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1958-02-14 第28回国会 参議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年二月十四日(金曜日) 午前十一時四十一分開会     —————————————   委員異動 二月十三日委員森田豊壽君辞任につ き、その補欠として松岡平市君を議長 において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小林 武治君    理事            大沢 雄一君            小柳 牧衞君            加瀬  完君    委員            伊能 芳雄君            西郷吉之助君            館  哲二君            成田 一郎君            鈴木  壽君            岸  良一君            森 八三一君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁刑事部長 中川 董治君   事務局側    常任委員会専門    員       福永與一郎君   説明員    文化財保護委員    会事務局美術工    芸課長     本間 順治君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○銃砲刀剣類等所持取締法案内閣提  出) ○遺失物法等の一部を改正する法律案  (内閣提出)     —————————————
  2. 小林武治

    委員長小林武治君) これより委員会を開きます。  まず、委員異動を報告いたします。  昨十三日、森田豊壽君が辞任されまして、松岡平市君が補欠選任されました。  以上でございます。     —————————————
  3. 小林武治

    委員長小林武治君) 次に、銃砲刀剣類等所持取締法案を議題といたします。  前回に引き続きもし質疑のある方は、御発言を願います。
  4. 鈴木壽

    鈴木壽君 十七ページの(登録)に関連してでございますが、美術品として刀剣類登録をすることができるわけなんですけれども、登録審査委員会等鑑定をした結果、美術品として適格性がないと、このようになったものは、これはどうにも所持できないと思うのですが、その場合に、その不適格なものとされたものを持つことは、これは犯罪になると思うのですが、取り上げるのですか、それともそのままほうっておくのですか、その点一つ
  5. 中川董治

    政府委員中川董治君) そういったものにつきましては、一応三条違反ということになるわけですが、三条違反になりましたものについて例外なく取り上げるということにするのもいかがかと考えますので、その違反にならないような態様に所持者がしていただく、具体的に申せば、刀剣類の形でないものに、鍛冶屋さんその他に売却するとか、鍛冶屋さんで別のものにしてもらうというのも一案でございます。そういうことが非常にめんどうだと言われる方々もあるかもしれませんが、そういう方は、警察署に持って行ってもらえば犯罪でなくなる、こういうふうに運用したいと思うのです。
  6. 鈴木壽

    鈴木壽君 それではあれは、形を変えるとかあるいは警察へ差し出してもらうというようなこと、これは自発的な所有者の意思だけでやるのですか、それとも何かそういうふうにせよというはっきりした命令みたいなもの、命令という言葉は悪いかもしれませんが、指示をするのですか。
  7. 中川董治

    政府委員中川董治君) 理屈といたしましては、そういうふうに自発的に警察に持ってくるか、鍛冶屋さんその他に行って直してもらうか、そういうことをしないと犯罪になるので、そういうことをしないと犯罪になるというバックのもとに、その犯罪にならないような防犯的措置関係者にしていただく、こういう仕組みでございます。
  8. 鈴木壽

    鈴木壽君 警察に持ってくるのは、これははっきりしているのですが、他のものに形を変えて持っておる、あるいは何かの格好で隠している、そういうような確認の具体的な何か方法をとるのですか。
  9. 中川董治

    政府委員中川董治君) それは第何条に基く確認という措置を講じますと、あまりぎこちなくなりますので、いろいろな防犯措置として、こういうふうにやったら刀剣でなくなるというふうなことに実際上の指導はあろうと思うのですが、その点は、全部非合法にもぐらぬようにやるという前提のもとに、関係行政機関としては、なるべく防犯措置として親切に指導する、こういう実際的行為によって、円滑に実施する方が便益かと思いまして、そういうようにいたしました。
  10. 鈴木壽

    鈴木壽君 何といいますか、自発的な所有者のそれを尊重するというようなことは、建前は私はそれでいいと思うのです。ただしかし、こういう一つ防犯といいますか、暴力なんかの発生を防ぐというような意味法案でございますから、何かやはり最終的に確認するようなことまでとられないと、果して形を変えて持っておるものやら、またどこかへ隠して持っておるものやら、つかみがたいというようなことがあり得るのじゃないか、そういうことが、ひいては何かの機会にその刀剣を持ち出すというようなことにもなりかねないと思うので、そういう点です。
  11. 中川董治

    政府委員中川董治君) まことにごもっともでございますので、文部省ともよく打ち合わせまして、文部省鑑定してもらったときの状況を正確に確認するということを、実際問題としてよくするように、地方においても連絡を密にして、きちっと確認するということを事実上もやるようにいたしたいと思います。
  12. 鈴木壽

    鈴木壽君 その点は一つよく注意してやっていただきたいと思いますが、もう一つ関連をして、これは常識的に言えば、合そういう、いわゆる登録を受けなければならないようなものの所持はないはずだと思うんです。終戦後、まあ私はっきりした命令とかあるいは規則的なことはよく記憶しておりませんが、いずれも終戦所持し得ないことになっておったと思いますけれども、当時も美術品としての価値あるようなものであれば、これは登録をして許される、こういうことになっておりたと思いますから、今も出てくるものは、これはもぐりだと思わなければならぬと思いますが、その辺の御見解はどうですか。
  13. 中川董治

