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1958-02-27 第28回国会 参議院 文教委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)    午前十一時十二分開会   —————————————   委員異動 本日委員西岡ハル君辞任につき、その 補欠として榊原亨君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     湯山  勇君    理事            林田 正治君            竹中 勝男君    委員           大野木秀次郎君            川村 松助君            下條 康麿君            林屋亀次郎君            三浦 義男君            吉江 勝保君            高田なほ子君            松永 忠二君            吉田 法晴君            加賀山之雄君   国務大臣    文 部 大 臣 松永  東君   政府委員    文部大臣官房総    務参事官    齋藤  正君    文部大臣官房会    計参事官    天城  動君    文部省初等中等    教育局長    内藤譽三郎君    文部省大学学術    局長      緒方 信一君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    文部省調査局長 北岡 健二君    文部省管理局長 小林 行雄君    海上保安庁長官 島居辰次郎君   事務局側    常任委員会専門     員      工樂 英司君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○教育、文化及び学術に関する調査の  件  (当面の文教政策に関する件)  (南極地域観測に関する件)   —————————————
  2. 湯山勇

    委員長湯山勇君) これより文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動についてお知らせいたします。  本日西岡ハル君が辞任され、その補欠として榊原亨君が選任されました。   —————————————
  3. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 当面の文教政策を議題といたします。  御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 松永忠二

    松永忠二君 二、三の点についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、科学技術教育振興方策というのが答申をされて、それに基いて本年度重点的な文教予算の施策として盛られていることは、ただたび文部大臣からも御説明があったところであります。実は、その科学技術教育振興に関する中教審答申についても、一般批判としては相当やはりいろいろな批判があるわけであります。特にこの振興方策答申が、一般的な基礎学力であるとか、あるいは専門的な基礎学力、あるいは一般教育重要性というようなものを、一応は指摘をしているけれども、非常に技術者養成するというような養成計画重点が置かれている。あるいは科学技術教育ということであるけれども、非常に職業教育そのもの重点が置かれて、やや場当り的ではないか。即効薬的な答申重点が置かれているのではないかというような批判も、実は一般に行われているわけであります。で、この答申中心として出された今度の科学技術関係振興予算を一わたり見てみると、理工科学生を増募すると、千七百名以上の者を増募するというような関係予算であるとか、あるいは原子力関係の講座を増設するとか、あるいは高校の課程の中に産業科を設けるとか、あるいは専科大学を設けるとかというようなものに伴う予算というものは、相当やはり充実をされている。いわゆる技能養成という点については、非常に重点が置かれて予算を盛られているけれども、たとえば基本的な、基礎的な科学技術振興に伴う予算、たとえば教官研究費であるとか、学生経費であるとか、あるいは教官研究旅費であるとか、学生実習指導旅費であるとか、あるいはその学生増に伴う定員増であるというような問題とか、あるいは一般理科教育施設充実とかというような基礎的なものについては、非常に予算がやはり不十分だというようなことが指摘をされるわけであります。そこで、こういう点について文部大臣はどういうふうにお考えになっているのか、まずその点について一つお尋ねをしたいわけであります。
  5. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました点については、十分三十三年度予算でもこれはもの足らない、不満であるという気持は持っておるのであります。しかしながら、御質問のうちの小学校中学校等における準備教育、それにも相当力を尽さなきゃいかぬというので、やはり予算の面に織り込んではおります。さらに量の上においてばかりでなく、質の面においても充実せんけりゃいかぬというので、現在の国の財力の関係においては、満足はできませんけれども、多少なりとも頭を持ち上げるというふうに、予算の上に表わして参ったわけであります。なお、しかし、御指摘準備教育については、これではいかぬので、何とか一つまたしなけりゃならぬというふうに、いろいろ研究は重ねておるのでございますけれども、しかしながら、まず初年度としては、大体ここら辺から踏み出していっていいのじゃなかろうかというふうに、満足はいたしませんけれども考えておるような次第であります。なお、予算の詳細については、政府委員から申し上げることにいたします。
  6. 松永忠二

    松永忠二君 そういうふうなお話があろうとは思うわけでありますが、今度の予算を編成する前に、科学技術養成拡充計画というものを文部省はお立てになっておると思うわけであります。で、その拡充計画に示されている点を見ると、養成人数等については、比較的それと接近したものを作られているわけであります。しかし、大学院の教授とか、助教授をどういうふうにふやしていくとか、具体的な数字も出ると思うわけでありますが、教育研究費についてはどのくらいのものということを、大体計画をされているが、それとは非常に隔りがあるわけであります。で、常に政府の方でも科学技術会議というものを設けて、それに伴う予算をすでに予算要求をされているのでありますが、この科学技術会議に対して文部省は、科学技術養成拡充計画というものをどういうふうに持ち込んで、そうしてこの科学技術会議においてこれを計画化していくのか、そういう具体案をお持ちであるのかどうかという点についてお尋ねをしたいわけであります。
  7. 天城動

    政府委員天城動君) 科学技術者養成計画の問題でございますけれども明年度以降の計画につきましては、三年ほど私たちの方でやって参りました調査基礎にいたしまして、一応の基本を立ててみたのでございますが、その後産業の将来に向っての規模の見通し、あるいは経済的な動きもございますので、科学技術庁その他の関係庁と、この問題をさらにこまかく検討し直している段階でございまして、将来に向っての科学技術者養成計画の問題につきましては、関係庁と緊密に連絡してやっていく考え方でおります。
  8. 松永忠二

    松永忠二君 大臣お尋ねしたいんですが、その科学技術養成拡充計画というのは、たとえば人数について言っても、国立四千人、私学三千人、それから公立千人と、予算的にも二百三十億の金を計画されてるわけです。で、本年度の実際の養成人数についても相当な開きを持ってるわけなので、科学技術養成拡充計画というものは、あらためて検討されていくべきだと思うし、また、その科学技術計画を一体どういうふうに、新しく設けられる科学技術会議文部大臣は、一体どういうふうな観点に立って、この文部省科学技術養成拡充計画というものを具体化していこうとするのか。あなたは科学技術会議の重要なメンバーとして参加をされるわけなんで、科学技術会議に、どういうことを一体諮って、これの実現をはかっていこうというふうに考えておられるのか、その点を大臣から一つお伺いしたいわけです。
  9. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました点は、まず、量の上においても、質の上においても、相当ふやしていかんけりゃならぬ、増強していかんけりゃならぬということは、これはもう論を待ちません。そこで、ちょうどわれわれの承知いたしておりまするいわゆる五カ年計画経済五カ年計画の最後の年、すなわち三十七年になると思いますが、その三十七年度は、大体八千人の中堅技術者が不足するというようなそろばん、これはなかなか正確なそろばんは出しにくいんですが、大体そういうそろばんが出て参ります。そこで、三十七年度に八千人以上を、一つ官学はもちろんのこと、私学の方からも合せて補充していくというふうな計画を立てますのと同時に、質の面におきましても、日進月歩いたしておりまするこの科学技術振興に即応して、そうして古い設備を改善し、そしてこれに対する、学徒に対する教官あたり相当の質を養成していくというふうな計画を立てんけりゃならぬと考えております。しかし、宇宙時代といわれておりまする今日、科学技術庁あたり考え方相当参考にして、教育面においてもこれを具現化せんけりゃならぬというふうに考えて進行したいと存じておる次第であります。
  10. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、こういうふうな理解でよろしいわけでありますか。科学技術会議文部省科学技術養成拡充計画というものを提案をして、そしてその実現をはかっていくというふうに考えているんだと、そうですか。
  11. 松永東

    国務大臣松永東君) 大体、科学技術庁あたり意見も聞きまして、さらにまた、企画庁あたり意見も承わりまして、そして遺漏なきを期したいというふうに考えておる次第であります。
  12. 松永忠二

    松永忠二君 まあ一つ科学技術会議具体案を持ち出して、実現をはかっていただきたいと思うわけであります。  そこで、やはり同じ中教審答申に、中学校について進学者就職者というものについて、進学者には基礎学力向上をはかるとか、あるいは就職者については職業技術者の、技能者としての資質の向上をはかれというようなことが答申として出ておる。それと歩調を合せて教育課程審議会で、御承知のように中学校について進学組とか、あるいは就職組というようなものを作っていくとか、というようなことが出されておるわけです。で、文部省の方でも四月から中学校の三年について、進学就職の区別をはかり、あるいはその大幅な教科選択について幅を認めていくというようなことを考えておられるというふうに発表もされておるわけで、しかし、この問題については、大臣も各地のいろいろな方面座談会に臨まれて、いろいろな方から御意見を聞かれておることと思うのです。特に私ども考えることは、義務教育の中にどういう形で、一体職業教育を持ち込んでいくかということは、なかなか大きな問題があるわけです。で、今の中学校職業科というものの内容を改めていかなければできないとか、あるいは施設充実をはかっていくとか、教員養成充実をはかって、職業科充実をしていかなければできないということは、確かに私ども異論のないところであるし、しかし、どうしても義務教育である以上、やはり職業教育といっても、基礎的な訓練であるとか、科学的な基礎学力というものを伸ばしていくということに重点を置かなければいけないし、そういう方面から考えたならば、全教科充実というような点に、中心を置いていかれるべきだと私ども考えておるわけです。現在の中で、この職業の大幅な職業選択の時間を設けたとしても、実際にはそれを取り扱う先生というものは、具体的に職業料先生というのは非常に充実をされてない、施設もほとんどできてない。そういう中で時間を二時間ふやしてみたところが、現実には充実したところの職業科の授業というものができるわけじゃない。そういうことも考え合せ、また一体義務教育の中における職業教育のあり方というものから考えてみても、これについては、教育学者現場の教師から非常な批判が出ているということ、これを早急に実施をするということについては、非常に困難な問題があるということを、各方面から言われていることは御承知通りだと、私ども思うわけです。文部大臣は、いろいろな座談会へ臨まれて、いや、これは試験的に実施していきたいというようなつもりでいるんだというお話をされている、座談会の模様も私どもも聞いておるわけである。私たちとしては、やはりこういうふうな問題については、ある試験的な期間を置いて、あるいは学校で自由なやり方をしばらくやって、いずれがいいかということを、研究の結果が出てきてから、これを確実に実施をしていくというような慎重な配意が必要だと私ども思うわけです。法的な私どもは疑義を持っているわけですが、大臣としては、これを明年度から強制的に直ちに全部実施をしていくというつもりを持っておられるのか、それともやはりこれは一つの試案として、各学校において実施を必要とするものは実施をしていく、それからまた、そうでないというものについては、現状のままでいくとか、あるいは特別な指定校を設けて、こういう方法実施をさしていくとかいう幅のある考え方で、これを実施をしていこうとするのか、それともこれはもう必ずこういうやり方で一斉に実施をさしていくという気持を持っておられるのか、その辺について大臣のお考えをお聞きをしたいわけであります。
  13. 松永東

    国務大臣松永東君) これはまだ、今松永委員お話しの問題は、それじゃきちっと、どの学校についても強制的にこれを明年度から実施をしていくというふうには、まだはっきりきまっちゃいないのです。私の気持はまだ表わしておりません。ただ問題は、御指摘になりましたように、中学校あたりからそろそろ基礎学を、つまり物理、化学、そういう面についての基礎学を十分浸透さしていく必要がある。そして中学職業に移るこういう子供たちには、職業上の手引きをする必要がある。そこで、それには選択的にあるいは工業とか、あるいは農業とかいう方面に振り向けていって、そうしてすぐ学校を出てからでも差しつかえのない、職業的の面に飛び込んでいって多少の参考になり、稗益をもたらすというふうにせなければいかんというふうな計画を立てまして、研究を今日まで続けております。やがて内藤局長が参りますので、文部省考え方をお耳に入れることができると思いますが、しかし、私の今日まで研究いたしました範囲では、これを強制的に新学期から進行していくというところまでは、まだ相談はいたしておりません。ただ選択的に、そうしてその学校所在の土地の環境に従って、それぞれその特異性を生かしていくというふうなやり方いかんければいかんのじゃあるまいかというふうな研究は、今日までやって参っております。いずれ政府委員から詳しく申し上げることにいたしたいと思います。
  14. 松永忠二

    松永忠二君 今の大臣の御答弁によると、そういうふうな状態で実施をされるというお話しであるのですが、そうなってくると、要するに全国一斉に各中学校で、就職方向コースを選ぶ者は、これだけの時間を必ずやらなければできない、あるいは進学方面向う者については、そういうものを必要としないで、一般教科をたくさんにやらなければいかんというようなことをきめるのではなくて、こういう一つ方法があるので、その方法に基いて実施をするやり方もあれば、従前のようなやり方実施していくやり方もあるのだという形において実施をしていくというふうに考えておられるというようにとってよろしゅうございますか。
  15. 松永東

    国務大臣松永東君) 先ほど私が申し上げた通り、さらに今、松永委員お話しになりました通り方針で進みたいというふうに考えております。すなわち従来の方法でいって、そして進学する子供たちはその進学方針に従って進んで、そして中学三年でやめて職業につこうという人々に対しては、それに即応するように選択科目を選んで修業させる、こういうふうな方針でいきたいというふうに考えております。
  16. 松永忠二

    松永忠二君 私の聞いているのは、そういうふうなものを作って進学コース向う者についてはこれだけの、特に就職をする者については、これだけの職業科選択をしなければできないというようなことを全国に一斉に、しかもどこの学校でもそれによって実施をするというようなことではないということなんでありますか。
  17. 松永東

    国務大臣松永東君) それは私がさっきから申した通り、その学校選択におまかせして、そうして学校の付近の、つまりその地方々々の特異性を生かしていきたいというふうに考えております。
  18. 松永忠二

    松永忠二君 それについては、道徳教育の時間特設の問題とあわせて、あとでもう少し的確にお聞きしたいと思います。  一つ大臣にお聞きしておきたいことは、今、文部省実施をされていく方向の中に、特にたとえば高等学校産業科を作る、別科を拡充して産業科を作るとか、あるいは専科大学を作るとか、あるいは今の話の出てきている就職とか、進学とかいうコースを設けるとかということについても、私どもは一体日本のこういう経営をしている人たちが、自分たち責任においてそういう技術教育技能教育というものは、自分たち職場においてそれを訓練していくという施設充実していくべきであって、そういう責任を果さないことを、学校教育の中で責任を果していかせるようなやり方ということについては、私どもは賛成はできかねるわけです。もちろん、今の学校教育の中で不十分な点については、十分改めていき、充実をせしめていくべきだとしても、どうも今の考えている考え方の中には、経営者自分の果すべき技術者養成施設充実という点については、何らの努力をしないで、それを学校教育の中でやらせていこうというような気持が、相当強く働いているというようなわけであります。これについてはいろいろな協議会等でも、文部省はもっと現場先生、そうしてまた教育を実際担当している人の意見を、もっと尊重していくべきだという意見を言われているわけです。文部大臣としては、一体今後こういうふうな、経営者職場なりあるいは職場の連合体で技術者養成の問題をどういうふうにして推進していくべきであるかというふうな、具体的な考え方というものは持っておられるのかどうか。そうしてこういう問題を学校教育に持ち込むことについては、どういうふうに一体お考えになっておられるのか。その点を一つお聞かせいただきたいと思います。
  19. 松永東

