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1958-02-27 第28回国会 参議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月二十七日(木曜日)    午前十時四十五分開会   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            柴田  栄君            藤野 繁雄君            清澤 俊英君            鈴木  一君    委員            雨森 常夫君            佐藤清一郎君            田中 啓一君            田中 茂穂君            仲原 善一君            堀  末治君            東   隆君            安部キミ子君            江田 三郎君            大河原一次君            河合 義一君            北村  暢君            梶原 茂嘉君            北 勝太郎君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 赤城 宗徳君   政府委員    農林政務次官  本名  武君    農林政務次官  瀬戸山三男君    農林大臣官房長 齋藤  誠君    農林省農林経済    局長      渡部 伍良君    農林省蚕糸局長 須賀 賢二君    水産庁長官   奧原日出男君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農業協同組合整備特別措置法の一部  を改正する法律案内閣送付予備  審査) ○臨時肥料需給安定法の一部を改正す  る法律案内閣送付予備審査) ○開拓融資保証法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○開拓者資金融通法の一部を改正する  法律案内閣送付予備審査) ○繭糸価格安定法の一部を改正する法  律案内閣送付予備審査) ○漁業制度調査会設置法案(内閣送  付、予備審査) ○農業協同組合法の一部を改正する法  律案内閣提出) ○農林水産政策に関する調査の件  (日ソ漁業交渉並びに国際漁業問題  に関する件)   ―――――――――――――
  2. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。  農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案閣法第六四号、内閣送付予備審査、二月二十一日衆議院農林水産委員会において可決)、臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案閣法第四四号、内閣送付予備審査)、開拓融資保証法の一部を改正する法律案閣法第六号、内閣送付予備審査)、開拓者資金融通法の一部を改正する法律案閣法第六五号、内閣送付予備審査)、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案閣法第九〇号、内閣送付予備審査)及び漁業制度調査会設置法案閣法第六六号、内閣送付予備審査)を一括して議題にいたします。  まず、提案理由説明を求めます。
  3. 本名武

    政府委員本名武君) 農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  わが国農業振興いたすためには、農業協同組合整備強化をはかる必要があることは、今さら申すまでもないところであります。従って政府といたしましても、農業協同組合整備強化につきましては、鋭意努力を重ねて参っておるのでありますが、御承知のように、特に経営が不振な農業協同組合につきましては、すでに昭和三十一年度から農業協同組合整備特別措置法により、強力にその整備促進をはかってきたのであります。  ところで、本法により整備を行おうとする農業協同組合整備計画を樹立しなければならない期限及び都道府県知事農業協同組合に対し合併について協議すべき旨を勧告することができる期限は、いずれも、昭和三十三年三月三十一日までとなっているのであります。  一方、経営不振な農業協同組合現状から見まして、本法を適用すべき農業協同組合の数を、当初より若干増加する必要があります。しかし、本法実施状況からいたしますと、これらすべての経営不振な農業協同組合につき、右の期限までに所要措置をとらせますことは、困難な向きがありますので、右の期限を若干延長すれば、経営不振な農業協同組合整備に遺憾なきを期し得ると信ずるのであります。従って、この際、この期限を一年延長することとし、第二条及び第十四条に所要改正を加えたいのであります。  以上が、農業協同組合整備特別措置法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  次に、臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  政府は、第十九回国会において制定せられました臨時肥料需給安定法に基き、昭和二十九年度以降毎肥料年度肥料需給計画の策定及び硫安の最高販売価格決定等を行い、農業生産資材のうち、最も重要な肥料需給調整価格の安定のため、格段の努力をいたして参ったのであります。  特に肥料需給計画決定に当りましては、政府は、同法第三条第二項第四号の規定によりまして、需給調整用として国内消費見込数量の一割程度保留数量を見込まねばならないこととし、そうすることによりまして、国内消費量計画に織り込まれた消費見込み数量を上回る場合に備えて、需給計画弾力性を持たせるようにいたすこととしておりますほか、さらに同法第六条の規定によりまして、農林大臣は、肥料需給調整をはかるため、その指定する団体に、肥料種類数量及び買い取りの時期を示して、需給調整用としての保留数量範囲内において肥料を買い取るべき旨を指示するものといたしまして、毎肥料年度一定量保管団体に不需要期に買い取らせ、需要最盛期に放出せしめ、それに対し、同法第九条の規定により、肥料買い取りにより生じた欠損金の額に相当する金額を、当該団体補助することとしているのであります。  しかるに、最近における肥料需給事情は、生産量が著しく増加して、需給に不安を生じない状態となっており、今後、生産増加及び消費増加見込みからいたしまして、需給相当緩和されるものと考えられますので、第三条の規定による需給計画には、今後も調整保留数量を計上して参りまして、内需の不測の需要に対処し得るよう措置すべきものと考えますが、第六条の規定による保管団体に対する買い取りの指示を必ず行うということについては、需給状況改善実情に照らしまして、今後は需給調整をはかるため必要があると認めるときにのみ、この措置を講ずることができるものと改正することが適切でありますので、このたびこの法律案を提出いたした次第であります。  以上が、臨時肥料需給安定法の一部を改正する法律案趣旨でございます。  次に、開拓融資保証法の一部を改正する法律案趣旨を御説明申し上げます。  戦後の開拓事業も、ここに約十年余を経ましたが、政府といたしましても、この事業達成のために多大の努力を払っており、また、開拓農家もその営農の安定をはかるために、日夜精進して参り、その生産力も年々高まってきております。  しかしながら、開拓農家営農現状を見ますと、一部には入植後数年ですでに既存農家水準を越え、新しい農業経営先駆者と認められる者もありますが、他面、不利な立地条件とたび重なる災害等のため、いまだに富農の基礎も確立できない不安定な開拓農家も少くないのであります。  政府といたしましては、右の実情にかんがみ、今後の開拓者入植につきましては、開拓入植方式を刷新し、入植者営農類型を改訂拡充しまして、これに基き、政府各種措置を講ずることとし、昭和三十三年度の新規入植はこの方針のもとに、ひとまず、営農の早期安定が確実と見込まれる地区において入植させることとし、その戸数は、二千五百戸にとどめる一方、既入植者営農振興に特に重点を指向し、第二十六国会において成立を見ました開拓営農振興臨時措置法等に基きまして、開墾建設工事については、残事業促進をはかるほか、追加工事を必要とする地区に対し、新たに高率補助により、開拓地改良事業を実施するため経費を計上し、また、営農資金については、開拓者資金融通特別会計から既入植者に対する貸付金の大幅な増額及び債務条件緩和をはかる等、総合的に施策を実施する考えであります。  一方、開拓農家の必要とする肥料飼料種苗等の購入に要する短期資金につきましては、農業手形制度の利用が困難なために、昭和二十八年七月開拓融資保証法を施行しまして、自後、中央及び地方に開拓融資保証協会を設立し、開拓農家債務を保証し、農林中央金庫の資金の円滑な融通をはかって参りましたが、さらに、三十一年秋より中小家畜等貸付期間三年以内の中期資金についても本制度にとり入れ、営農資金拡充確保をはかってきたのであります。その後、この制度に対する開拓農家の加入も増加し、また、営農の進展に伴い、資金需要増大して参りましたため、現在の中央開拓融資保証協会の基金をもってしては、開拓農家債務保証の要望にこたえられない段階に立ち至りましたので、政府は、主として既入植者営農振興対策の一環として、さらに、昭和三十三年度一般会計から三千万円を中央開拓融資保証協会に対し追加出資して、その保証ワク増大をはかり、開拓農家の必要とする肥料飼料等短期資金及び中小家畜等中期資金融通を一段と拡充円滑にし、もって開拓農家農業生産力発展農業経営の確立を期待するものであります。  以上が、開拓融資保証法の一部を改正する法律案趣旨であります。  次に、開拓者資金融通法の一部を改正する法律案趣旨を御説明いたします。  開拓者が未開の開拓地入植し、営農基礎を確立するためには、必要な長期及び中・短期資金を要しますことは、言を待たないところでありますが、政府は、昭和二十一年度から開拓者資金融通特別会計を設置し、新規入植者に対し、長期低利基本営農資金貸付を行うこととし、昭和二十七年度からは、新規入植者に対する右融資のほか、さらに、入植後三カ年以上を経過したいわゆる既入植者に対しましても、中期営農資金貸付を行うこととし、もって開拓者営農発展に努めて参ったところであります。  しかしながら、開拓者営農現状を見ますと、一部には、入植後数年で、すでに既存農家水準を越え、新しい農業経営先駆者となったと認められるものもありますが、他面、入植相当の年月を経ても、不利な立地条件や、建設工事の遅延その他やむを得ない事由により、入植当時目標とした営農基礎を未だ確立できず、また、たび重なる災害等により、過大な負債のため、経営基礎が不安定な開拓者が、少くないのであります。  政府といたしましては、このような既入植者実情に照らし、極力各般の措置を講じ、特にその営農振興に力を注ぐことといたしておりますが、これがため必要な営農資金につきましては、まず、開拓者資金融通特別会計による貸付金の総額が、三十二年度は十九億円でありましたものを、三十三年度は二十八億円といたしました。そのうち、既入植者に対し融通する大家畜農用施設農機具等を取得または設置するための貸付金を、三十二年度の八億五千万円から、三十三年度は十六億二千五百万円に、相当大幅に増額しまして、これによりまして、一般開拓者に対し、いわゆる中期資金を、おおむね継続して融資するほか、特に、開拓営農臨時措置法規定する不安定な開拓者に対しましては、重点を置き、貸付額増加及び償還期間の延長をはかりたいと考えております。すなわち、償還期間が、従来八年でありましたが、特に、開拓営農振興臨時措置法の適用を受ける経営不安定の開拓者に対しましては、これを十二年といたしたのであります。これが、本改正法律案を提出した理由であります。  これによりまして、開拓営農振興臨時措置法に基き、振興計画が適切に立てられた開拓者に対しまして、この貸付を行うとともに、別途行うこととなっております負債条件緩和等措置を、あわせ行いますと、おおむね五年後には、現在営農の安定のために、特別措置を講ずることが必要と認められる開拓者が、農業収入生計費をまかない、自立安定した農家となり、さらに進んでは、自後、自力により拡大生産を続けることになると考えるのであります。  さらに、別途、中央開拓融資保証協会に対する政府出資増額をいたしまして、その保証ワク増大により、開拓者肥料飼料中小家畜等を購入するための資金融通拡充円滑化をはかりますとともに、いわゆる天災による資金融通法により、比較的短期経営資金を借り受け、これの償還が困難な開拓者に対しましては、開拓営農振興臨時措置法による振興計画に基き、その実情を検討の上、これを長期営農改善資金として借りかえる等の措置を、あわせ講ずる所存でおります。  なお、既入植地であって、特に振興を要すると認められる開拓地におきましては、開墾建設工事につきまして、さらに事業促進して、残事業の圧縮をはかるほか、開拓地内の土地改良事業に対し、新たに高率補助を行う等の措置を講じまして、総じて、開拓地における営農振興に資しようと考えております。  以上が、開拓者資金融通法の一部を改正する法律案趣旨であります。  次に繭糸価格安定法の一部を改正する法律案について、その趣旨説明申し上げます。  この法律案は、生糸輸出の増進をはかるため、輸出適格生糸についての特別買い入れ制度を拡充するとともに、この制度による生糸買い入れ及び保管業務を行う日本輸出生糸保管株式会社を、法律に基く特別会社に改組して、繭糸価格安定制度運営の円滑を期するための改正であります。  以下、法律案内容についてその概略を申し上げますと、  第一は、生糸輸出価格の安定をはかるため必要があるときは、輸出適格生糸について、一定数量範囲内で、日本輸出生糸保管株式会社買い入れ保管しているもののうち、所定の期間内に売り主から買い戻しの請求のないものについては、政府においてこれを最低価格保管に要する経費を加えた価額で買い入れることができる旨の規定を新たに設けたことであります。  次に、右の特別買い入れ業務を行う日本輸出生糸保管株式会社事業範囲及び同会社に対する政府出資等について規定するとともに、その業務運営等について、所要監督規定を設けることとし、その改正に伴い、現に存する日本輸出生糸保管株式会社を、法律に基く特別会社に改組するため必要な規定を設けました。  なお、政府が保有している生糸について、買いかえを行う場合の規定を加えることにいたしました。  以上が、繭糸価格安定法の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらむことをお願いする次第であります。
  4. 瀬戸山三男

