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政府委員(
谷垣專一君)
消費の見通しというものは、正直なところ、はっきりしたデータでこれはこうなりますという実ははっきりしたものがなかなか出にくいようであります。従来やっておりまするように、従来の
国民の所得増加に伴いまして、牛乳、乳製品等の需要増加について、所得弾性値というようなもの、あるいは
価格の問題も含めまして、そういう所得弾性値等を
考えてみまして、どの程度にこれが伸びていくか、あるいは海外の他の諸国の状況等を比較して、この程度伸びていくであろうというような推定、そういうもので、この五カ年後におきまするようなものを実は打ち立ててみたわけであります。これは、私の今申しますことが、そのままなるわけではございませんが、たとえば牛乳の現在の
消費量はアメリカに比較するわけにいきませんが、四・六%くらい、牛乳の一人当りの
消費量はそのくらいしかなっておりません。現在、
国民所得におきまして、五年後におきまする日本の
国民所得が大体いくであろうと予想しておりますもの——これも変るかもしれませんが——それを
考えてみますと、西独あるいはイタリアというようなものの現在の状況に大体似たもの、イタリアの現在の状況が、日本の五年後におきまする大体
国民一人当りの所得になるであろうと推定いたしております。西独におきましては、それのまだ半分あるいは六割程度のものかと思うのでありますが、そこらのところを
考えてみましても、現在、イタリアでは牛乳を一人当り三十五キログラム見当は飲んでいると思いますが、日本のそういう状況を
国民所得にいたしました場合においては、大体今の計算では二十五キログラムぐらいのものが飲めれば需要はまかなえる、こういうような実は計算をいたしております。これはしかし御
指摘のように、一つの計算でございますので、需要が果してそれでいけるかというふうにないますと、私たちの方も一つの見通し、こういう指標でいけばこのぐらい
考えられるしするからという以上に、実は申し得ないのでありまするが、一応、この程度の需要は伸びていくのではないかというように
考えております。
ただ問題は、
市乳としての伸びをするか、乳製品としての伸びをするかというような具体的な問題になって参りますと、一つの問題点がございます。現在約一割が
農家の方に返っていくミルクになり、あと半分が
市乳と乳製品という形に進んでおります。大体諸外国におきましてもそういう形をとつておるのが多いような状況でございますので、将来もそういう形が望ましいのでありますが、
市乳の伸びの状況から見ますと、この数年間非常に
市乳の伸びの方が高い状況でございますが、最近、
市乳の伸び率が若干減ってきておりますが、しかし、五年後になりますれば、やはり、私は、
市乳の伸びが相当あってしかるべきものではないかと
考えますので、今後の状況としましては、
市乳の伸びをもっと増進する
方法をとる必要があるのではないか、こういうところに私たちは
消費増大のやはり一つの
重点を置く必要があるのではないか、かように実は
考えておるわけであります。
なお、ミルクの
価格あるいは乳製品の
価格が、
消費者の立場から見て安いか高いかという問題でありまするが、戦前のミルクの
価格、
消費者に対しまする、ルクの
価格から見ますと、物価指数その他から
考えますると、約半分程度に低下している。従いまして、これは一つの
考え方の違いではありまするけれども、他のいろんな食品類に比べますというと、ミルクの
価格というものは確実に下ってきておるということは確かに言えるかと思います。ただこれは、昔の栄養品としてのあるいは薬品としての需要が、漸次
国民一般に
消費されるという形にならなければならぬというわけでございますが、もっと安くする必要があるだろう、これは私たちもそのように
考えております。それで問題は、現在の
生産者あるいは
流通過程その他の中におきまするものに比較いたしまして、もっと
消費者
価格は下げられるのではないか、こういう問題であろうかと存じますが、これは現在の配達
制度あるいは各個の家庭が冷蔵
施設でありますとか冷蔵車、そういうものを用い得ない状況のもとにおきましての
前提で
考えますというと、なかなかそれはむずかしいと思います。従いまして、今度集団飲用の形でありまするとかあるいはもっと多くすると申しますか、ミルク・スタンドであるとかいうような、ミルクそのものを配達しないでやっていく、こういう形のものを今後進めていく必要があるのではないか、そういう形におきまして、
価格を下げていく
方法は、まだ十分あるだろう、かように
考えておる次第であります。