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1958-03-18 第28回国会 参議院 逓信委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年三月十八日(火曜日)    午前十時四十四分開会   ―――――――――――――   委員の異動 三月十七日委員松本治一郎辞任につ き、その補欠として森中守義君を議長 において指名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     宮田 重文君    理事            手島  栄君            松平 勇雄君            山田 節男君            長谷部ひろ君    委員            石坂 豊一君            黒川 武雄君            新谷寅三郎君            前田佳都男君            鈴木  強君            光村 甚助君            森中 守義君            野田 俊作君   国務大臣    郵 政 大 臣 田中 角榮君   政府委員    郵政政務次官  最上 英子君    郵政省電波監理    局長      濱田 成徳君   事務局側    常任委員会専門    員       勝矢 和三君   参考人    日本放送協会会    長       野村 秀雄君    日本放送協会副    会長      小松  繁君    日本放送協会理    事       溝上  銈君    日本放送協会理    事       稲葉 駿作君    日本放送協会理    事       前田 美徳君    日本放送協会企    画局長     春日 由三君    日本放送協会経    理局長     首藤憲太郎君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件放送法の一部を改正する法律案(内  閣送付、予備審査) ○放送法第三十七条第二項の規定に基  き、国会承認を求めるの件(内閣  送付、予備審査)   ―――――――――――――
  2. 宮田重文

    委員長宮田重文君) ただいまより委員会を開会いたします。  まず、委員変更について報告いたします。  昨十七日松本治一郎君が辞任され、森中守義君が選任されました。   ―――――――――――――
  3. 宮田重文

    委員長宮田重文君) 本日はまず、放送法の一部を改正する法律案議題といたします。  郵政大臣より提案理由の説明を願います。
  4. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま議題となりました放送法の一部を改正する法律案提案理由を説明申し上げます。  放送法施行後、わが国における放送事業は、一般放送事業、いわゆる民間放送が発足し、きわめて顕著な発展を示しつつあるほか、日本放送協会および民間放送を通じて、テレビジョン放送の飛躍的な普及を見ており、その発達はまことに著しいものがあります。  従いまして、放送国民生活に及ぼす役割、影響力もまた重大なものとなっており、しかも、この傾向は将来さらに増大するものと予想されます。  右の事情にかんがみまして日本放送協会につきましては、公共の福祉のため、放送及びその受信進歩発達をはかるように、一そう積極的な活動が要望されますので、その業務範囲を拡大し、機構を整備し、及び財政能力を充実いたしますとともに、放送番組編集及びその放送適正をはかるため、その指標を明確にし、内部に放送番組審議会を設けることとし、また、一般放送事業者につきましても、放送番組編集及びその放送適正をはかる等、所要規定を整備いたそうとするものであります。  この改正案のおもな点について申し上げます。  まず、日本放送協会に関する事項について申し上げますと、その第一点は、日本放送協会の公共的な性格をより明確にし、その活動を活発にさせる措置として、その業務機構及び財務等について次のことを規定しております。  その一といたしまして現在の協会の行う業務範囲協会放送に関することに厳格に限定されておりますが、本改正においては、これを広げて、協会放送だけにとどまらず、わが国放送全体の進歩発達目的として、放送及び受信研究調査を行うことのほか、一般放送事業者に対する番組等提供等を行うことができること。  その二といたしまして、経営委員会は、協定経営方針その他業務運営に関する重要事項を決定する機関、すなわち、協会意思決定機関たる性格を明確にし、その委員の数は、現行八地区から選出される者八名のほかに全国を通じて選出される者四名を加えて計十二名とし、さらにその欠格事項を若干緩和して適材の選出を容易にし、また、委員には現行法による旅費その他業務の遂行に伴う実費のほかにその勤務の日数に応じて相当の報酬を受けることができるようにすること。  その三といたしまして、会長は、意思決定機関たる経営委員会に出席して意見を述べることができることとし、その議決には加わらないこととしております。これは、協会役員の権限と責任を明確にする措置であります。その他業務範囲及び規模の増大に伴う措置として、理事を五人以上十人以内及び監事を三人以内置くものとしまた、補欠会長任期前任者残任期間とする現行の制度を改めて任命のときから三年として、役員任期が同一時期に始まり、かつ、終ることによって生ずる不都合を除去する措置を講じること。  その四といたしまして業務範囲規模の拡大に伴い、放送債券発行限度額を純財産額の三倍以内に拡張し、また、毎事業年度収支予算等国会において閉会その他のやむを得ない理由承認を得ることができない場合の臨時的措置を講じることといたそうとするものであります。  第二点は、放送番組及びその放送向上及び適正をはかる措置として次のことを規定しております。  その一といたしまして、協会放送番組編集するに当っては、現行法第四十四条第三項に規定するもののほか、善良な風俗を害しないものでなければならないこととし、特別な事業計画によるものを除き、教養番組または教育番組並びに報道番組及び娯楽番組を設け、放送番組相互の間の調和を保つようにしなければならないこととし、教育番組についてはそのよりどころを規定していること。  その二といたしまして、協会は、あらかじめ放送番組の種別及び放送対象とする者に応じて放送番組編集基準を定め、これに従って放送番組編集をしなければならないものとし、これを公表しなければならないこと。  これは、放送番組編集については、協会自主的規律にまかせようとするものでございまして、言論を統制しようとする意思のないことは、これをもっても十分御納得がいただけるものと存じます。  その三といたしまして、協会は、放送番組適正をはかるために放送番組審議会を設けなければならないこととし、放送番組編集基準及びその基本計画を定めようとするときは、会長はこれに諮問し、その意見を尊重して措置をしなければならないことといたそうとするものであります。  なお、放送番組審議会は、会長の諮問に応じて答申するばかりでなく、放送番組適正をはかるため必要があると認めるときは、会長意見を述べることができることとし、会長はこれを尊重して措置をしなければならないことといたそうとするものであります。  このほか、協会は、政令で定めるところによって、放送番組内容放送後において関係者確認することができるように措置をしなければならないこと、及び郵政大臣放送法施行に必要な限度において、協会に対し、その業務に関し報告をさせることができることといたそうとするものであります。  次に、一般放送事業者に関する事項について申し上げます。  その第一点は、放送番組及びその放送向上及び適正をはかる措置について規定した点であります。この点につきましては、さきに申し上げました協会の場合と全く同じでございまして、番組基準の制定、変更及びその公表等、もつぱら放送番組編集自主性を尊びその自律にまかせ、言論統制とならないように十分意を用いた次第でございます。  なお、協会放送番組審議会一般放送事業者が設ける放送番組審議機関と異なるおもな点は、構成員の数が協会の場合は十五人以上でありますが、一般放送事業者の場合は、十人以上である点及びその構成員の三分の一以内は、当該放送事業者役員または職員をもって充てることができることとした点等でございます。  第二点といたしましては、一般放送事業者について、その放送の健全な進歩発達をはかり、その業務運営に当つての準則を設けるため、次のことを規定しております。  その一といたしまして、学校向け教育番組放送には、業務に関する広告を含めてはならないこと。  その二といたしまして、一般放送事業者は、その名義を他人放送事業のため利用させ、または他人にその名において経営させてはならないこと。  その三といたしまして、一般放送事業者は、受信者から放送受信の対価を受けてはならないこと。  その四といたしまして、一般放送事業者放送番組供給に関する協定を行うに当つては、特定の者からのみ放送番組供給を受けることとなる条項及び放送番組供給を受ける者が、その放送番組放送の拒否、または中止を禁止することとなる条項を含んではならないことといたそうとするものであります。  なお、放送内容確認のための事後整理等に関する事項及び郵政大臣報告徴収権等につきましては、協会の場合と全く同じでございます。  そのほか以上の改正に伴う罰則その他の条文の整理を行い、及び所要経過規定を設けようとするものであります。  以上簡単でありますが、この法律案提案理由及びその内容の概略を説明申し上げた次第でございますが、何とぞ御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  5. 宮田重文

    委員長宮田重文君) この法律案質疑は後日に譲ります。   ―――――――――――――
  6. 宮田重文

    委員長宮田重文君) 次に、放送法第三十七条第二項の規定に基き、国会承認を求めるの件を議題といたします。  質疑に入ります。
  7. 森中守義

    森中守義君 今の案件についての質問でありまするが、委員長に特に私は質問しておきたい。きょう配付になった公報六十一号、この中に、この委員会会議に付する案件が五項目出ております。この五項目について、理事会及び委員長の打合会というものは完全に意見の一致を見て公報掲載したものかどうか、これを伺います。
  8. 宮田重文

    委員長宮田重文君) この公報掲載につきましては、理事の諸君とも打ち合せの上で大体いたしました。ただ、放送法の一部を改正する法律案の挿入については、これはあとから私がいたしました。
  9. 森中守義

    森中守義君 どうも言いづらいのですが、これは私は会議運営というものは、自民党の方でも、かつまた私の方でも、それぞれの党機関との連係を保ちながら国会運営の時間等もはかつてつております。それで委員長の職権における公報掲載であろうかと思いますが、こういうことでは委員会運営がなかなか私は困難に陥っていくような傾向も、放送法であるとか、あるいは電波法とか、こういう重要案件を書いてありますから、あるのは非常に遺憾に思います。私はけさ、わが党の理事といろいろと意見の調整をはかりましたが、電波法、これは理事は聞いていない、こう言っております。ですからこれを公報掲載する場合には、委員長及び理事打合会というものはもう少し真剣に御審議を願い、完全に両党の意見のまとまった上で公報掲載されるよう特に委員長に要請をしておきます。
  10. 宮田重文

