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参考人(
時子山
常三郎君) 三十三
年度の
地方税改正案に対します
意見を述べよということで参ったわけでありますが、本
年度の
改正案を拝見いたしますと、
必要最小限度の
改正にとどめるという
方針に従いまして、あまり大きな
改正が案として出されていない
ように思うの間であります。出ております案を見ましたが、
必要最小限の
改正という前提からいたしますというと、大体妥協の産物といっていいのかどうか知りませんが、まあそつのないことになっておると思うのであります。ただ気になりますのは、
木材取引税に表われております
ように、かなり大幅な
減税が続いて行なわれておる。この辺の
事情はどうかというふうに私感ずるのでありますが、
あとで
参考人の方からまた御
意見があると思いますので、私それで
一つ十分私も
考えてみたいとこう思っておるのであります。
従いまして直接の
改正案、今
国会に出ております直接の
改正案につきましてはあまり多くを申し上げることがないのでありますが、しかし、これで
地方税の大きな問題が何も解決されたとは言えないのでありまして、むしろ問題がこのほかにあるのじゃないか。国の
財政と
地方財政とがかなり
事情が違っておりますので、今、
木材引取税を例にあげましたが、
負担の
均衡あるいは
負担の軽減ということで、今までだいぶ進んできておるのでありますが、これから間果してそういうことだけで、
地方税にいたしましても、国税もそうでありますが、税の問題が解決し得るかどうか、こういうことが
考えられると思うの間であります。ことに、国の場合におきましては、
歳入の九三%は
租税収入でまかなわれておる。また、これはマッカーサー以来のやり方でありますが、
公債を募集しないという
方針がなお続けることにできておるのであります。また、
経費の面から見ましても、
財政でまかなわれる支出というものが、国におきましては
政策喪がかなり多いのでありまして、
収入と合せてこの歳出をかげんするということが比較的やさしいのでありますが、
地方財政の場合におきましては、
歳入の四〇%だけが
租税収入でまかなわれ間て、他は
交付税、
国庫補助金あるいは
地方債などで補ってきております。のみならず、
経費の面を見ますというと、教育とか警察とか、消防とか、その他
一般のいわゆる
義務費に属する
経費が非常に多く、
収入と見合ってその
経費を縮小するということは、国の
ような工合には期待できない。ここに私は
地方財政として今日特に
考えておかなければならぬ問題があるのじゃないか。そういう点から見ますというと、この三十三
年度の
地方税改正案というものは大きな問題を包蔵しているのじゃないかと
考えるのであります。
ことに、三十三
年度までは終戦以来の日本の
経済の
伸びがかなりよく
伸びてきておりますので、従って
自然増収という
ようなものがあって、割合安易な
税対策で事が済んで参りましたが、三十四年以後を予想いたしまするというと、
経済の
伸びにもだんだん限界が来るのじゃないか、そうしますと、
自然増収ということもだんだん期待できなくなりまして、
税そのもののあり方というもの、あるいは
地方税にいたしますというと、
地方税の整備ということは、単に
減税とか
負担の
均衡というふうな
意味での
税対策でなくして、積極的に税を育て上げる必要がある。そういう
方向が
考えられるのでありますが、この三十三
年度の
地方税一般を拝見いたしますというと、そういう問題があまり取り上げられていないと思うのであります。
そこで、これは私は幸いだったと思うのでありますが、
事業税につきまして、これを廃止せよとか、あるいは
減税すべきであるという
ようなことがかなり強く主張されてきております。で、幸いと申しましたが、私は三十三
年度でそれが取り上げら憩れなかったことが、これは非常にけっこうなことだ、こういうふうに
考えておるのであります。ことに、先ほど申し上げました
ように、消極的な
税対策でなくして、積極的な
税対策という点から憩
考えますというと、むしろ
事業税は現在の形であるばかりでなく、さらに農業、林業にまでこれは拡大していくべきである。ただし、拡大していくにつきましては、そうして得られた税
収入が納税者に報いられる
ような積極的な行政面をもっと活発にしていかなければならぬ。そういう前提はもちろん必憩要でございますが、税の積極的な整備という点から見まして、私は、今日
地方税収入の憩五〇%あるいは四〇%、府県によって違いますが、大きな財源となっておるこの問題を、もう少し
考えていく必要があるんじゃないか、こういう
ように
考えるわけでございます。従いまして、本日申し上げますことは、
事業税について特に申し上げたいのでありますが、今日の
事業税は、二十三
年度に、
事業をしている者に対して、
