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1958-04-08 第28回国会 参議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月八日(火曜日)    午前十一時四分開会   —————————————   委員の異動 本日委員柴田栄辞任につき、その補 欠として笹森順造君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            藤野 繁雄君            堀  末治君            上林 忠次君    委員            秋山俊一郎君            佐藤清一郎君            笹森 順造君            関根 久藏君            田中 啓一君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀本 宜実君            東   隆君            大河原一次君            河合 義一君            北村  暢君            梶原 茂嘉君            千田  正君   国務大臣    農林大臣臨時代    理       石井光次郎君   政府委員    農林政務次官  本名  武君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    農林省振興局長 永野 正二君    農林省畜産局長 谷垣 專一君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農林経済   局統計調査部長  藤巻 吉生君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選農林水産政策に関する調査の件  (たばこ耕作組合法案に関する件)  (農作物雪害に関する件) ○中央卸売市場法の一部を改正する法  律案内閣提出) ○酪農振興基金法案内閣提出、衆議  院送付)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  最初に、委員の変更について御報告いたします。本日、柴田栄君が辞任され、その補欠として笹森順造君が選任されました。   —————————————
  3. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 次に、柴田君の委員辞任に伴い、理事に一名の欠員が生じましたので、その補欠互選を行いたいと存じます。  この互選方法ば、成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  それでは、私から堀君を理事に指名いたします。   —————————————
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 議事に追加して、たばこ耕作組合法案の件について、藤野委員から発言を求められております。ちょっと速記をとめて。    午前十一時六分速記中止    ——————————    午前十一時三十分速記開始
  6. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を初めて。
  7. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 四月四日衆議院から送付されましたたばこ耕作組合法案によって見まするというと、たばこ耕作組合は、農林漁業団体職員共済組合に加入することができるようになっておるのであります。これでは、いろいろと農林漁業団体職員共済組合指導監督上にも問題が起るのでありますから、この際、たばこ耕作組合法案に関する申し入れを、大蔵委員長にしたいと思うのであります。その申し入れから案文を朗読いたします。    「たばこ耕作組合法案」に関する申入れ(案)   ただいま貴委員会において御審査中の、去る四月四日衆議院送付にかかる衆議院提出の「たばこ耕作組合法案」に関し、別記のように御措置願いたく当委員会の総意を以て申入れいたします。     記   たばこ耕作は農作の一部であって農業上きわめて重要な要素をなしており、たばこ耕作者団体である「たばこ耕作組合」は、農業団体の一としてそのあり方いかんは、農業協同組合その他の農業団体ときわめて重要かつ深刻な関係に立ち、さらにこの法律が成立する場合においては「たばこ耕作組合」は、農林漁業団体職員共済組合に加入することになるのであるから、農林大臣は常時「たばこ耕作組合」の実情を知悉しておく必要がある。よって農林大臣も「たばこ耕作組合」に対して、全面的に関与することができることとし、農林大臣の共管とするように法律案を修正せられたい。以上であります。
  8. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 藤野君の御提案に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。よって、全会一致をもってそのように決定いたしました。   —————————————
  10. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 農作物雪害に関する件を議題にいたします。この件については、先日鳥取県知事陳情をお聞き取り願ったわけでありますが、仲原委員その他から、政府に対して質疑の要求がありますので、この際、御質疑を願うことにいたします。
  11. 仲原善一

    仲原善一君 先日、鳥取県知事を初め農業団体の代表の三橋会長等も参りまして、当委員会陳情したわけでございますが、これは単に鳥取県だけでなしに仄聞するところによりますと、二十数府県にわたっての被害があるというふうに聞いておりますが、被害状況がおわかりであれば、御説明をいただきたいと思います。
  12. 藤巻吉生

    説明員藤巻吉生君) 三月の末に起りました凍霜害雪害によりまする農作物被害概況を御説明いたします。最初に、気象の概況でありますが、三月二十七、八日ごろから三月三十一日にわたりまして、西日本から東日本にかけまして気温が著しく下りまして、それとともに降雪も見るに至りまして、農作物にかなりの被害を与えたようであります。最低温度は、ひどい所はマイナス九度ぐらいになりまして、北九州の一部を除きまして、関東東海近畿中国四国九州に至るまで、ほとんど全域にわたりまして零度以下になったわけでございまして、これは平年の最低気温より五度ないし十度程度低くなっております。  次に、農作物被害概況でございますが、本年は概して冬が暖かく過ぎましたために、農作物は平年に比べますと成育が進んでおりまして、軟弱徒長と申しますか、やわらがく伸び過ぎている傾向にございます。そこに低温降雪等がございましたので、非常に被害を受けたわけでございます。過去の凍霜に比べますと、被害程度が深いだけではございませんで、被害地域が非常に広いということが特徴になっております。  次に、個々の農作物について申し上げますと、麦類につきましては、関東、東山、東海近畿等におきましては、若い穂が発育の時期に当っておりまして、中国四国九州等の暖かい地方ではさらに成育が進んで、穂ばらみ期、ないし出穂の初めの時期に当っておりまして、ことしは暖冬のために草丈も大きく、茎の数も多かったわけでございまして、雪が降りまして茎が折れましたり、あるいはまた低湿のために枯れましたり、成育の進んだものは、穂の形が非常に変形いたしますということに相なっているわけでございます。二三の試験の成績でございますが、今のところ非常に被害程度がわかりにくい時期でございまして、目下統計調査部の方で鋭意調査をいたしておりますが、穂をむいてみませんと、実際に粘れておるかどうかわかりかねる状況でございますので、非常に手間どっております。おそらくは、来週の初めごろに何とかまとめたいと思っておりますが、そのくらいかかるかと思います。そのほかに、菜たね、バレイショそれから果樹あるいは野菜、茶、桑等につきましても被害を受けたようなもようでございます。概括、以上のような程度でございます。
  13. 仲原善一

    仲原善一君 ただいまの御説明では、まだ十分な被害状態はわかっていないようでございますが、御説明にもありました通りに、暖冬異変あとを受けて、急に雪が降ったり温度が低くなったために、その被害が深刻であるというふうに考えております。特に鳥取県の方では、県会を初め非常に努力いたしまして調査の結果を出しておりますが、農産物の総生産額は、大体五十億であるところ、今回の被害が十一億程度にも達するというので、まあ非常に暗たんたる状態に陥って混乱しておる様子でございますが、昨年、実は新潟県で豪雪地帯があったときに、当委員会で取り上げられまして、委員等も派遣して適切な手を打って救済された例がございますが、まあことしのこの深刻な雪の害について、暖冬異変あとを受けた被害について、何かお考えなり方針でもありますが。その点があれはお聞かせを願いたいと存じます。
  14. 永野正二

    政府委員永野正二君) 本年の雪害、凍害につきましては、ただいま統計調査部長からお答え申し上げましたが、特徴といたしましては、非常に被害程度が、ただいまの状況で正確に判断をすることかむずかしい状態にあるのでございます。一部の果樹等につきましては、わせ系統のものがほとんど皆やられたというような事態もございますが、麦、菜種等につきましては、被害程度判断することが、生育の途中にあります関係で、非常に困難なわけでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、相当広範な、また深刻な被害があるというふうに、私どもは考えておるのでございます。これの対策といたしましては、農作物によります収入の減というものがございますので、これに対しまして、いわゆる天災融資法に基きます営農資金融資ということは、当然考えなければならぬと思うのでございます。なお、その他いろいろ技術的な対策といたしましても検討はいたしておりますか、今日の段階では、麦類等につきましても、たとえば施肥をするとか、あるいは土入れをやるとかいうことが、効果があるかどうか、むしろ疑問なような段階でございます。今後の生育をもう少し見守ることがいいのではないかと思っておりますか、一部非常に被害がはっきり出て参りまして、農民の側ではむしろこれを早期に刈り取りまして、家畜の飼料に回す。むしろあと作の方に期待をかけて、早く麦を刈ってしまうというようなことも必要な地帯があるようでございます。こういう場合に支障になりますのは、例の共済被害査定の問題でございますが、その点につきましては、本年は特に手を打ちまして、この共済査定関係につきましては、現地に一部の見本的な立ち木を残すことによりまして、あとになってから被害査定をするという道を開きまして、農民自分判断によりまして、これはもうあと作に期待した方がいいという場合には、共済金の心配なく刈り取れるような方法を講ずるということにいたしまして、その関係の通牒は、たしか近々出るはずでございます。なお、その他従来凍霜害に際しまして、講じましたようないろいろな施策につきましては、その被害程度をなお十分調査をいたしました上で決定をいたしたいと、こう考えます。
  15. 仲原善一

    仲原善一君 ただいまの御説明で、大体この被害状況によっては天災融資法の適用を初め、農業共済関係についてもまあ早期に支払うように、あるいは災害実情を把握できるような措置を指示するというお話で、まことにけっこうだろうと思いますが、まあそのほかの問題について関連した問題で、たとえば自作農資金を特に増すとかそれから現在ありますいろいろな補助の問題、たとえばこの病虫害の動力噴霧器なり、あるいはその他防除器具に対して、農林省で予算を持っておいでになりますが、そういう補助金の交付に当って、被害地域について特段の考慮を払うとか、また、この農林漁業資金償還期限を延期するような問題だとか、また関連のある問題といたしましては、公共事業を特にそういう地域について強化するとか、何か関連していろいろ援助態勢に入るような方法がいろいろあろうかと思いますが、そういうような点についても、御考慮できるかどうか。方針についてお伺いいたしたいと思います。
  16. 永野正二

    政府委員永野正二君) もう少し事態が判明いたしますれば、いろいろな対策について具体的に方針をきめなければならないわけでございますが、非常に広範であること。また、麦類等については、今後の事態によりましては、相当な被害になるかとは思いますが、ただいまお話のございましたような、たとえば自作農創設維持資金のそのための増額、あるいはいわゆる公共事業をそのために特別に救農的な考え方でやるというような点については、目下のところ検討はいたしておりません。
  17. 北村暢

