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1958-04-10 第28回国会 参議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年四月十日(木曜日)    午前十時三十八分開会   —————————————   委員異動 本日委員横川正市君及び吉田法晴君辞 任につき、その補欠として永岡光治君 及び森中守義君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤田  進君    理事            大谷藤之助君            松岡 平市君            永岡 光治君    委員            井村 徳二君            上原 正吉君            木村篤太郎君            剱木 亨弘君            苫米地義三君            中野 文門君            松村 秀逸君            伊藤 顕道君            田畑 金光君            千葉  信君            森中 守義君            矢嶋 三義君            島村 軍次君            八木 幸吉君   国務大臣    国 務 大 臣 津島 壽一君   政府委員    内閣官房長官  愛知 揆一君    内閣総理大臣官    房会計課長   吉兼 三郎君    宮内庁次長   瓜生 順良君    皇室経済主管  高尾 亮一君    防衛庁長官官房    長       門叶 宗雄君    防衛庁防衛局長 加藤 陽三君    防衛庁教育局長    心得      小幡 久男君    防衛庁人事局長 山本 幸雄君    防衛庁経理局長 山下 武利君    防衛庁装備局長 小山 雄二君    文化財保護委員    会事務局長   岡田 孝平君   事務局側    参     事    (委員部第二課    勤務)     川上 路夫君    常任委員会専門    員       杉田正三郎君   説明員    日本国有鉄道常    務理事     石井 昭正君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選防衛庁設置法の一部を改正する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○自衛隊法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○皇室経済法施行法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 藤田進

    委員長藤田進君) これより内閣委員会開会いたします。  委員異動がありましたので、事務局から報告させます。
  3. 川上路夫

    ○参事(川上路夫君) 御報告いたします。  昨日、近藤鶴代君が辞任されまして、後任として井村徳二君が委員に選任されました。また本日、横川正市君及び吉山法晴君が辞任されまして、後任として永岡光治君、森中守義君が、それぞれ委員に選任されました。  以上でございます。   —————————————
  4. 藤田進

    委員長藤田進君) まず、理事補欠選任の作についてお諮りいたします。  昨日、永岡光治君が委員を辞任されましたため、理事に欠員を生じておりましたが、本日、同君の委員復帰に伴い、この際、永岡君を再び理事に選任することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  6. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、次に、防衛庁設置法の一部を改正する法律案開法第三三号)及び自衛隊法の一部を改正する法律案(閣法第三二号)及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  7. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 昨日に続いて、防衛関係について二、三質問申し上げたいと思います。  政府の第一次防衛力整備計画は、こういうミサイル時代に入りまして再検討を要するものではないか、こういう意見が各方面から強く出ているわけでこういう意見に対して、防衛庁の統一した見解があろうと思いますが、  その面について、まず長官の御見解を伺いたいと思います。
  8. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 御質問の点についてお答えいたします。防衛力整備目標等の中にも、必要があればこの計画は再検討することができるといったようなことも示してあるわけでございます。三十三年度は、御承知のように、整備目標に沿い、当該年度として必要であり適当と認むる事業計画を立てまして、その線に沿って陸上その他の部隊漸増計画を具体化したものでございます。今後の事態につきましては、またいろいろな情勢変化その他の関係考慮いたしまして、必要の事態ありと認めたならば、これに対して再検討を加える、そのことについての考慮を加えるということになるわけでございます。ただいま、再検討をするということを今日の段階で明瞭に申し上げるということは差し控えたいと思います。
  9. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 防衛庁国防政策とか防衛力整備増強を急いでいるというような、そういう情勢の中で、今申し上げた第一次防衛力整備計画に続く次の計画が当然打ち出されなければならぬ、そういうふうに常識としても考えられるわけです。そこで、もちろん、現在の段階でまだ結論を得ていないとしても、その過程においてある方向は出ていると思うのですが、そういう面について、大綱でけっこうですか、お伺いしたいと思うのですが……。
  10. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 国際情勢並びに軍事状況については、絶えず検討を加えているわけでございます。従って、それに応じ、装備刷新、また新兵器開発研究といった部面において、常に最善の努力を払っているわけであります。これらの研究と相待って、今後の整備関係をどうするかということが当然に起ってくるわけでございますが、今はその研究段階でございまして、これはいわゆる質というものに重点を置くということは当然のことでございまして、いわゆる装備刷新ということが重大な課題になっております。その意味において、技術研究所においても、あらゆる部面から重点的に各種の問題を検討いたしております。その成果と相持って、これらの問題が具体化するわけでございます。防衛庁内においても、整備装備委員会というものを部内に設けまして、研究を今進めている段階でございます。従って、目標といたしましては、いわゆる質の改善、こういう点に今後重点を置いていく、その具体的の方策は今検討を加えている、こういう段階で、まだ最終的の結論には達しておりません。
  11. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 長官は、質の改善に今重点を置いて計画考慮している、こういうことでありますが、防衛庁に限らず、各官庁ともやはり先を見通し計画がなしには、仕事はなかなか進められないと思うわけです。従って、何か仕事を進めていく上についての計画があると思うのです。そういうものについて、現在、方向でもけっこうですから、そういう点についてお伺いしたいと思うのです。
  12. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 他の諸官庁仕事においても同様であろうと思いまするが、特にこの防衛関係においては、昨年、将来にわたる計画目標というものが一応策定されておるわけでございます。三十三年度は、まだそれの実行の第一年度に当っておるわけでございます。従って、大体の見通しというものは持っているわけです。その実行を個々の年度において、この期間内にどうするかという具体的の計画が、今日検討課題になっておるわけでございます。すなわち、三十三年度においては、予算並びに法律案の成立においては、これらの実施計画を具体化し、また、将来の三十四年度計画もこれと見合って、この目標とどう調整をはかってこの漸増の目的を達するかということの研究になるわけでございますが、従って、大きな目標というものはすでに策定されておるものがあるのです。ただ、これに対して再検討をするかどうかという問題も、そういった場合にあわせて検討すべきことはもちろんでございますが、しかし、こうやるのだという結論が、三十三年度の実際の計画というものが立てられ、将来に向ってこうすべきだと、こういう結論が得られるものだと思っております。せっかくそれらについて検討を加えておる、こういう次第でございます。
  13. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 重ねて申し上げますように、現在は第一次防衛力整備計画があるわけですから、これは現在はこういう方針で差しつかえないでありましょう。しかし、それからさらにその先数年を見通し計画がないならば、国の防衛というような大きな仕事は、なかなか進められないと思うわけですけれども、この点についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  14. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいま申し上げた通りでございまして、三十七年度にわたっての船艦の建造、飛行機の製造等の一応の目標はございます。で、その次に来るべき長期計画というものは、これはその当時の事態を想定し、また軍事状況のみならず、兵器歩進、そういったものを十分に考慮に入れなくちゃならぬ問題でございます。これは早くして、かえってその事態に即応しないようになっても、これは不都合を生ずるわけでございます。でありますから、評価を具体的にきめる場合は、もう少し事態の変遷を見て、この次に来たるべき計画というものを策定するのが実際的であり、効果的であり、現実に即するものだ、こういう次第でございまして、まず今日は、絶えず陸海空三自衛隊部隊にわたって、防衛の骨幹となるべきものをとにかくここに作り上げていこうというので、三十三年度がその第一年度になっておる、こういう次第でございまして、もちろん、われわれは将来に向けてのいろいろな構想もないことはないのですが、これを計画化するという段階には至っていない、こういうことを申し上げている次第でございます。
  15. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御承知のように、本年一月五日の毎日新聞紙上に、これはほかの新聞にもあったと思いますが、私は毎日新聞紙上で見たのですが、詳細にして具体的な発表があったわけです、第二次防衛力整備計画について。ここにその切り抜きも持っているわけですけれども、これは、正式に発表にはなっていないと思うのですが、その理由等について詳細にお答えいただきたいと思うのです。
  16. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 報道関係において、将来の長期計画についてのいろいろな情報と申しますか、記事を見たこともございます。しかし、その内容は、これは防衛庁で公表したものでもございません。また、防衛庁にはそういったものが、まだ確定したものはないわけでございまするから、その内容は、われわれがこれは防衛庁計画であるということを申し上げるということには至らないものでございます。
  17. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 先ほども申し上げましたように、現在には、第一次防衛力整備計画というものがあるので、差しつかえがないわけですが、先ほど申されたような理由から、当然、先数年を見通したたとえば第二次防衛力整備計画というようなものがあってしかるべきなんです。なければ仕事はできないわけですね。そういうような意味合いで、第二次防衛力整備計画については当然考えておると思うのです。ただ、ただいまの長官のお答えでは、まだ結論的な段階に至っていない、そういうことでありますが、やはりきまったことだけでも、一部でけっこうですが、そういうことをぜひ私どもは国民の一人として知りたいと思うのです。そういう点についてぜひお伺いしたい。もし、どうしても発表できないということであるならば、その法的根拠を示してほしいと思う。  昨日もその関連のお伺いをしたわけですけれども、やはりもう大体前からの計画であったので、大体方向はきまっておるのではないか、こういうふうに推察されるわけです。その点について、長官のお考えをお伺いしたい。
  18. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 第二次と申しますか、次に来たるべき長期計画がありや、また、あればその内容の三部でもここで申し上げるようにと、こういうことでございますが、実は率直に申しまして、そういったものを持っていないわけでございます。そういう意味において、もう少しこれは事態推移、また現在の段階においては、昨年策定されたものをどうしてこれを実行していくかということに全力をあげておるわけでございます。従って、はなはだ遺憾でありまするが、次の計画についてこうこうであるといったような考え方を申し上げるということは、時期が早い、こう思うわけでございます。また、事実、そういったものの具体的な計画は持っておらぬわけでございます。そういう事態でございます。
  19. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 お言葉ではありますけれども先ほども申し上げたように、一月五日のこういう大新聞に、詳細にかつ具体的に出ておるわけなんで、これ全然根拠がないとも考えられないわけですが、その点どうも納得がいかないのですが、いま少し納得のいくように御説明いただきたいと思います。全然こういうものは考えていないわけですか。一部についてまだ最終段階には至っていないけれども、大体こういうふうなことについては討議されたとか、そういう程度の点を御説明いただかないと、ちょっと納得がいかないのですが……。
  20. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 私はそういったものについての協議をしたこともなく、また、そういったものについて内部で協議をして一定の案ができておるということも、承知いたしておりません。これはまだ時期が早いと思います。その意味において、重ねての御質問でございますが、ありのままを申し上げて私のところあたりでそういう関題を審議し、あるいは話し合ったという事実はございませんでございます。
  21. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 それでは、重ねてお伺いいたしますが、今そういうものはないとおっしゃいますが、先ほど来申し上げておるような意味で、先数年を見通した第二次防衛力整備計画というようなものはぜひ必要なわけですね。これは長官も認めるだろうと思うのです。その次の計画について、大体いつごろを目途として検討を進めておるのか、そういう点についてお伺いしたい。
  22. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これはすべて、国際情勢をただ一、二年のことだけを考えてやるということは適当でないと思いまするが、これらの策定については、そういった条件がやや確実なる見通しというものが、今日よりもより確実になるという事態の方が、的確なる計画ができると思うのでございます。そういった意味において、いわゆるばく然たる構想的なものはかりに考え得られるといたしましても、今政府なり防衛庁といたしまして、まだやっと発足したところのこの防衛整備目標の実現というものの着手の時代において、次に来たるべき数年後の計画をここに具体化すということは、どうしても私は時期として適当でないと思うのでございます、今日は、そういった点において、まずす現在きめられておる整備目標を、どうやって時代推移に応じて適応するように実行していくか、こういう問題でまあ一生懸命にやっている、こういう事態でございます。
  23. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、前に問題になりましたサイドワインダー有償供与の問題に関連して、三月の初めごろ、いろいろ雑誌等記事を見ますと、ラドフォードが十二月十七日に東京に着いて、まず百田元首相のもとに参った。また、吉田首相から大野外務次官のところに伝言があって、そうして翌々日の十二月九日に、日米安保委員会が十五時開会の予定を十時に早めて開会して、サイドワインダー有償供与を決定した、そういうような記事があったわけですけれども、その際、岸総理東南アジア訪問の打ち合せだということで言葉を濁しておった。その直後、スタンプ大将からサイドワインダー有償供与の件が発表になった、こういうような記事が幾つかの雑誌に出ておったわけです。  そこで、お伺いしたいのは、こういうふうになると、国防会議性格は那辺にあるかということを疑われるわけです。その間の実情を、具体的に御説明いただきたい。
  24. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ラドフォード、もとこれは幕僚会議議長だったと思いますが、退職後に日本に来られたことも承知しております。ただ、この方の来日が、この日米安保委員会関係あり、また御指摘のサイドワインダーの問題と関係があって、何かあったという事実は、これはございません。
  25. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ないとは思うわけですけれども、相当信頼するに足る雑誌等がそういう記事を載せているので、何かそこにあるのではないかというふうに一応も二応も考えられるわけです。もしそうだとすると、アメリカのセールスマンによって日本防衛政策とかあるいは増強計画が決定せられる、というようなことがここに考えられるわけですけれども、この点について一つ、はっきりしていただきたいと思います。
  26. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 全体の問題についてお答えいたしますが、こういった新兵器と申しますか、そういったものについての防衛庁の態度は、防衛上これが非常に有効であり、性能において、またそれの実験ないし実用において、最も適切であるものを、慎重に検討するわけでございます。これがどこの向うの会社が作るとか、どういつたような事情にあるかというようなことは、これはもう問題外のことでございます。そういった意味において、われわれは、防衛ということに有効適切であるものをどうここに装備していくかと、その必要に応じて……。そういう観念以外には何らこれは影響を受けるべき性質のものでない、こういう私は信念を持っているわけであります。
  27. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 防衛庁防衛力増強計画し、また実際に装備しているわけですが、国防政策国防基本方針から幾分はずれておるのではないか、こういうふうに考えられるわけです。防衛庁は、防衛力増強するに当っては、どうしても世界軍事情勢を正確に把握し、その分析の上に立って、こういう計画を立てなければならない。また、それが当然だと思うわけです。この点は決して秘密事項でも何でもないと思うのですが、その点、一つ具体的にお答えいただきたいと思います。
  28. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 世界軍事情勢につきましては、大体私どもといたしましても特別に知識を持っておるというわけでもございませんけれども共産圏自由圏陣営の大きな対立のもとに冷戦的な状態がいまだに続いておるということは、大きくこれは言えると思うわけでございます。それぞれの戦略体制といたしましても、今までは自由陣営側力ソ連の周辺に幾百の基地を持ちまして、戦略空風の圧倒的なる優勢のもとにソ連を封じ込めるという政策をとって参ったのであります。それで、自由陣営側といたしましては、これらの基地並びに海上兵力、そして航空母艦中心とする機動兵力重点を置きまして、対抗する配備を固めて参っておるのであります。これに対しまして共産陣営側といたしましては、膨大なる在来兵力というものを中心に対峙しておる。  ところが、最近になりますと、新兵器、主として核兵器の部門におけるソ連の躍進が非常に目ざましいということが顕著な事実でございます。で、今まで数年間の間は、米国の方がIRBMその他核兵器におきまして優位を保っておったということは事実であろうと思います。今も、私どもは、少くとも核兵器の量においては自由陣営側が優勢だろうと思っております。ところが、最近になりまして、共産陣営側におきましてIRBM人工衛星等、打ち続きまする画期的な発表があったわけでございます。このことによりまして、今までソ連米国と直接に相対峙する、相撃の形というものは考えられなかったのでございまするが、ICBM実用化されますると、今度はソ連米本土が双方相撃つ態勢になったわけでございまして、今までの米国戦略体制というものは、相当私は影響を受けたのであろうと思います。  ただ、私どもの見ておりますところによりますると、IRBMは、今明年中にこれは実用段階に入ると思います。これは御承知のごとく、米国側におきましては、ジュピター及びソーというIRBMもほとんど実用化段階に入っておりまして、近く欧州方面にも配備しようという計画があるのでございます。ICBMにつきましては、ソ連の打ち揚げの成功の発表がございましたけれども各種の資料から判断いたしまして、今すぐにこれが実用化段階に入るとは考えておりません。おそらく一九六〇年から六一年以降のころに、ICBMというものが実用段階に入るのではなかろうかと思います。しかし、ICBMに関しましては、これはアイゼンハワー大統領も認めておりまする通りソ連の方がアメリカを引き難しております。アメリカが今、ソ連に追いつこうとして必死の努力をしておるわけでございまして、数年後の経過を見ますと、あるいは、大きな技術陣というものを擁しまして、自由陣営側の方が共産陣営側の方に追いつくのではないか。しかし、ここのところは、私どもはまだ未定でざいます。  いずれにいたしましても、ICBMの面におきましては、ソ連側の方が今のところでは優勢でございまするが、現状においてこれを判断いたしますると、自由陣営側IRBM及びこれを打ち出すところの基地というものを持っておるわけでありまして、これがもし実用段階について考えますると、IRBMの方が、射程も短かいのでありますから、正確度におきましても、あるいは核爆薬におきましても、ICBMよりも大きなものを正確に運べるという点に一つの利点があるのではないかと思います。もし現在の基地において、自由陣営側基地がそのまま保有できますならば、私は世界戦略上の大きな変化は今もないというふうに考えてよろしいのではないかと思っております。しかし、ここ数年間の米ソ陣営側におきまする新兵器開発がどの程度違うかということが、私どもの今後大いに注目をしなければならない事柄であると考えております。
  29. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御承知のように、昨年の九月、岸総理は渡米せられたわけですが、それ以来自衛隊質的増強あるいは近代化ということが強く叫ばれてきておるわけです。そこで、この質的増強内容はどのようなものか、長官の御説明をいただきたいと思います。
  30. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 各部隊に対する装備改善、また機械化通信等部隊を充足する、そういった編成の上と、また装備関係においてやっておるわけであります。で、陸においてはあるいは無反動砲であるとか、あるいは自走砲、いろいろな種類の、これはあるものは試験中の段階のものもあります。そういった意味において、空におきましてもその装備改善をはかる。まあ、空においては、御承知サイドワインダーのごときはその顕著なものであると思います。しかしながら、そういった質的改善は、これは基本的研究を必要とするものでございます。  たびたび申し上げましたように、技術研究所の機構をここに改善し、またその研究課題その他において一そうの効果を上げるように、予算等においてもその措置が講ぜられ、また本法律案においても開発本部といったようなことでその性格を実際化すると、こういうことに相なっておる次第でございます。
  31. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 御説明でありますけれども、この質的増強内容ということについては、近代原子戦に参加し得る装備、そういうことが意味せられておるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  32. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) たびたびお答えしたと思いまするが、原子戦に参加するためにわが国核装備をしなければ、これは役に立たないという見解は持っておりません。現在の進歩したる一般兵器——通常兵器という言葉も使っておりまするが、そういったものによっても、その防衛力増強ははかっていけるわけでございます。現勢においてその足らざるところは、これまたたびたび申し上げましたが、集団安全保障の力その他によってそれに対応し得るようにいくのであって、一国が独力であらゆる原子戦に対応し得るような防衛を全部作り上げるということは、今日の国際情勢はそうなっておらぬわけでございまして、わが国も、そういった意味において、それらの情勢と私は別に離れたものではない、こう思っておるわけでございます。
  33. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  34. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して下さい。
  35. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 防空装備委員会では、従来、エリコン型の研究だけだったようですが、現在、ナイキ型のミサイルについても、並行して研究しておるということを言われておりますが、この点を明確にしていただきたいと思います。
  36. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) を答え申し上げます。防空装備委員会は昨年の十一月に作られたものでございまして、これは事務次官を委員長といたしまして、関係の局長及び幕僚長が委員になっております。作られました目的は、わが国の将来の防空体系をどういうふうにしたらいいかということでございます。御承知のごとく、最近GMの開発研究が非常に進んでおりまして、ある分野におきましては、有人機にGMがとってかわろうとしているような情勢も、御承知通りだろうと思います。将来、わが国の防空の任務に当る上におきまして、そういうふうな有人機とGMというふうなものとの構成並びに任務の分担をどういうふうに考えたらいいのか、またその割合はどういうふうになるだろうか、並びにこれの防空のためには、まず早く、侵略してくるところの飛行機を探知するということが必要でございまして、その探知の組織体系というものをどういうふうにしたらいいか、その次には、探知いたしましてから、早く、わが方の要撃機に対しまして、これを発進させるための時間的な問題、どうすればこれを短縮できるかというふうな問題、並びに高射砲の問題が一つあるわけでありまして、レーダーをのがれるために、非常に低空で飛行して参るということもあり得る。こういうような場合に対して、GM及び飛行機及び高射砲との任務の分担をどういうふうに考えたらいいかというようなことを研究する任務を持って発足しておるのでございまして、今お尋ねになりましたように、ナイキがどうの、かにがどうのというふうなことまでは、研究はいたしておりません。目下、そういうふうな大きな全般の体系につきまして、研究を始めておるような状況でございます。この秋ごろまでに結論を得たいと思っております。
  37. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 次に、ミサイル軍備と核軍備というものは、密接不可分の関係にあると思うわけであります。これが近代装備の中で切り離されて入ってくるとは考えられない。そうだとすると、防空装備委員会でこの研究あるいは開発目標、こういうことも明らかになってくると思うのですが、防衛庁核兵器とか核弾頭保有の構想を十分考えることもできると思うのです。そこで、この点に対する長官見解をお伺いしたいと思うのですが。
  38. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ミサイルというのは、いろいろ種類も多くございまして、その性能、構造も非常に違っております。従って、このいわゆる誘導兵器研究開発とか、またこれを実用、いわゆる装備に使うということにつきましては、わが国としては、核装備をしたいわゆる誘導兵器というものを装備するとかいうような考えは持っておらぬわけでございます。その意味におきまして、ミサイルの研究それ自身は非常に心要である、しかしながら、それが即核兵器に通ずるものである、一体不離のものであるという見解はとっておらぬし、核もまたそうであります。  防空については、領空に来た相手方の航空機に対して、ただそれを防御するという意呼において、普通の機銃よりはいわゆる誘導兵器というものが効果的であり、またその精度において非常にまさっておるわけでございます。そういった意味において、単純なる防御的の要務を達し得るものはどういうものがあるかということについては、十分研究する必要があると思う。しからざれば、せっかく多額の経費を使って作りました航空機というものが、その能力において漸次低減するということがあっては相済まぬ。また、現実に防空、防御という見地からいっても、十分な機能を発揮できないということをおそれるわけであります。そういった意味において、その間にはっきりした区分がある問題でございまして、単純なるミサイルという言葉のうちに、必ずそれは核兵器であり、核弾頭をつけるということには相なっておらぬ。アメリカにおいて研究されておる各種のミサイル、誘導弾兵器、これにもはっきりとその二つの種類があるわけであります。
  39. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 アメリカソ連のミサイル発達の段階と今後の見通しについて、長官はどのように把握しておられますか、その点を明確にしていただきたい。
  40. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 詳細は政府委員の方からお答えした方が適切でないかと思いますが、先ほど加藤防衛局長からのお答えのうちにもその点には若干触れたと思いますが、いわゆる大陸間の弾道弾といった部面、長距離ですが、これにおいてはソ連が御承知のように一歩先んじておる。中距離弾道弾に閲する限りにおいては、これは米において相当の発展を示して、あるいは優位であると申し上げて、今日の段階において……。ということが、一般の軍事家の認めておるところでございます。それ以外の各位の誘導弾については、これは報道が区々でございます。しかし、いろいろな種類については、私どもの情報においては、米国においてこれが多くあるという情報、資料を持っておるわけでございます。従いまして、問題の点は、一番今日の軍事情勢において問題視されるのは、いわゆる長距離の弾道弾ということであると思います。この点については、ソ連が一歩先んじた事実に対して、目下米国はその方面に非常な力を入れてやっている。従って、将来のことは予測困難でありますが、これにも将来は均衡を保つというような事態になることが期待されるのではなかろうかと、こういうふうに、われわれ並びに一般の軍事家も、そういうことを観測しておるわけでございます。
  41. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 在日米空軍の訓練内容を、見ますと、三分の二は全武装で上空にある、残りの三分の二は地上で待機しておる、こういう訓練をしておるわけですが、こういう点からしても、米軍の撤退を要求しないで、核火器だけの持ち込みを拒否するこいうことは、なかなか実効は上らないのではないかと、こういうふうに考えられるわけです。常に、核兵器は持ち込みしないと、総理を初めそういう答弁でありますけれども、実際問題とし、こういう実情では実効は上らないと思うのです。この点について長官のお考えをお伺いたい。
  42. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 駐留米空軍が訓練をするということは、これは部隊としては当然のことであろうと思います。その訓練の割合が、地上部隊あるいは実際の空中訓練というものが今仰せになったような割合であるかどうか、これは十分に、私は明確な割合等はちょっと申し上げることはできませんが、しかし、いずれにいたしましても、航空機のあるところ必ず、わが国の航空自衙隊においても熱心に訓練をし、一定の仮定のもとに規則的にやらしておるわけでございます。しかし、その訓練そのものが、これが必ずしも核兵器に通ずるものだということは、私はいかなる国に対しても言えないのみならず、わが国の駐留米軍がそういった訓練をやっているから、これは核兵器に関連があるということには、これは関連を待つものであるとは思っておりません。
  43. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 時間の関係で、最後にいま一点お伺いして、質問を終りたいと思いますが、昨日もお伺いした内容の一部として、グラマン航空会社に対してスーパー・タイガー三百機の発注を行なったと発表があったわけですけれども、このことについて国防会議でもうすでに決定されたのかどうか、まずこの点をお伺いしたい。
  44. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これはF—86Fの次に来たるべき新機種という問題てあろうと思います。防衛庁においては、相当長期間にわたりましてあらゆる角度から検討いたしまして、次期戦闘機としてはF11F—1F、こういうものが最も適格したものであるということに内定いたしました。それを国防会議に付議して御審議を仰ぐという今日は段階でございまして、まだこれが政府として決定したという次第ではございません。
  45. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 関連。今長官の仰せられましたこの新機種の性能を、お差しつかえない限り、防衛局長からでもお話し願いたい。
  46. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) F11F—1Fというのはグラマンの飛行機でございますが、これは白重が約一万五千。ボンド、最大速度が二マッハ級であります。実用上昇限度が五万数千フィート、行動半径は二百マイル以上、所要滑走路は約七千フィートということでございます。
  47. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 値段は幾らですか。
  48. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 約百万ドルです。
  49. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 長官に重ねてお伺いしますが、もしすでに発注を行なったとすれば、国防会議の決定を待たないで発注できるわけなのですか、その点を……。
  50. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 政府方針が決定してその後発注ということは、まだその段階に至りません。現在はもちろんやっておりませんが、これはまだ検討を要する部面が相当あるわけであります。すなわち、生産の計画、時期、そういったようなことを十分検討する期間が今日所要なのです。そういった具体計画がない前に、発症という問題は起らぬわけでございます。
  51. 伊藤顕道

