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1958-04-23 第28回国会 参議院 内閣委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月二十三日(水曜日)    午前十一時三十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤田  進君    理事            大谷藤之助君            松岡 平市君            永岡 光治君    委員            上原 正吉君            大谷 贇雄君            剱木 亨弘君            後藤 義隆君            中野 文門君            西田 信一君            増原 恵吉君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            森中 守義君            矢嶋 三義君            島村 軍次君            八木 幸吉君   国務大臣    文 部 大 臣 松永  東君    建 設 大 臣 根本龍太郎君    国 務 大 臣 郡  祐一君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣官房内閣調    査室長     古屋  亨君    国防会議事務局    長       廣岡 謙二君    総理府総務長官 今松 治郎君    内閣総理大臣官    房公務員制度調    査室長     増子 正宏君    総理府恩給局長 八巻淳之輔君    南方連絡事務局    長       石井 通則君    行政管理政教次    官       榊原  亨君    行政管理局庁行    政管理局長   岡部 史郎君    自治庁長官官房    総務参事官   佐久間 彊君    大蔵省主計局給    与課長     岸本  晋君    文部大臣官房総    務参事官    齋藤  正君    文部省社会教育    局長      福田  繁君    建設大臣官房長 柴田 達夫君   事務局側    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    文部省社会教育    局体育課長   佐々木吉藏君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○自治庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○建設省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○総理府設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○恩給法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○旧令による共済組合等からの年金受  給者のための特別措置法等の規定に  よる年金の額の改定に関する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○内閣法の一部を改正する法律案(内  閣描出、衆議院送付) ○国防会議構成等に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○文部省設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院返付) ○継続調査要求の件   —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣委員会を開会いたします。  ちょっと、速記をとめて。    〔速記中止
  3. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して下さい。  まず、自治庁設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質疑のおありの方は、須次、御発言を願います。
  4. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この自治庁設置法の一部を改正する法律案に関する資料は非常に整備されておりまして、質疑はだいぶん簡素化することができるようであります。資料をよく整えられたことについては、敬意と感謝の意を表しておきます。  そこで、数点について伺いたいと思うのですが、確かに自治庁は、各地方公共団体への連絡、それから指導助言を与えること、並びに政府部内における各省庁との連絡等があり、相当事務複雑多岐であるということは了承いたします。このたび長官官房官房長を置くということが内容として含まれているわけでありますが、この官房長制度については、先般も岸総理に本委員会に出席いただいて、千葉委員を中心に、かなり本質的な質疑応答が行われたわけでありますが、第一院におきましても、たとえば文部省官房長は修正、削除して本院へ送付されて参りました。自治庁設置法改正案は原案のまま送付されているわけでありますが、従来は、この改正によって官房長が扱うであろう業務はどなたがどういう形でやられておったのか、その必要の状況についてお答えいただきたいと思います。
  5. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 御理解のあるお言葉をいただいたのでありまして、自治庁で実際扱います仕事が、御指摘のように、各省関係では、ことに法律を作りますときに非常に多く出て参ります。ところで、これは税が主だろうからということで税務局が扱っておりますが、実は、場合によりまして行政の面で非常に大事なことがある。従いまして、御指摘の点は、多くは事務次官、幸いにして非常に練達な事務次官が今おりますので、事務次官のところでさばく場合が非常に多いのであります。もちろん、状況によりましては総務課長がいたしまする場合もございますが、正確には総務参事官でございますが、総務参事官がいたすこともございますが、各省間の相当込み合いました事態につきましては事務次官。また同じような状況で私のところへも、事務次官のところへも参る場合が非常に多いのでありますが、いろいろな方面から、また国会議員の方なども言われるときに、なるほど伺っていると、起債の問題がある、町村合併の問題がある、そのたんびに、自治庁は、君のところか次官のところへ行かないと話がらちがあかぬのは困るなというので、勢い私のところへ、今までは事務次官、ことに地方公共団体人事の相談を受けております。これはどうもほかの者では、はっきりいたしたものがございません。従いまして、事務次官のところでいたしておりまするけれども地方団体人事の依頼を受け、あっせんをいたします機密を要しますようなことは、ぜび官房長というところでいたしたいと思います。今申しました三つばかりの点は、いずれも現在は事務次官が主として扱っております。これはかなり事務次官としても大へんでありまするし、同時に、受ける方も人がとらえられないために困るというようなことを聞きまして、どうにか間に合せておりますが、そういう状態でございます。
  6. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 自治庁官房長を必要とする説明は、大体私は了といたします。  次に伺いますが、「国会及び地方公共団体との間の連絡を緊密にする等」というのがうたわれておるわけですが、自治庁長官は元の内務省の御出身であるだけに、自治庁長官としてはあまりにその内容を知り過ぎていらっしゃるのではないかというような感じを私は持っておるわけですが、それで、知り過ぎておるだけに、場合によってはいい判断と裁断が下されてうまくいくこともあり得るし、また逆の場合もあるのではないかという懸念をするわけなんですが、それで、最近の地方公共団体に対する自治庁の臨み方を見てみますと、やはり昔の内務省的な性格性格へと復帰しつつあるというような感じがするのでありますが、あなたは昔の内務省のこともよく知っていらっしゃるし、自治庁長官として今の自治庁のこともよく熟知されているわけですが、町村合併等で、一万余ありました地方自治体も三分の一か四分の一程度になったわけですが、昔の内務省と今の自治庁というのは、どういうように自治庁長官考えておられますか。やはり昔の内務省のような形に返した方がいいと、そういう方向に持っていきたいというような考え長官はおられるのじゃないかということを、ちょいちょいと感ずることがあるわけですが、どういう御見解でございますか。
  7. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 私は、終戦後の法律その他いろいろな改革一つの顕著な例は、地方自治体というものがしつかりして参った、地方自治体執行機関議決機関も非常な責任を持って参ったという点を考えるのであります。従いまして、私は、自治体に対する指導と申しますか、扱い方というものは、かつての内務省がいたしましたような、事前にものをきめ、許認可のような形でいたしておりましたやり方というのを、全部制度の上で改めまして、何と申しますか、後見的な、やってみたところで、こういう点があるのでございます。町村合併にいたしましても、その他の点にいたしましても、どこそこではこんなにうまくやれたのに、君のところはもう少しやり方がうまかったらよかったじゃないか。それから、こういう例もございます。昨年、中国の県で水道がいたみまして、伝染病等が起った例があります。その場合に、特別交付税が行かない町村が起った。これはいけるはずなんです。ところが、これはもとの法律が——それを直すような問題もございましょうが、伝染病の予防として扱いますと特別交付税が不交付団体には行かないのであります。ところが、これは災害として扱ってくれば、君、行ったじゃないか、それを自治庁にむざむざと特別交付税を戻してくれぬでもできたじゃないか、そういうときには一ぺん前に相談してくれるとよかったのだがなということがあったのであります。しかし、地元に対しましてはそれぞれの理由で説明をつけておきました。従いまして、なるべく、手数はかかりますが、あとになってものを、この次はこうして下さいよというような指導に直ってきております。  ただ、財政再建団体などでは、急速にやはり財政再建という状態から脱却させたい、そんなことのために、制度上も幾らか、申さばやや昔の地方制度に近いようなものが残っておるところがございますけれども、思想としては、これからの行き方としては、お尋ねの点に対しましては、とにかくそういう工合に自主性を十分に認め、その後において是正すべきものがあれば事後においていたすというようなことで、指導いたして参っております。従いまして、自治庁仕事の割合も、ものの考え方も、全く従来とは変っておると私は考えております。
  8. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私があえてこういうことをお伺いするわけは、官房長の職制の新設によりまして、官房長を通じて地方公共団体を掌握するという形が出てくるおそれが多分にあると思います。この点は十分私は注意していただかなければならぬと思います。  具体的に伺いますが、地方財政再建促進特別措置法関係財政局に移して参ったわけですが、私どもときどき用件があっておじやますることがあるわけですが、再建団体に対する再建課指導力といいますか、影響性と申しますかは甚大なものがあると思うのです。再建法ができまして、それ以来、赤字団体に対しては自治庁で相当のめんどうを見ていただいた。その点は了としますが、もはやその後の状態というものはずいぶん変っているのですから、自治体再建計画変更等については、自治庁当局としてはかなり幅を持っていいのじゃないか。このたび財政局の所掌に移すことになっているわけですが、そういう考えを私は持っていますが、どういうお考えかということ。  それから、特に、このたびの国会災害防除法が成立いたしました。御存じの通りですね。この災害防除法五ヵ年計画において、災害襲地帯がやる場合に当っては、ことに赤字団体においては、再建計画変更というものをやらなければできぬわけでありまして、これを再建課の人がただ計算尺だけで変更を許すとか、許さぬとかいうようなことでは、あの台風常襲地帯に対する防除法というものは生きてこないと思うのです。確かに日本の経済も相当変って参りましたし、ことに地方財政の様相というものは、あの法が通って当初計画を立てたころと比べると、かなり変ってきているわけですから、私は、出先の指導をされまた認可承認等をされる再建課、さらには今度は財政局になるわけですが、こういう事務当局大臣の意向によって動くのでしょうけれども、相当幅を持たせていいのじゃないか、また持たしてもらいたい、こういう気持でおるのですが、長官の御所見を承わっておきたいと思います。
  9. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 確かに、御指摘のように、財政再建も相当進んで参りましたから、幅を持たせるということは、そのように考えて参ることにいたしましょう。それで、財政局に移しますのは、この方がどうも便利のようでありまするからいたすのでありまするが、私の方で、矢嶋委員の御指摘のように、まだうるさいことを言うておるかもしれません。ただ、それでも自治庁再建団体の味方になっておるつもりでございまして、国庫財政を扱っております当局などは、もう自然増があるからいいじゃないかとか何とか、財政再建団体に対する財政援助を値切ろうとしまして、私の方は単年度黒字になったって累積の赤字がこれほど多いじゃないかというてやっておるのでありますが、従いまして、再建団体に対しては幅を持って扱うことにいたして参りますが、同時に、再建団体をなるべく早く再建をさせ、財政援助をよくいたしますために、私の方でもまだまだと、こう言うておいた方が再建団体のためにいい場合がございまして、その点、私自身の持導も、また事務をいたします点につきましても、十分幅を持たせるように考えることにいたします。
  10. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 一つ具体的に伺いますが、例の給与切りかえに当って以来の問題ですね、これは当該委員会でずいぶん論議されたことでしょうから、私はここでは長いこと論議しません。ただ、要望とお伺いいたしたい点は、国家公務員地方公務員勤労条件というものは必ずしも同じではない。それから、各都道府県における今日の給与の現状というものは、歴史的ないろいろな経過、過程があるわけですね。従って、一つ方向は、国家公務員地方公務員、同一基準にするというその方向は示されても、一挙になかなかそこに行きかねるところがあるということで、青森以下十県ですか、若干トラブルも出てきた。その後、青森は、あなた方の指導というか、これは僕はかなり指示、命令に近いものであったと思うのですが、あなた方の御期待に沿うようにやられたわけですが、あとの県に対しては、今後起債許可等に当ってもめんどうを見ないぞ、報復行政をやるぞ、そういう活字は使っていませんが、内容はそうだと思うのです。こういう点は、郡さん、やっぱり少し行き過ぎているのじゃないでしょうか。やってから三年も四年もその線に来ないというなら別ですけれども、先ほど申したような事情があるのに、ちょっと私は行き過ぎているのじゃないか。  まして、今度は官房長ができて、各県の財政課長とかあるいは総務部長とかを推薦してくれとか、いろいろ世話を頼まれることが出てくると思います。その場合に、官房長が一切握るわけですね。そうなった場合に、官房長の各自治体に対する影響力が非常に多くなってくると思います。このことは、法律がどうなっておりましょうが、行政運営の面で中央集権というものが、実質的な内務省の復活というものが実現する確率が私は非常に大きいと思うのです。従って、私、今一つの例をあげたのですが、少しあれを緩和してはどうですか。少しひど過ぎると思いますが、どう考えておりますか。
  11. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) これは三十県はかりの県で十一の県が、御指摘青森を含めまして、十一ばかりの県が大体自治庁考えのようにいたしまして、まだ九県ばかり残っております。それで、給与の点も、私あまりものを窮屈に考えることもいかがかと思いまするけれども、ただ、府県公務員についてまず国の公務員と同じであること。それから、給与の点でもう一つ私気にしておりますのは、町村公務員でございます。これは大体、この六月か七月に約一千万ばかりの金で、自治庁の持っておりますのはその半分、半分は統計局の予算になっておりますが、約一千万ばかりの金で町村公務員の、特に待遇の点の実態調査をやりたいと思います。そういたします。と、私は、おそらく町村を一律にはできない、三つぐらいのグループでこれから町村給与というものは、合併もいたしたことでありますから、体系つけて、ある程度の給与を保証はできるようにいたしたいと思っております。大体の方向はそういうことでございますので、再建団体給与につきまして、まあ自治庁もある程度の、注文をいたしまするけれども、決して報復的、強圧的ということにはいたしませんで、話し合いでいきますように現に努めておりまするが、官房長がお認めをいただきましたら、これはごく民主的な官房長にいたすように、今のような点などは、ことに給与の点とか、人事待遇のこうした点は、官房長の大事な仕事になりますから、私はそういう点は自分で反省いたします点では、今の自治庁で、これはその規模も小さいせいもありますが、やや自治体に働いている者の実態の把握という点で少し欠けているんじゃないか、もっと実態を把握するということが私は必要だと思っております。従いまして、そういう点、十分気をつけて参ることにいたしたいと思います。
  12. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先般私は行政管理庁を通じて資料提出を要望いたしました件は、おそらくあなたの庁の方に回っているし、今度官房長ができると官房長仕事になるのではないかと思うのですが、私は重ねてあなたにお願いし、伺っておきたいと思うのですが、それは、この前、行政機構改革に関連いたしまして、中央官庁国家公務員もそうですが、あなたの関係のある方としましては、地方自治体出張、特に中央への陳情ですね、こういうものの実態を、若干日数はかかってもよろしいから、人員とか、費用とか、そういうもの、どうせ私は一ぺん調べなければならぬと思うので、時間がかかってもいいから、調べて資料を出していただきたいということをお願いしておいたのですが、これは私は調べられると思うのです。  その点と、それから、僕ら小さいころを想起して、村長さんや、町長さんというものは、一年に数回県庁に行くくらいで、東京なんかに出かける人というものはなかったと思う。時勢は変り、それから行政機構等いろいろ変遷があって、最近は、学校の講堂を一つ作るのに、何人かの町村長さんと町村会議員さんが東京までおいでにならなければ、学校の講堂一つ作られぬというような形というものは、私は納税者立場になったらどうも納得できないと思うのですが、一体自治庁長官は、自治体めんどう見るし、指導助言を与える立場にあるわけなんですから、こういう実情というものをどういうようにお考えになっておられるのか、どういう指導をされているのですか。極端な場合には、私は言いたくないのですけれども、ある補助金が、取れるようにきまっていくと、そうすると、人によればその町長とか村長へ電報を打って、大体止とまったから東京へ出て来いといって、東京へ呼んで、そこでまとまったようにして帰って、何々先生のおかげで補助金が取れたというような、選挙運動にこれを使っている向きも、皆無だと断言できる人は一人もおらぬと思うのです。こういう点は私はデータがなければ徹底的な追及ができないというので、データ要求しているのですが、データ提出ができるのかどうかということと、それから、どういうお考えを持ち指導助言をされておるのか、それを承わっておきたいと思います。
  13. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 私も、現在の地方公務員出張状況で、果して完全な地方行政をいたしているかどうか、少し疑問に思う場合がございます。従いまして、全面的にいけないということも無理かと思いますので、たとえば町村合併につきましては、町村合併のための陳情等事情の聴取は、自分の方から必要に応じて人を出していたすから、地元が出て来るということは相ならぬ。やってきても応待はしないから、というような通知を出してみますが、まあ幾らかは効果があると思いますが、繰り返し出しておりまして、若干は自粛の跡が見えると思うのでありますが、それで各種の府県市町村執行者知事会とか、市長会とか、町村長会とか、これに、一つ君らの方で自粛の決議でもして、君らの方で出て来ぬようにするというようなやり方ができぬかと、こういうことを言っておりまするし、また、私の役所に見えるような向きにつきまして、こういうことで出て来られぬでもいいじゃないかと言うような場合があります。また、必ずしも個人的ではございませんが、団体によって、あるいは官庁がそんな場合があるのかもしれません、出て来いと言うから出て来ましたというのもありまして、従いまして、私どももそういう調査の必要は認めておりますから、これは御要求もありましたし、どういう結果が出ますか、一つこしらえてみたいと思っております。
  14. 大谷贇雄

    大谷贇雄君  今、再建団体の話が出ましたが、先般決算委員会でこの近畿方面調査に行ったわけです。そこである地方公共団体におきまして、府県会議員歳費が毎月九万円になるということであります。一体、この赤字公共団体がそのような多額の歳費を払っているというのはおかしいじゃないか、こういうことを言いましたら、実は議員の方から押されるのだ、こういうお話であります。一体国会議員でも七万八千円、(「今度九万円になったよ」と呼ぶ者あり)しかも、国民からいろいろな批判がある。ところが、国会の方は一年七、八ヵ月も東京に常駐して、不便な生活をして、まあ私、矢嶋さんと一緒の宿舎におりますけれども、まず昔でいうと伍長勤務上等兵ぐらいな待過で、軍曹まで行っておらぬ。自分でやかんに水をついできて、お茶を電気こんろで沸かすというような、実に質素な生活をしているのであります。しかも、これはこの七万八千の給料は高いようでありますけれども、私ども自動車賃が毎月五万円、六万円。そうすると、赤字が、追微分が毎月二万、三万というくらい、国会議員生活というものはかかるのであります。それに対して国民の新聞などの批判というものはきわめて過酷であり、冷酷である。私は、二十万も三十万も出されても、国民にかわって国政を審議する上には当然だと思いますが、この再建団体府県会議員は、月に一回ぐらいより県議会に行かない。それが九万円からの費用が出ているということは、私は納得いかない。忠告を実はしてきたのでありますけれども、うやむやということで、そこまでようやらぬというようなことであったのであります。私は、富裕な県であるならばともかくも、再建団体においてそういうようなことで出費多大になるということは、これは一体自治庁の、郡自治庁長官指導よろしきを得ておらぬと思うが、これに対して御所感をこの際承わっておきたいと思います。
  15. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 御注意の点、私どもも、何と申しましても、そういう費用地方の税金でまかなわれておりますということは、よく考えなければいかぬことだと思います。で、これは大谷委員矢嶋委員、両方のお尋ねにからむのでありますが、この出張の中で、府県会議員等がよその県の状況を視察するというようなことで、旅費などを使いますこの出張、これなどは、それが抑制の措置を努めて講じておりまするけれども、御指摘の点の歳費の点なども一つ十分、あわせて、さらにもっと強力にいたして、実情に即するように、弊害を起さぬようにいたしたいと思います。
  16. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この資料はいずれ出していただきたいと思います。これは地方自治体だけではなくて、われわれみずから、国会議員国政調査権の発動による出張を、私は問題にしなくちゃならぬと思っておるのです。ともかく、そこで自主的効果が上るようにしなければ、納税者期待に沿わないと思いまして、常に私は資料を持ちたいと思いますから、国会関係の方は簡単に入るが、自治体は数多いので入らないのですが、若干時日を要してもよろしゅうございますから、お届けをいただきたい。  あと二点伺いますが、その一つは、話は変るのですが、長官選挙法関係担当大臣ですが、私は多くを議論しません、結論だけ申しますが、私は、国会議員選挙法というものは、国会現役議員が審議するのでなくて、何か独立機関を設けて、それには国会議員も入るかもしれない、しかし一般国民が入って独立機関を設けて、ここで国会議員選挙法というものを審議するというような機関を作るべきじゃないか。それがほんとうの僕は民主主義じゃないか。でなければ、国民から選挙された国会議員がこしらえる、その国会議員選挙法を審議するということになると、自分らに不利なものは絶対に作りませんから、だから、民主政治下においては主権者の代表者が政治をやるわけなんですから、その選び方というものは最も僕は根本だと思うのです。従って、選挙法内容、それから制定の仕方というものは、さらに根源に連なる問題だと思うのです。従って、私は折に触れて感じていることだから、伺うのですが、選挙法だけ審議する機関というものは、今の立法府以外に、その立法府との関係はいろいろ持ち方があると思うのですが、ともかく非常に影響力を持ってそれを決定し得るような機関があってしかるべきではないか、こういうような考えを持っていますので、あなたはかっては選挙管理委員会事務局長をされてその方面でもエキスパートでもありますので、御所見を伺っておきたいと思います。
  17. 藤田進

    委員長藤田進君) 質疑応答とも、簡潔に一つお願いしたいと思います。
  18. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) おっしゃる点、私は意義のあることだと思います。ことに選挙の普通、直接、秘密というような根本に触れますことについては、主権者たる人民がほんとうに盛り上って、現在でも、私、こう近づく総選挙などでも考えるのでありますが、まだ秘密投票だということが山の中に行くとわからぬのですが、書いてあるのがわかっちゃうと思っているのがあるんです。それですから、法律国会が当然その国会の責任でしていただくことでありますが、何か人民のそうした燃え上る気持を受け入れられる仕組みというのは、私はまあ、ものを限定すれば、イギリスの選挙区の区画確定の審議会のようなものでありますが、何らかの工夫は考えていいことだと思います。しかし、なかなかこの工夫というのはむずかしい点がありまして、十分考えたいと思います。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に、話は変って、最後にもう一つ伺いたいのですが、先般天皇、皇后両陛下が九州——佐賀長崎を除く各県に行幸啓なされたわけです。これは非常に好都合に終了したようでございます。私承わりたいのは、地方公共団体は、この天皇、皇后両陛下をお迎えに当って、どの程度の予算の執行をしたかということですね。こういう数字をどうも隠す傾向があるというのは、非常に誤まったことだと思うのです。私は、ほんとうに国民に親しみある、憲法第一条にある象徴天皇、人間天皇として、私ども国民のほんとうに身近に親しく感じるためには、私はやはり数字の方から国民に徹底させた方が、この憲法一条の説明がわかってくると思うのです。ややもすると、やはり天皇陛下を雲の上の人のように思ったり、また神格化そうという傾向があると思うのだが、これは非常に私は誤まっていると思うのです。それでは親しみというのは出てこないと思う。で、地方自治体がこのたびの行幸啓に幾らお金が要りましたかということは、なかなか発表しようとしない。そのことは、やはりそういうものに通ずる点があると思うのです。これは私はあまり好ましいことじゃないと思うのです。で、あなたのところでは支出予算というものはわかっているかどうか。わかっていなかったら、若干時日を要してもよろしゅうございますから、私はやはり参者に知りたいのです。問い合せて、資料として一つ提出していただきたいと思います。何もこういうことを地方公共団体の責任者が発表をいやがる傾向というものは、私は好ましいことではないと思いますので、お伺いしておきたいと思います。
  20. 郡祐一

    国務大臣郡祐一君) 努めて既定の経費で、たとえば前よりも道路の費用をよけい出して、そうしてこれは住民全体がよくなることでありますから、道距を直そう、それはけっこうだというような工合の指導をいたしておりますが、行幸啓のための費用というものはできる限り使わないようにはいたしておりますけれども、宮内庁あたりもその点大へん気にいたしておることであります。従いまして、将来の参考にもなりますので、私の方でも調べたいと思っておることでありますので、調べましたら、国会関係委員会などにも資料は差し上げることにいたしたいと思います。
  21. 森中守義

    ○森中守義君 私は、行政管理庁に、主として設置法関係についてお尋ねをいたします。もちろん、自治庁、あるいは総理府、文部省、それぞれの設置法にも関係のあることでありますので、自治庁関係の審議の途中でありますが、しばらく時間をお貸しいただきたいと思います。  衆議院段階における各省設置法の審議の中できわめて明瞭になっておりますのは、今度出されて参りました各省関係の設置法が、岸内閣の一つの定見に基いて、一つの方針に基いて出されたものでないということが明瞭になっております。それは単に私どものように野党がこのことを明確にしたのみならず、与党議員も、その議事録を読んでみますと、同様なことが主張されております。こういうようにすこぶる、何とはなしに場当り主義の、一番大事な国の行政について閣議としての方針がないままに、出されたことがきわめて明瞭でありますが、行政管理庁としては、設置法の三条の四月に明らかに各行政機関の機構の新設、改正及び廃止、こういう審査を行うというような条項がございますが、管理庁としては、こういうものを各省庁から御相談を受けられて、いろいろ理由はありましょうが、どういったように閣議の方にお話をされて了承を与えられたものか、その点をまず一番目に明らかにしていた、たきたいと思います。
  22. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) ただいまお話しになりましたように、行政機関の機構につきましては行政管理庁が担当でございますので、各省庁から出ました御百要求につきまして慎重に審議をいたしまして、しかる上で党の方の政調会、政策審議会等の正規のルートを経まして、そうして閣議によって決定されましたものを提出されたわけであります。
  23. 森中守義

    ○森中守義君 ただいまのお答えですと、私は、いささか現在の自由民主党内閣の方針としては、どうもその方針が従来の行き方から変ってきた、こういう工合に認識せざるを得ないのですが、さように了承してよろしゅうございますか。つまりですね、鳩山内閣、あるいは鳩山内閣が誕生する前の選挙の公約として、行政の簡素化ということは今日の保守党の公約の一つでして、むしろ三つの公約の第一公約です。それが、無原則というのか、あるいは無定見というのか、このように次から次に出されてくるということは、すでに公約を破棄したということになると思いますが、さように了承して差しっかえありませんか。
  24. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 行政管理庁といたしましても、内閣といたしましても、ただいまお話しになりましたように、嶋山内閣当時から主張されておりますところの行政機関の簡素化ということにつきましては、何ら変更した意見を持っておるのではないのであります。ただ、御承知でもごいましょうが、行政機関の複雑化しましたものをチェックいたしまして簡素化いたしますためには、一つ一つの省庁について、これはこう、あれはあるということは、理論上はできるかもしれませんけれども、実際の面に当りましては、やはり二割これを削減するとか一割削減するとかいうことでなければ、実際上は成果は上らないのであります。従いまして、鳩山内閣当時におきまして、そういう方式をもちまして、一律のパーセントによりまして各行政機関の簡素化をされたのでございますが、さて実際にやってみますというと、そういうパーセントだけで、そういう観点だけでこれを簡素化するということには、実際の面には合わない面が出てくるのであります。今現に出てきておる。従いまして、それらの点につきましては、この省の行政はこういうものだ、内容はこういうものだ、これを簡素化するにはこういう機構にした方がむしろ簡素化されるのだ、あるいは能率が上るのだというようなことが起ってくるのでありまして、そういうものを一つ一つ各省の御要求につきまして、各省の御要求通り、私どもがそのまま、よろしいといったのではなしに、これを十分に審査をいたしまして、省略していただくものは省略していただきまして出してきたのでございますが、さて、それを、次から次へ出ましたものを、あとから国会におきまして総合的にごらんになりまして、今の状態においては、まあそれは一つ一つについてはもっともだろうけれども、まあこの点は一つもうしばらく待ってもらいたいというふうな御要求によって、そういうようなお考えによって、衆議院の段階におきまして御修正があったものと私ども考えておるのであります。
  25. 森中守義

