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参考人(井原昇君) 私は、第三者的立場で、今まで私
どもが
市場の内外を通してながめて参りました
中央市場の実態、真相ということから、お話を申し上げたいと思います。それによって、本
法改正案についての諸先生の御判断の資料に供したいと思います。
私は、
市場経済の実際面について申し上げるのでありますが、まず第一の
名称の問題については、別に異議ございません。
賛成でございます。
次に第二の卸売
業務にかかわる
取引方法の
制限に関する
規定の新設でございますが、この点の
政府提案理由説明によりますると、
生産者並びに販売参加者に対する
前渡金あるいは
奨励金が過度に
支出されている、そのことによって
卸売人の経営が非常に不健全になっている、その原因になっていると申されておりまするが、これは
奨励金の
内容そのものについて
検討が不足のために、玉石混淆、一視同仁に見ているために、そのような御
意見が出たのだろうと思うのであります。
奨励金と申しましても、青果と魚類とにおいては、若干その趣きを異にしておるのでありますが、
青果部門においては、
市場経済の根幹をなしているのは、
卸売人に対する数百、数千の仲買、
小売人の一折代払い保証
制度の確立であります。これによって
卸売人の
健全経営を阻害しているどころか、
卸売人の発展を大いに助長援護してきたものと見られるのであります。そうして、この支払い保証に対して、その代償として
奨励金が出されているということなんでありますが、要は、この
奨励金が
市場経済の面から、はたまた社会通念から妥当かどうかということであると思うのでありますが、私は、代払い保証
制度確立のもとにおける
奨励金は、まことに妥当であると断ぜざるを得ません。
また一面、
生産者方面に対する問題でありまするが、
前渡金、
奨励金——先ほどから午前中も各代表者が申されました
通り、
生産者に対する
前渡金は現在の卸売機構においては、なかなか一朝一夕にこれを取りやめるというようなことが困難なことは、御承知のことと存じます。しかしながら、その
奨励金というもの、
生産者に対する
奨励金の大部分が、有力な
生産者、有力な出荷団体のみに限定されている。弱小の個々の
生産者に対しては、これが支払われていないという不公平な面も一応あるのであります。それから、いわゆる生
産地におけるボス、要するに
生産者団体、出荷団体を踏み台とするボスが横行して、
中央市場の
取引の不明朗の原因をなしている。この事実は見のがし得ないところであります。これに対して、在来、
農林当局も何ら手を打っておらなかったということはまことに私
どもとしまして潰憾にながめているのでございます。
市場の
卸売人に対してのみ
規制措置を講じまして、悪徳
生産者ボスに対しては、何らの抑制もしてこなかったということであります。大体、
生産者団体と卸売
会社とは、受託
取引契約を結びましてその際、
奨励金の取りきめも行なっているのでありまするが、このようなボスは、その取りきめられた
一定の
奨励金以上に、随時
会社に対して傘下の団体の圧力をもって、圧力を利用して、そうしていろいろな名目で金銭を強要していることは事実であります。具体的な例をここで申し上げてもけっこうでありまするが、差しさわりがあるようでしたら、ちょっと遠慮いたします。とにかく、各
市場とも
卸売人が非常に集荷
競争に狂奔しているその弱点に
——盲点といいますか、それにつけ込んで、食い込んで、盛んにボスが暗躍する、まことに目にあまるものがあるのであります。私
どもも、職業柄幾たびかこの事件について議論を戦わしたのでありまするが、実際問題としては、いかんともなしがたく、
現状においてもますますその傾向が濃厚であるということをここに申し上げることは、まことに残念に思うのであります。たとえばここに
一つの具体例を申し上げますと、いろいろボスもございますが、その代表的な悪徳
生産者のボスといいますと、かの有名なミカンの生産県である愛媛県の何がし、これなどは、自分がその工場を経営しておる、清涼飲料水の工場を経営しておるのです。その工場から生産する飲料水、いわゆるジュースですね、これを
卸売人に強引に押しつける。ところが、青果の
卸売人は清涼飲料水屋ではありませんから販路を持ちません。そのために泣く泣く原価を割って処分しております。かつてその昔マホメットは、左手にコーランをかざし、右手に剣を擬して布教をした。どうですか。
中央市場にもまだこのようなマホメットがおります。そうして左手に
卸売人が垂ぜんおくあたわざるところの伊予のミヵンをひっさげて、かざして、こちらにはジュースですよ、縁がないのです、青果
会社には。ジュースを買え、買わなかったらミカンやらぬぞ。泣く泣くジュースを引き取って損をしている。しかしミカンをもらうから、それで若干カバーができる、こういう
状態です。まず
市場の青果
会社に行きましたら、いつでもジュースはございます。もっぱら接待用に使われております。まあ自家消費です。売って損をします。そのようなことが現在行われておるのでありますが、こういったことについて、
農林省も一考の価値があるのではないかと思います。ま
あとにかく幾ら
当局が
市場取引の
規制を声を大にして叫びましても、かような悪徳
生産者ボスに対して何ら手を打たないならば、
中央市場取引の公正明朗化ということは、とうてい期待し得ない
現状でございます。しかしながら、また一面、進歩的な有力
生産者団体もございまして、青森県のリンゴ協会のごときは、まことにりっぱな
考えを持っておるようであります。そのリンゴ協会の石岡代表は、このように言っております。
産地として
奨励金はむしろやめてもらいたいのだ、これあるがために
産地の紛争が絶えないと言うのです。
