○
政府委員(
八巻淳之
輔君)
恩給法等の一部を
改正する
法律案の
内容につきまして、
概略御
説明を申し上げます。
お手元に御配布申し上げました「
恩給法等の一部を
改正する
法律案の要旨」というのをごらんいただきたいと思います。
第一点は、旧
軍人の
公務扶助料の
増額でございます。で、この
倍率を兵において三十五・五割とする。
倍率は、
公務扶助料の額を計算いたします場合には、御案内の
通り、
普通恩給というものを
土台に計算されております。すなわち、
普通恩給と申しますのは、相当年限を勤めましてそうして
退職しました場合に、この
普通恩給が支給されるわけでございます。その
普通恩給を受ける者が
死亡したという場合には、
遺族は
普通扶助料というものが受けられる。それがつまり
普通恩給の二分の一になっております。この
普通扶助料に対して、
公務扶助料を出す場合について、
普通扶助料に対して一定の
倍率をかけたものが
公務扶助料の額になるわけでございます。その
普通扶助・料に対する割増しの率と申しますか、これが
倍率でございます。この
倍率を、従来兵において二十六・五割という
倍率でございましたのを、三十五・五割というふうに
引き上げる。この
引き上げ方につきましては、準
士官以下「の分だけにつきまして
引き上げる。
尉官以上につきましては
現行倍率をそのまま据え置く、こういうことにいたしております。と同時に、四で書いてございますように、
恩給年額計算の
基礎となる
仮定俸給の
年額の
引き上げを行い
増額する。すなわち、現在
仮定俸給の
年額は一万二千円
ベースでございますが、これを
原則として一万五千円
ベースまで持っていくということによりまして、
俸給年額を
引き上げることと、
倍率を
引き上げる、この両建によりまして
公務扶助料の
増額をいたそう、こういうものでございます。
この一万二千円
ベースの」現在の
仮定俸給を一万五千円
ベースに
引き上げるという
引き上げ方におきましては、上の方を相当つめておるという点につきましては、四のところで申し上げます。それから、第二点は、
傷病恩給の
増額でございます。
傷病恩給の
年額は、これは、第一
項症を十七万一千円とし、以下それぞれ五割ないし八割
程度を
増額するとともに、
階級差をなくする。」、こうございます。
傷病恩給というものは、御承知の
通り、
増加恩給と
傷病年金と、こういう二つに分れております。で、
増加恩給につきましては、その
傷病恩給のほかに
普通恩給が入っております。
傷病年金につきましては
傷病年金だけ、こういうふうなことになっております。第一
項症から第七
項症までが
増加恩給、第一
款症から第四
款症までが
軍人の場合は
傷病年金、こういうふうになっております。で、まず全
廃疾の第一
項症の額というものを、現在十一万六千円という額を
——丘の場合でございますが、十一万六千円という
年額を、今回十七万一千円というものに
引き上げまして、以下順次下の
項症におきましても逐次
引き上げていく。これによりまして現在よりも五割ないし八割
程度の
増額になっております。この
増額の
程度につきましては、別な表に掲げましたように、それぞれ八割ないし五割
程度の
増額になっております。
それから、この
傷病恩給につきまして、第二点は、
特別項症、第一
項症、第二
項症というものにつきまして、
介護手当を年二万四千円
加給する。ただいま申し上げました
年額、すなわち一
項症におきましては十七万一千円というのが
基本年額でございますが、このほかに、
特別項症、第一
項症、第二
項症というふうな
重傷者につきましては、そうした
介護を要するような
重傷者につきましては、
介護手当を別に年二万四千円
加給するということにいたしております。
このほか、さらに
増加恩給受給者の
退職後の
子女についても
加給を行なっております。現在この
家族加給ということが
増加恩給の場合に行われておるのでありますが、これは
退職時の
状況において現存したところの
家族に対して給するというのが
建前になっておりますが、
退職後出生をした
子女については
加給をつけないということになっておったわけです。しかしながら、昨年の
臨時恩給等調査会の答申にもございます
通り、
退職後の
子女については、
重傷者については特にその
加給を考慮した方がいいという御意見もございましたので、この
退職後の
子女についても
加給をつける、こういう
改正になっております。
それから第三点は、
普通恩給と
普通扶助料の
増額でございます。これは
文武官を通じての問題になるわけでございますが、
普通恩給、
普通扶助料の
増額につきましては、これは
仮定俸給の
引き上げというものが
土台になるわけでございます。この
仮題俸給の
引き上げ方につきましては、次の項に
説明してございます。この