    ○森中守義君 その衆議院の修正ということは、きのう衆議院の山本さんがここに見えて、いろいろ御説明になっておりますから、それはそれでいいです。しかし、この法案をお出しになる経過を私は問題にしておる。つまり、ただいま政務次官のお話ですと各省庁から要求があった。それ自体が私は問題だと思う。衆議院の方では、明瞭に、官僚が今日の岸内閣を契機にして、新憲法下におけるややもすると権限が非常に弱体化しておるからこれを巻き返すのではないか、こういうような意見も出ておる。しかも、朝日新聞の論説を見て下さい。きわめて適切な論評を下しております。だから、形としては行管が扱い、最終的にはなるほど閣議がきめて国会に出て、悪ければ国会で修正するというルールは、その通りです。しかし、問題なのは、各省要求の前に一番大事なことは、としてはどういう方針で行政上の運営をはかるかという基本的な態度がやはり明確になり、それを各省大臣自分の省に持ち帰って、こういう内閣の方針であるから、この方針に沿ってわが省の機構の改正をするならする、こういう方向に私はあるのが、岸内閣以来の公約を果していく方法としては、定見のある、あるいは原則を確認をする、取扱い方であろうと思う。しかし、そういうやり方ではなくして、今、政務次官のお話ですと、各省庁が行管に要求を出して、それを一々詮議をして閣議にかけたということですが、それではやはり問題なんですよ、そういうようなところに、官僚の巻き返しである、あるいは国会が、政党が単に立法ということではなくして国の行政も完全に把握をするという、いわゆる官僚に優位性を持たせてはならないとする原則を踏みはずしておる、そういうことが問題なのであります。だから、方法はなるほどそうかわかりませんが、結果的においては反対じゃないのですか。総理大臣を中心にして閣僚がみんなお集まりになり、それで行政の基本はこうする、そういうようなことが明確になった上で、自治庁長官も、あるいは総理府の長官も、文部大臣も、自分の省にお帰りになって、閣議の決定通りにおやりになるというのが、当然私は内閣の責任であろうし、そのことが行政機構の基本的な態度決定でなければならぬのではないかと思う。ところが、今のお話からいけば、まるっきり反対なんです。ちょうど予算の要求を大蔵省に出して、これはいい、あれは悪いという査定を受けるのと同じような筆法で、この機構改革が出ておるではありませんか。それが問題だと、こう言っておるのです。  もちろん、これは管理庁の政務次官のお答えの範疇に入るかどうかわかりませんが、本来ならば、岸総理に明確にお答えをいただくところでありますが、所管庁の政務次官に、政務次官としてのその辺のお考えを明瞭にしていただきたいと思う。
  26. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 先ほど来お話しいたしましたように、鳩山内閣以来、行政機構の簡素化ということにつきましては、もう考えを全然変えておらないのでございまするが、さてこれを実際上の行政の効率的な運営ということを観点といたして考えますというと、ある場合におきましては、機構をふやすということがかえって能率の上においていいかもしらぬ場合もある。むしろ、そこに働いておりますところの、雇用しておりますところのいろいろなる職員の方々を、最もよく効率的に働いていただくように、あるいは機械化をいたしますとか、あるいは配置転換をいたしますとかいうようなことによりまして、むしろ効果を上げ得ることがある場合もあるのであります。また、アメリカのフーバー委員会のようなことでございまして、たとえば一つ局長のもとに何人というような画一的なことでなしに、実際上の行政内容そのものを検討いたしまして、そこには何人の人が要るんだ、これをどうしたらどうだ、むしろその場合にはここに局長なら局長というものを増すことによって、むしろ国費をセーブすることができるんじゃないか、そういう検討をしなければいけないのでございまして、このことにつきましては、まず鳩山内閣の当時から、行政機構の簡素化をいたしまして国の費用を少くするという大方針のもとにやっておるのでございます。実際上におきましては、さらに行政管理庁といたしましても研究をいたしまして、現に研究をいたしておるのでございます。研究をいたしておるのでございますが、そういうふうな意味におきまして、一つ一つのものについてやっていかなければならぬのでございまして、ただ機構が大きくなった、あるいは拡充されたというだけでは、これは鳩山内閣当時からの主張が曲げられたと私ども考えておるのではないのであります。  そこで、衆議院におきましても、政府としても、そういう点を十分検討して、一つ最も効率的な機構にするつもりだから、そこで今ちょっとこれを保留するという形で今度の修正がなされたと、私は昨日もお聞きしたのでありますが、そういうことだと私は考えております。
  27. 森中守義

    ○森中守義君 ちょっと、意味の取り方が御理解いただけないのかどうかわかりませんが、私はその逆なことを言っておるのです。今政務次官がお答えになったようなことが閣議の方針としてきまって、それを受けて行政管理庁がさようなお取扱いをなされるのは、これは筋が通る。要するに、鳩山内閣以来の一貫した方針のもとに行政の簡素化をおやりになろうという意味合いにおいては……。ただし、今各省庁の実務の状況であるとか、あるいは時代に合わないという、そういう御意見は別ですよ。その内容は別ですが、方針としては、やはり閣議で、いわゆる官僚でなくて大臣方がお集まりになり、こういう方針でいく、これを行政管理庁は実行せよ、あるいは各省庁に命じてかような行政の機構を作れ、こういうことは、岸内閣が鳩山内閣以来の方針を踏襲されたとすれば、それで了承できる。ところが、先刻のお話かいけば逆なんです。私は大蔵省に対する各省庁の予算の要求というものを引き合いに出したのであります。あたかも、それと同じじゃありませんか。しかも、その内容を見ますと、みんな官房長を置かなければならぬ、あるいは部を局に昇格せねばならぬとか、こういうものばかりなんです。なるほど、それも理屈のつけようで、全面的に否定はいたしません。否定はいたしませんが、各省庁から要求されてきたことに対して、しかも各大臣は閣議決定ではなくして各省庁における事務次官以下の部局長等の意見により、そのしり馬に乗ってこの設置法を通しておるというのが、実情じゃありませんか。まるっきり反対なんです、行き方が。ですから、私は、すでにして鳩山内閣時代の方針というものは、今日の岸内閣によって公約を破棄された、あるいは曲げられたのではないか、こういうことを問うておるのであります。  だから、もう一つ明瞭にお答えいただきたいのは、閣議の方針で下におりていったものか、あるいは各省要求によってこれが出たものか。もちろん、広義の意味としては政府全体の責任ですからして、一つの結論というものはありましょう。帰趨点があるのです。しかし、狭く解釈をして理屈で押していきますれば、やはりこれは下から押し上げてきたものを閣議できめたのなら、無原則、無定見という一言に尽きると思うのです。そういう扱い上の問題として、いささか行管では、すでに各省の便乗と申しますか、バスに乗りおくれまいとする出方に対するよろめきを感じたのではないのですか。その点を明確にお答えをいただきたい。
  28. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 行政機構の簡素化ということそれ自身が、先ほどお話しいたしましたように、各省一律に何%というようなやり方もございまするし、一つ一つ実態に即応してこれを簡素化していくという方法もあるのでありますが、私どもといたしましては、行政機構の簡素化ということは鳩山内閣以来の一に変らざる大方針でございまするが、そのやり方につきましては、ただいま私のお話し申しましたような方針でやるという方針のもとに、各省庁から出て参りましたものについて一つ一つ実態の査定をいたしたのでございます。  なお、もう一つこの際お話し申しておかなければなりませんことは、各省庁には大臣、政務次官がおられるのでございます。それらの方々はもちろん政党人でございますから、官僚の方々が我意を通すために横車を押すということにつきましては、各省庁におきましても十分これはチェツクされたことと私は思います。また、各省庁から出て参りましたものにつきましても、何ら官僚のばりこというようなことを私ども感じておらないのでございます。ただし、先ほどからお話し申しましたように、大きな方針のもとにこれを見まして、各省庁から出てきたものにつきまして、御要求につきましても、いろいろ実態を調べまして、実態をお聞きいたしまして、これを適当と考えたものを、正当のルートを通しまして、閣議決定をいたしたわけでございます。
  29. 森中守義

    ○森中守義君 大体、答弁の中で明らかになりました。要するに、総理を中心に閣僚会議の中で一定の方針の策定をして、それでこの機構改革が出されたものでないということが第一点、そしてまた、各省庁が、しかも事務官僚が成案を得たものを各大臣が行管に持ち込み、閣議の中に持ち込んで作ったものであるということが第二点、そのことを私は明瞭にただいまの答弁の中からくみ取ることができましたので、やはり衆議院段階で与野党一致して指摘されておるように、無定見あるいは無原則の機構改革である、結果的には、今日の保守党内閣が公約をして参りましたいわゆる行政の簡素化とは全く似もつかない一種の公約破棄であるということを、私は率直に認めたいと思います。  そうして、参考までに、自由民主党の中川委員が衆議院の内閣委員会でこういう発言をしておられます。私は実にこれは貴重な意見であると思いますから、将来のために、かようなことを再び繰り返さないために、特に私はこれを、政務次官あるいは御出席の各閣僚に一つの忠告として、読み上げておきたいと思う。「藩閥の時代にはそのすねをかじり、政党が盛んになればその中心に食い込み、軍閥の時代にはその爪牙となり、さらに終戦後は巧みに駐留軍首脳に食い入って売国的行為さえ行われておった事例があったと私は思うのです。これは私はかつて本会議におきましていろいろな事例をあげてついたのでございまするが、そういうことがあった。官僚機構の簡素化と一口に申しますけれども、余人を近づけない宮廷政治でございますから、」云々、こういうことを自由民主党の中川委員指摘をしておられます。まさに官僚の手によって今日の岸内閣はよろめいているじゃありませんか。はなはだ、私はこの設置法の提案に当っての政府の不手際を非難せざるを得ないのであります。  こういうような観点に立ちまして、もう一つ行政管理庁の所管事項について承わっておきたいと思いますが、設置法の中では、先刻も申し上げたように、機構の問題については審査をする、こういう項目がある。しかも、行政審議会というのがあります。かくも多数の設置法が提案されるということは、当然行政審議会に諮問をされるのが至当であろうと思うのであります。行政審議会に諮問なされましたか。されたとするならば、その諮問の答申の内容を明らかにしてもらいたいと思います。
  30. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 御承知の通り行政審議会は長官の諮問機関でございますので、諮問を要しますと認めました場合には諮問をいたしまするが、諮問を必ずしもしなければならぬということではないことは、御承知の通りでございます。今回出ました各省庁におきますところの行政機構の改革につきましては、行政審議会には諮問いたしておりません。
  31. 森中守義

    ○森中守義君 諮問をするかしないかということは、長官の判定の問題でありましょう。それはわかります。しかし、こういうものを国会に出して問題になるとはお思いにならなかったのですか。大問題ですよ。しかも、たとい官房長を設置する、あるいは部局の昇格という問題でも、これは私は、国の行政の中枢をなす問題ですから当然諮問をすべきであったろう、かように思うのです。ただいまのお答えだと、諮問をしていないと、こうおっしゃるのですが、この設置法についてはそう簡単にお考えであったのですか。おそらく長官一人で判定をするわけではないでしょう。もちろん、政務次官がおいでになり、あるいは局長もおいでになるのですから、長官は諮問をすべきかどうかということを行管の首脳部には御相談になると思う。あなたがたは、こういう無数に出ている設置法について、その取扱いに対して、審議会に諮る必要がないという工合に簡単にお考えであったのですか、その点を明らかにして下さい。
  32. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 先ほどからお答えいたしましたように、行政機構の簡素化、国費の乱費を防ぐということにつきましての方針は、先ほど私が御説明しましたように、確固としてきまっておるのでございます。従いまして、個々の省庁におきまするところの機構をどうするか、こうするかということにつきましては、その方針に従いまして、各省庁の御要求になった要点を十分内情を調査いたしまして、お聞きいたしまして、そうしてこの程度のものは、これは鳩山内閣のときに一律に何パーセントという行政の簡素化をされたということについて、実際上やってみて、ここにどうしてもこれがなければ困るのた、これがなければどうしてもむずかしい、これがあった方がむしろ効率化するというようなことの手直しの意味におきまして、一連の機構改革ということをお願いをいたしたのでございます。
  33. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  34. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記つけて。
  35. 森中守義

    ○森中守義君 ただいま速記がないときの話のいきさつもありますから、ごく簡単に政務次官にお答えいただきたい。  それは、この取扱いについてはやはり行管としては完璧でなかった、私はそう思っております。同時にまた、閣議としてもいささか従来の政策に反するようなところがあったように究極的に私は認識をせざるを得ませんから、それについて遺憾の意とまでは言いませんが、もう少しまとまった釈明をしていただきたいと思います。
  36. 榊原亨

    政府委員(榊原亨君) 先ほどからたびたび私がお答えいたしましたように、この行政機構の簡素化ということにつきましては、鳩山内閣以来の方針に従いまして、私ども各省庁から出てきましたものについて慎重に査定いたしまして、正規の党のルートを通しまして、閣議決定となって提案されたわけでございます。しかしながら、衆議院におきまして修正を受けました点につきましては、私どもといたしましてもいろいろ反省しなければならぬ点があると存じますので、このことは今後すみやかに、たとえて申しますと、今お話しになりました行政審議会のごときものについても十分諮問をいたしまして、鳩山内閣以来の行政簡素化の線に沿って、さらに努力をいたしたいと考えております。
  37. 森中守義

    ○森中守義君 肝に銘じて、一つそれをやってもらいたい。
  38. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  自治庁設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  40. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって自治庁設置法の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議なきものと認め、さように決定いたします。  それから、報告書に付する多数意見者の御料名を願います。   多数意見者署名    松岡  平市  島村  軍事    大谷 藤之助  大谷  贇雄    増原  恵吉  後藤  義隆    上原  正吉  中野  文門    永岡  光治  矢嶋  三義    田畑  金光  伊藤  顕道    森中  守義  千葉   信   —————————————
  42. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、建設省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質問のおありの方は、順次、御発言を願います。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 建設大臣に伺いますが、本年度成立いたしました予算を検討しますと、道路行政というものが画期的に飛躍しておる。これは大きな一つの特徴だと思う。特別会計に繰り入れられるのが四百九十四億九千万、全く飛躍的な数字が出ておるわけですが、これとうらはらの関係でこの設置法の一部改正案が出されたと思う。衆議院の方から、御承知と思いますが、管理部と建設部の二部新設をやめて、そのかわりに次長を置く、河川局に次長があるように、道路局に次長を置く、こういう修正がなされてきたわけです。  そこで、私の基本的な考え方は、行政機構というものは、放置しておくと、根なし草のようにはびこるおそれがある。それはチェックしなければならぬことはいたさなければならぬが、それを一つまとめて、あるいは河川とか、あるいは道路とか、まとまったものを積極的に推進しようとするときには、機構は臨機応変にそれに即応するようにした方が、能率が上ると思う。管理部と建設部の二部にするのと次長を置くのとでは、結局、機能とか定員とか予算面を見ると、ほとんど差はないわけなんですね。だから、実際行政を推進していくに当っては、この道路局の場合は、管理部と建設部の二部の方がうまくいくのじゃないかという、これは私見ですがね、そういう私は感じを持っているのですが、この修正に対しては建設大臣としてはどういう所見を持たれているか。私は、次長制というものは局長の責任感が薄らぐぐらいなことで、あまり役に立たぬと思うのですが、大臣の見解を一つ承わりたいと思います。
  44. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) ただいま御指摘のように、三十三年度建設予算の重点が道路整備に置かれ、しかも、これが相当長期にわたって今後行われていく、そういう観点から設置法の改正をお願いいたしまして、道路局に管理ともう一つの部を設置することをお願いし、この点は行政管理庁においてもこれが当然であるということで、これは閣議でまとまったのでございます。しかるところ、国会におきまして、全体の行政機構が少し拡大に過ぎているじゃないか、この際に、もとより二部設置の方が理想的であろうけれども自粛をして、そうして最小限度の機構で実施することがしかるべきだということで修正を受けましたので、この国会の意思を尊重して、次長制度を活用することによって遺憾なきを期したいと思いまするが、理想的に申しますれば、今御指摘のように、二部がわれわれとして理想であったけれども、国の最高機関である国会でさように修正されました以上、それを尊重して実施するのがわれわれの立場であろうと考えております。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう二、三点伺いますが、その一つは、あなたのところは民間の業者と非常に関係があるし、また出先の公務員も多いわけですが、私の知っている幾つかの例では、待遇関係もあるのでしょうが、民間の何々組ですね、そういう組の技術者ですね、そういう人がむしろ優秀で、それを監督する立場にあるあなたの部下、公務員の方が、経験からいっても、技術的に劣るという場合がちょっと見受けられるんですが、こういう点、建設大臣は認識しているかどうか。そういうところに私は、監督指導の不行届から、不能率な、むだな予算の執行が行われたり、いろいろ不都合なことが起るのではないか。私が言いたいことは、この現場において民間の方々と接触をし、監督指導される立場に立つ人の質的向上をはかる必要があるのではないか、かように私は考えますが、大臣の所見はいかがですか。
  46. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。大きな業者が相当の技術水準を持っていることは事実でございます。しかしながら、民間業者の全体の技術水準と、建設省全体の水準を比べれば、はるかに建設省の水準が高いと私は見ております。そうして全体の計画は本省あるいは地建の方で立て指導いたしまして、現場の方はやはり若干部分的には落ちる人がありましても、監督の要領並びに仕様書がはっきりできておりますから、それでこれはできると思っております。しかしながら、全体を通じて現場職員の質的向上をはかるということは、これは常に努力しなければなりませんので、現在研究所あるいは研究所において、漸次繰りかえいたしまして、教養並びに質的向上の措置を講じておりまするので、御指摘のように、今後さらに一そうの努力を進めて参りたいと考えております。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 比較的に災害の多い、いわば災害襲地帯に規定される四国に、新たに地方建設局を設けるということは、まことに私はこれは適切なる措置考えるわけですが、これと関連して、あなたの所管でございますから伺っておきたいのですが、このたびの国会議員立法の形で災害襲地帯に対する防除法提出され、成立したことは、御承知の通りです。しかし、これのみでは問題は解決いたさないので、たとえば、具体的にいうならば、比較的災害が多くて開発復旧の遅々としておくれている九州等に対しては、いわゆる開発三法を立法すべきだ、こういう声が国民の間にもあるし、あなたの所属される与党の中にあること、御承知の通りだと思うのです。あなたのところで総合開発その他についての研究、検討等されるようになっているわけですが、建設大臣として、まあ自由民主党に所属されているのですが、そういう方向についてはどういう見解を持っているか、承わっておきたい。
  48. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 災害襲地帯に対する特別立法ができまして、これに対応する建設省の機構並びに指導方針をどうすべきかということがお尋ねの重点だと、こう思いまするか……
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 開発三法ですね。
  50. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) これは御承知のように、各地建におきましては企画室を設けておりまして、これに総合的な開発計画と同時に、災害防除等そうした総合的な施策の所管をさしております。なお、この機構は、同時に、各府県の土木その他と密接な連携をとりまして、この特別立法を推進するに当りまして全面的協力態勢を特に作って参りたいと思います。  なお、開発三法をお作りになる、これはどうかということでございますが、これは東北の例もありますので、そうしたところの具体的な条件が具備すれば、これは立法されてしかるべきだと考えております。
  51. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この根本建設行政一つの特徴は、先ほどから私指摘したように、道路にあると思うのです。従って、こういう設置法の改正案も出てきたかと思うのですが、この際、この国会における前の私の質疑とも関連ありますので、ここでもう一回ただしておきたいと思うのですが、それは、関門国道トンネルの料金の問題ですね。これについては、あなたは、いろいろな角度から見て、とりあえず暫定料金にして、そうして、その後の成り行きを見たいということを、両院で答弁されて本日に至っております。開通以来一ヵ月有余を経たわけでありまして、一応の見通しを持たれたかと思うのです。  それを承わるとともに、承わる前に私は要望申し上げたい点は、当初きめられた価格というものは、何といっても高いと思うのです。で、少くとも当時きめられました暫定料金というものを、当分僕はあの線でいくべきじゃないかと、こういうふうに考えるのですが、かりに相当料金を高くしても、敬遠して人が利用しない。通らなければ、宝の持ちぐされてあり、また経理も成り立たぬわけですからね。そこをうまく計算してはじかなくちゃならぬと思うのですが、もう一ヵ月有余を経過したわけですから、大臣としては新たな角度からの答弁ができるはずでございますから、お答えを願いたいと思います。
  52. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 関門隧道の交通量の現状から見ますれば、当初公団で予定したよりも少うございます。まして地元関係者が想定したよりははるかに少うございます。これは現在関門隧道に連結する道路関係が必ずしも整備されていない。従って、利用したくても利用できないというその客観的事実に基くものが多いのではないか、こう考えております。  従いまして、これを採算の観点だけで、さらに当初予定した料金に上げるということは適当とは思いません、端的に申しますと。従いまして、まだ、これは公団からの申請がありませんから、私が今具体的にどうするとは申し上げかねますが、大体の傾向としましては、暫定料金でここ当分の間、これは三ヵ月とか二ヵ月ではなく、相当の期間をもう少し見てからでないと、私は最後の判定を下すのが困難ではないか、かように考えておりまして、従いまして、暫定料金の期間が来る前に、おそらくは道路公団から申請があるものと思いまするので、その際ただいま申し上げた方針で措置いたしたいと考えております。
  53. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は、しかるべく一つ研究、措置を要望しておきます。  最後に承わりたい点は、この提案理由に営繕に関する事務がうたわれているわけでありますが、あなたの所管としてお伺いいたしておきたいことは、各ブロックの中心地には、行政の能率向上と、それから営繕費等の節約等々の先度から、合同庁舎を作る方針で参っておるわけですね。そして各ブロックの中心地で、今日なお合同庁舎ができていないところ、それからそれに対するところの整備計画はいつを目途に完成するように計画を持たれているのか、最後にお答えを願いたいと思います。
  54. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 具体的な事務に関することでございまするので、正確を期するために、事務当局から答弁いたさせます。
  55. 柴田達夫

    政府委員(柴田達夫君) ただいまお話がありました、官庁関係の合同庁舎を各区域に設置して参ることは、全体の方針といたしまして、官庁関係はなるべく、お話しがございましたような合同庁舎にまとめていくという方針をとっておりまして、具体的に一々ここで申し上げませんけれども、相当の割合におきましてこれが今できつつございます。もし官庁営繕に対する自粛と申しますか、予算措置というものに制限がございませんければ、相当のスピードでこれを全国に完成いたしたいと思っております。昨年来、官庁整備につきましては、経済情勢で若干手控えております関係上、ややおくれておりますが、数年中には必ずこれを完成するような方針でやっております。
  56. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 一点だけ簡単に伺いますが、今度道路整備建設に相当重点をお置きになるというので、建設機械もたくさんお使いになると思うのですが、従来建設省の持っている建設機械の能率が悪くて、相当不経済になっている、そういうふうに承わっておりますので、現在持っていらっしゃる建設機械の総金額と平均稼働日数は大体どれくらいになっておるか、もっとより以上に能率を増進するためにどういうお考えがあるかという点を、簡単にお伺いしたいと思います。
  57. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 建設機械が現在必ずしも効率的に使われていないというような御指摘でありまするが、全体としては、相当よく使われていると思います。ただ、しかしながら、建設機械が実は外国から輸入したもの、あるいはまた、それを移し作りまして、日本で作ったものがありまするので、完全な整備ができていないものがございます。これは現在、修理するほか、さらに設計も変えて能率化していかなければならない。これは現在の日本の道路関係が、今まで非常に小規模なものでやられておった関係上、やむを得なくこうなったので、これは漸次改善していきたいと思っております。  この稼働率並びにその成果については、今手元にその資料がございませんので、いずれ事務当局調査の上、御提出申し上げたいと存じます。
  58. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて質疑を終局することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないものと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  建設省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  60. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、建設省設置法の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続につきましては、委員長にこれを御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に対する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     松岡 平市  鳥村 軍次     大谷藤之助  大谷 贇雄     増原 恵吉  後藤 義隆     上原 正吉  中野 文門     永岡 光治  矢嶋 三義     田畑 金光  伊藤 顕道     森中 守義  千葉  信   —————————————
  62. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとめて。    〔速記中止
  63. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して。  次に、総理府設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質問のおありの方は、順次、御発言を願います。
  64. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この提案理由を見ますと、北方地域に関しては今まで扱っていなかったような表現の仕方をしておりますが、北方地域について今までどこで扱っていたのですか、扱っていなかったのですか。
  65. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) お答えいたします。総合的には実は主管の官庁がございませんので、全然扱っていないわけではないと思いますが、扱っていなかったと申し上げることもできると思います。(笑声)
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そんな日本語はないですよ。これを見ると、扱っていなかったような表現になっておる。実際所管の南方連絡事務局というのがあったわけですが、所管は明確でなくても、どこかでめんどうを見ておったと思うわけですよ。全然見ていなかったか、それを明確にしてもらえばよいのです。
  67. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 私どもの方で所管しております南連の事務局では扱っておりませんが、この北方地域の問題は、あるいは地方庁の方で、今度新しく扱わんとしているような仕事を扱っておったかもしれません。ちょっとまだ私の方ではわかっておりません。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これはソ連と日本との国交関係もありましょうが、私も立法府に籍を置いておる一人として責任を感じておりますが、非常におそきに失しましたね。これは非常に北方の人に対しては僕ら責任があると思う。無責任だったと思う。ましてや、行政府においておやです。  で、次に伺いたい点は、簡単に数字だけ教えて下さい。北方地域と南方地域の方で、それぞれの地域に、お帰りになりたい希望を持ってお帰りになることができないでいる人は、どの程度人数があるのですか。あなたが今つかまれている数字を、正確に数えて下さい。
  69. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 南連の方で扱いました事務につきましては、他の政府委員から数字を申し上げます。
  70. 石井通則

    政府委員(石井通則君) 南方連絡事務局で扱っておりまする沖縄につきましては、希望者が大部分沖縄の現地に帰っております。小笠原に関しましては、いわゆる日本領土になる前からおりました欧米系の帰化人百三十五名が帰ったあと、約七千名小笠原に帰っておりません。これらのものは、大部分、帰島が認められれば帰りたいという希望を持っております。なお、北方地域、国後、択捉、歯舞、色丹等につきましては、まだ今後十分調査をいたしたいと思っておりますけれども、大体の聞いたところによりますというと、これも大部分、帰島が認められますれば帰りたいという要望を持っておるように聞いております。
  71. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は大部分とか何とかいうことを聞いておるのじゃないのです。あなた方が今持たれている資料に基く数字を、正確に教えていただきたい。これを提案している以上は、南連が今まで完備しておったといっても、北方についての数字を当然持っているはずだと思うのですが、数字を持っておられますか、今。
  72. 石井通則

    政府委員(石井通則君) 歯舞、色丹、国後、択捉におおきましては、昭和十五年の調査に表われたところによりますというと、約二万五千人ばかりおりました。それが終戦後本土に帰りまして、その方の関係団体で昨年把握しておりますのが一万一千人ぐらいでございます。なお、その後帰島者をだんだん調べておりまして、もっとふえる予想でございます。
  73. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は、これは掘り下げていけば、見舞金等の問題も起ってくると思うのです。戦後十二年を経過して、しかも、こんな法律を出すに当って、南方の島々どこどこは何名、北方の島々どこどこは何名、合計幾らという数字をぴしゃっと持っていなければ、こういう法律案を提案する資格はないです。総務長官の見解、いかがです。
  74. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) まことに矢嶋委員の仰せの通りでありまして、北方に関する問題を今まで政府として扱っていなかったということは、私は遺憾と存じます。おそいとはいいながら、ぜひこれを調査をしたい。そうしてその調査の結果で、また、南連で小笠原とか沖縄に行なっておりましたような厚生施設とかその他の問題を解決していきたい、こういうのが今回この法律案を提案いたしました理由でございまして、今までこういう問題に手が行き届いておりませなんだことは、これはまことに遺憾に存じます。
  75. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 遺憾の意を表したから追及しませんが、北方の領土あるいは漁業権等の問題について、岸内閣等において非常に関心が薄い点を、私は遺憾に思います。これは選挙で国民が審判することでございましょう。従って、これは追及しません。  もう一点、簡単に伺いますが、これを見ますと、特別地域連絡局というのができますね。そうなりますと、予算書を見ると、南方連絡事務局に四十七人の定員がありますが、特別地域連絡局になっても定員は従来と動かないのですか、北方が入るから幾らか定員が動いたのでありますか、その数字をお教え願いたい。
  76. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 北方地域の事務をいたしますために、課長補佐以下五名の人員を要求している次第でございます。
  77. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従来は南連の方は四十二名でやっておったということですか。
  78. 石井通則

    政府委員(石井通則君) いわゆる常勤労務者で定員化される予定のものを会せますと、そうでございます。
  79. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 最後に伺いますが、この十四条の二に、南方連絡事務所に置かれる職員に対する給与のことを規定しているのですが、そこに、「在勤手当を支給する。」、かようにうたわれています。外務公務員の在勤手当は、大体ワシントンを一〇〇として、各在勤地を指数で表わす例になっているわけですが、この南方連絡事務所は、ワシントンを一〇〇で表わした場合に、指数を幾らにするつもりでありますか。
  80. 石井通則

    政府委員(石井通則君) 那覇南方連絡事務所におきます在勤加俸は、沖縄におけるいろいろな物価の状況その他を勘案いたしまして、従来から定めているのでありまして、いわゆる東京と那覇とをいろいろ比較いたしまして定めたものでございます。ワシントン等、いわゆる在外公館との比較はいたしておりません。現在実施しておりますのは、もうすでに二、三年前にきめたものでございますが、東京の一〇〇に対しまして、那覇の物価その他の関係から勘案しまして、二八〇程度になっておったと思います。
  81. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて本案の質疑を終局いたすことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、直ちに採決に入ります。  総理府設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  83. 藤田進

    委員長藤田進君) 全会一致と認めます。よって、総理府設置法の一部を改正する法律案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     永岡 光治  矢嶋 三義     田畑 金光  伊藤 顕道     森中 守義  千葉  信     八木 吉吉  松岡 平市     鳥村 軍次  大谷藤之助     大谷 贇雄  増原 恵吉     後藤 義隆  上原 正吉     中野 文門
  85. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとめて。    〔速記中止
  86. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して。  午後二時まで休憩いたします。    午後一時九分休憩    —————・—————    午後二時十六分開会
  87. 藤田進