    北村暢君 ただいまもらいました和歌山県の陳情書ですね、それとこの統計調査部で出された被害報告概況について、だいぶこれは違っているのですね。和歌山県のは被害軽微見込みと、こう統計調査部被害概況ではなっていますが、和歌山県のこの陳情書によるというと、十三億に上る被害だとこう言っておる。これはですね、私は、だいぶこれは差があるのじゃないかと、こういうふうに思うんです。それでですね、まだ報告が詳しくきてないからわからないのか。また、この種の被害等調査には、一体この統計調査部の現在の機能を動員してやるというと、大体どのくらいでその的確な数字が把握できるのか、お伺いしたいのですけれども
  18. 藤巻吉生

    説明員藤巻吉生君) 統計調査部の方からお配りいたしました資料では、和歌山被害軽微見込みとなっておりますが、現在のところでは、まだよくわかっておらないのが実情かと思います。今鋭意調べておりますが、その結果が、先ほど申し上げましたように、来週早々にはまとまるのじゃないかと思いますが、これはまだ第一回の中間取りまとめという段階でございまして、詳細は、今月の末ごろ第二回の中間取りまとめを行う。こういう予定でございますが、そのころになりますと、やや被害もはっきりして参るのじゃないかというふうに考えます。現在の状態では、非常に被害のわかりにくい状態でございますので、県の方の報告と食い違いがあるかと存じますか、私どもの方でもなお十分検討いたしまして、正確な調査を出したいと、こういうふうに思っております。
  19. 北村暢

    北村暢君 正確な調査はいいんですがね、大体こういう雪害だの何だのといって突発的に起る被害に対してですね、被害程度その他によっていろいろ違うんでしょうけれども、今の統計調査部機能を動員してやれば、どのくらいの日数で調査ができるのか、それをお伺いしたいんです。
  20. 藤巻吉生

    説明員藤巻吉生君) 被害の出方によりまして、調査の期日もきまってくるわけでございますが、普通私どもの方では、被害発生直後とそれから一週間後と、その後二、三週間たってからというふうに分けて、段階的に調査をいたしております。私どもの方でも今月の末ころまとまる調査では、かなりはっきりしたものが出るのじゃないかというふうに考えております。
  21. 佐藤清一郎

    佐藤清一郎君 農林省報告から見ると、各都道府県にわたって相当の被害があるようでありますが、栃木県からも私どものところまで報告書が出ておりまして、明日当委員会陳情に来る、こういう連絡があるわけなんですが、私も現場を見てみましたが、昭和二十八年の凍霜害よりも、はるかにひどいんじゃないかと思われるのであります。それはどうかというと、麦がほとんど——ほとんどでもありませんが、特にゴールデン・メロンのようなやつは、全くもう寝てしまって、前回雪のために倒れたところへ零下六度、ここにもあるような、六度というようなやつでやられましたから、白くもう枯れてしまった。で、元来が、今時分の霜害というやつは、外様は何ともなくても、幼穂がもう沽渇して枯れてしまう、従って、穂か出る時には、実穂が一つも出ておらぬ、からのものだけが出てくる、こういうことになるので、私は、外観上は大したことはないが、実質的には相当な被害があるように見てきておるわけですが、これらのその被害のものを、どういうふうにこれからやるのが、農事試験場あたりでは、もうどうせだめだからといって刈り取って、そうしてあと作にし、それから豚の飼料にしてしまうということを聞いておりますが、なるべく早く災害救済に手を打つべきだと思うんですが、どういう方法を考えておられるのですか。
  22. 永野正二

    政府委員永野正二君) ただいま御指摘のように、現在の段階では、外観的に被害を何割というふうにきめることが、非常に困難な状態にございますが、ことに霜害関係は、現地によりまして、非常に被害程度がまちまちでございます。同じ圃場でも、あぜの外側と内側でも著しく被害程度が違うというようなことがございまして、私の方でも、被害がこの程度であるからどうこうしろという指導をすることは、非常に困難でございます。ただ農民の方で、自分圃場の麦を一部抜き取りまして、詳しく茎を抜いて調べますと、幼穂被害も、ある程度判断ができるのでございまして、そういうことをやった上で、これはもう刈った方がいいという判断をされる農民の方がおられるであろう、こう思うのでございます。これに、あとの技術的な対策といたしまして、たとえば肥料の問題、農薬の問題等も、いろいろ検討はいたしましたが、現在の段階で、被害を軽減するためにこれをやることが技術的にプラスになるかという点は、非常に疑問ではないかという技術者の結論が出ておるようなわけでございます。私どもといたしましては、もう少し被害程度を明らかにいたしました上で、これに対する救済のいろいろな対策について、具体的に進めて参りたい、こう考えておるわけであります。
  23. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 本件は、この程度にいたします。なお、本日の委員会経過にかんがみ、政府の遺憾なき措置を強く希望いたします。  ここでしばらく休憩して、午後一時から再開いたします。    午前十一時五十四分休憩    ——————————    午後二時六分開会
  24. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  中央卸売市場法の一部を改正する法律案議題にいたします。質疑を続けます。御質疑の向きは、御質疑を願います。
  25. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 質疑に入ります前に希望一つ申し上げておきたいのであります。  それは、先般の当委員会における東委員政府当局との質疑応答に関連する事柄であります。それは、生産者出荷に関連いたしましてこれを強化しなければならない、その方法として農業協同組合の組織によって行う、さらに組合法改正をして、強制的な権能を与える、そのことが、農林当局としては必要であるという御答弁があったのであります。それに関連して、私希望を申し上げたい。それは、御承知のように蔬菜等生鮮食料品集荷出荷ということが、物それ自体の性質と、それから蔬菜等生産率関係等から見まして、きわめて困難な実態であるわけであります。従って、長年にわたってそういう種類の農産物集荷については、種々の沿革等寸もあったことは御承知通りであります。こういう新鮮度というものを最も尊ぶ生鮮食料品蔬菜等について、これを強制的に集荷をして共販体制に持っていくという考え方は、観念としては一応うなずけますけれども、現実は、そう簡単な問題では私はないと思う。もしそういうことを実行されますならば、おそらくそれを担当する協同組合というものは、非常な困難に遭遇するであろうということは、これは私想像にかたくない、ひいてまた、生産者自体にも不慮の損害を及ぼすということも懸念されるのであります。私の希望は、そういう特殊な新鮮度を尊ぶところの蔬菜等についての集荷、あるいは出荷というものについては、できる限り物の実態に即する方法を慎重に考えてもらいたい、それを、単純に出荷団体の立場から強制してやるのだというふうなことを簡単に考えられないで、一つ慎重にお考え願いたいということを、これは希望として申し上げておきます。  それから今回の改正は三点ありますが、第一点のあれは、名称の問題であります。これについては、だれしも異論のないところで、現在施行規則にその条項があるわけであります。こまかいことですけれどもそれに関連してお伺いしたいのでありますが、なぜこれを法律に持ってこなければならないかという点が一つ。  それから現在の施行規則においては、名称禁止、それから類似名称禁止と二つ入っているのであります、現行法はですね。それを今回の改正案においては、名称だけであって、類似名称禁止はなくなっているのであります。なぜ現在よりもその幅を狭くしたかということが一つ。  それから第三は、法律名称禁止をうたって、そして施行後六ヵ月、施行後半年間はその名称を使うことを容認しておるのであります。これは、施行規則の方では、もう大正十二年以来、それは使っていかぬぞということになっている。この改正では、半年間猶予を与えるというのは、これは改正現行法規の間に一つのギャップが出てくるのではないか、いずれもきわめてささいなことでありますけれども、立法の観点からいうと、やや重要とも考えられますので、質問するわけであります。
  26. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 御質問の名称の点でありますが、第一に、なぜ施行規則では悪いかと、こういう点でありますが、これは施行規則では法律上の効果が違うのであります。その点が第一点であります。  それからさらに先般の改正で、類似市場等規制が出ておりますが、その規制の徹底が十分でありません。従って、この前の法律改正のときにも検討されたのであります。やはり名称法律ではっきり使用禁止文字を置いた方がいい、こういうふうにしたのでありまして、これも法律上の問題になりますが、この改正案第二十八条に、一条二項の規定に違反した者は、一万円以下の過料に処す、こういう法律上の制裁の規定法律に明記することによって、はっきり出てくることになり、施行規則では工合が悪いのであります。  第二の中央市場類似のものを使ってはならないという施行規則になっておったのを、今度はその条項を削っているではないか、こういうのでありますが、その点は、法律技術上、類似という範囲が非常に広過ぎるので、名称使用禁止罰則を使うのでありますから、何々中央卸売市場、この中央卸売市場という文字だけを使用禁止にしたというのであります。  それから第三に、経過規定で、付則で従来中央卸売市場でないもので、中央卸売市場という文字を用いているものについては、この法律施行後六ヵ月間はこの改正の第一条の二の規定は適用しない。すなわち猶予規定を置いておるのであります。これは、施行規則法律との、何と申しますか、効果が、法律に準拠してない、罰則規定も置いてないというので、施行規則できめておるだけでは、単なる宣言規定にすぎない、こういうことで効力が薄い。これは、何といいますか、その法律上の問題で、法律規定しておったのであれば、こういう猶予規定を置くことはおかしいんだけれども法律規定に基かない規則を置いておったのだから、それを一挙に罰則にかけるのもひどい、こういうことで、六ヵ月の猶予期間を置くことにいたしたのであります。
  27. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 施行規則にある名称禁止は、宣言規定である。従って、どういう名前を使っても、それは法律的には差しつかえないのだという御解釈のようでありますけれども、私はそういうものじゃあるまいと思う。そういう考え方だとすれば、施行規則にある各種の条項というものは、十分その趣旨に沿った監督は、おそらくできないであろうと思うのであります。そういうこと自体が、今日の中央卸売市場の姿を招来せしめた一つの私は原因かもわからないと思うのでありまして、これ以上申し上げません。  それから第二点は、過当競争防止に関することでありますが、先般も参考人の陳述で、私非常に重大と思われることを聞いたのでありまして、当時、その真疑を実は疑っておったのであります。それは、中央卸売市場における仕切りがあとで改さんされる。そのことが公然の秘密であるということを、ある参考人が陳述されたのであります。このことは、非常に重大なことでありまして、卸売市場の適正な機能からいえば、許すべからざるものであると私は思うのであります。そういうことは、果してあるのかどうか、当局資料によりますと、あったように伺うのであります。一体、そういう公知の事実といわれておる事柄が、今日まで放任されておるということは、不可解千万に思うのであります。この問題は、過当競争がどうこうとかという前に是正されなくちゃならない事柄である、こう思うのですけれども、その問の事情につきまして、一つ御回答願いたい。
  28. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 仕切りの改ざんは、私の方で卸売人の検査をいたした場合に、ほとんどどの業者にも発見されております。その仕切りの改ざんの中に、二つの種類があるわけであります。一つは、荷を引き受けましてせりを行なって、終りに、終末に近づきまして千人がせり落して、最後に幾分か残る。しかし、その日のうちに片づけなければ、軟弱野菜等では困るという場合には、相当安く落される場合があるわけです。これは、この場合には出荷者の側からいきますと、A村から出したものとB村が同じ日に出したものが、そのまま支払われるとすれば、非常に違った値段になるのです。これは荷受人の方でも気の毒であるということで、その日に出荷したものについては、たとえ安く落ちても高く支払う場合かあるのであります。これが仕切のその場合の一つのケースであります。それからもう一つの場合は、Aの卸売人とBの卸売人がせりをやっております。その際に、同じ村から二つのX、Yの出荷者がおりまして、それがA、Bに分れて委託した、Aの委託機関でせられた場合とBでせられた場合の値段が違う場合があるわけであります。その際に、それをそのまま払ったといたしますと、村でAとBの人が同じ日にほとんど同じものを出して値段が違う、これはけしからぬ、XがAに出した場合にこれは何円だ、YがBに出したものはこれば下回っておるから、これはけしからぬ、同じようにしろ、こういう要求で、仕切書を改ざんする場合があるわけであります。そういうのでありまして、後者の場合は、これは明らかに競争によって、本来ならば当然違っても仕方がないやつを、それは違ってはならないということで、仕切書を改ざんする、こういうケースが起るのであります。しかし、これは現在の卸売人が複数の場合でありまして、卸売人によってその日その日のせり価格は、必ずしも同一というわけにはいきません。そういうので、やむを得ないところがあるのでありますが、しかし、これは卸しの荷受人の複数と出荷者がまちまちであるというところから、その間の競争によって改ざんが行われる、こういう場合であります。そこで、これは検査のたびに厳重に言っております。それから、今言い落しましたが、逆の——今のやつは増仕切でありますが、今度は減仕切というのがあります。一般的な値段がある程度低い、特に高く仕切ったものは、そっと仕切書を改ざんして安くする、そうすると、ほかの取引のものは安いのであるから、出荷者の方はわからない、こういう場合もあるわけであります。これは、検査の場合に、厳重にそういうことのないように一々言っておりますが、今の複数制、それから出荷者の共販体制ができていないという場合とでは、なかなか根絶することは困難だと思います。しかし現在は、開設者に仕切価格を届けさせまして、それと実際の支払いを、すなわち伝票を少いケースで三枚、多いときは七枚持ちまして、それぞれ一つの仕切について要所々々にいって改ざんができないようにする、さらに進んではこれをせるごとにその伝票をすぐそこでテレタイプで打って、改ざんができないようにする、こういう仕組みをだんだん普及させてきております。これはせりをやっておってそういう仕切の改ざんがあるということは、どうしても許せないことでありますから、何といいますか、市場の組織そのものを変えると同時に、今の改ざんをするすきを与えないような機械とか、あるいは伝票の回し方、こういうことで防止していく、こういう工夫をいたしておるのであります。
  29. 千田正