    国務大臣松永東君) ただいま御指摘になりました松永委員の、その職場職場においてそうした技術者養成するということが当然だというような御説、まことにそうした計画は望ましいことなんであります。私も今日まで大企業家の中に作ってあります技術学校を実際行って実見いたしましたそうして参観いたしまして、ほんとうにその大きな会社、大きな工場等につい  て、その工場の持味を生かしていく、そうしてそれを次の時代をになう技術者に仕込んでいくというこの行き方については、非常に望ましいことであるという私は共鳴をいたしております。しかし御承知通り、わが国は中小企業家が非常に多いのでございまして、そうした施設を、あるいは学校経営することのできないような小工場がたくさんございますことは、御承知通りであります。従って、われわれ文部当局といたしましては、そういう方面の役に立つような技術者中堅技術者をたくさん作らなければならん。そういう必要性から申しましても、今御指摘になりましたような、やはり文部省といたしましては昔の専門学校、つまり蔵前の高等工業とかあるいは一橋の高等商業、そういうふうな中堅層技術者中堅層実業者を作るというふうな方針で進まなければいかん。そうすることが実用向であるというふうに考えまして、それで三十三年度から新しい計画として御協賛を仰ごうとして、今法律案を出している次第であります。
  20. 松永忠二

    松永忠二君 その新しく考えられている各問題について、具体的なこまかいことにつきましては、またお尋ねするとして、一体この辺でやはり文部省職業教育というもの、技能者養成というものについて学校教育の協力できる限界というものを、一つ明確にしておかなけりゃいけないじゃないか。まあ、松永文部大臣が出られてきて、いろいろ次々と出てくるいろんなやや教育制度の改革に触れるような問題が、比較的安易に実は出てきているわけなんです。まあ、必要だとお考えになるからお出しになるのでありましょうけれども、しかし、事柄は実は非常に六・三・三・四制の制度そのものに大きく影響を及ぼすような問題が、割合に簡単に予算の上にまた出てきておるわけなんです。こういうことになると、いわゆる限界というものを、どういうふうに文部省考えておられるのか。むしろ、ずるずるに、そっちの方に引きずり込まれてくるのではなかろうかという気持も、実は持つわけです。そういう点について、やはり今いろいろ御答弁があったわけでありますが、やはり学校教育の中で果すべき職業教育、そして一般経営者の果すべき職業教育というものについて、やはり文部省としてはこういう考え方を持っておるのだという基本的な態度を明確にされる必要があると思うのですが、そういう点については、大臣はどうお考えになっておられますか。
  21. 松永東

    国務大臣松永東君) 今の御指摘になりました点は、要するに六・三制をゆすぶるような計画を立てかかっているのじゃないかというようにも聞こえるのですが、それほど大した考えを持っているのではないのです。六・三制は、これはもちろん、このまま内容充実して発展させなけりゃならぬ。しかし、御承知のような世界環境経済情勢に即応するように何とか今後の教育もやっていかんけりゃならぬということを焦燥するあまり、すべての人がなるほどその通りだというふうに納得のいくような問題ばかりではありますまい。おそらくは議論も相当あることでござりましょうけれども、しかしながら、何といたしましてもこれら技術教育を浸透させんければいかぬ。諸外国の例に見ましても、ソ連、米国、英国、西ドイツ等方面やり方、さらに計画等にかんがみましても、われわれ日本教育といたしましてはこれに取り残されるわけには参りませんので、何としてでも、一つおくれをとらぬような施設をやっていかんけりゃならぬというふうに考えまして、こういう計画を立てているような次第でございます。そうして今仰せになりましたその大きな工場、大きな会社あたりでの実業家がやっておる方面に、そういう方面の御必要な工業技術については、まかしておいていいんじゃないかというようなふうにも聞こえるのでありますが、しかし、それはそういう方面の必要に応じた教育はその特異性を新たに作って生かしていくというふうになさることがけっこうでございましょう。私どもといたしましては、全国にまたがっている科学技術が必要である。その必要性に応じて、そうして普遍的な一般的なこれら技術一つ教育していくというふうに考えておる次第でございます。
  22. 松永忠二

    松永忠二君 まあ、いろいろ御説明を聞くわけでありますが、今度新しく設けられる、先ほど話が出ましたが、政府の方でも科学技術会議が開かれるわけです。そこへ文部省は出られて、文部大臣もいろいろそれに参画されるわけなんであります。そういう点について、やはり相当はっきりした限界をもって臨まれない限り、やはりそういうところの要望が、いたずらに学校教育そのものの中に入り込んでくるというおそれもないわけではない。そういう点については、相当やはり一般教育関係している者は心配もしている点もあるわけなんであります。それを危惧というならば、危惧であるという点を明確にするためにも、そういう基本的な態度を示される必要が私どもあると思うので、そういう点については、なお一つ特段な御努力をいただきたいと思うわけであります。  私はもう二、三の点についてお尋ねするわけでありますが、教育課程審議会がいろいろな報告をして、特に中間報告をした。それに基いて実は道徳教育の時間特設の問題が出てきているわけであります。実は、この文部広報の中に出ている特設時間に対する教育課程審議会目標指導方法により、基本線が出てきたという具体的なものを見せていただいたわけでありますが、これを見たときに、指導方法等について考えて、具体的にあげてある日常生活上の問題の利用、読みものの利用、教師の説話、社会的なできごとの利用、視覚教材の利用、実践活動、研究作業というようなものが出てきているわけなんであります。一体こういう指導方法実施をされていくということならば、現実に社会科なり他の教科で、国語なり社会科で現実に行われていることだと私ども思うわけであります。特に道徳時間を特設をしてやっていくということ、一体このものを見たときに、その必要が私どもは具体的に痛感をされないわけであります。これはいろいろ各方面の御意見があると思うのであります。そこで、実は道徳教育の時間を特設をすることについて賛成をする人の中でも、これを強制をしない方がいいのじゃないか、こういう一つのプランをもって、このプランを実施をしていこうというものについてはこれを実施させていく、そうしてそれが行われていって、結果が非常にいいというような結果が具体的に出てきたときに、一斉にこういうふうなことを実施をしていくということはいいとしても、賛成をしている人の中にも、直ちにこれを実施していくということについては、考慮を払うべきじゃないかというような意見も出てきているわけであります。文部大臣全国的に通達をしてぜひやれというのではなくて、試験的な意味で都道府県教育委員会に流すなどというようなことを言われているわけであります。私どもいろいろなところから、初中教育局長あたりが言われていることあたりを見ると、教材等調査研究会にこれを出して、三月に手引きを出して、そしてこれを全国一斉に実施をしていくのだということを言われておるけれども、これはあくまでも参考試案であって、手引き書であって、必ず週に一時間特設をしなければできないというようなことではなくて、今言うように、そういうふうなこういう一つの試案があるということで、必要な学校実施をしていくというふうに考えておられるのか、これはやはり全国一斉にこれを実施をしていくというお考えをお持ちなのか、その点を大臣から一つお聞きをしたいわけであります。
  23. 松永東

    国務大臣松永東君) ただいま松永委員の仰せになった通りなんでございます。実は全国にやりたいのです。全国にやりたいのですけれども、強制はしない。文部大臣の通達でやりまして、そうしてそれを全国にやりたいとは考えますけれども、それはその学校々々、その土地の環境に従って、そうしてまた、先生方のお考えによって、そうしてそれを採択していかれるところもあるだろうし、決してそれを強制してやってもらうというふうには考えておりません。しかし、相当期間それをやってみまして、そうしてそれがいいということに皆さんの御納得ができて、そうして国民の世論がなるほどこれはやった方がいいということになったら、これはまあ、皆さんの御協賛を得て強制してやるようにしなければなりますまいが、とにかく今のところでは、文部大臣通達で出しまして、そうして一つ各地方々々の教育委員会でそれを採択してもらう。それでそれは強制的にもっていこうというのではないということだけは、この前のたしか衆議院でも私は予算委員会かなにかでそう申し上げておいたのであります。
  24. 松永忠二

    松永忠二君 そうすると、先ほどの就職、それから進学コースと同じように、その道徳教育の問題についても、特設時間を設けることについても、一つのこういうふうな試案がある、文部省としてはこういうものを必要だと考えていると、実施をする場合には、こういう一つの具体的な方法もある、そういう意味で手引き書を作られて、そうしてこれを地方の教育委員会に流して、教育委員会がそれを実施するところは実施するし、実施を必要と認めないところは実施をしないというような形で、これを実施をしていくと考えているのだというふうに、今の御説明ではとれるわけですが、それで間違いないわけですか。
  25. 松永東

    国務大臣松永東君) 松永委員の仰せられる通り、後段はその通りです。しかし試案ではない。文部省から通達で出すのですから試案ではない、しかし、強制はしないということなのです。それは今最後に仰せになった通りであります。
  26. 松永忠二

    松永忠二君 私が試案と申し上げたのは、別に試案ではないということになると、また私は少しどういうことをおっしゃっておるのかお聞きをしたいわけです。文部省考えている一つの案であって、試案というのは、私の申し上げておるのは、そういう意味であります。一つの案である。だからその案を採択をしようが採択をしまいが、それはその地方の実情によってまた一つ教育委員会の中でも、地方教委の中で、市町村の教育委員会の中で、それを実施考えていくところもあれば考えていかないところもある、そういう結果が出てきて、世論的にもこういう方法がよかろうというときに、全国的に一斉に実施する。それまでにはたとえば文部省としても教科を設定するとか、あるいは教科書等の問題も解決をしていくというような形であって、あくまでも一つ文部省考えている案である、その採択は要するに地方教育委員会の権限によって採択をして、各地各様の実情に即した方法によって、これが実施をされていくのだ、そういう理解で私は申し上げておるわけです。もし、そういう理解で誤まりがないとするならば、一体私の申し上げたようなことが的確に県の教育委員会なり、地方の教育委員会にその趣旨が伝達されていると、文部大臣はお考えになりますか、その点についてはどうですか。
  27. 松永東

    国務大臣松永東君) 仰せの通りです。すべて強制はいたしません。がしかし、文部省案としてそういうものを通達いたしました。そうしてまた、その通達は、やはり全国の都道府県教育委員会の方に通達されております。従って了解を願っておる、こういうふうに考えております。
  28. 松永忠二

    松永忠二君 その点については、その通達の内容一つお見せいただきたい、資料としてお出しいただきたいと思うのです。私どもが理解をしておるのは、現場学校あるいは一般的に今の教育委員会が、責任者がどうお考えになっておるかということは知りませんが、私どものようなこういう関係の者でも、実は明年度必ずこれが全国的に一斉に実施をされるものだと、するのだということを文部省がお考えになっているように、われわれもとれるような状況が、実はいろいろな新聞報道にも出ているわけであります。大臣のおっしゃるようなことに誤まりがないということであれば、そうしてまた、そういう趣旨に基いて通達を出されておるというお話しであるならば、通達を資料としてお出しをいただきたいと思うし、またそういうことについて文部大臣が、誤解がやはり地方にあるというように考えておられるのか、十分その趣旨が徹底をされているというふうに大臣はお考えになっておりますか。私は大臣考えられている趣旨が十分に徹底をされていないのではないかというように思うので、なおこの趣旨の徹底について、具体的に一つ何らかの措置をさせていただきたい。まあ、通達を見せていただけば、その御趣旨がよくわかりますから、そういう点について大臣一つ伺いたい。
  29. 松永東

    国務大臣松永東君) これは私が間違っておったのです。通達をしようという相談にはなっておりましたけれども、まだ通達はしてないそうであります。従ってその通達は徹底いたしておりません。これから通達しようということで、私はまた通達になったものだと思っておったのです。従ってさっきの答弁は取り消すことにいたします。これから通達をする。それと、さっき仰せになった、つまり文部省としてはこれを全国に通達はいたしますが、全国の都道府県になるべくこれを一つ賛成をしてもらって御採用を願いたいという希望は、もちろん持っておることだけは御了承願いたい。
  30. 松永忠二

    松永忠二君 その点については、通達をお出しになるということであるので、通達が出たら、同時に一つここにも資料としてお出しをいただきたい。十分に今大臣の仰せられたことが、その通達に表われるように、まあお願いをしたいと思うわけでありますが、私はそこで、これは初中局長にこまかいことですからあるいは御答弁いただいてもいいのですが、学習指導要領というものについて、まあ「教育課程については、学習指導要領の基準による。」ということが学校教育法の施行規則に出ておるわけであります。その学習指導要領は、当分の間初等中等教育局が作成をするということが、文部省設置法の附則に出ておるわけでありますが、「当分の間」というのは、一体本来どういうふうな趣旨で「当分の間」というのがつけられたのか、これについて一つお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 当時、司令部の関係でこの文部省設置法ができましたので、司令部としては当分の間文部省がやる、将来は地方の教育委員会、特に都道府県の教育委員会で指導要領を作るようにと、こういうサゼスションがございましたので、それに基いて当分の間文部省は指導要領を作成すると、こういうふうに規定されております。で、この点が私ども若干問題があると思いますのは、学校教育法の方から見ますと、これは教育課程の基準は学習指導要領によると、こう明確になっております。ですから、こちらから見れば恒久的な考え方であり、文部省設置法から見ると暫定的になっておる。ここに多少ちぐはぐなものが現在の法体系の上ではあるわけであります。
  32. 松永忠二