    伊藤顕道君 ただいまの点をお伺いして質問を終る予定であったわけですけれども、次に項目が大きく転換いたしますので、ちようど区切りがいいので、これで私の質問を終りたいと思います。
  52. 田畑金光

    ○田畑金光君 最初に、今度の法律改正で自衛官の数もだいぶふえて、膨大な機構になってきたわけですが、予算の面から見ても、とにかく国の予算のうち一例以上を防衛庁の経費が占める、こういう膨大な機構になっているわけですが、この防衛庁設置法の第二条を見ますと、「総理府の外局として、防衛庁を置く。」、こういうことになっているわけです。外局でこれだけの膨大な機構というものは、防衛庁以外にこれはないわけですが、名は体を表わすで、この機構をさらに昇格させて省ぐらいにしようというような考え方等は持っていないのですか。
  53. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 仰せのごとく、防衛庁の機構は、防衛整備漸増とともに逐次増大してきたことは仰せの通りでございます。こういった膨大な機構が外局にあることがどうかという御質問であります。各国の状況、実例を見ましても、防衛を担当するについては膨大な機構、またこれに即応する組織、体制を整えておるのが実情であろうと思います。この問題は、しかし、国の行政機構といった全体から考慮すべき必要のある問題でございまして、今すぐこれを、機構の改変を私どもが提案するという考え方はいたしておらぬわけであります。これは将来十分検討した上で、国家全体の行政機構の調和、その上に立って考慮すベき問題で、単独に防衛庁自身のどうであるというもので決定すべきものではないと、こういうように私は思っております。
  54. 田畑金光

    ○田畑金光君 今、長官のお話の中に、各国のという前置きがありましたが、たとえばイギリスとかアメリカとかフランス、ソ連、こういうようなところは、どういう工合になっておるわけですか。
  55. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) アメリカは、御承知のごとく、一九四七年の国家安全保障法等によりまして、国防省というものを戦後に作ったわけであります。国防長官のもとに、陸軍長官、海軍長官、陸軍長官がそれぞれおります。しかし、これは国防長官のもとにおるわけでございます。それから、まあ概括的に申し上げますと、イギリスにおきましても、これは戦後国防省というものを作りました。しかし、イギリスにおきましては、国防省と相並びまして、陸軍省、海軍省、空軍省というものが併存いたしておりまして、この陸、海、全軍大臣というものは、いずれもこれは大臣であります。アメリカとはちょっと違うわけであります。アメリカは陸、海、空軍長官というものは国防長官のもとにおるのでございますが、英国におきましては、国防大臣と陸軍、海軍、空軍の大臣というものは相並んだ存在になっております。フランスにおきましても、戦後陸軍省、海軍省を廃止いたしまして、国防省を設置いたしました。国防省のもとに陸軍部、海軍部、空軍部といったものを置いておりまして、陸軍、海軍、空軍の長官はイギリスほど高い地位は与えられておりません。しかし、アメリカのように国防長官の純然たる下位機関ということではなしに、これは閣僚クラスの人がたっておるようでございます。それからソ連は、御承知通り、これもたびたび変革がございましたけれども、現在は国防省というものを置きまして、陸、海、空の三軍を統括しております。
  56. 田畑金光

    ○田畑金光君 行政機構改革については、もうこの国会でもたくさんいろいろな各省設置法が出て、いずれも機構の拡大、人の、特に管理職の人をふやすという機構改草案が出ているわけですが、防衛庁については、いわゆる内容は毎国会ごと、毎年膨大になっているのだが、ただ形だけがどうも発足当初来の方式を踏んで、いろいろな面で不都合がありはせぬか、外部から見て心配するわけですが、アメリカも今の御説明のような形になっているし、まあとにかく名前を見ますと、多くの国は、国防省、こういうものができているわけで、そろそろそういうようなことになっていくのだろうと、こう見ているのですが、長官としては、そういうような機構の中に持っていくような努力等はなさっておらないのか。全般的な行政機構との関連というお話でありますが、聞くところによりますと、今度の総選挙等には、行政機構の刷新について何か公約を政府与党は掲げられるようですが、そういう中で、この問題も処理していこうとするお考えなのかどうか、明確に一つお聞かせ願いたいと思います。
  57. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 防衛庁の根本的な機構改革の問題、これは私はまだ具体的に検討いたしておりません。今御指摘の政府全体の行政機構の改革といいますか、そういった案についても、まだ十分に連絡を受けておらぬわけであります。  一言この機会に申し添えますが、今回の自衛隊法改正、防衛庁設置法の改正についても、相当の自衛の増加を見ております。しかし、防衛本庁におきましては、これは衛生局の一人の増員という程度でございます。いわゆる自衛官以外の職員の増加は、主として技術研究本部、これが約五十人ばかり増員のことになっております。これは技術研究開発の必要が、たびたび申し上げたような次第でございまして、その他は調達の関係でございます。これは予算の増大に伴って、どうしても調達を適切にするために、所要の増員を必要といたす次第であります。そういった意味においての若干の増員をここに考案して提案をしておるわけでございまして、いわゆる俗にいうシビルと申しますか、そういったような一般職員という面においては非常な、むしろ事務の増加に伴うだけの所要の定員というものの増加を抑制しておるというような次第でございます。なお一方、陸自衛隊の増加につきましても、一般職員の増加はほんの百人ばかり必要とするものを掲げておる、こういうわけでございまして、極力経費の節約と事務の能率の増進をはかっていこうという趣旨に考えておる次第でございまして、御質問の全体の機構の問題等は、これは慎重に考慮する必要がある問題だと考えておる次第でございます。
  58. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから、この自衛隊法等を見ましても、吉田内閣発足当初のごまかし、再軍備をどうごまかすかということで吾かれている関係上、非常に言葉内容等でも実体を表わさぬ、むずかしい、わかりにくい言葉を使っているのです。まあ階級にいたしましても、たとえば自衛の階級としては、陸将とか、陸将補とか、一等陸佐、二等陸佐、三等陸佐というのは、一体どれが階級が主なのか、国民は非常に迷うのですね。三等の方がえらいように考えたりして、それが大佐だと思ったら実は少佐だったとか、まあこういうことで、非常に国民は迷うのです。  それで、たとえば、どこでしたか、練習隊群司令なんというのが自衛隊法第十七条の二にありますが、「練習隊群の、長は、練習隊群司令とする。」、まことにどうも、何を言っているかわからぬですね。練習隊長ぐらいにすればしごく簡単で、なるほど練習艦隊の長かと思うのですが、「練習隊群の長は、練習隊群司令とする。」。では、「群」ぐらいは削除したが、われわれ法文を読む上からいっても便利だし、理解をする上からも便利だ。あるいは戦車というものが特車になったり、こういうごまかしの再軍備論においても、言葉の上にまだまだ強く残っていて、毎国会ごとに法律案を読みますけれども、難解である、わかりにくい。今度のこの自衛隊法の改正を見ますと、国民に親しみやすい、わかりやすい、非常に国民が理解しやすいものに持っていこうとする内容考えておられるのですね。そういう点からいうと、こういうような点等はまず一つ、別に予算もかかるわけでもないわけですから、考え直したらどうかと思うのですが、そういう準備等や研究等は内部で持っておりませんか。
  59. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 非常にいい点を御指摘願いまして、まことにありがたいのですが、私自身防衛庁の事情には非常にうとい者であって、内部に入りまして、そういった新しい名称によって非常に迷うわけでございます。どうしても自衛隊は国民から十分御理解願って協力を得また親しまれるという感じを持っていただく必要があるのです。その意味においては、この今の呼称、陸佐とか、まあ隊群とかいうような言葉も、ぴんと御理解願えないような点があるかとも思うのです。これはまだ、どういうふうにしたらいいか……。いうことのきまった考えはありませんが、今の御指摘のような点は、私はこれは、同じ内容、実質を表わし、て、そして理解ができるような呼称を考えていくということは、非常に私はいいことだと思っております。まだ、そういった面において、具体的にこうしたらいいだろうという案には、これもなかなか困難なことで、今陸将補とかいっておりますが、何だろうということを皆さんおっしゃるのです。で、もう端的に何とかわかるようにしていいのですが、さあそれにかわるべきいい一体案がなかなかない。まあ一つ、何かいいことがございましたら、お教えを願いたい。
  60. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して、防衛庁長官に要望しておきたいと思うのですが、要望とともに意見を承わりたいと思うのですが、今指摘されたような問題は、どなたも、非常に不便だ、わかりずらいという気持でいると思うのです。なぜそういうことが起ったかというと、これは結局、憲法の関係ですよ。憲法の関係から、やはり法を立案作業をされる、さらに提出される皆様方におかれても、やはり胸が痛む結果、ああいうことになったわけです。憲法との関係です。憲法が現行のままで、今わかりやすいようにまた変えると、あなた方が憲法改正を企図しておられるが、もし憲法の改正をしている問に、そのうちにまた変えなければならない。何回も私は変っていくと思う。そうすると、そのたびに国民は頭をそれに切りかえていかなければならない。それから用紙にしても、あるいは看板にしても、あるいはスタンプにしても、ささやかながら、その機構の改革、名称の変更のたびごとに、それを取りかえていかなければならない。これはやられる方はけっこうかもしらぬが、国民にとっては迷惑千万なことです。精神的にも、社会的にも、経済的にも、これほど不能率なことはないと思う。  従って、陸将とか海将とかを非常にしわかりやすく、少将とか大将とかに改めるとか、少佐とか大佐とすればわかりやすいであろうとか、そういう研究をされるに当っても、あるいは機構の問題にいたしましても、あなた方は憲法改正を企図しておりますが、憲法を明確にしていこうということですが、それでやっていこうということですが、私はその後において考え直されることであって、それ以前におきまして、今まで警察予備隊から再三再四変ってきて、国民は非常にわかりづらく思っておりますが、この憲法をそのままにしているということは、私は適切でないという考えを持っておりますが、従って、もし検討されるならば、あらゆる角度から憲法はどうなるかわかりませんが、憲法を改正するかどうかという点で私ども意見は違うわけで、国民の場においてまあこれは皆さん方と論戦をやらなければならぬと思うのですがね。それ以前に私はそういうことをすべきでないと、こういう意見を持っておるのですが、従って、要望にかえてお伺いするわけでございます。まさか現行憲法のまま、こういう名称を何べんも変えていこう、あるいは機構を何べんも変えていこうという御意見は、防衛庁長官は持っていられないと思うのですが、いかがですか。
  61. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいま仰せのように、この問題にはいろいろ意見があるわけです。従って、私どもは具体的にこうしようというそういった案もまとまらないので、いまだこうやろうということを申し上げることはできない状態であります。しかしながら、一方、国民の御理解が十分できるようなことを考えていく、これは憲法の関係でなくてもやり得るものもあると思います。しかし、重ねて申しますが、こうしようというような具体案を今持っておるわけではございません。これはいろいろ世論や、また先生方のいろいろの御意見を聞いた上で、適当に判断すべきことだといます。
  62. 田畑金光

    ○田畑金光君 まあ憲法違反であることは論外で、長官の答弁の中にも苦慮されておるのは、それをどうごまかしてうまく、しかも国民に親しみやすい言葉に持っていこうか、そこに苦慮があると思うのですが、とにかくこういう形では困ったものだ。もう少し、こういう法文を書くにしても、名称をつけるにしても、これは考えてみる必要がありはせぬか。私はこれは毎国会ごとに申しておるわけですが、内部では何かそういう検討の機関でも持っておられるのですか。
  63. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) そういう機構があって、今この問題について検計せいということは、私は指令はしておりません。
  64. 田畑金光

    ○田畑金光君 きのうもこれは質疑の中に出たわけですが、国防白書ですね。先ほど申し上げたように、今度のこの法律案の改正の一つ理由には、たとえば国民が隊員の生活に直接接触し、また隊員と直接話し合うことにより、国民の自衛隊に対する認識を高める上にきわめて有効な措置として、いろいろ自衛隊に対する見学等を奨励しておられるわけです。あるいは学校の先伯方を招待して、自衛隊の中を見せておられるのです。こういう三合に国民の中に自衛隊というものを大衆化するというのか知らぬが、国民大衆の中に親しいものに持っていこう、こういう御努力はよくわかりまするが、それはいろんな事情からそうしておりましょうが、もしそういう自衛隊たらしめるためには、防衛庁をそういうものに持っていくためには、少くとも国防白書というものくらいはすみやかに作って、国民に現在の自衛隊、あるいは日本国防がどうなっておるのか、これを知らしめることが大事なことじゃないかと、こう思うのです。  本日、私は英国国防白書、一九五八年二月二十七日イギリスの統幕から出たこの資料をもらったわけですが、その冒頭にはこう書いておる。「英国の陸海空軍人が今日ほど重要な役割を演じたことは、いまだかつてない。かれらが今日ほどかれらの保護のもとに日常生活を営むすべての者の尊敬と激励に値いしたことは、いまだかつてない。」、実に誇り高き陸海空軍を激励する言葉で、まず冒頭に出ているのですね。こういう言葉でつづられたのでは、やはりこれはイギリスの軍人たる者、衰えたりとはいえ大英帝国を守ろうとする誇りというものが出てこようと思うのです。ところが、わが国自衛隊の場合は、矢嶋委員からも指摘されたように、どうも憲法違反という疑いを強く肩に背負いながら、こうしたわかりにくい名前をつけられて、そしてまた国民の側からいうと、どういう内容の上体わが国国防体制を唱えておるのかわからぬ、こういう実情だと思います。  特に、この白書によりますと、「平和と安全に対する英国の貢献」、「兵器の均衡」という題名で、第一に、「今日の世界は、全面平和の希望と全面戦争の恐怖との間の不安定な状態に置かれている。」等々、各国民の知りたい今日の核武装に対する世界の新しい戦略体制の移り変りに対する、英国国防のあり方というものをはっきりうたっておる。しかも、これに対して英国国民がどう、受けたかということ、これはまた別の批判がありますけれども、こういうような英国国防白書をまねろとはいわぬが、日本もそろそろ国防白書くらいは発表して国民にもっと真相を知らしめる、協力を求めるなら協力を求める、そういう姿というものが望ましいと、こう考えるわけですが、これについてはどう長官としては準備をされてこられたのか、お伺いしたい。
  65. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 私は就任以来、ただいまの田畑委員のお考えと同様な感覚を持って参りました。率直に申しますと、ちょうど去年の秋ごろ、予算の編成、また、予算の審議、そういうさなかでございまして、国防白書は、私は、先を見越して、予算の編成がまだできていないものを基礎にして書くということも、内容的にどうかという考慮もありまして、そういった意味で、国会になり、今日まで機会を得なかったわけでございます。  御承知のように、日本防衛問題、この重要な問題に対して、十分国民の方々からの御理解を願い、また現実にある自衛隊の組織、訓練その他につきましてもわかりやすく書いて、十分御理解を得ると同時に、自衛隊員が自分たちの任務というものに対しての非常な自覚、認識を高めるということは必要だと思います。その意味においては、これはぜひ一つまとめたいという考えを持っております。  もちろん、たびたびそういったような計画もあったように聞いておりまするが、いろいろな、時期その他で、今日までそれが結実しなかったようなわけであります。本年度においては特に、私は、世界情勢関係もあり、この自衛隊法等の法律案が成立するというようなことにお願いできれば、そういった意味においても、さらにこの察必要なものである。すなわち、国防基本方針に基いた防衛三カ年計画の第一年度というものは三十三年度でございます。その意味において、私は十分の御理解を得なければならぬ。そういうような、白書という言葉はいろいろありますが、何かそういったような意味発表をいたしたい、こういうように考えております。
  66. 田畑金光