    ○千田正君 関連して。ただいま梶原委員からの御質疑に対しての局長のお答えの中に、改ざんを発見した場合の扱いについてのお話がありましたが、改ざんということは、私は梶原委員と同じように、非常にこれは悪いことである、早く言えば詐欺行為のようなものですか、これば断じて許すべきことではない。もしもAとBの村から出てきたものが、Aのものは適当価格で買い上げられたとしても、Bは、市場においてそうでない低い値段があったとするならば、別の項目で市場の価格維持のための何らかの補てんの措置を講ずべきであって、安く一たん仕切ったものを改ざんするということは、これは許すべき問題じゃないだろうと思う。制度としては、もしそういう問題があるために調整するとするならば、別個の制度を考えなければならないことであって、改ざんということは、これはあくまで偽造と同じようなものですから、断固として取り締らなければならないと思う。あなたの御意見を、もう少しはっきりさしていただきたい。
  30. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 御説明申し上げましたように、お話のごとく、改ざんは許すべきものではない、従って、検査をいたしますときに、厳重にそういうことはできないように戒告していかなければならない。しかし、戒告だけでは、先ほど三つのケースを申しましたように、卸売人と出荷者との間で、いわばなれ合い的にやる場合があるわけです。それをできないようにするのには、卸したときにすぐ前の伝票について一つ改ざんしても、ほかの伝票は改ざんできないような仕組みをやっていくことがいいというので、そういう機械等を使う設備等を市場に備えつけさせまして、厳重にやれるように指導いたしつつあるのであります。しかし、まだ全部がそういう機械を備えつけているというわけではありませんので、今後とも一そう厳重に取り締っていかなければならない。しかし根本は、今の卸売人制度、あるいは出荷の体制がやはりそれに照応するように進歩していかなければならない、その方面も一緒に解決していかなければならない、かように考えております。
  31. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 この問題は、卸売人が複数であるとか、あるいは出荷者の体制が整備されておらないということとの関連性は、私、心ずしもない問題だと思うのです。中央卸売市場における卸売業務の運営のあり方自体の本質的の問題。それで、数次の検査でそういうことがわかっておって、しかも市場関係者から、そういう事柄は公然の秘密であるというふうにこの問題を見ておって、単に戒告で事が済む問題ではないように思うのです。話の、いろいろ物理的にそういうことができないような施策をやるということは、これはもちろんけつこうですが、私は、これは不正だと思うのです。不正が行われている場合に、たとえば業務を一時停止するとか、監督規定は私はよく知りませんけれども、責任者を変えるとか、徹底した十分な、はっきりした監督措置を取らないというと——そこはまだそういう伝票の組織ができていないからやむを得ない、できるだけ普及するのだ、一つ尽力するというふうなことだけではなく、これは常にプラスの対策ばかりではなしに、プラスの改ざんがあれば当然マイナスの改ざんがどこかにあるわけなのです。徹底した監督を、そういうことについては一つおやりになることが必要じゃないかと私は思いますね。市場の制度を改善していくことも、それがそのままであれば、いい市場はでき上らないだろうと思う。  それから次は、これも参考人の陳述で、いろいろ問題があったのでありますが、前波金の問題です。前渡金はよろしくないというように論議されておるわけであります。前渡金の性格は、私にははっきりしない点が多いのでありますが、市場に入荷してきまして、それを受けたときに、卸として適当な額を仮払い式に渡していく、これもおそらく私は前波金の中に入っておるであろうと思う。申すまでもなく、卸というものは、当然に金融的な役割を伴うものであろう、それがまった、卸の持っておる相当大きな性質であろうと思うのであります。従って、必要な前波金を出すということは、むしろ当然じゃなかろうか。これをやめさしていくという考え方は、理解ができないのであります。もちろん、前波金の性質にもよりましょうけれども、当然、卸として荷を受けて清算するまでの間に、若干の時間がかかる、従って、ある程度の前渡金をしていくということは、むしろ当然のことじゃないか、こう思うんですけれども、前渡金の性質なり、それがよろしくないと言われる点ですね、そういう点を一つお示しを願いたい。
  32. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 最初に、増仕切り、減仕切りの状況が、お話によりますと、非常に多いと、こういうふうな御印象をお持ちになっておるようでありますが、これは、資料でお配りしておる最後の表に書いてありますが、総金額に比べますれば、率はそう多くはないのでありますから、その点は、説明を補足さしていただきます。  それから、第二の前渡金の問題であります。これは、やはり蔬菜と水産によっては多少違います。水産でありますと、いわゆる漁に出る仕込み金融的な性質を帯びておりますから、これも長年やっておるし、それから、何といいますか、仕込み金融についての漁業協同組合なりその他の金融制度が完備しておりませんから、金額から見ても、お手元に配付いたしておる資料にありますように、水産の場合は非常に多い。青果物の場合は、前渡金は非常に少いわけです。これは、何といいますか、その清算の状況から見まして、前渡金に頼らなくてやれるのが多いわけでありますから、当然であります。しかし、いずれの場合にいたしましても、中央卸売市場の制度が、荷受人にせりを委託するのは生産者でありますから、買取販売の場合だと、前渡金という制度は相当あるいは弁護をされるかもしれませんが、この制度から見ますと、やはり別途の金融をつけることによりまして、市場のあり方を正常に、出荷者の委託を受けて、せりを行うと、こういうところに専念してもらった方がいいじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  33. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 これは、おそらく見解の相違ということになるかもわかりませんけれども中央卸売市場内であろうとどこであろうと、たとえば、農業協同組合の場合でも、委託の場合だって、当然に若干の前渡金といいますか、そういうものは、時と場合、また、物によって必要なんです。買い取りの場合に前波金が容認されて、委託の場合にはそういうものがないということは、実は納得ができないのであります。ただ、委託の場合においては、程度はもちつろん違いましょう、程度は違いましょうけれども、それは全部ほかの金融でいくんだというふうに線を引くということは、これは市場のあり方から見て、非常に私は問題だろうと思います。果して、そういう金融制度といいますか、金融面のそういう改善が、青果物についてできるかどうか。青果物にしましても、リンゴとか、物によってはもちろん可能でしょうけれども、なま野菜等についてそういう金融の措置が可能かどうか、私には、むしろ疑問であります。卸売としては、程度とかいろいう性質はありましょうけれども、適正な金融面の機能をむしろ与えて監督していくということが本来じゃなかろうか、かように思うのであります。それは、漁船の建造資金であるとか、仕込み資金であるとか、こうなりゃ、これは市場における卸売の金融としては行き過ぎであることは、言うまでもありません。しかし、荷を受け取って清算までの間に若干の金融的な役割を果すということは、むしろ当然のように実は思うのであります。見解の相違ということかもわかりませんけれども、御検討をお願いしたいと思います。  それから、第三点の純資産額ですね。これは、農林大臣が純質産額というやつは省令で計算の方法をお出しになるのであろうと思う。従って、どういう計算方法をとられるかということを一つ説明願いたいということと、とにもかくにも、それが基準が出れば、だれでも一応形式的にはそろばんをはじき出せる数字だと思います。ところで、その農林大臣がきめる額ですね、これは、抽象的な卸の数とかその市場の流通高とかその他の事情を考えられて大臣がきめられるわけですが、具体的に、大臣かどういうふうにおきめになるのか、これを一つ説明願いたい。
  34. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 純資産額の計算の方法は、あとでお手元にお配りいたしますが、資産は、すべての資産でありますが、これは、現金、預金、受取手形、売掛金等、科目別に計上されております。それから負債は、これもまたすべての負債でありまして、支払手形、買掛金、短期借入金等、科目別に計上いたしまして、これは正確なる簿記によって計上されれば、客観的にこの資産と負債を差引きすれば出てくるわけであります。これは、省令できめることにいたします。それから純資産額の最低額、これにつきましては、現在の市場の卸売の状況を見ますと、純資産額がマイナスになっておるものも相当にあるわけであります。これは法律規定でも、この純資産額を増資なりあるいはその他の方法で増加する余裕期間を与えて純資産額を充実するという規定を置いておりますが、さしあたりは、純資産額の最低額ば、農林省告示で十万円という程度にきめたいと、こういうふうに考えております。しこうして、この法律経過規定ですね。整備の余裕期間を過ぎた後は、当該中央卸売市場の業務の規模、すなわち取扱い高、あるいは卸売人の数、そういうものを参酌して、その卸売市場の平均一日の取扱額をもとにしまして、適当な最低額をきめるようにいたしたい、こういうように考えております。さしあたりは、ほんとうの現在の純資産額、マイナスをプラスにする、そうして堅実化をはかるというところに目標を置きたいと考えております。
  35. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今の純資産額の最低限度といいますか、それがさしあたり十万円、この十万円の基礎がはっきりわかりませんけれども、そういうことであれば、十万円として、現状から見まして、それに達しないものがどれくらいあるか。
  36. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 配付資料でお配りしてある中にあるわけでありますが、十ページになっておるかと存じますが、中央御売市場卸売人の純資産額区分の員数表という表が出ておるわけであります。最初に補足説明のときにお配りした資料ですが、中火卸売車場卸売人の純資産額区分の員数表。
  37. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私のお尋ねは、十万円にしまして、農林大臣が十万円ときめられる、そうした場合に、それに達しないものが全体の卸売人の中で、どれほどの数があるであろうかということです。
  38. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ですからその表を見ていただきますと、中央卸売市場の卸売人が二百二人おるわけです。そのうちで二十六。つまりそれを純資産額マイナス一千万円以内、三千万、三百万以内、五百万以内というふうに分類して、二十六人。二百二人のうち二十六人。卸売会社が……
  39. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 それは赤字じゃないのですか、今のお話のは。
  40. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは純資産額を計算して……
  41. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 十万円までの線を引いてそうなるのですね。
  42. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 一千万円以内というのは六社ありますが、その中に十万円以下のがあるかどうかということですが、これにありませんですから……
  43. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 わかりました。農林大臣がその額を示されまして、そうしてそれに達しないようなものに、まあある猶予期間を置いてやらしめる、こういうわけでありますが、おそらくそういうことになりまして、そのワクに達しなければ認可がなくなるということになりまするというと、通常の場合においては、金融はまずとまると見ていいと思います。従って、大体その卸会社は、一応清算的な段階に入らざるを得ないというような事態になりゃしないか、かように思われるのであります。それで、そういうまあ措置をこの改正によってとられるゆえんは、理由は、そういう比較的弱小のものを、この際に、何と申しますか、多少のトラブルがあってもやむを得ない、この際に、一応の清算をするのだという見通しなり、考え方であるのかどうか、そういう腹でこの改正をおやりになるのかどうかということであります。もしそうじゃなくて、できる限りそういう弱小のものも何とか十万円までの純資産額に持っていかすのだというお考えだとすれば、今回の措置は、非常にドラスチックな措置のように思われるのであります。そのほんとうの農林当局の腰ですね、政策のほんとうの考え方、それを一つお聞かせを願いたい。
  44. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは現在の法律規定によりますと、卸売人が資力信用を欠くに至ったときには、営業停止なり、営業取り消しを農林大臣はしなければならぬという規定になっているのであります。その資力信用の認定というものに対して何らの基準がないので、従って、この現在の規定では、まだ大丈夫まだ大丈夫ということで、金融算段をしていっているうちに、借金もできなくなって、仕切金ができなくなって破局に行くまで、何といいますか、どんどん仕事を継続していくのであります。そうしてにっちもさっちもいかなくなって、まあ、〇東のような事件が起るわけであります。今回は、純資産額の客観的な標準を置くことによりまして、絶えずそれが自分の資力信用の、何といいますか、判定の基準を与えられたことになりまして、純資産額最低限を割るような場合には、それを割らないようにみずから努力しなければいかぬという基準を与えることにいたすのであります。その際に、たとえば増資なり、あるいはその他の方法で資力信用を増すという方法が見つからない場合には、これを他の卸売人に対してその事業を吸収してくれとか、あるいは譲渡に応じてくれと、こういうふうな話し合いもできる道ができてくるわけであります。従って、卸売人の信用の保持、ひいては生産者、消費者に対して取引の安全というものを確保することができる、こういうふうに考えているのであります。
  45. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 御答弁が、非常に何といいますか、観念的なんですね、こう言っちじゃ、はなはだ何ですが。その限りにおいては私よくわかるので、その通りだと思います。ただ、これまでのところは、若干赤字であっても、言いかえれば、赤字であっても一応長年にわたって信用あるものとして事業が行われてきたのです。今度は法律で、しかも農林大臣の具体的に示す数が出まして、お前のところは信用あるなしという判定がぴっと出るわけです。それは多分農林当局だけの判定じゃなくて、金融機関方面でもそれは相当の影響を持ってくることに相なると思う。従ってそうなれば、金融も一応ストップの状況になるであろう。相当の混乱といいますか、それが起るであろう。それは当然予想をして、そうしてこの際思い切って一つ整理をやるんだという考え方かどうかということを伺ったわけであります。後刻お答えを願いたいと思います。  それからもう一つ、それに関連して私ちょっと疑問なんでありまするけれども、なるほど計数的に純資産が十万円だ、これは一応計数的には信用あるものと見るかもわかりません。しかし、ほんとうにこの会社が信用あるかないかは、必ずしも十万円の問題ではないのであって、その純資産の内容なるものか問題だと思うのであります。いかに計数上つじつまが合っても、その資産のたとえば貸付金が不良であれば、これは、その会社は信用のある会社とはいえない。この線ができますと、今後、農林当局監督としては、一応これは十万円あるのだからこれで大丈夫だといいますか、ということになるので、その会社のほんとうの信用というものに入ることができないことになりはしないか。それはそれでいいんだ、そういう客観的な標準で今後やっていくのであって、その会社の実質的な信用の問題というものは、これは別で、そこまで監督官庁としては入らないんだという考え方でいかれるのかどうか。そこに私一つの問題がありはしないかと思うのであります。その点を一つお伺いしたいと思う。
  46. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  47. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。
  48. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 第一点の、農林省は、この純資産の規定を置くことによって、弱小会社を整理するのに拍車をかけるのかどうか、こういうのでありますが、積極的にそういう意図は持っておりません。ただ、現在のところは、市場によりましては、複数よりも単数がいいというので、合併の話を出しておっても、資産額が非常に違うということによって、話が進まない所があります。そういう所では、この規定によって純資産額がある程度バランスがとれることになりますれば、そのそれぞれの業者の意思は実現しやすくなる、こういうことができてきます。すなわち資産状態がある程度バランスすれば、その対等合併が可能になる、こういうことであります。  第二に、純資産額かプラスであるかマイナスであるかということと、それから借金が多いか、多くないか、あるいは欠損が多いか、多くないか、こういうのは、ちょっと観念が違うのであります。今のように、総資産から総負債を引くと、差引残るのは資本金と積立金で、そういうものが残ってくる。それが純資産に相当するものになってくるわけでありますが、それが資本金を全部食った計算になると、純資産がとんとん、こういうことになるだろうと思います。従って、その会社の事業の軍営状況によって、必ずしも一律にやっていくことかできないと思うのです。ただ、純資産がマイナスになった場合には、これは相当その会社が苦しい営業をしているということだけは、はっきりいえるのでありますから、銀行等も、そうなったら、そういう会社については非常な警戒をしております。しかし、一度金を出しておるのですから、途中でそれをストップすれば、今まで貸しているのも取り立てができないということで、ころがしていっているのがこれまでの実情であります。それをころがしていって、〇東のように破局にいく前に純資産を増加すれば、金融機関も安心でき、生産者も消費者も安心して取引に応じられる、こういうふうに考えられるのであります。従いまして、何といいますか、純資産額を充実するということは、金融をつける面からいっても、非常に効果のある、卸売人にとっても得のいく制度である、こういうふうにわれわれは考えております。
  49. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 一つのお考えであると思います。新しく出発する場合に、そういう一つの基準で出発していく、これは非常にけっこうでありますけれども、何分にも大正十二年以来今日までそうじゃなくてきて、今、根本的な改正農林当局は近い機会に行うという考えを持ちながら、この言いかえれば暫定的な改正ですね、に、それを持ち出していくというところに、私は一つの危険性を実は感ずるのであります。  大臣に一つ伺いたいのです。今回の改正は、きわめて小さい範囲における改正であります。卸売市場全般について種々の重要な問題が御承知のようにあるわけであります。施行後相当長きにわたったとの制度であります。改善されるべき点も多々あると思います。しかも、先日の委員会において根本的な改正検討し、実行するということが言われておるのであります。この際に、過当競争防止措置、それと純資産の関係条項、これが出るわけであります。名称禁止の点はさしたる問題はないようであります。過当競争防止の点も、一応その条項には、業務規程にそれを入れることができるというだけであって、前渡金の問題につきましても、一体どの程度どういう性質のものをどういうふうにするかという点については、必ずしも明確ではない。おそらく、実際上監督されておやりになるのでしょうけれども、その点は、きわめて明確じゃないのであります。また、前渡金の問題も証券取引所なり商品取引所には、これに類似した規定がありますけれども、これは必ずしも主管大臣が正面切ってやっておるわけではないのであります。一応、基準は示しておりましょうけれども、それぞれ取引所が実際上の責任を作って、また取引所のメンバーなり仲買いは、それに関達して別途信任金を出すとか保証金を出すとかいう一つのギャランティの措置はあわせてとっておる。制度全体として右機的になっておるのであります。ところが、今回突如として、というとはなはだ言葉は当りませんけれども、ある額をお示しになって、これはもう社会一般に示すわけであります、そうしてそれに応じた措置を要請される。しかも十万円ですから、何といいますか、相当まあいい卸売についてはほとんど問題ない。きわめて程度が低い、非常に低いところに線が引かれるわけです。これは現実からやむを得ないかもわかりません。従って、相当いいといわれる卸売だって、内容的にはいろいろ問題があろうと思う、財政的にも。そういうものは、これによって一つの安定ゾーンができてしまう。それ以下のものは急遽混乱するという事態が一応想定されるのであります。そういうことが果して賢明な一つ措置かどうか、必要かもわかりませんけれども、この際とる方法として賢明な措置かどうかということになってくると、はなはだ疑問がある、これは私の感じであります。前渡金の問題、各種奨励金の問題等から見まして、当初大正十二年ですか、この市場が発足したときの手数料の問題であります。おそらく一割とかあるいは八分という手数料は、御会社といたしましては、普通よりは高率の手数量だと思います。今日そういう高率の手数量を取っている卸会社というものは、そうそうないであろうと思う。そういうことは、この一割なり八分という手数料の中に、当然に前波金に要する金利であるとか、あるいは関係業者に対する奨励金的なもの、そういうものが、当時の市場の実態から見て、中に入って、そうして一割とか八分というような比較的高率な手数料かきまったであろうと、これは私の想像でありますが、想像される。今これを改正されて、前渡金とか、各種奨励金というものをやめさしていくということになりますれば、当然に手数料の問題をあわせてこの際やはり考えられなければ、生産者の方にいたしましても、消費者の方にいたしましても、割り切れないことになるわけであります。手数料の問題というのは、やはりこれは根本的な問題ではなかろうかと、卸売市場ができた当時の事情から今日まで考えてみますと、そう思われるのであります。そういう点について、どういうふうにお考えになるか、この二点であります。前段は、この際おやりになるとして、かえってこれじゃ、農林当局としてほんとうに市場法の改正をやろうというのに、プラスにならぬじゃないかという考え方ですね、見方、これがどうか。それから手数料の問題、この二つを一つお答え願いたい。
  50. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 純資産額の問題につきましての最低線十万円という線を引く、現に説明がありましたように、二百二人のうち二十六人が、非常に低い線だと思っておっても、引っかかる者があるという状態でございますと、これを運んでいきまするには、運び方に慎重な態度をとって、各般の情勢を見ながらこれを運んでいかないと、思わざる混乱が起きて、今おっしゃったように理屈は通るけれども、非常な賢明でない方法であり、各方面に迷惑を及ぼすというようなことにもなるおそれは、もちろんないと言えないのでございます。この運び方は、できるだけ各方面の意向等も徴しまして、実際に沿うようにこれは運んでいかなくちゃならぬと、それは切に私どもも思っておるところでございます。  第二番目の手数料の問題でございますが、長い間、三十年これをやって参りました中央卸売市場の中での手数料といたしましては、もう取引事情等がだいぶ変ってきておりまするし、少しこれはその水準等については再検討をするまでにもうなっておったわけなんであります。お説のように、生鮮食料品の扱いのいろいろな理由からして、ほかよりも手数料が高いのでございますが、これはこの際、ちょうど取引方法規制をするような場合、卸売人の経営状態等をとくと研究いたしまして、調べまして、取扱い経費がどういうふうになっておるか、また、取引方法規制によりまして、どれだけのものが浮いてきて、そうしてこのくらいの程度であれば手数料はいいじゃないか、おそらくこれは今の手数料より低目に考えられる問題だと思うのでありますが、これは関係者等の意見も十分徴しまして、そうしてこの手数料等の適正化を当然はからなければならない、こういうふうに考えております。
  51. 千田正