    松永忠二君 それは私どもはちぐはぐではないと思うわけです。教育課程は学習指導要領の基準によるというようなことがきめられ、学習指導要領は「当分の間」ということは、今お話しのように、「当分の間」というのを明確にすれば、初めてそこで首尾一貫したものが出てくると私どもは思うわけです。これについてはこの「当分の間」というものを具体的にするということによって、学校教育法なり、あるいは地方教育行政の組織及び運営に関する法律等にいろいろ出ている問題等がやはりここに関連されて明確になってくると私どもは思うわけです。やはりこの学習指導要領については、私がここでいろいろ申し上げるまでもなく、この学習指導要領が実は教科書検定の基準になっているわけです。教科書の検定は、教科書はとにかく国定でなしに、検定によって実施をされているわけなんです。その教科書検定基準が学習指導要領に基いて作られているという趣旨から考えるならば、この「当分の間」というものを、なるべく早く具体的にやはり明確にして、学習指導要領そのものについて地方教育委員会はこれを作成するという方向に、明確に位置づけるべきではないかと私どもは思うのですが、その点についてはどうなんですか。
  33. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) ただいま御指摘になりましたように、教科書の検定権は、これは学校教育法に基いて、文部大臣の権限なんであります。その文部大臣の権限を行使するためにはどうしても学習指導要領というものが必要だ。これも御指摘通りです。ですから、この学習指導要領の作成、これが文部大臣にあるということは、私当然だと思うのです。ですから、今「当分の間」というのに期限をつけろというお話しでございますけれども、私どもとしては期限は今のところつけかねておるのでございます。
  34. 松永忠二

    松永忠二君 そこで、学習指導要領の基準によるというような問題についてですね、特に教育課程というものを実施していく。そうしてまた教育課程を作成していく。従ってその教育課程は学習指導要領の基準によるというようなことを考えてきめられていることから考えてみると、教育課程というものについては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の中にも、教育委員会の権限事項の中に入っている。それから、これはまあ基準の設定というようなことについても、第四十九条に、都道府県の教育委員会が「教育課程、教材の取扱その他学校その他の」云々ということを設けるということが出ているわけです。そういうふうなことを考えてみても、まあ、現実にこの学習指導要項の一般篇に「教育課程はそれぞれの学校で、その地域の社会生活に即して教育の目標を考え、その地域の児童や生徒の生活を考えてこれを定むべきであると言える、という教育課程は、その地域の社会の生活の特殊性により、その地域における児童や生徒の特殊性によってそれぞれ異るものである。」というふうに書かれているということから考えてみると、教育課程というものは、やはり地方教育行政の組織及び運営の法律から考えてみると、地方の教育委員会が作るのが当然であるというふうに私ども考えるのですが、それは誤まりじゃないわけですか。
  35. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) お説の通りでございます。ですから、具体的に何を何時間組むというような教育課程の問題は、これは各教育委員会の責任において組むべきものでございます。しかしながら、国の方はその教育課程の基準になるもの、つまり学年別の指導目標なり、その取扱いなり、時間数、こういう最小限のものは、これは国の方の基準できめる。その基準に基いて、具体的に各市町村で、どういうよな教育活動を営むかと、これは各教育委員会の責任になるわけであります。
  36. 松永忠二

    松永忠二君 そういうようなことになると、あなたのおっしゃったように、具体的に組み、また教育課程を実際実施をしていくところは教育委員会の責任によるということになれば、あくまで文部省の言われているのは基準であって、一つの基準を示したものにすぎないというふうにやはり考えていくべきだと思うのであって、基準というものは、これによらなけれでばできないということではなくて、一つの基準として出されているものであって、これに基いて地方教育委員会が地方の実情に即してやはり時間を組んでいく、教育課程を作っていくべきだというふうに考えるのですが、それで誤まりはないと思うのですが、どうですか。
  37. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 基準の部分に二通りあると思うのです。省令等できめられている問題もございます。たとえば学校教育法十八条には、小学校はこういうふうな目的で運営しろ、それを受けて施行規則でどういう教科を置くか、教科の時間数をどうするかというような問題は、これはおそらく施行規則の問題になると思う。さらに、学年別の具体的な目標、ねらい、取扱い等こまかなことは、指導要領にゆだねられると思う。ですからその基本的なものは、やはり各都道府県あるいは市町村の教育委員会でも守っていただかなければならぬ。それ以上に弾力性のある部分がございますので、その弾力性のある部分は、各教育委員会の特色を生かしていただく、こういうふうに考えておるのであります。
  38. 松永忠二

    松永忠二君 さっき話が出ているように、教育課程については、地方の教育委員会が実施をし、作っていく権限がある。教育課程については、学習指導要領の基準によるというふうなことが出されておる。学習指導要領は当分の間初等中等教育局が作るというふうに出ているのだから、早い機会に学習指導要領というものを、地方が作って、それに基いて教育課程実施をされていくというのが、私は当然の行き方だと思うわけです。それをそういう方向に持っていかないというのは、どういう理由からでありますか。
  39. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) これは特に義務教育の場合でも、高等学校の場合でも同じでございますけれども、私どもは国民に教育責任を負うわけでございます。行政府としての責任を負う場合に、どういう内容のものを、どういう程度にどのくらい教えるべきかということは、これは私どもは当然文部大臣責任だと思うのです。そういう考え方から、私ども文部大臣に学習指導要領の作成権を認められていると思うのです。ですからこの考え方をもしくずしますと、全国義務教育でも、ばらばらになってしまう。それから地方分権、もちろんけっこうでございますけれども、やはり全国的な統一というものは必要だと思う。その全国的統一を要する部分、特に国民に対して、父兄に対してどの程度の義務教育を課すべきか、こういうことは国できめるべき性質ではなかろうかと考えております。
  40. 松永忠二

    松永忠二君 そういうふうにおっしゃると、今できている法律と、あなたのお考えになっているのは、私ども別だと思う。文部大臣にそういう権限があるというふうなお話しでございますけれども、これは当分の間初等中等教育局が作るということであって、これは今あなたの御説明のように、都道府県の教育委員会が学習指導要領というものは作らなければならない。そして学習指導要領に基いて教育課程が行われる。この教育課程実施する権限は、やはり教育委員会にあるというふうに法にきめられているわけです。そこで、元へ返して学習指導要領は文部大臣が作るのである、そしてその文部大臣の作ったものによって教育課程実施され、その教育課程が地方において行われるというふうならば、私は法律を全部変えていかなければできないものであると思うのです。今大臣がおっしゃったように、このいわゆる道徳教育特設の時間の問題、あるいは就職進学コースの問題については、なぜそれを全国一斉に実施できないかといえば、ここに法律的な根拠があるからだと思うわけです。もし文部大臣答弁をされた以外に、これを全国一斉に実施をしていくということになるならば、これは法的に明らかに違反であると思うわけです。あなたの、局長のおっしゃったような考え方で、いや、学習指導要領は、文部大臣が作るのだと、これは全国的な基準だから作るのだ、そしてそれに基いて教育課程が行われるのであって、そして教育課程実施をしていくのは、地方の教育委員会だということになれば、法律を改める以外に方法はないだろうと私ども思うのだが、どうですか。
  41. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私ども、現行法で学習指導要領の作成権は文部大臣が認められている。そして地方教育委員会には、学習指導要領の作成権というものは認められていないわけです。だから「当分の間」、いつまで続くかわかりませんが、現在の段階においては、文部大臣に指導要領の作成権がある。そしてこれを強制するかどうかということは、施行規則の改正の問題になると思う。これは学校教育法で文部大臣にゆだねられた権限です。ただ、文部大臣は、今、道徳教育全国一斉にやるのは、しばらく様子を見たいということで、実は通達でやりたい。この結果がよければ、施行規則を改正しまして、全国に強制するつもりでおります。
  42. 松永忠二

    松永忠二君 私はあなたが最初答弁された、文部大臣はあまり言われませんでしたが、「当分の間というのは、地方教育委員会が作成するということであるけれども、当分の間、初等中等局が作成するというような御答弁があったわけです。その趣旨に基いて言うならば、私は今言った通り、これは文部省が、大臣が学習指導要領を作るのだということをおっしゃっておるのだが、それが正しいというならば、この「当分の間」というものを、明確に法律の上で規定づけていかなければできないものなんです。あなたのおっしゃるように、「当分の間というのは、地方の都道府県教育委員会が作るべきである。当分の間、文部大臣の権限の中に入っているのだという御答弁だから、早くそれを改めておやりになったらどうかというように私は申し上げた。そういうふうな趣旨で申し上げたのであって、そうなってくると、たとえば、現在道徳科特設の問題についても、その当分の間作る学習指導要領も、文面を見れば、学習指導要領は、教育課程の基準だと書いてあるのだが、教育課程そのものだというふうには書いてないわけです。だから教育課程を作る権限というものが、地方教育委員会にあるとするならば、今あなた方がお考えになっているように、一種の基準的な一つのものとしてただお出しになるのであって、これを実際に実施をして、どう実施をしていくかということは、現在の法律をもってしても、あなた方の思っておられること以外にできないと私は思うのです。慎重にやるとおっしゃるけれども、それ以外に方法はないと私は思うのです。そういう法的な逸脱をされないで、そういうふうに実施をされていくということについて、私はしかるべきだと思っているのですけれども、私はそういうふうに考えているのだが、それは誤まりがないと思うのですが、どうですか。
  43. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私が先ほど教育委員会が指導要領を作るのだということを私が申し上げたのは、司令部がそういうことを言ったのです。教育委員会において、都道府県の教育委員会でも、市町村の教育委員会でも、学習指導要領作成上の権限は法文上どこにもないのです。そこで、文部省の設置法だけが、当分の間指導要領を作成するという権限がある。文部省がなくなったら、どこに移るのだということは書いてないのです。だから、私どもは当分の間としても、当然文部大臣が作るべき性質のものだと、こういうように考えております。それからいま一つは、現在どういう教科にし、どういう科目にするかということが、道徳教育では問題になっておるわけです。これは施行規則の二十四条ないし二十五条ですが、そこで科目の問題はきまるわけなんです。それに基いて指導要領という問題も出てくるわけなんです。今のところ、まだ指導要領もできておりませんので、施行規則を改正する段階になっておりませんが、指導通達で、できるだけ各学校道徳教育を徹底していただくようにお願いをしたい。その結果を見て、いずれ近いうちに施行規則を改正し、指導要領を作りたい。かように考えております。
  44. 松永忠二

    松永忠二君 これについては、まあ今、「当分の間」というふうに出ておるから、それでこれは文部大臣だし、これは私が言ったのじゃなくて、当時の司令部がそういうふうに言ったのだとおっしゃるけれども、司令部がおっしゃったとしても、今の法の精神からいうと、これは「当分の間」というのは、早くそういうふうに改めていくのが、法の一貫した精神だと私ども思う。文部省のやる仕事というのは、法律で、教科を作るということなんでありましょう。しかも、それはたとえば小学校についていえば、第十七条、十八条の規定に従って、教科についてはこれを定める、ということがきめてあるわけです。教科を定めることについては、はっきりときめてある。その教科を定め、教科一つの目標というものもちゃんと設定をされておるわけです。その設定されておるその範囲内で学習指導要領というものは、当然組まれていかなければならないのだから、法的根拠はちゃんとある、国の基準は。その基準に基いて学習指導要領というものが各地の実情に即して組まれ、それに基いて教育課程が行われて実施をされていくというのが、法の建前になっておると私どもは思うのです。そういうふうに私ども考えるし、まあ、そういうふうに「当分の間」というものを、いつまでも「当分の間」と置かないで、やはり明確にしていくべきだと思うし、そういうふうに私ども考えておるわけです。それについて、どんな意見をお持ちですか。
  45. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 確かに法文上は「当分の間」になっておりますが、私どもはもし適当な機会がございますれば、こういうものは国の基準として、文部省が将来も握っておきたい。と申しますのは、教育の基準というものが、日本全国学校ばらばらになりますと、これは私どもは非常に国民生活の上から考えて、かえって困るのじゃなかろうかと思う。特に義務教育の段階で、どういう科目を教えるか、これもばらばらになる。どういう内容を盛るかということも、これもばらばらだということになっては、民族の統一の上からいっても、国家の繁栄の上からいっても、必ずしも適当じゃない。今、御指摘のように、都道府県の教育委員会に指導要領の権限がございますれば、これは文部省がはずすということも、あるいは可能かもしれませんが、現在のところは、都道府県の教育委員会に作成の権限がない。国の方だけが「当分の間」ということになっておる。非常にちぐはぐな規定だ、私どもはもし適当な機会ができ得ますれば、「当分の間」を削っていただきたいと思っております。
  46. 高田なほ子

    高田なほ子君 ちょっと関連して尋ねますが、今の御発言は、非常に重要な御発言であると思うのです。傾向は、これは明らかに教育委員会の方で定められたいろいろな権限、地方の自治、教育の自主性、そういうものを非常に阻害するような、いわゆる中央集権的な傾向に持っていくようなおそれのある重大な御発言であったと思うのです。私がお尋ねしたいのは、こういうことになるわけですが、指導要領は、これから永久に文部大臣の権限によって作っていく、そうしてまた、教科課程内容についても、この基準を国できめていく。衆議院の予算委員会の御答弁によると、教科課程内容についても文相の権限があるのだ、その権限を明確に法制化する用意がある、こういうような御答弁と、今の松永さんに対する御答弁とはうらはらを合せたような御答弁になってきますが、指導要領も国で作る、教科課程内容文部大臣の権限だが、現在それの明確な法的根拠がないから、これを法制化して、きちっとすべてを国できめるということになれば、この教育委員会なんというものは、私は一体どこに自主性を見つけていくのか、私はまことにおかしなものになってくると思う。教育の国家統制という形になってくる。これは衆議院の御発言は、教科課程内容についても、法制化する用意があるという御発言は、これはどういう意味なのか。今の松永さんへの御答弁でははっきりしないのですが、この点を一つ伺いたい。これは文相の御答弁だったと思います。どういう意味ですか。
  47. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 衆議院で法令の改正が必要であるというふうに大臣がお答えになりましたのは、これは学校教育法施行規則のことでございます。現在の学校教育法施行規則には、学校教育法第十八条の小学校の目的から、どういう科目を置くかということは、これは文部大臣の権限にまかされておることなんです。施行規則に、国語とか、算数とか、理科とかいうふうに書かれておる。ですからこの改正を予想しておるのでございます。衆議院の予算委員会の法令改正というのは、そういう意味でございます。
  48. 高田なほ子

