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1958-03-04 第28回国会 参議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月四日(火曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            柴田  栄君            藤野 繁雄君            鈴木  一君            上林 忠次君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            関根 久藏君            田中 啓一君            仲原 善一君            堀本 宜実君            東   隆君            江田 三郎君            大河原一次君            河合 義一君            北村  暢君            北 勝太郎君            北條 雋八君   政府委員    農林政務次官  本名  武君    農林政務次官  瀬戸山三男君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    農林省畜産局長 谷垣 專一君    農林省蚕糸局長 須賀 賢二君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林漁業金融公庫法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査) ○酪農振興基金法案内閣送付予備  審査) ○農業協同組合整備特別措置法の一部  を改正する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○農林水産政策に関する調査の件  (畜産に関する件)  (蚕糸に関する件)   —————————————
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案閣法第一〇二号、内閣送付予備審査)及び酪農振興基金法案閣法第一一六号、内閣送付予備審査)を、一括して議題にいたします。  まず、提案理由説明を求めます。
  3. 本名武

    政府委員本名武君) ただいまの提案になりました農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  農林漁業金融公庫は、その設立以来五年、その前身である農林漁業資金融通特別会計時代をも通算いたしますと、すでに七年間にわたり、農林漁業生産力維持増進するために必要な長期かつ低利資金融通して参りましたことは、各位のよく御承知の通りであります。この間、公庫の貸し付けて参りました資金の総額は、千六百七十五億円に上り、その融資残高は、本年一月末現在で千百七十七億円に達しておりますが、昭和三十三年度におきましては前年度に引き続き、重要農林漁業施策に即応して、土地改良事業、林道の整備、漁船の建造等農林漁業生産力維持増進及び農林漁業経営の安定に必要な資金融通を行いますとともに、さきに国会に提出されました「経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案」によりまして、公庫設立されます非補助小団地等土地改良事業助成基金運用により、国の直接または間接補助対象とならない農地の改良、または造成にかかる事業に対する貸付金利子を軽減し、もってこれらの土地改良事業促進をはからんとするものであります。  今回この農林漁業金融公庫法につきまして改正をいたす諸点について御説明申し上げます。  まず第一に、資本金の増額であります。昭和三十三年度における公庫貸付予定計画額は三百七十五億四でありまして、前年度に比較いたし、二十五億円の増加となっておりますが、この三百七十五億円の貸付を行うための原資は、年度内の資金交付所要額等を勘案いたし、産業投資特別会計からの出資金八十億円、借入金といたしまして、資金運用部から三十五億円と簡易生命保険及び郵便年金特別会計から八十億円及び回収金等百六十億円の合計三百五十五億円となっております。従いまして、政府産業投資特別会計から八十億円出資いたしますため、現行規定改正いたすものであります。  次に、米麦に次いで重要な農産物であるカンショ、バレイショ等につきましては、農産物価格安定法に基く農産物等買い入れ措置等によりまして、その価格の正常な水準からの低落を防止し、もって畑作農家経営の安定をはかっているものでありますが、なお、積極的にこれらの農産物等新規用途を開拓することによって、恒常的な需要拡大することが必要と考えられるのであります。  そこで、これらの農産物等を原材料とする製造または加工事業で、その新規用途を開拓することにより、消費拡大をもたらすと認められますものを育成して参りますことは、この目的を達成する上に効果的な手段であると考えられますので、今回新たに農林漁業金融公庫からこれらの製造または加工事業を営む者に対し、長期かつ低利設備資金融通する道を開くため、所要改正を行うものであります。  最後に、以上御説明申し上げて参りました公庫業務拡大や、昭和三十三年度において予定されております全国四カ所の支店の開設等に伴いまして、総裁を補佐するため、役員として副総裁一人を置くことといたし、関係規定改正を行うものであります。  以上が、この法律案提案理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。  次に、酪農振興基金法案についてその提案理由を御説明いたします。  わが国の酪農が最近数年間に著しく発達いたしましたことは、乳牛飼養頭数昭和二十五年から昨年までに約三倍に増加して約六十万頭となり、また、牛乳生産量におきましても、本年の見込みで、昭和二十五年の四倍近くに及ぶ七百三十数万石という量に上っていることからも明らかなところでございます。このような生産面発展とともに、いろいろ新しく施策を講ずべき問題も出て参るのでございます。  本年度下半期における牛乳乳製品需給の不均衡が見通される際に生じました加糖乳製品砂糖消費税免税措置撤廃に端を発しまして、早急に牛乳乳製品需給調整方策を樹立することとし、酪農審議会に諮問しましたところ、生乳取引合理化学校給食等による需要増進酪農振興基金設置等の対策を講ずべき旨の答申がありました。そこで政府といたしましては、(一)学童に対する牛乳給食、(二)酪農振興基金設置、(三)大かんれん乳緊急保管事業に対する助成その他の措置をとることとし、以来、酪農振興基金設置を除くこれらの施策を着々実施して参り、相当の効果を上げておるのでありますが、今回、酪農振興基金設立のため、この法案を提出いたしました次第でございます。  酪農の最近の目ざましい発展の陰には、需給の一時的不均衡という問題がひそんでおります。牛乳生産消費は、均衡しつつ急速に伸びており、大局的には、当分需給の不均衡を生ずるようなことはないと存じておりますが、しかしその発展の過程におきまして一時的に問題が生じました場合に牛乳特殊性として乳価の過度の低落、受乳の拒否、乳代の遅払いという事態を惹起しかねませんので、資金供給を円滑にいたすことにより、これらの事態の起きることを防ぐことが必要でございます。この酪農振興基金設立して乳業者又は生産者に対して所要資金融通円滑化をはかり、もって生乳取引関係の改善に役立てようとするのが、この法案のねらいでございます。  以上が、この法案提案経過及び趣旨でございますが、以下、簡単にその内容を御説明申し上げます。  第一に、酪農振興基金は、政府及び民間共同出資により設立する法人であります。政府は、設立当初に五億円出資いたし、民間は、当初に一億円以上、その後資本の充実、生産の伸張に見合いまして、昭和三十八年三月末日までに五億円に達するよう出資いたすこととなっております。  第二に、政府以外の出資者つまり、一、乳業者乳業を行う農業協同組合及び連合会を含む)。二、乳業者組織する中小企業等協同組合。三、乳業者である農業協同組合または連合会を直接、間接構成員としている農業協同組合連合会。四、生乳生産者を直接、間接構成員としている農業協同組合及び連合会。は、金融機関からの、次に申し述べます一定借入等に付し、基金から債務保証して貰うこととなります。  第三に、基金業務であります。乳業者につきましては、生乳購入資金その他の運転資金あるいは乳業経営合理化のための設備改良資金等借り入れ等により金融機関に対して負担する債務保証を行い、乳業者団体につきましては、構成員にこれらの所要資金を貸し付けるために必要な資金借り入れによる金融機関に対する債務保証を行い、生産者団体につきましては、牛乳販売代金が入るまでの生産者に対するつなぎ融資に要する資金について債務保証を行うことにしております。  第四に、基金機関でございますが、基金業務運営が公正かつ円滑に行われるよう、役員である理事長理事及び監事は、農林大臣適任者を任命することといたしております。なお、理事長の諮問に応じて、業務運営上重要事項審議する評議員会を設け、出資者及び学識経験者のうちから、農林大臣評議員を任命することとなっております。  第五は、基金に対する監督及び罰則でございます。政府出資をいたしておる関係上、収支予算事業計画及び資金計画を作成させ、農林大臣認可を受けさせることにいたしてあります。決算につきましても農林大臣決算書類を提出してその承認を受けることとなっております。また基金は、金融関係のある機関であるため、重要事項につき、認可承認をする際には、農林大臣大蔵大臣と協議いたすこととしております。なお、この基金業務の公正な運営を確保するため、所要罰則規定を設けました。  第六は、このような基金に対しましては、法人税その他の国税及び地方税を非課税とすることにいたしました。  以上が、この酪農振興基金法案提案理由でございます。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  4. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) これら両法案審査は、日を改めて行うことにいたします。   —————————————
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案閣法第六四号、内閣提出)を議題にいたします。  この法律案は、去る二月二十八日、衆議院本会議において全会一致をもって可決され、即日当院送付委員会に付託されました。この法律案については、去る二月二十七日の委員会において提案理由説明を聞いておりますが、本日は、まずこの法律案内容、その他参考事項について、農林当局から補足説明を求めます。
  6. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま議題になりました農業協同組合整備特別措置法でありますが、これはその法律の第二条におきまして、不良農業協同組合整備をいたすため、昭和三十三年三月三十一日までに都道府県知事の指定する日現在により、貸借対照表を作成し、それに基いて整備計画を立てる、こういうことになっておるのであります。そのために、この法律制定当時に、昭和三十年三月現在で調査いたしまして、その当時一万二千九百八十三の総合農業協同組合のうち、約三千三百の不良組合がありました。その中で、約一割はもう解散を前提にいたしております。約二割は自力更生ができる。残りの七割につきまして、この法律の定めるところによりまして、第三条によりまして、五カ年後の事業年度の終了する日までに、固定した債務の全部の整理、欠損金の全部の補てん、こういうことを内容として整備計画を立てまして、それに対しまして、政府が第十条によりまして一定補助を与える、すなわち補助整備計画に基きまして債務の整理なり、欠損金補てんをするに際して、信用農業協同組合連合会が金を貸しておる場合、その貸し金のすなわち組合から言えば、借入金利子を減免することが一つ。  それからもう一つは、整備組合に対しまして、府県から駐在指導員を派遣いたしまして、その都道府県農業協同組合中央会から駐在指導員を派遣することに対しまして、都道府県補助をする、それに対して国が県の補助にまた補助するわけであります。こういうことです。  それからさらにもう一つは、合併奨励をする。合併奨励をした場合に、一定補助金を出す、こういう内容になっておるのであります。法律制定の当時には、三十一、三十二年で千三十二組合がこの法律適用によって整備をしようという計画ができたのであります。その実績の状況は、昨年におきまして農業協同組合役員改選期がありました。ほとんどの全部の組合役員改選が行われた。それから一方市町村合併に伴って、組合合併等についてもいろいろ問題があります。従って、三十一年、三十二年度では、全部の千二十二当初予定したのが、約五十ばかり残ることになります。これは、先ほど申し上げましたように、町村合併とか、あるいはいろいろ役員改選というような関係で、おくれるような気配がありましたので、私の方では、さらに昨年の十月に、本法の適用によって正しく計画通りいくかどうか、あるいはさらにもっと整備計画を立てる組合があるかどうかということを府県に照会いたしました。約二百二十六の組合がこの法律によって整備促進していきたい、こういう申し出がありました。そこで、三十三年三月三十一日までに間に合わないだろうという五十二組合と、三十三年度にやりたいという二百二十六組合、こういうものを合せまして、この法律の第二条による指定期日を一年間延長いたしまして、再建整備促進をはかりたい、こういうふうに考えておるのであります。そうしますと、約千二百五十余りの組合になります。なお、何とかしなければいかぬ組合というものが残ります。しかしこれは、こういう方法では不十分でありまして、さらに合併強化するとか、あるいは固定化債権が非常に大きいので、抜本的に一ぺん解散して建て直すということまで考えなければいけない、こういうふうな組合もあります。これらはさらに検討を加えまして、別途の方策を講ずべき必要があるのじゃないか、ことに協同組合強化促進三カ年計画が、ちょうどことしは二年目でありますから、それともにらみ合せまして将来の方策を立てていかなけらばならない、こういうふうに考えております。合併状況は当初計画五百四十七を予定したのでありますが、三十一年に四十七、三十二年に百三十、予定に比べまして非常に進捗度が悪いのであります。これは、先ほど申し上げましたように、町村合併とか、あるいは組合役員改選、そういうものにからみましてうまくいかなかった。しかし、現在の状況から申し上げますと、交通機関なり通信機関なり道路網整備等が発達している状況からいいますと、現在の規模では経済単位に達しないというものが非常に多いのでありますから、そういうものは、地勢道路通信機関、そういうものの状況を見て、さらに一段と合併を進めていきたい、こういうふうに考えております。  それから、この整備対象組合負債状況を見てみますと、大体一組合当り平均五百六十万円見当になっております。で、この整備計画対象には百五十万円以上の欠損金があるものを対象にしておるのであります。多い組合では、鹿児島県のある組合が最高でありまして、四千万円というような組合も出ております。三十三年度の予定になるところにも、相当高額の欠損のある組合も出ております。大体多いところは五百万円から八百万円の欠損がある組合が多いようであります。このために、政府の出しました補助金は三十一年度で四千三百万円、三十二年度で一億六千万円、三十三年度の予算は一億四千五百万円、こういうふうに予定いたしております。  以上、整備特別措置法の従来の経過と今後の予定を申し上げたのであります。
  7. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまからこの法律案審査を行います。  まず、質疑に入ります。御質疑の向きは、順次御質疑を願います。
  8. 江田三郎