    政府委員瀬戸山三男君) 次に、漁業制度調査会設置法案提案理由を御説明申し上げます。  わが国漁業は、戦後の復興に伴い、次第に漁場拡大されるとともに、漁業に関する政府の諸施策とも相待ちまして、急速な発展を遂げ、昭和二十七年度においては、その生産高において戦前の最高水準に復帰し、以来、世界有数水産国の実をあげておりますことは、御承知通りであります。  しかしながら、この間、沿岸漁場における漁業生産は、必ずしも十分な伸展を見せず、漁業経営体総数の八割五分を占める漁家層は、低い生産性所得水準にとどまり、また、この漁場における漁業調整、特に沖合漁業との問題は、近来深刻化して参っているのであります。一方、近年におきましては、遠洋漁場において、沿岸国との調整をはかる必要が漸次増大するほか、水産資源最高生産性を維持するための国際協調が進められ、漁業に関する諸条約が締結されまして、従来のように、漁場拡大により、問題を解決する方途にも慎重なる態度をとらざるを得ない事態に至っているのであります。  このような事態のもとにおきましては、従来にも増して、一そう水産資源維持培養をはかり、漁場を高度に利用し、漁業調整に意を用いまして、漁業生産性を向上し、漁業者協同組織整備し、その経営の安定を期して参らねばならないと思うのであります。従いまして、この時に当り、ただに従来とられております各種漁業振興施策を強化するのみならず、現行漁業に関する基本的制度も検討し、これが改善措置を講ずる必要があると存ずるのであります。  現行漁業法によりますと、昭和三十六年度におきまして、一部の漁業権につきましては、第二回目の、その他の漁業権につきましては、第一回目の更新時期に際会いたすことでもあり、この間の漁業事情の推移をあわせ考えまして、現行漁業生産及び漁業者協同組織に関する制度を検討し、一そうの生産性の向上と漁業経営の安定を期するために、現在これら諸制度改善をはかる要緊切なるものがあると存ずるのであります。もとより、行政庁におきましても、かねて研究調査を重ねて参っているのでありますが、これら制度改善に当っては、その影響するところも多く、また、これら諸制度は、相互に複雑な関連を有しており、専門的に深く検討する必要がありますので、この際、水産庁漁業制度調査会を設置し、広く学識経験者の御参集を得て、慎重に審議を重ねていただくことが最も適当であると存じ、この法律案を提出する次第であります。  以下、この法律案内容について概略説明申し上げます。  まず、本調査会所掌事務でありますが、本調査会は、農林大臣の諮問に応じまして、漁業の許可、免許を初めといたしまして、漁業調整水産資源保護等漁業生産に関する制度及びこれらの制度と密接なる関係を有しまする漁業協同組合等漁業者協同組織に関しまして、その改善方途につき、重要事項調査審議し、また、これらに関し必要と認める事項を、関係行政庁に建議することをその任務といたしたのであります。  次に、本調査会組織でありますが、本調査会は、委員二十五人以内で組織するものとし、必要に応じ、十人以内の専門委員を置くことができるものといたしました。これら委員及び専門委員は、学識経験者のうちから、農林大臣が任命することとし、会長は委員の互選によって定めることといたしました。  このほか、この法律制定に伴いまして、水産庁設置法の一部改正を行なっております。  以上が、この法律案提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いする次第であります。
  5. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) これらの法律案審議は、日をあらためて行うことにいたします。  速記をとめて。    〔速記中止
  6. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。  引き続いて、農業協同組合法の一部を改正する法律案閣法第一〇〇号内閣提出参議院先議)を議題にいたします。  まず、提案理由説明を求めます。
  7. 本名武

    政府委員本名武君) 農業協同組合法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。  農業協同組合及び農業協同組合連合会の行う共済事業につきましては、昭和二十九年六月、第十九国会において成立いたしました農業協同組合法の一部改正により一応その整備を見たのでありますが、その後の共済事業発展にかんがみて、特に共済契約者あるいは被共済者たる組合員の利益の保護共済事業の健全な運営を確保する見地から最も重要な事項と考えられる責任準備金積立財産運用方法規制等につきまして、なお十分とはいえない点がありますので、現在、行政庁承認を受けた共済規程の定めるところにより積み立てられている責任準備金につき、その積立義務を法定いたしますとともに、財産運用方法につき、必要な規制を加える等の措置を講ずることにいたしたいのであります。  次に、農業協同組合中央会の行う監査事業につきましては、当該事業の円滑な運営に資し、農業協同組合及び農業協同組合連合会の健全な発達をはかるという農業協同組合中央会の本来の目的達成に寄与するため、農業協同組合中央会監査事業関係規定整備し、監査実施手続を明確にするとともに、監査事業に対する農業協同組合及び農業協同組合連合会協力関係を明定することにいたしたいのであります。  以上が、農業協同組合法の一部を改正する法律案趣旨でございます。何とぞ、慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げる次第であります。
  8. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 続いて、本法律案内容その他について、補足説明を求めます。
  9. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま議題となりました農業協同組合法の一部を改正する法律案補足説明を申し上げます。お手元に農業協同組合法の一部を改正する法律案関係資料というもの、それからもう一つ、農業協同組合及び農業協同組合連合会責任準備金積立及び財産運用に関する省令案要綱というのを追加してお配り申し上げておりますから、それをごらん願いながらお聞き取りを願います。  まず第一点の、責任準備金関係でありますが、これは法案の第十条の三から第十条の四まで規定しているのでありまして、その責任準備金規定は、もともとこの共済事業をする性格からいたしまして、契約者、あるいは被共済者たる組合員保護、この事業の健全な運営等を確保するための必要性からすると、事業内容にわたりまして相当法的規制を行うことが必要であるのでありますが、昭和二十二年に農協法制定によって共済事業が行われまして、行政庁行政指導でやっておりましたが、それでは不十分であるというので、昭和二十九年六月に農協法の一部を改正いたして共済事業を行う組合及び連合会共済規程行政庁承認にかからしめる等、農協法必要最小限度事業監督規定整備いたしました。そうしてそれに基きまして、農業協同組合及び連合会共済規程に記載すべき事項を定める省令制定しおります。さらに、農協共済事業指導要綱という通牒を出しまして、その運営に遺憾のないことを期しておるのでありますが、あとで資料について御説明申し上げますように、この事業が非常に急速に伸びてきておりまして、今まで程度のことでは不十分である、そこで、少くとも金を預っておるのでありますから、責任準備金積み立て規定あるいは単位組合における共済事業にかかる会計を、他の事業にかかる会計と区分して経理する規定、あるいは共済事業を行う連合会財産運用方法、そういうものについてはっきり法的な規定を置くことが、この際、必要である、こういうことで、この改正をお願いしておるのであります。で、ここにあります責任準備金は、省令案要綱でごらん願いますように、「省令の定めるところにより、」「積み立てなければならない。」、こういう規定になっております。その省令には、要綱でごらん願いますと、「責任準備金積立」、「法案第十条の三の規定により農業協同組合又は農業協同組合連合会積み立て責任準備金種類及びその額の計算は、次の各号によるものとする。」ということを規定いたしてあるのであります。すなわち、積立部分を有する共済事業種類――これは養老生命共済建物更生共済でありますが――は、次の額の合計額、すなわち(イ)共済掛金積立金、(ロ)未経過共済掛金、(ハ)特別危険準備金、こういう種類積み立てであります。さらに積立部分を有しない共済、すなわち火災共済であります。これは、次の額の合計額、すなわち(イ)未経過共済掛金、(ロ)特別危険準備金、こうなっております。これの計算の仕方は、現にやっておる方法をそのまま省令で――今までは指導要綱でやっておるのを、特令規定して、もっとはっきりしよう、こういうのであります。  さらに、「財産運用」、これは第十条の五であります。運用については省令で「農業協同組合財産共済事業会計に属するもの及び農業協同組合連合会財産は、次に掲げる目的以外の目的運用することができない」、こういうことを省令で定めることになっております。すなわち一は「信用事業を行う農業協同組合連合会、農林中金若しくは銀行への預金又は郵便貯金」第二は「国債証券、地方債証券、政府保証債券又は農林中央金庫若しくはその他の金融機関の発行する債券の取得」、三は「共済規程規定による契約者に対する貸付」、これ以外には運用してはならない、こういうことを省令規定しようとするのであります。これが責任準備金及び財産運用に関する規定であります。  第二点は、中央会の監査事業に対する協力規定であります。農業協同組合現状とこれをめぐる客観的な情勢を考えますと、その組織及び事業運営の刷新強化をはかることが大切でありますが、さしあたり協同組合の内部における事業監査機能を拡充しようとするのであって、このために三十三年度予算において農協中央会の監査事業に対する補助金約二千万円計上しております。これに伴って、法的にも中央会の監査事業関連の規定整備するとともに、監査実施の手続を明確にしようとするわけであります。外からの会計検査とかあるいは非違を指摘するということのほかに、検査によって組合事業運営を向上していこうというのがねらいであるから、やはり受検の組合の協力は絶対必要であるから、そういう事項に関する規定もこの法律で明らかにしよう、こういうわけであります。  法律の条文関係説明は以上でありますが、配付資料について若干補足的な説明を申し述べます。  農業協同組合の行なっている共済事業には、資料の第一ページの表でごらん願うと、養老生命共済建物更生共済農家建物火災共済団体建物火災共済、職員退職共済、自動車共済、輸送共済、こういう種類共済事業を行なっております。おもなものは生命共済と建物の共済であります。あとの職員退職共済あるいは自動車共済、輸送共済などは、普遍的ではないのであります。  このやり方は、単位組合、県共連、全共連のいわゆる三段階によって行われているが、その事業内容は、原則として単位組合は元受、県共連は再共済、全共連は再再共済の機能を果しております。その共済事業を行う組合の数は、単位組合が九千六百四十六、これは三十二年三月末現在。それから連合会は四十六、これは大阪だけができておらないが、ほかは全部できております。全国は一本、こういうことになっております。  それからその次のページの養老生命共済は、共済契約者たる組合員から、共済掛金の支払を受け、被共済者につき、一定期間、五年、十年、十五年、二十年、二十五年、三十年内に生じた死亡及び当該一定期間の生存を事故とし、当該事故の発生により共済金を交付する事業、これは普通養老生命保険と同じであります。共済金額は、一契約当り一万円より百万円までとなっております。  建物更生共済は、共済契約者たる組合員から共済掛金の支払いを受け、共済契約者またはその親族の所有しまたは管理する建物または建物内に収容されている動産であって、共済契約者またはその親族の所有し、または管理するものにつき、一定期間内に生じた火災及び当該一定期間の耐存を事故として共済金を交付する事業でありまして、これは、一契約当り五万円から百万円になっております。  その次は、建物火災共済であります。これは、やはり共済契約者たる組合員から共済掛金の支払いを受け、共済契約者またはその親族の所有し、または管理する建物または建物内に収容されている動産であって、共済契約者またはその親族の所有し、または管理するものについて、一定期間、これは短期間内に生じた火災を事故として共済金を交付するのであります。これもやはり、一万円から百万円までになっております。  それから、団体建物火災共済、これは共済契約者たる会員、すなわち組合連合会等の団体でありますが、それにつきまして火災事故について共済金を払うのであります。これは、一契約について五万円から三百万円、これは団体の建物でありますから、ほかは百万円が最高でありますが、三百万円を最高にしておるのであります。こういう種類のものをやっておるのです。  あと、自動車共済とか職員退職共済その他ありますが、これはほとんど活発にやっておりませんので、内容は省略しております。  そこで、実績を見ますと、その次の表をごらん願いますと、二十七年から三十一年までの実績を掲げております。相当急速に伸びてきておるのであります。  それから共済事業を行う連合会の財務の内容であります。五ページの第四に書いてありますが、共済事業を行う連合会の財務の内容については、次の通りであります。つまり、単位組合は、共済責任のすべてを共済事業を行う連合会に再共済させておりますから、共済事業の財務の状況は、連合会の財務の状況と同じと見てもらえばいいのでありますから、連合会のやつを出しておるのであります。すなわち七ページの表を見ながらお聞きを願いたいと思うのでありますが、資産の総額は三十二年三月三十一日現在で百三十九倍になっております。三十年度末では六十八億でありますから約倍にふえておるのであります。このうち、預金が百十五億、有価証券が一億、両者の合計が百十七億になります。それから資本、負債の項目で見ますと、支払準備金が一億五千で、責任準備金が百二十四億ということになっております。これも前年に比べますと、急速に伸びておるのであります。  以上が、共済事業内容についての資料説明であります。  協同組合監査事業資料が第九ページ以下に載っておりますが、これは協同組合監査士というものを置いておきまして、そうして自己監査をやっておるのでありますが、監査士は「農業協同組合監査士の選任資格を定める省令」、これは昭和二十九年に出ておりますが、それによりまして、資格試験合格者、あるいは無試験資格認定者という者で、一定の経歴のある者から無試験で中央会で認定している、この二つの種類があるのでありまして、その実際の人数は資格試験合格者が百六十五人、無試験資格認定者が三百五十二人で、五百十七人の資格者がありまして、その中から二百八十五人が現在選任されております。  中央会の監査の実績でありますが、全国中央会の監査は、監査士が三十二年に四人おりまして、これを補助する者十一人、合せて十五人で二十の組合監査しております。都道府県の中央会の監査の状況は、監査士が昭和三十二年で二百八十一人でありまして、それに補助者三百三十八人、合せて六百十九人が二千三百三十五の組合監査しておるのであります。この事業をさらに推進しようと、こういうふうに考えておるのであります。  以上、簡単でありますが、終ります。
  10. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をとめて。    午前十一時三十七分速記中止    ―――――・―――――    午後零時二分速記開始
  11. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。  これをもってしばらく休憩いたします。午後は、一時から再開いたします。    午後零時三分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十四分開会
  12. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  引き続いて、農業協同組合法の一部を改正する法律案議題にし、審議を行います。まず、質疑に入ります。御質疑の向きは御質疑を願います。
  13. 東隆