    委員長藤田進君) 委員会を再開いたします。  二時から総理の出席があるとの連絡があったわけでありますが、都合により本日出席できないとの連絡であります。非常に遺憾と思いますが、政府委員も見えておりますから、質疑を続けていただきたいと思いますが、いかがですか。
  88. 永岡光治

    ○永岡光治君 総理がいろいろ都合があって出られなかったのは非常に遺憾でありますが、明日自衛隊法関係で総理が出席される予定になっております。その際十分時間をとってもらうように、これと取引という意味じゃないけれども、非常に遺憾な点がありますので、そういう点、十分委員長も含んで、連絡していただきたいと思います。
  89. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、総理の出席がございませんが、審議を進行させたいと思いますから、御協力いただきたいと思います。  なお、今、水岡君の御発言については、十分努力いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案及び旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  90. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 長官に二、三お伺いいたします。  この表によりまして一覧いたしますと、傷病年金と増加恩給については階級差をなくしておるわけです。そこで特にこの増加恩給の第一項症を例にとって申し上げると、これは一律に大将も兵も十七万一千円ということになりますね。ところが、本人が死亡いたしますと、これは公務扶助料に切りかえられるわけですね。公務扶助料に切りかえられて、兵の場合には五万三千二百五十円、大体増加恩給の三分の一くらいになるわけですね。ところが、逆に大将の場合には二十万五千七百円というふうに、相当増額されるわけです。そこで、遺族間に、せっかく本人の場合には階級差をなくしておって、本人がなくなって遺族になると、大将の場合ではぐんと上って、兵の場合ではぐんと下る、この点が非常に不合理な点があろうと思うのですが、この点について、本人の場合にもなくしているのだから、遺族の場合吉にも階級差をなくすのが至当だと考えられるのですが、長官としてその点どのようにお考えになりますか。
  91. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 伊藤委員お尋ねでございますが、増加恩給並びに傷病年金につきましては、階級差をなくしておりますが、普通恩給はやはりその方々のやめられたときの恩給を併給しているわけでございます。そういう関係でございますので、もしそういう、ただいま御説明の第一項症の方がおなくなりになるというと、遺族の公務扶助料に変りますが、普通恩給だけはやはりその家族の普通の扶助料、こういうものでいきますから、その点には、やはり退職のときの俸給によりまして階級差があるわけでございます。従いまして、大将の場合と兵の場合とには、普通恩給において開きがある額がやはり開きとなっていくわけでございます。
  92. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 今申し上げたように、増加恩給と傷病年金の場合には階級差をなくして、そうしてこれが普通恩給なり扶助料になると、また階級差が出てくる。これは一貫性がないわけです。しかも、これは階級差をなくすことは非常に私どもとしては合理的であろう、このように考える。それで、この階級差をなくするお考えはないかということをお聞きしたい。
  93. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 他の政府委員から詳しく御答弁いたします。
  94. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) お尋ねの点は、傷病恩給につきましては、増加恩給の部分、傷病年金の部分が一律になる。しかるに、公務扶助料におきましては、やはり階級的な差があって、上と下の開きがある、こういうお尋ねだと思います。で、御承知の通り、増加恩給におきましても、今、長官から申し上げましたように、その普通恩給というものが併給になりまして、普通恩給というものについては退職時の俸給を基礎にして計算いたしますから、従ってこれは差がつくわけでございます。  公務扶助料の方はどういうことかと申しますと、やはり公務扶助料というものも普通恩給が基礎になって、それの半分の普通扶助料というものが基底になって、その上にある一定部分が積み重なったものが全体として公務扶助料と、こういうことになっております。で、言いかえてみますと、増加恩給の場合は、あたかもその上積みの部分だけが増加恩給と呼はれておりますけれども、公務扶助料の場合は、その根っこになっておりますところの普通扶助料、つまり増加恩給に匹敵すべき上積みの部分が一緒になって公務扶助料という形を形成いたしておりまするから、その間におきまして、普通扶助料部分の階級差というものがどうしても出てくる。従って、兵の場合日は五万三千二百円でございまして、その純粋なる上積みの部分というものを考えますと、約三万八千二百円くらいになるわけでございます。これと大将の普通扶助料の上積みの部分というものの比較におきましては、だんだんと差が詰まってきた。  今回の是正におきましては、将官においては全然据え置いておる、佐官、尉官におきましても、ある程度詰めておる、こういうような関係からいたしまして、上積みの部分の差というものが非常に詰まってきております。すなわち、現行におきましては、兵を一〇〇にいたしまして、将官の場合は三八倍になっておりましたのが、今回は兵を一〇〇にいたしまして、二倍というふうに差が詰まってきております。こういうふうなわけで、定額という考え方をとり得ない。そういう公務扶助料の立て方の必然性からいきまして、定額という建前をとり得ないわけなんですが、今申し上げましたような筋から参りまして、相当差が詰まってきておる、これがぎりぎりのところまで来ておる、こういうふうに申し上げて御了解を得たいと思います。
  95. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 項症と款症に分類されておるわけですが、この面では、実際の例をいろいろ聞きますと、よほどこれを慎重にやらないと問題があるのではないか、こういうふうに思うのです。そこで、二十一日の新聞記事にも、こういうような分類についてのいわゆる不合理性を強く訴えておるわけなのです。で、簡単にこの実例の要点を申し上げますと、胸部貫通銃創を受けて、しかも内部疾患を併発した。で、ほとんど働くことができないで、寝たり起きたりしている。しかも、これは第四款症。非常に低いのです。そういう実情自分はあって、今、いつ死ぬかというような恐怖にもさらされている、そういう方の訴えですが、ところが、一眼を失った場合には、五項症です。親指と中指を失った場合には六項症になっておる。こういう方々は、手や足の指は失ったけれども、業種によっては幾らでも働ける。しかし、私が申し上げている本人よりは、遥かに処遇も厚い。そういうことなんです。  そこで、さらに極端な例を申し上げますると、第一項症、これは一番重いわけです。第一項症で、競馬の騎手をしている例を自分は知っておると、この人が訴えております。そういう例をいろいろ勘案いたしますと、非常に不合理があるという点に帰一できると思うのです。従って、このような不合理を一刻も早くこの際是正してほしい、そういう訴えであるわけです。  これは時間の関係で、単なる一例だけでございますけれども、ほかにもいろいろ私見ておるわけです。こういう点についての長官の御見解を伺いたいと思います。
  96. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 項症、款症の実際の審査に当りましては、今、伊藤委員から申されたような、実際にそぐわないような決定になっておる方があろうかと考えます。ことに内部疾患、たとえば呼吸器系統とか神経系統とか、こういうような人に対する審査などにおきましても、今までは一律に表から見た審査書によって決定されたのもたくさんあるかと考えましたので、今回、永岡委員その他の方々の非常な御提唱もありまして、等差に関する特別調査会を作りまして、その意見を徴しております。で、九月末日までに、主として専門のお医者の方でございますが、この方々の意見を聞きまして、それを参考にして従来の扱い方に検討を加えて、できれば明年度予算を編成いたしまする場合に参考にしていきたい、こういうように考えておるわけでございます。
  97. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、文官と武官とにつきましては、在職年数の取扱いが違っておりますね。それと恩給納付金についても、また仮定俸給の設定方法についても、両者が違っておるわけですね。それなのに、今回、倍率論だけでこれを論じておる点については納得しがたい、そういう声を聞いておるわけです。この点を一つ明確にしていただきたいと思います。
  98. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 文官の場合につきましては、二十三年以前におやめになった方と、それから二十八年以後の方と、その間に非常に結果的に差等がある状況に相なっておりますが、その点につきましては、以前はたとえば小学校の校長さんを例にとりますというと、校長さんは奏任官の七等までにしか行かない、こういう職制であったわけであります。その後になりまして、校長さんたちが局長級のところまで俸給が上って参りました。そういう制度が変りましたために、非常にその後とその前とに不均衡な結果になっておりますが、これはわれわれのように、比較的昔の局長ぐらいの官吏をいたしておりました者につきましても同様でありまして、昔は局長というのが一つの俸給でありました。ところが、最近におきましては、同じ局長でも一号から七号ぐらいまでいろいろ差等がある。そういうような関係で、適当なまあ見合う号俸に昔の局長を当てはめておりますから、今の局長の一番上の俸給と比べますというと非常に低くなる。一番また低い局長の方と比べますというと、大体見合いになっている。個人々々の場合には多少そういうような組織の変化の関係で違いがありますが、詳細は他の政府委員からお答えいたします。
  99. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 今、文官の時代的な相違によるところの不均衡の問題とかいうような問題については、長官からお話がございました。文官と武官との関係の処遇の違いというようなものからいたしまして、おそらくお尋ねの点は、倍率につきまして三十五・五というものを特殊公務というものを目安に考えたという点に、何か問題があるのではなかろうか、こういうお尋ねであろうと思うのでございます。これは御指摘通り、在職年数におきましても、武官の場合は将校十三年、下士官、兵十二年というので普通恩給がつき、文官の場合は十七年で恩給がつく。それからまた、武官の場合は、主として戦時中でございますが、これは納付金がない。免除されておる。兵につきましては納付金がないのであります。また、仮定俸給の取り方におきましても、これは文官におきましては、現実の退職時の俸給というのが仮定俸給の基礎になっておりますけれども、軍人におきましては、別途現実の俸給から離れた仮定俸給、恩給の基礎とした仮定俸給というものが定められておる、こういうような格好になっている。こういうような違いを御指摘になって、そうしてそういう面において有利になっているのだから、倍率をまたさらに有利にとるということについてはどうだろうか、というようないろいろな諸条件を勘案して、最高のところでつり合いをとるのはどうだろうかというのが問題にされたのだろうと思います。  その点につきましては、昨日から総理が答弁されましたように、文官において一万二千円ベースにおいて四十割の倍率の適用を受けて、兵と同じような文官が五万三千二百円という公務扶助料を受けておる。同時代に死亡した赤紙召集の下士官、兵という方々の遺族の三万五千二百四十五円という公務技助料であるということについて、この処遇上の不均衡感というものを何らかの形で解決しなければならないということで、五万三千二百円というところに処遇を合せまして、従いまして、その結果として三十五・五割という倍率が一万五千円ベースにおいて出てきた。こういうことになっているのでありまして、その他いろいろににらみ合わせながらいきまして、妥当な線であると、こういうふうに考えておるわけであります。
  100. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、恩給外の高額所得者に対する恩給利限ということがあるわけですが、この構想について、概略でけっこうですから、承わりたい。
  101. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 恩給外の多額所得者に対する恩給の制限でございますが、現行法におきましては、普通恩給が九万五千円以上の方で、恩給外の所得が五十万円以上という場合におきましては、ある一定率をもちまして、最低は一割五分から、最高恩給外所得が百二十万を越しますというと三割まで、漸次逓増的に恩給額を停止いたしております。この実際の実情と申しますか、実際の状態から申しますというと、昭和三十二年の調査の結果によりますというと、普通恩給の受給者の九万五千円以上の普通恩給を受けておる方、この方の数というものは、五万六千三百九十六人、こういうことになっております。このうち、先ほど申し上げました五十万円以上の恩給外所得があるということで停止の対象になりますものが二千七百五十九人、この方々の恩給年額が約四億五千七百万円でございます。それに対しまして停止年額は約一億、こういうことになっておりまして、平均して申しますというと、停止対象の方々につきまして、約二割二分というものが停止になっておる実情でございます。
  102. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 ところが、こういう制限があるにもかかわらず、三十三年十月一日以前に給与事由を生じたものについては除外されておるわけです。これはどういう考え方からやったのですか。
  103. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 今申し上げましたのは、現行の法によるものでございまして、今回その制限の率を上げよう、こういうわけでございます。すなわち、最低一割五分というのを二割、百二十万円以上三割と申しますのを五割というふうに上げよう、こういう改正を今回御提案しておるわけでございますが、この改正規定が適用になるものは、今後給与事由が発生する者で、今まですでに恩給受給権が発生した者には今までの規定によるわけであります。なお、今後給与事由が発生するというのを法律施行から約六カ月——四月と考えて、それから約六カ月、半年という猶予を置きまして、それから発効させる、こういう考え方であります。
  104. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、通算措置と加算制度、これに対する理論的な考え方についてちょっと伺いたいと思います。
  105. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 加算の問題につきましては、昨日も総理大臣がお答えをいたしましたが、まだ改定をしていない軍人の方で、加算をすでにもらっている方ともらっていない方とあるわけであります。その問題は非常に残されたる大きな問題と考えますので、昨日も総理が申しましたように、われわれとしても十分に検討をいたしまして、何らかのいい方法を考えたい、こういうふうに考えておるものでございます。  通常の問題については、他の政府委員からお答えを申し上げます。
  106. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) この通算の問題と申しますのは、旧軍人の実在職年の計算の仕方につきましては、昭和二十八年の法律百五十五号におきましては、七年未満の在職年は、これは算入しない、こういう建前になっておったのでございます。すなわち七年以上引き続いての在職年数のみが軍人恩給の計算の基礎として、また文官恩給の計算の基礎として有効である、こういうふうに百五十五号では規定したわけでございます。ところで、その後軍人の実在職年の通算につきましても、あれは昭和三十年百四十三号だったと思いますが、これによりまして、一年以上七年未満の実在職年を、軍人恩給の基礎としてはこれは通算するということにしたわけでございます。ところが、その際通算はいたしまするけれども、それによって普通恩給の資格の年限である十二年あるいは十三年までは通算する、それ以上幾らあってもそれは計算上プラスにならないというふうな規定の仕方がしてございます。また、文官恩給の基礎といたしましては、七年未満一年以上の実在職年というものは、これは算入されない。文官の恩給の基礎にはならない。たとえば司政官でもって、内務省なら内務省から司政官として、派遣されまして、そうしてまたもとの省に戻ってくる、こういうような場合に間の切れた司政官時代の三年なら三年というものは、その人の文官恩給の基礎としては算入されない、こういうふうな事情になると思います。  従いまして、普通恩給の資格を取得するという面から申しましても、文官と軍人との問にはアンバランスがある、そういうような問題があったわけです。また実在職年として完全に勤務したにかかわらず、その年数が十二年なり十三年以上には何ら計算されないというところにも問題がございまして、昨年の臨時恩給等調査会において検討の結果、これらの実際の勤務した期間というものは完全に計算すべきであるという結論に答申はなっております。従いまして、今回の改正措置におきましても、これらはもちろん、すべて軍人の実在職年というものは、文官恩給の基礎として、普通恩給の資格発生の要件として、また恩給年月の計算の要件として完全に見る、こういう措置を講じたわけでございます。
  107. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 時間の関係もございますので、最後に一点お伺いして、私の質問を終りたいと思います。  ただいま御説明のありました在職期間の通算措置によって、軍人のうちの上級者ですね、上級者についてはいろいろまあ抑制を受けているわけですけれども、その抑制をされた分をこれでカバーしておると思いますね、この在職期間の通算措置によって。そういうことになりますと、これはやはり階級差を強化することにも考えられるわけです。この点についてどういうお考えをお持ちですか。
  108. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) ただいまの非常に短かい期間というものが通算になるというのは、高級の職業軍人の場合には、おそらくその問が切れて、そうした在職があるということはほとんどないと思います。おそらく応召の方が多うございまして、五年とか、あと三年とか、ばらばらに行った場合が多いのじゃないかと思います。また、たとえそういうことがございましても、それは一応は一万二千円ベースでの計算の基礎になるのでございまして、一万五千円ベースに上げる、こういう場合には当然今度の制限規定が働きますから、それほど大きく響かないだろう、こう思っております。
  109. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 二、三点伺っておきます。やや重復する点があるかと思うのですが、個別的に伺いますから、お答え願いたいと思います。  「恩給費、国民所得及び人口の推移」、これは私が要求しまして出された資料でございますが、これを見ますと、昭和三十三年度に恩給費千三十四億円、逐次上昇いたしまして、三十六年に千三百六十四億円、これからカーブが下降線をたどりまして、三十七年が千百九十九億と、逐次下降の一途をたどり、四十三年に千二十五億円、かような資料を出されております。そこで、まあそれに即応する国民所得並びに人口の推移は、一部は推定もできないので表が出ていないわけですが、かりに、承わりたい点は、三十六年のピークの千二百六十四億、これを維持していくとすれば、あとこう千二百六十四億から下降していますね。下降しないで、恩給費の支出を千二百六十四億で維持していくとしますね、そうしますと、どの程度の何ですか、アンバランスの是正等が行えると予想されますか。先日来の答弁がある以上は、そういうことは研究しているはずですよ、大まかでも。
  110. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) この、矢嶋委員の御要求によりましてお手元に差し上げました表にございますように、恩給費の推計といたしまして、昭和三十六年の千二百六十四億という数字を一席示しておるわけです。で、今のお尋ねは、このピーク時の一千二百六十四億というままで、落ちない形でずっといった場合に、結局四十三年にはそれからさらに二百億ばかり落ちるわけでありますけれども、結局、その二百億に至るまでの財政的余裕があるならば、どれだけの是正措置が、さらに問題とされているようなことが解決されるのか、こういうお尋ねだろうと思うのでありますが、いろいろまあ残されている問題について検討をいたしました場合に、その処理のいたし方にもよりましょうし、またその範囲のとり方にもよりましょうし、今後のいろいろな不確定な要素が多分に含まれておりますので、今即座にお答えをすることはできませんけれども、大きくいって、昨日も総理から申し上げましたように、大きな財政需要を伴うような改正というものは今後考えられない、こういうような考え方からいたしまするというと、これが二百億が絶対に落ちないというふうな形での財政需要を伴うところの是正措置というものは、なかなか相当な問題があるのじゃなかろうかと思いますが、私どもは今現にいろいろ検討を命ぜられておりますところのいろいろな問題について考えましても、加算というような問題を除きましては、そう大きな需要を伴うものではなかろう、こう思っております。
  111. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の言いたい点は、ひとしからざるを憂えるようなことのないように、最小限度やらなくちゃいかぬと思っているのです。それで、昨日でしたか、岸総理に伺ったのですが、私は今仮定の上に議論を進めているわけですがね、三十六年、国民所得も相当膨脹しているようですが、このときに千二百六十四と、この数字を維持すれば、昨日田畑委員質疑応答がなされた、衆議院の委員長と総務長官の応答の線ですね、その程度は処理できるというようなおつもりでおられて答弁なさっておられるのじゃないかということを、きのう私は答弁を聞きながら推察したわけですが、その点、総務長官はどういうお見通しですか。どうせ大ざっぱなことしかお答えできないでしょうから、大まかなことを一つお答え願いたいと思います。
  112. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 昨日も総理大臣からお答えをいたしましたように、この加算問題というものがどういう工合にして解決するかという問題を除きますというと、そう大きな財政負担はないだろう、こういうようなお答えをいたしました。しかし、もうその一時間くらいの問のことでございますから、十分に検討する余裕がありませんでしたが、あとの問題は、もし検討の結果早急にやるというような結論が出ましても、大きな財政負担じゃないだろう、こういうように考えて御答弁を申したわけでございます。
  113. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 加算制の問題は予算を相当要するわけですが、やはり問題としては大きいと思うのです。服務時期、軍隊から除隊された時期によって非常な差がつくということですね。法律で機械的にやるから、全くなめらかなカーブを描かないで、極から極に行くように非常な落差がつくわけですね。これは戦争に勝っておればそういうことはないのですけれども、負けたのでそういうことになっているわけで、当事者になれは、なかなかこれは了解しがたいところだと思うのです。だから、恩給局長に伺うのですが、何かなめらかなカーブに直すようなことを研究したことがないですか。できるじゃないですか。そのときに問題になるのは、既得権の問題だと思うのです。私たちもよく既得権、期待権ということを言っております。既得権の問題だと思うのです。  この既得権については、終戦時に発せられたいろいろの法律、制限等との関連があると思うのですが、恩給局長は、既得権について日本の学者にはどういう意見があると把握されておりますか。この既得権の解釈次第では、ひとしからざるを憂える非常に落差のひどいのを、流線型のカーブに描き直せると思う。そうむずかしい技術じゃないと思うのです。予算等もにらみ合せてそういうこともできると思うのですが、今のままでは非常に予算の要ることですが、やはり加算制を付加してもらいたいというこの声は、私は無視できない。これはごもっともな点があると思うのです。従って、これは行政府においては、やはり法規にも照らして考えなくちゃならぬのですが、相当技術を要する問題ですけれども、検討して成案を得べきものだと考えるのですが、これは専門の局長さんに一つお答え願いたいと思います。
  114. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) この問題についての検討は、これから、だんだんとやらしていただくわけなんでありまして、昨年の調査会におきましても、これに対する具体的な問題の所在というものを、全貌なりあるいはその分析というものは申し上げたわけでありますが、それに対する処理方法というものは、従来の恩給法的な処理方法以外の新機軸を出しての処理方法というものは、そのときは考えておりませんでした。今後とも考えなくちゃならぬだろうと思いますけれども、今おっしゃいました既得権との関係、こういう問題につきまして、これはやはり恩給の受給権が、権利が発生したものにつきまして、そして金額、財産権と申しましょうか、債権が確定したものについて、これを不利益に変更する、あるいは消滅させるということは、これは財産権の侵害になるという見方からいたしまして、従来どうしても過去の制度のために非常にそこにこぶができる、こういう場合に、新しい制度を持ってくる場合に、なかなかやりにくいという面があったわけであります。従来の恩給法上の手法といたしましては、そうしたこぶというものはできるだけベース・アップというふうなものを機会に埋没さしていくという手法をとってきたわけであります。従いまして、今回におきましても、多少ともそうした努力はなされておるわけでありますけれども、その他全然既得権というものを消滅さして、そして新しく白い紙の上に新しい制度を書き直すということは、なかなかむずかしい問題なのであります。今までの手法から申しますれば、漸次ほかの水準が上っていくというときに、頭を出しておる部分を埋没をさして、そして地ならしをさしていく、こういうふうな手法をとらざるを得なかったのであります。今後におきましても十分検討いたしまして、何らかの新機軸を出すという方向では、われわれ事務当局といたしましては努力しなくちゃならぬ、こう思っております。
  115. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点でありますが、国内の法律学者の中でも、恩給法、これに基くところの既得権というものは、終戦時において一応消滅したものであって、過去の実績から新たに政治的に生まれたものであって、法律的には一応消滅したものである、こういう法解釈をしている学者があることは御承知だと思う。私はこの法律論を一がいに否定できないと思う。ごもっともな点があると思うのです。それらをどう解釈するかによって、今のような落差の是正という方策も変ってくると思うのですが、こういう国内の法律学者の論に対しては、政府はどういうふうな見解をもって対処されているか。
  116. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 今のお尋ねの御趣旨をちょっと取り違えておりましたが、軍人恩給というものは勅令六十八号で一たん廃止制限されたのでございますが、そうして軍人恩給は昭和三十八年の法律百五十五号によって新しく出発をしたわけであります。旧軍人に関する権利というものは、法律百五十五号によって初めてそこに付与された、こういうふうに見ているわけであります。従いまして、旧時代における既得権云々という問題とは別な問題でありまして、それとは形を変えて昭和二十八年に再発足して、そこから生まれてきた、こういうふうに見ております。  私が今申しました既得権云々というのは、法律百五十五号の土台の上での、すでに生まれたところの権利というものをベースにして、そうしてそれの問題と今後の問題と申しますか、その後における問題とのアンバランスの問題というふうなことについての所見を申し上げたわけであります。
  117. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、伺いますが、修正公務扶助料金額、兵の五万三千二百五十円に対し大将の二十万五千七百円というこの差ですね、こういう差は、少しどうも僕は納得しかねるのですがね。開き過ぎていると思うのです。兵からおよそ少尉までは、大体近似数が出ております。しかし、一番下の兵と大将と考えた場合に、公務扶助料という立場から考えたときに、五万三千二百五十円と二十万五千七百円というのは、ずいぶん私は差が大きいと思う。これはやはり既得権の関係から来ているのですね。
  118. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) ちょっと説明させていただきたいのですが、もちろん、将官につきましては、二十万五千七百円というのが現在もそうでありますし、今度の改正案におきましても変っておりませんから二十万五千七百円、これは十三年と計算した場合です。しかし、この十三年を最短年限として計算した場合におきましても、二十万五千七百円という中には、十二万一千円という分は、これは在職年に見合った分として遺族が当然受くべかりしものであります。つまり将官クラスになれば、十三年で将官になるということはございませんので、長いのが当然でございますけれども、たとえば十三年といたしましても、二十万五千七百円の中身には、この方が勤めあげてそうして普通恩給を受けて、おなくたりになっても、その遺族の方が受けられるのは当然十二万一千円というのがあるのであります。従いまして、公務であったために、その上にプラスになった分というのは八万四千円ぐらいのものです。そのプラスになった八万四千円というものを、兵の場合におきましては、ほとんど応召してすぐになくなった方もありますし、おそらく戦死された方で十二年も勤めてから戦死されたという兵の方はないわけでありまして、そういたしますと、また普通扶助料というものの考えを抜きにして考えれば、五万三千円というものが公務扶助料、公務災害補償というものそのものになるわけであります。それとの対比において考えますると、五万円と八万円という開きは、これは非常に縮まってきておると、こうも言えるわけでございます。しかも、将官におきましては現にそうなっておるので、全然上げておらない、今回は下士官、兵におきましてはぐっと上げてきておりますから、従来の差よりもずっと縮まってきておる、こういうようなことが言えるのではないかと思っております。
  119. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの説明を聞くと、ごもっともな点もありますけれども、私はやっぱり納得しかねます。前提が違うから意見が食い違うと思うので、その点はその程度にしておきます。  次に伺いますが、この特別の恩給年額ですね、それから佐官の恩給年額の表を出していただいたのでありますが、普通恩給年額と公務扶助料年額が大体とんとんになっていますね。私見を申してそのお答えをいただきますならば、私は今後たどるべき方向は、生活力との関連を持たして考慮していくべきだと思う。で、大将、中将、少将でも、その生活が豊かでない人に対してはそれ相当のものを出してけっこうだが、かりに大将の生活が豊かである、それから普通恩給をもらう兵の生活が豊かである、こういう同じ条件において比較する場合に、これほどの差があるということは、私は旧観念にとらわれ過ぎておるという立場で、賛成いたしかねる点が一つあります。  それと、もう一つは、おなくなりになった公務扶助料の年額に対して、普通恩給年額がとんとんだということは、佐官級あたりと比べてみますと、まあその人の生活状況にもよりますが、戦後職を失って、元佐官だった人が、体面もありましょうし、うまく転職のできなかった人は、公務扶助料に対してこの程度の普通恩給では、お気の毒な面も私は出てくると思うのです。それから、私の申しておることは、やはりその生活力と若干関連づけてこういうものの数字を算出しないというと、納得しかねる面があると思うのですが、この点をあなた方はどういうように考え、どういう議論をされたのか。私の言わんとするところはおわかりにくいかもしれませんが、大佐の場合をとりますと、大佐だったら公務扶助料十四万円になっておりますね。普通恩給十四万七千二百円。ほとんど同じでございますね。この人がうまく転職していないというような場合は、ちょっと気の毒なような感じもするのですが、そういう点はどういうふうにお考えになって、こういう数字を算出されておるのか。私、ちょっと理解しかねる点がありますので、伺いたい。
  120. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) この普通恩給と公務扶助料と比べてという比較論でございまするが、それとも、普通恩給そのものの御議論か、いずれかよくわからないのでありますが、いずれにいたしましても、佐官の普通恩給年額というものが、大佐におきまして、大佐を二十二年というふうにいたしました場合に十四万七千五百円、これは二十二年勤め上げた大佐の方の恩給としては月一万二千円足らずというので、これをもって全生活を維持していくということには足りないということは、私どもも認めるわけでございますけれども、この基礎というものが、大佐の仮定俸給というものを、大体文官の旧時代の仮定俸給とにらみ合せまして大体きめまして、そうして退職時の俸給の三分の一プラス年限加算というものをつけまして、十四万七千円という数字になっておるわけであります。普通恩給というのは、大体退職時の百五十分の五十、三分の一と、こういう建前になっておる。最近の年金法におきましても、退職時の俸給の四〇%、四割ということになっておる。その程度のものが退職後の恩給の基礎になっているわけです。  これに対しまして、公務扶助料というものは、昔の昭和八年以前の制度におきましても三十割という倍率が用いられておりまして、言いかえれば、普通恩給と同額ということでございますね。普通恩給に対して二分の一の普通扶助料に対して、二十割ということは、逆にいえば、公務扶助料は普通恩給と同額であると、こういうふうな考え方です。公務でなくならない場合には、普通恩給を受けている人が今までもらった人の半分でよろしい、今まで恩給で生計を営んでおった御主人がおなくなりになって未亡人が受けるものは、その半分でいい、こういう考え方。やはり公務扶助料の場合は、これは公務災害的な補償という考え方も入りまして、そうしてその人が年限と勤めあげてまるまる受けるであろうところの恩給額と同じくらいでいいんじゃないかというので、二十割という倍率があったと思うのです。この佐官に対する現在の倍率というものがこれは十九割という倍率になって、そうして十四万百円というものがここに出てくるわけですが、十九割というものは昔の二十割よりもちょっと下回っておりますけれども、大体法律百五十五号のときにそうした二十割という線を考え、上の方の階級におきましては上薄下厚、将官におきましては十七割、佐官においては十九割、尉官については二十割という線を出しておるわけでありまして、従来の恩給法の上での考え方というものはこういう筋で来ているわけです。  それからまた、最近の災害補償関係の立法におきましても、この全廃疾の場合に、俸給年額の八カ月分くらいを生きている場合に扶助する。これに対して、死んだ場合はそのまた三分の二くらいを付与する。こういうような立て方をいたしておりますので、大体標準的なところでは、こういうところにそう狂いはないと思うのでございます。  こういう説明で御納得いただけるかどうかわかりませんけれども……。
  121. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その説明は承わっておきます。  もう二、三点伺います。高額所得者の停止ですね、これは適正に行われていないという。これは軍人恩給だけでなくて、全恩給支給者について……。そういうことをよく耳にするのですが、実情はどうなのか。  それから、巷間でよく軍人恩給の辞退者が中にあるというようなことを聞くのですが、軍人恩給の受給の辞退者ですね。実は私は新聞で一回見たのですが、非常に負傷された方で働くことのできない人が、広島県か何かで辞退されて、町の道をよくしてほしいといって寄付されたということを、新聞で拝見したのですが、こういうのは特例だと思うのですけれども、私承っておきたいのは、ここで普通恩給、それから普通扶助料、公務扶助料を受けるもとの大将、中将、少将階級の人は、合せて四千七百六十三人という資料が出ています。この中でこういう手当を辞退されている方があるというようなことをよく巷間聞くのですが、何人ぐらいあるのか、ないのか、参考に承わっておきたい。
  122. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 後段の、軍人恩給の辞退者があるかどうかというお話でございますが、恩給は請求をいたしませんというと権利の裁定が受けられないのでありますが、われわれの方で権利の裁定をいたしましたものの中で、一ぺん裁定をいたしながら、辞退をして権利の放棄を申し出た、こういう方はまだ私どものリストにございません。ただ、全然請求をしないという形で、権利を放棄しているという方はあるかもしれません。そういう方はわれわれの方にまず請求に出てきませんから、この数字をつかむことはできませんので、そういうまだ全然請求をなさらない方の中には、そういう種類の力もあるかもしれません。これは実態をつかめないわけであります。  それから前段の、高額所得者の恩給制限につきまして、何かルーズじゃないかというお尋ねでございますが、これはもう非常に機械的にやっておりますので、先ほども申し上げましたように、われわれの力では、九万五千円以上の恩給受給者のカードを、現在は五万六千人分でありますが、そのカードを税務署別に配列いたしまして、それによって毎年税務暑にその人の恩給外所得の照会をいたしております。そうして各税務署からわれわれの方へその調査が上って参ります。それに基いてやっておりますので、その間の税務署が脱漏があれば別ですが、またわれわれの方が当然所得の所在しないところの税務署に照会したりして、そうしてほんとうに所得のあるところの税務署に照会しなかったというようなことで、脱漏があるということならは別でございますけれども、それはもちろんあとで補正いたしますが、そうでない限り、そうしたルーズに流れるということはないというふうに確信しております。
  123. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 了解いたしました。  次に、承わりたいことは、恩給を是正し、所要額の三百億の恩給関係並びに援護関係等への配分はどういう根拠でされたのか。さらに、一部を遺児の育英費関係へ割合したのは、非常に私はけっこうなことだと思うのでありますが、どの程度割愛し、運用をどうされるのか。そういうことを承わったことがありますので、果してそうなのか、伺っておきたいと思います。
  124. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 個々の分け方についてお答えをいたしますが、三百億恩給是正が決定いたしまして、これを旧軍人の戦没軍人の公務扶助料と、傷痍軍人の方の方に重点を置いて、われわれとしては配分をいたすわけであります。その結果、いろいろ援護関係費用関係もありまして、従来の額の関係、また軍人恩給と援護関係との従来の扱い方、こういうものからいたしまして、二百六十九億を恩給関係に使うことにいたしました。残余を援護関係と旧令の関係に配分する、こういうようなことで部内の話し合いがきまったわけでございます。  それに合せましていろいろ検討してみた結果、先ほどもお話ありましたような遺児関係の方々に、傷痍軍人の遺児の方々にも増加をしたい、こういうようなことで、それを出しますのに苦労したような工合で、われわれの方の具合の根拠は切り詰めたところまで検討したつもりでございます。
  125. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) ただいまの三百億のワクの中でのいろいろな処遇の考え方というものについての割り振りの問題でございますが、これは昨年の臨時恩給等調査会におきまして、恩給、援護というものを網羅して、いろいろな報告が出ております。で、大きな柱につきましてそれぞれの金額を検討いたしまして、そうしていろいろな角度から制限すべきものに制限し、できるだけ遺族、傷病者に厚い、老齢者に厚いという考え方をとりながら、この中でできるだけ効率的に金を使えるようにしよう、こういう考え方であります。  先ほど総務長官から遺児の問題という点につきましてもこの中で考えておるという点は、これは増加恩給を受くる傷病者につきましての退職後の子女の加給制度というものは、昨年の臨時恩給等調査会の報告におきましても、何らかの形でこれを実現するようにという御答弁でございますので、そういう点もあわせて考えて、この中に盛ってある、こういうことでございます。
  126. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この三百の内訳の金額は、項目別に私にわかっておるわけです。それで、伺っておるのは、たとえば旧軍人傷病恩給二十一億四千万円、こういう数字はただその人の勘で、つまみとして出したのか、何かはっきりスケールがあって、そうして出されたのか、そういうところを伺っているわけです。私はこの国会政府委員質疑したときに、官房副長官は、戦争未亡人は二十七万できた、それから戦争遺児が約五十五万人生じたと推定される、こういう答弁をしておるわけです。私見をもってするならば、こういう未亡人、ことに遺児ですね、それから今、私、数字をあげましたこの軍人傷病恩給ですね、傷病者に対する手当というものは最も私は重点的でなければならない。第二次世界大戦でずいぶん戦争に負けた国がある。ドイツだってあれほど惨たんとやられましたけれども、五、六年後には遺児を抱きかかえて苦しんでいる未亡人の姿などドイツにはなかったのです。それからまた、白衣軍人なんか、もう戦争後四、五年したころには、ドイツの街頭にはさまよってはいなかった。これらの点は、日本は初めて戦争に頂けて経験不足のせいもありましょうが、戦後処理というものはきわめてまずかった。最近ようやく傷病者の姿が街頭から消えつつありますけれども、しかし、いまだに盛り場に行くとちょっちょっと姿を見るわけですね。このたびの改正に当っても、こういう傷病者に対しては最も重点的に配慮されなくちゃならぬという考えを持っておったのですが、必ずしも私はそうじゃないと。そこで、先ほど時間がないから、総括的にどういうスケールによってなされたのか、二十一億四千万というのは一つの堪で、つまみとして出されたのか、そこら辺をお答え願いたいというのと、最終段階の法律案を出すときに、方針を若干変えて、戦争遺児の育英費に、佐官級のふやすところを削除して、それを回そうというようなことを伝えられておったのは、今、私お聞きしておったのですが、その点、お答えなかったと思うのですが、一体金額としてどの程度で、運用をどうされようとしておるのか、それを承わりたい、こういうわけです。
  127. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) この傷病恩給の金額の算出でございまするけれども、これはあくまでも傷病恩給の個々の第一項症の基本年額を幾らにする、またその以下の項款症の基本年額を幾らにするかということをきめまして、そして受給対象人員とのかけ算によってその総額が出るわけでございます。幾らにするかという問題は、これはやはり第一項症を幾らにするかという問題は、これは臨時恩給等調査会の答申もございますように、現在の十一万六十円というものをどういうふうなレベルまで上げるべきかということでいろいろ検討いたしました結果が、十七万一千円に上げるということになったわけでありまして、これとそのほか介護手当の二万四千円とか、あるいは家族加給を加えるとか、こういうようなことによりまして、これは普通恩給を合せて二十一億四千万円、こういうことになっております。これが全体の占める中でウエートが非常に低いのじゃないか、こういうふうな印象をお持ちのようでございまするけれども、現在の基礎になっておりまする現行の金額、予算というものを土台にして考えまするというと、今回の増額分というのは相当な増額になっているわけでございます。  増加恩給受給者、傷病恩給受給者というのは大体十三万人、こういう推察をされております。これに対しまして公務扶助料受給者というのは百五十三万という、十倍以上のものになっておるわけでございます。公務扶助料の現在の、もし今回の増額をしないとするならば、現在の公務扶助料に対する予算額というものは六百三十四億六千万円、これに対しまして今回は二百二十九億六千万円という増になっておりまするから、三四%、これに対しまして増加恩給の場合は、増額をいたさないとすれば現在の予算額というものは二十億円、これに対して今回の処置は十四億六千万円余をふやそうというのですから、七三%の増加になっております。傷病年金におきましても、現在七億七千万円余を三億六千万円だけふやそうというのでありますから、四七%ぐらいの増になっております。そういうような意味におきまして、絶対額がら申しまするというと、非常に少いようでありまするけれども、現在を基礎にして考えまするというと、その予算額の増加割合というものは相当ふえております。こういうような意味で、傷病恩給というものが、決して片すみに寄せられているということは私はないと思っております。  先ほど、育英費というものが、階級制限を強めることによって、育英費に身がわりをしたというようなことを聞いておるというお話でございましたけれども、これはいろいろな作業の過程におきまして、傷痍軍人の増加恩給を受けるものにつきまして、退職後の生まれた子供への加給の制度をどうするか、こういう問題を考えます場合に、その財源というものがそうしたものとの見合いになってきたというようなことも、その中間段階においてはございましたけれども、この退職後の子女の加給というものがこの中に、三十一億四千万円の中に入っておるわけでございます。で、遺児の育英資金というのはちょっとそれと何か混同されておるのじゃないか、こういうように思っております。
  128. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点、わかりました。ただ、引き上げの率が、あるいは七三%、四七%と非常に伸びたということは、これは認めます。その通りです。しかし、そもそもの基礎が、現在の基礎というものが不十分であったわけですから、必ずしもその率だけで、その努力は認めるけれども、結果が果して適正かどうかということは、また別問題だと思うのです。  最後に、もう一点承わりたい点は、これは今後の問題でありますが、この総理府所管の恩給法とそれから厚生省所管の援護法関係ですね、このアンバランスは、新しい時代の施策としては私は検討をどうしてもしてもらいたいと思う。それは、たとえば不具廃疾の程度で、第一項症で軍籍にあった人は、普通恩給のほかに増加恩給として十七万一千円が併給されるわけですね。そうですね。ところが、傷害年金の方、まあ学徒動員等に参加しておった人は、準軍属として、これが八万五千五百円になるわけですね。僕は実際知っているから、そのアンバランスをどうしても直してもらいたいという気持がするわけなんです。あのころは、学生は若くして予科練その他軍籍に身を置いた人がある。従って、私はあの長崎に原子爆弾が落ちたときに、ちょうど長崎におって、元中等学校の教員をしていましたから、私の教え子が三年から予科練に行って、長崎に軍籍におって、傷ついて、普通恩給と増加恩給と併給されている人もある。ところが、中学校五年まで行って、三菱の工場へ行って原爆でやられて、今までは何にも手当を受けないで、これからやっと準軍属として扱われて、第一項症で八万五千五百円いただくということも知っている。現実に両手を落して、もう実際何も書けないわけですね。今二十四、五才ですが、これから一体何をして生きていくか、何にも生きようがないわけです。両手なくして、極端な気の毒な人なんですけれども、それが一カ月かそこそこ軍籍にあった、中学校の同級生であったが、一方は軍籍にあった、一方は軍籍に行かないで中学校にあって、当時の学徒動員令によって工場へ行っておった。ところが、原爆でやられたというのによって、この増加恩給において、さらに普通恩給、その合計と、傷害年金で非常な差がつくという点は、まあこのたびの改正で、政府の施策で前進はしたのですけれども、やはり今の時代のこの時点に立ってこういう政策を考えるときには私はこのアンバランスというものは検討さるべきである、してもらいたい、こういうふうに思うわけです。  この点に対する総務長官の見解と、それからもう一つは、遺族給与金を五年間に限りましたね。これはずいぶん経過はありました。傷害年金を準軍属にどの程度与えるか、それから遺族給与金を一時金にするか、何年にするか、ずいぶん議論がありましたが、今回出された法律案では、これは五年間として出たわけですね。あなたはこれは関係があって関連事項ですから、十分討議の段階は御承知と思いますから、この五年に限ったのはどういう根拠に基くものか。おそらく私は、一応五年ということで押しておいて、その五年たった後には、その当時の、そのときの社会情勢、さらにわが国の経済状況等をにらみ合せて、さらに継続すべきか、それで切るべきかという含みを持って、この五という数字が活字として法律に表われてきたのだろうと、かように私は推察しておるが、そこらあたりについて総務長官の御見解をお聞きして、私の質問を終ります。
  129. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) ただいま矢嶋委員の御質問の内容につきましては、まず恩給法の適用を受ける者と援護法の適用を受けます者との間に差があることは、私どもも認めております。これは恩給法のワクの中において将来考えますることは困難かと考えますが、厚生省とも十分に相談、検討いたしまして、将来の問題として考えたいと思います。  五の問題についても、今、矢嶋委員の申されたような考え方ではないかと思いますが、当時の事情を詳しく承知いたしておりませんので、それも含めまして、厚生省の援護関係の問題、それから恩給法で処理しまする問題と、あわせて検討したいと思います。
  130. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 時間もあまりないようですから、ちょっと簡単にお聞きしたいと思います。重復する点があるか、あるいは今までの質問に出ていない点があるようですが、一、二点だけ長官にお伺いしたいと思います。  今度四年間三百億ということで出た予算の問題でありますが、これは、今までの成立の経緯やら経過、それからその後に出た法案の内容の裏づけ、これから見るというと、つかみ金を先に三百億、財政の理由か、その辺の見地からきめられて、そのあとで、理論の裏づけ、あるいは政策を持ってこられた、かように実は見られる点が、どうも方々に、いろんな関連した問題で、あるようであります。従って、衆議院で委員長から、異例のああいう九カ項目にわたって将来の善処という問題で質疑が行われた。しかも、この問題は、九カ項目にわたって、範囲は今度出る法律のほとんど全面をカバーするような問題が、どの点にも問題があるように思う。これは、当然総理がおいでになって、さらに参議院としてもそ、の点は再確認をしておきたい。これは一番ポイントの問題だろうと思いますが、これは長官におかれましても、関係の部分の援護法の問題もありますけれども、あわせてその点は一つ再検討して善処してもらいたい。再確認をここで御返答願いたいと思います。
  131. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 昨日、総理大臣があの問題について御答弁申し上げました通りに、私どもは今後十分検討して参りたい、こういうふうに考えております。
  132. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 これに関連しまして、今まで話の出ていない問題で、少し実情長官にも承知しておいてもらいたいと思うのですが、今恩給法、ことに扶助料に関係しました問題、あの九カ項目の冒頭に、遺族扶助料の倍率ということがあげられております。この扶助料の倍率四十割という問題については、いろいろ衆議院の段階においても論議がかわされておりますけれども、この問題は将来に残る問題であるという点は、今まで論議されて、ほかの見地からもいろいろ問題があるように思われます。同時に、この四十割に関連しまして、今度の恩給法のあるいは倍率是正、あるいは傷病恩給、あるいはベース・アップ、そういう三百億の増額に関連して、一歩もここに増額はされぬ部分がある。これは端的に申しますというと、文官の遺族の公務扶助料、これは従来四十割だったものが三十五・五割に落されておる。しかも、その内容は、いわゆる戦没者の公務扶助料の倍率四十割、あるいは金額でいうなら五万三千二百円、これに見合うために、文官の遺族扶助料四十割を三十五・五割に落されておる。しかも、これは金額において変らないから既得権の侵害じゃない、ここにも一応の問題があると思われますが、それ以外に、ベース・アップという一律に均霑させるものを、文官の公務扶助料の部面はベース・アップの恩恵に浴さぬということは、あまりこれは法の前に不平等過ぎると、かように考えておりますが、その点についてどういう御見解でございましょう。
  133. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 文官の旧倍率によりまして四十割、三十三割いう適用を受けておるところの文官の公務扶助料につきましては、これは法そのものが制度的なこぶである。横の均衡におきましては、それに見合って旧軍人の公務扶助料を是正しなければならないという面となり、また、文官の縦の線においては、むしろこぶになっておる、こういう関係でございます。従いまして、これをさらにべース・アップをし、旧倍率を適用してさらにこぶを大きくしていくということは、全体の均衡上ますますおかしなことになるわけであります。従いまして、現在の旧文官のこうした割りのいい倍率の適用を受けているものにつきましては、既得権でありますから、これを減らすことはできませんけれども、そのまま据え置くという立て方をいたしております。
  134. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 この問題はあとに保留しておきたいと思います。  次に、異例の問題としては、今まで扶助料あたりには年令の制限という問題はなかったわけです。今度初めて、父だ母だというものは、遺族の公務扶助料においても、年令制限という新たな、これは社会保障の見地は別として、おそらく財政的な見地だろうと思いますが、そういうことで六十という問題が新たに出ております。ところが、この問題のよしあしは別としまして、子供二人おって、二人とも戦死をして、そうして父はなくして、お母さんだけで、そのお母さんが就職の能力がないというような実例はかなりたくさんあるわけです。そういう場合に、全然公務扶助料の恩典は行かない、こういう問題があるわけです。こういう点については、問題として一つ検討していただきたいと思います。
  135. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) ちょっと、大谷委員に誤解がありはせぬかと思いますが、今回のは六十才になるまで受給を待ってもらっておるわけでありまして、従来の額はそのままであります。それで、若い力と年寄りの方とどちらを先にする、こういう問題で、二年間お年寄りの方を先にする、こういうことにいたしましたが、公務扶助料の関係では、大体ごく少数の方以外はみな六十才以上になっておられるように考えるのです。数字につきまして、もし必要があれば他の政府委員からお答えいたします。
  136. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 問題はこの六十才ですが、さような年令制限が加えられるという考え方も一法だろうと思いますが、むしろ、そこまで非常に窮屈に、リジッドに考えられるのであれば、現在の若年停止の四十五才を五十才に引き上げ、五十才を五十五才に引き上げ、五十五才を六十才、六十才を満額にする、かようなへんぱな措置はむしろ穴埋めにした方がよろしい。これは、むしろそういう点のあり方の方が適当じゃなかろうか、かように考えておるものであります。  同時に、先ほど矢嶋委員からも御指摘になりました援護法と恩給法との不均衡、これは今度新たに起きた問題ですが、たとえば扶助料を一方では五万三千二百円もらう、同じ立法の精神である援護法においては五万一千円、頭を三千二百円削っておる。これはどこにも理由がない。いかなる説明を聞いても納得ができない。同時に、また、先ほどの傷病者の給付金を五カ年にしぼっておる。遺族の援護年金の給付においても、やっぱり遺族年金においても五年の給付でしぼっておる。そういう点においては、これは五年先になって死んだ者が生きて帰るというならば、これはけっこうであろうと思いますが、かりに当分であるならば、全額当分であるか、あるいはその冒頭をつけるか、その辺については新たに生まれた不均衡として、新たな不満をここに呼び起しておる。こういう問題が方方にあるように思いますから、そういう点については慎重な御検討を賜わりたいと思います。
  137. 田畑金光

