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説明員(
柴田護君) 徳島県の問題は、公債費だけとは申し上げませんけれども、まあ公債費問題が主であります。その原因は、交付税の中の投資的経費の取り扱い方——つまり数年前の平衡交付金時代からでございますが、取り扱い方というものは、いわば経営の施設の維持費といいますか、維持補修費と申しますか、でき上った施設というものを維持していくための金は交付税で認めている。しかし、新たに水準の低いものを引き上げていくと、いわば開発
関係といいますか、そういうものの経費というものは地方債でやるのだと、勢いそういうようなやり方を振り返ってみますとして参っておるのであります。そこで、あえて徳島に限りません、東北でも同じような問題が起っておるわけでございますけれども、いわば財政力のない
府県におきましては、どうしても
一般の
団体並みに行政水準を持っていくために、勢い地方債を起して仕事をしておると、それがまあ今日はね返っておる。その中には、国が意識的にそういうような地方債のつけ方をしたところもありますし、徳高県の場合にはそれが相当あると考えられます。そのほかに、徳島県といたしましては、まあ財政力を離れて仕事一点張りに走った時代があるのでありまして、
昭和二十六年、七年、八年、九年と、このころの徳島県の事業分量というものは、投資的経費と消費的経費の比率というものをごらん願いますと、全国的な比率から見まして、非常に多いのであります。しかも、その財源はほとんど起債であるということになっておりまして大
部分は財政運営の本義を離れた財政運営が行われておったということも言えると思うのであります。言いかえますれば、徳島の場合には、国の
措置に基因する場合もありますし、地方
団体が財政運営の本義を忘れて、とにかく仕事だ、赤字を出したって何を出したって仕事は仕事だということで、収支の均衡という本義を忘れて運営した分もあるのでございます。まあこういうような考えでございますが、地力財源の配分そのものにおいて欠点があったのも事実でございます。その
一つは、交付税全体を通じまして、開発経費と申しますか、いわゆる投資的経費の
処理の仕方がまずかった点が
一つです。もう
一つは、徳島県の場合には、地すべりという特殊問題があります。この地すべりというものの特殊問題の扱いは、実際、実情は、緩慢災害という言葉でいわれますけれども、一種の災害であるにもかかわらず、それが災害復旧興としては扱われませんで、全く乏しい特別交付税のワクで始末をされてきた。これがほかの
府県と違うところでございます。
徳島県について申し上げますと、
一般的なものといたしまして、公債費問題に対する跡始末といたしましては、財政力補正というものを
適用する。現に本年度も、財政力補正のまねごとを特別交付税でやっております。そのためにたしか、記憶ははっきりいたしませんが、基準財政需要額に直しまして五、六千万、もうちょっとありましたかの、相当の需要が増しておりますが、これを今度は普通交付税で本格的に取り上げる、そして徳島県財政を圧迫していくであろう救済にかかる、公債費の圧迫を除く。もう
一つは、従来特別交付税で
処理して、普通交付税で
処理していない——つまり交付税上は完全に
処理していなかった緩慢災害の
部分につきましては、普通交付税の災害復旧費の中に取り入れて、これを災害復旧費と同じような扱いをして解決していこう、こういうことが一点。それからもう
一つは、徳島県だけじゃございませんで、佐賀県あるいは高知県等も入って参りますが、いわゆる
府県行政の特質からくるところの財政
措置と申しますか、つまり財源の貧弱なところほど県としては財政需要が多い。その
関係が態容補正係数の中にうまく現われてこない。つまり
市町村の係数をそのまま積み上げて参りますので、貧弱
市町村をよけいかかえておるところは、勢い補正係数が低く出てくる。ところが実際の経費は、そういう
府県ほど
市町村のめんどうを見るべき分野が多い。従って経費は逆に多いのじゃないか。これを直す
方法といたしましては、
市町村の態容係数を積み上げていって
府県の態容係数とする
方法を改めなければならない。そこで、態容補正係数を変えようとしておるわけでございます。これらの点を改めまして、徳島県等のそういう
団体に対しては対処ができる。もちろん、理想からいいますれば、十分とは言えないかもしれませんが、極力対処し得る態勢ができると私たちは考えておるわけでございます。どのくらいふえるかとおっしゃいましても、ちょっと返答いたしかねます。と申しますのは、基準財政収入の計算もございますし、補正係数の算定もあるわけでございますので、ここで幾らふえるということを言えとおっしゃいましても、私たちの口からははっきり言いかねるのでございますが、まあそういう