    江田三郎君 整備促進というものがよくわからぬのです。何を一体整備するのか。局長説明を聞いておると、ただ負債の話やそれから統合というようなことばかりが言われておるのだが、農業協同組合というものは、統合したり、負債ができなくなるようにしさえすれば、それで目的を達しているのかどうかということを、私よくわからぬからお聞きするわけです。なるほど統合はいいと思うんです。しかし、統合をして大きくなった農業協同組合というものは、どういう事業をやっていくのか。まあ普通に見ておるというと、統合して大きくはなりますけれども、結局やっている事業というものは、信用面なりあるいは流通面の仕事が強力になるというだけで、だんだんと大きくなるにつれて、零細農民というものは置き忘れられていっているのじゃないか、そういう点について、農林省指導方針はどうなっておるのか。あるいは、黒字を出しさえすりゃいいということなら、たとえば農協の預貯金にしたところで、何も系統なんかを利用しなくたって、高いところへ預けたらいいわけです。現に、そういうような系統金融吸収率というものは、だいぶ落ちているように思うんですが、僕は、この整備統合ということが、あなた方の考えておられるのは、ただもう赤字を解消するということ、それから、何でもいいから組合を大きくする、それだけが目的でやっておられるのか、どこに根本的な目標があるのか、農業協同組合指導方針というものが、いささかわけがわからないようになっているのじゃないかと思うので、その点を一つ局長の考え方を聞きたい。
  9. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 協同組合は、もう先生の方がよく御存じで、「農民協同組織の発達を促進し、以て農業生産力増進農民経済的社会的地位向上を図り、」、こういうのが法律目的であります。しかし、その十条で、「組合員事業又は生活に必要な資金貸付」「定期積金の受入」「物資供給」、「共同利用施設」、「土地造成改良若しくは管理」、「物資運搬加工、貯蔵又は販売」、「農村工業」、「共済」、「医療」等々、経済活動をすることが中心になっておるわけであります。その前提といたしましては、結局、組合員利益向上ということが主になっておるのでありますが、その利益向上をするためには、組合活動それ自身が円滑にいくということが必要であります。従って、組合員経営単位がそろっておれば、これは組合経営が非常に楽じゃないかと思います。組合員経営単位が非常に零細なものが多いということになれば、組合経営がむずかしくなります。そこで、一つは、現在の農業協同組合それ自身がそういった零細農を包含するのにどういうふうにしたらいいか、現在零細農を包含するような工夫ができておるかどうかということが問題になっております。これは非常にむずかしい問題でありまして、私の方で提案しておりますのは、部落組合組織によって団体加入するという方法一つ提示されております。しかし、これもなかなか理屈はいいのでありますが、実効はなかなか上っておりません。そこで、もう一つ方法は、結局、組合員数が少なければ、同じ事務所の費用にしても、職員費用にしても、配給肥料一かます当りなり、あるいは販売する米一俵当りの手数料の額も割高になるから、それを割安くするために、経済単位を考えまして、運搬なり地勢関係を考えましてできるだけ経済単位拡大したらいいじゃないか、こういう一つの要求があります。それも、しかし、今までのところは実現しておりません。さらに、協同組合組合員農業経営指導をやって、農家の力をつける、そうすればいい施設を作ることができる、あるいはいい人を雇うことができる、こういうふうな関係で、回り回って全体の水準が上っていく、従って、協同組合農業生産あるいは農業経営指導にもっと積極的に乗り出さなければならない、こういう意見が出ております。さらに、それを相当やっております。しかし、これも卵と鶏のような関係で、協同組合の基礎確実なところはどんどんそういう事業も進歩しております。しかし、協同組合の基礎が確立していないところは、なかなかいい技術者を雇うことはできないということで、これもうまくいっておりません。そこで、ただいま申し上げたような各部面について効果的な運営をし、効果的な施設をするということが前提になるのでありますが、この法律で、今出しております法律でねらっておりますのは、ほんの一部面、協同組合のほんの一部面を直していこうということだけをねらっておるのでありまして、それはこの法律に書いてありますように、欠損金をまずなくすることがいい、欠掛金をなくするには、組合経営をよくすることと、組合が外からの負担、すなわちここで考えられておりますのは、欠損すなわちそれは借金の形で残っておりますから、借金負担をなくしていこう。それからもう一点は、ここにありますように、組合管理、先ほど申し上げましたように組合に対するもの、組合事業経営管理の仕方、そういうものをよくするために、中央会から経営指導員を出して、それに対して補助する。こういうような、一面においては、組合欠損による——欠損ということは借金、その利子負担を軽減すると同時に、協同組合法に基いてやらなければならない事業一つ一つ片づけていく指導をやる駐在員を派遣するための補助、この両面でねらっておるのであります。しかし、この法律だけで協同組合がよくなるということではないのでありまして、この前の再建整備法とか、いろいろな法律もありますし、それからまた事業につきましては、農協がやる共同施設に対する公庫低利資金貸付なり、あるいは農家それ自体のためには、農業生産全般農家地位を上げて、両々相待っていく、こういうのでありまして、あくまでこの法律協同組合のある一部面だけをよくしよう、ある一部面だけをねらった法律になっておるのであります。
  10. 江田三郎

    江田三郎君 ただ、整備促進なり、この特例措置法昭和二十五、六年のあの農協の行き詰まりの跡始末をすることに必要だということは、これは私どもも否定しないのであります。しかし、もうそろそろもう少し根本的なことをお考えになったらどうか、まあ局長の今のお話を聞いても、こういう問題もある、こういう問題もあるけれども、どれもうまくいっていない、うまくいかそうというだけの熱意がないのじゃないか、あるいはうかつにこう飛び込んだら、八幡のやぶ知らずみたいになってしまうので入れぬということかもしれないけれども、われわれ最近のあなた方の指導方針を見ていると、農業協同組合というものがどういう役割を果さなければならぬかというその根本が忘れられて、ただ今あるところの負債をどうするか、とにかく赤字にならなければいいということばかりに持っていかれているんじゃないかという気がしてかなわぬわけです。だから、私さっきもちょっと言いましたように、ただ赤字をなくしさえすればいいというなら、たとえば系統資金だって、高い銀行なんぞに預けさしたらどうですか。その方がきっぱりするじゃありませんか。しかし、そうではいかぬのだというなら、その系統資金なんぞの使い方をもっと考えたらどうですか。そういう点についてどうも、まあ渡部さん御苦労されていることは知っているけれども、しかし渡部さんだけでなしに、私は農協関係者全員が、この辺で一つ根本的な反省をしてもらわぬと、たとえば米の統制だってこれはいつまで続くかわかりませんよ。米の統制一つはずれたときのことを考えたときに、一体今の農協はどうなるのです。整備促進も何もあったものじゃないと思うんですよ。ばらばらになるんじゃないですか、あれは。そういう点がほんとうに農民の気持にぴったり、特に零細農あたりに対しての共感を呼ぶものなくして、ただ赤字をなくすればいいとか、役員職員の給与さえ払えればいいとか、そういう方向にだんだんこり固まってきていやしないか。こり固まるというよりも、そこへ萎縮してきているのじゃないか。そういうことを僕は心配するのであって、少し何かもっと——あれもやりたいがむずかしい、これもやりたいがむずかしいじゃなしに、何かもっと根本的な大きな計画はないのですか。
  11. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お話は全くごもっともなんであります。ただ、われわれが今非常に困難を感じておりますのは、協同組合法の精神からいって、何といいますか、上からの押し付けというものが極端に排除されておりまして、自主的な組織であり、自発的な団体である、こういうことが非常に強く出ているわけであります。従って、これは占領軍のときにできた法律でありまして、アメリカの説明するところによりますと、政府指導するのでなくして、情報を提供するのだ、あくまでも組織者みずからがその事業を刷新していくのだ、こういう説明を下しているのであります。これは農務省の協同組合の担当官にさんざんやられているわけなんであります。しからば現在そういうふうな状況になっているか。そのままアメリカの状況をこの法律に移されて、日本の実情に合うかどうか、こういう問題があるわけです。これは昔からの伝統がありまして、そう簡単に百八十度転換できないのでありますが、御承知のように農地改革の結果、農家がバランスがとれてきた。しかし組合経営は、役員組合員でなければならない。職員に十分な俸給を払えないということになりますと、結局これは、私のところへ来て熱心な組合長さんのおっしゃることは、協同組合を本気にやつていちゃ家の田畑が荒れてしまう。両方は成り立たない。あとに留守番のむすこがしつかりしているとか、あるいはおやじがしつかりしておって見守っていてくれればいいけれども、そうでなければ、組合の仕事もやりたい、家の仕事も忘れてはならないということになれば、持たない、こういう苦衷を訴えているのであります。私は、このことは非常にもっともじゃないかと思うのです。現在の農業経営状況からいえば、そういう余裕のある農家だけが組合理事者になれるというわけにはいかないと思います。従って、そういうところに一つの問題があると思いますが、それにしましても、御指摘のように協同組合の形式が、先ほど私が説明いたしましたような自主的、民主的団体であるけれども、実際は、戦争中、戦後の物資統制のワクをはめられたまま改組されている。従って切符によっていろいろ仕事をしておったことになれて、それからさらにまた農産物、すなわち扱う商品、米麦等は今に至るまで統制が残っているし、肥料についても統制の継続は相当強く残っている。従って、それだけで成り立つ組合は比較的問題がないけれども、米麦のウエートが少い組合では、新しい工夫、新しい努力が必要であるけれども、それに対して十分の組織なり、あるいは十分の資力が伴わない、従って、この運営が非常にむずかしい、こういうふうに考えるのであります。これは結局、協同組合の内部の問題と、それからそれに対する国家の施策の問題、両々相待っていかなきゃ解決できない問題だと思います。その問題点は先生の御指摘の通り、われわれも痛感しておるのでありますが、今までの現状ではそういう実態を、組合関係の人、政府、両方がよく認識して解決していかなきゃならない問題じゃないかと思います。さらにもう一点は、中央会組合経営指導を看板に掲げて——昭和二十九年に法律改正して入れたわけでありますが現在の中央会組織からいいますと、中央会に各連合会なりあるいは単位組合が経費を負担しておる、従って、連合会なり組合の気に入らぬことはいかにいいことでも受け入れられない、すなわち中央会がいまだ弱体であるということも、御指摘のような組合の方向転換といいますか、刷新強化といいますか、非常におくれておるゆえんであります。こういうふうに感じておるのであります。
  12. 江田三郎

    江田三郎君 それから占領中にアメリカが作った法律だとか何だとかいうことは、これはもう理由にならぬわけです。しかし、あくまでも農民の自主的な組織だというても、現にそれが政府の方で決して自主的にまかしているのではなしに、いろいろの手を加えて、あるいはこういう法律だけでなしに、財務処理の基準令なるものを作られたり、あるいは団体再編成で中央会を作ったり、いろいろやつておられるわけです。だから、そんなに政府がやりたくても自主的組織だからそうはいかぬのだというのは、僕は逃げ口上だと思うのですよ。特に中央会にやらすのだというような構想を持ってやられても、今のお話のように中央会がまだ強くならぬのじゃなしに、逆に中央会というものはだんだん弱化するのじゃないですか。だんだんと中央会が宙に浮いてきておる。そこに私どもは、ただ協同組合というものがほんとうの農民協同組合でなくて、だんだんと役職員協同組合になりつつありゃしないか。たとえばこの物品の取扱い手数料を見ても、私どもは単協に比べて全購なり全販なんかの手数料の取り方が大き過ぎると思うのです。だから一番恵まれておるのは、全購連であったり、あるいは全販連であったり、中央の経済事業をやる団体で、下になるほどだめになってくる。中央会なんというものはだんだんなり手がなくなってくる。そういうことになってこういう法律を作って何だか格好は整ってできたけれども、実は精神の抜けた抜けがらだけが出てきておるのじゃないか。もしあなたがさっきおっしゃったように、もっと部落に根を置いたところの小組合というか、生産協同組合というようなものに力を入れるのだというなら入れるで、そういうことをもっとはっきり施策に出し、法案を作り、予算の裏づけもする、そういうことを一つ一つてきぱきやってもらいたいと思うのですよ。私はこういうことは今までのいきさつがあるから、整促にしたところで、跡始末をつけなければならぬから、この法律が不必要だとか、悪いと言うんじゃないんです。しかし、あなた方がやっておるのを見ると、こんな方向ばかりいって、ほかの根本問題について少しなおざりにすぎはしないか。もちろん一生懸命やっているんだと言うことでしょうけれども、その一生懸命の上にも、渡部流をもう少し有効適切に出してもらわぬと、少しこのごろ渡部さんもかすんできておるんじゃないか。まあそのくらいにしておきますよ。
  13. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をやめて。    〔速記中止〕
  14. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。
  15. 鈴木一

    ○鈴木一君 先ほど江田さんからいろいろ質問があったのですが、渡部局長はかすんでいるというような話もありましたが、非常に渡部さんには気の毒だと思っております、もちろん監督するといっても、微に入り、細に入り、そばについていて監督するわけじゃありませんし、とにかく協同組合で起った不始末は、監督官庁である渡部さんが最高責任者として呼び出されて、決算委員会なり、農林委員会なりでいろいろとっちめられておる。最近特にそういう事件が多いので、渡部さん自身には気の毒だと思っておりますけれども、しかし、何といっても農林省の立場が今のような現状では、特に協同組合に対して非常に大きな指導的の役割も果すわけでありますから、当分一つがまんして、元気を出してやってもらいたいと思うのですが、今の農業協同組合で一番欠けているものは何かというふうに私たち思うのですけれども、これは、大きく見て確かに農民の自主的団体ではあるけれども、それを非常に強い自覚に基いて、自分たちの組合を盛り立てていくのだ、そうして、これを通じて経済的、あるいは社会的の地位向上をはかるのだというような意識が、農民にも、またこの選ばれている役員にも、非常に欠けていやしないか、そういうところが根本的の問題であって、いろいろ政府赤字の処理とか、その他の法案を出し、あるいは財政的の補助までしてやってみても、そういう根本的のところに欠陥があるために、協同組合がいつまでたってもいい方向に進まないのじゃないか。ですからデンマークやスエーデンなんかの協同組合を見ても、組合員に対する宣伝啓蒙活動というものは、非常に強力に、もちろんこれは自主的ですけれども、行われておりますけれども、今の日本で行政指導するなら、そういう赤字の解消、そういうことはこのくらいにして、もっと根本的の問題に政府が本腰を入れなければ、とうてい農業協同組合というのは、所期の目的を達し得ないのじゃないかという感じがするわけです。そういう点、農林省ではどういうふうにお考えになっておりますか。
  16. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お話の通りであります。しかし、私申し上げたいのは、戦争前に比べまして、経済組織経済活動が、これは国民経済全体のみならず、農村においても非常に変ってきているのではないかと思います。端的に申し上げますと、戦争前の数字で申し上げますと、農林白書等でも言っておりますが、動力農具の数は何百万になっております。そのことは、やはり運搬施設にしましても、戦争前にはほとんどトラックやオート三輪車というものは農村には普及していなかったけれども、これも非常に普及しております。その前提になる道路も完備されて、各部落までトラックが入れるようになってきている。これは農家が、戦争前は封鎖経済でありまして、売る物は米麦、買う物は肥料、それが主であったのが、都会の生活水準と農村の生活水準が非常に幅が狭まってきている、従って、農家個々が協同組合理事者についていけばいい、こういう状態ではなくして、農家それ自身が、そのほかの産業部面と直結する機会が非常に多くなって、ことに全国津々浦々から東京、大阪の日本の中心地に出る機会が非常に多くなった。従いまして、従来の産業組合のような指導精神で、理事者の言う通りについてくればいい、こういうことでは、協同組合組織というものは持てないのであって、先ほど江田さんが御指摘になりましたように、協同組合それ自身は非営利の団体であるけれども、農家に一銭でも利益をもたらすための機関であることは間違いはないわけでありますから、そこに一つは徹底しなければならないのではないか。こういう前提に立ちまして、これは近視眼的に見れば、系統信連に持っていくよりも銀行に持っていった方が利子がいい。しかし、その部面だけで見てはいけないのであって、それが系統組織強化によって、肥料全体の価格のレベルを下げる力になるのだということを、はっきり個々の農民に認識させる努力が必要ではないか、その努力をやる方便としまして、端的に言いまして、有線放送とか、新聞、ラジオの普及率から見まして、ラジオの聴取台数も千五百万台で、農村の方が都会より多いくらいでありますから、われわれ、あるいは関係者を啓蒙する担当者がそういう進歩した手段によってやる必要があるのではないか、こういうふうに考えるのであります。しかしそのためには、やはり一定の経費が要るわけでありまして、政府が出すか、組合員が集めて出すか、こういうことで、現在進歩した施設を利用するだけの経費を出す方法を考えなければならない。ところが政府の財政支出も、協同組合は経済団体であるから、なかなか出し得ない。それから農家もなかなかそういった共通に利用する費用負担してくれない。従って、ほかの経済社会では非常に進歩した施設を利用されているけれども、協同組合は取り残されている。一番残されているのは率直に言って役所ではないかと、いつも言うのでありますが、農家のちょっと気のきいた家には、オートバイもオート三輪車もあるが、統計調査部なり、あるいは改良普及員はいまだに自転車で回っている。こういう時代錯誤的のことになっているのが、偽わらざる現状ではないかと思います。それをどうしてもならしていって、それぞれの持ち場で十分の活動ができるようにしていかなければならない、こういうふうに考えるのであります。また、たとえば端的に申しまして、協同組合の中央機関のやり方、そういうものについては、上野能率研究所、カトウセイジの経営研究所、そういう所のように、近代化された非常に単位の高い数を扱う機関はどうすればいいか、これは一流銀行なり、一流事業会社が一生懸命でそういうふうに経営合理化をはかっているのに、農業団体だけほうっておけないということで、そういうもののアドヴァイスも受けろということを口をすっぱくして言って、最近そういうこともとり入れるようなっておるようでありますが、全体が、農業協同組合の基本理念というものを十全に理解しなければ、戦争前に比べまして協同組合組織活動というものが非常にむずかしいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  17. 鈴木一