    ○千田正君 大臣が時間がないようですから、簡単に聞きたいのであります。ただいま梶原委員からもいろいろ御質疑かあったのですが、私も同様の意見を持っておりますが、これは、今度の改正案が出されることによりまして、一応整理の対象になったり、あるいは今の純資産額その他の制定等が施行されるということになりましても、それだけでは、私は今後の市場の信用というものは維持できない、それには、やはり支払準備金あるいは支払保証準備金のような制度を設けて、たとえば積立金であるとかあるいは保証金であるとか、かつては、現在でも行われているところの過当ないわゆる前渡金とか奨励金というようなものを出すだけの力があったのですから、それを引き戻しまして、市場内におけるところの支払い準備の保証に充てるような準備金制度を確立して、そうして市場の信用を確保するような制度を考えていかなかったならば、法律でだけ締めていっても、現実の問題においていろいろなそごを来たすおそれがある。私はそう思うのです。そこで、実際面におけるところの実行に当って、そういう制度を御研究の上、設ける御意思があるかどうか、そういうものが相待って表裏一体とならなかったならば、おそらく法律だけがきつくいって、実際の運用が、信用を確保するという面が、やや欠けるおそれがあるのではないか、その点について、大臣はどういう御所信を持っておられるか、将来そういう問題を解決する意味において、支払い準備金保証制度のようなものを考えるという御意思がないかどうか、その点を一点伺っておきたい。
  52. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) ただいまお活の基金または保証金制度というようなものを設ける考えがあるかどうかというお話であります。これは私どもはぜひこういう制度を設けたいと思っております。今度の改正法律案の中にも、そういうことを一応仮定して、いろいろ究研いたしてみたのでございますが、この際、私どもの到達したところでは、基金に対する醵出を強制しなければいけない、強制すれば、ちょっと無理な法律上の問題があるというようなことで、今度は取り上げなかったのでございますけれども、実際上の問題といたしまして、この必要は、私ども強く認めるところでございまして、行政指導等によりまして、こういうふうな方向に進めるということを、一つやっていきたい、ぜひこういう制度は、どんな形かにおいて実現するように努力いたしたいと思っております。
  53. 大河原一次

