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矢嶋三義君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました二法案に、断固反対の意思を表明するものであります。
まず、
内容に入る前に、審議を十分尽すことができなかったことを遺憾に思います。私
ども本
委員会に臨むに当りましては、少くとも数ヵ月間にわたってこの
内容を研究するとともに、さらに、審議の
過程においては、つぶさに
自衛隊の各部隊を親しく視察し、審議の資料といたしたい、かように
考えておったわけでございますが、視察はおろか、十分なる
質疑を尽すことのできなかったことを、非常に遺憾に思います。しかしながら、ただいま
質疑打ち切りの採決が行われましたので、まことに遺憾でありますけれ
ども、反対の討論に入る次第でございます。
まず、私
どもが反対する第一の理由は、申すまでもなく、この法案が
憲法違反であり
憲法をじゅうりんしていることであります。
憲法をじゅうりんしているということでございます。
岸内閣の代表者である
岸総理大臣は、事あるたびに、法治
国民は
法律を守らなければならないということを、いたいけな子供にまでさとしているわけでございますが、その
岸総理自身が、国家の基本法であるところの
憲法を軽視し、じゅうりんしているということは、素わめて重大なことだと思うのでございます。
そのじゅうりんしているという理由は、本法案審議の
過程において、各
委員から
質疑指摘されましたように、この
憲法が
制定されました当時は、
武力行使ができない、こういうことを担当金森
国務大臣は再三にわたって明確に
答弁をいたしておるのでございます。さらに、
憲法草案審議の段階におきましては、果して
自衛権があるかどうかということも論じられておりました。当時の吉田
総理大臣は、
自衛のためといって過去において
戦争をやり、誤まったのであるから、
自衛戦争もこの
憲法は
否定しているということを、当時の吉田茂
総理大臣は言明をいたしまして、速記録に残っておるわけでございます。しからば、国はいかようにして守るのかという
質問に対しましては、徹頭徹尾、
日本国
憲法の前文を引用いたしまして、そして平和裏に話し合って、諸
国民の公正と信義に信頼し、そうしてわれらの安全と生存を
保持することを決意したのだ、かように
答弁をいたしました。それを
国民は信じて参ったのでございます。で、御
承知のごとく、吉田
内閣時代には吉田
総理は、
自衛のためといえ
ども戦力は持てない、
最小限度の狭義における
自衛権があると、こういう
答弁で終始いたしました。当時朝鮮事変勃発以来、アメリカは
日本政府に対しまして、防衛力の増強と再軍備をきわめて強く要求して参ったわけでございますが、当時の吉田
総理は、この
憲法九条をたてにとりまして、
日本には軍備は持てない、これをたてにとりまして、アメリカの抑圧をある面において排除して参ったわけでございますが、時移り、鳩山
内閣が誕生するや、
自衛のためならば
戦力も持てる、こういう
解釈に変って参りました。さらに、
岸内閣に至るや、全くズロースを抜いでしまいまして、そうして先日来の本
委員会におけるところの
答弁にも明確なごとく、相手が
攻撃してきた場合には、これを迎え撃つための
実力を持つことができる。これまで
憲法解釈を曲げて参ったわけでございました。このことたるや詭弁以外の何ものでもございません。私
どもは断じて許すことはできません。
これをさらに
解釈いたしますならば、今や
IRBMあるいはICBMの時代に入ったわけでございますが、相手国が
IRBMをもって
日本を
攻撃するおそれがある場合には、これを迎え撃つために、アンチ・
ミサイル・
ミサイルというものを持てる、また持つという
解釈になって参ります。このことに対しまして、
岸総理は、かような場合にはアンチ・
ミサイル・
ミサイルは持てるが、それは
核兵器であってはならない、かような
答弁をいたしておりますが、常識的に
考えましても、ICBMとかあるいは
IRBMを迎え撃つところの兵器というものは、これは
核兵器に間違いございません。
核兵器以外のもので
IRBMを迎え撃つところの兵器というものは、
考えられません。ここに
岸総理の
答弁には非常な矛盾があるわけでございまして、
憲法に違反し、これをじゅうりんしていると思う次第で、こういうことを論ずること自体が、すでに私は
憲法の基本精神に反しているということを指摘せざるを得ません。
さらに、津島防衛庁長官は、領空侵犯に対する
自衛隊法八十四条の
発動につきまして、他国の飛行機がわが