    高田なほ子君 そういう御発言もあったのです。きょう速記録を用意していないので、はなはだどうもちょっと便利でないのですが、それは道徳教育というものを独立科として設けてやる場合には、当然学校教育法施行規則第二十四条の改正をしなければならないという御答弁があった。なぜそういう答弁をされたかというと、先ほど指導要領の問題について、近いうちに道徳教育についての指導要領を出すのだ、しかし、それは強制しないで通達でもって地方の御了解を得、国民の世論が上ったときに、独立科としてやっていきたいのだということから、二十四条の改正の問題がひょっと出たのですが、衆議院の予算委員会の御答弁をちょっと私メモしておいたのですが、指導要領は八月にできるという答弁をしておられる。八月にできるから当然独立科として設けたいので、施行規則の二十四条を改正するのだというふうに言っておられたのです。そうすると、先ほど文相が通達として流して、了解を得て国民の世論が上ったならばこれを実施するのだというふうに言っておられますけれども、どうもそうではなくて、国民の世論が上ったらというのではなくして、八月にもはや指導要領ができるから、できたならば二十四条を改正して、そうしてこれを独立科として、科目として押しつけていくということになってくるので、どうも国民の世論が上ったらやるというのは御体裁です。あなたの方はちゃんと準備を作っておいて、施行規則二十四条の改正をすでにもくろんでおられるのではないでしょうか。そういう考え方松永さんに答弁しておられるから、どうも大臣とあなたの答と松永さんの質問とは、こんがらがってわからない点だと思う。そこで、私はくどいようですが、今度は大臣お尋ねいたしますが、指導要項、道徳教育の指導要項は八月の末にできるのだ、できたならばこれを通達か何か知りませんけれども流して、これを実施させることになるわけです。そのときに施行規則の二十四条を改正して、そうしてこれは法律できめれば、世論が上るも上らないもなく、中央から、こういう法律ができたからやれというふうに持ってくるのではないかと思いますが、国民の世論とこの八月にでき上る指導要領の実施、それとの関連はどういうふうに一体お考えになっていらっしゃるのですか。底意があるならあるように、もっとはっきりと明らかに出していただいた方が、さばさばしていいと思うのです。
  49. 松永東

    国務大臣松永東君) 私どもとしては、とにかく道徳教育をしようという初めからの企てがありまして、全国都道府県に通達をいたします。従ってその通達を全都道府県でそれを採用してもらいたいということが希望されております。しかし、強制はいたしません。それはつまり学習指導要領が八月にできまして、そうして大体まあ世論が、それはすべてがけっこうだといって、非常に拍手かっさいして礼賛してくれるとは思いません。多少の反対はありましょうけれども、大多数はそれでいいのだという見通しがつけば、これは法律を改正して、そうしてまた、皆様の御協賛を仰いでやっていきたいというふうに考えておるのであります。……いや、間違いました。これは施行規則でございますから、法律は要らないけれども、今申し上げた通り、指導要領ができますれば、今仰せになった通りやっていきたいというように考えております。
  50. 高田なほ子

    高田なほ子君 そうすると、指導要領ができますと、国民の世論が上っても上らなくても、これは実施なさるわけですね。大臣、そうですか。
  51. 松永東

    国務大臣松永東君) 大体、試験的にやるのですが、国民の空気は大体わかるんじゃなかろうかと思います。
  52. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも、大臣はとっても善意の方なんです。わかるんじゃないかというような、そういう宗教のような言葉でおっしゃられても困るのですよ。今、三月に答申案ができると言われておりますが、その三月の答申案に基いての指導要領というふうに私は了解したいのですけれども、どうもその答申というのが、文部省が一応原案をこさえておいて、そうして、これでいいかどうかというふうに諮問する形になっているのですか。そうでなければ、三月に答申が出て、そうして八月に実施するなんというそんなばかなことはできませんよ。そういうような答申だったら、その答申はやっぱり私はほんとうの答申じゃないと思います。前回の文教委員会で竹中さんも、ほんのちょっぴり道徳教育問題については質問がございましたし、われわれもまた十分に大臣の意向をたださなければならない。答申案ができたらば私どもも見せていただいて、そうして十分に、この問題はなかなかむずかしい問題なのですから、文教委員会でも十分に論議さしていただいて、そうしてこれは実施すべきものだと思っているのに、多分もう、八月にできるということになると、作業は進み、答申案の内容文部省の方ではわかっておられて、そうして施行規則二十四条の改正も考えて、そうしてこの教科課程内容そのものについても、文部大臣に権限を与えるような法の改正をして、一挙に私は通達と同時に持っていくのじゃないかという考え方を持っておるのですけれども、どういうような順序でもって道徳教育実施するのか。もう一度系統的に言ってみて下さい。どうもわかりません。
  53. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 教育課程審議会が昨年の九月から発足をいたしまして、そうして毎週一日、土曜日ですね、午前、午後をつぶしてやっているわけです。やっていただいておりますが、そこで基本的な問題で私どもが諮問いたしましたのは、道徳教育についての問題と、それから科学技術教育振興ということ、それから第三に国語、算数等の基礎学力充実の問題、第四番目に先ほどの、中学校を卒業して社会に出る者が五割、すなわち八十万ないし百万の者がおりますので、この人たちにもう少し十分な職業教育基礎的なものを強化していきたい、特に真の適性に応じた弾力性のあるような教育課程を組むべきじゃなかろうかというような四つの点、それから今、現在の小、中、高等学校学校間における重複が非常に多いので、この重複をいかに征服するか。それから各教科間の重複が非常に多い。たとえば国語の中でも、社会科の中でも、理科の点でも、あまりに重複が多い。以上のようなことにつきまして教育課程に大きな諮問をいたしたわけでございます。内容につきましては、各教科とも、すでに中間発表で皆様方もお目通りになったと思いますが、各教科についてそれぞれ中間報告をしていらっしゃいます。三月の中ごろまでには、人体今日までで若干を除いては済んでおりますから、三月の中ごろ程度には、全部の教科にわたって教育内容の改革の方向というものが出るのではなかろうか。この中で道徳教育につきましては、昨年の十一月にすでに中間発表していらっしゃいますのでその中間発表に基いて教材等調査研究会で具体的な細目を検討していらっしゃるわけです。これが大体の私どもの見通しでは、三月の中ごろまでには成案が得られそうな状況であります。ですからこの成案が得次第、都道府県の方にはなるべく早く、四月の新学期には間に合うように通達を流したい。その基本的な性格に基いて指導要領は、これは道徳教育ばかりでなくて、各教科とも八月の終りごろまでには指導要領が作成される、その指導要領に基いて三十四年に教科書の検定が出てくる。これは一番早い分です。それから三十五年に教科書の採択が行われ、子供たち教科書を使用するのは三十六年度からです。これは一番早くて三十六年度。今の予定ですと、三十六年度に小学校を全部発足したい。中学校は三十七年度、一年ずれると思います。これは出版能力の関係で無理でございますので、三十七年ということになると思います。そこで、道徳教育につきましては、他の教科と違いまして、この前教育課程審議会で発表になったように、教科書は原則として使わない。それで読み物とか、あるいは視聴覚とか、あるいは日常のできごととか、新聞、ラジオ等のニュースとか、あるいは子供の作業とか研究した成果とか、こういうものを中心に話し合って、人間の生き方、あり方について反省し、そして考えさせる時間を与えていきたい。こういうことでございますから、教科書を使用するのは三十六年度以降になりますけれども教科書を使用しないものは、すぐにでも発足できる、こういうわけで四月から指導通達でやっていきたい、指導要領ができて、そして先ほど大臣からお答えがありましたように、大体各学校でやっていただいておる状況を見まして、適当な機会に学校教育法の施行規則の改正を行いまして、全国にこれを徹底していきたい、かように考えております。
  54. 松永忠二

    松永忠二君 ちょっと関連して、今の点で。学習指導要領が八月までにできないので、そこで三月、四月からは通達を出してやるのであって、八月に学習指導要領ができれば、そうすれば教育課程はこの学習指導要領の基準によると書いてあるのだから、これはいいのだというような考え方ですか。
  55. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 指導要領ができないから、それを施行規則を改正するのは、無理だと思います。
  56. 松永忠二

    松永忠二君 学習指導要領の基準によって教育課程をやらなければならないが、学習指導要領の基準というのは八月にできるのだから、それまでは学習指導要領ができない。だからそこで通達でやるのであって、基準ができさえすれば、もう学習指導要領ができさえすればそれでいいのだ、つまり今の話しで、状況をみるとか何とかというお話しだけれども、実際には四月からすぐ実施をするには、学習指導要領もできてはいないのだから、法でとにかく規則の中で教育課程が学習指導要領の基準によると書いてあるのだから、字習指導要領ができなければ、その基準に基いて教育課程実施するということは法律的には問題があるので、そこでそれまではこの通達でいくのだという考えなのですか。
  57. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 大体そういう趣旨でございますが、この点は実は文部省文部大臣の諮問機関である教育課程審議会でも、一週間に一時間程度は特設するのが必要だ、こういう答申をいただいておりますので、私ども答申の線に沿って措置したい。しかしながら、御指摘のように八月までは、これはやりたくても、指導要領ができないので、通達でやらざるを得ないと思うのです。その後になりましたら、これは機械的に指導要領が動くというわけでございませんで、いかに実施するかという時期については、私は施行規則等できめなければならぬ。施行規則の改正を必要としますから、これは単に道徳教育だけでなく、各教科とも施行規則で明瞭に施行期日をきめなければならぬと思います。
  58. 松永忠二

    松永忠二君 そうなってくると、実は順序からいえば、学習指導要領が八月にできて、それからさっきお話が出てきた規則の改正をやって、まあ教科特設する必要があるなら特設をして、そうして教科としての取り扱いもできるので、実施をしていくという順序だと思いますが、実は教科特設するということになれば、これは教科を規則の改正でやったから、それでもう文部大臣の権限でできるかどうかということについては、これはそう簡単には私は言えないと思う。これは教科を設定する根拠がちゃんと出ておるのだから、それについてはいろいろそのとに聞かなければできないことだと私は思うわけです。しかし、私ども今、高田委員からお話があったように、実は学習指導要領も八月にできて、それに基いて教材等調査研究会で資料が集められてそうして教科書ができ、県でもって実施をするのは昭和三十六年ということになっております。よく文部大臣は、善は急げということを言われる。善は急げだから、よければその方をやれというお話もあるけれども、善は急げといっても、実は相当反対な者もいるわけですね。そうなってくると、実は教育課程というものは、全般的な範囲の上に立って行われなければできないし、全般的な見通しの上に問題を考えていかなければいけないし、しかも、さっきから私が少し申し上げたように、指導要領自身についても、現在の法律では、当分の間ただ初等中等教育局が作るということをきめられているだけの状態の中で、一体このことだけをそんなに早急に実施していくというよりも、やはりさっき大臣が言われたように、これは実施の結果を見て、そうしてそれが非常に工合がよいという点が、実証があがった上で準備を進めていくべきだと私は思うのですが、この点については、大臣はどうお考えになりますか。
  59. 松永東

    国務大臣松永東君) 御指摘になりました通り、今もって善は急げと考えております。どうしても道徳教育は必要だというように私ども考えております。また、必要だというわれわれの意見に同意してくれておる国民も大多数だと私どもは確信いたしております。従ってこれを何とかして早く実施したいのでありますが、しかし御指摘になりました通り、学習指導要領あたりを整備しますのについて、一応通達で全国に流して、そうして願くは各全国の都道府県の教育委員会あたりでこれを採用してもらいまして、しかしそれについていろいろなやはり議論もありましょうし、八月に指導要領ができ上りますまでの間には、いろいろな議論も、いろいろな世論の声も起ってくるであろうと、そうしていよいよそのときになって、学校教育法の施行規則を改正するというようなことについても一つ参考にいたしまして善処したいというように考えておる次第であります。
  60. 松永忠二

    松永忠二君 それについては大臣とは私ども考え方が違っておるわけですがね。善は急げというお話があるけれども、善は急げという場合には、まあ全般的にほとんどの方が賛成をしておるというお話しではあるが、文部省が主催されておる校長の教育研究会でも、この道徳教育の時間特設の問題については、相当反対の論議のあったことも大臣は御承知通りであります。また、教育学者の中でも、相当な論議を呼んでおるということも事実でありましょう。ですからそう簡単に大臣がおっしゃるように全般の者が賛成であるというようなことには、私はいかないと思う。現に実施をすることについて賛成する人たちですらも、やはりこれを一斉にやらないで、相当な試験的な期間を置いて、やはり実施をしていくべきだということを言われているので、今、大臣がおっしゃったように、善は急げだけれども、準備もできないので、もう少しただ法的な整備をするだけだというふうな考えでおっしゃるならば、私たちはそうではなくて、やはりもう少しこの試験的な実施をして相当なものが出てきてから考えていくように配慮していただきたい。  それからなおもう一つの点は、実は学習指導要領に基いて教材等の調査研究会ができて、その内容が規定をされ、そしてまた学習指導要領の基準によって教科書というものがその検定の基準になってるわけなんで、そういう意味から言うと、実は教材等調査会なり学習指導要領を作るということについては、相当方面意見を実は入れていくべき性質のものだと私ども思うわけです。そういう趣旨から、私どもは「当分の間」ということは、単に初等中等教育局が事務的にこういうものを作っていくとか、あるいは一方的に作るんじゃなくて相当やはり各方面意見を聞いて作っていくべき、そういうものを作っていくべきだと私ども思う。学習指導要領の基準が、すぐ教科書そのものの内容を規定するようなことになっているような重大なこの学習指導要領を、ただ初等中等教育局が作成をするというようなことでは、実は不備である。やはり学習指導要領そのものを、相当方面的な者を集めてやはり作っていくという配意が必要だ。それによって十分な道徳教育の指導内容というものもきめられてくるんではなかろうかと私ども思うのです。そういう点について、やはりこの教材の問題等についても、私は研究会の委員の方々の顔ぶれを見ても、実は現実にその仕事を実施をしているその人たちというのは、たった二名しか現場の人は入っておらないわけです。もちろん、そういう経験をお持ちの方もあるでありましょうけれども、現実にそうだ。そういうことを考えてみたときに、もう少しやはりその教材の内容等についても、十分な精査をしていく必要が私どもあると思うのです。さっき話を聞けば、必要があれば教科も施行規則によって追加していくということを言われておられる。そうなってくれば、それは教科内容ということではなく、教科書の問題になってきて、非常に大きな内容を持ってくるわけなんだから、それを簡単に短い期間に教材等調査研究会が資料を集めていくなどというようなことで、これを運んでいくということは、非常に慎重を欠いていると私ども思う。こういう点について大臣としては当初述べられたような趣旨で言われているのか、あとの方で言われたように、ただ準備が整わないから、そこでやるのかどっちなんでありますか。
  61. 松永東

    国務大臣松永東君) これは御承知通り、私が就任しましたのは去年の七月からですが、その前に昭和三十一年からずっと連続研究を重ねて参っておる。しこうしてその委員の顔ぶれも、今御指摘になったように、現場先生が二人きりだというお話しですけれども、私の聞いているところでは、そんなものじゃないようです。相当各界各層の人が集まって慎重審議をこらして今日までやって参られたと、こういうことを承わっております。しかも今、先ほど来るる申し上げる通り、通達をもって新学期からなるべく一つ全国に施行してもらう気持を表しますけれども、しかしながら、そうは拘束力を持つものではございません。仰せの通り一つ試験的にやってもらって、そうして八月まで、学習指導要領ができ上りますまでの大体の全国の空気、全国の世論等も参考に入れて、そして善処したい。これはちっとも変っておりません。
  62. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 午後に一つ……。
  63. 松永忠二