    ○田畑金光君 簡単に一、二点だけ承わっておきますが、昨日の総理の答弁によりますと、倍率については、もうこれから考えない、ただ給与のベースの不均衡等については今後とも検討を進めていく、加えていく、こういうお話があったわけですが、今回一万五千円ベースで是正をやっておるわけです。ところが、一般の公務員給与ベースは今一万七千円台になっておると思いますが、結局、これは給与の内部の不均衡是正という名前で手直しというわけで、いわゆるベース・アップという形式を踏まないでやっておるわけです。こうしました場合、一体一万二千円ベースから一万五千円ベースにした、今度は一方においてすでに一万七千円ベースになっておるのだ、この関係一体どういうことになるのか。総務長官も、先般来ベースについては考慮する、こういうお話でありましたが、今言ったように、いわゆるベース・アップという形式はとらないで、だんだん実質的にベースが上っていった、こういう場合にはどういうふうな処理の方法を考えておられるのか、承わっておきたい。
  138. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 端的にお答えいたしますと、ベース・アップの場合に、恩給の問題がそれにすぐにスライドしていく、こういうこととはちょっとむずかしいかと考えまするが、ベース・アップしなくても、自然にベースが上っておる、こういう問題のときに、恩給の問題についてどうするかという御質問でございますが、私どもといたしましては、この恩給の支給さ、れる根本の理由にかんがみまして、経済上の変動が非常に激しくなってきて、恩給受給者と現在生きておって俸給を受けておる方々との均衡が著しく変るような場合には、財政の事情もございますが、できるだけそれに見合うような方針で財政当局と折衝して参る、こういうような考えでおります。
  139. 田畑金光

    ○田畑金光君 その著しく経済情勢が変ったとか、また、新しい退職者と古い退職者の間に相当給与条件が違って、給与内容が違って、従って生活の条件においても相当隔たってきた、これは言葉としてはわかりますが、一体著しく経済情勢が変った、こういうような基準は一体どこに置かれるのか。これは恩給受給者団体の力で騒ぎ出さなければ結局やらないというのか、あるいは何かそこに一つの基準があって、まあ是正措置を講ずるということになっていくのか、この辺はどういうことになりましょうか。
  140. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 恩給受給者が騒ぎ立てるから考える、こういうような考えは私どもは持っておりません。ただ、どれくらい上ったならばそれじゃ恩給の方を考えるか、こういうお尋ねでございますが、やはりこれはまあ常識的に考えまして、非常に著しい差があると、こういうような場面に至りましたときには、その額が、それじゃどのくらいその開きができるならば考えるか、こういうお話になりますというと、これは私は今、これくらいならば考える、こういうはっきりしたことを御答弁申し上げられないのでありますが、大体常識的に考えまして処理したい、こういうふうに考えます。
  141. 田畑金光

    ○田畑金光君 実はその常識の基準々どこに置くのか、それを伺いたいと考えておるわけですが、まあしかし、その程度の答弁で、答えができなければやむを得ません。  ただ、今回の、ベース・アップの措置が、要するに、昭和二十九年一月以降やめた公務員と二十八年の十二月三十一日以前に給与事由の生じた人方との不均衡を是正するという意味で、一万五千円ベースになったのでありますが、たとえば今後新しくやめていく人方と、また二十九年一月以降やめた人方との間に相当なる不均衡というものがまた出てくるということも明らかになるわけです。そこで、恩給調査会等におきましても、この問題についてはいろいろ論議があって、たとえば将来給与ベースの引き上げがあったとしても、前退職者との均衡を考慮し、べース改定後の退職者だけが特別によくなるようなことにならぬように措置をはかれと、こういうことを政府に答申しているわけでありますが、この点は、恩給制度が現在の形で続く限り、いつまでもつきまとう問題ではなかろうか、こう考えておるわけで、この点に関しまして政府部内ではどういう見解を統一されておられるのか、これをちょっと承わっておきたいと思います。
  142. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 昨年の恩給調査会の問題として取り上げられましたこれに対する答申の中で、将来給与ベースの引き上げがあっても前退職者との均衡を考慮して、ベース改定をしたあとが割よくならないように何か方法を講ずるようにという意見も開陳されたのであります。これは実のところ、現在これが出てからベース改定は行われたことはございませんので、これについてどうするか、今度はべース・アップが行われるんだがこのべース・アップ後に退職する人が非常に割がよくなるんじゃないか、これをどうするかという問題に当面ぶつかっておりませんので、すぐこれに対してどうするかは措置考えておりません。もちろん、ベース・アップ前後における不均衡をなくそうという考え方として、消極的な意味で、非常に一つの新しいアイデアだと思うのでございまして、そういうような際には、また新しい角度からこの問題について十分検討しなければならない問題だと思っております。
  143. 田畑金光

    ○田畑金光君 今回で一万五千円ベースになるわけでありますが、先ほど申し上げたように、もうすでにベース・アップという形式は踏まなくても一万七千円台になり、やがて一万八千円台になり、だんだんこういうまた不均衡が出てきますと、当然私は、先ほど申し上げましたような点は、根本的な今後の恩給制度のあり方として検討を加える必要があるわけで、現実、ぶつかっていないと言っておるけれども、現実すでに問題はあるわけで、これらの点については政府の中においても十分一つ検討を加えられるように希望するわけであります。  それから、もう一つ、簡単な事例でありますが、先ほど恩給局長から、公務扶助料について大将の公務扶助料の形態はこうだという御説明がありましたが、十三年基準で、大将の公務扶助料をお話しになったわけで、実際に十三年で大将の公務扶助料ということは考えられないわけでありますが、今支給されておるもとの大将の公務扶助料で最取高の額は一体どの程度になっておるわけですか。
  144. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 大将の公務扶助料、これを在職年三十五年と、こういたしました場合に二十九万六千円。ですから、これは、実際今裁定を受けておるものの中で大体これが最高かと、こう言われますと、ちょっと直ちにお答えが申し上げられないのでありますけれども、大将の在職年が四十年であると仮定いたしますれば、これよりも上回ることになりますけれども、大将の在職年を三十五年と計算いたしました場合には二十九万六千円、こう相なっております。
  145. 田畑金光

    ○田畑金光君 四十年の場合は……。
  146. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 四十年の場合はこれに……。
  147. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ、よろしゅうございます。  それから、もう一つお尋ねいたしますが、今回のこの措置は、ベース・アップについては普通扶助料にも適用されておるわけで、それで加算に関連して問題になった点は、軍人恩給廃止前のいわゆる既裁定着、実役三年で小づかい程度の恩給をもらっておる人々、この人方については、未裁定者との均衡等も考慮して、恩給の給与ベース引き上げによる実質的な増額は見合せるように、こういう答申が出ておるわけですが、この点に関しましてはどういうことになっておるのか、恩給局長から一つ説明願いたいと思います。
  148. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 加算に関しますところの調査会の報告はその通りでございます。今回の措置におきましては、加算年が一年分につきまして、現在の恩給法では百五十分の三・五というものを、十二年ないし十三年に足りない分一年につきまして、百五十分の三・五を百五十分の五十から減額しておるのでございますが、この調整の率を、一年につき百五十分の三・五を百五十分の四・五にいたしております。と申しますことは、この百五十分の三・五という減額率というものを厳密に考えて参りますというと、十二年で百二十日分の普通恩給が建前としてつくわけでございますが、言いかえますれば、一年につき十日分ということになるわけであります。従いまして、一年に足りない分について十日分ずつ引いていきますということは、百五十分の四・五引いてよろしいということになります。こういうような意味合いからいたしまして、現在の調整率を若干上げますことによりまして、ベース・アップはいたしまするけれども、実額におきましては年限の短かい方についてはそのまま増額にならない、こういうふうな現象になって現われるわけでございます。このことは調査会の答申の趣旨にも合致するわけでございまするし、また将来の制度の見通しから申しましても、加算による分というものの計算の方法というものをできるだけ厳密にこの際直していくことが、ベース・アップの際よろしいのではなかろうか、こういうふうな見地から、そういうふうな調整率を直しておるわけでございます。
  149. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから、もう一つ、先ほど恩給局長の答弁があったようでありますが、ちょっと不明確でありましたので…。この傷病恩給で第一項症を十七万一千円に基準を置いた、この理論的な根拠を、もう少し正確に一つ説明していただきたいと思うのです。
  150. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 実は第一項症の基本年額というものを、法律百五十五号を制定いたします場合にどうきめるかということが問題であったわけであります。これはその当時の恩給法特例審議会の建議の趣旨に基きまして、その当時の生計費の状態とか、過去からの第一項症の額と普通恩給あるいは仮定俸給との開き、割合というようなものを考えまして、昭和二十八年当時十一万六千円というものを第一項症の基本額にするという考え方をとったわけであります。この基礎というものを柱にいたしまして、そうしてその後における生活水準、物価水準の上り方というものを考えて、これを増額していったらいいのじゃないか。このためには、当時の兵の仮定俸給というものは六万六百円でございました。それが今度、今回の是正措置におきましては九万円に増額しよう、こういうわけであります。仮定俸給は六万六百円から九万円になる。言いかえますれば、四割八分増しになるわけでございます。そうした処遇の面におきましては四割八分増しになるということは、言いかえれば、物価水準なり生活水準というものをそれだけ上っておるものと見た、こういうことも言えるわけでありまして、その四割八分増しというものを十一万六千円に対してかけまして、そうして十七万一千円というものを第一項症の基本年額にしたわけでございます。  もちろん、この十一万六千円というきめ方に対していろいろ問題があるではないかというような御議論もございますけれども、それは昭和二十八年法律第百五十五号におきまして、重症者に厚くという精神で、相当慎重に、その当時の状態としては非常に慎重に厚く考えたという意味におきまして、これを柱に考えて、その後の状況の変化というものを織り込むということが妥当である、こう考えておるわけであります。
  151. 田畑金光