    ○鈴木一君 新しい時代になったということは、私もそれはよくわかります。しかし、新しい時代になっても、協同組合目的とするところは、私は変っていないと思うのです。ですから、新しい時代に即応したようにはっきりと理念を掲げて、それに向うためのいろんな具体的な、科学的な方途を農民に示していく、そういう大きな宣伝啓蒙活動というものが、もちろんこれは自主的にもやらなければならないし、同時にまた、政府もやらなければならないと思うのですが、一体になってやらなければならぬのですが、そういうものが非常に私は欠けておるのじゃないかということなんですよ、私が指摘したいのは。今どき農村へ入ってみても、組合へ行っても、組合長からこういうふうにしたいのだというような情熱に燃えた話を聞いたこともないし、各部落から一人ぐらい協同組合役員は出ておりますけれども、そういう人たちが、自分たちの地域社会たる部落にいて、協同組合の理念を部落の連中に宣伝啓蒙するとか、そういう努力をするということは、まず数えるほどしか私はないだろうと思う。ですから、いろんな点が考えられますけれども、そういう根本的な教育活動というものに欠陥のある限り、農業協同組合は伸びられないのじゃないかということを感ずるわけです。組織にしてみても、全国機関、それから県の機関ですね、それからまた村の機関と三段階ありますけれども、たとえば全購、全敗を見てみましても、販売事業、購買事業をとってみても、中央の段階では一千億近いものを扱っておるわけです、金額にしまして。今どき一千億も扱っておるような会社で、事業機関で、そこの本社の社長が県の支店長も兼ねて、さらにまた村の支所長も兼ねておるなんて、こういうような機関は、私はないだろうと思います。なるべく農民でやらなければならぬという占領政策のなごりかもしれませんけれども、そういうふうな役員の構成そのもの一つとってみても、非常に時代離れがしておるのですよ。これを改めろといっても、すぐには改まらないかもしれませんけれども、その人たちが非常に能力があって、この三段階の責任を持てればいいのですけれども、実際問題として不可能だろうと思う。そういうふうな点についても、もう少し改良して、たとえば役員についても単に農民であればいいのだということじゃなくて、総会なら総会において農業協同組合経営に才能があり、また、今までの実績が農民利益を守る人だということが、総会で認められるならば、その人は農民でなくても、何らの差別なしに、役員にもなれるのだというような形にも改めていかなければならないような気がするわけです。こういうふうな、先ほど渡部さんが、占領政策のなごりだと言われましたけれども、そういう点も、この際、勇敢に、今の時代に即応したように改めていくということも、一方においてやることが必要ではないか、また、宣伝啓蒙活動は必要ですけれども、それと並行しながら、今は占領下じゃないのですから、悪いところは改めていくという努力も、一方においてはしなければならないのじゃないかと思いますが……。
  18. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お説は一々ごもっともでありまして、協同組合の、何といいますか、理想的な、法律に盛られておる組織と、それを担う現実の人とのギャップといいますか、これは、私も全購連事件があったあと、全購連の会長、役員、常務役員というものが、どういうあり方であったらいいかということで、私の意見として述べたことはあるのでありますが、これだけの膨大な機構を担うのには、常勤役員でなければ切り盛りをすることはできないのは当然であります。そこで、常勤役員になった場合には、系統組織でありますから、系統役員であることを前提要件とすることはいいけれども、経済連の会長が即全購連の会長、あるいは全購連の専務ということは、不可能を強いることになるのではないか。従って、会長になる場合には、会長であることを一つの要件にすることはやむを得ないとしても、一たん全購連の会長になれば、それは経済連の平役員、平理事になって、そうして全購連の仕事に専念してもらいたい、こういうことを強く要望したのであります。しかし、いまだに実現しておりません。さればといって、これを法律改正に持ち込むところまでの、何といいますか、卒直に申しまして元気がなかったわけでありますが、しかし、それらがほんとうに解決しないと、幾ら協同組合の理想を掲げましても、現実に経済を動かすのは人でありますから、人の能力には限界があるのでありますから、そういうことを解決しないで、全購連や農業協同組合系統組織系統組織といいましても、だんだんくずれていく、こういうことはいなめない。それで、現在私どもはそういうものを根本的に解決しなければいかぬじゃないか、これが今関係者で議論するときに、純粋経済論者と、そうでない連中と、二つの派に分類されて批判を受けているわけでありますが、やはり経済団体でありますから、経済的な基礎を確立することを前面に押し出して、同時に組合員経営を引き上げていく、これはお互いに因となり果となっていくわけでありますから、どちらかだけをやったらいいということにはならないと思いますけれども、しかし組合指導者は何百人、何万人の会員を率いているわけでありますから、お話のようにする必要はあるのではないかと思います。さらに、三段制の問題につきましても、従来ならば当然系統組織で三段制ということは考えられるのでありますが、今のように交通、通信機関が発達しますれば、なるほど統制は三段で統制した方がいいと思いますけれども、一々の取引について三段を強要することは、かえってほかとの競争力を弱める原因になっていることは明らかでありますから、これらについても、先般の流通改善対策、私の方で出したやつにははっきりそれを再検討すべしと、こういう線を出しておるわけであります。だから、検討する余地は非常に多いのでありますが、しかし、これは従来の伝統と経過があるものですから、全体がその気になっていただかなければ、かりにすぐに規則を改め、法律を改めても、実効は得られないと思いますので、そういうことについて、さらに一段と努力をいたしたいと、こう考えます。
  19. 鈴木一

    ○鈴木一君 ほんとうに渡部さん、ここに来てしょっちゅう怒られて気の毒だと思っておりますから、せめてうっぷん晴らしでもいいと思いますけれども、役員のあり方なんかも不可能なんです。県の会長も勤め、村の会長もやり、全国機関の会長もやり、あるいは専務もやるなんということは不可能なんですから、そういうところは、農協に行政指導をやって、はっきりさしたらいいと思う。そうでなければ、また同じようなことが繰り返されると思います。やれるわけはないのですから。それから今の農協を見ていると、購買面は一応やりやすいという点もあるでしょうけれども、比較的順調に伸びてきたと思います。しかし、そこには問題があると思いますけれども。しかし販売面としたら、米は食糧管理法の上に乗っかって、ただ保管をやって眠り口銭をもらっておる、手数料をもらっておるというだけにすぎないので、ほかの木炭にしろ、農産物にしろ、言うべきものは一つもないのですから、そういうところに、私は日本の協同組合の大きな弱点があるだろうと思うのです。これはやはり組織も悪いと思いますけれども、町村もあの通り合併されておるのですから、経済単位なんというものは、もっともっと今の町村合併の地域よりも広くしたらいいと思います。しかし、だからといって、新しい町村を二つも一緒にした組合を作るということは不可能であると思いますから、せっかくやっと連帯性ができてきた新しい町村においては、急速に組合合併をして、そして倉庫のようなものでも、もより駅に一カ所大きなものを作って、そしてそこを中心にして組合経営をやっていく。米の統制撤廃はいつでもこい、農協は今の食糧管理法があればこそ、われわれとしては不満ながら、いつでも米価を引き上げているのだから、まあその米価が上ることによって問題があるかもしれません。しかし、少くとも農業協同組合としては、一万一千円なり二千円なりの米価を確保をできるだけのみずからの態勢を作って、消費者を擁護するためのもともとの食糧管理法ですが、今農協が自分たちにとって不利益であった食糧管理法を、何とかもう少し存続させてくれというようなことで、へっぴり腰で頼んでいるというぶさまは、私はないと思うのですよ。むしろみずから力をたくわえて、統制撤廃いつでもこい、そのかわり米価は農民の再生産を償うものをわれわれは当然要求し、確保できるのだというようなところまで、農協がいくべきだと思うのです。単なる赤字を出した町村の合併だけで、農林省指導が終るのじゃなくて、黒字を出して、いい経営のところでも、どんどんそのような方向に持っていくような、強力な行政指導というものがなければ、今の農業協同組合というのは、一部の人から言われておりますように、単なる肥料メーカーなり、そういうもののパイプにすぎない、農民をしぼるパイプにすぎないのだという悪口を私は言われるのだろうと思うのです。ですからもう少し、自主的な団体だからしようがないのだというようなことであきらめないで、この際、強力な指導を、もちろん皆さんたちがいきなりいってやるということは困難でしょうが、農協が、少くとも県段階なり全国段階の幹部の連中と話し合いをして一つの当面の指導方針というものをきめて、それを強力に役所がうしろにおって、それこそ自主的な形でこさせるような施策をやらなければ、私は、幾ら農業協同組合法律を作って援助しても、ちっともよくならないという感じがするのですよ。
  20. 東隆

    ○東隆君 この整特措置法に関係して特殊農協ですね。特殊農協対象になっておりますか、そのようなものはあるのですか。
  21. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 特殊農協は、一応この法律では取り上げておりませんです。
  22. 東隆

    ○東隆君 協同組合指導の方面から考えて、特殊農協をどういうふうにお考えになっているのですか。
  23. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ここ数年前までは、特殊農協というものを否定的に扱ってきているようでありますが、しかし総合農協の限界というものがあります。ことに酪農において発展して酪農事業を中心にして協同組合を動かさなければならぬ、そういう地域が出ております。あるいは果樹、養鶏、養豚いろいろそういうのがあるのであります。そこで、これを育成する方向に育て持っていかなければいけないのではないかというふうに、最近方針を切りかえているのであります。それについて、農林省中央会方面との意見は必ずしも一致しておりません。農林省としては、はっきり協同組合は、先ほど江田さんのときにもありましたように、総合農協としての経済単位はなるべく大きくして、特殊農協としては必ずしもそういうふうにいかない、しかし特殊農協には、現在信用事業等を行わしておりません、特殊農協の限界もありますから、特殊農協と総合農協との関連は、だから特殊農協を総合農協に団体加入さす、そういう方向において結びつけたらいいじゃないか、こういう線を出しているわけであります。特殊農協一つの問題になりますのはこれは何といいますか、たとえば養鶏なら養鶏で数郡を区域とする特殊農協と、あるいは開拓組合のように三十戸とか五十戸を単位にする農協、こういう特殊な例が出てくるわけであります。これでは、経済行為をやろうと思っても不可能でありますから、それは指導的な事業を行うことに重点を置く特殊農協にしていただいて、経済行為は団体加入するなり、あるいは二重加入ですね、総合農協に加入すると同時に特殊農協に加入する、こういう方向によって、それぞれの農家がこの組織を利用すべきである、こういう方針を出しているわけであります。
  24. 東隆

    ○東隆君 今、総合農協に特殊農協が団体加入をするのがいい、こういうお話があったのですが、私はそれには非常に賛成なのであります。ところが、特殊農協の形でもって郡区域、あるいは一つの種類をとりますと、かえって大きな区域ができるものがだいぶあるわけです。しかも、それが酪農のような場合でありますと、農協から離れて、そして特別な会社と原料乳の奪い合いをする、そういうようなものをこしらえる橋頭堡になってしまう。そういうような形が、私は相当全国的に出ていると思う。それで、酪農を中心にした場合における関係なんかは、先ほど言ったように、単協の区域はこれは大きくした方がいい。こういうお話ですから、その中に入り得るような区域にとどめる。こんなような考え方をとってしかるべきじゃないか。こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  25. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ことに果樹、養鶏、牛乳生産では、何といいますか、ある程度まで集約的になりますと、今おっしゃるようなことができますけれども、出発の場合には、その地域の同業者が新しい産業を興すということで、相当広域の特殊農協があります。しかし、それは従来の実績を見ますと、成功しておりません、それは。従って、私の方としましては、何といいますか、ある特定の共通目的を持った人が、特殊農協組織することを阻止することはできませんけれども、それが無理に経済行為をやって赤字負担を残すというようなことのないように、事業指導はその協同組合でやっていただいてけっこうだけれども、たとえば飼料とかあるいは肥料の購入とか、あるいは販売については、総合農協と連絡し、資金的な面においても総合農協と連絡する、そのようなことで、そういう大きな地域では二重加入でやってもらう。そうすると、その地域の人は数カ所の組合に同時に加入することになります、それぞれの地域に従って。しかし、その人の行動は、特殊農協で相談してやっていただく、こういうふうにしたらいいじゃないか。小さい区域の特殊農協であれば団体加入ができますけれども、そういう大きな場合は発展的な段階でありまして例外的には、わざわざ分派的にそういう特殊農協を作る場合がありますけれども、これは結局においてうまくいきませんから、発展的な場合には、そういうふうに指導していきたい、こういうふうに思っております。
  26. 東隆