    政府委員中川董治君) お説の通りでございます。現在あれば犯罪になる、こういうことになると思います。ところが、これが運用としましては、犯罪々々だといっておっては解決しないのでありますから、潜在してい危険物をなるべく顕在化して、合法な線に持っていきたいと思います。その一つ方法としましては、二十三条の規定を活用いたすのでございますが、現在そういう刀剣は、今発見したという届出があるような場合におきましては、その届出を重視いたしまして、その発見に基いて合法な線に持ち込んでいく、こういう努力をいたしまして、潜在する危険物は顕在化して危険をなくしていこう、こういう努力を続けたいと思います。
  14. 鈴木壽

    鈴木壽君 先ほど登録のことにまたちょっと戻りますが、鑑定を受けて、いわば美術品としても不適格というふうになった。しかしこれはいわば先祖代々からのお家重大の、その人にとっては大事なものだというような場合があると思うんですが、そういうものは、これは所持を許されるものかどうかですね。
  15. 中川董治

    政府委員中川董治君) 現行規定におきましては、お示しのごときものは、全く道がなかったのであります。それで今度提案いたし、法律案四条後段におきまして「一般風俗慣習上やむを得ないと認められるもの」、こういうものである限りにおきましては許可をいたしまして持てるようにしよう、これが改正一つ趣旨でございます。一般風俗慣習と申しますと、一般と書きましたのは、暴力団の何々一家の慣習では困るけれども、通常の社会常識に基いての一般慣習先祖から伝わっているものを持ちたいという一般慣習はあろうと思いますので、その慣習と認められる限りにおきましてはそれを許可して参ろう、こういうことにいたしたいと思って、第四条後段規定を新たに設けるようにいたした次第でございます。
  16. 鈴木壽

    鈴木壽君 そうしますと、第四条後段の「一般風俗慣習上やむを得ない」と、こういうふうにありますことは、その前の文章にある「祭礼等の年中行事に用いる」もの、さらに今のお話の、先祖から伝わっている重要だと思われる、美術的にそう価値あるものでもないものを持ちたいというものは持てる、こういうことなんですね。
  17. 中川董治

    政府委員中川董治君) その通りでございます。
  18. 加瀬完

    加瀬完君 今の問題は、十四条の「美術品若しくは骨とう品」というのですけれども、骨董品価値というものは、その者がいいと言えば、それで価値ということになるのじゃないですか。客観的な価値ということばかりでは骨董品ということにならないでしょう。その人が、その刀を持っていたいということになれば、美術品でないが、骨董品という意味を持って、持ちたいというものは持てるという判定は当然下せるわけじゃないですか。そういうことでのがれさせるということは、合法だという裏づけをすることになりませんか。
  19. 中川董治

    政府委員中川董治君) 十四条の今の御指摘の運用は、全く文部行政でございますので、文部省の御意見通り運用ているわけでございますが、それは骨董的価値があるかどうかの状況は、十四条二項以下に基きまして、登録審査委員鑑定に基いてやる、こういうことに相なろうと思います。鑑定の標準といたしましては、文化財保護委員会行政の一環として、骨董品として認められるという程度のものはどしどし登録してやるというふうに運用するのでありますが、運用の細部の点については、文部省の方が非常に詳しいのですが、ただいま文部省の方がお見えになっておりませんので……。
  20. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと関連して。火なわ式銃砲あるいは刀剣は、届出登録すれば、特殊な場合を除くほかは全部保有することができる、こういう建前ではないのですか。
  21. 中川董治

    政府委員中川董治君) その通りでございます。登録すれば保有できるということでございます。
  22. 加瀬完

    加瀬完君 登録するときに、登録する品物を持って参りまして、許可されるものと許可されないものと、こういうような二つのケースが当然あるということではなくて、所持品を持っていって登録すれば、ほとんど受け付けられる、特殊なものを除いてはほとんど受け付けられる、こういう建前じゃないですか。
  23. 中川董治

    政府委員中川董治君) 法律建前といたしましては、許可とか不許可とかという建前でございません。文化財保護委員会が、登録をするか、登録をしないかという建前でございますが、登録するにつきましては、同条第三項によって、登録審査委員鑑定に基いて登録文化財保護委員会がされます。文化財保護委員会という行政機関登録するに当っては、十四条趣旨に基いて登録する場合が多いと思いますけれども、十四条趣旨からはずれると認められる場合には、登録しないという場合があろうかと思います。
  24. 鈴木壽

    鈴木壽君 もうちょっとこまかいことでございますが、第四条の二項の「法人が前項に掲げる業務のため代表者又は代理人使用人その他の従業者に」とありますが、「その他の従業者」という場合に、これはどういうふうな解釈をすべきでしょうか。
  25. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは実は法人関係に書いてある例文によったのでございますが、代理人と認められる者、使用人と認められる者、代理人使用人との概念まで入りにくいけれども、その法人従業者、こういう意味に解するのですが、そういう使用人にあらざる従業者というのはどんなことかというと、きわめてレア・ケースであって、多くの場合には法人に用いてい例文によったのでございます。
  26. 鈴木壽

    鈴木壽君 そこで、この法の趣旨は、やはりだれでも持てない、刀剣銃砲等をだれでも持てなくすることなんだと思います。その場合に、使用人ならざる法人従業者、これは臨時とか何とか、そういうことも入るのですか。そうしますと、非常にそこら辺がぼやけてくるものが出てくるのじゃないかと思いますが……。
  27. 中川董治

