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政府委員(
石井榮三君) 理想といたしましては、
警察力の充実にはいろいろな方途がありますが、個々の警官を質的に高めるということがまず根本であると思うのでございます。能力の足りない者がいかに数多くあっても役に立たない。一人々々の
警察官の質を向上していく、いわゆる少数精鋭主義、一騎当千の士が多くなれば、人間の頭数が必ずしも多くなくても、十分お役に立ち得るということになろうかと思うのでございますので、そういう
意味におきまして、私は前々から
警察官の教養の重要性に着眼いたしまして、
警察官の質的向上をはかる教養にはかなり力をいたしておるのでございまして、将来もまた、その方向には最善を尽したいと
考えておるのでございます。と同時に、先ほ
ども申しましたように、
警察の
機械化、近代化と申しますか、いわゆる科学的な
施設、設備を充実するとこによって、人力に頼らないで、
機械力によって
警察力を充実するということも
考えていかなければならぬということは申すまでもないことでございます。そういうふうにいたしましても、それには、先ほど申します
通り、
国家財政、その他いろいろな制約がございまして、おのずから限度がございますので、それでなおかつ足りないときには、
警察官の頭数をふやすということもあわせて
考えていかなければならぬ、こういうふうに私
ども申し上げたつもりでございますが、確かに
昭和二十九年の制度
改正のときには、今まで細分化されていた小さな自治体
警察が一本に統合されて、都道
府県単位の自治体
警察ということになるので、組織が大きくなることによって能率的運営がはかり得る。従って、ある
程度の人員の縮減が可能であるという
結論を出したのでございますが、それは当時を今から振り返って
考えますと、たとえば犯罪発生の状況一つを取り上げてみましても、戦後逐年増加しておりましたあの犯罪の発生の傾向が、二十八年が一番少い
数字になっておりまして、大体、戦後数年を経まして、もうこの辺で
国民生活も相当安定を見たものでありますから、今後さらに犯罪が減るという方向はたどらないまでも、少くとも横ばいの
程度でいくであろうというふうに、当時われわれは判断をしておったわけでございます。しかるに、不幸にいたしまして、現実は二十九年以降、また再び犯罪は増加するという傾向を示しているのでございます。御承知の
通り、二十九年、三十年、ずっと逐年調べてみますと、漸次また上昇カーブを描いておる。しかも、ただ単にそれが数的に増加しておるのみならず、犯罪が質的にも悪化をしておる、こういう傾向もございまして、それだけ
警察官の負担は重くなってくる。二十九年の当時のわれわれの将来の
見通しが甘かったといわれれば、これはまことに不明のいたすところと言わざるを得ないのでございますが、現実がそういう状況に相なっております
関係上、やむを得ず、その後において整理すべかりし予定の
計画を変更せざるを得ないということに相なったのでございます。ひとり犯罪の発生のみならず、あるいは逐年増加しております交通事故の
状況等から見まして、交通取締りについても
警察力を相当に充てなければならぬといったような状況、また、国交回復によって外国との往来もひんぱんになるようなことになりまして、いわゆる外事方面の仕事もふえて参っておるというような、いろいろな要素が山積せられまして、二十九年制度
改正当時の客観
情勢と異なった、いわば
警察的にはそれだけ
警察の負担が重くなるような幾つかの要素が積み重なりまして、
警察官のそれだけ負担が重くなったということから、
警察力はある
程度これに対応した増強をはからなければならぬ。従って、先ほど申しました
通り、そうした新たなる理由に基く新規の増員をするかわりに、整理すべかりし予定の
計画をストップするという措置をとらざるを得なくなったというのが、今日までの状況でございます。二十九年の制度
改正当時のわれわれの
見通しが誤っておった、甘かったということでありますならば、これは甘んじてその御批評をお受けしなきゃならぬと思いますが、その後
情勢のそういう
変化に即応いたしまして、今日とっておるような措置をとらなければならなかっという点を御了承願いたいと思います。