    ○東隆君 私の心配していることはやはりセクト主義でもって、助成その他のものは特殊農協に流れることによって、特殊農協設立するような、そういう気運を起す可能性がたくさんあると思う。それで、農業経済局の関係は、これはもう特別に協同組合そのものに対する指導、こういうことになっていますから、従って、たとえば畜産関係、それからあるいは農地関係、そういうふうな関係でもって特殊農協というものは別な局が指導をする可能性がある。そこで相当連係をとって協同組合に対する指導の基本を、根本を、一つ確立しておいていただかないと……。先ほどお話しになったようなことを一つ基本にしてはっきりさしておく必要があろうと思う。その点、一つお考えを願いたい。  それから私はもう一つ、今の農業金融関係が、これが非常に乱れていると思う。それは、以前は都道府県の信用事業は、大てい経済連関係と一緒で、総合的に運営され、今のように信連として独立をしていなかった。ところが、占領政策によって、私は、ある意味において日本の農業協同組合組織を弱体化するような方針がとられたのではないかと思う。縦割りが行われた。縦割りが行われて、そうして実際のことを言うと、たくさんの連合会ができた。それから役員なんかも、当時は別々なものを立てていた。これはまさしく日本における農業会のあの形がもし進められると、農業組織というものが相当強いものになります、あの形でいけば。ところが、あいつに対するやはり協同組合の精神からあれを是正をするために、非常に弱体化するけれども、ああいうような方法をもって臨んだのじゃないかと思う。そこで、経済連その他の関係のものはだいぶ旧に復して参りました。信用事業だけが今都道府県に独立をしております。この都道府県の信用事業が独立をしていることによって、組合員の内部における蓄積されたところの資金というものは、その段階において有効適切に利用するという形が、各系統々々々において事実において行われなくなった。単協は、仕事をするとき、単協自身の中でやりくりでもってやっていくというような形が行われているけれども、今度は連合会の段階になってくると、そいつが行われないわけです。信用事業で集めたところの金を、他の販売あるいは購買の面で使うことができないわけです。そういう面が非常に多くなってきた。それが私は非常に今の内部におけるところの蓄積、あるいは事業運営、そういうような方面における形が、銀行金融と同じようなものになってしまった。こういう面が現われていると思う。それで、当然農林中金もすでに都道府県に支所を出したりしてやっている今日において、私は、都道府県の信連は経済連に統合をして、そうして協同組合におけるところの会計の部面を信連が扱う、その信用事業が扱うと、こういうようなところにもう進んでいって然るべきじゃないか、もちろん貯金を吸収して、そいつを中金にまで持ち上げるという、そういう働きは、もちろんやってよろしいけれども、しかし、内部において自分たちの蓄積した金を、販売、購買の面において十分に使い得るような態勢を作り上げる、こういう形をやってもいい時分ではないか。それによって中金と、それから単協、その上の県段階の連合会系統を結びつけてそうしてやる。そうして中央の中金を一つの一番最高のなににして、二段階のような形にまで持っていくと、こういう形に進むべきではないか、こういう考え方を持つわけです。  これは、今のやり方でやりますとですね、県段階でもって販売事業をやるにしましても、購買事業をやるにしても、銀行から金を借りてやった方が、そのものについては、かえって利益が出てくることは事実です。今の形ですと、そんな形になってしまう。その販売事業そのものの計算をするとですよ。購買事業そのものを計算をすると。だから、もう一つ私は考えて、信連の事業の内部の形を切りかえていく必要があるのではないか、そのために信連の事業というものを統合さす考え方をとるべき、もうすでに時期じゃないか、そうして経済連そのものを、非常に強力なものにしていくと同時に、その会員の信用だの何だの、そういうようなものを獲得しなければ、これは非常にまずいものになろうと思う。大蔵省当局だの金融面の銀行局関係の人が見るときには、信連その他の独立することを希望するかもしれないけれども、しかし、協同組合経営の段階において少くとも考えてくれば、そういう私のような見方が出てくると思う、その点をどういうふうにお考えですか。
  27. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お話の点は、いわゆる農村金融というものの目標をどこに置くか、こういうところから考えなければいかぬ、私は、農村金融長期低利の金、つまり長期性と低利性、これがなければ、農村金融として一般金融と分離するなにがない、こういうふうに考えます。従いましてその意味から言いますと、お説のような方法は、たしかにあると思います。しかし、これがなぜできないかというのは、この前も二、三年前に単位組合の信用事業の分離論まで出たのであります。これは、御指摘のように金融金融として、農村金融を、一般金融と分離しない、金融金融として考えた場合に、そうなってくるのであります。つまり、一定の金は一定の利息を生まなければならない、その利息はなるべく高く生まなければならない、こういう観念からいくと、分離論は下まで分離しなければならないという議論になってくるのであります。しかし、これは協同組合が、農家経営を安定し、農家の社会的、経済的地位を上げるという点から言いますと、自分たちが出した金であるから、それはその金を、普通一般の金と同じように考えない考え方で協同組合組織しているわけでありますから、その点から言いますと、できるだけ安く使えるようにするためには、信用事業と経済事業とを一本にした方がいい、ただもう一つ理由は、終戦後の状況を見ると、信用事業と経済事業とが一緒になっているので、その会計が混淆いたしまして、そうして非常に、何といいますか、使い込むとか、事業がルーズになるという結果が、非常に多く出たわけであります。その関係から、今の信用部面と経済部面は単位組合で分離することはできない、その区分もはっきりしなければいかぬし、連合会以上になれば、分離しなければならない、なおかつ、信用事業は総合農協に限ると、こういう制限を出しているわけであります。従って、農家に安い金利で長期に金を回して、農業経営をよくする、そこの点をねらうとすれば、お話のようなことは考えられるのであります。さらに現在になってきますと、問題はもっと複雑になりまして、それぞれの独立機関があるのでありますから、合併すれば、少くとも理事者の数は減ってくる、あるいは職員の数も減ってくる、そういう問題をどう処理するかという問題が出てきますので、すぐ理屈通りにはいかないのでありますが、お説のような点は、そういう趣旨を生かして、系統内の金融操作をやるべきである、こういうふうに考えます。
  28. 東隆

    ○東隆君 私は、戦前に統合してやり得たものである、信用事業というのは。そうして全国段階でもって農林中金ができた。それで十分にやり得たものが、今やり得ない、こういうところに、実は非常に問題があると思う。それと同時に、昔は農林中金、それから県段階、それから町村というような段階を通じて、政府資金がほとんど全部協同組合を通して出ていった。ところが御承知のように農林漁業金融公庫というものができて、政府資金は一本にまとめられてしまう。それで、農村におけるところの長期資金というものは、これは今は別途のところから出てきている。そういうふうに上の方に分けられてしまっている。そうして農林中金そのものは、もちろん長期資金も出します、中期の資金を出しますけれども、大部分は結局どういうことになったかというと、貯金を吸収し、そうして短期の資金を出す、こんなような銀行並みのものになってしまって、そうしてほんとうの農村の金融として活かしていかなければならないところの長期金融によって、何年計画でもって進めていかなければならないような、そういうようなものは、ほとんど別なものになってしまう。それだけ昔よりも非常に仕事が簡単になっていると、こう言えば語弊があるかもしれませんが、量が多くなっておるが、そういう体制になっている。だからこの機会に、もう少し長期資金、その他のものを、農林中金は、十分に今でも扱っておりますけれども、金融ですか、そういうようなものをやめて、あれにもう少し導入することによって農民の団体によるところの組織によって、長期資金を流していく、こういう形を作り上げていかなければならない。私は、何も昔やってきたものが非常にまずかったと、こうは考えない。量は非常にふえた。金額はふえた。しかし、仕事の中味を考えてみたときに、かえって昔よりも楽になった。農林漁業金融公庫の中味を見ますと、団体を対象にする以外に、今度は個人のものにまで出して、そうしてだんだんだんだん仕事の分量をふやして、そうしてこれは、農村におけるところの農業協同組合なりを強化するところの正しい力が一つも働いておりません。かえって協同組合自体の仕事を弱体化するような、そんな方向にかえって出てきている、個人に分散されて出ていく、そんなようなことを考えて参りますと、私は、昔のような金融のあり方をやはりもう一度考えていかなければならない。  それから段階をたくさんこしらえるというのは、これはおかしな話である。ことに今度のなにでもって、公庫が支所をこしらえてやっていくというような、ああいうやり方は、私は、公庫ができてくれば、ああいうような形が生まれてくるのは当然だろうと思いますけれども、しかし、協同組合の側から見れば、あの姿というものは決して自然な姿じゃないわけであります。協同組合を強固にして、そうして協同組合事業をどんどんやっていくというそういう面から見れば、金融を、財布は全部協同組合系統でにもって握ってやっていくという、そういう面から考えてくると、非常にあれはまずかった進み方をしておる。そういうふうにお考えになりませんか、協同組合の立場から。
  29. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは、戦争前の、経済が分化しない時代であれば、お説のようなことは考えられますけれども、現在はそういうように簡単に参らぬと思うのです。たとえば公庫が市中銀行を使っておるのは、造林事業であるとか、漁船事業であるとか、そういう協同組合でない部面ですね、公庫貸付することになっておりますから、それの受託機関として認めております。協同組合でやるものは、全部中金なりあるいは信連を通じてやる。従って、公庫の金で九割以上は信連なり中金を経由する金になっておりますから……。それからさらに、農業は、何というか、いわゆる原始産業の農耕だけを与えるのでありますと、お説のようなことが言えるのじゃないかと思います。しかし今の農業は、農耕だけを考えておったんでは農業は立ちおくれるばかりでありまして、農業に資材を投入するのも、農産物を、生産物を販売する場合に、そのままで売るのじゃなしに、加工して売る。つまり農耕の直接の生産物から消費者に行くまでの段階を、何というか、農業の親族、一部として取り扱うことを考えなければならない。そこにいわゆる加工、貯蔵、流通段階にまで農産物については農業の定義を拡大しなければならないのじゃないか、そういうふうに私ども考えておるわけです。  その際に、その流通加工の段階を協同組合オンリーでやったらいいかどうかという問題が起ってくるのであります。これは協同組合オンリーでやることは、協同組合の限界を越えることだ、すなわち、協同組合組織そのものが、先ほどから議論のありますように、役員の機構にいたしましても、役職員に支払い可能の俸給にいたしましても、継続的に、あるいは他の資本的な会社がやるのと同じ事業をやる場合に、競争力の見地からいって、協同組合組織では非常に不経済、不合理でありますが、そういう部面がありますので、そういうような部面は、やはり国家の制度的な金融で育成して、両方が相待って農家経営農家販売が、有利にできるようにしなければならない、このように考えておるのであります。これは経済組織なり経済活動拡大されるにつれて、当然考えなければならない、われわれはそういうふうに考えておるのであります。
  30. 東隆