    政府委員中川董治君) こういう関係は、危害予防規定ですから、法人を厳密に解釈しますと、そういう場合も出てくる。法人がそうしようとする場合においても、具体的に持つ人が許可を受けなければならぬ、こういうふうに二項に書いております。法人が持つ、こういうことになりますと、法人性格に基いてやることになりますので、そういうような場合には、具体的に所持しようとする者が、そういう自然人許可を受けなければならない、こう規定したのであります。
  28. 鈴木壽

    鈴木壽君 ですから、その場合の「その他の従業者」ということは、非常に幅の広い解釈になって、かりに臨時的なものであっても、とにかくその人が届出をすればよい、許可を受ければよいというようなことになると思いますから、そこら辺もう少しはっきりする必要があるのじゃないかというふうに私は考えるのですが、どうでしょう。
  29. 中川董治

    政府委員中川董治君) ほかの民事関係法律と違いまして、危害予防規定でございますので、法人が持とうとする場合でも、法人ということではなしに、そういう場合におきましては、そういう具体的に所持しようとする自然人許可する、こういうことによって問題はむしろ明確にいたしたい、こういう趣旨規定したのであります。民事関係とは異なる事実関係を用いたのであります。
  30. 森八三一

    ○森八三一君 十四条の前段の方には骨董品という字句があり、刀剣後段の方には骨董品という表現がないのですが、これはどういう関係が……。
  31. 本間順治

    説明員本間順治君) 十四条お尋ねのようでありますが、これは、銃砲の方には骨董とあって、刀剣の方には骨董とないのはどうかというお尋ねでございましょうか。
  32. 森八三一

    ○森八三一君 そうです。
  33. 本間順治

    説明員本間順治君) これは、刀剣の方は数がたくさんあるものでありますので、骨董品というところまで線を引きますと、大ていのものは骨董品だというようなことになります。銃砲の、火なわ式銃砲というものは数の少いものでありますので、これは大てい許可してもよろしいのではないか、持たしてもよろしいのじゃないか、そういう見地から、美術品とだけにしぼりませんで、骨董価値のあるものというふうにいたしておるのであります。
  34. 森八三一

    ○森八三一君 私はこのことを、非常にしろうとでわかりませんが、刀剣類には骨董品的価値のあるものはない、こういうことに割り切ってよろしいということになりますならば、どうも常識論としては、刀剣類といえども骨董価値があるといって愛玩というか、所持しておる人が世の中にはなくはないのではないかと私は思いますが、いかがでしよう。
  35. 本間順治

    説明員本間順治君) もちろん、刀剣骨董的価値のあるものもございますが、この美術刀剣審査いたします鑑定の基準というものが、この法で相当幅広く見ておりますので、いやしくも鑑賞といいましても、目の高い人、低い人と、いろいろありますが、いやしくも刀好きの人が鑑賞対象にする、そういう程度のものはみな審査規定の上でとれるようにいたしておるのでありますので、そのどれにも該当しないというようなものは、これは骨董品として特に見る必要はないのではないか。また、なお骨董品としても、今度「許可」の方の第四条の力で、幅広くいろいろと、こういう場合は許可するというふうに認めておりますので、両方あわせて考えますと、大ていの、皆が家宝として持っておる刀は、全部いずれかに入るのではないかというふうに見ておるわけであります。
  36. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、今、四条の力は、一般風俗慣習ということで、局長のお話のように、先祖から伝わってきたような家宝のようなもの、ところがその家宝ではない、しかし、その所持者としては、骨董的なものとして愛玩をしておるというのは四条には入らない。十四条では骨董的な価値を認められ、個人としては認めておっても、委員会としては審査対象にはならぬという結果になるように思うのですがね。火なわ銃には骨董的価値を認めるが、刀剣類には骨董的価値を認めない、四条救済するといっても、それは骨董的価値のあるものとして、主観的にその個人が考えた場合を、風俗慣習上という範疇に入れて解釈してよろしいのですか。こういうことには、今までの質疑応答ではならないように思いますが、取締り当局の方では、そういう場合も風俗慣習範疇に入れて了解する、こういうことになりましょうか。
  37. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御質問取締り関係のようでありますから、私からお答え申し上げます。  お説のようなことの筋になると私は思うのであります。ところが、美術的価値というのは、もちろん、文化財保護委員会の方が御説明になりましたように、美術的価値という言葉相当広い概念として理解できる。それで火なわ式銃砲のみについて骨董をつけて、刀剣骨董をつけていないのは、火なわ銃砲という性格にかんがみ、骨董というニュアンスが非常に強い場合がある。刀剣につきましては美術的価値相当広く読めるということで、骨董的価値は特に書かなくても問題は解決ができると、こういうふうに規定いたしたのであります。  それから、御質問最終点は、「一般風俗慣習上」という言葉意味に相なるわけですが、「一般風俗慣習」とは、特定の風俗慣習でなしに、一般にまあそういうことを持つということが、社会慣習上許される、こういうものは広く読むべきだと考えますので、先ほど文部省説明員の方も御説明になりましたように、四条後段と十四条と、両者併用することによりまして、不合理な運用にはならないとわれわれ思っているのでございます。
  38. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、要約して、十四条では骨董的価値を認めないということで登録することを否認された、が、しかし、その所持者は、骨董的価値愛玩しておるということで、一般風俗慣習上、骨董品愛玩するということは、日本人の習慣ですから、そういうものは四条救済をすると、こういう取扱いをすると理解してよろしいということでございましょうか。
  39. 中川董治