    委員長宮田重文君) 速記をとめて。    〔速記中止
  11. 宮田重文

    委員長宮田重文君) 速記を始めて。
  12. 鈴木強

    鈴木強君 実は私、予算委員会との関係がありますから、二つだけ大臣質問をいたしますが、最初の質問は、前回の委員会森中委員からも質問がありまして大臣からお話があったチャンネル・プラン、これに伴う予備免許の問題でありますが、お話によりますと、あと二、三社を残してあなたの方からお示しになった条件によって、競合になっている問題はそれぞれ話し合いがついて準備にかかっておる、こういうことでありますが、そのことは私けっこうだと思います。ただ私非常に心配するのは、あなたも力説されておりましたように、放送独占といいますか、言論独占といいますか、そういったことに対して極度に私たち警戒をしておるわけです。ですから、あの条件によりますと、お互いに歩み寄った形になっておりますが、現実に今後の運営の中で、たとえば極端な例を申し上げますと、かつて会社新聞社社長をしておった人がやめてテレビ会社社長になる、これは一つの例ですよ、そういう場合に形式上は辞任をされておりますから、あなたのおっしゃっている条件には適合するでしょうが、日常の業務運営の面から申しますと、その人が実権を握って、実際にニュースをとるソースの問題にしても、ある一定の新聞社からソースを求める、こういうようなことがないとは私は断言できないと思うのです。私はそのことを非常に心配しておりまして、もちろんこれからまだ実際に放送を開始するまでには一年以上期間があると思いますので、今からそういうことを言うのはどうかと思いますが、しかしそういう点も一つ十分に大臣としては指導していただかなくてはいけないと私は思うのでありますが、いずれこの論議は、おそらくそれぞれの放送局放送開始して、三カ月なり四カ月なりあるいは一年なりの中で明確になってくる問題だと思いますが、老婆心から私はそういうことを心配しておりますから、残された数社の条件に対する統一も積極的にやつていただくと同時に、今の問題につきまして大臣一つ格段指導の面をお願いしたいのでありますが、その点いかがでございますか。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) テレビ免許につきましても、マスコミの独占にならないように配慮したということは、私もたびたび申し上げておる通り、非常に強いそういう考え方を持っております。三十四社三十六局に対してはおおむね順調に進んでおりまして、三月三十一日の期限一ぱいには確認を出す、大体全部確認できる状態になっております。ただこれは競願者同士が円満に書類の上ではまとまったという協定書をちゃんと提出してございますので、私はこれの実際の波の出る場合にならないとなかなか、ただいまあなたが申されたように明確にはいろいろな  問題が起きて参らぬわけであります。しかし放送法改正案も提案してございますし、一社からのみニュースを受けてはならない、またそういうふうな契約をしてはならないというような改正案も出ておりますので、これだけでも完全にいろいろなものが排除できるとは考えておりませんが、現行法よりももう少ししぼってございますので、これと合せて万全を期して参りたいという考えでございます。
  14. 鈴木強

    鈴木強君 大臣のお考えを私は了承いたします。どうぞ一つさらに万全の御指導をいただきますようにお願いいたしておきます。
  15. 森中守義

    森中守義君 関連。今のチャンネルの問題に関連して、一、二承わっておきます。ただいまの大臣答弁から参りますと、大体正確に確認書を十九社に対して第一次分として交付した、こういう答弁でありますが、先般、昨年の十月二十二日に大臣の談話と同時に発表された条件、これが名実ともにこの条件通りに行われますか。
  16. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 条件はおおむね実現するように希望いたしておりますし、おおむね私たち考えたような方向に向って妥結をしそうであります。しかし、十月の二十二日の予備免許について付しました条件は、法律に準拠しておりませんから、この条件に対して、守らせなければならないという考えは先行いたしておりますが、大前提にはなっておりますが、守らせるようなための必要な法的な規制はないわけであります。だから、お互い電波法放送法精神をよくくんで、少くともこれに近い、こういうふうに免許をした精神をくんでやつてもらいたいという行政指導をやつておりますので、おおむね私たち考えたような線から、はずれないで、予備免許確認が行われている状態であります。
  17. 森中守義

    森中守義君 大臣の今の答弁からいけば、この確認書交付に至る条件というものは絶対的に拘束力を持たぬ、こういうことになりますか。
  18. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 遺憾ながら、法律的には拘束力を持っておりません。
  19. 森中守義

    森中守義君 だとしますと、衆議院及びこの委員会において、大臣は今までこの条件を唯我独尊的にあなたは宣伝してきたのですよ、こういう条件があるから絶対大丈夫だ、郵政省のやることは確実だということをあなたはしばしば繰り返されておる。にもかかわらず、今ここで法律に準拠していないから絶対的な拘束力はない、ただ行政指導をこれによってやっていくということであれば、先刻の私は大臣が間違いないと主張するその意思というものは、どうも実際の審査過程において疑義を持たざるを得ませんが、どうですか。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現行電波法及び放送法規定範囲内においては、最上の努力をし、最上免許方針をとつておるという確信を持っております。
  21. 森中守義

    森中守義君 法律に準拠していないから、行政指導という言葉が今出ましたね、大体この条件に満ち足りるようなものを作つていきたいというような先刻の答弁ですよ。今はそうじゃない、大体間違いなかろうと思う、これはやはり食い違っております。私の頭脳ではそう判断する。そこで、私ども大臣がこの条件を両院に出してきて、これこそが天下一品であるとあなたは宣伝して誇ってきたが、その当時私どもが賛意を表したのは、新聞とは違います。新聞輪転機を持っている、取材をしてそれで出すのだから、これはそれぞれの会社の所有でしようが、電波はこれは国民共有財産なんだ、国民共有財産を個々の企業体に分けていこうというのだから、よほど私は重要に考えないと大へんであるが、憲法あるいは商法にも若干疑いのあるようなことも条件の中に入れておる、そういう大臣の勇断に私は非常に敬意を表しておる。そこで、そういう憲法やあるいは商法にも若干疑義があるような条件をも大事な国民共有財産を業者に渡そうというのであるから、ある程度の勇気は必要だろう、そう思っていたのですが、今ここで大臣の二回にわたった答弁というものは若干食い違いがある。その点、もう少し明確に答えて下さい。要するに絶対に十九社に渡したチャンネルというものは、確認書というものは断じてこの条件に沿っておるなら沿っておる、こういう答弁をしてもらいたい。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確認書を与えたこの十九社に対しては、私が予備免許に当ってつけた条件とおおむね所期の目的が達成されておりますと認められるので確認書交付したわけであります。
  23. 森中守義

    森中守義君 それでは一応この程度で私はきようは終つておきますが、これから先、たとえば電波監理審議会に対して異議申請あたりが出たという事実はどういうことを裏書きすることになりますか、今あっているかどうか知りませんよ。
  24. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十九社の確認に対して、異議申請は出ておりません。
  25. 森中守義

    森中守義君 仮定の話だからどうもむずかしいのですが、もし出たとすれば、やはり両者協定というものは完全でなかった、そういう場合にどうするか、こう言っている。
  26. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 競願者代表が、双方において円満な了解点に達しておるという調印書をもとにして交付しておりまして、双方調印をしないということに対しては、全然確認書交付しておりませんから、異議申請が出ようはずがないのであります。異議があるとすれば、これは電波法上の異議ではなく、双方協定が守られなかったという民法上の問題であって、双方が裁判に訴えて権利を主張するという問題は起きますが、電波法上の異議は全然出ない状態において、確認書交付しておるわけでございます。
  27. 森中守義

    森中守義君 なるほど、報告をする際に、そういう条件がついていますから、形式的にはそういうことが言えるでしよう。しかし、問題は、郵政省双方調印によって確認書をおろしたということでありますが、それであれば、単なるこれは書類審査にすぎない。実際、協定に至る経過であるとか、あるいは不満な状態協定が成立しておるかもしれません。そういう場合に、利害が相反するとか、あるいは若干の被害をこうむったということで、たとえばABという混合方式の場合のBならBが、法人格としての異議の申し立てではなくとも、その中の少数のもの、あるいは大多数のものが有志という形で申請をする場合も私はあり得ると思う。これは電波法の八十三条にはそういう精神があると思うのです。私の解釈違いかもわかりませんが、そういうことも想定されますよ。だから、私は、やはり大臣が、双方調印を終つて出してきたから、まず混合方式の場合も、両者の主張というものは食い違っていない、だから、形式的には異議申請はないが、実態としてはそういうことがあり得るとも言えると思う。ですから、郵政省は、単なる書類だけの審査に基いてこの確認書交付したのか、協定に全く間違いないという完全な各社の実態を把握して確認書をおろしたのか、そのいわゆる確認書をおろすに至った作業の過程はどういうことになっておりますか。
  28. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) もうすでに三月の十五日でありますから、三月の半ば過ぎでありますので、十月の二十二日からこの二十二日までには、まるまる五カ月もあるわけであります。この間において相互が円満に協議を行うようにということでありますから、出先電波監理局も十分その間の事情を調査し、報告をしておりますし、この報告と符合する競願相互間の円満な協定書が提出せられた以上、私としては確認書交付せざるを得ない。しかも、今までの免許方法は、御承知の通り電波法では申請があったら免許をしなければならないという強制規定がございます。にもかかわらず、私が今度、確認というような方法をとりましたのは、免許に慎重を期したということでありまして、こういうふうな非常に停止条件づきで慎重を期しておりましたから、相互から円満に協調できる、また協調できましたという法律的に有効な書類があれば、当然免許状交付しなければならない、こういう立場にあることは御了解いただけると思います。もう一つは、その競願者の中の一部の方々が異議申請を出したということはそれまで全部――一部でも、一人でも異議がないのが理想的でございますが、一人でも二人でも異議を出したから、これも電波法上の異議になるというふうに考えておりません。そうなりますと、電波の割当に対するものは、株式会社である場合は、これはもちろん代表者の名前で申請をされておりますが、新しく会社を設立するものは発起人代表という法律的な資格で申請をされておりますから、この法律的に有効な発起人代表調印があれば、合法的とみなさざるを得ないのでありまして、私は、実際問題としては 一部においても異論のないことを望むのでありますが、一応、法律的に郵政省電波法対象にしなければならない、相互円満調印がある場合には、円満に協定ができたと確認をして確認書交付したというわけでございます。
  29. 森中守義

    森中守義君 具体的にそういう問題が出るかどうかわかりませんが、想定の話ですから、この程度で私は今の話はよしておきましょう。いずれ何かの機会に、またこういう激論を戦わす場合もあるでしょう。ただもう一回、私はお伺いをしておきたいのは、協定書が出てきた、だから協定書双方意思が一致したものだということは、形式的には理解できる。理解できるが、実際その協定書だけを見て郵政省確認書をおろしたのか、この協定書名実ともに間違いないものだという実態把握を行なったか、それを私は聞いておる。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 地方電波局をして十分調査さしておりますし、特に本省の電波監理局をして双方を招致させて事情確認を行なっておりますから、名実とも確認を行える段階になったという認定のもとに確認書交付しておるのであります。
  31. 森中守義

    森中守義君 そうしますと、単なる調印協定報告だけによらずして、実態把握も行なった上での確認書交付である、こういうことですね。間違いありませんね。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) その通りです。
  33. 森中守義