    大河原一次君 大臣に一言簡単にお尋ねしたいのですが、これは、さきに政府は、河野農林大臣のときだと思いますが、従来の農業政策のいわば転換というそういう立場に立って、適地通産主義である換金作物の作付転換を行う、こういうことで、いわばわれわれから言うならば、農業の、何といいますか、資本主義化といいますか、商業化といいますか、そういう方向がとられたと思うのです。しかし、その結果といたしましては、確かに適地通産主義が、一応の実を結んだというそういう結果から、相当の生産の増加が来たされた、しかしながらこの形は、先般も新聞に出ておったと思いますが、農業観測所の発表の中に、今日は農産物の供給過剰であるということがいわれておる、供給過剰の傾向であるということが、農業観測の中に出ておると私は記憶しておるのでありますが、このことは、やはりうっちゃっておけない大きな問題である、一面からいえば、日本の農業恐慌の現われではないか、こういうふうにさえ考えられるのでありますが、こういうことが、実際からいうと、農家経営の安定ではなくて、農家経営の不安になってくることは大臣もお認めになられると思うのです。こういう現状は、うっちゃっておけないのでありまして、さしあたり農林大臣としては、この供給過剰に対するどういうような対策を考えられておるか、今のこの市場法の問題に関連がありますので、お聞きしたいと思うわけであります。
  54. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 畑地奨励、酪農奨励等々のために、いろいろなものか豊富に供給されるようになりましたけれども、これの供給者、生産者である側の者として、たくさん作りながら費乏をする、苦しまなくちゃならぬというような状況が随時見られるのは、御承知通りであります。牛乳の問題等にしましても、非常にたくさん牛乳ができて、消費の方がこれに伴わないので、今度学童給食等に用いてもらうというようなこと等で、新天地を開き、そのうちだんだんと需要が増してくる、需要の道を開始していくということにいたしておるようなわけでございますが、野菜類等、生鮮食料すべてにつきまして、どうしてもこれは足の早いものが多いわけでございます。保存の期間が短いために、供給が需要にちょうどいい工合に合わして運んでいけないというのか根本の問題でございまして、そういうことの一端からも、これは中央卸売市場を強化し、そしてりっぱなものにしていくということは、それによって、出てきます品物等の保存等もでき、そして適時にマーケットから出して消費者の手に渡すというような手助けも、この方法はできるというようなことを考えまして、この中央卸売市場の強化というような線で、今度の改正案等も出したようなわけでございまして、何といたしましても供給過剰になるものを過剰になさぬように、だんだんはいていくという方向に、できるだけの努力を私どもはやっていく、新しい市場を開拓していく、新しい消費の道を開いていくということで、いろいろ努力を続けていきたい、こういうふうに考えております。
  55. 大河原一次

    大河原一次君 私としては、現在審議されております法の一部改正、こういう問題のねらいが、一体どこに重点が置かれておるかということになると、非常に疑問なんであります。なるほど流通面の改善によりまして、たとえば青果物あるいはまた魚類等の生鮮食料品、この流通面の改善によりまして、一面には農家経営なり、あるいはまた漁村の経営安定というそういう方向に、十分に私は結びつかなければ、この法案の一部改正の問題は、意味がないだろうと考えております。従って、私は、この法案をよく見ますると、どちらかというと、そういう生産者との問に利益におきまして共通した——むしろこの法案の改正生産者の経営安定という方向に果していくかどうかということになると、私は非常に疑問があります。むしろ、卸売市場それ自体に対するあたたかい保護政策が加えられたというそういう感なきにしもあらずであります。従って、私は、具体的にお聞きしたいのですが、この法案の一部政正によって、いわゆる生産者としての農家あるいはまた漁村、こういった面の方々に対しまして、どれだけの一体好影響が与えられたかということにおける具体的な一つ説明を願いたいと思っております。基本的な問題について、一つ大臣の方から。
  56. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 詳しくは政府委員から答えてもらいますが、市場そのものが健全化するということになりますることは、卸売人の信用を増し、それが土台となりまして、生産者出荷者も、この扱いに関する人たもが、すべて安定した心持ちで取引ができるようになるということ、これが、私は、一番大きな問題ではないか、こういうふうに思うのでございます。すべて経済の根本は、申すまでもなく経済は安定性を持つということでございますが、こういうふうな改正によりまして、市場の信用も増し、そうしてみんな取引する人が喜んでこれに応じて、そうしてその人たちが不測の損害を受けないということによって、これはりっぱに卸売人から生産者に至るまでのすべての人たちに利益になるものだと、こういうふうに思っておるのでございます。なお、詳しくは一つ局長からお答えいたします。
  57. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま大臣がお答えになった通りでありますが、結局、今の生鮮食料品について見ますと、いつも申し上げますように、加工と貯蔵が困難なために、平均売りによって価格の維持ということがむずかしいのであります。従って、これは不特定の需要と不特定の共給とを結びつける機構の確立がなければいけない、これが市場制度であるのであります。その市場制度が今までのような状態であるところに問題があるのでありますから、具体的に申し上げますると、生産者に対する過当の奨励金を出して、生産地を、何といいますか、欲目に見ると、もうけたようだけれども、ある市場に物が集中して、結局値段が暴落する、こういうようなことになるのであります。どうしても市場の機構がはっきりしなければならないというところをねらっておるのであります。これが全部ではないのでありまして、ほんの一端であることは、御指摘の通りであります。われわれは一つ一つを取り上げて片づけていきたい、こういうふうに考えております。
  58. 大河原一次