    ○東隆君 この協同組合法の改正を通して、この中に隠れておる問題は、協同組合に課税をするという問題なんです。協同組合事業に課税をするという問題が、ここに隠れておるのであります。そこで、根本にさかのぼって、私は、協同組合の非課税の原則ということを常に主張をいたしておりますので、その立場から伺いたいと思いますが、日本における以前の産業組合その他に対して、これは協同組合そのものが利潤を追求しない仕事であるために、おそらく協同組合の発足以来、協同組合事業そのものに対しての利益、そういうようなものはないのでありますから、従って、それに課税をしない、こういうのが、これが基本の原則で、世界的にそういうことが行われておったと思うのです。それが第一次欧州戦争、ああいうようなものを契機にして、協同組合に対する課税が認められた。こんなようなことになって、日本においてもそういうような先例に従って税金をかける、こういうようなことになってきて、そうして現在に至っては、利潤を追求しない、しかも民主主義的な経営をやっておるところの協同組合事業に対して課税をする。こういうことが平気で行われておる。こういうのが現状だろうと思うのであります。従って、協同組合法に強制規定があるなしにかかわらず、当然協同組合事業に対して免除をするのが、これが本来からいって正しいことだとこういうふうに考えている。その点はどういうふうにお考えになっているか、これを一つお伺いしたいわけです。
  14. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) 産業組合時代当時と現在の協同組合法との課税の状況が御指摘の通り違ってきております。しかし、これは世の中の経済機構なり、経済組織の変化からですね、お説のように、協同組合そのものについて、頭から課税をしてはならないという説で通してきていない実例があります。しかし、これはやはりこの協同組合の本質からいって、協同組合が一般株式会社等のごとく、資力のある者が寄って、その資本によって利潤を獲得する、こういうものとは違った本質を持っているような気がいたします、課税上の相当程度の差をつけることがいいということは、これは大多数の人がそう考えるのじゃないかと思います。そうしますと、結局どの程度の差をつけたらいいかということが、先ほど申し上げましたその当時の経済事情なり、経済組織、経済機構のもとで考えられるべきじゃないかというふうに考えられるのでございます。現在法人税あるいは所得税、登録税、印紙税あるいは地方税等につきましても相当程度の差はついておりますが、先ほどから申し上げますように、協同組合は、資力のある者もない者も一緒になって、相互扶助、共存同栄のために組織しておるんですから、もっと安い方がいいんだと、われわれはこういうふうに考えております。
  15. 東隆

    ○東隆君 この共済関係積立金そのものの内容ですね、これは、利潤を追求するために積み立てておるのかどうか、こういう問題ですね。これは決して利潤を追求していない関係で、かえって、大蔵省の方から考えてみても、積み立てをする、安全な経営をする、こういうふうなことから考えて、当然、こういう種類のものは、協同組合がやる場合には、免除をしなきゃならぬ、こういうことは当然に考えなきゃならない。そういうような場合に、農林省の考え方と大蔵省の考え方との間に非常に大きな食い違いがある。ただいまの非課税の原則というものを農林省が堅固に支持して、そして大蔵省と話し合いをする、こういうことによって、この問題は当然解決しなければならぬ問題ではないか。あえて法律を直さなくとも、こういう種類のものは当然免税さるべきものである、こういうことが確立されていかなきゃならない。ある協同組合法律には強制規定があるから、そこで免税をする。それよりも長い歴史を持ってそしてやっておるところの協同組合は、強制規定でない、そのために課税をする。こういう考え方が、協同組合そのものの本質に立って折衝をしないところに起きてきておるのじゃないか、私は、こういうふうにも考えるわけです。私は、そういうような点で、協同組合そのものの考え方を、大蔵省にはっきりと一つ今回のこの機会に植え付けておかないと、これは将来いろいろな問題が起きてくると思う。単にこればかりじゃなくて、あらゆるものにこういうような規定をしなければ税金を取ると、こういうようなことになって、協同組合がこれから、組合員のためにやるところの仕事は、各般の仕事がある。それが進んでいけば進んでいくほど、強制規定がなければやっていけないと、こういうような形になっていって、そして、本来の民主主義の機構であるところの協同組合の中に、強制機構を持ってくることによって、協同組合そのものを非民主的なものにしていくおそれが多分にあるわけです。協同組合というものは、そういうようなものじゃなくて、組合員の総意によって決定をして、そうして、利潤を追求しない、こういう原則のもとに立っておるんですから、こいつを、法律を、あまり民主的な機構をこわさないような形でもって当然免税さるべきものであると、こういう形に持っていかなきゃならぬ。そういう点を、農林省の方は頭の中に入れてやっていかないと、常に、仕事をすればするほど、そいつに今度はからんできて、そうして税金を取り上げられる。これは、営利を目的とした仕事と全然違って、そうして、しかも、今回の場合のこれなんかは、積み立てをすることによって非常に経営が安全になっていって、そしてその協同組合以外の関係にも非常に好影響を及ぼすものである。そういうようなもので、これは当然もう免税をさるべきものなんですから、だから、そういうような場合に、規定を持っていかなければ免税にならぬと、そういうような考え方は、これは協同組合というものの本質が、税を取る方の側にはっきりしていないということなんです。私は、その点を強力に、一つこういうような機会に、推し進めていく必要があろう、こう考えるんですが、その点はどういうようにお考えですか。
  16. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) お説の通りでありまして、一方からいいますと、各種の税金は、各種のそれぞれの法律に基いて規定されておるのでありますから、その中に、特別規定で落すということにならなければ、今のお話の本質論から、すぐは免税ということは出てきませんから、どうしても、こういう法人にはこれこれの税金は課すべきでないということを明確にする意味において、今度も法人税法の対象として法人税法によってかける法人から脱落さす、その目的法律改正しておるのでありますから、今後も引き続いて協同組合の本質、それに対する税法上の取扱いについては、私の方でも努力していきたい、こういうように考えております。
  17. 北村暢