日本の領空に侵入した場合に、退去あるいは着陸を勧告した場合、これを聞き入れず相手が発砲してきたならば、
自衛権の
発動として、
自衛行動といたしまして、刑法三十六条の急迫不正の侵害に対する正当防衛として
武力行使をすることもあるということを、
答弁いたしておりますが、きわめて危険でございます。かような形で
日本の安全を守るという
立場において、
日本国
憲法は
制定されたものでないということは、小学校の生徒でもわかることだと思うのでございます。
それは良心的にあなた方は私のこの理論には賛成せざるを得ないと思うのでございますが、何といっても、
日本の防衛力増強というものは、アメリカの、米国の支配のもとに、その指導の下にやられておるわけでございまして、心ならずもかような詭弁を弄して、今の防衛力増強をやっていることは、
国民を欺瞞し、
国民を欺いているものとして、その反省を求めなければなりません。これが私の本法案に反対する、しかも最も重要なる理由であります。
次に申し上げたい点は、
国民を欺瞞して、米国の世界戦略に基く極東米軍の一環として
自衛隊が成り果てつつあるということでございます。で、
岸総理は、事あるたびに、
核兵器は持たない、また他国の
核兵器は持ち込ませないと、かようなことを
答弁いたしておりますが、しからば、アメリカの
核兵器は
日本にはっきりと入ってはならないと、そういう法的根拠はどこにあるかと指摘いたしますと、それはないと。それでは、アメリカの
核兵器が
日本に来ていないという証拠がどこにあるかと言いますと、これもまた
答弁ができません。ただ、信頼していると言うだけであります。
国民は不安でならないわけでございます。と申しますことは、行政協定の五条によりますと、アメリカの
核兵器を持った飛行機あるいは軍艦は、自由にわが
日本国の港、さらに飛行場に出入ができることに相なっておるわけでございまして、
岸総理のこの点はきわめて不明確だと思うのでございます。しかも、事あるときに、行政協定二十四条におきまして、
日本区域の防衛のため必要な共同措置をとるということになっておりまするので、
核兵器は持たない、持ち込ませないと主張するところの
岸総理は、事あるときには、行政協定二十四条に基いて、
核兵器を持っているところの米軍と共同
行動をとることに相なるわけでございまして、非常に
岸総理の言明には矛盾が多いのでございます。従って、私
どもこれを明確にし、
国民に安心していただくため、非核武装決議案、
日本国を核武装しないという決議案を国会で決議することによって、これを中外に宣明し、そうして
日本を核武装しない、他国からも持ち込ませない、かようにいたしたいというので決議案を上程いたしましたけれ
ども、自由民主党の諸君はこれに賛成いたしません。ここに問題があると思うのでございます。
しかも、私が
質疑の段階に指摘いたしましたように、十八日UPワシントン電は、アーウィン米国防次官補代理は、
日本に
核兵器基地を設置いたしたい、そうして
日本の岸政権は
核兵器並びに
核兵器基地について非常に消極的であり神経質であるが、この
日本の政府に対しまして米軍幹部は圧力をかけるべきである、かようなことを責任者アーウィンはアメリカの記者団を相手に談話を発表いたしておるわけでございます。これは全世界に電波をもって通じられたわけでございまして、これが虚構のことだとは断じて
考えられません。さらに、ダレスさんは、一九六〇年までには極東の大部分の国は小型の戦術用
核兵器を持つに至るであろう、持たせるということを言明いたしておりますし、さらにその前提といたしまして、スタンプ大将は、
日本の政府が要望するならば、ナイキ、オネストジョンを供与するということも言明いたしておるわけでございまして、これらの点につきましては、われわれ
国民は知らされておりませんけれ
ども、岸政権とアメリカ国防当局とは何らかの話がかわされているものと推察されます。その線から、このたび技術研究本部等が設けられ、それに即応ずるところの予算が計上されていると思うのであります。この
矢嶋の言うことがうそかうそでないかということは、いずれ時が証明するでございましょう。
かくのごとく、
国民を欺瞞し、アメリカの世界戦略に基く極東米軍の一環として
自衛隊が成長し、
国民の多額の税金を費消しているということは、断じて許すことはできないと思うのでございます。
第三点として申し上げたい点は、今やICBM、
IRBMの時代になりまして、世界の情勢というものはずいぶん変って参りまして、世界政治を動かすに至りました。ましてや、各国の国防体制というものが再検討されているこの時でございます。そのときに、従来わが陸上
自衛隊は、おおむねアメリカの中古兵器を貸与あるいは購入して
装備して参ったわけでございますが、二年前、アメリカの
日本に対する強要によって、時の