    ○田畑金光君 厚生省では厚生白書が昨年の年末に出ましたし、非常にこれはわれわれとして勉強になるわけで、またあれを読むと、国民もよく今の姿というものが理解できると思うのです。労働省のあるいは労働白書、それから総理府に青少年問題協議会というのがあります。今度青少年問題協議会設置法の一部改正法案が出ているのです。わずか十名前後の職員をこれから作ろうという法律案ですけれども、そこでも青少年白書という膨大なものを出しておる。  毎年二百億以上の金を使い切れないで余して、国民から批判を受けておる、会計検査をやってみるといつでもむだ使いを指摘されておるのが防衛庁だと思う。これが今の悪評さくさくたる防衛庁になっているわけですが、金があり余っておるわけですから、もう少し国民に対して、防衛庁というものはこういうものだ、防衛計画は三十三年度はこういう内容でいくのだ、ここまで来るのだ、こういうようなことはすみやかに一つ成案を作って国民の前に明らかにすべきだと思いますが、今の御答弁によりますと、今年はおやりになるというわけですか。
  67. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 内部的に準備は進めております。三十三年度においてはこれを実行したいと、こう思っておるわけであります。
  68. 田畑金光

    ○田畑金光君 それから長官の御答弁の中にもありましたが、昭和三十二年度予算編成の前後に、一応防衛白書というものを準備されたと聞いておるわけです。取りかかったと聞いておるわけです。昨日も伊藤委員からその質問があったわけですが、それはどういうわけで途中で投げられたわけですか。
  69. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 完全なものができたということでは、ございませんが、私は、これは予算を大蔵省に要求し、またそれが確定を見るという、いわゆる防衛庁としてはどれだけ予算ができるかということは不確定な時期であります。そのときに、予算の要求の内容をもって白書の内容にするということは、ちょっと確定したものでないものを主題にして、予算関係が入りますから、どういう評研であるということは、それは時期当を得ない、こういう感覚を持ったわけであります。でありますから、それははっきりこれだけの経費を来年はやる、三十二年度はこうだった、また将来の計画はこうだというようなことは、これはやはりいわゆる不安定な未確定な計数等をもって内容にあげるということは、これはあまり適当でないというような私自身の感覚を持ったわけであります。これは適当な時期を待った方がいいだろうという感覚になったのでございます。
  70. 田畑金光

    ○田畑金光君 その点は、長官の御答弁、私納得いかないわけです。予算がきまっていなかったからできなかったというのでなしに、むしろ、三十一年度予算のもとに自衛隊はこの程度の増強をやってきたのだ、そうして三十二年度予算のもとにおいては従来の計画に対しこの程度の目標が達成できたのだ、そういう予算、それに伴う過去の実績等というもの、そうしてまた将来はこの実績の中から将来こう持っていきたい、こういうような形が望ましいことであって、できないというのはどうもそのまま受け取るわけに参らぬわけです。  そこで、今度は話を変えまして、この一年間にアメリカの陸上兵力は大体撤退した、こういわれておりますが、これが本年度はどういうことになるのか。今年度はどの程度撤退をするのか。現在のアメリカの駐留兵力はどの程度であって、この一年間にこれがどういうように増減になるのか、これを御説明願いたいと思います。
  71. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 駐留米軍の人員の問題、その撤退の問題についての御質問であると思います。陸の方の関係をまず申し上げますが、駐留米軍の陸の部隊は、昨年初めごろは大体三万強でございますが、これは端数があります……。それが現在では大体一万七千。で、撤退いたしましたのは、陸上の戦闘部隊、それが撤退いたしたと。一万三千ないし一万五千ぐらいと思いますが、そういう状況であります。これが今後どう撤退というか、縮減するかという問題は……。残りのものは大体補給部隊でございます。戦闘部隊はもう全部引き揚げました、昨年中に。補給の関係の事務がどうなるかということは、これは日本の他の部隊の駐留の状況、またある二部の事務は、在韓国における米部隊等にも日本で物を買い調達して補給しているという関係もございまして、まだ的確なる数字が、われわれとは話し合いがまだできておりません。若干の減少はあると思います。三十三年に。  それから、海の方でございますが、海は現在は大体において人員においては二万、それから空は大体四万と。すべてを入れまして、従って約七万七千というのが現在の駐留軍の数であろうと思います。これは昨年の初めごろには、空については大体五万強であったが、今は四万ぐらいでございます。空軍、一万は減少していると思います。そういった意味で十万ないし十一万といわれたのが、今日七万七千見当、こういうように、まあ人数のこれは縮減でございますが、そういう状態でございます。
  72. 田畑金光

    ○田畑金光君 これは日米安保委員会等では、こういう撤退についてお話しなさっておられるようですが、将来この空軍、海軍の漸減ということについては、どういう計画になっておるのですか。
  73. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) まあ全体の方針といたしましては、岸総理・ア大統領の共同声明にうたわれておりますように、陸上戦闘部隊は至急に撤退すると、その他の部隊についても縮減を考慮しておるが、これは日本自衛隊漸増と見合ってやろうというその計画を持っておる、こういうことでございます。で、今のは空が一番多いわけでございます。わが国の航空自衛隊も漸次増強の過程にあり、それと見合ってこの縮減の撤退が行われるというのでございまして、今まで私ども接触したところにおいては、その人数等の具体的の計画がまだでき上っておりません。しかし、漸次基地関係とか、その他においても圧縮しつつあるということは事実でございます。
  74. 田畑金光

    ○田畑金光君 将来、もし日本が、この空軍も海軍もアメリカ側の撤退に応じて充足していく、こういうことになれは、これはアメリカの軍隊は全部撤退する、こういうことになるわけですか。
  75. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これは日米安保条約で、日本の米駐留軍は暫定的の処置である、日本防衛力増強を期待しているということが書かれておるわけでございます。そういった意味においては、その全体の方針といたしましては、わが国防衛力、すなわち今の自衛隊増強というものに伴って、米駐留軍の撤退というものが行われるわけでございます。しかし、今の計画において、この日本自衛隊各三部隊を通じて、陸については今補給だけになっておりますが、海、空についてどの程度になればこれは全部撤退するというような、具体的な話し合いはできておらぬわけでございます。これは逐次それに応じて、見分って撤退すると。しかし、基本的には、これは日米安保条約そのものが暫定的の処置であるということになっておるわけであります。しかしながら、いつ全部撤退するかということは、現状においてははっきりとその時期等が申し上げかねる状態でございます。
  76. 田畑金光

    ○田畑金光君 私がお尋ねしたいことは、現在空軍が四万、海軍が二万名おると。これについて計画的に、アメリカは今後何年のうちに日本から撤退する、こういうような話し合い等は全然ないのか。アメリカの、そうすると、極東戦略、あるいは太平洋全体の戦略観点から、アメリカの必要に応じてでなければ日本にある空軍・海軍を減らすというようなことはないのか、あるいは計画的に本年度はこれから何万減らすとか、そういう計画等は全然話し合いの上に乗っていないのかどうか。
  77. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 御質問の点は、全部米駐留軍が引き揚げる時期、その段階等について、具体的のお話がありゃなしやということであります。これはまだありません、現在においては。
  78. 田畑金光

    ○田畑金光君 結局、まあ将来は、お話のようにアメリカの軍隊が撤退すると、日本自衛隊でその穴埋めをしていかなければならぬ。そうなってきますと、これは相当日本軍事予算というものもふえていくように考えるわけですが、かりに今のアメリカの空軍、海軍がいなくなった、日本の自力でこれをまかなうと、こうなってきますと、相当これは予算の一面においても、批准は一割以上だが、二判になり、三割になり、あるいは四割になるかもしれない、こういうようなことも等予側されるわけで、大体防衛庁長としては、この日本軍事予算というものは総予算の中で何%くらい占めるのが適当と患われるのか。あるいは国民所得との関係からいうと、どの程度あたりが日本の国力、国情に沿う内容であるとお考えになっておられるか。
  79. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 現在の米駐留軍に相応したところの防衛力を持つということは、これは私は、今の国情から申しましても、国力からいいましても、財政上からいいましても、私は困難なことであると思います。で、将来長きにわたっては、これは周辺の各国その他を含めての軍縮問題というものはどうなるかということに開通するわけでございます。その意味において、各国は、外国において駐留しておる軍隊は、英国のごときもずいぶん引き揚げたものがございます。英国の陸軍等の縮減というものは、その海外に派遣されたる軍隊の駐悟が必要でないものを引き揚げたものによって、縮減を見ておる部分が非常に多いのでございます。従って、こういった将来の見通しについて、現状と同じような、米駐留軍だけの実力というものを自衛隊が持たなければ撤退しないということには、私は結論的にはならぬと思います。しかしていかなる場合を問わず、私は、日本自衛隊というものは、国力、国情に相応し、また民生の安定というものをよく勘案して、財政の事情というものと調整をはかって防衛漸増をやろうというのが、この国防基本方針になっておる、国防会議において決定された。そこで、具体的に今何%くらいであるかといことをお尋ねでございました。これは大体国民所得の二%をこえざる限度においてやるならば、民生安定その他の経済の発展、あらゆる財政に対する圧迫ということなしにやれるのじゃないか。おおよそのめどはついておる。現実に三十年度においては国民所得の大体一・七%くらいに相応しておるわけでございます。今後の第一次というのですか、今の防衛目標を現実に各年度において実行する上においても、十分弾力性を持たして、そういったような意味において財政に重大な負担をかけないて、民生の安定というものを十分考慮してやっていく、そういったような方針というものは、これは堅持すべきものだと思っております。そういった観点から、一定の、何と申しますか、方針というものによって逐次増強をはかっていく、こういう方針は維持していくべきものだと思っております。
  80. 田畑金光

    ○田畑金光君 本年の予算を見ますと、防衛分担金の減額が百四十億になっておりますか、それに特別の減額が三十億に上っているわけです。この防御分担金の減額について一般方式のほかに、特別減額というものがことし初めてとられたのですが、これは今後とも継続していくのかどうか、日米町の話し合いはこれはどうなっているのか、お伺いいたします。
  81. 山下武利

    政府委員(山下武利君) 分担金につきましては、日米間に一般方式という取りきめがありまして、日本側の防衛庁費並びに施設提供諸表等の増加します部分の半分を、その前年度の分担金から減額していくということに取りきめられておるわけであります。本年度につきましては、特に米軍の撤退が著しいという事実がありましたために、政府の方で米側と交渉いたしまして、三十億円というものを一般方式による減額に加えて引くということで、妥結をいたしたわけでありまして、本年度の分掛金はそういうふうにしてきまっておるわけでございます。来年度以降につきましては、一般方式というものはまだ残っておるわけでありますが、本年度のような特別措置を来年度以降について考えるかどうかということは、これはむしろ来年度以降の問題でありまして、三十億円の減額というのは一応本年度限りの措置だというふうに考えております。
  82. 田畑金光

    ○田畑金光君 長官にお尋ねしますが、特別減額の来年度以降のあり方というものについて、政府として、あるいは長官としては、どのような考え方をお持ちになっておられるのか。
  83. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) その問題は、三十四年度予算の規模、内容等がきまって、それからあとに分担金の交渉が最後に来るようになるわけでございまして、まだ年度初めのことでございますので、この見通しがどうであるかということを私から申し上げるということは、時期が早いのじゃないか。これはずっと暮に押し迫りまして、具体的な折衝が始まるわけでございますから、今のところ、どういうようなことになるのか、ちょっと見当がつきません。
  84. 田畑金光

    ○田畑金光君 私のお尋ねしたいことは、行政協定の二十五条の今問題になっておる軍費の負担、日本防衛分担金の負担の問題ですが、これは長官の今のお話のように、来年度予算がきまる前後でなければ話し合いがっかぬという問題じゃなくして、もう第三十五条等については、基本的に日米間の話し合いが進められてもいい段階になってくるのではなかろうか、こう考えるわけで、ことに、アメリカの陸軍兵力が撤退し、空軍、海軍だけが日本に残っておるというのは、これは日本防衛ということも一半の目的はあろうが、その多くの目的はアメリカ自体の戦略であるし、アメリカ自体の自国防衛の空軍、海軍であることは、これは世界の常識になっておるわけです。  イギリスなんか見ましても、最近イギリスにおけるIRBM基地協定に対して国民がごうごうと、あげて反対しているのも、何もそれがイギリスのためのアメリカIRBM基地じゃないのだ。結局アメリカは、自国本国に対する攻撃というものをイギリス本土において受けて立とう、これはアメリカの最高政策であるのだということは、イギリス国民全体の簡単な常識になっているのです。これは日本の場合であっても、もう日米安保条約が締結されてから十何年も経過している。アジアの情勢も変ってきているし、日本の国内情勢も、自衛隊の実力そのものも変ってきている。  こういうことを考えたときに、もうこの辺でこの二十五条の軍費の負担、防衛分担金の負担等については、私は基本的に再検討の時期に来ていると思う。そのためにできているのが日米安保委員会だと考えますが、防衛庁長官はどういう考えを持っておられるか。
  85. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これは実は、予算関係から申しましても、大蔵省の所管の予算で、防衛庁に計上されていない。だから、そういう意味において大蔵大臣がこれは責任者でありまして、ただいまの御意見のあるところは、それはなるべく早く問題をちゃんと処理していくということはけっこうでございましょう。しかし、従来の経過から申しますと、毎年度その経費と見合って折衝しているという実情でございまして、折衡は大蔵大臣がする、外務省を通じますが、そういうことになっている。防衛庁そのものの予算の経理ではない。いろいろ最も密接な関係のあることは当然でございます。防衛に関連を持つ。しかし、今のような御意見は、私は大蔵大臣には十分伝達いたしますが、こうやろうということの政府の意向、それを私が単独で申し上げることは、ちょっと遠慮すべきじゃないか、こう思っております。
  86. 田畑金光

    ○田畑金光君 どうも、防衛庁長官の答弁を昨日から承わっておりますと、あまりにも何と申しますか、答弁技術に重点を置かれている。われわれの聞きたいということ、国民の知りたいと思うことを、もう少し私は勇気をもって、自分はこう考えるのだ、政府はこういうふうな方針でゆきたいのだ、このくらいのことは、防衛庁長官ともあろう方が、しかも前歴から申しましても、現在の閣僚の中ではほんとうに一番われわれが尊敬を払っている長官であるわけで、その過去の閲歴から見ても、もう少しわれわれの聞きたいこと、知りたいことについては、味のあると申しますか、一つの決意のほど等も、ときには片鱗くらいは見せられるものと期待しておりましたが、昨日来の答弁を見ますと、全部そこに書いてある紙きれを読んでおられるような始末では、これは情ないきわみなんです。  防御分担金削減の交渉が大蔵省の所管であり、あるいは外務省を通じてやるということぐらいは、承知しておるのです。そうじゃなくして、第二十五条のこの分担金の負担の割合の問題等は、もうそろそろ、私が先ほど申し上げたような事情等から、アメリカの空軍、海軍というのは日本防衛する出の責任を持とうが、それはより多くアメリカの太平洋戦略、極東戦略から来て、アメリカ防衛のためにおるのが主たる目的だということが偽わりのない事実です。そういうことを考えたとき、もうこの辺で二十五条等については、せっかく日米安保委員会もできておるのですから、話し合いを進められたらどうであろうか、こう考えておるわけで、その点についてもう一度一つ長官としての見解を承わりたいと思う。
  87. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) この防衛分担金の負担に関することは、大体、余年折衝を重ねるということの煩瑣を避けて、一定の方式ができたわけでございます、三十一年度から。これは行政協定の規定によるいろいろな場合を想像して、この方式によれば問題が相互に円満に処理できるということで、これは重光外務大臣時代にできたわけであります。この方式は、これはそのまま適用すれば、何らもここに折衝もなくやれる程度に、毎年の折衝の煩瑣を避けて、相互にした方式があるわけであります。ただ、この方式は、駐留宙の撤退という新しい事実に応じて、そのまま適用することがいいかどうかという問題が新しく起りまして、三十一年度予算関係については新たに折衝が行われたわけで、あります。そうして、ああいったような特別の減額というものがあったわけでございます。今後はやはりこれは、予算のどういったような、防衛費等の見通しがついて交渉をすべき、これは具体的の問題でやろうと思うのです。全然きまったものがないわけじゃございません。一にそういったことを持ち出す時期いかん、適切な時期、効果的な時期いかんということに考えるわけでございます。これを、直ちに今すぐこの問題を持ち出して、果して所期の効果を上げられるかどうかということについて、私としては疑いを持つわけでございます。しかし、何分にもこれは防衛庁が直接折衝のものじゃないから、御趣旨のあるところは、これは関係閣僚ともお話をしようと、こういうことを申し上げたわけであります。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ちょつと関連して、一つだけ長官に、今の問題について承わっておきたいと思うのですが、こと押し、御承知のように、初めて特別減額三十億があった。これは昨年一萬田大蔵大臣がアメリカに海外出張されたときに打診協議されて、それから具体化して参ったのでございますが、私は、防御三法担当大臣としてここに改正案を長が出されておるわけでありますが、私承わりたいのは、あの特別減額の十億円と、陸上自衛隊万人増員を中核とするところの今度の法改正案というものは、何らか紳士的な話し合いがあるのではないか。政府が外交権を持ってやられておることですから、国際的信義も無にするわけにはいかないので、当面この問題の改正案を審議するに当っては、そういう点が実は私は気にかかっているわけです。  それで、あの特別減額の三十億円と、今われわれが審議しつつあるところの二法の改正案とは、関係があると考えてよいのか、全く無関係だと、こういう立場において私は審議してよろしいのか。こういう点については、大蔵大臣が面接折衝の衝に当る所管大臣といたしましても、この法自体と密接不一分の関係にありますので、閣議あるいは防衛関係閣僚懇談会等において相当話し合われて、防衛庁長官としてはそての実情というものを把握されておるだろうと予想されますので、承わりとうございます。
  89. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 私の関係閣僚から聞いたところを、そのまま申し上げます。自衛隊増強計画のある一部について、関係があるという問題では全然なかったのです、これは従って、今の陸上一万の増成と関係はない。その特別減額は、従来の方式によっては、大体駐留軍の駐留、その経費の分担でございまするから、それが三十二年度に相当撤退をしたから、その経費においても縮減を見ておるだろう、そういった意味において、自衛隊側の増強でなくて、先方の縮減というものに伴って当然分担を減らすべきものがあるではないかということが、当方の考え方なり、その理論を言って、この一定の金額、まあ三十億ですか、それに妥結したのです。理論は、基本的に先方の人数の減ったということから来る個々の問題が特殊の事情として考慮された、こういう事情でございます。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう一回。そのことは、今後も減員が行われるわけですが、一般方式そのものの欠陥を暴露したものだと思うのです、一般方式では不十分である。重光さんが結ばれた当時は十分と思ったけれども、現実に即応すると、どうも適当でない、こういう日本政府の主張がアメリカ政府のいれるところとなって、特別減額三十億円というものが出てきたということが明確になった。そうなりますと、先ほどの他の委員質疑からもわかるように、今後減員というのが行われるわけなんですから、だから、この時点に立って、日本政府は一般方式の改訂というものを強硬に主張をすべきではないですか。主張しているのですか、していないのですか。主張すべきだと思うのですが、その御答弁を願いたい。
  91. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 今のところで、撤退の時期、数等が明瞭でないので、従って、また予算の編成等と直接関連を持ったものでございますから、今その問題をすぐ個々の交渉の課題にするのがいいかどうかという点になりますと、おそらく私は、その担当の閣僚は、適当な時期、最も適切な時期を選ぶだろうと思います。また、そうあって私はいいんじゃないかと思います。
  92. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記とめて。    〔速記中止
  93. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記起して。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 資料をお願いしておきますので、できるだけ早い機会に出していただきたいと思います。一つは、一部出ているようでありますが、不十分でございますので、さらにお願いするわけです。それは、各種兵器の価格、これは外国が所有している兵器も含めて、現在の価格について表を提出していただきたい。一部出ておりますが、不十分でありますので。それから、それと関連して、アメリカからわが自衛隊に貨与されている兵器の現布価格に換算したもの、これを兵器の種別に表を作っていただきたい。  それから、第二点は、過去二ヵ年問における自衛隊の事故の回数、そうして人的損害、物的損害の一欄表、これ陸、海、空別に願います。それから、特にそのときの自衛隊の除隊者の数、それからもしその理由がわかればそれと、それから自殺者の陸、海、空別の数。  それから、第三番は、陸上自衛官と警察官の待遇比較表、それから海上自衛官と、海上保安官の待遇比較表、それから航空自衛官と、日本では民間航空が若干あるわけですが、それとの待遇比較表。  それから、第四番は、分れますが、自衛隊法八十一条の要請による治安出動、これの有無並びに回数、それから内容。それから八十二条の海上における警備行動、これの有無、回数、内容内容は概略でよろしゅうございます。それから八十三条に基く災害派遣、これの有無、同数並びにその内容の概要。それからもう一つは、自衛隊法の施行令の百二十二条の土木工事の受託というのがございますね。あの土木工の受託件数、それから事業量、これは方面管区別に出して下さい。それからそのときにこの土木工事受託に応ずるところの現在の自衛隊装備状況ですね、それから能力はどの程度かということがわかるように、ちょっと付記しておいていただきたい。  以上お願いいたします。
  95. 森中守義

    森中守義君 私も資料を一つ……。今日まで防衛庁の制服あるいは職員の人たちが海外に派遣されておりますが、それの行っている先、身分、仕事の、内容、そういうものを克明に出してもらいたいと思います。
  96. 藤田進

    委員長藤田進君) 午前中はこの程度にとどめまして、午後一時半から再開することといたしまして、これにて暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩    —————・—————    午後二時一分開会
  97. 藤田進

    委員長藤田進君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、防衛庁設置法の一部を改正する法律案(閣法第三二号)及び自衛隊法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  御質疑のおありの方は、両案につきまして一つ、順次、御発言をいただきたいと思います。
  98. 森中守義