    ○東隆君 戦争後における日本におけるいろいろな変化、そういうようなもののうちで、今発言されたうちで、協同組合に限界がある、従って会社でなければ他の会社と太刀打ちができない、そこで農民資本によるところの工場、そういうようなものでもって会社が経営するときには、それに資金融通してやっていいことだ、こういうことなんです。それで、その場合に私は、農業協同組合に限界があるといっても、それはおのずからあの当時の、占領政策の当時におけるいろいろな条件が、私は限界を作り上げたと思うのです。限界と条件をこしらえたのだ、アメリカが。たとえば変な話ですけれども、協同組合人が、その当時追放にかかった人が非常に多かった。その追放になった人は、協同組合役員にはなれなかった。理事者にはなれなかった。ただし、会社の理事者にはなれた。そういう現象が非常にたくさんあった。そこで、協同組合で十分なし得るような仕事も、これを会社に作り変えて、そうしてやったわけです。たまたま、そういうようなことをやったものが、経営がうまく進展をしたものは問題がありませんでしたけれども、経営がまずくいったところは、これは各所に問題を起しているわけです。中金がこの前問題になった例の農工水産のあの問題にしても、私は多分にそういう問題が伏在しておると思う。北海道における、北さんなんか関係されておる興農公社も、この興農公社ができるのは別でしたけれども、戦後においてそいつを協同組合に変更するというような場合においても、私は、そういう問題が非常にじゃまになったと思う。従って、あの当時におけるところの協同組合を会社に切りかえたそのことをもって、協同組合農産物加工をやることができないとか、あるいは、協同組合は会社に比べて非常に企業その他において活動に限界があるんだと、こういうような考え方は、これは私は相当是正をしなければならない時代だと思う。これは、もうすでに協同組合人として新しい時代に教育された人間もある。そういうような人間が、もう少し協同組合として仕事をやる部面がたくさんあると思う。協同組合がやることによって、少くとも農村におけるところの高度の加工というものが行われてくる、会社資本によってやられることによって、高度の生産をやって、そうして収益を十分に農村に落すような体制のものが、これで完全に離れてしまう。そして、農村は原料のみ生産すると、こういう形に打ち切られてしまう。そういう形が出ておるんです。だから、私は、この際どういうことをやらんきやならぬかというと、やはり高度の加工まで農産物を持っていく。その体制を、協同組合組織でやるような体制に、金融その他の面を追い込んでいかなきゃならぬ。これが私は農村の金融の正しいあり方だろうと思うんです。そいつがなされていないわけです。たとえば、全敗連その他だって、あの当時、小麦生産五カ年計画なんかをやっていた時分に、関東ぐらいに製粉工場を持ったところで一向に差しつかえない。あの当時に製粉工場を持っておれば、その後において、何もそんなに製粉工場を持っておる資本に圧迫を感ずる必要はない。あの当時においては、全販連が製粉工場を持つことができないために、農民はただ集荷機関になって、そして奉仕しただけである。そういうような形がたくさん出ておる。全販連が製粉工場一つぐらい持てないような、そんなばかな話はない。そういう形でもって、協同組合はできないものと、こういうふうに考え込んでおるところに問題がある。たとえば、北海道で製糖工場を始める、それは北連が一つこしらえることになりました。これは、会社となると計算の仕方もだいぶ違って参りましょうけれども、同じ情勢のもとにおいては成り立っていくんじゃないか。こういうものがたくさんあるんじゃないか。だから、あまり、会社でなければできないんだと、こういう形でもって協同組合事業に優位性を持たせないで財政投融資、そういうようなものが行われるとすると、これは非常に間違ったものができてくる。私どもは、農家が作ったものを高度に加工して、そうしてそれが農家生産になったと、こういうことによって消費者の段階までできるだけいって、その間のいわゆる効用というものについての対象ですね、それをやっぱり農村の収得に持ってこなきゃならぬ。そういうような考え方を見ておるときに、私は、やはり今の金融のあり方というものは、非常に間違っておるのじゃないかと、こう思うわけです。そういう点で、限界があるというお話だったけれども、限界というのは一体どういうところですか。
  31. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 少し誤解があると思いますが、私は、協同組合ができることをもできないと、こう言っているのではないのでありまして、協同組合が能力があるのであれば、協同組合にどんどんやってもらってもけっこうなんであります。また、それを奨励しておるのであります。しかし、協同組合でなければならないと、こういうことを言ったんでは困る、こういうことを申し上げたのであります。協同組合、これは特殊農協を入れますと三万あるのでありますから、その中に優秀なのがないわけじゃありません。そうして成功しておるのもあります。しかし、それには、資金的に、人的に、その協同組合のおい立ちからいって、協同組合精神に徹して、これは農耕それ自身でも非常な工夫と努力は要るのでありますが、ことに農産物加工になりますと、研究は積んでおりませんし、ことに外国の食品工業は非常に発達しておりますから、それにつれてだんだん古い施設を新しく変えなきゃいかぬ。それにはお金が要るということになりますし、技術者におきましても、非常に高度の技術者を要求する。しかし、いい技術者があればほかの方でさらにいい俸給で引き抜きに来る。それを防止するだけの能力が協同組合になければ、その協同組合がいくら思いつきがよく、いくらスタートがよくても、長続きしない。そういう例が非常に多いのでありますから、そういうことを協同組合でできる能力をつけることが先決であることは、これは私も異存ないと思います。しかし、それがないのに、全部の協同組合ができるまで待てと言ったんでは、これは地方のいろいろな事情にもよると思いますけれども、困るのであるから、協同組合が特殊の農産物長期共同販売契約を結んだ会社とか、あるいは協同組合が相当領を出資しておるような会社、すなわち農家利益が阻害されないような形態で、これは行政方針でやろうと思っておりますが、そういう会社に対しては公庫の金も貸し付けるワクを広げた方がいいのじゃないか。しかし、これも無制限というわけにはいかないのでありまして、たとえば、澱粉を新しい精製ブドウ糖へ、急速に事業拡大していこう、そういうものを選んで、そういうものに公庫のワクを広げようというのが、今度の公庫法の中に織り込んだ点でありまして、百パーセント協同組合で満足できない、協同組合の伸ばすべきところは伸ばすけれども、そのほかの有利な形態組織もとり入れた方がいい、こういうことを申し上げておるのであります。
  32. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ここでしばらく休憩いたしまして、次は、午後一時半から開会いたします。    午後零時二十九分休憩    —————・—————    午後一時四十九分開会
  33. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。午前に引き続いて、農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案議題にいたします。御質疑の向きは御質疑をお願いいたします。
  34. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 二、三の問題についてお尋ねいたしたいと思います。  農業協同組合整備特別措置法関係資料に基いて見ますというと、だいぶん合併も進んでおるようでありますが、一体、合併をさせるについてはいかなる基準によって合併させられるか、経営規模はどのくらいの規模でなければできないというような、規模を土台にして合併せられるのであるかどうか、合併についての適正規模についてお尋ねしたいと思うのであります。
  35. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 合併の基準でありますが、これは地方々々によって一概に言うことはできませんが、私の方として一応の基準は、適正規模を千戸から千五百戸くらいという一応の標準を示しております。当初は七百戸くらいといっておりましたけれども、先ほど来申し上げましたように、町村合併が進むし、町村内の道路網なり、あるいは部落間の連絡が、有線放送の発達とか、あるいは生産物の集荷配給等の事情を見まして、職員に適正なる俸給を払い、組合運営を円滑にするためには、少くともただいま申し上げましたような千戸から千五百戸の規模がなければ、十分な経営はできない、こういうふうに考えております。
  36. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、三十一年度及び三十二年度で合併したところのものの規模はどういうものであるか、過去の事実があるのでありますから、過去の事実を説明してもらいたいと思います。
  37. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは、ただいま御説明申し上げましたように、私の方では、何戸でなくてはいかぬということは言っておらないのでありますが、法律の十四条の規定にもありますように、「組合員の数の過少その他特別の理由によりその事業を継続することが著しく困難であると認められる農業協同組合がある場合において、」ということで、一応の標準を示しておりますけれども、何ぼでなくてはならない、こういうことは強制はしておらないのであります。なお、その資料につきましては、ただいま調査中でありまして、まだその集計ができておりませんので、何戸の組合で、どれだけの規模になって存続をしているかということは、ただいまのところ、資料としては御説明申し上げることはできません。
  38. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 そうすると、三十二年度まではそれでいいが、三十三年度今度一年延期するという場合においては、今、局長からお話しになったように、適正規模が千戸ないし千五百戸であるとしたならば、千戸ないし千五百戸を基準として合併を進められる方針であるかどうか。それに該当しなかったならば、どういうふうな対策を講ぜられるか。
  39. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 先ほど申し上げましたように、必ず千戸でなければいかぬとは言えないのであります。御承知のように、組合員の数が二百五十とか三百とかいう組合も相当残っております。従いまして、ことに町村合併で平均三カ町村ないし四カ町村が一村になった、こういう格好であります。これは平均の話であります。多いところは十数カ町村が合併したというような例もありますけれども、それとにらみ合して、その二組合、あるいは三組合、それぞれその地方の特色に応じて合併をしたらいいじゃないか、しかし、その一つの標準として、経営単位がどのくらいであるかという一つの指示を与えているだけでありますから、三百戸の組合合併しても、それはいかぬというわけではありません。しかし指導方針としましては、その地方の経済状況、地理的状況等を見てなるべく私の方で示している標準に合うように指導していきたい、こう考えております。
  40. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 ただ、地方の事情に応じて考慮するという話でありますが、地方の事情によって考慮するのはもちろんですけれども、今後の農協経営というものは、一定の適正規模によらなければ経営がうまくいかない、こういうふうな状態であるとしたならば、今回の整備特別措置法によって合併をする場合においては、努めて適正規模に適応するようにしなかったならば、整備はできたというものの、また不整備組合になってしまうのでありますから、この点は十分に一つ御検討をお願いしたいと思います。  それと関係があるのでありますが、市町村では合併促進法ができて、いろいろ合併を進めておりますが、過去の産業組合時代のことから考えてみますというと、過去の産業組合時代には、原則としては一市町村一組合である。特別の場合においては例外を設ける、こういうことになっておったのでありますが、適正規模と町村合併農協との関係で、農協は一市町村を一区域とする、こういう根本方針を立てられますか、また、特別の場合だけは除外するというようなことで進められる方針であるか、町村合併との関係、すなわち町村の区域と農協の区域の関係について一つ御高見を拝聴したいと思います。
  41. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 協同組合は、あくまでも経済団体でありますから、やはり協同組合経営がうまくいくのには、必ずしも行政単位と一致しなければならないという原則を当てはめることは無理だと思います。しかし、一定の適正規模を備えなければ、経済団体としては成り立たないのでありますから、地理的条件あるいは交通網、そういうものを勘案して、それぞれの区域をきめるべきである。こういうふうに考えております。ただ、問題になりますのは、なぜこんなに合併がおくれているかということで、農林省は、この法律もありますので、適正規模を早くやれと、相当慫慂しているのでありますが、結局、村に出張して村の座談会等で聞きますと、協同組合合併したらいいにきまっているのであるけれども、一つは経済団体でありまするがゆえに、その組合の資産状況が必ずしも同程度でないというところに、一つ合併のむずかしい点があるのであります。これを全部解散して、新しく新しい地域をきめて組合設立すれば、理屈上は平等に各組合員が出発できるのでありますが、組合は、それぞれの組合出資によってできており、それぞれの組合の資産状況について、A組合とB組合の、組合員組合に対する持ち分等も相違が出てきます、それをどういうふうに評価していくかというところで、なかなか話がつきにくいというのが一点であります。  もう一つは、やはり組合にはそれぞれ組合役員というものがおりましては合併しますと、その組合役員の数が減る。そういうことは、現在組合員である人が、みずから進んで合併というむずかしい仕事に入りにくい。そういうところが、合併がなかなか進まないゆえんである。ことに、昨年は役員改選でありましたから、改選時期にそういうむずかしい問題を出すことをことさら避けたというようなこともいわれておるのであります。そういうわけでありますから、今申し上げましたような点を配慮しないで、いたずらに合併を叫んでもなかなかむずかしいのじゃないかと思います。そのために一組合当り十万円ずつの合併奨励金を出すことにしておるのであります。その程度では、ただいま申し上げました組合間の資産のアンバランスを是正するには役立たないわけでありまして、これは組合経済単位というものが、組合運営にいかに重要であるかということを、個々の組合員が認識を高めていただく。それがまず先決ではないか、その段階は相当続いておるのでありますから、もう相当強力に合併を奨励してもいいんじゃないかとも考えておりますが、これは、中央会等とも十分連絡をとって、一そう進めていきたい、こういうふうに考えます。
  42. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それでですね、市町村の区域によらなくてはいけないというようなことになれば、経済団体だから困るというようなこともありますけれども、とにかく今後の自治体の発達、あるいは協同組合の発達というようなことから考えるというと、原則は、どこどこまでも農協の区域というものは一市町村一組合だ。ただし、特別の場合があったらば、それは考慮するのだ。この原則は、いかなる場合といえども確立しなくちゃいけない、こう考えておるのでありますが、私の今申し上げた原則について、どう考えておられますか。
  43. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これは、私の方で全国の市町村の合併状況を表にして持っております。それから拾いますと、お説のように、一市町村一組合が原則で一向差しつかえないかと思います。十数カ町村とかあるいは五、六カ町村が合併しているという町村は、そうたくさんありませんから、それで差しつかえないと、こうは考えております。
  44. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次に、総合農協であってですね、同一区域に同種の組合が二つ三つあるというようなことになっている。これについて、政府の対策はどう考えているか伺いたいと思う。
  45. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ちょっと今の具体的な例を……。
  46. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 例えば甲という村に同じ総合農協が二つある。重複している。だから私なら私が甲の農協にも加入し、乙の農協にも加入する。あるいはこれが同志的結合というようなことで、一方からいえば社会党の農協である、自民党の農協であるというようなことにもなる。あるいは五反歩以上の農協である。それ以下の農協である。こういういろいろな組合になっておるのが、ときどきあるように見受ける。そういうようなことで、農協があるために、その農協のためにかえって感情を害して、町村の融和がとれないというようなことになるから、総合農協であったら少くとも同一区域内には一つでなければ認めない。こういう方針で進んだらいいんじゃないか。だから、もしもそういうふうな農協があるとしたら、期限を切ってこれは合併の奨励をすべきじゃないかと、こう考えるからお尋ねする。
  47. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お示しのような例は、私の力では好ましくないと考えております。そういうものがありますれば、お説のように一地域には一総合農協という建前で指導していきたいと考えております。
  48. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 それから組合員の責任問題なんです。組合員の責任問題はこの前の経済更生連動及び産業組合の拡充五カ年計画、こういうふうな法律で責任問題を規定した。当時の法律からいえば、無限責任、保証責任、有限責任という三つの種類があった。しかし、経済更生運動が盛んになった結果、法律ですべてのものは保証責任の組合にせなくちゃいけない。そうして何カ年以内に保証責任にせなかったら、その組合は自然解散だ。こういうふうな強制規定を作って組合員の責任を重んじ、組合の基礎を強固にしたのであります。今日いろいろの不振の農協になりつつあるというようなところも、いろいろの原因はあるけれども、もとをただせば、組合員の責任が出資金に限られておる。その後の責任がないからだ。従って、農協に関心が組合員が薄い。こういうふうなのが原因になるのじゃなかろうかと思うのであります。でありますから、この前の経済更生運動あるいは産業組合拡充五カ年計画のときと同じように、組合員出資額以上に、ある一つの責任を持たせるというような法律を作っていかなくちゃいけないじゃないか。もしそういうふうなことができないとすれば、出資したところの金額を倍にして、その半額を払い込み済みにして、残りの半額は組合赤字ができたならば全体で責任があるのだ。すなわち農協赤字を出すとか不振の状態に陥るというようなことがあったならば、全組合員が責任を負わなくちゃならないのだ。責任があるのだ。こういうふうな認識を与えることが、不振組合強化し、また、現在の組合をさらに強化して、協同組合活動が十分にできる素質を作るのじゃなかろうか。こう考えておるのでありますが、この点についてのお考えを承わりたいと思います。
  49. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま御指摘の点は、非常に重要でありますと同時に、われわれもそうあるべきと考えておるのであります。ただ、協同組合法が施行されましてから十何年かになりますが、現在一組合当り出資金は百五十万円、平均ですね、全国平均してそのくらいになると思います。これを一組合員当り出資額に、これを産業組合時代に比較いたしますと一万円未満であって、産業組合当時よりも一人当り出資額は少い。しかも、これは現在でありまして、昭和二十五、六年当時は、一組合当り出資額は二十万円前後しかなかったのでありまして、この六、七年に百五十万円程度まで上げたのであります。これがこの間の私どもの成績でありました。御指摘のように組合への出資額が少い。従って、組合員組合に対する責任観念が薄いこと。それが組合運営上非常に、何といいますか、刺激といいますか、組合員組合運営に対する指導精神というものの弱さを物語っておるのでありますから、さらに出資を増加すると同時に、お説のように、組合員の責任限度を、ある程度の保証責任を持たすことも必要であると思います。しかし、今申し上げましたような経過的な事情もありますので、その点は、さらに今後できるだけすみやかなる機会に、御趣旨に沿うように努力したい、こう考えております。
  50. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今の問題は、この前の場合のように、法律改正せなくても、農林省指導方針によって、出資金は全額払い込まなくちゃできないという指導方針を、半額払い込んでもいいんだ、そうして出資金は、たとえば払込金額が一万円であったならば、出資総領は二万円として、そうして一万円を払い込み、残りの一万円は、赤字を出したならば責任を負わせなくちゃできないんだ、こういうふうにすれば、この前の目的を達成すると思っておる。ただ、法律改正して、保証責任というような形になれば、これはいろいろの道義上の問題もありますから、繁雑だから、簡単に農林省が腹をきめたらば、現在の出資金は全額払い込むというのを、半額払い込みにして払い込みの金額だけを現在のようにするならば、その倍の金額を出資した金額と、こうきめるだけで差しつかえないと思うのでありますから、これは農林省の行政措置でできる、行政措置ででかしたところのものによって農協強化するということであったならば、このくらいのことは、単刀直入に一つ実行していただきたいと思うのでありますが、政務次官の御意見を承わりたいと思うのであります。
  51. 瀬戸山三男