    大河原一次君 先ほどのにさらにつけ加えて申し上げたいのですが、今私が申し上げたのは、いわゆる農村であるとか漁村の生産者に対する点でお伺いしたのですが、一面さらにこの法案によって一般消費者の上に、消費水準の上にどれだけの安定というものを与えることができるかどうかということについても、一つ具体的にお伺いしたいのであります。
  59. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 今までの考で方でありますと、野菜はいつ小売屋に行ってもあるということで、全然与えられたものをもらうというのが消費者の立場であったと思います。それが、だんだん交通機関、通信機関の発達によって、生産地の価格と消費者価格との開きがあまりに大きいということが注目されてきておるわけであります。そういう点は、やはり流通機構が各段階で認識されることによって、正常なそれぞれの制約を受けているということができると思います。それにしましても、卸売市場の中の卸、仲買、小売、この段階について、従来から非常に、たとえば、仲買人が卸売人から奨励金を取るというようなこともあります。そういう点もなくなれば、それだけ中間マージンが減るわけでありますから、小売商、消費者にとっても、中央卸売市場の運行を安全確実にすることによって、当然利益が出てくる、こういうことになると思います。
  60. 大河原一次

    大河原一次君 最後に簡単に、時間がないようですから、大臣にお伺いしたいのですが、これは私は、今後の——今日でもそうでありますけれども——生産者の経済安定ということと、それから消費者の立場における消費生活の安定ということは、今日の段階としても非常に重要であるし、十分に考えなければならぬと思うのでありますが、今回のこういう市場法の一部改正ということだけで、あるいはまた流通機構の改善ということだけで、消費水準の安定を考えたり、あるいはまた、生産者の経営安定ということは望めないと思うのです。やはり先ほどの過剰生産、供給過剰ということを私は申し上げたのでありますが、やはり今後の問題として今日の価格安定の制度であるとか、価格支持制度というものは十分でないと思うのであります。従いましてこういう点については、大臣は今日現在ある価格支持制度について、さらにワクを拡大してもっと充実したものにしなければならないというふうに考えておりますが、その点大臣どういうふうにお考えになっておりますか。  具体的に申し上げましょうか。今日価格支持制度がありますね、しかしながらまだまだカンショであるとかバレインョであるとか、切りイモであるとか、全く対象になっているものはわずかなものであります。このワクをもっと、たとえば蔬菜の端まで全部価格支持制度の中に包含すべきではないか、それなくしてはいわゆる生産者の安定というものは考えられない。一面においては適地適産である、何を作れかにを作れとどんどんどんどん作らせているが、それに対しては何らの裏づけもされてない、結局農家の方々は過剰供給の中で回り回ってみずからの経営の不振を招いている。こういうことを考えるとこういうふうな市場法の一部改正、流通面の改正だけでは生産者もそうであるし、一面にはこの利益を受ける消費者も阿り回って、結局消費者の上に圧迫を加えることは明らかです。そういうことを考えますと、今日の今とっておられる価格安定法というものは、十分でないのではないか、これをもっと拡大しなければならぬというふうに考えております。その点について大臣のお考えをお聞かせ願いたい、こういうことであります。
  61. 石井光次郎

    ○国務大臣(石井光次郎君) 今の政府が価格をきめております問題は、大体におきまして貯蔵のきくもの、加工貯蔵のできるものという、大体な範囲でやっているわけです。それから先の問題になりますと、実際に持ちこたえきれないと、なかなか値段はきめられないわけでございますが、これはまだ今のままでどうにもこうにも動かないものと、必ずしもきめているわけではないのでございます。方針だけは大体今申しましたようなものに合うもの、そうすると大体今くらいのところではないかと思っておりますけれども、これにはなお研究の余地があると思いますので、お言葉の意味を含んでなお研究いたします。
  62. 東隆

    ○東隆君 先ほどから市場の信用保持というお話がだいぶございましたが、市場の信用の保持をするためには、卸売人の資産の内容をよく知るということは、これは重要な要素だろうとこう考えますが、私はそれ以外に、市場における価格を形成する場面におけるいろいろな行為といいますか、そういうようなことにはこれが非常に信用の保持に大切だろうと思う。その場合に、せりを中心にして価格が形成されるのでありますが、このせりに該当しないものが相当たくさん出てくるわけです。たとえば大きな漁業をやっている会社が値段をきめて市場に出す、定価で出す、指値で出す、こういうことになりますと、委託をして販売をするそういう形とは全然違う形のものが出てくるわけです。それから卸売人みずからが買取販売をする、こういうような場合が出てくるわけです。こういうようなものをある程度規制をしなければ、小生産者がいかに団結をして、組織を作って計画的な生産をやり、そして計画的な出荷をやっても、数量の需給調節の関係でかりに価格が決定される、こういうことになりますると問題にならぬと思う。そこで私はせりを原則にする、こういう建前ならば、やはり市場の信用を維持するために、せりの原則をはっきり立てる必要がある。それを大会社その他の者が出荷をする場合に価格を決定して、指値をして出すというような方法は、この際ある程度制限をする必要がある。こういうような会社は十分に自分の採算がとれないときには貯蔵をするとか、あるいはいろいろなことをやるのですから、そこで出すものについては当然せりに供する、こういうことをきめていかなければ、市場におけるところのせり、市場におけるところのものは常に大会社によってこわされていく。こういうことが起きてくると思う。それからまた、買い受けてそしてそれを市場に出す、こういうような形になりますると、これも上手に販売をしなければならぬ。こういう問題が出て参りまして、卸売人みずからは最も知脳をしぼって、そしてせりにおいて有利な形で入れることをはかると思う。当然これはそういうことをはかるだろうと思う。従ってそういうようなものを調節をしないで、小さな生産者のもののみを委託されてそれをせりに出す。あとのものは定価売り、あるいは卸売人みずからが自己の採算において、有利にこれを販売し得るという前提のもとに買い受けをする。これでは適正な価格というものは出ない。市場におけるところの価格の安定であるとか、あるいは適正な価格、公正な価格、こういうようなものは出てこないと思う。その点はどういうふうにお考えですか。
  63. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま御指摘の問題は生果物と水産、それから肉によっていろいろ違うのであります。御指摘の点は主として水産物にそういう傾向が非常にふえてきているのであります。その理由は、加工貯蔵がきくからそういうことになるのであります。結局平均売りができるからそれによって市場を通じなくてもいい、こういうので、現在の水産の取引については、非常な将来の市場のあり方について問題になっておるのであります。御指摘の点は一律に生果物も、水産も、肉等も一律に規定することが、それぞれの商品に応じて無理な点が出てくるのじゃないか。しかし現在はそれをどう解決すべきかということについて検討が加えられて、市場当局、卸売人、仲買い、生産者でそれぞれ市場なんかやめてしまって、水産については直接消費者と結びつける、あるいはスーパー・マーケットと結びつける、こういうふうにしたらどうか、こういう意見もでてきているわけであります。それらの点が、今後の卸売市場の根本的な問題解決の一つの重要な項目になるのじゃないかと思います。しかしそういうものを、指値委託とか、あるいは定値売りとか、買取販売を一がいに否定してしまうというわけにはいかないだろうと思います。これらの点を研究を続けていきたいと思います。
  64. 東隆

    ○東隆君 大生産者のものについての、市場に出すものについてはせりを原則にするという、そういう考え方はこれはそんなに困難じゃないのじゃないですか、白巳の計算において調節をしますから。それを指値でどんと出されたのじゃ、ほかのものがものすごく影響を受けるのですが、その場合における市場利用という立場から、そういう指値で売るというやつを押えることはどうなんですか。そいつはできるのじゃないかと思うのですが、だんだんだんだんそういうものが出てくれば、市場から離れていくと、こういうものも出てくるかもしれません、それは。しかしその場合における問題、それから手数料の関係ですね、これは卸売人の取る手数料、あるいは市場が取る手数料、そういうようなものについてもある程度の差をつけるというような、いろいろな方法も考えなきゃならぬと思うのですがね。さしずめ私はせりを原則にするのならば、せりを出す、あるいは買い取り販売というような形でやれば、せりじゃなくなってしまうのですから、そういうようなものをなくする方法を考えるべきじゃないか。こう思うのですが、この点研究課題だというよりも、行政措置その他でそういう点は強硬にやり得ないのですか、今の法規では。
  65. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいまの点を強行するとすれば、市場に出回らなくなるのであります。これは築地でも現に当面の問題になっているわけであります。カン詰であるとか冷凍物は何も市場を通さなくても、あるいは練り製品でも市場を通さなくても、どんどんほかのルートで流せるじゃないか。こういう問題ができて今盛んに論議をしているところであります。それを無理に市場にせりに出したがいいのか、せりに出さないでも公正に取引かできるのならば、それでもいいのか、これらは今すぐどの方法でなければならないということは、一がいには言えないのじゃないかと思います。
  66. 東隆