    ○田畑金光君 もう一点だけお出ねしますが、この増加恩給の受給者に対して、家族加給を四名にとどめておりますが、これはどういう理由に基くものですか。
  152. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 一般社会保障等の年金制度におきまして、給与事由の発生しました後において出生した子女に対する加給の制度というものはないのでございますけれども、今回傷病恩給の受給者だけにつきましては、退職後の子女につきましても加給の制度を設けることにしたわけでございます。従いまして、その間すでに退職前からの子女の分とその後の分というものとの制度の立て方におきましては、若干の相違をつけてもいいじゃないか、そういうような趣旨からいたしまして四人まで、こういうふうに押えたわけでございます。四人とした方がいいかあるいは五人とすべきであったか、三人とすべきであったかというところは、いろいろ議論のあるところと存じますけれども、四人ということで一応のそこに割引をしたと、こういうことであります。
  153. 千葉信

    千葉信君 わかればはっきり数字でお答え願いたいのですが、少尉以上の軍人さんの数と、それから下士官以下の数、これはもちろん恩給法の対象になる人員、それから当時同じ通し号俸の上で三十四号俸以上の本法の適用をされる人員数と、それからそれ以外の人員数、つまり五十三号俸以下の人員数は幾らになっておるか。
  154. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 傷痍軍人の数は、増加恩給の受給者が大体六万五千、傷病年金の受給対象者が六万五千、こういうふうに今なっております。なお、今後におきまして、未申達のものがございますので、約四万件ないし五万件ぐらいのものが、復員官署を通じて今後申達されるものと見込んでおります。  で、今お尋ねの下士官以下とおっしゃいますのは、傷痍軍人の中でございましょうか。
  155. 千葉信

    千葉信君 いいえ、全部です。
  156. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) およそ軍人恩給をもらっておる者で下士官以下の数でございますね、これは今ちょっと口頭で申し上げられませんが、資料を差し上げて……。
  157. 千葉信

    千葉信君 今ここで急に数字を言えと言っても無理でしょうから、大体の割合でけっこうですから、どのぐらいの割合になっておるか、文官と軍人とに分けて御答弁願いたいと思います。——八巻さん、だいぶあわてているようですがね、それ、わからなければ、大体でいいんですけれども。それもわからなければ、もう一歩譲歩して、文官の場合、三十四号俸というと、大体係長ないし係長補佐程度の俸給でしょう。いわゆる七級六号という格好ですから、そうでしょう。
  158. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) そうですね。三十六号俸と申しますと、大体八級から九級……。
  159. 千葉信

    千葉信君 三十四号です。
  160. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 前の級から申しまして、八級の三号のちょっと下でございますね。八級の二号ぐらいのところです。ですから、お尋ね通り、係長クラス……。
  161. 千葉信

    千葉信君 そこで、私のお尋ねしたいのは、係長ないし係長補佐という程度は、大体十七年勤続した文官の場合には、まあほとんどの職員がその程度までは行っていると思うんですが、どうですか。
  162. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 大体まあ係長、課長補佐くらいで、まあ十七年になるとそろそろなると、こういうところだと思います。
  163. 千葉信

    千葉信君 そういうことになりますと、まあ、恩給が公務員の場合でついている場合には、もう係長ないしは係長補佐程度にはなっているし、そうすると、文官で恩給をもらっている諸君の場合には、そのほとんどがこれに該当すると考えて当然だと思うんですが、いかがですか。
  164. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 現在のあれを目安にして考えますと、十七年というところの在職年を持ちますれば、係長クラスにはもう少くともなる、こう考えております。
  165. 千葉信

    千葉信君 そこで問題になってきますことは、今回の恩給法の改正で一万二千円から一万五千円に引き上げられた。仮定俸給の関係もその措置がとられて、新しい法律案がここに登場したわけです。ところが、まあこれはわが党の主張でもあるけれども、少尉以上の分については、それぞれ逓減の措置が講ぜられる。これは私は、わが党の主張に近づいているんですから、こういう措置は私は別に取り上げません。しかし、文官の場合に七級六号という程度の場合には、今御答弁のあったように、大体の文官の場合には退職時にはその程度にはなっている。従って、文官で恩給を支給される場合の条件としては、ほとんどがその軍人における少尉という号俸のところまでは来ているわけです。そうですね、八巻さん。
  166. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 大体、最近の実例におきましてはそうでございます。
  167. 千葉信

    千葉信君 そこで問題になってくることは、今度の恩給法では、文官の場合には全部、少尉以上の逓減措置をとったそのあおりをほとんどが食っているんです。軍人恩給の場合には少尉以下の、まあ割合がわからないから何名程度かわかりませんけれども、少尉以下の場合には、軍人の場合には相当多いんですから、これは軍人恩給という格好で問題を考えれば、私はこの少尉以上に逓減率を持ってきたということについてはそんなに問題は起らぬけれども、それをいきなり文官の方に持ってきたため、文官の恩給受給者ほとんど全員がこの逓減措置にひっかかったきた。これは少し、政府としてあまりに非情なやり方ではないか。ですから、結論からいいますと、文官の場合には——、軍人の場合は別です。文官の場合には、一万五千円ベースの適用じゃなくて、私の計算によると一万三千五百円ベースの適用です。数字がそうなるんです、私のところにある調査では。これじゃ、文官の場合は、ほとんどこの法律案では踏んだりけったりの格好じゃありませんか。数字を読み上げてもよろしゅうございます、克明に。しかし、時間もそんなに余裕があるわけではありませんから、私は大体の私の調べたその平均を基礎にして言っても、一万五千円にすると言いながら、一万三千五百円でごまかしておる。これは一体どういうことですか。総務長官、あなたから御答弁を願いたい。
  168. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 今回の是正におきまして、少尉以上の方々の増額分の逓減をいたしましたのは、先ほどもお話がございましたような、今度の処置が主として戦没軍人の遺族の方々の公務扶助料、それから傷痍軍人の方々に、重点を置いてやりました。その結果、まあ上に薄く下に厚い、こういう考え方からいたしまして、今千葉委員のおっしゃることは私どもよくわかりますが、文官と武官とを変えて率を出すということが恩給法上ちょっと困難であると考えまして、そういうような措置になったわけでございます。
  169. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 先ほど下士官以下、尉官以下の数がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、文官におきましては、普通恩給の今回の増額の対象者十四万三千人、この中で下士官以下に該当する者が、つまり尉官より下の者が六万一千人、それから普通扶助料におきましては七万四千人に対しまして三万人と相なっております。それから軍人におきましては、普通恩給受給者二十一万五千人のうち十六万人が下士官以下でございます。それから普通扶助料におきまして、七万八千人の中で五万人が下士官以下であります。それから公務扶助料が、百五十三万五千人に対しまして、百四十万人が下士宮以下でございます。
  170. 千葉信

    千葉信君 総務長官、お聞きのように、私は、軍人恩給自体の問題としては、これは了承しております。しかし、それを今あなたの御答弁では、別に文官の場合を扱うことができなかったと、こういうことですが、それなら、私はこの際お尋ねいたしますが、政府の方から出た提案の中で、ここに旧令による共済組合云々の法律案があります。並行審議をしております軍人恩給に直接関係のないこの共済組合法にまでこれを適吊したのは、一体どういうことですか。
  171. 岸本晋

    政府委員(岸本晋君) 旧令共済法は大蔵省の所管法でございますので、こちらからお答えいたします。  旧令共済の今回のベース・アップの仮定俸給の取り方は、全く軍人と同じようなことをやっております。あるいは文官恩給も同じことをやっております。御指摘通りでありますが、これは終戦後恩給のベース・アップが行われたために、旧令共済はそれに追随して行なっておりますが、仮定俸給は全部その場合恩給と同調して参っております。これは実態的に、終戦後官吏、雇用人というものが給与法上の差別がない、それに基いての考え方でございます。雇用人だけこの際別にするということはちょっと考えられないところであります。
  172. 千葉信

    千葉信君 恩給法の基準によったという御答弁ですが、これは私は総務長官お尋ねしているのです。恩給法の基準によったという御答弁が今大蔵省の方からありましたが、もともと軍人恩給が制定されるまでは国家公務員に対する恩給法なんです、これは。それを政府の方では、軍人恩給制度を立てるときに、恩給法に抵触するおそれがあるもんだから、恩給法の付則で軍人恩給という制度を確立した。ですから、逆に軍人恩給に対して文官恩給本来の恩給を適用する方法をとることも間違いだし、同時に、軍人恩給が制定されてから後に、今度は軍人恩給が主体となって、今回なんかは仮定俸給の取り方は逓減率の採用、こういうことをやっております。政府としてはそういうやり方以外なかったといえば、私はこれもよろしい。しかし、そのために、さっきもちょっと触れましたけれども、軍人の場合にはこの逓減率がそれほど全体としては影響をこうむらない。しかし、さっきも御答弁があったように、文官の場合には恩給を支給される資格を取得するまでには、どんな公務員でも係長補佐、係長くらいにはなっているわけです。従って、もう文官諸君の場合には、今回の逓減率は、ほとんど全部にこの逓減率の影響を受けて被害をこうむっているんです。そういうやり方を、非常に単純に、軍人恩給の仮定俸給の場合と別に一緒することができなかった。ただ、それだけの理由です。なぜできなかったのですか、できなかった理由がもっとはっきりしていて、そうしてしかも、それほど全体の文官諸君が被害をうけなければ、私はそんな問題にしなくてもいいと思う。この点はどうです。もっと了解できるような答弁を私は聞いておきたいと思います。
  173. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 文官の恩給と軍人の恩給とをすぱっと二つに分けちまうという根本的な御議論なら別ですけれども、同じ恩給法のレールの上に軍人の恩給制度と文官の恩給制度が乗っております。また、国家の使用人としての文官も、また軍人も、年功恩給におきましては全く同じだと、こう考えなければならぬわけです。従いまして、同じ額の俸給を受けておる人、これは文官であると軍人であると問わず、同一の処遇をすべきであるという私たちの考え方です。従いまして、軍人において五万円なら五万円の普遍恩給を受けておる方、これについて今回のベース・アップを一割方低減するということならば、文官におきましても五万円受けておる場合につきましては同様の措置をするということが、私どもは公平にきまっておる、こういう見地に立ったのでございます。
  174. 千葉信

    千葉信君 どうもそういう説明では了承できませんが、大体今回のベース・アップの場合には、一万二千円から一万五千円ベースにするという方針で、政府もその方向でやったということはしばしば言明されて、この法律が提案された。しかし、その場合、私は軍人の場合にはこれでいいと言うのです。これも少々不満はあるけれども、この逓減率を採用したということについては、私どもそれほどこれを問題にしていないのです。簡単に一緒にやるという考えに立ってこれをやったんだと八巻さんは言っておりますけれども、私はそのために出てきた結果として、文官全部がほとんど平均して一万五千円ベースどころか一万三千五百円ベース、はっきりしています、この表で。それでは、政府の言っていることは実態上でごまかしている。ごまかしだ。そんなやり方を責任ある政府としてとるべきではない。全部が一万五千円にならない。一万五千円にしたものは一人もないのです。さっきの答弁から言いましても、ほとんど三十四号俸以上になっているのですから、ほとんど三十四号俸以上になっている文官の場合に、一万五千円ではなくて一万三千五百円ということに直して、看板だけは一万五千円ベースだ。軍人の場合にはいいですよ。これは下士官以下の諸君については逓減率は採用されておらない。人員数においても、非常に軍人は下士官以下が多いということは、さっきの数字で示しておりますから。片方の文官の方はそうではない。これは一体、こういう看板に偽わりある態度をとって、責任ある政府はそれでいいというお考えですか。これは一緒に扱う必要があったと、そんな答弁だけでは了承できぬ。常識上了承できぬ。
  175. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 先ほど文官と軍人の場合におきまする、下士官以下の比率と申しましょうか、その受給者は、下士官プラス以下の人員のあれを申し上げましたが、その割合は……。
  176. 千葉信

    千葉信君 軍人の方は問題にしていない。
  177. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 文官におきましても、普通恩給受給者の十四万人のうち六万人は、今回のベース・アップにおきましても、一万二千円ベースから完全に一万五千円ベースに行っている。あとの残りの八万人でございますか、この分は漸次多少ずつ一万五千円ベースのベース・アップを制限を加えられている。こういうものでございまして、ほとんど大部分が制限を加えられておる者ばかりである、こういうふうな点につきましては、全然全く……。一万五千円ベースに上った者もあるんだ、相当あるという点において御了解をいただきたいと思います。
  178. 千葉信

    千葉信君 全然ないわけではないけれども、半分にも行ってない。  そこで、私はこの際この席で、長官も来られておりますから、まああまりこの問題で深追いをするつもりではありませんから、官房長官にお尋ねしておきたいと思いますが、この問総理大臣は、衆議院の内閣委員会における福永内閣委員長質疑に応じて総務長官が答弁された事項を、確認された形です。官房長官もおそらくその点については同様の御方針と私は了解しておりますが、そこで、今後恩給法について、軍人恩給を含めて恩給法に対しては検討の余地がある、検討する、そういう検討の中にただいまの質疑の展開されましたもの、少々だれが考えてもこれは不合理だという結論が出ますが、これも検討の対象にお加えになるおつもりか、その程度を私はここで聞いておきます。
  179. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいま千葉さんからの御質疑でございますが、衆議院の内閣委員会におきまして、恩給関係法律案の最終的な審議の過程におきまして、今松総務長官から福永委員長に対するお答えは、政府全体の最終的な方針でございます。その点を、まず第一に明らかにいたしておきたいと思います。  それから、次いで、具体的なただいまのお尋ねでございますが、私は、今松総務長官の答えられた中にそれも含まれておる、こういうふうに理解をいたしております。
  180. 千葉信

    千葉信君 それでは、この問題はそれぐらいにして、次の問題。簡単な問題ですが、今回この法律案によってとられた措置として、増加恩給の関係については、第一項症から第六項症まで将官も兵も一律に扱われる、これは私はすこぶる近代的な感覚に立った方針だと思うのです。これは私は了承します。ところが、その第一項症で十七万一千円もらっていた将官、同時にまた、同様に十七万一千円もらっていた兵隊さんが死亡した場合に、今度はとたんに大へんな差がついてしまう。増加非公死による公務扶助料、これでまた完全にもとに戻って、せっかくのいい考えがここで完全にまたボロを出してしまった。せっかく増加恩給で踏み切った政府が、いつでも問題になっている公務扶助料等の関係で、また逆に戻ってしまうということは、私はどうも知恵の足りないやり方、だったと思うのですが、この点についてはいかがですか。
  181. 八巻淳之輔

    政府委員八巻淳之輔君) 増加恩給なり傷病年金というものは、これは御承知の通り、その傷害を受けた軍人の方々の生活というものを中心にして考えて参るわけでございます。それが、その方がおなくなりになりまして、遺族の受ける恩給というものがどういう形のものになるかと、こう申しまするというと、これはその傷がもとでおなくなりになれば、これは公務扶助料そのものになるわけでございます。ですから、その方が初めから戦死でおなくなりになったという場合の遺族に対する処遇と、全く同じに扱うわけでございます。しかしながら、その傷がもとでなくて、ほかの病気でおなくなりになった、すなわち平病死したと私ども申しておりますが、平病死しました場合には、公務扶助料よりも若干低い低度の、いわゆる増加非公死の公務扶助料というものを支給することにいたしております。でありまするから、現にその傷痍軍人が生きて生活しておるそのときの状態というものとは別の角度から、その人が戦死して受ける公務扶助料とのバランスにおきまして、それとのつり合いにおいて、増加非公死扶助料あるいは公務扶助料を支給するこういう建前になっておるわけでございます。
  182. 千葉信

    千葉信君 私もおそらくそういう答弁をするだろうと思っていました。私のお尋ねしたいのは、そういうことはわかっておりますけれども、せっかく増加恩給で、はっきりいえば進歩的な措置、非常に近代的な措置で、差を撤廃して、今までの将官から兵に至るまでの格差をとっぱらって一律に持っていく、ここまでやっておりながら、なぜ踏み切って、もっと問題になっている公務扶助料等の関係で同様の措置をとろうとしなかったか。そういう措置をとらなかったために、私が申し上げているような、増加恩給をもらっている傷痍軍人の生きているうちは、大将も兵隊さんも同様でありながら、同率でありながら、同じ金額でありながら、死んだとたんにまた逆戻りして、片方は二十万円、片方は六万円という格差がついたか。これは政策としても、私はこういう政策は考えなければならぬ。この点について、総務長官の御答弁をお願いします。
  183. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 千葉委員の御意見もごもっともでございますが、たとえば、増加恩給を受けている方の階級差は全部なくしたわけでありますが、その増加恩給を受けておられまする方が普通恩給をもらっている場合には、その普通恩給というものを合せて併給されたわけでございます。従って、その普通の恩給というものは、これは退職時の恩給によりまして支給されるものでありますので、その方がなくなられますというと、普通の場合には、その普通恩給を受けておられます方の普通扶助料が支給せられる、公務扶助料の場合には公務扶助料が支給せられる、こういうわけでございまして、どうもわれわれ今恩給を扱っておりまする観念といたしましては、退職時にもらった恩給というものは、いつまでもこれがつきまとっていく、ただ、傷病恩給につきましては、その病状によりまして支給する額でありますので、これは大将も兵の方も同じにした、こういうわけでございますので、御了承願いたいと思います。
  184. 千葉信

    千葉信君 大体了承してもよろしいけれども、何といっても、今質疑の中にありましたように、増加恩給については、これも従来差があったのです。これにも従来差がなかったというなら私はわかるのです。ところが、増加恩給にも、今おっしゃるように、一定の基準に基いて格差があった。その格差を今回は撤廃して、一律に大将も兵も、取り扱う、そこまで来たわけです。ですから、そこまで来たその近代的なそういう考え方を、なぜもっと一歩進められなかったか。進められなかったために、生きているうちは同率であるけれども、同額であるけれども、死んでしまったら公務扶助料で格差がついてしまう。これはおかしいじゃないか。これを受けている国民の印象としても、私はすなおには受け取れぬと思うのです。これも検討される用意をお持ちですか、どうですか、お伺いいたします。
  185. 今松治郎

    政府委員(今松治郎君) 現在におきましても、増加恩給を受ける方に対しまして、普通恩給をもらっている方は、これは併給しております。従いまして、これは先ほどから問題になっておりまする既得権、財産権、こういう問題ともからみ合う問題でありますので、ただいまの恩給扱い者の立場としては、ただいま千葉委員が申されましたように、増加恩給の階級差をなくしたような工合に、簡単になくすることはむずかしいと思いますが、十分検討いたしたいと思います。
  186. 千葉信

    千葉信君 議事進行について。かなり審議も進行したようです。先ほど与党理事の大谷委員の、質問中、議事進行に関する発言がありました。衆議院の内閣委員会における福永委員長の質同等に関連し、あらためて首相を呼んで再確認するつもりだ、こういうお話がありました。再確認することにするというお話がありました。他に異議もなく、委員長もそのままそれを了承されて議事が進んでおりますが、その首相の出席はいつ実現するか、委員長の御方針を承わっておきたい。
  187. 藤田進

    委員長藤田進君) ただいまの点は、そのしさいについては速記録を調べませんと、委員長としても確たることを申し上げられませんが、今御指摘のような趣旨に私も聞きとれたんでありますが、おそらく、この際特に総理を呼んであらためた上での進行をはかりたいということかどうかについては、まだ会議の進行中でありまして確かめておりません。  この際、大谷委員にお伺いいたしますが、今千葉君の言われたようなさような趣旨で大谷君もおられるのかどうか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  188. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 ただいま千葉委員の御発言ですが、総理がおいでになればお聞きしたいと思うけれども、総務長官がおいでですから重ねてお聞きいたしたい、こういう意味でお聞きしたんです。そういう意味で、さような発言ではない。
  189. 千葉信

    千葉信君 速記もそうなっておりますか。
  190. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 そうなっていると思います。
  191. 藤田進

    委員長藤田進君) ただいまの点は、総理の出席を求めて確かめるということにもし速記がなっているとすれば、その点を委員長において善処したいと思います。よろしゅうございますね。
  192. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 ええ。
  193. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をとめて。    〔速記中止
  194. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して。  他に御発言もなければ、これにて両案の質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  195. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めまする  それでは、これより両案を一括して討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。
  196. 田畑金光

    ○田畑金光君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となっております恩給法等の一部を改正する法律案に対し、反対の意思を明らかにせんとするものであります。  恩給制度の歴史的な変遷を見てみますと、明治以降、わが国の官吏制度と表裏一体をなして発送してきたものでありますが、いわゆる天皇の官吏、大元帥の股肱の臣としての文武官、に付与された特権的恩恵であったことは否定し得ない事実でありまして、恩給制度が幾たびかの戦争を通じまして果して参りました役割りというものは、戦争遂行の面において、はたまた戦後処理の面において、大きな支柱となってきたわけであります。しかしながら、戦後、連合国最高司令官の覚書に基き、昭和三十一年勅令六十八号により、軍人恩給は傷病者に対する少額の恩給を除いて、廃止されたのでありますが、昭和二十七年、平和条約発効と相前後して、日本をめぐる内外の軍事的要請は、ことに自衛隊の急速な増強と、古き愛国心の鼓吹に迫られて参りまして、政府は昭和二十八年法律百五十五号により、旧軍人恩給復活をはかったのであります。しかして、復活された現行軍人恩給は既得権であるのか、あるいは新しい権利の発生であるかということは、議論の分れるところでありますが、法律学者の多くは、既得権にあらず、新しい権利の創設と見ておるのでありまして、旧軍人恩給がポツダム勅令によって廃止された歴史的経過を見ますと、この見解が妥当であると考えるわけであります。  今次の戦争が、古今未曽有の大規模で行われ、しかも、前戦銃後の区別のない総力戦であったこと、戦争の残したる禍害は各面にわたっておるということ、従って、旧軍人恩給についても、このような客観的な情勢によって相当に制約が加えられてきたということは当然でありまして、かくて、現行軍人恩給が遺族傷病者の処遇に重点を置くような、社会保障的性格を濃厚にしてきたということは、当然のことだと考えるわけであります。政府も今回の提案に当りまして、遺族、重傷病者、高齢者に重点を置いたこと、上に薄く下に厚くするという精神に立脚し、重点をどこまでも下扱者に置いたと言っておるのでありますが、しかし、事実は看板に偽わりがあると指摘しなければならぬわけであります。なるほど今回の改正に当り、旧軍人の将官については据え置き、佐官、尉官についてもそれぞれの制限をしたことは事実でありますが、にもかかわらず、仮短俸給年額を例にとりますと、大将が七十二万六千円、兵隊がわずか九万円、上級者は大なり小なり戦争の責任者であったわけです。また、経済取得能力も、過去の蓄積能力も、赤紙応召のもとにおける下級兵士との比較ではないはずであります。恩給受給権は財産権であり既得権であって、侵害を許されないという形式的な憲法理論で律するには、あまりにも国民心情と反するものがあるわけであります。遺族扶助料を例にとりますと、準士官以下には倍率改正を行い、また仮定俸給についても一万五千円ベースに完全実施したと、こう言っておりますが、兵の扶助料が五万三千二百円、大将のそれは十三年という基準で二十万五千七百円であるわけですが、一家の柱、大黒柱を失って家族が路頭に迷い、貧窮に陥る事例は上級者の遺族ではなく、これら下級兵士の遺族であることを知るとき、こうい、う不均衡をこのまま放置していいのかどうか、疑問を持たざるを得ないわけであります。  世上一部の論者は、いわゆる職業軍人は九万名であり、金額にして二十二億五千万にすぎないのであるから、旧軍人恩給としてかれこれ批判することは当らないと、こう申しておりますが、問題はまさにそこにあるわけであります。百五十余万の遺族の方々や、約十三万名に上る傷痍軍人の方々は、戦争に際し、公務により、または国の命令による行動等によって身を犠牲にし、また傷ついた方々でありまするから、国がその使用主の精神に立脚して、あるいはこれに準ずる立場において、しかるべき処遇を講ずることは当然であると考えるわけであります。しかるに、これらの人々についても、軍人恩給という名において批判が加えられておりますことはまことに遺憾でありまして、わが党はこういう人々については別個の法律によって処遇し、もって恩給亡国等といわれる非難から救済すべきであると考えております。同時に、職業軍人等については、さらに大きな所得制限等を加え、もって国民感情等との調和をはかるべきであると考えるわけです。  わが党は、収入の低い下級者の公務扶助料については、一律五万四千円まで引き上げ、将来国民年金制度との調整をはかりながら処理することとし、また、これら下級者については、四年間据え置くというようなことでなく、直ちに実施に移すべきこととし、他面、職業軍人等については新たな角度から検討を加え、平均余命率等を根拠にして、公債による打ち切り補償制度考えておるのも、要は、これなくしては下級者を優遇することも、国民世論や国民年金制度との和解調整をはかることは困難であると信じておるからであります。  ことに、今回の改正案で不当に抑圧されたものは傷病恩給でありまして、このことはまことに遺憾といわなければなりません。臨時恩給等調査会におきましても、傷病恩給の年額は、普通恩給扶助料と、仮定俸給等々を基礎として計算される恩給が仮定俸給の改正により増額されたにもかかわらず、これと歩調を合わせて増額されることなく、今日まで据え置かれておるので、その後の給与水準の上昇に見合うよう増額すべきであり、間差においても再検討を加うべきこと、ことに傷病恩給は外形の症状に重点を置かれ、内部疾患については軽視の傾きがあることを指摘されておりますが、今回の措置はこれを尊重しているとは言えません。階級差が撤廃され、不具廃疾または傷病の程度の同一者には同一の傷病恩給額を支給するに至ったことは、わが党の主張に譲歩した結果であることは、あるいは一歩前進ということでありますが、しかし、両手両足のない、いわゆる第一項症を十七万一千円に引き上げることによって、万事均衡を得たと考えておりまするが、完全な廃疾者十七万一千円、元大将の扶助料二十万五千七百円とでは、国民感情からいいましても、経済取得能力の減損の度合から見ましても、妥当ではありません。今回のこの政府の措置は、要するに下に厚く上に薄いという精神は完全に踏みにじられており、遺族と傷病に重点を置いたといっていましても、階級差は依然として残っておるわけであり、職業軍人と赤紙応召者との不均衡はなおはるかに遠く、しかも、最も弱い傷病者等について多くのしわが寄せられておるということを考えましたとき、また臨時恩給等調査会の答申にも反しているということを考えましたときに、今回の措置はわれわれとしては認めるわけには参らぬわけであります。  これが反対の第一の理由であります。  第二の私の反対する理由は、今申し上げましたように、今回の措置は臨時恩給等調査会の指摘した問題点等について的確な解決の努力を示していないということであるわけであります。衆議院においては、その審議の最終段階に当りまして、付帯決議というような方法によらず、内閣委員長の質問の形で、これに対し総務長官が政府を代表されまして、十分検討の上善処するという答弁で逃げておりますが、問題点としてあげられた点は、遺家族公務扶助料の倍率及び支給条件等の是正、傷病恩給の間差、等差及び他の恩給との不均衡是正、仮定俸給抑制措置の是正、文官恩給に内在する不均衡是正、旧軍人等恩給失権者に対する加算制度の実施、旧海軍特務士官の仮定俸給基準の是正、元満州国等外国政府職員の通算実施、旧日本医療団職員の通算実施、金鵄勲章年金受給旧軍人に対する処遇改善等、相当な点にのぼっておるわけであります。  これは要するに、たとえばこの中で問題となっておりまする旧軍人等恩給失権者に対する加算制度の問題を見ましても、いわゆる軍人恩給廃止前に普通恩給を受ける権利の裁定を受けた者は実役三年で恩給受給権が認められているにかかわらず、ひとしく戦地に勤務した旧軍人でありながら、昭和二十一年二月一日以前に裁定されなかったという理由だけで、実役十一年十一カ月をこえても十二カ年に満たざる限り恩給受給権がないというところに、非するといたしますと、約七十五万余が浮かび上がってきまして、一万五千円ベースといたしますと、勢いピーク時では百三十七億の新規財源が必要となってきまして、国家財政、国民感情、国民年金制度等との関係を考慮いたしますと、一体これをどうするのか、いずれの道を選ぶかということは、すみやかに決定すべき問題でありまして、ときに国民世論をおそれて問題の焦点をぼかしたり、ときには票数ほしさに国民世論のかげに隠れて弥縫策に走るというようなことは、岸内閣の性格をよく示しておりまして、わが党はこういう責任回避の態度を許すことはできない。こう指摘せざるを得ないのであります。  また、問題点として、取り上げられているその他の点についても、たとえば旧日本医療団職員の通算実施等は、人員にいたしましても、金額にいたしましても、少額であるにかかわらず、今日までこれが放任されてきている態度等は、まことに遺憾と申さなければならぬわけでありまして、こういうところに、結局、今回のこの一連の恩給制度の復活あるいは改正というものが、再軍備政策の一環をなしておると世上批判されるゆえんでありまして、われわれといたしまして、この政府の責件回避の態度に対しまして強く糾弾するとともに、こういうようなあり方に対してわれわれが反対するゆえんがあるわけであります。  第三の反対の理由は、恩給と国民年金制度との関係におきまして、政府の明確な方針理念が明らかにされない。結局、恩給制度の前に国民年金制度が犠牲にされる、そういう危険が見受けられるわけであります。三十三年度予算は、恩給関係費は一千一百六億に上っておりまするが、三十六年度には一千三百億をこえる、こう言われております。さらに、先ほど指摘いたしましたような加算制度の是正、不均衡是正等を考ますと、一千五百億をこえる額に上りはしないか、かように判断するわけであります。社会保障制度審議会は近く答申を出すでしょう。ことに同審議会は、昨年十二月、大内会長の名で政府に対し、恩給増額のため社会保障を犠牲にせぬことを強く申し入れている事実を想起すべきだと思います。昨年十月、厚生大臣の諮問機関である五名の国民年金委員会は中間的な審議の経過を発表いたしておりますが、現存の六十五才以上の老齢者を対象として月額三千円からの年金制度を実施するといたしますと、年額千六百億、これに加えて、重度の身体障害者に月額三千円を支給いたしますと、年額百四十億、母子世帯に月額四千円程度を支給いたしますと、年額二百億、合計千九百四十億の膨大な経費を必要とし、老齢人口増大化の傾向はますますこの金額を大きくすることを指摘いたしております。  今回の政府提出法案には、将来の国民年金確立に関し、何らの展望も、具体的な施策も、方向も明らかにされていない。恩給は雇用関係に基く被用者の権利であり、社会保障は貧困の救済であるという観念は、近代国家の理念としてはもはや通用しないと考えます。福祉国家を目ざす先進諸国の社会保障制度内容と、社会保障についての新たな理念をよく見なければならぬと思います。社会保障即救貧であるという考え方は、かえって旧軍人遺族の方々と国民との関係を分裂させるもので、お気の毒な遺族や傷病者の立場をかえって不幸にするものと、われわれは考えるわけでありまして、まして、今次大戦の犠牲となった一般戦争犠牲者は、今のような政府のやり方でいきますと、いつの日に国家の施策によって処理されるかわからない状況にあるわけであります。  こういうことを考えましたとき、われわれは今回のこの政府の出しておりまする法律案の中に、将来の国民年金制度の構想が取り入れられていないという点に、強く反対するわけでありまして、結局、私はわが社会党の主張しておりまする恩給法改正の構想というこの考え方に立たなければ、遺族の方も、傷病者の方も、老齢者の方も、また一般国民も救われない、このことを強く訴えて、私の反対討論にかえたいと思うわけであります。
  197. 島村軍次