    ○北村暢君 今度の法律改正目的が、今、東委員が指摘いたしましたように、税を免除するということに裏の目的があるようでありますが、農業協同組合法の第六条には免税の規定があるわけです。この規定は、組合員に剰余金の配当に対するものについて租税を課さない、こういう規定があるのでありますが、この条項と、従来農業共済事業を行っておりました法人に対する課税がなされておったということとの、何ゆえそういうような課税がなされておったか。今聞くところによるというと、法人税から、政令で除外するということのようですけれども、もっと早くこれはなされるべきでなかったかと思うのですがね。どういうことで今まで課税の対象になっておったか、この点について、ちょっと御説明をいただきたい。
  18. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま御指摘の農業協同組合法第六条は、ここにありますように、「剰余金の配当に相当する金額については、租税を課さない。」これは、まあ会社でいえば利益配当の分について、事業分量割の部分については課さない、それだけでありまして、そのほかに、たとえば、法人税についてはどうする、所得税についてはどうすると、こういうことがそれぞれの法人税法、所得税法等で特例がまた別途にそれぞれの法律で置かれておるわけであります。その六条の分は、今の利益配当に相当する部分だけのことでありますから、ほかにたくさん税がありますから、それぞれ、たとえば、印紙税法等では、組合の発する出資証券、貯金通帳、積金通帳、積金証書、そういうものとか、あるいは組合または連合会の発する貯金証書で記載金額三千円未満のもの、あるいは系統組合及び連合会相互間の受取書、農業倉庫証券、そういうものは印紙税法で印紙税を課さない、同様な若干の例外が登録税にもありますし、所得税にもそれぞれあるわけです。この積立金の今度の改正の裏にある法人税を免除しようというのは、お話のように、元来これにかけるのはおかしいのでありますが、しかし、税の建前から、税の方で、そういうものをかけないといわなければ、性質上、取らなきゃいかぬ、取らなければ、何といいますか、税務担当者は法律違反になるわけですから、法律違反にならないようにするのは、法人税法の施行規則の中で、これはかけないのだということがいえるようにしておかなければならない、それをなぜ早くやらなかったのか、こういうのでありますが、御指摘のように、もっと早くやるべきであったのでありますが、これは先ほどお話がありまして、協同組合について、もっとほかのところにも改正すべき点があるのではないか、一諸にしたらどうかということが第一点と、それから協同組合共済事業そのものに、先ほど私が説明したときに、もっと法的な規制を――ただ、一般の保険では、保険業法がありまして、これは非常にたくさんの人の金を預って管理するのでありますから、その管理がうまくなければ、関係者に非常な迷惑を及ぼすのでありますから、当然その管理についての規定があるべきだ、これも今準備中であります。金額が少いときには、たとえば、先ほども申し上げましたように、積立金がまあ百億をこしております。それは前年に比べて約倍になっております。三十二年度ではおそらく二百億、やはりことしの倍ぐらいになるのではないかと思います。そうしてきますと、小さいときであれば、この積立金の運用についても、相当の利回りに運用ができるわけでありますが、それがたくさんになってくれば、運用もむずかしくなってくる。これの管理について、はっきりした規定を置きたい、こういうので準備しておるのでありますが、その法的規制は、当然これを直そうとしておったのでありますが、それが手間取っておりまして、相当膨大な規制法律になりますから、それを待てない。この分だけは、予想以上に積金がふえてきておりますから、早く税金の対象から除外してもらいたい、こうなるのであります。大体ことしだと三千万円くらいの免税額になる予定でありますから、相当の金額になるわけであります。
  19. 北村暢

    ○北村暢君 そうしますと、今言われましたように、この剰余金に対する配当に対してすら免税されるのですから、特に事業の一つとしての共済事業、その趣旨からいえば、共済事業なんですから、もちろん営利を目的としていない。税の減免措置というものが当然なされることが、理由としては成り立つものであったということですが、それが今日まで問題にならなかったというのは、その発足当初からいって、その額そのものが大した額にもなっておらなかった、そういう点もありましょうし、今ようやく三千万ぐらいに税額がなっておるということで、すみやかに減免措置をやることが当然だったと思うのですが、法律の不備からこういうことがあったと思うのですが、今仰せられましたように、いろいろほかの面についても検討を要するところがあるようでありますから、私は、非常に政府としては、これはやはり問題が水産協同組合の場合は、初めから除かれておった問題で、それとのバランスからいっても当然早く考えられるべきで、今まで出なかったということは、非常に怠慢であったのじゃないか、こういうふうに思うわけです。従って、これ以外のいろいろな問題についても、先ほど東委員が指摘いたされましたように、協同組合事業の税の減免措置というものが、原則として営利を目的としない事業でありますから、私もそうあるべきだと思う。政府は、すみやかにそういう準備をやるべきである、こういうふうに思いますので、これは答弁は要らないと思いますので、要望をいたしておきます。
  20. 東隆

    ○東隆君 私は、共済関係でもって蓄積された資本というものは、これは普通の協同組合の信用事業における資金のように短期資金でなくて、将来これは長期資金に当然運用していかなければならぬ筋合いのものである。これは農業保険が日本に一番初めに到来したときにペー・マイエットなんかが強力に主張をしておったことであって、農村金融のおそらく中心になるところのものは、農業保険を通して長期資金が得られ、この資金を十分に農村に還元をして、そうしてこれを生かすことによって、初めて農村金融というものは完成をするものである、従って、早く農業保険をやるべきである、こういうのがぺー・マイエットなんかの明治二十年代ごろにおけるところの強力な主張であったのです。ところが、それが行われないでずっと続いておって、日本では保険事業というものはことごとく営利事業でなされてきた。従って、農村には長期資金を蓄積するところの機関が一つもなかった。そうして財政投融資というような関係でもって預金部資金が流れたりなんかして、辛うじて長期資金をまかなっておった。そのために農村は資本的に蓄積が一つもできなくて、そうして常に経済界の変動によって苦しめられてきた。こういうのが、私は日本の農村の姿であると思う。従って、この共済事業によって蓄積されるところの資本というものは、当然農村に還元されるべきものである。ところが、今お考えになっておるところの財産運用のやり方は、非常にそういうようなものとはかけ離れた考え方になっておる。単に安全ばかりを考えて、そうして農村にこれが還元されていかない。ただ中金の余裕金として存在をする、あるいは国の債券や地方債券、そういうようなものに固定されて投資をする。農村の住宅の建設もできないし、土地改良も根本的にやれないし、それから農村におけるところの病院の建設なんかも私はできないと思う。厚生事業を進めていくために資金を借り出そうとしても、なかなかこれは容易じゃない。しかし、こういう積み立てられた資金こそ、農村厚生事業に投資してもいい資金じゃないか。あるいは農家の住宅を建設するためにこの資金を使っても、そして考えようによれば、この積み立てられた資金というものは、これは金利というものを、見ようによっては非常に安い金利のものに使えるところの原資金になるわけです。ところが、この考え方からいけば、これは単に預金として、その金利だけを利用するというような形に、これがなっておるために、共済事業をやるところの本来の大きな目的から、これは非常にそれてしまう。このやり方を、従ってもう少し道を開いて、たとえば農家の住宅を建設する資金のためにこれは使うことができるのだ、こういうふうにすれば、結局いい住宅に入れば衛生方面もなにいたしますし、それから生命が延びれば共済料金もたくさん入ってくる、拡大されていくわけです。火災関係の問題にしても、りっぱな家をこしらえれば、不燃質の家をこしらえれば、これは火災にかからないで済む。そして、しかも安い保険料でもってやっていく、こういうような非常に重要な農村の資金として、しかも長期資金として非常に重要なものを、それを変な方面にみんな使わなければならぬ、こういうふうに規定をするのは、これは農村金融本来のものを忘れてしまっておるところのやり方である。こういうように考える。この点はどういうようにお考えですか。
  21. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) ただいま御指摘の点は、この制度ですね。非常に重要な問題じゃないかと思います。私どもも、考えようによっては、共済目的を達すれば、この積立金は無利子で貸してもいいのじゃないか、安全に返ってくるならば。ところが、御指摘のように、共済目的と、その積立金を利殖してその積立金をまた配当する、こういうふうに二重に使っていることになっているのです、現在。ところが、また別の方面からいいますと、現在までは金が比較的少いですから信連に預け、中金に預ける。これはほとんど現在までは百二十四億のうち百十五億は系統機関の預金になっております。有価証券その他わずか一億ぐらいになっております。これぐらいの金ならば、それで運用ができると思う。これが二百億になり五百億になるということになると、もう中金なり信連でも、そういう金を頂って、現在のように六分五厘とか七分で預ってはくれなくなる、当然。従って、これを御指摘のような農業生産の拡充の長期的な運用の方に向けなければならないということは、われわれもかねてからそういうことを関係者で相談して、ぜひそういう方法を確立したらいいじゃないか、また別の議論としては、これを長期運用するとすれば、現在農林漁業金融公庫に預けて、農林漁業金融公庫の一つの長期資金として運用してもいいのじゃないか、いろんな案を今検討しております。しかし、根本はどうしてもこの積立金を有利に利殖して、そこでもうけるという考え方をやめて、共済でその財産保護する。その積み立てた金は、もっと長期農業生産拡大する方向に用いるべきである。この方向は私ども全く同感でありまして、どうしてもそうしてもらはなければいかぬというので、今関係者で案を練っているのであります。ただいままでの、ただいま省令案としておりますのは、「共済規程規定による契約者に対する貸付」、この中で一応やればできることになるのでありますけれども、もっと何と申しますか、根本的にそういう制度を、この共済事業の中で打ち立てていく必要がある、こういうふうに考えております。
  22. 東隆

    ○東隆君 農業災害補償法による農業共済組合で、家畜の診療所をやっておる、これは割合に、よその方はわかりませんけれども、北海道なんかでは非常にスムーズにいって、なかなかいいのですが、そうして、かえって人間の病院よりも充実しているのじゃないか、農村においては。従って、そういうようなことを考えて参りますると、共済関係の、特に生命共済というようなものを中心にした場合、そこから上げられてきたところの積み立てられた財産は、私は当然農村における厚生事業、こういうようなものに投資をする道を開いておいた方が、これは将来のために非常に明るい資金の利用面になるのじゃないか、それで、これを関係をもし非常に困難なものにするならば、共済事業が付帯事業として厚生病院をやる、こういうような考え方も一応考えられる。それで、そういうような考え方でもって、当然あの事業を広げていかなければ、厚生事業というのは、どこの県もおそらくそううまくいっていないのじゃないか。しかし、あの仕事は非常に大切な仕事ですから、その方面に融資をする、こういう道を一つ、何らかこの際、開いておかなければいかぬ、こういう考え方ですが、この点、一つどういうふうにお考えですか。
  23. 渡部伍良