    政府委員瀬戸山三男君) お説の通りに、農協が弱体なのにはいろいろな理由があるわけであります。出資が非常に小さい。今、局長からお話しましたように、最近やや拡充されましたが、まだまだほかの事業等の関係から見ると、非常に小さいわけであります。それも御承知の通り、比較的各農家が零細である、農家経営状態が必ずしもよくないというところに大きな原因があると思いまするが、今お話のようなことは、十分今後検討して、できれば実施に移したい。ただこの際、私どもちょっと懸念いたしますのはこれは先ほど来、農協の根本問題に触れて、いろいろ御高説を承わっておったのでありますが、出資をそういう意味において、ある程度、まあ半額と申しますか、保証的な意味を持たせるということは、農協強化には非常に重要な問題と思いますけれども、そうなってくると、反面、農協経営というものについて、さらにこれを検討を加えなければならないんじゃないか、農協法の改正は、御承知の通りに、先般御決議願いましたが、これはほんの一部分であります。根本的な改正にまで至っておりません。この問題は、先ほどお話がありましたように、農協のいわゆる理事者と申しますか、役職員の責任問題、あるいはそういう人々の選び方の問題についてもかかってくるんじゃないかという気もいたします。でありますから、そういう点も検討を加えまして、お説のようなことは、十分今後行政措置でできるものは指導いたしたい。行政措置でまかない得ないものは、これは単に農林省ばかりでなしに、先ほどもいろいろ御議論がありましたように、農協の再検討と申しますか、強化ということについては、農民はもちろん、それから農協経営に直接タッチしておられる人々は、全部やはり真剣に考えてもらわないと、この根本的な問題は解決できないんじゃないか、こういうふうに考えておりますことを申し添えておきます。
  52. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 先ほど農協組合当り平均出資額百五十万円と申しましたが、二百五十万円でありますから、ちょっと訂正いたしておきます。
  53. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 今、政務次官から役員の問題があったから、役員のことに触れてみたいと思うのであります。農協役員には、農協と競合したところの仕事に従事しておる者は役員になることはできない、こういうふうな規定があります。しかるに、私の知っておる範囲においては、競合しておるところのものも、今なお役員に残っておる者があると信じております。競合しておるところの役員がどのくらいおるか、各県で調査されたことがあるかどうか、承わりたいと思っております。
  54. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) そういう資料は今持っておりません。
  55. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 もし競合しておるところの役員があるとしたならば、直ちに役員を罷免される覚悟があるかどうか、承わりたいと思います。
  56. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) よく調べまして、法の精神に照らして措置いたしたいと思います。
  57. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 現在、整備促進特別措置法によってやられるような農協では、貯金者に非常に迷惑をかけておる。貯金者は、預けておるけれども、支払いを受けられずに困っておる、こういうふうな状況であるのでありますが、将来において貯金の奨励をやるというようなことであれば、単位農協に預け入れたところの貯金に対しては、いかなる場合といえども支払いをするんだ、こういうふうな支払保証をやるということが、貯金奨励についても最も必要であると考えるのであります。これは別な例を取って見まするというと、同じ農協でやっておる共済事業に対しては、単位農協が引き受けると同時に、県の連合会が共済の責任を引き受けるから、単位農協がいかに微弱な農協であっても、安心して共済に加入することができる。これと同じような筆法が、単位農協に対する貯金に適用できないかどうか、適用できないとするならば、何ゆえに適用ができないのか。一方の共済事業にはでき、貯金にはできない、同じ金を借り入れるのに、一方はでき、一方はできないという根拠がどこにあるのか、それを承わりたいと思うのであります。
  58. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいまの貯金と共済の再共済ですか、共済事業における再共済と全く性質が違うのでありますから、同様には扱えないのであります。そもそも貯金は、相手を信用して預けるのでありますから、それを貯金の支払いを保証するということになれば、そういう制度がもう一つ要るのであります。共済の方は、掛金を元にして、それをもっと広い範囲で危険を分散するという作用でありますから、再共済というのができるのであります。現在の農業協同組合では、貯金について、その貯金の支払いを保証するという制度はできておりません。これもそういう制度を作ったらいいじゃないか、つまり貯金の、何と申しますか、保険ですか、しかし、それは貯金をやること自体を否定することになるんじゃないかと思いますので、どうしても協同組合それ自体の活動を活発にして、遅払いが起らないように処置する以外にはないんじゃないか。たとえばパニックその他で遅払いが起った場合に、これまた国民経済に重大な影響を及ぼすということで、別途処置ができると思いますが、平常の状態におきましては、貯金の払い戻しができないというようなことは、組合経営を健全にやっておれば、あり得ないことであります。これは、どうしても組合それ自体を強化することによって解決する以外にはないと、こういうふうに考えております。
  59. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 例を銀行にとれば、地方銀行が行き詰まったならば、必ず日銀がこれを応援してくれる、そうしてほとんどこれが更生するまで導いてくれる。しかるに農業協同組合は単位農協が行き詰まった場合において、上級農協がこれを見てくれないということは、相互主義からもおもしろくないんじゃないか。単位農協が行き詰まったならば県の信連がこれを見てやる、信連が行き詰まったならば中央金庫が見てやる、こういうふうなことで、一連の関係で貯金の保護をやっていくということによれば、貯金も集まるし、また、組合員も安心して貯金をすることができるというようなことだから、不振組合をよくして貯金も増していくということは、その貯金に対するところの支払い保証というようなものが、何とかの形ででき上ることが最も望ましいことじゃないか。そうじゃなくては不振組合というものはいつまでたっても貯金は集まらない、貯金が集まらなかったならば、不振組合は振興することはできない。こういうふうな循環性があるから、この際において、私などは、単位農協に対する預金者に対しては、その預金の保護というようなことを考えて、そういうふうな保護ということを考える場合において、上級機関がそれを責任を持つことができないということであれば、さっき申し上げたように、出資金の金額を倍にして、そして半額を払い込んで、その半額ですべての組合員が責任を持つ、こういうふうな態勢を整えたならば、ほんとうに自主的に貯金の支払いの確保ができるんじゃないか、こういうふうなことも関連してくるのでありますから、出資金の金額を倍にして、その半額を払い込み、そして、もしも経営がおもしろくいかないというような場合、あるいは、貯金が支払いができないというような場合においては、全組合員が貯金者に迷惑をかけないようにする、こういうふうなことによって初めて更生ができるんじゃないか、こういうふうな考えを持っておるのでありますから、これに対するさらに意見を承わりたいと思います。
  60. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 御指摘の方法は、十分研究しなければならないと思いますから、私の方で関係方面とも十分連絡して、御趣旨に沿うような方向で研究していきたいと思います。
  61. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 次には、資産の再評価問題であります。金融機関再建整備法の除外例というようなもので、農協の戦時の問題は解決して、当時の帳簿価額によって算定をする、こういうふうなことで、金融機関再建整備法の問題は解決している。現在の農協の資産というものはどういうふうな状態であるかというと、新たに作ったところの資産は、非常に、現在の価格でやっているから高くなっているが、従来から持っているところの資産は、非常に帳簿価額が安い。中小商工業者のようなものまでも資産再評価をやれと、こういうふうなことで資産再評価を進めておるのでありますが、農林省は、農協の資産再評価について考えられたことがあるかどうか。考えられたことがないとしたならば、なぜ考えられないのか。考えたことがあるとしたならば、どうやって資産再評価をやろうとされるのであるか。この資産再評価によって、農協強化をはかることができるという考えであるか、できないという考えであるか。こういうふうな点についてお尋ねしたいと思います。
  62. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 資産再評価の問題は、かねてから先生から御指摘をいただきまして、私ども研究しておるのでありますが、これは、御説のように、戦争前の膨大なる倉庫なり精米所とか配合所とか、そういうような財産が、帳簿価額ではほんの数万円に記載されている。このことは、それの償却積み立てというようなことを非常に不健全にいたしまして、将来の組合経営拡大に非常に支障があるから、再評価をすべきであると、こういうふうに考えて研究をいたしております。私自身は、早急にこれをやるべきであると、こういうふうに考えておりますがまだ最終的な結論を出しておらないのが現状であります。至急結論を出したいと、こういうふうに考えております。
  63. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 これで最後の質問です。不振農協の原因は、経営の任に当るところの理事者に能力がなかったということも一つ、それから職員に能力がなかったということも一つある。そういうようなことを考えられて、法律では、不振農協駐在員を派遣してやられると、こういうふうなことになっておるのでありますが、これは、まことにけっこうなことと信ずるのであります。また、この駐在員の派遣によって、整備特別措置法の該当の農協はだんだんとよくなりつつあるのであります。しかし、現在ぐらいの駐在員では、どうしたってまだ十分でないと思うのでありますが、これを増される考えはないかどうか。もし政府自身の金で増されないとしたらば、他に増すところの方法は何かないかどうか。そういうような点をお尋ねしたいと思うのであります。
  64. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 駐在指導の力の入れ方が足りないじゃないかと、こういうお話でありますが、これは私どもも、駐在指導の効果が相当あるということを考えております。その前に、駐在員の資質能力の向上ということがもう一つ横たわるのであります。そこで、農林省といたしましては、中央会に委託して役職員の研修ということを非常に重点を置いておるわけであります。そうしますれば、補助金なしでも、それから必ずしも長期駐在しなくとも、しょっちゅう組合に出向いて中央会職員がいろいろな示唆を与えることによってその目的は達成できると、こういうふうに考えております。ただ、役職員の研修というものについても、さらに一段と拡充する必要があるのじゃないかということで、たとえば家の光の普及等の助力も借りまして、もっと拡大した方がいいのじゃないか、それから中央機関等も、もっとそういう中央会の役職員の研修、そういうものに力を入れた方がいいのじゃないか、こういうふうに考えております。
  65. 東隆

    ○東隆君 私の記憶に誤りがなければ、この法律が通過する際に、参議院の方で付帯決議をつけているわけです。それは、この農業協同組合だけになっておりますけれども、これに対して、漁業協同組合に対する面と、それから林業の組合農林漁業にこれを広ぐべきじゃないか、こういう意味の付帯決議をつけて参議院は通過をしておるはずであります。それで、私は、現在においても、漁業協同組合の面、あるいは林業関係の面は、再建整備の特別措置によってやらなければならぬのがあるのじゃないかと、こういうように考えておりますが、これはどういうふうになっておりますか。ちょうどその時分、柴田さんは林野庁の長官をされておったと思います。林業の方面とそれから漁業の方面と分けて一つお答えを願いたいと思います。
  66. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 林業、漁業組合の方の資料は、ちょっと私の方の担当でなかったものですから、用意してきていないので、あとで調べて報告いたします。
  67. 東隆

    ○東隆君 聞くところによりますと、水産庁もそれから林野庁の方も法律はないけれども、何かかわるべき方法を講じておる、こういうふうなことを言っておりますが、政務次官はその関係のことをお知りじゃないかと思いますが……。
  68. 瀬戸山三男

    政府委員瀬戸山三男君) 詳しいことは存じませんけれども、たとえば森林組合でありますか、こういう問題についてはこれもやはり一定計画を立てまして、法律はありませんけれども、行政指導といいますか、全国の森林組合に呼びかけて用賀を増強する、いわゆる組合の再建をはかるということで、今計画に従って進んでおるということを承知しております。漁業組合については聞いておりませんが、またの機会にお答えすることにいたします。
  69. 東隆

    ○東隆君 実はこの問題は、私は非常に今後法律を作っていく場合関係があると思うのです。というのは、たとえば農協職員の年金制度の問題を考えてみましても、農協関係職員単独でもって進めていく、こういうようなことで始められて、そうしてほかの方がだいぶ大騒ぎをして、そうして農林漁業関係を含めてやるように改正をされている。こんなふうな形になりまして、これは大へんいいんですが、この整備特別措置法が出る場合に、実は漁業の方面では非常に残念がっておったと思うのです。漁業協同組合の方が協同組合としても弱体なのです。にもかかわらず、なぜその中に入れてくれないのか、このようなこともありましたので、私がそういうことを申しますと、当時、元林野庁長官をされておった三浦辰雄君が、やはり林業関係についても同様だから、それを強力に何とか措置を講じてもらいたい、こういうので付帯決議になったわけです。そういうような経過があるのでありますが、私は漁業協同組合、特に沿岸の漁業協同組合を見ますときに、当然組合の併合を行なって、そうして強力なものに仕上げていかなければならないのがたくさんあると思う。これこそまさに整備特別措置法によって画期的にやらなくちゃならぬ筋合いのものじゃないか。そういうようなものが残されておりますので、これは一つ単にこそくな方法でなくて、もう少し力を入れてやるように、一つ次官の方から水産庁の方に——一つ大いに力を入れていただきたいと、こう思います。私は別な機会に水産庁の方から一つ経過その他、また林野庁の方からもお聞きをいたしたいと、こう思っておりますから、そういうふうに一つお願いいたします。
  70. 瀬戸山三男