    ○島村軍次君 私は、緑風会を代表いたしまして、本二法案に対して賛成の意を表するものでございます。  恩給法の改正に関しましては、多年にわたり論議がかわされ、しかも、戦後処理として強く要望されましたいわゆる戦没軍人遺家族に対する措置が、ややもすると軽んぜられ、かつ多年にわたる要望にもかかわらず、今日までその措置が十分でなかったことに対しては、まことに国民一致の意見として遺憾に存じておったところでございます。しかるに、今回の改正案によりましては、その戦没軍人遺家族や、あるいは戦病傷者に対する処遇改善と、しかも、老齢の退職公務員に対して全般にわたるその処置が講ぜられ、いわゆる不十分ではありまするが、公平妥当な措置がこの法案の全体に考えられておることでありまして、これは従来の戦後における処置法案を百尺竿頭歩を進めたものとして、第一に賛成をいたす次第であります。  第二には、御案内の通り、恩給制度は明治以来わが国におけるいわゆる栄誉的な既得権のごとき感じを持たされておったのでありますが、これを、今回の提案が、むしろ恩給制度、恩給法の改正そのものとしてあげられたことは、たとえば軍人の遺家族に対する処遇、あるいは戦没者に対する援護等から考えますと、別途に考えられるべきものであると思うのでありますが、一に恩給制度という措置にとられたために、ややもすると世間に誤解を招いておるという点はまことに遺憾であります。しかるに、今回の改正案は、各委員の御指摘になりましたように、不十分ながら社会保障制度の色彩が各段階において取り上げられ、しかも階級差を少くし、逓減の措置が講ぜられ、いわゆる上薄下厚の線が出されておるということであります。  第三には、文官と旧軍人とを通じまして一万二千円ベースが一万五千円ベースに上げられ、その仮定俸給が引き上げられたということでありまして、しかも、これらはあるいは加給制度が加えられ、あるいは軍人に対しまする育英制度措置が講ぜられまして、恩給全体に関する均衡がややとれて参ったということであります。  第四には、社会保障制度の一環として、あるいはまた恩給の制度として、ある程度のチェックを行い、いわゆる若年停止に関する考え方が相当取り入れられたということであります。  第五には、これを全体のわが国の財政見地から考えますというと、以上のような諸点が取り入れられておるのでありますが、なお一千一百余億円にも上る今後の措置考えまして、政府が財政的には漸進主義をとって参ったのでありまして、今後のわが国の国民所得と対比いたしますれば、恩給亡国等の議論もありますけれども、この措置は、わが国の戦後処理として、かつまた社会保障制度を取り入れた点から考えましては、やむを得ざる措置であって、この点からも賛成を申し上げる次第であります。  最後に、私は、さきに衆議院における内閣委員長発言に対し、政府を代表しての答弁のありました諸案件、あるいは遺家族公務扶助料の倍率、あるいは支給条件等の是正、傷病恩給の等差及びその恩給との不均衡是正、あるいは仮定俸給抑制措置の是正、その他ここに指摘されましたる諸案件については、岸総理大臣の答弁によって明らかなるがごとく、今後公平にしてかつ、妥当なる措置、社会的環境を十分考慮のうちにおいて検討を加えるというその言を信用いたし、かつまた、かくのごとき措置が講ぜられることを強く要望いたしまして、本案に賛成の意を表する次第であります。
  198. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 私は、自由民主党を代表いたしまして、本法案に賛成の討論を行わんとするものであります。  この恩給法等の一部を改正する法律案は、遺族、戦傷病者に対しまするところの処遇改善を中心といたしまして、その恩給費を増額をし、かねて懸案でありまするところの不均衡の是正問題につきまして、総合的な解決をはからんといたすものでございます。この法案に関しまして、世上一部の論者は、軍人恩給という名のもとに、いかにもかつての軍人を自分たちの仇敵のように取り扱い、批判をいたすというようなことに関しましては、まことに遺憾千万であります。この法案に該当をしまするところの人々の大部分というものは、九割以上が最もお気の毒な境遇におられますところの戦没者の御遺族、その方々に対するところの公務扶助料と、傷痍軍人に対するところの傷病恩給であるのであります。従って、一部の論者言うがごとき、職業軍人に対してのみ恩給を増額するというようなことでは断じてないのであります。今日、全国二百万の遺族の人々の心情というものは、何とも言いようのない、こういう言葉によって耐えがたい気持を感じておられるのであります。  遺族の気持は、子を失い、親をなくし、夫をなくした人でなくてはわかりません。去る者は日々にうとしと申しまするけれども、普通の場合におきましては、去る者日々にうとい感じを持つのでありまするけれども、夫をなくし、子をなくし、親をなくしたそれらの人々の気持というものは、去る者日々にうといどころではございません。子供の命日が来れば、子供の着物を取り出しては涙にむせぶ、桜が咲けば、わが夫いませばという気持が胸の中に起きてくる。よその親を見れば、わが父いませばという気持が遺児たちの胸の中に常に去来をいたすのでございます。日ごと夜ごとになき人々のありし日のことを思うのが、遺族の心情でございます。私みずからも、新聞社におってその後大学を卒業しました弟が、結婚をして、子供が生まれると同時に召集をされて、いつの問にかやら台湾に行き、ボルネオに連れられていって、一片の遺骨すら参りません。村葬には砂が届けられました。私の胸にはいまだわが弟は生きておるものだという気持が、毎日のように思われます。ことに、そのときに生まれました女の子が、ことしは小学校の六年生になりました。おばあさんの家に預けられております。そのいたいけな子供の姿を見るたびに、私は全く胸つぶるる思いがいたすのでございます。こういうような遺族に対してすら、軍人恩給の名のもとに批判を加えるがごとき一部論者に対しましては、私は正義の義憤を感ぜざるを得ないのでございます。  今回、岸総理が三百億の国費を出しましてこの恩給の是正をいたすことの決意を固められまして、提案をされましたことは、私は岸総理のこれらの方々に対するせめてもの償いの気持を表現をいたしたものとして、私は心から賛同の意を表するものでございます。三面億といいますると、いかにも多額のようでございまするけれども、一人当りにしてみますれば、きわめてわずかな、わずか五万三千二百円。年間五万三千二百円というのは、子供を捧げ、親を捧げ、夫を捧げたそれらに対しまする国の償いとしては、あまりにも低過ぎる感がまことに深いのでございますが、しかし、国家の財政の現状からながめまするときに、これまたやむを得ざることでございます。職業軍人のことをかれこれおっしゃいまするけれども、兵長は、(「だれも、兵長を職業軍人と言っておる人、ありゃせんぞ」「どっち向いて演説しているのだ」と呼ぶ者あり)遺族の扶助料におきまして、従来月額二千九百三十円である。東京都の生活保護費が標準世帯で月額七千八百三十円、あまりにもその差というものがはなはだしい。従って、今回これを増額をして月額四千四百三十円にしよう、こういうことでございますけれども、それらにおきましてもそういう差があるのでございます。そういう点から考えますると兵長において、一般の人々におきまして五万三千二百五十円というようなことは、あまりにも国家の償いが少いと思いまするけれども、国家財政の見地から、これまたやむを得ざることでございます。  本法律案の特徴は、第一に、その実施の緩急順序におきまして、前段申しますように、戦没軍人の遺家族、重傷病者あるいは高年齢者を先にいたしておる点、また処遇改善の対象を六十才以上の老齢者、あるいは未亡人、遺児、傷病者としておる点、さらにまた、上に薄く下に厚くするという精神に立脚をいたしておる点等につきまして、私はきわめて特色的であると思うのでございます。しかも、国家財政の見地に立ちまして、国家財政を乱さざるよう四年間に措置をするという点におきまして、これらの点につきましては、私はその措置よろしきを得ておるものと思うのでございます。傷病恩給につきましては、階級制を撤廃をいたしたという点につきまして、政府の創意が見られる次第でございます。  従って、私は、社会党さんは先ほど赤紙で召集をされた人々に対してきわめて感謝の意味のこもったお言葉を言われまして、私また喜びにたえません。しかし、あなたの方の社会党の態度というものは、三十三年度予算原案において、保守党政府は再軍備を目的とする旧軍人恩給の増額の決定をしたと発表いたしておる。何が再軍備でありますか。赤紙召集を受けて国家に命をささげた人たちに対する償いをいたすことが、何で再軍備のことであるか。私ははなはだ実は遺憾にたえぬのでございます。しこうして、わが自民党は、先ほど来国民年金制のことをしきりにおっしゃいまするけれども、わが党が国民年金制度を決定をいたしてこれが準備を着々と進めておることは、天下国民が承知をいたしておることでございます。当らざることはなはだしいと申さなければなりません。  しこうして、この軍人恩給に対する社会党の態度という中には、国民恩給制度というものはやめて社会保障にしろというようなことが盛られておるのでありまするけれども、イギリスにおきましても、アメリカにおきましても、ドイツにおきましても、フランスにおいても、ソ連においてすら、軍人恩給と社会保障は別ワクにいたしておることを、社会党の方々はよく御承知のことだと実は思うのでございます。私は、先ほど、赤紙の召集を受けられた方はまことにお気の毒であるという御意見を承わって、欣快にたえぬのでありますが、しからば、私は、これらの方々に対するところの恩給増額に対して賛成をなさることが当然だと思うんだが、私はまことに割り切れぬ気持を実は持っておるのであります。票を岸内閣がほしいとおっしゃるが、私はその真意をはかることができないのである。この問、私は本会議における質問の演説の際に、ししは食いたし命はほしし、こういう言葉があるが、社会党さんは票はほしいし面子も立てたい、こういうことではないでしょうかとひそかに思っているということの、私の感慨を申したのでありますが、私はいまだにその疑問が氷解をいたさぬのでございます。  私は、先般衆議院におきましても福水委員長から要望のありました点、すなわち、倍率、傷病恩給の間差、加算等というような問題につきまして、今後政府が、財政措置が許す場合におきましては、ぜひとも十分なる検討を加えられまして、でき得る限りすみやかに適当な措置を講ぜられるよう、政府にこの点を強く要望いたしまして、賛成討論を申し述べる次第でございます。(「本論が足りないな、少し」「大きなことばかり言っている」「選挙演説だ、それは」と呼ぶ者あり)
  199. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  200. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、恩給法等の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  201. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、恩給法等の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  次に、旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  202. 藤田進

    委員長藤田進君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における口頭報告の内容、その他自後の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名    〔恩給法等の一部を改正する法律案〕     松岡 平市  島村 軍次     大谷藤之助  大谷 贇雄     西田 信一  増原 惠吉     後藤 義隆  劔木 亨弘     上原 正吉  松村 秀逸     中野 文門  八木 幸吉    〔旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律案〕     松岡 平市  島村 軍次     大谷藤之助  大谷 贇雄     西田 信一  増原 惠吉     後藤 義隆  劔木 亨弘     上原 正吉  松村 秀逸     中野 文門  千葉  信     森中 守義  伊藤 顕道     田畑 金光  矢嶋 三義     永岡 光治   —————————————
  204. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと、速記をとめて下さい。    〔速記中止
  205. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をおこして下さい。  次に、内閣法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  206. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 官房長官に、数点について伺います。  まず、この十五人を増員されたわけでありますが、それに伴って、もう具体的に率直に伺いますが、内閣官房の予算に計上されています報償費ですね、これは昨年度九千二百八十万円に対して、一億九千二百八十万、一億円増額になっております。それから、情報調査委託費というのが一億六百万円計上されておるわけですが、この内閣調査関係の予算の中の物件費も約千七百七十四万ほどふえておりますが、これらの予算は、情報収集のためにNHK、共同通信、ラジオ・プレス等の各団体に委託する予算だということですが、どの程度なんですか、委託費として出しておるのは。それから、民放等でときどき岸内閣のアワーがあるわけですが、あのスポンサーとしての費用もこれから出るのか、その点、承わりたいと思います。
  207. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいまのお尋ねの点でございますが、まずこの十五人の増員の問題は、内閣調査室の問題でございます。  内閣調査室についてまず申し上げますると、本年度の予算額は昨年度に比較いたしまして、千七百七十四万三千円が増加されております。その内訳は、事務費が百七十六万余円でございまして、情報調査委託費において約千五百九十八万円が増加になっておるわけでございます。この事務費の百七十万余りの増加に増員に伴う庁費でございます。それから情報調査委託費の増加は、大別して申し上げますと、まず一つが海外の放送の関係、それから通信、新聞、雑誌、その他の定期刊行物等の各種の資料の充実をはかるための経費でございます。先ほどお尋ねがございましたが、民放その他に対して政府の時間というようなものをやっておりまする、そのスポンサーに政府がなります経費は、これとは関係がないのでございまして、内閣といいますか、総理府の審議室の系統でもってこれを担当することになっておるのでございます。
  208. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では、内閣の時間に対してスポンサーとして支払われるものは、やはり内閣官房の予算の中から出ていくわけでしょう。日でいえば、どこですか。
  209. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) その通りでございます。目は……。ちょっとお待ち下さい。
  210. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その間に調べていただきたいのですが、続いて官房長官に伺いますが、このたびの定員増は、情報収集、それから連絡調整がおもなる目的として増員が行われておるわけでございますが、情報収集の委託というのはNHK、共同通信、ラジオ・プレスくらいですか。それ以外に何か民間の諜報機関等に委託をいたしますか、いかがですか。
  211. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 調査室の系統で調査の委託としておりまするものは、大体今御指摘がございましたが、大体のところ申し上げますと、日本放送協会、内外情勢調査会——これは時事通信の系統になるわけでございます。それから共同通信社、ラジオ・プレス、アジア問題研究会、日本社会調査会、東京出版研究会、国民出版協会、日本文化研究所というようなものが、この調査委託を行なっておりまする相手方でございます。
  212. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委託費の総額は幾らですか。
  213. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 調査委託費の総額は一億六百万円でございます。
  214. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 先ほどお伺いいたしました、内閣官房の予算要求の中の内閣の民放等に払うスポーサーとしての費用ですね、それもおわかりになったと思うのですが、それ、並びにそれに類似すべき情報収集関係の予算総額並びに内容を御説明下さい。
  215. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいま政府委員を呼んでおりますから……。なお、詳細に御説明をいたしたいと思いますが、調査室の関係におきましては、報償費が三千百五十万円、情報調査委託費がただいま申しました一億六百万円、その他の事務費が千百七十五万九千円ということに相なっております。
  216. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その報償費の三千万何がしは、内閣官房の予算要求の中の一億九千二百八十万円のうちの三千万何がしだと思うのです。この五千万何がしは、領収書はなくて支出をやるのですか。それとも、領収書はとってありますか。
  217. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) これはなるべく最末端のところまでの領収書を取るように指導をいたしております。
  218. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そうしますと、まだおわかりにならなければ、あとで教えていただけばいいのですが、あなたの所管下における年間の情勢収集関係の総予算額をお教えいただきたいことと、それから先ほどの、調査室でお使いになる一億六百万円、この情報収集委託費は、国内情報関係と海外情報関係に分けますならば、この使途は大体比率にしてどのくらいになっておりますか。
  219. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 達観的に申しますと、大体半分々々というふうになっております。
  220. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は官房長官に率直にお伺いするのですが、一対一だとしますと、国内情報関係で、先ほど御説明になったような委託費だけで八千万円くらいになるわけですがね。それほど必要ですかね。ちょっと必要という理由を御説明いただきたいと思うのと、さらにこのたびの調査官を主としての十五人の増員並びにこの予算内容から考えるときに、情報局の設置をお考えになっていらっしゃるのじゃないかと思うのですが、岸内閣としてはどういう方針をとられているのか、承わりたいと思います。
  221. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 先ほど達観的に大体半分々々くらいと申し上げたわけでございますが、しかし、この調査をする対象ということになりますというと、海外の関係の方が相当多くなります。これは御案内と思いますが、たとえば国際情勢資料というものを調査室で週間で発行いたしております。これは約毎回二千部印刷発行いたしておりますが、これは国会関係、各議員の方々にも何らかの御参考ということで配付をいたしておりますが、こういうものの資料を集めましたり、分析いたしましたりする、その基礎の資料を収集いたします場合に、先ほど申しましたようなところへ、委託調査をするというようなふうなやり方でやっているわけでございます。  それから、情報局を作るような考え方はどうかというお尋ねでございますが、これはまあ率直に申しまして、私どもの現在の考え方では、調査室をこの程度にやらせていただけば、まずこれで十分目的はただいまのところ達せられると、こういうふうに考えております。ただ、いささか余談になりますけれども、実は今回増員をお願いをいたしておりまするのも、その資料というものはずいぶんたくさん収集ができるわけなんでありますが、それを総合的に整理あんばいして、政府としてももちろんでございまするし、その他の方面でもこれを適当に利用をしていただくということを主眼にいたしたいのでございまして、この総合整理とか、あるいは総合的な立場からいわば価値判断をするとかいうような面において、相当程度の増員をさせていただけば、収集されておりまする資料というものが非常に多く利用ができるようになるということを主眼にいたしておるわけでございまして、そういう意味から申しましても、ただいまのところ情報局というようなものを作るということは考えておりません。
  222. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは、この増員される十五人の人は、大体、何ですか、統計方面に素養を持った方を採用されるおつもりでございますか。それとも、他に特殊技能を持った方を採用されるおつもりでございますか。
  223. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) これは御承知のように、内閣法で現在の定員が二十八人でございます。そのほか、実は関係各省庁から兼任の職員が現在のところ十八人あるわけでございます。調査室としては総務、それから資料、国内、国際というふうに、四つの部に分けて仕事をいたしているわけでございますが、今回増員をお願いいたしたいと申しまするのは、まあ主として資料と総務というようなところが、先ほど申しましたような点からいいましても、必要なことと考えておるわけでございまして、そういう必要性から申しまして、それに適合するような技能のある人をこのポストに採用いたしたいというふうに考えているわけであります。
  224. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 報償費一億九千二百八十万円、このうちの約三千万円は調査室で使われるということですが、残りの約一億六千万円というものは、参事官室と審議室でお使いになると思うのですが、いかようにお使いになっておられますか。
  225. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) この中の報償費の問題につきましては、実はまあこういうふうな格好になっているわけでございます。と申しまするのは、たとえば昨年度の状況をごらんいただきましてもおわかりいただけると思いますが、今日のような国際情勢になりますると、たとえば国賓の接遇でありまするとか、あるいは総理大臣といいますか、内閣の立場においての渉外的な活動も相当活発であることが必要とされる。実は昨年度におきましても、それらの必要から、年度中におきまして相当額の予備費を支出しなければならなかったというような状況もございまするので、一つはさような面においてのある程度の用意をいたしておきたいということが、一つでございます。そうして同時に、国内的にどういうことかということでございますが、これらについては、先ほど申し上げましたように、なるべく末端に至りますまでの使用方法等については、領収書を取るというようなことで、内閣として、あるいは内閣総理大臣立場におきまして、いろいろと所要のものがございますることは御想像にかたくないかと思いますが、しかし、その経理なり支出については、あくまで私ども的確な使用ができるようにということを心がけておるようなわけでございます。
  226. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 情報関係の方は十五人ふやして、そうしてこの調査室で一億六百万円の調査委託費を使われるということですが、この内閣官房の予算の目をもう少し明確に来年度あたりからしていただけないものかと思うのです。たとえば報償費一億九千三百八十万円、そのうち約三千万円は調査室といいますが、あとどういうふうに使われるのか。それから交際費は二千四百六十二万五千円というのが別途あるわけですし、こういう使途がもうちょっと明確になるような予算書の作成はできないものかと思うのですが、御意見を一つ承わっておきます。  それとともに、確かにこの情報の収集とか、あるいは重要政策にかかわる連絡調整というものは必要でございましょう。従って、優秀な方を適当な員数を確保することは大事だと思いますが、暗い影をささないように、ややもすると、こういう領収書を必要としない予算をたくさんかかえて、そして内閣官房に情報機関を整備いたしますと、運用次第では暗い影をさすおそれが私はあると思うのです。また、資料等を集めるに当りましても、客観的に、総合的に取り扱われないで、その情報を集めようと思う人が利用しやすいような、自分に都合のいいような、自己的な角度からこれをやるという場合がよくあります。また、それはやれます。そして、それをうまく利用できるわけで、そういうようなことに運用がなっては相ならぬと思いますので、私はその点の御意見を承わるとともに御要望申し上げておきたいと思うわけです。
  227. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 前段でお話のございましたことは、まことにごもっともでございまして、会計の制度としても私は相当改善の必要があると思います。しかし、同時に、現行制度のもとにおきましても、十分政府といたしましては戒心をしなければならぬ点で、これは実行上一つ暗い影のないようにいたさなければならない、さようにいたしたい。こういうふうに考えておるわけであります。  それから、後段のお尋ねの点でございますが、これは実は、たとえば最近のようないろいろの面が発達して参りますと、海外の放送、短波放送というようなものも、これはまあできるだけ的確に捕捉したいわけでございます。ところが、これはなかなかばらばらにではできないことでございますので、政府が相当指導的の立場になり、あるいは経済的にも援助をいたしまして、常時各国から出しますところの短波放送その他を的確に掌握し、そうしてこれの整理をいたしまして、政府とし、あるいはその他の面におきましても、有効に活用できるようにするということが、どうしても今日の事態におきましては必要なわけでございますので、この点を中心に、一つ調査室としてはやって参りたい、こういうふうな考え方でおるわけでございます。
  228. 森中守義

    ○森中守義君 二、三の点について、官房長官にお尋ねを申し上げます。  情報の収集というようなことなんですが、具体的にこれはどういう内容のものですか。しかも、人の数が十五名、こういうことで特に内閣官房として情報収集の必要があるかどうか、問題はその中身だと思うのですけれども、それを具体的に御説明願いたいと思います。
  229. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 先ほど申し上げましたように、現在二十人の世帯でやっております。それからその世帯でやっておりますものに、資料の整理、分析等を主として今回増員のお願いをいたしておるわけなのでありますが、何分にもその程度でやっておりますことでございますから、その担当の役人が個々に、たとえばどこかに出かけていって、いわゆる諜報とか情報をとってくるというような、いわゆるそういうふうな諜報機関では全くございませんで、たとえば、今申しましたが、海外放送でありますとか、あるいはもっと身近なことで申しますれば、日常の国内で頒布されております新聞、雑誌、あるいはまた官庁とか国会図書館等でお出しになっておるようなもの、こういうふうなものを内閣の立場で一手に集めまして、これを収集し、これを整理分類いたしまして、政府としては総合的な立場で重要政策の立案の具に供したい、こういうわけでございますので、いわばいろいろの行政機関、あるいは現存しておるところの報道機関というようなところからの、いわば孫引きとでも申しましょうか、そういうことがわれわれの仕事の主体になっておるわけでございまして、一人の調査官が、先ほど申しましたように、何がしかの金を特別にもらって、その人がどこかに潜入して諜報を集めてくるというようなことは、われわれの調査室の仕事としては全然考えておらぬわけであります。
  230. 森中守義

    ○森中守義君 こういう国会委員会における公式な発言ですから、まさかそういうことにうそ偽わりはないと思うのです。しかし、私どもが在来の観念からすれば、政治に直結をする、政界に直結をする、しかも総理大臣の旗本としての官房に、こういう情報収集というような表現が行われてくれば、やはり在来の観念というものが再び、錯覚であるかもしれませんが、私どもの頭の中には去来をするのです。従って、先刻の矢嶋委員の御発言と同じように、やはり暗い影がどうしても、今、官房長官の御答弁そのものではぬぐい去ることができません。  それで、私はそういう考え方を持っておりますので、もう一つ伺いたいのでありますが、内閣の官房というのは一体どういう仕事をするのですか。政策の立案機関である、あるいは情報の収集機関である、こういうお答えが先刻行われたように私は聞きました。それに間違いありませんか、官房のお仕事というものは。
  231. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 内閣官房の仕事は、相当広範囲にわたっておりますのと、要するに内閣法に規定されたところによるわけでございますが、内閣法でどういう規定があるかと申しますと、御案内のごとく、閣議事項の整理、その他内閣の庶務、閣議にかかる重要事項に関する総合調整、あるいは行政各部の施策に関する統一の保持上必要な総合調整、それから内閣の重要政策に関する情報の収集、調査に関する事務、まあ大体こういうふうなものが内閣官房に与えられた職責でございます。  しかし、この情報の収集というのは、私の理解いたしておりまするところでは、内閣としての重要な政策などに参考になるような資料を収集する、こういう意味の情報の収集でございますから、その情報の収集それ自体が目的であるというふうには考えておりませんし、また現在の機構では、とうていそこまでは行き得ないわけでございます。
  232. 森中守義

    ○森中守義君 もう一つ聞き捨てになりませんのは、先刻情報収集に適材と思われるような人たちを任用したい、こういう御意見でありました。そういう御説明がありました。それで、私はそういう言葉から受ける考えとしては、やはり現在の公安調査庁であるとか、あるいは警視庁関係、そういう何とはなしに機密事項的な、そういう仕事にたんのうな人をお集めになるのではなかろうか、こういうことを考えるのですが、どういう人たちを当てこんでおいでになりますか。
  233. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 私の申しましたことをちょっと誤解なすったかと思うのでありますが、今回増員を考えまする場合には、たくさんの資料がありまするものを整理をし分析をするようなことにたんのうな者を集めたい、こういうふうに申し上げたつもりでございまして、情報の収集に特殊の技能を持っておる者という意味では申し上げなかったつもりでございます。  それから、やはり内閣としてのこういう仕事でございますから、大体、特殊の技能というよりは、たとえば経済関係に明るい人なら明るい人、また国際問題に明るい人、あるいは労働問題に明るい人というような、この事項別に大体専門の者がおりまして、それがたとえば国内班、国際班というふうに分れて、そこで収集せられておるところの調査資料とか情報というものを、資料班とかあるいは総務班というところが分析をして、あるいはこれを整理をする、こういうふうなやり方にやっていきたい。そこで、くどいようでございますが、今回特に増員をお願いしたゆえんのものは、この資料を総合的に整理をして見やすくする、俗な言葉でいえば、利用しやすくするというふうにやりたい。せっかくいろいろの資料が集まっておりながら、その総合的な整理ができていないという点がいかにも残念でございますので、若干の増員ができれば、そういう意味で相当各方面のお役に立つことができるのではなかろうか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  234. 森中守義