    政府委員中川董治君) その通りでございます。
  40. 森八三一

    ○森八三一君 それから、二十三条の「刀剣類発見し、」というのですが、これは現行法で全部届出済になっているはずです。先刻、鈴木委員の御質問で、もうないはずだと、それを発見するものを今度救済すると、その発見した経路というものは明確にされなければならぬと思うのですが、そういたしますると、旧法、改正前の法律に触れるという結果が生ずると、私は思うのですが、その発見ということについて、どの程度に取り扱われるのか。発見経路というものをずっと究明していけば、今まで届出を怠っておったということに私は必然になると思うのです。そうするとやはり救済しようとしても、そういうような不法所持をしておったようなものは救済はできない、事実上できないという結果になる。だから二十三条の発見ということをどの程度運用されるのか、伺いたい。
  41. 中川董治

    政府委員中川董治君) 運用根本方針といたしましては、第一条危害予防上の趣旨からいきますので、発見して持ってきたものについて、だんだんやかましく経路を追及するということは、まあそうむやみにやらない方が、この法律全体の趣旨に沿うと思って運用いたしたいと思っております。
  42. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、新法の、改正法の二十三条で新しく届出をするものについては、その届出に至った経路というものは、一条趣旨を達するために、究明をしないというように理解をしていいかどうか。
  43. 中川董治

    政府委員中川董治君) 一条趣旨前提にする次第であります。
  44. 西郷吉之助

    西郷吉之助君 ちょっと今の森さんのに関連するのですが、念のために私も聞いておきたいのですが、今のように、先ほども御質問がありましたように、不法所持てい刀剣銃砲はない建前ですけれども、どうもきょうの連合審査会でも、そういう趣旨がありましたが、まだまだ私は、暴力団なんかが持っているのは、これは別ですけれども、善意の人で、届出をしないで持っている人がいるのじゃないかと思う、地方なんかに参りますと。それから、たとえば骨董屋なんかであった物を買おうと思っても、届けてなければ、それを買えば、やはり自分が不法所持になるので、非常にちゅうちょする場合もあると思う。だから、こういう新旧入れかえの際に、やはり今の御質問がありましたが、善意でまだ届出を怠っている人は、こういう機会に、なおかつ届出させるような指導、宣伝をなさった方がいいと思うのですが、そういう点はどう考えるのですか。
  45. 中川董治

    政府委員中川董治君) 西郷委員の御意見通りに実施したいと思います。
  46. 加瀬完

    加瀬完君 この取締法案に直接の問題ではありませんが、この一つ目的が、暴力国等防止ということも大きな一つ目的として含んでいるわけでございますので、その点について伺いたいんですが、このごろ、一部的かもしれませんが、警察行政を見ておりますと、警察署中心主義といいますか、一つ個所人員を集中して機動力を増すと、こういう形をとっておるように思われる。これが犯罪防止の上に一つのプラスになっているかどうかというと、地方へ参りますと、たとえば警部の派出所、あるいは警部補の派出所巡査部長派出所あるいは駐在所、こういうものの人員が、中心に集中されて減ってきて、かえって僻陬地といいますか、僻地の警備というものは手薄になっておるようにわれわれは感じられる。パトロールなんかが来ましても、大きな音を立ててパトロールが来るときだけ逃げてしまって、いなくなればまた寄ってくる、こういったような傾向が強いんじゃないか。それで地方の人々は、もっと駐在なり、あるいはそれぞれの派出所に、こういうものの人員の強化というものを熱望しているように考えられるんですが、長官もいらっしゃっておりますが、大きな立場で、防犯ということで、今のような方式だけで一体いけるかどうか、都市なんかそれでもいいかもしれません。百十番ですぐ連絡がつくかもしれない。百十番で連絡のつかないような僻地はどうする。駐在へ行ったって駐在はおらぬ、今まで派出所へ行けば、何人かおって、すぐ連絡がついたが、いつ電話をかけてもおらぬ。こういうことでは、大犯罪に対する対策は立っておるかもしれませんけれども、われわれの生活を取り巻く小さい犯罪防止ということはさっぱり、今よりも能率が落ちてしまう、こういう不平を聞くんです。この点どのようにお考えになっておられましょうか。
  47. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 駐在所派出所が 警察組織末端第一線組織としてきわめて重要な使命を持っておりますことは申すまでもないことでありまして、それぞれの府県によって実情は若干の差はありましょうが、それぞれ各府県実情に即して、必要な個所派出所ないしは駐在所を置くということになっているわけでございます。最近人口の移動その他によりまして、新しく駐在所ないしは派出所を設けなければならぬというような必要の個所もあるにもかかわらず、現在の警察官の定員の関係上、それが配置されていないというようなところが、あるいは全国的に見ますと、若干あるかと思うのでございますが、今日、警察で負担する仕事が各面にわたりましてふえて参っております、人員の増加ということも、地方財政関係等もありまして、簡単にできない状況にございますので、実は三十三年度の予算におきましては、私ども、警察力近代化機械化と申しますか、そういう意味におきまして、先ほどお話に出ましたパトロール・カーを飛躍的に増強することによって、そうしたものの活動によって、防犯的な活動を十分にやっていくと、こういうことに力をいたしておる次第でございます。決してあるところに警察力を集中して、末端第一線の必要な個所警察力配置を削減する、こういうことはないのでございまして、むしろ、第一線の方をもっと増強しなければならぬ点が、先ほども申します通り人口その他の関係等によりまして新たに加わっておると思うのでございますが、人員増強等ができない関係上、そういった点にまだ十分手が届いていない点は、あるいは若干あろうかと思いますが、そうした点は、今後機会あるごとに、実情に即するように改善をして参りたい、かように考えております。
  48. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると警察庁方針としては、その駐在所とか派出所とか、こういう点を重点的に考えておると、こういうふうに承わったんですが、そうですが。各地方によりまして、県警本部の方針で、警察署中心で、警部派出所であったものを格下げして警部補派出所にしたり、警部補派出所であったものを巡査部長派出所にしたり、十人の人員がおったものを四名に減らすといったような、極端な減らし方をして、それを警察署に集中させて、そのバランスをとるためでしょうが、白バイを二、三台ふやす、こういうようなことは、県警自体の方針であって、警察庁ではそういう方針ではないということですか。検察庁あたりの意見を聞くと、地方によってそういうふうに出先を減らすということは非常に因る。犯罪をかえって激化させると、何とかして末端の警察機構というものにもつと重点を置いてもらいたいという陳情といいますか、意見というのをわれわれは受けるのです。警察の現在の地方によっての方針と、検察庁の同じ防犯的な活動をしている方々との考え方の食い違いがある。これを警察庁自身はどう考えておられるか。少くとも私ども見ておって、パトロールとか白バイにしても、あるいはジープにしても、そういう機動力というのは限度があると思う、時間においても場所においても。そういうものの行けないところにだって犯罪は起るわけで、どうもそこに警察官がおって、駐在所なりあるいは派出所なりというものがあって、それがやはり保護してくれるということの方が非常な安心感を住民は持つのです。こういう点、警察庁としてもっと全国的に、この問題というものを検討してもらわなければならないのじゃないかと思うのです。まあお答えはけっこうですが、そういう希望が住民に非常にありますので、どうぞその点一つお考えいただきたいと思います。
  49. 石井榮三