    政府委員渡部伍良君) これはもうすでに議題になっているのでありまして、今まではこの金は系統預け、国債、それから有価証券ということで、今お話いたしましたように、ほとんど全部が系統預けになっております。それを、お話のように、組合員に還元する方法で、直接信連を通ぜずに、この共済単位組合から流した方がいいのじゃないか、こういう意見が出てきているのであります。私は、拡大的にやった方がいいというので盛んに中で議論しているのでありますが、ただ、今程度の金額であれば、二百億ぐらいであれば、全く系統預けでやった方が安全確実じゃないか、こういう意見の方が現在のところ強いのであります。しかし、お説は私全く同感でありますから、今度の省令をきめるときには十分そういう点も取り入れまして、ここにお配りしている省令案の、この内容については、十分そういう御意見が実現できるような方向で考え直していきたい、こういうふうに考えます。
  24. 藤野繁雄

    ○藤野繁雄君 多年の懸案でありました農業協同組合及び農業協同組合連合会が行う共済事業責任準備金積み立て義務の法制化について、今回ようやく政府から法律改正が提出されるに至りましたことは、おそきにすぎるうらみがあるのでありますが、この点については、政府の労を多とするものであります。私は、この機会に、農業協同組合及び農業協同組合連合会に関して、諸般の事項にわたって問題を究明し、政府の所見をただし、その誰処を求めたいのでありますが、責任準備金積み立て義務の法制化は、法人税の取扱い等との関連において急を要し、従って、この法律のすみやかなる成立が要望されておりますので、農協の基本的な問題に関する審議は他の機会に譲ることといたしますが、ただ一言、本法案成立の上は、特別危険準備金は、他の例に見るように、所得の計算上損金に算入するよう取り扱われるものと期待し、その実現方について、農林当局の善処を求めるものであります。この法律案の提出までの経過から考えてみますると、農林政務次官は大蔵政務次官と十分な検討がなされておるのでありますから、この点について、農林政務次官の決意を承わりたいと思うのであります。
  25. 本名武

    政府委員本名武君) ただいま藤野委員の御意見まことにごもっともでございまして、われわれも本法案のすみやかな提出と、そうして成立を久しく期待いたしておったのであります。本日はここに御審議をいただきまして、さらにこの法案の本質的な目的と申しますか、われわれの念願いたしておりますところは、やはり責任準備金に対する課税の問題だろうと存じます。この点につきましては、大蔵当局とも完全な折衝をいたしまして、必ず御要望の通りの実現を期することを確信いたしております。従いまして、この点については何ら御懸念をいただかなくても、本法案の成立後において、ただちに法人税の政令の改正を行いまして、本年度内に実施いたしますことを、ここにはっきり申し上げて、お答えにかえたいと思います。
  26. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。    〔速記中止
  27. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。  他に御発言もないようですから、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  それではこれより討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もないようでございますが、討論は終結したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認めます。  それではこれより採決に入ります。農業協同組合法の一部を改正する法律案を、原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  30. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 全会一致でございます。よって本案は、全会一致をもって原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、議長に提出すべき報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  31. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、本案を可とされた方は順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     柴田  栄  藤野 繁雄     鈴木  一  清澤 俊英     雨森 常夫  佐藤清一郎     田中 茂穂  仲原 善一     堀  末治  東   隆     大河原一次  河合 義一     北村  暢  北 勝太郎     千田  正
  32. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。    〔速記中止
  33. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を起して下さい。  では、これで休憩いたします。四時から再開いたします。    午後二時四十一分休憩    ―――――・―――――    午後四時十六分開会
  34. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  日ソ漁業交渉並びに国際漁業問題に関する件を議題にいたします。この件について、千田委員から御質問の御要求がございますので、この際、御質疑を願うことにいたします。
  35. 千田正

    ○千田正君 どうも非常におくれた時間で、しかも各委員の方々が勉強されておることは十分承知しておりますが、私は、大臣に注文を発したいのであります。それは、予算委員会が開いている間は、全然委員会に出られないのかどうかということを、これは冒頭に一つ聞いておきます。  とりあえず私は、時間もありませんから、端折って重点だけをお尋ねいたしますが、日ソ漁業条約の、ただいまそれを中心として委員会が開かれておりますし、またモスクワにおきましては、日本の代表が行って交渉中であるけれども、ちっとも進まない、それで一九五六年十一月のいわゆる北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間の条約に基く漁業委員会が、ただいま開かれておりますが、先般来の状況を見るというと、漁業条約を中心じゃなくして、むしろ政治的な面において、サンフランシスコ平和条約の問題とからんでソ連側は持ち出してきて、なかなか進んでいない、ところが現実においては、北洋漁業に進出すべき準備を整えなければならない時期に到達してきておる、間もなく、従来であったならば漁業者はすでに仕込みの準備をしなければならない、そういうときに追い込まれできて、今日まだもたもたしている、一体この見通しはどうなるのか。これは、われわれ委員会の委員ばかりでなく、毎日の新聞あるいはラジオ等を通じましても、国民のひとしくこの問題に関心を持っていることでありますが、大臣としてはどういう見通しをつけておられますか、一応お伺いをいたしたいと思います。
  36. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 予算委員会に出ている間は農林水産委員会に出られないのかというお尋ねでありますが、極力出るつもりで、実は今日もまた予算委員会をやっておりまして、私に対する質問が、次の次の人もありますが、極力時間をさいて出るつもりであります。ただ、問題によりましては、その人が質問しております間中おりませんと、いろいろの問題が出ますので、また、予算委員会に力を注いでおりますので予算委員会に出ているわけでありますが、予算委員会に出ておる間は決してこちらの農林水産委員会に出ないという原則じゃありませんから、時間をさいて出て来ておるわけであります。  また、今お話のように、日ソ漁業に関する委員会が今開かれているのでありますが、これはお説の通り、一昨年の日ソ漁業条約に基いての交渉といいますが、委員会の場で協議をとげておるのでありますので、私の方といたしましては、サンフランシスコ条約とか、あるいはまた日ソ間の平和条約とからんで問題を考えるべきものでなく、また、先方においてもこれとからみ合わせてこの委員会の審議を進めていくべきものではない、こう考えております。事実の問題といたしましても、御承知の安全操業問題につきましては、安全操業の申し入れに対しまして、交渉に入ろうということを、一時昨年向うから回答があったのでありますが、最近におきまして、平和条約問題を議するに熟しておらないから、安全操業に対する話し合いもまだ時期ではないというようなことを言ってきております。しかし、このサケ、マス等の漁業交渉委員会においては、先方においてサンフランシスコ平和条約等にからんで話し合いを持ち込んできている情勢ではありません。そこで、私どもの方の委員も、向うの委員も、三人ずつ六人出て、あるいは本会議あるいはまた科学技術小委員会等において審議を続けている、あるいはまた代表が、向うのしかるべき人と話をしているということで進めてきておるわけであります。問題は、私は非常にむずかしい問題であるとは考えておりますが、情報をだんだんに私どもの方でも聞いておるのでありますが、いろいろ小さい問題等につきましては、小さいといっても重大な問題でありますが、いろいろな提案を向うから出してきていますが、そういういろいろな問題も、逐次技術小委員会等におきまして話し合いがきまってきている面もあるのであります。たとえば、はえなわ漁業禁止というようなものは、規制区域外の問題でありますが、こういう問題も、話し合いがついて、向うで提案を撤回している、こういうことにもなっておりますし、カニの問題等につきましても、相当歩み寄りをしておるというような状態であります。こういう状態でありますので、非常に総漁獲量等の問題をめぐっては、これはなかなかむずかしい問題になろうかと考えておるのでありますが、私は、これは新たに漁業交流をしておるというのじゃなくて、今お話ししたように、日ソ漁業条約の軌道に乗って、その場においての話し合いでありまするから、結論を得ないと最後まできまらぬというふうには私は見ておりません。しかし、漁期が切迫してきておりますが、去年きまったのは、御承知のように四月の六日ごろにきまったのでございます。でありますので、切迫はしておりますが、まだ私は、去年から比べれば期間もあるように考えておるのでありますが、しかし、出漁する方面から見ますならば、非常に気がせくといいますか、そういうことがあるわけであります。そういうことでありますので、私どもは、今出先におきまして、モスクワにおきましても、時期は迫っておるが、譲歩してということでなくて、やはりわれわれの方の主張を、科学的根拠に基いて貫徹に万全を期しておるという状態でありますが、操業開始時期をも考えまして、交渉の進展に応じて、それぞれ準備等について所要措置を進めていきたい、こう考えております。
  37. 千田正

    ○千田正君 私は、今これから聞こうとする問題は、あるいは農林大臣にお聞きするのは妥当であるかどうかわかりませんけれども、お答えができるならばお答えしていただきたいと思います。日ソ共同宣言のうちの第九項におきまして、日本国とソビエトの両方の共同宣言の中に、歯舞、色丹は日本の要望の通り譲ろう、ただし、これは平和条約を結んだあとでなければこれは実行できない、やるわけにはいかない、しかし、要望に沿うて返す、返還するということを、共同宣言の中に堂々とうたっておるのであります。それで、今問題になっておるいわゆるこれを中心として、北海道周辺の沿岸漁民の諸君の特に強い要望があるわけでありますが、その歯舞、色丹を中心とする漁業が自由にやっていけるかどうかという問題、四十八度線以南におけるいわゆる中部千島における流し網、はえなわ等に対しては、従来の通り、何ら制限を受けることなくして漁獲ができるか、どうか、この見通しはどうですか。
  38. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 日ソ共同宣言といいましたか、その中には、今御指摘のように、歯舞、色丹は日本の領土と認めて、平和条約のときに、平和条約締結のときにこれを引き渡す、こういうように書いてありますので、平和条約のときには引き渡すことになっていますが、現在は、事実上占拠しているといいますか、占有しているといいますか、占拠している。こういうふうになっていますことはお話の通りであります。そこで、まだその引き渡しを受けておりません。択捉、国後等はまだ問題が解決しておりません。引き渡しを受けておりませんので、向うでは事実上占拠しておりますから、これは領土からいえば、領海という問題も、ほんとうは日本の三海軍でいいわけでありますが、この点につきまして、引き渡し前においては、向うの方でも十二海里というような考えを持っておるのじゃないかと思います。法律的にいえば、引き渡しはしていないが、事実日本の領土として認めておるのでありますから、領海も従って日本の解釈でいいはずだと、私は考えております。向う側では、そうは考えておらないのじゃないか。でありますので、その近辺に入って漁撈に従事するということになれば、やはり向うでこれを拿捕するというようなことが、今までのようにあると思います。北海道の方からも、領海の問題はいずれにしても、あるいはこの領海を認めても入りたいという申し出があり、あるいはまた、ソ連がそれに応じたというような話も、間接には聞いていますけれども、しかし、私どもといたしましては、十二海里という領海を認めるという前提のもとにそこへ入って行くというようなことは、これはとるべき態度でない、こう考えているわけであります。それから四十八度以南につきまして、向うで規制区域を拡張しようという考え方があるようであります。これは正式に要求しているわけではありませんが、そういう動きがあるように私どもも察知しておるのであります。そこで、流し網の規制につきましては、この区域にも適用しようとする要請はしておりますが、これにつきましては、私どもの方としては拒否している、こういう現状であります。
  39. 千田正