    森中守義君 津島長官に二、三御質問を申し上げます。もちろん、この案件はすこぶる重要な案件でありますので、今後の質問の資料というような意味で、ごく抽象的に伺いたいと思います。  その第一点は、現在から将来にわたる世界の趨勢は、軍事勢力を背景にして変化していくと思っておいでになるか、あるいはまた、変化のどの程度の部分を軍事力と見るべきか、こういう点について長官の方ではどうお考えでございましょうか。
  99. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 現在、将来における軍事力の推移はどうなるか、またどういうことをもって軍事力と見るかと、こういうようなことで、非常にこれは大きな問題でございます。普通、軍事力という意味は、一定の軍の編成、装備、固有の国防という意味に解されます。が、しかし、今日のような科学の進歩した時代、また、国防に非常な経費のかかるような態勢になっております。新兵器のごときは、従来の兵器に対して何十倍の経費を要する、こういうことでございます。その意味においては、過去におけるよりも科学的の進歩、レベル及びに経済力、国力、そういったものが基盤になって初めて国の防衛というものができ得るという態勢に、これは第一次世界大戦、第二次世界大戦においても、従来の国防とは変って参ったわけでございます。さらに、それが一段と科学の進歩と、また国防に要するいわゆる財政力、そのバツクにまたさらにいわゆる国民の全体の力、精神力、こういったものが総合されたものになるという時代に、だんだんと進展して参ったわけでございます。その意味におきましては、今後の国防力を判定するに当っては、そういったあらゆる角度を総合して、そこに国の独立安全を守るというような形態になっておると思います。これはすべての国に私は共通じゃないか。  また、同時に、一方、一国だけて単独なる防衛を、やっておった時代もずいぶんあった。その間に同盟とか、三国同盟とか、いろいろな時代もございました。しかしながら、今日は一国をもって……。今のような事情にかんがみまして集団的の防衛体制を作るという傾向がだんだんに強くなっているようであります。  従いまして、現在存在しているそれらの情勢が将来においてどうなるかということの問題は、一面において、平和に対する一般のあこがれ、また、これを実現しょうという世界の世論というものと相待ってそういった形をとるけれども、いわゆる固有の軍備そのものがどういった方向になるか、それを増大する、こういう方向になるかどうか。大勢としては、今日は軍縮ということに世界の世論、政治家も頭を悩ましているわけであります。これを実現するということは、人類の幸福のためにも、また、世界各国の独立安全のためにも必要であります。しかし、現在においては、この問題を解決するということの確固たる見通しはないけれども、私は将来そういった方向に向けられることを希望し、また努力しなければならぬ。すなわち、平和外交、各国の融和、お互いの信頼、こういう部面、それによって、形態は先ほど申しました形態でありましょうが、しかし、将来遠くを見れば、私は世界の世論というものはそういった方向を裏づけるに足る力をだんだんに醸成されるものと、こういうように見通しをいたしている。きわめて抽象的でありますが、見通しはそう思っております。
  100. 森中守義

    森中守義君 お答えの大半については了承できますが、私がお尋ねしている問題の焦点というものは、なるほど、今長官の言われるようなことが予見されるでしょう、見通しとしましては。しかし、もう少し具体的に、防衛の問題を論議する際に必要なことは、世界の経済、あるいは産業、外交、こういう問題がややもすると軍事力の増大ということを背景にして行われるのではなかろうか。そういうことに対して、わが国防衛問題を、いろいろ制約はあります、安全保障条約を中心にして、しかも国内では憲法九条の問題をめぐって制約はたくさんあるけれども、大体世界の趨勢に対する見通しいうものは、長官の方でお持ちにならなければ、なしくずし的な軍事力の強化であるとか、あるいは防衛力の埴輪ということは、すこぶる国家的に見て危険この上もないと思いますから、明確に外交あるいは経済、こういう間脳が軍事力を背景として今日から将来にかけて行われ得るならば、そういう目通しをお持ちかどうかということをお尋ねしているわけです。
  101. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 私のお答えが多少御質問の核心に触れなかった点があったかと思いますが、ただいまの御質問によってや焦点が明らかになったと思います。そういった狭義の国防軍備、そのものと外交の関係経済力の関係、これはどの国も、軍事力の増大によって生ずるところの国民の負担、あるいはそれがかえって軍唯力の増強による平和に対する脅威というものには、関心を持たざることはない。従って、一方必ずや軍事力そのものの増強に伴う、一方においてはこれに正比例というか、むしろ輪をかけて、平和を保ちたい、外交というものによって平和を保とうという力も、同時にこれは強くなるものと思うのです。  なお、経済の関係についてはどうであるかと申しますが、今の御質問の中には、軍事力の増大は経済力の裏づけというか、それに因果の関係があるようにちょっとお触れになったように承わったのですが、これはむしろ逆であって、軍事力によって経済力を増加していこうというのは、過去の侵略政治の時代であったと思うのです。今日は、少くともわが国においては、外部からの実力行使、武力行使に対処して自分の国を守ると、また海外派、共もそういった意味においての方策に反することはやれないという建前になっておるわけですから、軍事力を増大して経済力のまた増大のかてというか、てこにしようという考え方は、もう絶対にないわけでございます。あるいは昔はいわゆる国策遂行のために軍事力を増加したという時代があり、これは違法のものであって、もうすでに一九二九年来の不戦条約においてはこれは否定されておるものであります。また、国際連合においても、この点はもう否定されておるわけでございます。しかし、日本防衛というものは、そういったような経済力の拡大を支持するいわゆるてことして武力を持つというような考え方は全然ありません。そういう意味において、私は今の関係は外交の部面とはよほど違ったものがあると思うのです。  今日の方針というものは、わが国の経済力、民生安定というものを十八分に考慮しつつ、それと調和して、財政力というものと見合って、最小限度の防衛をし、しかも、これが他国に対する脅威とならないように、一にこの防衛目的に沿うというような、形態なり編成なり装備についても、そういう考慮が深く払われておるわけでございまして、これが何年後にどうなるか、その方針は私は変えることができない。われわれの念願は、これはもうすべての世界各国が軍備を縮小して、わが国の方においてもそういったような危険、脅威がないようにして、防衛というものを、固有の、狭義の防衛というものはこれは少くするほど、私は国家のためにもいいのでないかと思うのでございます。その意味において、今の外交方針というものは最も重要なる役割を占めるもの、でありまして、今何年後にどうなるかというようなことについては、なかなかこれは、世界の大勢というものに対する予想というものはなかなか困難でございまして、わが国に関する限りは、繰り返して申し上げますが、今のような考え方に一貫しておると、こう思う次第でございます。
  102. 森中守義

    森中守義君 非常に広範にわたる問題でございますので、私はこの機会にそれ以上今の問題に言及することを避けたいと思うのでありますが、ただ、長官のお答えの中でどうしても私が釈然とできないのは、お答え通りのことがそのまま実行されていけば、これはまた話は別です。しかし、昨年もいわゆる自衛官の増強が行われておる。大体同じような程度の数ですね、そういう人員の増、兵員の増も行われておるし、加えて、いろいろな兵器についてもだんだん拡大をされておる。あるいは核兵器を持ち込むのじゃないか、こういったような疑問すらも持たざるを得ないようなわが国国防の状態を推測していくならば、必ずしも、長官がお答えのなるように、いわゆる国内の防衛の問題あって、かつて通念的に考えられていた侵略であるとか、そういうことことはないのだということであれば別でありますが、やはり私は、具体的に政府の方で今まで進めておいでになった数々の実例から、今の答弁をそのまま了承するわけには参りません。同時に、また軍事力あるいは国の防衛の基本的な問題について、もう少し日を譲って根本的に質問を行いたいと思います。  それで、もう一つ、今のことに関連をする問題でありますが、先刻加藤局長の力から東西両陣営国防あるいは軍事力の増強についてのお話がありましたが、やはりそういうことを考えていけば、やはり防衛庁防衛庁なりに、諸外国のそういう軍事力の状況については、たえず情勢の把握が行われておる、こういう工合に理解もできますし、加藤局長がはしなくも説明をされていた、いわゆる東西両陣営を初め、それに隷属をするそれぞれの国内における軍事情勢の判断というものは、何によって受けておいでになるか。ことに、私は先刻資料の拠出を求めましたが、昔、陸軍あるいは海軍が駐在武官として大使館等に勤務をしておりましたこういったような状況が、今日行われておるのではないかと思いますし、そのことも含めて、国際軍事情勢防衛庁における把握の方法、アメリカからもらっているならもらっておる、あるいは独自で防衛庁の制服なり、あるいは文官を派遣して調査をしておるならしておる、そういう具体的に御説明をいただきたいと思います。
  103. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) お答えを申し上げます。日本防衛考えます場合におきましても、各国の軍事力なりあるいはその技術的な進歩の態様というふうなものを調べますることは、私どもは非常に大事な問題であると思います。で、まずお尋ねの点の昔の駐在武官の制度でございますが、これは現在、米国とそれからフランス、ソ連に派遣をいたしております。本年度予算において一名の増加が認められまして、これは英国に派遣をするつもりでございます。私どもの判断の資料といたます資料は、各国政府の公館の資料、それから民間の軍事評論家、その他の資料もございます。さらに、各在外公館から、これは今の米、仏、ソ等、防衛駐在官と称しておりまするが、これを派遣しておりまする国以外の国におりまするわが国の在外公館からも、たえず必要なる資料の調査、資料の提供を受けております。また、われわれ防衛庁内部におきましても、これはそれぞれ陸海空統合幕僚会議及び防衛局におきまして、それらの資料を検討するスタッフを持っておりまして、専門的に、個々の問題につきましてたえず研究いたしております。それをまた上の方のクラスにおきまして、総合的に各国のいろいろな角度から検討し合いまして、大体まあこういうふうなことであろうかというふうな判断をしておるわけでございまして、必ずしもこれらの資料が全部が全部確実なる出所であるとばかりは申せません。いろいろな方面からの私ども資料を手に入れておりまするが、大体において間違いのない判断はできる程度にはなっておるのじゃなかろうかと。  まだまだ、現在の段階におきましては、私は、大事な仕事であるにかかわらず、防衛庁内におけるこの方面努力が足りないと思っておりますけれども、まずまず今のところはある程度間違いのない判断ができるのではなかろうかと思っております。各国の政府からも、名前をあげますることは差し控えたいと思いまするが、必要なる、友邦からは資料の提供を受けております。
  104. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、わが国防衛計画は、とりあえず安全保障条約によって、日米共同防衛体制ということで表現をされておりますが、それが基本であることは承知をいたしております。そこで、日米共同防衛体制の確立の前提となる国内における防衛上の計画、こういうものがアメリカとの折側によって最終的なとりきめになるのとはないかと、こういう工合に私は私なりに判断をいたしておりますが、やはりたとえそのことが防衛であっても、外国に核兵器がある、その他いろいろな新兵器がある、あるいは兵員が幾らいる、艦船の数、飛行機の数、こういうものがあらかた対象になってこないと、日本防衛ということは私はあり得ない、こういう工合に思う。で、勢いそういう相手のある、しかも兵器等を中心にして、わが国防衛計画をするということになれば、必然的にわが国防衛の基本というもの、あるいは将来というものは、諸外国の水準まで達するということが、私は大体お考えになっている防衛の将来ではないか、こういう工合に考えるのですが、防衛という言葉は非常に消極的のように受け取れますけれども、やはり考え方としては、今後わが国軍事力というものは、そのものずばりで諸外国の水準まで、そこまで発展せしめていくというこういう認識をしてよろしいかどうか、長官からお答えを願いたいと思います。
  105. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えいたします。わが国防衛の規模なりその体制をどの程度に持っていくのかと。まあその御質問の中には、わが国防衛の規模、水準は外国の水準まで及ぼすべきものであるか、どういう考えか、そういう目途ありや、こういうことであったと思います。  これは、各国その国の事情に応じて、一律に、強大国の国防あるいは軍事の現状または将来に即応して、その水準まで持っていくということは、私は国の事情に応じてやるべきものであって、そういった考え方は私は諸外国は持っていないと思います。今日は最も強大なる軍事力を持っておるのは米ソでございましょう。これに次ぐ国もございましょうが、しかし、それらの国の水準まで持っていこうという国は、私はアジアの国においてはほとんどない、ヨーロッパ諸国においてもそうであろう、南米においてもそうであろうと思います。そういう意味において、わが国防衛方針は、たびたび申し上げて恐縮ですが、わが国の国情に沿い、しかも基本の方針は、防衛、守る、外敵が来た時分に、これに即応したところの防衛をするという程度のものをやる。しかし、水準は、一応目標といたしましては、いわゆる防衛整備目標というのがございまして、飛行機でいえば千三百機を三十七年までに完成しようという水準があるわけです。この水準は諸外国に比して非常に低いものでございましょう。あるいはこれより少い国もございましょう。あるいはこれを平等化して、世界各国が同一の水準に持っていくという考え方は、すべきものでもなく、できないことでもあり、ことにわが国はそういった目標もあることでございますから、その水準をまず達成して、その足らざるところは、足らざる場合ありとすれば、これを安全保障また日米安保条約の力によるのほかはないんじゃないかというのが、今日の現在の状況でございます。
  106. 森中守義

    森中守義君 なるほど、防衛の方式では、国連を中心にやることもありましょうし、あるいはアジアの集団安全保障ということも方式としては考えられ得ると思いますが、防衛という現状から考えていけば、やはりより強いものに対して、より強大なものに対して防衛をするという意味でなければ、理屈としては通らぬと思います。そういうことになれば、やはりそういう水準までわが国防衛というものを近つけていくということが、将来の私は防衛一つ目標ではないか、こういう工合に考え得るし、そのことを裏づけするように、三十二年度予算審議の際も、前の小瀧防衛庁長官は、一千四百億の防衛庁予算のうちの大半というものは誘導弾の研究開発に使う、こういうことを言明をいたしました。加えて、総理もそのことを肯定するような答弁を行なっております。それでは、一体誘導弾の研究開発というものは、今長官が言われるような意味からするならば、私は必ずしも必要とはしないのではなかろうか、こういうことも考え得るわけです。従って、防衛庁が日夜専念をされておる国の防衛計画の中に、具体的、にそういう方向を許しておると指摘してもあえて行き過ぎではないような数々の問題がありますので、現状にとどまることなく、やはり強大な方向わが国防衛力というものを、実は軍事力というものを増大させていくことがあり得るのではないか、こういうことを開いておるのですが、くどいようですけれども、もう一度御答弁をお願いいたします。
  107. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 今御引用になりました、誘導弾の研究防衛庁経理の半分を注入するのだということは、どういうような意味でありましたか、ちょっと理解に苦しむのでございます。現実の問題といたしましては、千二百億の三十三年度予算の中においても、もっぱら誘導弾の研究、これは防衛庁の中の技術研究所に計上されておるものはございます。これは約五億円のものでございます。なお、それ以外に誘導弾としては、サイドワインダー、これは五千万の予算が三十三年度予算に承認されておるわけでございます。直接その誘導弾研究開発またはその購入の経費というものはそのくらいのものでありまして、千二百億の中で約五億、五億ちょっとこしますが、五億何千万円、これに若干の予算外のいわゆる国庫債務負担契約がくっついておるわけでございます。その程度でございますから……。  しこうして、防衛に関する経費全体というものは、あらゆる経費を加えて、今日は千四百六十一億、三十三年度は。これは駐留軍に対するあるいは分担金とか施設整備費とかを加えたものであります。この経費の全体のワクと申しますか、これは財政上の事情を考慮して、最小限度に自衛の体制を作るに必要なものとしての経費を御承認願っておるわけでございます。この範囲においては、装備改善ということは、効率を上げ、自衛の体制を同じ経費でも能率化し、効果的ならしめるという工夫は必要だと思うので、それが誘導弾が全部の半分であるといふことは事実ありませんし、これは当然与えられたところの国費というものを、防衛のための経費を有効的に利用する。その意味においては、飛行機においてもずいぶん装備というものは今後改善されていって、同じ経費をかけても、万一のことがあった場合にこれを十分活用し得るということに工夫をこらす、これは当然のことだと思うのです。そういう工夫をこらすということが防衛費のワクの内のことでございまして、さらにそういういろいろな増強のために必要な大きな金額をここに予定しているということはございませんです。先ほどもこの問題に関連して御質問ございましたが、これは今日まで、大体の含みとしては、国民所得の二%以内くらいなところで適正なる計画実行していく。現に、そういった。パーセンテージにもなっておらぬわけでございます。そういう意味でございますから、何かそういった目的にすると、これが非常に膨大になってくるという懸念を打たれることはもちろんございましょうが、そういう方針でやつておらぬわけでございますから、どうか一つ御了承願いたいと思うのでございます。
  108. 森中守義

    森中守義君 それから、もう一つ承わっておきますが、先刻も申し上げたように、防衛上の問題としては、憲法九条やあるいは安全保障条約の問題に関係いたしておりますが、実際の防衛庁の中における防衛計画、たとえば予算が仕上った、あるいは法律が仕上って国会に出てくる場合には、なるほど今長官政府委員の皆さんが答弁をされるように、きわめてそつのないもっともな答弁ではありまするが、しかし、この作業が行われる過程の中には、やはり陸、海、空、かつての空戦の状態、あるいは海戦や陸戦の状態というものが、各国の情勢を現状のまま把握をして、それに対処するような戦略あるいは戦術、そういうようなものを中必として、人が要る、物が要る、そういったような状況がだんだん積み重なってこういう形に現われてくると思うのですが、そういう関係をしている軍略家というものが、あるいは戦略家というものが、そういう人たちが、今のままでいけばそう問題ないでしょうが、下手すると、かつての軍閥的な非常に強力なものになって、大臣にも、あるいはまたその他の制服の方にも、強い抵抗力を示すというようなことは、長官の方では危惧いたしませんか。
  109. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまのような御懸念はないと思います。これは防衛庁設置法においても、従来の軍と違った機構になり、いわゆる英語でいうシビリアン・コントロールという制度が実施されておるわけでございます。長官初め政務次官、またこの内局の防衛局長その他人事の関係装備関係、訓練すなわち教育の関係と、こういったものはみな、これはユニホーム、制服の自衛官がばれないものなんです。ここで基本的の方針をきめるということになっておるわけです、米本計画は。実際の、外国や何かの武力行使を受けた場合に第一線に立ってやるのは、これは陸、海、空の自衛隊、またはその幕僚がいろいろ指揮する、その場合においても防衛庁設置法においては、総理大臣が指揮監督権を待ち、長官が総括し、そうして幕僚はその指揮を受けるわけです。指揮を受けるんですから、すなわちシビリアン・コントロールなんですね。そういうことがこの法の精神であり、また規定になっておる。もちろん、これらの幕僚は長官を補佐して、決定権のないいろいろな事態に対応ずべく、いわゆる計画とかそういったものはふだん研究を続けております。しかし、これも決定する権能はありません。補佐機関であります。そういう意味でありますから、今日のわが国防衛体制といい、また防衛庁の機構、その組織から申しましては、全然新しいものであるというふうに私は強い感じを持ち、また責任者としては当然それに対、処すべく、やっぱりちゃんとした覚悟を持ってやっていくということでございまして、設置法そのもの、自衛隊法そのものからいって、御懸念の点は私はないと思います。
  110. 森中守義

    森中守義君 私も実はしろうとではありますが、防衛庁の設置法やあるいは組織令程度のものと、大体指揮系統がどうなっておるかくらいのことは知っております。しかし、お聞きしておる中心は、そういう形態ではなくして、潜在的な勢力として、軍略家、あるいは戦略家、戦術中外というものがそういうものをあえて突き破ろうとするような外力になるような懸念はないのでございますか、こういうことなんです、よ。それはしばしば死の行軍であるとか、それからまた、いろいろなよろしくないような一件が勃発をしていて、まあ何とはなしに、そういう行政法上の、あるいは組織令上の問題以外の潜在弊力があるのじゃないか、そういう努力が漸次固まりつつあり、高進しつつあるのではないかという不安を私は打たざるを得ないのであります。現在の防衛庁の内部に、自衛隊の内部に、そういう傾向はないのか、こういうことを聞いておるんです。
  111. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 私の承知し、また検討した上からは、私は卒直にそういう傾向はないと、こう判断いたしております。
  112. 森中守義

    森中守義君 それから、やはり何事によらず、国民感情というものは私は政治の基本でなければならぬと思うのですが、アメリカの共同防衛計画、あるいはわが国の現在の防衛状況、こういうものが国民感情と食い違った場合に、防衛庁長官はどういう工合に措置をされるおつもりですか。
  113. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまの御質問の趣旨はちょっと捕捉することができませんでしたが、日米安保条約のもとにおける防衛庁体制と国民の意向が食い違ったものができてきた場合にはどうするか、こういうような御質問のように伺ったんですが、もしそれでよければお答えいたしますが、そういった国民の意思というものは、私は選挙によって一番的確に表われると思う。これは防衛庁問題も選挙の課題だと思います。今の体制、これに対して反対の力が多数おられれば——国会においてこの意思がどういったふうに表われるかということによって、この日米関係その他いろいろな法制もまた、それに沿うようにできるのじゃないかと思うのです。今の国民との食い違いというものは、どの部面においてどういう食い違いがあるか、これはまあいろいろ国民も範囲が多数のことであり、おのおの意見の相違もあることと思いますが、的確に意見の食い達っ、ておるということを判断するのは、私はそういうのが一番的確に判断できるだろうと思います。そういう場合に対処するということになると、これはやはり国権の最高機関である国会がはっきり措置をすべき問題であると思います。それによって防衛庁長官は適当な措置を講ずると、これがほんとうの筋道じゃないかと思います。しかし、御質問の趣旨を十分把握しておりませんですから、あるいは的はずれのことを申し上げたかもしれません。御了承願います。
  114. 藤田進