    森中守義君 それじゃ、もう一つ伺っておきますが、これは先般、大臣と私は非公式に会見をしたときに、あなたが言明したことがある。それはいわゆる定款の中で、取締役会の会長が取締役会の招集権を持つ、これは条件の、いわゆる一般放送の場合の役職員の兼職条項の制限というのがありますね。これに合致するのか、あるいは違反するのかどうだと、こう聞いたところが、あなたはそれは兼職はいかぬ、明らかにそれはこの条件に違反しておる、こういうような説明がありました。この考え方は今も変っておりませんか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはざっくばらんに申し上げますが、熊本の例でございます、きっと。私は、このラジオ熊本の社長が、定款でもって代表権は持たないけれども、取締役会の招集権を持つということがあるのですが、これはどうですかという話でありましたから、その場合、私は明確に、代表取締役でなくとも、取締役会の招集権もしくは株主総会の招集権を持つということは、事実上の代表権である、こういうふうに私も考えましたから、それならいかぬと思います。こういうことを明確に申し上げたわけであります。その後、法制局や、いろいろ法律的な見解を事務当局が調査をしましたところ、大臣はそう言われるので、事実は、そういうふうに考えることがいいかわかりませんが、法律的には制約をするということはできないのです。法律的に、あくまでも、定款に代表権をうたってなければ、代表権者ではない、取締役会の招集権及び株主総会の招集権は、会社代表する者は自動的に招集権を持ちますが、招集権を持つ者必ずしも代表者ではない、こういう議論からいって、現行法上は、招集権を持つから代表権を持つものであるという認定はむずかしいので、その条項に抵触をさせるというわけにはいかないでしょう、こういうふうな法律的な明確な答弁があったそうであります。それで、私もあなたにそういう報告をしなかったのは、時間的に御連絡が不十分でありましたが、いずれにしても、法律的にそういう明確な問題が出て参りましたので、私の方でも確認を拒否するという段階には至らない、そのかわりに、そういうことは、できるだけ、全国にはそういう例があってはならないということを考えておりますが、熊本を除いては、そういう問題は全然ないようであります。全く熊本だけの特殊な例であります。
  35. 宮田重文

    委員長宮田重文君) ちょっと森中君に申し上げますが、関連質問ですから、簡単に願います。
  36. 森中守義

    森中守義君 簡単にやります。今の私の問いに対して、ちょっと中心がぼけたような気がするのです。つまり、なるほど大臣が言われるように、いわゆる取締役会の役員は、商法上は、それが会長であろうと、社長であろうと、あるいは末輩の平取締役であろうと、なるほど、これは招集権があるのですよ。しかし、その会社の定款には、明らかに明言してあります。取締役会長が招集権を持つということを明言しておる。しかも、取締役会長に事故がある場合には、役員会で決定する順位に従って招集権を持つのだ、こういう工合に明確に規定しておりますよ。しかも、その取締役会長が取締役会の招集権を持つ、勢い株主総会の招集権を持つということになれば、たとえそれが代表取締役という商法上の固有名詞が付加していなくても、やはりこれは取締役会長が一切の代表権を所有する、こういう解釈が私は通念上妥当だと思う。そこで、もう一つ今の大臣の答えに合点がいかないのは、先刻も私が申し上げたように、この基準というのは商法あるいは憲法よりも先んじて非常にきつい条件になっておる。こういう条件を提示したのはやはり電波国民共有財産であるからその共有の財産を特定の業者に渡そうというのであるから法律以上のものを作った、こういう説明が今までしばしば行われてきたわけです、そうなれば今大臣の答えからいけば、この役員兼職の条項だけが商法の一般通念としての解釈を適用しておるならば、この全文を通じてただ表に大義名文をこうこういう目的のためにチャンネルをこうするという理由だけのものであって実態としては全部この条件はくずれておりはしないか、こういうことを聞いているわけです。
  37. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この定款の形態は常識的には非常におかしいと思います。おかしいというのは全く新しい形態であって法律的に抵触さえしなければどういう形態でもいいというふうな考えじゃないかとさえとられるぐらいに私も考えておりましてそういうことは好ましい形態ではないというふうに考えます。しかし、招集権があるからといって代表権がないとは法律的に認定できないのです。これは法律で明確にいっております。私自身もなるほどあとから考えてみればそう考えられます。でありますから、今の状態においてそういう定款の状態が好ましくないということは言えても、確認書交付できない状態であるとは認定はできないわけであります。でありますから、最善の処置をとるとすればできるだけ早い機会に定款を変えて、そういうことのないようにという行政指導を行うということ以外には道はないと思います。
  38. 森中守義

    森中守義君 私は要するに役職員の兼職の制限条項だけが一般商法の解釈を適用して、あとはきびしいものをやっておる、そこに矛盾はないかと、こう言っている。何も私はその会社関係者でも何でもないのだからそれはどっちでもいいんだが、要するに電波をそういう工合に特定の業者に渡そうとする場合には、きつい基準というものは賛成なんです、私は。こうしなくちゃいかぬと思う。それで、その他の条件はこの基準を適用し、条件を適用して、今の役職の制限条項だけを商法の通念を適用するのは、この条件の全体においてくずれるのではないか、こう言っているのですよ。
  39. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 法律的な問題になりましてまことに恐縮でありますが、私も憲法違反、法律違反の条件をつけられないのです。これはいかに私がつけようと思ってもつけられないので、形式的には申請者が自発的に左の条項を守りますからどうぞ一つ許可をいただきたい、こういう形式をとつております。でありますから、私の方はもちろん申請者自体が省に提示した条件を守られなければ免許を与えない、こういう態度をとつてきておることも御承知の通りであります。ところが、申請者の方が、私が出した誓約書の条項は円満に満されました、こういう認定をして確認書を求めて参っております。なおそれに対しては競願者代表相互異議ない、こういうことで調印をせられて参っておりますと、私の方では条件は満されたというふうに確認をせざるを得ないのであります。ただ先ほども申し上げました通り権限はないにしても、公けの電波を公けの立場で行使せしむる放送業者の免許を新たに行うのでありますから、できるだけ実際的にも条件が守られるようにという基本的な考えからいうと、できるだけ常識的ならざる定款等も改正してもらうように次の段階において放送業者の善処を求むるという以外には、行政的には道はないというふうに考えられます。
  40. 宮田重文

    委員長宮田重文君) まだありますか。
  41. 森中守義

    森中守義君 大へん長いですけれども、もうこれで終りますから……。
  42. 宮田重文

    委員長宮田重文君) これでやめて下さい。
  43. 森中守義

    森中守義君 大臣が言われるように、この条件ですね、これは今の説明からいけば基準になるわけですね、望ましいという意味でしよう。望ましいということですね。それならば衆議院や参議院でこういう条件を出して、チャンネルは絶対確実なものであり、正確なものであるという今までの大臣の言明というものとはだいぶ食い違ってきませんか。それと、今具体的に大臣が熊本はこうこうだというお話がありましたが、実は熊本にそういうのがあります。明らかに定款の中に、取締役会長が招集権を持つ、もし会長に事故がある場合には、取締役会できめる順位に従って招集すると、こういうことは大臣も常識的にそうだと言っておりますが、一体こういうものはどうします。
  44. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 免許に慎重を期したという私の言明に対しては食い違いはありません。(森中守義君「大いにある」と述ぶ)これは現行法上は、私がつけられない条件を、免許申請者から自発的に提示をしたという形態をとったにしても、現行法疑義のあるものでさえも非常に強くしぼったのでありますから、私は、少くとも過去における免許の例等につきましても非常に慎重であり、厳重にいたさなければならないという考えを持っておりますから、食い違いは全然ないという考えを変えておりません。  第二の問題の、この熊本の問題については確かに、どういう事情があったかわかりませんが、法律的にはどうすることもできない、もちろん適合しております。適合しておりますが、その定款に代表権はないと明記しておりながら、株主総会や取締役会の招集権を持つということになりますと、少くとも大衆から見ますと、明らかに代表権を持つ取締役会長だというふうに錯誤を起させるに十分な条件が備わっておることだけは間違いありません。ところが、普通の法人でありますから、いろいろな表現を行うにしても、一部において、ある問題に対して株主の中に議論もあるのですから、できるだけすんなり形をよくするためにも、名実ともに形態を整備するためにも、こういう変則的な定款はなるべく改めて誤解を招かないように行政措置を行い、勧奨を行い、できるだけ省の意見に従ってもらうということをやる以外には道がないと思います。
  45. 鈴木強

    鈴木強君 次に、ただいま放送法の一部改正法案の説明を聞いたのでありますが、すでに十四日の本会議に提案されております。そこで今三十三年度のNHKの予算を私ども審議するのでありますが、ちょうど法律改正と予算の編成との関係でありますが、おそらく法案の内容を見ますと、理事も五人以上十人以内、監事五名以内、こういうふうに役員の強化ですね、さらにまた経営委員会等におきましても十二名にふやす、こういうことで人的面から見ましても、法律通りますと、改正案通りますと、それに伴う予算的な措置も当然やらなければならないようになっていると思うのです。その他業務全般としても改正案通りました暁におきましては同じようなことが言えると思いますが、そういった点はこれは大臣に聞いた方がいいのか、NHKの当事者に聞いた方がいいのかわかりませんが、いずれにいたしましても大臣から提案したのでありますから、両方からお聞きしてもいいのですが、そういう点はこの予算案が提案された通りにわれわれがかりに議了したとしても、改正法案によって支障はないのですか。  それから具体的に役員の問題で理事を五名以上十名以内とここにありますが、これはNHKの方ですがね、全部十名以内となっておりますから、十名にふやす予定かどうか、その点二つ……。
  46. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) NHKの三十三年度予算案と放送法をあわせて御審議いただいておりますが、放送法と提案をしておりますNHKの三十三年度予算案がいずれも通過をする、また、通過をさせてもらうという前提でもってしております。  なお、放送法が通過をしても、NHKが現在出しておる予算案で十分まかなえるという考えでおります。人件費の増は、例をあげますと、理事は五名ないし十名ということでありますし、現在は五名でございますが、理事待遇が四名おりますし、そういう意味では七名であります。そのほかにも、現在の給与の体系からいうと、根本的にプラスされるものじゃないという考えでありますし、三人や五人ふえても、八千万の予備費を組んでおりますので、この中で十分まかなえるという考えで予算案を提案したわけでございます。
  47. 鈴木強