    政府委員瀬戸山三男君) 今、お話しの通りでありまして多少異なっているといえば——私前のいきさつは十分存じておりませんけれども、日本の農業——いわゆる農業、それから林業、あるいは漁業、これは御承知のように、地域的には多少異なった要素がある。農業の場合には、先ほど市町村合併のときは、市町村単位にしたらいいじゃないかというぐらいのお説が出るように、相当まんべんなく、いわゆる組合員と申しますか、組織ができるようになっている。もう一つは、漁業の場合はこれは特に零細に分裂しているという状況になっております。林業は御承知のように森林の、いわゆる山の配分が現在におきましては偏在しているような状況でありますから、いわゆる農業の協同組合組織とは多少異なっている、こういう事情はあると思います。そこでいわゆる森林組合も非常に日本の森林組合は弱体である。漁業組合も一町村に何組合もあるということで、特にこれはまた弱体である。まして沿岸漁業が非常に不振でありますから、そういうことが顕著なわけであります。これを放任しているわけではありませんので、実は漁業協同組合の問題については、いずれ詳細な点については専門家の水産庁長官その他からお答えすることにいたしますが、御承知のように、ただいま提案をいたしております漁業制度調査会設置法案、これによってそういう問題は根本的に再検討してもらう、そうしてそれに基いて根本的な改正をすべきものはしたい、こういう気持でやっておりますことをお答えしておきます。
  71. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それでは速記をとめて。    〔速記中止〕
  72. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を起して。  本日の質疑はこの程度にいたします。  速記をとめて。    午後二時二十七分速記中止    —————・—————    午後三時四分速記開始
  73. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を起して。  北委員から家畜病疫の件について緊急質問の御要求がありますので、この際追加して議題にして質疑を願うことにいたします。
  74. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ジャージー種の輸入とともにブルセラ病が入ったというのでありますが、もちろん動物の輸入には厳重な検疫がされておることと思うのでありますが、どんな経路でこの病気が入ってきたのでありますか、それを承わりたいと思います。
  75. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) ブルセラの案件でございますが、毎年豪州からジャージー種を導入しておるわけでございますが、その中で北海道に回しましたものの中に、ブルセラ病にかかっておるものがございまして、それで現地におきましてそれの発病を見ましたために、農林省の、北海道にありまする防疫の支所のところにそれを収容をしておるわけでございます。これの伝染の経路と申しまするものを調べてみたわけでありますが、ジャージー種のその当該の罹患をいたしました牛の入っておりました船及びその船に積み込みました牛がどこの牧場で飼われておったか、こういうものを推定いたしまして、豪州におきまするそれぞれのブルセラが発生したと思われる牧場をそれぞれ推定をいたしております。そういう経過でございます。
  76. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 今のお話では北海道だけのようなことでありますが、午前中経済局長からのお話では、岡山、富士山ろくその他にも入ったという話でありますが、北海道だけでありましょうか。
  77. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) このたびの輸入いたしましたものは、今までのところ北海道だけでございます。岡山の一部、あるいは富士山ろく等にブルセラが出ましたのは、これは一昨年でございましたか、そのときに輸入したときにそういうものが発生しております。このたび発生いたしました案件は北海道に回しましたジャージー種でございます。さようになっております。
  78. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 この病気は人間にもうつる病気だと聞くのでありますが、当局はこれを肯定されますか。
  79. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 人間にもうつる場合がございます。
  80. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 伝えるところによりますと、ブルセラとらいとは治療の方法はないということでありますが、最近はらいは何か予防の方法があるとかいって、つい二、三日前ラジオで聞きましたけれども、ブルセラは治療の方法がないというような……。
  81. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) ブルセラの問題につきましては、これは非常にむずかしい問題がございまして、獣医関係におきます世界的問題になっております。世界的な獣医機構がございますが、そこの委嘱で昨年から東京にありまするわが国の家系衛生試験場がアジアにおけるブルセラ・センターということになりまして、アジア地域におきまするブルセラの諸種の対策についての研究のセンターになっております。御指摘のように、これに対しまする的確な方法というものにつきましてはまだ研究を要するわけでありますが、オーレオマイシン等の使用によりましてこれが効果を表わしておる、こういう例はございますけれども、的確な対策というものはなお今後研究を要する問題であります。
  82. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 午前中、渡部経済局長からの御答弁では、潜伏期があるので非常にこれを見つけることは困難だというお話であります。これは事実でありますか。
  83. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 潜伏期が一定いたしておりません。早いのは二週間くらいで出て参るのもございますが、普通半年もたちますれば大丈夫だと言われておりますけれども、ものによれば一年ぐらいたって出てくるものもあるようでございます。潜伏期につきましては、ものによってはっきりいたしかねるのでございます。
  84. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 牛の排泄物その他から風土病のようになってその地方に残るものではないのですか。
  85. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 牛舎等直接にその牛の影響しておりまするものにほかの牛が入るというような場合に、それがうつることが確認されております。広く風土病的になるかどうかという問題につきましては、必ずしもこれが的確に出ておりません。
  86. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 撲滅の方法はどうでありましょうか。また保証方法、この病気を撲滅する方法
  87. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 撲滅する方法は、今申し上げたように、的確なこれに対する対策は、各国が相協力しまして、今対策を考究している、そういう段階のものでございますが、ブルセラが検診の結果はっきり出ました場合には、これは家畜伝染病の法律に基きまして殺処分に処します。そういう形におきまして、これは対策を立てております。かようなことでございます。
  88. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 殺処分しましても、牛舎まで何しなければならぬという話ですが、それはどうですか。
  89. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 家畜伝染病予防法に基きまして、牛舎等汚染とみなされる場所は、国の費用でこれを消毒してやっております。
  90. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 現に北海道では病牛を養なっている者が村八分されている。杯のやりとりもできないということで、大弱りに弱っているようでありますが、こういう問題に対してはどう考えておられますか。
  91. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) ブルセラという病気に対しまする非常な恐怖心が初めて発生しましたこの事態になりましたことは事実でございます。これに対しまして、病気になりました牛を飼っているこの家族の方々がいろいろと嫌悪されるという報告も聞いております。これらのことは、確実なこれに対しまする対策を立て、また方々周辺の方々にその問題に関しまする啓蒙をいたしまして、そのような事態を一日も早く解消するように努力いたしたいと考えておりますし、すでに道庁その他、また私の方の担当いたしております課長、あるいは係官を現地に派遣をいたしまして、それぞれ手配を了しております。そういう形におきまして今のような問題は一日も早く解消するようにいたしたいと思います。
  92. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ジャージーは特にこの病気にかかりやすい素質を持っているものではないでしょうか。
  93. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) ジャージーがブルセラに特にかかりやすい、そういうことはございません。
  94. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 従来、私ども長い間牛を飼っている者でありますが、ブルセラにかかった牛のことをあまり聞きません。ホルスタインにはそういうものがないのではないでしょうか。
  95. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 御承知の通り、長い間におきまするわが国の家畜防疫の効力の結果、ブルセラの発生、日本内地におきまする発生はごく少数でございます。しかし、全然皆無というわけではございません。このたびのものは海外から入れましたジャージー、そのジャージーによりまして運ばれたものでございます。豪州におきまするジャージーを入れます場合、海外からこういう家畜を入れます場合には、当初からこの問題を実は憂慮いたしておりました。さようにいたしまして、向うにおきまする検査その他のために専門官を二名派遣いたしまして、極力これらの問題に対しまする対策を講じて参ってきたつもりでございます。
  96. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ジャージーは、気候の不適格からその病気が特に起ったのではないでしょうか。
  97. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) このブルセラに限りませんけれども、こういう病気の場合、家畜個体の栄養でありますとか、あるいは家畜個体の抵抗力というものが強い、条件の非常にいい場合には、それらの病気を自然に克服することが表われております。従いまして気候が急変をするということ、あるいは状況が変るということ、また輸送途中その他の条件がよくないということ、これらのために、やはり家畜のからだ全体の栄養、衰弱等の状況がありますと、間接的にそういう病気の発生あるいは、それまで押えておりましたものが出てくるということは考えられるのでございます。それ以外に、特にそういう場合にどうという問題はなかろうかと思います。
  98. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 この問題は、将来の畜産の消長に重大な関係があると思うのでありますが、当局はどう考えられますか。
  99. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 海外から大量に家畜を入れます必要がありました場合、極力海外の輸入いたしまする、購買をいたしまする現地におきまして、あるいは輸送途上におきましてこれらの心配の起きませんように、極力海外から入れます場合における家畜について、病気が発生しないように、またそういう患畜を入れないように努力を今後も続けていきたいと思っております。  なお、万やむを得ないケースでこれが日本内地に入りました場合には、国の法律に基きまして、その発生を見ますれば直ちにこれを隔離し、あるいは真性であると決定いたしますれば、それを殺処分に付し、また汚染をいたしました牛舎その他につきましては、これを消毒いたす、こういうようなことを続けていきたいと考えております。さようにいたしまして、極力これに対する対策を続けまして、国内におけるこの病気の発生を根絶するように持って参りたい、かように考えております。
  100. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 潜伏期が長いために、この病気にかかったものは、現物を見てもわからぬという説がありますが、どうでございますか。
  101. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 潜伏期の間は気がつかないことが多いと思います。ただし、種々の検査をいたし、あるいは血液等をとって検査をいたしまして、これらの問題の患畜であるかいなか、あるいはその疑いがあるかどうかというような認定をいたす必要があろうかと思います。
  102. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 豪州から輸入したものにブルセラ病があったということでありますが、今後はその地方からもう将来輸入を中止するというお考えをお持ちになりませぬか。
  103. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 今のところ豪州からジャージー牛を導入いたしますのは、これを当初計画いたしましたような形で輸入を続けて参りたいと思います。ただし、今度のような問題がおきましたように、ほぼ現地におきましてどの牧場から出しましたものが非常に嫌疑が濃厚であるというようなことは現地で判明いたしておりますので、そういう牧場からの購入はこれは厳に禁止いたす旨を向うに連絡を済ましております。
  104. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 牛乳生産が過剰で農家が非常に困っておる今日、この問題があまり解決がついておらんのに輸入するということは不適当だと思うのでありますが、一時中止するお考えはありませぬか。
  105. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) ジャージーの希望は全国的に非常に強いと私たちは考えております。ミルクの需給関係の問題は確かに別途にあると存じまするが、これはこれといたしまして、対策を立てるべきものだと考えておりまして、現在ジャージー牛の導入を中止する考え方は持っておりません。
  106. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 牛乳生産過剰の今日、ことさらにそういうものを今にわかに入れなければならぬ理由はないと思うのでありますが、なお、それでもかまわずに入れられるということは非常に無責任な話ではありませぬか。
  107. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 牛乳が過剰であるかどうかという問題につきましては、いろいろ御議論があることと存じます。これは需要供給のバランスが失しました場合に過剰が生じて参るわけでありますが、この現在ありまする状況が果して恒常的な過剰であるかどうかという点につきましては種々議論がございます。これは私たちの方でいろいろ推測、推定をいたし、計画を立てておるわけでありますが、それらの考え方から申しますと、現在のミルクの需給関係というものは、確かに昨年の秋くらいから過剰の状況を示しておりますけれども、これは長く続く、あるいは大局的にこういう状況、つまり恒常的な過剰が続くというふうに私たちは考えておりません。従いましてこのジャージー種の導入自体につきましても、現在の過剰というものが将来とも続くというふうには考えておりませんから、また今入れましたジャージーが直ちにミルクを出すというわけではございません。今後の問題としてミルクを出すわけでありまして、さような考え方からいたしまして、ジャージー種の導入はやはり一定頭数はこれを導入いたしたい、かように考えております。
  108. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ジャージーの防疫については、何か防疫センターで調査中ということでありますが、まだその問題は解決ついておらんのに、なお継続して豪州から輸入するということは、これは大いに慎しまなければならぬことじゃないかと思いますが、どう考えられますか。
  109. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) これは、ブルセラだけにとどまりませんが、家畜の病気につきましてずいぶんとまだ未解決であるものが多いと考えております。ブルセラもその一つでございますが、従いましてこのブルセラの的確なる対策、的確なる病気治療の方法というものにつきまして、上述いたしましたように、海外からの共同の研究をいたす意味でアジアのブルセラ・センターを設置して共同研究を進めていきたい、かように考えておるわけであります。ただ現在までわかっておりまするブルセラに対する対策といたしまして、やはり全然ないわけではありませぬ。相当な方法がございます。従いまして、そういうやり方をいたしまして、入って参りましたブルセラに対する撲滅策を続けて参りたい、かように考えております。
  110. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 牛乳生産過剰に困っておる。このことは、われわれ畜産に従事しているものは実際に味わっておるのですが、当局はそういうことは味わっておられないのですか。
  111. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 牛乳生産過剰につきまして、昨年の秋からずいぶんいろいろな問題がございました。当局といたしましても十分痛感をいたしているのであります。ただ、これがそのままの状況が、そのままの需給状況が続くものであるかどうかというところに問題があろうかと思います。ちょうど二十九年のときにもやはり非常に過剰生産といわれたときがございました。それで大騒ぎをしたわけでありますが、三十年の夏にはミルクが足らなくて取り合いをするような状況になった事情もございます。その事情の通り、この三十二年の秋からの状況が三十三年の夏に繰り返すとは私たちは考えておりませんけれども、しかしそのような事情もございますし、また今後におきまする消費の増大もかなり高く考えていい問題ではないかと考えておりますので、この現在ありますような状況が長く続くものとは考えておりません。
  112. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ブルセラの問題が起りましてからわれわれは牧夫を雇うのに非常に困難をしているのであります。当局はその点どういう工合に考えておりますか。
  113. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 牧夫を雇うのに困難だというのは、実は私初めて聞きましたが、そういう事情がございますれば、またいろいろ対策を考えなければならぬと思います。今初めてそういうお話をお聞きいたしました。
  114. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 人間にもうつるという、これは当然起ってくるべきものだと思うのでありますが、一時といえども問題が解決つくまでは豪州から輸入しないような方法をとる方法はありませぬか。
  115. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) それは、実はブルセラの問題は、いろいろ問題がございまして、各地で問題があったのでありますが、それぞれその地方で片づけております。どうしても北海道の、御指摘のような所で、ブルセラのためにジャージーを入れるのが心配である、ジャージーを入れるのがいやだと、こういうお話であれば、これは必ずしも北海道に入れる必要はなかろうかと思います。そのほかの国内の地帯でずいぶんとジャージーの希望がございますので、そちらの方に回したいと思いますけれども、このジャージーを入れることと、ブルセラを防ぎますことと、ある程度分けて考えられる筋のものではないかと考えます。どうしてもブルセラがこわいためにジャージーを入れちゃいかぬ、このことは、実はこのジャージーを入れます当初議論を非常に私たちはいたしたわけであります。非常にいたしました結果、極力ブルセラの導入されることを防止してそうしてジャージーを入れることにしようじゃないか、こういうことになったのであります。その後確かに、十分に管理をいたしたつもりでありますが、やはり若干のブルセラの発生を見たわけであります。そうして、残念ながら、このたびまた北海道で発生を見たわけであります。今後もそういう発生の極力ないように、できるだけの全力を尽したいと考えておりますけれども、そのためにジャージーの導入を一時とめるというところまでには私たちはまだ決心をいたしておりませんし、また半面そういう事情がございますけれども、ジャージーに対する期待も相当に強いものがございます。それらに対しまする希望に対してもジャージーの導入をここで途絶させるということはまだ考えておりません。
  116. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 ブルセラがいやならば北海道ヘジャージーはやらぬぞというのははなはだけしからぬ、おどかし文句みたいに思いますが、これは単に北海道だけでなくて、日本全国の問題として私は伺っているわけであります。どうかそういう狭い考え方でなしに、一つ御答弁を願いたいと思います。
  117. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) 少し言葉が過ぎて申しわけないと思いますが、実はすでに何回もシャージーの問題につきまして、北海道の現地から見えております。その方々に対しましても、私はそういうことを申し上げているわけであります。と申しますのは、非常に恐怖心の高いものでありますれば、御指摘のように、しばらくの間ジャージーというものを入れない方が、私はその地方の気持を静める上に一つ方法かと思います。これは決して変な感じでなく申し上げているのであります。で、北海道の現地では、そのブルセラはこわいのだが、ジャージーは実は非常にほしいのだ、こういう御意見のようでございまして、従いまして一時はほかの、すでに日本に入っておりまするジャージー、それから生まれました子供を回すようなことを考えたらどうかというようなことも私たち考えてみたのであります。しかし、これはこれで、やはりその地帯その地帯で、その牛を放したくないという希望が非常に強い。これはもっともなことであります。でありますので、どうしてもブルセラがこわいということでありますれば、その地帯におきましてしばらくそういうジャージーの導入をとめざるを得ないということにならざるを得ないのじゃないかと思います。ジャージーというものとブルセラというものが密接不可分である。どうしてもこわいのだということになれば、やはりそういうことも考えざるを得ないのじゃないか。でありますから、決してそういうことならそれを渡さない、そういう簡単な言い方を申し上げているのじゃないので、現地の方々にはやはりその間の状況を見ながら、どういうふうに判定なさるかということを申し上げているのであります。道庁その他では、やはりジャージーというものはそれぞれ評判もいい向きもある。北海道は、御指摘のように、初めジャージーの導入されることを非常に実は反対の地帯がございまして、その後一部にジャージーが入りまして、ジャージーというものが非常にむしろ好評を得てきたところへ、現在そういう発生を見た。こういう順序になっております。従いまして、ああいう北海道のような所で、ほかの地帯と比べまして、やはりホルスタインに対する非常に何と申しますか愛着心も強かろうと思います。どうしてもジャージーを入れるのが困るという気持がほんとうに強いなら、やむを得ずそういうことも考えた方がかえって現地も納得されるのじゃないかということで、道庁にも相談したが、道庁としても、そこまでいかなくても、これは対策なり、その他を迅速に持っていったらいい、こういうふうなお話をなすっております。私たちもそれでいけばそれでけっこうだと思います。
  118. 北勝太郎

    ○北勝太郎君 北海道だけでなくて日本全体としてですね、この問題は非常に困る問題だと、こう思われませねか。
  119. 谷垣專一

    政府委員(谷垣專一君) まあ、毎年かなりの頭数を入れているわけでありますが、ブルセラの発生いたしますのはそう多くはございません。ごく例外的なものであります。例外的なものが発生しましても、それをできるだけ小範囲に急速に撲滅するために全力を尽しております。従いまして、そのことによりまして全国的にジャージーの導入をとめろというところまでには私たちはまだいっていない、かように考えております。
  120. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件はこの程度にいたします。   —————————————
  121. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 関根委員から、蚕糸価格の暴騰に……(「暴落だ」と呼ぶ者あり)蚕糸価格の暴落について緊急質問の御要求がありますので、この際追加して議題にして、御質疑を願うことにいたします。
  122. 関根久藏