    ○森中守義君 ただいまの御答弁の限りでは、内閣法の中にうたわれているいわゆる内閣官房の仕事この限りにおいては、違法でもなければ問題はないと思うのです。しかし、ただいま官房長官の御説明から参りますと、これはやはり運営のいかんによっては、労働問題も、労働省の権限を侵してでも総理大臣直属の機関として監督権を持つ、正確にそういう権限の条項がうたわれておりませんけれどもね。あるいはまた、諜報機関的な役割を果すということも運営いかんによっては私はあり得るような気がするのです。非常に危険を感じます。  それで、もうすでにこの法律改正案が通過するものとお考えになった上で出されたはずでありますから、具体的に、外務省から何名、あるいは労働省から何名、警視庁、公安庁から何名、そういう人選等が進んでおるのじゃないですか。その内容をお聞かせ下さい。
  235. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) その内容は、まだこの法律案の御審議中でございますから、具体的にどこそこから幾らというようなことは考えておりません。ただ、従来、まあたとえば民間の人などでも非常に協力をしていただいておるような組織や人がございますので、場合によりましてはこういうような人に参加してもらえれば非常に能率がいいなと思うような程度の心がまえがございますが、何省から何人というところまでは考えておりません。
  236. 森中守義

    ○森中守義君 そういう具体的な意思決定までは行われてはいなくても、大体先刻の答弁から参りますと、仕事の性質上、新制大学をことし出た者をどれだけとるとか、あるいはそういう新規採用という方式でなくて、すでに各省庁において相当の地位を占めているベテランをお集めになる、こういう御意向ですか。
  237. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 必ずしもベテランという程度には考えておりませんのですが、大体三等級二人、四等級二人、五等級二人、六等級二人、こういった八人はできるだけすみやかに、それから十月以降において三等級二人、四等級四人、五等級一人、計七人という程度のところを充員をいたしたいと考えておるわけでございます。ですから、非常に高度のベテランというわけでもございませんし、さりとて新卒というようなところを考えているわけでもございません。大体銘柄と申しますか、等級あんばいでいうと、大体この辺のところを適当と考えております。
  238. 森中守義

    ○森中守義君 なるほど、公務員の等級の格差からいけば、そういう考えも成り立つと思う。しかし、三等級といえば各省庁における中堅ですよ、旧制大学を出て、まず十五年から十六年、二十年ぐらいたった。官房長各省のもうすでに二等級になる前の、課長補佐でもなくて大体課長というところであって、一番ベテラン中のベテランじゃないですか。私はそう思う。現在各省庁に配置しているこういう等級の判定からいけばですね。それで、さしずめは八名ということでありますが、やはりただ単にNHKが海外情報をとった、あるいは外務省が海外の情報をとったとか、そういうことだけでなくて、相当いろいろと閣議決定とかあるいは総理大臣の重要事項の判定の資料をこれでお集めになろうとする、いわば頭脳的な中枢的な存在ということになりはしませんか。
  239. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいまお話がございましたように、まあ三等級というと相当な役人としては練達のものであると。この点は確かにそうでございます。ただ、ベテランというものを非常に高度のものに私考えたものでありますから、そこまでのものではないと申し上げたのでありますが、大体この中堅クラスということになるわけでございまして、また、そうなりますと同時に、一時に十五人全部採用ということもなかなかむずかしかろうと思いましたので、これを二度に分けて、大体秋までと、秋以降、十月以降において充員を実行しようと考えておるわけでございます。  それから、ただいまのそのお話でございますが、その点は、私は故意に増員というものを過小評価しているわけでもございませんし、また調査室のやっておりますことを、これまた故意に小さく申し上げておるつもりは毛頭ないのでありますけれども、先ほど来申し上げておりますように、このごろは海外情報だけでもなかなか大へんで、実に膨大な、現存の資料だけでも膨大なものがございますが、これは整理の仕方がよく、また分類が科学的にできれば、いろいろの意味で非常に効果的に役に立つ。場合によりますれば、これはそういうことの検討によりまして、さらに一つの政策立案にも大きな役割をなすこともございましょうが、しかし、なお調査室は諜報機関でないと同時に、政策の企画をする所でももちろんございませんから、調査室がそういう情報等に基いて最高の政策をそれによって作るのだというような、そういう役割は持っておりませんわけです。そういう点におきましては、文字通り調査室でございますので、今後といえども、文字通り調査室の性格で運営して参るべきものである、私はこう考えておるわけであります。
  240. 森中守義

    ○森中守義君 大へんくどいようですけれども、先刻私がお尋ねしたのは、閣議の内容は、総理の重要事項の決定の資料にこの情報の収集の結果はもたらされることにはならないか、こういうことを一つお聞きいたしております。そのお答えがありません。
  241. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) まだ、これは従来の例で申しますと、調査室で整理をし、分析いたしましたような情報といいますか、調査資料と申しますか、これを閣議に配って各閣僚の勉強の資料にしてもらいたいというふうに扱っておることはございますけれども調査室が立案をしたというようなものは閣議に行かないことは申すまでもないわけでございます。従って、何と申したらいいでしょうか、調査室自体で企画立案するものはない、こう申し上げて大体間違いないと思います。その資料を利用して、それぞれの責任者がそれぞれの事項について、先ほど労働問題のお尋ねがございましたが、労働政策の基本を調査室が立案するというようなことは毛頭考えておりませんし、またやるべきでないと思います。
  242. 森中守義

    ○森中守義君 今までのお仕事の中で、総理と官房長お二人だけの中で話があって、ほかの閣僚に御相談されずに、特命事項として官房長がだれかをどこかに派遣されるようなことがありましたか。
  243. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) そういうことはございません。
  244. 森中守義

    ○森中守義君 大体連絡調整というようなことが先刻から出ていますが、連絡調整ということは、別に政策の立案機関であるとかもそういう機関ではなくても、人を中心にして特に総理が官房長官に命令をする、官房長官が人を動かして、これを探ってこい、あれを探ってこいということは、あり得るのでしょうね。
  245. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) それは理論的にはあり得ると思いますけれども、あまり実際上例のないことでございます。
  246. 森中守義

    ○森中守義君 これで終りますが、やはり釈然といたしません。どうしても側近政治の強化、宮廷政治の強化というような印象が特に濃厚です。私は、従って、運営上ややもすると、こういう側近的なもの、宮廷的なものは、何とはなしに陰惨きわまりないものが過去においてありましたから、これは一つ運営上絶対にあやまちのないように、私は注意を喚起して質問を終ります。
  247. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  248. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  内閣法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決するに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  249. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、内閣法の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  250. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     松岡 平市  鳥村 軍次     大谷藤之助  西田 信一     増原 惠吉  後藤 義隆     劔木 亨弘  上原 正吉     松村 秀逸  中野 文門   —————————————
  251. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次、発言願います。
  252. 田畑金光

    ○田畑金光君 国防会議の今日まで開会された回数と、国防会議議員懇談会で相談された会議の数を比較してみますと、正式の国防会議ではなくして、むしろ懇談会の数がより多く開かれておるわけですが、これはどういう事情に基くものか。
  253. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) この国防会議は、申すまでもなく、非常に重大な案件を決定する、そういう性格のものでございます。従って、議案の性質によりましては、国防会議を構成しておりまする議員あるいはそれと密接な関係を持っておる者で、まず懇談会という形で会合を開きまして、だんだんと検討を進めて参りまして、それが政府の意見決定といいますか、国防会議としての意思決定にふさわしい状態になるというときになりましてから、国防会議という格好に正規に——格好といいますか、正規の国防会議を開いて決定をする。そうして決定いたしましたものは、これを閣議に報告をするといいますか、申し入れるといいますか、そういう形式をとっているわけであります。従って、国防会議の場合においては、懇談会という会合の形式が非常に多いということは、御指摘通りでございます。
  254. 田畑金光

    ○田畑金光君 国防会議も懇談会も同じ顔ぶれであるし、あるいは必要な場合は他の国務大臣の出席を求むることもございましょうが、正規の国防会議と同じ顔ぶれである懇談会は、正式な会合といっても同じメンバーの構成で話し合っているわけですから、むしろその間に懇談会だから話がときとして固まれば、今度は正規の国防会議に移すわけですが、同じ顔ぶれですから何ら違いはないように見受けるわけですが、むしろ国防会議なら国防会議を開いて、問題をその中で最初から話し合っていって結論をまとめる、こういうようなことが、国防会議の発足した経緯から、また権威からいっても、妥当な行き方ではないかと思いますが、どうでしょうか。
  255. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) それもまことにごもっともな御意見だと思うのでありますが、同時に、私どもの今のやり方としては、国防会議の権威あるいは事柄の重大性にかんがみまして、むしろ懇談会というようなことで十分に議案を、あるいは議案になりまするまでの間におきましても、議を練りまして……。それから懇談会という形式にいたしまする場合は、たとえば防衛庁で申しますならば、陸海空の幕僚長というような方々にも参加をしてもらうことができる。あるいは関係各省で申しますならば、国防会議議員になっておりまする大臣の補佐機関あるいは専門の技師というような人にもそこに出てもらいまして、十二分にいろいろの研究をすることができるわけであります。これはまた、国防会議の構成員たる閣僚というような人は、政治的な決断をしなければならない立場にあるわけでございますが、同時に、やはり決断をする場合におきましては、相当の程度に、専門家の意見なども十分に聞いてもらう必要がある。しかも、それも一人々々が専門家の意見を聞くというのではなくして、集まって、同時にそういうような話を聞き、また意見を交換するというところに、私は意味が大いにあるのじゃなかろうか。従来もそういう考え方の運営が、私は相当の成果を上げておるように思います。従って、今後におきましても、懇談会という形で開きまして、そうしていよいよ、こういう案件についてはこれが適当だというときに、初めて国防会議ということにして、また場合によりましては、出席者も限定をいたしまして、最高度の方針の決定ということをやるようにすることが適当であると、大体こういうふうに考えておるわけでございます。
  256. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、官房長官のお話しになったことは、国防会議構成等に関する法律の第六条をさして言われるわけでありますが、この第六条によりますと、「議長は、必要があると認めるときは、関係国務大臣、統合幕僚会議議長その他の関係者を会議に出席させ、意見を述べさせることができる。」。でありまするから、別に、懇談会だから多数の人が呼ばれるとか、国防会議の正式会議だから呼ばないとか、こういう違いはないわけで、同じことをやるならば、むだなことだと考えるわけですが、今のお話は、第六条で明確に規定しているわけなんです。要らざる無用な会議を重ねるということになるし、また別な角度から見ますと、国防会議なんという、そもそもあの法律を審議したときの意見でありますが、意味がない話で、結局、閣議で相談する、報告をしなくゃならぬ。それからまた関係大臣だけが集まって相談するといっても、特別ないい話が、知恵が浮ぶわけでもないし、また話をするといっても、今お話のように、関係者を呼んで意見情報を聞くということになりましょうが、今の御答弁は、第六条によって十分処理されておると思うのですが、どうでしょうか。
  257. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) それは先ほども申しましたように、一つ考え方として、ごもっともなお考えと私も思います。しかし、私は、同時に、この法律の第六条という規定は確かにございますけれども、実際の運営を円滑にして参ります場合には、初めからあまり形式ばったやり方でなく、懇談という形でいきました方が、私どもとしてはベターであると考えておりますわけであります。その会議やり方を、まあ懇談会形式でやるか、あるいは最初から国防会議というようないかめしい形でやるか、いずれが成果が上るかというようなことについては、そうとらわれて、私、考える必要はないのではなかろうか。御意見も十分にごもっともと存じますので、今後の運営について大いに私どもは参考にさせていただくつもりであります。
  258. 田畑金光

    ○田畑金光君 本日のこの法律審議は、官房長官の御出席を願っているわけですが、本来ならば、これは国防会議の議長として総理大臣の出席を求めるのが、法律の建前からいっても当然だと、こう思うわけです。それから、第八条を読みますと、「事務局長は、内閣総理大臣が任命する。」「議長の命を受けて、事務局の事務を掌理し、」、こういうことになっているわけで、「ただし、事務局の事務のうち国防会議事務以外の事務の掌理については、内閣官房長官の命を受けるものとする。」。そうなりますと、本日官房長官がここに御出席願って、答弁されることも、この法の建前からいうと、少し筋違いのような感じを受けるわけで、官房長官でありますから、当然御出席になって答弁に当られるものだと、こう考えておりましたが、この法律をよく見ますと、これは官房長官は特別な事務に関してのみ事務局長を指揮、命令する、こういうことになっているわけで、これらの事情をもう少し一つ、どういう関係になっているのか、この法の建前と照らし合せて、どういうことになっているのか、御説明願いたいと思うわけです。
  259. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいまのお話は、まことに私としては恐縮なわけでありまして、純粋に法律的な観点から申しますと、国防会議というものについて私が責任を持っていない立場にある。そういう点から申しますと、御説明申し上げるのもいささか恐縮でありますが、私は国防会議の議長が総理大臣である。で、その総理大臣の補佐をする立場におきまして、私から御説明をし、御答弁を申し上げている次第でございます。国防会議事務の掌理等については、この法律にございます通りに、事務局長もここにおられるわけでございますから、十分に御質疑にお答えをいたしたいと思います。
  260. 田畑金光

    ○田畑金光君 次に、国防会議と日米安保委員会との関係と申しますと、少し問題が大きくなり過ぎるわけでございますが、結局、国防会議で審議をする事項は、防衛庁設置法の四十二条の第三項に明確にうたわれているわけで、日米安保委員会で話をすることも日米防衛問題が中心になってくるわけで、そういたしますと、その会議の構成は違っておりますが、取り扱う内容、実質的な面においては共通の日本の「国防の基本方針」、こういう内容を持っているわけで、相当両者の間は関係が深いように見受けるわけであります。たとえば、日米安保委員会でいろいろな相談をして、これは日本の国防に直接関係する重要な事項、こういう問題については国防会議においてどういう取扱いをなさっているのか、あるいは国防会議の懇談会で、あるいは正式の国防会議で、取り上げて話をなさる問題等もあると思いますが、どういうことになるのか。
  261. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 国防会議と、それから安保条約による合同委員会、これは申すまでもございませんが、当然には全く別々のものである、これがまず第一であると思います。同時に、国防会議の役割は、国防の基本方針とか防衛計画の大綱とかいうことが与えられた任務でございますから、事実上の問題として、たとえば安保合同委員会に議題となるような事項について、日本として、国としての意思決定がその基礎において必要になるようなものがありまする場合、それがたとえば国防の基本方針とか、防衛計画の大綱とかいうもので呼ばれるような内容のものでありまする場合には、内閣総理大臣としては、その決定を国防会議においてやらなければならない。そういう意味におきまして、関連が実際問題としてあるものもあろうかと考えます。
  262. 田畑金光

    ○田畑金光君 今まで、たとえば国防会議で取り扱った問題を日米安保委員会でやったとか、日米安保委員会の議題になった問題を国防会議で正式に相談をして、いろいろ国の方針を立てたとか、こういう事例があるのか、ないのか。
  263. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) 昨年の七月、岸内閣の改造後「私が関係いたしましてからは、そういう事例は全然ございません。
  264. 田畑金光

    ○田畑金光君 今回一名増員するという法律案でありますが、国防会議事務局の仕事内容というのは、われわれの承わる限りにおいては、別段大したことでもないようにこれは見ておるわけで、国防会議にかける重要な国防の基本方針とか、防衛計画の大綱とか、あるいは関連産業の調整計画の問題とか、こういうような問題等は、別に事務局で立案して国防会議にかけるというのじゃなくして、統合幕僚会議、あるいは防衛庁等から一つの方針が出されて、それを国防会議で正式に審議をする、こういうことになる順序だろうと思うのです。従って、別段新しくここに一名の増員をするというようなことは必要もないという感じを持っているわけで、むしろ人を減らしても、今の国防会議仕事の程度であるならば十分やっていけるものだと、こう見ておるわけですが、あえてここに一名増員しなきゃならない事情はどこにあるのか、事務局長から一つ説明願いたいと思います。
  265. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) その点はちょっと事情が実は違うのでございまして、私などの見ておりますところでは、やはり国防会議というものは、何といいますか、独立的なものであると。独立的というのは俗な表現でございますが……。で、これはなるほど防衛庁あるいはその他の役所に協力をしてもらって立案ができるということでもございましょようけれども、本来やはり国防会議事務局が独立的に事務局としての働きを私はすべきものだと、こう考えるのであります。で、見ておりますと、現在の職員の、現員の数というものは、他の官庁等に比べて決してひまなことはございませんで、むしろもっとその増員をしたいと思うぐらいに、率直に申しますと、そういう感じがいたします。しかし、それは今の段階において遠慮しなければならないと思いまして、そういうことはこの案に考ておらないのでありますが、ただ、実際問題として人手が足りませんために、現在参事官のうちの一人は防衛庁の定員を食って、実際上は国防会議事務局の職員として働いてもらっているのであります。こういうことは筋としてもしかるべきことでございませんので、その借りておる、実際国防会議で働いている人は、国防会議事務局の定員として、そしてきちっとした格好にしたい、こういうふうに考えましたのが、今回の一名増員をお願いいたしましたゆえんでございますので、その事情はどうぞ御了察いただきたいと考えるわけであります。
  266. 田畑金光

    ○田畑金光君 せっかく事務局長が出ておられるわけですから、事務局長の方から、どういう仕事国防会議事務局としては取り扱っておるのか、まあ大綱でよろしゅうございますから、簡潔に一つ説明願っておきたいと思います。
  267. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 国防の問題、あるいは防衛の諸問題等を検討いたしまする上におきましては、これらの問題が非常に政府の各機関と密接な関連を持つものでありますので、あらゆる角度からの問題を検討して参らなければならぬ点が非常に多いわけであります。総合的に判断をいたすことも必要でございまするし、また変転いたしまする国際情勢等の推移に対処いたしまして、防衛計画の万全を審議し、あるいは検討するというためには、ただいま、先ほどから官房長官からるるお話のありました通り、常時国防会議関係閣僚の段階でもってこれを検討し、あるいは調整していく必要が、非常にたくさんあるわけであります。従いまして、私どもといたしましては、国防会議が適正に、かつ円滑に運営されていきまするために、われわれ自体も非常に勉強いたして参らなければなりません。そのために、関係各省の方と密なる連絡のもとにいろいろ研究もいたしまするし、また、民間のその道の経験のある方々の、あらゆる方の御意見も率直に伺う。まあそういうことを常に研究しつつ、参事官の会議、これは大体週に一回開くことにいたしておりまするが、必要のつど関係各省の次官をもって構成いたしまする幹事会を開きますとか、こういうようないろいろな段階部門において研究を加えました結果、一応その資料を整備いたしまして、あるいは調整のできるものは調整をいたしまして、その結論を国防会議提出いたして、会議としてのいろいろな面からの判断に資するという、こういうやり方を今日までいたしておるわけであります。
  268. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 事務的な点を二点伺います。  今、国防会議事務局で働いていらっしゃる実員ですね、定員を言うのじゃありません、実員何名ですか。
  269. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 現在、私ほか参事官が三名おります。そのうちの一名が、ただいま官房長官からお述べになりました防衛庁の兼務職員でございますが、常時事務局において仕事に専従をいたしております。それから補佐が五名、それから係長が二名、係員が五名、これが定員でございまするが、それ以外に常勤労務者が五名おります。計十九名おります。
  270. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この予算を見ますと、一名増員することを予想して予算書が出ているのですが、十四人と出ているのですが、私、どうもおかしいと思って伺ったんですが、常勤労務者五人あれば、これは常勤労務者五人も、これどこかに出なくちゃいかぬわけですね。で、あなたの方のこの予算書を見ますと、常勤労務者は給与だけ出ていますが、こういう数字はどこかにやはり入れておかなくちゃいけません。それと、常勤労務者はさておいて、この一名増員したことにして十四人に出ているのに、十九人いるというのは、これは困ると思うのですね。  それから、問題をしぼって伺いますが、参事官五名ですか、そのうちの一名は防衛庁の所属になっているとあらば、今度一人を増員するというのは、その方になるわけですね。
  271. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 予算書には定員は十三名と出ておるはずでございます。
  272. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ちゃんと、十四人と出ている。
  273. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 一名ふやしていただくということになりまして、十四名……。
  274. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 行政職俸給表(一)適用には十三人、行政職俸給表(二)の適用には一人と、合せて十四人と出ている。
  275. 藤田進

    委員長藤田進君) 政府委員におかれてよく調べて、確信のある御答弁を願います。
  276. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 前年度が十三名でございまして、三十三年度が定員十四名、こうなっております。
  277. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 さっきの十九人との関係は……。
  278. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 常勤労務者はこの定員の中に入っておりませんです。
  279. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それから、その参事官の三人と、今度一名増員した、こういうことをあなた言えばよかったのです。定員が十四人である、そのほか常勤が五人いますと、こう言うべきを、定員が十九人おって、ほかに常勤が五人おります、こう言ったから、問題が起った。そうでしょう。
  280. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) そうです。
  281. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで、しぼって、その参事官の三人のうちの一人は防衛庁からおいでになっておる人で、現在でもおるのだ。今度新たに一名増員になりますね、正式に。そうすると、防衛庁に籍を置いてあなたの方の仕事をされておった人が、正式にその人があなたの国防会議事務局の籍に移って、引き続き勤務をされる、かようになるわけですね。
  282. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) そうでございます。
  283. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで、この十四人の方々の専門はどういうふうになっておりますか。まあ今の方はおそらく防衛庁の軍事の方の専門の人でしょうが、あなたを含めて十四人を専門別に色分けしますと、どういうふうになっておりますか、大まかに。
  284. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) ほかの二人の参事官は、一人が大蔵省から参っております。それから、他の一人は通産省から参っております。それから補佐クラスにおきましては、大蔵省、通産省、外務省、警察庁、それと庶務を担当いたしておりまするその五名でございます。
  285. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法案は一人の増員だから、見方によると、増さぬでもいいじゃないかと思うし、また違う角度から見れば、非常に良心的な法律案(笑声)だとも言えるわけなんですが、まあ時間がないから、もう触れませんが、とにかくこの国防会議というのは、事ある場合には大した威力を発揮するんです。大した威力を発揮するのですから、職員の——私のところは、ふやすのは反対ですが、ともかく私は質的に伺ったわけですが、危なっかしいことですな、実際。これは他日論ずることにしましょう。  最後に伺いたい点は、あなたのところに諸謝金というのが三十八万四千円と、それから国防調査委託費というのが九万五千円ありますが、これはどういうふうに使っておりますか。それを伺って、質問を終ります。
  286. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 謝金の方は、先ほど来お話しいたしましたように、われわれの資料の整備をいたします上につきましても、各方面の方々の意見を参考といたして、そうして勉強しておるわけでありまするので、各講師の謝金として、この諸謝金からそういう費用に支出をいたしております。  それから、調査委託費の方は、やはりそういう事情、まあそういういろいろな目的からいたしまして、防衛問題あるいは国防全般の問題として必要なる資料を整備いたしまするために、適当なる団体に委嘱いたしまして、これらの資料を集める、そういう経費としてこれから支出をいたしておるわけであります。
  287. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一回。ちょっと、お伺いしておってわからなくなったのですが、あなた方がレクチュアを受けるというのは、大部分は何でしょう、防衛庁、さらに通産省、大蔵省関係だと思うのですが、そういう方々のレクチュアに対しては謝金というものはないと思うのですが……。この国防調査委託費、いろいろな団体の方に委託しているということですが、どういう団体があるのですか。民間団体ですか。
  288. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 団体は民間の団体でございます。
  289. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 どういう団体ですか。
  290. 廣岡謙二

    政府委員廣岡謙二君) 昨年委託いたしました団体は、装備品の調達に関してはいろいろ問題がございますので、これらを十分に研究いたしますために、日本兵器工業会に委託いたしましたものが一つございます。それから、諸般の軍事上、防衛上必要とするような資料を検討してもらいますために、東南亜総合通信社、それから大陸問題研究所等、それから新しいFXの機種を選定いたしまするに十分な研究を集めていかなければなりませんので、このためにこの方の道に非常に明るい天川研究所、この四団体に委嘱をいたして、調査をいたしました。
  291. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで私の質問を終ります。
  292. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、これにて質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  293. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  294. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、国防会議構成等に関する法律の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  295. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  報告書に付する多数意見者の署名をお願いいたします。    多数意見者署名     大谷藤之助  大谷 贇雄     西田 信一  増原 惠吉     後藤 義隆  上原 正吉     松村 秀逸  中野 文門   —————————————
  296. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、文部省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより本案の質疑に入ります。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  297. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 文部大臣に二、三お尋ねをいたします。時間の関係もありますので、ごく簡明にお伺いいたしますから、大臣もまた簡明にお答えいただきたいと思います。  まず、学校教育テレビ五ヵ年計画がございます。これは現在どのようになっているか、この点を伺いたい。
  298. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまのお尋ねはテレビの問題と伺ったのでございますが、このテレビ放送につきましては、御存じのように、郵政省におきまして電波の割当をいたしまして、それに従っての、NHKの関係の局、それから民間放送の局、それぞれ予備免許が与えられまして、われわれの方の関係といたしましては、教育放送という問題につきましていろいろ計画をいたしているわけでございますが、文部省といたしましては、このテレビの教育的な効果という点から、これを最大限に利用したい、こういうような観点から、今仰せのような数年後には全国的にある程度テレビの波が普及いたしますので、できるだけその視聴範囲の学校、公民館、その他の社会教育施設等におきまして、それぞれの教育放送が十分実施できるように、そういった準備を現在いたしているわけでございます。
  299. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、国立劇場の構想についてお伺いしたいと思いますが、具体的な計画と進行状況はどのようになっているか。
  300. 松永東

    国務大臣(松永東君) 国立劇場の問題については、敷地の問題がなかなかきまらないのであります。それで、大体一番適当な所だろうというので、大体きまりましたのは、赤坂の御所のちょうど交差点の所を、一部皇室の方から譲っていただくことにしまして、大体それに決定する予定であったのですが、そこはいろいろな観点からいかぬというような議論もありまして、そうしてようやっとあのパレス・ハイツ、あそこに決定をいたしているわけなんです。しかし、そう急ぐことでもありませんので、大体、パレス・ハイツの所は大衆の足場が悪いじゃないかというような議論もありますが、しかし、大体パレス・ハイツということにきまることは間違いないのであります。しかし、まだ閣議に上程するところまでは行っておりません。実はこの間も閣議に上程してきめようかというところまで行っておったのでありますけれども、そう一日、二日を急ぐ必要はないじゃないかというので、大体今までになっておりますけれども、パレス・ハイツにきめておるわけであります。
  301. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 体育局とスポーツ振興審議会との関連は、今後どのようにたりますか。
  302. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御承知と思いますが、内閣に置かれましたスポーツ振興審議会は、当初から大体一年間ということで設置されましたので、今年の三月三十一日をもって一応使命を終った、こういうことで、終了いたしております。
  303. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 体育デーの構想についてお伺いしたいと思います。
  304. 松永東