    松永忠二君 今お話しになったのですが、このことは私申し上げなくても、御承知だと思うのですが、教育課程審議会は早くから持たれて、この問題については論議をされているというお話しですが、前回の教育課程審議会は結論は出ないのです。それは前回の教育課程審議会では、むしろ逆の結論すら出てきておるのです。それでしかも、新しく設けられた教育課程審議会では、前回の審議過程がどんなふうであるかという資料をお出しでないでありましょう。そういうことから全部今まで積み上げた形で、新しい教育課程審議会が審議をされているのではないのでありましょう。従前の教育課程審議会のことについては、どうもこれは教育教科の専門家が入っているというので工合が悪い。教育課程審議会のメンバーを、今度は教育教科の専門家を抜かして作られた。その入っているときのことについては、どういう資料を具体的に新しく教育課程審議会にお出しになっていかれるのですか、私がまたあとから申し上げたのは、教材等調査研究会の中に、二人しか現場高等学校というか中学校というか、その教諭が入ってないということを言ったんでありまして、教育課程審議会ではありません。ただし、教育課程審議会については、実はおっしゃるように長くから研究していたけれども研究した結論は、前回はそういうふうな結論は出てきておらないのです。ただ、大臣の中間的な報告をいろいろ事務的に、文部省内部の視学官の検討の結果等は報告されているという記事等を見ても、これについては全教科実施するのが妥当だということを、お出しになっておられるようでする。全然あなたのおっしゃったように、積み上げて今までやってきたのではなくて、新しく出発をされているのであります。しかもその内容が、教育課程審議会の前回の一体審議内容は、どれだけ新しい教育課程審議委員の手に渡って検討されているか、その点をお答え願います。
  64. 松永東

    国務大臣松永東君) 今、御指摘になりましたずっと長い間の教育委員会の変遷等については、私よりもその当時からずっと関係いたしておりました政府委員の内藤君が承知いたしておりますから、内藤君から答弁いたさせます。
  65. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 先ほど大臣からお答えがございましたように、この問題は、昭和三十一年度からわが国の教育をどういうふうにするかということで検討を進められておる。そこで、御指摘のように三十一年度には結論は出なかった。これは結論を生むために私どもやったわけではなくて、問題点を洗ったわけです。どこに問題があるか、問題の点を一応洗いまして、このたび昭和三十二年度になりまして、どういう方向でまとめていくかということをお諮りしたのであります。その場合に、各教科の前回の問題点の所在を明らかにするという意味から、各教科の専門家も入っていただいたのです。たとえば習字の専門家、あるいは図工の専門家、ところが、このたび教育課程の全体をまとめる段階になりますと、大所高所から判断していただかなければならぬので、各教科の専門家は一応御遠慮願いまして、大所高所から判断していただけるような方を選んだわけです。ですから、かわった分は教科の専門家がかわりまして、そうでない一般的な方がお入り願ったと、こういうことでございまして、審議の事項において、今まで審議経過が十分審議されなかったという御意見がありましたけれども、これは非常に誤解だと思います。私どもは各教科について、前回の審議過程でどういうふうな問題になっておったかということは、詳細に説明いたしております。その積み重ねの上に、今回の判断を仰いでおるのでございますから、そういう点はございませんことを、御了承いただきたいと思います。  それから教材等に二人しかいないというお話しでありますが、これは誤解ではないかと思います。教材等調査研究会は小学校中学校教科別に、これは十科目あるのでありまして、そのほかに道徳教育もございますので、現場先生教育学者、あるいはその方面の専門の学者、こういう方々で構成しておりますので、この点は現場先生がお二人というのはどういう点か、私の方で非常に理解に苦しむのであります。
  66. 松永忠二

    松永忠二君 私の申し上げたのは、教科別になっている道徳教育の教材等のあれに二人だけだということを申し上げたので、その点は誤まりなんですか、私は誤まりでないと思うのですが……。教科別になっておる道徳教育関係の初等の方面ですか、その方面高等学校と小学校現場の教員が二人しか入っておられない。あとは主事とかあるいはその他の人が含まれているということを、私は申し上げたんです。その点については私も調べてみますので、誤まりであれば訂正をしたいと思うわけであります。私の申し上げたのは、そういうふうな経過をとってきておるし、そうなってくると、私たちは一体新しい教育課程審議会にどういう御説明をなさっているのか。そういう文書的な報告等もお伺いをしたわけです。そういう資料等も御提出をいただいて、やはりこの問題について参考に聞かしていただきたい。特に道徳教育の問題と就職進学コースの設定の問題について、従前の教育課程審議会がどういう結論を一体まとめておるのか。それをどういう形で新しい教育課程審議会にお出しになったのか。それを一つ今、大へん十分に御連絡をとられたようなお話しでありましたので、具体的に一つ御提示をいただきたいと思うわけであります。  それから私の申し上げたのは、そういう私ども承知している今までの審議経過の過程から考えてみても、非常に早い時期に中間報告が行われ、しかも、学習指導要領を作らぬ事前に手引き書を作っておやりになる、整備をすればすぐやれる、教科の設定についても、施行規則で教科を設定するというお話しですけれども教科は十七条、十八条の精神に基いて、事柄によって実施をされておるので、もし教科を設けられるならば、第一号から第八号までのどこに基いて教科をお作りになるのか、その点をお聞かせいただきたい、そういうことなんです。
  67. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 十八条の一号ないし二号でございます。
  68. 松永忠二

    松永忠二君 そうなってくると、私は教科等も十八条の一号、二号によって設けられているというお話しでありますけれども、こういうことこそ、文部省がこういうことを、教科等を規則で作っていかれるというようなことになりますならば、これこそ、私は相当なたくさんな人に衆議を尽してやはりやっていくべきものだ。教育課程一つ内容である教科というのは。そんなことであるから、文部省教科を作っていくのは当りまえのことだ、しかも、教科の時間等も、文部省が権限を持っているのだから、時間等もきめていくんだというようなことになってくるならば、これは新しい戦後の文部省というものが、教科内容というものについては、できるだけ地方の教育委員会に自主性を持たしてやらしていこう、文部省というものは、教育の条件を作っていくという考えで発足されたことと非常に相違を来たしている。私どもの聞いている範囲では、イギリスあたりなどでも、教科内容等については、文部省に匹敵するものがほとんど触れていない。そこで教育行政、特に条件を作るということについて集中的に努力を払っているというように聞いておるのです。こういうようなことが軽々に文部省の権限で、しかも時間的に非常に早い経過にどんどん作られていって、それで新しい教育基本法の精神とか、あるいは地方教育行政の組織並びに運営のそういう精神と全然そむいたものでない、いや、その精神を順法してやらせたというような御理解を、あなたはお持ちになっておられるのですか。
  69. 内藤譽三郎

    政府委員内藤譽三郎君) 私どもは、法律に基いて文部大臣の権限にゆだねられたことだけをやっているわけなんで、別に法律改正をしようという意図ではございません。そこで、もちろん地方教育委員会の組織及び運営に関して地方の教育委員会の自主性の範囲は、これは私はよく存じているつもりです。ただ、教育委員会にしても、これは法令の規制を受けるのでありまして、別に教育委員会だから治外法権だというわけには参らないと思うのであります。その法令の規定の当然制約は受ける。その制約は学校教育に関しては学校教育法によって動くわけです。その目的は十八条の中に一号から八号までございます。あるいは教育基本法第一条にも大きな意味で教育の目的が掲げられております。ですから、教育基本法の第一条の目的及び学校教育法の十八条一号、二号の目的に従って道徳教育の科を設ける、こういう趣旨でございまして、どういう科を設けるかということは、これは私は文部大臣の権限にまかせられている。この場合は文部大臣は独断でやるわけにいかない。教育課程審議会という審議会の意向を尊重してきめる、こういう建前になっておりますので、教育課程審議会の御答申を尊重して、それによって実施する、こういう建前でございます。
  70. 湯山勇

    委員長湯山勇君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  71. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 速記をつけて。それでは、午前中の質疑は、これにて終了いたします。    午後零時五十九分休憩   —————・—————    午後二時二十二分開会
  72. 湯山勇

    委員長湯山勇君) これより委員会を再開いたします。  まず、国際地球観測年南極地域観測事業について、文部大臣及び島居海上保安庁長官から今までの経過並びに今後の方針を聞くことといたします。まず、島居海上保安庁長官から説明を承わることにいたします。
  73. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) 本委員会は本国会で初めてでございますので、最初から、もうほんとうにかいつまんでお話しいたしたいと思います。  まず、本観測につきましては、予備観測の経験にかんがみまして、去年苦い経験がありますので、それで帰りにああいうふうに閉じ込められないようにと思いまして、十八日早く、すなわち去年の十月二十一日に東京を出発いたしたのであります。  それから十二月二十一日に極地エンダービーランドのクローズ岬沖に着いたのでありまして、これまでは順調にいきました。それから西南方のコースをとって、ヘリコプターで前路を偵察しながら行ったのであります。ところが、途中いろいろ偵察をしながら行ったんでありますが、だんだん氷盤が大きくなって、二十六日にビーバーが発着可能と思われるような開水面が向うに見えた。そこで、これに接近するように行ったんでありますが、だんだん氷状が悪化して参りまして、そうして三十一日には強力なブリザードに襲われまして、そうしてそのまま身動きならないようになってどんどん西の方へ流されていった、こういうのであります。そうして一月三十一日までに、約二百四十海里西の方へ流されたのであります。それからだんだん氷状が好転して参りましたので、二月一日行動中に左舷のプロペラーの一翼約四分の三を折損いたしました。こういうのは船の乗組員にとっては、非常なショックであったのであります。しかし、これは氷を割って行く能力については、二割程度低下したくらいでありますが、船が進んで行く力には大して変りがない、多少はもちろん落ちますが、大して変りはないのであります。  それから一週間くらいたちまして、二月六日の十三時三十分——現地時間でありますが、日本時間の十九時三十分に自力で外洋に出たようなわけであります。  その前から早く出なければ、本観測に差しつかえると思いまして、現地とも連絡をとったのであります。というのは、今度の場合は去年と違いまして、いわゆるエマーゼンシーの場合ではないのでありまして、いわゆる援助でございますので、向うの方が忙しいとか、あるいは何らかの支障があると、なかなかおいそれとは来れないような状況でありますので、二週間くらい前から計画しなければなかなか思うようにならぬ、こういうようなことを松本船長にも言ってやっておりまして連絡をとっておったのであります。また、私どもといたしましては外務省を通じまして、南極にある各国の砕氷船の調査を進めておったのであります。それから、現地から一月三十一日に、まことに不本意であるけれども頼んでくれというような連絡もございましたので、そのとき宗谷に最も近くて、そうして能力もあるものと、こういうことになりますと、結局のところ、アメリカのバートン・アイランドが約千三百五十海里くらいの東のところにおったのであります。これに頼んだような次第であります。そうして宗谷はもちろん自力で出まして、バートン・アイランドと二月七日オングル島の北方約九十海里の地点で会合して、これからは両船でもってまた再び氷を割ってオングル島に向けて入って行ったのであります。そうして二月九日に両船はオングル島の二百九十三度約六十八海里の地点で仮泊しまして、これからバートン・アイランドの能力をもっても、もう割っていけないということで、やむを得ずこの地点から昭和基地の第一次越冬隊員の収容及び第二次越冬隊員それから物資の輸送を決定したのであります。  それから十日に気象状況やや好転いたしましたので、十五時四十五分ビーバーによって第一次越冬隊員の収容作業を開始しまして、十一日の十八時五分、もちろんみんな現地時間でありますが、全員十一名と犬六頭を宗谷に収容したのであります。  その後、雪上車によって行くとか、いろいろ現地で、隊側の方で計画あったようでありますが、いろいろの支障がありまして、結局十四日の十六時三十分に昭和基地派遣中の三名及び犬三頭、合計して九頭になりますが、を収容して、同日の十八時二十分、もうそこにおりますと、だんだん二船とも閉じ込められていきますので、その地点を離岸しまして、バートン・アイランド号と一緒に東北東に向って外洋に出て行ったのであります。その途中バートン・アイラインド号はレベルアイスの砕氷中に船首を氷に突っ込みまして抜けなくなった。宗谷がそれを後から引っ張ったのでありますが、ワイヤーまで切れてしまった。結局爆破作業をして、やっとのことでバートン・アイランド号も出てくる。それからまた、宗谷も氷盤に乗り上げまして、そうしてその反動で後退したときに氷盤に激突いたしまして、そうして右舷の推進器軸が若干湾曲いたしました。また、かじが中心より約十度ばかり振れるというような損傷を受けたような次第であります。その後、出まして、そうして天候の回復を待ったのでありますが、なかなか天候が回復しないので、ことに濃霧が生じてきました。氷山に当りますと非常に危険でありますので、濃霧を避けて、お配りしております航跡図のように、北の方へ迂回して、そうして天気図で見ますと、大体二十三、四日がそのチャンスだ、しかも、これはいろいろな天気の変化から見て最後のチャンスだというので、その日を待っておったのであります。そうして二十三日の十九時五十三分に南へ湾入しているオングル島の北方約五十一海里の外縁の地点まで引き返したのでありまして、これは今回における最短な距離であったのであります。  そうして最後のときには、いろいろ新聞でもごらんになったと思いますが、ビーバーとヘリコプターとを両用をして、そうして最小限度の輸送を完遂しよう、こういう計画を立ててきまして、ビーバーですと、向うのおりる方はそりでおりられますが、飛ぶ方の、離陸する方の側のそういう五百メートルもあるような永原がございませんので、やむを得ずフロートにかえまして、海から離水して、向うの水面がオングル島寄り付近にありましたので、それに着水するというふうな計画を立てたのでありますが、そうしてその着いたところから昭和基地のところまでヘリコプターでやっていく、しかし非常に御存じのように南極は天候は変りやすいので、向うはその間はヘリコターでこれを輸送する、ただしもし、天候の変りやすい状況なところでありますので、万一だめな場合は、ヘリコプターもそこへ置いてこざるを得ないが、その指示を請うというふうな最後の段階に来ましたので、私どもの方も関係方面と連絡いたしまして、それもやむを得ないというふうなことをやつて、最後の奮闘をやったのでありますが、これまた天候に幸いされず、うねりが多くて、ビーバーがついに飛ばせないということになりまして、涙をのんで宗谷は二十四日の十二時、日本時間の午後六時でありますが、ついに第二次越冬隊空輸を断念して、バートン・アイランド号にも、今までの強力な援助に対して深甚な謝意を述べて離別をしまして、宗谷はケープタウンに向つたような次第であります。  まことに残念でございますが、かくのごとき状況で、何とぞ御了承いただきたいと思うのでございます。
  74. 湯山勇