    政府委員石井榮三君) 全くお説の通りでございまして、各県の実情はそれぞれ若干ずつ違いますので、お話のように、第一線の充実の必要を痛感している本部長は、県警察本部の陣容を極力簡素化して、人員第一線に配置するというふうにしている県もあるくらいでございまして、第一線の充実がまず優先的に考えられなければならぬということは、各府県ともひとしく考えておることと思うのでございます。ただ、定員その他の関係で、そうしたことが急にできないという、あるいはある特殊な問題があるために、一時、臨時的に警察力を一定のところに集中しなければならぬ、ある署を特に厚くしなければならぬといったような関係で、臨時的に最末端のところは一時手薄になるというようなことがままあろうかと思うのでございますが、私どもの考え方といたしましては、どこまでも、ただいまお話しの通り第一線を充実しなければならぬ、これが何と申しましても、毎日最も問題の発生のあるところであり、そこに十分警察力が浸透しておらなければならぬことは当然であるのでございます。固定配置と移動警らの調整をはかって、間隙なく警察力が末端まで浸透しておって、十分に防犯、あるいは刑事事犯に対しての措置が迅速にできるような措置を整えることが必要であることは申すまでもないところでございますので、御意見の点は十分に考慮いたしまして、善処いたしたいと思っております。
  50. 小林武治

    委員長小林武治君) では、他に御発言がなければ、本案に対する質疑はこれにて終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 小林武治

    委員長小林武治君) 御異議ないと認めます。  なお、本案に対する討論、採決は、都合により次回に譲ることといたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時二十二分開会
  52. 小林武治

    委員長小林武治君) 委員会を再開いたします。  午後は、遺失物法等の一部を改正する法律案を議題に供します。  まず、政府委員より詳細説明を聴取いたします。
  53. 中川董治