    鈴木強君 間に合えば非常にけっこうですから、これ以上私は申し上げませんが、次に、国際放送のことですが、私は、非常にくどいようですが、予算委員会でもあなたにだいぶ質問しましたが、依然として私の問いに対する明確な答弁がないからきょうも私は伺いたいのですが、まず一点お尋ねしたいのは、六億のNHKからの要求に対して二億六千万ですか、郵政省が査定をし、それが八千九百万円に大蔵省に削られてしまった。今NHKの予算を見ますと、一億六千万円組んでありますから、少くとも七千五百万円はNHKの負担によって国際放送がやられる、しかも、七千五百万円というのは、国内放送の聴取者から徴収をしたその料金によってまかなわれている、こういうことでありますから、国内の聴取者から見ますと、断じてこれは許せないことだと私は思う。そこで、大体放送法三十三条と三十五条との関連でまだこれは不明確な点があるので、あなたがこういう点をはっきり改正してくれたら、今まで長いこと問題になっておったその点はすっきりしたわけですが、そういう大事なところは、この前も言ったように、改正法を出していない、非常に怠慢だと思うのですが、そこはさておいて、結局、国際放送に対する政府の考え方というものが、私は今までのやり方を見ておりましても、たとえば、予算が通過する、そして今年も政府交付金が八千九百万円、こういうふうにきまって、そのあとでもって、あなたはNHKに対して命令を出している、四月一日ごろにきっと出す。――あなたの方はまだ出していないと思う。国際放送に対しては、こういう内容のをこういう方向に放送をしてくれと、そういう命令書を出すわけです。そういう命令書は出ておりますか。大体そういうことが、本質的に、NHKに対する国際放送を政府が基本的にどう考えておるか疑問があるのです。もっと明確なあなたのお考えがあるわけですから、それに基いてNHKに早目に命令書を出して、それによって予算を取るということにしないと、一歩後退、二歩後退、三歩後退になってしまって、予算が通ってしまってから、押しつけ的にその予算に合せるために、あなたの方では形式的に命令を出しておるのです。そういうことをしておるから、大蔵省になめられてしまう。大臣としては、これだけの命令を出して、どうしてもこれだけはやらせなければならぬということでNHKに命令を出して要求すれば、大蔵省だって法律に基いて要求するのだから、大蔵省から出してくれますよ。前から、私は平井大臣のときから、何回も論議をして、あなたに引き継いでもらうようにこの委員会質問もやつたくらいですから、そういう点非常に遺憾に思うわけですが、その点、どうお考えになりますか。
  48. 光村甚助

    ○光村甚助君 これは大臣だけに聞くのじゃなくて、NHKの方からも聞いた方がいいと思うのです。予算はきめられた予算でやつていこうとするのか、予算を少くされた、その予算の範囲内でやっていくのか。それともNHKで経済を節約をして、今まで通り放送をやるのか、これはNHKにも聞かなければいけない。大臣の話では、NHKの当局者がいないときに結局は機械を二台を一台にしたらやつていけるのだ、こういうお話であった。われわれがNHKで聞くところによると、そういう手品のようなことはできないとおっしやるのですね。手品という言葉は違いますけれども、どうも大臣のおっしやることと、NHKの考え方が違うので、これはNHKの方からも答弁してもらいたい。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国際放送の問題、少しこんがらがっておるようでありますから、私が一つ明確に申し上げたいと思いますが、法律的にはこの三十三条の条文、三十五条の条文は、これはなかなか疑義のある条文であります。政府はNHKに対して国際放送をなさしめることができる、また、政府は国際放送の費用を負担しなければいかぬ、これは全額負担をするのか、政府が命令をした国際放送の部分だけをやるのか、常識的に、例によって半分を交付するのかということでもって疑義があるのです。あるのですが、今まではどうも中途半端な解釈で、政府が全部やるとも解釈しておりません。それから、政府が命令したものだけを交付するのだということもやつておらないのです。NHKが出した半分だけを交付する、こういうふうなことを今までずっとやつているのです。今度は一億七千万円のうち八千九百万円でありますから、五割一分か五割二分を交付する、こういうふうに条文の読み方というものに対してはおかしいのです。でありますが、衆参両院の委員会では、もちろん国際放送は全部政府が交付すべきだという議論をずっとお持ちになっていたようであります。で、私も平たく考えると、国際放送というものは、政府が全部交付をすることが一番好ましいというふうに考えます。これは三十三年度からはできなくとも、三十四年度か、いずれにしてももう近い将来にこれの問題をやらなければいかぬという考えを持っておる。なぜそれじゃ三十三年度からやらぬかということ、三十三年度には、この三十五条の改正案というものに対して自信がないのです。なかったから法律案改正案を提案しなかったのです。全額を政府は交付しなければならぬということになると、国際放送は政府が行うということにもなるのです。もう権利と義務は常に並立をするものでありますから、政府が全部国際放送に対してやらなければならぬということになりますと、政府が放送を行うことになる、これは当りまえの常識論であります。金は政府が出さなければいかぬ政府は絶対監督もできない、内容にも干渉できない、NHKにまかす、そんなことはありません。そういう一方の義務だけを課して、一切権利のないようなものは世の中には考えられない。だから私は、三十五条の考え方は今までそういうふうないろいろな議論がありましたから、これを明確にただして、国際放送は政府が全部出さなければならないというふうにしよう、こういうふうに思っておりましたが、そういうふうに規定すると、有力な意見として、国際放送そのものを政府がやるということになるので、非常に慎重にものを考えなければならぬということでありましたので、三十五条の改正案は今度の中に含めなかったということでありまして、こういう問題を分けて考えますと、いずれにしても、三十三年度は十五方向十五時間という在来の状態で国際放送を行う、三十四年度からは、国際放送というものを一体どうしなければならぬかということは明確に一つ命令をしなければいかぬ、こういう考えを持っておるわけであります。でありますから、三十三年度は八千九百万円で、三十二年度に比べて千五百万円削ってはございますが、これは国際電電の機械の使用料が千五百万円減ったという  ことでありまして、ただ、この場合に申されることは、であれば、三十二年度より一本も国際放送をよけいにやろうという熱意が見えないのじゃないか、こういう議論になるわけでありまして、私もそれは十分そう考えております。三十二年度のままで十五方向十八時間をやれるとは思っておりません。おりませんので、三十三年度はもう少し実際の運用上でもってものを考えられないかということを考えておじますし、もう一つ、予算編成のときにこの問題は必ず議論になると思いましたし、議論になることが当然であるので考えたのでありますが、放送法改正過程において、政府はもっと国際放送に出さなければならないということになれば、予備費がございますから、予備費というものを考えてはどうかというので、いわゆる政府はもう少し交付金を出せるような制度も考えなくちゃいかぬのじゃないかということで多少議論をしてみたこともあるのでありますが、いずれにしても時間的に、技術的に間に合わなくてこのまま提案になったというわけでございまして、国際放送に対しては、将来確固とした方針をきめて拡充をして参らなければならないという考えでございます。
  50. 光村甚助

