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八木幸吉君 私は、
本案に
反対をするものであります。そのおもなる
理由を申し上げたいと思います。
わが国の
現状を顧みまするに、
輸出振興の重要なことは私もこれを認めるのにやぶさかではないのでありますが、しかし、それだからといって、
振興部を設けることには
賛成いたしかねるのであります。ただいま
永岡委員からもお述べになりましたが、従来
わが国では、何か問題が起ると、すぐにこれに便乗した形で
行政機構を拡大せんとする
傾向がございます。たとえば、
体育の
振興が叫ばれると、すぐに文部省に
体育局を設けようとする。
環境衛生の問題が起ると、従来の
環境衛生部を局に昇格しようとするというがごときは、すなわちこれでございます。しかし、さればといって、これは
政府側のみを責めるわけには参りませんので、
民間におきましても、
官庁内部の部局の昇格が直ちに事態の
解決推進をするものであるという錯覚をする
傾向があるのであります。しかしながら、私どもといたしましては、現存すでに膨大複雑化いたしておりまする
行政機構を簡素能率化する必要があることを痛感いたしておるものといたしましては、よほどの特殊の事由がない限りは、これに背馳することには原則的に
反対するものであります。
第二に申し上げたいのは、およそ部や課の新設や廃合をいたします場合には、一定の基準を立ててこれをやる必要があると存ずるのであります。
アメリカの
フーバー委員会は、一人の人がよく監督をし統制のできる範囲は、まず、
仕事の
内容にも人の
能力にも
関係いたしますけれども、六人ないし十二人と言われておるのであります。通産局が十五の課を局の下に持っておるという事実は、現在防衛庁の
陸上幕僚監部に、
方面総監部の下に十五の課があり、管区並びに
方面総監部の下に十二の課があることを除きましては、郵政省の
電波監理局に十一の課があるのが
各省の上で最も大きな課を持っておる
行政組織でありますから、この
意味から申しますと、現在十五の課のありまする
通商局が、その中から四つを別にして、さらに
産業デザイン課をこれに加えて、
一つの部を作るというお考えは、一応ごもっともであるような感がいたすのでありますけれども、しかし、
輸出振興の業務は、大にしては
政府全部、またあるいは
通産省全部が努力しなければならぬ目標でございまして、少くとも
通商局に関する限りは、各課にわたって
調査や手続等相関連することが多いのでありますから、これを分割いたしますると、かえって
事務の連絡上不便を来たすことがないとも申されないのであります。
さらに、
人員や
内容を検討いたしますると、その
人員においては、
一つの課で最小十五名の所もあれば、一番大きい所では五十名の所がある。また、班の数にいたしても、
二つの班から
九つの班までというふうに、非常に不同があるのであります。従いまして、これを適宜あんばい再編成するならば、課の数を十二課にするということも私は可能であると存じます。一例をあげて申しまするならば、たとえば
市場課というものは、地域的に三つの課に分れておりますけれども、班の数は
合計十一でありまして、
課員の数は
合計五十名であります。これを
一つの課にいたしまして適当の班にあんばいするということも可能であります。また、
経済協力局や
振興課、
通商調査課などは、班の数が
合計九つで、
課員の数は
合計五十七でありますが、これを
一つまたは
二つの課に廃合あんばいするということも可能であります。
さらに、係長が百六十三名でありまして、係員は百六十九名、ほぼ同数であるという不合理を生じておりますことは、これは
職階制と
給与の
関係から来ておると存ずるのでありますが、かつて
鳩山内閣の第一次
行政制度改革要綱の三において、実力と
能力に応じて正当な
待遇を与えることができるように
職階給与制の
運用を是正すると、こういう一項があるのでありますけれども、これが行われていないからこういう結果が生じておると思うのであります。従いまして、全体から見て、課の配分をこの際再検討するということが必要でありまして、いわゆる中二階制的な部を作る必要は認めないのであります。
ことに、今回
政府が
振興部をお作りになりますことは、
日本貿易振興会に二十億円の
政府が出資をするということに多少便乗した感があるわけでありまして、この
振興会のごときも、将来、
通産省の
外郭団体として天下り的な人事の行われないように、特に私は希望いたしますと同時に、
民間人の活動を一そう自由ならしむることが必要である、かように考えるものであります。
第三に、
本案は
軽工業局に
アルコール事業部を設置することを提案いたしておりますが、戦争中の燃料の確保のための
アルコール専売であるということならばともかくといたしまして、現在ではすでに
従業員が、最盛のときは二千九百名であったものが約半減いたしまして、千四百名になっております。
工場の方も相当多くの
工場を
民間に払い下げ、かつまた
民間に
委託製造をさせておる
現状におきましては、まず特にこれ以上に
専売を積極的に継続しなければならぬという
理由がないように考えるのであります。
さらに、
原料関係におきましては、
カンショを
原料とするならば、
原料費が全体の
生産費の六、七割もかかる。一方、
パルプ廃液を使えば、わずかに五、六%で済む。ところが、こういう実情であるにもかかわらず、
カンショの
耕作者のために、この
方面の問題については十分徹底的な対策を研究せずして、
アルコール専売を
農村救済と混同した感があるのであります。
さらにまた、その
製造原価にいたしましても、
アメリカの
市場は一キロリットル当り四万五千円であって、運賃を加えましても五万二千円である。ところが、
わが国の
製造原価はこれよりも約三万円以上も高いという
現状から見ましても、本問題はもっと根本的に検討すべきでありまして、
機構の改廃のごときは第二次的のものである、かように考えるのであります。
以上をもちまして私の
反対討論を終ります。