのは、当然やらなければならないことなので、こういうふうに予算の目から落ちておっても、当然奨励研究、あるいは民間の研究というものは、昨年同様に継続されるものと私は理解しておるんです。間違いありませんでしょうか。
  139. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) その通り考えております。
  140. 野本品吉

    ○野本品吉君 次にお聞きいたしたいのは、ことしの文教予算の中の目新しいことの一つといたしまして、社会教育の面において、新たに青少年の宿泊訓練と団体活動の指導者養成等のための青年の家の施設整備に六千万円を計上したということ、そういうことになっておるわけであります。私は教育の機会均等の問題は、やはりそれぞれの境遇に置かれておる若い者に対する適当な施設を作ることが必要で、学校をふやすだけが、教育の機会均等の実現ではない、村には村の、町には町の、学校へ行かない者に対する教育の機関がほしいということを念願しておったわけでありますが、幸いに今年度新しく六千万円という予算を計上して、新しい施設としての青年の家というものを考えていく、これは非常に私としましては喜ぶべきことであると、こう考えております。そこでお伺いいたしたいことは、青年の家のために計上された六千万円というものは、大体どういう構想においてこれを扱っていくか、最初にこの構想の輪郭だけをお伺いしたいと思います。
  141. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま、青年の家についてのお尋ねでございますが、これはただいまおっしゃいましたように、私どもといたしましては、健来からやっておりますところの青少年の野外活動の拠点としての野外訓練の場としてこれを使っていくということと合せまして、特に最近必要になって参っておりますところの勤労青少年に対する職業技術の教育を充実させるというような観点から、そういった職業教育の施設も加味いたしまして実施いたしたい、こういう趣旨でございます。で、六千万円の金の使途でございますが、これにつきましては、今申しましたような観点から、大体その施設と設備とを分けまして、この施設につきましては青少年の宿泊訓練もできるような施設にいたしますと同時に、設備もそういった宿泊訓練のできるような設備と同時に、いろんな各種の職業教育的な設備も加えたい、こういうふうに考えております。従って六千万円でございまするので、必ずしも十分とは申せませんが、大体三十三年度の予定といたしましては、おおむね十五カ所程度にこれを作りたいという計画のもとに進めております。補助率も、大体地方の府県が建前といたしまして半分、それから国からの施設、設備の補助金を大体原則として二分の一と、こういうふうに考えて進めておるわけであります。
  142. 野本品吉

    ○野本品吉君 今まで青少年の家として二十数ヵ所の既設のものがあると思っております。この既設のものと、今度の青年の家との性格の違いと申しますか、違いをもう少しはっきり示して下さい。
  143. 福田繁

    政府委員(福田繁君) この性格的な違いと申しますか、それは私、別に違わないと考えております。従来の各府県に奨励して参りました二十六ヵ所の青年の家につきましては、大体従来が、建前といたしまして青少年の野外活動の拠点というような意味で作ったのでございます。従ってその点においては全然性格は同じでございますが、しかしながら、三十三年度のこの青年の家につきましては、規模もかなり大きくなって参ります。それからまた、いろいろ設置場所につきましても、従来のような単なる景勝の地とか、そういう野外活動のみに便利なという観点からのみ選定した場所でなく、職業教育もある程度十分できるような観点から選定する場所にも持っていきたい、かように考えておりますので、多少その点は、目的は変ったということはできるかも存じませんが、性格的には変ってないと考えております。
  144. 野本品吉

    ○野本品吉君 職業教育も加味するということになれば、おのずから、かりにそれが農村に設置される場合には、農村における近代的な農具の研究というような、工場地帯ならば機械の研究というような、いわゆる研究センター的な設備、それから研究センターとしての内容を持たせた運営、こういうようなことをお考えになっておるんですか。
  145. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは土地の状況なり、あるいはその使用の目的なりに応じまして、それぞれ多少の特色を持ってもいいんじゃないか、あまり画一的に設けなくてもいいんじゃないかと私は考えております。従って今おっしゃいましたような点で、たとえば農村に作る場合におきましては、農村の青年のために必要なそういう農具その他の実習訓練等もできるように、いわばセンターと申しますか、そういう使命を当然持ってもいいのではないかと考えております。
  146. 松永忠二