    ○関根久藏君 皆様御承知の通り、実はこの蚕糸価格は最低が十九万円、最高が二十三万円と、こういうことに繭糸価格安定法できまっておるんだが、しかし内外の情勢からしばらくの間、約一年近い程度十九万円を低迷しておったんです。それが、くしくも昨日衆議院で三十三年度の予算が通過する日に、たちまち十九万が急激に割れて参りまして、十七万五千円ということに大暴落をしたんです。従いまして、実は先ほど政務次官もおいでになりましたから、いろいろ政府のお考えもお聞きしたいと考えまして、特に委員長にお許しを得て緊急に質問を申し上げたいと思うのでありますが、ただいま暴騰と申されましたけれども、あれは暴騰ではなくて大暴落、これは大へんな問題になってくるのであります。  御承知のように、繭は安定法によって千四百円は保証されておるわけなんであります。かようなことになりますというと、いろんな方面から見てこれを保証ができないようなわけであります。本年の養蚕も春蚕が六月ごろ出て参りますが、非常に養蚕家に対して不利を与える。もともとこれは安定制度に対する内外の疑心暗鬼がさようにさしたと思う。で、安定法によります大体のワクは、基金と信用によりまして、六十億なんです。ところが、六十億の金が来年度の予算に二十億追加されておりますから、ちょうど八十数億でありますが、かりに二十万円と仮定いたしましても八十億では、二四が八十億でありますから、四万俵も買えばもうあとは手は打てない。さようの見地から非常に今、何といいますか、変則的の何でありましょうが、製糸家が政府へ糸を売るために一生懸命糸を織る、早くその金のあるうちに売った方が得だと、こういう趨勢がきわめて濃いようであります。外国においては八十億きりないんだから、それ以上買えばもう安定制度はできないんだから、これはくずれてしまうんだから、そのうちに安くなるだろう、先般私どもがヨーロッパへ参りましたときも、もう日本の価格も一万円下げてくれ、下げるべきだと、こういうことを申しておったぐらいでありますから、ちょうどいい機会に身上が洗いざらい出てしまったんだから、これがこれきりないから下るんだということで、昨日十七万五千円が出たと思うんです。まあそれらの経過につきまして、一つ蚕糸局長から、どうしてこうなったか、どういうわけでこうなるのか、一つ一応の御見解をお伺いしたいと思う。
  123. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 横浜の生糸取引所の先物相場は、昨日以来大幅に下落しております。この件につきまして、今後の対策等につきましてかいつまんで申し上げたいと思います。  昨日はちょうど八月限の新甫が立ちまする日でございます。八月渡しの相場は昨日から——一日から出たわけであります。一日に八月限は十八万五千円という相場が出たのでございますが、さらに昨日その安値を更新をいたしまして、八月限は十七万五千円という相場になったのでございます。これは六月限以降は、それぞれ現在の最低価格を大幅に割っておる。当月限及び四月限、五月限につきましてはそれほどのことはないのでありますが、六月限以降が大幅に糸価安定の最低価格の線を割っておるという状態になっておるわけであります。昨日の横浜の引値は、六月限が千七百七十四円、これは一斤でございますので、俵に換算いたしますと十七万七千四百円、七月限十七万七千五百円、八月限が十七万五千円、こういう相場に相なったのでございます。このように先物に限りまして大幅に下げて参りましたのは、最近、政府に対しまして生糸の最低価格による売り込みが非常に増加をして参ったのであります。生糸の値段は、昨年の八月ころまでは大体二十万円に近い線を維持しておったのでございまするが、十月ころからだんだん軟調になって参って十二月の初めから、最低価格十九万円の線に膠着をいたしておるわけでございます。従いまして、去年の十二月、ことしの一月、二月と最低価格による売り込みが続いたわけでございます。それで、二月末現在におきまして政府が最低価格で買い入れましたものは、約二万俵になったのでございます。そのような生糸自体の不況、それに加えまして、一般繊維が、御承知のように、今非常に不況の状態にあるわけでございますが、それらの要素がいろいろ積み重なりまして、生糸につきましても非常に暗い場面が続いておるわけでございます。二月末二万俵の政府買い入れ手持でございますが、これを業界の方、いわゆる業者なりの感覚で見まするというと、かりに、三月以降におきましても月五千俵ぐらいの割合をもちまして政府に最低価格による売り渡しが続くと仮定をいたしますと、三、四、五、六の大体四カ月間ぐらいで今政府が持っておりまする糸価安定の資金は底をつくであろうというような見方が業界に出て参ったのであります。その結果、六月限あたりから先が大幅に下落をいたして参ったわけでございます。言葉をかえて申し上げますと、今回この国会で御審議をいただいておりまする糸価安定特別会計法の改正によりまして二十億円の資金追加をいたしましても、今のような情勢が続く限り、六、七月のころには糸価安定が底をついてくるのではないかというような観測が生まれて参った。それが、市場におきまして先物の現物の値段に非常に大きく響いて参ったわけでございます。状況は、以上申し上げました通りでございますが、そのような情勢にございまするので、われわれといたしましては、以下申し上げまするような対策を講ずることによりましてできる限り早期に糸価が回復して参るように努力をいたしたいと考えるわけでございまするが、特に生糸につきまして、昨年暮以来糸値が十九万円にこげついておりまするのは 一般繊維の不況に加えまして、特に生糸につきましては、昨年産の繭が非常に豊作であったわけでございます。去年は、農林統計の面では三千百八十万貫の生産統計になっておるのでございまするが、その前年は、凍霜害もありましたような関係もありまして、統計面では二千八百八十万貫になっておる。ただ実際は、一昨年におきましても約三千万貫に近い繭は、製糸工場に入った面から調べてみますと、とれておるようでございまするが、いずれにいたしましても、昨年の繭産額は戦後最高でありまするし、前年を二百万貫以上上回っておることは事実でございます。それで昨年の暮にわれわれの方で器械製糸工場につきまして繭の手持がどのぐらいあるかを調べてみたのでございますが、それによりますと、ちょうど一昨年の同期に比較いたしまして、製糸工場の繭手持は、二割程度多いようでございます。一方、糸価に対する先行きの見通しが非常に暗いというような情勢が作用いたしまして、製糸家は去年の暮から今年の正月、二月とかけまして非常に糸をひき上げるテンポを速めて参った。今年の一月の糸の生産高を見ますと、去年の同月に比較いたしまして二割八分程度よけいひいておる。これは、休みも返上してやる、時間延長をやる、というような形においてどんどんひき急ぎをして参った。二月の実績はまだ出ませんが、おそらく二月は、去年の二月に比較いたしまして三割以上よけい糸をひいておるのじゃないかと私どもは推測をしておるわけであります。従いまして、それをどんどんひきまして、しかも、市場の方は、輸出の面におきましても先安の気分が出ておりますために、なかなか輸出の方もはかばかしくない。一方、国内で使われます分の方も、こういう景気の情勢でございまするから、各繊維を通じまして機屋は手控えておるというようなことになりまして、作られましたものの相当量が政府へ持ち込まれるということになって参ったわけであります。それで先月は二月二十八日までで六千俵以上の政府売り込みがあったわけでございます。まあそういうような状態が続いておるわけであります。それで、先物の相場が下落をいたしましたことと照応いたしまして、今私どもが製糸業者に要請をいたしておりまするのは、いずれにいたしましても、こういうようなテンポで糸のひき急ぎを非常にやりましていちずに政府へ持ち込むというような態勢を続けて参りまする限りは糸価安定制度につきまして資金面で補強をいたしましても、とうてい将来を考えますと維持をしていくことは困難であるという考え方に立ちまして、製糸に対して操業短縮を要請をいたしておるのでございます。私、ただいまお呼び出しを受けます際にも、業者の方とこちらの話をいろいろ詰めておったのでございまするがいずれにいたしましても、どんどん繭をひき急ぎまして製品を横浜へどんどん出していくという状態では、とうていこの状態を改善することは困難だ。従いまして、製糸も操短をやってもらうべく今話し合いを進めておるわけであります。現在全部の繊維につきまして、これは私の方で調べましたものがございまするので、あとから差し上げたいと思いまするが、全部の繊維を通じて相当高率の操短をやっておるわけであります。さらに情勢によっては操短率等も引き上げなければならぬというような情勢になってきておるわけであります。今から一カ月ばかり前に経済企画庁長官が主要繊維の業者を集めまして繊維対策につきましていろいろ協議をされたのでございまするが、私どももそこへ出ましていろいろ話を聞いた状況によりますと、今から一カ月くらい前には綿、スフ等につきまして四月好転という考え方をかなりの人が持っておった。四月好転説、四月になったら状況が少しはよくなるんではないだろうかという期待を持っていたのでありますが、最近の情勢によりますと、特に繊維の不況がある程度時間が長引くということも考えて参らなければならないような情勢になっておりますので、生糸につきましても操短を具体的に協議いたしておるわけでございます。  それから、糸価安定資金は最近の政府売り込みが急激にふえましたことによりまして、二月末現在におきまして約四十億円を支出しております。四十億円相当分が糸にかわって、これが政府手持となっておる。従いまして、現在の糸価安定会計の内容といたしまして、なお二十億円の買入資金の残を持っておる、約一万俵に相当する数量の買入資金を持っておるわけであります。さらに現在御審議をいただいております特別会計予算及び関係法律が成立をいたしますれば、二十億円の資金が追加されるわけであります。そういたしますと、二月の初めから考えまして、なお四十億、二万俵に相当する資金が現在あるわけであります。従いまして、糸価安定の規模といたしましては、約半分の金が糸にかわった段階でありますけれども、全体の不安人気というものが非常に強くなってきているというふうな事態によりまして、今先ごろの相場がそういうふうになって参ってきておるわけであります。今後の糸価安定会計の問題といたしましては、先ほど申し上げました、製糸業者自体として、糸価回復にどのような具体的努力をして参るかというような状況等も十分見ました上で、今後の問題として必要な措置を講ずることにいたしたい、さように考えておるわけであります。一般繊維に比較いたしまして、この生糸につきましては、糸価安定制度がありましたために、今日まで業者の倒産も出ておりませんし、一応やって参ったわけでございます。この制度を安易に使いますと、将来の問題といたしまして非常に大きな問題が出て参る、さように考えまして、業界の方にも積極的に協力を要請をいたしておるわけでございます。  なお、今年の春繭は、相当増産されるのではないかという見通し、予測が出ております。これは気象条件、あるいは去年の夏秋蚕が非常に豊作でありました関係で、桑の成育条件が非常にいいそうでございますが、そのようないろいろな条件によりまして、今年の春繭は気象状態が普通に推移いたしますと相当量増産される可能性があるわけでございますが、これは今日のような情勢になりましたので、全養連当局におきましても、いろいろこれに対する対策を考えておるわけでございます。ただ私どもといたしましては、万が一今年の春繭につきまして、最低繭価の維持が困難であるというような事態が起きました場合は、繭糸価格安定法の中に定められております乾繭共同保管制度を動かして参らなければならないのじゃなかろうか。昭和三十年に繭糸価格安定法が改正されまして、そのとき乾繭共同保管制度を加えたのでございますが、今日までは幸いにいたしまして現実に発動するような事態はなかった、今年あたり場合によりましてはこちらの側からも乾繭共同保管につきまして必要な措置は講じなければならぬ、今から事前の準備といたしまして全養連当局にもいろいろ、共同保管が現実に行われます事態に備えまして、いろいろその準備を要請いたしているようなわけであります。  なお、つけ加えて申し上げておきたいと考えますることは、新聞記事等によりますと、三月一日から政府買入生糸の制限を行なったことが、今回の暴落の契機ではないかということが報道されているのでございますが、この点につきまして、これを御説明申し上げたいと考えますことは、三月一日から政府買入生糸につきまして品質の制限をいたしたことは事実でございます。これは数量の制限ではございません。品質の制限をいたしたわけであります。さような措置をとりましたのは最近政府に入って参りまする糸の内容をこまかく調べてみますると、どうも政府売り込みだけを目当てにしてひいた形跡が見られるわけであります。今政府で買っておりますのは、二十一中A格、それから3A格、それからB格、C格という、そういう糸を買っているわけでございますが、この二十一中A格という糸の格づけも実際には非常に幅が広いわけであります。二十一中A格と格づけされましたものの中にも、内容的には非常にいいものと悪いものがあるわけであります。ここ数年来の糸の実需の傾向を見ますると、だんだんできるだけ細目のものが好まれる傾向になってきている。それで、現実に市場で取引をされておりまするのは、二十一中A格という非常に幅の広いものの中でも、現実には細目の方にしぼられたものが取引をされている。去年の八月に横浜の生糸取引所におきまして、同月限の値段が十九万円を割りそうな事態が一、二回ありましたために、取引所の受け渡しの供用品の規格をしぼったわけであります。これは細目の糸の方が受け渡しの供用になるという形にしぼった。ところが、去年の十二月以降政府へ行ってきておりますものをこまかく調べてみますると、太目の糸のものがまじっている。これはどういうわけでそういうことになるかと申しますと、製糸家は能率を上げることばかりにまあ狂奔をいたしまして、そういう糸をひきますと非常に能率が上る。従って政府売り込みの規格のすれすれのところまで場合によったら下げていくというような気配も見えたものでございますから、三月一日からこの品質をしぼりまして、横浜生糸取引所の受け渡し供用品になり得るもののところまでしぼった。従いまして、言い方を変えますと、今までの政府の買い入れがやや甘かったのでありますが、これを三月一日から一般市場に規格品として流通をいたしておりまする限度にまでしぼったのでございます。たまたま六、七月限の大幅の値下げが三月一日にあったものでございまするから、この政府の買入品の品質をしぼったこととこれが一緒になりまして、そのために下ったようなふうに報道されているのでありますが、その間の事情はただいま申し上げた通りで、これはしぼるにつきましては業界ともよく話しをいたしまして、製糸家としてそういう行き方は改めてもらわなければならない、十分協議の上でやったわけでございます。  以上で御説明にかえさしていただきます。
  124. 関根久藏

    ○関根久藏君 ただいまのお話を要約してみますというと、製糸に対する操短の問題だけのようでありますが、これはどんな程度に操短をさしていくお考えなんですか。それがまた、操短がそういうふうに工合よくいくとお考えになっておるのか。
  125. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 三月から私どもの方で、現在製糸家が持っておりまする繭、それから今後の輸出の見通し、内需の見通し等も総合いたしまして推定をいたしてみますると、今の製糸家が持っております繭を全部糸にひいてしまいました場合には、かなりの余剰といいますか、政府へ売らなければならないものが出てくるというふうに考えるわけでございます。それで三月から操短をいたしますと、大体三、四、五と三カ月間大体二割くらいの操短、それから四月、五月で操短をやりますと、四月、五月に操短率が三月分だけずれますので少し高くなって参ります。そういう見当でございます。
  126. 関根久藏

    ○関根久藏君 それから、来生糸年度の価格もそのうちにおきめになるんでしょうが、かような時期に際会いたしましては、速急におきめを願って、政府の方針を明確にすることが一番必要ではないかと思うのですが、安定審議会ですか、価格安定審議会ですか、それへいつごろ諮問をなさるお考えですか。
  127. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 繭糸価格安定審議会を早期に開きまして、来年度の糸に対する方針を早くきめようという要請が非常に各方面から強いのでございますが、私どもの方でもこの新糸の値段をきめまする材料の整備につきましては、本年度は特別にいろいろ工夫をいたしまして、いろいろその時間も短縮さしております。それで目下の見通しでは、十日ごろに大体新糸の値段をきめまする資料が整う見込みでございますので、ただいま私どもの方で予定いたしておりますのは、今月の十三日ないし十四日に繭糸価格安定審議会を開催して新糸に対する方針をきめたい、かように考えております。
  128. 関根久藏

    ○関根久藏君 そのときに、この十九万円は堅持するのだというふうなことをお考えになっていますか、どうですか。
  129. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) いろいろ情勢が急激に変っておりまするので、考え方等につきましてもいろいろな考え方も出てくると思うのでございまするが、私ども現在農林省部内におきまして、いろいろ方針につきまして協議をいたしておりますることと、それから部外に対しましても新糸の決定の方針につきましていろいろ協議をいたしておりまする考え方は、いろいろ情勢が激変いたしておりまするけれども、三十三年生糸年度の最高生産価格は現行の線を続けて参りたい、そういうふうに考えております。
  130. 関根久藏

    ○関根久藏君 まあ、先のことはどうなるかわかりませんけれども、いろいろの施策によってあるいは食いとめることが可能であろうとわれわれも念願しておるのですが、万一いろいろのことが起って安定制度が維持困難だと、さようなことに際会しました場合の政府のお考えを一つ承わっておきたいと思います。
  131. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 私は、生糸のような性質の商品につきましては、不況の影響を受けます度合いが相当強いわけでございます。また逆に景気が立ち直って参りました場合の回復の度合いもまたかなりの期待が持てると考えるわけでございます。従いまして繭糸価格安定制度と申しまするものは、このような事態に備えて発足したものと了解いたしまするので、この制度の維持存続につきましては、業界の協力も求めまして万全の措置を講じたい、さように考えます。
  132. 関根久藏

    ○関根久藏君 政務次官にお尋ねしたいのですが、ただいまの蚕糸局長の御答弁のようなふうにお考えになっておられますか。
  133. 瀬戸山三男

    政府委員瀬戸山三男君) ただいま局長からいろいろ詳細にわたって御説明、お答えいたしましたが、生糸の価格維持については、農林省としても非常に今日まで苦労を、苦心をいたしておるところであります。しかしながらこういう、何といいますか、急変が起りましても、今局長が申し上げましたように、そのための価格維持安定の方策でありますから、これはあくまでも維持していくと同時に、今関根さん非常に御心配なさっておりますように、これから春蚕の時期に入りますときでありますから、影響するところは生産農家に直接関係があります。でありますから、そういうところに悪影響のないように、必ず最大の努力をいたします。こういうふうに申し上げておきます。
  134. 関根久藏

    ○関根久藏君 どうぞよろしくお願いします。
  135. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件はこの程度にいたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後四時七分散会