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政府委員(
美濃部亮吉君) お答えいたします。その問題は非常にむずかしい問題でございまして、
統計の
機構をセントラライズ——
集中化するのがいいか、分散化しておく方がいいか、これは国連でもそういうセミナーを開いて、
後進国家の新しく
統計を発展させようというときに、どっちがいいかという
講習会を開いたことがあるくらいなのでございます。それで、その両者につきましては、一長一短がございます。理論的に申しますと、ただいまの御
質問のように、
集中化して
一つに集めるということが、むだを省き、
一つの
統一的基準が設定されていいということは、ほぼ結論が出ておるのでございます。ところが、そういうふうに
集中化いたしますことから、弊害がまた出てくるのでございます。
と申しますのは、何と申しましても、
統計というのは
政府の
行政、
政策と密接に
関係をして参りますので、実際に
行政なり
政策なりを担当している人のところで
統計を作りませんと、
統計が
統計そのものを
目的とするようになって、浮いてしまうということと、それから、
統計の
調査の設計その他をいたします際には、非常に専門的な
知識をますます必要としてくるのでございます。そうして、そういう専門的な
知識を持っているのは、やはり各
行政を分担している
各省に最も多いのであります。そうして、その
専門的知識というのが、
行政の
運営、
政策の樹立と裏表の
関係にならなければならないということで、このセトラライズされた
組織に対する
反対論というのは、主として
統計が
統計だけのために作られてあまり利用できないものになってしまって、浮いてしまうということにあるわけでございます。それからもう
一つ、伝統的に
行政それ自体が比較的分散している国においては、分散された
統計として伝統的に発達してきている。そうして、それを無理に
集中化しようとすると、そこで非常な困難が起きてくるのではないか。そうして
統計というのは、もうまずくいきますと、まずくいったことが如実に出てきて、そこに断層ができてしまいますと、
統計としての用が足りなくなる。そこで、無理をして
統計を
集中化するなり何なりするということは避けた方がいいのではないかというふうな議論もございます。
それで結局、完全に
集中化した
組織をとっている国、
カナダなどはその典型でございまして、
カナダとか、ブラジルとかオランダとかいう国はやや
集中化、
カナダはもう完全に
集中化しております。その他の国々を見ますと、大体において分散しているという国が多いのでございます。ところが、ただいまの御
質問のように、
統計というのは
集中化しなければと申しますか、統一的に行われなければその価値が半減するということは、これは明白な真理でございますので、その分散された場合においても、分散しっぱなしにしておいてはどうしてもいかぬと、それを強力に
中央において
総合調整する
機関が必要であるというので、分散した
組織をとっておる国においては、程度の差はありますけれ
ども、
総合調整の
機関が作られております。それで、
日本も大体その
系統の
組織をとっておりまして
統計調査そのものは分散しておりますけれ
ども、
中央に
行管の
統計基準局があって、
総合調整の任に当っておる。
それで、
日本の
総合調整の
権限は、ほかの国に比べますと、非常に強いものになっております。
統計法があって、それに基いて
指定統計というのがあって、
指定統計に伴う
権限というのは非常に強いのでございまして、それからさらに
統計報告調整法がありまして、
官庁のとる
統計はすべて私の方のアプルーバルが要るということになっておりますので、
総合調整の
権限というものは大体においてほかの国に比べますと、非常に強いことになっております。
今、次官から
お話しになりましたように、われわれが目下頭を悩ましておる問題は、集計の問題でございます。それは、今年度の予算で、幸い七〇五という最も進歩した
電気計算機が入ることになりまして、これは非常な能力を持っております。
日本が七〇五を持つようになったということは、いろいろな意味において、単に
統計だけでなく、科学一般の計算をする上において非常な進歩になるだろうと思いますが、しかし、これはよほど集計を
集中化させて能率的に使いませんと、せっかく入れたものが宝の持ちぐされになるというふうに思われますので、これが入りました暁のことを
考えまして
統計審議会におられますそちらの方の
専門家である山内先生その他を中心にして、これを
日本においてどういうふうに使うべきかということを慎重に考慮していきたいと思っております。そうしてその結果は、おそらく相当の程度に集計を
集中化するということにならざるを得ないと
考えております。