    松永忠二君 大臣にちょっとお尋ねするのですが、社会教育費というのは今年十六億要求をして、国立の競技場の管理運営費とか、あるいは国立西洋美術館創設の費用等が減るという関係で、要求を十二億八千というわけで非常に減らした要求をしておるのです。ところが結果十二億の要求に対して、昨年より少い要求をしていて、そして結果は四億七千と、三分の一の社会教育費しか通らないわけです。しかもその中には、体育局の設置とか、アジア競技大会の開催とか、今お話しの出てきた青少年の家とかの補助等も含んでおるのです。相当新しい新規事業を含んでおるのです。そういうふうに見てくると、非常に社会教育費というものが充実をしていないと私たちは思うのです。具体的に一つ一つ当っていってみれば、青年学級の振興費等が要求の二分の一であり、昨年よりも節減をされておるとか、社会教育特別助成費もそうであるし、教育放送についてもそうであるように、非常に社会教育費自身が充実をされてないと思うのです。こういう点については大臣としてはどういうふうな努力をなさり、そしてまたどういうふうな結果がこういうものを生んできたか、どういうふうに考えておられる、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  147. 松永東

    国務大臣松永東君) 今、松永委員の仰せになりました点についての予算の面については、相当努力はしたんですが、そのことを今さら言ったって何もなりませんが、要するにどの費用がどういうふうにいくという明快な説明は、福田政府委員から申し上げた方がおわかりになると思いますので、お聞きを願いたいと思います。
  148. 松永忠二

    松永忠二君 私がお聞きしたいのは、教育費の内容については、いろいろ説明もあるので私よくわかっておるのですが、ところが実際には、社会教育費は非常に自主的にというか、自粛をされて、事業の落ちたものについてはそれを減らして要求をしておるのです、昨年よりも。しかも、その要求しておるものが三分の一しか通らなくて、しかもその中に体育局の設置とか、アジア競技場の設置等というような、そういう新設の項目も含まれていて非常に少い。私は内容のことを聞いておるのではなくて、あまりに社会教育の費用が非常に取れてないというようなことについては、どういうふうに努力をなさったが、けれどもだめなんか、特にどうして社会教育の費用がこういうふうに少いのか、その点大臣どういうふうにお考えになっているかということをお聞きしたんです。内容のことではありません。
  149. 松永東

    国務大臣松永東君) これは一番総計の数字をごらんになればそうなりますけれども、御疑問の点無理からぬと思いますけれども、しかしながら、国立競技場建設費用、これが三十三年度は必要がありません。そこでこれが十二億幾ら、十三億ばかりこれを削らなければならない、必要がないですから。それからその次には、国立西洋美術館、これはもうでき上ってしまい、この経費は要らぬ、こういうことから総額においては減額になっておる、こういうことなんです。ですから、昨年度すなわち三十二年度は必要があったのですけれども、三十三年度は必要がないものですから、その経費を削減した、こういうことになっておるわけであります。
  150. 松永忠二

    松永忠二君 私はそういうことを言ったのですよ。そういうものがないので、予算の要求がすでに昨年よりも減っているわけです。そういうことを考えて予算要求を減らしているわけです。ことしの予算要求というのは、昨年の予算要求より少くなっているのです。そういう点、非常に社会教育費は少いので、そういう点についてやはり少いというようにお認めなのか。それとも今のように少くなっているのは、こういうもの、こういうものを切ったから、少くなっておるというお考えなのか。やはり非常にこれは少いのじゃないかと私は思うのですが、どうなんですか。
  151. 松永東

    国務大臣松永東君) これはお説の通り、今申し上げたような費用が要らなくなりましたから、これを切ったのであります。それでも社会教育費はもう少しほしかったのです。ほしかったのですけれども、なかなかそう思う通りいきませんので、しかしどうも本年度は、すなわち三十三年度は、右申し上げたような額ですけれども、これは来年、三十四年度は相当ふやさなければならんというふうに、文部省全体でも考えておる次第であります。
  152. 松永忠二