方法で極力努力をしてみたい、かように考えております。
佐賀県の場合はちょっと事情を異にしておりまして、佐賀県の財政窮迫の原因は、いろいろございますけれども、主として過去からふり返ってみますと、この原因は、
昭和二十五年の税制
改正に実はある程度起因しておると思います。と申しますのは、佐賀県のような県は、昔の地租、家屋税がございました時代におきましては、相当安定した財源を持っており、この安定した財源で財政運営が行われておったのでありまして、現に、
昭和二十三年、四年、五年、このあたりの佐賀県財政は、決してそう派手なものではございませんけれども、非常に安定した、比較的小さいなりに弾力のある財政運営をして参ったのでありますが、
昭和二十五年になりまして、税制
改正が行われて、
府県税の中心が事業税になってしまった。そうして地租家屋税は、固定資産税として
市町村におろされて参りました。その間の税制
改正に即応する即応態勢と申しますか、即応して、財政運営態度を改めていかなければならない。ところが、その辺の順応がおくれた。それがまあ佐賀県財政を困窮に陥れた
一つの遠因であります。その後、災害等もございますし、また干拓等の経費が十分見られていないというような問題もありましてまあ交付税の算定上残されていく、いわば自由財源というのが佐賀県の場合は非常に少い。にもかかわらず、佐賀県は教育王国で、教育が非常に熱心だ。これに対して応ぜないわけにはいかない。その辺のギャップがだんだん広まって参る。かたがた、公債費問題もそういうふうに累加していく。こういうことになっていっておるのが
一つの、佐賀県の財政困窮の過程をたどりますと、そういういろいろな複雑な分子が織りなして困窮を招いておる。その間、もちろん佐賀県財政の運営自身においても間違った、誤まった点もあるのでございますけれども、その原因は、徳島県の場合と違いまして、非常に複雑であります。で、交付税法上の、交付税配分上、これをどう解決するかという問題になって参りますと、徳島県のようにしかく簡単には実は参りません。と申しますのは、佐賀県とよく似た県が香川県でございますけれども、香川県も同じようなことが言えるのであります。単に佐賀県が財政再建
団体ということだけで、特殊の地位を占めているのではございませんで、交付税の算定上は、公債費問題という特殊問題を別にいたしますと、佐賀県と香川県とは非常によく似ておるのでございます。どれくらい似ておるかと申しますと、面積が非常に小さい。しかも、
人口は稠密である。で、言いかえますならば、
人口密度が非常に高くて、しかも、その主力は農業、従って現行の
府県税制上は税収入が少い、こういうことになるのでございます。
そこで、これを救う
方法は、
一つは、先ほど来申し上げました弱小
府県の態容差の縮小という問題が
一つ、それから佐賀県の場合は、公債費問題に対する財政力補正というものがある程度きいて参る。もう
一つは、佐賀県の場合には、海岸堤防の特殊経費があります。これは海岸保全施設の延長をはずして参りますと、別建にいたしますと、ある程度出てくるのではないか、こういう感じを持っておるわけでありますが、基本的には、佐賀県といったような乏しい財源を持つ県が、交付税の算定上置かれております二割の留保財源、この留保財源を交付税算定上どのようにこれを補っていくか、カバーしていくかということになるのでありましてそこになって参りますと、投資補正の問題に結局なるのではないかと私は考えたいのであります。投資補正の問題を今までのようなやり方で考えていきますと、実は
人口密度が稠密でありますし、経済構造がある程度高いのであります。従って投資補正係数もあまりうまくいってない。そこで、投資補正のやり方を別のやり方で考え直していかなければならぬのではないか、こういうことになろうかと考えております。この問題は、非常にむずかしい問題でございまして佐賀県の救済をどうするかという問題は、私どもにとって
一つの交付税算定上の山と申しますか、限界と申しますか、であります。で、今回も実は係官を派遣いたしまして、佐賀県につきましては財政状態を、中身を全部洗っております。その洗った結果を見まして投資補正等についてやはり相当の改善を加えなければいかぬのではないか、そういうように考えております。これにつきましても、そういう手段を講じますれば、再建計画の将来の
部分についても相当
合理化し得るのじゃないかというように現在のところ考えております。