    国務大臣(松永東君) 昨年の暮の閣議で、全国に、老若男女を問わず、体育を普及するということで、体育デーの相談をいたしまして、満場一致閣議できめたわけであります。しこうして、先般、とりあえず五月の四日に文部省で施行いたしますことにしまして、本年限りでありますが、大体五月が一番よかろう。ちょうど新緑の折からでもあるし、老いも若きも、ちょうど新しい気持を持つ時分だから、よかろうということで、本年度は五月四日にきめて、そして施行することにいたしております。
  305. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 この法案が通りますと、新たに体育局ができるわけですが、そこで学校保健と学校給食、これを所掌事務とするわけですね。そこで、学校保健と学校給食について、それぞれのあり方について今後どのように考えていこうとするか、大体の構想について伺いたい。
  306. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 学校保健につきましては、先般成立いたしました学校保健法に基きまして、学校保健の全般について整備して参りたいと思います。特に就学前の健康診断ということを重視いたしまして、これによりまして就学時から健全な身体で就学できるようにいたしますとともに、学童の家庭が貧困であって、そして治療ができないということのないように、要保護児輩並びに準保護児童の治療費の補助というものを推進して参りたいと思っております。  第三の、学校給食につきましては、小学校につきましては、すでに五〇%をこしておるような普及状況でございますが、中学校はおそく発足いたしたために、またその他の事情もございまして、一〇%に満たないような状況でございます。これにつきましては、ますます学校の設置者と協力いたしまして、普及充実をはかるとともに、なお、学校給食につきましては、給食費を払えないような準要保護児童に対しましての補助に遺憾ないようにいたしたい、かように思っております。
  307. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、松方コレクションの受け入れの条件等について概要をお伺いいたします。
  308. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 松方コレクションの受け入れにつきましては、御承知のように、フランス政府の好意によりまして、松方コレクションが日本に返還されるということになっておりますが、これに関するフランス側の法案も国民議会を過日通過いたしたようなわけでございます。従いまして、文部省といたしましては、この受け入れのために新しく西洋美術館を建設するということで、三十二年度、三十三年度に必要な予算を計上をお願いいたしまして、現在設計等につきましては、御承知のように、フランス人のコルビュジェ氏にお願いして、その実施設計を日本の建築家にやってもらいまして、この三月に着工いたしまして、上野のもとの凌雲院の跡に現在工事を進めているような次第でございます。
  309. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 国際文化交流の面で、東南アジアとかその他の地域の留学生招致の構想について、要点をお伺いしたい。
  310. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 海外の留学生、特に東南アジアの留学生の招致につきましては、年々力を入れておりますが、本年はその招致の計画を七十名に拡大いたしまして、そのほか留学生の受け入れ態勢を整備いたしますために、日本国際教育協会というものが設立されまして、それに対して運営の補助をいたすとともに、留学生会館の建設、あるいは会館に入り切れない学生のためには下宿のお世話、そういうようなことを通じまして、東南アジアの留学生の受け入れに遺憾なきを期したいと考えております。
  311. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 次に、学校給食の分科審議会がありますが、その運営はどうなっているか、大要。
  312. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 保健体育審議会の中に、今お話しありましたように、学校給食に関する分科会がございます。これは現在管理局が学校給食に関する仕事を所掌しておりますが、常に学校給食の普及充実、それから特に給食の職員の整備の問題、そういうような事柄について、いろいろ相談をしているわけでございます。
  313. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 これは体育局に関連する内容だと思いますが、要保護家庭の子供の保健の面について、どういうように措置されておりますか。
  314. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 先ほど申しましたように、準要保護児童あるいは要保護児童の就学を容易にするために、学校給食並びに児童の治療費の補助をいたしております。そのほか、体育局に直接関係ございませんけれども、教科書につきましても、準要保護児童に対する補助を行なっております。
  315. 伊藤顕道

    ○伊藤顕道君 最後に一点だけお伺いしますが、学校給食の補助金、これについてはいろいろ問題があるわけですけれども、この大要を一つお伺いしたいと思います。新年度の分でけっこうです。
  316. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 学校給食の補助につきましては、準要保護児童に対する補助につきましては、これは教科書等と違いまして、一人当りの年間の経費というものが割合に高くつくのでございます。それで、従来対象の児童が少くて、予算の範囲内で補助いたしますために、十分にお世話することができなかったのでございますが、本年もその範囲を増加いたしましたけれども、なお今後十分ではございませんので、私たちの目標としては、全児童数の四%くらいのところまでの予算を確保しなければならない。それを当面の努力目標として、次年度以降も努力して参りたい、かように考えております。
  317. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この法律案は、昭和三十二年一月、日本体育協会の意見書、さらに昭和三十二年六月十四日、スポーツ振興審議会第一号答申、さらに同年十月一日のスポーツ振興審議会の第二号答申さらに去る五月二十四日スポーツ振興審議会の最終総会における大浜会長の岸総理大臣宛の要望書に基いて提案されたものでありまして、その努力に対して敬意を表します。そこで、文部大臣に伺いますが、時あたかも二十四日からはアジア競技大会が東京で開かれる。これは国際的な競技会であるだけに、万全の備えをもって成功させなければならぬと思います。さらには、国会における両院において再三にわたって決議されましたように、近くはオリンピック大会も招致しようというわが国のスポーツの状況でございます。従って、この法律案が通過成立いたしましたならば、きわめて敏速に優秀なるスタッフを整えて、整備、推進をはかっていただきたい、かような私は意見を持っているものでありますが、大臣の御見解を承わります。
  318. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました通り、もうすでに来月はアジア大会が開催されることになっておりますばかりでなく、そのアジア大会が、やがては国際オリシピック招致の問題に非常な関連を持っておりますので、この第十八回オリンピック招致の問題は、何が何でも一つ今度は実現を見るように、皆さんにも協力していただきたいと。そして、必ずやこれを招致せなければならぬと考えております。従って、そうした問題にも影響いたしますので、お説の通り、迅速に、そうしてできる限りの力を尽して、そしてアジア各国から来られるスポーツの人人に満足を得せしめるというふうに努めたいという考えであります。
  319. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 従来、文部省内におきましても、それぞれの部局によって、体育行政が必ずしも統一されているのでなくて、分割されて、まずい面もあったと思うのです。さらに、法務省におかれても、あるいは警察庁においても、青少年の善導とかいうような立場で、あるいは野球大会を開くとか競技大会を開くといったような形がとられておったと思う。学校体育、社会体育を通じて、ともかくも戦後ばらばらになって統一されたものがなかったと思うわけですが、この法律が通過いたしまして、文部省に体育局というものが設けられた暁においては、他の、先ほど私が申し上げましたように、あるいは法務省の行政官署とかあるいは警察関係あたりで、児童を対象にいろいろのスポーツ競技会、リクリエーションをやられておる点も、体育局と十分連絡をとるなり何らか相互調整して進めらるべきものだと考えますが、どういう御構想のもとに立たれておるか、承わりたいと思います。
  320. 松永東

    国務大臣(松永東君) 仰せになりました通り文部省といたしましては、この法案が通過いたしますれば、御指摘になりました通りの構想で働きたいというふうに考えております。ことに、幸いにして外苑にああしたりっぱな競技場もできました今日、あそこを土台といたしまして全国的に働ける、要するに名実ともに整った体育の充実をしたいというふうに考えております。
  321. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 体育局が新設されましたならば、優秀なる体育局長を中心に体育行政を積極的に推進していただかなければならぬと思いますが、当面はアジア競技大会の成功を目ざして努力しなければならぬと同時に、もうオリンピック大会というものは、すでに本日から準備に入らなくちゃならぬと思うのです。従って、私はここで文部大臣に明確にしておいていただきたいのでありますが、そのことは、オリンピック大会主催の責任者、主催者というものが、日本国内では本日なお明確になっていない。あるいは東京都が主催者になるとか、あるいはIOCが主催者になるとか、いろいろな説があって明確になっていない。これがオリンピックを招致するのに当って将来障害をもたらすであろうということを言われておりますが、オリンピック大会の主催者は、どこだと文部省は統一解釈を持っておられるのか、明確にしておきたいと思います。
  322. 松永東

    国務大臣(松永東君) 仰せになりましたその主催者は、IOCが主催者である。東京都も協力はいたしますけれども、それは地元として協力をする、こういうふうに思っております。
  323. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 専門の体育課長に伺いますが、今の文部大臣の解釈は違っているのじゃないかと思うのですがね。そこに日本の混迷が私はあるのではないか。オリンピック憲章からいって、オリンピックの主催者は国内オリンピック委員会、いわば略語でいえばN ○C、あるいはOCが主催者であって、東京都とかあるいはIOC等がオリンピック憲章からいって主催者でないと思う。私はそういう解釈です。私が読む憲章、本の範囲内では、そういう私は結論を持っている。こういうところを明確にしておかないで、準備委員会を作ってスタートしていくと、後に混迷が私は起ってくると思うのですが、これは私は、佐々木体育課長はこの方面については世界的な人物で詳しいと思うのですが、責任ある答弁を一つしていただきたいと思います。
  324. 佐々木吉藏

    説明員佐々木吉藏君) ただいまの御指摘のありました点につきましては、オリンピック大会はIOCが全部の責任を持つわけでございますが、大会を主催、開催いたしますのには、開催国におきましてオリンピック大会組織委員会というものを作ります。これには政府並びに東京都、日本体育協会というふうなそれぞれの関係者の代表者が網羅されまして、ちょうどアジア大会組織委員会のような形を作りまして、それによって全体の運営をする。従って、IOCはその組織委員会に運営の全部をまかせるという形になります。一応これは主管者といったり主催者といったりしておりますが、国内的には組織委員会が全部をやるわけでございます。しかし、大会の全体の主催の責任はIOCと、こういう形でございまして、この点は一応主催とかそういう名前はあまり使いませんで、主管者という形でございますので、しいて言えば、日本の組織委員会が主催者である、こういうことにも説明していいようになっておるわけでございます。
  325. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 あなたの答弁はやはり明快です。(笑声)ともかく、国内の組織委員会が、まあいわばNOCが責任者ですよ。ここはしっかりしてやらなければ、東京都の都会議員あたりが誘致をやっておるわけです。知事やらがやっておるわけです。いざとなると、いざこざが必ず起ってくるのです。この点は明確にして……。佐々木さんが、あるいは局長になられるかわかりませんが、それはわからぬけれども、しっかりやってもらわなくちゃならぬと思う。  次に、これに関連して承わりますが、本国会で、松永文部大臣は、他の委員会において、近くオリンピック大会を招致するのであるが、オリンピック標識の盗用、乱用がすでに始まっている。これは国際的恥辱であるから、従って、そういう盗用、乱用が行われないよう、事前に法的措置を講ずるつもりだということを、本国会中に他の委員会で答弁されておりますが、ところが、本日まで何らの措置がとられていないのですが、いかようにされるおつもりか、お答えを願います。
  326. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまのオリンピック・マークの使用制限の立法措置の問題でございますが、これはいろいろ私どものところにおきましても研究いたしまして、関係省と若干のまだ話し合いの余地を残しておりますけれども、大体の成案は私どもの手元におきまして得ております。しかしながら、こういったその後の状況から見まして、私どもといたしましては、この法案の提案ということを慎重に検討しておるわけでございます。一応関係省とはいろいろ問題がありますけれども、若干の問題を残して、ほぼ話し合いはついているというような段階でございます。
  327. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 ともかく、日本人というのは、実績において、前の十五回ですか、あの大会を招致すると大体内定したというときに、もう事前にずいぶんあったのですから、それから通産省関係でも、意匠の登録盗用なんかというのは国際的に非難を受けるほど多いわけなんですから、これはいざオリンピックが大体確実性が出てくると、それは特許局が困るほど起りますよ。この点は十分注意していただくよう、警告を発しておきます。  次に、もう二、三点伺うのでありますが、こういう体育局のできる機会に、文部大臣、子供センターというようなものをお作りになったらどうかと私は思うのです。厚生省におかれては、母子健康センターというものを逐次、都道府県指導して、若干の補助をして作りつつありますが、今の日本の子供は健康な環境に恵まれていない。そうして地方公共団体にしても、貧困なるがゆえに、施設を整備できないわけなんです。だから数多く作れないから、子供センターというようなものをこしらえて、そこではフィルム・ライブラリーもあり、さらに遊戯もできれば知名氏の話も聞けるし、さらにはリクリエーションもできるというような施設設備をして、しかも横の連絡をとるようにしたならば、私はよろしいのではないか。ともかくも青少年の不良化ということが盛んに言われておりますけれども、子供をしかるだけでなくて、ほめてやって、彼らが安心して楽しく遊べる場所を提供するということが大事だと思う。これは私は、体育局ができれば、文部省の体育局なり、あるいは社会教育局で、真剣に取り組むべき問題だと思うのであります。こういう体育局を新設する機会に、そういう点を具体的な研究課題に上せて推進されるべきではないかと、こう考えるのですが、文部大臣の御意向を承わります。
  328. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました点は、実は二、三ヵ月前から研究をさせてあります。ことに、静岡で今仰せのようなセンターが、子供のセンターが行われて、非常にこれは児童にほがらかに生活をさせているというようなことも聞いておりますので、都会地にはどうしてもそうした児童のためのセンターが必要であろうと存じまして、今研究をやらしております。従って、この案が御決定になることになりますれば、やはりこの局内にそういういろいろな課というか係というかを設けて、研究さしてみたいというふうに考えております。
  329. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 研究段階に入ったならば、けっこうです。ぜひとも一つ、誤まりなきよう推進していただくことを要望しておきます。  それから、体育局ができる機会に承わりたいのでありますが、学校スポーツのプロ化に対してはどういう対策と指導方針を持っておりますか、これは社会教育局長に伺いましょう。
  330. 福田繁

    政府委員(福田繁君) これは矢嶋先生御承知の問題でもございますが、なかなかこの学校教育と選手の問題は、非常にむずかしい問題がございます。しかしながら、こういった問題は一がいに、文部省がこうしろ、ああしろというような指示はできませんけれども、できるだけそういった学校の体育部を通じまして、プロ化というか、非常に非常識なやり方については、できるだけ相談をするような方法をとっていくというようなことによりまして、一ぺんにはできないと思いますけれども、徐々にそういったスポーツのいい意味におきますところの健全化というような方向に持っていきたいと考えております。幸いに、最近におきましては、いろいろな社会問題とまではいかなくても、いろいろな意味におきまして注目の的になっております学生の選手の問題もありますので、そういった意味からも、各大学等におきましていろいろ自主的な方法もとられつつあるようなことも聞いておりますので、私どもとしては、できるだけそういった方向に各学校が行くように願っているわけであります。
  331. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この問題はかなり論じられた問題で、しかも重要であります。深くそう触れませんが、通り一ぺんのことではいけないとして、やはり相当の指導理念と熱意を持たなくちゃならぬと思います。ただし、統制的なものではいけないと思うのです。そこで、私はこれは大臣局長よりも、最も当面その所管をされている体育課長に、この際、警告を含めて私は伺っておきたいと思うのですが、今の日本のこの体育界ですね、私はスポーツが好きですからずいぶん関心を持っているのですが、日本の体育界には若干封建的なところがありますよ。私はそう思う。それから要心しないと、統制的なものが出るおそれがある、素地は私はかなりあると思う。これは戦時中軍部の跳梁によって、その支配下にある意味において入った、そうして戦力の増強とスポツというものを誤まって結びつけていった、こういう過去があるわけです。その私は幾らかが残っているような感じがする。かかるがゆえに、戦時中あったところの体育局は占領軍からつぶされたわけです。ここに新たに体育局が生まれ変ろうとするわけなんですが、今の日本の体育界にあるささやかなものでありますけれども、しかし、これは芽を注意しなくちゃならぬと思う。封建的なものとやや統制的なものに、末端で特になりがちな傾向があるという点、私は懸念いたしておりますが、体育課長としてはそういう点は全然気づいておられないかどうか、この際承わっておきたいと思います。
  332. 佐々木吉藏

    説明員佐々木吉藏君) 今御指摘のような、スポーツ界に先輩の関係する面がかなり多くございまして、それらにつきましては、その先輩の多くはスポーツ団体の役員をしております。で、文部省といたしましては、そういう関係団体と常に懇談的な機会を持って、問題は自主的に団体立場で解決されるようにしていくべきであると考えておるわけでございます。しかし、体育行政といたしましては、現在非常に民主的にそういうふうにやっておりますので、その考え方を伸ばしていけは、昔のような体育行政の陥ったようなところには行かない、また行かないようにすべきだと思っております。
  333. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に、衆議院において西洋美術館は分館が本館と修正されて、本院へ送付されているわけですが、その修正によって、建設維持運営に必要な経費、先般国会で成立いたしましたあの予算には変動がないものと考えてよろしいかどうか。
  334. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御質問の通り、成立いたしました予算には変動はございません。
  335. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 了承しました。  次に、文部大臣に伺います。これは伊藤委員質疑に関連してでありますが、あなたは、この国立劇場の敷地について、他の委員会でよろめいているのじゃないかという質疑に対して、絶対よろめいていないということを反撃しておられました。ここで繰り返すまでもなく、転々として候補地は変っている。絶対よろめいていないぞというときは、大宮御所でございました。その前パレス・ハイツ。ところが、今の伊藤委員の質問に対しては、またパレス・ハイツに変っておる。かように変ることをよろめくという。一体、あなたは、主管大臣ですが、どこにしようとしているのですか。大蔵大臣のちょっと抵抗があると、なかなか、あなたはりっぱな人格者だもんだから、そこはいいところがあるのですが、よろめく。はっきり、やはり主管大臣としては、どこでなくちゃならぬときめて、そして閣内をリードしていくくらいでなければ、私は、この問題は解決しないと思う。従って、私は先日、岸総理大臣にちょっと伺たのですが、この問題は解散になる前に、やはり閣議決定すべきだ。そして設計段階に入るべきである、かように私は考えるのですが、ほんとうに、あなたはよろめいていないのかどうか、今度のパレス・ハイツは変らぬのかどうか、伺っておきます。
  336. 松永東

    国務大臣(松永東君) よろめいているわけじゃないのですけれども、何せ赤坂にきめておったのですが、ところが、一萬田大蔵大臣が、何としてもそれはきかぬ。きかぬものだから、どうにも、大蔵大臣の所管だもんで、それを決定するわけにはいかぬ。しかし、そこでパレス・ハイツも、急遽あすこをあけ渡すようになっているらしいから、そう大しておくれぬのなら、あすこでよかろうというふうにきめているわけです。ですから、もちろん、この次の閣議あたりできめてみたいというふうに考えております。
  337. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点は、私はある意味ではあなたに私淑している面があるのですが、一つがんばって、しっかりやってもらいたい。  最後に、お聞きすることをお許し願いたい。それは、この国会で、あなたと院内で正式にお目にかかるのは最後と思いますから、あえてお聞きすることをお許し願いたいと思う。それは、例の勤務評定の問題について、御承知のような事態になっている。こういう事態になったことについては、文部大臣が全然無関係である、責任がないというものではないと私は思うのです。これは予算も伴わないものだ。これを一ヵ月か二ヵ月早くやらなければ、日本の文教というものがつぶれるというようなものではない。伝え開くところによれば、自殺未遂者が出た。全国的に相当の問題を起している。これほどの問題を、なせ、あれほど強引に一ヵ月、二ヵ月を争ってやらなければならぬのか。私は文部大臣の人柄をよく知っている。さすがに、あなたは第一院の議長になっただけ、それは私は敬服している点がある。あなたの本心は決してそういうものじじゃないと思う。どこからそういう力が出てくるのか、やっておる。そして文部省の役人は、全国に出張して督戦隊となっておる。そして、日本の教育界は混乱しておる。こういう事態を思うときに、今、文部省設置法を審議しているのですが、全然これに触れないで、私は質問を打ち切るわけにはいかないので、あえてお許しをいただいて……。文部大臣はどういう心境にあるのか。私は、おそらく相当あなたは悩んでおられるだろう。そして、この事態を、最高責任者としていかに収拾しようとお考えになっておられるのか、私はそれを最後にお伺いして、質問を終りたい。
  338. 松永東

    国務大臣(松永東君) この問題については、実はきのうもほとんど徹夜みたいにしてやった。ところが、事態がかくのごとくなって参りますというと、なかなかそういきません。円満な解決ができません。だが、しかし、最悪の事態に持ち込まないようにと努力をしたのですが、御承知のように、とうとうここまで来てしまいました。しかし、まだこれから、さらに各県あるいは都道府県の方にもいろいろの問題も起るであろうと思いますので、できるだけ一つ善処したいというふうに考えております。
  339. 森中守義

    ○森中守義君 ごく簡単に、先刻の伊藤委員の質問と関連して伺っておきます。実は、私も一度、文部当局にテレビの問題をお尋ねしたいと思っておった。そういうことで、特に長くなっておりますが、四、五分お許しをいただきます。  先刻の伊藤委員に対するお答えの中で、文部省が教育放送のテレビ・チャンネルを別に申請さして、文部省が放送施設をお作りになるというように受け取ったのですが、さっきの。そういうことに間違いがないのかどうか。
  340. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいまの御質問でございますが、私は、さように申し上げたのではないのでございまして、このテレビ放送の局は、NHKあるいは民放の局として、郵政省で認可された局があります。この局が今後、電波を出しまして、放送をやる上につきまして、教育放送というものを実施します際に、文部省としては、その内容について、その番組の向上あるいは教育的な見地から、その内容について非常に関心を持っておるということを申し上げたつもりでございます。従って、今後、教育放送が実施されますにつきましては、私どもとしまして、今後、その放送の実施された暁におきましては、これを調査したり、あるいはまた、実施をされる事前におきまして、いろいろ、たとえば学校向け放送でありますと、小学校、中学校、高等学校等の教科課程にマッチした放送がなされるというようなことを希望いたします。そういった面で、いろいろ内容的に準備をしておる、こういうようなことを申し上げたつもりでございます。文部省が決して局を設置するということではございません。
  341. 森中守義

    ○森中守義君 それから、もう一つお聞きしたいと思いますのは、教育テレビがもう時間の問題なんですよ。すぐ始まります、チャンネルの割当が始まりますから。そういう際に、教材としてテレビの映像機がおそらく各学校に配置になると思うのです。それも、私の仄聞ではありますが、現在、文部省計画では、八学級に一台というように聞いております。もちろん、八学級に一台ということであれば、明らかにこれは教材の役目を果しません。従って、現在、正確な文部省の映像機の義務教育に対する配置の台数は、何学級にどのくらいをお考えになっておるか。そうしてまた、映像機の交付といいますか、あるいは設備というものは、完全なる文部省予算から出ておるのか、あるいはPTA、さらには地方団体等の負担を求めようとされておるのか、この点を明らかにしてもらいたい。
  342. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただたいまの御質問でございますが、学校におきます受像機の設置につきまして、文部省としては、必ずしも八学級に一台というように考えていないわけでございます。これは今後の教育放送をいろいろ利用します場合に、少くとも各学級ごとにやれば一番いいのでありますけれども、実際はそこまでなかなか参りませんので、文部省としては、この教材費等の経費の中にそういったテレビの受像機も希望すれば買い得るような措置をとつております。従って、この希望する向きにおきましては、学校でこういうものを買われると思いますが、その場合には、補助金が一部行くということになるわけでございます。しかしながら、現在はまだ学校にあまりたくさんは普及しておりません。せいぜい、まだ千五、六百台と思いますが、その程度でございますので、現状ではなるべく、文部省としては、価格の安い受像機を普及していくということを先決問題としてやっております。
  343. 森中守義

    ○森中守義君 この補助金ということではっきりしましたが、やはり理想的には、完全に国庫負担による、しかも一学級一台ということが理想でなければならぬと思うのですよ。従って、もう明らかに文部省の方針としては、補助金でやる。ただ、何学級に何台という決定が行われていないようでありますが、この問題は、かなり私は、今日のテレビが言論、放送界の革命をもたらしたように、教育界においても一大革命であろうと思う。そういう意味から、この今局長の答弁のように補助金でいく、こういうお考え方でなしに、やはり最大限の努力は完全に国庫負担で、しかも一学級一台、こういう理想的な方針でお進みになる決意を、願わくは文部大臣からこの際明らかにしておいていただきたいと思います。
  344. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ちょっと訂正いたしますが、先ほど私が補助金と申し上げましたが、義務教育国旗負担金の教材費の中にそういうものが含んでおりますので、これはテレビの受像機その他の学校の教材を買う場合の負担金でございます。従って、補助金でございませんので、訂正いたします。
  345. 森中守義

    ○森中守義君 わかりました。  それから、これは蛇足みたいになりますが、できるだけ低廉な受像機、こういうお話がありましたね。御承知のように、最近のテレビは非常に多いのです。しかも、あまり低廉に過ぎると、例のブラウン管がくずれてしまって、なかなか辺陬な土地においてはこれの修理ができません。だから、一年に一台ずつ新しく更新していくということは、これまた文部省予算としても大へんなことでしょうし、できるだけ長く、しかもそう簡単にくずれないような、少々思い切ってかなり高度のものを設置されるように、この点は特は要望を申し上げたいと思います。  それから、最後にもう一つ。先刻のお話ですと、全国の公民館など公共施設にも文部省はお考えのように、局長はお答えになりました。その通りに解釈してよろしゅうございますか。
  346. 福田繁

    政府委員(福田繁君) もちろん、学校と同様に、公民館におきます各種活動にそういったものを利用する場面が非常に多いのでございますので、従って、この際、予算は十分ではありませんけれども、公民館の設備の補助金の中から、若干そういうテレビの受像機を買う場合に補助をいたしております。従って、今後、補助金は少うございますけれども、できるだけ、さっき申しました学校と同様に、ある程度規格化した、耐久力はもちろんなければいけませんが、なるべく安いそういった受像機を普及していきたい、こういうように努力いたしております。
  347. 森中守義

    ○森中守義君 今、民間放送あるいはNHK、こういうものを中心にして、放送審議会というのが発足しつつあります。しかも、郵政省が計画をしている、今度この国会に出されておそらく流産になるのでしょうが、新しい計画されている放送法の中には、テレビも含めて放送番組審議会というものが計画されております。この中には文部省は構成要素に入っていなかったように考えておりますが、その必要はお考えになっておりませんか。
  348. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 私ども郵政省と連絡いたしまして、そういった面についても種々話し合って参ったのでありますが、要するに、この教育関係の学識経験者を入れるというようなお話でございますので、そういった場合に相談をして善処したいと考えております。
  349. 西田信一

    ○西田信一君 文部大臣に、体育団体に対する補助の問題について、一点だけお伺いしたいと思います。前々国会で社会教育法が改正を見まして、運動競技団体に対する国の補助の道が開かれたわけでございます。その結果といたしまして、昨年の予算では、日本体育協会に対しまして一千万円、あるいは庭球協会に対しまして、デビス・カップではないかと思いますが、百五十万円、また本年度予算におきましては、アジア大会に対する補助金が六千万円、また体育協会の運営費あるいはIOC総会に対する補助金一千万円を組まれているわけであります。  この憲法第八十九条の解釈では、これはいわゆる教育活動をする団体として運動競技は除外するという解釈に立って、こういう改正が行われたことはその通りでございますが、そこで、私お伺いしているのは、このように、この改正によって全国的に、あるいは国際的な行事を行う団体に対して国が補助する、こういう道が開かれたわけであります。しかしながら、それ以外の団体、たとえば都道府県等における、都道府県を単位とするところの体育協会等々のこれらの団体に対しましては、一切国の補助はもとより、地方公共団体の補助の道も閉ざさたているわけであります。非常に体育の問題を政府が重要視されまして、体育局を作る、あるいは体育デーを設定するというふうに、積極的ではあります。私も非常にけっこうだと思うのでありますが、このような全国的な、あるいは国際的な事業を行う団体に対して、国が補助を行うという道を開いただけで、その他の団体は一切その道が閉ざされているが、この点について大臣はどのようにお考えになられますか。これでよろしいとお考えになるか、ないしは、さらに御検討になって、小さな団体とは申しませんが、少くとも都道府県単位の体育団体等に対しまして、地方の都道府県等の地方公共団体がその意思によって補助を出し得るというような道を開いてやるという必要があろうと私は考えるのでございますが、大臣の御見解と、またこれに対する御方針とを、伺っておきたいのでございます。
  350. 松永東

    国務大臣(松永東君) 御指摘になりました点は、この間も問題になりましたのですが、これは何とかして検討して、支障のないようにしたいと思って、文部省は今研究中でございます。
  351. 藤田進

    委員長藤田進君) ほかに御発言もなければ、これにて質疑を終局することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  352. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。  別に御発言もなければ、これより直ちに採決に入ります。  文部省設置法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案を衆議院送付の原案通り可決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  353. 藤田進

    委員長藤田進君) 多数と認めます。よって、文部省設置法の一部を改正する法律案は、多数をもって、原案通り可決すべきものと決定いたしました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容、その他自後の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  354. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     松岡 平市  島村 軍次     大谷藤之助  大谷 贇雄     西田 信一  増原 惠吉     後藤 義隆  劔木 亨弘     上原 正吉  松村 秀逸     中野 文門  永岡 光治     矢嶋 三義  田畑 金光     伊藤 顕道  森中 守義     千葉  信   —————————————
  355. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、継続調査要求の件についてお諮りいたします。  前国会に引き続き、本委員会において鋭意調査を続けて参りました国家行政組織に関する調査国家公務員制度及び恩給に関する調査、及び国の防衛に関する調査、以上三件の調査につきましては、いずれもその対象が広範多岐にわたっておりますために、相当長期にわたり一貫した調査を行う必要があると存じますので、諸般の情勢にかんがみ、この際、閉会中における継続調査要求することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  356. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  なお、継続調査要求書の作成については、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  357. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないものと認め、さよう取り計らうことにいたします。   —————————————
  358. 藤田進

    委員長藤田進君) 次に、今期国会において本日までに付託されました請願百八十八件について審査を行います。  速記をとめて。    〔速記中止
  359. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記をつけて下さい。  ただいま請願百八十八件について審査を進める手はずにいたしましたが、速記をとめ懇談いたしましたところ、千葉委員から、本請願に関しては、明日以後、理事会等においてさらに慎重検討の上、議題に供すべきだとの御発言がございました。さよう取り計らって御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  360. 藤田進

    委員長藤田進君) さよう取り計らうことにいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後七時二十七分散会