    松永忠二君 今、野本委員からもお話があったように、岸総理が青少年に対して奮起を要望して、その関係の予算等非常に努力をしたようなお話を聞いておるわけでありますが、現実に青少年といっても、その対象となるものは多く勤労青少年だと私は思うのです。そうすると、勤労青少年に関係した予算というのは、ここで社会教育費の中からいうならば、青年学級の費用というものが考えられるわけです。それからまた、あるいはほかの方の費用でいえば、定時制、通信教育の関係の費用というようなものがそうだと思うわけであります。この定時制、通信教育関係の費用も全部削られてしまった。給与を四割国庫負担するということも削られてしまった。そしてまた、青年学級の予算等も非常に削減というか、節約をされているわけです。もう少し勤労青少年の教育という意味からいうと、特に青年学級並びに定時制の通信教育とか、あるいは定時制の教育を進めるために、給与の四割国庫負担というような問題等が解決をしなければできない問題だと思うのですが、こういう点についての十分な解決がなされていないわけです。こういう点について、やはり青年学級等についても十分な構想を持って予算要求をされていると思うわけなんですが、そういう予算の折衝に当っては、どういうふうな状況でこれらの問題が削減をされているのか、そういう点を大臣が無理であれば、局長から一つお聞かせいただきたいと思うわけです。
  153. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 青年学級運営費の補助が二百万円ばかり三十二年度に比較いたしますと三十三年度において減っておりますが、これは一般に旅費とか、庁費とかいうような関係の経費の節減の趣旨でありましたので、そういった点で節約を若干つきあったという結果から減ったものであります。また、先ほどおっしゃいました社会教育特別助成費の減でございますが、これは減と申すよりも、むしろ従来社会教育特別助成金の中に約三百万円分の青年の家の経費を含んでおりました。これが大きくふくれまして、六千万円ばかりにふくれて外に飛び出しましたので、この方を合せますと、むしろ増加になったという関係になるわけであります。われわれといたしましては、先ほど大臣がおっしゃったように、必ずしも十分とは申しませんが、大いに努力したつもりでございます。
  154. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 定時制の経費でございますが、設備費につきまして、理科の設備を増加するという意味で、若干ではございましたが、三百五十万円の増額をいたしております。なお、定時制の建築費の補助といたしまして、前年初めて五千万円入れましたけれども、本年はさらに一千万円増額いたしまして、六千万円にいたしたわけであります。なお定時制の職業教育の推進のために、分校の職業教育施設設備補助金といたしまして二千万円を新たに計上したわけでございます。こういうような面で、定時制及び通信教育の振興をはかったわけであります。ただ今お尋ねの、給与費の十分の四の補助はどうなったか、こういうことでございますが、これは前年も認められておりませんでした。本年も、文部省は要求いたしましたけれども、実は交付税交付金の方が一・五%御承知の通りふえましたので、交付税交付金の方で十分みるからということで、本年は遺憾ながら補助の方は落したわけでございます。
  155. 松永忠二

