○堀本宜実君 第二班の大阪の市場の調査について御
報告を申し上げます。
第二班は、去る三月二十一日より二十三日までの三日間にわたって、大阪市における中央卸売市場の実情につき調査をいして参りました。一行は、
河合委員、
上林委員及び特別に参加されました
清澤委員と私の四名であります。
以下、調査の
内容について申し上げます。われわれ一行は、二十二日午前四時より大阪市の中央卸売市場に参り、
関係者より市場の概況について説明を聴取した後、直ちにその施設並びに運営の実情についてつぶきに視察し、また、
関係業界の代表と懇談をいたしたのであります。
この中央卸売市場は、市内福島区安治川北岸にある本場と、住吉区にある分場とからなっておりまして、本場は昭和六年十一月より、分場は十八年六月より業務を開始したものでありますが、そのおもな施設といたしましては、敷地面積五万六千余坪、
建物の面積が約一万五千坪で、そのうち卸売場が五千六百坪、仲買売場が六千五百坪、冷蔵庫面積は二千五百坪で、その収容能力は約七千八百トンであります。また、取扱品目は、青果物及び水産物がおもなもので、その他はつけもの、鶏の卵等で、昭和三十一年における取扱い高の総額は三百十九億余円で、そのうち青果物は八千六百万貫で約百十億円、水産物は五千八百万貫で約二百億円であります。これら集荷物のおもな産地は、青果物にあっては、和歌山、大阪、青森、静岡等であり、水産物にあっては、長崎、山口、福岡、北海道、兵庫等であります。
また、この市場の運営について見ますると、
関係業者数は、卸売人は十五社で、そのうち青果物
関係は五社、水産物
関係が三社、その他が七社、仲買人は千百二十四人で、そのうち青果物
関係が四百五十四人、水産物
関係が六百四十一人であります。その他に売買参加者が七十八人おります。卸売場については、青果物にあっては一年ごと、水産物にあっては三年ごとに更新が行われることになっており、その期間中の各社の取扱い量の
実績によって売場面積がきめられることになっております。また、即売人と仲買人との取引は、せり売りが行われることになっておりますが、実情は、必ずしも公正妥当なせり売りとは言いがたい
方法が行われております。なお市当局は、中央市場の運営の完全を期するため、本場及び分場の整備を急いでおりますが、整備計画は、本場に八億八千万円、東部分場の新設に九億一千万円、南部分場に二億三千万円を予定して、昭和三十五年度中に完成させるべく、着々その準備を進めております。
次に、市場
関係者との懇談会の模様について申し上げますと、この
会議に出席された方々は、大阪府、市場開設者、卸売人、仲買人、小売人、生産出荷者
団体等の各界代表約四十名でありました。この懇談会における各界代表の要望のおもなものを申し上げますと大阪市としての要望の第一点は、類似市場の規制についてでありますが、さきの改正で、類似市場は届出制となったが、今日まで果してどの
程度の規制の実が上ったか疑問である。第二点は、開設者に対する権限の付与についてでありますが、市場については、実情を最もよく知っている開設者に権限を与えるべきで、農林大臣は開設者を監督するという建前に改めていただきたい。第三点は、補助金、起債等財政的援助についてでありまするが、
農林省の
予算では、市場対策費はわずかに十四万円で、
政府の市場に対する関心がいかに薄弱であるかがわかる。もっと補助金等の財政的援助を積極的に行うべきであるというのであります。卸売人の要望する点につきましては、今回の
法律改正については異存はないが、この改正は、明らかに丸東問題に端を発したものであって、政治の貧困を裏書きするものである。このような改正で、全面的に流通面が改善されるかどうか疑わしいので、将来とも中火卸売市場のあり方について、根本的な検討を加えるべきであるというのであります。仲買人の要望の第一点は、奨励金の規制は、市場
経済に関する当局の認識不足を物語るものである。仲買人の卸売人に対する支払協定では、買受日を含めて四日目となっているのに反し、買出人に対するそれがないために、売