日本政府が約束をいたしました陸上
自衛隊一万人増員計画を、ICBM、
IRBM、世界が宇宙時代になった今日現在、この陸上
自衛隊一万人の増員を主とするところのこの法案を出されたことは、全く今なお世界情勢と兵器の進歩を知らないものでありまして、まことに残念に思う次第でございます。御
承知のごとく、陸上
自衛隊一人を増員するに当りましては、一人当り二十六万円の予算を必要とするわけでございます。かりに
自衛隊が存続し得るといたしましても、かような世界の情勢に即応しない、一世紀あるいは半世紀おくれたような、かような
自衛隊の増強計画をいたしましても、数年後には
国民の税金がむだ使いされたという結果がもたらされるでございましょう。かような先の見えないところの防衛計画というものは、国防政策というものは、アメリカの支配下にわが
自衛隊が入っておって、ほんとうに、
国民の手になる自主性のあるところの
日本国の
自衛隊でないところに、こういう事態が生ずるわけでございまして、戦後十二年、すでに独立して久しきわが
日本国民といたしましては、そのプライドからいっても、この法案に賛成することはできません。
さらに、最後に、第四点といたしまして、予算面からこれを申し上げたいのでございますが、御
承知のごとく、わが国は
戦争に負けまして、四つの島に九千万に余るところの
国民が生活するという、こういう悲境に追い込まれました。しかも、戦後処理が適切を得なかったために、今日なお全国に一千万有余の生活困窮者をかかえており、社会保障政策の推進が最も要望されているわが国の現状でございます。さらに、わが国は災害国でございまして、年々風水害等によって多額の損害を
国民は受けておるわけでございまして、若干数字をあげて申し上げますならば、戦後十年間にこういう災害で受けたところの損害は約三兆円に相なっております。年々平均二千五百億から二千八百億円程度の損害を受けているわけでございまして、今やわが国の政策の重点は、社会保障を推進することによって民生の安定をはかり、さらに資源が少く狭い領土に多数の
国民が住んでいるわが国におきましては、国土の回復、保全、この政策を強力に進めなければならない、これが何ものにも先行しなければならない政策であると私は
考えます。しかるに、これらの政策を第二義的に扱って、今の世界情勢上必要もない
自衛隊の増強のために多額の
国民の税金を使っているということは、何といっても、私
ども理解のできないところでございます。
このたびの国会で成立いたしました防衛庁の予算は千二百六億円でございまして、これに防衛分担金を合せますると、実に千四百六十一億円でございます。この数字を、あまりにも大きいのでちょっとわかりずらいので、皆さん方並びに
国民によくわかるようにこれを説明いたしまするならば、この国会に赤じゅうたんが廊下に敷かれております。廊下に赤じゅうたんが敷かれておりますが、この赤じゅうたんに千円札を二百十枚、二十一万円の厚みで廊下の赤じゅうたんに貼れば、これはあなたが預かっている千二百億円に相なるわけです。だから、あなたが廊下を歩くときには、いつも、赤じゅうたんを踏んだときには、これは二十一万円を踏んだ、こういう気持で歩いていただかなければなりません。(笑声)笑いごとではございません。また、国会の面会所がそこにございますが、あの面会所は三億九百七十五万円で建築中であります。この建築は、御
承知のごとく、すでに五カ年たってなおでき上っておりません。ようやく十二月にあの議員面会所は利用できることになるわけでありますが、この三億円の議員面会所を、あすこには
政府委員とか、あるいは法制局の諸君が入るわけでありますが、これが五年かかってなおできて使えない。ところが、防衛庁の予算に換算いたしますと、あの建物が一年間に四百棟できるわけですね。四百できる。それだけの
自衛隊は予算を使っておるわけです。これがどれだけ国の発展のために、さらに民生安定のために役立つかということを
考えるときに、これらの点については納得しかねるものがあるわけでありまして、この法案が多数決によってもしも成立した暁におきましては、その使途につきましては、十分厳正に効率的な扱いをしていただかなければならないと思うわけです。
最後に、一点指摘いたしたい点は、隊員以外の訓練を百条の二においてなすということ、並びに防衛庁法の三十三条の二によって、
日本の防衛大学に外国人の学生を入れて、教育訓練を受託してやる、こういうようなことは、私は非常に飛躍したことであり、今の
憲法と
自衛隊法の
立場からいって、これまたできないところでございます。
時間が参りましたので、私は本日はこの程度の理由を申し述べまして、わが
日本社会党を代表いたしまして、本二法案に反対の意を表明いたした次第でざいます。