    ○千田正君 四十八度線以南の流し網等は、御承知通りいわゆる中小企業を主体とした漁民であることは、これは私が申しあげるまでもないことであって、これといわゆる大資本を背景にした船団との漁業の競合点において、いろいろな問題が起きてくるおそれがあるのでありまして、これは、今あなたのおっしゃる通り、北海道の漁民の方々ももちろん多いのでありますから、非常にこれは、将来ソ連側が強く制限区域を主張してきた場合において、これは敢然に圧縮されてしまう、そういうおそれが多分にあるわけであります。で、ただいまあなたがお答えなされました通り、日本側は敢然としてそれを退ける、こういう御意思のあることは私は非常に敬意を表しますが、同時に私は、このほかにもう一つ、非常に現段階でふに落ちない問題が起きている、ということは、今月の初めにおいて、日本の漁船が、大体タラ漁業と思いますが、五隻ばかり行方不明になっている、これは外務省あるいは水産庁あるいは海上保安庁を通じまして、これらの船主並びに漁夫の家族が、極力捜査を願い出ております。しかるに、これは消息を断っている。海上保安庁からは「だいおう」が行って、その周辺を調査したにもかかわらず、遭難したとおぼしきものが一つも見出すことができない。そうすると、当時の風浪その他を考えまして、これはソ連領土内に、あるいは風の強かったために避難したかもしれぬ、そのまま拿捕されたのではないか、こういう危惧がある。で、日ソ漁業委員会がちょうど開かれているさなかであって、こうした拿捕というものが、その陰の一つのソ連側のゼスチュアとして行われているという杞憂も、われわれは感ずるのであります。で、一体この漁船五隻がどうして行方不明になったのか、この点について、水産庁なりあるいは外務省なりに、この問題について何らかの情報が入っているかどうか、これをお聞きしたいのです。
  40. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) 非常に残念に思うのでありますが、まだわれわれ情報をよくつかんでおらぬ次第でございます。
  41. 千田正

    ○千田正君 これは、あらゆる面から見まして遭難と見受けられるふしがないのであります。むしろ逆に、いわゆる中部千島あるいはその他の所に避難した、避難と同時に、あるいは拿捕されておるか、抑留されておるだろうという推測を下さざるを得ないのであります。で、今、大臣のおっしゃったような領海侵犯ということは、将来相当問題が起きてくる、こういう際に、私は強くソ連のあり方に対して、日本側として要請すべき問題があるのではないか、ということは、一九五六年のこの条約の中にも、海上において遭難した人の救助に対する両国の協定があるはずであります。それに基いて、これは、きょうは外務大臣が来ておりませんから、私は強く要請できませんけれども、事は漁船の問題であって、相当の人数が乗っておるわけでありますから、堂々とこういうことに対してはソ連側の調査その他に対して、報告を求むべきじゃないか、これは大臣の方からも特に要請していただきたい。  それで、次の段階といたしまして私のお伺いしたいのは、ソ連側は常にの漁業条約を中心とした会議のときに、いつでも、日本の背後にはアメリカがあるのじゃないか、アメリカというものが背後にいて、日本というものを抑制しておるから、われわれとの間の話がいつでももつれ合うのだ、こういうふうなことをあらゆる機会を通じてソ連側は報じておるわけであります。そこで、たとえば今度のいわゆるサケ、マス等の漁業に対しましても、一方的にソ連にばかりあなたたちは要求するのはおかしいじゃないか、北部太平洋というものは、カナダなり、あるいはアメリカに通ずるところの海である、なぜアメリカやカナダに対しては、あなた方は要求しないのだと、こういうことを一面においては言うておる。そこで私は、昭和二十六年の十一月に結ばれた日米カナダ漁業条約における日本側としての立場というものは、今まで条約を守ってきた、しかし、魚類の資源保護ということに対しては、相当のマンネリになってきたのじゃないか、一面、これはある意味においては、日本の漁場の拡張という意味からいっても、アメリカやカナダに向っても、ある程度の開放を迫ってもいいのじゃないか、これに対して、大臣はどういうふうなお考えを持っておられますか。
  42. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 日米カの漁業関係につきましては、昨年中も、こちらからも出ていって会議を続けておったわけであります。ところがこれも御承知通りでありますが、向う側から見るというと、これは西経百七十五度の西の方に、アメリカ系のマスなども入ってきておるのじゃないか、こういうふうなことも言っておるのでありますけれども、これは条約の基本的な問題が、西経百七十五度の線が、アジア系、アメリカ系のサケ、マスを公平に分つという一つの暫定的な線でありますので、これから日米カ三国が、条約に基く調査研究を行なって、アジア系、アメリカ系のサケ、マスを最もよく分つ線を決定したときには、これにかわるべきものが定められるものだと私ども考えております。この調査研究もすでに四カ年実施されておりますけれども、なお、今後も調査を進めていかなければならない点が多いと考えます。お話の点につきまして、調査研究の進捗に伴いまして、これに対して慎重な検討を加えた上、わが方の立場を明らかにしたい、こう考えております。  そこで、今の日ソ漁業交渉問題等につきましても、ソ連側にのみ話をしておって、アメリカ側等に対しては、主張すべきものを主張しないで、むしろ弱気じゃないかというような見方がないとは限らない、あるいはまた、今お話のように相当あるのじゃないかという気もいたしますけれども、そういう点も留意いたしまして、昨年度の日米カの漁業の問題の話し合いのときにも、わが方としては、アメリカ、カナダ等についても、わが方の主張を強く押し通してきましたので、あの委員会において、あるいは小委員会等において、西経百七十五度の線をもっと西の方へ持っていってくれというような向うの主張などは、まあけっておいたようなわけであります。でありますので、決してアメリカ等に対して、主張すべきものを主張しないということでなくて、やはりこの方にも主張してきておるのでありますが、残念ながら、そういうことがソ連の方に聞えていないといいますか、認識されていないということでありますならば、非常に残念であります。出先の委員等にも、御注意のようなことを、なお伝える機会を持ちたいと、こう考えます。
  43. 千田正

    ○千田正君 今の問題は、これはマッカーサー・ラインの当時、占領海域内にかわるべき条約として、アメリカ及びカナダが持ち出してきたところの条約であって、われわれからいえば、公海に一線を引かれるということは非常に残念であります。当時の状況からいいまして、日本側が被占領国という立場においてやむを得ずああいう条約を結んだとさえもわれわれは考えるのでありますから、機会あるごとに――これは今日においてブルガーニン・ラインあるいは李承晩ライン、いろいろな面において公海の自由操業というものが狭められておる今日でありますから――こういう問題は、逐次改正に持っていかなければ、日本の漁業というものは衰微する一方にある、私はかように考えますので、この点も十分に研究していただきたいと思います。  次に、三月早々アメリカ側はまたビキニ及びエニウェトクにおいて原子爆弾の実験をやるということを声明しております。これに対しては、日本側は受諾しておるのかどうなのか。また、農林当局としましてはこれに対応するところの何か処置をしておるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 今のエニウェトクにおいてアメリカが核実験をするということにつきましては、政府としてもかねてからこれが中止を要望してきておるのであります。私どもも、この場所において核実験をするということにつきましては、まことに遺憾に存じております。二月の二十日に在米大使を通じまして、重ねて本実験の中止を要請いたしております。  それから前の賠償の問題も、まだ抗議を申し込んで解決を見ておりません。この方面も押し返して賠償の要求をしておるのでありますが、今エニウェトクにおいて核実験をするということにつきましても、強くこの中止を要請しておるのでありますが、かりに実験が強行されるにおきましても、これによって生ずるすべての損害は、アメリカが賠償すべきである、こういう旨の申し入れもいたしております。前にも核実験の中止を申し入れておったのでありますが、強行されております。また今度も、強く申し入れてはおりますが、強行される場合に、捨ててもおけませんので、漁業関係からいいまするならば、核実験による被害を避けるために、二月十七日に、とりあえず危険区域の設定について、関係都道府県漁業者団体及び郵政省の地方機関でありまする漁業用海岸同等に対しましてアメリカ側で核実験の意図がある。これについては抗議を申し込んでおるけれども、あるいは強行するかもしらぬから、こういうことで関係漁業者に周知徹底方を通知いたしておるわけであります。
  45. 千田正

    ○千田正君 昨年のイギリスの実験等に対する損害賠償あるいはそういった要求に対して、イギリス側の回答なり措置はあったのでありましょうか、どうでありましょうか。
  46. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) イギリス側に対しまして要求を提出いたしたのでありますが、まだそれについての回答を受領する段階に至っておりません。
  47. 千田正

    ○千田正君 どうもこの間の問題、こういう問題が非常に日本にとっては重大な問題であるにもかかわらず、どうもしり切れトンボになってしまう。そうして大国から押し切られてしまう。それだったら、日本が全然損害がなかったのかというと、そうじゃないはずであります。これはどうしても今後もそういうことがたびたび行われるということになると、これは漁業だけの問題ではないのであります。日本の将来という問題に対する大きな独立権ということから考えまして、日本側が相当がんばらなければならない問題であります。去年の問題も解決しない、またことしも核実験をやられる。そうして、また損害が重なっていく。これじゃとてもやりきれないと思うのですが、きょうは外務大臣が来ておりませんから、外交上のことは言いませんけれども、これは農林省、水産庁としましては、少くともその行政の一環であるところの漁業保護とか、あるいは資源の保護ということからいっても、この問題は強く要請しなきゃならないと思うのですが、大臣としてはどういうお考えを持っておりますか。
  48. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 御意見の通りで、これは強く要求いたしておりますが、なお、さらに外務当局とも話し合って、強く要求するようにいたします。
  49. 千田正