    委員長藤田進君) 質問の趣旨がわからない場合は、再度問い返していただいていいと思いますから、わからないままに適当にお答えにならないようにお願いいたします。
  115. 森中守義

    森中守義君 確かに少し取り違えもありました、私のお尋ねした要点も少しぼけていたのじゃないかと思いますが、私は、なるほど、今長官が言われるように、国会が国の最高の機関なんですから、国民の意思がこの中に反映されておるということは論を待ちません。ただ、しかし、すなおな国民の感情というものは、国会に反映される以外のものがある。これは私は当然あり得ると思う、それで、実はその質問の前段にあるものは、現在の防衛問題について、国民の関心はどういう方向に向っておるかということを長官は把握されたことがあるのか、こういうおねの仕方が正当であるかもわかりません。だから、今国民は、これでよろしい、なるほどこれでなければいかぬというように思っておるかどうか。その把握の仕方を一つ聞かしておいて下さい。それで、そういう上に立って、またさっきの質問を再度申し上げたいと思います。
  116. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 世論の動向ということは、われわれ政治家としては常に注意をいたし、またこれを尊重するということは当然のことだと思います。防衛の問題についても、いろいろな意見のあれはございまして、これらについてはずいぶん関心を持ってあります。私はこれを読み、また人の話も聞いております。これはわれわれ自衛隊を運営する上においては、どうしても反省すべき点もいろいろございます。これらは満実に改憲をはかっていきたい。しかし、国の基本的の方針として、この防衛というものは要らないのだというような意見がかりにあったら——あるようですが、これには私は賛成できない。ただどういう方法で、どう効果的にやっていくかということについての建設的な意見は、十分私尊重しなければならない。また、装備関係についても、いろいろ意見もございましょう。しかしながら、これも国民の世論に沿うべくわれわれは苦心いたしておるわけです。そういう意味においての、いわゆる国民の皆様の考え方中のもっともだと思うものを、反省すべきものはこれを反省のかてといたして、運営に支障のないように私はやっていくべきものだと思っておるのでございまして、これはぜひとも、世論の勤向等に注意を払って善処していくという気持は、始終私は持っておるものでございます。
  117. 森中守義

    森中守義君 非常に長官のお答えが浅くて、私の承わろうとするところに、ちょっともの足りないのですよ。こういうことですよ。要するに、国民は、アメリカとの講和条約により、しかも講和条約を基礎にして安全保障条約や日米行政協定がきた。それで無理やりにアメリカから押しつけられた防衛であって、九千三百万の国民が、心の中から、何としても防衛体制を作らなけばれならぬという意思で出発をしていない。そもそもそこに問題があるのじゃないか、こう聞いておるのです。だから、選挙で、なるほど今日の与党、野党がおのおの防衛問題に論争をかわして、国民の厳粛なる審判の上に選び出されてはきておるが、それ以外の問題、それ以上の問題として、国民は今日の防衛についてはなお割り切れないものがあるが、そういうものについてはどう判断をつけておるか、こう聞いておる。
  118. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 非常にむずかしい御質問でございます。日米安保条約というものは、平和条約と同時に協定ができまして、日米の防衛の体制からいっても、これはどうしてもこういうものによって独立と安全を維持しよう。そしてこの条約というものが国会の承認を経、その基礎のもとにあらゆる法律なり予算化されておるわけです。今日の予算におきましても、三十三年度におきましても、飛行機等については、あるものについては、大体半分づつ持って製造の計画を立てておる。これは説明しておるわけです。艦船等についても同様なものがあるのです。これはいわゆる日米のMDAPと申しますか、そういうものであるわけです。これは毎年そういった体制の基礎の上において国会で御承認を願い、われわれがこれを実行して参っておるわけであります。そういったものを的確に実行する衝にわれわれはあるわけであります。もしこの体制がだめであるということであれば、これは予算においてもすっかり変貌を来たすわけであります。三十三年度においても、四百三十億円あまりの供与物費を期待してこの予算ができ、防衛整備目標の初年度がやれるということになっておるわけで、まずわれわれは国民の世論というものは聞き、防衛すべきものは大いに反省しますが、基本的に日米安保条約はいれないのだという国民の最終的な判断は、まだそこまで具体的にわれわれが実行に移すべきところまで表われておらぬ、こういう見地でございます。
  119. 森中守義

    森中守義君 いずれ総理もおいでになるでしょうから、こういうことは総理にもう少し正確にお尋ねした方がいいと思いますが、今日のわが国防衛の状態というものは、国民の自発的な意思に基いて行われたものでないということだけは、私は事実だろうと思うのです。それは先刻申し上げた講和条約、あるいは安全保障条約、こういうものが基礎になってできておるわけですからね。そうなると、長官に私はお答え願えるかどうかわかりませんが、こういう出発点によるわが国防衛というものがいいとお思いであるのか、あるいは問違ったということで、あるのか、やむを得ないということであるのか、そういうことをもう少し虚心たんかいにお答え願いたいと思うのです。国会で承認を求めたとか、法律に基いてやったという、そういう機械的な事務的な答弁ではなくして、要するに、国民の意に基いた防衛であるのか。明らかにそういうものじゃありませんが、そういう仕方がいいかどうか。  だから、私はちょっと言葉が過ぎるかわかりませんが、最近あまり聞きませんけれども、しばらくは、自衛隊を称して、税金どろぼうであるとか、また言われた方の自衛隊は、汽車に乗るにもバスに乗るにも、何とはなしに肩身の狭い思いで行動をされていたということが、しばしば週刊誌に出たり、あるいは新附に出たようなことがあります。これは明らかにそういう率直な国民の感情が私は反映しておるので片ないかと思いますので、防衛の出発が正しかったのかどうか。もろろん、その結論は私は私なりに持っておりますが、そのことを基礎にして、さら後日この問題を深く検討して参りたいと思いますので、その出発点において、長官はどうお考えであるか。
  120. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 国民の自発的意思に基かないというのはどういう観点からでありまするか。私は、国民の意思に基いて決定され、現に実行されているものだと思います。国民の意思とは何ぞや、これはやはり国会においていわゆる国民の意思というものべ表現された結果においてやるべきものであって、またそれが事実行われておるもので、その判断というものは、これは独断的にできないものだろうと思うのです。今日の防衛のあるいはいるんなやり方について御批判はあると思いますが、今日の日本防衛がこれは国民の意思に違ったもの、自発的でないという観点は、私はどうも賛同できないことだと思います。
  121. 森中守義

    森中守義君 あと三つでありますが、先刻まあ国際的な視野の中からいろいろ御報告ありましたが、もう一つ、その関係で聞いておきたいと思いますのは、いわゆる自由主義国家といいますか、そういうアメリカ中心とした陣営は、これはいいとして、世界の趨勢として、わが国の今日の防備の体制についての評価というか、あるいは見方というか、そうういうものは把握されておりますか。一つつけ加えて申し上げるならば、アジアの諸地域においてわが国の現存の防御体制が賞賛を受け、あるいは同意を得ているし思っておいでになるか。あるいはまた、再び日本が侵略戦争をするのじゃないか、そういう危惧を持っているところもあるのじゃないかと思うのですか、そういう世界の各国が見た日本防衛に対する反響、あるいは世論、そういうものを聞かしてもらいと思います。
  122. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) 私どもの立場からいたしますれば、もっぱら日本の国の防御ということに専心をしておるわけでございまして、外国がわが国防衛をどう見るかということは、関心はございますけれども、直接にそういったことについて研究をしておるわけではございません。ただ、日米安全保障条約の前文にもございます通り、他国の脅威となるような軍備を持つことを避けつつ、「アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在、若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、面接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。」というのが日米安全保障条約の前文でございます。この方針に従いまして自衛隊整備が進められていっておる。またそうしなければならないと思うのでございまして、各国いろいろの見方はございましょうけれども、私どもとしては、この安全保障条約全文の精神に従って、性格を把握すべきであると考えております。
  123. 森中守義

    森中守義君 なるほど、局長の答弁としては今のでいいと思いますが、長官はどうなんですか。私はやはり、諸外国の意向、ことにアジア近隣の諸国の意向というものを無視して、ただいたずらに日米安全保障条約にこうこうということを取りきめているから、ひたすらにそういう方向に向わなければならぬとすることは、いささか国全体の問題としては私はあやまちを犯すのじゃないかと思います。それで、そういう意味から、ただ防衛という技術上の問題でなくして、国際的にわが国防衛をどうしたらいいか、どのように気を配ったらいいか、そういうことは私はやはり長官がお考えになるのが必要だと思うのですが、その辺の心境と申しましょうか、長官意見を聞かしてもらいたいと思います。
  124. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 今、加藤局長から申し上げた点で尽きておると思いますが、今日のわが国防衛整備目標、またその実行段階におけるわが国防衛が、諸外国からどういうような評価を受けるか。評価という意味は、非常に貧弱であるという評価であるか、これが脅威であるかということに帰するだろうと思います。私は、これが強大であって、安全というか、平和の脅威になるということを言う国は私はないと思います。アジア請国においても、この程度の防衛整備が……。私はそう思います。また、ある国からいえば、これは日本の国力に相応しない、また微弱なものだという批評はあり得ると思います。われわれは独自の見解で、自主的にこの程度の防御が適切である、必要である、国力にも相応したものであるというところで、適切妥当なる整備目標を、実行しておる。他意がないのでございますから、今のいろいろな評価というか、外国からの観察がどうであるかということについて、私は何ら影響を受けるところは、必要はないと、こう思うわけであります。
  125. 森中守義

    森中守義君 どうも長官のお答えは軍事専門家的な、防衛技術者的なお答えで、私は了承できません。長官であり、国務大臣なんですから、やはりわが国が、防衛の問題にしても、外交、内政の問題にしても世界各国の反響というもの、あるいは意思というものを無視して、わが国が独自で生存していくということ、ないしは民族の発展ということは、私は非常に危険だと思う。そういう意味で、もう少し全世界方向に目を向けて、日本防衛に対しては、各国はどう見ているだろう、いやしくも。ポツダム宣骨を、受諾しているわけですから。そういうことを私は、聞きたいのでありますが、残念ながら長官からそういう答えが得られませんから、これは時間の関係もございますので、後日に譲りたいと思います。  最後に、もう一つ承わっておきますが、例の安全正保障条約第三条に基づいて通信協定ができておりますね、それの施設の運行状況防衛庁との連携の状態、さらにもう一つは、防衛庁あるいは海上保安庁、こういう軍事的あるいは準軍事的な通信施設以外の、国内に存在する。通信施設が軍事上必要であるとする場合に、かつての第二次世界大戦当時に行われたような国家総動員的な意味で、軍事上必要であるとする場合にることがあり得るかどうか。そのことをお答え願いたいと思います。
  126. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) これは専門的なことですから、政府委員からお答えすることに御了承願います。
  127. 加藤陽三

    政府委員加藤陽三君) お尋ねになりました全部の問題をカバーする答弁はただいま用意をしておりませんので、この次の機会に答弁をさせていただきたいと思います。  そのうちの一つ、戦時総動員法的なものを考えておることはないかということでございますが、この点につきましては、自衛隊法の第百四条というものがございまして、公衆電気通信設備の利用につきまして規定をしておる条文がございます。これは防衛出動を命ぜられた場合におきまして、「自衛隊の任務遂行上必要があると認める場合には、緊急を要する通信を確保するため、郵政大臣に対し、公衆電気通信設備を優先的に利用し、又は有線電気通信法第三条第三項第三号に掲げる者が設置する電気通信設備を使用することに関し必要な措置をとることを求めることができる。」、そして郵政大臣はこの要求がありましたときには、「その要求に沿うように適当な措置をとるものとする。」という規定がございます。防衛庁等の場合も、通信線の有線利用につきましては、ただいまこういう規定に基きまして準備しているわけでございます。
  128. 森中守義

    森中守義君 非常にお答えが的確でよくわかりました。  それで、今、はしなくもその一例が示すように、いわゆる平和産業に寄与すべきわが国の通信というものが、表現では防衛上ということでありますが、軍事的な意味でそういう方向に動員をされる危険性がある。もうすでに設置法の中で明確になっておりますし、こういうことが、いろいろと考えていけば、やはり通信に限らず、船舶も、あるいは民間航空も、いろいろな国内における機能というものが軍事的に利用される危険性を感ずるのでありますが、先々、今すぐお考であるかどうかわからぬが、防衛庁の方では、防衛計画一つ方向としては、そういう戦時総動員法的なものを作らなければならぬという必要をお考えになっておるかどうか。それを明確に長行の方からお答え願いたいと思います。
  129. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 現在の法制のもとにおいては、この自衛隊法においては強制的の措置に出る場合が限定されております。しかし、これに対して過去における戦時総動員法的な強圧または強制的の法規を作るかどうかという問題は、これは一に事態推移によって考慮すべき問題でございます。少くとも今日においては、自衛隊法の規律のもとにわれわれは計画を立てていかなくてはならぬ。それは一にそのとまの情勢によって判定さるべき問題であり、ことに法規を必要とするものは国会にはからなければできない。従来の緊急勅令式なものはない。これは一に国会の意思によって御決定願うことであって、その計画的なものがあるかといえば、今日はそういったものはない、こう申し上げるほかはありません。
  130. 森中守義

    森中守義君 非常に重大な問題です。私は今のお答えで明瞭になりましたが、ただ念を押しておきたいと思いますのは、事態推移の中にさようなこともあり得ると、こういう意味の答弁でありますね。今計画はない、しかしその可能性はある、こういうことに了承して差しつかえありませんね。
  131. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) 防衛出動の場合は、自衛隊防衛出勤は国会の承認事項になっております。そのときに、防衛出動というものがどの程度に必要ありゃ、またこれは一に国会において御審議願うことでございます。従って、可能性あり、また何も、要らないというようなことは、今日の事態においては申し上げるのは私は時期でないと、こう思います。
  132. 森中守義

    森中守義君 非常に答弁が後退しましたが、なるほど国会がそういうことはきめます。きめはするが、防衛庁計画としてはどうかと開いたところが、今はない、しかし事態推移の中にそういうこともあり得るという趣旨のことが、先刻長官から述べられた。だから、その可能性があるものと了承してよろしいかと私は言っておるのですが、それをもう一回明確に言って下さい。
  133. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) ただいまの問題、私は可能性ありとは申しませんでした。そのときに応じて研究をすべき問題であると、こう申し上げたわけでございます。
  134. 森中守義

    森中守義君 非常に大事な問題で、速記を私はもらって、また今のそれは明瞭にしたいと思いますが、私は、先刻の長官の答弁からすれば、事態推移によってそのことはある可能性がある、こういう工合に考えております。判断をいたしております。しかし、今その計画はない、事態推移の中にわいてはそういうようなこともあり得る、こういう御答弁であったと思います。だから、速記を後ほど明瞭にして、この問題については明らかにいたしたいと存じます。
  135. 津島壽一

    国務大臣津島壽一君) お答えを繰り返すようでございますが、可能性ありと断定したわけじゃない。可能性もあり、またそういった事態に即応して考えらるべき問題であると、こういう意味でありますから、可能性ないこともあり得るということを申し上げたつもりでございますから、あらためて申し上げておきます。
  136. 森中守義

    森中守義君 その問題、速記を後ほど明瞭に見た上で、この次の機会に御質問いたします。  私は、ほかにたくさんございますが、時間の関係もありますから、今日の防衛問題の質問はこの程度で終ります。
  137. 藤田進

    委員長藤田進君) それでは、引き続き御質疑をいただきました両案につきましては、本日はこの程度にとどめまして、都合により五分間休憩をいたします。    午後二時五十九分休憩    —————・—————    午後三時十分開会
  138. 藤田進