    ○光村甚助君 NHKの人にも答弁してもらおう。それでやるのか、施設を落してやるのか。
  51. 山田節男

    ○山田節男君 今の国際放送の問題ですが、あなたはこの三十五条のことだけをおっしゃいますが、たしか三十三条に、郵政大臣は、放送区域、それから放送事項を命令する、そういうことに対応しての三十五条であるということは疑いがない。それからもう一つは、政府がどうもその点に認識不足かと思うことは、この放送法が二十五年の六月に制定されて、従来の社団法人のNHKがこの放送法に基く一つの法人になった。ですから実質においては公社なんです。ですから、その公社という建前に立って国際放送郵政大臣の命令のもとにやる、それから費用も国が負担する、これはたとえば外国の例を出しますが、イギリスの場合、やはり国家交付金という、グラント・イン・エイドという金額負担なんですね。これはある場合に、過年度において超過した場合には、その過年度に超過した国際放送の費用も政府が出す、いわゆるグラント・イン・エイドの形で出すということなんです。社団法人のNHKの時代におきましては、御承知のように社団法人ですから、その費用でもって国際放送をやり、また政府が一部これを負担するということもこれは考えられる。ところが、公法人になって実質上の公社になりました以上は、法律に明記した以上は、これは当然国が負担するということは、全額負担する、それができなければ一部負担ということを考えなくちゃならぬ。国が負担するということは、法律的に解釈しても全額負担するということはもう言うを待たないところなんです。ですから、どうも二十六年以来予算の編成が問題になる、大蔵省に郵政省あるいは電気通信省が負けておるわけですね。今の受信料の徴収のことからいえば、NHKの放送受信し得る受信施設をした者は、これは契約しなければならないという、すなわち受信料を強制的に払わなければならない、これはNHKと受信者との契約とは、国内放送受信契約であって、国際放送は聞えやしないのです。そういう面からいってもこれは明らかに政府が違反をしている。ですから、ここを私は今のあなたの御答弁ではさっぱり論理が合わないと思うのです。ですから、今日のようにNHKに受信料を払うということは必要のないことで、テレビもラジオも聞けるのですから、政府が受信料の強制契約ということをやれば、憲法の契約の自由を侵害するものである、憲法違反ではないかある地区におきましては、弁護士がこれは明らかに、NHKが現状において強制契約をするということは憲法違反である、これは相当の有数な弁護士がそういう一つの、決定はしませんけれども疑義を生じてきているのです。ですから、こういう根本的問題と法律の制定の経過、それからこれが、NHKが今日実質上の公社である、それを実態においてあなたがちゃんと大蔵省に交渉されぬから、こういうことになる。大蔵省はそういうことを知らないだろうと思う。ですから、毎年これがもやもやしたものになってくるのだけれども、NHKの受信料が問題になっている今日、この点はやはり政府ははっきりしないと、来年またより悪い形において問題になってくると思うのです。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 そういうことになると議事進行で、NHKに答弁してもらって、それからやれば本筋にいくのですよ。あっちからこっちから言うからそうなってくる。それは法律をじゅうりんするようなことをあなたは言っているのです。要するに、全部国が費用を負担すれば、NHKが聴取料を取るのはおかしい、そういうことを大臣が言うのは論理の飛躍ですよ。三十三条に、少くとも国際放送というものに対する定義が、今、山田委員からあったようにあるのですよ。少くとも「郵政大臣は、放送区域、放送事項その他必要な事項を指定して、協会に国際放送を行うことを命ずることができる。」、こういうふうにあって、第三十五条にはその「協会の行う業務に対する費用は、国が負担する。」、こういうふうにあるのですよ。だから、その精神というものは、国際放送精神というものは、放送法に基いてきまっているわけです。普通の論理でいくならば、国際放送に対して政府が金を出すから、その分に対しては、監督権は政府が行使してもいいのだという考えが支配しているのではないですか。だから、放送法というものをよく理解してくれないから、たとえば前の会長がなくなったときにもそうです。次期の会長について、あなたは放送法精神を知らないで、すぐ、総理大臣のところに行ってひそひそ相談をやるものだから、かえってああいうことになった。一カ月もブランクになった。そうでしよう。だから、大臣として、あなたは勉強されておる大臣だから、そんな放送法精神をじゅうりんするようなことを言われては私は困る、この委員会で。その点をはっきりしてもらいたい。ですから、国際放送というのは、今、山田さんが言ったように、国内放送の聴取料によって大体支弁されておる、収入というのはそこに求めておるのですから、その予算を国際的な放送に使うということは――経営自体から見ても国際放送から金は取れないでしょう。逆に国際電電に金を払わなければならぬ。ですから、そういう格好で料金の徴収ができないし、また国策として外国との親善あるいは輸出の振興、貿易の振興等、いろいろな形において国際放送が必要だから政府がやらしておるわけです。そういう精神からいっても、この放送法第三十三条ないし第三十五条にきめた精神はそこから来ておるから、あまり大臣が論理を飛躍してそういうことを言われては私はちょっと困ると思うし、それで関連してこのことだけはっきりこの際言っておきたいと思います。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も明確に申し上げておきますが、私もいいかげんに解釈しておるのじゃない。だから、法律をよく読んでいただくと私と同じような議論になる。私は平たく申しまして、放送法規定による国際放送はできるだけ政府が全額出すことがよい、しかし、それはあくまでも精神的な規定でありまして、法律的にはNHKが行う国際放送に対して、政府が全額持たなければらぬとは考えてない。で、法律の条文を見ますと、かえって逆に政府が命令したものに限ってだけ負担をしろと書いてあるようにさえ読めるので議論が分れておる。なぜかといいますと、第三十三条にはこう書いてあります。「協会に国際放送を行うべきことを命ずることができる。」、それでは命じない場合は一体どうするかということがすぐ起きて参ります。第三十四条には「第九条第一項第四号の範囲内で事項を定めてその研究を命ずることができる。」、第九条第一項第四号というものはどうかといいますと、放送番組または放送技術に密接に関連をするものに限られた研究施設であります。そうしますと三十三条と三十四条を受けた三十五条、すなわち「前二条の規定により協会の行う業務に要する費用は、」ということになりますと、国が命令をした国際放送についてだけ、それから第九条第一項第四号の研究施設を命じた場合、その費用だけは国が負担しなければならないと、法律的に読むのが正しいのです。これははっきりした事項であります。だから、こういうことでは国際放送で政府が命令しなかったらどうか、命令をしなくてもNHKはやっておるのです。その政府が出す金といえども国会が議決をする範囲内でなければならないというから、政府の交付金がきまったら、それを年度のNHKの予算の中に入れて国会審議を仰ぎ、国会の議決した範囲内に定めなければならぬと法律第三十五条では明確に規定されておる。ところがこの法律というものは、これに当時の法律であって、こういうもの自体も変えなければならんという考えであって、国際放送というものに対しては、政府が全額交付することがいいという考えを持っておりますが、現行の制度からいいますと、大蔵省が言うように半分もやればいいじゃないか、実際郵政大臣が全然国際放送事項を指定して命令をしておらんというならば一銭もやらなくてもいいのだという、極論でありますが、これは仮定の議論でありますが、そういうふうにも法律が読めるという法律上の疑義が非常にあるのであります。でありますから、私の方では、政府が事項を定めて、内容、番組を定めて、NHKでは全然国際放送はこういうものをこの時間にやってくれというような命令は現在しておらないのです。実際やつておりません。NHKの全く自主的な判断にまかせた、運用にまかせた国際放送をやつても二分の一に該当する金額を交付しているから法律違反じゃないか、こういう議論をしておるわけです。今三十三条、三十四条、三十五条の条文は、もう少し明確にしてできるだけ国際放送というようなものは政府が全頻出した方がいいというふうに私は解釈しているだけであります。
  54. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) NHKの使命といたしまして、私は国際放送を拡充いたし、国際親善、文化の交流等に資すると同時に、日本の貿易発展にも貢献いたしたいと、かように考えております。なおこの国際放送によって、在留邦人に対してもできるだけ慰安を与え、そうして在留邦人の活躍に資したい、かように考えておりまして、私はNHKとしてはできるだけ国際放送を拡充する方策をとつていきたいと思っております。ただ今日のようなやり方で、政府から交付金をもらってやるのがいいのか、あるいはまた国家が全額これを負担するのがいいのか、またNHK自身で全部まかなっていくのがいいのか、この三点について私はまだ最後の結論に達していないのであります。ただ私の気持といたしましては、できれば政府から金をもらわないでNHK自身でまかなって、そうして自由闊達な国際放送をやるのがより効果があるのではないだろうか、かように考えておるのであります。と申すのは、私の狭い浅い経験でありますが、かつ同盟通信を作ったときに、外務省から金をもらいました。そうしてそれが後には情報局から金をもらうことになったのであります。同盟通信が金を政府からもらっておるということがどことなしに外国に対して悪い感じを与えておりました。だんだん戦時体制に移行するに従っていろいろの制約を受けたためでもあったでありましょうが、同盟通信のクレジットがどうも世界に、通用しがたいというわけではありませんが、少くとも軽く見られるようになったのであります。ついに同盟通信は解体のやむなきに至ったのでありますが、私どもは通信社の力を発揮して、そうしてこれを国際的に大いに活用しなければならぬ、それには新聞の組合通信にするがよかろう、新聞社はいろいろの負担は多くなるだろうけれども、これは忍ばねばならぬ、国のために忍ばねばならぬというので今の共同通信にいたしたのであります。ただ、占領が長かったためにこの通信社の機能を十二分に発揮し得なかったきらいはありますけれども、しかしこれは独立した、政府からも、またその他外界のいずれからも金を出してもらっていない、自主的な運営によってやつているものであるということは、国際間においてもよくこれを認めてもらっているのであります。ここが同盟通信と共同通信の違うところであるのであります。私はそういう意味において政府から金を出してもらわないで、NHK自身でやるのがいいのではないだろうかということを考えます。またもう一つには私は、これも私の狭い浅い知識でありますが、各省からいろいろの補助金を地方団体に出しております。そのために地方事務官というものを置いておりますが、これは地方団体としては相当いろいろの議論があって、この補助金制度の検討とともに、地方事務官制度についても議論があるように聞いております。ここで私は、これと国際放送とを直ちに結びつけるのがいいか悪いかはまだ私にも判断できません。わかりませんが、私は全額国から金をもらって国際放送をやるということになると、そこに何かのひもがついて来はしないかということの懸念も持っているのであります。従って私は今の段階においては、この予算に組んであるように、今までよりも国から交付金が出されるのが減つても、NHKとしては今まで以下にしてはいかん、できるだけその機能を発揮して、この国際放送の成果を上げるようにしようと、かように考えまして、この予算を組んでいるわけであります。結論といたしましては、今申し上げたように、私は三つのうちどれをとるのがいいか、もう少し――もう少しではない、しっかり考えたいと、かように考えております。
  55. 鈴木強