    松永忠二君 その定時制についての施設とか、あるいは設備の額がふやされたということは承知いたしているわけですけれども、一番定時制の関係で問題になっているのは、四割の国庫負担であることは御承知の通りだと思うのです。これが実現が相当懸案の問題であるし、しかも、こういうふうに政策として掲げられているときであるので、われわれとしては相当今度予算化の可能というものを見ておったわけです。青年学級についても、いろいろお話はあるけれども、具体的にはなかなか予算の伸びが少いのではないかというふうに、伸びどころじゃない、節約を受けているというふうに私思うわけです。そこで、大臣にお尋ねするのですが、今、青年の家の話も出てきておりますが、青年の家を建てるとしても、私はいなかというよりも、むしろ町に建てられるというか、市町村の中でも、町くらいの中心のところへ建てられるのじゃないかと思うのです。それから高等学校に産業科を設置するといっても、高校は御承知の通り都市にある。定時制といったところが、やはり高校としては定時制は都市に相当多いわけです。分校の数はむしろ減ってきているわけです。そうなってくると、実は勤労青少年と、こういってみたところが、十五才から二十五才の青少年というものが大体千五百万ある。その中で教育を受けている者が大体五百万、青年学級に行っている者が百万だ、こういうことになると、あと九百万の勤労青少年というものが、いろいろな形で施策はされるとしても、ほとんど落ちているわけです。しかも、その施策というものが、ややばらばらにあちこちただ手を打っているというふうな状態になってきていると思うわけです。そこで御承知のように、中央青少年問題協議会が答申をして、産業高校というものの設置を、仮称して答申をしているわけですが、勤労青少年の教育について抜本的に何か考えているところがあるのかどうか。そういう点について、各地各所へばらばらに手を打つのではなくして抜本的な方法を講じてこの勤労青少年の教育を充実させてゆくという構想をもって進められているのかどうか。その辺を一つ大臣からお聞きをしたいわけです。
  156. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました勤労青少年の教育については、私は非常な関心を持っているのであります。これは申すまでもなく、昼間の間、あるいは工場に、あるいは野ら仕事に一生懸命汗あぶらを流して働いた青年たちが、夜間のひまを利用して、そうして頭を練り腕をみがくという学問にいそんしんでいくという青年たちには、できるだけ国家が手を差し伸べてそうしてこれを救済し、なごやかな気持で学問をさせるというふうに仕向けていかなければいかんというふうに私は考えている。先ほど御指摘になりました青年の家の問題、これは必ずしも都会に建てるものではございません。むしろ、景色のいい村落あたりに建てて、そうして保健の趣旨にかない、さらに共同生活によってお互いに知識をみがき合っていく、さらにできれば職業的の教育もしたいというふうに考えておるのでございます。従って、むしろ町方というより、村落の方にそういうのを建てて、そうして空気のいいところで修練させたい。さらにまたもう一つ、これは将来のことでございまするが、御承知の通り四千万円は、この費用を運輸省の方が取りまして、そこで運輸省の方はどうかということをいろいろ聞いてみると、やはりこれも青年層の教育のためだそうでありますが、そうして、そういう計画は、温泉場だとか、空気のいい、見晴らしのいいところあたりに建てると、こういうような話しでございますから、そういうところにもこっちから割り込んでいって、一つ利用をさしてもらおうということを交渉しようじゃないかということも、今お互い、この文部省内では研究をいたしておるのであります。さらにまた、先ほど来お話しの定時制教育、これについては、今申し上げておりましたような考え方から、何とかできるだけの補助はしたいというふうに考えましたけれども、思う通り予算も取れませんでしたが、ただ、各村落に分校を作りまして、そうしてその分校でやはり相当の教育をすることができるようにしたいというので、たしか、これは二千万円であったと思いますが、予算を計上いたしておるのであります。従って、本年度は思う通りにはいかなかったのですが、私は右申し上げるような趣旨からして、この問題については渾身の力をぶち込んで、そうして何とかこうした青年層の利益のためになるように働いてみたいというふうに心得ております。
  157. 松永忠二

    松永忠二君 私がお聞きしたのは、青年の家のそういう構想とか、定時制の構想とかいうことではなくて、そういうように定時制を充実さしたり、あるいは定時制あるいは全日制に産業科を設置したり、あるいは青年の家を作ってみたりしたところで、現実には青年の家にしたところで、全国で十五ヵ所です。いなかへ作るというようなことを言われてみたところが、現実に、さっき話したように、九百万のいわゆる勤労青少年がいるわけなんです。青年学級にも入っていなければ、定時制にも入っていない子供たちがいるわけなんです。こういう勤労青少年を教育するについては、やはりもう抜本的な考え方をもっていかなきゃできないときではないか。そういうふうな点について、すでに青少年問題協議会等でも一つの答申も出ているので、文部省としては何か考えられて、大臣としては個々のそういうものを充実するとともに、何か計画的に構想を持って、抜本的な改革をする時期だというふうに考えて努力をされておるのかどうかということを、また考えられていたら、具体的にそういうものがあるかどうかを、それをお聞きしているわけであります。
  158. 松永東

    国務大臣松永東君) よくわかりました。御趣旨をはき違えておったかもしれません。仰せの点は重々ごもっともだと考えております。従って、この問題については、すでに中教審に諮問をいたしておりまして、たしか、本月末あたりまでにはその諮問が私らの方に参ることになっております。そうして、その諮問を受け取りました上で、一つその実現に努力してみたいと思っております。
  159. 湯山勇

    委員長湯山勇君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  160. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 速記をつけて。
  161. 高田なほ子