地方サービスに対する受益
負担、応益
負担といいますか、そういう形で
地方経費を分担するのだということでできておるのでありますが、その
建前から見ますというと、これは個人の、普通の勤労者が個人として受ける
地方サービスよりはかなり大きな
地方サービスからの利益を得ておるので、一時この付加価値税というものが専業税にかわって提唱されたわけでありますが、そういう点から見ましても、
地方サービスに対する受益の反対給付、こういうことが専業税におきまして重要ではないかと思うのでありますが、こういう性質の税は典型的なこれは応益原則による
地方税でありまして、
地方自治を裏づけとしての税源確保という点から見ますると、これほど格好な税はない。従いまして、こういうものを今なくしてしまうという
ようなことは、これは
地方税そのものの全体のあり方から見ますというとなすべきことではない。ただ問題としてよくあげられますのは、
事業税は東京とか大阪という
ような富裕
団体に偏在しておる。従ってこういう税があるということは、
地方財源の偏在を一そう大きくするんだ、こういう主張もある
ようでありますが、ところが、富裕
団体でも、貧困
団体でも、大体
事業税というものは、その
団体の
租税収入の四〇%から五〇%という
ようなところでありまして、別に特にこの富裕
団体に税を偏在させるという大きな
理由にはこれはならないかと思う。ことに、現状から見ますというと、これは戦前に比較しまして、他の税はほとんど全部といっていいほど重くなっておるのでありますが、
事業税だけはむしろ軽くなっておるんじゃないか、そういうふうに
考えられるわけであります。問題は、
事業税の廃止あるいは軽減ではなくて、
事業税をますます多くとれる
ような、
事業そのものの育成、あるいは後進
地方団体からいいますれば、そういう
事業を誘致する。また現に、府県によりましては
事業を誘致することによって税
収入をふやしておるということが、すでに行われておるのでありまするが、そういうことがむしろ
税対策の重要な面である。
あとで本日
意見を申し述べろという問題でありますところの
地方財政と
地方行政との関係に関しまして、また申し上げる機会があると思うのでありますが、むしろ
事業を育成する必要がある。そういうふうに言えるのじゃないかと思いますが、この
事業税は農業、林業には現在課税されておりませんので、
事業税の廃止を主張される方は、その点をまた問題とされる
ようでございますが、この農業とかあるいは林業に
事業税が課せられなかったのは、これはシヤウプ勧告当時の
事情によるのでございまして、固定資産税がかなり多かった。あるいはまた、統制価格でこの米などは縛られておった。そういう
事情のために、農業に対しては課税しないということでやってきたのでありますが、だんだん
事情が変って参りますに応じて、やはり農業にも、あるいはさらに林業にも、とにかく
一般に、税金の重い軽い、これは別問題でございますが、この
事業税をむしろ拡げていって、これを
地方税の中軸にまで育て上げていくべきではなかろうか、こういうことが
考えられるわけであります。
ことに、府県の産業行政費などを見て参りますというと、農業行政費は、大体全国
一般から見ますと六割、林業行政費を加えますと八割、こういうものがこの府県の産業行政費となっているのでありまして、農業もまた
一般の民政の安定、社会福祉という
ような
地方サービスからの利益を、得ているということが
考えられるのであります。こういうこの機会に、税の拡大などを主張するということはけしからぬやつだと、またおしかりを受けるかもしれないと思うのでありますが、日本の
経済の規模の鈍化、従いまして、税がだんだん困難になるという
ような点から
考えますと、今日盛んに主張されております
事業税の廃止とか、あるいは軽減にむしろ一反対の
意見を申し上げざるを得ないわけでございます。大体、税につきましてはこれくらいにいたしまして、問題は二つございますので、
地方財政と
地方行政との関係について次に申し上げたいと思います。
この問題につきましては、
地方制度調査会の審議の過程におきましても何回か触れて申し上げております。あろいは雑誌その他にも何回か私の所論というものを書いておりますので、本日は時間の関係もありますので、詳しく申し上げることはできないと思うのでございますが、
地方財政と
地方行政との根本の問題はどこにあるかと申しますと、
地方行政が全国的に画一化されてきている。これは生産手段とか生活手段、あるいはマス・コミ手段の発達によりまして、
一つの時勢の傾向としてこの
方向をたどってきているわけであります。また民主主義が徹底して参りますというと、
地方民がこの均一な行政を当然要求して参ってくるのでありますが、ことに日本の場合には、占領施から、身分以上の高い
地方行政の施設を要求されたということが言えるのじゃないかと思うのでございますが、といいます。ことは、財源がなくたり、