    鈴木強君 野村会長の御意見はわかりましたが、私たちここでそういうあなたの意見を聞いているわけじゃないのです。少くともあなたが会長として御就任以来、放送法のもとに、公共放送としての使命を達成するために努力をされているものだと私は思うのです。本委員会におきましては、少くとも三十三年度のあなたの協会の予算を今審議せんとするときに、今までの予算編成の過程から見て非常に協会の経営が困難になってきている。私たちは、少くとも協会を生々発展させなければならぬという立場を基本的に持っているわけです。ですから、放送料もおそらく値上げできない、聴取者もほとんどリミットにきている、そうしますと、その協会の発展するテレビの計画、さらに放送事業の拡充を、どこに財源を求めますか。私たちはそういう観点に立って少くとも国際放送をながめたときに、現行法上、NHKの会長が少くとも予算編成の過程において六億の要求をなされたはずです、それにはそれだけの放送事業の拡充をあなたは念願しておったからこそそういうことになったと思います。ところが、それが不幸にして二億五千万円に削られ、今日八千九百万円に査定をされて、ほんとうに見るかげもない姿になって今ここに現われている。私は、あなたたちが六億円予算を要求した根拠というものが少くともあると思うのです。それを、今お話を聞いておりますと、私たちが聞かないことを、将来の放送法改正につながるかもしれませんが、そういうところまで理論を発展されてここに意見を述べられたということについて、私たちは率直に申しまして、今の直接の審議の参考にならないのです。今、光村委員も申されたように、少くとも将来二方向、三方向に基いて二波、三波によって国際放送をやられております。どこの国のを見ましても、それを一台に減らしてやられますと、かりに中共―北京あたりの近いところでありましても、電波の伝播の状況等によりましてはなかなか電波は完全に到達できないのです。だから、二波ないし三波を併用してやるというのが国際放送の通念なんです。ですから、そういう意味から見ましても、大臣の説明を聞いておりますと、なるほど金は額面から見ると減つておるけれども、実際の運用においては昨年と影響ないようにしてあるのだ、こういうお話を伺います。それについては、私としては非常に危険を感じますから、そのことを私はあなたにお尋ねをしておるのですが、だいぶ先まであなたはおっしゃいましたが、しかしそういう考え方を持っておるなら、私は一言言っておかなければならないので、少くともあなたたちの方から出しておる全世界の海外状況実施表というのをごらんになるとわかりますように、ここにあげられております十四国のうちで、どこの国でも直接私企業として国際放送をやつておるといろはございません。アメリカにしましても国際放送はVOAが少くとも国営として今日放送をしております。各国が国営形態ないしは公共企業体形態で国際放送をやつておるというこの論拠はあるはずです。ですから、そういうふうに平面的に、あなたが政府から金をもらえばひもがつくから、私はそんなことはいやなんで、できれば自前でやりたい、こういうお考えですが、これはあなたの御意見に対しては別に反対するとは申しませんけれども、少くとも私たちは各国の国際放送の実情等も十分勘案するときに、現在の形態においてできるだけ政府から国際放送に対する交付金をいただいて、そして完璧な放送をしていただくようにしなければいかぬじゃないかという気持を持っておるわけです。あなたがそういう非積極的であるならば、私たち予算委員会でも何でも、大臣もずいぶんがんばったでしよう、しかし大蔵省が査定されておりますから、私はそこをついておるのです。三十三条、三十五条の精神を大蔵省はどう理解したのだ、少くとも六倍の要求が二億五千万円に減り、二億五千万円すら八千九百万円に減つているじゃないか。これはどういう根拠に基いてやったのか。郵政大臣は、NHKに対してこれだけの国際放送をやりたいという構想を持っておったはずです。六億を二億五千万円に査定したのですが、それは少くとも郵政大臣が直接必要だというわけなのに、これを認めないのだというわけで追及している。まだ予算委員会でもこれは追及しようとしておるのです。だから何か会長のおっしゃるような非積極的なことであるならば、私は何かしらぬ審議に対する熱意を欠くのです。しかし、そのことに対してはNHKのためにも、また国家のためにもよくないですから、私も最後までがんばって、大臣もおっしゃっている通り、もしできるならば予備費か何か出してもらつて、少くとも郵政大臣がほしいといったこの二億数千万円の金ぐらいは出してもらわなければならないという気持を持っておるのです。現にあなたはこの経営に責任を持てますか。減価償却費を切って今まさに危機ではないですか、これから一年間は。しかも償還すべき金までも食い延ばして無理な予算を請求している。そういう関係において少くとも三十三条、三十五条の精神を、私は従来から何回も論議しておるのでありますが、確かに大臣のおっしゃるような意見の食い違いがあるのだが、食い違いがあるから早く明確にして、放送を命じたものに対しては全額出す。しかもNHKはニュースの前にメロディをかける、最後に君が代をかける、そして国外の人たちにただ単にストレートのニュースだけでなしに、いろいろな音楽や何か入れてそして潤いのある放送をしているわけです。ところが、政府の方ではニュースとかそういうものだけしか命令してないから、そういうものだけは出すのだ、しかし前に放送するメロディや、あるいはあと放送する、あるいは中間に放送する音楽というようなものは政府は命令しないから出さない、こういう理論になると思います。私たちは少くともそうではない、NHKのやっている形態というものは、各国がやっている国際放送の形態であるわけですから、少くとも十六カ国がやっているこのNHKの形態というものを認めていただいて、二億か三億の金を出し渋ることなしに、重要な国際放送に対して金を出してもらいたいというのがNHKの今までの主張だった。今までの会長も実際心痛されて、この委員会の最後のときに山田委員質問に対して憤然と、何か気にさわったことがあったでしよう、納得ができないと言ってここを去られた二、三日あとにああいう不幸なことになったのですが、少くとも永田会長もNHKの経営についてはずいぶん心痛されて、全精力を注ぎ込んで、今日のこの三十三年度予算はあなたの手によってなされたわけですが、私はそのことをやつておられたことと思う。いわばそういう激務によって倒れたといっても過言ではないでしょう。そういう経緯の中で私たちは、今、従来と変った形でNHKの予算を審議している。だから感情的になることがあるかもしれませんが、言葉が過ぎることがあるかもしれませんが、そういう点はお許しいただいて、要はNHKというものに対して、ほんとうの公共性を持った事業をやつてもらいたいという私たちは全身にみなぎる熱意をもっていろいろな意見を出しているわけです。まあ大先輩に対して、私たち若僧がいろいろなことを言って恐縮でございますけれども、私、放送事業については十数年の間従事してきております。かつては国際放送といえば全部検閲を受けて、われわれはそのスイッチを切った一人なんです。私も十数年間放送をやりました。ですから、私も人一倍関心を持っている方だと思う。ですからこの問題について、執念深く国際放送に対してやつているわけです。また私も南方捕虜になって向うにいた当時でも、祖国からの放送を聞いてどんなに自分の潤いになったかわかりません。そのことも体験しております。ですから、今日国際放送は非常に大事だと思って、私は実はこういう執念深い質問をしているわけでございますから、ですから大臣としても、私はこの法的な解釈について確かに論議はありました。ありましたが、少くとも国際放送に対する観念というものはNHKにまかしておって、あとこれだけ半分くらい補助すればそれで足りるのだという非積極的なことでは私は困ると思いますし、少くとも予算のまだ審議過程でありまするから、どうか一つ最後まで大臣も信念をもってわれわれとともにNHKの国際放送の完璧を期するために努力してもらいたいと思いますから、大臣の奮起を、私はこの機会に強く要望すると同時に、NHKの会長以下の皆さん方に対して、どうか現行法上におきまして今年度の予算をわれわれ論議いたしますので、将来の方向に論議を発展することなしに、われわれの審議意見を聞かせてほしい、そう思うわけです。
  56. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) 私、こういうところでお答えすることが不得手でありまして、あるいは脱線いたしたかと思いますが、三十三年度予算、ことに国際放送に関する事項につきましては、他の参考人をして詳細にお答えいたしまして御了解を仰ぎたいと思います。なお私が先ほど申したのは、決してこういうことを考えてこういう結論が出たというわけじゃございません。これからよく考えて結論を出したい、かように考えておるのでありまして、その点御了解を仰ぎたいと思います。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題で蛇足かもしれませんが、今までの経過を簡単に申し上げてみますと、従来は政府では、命令をした分はその所要資金は全部政府が出す。しかし、政府の金でばかりやっていると魅力的なものは実施できないので、足りない場合はNHKが金のつけ足しをする、こういう方向でおおむね二分の一ずつということでやつてきているわけです。なお受信料から出すことに対しては、一体NHKがそういうことをきめるのも問題じゃないか、受信料は一般の受信者に返すべきじゃないかということでありますが、これを一体国際放送に使っていいか悪いかというのは、事業計画国会に出して、国会承認を仰いでおりますから、まあこの程度でやむを得ないだろうということで、一応筋を通してきているわけです。大蔵省の考え方を申しますと、これはもう条文通りの解釈をしているわけです。政府は、命令以外の国際放送に対してまで政府が出せとは書いてない。なお、NHKが国際放送をやってはならぬという禁止規定がないばかりでなく、むしろ九条の第一項二号に「国際放送を行うため、放送局を配置し、維持し、及び運用し、又は政府の施設を使用すること。」と書いてあるだけで、これは原則的にはNHKがやるということであって、国が全部出すのがおかしいのだ、こういう四角定木な議論を大蔵当局はやっておるわけです。ところが郵政当局は、受信料は受信者に還元するということであるので、外国に向っての放送に関しては受信料は返ってこないのだから、こういう問題は国民全体の負担でまかなう、すなわち税金や国費でもってまかなう方が筋であると、こういうふうにこれを読みかえて、法律の条文はどうあろうとも全額国が出すべきだということで、非常に強硬に主張してきておるわけであります。でありますから、今は受信料といえども国の八五%になっているのだから、受信料そのものが税金のような形だから、場合によっては法律を明確に割り切って、受信料から全部まかなうというふうに規定してもいいじゃないかという議論がありますことは、今の会長がかえって交付金などというものではなく受信料によってまかなう、特に値上げできればそれでまかなった方がいいのじゃないか、こういう議論も一部にありますが、私は全世界の例を見ても、やはり少くとも国は現行よりもよりよけい出すという制度を期待してはならない、それよりも一歩進めて、やはり全額国が出すべきだという議論を進めておるわけであります。
  58. 鈴木強

    鈴木強君 大臣、非常に誠意のある見解を発表してくれまして、心強く思うのですが、どうでしょうか、私もわずか足かけ三年間の短かい経験ですが、私当初からこの問題について論議してきておる三十三条と三十五条の関係ですね。せっかく放送法の一部改正案を今政府がお出しになったわけです。しかし今から、私が言ったからといって、政府がもう一回やり直すわけにはいきませんから、わが党がそういう点を改正案として出したいと思いますが、あなたそのときは当然賛成してくれるでしような、どうです。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そういうことがあれば、院議は尊重しますから、どうぞ一つ……。
  60. 鈴木強

    鈴木強君 私、最後に一点だけお尋ねしますが、経営委員会の権限の問題でございますか、従来NHKの会長経営委員会のメンバーとして経営委員会に参画ができることになっておつたわけですが、今度の改正法案によりますと、今度は正式メンバーになれない、意見があれば述べてもいい、こういうような形に改正になっておりますね。それでちょっと私その点が非常に考え方によると、会長の権限というものを、執行段階において経営の決定権については参画させないと、こういうことですから、議決機関と執行機関との関係をはっきりしたという点から言うと、わからぬこともないのですよ。だがしかし、私は少くともNHKの経営というのは、その最高責任者は会長であろうかと思うのです、その協会を経営していくのにはですね。ですから、その会長がどだい経営委員会のメンバーになれないということは、どう考えてみてもちょっと私は納得できないのですね。その理由がどういうところにあるのか、明確にこの際していただきたい。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。私は現行放送法会長経営委員会委員で、当然委員でありまして表決に加わる、こういうことではよろしくないということで、一つ明確に権限を規定しようと、こういうことはある一面、会長経営委員会に入っておって表決権を持つということは非常に便利なようでありますが、これは責任が非常に不明確になるのです。不明確であるばかりでなく、こういうことになりますと、NHKの会長といえども経営委員会に対しては経営委員長代表する、そうしますと、現行状態では一体、NHKの代表はだれなのだ、経営委員長か、会長か、こういうことなのです。でありますから、私は行政機関の責任者は総理大臣だ、こういうふうにやっぱり明確に規定しなければいかん、あいのこのような考え方はいかん、こういう考え会長経営委員会からはずしたのです。そうして経営委員会現行法では指導統制でありますが、重要な問題に対してだけ決定するという意思決定機関としての明確に規定を分けまして、NHKの代表は、すべての代表会長が行うということを法律上に明記をするというためには経営委員会からはずして、意思決定機関と執行機関の責任者は当然責任が分れておらなければいかぬということで、経営委員会からはずしたのであって、これはどこでも、こういうふうになっておるのは非常に珍しい例であります。一つ電電公社があります。電電公社の総裁及び副総裁は経営委員なのですが、これも戦後できたまあ非常に変ったケースでありまして、こういうものは、まあいいか悪いかというのには議論が分れるところでありますが、これもできれば、私はおかしいじゃないかと、これに対してもう総裁、副総裁との間でも話をしましたし、経営委員との間でも話をしてみたのです。一体あなた方どう考えますかと言ってみたら、やっぱり現状通りでいいでしょうということでありましたから、それは手をつけようという気もありませんでしたし、まだいろいろ問題もありますので、そのままにしてございますが、放送法に関しましては、現に放送法改正審議会の答申に、会長を経営委員からはずして、協会代表会長であるということを明確にする必要があるという答申がなされております。そういう意味で……、いや、なされておると思うのです。そういうことがありましたので、経営委員と、それから会長との責任を明確にするためにはずしました。そのためには会長の権限が弱化したのではなく、私は会長の権限を強化し、経営委員会の権限は重要な問題の意思決定機関だけであるというふうに明確に分けたのであります。
  62. 鈴木強