    政府委員中川董治君) 過日、国務大臣から説明いたしました遺失物法等の一部を改正する法律案について、条を追って説明いたします。  第一条は、遺失物法の一部を改正しようとする規定であります。  その第二条ノ二の改正規定は、現行法の第二条の規定によって、警察署長が売却に付しても売却できなかった物件または売却することができないと認められる物件は、警察署長においてこれを廃棄することができる旨の規定を設けたものであります。現在取り扱っている遺失物の中には、腐敗したくだもの、効用のなくなった野菜等がありまして、現行法運用としては、条理に基いて適宜廃棄するのやむない状況にあるのでありますが、かかる場合の明文の規定を設けることが、かえって処理の適正を期するゆえんと考えられますので、この規定を設けることといたしたのであります。  第四条改正は、規定整理のため、現行法第十条第三項の内容をこの第四条に移したものであります。  第七条中改正は、現行法趣旨とするところを明確にするために改めようとするものであります。  第八条第三項中改正は、一般的には法令の規定により私に所有所持することを禁じた物件であっても、猟銃、刀剣等のごとく、許可または登録により所持が認められるものについては、拾得君に権利を与えることが妥当と考えられますので、この改正規定を設けることといたしたのであります。  第九条中改正規定は、次に申し述べますように、船車建築物等において現実に拾得した者に対し、拾得者としての権利を付与することにいたしたことに伴う改正であります。  次の第十条は、全文を改めるものであります。船車建築物等の占有者のため、これを管守する者が、その管守する場所において、他人の物件を拾得したときは、現行法の場合と同様に、当該船車建築物等の占有者に拾得者としての権利を与えるのが適当であると考えるのでありますが、管守者以外の第三者が、船車建築物等において他人の物件を拾得したときは、第一次的には、現実の拾得者に拾得者としての権利を付与し、当該船車建築物等の占有者が拾得物に関する権利を取得するのは、現実の拾得者が拾得物に関する権利を放棄した場合と、その者が三十四時間内に管守者に物件を交付することを怠った場合に限ろうとするものであります。なお、この場合、現実の拾得者は当該船車建築物等の管守者に物件を交付し、この交付を受けた管守者はその占有者に差し出すべきことは、現行法と同様でありま。  第十条ノ二の改正規定は、右の船車建築物等の占有者のうち、拾得物を保管するに適すると認められる特定法人は、わざわざその物件を警察署長に差し出すことをしないこととし、届け出ることのみによって、みずからこれを保管し、これに伴う必要な処理を行うべきことといたしたのであります。すなわち、かくすることが、むだを省き物件の損傷を少くするゆえんと考えるのでありますが、右の法人の指定に当っては、当該船車建築物等における拾得物の保管設備の状況等を十分勘案して、実状に即して逐次実施することが、この改正規定趣旨に沿うものであると存じます。  第十一条改正規定は、犯罪者の置き去ったものと認める物件については、現行法のもとでは、当該犯罪の公訴権消滅後さらに一年の期間を経過しなければ、拾得者に権利が移らないのでありますが、これは適当でありませんので、公告後六ヵ月を経過した後であれば、当該犯罪の公訴権消滅の日に拾得者に所有権が移るよう規定を改めたのであります。  第十三条中改正規定は、右の第十条ノ二の規定を設けたことに伴う改正であります。  第十四条改正規定において「六箇月」を「二箇月」に改める趣旨は、所有権を取得した者が所有権取得後一ヵ月内にすでに七二%強、二ヵ月内には九〇%弱引き取ってい実情でありますので、この実情に即して処理を迅速に行い、物件の活用をはかろうとするものであります。  第十五条の改正規定は、麻薬等のような法令の規定により私に所有所持することを禁じた物件については、その所有権が国に帰属する旨の規定を設けるとともに、第十条ノ二の規定を設けたことに伴い改正したものであり、第十六条の改正規定は、細目については政令その他の命令にゆだねようとするものであります。  法律案第二条においては、水難救護法の一部を改正しようとするものでありますが、同法に定める漂流物または沈没苗については、制定当時から遺失物とおおむね同様に規定されていますので、遺失物に関して期間を短縮すると同趣旨により、同法第二十七条及び第三十条所定の期間を短縮しようとするものであります。ただし、沈没品のうちには、期間を短縮することが不適当なものがありますので、沈没品中政令をもって定めるものについては、現行法通り一カ年とするものであります。  第三条において民法の一部を改正しようとするのでありますが、国務大臣から説明いたしました趣旨に基き、同法第二百四十条所定の「一年」を「六个月」に改めようとするものであります。  なお、付則において施行期日の規定並びに右改正に伴い必要な経過規定及び関係法律の一部改正規定を設けております。
  54. 小林武治

    委員長小林武治君) これより、本案について質疑に入ります。質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  55. 森八三一

    ○森八三一君 昨日も連合審査で問題になったのですが、第二条の改正で、売却することができなかった場合、それから売却することあたわずと認められるような物件は、警察署長が処分をするという規定ですが、この売却することができなかったという場合でも、警察署長の主観によって売却することができないと認定したものでも、遺失者にとっては非常に重要な価値を感じるものがないわけではないと思います。ただ、ここに今御説明のありましたように、きのうも連合審査説明があったように、野菜等を遺失して、腐敗しているとか、腐敗する危険があるとかいうものについては、よく了解できますが、そうでない性格のものがないわけではない。そういうものを、警察署長の主観によって一方的に処分をするということは、時にあやまちを犯さしめるという危険を生ずる場合があるのではないか。もちろん、趣旨を十分徹底せしめられまして、そういうような遺憾のないように指導をされることは期待いたしておりまするし、当然そうあると思いますが、多数の中には、そういうような間違った措置に出る場合がないとは言えない。そういう危険を、きわめて少い日にちでしょうけれども、感じますので、ここに何らかの制限を加えておくことが必要のように思いまするが、そういう点についてはどうお考えになっておりますか。
  56. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御意見まことにごもっともですが、きのう説明いたしましたように、物件そのもの自体は、問題がないというものに限りたいと思っておりますので、それからはみ出ることがないように、実施に当りましては厳重なる措置を講ずる。ことに、きのう説明したバナナの場合とか、腐った魚の場合等を中心とするのだということを明確にして、警察署長が間違わないように、執行に当りましては十分注意したい。注意するばかりでなく、その趣旨を徹底する方途を、いろんな訓令その他において講じたいと思います。
  57. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、第二条ノ二の運用につきましては、警察庁長官から各警察署長に、運用上の訓令その他を発せられる場合に、ここにいう「売却スルコト能ハザリシ」あるいは「売却スルコト能ハズ」と認定する範囲は、この提案理由の詳細説明にもありますように、野菜、くだもの等、腐敗しておるものとか、腐敗をすることが通念上当然のものというように限定をするのであって、きのうも質問がありましたように、多くの人は何ら価値なきものと認めるような、かわらのかけらのようなものであっても、腐敗性がないというものについては、この処分の対象にはしないという措置がされる、こういうふうに了解してよろしゅうございましょうか。
  58. 中川董治