    委員長藤田進君) 休憩前に引き続き、委員会を開きます。  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案を議題といたします。  御質疑のおありの方は、順次、御発言を願います。
  139. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 宮内庁の所管の正倉院の御物の問題についてお伺いいたしますが、正倉院の御物の保管責任は宮内庁にあると思うのですが、さようでございますか。
  140. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) さようでございます。
  141. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 国宝に指定されましたら何か都合が悪いようなことがございますか、どういうわけで国宝に指定されておりませんか。
  142. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 国宝に指定をされて特に都合の悪いという点があるわけではありませんですが、あすこにあります御物というのが整理中で、未整理のが相当まだあるものですから、国宝に指定されるには、一応いろいろ調査書をつけて審議される、そのものが今調査中でございますので、そういう関係上、特に国宝の指定をいただいていないと思いますが、また一面この管理が、あすこにあります宝物の管理をするのは、宮内庁という国の機関がやっておりまして、特に指定がありませんでも、それをみだりに扱うようなことはまずないというようなこともありまして、特別にそのことを積極的に進めていないという次第でございます。
  143. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 次に、正倉院御物の保存の関係について文化財保護委員会にお伺いをいたします。先般来、新若草山の観光道路に関連いたしまして、内閣委員会で、昨年の四月十一日でございましたか、満場一致でもって決議をして、その保存に遺憾なきを期せられたいといったことは、文化財保護委員会で十分御承知通りであります。ところで、その後私が現地の人に聞いたところによりますと、肥鉄会社が責任を持ってやるべき正倉院の北側並びに西側の舗装が完全にできていない、こういうことを承わっているのでありますが、文化財保護委員会としては、当委員会の決議の趣旨もあるし、十分その辺の監督は厳重にしていられると思うのですが、舗装は完全にできたとお認めになっておりますか。
  144. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) お尋ねの正倉院の北側及び西側の道路の舗装でございますが、これは何日にも分けまして舗装をしまして、そうして長後には、昨年の九月でございましたですか、最後に一応全部の分につきまして舗装いたしたのでございますが、しかしながら、その舖装は完全ではございませんので、文化財保護委員会といたしましては、今、会社を監督いたしましてでぎる限りこの舖補が完全になりますように、たとえばいたんでいるところはこれを宣すように、常に県を通じまして監督いたしておりますが、修理は、一度舗装いたしましたものを、破損いたしました分は修理は一回はしてはございますが、その後におきまして、さらに修理をしておるという様子はないのでありますので、これはできる限りすみやかに、破損いたしました個所は修理を書せしめるように、さらに厳重に一つ督励をいたしたい、かように考えております。
  145. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最初、新若草山ドライブ・ウエイ補装計画図というものは、日本肥鉄土開発株式会社自動車課というものから出ている資料が私の手元にございます。これは私の手元に入った経路はちょっと忘れましたが、おそらく文化財保証委員会からいただいた以外には入るわけがありませんから、文化財保護委員会からいただいたものだと思います。その設計図によりますと、幅が六メートル、それから深さが五センチメートル、割栗石を入れて、その上にこまかい砕いた石を入れて、そうしてその上に瀝青乳剤滲透マガタムという方式でやると、着工の日が三十年の十一月の下旬で、延長が第一次が百メートル、第二次が百五十メートル、第三次が百五十メートル、工費予算が第一次が三十六万円、第二次が五十四万円、第三次が五十四万円、こういうはっきりした計画書があるのですが、現地から報告をもらったところによると、北側道路がまだ片側が二尺舗装されていない。西側道路は二、一尺舗装されていない。この設計図は本式のようであるけれども、実際にやったのは、仮舗装であるというので、非常にずさんなものである。しかもなぜ現地でこういうずさんなものをやったかということについては、県教育委員会に対して文化財保護委員会から、簡易舗装程度の工事をさせればよろしいと、こういう指令があったために、現地ではさような簡単なものをやった、こういうふうに私は聞いております。これが間違っておるかどうかお聞きしたいのと、この最初の設計図通りの本舗装ができるのでなければ、修繕がたびたび回ってくるというようなことは当然のことでありまして、この本設計図の通りなぜやらせなかったか。また、やらなければ……もう前々から何度か内閣委員会で決議をするくらいに不誠意な会社でありますので、正倉院の御物に内接関係のあるこの道路に対して、文化財保護委員会としての監督が非常に弱い、これらについての御弁明を承わりたいと思います。
  146. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) 今のお話の正倉院北側、西側の道路でございますが、それの舗装の問題と、それからもう一つは、今話にございませんでしたが、それから正倉院の東北からち、ちょっと山の方へ登っていきまする道路でございまして、約二百メートルの舗装の方と両方舗装の問題がございます。そこで東北から二百メートル山の方へ登っていきます道路につきましては、会社の方もまあかなりりっぱな設計図を出しまして、そうしてその通り実施するということで、これは期日はおくれましたけれども、とにかくその方は大体におきまして予期通りのかなりりっぱな舗装ができたのであります。お話の正倉院の北側及び西側の道路につきましては、会社側も同時に東北の方の道路と、それから正倉院の北側、西側と同時になかなかできないということでございまして、お話のような計画は払ちょつと記憶ございませんが、そういうような案もあったかと存じますが、たしかその際にはずっと北側、西側の方はもう期日はおくれる、おくれて実施をするというたしか話であったように聞いております。そこで、それではいけない、とにかく当初の道路の許可条件、三年以内に北側、西側の道路を舗装すべしという条件がございますのて、その期限をこれはおくらしてはいけないというようなことを厳重に、県の方を通じまして申しました結果、この北側、西側の方の道路はいわゆる簡易舗装程度だと存じますが、とにかくそれを実施するというようなことで、その実施を認めまして、そして簡易舗装でございますけれども、そこを実施せしめた、こういうようないきさつになったと存じております。
  147. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この設計図は本舗装になっておるのですが、本舗装を簡易舗装でいいということは、非常に何と申しますか、ゆるやかな許可であって、なぜ本舗装を御命令にならないのですか。
  148. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) これは一番初め、ちょっと前になりますが、昭和二十九年のときでございますが、道路の許可の際に、条件をつけましたときには、正倉院の北側、西側の道路を舗装すべし、三年以内に舗装すべし、こういう条件でありまして、いかなる程度の舗装をなすかということは特に詳しい指示はなかったわけであります。もちろんお話しのごとく、これはりつぱな舗装をいたしますならば申し分ない。これは私も希望いたしておったのてありますけれども、何分にもこの道路は県道でございまして、その県道に対しまして一個人の会社が舗装するということは、これは会社に対しては、条件としては非常に酷であるというような意見もいろいろございまして、できるならば、県なりあるいは正倉院側がなすならばこれは非常にいいことでございますけれども、会社に対しては条件をつけるのは酷である。しかしながら、いろいろいきさつがありまして、とにかく会社に対して道路を許可する以上は、この舗装も条件といたしましてこれをしなければならぬということで、これを許可したわけであります。従って、当初からのさようないろいろないきつがございますので、これに対しまして完全な舖装を命ずることは、これは期限が相当延びますということならばあるいは望み得たことでもございますけれども、会社の申しますごとく、いつまでもだらだらにこれを延期することはできませんので、とにかく一応これは舗装すべし、そして後のことは、またいろいろと県なり正倉院側とも連絡をいたしたい、かような経過になっておりまして、ただいまのような舗装をいたした、かような経緯でございます。
  149. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 私は、本舗装を命令するのはちっとも酷でないのみならず、元来観光道路を無許可のものを既成事実を認めるような文化財のやり方は非常に不穏当である。不穏当であるからこそ、満場一致で内閣委員会の決議はできたものである。かように考えておりまして、いまだに文化財保護委員会当局の態度というものは非常に不満足であるわけでありますが、この設計図は、これは文化財保護委員会に出たものにきまっております。それ以外に私は入手する方法がないのです。それでこれが出ている以上は、これは当然この通りやれということを指示すべきでありまして、局長が御存じなければだれか事務局でこの設計図を御記憶の方はありませんか。そこで設計図がなぜ出て、どうしてこの通りやらなかったということは、時間を省く点でもう一度よくお調べを願いたいと思います。それが一つ。なお、私は事務当局のやり方というものは、非常になまぬるくて非常に不満足であるという点だけをこの場合指摘しておきまして、他の問題は他の機会に譲りたいと思います。  次に伺いたいのは、史跡を無断で使用していることを相変らず文化財保護委員会では知らないという点を指摘し、て、御注意を喚起したいと思うのですが、この新若草山から北の方ヘ、今度ホテルを建てるというので、史跡のうちに無断で道路を敷設している、こういう問題が新聞に出ておるのですが、この事情を御存じですか。
  150. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) 存じております。
  151. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 そこで、県の文化財保護委員会から注意が出て、現在は工事が中止されておる。そしてそれの許可願が三月二十二日付で文化財保護委員会に出ている、こういうことが新聞に報ぜられているのですが、許可をされるお考えですか、許可をしないお考えですか。
  152. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) お話しの問題は犬東善治という個人がこの史跡の北側外側、史跡の区域外でございますが、そこに従来からありますところのホテルを買いまして、そしてそれを大きくいたしましてホテルを経営したい、こういうことで、さらにそれに連続いたしておりますところの史跡内の土地を購入いたしまして、その史跡内の、これはお話しの観光道路の北側でございますが、その土地も購入いたしまして、そしてそこを一種の緑地帯にしたい。そういたしまして、自分の経営いたしますところのホテルに参ります通路に一部したい。かような計画であったわけであります。そこで、その一部通路にいたしましたのは、これは私どもの許可いたします以前にしたわけであります。東の方ではこの事実を。知りまして、直ちにそれを差しとめましたので、その後工事は進行いたしておりませんが、要するに、自分の土地を一部通路にいたしまして、そうしてそこを通るという、自分のホテルの通路に使う、かようなことであります。これに対しましては、私どもといたしましては、果して緑地地帯にすることが史跡の保存上非常にいいかどうか。それからそのホテルに参りますためにいろいろその土地が利用されることによりまして、史跡全体に何か有害な影響を及ぼすかどうかという点、さらには、これは正倉院にも多少関係はないことはないのでございますけれども、正倉院の方に何か影響があるかどうかごいうような点をいろいる、研究いたしたいと考えておりまして、ただいまのどころでは、それらの点につきまして慎重に審議いたしているような段階でございまして、まだこれを許可すべきか、不許可にすべきかは決定していなわけであります。
  153. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 今の御答弁を伺いますと、緑地地帯にすることが史跡との関係でどうだというようなことに重点を置いているのですが、私が重点を置いて今この問題をお伺いする一番大きな点は、道路がそこにできる、ホテルかできる、ゴルフ場ができる、そうすれば、今でも年間三万台、多い月には五千台も観光通路を自動車が通って、それの排気ガスのために正倉院内御物の銀器等が非常に変色する、あるいは古い織物に非常な影響をもつ。それを実は一番心配しておりますのと、今の文化財保護委員会御当局の御答弁を伺いますと、そこへ年間さらに多くの自動車が出入りをして、排気ガスを出して、それが正倉院御物に影響するといったような、われわれの一番心配をしている点についてはあまり関心がないような御答弁を聞いて、非常に実は私は憤慨にたえないわけであります。私は観光道路の問題を非常にやかましく言うのは、その排気ガスの正倉院御物に対する悪い影響、この点について実は一番私はやかましく言っているので、緑地地帯にしたらどうだとかいうそういう問題に対してまで私は関心を持って言っているわけではないのでありますから、すでに年間三万台といっている数字が間違っておれば御指摘願いたいと思うのでありますが、今でも実は観光道路をほかの路線に変えてもらいたい、または変えるべきである。内閣委員会の決議でも、路線の変更ということが書いてあるのです。文化財保護委員長は、路線区の変更の意味を含まないものと認めますと、非常にこの前不十分な意見開陳があって、私ども非常に不満に思ったわけでありますが、どうかその排気ガスの御物に対する影響という点をお考えになって、不許可にされることを私は希望いたしたいと思います。  それから第三点として私伺いたいのですか、これは河野国務大臣があちらの方へおいでになりまして、京都と大津と宇治と奈良とこの四つを合せてあそこに大きな国際的な観光道路を作る、その道路の候補地として、私どもがしばしば申しておった正倉院の若草山から柳生街道の方へ出る道をつけたらどうかというふうな構想が出ておるということを新聞紙上で拝見いたしました。その柳生街道の方に若草山の上から道をつけるということは、最初に観光道路が問題になったときに、その方に道をつければ正倉院御物に対する影響が少いだろうという点に対しては、たしか文化財保護委員会の方からも多少その話を、されたかのように私は承知いたしております。この問題は、この前たしか局長の御答弁だったと思いますが、途中に断層があってその道が非常にむずかしいというような御議論がありましたけれども、実際当ってみればそういうむずかしい点はないのだと、また、宮内庁の三井書陵部長ですか、この方も非常に希望しておられた、こういうことを聞いておりましたので、幸いこういったような観光道路の、大きな四つの都市を結ぶ観光道路の構想もあるわけでありますから、正倉院御物の保全という観点から、まず今度の許可は不許可にして、その方に問題を移していくという点について、文化財保護委員会としては、強力に一つ研究していただきたい。たとえば柳生街道の力に道をつければ工事費はどれくらいかかるというような点も、もう少し具体的に熱意持って、正倉院の御物に対する保持保全ということに対してもう少し積極的になってもらいたいということを私この機会に希望いたしておきまして、何か御意見があれば承わっておきます。
  154. 岡田孝平

    政府委員(岡田孝平君) お話の観光道路の計画につきましてはまだ聞いておりませんですが、そういうことがありまするならば、それと関連いたしまして、奈良の文化財の地帯を、ことに正倉院の保護という観点から十分に一つ計画を考究していきたいと思います。  それから先ほどのお話の、会社の通路を作ったことにつきまして許可するかどうかというお話でございます。も託ちろん正倉院の御物の影響ということにつきましては、よく考慮いたしたいと思います。従って、宮内庁の御意見を十分一つ拝聴いたしまして、よく連絡をいたしまして、その上でこの問題を処理したいと、かように考えております。
  155. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 この前観光道路を無断でつけたのに、文化財保護委員会の態度が非常にあいまいであったために、駐車場を奈良で無断で作ったり、史跡を荒すということの悪い前例が一つできたものですから、その奈良でいろいろ同じようなケースが出て取締り当局が非常に困っておるということが新聞紙に出ております。そこで、今のゴルフ場の問題でありますが、すでに史跡を無断で荒したという点についてはもうこれは許可する必要はない、もう少し法の峻厳ということについて厳重に取り締ってもらいたい。こう私は思うのです。どうも文化財保護委員会の態度は、この点に対して非常に弱い、もう今ではあるかないのか私はわからぬというくらいに思っておるのです。法を犯した者はびしびし取り締るという点を、この機会に私要望しておきまして、私の質問を終ります。
  156. 森中守義

    森中守義君 二、三お尋ねをいたします。今回の増額の理由の中に、物価の高騰というものがうたわれておるようでありますが、今まで官公庁の組合等の要求に対して、政府当局の方ではここ数年間は、全く物価は横ばいの状態にある。こういう公式な見解政府は表明して参りました。しかるに、この皇室経済法施行法の一部を改正する法律案の提案理由説明の中では、明らかに逆なことがいわれておる。これでは同じ政府機関として、私は若干食い違いがあるのではないかと思うのですが、政府の権威ある機関の片一方では物価は横ばいといい、皇室関係は物価の高騰というこの食い違いをどういったように認識をしてよろしいのか、宮内庁の方で物価が高騰をしたという理由を御説明願いたい。
  157. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) その点は、昭和二十八年のこの前金額を改訂いたしましたそのときから比較いたします。ると、この案を起しますときには一割六分上っている。でその一割六分の上り方は、その一五ヵ年の前の方であります。昨年くらいからはそう上っていない。それからその計算上一側五分となっておりまするが、これは大蔵省との、いろいろこういう問題の場合に審議いたしまするが、三十三年度は少し物価は下るのじゃないかという、そういう見通しなんかありまして、遠慮して、さらに下に下って一制五分という数字を出しましたので、最近は横ばいか、場合によっては下るという傾向でありますが、二十八年、九年、三十年あたり上って、三十一年、三十二年と下ってきて、結局は五年間を見ると、上っているということでございます。
  158. 森中守義

    森中守義君 それから皇室の外交交際の範囲及び内容が拡大をされておるということが同じように説明の中にいわれております。これはただ単に交際の範囲及び内容が拡大をしたということでは理解できませんし、具体的に最近の外交交際の範囲及び内容はどういうものであるか、実例をあげて御説明を願いたい。
  159. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 交際の範囲が、二十八年から五年の間に広がっておりまする点は、日本と国交を開いておる国の数が、その当時と比較いたしますると、その当時が二十九カ国でありましたが、昭和三十三年の現在は、五十六ヵ国になっております。で、皇室の関係では、国交の開かれた国の大公使、これは信任状の奉呈がありますから、大公使が信任されるのであります。また、離任があります。帰るときであります。そういう場合には午餐会というものをなさいまして、これは一人一人なさるのじゃないのですが、二月に一回ぐらい折を見まして、その問の新任それから近く離任するという方を、まとめて午餐をやられます。しかし、国の数がふえましたので、そういうような外交の数も間隔をもっと狭めてだんだんふやしていかなければいけないというふうになってきております。それから最近は国賓の来訪が非常にふえております。昨年中の数字は記憶しておりませんが、総理級の力が日本に来られるのがふえております。総理級の方が見えますと、そういう方のためには、普通の大公使とはまた違って、その人のために特に午餐会を開かれるわけであります。そういう場合の数が、五年前から見ますると、ずっとふえております。ざっと私のこれは不正確かもしれません記憶でいえば、数倍になっているのじゃないかと思います。五年くらい前はほとんどなかったのでありますが、    〔委員長退席、理事永岡光治君着席〕 元首の来訪、これは一昨年の秋にエチオピアの皇帝が見えましたけれども、昨年は元首の来られるのはありませんでした。しかし、まあイラクの皇太子が見えました。その場合は元首と総理大臣の間くらいの取り扱い、そういう場合の扱いの場合には、単に午餐会を開くだけでありませんで、ホテルのサービスから、いろいろ京都の方に行かれれば、そういうふうなお世話も外務省と分担していたします。イラクの皇太子の場合の例を見ますると、十日間、二週おられたうち、そのうちの三分の二が宮内庁でお世話をして、三分の一が外務省でお世話されました。エチオピア皇帝が見えましたときは、ちようど半々の世話というようなことであります。  それからなお、今年三十三年度予想されまするのは、現在きまっておりまするのは、五月の十九日にイランの国王が見えます。そういう場合には、外務省と協力いたしまして、多分この場合も、宮内庁側が三分の二で、外務省が三分の一くらいの関係でお世話をすることになると思います。なお、予想されることとしては、その他の国の元首、たとえばこれはまだきまっておりませんからどうと言えませんが、情報のありますのでは、ブラジルの大統領、それからフィリピンの大統領なども年度中に見えるであろうということも考えられるわけであります。そういうようにふえてきておることで、それに伴うて公的に宮廷費でまかないますもののほかに、私的なおつき合いというものがそういう機会にまたありますので、そういうことを含んで説明がなされておるわけであります。
  160. 森中守義

    森中守義君 もう一つ伺いますが、皇室と同じように、皇族の方でも内廷費関係が、諸活動が最近非常に拡大をされてきた、こういうことが言われております、これも皇室と同様に、具体的にどういうことをなさっておるのか、そのことをお答え願いたいと思います。
  161. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 各皇族さんは、先ほど申しました大公使が見えますと、大部分の方は宮中の方へあいさつに来られるほかに、皇族の方のところへもあいさつに行かれるようであります。で、なお見えますと、そういう新任、離任のときが多いのですが、レセプションとかパーティとか、そういうものをされる。そういう場合には、天皇陛下はそういうところへはお出になりませんが、そういう場合に皇族の力がお出になります。その他、各国の国祭日、独立記念日でありますとかあるいは英国でありますればクインの誕生日とか、その一年間に各国の、交際のあります、五十六ヵ国それぞれが、一年に一回以上は国祭日というのがありまして、その日には皇族方も呼ばれておられます。そういう場合には、全部お出になることは珍しいのですけれども、どなたかお出になるというふうになっております。交際の国の範囲が広くなりますと、自然そういうような会合がふえてきておるということでありまして、そういうような外国の大公使のあいさつのレセプションとかパーティとかあるいは国際日のレセプションあるいはパーティもありますけれども、そういう場合に出られる場合、そういう場合には、そういう服装とか何とかというのは、この皇族費でお作りになって出ておられる。服装の関係は主とし妃殿下方の方がいつも同じもので行けないというようなことで、作りかえて行かれるようなこともありますることで、経費がそういうものはあります。なお、呼ばれておられる場合に、いつも呼ばれてばかりいてもいけないからお返しでごちそうしようというふうなこともなさいます。それも皇族費の中でなさるのであります。    〔理事永岡光治君退席、委員長着席〕
  162. 森中守義

    森中守義君 大体わかりましたが、少し疑問になって参りましたのは、外国交際の範囲の拡大ということ、あるいは内容の拡大ということは、憲法七条、九項に「外国の大使及び公使を接受すること。」こういう規定条項があります。これは明らかに、私は象徴という、アクセサリーというのかあるいは飾り物ということであろうと思う、いわゆるその天皇の今日の置かれている立場というものは。そうだとすれば、国を代表して外国との交際をされる、そういうことで、今確かに国交が回復した国が昨今では五十六にふえた、だからその国交回復の国がふえたので、自動的に必要な経費がスライドするということはわかるのです。しかし、内容も拡大したということであれば、やはりこれは天皇がやられる行為の範囲というものが、憲法七条に少しはずれるのではなかろうか、こういう疑いを持つのです。今パーティをお開きになるとか、いろいろ御説明があったようですが、これはやはり内容に入るかどうかわかりませんけれども、やはり外務大臣あるいは関係の各省、こういうように政府の権限じゃないか、こういうことも考えられるのですが、それですから、その辺のことをもう少し、範囲が拡大をされたというのは、なるほど国の数が五十六になったということでわかりますが、外国交際の内容も拡大したというこの御説明でありますので、その内容の拡大とはどういうものか、憲法七条に逸脱するような、象徴である天皇がそのままの状態であれば内容が拡大されたということは言えないとも思いますから、その辺を少し詳しく説明をしてもらいたい。
  163. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) その内容の拡大というのは、まあだんだん最近六年前に比較いたしますると、同じ国でも相手方のなさり方が幾らか派手になってきておられる。これはおみやげとかそういうものも、比較的いろいろな関係で、幾らか以前の関係よりもよくなってきておるというふうに見えます。それからパーティとかレセプションなんかでも、必ずしもやられなかったところもやられるという、そういうような関係、そうなりますと、そういう機会がふえ、内容がふえてくる。それからこのおいでになった方で、ほかのいろいろな国を回ってこられて、ほかの国でこういう扱いを受けておるということで、そういうことから今までよりも少し丁寧に、ほかの国とのつり合いもあるからというので、以前、五年前でしたらちょっと考えていなかったような扱い、たとえば観光される場合に、こちらから案内をするというような——人によりますけれども、皇帝だとか、皇太子の場合でしたら案内する。五年前でしたらそういうことは一件もなかったわけです。そういうようなことが一つあります。  なお、御疑問の憲法上にいう象徴としてなさいますということは、これは公けのことでございまして、その関係のは宮廷費の方でまかなっております。それから見えました際に、象徴である天皇かもしれませんけれども、私的な立場、皇族さんも私的な立場で御交際をなさる、同じ人に対する場合も、金を出す場合に、これはほんの私的なものだという場合には、私的な内廷費あるいは皇族費でなされるというようなことで、実質的に五年前の象徴としてなさっておりましたこのことと、実質において何かこう幅を拡大して、解釈上広げていくというようなことはありません。
  164. 森中守義

    森中守義君 やはりまあ聞く方の印象でもあり、あるいはまた、説明を受けたものの印象かもしれませんが、どうしても急激に相当、額がかさんでいくとか、額そのものよりももっと問題なのは、やはりやっておいでになることがどうしても政府がやるようなところまでもおやりになっているのじゃなかろうか、そういうしむけ方が行われているのではなかろうか、こういうことを私は危惧するのです。それで果して象徴としての行為であるかどうかというのは、すこぶるその判断もむずかしいのですけれども、何とはなしに、だんだん旧天皇制への復活というようなことが、こういうような経過をたどっていけばあり得るような気がするのです。それで今、さらに一切外国使臣やあるいは貴賓との御交際になる内容というものを克明に承わっても、それは判断の問題でなかなかむずかしいかとも思いますが、次長の力で、明らかに憲法七条の九項に矛盾しないような天皇の行為であるのかないのか、その点をもう少しすっきりと御説明願いたいと思いますがね。
  165. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 憲法の大公使の接受、これは内閣の助言、承認によって、天皇が行われる国事行為というものははっきりいたしておりますので、接受をされるということで、これは信任状を持って見えた場合にそれを受けられる、それから親善のために来られた場合に、公式に会われるというのも接受ということになると思うのであります。なお、この外国の交際には、国事行為とまでいかない、国の象徴として儀礼的になさるというものもあると思います。来られた方の接待の場合、それがたとえば外国から皇族が来て、京都まで御案内したのはどうか、これは接受とも考えられますし、象徴としての儀礼的なものとも考えられます。国の象徴という概念から儀礼的なことをなさるというもの、それも接受の中に含むとも考えられますし、しかし、そのものによりますると、単なる儀礼的なこと、たとえば外国の国祭日に祝電をお打ちになります、これは接受という中には入りませんが、しかしながら、接受をなさるという、そういうお立場を持っておられるから、そういう場合に、儀礼的に祝電も打たれるというふうに、そういうものも私はあるというふうに考えます。
  166. 森中守義

    森中守義君 くどいようですが、象徴行為の限界というのは、やはりむずかしいと思うのですよ。やはりこういう説明書の中に、内容の拡大というようなことを言われておると、何かしら象徴行為以外のことまでもだんだんおやりになりつつあるのじゃなかろうかという、こういう錯覚を起すのはあながち私一人じゃないと思う。そういう意味で、私は今の質問をしたわけですが、間違いなく、次長の方から象徴行為以外のことはない、その精神に沿った象徴行為であるとすれば、それでけっこうですが、もう一つ伺っておきたいのは、そういう交際をされる際に、この宮廷費の交際費は去年よりも六十万円減額になっていますね。そうなると、営廷部面の公的な交際費が減額されることは、私的交際においても同様であろうと思いますが、その辺はどうでございますか。
  167. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) その点は、この前の委員会の際に御質問がありましてお答えしたのでありますが、この宮廷費の方の交際費は、これは皇族の方が公式にお使いになる、なお、宮内庁長官、式部官長が公式の立場で何か連絡の関係で交際されるという場合に使われる。陛下の方の分は、この報道費、会議費という中でやっておられる。なお、陛下の場合には、先ほどの外国の元首なんか見えますとか、特別の場合に一々その数が一年に予定されないものですから、この宮廷費の報償費を予備費としてそれに充てる。その中には先ほど申し上げたように、皇族さんがおもでありまして、長官、式部官長がやる場合もあります。減っておりまするのは、昨年この皇族さんの関係で、いろいろ服装の関係なんかで、今までのものでどうもまずいから改善しなければいけないというので、この公式の会合に出られる際の服装を臨時費としてふやしたのであります。その臨時費の分が落ちたものですから、それだけ減っておるのであります。
  168. 森中守義