    鈴木強君 大臣のそういう御意見もあると思うのですよ。しかし、私はあなたの意見が絶対に正しいのだということは、ちょっと考え直してもらいたいと思うのです。要するに現に三公社の問題でも、どうも電電公社おかしいとおっしゃるが、三公社の中では一番近代的な経営形態に私はなっておると思うのです。専売にしても、国鉄にしても、戦前にできた経営形態でありますが、むしろ公共企業体として私は専売、国鉄の二年ないし二年間の形態の経験にかんがみて電電公社はあとからできたのでありますから、相当に進歩的な公社法になっております。ですから、そういう点から考えましても、なおまた国会の、たとえば国の行政機関と立法府との関係においても、たとえば総理大臣国会関係を、じゃどうするかということになるので、まさか総理大臣国会における議決権を放棄するということは考えられない。採決に一票加わる権限があるわけですから、そういうふうなことを考えてみましても、必ずしも執行部と議決機関というものをきちっと切った形には私はならぬと思うのです。ですから、それは意見としては二つの意見お互いに長所もあると思う、また短所もあると思うのです。ですからあなたがすぱっと割り切って、これが正しいのだから、今までやっておったのはどうもおもしろくないから変えたのだ、こういうことですから、むしろ経営権を強化しようとかいうのではないのです。少くとも会長というものはNHKの最高の責任者ですから、その方が経営委員会の経営委員長以下の、阿部さん以下の会議に入り、十分に意見を述べ、またそれに対して十分執行する以上、その表決に加わってこれは合議制でやるのでしょうけれども、全会一致制でやるのでしょうが、そういうふうな形の方が妙味があるのじゃないかと思うのです。そういう形で今までやってきたと思いますから、そういうことならば、ここであなたと論議を戦わしたってしょうがないから、一応私の意見はそういうことで、あなたが絶対に正しいと、そういう意見を押しまくらないようにしていただきたいということを申し上げておきます。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題はいろいろ議論がありましょう。私はもう一度お答えいたしますが、私としては、ただ筋を通そうという考え方だけだったのです。内閣総理大臣国務大臣も議員であるじゃないかというのですが、これは多少違うのじゃないかと思うのです。これはその選挙母体が、議員であるがために内閣総理大臣になるというような場合は、そのまま議員の身分を保持しているということでありますが、これでもやっぱり内閣総理大臣国務大臣国会役員を兼ねるというようなことはこれはよくない。でありますから、内閣総理大臣委員長を兼ねるということはないのです。だから、NHKの会長も経営委員の中で互選でもって会長を選ぶというような非常に明確な準拠規定があれば、そのまま経営委員としての資格を保有するということはありますが、全然第三者から選ぶという場合に、経営委員を兼ねておるということになると、これはある意味において権限の紛淆になるのじゃないかというふうに考えたわけです。もう一つは、答申案に、委員八人及び会長をもって組織することとなっておるが、経営委員会と執行機関との責任と権限とを明確にするために、会長経営委員会構成員としないことが適当である、こういうふうな答申がなされておりますので、ではまあそうしょう、こういうことであって、全く他意はないのであります。
  64. 光村甚助

    ○光村甚助君 NHKの予算の方に戻りたいと思います。NHKでは、値上げをしたいということを前から言っておりました。それが放送料の値上げがなくなった。それからテレビの方の金を借りるのは別ですが、一般放送の方で、幾らぐらい政府の方の投資を求められるのですか。
  65. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) ラジオの方の借入金は全部建設費でございまして、予算上十四億でございます。それから放送債券の借りかえが四億ございます。いずれも建設費になっております。そのうち幾ら借りますか、テレビが三十二億ございます。これまた建設費でございますので、郵政大臣と御相談しようと考えております。
  66. 光村甚助

    ○光村甚助君 さっき会長は、なるべくならば自給自足でやって、政府から金をもらわぬ方がいいとおっしゃった。なるほどそれはけっこうですが、それならばどうしてNHKが、今の予算でやれないのに、政府の出資を求めずに、はっきり値上げが必要なら幾ら値上げが必要だということをお出しにならなかったのか。それとも郵政大臣の方から、総選挙の前に値上げをすれば悪いからやめてくれという、そういう話でもあったのですか。その点お伺いをいたしたい。
  67. 野村秀雄

    参考人(野村秀雄君) NHKの仕事を積極的に行なってそうして国民大衆の期待にこたえるためにはどうしても値上げを必要と考えます。そうしてこの値上げ案に基いて予算の編成をいたしたのでありますが、客観的諸情勢が、どうしても値上げを許しませんので、やむを得ずこういう値上げのできないときには、やむを得ない非常措置としてこういうような予算を編成して御承認を仰いでおるわけであります。
  68. 光村甚助

    ○光村甚助君 NHKの苦衷は確かにわかります。おそらくこれは政府の干渉だということは、われわれも知っております。大臣は、新潟において、去年、NHKの聴取料を値上げするのだ。三百円くらいにしたいのだが、そうはいかないだろうから、八十五円くらいにしたいのだということを、はっきり新聞記者にも言っております。この席上でも大臣は言っております。それにもかかわらずNHKが出した予算に、どうして大臣は値上げを認めなかったのですか。予算じゃなくて、そういう申し出に対してあなたは値上げを認めなかったのですか。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お答えいたします。私もこの委員会で申し上げましたが、三十三年度のNHKの予算は、民放に先行し、全国あまねく放送するためには、相当事業量の拡大をはからなければならない。そうしますと、財政的に新しい処置をしなければならない。その処置の仕方としては一つ方法としては、値上げをもってまかなうということがございますし、もう一つは、政府交付金の制度を作るという制度もございます。もう一つ言いますと、長期借入金制度を行なって、ペイ・ラインに乗るまでの間そういう制度を作るというようなことがございますから慎重に考えます、こういうことを申し上げております。昭和三十二年の暮ごろからの考えで言いますと、どうしても八十五円くらいまで値上げをしなければならぬのじゃないかというふうに私も考えましたし、またNHK当局も考えておったようでありますが、その後物価というものの凹凸是正に対しては、非常に国家的に重要なことであるから、今軽々にやれないということは、新聞紙の値上げがとまったり、また電力の三割頭打ちの問題が起きたり、いろいろ問題がありましたので――私鉄の問題もございます。当然物価の凹凸是正、再改訂を行わなければならない段階であるが、今適当であるかどうかということに対しては、経営委員会でも、またNHKの理事会でも、相当問題になったようでありますが、全然私鉄も上げない、新聞も上げない、いろいろ何も上げない。凹凸是正の時期は慎重にと政府が考えておることに対応して、今年度はほかに財政的な見通しがつくならば、一つ値上げをしないで据え置きのままで予算を組んでみようじゃないかということで、お出しになったわけであります。今度私も法律に基いて意見を付しておりますが、理想的な姿の予算案ではありません。で、大体こういうふうな、ある意味では赤字予算と言われるような予算案は二年も三年も続けるべきものではなくて、少くとも三十四年度には正規な、もっと姿のいい、十カ年計画というようなものの第一年度、第二年度としての正当な予算を組まなければならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  70. 光村甚助

    ○光村甚助君 ことし解散やつて、総選挙でも済んだら上げようというのですか。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この値上げをとめましたことは選挙対策上やったことでは絶対にございませんし、選挙が終るとか終らないということよりも、いわゆる国全体の物価政策と合せなければいかぬというNHK当局の配慮からでありまして、私もまたあらゆる角度から物価政策を考えて、適当な時期に値上げを考えなければいかぬだろう、値上げが考えられない状態だと、別途の財政措置考えてやらなければならぬ、こういうふうに考えるわけであります。
  72. 光村甚助

    ○光村甚助君 あなたは、この委員会で値上げをしたいと言ったことは、あなたの不見識だったわけですね。当委員会で値上げをやらなければならぬと言ったのは。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほども申し上げました通り、三十三年度の予算案というものを作る場合には、事業計画が非常に膨大になりますので、必然的に財政措置をしなければならない。その財政措置一つとして値上げが考えられます、もう一つとしては、政府交付金が考えられます、と言って、並べて申し上げたのであって、値上げをしなければならないと、しぼってお答えをしたわけではないのでありますから、NHK当局が、三十三年度の予算案は、姿はまずくても大きな立場から平たくものを考えて、今年度はこれでがまんをしようというふうにお出しになってきたのでありますから、私もまあ不見識だったとは考えておらないわけであります。
  74. 光村甚助