    ○千田正君 最後に二、三点、時間もありませんからお伺いしますが、今ゼネバにおいて国連の要請に基きまして、海洋に対する法案すなわち領海という問題を決定すべき法案に対する審議の準備委員会をやっておるわけであります。報ずるところによるというと、日本側は領海三マイル説を主張した。これは御承知通り国際法の厳正な法規がありませんので、各国ともおのおのの立場で主張してきておる。大体三海里説というものが一つの定説のように戦前には考えられておった。ところが戦後においてはもうめちゃくちゃで、二十海里を主張する国もあれば、十二海里を主張しておる国もあります。あるいは李承晩であるとか、ブルガーニン・ラインであるとかいった勝手なことでラインを引いて、国際紛争をかもすべきおそれのあるような状況に立ち至っております。日本は三海里説ということを主張しておるのですが、三海里説を主張した場合において、日本側にとっては少くとも水産関係においては、これはまさしく利益であるかどうか。これに対しての考え方は、どういうふうに政府は思っておられるのですか。とりあえず農林大臣からお考えを承わっておきたい。
  50. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 今お話しのように、領海につきましては国際法上にも問題があるのでありますが、従前領海三海里説というのは世界の定説になっておるのでありますけれども、戦後いろいろな考え方といいますか、意見が出ております。ことにソ連などでは、これは前から十二海里説というのを言っておったようでありますが、しかし、日本といたしましては、領海三海里ということが適当だし、またそうあるべきだ。それ以上の公海については、これは魚類の保存とかいろいろな問題から話し合うということはあり得るけれども、領海としてはやはり三海里説を強く主張していくという態度に変りはないのであります。
  51. 千田正

    ○千田正君 ところで、そういう、日本側だけが三海里説を主張して、一方においては公海自由の原則を盾にとって、日本側としましては長い経験を生かしながら、いわゆる日本の生きる道としての水産というものが進んできておる。日本側は三海里説を主張するが、ほかの国は四十海里だ二十海里だと勝手なラインを引かれて、どうにも行き詰まってきつつある。これの打開の方法として、何か考えなければならない、こういう段階にきておると思いますが、これに対しましては、政府側としては、何か強く国際間に持ち出すところの用意があるかどうか。そういう点についてはどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  52. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) これは国際法の学術的な問題が中心であろうと思います。しかし、学術的な問題といっても、実際上の問題との関連が、これもまた持たされてくると思うのであります。しかし、再々お話がありました通り、また私ども考えておりまするように、日本といたしましては三海里を主張し、またその貫徹に努める。しかし世界の各国が集まっておりますので、これはきまるというわけにはいかない場合も考えなければならないと思います。そういう場合におきましては、ほかに領海の幅の問題について違った意見があるかもしれませんが、日本にとっては三海里以上については公海として、漁業の問題等は、先ほどから申し上げましたように、魚類の保存、こういうような意味からの話し合いをするということであれば、いいけれども、そうでなくて、領海の幅員を三海里以上に延ばしていくということには賛成もできませんし、また、ほかに他の意見がありましても、三海里説に同調するように尽力していくということであります。なおその場合には、漁業対策等についての御意見がありましたが、水産庁長官からお答え願います。
  53. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ゼネバの海洋法草案に対しまする会議におきましては、領海の問題と、それから公海におきまする漁業規制の問題と、この二つの問題が取り上げられるかと思うのであります。もちろんそれ以外にも、大陸だなの問題、その他いろいろわが国関係の深い重要な問題がありますが、ただいまの御質問に対しては、この二つについてお答えを申し上げたい。かように存ずるのであります。  領海に関しましては、今審議基礎になります草案におきましては、三海里と十二海里の間で何海里とするかということについては、関係国一致したところで決定すべきだ、こういう案を出しておるのでございまして、日本といたしましては、ただいま大臣からお話がございましたように、その他の海洋国ともたがいに手を携えて、あくまでも領海は三海里ということで主張し、かつまたそう主張することが日本の当面しておりまする領海に関しまする国家的利益というものに合致する。かように考えておる次第でございます。  ただいま話がまとまらなかったらどうするか、こういうことに関しましては、会議の進捗を見た上でないと、何ともお答えいたしかねるのでありますが、とにかく、その際におきましては三海里を主張したということのために不利なる立場に立ち回りますことのないように、十分配慮をして折衝をいたす、かように考えております。  それから公海におきまする漁業規制の問題に関しましては、公海におきまして漁業をいたしておりまする国が、資源の保護のために漁業規制し得る権利を持つ、こういうことに相なっておるのでありますが、同時に沿岸国がその規制に対して参加し得る、こういうことに相なっておるのであります。そこで、沿岸国と出漁国との間の意見が一致しない場合においては、沿岸国が科学的根拠に立って自国及び出漁国との間の平等なる基礎の上に、その必要とする規制措置を講じ得る、こういうことに相なっておりまして、それに対しては、仲裁裁判に訴える道が開かれておるのでございます。しかしながら、日本といたしましては、あくまでもわが国漁業を守っていくという観点に立ちまして、科学的な根拠に立って資源の保存をはかるための合理的な漁業規制をするという場合においては、あくまでも国際間の合意に基いてやるという立場を貫いて参りたい、かように考えておるのでございまして、従って、今後この会議に臨みましても、そういう立場においてできる限りの主張もし、貫徹もはかって参りたい、かように考えておる次第であります。そこで、同時に国際的な漁場についてのいろいろな制約が加わっておる現在において、いかにするかということに関しましては、この国際法典においてわれわれがとろうとしておりますその立場そのものが、すなわち日本等の海洋国の行くべき立場である、かように考えるのであります。国際的ないろいろな支障に関しましては、それぞれについてこれを十分折衝をしてほぐして参る、かように努力をいたしたい、かように考えております。
  54. 千田正

    ○千田正君 今の奧原長官のお話であれば、沿岸国が主張した場合には協力するという意味にとられますが、ただいまのソ連側は、昨年から日本側とのいわゆる協定に基く四十海里、それから先ほど大臣が御答弁になった歯舞、色丹あるいは千島等におけるところの占領地区における十二海里説、これはあくまで公海における自由の原則からいえば、そういうラインを引かれるということは、われわれは承知できないのですよ。今お話しのように、漁業資源の保護という意味において沿岸国がそういうことを設定し得るけれども、私は、日米加条約におけるところの百七十五度以東ですか、この問題でさえもマッカーサー・ラインにかわるべきところの制限区域だと考える。さらにソ連側の主張している四十海里については、勝手な私は言い方だと思う。それを打ち破るだけの日本としては科学的根拠を持たないところに、今までの科学的調査あるいは資料の収集等において貧しい点があったのではないか、私はそう思うのですが、今度の三十三年度の予算を見ましても、こうした調査研究という面の予算は、あまり感心できない。水産そのものは将来国際性を帯びているだけに、国際会議において堂々と日本の主張が通るような相当の予算を持って、そうして研究を積み重ねていかなければならないと思う。私は四十海里説は、はなはだ不満でありますが、大臣並びに長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  55. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 私も領海的に考え、四十海里というのは不満であります。ただ、日ソ漁業交渉の場合におきましては、漁業委員会の条約に基いて、距岸四十海里を離れて漁撈をしようというこれは契約上の、両方話し合いの問題であります。一方的に四十海里であるとかというようなことに対しては、私どもは頭から承諾できない問題であります。日ソ漁業委員会での話し合いの漁撈といいますか、魚類を保存するという意味で魚をとる場所をお互いに避けようという話し合いでありますから、これは話し合いとすればいたし方がない、こういうふうに考えておりますが、領海としての主張は認めるわけにいかない、こう考えております。
  56. 千田正

    ○千田正君 領海の主張として認める、認めないは別ですが、そういうふうに資源保護、資源保護というので方々にラインを引かれている、これは終戦後における日本の海洋における活動を制限されたという意味からいえば、ことごとくそうだと私は言いたいのです。だから、これをどうしたならば防ぎ、どうしたならばもっと日本がすなどりのできるような、漁場を拡張できる方向に持っていけるかというその根本政策は何かということを、私ははっきり考えておく必要があると思うのです。  時間もありませんから次に移りまして、私は最後にお尋ねしたいのは、今、日ソの漁業委員会は、しょっちゅうジグザク・コースをたどっておる、もしも昨年の通り十分な主張ができない、あるいは十二万五千トンで押えられるかもしれない。あるいは十万トンで押えられるかもしれない。必ずしも日本の主張が通るとは、われわれは、どうも今の段階では考えられそうにもありません。しかしながら、国内的には、それぞれの用意をしなければならない。で、妥結することをもちろんわれわれは希望しますが、日本の主張がいれられなかった場合においてでも、やむを得ず日本は、向う側の主張のままに沿うて変えるというようなことがあった場合にはどうするかということを、われわれは考えなければなりません。一体これは最後まで妥結は望むことは、大臣はそういうお答えをするでしょうが、昨年の通りいかなかった場合には、どういうふうにお考えになりますか。
  57. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 昨年の通りにいかない妥結になりまするならば、母船や独航船を減らすという形になると思うのであります。しかし私は、今交渉中でもありまするし、千田さんも御承知と思いますが、わが方の主張は、やはり沖取り漁業というものが、向うのソ連の漁業に大へんな悪影響を及ぼしていないのだ。むしろ沖取りの漁業があって、適当に産卵もでき、向うの漁獲もできるのだということは相当科学的な根拠に基いて主張しているわけであります。それからもう一つ主張の違う点は、マス等について豊漁と不漁の年があってことしは不漁なのだということでありますが、私どもの方は、統計上やいろいろな科学的根拠に基いては、そういう確然たる区別はないのだと、だからして、その差というものが、かりにあったとしても少いのだという主張を続けておるわけであります。でありますので、経過等を見まして、だんだん近づいてきておるから、決裂のままということはちょっとあり得ないのじゃないかと思いますが、私は、話がほんとうに違っておるということなら、一度帰ってきて、また交渉し直すということもあり得ると思うのですが、これもまだ、漁期が近づいてきますと、そういうこともなかなかできません。そこで両方の意見が、相当平行線できまらぬというような場面にも追い込まれるかもしれません。そういうときには、去年の経験等を見ましても、岸総理が、最後にテヴォシャンと科学的な根拠に基いて、政治的に話し合うというようなことで、漁獲量等をきめた例もありますので、私は、だれが行けばきまるということではないけれども、やはり平行しておるような場合には、政治的にもきめなくちゃならぬということで、きめるきっかけを作るという意味においては、これは、こちらから人を出すといいますか、出ていくのも、きめるきっかけを作ることになりはしないかということにも考えております。そういうことで、妥結の道をいろいろ考え、また、出先の委員あるいは政府代表におきましても、熱心にこの妥結の道を開きつつ交渉しているわけであります。もう少し経過を見てから、今のようなことは考えてみたいと思うのでありますけれども、また、国内の漁業者等につきましては、どれくらいになるかということの予想を申し上げるわけにもいきませんし、また、私も知っているわけではありませんが、全然なくなるとかいうようなこともないので、ある程度の準備はしておくことがしかるべきだと、こう考えております。
  58. 安部キミ子