    委員長湯山勇君) なお文部大臣の方からは格別前もって御説明申し上げることはないそうでございますから、これより御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  75. 高田なほ子

    高田なほ子君 南極大陸に、変りやすい気候の中で、ほんとうに最善を尽して、今日ただいまの御報告のような状態になったことに対しては、はなはだ残念だとは思いますけれども、最善を尽されたという点について、出先機関初め、また当局の御心配になられた皆さん方にも、この際深く敬意を表したいと思うのです。  今度の南極観測は、結果としてははなはだ残念の状態になったと思いますけれども、しかし、この白い大陸にいどむ科学陣のメスを振ったというこの事実に対して、全国民はこの探検に期待をかけ、そしてその成功を望んだ。このことは明らかにこの事実を通して、国民が科学というものに対して深い関心を寄せたということで、たとえこの事業がただいまの御報告のごとくであったにしても、非常にやはり効果は偉大なものがあった。国民的な非常な効果があったということについて、私はこの点についても大きく指摘したいと思うのです。  できてしまったそのことについて、私はとやかく追及をしようとは思いません。ただ、大臣が先般本観測を断念、やむなく帰路につくという事態に立ち至ったときにも、大臣は、できるならば本観測事業を継続してやりたい、こういうような御意向を漏らされたことを新聞で拝見したわけです。私もまた、この御決意に対しては、心から賛意を表するものでありますが、この大臣お話しになったこと、御決意、こういうものについて、大へんいい機会でございますので、詳細に御意見、御主張などを承われれば大へん仕合せするわけでありますから、お答えいただきたいと思います
  76. 松永東

    国務大臣松永東君) お話し通り、実は何とか本観測をぜひ継続してやりたいというので、緊密な連絡を現地とはかって、そうして本部といたしましても、いろいろ学術会議その他と打ち合せをいたしまして、一日も早く最小限度の、つまり七人でも越冬隊を残して本観測を達成したいというふうに考えておったのですが、天候にはばまれ、とうとう、せっかくの国民一同の要望にこたえることができなかったことは、まことに残念に存ずるのであります。しかしながら、われわれ本部といたしましては、せっかくあそこまでやり遂げて、そうしてすでに昨年も十一人の越冬隊を残して、この越冬隊の人々が帰って、そうしてもちろん国民に報告せられることであろうと存じますが、その中には、相当科学的にいろいろな参考資料になる材料があると思うのであります。従って、私どもといたしましては、何とかこの計画をできることなら続行したいという気持で一ぱいなんです。しかしながら、いろいろ学者の意見を承わってみたりさらにまた、世界各国のこの問題に対する今日までの経過あたりから考えてみましても、しかも、日本が目的といたしました場所の点から考えましても、非常にこれは至難な仕事だということを承わっております。従って、右申し上げたように、気持の上では何とか一つ継続したい、続行したいと考えておりますけれども、何分にも学術的に、さらにその環境、気候、そういう点からいって、果してそういう気持実現ができるものかどうかということには、多大の疑問を、もちろん私ばかりではなく、国民全部も持っておられると思うのであります。従って、昨日電報を打ったわけでありますが、隊長並びに越冬隊として残された十一人の人々が、ケープタウンから飛行機でぜひ帰られるようにというこちらから電報を打ちました。多分来月の半ばごろは帰還されることと存じます。従って、その上で詳細に承わって、そうして継続するとすれば、どういう方法で継続してやっていけるか、もしくは継続することは、とうてい至難なことで無理だというふうな判定がつくのであるかという点も、右申し上げたように、皆さんが帰ってこられたあとで、その資料によって一つ判断したいという考えでおります。しかしながら、気持といたしましては、せっかくここまで相当の費用を投じて努力して参りましたばかりでなく、国民の期待も相当大きいのでありますから、何とかして一つ目的を達成したいという気持だけは終始変りません。ただ、実現できるかどうかという点については、学者の意見並びにその経験を承わった上で判断したいというふうに考えております。
  77. 高田なほ子

    高田なほ子君 今度の行動を通して、皆さんがお帰りになってから諸般の説明を聞いてさらに新しい計画を立てる、こういうような慎重なお考えについては、私も了解しないではないのです。また、当然そうあるべきだと思うのです。しかし、それは今置かれている大臣の御答弁であって、先般オランダのハーグに開かれた国際学術会議の南極研究特別委員会に日本代表の力武代表が参加されたのでございますが、力武代表の参加されたときには、政府予算関係で来年度さらにこの観測を持続するかどうかということについては、はっきりしないのだというような態度で、私は日本を立っていかれたように新聞で拝見しているわけです。そうしますと、今、大臣は今度の不成功、その原因等は、実際に行かれた方々の意見を徴して、そしてまたやってみたいと思うのであるけれども、非常にそれは困難なので、心はあるけれども、どうしていいかわからないとおっしゃるけれども、本来は予算というものが先行して、態度というものがきまらないのではないかというふうに私、考えます。私は過ぎ去ったことを追うのではありませんけれども、少くともやはりこの力武代表が国際会議に参加されるときに、日本予算関係で結論が出ぬというような、そういう結論を持って代表を参加させるべきではない。政府の意思がまずどうであるかというようなところにこそ、予算が組まれるのであって、予算が先行して結論が出ぬというのは逆じゃないか。また、今度の問題を通して、来年度はどういうふうになるかということについても、確たる御返事を今いただこうというのは無理かもしれませんけれども、どうしてもこれはやってみるのだという、またやらねばならないのだという、そういう私は意思決定の方が先ではないかと思うのです。また、松本さんも中途において、この観測はどうかしてもう一年継続すべきものだというようなことも、こちらの本部の方に意見として寄せておられるように聞いておるのでありますけれども、前後の事情から考えますと、予算がきまらないのではないかという御心配の方が先行して、この研究をあくまで続けていくのだというような御意思が若干希薄のように思いますけれども大臣予算にからんでそういう御答弁をされておるのでしょうか。それとも、やりかけた仕事である、また国際的な見地から見ても、さらにこの一年継続すべきだというような意見がかなり強いように私、承知しておりますが、やはり日本もこれと同調して、国家の大きな犠牲と、それから限りない忍耐というものが、この次の事業として継続されるべきが本体でないかと思いますが、大臣のような、そういうような少し弱腰のお考えでは、せっかく帰っていらっしゃる方も、さみしいじゃないですか。来年もまたやるのだ、何とかしてこれはやり遂げるのだ、希望を持って帰ってきなさいというような、そういうような態勢こそ、私は今度の出先機関において御苦労された方々に対する最大の歓迎の言葉ではないかと思いますし、また、政府としても、少くとも国際的にふるわれた科学のメスに全精力をあげてやるということは、小さい事業のようには思われましょうけれども、これは再軍備計画どころの騒ぎじゃない、もっと大きな、私は国際的な意義を持つものであるというふうに考えます。もう少し先の方が帰ってからというのではなくて、政府としてこの事業に対してどういうように取り組んでいくのかという、やはりきぜんとした大臣の御態度というものを私は伺いたい。もう一度お答えをいただきたい。それから力武代表の問題については、担当の方から詳細御説明をいただきたい。
  78. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の仰せになります通り、私としては、ぜひ一つ来年もやりたいという気持には燃えておるのです。燃えておりますが、しかし実際問題として、こうしたことについて、私はずぶのしろうとですが、いろいろ御意見を承わってみると、一体このまま宗谷で来年続行ができるかどうかということが一つ、もし、続行ができるとすれば、何でも二億四、五千万円もかければ、また行けるという話しであります。しかしながら、その今の問題の昭和基地は、一番これはむずかしいところで、各国が手を出せなかったところであるというような話を聞いております。そういうときにそういう場所に、しかも、あの荒天候がやはり来年も続くと見なければなりません。そういう場合に、あの宗谷で果してこの目的が達成できるのだろうかということについては、これはもう専門家はとてもできないのだというようなことを言っておることも耳にいたしております。そうするというと、宗谷でいかぬとなれば、今のアメリカの船、ソビエトの船におくれをとらない、内容充実した船を出さんければならぬ。それには少くとも二、三年の歳月を要する。しかも、予算はまあ仰せの通り、これは世界的な学術の問題でございますから、何とかしなければなりますまい。しかし、右申し上げる通り、新しい船を新造する、そうして装備を新たにするとすれば、やはり時日の上からいって、二、三年かからぬというと、これはどうもできないのじゃないか。そこで問題は、いや、そうではなくて、宗谷でもって行けるのだという見通しが、帰還せられた人々の経験によってはっきりできるかどうかということが、われわれが判断せんければならぬ重要なポイントじゃなかろうかと思います。従って、その上で皆さんの御協賛を仰いで、御相談を申し上げたいと考えておる次第であります。
  79. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 国際会議に出席いたしました日本の代表の関係につきまして、御質問がありましたのでお答え申し上げます。この南極観測事業は御承知通り、地球観測年事業の一環として行われておるのでございまして、地球観測年事業は、本年一ぱいをもって終了するわけであります。当初の計画はさようでございました。日本の南極観測年事業は当初の計画といたしましては、三十二年の本観測をもって打ち切りまして、来年度はこれが計画通りに越冬隊を基地に残すことができることを想定いたしまして、それを迎えに行く、その折に、船上あるいはその接岸中に可能な限りの観測をやり、研究をやると、こういうふうなことで計画をいたしておったわけであります。従いまして、三十三年さらにもう一回延ばすという計画は最初からこれはなかった、国際的にも一応はさような計画であったわけでございます。ところが、その後国際間で、学者の間で、もう少し延ばしたらいいじゃないかというふうな話が起りまして、そうしてそれが国際学術連合会議の南極特別委員会で取り上げられることになったわけであります。その会議にこの二月の中旬に力武教授が出席をしたわけであります。で、これは学問的に学術会議等におきまして、こういう観点だけから申しますと、ぜひ続行したいという気持は非常に強いわけでありまして、私どもといたしましても、政府といたしましても、ただいま大臣も申されましたが、ただこの問題は、大臣もお述べになりましたように、実行上それが可能であるかどうかということは、非常に大きな問題でございます。特にどの船で行くかという問題でございます。でございますので、その会議に出席いたしました力武教授といたしましても、必ず延ばすという意思表示はできなかったわけでございます。さような関係で、これは学者の会議でございますけれども、その結論はもちろんまだ出ておりませんけれども日本代表としての態度はさような態度をとられた、かようないきさつでございます。御了承いただきたいと思います。
  80. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 今の点について島居長官、宗谷の能力その他の問題について関連して御答弁願います。
  81. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) それではおさらいでございますが、最初に宗谷が出かけるときの話をちょっとさせていただきたいと思います。最初宗谷が出かけますときに、学術会議その他でいろいろ御検討されまして、初めは外国の船でも借りて行ったらというふうなお話があったようであります。そこで外国の用船市場に出したところが、ノルウエーとデンマークあたりの五、六百トン程度の船しか用船のあるものはなかったのであります。実際またそうであろうと思います。軍艦その他ならアメリカ、ソ連に相当有力なるものがありますが、普通の一般の船でいわゆる砕氷能力のあるものはそんなにないはずでありますので、その程度の船しかなかったのであります。そこで、国内でやっていくにはどうしたらいいかということなのでありますが、そのとき、すでに昭和三十年の十一月のころでございましたので、新しく作って行くとすれば、先ほど文部大臣からもお話がありましたように、少くとも二年半くらいはかかるわけであります。それにまた、グレーシャーくらいの能力の船を作るといたしますと、約五十億くらいかかるわけであります。そこで、金は皆さんに協賛していただくといたしましても、時間の問題でとても間に合わないというので、在来船でやむを得ずやっていこう。そこで存来船にはどんなものがあるかというと、国鉄に宗谷丸、それから私の方の海上保安庁の宗谷、こういう船が二隻候補に上ったわけであります。国鉄の船は、いろいろの関係でだめになりまして、結局海上保安庁、お前やってくれということになったわけであります。時すでに一年以内でございますので、われわれとしても、なかなか南極というところは、むずかしいところでありますが、しかし海上保安庁でとてもいかぬとなると、日本はとにかくだめになってしまうので、しかし、各国の例を見ましても、また南極の全体の研究もずいぶんいたしまして、そうして宗谷をその残された時間で、また与えられた予算でできるだけの改造をやったのであります。また、この改造につきましては、日本の学界、及び民間の造船の最高権威の方々に集まっていただきまして、それで研究してもらって改造設計をやっていただいたようなわけでありまして、今までのいわゆる可能なる範囲におけるあらゆる手は尽していったようなわけでございます。  そこで、今後の問題が、結局それがお答えになるかと思うのでありますが、新しく作るといたしますと、まあグレーシャー程度になると、先ほどのように二年半か三年程度かかるわけでございます。また、金額といたしますと五十億程度かかると思います。そこで、外国の船も借りられないし、どうするかということになると、なかなか問題なのであります。しかし、それじゃお前外国はもっと能力の少い船で行っておるじゃないかということをすぐお気づきになると思うのでありますが、まさしくその通りでありまして、たとえばアメリカとソ連を除きますと、その次に能力のあるのは宗谷なんでございまして、たとえばほかの国、実は宗谷の閉じ込められましたときに、南極における各国の砕氷船を調査したのでありますが、豪州にはサラダン号というのがありまして、これは総トン数が二千百トンであります。機関の出力が二千二十馬力であります。それからベルギーのポーラーハブ、これが総トン数が六百トンで、機関の出力が千二百馬力、それからもう一隻ポーラーシルケルというのがありまして、これが総トン数が五百四十九トン、機関の出力が千二百馬力、そうして砕氷能力はわかりませんが、大体言ってきておるところによりますと、一メートル程度であります。このベルギーのポーラーハブとポーラーシルケル、この程度の機関の出力では、こんな砕氷能力はないと思いますが、まあ大目に見ても、せいぜい一メートル弱じゃないかと思うわけでありまして、みんな宗谷よりも低いのであります。宗谷は総トン数は二千七百九十トン、排水量にいたしますと四千六百五十一トンであります。馬力は四千八百馬力であります。これらの今まで申し上げましたのの二倍または三倍であります。砕氷能力は一メートル二十としておりますが、まあそういうふうなわけでございまして、ほかの国のは、アメリカとソ連とを除きますと、大体宗谷の方が数等上なのであります。しかしながら、一番大きな問題は、ほかの国の行っているところは、行きやすいところ、まあ簡単に申しますと行きやすいところであります。たとえば、この間新聞に写真が載っておりましたから、ごらんになったと思いますが、バートン・アイランドが宗谷の方へ参りますときに、ソ連のミルヌイ基地を訪問しております。その写真が出ておりましたが、もう基地のそばがすぐに海水面になって、楽々と行けるようなところであります。そういうふうなところで、基地ということが非常に大きな条件をなしておるのでありまして、こういうところを割り当てられて、お前やれと言われた私の方は、全く貧乏くじになるわけでありますが、しかし、これは学術会議で、私どもの方は存じませんが、御決定になったのでありまして、これは与えられたものは、われわれとしてやっぱり責任上やっていかなければならぬので、これはやむを得ず私の方としましては中央、また宗谷に乗り組んでいる人々が全力をあげてやったような次第であります。  以上、その要点だけを申し述べさせていただいたようなわけであります。
  82. 高田なほ子