仮定俸給の
引き上げを行いますが、この
普通恩給、
普通扶助料における特に考悪いたしました点は、六十五才以上の
高齢者について、
増額の
実施時期を
公務扶助料のそれと同様に給する。つまり、
あとで御
説明申し上げますけれども、
増額の
実施時期というものを、
原則としては
公務扶助料を
傷病恩給よりも二年おくれてやるということにいたしておりまするけれども、六十五才以上の
高齢者については、
公務扶助料及び
傷病恩給と同様に今年の十月から
実施する、こういうことにいたしております。
それから四番目は、
仮定俸給については、「
文武官を通じ
准士官以下にあっては、一万五千円
ベースとし、また、
尉官にあっては、
現行仮定俸給と一万五千円
ベースの
仮定俸給との
差額の九割ないし七割、佐官にあっては、その五割ないし二割をそれぞれ
現行の
仮定俸給に加えたものをもって
仮定俸給とし、将官については据えおきとする。」、
仮定俸給というのは、先ほどから申し上げましたように、
恩給金額を計算いたします場合に
基礎になりますものは、
退職時の
俸給あるいは
死亡時の
俸給、こういうことになっております。しかしながら、その後の
物価水準の
上昇等によりまして、
死亡時の
俸給あるいは
退職時の
俸給というものを漸次見直していくということになりますというと、別の新しい
俸給に見直す、この場合に
仮定俸給といっております。この
仮定俸給というものを今回一万二千円
ベースから一万五千円べ
ースまで
引き上げよう、こういう
考え方でございます。この
引き上げるに当りましては、
准士官以下につきましては大体全面的に一万五千円
ベースまで持っていく。しかしながら、
尉官以上の
階級につきましては、相当これを押えていく。こういう
考え方でございます。すなわち、
尉官につきましては、現在の
仮定俸給、すなわち一万二千円
ベースと一万五千円
ベースの
仮定俸給の
差額の、
少尉クラスの場合は九割、
中尉クラスであれば八割、大尉クラスであれば七割、少佐におきましては五割、中佐におきましては四割、大佐におきましては二割という
程度の
増額をするという
程度にとどめたわけでございます。また、将官クラスにおきましては、全然一万二千円
ベースから一万五千円に上げない。
現行のまま据え置く。こういうことにいたしております。
それから、今まで申し上げました
公務扶助料、
普通扶助料、
普通恩給を通じまして、今回の
増額措置について年令制限を加えておることでございます。すなわち、扶助料につきましては、妻、子、六十才以上の父母、祖父母についてだけ行う。すなわち、言いかえれば、
遺族でありまするけれども、六十才未満の若い父母、あるいは祖父母もございますかもしれませんが、そうした
遺族については六十才に到達するまでその
増額分を停止する、こういう形にいたしております。それから
普通恩給の方につきましては、これは御本人でございますが、六十才以上の
退職者及び
傷病恩給を受ける者についてだけ行う。従いまして、裏を返せば、六十才に到達するまでその
増額分は停止される、こういうことでございます。
そのほか雑件につきまして、「通算その他」というところで、第一点は、「
軍人の実在職年の通算」、これは実は
軍人の実在職年というものは、
昭和二十八年の
法律百五十五号のところにおきましては、七年未満の
軍人の実在職年は算入されないと、こういうことになっておったのでございますが、その後の
改正におきまして、
軍人の
恩給の
基礎といたしましては、これを一年以上七年未満のものであっても算入する、こういうことになったわけでございます。しかしながら、その算入の仕方におきましては十二年で打ち切る。それ以上幾らあっても、それは
年額の計算上プラスにならないというふうな
措置がなされておったわけです。また、
軍人の在職年が一年以上七年未満の在職年を文官が持っておったと仮定いたしますと、その場合には文官
恩給を一受ける場合の
基礎の在職年には
軍人の在職年というものが通算されない、こういうことになっておったわけです。こういうようなことで、
軍人恩給の内部におきましても、
軍人、文官相互間におきましても不均衡の問題がございましたので、この点は
臨時恩給等調査会においても指摘せられておる
通り、この通算を
実施しようと、こういうことにしてあるわけでございます。
それからその次は「
昭和二十三年六月三十日前
退職者の妻の扶助料に対する六十才の年令制限の撤廃」、これはどういうことかと申しますというと、
昭和三十一年の
法律百四十九号というものによりまして、
昭和二十三年六月一三十日前に
退職した方、まあ主として——主としてと申しますよりは、
給与体系が全面的に
改正になる前に、すなわち旧
官吏俸給令時代の
退職者、こういう方々について、
昭和三十一年の
法律百四十九号で、その後に