    政府委員中川董治君) その通りでございます。
  59. 森八三一

    ○森八三一君 それからもう一つ、管守者のある汽車とか電車、営造物において取得した、拾ったという場合は、従来は、その権利というものが鉄道なり、デパートなりにある。今度は、拾った人に与えよう。これは意味はよくわかりますが、こういうようにすることによって逆作用の起きる危険がありはせぬか。というのは、汽車の中なんかで、食堂とか何かに行っておる留守に、その物の所持者ははっきりしておるのです、実態は。けれども、そのときに、たまたま不在であるということで、拾ったという形を作って届け出る。その場合、当然遺失者は発見されますから、戻る。戻るが、拾ったということによって何らかの報酬を得るというような、逆作用が起きる危険があるようにも思うのですが、これは、もちろんそういうことを作為的にやるのですから、けっこうなことではありませんけれども、取得者に対して権利を与えることによって、そういう逆結果を誘発するという危険があるように思うが、そういう場合はどういうように対処されますか。
  60. 中川董治

    政府委員中川董治君) そういう逆の効果が起きないように、そういう拾得という概念、遺失物という概念を、正確に関係者に徹底して、逆作用の起らないようにいたしたいと思います。ところが、また御提案と別の意味において、現在は何にも権利を与えていないから失敬するという場合もあろうと思いますが、その点は今度よくなる。こういうことで、プラス・マイナスを考えてみますと、プラスの点が非常に多い。マイナスの点は、あるいは御指摘のようなことがあるようにも思いますが、そういうことのないように、よく遺失物という概念を明確にして、便所に入っている間のものはその所持を離れていない、従って、遺失物ではない、こういう点を徹底して参りたいと思います。
  61. 森八三一

    ○森八三一君 その場合に、管守者のある営造物なり船車等において拾うというときには、おそらく、だれも見ていないという場合はまれだろうと思うのです。ですから、おっしゃったように、拾得者がネコババしてしまうということは、実態としては少い。むしろ、僕の申し上げたような逆作用は、常々とこれは公けにやれるのですね。この物は所有者はございませんか、そのときには、所有者はおりません。それからそういうときに、よく見きわめた上でやることですから、そこで正式に届け出る。何らそこに、行為としては形式上は不正な行為は存在しないのです。だから、むしろ拾得権を与えることによって逆作用を誘発するという危険の方が多くなりはせぬかという心配を持つのですが、そうはお考えになりませんですか。
  62. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは実は、プラットホームで拾った場合と、そこに入る前に拾った場合と、違うのは不合理だ、不合理だと、各方面から言われたものですから、直したのですが、御注意の点は、拾得物の観念をほんとうの概念に整理いたすことを徹底して参りたいと思います。
  63. 森八三一

    ○森八三一君 概念を整理するというのは、もう少し具体的に御説明いただきたいのですが、どういうのですか。
  64. 中川董治

    政府委員中川董治君) 遺失物とは、所有者所持の範囲から完全に離れたものをいうので、便所に行っている間とか、食堂へ行っている間は、所有の観念から離れていない、こういう観念を明確に徹底いたしたいと思います。
  65. 森八三一

    ○森八三一君 そうすると、徹底するということであっても、現実の現われてくる行動としては、その瞬間には所有者はいないのですね。拾ったといって、すぐこれを車掌なりその他に届け出るというのではない。この所有者はございませんかということで、その付近におる一般の公衆に表示をして、だれも所有者はありませんということを確認して届け出るのですから、そういう趣旨を徹底するといっても、徹底の範囲外において行われる行動である。それによって報酬をもらう、その報酬を目当てに届出をするという行為が、駅だとか船車の場合には、かえって誘発されるじゃないか。今までは、そういうものを拾っても、ございませんかということで聞くし、また見ておる人もあるのですから、ネコババするという危険はむしろ少かった。改正の方がむしろ逆になるような危険を僕は非常に強く感ずるのですけれども……。
  66. 中川董治

    政府委員中川董治君) 御提示の例で、車掌へ持って来る。車掌へ持って来ることは必ずしも悪くないと思いますが、車掌へ持って来たことによって遺失物と考えて報酬などをするというふうな処置をしなければ、目的を達成できると思いますので、そういう場合には、幾ら届けて参りましても、それは、所有者が食堂におって、わかったじゃないか、それは遺失物でない、こういう観念を徹底することによって、御心配のところがなくなると思うのでありますが……。
  67. 小林武治

