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国務大臣(
田中角榮君) 三十三年度の一般会計
予算及び御審議を願っている
NHKの
予算の中では、
国際放送に対する三十三年度の
政府交付金が八千九百万円でありますから、三十二年度から見ますと千五百万円減っております。この千五百万円は減っておるけれども、十五方向十五時間をやるということになっておりますから、一体どういうことだということになるわけでありまして、これは国際電電の機械の使用料が千五百万円減るから、三十二年度の交付金と同じ額を交付した、こういうことを
政府は
考えておるのだということを四角ばって答弁しております。おりますが、私自身は……、
現行放送法の
建前からいうと、この
予算でもいいのであります。いいのでありますが、個人的な
考え方は、いつも申し上げておりますが、まあ
世界の例もあるように、また
国際放送の重要性を
考えますと、法律のいかんにかかわらず、二分の一なんというみみっちいことを言わないで、
国際放送に要する費用そのものは全額国が負担することが一番いいのじゃないか、そういうふうな形態でいくべきだろうという
考えを持っております。また六億余万円の要求に対して、私が
政府と連絡をして二億何千万円
郵政省としては要求をしております。おりますが、それが八千九百万円になったというので不本意であります。不本意でありますが、大蔵事務当局とどうしても私たちの間に問題がありますし、過去にも問題がありました。三十三年度の
予算でも問題があり、将来もその問題があるのじゃないかと思われるものは、条文に非常に明確な
規定があるのであります。それは三十三条、四条、五条、三十九条及び第九条の問題でありますが、三十三条では明らかに
政府は
国際放送をやらしむることができる、方向、時間、それから
放送事項を定めて、こういうことでありますから、
政府が番組の内容まできめて
放送せしむることができると法律には明確に書いてあります。ところがそういうことは、今までやったことはございません。ございませんが、法律の
建前を読んでみますと、第九条の一項で、
NHKが
国際放送をすること、こういうふうに明確に
NHKに義務立てております。三十九条では
NHKは
国際放送の金は
政府から全部もらうのではなく、
聴取料でもってまかなってもいいのだということが三十九条にあります。
受信料でもってまかなえるものすなわち
NHKに
収入金をもってまかなえるものは第九条第一項、第二項の事項に支出する費用に限るというふうに明確にしてありますから、
国際放送は一般
受信料でまかなってよろしいというのが現行の
建前であります。除外例として、第九条を受けて第二十三条があります。
NHKが原則的に
国際放送をやるのであるが、
政府は事項を定めて
NHKに対して
国際放送をやらすことができる。その費用は全額国が負担しなければならない。こういうふうに非常に明確になっておるのです。でありますから、
政府が現在あまり事項を定めてまで
国際放送を指示しておらないのだから、二分の一出して、それに
NHKが
受信料でもってプラスをしても法律の
建前上は当りまえだというのが大蔵省の
考え方なのであります。私は法律上はそうであっても、
国際放送というもの自体を
考えるときに、
世界の例を見ても、こういうものこそ全く
政府が全額出すべきなんだという
考えを持っておるのでありますから、対立をしておって今日のような
予算の
状況になっております。でありますから、三十五条でありますか、その費用は国が負担をしなければならないという
規定は前条を受けておるのでありますから、前二条による費用は国が負担をしなければならない。すなわち、三十四条、三十三条の
政府が命令をしたものだけをやる。こういうことでありますから、命令をしない
部分は
NHKが
受信料をもって二十九条でまかなうのだ、こういうような法律的な明確な
規定があります。でありますから、大蔵省はこれでよいのだ。全く合法的なので、
郵政大臣が言うのは精神としては了解はするが、法律的にそういうことをするのはいらんことをすることにもなるのだ。ことに
放送法の
建前は
NHKの自主性を非常に強くして
NHKの自主性を侵すようなことをやつちゃいかぬので、法律にない金まで出すのは
NHKの自主性を得す。すなわち、
放送法の精神にも反するのじゃないかという、こういう議論さえやって、
相当深刻に対立をした問題なのであります。でありますから、できれば
国際放送というものは国が全部やるのだ、できるだけ。実際
政府が必要としないものは
NHKで自主的にやらしておいて、
政府が必要とする場合は事項を定めて
放送命令を出すということが一番合理的であるのじゃないかというふうに
考えておるわけでございます。でありますので、三十三年度の
予算を顧みて、
放送法の
改正案も出しておりますから、できればこの問題も明確に
規定すればいいのでありますけれども、ついに
放送法の
改正案でも現行の条文
通りということになったわけでございまして、こういうことについては両議院の非常に長い間の御意見もありますので、三十四年度以降については
政府部内の意思統一をはかって、できるだけ国がより多く交付金を出して
国際放送の万全を期すようにしなければならないだろう、こういうふうに
考えておるわけであります。