    高田なほ子君 中教審に今諮問していらっしゃるという御答弁でしたね。ところが、今年の予算を見るというと、この青少年対策というのが、各省ばらばらに出ておる。せっかく文部省がその中教審に諮問しておるというにかかわらず、ざっと見ると、さっきお話しにありましたが、文部省が六千万円、運輸省の方が今度は四千万円、それから今度は、何ですか、総理府の方に二千二百万円ですか、それから農林省の方は、農村建設青年隊事業費の補助に千六百四十万円、それから農村青年建設隊中央隊というのに七百五十万円です。それから農村青年実践活動促進費補助というのに六千三百万円、それから農村青壮年海外派遣費の補助、これが九百万円、それから農業講習費補助五千八百万円、それから、さっき言った運輸省の方が四千万円でしょう。そこへ持ってきて、建設省の産業開発青年隊というのに三千八百万円、こういう工合に実に各省ばらばらの青少年対策で、これでは松永さんの御質問にあるような、抜本的な青少年対策はできないのじゃないかというそしりを免れないのじゃないか。先ほど文部大臣は、農林省の方へ割り込んでいくと言いますが、割り込むという精神もどうかと思いますが、一体各省ばらばらにとられたこういう青少年対策というのは、自民党の選挙対策ですよ、これは明らかに。これは、政府はよくありません。こういうことを一体、行政府としてどういうふうに総合的におやりになるのですか。これはよほど、大臣は青少年対策の本家本元ですから、しっかりお考えにならぬといけないと思いますが、各省まちまちの対策は、どういう経過からこういうものが出てきたか、せっかく中教審の方に諮問もしていらっしゃるのに、なぜ、こんなものが突如として出てきたか。これはおそらく、岸内閣の青少年対策としてぱっと出てきたものが、各省ばらばらに出てきたのではないかという想像がされるのですが、この経過と総合的な行政措置と、どういうふうになさるのですか。割り込むのでなくて、どうなさるのか、この点について伺いたい。
  162. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の御指摘になりました点は、全くばらばらで出ておることは、御指摘通りであります。しかし、今度、総理府に青少年局とかというのができまして、そうしてこれを統一してやるようになっておるのです。ですから、御指摘になりましたようなばらばらのが、やはり統一せられた運営ができるのじゃないかというふうに考えております。
  163. 高田なほ子

    高田なほ子君 それは重大ですよ。
  164. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま大臣のお答えになりましたことに補足して若干申し上げますと、青少年対策と申しましても、それぞれの各省で、それぞれの省の所管の行政に関連した対策というものが、それぞれあるわけであります。先ほどお述べになりました、たとえば農林省の農村建設推進班でございますか、そういったものは、新しい農村を作るというような意味から、農村でのいろいろな対策として考えられておるのであって、建設省でも、それぞれ前から建設班というものを設けて、全国にそれぞれ隊を持って建設班の仕事を進めております。そういった工合に、各省それぞれの立場で、あるわけでありますが、これがまたいろいろ、おっしゃるように、ばらばらで無計画に行われますことは、これはいたずらに混乱を地方に起しますので、そういった点については、従来から総理府におきまして、各省の担当官が集まって連絡なしながら、仕事の調整をしながら進めてきたのであります。青年の家につきましては、これは新しい試みとして三十三年度に、文部省に六千万円、運輸省に四千万円という経費が計上されましたけれども、その他の経費については、大体従前からやっておる仕事を伸ばしていく、こういうようなことになっております。そういった意味で、さらに各省のそういった仕事の進め方を連絡調整しながら、もっと強力に推進していくという意味におきまして、総理府の機構も整備される、こういうふうに聞いておるのであります。以上御説明をいたしました。
  165. 高田なほ子

