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政府委員(
八巻淳之輔君) 昨年の十一月十五日の臨時恩給等
調査会の
報告に基きまして、今回の改正案が
提案されたわけでありますが、この
報告の中での重要な案件につきましては、大体網羅されて今回改正を見ている、こう
考えております。すなわち、大きな柱といたしましては、軍人恩給と文官恩給相互間の不均衡を是正する、あるいは軍人恩給内部における、あるいは文官相互間におけるそうした不均衡あるいは不合理の点を是正する、こういうような点につきまして、いろいろな意見が出ているわけであります。また、もう
一つは、
昭和二十九年一月一日前に退職した
公務員の恩給というものが一万二千円ベースになっている、その後に退職した
公務員の恩給が一万五千円ベースになっている、こういうふうな意味で、その一万二千円時代の恩給の
基礎というものを、その後の物価水準に応じて適当に見直すという措置、すなわち恩給の
給与ベースのベース・アップ、こういう措置、これらが答申案の中でも大きな柱でございます。
具体的に申しますというと、公務扶助料の問題におきましては、これは軍人の恩給と文官の場合、不均衡が、少くとも
昭和二十八年の八月一日前退職者であるところの旧文官の公務扶助料につきましては、特殊公務四十割、普通公務三十三割というような倍率の
適用を受けまして、従いまして、兵と同等のものにつきましては五万三千二百円という公務扶助料を受けている。しかるに、その後の扱いといたしまして、兵の
関係の公務扶助料の倍率というものが二十六・五になっている。すなわち一万二千円ベースにおきまして、三万二千二百四十五円という額になっているというようなところで、非常に扱い方が、同じ時代に死亡した者について扱い方が不均衡であるというようなところにおきまして、何らかの方法でその不均衡を除去する、解消するということが望ましいという
結論に答申はなっております。その意味におきまして、これを今回三十五・五の倍率を
適用するということと、同時に、べース・アップを行うという
考え方をとったわけであります。
また、傷病恩給につきましては、
報告の中で、この第一項症の額というものを適当な額に増額をせいという点につきましては、今回の
法律案の中でも、十一万六千円という第三項症の基本年額を、さらにその後の物価水準等を
考えまして、十七万一千円という額に引き上げ、第一項症を一〇〇としまして、下の方はそれぞれの割合になっております。以下の各項款症におきましても、それぞれ引き上げるという措置を講じたわけであります。さらに、特項症、第一項症、第二項症という重症者につきましては、答申案の中でも特に重症者に厚くという精神が打ち出されておりますので、これらにつきましては、介護手当年額二万四千円というものを加給するということにいたしたわけであります。
なお答申の中では、退職後の出生した子女について加給制度が傷病恩給にはない。これは何らかの適切な措置を講ずべしということにされているわけでありまして、そのために、今回の措置におきましてもその点を考慮する。また、傷病恩給の事後重症の場合の、すなわち退職後五年経過後の事後重症あるいは五年経過後の不具廃疾、こういうものにおきますところの
給与の始期というものが、従来、恩給審査会の議決の翌月から、こうなっておりましたが、これを議決の翌月からではなくて、前にさかのぼって給付することができる、こういうことにしたわけであります。これも
報告の中の有力な意見として現われております。
その次に、各種恩給を通じてのシャフトになる、すなわち恩給の仮定俸給でありますが、仮定俸給のベース・アップの問題、これにつきましては、
報告は、一万二千円ベースをもとにしたところの旧退職者の恩給というものが、これは政策的に考慮しても、どうしても一万五千円ベースに持っていくのが至当であるというような意見が出ております。この問題につきましても、今回の立案におきましてはこれを尊重して取り上げておるわけでございまして、そのベース・アップにつきましては、しかしながら、上薄下厚という精神を加味いたしまして、兵隊のあれで申しますると、準士官以上すなわち少尉以上、尉官以上のクラスにおきましては全面的なベース・アップではございませんで、ある
程度の制限を加える、こういうふうな形で、ベース・アップについての
報告というものをこういうふうに実現いたしておるわけでございます。
その他、軍人の、実在職年の通算、この場合についても、通算についていろいろ現在不均衡があり、これを完全に通算せよと言われまして、その
通りにいたしております。また、
昭和三十三年年六月三十日前退職者のいわゆる第二次不均衡是正の際の増額につきましては、六十才未満というのを妻の場合も六十才未満というふうに
適用してあったのでありますが、妻は六十才未満であっても増額分を均霑すべきであるという意見が有力でありまして、その
通りに今回の立案によってしたわけであります。
従いまして、以上申し上げましたように、大筋といたしましては、昨年の臨時恩給等
調査会の答申というものは、ほぼ網羅的に、今回の
恩給法の一部を改正する
法律案の中で盛り込まれておる、こういうことがいえると思うのであります。