    高田なほ子君 どうも貧乏くじを引いたというような御発言でありますけれども、両者の御意見を伺っておりますと、どうも総合的に憶測して考えると、前々からリュツォフ・ホルム湾が非常に難コースであるということ、それから時間的に限られた限界で宗谷を改造して出かけたこと、こういうようなことから考えると、成功するかしないかということは、ちょうど神風の運勢を待っているような気がする。また、松本船長も、ほぼ私と同じような表現をされて、意見を開陳されたことがあると思うのです。宗谷のような船で、リュッォフ・ホルム湾に来ることは、はなはだしく不経済である。もし宗谷のような船で、こういうところへ来るならば、これはいつもあなたまかせの運まかせということになって、はなはだしく困難であるというようなことも意見として言っておるようでありますが、文部当局は、こういう総合的な見地から、当初から運まかせというような点で出発をされた、と言っては語弊がありますが、運まかせという気分が七分ぐらい占めておったのではないかと思いますが、大へん失礼な言い分でありますけれども、どうも長官の御答弁から伺っていると、そういう気がするのですが、どうもそれは大へん私はまずかったのじゃないか。責任を追及するわけじゃないけれども、そういう態度は大へんまずかったのじゃないか。もしそうであるならば、やはりこの計画の中に、外国砕氷船を借りるというような手だても講ずべきではなかったかと思うし、死んだ子の年を数えるようで、はなはだ済まないのでありますが、あるいはまた、予備観測隊が帰られたときに、来たるべき本観測には、本観測を主にしなければならないのじゃないかというような意見が開陳されたと、私は聞いておるのですが、そういうようなことについても、相当研究をされてやられたのではないかと思うのですが、どうも、ただいまの御両者の御発言を総合すると、もう政府態度が、運まかせのところにあるような気がしてならないのですが、これは私の誤解でしょうか。大へんこれは出先機関に対しては、失礼な質問に当ると思いますけれども、もしそういうようなことであるならば、これははなはだしく、私はよろしくないことであると思うのですが、島居長官の御答弁が、はなはだしく私にそういう印象を与えるが………。
  83. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) それでは、そういう御印象を与えたものとすれば、私の言葉が足りないのでありますが、実は話が途中になりましたが、そういうふうなわけで、宗谷を改造する一方、松本船長といたしましても、全然現地を見ておりませんので、いろいろのアメリカ系の、ずいぶん調べた南極の本もあります、また英国系の南極を調べた本もありますが、こういうものを研究するのは当然のことでありますが、まず現地を見なければいけないというので、それできまりますと同時に、きまったのはすでに十二月でありましたが、もう大急ぎでもって、その年、三十年の暮れに、捕鯨船に便乗させまして、船長、機関長、航海長、この三人を南極へ派遣したのであります。そうして、いろいろ手分けて調査しました。松本君はリュツォフ・ホルム湾の沖の方まで参りまして、そうして、あの調子なら多分行けると思いますというようなことを、私に報告しておるようなわけであります。ですから、今高田先生がおっしゃいました、ただ運まかせということでは決してないのでございますので、その点一つ御了承願いたいと思うのであります。
  84. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) お答え申します前に、先ほど島居長官のお話しの中にもございましたけれども日本が引き受けましたリュツォフ・ホルム湾でありますが、これは非常にむずかしいところであるのは、事実のようであります。ただ、これを割り当てられましたその経緯でありますけれども、これは国際会議で、各国が基地を設定する場所をきめたわけでありますが、地球観測年の事業としては、三十二年、三十三年でございますけれども、それぞれの国におきまして、たとえば英、米、仏、ソ連、ノルウエーとか、そういう国におきましては、相当前から、南極の観測を行なっておりまして、すでに基地を設定しておるのであります。この地球観測年事業になりましての、その一環としての南極観測事業としましては、十一カ国ほどがこれに参加したわけでありますけれども、基地の設定につきましては、今申しましたように、前々から設定しておりました基地のないところを新たに割り当てたという関係でございます。日本が引き受けましたリュツォフ・ホルム湾は、観測事業としては相当重要な地点であるのであります。特に宇宙線、磁気現象等につきましては、非常に重要な場所ということのようであります。そういう経緯であそこを引き受けたわけでありますけれどもお話しのように、南極の中でも相当気象条件等は悪くて困難なところであったのは間違いないのであります。そこで、そこに行きますための船につきましては、これはただいま島居長官がお話しになった通りでありますけれども、正式に南極観測事業に参加を決定しましたのは、三十年の十一月四日に閣議決定が行われております。正式にはそれから着手したわけでございますけれども、今お話しのように、いろいろと事前の研究等もやりまして、結局宗谷を改造して行くほかはないという結論になって参ったわけであります。予備観測におきましては、昨年は越冬隊を上陸させることに成功いたしました。ただ、帰りに氷に閉ざされまして、ソ連のオビ号に助けられたという事態も招来いたしたわけであります。昨年から比べまして、ことしは非常に気象条件が悪くて、特に天候としまして霧が多い、雪が多い。昨年から比べますと、非常に気象条件が悪かった。風も非常に悪かった。氷の状態も非常に悪かった。こういうような工合で、昨年から見ますと、非常に気象条件に災いされまして、本年はついに成功し得なかった、こういうのが現状でございます。  そこで、初めから運まかせであるかというお話しでありますけれども、これは今申し上げますように、リュツォフ・ホルム湾といたしましては、南極の中でも資料がないところでございまして、いろいろと従来からこういう資料につきましては、準備の段階で検討しましたけれども、気象条件等につきましても、正確な資料は求めがたいところであります。全く未知のところに分け入るというところでございますから、なかなか万全の、これならもう絶対確実だという見通しというものは、これは非常にむずかしい問題であると存じます。しかしながら、先ほどからお話しのありましたように、船長を派遣し、あるいはそのほか可能な限りの手を尽しまして派遣をしたということでございまして、ただそういう場合に、学術の、この国際的な事業に参加する意義は非常に大きいのでございますから、安全を期し得る限り、これは参加すべきだという決定に、学術会議としても、政府としてもなったことだと存じております。さような状況でございまして、御了承いただきたいと存じます。
  85. 高田なほ子

    高田なほ子君 大体総合いたしますと、宗谷の限界というものは、今ここで御説明になった通りです。新しい船を作るとすれば二、三年の月日を要する、こういうことになって参りますと、来たるべき年の、一年延長の際にこれに参加するかしないかということは、おのずと結論が出てしまっておるように思いますが、そういうように解釈してよろしいですか。宗谷はもうこれで限界だというのですね、今度新しく一年延長して、これに参加するとすれば、宗谷以外の船を考えなければならない。そうすればもう時間の関係で間に合わない、こういう結論が出そうな気がするのですが、こういうような考えでおられるのですか。
  86. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 新しく大がかりの砕氷船を作るといたしますと、先ほどから申し上げますように、二年半ないし三年ぐらいかかる、これは時間的の制約がございます。そこで、宗谷でそのまま行けるかどうかという問題が一つありますのと、それから予備観測、本観測を通じまして、ほかにかわる船が国内、国外にあるかという点を十分検討いたしましたけれども、それはなかったわけでございます。それで、宗谷で行けるかどうかという問題が、大きなポイントになると思います。しかし、全般的にわたりましては、船長、隊長が帰りました上、十分検討してかからなければならない問題だと存じます。
  87. 高田なほ子

    高田なほ子君 その結論を今求めることは、はなはだしく困難だと思いますが、統合本部では、やはり今までの長い予備観測を通し、今回の事業を通して研究されているわけでありますから、ほぼ結論も出かかってきているのではないかと思いますが、どうか一つ、統合本部は早く、こういう問題について、忌憚のない意見を出し合って、今まで苦労された出先機関がお帰りになっても、希望を持ってお帰りになることができるような態勢を作っておいていただきたい、私はそれを強く希望するものです。  次に伺いたいことは、今回の事業に対して、海鷹丸は前年予備観測で随航したわけですが、今度はどうして海鷹丸の随航を許さなかったのか。伝え聞くところによると、海鷹丸は、予備観測で南極海洋の研究に非常なよい資料を集めて帰ってこられたと私は聞いているし、当然またそうであることをわれわれも期待したわけです。期待にたがわず海鷹丸は、少い費用で、これは国が出された費用は、半年もああいう難事業に当っていて、三千七百万円という非常に僅少なものです。しかるにもかかわらず、未開拓の南極の海洋研究には、またとないよい資料を研究して集めてこられておる。そうしてまた予備観測に際しても、随伴船の果した使命は、われわれとしては非常にこれは大きかったと思うのです。ところが、今度は海鷹丸の随航を許さない、予算を全然削ってしまう、こういうようなことでは、一年こっきりの研究というものは、決して私はよい実を結ぶものではなくて、やはり学問は、特にこういう観測事業というものは、あるいは研究事業というものは、継続して行わなければならない、こういうふうに考えていますが、どういうわけで予算を削ったのでしょうか。
  88. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 予備観測のときに、海鷹丸が随伴船として果した使命、それから、随伴船として行きましたのでありますが、その間、海洋調査等におきましてあげました成果、これは非常に大きなものがあったと存じます。ただ、本観測の場合に、随伴船を使うか使わないかということにつきましては、統合推進本部の総会におきましても、非常に慎重に検討したわけであります。そのときの結論といたしまして、本観測には随伴船を必要としないという結論になりましたので、これを用いなかったわけでございますが、その理由は、第一、予備観測のときには、どこに上陸するか、当てが全然ない。基地を探して、そこに上陸するということになりますので、一そうだけで行くということよりも、随伴船を連れていった方が有利だということがございました。それからもう一つは、気象条件等につきまして、氷の外でその外側の気象条件を通報するということは、一つの有利な条件になるだろうということもありました。ところが、本観測におきましては、すでに昭和基地は設定されておりまするし、基地を探すという作業は必要でないのであります。それからまた、気象の通報などにいたしましても、基地がありまして、そこで気象は十分観測をいたしておりますから、氷の外側から気象通報を送って助けるという必要はまあないだろう。予備観測の当時の海鷹丸の随伴船としてのいろいろの力は、これは没却すべからざるものがございますけれども、気象条件等は、予備観測の経験では、氷の外と内では相当違っておって、外からの気象ということよりも、あの氷の中にある昭和基地におきまする気象資料というものが非常に助けになるだろうというようなことがいろいろと論議されました結果、随伴船は必要でないということになりました。そうして宗谷だけで行くということにきめたわけでございます。まあ、随伴船として参りましたけれども、その間に学術的な観測、調査をやりましたこのことは、非常に大きな成果があったと思いますけれども、もともと随伴船として使うか、使わないかという観点から、南極観測統合推進本部におきまして、関係者全部寄りまして、慎重に検討しました結果、使わないということにきまりましたので、予算も当然落したということに相なったわけでございます。
  89. 高田なほ子

    高田なほ子君 いろいろ理由はあったと思いますが、私はここで根本問題に触れて大臣に所信をただしたいと思うのですが、海鷹丸を随行させないとか、させるとか、今させなかったという理由について意見が一致して随航させなかったということでありますが、私は、それは表面の理由でありまして、決してすべての意見が必要がないという断定を下すような資料のもとにやられたというふうには考えられないのです。しかしこれは、ここでは水かけ論になりますから、私はここで論議しようとは思いません。ただしかし、今日の南極洋に対する世界各国の目というものは、はなはだしく今きびしくこれを見守っているようです。ソビエトの南極大陸にいどむ態勢というものは、これは容易ならざる態勢にあるとも伺っております。しかしソビエトがそうだから日本もそうせよというのでは決してないのですけれども、現在のわが国の捕鯨漁業は、いろいろ各界のお説を承わっていますと、相当に高い水準を保っているように聞いています。六船団もの漁業船が雄飛して、世界のバターの必要量の約一割五分の原料をわが国捕鯨業がこれを獲得して提供している。そういうすばらしい貢献を平和産業にしているにもかかわらず、海洋学に対する系統的なものを持たないために、国際的の発言権というものが必ずしも強くはなっていない。これはどうしても系統的な海洋学に対する研究、なかんずく未開発の南極洋に対する基礎的な努力というものは、これはやっていかなければならないということになるのじゃないかと思うのです。幸いに前回の予備観測では、海鷹丸がその使命を果して、南極洋に対する今後の捕鯨漁業が、どういうふうな形で広げられていくのか、魚類の生息はどういうような海洋の中につかんでいくことができるかというような点についても、かなり突っ込んだ研究をされてきたと私は思うのです。こういうような地球観測年の一事業である海洋研究に対して、すべての人が、これが必要ないなどということは、私はそういう結論は出さないのではないかと思うのです。もう少し日本の将来は、再軍備で日本の威力を示すのではなくて、平和な、それはまた、世界の人がほんとうに必要であると思われるような食糧の生産のために科学陣を動員するということは、当りまえなことだと思うのです。伝え聞くところによると、ソビエト砕氷船のオビ号には、半分も学者が乗っている。そうして未知の南極洋の研究のために全力をあげていると聞いています。また、白い大陸といわれる南極には、すでに四つの基地を結ぶ八十マイルにも及ぶような恒常的な基地航路ができているとも聞いています。それなのにわが日本では、せっかく国際協力の一歩を踏み出しながら、海洋研究の海鷹丸の費用は必要ないといって削ってしまう、宗谷の力はもう限界である、新しく船を作るには二、三年かかるというような、そういうような、根本的に科学とわが国の生産とをどういうふうに結びつけるかという、そういう熱意というもの、あるいはまたそういう研究というもの、そういうものを持たないというところに、私は科学とわが国の生産というものが別々になってしまうのではないか。せっかく貴重な国費を使い、そしてまた、宗谷とそれから海鷹丸の前年の関係を見ても、お互いに助けたり助け合われたりして、非常に観測にはよいお友だちと言ってはおかしいのですけれども、広い困難なところに向うために、お互いに連絡をとり合うというような道連れがあるということは、常識的に考えても大へんけっこうなことであったと私思うんですが、大臣は今後こういったような事業に対して、この失敗を新しくまた新たなる面に生かしていこうというようなお考えをお持ちになる用意はないでしょうか。また、こういう面について農林水産方面と連絡もとられて、この科学陣がもっと生きた方に使われるような形の組織というものを必要だとお考えにはならないか。現在の推進本部のような形だけではなくて、もっと学問の研究というところを主にした、組織の再編成というものについてお考えになることはできないか、この点について大臣の御所信をただしたいと思います。
  90. 松永東