掛金の回収率は平均二十日を要し、その間は借入金によっているのであって、この奨励金は、代金支払いの保証という意味を持っており、この規制は、かえって市場取引の円滑を失わしめるものである。第二点は、類似市場に対する規制や取締りが一向に講じられないのは遺憾である。第三点は、全面改正の時期に来ているので、早急に検討してほしいというのであります。小売人の要望は、類似市場の分場化について考えてほしいというのであります。生産出荷者
団体の要望の第一点は、奨励金については、実際の生産者に行かす、
農協などの一部特定人を肥やしているだけである。従って、この際奨励金の規制は
賛成である。第二は、販売面の中間
経費すなわち手数料の引き下げを考慮していただきたい。第三は、中央市場の設備の拡充と類似市場の分場化の促進に、類似市場の規制の強化を行うべきであるというのであります。以上が各界代表の要望でありました。
かくして中央卸売市場における調査を終り、午後浪速区にあります大阪木津卸売市場を視察いたしました。この市場は類似市場でございまして、昭和二十五年十二月民間の
会社によって開設されたもので、敷地面積六千二百坪、建築面積四千五百坪で、そのうち荷受売場は五百五十坪、卸売場三千坪、冷蔵庫の収容力は三千トンであります。取扱い品目は青果物及び水産物で、その取扱い額は年間七十数億円で、そのうち八〇%が青果物であります。また、
関係業者数は、荷受機関五、卸売人四百六十一名であります。ここに集荷される品物は、主として市場周辺の近郷から運ばれるもので、一部には遠方より来るものもあるようであります。
時間の都合で、ここの視察は簡単に済ませまして、西成区にある大阪市食肉卸売市場へ参ったのであります。この食肉卸売市場は、大阪市が、
政府の食肉
関係流通
機構の改善策に沿い、食肉の公正取引を実施するために、かつて市の食肉卸売商
組合が所有をしていた屠畜場を買収し、
政府の余剰農産物見返資金から九千六百万円の融資を受けて、新たに食肉卸売場及び冷蔵庫等を建てて、本年一月から、中央卸売市場法に基く取引業務を開始したものであります。ここの取扱い品目は、牛、馬、豚、緬羊及びヤギでありまして、卸売場は三百四十六坪、一回の取引可能頭数は、牛馬二百三頭、豚四百五頭であります。冷蔵庫は空冷式で、地下室となっておりまして、その面積は三百四十坪、収容力は、牛馬六百五十八頭、豚六百十四頭で、屠畜場、卸売場及び冷蔵庫間の枝肉の搬送は、すべてモノレールを使用するという、最新の設備を持っております。屠畜場の屠殺能力は、一日五時間作業で、牛三百頭、馬五十頭、豚五百頭であります。
以上のような設備を有しておるのでありますが、現在は、発足後日も浅いし、また、枝肉市場に対して
関係者が批判的である等の理由によりまして、一日の屠殺量は、牛百頭、馬五頭、豚百五十頭
程度で、このうち枝肉市場に上場されるものは六〇%
程度であります。取引は、中央卸売市場法に基いて行われておりますが、現在までのところ、価格の点については、生産者及び消費者にとっては、いい結果が出ているようであります。これらの
関係業者の数は、荷受機関が二社、売買参加者が百三人であります。
次に、この市場における
関係業者、特に卸売人の強い要望を申し上げますると、枝肉市場の
制度は、食肉の流通過程の
合理化と食肉の公正取引の面から、まことにけっこうな
制度でありますので、これが実施につきましては、全面的協力を惜しまないが、古い
制度のもとに今日まで働いてきた多数の弱小な仲買人等は、現在失業に等しい状態に置かれているのであります。これらの仲買人は、新しい荷受機関の
職員として作業についておるのでありますが、上場される枝肉の頭数が少いので、生計を維持するだけの給与が得られないという深刻な問題となっているのであります。従って、当局においては、
農協等からの出何について積極的な指導を行う等、これが救済策を早急に樹立するのでなければ、せっかくのこのよい
制度の存立が危ぶまれるというのであります。
以上をもって調査日程を完了いたし、二十三日帰京をいたしました。
以上、御
報告を申し上げます。