    高田なほ子君 私は非常にこれは重大だと思うのですが、総理府でもって今度青少年対策の総合的な施策、行政措置についての総合的な見解、そういうものを、総理府の所管になる青少年問題協議会に二千二百万円ばかりの予算が組まれておるんです。そうすると社会教育との関連については、これはよほど研究しなくちゃいけないんじゃないかと思う。社会教育法の第一条では、社会教育の目的を達するために、国及び地方公共団体のそれぞれの任務を明確に規定して、これらの社会教育の仕事に対して不当な干渉を極力排除するように繰り返し社会教育法では明記してあるはずです。そうすると総理府というのは、これは国の仕事です。そうすると社会教育自体が、その国の統制の中でもって行う、文部省の統制の中で行う社会教育の仕事としての青年の家というものを経営がされてくるということになってくると、これは社会教育法の目的と若干逸脱した方向にいくのではないか。今日なおもって文部省の社会教育なるものは非常な批判があるんです。最近文部省の官僚統制がきつくなった幾多の例を私は知っています。これはまたあとで御質問申し上げますけれども、こういう中でさらに総理府の指揮監督、命令指導のもとに、社会教育の管理の中にある青年の家というものが運営されてくるということになると、非常なこれは問題になってくるんじゃないか。私は文部大臣にも党籍を離れていただきたいくらいのことを申し上げておるし、もう文部省なんというものは要らないんじゃないか、こういうような考え方を持っておるんですがね。それはいろいろ議論もしたいところもあるんですが、この点についての関連はどういうふうにこれをおとりになるつもりでしょうか、大へん大切な問題ですから。
  166. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりましたのは、私が先ほど申し上げたことは、少し言葉が足らなかった点もあるだろうと思うんですが、総理府にそうした統一の相談をする場所ができまして、そうしてあるいは農林省、あるいは文部省その他運輸省というのが、重複したいろいろな施設をしないように、統一して仕事をスムースにやっていくような相談をするという場所でございます。何もそれがそこで支配をして、そうして仕事を実施していくという場所ではないのであります。そういうところで、みんなそれぞれの協議を重ねて、重複を避けてスムースに円満にいけるような方法をとりたい、こういう施設になっておるわけなんであります。私の申し上げたところは、その意味でございますから御了承願いたい。なお、足らざるところは福田君から一つ申し上げることにいたします。
  167. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 大臣予算委員会に出られるそうですから……。
  168. 松永忠二

    松永忠二君 私はまだ少しあるが保留しますよ。
  169. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 小林局長に御質問がある方は……、高田さん、さっきの私学振興会の……。
  170. 高田なほ子

    高田なほ子君 私の質問の趣旨はわかっておられますか。
  171. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 大体承わりました。もし足りなければ……。
  172. 高田なほ子