    ○東隆君 そうすると、卸売人の調節機能ですね、需給関係を調節する場合、卸売人がある程度機能を持っていなけりゃならぬ、卸売人がですね。そうでないと、生産者のその一番末端のところに卸売人がいたとして、これはもう全然出荷団体なんかの方のこれは味方じゃなくて、まるで先の方で出荷者が出したものを材料にして商売をやっているのと同じことになる。そこで中央卸売市場のある場合における卸売人の機能の中には、調節機能も持たなけりゃならぬ、価格を調節するという面を果すために、数量の調節をやらなけりゃならぬ。そういうふうないろいろな調節の機能がなけりゃならぬというのですが、そういう機能は今どういうふうなんですか。
  67. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 中央卸売市場の本来の姿はそういうものであります。ただその前に、今のような水産物につきましては、生産者がみずから数量の調節をやっているわけであります。ほかのなま野菜、くだもの等でありますと、一定の時期までくれば、貯蔵がきかなくなりましてどうしても出さなければならぬ。その間における生産者の平均売りのワクが非常に制限されておりますか、冷凍物とかカン詰とかそういうものになってきますと、幾らでも持てるわけであります。そこでその際に、御売人が持っている数量調節とか市場調節の機能が、その前の段階で処理されているということになると、そこに問題があるわけであります。従ってこの水産が近海漁業から遠洋漁業、冷凍施設の完備したそういう産業になった場合に、従来の中央卸売市場そのものでは工合が悪い。従ってもっと工夫をしなければならないというのが問題になっておるのでありますが、非常にむずかしい問題になっておるのであります。
  68. 東隆

    ○東隆君 もう一つ。私は先般、もうだいぶ前になりますが、築地の市場における冷蔵庫その他を見せてもらったことがある。そのときにどうも北洋でとったやつが、どうも相当中に入っておったように思う。で、北洋でとったサケ、マスが市場の冷蔵車の中に貯蔵されて、そして沿岸漁民が出したところのものの数量は市場において調節をして、そしてある程度生産者に都合のいい価格でもって売ろう、こういう形であの冷蔵庫であるとか、その他の設備ができていると思う。そういうようなものが北洋物なんかで満たされてしまって、集荷機能を発揮しないような形で置かれる。こういうようなのは、これは私は中央卸売市場そのものの正しいやり方じゃないと思うのです。ところが実際にそういうようなことが行われておる。こういうように考えて参りますると、卸売機関というものがあまりに営利を目的にする、そういう方向に走り過ぎて、そして小生産者を犠牲にしておる。こういうような面が多分に出ておると思うのですが、こういう事態がある場合には、何らかの方法監督をして、そいつを直すことができますか。
  69. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは現在の法律のもとでは、かりに農林省がお説のようにせりに全部かけろと言えば、市場に出てこなくなる率が多くなってくる。こういうわけで、やはりこれは市場の卸売人自身も、それでは商売が減りますから好まない。従って監督官庁の命令に服従しない。こういう現象が起るだけじゃないかと思います。従ってそういう何と言いますか、生産、加工、貯蔵の技術が進んだことを前提にしての、取引の安全を期する法制が必要になってくる。私どもはそういうふうに考えております。
  70. 堀末治

    ○堀末治君 私はお聞きしたいことが二つあるのですが、そのうちの一つは、先ほど梶原委員その他から御質問があって、大臣の御答弁をいただいて、それで大体了承するのですが、しかしこれはこの前私ども名古屋に行って聞いたときに、名古屋の連中の中から切実に訴えられた。それは今のこの第二の問題が六カ月たてばますます成立してしまう。営業停止後六カ月間に純資産が最低額に速しない場合には、規制される、これを非常に心配していた。そしてどうかこれに対しては政府も、こういう措置をとるならばけっこうだけれども、われわれは非常に手ほそのものであるから、なるたけ温情ある措置をとってもらいたいということを切実に言っておりました。これはもう無理からぬことだと思うて聞いたのです。先ほど大臣の答弁には、それは露骨に私のようにはおっしゃっていませんけれども、決して混乱をきたさないようにやりたいという御答弁で、大体満足だと思いますけれども、あなたの御答弁ではどうもそこら辺が少し冷たいような御意見があるから、そこを大臣と同じような腹で、もう一ぺんひとつはっきり言うといて下さい。
  71. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま御指摘の点は、私の方でも先ほど梶原委員にお答えしましたように、急激に事を処理しようというつもりは全然ありません。ただ、できるだけ早い機会に、不測の損害が起らないような資産の状態に到達してもらいたい、十分行政的に懇切な指導をいたしたい、こういうふうに考えております。
  72. 堀末治