    森中守義君 これで終りますが、今その外国からのおみやげに対する答礼というようなことが出ましたね。それを見ると、何かしらこの内廷費と宮廷費が混淆されているような気がするのです。そこの区別は明らかにいつもされておりますか。
  169. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 象徴としてなさるというような場合は、宮廷費で、皇帝が見えましたときのおみやげのお返し、そういうようなものは宮廷費でやっております。それから去年あたりイランの皇女が見える、私的な資格で日本に遊びに来られる。先方も公式でございません、私的でございます。その場合に、何か持ってこられて、お帰りになるので何かおあげになる。これは先方も私的であり、皇室の方も私的です。そういうのは出しておりません。
  170. 森中守義

    森中守義君 そうすると、先方から天皇の方に届けられたおみやげの性質によって、宮廷費かあるいは内廷費かという区別をされるということですね。
  171. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 先方から届けられたというその性質だけにそれが……、まあそのことになりますけれども、要するに、陛下の方が私的になさる私的のお客、国家的なお客さんの場合ですとこれは宮廷費ということでございます。
  172. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 官房長官御多忙でしょうから、まず官房長官に対しまして、先に二点だけ伺いたいと思うのです。  その一つは、最近他国の元首あるいは王等が日本においでになられる、こういう人の交流が行われることは、私はけっこうなことだと思っております。それでまた外交が開けて参りますと、信任状の奉呈と接見の機会も多くなるわけですが、おそらく他の委員から質疑がなされたと思いまするが、表宮殿が焼失されて、今宮内庁庁舎の一部を改造して使われておる。で、象徴天皇が国事行為をされる場合に、果してあのままで十分かどうかというような問題点があると思う。従って、まあ造営計画あるやに承わり、その準備的な経費が非常にわかりつらいのですが、この皇室費の目の二、三カ所に入れられているということを予算の分科会で承知したわけですが、そこでこの予算の目の中に金額としてどの程度入っておるのかということと、それからいわゆる造営計画を持たれましても、これは十分御検討なさっておると思いますし、また、昨年は外国に係官を出張させて調査もさしたようでありますが、その適当なる規模というものが大切なことではないか、それでそれについて内閣としてはどういうお考えでおられるのかというのが一点と、それからもう一点は、この国会においても、外国の国会の代表を国会として最近お招きした例もあるわけなのですが、こういうこともまた私はいいことだと思っております。そうなりますと、いつでも問題になることは、迎賓館でございますがね。私も二度ほど外国へ出張いたしましたが、その訪門した先でお招きを受ける場合に、ここは政府並びに国会がお客さんがおいでになった場合に使っている建物だ、そういうところへお招きいただくと、ごちそうになるものはたとえお粗末でも、非常に親近感を覚え、相手国の国会議員諸君との交流もできるわけですね。日本が今後——今でもそうでありますが、賓客を迎えた場合に、あるいは帝一国ホテルとか、あるいは時たまには赤坂あたりを外務大臣が使っているようですが、そういうことでなくて、私は迎賓館というものを一日も早く設けて、そこを国際社会におけるわが国の公式的な交際の場とするということは、私は大切なことじゃないかと思うのです。そこで、それに関連して、先般来この委員会質疑が行われたのですが、高松宮家の光輪閣ですね。これは実際問題として、私は高松宮家としてはこの光輪閣はもてあまされておられるのだと思うのです。その結果として、光輪クラブというものに貸与されている。政府委員の答弁を承わりますと、固定資産税の百五十万円と、借地料六十三万円だけを光輪クラブが負担されて、あれほどの建物を光輪クラブに提供しておりながら、高松宮家には一切収入というものがないのだということなんですね、そういう答弁です。また、他の資料によりますと、高松宮家は、皇族費以外の収入を加えてもたお不足する金額は百六十六万円とい武ような資料が出されているわけなん外すが、あれだけの建物で光輪クラブいいうものは成果を上げてないのかどうかという点について、私は疑問を持たざるを得ないわけなんですが、これは宮家の意向もございましょうが、あの光輪閣というものはりっぱなものですし、敷地は高松宮家がお借りになっておられるというならば、宮家の御意向もありましょうが、宮家の意向さえよろしいということになれば、ああいうものを買い上げて、そうして高松宮家としては、あの建物を金券化して、そして御財産にされるという方法もあるかと思う。そういうものを迎賓館にするか、あるいは赤坂のもと離宮——今の国立国会図書館、御承知のごとく、国立国会図書館はすぐそこに、ここ三年もすればでき上るわけですが、ああいう今の国立国会図書館を、今後迎賓館にするとか、いろいろ考え方はあると思うのですが、いずれにしても政府としては、一つのお考えを持っておられなくちゃならぬのではないか。ことに私は、このたびの法案を審議するに当って出されました資料を拝見するときに、光輪閣の具体的な問題が浮び上ってきた場合、そういうことと関連して痛切に感じましたので、政府を代表して官房長官においで願ってて御意見を承わりたいと思うわけです。
  173. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) ただいまのお話に対しましてお答えをいたすのでありますが、一つは宮殿の造営の問題につきましては、ただいま理指摘がございましたように、本年度予算の目の中に五百万円程度の造営調査に要する経費というものが計上せられておるわけでございます、御承知通りに、皇太子殿下のお住いになる所については、具体的に計画実行に移りつつあるわけでございますが、宮殿の関係につきましては、ただいまお話もございましたように、まことにどうも、国際的ないろいろの関係から申しましても、お粗末千万でございまするので、これは慎重の上にも慎電に、適当な規模におきまして新しく造営ができるように運びたいと考えておるわけでございますが、なおこの点については、的確に具体的にこうこういう年次計画でこの程度のものということにつきましては、まだ申し上げるような段階に至っておりませんが、できるだけ慎重の上にも慎重に、またこれは陛下のお考えというようなことも、十分に想像申し上げながら措置する必要もあろうかと々ずるわけでございます。  それからその次の問題は、これももう全くごもっともで、私どもも、自分の体験等からいたしましても、何とかせねばならぬと考えておるわけでございます。これはちょっとお尋ねの点から範囲が広がるかと思いまするけれども実は政府自体の関係におきましても御承知のような総理大臣官邸のような状況でございまして、全く公けのフアンクションが十分に行えないというような状態になっておりまして、ただいまお話もございましたように、ある場合には帝国ホテルでやったり、ある場合には目黒のいわゆる迎賓館を借託りましたり、これはもう実に、率直に申しまして、閉口いたしておるわけでございます。従って、適当なところがありますれば、まず政府といたしましても、何らかの措置を公けの設備として持ちたいということを考えておるわけでございまするが、これはまあ予算関係その他も慎重にしなければなりませんので、ただいまどこの場所をそれならば、総理大臣公邸といいますか、迎賓館と申しますか、いたしたらよいかということにつきましては、実は現存の建物等についても十分その調査をやりましたのでありますが、ただいまのところ、帯に短かしたすきに長しとでも申しましょうか、適切な施設がないのでございます。この点は、率直に申しますが、何とか至急に方法を考えなければならないと思っております。  それからその次に、光輪閣の問題は、これも率直に私申し上げるのでありますが、ちょっと急なお呼び出しでございましたので、こまかい資料を勉強して参りませんでしたので、詳細にお答えができないのでございますが、この公けの迎賓館として適当な場所であるかどうかという実は候補には今のところ考えていないのでございます。これは所有されておりまする高松宮様の方で、これはあるいは私間違っておるかもしれませんが、私のただいま承知しておる限りでは、直ちに手放すというようなお気持がないのではないかと、これはやはり、買いたいと思いましても、売買の問題でございますから、所有者の方のお気持ちというものも的確にわからないわけでございまして、ただいまのところは、あすこを買って、そうしてこれを公けの迎賓館にするということは考えておらないのであります。ほかの所に適切な候補地を求めるか、あるいは場合によりましたならば、新規の施設を造営しなければならぬかという問題があり得ると思うのであります。この点はいささかくどくなりますけれども、実は宮内庁の関係もそうであります。また、外務省の専門的なプロトコールの立場その他から考えましても、たとえば宮中に国賓が往来する場合、最も正式の場合には、たとえば馬車で往復をされるというようなことも、これは将来の交通関係その他から申しましても、たとえばそういう面をも資料として考えなければならない。あるいはまた、国賓を迎えて、泊ってもらうためには、たとえば国賓が夫人、家族を連れてこられる、あるいは随員の人たちもそういう場合がありますが、大体一行で、適当な普通の慣行による規模を考えましても、寝室とかその他が手ぎわよく収容できるようにするというような特殊の考慮がなればならないというようなことで、さっき申しましたように、現存のものの利用ということはなかなか帯に短かしたすきに長しということで、まあほんとうに今のところ名案がなくて困っておるというふうな実状でございます。
  174. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 その光輪閣の問題は、他の委員から、持ち出され、質疑がされましたから、私はもうこの程度で繰り返しては伺いませんが、しかしこの資料に基きますと、高松宮家が一番生活にお苦しいという資料が出ておりながら、あれほどの施設、設備を持っておる光輪閣を、光輪クラブというクラブにまかされて、固定資、産税と借地料だけを光輪クラブは出されて、そして宮家には一円も収入がないと、こういう御答弁を承わっては、私はどうも納得しかねるものがあるわけなんですよ。私はそういう方面にはしろうとだけれども、支配人でも任命していただければ、私はあれだけの施設と設備があれば、一年間にこんなことでなくて、相当私は成果を上げ得ると思うのですよ。それは宮家個人の問題だから深入りしないのですが、それが資料として出され、そうしてこの三宮家のうちで一番高松宮家が生活がお苦しいという資料が出ましたから、黙っておられないわけですよ。これはそれで伺ったわけです。これは次、長よく聞いておいてもらっておけば、それだけでよろしゅうございますが、これ以上、私は質問いたしません。まあ機会があれば、事に触れて、一つやってもらいたいと思う。  それから、この賓客を迎える場合の建物については、官房長官、他の委員、会で質疑を受けたことと思いますから、これまた時間をかけて伺いませんけれども、今の総理官邸が住居にふさわしくなくなった。しかも総理府は防衛庁とか国家公安委員会とか、いろいろかかえて、そうしてその国務大臣クラスがあの中にたくさん入った。従って住居にはふさわしくなくなったので、公的事務だけやって、そして総理の公舎を他に設ける、そこをまあ総理大臣が総理としての公私の行動をとられる場所とするということで、総理大臣公舎の問題が浮び上った。しかし今度予算に出ました、借上料が出ましたねあれは総裁選挙の熾烈な当時に、岸さんはあの第一回選は負けて、第一回選で勝たれたわけなんだけれども、お隣の女優さんのお宅を借りられて、そうして本年度からこれを公舎として国庫で借上料を出すというのなんか、私はそういうのはあまり芳ばしくないと思う。岸さんが永久に総理をやるわけでないし、総理のかわるたびに自分の家の近所寺辺にある家を探して、総理の公舎にして、そして国庫から借上料を払うというような形は私は不見識だと思いますね。従って、先ほど私の質疑申し上げた点について、一つ官房長官として善処していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  175. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) これはもう全く、お説の通りでございまして、昨年改造後におきましても頭を悩まし……。問題なんでありますが、結局総理大臣が公けの資格において活動するのにふさわしいようなところがございませんもんですから、考えあぐねました結果、昨年の十月から月ぎめでとりあえず家賃を払って、暫定的にこれを公舎にするということにいたしましたわけてありますが、これを私どもも適当な措置とは考えていないのでありまして、やむを得ざる暫定的な措置というふうに考えておるわけでございます。  そこで総理大臣の公舎に対する考え方でございますが、相当数の国賓等が来られたときに、泊めて上げるといいますか、泊まってもらうような施設にするというのも、これはいかがかと思うのでありまして、総理大臣公邸は公邸としての性格にふさわしいものにする、そうした場合には、たとこば宴会だとか何とか、そういうものはそこの小で私はできるかと思います。お泊めするまでの迎賓館ということになりますと、先ほど申しましたようにもっと大規模なものに、それで実はそういう、ふうな適当なところが絶対にないとも言えないかと思いますが、ただいまの東京都内で、交通その他の関係から考えますと、全くこれは今後においても努力はいたしますけれども、あるいは現存の施設でよろしいのじゃなかろうか、その場合には予算との関係もございますが、後年度にある程度の長期の計画で新設を考えなければならぬのじゃなかろうか、それまでの間はやはり今のような程度でしのいでいくよりほかにないのじゃないか、非常に卒直にざつくばらんに申しますと、そういう状態になっております。
  176. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 最後に長官一つ苦言を呈しておきたいと思うのでありますが、総理大臣官邸という難物は、利用率からいえば、これは分けの建物の中では最右翼にいくのじゃないかと思うのです。ずいぶん使っていると思うのです。問題はその使い方なんですね。これは先ほど申しましたように、今のわが国の行政機構の必要から、総理大臣の公邸をあるいは他に求められることにはそんなに私は一反対いたしません。しかし、今の官邸の使い方ですね、これは申さなければわからないから申すのでありますが、たとえば自民党の。婦人部大会とか、あるいは青年部大会とか、はなはだしきに至っては、総理の奥さんの母校の女学校の同窓会をあの総理官邸の大広間で開かれた、これは一つの例です。申さなければわからぬから具体的に申し上げるのでありますが、そういう利用の仕方というものは間違っていると思うのです。これは官邸の大番頭としての、内閣の大番頭としての官房長官として、しっかりしてもらわなければならないと思います。使うことはいいが、やはりこれは公けのものでありますから、公私の別ははっきりしなければ、同窓会まであそこでやったのじゃ、それはおいでになる方は善ばれるでしょうけれども、そういうことは、私は常識はずれていると思うのです。そういう点については、あなたは一々、場合によればめくら判を押す場合もありましょうから、わからぬでしょうけれども、あなたの部下をして十分注意をして、もう少し私は適正にして厳正なる使用に善処し、いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  177. 愛知揆一

    政府委員(愛知揆一君) まことに御忠言ありがとごうございます。私どもとしても、ミスがあったことを率直に認めます。そういうことは自今絶対にないようにということで、私は自今、めくら判を抑さないようにしておりますので、御了承を願います。
  178. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 官房長官けっこうです。  次長に若干伺います。あの皇居ですね、ずいぶん広いと思うが、維持管理——清掃等入ると思うが、これについては相当奉仕者があって、その奉仕者に対してはどういう取扱いをされているかということは、この前から伺ったからわかりました。そこで伺うのですが、奉仕者があるということを予想して、定員、予算というもうは組んであるのですか。それとも、ああいう奉仕者がなくても、大体皇居としての、ずいぶん広大だと思うのですが、皇居としての維持管理ができるという立場をとっておられるのですか、どうですか。
  179. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 予算の編成には、現在勤労奉仕の方が見えますもの上ですから、そういうこともあるということで労務賃などが組んであります。勤労奉仕をはずして、労務賃をふやしたらいいじゃないかという御意見もあるのでございますが、今のところは、予算の編成としては、予想して清掃の労務賃はそれだけ減っておるということでございます。
  180. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 吹上御苑の方は何ですか、これに出されておる資料の内廷費支弁の職員、これだけで維持されておるのですか、それとも別に内廷費でやられておるのですか、または奉仕者、あるいは宮廷費から支出する職員が入られて吹上御苑のところで清掃等して維持管理されておるのですか、どうなんですか。
  181. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 吹上御苑はやはり国有財産たる皇室用財産でありますから、その維持管理費は宮廷費で組まれておる。それの特別の労務費があれば、宮廷費の労務賃でやることになっております。
  182. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 大体想像つきました。  次に承わりますが、営内庁の職員で、宮内省、それから宮内庁と引き続き勤めておる人で長い人はどのくらいですか。それから平均勤続年数はどの程度になっておられますか。どうも宮内庁の方を見かけますと、非常にスマートで、行儀がよくて、別世界の人のような感じがしまして、考え方までそうなっては私はよろしくない、こう思いますので、勤続年数というものはどういうふうになっておるのか。最近他の省庁との人事交流をどのくらいやられておるのか、概略でよろしいですからお答え願いたい。
  183. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 宮内庁の職員の特殊性から考えまして、長期の勤続者が多いわけでありますが、現在平均の勤続年数は十六年九ヵ月ということであります。長い方はもう四十年以上おられる人も、これは少数でありますが、比較的長く勤めておる方が多いということであります。  なお他の官庁との交流でございますが、下の方の職員で交流はあまりありませんのですけれども、課長補佐ですとか課長、そういうようなところの人は、たとえば現在の総務課の課長補佐などは自治庁の方と……今いる人は自治庁から一昨年入ったのであります。その前の人は自治庁に帰っておる。総務課長は、これは行幸啓の関係仕事なんかもあるものでんから、警察に勤務をしていた者が二年中前に入っております。その前にいた人は警察に帰っております。秘書課の課長補佐、これは厚生省から昨年の暮に、その前にいた人は厚生省から見えておりましたので、厚生省に帰りました。それから侍従職の侍従も、一番若い人は三名は自治庁から見えております。これは一昨年の暮に見えております。その前にいた人はやはり自治庁に帰っております。なお課長では、まあずっと前から宮内庁におる人もありますが、他の官庁にいて途中から入っておる人、たとえば秘書課長は厚生省から数年前に入っております。私は警察におりまして四年前に……。
  184. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでよろしいです。その六級職の試験に合格した新卒を採用されるということは、宮内庁にはないのですか。
  185. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは毎年人事院の方に希望の人があればというのであっせん方を依頼しております。ことしも、去年も一応選考に数名の方が見えましたけれども、こちらで去年も採用しようと思って一応決定したのですが、その後ほかの方に行かれました。それからことしも採用決定をしたのですが、しかしほかの方に行かれた。宮内庁は仕事が非常にじみなものですから、ほかの方がおもしろいというので、なかなか若い方が見えないのじゃないかと思いますが、とろうという意思はあるのであります。
  186. 藤田進