仕事をすることに迫られてきたという
ようなことが言えないかと思うのであります。そういうことで、
地方財政と
地方行政との問題が大きく取り上げられる
ようになって参ったわけであります。ところが、この行政をまかなうべき財源は、
地方経済力のはなはだしいアンバランスによりまして、必要
経費を農村県におきましては特にまがなうことが困難になっている。それがもう限界に来ているのじゃないか。手近な例を見ましても、最近、電力あるいは道路、輸送という
ような生産上のネックが盛んに問題とされてきております。そればかりでなく、工業用水ぶだんだんなくなってきたり、あまりくみ出してしまったために、地下水がなくなって、地盤が落ちるという
ような問題がもう起ってきている。また、地価が最近問題になっておりますが、工場の敷地を求めるにも地価が高くてどうにもならない。あるいは土地を広げるにも地価が高過ぎるという
ような、生産の
条件がもう改善の余地のないところまできている。ところが、他方、今度は働く人の
条件を
考えてみますというと、通勤の混雑、また非常に遠距離から通わなければならぬ、住宅が足りない、あるいはまた都心で働く者は煤煙のための空気汚染その他によりまして、非常に能率を阻害する
ような状態にきております。大都市を中心として衛星都市などを作るという
ような計画はもう時代おくれになっておる。むしろ大都市地域の工業地域を、できれば
地方後進地域に分散する、
地方に新しい、工業中心地を作り出すことによって財源を作り出す。そこで初めて
地方自治をまかなうだけの財源の可能性要が出てくる。こういうふうな行き方が根本的になされざるを得ないのではないか。すなわち、生活と生産の場が一体となる。これは自由民主党の
衆議院におられます佐伯さんなども同じ
ような点に着目しておられる
ようでございますが、
地方都市圏を作り上げていく。で、イギリスの労働党が工場配置法というものを実施して、こういう点についての抑制策をとっておるということでございますが、日本の場合におきましても、大都市に人口や産業が集中する、府県間の
経済にアンバランスが起ってきておる。それを是正するためには、積極的な政策をとって、そしてこの
地方財源を生み出す
経済力を養っていくというところにこの根本の問題があるのじゃないか。で、
地方行政委員会などにおきましても、
地方制をとるか、あるいはまた二、三府県の統合制をとるかということが問題になりましたが、私はこういう単に民生の安定というふうなこと、あるいは社会福祉という
ようなことより以上に、積極的な中央的、
地方的な行政の必要が起って参ります。で、そういう行政の要求を満たすには、
地方制がいいのか、あるいは二、三府県の統合がいいのか、むしろ基準をそういうところに求めて論ぜらるべきじゃなかったか、で、そういう世相を通しまして、だんだんと
地方財源を作り上げる
経済条件を必要とするのであろうと思うのであります。それにはこの行政上の
仕事といたしましては、工場の敷地あるいは工業用水に対して手当をする。電力をもっと嵐富にする
ように講じて、生産施設をだんだんと
地方にも伸ばしていく、あるいは鉄道、道路、港湾というふうな流通施設を
地方行政の方に重点を置いて作り上げていく、あるいは住宅、上下水道という
ような生活施設を作り上げる、そういう行政を通して
地方生活圏というものを作り上げて、これによりまして
地方行政と
地方財政との全体的の統一の場を作る。これが
一般地方財政と
地方行政との根本の問題でなかろうか。実際の問題を扱っておる方方には、何か迂遠の
ようにお聞き取りになろうと思うのでありますが、資本主義の発展、あるいは最近の新しい技術革新ということを考慮に入れますというと、今こういう
方向で一応
地方財政というものと
地方行政というものとを全体として考察しておく必要があるのじゃないか、まあそういうふうに
考えるのであります。
最後に、こういうふうに見てきますというと、現在直接問題になっておりますところの電力の価格の問題でございますが、現在までのやり方によりますというと、電源地帯がかえって都市の消費地帯より高い電力料金を払わなければならない、こういうやり方は、これは従来のやり方でありまして、今申し上げました
ようなこの新しい
地方財政と、それから
地方行政との統一の場を作り出そうとするためには、少くとも電源地帯におきましては、送電ロスだけ安い料金で
地方が
仕事ができる
ように、あるいはもっと有利にこの動力
条件を
地方に与えるという
方向をとる、べきでなかろうか。いろいろ直接の関係者から見ますというと、御
意見があろうと思うのでありますが、私どもから見ますというと、どうもそういう点において不自然な傾向が見られやしないか、まあそういうふうに
考えられるわけでございます。
時間が、ございませんので、一応これだけ申し上げまして、
あと何か御質問ございますれば、それに対して
お答え申し上げたいと思います。