生産者としては、公正な競売が一番望ましいことであって、わずかばかりの
奨励金をもらっても、全くしょうがないんだ、公正なせりによる公正な仕切金をもらいたい、幾ら歩面しをもらっても、ちょっとぼんこつをやられたらそれでおしまいじゃないか、こういうことです。この言たるや、現在の
市場取引の一端がうかがえて、なかなか含蓄がある
言葉であろうと存じます。公正
取引の場であるべき
中央市場の現在の
取引の実際は、不公正、不明朗な面も多々あるのであります。この点、特に御留意を
お願いしたいと存じます。
卸売人の
生産者に対する仕切書の改ざん、これは、
大阪中火
市場においては最もはなはだしく行われておるのであります。これは、卸売
会社自体、
卸売人自体、責任者が声を大にして叫んでおるのであります。かつて本
委員会の諸先生方と
大阪中央市場の
業者の代長者とのこの問題についての
意見の交換会がありましたが、その席上においても、われわれはどうしても仕切金を改ざんしなきゃやっていけないのだ。これはどうもやりたくない、悪いことはしたくないけれ
ども、現在の卸売機構においては、自衛上やむを得ないんだ。これはもう公然の秘密である。公然の秘密とはどうかと思いますが、白昼公然とこれを行なっておる。まことに清ない事態であるということを申しております。ですから、この懇談会に御出席なされた先生方は、この間の事情をよく御存じと存じます。それから、こういった点に対して、
開設者あるいは
農林当局が、厳然として
監督のいすにすわっておるのでありまするが、いまだかつてこの問題について
当局の指導
監督ということの効果について、あるいはやろうとしたかもしれませんが、気持はあるのでしょうが、何ら依然として効果が現われてない。まことに遺憾であります。鈴木課長、御存じですか。これを要するに、
東京青果
——まただいぶバラエティになりますが、脱線しますが
——これを要するに、
東京青果都あるいは
大阪魚類
仲買い、
小売は、
市場経済の面について、非常に貢献をしておったということなのであります。この
奨励金を最も有効適切に使っておるのが、
東京の青果都仲買
小売商組合、
大阪の魚類
仲買いであります。残念ながら、まだ
東京魚類部仲買組合は、
奨励金はもらっておるけれ
ども、何ら支払い保証もしておりませんし、代払いもしておりません。こういったものと、りっぱに保紙代払い
制度をやって、その代償として受け取っておるその
奨励金を、
当局は、まことに残念ながら、玉石混淆してお
考えになっておるように見られることは、残念であります。いずれにしましても、この第二項の
奨励金の問題は、買い方に関する限り、代払い支払い保証
制度のもとにおける
奨励金は、
市場経済上絶対に必要であり、また、妥当であるということを申し上げたいと思います。
それから第三の
卸売人の
純資産額に関する
規定についてでございますが、
当局の
提案理由説明によりますると、現在の
卸売人の財務
状況は、過度の
競争その他により、きわめて憂慮すべき
状態にある云々と申されておりますが、まことにしかり。しかしながら、その憂慮すべき
状態が生ずるに立ち至ったその主たる原因である過度の
競争という根源について、まず改善策を
考えられなければならないのにもかかわらず、これをさておいて、過度の
競争というこの原因を、よってもって生じたその憂慮すべき結果についての処理
方策が、この
純資産の
改正条項であると解されるのでありまするが、私は、
過当競争によって生じた結果の処理策よりも、その
過当競争という根源を断つのが先決ではないかと
考えておるのであります。この点については、ただいま川野教授も申されておりますが、
卸売人の経営不安の最大の原因を放任して
卸売人が左前になったら、首を締めちゃう、これが今度の
改正案のねらいのごとく見られますが、いかがですか。終戦後、怪しげな
卸売人を無
制限に
当局は許可したのであります。その始末に困って、そうして今度は各
卸売人に対して、いわゆる責任数量というものを押しつけた。そうしてその責任数量に達しない者は、片っ端から首を切ったのです。そうしてその資格を失った人たちは、不本意ながら泣く泣く
市場を追われたということであります。このような
卸売人の整理は、徳川時代の切り捨てごめんと何ら異なるところがございません。しこうして、辛うじて今日まで残った
卸売人の中にも、当時のその責任出荷による出血の痛手をかかえて、いまだに難渋な経営にあえいでいる
卸売人が数社あるということは、
農林省の発表の
通りでございます。この
卸売人を、
農林当局は、憂慮すべき経営不安な
状態にあると、本案提案に際して
説明されておりまするが、この
卸売人の財務不良は、何も今に始まったことではありません。これは初めからなんです。この
内容は、初めから
農林省も
開設者もよく知っておるものですから、何とかしなきゃならぬということから、在来しばしば次官通達あるいは局長通達を発しまして、
卸売人の整備統合ということを、実は年中行事にやってきたのであります。ただし、結果は何もあげておりません。まことにお気の毒な次第であるけれ
ども、
開設者にも
農林当局にも、この通達は出すが、通達の趣旨を実現せしめるだけの行政能力がなかったということなのでありまして、そのままじんぜん無為にして日を送った結果が、いかがですか、昨年の夏、東〇という、ああいう大事件が勃発したのであります。そうして
農林当局も
東京都も、こうごうたる世論の指弾を受けたのであります。よく業界に精通しておりますもちろん
監督官庁である
農林省も
開設者も、これはたまらぬ、今これだけの不良の
会社があるのだ、だからこれは東〇に続くものがすぐ現われるぞ、これは大へんだという、自分の立場擁護ですね、私
どもが
考えますと。そうして、さような不安におびえた
農林当局……