    安部キミ子君 関連して。私は、今漁業問題が出ましたので、先ほどの千田先生の質問に関連してですね、今問題になっております安全操業の問題について、いつまでたってもこのまま解決しないのでは、現地の漁民も非常に困ると思うのです。それでソ連側の意向は、安全操業と領土と平和条約の問題がスムーズに解決するには、基本である平和条約を早く締結することだと、その平和条約が締結されれば、あとの二つの問題は自然に答えが出るのだと、こういうふうな考えに立って、なかなか向うの主張は強いし、今の様子では譲りそうにもないのでしょう。このまま譲らないで、日本側といつまでも対立しているということになりますと、一番困るのは漁民でありますが、この問題がいつまでも対立して解決がつかないということについて、大臣はどう考えられますか。このまま放っていつまでも対立したままにしておかれるのかどうか。その点、一つ。
  59. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 話を分けて申し上げまするならば、先ほどから私が申しておりましたように、日ソのサケ、マス等の漁業交渉ですが、これは今から漁業交渉を新たにするということではなくて、一昨年の十一月でしたか、日ソ漁業条約ができたのでございます。その条約の各条文に従って、日本及びソ連側から三人の委員が出て、その委員会において総漁獲量とか、規制区域とかを相談いたしまして、それを各政府に勧告する。各政府がそれぞれの措置を許可をしたり何かすると、こういうことになっておりますので、これは平和条約の問題というようなことはかけ離れて、共同宣言がなされた場合には、この条約が効力を発するということで、効力を発して去年も第一回委員会が開かれた。ことしも第二回の委員会が開かれたのでありますから、これは平和条約の問題とからませるべき問題でもなし、また、ソ連側としても常識があるりっぱな国として、これを平和条約にからませるというようなことは、私はあり得ないし、また、あったといたしましたならば、それは筋違いだ、こういうふうに私は考えております。  それから安全操業の問題でありますが、これは去年、ことしに始まったわけではないのであります。終戦後引き続きあの周域には出漁ができないということで、ずっと続いてきておったのであります。しかし、小漁業者といいますか、零細漁業者等については、歯舞、色丹などは、共同宣言においても、平和条約ができれば日本に引き渡すというようなことなど、はっきりしているようなことでありますから、あの近辺に出漁するということが必要であり、望ましいことでもありますので、昨年あの近くに入って漁をするということについての申し入れをしたのであります。そのほか三、四の点において、灯台を作るとか、あるいは墓参りをするとか、いろいろな問題について申し入れをしたのであります。その申し入れをしたところ、ソ連側から、私の方からの再々の督促によりまして、昨年の八月でしたか、交渉に応じてもよろしいというような話があって、ことしになりまして、日ソサケ、マス漁業交渉等と一緒にやりたいということでありますから、これは分離してやるべきものだ、日ソサケ、マスの漁業交渉は、漁業条約に基いてやるべきだ。安全操業の問題は、この条約の中には入っていないもので、別にやるべきだということを主張いたしまして、これは向うでいれたのであります。向うでいれて、ただ時期的には、日ソサケ、マス漁業委員会が開かれるときに話し合おうじゃないかというようなことになっておったのでありますが、最近におきまして、今御承知通り、正式に平和条約を締結しなければ、安全操業の問題は応じないと言ってきたわけではないのであります。話の途中におきまして、平和条約の問題、平和条約を締結するということは機が熟していないから、安全操業の問題を取り上げるのも時期が早いといいますか、来ておらないのだ、こういうふうに申出でがあったのでありますが、これは正式に平和条約を締結しなければ、安全操業問題と抱き合して安全操業問題を全然取り合わないという強い意味ではないと、私どもは受け取っておるのであります。で、十二年、それ以前からあの近くには入れないというようなことなんでありますが、それにつきまして、困っておる漁民に対する生活保護とか、あるいはまた漁船の建造についての融資とか、いろいろな方法は講じていきたいと思いますが、おととしまでやっていて、急に去年からだめになったとか、あるいは去年までやっておったのが、ことしからあそこへ入れなくなったという問題とは性質が違うのであります。御承知だと思いますけれども、念のためにつけ加えておきます。
  60. 安部キミ子

    安部キミ子君 大臣は、それではこりを切り離して、日本が突っぱねていって、いつまでもソ連との意見が平行線になっていてもかまわないと言われるのか。ソ連のねらいは、平和条約を結ぶことがソ連の考え方としては一番大事なんですよ。というのは、日本のうしろにはアメリカがあるのだ、アメリカが日本を利用して原爆の基地をソ連とか中国とかという共産圏に向って、御承知のようにもう北大西洋条約からNATOから、みんな態勢をとって、現にイギリスにもそういう基地を作りつつあるわけですね。で、ソ連は、昨年は私はブルガーニン首相に会いましたし、風見先生はフルシチョフ第一書記に会われて、いろいろな方たちに会って、一体ソ連は千島をどんなふうに考えているかという質問をしたわけです。ところが向うは、ソ連は土地は大へん広いし、資源が豊富で、あの小さな千島がほしいとは実は思っていない。率直に言えばあの千島はあってもなくてもそう問題はないのだけれども、戦略的に今は価値がある、というのは、先ほど申しましたように、アメリカが日本の中にあって基地を作っておる現在では、ソ連としては、この問題を日本が要求するように、すぐはいということにはいかないというわけです。千島の価値を、ただ戦略的な価値としてしか見ていないのです。だから日本が早く平和条約を結べば、そうしてアジアの諸国が平和になり、共産圏に対して自由陣営がみんな一斉に大砲の口を向けているようなことがなくなれば、日本にとっては、私は非常に有利になると思うので、いつまでもこの平和条約を結ばないでいるという日本の政府の考え方が、私どもにはわからないわけなんです。早く平和条約を結んでですね……
  61. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 安部さん、今予算委員会からだいぶん呼びに来ておるので、大臣は三十分ということでなにしたので、一つお願いいたします。
  62. 安部キミ子

    安部キミ子君 それで、時間もありませんので……、こういうふうに向うの意向も、大体日本の政府にもわかっていると思いますので、早く平和条約を結んで、その平和条約を結んだ中において安全操業の問題やら領土の問題を解決した方が、日本にとっても得策ではないか、こういうふうに考えますが、平和条約を早く結ぶという考え方について、農林大臣の所見を伺いたいと思います。
  63. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 平和条約等の問題につきましては、一昨年来非常に交渉を続けてきたわけでありますが、その結果、領土の問題、歯舞、色丹はきまりましたが、国後、択捉島が日本の本来の領土であるという主張と向うの主張とが食い違っておりますので、平和条約締結ということには、いっておりませんけれども、しかし、日ソ共同宣言によりまして、日ソの国交は回復してきておるのであります。でありまするから、平和条約の問題は、まあ私は外交官じゃありませんが、外交的な言葉で言えるかどうかしりませんが、これは継続審議というような形になっている。引っ張られておるような形であります。でありますから、あえてこれを拒否している日本の理由も何にもないのでありますけれども、しかし、それが締結されるというのには、見通しとして、国後、択捉島が日本に返されるということでなければ、これはなかなかむずかしかろうと思います。今のお話のように、平和条約を締結してから領土を返してもらうということとは、逆のようないきさつになっておりますので、私は、平和条約締結ということは好ましいことでありましょうけれども、事実上非常にむずかしいというふうに考えております。
  64. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  65. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をつけて。
  66. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけ伺います。これは先般来たびたび当委員会から主張しておりますが、今度の補正予算にラッコ、オットセイの処置に関する補正予算が五億円計上されております。ラッコ、オットセイはすでに接岸して来つつある。これに対する処置を早く講じないというと、ことに零細漁民はとれなくなるというと、やはり違反を起す、こういうおそれがあるのであります。一体これは、いつごろまでにこの問題を解決するか。ことに最近の状況を伺うというと、船を持って財産のあるものに対しては、金融公庫を通じて金を貸して転換させるということを言っておられる。船を持たない、そうしてしばらく休んでおったというそういう零細漁民に対する方法というものは、まだはっきり打ち出していないのじゃないか。それに対してはどういうふうにお考えになっておりますか。
  67. 奧原日出男

    政府委員奧原日出男君) ただいまのお話は、イルカ業者の転換の今の進行状況について御説明申し上げる必要があるかと思うのでありますが、われわれといたしましては、イルカ漁業によりまして猟銃によりイルカの漁獲によって生計を立てておった漁民というものを、どういう形においてつかむかということに、いろいろ苦慮をいたし、業者の実態を調査し、あるいはその後またいろいろ実績を有する方々のお話も伺ったり、そういうことで時間を要したのでございます。われわれといたしましては、あのオットセイ条約の交渉前二カ年の間に、猟銃によりまして正規の火薬の使用の許可を持って、イルカを二カ年間のうちのどちらかの年にでもとっておれば、これをイルカ転換の対象としてとり上げる、こういうことにはっきりした客観的な一つの基準を求めたい、かように考えておる次第でございます。そうして、大体われわれとしましては予算に要求しております程度の百七十隻足らずくらいの船がこれに該当するのじゃないか、こういうふうに今の段階において考えておるのでございますが、ただその中で、みずからこの際従来の突棒船をやめまして、漁船を建造していきたいというのと、それから漁船を新しく作るよりも機関換装する、あるいは漁探を整備する、そういうふうな程度の充実をこの際加えて、他の漁業に転換していきたいという方々と、それから、もうこの際いっそ漁業をやめて、そして別の仕事につきたいという方々と、大きく分けまして三つのグループがあると思うのであります。それらにつきまして、それぞれに対しまして廃船の交付金及び代船建造、あるいは機関換装の補助金、さらにまた失業をいたしまする銃手等乗組員に対しまする補助金、そういうようなものを予算に計上いたしておる次第でございます。一方におきまして、公庫におきましてもこれに対する融資の準備をいたしておるのでございまして、すでに経由金融機関を通じまして、公庫の方に書類がだんだん出て参っております。これらにつきましては、もうおそらく来月末まで待つまでもなしに、融資措置が具体的に決定される、かように考えておるのでございまして、従いまして、実はイルカ漁期前に転換を運びたいと考えておりました点は、やや立ちおくれた次第であったのであります。しかし、明年度前半中にはそれぞれ転換が達成し得ると、かように考えております。
  68. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) この件については、本日は、この程度にいたします。  本日は、これをもって散会いたします。    午後五時二十三分散会