    国務大臣松永東君) 高田委員の高邁なる御意見には、徹頭徹尾賛成であります。私はもう初めから、私の気持を言えば、先ほどから申し上げておる通り、私はこの観測は断固継続すべきだというふうに念願しています。しかし問題は、果して、先ほど申し上げた通り、この宗谷で目的を達し得るか、もし、宗谷で達することができぬとすれば、二年や三年の歳月をかけて、そうしてさらにあなた方の御協賛を得て、予算を組んでもらう、そして新たな構想に基いてやらんきゃならぬ、それでも私はやりたいと思います。そうして仰せの通り、まあ再軍備とかなんとかということはしばらくおいて、とにかく学術の上からいって、さらに今仰せられた海洋の研究からいってさらに水産事業の面からいって、なお私は聞くところによると、南極方面の地質の調査あたりも相当重要な調査ができているというようなことも聞いております。そうすると、今後世界人類の共栄共存の上にもたらすところの利益は莫大なものがあると思う。でありますから、私は何とかこれが皆さんの御協賛ができれば、さらに思いを新たにして新たな構想のもとに一つ進んでいきたいというふうに考えております。ただしかし、これは現に帰還せられる、一年間向うで越冬して、そして非常に研究を重ねられた人々の意見も聞いて、そして考えを新たにしていきたいというふうに考えております。
  91. 高田なほ子

    高田なほ子君 今の大臣の御意見はまことに私はけっこうだと思うし、社会党の方でも、これがもう平和生産に資することであり、ほんとうに科学のために、日本の科学の発展のために、あるいは国際協力のために必要だというなら、これはもう社会党は全面的に、むしろお宅様の方よりは全面的に私どもの方は昔から賛成して、主張しておることですから、大臣はどうぞ御心配なく、今の御所信を実現するように一つしていただきたい。ただ、大蔵大臣あたりでは、なかなかこういうことは金を渋って出さない。弾丸や機関銃なんかには、まことにどんどん予算をお組みになるけれども、どうもこういうところは大蔵省あたりがきしんでいるようです。もっと本腰入れて押して下さい。そして実現して下さい。  それから、けさの新聞を拝見いたしますと、なかなか今度の観測年の事業で、非常に残念であったけれども、基地に今いろいろの施設を残してきたと、できるならばこの施設に残されたいろいろの機械が各国の協力によって有効に使われるようになったならば、それこそ国際協力として、科学陣の発展のためにふさわしいんじゃないか、そんな方法はとれないものかという、たしか天声人語さんだと思いますが、なかなかいい意見でした。私は今この基地にどういう施設が残っているかつまびらかでありませんが、ほんとうにこの意見はよい意見だと思いますが、どういうような施設が残っており、せっかく国際的に協力してやる仕事ですから、何も日本だけが宗谷、宗谷と、前畑がんばれ、前畑がんばれという式じゃないんで、国際的に協力してやるという仕事なんだから、こういう考え方も私は一面妥当じゃないかと思うので、こういうことについて、国際協力の線に沿って有効に使うことができるようになるものか。日本の今度の失敗というものは、日本だけでは失敗であったかもしれないが、すべての事業の上からは、何かプラスになったのではないか、こういうような観点からしぼりますと、今基地にある施設、それからその施設を今後どうしていくのかということと、それから日本は失敗であったけれども、国際的に、この今年度の観測年度を通してどういうふうな成果をおさめているのか、全般的なことについて伺いたいんです、二つだけ。
  92. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) この予備観測で、基地において行いました観測事業は、特に気象、宇宙線、極光、夜光、地質等でございます。なお、そのほかいろいろな生物とか海洋、あるいは地磁気といったような関係ももちろんやっておると思いますけれども、これらに関しまする観測資材は今度持って帰れませんので、結局基地に残存しておくほかない結果になったわけでございます。それから、そのほかの観測の成果でございますけれども、これは帰ってみなければよくわかりませんけれども、越冬中におきまする観測資料につきましては、飛行機で持ち出しまして、これらを今度積んで帰って参ります。帰ってこなければわからぬと思いますが、相当期待の持てるものじゃないかと考えております。なお、予備観測の宗谷の船上におきましても、相当の資料を持ってすでに帰って来ております。これだけでもまたなかなか整理しきれないくらいの分量があるということを、関係の学者は申しております。なおまた、宗谷がこのたびも相当リュツォフ・ホルム湾の中で悪戦苦闘をいたしたわけでありますが、その際にも、決して観測の方をむだにしておったわけではないのでありまして、関係人たちは、十分その成果を上げるように努力をしたことには間違いないと存じます。また、往復の途中におきましても、また先ほど高田先生おっしゃいましたように、海洋の調査、海洋生物の調査というものにつきましても、往復の道におきましても、やって参るわけでございます。でございますので、本観測の越冬隊を残すことに失敗いたしましたけれども、まあ、そのことはまことに残念でございまするけれども、しかし予備観測、あるいは本観測の今度の船上の、往復あるいはリュツォフ・ホルム湾の中におきまして相当な成果を得られたのじゃないかと期待いたしております。それから、これが国際的な何か利用の道がないかということもお話しにございましたが、これはわれわれちょっと現地の状況をわかりませんので、何ともこれはお答え申し上げかねます。観測隊が帰って参りましたならば、その辺の消息もよくわかると存じますが、ただいまではお答えいたしかねる状況でございます。  それから世界的な観測の国際的な成果でございますが、これも終りまして、また国際会議等でその資料が公開されることと存じますけれども、さぞかし輝かしい成果が上っていると思いますけれども、これも詳細にはまだわかっていないのであります。
  93. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) 宗谷が去年はあそこへ着いたわけでございまして、今まであそこはベルギーとかノルウエーとか、その他フランスとか、各国が行こうとして絶対上陸できなかった所でありまして、それで今まではノルウエーだったと思っておりましたが、行ってないものですから、船から飛行機を飛ばしてあの辺を写真でとった。そういうのが今までの地形となっておるのであります。宗谷が去年行ったためにその辺の海図なり、あるいは水深なりというものは、世界的に大いに貢献しているような次第であります。また、今回リュツォフ・ホルム湾に入ろうとして、ずいぶん西の方へ流されておりますが、その辺に流された、かえって逆の効果からいえば、その辺の海洋なり、いろんな方面調査は、ずいぶんかえって効果を上げておるように思っております。また、私の方といたしますと、いわゆる乗組員というものは、海洋の航海についてはずいぶん長く経験を持っておりますが、氷海の航海については、去年とことしでどれだけ経験を経たかということにもなりますし、この経験がまた世界各国の海洋の航行、あるいは海洋の研究というものにどれだけ役に立つかと思っているのであります。そこで宗谷はあそこで使わないことになりますと、実は北洋の方へ回しまして、日本における北洋の水産あるいは流氷もありますので、その辺に私の方では使おうと思っておるのでありまして、先ほどお話がございましたように、今後私どもといたしましても、砕氷船というものはどうしても要るのでありますので、まあ時間と金でございますが、そういうものが許していただけるならば、私どもの方としては、どんどん大きな砕氷船というものを持って、日本はもちろんのこと、国際的に貢献いたそうと、こういうふうに考えておる次第であります。
  94. 松永忠二

    松永忠二君 簡単に一、二だけお聞きしますが、今質問の点は、高田委員からお話しになりましたように、この事業の価値とか、あるいは非常な御苦心をしていただいた点について十分に感謝をし、今後の成果を期待するという観点からでありますが、今、宗谷が上げた、あるいは予備観測の成果等についてお話があったわけですが、この国際地球観測年における南極の観測において、日本が本観測を実施をされないために、国際的な観測というものについて、やはり欠陥が出てくるのじゃないかというふうな点も考えられるわけであります。そういう点については、具体的に日本が受け持ったこの範囲の観測が行われないということによって来る一つの欠陥というものを、どういうふうに考えられておられるのか、この点を一つお聞かせいただきたい。
  95. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 南極の大陸の周辺に、あるいは内陸もありますけれども、なお数多くの観測地点を作って、そして総合的に観測していくというのが、国際的な南極観測事業の内容でありますので、まあ、日本が受け持ちました所におきまして、本観測の越冬観測ができないということになりますと、それだけ欠陥がそこに生ずることは、これはもう否定しがたい事実であります。この点まことに遺憾でございますが、それがどの程度全体の価値の上に影響してくるかということは、これはちょっと具体的には私どもとしましては申しがたいわけでございます。けさも衆議院の文教委員会におきまして、茅学術会議長からもお話がありましたけれども、これはもう事実穴があくということは否定できないということであります。
  96. 松永忠二

    松永忠二君 その点は学術会議の会長あたりにお聞きすればよくわかる問題だと思うのですが、もう一つの点は、今お話しのあったように、リュツォフ・ホルム湾というのは、七回も失敗をしておる。そういうようなことで非常にむずかしい地点が選ばれたわけでありますけれどもこういうふうなことから、また資料が非常に整っておらないということから、再度本観測に向うに当っては、やはりこういうふうな事態に閉じ込められるということも考えられて、それについての準備等もなさって行かれたのではないかと思うのですが、話しによると非常にヘリコプターあたりは、実際には器材を乗せることはできないし、ビーバー機等のごときも、積載量が非常に少いということで、実際には越冬隊員を少数に節減しても、なおかつこれが実施できないということが出てきた。随伴船としての海鷹丸の問題も出てきたけれども、ここで随伴船があったらばどうかという問題も実は考えられないことではないわけです。そういうことを考えてみると、非常に困難な場所であったということで、この前非常に成功した、しかし帰路ああいうふうなことがあったということから、再度これを決行して本観測をしていくという場合には、そういう準備等も考えられておったんだろうと思うのですが、具体的にどういうふうにそういう点をお考えになっておられるのか、その辺お聞かせいただきたいと思います。
  97. 島居辰次郎

    政府委員島居辰次郎君) 予備観測のとき、また今度の本観測につきましても、当然万一の場合は、閉じ込められた万一の場合ということは考えましたが、燃料とか、食糧その他十分宗谷の中に持っていかしたようなわけでございます。それからヘリコプターのお話が出ましたが、ヘリコプターはつまり宗谷が氷を割って入るときの水路、前進して行く水路の偵察というふうな意味で、ヘリコプターを持っていったようなわけでございます。
  98. 松永忠二

    松永忠二君 その辺は食糧とか、そういうものは用意されたというお話しでありますけれども、そういう点について特にわれわれとしては困難な地域だけに、しかも、宗谷そのものの性能についても、相当苦心を払われてやられただけに、いろいろ今度の場合には、気象の悪い点が一番致命的な欠陥であったということは、事実でありましょうけれども、それだけに予想でき得る準備というものが、やはりこの程度具体的にやられておったということを示していただくということは、やはり相当な準備が進められておったという具体的な事実になると思いまして、もう少しそういう点について加えて補説をするものはないでありますか。
  99. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 宗谷でいよいよ行くということをきめました経緯については、先ほど来申し上げておる通りでございますが、宗谷で行きます場合に、やはり予備観測におきましても、あういう事態がございましたので、本観測のときもどういう事態になるかわからないということで、十分考えられておりまして、ただ、あくまでそういう安全ということはどうしても貫かなければらない原則だということでございまして、万一の場合に国際協力の線に沿って外国の砕氷船の援助を受けるということは、決定したときの総会等でも一つの問題として論議され、つけ加えられて一つの要素となって決定されております。それからなお、装備等の点につきましては、島居長官からお話しのありました通り、観測隊の側におきましても、宗谷の側におきましても、十分な予備的な準備をいたしておりまして、特に食糧でございますけれども、予備食を一年分持って行っております。よけいに持っていっております。  なお、ついででございますけれども、昭和基地現地におきましても、なおまだかりに十一人の越冬隊を残すといたしました場合には、主食は一年分まだございます。それから脂肪、蛋白質等も半年ないし七カ月分くらいございまして、そのくらいの準備をして行っております。今度参りました本観測におきましても、もちろん予備食等を十分用意をして行っているということでございます。いろいろな場合を想定いたしまして、万全の準備をしたつもりでございます。
  100. 松永忠二

    松永忠二君 その点はお話はわかりましたが、日本の国がこの問題について努力と準備ということについて、やはりこういうふうな結果から考えてみて、なおこういう点について、準備と力とをすべきであるというような点について、具体的にお考えになっている点があったら、一つお示しいただきたいと思います。
  101. 緒方信一

    政府委員(緒方信一君) 装備の点等につきましても、これは相当準備万端慎重を期したつもりでございます。これは統合推進本部と、それからそれに並行いたしまして学術会議の中に、学術会議が統合推進本部に加わっておりますけれども学術会議の中に南極特別委員会というのができましてこれは観測の部門と設営の部門と両方に分れておりますが、多数の関係者が参加されまして、非常に綿密な研究検討をやりまして、装備等につきましてもきめたわけであります。そうしてさらに、政府予算でどうしてもまかない得ないような部分もございますので、これは南極観測事業の後援会ができておりまして、後援会のお力によりまして、民間の寄付金等も相当集まったのであります。それらをもちまして相当の準備を整えまして、これもけさほど茅会長から衆議院でお話がございましたが、現地に行っている観測隊の人たちも、まあ、日常暮すのには十分困らなかったということを言ってきたような状況でございまして、その行きますにつきましての準備、装備、そのほかの準備につきましては、万全を期したつもりでおります。今後さらに実施いたします場合に、どういう点をさらに加えなければならないかという点につきましては、なおやはりこれは帰って参りました上で、十分経験も聞きまして、慎重に研究すべき問題だと存じております。
  102. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 他に御質疑ございませんか。  速記をとめて。    〔速記中止〕
  103. 湯山勇

    委員長湯山勇君) 速記をつけて。  それでは本日の委員会は、これにて散会いたします。    午後三時五十一分散会