    委員長小林武治君) ほかにありませんか。
  68. 鈴木壽

    鈴木壽君 条文に関係したことじゃないのですがね 今回のこの改正は、相当大幅な改正だと思うのですが、こういう機会に、古いこういう背の法律を、今の現代文に書き改めるということをお考えにならなかったのですか。
  69. 中川董治

    政府委員中川董治君) ごもっともですけれども、多年こうやって、ことに民事関係の法令と非常に関係を持っておりまして、新憲法に基いて改正するときにもそれを考えたのですけれども、ずっと判例なんかで集積しておりますので、改正となると、根本的に思想なんかも変ってくる傾向がありますので、この際、やむを得ず多年集積した文字を用いて、必要な文字だけ変えた、こういう形をとったので、ちょうど民法改正とか、刑法改正の場合にとったと同様な形をとったわけです。
  70. 鈴木壽

    鈴木壽君 これはいろいろ関連する、古い法令に関連するところがあるんですから、お話のような困難な点はあると思いますが、しかし、それが必ずしも克服できないものじゃないと思います。これは、民法改正だって、一部改正があって、新しい文章にもなっておりますし、用語とかそういうことについては、あるいは昔のものがあったにしても、これは今お話のように、不可能なことじゃないと思いますがね。何か、調子からいっても、明治三十何年ですか、二年ですかの法律で、まことに読んでおって不快なような念を抱かせるような、命令的なそういう調子が残っているわけですね。ですから、私は、やっぱりこういう機会に逐次、いろいろな困難はもちろんありますけれども、それは必ずしも私は不可能な問題とは思わないし、やはり直していくことがいいんじゃないかと思って、ちょっとお聞きするんですがね。
  71. 中川董治

    政府委員中川董治君) 不可能ではございませんけれども、非常に困難だということであります。民法の場合も、民法一条は最近変えたのですが、これもやはりかたかなでいったようなわけでございますので、民法改正が非常に困難であるのと同様に困難であったので、こういうふうにいたしたのでありますが、さらにこれ以上の大きい改正をする場合におきましては、御指摘のように考えていきたいと思います。
  72. 鈴木壽

    鈴木壽君 これ以上の大きい改正といっても、私はこういうものが将来またあるものじゃないと思います。明治三十何年かにやって、何べんも今日まで改正されておりますけれども、ほとんど骨子は変っていないのです。今後も、こういうものはそんなに変るものじゃないと思います。今回、たとえば拾得者に返す期間を一年を六ヵ月にするとか、あるいは建物の中などで拾ったような場合の所有権の取得の問題等、これは相当従来から見れば大幅な改正です。こういうのは、また近いうちに何べんもあるとは思いません。多少の期間の短縮とか何とかは、かりにあるにしても、この法律そのものは、そんなに根本は変るものじゃないと思いますし、これから大幅に改正する機会があるといっても、いつのことかちょっとわからないと思いますが、その点どうでしょう。
  73. 中川董治

    政府委員中川董治君) 私が、これ以上の改正という言葉が不正確だったのですが、民法との関係がありますので、民法とか刑法などが、かたかながひらがなにならないと、それと関連しないと困るので、その点御了承を願いたいと思います。
  74. 森八三一

    ○森八三一君 今のに関連したようなことですが、遺失物の取締法によって、民法の改正をここでやってしまったわけですけれども、これは関係各省と打ち合せ済みでしょうけれども、こういう手続について私は非常に疑義を持つのです。これはやっぱり、民法の改正改正で別個に同時審議をすべきであって、他の法律の付則的なものをちょっぴりくっつけて基本法を改正してしまうという行き方ば、実体としては議論はないにしても、問題はあると思いますが、法制局との打ち合せの場合に、そういう点はきわめて簡単に了解済みなんですか。
  75. 中川董治

    政府委員中川董治君) 結果的にはきわめて簡単に了解済みなんですけれども……。と申しますのは、民法の基本構造を改正するような場合には、御指摘の通り、かなり手間取りますが、この法律案は、遺失物ということに関連する問題で関係法律改正するということで、思想を統一している、こういう意味において、最近この種の形式は非常に多く用いておりますので、その意味において形式的な反対説というのはあまりなかったのでございます。
  76. 森八三一

    ○森八三一君 その趣旨においては同感であるが、手続上、同時に民法の改正手続を運ぶという別個の方途を講ずるという意見は、法制局になかったのですか。この法律のうちで民法改正の手続をとるのと別途に、同時に民法改正の手続を別個にとるということ、形式上の問題ですが、そういう点については別に異議も論議もなしに行ってしまったのか。
  77. 中川董治

    政府委員中川董治君) これは、こまかい論議ということではなしに、従来、形式といたしましては、御指摘のような方法で、遺失物法改正の付則で民法を改正するという形は、私は不適当だと思うのです。ところが、この法律の形式は、遺失物にかかわり合いする法律を遺失物の観点から改正する。第一条で遺失物法を改正する、第一条で水難救護法を改正する、第三条で民法を改正する、それから付則で覚せい剤取締法を改正するのは、全く機械的な改正である、こういうことでありますので、この形式は相当多く用いられておりますので、その意味において論議はなかったのでございます。
  78. 小林武治

    委員長小林武治君) それでは、本案に対する質疑は、さらに次回に続行することといたします。  本日は、これにて散会いたします。次回は十八日、火曜日午前十時より開会いたします。    午後一時四十八分散会      —————・—————