    ○堀末治君 それからもう一つ。これも名古屋の業者から切実な希望であったのでありますが、先ほど千田さんからもあった、いわゆる責任準備金の制度の問題ですが、その先に、あの人方の最も希望するのは、自分らは店舗その他は全部開設者から借りてやっている、そんなようなことで、償却資産というものは一つもない、上った利益は全部そのままで課税の対象になるので、どうもいわゆる蓄積、社内留保というものができないということは、私どもの商売の最もこれは情ないところだ、どうかこういう点についてひとつ何とか政府は考えてもらえないか、こういう希望があった。これはひとり市場の卸売その他の者ばかりでなく、いわゆる一般の小売業者というものは、全部その通りだ。固定資産がない、償却資産がないものですから、全部その売上経費を引かれたあとが課税の対象になる。それがためにいわゆる資本の蓄積ということができない、これが今の小売業者の非常に困るところですが、これらに対して何か税の減免処置を政府で考慮してもらえないか。こういう意見があったんで、これは私非常に大切だと思う。ことに普通の小売商と違って、これらは許可制度、いわゆる免許制度になっているものだから、何かにっぱりこういう免税制度が必要でないか。いろいろ農林関係のものには、そういう免税制度も地方税その他でもあるし、大企業になってくれば新しい企業なんかは、電気・ガス税などもあれば、あるいは固定資産税なんかもある。そのほか法人税なんかも思い切りやっているということで、それはあなた方よくおわかりの通り、社会党から大企業に偏重だと言うてしかられる唯一の点も、私どもも痛切に感ずるんですが、これは今度の処置ではできまいと思いますけれども、しかし、でき得ることなら、これは農林省だけではできないことだと思いますけれども、何らか、そういう点大蔵省とも話し合って、課税の対象についてもあまり手きびしいやり方をせないで、育成するという方向にひとつ御尽力を順いたいと思いますが、いかがですか。
  73. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 御指摘の点ば、普通の自己営業なれば店舗たけでも不動産があるわけですが、これは店舗も開設者から借りている、こういうことで、非常にわれわれも何らかの措置を必要とすると、こういうふうに考えておるのであります。その一つ方法として信用準備金、そういうものを慎み立てることによって、共通のファンド、それに免税をしてもらう、こういう考え方。それからもう一つは、協同組合に、特別措置として、資本金の四分の一に達するまでは積み立てを損金とみなすと、こういうような規定がありますが、そういう考え方もあるわけです。この市場の卸売人の特殊性というもの、特殊性をほんとうに認識してくれるならば、税務当局でもそれに同調してもらいたいというのがわれわれの希望でありますが、その点は御指摘もございまするので、これも根本的な改正一つの課題として十分取り上げたい、こういうふうに考えております。
  74. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この法案の本日の審議は、この程度にいたします。   —————————————
  75. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 酪農振興基金法案(閣法第一一六号、内閣提出衆議院修正送付)を議題にいたします。  この法律案については、去る三月四日の委員会において提案理由の説明を聞いたのでありまして、本日はまず、法律案の内容、衆議院の修正点、及びこれら修正に対する政府の見解その他について、補足説明を求めます。
  76. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 酪農振興基金法案につきましては、さきに政務次官が提案理由の説明をいたしたのでございますが、若干の補足説明をさせていただきたいと思います。  御承知のように、昨年は昭和二十五年に比べまして、乳牛の頭数で約三倍、生乳の生産量で約四倍程度の上向線を描いておる状況でございまして、このように非常に酪農か伸展してきつつあるわけでありますが、今後さらにこれを健全に発展させて参りますためには、生乳の生産基盤を強化しますと同時に、また他方、生乳取引の特殊性から来まするところの欠陥を克服いたしまして、安定した酪農経営を維持させることがぜひ必要であるかと存じます。で、生産基盤と流通関係とあるいは消費の拡大というふうに、各方面の施策が必要でございまするが、その垂要な一つといたしまして、このような最近の非常に目ざましい酪農の発展のその陰に、需給の状況が一時的にしましても不均衡が生じて参る、こういう問題がひそんでおるわけでございます。御存じのように、生乳に関しましては、まず季節的な変動がございまして、夏は生産が減少しますのに比べまして消費が増大する、冬は消費が減っておるのにかかわらず生産かふえる、こういう一時的な滞貨がふえる、という現象がございます。さらに、これを数年間にわたってながめてみますと、大局的には、生産と消費が均衡しつつ伸びて参っておる現状でございますけれども、たとえば昭和二十九年あるいは昨年の秋からの状況でございまするように、数年に一度というような状況で、かなりの需給の不均衡が生じて参る懸念があるのであります。御存じのように生乳は、需給に合せまして貯蔵しておくことができません。生産されますとすぐに処分しなければならないものでありまして、従いまして、需給の不均衡がある程度以上になりますると、乳価の過度の低落といったような、あるいは乳牛飼養の放棄といったような、酪農経常を危うくする事態が引き起されるおそれがあるわけでございます。たまたま昨年の下半期におきまして、牛乳、乳製品の需給の不均衡がある程度見通されるちょうどその折に、昭和三十年の砂糖消費税法の改正に伴いまして、大カン練乳等の砂糖消費税の免税措置が、六月いっぱいをもちまして、なくなるという状況がございました。それを政令の改正をいたしまして、九月末までそのまま撤廃の延長を見たのでありますが、そのときちょうど、九月末のときと下半期におきまする需給の不均衡の問題とが見通されたような状況でございまして、こういう状況が今後の乳業に与えます影響を考慮いたしまして、政府といたしましても、牛乳、乳製品全体に対しまする需給調整対策につきまして、案を立てる必要が生じて参ったわけでございます。そこで、酪振法に基きまするところの酪農審議会に、この件を諮問いたしまして、酪農審議会におきましてはいろいろと御審議をいただいたわけでありますが、その結果として答申をいただいて、で、その答申の中で重要なものといたしまして、乳業者または生乳の生産者団体の必要といたしまする、資金の借り入れにつきましての債務保証をさせるために、酪農振興基金を設置する必要がある、こういう要請かあったわけでございます。政府の方といたしましても、その必要を認めまして、この答申を参考といたしまして、牛乳、乳製品の需給の不均衡から生じまする悪影響を緩和しながら、安定した酪農経営の維持をはかりますために、一方におきましては牛乳、乳製品の学校給食を実施いたしまして、滞貨の悪影響を緩和し、かつは学童の体位の向上と、さらには牛乳、乳製品の国民食といたしましての発展すべき礎石を置くような措置を講じたのであります。さらに当時主といたしまして乳製品、大力ン練乳の棚上げをいたさせまして、これに対しまして必要な保管管理費、その他の補給をいたしたわけであります。他方この酪農振興基金を設立いたしまして、乳業者に対しましては生乳取引に要しまする資金、あるいは大カン練乳の免税措置の撤廃に伴いますところの、設備資金融資保証を行いまして、これらの資金の融通を円滑にいたしたい。生乳生産者に対しましては、生乳の生産に必要な資金の融通を円滑にいたしますることによって、乳価の暴落なり、あるいはまた乳牛飼養の放棄なりの事態を回避いたしまして、生乳取引関係が安定いたしまして、その基盤の上に維持されるように企図いたしたのであります。このような趣旨あるいは経緯から立案されましたこの法案は、大よそ次のような構成及び内容を持っておるわけであります。  で、基金の第一に性格でございますが、これは第六条から第十三条までに規定されておりまするように、政府と民間とが共同出資いたしまして設立する特殊法人でございます。で政府は設立当初五億円を出資いたしまして、民間の出資額との合計額をもって資本金にいたしまして、されが基金の業務を運営いたしますところの財産的基礎になるわけでございます。で、その額は設立当初は最低六億円、これをその後民間におきまする資本の充実、あるいは生産の伸長に伴いまする資金需要の増加と見合せまして、民間出資を漸次増加して参り、三十八年の三月末までには合計十億といたしたい。民間出資五億、政府出資五億、合せて十億といたしたい。またそうするように基金自体も責任を持ちまして努力するし、監督に当っておりまする政府もそういう指導監督をする責任を持つと、こういう趣旨が付則第七条並びに第八条に書いてあるわけでございます。  第二に政府以外の出資者の問題でございまするが、これは第八条に列挙されておりまするように、大別いたしまして乳業者と出産者とに分れると存じます。乳業者につきましては、第一はみずから乳業を行なっておりまする法人もしくは個人、でこれは乳業を行なっておりまする農業協同組合、あるいはまた連合会も含まれております。あるいは規模の大小を問わずあらゆる乳業者、乳業メーカーと称せられておる者が、この中に包摂されておるわけでございます。第二は乳業者の組織いたしまする中小企業等協同組合でございまして、これは現在乳業関係のこういう組合はただ一つしかございませんが、この組合でも組合員の製品を共販しようとする具体的な動きもございますし、また組合名をもちまして出資するという態勢をとっておりまする関係から、団体加入を認めたわけでございます。第三の乳業着たる農業協同組合または連合会が、直接または間接の構成員となっておる農協の連合会も、これも同様の趣旨で加入を認めたのであります。他方生産者につきましては、この基金の目的が生乳取引の改善を目途といたしておりまする以上、それを確保する措置が必要になるわけでございます。従いまして単に乳業者のみに債務保証を行うにとどまらず、それが確実に生産者に支払われる必要がございます。従いましてたとえば乳業者の中の未出資の者とか、あるいは出資額不足の者とか、その乳業者に対しまして必要額の債務保証が行われない場合におきまして、それと取引をいたしておりまする生産者は困ることに相なりまするので、あるいはまた必要がありますれば、生産者みずからが信用力を持ちまして、相手方に対し取引上優位に立つ、ということも考えられるのでありまして、従いまして生産者も基金に出資して、債務保証を受けることとしておく必要が生じるわけでございます。  第三に基金の業務でございます。これは第二十九条各号に掲げてございますが、第二十九条各号に掲げておりますところの、資金の借り入れ等による債務保証を行うわけでございますが、この資金は乳業者につきましては、乳代支払いの資金等の経営資金が大部分でございまするが、これとともに経営を合理化いたしますところの設備資金、たとえば現在のところ考えておりますのは、大カン練乳等加糖乳製品の製造業者が、砂糖消費税の免税撤廃に伴いまして、その設備を市乳あるいは粉乳等の製造設備に転換する必要が生じておりますが、そのような資金、あるいはまたこれらの製造設備を新設いたしまするところの資金、これが対象になるわけでございます。団体加入の場合には、これらの資金をその組合員あるいは構成員に対しまして転貸するための資金ということになるわけでございます。一方生産者につきましては、生乳の共販などを行なっておりまする農協あるいは連合会の乳代の、立てかえ払いの資金が対象になるわけでございます。これは上述いたしましたように、基金の性格あるいは目的が、乳業者の経営の維持あるいは安定のための資金ばかりでなく、生産者の経営資金も見て、その経営の向上をはかる必要がある、そういうことを眼目としておりまする関係から出て参ったわけでありまして、生乳の販売代金を乳業者から受け取るまでの間におきまするその代金を限度といたしまして、生産者の必要な生産資金を確保させる、こういうことになるわけでございます。  第四に、基金の機関につきまして申し上げますると、執行機関として理事長及び理事、監査機関として監事、諮問機関として評議員会があるわけでございます。理事長及び理事二名は常勤になるわけでございますが、これは実際に基金の業務を担当する幹部になるわけでございまして、第二十三条におきまして、営利事業に従事することを禁止する旨の規定を設けてございます。こういうふうにいたしまして、公正な第三者的な立場にある者が選任されることを期待いたしております。このほかに非常勤の理事七名以内を予定いたしております。これは出資者でありますとか、その他学識経験のある方々から専任いたしまして、その実際上の経験、知識あるいは出資者としての立場というものを、業務の運営の上に生かしていきたいと考えておるわけでございます。また諮問機関として設置されまするところの評議員会は、出資者である乳業者あるいは出産者のほかに、広く牛乳あるいは乳製品の消費流通に関しまする学識経験者をもちまして構成いたしまして、その意見を基金の業務運営に適正に反映させる、こういうふうになっておるわけでございます。従いましてこれらの重要事項につきましては、理事長の諮問に応じて審議するというわけでございます。  第五に基金に対しまする監督罰則の点でございますが、一定のこういう政策目的の実現のために、政府が出資しております団体でありまして、会員とかあるいはその総会というような議決機関はございません。従いまして所管行政庁はこの基金の運営を責任をもって監督する必要があるわけでございますが、本基金は他の政府出資団体におけると同じように予算、決算及び事業計画、資金計閥につきまして農林大臣の認可あるいは承認を受けさせることといたしております。またこれらの財政的な問題につきましては、その所管大臣である大蔵大臣に協議をしていたしていきたい、かような規定を設けてございます。罰則も同様に運営の厳正を期しておるということでございますが、そのほか財務及び会計につきましては、第五章におきまして運用の基本準則を定め、付則におきまして、法人税その他国税あるいは地方税の免税措置を講じてある、こういうような次第になっております。  以上が政府が提案しました原案の内容でございまするが、この法案につきましては、衆議院の方におきまして、次の三点について修正がなされ、そのほか六項目に関しまして付帯決議が付せられております。  修正点の第一は、基金はその運用に当り価格の安定及び需給の調整を目途とする、そういう趣旨を明確にいたしまするために、第一条の「目的」にその文句をうたうべきであるということから、原案の生乳取引の改善としましたものにつけ加えまして、「生乳及び乳製品等の価格の安定並びに乳製品等の需給の調整」という文字が挿入されたことでございます。  第二は、「目的」をこのように修正いたしたのに伴いまして、第二十九条の「業務」につきましても、乳製品のたな上げ保管など需給調整上の効果を持ち得るような資金について、保証が行われる趣旨を明確にするという必要から、このイに掲げてある運転資金を二種に分けまして、ロとして、その趣旨を積極的に規定した点でございます。基金が債務保証業務を行うにつきましては、その成立の経緯からいたしましても、需給調整的な機能を果すべきことは当然でございまするし、その意味で、基金の活動は帯貨の異常時に最も盛んになりまして、またその際こそ基金の機能を十分に発揮することが期待されておるのでございます。法案作成に当りましては、この点につきまして十分留意いたし、第一条の「目的」にありまする「乳業者及び生乳の生産者の経営の維持及び安定に要する資金」あるいは第二十九条第一号、イの「乳業の経営に必要な資金」と申しておりまするものの中には、乳製品のたな上げに要する資金はもちろん含まれていると申しますよりも、むしろそのような需給調整資金の保証が主として行われる、というように考えていたわけでございますので、提案者たる政府といたしましても、そのような趣旨をはっきり法律の文書に織り込むことにつきましては、別段の異議はございません。  修正点の第三は、基金の業務として、債務保証の業務の遂行に支障のない範囲内で牛乳、乳製品の需要の増進に閲する業務を行うことができる旨の規定を、第二十九条に一項加えたことでございます。  衆議院の審議の過程におきましては、この法案に関係のございます乳業者や生産者や金融関係者が参考人として呼ばれまして、この法案についての意見の開陳を行なったのでございまするが、その際多数の意見は、基金がその運用益を消費の拡大、普及等需要増進に使用できるよう、法案を修正されたいということがございましたので、これが農林水産委員会の、衆議院におきます、採用するところとなりまして、前述のような修正が行われたわけでございます。  政府といたしましても、債務保証という、その本来の主たる業務の円滑な遂行が妨げられず、また、基金が需要増進業務を行うことにより、基金に対する民間出資が促進されることになりまするならば、法律の目的もよりよく達成されることになると考えまして、修正に賛同いたすものでございます。  以上、本法案の趣旨並びに経緯並びに衆議院におきまする修正の諸点、あるいはこれに対しまする政府の所見を申し上げました次第でございます。
  77. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) まず質疑に入ります。御質疑の向きは御質疑を願います。……  本日はこの程度にいたします。散会いたします。    午後四時六分散会