退職した人との不均衡を是正するということで、そういう方々についての
恩給を
増額いたしたわけでございます。この際に、その
増額分につきましては六十才以上の方々についてだけ
増額する、こういう抽置をいたしたのでございます。従いまして、
遺族である妻でありましても、六十才にならなければその
増額分が均霑しない、こういうことになっておったわけでございます。しかしながら、この点も、今回の
措置によりましてこれを撤廃しよう、妻に関しては六十才未満であっても、これを
増額分は均霑させるべきである、こういう
考え方から、またこの点につきましては、すでにこの
法律の審議の際両院の付帯決議もございましたので、その付帯決ようと、こういうわけでございます。
その次は「
恩給外多額所得者に対する制限の強化」でございます。現在
恩給が、
普通恩給が九万五千円以上の方で、その方が
恩給外所得が、五十万円以上ございます場合には、
恩給額に対して一定の率をもって制限が加えられておるのでございます。すなわち、九万五千円以上、五十万円以上をこす場合におきましては、
恩給額の一五%から、上の方へいきますというと、
恩給外所得が百二十万をこす、こういう場合には
恩給額の三〇%を減らす、こういうことになっておるわけでございますが、これをさらに今回、一五%を二〇%に、三〇%を五〇%にというふうに、大幅に、
恩給外所得が多くなるに従いまして大幅に制限をいたしていこう、こういう
措置が行われております。
その次は「未帰還
公務員に対する扶助料の遡及支給と留守
家族手当、
普通恩給等との調整1「でございます。これは、未帰還
公務員、すなわち、ソ連、中共に抑留されておりますところの
公務員、こういう方々の留守
家族につきましては現在留守
家族手当等が支給されておるわけでございます。ところで、その方々が
死亡が判明するということになりまするというと、留守
家族手当が打ち分られまして、そうして
死亡判明のときから
公務扶助料が支給される、こういうふうなことになっておるわけでございます。ところで、留守
家族手当も何も支給されぬと、こういうような方々につきましては、それまでの間、すなわち
死亡判明までの間、全く未支給の状態に置かれると、こういうような問題もございまするし、また、
公務扶助料の
原則というものが、
死亡時期に遡及して支払われるというのが
原則でございますので、そうした未「帰還
公務員の
死亡判明した方々についての扶助料というものは、
原則として
死亡の時期に遡及すると、こういうふうにいたしたい、こういう考えでおります。しかしながら、その場合に、遡及いたしますことによりましてその間、生きているものとして支給された留守
家族手当なり、あるいは
普通恩給なりというものともこれは調整をすると、こういうことに相なってくるわけでございます。
その他、いろいろと技術的な調整のこまかい問題もございまするが、これは省略さしていただきます。
「
増額等の
実施時期」、以上申し上げました
増額につきまして、その
実施の順序というものがどうなるかと、こう申しますというと、うしろの表についてございますように、大体今年度の、三十三年の十月から始まりまして、十月から
公務扶助料につきましては、まず
増額分の半額だけを
実施していくと。すなわち、たとえば兵の
公務扶助料について申しますというと、兵の
公務扶助料は、ほかの表にございますように、現在三万五千二百四十、五円から五万三千二百円と、約一万八千円
増額になるわけでございまするけれども、そのうちその半額約九千円を十月から
増額いたして参りまして、
昭和三十五年の七月には完全にこれを一万八千円の増までにいたそう、こういうことでございます。
それから、
傷病恩給につきましては、重症者であるところの
増加恩給につきましては、今年の十月から満額
実施をいたし、軽症者でありまするところの
傷病年金につきましては、来年の七月から
実施をいたす、
増額の
実施をする、こういうことにいたしております。なお、
退職後
子女の
加給ということにつきましては、これは来年の一月分から支給する、こういうことにいたしております。
それから、
普通恩給、
普通扶助料、すなわち
ベース・アップだけの問題につきましては、これは
原則としては三十五年の七月からこれが
実施されることになっておりまするが、六十五才以上の方につきましては、
増額分の半額だけを
公務扶助料、
傷病恩給と同時にスタートさせる、こういう
考え方でございます。
それから、通算、あるいは妻の年令制限撤廃というふうな
措置は、これは
ベース・アップなり、
公務扶助料の完全
実施と時期を伺じゆうして、三十五年の七月から
実施いたそうと、こういうわけでございます。
以上をもちまして、大体簡単なる
内容の御
説明を終ります。
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