    委員長藤田進君) 質問者に申し上げますが、国鉄から石井常務理事が見えられております。
  187. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そう時間がかからないで終りますから、もうしばらくで終ります。  伺いますが、天皇陛下の御名代として高松宮なり三笠宮が外国に御旅行なさる場合がございますね、あの費用は私は宮廷費からおそらく出るので、あろうと思うのですけれども、それに相当するような予算費目と金額が私は見当らないのですが、ああいう場合には宮廷費から出るのですか、それとも内廷費から出るのですか。まさか宮内庁費から出るのじゃないと思いますが、どうなんですか。
  188. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) そういう経費は宮廷費から出るのであります。しかし、その当初予算には載っておらないのであります。そういう計画がありますと、そのたびごとに予備費を要求いたしまして、大蔵省の方でいろいろ査定して、その予備費の手続を経てきめていただく。そういうふうにしないで、ある程度まとめていただきたいということは、事務的には言っておりますけれども、年によって何件であるかわかりませんですから、そういうふうになっておるわけであります。
  189. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは大蔵省は、大蔵大臣が所管しておる八十億の予備費からそういうものは出るというわけですね。
  190. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) さようでございます。
  191. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 わかりました。  次に伺いますが、植樹祭とかあるいは国民体育大会等に天皇、皇后両陛下が行幸啓なさる場合、どういうところをごらんになりたいというような御希望をあなた方の方から承わるのでございますか、それとも陛下から積極的に御希望がございますか、その実情はどうですか。
  192. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 御視察をなさいます先のことについきましては、これは県の知事の方で一応考えられて原案を持ってこられるわけでありますが、それを宮内庁と御相談の上きまるのでありますが、しかし、それをきめる前に、やはり両陛下の御希望なども宮内庁の長官が聞きまして、特にこういう方面でどこかとくにおいでになりたいところがあればということも聞くわけであります。そういうことも頭に入れながら計画をきめます。
  193. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 そうなりますと、やはり宮内庁長官を筆頭とする宮内庁の皆さん方並びに行幸啓を仰ぐ地方上自治体の理事者側の意向によってだいぶきまると思うのです。従って、私は伺いたいのは、今、両陛下は九州へおいでなさっておられるわけですが、もうちょっと自然な姿を見ていただくというふうに努力する必要があるのじゃないですかね。あらゆるスケジュールを見ますと、全く典型的と申しますか、優秀なものばかりでね。それから、長い旅ですからお疲れになってはいけないから、道路を私は改修されることもけっこうだと思うのですが、このお通りになるところだけ非常にりっぱな道にして、ちょっと車の入らぬところはでこぼこだ、非常に露骨な面が出ておりますね。今、天皇陛下は象徴で、別に政治に対する発言権を持たれておらないので、昔の天皇と今の天皇というものは、地位と権限は違うわけですから、それほどでもないと思うのですけれども、しかし、やはり陛下にごらんいただくならば、私は非常にけっこうな面を見ていただくとともに、ありのままが少しでも両陛下に想像できるように、おわかりいただけるような巡幸啓計画というものを立てる用意が、関係者に私はあってしかるべきじゃないか。少し一方的ではないかという感を、このたびの九州の巡幸啓におけるスケジュールを見て感じるわけです。  それから、もう一つは、これは私は現地に行って見なかったのですが、新聞で拝見したのだから、どこまで的確わかりませんので、そういう条件つきで伺いますが、大野総務課長が下検分に行かれたわけですが、ある県では麦の青いの、それから菜種のまだ実らないのを取ってしまって、まだその土地では田植え時期になっていないのに、両陛下に田植えの姿を見ていただくために、実らない麦、実らない菜種を取ってしまって、それで田植えの準備をして、田植え姿をごらんいただくという計画をして、実行されるということを、私は汽車の中で新聞で見たんですがね。そういう計画があるということは、下検分に行かれた大野総務課長としては私は承知のはずだと思うのです。もしそういう計画があったとすれば、そのために下検分に行かれるのだから、そういうことは陛下の御意に反すると、そういうようなことはいけないというような指導をしなければ、宮廷費で出張されるということを承わっているわけなんですが、意味なさぬと思うのですね。  そういう点について、次長は、私の今の第一問と第二問についてどういう御見解を持っておられますか。
  194. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) あとの方のことから先に申しますが、第一というのは、ちょっと……。失礼ですが、第一は何でございましょうか。
  195. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 聞いておらにゃいけません。
  196. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 聞いたのですけれども、二つずつ関連して、一つのように聞きましたから……。  それじや、私が理解したところで申し上げます。  行幸啓のお立ち寄りの先の問題が第一だったと思いますが、そのお立ち寄りの先の関係につきましては、先ほど申したようにきまるのでございますが、われわれの方といたしましては、その地方の実情をやはり見ていただくということを主に考えておるのでありまして、実際つくろったところを、きれいなところだけをごらんいただくということでは、せっかく地方においでになる意味もないのでございますので、そういうつもりでおいでになる先をいろいろ考えるのでございます。ときによりますと、県から出てきました、こういう学校を見ていただきたい、これは非常にいいのだ、非常に他の模範になるようにいい。これももちろん何でございますが、そうでなくて、きれいなところだけごらんになってもということで、途中の山間の合併教授をなさっているような、そういうところもお立ち寄りをなさるように計画の中へ加えましたり、それからよく社会上の関係で、保育所あたりで、どうも保育所は狭いしきたないから、こっちの方にこういうようなりっぱなきれいな、というような意見が出ます際も、きたなくてもいいので、実情をごらんになるためにこういうふうにというので、その計画の場合にこちらの意見で変えて、おる場合もございます。われわれとしては、実情を見ていただく。  なお、おいでになります際に、工場なんかで何か特に、陛下がおいでになるというので、特別にきれいな建物を作ったり、盛んにやっておられるような場合は、そういうことはやらないでほしいというようなことを申しておるわけであります。で、その点はそう審ってはおりまするが、工場あたりではどうも、特にまあ金をかけてきれいにされるというようなことが多いので、そういうことのないことを希望してはおるのですが、そういうような場合があるということは、われわれとは意見としては一致していないのであります。きれいにしてお客を迎えるということは、これはお互いに客を迎える場合に大切でございましょうけれども、特に金をかけて増築したり改築されるということは、宮内庁としては希望していないわけであります。  それから、あとの方の、何か田植えをするために特別に刈ったというようなこと、そのことは私は聞いてはおりませんが、大野総務課長もそういうとは知っていなかったのじゃないか……。思いますが、やはりそれではお芝居になってしまいまして、実際のことではないので、われわれの力の立場としては感心しないと思いますけれども、そのことは聞いておりませんので、そのこと自体についてどうということを申し上げかねますけれども、一般論としては、そういうことは希望いたしておらないわけであります。
  197. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 まあ、具体的に何っておいた方がよろしいと思いますので伺いますが、このたびの九州行幸啓に出られては、私は内廷費は全くこの支出はないものと思います。全部宮廷費とそれから地方自治体の支出と、それかけだと思いますが、それに間違いあれば間違いがあるという点を指摘してもらいたいし、なければそのままでよろしい。  そこで、この宮内庁の職員は、随員としてああいう場合はどのくらいおいでになって、この宮廷正賞のこの予算の中から、大体所要予算はどのくらいになるのか、お教えをいただきたいと思います。
  198. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) ああいう今度のような御旅行の場合の経費のほとんど大部分は、宮廷費であります。この乗物の費用とか、それから旅館に対する謝礼ですとか、大部分の経費は宮廷費でありまするけれども、やはり一部内廷費もございます。といいますのは、お出かけになりますと、お出かけになったその県における大事な神社とか、護国神社、そういうところにお供え物をおやりになります。これは内廷費であります。それから、おいでになる際に、ほんとうの手回りのお服装なんかをととのえられるとすれば、これは内廷費。写真機でも持って行くと、写真のフイルムとかそういうものも内廷費。それから、もう一つの随員の関係は、両陛下がお出ましのときには、お供に行く者——随員としては十四名くらい、それから関係員が十五名、合せて二十九名、それくらいの人が参りまして、その金額といたしまして……。
  199. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 宮廷費の支出ですか。
  200. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 旅費だけといたしまして……。
  201. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 いや、旅費もすべて。
  202. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 旅費といたしまして……。旅費は、これは単価が出て、これに数をかければ出ますが、百三十万ぐらいになります。
  203. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 国鉄の石井常務理事がお見えになっておるから承わりますが、陛下が那須の御用邸、あるいは国体、植樹大会等にお出ましになるときに、特別列車を御使用になられるわけですが、あの機関車並びに車両は——車両はもちろんそうだと思いますが、機関車も平素はお使いにならないのかどうかですね。それから、私は、建前としてはやはり宮内庁の宮廷費の方に予算を組んで、そうしてその費用は国鉄に納めるという形が、支出形態としては私は正しいのではないかと思うのです。ところが、これについては、宮廷費から国鉄には一切支払いがないわけですね、そうすると、国鉄としてはああいうお召列車の運行費、それから旅費、維持管理費というものは、どこの項目にどういうふうに組み込んでいるのか。それらの経費というものは概算がどのくらいになっておるのか、お答え願いたいと思います。
  204. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) 御質問通り、お召列車で陛下がお出ましになるのでございますが、お召列車の客車は、これは御料車で特別なものでございますので、陛下の御旅行の際にだけしが使わないわけでございます。ただ、機関車はさようなことはございませんので、平素拠っております機関車の中で状態のいいものを選びましては、よく検車をいたしまして、お召列車の承引をするという建前になっておるわけであります。  それから次に、お召列車について、対価申しますか、そういうものをいただいておらないのでごいます。この逆転に関する費用その池は、私どもの方でははり経営費の予算に、企業会計でございますから、私の方は一般会計と違って、特にこまかな項目はございません。しいていえば、経営費の中に入っているということに相なるかと思います。
  205. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 やはり経営費を算定する場合には積算というものがあると思うのですが、どの程度に積算を見積っているのですか。
  206. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) お召列車運転のためにどれだけ経費がかかるかということは、これは経費にも、平均費用、あるいは原価費用の二種ございまして、また、私どもの方の事業の、内容から申しますと、普通の旅客列車一本動かしたら幾らかという計算というものは原価的にはむずかしい。線路費用、その他間接費の分割等でありまして、特段にそういうことは、仮定が多くて、ある場合には経営参考上いろいろな仮定を置きながら使うこともございまするが、実際にこれがそうだと申し上げるような数字はないのでございます。ただ、お召列車というようなものを動かした場合に、大体まあ、もし運賃料金をちょうだいするとすればどの程度になるかという計算はあるのでございます。それは昨年三十二年中に、昨年は遠距離へのお出ましがなく、一番遠いところが岐阜においでになった程度でございますので、五回ほどございますが……。
  207. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それは、金額はよろしいです。私が承わりたい点は、こういうことなんです。私は宮廷費の中に予算を組まれておって、その宮廷費の中から国鉄に納入されるような形態になっておるのかと思ったところが、そうでないのですね。従って何か規則とか、法律とか、今、現行でやるというのは、基礎というようなものがあるのか。それとも、だれかがきめて、慣例でずっと来ておるのか。その点を明確にされたい。  それから、国鉄の総裁が旅行されるときに、特別列車を今出していますか、出していませんか。
  208. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) 規定でございまするが、実は、これはまあ戦前と、ただいまの陛下と、いろいろな考え方なり何なり違うことは十分承知いたし場ております。又、私どもの企業も官庁から公共企業体というようなものになりまして、性格が若干違って参っておるということも承知いたしておりまするが、これは率直に申せば、ずっとの慣例でそういうふうな取扱いになっておる。ただ、古い時代でございますが、大正九年に鉄道省の大臣達しという部内規定がございまして、これは、陛下の御旅行の運賃料金というよりも、陛下、殿下等が御旅行する場合のお供あるいは警固員等に対してどういう取扱いをするかというけじめをはっきりいたした規定がございます。これも結局、陛下あるいは皇太子殿下の行幸啓の場合には、そういう特別列車を動かしても、当然これは国鉄が御奉仕申し上げなければいかぬという建前の伝統に立っておるものと思っております。  それから、国鉄の総裁が旅行する場合に特別列車を動かしたことはあるかと申しますのは、昔のことは存じませんが、国鉄総裁になりましてから、そういうことは私の記憶では全然ないと承知いたしております。
  209. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もう二、三点伺いますが、このたび、皇族費の方も引き上げになるわけですが、国鉄としては皇族の方々に対してはどういう取扱い方をしているんですか。
  210. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) 皇族に対しましても、やはり従来の慣例で、乗車賃はいただかないことにしておりまするが、皇族が御旅行の場合には、警固員、随行員等に対しては相当の料金をいただいおります。  なお、最近では、皇族の方々が、私どもにも御連絡なく、御微行でと申しますか、いろいろお出ましになるよう場合があると思いますが、そういう場合おそらく一般の方々と同じようなことで御旅行になっておるものと、私ども拝察いたしております。
  211. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 それでは、あなたの答弁では、皇族は場合によるとおみずから切符を買われて乗られておる場合もある。別に、国会議員が法律で受けているような、一等パスというようなものはお待ちになっておられないと、こういうことなんですが。
  212. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) 皇族御自身には、私の方から乗車証を差し上げてあると思い記ます。
  213. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 差し上げてある……。それは、あなた、切符をお買いになってどうというようなことはないわけでしょう。
  214. 石井昭正

    説明員(石井昭正君) 特急料金とか、一等料金とか、あるいは特別一等料金とか、寝台料金とか、そういうものは全部お支払いになっておると承知しております。
  215. 藤田進

    委員長藤田進君) その点、宮内庁次長の方からどうですか。
  216. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 特に切符を買ってお乗りになるという場合、これは義宮さんが御旅行のときなんかで、やはり改札口から皆さん方にわらないように、ほんとうの普通の方も一緒に旅行を経験されることも必要だ、そういうとき切符を買ってお乗りになることもあるという、そのことを今おっしゃったのじゃないかと思います。
  217. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 次に伺いたい点は、これは私は次長の方に伺うのですが、今度、陛下が九州からお帰りになるときに、飛行機に乗られますね。これは、国鉄が特別列車を奉仕しているように、日本航空が奉仕をする形なんですか。それから、宮廷費の報償費ですね、報償費の一部を、このような行幸啓の場合、国鉄並びに日本航空に対して報償費から一部支出が行われるのですか、どうですか。もし行われるとすれば、報償費は二百六十二万五千円が成立しているわけですが、どの程度の報償費を出されるか、お答え願いたい。
  218. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 日本航空の飛行機にお乗りになるとその場合に、日本航空の普通の賃金は取らないのであります。しかし、乗られた場合に、いわゆる使った席と、実際払えばどれくらいだということも計算して、それに上回った金、たしか今度の九州のお帰りのときは、報償費から六十万円出されたと思っております。  鉄道の関係は、金では出しておりません。貸物の運賃は、これは出しておりますけれども、それ以外は金では出しておりませんので、符に尽力された方々にたばこを出されるとか、持別の方にカフスボタンを出されるとか、そういう品物である程度労をねぎらっておられる。これも報償費から出されるわけでございます。しかし、その金額はわずかでございます。
  219. 千葉信

    ○千葉信君 かなりの時間ですから、私は簡潔に二点だけについて御質問したいと思うのですが、今度の内廷費、皇族費の引き上げの根拠になりました直接の原因ですね、それは皇室経済会議結論によったものであるということだと思うのですが、その点いかがですか。
  220. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) これは手続といたしましては、皇室経済会議結論によったのが根拠であります。さらに、その先になれば、情勢が変っていくので、引き上げの必要があろうかと思っております。
  221. 千葉信

    ○千葉信君 根拠としては、皇室経済会議でそれぞれ金額も明示して、経済情勢変化によりという理でこの意見書が提出されたわけです。今、次長も言われたように、その他の条件が、この法律案の提案理由説明に付加されております。そうしますと、そのあとから付加された、たとえば外国との交際の範囲の拡大であるとか、あるいは成年に達していろんな経費がかかるとか、こういう条件が提案班田の方で付加されてあるということは、議論をすれば、経済情勢変化によってこれこれの引き上げをしなければならぬというその金額に対して、さらにその点が考慮されなければならぬという議論も出てくるわけです。そういう議論になると思うのですが……。  で、私はここで、あとからこういういろんな理由を追加したことに対して、非難がましい質問をするつもりはないのです。で、私の言いたいところは、要は、こういう提案理由説明でいろんな条件を付加しなければならなかった直按の原因は、皇室経済会議意見なるものが非常に簡明過ぎて、非常に簡単で、これだけではどうも了承できぬという程度の結論だけしか、皇室経済会議から意見を申し出ていないのです。そのやり方が、どうも私どものひがみではないと思うのですが、強いて言えば、どうも事こういう問題についてはおそれ多い問題だから、なるべくああでもない、こうでもないという論議の対象にはならぬようにしたいとか、さもなければ、若干、国会のこういう問題を取り上げるに当っての論議について、あまり深く論議されることが好ましくないとか、そういう関係もあったか、ないしは、事皇室に関することだから、そんなに今回の参議院の内閣委員会におけるごとく広く深く謝儀をされることはないであろう、まあ簡単にこういう問題は了承されることになるだろうというような軽い気持で、国会軽視というわけではありませんけれども、軽い気持でかかられているか、そういういろんな要素が、こういう意見を申し出るに当って、十分意見を解明するような、つまり、その意見を敷衍するような態度がとられなかった。私はこの点に理由があると思うのです。  しかし、御承知のように、今回参議院の内閣委員会ではいろんな角度から論議されまして、おそらく次長も少し思いがけない感じを持たれていただろうと思います。これは今申し上げたように、そういう態度ではなくて、たとい事皇室の関係であろうと、その経費は失業者のたばこの税金の中からも負担されます、生活困窮者の国から補助されたその金で買っているいろんな物資にも賦課されている税金でも、皇室のこの経済は維持されております。ですから、そういう点からいいますと、これはやはり国会の中で慎重に論議されることが、妥当な引き上げであるかどうかということが検討されることが望ましいと思うのです。  そういう意味からいうと、あなたは皇室経済会議の構成員ではありませんけれども長官は構成員です。これは、機会があれば、私はその機会をとらえて、議長にもこの点については注意を喚起するつもりです。一つあなたの力でも、今後、そういう皇室経済会議結論意見なるものを出されるときには、他のこういう機関で出すやり方と同じように、その結論の出た、意味の出た理由、その結論がすなおにわかるある程度の説明なり、その経過なり、もしくはその皇室経済会議の主要な意見等について摘記をされるとか、そういう態度が、私はかえってあなた方の方の態度として望ましい態度だと思うのですが、今後そういうふうに考慮を払われる用意があるかどうか、お伺いしたい。
  222. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 皇室経済会議意見書というものは非常に簡単であると今おっしゃいました点は、われわれもそうおっしゃいますようによくわかります。少し簡単過ぎたのではないかと思います。それは前例がそうだったから前例通りにやったような形になったので、ただ、皇室経済会議には、説明は、ここでいろいろいたしましたと同じような説明がずっとなされ、資料もある程度詳しく出ておったのであります。その結論のところだけ、簡単にすっと意見が出たものですから、非常に簡単であります。しかし、将来、事務の力の関係でわれわれがいろいろお手伝いするわけですから、今おっしゃいましたその意見につきましては、将来またこういう機会があれば、十分に考えたいと思っております。
  223. 千葉信

    ○千葉信君 それから第二点は、この間の内閣委員会でも吉田委員の方から出ましたが、光輪閣のことです。私は北海道ですが、北海道の一部にも、宮家が妙な商売をやっておられるそうだという風評があります。今回の内閣委員会の審議によって、この光輪閣全貌がかなり明らかにされました。つまり光輪クラブの諸君が、地代を負担し、税金を負担して、まあ宮家もある程度御使用になるけれども、主としてその地代、税金等については、光輪閣の諸君が負担してお借りしておる、この点は今回の国会の審議で明らかになりましたから、これはプラスだと思うのです。そういう風評が間違いだということが明らかになったのですから……。  しかし、それと同時に、今度は、一方では、光輪クラブなるものが全く一部の連中で、その世話人と称する連中も、全く一部の連中で、その世話人と称する連中も全く片寄り過ぎた連中です。まあ、これはほとんど財界の連中といいますか、淺尾新甫さんとか、澁澤さんであるとか、そういう連中が税金を負担し、地代金を払って使っておるとはいっても、これ一種の脱税みたいな格好ではないかという鋭い追及もあったようですが、私はそこまでは申し上げません。しかし、ああいう建物がその程度の経費で使えるとなったら、これはだれでも使うことを希望すると思う。自治体でもそうだと思うのです。  そこで私の申し上げたいのは、料理屋をやっておるとか、あるいは変な商売をやっておるとかいう風評は、今回の委員会の審議で打ち消されることになりますけれども、一方において、今度はそういう一部の連中に貸して使わしておるのは非常に国民の印象は悪いと思うのです。私なんかは実にいやな感じをもって聞きました。ですから、せっかく高松宮がこういうふうに民間人等に貸し与えるということでしたら、もっと近代的な、新憲法のもとにおける県室として国民に親しまれる、ほんとうに国民から親しまれると同時に尊敬されるような格好に、いろいろな行動なりお考えが進んでしかるべきだと思うのです。そういう点からいって、光輪閣の使い方について、私は国民がすなおな気持で了承できるような使い方をするように、これは私があなたにそう高松宮に申し上げろとは言いません。しかし、あなた方は側近におられるのですから、いろいろの機会があると思う。今回の内閣委員会で取り上げられた問題等のうちで、この問題なんかかなり重要な問題です。ですから、できれば何かの機会、何かの方法をもって、あなたの方から意見されたり、こうしなさいということを私の方からあなたに言うことは酷だと思うのです。そういうその四角ばった格好でないやり方が私はあると思うから、そういう点について、あなたもそうだし、宮内庁長官もそうだし、こういう点は側近におられるものの立場として、やはり責任の一半を負わなければならぬのですから、できるだけ一つ国民がすなおな気持で納得できるような方向に、光輪閣は、高松宮として開放しても差しつかえない程度の、開放のやり方をできるだけ好ましい方向に持っていく、こういう御努力があってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  224. 瓜生順良

    政府委員(瓜生順良君) 光輪閣の問題につきましては、この光輪クラブの内容なんかは私自身よくわからないのですが、しかし、まあ今度の委員会でいろいろお話を聞きまして、そういううわさもあるのだということは私は初めて知ったようなわけで、そういういろいろのうわさがあるとすれば、それは結局、高松宮さんについてもやはり悪影響があるわけですから、殿下に対して、委員会でもこういうことを聞きました、宮さんもその建物を貸しておられるし、名誉会員でもあられるから、そういう点を一つ考慮願いたいということは、折を見て申そうと思っております。
  225. 藤田進

    委員長藤田進君) ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  226. 藤田進

    委員長藤田進君) 速記を起して。  他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて、これにて質疑を終了することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  227. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のおありの方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。なお、委員長の手元に、松岡平市君から修正案が提出されております。本修正意見は、討論中にあわせてお述べ願いたいと思います。
  228. 松岡平市

    ○松岡平市君 自由民主党を代表いたしまして、本法案に賛成であるということだけを申し上げます。  別段意見の付帯はいたしませんが、一点、本法律案について修正をしていただきたいという修正案を提出いたしました。修正案を申し上げます。   皇室経済法施行法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   附則を次のように改める。    附 則   この法律は、公布の日から施行し、昭和三十三年四月一日から適用する。  この法律案の付則におきましては、「この法律は、昭和三十三年四月一日から施行する。」とありますが、もはやこの日は経過しておりますので、この際、この付則の規定を、ただいま申し上げましたようなふうに修正することが適当であると考えますがゆえに、ここに本修正案を提出する次第であります、ぜひ修正案について御賛同を願いたいと思います。
  229. 藤田進

    委員長藤田進君) 他に御発言もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより皇室経済法施行法の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、討論中にありました松岡君提出の修正案を問題に供します。本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  231. 藤田進

    委員長藤田進君) 全会一致と認めます。よって松岡君提出の修正案は可決されました。  次に、ただいま可決されました修正部分を除いた原案全部を問題に供します。修正部分を除いた原案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  232. 藤田進

    委員長藤田進君) 全会一致と認めます。よって本案は、全会一致をもって、修正すべきものと議決せられました。  なお、本会議における委員長の口頭報告の内容議長に提出する報告書の作成、その他自後の手続につきましては、慣例により、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  233. 藤田進

    委員長藤田進君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  それから、報告書に付する多数意見者の御署名を願います。   多数意見者署名     松岡 平吉  永岡  光     大谷藤之助  苫米地義三     中野 文門  剱木 亨弘     上原 正吉  伊藤 顕道     八木 幸吉  松村 秀通     千葉  信  森中 守義     矢嶋 三義
  234. 藤田進

    委員長藤田進君) 御署名漏れはございませんか。——ないと認めます。  他に御発言もなければ、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十一分散会