    高田なほ子君 繰り返しますが、貸付金は三十三年度までに五十億支出することになっていますね。ところが、三十二年度までに約四十五億の貸付がされておる、この貸し付けをする目的は、設置基準に達するために、つまり学校差を極力なくすためにそうした貸し付けが行われておるわけです。従って三十三年度に繰り回される五億の貸し付けによって全私立大学の学校差は一応設置基準に到達するのか。五億という貸し付けは、総合的にこうぐるぐる回っているのじゃないかと思いますけれども、そこらの趣旨は、どういうことになっているかという質問です。
  173. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) お尋ねの私立学校振興会の出資金並びに貸し付けについてでございますが、御承知のように私立学校振興会につきましては、二十八年以来年々政府から資本金を出資いたしまして、明年度の五億円で五十億になるわけでございます。そのほかに御承知の通り私立学校振興会が発足いたしました当時、現金出資として三億九千万円の出資金がございます。なお、私立学校振興会発足当時、それ以前に戦災復旧の貸付金の再建出資金を引き継いでおります。これが十七億六千万円、それらを合せますと大体七十一億五千万円という資本金になるわけでございます。これを今後申請者に対して貸し付けていくということになるわけでございまして、なおそのほかにも、たとえば私立学校教職員共済組合、この方の長期掛金の積立金の方から年々一部分借り入れをいたしております。三十二年度では一億五千万円、三十一年度では一億というような金を、これは利子つきでございますが借り入れております。これらの金をまあ貸し付けるわけでございますが、ただ先ほど申しましたように、再建出資の十七億六千万円分は三十年賦で貸しておりますので、急速にこれが返えるわけでございません。年々返ってくるという状況でございまして、実際に、たとえば三十二年度では約十八億程度の貸付金になっております。明年度におきましては、これが御承知のように本年度の八億五千万が五億に減りますので、その分だけ減ってくるわけでございまして、従って十五、六億という貸付金額になるわけでございます。実際にこの各大学、あるいは学校の方から貸付金を受けたいということで申請してくる状況を申し上げますと、たとえば施設費の貸付金十五億に対して三十七億程度の申し込みがある。それから経営費三億二千万の貸付金に対して五億八千万程度の申し込みがある。従って施設費につきましては二倍半程度の申し込みがあり、また、経営費につきましては一・五倍程度の申し込みがある状況でございます。従ってただいま申しました再建出資……、総額公称資本の七十一億五千万程度では、これは完全に私立学校の要望を満たすという状況ではございませんけれども、今まで五ヵ年計画を立てまして、一年延びましたけれども、予定の通り五十億を出資してもらいましたので、今後特別の事情の変更のない限り、今直ちにさらに五十億以上の金を出資してもらいたいということを政府に要望しても、なかなか実は困難ではなかろうかと考えております。今後その場合にどうするかと申しますと、まあ、これにはいろいろ考え方があるわけでございますが、たとえば信用のある学校が市中銀行から融資を受けるというような場合に、その保証をしてやるとか、あるいは利子について補給をしてやるとか、そういうような方法を講じて、できるだけこの資本金が有効に活用されるように方途を講じていきたい。場合によっては、私立学校振興会法の法自体にも、ある程度改正を加える必要が出てくるのじゃないか、こんなふうに予想しておるわけでございます。  それから、私もおりませんで大へん失礼いたしましたが、公立文教の関係で、たとえば僻地等において学校を整備する場合に、文部省が配分の際に、四十坪というような最低基準を設けているそうだがというお尋ねであったように思いますが、一般的には、できるだけ公立文教の補助金につきましては、重点的に配分をいたしたい。従って数年前までやっておりました微量配分というものを、一般の場合にはなるべく排除をしたいという原則を立てております。ただ、たとえば北海道のような、僻地の非常に多いような土地、また、その他の、たとえば本土におきましても僻地で、実際財政的に窮乏しておるような市町村につきましては、例外といたしまして四十坪以下の配分でもとれを認めるという措置をとっておる次第でございます。
  174. 野本品吉

    ○野本品吉君 わかりました。それで、くどいようですが、申し上げておきますが、大蔵省その他に、いわゆる零細補助を押えるという固定的なものの考え方、その零細補助の中には押えていいものと押えてはならぬものがあって、この僻地に対する補助のときは押えてならない補助であるということを、十分頭に置かれて大蔵省との折衝をしていただきたいという希望を申し上げます。
  175. 高田なほ子

    高田なほ子君 さっきから、これはぽつんと切り離した質問じゃなかったんですよ。授業料値上げからここに発展していたわけです。今の御説明だと、施設費がこれだけほしいというのを総計すると、大体三十七億、しかし、現在の状態としては十五億ぐらいだから、約二倍半になっておるというので、それだけ不足になるということですね、施設費が。その不足分が、やはり足りないために、学校としては赤字財政ということに現在はなっているわけですね。それが授業料の値上げという形になってくるわけですね。そういう因果関係になるのでしょう。
  176. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 先ほど申し上げました十五億の貸付金額に対して三十七億の申請があるというのは、なまの数字を、実はそのまま三十一年度の実績をそのまま申し上げたのでございまして、ただその場合に、三十一年度においては貸せないということでありました。それでは翌年まで待つというのがかなりあるわけであります。それから中には、銀行から借りてやはりその年度に建てるというものがあるわけでございますが、これがそのまま赤字財政の大きな原因というほどまでには、実は考えておりません。
  177. 高田なほ子

    高田なほ子君 収容増のためにこういう数字が出てくるのですか。この資料がありましたらほしいのですが、各大学の収容増のために、施設費が過分に必要になってきたのか。
  178. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) これは私ども直接やっておりませんし、振興会の方で申請を受け、貸し付けをやっておりますので、的確にお答えできませんが、できるだけそういう収容増あるいは現状での基準が足らないというようなことについて、できるだけ調査してみたいと思います。ただ、各大学、あるいは学校別ということになりますと、個々の大学なり、学校の財政面に立ち入ってくることになるので、その点は一つごかんべんをいただきたいと思います。
  179. 湯山勇

    委員長湯山勇君) それでは、残余の質問は次回に譲ることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会     ——————・—————