    ○光村甚助君 一つの事業をするに、金を借りてばかりいて事業をやったらどうなりますか。大臣は事業家だからよくわかるだろうと思う。ただ、その場その場をしのぐためにどんどん金を借り入れて事業をやって、将来どういうことになりますか。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) NHKの予算は、借りて仕事をするのは、建設費以外はやってはいかぬというのが建前であります。これはもうけてはならない。そのかわりに、適正国民から負担をもらっておるのでありますから、国民負担を増大せしめないで、適正な公共放送の使命を果さなければならないというところに、非常にむずかしさがあるのです。ですから、ある意味においては、政府交付金をうんと増すというような制度も新しく考えられなければならないわけでございますが、これは現在の状態でNHKがペイ・ラインに乗らないというふうには考えないのです。うまくいけば五年間で乗るだろう。おそくとも七、八年間では、現在の聴取料でもまかなえるかもわからぬというところに、非常に問題があるようであります。なぜかと言いますと、ラジオは現在千四百五十万台でありますが、これはおおむね千六百万台までは上るだろう、漸進的にではありますが、千六百万台までは考えられるということになりますと、大体百三十億でありますから、手数料を引いても百二十五億は残る。そうしますと、テレビは七十五万台でありますが、五ヵ年間のうちには四百万台にはなろう。そうしますと百二十億でありますが、おおむね二百六、七十億ということになります。三百億くらいになるわけです。いや、三百六十億くらいになるのです、四百万台になりますと。まあ六百万台になるということになると、今度ラジオが減ってもテレビの費用でラジオもまかなう、そこで初めて、今まではラジオの聴取料は絶対にテレビには使ってはならない、これは原則として私ども認めておりますが、そのテレビのものをラジオに使ってはならないとはなかなか考えられないのです。まあテレビがこう発達をしますと、ラジオが減りますから、だから、ラジオとテレビというものを合せて一本の料金にしてはどうかという新しい論もあることは御承知の通りであります。テレビが六百万台になる場合には千二、三百万台にラジオは減るだろう、テレビが九百万台になる場合には、ラジオは九百万台に減るだろうというくらいにNHK事務当局は言っておりますが、私はそう減るとは思っておりません。思えませんが、やはりこれはおおむね百五、六十万台くらいは減るだろうということを考えますと、五年間から七年くらいうまくいきますと、そのテレビ・ラジオを通ずると、NHKも現行の料金でさえも何とかうまくいくかもしれぬ、こういう見通しの問題です。そうであるならば、どうしても値上げができない場合、五年くらいは交付金を出してもいいじゃないかという議論も生まれますし、今度の値上げをしなければならないようであれば、法律改正案に法定をして、しかも、ある時期には下げなければならないというふうな返り規定を作るということも十分考えたのですが、そういう事情もございましたので、今年度は値上げをしないという結論をNHKが出しましたので、そのまま国会にお出ししたという状態でございます。
  76. 光村甚助

    ○光村甚助君 NHKが出したのじゃなくて、あなたからそういう指示があったのだろうと思いますが、そのことは深く追及はいたしません。  NHKにお伺いしますが、聴取料を取らないラジオは、今、台数は全国で幾らぐらいですか、無料の。
  77. 首藤憲太郎

    参考人首藤憲太郎君) 規定によりまして免除をしております台数は約五十万でございます。
  78. 光村甚助

    ○光村甚助君 五十万台だとすれば、今二百円ですか、そうすると大体一億くらいになるのですね。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五十万台、年八百円でありますから、四億であります。
  80. 光村甚助

    ○光村甚助君 NHKの予算が苦しいときに、四億というようなただのラジオがあるというのは、私はおかしいと思うのです。これはもちろん学校とか公共施設だと思うのです。これは政府の方でも将来、これこそ政府の方で負担すべきだと思うのです。この点大臣どうですか。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは公民館、学校というように教育法によるものであります。ありますが、これを拡大をしろということで傷痍軍人会とか、いろいろないわゆる給付を受けておる団体からもそういう申し込みがありますが、これはやっぱり平等の原則に基いて徴すべきものは徴し、交付すべきものは交付するというのが正しいのだろうという考えで、私もそういうものは認可をしないという方針をとっておるわけでありますから、五十万台よりもうんとふえるというような状況はございません。しかし、まあこの四億を政府交付金とするかどうかという問題に対しては、まあNHK自体がこの五十万台というものは初めからもう無料で奉仕をしようということになっておりますから、しかし、この四億くらいは何とか一つ、まあ四億というよりも五十億だけ今年は何とかしなければなりませんので、政府も先ほど申し上げましたように、NHKがいつ返せるか、返すためにはどういう手段を講じなければならぬかということを十分に慎重に審議をする、あわせて三十三年度の予算の御承認をいただければ、財政措置に対しては十分協力していきたいという考えでおります。
  82. 光村甚助

    ○光村甚助君 この無料のラジオというのは、ある程度の政府の慫慂によってできておるのですから、当然今年は間に合わぬかもしれませんが、来年度予算を組むときには、少くとも政府の方でこれはただにしてやるのだったら、当然政府の方で、NHKの予算が苦しいのだから、当然政府で見るべき義務があると思いますから、来年度予算を組むときには一つこれを考慮してもらいたい。以上、私の質問を終ります。
  83. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 文部大臣その他とも十分相談をいたしまして、できるだけのことをいたしたいと、こう考えるわけであります。
  84. 森中守義

    森中守義君 今まで大臣のNHKに対する答弁を聞いていますと、知っていること、あるいは覚えていることを言葉としてここに並べているにすぎないような気がするのです。一番大事なことは、今のNHKの運営じゃやはりいかぬ、だから、五年計画なり十年計画なりを立てて、一貫したものが必要だということは、あなた今述べたのだ、それはやはり思いつきだと思う。しかも、今年度の予算は、私どもは絶対これは承知できないような予算になっておる。だからといって上げぬということは大へんなことになるでしょうがね。しかし、そういうずさんな予算を出して、それでこうも思う、ああも思うということでやはり済まされぬと思のですよ。だから、そういう点をもう少しここでじっくりと中身の審議ができるような――ただ言葉の羅列や、思っていること、知っていること、覚えていることを並べてもらう前に、もう少し協会とゆっくり話しをして、計画はどうする、電電公社のように五年計画とかあるいは十年計画、こういう基本的なことについて、もう少し私は大臣として考える必要があると思うのですが、どう思いますか。
  85. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、今の御質問でありますから、真意が伝わらないと困りますので申し上げますが、就任八ヵ月近くなりますが、NHKの問題だけ深刻に考えて参りました。民放免許、百日かかったのも、NHKの将来がどうなるだろう、これに及ぼす影響はどうだろうということを考えましたために、非常に慎重な態度をとった。このNHKの将来というものに対しては、まじめに深刻に考えております。でありますから、今度の法案の改正案などというものは骨抜きだというふうにも言われますが、民放が非常に発達をした四、五年後になると、この民放があげてNHKをたたいてくるのであって、NHKはある意味においてはもう聴取料を独占的に取っておるのであるから、娯楽放送全部やめて、教育、教養だけを全部やれと、こういうような乱暴な要求さえも出てきておる現状でありますから、これはもう五年後になったらば大へんなことになるという考えで、少くとも三月の民放に対する確認が終るまでにはどうしてもNHKと民放との間の明確な区分をするような最小限の法律改正はどうしてもしなきゃいかぬということをまじめに考えて、ここまでやってきておるのであります。これはまあNHKと話をしておらぬとか、またNHKに対して熱意がないとかいうことはないのであります。ただ値上げをするのだったらばすっぱり値上げをしてしまえばいいじゃないか、それをこういうふうな赤字予算のようなものを出してくるということがおかしいのだということは、もう私もよくわかるのです。わかるのですが、先ほど申し上げた通り、その他の物価の凹凸是正という問題も、時期でないということで大きく政府の方針も打ち出しておりますし、NHKの経営委員会でもこの案を作ります場合にはもう非常に深刻な議論をして、これだけのものが実際国会に出されて、もし通過できないような場合には、それはもう責任を一体どうしてとるのだというくらいに深刻な論争をして、もう万やむを得ない予算を組んだのでありますから、一つその間の事情をぜひ御了承いただきたいと考えるわけでございます。
  86. 森中守義

    森中守義君 私の言っているのは、その協会大臣が話をしているのが、基本的な面にあまり触れていないような気がするのです。ただ料金をどうするとか、なにをどうするというその場限りのことが多いのじゃないですか。私どもはやはり、ここでは協会はどうあるべきか、はしなくもあなたが五年計画、十年計画ということを言い出したから、やはりそういうものが必要だということをこの委員会では前大臣あるいは前々大臣のころから何回もそういうことを繰り返しておるのみならず、大臣の方では考えますということを言っているのですよ。しかし、実際出てきた予算あるいは大臣の答えておることは、まあどうしてもこま切れ的な、一つの一貫性がない、こういうような印象を受ける。だから、願わくば今度この予算は実はこうこうだということで残念ながらこういう結果になった、しかし、五年計画なら十年計画という、こういう一定の方針をもって今から進むなら進むんだということが明確に示されてこないと、何回こういうことが繰り返されても同じ、さっきの国際放送でも同じ、私どもはただ大臣の言葉を聞いておるわけではない。その点はっきりして下さい。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これだけの予算を御審議願うのでありますから、これを機会に当然五ヵ年計画、十ヵ年計画を作らなければならないことは当然でございます。なお五ヵ年計画、十ヵ年計画というものに対してのNHK側の意見を聴取しておらぬわけではないのであります。私どもの方でも、ただ放送法による意見書を出せばいいんだという考えではないのでありまして、NHKが一体五ヵ年計画というものに対してどういう考えを持っておるか、また私たち電波法によって免許を与えなければならないFM放送の問題をどうする、また中波からFMに動かす問題をどうする、またカラー・テレビに対してはどういう計画を持ってやるか、教育放送は第二を使うだけではなく、FM放送もこれに充てると同時に、これからの方針をどうしようということに対しては、相当深刻な研究をしておるわけであります。でありますから、民放三十六局の免許に対しては、おおむね民放に対する免許はこれが最終であるということを明確に私も言明すると同時に、今度確認書を与えるに対しても、当分与えないぞということを申しております。その裏は、NHKの整備を行おうということに一貫しておるわけであります。ただ、NHKと私たちとの間にまだ話がはっきりいたしませんのは、先ほどもちょっと申し上げましたが、これからテレビが四百万台になったときには、ラジオは私の方は千五百万台には減らないだろうという考え方、NHKでは九百万台には減るでしょうというような考え方と、段階的に出てきているわけですが、こういう問題は非常に世界的な例にも徴さなければなりませんし、日本の経済的な実勢も十分つかまなければならないし、また聴取料徴収の成績というものとも関係がございますし、民放との関係もありますので、そういうものもあわせて一つ少くとも五年の将来、十年の将来というものの相当明確な計画を出さなければならないだろうということは、深刻に考えております。ただ、現行放送法は断続費制度というものを認めないで、そのときそのときに国会の議決を経て、承認範囲内において執行するということになっておりまして、ラジオの聴取料及びテレビ受信料さえも一年ごとにきめられるというような制度をとっておりますので、今度の改正案では、承認が年度末に得られなかった場合の暫定措置規定しておりますが、いずれにしても、これだけの予算の御審議をわずらわすのですから、明確な将来の計画を作らなければいけないということで、鋭意今努力を進めているわけでございます。
  88. 宮田重文

    委員長宮田重文君) では、本日の委員会は、これをもって散会いたします。    午後零時四十四分散会